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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【SLEEP THEORY : AFTERGLOW】


COVER STORY : SLEEP THEORY “AFTERGLOW”

“Nowadays, Heavy Bands Have Flipped The Script, Making Music For Everyone’s Ears. You Might Be The Sort Of Listener Who Considers Themselves a Pop Fan, But You Could Turn On a Sleep Token Song And Enjoy It.”

AFTERGLOW

「僕たちはアートを作るためにここにいる。 みんなと同じでは何も始まらないからね」
SLEEP THEORY のフロントマン、Cullen Moore の最初の記憶は、リビングのソファーで父とボビー・ブラウンの反抗的なアンセム “My Prerogative” を一緒に歌ったことでした。”誰の許可も必要ない 自分で決断をする それが自分の特権だ”。
このマインドセットは、メタルの境界を破る SLEEP THEORY に結実しました。そのポップな滑らかさとR&B の野性味は前例のない共鳴、共感を呼んだのです。彼らはラジオを支配し続け、今後の大規模なフェスティバル出演が成功を確固たるものにしています。
「ガソリン・スタンドで止まった時、父が “SLEEP THEORY がこんなに大きくなるなんて考えたことある?” と聞いてきた。僕はただうん、と答えて父に “それは僕が決して小さくさせなかったからだよ” と伝えたんだ。僕は僕が関わるものに対しては、競争心が強く、決して自分の水準を下回ることを許さない。そのアティテュードがどこから来たのかは分からない。ただ、ずっとそうだっただけだ。それは他の人より “優れている” ことではない。誰かが何かを成し遂げるのを見て、自分がどれだけできるか試したいという意欲なんだ。SLEEP THEORY が既に到達したレベルに達していなくても、それが実現するまで努力を続けるだけだ」
Cullen のその自信には、作られた要素は一切ありません。 テネシー州とミシシッピ州の州境の南側で音楽に囲まれて育った彼は、その場所を親しみを込めて “メンフィシッピ” と呼びます。その背景が、彼の自信の大きな要因となっているのです。ブルースの発祥地であるビールストリート、メンフィス・ラップの誕生地である粗野な街、そしてエルヴィスのグレースランドの豪華絢爛な世界など、アメリカを象徴する多くのサウンドは、彼の家の玄関から車で 30 分圏内で生まれました。
「みんなは、僕がいつ歌えるようになったのか尋ねてくるけど、正直覚えていない。ただずっと歌っているだけなんだだ。それが唯一、僕ずっとできてきたことだから。父はいつも歌っていた。祖母も。叔父も。もう一人の叔父も。叔母も。大叔母も。僕たちは皆歌手だった。そして皆自然にやっている。人生で経験した多くのことにおいて、音楽が関与していた。そして、それは僕の人格の核心的な部分となった。歌が人生であることを疑ったことは一度もないんだ」

粒子の粗いVHSで父親の音楽ビデオを見たことが、Cullen が歌を職業として実現可能だと確信するきっかけになりました。両親は息子に良い育ちと彼が得るべき機会を与えるために努力しました。時には、勉学を優先して音楽を “プランB” にすべきだと奨励しましたが、それは決して彼の道ではなかったのです。
「12歳から音楽をやっている。そして14歳からスタジオにいる」
まずは、創造的な道を模索することが第一でした。Cullen にとってヒップ・ホップに手を出すことは魅力的ではなく、父親から受け継がれた純粋なR&Bのバトンを継ぐこともありませんでした。そうして彼は、人生のコントロールを握るという別の目標から父親の足跡をたどり、アメリカ軍に入隊しました。ミシシッピ州コリントを拠点とする警備隊での3年間、それは自己肯定感の向上と現実の厳しさを同時に感じた経験だったのです。
「あの瞬間を鮮明に覚えている。軍隊では、自分を正す必要があると感じるから入隊する人もいる。僕はバランスの取れた家庭で育った。悪い子供ではなかった。だけど、大学を中退し、自分がどこへ行きたいのか、何をしたかったのか分からない状態だったんだ。数歳年下の友人と将来の計画について話していた時、彼は軍隊に行くと言った。僕は人生で何をしたいのか分からなかったから、同じように入隊を決意したんだ。父には話さなかった。父が軍に行かせたがっていたことは知っていたけど、もしそれが気に入らないものになったら、彼のせいにするのではなく自分で決めたことだと言いたかったから」
軍での経験は強さを養い、Cullen は自信を磨きました。同時に、日本のアニメは “良い人間” になる手助けをしてくれたと語り、”Naruto” のタトゥーを腕に刻みました。
「僕は常に非常に意志の固い人間だった。非常に頑固で、自然に自分自身に自信を持っていた。しかし、軍隊を経験したことで、すでに制御不能な炎のように感じていたものがさらに強まったんだ。軍隊は僕に冷静な判断力を与え、本当に僕のパーソナリティを1000倍に強化してくれた。そして、忍耐とチームワークを教えてくれたんだ。もし時間を遡れるなら、再び入隊するだろうか?一瞬の迷いもなく、イエスだね!」

2023年初頭、SLEEP THEORY はまだ無名でした。 彼らのラインナップが固まったのはつい最近のことで、名前が決まったのはそのほんの数ヶ月前のことでした。新曲 “Another Way” の17秒のプレビューを気まぐれにTikTokに投稿したときは、ほとんど期待もしていませんでした。しかし、36時間以内に再生回数は50万回を記録し、新たなファンの軍団が続々と押し寄せてきたのです。
その瞬間が SLEEP THEORY の物語から切り離せないのはたしかですが、Cullen は彼らが “一夜の成功” と受け止められることには皮肉を感じています。なぜなら、2018年に軍を退役した彼は、それからずっと地元のプロデューサー、David Cowell と二人三脚で歩んできたからです。
「メタルのブルーノ・マーズになりたいと David に言ったんだ。僕は次に何をするのか全くわからないような、そういう明確なアイデンティティを持ったアーティストになりたかったんだ。 David はその時点でメンフィスで最高のプロデューサーだったと思うけど、まだ注目されていなかった。そして今、彼はプロデューサーとして、そして SLEEP THEORY はバンドとしてブレイクを果たした。彼の天才ぶりが注目されるのはいいことだ!」
最初の数年間はスタジオ・プロジェクトでしたが、2021年にベーシストの Paolo Vergara を迎え入れ、本格的に活動を開始しました。Paolo の紹介でドラマーの Ben Puritt が参加するようになり、素晴らしいシュレッダー/スクリーマーである Ben の弟 Daniel が加わったことで、すべてがかみ合いました。
「俳優、プロデューサー、撮影監督がいる映画を作るとしたら、僕は監督みたいなものかな。 ギターを弾くことはできないけど、物事を見て、物事を聞いて、すべてがどこに向かうべきかを理解することはできる。 また、他の人たちに仕事を任せるために、自分のやり方から離れるべきときも学んできた。 最初のころは、まだ物事を理解しようとしていたけれど、今は、よりよく動くマシーンになったよ」

Cullen にとって、自身の作品にラベルを付けるプロセスは難しいものでした。他のバンド名として “Monolith”(暗すぎる)と “Wavelength”(ポップすぎる)を却下し、オンラインで科学用語を閲覧していた際に、”Sleep Theory” に決めました。
「これが正しいと感じる。口に馴染む。重すぎず、軽すぎず」
2023年にEpitaphからリリースされた “Paper Hearts” はEPでしたが、その6曲に費やされた時間と努力は、それ以上のものを感じさせる作品でした。そうして、David のSupernova Soundスタジオ(メンフィス北東部)と往復しながら “Afterglow” のレコーディングを行った Cullen は、これがそのEP以上の決定的な声明である必要があると悟ったのです。
「”Afterglow” は “Paper Hearts” の続きから始まる。情熱的だが最終的に抽象的な感情の枠組みで、僕たちがこれまで語ってきたストーリーに終止符を打つものだ。愛する誰かと共に多くのことを経験したにもかかわらず、まだ “私とあなた” の間で迷っている感覚を捉えているんだよ。その余韻—アフターグロウ—は僕をまだ悩ませているんだよ。そこには個人的な経験が含まれているけど、それは僕だけに限定されたものではない。このバンドのどのメンバーからも、または僕たちのプロデューサーからも来得るもの。もちろん、スタジオに入って “さあ、愛について話そう!” と言ったわけではないけど、アルバムの曲は共感できるものにしたいと思っていた。誰もが失恋を経験するので、意識的か無意識かに関わらず、そのことを書いたんだよ」
ヒップホップのビートとエレクトロのアトモスフィア、メタルコアの咆哮とR&Bの官能性が融合し、刺激的な作品を構成。緊張感あふれるアドレナリンの爆発、脆い切なさ、魂を揺さぶるカタルシスの瞬間を織り交ぜるアルバムは実にユニークです。例えば “Hourglass” は、A Day To Remember の全盛期を思わせるポップ・パンクとメタルコアの融合。”Stuck In My Head” は、失恋の物語に巨大なフックを埋め込んで煮詰めた共感の一曲。EPからの継続曲 “Numb” はアンセムで、”壊れた夢の目を覗き込む / 縫い目が裂けた新たな計画” と挑発的に歌っていきます。

