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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SEEDS OF MARY : LOVE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JULIEN JOLVET OF SEEDS OF MARY !!

“I Quite Like “Progressive Grunge”! Actually We Are As Much Fond Of Grunge As We Are Of Prog Music.”

DISC REVIEW “LOVE”

「僕たちは GOJIRA をとても尊敬している。彼らは僕らの世代にとって、まさにフレンチ・メタルのパイオニアだ。彼らは僕たちに進むべき道を示し、フランスのオルタナティヴ・カルチャーにスポットライトを当てる手助けをしてくれた。彼らの音楽は妥協がなく、とてもよく練られている。彼らがこのセレモニーに参加するとは予想外だったけど、今や世界中が彼らのことを知っているよね。それは素晴らしいことだよ」
GOJIRA, ALCEST, IGORRR, BETRAYING THE MARTYRS, LANDMVRKS, DEATHSPELL OMEGA, GOROD, THE GREAT OLD ONES, BLUT AUS Nord。挙げればキリがありませんが
これほど多くの才能あふれる革新的メタル・バンドが揃っていながら、フランスにメタル大国というイメージはこれまでありませんでした。それは、日本と同じく “後追い” の国だったからかも知れませんね。しかし、そんなイメージもついに今年、ガラリと変わることになりました。
オリンピック・ゲームの開会式で、地元フランスの GOJIRA が見せたパフォーマンスはまさに圧巻でした。王宮と牢獄。光と影のコンシェルジュリーを光と影のメタルが彩る奇跡の瞬間は、世界中を驚かせ、メタルの力、フランスのメタル・シーンを羽ばたかせることになったのです。
「僕たちはみんなあの時代に育ったから、より共感しやすいんだ。きらびやかな80年代からダークな90年代へのシフトによって、君が言ったような偉大なバンドが出現した。戦争、大量失業、ウイルス性疾患など、残念ながら僕らの生きる今の時代は90年代に通じると思う。だからこそ、そうしたバンドや音楽の美学は今でもかなり重要なんだ」
ではなぜ、モダン・メタルの力が今、世界中で必要とされているのでしょうか?その答えを、フランスの新星 SEEDS OF MARY が代弁してくれました。煌びやかな80年代からダークな90年代へのシフト。それは、まさに理想を追い求め、追い求めすぎたためにやってきたこの “欲望の時代” への揺れ戻しと非常にシンクロしています。だからこそ、多様でダークな90年代のメタルを原点として育った新たなメタルの形、その審美性や哲学、暗がりに臨む微かな光がリスナーの心に寄り添うのでしょう。
「ALICE IN CHAINS からは常に大きな影響を受けてきた。事実、SEEDS OF MARY として初めて演奏した曲は、”Them Bones” のカバーだったんだからね。今日、僕たちはその影響から解放されて、自分たち独自のものを作ろうとしている。でも、声のハーモニーや音楽にあのダークなムードがあると、リスナーがAICを思い浮かべないのは難しいことだと思う」
ゆえに、彼らの音楽は “プログレッシブ・グランジ” と評されることもあります。ALICE IN CHAINS は間違いなく、グランジの渦の中から這い出でましたが、その本性はメタルでした。あの時代の新しい形のメタルでした。そして、その怪しいハーモニーや不確かなコード、リズムの変質に絶望のメロディはあの時代のプログレッシブであり、見事にあの時代を反映した革新でした。
SEEDS OF MARY はそこに、Devin Townsend, Marilyn Manson, SLIPKNOT, SOILWORK, SOTD, NIN といった90年代の代弁者を取り揃えながら、より現代的な手法や趣向に PINK FLOYD のサイケデリアを散りばめることで見事に20年代の暗がりを表明します。
音楽の流行に圧倒されることなく、”種” をまき、収穫する。暴力的で、幽玄で、特定の難しい彼らのサウンドは、内省的な歌詞とありのままの感情の肯定によって、急速に強く成長していきます。
今回弊誌では、Julien Jolivet にインタビューを行うことができました。「僕たちは皆、間接的に日本文化の影響を受けているんだよ。みんなレトロなビデオゲームをプレイしたことがあるし、Jeremy はクラシックな日本映画をよく観ている。アニメやマンガは僕の人生の大部分を占めているよ。アニメの音楽(たとえば “AKIRA”)や菊池俊輔のような作曲家は、間違いなく僕に影響を与えているね」 どうぞ!!

