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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【Kostnatění : Úpal】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH D.L. OF Kostnatění !!

“I Think The Bands That Are Currently Pushing Black Metal Forward Are The Ones Who Don’t Make It About Satanism Because They Think It Is Mandatory.”

DISC REVIEW “Úpal”

「現在ブラックメタルを前進させているバンドは、サタニズムをテーマにしていないバンドだと思う。それを強制させられた時点で、創造的とはいえないからね。ブラックメタルは、歪んだギターで演奏されるエネルギッシュな音楽であれば、どんなものにも適応できるし、同様に幅広いテーマやムードを取り入れることができる」
モダン・メタルはその生命力、感染力、包容力で世界中に根を張り、多様な文化を吸収して、今も拡大を続けています。その最先端に位置するのがブラックメタルであることは、もはや公然の秘密でしょう。そして、その多くがもはや原初のサタニズムを強制されてはいません。強制とは創造の反対語。米国ミネアポリスを拠点とする Kostnatění も、全身全霊で創造の限りを尽くします。
「僕は単純にトルコの音楽に長い間興味を持っていて、それをメタルに取り入れた結果を楽しんできたんだ。”Úpal” にはトルコ音楽の影響だけでなく、マリのティショマレンや中東・北アフリカの民族音楽、ポップス、クラシック音楽からの影響もある」
灼熱の太陽、砂漠の熱砂、地獄の乾燥。蜃気楼の踊る異国のアルバム “Úpal” は、チェコ語で “熱射病 “を意味し、極限に咲く美しさと激しさの二律背反を表現しています。Kostnatění が目指すのは、”砂漠の太陽、その灼熱の光と正気の融解”。威厳と殺戮を伴って移り変わる砂の上の文明に焦点を当て、酷暑に屈っせず進化する人々の強さに敬意を表します。
ゆえに、そのブラックメタルには音楽の進化の証であるポップスやクラシック、現代音楽とともに、中東やトルコ、北アフリカの音楽が共存しているのです。
「僕はいつも、今ある既存のものとはまったく違うサウンドを作ることを目標に音楽に取り組んできた。いろいろな音楽を聴いて、それを組み合わせることで、簡単に他とは異なる目立つ音楽を作ることができる。それに加えて、僕はポップ・ミュージックの感性を曲作りに生かすようにしている。どんなに激しく邪悪な音楽であっても、記憶に残るものでなければならないと思うからね」
Kostnatění(チェコ語で “骨化” の意)は、アメリカ人 D.L. を中心としたバンドです。アメリカ人でありながら、チェコ語とチェコ文化を中心に据え、中東やアフリカの音楽を奏でるその異端は D.L. に言わせれば実に自然な営みでした。
結局のところ、D.L. はアーティストとして、自分が興味の向くものを、好奇心のままにアートとして創出しているだけ。そこには、モダン・メタルに宿る強制されない創造性が多分に反映されていて、最終的に D.L. 本人を軸として、不思議にまとまりのある百鬼夜行として収束していくのです。
Kostnatění は伝統的なサウンドをより深く、理論に基づいて解釈することで、ブラックメタルを新たな次元へと昇華させていきます。リズムはメタル・ルールブックの理解を超え西洋音楽とは異質の次元で時を刻み、フレットのないマイクロトーナル・ギターは死の谷の暑さの中でゆっくりと干からびていく蛇のように、ジワリジワリとリフの命を捻じ曲げます。
そうして、エキゾチックと無慈悲の綱渡り、幻覚的で予測不可能な “Úpal” は、アフリカン・フォークと砂漠のブルース、中東のダンス、トルコ民謡の微分音、邪なノイズ・ロックの影響を受けながら、不安と強迫観念の蜃気楼を不協和音の楼閣に描いていきます。その不協和は、しかし魅惑の異世界旋律で、さながらサハラの太陽のごとくリスナーの心を溶かし、揺さぶり、いつしか焼きつくしてミイラ取りをミイラにしていくのです。とはいえ、Kostnatění の音楽を完全に解析するには、難解な学位が必要でしょう。
今回弊誌では、D.L. にインタビューを行うことができました。「メタル文化の中で、入門バンドから成長しなければならないという考えに賛同したことはないよ。だって、結局、入門編となるメジャーなバンドは曲作りが良いから人気なわけでね。アンダーグラウンドの音楽はメインストリームから学ぶべきことが多いと思う。その逆もまた然りだけど」 どうぞ!!

Kostnatění “Úpal” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【EXTREME : SIX】 JAPAN TOUR 23′


COVER STORY : EXTREME “SIX”

“The Great Bands That We Love, They Still Wrote Simple Rock Songs, But There Was a Complexity If You Wanted To Look Deeper. So What I Call It Is Simplexity!”

EXTREME: SIX

今年のポップ・カルチャーな圧倒的にエレキ・ギターがモメンタムです。そして EXTREME 待望の新作 “Six” にはまさに、シュレッダー志望者なら誰もが弾きたいと思うソロと、ハードロック的なグルーヴに包まれたキラー・リフのオンパレード。3月3日に公開されて以来、ファースト・シングル “Rise” の再生回数は300万回を超え、多くのプレーヤーが練習に戻って自分のプレーを見直すことになったはずです。同世代で最もダイナミックなプレイヤーの一人である Nuno Bettencourt は、ここにきてまた一段とレベルアップしているのですから。
そしてそれが、Bettencourt の “Six” に対するアプローチ、原動力の1つでした。
「”Six” では、エネルギーとコミットメントを持って物事を投げかけることが重要だった。炎や情熱という言葉は俺の日常だ。ギタリストとして、どのアルバムでも、俺は常に偉大なプレイヤーからインスピレーションを受けてきた。でも、いつかは彼らを倒したいと思わなければならない。俺はまだ倒せると信じている。 “ヒーロー” と肩を並べられると信じていないのに、なぜ誰かと何かを共有したいと思えるんだ?そうやって俺は人々とつながり、ギターの楽しい面を見せたいんだよ」

同じく MV となった “#Rebel” と “Banshee” を聴けば、”Six” が2023年最高のギター・アルバムの一つであることは疑うまでもありません。しかし、このバンドが EXTREME である以上、アルバムは当然、ハードなロックばかりではありません。彼らのサウンドには弾力性があり、Bettencourt が7弦ギターに挑戦した “X Out” のような大胆な柔軟性も備えています。”Beautiful Girls” のような VAN HALEN 的常夏ポップなスタイルもあり、バラードもあれば、アンセムもあります。Bettencourt が言うように、EXTREME では “予期せぬことを予期しなければならない” のですから。
壮大なギター、親しみやすいメロディ、ジャンルの横断、誰も思いつかなかったようなギミックや展開。このアルバムをプロデュースした Bettencourt は、バンド・メンバーをかつてないほど追い込んだといいます。中でも、当然のことながら、Bettencourt は自分自身を最も追い込みました。だからこそ、実に30年ぶりくらいに、”ギタリスト” があれほど注目を集め、興奮をさらった “Rise” の “ワイルド” なソロが生まれたのです。
「一言でいえば “ワイルド” だ。ファンの反応そのものがね。ほら、エゴイスティックに、自信たっぷりに、俺はいつも、”Porno” でも “III Sides” でも何でも、すべてのアルバムに情熱と炎を持って臨み、それが何らかの反応を得るべきだと信じていたけどね。そうでなければ、やらないよ。
最近、ある人から “More Than Words” はあなたたちにとって祝福なのか呪いなのかと聞かれたんだよな。面白い。一方では、”More Than Words” が世界的に1位を獲得し、世界ツアーを行うことができた。それはとても素晴らしいことだ。おかげでまたアルバムを作り、たくさんのクールな音楽を生み出すことができる。そして、俺たちは住宅ローンを払い、実際に最終的に生き残ることができた。だから、もし “More Than Words” が成功しなかったら、俺はバーガーキングで働くことになっていたかもしれない。だから、ヒットを恥ずかしいと思ったり、呪いだと思ったりしてはいけないということは言える。俺たちは、どのアルバムに収録されている曲も、まさにその理由で誇りに思っているんだ。そして、人々が俺のギターに共感してくれることを願う。
でも、俺は56歳になって、バンドは15年間音楽活動をしていなかったから、さすがにこれほど反響があるとは思いもしなかった。本当にワクワクする。なんだか目が回るような気分だよ。以前は、何かを発表するとき、人々がそれを好むかどうかがわかるまで、何カ月も待たなければならなかった。ラジオに出演して、チケットを売って、お客さんが来てくれるかどうか…チャートも見る。そのすべてに時間がかかる。今は、何かをリリースすると、24時間、48時間以内に、好きだとか、嘘っぱちだとか、すぐに結果が出る!」

それにしても、かつて “More Than Words” でポップ・カルチャーの頂に立った EXTREME がここにきて再度その場所に戻り、話題を独占するとは驚きです。
「10日間で100万回再生され、発売以来200万回近く再生されている?これは予想外だったし、とても感謝しているんだ。同業者やギタリスト、Steve Lukather や Brian May のような人たちが、”ヘイ、バディ、グッジョブ!君の新作が大好きだ!” みたいな反応じゃなくて、長いテキストメッセージのようなものを返してくれた。アルバムにちゃんとしたソロがあって、ちゃんとした曲があることに関係しているのだろうけど。
そしてもっと重要なのは、彼らの反応は、もしかしたらみんな知らないかもしれないけど、ここ8~10年、本当に素晴らしいギタリストの大半は、俺もフォローしている驚異的なプレイヤーは、みんな部屋に座っているってこと。俺は舞台の上にいる。エネルギーが違うんだ。
彼らは一人でスタジオに座って、ギターを弾きながら、SNS が何かで俺たちを驚かせる。彼らと俺の違いは、バンドが登場すること。だからこそ、感情的で、フィジカルなものになる。バンドの誰かが曲の途中でハーモニーやボーカルをとるし、歌詞もあるし、アレンジも、ブリッジも、とにかくオールインで、情熱的に演奏している。それこそが、人々を再び興奮させるレシピなんだよ」
Bettencourt はポップ・カルチャーに再びギターを取り戻した事で、感謝さえされています。
「ある人からメールをもらったんだけど、そのほとんどがお礼のメールだった。再びロックンロールを届けてくれてありがとう!というお礼のメール。ビデオの中でギタリストがソロを弾くのを見て、あんなに興奮したのはいつ以来だろう?ってね。それが人々を興奮させているのだと思う。
もし俺が座って同じソロを演奏したら、人々は “オーケー、クールだ” と思うだけだろう。”かっこいい。彼は何か面白いことをやっている” と思うだけだろう。俺はそういう演奏はしない。例えば、”Other Side Of The Rainbow” だ。あのソロは俺のお気に入りの1つだけど、みんなはそれほど興奮しないかもしれない。たしかにベスト・ソロではない。でも、あんなソロ、他にないだろ?つまり、あの曲にとって最高のソロなんだ」

Eddie Van Halen に捧げた “Rise” のソロも完璧ではないと Bettencourt は語ります。
「冒頭のベンド!あれは音符じゃないから、何の音を出しているかは分からない。15年前なら、”あのクソ音符をやり直そう” と、直していたかもしれない。でも、俺の中の何かに響いたんだよな。つまり、キックドラムの音に、車の衝突音を混ぜたような音だったからな。不完全さに惹かれるというかね…」
Bettencourt のソロはいつもダンサブルで、リズミカルです。
「その理由はただひとつ。俺はドラムから始めているからね。ドラムは俺にとってすべて。誰かが俺をジャムに誘うたびに、”ああ、君が望むならドラムを叩くよ!” と言うから、嫌われているくらいでね。でも、それが俺の楽器のやり方のすべてなんだ。パーカッシブに演奏するというね。ソロを演奏するときでさえも、俺にとって重要なのはリズムであり、フィーリングであり、バウンスなんだ。リズムギターの上にさらにリズムギターを重ねるような感覚でソロを弾いている。わかるかな?ドラムを叩いて、すべてのパターンを書き出すことができるような感じ。わざとじゃないんだけど、”Rise” の冒頭で音を曲げたときでも、信じてほしいんだけど、その後まで流れがあって、それがリズミカルということなんだよな」
ただし、Bettencourt にとってこれはずっと続けてきたことでもあります。
「みんな “Rise” のソロを聴いて、まるで神の再来だ、ギターのハードルが上がった!みたいなことを言ってるんだ。待てよ、俺はこれを30年ずっとやっているんだけど…。”Peacemaker Die” を聴いたことないのかよ!って思うね。”Rise” のソロと同じような感じで、”Peacemaker Die” はかなり見落とされてきたソロだ」

EXTREME には、80年代のヴァイブ、90年代のヴァイブ、どんなものでもありながら、とても EXTREME らしい存在感が常にあります。ヘヴィな曲の一方で、”Small Town Beautiful” のような映画化目前の楽曲もあって、その対比がダイナミックさを生んでいます。
「このアルバムには、映画のサウンド・トラックに収録されそうなシネマティックな楽曲がたくさんあるよね。俺が曲を書くときは、紙とペンであろうと、コンピューターであろうと、その瞬間に最初に考えるのは映像。俺は音を見る。音がもたらすビジュアルを見て、どんな映像が考えられるか、俺が見ているものは何か、そしてその感情は何かということを書いていくんだ。俺たちが撮影した “The Other Side Of The Rainbow” のビデオを見ると、場所的にとても “虹の向こう側” なんだよな(笑)。そうやって、俺たちは生身の人間であり、名声の栄枯盛衰を描いていったんだ」
EXTREME はアルバムが少ないことにも理由があります。
「”Chinese Democracy'” にあやかって、”Portugal Democracy” と名づけようかと思ったくらいでね (笑)。まあでも、アルバムが出る、あるいは音楽が出るということは、それなりの理由があるわけで、それはたいてい俺にとって良い理由なんだ。俺たちがあまりアルバムを出さないのには理由があるんだ。
とてもとても若い頃、Gary Cherone に “音楽を出すために音楽を出すのは絶対に嫌だ” と言ったんだ。たしかに、アルバムを出すたびにお金が入り、世界中をツアーすることができる。しかし、それは本当に誇りに思うものでなければならないと思う。みんなに嫌われようが愛されようが、そんなことは自分にとって結局は何の意味もない。ファンが気に入ってくれるのは、いつもオマケのようなものだ。自分がやったことが好きじゃなかったのに、みんなが自分のやっていることを気に入ってくれることほど悪いことはないんだ」

それは、THE WHO の英雄から学んだ哲学です。
「何年も前の90年代半ばに、Pete Townsend のラジオ・インタビューを聞いたんだ。深夜に車を運転していたら、DJ がこう言った。THE WHO が復活してツアーをするのはクールだ。ファンのためにやってくれるなんて最高だってね。そして、Pete がこう言ったんだ。”そんなの全くのデタラメだ。どんなアーティストであろうと、ファンのために何かをやることはない。ファンのためにアルバムをレコーディングしたとか、ツアーをやったとか言うアーティストは嘘だ” とね。
当時は、すごい攻撃的で冷たいなと思った。でも今なら、彼の言いたいことがわかる。ファンは俺たちに物事をコピーしたり、ファンに合わせることを望んでいないんだよ。何でもいいからやってみよう、そうすれば彼らは興奮する。この人たちは今、何をやっているんだろう?ってファンは、予測不可能なアッパーカットを求めているんだ。だから、アーティストとしては、自分たちのバブルの中にいて、自己中心的でわがままになり、好きなことをやらなければならないと学んだんだ。それが、ファンが俺たちに本当に求めていることなんだよ」
“Six” の制作にあたって、Bettencourt はギターのレベルアップも明言していました。
「ギタリストの友人の一人に、ギターそのものが、俺とまるで人間のような関係を持っていると話したことがあってね。ギターは置いておくだけの木の塊ではないんだよ。友人と一緒にいるのが楽しみなときもあれば、そうでないときもある。そんな友人は誰にでも一人や二人はいるもので、1年や2年会わないかもしれないけれど、会ってランチをすると、まるで離れたことなどなかったかのように、絆と理解が深まるんだ。俺はいつもギターとそんな関係だった。しばらく離れてもいいんだ。しばらくは誰かから離れる必要がある。そして、時には夢中になり、6ヶ月間ずっと一緒にいることもある。そしてそれが今の状況なんだ。
あとは、ジェネレーション・アックス・ツアーに参加したことにも刺激を受けたよ。素晴らしいギタリストやヒーローたちと一緒に演奏することで、また少し火がついたんだ」