しかし、最も心に響くトラックは、新曲 “III”(「スリーズ」と発音)でしょう。バンドから奪われた何かが “想像し得る最悪の形で汚された” というストーリー。その耳に残るフックと楽曲の成功は、彼らにとって最も満足のいく復讐となるでしょう。
「人生に酸っぱいレモンを与えられたら、そこからレモネードを作ればいい。そんな悪い経験をしても、それをヒット曲に変えればいいんだ!」
正直さと純粋なビジョンが全て。たとえそれが、彼らの成功が SNS の “バズ” から始まったとしても。
「僕は “TikTokアプローチ” をただ受け入れるつもりはない。トレンドには興味がないんだ。一時的なバズのためにここにいるわけじゃない。みんながやっているなら、僕はやりたくない。TikTokダンスをしたり、他所でよく見かけるような目立つためのクリップを作ったりする人間にはならない。それではただ、大衆に迎合するだけだ。
「”Another Way” の最初のティーザーでも、それは “夏のTikTokソング” を目指すことではなく、僕たちが目指すよりプロフェッショナルなイメージを確立するためだった。僕はTikTokの基準に妥協しない。僕たちはコメディアンになるためにここにいるのではない。アートを作るためにここにいる。それは他の人と同じ場所から始まるものではない」

Cullen には説教臭さも不自然な派手さもありません。急速に成功を収めたアーティストとしては、驚くべきほど傲慢さがないのです。そうして論理、問題解決能力、そして抗いがたい自然な好奇心が存在します。彼は、SLEEP THEORY の急激な上昇だけでなく、より広範な盛り上がるオルタナティブ・シーン全体、そして SPIRITBOX から SLEEP TOKEN まで新たなリーダーたちにも焦点を当て、変化の潮流を見据えています。
「昔の Bring Me The Horizon は、好きか嫌いかの二者択一だった。しかし、最近の新しい Bring Me The Horizon には、多くの異なる要素が絡み合っていて、多くの人々がその中から気に入るものを見つけることができる。歴史は繰り返す。2009年ごろ、ヒップ・ホップとポップが真のブームを迎えていて、ロックはその波についていけなかった。ほとんどのアーティストは、この音楽を幅広い層に受け入れられるようにする努力をしていなかった。もしそうしていたなら、彼らは Thirty Seconds To Mars や Imagine Dragons のようなカテゴリー(ポップサウンドを直接取り入れた)か、Kings Of Leon のようなバンド(ポップな曲作りを重視した本格的なバンド)に分かれてったはずだ。適切なバンドがとてもポップな感覚を学んでね。でも、実際はヘヴィなメタルコアやスクリーモのジャンルに入ると、それははるかに “好みが分かれるもの” だった。
でも現在、ヘヴィなバンドは方針を転換し、誰もが楽しめる音楽を作っている。ポップ・ファンを自認する聴き手でも、SLEEP TOKEN の曲を聴いて楽しむことができる。感情の幅も広くなっている。悲しみや暗いテーマばかりではなく、より共感できる内容で、古いバンドが扱っていた感情の幅を捉えているんだ」

“Stuck in My Head “の野外アコースティック・パフォーマンスにも彼らのポップ・センスが現れています。
「アコースティックで曲を歌うのが大好きなんだ。 このプロジェクトの背景にあるアイデアは、ヘヴィなギターをすべて取り除けば、ポップな曲になるということなんだ。 どんなメタルやロックの曲でも、アコースティック・ヴァージョンを作れば歌えるんだ。
この曲のライティングやメロディが、ポップ・ソングとして問題なく成立させているんだと思う。 もしカントリー・アーティストが “Stuck in My Head” をカヴァーしたら、間違いなく完璧に歌いこなせるだろう」
あの BACKSTREET BOYS でさえ、彼らの栄養となっています。
「”Static”のビデオ撮影で “I Want It That Way” を4人で歌った。バンの中でみんなで歌ってるけど、まあリハーサルするようなことじゃないよ。 ただ歌い始めるだけ! ミュージックビデオの撮影で、僕が “You are my fire/The one desire” と歌い始めたら、他のみんなも歌い始めた。 だからインスタグラム用にちょっと作ったんだ」
あの伝説的なバンドも彼らの一部となっています。
「どのバンド・メンバーも、演奏や作曲に関して最も影響を受けたアーティストがいる。だけど SLEEP THEORY のサウンドに関して言えば、LINKIN PARK は僕らの音楽を形成する上で重要な役割を果たした。サウンドだけでなく、曲作りへのアプローチやオーディエンスとのつながり方にも影響を与えている。 多様性を受け入れること、純粋な感情を表現すること、サウンドで実験すること、そして自分独自の芸術的な声に忠実であること…それはロックとオルタナティヴ・ミュージックの世界に忘れがたい足跡を残したバンドの影響を反映しているんだ」

BEARTOOTH と共に大規模な会場でライブを敢行し、WAGE WAR から NOTHING MORE, HOLLYWOOD UNDEAD まで、あらゆるバンドとステージを共有してきた SLEEP THEORY は、現在のヘヴィ・メタル界のトップクラスと肩を並べる能力を証明してきました。それでも、Cullen は青春時代聴いていたバンドを参考に、自身の道を模索しています。3つのフェイバリットを挙げるよう促されると、彼はさらに多くのバンドを挙げていきました。
「LINKIN PARK, FALL OUT BOY, PARAMORE と言えるかもしれない。でも DISTURBED, THREE DAYS GRACE, SAOSINとも言える。または WOE IS ME, DANCE GAVIN DANCE とも言える。僕にとって、一つに絞るには変数が多すぎる。難しいよ」
まず第一に、Cullen は音楽のファンであり、バンドのファンなのです。だからこそ、自分のバンドに対して他人が感じるファン心を、彼は最も誇りに思っています。たしかにストリーミング指標やチケットの売上は SLEEP THEORY の成功の一端を示すかもしれませんが、人間同士のつながりの電気のような力は、名声や富よりも価値があると信じています。
「”大きなバンド” になることは、人々の心を動かすことだ。それはほんの少しかもしれないけど、人々の生活を変えることだ。SLEEP THEORY の変化に気づいたのは、あるコンサートでのことだった。僕よりずっと年上の男性が写真撮影を求めて近づいてきた。彼が震えているのに気づき、大丈夫ですかと尋ねた。彼は “ヒーローに会うから緊張している” って。音楽が人々に影響を与えていることは知っていたけど、その瞬間、本当に実感したんだ。理解するのが難しかったよ。僕は人生のほとんどを、僕より年上の人々を尊敬してきたけど今や、僕より長く生き、多くの経験を積んだ人々が、僕を尊敬していると言っているんだからね!」
結局、最も重要なのは自分自身を満足させることです。様々な影響の中でも、Cullen はアトランタのメタルコアの先駆者 ISSUES、特に2019年のランドマーク作 “Beautiful Oblivion” を、最も模倣したいテンプレートとして挙げています。彼にとってこれは完璧なアルバムであり、自身のキャリアの終着点として無駄な曲の影も残さないことを理想としています。
「僕はマイケル・ジャクソンのようなアーティストを聴きながら育った。だから、これで十分だと言うような人間にはならない。平均的な曲は欲しくない。ただやり過ごすための曲も欲しくない。人々が僕のカタログを見て “素晴らしいけど、あの曲はもっと良くなれたはず…” と言うような曲も欲しくない。そして、ファンが聴きたいものを作りたいとは思っているけど、自分が作りたくないものは絶対に作らない。
人々はアーティストが聴き手に合わせるという考えに慣れすぎている。僕は誰にも合わせないよ。自分のやりたいことをやる。自分自身に忠実なだけだ。それに共感するかどうかはリスナー次第。僕は決して他人の気まぐれに屈しない。合わせることができない。それが本当に僕の本質だから」


参考文献: KERRANG!:Sleep Theory: “We’re here to make art. That does not begin with being the same as everybody else”

REVOLVER:TORNADOS, TIKTOK AND THE TRUTH: SLEEP THEORY TALK HIGHLY ANTICIPATED DEBUT ALBUM ‘AFTERGLOW’

LOUDWIRE: SLEEP THEORY INTERVIEW

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LUX TERMINUS : CINDER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VIKRAM SHANKAR OF LUX TERMINUS !!

“Trying To Make Heavy Music With No Guitars Is a Creative Challenge That Requires Creative Solutions, Which Is a Lot Of Fun.”

DISC REVIEW “CINDER”

