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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【OPETH : THE LAST WILL AND TESTAMENT】


COVER STORY : OPETH “THE LAST WILL AND TESTAMENT”

“Why Not Do The Screams?’ And Now It’s Like, ‘Why Do The Screams?’ You Can’t Win!”

THE LAST WILL AND TESTAMENT

OPETH のニュー・アルバム “The Last Will & Testament” から、”§1″ というタイトルの新曲が発表されると、この楽曲は2019年の “In Cauda Venenum” からの曲よりもずっと大きな話題となりました。それは、これまでよりもずっとヘヴィで、数年ぶりに Mikael Åkerfeldt のグロウルが戻ってきたからでした。しかし、なぜ今なのでしょう?
「そうだね。グロウルがいつも問題になる。以前は、”なぜグロウルを使わないんだ?” で、今は “なぜグロウルを使ったのか?”。勝ち目がないね!でも、なぜ今なのか?ニュー・アルバムはコンセプト・アルバムだから、あのようなボーカルが有効だと思ったんだよ。
ある意味、流行に流されないのが好きなんだ。だから、あのデス・メタルのボーカルを復活させるときは、人々がもう気にしなくなったときにしたかったんだ!
逆に言えば、外からのプレッシャーを感じたことはない。もちろん、私も “OPETH はかつて素晴らしかった”, “OPETH をもう一度素晴らしくしてくれ。また OPETH をうならせてくれ” という声は知っていたよ。でも過去4枚のアルバムでは、そういうボーカルの余地はなかった。自分のもうひとつの声ももう少し追求したかったし、音楽がそれを必要としていなかった。前の4枚のアルバムには、そういうボーカルを入れる意味がなかったんだ。
それに、自信を持てたんだ。古い曲をたくさん演奏するツアーを何度かやったけど、楽しかった。私にとってスクリーミングは、ある意味ラップに近い。ラップがうまいというわけではないけど、私のリズム全体が面白いと思う。
私はグロウルにはとてもこだわりがあるんだ。相当うまくなければならない。具体的でなければならない。そういうものに関しては特別なセンスがあるんだ。そしてもちろん、音楽全体のアイデアにプラスになるものでなければならない。今回はコンセプト・レコードだから、そうなっている。全体として、より良いレコードになったと思う」

16年ぶりにうなる最初のラインは?”死に包まれて…伝承の遠吠え…”。この冒頭のセリフはこれから起こることの舞台を整えていますが、同時にグループとしての OPETH の伝承、伝説、歴史を物語っています。結成当初から、OPETH と Mikael は、メタルの同胞たちとは一線を画してきました。初期には、フロントマンが見事なグロウルとクリーン・パッセージを聴かせるプログレッシブ・スタイルのデス・メタルとブラック・メタルを提示することで、同世代のバンドとは一線を画していました。
その後のリリースごとに、バンドはソングライティングに対してより簡潔で合理的なアプローチを示し、自分たちを繰り返すことなく、優れた作品を作り続けました。コンセプト・アルバムであろうと、ハーシュとメロウという異なるスタイルをフィーチャーしたツイン・レコードであろうと、デス・グロールを完全に捨て去ろうと、英語とスウェーデン語の両方でアルバムをリリースしようと、Mikael とその仲間たちは常に自分たちの音楽を最高水準に保ってきました。彼らはその完全性を徹底的に守りながら、次の進化に努めてきたのです。
古い曲をライヴで演奏するのと、再びスタジオで、新曲で叫ぶのは異なる体験なのでしょうか?
「みんなに変な感じ?って聞かれたよ。いや、そんなことはなかったよ。ボーカルは全部、自宅の地下室でひとりで座って録音したんだ。でも、なぜかうまくいった。他のシンガーの友人には、私が怠け者の年寄りのように座ってボーカルを録音したことを話したけど、とにかくなぜだかうまくいったんだ。ただ試してみて、最終的にカッコいいと思える曲ができた。それをみんなに送ったら、グロウルを聴いて、クールだって言ってくれたんだ」

