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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PORTRAYAL OF GUILT : WE ARE ALWAYS ALONE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATT KING OF PORTRAYAL OF GUILT !!

“At The End Of The Day, You Have No One To Depend On But Yourself. That’s Just My Opinion. Being Alone And Having To Do Things On Your Own Brings a Lot Into Perspective Sometimes.”

DISC REVIEW “WE ARE ALWAYS ALONE”

「そうだね、部屋から出ないというのはほとんどまちがってないよ。自分の部屋で一人で生きているというかね。だって、そこが一番快適な場所だから」
Matt King は、自分の部屋から出るのが好きではなく、 一日中パソコンに向かいながらオースティンの PORTRAYAL OF GUILT で “クソ悲しい音楽” を作ることが使命だと表明しています。それでも、「僕はなるべく楽観的にいようとしているよ。でも、同時に現実的でもあるんだよ」 との言葉通り、彼は自身が落ち込んでいるわけではないと、少なくとも本人はそう考えています。
たしかに孤独の中で社会と馴染まず生きているとしても、少なくとも Matt はクリエイティブであり続けています。実際、彼は自分のアンニュイな気持ちを表現することに長けており、PORTRAYAL OF GUILT のデビューアルバム “Let Pain Be Your Guide” では、Robotic Empire やEbullition Records の黄金時代以来、最も激しいスクリーモ/ポスト・ハードコア作品の1つを生み出すことに成功しました。
過酷で幅広いジャンルを1つの熱狂的なサウンドに融合させた彼らの冒険は、複数の “Best of 2018” リストに掲載され、人気者 TOUCHE AMORE からパンクのベテラン SCREANING FEMALES まで、百戦錬磨のツアーアクトをサポートしながらシーンの中へと完璧に融合することができたのです。
ギターはクラッシックなスクリーモを意識しながら、Matt のヴォーカルは通常よりも殊更低い音域に沈むことが多く、ノイズがあり、エレクトロニカがあり、パワーバイオレンスの断片があり、まるで井戸の底に鎖でつながれながら水が着実に迫ってきて、ついに目に入るものすべてを悲しみの暗闇が包み込んでくるようなイメージを植え付けます。
「結局、自分以外に頼れる人はいないんだよ。これは僕の意見だけどね。一人でいること、一人で何かをしなければならない状況によって、時に多くの視点を得ることができる。孤独をネガティブにとらえる人もいるけど、僕はポジティブでもネガティブでもないと思っているんだ。それよりもむしろ、人生の教訓を得られると考えているよ」
PORTRAYAL OF GUILT で語られるテーマは Matt のカタルシスを表現しており、世界に対する不満や無力感を叫んでいます。Matt の人生観とはまさに新たな作品のタイトル通り “We Are Always Alone”、自分以外に頼れる人がいないこと、そしてそれが現実であること。
結局、他人は何もしてくれない。つまり、世界で起こっているパンデミック、大統領が誰であるかとか、狂ったようなサイコな事象に対して私たち一人一人はあまりに無力であるという感覚…何よりもただ一人であるという感覚が、このアルバムの世界観を締めつけています。それでも Matt はただ “悲しい” 男だとは言えません。自分はわざわざ誰かに話しかけたりしない。誰かと一緒にいるよりも、一人でいる方が好きだから。
2017年に PORTRAYAL OF GUILT は MAJORITY RULE の Matt Michelle に誘われて、彼らと PAGENINETYNINE (PG.99) とショウを行う機会に恵まれました。初期の伝説的スクリーモはたしかに Matt の原点であり、この出会いがバンドをさらなる高みに引き上げましたが、それでも PORTRAYAL OF GUILT の音楽にはただの懐古主義ではなくこのジャンルを進化させたいという願望に満ちています。
例えば、UNDEROATH や THRICE がこれほど陰鬱なアトモスフィアやブラック・メタルに傾倒したことはありません。John Carpenter の “Halloween” にもリンクするインダストリアルな雰囲気から、教科書のようなブラストビートとノイジーなリフの黒い攻撃を伴う “Garden of Despair” はまさに PORTRAYAL OF GUILT の真骨頂と言えるはずです。
重要なのは、PORTRAYAL OF GUILT がこの10の悪夢に、心理的な絶望感をたっぷりと注入している点でしょう。その残忍さは単なるニヒリズムを超えて、純粋に悲しく絶望的な旅路へと到達しています。特に、”It’s Already Over” の歌詞は、ひどい鬱病を患っている人の視点から語られていて、重く、悲しく、動揺を伝えます。「投薬につぐ投薬。これから始まる朝に備えて、体を折り曲げ、痛みに悶える。まわりには誰もいない」
「僕は NINE INCH NAILS を愛しているんだ。僕たちのアルバムが彼らを思い起こさせてくれたというのは、嬉しい賛辞だね。彼らの音楽が僕に様々な面でインスピレーションを与えてくれたことはたしかだけど、まあその要素を僕たちのアルバムに盛り込もうとするほどではないと思うよ」
スクリーモに吹き込まれる新たな命。サンプリングは確かにスクリーモの一部ではありますが、ほとんどの場合、映画の引用のイントロや間奏に限定されていて、ランダムに個性を加えているに過ぎません。しかし、PORTRAYAL OF GUILT の音楽においてはエレクトロニカは DNA の不可欠な部分であり、音に完全な奇妙の階層を加え、Matt がバンドの将来に対して見ている幅広い可能性を表現しています。NINE INCH NAILS のように、多種多様な楽器を使ってシネマティックな世界を構築する。それが彼の狭い部屋から生まれた大きな夢なのかもしれませんね。
今回弊誌では、Matt King にインタビューを行うことができました。「僕は日常的に罪悪感を感じているとは言えないし、バンドとしても人としての罪悪感を “描いている” とは思っていないからね。それは僕たちのバンドの名前に過ぎないんだよ」 どうぞ!!

PORTRAYAL OF GUILT “WE ARE ALWAYS ALONE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CANVAS SOLARIS : CHROMOSPHERE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HUNTER GINN OF CANVAS SOLARIS !!

“As Far As Djent Goes, I Hate It. I Think It’s a Watered-Down, Trash Version Of Meshuggah That Captures None Of That Band’s Invention, Intensity, Or Imagination. That Whole Scene Can Drift Offer Into Oblivion, For All I Care.”

DISC REVIEW “CHROMOSPHERE”

「Djent に関しては、僕は嫌いだね。MESHUGGAH を水増ししたゴミのようなもので、あのバンドの発明、激しさ、想像力を全く捉えていないと思う。あのシーン全体が忘却の彼方へと流れていっても構わないと思っているよ」
ポリリズム、シンコペーション、変拍子の黄金比で、メロディー以上にリズムによって楽曲のイメージを決定づける Djent の登場は、プログレッシブ・メタルにとってある意味劇薬でした。低音の魔法と0000の麻薬はシーンを席巻し、フレッシュな空気を吹き込むと同時に、音楽やサウンドの定型化をも導いたのです。言いかえれば、一部の奇才が創造した方法論を機械的に当てはめる音楽のオートメーション作業は、それまでランダムに散発的に勃興していたプログ・メタルの奇々怪界を一掃するほどのインパクトと中毒性を秘めていたのです。
「”Chromosphere” は、僕たちがこれまでに制作したアルバムの中で、最もヘヴィーでアグレッシブな作品だよ。僕たちは、かなり具体的なインスピレーションのリストに基づいて作業したからね。MEKONG DELTA, WATCHTOWER, SIEGES EVEN, TARGET, TOXIK, REALM がそのリストに挙がっていた」
ただし近年、あの重苦しく突拍子も無いプログ・メタルの百鬼夜行は少しづつその歩みを再び刻み始めています。四半世紀ぶりに LIQUID TENSRON EXPERIMENT がもたらした鮮烈はまさしくその狼煙でしょうし、MEKONG DELTA, WATCHTOWER, TOXIK, CORONER, CYNIC といった伝説の魔人たちも再び彼らの法律で新たな闇に跳梁跋扈しつつあります。そして11年ぶりとなる新作を携えた歴戦の強者がここにまた一人。CANVAS SOLARIS の復活作、”Chromosphere” は明らかに80年代後半から90年代前半を席巻したプログ・メタルやテクニカル・スラッシュの DNA を色濃く受け継いでいます。
「ボーカルの要素を完全に排除してインストゥルメンタルにすることを決断したんだよ。2002年当時はかなりワイルドなアイデアだったね。今でこそ数多くのインストゥルメンタル・バンドが活躍しているけど、当時はまだ未開の地だったから」
実際、インスト世界でこれほどアグレッシブに、数学的に、それでいて雄弁に語りかけるメタル種族は、BLOTTED SCIENCE, SPASTIC INC, そして CANVAS SOLARIS の三雄くらいのものでしょう。壮大な組曲のような “Chromosphere” の中で最も強烈な楽器の祝祭は、10分以上の “Extrasolar Biosignature” と “Zero Point Field” に違いありません。
リフのしたたかな高揚感は F1 並のスピード感で複雑なリズムのサーキットを疾走し、うねるベースとパーカッシブなドラムのアスファルトにはシュレッドのエキゾーストノートが響き渡ります。ダークな雰囲気を照らし出すシンセサイザーのダンスはさながらナイトレースに差す光。そうして、混沌とした攻撃性とメロディのバランスを巧みにコントロールしながら、彼らはソラリスの陽のもとに緊張感を高め、解放し、シームレスに古のプログに咲いた自由を謳歌していくのです。メロディックを極めたギターハーモニーやコードのボイシングも非 Djent で実に独特。
今回弊誌では、Hunter Ginn にインタビューを行うことができました。「Nathan と僕は、インストゥルメンタル音楽を作り始めた頃、ミニマリズムに影響を受けた80年代のクリムゾンからインスピレーションを得ていたんだ。彼らのそのサウンドへの最も明確な賛辞は、”Cortical Tectonics” に収録されている “Interface” という曲で聴くことができるだろうな」 どうぞ!!

CANVAS SOLARIS “CHROMOSPHERE” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【FEAR FACTORY : AGGRESSION CONTINUUM】


COVER STORY : FEAR FACTORY “AGGRESSION CONTINUUM”

“Syncopated Guitars And Drums… A Lot Of People Were Saying, ‘Well, Meshuggah Made That Popular, Yeah, Meshuggah Didn’t Make It Popular Till Much Later. Fear Factory At That Time Was a Much Bigger Band. We Were The Only Band, Really, At The Time That Was Really Popularizing That Style With The Syncopated Guitars And Drums.”

FEAR FACTORY DEMANUFACTURES   AGGRESSION CONTINUUM

FEAR FACTORY の偉業。未来はいつも今、作られ続けています。1995年にリリースされたセカンド・アルバム “Demanufacture” のリリースから25年以上が経過し、読者の中にはもしかすると発売当時生まれていなかった人もいるかもしれません。しかし、そんなリスナーでもこのアルバムを耳にして、時代遅れだとか古臭いといった感想を待つ事はきっとあり得ません。”Demanufacture” は時代を遥か先取りした革新的な作品であり、そして現在でも当時と同じように新鮮に聞こえます。メタルとハードコアの近未来的衝突。
実際、”Demanufacture” はメタルの未来と、インタラクティブ・テクノロジーや人工知能の暴走を、鋭く、力強く予言していました。エクストリーム・ミュージックのサウンドを永遠に変えながら。
実のところ、FEAR FACTORY は広く成功する可能性を持ったバンドではありませんでした。1991年のデビュー作 “Soul Of A New Machine” は、デスメタル、グラインドコア、インダストリアル・ミュージックからヒントを得た、非常に新鮮で独創的なエクストリーム・メタルのレコードでバンドのユニークさを存分に認識させましたが、彼らの音楽的ビジョンが真に生かされたのは、1993年に発表された同様に画期的な “Fear Is The Mindkiller remix EP” でした。FRONTLINE ASSEMBLY の Rhys Fulber が解体・再構築したリミックスの輝きは、喜びに満ちた異種交配によって FEAR FACTORY を正しい方向へと誘い、やがて彼らのキャリアを決定づけるアルバムへと導いたのです。ギタリスト Dino Cazares は当時を振り返ります。
「”Fear Is The Mindkiller” は、俺たちがやりたかったこと。ただ、最初はそのための技術がなかったんだ。キーボードのサンプルもなければ、Rhys が使用するようなコンピュータもなかった。だから、ギター、ベース、ドラム、ボーカルでマシンをエミュレートしようとしたんだ。KMFDM や Ministry のような古いインダストリアル・バンドを聴くと、メタルのリフをサンプリングし、それをループさせて同じリフを何度も繰り返しているよね。僕らはそれを楽器で真似しようとしたんだ」
“Soul Of A New Machine” で礎を築き、その後、リミックスアルバム “Fear Is The Mindkiller” で理想に近づいた FEAR FACTORY。しかし、やはり “Demanufacture” は別格でした。その遺産、今日まで続いている影響、そしてメタルのスタンダードになった手法は多岐に及びます。
まず、クリーン・ボーカルと極端なデス・グラントをミックスした Burton C. Bell のスタイルに注目が集まりました。
「特に、クリーン・ボーカルと極端なデス・グラントをミックスした俺のスタイルは、メタル界のスタンダードとなった。 もしわかっていたら、自分のスタイルを商標登録していただろうね。そんなことはできないだろうけど (笑)。”Fear Is The Mindkiller” の後、俺たちは “Soul Of A New Machine” と “FITM” とのコンビネーションを求めたんだ。完全なエレクトロニックではなく、新しい展開があり、また、多くのハードコア・バンドとツアーをしていたから、ハードコアやメタルの雰囲気も残したかったんだ。そこにさらにもう少し新鮮さを加味したいと思って、ボーカルの幅を広げ始めたんだよね」
そのボーカル・スタイルにはどうやってたどり着いたのでしょう?
「そうだな、正直俺はあまりメタル系の人間ではなかったんだ。好きなメタルバンドはいくつかあったけど、どちらかというと HEAD OF DAVID や SONIC YOUTH, BIG BLACK といったバンドの方が好きだったね。他のバンドの中にもすごく好きな部分があって、例えば GODFLESH では Justin が歌うというより、うめき声のような感じで感情を露わにしている。俺は Justin の真似をしようとしたんだけど、うめき声ではなくメロディーのようなものが出てきたんだ。クールなサウンドだったからそのまま続けてみたら、そのボーカル・スタイルをより多く曲に取り入れることができたんだよね。すべての曲ではないけど、”Pisschrist”, “Self Bias Resistor”, “Zero Signal”, “Replica” みたいな曲では、とても効果的だった。ただ、それはまだはじまりに過ぎず、今でもさらに発展し続けているんだよ」