「芸術的に言えば、ギターがないという制約があることはとても充実したことだと思う。実は僕はギターの音が絶対的に好きだし、好きなミュージシャンの多くはギタリストだ。それでも、ギターを排除することで、キーボードが “音の混沌” に埋もれてしまうことがなく、繊細さや美味しさを堪能する余地が生まれる」
LUX TERMINUS とは、ラテン語で “終わりの先の光” を意味します。そう、このバンドは過去のプログのトンネルの先にある光に違いありません。バンドの中心人物は Vikram Shankar。そう、2010年代後半、シーンに彗星のごとく現れた若き鍵盤の魔法使いこそプログ世界の希望。
あの歌聖 Tom Englund との美しすぎるデュオ SILENT SKIES でネットから現実へと飛び出した Vikram は、すぐにその優れたテクニック、音楽教育を存分に受けた知性、研ぎ澄まされたメロディの感覚、音楽を俯瞰して見る眼差しが認められ、REDEMPTION や PAIN OF SALVATION といったこの世界の鬼才にして重鎮にとってなくてはならない存在となりました。
彼がプログ世界の希望である理由。それは彼の音楽に対する優れた才能、真摯な態度だけではなく、鍵盤をその武器に選んでいるから。かつて、プログやメタル世界の華のひとつだったキーボード・ヒーローは今や絶滅寸前。しかし、その繊細さや多彩な色彩は決して滅びてはならない天然記念物。Vikram はこの LUX TERMINUS で、PLINI, INTERVALS, David Maxim Micic といった愛するギターヒーローの哲学をキーボードで再現して独自に進化させ、ギター全盛のシーンに選択肢を増やそうとしているのです。
「ギターがない状態でヘヴィな音楽を作ろうとするのは、創造的な解決策を必要とするクリエイティブな挑戦であり、それはとても楽しいことなんだ。LUX TERMINUS は、おそらく SILENT SKIES と最も共通点があると思う。主に、シネマティックな色合いという意味でね。僕たちは、サウンド・デザインを織り上げていくようなアプローチや、深く思慮深い雰囲気を作り出すための音の実験が大好きだからね」
ギターレスのDjent。LUX TERMINUS の原点はそこにあります。重量感マシマシ、ギターありきのDjentにキーボードで切り込むその心意気こそプログレッシブ。Vikram はアルバム “Cinder” の中で、そのミスマッチに様々な創造的ソリューションで挑んでいきます。
もちろん、ARCH ECHO のようなキラキラの Fu-Djent も一つの解決法でしょう。幾重にも重なった光のキーボードと複雑重厚なリズムが織りなすディズニー・ランドは完璧なエンターテイメントとなり得ます。SLEEP TOKEN のポップな電子メタルも、DIRTY LOOPS のファンキーなリズムも彼らは飲み込み咀嚼します。しかし Vikram の企みはそこだけにとどまりません。
「特に久石譲のジブリ映画の音楽には大きな影響を受けているよ!また、僕は尺八を持っていて、レベルの高い尺八の演奏に心から魅了されているんだ。そうした名人たちには遠く及ばないけど、それでも “Neon Rain” (三味線や箏の演奏もある)のバックで尺八を僕が吹いているんだ。他にも、驚くべきソースがあってね。ポケモン・アルセウスのサウンドトラックに収録されている、特にジュビレシティーのテーマとかね。僕は日本の “音楽言語” がとても好きなんだ!」
Vikram の生み出す音楽はよりコズミックで、映画的で、未来的。Espera という優れたボーカル集団と紡ぐ “Jupitor” 三部作で私たちはインターステラーやスターフィールドといった壮大な映画やゲームの世界へと旅立ち、かの Ross Jennings と Jorgen Munkby を起用した “Catalyst” では CHICAGO や THE POLILE が映画やドラマの主題歌に使われていたあのアーバンでポップな80年代を再訪します。
そして何より Vikram がこのアルバムで大切にしたのが日本とのつながりでした。PAIN OF SALVATION の来日公演で愛する日本を訪れ、様々な都市を訪問した彼はこの国の人や風景の優美に感銘を受けます。尺八や三味線、琴を使用した “Neon Rain” はまさにその感銘が投影された楽曲。そうしてアルバムを締めくくる “Natsukasii” で Vikram はジブリの世界観とメタルを見事に融合させていきます。ノスタルジーと情景、壮観。彼が LUX TERMINUS で目指したものは、素晴らしくここに投影され、確かに鍵盤でなければ実現できない未曾有の景色で、未来へのプログレッシブな窓でした。
今回弊誌では、Vikram Shankar にインタビューを行うことができました。「最近のプログレッシブ・ミュージックには、メタルだけでなくフュージョンやジャズの文脈で活躍する優れたキーボーディストがたくさんいると思うけどね。とはいえ、キーボードの “旗手” のような存在になって、キーボードでどれだけ多彩で奥深い表現が可能かをアピールするできるとしたら、それはとてもやりがいのあることだと思うよ」 どうぞ!!

LUX TERMINUS “CINDER” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【MORBID SAINT : SPECTRUM OF DEATH】JAPAN TOUR 25′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JIM FERGADES OF MORBID SAINT !!

“We Are Humbled By The Fact That a Little Album We Wrote So Long Ago Has Been Embraced By So Many From So Far. We Thank You And Look Forward To Seeing You All!”

DISC REVIEW “SPECTRUM OF DEATH”

「自分たちや他のバンドが成功したかしなかったかについて、失望したりうらやんだりすることはなかったよ。僕たちはただ自分たちのやりたいことをやり、バンドが終わったら終わったものは仕方がないって感じだった。バンドを始めたときはとても若かったし、年齢を重ねるにつれて私生活も変わっていった。家族を養うためにお金を稼ぐことが、音楽を作ることよりも重要になる時が来るんだよな」
人はいつまで夢を追えるのでしょうか?人生とは無情なもので、夢を叶えられる人はごく僅かです。私たちは必ず歳を重ね、人生のステージが進むと共に夢と同じくらい大切なものもまた増えていきます。誰もが一度は、”諦める” という選択肢や決断と向かい合う時がきます。とはいえ、人生は一度きり。せっかく大きな夢を持ったなら、それを実現したいと願うのもまた人の性でしょう。
ウィスコンシン州シボイガンで青春時代を過ごした MORBID SAINT もまた、夢と生活を秤にかけ、一度は “諦める” という選択肢を選んだバンドでした。80年代後半から90年代前半にかけて、ヘヴィ・メタルの世界には “アルバム一枚だけ” をリリースしてフェイド・アウトするバンドが実に多く存在したのです。メタルの日差しが翳る中で、自然と淘汰されていくのもまた運命。むしろ、アルバムを一枚だけでもリリースできて、歴史に名を刻めた幸運を噛み締めるべきなのかもしれませんね。とはいえ、MORBID SAINT のように長い月日を経て復活する稀有な例もあります。
「2010年ごろから、オンライン上で “Spectrum of Death” がかなりの支持を集めていることがわかり始めたと思う。そしてそれは、僕らにとって本当に驚きだったんだ!このアルバムは、最初にリリースしたときはあまりうまくいかなかったんだけど、今のように成長した姿を見るのはとてもエキサイティングなことなんだ」
MORBID SAINT の数奇な運命が動き始めたのは、SNS が普及し日常となった2010年頃でした。大手メディアの注目など集めたこともなかった “死んだ” バンドの話題がポロポロとメタル・コミュニティの中で語られるようになったのです。SNS の使用には一長一短がありますが、光の当たらない才能を発掘できるのは確実にこの場所の強み。
そして実際、アグレッション、スピード、テクニックを兼ね備え、スラッシュとデスメタルの架け橋と謳われる MORBID SAINT の才能は SNS の “共感” によって日の目を見ることとなったのです。そうして彼らは復活を決めました。SNS によってつながった、メタル・コミュニティの共感力によって。
「初の来日公演にとても興奮しているよ!ようやく東アジアのファンのために演奏し、会えることができて光栄だね。 東アジアのファンのために、”Spectrum of death” の完全再現と “Destruction System”, “Swallowed by Hell” からの曲を演奏することを楽しみにしているよ。 ずいぶん前に作った小さなアルバムが、遠く日本のこんなに多くの人に受け入れられているという事実に、僕たちは身が引き締まる思いだよ」
そうして、ウィスコンシンの小さなバンドが生み出した小さなアルバムは、いつしか多くの場所、多くの人のかけがえのない大きな宝物となり、ずいぶんと遠回りになりましたが MORBID SAINT は夢を叶えました。”諦めなければ夢は叶う” などとよく言われますが、人生はきっともっと複雑で無慈悲。しかし、一度は諦めたとしても全力を注いだ何かがあれば、きっといつかはこうした幸運が舞い込むものなのかもしれませんね。
今回弊誌では、ギタリスト Jim Fergades にインタビューを行うことができました。「DEATH とは確か3公演しか一緒にやらなかったけど、一緒にやったときに Chuck と一緒に過ごすチャンスはあった。彼はとても実直で、純粋にいい人だった。 彼とバックステージで音楽の話ができたことを光栄に思うよ」 どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SIGN OF THE WOLF : SIGN OF THE WOLF】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TONY CAREY OF SIGN OF THE WOLF !!

“In The Original Era, 60s, 70s, and 80s, The Music Was New And The Style Was Being Invented. It’s Now 50 Years Later For Me – I Joined Rainbow In 1975 – And The Bands I Hear Today Aren’t Inventing Anything. That’s The Difference.”

DISC REVIEW “SIGN OF THE WOLF”