SEEDS OF MARY “LOVE” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【JERRY CANTRELL : I WANT BLOOD】


COVER STORY : JERRY CANTRELL “I WANT BLOOD”

“I Felt Like I Was Operating At The Top Of My Abilities As a Singer, For Sure. I Think I’m Growing. I’m Trying To Get More Consistent At Everything. That’s The Goal”

I WANT BLOOD

「私はこのレコードのファンだ。もし私が私でなく、ALICE IN CHAINS のメンバーでなかったとしても、ALICE IN CHAINS の作品と私が作ったソロ作品のファンになっていただろう」
ヘヴィ・ミュージックの世界は永遠に流動的で、新しい声は台頭し、常に驚くべき進化を遂げています。
2024年夏季オリンピック・パリ大会では、開会式でフランスのメタルバンド、GOJIRA が大活躍を果たしました。7月、このバンドは、かつてマリー・アントワネットが幽閉され、死刑判決を受けた中世のコンシェルジュリー宮殿で、火柱が立ちのぼり、窓から何人もの首を切られたアントワネットが歌う中、雷鳴のように19世紀のフランス国歌 “Ah!Ça Ira” を轟かせました。
セーヌ川のほとりから世界中に、妥協のないメタルが鳴り響いたことに、Jerry Cantrell は目を細めます。
「クールで意外な選択だと思った。時代が良い方向に変わってきているのかもしれない」
もちろん、変わるものもあれば、変わらぬものも存在します。Cantrell にとって、創造の瞬間はこれまでと同じです。その感覚は、彼が若いギタリストとしてシアトルのガレージやベッドルームで過ごした時間と何ら変わらないのですから。
ALICE IN CHAINS のギタリストは、そうした初期の日々をはっきりと覚えています。
「そこでマリファナを吸ったり、RUSH のレコードを聴いたり、ドラムキットが半分しかなくても仲間と一緒に演奏してみたり。そういうのが好きだったんだ」

シアトルのシーンも懐かしく回想します。
「私たちの前にも、HEART や QUEENSRYCHE がいてずっと活気のあるシーンだった。音楽や芸術が盛んな土地でね。大都市じゃないから、誰からも干渉されずに熟成する時間があった。そして、ここで何かが起こっていると感じ、気がつけば自分もその一部となっていた。19歳や20歳の若者にとっては、それはかなりクールなことだった。
我々はMTVを開拓した最初のバンドともいえた。SOUNDGARDEN もね。シーンにとっては、MOTHER LOVE BONE も本当に重要なバンドだったし、MAD HONEY も、GREEN RIVER もいた。彼らみんなが小さな足がかりとなった。
一緒に仕事をしていなくても、我々はそれぞれが個人として、グループとして、お互いに助け合っていたよ。そしてその成功のひとつひとつが、より大きなものへとつながっていき、臨界点に達して、PEARL JAM や NIRVANA が誕生したんだ」
だからこそ、Cantrell は UK のバンドに大きな影響を受けたといいます。
「私はイギリスのバンドに大きな影響を受けた。JUDAS PRIEST, BLACK SABBATH, LED ZEPPELINなど当時はあの場所に素晴らしい音楽が圧倒的に多かった。量も質もね。これらのバンドはすべて、何らかの形で、互いに影響を与え合ったり、刺激し合ったり、誰かが別の道を進むための分岐点を作ったりしていた。そういう環境は、私たちの小さな町で一握りのバンドで起こったことと似ていて、健全なレベルの尊敬と同時に競争があり、それがすべてのバンドの成長に拍車をかけたんだ。多くのUKバンドも同じだと思う。
だから “British Steel” が好きなんだ。すべてのメタル・ヘッズにとって特別で時代を代表するレコードのひとつだ。Dimebag やVinnie Paul と何度一緒になったかわからないけど、Dime はいつも首にこのカミソリの刃のペンダントをしていたね。
このリフは、私が最初に弾き方を覚えたリフなんだ。K.K. と Glenn Tipton は、メタル界における名デュアル・ギターで、Rob Halford はまさに最高だ。彼のような人はいない」

