EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JULIEN JOLVET OF SEEDS OF MARY !!
“I Quite Like “Progressive Grunge”! Actually We Are As Much Fond Of Grunge As We Are Of Prog Music.”
DISC REVIEW “LOVE”
「僕たちは GOJIRA をとても尊敬している。彼らは僕らの世代にとって、まさにフレンチ・メタルのパイオニアだ。彼らは僕たちに進むべき道を示し、フランスのオルタナティヴ・カルチャーにスポットライトを当てる手助けをしてくれた。彼らの音楽は妥協がなく、とてもよく練られている。彼らがこのセレモニーに参加するとは予想外だったけど、今や世界中が彼らのことを知っているよね。それは素晴らしいことだよ」
GOJIRA, ALCEST, IGORRR, BETRAYING THE MARTYRS, LANDMVRKS, DEATHSPELL OMEGA, GOROD, THE GREAT OLD ONES, BLUT AUS Nord。挙げればキリがありませんが
これほど多くの才能あふれる革新的メタル・バンドが揃っていながら、フランスにメタル大国というイメージはこれまでありませんでした。それは、日本と同じく “後追い” の国だったからかも知れませんね。しかし、そんなイメージもついに今年、ガラリと変わることになりました。
オリンピック・ゲームの開会式で、地元フランスの GOJIRA が見せたパフォーマンスはまさに圧巻でした。王宮と牢獄。光と影のコンシェルジュリーを光と影のメタルが彩る奇跡の瞬間は、世界中を驚かせ、メタルの力、フランスのメタル・シーンを羽ばたかせることになったのです。
「僕たちはみんなあの時代に育ったから、より共感しやすいんだ。きらびやかな80年代からダークな90年代へのシフトによって、君が言ったような偉大なバンドが出現した。戦争、大量失業、ウイルス性疾患など、残念ながら僕らの生きる今の時代は90年代に通じると思う。だからこそ、そうしたバンドや音楽の美学は今でもかなり重要なんだ」
ではなぜ、モダン・メタルの力が今、世界中で必要とされているのでしょうか?その答えを、フランスの新星 SEEDS OF MARY が代弁してくれました。煌びやかな80年代からダークな90年代へのシフト。それは、まさに理想を追い求め、追い求めすぎたためにやってきたこの “欲望の時代” への揺れ戻しと非常にシンクロしています。だからこそ、多様でダークな90年代のメタルを原点として育った新たなメタルの形、その審美性や哲学、暗がりに臨む微かな光がリスナーの心に寄り添うのでしょう。
「ALICE IN CHAINS からは常に大きな影響を受けてきた。事実、SEEDS OF MARY として初めて演奏した曲は、”Them Bones” のカバーだったんだからね。今日、僕たちはその影響から解放されて、自分たち独自のものを作ろうとしている。でも、声のハーモニーや音楽にあのダークなムードがあると、リスナーがAICを思い浮かべないのは難しいことだと思う」
ゆえに、彼らの音楽は “プログレッシブ・グランジ” と評されることもあります。ALICE IN CHAINS は間違いなく、グランジの渦の中から這い出でましたが、その本性はメタルでした。あの時代の新しい形のメタルでした。そして、その怪しいハーモニーや不確かなコード、リズムの変質に絶望のメロディはあの時代のプログレッシブであり、見事にあの時代を反映した革新でした。
SEEDS OF MARY はそこに、Devin Townsend, Marilyn Manson, SLIPKNOT, SOILWORK, SOTD, NIN といった90年代の代弁者を取り揃えながら、より現代的な手法や趣向に PINK FLOYD のサイケデリアを散りばめることで見事に20年代の暗がりを表明します。
音楽の流行に圧倒されることなく、”種” をまき、収穫する。暴力的で、幽玄で、特定の難しい彼らのサウンドは、内省的な歌詞とありのままの感情の肯定によって、急速に強く成長していきます。
今回弊誌では、Julien Jolivet にインタビューを行うことができました。「僕たちは皆、間接的に日本文化の影響を受けているんだよ。みんなレトロなビデオゲームをプレイしたことがあるし、Jeremy はクラシックな日本映画をよく観ている。アニメやマンガは僕の人生の大部分を占めているよ。アニメの音楽(たとえば “AKIRA”)や菊池俊輔のような作曲家は、間違いなく僕に影響を与えているね」 どうぞ!!