「Ronnie の声?まさに最高の一人だよ。人として?彼は僕より14歳年上で、叔父さんのような存在だった。Ronnie も Wendy Dio も素晴らしい人たちだったし、彼は僕と同じアメリカ人だったからね。僕はイギリス人ミュージシャンと仕事をしたことがなかったから、バンドにもう一人アメリカ人がいたことは大きな助けになったんだよ」
70年代/80年代を象徴するハードロックについて語るとき、RAINBOW の “Rising”、BLACK SABBATH の “Heaven And Hell”、DIO の “Holy Diver” が挙がることは間違いないでしょう。共通項はもちろん、伝説のボーカリスト Ronnie James Dio の存在。彼の歌声、彼の魔法、彼のファンタジーが失われて久しい2025年の暗闇に虹をかけるような傑作が、Ronnie を愛する人々の手によって生まれました。SIGN OF THE WOLF。彼の掲げるメロイック・サインに集いし者たち。
「オリジナルの時代…60年代、70年代、80年代は、音楽が新しく、スタイルが発明がどんどん発明されていった。僕は1975年に RAINBOW に加入したんだ。それから50年が経って…今僕が耳にする新しいバンドは何も発明していない。それが違いだと思うよ」
この美しいプロジェクトは、Firework Mag の Bruce Mee の発案で始まりました。”Tarot Woman” のイントロ、Tony Carey の幽玄神秘なキーボードが彼をハードロックに引き込み、Ronnie の圧倒的な歌声に忠誠を誓いました。そうして長年音楽業界に身を置く中で、今回のインタビューイ Tony Carey と同く、現代のハードロックにどこか物足りなさを感じるようになったのです。かつての、個性的で、音楽の発明が各所に散りばめられた壮大なるメロディの園を甦らせたい。そうして彼は Tony Carey をはじめ、温故知新で才能豊かなアーティストを集めることに決めたのです。
「このプロジェクトにはたくさんの才能があるし、僕はとにかく、Doug Aldrich と Vinnie Appice と一緒にやってみたかったんだ」
ドラム・キットの後ろには、”Mob Rules” や “Holy Diver” など数多のマイルストーンでエンジンとなった Vinnie Appice が鎮座し、Chuck Wright や Mark Boals といった名手とタッグを組みます。リード・ギターは Doug Aldrich。ご承知の通り、WHITESNAKE に再び魂を込め、DIO を復活に導いたカリスマにして、真のギターヒーロー。
もちろん、Ronnie James Dio の歌声は誰にも代えられませんが、ここでは全曲に Andrew Freeman が参加。Vivian Campbell が DIO を受け継ぐ LAST IN LINE (“Ⅱ” の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい) でボーカルを務める Andrew の実力は本物。良い意味で “ジェネリック・ディオ” ともいえる彼のキャッチーな力強さは、SIGN OF THE WOLF の音楽に真のフックと重厚さを与えています。そこに、Doug や Vinnie と演奏をしてみたかったと語る RAINBOW のレジェンド Tony Carey が合流。絶対的なハードロックの金字塔がここに誕生しました。
「”Rising” がこんなに長く愛されていることに驚いているよ。たいていのレコードは2~3年で忘れ去られてしまうものだからね。”Rising” はほとんど50年も人々の記憶に残っているんだから」
実際、Tony の参加した “The Last Unicorn” や “Rage of Angels” では、まさに “Tarot Woman” や “Stargazer” が放っていた神秘的で荘厳なロックの魔法が降臨しています。まだ鍵盤がロックの中心にいた虹色の時代。ただし、アルバムは RAINBOW のみならず、”Arbeit Machat Frei” では THIN LIZZY を (まるで Doug の BAD MOON RISING の3rd のようでもある)、”Silent Killer” では DIO を、そして壮大なタイトル・トラックではあの名曲 “Heaven and Hell” をも探訪して、ロックやメタル、その革命の炎を今でもあかあかと燃やせることを証明するのです。Steve Mann や Steve Morris, Mark Mangold の美学が炸裂するメロディックな楽曲もまた素晴らしい。
今回弊誌では、Tony Carey にインタビューを行うことができました。「実は、RAINBOW のライブは、スタジオでの RAINBOW とはまったく違っていたんだ。コンサートではハモンドをたくさん弾いたけど、レコードではほとんど弾かなかった。”Rising” と “Long Live Rock and Roll” のレコードは、ハモンドの代わりにギターのオーバーダブがほとんどだったんだ。だから僕たちのライブ・サウンドはスタジオとはとても違っていて、そのライブ・サウンドこそが僕にとっての RAINBOW だったんだ」本物にしか作りえない本物のハードロック・アルバム…Dio といえば “Dehumanizer” の再評価も進んで欲しいと祈りながら…どうぞ!!

SIGN OF THE WOLF “S.T.” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ANCIENT DEATH : EGO DISSOLUTION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JERRY WITUNSKY OF ANCIENT DEATH !!

“Pink Floyd’s My Biggest Influence. I Picked Up a Guitar When I Was 4 Years Old Because Of David Gilmour From Watching Pink Floyd Live at Pompeii. So My Natural Style Is Just Things I Picked Up From Listening And Watching Him.”

DISC REVIEW “EGO DISSOLUTION”

「ATHEIST, CYNIC, DEATH…ANCIENT DEATH はこれらのバンドなしでは存在しなかっただろう。僕がそうした “グループ” を知ったのは、10歳か11歳の頃だった。当時クールだった “トレンド” の枠を超えて、より傷つきやすく内省的なところから曲を書くことで、個人として、ミュージシャンとして、自分らしくいられることを教えてくれたんだ。その体験は文字通り、僕の世界を変えた。僕は今年28歳になるけど、彼らは今でも当時と同じくらい僕にとって重要な存在だよ」
真の芸術は時の試練をものともせず、時代を超え、そして受け継がれる。メタルコアや Djent 直撃世代の Jerry Witunsky は、そのトレンド以上に探求すべきプログレッシブなデスメタルの審美と人間味に魅了され、情熱を注ぎ、ついには日本で愛するバンド ATHEIST の一員としてライブを行うという夢を叶えようとしています。その夢の実現のために大きな助けとなったのが、彼の世界観を体現した ANCIENT DEATH だったのです。
「”Ancient Death” という名前は僕らにとって実に意味があるんだ。それは、僕らの曲 “Voice Spores” の歌詞にある。ここで基本的に語っているのは、今は否定が否定を生み、それが僕たちを互いに分断しているということ。僕たちの見解では、否定性こそが人と人とのつながりにおける古き良き “古代の死” なんだよね」
憂鬱、悲しみ、心の平和、自己成長といったテーマを探求することで、ANCIENT DEATH は、人々がやがて自分自身にも他人にももっと優しく、寛容となり、共感できることを願っています。SNS では他者を否定し、断罪し、攻撃して溜飲をさげる行為が当たり前となった現代。彼らはそんな時代を古き良き “古代の死” と命名しました。デスメタル世界の “つながり” によって夢を叶えた Jerry は、心と魂のつながりの強さを信じています。つい最近、地球上で最も影響力のある人物が共感は “西洋文明の根本的な弱点” だと言及したばかりですが、だからこそ彼らのデスメタルはそうした合理主義に反旗を翻していきます。
「PINK FLOYD に一番影響を受けたっていうだけなんだ。彼らの “Live at Pompei” を見て、David Gilmour の影響で4歳のときにギターを手にしたんだからね。だから僕の自然なスタイルは、彼の演奏を聴いたり見たりして得たものなんだ。また、サウンドトラックの大ファンで、特に宮崎駿監督の映画は大好きで、1作を除いてすべて久石譲が手掛けているよね。僕にとって音楽とは、解放の場なんだ。誰かに何かを “感じさせて”、違う場所に連れて行く…それこそが美しいことだよ」
ANCIENT DEATH の音楽は、メタルを別次元に誘った80年代後半から90年代前半の、プログレッシブで実験的なデスメタルの鼓動を宿しています。しかし、オールドスクールなデスメタルに正直で真っ直ぐでありながらも、決して過去の焼き直しだけには終わりません。音楽を先に進めることこそ、彼らが先人から受け継ぐ美学。彼らがほんの数秒前まであった場所とは全く違う方向へと聴く者を連れて行くような、豊かなサウンドの雰囲気を作り出した時の驚きは、決してあの BLOOD INCANTATION に負けるとも劣らず。
90年代、DEATH や CYNIC が開拓したデスメタルの実験は、オフキルターなリズム、脈打つベースライン、幻覚的なギターの響きで、さながら THE DOORS や PINK FLOYD が見せる精神的な深みへと移行していきます。時折歌われるクリーンな祈りは、濃い瘴気の中で聴く者に手を差し伸べる静寂の声。
常に移り変わるムード、複雑なドラム・パターン、不可解な拍子記号がジグソーパズルのように組み合わさったアルバムは、それでも “Ego Dissolution” エゴを捨て去りすべてをアートとデスメタルのためにのみ捧げられています。だからこそ彼らは、ゴア描写や反宗教的な歌詞にこだわるのではなく、デスメタルらしい安っぽさや陳腐さを感じさせることもなく、私たちの感情の内面や魂の本質を探る、より深いトピックに踏み込んでいくことができたのです。
今回弊誌では、Jerry Witunsky にインタビューを行うことができました。「Rand Burkey は、僕にとってメタル界で最も影響を受けたギタリストだろう。彼のソロとメロディーは他のギタリストにはないものだった!14歳の頃、寝室で彼のパートをかき鳴らし、まるで自分が書いた曲のように人前で演奏することを夢見ていた僕が、実際にステージに立って彼らとまさに同じ曲を演奏しているなんて!デスメタル世界の心とつながりは、とてもパワフルなものだよね」 どうぞ!!

ANCIENT DEATH “EGO DISSOLUTION” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNOOZE : I KNOW HOW YOU WILL DIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LOGAN VOSS OF SNOOZE !!

“The More People Are Inundated With Instant Gratification, The More It Becomes Impactful When Something Comes Around That Was Worked On Really Hard. I Think The Pendulum Is Beginning To Swing The Other Direction.”

