EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAMIE SAINT MERAT OF ULCERATE!!
“We Knew Early On That We Needed To Capitalise On a Far Greater Sense Of Melody Than We Ever Had Before, And Really Challenge Our Own Intuitions.”
DISC REVIEW “STARE INTO DEATH AND BE STILL”
「早い段階で、これまでよりもさらに強くメロディのセンスを活用して、自分たちの直感に挑戦する必要があると気付いたんだ」
テクニカルかつアトモスフェリックなデスメタルとして高い評価を得ているUlcerate。その6作目となる『Stare Into Death And Be Still』は、彼らにとっては挑戦的な作品となりました。20年以上のバンド生活で養った本能は、いつしか「混沌」や「醜さ」「汚さ」に偏っていたようです。その偏りを「雪崩のように大量の素材を書いては捨てた」ことで洗い流したあとに芽生えてきた、異質なリフやパターン。そこには「力」や「美しさ」「明瞭さ」がはっきりと宿っていました。
彼らはその異質さをしっかりと捉え、さまざまな角度から強化していきます。もっともわかりやすいのがプロダクションの方向性でしょう。「今回のライティングとプリプロダクションの哲学は、混沌よりも力を優先すること」。そう語るJamieのことば通り、本作の音は明瞭で太く、暖かみさえ感じます。また、彼のドラミングにも変化がありました。メタルからジャズ、ファンクと、さまざまなジャンルのドラマーからそのスタイルを吸収してきたエクストリームメタル界きっての名手の彼ですが、本作では人生の大半をかけて磨いてきたそのテクニックを抑制し、曲そのものを活かすパフォーマンスを志向したのです。
彼らにとっては挑戦的なこうした変化は、リスナーにとってはむしろ“親しみやすい”作風に変化したと感じられるかもしれません。ただし、その親しみやすさは『Stare into Death and Be Still』というタイトルに接続しています。「死への畏敬」。死は常に突然に、暴力的にやってくるものではなく、ときには冷静にはっきりと観察せざるを得ない。そうした「穏やかな恐怖」とでもいうべき感情が、そしてそれに立ち向かうための意志が、「混沌」から「力」へと向かった彼らの作品には宿っています。
「もし『音としてはよいが意味がわからない』歌詞だったり、テキストとしては出来がよくてもフレーズがひどい歌詞だったりしたら、何の役にも立たないからね」。その通り、本作のテキストとそのサウンドは、楽曲と高度に一致しています。
このように、彼らは各要素を綿密に調整して作品を作っています。しかし、その綿密さは、あくまで彼らの精神と肉体から生み出されたものでなければなりません。「自分が演奏しているものが最終的な品物であること意識する」。コンピューターによる演奏の修正や数値管理を否定し、ライン入力ではなく部屋録りを志向する彼らの作品が、整理されたテクニカルさではなく、うねるようなグルーヴと、真に迫るアトモスフィアをまとっているのはうなずけます。
曲、歌詞、演奏、レコーディング、プロダクション……彼らの哲学のもとに、それらすべてが生々しく一体化したデスメタルの名盤がここに誕生しました。今回弊誌では、ドラマーのJamie Saint Meratにインタビューを行うことができました。「完璧は芸術の敵だ」。どうぞ!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TREVOR STRNAD OF THE BLACK DAHLIA MURDER !!