一方で今、ロサンゼルスやシアトルの自宅のリビングルームで、Cantrell と彼の仲間たちは、アンプとペダル、電子ドラム・キットに接続し、ヘッドホンをつけて演奏します。彼の横に座るのは、ベーシストのDuff McKagan (Guns N’ Roses) と Robert Trujillo (Metallica), ドラマーの Gil Sharone (Marilyn Manson, Dillinger Escape Plan) と Mike Bordin (Faith No More), そしてコンポーザーでギタリストの Tyler Bates。
そうしてある日、”Let It Lie” となる曲が誕生します。完成したその曲は、Cantrell の新たなソロ・アルバム “I Want Blood” に収録されていますが、Cantrell はそれを、”クソみたいにドロドロしている” と表現しています。うなるギター、プログレッシブな中間部、ビッグ・ロック・ソロ、そして Cantrell の歌声からなるドロドロの叙事詩。”誰にでも呪縛がある/原始的な闘争衝動がある/相手の中に自分が見えるか?”
Cantrell にとってこの曲は、初期の SOUNDGARDEN を彷彿とさせる、重厚で荒涼としたロック・チューンで、彼がよく知るグランジの初期を彷彿とさせるもの。リビングルームでたむろしていたロック野郎たちが、偶然インスピレーションを得た瞬間から物語が始まりました。
「フリーフォームのジャムをやっていて、偶然あのリフを見つけたんだ。そうしたら Bates が別の何かで反応した。彼はただ、クールだね、という感じで私を見ていた。ジャムの段階やデモの段階では、少しローファイにしておくのが好きなんだ」

2021年のソロ・アルバム “Brighten” と同様にオールスター・ミュージシャンをフィーチャーした “I Want Blood”。ただ、”Brighten” は Cantrell にとって19年ぶりのソロ・プロジェクトでした。
その19年の間に彼は、2002年の Layne Staley の悲劇的な死によってキャリアを絶たれた ALICE IN CHAINS の復活に集中していました。彼らのカムバックは2009年の “Black Gives Way to Blue”。これはかつての AC/DC のように、ダイナミックなフロントマンの死後、ロックバンドが成功した珍しいケースとなり、アルバムはゴールドを獲得し、ビルボード200で5位を記録しました。その後、シンガーの William DuVall を迎えてさらに2枚のアルバムをリリースした ALICE IN CHAINS は、ツアーとレコーディングを積極的に行うユニットとして完全に再確立され、今年はラスベガスで開催された注目のシック・ニュー・ワールド・フェスティバルで話題をさらいました。
ALICE が確かな地盤を築いたことで、Cantrell はダウンタイムを手にし、1998年の “Boggy Depot”、2002年の “Degradation Trip” に続くソロ・キャリアに戻ることができました。このシンガー兼ギタリストはそうして “Brighten” で、エンニオ・モリコーネのハードロックと傷ついたバラードのコレクションで、新たな伸びを見せたのです。
「あの経験の後、私は燃え上がっていたんだ。もう少し早く仕事に取り掛かりたいと思ったし、時間とチャンスがあるうちにもう1枚やりたいって思ったんだ」
名は体を表す。アルバム・タイトル “I Want Blood” はまさに Cantrell の乾きと情熱を表しています。
「ALICE IN CHAINS の共同マネージャー、スーザン・シルバーとシック・ニュー・ワールド・フェスのためにヴェガスにいたとき、彼女に訊かれたんだ。タイトルは “Fuck You” でしょ?ってね!彼女は正しかった!私のカタログには、”Dirt”, “Facelift”, “Degradation Trip” など、強力なタイトルがいくつかあるからね。運が良ければ、核となる曲のひとつからタイトルをもらえたり、作品を体現するようなものをもらえたりする。”I Want Blood” という曲には、その両方があった。このアルバムはハードな内容なので、この曲のトーンがぴったりだと思ったんだ」

“I Want Blood” の曲の中で浮かび上がってくるのは、もっとヘヴィなもの。威嚇的な “Vilified” は、渦巻くギター、轟く Trujillo のベースラインと Sharone のドラムビート、そして Cantrell の特徴的な歌声が何層にも重苦しく重なりアルバムの幕を開けます。”Off the Rails” と “Throw Me a Line” を含め、ここにはたしかに ALICE IN CHAINS の初期から彼が生み出してきた印象的で陰鬱なロックのフックが溢れています。
「作曲だけでなく、ギターの演奏も歌もリスクを犯した。最高の作品というのは、自分が心地よくない場所にいるときに生まれるものなんだ。それをやり遂げられるかどうかわからない。もう少し安全なことをしよう。そんな考えは捨てて、とにかくやってみるんだ。そうすれば、きっと普段はやらないようなことをやったり、自分を追い込んだりして、自分が目指しているよりも高い目標を達成できるはずだ。中心から少しずれた、少し危険な感覚を味わうことができる。そして、偉大な作品になる可能性を秘めたものを作る良いチャンスを手に入れるんだ」
この9曲入りのアルバムは、Cantrell と Joe Barresi のプロデュースにより今年初めにレコーディングされました。セッションは、カリフォルニア州パサディナにあるバレージのJHOCスタジオ(ジョーズ・ハウス・オブ・コンプレッション)で、赤レンガの壁とヴィンテージ機材に囲まれて行われました。Cantrell は、TOOL, SLIPKNOT, QUEENS OF THE STONE AGE など、メジャー・アーティストとの仕事で知られるプロデューサーとのコラボレーションについて説明します。
「彼のスタジオに入ると、まるで10軒のギター・センターがひとつに詰め込まれたようで、過去50年分の機材で埋め尽くされているんだ」