時代を先取りしていたのは、Burton のボーカルだけではありません。Raymond Herrera のドラムパターンの驚速と激しさは、バンドが本物のドラマーではなく、ドラムマシンを使っていると思われるほどでした。
「彼はスタミナと体力をつけるために、コンバット・ブーツやレッグ・ウェイトを使って演奏していたんだ。人々は、彼が本物のドラマーであることを信じていなかったし、シンガーが一人であることも信じていなかったんだよ。つまり、俺たちには多くの誤解を解いて回らなきゃならなかった。特に初期のツアーでは SICK OF IT ALL や BIOHAZARD のようなハードコア・バンドと一緒に回っていたから、受け入れてもらうのに時間がかかったね」
自身も右手に重りをつけ、左手指の関節を固定してマシンガンピックを養った Dino は、自分たちの音楽にターボチャージャーをかけてパワーアップさせる方法を見つけようとしていました。Rhys Fulber が回顧します。「”Fear Is The Mindkiller” では、それまで演奏されていなかったようなインダストリアルなクラブで演奏するようになったからね」
FEAR FACTORY とロードランナーとの契約に尽力した著名なメタルA&Rのモンテ・コナーは、このバンドの特異なアプローチにいち早く可能性を見出し、革命的だと主張した人物です。
「FEAR FACTORY は最初から先駆的だった。残忍なデスメタル・バンドが、ポップなコーラスを入れていたんだから。しかし、 “Demanufacture” を制作していたときの目標は、デスメタルから完全に新しいものへと進化させることになったんだけどね」
関係者全員の多様な嗜好。FEAR FACTORY はそもそも決して一般的なメタル・バンドになる運命にはありませんでした。デスメタル、インダストリアル、エレクトロニカ、サウンドトラックなど、バンドが愛してやまないものすべてが、スリリングで見慣れない新たなアイデンティティへと集約されていきました。90年代初頭は、商業的にはメタルにとって最も恵まれた時代ではありませんでしたが、SEPULTURA, PANTERA, MACHINE HEAD, KORN などと並んで FEAR FACTORY は新しいやり方とサウンドを考案することで、このジャンルに新鮮な命を吹き込んでいたのです。Burton が説明します。
「俺たちは、FEAR FACTORY をこんなサウンドにしたいというビジョンを持っていたけど、自分たちの技術を理解し、そのポイントに到達する方法を把握するのに時間がかかったんだよね。”Demanufacture” の時点で、すべてがまとまったんだ。歌詞、コンセプト、サウンド、アレンジ、プロダクション…すべてがね。チャンスを逃すことを恐れてはいなかった。だから自分たちの好きなことだけをやっていたよ。コーラスをビッグにしたり、テクノの要素を取り入れたり。自分たちが好きなら、やってみようという感じだった。失うものは何もなかったんだから」

1994年10月から12月にかけてレコーディングされた “Demanufacture” に問題がなかったわけではありません。バンドは、シカゴの Trax スタジオでレコーディングを開始しましたが、すぐに自分たちが期待していたものとは違うことに気づきました。
「次から次へと問題が出てきて、まさに最悪の状態だったな。ドラムを聴き直すと、マイクが機能していなかったせいで多くの音が欠落していた。俺たちは、”この場所はクソだ ” と思い、FAITH NO MORE が “King For A Day” をレコーディングしていたウッドストックに飛んだんだ。空きスペースはあったんだけど、1ヶ月分もはなかったから、結局、シカゴのデイズ・インで1ヶ月間、床に寝ることになったよ。その後、ベアーズビルのスタジオが使えるようになるまで、マネージャーの家に住んでいたね。ここの未完成の地下室を使って、文字通り地面の上でリハーサルをしていたんだ。6月から10月の間、俺たちは宙ぶらりんだった」
ベアーズヴィルは彼らのニーズに合ったスタジオでしたが、バンドには時間がなく、ロンドンのウィットフィールド・ストリート・スタジオでボーカルを完成させました。アルバムの音がちょうどよくなるまで、何度もミックスとリミックスを繰り返しました。また、アルバムにクレジットされてはいますが、ベーシストの Christian Olde Wolbers はバンドに入ったばかりで、Burton によると「十分にタイトな演奏ができなかった」ため、彼のパートはギタリストの Dino Cazares が担当したといいます。その Dino がレコーディングを振り返ります。
「俺たちは、山の中の都会人だった。スタジオでは、FAITH NO MORE と BON JOVI に挟まれていたんだ。FAITH NO MORE とはよく一緒に遊んだと言っておこう。ドラムを始めてからは順調だったんだけど、ギターを始めたところで壁にぶつかってしまった。最初のプロデューサー Colin は俺のギター・トーンが気に入らなかったんだ。2週間も喧嘩して、1音も録れなかったんだよ!」
プロデューサーとの対立の中で、Dino と Burton は、時間がどんどん過ぎていき、予算がどんどんなくなっていくのを感じていました。Colin は、Dino が機材を変えるべきだと断固として主張した。Dino は Colin に「失せろ」と言いました。
「これが俺の音なんだ!ってね。ある日、あまりにもイライラしていたから、スタジオから坂を下ったところにあるフルーツ・スタンドまで歩いて行ったんだ。そこで働いていた男の人に見覚えがあって、それが DC のハードコア・レジェンド BAD BRAINS のギタリスト、Dr. Know だったんだよね。そこで彼と話をして、今の状況を伝えると、彼は『君が使えるものを持っているよ』と言ってくれた。それで、俺のアンプを彼のキャビネットに接続してみたところ、突然、ドーンと音が出てきたんだ。みんな額の汗を拭いていたよ。ハハハ!」
膠着状態が解けたことで、”Demanufacture” の制作が本格的に始まりました。キーボード、サンプル、サウンドエフェクトに重点を置きながらも、リフとキックドラムの同期した機械的ブレンドによって前進するこのアルバムは、11曲で構成され、メタルの新しいマニフェストとなることが約束されていました。しかし、アルバムに対する Dino のビジョンは、その集中力と激しさゆえに、Colin Richadson がミックスを担当するにはもはや適任ではないという結論へと急速に達していました。Rhys Fulber が証言します。
「Colin を悪く言うつもりはないよ。彼は素晴らしい人だけど、俺たちは違う方向に進んでいると感じていた。もし彼がミックスしていたら、典型的なメタルのレコードになっていただろうな。俺たちには既成概念にとらわれないことが必要だった。最初のミックスは最悪でね。キーボードが前面に出ていなくて、俺たちはあの音を大きくしたかったからレコードのコントロールを取り戻したんだ」

誤った情報の宝庫であるウィキペディアによると、”Demanufacture” は、映画『ターミネーター』の第1作目からインスピレーションを得たコンセプト・アルバムであるとされていますが実際はどうなのでしょう? Dino が振り返ります。
「俺たちは最初からSF映画のファンだった。『マッドマックス』は、1979年に撮影されたものでずいぶん昔の話だけど、俺らは子供の頃にそれを見ていたんだ。その後、突然『ターミネーター』が登場して、”Soul of a New Machine” の時に、『ターミネーター2』に出てきた液化したT-1000という新型ターミネーターの記事を読んで、新たな機械の魂ってアルバムのタイトルとしては最高だなと思ったんだ。だから、俺たちは明らかにテクノロジーを受け入れ、それを FEAR FACTORY の大きなコンセプトにしたんだ」
Burton は、SF がインスピレーションのひとつであることに同意するものの、それは多くの源のひとつに過ぎないと語ります。
「俺は『ロボコップ』、『ブレードランナー』、『フォーリング・ダウン』、『アポカリプス・ナウ』のファンだった。あと、”The Closet “という映画があって、そこでは冷戦時代の東側の尋問が描かれていて、それがいくつかの曲のインスピレーションになっているんだ。当時のビデオゲームからもいくつかヒントを得たね。でも、一番のインスピレーションは、92年のLAでの暴動だったと思う。俺たちはアレを経験しているから。殴られたり、裁判を傍聴したりね」
Dino が付け加えます。
「1990年から1995年にかけて、火事、洪水、暴動が起こった。1994年には大きな地震があり、ロサンゼルスが破壊されるのを目の当たりにしたよ。略奪者、銃撃戦、国家警備隊の夜のパトロールなどを目の当たりにね。Burton はそのすべてを “Demanufacture” に注ぎ込むことができたんだよ。このアルバムの最初の行は、”Desensitised by the values of life… ” だからね」
皮肉なことに、暴動が始まった日、バンドはLA南部で “Soul Of A New Machine” の写真撮影を行っていました。その場所は、暴動がはじまったフローレンスとノルマンディーから文字通り3ブロック離れた場所でした。Burton が回顧します。
「人々が集まって抗議活動を始めたとき、ちょうど車でそこを通っていたんだ。これはひどいことになるぞ、早くここから出ようと思っていたね。そして、実際に醜くなった。ピリピリしていたよ。誰もが敵対し、標的になっていた。誰も警察を信用していなかった。シュールだったね。ビルの屋上で自動小銃を持って商品を守っている人もいたんだから。俺たちは “Demanufacture” の時代に生きていて、人間と戦い、生き延びるために必死だった。精神的にも肉体的にも影響を受けたよ。つまり、住んでいた場所を失い、正式にホームレスになって、94年の “Demanufacture” のレコーディングが終わるまで、ソファで暮らしていたんだから」

人間対機械という考えは、FEAR FACTORY にとって永遠のテーマとなりました。自動精算機、ドローン、自動運転車が普及している今日、それは彼らが想像していたよりも予言的であったかもしれません。コンセプトアルバムのアイデアは “Demanufacture” が完成した後に生まれたと Burton は説明します。
「アルバムを録音し、アートワークも完成していたけど、プレス用に各曲の解説をするように頼まれたんだ。そしてそれを書き始めたところ、各曲にストーリーを持たせることが自然に思えてね。つまり、この混乱と人々の暴動の中に主人公がいるということだよ」
歌詞を振り返ってみると、未来的というよりは非常に個人的な内容のものもあります。
「そうだね、すべて個人的なものだよ。”Therapy For Pain” は、元ガールフレンドの夢を描いたもので、愛と痛みをテーマにしているよ。”Zero Signal” は、ロンドンでアシッドトリップから目覚めたときに書いたんだ。Marquee クラブのレイブで大量のアシッドを摂取して、ある女の子と付き合い始めたんだ。彼女の部屋で一晩中トリップしていたんだけど、目が覚めるとカーテンの隙間から日の光が入ってきて、その光が青い目をしたイエスの巨大な絵に当たっていたんだよね。アレはとてもパーソナルな出来事だったな。あとは、あのころ俺は法律番組をよく見ていて、台詞をカセットに録音していたんだけど、その多くがアルバムに使われている」
一方、Dino は別の場所からインスピレーションを得ていました。
「Dino と俺は当時、一緒に暮らしていたんだ。彼はあのころ Dimebag のようになりたいと思って、”Cowboys From Hell” を全部暗記していたくらいでね。それに、面白い事実があるんだ… “New Breed” のリフは、STONE TEMPLE PILOTS のリフを逆に演奏したものなんだよ。確か “Vaseline” だったかな」
1995年6月13日に発売された “Demanufacture” は、オーストラリアではゴールド、イギリスではシルバーに認定され、アルバムチャートで27位を記録しました。さらに、このアルバムは無数のメタルバンドに影響を与え、インダストリアル・メタルやメタルコア、さらにはかなり先の未来、 djent の文字通り青写真となりました。Burton は胸を張ります。
「”Demanufacture” は、俺のキャリア全体を変えたし、多くの扉を開いてくれたんだ。あのアルバムは時の試練に耐えてきたと思うよ。サウンド面やプロダクション面だけでなく、歌詞の面でも真実味がある。俺たちは、暴動やいろいろなことで、文字通り常に緊張感の中にあった。つまり、現在のような状態だよ。結局歴史は繰り返すんだ」
Dino も同様にあのレコードを誇りに思っています。
「本物の演奏だと気づかない人もいた。エレクトロニック・ドラム、つまりプログラムされたドラムだと思った人もいたし、俺のギターがサンプリングされたものだと思った人もいた。非常にタイトなレコードだったから、そしてある意味では機械的な音だったから、リアルではないと思われたんだ。俺は、今でも人々が賞賛するサウンドを作ることができたことをとても嬉しく思っている。今でもあのレコードに影響を受けている人がいるからね。あれはバンドのキャリアの中でも画期的なもので、インダストリアル・メタルというジャンルを定義するような作品を作ったんだ。確かに、 MINISTRY や GODFLESH みたいなバンドはいたけど、FEAR FACTORY はそれを別のレベルに引き上げたんだよね。他の人がやっていないような多くの要素を組み合わせたんだ。
レコードのプロダクションも大きな要因のひとつだね。このレコードのミキシングは、間違いなく新しいレベルに到達している。Rhys と Greg がミックスを担当したのは、この種の音楽の標準となるような、素晴らしいものだったから。ボーカルだけでも、後に続く世代のミュージシャンやボーカリストにインスピレーションを与えたよね。シンコペーションの効いたギターやドラム…多くの人が MESHUGGAHが流行らせたと言っているけど、MESHUGGAH が流行らせたのはもっと後だよ。当時の FEAR FACTORY はもっとビッグなバンドだったから。シンコペーション・ギターやドラムを使ったあのスタイルを広めたのは、当時の俺らだけだったんだ。だから、時の試練に耐えられるような名盤を作れたことは、とても幸運だったと思うよ」
Dino は今でも “Demanfucature” よく聴き返すと語っています。
「サウンドとかではなく、構造を聴くために時々戻ってくるんだ。多くの場合、その構造を新しい曲に応用しているよ。例えば、どうやって “Zero Signal” を書いたんだっけ?どうやって始まるのか?バースはどこへ行くのか?中盤はどうなっているのか?とかね。新しい曲に行き詰ったら、”Demanufacture” に戻って、『よし、これが俺たちのやり方だから、戻ってこの曲に適用してみよう』という感じになる。曲がまったく違っていても、リフが違っていても、今でも曲作りの助けになっているんだよ」