“We Did Come Up During The Age Of Swedish Influenced Metalcore ala As I Lay Dying, Unearth, etc And Did Get Lumped In With That Genre a Lot But I Don’t Personally Believe We’ve Ever Been That. It’s Always been Death Metal To Me. “
DISC REVIEW “VERMINOUS”
「僕たちが登場したのは AS I LAY DYING とか UNEARTH のようなスウェーデンの影響を受けたメタルコアが勃興した時期だったね。そして確かにメタルコアのジャンルによく分類されてきたよ。
だけど、個人的には僕たちがメタルコアだったことはないと信じているんだ。ただずっとデスメタルであり続けただけなんだ。」
THE BLACK DAHLIA MURDER のおよそ20年のキャリアは、誤解を振りほどくための飽くなき闘争だったのかもしれません。無残な猟奇事件の被害者、ブラックダリアの名を冠するデスメタルバンドにとって、登場した時期、場所、人脈すべてが本質とは少しずつかけ離れ理想と乖離しながら得た名声は、70年前の事件と同様ミステリーだったのかも知れませんね。
ただしバンド、いやもやはメタルシーン全体のご意見番として定着した Trevor Strnad がデスメタルのタグに拘るのは、メタルコアのフォーミュレイクな音楽性云々以前に、アンダーグラウンドメタルへの深い愛情が理由であるはずです。
「だって僕たちはアンダーグラウンドミュージックを愛しているからね。僕たちの音楽はアンダーグラウンドミュージックへのトリビュートさ。僕たちが達成した成功は、自分たち自身の条件に妥協することなく基づいているからね。」
BRING ME THE HORIZON が恐れなきその眼差しでジェネリックポップを抱きしめ自らの理想をメタルの新聖歌へ昇華したのとは対照的に、THE BLACK DAHLIA MURDER はエクストリームであり続けアンダーグラウンドを追求することで自らの理想を鋼鉄の大樹へと刻むのです。
「僕たちのメタル文化は社会の大部分から過小評価されているけど、計り知れない強さを持ち、宗教の束縛なしで自由に生きることができるコミュニティーなんだ。」
Trevor にとって、理想的なメタルヘッズとは今でも主流の対岸に位置し、偏見なく音楽ひいては社会の常識や欺瞞を疑う監視者。つまり、権力や主流派にとっては知識という疫病を運ぶ害虫であるべきなのでしょう。ゆえに、当然 “Verminous” “害虫” の名を冠した最新作は新たな反抗の幕開けです。
「僕はこのバンドが何年もかけてより3次元的なサウンドへ、自然に進化を遂げていったと思っているんだ。だから今ではバンドとしてダイナミズムを出すために何をするべきか完全に理解しているんだよ。まさに多様性の力だね。」
あの運指マシーン Ryan Knight を凌ぐほどに燦然と輝く Brandon Ellis の加入と共に前作 “Nightbringers” で芽生えた創造の羽は、”Verminous” において漆黒の大翼として下水道の闇に君臨します。
皮肉にも、”形式的” “一辺倒” を揶揄するために TBDM を含むかつてのメタルコア一派が称された “任天堂サウンド” は、彼らの臓腑の奥底でゲーム音楽が本来有するダイナミズムと万華鏡の音の葉を強調し始めることになったのです。
「確実に僕の書く歌詞はロールプレイングゲームのファンタジーサイドから影響を受けているよね。任天堂のクラッシックなゲーム音楽はメタルと様々な相似点が存在するし、僕たちが書いている音楽もそこから影響を受けているんだよ。」
ドラマティックでシネマティック、より感情的に喚起される作品が書きたかったと語る Trevor。実際、”Verminous” は切り裂きジャックや吸血鬼が主人公ですが、彼が敬愛するドラゴンクエストやファイナルファンタジーに勝るとも劣らないファンタジックな猟奇譚で、好奇のローラーコースターでしょう。
メロディックデスメタルはもちろん、スラッシュ、プログレッシブ、クラシカル、さらにはドゥームの鼓動まで感じさせるレコードのカラフルでムーディー、カリスマティックなイメージは、洗練と地下水脈をまたにかける THE BLACK DAHLIA MURDER にのみ許された秘伝、調合の魔法に違いありません。同時に、体内の害虫は貪欲にに肌を食い破り、変わらぬ凶暴を見せつけるのです。
今回弊誌では、Trevor Strnad にインタビューを行うことができました。「僕は特にレトロゲームを愛しているんだ。フェイバリットは、ドラゴンクエストとファイナルファンタジーシリーズだね。昔の16bit とか 8bit の時代が大好きなのさ。
ゲーム機ならファミコン、スーパーファミコン、メガドライブ (セガ) が絶対的に好みだね。中でもオリジナルのファミコンが最高さ!」 どうぞ!!
COVER STORY : MY DYING BRIDE “THE GHOST OF THE ORION”
“Tired Of Tears Was Exactly How I Felt. They Had Been Flowing Freely From Me For Months And I Was a Shadow Of My Former Self. It Is Sad That This Will Continue For Many Others. Innocent People. So Very Tired Of Tears.”