グロウルを必要としたコンセプトはどんなストーリーなのでしょうか?
「時代は第一次世界大戦後の世界。3人の兄妹が実家の豪邸に到着するところから始まる。彼らの父親は厳格で年老いた保守的で偏執的で邪悪で高貴なクソ野郎だが、他界したんだ。3人の兄妹は、20代後半の男女2人の双子と、ポリオという骨格系の病気に冒された少女だ。そして、歌詞は遺言の朗読のようになっている。だから曲にはタイトルがなく、ただ1…2…7…と段落があるだけなんだ。
“遺言 “の朗読を通して、この子供たちは自分自身について、父親の秘密について、家族とのつながりについて、たくさんのことを知る。双子の兄妹はドナーによる子作りの結果生まれた。父とその妻は子供を作ろうとしたがうまくいかず、彼は妻が不妊であると責めた。しかしどうしても子供が必要だった彼は、妻に他の男をあてがうんだ。妻は双子を妊娠したが、その間、主人公は妻が他の男に犯されたことを後悔していた。だから、彼は基本的に2人の双子を後悔している。
“遺言 “の朗読を通して、双子は彼が本当の父親でないことを知り、最終的に遺産から取り残される。彼の唯一の血のつながった本当の子供は、病気の女の子だ。彼女はすべてを受け継ぐ。しかし彼女は、彼が屋敷のメイドと交わした恋の結果だった。彼は妻に、彼女のかわいそうな子供を身内のように面倒を見るべきだと嘘をついたんだ。
今、彼の妻も亡くなった。しかし、妻は夫が浮気をしていたことを知っていたようで、彼女は血のつながった相続人となった。彼女はすべてを相続する。そして遺言が終わり、最後の曲 “The Story Never Told” がはじまる。
彼女は今、屋敷に住んでいる。彼女はすべてを手に入れた。しかし、そこに一通の手紙が届く。それはメイドである母親からのもの。”私はあなたの父親に嘘をつきました。あなたは別の恋愛の結果です。彼はあなたの父親ではなかった” って。つまり、父は不妊症だったんだ」
かの KING DIAMOND が生み出しそうなストーリーです。
「否定できないね!(笑) だけど、彼はキャラクターとか名前とか、そういうことにもっと興味があるんだ。でも、私は家族全体に興味があったんだ。遺産相続をめぐって家族がどう衝突するかとか、血は水よりも濃いとか、そういうことにね。前作でもそうだった。そして、それをいい形で表現できるような音楽があれば、面白くてダークなトピックになると感じたんだ」

ストーリーと音楽。どちらからはじめたのでしょう?
「いつも音楽から始めるんだ。でも、アイデアはあったし、今回は並行してストーリーを考え始めて、メモを書き出した。同時に、曲の順番も考えなければならなかった。私は、音楽にとって良い方法で並べたかった。いわば、最初の10分で、すべてを台無しにするようなことはしたくない。私はレコードの流れるようなシークエンスが好きなので、まず音楽的にやりたかった。でも、いったん歌詞が決まったら、それを変えることはできなかったね。だから、いつもより少し大変だったかもしれないけど、より興味深かったし、楽しかったと思う。ガールフレンドにもたくさん助けてもらったしね。主人公に子供がいないという最後のひねりは、彼女のアイデアなんだ」
Mikael の作曲術は直感が命です。
「自分の直感を信じる。あまり深く考えない。ある種の知識はあると思うけど、それは理論から得たものではない。シンガーソングライターのレコードから持ってきたものもあるし、ポール・サイモンの曲かもしれない!デクスター・ゴードンの曲かもしれないし、MORBID ANGEL の曲かもしれない。必ずしもパクろうとするわけではないが、これらのパーツの総和が、私にとっての普通なんだ。
私にとってはいつもそうだった。例えば、MORBID ANGEL のサウンドにすぐに影響を受けたのは、ずいぶん昔の若い頃だった(笑)。どうやったらあんなことができるんだろう?彼らのサウンドって何だろう?そしてしばらくして、リフを書いてみて、”ああ、クソッ” って感じたんだ!”私が探していたのは、MORBID ANGEL のサウンドのようなものなんだ”ってね。ちょっと変わったミュージシャンに惹かれるんだ。
例えば、Trey Azagthoth とかね。私の知る限り、彼は唯一無二の存在だ。あんな音楽は誰も書けない。もし私が彼にインタビューするなら、こうを 聞くだろう。どうやったらこんなものが書けるんだ?何を聴いて今に至ったんだ?どんな血とDNAがあれば書けるんだ?とね。そうやって私の中にさまざまなジャンルがブレンドされているからこそ、OPETH はジャンルレスなサウンドなんだよ」