“I Felt Like I Was Operating At The Top Of My Abilities As a Singer, For Sure. I Think I’m Growing. I’m Trying To Get More Consistent At Everything. That’s The Goal”
I WANT BLOOD
「私はこのレコードのファンだ。もし私が私でなく、ALICE IN CHAINS のメンバーでなかったとしても、ALICE IN CHAINS の作品と私が作ったソロ作品のファンになっていただろう」
ヘヴィ・ミュージックの世界は永遠に流動的で、新しい声は台頭し、常に驚くべき進化を遂げています。
2024年夏季オリンピック・パリ大会では、開会式でフランスのメタルバンド、GOJIRA が大活躍を果たしました。7月、このバンドは、かつてマリー・アントワネットが幽閉され、死刑判決を受けた中世のコンシェルジュリー宮殿で、火柱が立ちのぼり、窓から何人もの首を切られたアントワネットが歌う中、雷鳴のように19世紀のフランス国歌 “Ah!Ça Ira” を轟かせました。
セーヌ川のほとりから世界中に、妥協のないメタルが鳴り響いたことに、Jerry Cantrell は目を細めます。
「クールで意外な選択だと思った。時代が良い方向に変わってきているのかもしれない」
もちろん、変わるものもあれば、変わらぬものも存在します。Cantrell にとって、創造の瞬間はこれまでと同じです。その感覚は、彼が若いギタリストとしてシアトルのガレージやベッドルームで過ごした時間と何ら変わらないのですから。
ALICE IN CHAINS のギタリストは、そうした初期の日々をはっきりと覚えています。
「そこでマリファナを吸ったり、RUSH のレコードを聴いたり、ドラムキットが半分しかなくても仲間と一緒に演奏してみたり。そういうのが好きだったんだ」
シアトルのシーンも懐かしく回想します。
「私たちの前にも、HEART や QUEENSRYCHE がいてずっと活気のあるシーンだった。音楽や芸術が盛んな土地でね。大都市じゃないから、誰からも干渉されずに熟成する時間があった。そして、ここで何かが起こっていると感じ、気がつけば自分もその一部となっていた。19歳や20歳の若者にとっては、それはかなりクールなことだった。
我々はMTVを開拓した最初のバンドともいえた。SOUNDGARDEN もね。シーンにとっては、MOTHER LOVE BONE も本当に重要なバンドだったし、MAD HONEY も、GREEN RIVER もいた。彼らみんなが小さな足がかりとなった。
一緒に仕事をしていなくても、我々はそれぞれが個人として、グループとして、お互いに助け合っていたよ。そしてその成功のひとつひとつが、より大きなものへとつながっていき、臨界点に達して、PEARL JAM や NIRVANA が誕生したんだ」
だからこそ、Cantrell は UK のバンドに大きな影響を受けたといいます。
「私はイギリスのバンドに大きな影響を受けた。JUDAS PRIEST, BLACK SABBATH, LED ZEPPELINなど当時はあの場所に素晴らしい音楽が圧倒的に多かった。量も質もね。これらのバンドはすべて、何らかの形で、互いに影響を与え合ったり、刺激し合ったり、誰かが別の道を進むための分岐点を作ったりしていた。そういう環境は、私たちの小さな町で一握りのバンドで起こったことと似ていて、健全なレベルの尊敬と同時に競争があり、それがすべてのバンドの成長に拍車をかけたんだ。多くのUKバンドも同じだと思う。
だから “British Steel” が好きなんだ。すべてのメタル・ヘッズにとって特別で時代を代表するレコードのひとつだ。Dimebag やVinnie Paul と何度一緒になったかわからないけど、Dime はいつも首にこのカミソリの刃のペンダントをしていたね。
このリフは、私が最初に弾き方を覚えたリフなんだ。K.K. と Glenn Tipton は、メタル界における名デュアル・ギターで、Rob Halford はまさに最高だ。彼のような人はいない」
一方で今、ロサンゼルスやシアトルの自宅のリビングルームで、Cantrell と彼の仲間たちは、アンプとペダル、電子ドラム・キットに接続し、ヘッドホンをつけて演奏します。彼の横に座るのは、ベーシストのDuff McKagan (Guns N’ Roses) と Robert Trujillo (Metallica), ドラマーの Gil Sharone (Marilyn Manson, Dillinger Escape Plan) と Mike Bordin (Faith No More), そしてコンポーザーでギタリストの Tyler Bates。
そうしてある日、”Let It Lie” となる曲が誕生します。完成したその曲は、Cantrell の新たなソロ・アルバム “I Want Blood” に収録されていますが、Cantrell はそれを、”クソみたいにドロドロしている” と表現しています。うなるギター、プログレッシブな中間部、ビッグ・ロック・ソロ、そして Cantrell の歌声からなるドロドロの叙事詩。”誰にでも呪縛がある/原始的な闘争衝動がある/相手の中に自分が見えるか?”