DISC REVIEW “I KNOW HOW YOU WILL DIE”

「アートが消費され、”コンテンツとなった芸術” の時代である今、より多くの人々が、よく練られ、愛のこもった作品で、時代に左右されずに存在する音楽、芸術、アイデアを求めているのだと思う。人々が即座に満足できるインスタントなものが溢れれば溢れるほど、情熱をかけて心から一生懸命取り組んだものが世に出たときの衝撃は大きくなる。より多くの人々が、自分の意思をあまり持たずスマホに釘付けになることに不満を感じ、振り子が反対方向に振れ始めているんだと思うよ」
アートが消費される “コンテンツ” となった現代。人々はさながら SNS を一瞬賑わせ、そしてすぐに忘れ去られていく日々のニュースのようにアートを消費し、放流していきます。しかし本来、芸術には “永続性” が備わっているはず。本来のアートは時代を超えて愛されるべきでしょう。そうした意味で、シカゴの “ハッピー・ヘヴィ・マスロック” SNOOZE の音楽はさながらスマホのアラーム、あの “スヌーズ” 機能のように、時が過ぎても何度も何度もリスナーの心を目覚めさせていくはずです。
「ヘヴィな歌詞の内容とヘヴィ・メタルに影響を受けた音楽的要素が、とても楽観的なコード進行の選択と組み合わさって、楽しい認知的不協和を生み出しているように感じるよ」
複雑怪奇な変拍子を操る SNOOZE の最新作 “I Know How You Will Die” が4/4日にリリースされた事実がすでに、彼らのニヒリズムと知性が生み出す二律背反を見事に表現しています。たしかに SNOOZE はハッピーなマスロック・バンドですが、同時にヘヴィなプログレッシブ・メタルでもあります。その怒りと幸福、ヘヴィとキャッチー、実験と正統をまたにかけるダイナミズムの妙こそ、彼らが情熱を注いだアート。
「若いメタルヘッズだった僕たちは、テクニカルさと名人芸に取り憑かれていたような気がする。それからマスロックに出会ったとき、それと同じ波動を感じたような気がしたんだ。だから、それを掘り下げていくと、より多くの非常識なバンドを見つけることができた。 でも最近の僕たちは、可能な限りテクニカルなこと(考えすぎること)を探すのをやめて、意味のある、感情的な音楽に傾倒していると思う。だからよりメロディックな音楽の中に濃密なリズムのアイディアを取り入れる人がいると、いつも嬉しくなるよ」
またにかけるのは光と闇だけではありません。エモ/ポップ・パンクのヴォーカル・センスをヒントに、マスロック、プログレッシヴ・メタル、ポスト・ハードコアをブレンドした、大胆かつ折衷的な旋風こそ彼らの真骨頂。 最も際立っているのは、それぞれのジャンルをシームレスに行き来しながら、独自の色と説得力をもって主張する彼らのアイデンティティでしょう。BETWEEN THE BURIED AND ME が見せるようなボーカル・ハーモニー、その実験的な使い方も、SNOOZE の複雑な楽曲に驚くほどの色彩と感情をもたらしています。彼らの創意工夫を前にして、スマホに齧り付くことはできません。振り子の針は逆側に触れ始めました。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの Logan Voss にインタビューを行うことができました。「当時は VEIL OF MAYA をよく聴いていて、ギターを初めて弾いた曲のひとつでなんと “It’s not Safe to Swim Today” を覚えようとしたんだ。YouTube の黎明期には、バイラルになる動画は限られていたので、初期の ANIMALS AS LEADERS のミュージックビデオを見たとき、みんなが度肝を抜かれたのは間違いないよね!」 どうぞ!!

SNOOZE “I KNOW HOW YOU WILL DIE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SLEEP PARALYSIS : SLEEP PARALYSIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN KNAPP OF SLEEP PARALYSIS !!

“I Really Like Using The Pianos Percussiveness, It Can Add a Lot To The Rhythm Section In Different Ways While Also Providing Harmony And Accents, Plus Slamming Loud Dissonant Chords Sounds Sick As Fuck Over Blast Beats.”

DISC REVIEW “SLEEP PARALYSIS”

「ピアノのパーカッシブさを使うのがとても好きなんだ。ハーモニーやアクセントを提供しながら、リズム・セクションにさまざまな形で多くのものを加えることができるし、ブラスト・ビートの上で大音量の不協和音を叩きつけると、最高に気持ち悪いサウンドになる。 ピアノは曲の緊張感を高めるのにとても効果的だし、クラスターコードはサウンドに違う色を加えるのに遊んでいていつも楽しい」
メタルにおいてピアノの響きは過去のものになりかけています。キーボードにしても場所をとりますし、ギターの可能性が広がるのと比例して、ピアノの出番はどんどん少なくなっていきました。しかし、本当にメタルからピアノは消え去るのでしょうか?ピアノの打楽器的な力強さ、一方で両の手で組み立てる繊細さと旋律の妙はやはり唯一無二のものでしょう。SLEEP PARALYSIS をひとりでとりしきる Stephen Knapp はそんなピアノの可能性をブラックメタルで再度呼び起こします。
「MIDIですべてを書き込んで、どんな音がするかすぐに調整できる汎用性が気に入っている。それに、自分の思い通りのサウンドにするために、必要に応じてダイナミクスを調整できるのも魅力だ。メタル・コミュニティでは、楽器をプログラミングすること(特にドラム)は簡単な方法だという汚名があるように思う。とはいえ、実際にドラムやピアノを演奏してレコーディングするのと同じくらい難しいとは言わない。最終的には、自分のビジョンを完全に実現し、目指すヴァイブを達成するためのツールでしかないからね」
面白いことに、Stephen はピアノが弾けるにもかかわらず弾いていません。すべてをプログラミングで入力しています。なぜなら、彼には思い描いた音楽の確固たるビジョンが存在するから。NEURAL GLITCH もそうですが、若い世代のアーティストにとってはプログラミングもまた楽器のひとつ。自らの理想を実現するためには、むしろ “入力” という正確な手段の方が彼らにとっては必要だったのです。
「大学時代、睡眠時間がめちゃくちゃで、慢性的な睡眠不足に陥っていたとき、よく金縛りになったんだ。 このアルバムのために最初に書いた “Sleep Paralysis” という曲は、僕が初めて金縛りになったときのことを音楽的に解釈したもので、どこにでもいるような金縛りの影鬼が僕の上に乗っていた」
そんな Stephen がブラック・ピアノ・メタルの実験場に選んだテーマが “金縛り” でした。実際、この悪夢のようなオデッセイの上演にこの主題は完璧でしょう。陰湿に渦巻く不協和音。恐ろしいほどスリリングな混沌。聖歌隊に狂気のラグタイム、ホラー映画、任天堂の怪奇ゲームに重なるドゥビッシーやラベル、ショパンのファンタズマゴリア。不吉で威圧的で猛烈に突き進むこの悪夢の錯乱状態に、ピアノのアタックやサスティナーはあまりにも完璧にフィットしています。
そう、このアルバムはリスナーを恐怖と不安で冷や汗の渦に引き入れ、PTSD ストックホルム症候群の湧き上がる疑念が押し寄せる中、それでももう一度アルバムの再生ボタンを押させる日本の怪談のような不気味な中毒性を宿すのです。
今回弊誌では Stephen Knapp にインタビューを行うことができました。「ピアノは、メロディー、ハーモニー、リズム、テクスチャーなど、通常のメタルでは見られないようなものを加えることができるので、超万能なんだ。WRECHE のファンになってしばらく経つし、DEATHSPELL OMEGA の曲のピアノ・カバーをいくつか見ていたから、ピアノ中心のブラックメタルがうまくいくことはわかっていた」 どうぞ!!

SLEEP PARALYSIS “S.T.” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【DEAFHEAVEN : LONELY PEOPLE WITH POWER】


COVER STORY : DEAFHEAVEN “LONELY PEOPLE WITH POWER”

“If Power Is Influence, We Have a Responsibility To Be As Understanding, Empathetic And Knowledgeable As Possible”

LONELY PEOPLE WITH POWER

第二次世界大戦の冷酷と殺戮の後、アメリカの心理学者グスタフ・ギルバートは悪の本質について何年も考え続けました。そして1947年に出版された “ニュルンベルク日記” の中で、生き残ったナチスの指導者たちとのインタビューについて書いた彼は、悪の本質を見つけたと信じていました。 悪、すなわち戦犯たちを結びつける一つの特徴は、弱者や少数派の苦境に関わることができない、あるいは関わろうとしないことであると。悪とはつまり、共感の欠如であったのです。
「国民が戦争したがるように仕向けるのは簡単。国の危機を宣伝し、平和主義者を非難すればいいだけ。これはどんな体制でも同じ」
80年後、グスタフの教訓は忘れ去られようとしています。世界中のポピュリスト政治家たちが、再び人間の自己中心性を食い物にしているから。 弱者蔑視と外国人憎悪を武器に足場を固め、富裕で影響力のあるオリガルヒに屈服し、自分たちの今でも計り知れない富がさらに膨れ上がるのであれば、喜んで工作に協力する。
「西洋文明の根本的な弱点は共感であり、共感搾取である」と、世界一の大富豪イーロン・マスクは最近CNNで説き、非正規移民に基本的な医療を提供することが、公的資金配分の誤りだと主張しました。 マスクは弱者や少数派への共感を西洋文明の “バグ” だとして、そこから犠牲を強いられる “集団” を救うとさながら英雄のように強弁したのです。非常に怖い話です。
George Clarke は、DEAFHEAVEN の素晴らしき6枚目のアルバム “Lonely People With Power” で、西洋社会の右傾化について特に語っているわけではありません。 実際、常に冷静で知的なこのフロントマンは、アルバムに込められたアイデアを解き明かす際、政治的な対立をむしろ避けようとしています。しかし、マクロ的なレベルでは、個人的な出世や富のために共同体を捨てるというコンセプトは、まさにこの暗い現代に対するアンチテーゼといえるでしょう。
「私は万能で慈悲深い世界の創造主など信じていない。このレコードに関連して “力” について語るとき、私は本当に影響力について話しているんだ。 視点を形作る力、世界観を形作る力、それに伴う責任についてだ。 彼らのような富と影響力を手に入れるためには、周囲のものを手放すことが必要なんだよ。彼らは孤独な目的を追い求めている。それは、隣の人の幸福など気にも留めないほど圧倒的なシニシズムと虚無感がなければ達成できないものだから。”孤独” は時に無知やナルシシズムや精神の空虚さの代用品となる。そうやって、共感を捨てて得た冨や影響力は、逆に精神的な空虚さを表している」