コンセプト・アルバム、プログ・メタル・オペラの制作は想像以上に労力を要します。
「直前になって、ある曲を2曲目ではなく7曲目に入れるなどということはできない。でもそれはある意味、解放的なことだった。
曲作りには常に多くの困難がつきまとうが、そのほとんどは個人的なものだ。自分自身を感動させたい。自分がいいと思うものを作りたい。いいものにしたい。鳥肌を立てたい。今自分がいる場所で、今自分がクールだと感じる音楽を書くのが好きなんだ。最終的に僕が求めているのは楽しむことなんだ。これを仕事だとは思っていないんだ」
Mikael はこのアルバムを、TikTok に例えます。
「これはとても落ち着きのないレコードだ。誰かが閉所恐怖症だと言った。あまりハッピーなレコードではない。つまり、どのメタル・バンドも “ダーク” という言葉を使うけど、このアルバムはそれよりも…落ち着きがないんだ。ぜんぜんダラダラしていない。アイデアが爆発しているような感じ…まるでTikTokのようだ。テレビシリーズの “サクセション” にも影響された。マードックのような父親の後を継いだ兄弟間の権力闘争を描いた素晴らしいテレビシリーズだったね。
安っぽく聞こえるかもしれないけど、ああいうストーリーが大好きなんだ。あのアイデア全体が私にとっては魅力的だ。父親を喜ばせて、王座を簒奪する、王座への道を拓く。金と権力は、人を自分がそうなるとは思ってもみなかったようなものに変えてしまう。兄と弟がお金を巡って争うように、家族が分裂するというアイデアに興味を持ったんだ。突然、血は水よりも濃くなくなった。私はそれが魅力的だと思う。このようなアイデアの断片を手に入れたら、あとは物語全体を通して自由な発想で進めていくだけだ」

地下室だけでなく、ウェールズのロックフィールドでもレコーディングを行いました。
「素晴らしかった!音楽の大部分はそこで録音したね。僕の家でメロトロンやボーカルを録り、その他のエフェクトなどはそこでやった。ソロのいくつかは、Fredrik Åkesson が自宅のスタジオでやったんだ。JETHRO TULL の Ian Anderson が参加しているが、彼はどこかのスタジオでスポークンワードのパートを担当した。EUROPE の Joey Tempest もこのアルバムに参加している。だから、いろんなスタジオを使ったけど、大部分はロックフィールドで作ったんだ。
超クールな場所だよ。あそこが大好きなんだ。ロックフィールドは落ち着きを与えてくれるし、孤立しているとは言わないけど、田舎の農場にいるような感じなんだ。だから、新しく入ってきたメンバー(ドラマーの Waltteri Väyrynen)との絆を深めるのに適していた。レコーディングの間、みんなでそこにいて、ぶらぶらしたり、ご飯を食べたり、ビールを飲んだり、くだらない話をしたり、とにかくレコードに集中したんだ」
そこはかつて、JUDAS PRIEST や OASIS がレコーディングした場所。
「クールだよ。たいていの場合、有名なスタジオに行くと、”ここがキッチンで、ここがコントロール・ルーム” みたいな感じなんだ。でも、そこには QUEEN がよく使っていたグランドピアノが普通に置いてある。”Killer Queen” はそのピアノでやったし、私たちのレコーディングでも使った。だから、本当にクールなんだ」
Ian Anderson と Joey Tempest。ふたりの異なる才能もアルバムに華を添えています。
「Ian は、何年か前に “Herigtage” のアルバムでフルートを吹いてくれないかと頼もうと思った。それで、正しいアドレスかどうかわからないけど、イアン宛にメールを送ったんだ。でも返事がなくてね。それで結局、今は亡きスウェーデン人をそのアルバムに起用したんだ。
しばらくして、レコードについて話すインタビューがあった。そのうちのひとつは JETHRO TULL のレコードで、Ian が返事をくれなかったことを話し、”あの野郎!” みたいなことを言ったと思う。そのあと、JETHRO TULL のマネージメントからメールが来て、”イアンは将来あなたと一緒に演奏したい。連絡してくれ” って言ってくれた。Ian のインタビューを見ていたら、彼の声、つまりしゃべりがすごくいいんだ。だから、彼にナレーションのようなものを頼んだんだ。その流れで、彼は “フルートも必要かい?” って。
Joey Tempest は私の家にランチを食べに来たんだ。それで “こんなパートがあるんだけど、私は本当にできないんだ。もし歌ってくれるなら、本当にクールだよ” って言った。すると彼は “マイクを向けてくれ” と言ってくれたんだ。まあ、私は歌詞をまだ書いていなかったので、結局、彼はロンドンで自分のパートをやった。たとえ彼らが私のヒーローであっても、有名人であっても、何であっても、2人のおかげですべてがとても良くなった。それが結局、彼らの名前ではなく、彼らがそこにいる理由なんだ」