あれから26年。Dino が語る通り、FEAR FACTORY は FEAR FACTORY の哲学を微塵も失わない強力な “Aggression Continuum” で戻ってきました。そう、彼らのアグレッションは今でも続いています。
長い間の悲劇的な活動休止の後、棚上げされていた原題 “Monolith” がついに私たちの目の前に現れました。しかし、ここに一つ大きな問題が。30年のキャリアの中で11枚目のフルアルバムである “Aggression Continuum” は、ギタリスト Dino Cazares とボーカリスト Burton C. Bell のデュオにとって最後の作品になります。このアルバムでこそ Burton はその唯一無二の個性を響かせていますが、すでにバンドを脱退。しかし多くの人にとって、Dino と Burton こそが FEAR FACTORY なのではないでしょうか?
残念なことに、ここ数年、Burton や Dino をはじめとするメンバーの人生には様々な浮き沈みがあり、破産や商標権の問題など、バンドの主眼である音楽の行く手を阻む困難が多くありました。そして、二人が一緒にステージに立ち、熱狂的なオーディエンスの前で “Replica” や “Edgecrusher” を口ずさむ姿を見ることはもうかないません。つまり、私たちは “Aggression Continuum” を最大限に活用し、この章をふさわしい形で終わらせることを期待しなければならないのです。
過去と現在のバンドメンバーからの一貫した不誠実な表現と根拠のない告発。Burton が発表した脱退の理由はいたってシンプルでした。
「脱退をしばらく考えていたんだ。訴訟で消耗したんだよね。エゴの塊。貪欲さ。バンドのメンバーだけでなく、弁護士も含めてね。俺はただ、バンドに対する愛情を失っただけ。FEAR FACTORY では、常に何が起きているんだ!と思うことばかりだった。30年というのは、とても良い期間だよ。俺が FEAR FACTORY で制作したアルバムは、これからもずっと世に出続ける。俺は常にその一部であり続けるんだ。だけどただ、前に進むべき時だと感じたんだよ。もちろん、自分の遺産を誇りに思っている。俺たちは偉大なことを成し遂げたからね。信じられないような音楽を作り、音楽業界や世界中のファンに忘れがたい足跡を残してきた。最高の時には山の頂上に登り、最低の時には深い溝を掘ってきた。ただ、別のバンドでもっと素晴らしいことをするために、前に進まなければならない時が来るんだ…」

Dino にももちろん言い分はあります。
「辞めるとすら彼は言わなかった。SNS で知ったくらいでね。彼はいつものように、ちょっと姿を消してしたんだよ。俺が知っている Burton は、困難な状況になると逃げるのが好きな男なんだよね。彼は2002年に辞め、2007年には他のメンバーを辞めさせ、そして今また辞めている。彼はすべてのレコードで歌声を残しているにもかかわらず、辞めてしまう人でもあるんだよ。
俺は問題に正面から取り組むのが好きだ。もし問題があるなら、部屋に入って議論し、解決しようとする。人によっては、自分が追い込まれているように感じ、それに耐えられないこともあるだろうね。彼はそういうタイプなんだ。
去ったのは3年前だが、正直なところ、本当に去ったのは何年も前のことだと思う。おそらく20年は経っているだろう。彼は FEAR FACTORY のために歌詞を書いていたのは、心の底からではないと言っていた。歌詞を崇拝しているファンへの冒涜だよ。お金のために戻ってきたとも 言っていたしね。すでに知っていたよ。対処しなければならなかった」
たしかに Burton は現在、別バンド ASCESION OF THE WATCHER にすべてを捧げています。Dino が FEAR FACTORY に情熱を注ぐように。
「レコードを作ることに関しては、俺は非常に意欲的な人間だ。Burton はいつもプッシュしなければならなかった。さあ、やろうぜ !ってね。 あるいは、彼に連絡を取ろうとしても、彼がいないこともあった。何ヶ月も何ヶ月も姿を消していて、どこにいるのかわからない。彼が戻ってくるのを待つしかないんだよ。
“The Industrialist” のときは、俺がすべての曲を書いて準備ができていたんだけど、Burton が8カ月間も姿を消して、誰にも居場所を教えなかったんだ。その後、彼はカナダで “City Of Fire” というプロジェクトに参加していることがわかった。もちろん、今では自分のプロジェクトで自分のことをする必要があることも理解している。わかったよ。だけど、俺たちに教えてくれよ!
そういう面もあったよね。つまり Burton は長い間、出口を探しているように見えたんだ。彼は自分の他のプロジェクトが軌道に乗ることを望んでいて、そうすれば「おい、CITY OF FIRE は次の SOUNDGARDEN になるぞ、じゃあな!」と言うんじゃないかってね」

バンドを巡る訴訟や個人的な問題が、Burton の脱退に影響を及ぼしたのは明らかです。アルバムの赤々と燃える怒りの炎の代償とも言えるでしょうか。
「理解してもらいたいんだが、俺たちはとても多くの法的な問題や破産、離婚を経験した。俺は個人的に100万ドルの損失を被ったからな。ストレスは大きかったね。何度か病院に行かなければならなかった。心臓発作かと思ったけど、すべてはストレスによるものだった。でも、勘違いしないでほしい。俺はそのことで、戦うべきことを戦い、必要な犠牲を払うことを躊躇したわけではないんだよ。音楽は俺の情熱だから。常に愛しているんだ」
現在は、FEAR FACTORY の商標は、Dino が単独で所有しています。
「必要な措置だった。バンドを存続させたかったら、戦わなければならないという緊急性があった。Burton と戦うという意味ではなく、裁判所と戦うという意味で、Raymond や Christian と戦うという意味でね。
連邦破産法第7章を申請するときには、すべての資産をリストアップしなければならない。コンピュータ、車、家、ビジネス、そして商標などもリストアップしなければならない。そこに何も記載していないと、奪われてしまうんだ。それが Burton に起こったことだよ。Raymond と Christian の弁護士が、彼が FEAR FACTORY の商標を資産として登録していないことを発見したため、商標を取り上げられたんだ。それで裁判所がオークションに出した。みんな俺が Burton から商標を奪った、あるいは訴えたと思っている。だけど、裁判所が商標をオークションにかけたんだ。つまり、誰でも入札できる eBayのようなもの。俺は商標を手放すつもりがなかった。最高額で落札しようとしたんだけど、その入札者には Raymond や Christian もいたんだよね。とても激しい競り合いで、汗びっしょりだったよ」
クラウドファンディングで制作費を募って完成させたアルバムです。
「確かに高額なアルバムだった。レコード会社からもらった前金を使い果たしてしまったから、結局、GoFundMe キャンペーンを行うことになった。キャンペーンはとても成功したんだけど、Burton は賛成しなかったんだ。なぜかはわからないけどね。レコードが出れば彼の利益になるだけだからね。でも、本当に助けてくれたファンの皆に感謝しているんだよ。2万5,000ドルも集まったからね。これは、アンディ・スニープにミックスを依頼したり、生ドラムを叩いてもらったり、エンジニアを雇うための費用となった。金額は言えないけど、かなりの額自腹も切ったよ。だから、俺は今ほとんど無一文なんだ。でも、俺は悪いレコードを抱えて生きることはできないから。もし、ここまで戦ってきて、レコードが最悪だったら意味がないんだ」
一連の騒動がアルバムになんらかの影を落としたのでしょうか?
「いや、音楽に影を落としているとは思わないね、全く。むしろ摩擦が素晴らしいものを生み出すことだってあるだろ?この新譜でもそうだと思うよ。Burton が奏でる美しいメロディックなボーカルには、怒りや不安の感情が同時に込められている。彼が書いた歌詞と彼が歌った歌詞を聴けば、素晴らしいの感想以外はでないだろう」

間違いありません。ここには Burton C Bellの声があります。この声は、SLIPKNOT や KILLSWITCH ENGAGE が台頭してきたときに流行した、ダイナミックな唸りと歌声の元祖。そして、SF的なシンセサイザーやドラムトリガーと、ギターやベースの本格的なピッキングを組み合わせた、相反融合するインダストリアルでオーガニックなサウンドはいささかも衰えることはありません。
つまり、Dino と Burton の FEAR FACTORY は最も相応しい形でその幕を閉じます。インダストリアル・サウンドとマシンライクなリフアタック、多弦の重み、免許皆伝二刀流のボーカル、研ぎ澄まされたリズム隊に加え、一際メロディックでキャッチーなコーラス。さらに、アルバムには映画のようなオーケストレーションが施されており、深みがあって、近未来的なディストピアやドラマのような感覚がしっかりと刻まれています。何より、闘争の恩恵か、彼らは怒りやエッジをほとんど失っていません。”Demanufacture” で聴かれた怒りに匹敵する高温がまだここには火照っています。ただし、何十年もかけて曲作りが洗練されてきたせいか、どことなく柔らかさや滑らかさが出てきたような気もしますね。
モンスター・コーラスといえば、”Purify” が “Agggression Continuum” の “Replica” であるという考えはあながち間違ってはいないはずです。このレコードに収録されている曲の中で最も即効性のある曲ですが、スタイルとエレガンスを持って “浄化” が行われているため、あからさまなキャッチーさやポップメタル的なニュアンスとは無縁。最近、Burton が LINKIN PARK の “Hybrid Theory” は子供向けの “Demanufacture” だと語っていたのを思い出しました。Dino は一笑に付していましたが。
ファースト・シングルの “Disruptor” は、”Genexus”の “Soul Hacker” と多くの共通点があり、 「自分の道を貫け」という希望に満ちた歌詞を持つ、抵抗のための力強いアンセムです。”Fuel Injected Suicide Machine” では、バンドが愛する複雑すぎる曲名と、冷酷なまでの攻撃性が見事に融合しています。「運命を恐れず」「決して抵抗をやめない」という歌詞は、”Demanufacture” のメジャーな曲と同レベルの、真のインダストリアル・バンガー。
FEAR FACTORY には、アルバムを壮大でゆっくりとした曲で閉じるという強い伝統がありますが今回はそうではなく、”End of Line” は、Burton の広大なボーカルレンジと豊富なリフを使ったメタルトラックで、アルバムを大々的に締めくくっています。”Monolith”のソロのように、一歩踏み出した挑戦もあり、”Aggression Continuum” 以前のリリースとは異なるエッジがたしかに生まれてきているのです。そうしてシンセと話し言葉だけが残り、深い声で「恐怖がなくなったとき、私だけが残る」と述べてアルバムは幕を閉じます。危険は去っていない、抵抗は続いていく。結局、FEAR FACTORY は “Demanufacture” のころからずっと、メタルのレジスタンスであり続けているのでしょう。
女性ボーカルを入れるという噂もありますが、Burton との復縁はもう起こらないのでしょうか?
「俺は前に進まなければならない。だから起こるならすぐに実現しなければならないと思う。ファンの皆が待たされるのは不公平だと思うからね。もしそうなるのであれば、なぜ今ではないんだい?なぜファンは、彼がここが自分の居場所だと気づくのを待たなければならないのだろう?
わからないけど、彼は新しい人生の選択をして、前に進んでいるのかもしれない。彼がここにいたくないと思っていた時期が何度もあったという事実を無視することはできないよ。彼が出口を探していた時期もあったしね。だけど、同時に、俺たちが作り上げたものを否定することもできないよね。だから…将来的に Burton と復縁するか?可能性はあるよ。俺はそれを受け入れている」

参考文献: EON MUSIC: FEAR FACTORY Interview

KERRANG!:“I’m Proud Of My Legacy… But You Have To Move Forward”: Burton C. Bell On Leaving Fear Factory And What’s To Come

LOUDER:Dino Cazares: “I think Burton C Bell left Fear Factory many, many years ago”

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CICADA THE BURROWER : CORPSEFLOWER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CAMERON DAVIS OF CICADA THE BURROWER !!