陰鬱な “Echoes of Laughter” は、彼らが集まるたびに Bates が演奏していたリフから始まりました。マリリン・マンソン、HEALTH、Starcrawler のサウンドトラック作曲家、プロデューサーとして高く評価されている彼は、”Brighten” でも Cantrell の主なクリエイティブ・パートナーでした。ツアーにも帯同し、サウンドチェックや楽屋、そして Cantrell のリビングルームのジャムセッションで、このリフは何度も登場します。
「このレコードには、しばらく前から循環しているリフがいくつかある。家を探しているんだ。いいリフなんだけど、どこに置いてくれるんだい?僕の家で、 Bates がちょっといじり始めたんだ。俺は “お前はそれを弾き続けろ。それで何か作ろう”って。
僕はこう言ったんだ。君が思いついたんだってね。あの曲は、ほとんど彼が書いたものなんだ。でも、本当にエモーショナルで、映画のような曲だ。人生の美しさと有限性に触れている。私たちの人生はすべて終わってしまう。でも物語の中には、最初から最後まで美しい瞬間がたくさんある。この曲は、祝福すると同時に手放すというテーマに少し触れているんだ」
Cantrell は喪失感の歌詞で音楽に応えました。”君を横たえて、放して、太陽に咲く花/ざわめき、移動が始まった/もう二度と会わないし、抱きしめることもない”
「それはごく一般的な人間の経験だ。歌詞を書くときは個人的な歴史や他の人が目撃した人間的な瞬間に基づくことが多い、それは決して簡単なことではない。苦悩するよ。歌詞はクソ最悪の部分だ。出来上がったときは最高だけど、すごくイライラするんだ。音楽がまずあって、それから、よし、一体何を言えばいいんだ?この素晴らしい音楽を、バカなことを書いてすぐに台無しにすることもできるんだからね。
でも何かが形になり始めるまで取り組むんだ。多くの場合、出来上がるまで何が何だかわからないんだ。それでも時々、これはどこから来たんだろう?良い歌詞を書くには、第一に、個人的なものでなければならないと思う。自分自身、自分自身の感情、自分自身の感覚、自分自身の観察から始めなければならない」

Layne Staley の悲劇的な死も、Cantrell が対峙した喪失のひとつ。
「我々はそれぞれに個性的な好みがあった。彼が好きなもの、私が好きなものがそれぞれあって、その間にあるものをたくさん共有していたんだ。彼は本当に不思議な能力を持っていてね。誰かの喋りを一度聞いただけで真似できたり、映画のセリフをそのまま繰り返したり、ジョークを言ったりしていした。彼には、そういう模倣力があったんだ。
彼もハーモニーが好きだったし、私もそうだった。一緒に曲作りを始めたときは、自然の成り行きに任せていたね。ただ曲を作って、自分たちのスタイルを見つけようとしていた。他のアーティストの真似を1年ほど続けた後、やっと“これはクールじゃないか? これこそ自分たちの音楽だ”と思えるものに出会ったんだ。
どのバンドにも言えることだけど、本当に自分らしいと思えるアルバムを作るまで、試行錯誤に結構かかったりするよね。でも、私たちはデビュー作の “Facelift” ですでに、90~95%くらいは自分たちの音楽にフォーカスできていたと思う。まだ捨てきれていないものや、古い皮膚のようなものが残っていただけでね。
それは私たちが一緒に作り上げたものだった。だから、今でもそれを演奏し続けることでいい気分になるし、彼のことを思い出すこともできる。もちろん、彼がいなくなってとても寂しいけど、一緒に過ごした時間や一緒に作った音楽には感謝している。私たちが一緒に始めたものを私はこれからも続けていくよ」
だからこそ、”Let It Lie” では Cantrell がギターと同じくらい切れ味鋭い唸るような言霊を披露しています。
「これは個人的な人間関係の歌詞だ。自分の人生において、対立する誰かとどんな関係であっても、それをプラグ&プレイ “すぐに接続” することができる」