ヒーローといえば、Bettencourt は最愛のギターヒーロー、Eddie Van Halen を失いました。
「アルバムを作っているときにも、Eddie が俺の家に来て、アルバムを聴いてくれた。もちろん、Eddie Van Halen の王座を継ぐ者はいないと言わざるを得ないよ。誰もその王座を奪えない。 Eddie は単なる “ギタリスト” ではなかったから。文化やギターの弾き方を変えてしまった人なんだ。それで、”Eddie が亡くなった時、”クソっ!俺らの世代にはもう分かり合える人たちがあまり残っていない…”と思ったんだ。若い世代で素晴らしいギタリストはたくさんいるけど、バンドで曲を作り、曲の中でソロを弾き、その曲のトーンの中でクリエイティブになれる人はあまりない。バンドの中のギタリストという”聖火”をつなげる責任と炎を感じたんだ。
このアルバムは楽しいものにしたい、ギターで楽しいものにしたい、リズムの中にソロがあるという意味で血を求めていきたいとみんなに言ったんだ。それは、Eddie Van Halen, Brian May, Jimmy Page に由来するもの。彼らは、たとえリズムを演奏していても、その下にセクションやコード的なものがあっても、ただクリエイティブだった。俺たちはジャズをやっているわけではないからね。ロックンロールをやっていて、3分半の曲で、曲はシンプルであるべきなんだけど、その中で天才的なことをするのは悪いことじゃないんだ。俺らが大好きな偉大なバンドたちは、やはりシンプルなロックソングを書いていたけど、深く見ようと思えばそこに複雑さがあったんだ」
Bettencourt はその複雑性を “層” と例えます。
「曲の中に剥がせる “層” があり、発見できるものがあった。”だから俺はそれを “Simplexity “と呼んでいるんだ (笑)。Simplicity (単純性) と “Complexity” (複雑性) をかけ合わせた造語だよ」

Bettencourt に言わせれば、ロックは過剰に知的化されすぎています。
「ロックンロールやロックバンドは、みんな自分たちがすごく手が込んでいて、すごく知的だと思いたがるが、それが何であれ、申し訳ないが、結局は大人向けの童謡を書いてるだけなんだ。それが俺らのやっていることなんだ。そして、みんなで一緒に歌う。アンセムなんだ。歌詞とメロディがちょっと大人向けってだけなんだ。それでも、もし詩を書きたいなら、ギターでやりたいことがあるなら、この “Simplexity” の世界に行きたいなら、そうすればいい!
例えば、RADIOHEAD は “Creep” という曲が大嫌いだけど、あの曲は俺の人生を変えたんだ。なぜなら、あの曲こそが “Simplexity” 究極の形だから。RADIOHEAD はそれを芸術としてやっている。でも、歌詞があり、メロディーがあり、奇妙なハーモニーがあり、プロダクションがあり、それでいて、少しスマートだから、オルタナティブと呼ぶんだ」
ポップでロックな曲の中に、大きなアイデアを盛り込むことができるという意味で、EXTREME 常に破壊的な存在でした。金曜の夜にビールを飲みながら、月曜の朝にヘッドホンをして細部まで分析できるような曲をたくさん持っています。
「その通りだ。そして、音楽はムードなんだ。曲を作る時に、テンポを選ぶのが一番の悪夢さ。曲はできたけど、この曲のテンポをどうしよう?2クリック速く、2クリック遅くすることで、全体が変わってしまうんだ。曲の雰囲気も、リフも全く変わるんだ。難しいのは、スタジオにいると心拍数が変わり、曲を作るときと認識が変わるんだよな。心境、心拍数、アドレナリン、それが変わると、曲の聴こえ方も変わってくる。ライブに行くと、全部知っているはずのプリンスやマイケル・ジャクソンの曲が、知らない曲ばかりになる。”Wanna Be Startin’ Somethin'” とかね。でも、彼らの頭の中では、録音通りなんだよな。興奮しているからなんだ」

Bettencourt は Van Halen だけでなく Prince にまで愛されていました。
「EW&F のトリビュート・ライブで Prince が Nikka Costa と座っていた。で、耳元で彼女に何か囁いたんだ。”下手くそ野郎”とかかな…って落ち込んだよ。次の日 Nikka が家に来た。”あのギタリストは世界で3本の指に入る”だって…」
プロデューサーとしても有能な Bettencourt ですが、かつては Michael Wagner といった有名人にプロデュースを任せたこともありました。
「まあ、ひとつだけはっきりさせておくと、EXTREME のアルバムは全部俺がプロデュースしたんだ。Michael Wagner は大好きだし、彼のプロダクションが好きだったから依頼したんだ。でも、結局彼を雇ったのは、彼は、俺がやっているすべての仕事を、それが曲やアレンジメントにとってどれほど重要であるかを認めてくれる人だったから。彼はそれを認めてくれたんだ。”Porno” のレコーディングのとき、彼はスタジオにいなかったんだ。あのアルバムの8割は、LAに行く前に完成していた。優れたプロデューサーは、仕事の99パーセントをやるときと、1パーセントをやるときを心得ている。だから “Porno” の時の彼は天才だったんだ…邪魔をしないという意味でね」
なかでも、今回の仕事は最高だったと、Bettencourt は胸を張ります。
「”Six” は、おそらくこれまでで最高の仕事だと思う。俺はいつも、アレンジやサウンド、演奏、技術的に優れたプロデューサーだった。でも今回は、”感情的なプロデューサー'” としてみんなを苦しめたんだ。感情やそういうものを学ぶには何年もかかる。Gary Cherone が言うには、このアルバムは彼の歌唱中で最高のアルバムだそうだ。その理由のひとつは、プロデューサーであるクソ野郎、俺だ!
良いプロデューサーは、必要なときに、怒らせるんだ。”おい、”Small Town Beautiful’、お前、きれいに歌ってるじゃないか” と言う。美しく歌っているが、感情はどこにあるんだ?っめね。Tom Morello や Steve Vai は俺が “Hurricane” を歌うのを聴いて涙を流した。もちろん、完璧なボーカルじゃないけどそこに感情があったから。技術的なことではなく、ピッチでもなく、でも…亡くなった親友 Eddie のことを歌っていたから…」

“X Out” では、人生で初めてN7の7弦を使用しました。
「ギアに関しては、長年俺と話してきた人なら誰でも、クソほど退屈な人間であることを知っている。俺は習慣の生き物なんだ。マーシャルのDSL(JCM)2000も持っている。DSLを手に入れた人は、”冗談だろう?DSLなんて。DSLなんてクソみたいな音が普通だ” と言われる。多くの人がそう言うんだ。でも、高音が2、中音が2、低音が4、プレゼンスが2で、それを大きくすると、俺の音になるんだ。俺にとってはそれがキーポイントなんだ。”X Out” では、人生で初めてN7の7弦を使った!生まれて初めて7弦ギターを使ったんだ」
EXTREME には、何も制限を受けないという内部哲学があります。”X Out” を聴いて “Beautiful Girls” を聴くと、本当に何でもありという感じが伝わります。
「最近、ある人に “Rise” は今までと違うよねと言われたんだ。そうだね、EXTREME のアルバムだからね。予想外を予想するんだ。俺らはどんなクソ忙しい時でも、アルバムを作っている時はバブルの中にいて、自分たちが好きなことをやっている、それだけなんだ。EXTREME のアルバムは、QUEEN のように自分に忠実で、自分のやるべきことをやらなければならない。
もちろん、俺たちは QUEEN とは違うが、哲学的には QUEEN によく似ている。俺たちは、自分たちがベストだと思う曲を選ぶ。とてもシンプルなことで、それぞれがとても違っていて、何でもありなんだけど、そんなことは気にしない。今こそ、古き良きロック・アルバムが必要な気がするんだ。”Six” は確かにモダンな音だけど、ヘッドフォンをして最初から最後まで旅に出ることができる。昔の名作みたいにね。つまりこれは、EXTREME 2.0 みたいなものなんだ」
QUEEN といえば、アルバムは “We Are The Champions” の逆再生で締めくくられています。
「だからまさに “Here’s To The Losers” なんだ。これはアンセムなんだ。クリスタル・パレスのためにアンセムが必要だった!(笑)」

日本盤のご購入はこちら。VICTOR ENTERTAINMENT

EXTREME JAPAN TOUR 23′ : UDO 音楽事務所

参考文献:MUSIC RADER:Nuno Bettencourt: “I told the guys, ‘I wanna go for blood on this album.’ 

METAL EDGE: Nuno Bettencourt talks Extreme’s new album, ‘Six,’ the legacy of ‘More Than Words’ and the band’s most overlooked song

BLABBERMOUTH:EXTREME’s NUNO BETTENCOURT: ‘There’s A Reason Why We Don’t Put Out A Lot Of Albums’

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VICIOUS RUMORS : THE ATLANTIC YEARS】 JAPAN TOUR 23′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GEOFF THORPE OF VICIOUS RUMORS !!

“Saint Albert Was a One Of a Kind. We Were All Like Brothers…Sharing The Stage And Creating Music With Him Was Something Artist Dream About.”

DISC REVIEW “ATLANTIC YEARS”

「我々はスピードとメロディーをミックスしている。とにかく自分たちに忠実でありたいと思ったんだ!VICIOUS RUMORS はパワー・メタルのパイオニアだと言う人もいるけど、ある意味、我々はヘヴィ・メタルにスラッシュ、ブルース、アトモスフィア、真のメタル的なシンガロング・アンセムをオリジナルな方法でミックスしていたんだよ。我々は決してフェイクな何かになろうとしたわけではない。そこには常にパワーがあったからパワー・メタルなんだ」
サンフランシスコのベイエリアは、1980年代初頭におけるメタルの揺籠でした。この街の雰囲気は実験的な試みを許容し、特にスラッシュ・メタルはこの地の自由な追い風に乗って成功を収めていきました。スラッシュは確かにこの地で飛躍し、世界を征服していったのです。
「スラッシュは常に私たちの周りにあったよ。スラッシュとの相性は今日でも強力だよ。私はそれが大好きだからね…ただ、私たちはより幅広いバリエーションを持っていて、LED ZEPPELIN のようなアプローチを自分たちのヘヴィ・メタルに適用したかったんだ!」
現在のエクストリーム・ミュージックの基準からすると、当時のバンドのほとんどは今よりずっとメロディックに聴こえます。つまり、エクストリームとメタルの基準がまだ曖昧だった逢魔時。そんなベイエリアで産声をあげた VICIOUS RUMORS は完全なスラッシュ集団になるつもりこそありませんでしたが、それでもスラッシュと同等のエッジがあり、同時にメロディがあり、新しい、よりハードな音楽の辛辣さだけでなく伝統的な要素もあり、音楽的な幅の広さでは彼の地でも群を抜いていたのです。
「”Digital Dictator” は、クラシックなラインナップの始まりであり、Carl Albert の最初のアルバムだったから、いつだって特別なアルバムと言えるだろう。あの頃は、とてもエキサイティングな時間だった!アトランティック・ブルー (90年のセルフタイトル “Vicious Rumors”) のアルバムは、ある意味、最初のメジャー・レーベルからのリリースということで特別だね…」
硬軟の傑出したギター・チーム Geoff Thorpe と Mark McGee、ドラマーの Larry Howe、ベースプレイヤーの Dave Starr、ボーカリストの Carl Albert からなる5人組はすぐに有名になり、絶えずツアーを行い、JUDAS PRIEST の “Screaming for Vengence” をスラッシーにドーピングしたような名作 “Digital Dictator” で巨大企業アトランティック・レコードの目に留まることになりました。そうしてバンドは緊密なユニットとなり、精密機械のように動作して、”アトランティック・ブルー” と呼ばれるセルフタイトルを90年にリリースします。
“90年代を定義するメタル・アルバム” と称された “Vicious Rumors” は、タイトなリフとリズムが火山のように噴火し、5オクターブの並外れたボーカルが雷鳴のように轟きます。オープニングの “Don’t Wait For Me” が激烈でスラッシーな一方、”Down To The Temple” では DIO 時代の RAINBOW、”The Thrill Of The Hunt” では IRON MAIDEN を彷彿とさせ、その輝かしい伝統と新風のミックスはメタル・コミュニティ全体に広く、素直にアピールする魅力的なものでした。
「私たちは VICIOUS RUMORS のヘヴィ・メタルでパワフルな日本の夜を過ごし、最初のショーの後、楽屋に向かったんだ。するとプロモーターがやってきて、”もう一度だけアンコールをお願いします” と言うんだ!誰も会場を出ていないからとね!私たちはとても驚いたよ!再び出ていくと客電はついているのに、まだ満員のままだった!!! 私たちは再びライブハウスを揺るがしたよ。この経験は決して忘れることはないだろうね!」
91年の “Welcome to the Ball” も好評のバンドはその勢いを駆って1992年に来日し、ライブ・アルバム “Plug In and Hang On – Live in Tokyo” をリリースします。オーバーダビングのない、生の興奮と情熱を反映した作品は間違いなく VICIOUS RUMORS の絶頂期を捉えたもので、ダイナミックな演奏の中でも特に、生前の Carl Albert の “凄み” を存分に見せつける絶対的な記念碑となったのです。
「聖アルバートは唯一無二の存在だった。彼の半分ほどの才能しか持たないようなボーカリストたちが、巨大なエゴを持ち、小切手を切っているんだ。その才能はお金に値しないのにね。彼は後世の多くの人に影響を与えた。私たちは皆、兄弟のようだったよ…彼とステージを共有し、音楽を創り出すことは、アーティストとして夢のようなことでさえあった」
1994年に5枚目のアルバム “Word Of Mouth” をリリースした翌年、Carl Albert が交通事故で亡くなり、バンドは兄弟を失い、メタル世界はずば抜けたボーカリストを奪われました。それでも VICIOUS RUMORS は絶望の淵で踏みとどまり、インタビューイ Geoff Thorpe を中心に今日までコンスタントに、諦める事なく、”意味のある” メタルを届け続けています。そんな彼らの不屈は “アトランティック・イヤーズ” における再評価の波と共に実を結び、遂に今回、16年ぶりの来日公演が決定したのです!VICIOUS RUMORS is Baaaaack!!
今回弊誌では、Geoff Thorpe にインタビューを行うことができました。「日本のファンのみんなも素晴らしかった。空港や駅で私たちを待ってくれて…彼らがどうやって私たちの居場所を知ったのかわからないよ!」 Geoff が歌っていたアルバムも悪くないし、隠れた異才 Mark McGee をはじめとして、Vinnie Moore, Steve Smyth, Brad Gillis など彼のギター・パートナーとの対比の妙もこのバンドの聴きどころ。どうぞ!!