HOW GOTHIC DOOM LEGEND TURNS DARKNESS INTO LIGHT
PARADISE LOST の “Gothic” こそがゴシックメタルの幕開けを告げたレコードであることに異論の余地はないでしょう。
以来、ミルトンの失楽園に啓示を受けた荘厳耽美の象徴は、”Icon”, “Draconian Times” とメランコリーの金字塔を重ねることとなりました。そうして、90年代というメタルの実験室は多種多様なゴシックの重音楽を創造することになるのです。
ゴシックメタルの総本山 Peaceville Records は、その PARADISE LOST, ANATHEMA, そして MY DYING BRIDE の通称 “Peaceville Three” を世紀末の世界へと送り出しました。さらにデスメタルから分岐した SENTENCED や TIAMAT、しめやかな女声をメインに据えた THEATER OF TRAGEDY, THE GATHERING と漆黒に広がる色彩の中でも、ヴァイオリンとクラシカルに沈む暗海 MY DYING BRIDE のゴシックメタルは飛び抜けてドゥーミーな陰鬱だったと言えるでしょう。
創立メンバーで出戻りの Calvin Robertshaw とドラマー Shaun Taylor-Steels がレコーディングの直前にバンドを離れました。
「もっと重要なこと、娘の治療に気を取られていたから、メンバーの離脱を気にかけている暇はなかったね。だから Andrew が Calvin がまた辞めたと言ってきても正直どうでも良かったんだ。幸運にも早めに出て行ってくれたから “The Ghost of Orion” のための彼の素材はそんなに残っていなかったんだけど、後からお金を請求されても嫌だから Andrew が全て書き直したよ。ギタリストなら自分のリフが全て採用されるほうが幸せってもんだ。前のアルバム “Feel the Misery” も Hamish Glencross がレコーディング前に辞めたから同じ状況だった。あのアルバムのレビューはこれまでよりポジティブだったから、Andrew が素晴らしいソングライターであることはすでに証明されているからね。
Shawn の場合、エンジニアの Mark が ex-PARADISE LOST の Jeff Singer を知っていて、僅か2週間で全てを覚えて素晴らしいドラミングを披露してくれたんだ。
もちろん、過去にメンバーが去った時は少しイラついたかもしれない。だけど今回私は別の次元にいたからね。ある意味 MY DYING BRIDE との繋がり自体、少し希少になっていたから Andrew はストレスが溜まっただろうな。メンバーが去ったと慌てても、私は肩をすくめて知らないよと言うだけだったから。」
レコードで最も荘厳にエモーショナルに織り上げられた “Tired Of Tears” は文字通り娘の罹患に枯れ果てた涙の結晶。
「この楽曲は僕の人生で、最も恐ろしくストレスが溜まった時期を扱っている。唯一の子供が死に近づいたんだから。これまでも落ち込んだことはあったけど、これほどではなかったよ。真の暗闇でどう対処して良いのか全くわからなかった。それでも全力を尽くして戦おうと決めたんだ。涙が枯れ果てたとはまさに私が感じていた気持ちだ。何ヶ月も涙が自然と溢れ続けたんだ。」
結局、MY DYING BRIDE のあまりに長く、思索を誘う悲嘆のセレナーデは現実という葬儀の行進を彩る葬送曲です。Andrew によると、「悲惨な楽曲は現実の生活に対処するための準備でありカモフラージュ」なのですから。
MY DYING BRIDE は Peaceville Records と最も長く契約したバンドでしたが、”The Ghost of Orion” で袂を分かち Nuclear Blast と新たに絆を結びました。
「Peaceville を離れたのは時間が理由だったと思う。彼らは私たちのために出来得る限り全てをしてくれたし、完全なる芸術的自由を与えてくれたね。だけど私たちはもっと多くのものを提供したかったし、コミュニティーにおける存在感もさらに高められると感じていたんだ。Peaceville はその渇望を満たすことが出来なかった。Nuclear Blast ほどの巨大なレーベルなら実現が可能だからね。
新たなレーベルと契約し、新たなメンバーを加えて、私は MY DYING BRIDE が蘇ったように感じているんだ。新鮮な空気を吸い込みセカンドチャンスが与えられたようにね。”The Ghost of Orion” は最高傑作に仕上がったと思うし、再びエネルギーを充填して、より大きく、より素晴らしい音楽を生み出すバンドを目指していくんだよ。」
“The Ghost of Orion” は MY DYING BRIDE 史上最もキャッチーでアクセシブルだとメンバー、リスナー、評論家全てが評しています。その変化は存在感を高めるため?それともレーベルの影響?もしくは娘の回復が理由でしょうか?