Cantrell にとって、インスピレーションは様々なところからもたらされます。彼のギター・ヒーロー、Joe Walsh のインタビューもそのひとつ。そこには、彼が1973年にヒットさせた “Rocky Mountain Way” の歌詞について書かれていました。
「彼は完全にふさぎ込んでいるのに、バンドは “おい、歌詞が必要だ” と言ったんだ。それで、彼はただ意識の流れに身を任せ始めたんだ。彼は立っていて、ロッキー山脈を見ているんだ。そして、”彼はこう言っている、ああ言っている” という歌詞は、彼のマネージャーからの電話だったんだよな」
Cantrell は、Walsh は彼の中に足跡を残したクラシック・ロック時代の多くのプレイヤーの一人だと説明します。
「JAMES GANG、ソロ・キャリア、EAGLES……彼が大好きなんだ。彼は偉大なソングライターであり、偉大なシンガーだ。素晴らしいギタリストだ。トーンも素晴らしい。Joe は僕の個人的なリストの中でも上位に入るね」
まだ多感な子供時代、Walsh の1978年の自伝的シングル “Life’s Been Good” をラジオで聴いたことを彼はしみじみと思い出します。そこには、パーティー、リムジン、マセラティ、ホテルに住み、壁を壊し、会計士に全部払ってもらうといったロックスターの退廃的な話がありました。そのすべてが幼い Cantrell には響いたのです。彼は結局、10年か20年後にヒットメーカーとなったハードロック・バンドのメンバーとして、似たような経験をすることになります。
「私はそうしたロックな物語のいくつかを生きてきた。個人的には経験したことがなくても、経験した人の隣に立っていたことはある。だから、私は犯罪の現場にいたようなものだね」

“I Want Blood” では、”Held Your Tongue” で Cantrell の歌詞の一部が露わに。冒頭のヴァース全体をアカペラで歌っています。初期の ALICE IN CHAINS のレコーディングから、Cantrell はバンドのボーカル・サウンドの重要な要素で、彼のラインは Staley のラインと混ざり合い、強烈に一目で AIC とわかるスタイルを作り出していました。彼のソロ・アルバムでも、そのスタイルは維持されています。しかし、たとえヴァースであっても伴奏なしで歌うことは、Cantrell がボーカリストとしての自信を深めていることを示唆しています。
「確かに、今はシンガーとして自分の能力の頂点で活動しているような気がした。私は成長していると思う。何事にももっと一貫性を持たせたいと思っているんだ。ギターを弾くのも、歌うのも、曲作りをするのも、プロデュースするのも、他の人と一緒に仕事をするのも、うまくプレイするのも。
そうすれば、避けられない浮き沈みが起きても、少なくとも戻るべきベースラインがある。前作では、ステップアップしたように感じた。今回のアルバムでは、特にボーカルにおいて、もう一段階上がったような気がするよ」
例えば、”Off The Rails” や “Afterglow” のような彼独特の、陰鬱でありながらキャッチーなメロディはどこからくるのでしょうか?
「私がミュージシャンになりたいと思ったのは、Elton John のバンドを好きになったことがきっかけだった。”Tumbleweed Connection” が好きでね。アメリカーナのような雰囲気があるんだ。私の印象では、Elton はアメリカを愛していると思うんだ。ポップスやロックンロールだけでなく、カントリー・ミュージックの要素もあるかもしれない。そしてこれには南部の雰囲気があるんだ。”Country Comfort” と “Amoreena” は、このアルバムの中でも特に好きな曲だ。
Elton には何度か会ったことがあったけど、彼はいつもとても物知りで、バンドにとても興味を持ってくれた。彼が僕らの曲 “Black Gives Way To Blue” をレコーディングすることになった頃に、私はそれを知ったんだ。彼は ALICE IN CHAINS の大ファンなんだ。彼自身がファンだから、いろんな音楽について常にアンテナを張っていて、すごく詳しい。自分にとって一番の音楽的インスピレーションの源である人物に、自分の曲で演奏してほしいと頼むなんて…それはとても意味のあることなんだ。まさか彼がイエスと言ってくれるとは思ってもみなかったけどね。私は彼にメールを書き、その曲の意味、特に Layne に敬意を表したいこと、あの曲は和解し、”親友よ、さようなら” と言い、同じ本の新しい章を生きるためにバンドとともに前進するために書いた曲だと説明した。彼はあの曲を聴いて、こう言ったんだ。”この曲の一部になりたい。感情がとても純粋で、この曲でピアノを弾きたい” ってね。私にとってもバンドにとっても、これまでで最もクールな出来事のひとつだ」