アルバムには、ブラックモアやギルモアを想起させるギターヒーロー的な見せ場もふんだんに盛り込まれています。
「ああ、それはとてもいい指摘だ。Fredrik は ARCH ENEMY に在籍していたんだ。それに彼はスウェーデンの TALISMAN というバンドにいて、そのバンドには元Yngwie Malmsteenの2人、Marcel Jacob とJeff Scott Soto がいた。まさにギターヒーローだよ。彼はスウェーデンでトップ・ギタリストの一人として確立されていたけど、加えてミュージシャンとしての地位を確立したいという願いがあった。彼は私が難しいと感じることもこなせるし、私にはないギターヒーロー的な気概も持っている。私は彼のギターが大好きだ。彼は世界最高のギタリストだと思う。
私自身もギター・ヒーローが大好きだけど、私はソングライターでもあるから、シュレッドするときとソウルフルで長い音を出すときがはっきりしているんだ」
唯一曲名を持つ “A Story Never Told” のソロはそんなふたりのギターヒーローの協力の結果です。
「Fredrik には何も言う必要はなかった。彼はブレーキを踏むタイミングも知っているし、トップギアに入れるタイミングも知っている。彼はただ素晴らしいソロを披露してくれた。私は、ただ “ああ、最高だ” と言うだけだよ。
“A Story Never Told” のソロも上手くやるって言ってね。私はちょうど RAINBOW の “Bent Out Of Shape” を聴いていたんだけど、その中に “Snowman” という曲があって、すごくスローなんだ。だからこそ私はブラックモアが大好きなんだ。彼はいろんなトリックを持っていて、素晴らしいプレイヤーだったけど、いつも音楽的だった。Fredrik もそうさ!」
今回のレコーディングでは珍しく、テレキャスターも使用しました。人間らしさを得るために。
「私たちが目指しているのは完璧さではない。バーチャルの楽器を本物の楽器に置き換えるとき、欠点を探すのではなく、人間的な面を探している。不完全さの中にこそ人間性がある。それはデモにはないものだ。私のデモを聴けば、クソ完璧だ。私は、繰り返しになるが、人間的なサウンドの擁護者なのだ。完璧は私にとっては正しい音ではないんだ。完璧なテンプレートがあるのはいいことだけど、それをレコーディングするときにちょっと失敗して、最終的に人間的なサウンドのレコードになるんだ」

元 PARADISE LOST のスティックマンである Waltteri Väyrynen もバンドに新鮮な要素をもたらしています。彼がボスを感心させたことは間違いありません。
「Walt が素晴らしいドラマーだということは知っていた。このバンドはくだらないミュージシャンの集まりじゃない。演奏はできる。でも私たちはロックフィールド・スタジオに座っていて、彼は非常識でテクニカルな曲をワンテイクでやっていた。ほとんどリアルタイムでレコーディングしていた!彼はすごいよ!」
そう、これは OPETH 史上最高のギター・アルバムで、リズム・アルバムでもあるのです。バンドのもうひとりのキーパーソン、ギタリスト、Fredrik Åkesson も今回のアルバムの仕上がりには興奮を隠せません。
アルバムの複雑なテーマを踏まえて、Fredrik は Mikael とのコラボレーションが鍵だったと明かしました。
「このアルバムは、2008年の “Watershed” でバンドに加わったときと同じくらいエキサイティングだと今でも思っている。僕にとって特別なアルバムだからね。もちろん、どのアルバムも良いし、どれも満足しているけれど、このアルバムは、古い OPETH とプログの OPETH が新しい方向性と一歩前進のために組み合わされたような作品なんだ。
だからこそ、自分を本当にプッシュしたかったんだ。そして、すべてのソロに目的を持たせたかったんだ。Mikael と僕はヘヴィなリズム・リフを分担し、僕はアルバムの多くのメロディーを演奏した。Mikael はアコースティック・ソロを弾いているね。
“In Cauda Venenum” の時僕は、Mikael のスタジオで即興的にソロを弾いていた。でも今回は、音楽を送ってくれたんだ。だから、自分のスタジオでソロを考え、今までやったことのないことをやろうとより多くの時間を費やした。どのソロもそれぞれ違うものにしたかったんだ」
そうして Fredrik はこのアルバムで、より思慮深いアプローチへと突き進みました。この新しい創造的な空間において、彼は楽曲だけでなくレコードの大きな物語に合うように、それぞれのソロを綿密に作り上げていったのです。
「”目立ちたい “という考え方は好きじゃないんだ。テクニカルなものを盛り込むのは好きだけど、それは目的があってのこと。このアルバムでは、リードに多くの時間と余韻を費やした。
かつて Gary Moore が言ったように、”あなたが弾くすべての音色は、人生で最後に弾く音色のようであるべきだ”。そういうメンタリティなんだ。人生を当たり前だと思ってはいけない。常にベストを尽くしたいと思うだろう。それがいいモデルだと思うし、できればそれ以上になりたい。ちょっと野心的に聞こえるかもしれないけど、ある意味、少なくとも僕が目指していたのはそういうことなんだ。みんながどう思うかはこれからだけど、かなりいい出来だと思うよ」