ウィリアム・ランドルフ・ハーストは1951年8月14日に亡くなりました。DEAFHEAVEN の本拠地サンフランシスコで生まれたこの新聞王は、米国のセンセーショナルなタブロイド紙の先頭に立ち、1900年代を通じてニューヨーク州知事選、ニューヨーク市長選、合衆国大統領選に出馬して落選しました。当初は進歩的な政治を支持していたハーストでしたが、20世紀に入ると保守的で孤立主義的な政策を採用。1930年代には、ナチス・ドイツを声高に支持した人物です。
多くの点で、ウィリアム・ランドルフ・ハーストは George の語る典型的な孤独な権力者だといえました。
「ハーストのメディアの巨人としての時代は、今日私たちが目にしている多くのことの先駆けのように感じられる。ああした人たちは常に熾烈で、嘘をつくことも誇張することも厭わず、道徳的な境界線というものをまったく理解していない。ハーストの人間関係は、刹那的で執着的な傾向があったにもかかわらず、決して人間的ではなかった。ハーストは、人間や、世界が動くより大きなメカニズムにまったく関心がなく、非常に利己的だった。それは奇妙な二律背反だった。支配欲を満たすためには、寛大さもヒューマニズムもなく、他人を蹴落とし周囲の世界から皮肉なまでに切り離される必要があるんだよ。
コミュニティーの欠如、自己孤立、自己保存、利己的な動機はすべて、人が支配力を集め、権力を獲得するために必要なもので、単にその権力が他よりも価値があると見なすために必要なものだ。 政治や産業界ではよく見られることだ」
サイコパスと呼ばれようが、ソシオパスと呼ばれようが支配欲が満たされれば関係ないのでしょう。
「最も多くの富を蓄え、最も多くの人々を支配するためには、反コミュニティである必要がある。普通の人なら困惑するだろう。10億ドルを与えられて、それで何をしたいかと聞かれても、僕にはわからない。率直に言って、そのような目標を追い求めるなら、仲間とつながる時間はなくなってしまう。だから莫大な物質的なものを追い求めることに、共感する余地はないんだ」

ソーシャルメディアは、ハーストの新聞全盛期以来、金と影響力の最も明白な混同を生み出しました。DEAFHEAVEN でさえ、その引力から逃れることはできません。彼らは1月27日のアルバム発表から3月28日のリリースまでの間に、ミュート・ウィドウズが監督した各曲の一連のショート・クリップを公開。それは最終的に包括的な物語に結びついていて、アルバムの前後の素晴らしさをより明確に描き出しています。
芸術的な深みを加えながらリスナーに届くという点でその手法は優れていて、フェイスブックやインスタグラム、XやTikTokの否定的な側面とは対極にあるようにも思えます。George は、SNS の隆盛で名声と富を求めるキッズたちのゴールポストが変わったと見ています。
「セレブ文化は常に存在し、華やかさはその性質上魅力的だ。しかし、以前は成功しないかもしれないと思いながら多くの犠牲を払わなければならなかったもの、今はコメントや “いいね!”、そしてマネタイズによって “成功” の度合いが小さくなっている。かつては一部の人にとっての大きな夢であったことが、ビジネスになってしまったんだ」
しかし、陰湿なアルゴリズム、ねじ曲がったデジタル・リアリティ、死んだような目をしたSNSのオーナーたちは、結局はかつての新聞王以上にその支配力を際限なく拡大させています。
「前例のない瞬間を生きていると思うか?と聞かれることがある。私はそうは思わない。メディアが存在する限り、人々はそれを形作ることに憧れてきた。しかし、テクノロジーがそれを変えたのは確かだ。ソーシャルメディアには即効性があり、中毒性がある。即効性があり、すべてを飲み込むように感じられ、負の感情を強調しようとする勢力がある。常に恐怖を煽り、悪いニュースの嵐だ。人々はリラックスすることを許されない」
そうして、テクノロジー業界の億万長者たちが、アメリカ大統領就任式で選挙で選ばれた人たちが座るはずの最前列の席を占拠しているのです。
「私は歴史家ではない。でも、ちょっと馬鹿にされているような気がしないでもない。これって、製薬会社のCEOが薬物中毒のジャンキーたちの部屋に入り込むようなものだと思っている。この時点で、彼らは笑っているだけだ。まあ終わったことは終わったことだ。彼らの影響力はあまりに強く、人々はその中で迷い込んでしまう」

デビューから15年、DEAFHEAVEN は “Sunbather” のように再び自分たちを定義できるようなアルバムを作る必要性を感じていました。そうして伝説的なメタル・レーベル、ロードランナーとのレコード契約を受け、新たなスタートを切ったのです。KNOCKED LOOSE や INTERPOL など様々なアーティストと共演し、自分たちを証明してくれる潜在的な新しいファンの川は深く流れていました。
「”Infinite Granite” が楽しくて必要なアルバムであり、私たちがあのアルバムを誇りに思っているのと同じくらい、私たちのヘヴィ・ミュージックへの愛に再び火をつけたのは、あの作品の曲をツアーする過程だった。 長い間、あのメロウな音楽を演奏していたから、もっとヘヴィな曲を演奏したかったんだ。 それに、”Sunbather” のアニバーサリー・ライヴをやる機会もあったし、KNOCKED LOOSE とのツアーも楽しかった。 速くてハードな演奏をするという精神が復活したんだ。 特に Kerry にとっては、これが自分の好きな音楽なんだという個人的な気づきにつながった。 彼は、このレコードがまだ DEAFHEAVEN らしいものであるという条件付きで、スピードと重厚さを取り戻すという真のビジョンを持っていた。 一つの方向には向かっていないんだ」
“Lonley People With Power” の野心的なアプローチについて、George はこう説明しています。
「DEAFHEAVEN はバンドとして十分な年月が経っているので、自分たちが以前に何をしてきたかを参考にすることができる。今までのアルバムや一緒に経験したことを通して、このバンドが一体何なのかを消化し始めることができる。それを抽出しようと試みることさえできる… このバンドのDNAには、ちょっとした貧乏根性が埋め込まれていると思う。 私たちは2人とも、一生懸命やっても誰も気に留めないようなバンドに何年も在籍していた。 だからこのバンドのDNAに深く刻み込まれているのは、オーバーワークなんだ。すべてが完璧だと感じられない限り、十分な働きはできない。私たちは泡銭、家のお金で遊んでいるようなもので、本当はここにいるべきでないようなもの。だから、それを最大限に活用しないのは、宇宙に対して失礼なことだと思う」

かつてポーザーと呼ばれていたのが馬鹿らしいほど、彼らはもはやメタルを代表する存在となりました。
「何年もの間、みんなが DEAFHEAVEN を “ポーザー “と呼びたがっていたのに、今ではその話題もなくなってしまった。我々のバンドを支持する人も嫌いな人も、それが退屈な会話だということに同意して握手していると思う。 DEAFHEAVEN のことを嫌っている人たちでさえ、”ああ、クールだ、新譜が出たんだ” と思えるくらい、私たちは長く活動してきた。
メタルがここ数年、大きな盛り上がりを見せていることが救いだ。 多くの素晴らしいバンドが誰でも簡単にアクセスでき、ツアーを行い、常に素晴らしいショーを行っている。 私たちは皆、その方がいいと思う」
NINE INCH NAILS, St. Vincent, THE MARS VOLTAといったアーティストを手がけるベテラン・プロデューサー、ジャスティン・メルダル=ジョンセンは、”Infinite Granite” に参加して、そのアルバムのソフトなエッジに驚かされました。そして今回、彼は期待をさらに上回る驚きを “Lonely People With Power” に感じました。
「初めて彼に “Revelator” を聴かせたときのことを覚えているよ。彼は、”ワオ、これは私が期待していたヘヴィネスを満たしているだけでなく、それをはるかに超えている… “という感じだった。
それは、私たちが以前やっていたやり方を引き継いだものだ。 そう、”Magnolia” は音楽的にかなり攻撃的だ。そして、このアルバム全体を通して、似たようなサウンドの部分がある。 確かに “Lonely People With Power” には獰猛さがあるが、DEAFHEAVEN は常にエモーショナルな核を維持し、物事を特異なレンズを通して見ないことを目指してきた。 その意味で、このアルバムの多くは、赦すこと、あるいは自分自身を含む権力の力学を認識することをテーマにしている。 そう、怒りがある。 しかし、決意、許し、認識もある。 そして、それらは均整のとれた音のパレットで表現されている」