アルバムは、ドリーミーなギター・パターンとエレガントなギター・ソロ、伸びやかな単音で終わる壮大な “It Comes” でその幕を閉じます。Cantrell にとってこの曲は、PINK FLOYD とその象徴的なギタリストである David Gilmour への感謝の念と呼応しています。
レコーディング・セッション中、Cantrell は突然ひらめき、ギターのシングル・ピックアップに顔を近づけ、”Another Brick in the Wall, Part 2″ の不朽の名セリフを叫びました。
「”肉を食わなきゃ、プリンも食えないだろ?”よく聴いてみると、この曲の最後の瞬間にそのようなボーカルがあったことがわかる。その場の雰囲気に流されて、ただ面白いと思ってギターに向かって叫んだんだ」
PINK FLOYD への愛情は深く、Gilmourが彼の本質的なギター・ヒーローだといえますが、実際に会う機会はないといいます。
「いつかあの人と2、3時間一緒に過ごしたいよ。少なくとも、2、3時間ね。私は Gilmour が大好きだ。PINK FLOYD も大好きだ。彼らは私にとってビッグ・バンドなんだ。あのテイストを出すつもりで書いたわけじゃないんだけど、自然とそうなったんだ。この曲には、私のフロイドに対する感謝の気持ちと、ちょっとした煌めきの要素が含まれていると思う。あの人たちに触れることはできない。アンタッチャブルだよ。私にとって PINK FLOYD は、常にとても視覚的なバンドだった。音楽を聴いていると、いろんな場所に連れて行ってくれるし、風景や人物を見ることができる。私はいつも彼らのそういうところが好きだった。曲作り、パフォーマンス、プロダクション・レベル、特に当時としては、とても重層的で、とても豊かで深みがあった。私は Gilmour を尊敬するギタリストのトップ5に入れているんだ」
当然、シアトルの血脈として BLACK SABBATH も Cantrell の血肉となっています。
「私が最初に聴いたサバスのアルバムは、実は “Vol. 4” で、でもそれでいいんだ。あとは “Paranoid” も完璧に近いと思う。サバスにはヘヴィネスとダークネスがあり、それは私たちのサウンドに直接影響を与えたとしてよく引き合いに出される。たしかにその血統をたどることができるし、それはシアトルの多くのバンドに言えることだと思う。
サバスはフロイドと似てとても視覚的なバンドでもあるけれど、ただもっと直感的なんだ。オジーがホラー映画のサウンドトラックを作ろうとしていたというインタビューを読んだことがある。テーマは常にかなり暗く、殺伐としていて、テーマ的にも歌詞的にもパンチが効いていたからね。Tony Iommi も私のお気に入りのギタリストの一人で、とても影響を受けたよ」

Cantrell は自身のギターリフの特徴をどう捉えているのでしょうか?
「グランジはチューニングが少しずれていて、フルベンドとは言えないリフが多い。僕の曲には、大きくベンドするリフが多いんだ。これは僕の特徴のひとつなんだ。サバスの Tony Iommi や Ace Frehley を聴いていて、そう思うようになったんだ。Frehley は大のベンダーで、僕も子供の頃は彼の大ファンだった」
デュアル・ギターのバンドが Cantrell の好みです。
「私は長年 AC/DC のファンだった。”Highway To Hell” も “Back in Black” も完璧だと思う。とても巨大で、とても衝撃的で、私にとっても、何百万人もの人々にとっても、人生のしおりのようなものだった。
奇妙なことに、ALICE IN CHAINS は彼らが経験したことをいくつか経験した。私たちはメンバーの死を経験し、続けていく決心をし、それを成功させた。私たちのバンドは、ある意味パラレルなんだ。
バンドを始めたころは、私はどんなバンドでもリズム・プレイヤーだったから、Malcom にとても共感していたし、いつか Angus のようにリードを弾きたいと思っていた。彼は驚異的なリード・プレイヤーだけど、バンドのバックボーンはリズム・ギターだといつも思っている。私が好きなバンドの多くは、デュアル・ギターのバンドだと思う。IRON MAIDEN も SCORPIONS もね。ALICE IN CHAINS を始めた当初は、本当はもう1人ギタリストが欲しかったんだけど、他のメンバーがギタリストを欲しがらなかったから、もう少し弾けるようになる必要があったんだ(笑)」
ギタリストとして、同じシアトルのあの偉人も Cantrell に大きな影響を与えました。
「Jimi Hendrix はシアトルのローカルヒーローの一人で、私たちは同じ道を歩いた。彼と同じ町の出身であることを誇りに思っていた。このバンドのごく初期の頃、私たちは墓地まで車で行き、彼の墓に行ってビールを数本くすねたりしたのを覚えている。多くの人がそうしていることも知っていた。だから、もしマリファナが少なかったとしても、墓に行けば必ずマリファナが1、2本はあったよ……私たちも何度かやったけどね!(笑)みんな、ギターのピックや時にはマリファナ全部を置いていくんだ。そして私たちはジミと一緒にいて、人々が彼の墓に置いていったマリファナを吸った。
彼は驚異的なギタリストだった。彼のバンド、あのレコードのトリオは伝説的だ。”Are You Experienced?” は、私が最初に出会った彼のアルバムだ。そして今でもベストだと思っている。彼は革新者であり、極めてユニークだった。彼は時の試練を乗り越える独自性を持っていた。同レベルのギタリストは、Eddie Van Halen しかいない」