“I Wanted The Name And Aesthetic Of The Record To Reflect The Duality Of My Personal Experience Being a Transgender Woman. It Seemed Like The Best Way To Do That Was To Combine Something Lifeless, a Corpse, With Something That Represents Life And Femininity, Flowers.”

DISC REVIEW “CORPSEFLOWER”

「私はトランスジェンダーの女性であるという個人的な経験、その二面性をレコードの名前と美学に反映させたいと思ったの。それには、生気のないもの、つまり死体と、生気や女性らしさを表すもの、つまり花を組み合わせるのが一番良い方法だと思ったのよ」
ブラックメタルは痛みを解放し人生を肯定してくれる魔法なのでしょうか。LITURGY の Hunter-Hunt Hendrix がトランスジェンダーの女性であることを公表したと時を同じくして、CICADA THE BURROWER の Cameron Davis も真の自分を世界に解き放ちました。
「このまま世の中には黙って性同一性障害を抱えて生きていくのがいいのか、それともトランスジェンダーであることを明らかにして社会的な影響を受けるのがいいのか。この葛藤を “Corpseflower” がうまく伝えてくれることを心から願っているわ」
美しい花には骨があります。自らのプロジェクトを “穴の中の蝉” と名付け、自らを羽化する前の蝉の幼虫に例えた Cameron にとって、”Corpseflower” は自身の痛み、苦悩、そして一握りの希望の両面を迷いの中から描き出す羽化の葛藤。二面性というスティグマは彼女の生にずっと宿っていて、死体と花は彼女の化身である音楽にも当然のように憑依していきます。
「ALCEST や DEAFHEAVEN のようなバンドは、私が “peak and valley” “山と谷” と呼んでいる優れた曲構成を実践している。彼らは、曲の激しい部分(山)を強調するために、繊細な部分(谷)を使用するの。私が “Corpseflower” で行ったことは、同じような考え方に基づいているんだけど、その方法論へのアプローチの仕方は、より抽象的で矛盾した感情を表現している可能性が高いと思うわ」
ラウンジ・ジャズやアダルト・コンテンポラリーがブラックメタルとまぐわう日をいったい誰が想像したでしょうか。Cameron はブラックゲイズの先駆者 ALCEST や DEAFHEAVEN の培った”山と谷” の方法論を、より高低差の大きい相反する二極での実験へと進化させました。自分が何者かを学び、未来の自分に折り合いをつけるため、彼女は映画のサウンドトラックのような眩くもキャッチーなジャズの煌めきと、暗闇に蠢くブラックメタルの牙をためらいなく混ぜ合わせ、美と暴力の混沌の中で自分自身を遂に見つけたのです。
そのシンプルで複雑な、ヒプノティックで没入感に満ち、即興的で筋書きのある光と闇のドラマは、そうしていつしかリスナーの人生まで抱きしめて、すべてを肯定していくのです。
「今日のブラックメタル・アーティストが生み出すサウンドにとって非常に重要な存在だよ。彼らが歩いたから、私たちは走ることができた。当時、音楽に許されていた限界を超えようとした彼らの意欲に、私は心から感謝しているのよ。彼らは、それまで探求されていなかったエクストリーム・ミュージックの隠れた可能性を明らかにしてくれたんだからね」
皮肉なことに、かつて最もプログレッシブから遠い世界と思われたブラックメタルは激しく変化し、今では最も進歩的なメタルサウンドを響かせています。DEAFHEAVEN や ALCEST のシューゲイザー、ZEAL & ARDOR のゴスペルとソウル、IMPERIAL TRIUMPHANT や KRALLICE, LITURGY のジャズ/現代音楽。そんな混乱するほど魅力的で複雑なブラックメタルの枝葉において、CICADA THE BURROWER はむしろダークウェーブやブラックゲイズを取り入れたジャズともいえる前衛的世界観で稀有な果実を実らせました。
リスクを冒す価値はありました。ここには、存在の本質的な寂しさ、選択の自由という野蛮な牢獄、そして心の季節の移り変わりが崇高なまでに如実に描かれているのですから。そうして蝉の幼虫は、暗い穴からゆっくりと、ゆっくりと木の幹を登っていきます。
今回弊誌では、Cameron Davis にインタビューを行うことができました。「セミは、一生の大半を地中に潜って過ごし、死ぬ数週間前に地上に出てきて、空を飛ぶ大きな生き物に変身する魅力的な虫。私はいつもこの生き物に共感していて、自分自身もまだ地下に潜っている人間だと思っているの。だから、私はこのプロジェクトを “Cicada the Burrower” “穴の中の蝉” と呼ぶことにしたんだよね」どうぞ!!

CICADA THE BURROWER “CORPSEFLOWER” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ZAO : THE CRIMSON CORRIDOR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JEFF GRETZ OF ZAO !!

“It’s About Using This Often Abrasive, Sometimes Pretty Music, To Paint a Picture Of Internal Turmoil And Use The Band As a Healthy Release Of That, And Maybe Help Someone In The Process Who May Be Going Through The Same Things.”

DISC REVIEW “THE CRIMSON CORRIDOR”

「たしかにメタリック・ハードコアのシーンは長い間、画一的で飽和状態に “あった” と思うよ。俺たちもおそらく一度や二度はそのような状況に陥って、罪悪感を抱いたことがあるんだから」
ウェストバージニア州の英雄 ZAO は、今年結成28年目を迎えました。彼らは90年代半ばのメタリック・ハードコアの死や、自らが生み出したテクニカル・メタルコアの盛衰を乗り越え、何度も解散、再結成、メンバーチェンジを繰り返しながら、ホラー映画の悪役のように繰り返し蘇り、今もこの場所にいます。
「多数のメンバーチェンジが行われる前から、クリスチャンだったメンバーたちは信念を変えたか、もしくは変えなかった人たちも “俺たちはクリスチャン・バンドだ” というメッセージを押し通すことは、俺たちが伝えたいことを伝えるのに適していないと判断したんだよね」
ZAO は1993年、キリスト教に焦点を当てたハードコアを作ることを目的に結成されました。ハードコアというジャンルは、テーマに関わらず極論を唱える傾向がありますが、ZAO は彼らの宗教観を前面に押し出していました。祭壇に呼ばれたり、ステージ上で説教が行われたりするのが初期のライブの特徴。
2代目ヴォーカル、Shawn Jonas は、1996年初頭のライブ映像で、「我々はイエス・キリストを崇拝し、彼の前に出るためにここに来た」と熱心に宣言しているほど。そうして若いキッズにとって想像が現実を超越し、神話のような存在となった ZAO は、数多の内部抗争を克服し、リアリティーを伴った “蔵王” の復活を成し遂げたのです。
「ZAO は、自分たちの本能に従って正しいと思うことをするときにこそ、いつも最高の仕事をやってのけるんだ。最近の “メタリック・ハードコア” には、メタルやハードコアとは関係のない外部の要素がたくさん入り込んできているけど、それはとても良いことだよ。俺たちは様々なタイプの音楽が好きだし、ZAO のように聴こえるなら何をやってもいいという自由は、俺たちにとって大きな意味を持っているんだよ」
自らのレーベルを立ち上げ、売り上げや権力を気にかけない自由を得た ZAO は、例えば自らより若い YASHIRA や THOU のような多様性を遺憾なく発揮することになりました。大御所として神話の中の存在でありながら、あくまで自らの本能に従い正直に音楽と対峙し挑戦し続ける ZAO の姿勢こそハードコアであり、CODE ORANGE など現在のシーンを牽引する若手からリスペクトを浴びる理由なのでしょう。
もちろん、”Sprinter Shards” や “Blood and Fire” といった名曲は今でも健在ですが、2016年に発表されたアルバム “The Well-Intentioned Virus” でネクスト・レベルへと到達したコンポジションは、5年の月日を経た “The Crimson Corridor” で一つの究極へと達しました。
「俺たちにとっての ZAO は、攻撃性を解放するためのものだ。バンドとして、俺たちは “重い” 音楽を作りたいと思っている。ヘヴィーといっても、いろいろな意味があるんだ。俺たちにとっては、ハードコア、メタル、デスメタル、さらにはラウドではないけれど “エモーショナル・ヘヴィー” “感情的にヘヴィー” なものまで、すべてが語彙の一部なんだよ」
長い年月で培った豊富な語彙によって、映画のようなメタルコアの世界が現実のものとなりました。一つのリフごとにすべての破壊を目指すのではなく、よりムードを重視したアプローチを交え真綿で首を絞めるように、”感情的にヘヴィー” な情景をそのフィルムへと収めていきます。”Into The Jaws of Dread” のポスト・メタルやサイケデリカな色彩、”Croatoan” の瞑想的で冷ややかな質感、タイトルトラック “The Crimson Corridor” の陰鬱でドゥーミーな音の葉、”R,I.P.W.” のひりつくようなエスニック・プログレッシブ、”Nothing’s Form” の慟哭は、バンドが今でも進化を続けている美しき証明でしょう。しかし同時に、どの楽曲にもメタルコアの矜持を盛り込むことで、対比の美学は凛然とその輝きを増していきます。
「今、音楽に何ができるのかはわからない。世界に会話がないから、もう音楽を通しても会話をすることができないように思えるんだ。自分の言っていることに同意してくれる人たちに向けて歌を歌うか、自分に同意しない人たちを排除するかのどちらかだから」
文字通り、真紅の廻廊のように幻滅からニヒリズムのスパイラルを辿るアルバムは、メロディアスなベースライン、メランコリックなバイオリン、そしてスローモーションのようなドラミングに駆動する圧倒的なリフワークなど、あらゆる要素が盛り込まれた “The Web” でその幕を閉じます。熟成を極めたエレガントなレコードを集約した “The Web” はまるで上質なワインのごとき輝きを秘めています。それでも野蛮で野心的なアルコールの攻撃がリスナーをジワジワと悩殺していくのですが。
今回弊誌では、ドラマー Jeff Gretz にインタビューを行うことができました。「このバンドの全体的なメッセージは、感情的な正直さだよ。それは、この時に耳障りな、時に美しい音楽を使って、内面的な混乱の絵を描き、それを健全に解放するためにバンドで演奏し、その過程で同じようなことを経験しているかもしれない誰かを助けることなんだ」 どうぞ!!

ZAO “THE CRIMSON CORRIDOR” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CARA NEIR : PHASE OUT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GARRY BRENTS OF CARA NEIR / GONEMAGE !!

“Here On Phase Out Is The Demonstration Of Him Warping Us Into a Video Game Dimension That He’s Created With The Use Of a Forbidden Device Known As The RPGBOY.”

DISC REVIEW “PHASE OUT”

「今回の作品は、これまでのスタイルとは全く異なるものになったよね。これまでの殺風景なイメージを一新して、自分たちの作ったコンセプトをしっかりと表現できるようにしたんだよね。ゲームソフトの表紙のようなイメージを切り取ったんだ」
“8-bit punk black metal chiptune chiptuneish indie rock lo-fi noise rock pixelcore post-hardcore skramz”。”Phase Out” の Bandcamp にはこれだけ大量の “タグ” が敷き詰められています。テキサスの異端児 CARA NEIR は、これまでブラックメタル、グラインドコア、ポストハードコア、スクリーモといったパレットの色彩からあらゆる不幸の痕跡を抽出し、万華鏡のように世界へと投影してきました。その多様性は時に一貫性のない “骨抜きのブラックメタル” と揶揄されながらも、ついに最も冒険的な “Phase Out” で魅惑と実験のアマルガムを最高の場所まで引き上げたのです。
「”Phase Out” では、ザ・ワンが “RPGBOY” と呼ばれる禁断のデバイスを使って、僕たちをビデオ・ゲームの次元にワープさせてしまったんだ。ゲームボーイのような形をしているけど、操作する人の知恵次第で時空を操ることができる力を持っているんだよ。ザ・ワンはその力を悪用して、RPGバージョンの僕たちを、彼のガントレットのような次元の中に作り出したんだよ。そして僕たちは、彼の病的な娯楽のために、このガントレットの中で競うように服従させられている」
例えば、忍者竜剣伝やドラゴンクエストの一場面を切り取ったようなドット絵のアートワークこそ “Phase Out” への招待状。宿敵の宇宙人 “ザ・ワン” によって RPG の世界に閉じ込められてしまった Garry Brents(ほぼすべての楽器、サンプル、プロダクション)と Chris Francis(ほぼすべての歌詞とボーカル)、つまり CARA NEIR の2人はアルバムを通してビデオゲーム “Phase Out” のクリアーを音楽で試みます。
「いとこと一緒に “マクロス/ロボテック” の卓上RPGをずっとプレイしていたんだ。ペンや鉛筆、紙を使って、マクロスの世界をダンジョンズ&ドラゴンズのスタイルで遊んだことが、子供の頃の自分の想像力の出発点となっているんだよね」
実際、マクロスやスター・オーシャン、クロノ・トリガーといった日本のアニメやゲーム、それに植松伸夫やロックマンのサウンドトラックを聖書として育った彼らの作品には、その息吹が存分に息づいています。レベルアップを告げるブレイクダウン、セーブポイントでのリラックスしたローファイなインストゥルメンタル、命をかけた圧倒的なバトル、スターオーシャンをサンプリングしたスポークンワード、そのすべては8-bitの歪みとファミコンのリヴァーブによって描き出され、子供のころ胸を弾ませたあの冒険へとリスナーを誘います。
ただし、CARA NEIR が連れ出す冒険とは狂った音楽の旅路。ブラックメタルを魔改造したアバンギャルドなサウンドから、チップチューン、サンプル、ジャジーなスウィング、トラップ、スクリーモ、グラインド、アコースティック、ハードコアまで、リスナーがたどり着く街やダンジョンはすべてが多様でユニークに絡まり合い、その魅力を存分にアピールしているのです。そこに一握りのニヒリズムとユーモア、そして現実からの逃避を散りばめながら。
「GONEMAGE はブラックメタルと8-bitサウンドをミックスしたものだけど、よりメランコリックでドリーミーな感じで、特にいくつかの曲ではシューゲイザーを取り入れているよ」
Garry の創作意欲は衰えることを知りません。CARA NEIR のリリースからわずか数ヶ月で完成を見た別プロジェクト、GONEMAGE もシーンの注目を浴びています。同様に8-bitをメタルとクロスさせつつ、よりブラックメタルに特化し感傷的なシューゲイズの響きも取り入れた “ピクセルコア” のサウンドは、実に奇抜でしかし心を激しく揺さぶられます。
今回弊誌では、Garry Brents にインタビューを行うことができました。「音楽的に大きな影響を受けているのは、常に ULVER だよ。今までで一番好きなバンド。彼らは常に変化し続けるバンドで、無意識のうちに自分の音楽や CARA NEIR のためにそのことを心に留めていたんだと思うよ」 どうぞ!!