Cantrell にとってこの曲は、初期の SOUNDGARDEN を彷彿とさせる、重厚で荒涼としたロック・チューンで、彼がよく知るグランジの初期を彷彿とさせるもの。リビングルームでたむろしていたロック野郎たちが、偶然インスピレーションを得た瞬間から物語が始まりました。
「フリーフォームのジャムをやっていて、偶然あのリフを見つけたんだ。そうしたら Bates が別の何かで反応した。彼はただ、クールだね、という感じで私を見ていた。ジャムの段階やデモの段階では、少しローファイにしておくのが好きなんだ」
2021年のソロ・アルバム “Brighten” と同様にオールスター・ミュージシャンをフィーチャーした “I Want Blood”。ただ、”Brighten” は Cantrell にとって19年ぶりのソロ・プロジェクトでした。
その19年の間に彼は、2002年の Layne Staley の悲劇的な死によってキャリアを絶たれた ALICE IN CHAINS の復活に集中していました。彼らのカムバックは2009年の “Black Gives Way to Blue”。これはかつての AC/DC のように、ダイナミックなフロントマンの死後、ロックバンドが成功した珍しいケースとなり、アルバムはゴールドを獲得し、ビルボード200で5位を記録しました。その後、シンガーの William DuVall を迎えてさらに2枚のアルバムをリリースした ALICE IN CHAINS は、ツアーとレコーディングを積極的に行うユニットとして完全に再確立され、今年はラスベガスで開催された注目のシック・ニュー・ワールド・フェスティバルで話題をさらいました。
ALICE が確かな地盤を築いたことで、Cantrell はダウンタイムを手にし、1998年の “Boggy Depot”、2002年の “Degradation Trip” に続くソロ・キャリアに戻ることができました。このシンガー兼ギタリストはそうして “Brighten” で、エンニオ・モリコーネのハードロックと傷ついたバラードのコレクションで、新たな伸びを見せたのです。
「あの経験の後、私は燃え上がっていたんだ。もう少し早く仕事に取り掛かりたいと思ったし、時間とチャンスがあるうちにもう1枚やりたいって思ったんだ」
名は体を表す。アルバム・タイトル “I Want Blood” はまさに Cantrell の乾きと情熱を表しています。
「ALICE IN CHAINS の共同マネージャー、スーザン・シルバーとシック・ニュー・ワールド・フェスのためにヴェガスにいたとき、彼女に訊かれたんだ。タイトルは “Fuck You” でしょ?ってね!彼女は正しかった!私のカタログには、”Dirt”, “Facelift”, “Degradation Trip” など、強力なタイトルがいくつかあるからね。運が良ければ、核となる曲のひとつからタイトルをもらえたり、作品を体現するようなものをもらえたりする。”I Want Blood” という曲には、その両方があった。このアルバムはハードな内容なので、この曲のトーンがぴったりだと思ったんだ」
“I Want Blood” の曲の中で浮かび上がってくるのは、もっとヘヴィなもの。威嚇的な “Vilified” は、渦巻くギター、轟く Trujillo のベースラインと Sharone のドラムビート、そして Cantrell の特徴的な歌声が何層にも重苦しく重なりアルバムの幕を開けます。”Off the Rails” と “Throw Me a Line” を含め、ここにはたしかに ALICE IN CHAINS の初期から彼が生み出してきた印象的で陰鬱なロックのフックが溢れています。
「作曲だけでなく、ギターの演奏も歌もリスクを犯した。最高の作品というのは、自分が心地よくない場所にいるときに生まれるものなんだ。それをやり遂げられるかどうかわからない。もう少し安全なことをしよう。そんな考えは捨てて、とにかくやってみるんだ。そうすれば、きっと普段はやらないようなことをやったり、自分を追い込んだりして、自分が目指しているよりも高い目標を達成できるはずだ。中心から少しずれた、少し危険な感覚を味わうことができる。そして、偉大な作品になる可能性を秘めたものを作る良いチャンスを手に入れるんだ」
この9曲入りのアルバムは、Cantrell と Joe Barresi のプロデュースにより今年初めにレコーディングされました。セッションは、カリフォルニア州パサディナにあるバレージのJHOCスタジオ(ジョーズ・ハウス・オブ・コンプレッション)で、赤レンガの壁とヴィンテージ機材に囲まれて行われました。Cantrell は、TOOL, SLIPKNOT, QUEENS OF THE STONE AGE など、メジャー・アーティストとの仕事で知られるプロデューサーとのコラボレーションについて説明します。
「彼のスタジオに入ると、まるで10軒のギター・センターがひとつに詰め込まれたようで、過去50年分の機材で埋め尽くされているんだ」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVE DAVIDSON OF GARGOYL !!