その Van Halen は彼の恩人です。
「彼は私の友人でそう呼べたことを誇りに思っている。1990年頃、半年ほど彼らのツアーに同行したとき、彼らは私たちに最初のブレイクのきっかけを与えてくれた。
最初にファースト・アルバムを聴いたんだ。そして最初の一音から……それがどんなにマジカルだったかを覚えている。ジミヘンと同じだよ。だからふたりを引き合いに出すんだけど、彼らは時代の違う兄弟のようなものだと思うんだ。完全に唯一無二なんだ。Eddie の前には Eddie のようなサウンドを出す人はいなかった。でも、その後に彼のようなサウンドを出したり、彼の真似をしようとしたりした人は山ほどいた。
タッピング奏法をやってみたけど、全然ダメだった。あのレコードは、ギタリストになりたいと思っていた子供にとって、まるで達成不可能な目標みたいなものだった。
数年後、私たちは本当にいい友達になった。彼は新しいギターとアンプを持っていた。それを買っていいかどうか、少し安くしてもらえないかとか、そんなことを尋ねたのを覚えている。彼はこう言ったんだ “そんなのクソくらえだ、お前にやるよ!”」
Cantrell が夏のツアーで全米を回る中、”I Want Blood” で作った曲のほとんどは、”Vilified” を除いて秘匿されることになりました。90年代、ALICE IN CHAINS は次のアルバムに収録される予定の新曲をロードテストすることが度々ありましたが、それはスマートフォンが普及する前の時代だから。ファンが前夜のライヴの全編をハイビジョン映像でYouTubeにアップする時代ではありませんでした。
彼らが “Would?” や “Rooster” のような曲をテストしていた当時は、時折海賊がテープレコーダーをショーに忍び込ませ、サウンドボードに接続する以外は問題ではなかったのです。そのような傷だらけの録音を聴くのは、いずれにせよ選ばれた一部の人たちだったから。
「一般的に、私は最初にその曲のベスト・ヴァージョンを聴いてもらいたいんだ。それから、ビデオとかが氾濫するのはいいんだ。やり方が変わってきたし、おそらく多くの他のアーティストもそうだろう」

Cantrell は後ろを振り返ることにあまり時間を費やさないといいますがしかし、このギタリストは自分自身を音楽、ロックの連続体の一部だと考えています。
「私はバトンを手渡されたコミュニティの一員なんだ。そして、そのバトンを他の人々、次の世代のミュージシャンに渡すことができ、彼らがそのバトンを受け取り、自分のレースを走るのを見ることができた。とてもクールなことだよ。崇高な努力だよ」
昨年4月のシック・ニュー・ワールドのギグの後、具体的な計画がないとしても、ALICE IN CHAINS が彼の次なる舞台なのは確かでしょう。
「いつかはまたロックに戻るつもりだよ。それがいつになるのか正確にはわからないけど、適切な機会が訪れたり、”そうだ、やろう” と決めたら、やるつもりだよ。両方できるのはいいことだ。私の経歴を見れば、私のハートがどこにあるかわかるよ。私はアリスに生き、アリスを食べ、アリスを愛している。バンドにいることが大好きなんだ。でも、たまには船から出てひとりで泳ぐのもいい。それは健康的なことだ。ボートはいつでもすぐそこにあるし、泳いで戻ることもできる。それは私たち全員にとって変わらないことだ」
ソロ・キャリアを模索することは、ここ数年、アリスが現在進行形で取り組んでいるように、刺激的な場所であったと彼は言います。
「自分の直感に従うこと、自分らしくあること。この2つを実行すれば、勝っても負けてもうまくいく。それが私たちのモットー。何をするにしても、この2つから始めるようにしている。自分の直感を信じ、自分に賭けるんだ」


参考文献: REVOLVER :JERRY CANTRELL: “YOU CAN LOOK AT MY HISTORY AND YOU KNOW WHERE MY F**KIN’ HEART LIES”

KERRANG!:“It’s some of the best work I’ve done”: Jerry Cantrell takes us inside his new solo album I Want Blood

Trace The Bloodline: Jerry Cantrell Of Alice In Chains’ Favourite Albums

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GARGOYL : GARGOYL】WHEN GRUNGE AND PROG COLLIDE


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVE DAVIDSON OF GARGOYL !!