VICIOUS RUMORS “THE ATLANTIC YEARS” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【AVENGED SEVENFOLD : LIFE IS BUT A DREAM…】


COVER STORY : AVENGED SEVENFOLD “LIFE IS BUT A DREAM…”

“We Kind Of Know The Rules Of Music, And This Record, We Were Able To Just Go Break All The Rules”

LIFE IS BUT A DREAM…

AVENGED SEVENFOLD は、常に自分たち独自の方法で物事を進めることで、モダン・メタル最大のバンドのひとつとなりました。それでも、フロントマン M. Shadows にとって最新作 “Life Is But A Dream…” の変化は我ながら衝撃でした。
「ショックだった!プログレッシブなザッパのようなものから、突然ファンク、DAFT PUNK、そしてフランク・シナトラやオズの魔法使いのようなものへと変化していく。こんなの初めてだよ。よし、これはすごいぞ!という感じだった。最近では、100 gecs とかと同じ衝撃。彼らの曲を聴いたら、”脳みそが花火になったみたいだ” って思ったんだ。でも、とてもうまくできている。音楽を作る人間として、”これは表面上のものではない” と思ったんだ」
しかし、彼は常にそう確信していたわけではありません。ギタリストの Synyster Gates と一緒に車に乗っていたとき、Shadows はバンドメンバーに向かってこう尋ねたのです。
「このアルバムはそんなに突拍子もないのか?」 と。Shadows はあまりに長い間、このアルバムとともに生きてきたため、衝撃はいくらか薄れて “普通” に感じられていたのです。
しかし、Synyster は友人の心配とは違う解釈をしていました。
「このアルバムは、アレンジやプロダクションの観点から、奇妙でクレイジーでファックな作品だよ。そして多分、Shadows が言いたかったのは、ソングライティングの構造。今までは考えもしなかったんだけど、このアルバムは僕らの中で最も子守唄的で親しみやすいアルバムかもしれないということなんだ。ソングライティングは、私たちのベストだと思う。40歳が18歳の道具を使っているような音にならないように、どれだけめちゃくちゃにできるか試してみたかったんだ!」
Shadows と Synyster は、以前 “論争的” なレコーディング過程を経験しているため、今ではほとんどすべてにおいて意見が一致するようになりました。むしろ、お互いのことを “いい人” とさえ思っていると、Synyster は笑います。つまり、AVENGED SEVENFOLD は、”Life Is But A Dream…” で極限まで自分たちを追い込みましたが、全員が同じ方向を向いているのです。
最近の彼らは、可能な限り “小さなことは気にしない” というアプローチをとっており、新曲は絶対的な真剣さで扱われたものの、人生とキャリアに対しては常にポジティブな意思が貫かれています。

人工知能やビッグバンといったテーマに思慮深く取り組んだ2016年のプログ大作 “The Stage” のあと、パンデミックで深い実存的危機を経験したフロントマンは、”人間の完全な経験” について思いを巡らせはじめました。
「AIのオーバーロードの可能性について語るよりも、ずっとエモーショナルなレコードだよ。いつか必ず起こるであろう “自分が存在しない世界” について考え始めると、その衝撃が心に響いて、フリーズするんだよね」
今作はより心に響く内省的な作品だと、Synyster も同意します。
「実存主義。この言葉を知っている人も知らない人も、みんなそれを経験している。ある時点になると、”人はみんな死ぬんだな…待てよ…みんな死ぬのか!” って思うでしょ。そして、子供ができて、”子供もいつか死ぬんだ…” と思う。そして、それはあまりにショッキングな事実だ。人生で感じる “平凡” は、実は人生の報酬なんだよな。子供たちと映画鑑賞を楽しんだり、練習に連れて行ったり、感謝祭に両親を訪ねたり。めんどくさくてつまらないことが実は、人生をより楽しいものにするための鍵になる。だって、長生きすれば、愛する人を全員失うか、自分が死ぬか、どちらかになるからね。その覚悟が必要だし、その意味を知る必要がある」

Shadows は、このアルバムの実存的な歌詞のテーマを十分に生かすために、5-MeO-DMT(ガマの毒として知られる)というサイケデリックドラッグに手を出しました。その高揚感は、信じられないほど洞察力に富ませ、目を見開かせるものでしたが、自我を破壊するような体験は、彼を精神的な危機に陥れることにもなりました。
「あの体験は、俺が必要としていた “転機” だった。だけどおかげで、6~8ヶ月間、実存的な危機に陥ったんだ。家から出られず、スポーツもできず、ジムにも行けず、何もできない、今までで一番深い鬱状態になったよ」
フロントマンはそこから、重要な意味を持つ啓示を受けました。
「俺たちは短い間しか生きられないんだ。だから、大胆に音楽を作らなきゃ!俺たちは、人生においても、芸術においても、映画においても、本当に大胆な瞬間を探し求めていたんだよ。究極的には、人生に目的なんてない。そのことに気づけば、あとは好きなことをすればいい。すべての扉を開けたようなものだよ。道徳は崇高な存在から与えられるものじゃない。人は本来、善良な存在で、何が正しくて何が間違っているのか、誰かに教えてもらう必要はないんだよ」
Synyster は、良い曲ばかりを集めたアルバムは地球上に存在しないと考えています。彼のお気に入りのレコードでさえ、”完璧なものではない” と。その理由はインストゥルメンタル・トラックが含まれているから。
「インストは、気に入りのアルバムをAプラスからBにする。俺はいつも完璧なレコードを書きたいと思っていたんだ。4,000万枚売れるようなレコードではなく、2、3年後に振り返って、”無駄な脂肪がある” と言われないようなレコードをね。インストは脂肪だよ。だから、”The Stage” の15分のほとんどインストな “Exist” にもボーカルパートがあるんだ!」

ただ皮肉にも、A7Xのニューアルバムにはインストゥルメンタル・トラックが収録されています。4分半の見事なエンディング・タイトル・トラックで、Synyster は武器のギター・アックスではなく、ピアノでその音楽的才能を披露しています。彼はクラシック音楽の教育を受けていないため、1日2時間以上練習し、数年かけてこれを完成させました。それだけでも大変なことですが、そこにはさらに複雑な問題がありました。Synyster は自分のピアノでしか演奏ができなかったので、プロデューサーのジョー・バレッシが彼の家に来て、そのピアノを録音するためのスタジオを作らなければならなかったのです。Shadows は、なぜ A7X が7年間もアルバムの間隔を空けなければならなかったのか伝わるだろ?と笑います。
「あれは、Synyster が長男の出産の影響で MIDI(プログラム)で書いていた時だから、10年前、ほぼ11年前だ。そして、彼は俺と妻にそのデモを送ってくれたんだ。毎晩、ヘッドフォンで MIDI バージョンを聴いていたよ。このレコードはとても重く、感情的で、最後の方は、ジャック・ニコルソンの “シャイニング” を想像していたね。最後のシーンを思い浮かべながら、このシンプルなピアノ、つまり生のむき出しのピアノを聴いたんだ。そして、この曲をレコードの最後に入れる必要があると Synyster を説得したんだ」
Synyster は Shadows の気持ちを受け止めました。
「とても光栄に思うと同時に、とても心配になったよ!最近はあまり恥ずかしさを感じないだけど(笑)、これはさすがに “俺を見て” という感じだから、ちょっと恥ずかしかったな。自分が書いて弾いたクソみたいな蛇行したピアノ曲を AVENGED SEVENFOLD のレコードに入れるというサポートがあったことに、とても感謝しているんだ。つまり、これ以上の友人、これ以上のバンドメイトを求めることができるだろうか?そういうサポートがあることにどれだけ感謝しているか、言葉にできないよ。だから、このアルバムは完璧じゃない。でも、俺はそれを冷静に受け止めているし、心から誇りに思っている」

バンドが “Life Is But A Dream…” が “完璧” でないことを指摘する理由は他にもあります。例えば、Shadows がアルバムの中で最も感動的なリサイタルを披露する壮大な “Cosmic”。
「あれは俺の最高のボーカル・パフォーマンスではない。でも、リアルに感じられるだろ?こういう作品を作る上で、それは重要な側面だと思うんだ。完璧でなければならないとか、パワフルでなければならないとか、そういう昔の、昔の、昔の作品とは全く違う哲学があるんだ。完璧ではない真のパフォーマンスをすることの方が、長期的には愛着が湧くし、クールだと思うんだ。俺は今、完璧さがまったく気にならない場所にいて、それがとても気に入っている。技術的に優れているかもしれない完璧なテイクよりも、今あるものを映し出せたらなって」
Synyster にバンドメイトの “リアル” なボーカルについて尋ねると、彼は文字通り鳥肌が立つような表情を見せます。
「彼の歌唱は、とても信じられるものだ。そして、彼の歌詞はとてもフリーキーだ。このレコードで彼が言っていること全てに感動したんだ。彼が触れている様々な事柄は、すべて心と魂から伝わってくるものだ。ある意味、昔の彼のような音にはならないように意識的に努力した部分もある。あの時代に入り込んでしまい、自分たちがどこから来たのかを思い知らされるような気がするからね。俺たちは、この作品を自分たちのものにして、一から作り直したいと思っていたんだ」
しかし、このバンドのルーツが無視されているわけではありません。実際、”Life Is But A Dream…” は、パンク、メタル、フラメンコ、スラッシュ、ハードコアの融合である “Game Over” で幕を開けるのですから。しかし Shadows は、次の50分間も同じことが続くとは限らないと嘯きます。
「紆余曲折の末に完成した作品だ。俺らが影響を受けたのは、アビーロードみたいなもので、途中まではビートルズっぽいんだけど、そこからまたカオスに追い込まれる。そこが俺らのマインドセットだった。騙したわけじゃないよ (笑)!いかに人生が短く速いものなのかを示したかった。ある日、瞬きをしたら、80歳の死に際で、”どうしてこうなった?自分が望んでいたことができたのだろうか?” ってね。

アルベール・カミュの1942年の小説 “異邦人” やアウトサイダー・アーティストのウェス・ラングの作品にもインスパイアされています。
「”Mattel” のコンセプトは、マッシュルームを少しやって、犬を散歩させていたときに思いついたんだ。”他の国ではそれが普通なのかどうかわからないが、南カリフォルニアでは水を節約するためにみんなフェイクグラスを使う。家は完璧に見えるけど、外にいる人たちはまるでトゥルーマン・ショーみたいだ」
インダストリアルなリフから、オーケストラやオペラのような要素、そして曲の後半にあるプログレッシブなソロのブレイクまで、”Nobody” は生まれ変わった A7X を象徴するような楽曲。
「俺にとって、”Nobody” はアルバムのちょうど中心に位置していると思う。歌詞の中にとても深みがある。この曲は、俺たちがどんなコンセプトで、どんな精神状態から作ったかを完全に表現しているね。
俺たちはこの惑星に生まれ、成功とはお金であり、成功とは素敵なもの、金の鎖などであると教えられてきたということがよく描かれている。そして現実は、”もっと勉強を、もっと仕事を、もっと金を!” みたいな苦行の中に置かれる。家族や教師は、”あなたは素晴らしい!” と言い続ける。そしてある日、目が覚めると56歳で、”俺は人生をかけて働いてきた…それで?” と思うんだ。
つまり、人生は旅なんだ。目的地なんてないんだよ。”We Love You” は、俺たちが生きているこの世界の窮屈さ、何を成功と受け止め、何を勝者と受け止めるかを、とても皮肉に表現しているね。”Nobody” はリフがとてもキラーで、まるで虫のよう頭に穴を開けると思うんだ。プログレを意識することなく、とても面白いアレンジになっているし、シリアスな雰囲気が漂っている。意味のある、重みのあるものを提供しようとしているんだ。とても重みがあるんだよ」

アルバムのフィナーレを飾る “GOD” の3曲は、Shadows にとっても “攻め” た組曲です。
「”Life Is but a Dream…” は、”G”, “(O)rdinary”, “(D)eath” の3曲からなるめくるめく組曲で締めくくられる。これは A7X の全作品の中で最も野心的だと言えるかもしれない。このアルバムのジャンルを超えた折衷主義を象徴するというかね。この3曲は1つの曲として作ったんだけど、横になって続けてボリュームを下げて聴いていたら、突然心臓発作を起こしそうになったんだ。OK、これはあまりに変だと思った。STEELY DAN と Zappa から、Stevie Wonderと DAFT PUNK, そしてシナトラへあっという間に変わってしまう。自分の音楽で自分をビビらせたことは今までなかったんだ」
完璧ではないと言いながらも、”Life Is But A Dream…” のすべては100%意図的に作られています。信じられないほどの緻密さは、今も昔もA7X のやり方であり、特に Synyster はそれを気に入っています。
「俺は世界一偉大なソングライターではないけれど、自分には容赦がないんだ。心の底から好きで、アレンジして、作るのが待ちきれないようなものに出くわすまでは止めないよ。そしてそれは、膨大な時間と、エネルギーと、執念と、少しでもアレルギーのあるものに対するクソみたいな態度が必要なんだ!今日ここに座って、純粋に “自分たちが作ったアートが大好きだ” と言えるくらいにはね。ロックは少し型にはまった音楽になってしまったと思う。このアルバムが、その限界を超えるためのインスピレーションになればいいなと思っているんだ」
LINKIN PARK の Mike Shinoda もこの壮大でガッツ溢れる作品を気に入っていると Shadows は興奮します。
「”4歳児がキャンバスに絵の具を投げつけているのとは違うんだ。君らは何をやっているのか理解しているんだから。君らは今まで美しい絵を描いてきたけど、今、キャンバスに絵を描くと、それは芸術になっている” と言ってくれた。つまり、音楽のルールを知りながらすべてのルールを破ったから、より意味があるんだとね」

Mike の言葉はまったくもって的確です。8枚のアルバムをリリースした AVENGED SEVENFOLD。Synyster は同じメタル作品を何度も何度も焼き直すよりも、芸術を追求することを望み、この場所にたどり着いたことに喜びを感じています。
「俺たちはこんなにも奇抜でイカれたアイディアを持っているのに、”なぁ、Johnny、これを演奏してくれないか?” と言えるんだから、このバンドは本当にすごいよ。Zacky Vengeance のような男のところに行って “クレイジーなコードなら何がある?” あるいは Brooks のところに行って “モダンなグルーヴのザッパが必要なんだが、どうだ? DAFT PUNK が欲しいんだ。初期の METALLICA が欲しい” とかね。パートをこなすだけでなく、革新的で新鮮な空気を吹き込むことができる男たちがいるんだ」
しかし、ファンのすべてが Mike Shinoda の波長に合わせられるというわけではありません。実際、Twitter で定期的にファンと交流している Shadows は、SNS の陰鬱な面を見るのに慣れていて、時々投げかけられるくだらない言葉を受け流すことができます。
「コメント欄で、”こいつら、もう曲の作り方を知らないんだな” とかね。”Bat Country みたいな曲をもっと作ってほしい” とかもある。あるいは、”彼らは(故ドラマーの)The Rev と一緒に死んでしまった” と言う人さえいる。そして、俺が書いた曲の数々まで、The Rev が作ったことになる。それは誰かが死んだときに起こることで、 “彼がこれとこれとこれを書いたから…” と言われて、”いや、本当は俺が書いたんだけど、まあいいか” みたいなことになる。でも、Rev はこのアルバムに興奮すると思うよ。ヤツはいつも新しいことに挑戦する先導者だったから。”Mattel” には Rev が昔書いたパートも使われていれる。だから、この先、新しいことをやっていく中で、ネガティブなものばかりが目につくようになることはないだろう」

つまり、Synyster に言わせれば、A7X は自分たちや自分たちのヒーローを “再利用” することをもうやめたのです。
「新しい領域、新しいアプローチ、新しいテクニックを探求する時期だったんだ。バンドの誰もアンプに繋いで、音を大きくして、俺たちのリフ、PANTERA のリフ、METALLICA のリフの焼き直しを書きたくなかったんだ。でも、だからといって、ギター中心であってはいけないというわけではないよ。今回、オーケストラ以外のもの、シンセパートまで全部ギターなんだ」
Shadows はまた、バンドの特定の時代のファンが新曲にどう反応するか、様々なアルバムへの愛着が今のA7X の活動を受け入れるか拒むかをよく考えています。例えば、2003年の “Waking The Fallen” や2005年の “City Of Evil” にしか興味がない場合、それは場合によっては “妨げ” になるのではないかと彼は考えています。
「俺らのやることはすべてメイクアップとデュエル・ギターとスピード・ドラムだと思っている人たちがいるけれど、俺たちは12年間それをやめているよね? だけど、人々はまだ俺たちをその箱に入れたがる!
もちろん、純粋なメタルシーンは常に存在すると思う。常に脈を打っている。ただ、革新性はないと思うし、ファンが革新的なものに対してオープンマインドでいられる能力もないと思う。素晴らしいソングライティングも少し失われてしまったように思うね。同じようなアルバムを出すだけというのは、ファンに対して失礼だと思う。再利用というか。レコードを聴き、AIを装着して “こんなレコードが欲しい” と言えば、それはおそらく作ることができる。
だから、バンドが同じものを何度も提供しようとするのは罪だよ。彼らは創造的でないだけでなく、リスナーを馬鹿にしているのだから。レコードを作らなければならないからアルバムを作っているだけかもしれないね。俺はバンドが “言いたいことがあるとき” にアルバムをリリースすることを望んでいる。メタル以外にも世の中には素晴らしいアートがたくさんあって、素晴らしいポップス、素晴らしいヒップホップ、素晴らしいR&B、そして本当にエキセントリックなことをやっているアーティストもいるんだよ」