ヘヴィでアグレッシヴなパッセージと、幽玄でメランコリックな瞬間がぶつかり合う OPETH の特徴的なサウンドは、このアルバムの中核をなしています。この両極端の間の複雑なバランスは、バンドが長年かけて習得してきたもので、彼らはアイデンティティを失うことなく、幅広いサウンドパレットを探求できるようになりました。そして彼らの14枚目のスタジオ・アルバムでは、そうした対照的な要素の相互作用が、慣れ親しんだものであると同時に、新たに活性化されたようにも感じられると Fredrik は言います。
「僕の見方では、OPETH の曲は陰と陽のようなものなんだ。とてもアグレッシブなパートと、よりメランコリックなパートが出会って、一方が他方のパートを糧にする。これはレコーディングの方法でどのように演奏し、どのようなサウンドを使うかによって、音楽にそうした極端な変化を生み出すことができるんだ。
ヘヴィなものから森のような夢のようなサウンドスケープまで。それは “Orchid” 以来、OPETH の一部になっているものだと思う。しかし、それは常に発展し、様々な方法で行われてきたんだよ」
“The Last Will and Testament” が形になるにつれ、この作品は Fredrik のようなベテラン・ミュージシャンにとっても新たな挑戦となることは明らかでした。レコーディング・プロセスでは、技術的な複雑さと新鮮な創造的要素がプロジェクトの重みを増し、バンドは予想外の方向にまで突き進みました。しかし、限界に挑戦し続けるというバンドの決意は揺るがず、革新と芸術的進化への深い情熱がその決意を支えたのです。実際 Fredrik は、音楽そのものの複雑さが障害となり、また成長の源となったことを明かしています。
「今回のドラムのパートはとても複雑だから、リフを入れるのに時間がかかった。ポリリズム的なものがとても多いんだ。だから、リフのいくつかを捉えるのに時間がかかった。でも僕は挑戦することが好きなんだ。Mikael は常に僕らにも挑戦したかったんだと思う。いい意味でちょっとサディスティックなんだ」

“The Last Will and Testament” は過去への回帰を意味するのか、それとも OPETH の進化の継続を意味するのでしょうか?
「継続だ。一歩前進だ。これは初期の OPETH とプログ時代の OPETH をひとつにまとめたものだ。他のアルバムとはいろいろな意味で違うが、OPETH サウンドは健在だ。ちょっと新しいサウンドなんだ。グロウルのヴォーカルもあるけど、Mikael は “Paragraph I” で聴けるような、もっと芝居がかったクリーン・ヴォイスを開発したんだ。これまでそういうことはしてこなかったからね」
バンドとして革新と進化を続ける原動力は、自己満足を避けたいからだと Fredrik は説明します。
「飽きられたくない。常にステップアップし、レベルを上げ、限界を上げなければならない。もちろん、それは難しいことだ。でも、新しいアルバムはリスナーに対してではなく、自分自身に対して何かを証明する機会なんだよね。
毎回また何かを証明する必要があると思うし、それは今でも OPETH のアルバムのモットーなんだ。ビジネスを維持するためだけにアルバムを作るのなんて意味がないからね」
最後に Mikael は自分とバンドの立ち位置を明確にします。
「私は自分をミュージシャンだと思いたい。ミュージシャン…つまり、私は自分が消費する音楽の産物だ。私はもう50歳だ。だから、長年にわたってたくさんの音楽を聴いてきた。そうして多くの音楽を盗み、参考にしてきたんだ。でも結局のところ、私は自分が何をやっているのかわからないんだよな!」