「全ては意図的に行われた変化だよ。Peaceville 時代の後期からすでによりレイドバックした “イージーリスニング” なアプローチは検討されていたんだ。過去の私たちがそうであったように、若いころは強い印象を与えようとするからね。私たちも4回リフを繰り返して自然に他のパートへ移行する代わりに、ただ驚かせるためだけに同じリフを7回半ひたすらプレイしたりしていた。技術的に優れていることも証明したかったんだと思う。だけど、それはもう過去にやったことだ。今は何も証明する必要もない。
だからこのアルバムにはギターとボーカルのハーモニーがたっぷり含まれているんだ。ダブル、トリプル、時には4重にも重ねてね。さらにコーラスも存分に取り入れて聖歌隊の雰囲気を与えたよ。
ただ、あくまで MY DYING BRIDE 流のコマーシャルさ。だってシングル曲 “The Old Earth” にしたって10分あるんだからね。一般的なコマーシャルとはかけ離れている。それでも、耳に優しいのは確かなようだ。メタルに詳しくない友人が “Your Broken Shore” を褒めてくれたのは嬉しかったよ。つまり新たなファンを獲得しているってことさ。
もちろん、リッチなコーラスに不満を言うファンはいるだろう。でも私たちは新たなチャレンジを楽しみ、前へと進んでいるんだからね。」
新たな挑戦と言えば、チェロ奏者 Jo Quail と WARDRUNA の女性ボーカル Lindy-Fay Hella がゲスト参加しています。チェロはバンド史上初、女声も “34.788%…Complete” 以来初の試みです。
「アルバムを制作していくうち、特別な作品へ発展していることに気づいたんだ。それで私たちだけで仕上げるよりも、他の質の高いミュージシャンを加えて最高のアルバムに仕上げるべきだと思ったのさ。真に際立った2人の女性が、その才能で素晴らしいパートを加えてくれたんだよ。」
今や様々な分野のアーティストに影響を与える立場となった MY DYING BRIDE。では Aaron Stainthorpe その人はどういった芸術家からインスピレーションを受けているのでしょうか? CANDLEMASS と CELTIC FROST は彼にとっての二大メタルバンドです。
「”Nightfall” の暗闇は私の中で生き続けるだろうね!実に巧みに設計されていて、最初から最後まで過失のないレコードだよ。特にボーカルがね。CELTIC FROST なら “Into The Pandemonium” だよ。このバンドが支配するアンビエンスと真の狂気は私にとって純粋に詩的なんだよ。アートワークも素晴らしいよね。」
同時に DEPECHE MODE と DEAD CAN DANCE も当然彼の一部です。
「DEPECHE MODE を愛するメタルヘッドは決して少なくないよ。だって終わりのない落胆と陰鬱が存在するからね。私はアルバムだけじゃなく、12インチ7インチを出来る限り購入していたね。ファンクラブのメンバーにも入っていたくらいだから。
DEAD CAN DANCE で私が最初に聴いた CD は “The Serpents Egg” で、これは長年にわたって個人的なお気に入りなんだ。新しい歌詞や詩を書きたい時に聴きたくなるね。 モダンで厳格な心持ちから、望んでいる温かく創造的な雰囲気に変化させてくれる。このLPは、そうして “言葉の食欲” が落ち着くまで繰り返されるわけさ。」
さらには SWANS まで。「Michael Gira の心は複雑で、その創造的な成果は特に SWANSに現れている。Michael の提供する複雑なリリックと楽曲は、時に不快だけど喜びで価値があるものだ。何が起こっているのかわからないけど、魅力的で戸惑うほど美しい。」
そうした Aaron の才能はいつか小説や映画を生み出すのかもしれません。
「いつか映画を撮るかもしれないね。大きな映画館じゃ上映されないような作品さ。2020年のベストフィルムは “The Lighthouse” だよ。4K やフルカラーで撮影されなければ映画じゃないように思われているかもしれないけど、実際はそうじゃない。」
今年はバンドにとって3枚目のアルバム、マイルストーン “The Angel and The Dark River” の25周年です。興味深いことに、名曲 “The Cry of Mankind” は僅か2時間半で全てが完成した楽曲です。
「Calvin が適当にギターを触っていて、残りのメンバーは無駄話をしていた。でも彼のフレーズの何かが私たちの耳を捉えたんだ。そこから全員で一気呵成に仕上げていったね。こうやって自然と出てくる曲はそれほど多くはないよ。通常は誰かが「私に3つのリフがある。さあここから他の楽器で装飾し楽曲を作ろう」って感じだから、何もないところから作られて絶対的なリスナーのお気に入りになったのは最高だよ。ファンがその曲を愛しているんだから、すべてのギグで演奏しなければならないと思う。」