ただし、このアルバムの背景、人生の壮大な計画の中で、そんなことはどうでもいいということを、Shadows は理解しています。コメント欄、ソーシャルメディア、速いペースで進む世界…しかし M.Shadows はそれよりももっと大きなことを抱えています。
「今の世の中、俺は不安でいっぱいで、注目を浴びることができず、何らかの牽引力を得ることができないかもしれない。でも俺はそれを美しいと思うし、選択肢がたくさんあることを面白いと思う。だから、自分のメッセージを言って、アートを出すだけでいい。アーティストが自分のやりたいことをやり続け、より深く掘り下げることができるのは、自由なことだよ。なぜなら、今は80年代でも90年代でも2000年初頭でもないのだから、自分が思っていたようなフィードバックやトラクションを得ることはできないよ。大丈夫」
しかし、最終的には、”Life Is But A Dream…” は、意図した場所に届くはずです。
「”メイクアップとデュエルギター” の枠に入れられたら、その枠が好きでない人たちがこのアルバムを気に入るチャンスがなくなってしまう。昔の作品を求めている人も大勢いる。で、どうするんだ?(笑) また昔のような曲を書くのか?それとも、他の人たちに聴いてくれるように頼むのか?結局、何もすることはできないんだ。だけど、ただ存在していれば、きっとみんな見つけてくれる」

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参考文献: KERRANG! Avenged Sevenfold: “Just say your message and put the art out there. Artists should do what they want and explore deeper rabbit-holes”

REVOLVER: 5 THINGS WE LEARNED FROM OUR AVENGED SEVENFOLD INTERVIEW

Avenged Sevenfold’s Synyster Gates Explains One Thing That’s Wrong With Rock Music Today

M. SHADOWS: AVENGED SEVENFOLD Was Able To ‘Break All The Rules’ Of Music On ‘Life Is But A Dream…’ Album

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【KING’S X : THREE SIDES OF ONE】


COVER STORY : KING’S X “THREE SIDES OF ONE”

“I wrote lyrics with my age in mind, so it has become sort of my mantra for what I’m doing for the rest of my life”

THREE SIDES OF ONE

これまで、KING’S X ほど見過ごされてきたバンドはいないかもしれません。ただし、dUg Pinnick, Ty Tabor, Jerry Gaskill の3人は、チャートのトップに立つことはなかったかもしれませんが、熱心なファンの心には深く刻まれ続けています。
80年代半ば、このトリオはテキサス州ヒューストンに渡り、メガフォース・レコードと契約。”Out of the Silent Planet”(1988)、”Gretchen Goes to Nebraska”(1989)、”Faith Hope Love”(1990)と、口紅とロングヘアのゴージャスな時代において、あらゆるジャンルの規範を無視した伝説のアルバムを3枚録音しました。
だからこそ、90年代初頭には、多くの仲間のロックバンドを虐殺したグランジの猛攻撃から免れることができたのかもしれません。音楽界の寵児として、また “次の大物” として、KING’S X はアトランティック・レコードに移籍し、セルフタイトルのアルバム(1992)を録音しましたが、残念ながらビルボードに並ぶほどの成功は得られませんでした。それでも彼らは、90年代から2000年代にかけて、感情を揺さぶる、音楽的に豊かなアルバムを次々と発表し続けました。
そうしてロックミュージックで最も露出の少ないバンドは、2008年に突然沈黙するまで、自らの道を歩み続けたのです。
休止中も、dUg は KXM や GRINDER BLUES で音楽を作り続け、自身の名義でレコードをリリースするなど、ゲリラ戦士として戦いを続けていました。クリエイティビティに溢れるベーシストは KING’S X の終焉を考えることはありませんでしたが、一方で、次のアルバムも必ずしも期待しているわけではありませんでした。こうして14年という長い間、KING’S X はただ沈黙を守り続けました。世界は変遷し、新しい現状が形成され、KING’S X はもはや時代の一員ではなくなったかに思われました。
しかし、14年という長い年月を経て、その門戸は開かれます。ついに彼らは再び一緒に作曲し、レコーディングすることを決断したのです。その経緯を dUg が語ります。
「72歳になるんだけど、歳を重ねた実感があるんだ。自分の年齢を意識して歌詞を書いたから、アルバムは残りの人生をどうするかという詩的なマントラのようなものになった。基本的に、私は人生が終わるまでなんとか乗り切るつもりだ。世の中が見えてきてね。友達のこと、Chris Cornell, Chester Benington, Layne Staley…死んだり自殺したりした人たちのことを考えると、ただただ痛くて、”自分は絶対にそんなことはしない” といつも思っている。人生を乗り切るためには、麻酔をかけられなければならないだろう。けど、あの世で何が起こっているのかわからないし、この世で惨めで痛い思いをしてまで、何も知らないあの世に移りたいなんて馬鹿げてる…それが私の論理なんだ。だから、アルバムはそういうところから生まれたものなんだ」

たしかに、”Three Sides of One” は、一見すると瞑想的な作品に見えます。
「まあ、メンバーはレコードを作りたくなかったんだ。なぜなら、作るなら今まで作ったどの作品よりも良いものでなければならなかったから。これまでは、自分たちがやったアルバムのレパートリーに加えるべきものがあるとは感じていなかったんだ。だから、14年かかってようやく “よし、これはいけるぞ” と思えたんだ。私自身は、初日から準備万端だった。14年の間に、いくつかのサイド・プロジェクトを立ち上げたり、いろいろなことをやっていたからね。私が持ち込んだ曲は27曲で、全部新曲だし、Jerry と Tyも何曲か持ち込んでいて、それも全部新曲だ。それで、リストに載っているものを全部、十分な量になるまで実際に覚えていったんだ」
アルバムのタイトル、”Three Sides of One” は3人が共有する生来のケミストリーを表現しています。
「いつもは、アルバムの名前は決まっているんだけど、今回は誰も思いつかなかったんだよね。それで、マネージャーが “Three Sides of Truth” と言ったんだけど、私は、なら “Three Sides of One” はどうだろうと思って、みんなが、ああ、それならいいと言って。そして、そこから出発したんだよ。しばらくすると、子供を持つのと同じで、名前はそれほど重要ではなくなるものだ (笑)」
アルバムには、歳を重ねた3人の自然な姿がさながら年輪のごとく刻まれています。
「Jerry は、基本的に臨死体験から多くの曲を書いている。そして Ty は、今の生活を観察して曲を書いた。私も同じで、72歳になるんだけど、世界が今までの人生とは違って見えてきたんだ。だって、今まで生きてきた距離に比べたら、もうそんなに長くは生きられないんだとやっとわかったからね。そして、そのことについて話したり歌ったりしたかったんだよね。70歳を迎えて、私にとって一番大きなことは、今の世界をどう見ているかを詩的に歌詞にすること、そして同時に自分の周りで起こっていることを書くことだった。政治や人々が憎しみ合う様子など、でたらめなことが起きていることは分かっていたんだ。それを歌うんだけど、ただ説教しているように聞こえたり、すでに聞いたことのあるようなことを言ったりしないように、工夫しているつもりなんだ。
今は、言葉に気をつけないと、アメリカでは自動的に批判される。私は問題を解決するのが好きなんだ。私の問題は、直せないものを直そうとすること。私はいつも、なぜ世界がうまくいかないのかを論理的に解明しようとしてきた。ある意味、人は全員とは分かり合えないというのが結論なのかもしれない。だから、年齢は私たち全員に影響を与えたと思うんだ。また、Jerry はバンドに曲を提出することはあまりない。でも実際は、彼の曲が全員の中で一番いい曲だと思うこともあるんだ。だから曲を持ってきてと言ったんだ。自分たちのアルバムにするために、本当に頭を使ったんだよ」

dUg は今回、”慣れ親しんだバンドでありながら、新しいバンドにいるような気がする” という言葉を残しています。
「新しいバンドに入ったという感じではなく、自分たちを再発見したという感じだと思う。なんというか、”自分は実はいいやつなんだ” と気づくような感覚なんだ。わかるかな?結局、スタジオからずっと離れていて、演奏し始めると、疑心暗鬼になるんだよね。つまり、私たちはいつも自分たちのやることなすこと全部が嫌で、本当のアーティストらしく、自分の芸術に対して否定的なんだ。でも今回は、最初に作った曲のとき、スタジオに行ってベーシックなトラックを聴いたら、生まれて初めて “おお、すごいな!” 思ったのを覚えているよ。やっとわかったよ…と。私たちの演奏には、欠点ばかりに気を取られていて気づかなかった何かがあるんだよな。だから、とてもエキサイティングで、もっともっと探求したくなったんだ」
その新たなマインドは、アルバムの歌詞の内容にも表れています。
「絶望的に見える世界の状況も、人類に何らかの救済や和解があることを願いつつ、それが歌詞に深く刻み込まれている。まあ、自分の周りで起こっていることを考えただけなんだけど。”Give It Up” は、私の気持ちを代弁してくれているような気がするね。私はライトが消えるまで、絶対に諦めない。Layne, Chris, Chester…友達が自殺していくのを見てきたんだ。クリスが死んだ頃にこの歌詞を書いていて、思ったんだよ。”ライトが消えるまで、絶対にあきらめないぞ” と。だって、死後の世界に何があるのかわからないし、そこを好きになれないかもしれないから。だから死ぬことは考えないよ。今できることを精一杯やりたい。最後に麻酔をかけられるまで、ずっとここにいたい。これが私の知っているすべてで、終わるまで乗り切るつもり。それが私にとっての知恵だから。それ以外のことは、他の人が決めることだけどね」

“Swipe Up” は時代を反映した楽曲。
「この曲は Jerry がジョン・ボーナムのスイッチを入れているね。インターネットや iPhone を利用しているときの体験がテーマになっているんだ。私たちはただスワイプし続けるだけで、アルゴリズムが自分だけの小さな世界の中で欲しいものを与えてくれる。だから、この曲は全部それについて歌っているんだ。iPhoneの小さな世界で生きていることについて」
テクノロジーの進歩は、音楽全般に対して悪影響を及ぼしているのでしょうか?
「進歩が起これば芸術も変わる。そういう観点では考えていないよ。例えば、最初のドラムマシンが登場した時、多くのドラマーが職を失った。しかし、突然、ドラムマシンのような安定性とタイミングを持った機械が登場したことで、私たちは皆変わり、クリックトラックで演奏するようになり、ドラマーはより良くなったんだ。オールドスクールはまだ存在して、まだレコードを買い、CDを買っている人もいるけど、新しい世界では音楽の見方や聴き方が違うよね? 彼らは iPhone で音楽を聴くし、彼らが好きな音楽も全然違う。それが “彼ら” の音楽なんだよ。
私が若い頃、THE ALLMAN BROTHERS を聴いていたら、親が “そんなのブルースじゃない” と言うようなものさ。よく、”BB KING を聴きなさい” と言われたものだよ。つまり、進歩とは、そこから何を学ぶか、そして自分の芸術をどのように変化させるかということなんだ。私は、すべてのことをポジティブにとらえるようにしている。難しいけどね。ナップスターが登場したとき、みんなが我々の音楽を配り始めて、それは最悪だった。それで、私たちはひどい目に遭ったよ。でもね、それでどうなったか?私たちは、人々が買ってくれるような素晴らしい商品を作る方法を学ばなければならなかったし、人々が私たちのライブを見に来るような良いコンサートをやらなければならなくなった。自分に起こることはすべて、自分なりの方法で適応していくしかないんだ。あの出来事で泣く人がいるなんて、そんなの戯言だ。泣いてばかりじゃダメだ。立ち上がって、やり遂げるんだ」

ネットがもたらしたものとその弊害にも言及します。
「人との関係において私が常に念頭に置いているのは、相手の行動を理解し、自分の気持ちを明確にして、争いのない方法でお互いに共存できるようにすることなんだ。私はいつも、平和を作るための新しい方法を探している。昔、このことを歌にしたことがあってね。私の人生は、どうやって人と良い友達になるかの積み重ねだった。彼らを知り、彼らを理解し、彼らを愛するようになることのね。
私は、人と一緒にいて、同意したり、反対したりして、みんながうまくやっていけることに心地よさを感じていたし、そのことに満足していた。だけど突然、アルゴリズムが入ってきて、みんながYouTube やスマホなどを見ていると、ビッグブラザーが私たちの行動をすべて見ていて、私たちの好みをフィード、与えてくるようになった。それが始まって10年ほど経ったよね。遂に私たちは、スマホの向こうに同じ現実を持っている人は一人もいないというところまで導かれてしまった。一人もね。一つの信念に溺れるまでとことん与えられる。そして、突然、誰も信用できなくなり、それぞれが快適で同じ意見を持つ人だけが集まる洞穴の”部族”に戻ってしまうんだ。
インターネットがもたらしたもの、それは私たちが原始人だった頃のような “部族”を生み出したということなんだ。
私には出口がわからない。今のところ、出口は見えないよ。たとえコンピュータを全部止められても、私たちにはすでに強固な”部族”がある。そのどれもが外部からの影響を受けないようになっているんだよ。変えることができる唯一のものは、洪水や宇宙人の侵路で、全員が警戒心を捨てて人類のために戦い、何か統一的な危機が訪れることしかないよね」
アルバムのクローサー “Everything Everywhere” はまさに完璧なエンディングです。
「ビートルズのようなサウンドの曲を書きたかったんだ (笑)。観客たちが叫びながら歌っているような感じで、私のアンセムという感じ。大勢の人が手を挙げて歌っているのを見れたらいいなと思うんだ。そうしたら気持ちいいからね。この曲には真実の要素が含まれていると思う。なぜなら、私たちは皆、愛を探しているから。愛には、たわごとをかき分け、すべてを癒し、すべてを乗り越える力がある。この曲は私の家路であり、私の癒しだから」

他の作品よりも優れていなければ、必ずしもアルバムを作る必要はないということは、14年経った今、この作品はこれまでやってきたことをすべて上回るということなのでしょうか?
「ああ、そうだね、このアルバムは今までのどの作品よりも優れているね。というのも、私たちは43年間バンドとして活動してきたわけだから、何をするにしても、すでにやったことよりも良くなければならない。あらゆる意味でそう思っているよ。例えば、子供にマーカーを持たせて、 “毎日、壁に直線を引きなさい” と言うと、50歳か60歳になる頃には、その直線があまりにもまっすぐで、びっくりするくらいになるはずだ。だから、私が考えるに、自分のやっていることを続けていれば、必ず良くなる。それは当たり前のことなんだよ。
ZZ TOP や MESHUGGAH など、私たちと同じくらい長く活動しているバンドを観に行って、20年、30年前に書かれたものを今聴くと、”ああ、同じ曲なのに、どうしてこんなに素晴らしく良く聞こえるんだろう” と思うことがある。だから、私たちも同様に良くなっていると思う。曲作りに関しては、とにかく曲を作り続けて、みんながそれを気に入ってくれることを祈るしかないけどね。でも、シンプルな曲の書き方や、複雑な曲の書き方を学び、それを成功させるために、あらゆる方法で限界に挑戦し続けているんだ。それでも、誰かがつまらないと文句を言うかもしれない。だから、結局は、自分の頭の中に何があるのか、そして、世界中が納得するような曲を書きたいと思ったときに何をやり遂げることができるのか、ということなんだ。たとえそれが、おそらく実現することのない盲目的なファンタジーであっても、それは私の目標であり、実行するだけでもやりがいがあるんだ。つまり、人に伝わろうが伝わらなかろうが、音楽をやり続けること、それが僕にとって最も意味のあることなんだ」
心の中で、KING’S Xはもう二度とレコードを作らないかもしれないと思ったことはあるのでしょうか?
「本当に考えなかったよ。唯一、もう二度とレコードを作らないかもと考えたのは、Jerry が初めて心臓発作を起こしたとき。彼の奥さんからメールが来て、”Jerry が心臓発作を起こした。生きられる確率は50/50″ と。それを見て、私はベッドから飛び起き、”ああ、大変だ…私たちはもう終わってしまうのか” と思ったよ。”全世界で最高の親友の一人がいなくなるのか?バンドができなくなるのか?私が持っているもの、私たちが持っているもの、すべてを失ってしまうのか?” とね。その時に書いたのが “Ain’t That The Truth” で、これはソロアルバムの “Naked” に収録された。1週間後くらいに書いたんだけど、1行目に50/50の可能性みたいなのがあって、すごく影響を受けたんだよね。それ以外は、KING’S X の終わりを意識することはないね。だから、考えたこともないんだと思う。すごい。そう考えると、ちょっとクレイジーだよね!」