激烈な “Magnolia” の後、セカンド・シングル “Heathen” は、彼らのアヴァンギャルドでポスト・メタル的な傾向を再び紹介するための意識的な努力のように感じられます。
同時に、事実上のオープニング曲 “Doberman”, 前述の “Revelator”、そして変幻自在の叙事詩 “Winona” で、George が2013年の名作 “Sunbather” の流れを汲む痛快なブラストビート・ブラックメタルに回帰していることも否定できないでしょう。
実際、”Sunbather” のジャケットであえてピンク色を使い、メタル全体に衝撃を与えたことから、前作 “Infinite Granite” ではメタルをほぼ完全に排除したことまで、あらゆる決断がバンドをこの瞬間へと導いたように感じらます。 ブラックメタルはその本質的な暗さにもかかわらず、多くの新しいリスナーを輝かせるチャンスがあることを証明する大作に仕上がりました。
「今は獰猛さにインスパイアされるんだ。もっと獰猛になりたくなる。自分たちのサウンドを抽出したいという欲求があったのと同じように、歌詞のテーマも抽出したいという衝動に駆られた。家族、アルコールと中毒の個人的な経験、自殺願望、友人との関係、女性との関係は、バンドにとって常に試金石だった。自分たちらしさを最大限に発揮しようとすることが、自分にとって何を意味するのかを考えた。それは、そうした考えやテーマに対してより直接的であることを意味する。これまではかなり抽象的だった。でもこのアルバムでは、私は自分の足で歩いている」
実際、George はこのレコードを作るにあたって、ヘヴィな世界を再発見していました。
「WOE の大きな世界を再発見した瞬間があった。僕らの新曲を聴いて SPEATRAL WOUND のことを言う人もいて、それは間違ってはいないんだけど、彼らが好きなバンドは我々も好きなんだ。DARKTHRONE, EMPEROR の鍵盤とベル、IMMORTAL も少し。
それに影響を受けたバンドが宇宙みたいにたくさんいる。 ウォー・メタルもあった。”Revelator” を聴いてみると、リフの背後にあるのは、DEAD CONGREGATION をもっと PORTISHEAD のコードに置き換えたらどうなるだろう、というような試みだった」

そうやって焦点を絞ることで、”Lonely People With Power” のよりパーソナルな側面が明らかになります。George は常に、両親や教師のような影響力を持つ人々からの影響について考えてきました。 アルバム “Sunbather” は、”私は父の息子/私は誰でもない/愛することはできない/それは私の血の中にある…” という嘆きで幕を閉じました。”Magnolia” にも同じような慰めの感覚が内包されています。タイトルは、 George の父の実家があるミシシッピ州の州花にちなんだもので、そこは叔父の葬儀に参列した場所でもあります。歌詞は、George の父と共通の特徴である、叔父のアルコール中毒とうつ病を問い、共有された遺伝と、新たな発見と温かさと受容とともに受け継がれた教訓を受け止めています。”私の愛は果てしない/あなたのすべてが私/一歩一歩が墓場へ向かう/私たちが与えられたのは肉と血だけだったのだろうか?”
“孤独” は “無知” の代名詞でもあると George は考えています。
「両親のような人々について話すとき、彼らのほとんどは自分が何をすべきかわかっていないように感じる。 このアルバムには、両親や教師が自分の人生において欠点やハンディキャップを抱えているにもかかわらず、それでも最善を尽くしていることが多いということを認識するんだよ。寛容の要素が含まれているんだ」
アートワークは、車の助手席の子供を挟んで話す両親と見ることもできますが、あまり健全でないことで道行く女性に寄っていく父親と見ることもできます。
「それは人々が自分で決めることだ。 運転する大人、窓際の女性、助手席の子供。 それをどう思うかは人それぞれだ。 しかし、人々は常に答えを得るよりも多くの疑問を見出すものだ。 私たちにとって、それは重要なことだよ」
切迫して脈打つような “Body Behaviour” では、年上の男性が、若い男の子にポルノグラフィーを見せて絆を深めるという “伝統” を描いています。そこに悪意はないと George は考えています。不気味でもない。ただ、知識を共有するための奇妙な試みなのだと。ある世代から次の世代へと受け継がれる、歪んだ通過儀礼のひとつなのかもしれません。そう歪んだ…
「正直なところ、私が知っている男たちは皆、父親や叔父、年上のいとこ、あるいは誰であろうと、そのような話を何バージョンか持っている。これは現代社会の “症状” であり、現在の男同士の関係の基準なんだ…」

このような話題は気まずく不快なものですが、それに立ち向かう姿勢は DEAFHEAVEN に信念を貫く勇気があることの証でしょう。ポピュリズムとインフルエンサー・カルチャーが有害な行動を強化し、有意義な人間関係を腐食させている世界において、男らしさ、”男はこうあるべき” という古い固定観念についての力強い議論とオープンな自己検証は、言うべき意味があります。
「どんな理由であれ、メタル・ミュージックでは “男らしさ” をアップデートするようなトピックは今でもタブーとされることが多い。それはとても奇妙なことだと思う。異なる視点を提供し、状況を打破し、”若い頃、こんなことがあったんだ。それは奇妙なことだった。そして、それがその後の人生にどう影響したかを知ることができる…” それが、感情的に健康な人間になるために必要なことなんだ。同時に、私は、周囲の世界からの逃避の方法として、空想的な主題に満ちた音楽を演奏するバンドを批判したくないと思っている。私も含め、多くのリスナーはそのような手の込んだストーリーテリングに惹かれるものだから」
ソーシャル・メディアの一角に身を置くと、多くの若者にとって不穏なロールモデルを見つけることができるでしょう。パトリック・ベイトマン。ブレット・イーストン・エリスが1980年代のヤッピー・アメリカのナルシシズムを風刺するために生み出したキャラクター、このアメリカン・サイコそのものが、一匹狼の “シグマ・メール” (アルファ・メール(勝ち組男性) と同程度の成功を収めているイケメン男性だけど、群れない人。頭もよく、見た目もよく、お金もあるけど、一匹狼) の憧れの的として再利用されています。裕福。怒りっぽい。周囲の人々から完全に切り離されている…2000年に映画化されたメアリー・ハロンの名作からのクリップをシェアしている人たちの中には、このジョークに乗っかっている人もいるでしょう。しかし、パトリック・ベイトマン自身が執着する対象であるドナルド・トランプがホワイトハウスに座っている現実では、出世のために喜んで絆を断ち切ろうとする人が現実に多く出現しているのです。
George は、ステージ上でベイトマンになりきっていたかもしれない初期のツアーを思い起こしながら、あの冷淡な離人感にはいつも魅了されてきたと過去の自分を振り返ります。
「あのキャラクターが好きなのは、自分自身の中にそれを見たからでもある。それは、パフォーマンスを魅力的なものにする大きな要素だ。少し深く掘り下げ、自分の中にあるものを見つけ、それを見世物のために裏返すのだ。
友人に聞けば、僕らの関係はより “リアル “になったと言うだろうね。若いうちは、受け入れられようとするあまり、見栄を張ってしまう。AからBに行くために、きれいごとやパフォーマンス的な習慣を身につける。仮面をはがすこと、本当のつながりに必要な弱さを見せることは、かつての私にとって難しいことだった。年を重ねるにつれて、正直でいることができるようになった。でも、それは目的地ではなく、むしろ旅路なんだ」

同様に、DEAFHEAVEN 自体も、彼の血管の中にある氷の単なるはけ口から、それを処理するための重要なツールへと変貌を遂げました。
「初期のころは、これが他の方法ではできない自己表現の方法だと感じていた。今は、セラピーのようなものだ。ツアーから離れることで、外に出ることがどれだけ自分の幸せにとって重要かがわかる。旅行や演奏だけでなく、新しい人々に会い、新しい文化を体験し、自分のバンドをよりよく知り、自分を違った形で知ることができるんだ!」
DEAFHEAVEN のオーラの中で、ブラック・メタルらしい危険や脅威はいまだに大きな役割を果たしています。それを今も維持し続けるのは難しいことなのでしょうか?
「ステージにいると、大きなパワーを感じる。エゴの塊だよ。ある程度の誇大妄想もある。私は今でもその極悪非道なキャラクターに傾倒するのが好きなんだ。大観衆の前での瞬間が、日常生活といかに違うかを目の当たりにし、私は自分の分身を掘り続けることを選ぶ。今の自分をどう見ているかの違いは、自己認識が深まったことと、そのキャラクターがとても優しく、共同的で人間的な瞬間のために、今の自分を壊すことを許されるようになったことだ。観客の中に入って誰かを抱きしめたり、バリアの上で泣いているファンに寄り添ったり。私の音楽は、私が最も傷つきやすいときのもの。パフォーマンスは、私が最もパワフルな時のものだ。キャラクターが壊れるとき、私は最も自分らしくなる。もし人々が本当に DEAFHEAVEN のシンガーと瞬間を共有し、歌詞を歌い、あるいは歌詞にしがみついているとしたら、それは Georgeと瞬間を共有していることになる…」

創作、パフォーマンス、個人的な経験の相互関係を分析することで、どのアーティストも、少なくともある程度は、力を持つ孤独な人間であるという気づきを George は得ました。
「パワーが影響力であるならば、私たちは皆、ある程度のパワーを持っている。インタビューはその典型的な例だ。誰かが私の発言を読み、それが彼らの意見を形成するかもしれない。だから私たちには、できるだけ理解し、共感し、知識を持つ責任がある。どうすれば誰かの教師になれるのか、と自問自答する。でも、それは常に進化する謎なんだ」
“Lonely People With Power” の最も難しい教訓は、まさにその最後に訪れる。ジャン・ウジェーヌ・ロベール=ウーダンの悪名高い19世紀の複雑な錯視にちなんで名づけられた “The Marvelous Orange Tree” “驚異のオレンジの木” は、自殺について歌った厳しくも美しい曲。”この病気と一緒に生きて/震える肌を見せながら/あなたと一緒に、私の終わりのない病気で/私の終わりのない病気で/暗闇の中を歩いていく” という表向きは絶望的なセリフで締めくくられています。しかしこれは、奈落の底へ転落するのではなく、常に足元に気をつけるようにという戒めなのです。
「物事には終わりがある。自分の中の悪魔を見極めているとき、”もう心配ない!” とか “もう終わったことだ!” と言うのは難しい。ドアは常に開いていると認識することが重要だ。それは、負けるとか屈するという意味ではない。ただ、本は決して閉じられていないということを知ることだ。
人は何かを打ち負かしたと思ったり、無視することを選んだりすると、思いもよらない形で再び忍び寄ることがある。この曲は、そのような負の感情がいつもまだ存在し、これからも存在し続けるということを認めている曲なんだ。死にたくなったことを話したくなったら、話すべきだし、そうしている。それを放棄することで起こりうる驚きに直面したくない。結局のところ、このアルバムは共感と許しが中心となっている。他人の欠点に対しても、自分自身の欠点に対しても。それはすべて、認識と理解に関係している。”Amethyst” の歌詞で歌ったように、ここには非難するようなものは何もない….」


参考文献: KERRAMG! :Deafheaven: “If power is influence, we have a responsibility to be as understanding, empathetic and knowledgeable as possible”

KERRANG! :https://www.kerrang.com/deafheaven-new-album-lonely-people-with-power-george-clarke-interview

LOUDWIRE

NEW NOISE MAG

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DAWN OF OUROBOROS : BIOLUMINESCENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TONY THOMAS OF DAWN OF OUROBOROS !!