Aaron と Andrew は唯一のオリジナルメンバーで、その付き合いは30年を超えています。
「私たちは老夫婦のようなものさ。 両方とも同じものを望んでいる。それに私だけがオリジナルメンバーではないのが嬉しいんだよ。親愛なる人生のために、他の誰かがまだそこに留まっているのは素晴らしいことだからね。 もし Andrew が辞めたら、私もタオルを投げるだろうな。彼も同様のことを言っているがね。なぜなら私たちは自分からは辞めると言いたくないんだよ。だから長く続くかもしれないね!私はまだもう10年は続けられると思う。」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHASE MASON OF GATECREEPER !!
PHOTO BY PABLO VIGUERAS
“Gatecreeper Started When I Met Our Drummer, Matt, And Discussed Our Shared Love For Old School Death Metal. We Both Talked About Dismember And Decided To Start a Band. Our Formula Has Always Been The Same Since The Beginning.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ISAAC FAULK OF BLOOD INCANTATION !!
“I Believe That Questioning Mainstream Archaeology, Even If The End Goal Isn’t Proving The Existence Of Aliens, Is a Great First Step To Questioning Everything We Have Been Taught About Our Own Society.”
DISC REVIEW “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE”
「僕たちの音楽、アートワーク、歌詞の主な目標は、人々に先入観を疑わせることなんだ。音楽的にだけじゃなく、概念的にも限界を押し広げることが重要なんだよ。そのため、エイリアンや次元を股にかける存在だけじゃなく、何かにインスパイアされて自分自身の内なる世界を拡大することもまた重要なテーマなんだ。」
宇宙、異次元、エイリアンをビッグテーマに “アストラルデスメタル” の称号を得る BLOOD INCANTATION は、しかし自らの存在や哲学を “サイエンスフィクション” の世界に留め置くことはありません。SF を隠喩や象徴として扱う “デス・スター” 真の目的は、現実世界のリスナーに森羅万象あらゆる “常識” に対して疑問を抱かせることでした。
「主流の考古学に疑問を呈することは、例え最終的にエイリアンの存在を証明出来なかったとしても、僕たち自身の社会について教えられてきた全てに疑問を投げかける素晴らしい第一歩だと思うんだよ。」
BLOOD INCANTATION の叡智を司るドラマー Isaac にとって、ギョペグリ・テペやギザのピラミッド、ナスカの地上絵が宇宙人の創造物であろうがなかろうが、究極的にはどちらでも構わないのかも知れませんね。なぜなら、彼の最終目標は宇宙よりも未知である人の心、暗く危険な内部空間の探索にあるからです。
Isaac は現在の人間社会、政治システムを完全なる実験の失敗だと捉えています。故に、この文明社会こそ人類の最高到達点で良好な進歩を遂げているという固有概念に疑問符をもたらすため、寓話的に SF を使用しているにすぎないのです。
「僕たちの新しいレコードは、人類という種が記憶を失っていて、その過去はまだ明らかにされていないという概念に焦点を当てているんだ。」
“Hidden History of the Human Race” で描くのは忘却の彼方に追いやられた人類の隠された歴史。大胆不敵な宇宙旅行者が作成する、失われた古代の歩みを取り戻すアストラルレコードの使命は、そうしてデスメタルとプログレッシブのロマンを取り戻す旅ともリンクしていきます。
「僕はね、”プログレッシブデスメタル” ってタグはあまり気に入っていないんだよ。だってそこに分類されるバンドの大半が、僕がプログレッシブロックがもともと志していたと考える音楽をプレイしていないんだからね。」