2022年はバンドが1992年にリリースしたセルフタイトルのレコードから30周年にあたりました。
「まあ、Sam Taylor との最後のレコードだったわけで、それはそれで意味があった。それまでは、KING’S Xのサウンドを最大限に追求していたと思うんだ。最初の3枚は、インスピレーションを受けたものを何でも書いて、自分自身を見つけようとしていたし、自分自身のサウンドを見つけようとしていたから、いろんな意味で実験的だったと思うんだ。でも、4枚目のアルバムになると、ある程度定まってきたよね。曲作りに関して言えば、”The World Around Me” のような曲は、私が “バックス・バニーのリフ” と呼んでいるもので、ああいうカートゥーンのサウンドが好きなんだ。あのレコードが完成したとき、私たちは気に入っていたし、サウンド的にも良かったと思うんだけど、バンドにとってはひとつの終わりであり、ある種のサウンドの終わりでもあったんだ。Sam Taylor が抜けた後、次のアルバムは “Dogman” で、Brendan O’braien は “このアルバムに何を求めているんだ” と言ったんだ…”ライブで鳴っているような音を出したいんだ。ロックバンドのようなサウンドにしたいんだ” と答えたね。だから “Dogman” では、Brendan はすべてのレイヤーを取り払って、ただひたすらレコードを作らせてくれたんだ」
KING’S X はメジャーレーベルであるアトランティック・レコードから初めて作品をリリースしたバンドでもあります。
「我々はレコード会社からプレッシャーを感じたことはない。なぜなら、我々はレコード会社に “勝手にしろ” と言えるくらい反抗的だから (笑)。私たちはいつもそうだったんだ。アトランティックの子会社だったメガフォースに所属していたんだけど、”Over My Head” が出たときに、彼らが我々に電話してきて言ったんだ。”ラジオで流れてヒットしそうな曲を書くと、いつもその真ん中に何かを入れて、すべてを台無しにするのはなぜだ?”って。こう答えたよ。 “それが私たちの音楽の書き方だからな。ピクニックの真ん中に列車の事故を置いたり、その逆が好きなんだ” ってね。だから、私たちのことを説明したり、カテゴリーに入れたりするのは苦労したよ。ある時期、私たちは音楽業界の寵児で、誰もが私たちが大成することを応援していた。でも、要するに、世の中は茶色いコーラを飲み続けるということなんだ。透明なコーラの味がまったく同じであっても、未知の味に乗り換えることはないでしょう。茶色のコーラを飲み続けるんだ。私に言わせれば、何百万も売り上げているバンドのほとんどは、自分のやりたいことをやっていない。そのようなバンドは、もう一度、本当のことをやりたいと願っているんだ」

反抗的といえば、dUg はかつてキリスト教という “権威” にも牙を剥いています。”Let It Rain” の歌詞はまさにそんな dUg の心情を反映した楽曲。”世界の終わりか新しい始まりか?救世主は?神々は? 今こそ私たちを救ってはくれないのか? 誰もが権利を主張し誰もが戦いたがっている 誰もが自分を正当化して だから雨を降らせよう 恐れを洗い流すために”
「ゲイであることを公表したとき、ハードロック・コミュニティからの反発はなかったんだ。私は声明を出したり、プレス発表をしたことはなくてね。ただ、メジャーなクリスチャン雑誌のインタビューを受けたんだ。彼らが延々と話すから、私はただ思ったんだ。”クリスチャンの偽善にはうんざりだ。私はゲイだと言って、それで終わりにしよう” とね。
今日、それは問題ではない。誰からも反発されたこともないしね。ただし、あの記事が出たときは別だった。KING’S Xのレコードがキリスト教系の店で販売禁止になったんだ。その時、私たちは “素晴らしい!これでキリスト教の汚名から逃れられる”と思った。なぜか、KING’S Xはクリスチャン・バンドと思われていたからね。当時の私たちの信仰がそうだったからかもしれないけど、今はもう誰もそうではない。イエス・キリストは救世主ではないからね。70歳になったとき、世界を見渡してみたんだ。人々にはもっと思いやりと愛が必要だと思った。”雨を降らせて恐怖を洗い流せ” というのは、いい例えだよ。つまり、私たちが問題を抱えているのは、私たちが恐怖を恐れているから。立ち上がり、”怖がるのをやめよう!” と歌う、それが私の仕事なんだ」
しかし、dUg が3歳の時、連れ去られた宇宙人はキリストのようだったとも。
「3歳だって記憶しているのは、母がまだ一緒に住んでいたから。母は私が3歳のとき去ったからね。私が寝ていると、その人が部屋に入ってきたんだ。長いブロンドの髪の毛でローブを着て、それに銀色のベルトを巻いていた。すごく背が高かったのを覚えてる。足に巻き付けるサンダルを履いていたよ。裏口から外に出て、舞い上がったのを覚えてる。私は目が覚めたばかりだったが、外はとても明るかった。その時点で何かおかしいって思って、その人物から離れようとあばれたんだ。ようやく、彼は私の手を放した。次に覚えているのは、母の膝の上にいたこと。それって、ずっと、クレイジーで馬鹿げたことだと考えていた。でも40を過ぎたとき、”Ancient Aliens” を見ていて、わかったんだ。彼らは、人間がコミュニケーションを取ったり、拉致されたという4つのエイリアンのタイプについて話していた。その一つ、Nordic と呼ばれているエイリアンが、まさに彼だった。それまでは、夢を見てたんだって思ってた。でも、40年が経ち、理解したよ。私は拉致されたんだ」

宗教は dUg にとっていつしか虐待へと変わっていました。
「ゲイは忌み嫌われる存在で、神はそれを聖霊への冒涜以外の何ものでもないと嫌ってる。聖書によれば、男は他の男と寝てはならない。私はずっとそう言われてきたけど、でも同性愛者だ。
だから、誰にも言えなかったんだよ。ある時、”じゃあ、イエスがしたようにやってみよう” と決心したね。3日間断食して、自分を”ストレート”に変えてくれるよう神様にお願いしようと思ったんだ。田舎のトレーラーに座って、2日間断食して、食べずに水だけ飲んでたよ。祈って、祈って、泣いて、神が私を変えてくれるように懇願したけど、私は何も変化を感じなかった。そして、私は立ち止まって、”あきらめます” と言ったんだ。心の奥底にあったのは、人々が言う『神をあきらめるな』『神はまだ終わっていない』『神を待たねばならない』『神のタイミングで物事を得ることはできない』という聖句のことだった。だからその時は、何をやってもうまくいかないのは、すべて自分のせいだと思った。
ほら、私にとって宗教は抑圧的なものでしかなかったから。宗教は私に何もさせてくれなかった。4、5歳の頃、教会で曾祖母と一緒に最前列に座って、牧師が “踊ったり、酒を飲んだり、夕バコを吸ったりしたら、地獄に落ちるぞ。悪魔がお前を捕まえるぞ” と叫んでいるのを聞いたのを憶えている。悪魔がやってきて私を苦しめるんじゃないかと、子どもの私は毎晩死ぬほど怖くてベッドに入った。悪夢にうなされ、叫びながら目を覚ましたものだよ。
つまり私にとっては、宗教は虐待だった。他の人はそうではないし、私はそれでいいと思う。でも、私にとっては、そうなんだ。誰かが、”ああ、神はあなたを愛し、あなたの罪のために死んだ” と言ってきたら、心の中で “くたばれ” と言いたくなる。でもその代わりに、他のみんなにそうであってほしいと思うように、その人が誰で、何を信じているかを受け入れて、その人を愛するだけだよ。
私は、多くの、多くの、多くの、多くの、真の信者がいると信じているし、彼らを賞賛し、拍手を送るよ。だけどね、宗教でお金を要求する人たちはみんな、デタラメで、うそつきさ。彼らは、人からお金を搾り取る方法を見つけた、ナルシストの集団だ。私は彼らに嫌悪感を抱いている。そして、それを信じていた人たち、今も信じている人たちに対して、悲しみを覚えるんだ。嫌悪感ではなく、悲しみなんだよね。さらに悲しいことに、私は彼らが受け入れないようなタイプの人間だから、離れていなければならないんだよね。それが悲しいんだ。でも、それが人生なんだよね」

自身では、KING’S X のサウンドをどのように “カテゴライズ” しているのでしょうか?
「私たちはスリーピースのロック・バンド。ただそれだけだよ。パンクの曲も、ロックの曲も、ファンクの曲も、同じように演奏できるんだ。ドラム、ギター、ベースさえあれば、どんな曲でも演奏できる。私たちは本当に良いリズムセクションが根底にあって、それが KING’S Xのマジックだと思う。お互いのニュアンスの中で演奏する。音楽だけではなくてね。実際、KING’S Xは、私がこれまで演奏してきたバンドの中で唯一、みんながお互いの話をよく聞いているバンドなんだ。今まで一緒に演奏した他のバンドでは、周りを見渡すとみんな話を聞いていない。お互いの言うことを聞かないし、私の言うことも聞かない。でも私たちは皆、自分たちのやっていることに耳を傾けていて、その結果、違いを見分けることができるんだ」
最近では、”ロックは死んだ” というミームも使い古されてきたようです。
「ロックは死んでいない。ただ、怠け者が外に出て音楽を探さなくなっただけだ。GRETA VAN FLEETの曲は最低だけど、でも、ああした音楽を再現している子供たちがいる。20代の若者たちがサバスや BON JOVI を同時に吸収して、本物の何かを作り出しているんだ。問題は、それをやるための場所がないことだ。彼らを拾ってくれるレコード会社もない。MTVもない。新しいロックを聴かせるFMラジオもない。誰も彼らにチャンスを与えようとしないから、みんなツアーに出ている。そういうバンドを見に行くと、会場は満員になるんだけど、誰もそのことを知らない。”ロックは死んだ” 論者たちに言いたいのは、”おい、泣くなよ。彼らはそこにいるんだ。決して変わっていない。YouTube や Tik-Tok で見るような天才たちが素晴らしい音楽をやっているんだから、そこにいるんだよ” とね。私たちが子供だったころは、MTV はあったけど、Tik-Tok や YouTube がない時代だった。だから、まったく新しい世界、新しい世代の子供たちがいて、世界に対して違う見方をしていて、私が経験することのない違う経験をしている。才能はこれからも変わらず現れるだろう。ロックは決して止まらない」

dUg は世界的に名の知れたロックスターですが、決して裕福な暮らしを送っているわけではありません。
「金がなければサイドプロジェクトをやるだけだ。レコード契約を結んで、2、3ヶ月の間、支払いをするんだ。私たちは誰も9時から5時までの仕事には就いていない。でも、私たちにできることは何なのか。私たちは市場において価値があるから、クリニックとかそういうことができる。手書きの歌詞を作ることもできる。黒い紙に銀色のインクで書き出し、サインと日付を入れるんだ。何百枚も書いたよ…それでうまくいく。それに、この歳になると、ソーシャル・セキュリティーを受けることができる。3年ほど前に社会保障を受け始めたんだ。社会保険で家賃が払えるから、心配することはなくなった。それ以外のことは、自分でできる。街角でギターを弾けば、5ドルが手に入る。友だちに電話して、”お金がないんだ。今日、ご飯を食べさせてくれないか?” と言えば、OK! となる。それに、私にはシグネチャー・ペダルと、シグネチャー・ベースがあって、みんな買ってくれるんだ。だから、時々、6ヶ月分の小切手をもらって、助かっているよ」
ロックの精神は健在でも、同時代の多くのアーティストが降参したり撤退する中で、KING’S Xが長生きできたのはなぜでしょう?
「バカだからだよ (笑)。どんな困難にも負けず、自分たちのやるべきことをやり続けたし、今もそうだ。そして、ステージに上がると、世界に対して私たちが立ち向かうことになる。このバンドは誰も解散するつもりがない。私はこのバンドを辞めないし、Ty も Jerry も辞めない。誰も辞めないよ、だってバンドを解散させる責任を取るつもりはないんだから。私たちはそんなことするつもりはない。そんな愚かなことをするには私たちは優秀すぎるんだ。だから、誰かが死ぬしかないんだ、それでおしまい。この3人のいない KING’S Xは存在しない。それはあり得ないよ。もちろん、KING’S Xのトリビュート作品は常に存在しうるし、もし私が生きていれば、それに出演することもあるかもしれない。でも、私と Ty と Jerry のいない KING’S Xは存在しないだろうし、それは私の心の中で感じていることなんだ。他の人は違う意見を持っているかもしれないけど、これが私の気持ちなんだ」

参考文献: VW MUSIC:An Interview with dUg Pinnick of King’s X

DEFENDER OF THE FAITH:dUg Pinnick (King’s X) Interview

BLABBERMOUTH:DOUG PINNICK Says KING’S X Has ‘Never Been Profitable’: ‘We All Have To Do Outside Things To Make Ends Meet’

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WINGER : SEVEN】 JAPAN TOUR 23′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KIP WINGER OF WINGER !!

“I Do Feel Overall SEVEN Has All The Hallmarks Of Classic WINGER.”