CARA NEIR “PHASE OUT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WRECHE : ALL MY DREAMS COME TRUE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN STEVEN MORGAN OF WRECHE !!

“I Think Within Black Metal, The Piano Opens Up Patterns Of Notes That Appear Like Tremolo Riffs, But Sustain a Greater Wealth Of Musicality – Also, Being That The Piano Notes Immediately Die Off After Being Played Unlike a Guitar That Has Sustain, The Athleticism Is Appealing.”

DISC REVIEW “ALL MY DREAMS COME TRUE”

「ブラックメタルでは、ピアノはトレモロ・リフのような音のパターンを開拓しながら、より豊かな音楽性を維持することができると思うんだ。サスティーンのあるギターと違って、ピアノは弾いたらすぐに音が消えてしまう。そのために必要となる運動性の高さも魅力だよね。膨大なエネルギーの雲を作るためには、動き続けなければならない。これは、ギターにはできないピアノの特徴だよ」
“もしもブラックメタルで、トレモロ・リフを弾くギターの代わりにピアノを使ったら?” WRECHE の “All My Dreams Come True” は、そんな荒唐無稽でしかし好奇をそそる If の音夢を文字通り実現する物怪の幸いです。それだけではありません。アルバムにはピアノだけでなく、現実的な絶望苦悩に満ちたボーカル、シンセサイザーの神秘的で壮大なレイヤーが敷きつめられて、ブラックメタルでありながらブラックメタルの常識をすべて覆す、ジャンルにとって青天の霹靂ともいえる領域にまで到達しているのです。とはいえ、あくまでも手段は手段。儚さ、苦しみ、怒り、そして神秘的な体験という感情の肝は、たしかにこの場所に同居しています。
「僕はブラックメタルのファンタジーや逃避的な側面にはあまり興味がないんだよね。貧困と絶望が蔓延し、宗教指導者とそれを支持する政治家に騙され、いたるところにテント村があり、残酷な行為が行われているという、僕の身の回りにある世界をこのアルバムで表現したかったんだ」
WRECHE の中心人物である John Steven Morgan は、Bandcamp ページにおいて、シュールレアリストであり、神秘主義者としても知られるヘンリー・ミラーの言葉を引用しています。”歌うためには、まず口を開かなければならない。肺があって、音楽の知識が少しあればいい。アコーディオンやギターを持っている必要はない。肝心なのは、歌いたいと思うこと。これが歌だ。私は歌っている”。今しかない、今はじめろ、今を生きろ。John がアルバムに込めたポジティブなメッセージは、音楽同様ブラックメタルの典型とは明らかに距離を置いていました。
「すべてが揃っていても、”歌いたい” という気持ちがなければ何の意味もないわけだから。そしてそこから僕はミラーの言葉を、何かを始めるとき、あるいは芸術作品として表現するとき、あるいは人生において何かを行うときの方法として捉えているんだ。ただシンプルに、始めることが実現への第一歩だから」
隠喩としてだけではなく、音楽自体も “All My Dreams Come True” はヴォーカルに重きが置かれています。荒々しき “Schrezo” では、不協和なピアノラインに、苦悩に満ちた叫び声が重なります。ピアノの和音は絶えず背後で鳴り響き、ドラムのダーティーなシンバルは緊急事態を表現。この混沌とした状況の中で、トラックの大半をリードするのがスクリームであり、フィードバックとの相互作用が実に面白く、圧迫感のあるものとなっているのです。”肝心なのは歌いたいという気持ち”という言葉が、John の情熱と献身が、ハードコアの獰猛まで抱きしめたこのトラックを通して実によく伝わってきます。
一方で、アルバムの神秘性は、苦しみの裏返しとして、より “美しく” 儚い曲で伝えられていきます。”Mysterium” と名付けられた楽曲は、半音階的でハープにも似たドリーミーなピアノの音で幕を開け、万華鏡のピアノとシンセが楽曲の階段を駆け上がり、ブラックメタルが探求できる経験の底辺から、ブラックメタルが実現できる表現の高みまでを幻想的に描き切ります。
「僕の演奏スタイルは、ジャズやクラシックよりもメタルのジャンルに適しているんだよね。僕は鍵盤を叩くのが大好きで、かなり暴力的なプレイヤーだからね」
John はそう嘯きますが、醜さ狂気、暴力と同時に彼の鍵盤は神々しき美麗や荘厳、そして現実に残された一握りの希望までを的確に表現しています。暴力の天頂、宇宙の壮大、サイケデリックな夢、孤独、痛み、苦悩、悲しみ。対比というよりも、クラッシック、マスロック、ジャズ、ハードコアを通過したがゆえの多様な感情のスープでしょうか。そうして WRECHE は、ブラックメタルというジャンルの音楽的背景を、目を見張るような方法で変貌させ、拡張し、揺さぶり、前へと進めました。彼の言葉を借りれば、メタルに宿る無限の可能性を引き出したのです。
今回弊誌では、ほぼすべてを一人でこなす John Steven Morgan にインタビューを行うことができました。「クラシック音楽、特にベートーヴェンを独学で研究し始めたんだ。スコアを聴いたり読んだりして、どうやって特定の効果やムードを生み出したのか、またどうやって転調させて音楽を前進させたのかをね」 どうぞ!!

WRECHE “ALL MY DREAMS COME TRUE” : 10/10

INTERVIEW WITH JOHN STEVEN MORGAN

Q1: This is the first interview with you. So, at first could you tell us about yourself? What kind of music were you listening to, when you were growing up?

【JOHN】: Yeah! Thanks for having me here. I grew up in a small rural desert town in CA, USA. I really loved Beethoven as a child (well the more popular pieces like Moonlight Sonata), but the bread and butter for me was listening to bands like The Doors, Queen, Boston, ELO, The Beatles, and Led Zeppelin. My dad and I would listen to classic rock on the radio on the way to school or when we were working outside on the property. My first obsession in music was Pink Floyd in high school – especially their psychedelic albums (Piper thru Ummagumma/ Meddle/ Atom Heart Mother).

Q1: 本誌初登場です!まずはあなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【JOHN】: インタビューをありがとう。僕は、アメリカのカリフォルニア州にある小さな砂漠の田舎町で育ったんだ。子供の頃はベートーヴェンが大好きで(”月光” のような人気の高い曲も) 。僕にとっての糧は DOORS, QUEEN, BOSTON, ELO, BEATLES, LED ZEPPELIN みたいなバンドを聴くことだったね。
僕と父は、学校に行く途中や、外で敷地内の作業をしているときに、ラジオでクラシック・ロックを聴いていたんだよ。最初に音楽に夢中になったのは、高校時代に聴いた PINK FLOYD だったね。特にサイケデリックなアルバム(Ummagumma/ Meddle/ Atom Heart Mother)が好きだったよ。

Q2: You seem to be able to play a variety of instruments, how did you learn how to play them?

【JOHN】: I started piano at 15 and drums around the same time (playing on pots and pans), over time I just really loved to play and it was a great way to find respite from school or sports – then it became a full on passion by the time I turned 18 and started playing / improvising with Barret Baumgart. I just taught myself how to play the instruments and as time went on, I started self-study of Classical music, especially Beethoven. I both listened and read the scores to learn how they achieved certain effects and moods, and how they propelled the music forward through modulation.

Q2: あなたは様々な楽器を演奏できるようですね?

【JOHN】: 15歳でピアノを始め、同じ頃にドラムも始めたんだ。ドラムは鍋やフライパンで演奏していたんだけど。そのうちに演奏することが本当に好きになって、学校やスポーツの合間の息抜きになっていたね。18歳になって Barret Baumgart と一緒に演奏、即興演奏をするようになってからは、完全に音楽に対して情熱的になったんだよね。
楽器の演奏方法は独学で学んだんだけど、時間が経つにつれ、クラシック音楽、特にベートーヴェンを独学で研究し始めたんだ。スコアを聴いたり読んだりして、どうやって特定の効果やムードを生み出したのか、またどうやって転調させて音楽を前進させたのかをね。

Q3: What inspired you to start Wreche? What’s the meaning behind your band name Wreche?

【JOHN】: Well, Barret Baumgart and I started Wreche with our 2017 self-titled album – it was an extension of our 2008 band Architeuthis (which was also piano & drums, just instrumental). He went off to grad school and I was working on other things, but around 2015 we decided we wanted to do another project more in the metal vein. I also wanted to work in a genre that served my ambitions as a pianist and composer – and metal seemed pretty limitless, and still is in my opinion. The meaning behind the band name is “misery” – Wreche is the middle english spelling of wreak – as in to wreak havoc, or befell with great sadness/misery (from the Oxford English Dictionary). I was sad at the time I came up with it haha.

Q3: WRECHE を始めたきっかけを教えていただけますか?

【JOHN】: Barret Baumgart と僕は2017年のセルフタイトル・アルバムで WRECHE を始めたんだけど、これは2008年に活動していたバンド ARCHITEUTHIS(ピアノ&ドラムのインストゥルメンタル)の延長線上にあったんだ。
彼は大学院に行き、僕は他の仕事をしていたんだけど、2015年頃に、もっとメタルの流れを汲む別のプロジェクトをやりたいと思ってね。僕は、ピアニストや作曲家として自分の野心を満たすようなジャンルで仕事をしたいと思っていたんだけど、メタルはそういう意味でかなり無限の可能性を秘めていると思ってね。
バンド名に込められた意味は “不幸” だよ。 中世で Wreak は Wreche と綴られていて、「大混乱を引き起こす」「大きな悲しみや不幸に見舞われる」という意味を持っていたんだ。オックスフォード英語辞典からの引用だけど。この名前を思いついたとき、僕は悲しかったんだよ。

Q4: One of the unique aspects of Wreche is that you use the piano as your main instrument instead of the guitar, even though it’s black metal. Why did you go for such an idea?

【JOHN】: I really love metal, but I don’t play guitar! However, as Barret and I discovered over the years, my playing style really lends itself more to the metal genre than say jazz or classical. I love banging on the thing and I’m a pretty violent player.

Q4: WRECHE は、なんと言ってもブラックメタルにもかかわらず、ギターの代わりにピアノをメインの楽器として使用しているところが非常にユニークですよね?

【JOHN】: 僕はメタルが大好きなんだけど、ギターが弾けないからね!だけも、Barret と僕が長年にわたって発見してきたように、僕の演奏スタイルは、ジャズやクラシックよりもメタルのジャンルに適しているんだよね。僕は鍵盤を叩くのが大好きで、かなり暴力的なプレイヤーだからね。

Q5: In fact, guitar tremolo riffs are an iconic part of black metal, are you using the piano as an alternative or something completely new? Within the framework of black metal, is there something that can be expressed only with the piano?

【JOHN】: There’s a few sections in “Les Fleurs mov.2” where I purposefully emulate tremolo guitar riffs (as a sort of homage or quote to black metal). Otherwise, yeah it was difficult in some ways to adapt my playing further into the black metal style – especially in terms of subbing for tremolo riffs. I needed a way to create constant motion on the piano. I did this by implementing arpeggios and various triplet or quadruplet double hand patterns to create a moving base for the music to stand on, and to keep up with blast beats. I hope this hits people as completely new – I have never seen the piano used this way in metal before…usually it’s just for pretty little interludes or ballads. I think within black metal, the piano opens up patterns of notes that appear like tremolo riffs, but sustain a greater wealth of musicality – also, being that the piano notes immediately die off after being played unlike a guitar that has sustain, the athleticism is appealing. You have to keep moving to create vast clouds of energy. This is something the piano does that guitars cannot – each note is like a small shard of glass in a mosaic because of the nature of the instrument’s sustain.