プログレッシブの名を冠しながら、モダンなテクニックの博覧会を志向する昨今のバンドとは一線を画す BLOOD INCANTATION のロマンチシズム。それは YES, PINK FLOYD, RUSH, KING CRIMSON といった神代の巨人への憧憬を根源としています。
“Echoes”, “Close to the Edge”, “The Gates of Delirium” といったプログエピックを指標した18分の異次元探索 “Awakening from the Dream of Existence to the Multidimensional Nature of our Reality (Mirror of the Soul)” を聴けば、そこに古の技術やイデアを元にした音のペイガニズムが存在することに気がつくはずです。
同時に、テクニカルデスメタル、ブルータルデスメタル、デスコア等の台頭により次元の狭間に埋もれた “OSDM” オールドスクールデスメタルの “レコンキスタ” を司る十字軍の役割も忘れるわけにはいきません。
HORRENDOUS, TOMB MOLD, GATECREEPER を従え津波となった OSDM リバイバルの中でも、BLOOD INCANTATION の映し出す混沌と荘厳のコントラスト、プログの知性やドゥームの神秘まで内包する多様性は傑出しています。その理由は、GORGUTS を筆頭に、DEATH, CYNIC, DEMILICH といったデスメタルに異世界を持ち込んだ異形の “血の呪文” を受け継いでいるからに相違ありません。
逆説的に言えば、ブラックメタルやドゥームメタルほど神秘や謎、アトモスフィアを宿していないデスメタルの領域でその世界の “DEAFHEAVEN” を演じる事は簡単ではないはずです。しかし、”Inner Paths (to Outer Space)” に内包された爆発的なエネルギー、リフノイズの海に鳴り響く美麗邪悪なアコースティックギター、複雑怪奇なフレットレスベースの胎動、アナログアンビエントな音の葉を浴びれば、彼らの野心が文字通りコズミックに拡大を続ける宇宙であることに気づくでしょう。
今回弊誌では、Isaac Faulk にインタビューを行うことが出来ました。「プログレッシブロックとは、様々なジャンルを過去のスタイルから生まれ出るテクニックと融合させ、異なる方向へと導くような音楽だよ。」 音楽にしても、時に “メインストリーム” に疑念を抱くことはきっと必要でしょう。どうぞ!!
BLOOD INCANTATION “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE” : 10/10
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAN MULLER OF WILDERUN !!
“Epic Is Probably The Most Encapsulating Word You Could Use But I Feel Like It Still Leaves Out Some Of The More Progressive And Experimental Sides Of Our Music.”
DISC REVIEW “VEIL OF IMAGINATION”
「”エピック” はおそらく最も僕たちの音楽を要約した言葉だけど、ただ僕たちの音楽にあるいくつかのより進歩的で実験的な側面をそれでもまだ除外しているように感じるね。」
虚空に七色の音華を咲かせるフォーク-デス-ブラック-アトモスフェリック-シンフォニック-プログレッシブ-エピックメタル WILDERUN は、ジャンルという色彩のリミットを完全に排除してリスナーに名作映画、もしくは高貴なオペラにも似て胸踊るスペクタクルとドラマティシズムをもたらします。
「OPETH の音楽には特に昔の音源でダークな傾向があるんだけど、WILDERUN には常に見過ごされがちな明るく豊かな側面があったと思うんだ。」
時にアートワークから傑作を確信させるレコードが存在しますが、WILDERUNの最新作 “Veil of Imagination” はまさにその類でしょう。アートワークに咲き誇る百花繚乱はそのまま万華鏡のレコードを象徴し、”陽の”OPETHとも表現されるブライトでシンフォニックに舞い上がる華のモダンメタルは、シーンにおける “壮大” の概念さえ変えてしまうほど鮮烈なオーパスに仕上がりました。