DISC REVIEW “SEVEN”

「全体的に “SEVEN” はクラシックな WINGER の特徴を備えていると感じているんだ。それは、Paul Taylor の復帰とオリジナル・ロゴの復活でより強調されているね」
WINGER は巨大な才能を持ちながら、同時に “二刀流” というジレンマに悩まされてきたバンドです。華やかなロックやメタルには知性が強すぎ、プログレッシブの宮殿に入るには騒がしすぎる。この、実は非常にユニークな並列の魔法は、爆発的なヒットとなったデビュー2作のあと、局所的なリスペクトを得ることを生贄に、バンドの足枷として長く活躍の妨げともなってきたのです。
「僕たちは決して “解散” していないんだよ。グランジ・ミュージックに支配され、その間に “Beavis and Butthead” と METALLICA の騒動が起こって、当時僕たちは続けることが不可能になったから、長い間休んでいただけなんだ。アーティストとして、僕なら他のアーティストを公然と侮辱するようなことは絶対にしないよ。”Pull” に関しては、あのレコードは僕らのベスト盤のひとつだと今でも信じているんだ」
生贄といえば、WINGER はまさに90年代の “生贄” となったバンドなのかも知れませんね。ヘアメタルと呼ぶには、あまりに高度なオーケストレーションに演奏技術を纏いながら、売れてしまったがゆえに祭り上げられた不可解なシンボルの座。Reb Beach は最近、当時を振り返ってこう語っています。
「90年代に入って、グランジが台頭して、ギター20本と家を売った。アニメに WINGER のTシャツを着たキャラが登場してね。家に帰ると両親も WINGER、犬まで WINGER のTシャツを着てる(笑)。全員オタクなんだ。ダサくなったヘアメタルの象徴というかね。翌週からチケットが全く売れなくなったよ…」
METALLICA は “Black Album” のレコーディング・セッションで、Lars Ulrich が Kip Winger のポスターにダーツを投げつける映像を公開しました。今思えば、非常に愚かな行為ですが、当時ライブ会場で投影された時には、観客から大きな笑いが起こっていたそう。最近、James Hetfield が直接 Kip に謝罪の電話をかけたそうですが、時すでに遅し。やはり “時代” のスケープゴートとなった感は拭えません。非常にオーガニックかつ、ALICE IN CHAINS のような暗がりの知を宿した名品 “Pull” のリリースも焼け石に水。1994年にバンドは沈黙を余儀なくされたのです。(これまで、”解散” だと言われていましたが、Kip によると “活動休止” だったとのこと)
「僕は自分の人生や周りの人々の人生について、個人的な視点から歌詞を書いているんだ。だから、ある意味、世相を反映していると受け取ってもらっても構わないと思う。僕や周りの人はこの暗い状況で生きているんだから、このアルバムはよりシリアスなトーンになったんだろう」
00年代初頭の短期的な復帰を経て、2006年、WINGER は海外に駐留する米兵の現実を描いた “Ⅳ” でついに完全復活を遂げます。以前よりも社会性を全面に押し出し、よりプログレッシブに躍動するこのアルバムが、以降の WINGER の指針となりました。
バンドが経験してきた浮き沈みを “業” として書き綴った “Karma”、ポジティブなトーンでより良い世界の実現を願った “Better Days Comin” と、彼らは80年代のイメージを払拭するような等身大で現実的な高品質のアルバムを残していきます。ただ一つ、WINGER が WINGER である所以、”キャッチー” な一面をどう扱うのか…常にその命題と向き合いながら。
9年ぶりとなる最新作 “Seven” は、そんな WINGER の社会性、プログレッシブでシリアスな一面と、出自であるハードロックのロマンチシズムが完璧に噛み合ったアルバムと言えるでしょう。
“Resurrect Me” はそんな最高傑作の中でも、特に WINGER ここに極まれりという名曲。シリアスでダークなスタートから一転、コーラスではロマンチシズムが雷鳴のように響き渡り、フックの嵐の中を Kip のキャッチーな雄叫びがこだまします。Reb のギターが炎を吹き、Rod の尋常ならざるフィルインが轟けば、WINGER はその翼を大きく広げて自らの “復活” を宣言します。
QUEEN への憧憬を織り込んだ “Voodoo Fire” を経て到達する “Broken Glass” は、復活 WINGER のもう一つの翼。Paul Taylor の復帰をしみじみと実感させるエモーショナルな音絵巻。WINGER 屈指のメランコリー・オーケストラ “Rainbow in the Rose” を、Kip のソロキャリアで熟成したかのような内省的な審美感は、96年に初めての妻を突然の事故で失って以来、彼の命題となった痛みと優しさの色彩を完璧に投影しているのです。
ヘヴィで繊細。ラウドでソフト。知的で野蛮。痛みで優しさ。ダークでロマン。WINGER の二刀流はいつしか、何 “マイル” も先で多様に花開いています。今回弊誌では、Kip Winger にインタビューを行うことができました。「かつてより世界は悪くなっているよね。金持ちはより金持ちになり、貧乏人はより貧乏になったように感じる。権力闘争の政治家、過激なイデオロギーのインフルエンサー、宗教的狂信者たちは、わざわざ力を尽くして世界の人々を分断しようとしている。とても悲しいことだよね」 どうぞ!!

WINGER “SEVEN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENFORCED : WAR REMAINS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KNOX COLBY OF ENFORCED !!

“Humans Are Violent By Design. That’s How We’ve Survived.”

DISC REVIEW “WAR REMAINS”

「俺たちは古い伝統に思いを馳せながら、新しいリスナーには新鮮に映るように工夫してやってるんだ」
2010年代後半。スラッシュという容赦のない獣は、爆発的な人気を誇る新進気鋭の POWER TRIP の力によって、ハードコアの衝動を多分に受けた新たなスタイルで世界に再びその威光を轟かせました。2020年、POWER TRIP の象徴的なフロントマン Riley Gale の急逝は明らかにメタル世界の大きな損失でしたが、それでも彼らに続くアメリカのニュー・エクストリーム、その激しい波はとどまることを知りません。いや、むしろ、現代こそが “クロスオーバー・スラッシュ” の黄金時代なのかもしれませんね。
「Arthur は、自分のやっていること、作っていることを正確に理解していて、特定のスタイルやサウンドのバンドがどのように表現されるべきかをしっかりと理解しているんだ」
自らも SUMERLANDS, ETERNAL CHAMPION という温故知新のニュー・エクストリームを率いる Arthur Rizk こそが、この新たなアメリカの波の牽引者です。若い世代にとって、インターネットを通して知る80年代の音楽は、ある意味驚きで、新発見なのでしょう。そうして彼の地のメタル・ナードたちは、好奇心の赴くままに古きを温めすぎて、当時を過ごした実体験組のような知識と思い入れを持つようになりました。そこに現代の文脈を織り込めばどうなるのだろう?そんなタイムトリップのような実験こそが、Arthur の真骨頂。
POWER TRIP, CODE ORANGE, TURNSTILE といった Arthur が手がけたニュー・エクストリームの綺羅星たちは、そうやって様々な “If” の掛け算を具現化していったのです。今回インタビューを行った、東海岸から登場した ENFORCED は “暴力装置” という点で、”Arthur’s Children” の中でも群を抜いた存在でしょう。
「俺は暴力的な人間ではないけど、暴力行為の因果関係や思想や概念としての暴力を理解できるほどには成熟している。俺たちが暴力と完全に縁を切るということは、自分のDNAを無視するってことなんだ」
ENFORCED は、否定したくても否定できない人間の “暴力性” に一貫して焦点を当てています。戦争の時代に戻りつつある現代。ENFORCED の魂 Knox Colby は、机上の平和論者に現実を突きつけます。オマエは暴力の恩恵を受けていないのか?戦争は時代を進めて来たんじゃないのか?人類は本当に暴力と縁を切れるのか? “War Remains”…と。
「SLAYER が成してきたことを、俺たちも実現できると思いたいね」
前作 “Kill Grid” のスラッシュへのグルーヴィかつ多彩なアプローチが “South of Heaven” だとすれば、”War Remains” は彼らの “Reign in Blood” に違いありません。このアルバムが走り出したが最後、33分後には死体確定。跡形もなく踏みつけられたリスナーの骸以外、何も残りません。Knox が Tom Araya のひり付くシャウトとデスメタルの凶悪なうなりの完璧なキメラで血の雨を降らせ、殺伐としたギターの戦車が世界を焦土に変えるのに3分以上の時間は必要ないのです。今回、彼らが所望するのは電撃戦。
ただしバンドは、古いスラッシュのルールブックに基づいて演奏しながら、MORBID ANGEL や OBITUARY の伏魔殿から、”Nation of Fear” のような “ハードコアISH” のグルーヴまで暴力の規範を変幻自在に解釈して、人が背負った “業” を、現実を、リスナーに叩きつけていくのです。私たちはそれでも、”ウルトラ・ヴァイオレンス” な世界を塗り替えることができるのでしょうか?
今回弊誌では Knox Colby にインタビューを行うことができました。「人間はそもそも、暴力的にデザインされているんだ。そうやって俺たちはこれまで生き延びてきたんだよ」 どうぞ!!

ENFORCED “WAR REMAINS” : 10/10

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COVER STORY 【RETURN OF SAVATAGE】 INTERVIEW WITH ZAK STEVENS


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZAK STEVENS OF ARCHON ANGEL & SAVATAGE !!

“Criss Treated Everyone With Total Love And Respect. He Had a Really Angelic Spirit.”

復活のSAVATAGE

「タイトルは”カーテン・コール”になるだろう。来年の4月、Criss の誕生日にリリースしたい。そうしてツアーでファンに愛と感謝とさよならを伝えるんだ。これまでのメンバー全員に関わってもらい、10点満点の最高傑作で幕を閉じる」
US プログ・パワーの伝説、SAVATAGE の首領 Jon Oliva の言葉です。復活の SAVATAGE。アメリカにプログ・メタルとパワー・メタルの種をまいたドラマティックな反乱軍が、ついにメタル世界へと帰還します。
「僕が92年に初めて SAVATAGE に参加したとき、Criss が “今まで一緒にいられなかった時間を取り戻し、一緒に遊んで、もっとお互いを知る必要がある。だから一緒に暮らそう” と言ってくれたんだ。それが彼のやり方なんだよ。彼は誰に対しても完全な愛と敬意を持って接していた。本当に天使のような精神を持っていたんだ。僕たちは一緒に音楽を作り、失われた時間を取り戻していった。だからこそ、数年というより、10年以上一緒に仕事をしていたような気がしているんだ」
SAVATAGE を語るとき、避けては通れない2つの魂こそ、Criss Oliva と Paul O’Neill。両者とも、この世を去って何年も経ちますが、未だに彼らに対するスタンディング・オベーションと “カーテン・コール” は鳴り止みません。
Jon Oliva の弟、Criss Oliva は天賦の才に恵まれたギタリストでした。Eddie Van Halen の技量を宿しながら、エモーションとカタルシスに全振りした Criss の流麗なソロイズムはまさに天国への階段で、バンドのドラマ性を飛躍的に向上させていました。Zak Stevens が証言するように、誰が評しても “天使” となるその本質は、むしろ Randy Rhoads に近かったのかもしれません。とにかく、Criss のギターと Jon のピアノ、そして後に Zak が受け継ぐ旋律の魔法を軸とし、Paul O’Neill の荘厳華麗なシンフォニーと変幻自在なリズム、そこに考え抜かれたコンセプトが加わって、SAVATAGE の唯一無二は実現していました。
ただし、Criss と Paul が召されてもなお、SAVATAGE-Ismは脈々と受け継がれ、途絶えることはありません。Chris Caffery, Alex Skolnick, Al Pitrelli といった超一流がギターの芸術を繋ぎ、Paul O’Neill のシンフォニーは TRANS-SIBERIAN ORCHERSTRA として多くの SAVATAGE メンバーと共に夢のような成果を残しました。後続への影響も並々ならぬものがあったはずです。そして、Jon Oliva が SAVATAGE の声であるのと同様に、Zak が歌った4枚の名作、その驚異的な完成度を鑑みれば彼もまた、SAVATAGE の声に違いありません。
「僕はいつも QUEENSRYCHE と FATES WARNING の大ファンだったんだ。ARCHON ANGEL とその2つのバンドを比較することは、間違いなく正しいよ。Aldo も QUEENSRYCHE の大ファンであることは知っているので、その比較は完全に理にかなっているね」
Jon Oliva とボーカルを分け合う Zak Stevens による新たなバンド ARCHON ANGEL も、そうした SAVATAGE-Ism の継承者であり、同時に SAVATAGE の復活を祝う天使の啓示でもあるでしょう。これほどドラマティックかつ知的なプログ・パワーは近年稀に見ると言わざるをえません。素晴らしいのは、SAVATAGE のシンフォニーやドラマを基軸としながらも、QUEENSRYCHE が見せたコンパクト&キャッチーなプログ劇場、FATES WARNING の濃密なプログ・エキスをしっかりと抽出して、アーコン・エンジェルの物語へと落とし込んでいるところでしょう。アーコンとは、神々の宣託を地上に伝える選ばれた天使のこと。その天使がもし、Criss Oliva だったとしたら、我々は USプログ・メタルの始祖が三位一体となった ARCHON ANGEL の作品で、SAVATAGE の雄々しき復活を今まさに天から告げられているのでしょう。
今回弊誌では、Zak Stevens にインタビューを行うことができました。「特に2020年以降、世界で起きているネガティブな出来事については、とても残念に思っている。 復活した SAVATAGE は、今まで通り、人々の人生のタイムラインになるような曲、人生の辛い時期を乗り越えるような曲、そして感動を与えるような曲を届けることができると思っているよ。 それは、ファンのみんなからいつも聞いている話で、僕たちの音楽を通じて、そうした素晴らしい出来事が継続することを期待しているんだ」 どうぞ!!

ARCHON ANGEL “Ⅱ” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【METALLICA : 72 SEASONS】


COVER STORY : METALLICA “72 SEASONS”

“We’re All Really Average Players, But When You Put Us Together, Something Happens”

72 SEASONS

METALLICA の前作 “Hardwired… To Self-Destruct” から7年。数多の受賞歴があり、数百万枚の売り上げを誇るモンスター・バンドにとっても、11作目となる “72 Seasons” は、世界的なパンデミックの余波でまったく新しい状況の中の創造となりました。
パンデミックの坩堝の中で生まれた “72 Seasons” は、単なるニューアルバムではありません。コロナ以前に比べて、ポップカルチャーの中で、より大きな位置を占めるようになったバンドの再登場という意味合いが強いのです。その理由のひとつは、1986年の名曲 “Master of Puppets” が Netflix のレトロSFシリーズ “Stranger Things” で大きく取り上げられ、大きな後押しを受けたこと。もうひとつは、Lars Ulrich, Kirk Hammett, Robert Trujillo が昨年ブラジルのステージで、James Hetfield が観客に少し年をとって不安を感じていると認めた後に、3人でこのフロントマンを抱きしめたヴァイラル・ビデオの存在。METALLICA が Ozzy Osbourne とツアーを行い、テストステロンとビールを燃料とするスラッシュ・マシーンだった80年代には、こんなことは考えられませんでした。Lars Ulrich が振り返ります。
「バンド仲間をハグすることは、僕らの楽しみだよ。そして、お互いへの愛、40年以上経った今でもつまずきながらもやっていけることへの感謝をオープンにする。俺たちはそういう面をとても心地よく感じているんだ。俺たちは、お互いにオープンで透明な関係であろうとしている。30数年前、自分が20歳の時に “メタル・ロボット” であるため感情を持つことが許されなかった時代とは対照的だ。当時は、人間的な要素は、ある意味、置き去りにされていたんだ。ステージから降りたとき、俺たちはよく議論したものだ。 “あれは失敗した” “いや、俺のミスじゃない”。それは、ある種の完璧さを求める、狂気じみた、人間離れした努力だった…それが達成可能かどうかもわからない。でも今は、加齢に伴う自分たちの姿に満足し、”あの曲のあの失敗、面白かったよね?”と思えるようになった。今、俺たちは失敗を笑い、冗談にしているんだ。それでも俺たちは毎晩、ベストを尽くそうとする人間なんだよ」

つまり、結局のところ、2023年版の METALLICA はまったく別物なのでしょう。現在の彼らは、2004年に公開されたドキュメンタリー映画 “Some Kind of Monster” で見られるように、単に高額の精神科医を雇って創造性の違いを調整したり、バンド間の対立を仲裁したりすることはありません。彼らは実際に自分たちの感情について話しています。ステージ上でさえ。だからこそ、”72 Seasons” に収録された楽曲は、これまで以上にパーソナルなものになっているのです。以前のように必ずコンセプトや決まりごとから始まった作品ではなく、自らを曝け出し、初めて本音や伝えたいことをむき出しにしたアルバムなのかもしれませんね。
音楽的には、このアルバムはバンドの42年のキャリアを概観するような内容になっています。タイトル曲や “Shadows Follow”, “Too Far Gone?” は METALLICA 初期の熱狂的なスラッシュを蘇らせ、”You Must Burn!” は “Black Album” に収録されていたようなグルーヴを宿し、”Sleepwalk My Life Away” と “Chasing Light” では LORD/RELORD 時代のむき出しのロック・グルーヴを披露。一方、リードシングルの “Lux Æterna” は、METALLICA の初期のインスピレーション NWOBHM, 具体的には DIAMOND HEAD に向けたトリビュートのよう。11分のクローズ曲 “Inamorata” は、KYUSS と METALLICA 1986年のインストゥルメンタル曲 “Orion” の両方を呼び起こすことに成功しています。さて、このキャリアを包括するような新たな歴史の1ページは、いかにして生を受けたのでしょうか?
当初、バンドは毎週 Zoom ミーティングを行い、つながりを保ちながらアイデアを伝えていきました。遠隔地でのコラボレーション最初の試みは、2020年4月に各メンバーの自宅スタジオで録音された “Blackened” のアコースティック・バージョン(Blackened 2020)でした。そこからやがて、メンバー間の会話はより充実した音楽を作ることへと変わっていったのです。
Kirk Hammett が当時を振り返ります。
「ロックダウンが行われたとき、僕はかなりイライラしていた。両手を縛られたような気分だった。Rob(Trujillo) と “どうするんだ、このままじゃダメだ” っていう会話をしたのを覚えているよ!”こんなに時間を失うわけにはいかない!どうやってこの時間を取り戻すんだ!” とね。でも、Rob が言ったことがすごく心に響いたんだ。彼は “こんな時こそポジティブであれ。クリエイティブであれ” と言った。僕はそれを心に刻んだんだ。
今は、音楽的なアイデアがありすぎて、混乱してしまうくらいだ。そうして、ソロEP “Portals” の2曲を完成させることができたし、テクニックを鍛え、ずっとやりたかったギター・プレイに取り組むことができたんだ。時間が出来て、とても幸運だったと思えるよ。ロックダウンは、多くの人にさまざまな影響を与え、中には良くない影響を受ける人もいた。でも僕は Rob のおかげで、ポジティブに、要領よく、生産的でクリエイティブに過ごせたんだ」