‘For Me a Band Like Alice In Chains Does Have Progressive Edge To Them Even Though They’re Considered Grunge. They Definitely Weren’t Just Taking a Radio Rock Approach, They Always Had Something New To Say With Every Album.”
DISC REVIEW “GARGOYL”
「僕はこのプロジェクトを自分の中にある別の影響を吐き出す場所にしたかったんだ。普段、僕がかかわっている音楽から離れてね。そうすることで、アーティストとしての別の一面を表現することができるから。」
前身バンドも含め、ボストンの名状しがたきデスメタル REVOCATION で2000年から活動を続ける Dave Davidson は、究極に複雑なリフ、慄くようなスクリーム、そしてブラストの嵐の中で20年を過ごしてきました。つまり、自らの全てをエクストリームメタルへと捧げることで、シーン随一のギタープレイヤーという威名を得ることとなったのです。DEATH や CYNIC の正当後継者、魂の継承は彼にこそ相応しい。ただし、それは Dave という多面体の音楽家にとってほんの一面にしか過ぎませんでした。
「自分たちが影響を受けたものにオマージュを捧げたいという気持ちはあったと思うけど、それは自分たちのやり方でやる必要があったんだ。 俺たちは過去を振り返るバンドになろうとしているのではなく、影響を受けてそれを発展させることができるバンドになろうとしているからね。」
AYAHUASCA のギター/ボーカル Luke Roberts を巻き込み立ち上げた新たなプロジェクト GARGOYL で、Dave は自らが多感なスポンジだった90年代の音景を、培った20年の発展を注ぎながら再投影してみせました。グランジ、ゴス、オルタナティブ。具体的には、ALICE IN CHAINS や FAITH NO MORE の面影を、Dave らしいプログレッシブやジャズの設計図で匠のリフォームの施したとでも言えるでしょうか。ALICE IN CHAINS + OPETH, もしくは MARTYR という評価は的を得ているように思えますし、プログレッシブ・グランジという Dave が失笑したラベルにしても、少なくとも作成者の苦悩と意図は十分に伝わるはずです。
「間違いなく、僕たちは全員が ALICE IN CHAINS から大きな影響を受けていると言えるね。そうは言っても、Luke は間違いなく非常にユニークなアプローチを行なっているし、彼は本当に個性的になろうと努力しているんだよ。」
Luke を乗船させたのは明らかに大正解でした。ALICE IN CHAINS の神々しき暗闇が、Layne Staley の絶望を認めた絶唱とギタリスト Jerry Cantrell の朴訥な背声が織りなす、音楽理論を超越した不気味で不思議なハーモニーにより完成を見ていたことは間違いありません。そしてアルバム “Gargoyl” が荘厳極まる “Truth of a Tyrant” のアカペラハーモニーで幕を開けるように、Luke の声によって GARGOYL は、ALICE IN CHAINS の実験をさらに色濃く推し進めているのです。
「僕にとってクラシック音楽やジャズは超ヘヴィーなものなんだよ。不安や実存的な恐怖を呼び起こす緊張感、クライマックスでその緊張感を解消した時のカタルシスや爆発的な解放感など、曲の中にテンションを生み出すことで得られる攻撃性やアティテュードがね。」
実際、”Gargoyl” はブラストやグロウルに頼らなくとも重さの壁を超えられることの証明でもあります。不協和なドゥーム、不規則なアシッドトリップに潜みそそり立つ美麗なる聖堂。LEPROUS にも通じるそのコントラストこそ、真なるヘヴィー、真なるプログレッシブを導く鍵であり、メタルがグランジを捕食した気高き勲章なのかも知れませんね。
今回弊誌では、Dave Davidson にインタビューを行うことが出来ました。「僕にとって ALICE IN CHAINS のようなバンドは、グランジと言われていてもプログレッシブなエッジを持っているんだよ。Jerry Cantrell のソロは特に派手ではないし、夥しいわけではないんだけど、僕ははずっと愛してきた。彼はまた、ユニークなリフを生み出す優れた耳を持っていたしね。とにかく、彼らはただラジオ・ロック的なアプローチを取っていたわけでは全くない。どのアルバムでも常に新たな挑戦に挑んでいたんだ。」 二度目の登場。どうぞ!!