「僕たちが様々な種類の音楽をブレンドする際に使用した最も重要なテクニックとは、単にストレートなフォークセクションをプレイしてから、お決まりのブラックメタルパートを始めるって感じじゃないんだよ。その代わりに、メタルと非常に異なるスタイルの音楽にしか存在しないと思われる特定の作曲テクニックを分析し、それをどうメタルの文脈に適応させるのか探っていったんだ。」
ベーシスト/オーケストレーター Dan Muller が語る通り、WILDERUN の多様性は単純な足し算ではなく複雑な掛け算により無限の可能性を見出しています。様々なジャンルの本質を抜き取り、その膨大なコンポーネントを最適に繋ぎネットワークを構築する彼らのやり方は、さながら人間の神経系統のように神々しくも難解な神秘です。
中でも、シンフォニックなアレンジメントは作品を通じて情炎と感奮、そして陶酔をもたらす WILDERUN のシナプスと言えるのかも知れませんね。メタルをはじめとした豊かな音の細胞は、優美でドラマティックなオーケストレーションにより有機的に結合し、思慮深くシームレスに互いを行き来することが可能となるのです。
オープナー “The Unimaginable Zero Summer” はその進化を裏付ける確固たる道標に違いありませんね。語りに端を発する抽象的かつファンタジックな15分の規格外に、目的のない誘惑など1秒たりとも存在していません。
オーケストラの名の下に、無慈悲なデスメタルからメランコリックアコースティック、浮遊するエレクトロニカ、オリエンタルな重量感、絶佳なワルツの大円団、そしてエセリアルなピアノのコーダまで、秩序と無秩序の間で悠々と整列した音の綺羅星はいつしか夜空にプログレッシブな夏の星座を映し出しているのです。WILDERUN に宿る平穏と焦燥の対比を完膚なきまでに描き象徴する Evanのボーカルレンジも白眉。
クライマックスは中盤に。”Scentless Core (Budding)” に蒔かれたエピックの種は、”Far From Where Dreams Unfurl” の青葉としてエアリーかつメランコリックな大合唱で天高く舞い上がり、”Scentless Core (Fading)” で老獪な叙情の花を咲かせるのです。まるでアルバムのテーマである無邪気から退廃へ、人の歩みを代弁するかのように。
例えばプログレッシブデスメタルなら “Blackwater Park”、シンフォニックエピックメタルなら “Imaginations From The Other Side”、オリエンタルフォークメタルなら “Mabool”。ファンタジックで知的なメタルには各方面に絶対のマイルストーンが存在します。しかし “Veil of Imagination” はOPETH よりも華やかに、BLIND GUARDIAN よりも多様に、ORPHANED LAND よりもシンフォニックに、数ある傑作の交差点として空想力に創造性、好奇心、そして多様性のモダンメタル新時代を切り開くのです。
今回弊誌では Dan Muller にインタビューを行うことが出来ました。「少なくとも僕にとってこのレコードの歌詞のゴールは、世界を実際あるがままに見せることなんだ。みんなの心の目を再度トレーニングしてね。」2度目の登場。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BUSTER ODEHOLM OF HUMANITY’S LAST BREATH !!
“Djent Was a Continuation Of What Meshuggah Started. Everyone Added Their Own Flavour To The Sound For Better Or For Worse. Thall Is Just a Word That Sounds Funny In Swedish.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH EMILIO MARQUEZ OF POSSESSED !!
“Seven Churches” Was The Creation Of Death Metal In My Opinion. There Was Never a Band Who Used The Words “DEATH METAL” In Any Song Title Or Claiming That Category When “Seven Churches” Was Released. “Seven Churches” Was Very Raw And Wierd In Structure And Lyrics. Just So Dark For Its Time. Very Unique!”