そうして、4人の怪物たちは、何百ものアイデアを纏めるために選別し始めました。しかし、Zoom の喜びも束の間、何百、何千マイルも離れた場所にいる彼らは、これまで遭遇したことのない難題に直面しました。プロデューサーの Greg Fidelman がLAにいて、METALLICA のメンバーは西海岸に散らばっていたため、文字通りバラバラで、Lars はこの状況を “クラスター・ファック” と表現していました。
月日が流れ、世界が変わり始めた2020年11月、バンドは “All Within My Hands” のために集まり、実際に同じ空間で初めて新曲に取り組みます。それ以降、メンバーが家族の元に戻る前に会ったり、2021年にキャンセルされたライブを実現したりと、非常にストップ・アンド・ゴーなプロセスでしたが、ゆっくりと、しかし確実に、レコードが見えてきたのです。Lars がそのプロセスについて振り返ります。
「時には、より直接的で明白なビジョンが目の前に示されることもあれば、より本能的で言葉にならないこともある。2008年の “Death Magnetic” は、リック・ルービンと初めて組んだアルバムで、自分たちが何をしているのか、自分たちは何者なのか、これまでどこにいたのか、これからどこへ行くのか、アイデンティティや方向性について話し合うことがとても多かったんだ。こんな風に、各レコードは常に独自の旅であり、独自の存在なんだけど、このレコードはまるで偶然に突然出会ったようだった」
“音楽が現れた時、自分たちの方向に向かっているように感じた” と、Kirk は懐かしそうに振り返ります。
「これは僕らにとって初めてのことだよ。これまでは何度も、自分たちが考えるコンセプト通りに音楽を操作する必要があると感じていたんだけど、今回はそれがなかった。リフが現れて、一緒になって、僕たちはただ邪魔をしないようにするだけだった。音楽が飛び立つのを待つのが好きで、僕はその軌道を維持するためのガードレールに過ぎないんだ」
Lars の説明によると、具体的な目標や方向性に関する “ロッカールームでの会議” はなく、計画に関してはかなりルーズな感じだったと言います。パンデミックという外界の不確実性に囲まれていたため、より直感的に、考えすぎず、Kirk が言うように、音楽の流れに身を任せる必要があると感じていたようです。
「形にはなってきたけど、ゴールはなかった。というのも、創作活動でやっていることの大部分は、心臓や腸など、体の一部から生まれるものだと思うんだよな。もしそれが重くなりすぎたり、頭でっかちになったりすると、少し強引になってしまうし、過去に俺たちが頑張りすぎてしまったこともたしかにあった。だから “Hardwired” やこのアルバムは、曲作りのプロセスを可能な限り有機的なものにすることに重きを置いていると思う」

この自由で無秩序な作業方法と、作曲とレコーディングの過程でバンドに与えられた余分な時間は、音楽とそのクリエイターに余裕を与え、それまでとは全く異なるダイナミズムを植え付けました。Lars はそれは METALLICA にとって驚きだと言います。
「この2年間の制作期間中、誰かが声を荒げたり、議論や衝突があったとは思えない。40年も一緒にいれば、当然ぶつかることもあるし(笑)、それは過去によく語られてきたし、映画などでもよく記録されている。でもこれは、METALLICA がこれまでに作ったレコードの中で、断然、100パーセント、摩擦のないレコードだ。
結局のところ、俺らは自分たちがやっていることをとても愛しているし、自分たちが持っているものをとても大切にしているから、その道を旅するにつれてより大切にするようになるんだ。METALLICA を台無しにするようなことはしたくないから、もし何か問題が起きたら、すぐに手を引くんだ。今は互いにもっと共感できるようになったし、お互いを信頼して、すべての意見の相違が口論になる必要はないと思えるようになったのかもしれない。以前は、自分自身や全体像に対する信頼や信念が足りなかったから、あらゆることが喧嘩になったものだけど、今はそうではないんだよ。つまり、”過去” とは違う環境だ。このバンドにいて一番いいのは、安全な空間のように感じられることで、みんながそれに貢献している。みんながそれをとても大切にしているんだ」
James Hetfield は、METALLICA という “乗り物” があるからこそ4人が輝くと考えているようです。
「俺たち4人は個々でいると、マジで平均的なプレイヤーだよ。だが、4人が集まると何かが本当に起こるんだ。だから、基本的に他のミュージシャンとジャムるのは、俺にとって悪夢のようなものなんだ。俺はとてもシャイだから。1万人、2万人の前に立つよりも、誰かと1対1で座っている方がずっと不安なんだ」
Rob Trujillo も METALLICA の絆を感じています。
「METALLICA は家族なんだ。僕は家族に加わったんだよ。新しい兄弟を受け継いだ。ほとんどの人が知っているように、あるいは知っていてほしいのだが、特にこのようなバンドに参加するときは、責任が生じるんだ。もちろん、演奏できることは必要だし、信頼もパフォーマンスも必要だ。でも同時に、家族の一員として、その人の個性に合わせることも大切なんだ。METALLICA のメンバーはみんな違うし、同じではない。だから、物事を解決するためには、たくさんのコミュニケーションが必要なんだ。そして時には、自分の兄弟と同じように、完全に怒っている自分に気づくこともある。自分の家族と同じように、性格の違いを乗り越えていかなければならない。それと同時に、本当に大切なのはサポートだ。兄弟の誰かが落ち込んでいるとき、どうすれば彼を助けられるかを知っておかなければならないよ。METALLICA にいることは、そういうことなんだ」

METALLICA が闇を知らないわけではありません。”Master Of Puppets” での薬物中毒、 “One” での恐ろしいまでの孤独、”Fade To Black” での自殺願望など、彼らの作品は決して祝福と幸福に満ちたものではありませんでした。しかし、そんな中でも “72 Seasons” は、人間の大きな苦しみと不確実性を背景にした、彼らの最も暗い作品かもしれません。Kirk が説明します。
「ありきたりだけど、音楽は僕らの感情的、精神的、霊的な状態の反映なんだ。逆に言えば、”そうであってはならない” ということが理解できないんだ!僕たちはよく働くバンドだ。ロックダウンで閉じ込められたとき、僕らのエネルギーをどうやって取り除くんだ?僕たちはそれを音楽に注ぎ込む。だから、多くの音楽はとてもエネルギッシュなんだ。バラードがないのは、バラードが現れなかったからだ、兄弟。素敵で優しくて繊細な音楽はないんだ。この感情をカタルシスのある方法で吐き出したいんだ」
確かに、バラードはありません。77分という長い時間をかけて、”72 Seasons” は猛烈な勢いで駆け抜けていきます。このバンドは明らかに、自分たちの才能を誇示する気はなく、代わりに内なる猛り狂った地獄を共感させることを選んだのです。
しかし、この強烈なメタルの狂気は、”72 Seasons” の一つの側面に過ぎません。実際、James Hetfield はキャリアの中で最も露骨で脆弱な歌詞を残しています。人生の最初の18年間は、その後の人生に影響を与えるというコンセプトのもと、72 Seasonsはノスタルジア(”Lux Æterna”)、自傷行為(”Screaming Suicide”)、内省(”Room of Mirrors”, “Sleepwalk My Life Away”)など一見暗い内なるテーマを扱っています。Lars が説明します。
「このアルバムのテーマは、人生の最初の過程で経験したことが、いかに自分を形成し、自分が下す決断に影響を与え続けるか、そして自分が何者であるかを決めるということ。James は、人間のすべてが、最初の “72シーズン” で形作られるというコンセプトを持っていたんだ」

2019年10月、フロントマンは依存症をめぐる問題で2度目のリハビリ施設に入りました。”72 Seasons”のコンセプトは、人生の形成期である18年間と、それが最終的にどのように自分自身のあり方へと影響を与えるかだと説明した James 自身は、厳格なクリスチャンの家庭で育ち、13歳の時に両親が離婚。16歳のとき、母親はがんで亡くなっています。James は “大人は誰しも子供時代の “囚人” という言葉を使っています。
「James は、自分が経験してきた多くのことを、とてもオープンにし、透明にしているように感じるんだ。その多くが歌詞に現れていて、彼が歌詞を使ってコミュニケーションをとることをとても支持している。彼の口を塞ぎたくはないんだよ」
歌詞を読み解くと、憂鬱、逃れられない闇、誘惑、分裂、救済への願望など、明確なテーマがあり、その根源は魂の探求と隠れた悪魔との対峙に費やした結果だろうと読み取れます。しかし、 Lars は James の言葉にポジティブなものも見出しているのです。
「James は闇と光のコントラストを表現しているんだ。一歩引いて、歌詞や James が今回持ってきたテーマを見てみると、光と闇の両側面や両者の相互作用についてとてもよく感じられる。自分探しや、自分の弱さ、可能な限り透明であろうとすることなど、多くの要素に取り組んでいるんだ」
Kirk も Lars に同意します。
「歌詞が暗いとは思わない。彼は本当に暗いテーマに明るい光を当てているという事実において、非常にポジティブだと思う。それは必ずしも悪いことではなく、誰も触れようとしないようなパーソナルでタブーなテーマにアプローチすることで、みんなに大きな奉仕をしているんだ。そうやって、自分自身を世界に示しているんだ。もちろん、とても勇気のいることだよ。物事のネガティブな面を見ることは、世界で一番簡単なことなんだ。人は3秒でネガティブになれるが、ポジティブになるにはもう少し努力が必要だ。時間が経つにつれて、ポジティブでいること、みんなの幸福を拾い上げることだけでも努力する価値があると気づくだろう。James はこの歌詞をポジティブに捉えているんだ。KING DIAMOND のように究極の終末を語るわけでもなく、デスメタルのようなものでもなく、James は希望について歌っているんだ」
James も光を認めます。
「俺の人生、キャリアにはたくさんの暗闇があった。しかし、常に希望の感覚を持ち、暗闇の中に光を持ってきた。暗闇がなければ光はないのだから。人生には良いことがたくさんある。それに集中するんだよ。そうすることで、人生のバランスをとることができるんだ。誰もが自分の人生に何らかの希望や光を持っているんだ。明らかに、音楽は俺のもの。”Lux Æterna” では特に、コンサートに集まった人たちのことを歌っているんだ。ライブでは音楽から生まれる喜び、生命、愛、そして家族を見ることができ、ただただ高揚する感覚を味わうことができる」

Lars が James と出会ったのが、ちょうど17の時でした。ある意味、原点に戻るような意図もあったのでしょうか?
「バンドの原点を振り返るというより、俺ら自身のストーリーを振り返るということだと思う。長い間活動していると、その境界線は本当に曖昧になるからな。俺は17歳のときから METALLICA に参加しているから、人生のほとんどすべてを METALLICA の出来事と関連付けている。James と俺が出会ってバンドを始めたのが17歳の時だった。その2、3ヵ月後に18歳になったんだ。だから、人生のタイムラインは、基本的にバンドのタイムラインと連動しているんだよ。この2つを別々の軌跡として切り離すことはできないんだ。
もちろん、仲間と一緒に座って、昔話や喧嘩の話などをすることもあるだろう。旅先での話や、さまざまなおかしないたずらについて話すこともある。でも俺は過去にはあまり時間を割かないんだ。むしろ、未来に時間を割きすぎていて、現在には十分な時間を割いていないのかもしれないよな。でも、過去、現在、未来の間で、俺は間違いなくほとんど未来にいる」
ただし、リード・シングルの “Lux Æterna” に初期の METALLICA、もっと言えば NWOBHM の影響を見る人は多いでしょう。
「”Lux Æterna” を書いているとき、DIAMOND HEAD の話は出てこなかったと思う。でも、曲の中で James が “Lightning the Nations” (DIAMOND HEADのデビュー作) と言ったのは、明らかに意識していたよな。正直なところ、歌詞について彼に聞くことはあまりないんだ。でも、 “NWOBHMみたいだ” とか “DIAMOND HEAD みたいだ” とか言われると、なるほどと思うことがあるのは、俺らのことをよく知っているからだろう。専門的なことを言えば、あのリフのキーはAで、NWOBHM の曲の多くもAだった。俺らの曲の大半はEかF#のどちらかだからな。そこまで分解するのは嫌いだけどね」
セカンドシングルの “Screaming Suicide” をYoutubeで見ようとすると、”この曲は自傷行為について話しています” という警告があり、同意する必要があります。その下には自殺ホットラインの番号が書かれています。
「まあ、それは後からついてきたものだ。作っている最中は、どう解釈されるかなんて考えている暇はない。でも、このテーマ、この歌詞の土台であれば、免責事項や情報をパッケージにしたほうが役に立つと思い、選択したんだよ。そして、それは俺にとって本当に、本当に感情的なことだった。発売から1、2日後にコメントをチェックしたのだけど、ファンからのフィードバックには、自分の家族、親戚、友人など、どれだけの人がこのテーマに影響を受けているのかが書かれていて、ただただ驚かされるばかりだったよ。YouTubeのコメントを読んでいると、3つ目か4つ目のコメントには、身近な人の自殺や自殺願望に関するエピソードが書かれていたんだ。俺は涙を流しながら、この感想を読んでいたよ」

40年のキャリアに11枚のアルバム、そして4人のメンバー全員が60歳代を迎えた METALLICA。暖炉の周りに座って自分たちの遺産について反芻していても不思議ではありませんが、実際の彼らは正反対。METALLICA のタンクにはまだ燃料があり、成し遂げるべきことがはるかに残されているのです。ポール・マッカートニー、ブルース・スプリングスティーン、DEEP PURPLE などを例に挙げ、Lars は 「彼らが最高レベルでキャリアを続けていることは刺激になるだけでなく、何が可能かを示している」と言います。
「バンドの精神は長く続けることで、僕らはこれを本当に楽しんでいるんだ。この5年、10年の間に、自分たちの境界線と限界を理解し、どれだけ自分を追い込むべきかを理解できるようになった気がする。でも、膝や首、背中、肘、喉など、いろいろなガタがくるのは、これからだよ(笑)。ステージに上がると、やはり疲労が蓄積するから、健康を祈るばかりだよ」
Rob にとっては、”72 Seasons” こそがバンドの最高傑作です。
「僕らにとっての祝福と呪いのひとつは、新しい音楽的なアイデアがたくさんあって、レコードを作るのが楽しいということ。METALLICA のように長く活動しているバンドの多くは、ある時点で行き詰まりを感じたり、高いレベルで創作することが難しくなったりするものだけどね。でも、僕たちはたくさんのアイデア、たくさんのリフ、たくさんの音楽を持っているバンドなんだ。Kirk のリフのストックなんて、何百もあるみたいだしね。だから、僕らが持っているすべてのアイデアを実現するほど十分なアルバムをまだ作っていないんだよ。だから、想像するに、そう、僕らは新しい音楽を作り続けるんだろう。この作品は、僕がバンドをやってきてから一番いい作品だと思う。だから、これからも新しい音楽には事欠かない。ただ、それをやるための時間があるかどうかだ。それは全く別の話だ」
しかし、METALLICA にはまだ野望があるのだろうか?彼らは地球上のほとんどすべてのフェスティバルでヘッドライナーを務め(今秋にはカリフォルニアで開催される大規模フェスティバル Power Trip に出演予定)、7大陸すべてで演奏した唯一のバンドであり、1億2500万枚以上のアルバムを販売し、ビールやウィスキーの自社製品も持っています。さらに、レコードのプレス工場も購入したばかりです。Lars が答えます。
「よし、まだ月でライブをしたことがないから、その方法を考えてイーロン・マスクに電話しようみたいなチェックリストはないんだ。俺にとっては、自分たちを更新し続けることが重要だ。これからの数年間は、自動操縦に陥らず、自分に挑戦し続けるという適切なバランスを見つけることが大切なんだ」
Kirk は METALLICA の音楽の未来について、たとえ自分たちがこの世から去ったとしても遺せるものがあると信じています。
「ロックンロール・バンドの歴史を見れば、僕らはとっくに解散しているはずなのに、解散していないんだ! なぜそうしなかったかというと、僕たちが真の兄弟だからだ、お互いに離れられないと心から思っている。それに音楽が一番大事なんだ!僕たちはいつか死ぬし、賞味期限があるけど、音楽にはそれがない。音楽は生き続ける。楽曲は何年も何年も存在し続けて、聴かれ、発見されるのを待つ。100年後、誰かが “Seek & Destroy” を発見して、何だこれは?となっても、誰も僕たち4人のことまでは気にしないよ!”うわー、あいつら誰だ?長髪の男たち?でも、Enter Sandman” はクールだ”。レガシーとは、エゴの旅であり、ある意味無駄なものなんだよ」