Q5: 実際のところ、ギターのトレモロ・リフはブラックメタルの象徴とも言えますが、あなたはピアノをその代用としているのでしょうか?それともピアノならではの表現を模索しているのでしょうか?

【JOHN】: “Les Fleurs mov.2” では、ブラックメタルへのオマージュや引用として、意図的にトレモロ・ギターのリフを模倣した部分がいくつかあるね。ただ、それ以外の部分では、自分の演奏をさらにブラックメタルのスタイルに合わせるのは難しい面があったのは確かだよね。トレモロ・リフという意味ではね。
だから、ピアノに一定の動きを持たせる方法が必要だったんだ。そこで、アルペジオや3連、4連の両手のパターンを導入して、音楽の土台となる動きを作ったり、ブラストビートに合わせたりしたんだよね。今までメタルでこのようにピアノが使われたことはなかったよね。インタルードやバラード以外では。みんなが完全に新しいと感じてくれればいいな。
ブラックメタルでは、ピアノはトレモロ・リフのような音のパターンを開拓しながら、より豊かな音楽性を維持することができると思うんだ。サスティーンのあるギターと違って、ピアノは弾いたらすぐに音が消えてしまう。そのために必要となる運動性の高さも魅力だよね。膨大なエネルギーの雲を作るためには、動き続けなければならない。これは、ギターにはできないピアノの特徴だよ。サスティーンがないからこそ、一音一音がモザイクの中の小さなガラスの破片のようになるわけさ。

Q6: The title “All My Dreams Come True” and the artwork of flowers are far from typical Black metal images, and also very impressive. Can you tell us about the concept of the album and the theme of the lyrics?

【JOHN】: Yes! They are distant from standard black metal imagery. I’m not that into the fantasy/escapist side of black metal, even if I did put flowers on the cover. I really wanted to express what was around me in the city (and even the US) on this album – the widespread poverty and despair, people being tricked by their religious leaders and the politicians backing them, all while there’s tent cities everywhere, abject cruelty. It is so sad. The flowers were a gift to me and I took the photo years before the album was finished. However, the more I thought about life, the more I saw it in relation to the flowers. They live and die, they are put on your grave as a final statement, they grow from last year’s dead detritus every spring as a sign of new life. It was a perfect metaphor for the past/present/future – the cycle of life. The title reflects this – rather than waiting for the afterlife, or some invisible future, it is an urge to see what is in front of you, to be present in your surroundings. It is easy these days with social media to feel so isolated, un recognized – as if your dreams and goals are constantly further away from you because of the comparisons you may make to other people’s successes – all right in your face 24hrs/day. It is a call to throw out fantasy/future planning for some distant plain of transcendence, merely existing for the next day, and realize that this earth, this time we have here, is both heaven and hell. There is no afterlife. Only now. All my dreams came true because I am here..

Q6: アルバムのタイトルである “All My Dreams Come True”、それにこのアートワークはブラックメタルの典型的なイメージとは程遠いですよね?

【JOHN】: そうなんだよ!標準的なブラックメタルのイメージとはかけ離れているよね。ジャケットに花をあしらったとしても、僕はブラックメタルのファンタジーや逃避的な側面にはあまり興味がないんだよね。貧困と絶望が蔓延し、宗教指導者とそれを支持する政治家に騙され、いたるところにテント村があり、残酷な行為が行われているという、僕の身の回りにある世界をこのアルバムで表現したかったんだ。とても悲しいことだよ。
この花は僕がもらったもので、アルバムが完成する何年も前に撮影したんだ。その間に、人生について考えれば考えるほど、この花との関連性が見えてきたんだよね。花は生きて死に、最後の意思表示として墓に供えられ、毎年春になると去年の枯れた残骸から新しい生命の証として成長していく。それは、過去・現在・未来、つまり生命のサイクルを表す完璧なメタファーだったんだ。死後の世界や目に見えない未来を待つのではなく、自分の目の前にあるものを見て、世界の中に存在したいという衝動が、このタイトルには込められているんだよ。
SNS が発達した昨今では、自分が孤立しているように感じたり、認識されていないように感じたりすることがよくあるよね。他人の成功と比較することで、自分の夢や目標が常に遠くにあるように感じてしまうんだ。
これは、空想や将来の計画をどこか遠くの超越した場所に投げ捨て、ただ次の日のために存在するだけで、この地球、この時間が天国でもあり地獄でもあることを理解するように呼びかけるアルバムだ。死後の世界なんてないよ。今しかない。僕がここにいるからこそ、すべての夢が叶うんだ。

Q7: At Bandcamp, you quoted Henry Miller’s words. It seems to imply the importance of vocal and lyrics in your mind, would you agree?

【JOHN】: In a lot of ways yes, but I meant it more in terms of making art. The lyrics are very important to me because they voice best what I want to say about the world and my place in it – my personal experiences and observations. The quote for me (which isn’t the objective meaning of course), puts importance on the will to do something less the requisite materials. You could have everything, but if the “want to sing” isn’t there, it means nothing. Also, I see that quote in terms of how something is to be started, or manifested as a work of art, or anything in life for that matter – you simply begin and then it becomes.

Q7: Bandcamp のページであなたはヘンリー・ミラーの言葉を引用していますよね?あなたの中の、歌や歌詞の重要性を隠喩しているように感じました。

【JOHN】: いろいろな意味でまあそう取れるよね。だけど、僕はアートを作るという意味でより多くのことを考えたんだ。歌詞は僕にとって非常に重要なもので、世界とその中での自分の居場所について言いたいこと、つまり個人的な経験と観察を最もよく表しているからね。
僕にとってミラーのこの言葉はもちろん客観的な意味ではないけれど、必要な材料がなくても何かをしようとする意志を重要視しているんだよ。すべてが揃っていても、「歌いたい」という気持ちがなければ何の意味もないわけだから。
そしてそこから僕はこの言葉を、何かを始めるとき、あるいは芸術作品として表現するとき、あるいは人生において何かを行うときの方法として捉えているんだ。ただシンプルに、始めることが実現への第一歩だから。

Q8: With the emergence of Alcest and Deafheaven, black metal has continued to spread and diversify. You are one of such a new generation, what does the first generation of Inner Circle and evil legends mean to you? Have you ever seen the movie “Lord of Chaos” ?

【JOHN】: Definitely haha! The movie was pretty good. The documentary “until the light takes us” is pretty good too. To me, some of the music still holds up and is really good, but ultimately , they were for the most part (with exceptions like that guy Gaahl) a bunch of suburbia kids running around causing mayhem spreading neo polytheistic, and for some – racist, and homophobic ideas; burning down churches to reclaim their heritage from the crusading Jesus pushers back in 1200AD. Not sure if those bloodlines still run, but I do understand how horrific the christian crusades were – erasing entire cultures in order to replace their history with the Bible’s history, and they did it all over the world. Still, the music was great, the atmosphere was great, though I think kids like that are/would have been diametrically opposed to people like me. One thing I do agree with is the anti-capitalist sentiment.

Q8: 映画 “Lord of Chaos” はご覧になりましたか?
ALCEST や DEAFHEAVEN の登場でブラックメタルは多様化と拡散を続け、あなたもそういったアーティストの1人ですが、第1世代のインナーサークルや狂気にかんしてはどう感じていますか?

【JOHN】: もちろん見たよ!ハハハ! 映画はかなり良かった。ドキュメンタリー映画の “Until the Light Take Us” もいいよね。
僕にとっては、いくつかの当時の音楽は今でも残っていてとても良いと思うんだ。だけど結局のところ、Gaahl のような例外はあるにしても彼らは、新多神教を広めて騒乱を起こしながら走り回る郊外のキッズ集団であり、一部の人にとっては人種差別的で同性愛嫌悪的な考えであり、西暦1200年に十字軍に参加したイエスの押し売りから自分たちの伝統を取り戻すために教会を焼き払っていたわけだよね。
もちろん、その血筋が今も続いているかどうかはわからないけど、キリスト教の十字軍がどれほど恐ろしいものだったかは理解しているよ。彼らの歴史を聖書の歴史に置き換えるために、文化全体を消し去り、それを世界中で行ったんだからね。
音楽は素晴らしかったし、雰囲気も良かった。でも、あのようなキッズたちは、僕のような人間とは正反対だったと思うよ。一つだけ同意できるのは、反資本主義的な感情かな。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED JOHN’S LIFE

HELLA “HOLD YOUR HORSE IS”

THE BAD PLUS “SUSPICIOUS ACTIVITY?” “PROG”

PINK FLOYD “MEDDLE”

ULCERATE “VERMIS”

BEETHOVEN “SONATAS”

MESSAGE FOR JAPAN

Thank you so much for reading this! It has been my desire to reach people in Japan ever since 2007 – I was very much into Hella and they toured Japan and made a DVD called Homeboy/Concentration Face. I could not believe the enthusiasm for such a strange band! In America, Hella shows were not packed, but in Japan they were. It made me respect the culture and the open minded approach to life and art. I thought that maybe one day, I can get my music out there because I think people will give it a chance. So, I hope you all enjoy the new record and I hope to get out there to play live one day.

読んでくれて、本当にありがとう。2007年に HELLA に夢中になり、彼らが日本をツアーして “Homeboy/Concentration Face” という DVD を作ったときから、日本の皆さんに僕の音楽を届けたいと思っていたんだ。
ああいった奇妙なバンドが熱狂的な支持を受けるなんて信じられなかった。アメリカでは、HELLA のショーは満員ではなかったけど、日本では満員だった。それを見て、僕は日本の文化や、人生や芸術に対するオープンマインドなアプローチを尊敬したんだよ。いつか自分の音楽を世に出せるかもしれない、そうすれば日本の人々はチャンスを与えてくれるだろうと思ったんだ。
だから、みんなが新譜を楽しんでくれることを願っているし、私もいつか日本でライブをしたいと思っているよ。

JOHN STEVEN MORGAN

WRECHE Official
WRECHE Bandcamp
DIES IRAE WRECHE “ALL MY DREAMS COME TRUE”

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE BEAST OF NOD : MULTIVERSAL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH THE BEAST OF NOD !!

“Some Of Paul’s Favorites Are Yu Yu Hakusho, Hunter x Hunter, And One Piece. He Is Also a Very Big Fan Of Zelda, Final Fantasy, And Castlevania Games, Often Wearing a Zelda Shirt On Stage.”

DISC REVIEW “MULTIVERSAL”

「僕たちの音楽はすべて、同じ多元宇宙と、その中のキャラクターや出来事をテーマにしているんだ。宇宙の運命がかかった銀河間の紛争に備える必要から始まり、その紛争に参加し、悪の存在であるカオスが解き放たれて宇宙を終わらせる。その後、新しい多元宇宙の誕生に移り、多元宇宙の守護者が設立され、次の潜在的な脅威が紹介されていくよ」
ベイエリアの銀河系間デスメタル・バンド THE BEAST OF NOD は、その”多次元宇宙” という壮大なアルバム・タイトルからして無限の可能性を秘めています。戦争とサバイバルをテーマとした銀河系 SF の大作として、いくつもの宇宙にまたがる未曾有のドラマがメタルサウンドで描かれるカタルシス。間違いなく、このインターギャラクシーな獣の野心は、メタル世界を多次元の “目覚め” へと誘うはずです。
「幽遊白書、ハンター×ハンター、ワンピースなどは大のお気に入りだね。また、ゼルダ、ファイナルファンタジー、悪魔城ドラキュラといったゲームの大ファンでもあり、ライブ・ステージではよくゼルダのTシャツを着ているよ」
原子物理学者で MIT の博士号を持つギタリスト Dr. Gore と、バイオテック業界で働いていて、生物学と化学のバックグラウンドを持っている Paul Buckley を中心人物とする THE BEAST OF NOD は、その学問的知識の泉とゲームやアニメへの愛情を自らのメタル作品へと惜しみなく注ぎ込んでいます。
Land of Nod の伝承の敵ヴァンパイアに焦点を当てた、アクション満載の SFメタルデビュー作 “Vampira” には、悪魔城ドラキュラやロックマンに影響を受けたと思われるコミックブックが付属していました。そうしてリスナーは、宇宙の運命がかかった銀河間の紛争、悪の存在であるカオスと宇宙の終焉、新たな多元宇宙の誕生へより深く没頭して理解することが可能となったのです。ある意味、あの素晴らしき DETHKLOK は彼らの雛形でしょう。
「Joe Satriani は、Dr. Gore が本格的にギターを弾き始めた頃に最も影響を受けたミュージシャンの一人なんだ。サッチ以外で影響を受けたのは、Reb Beach、Tosin Abasi、そして Yngwie Malmsteen だろうね。また、バッハをはじめとするバロック音楽の作曲家にも大きな影響を受けているよ」
SFやコミックだけでなく、”Multiversal” はギタリストの天国としても充分に野心的です。Joe Satriani, Michael Angelo Batio, ABIOTIC の John Matos, WORMHOLE の Sanjay Kumar, EQUIPOISE の Nick Padovani, BLEAK FLESH の Matias Quiroz、さらに Michael Angelo Batio, Joe Satriani といった大御所までがゲストとしてシュレッドを繰り広げる作品には、さながらアステロイドベルトのように印象的なシュレッドが所狭しと敷きつめられています。まさにシュレッドの小宇宙。
「”Tech-death” の領域に入ることで、より速く、より複雑な音楽を演奏するというチャレンジを楽しむことができたし、プログの影響を受けることで、よりユニークなサウンドを開発することができたと思う」
何より、宇宙から降りそそぐ聴覚の電磁波は絶対的です。指さばきが音速を超える複雑怪奇なギターリフ、異次元で巨大なグルーヴのスペクトル、地球外のエイリアン・ボーカル、近未来的な空間を演出するシンセサイザー。BETWEEN THE BURIED AND ME のプログレッシブな審美眼、BORN OF OSIRIS のアトモスフェリックな美宇宙、THE HUMAN ABSTRACT のクラシカルな素粒子、ANIMALS AS LEADERS のユニークな星間風、そのすべてはダークマターのようにアグレッシブに結合して、THE BEAST OF NOD という巨大な宇宙船までリスナーをトラクター・ビームで誘導していくのです。
今回弊誌では、THE BEAST OF NOD にインタビューを行うことができました。「僕たちは自分たちをインターギャラクティック・デスメタル・バンドと呼んでいるんだけど、作家や映画だけでなく、アニメやコミックにも大きな影響を受けているんだ」どうぞ!!