“We All Grew Up Near The Coastline Of California So The Pacific Ocean Has Been a Major Theme Across All Of Our Music. In The Case Of Bioluminescence, Chelsea Felt It Was a Theme She Found Beautiful, And Wanted To Express Her Admiration Of It Through The Music.”

DISC REVIEW “BIOLUMINESCENCE”

「僕たちはみんなカリフォルニアの海岸線の近くで育ったから、太平洋は僕たちの音楽すべてに共通する大きなテーマなんだ。”Bioluminescence” の場合は、Chealsea が美しいと感じたテーマで、音楽を通して生物発光の素晴らしさを表現したかった。主にアルバムのタイトル曲でね」
“Bioluminescence”(生物発光)とは、生物の体内で起こる化学反応が光を生み出すことを表します。これは、カリフォルニア州オークランドの DAWN OF OUROBOROS、その自らの尾を飲み込む円環の音蛇を実に的確に比喩した言葉なのかもしれません。様々に異なる曲作りの技法を組み合わせた彼らの虹色の輝き、それはまさにブラックメタルの生物発光。
重要なのは、彼らがそうしたインスピレーションを、自らが生まれ育った太平洋の海岸線、美しき海原と生命の神秘から受けていることでしょう。もちろん、今日ブラックメタルはその出自であるサタニズムの手を離れて、自然崇拝や少数派、弱者の代弁、スピリチュアリズムなど様々な分野に進出していますが、彼らも自らのアイデンティティを余すことなくブラックメタルに注いでいます。メタルにおける自己実現。それはきっと、とても尊いこと。
「作曲を始めるときは、いろいろなドラムのアイデアに合わせてギターを弾き、気に入ったものが出てくるまでその上で即興演奏するんだ。だから、インプロビゼーションを通して自然に生まれるものなんだよ。でも、僕たちのサウンドが人々の心に響くのは、イントロ部分の Chelsea の歌のおかげだよ。彼女もそのボーカルの多くを即興で歌うので、曲に自然なジャズ・フィーリングが生まれたんだ」
そうして唯一無二の方法で育まれた DAWN OF OUROBOROS の音楽は、当然ながら他のブラックメタルとは一線を画しています。現代的なブラックメタルとデスメタルが巧みに混ざり合う “Bioluminescence” の世界には、さながら深海を探索するようなポスト/プログのアトモスフィアが漂います。発光生物の多くが海に生息しているように、DAWN OF OUROBOROS の音色は明らかに水中のイメージを想起させ、ボーカルとギターのメロディーにはオワンクラゲのごとくみずみずしき浮遊感が存在します。
一方で、リズム・セクションが津波のようなシンセ・ラインとともに脈動し、激しいうなり声や叫び声が大空から轟いてくることもあり、この太平洋の神秘と荒波の二律背反こそがウロボロスの夜明けを端的に表しているに違いありません。
「僕たちは自分たちが好きな音楽を作ること以外を目指したことはなかったから、他のバンドがよくやること、当たり前なことなんて考えたことはなかったんだ。それに、Chelsea の声はそれ自身で彼女がいる意味を物語っていると思うし、何より彼女はハーシュ・ヴォーカルもクリーン・ヴォーカルも、他のヴォーカリストよりもうまくこなせるんだ」
そうした DAWN OF OUROBOROS の両極性を増幅させるのが、Chelsea Murphy の多面的なボーカルでしょう。ドリーミーな歌声と生々しい叫び声を瞬時に切り替える彼女の類まれな能力は、ROLO TOMASSI の Eva Korman を想わせるほどに魅力的。
“Slipping Burgundy” ではスムースでジャジーに、”Fragile Tranquility” では荒く、ほとんど懇願するようなトーンでリスナーの感情を刺激します。 先程までラウンジで歌声を響かせた歌姫が、まるで燃え盛るマグネシウムのまばゆい輝きのように耳を惹き、ハリケーンのように畏敬の念を抱かせるスクリームで世界を変える瞬間こそ圧巻。バスキングと威嚇を繰り返すウロボロスの円環はあまりにも斬新です。
今回弊誌では BOTANIST でも活躍する Tony Thomas にインタビューを行うことができました。「最近では、ALCEST や DEAFHEAVEN, 明日の叙景、LANTLOS, HERETOIR のようなポスト・ブラックメタルや、COMA CLUSTER VOID, ROLO TOMASSI, ULCERATE のようなプログレッシブ・メタルを探求しているね」 どうぞ!!

DAWN OF OUROBOROS “BIOLUMINESCENCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FROGG : ECLIPSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SKY MOON CLARK OF FROGG !!

“Obviously I LOVE Tech Death, But Yes, One Has To Admit There’s a Formulaic Approach To Both Production And Songwriting In The Genre.”

DISC REVIEW “ECLIPSE”

「特定のサブジャンルにこだわる必要なんてなくて、どんなアイデアも排除したくなかったんだ。 だから “Eclipse II” にはメタル・コア、Djent、フュージョンの要素があり、Will が演奏した何十種類もの楽器を使ったギター・ソロ・セクション、特にファースト・ソロで目立つタブラの妙技、そして黒く染まったシンフォニック・デスメタルのアウトロまでがある。 まさにそれが僕たちが感じていたものだった」
“Frogging the Horses” という SikTh の狂った名曲がありますが、Frogg の二つ名はプログ世界にとってはどうやら僥倖。”どんなアイデアも排除しない” という意味で、明らかにニューヨークのセンセーション FROGG はあの SikTh の魂を受け継いでいます。いや、SikTh だけではありません。00年代、SikTh と “カオス” の覇権を激しく争った PROTEST THE HERO の高鳴るギター・メロディ。ANIMALS AS LEADERS の超重低音とシステマティックな陶酔。BETWEEN THE BURIED AND ME の驚異的で雑多な構成力。NECROPHAGIST の性格無比な超速暴威。そうした21世紀を代表するプログ・メタルを養分として蓄えた巨大なカエルが今、メタルの境界をすべて飲み込みます。
「間違いなく Alexi Laiho だね。 僕がギターを弾き始めたのは高校1年生のときで、かなり後発組だった。 でも、ギター中毒になってしまって、ギターを弾くのを止められなかったよ。僕はPCゲーマーだったから、ネットで独学する方法を知っていたんだ。 Ultimate Metal Forums と sevenstring.org は、当時ギターを学ぶのに人気のサイトだった。まだYoutubeのコンテンツが豊富ではなかったから、フォーラムとギター・タブが主流だったね。僕は地元でフルタイムのインストラクターを雇う余裕がなかったから、Guitar Proが最初の先生だったよ」
そうした21世紀の多様性に FROGG はギター・ヒーローの魂を持ち込んでいます。奔放でカラフル、まるでメインストリームのポップ・ミュージックのように光り輝く “Wake Up” においても、Alexi Laiho から受け継いだ高速の “ピロピロ” がメタルの証を主張します。
実際、”フロッゲンシュタイン” などと例えられるパッチワークな FROGG の音楽において、Sky Moon Clark と Brett Fairchild のシュレッドがすべてを縫い合わせている、そんなイメージさえリスナーは感じることになるでしょう。Alexi Laiho と Guitar Pro の遺産が実りをもたらす時代になりました。”Double Vision Roll” なんて実に COB ですよね。
そうして紡ぎ出されるのは、テクニカル・デスメタルらしからぬスケール感と意外性、そしてお洒落なムード。空想的なメロディ、短いポップなブレイク、奔放な音楽的ショーマンシップに自由を見出した薔薇色のメタル。今の時代、”テック” だけでメタル世界の水面に波紋を広げることはできません。しかし、FROGG の棲む水面にはステレオタイプに飽きたリスナーが渇望する、ぞわぞわとしたカタルシスとカエルが舌を伸ばすようなお茶目な驚きと遊び心が混じった何かが渦を巻いています。まさに新時代のメタル両生類。
今回弊誌では、ボーカルも務める Sky Moon Clark にインタビューを行うことができました。「Will(ドラマー)はこのアルバムのもう一人の主要なソングライターで、BTBAM や SikTH に影響を受けている。 THE FACELESS, COB, SCAR SYMMETRY にはもっと影響を受けたと思う。 FFO (For Fans Of) にBTBAMに入れたのは、彼らが DIABLO SWING ORCHESTRA や UNEXPECT と並んで Will に大きな影響を与えたからなんだ」 UNEXPECT!!ARSIS の名盤を挙げているのも嬉しい。また Emma のショルキーが最高よね。どうぞ!!

FROGG “ECLOPSE” : 10/10

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