アルバムのタイトルにもあるように、人生の最初の72シーズン (18年) は、その人のあり方を決定づけます。ある人は、子供の頃が本当に自由だった最後の時期だと振り返り、現実の生活に埋没する前に人生の最高のものを経験したと考えます。一方で、幼少期は過去として残し、明日は前よりも良い日であると考える人もいるでしょう。James は親となる事で、そのどちらをも肯定するようになりました。”過去は終わった” と認めることで希望が生まれる。混沌とした子供時代は避けられなかったかもしれませんが、それも過去であり、未来は自身が作るもの。
「人生最初の72シーズンがどんなもので、それが今どんな意味を持つかは、人それぞれだ。ただ、子供を持つことは、自分の子供時代や両親が経験したことを理解するのに役立つのは間違いない。どちらかというと俺は後者だね。親である俺は、”みんな、勘弁してくれよ。俺はただの人間なんだ” って感じだけど、子供のころは、親を神様のように尊敬していた。親は悪いことをしないし、親が言うことは何でも正しいと崇拝していた。でも親も人間だったんだ。世代を超えて、親として、本当に、俺がやりたいことは、自分の親がやったことより、もう少しうまくやることかもしれない。それが、自分に求めたいことだね。努力しなければならないこともあれば、完全に忘れなければならないこともあるし、見つけなければならないこともある。ただ、あれやこれやと親を責めるのはもうやめにしたいんだ。一つ言えるのは、誰にでも幼少期がある。それが良かったか悪かったかは、人生の後半で決めればいい。子供時代を変えることはできないが、子供時代の概念や今の自分にとっての意味は変えることができるから」
黄色のパッケージを選んだのにも理由がありました。
「俺にとっての黄色は、光。光なんだ。善の源なんだよ。だから、黒に対して、本当にポップな光の作品なんだ。俺のビジョンは、もともとこのアルバムを “Lux Æterna” (永遠の光) という名前にすることだったんだ。そして、俺は名前決めの投票に負けたんだけど、これは素晴らしいことだよ。”72 Seasons” は、より噛み砕きやすい曲であることは間違いない。それが何であるかを理解することができる。もう少し掘り下げて、噛み砕いてみてほしいね。でも、あの色は “Lux Æterna” から生まれたものなんだ」

METALLICA のメンバーにとって、72シーズンは複雑な旅路でしたが、最終的には、今日まで存在するメンバー共通の情熱、すなわちヘヴィ・Fuckin’・メタルを発見したことがすべてでした。Kirk が振り返ります。
「僕は機能不全な子供時代を過ごしていた。18歳になる頃には、頭が真っ白になっていたよ。都会で育ったから、あまりにも多くのものを、あまりにも早くから見すぎたんだ。だから、言いたくはないが、50回目のシーズンにはすでに傷物になっていたんだ(笑)。でも、72シーズンという短い期間の中で、いろいろな音楽を聴くことができたのは、僕にとって大きな財産になった。ベイエリアの音楽、ソウル、ファンク、R&B、ラップ、サルサ、ジャズ、クラシックなど、たくさんの音楽を聴いて育ったからね。ハードロックに目覚めたのは12歳か13歳のときで、KISSというバンドは好きだし、LED ZEPPELIN も好き、PINK FLOYD も好き…と思い、そこから始まったんだ。15歳のときに NWOBHM に出会い、JUDAS PRIEST や MOTORHEAD を知り、IRON MAIDEN のファースト・アルバムが発売され…そういったことはすべて72シーズンのうちに起こったことだ!その間に音楽的な情報を得て形成されたものが、今の僕の人生の音楽なんだ。どんな音楽も好きだけど、ヘヴィーでアグレッシブでエネルギッシュでダークな音楽を演奏するのは、心の底から好きなんだ。メタルが僕の72の季節を映し出す鏡であり、実際に過去に戻らなくても、あの頃のメタルを聴けばそこに行くことができる。それは健全なことだ」
Lars はどうでしょう?
「テニスをする家庭で育ったから、自分の中ではテニスで生きていくと思っていた。デンマークで育ち、テニス選手として国のトップ10にランクされたのに、ロサンゼルスでは、自分が住んでいる通りのベスト10に入ることもできないなんて、思いもよらぬ衝撃だった。だから、音楽の世界に飛び込んで、IRON MAIDEN, DIAMOND HEAD, TYGERS OF PAN TANG といった、バンドが、”音楽をやるのは楽しいかもしれない” と思わせてくれたんだ。それが目標だったんだ。James と俺が音楽を作り始めると、自分たちが求めていたものと同じようなもの、つまりメタルに没頭することを求めている人たちがもっといることに気づいたんだ。当時は世界の仕組み上、誰も知らなかったけど、俺らと同じようなはみ出し者や不適合者、権利を奪われた一匹狼が世界中に何百万人もいて、同じものを探していたんだよ!」

ヘヴィ・メタルは Lars にとって外の世界に初めてできた “家” でした。
「俺は一人っ子なんだ。バンドをやっているのは、他の人と一緒にいたいからなんだよ。幼いころは確かに一匹狼で、仲間はずれにされ、大きなクラブに所属したこともなく、注目の的だったこともない。いつも1人で外をウロウロしていたんだ。テニスをしていたけど、テニスは孤独なスポーツだ。俺は多くの時間を壁に向かってプレーしたり、ボールマシンでプレーしたりしていたからな。学校へは、他の子供たちと一緒にバスに乗るよりも、自転車で通うことにしていた。だから、バンド、グループ、集団、ギャング……どんな呼び方でもいいけど、俺は常に帰属意識を持ちたかったんだ。
昔は不器用で孤立した一匹狼の子供だったけど、バンドという環境に飛び込んだ。だから、ミート&グリートや、人と一緒にいること、昔はパーティーなど、社会的な要素はすべてその後に生まれたものだ。同じ志を持ち、抑圧されたメタル・ヘッズたちと一緒にいることで、”うわ、俺たちはこんなにたくさんいるんだ” と感じたんだよ。バンドを結成した当初は南カリフォルニアで、俺と James、そしてごく初期に一緒に演奏した数人のメンバーでスタートしたんだ。その後、サンフランシスコに移り、そこのスラッシュ・シーンの一員となった。そこから、メインストリーム以外のミュージシャンやメタル・ファンにどんどん出会っていった。人とのつながりを求めるのは、間違いなく俺の道だ。それは、一人っ子であることから始まった。でも、誰にでも自分なりの道があるものだよ。君にもきっと、自分なりの道があるはずだ」
Lars は、まだクラブで演奏していたころの PANTERA と知り合い、その仲を深めてきました、
共演も控えています。
「”Ride The Lightning” のツアーで兄弟に会って、友達になったんだ。ダラスでのことだよ。二人とも大好きで、テキサスには仲間もいて、テキサスを通るときはいつも会っていたよ。バンドがロック的な雰囲気から、クリエイティブでユニークな力へと進化していくのを、俺たちは何年もかけて見てきたんだ。だから、何十年も彼らとの関係を保ってきたんだ。”Walk” が好きでね。彼らが PANTERA の音楽と魔法を祝うという考えは……人々がそれを支持するかどうかについて、コミュニティで多くの話があるのは知っている。でも、俺はグレン・ヒューズが DEEP PURPLE のセットで演奏したいと言ったら、それを支持するタイプなんだ。だから、PANTERA の再結成はいいことだと思うんだ。Charlie が参加するのも素晴らしいことだ」
そして約40年後の今、ベイエリア出身のはみ出し者たちが、何百万人もの世界中のオーディエンスに接続され、真っ暗な闇の中から希望と光のメッセージを語っているのです。METALLICA の軌跡は、二度と繰り返すことのできない伝説であり、世代を超えたものでありながら、今だに1981年にバンドを始めた10代の若者たちの血と汗と涙が燃料となっているのです。
さて、Lars は72シーズンを終えた18歳の自分にどんなアドバイスをするのでしょうか?
「長髪を楽しめ。30代になったら前髪は消えてしまうし、あの大きなデニッシュのおでこは、一生目立つビジュアルになるんだから!」


参考文献: KERRANG! :Metallica: “In the past every single thing had to be fought over… now the band is a safe space and everyone is very protective of it”

REVOLVER:INSIDE ’72 SEASONS’: METALLICA’S JOURNEY FROM “METAL ROBOTS” TO OPEN-HEARTED FAMILY

CONSEQUENCE SOUND : Letter from the Editor: The Metallica Consequence Cover Story

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COVET (YVETTE YOUNG) : CATHARSIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YVETTE YOUNG OF COVET !!

“I Would Not Be Alive Today If Not For Guitar!”

DISC REVIEW “CATHARSIS”

「私にとって音楽とは、喜びや悲しみ、怒りなどの感情を吐き出すこと。カタルシスなの」
2010年代にマスロックイーンとして華々しくシーンに登場したイヴェット・ヤングは、CHON, POLYPHIA, PERIPHERY といったバンドとともに時代の寵児として新しいギターの波を起こしました。音楽的な多様性と機材的な野心の革命。そんな中で、まだまだ女性の少ないギター・ワールドにおいて、彼女のずば抜けたテクニックとマルチな才能、そしてキュートな容姿は多くのファンやアーティストを魅了し、さながら”ギタサーの姫”としてシーンを席巻したのです。しかし、どんなお姫様も永遠に夢見る少女じゃいられません。
嵐が巻き起こったのは、2020年のことでした。PERIPHERYのマーク・ホルコムと恋愛関係となったイヴェットは、後に彼が既婚であることを知り正直に事の顛末を話したものの、マークの酷い行いのみならず彼のファンベースからも誹謗中傷を受け、セラピーに通わざるを得ないほどに傷つきます。同時にパンデミックが世界を襲い、ツアーの機会も奪われました。一方で、あのウィル・スミスの娘Willowとコラボレートを果たし、彼女から世界最高のギタリストの一人と称されるといううれしい出来事もありました。しかし様々な”傷”と”歪み”は最終的に、彼女の”ホーム”であるバンドCOVETの瓦解へと繋がってしまいます。
「正直、このアルバムの制作過程はとても困難なものだった。シンプルに言えば、私はCOVETをやめたいと思うようになった。本当に、新たなスタートを切るか、このプロジェクトを完全に破棄するかどちらかだとね。だから、ベースのブランドン・ドーヴ、ドラムのジェシカ・ブルデーとともに”再生”を行うことができるのは、私の人生でとてもポジティブなこと。もう、過去のCOVETのネガティブなことには触れたくないの」
バンドの中で何かがあったのは明らかです。しかし、私たちがそれを知る必要はありません。イヴェットがCOVETに再び前向きになり、灰の中から”Catharsis”という美しい復活の火の鳥を届けてくれた。その事実だけで充分でしょう。そう、これは輝かしいアイドルが成熟したアーティストへと生まれ変わるレコード。そのために必要だったのが、喜びも悲しみも含めた”テクニカラー”な経験で、彼女はそれを今回”カタルシス”として吐き出していったのです。
「このアルバムがあなたを旅に連れ出すことを願うわ。アルバムのテーマはファンタジーへの逃避。音楽は私にとって常にエスケープであり、セラピーの源でもある。この音楽がみんなをどこかに連れて行き、想像力をかき立て、少なくとも何かを感じさせてくれることを私は願っているの」
成熟したアーティストとして、イヴェットが最初にリスナーへと提供したのは、暗い現実、癒えない傷からの逃避場所でした。それは、イヴェット自身、痛みや傷から逃れる手段として、音楽やギターに頼っていた経験があったから。
「ギターがなかったら、今生きていないわ!(笑) 。4歳の時にクラシックピアノ、7歳の時にヴァイオリンを始めたんだけど、プレッシャーが大きくて、体調をひどく崩してしまったの。入院中にギターを独学することにしたんだけど、そのおかげで自尊心が芽生え、自分にはないと思っていた “声” があるように感じさせてくれたの。今でもギターは私にとって神聖なもの。だから、楽器や芸術を通じて、自分の声やアイデンティティ、自己表現を探求することを奨励したいと思っているのよ。私の音楽を聴いたりしてね。そうなれば、多くの命を救うことができるし、人々が世界で孤独や迷いを感じることが少なくなると思うから」
実際、このアルバムを聴いて現在、そして未来においても救われる人は多いでしょう。アートは異世界への扉を開く鍵であり、未来へと続く道。COVET は、独創的なギター、絶妙なアレンジ、予測不可能なリズム、ダイナミックな”音声”によって、臨場感あふれる生き生きとした音世界を作り出していきます。その音色、メロディー、グルーヴは、映画のヒーローやヒロインのように生き生きとしたファンタジックな楽曲のキャラクターを呼び覚ますのです。
「音楽やビデオゲームは逃避のための器にも思えるわ。この世界には多くの問題があるけど、社会問題の解決や地球の修復に力を注ぐ代わりに、テクノロジーを使って代替現実や”より良い世界”を築こうとする傾向があるようね。この曲は、そんなメタファーで、人々がに逃避するための代替現実のようなもの。虚空に飛び込み、幻想的なサウンドスケープの世界へと浸れるようなね」
近年、盟友ともいえるPOLYPHIAのティム・ヘンソンが、その真意は測れないにしろ、ロックやメタル、ギター・ミュージックを時代遅れだと考え、流行とヴァイラルを追う姿勢を少なからず打ち出しています。イヴェットはロックとギターの未来についてどう考えているのでしょうか?
「人気者になることやヴァイラルを得ることは、私の芸術を蝕むと思う。私は自分のために音楽を書き、ギターを弾いているから。それが私の神聖な場所。私の人生を救ってくれた場所。だからもし、人の評価を気にし始めたら、私の書く音楽は本物ではなくなってしまうでしょう。どんなジャンルにも、収まるべき時と場所がある。どんな音楽でも時代遅れだとは思わないし、メタルやロックに見切りをつけるのはフェアではないと思うわ。私はただ、私の音楽で希望が湧いたとか、ギターを手にしたと言ってくれる人がいるととてもうれしいの。不安や痛み、時には抑圧的な現実から逃れるために音楽や芸術に頼ってほしい。そうして、音楽やアートを使って、こんな世界があったらいいなと思うような理想の世界へと旅立つの。音楽はとてもパワフルで、例え歌がなくてもみんなを高揚させ、共感させることができるのだから」

YVETTE YOUNG 弊誌インタビュー 2020

COVET “CATHARSIS” ライナーノーツ4000字完全版は4/21に  P-VINE からリリースされる日本盤をぜひ!!

COVET “CATHARSIS” : 10/10

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