THE BEAST OF NOD “MULTIVERSAL” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【THE ARMED : ULTRAPOP】


COVER STORY: THE ARMED “ULTRAPOP”

“I’d Rather Be The Band That Doesn’t Get All The Way There But Pushes The Next Person To Be Super Great With Something You Were Able To Put Forward. I Think That’s Missing a Lot From Heavy Music In General.”

WE’RE GOING TO SAVE ROCK MUSIC BY KILLING IT!

2015年にアルバム “Untitled” をリリースしたとき、THE ARMED は自らを “デトロイト発のパンクロック・バンド “と謙虚に表現していました。しかし、わずか数年でそんな単純な説明では、この匿名バンドを取り巻くシュールな演出やミスディレクションをとても十分に表現できないことが明らかとなります。
THE ARMED は、ハードコア、マスロック、パンク、さらにはポップの境界を絶妙に溶かし得る “武器” だと言えます。まばゆいばかりのショーマンシップ、興味をそそる不可解の嵐、洗練された作品への称賛を通して、私たちはかならず、”彼らは一体何者なのか?” という、その絶対的な武器の素材に対する疑問を抱くことになるのです。
THE ARMED の真の姿を解明せよ。すぐに、インターネットのコメントスレッドでの議論がはじまり、特捜班が編成されます。
そうして2018年のアルバム “Only Love” のリリースまでには、彼らに関する奇抜な “陰謀論” が出回り始めたのです。プレス写真に写っている人たちは実際にはバンドのメンバーではないとか、CONVERGE のギタリストで、凄腕プロデューサーでもある Kurt Ballou がこのプロジェクトの首謀者であるとか、もっと言えば、すべてが手の込んだデマやパフォーマンスのアート・プロジェクトであるといった考察が飛び交います。
事実、彼らのライナーノーツにはメンバーが記載されていませんでした。アーティスト写真に、メンバーではないかもしれない、楽器を演奏したことがないかもしれない別人が写っているなど前代未聞の由々しき事態です。
当時まだ、インスタグラムのフォロワー数3000足らずのバンドが、The Atlantic、NPRといったメインストリームの雑誌や、Vice の一面を飾ったのも振り返れば不思議な話です。
さらに、ヨーロッパの巨大なフェスティバルで注目を集め、フォードのテレビコマーシャルに本格的に登場し、昨年には、高い評価を得ている “サイバーパンク2077” のサウンドトラックにバンドの曲が収録までされました。

Kurt Ballou が2018年に語った言葉は、それらの謎を紐解く一つの鍵でしょう。
「ソーシャルメディアの時代になって、バンドとそのオーディエンスの間の区分けがどのように変化したかについてよく考えていた。直接アクセスすれば、コミュニティの中で親密な関係を築くことができるけど、一方で不均衡な権利意識を生み出すこともあるだろう。
だから俺は、このプロジェクトを立ち上げることで人々にクリエイターではなくコンテンツだけに注目してもらい、そうした文化を破壊したかったんだ。それによって、製作者よりも作品が重要な、クリエイティブな文化の時代が到来することを願っているんだよ」
実際 Kurt は、THE ARMED アルバムのエンジニアリングを担当し、小規模バンドにとっては夢の高品質なレコーディングと音響のオペレーションを行い、メディアやマスコミにもツテがあります。同時に曲を書く才能があり、パフォーマンスを補う友人のパンクやハードコアミュージシャンの巨大な名簿も所持しているのですから。
噂によると、THE ARMED は CONVERGE の型にはまらない素材のための、奇妙な実験として始まったと言われています。とはいえ、最新のインタビューではその件について全否定しているのですが。
「元の記事を調べてみたんだけど、翻訳ミスだよ。ジャーナリストは常にコンテンツを編集する必要があるからね。 実際に俺が言いたかったのは、THE ARMED を作った時ではなく、プロデュースを始めた時、だったんだからね。とにかく、彼らは素晴らしいと思うよ。一緒に仕事をしていると、困難なこと、混乱すること、そして本当にフラストレーションがたまることもたくさんあるけどね。
まず、彼らは俺が彼らにドラマーを提供しないと予約を取り消すと脅してきた。だから俺のドラマー仲間の多くが彼らのレコードに参加することになったんだよな。最新作では、さらに事態が悪化したよ。 俺がドラムのエンジニアリングをして、彼らがオーバーダブをして、ミックスの時には俺に隠れて God City で働いているエンジニアのザックを雇ったんだ。 彼は、俺が他のレコードの作業を終えた後、夜にスタジオに入り、俺の機材と設定をすべて使ったんだから。 欺瞞と破壊が THE ARMED の活動の核心だから、驚くべきことではないけどね」

事実、初期の EP には元 THE DILLINGER ESCAPE PLAN の Chris Pennie が、”Untitled” には SUMAC などで鳴らす Nick Yacyshyn が、”Only Love” には CONVERGE の Ben Koller がドラマーとしてフィーチャーされています。まさに凄腕が揃うドラム・パラダイスの様相ですが、Ben などは METALLICA の Robert Trujillo がプレイすると騙されて連れてこられた上、楽曲は CONVERGE のデモだと告げられていたのですから、酷い話ではあります。
陰謀論といえば、あのパーティーメタル・ゴッド Andrew WK の関与も長く囁かれています。Adult Swim への参加は無名のハードコア・バンドとしては異例のことのように思えましたが、ASコラボレーションの歴史が長い Andrew WK と結びつくことで、その意味はより明確になります。さらに、THE ARMED が CM に起用される前に Andrew がフォード・フィエスタをレビューしていたことや、フォードの製品発表会で THE ARMED のコントリビューターとして知られる人物と会っていた事実は、この説に一定の重みを与えているのです。

34歳の Cara Drolshagen は THE ARMED のメンバーの中で唯一、何年も前から写真やビデオ、インタビューではっきりと身元が確認されている人物で、彼女の凶暴な叫び声は “ULTRAPOP” の至る所で聞くことができます。彼女は、2012年からバンドに貢献していると言いますが、一方で彼女の個人的な経歴についての発言は、熟練したハードコア・ミュージシャンとしての彼女の地位と矛盾しているようにも思えます。
「不思議なことに、誰がバンドに所属しているかをはっきり言えば言うほど、嘘をついていると思われてしまうのよ。私がこのバンドに参加したとき、みんな冗談だと思って笑っていたのを覚えているけど、私は実際に自分が “主張 “している通りの人間なのよね。私は、自分が音楽シーンにいるとも、ハードコア・ミュージックに夢中になっているとも思っていないわ。写真を撮るのがすきなのよ。無生物の写真を撮って、そこに顔や何かが写っていないか試してみるの。いろんなことに手を出しているよ」
“ULTRAPOP” は、多くのリスナーに驚きと喜び、そして混乱を等しく与えるレコードです。ポップ・ミュージックとエクストリーム・ミュージックの融合により、太陽とノイズの突然変異を生み出すことに成功しました。常識をいくつも破りながら。しかし、それが重要なのです。
「アグレッシブでハードコアでエクストリームな音楽という、破壊的なジャンルであるべきはずのものが、完全に戯画化されてしまっている。私たちはそれに立ち向かいたかったのよ。異なるパターンを探求し、壊したいの。期待されているものを排除しようとしているのよ。アートフォームで考えれば、特に音楽は予測可能性に満ちているわ。従うべき基準にね。私たちは、人々を立ち止まらせ、再考させたいの。パターンに気づけば、それを壊すことができるわ。それが私たちの目標よ」
そのために、本作では著名なプロデューサー Ben Chisholm(Chelsea Wolfe)を起用しました。これまでの作品では、Kurt Ballou がメインプロデューサーを務めていましたが、今回は少し趣向を変えて、Kurt はアルバム制作自体に関わっていると言います。
「Kurt は今でもこのアルバムのエグゼクティブ・プロデューサーよ。その点は変わっていないわ。Ben については、音楽の背後にある数学を理解し、その数字を新しい方法で再構成し、異なる解決策を見出すことができる天才だと言えるわね」
Cara はさまざまな形で新作に貢献しています。実際、ほとんどの曲に彼女の指紋、あるいは声がプリントされていると言ってもいいでしょう。
「すべての曲で歌詞を書き、何らかの形で歌っているわ」
またこのアルバムには、元 SCREAMING TREES の Mark Lanegan, QUEENS OF THE STONE AGE のギタリストでマルチ・インストゥルメンタリスト Troy Van Leeuwen, ROLO TOMASSI の Eva Spence, など、さまざまなゲストが参加しています。しかし、バンドのメンバーは流動的であるため、Cara はそういったプレイヤーを必ずしも “ゲスト” とは見なしていません。今や彼らもこの集団の一員なのです。
「私たちは皆、The Armed ⋈⋈」

Adam Vallelyの経歴はさらに意味をなしません。このギタリスト兼ボーカリストは、赤いノースリーブのシャツとヘッドバンドを身につけていて、腕の筋肉は猛烈に膨らんでいます。Cara と同時期に THE ARMED に加入したと言ってはいますが、そのような名前の人がバンドに登場した記録はありません。”Adam Vallely” をグーグルで検索すると、最初に出てくるのは小柄なイギリス人男性で、彼のSNSにはULTRAPOP のプロモーションが流れています。
一方で、実際に目撃した人物は、Adam Vallely が現在はエクスペリメンタル・メタルバンド、GENGHIS TRON に参加している Tony Wolski によく似ていると証言しています。
「もちろん、誰が何をしているのか、時には意図的に不明瞭にしている。それは秘密でもなんでもない。皮肉なことに、俺たちが真実を語れば語るほど、人々は俺たちが嘘をついていると思うようになるんだから」
謎に包まれ THE ARMED の中心には常に真の意欲があり、それが “ULTRAPOP” ではかつてないほどよく実現されていると、Adam は情熱的に語ります。このレコードは、ハードコア・ミュージックを、これまでシーンが踏み込めなかった領域に引きずり込もうと、全身全霊で取り組んだ結果だと。全く新しいジャンルとして構想され、実験的なポップやヒップホップの最も大胆で生き生きとした側面を自分たちのサウンドに取り入れることで、全く新しい強度を実現したと。レコードには数十人のメンバーが参加していますが、ライブではその人数が実用性を考慮して8人ほどに絞られています。彼らは、個人のアイデンティティを隠すことで、バンドのより広大な目的についてのメッセージを維持したいと考えているのです。
「次に挑戦する人たちを後押しするバンドでありたいと思っている。一般的なヘヴィー・ミュージックにはそれが欠けていると思うんだ。構造や特定の方法に従わなければならないからね。ニッチなサブジャンルへのこだわりや、プロセスへのフェティシズムは、芸術を完全に停滞させてしまう。だから音楽界の片隅では、誰かが針を動かすことが必要とされているわけさ。だから、俺らは一線を越えようとしている人よりも、そうしようとして失敗したバンドになりたいと思っているんだよ」