‘For Me a Band Like Alice In Chains Does Have Progressive Edge To Them Even Though They’re Considered Grunge. They Definitely Weren’t Just Taking a Radio Rock Approach, They Always Had Something New To Say With Every Album.”

DISC REVIEW “GARGOYL”

「僕はこのプロジェクトを自分の中にある別の影響を吐き出す場所にしたかったんだ。普段、僕がかかわっている音楽から離れてね。そうすることで、アーティストとしての別の一面を表現することができるから。」
前身バンドも含め、ボストンの名状しがたきデスメタル REVOCATION で2000年から活動を続ける Dave Davidson は、究極に複雑なリフ、慄くようなスクリーム、そしてブラストの嵐の中で20年を過ごしてきました。つまり、自らの全てをエクストリームメタルへと捧げることで、シーン随一のギタープレイヤーという威名を得ることとなったのです。DEATH や CYNIC の正当後継者、魂の継承は彼にこそ相応しい。ただし、それは Dave という多面体の音楽家にとってほんの一面にしか過ぎませんでした。
「自分たちが影響を受けたものにオマージュを捧げたいという気持ちはあったと思うけど、それは自分たちのやり方でやる必要があったんだ。 俺たちは過去を振り返るバンドになろうとしているのではなく、影響を受けてそれを発展させることができるバンドになろうとしているからね。」
AYAHUASCA のギター/ボーカル Luke Roberts を巻き込み立ち上げた新たなプロジェクト GARGOYL で、Dave は自らが多感なスポンジだった90年代の音景を、培った20年の発展を注ぎながら再投影してみせました。グランジ、ゴス、オルタナティブ。具体的には、ALICE IN CHAINS や FAITH NO MORE の面影を、Dave らしいプログレッシブやジャズの設計図で匠のリフォームの施したとでも言えるでしょうか。ALICE IN CHAINS + OPETH, もしくは MARTYR という評価は的を得ているように思えますし、プログレッシブ・グランジという Dave が失笑したラベルにしても、少なくとも作成者の苦悩と意図は十分に伝わるはずです。
「間違いなく、僕たちは全員が ALICE IN CHAINS から大きな影響を受けていると言えるね。そうは言っても、Luke は間違いなく非常にユニークなアプローチを行なっているし、彼は本当に個性的になろうと努力しているんだよ。」
Luke を乗船させたのは明らかに大正解でした。ALICE IN CHAINS の神々しき暗闇が、Layne Staley の絶望を認めた絶唱とギタリスト Jerry Cantrell の朴訥な背声が織りなす、音楽理論を超越した不気味で不思議なハーモニーにより完成を見ていたことは間違いありません。そしてアルバム “Gargoyl” が荘厳極まる “Truth of a Tyrant” のアカペラハーモニーで幕を開けるように、Luke の声によって GARGOYL は、ALICE IN CHAINS の実験をさらに色濃く推し進めているのです。
「僕にとってクラシック音楽やジャズは超ヘヴィーなものなんだよ。不安や実存的な恐怖を呼び起こす緊張感、クライマックスでその緊張感を解消した時のカタルシスや爆発的な解放感など、曲の中にテンションを生み出すことで得られる攻撃性やアティテュードがね。」
実際、”Gargoyl” はブラストやグロウルに頼らなくとも重さの壁を超えられることの証明でもあります。不協和なドゥーム、不規則なアシッドトリップに潜みそそり立つ美麗なる聖堂。LEPROUS にも通じるそのコントラストこそ、真なるヘヴィー、真なるプログレッシブを導く鍵であり、メタルがグランジを捕食した気高き勲章なのかも知れませんね。
今回弊誌では、Dave Davidson にインタビューを行うことが出来ました。「僕にとって ALICE IN CHAINS のようなバンドは、グランジと言われていてもプログレッシブなエッジを持っているんだよ。Jerry Cantrell のソロは特に派手ではないし、夥しいわけではないんだけど、僕ははずっと愛してきた。彼はまた、ユニークなリフを生み出す優れた耳を持っていたしね。とにかく、彼らはただラジオ・ロック的なアプローチを取っていたわけでは全くない。どのアルバムでも常に新たな挑戦に挑んでいたんだ。」  二度目の登場。どうぞ!!

GARGOYL “GARGOYL” : 10/10

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