DISC REVIEW “REVELATIONS OF OBLIVION”
先日、かの Rick Rubin が SLAYER をしてブラックメタルの創案者と呼んだように、ジャンルの朝未きはいつも朧げで、故にそのミステリアスなアルカイックパズルの最適解は常に議論の的となってきました。
1983年に降誕した POSSESSED は “ゴッドファーザー・オブ・デスメタル” の称号を贈られる邪悪の根源。85年にリリースしたデビュー作 “Seven Churches” が、DEATH の “Scream Bloody Gore” をはじめ CANNIBAL CORPSE, DEICIDE, OBITUARY, MORBID ANGEL といったフロリダの魑魅魍魎に少なからず影響を与えたことは想像に難くありません。
実際、今は亡き Chuck Schuldiner は、DEATH の前身バンド MANTAS が当初 VENOM/MOTORHEAD 的な方向性を志向していながら、POSSESSED の登場で全てが変わったことを認めています。
「POSSESSED は当時登場したどんなバンドとも異なっていた。その音楽は純粋なノイズではなく、様々な要素、アイデアを作曲に取り入れていたんだ。彼らの進化は、他のバンドの挑戦や拡大の下敷きとなったんだよ。」
しかし、例え楽曲やデモのタイトルに “デスメタル” の文言を掲げようとも、”Seven Churches” の音楽性は決してデスメタルの完璧な “模範解答” であった訳ではありません。むしろ、スラッシュメタルとデスメタルのダークな架け橋との評価が一般的だと言えるかも知れませんね。ただし、POSSESSED の理念は完璧なまでにデスメタルでした。
「スラッシュはクリーンボーカルで歌われる生々しくファストな音楽だ。決して難しいソングライティングのスタイルではないよ。ブラックメタルも好きだけど、限られた少しのバンドだけだ。なぜならブラックメタルバンドの大半は、サタニックでさえなく、トレンドに追従しているだけだからね。デスメタルはもっともっとチャレンジングな音楽だよ。そしてコンセプチュアルでもある。バラエティー豊かだしね。」
新生 POSSESSED の栄誉あるドラマー職に任命された Emilio Marquez は、ジャンルの交差点に対して鋭い観察眼を発揮します。
確かに、クロスオーバーの禁忌を発動せずとも、デスメタルはスラッシュやブラックメタルと比較してより猟奇でカオスで挑戦的なジャンルであるように思えます。そして、その美学を主導したバンドこそ POSSESSED だったのです。
新生。そう、POSSESSED は不死鳥の如く蘇ったバンドです。後に BLIND ILLUSION, そして PRIMUS を結成する Joe Satriani が一番弟子 Larry LaLonde の絶妙に捻くれ絶妙に知的なギターワークを軸に据え、今では心理学の学位を取得しカウンセラーとなった Mike Sus の奔放で奇々怪界なドラムダンス、Jeff Becerra の狂猛なる咆哮を三位一体の阿鼻叫喚とした10代の POSSESSED は、さながら奇想画のごとくジャンルの脱俗と自我意識を備えた異端でした。
2枚のアルバムと1枚のEPを遺して解散したバンドの復活は2007年。トリビュートアルバムから実現した再起のオリジナルメンバーは Jeff Becerra のみでしたが、それでも車椅子の Jeff が牽引するパフォーマンスはファンの熱狂を呼びました。
そして、それから12年の後に届けられた最新作 “Revelations of Oblivion” には、Emilio の言葉を借りれば “POSSESSED のレガシーをしっかりと受け継いだ” ネクストレベルの無慈悲な倒錯が封じられていたのです。
“Seven Churches” と同様に荘厳な SE で幕を開ける伏魔殿には、確かにあの POSSESSED の背徳が投影されています。GRUESOME や ex-DRAGONLORD でならすシュレッダーをリクルートした効果は絶大で、当時のリフの迷宮はドラマ性とエキサイトメントを充填し迫ります。
もちろんチープだったプロダクションも大きく改善され、Emilio の正確無比なドラムアタックは Sus の異様を懐かしむ暇さえ与えませんし、何より Jeff の鬼気はその迫真を増しています。
特に、スラッシュの疾風とデスメタルの迅雷を共存させた “Demon” の刻々と移りゆくペースチェンジの妙、”Abandoned” や “Shadowcult” の絶妙に捻くれながらもギターハーモニーまで披露するリフドラマは、アップデートされた POSSESSED 2.0 の脅威を見せつけるに充分の攻撃でしょう。
今回弊誌では、Emilio Marquez にインタビューを行うことが出来ました。「僕の考えでは、”Seven Churches” こそがデスメタルを創造したと思うね。実に生々しく、構成や歌詞も風変わりだったよね。あの時代にしてはただ本当にダークだった。とてもユニークだよ!」 偶然にも、近年の KREATOR と非常に近い場所へと着地した可能性もありますね。どうぞ!!