実際、エクストリーム・ミュージックは停滞しているのでしょうか?
「そう思う。Soundcloud のラッパー全員が美しいビジョンを持ったアーティストだとは言わないけどね、そこそこ面白くてリスクのあることをやっている人はいるよ。目新しさは、質の高いアートの重要な要素だと思う。何らかの新しい思想を打ち出す必要があり、俺たちはそこに焦点を当てているんだ。ギターを使った音楽は、特にヘヴィーになればなるほど、サブジャンルやサブカルチャーへのフェティシズムを感じさせる。グラインドコアは80年代後半に始まったが、なぜ30年経った今でも50万のバンドが同じことを繰り返しているんだい?」
音と美の概念を覆すことは、結成当初から THE ARMED の計画に組み込まれていました。”ULTRAPOP” は、この反乱的な姿勢をさらに一歩進めました。音楽的に破壊的であろうとするだけでなく、テーマ的にも、現代における破壊の無力さを批判したいと願います。彼らの創造的な世界観においては、純粋な好奇心の欠如こそが、音楽的に破壊的であることを不可能にするのです。
「ハードコア・ショーに行くと、最前列でマイクを握ったり、観客をぶっ殺したり、モッシュをするのは誰でも知っている。俺たちがやろうとしたのは、その儀式を壊すことだよ。なぜなら、誰もが何かの初心者になれば、そこに魔法のような体験が生まれるから。あらゆるものがポップなんだ。Cara が一緒に仕事をしていたクリエイティブ・ディレクターで6桁の給料をもらっている人たちは、首にタトゥーを入れていた。ターゲット社のTシャツにはドクロが描かれている。”ULTRAPOP” のアイデアは、”すべてがすべてである” という意味て、これがアルバムであり、これがジャンルなんだ。俺たちのジャンルは今やウルトラポップなんだよ」
それでもハードコアを捨てないのは、ジャンルへの愛情なのでしょうか?
「首謀者の Dan Greene はみんなと “ロックを殺すことで、ロックを救う” という言葉を共有している。激しさを捨てたいわけではないんだよ。常に存在するものだから。目標は常に、信じられないほど強烈な、最大級の体験を生み出すこと。それが、俺たちがこの世界に入った理由のすべてだから。俺らがやっているのは、ビールを飲みながら革ジャンを着て、TERRORIZER のどのアルバムが一番いいかを語るようなタフガイの集まりじゃないんだ。ウルトラポップという新しいジャンルを作り、最終的にはハードコアよりもハードコアらしいものを作るという、笑えないほど大げさな目標を自分たちに課しているだけさ。カニエ・ウエストレベルの妄想に聞こえるだろうが、壮大なことをやろうとするときに必要な妄想だと思うよ。俺たちは、必ずしもそのようなコミュニティの人々に対して言っているのではなく、これらのジャンルやアートフォームが自分自身の風刺画になってしまうような、停滞した状況に対して言っているんだ」

あなたの筋肉もそうですが、キーボードのメンバーはまるでシュワルツェネッガーです。
「あれは Clark だよ。彼は本物のボディビルダーなんだよ。それってウルトラポップの美学の一部で、ツアーのために全員が信じられないほど良い状態になること。そのために Dan が4ヶ月間ほど栄養士をつけてくれたんだ。今では12ヶ月、16ヶ月の計画になっている。俺たちは、可能な限り超人的な状態でツアーに臨みたいと考えているから、文字通り絶え間なくダイエットとワークアウトを続けているのさ。個人的には、大人になってからずっと大腸炎に悩まされてきたんだが、ボディビルの食事プランのおかげでもうその悩みは消えたんだよ」
“インターネット・バンド” という揶揄にはどう対処しますか?
「”インターネット・バンド” という言葉を軽蔑的な意味で使う人がいるけど、俺たちはその意味を受け入れている。フリークが少ないなら、それを効果的にするために世界中のフリークをキュレーションする必要があるんだ。今の社会では、カルトは必ずしもインチキ薬のセールスマンを中心に形成される必要はなく、Apple や Crossfit のような製品に夢中になっている人たちであってもいいんだからね。俺たちは時に美学と向き合うことで努力してきたし、これからもそうしていきたいと思っている。でも、自分が企画したわけでもないのに、タイムズスクエアのビルボードを誰かが買ってくれたりするのは驚きだよね。嘘ではなく、人々が PayPal でお金を集めてビルボードを買ったんだから」
匿名性にこだわるのはなぜでしょう?
「大げさで妄想的に聞こえるかもしれないが、やはり大きな目標を達成しようとするならば、時にはそのようにならざるを得ないんだ。このバンドが最初から目指していたのは、ある種のムーブメントというか、個々の人間よりも自然の力を感じさせるような強烈なもの。問題は、SLIPKNOT のような “仮面とナンバー” 制度をやりたくないということ。GORILLAZ のように “人間ではない” とか “俺たちはアニメだ ” といった、馬鹿げたものにもしたくなかった。女性ボーカルで、ベースやシンセサイザーも担当している Cara は、写真に登場すると、みんなに冗談だと思われていた。Dan は物語の流れを整えることに長けていすぎて、人々がそのことをもっと気にしていて、ミステリーになっていくんだよ。それはそれでいいんだけど、ムーブメントについての重要性が薄れてしまうのはちょっとね。まあとにかく、何か大きなことをしたいと信じてやっていくよ。お金を稼がなければならないからアルバムを作る、なんてことは誰も望んでいないから。今まで誰も見たことがないような、最高で、強烈で、おそらく文字通り目を見張るようなショーを作るために、一生懸命努力するだけさ」

不可解なマーケティングや、独特のマキシマムパンクサウンドなど、混乱はバンドの美学の主な要素です。”ULTRAPOP” では、ハードコアの激しさと目まぐるしいポップの即興性が同居した、ジェットエンジンで動くニューウェーブのようなサウンドで五感を揺さぶります。核は、ストロボのようなシンセ、歪んだエフェクト、狂気のリズムの上に構築され、同時にヘヴィーミュージックの中でも最も勇敢なフックを備えています。
このタイトルも決して皮肉ではありません。”ULTRAPOP” は、ハードコアの強度とフィジカルを全面的に採用している一方で、最終的にはポップソングのコレクションなのですから。アルバムは、”All Futures” の Yeah, yeah, yeah, yeah!というコーラス、”Masunaga Vapors” の勝利のリフ、”Where Man Knows Want” のインダストリアル・ディスコなど、隅々までドーパミン反応が最大になるように設計されています。これは、期待を裏切り、最終的にはヘヴィー・ミュージックの現状を打破するという、バンドの使命の一部なのでしょう。
謎に包まれた首謀者 Dan Greene が残した最も深いコメントは、”ULTRAPOP” 最後の曲、”THE MUSIC BECOMES A SKULL “についてでした。
グランジ・アイコンである Mark Lanegan が歌っていると言われている重苦しいインダストリアル・トラック。その歌詞には、拍手喝采を浴びてステージを降りた愛すべきパフォーマーが、突然捨てられる様子が描かれています。”What a brilliant show/Now get off/You have been dethroned ” と悲劇的なクライマックスを迎えるのです。それは、ポップがすべてである世界では誰にでもあり得ること。
「この曲がポップスターの死について歌っているとはいわないけど、そうかもしれないね。名声やパフォーマンス、成功のはかなさ、そしてあらゆる可能な結果において避けられない破滅について歌っているんだ。ポジティブさを表現しているアルバムの冒頭部分を反映しているんだ。よりシニカルに見えるかもしれないけど、実際にはそうじゃない。アルバムの最後にある付箋のようなものだと思って欲しいね。まあどうでもいいことにはあまりこだわらないでくれよ」
どうでもいいことにこだわるな。それは、このバンドの正体や Dan Greene の正体を暴こうとした人たちへのメッセージかもしれません。結局、無数のロシア製マトリョーシカをすべて取り外してみても、中身は空っぽなのかもしれないのですから。日本盤は DAYMARE RECORDINGS から発売されています。

参考文献:REVOLVER:SEARCHING FOR THE ARMED: HARDCORE PRANKSTERS FLIPPING HEAVY MUSIC ON ITS HEAD

THE QUIETUS:Maximum Intensity: An Interview With The Armed

NEW NOISE MAG:Interview: The Armed’s Cara Drolshagen Talks New Album ‘ULTRAPOP’

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GENGHIS TRON : DREAM WEAPON】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HAMILTON JORDAN OF GENGHIS TRON !!

“I Think We Have Known For a Long Time That We Wanted Our Third Album To Have More Sonic Space, And More Atmosphere, And To Create a World That Is More Warm And Hypnotic, Instead Of Being Claustrophobic And Abrasive.”

DISC REVIEW “DREAM WEAPON

「僕は今でも “ブルータル” な音楽が大好きだけど、今の僕たちの生活の中では、そういった音楽は正直な気持ちで書けるものではないし、自分たちの音楽として聞きたいと思っていたものでもないんだよね。だから少なくとも、このアルバムにお決まりのブルータルは存在しないのさ」
“Board Up the House” から13年の時を経て届けられた “Dream Weapon”。パンデミックの喧騒に、人類と地球の “重さ” を天秤にかけるレコードで彼らが戻って来たのは、きっとある種の運命でしょう。
さながら列車の分岐器のように、時おり流れを変えるレコードがレールの上へと現れますが、まさに “Board Up the House” はそういった類の作品でした。エクストリーム・メタルとエレクトロニカ究極のアマルガム。グラインドコアに絡みつくコンピューターの鼓動。反復を重ねるドゥームとシリアスなメロディーまで血肉としたこのアルバムが、以降の重音と電子音という両極端の甘やかな婚姻に果たした役割は決して少なくありませんでした。
「”Dream Weapon” のヘヴィネスは、ダークなメロディー、ヒプノティックなリズム、歌詞の内容といったソングライティングそのものから来るもので、プロダクション・スタイルから来るものではないんだよね」
13年という時間はバンドの多様性を洗練へと導き、サウンドの大きな変化をもたらしました。ただし、GENGHIS TRON がソフトになったという評価はおそらく間違いでしょう。彼らはただ、ヘヴィーの真理を追求しながら、没入感のある音楽世界という当初からの目標へとまた一歩近づいたに過ぎないのですから。実際、”重さ” とはこの夢見がちな武器のキーワードです。そして Hamilton Jordan は美しいメロディーが時にブラスト・ビートやシュレッド・ギターより遥かに重く腹に突き刺さることを認めています。
「10年前に好きだったバンドやアルバムは今でもすべて好きだけど、好みが広がって他の影響を受けているってことかな。新しい音楽にも素晴らしいものはたくさんあるけど、僕が最近聴いているのは、Peter Gabriel, TEARS FOR FEARS, KING CRIMSON, YES, CHAMELEONS。THE BEATLES でさえ聞いているよ」
メタルとエレクトロニカという一義的なジャンルの交配から距離を置くことも重要でした。10年で養った、クラッシック・ロックの素養は優しく、オーガニックに、二面性だけで語られがちなバンドの音像を嫋やかに立体へと変えていったのです。
ロックダウンの影響により別々の場所で録音されながら、Kurt Ballou は今回もそのアイコニックな手腕でバンドの進化を支えました。むしろリモートワークは作品にとってプラスにさえ働いたのかも知れませんね。おかげでミキシングとプロダクションに時間をかけることができ、「ヘヴィーのためのヘヴィー」ではなく、楽曲そのものから生じる重さ、忍び寄るようなクリーンで繊細なアプローチを Kurt に依頼することが可能となったのですから。
「初めて Nick のパフォーマンスを見たとき、僕は圧倒されたね。2017年にカリフォルニア州バークレーで行われた SUMAC のライヴだったんだけど、彼の演奏は実にパワフルでありながらニュアンスがあって、ダイナミック。本当に面白いドラムパターンを演奏していたんだ。 その頃から、もしドラマーと一緒に演奏するなら、Nick がいいなと思うようになってね。」
もちろん、 BAPTISTS や SUMAC で鳴らした Nick Yacyshyn という界隈きってのドラマーがもたらす “重さ” もGENGHIS TRON の進化にとって重要なファクターです。これまで打ち込みのドラムスで表現されていた絵画のパレットは、Yacyshyn のダイナミックなビートで有機的な三次元の広がりを見せました。
ファースト・シングルに選ばれたタイトル・トラック “Dream Weapon” はまさに彼らの現在を具現化した夢の武器でしょう。
サイケデリックでリフ主導のエクスペリメンタル・メタルは、ノイジーでフィードバックを多用したミニマルな珠玉。意図的に繰り返しを行うことで緊張感を生み出し、思うがままにダイナミズムの罠を張り巡らせます。Sochynsky のプログラミングとシンセ全ては Jordan のカラフルで質感を纏うリフへと溶け込み、機械に挑戦を挑む Yacyshyn の強烈なグルーヴは、変拍子も、もう一人の新メンバー Tony Wolski の甘くメロディックなヴォーカルラインもすべてを受け止め鼓動を刻みます。
機械が天使を遣わしたかのようなインダストリアル・ポップロック “Pyrocene”、80年代のSci-fiイメージを優しく封じたレトロ・フューチャー “Alone In The Heart Of The Light”、MESHUGGAH の哲学を電子の世界に込めた”Single Black Point”。アルバムは現代社会の苦悩、人間の醜悪と、その業が取り除かれる遥か先の夢見がちな地球両者を、時に対比させ、時に融解させながらリスナーの本能へと投影していきます。決して悪夢や暴動がひたすら押し寄せるようなレコードではありません。それでも胸に鋭く突き刺さる、機械獣の重い牙。
聴くたびに新たな発見のある作品を創生したい。”ヘヴィー” の意味を問う作品を創生したい。RUSSIAN CIRCLES や Chelsea Wolfe の生々しくも新鮮なスピリットと共鳴しながら2つの世界を描ききる “Ritual Circle” は、そうして人類と音楽に残されたわずかな希望の灯火となるはずです。人類の終わりは地球の終わりではなく、私たちの地球は再生して、前進するだろう。だから、未来を恐れるのではなく、愛をもって受け入れるべきなんだと。
「人類の終焉と世界の終焉を同一視する人がいるようだけど、それは全くの別物だ。 気候変動であれ、パンデミックであれ、小惑星や核戦争であれ、人類が終わりを迎えれば、地球は次の段階に進むんだよ。それはたしかに悲しいことなんだけど、同時に僕たちはその事実に安心感を覚えるんだよね」
日本盤はボーナストラック追加で Daymare Recordings から4/14リリース。ライナーノーツは私。どうぞ!!

GENGHIS TRON “DREAM WEAPON” : 10/10

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