EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAMAS KATAI OF THY CATAFALQUE !!
“The Underground Metal Scene Of The 90s Is My Main Source Of Inspiration Until This Time. I’m Not The Type Of Person That Locks Himself In The Past But That Era Is Very Important To Me And I Personally Think It Was The Golden Age Of Creative And Inventive Metal”
DISC REVIEW “VADAK”
「僕は過去に閉じこもるタイプではないけれど、90年代は僕にとって非常に重要なんだよね。個人的には、ユニークなサウンドとアティテュードを持つ多くのバンドが存在した、創造的で独創的なメタルの黄金時代だったと思っているんだよ」
メタル世界の番外地ハンガリーから現れた THY CATAFALQUE の謙虚な天才 Tamás Kátai は、やはり異端者です。ジャズ、ポップス、フォーク、エレクトロニカなど、様々なジャンルのしたたかなアマルガムでメタルのマニュアルを再創造していくのですから。そんな東欧に根ざす舞曲のような野心は、90年代に跋扈した魑魅魍魎の独創をドナウの流れに受け止めています。
「野生とか、野生動物を指す言葉さ。アートワークの写真を見れば意味がわかると思うよ。作品のゆるやかなコンセプトは、僕たちは、すべての生き物のように、時間の森の中で死に追われているということなんだ。僕たちは結局野生動物であって、ハンターではないんだよ」
“Vadak”。ハンガリー語で “野生” を意味するアルバムタイトルは、この新たな天啓のエキゾチックで野放図なエッセンスを指し示す重要なヒントとなっています。”Vadak” とは教訓としての死の予感。人にも獣にも同じように宿る儚さにフォーカスしたこのレコードは、人間も動物と等しく本質的に究極の終焉である “死” を恐れ逃げ出すという、フロイト的な生命の本能について深く探求しています。
「”Vadak” も例外ではなかったよ。ただ作曲と録音を始め、その過程でアルバムが勝手に出来上がっていったんだ。もっと有機的で自然なプロダクションにしたいと思い、楽器の世界に飛び込んだんだけど、このアイデアは作曲中にも出てきていたね」
THY CATAFALQUE を “バンド” と呼ぶのは少し不適当かもしれませんね。なぜなら、Tamás Kátai はこのプロジェクトの首謀者で、ソングライターで、マルチ・インストゥルメンタリストで、ボーカリストでもあるからです。つまり THY CATAFALQUE は基本的に Tamás が一人でギター、ベース、シンセ、プログラミング、ヴォーカルを担当している彼の子供のようなもの。
一方で Tamás は自分の音絵巻を完全なものとするために、多くの才能の助力を仰ぎます。”Vadak” では、ボーカル、バイオリン、サックス、レッドパイプ、トランペット、ギターなど、16人ものゲスト・ミュージシャンをアメリカ、ロシア、エジンバラ、ブラジルなど世界各地から招き入れているのです。
このような多国籍なアプローチには大抵大きな困難が伴いますが、”Vadak” は誇りと信頼性に加えて、まとまりを伴いこの難題を成功へと導きました。近年の DORDEDUH や WOODEN VEINS にも言えますが、アヴァンギャルド・メタルが混乱を意味していた時代は終わり、一つのベクトルを見据えた美しき旅路こそがこのジャンルの新たな看板として掲げられているのは明らかでしょう。
「僕は今でもこのジャンルが大好きで、音楽の中には常にブラックメタルの要素があると思っているよ。この数年で僕の目は大きく開き、最近はパレットがよりカラフルになったけど、やっぱり “黒色” はまだ存在していて、僕はそれでいいと思っているんだよね」
エレクトロニカ、ポップス、フォーク、インダストリアル、メロディック・デスメタル、ジャズ、ゴシックロック。色とりどりのパレットとなった THY CATAFALQUE の音楽ですが、今でもその中心にあるのは漆黒、つまりブラックメタルです。言い換えれば、それは90年代の型にはまらない独創性なのでしょう。EMPEROR, DISSECTION, NOCTURNUS, EDGE OF SANITY, TIAMAT といった境界があるようでなかった、限界があるようでなかった曖昧なバンドたちの DNA は間違いなくこの作品へと浸透しています。
シンセとブラックメタルの神々しい融合 “Szarvas”、レッドパイプと天使の女声が響き渡るフォーキーな “Köszöntsd a hajnalt”、金管楽器に東欧の幸福と孤独を投影する “Kiscsikó (Irénke dala)”、ギターとヴァイオリン、そしてブラストビートの音壁で背筋も凍るダークファンタジーを描いた “Vadak (Az átváltozás rítusai)”、そして熱病のようなすべての錯乱を冷ます幽玄なピアノのクローサー “Zúzmara”。そう、”Vadak” のすべてはあの時代に証明されたメタルの可能性を呼び覚まし、さらに前へと進める本能の祝祭。
今回弊誌では、Tamás Kátai にインタビューを行うことができました。「このバンドにとって、自然は初期の頃から非常に重要な要素で、それはブラックメタルの伝統にも由来しているんだ。このアルバムは、環境保護を意識したものではないと思うけど。自然は常に僕たちの創造性にとって豊かな土壌で、今回のアルバムもその例に習っただけなんだよね」 二度目の登場。どうぞ!!