日本盤のご購入はこちら。Ward Records

参考文献: KERRANG! :“Screaming, for me, is almost like rapping”: Mikael Åkerfeldt talks Opeth’s new album, The Last Will & Testament

MUSIC RADER :“What we are after is not perfection. You’re looking for the flaws… the noise… earth hum. You’re looking for the arm-tight playing… the human aspect”: Opeth’s Mikael Åkerfeldt on inspirations, intuition, shred, and the problem with modern metal

PROG SPHERE :OPETH Guitarist Fredrik Åkesson on Crafting Their Most Challenging Record

GUITAR INTERACTIVE MAG:“It’s about a Murdoch-type media mogul and his children fighting for control… that inspired me to explore those dynamics.” How HBO’s Succession helped inspire Opeth’s new album The Last Will and Testament | Interview

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE FALLEN PROPHETS : PRIMORDIAL INSTINCT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FRANCOIS VAN DER MERWE OF THE FALLEN PROPHETS !!

“All The Major Cities In South Africa Have Their Problems With Crime. It Could Possibly Affect Our Music. We Do Live In a Place That, As Beautiful As It Is, Constantly Reminds Us Of Violence And The Dark Nature Of Humanity.”

DISC REVIEW “PRIMORDIAL INSTINCT”

「ケープタウンは危険な街だよ。僕たちは皆、犯罪に何度も遭遇しながら育ったんだ。それが世界の他の都市とどう違うのかはわからないけど、南アフリカの主要都市はどこも犯罪の問題を抱えている。それはもしかしたら僕たちの音楽にも影響しているかもしれないね。美しいと同時に、暴力や人間の暗い本性を常に思い起こさせる場所に住んでいるのだから」
南アフリカ発祥の地 “マザーシティ” と称されるケープタウンは、風光明媚な多文化自然都市として知られています。最先端のショッピングタウンに街の象徴テーブルマウンテン、そして世界で最も美しい岬、喜望峰。そんな理想的に見える場所には実は裏の顔が存在します。世界で最も危険な都市のひとつ。
貧困と格差、失業率の高さが生み出す犯罪は後をたたず、強盗、スリ、性犯罪、車上荒らし、そして南アフリカ全体で1日に75件の殺人事件が発生。銃社会のこの国は、アパルトヘイト撤廃後の混乱と流入にうまく対処できなかったのです。
そんな南アフリカ、ケープタウンの光と闇を全身全霊で喰らい尽くしたバンドこそ、THE FALLEN PROPHETS です。彼らのデスメタルには、常に流れるような美しさと人間の深い闇が同居しています。
「アフリカのメタルは市場が小さいし、ほとんどの国際的なアーティストにとってアフリカは地理的にかなり遠いという事実。通貨も弱い。しかし、世界がデジタルの時代へと進化し、アフリカがその不利を克服してきたことで、僕たちは最近より多くの音楽に触れることができるようになった。今アフリカは間違いなく、世界で最もユニークなメタルを生み出している」
世界で最も遅くメタルが根付いたアフリカ大陸は、インターネットで世界が小さくなった今、個性的でユニークなメタルを生み出す奇跡の場所へと変貌しつつあります。そして、THE FALLEN PROPHETS は、ダークでアグレッシブなテーマとデスメタルの揺るぎないルーツ、そしてクラシックやバロック音楽からの意外な影響を融合させることでケープタウンの今を投影し、アフリカのメタル、その進化を証明してみせました。
“Primordial Instinct” はそんなバンドにとって大胆な新章の幕開けです。ネオ・クラシカルの複雑さを取り入れ、より洗練された彼らのデスメタルはブラックメタルの凶暴まで内包。”Beneath The Veil Of Flesh” では、デスメタルの真髄である容赦ないリフ、ブラックのトレモロにブラストビートを叩きつけながら、バロック・ギターのイントロ、複雑なアルペジオ、ディミニッシュのランで彼らの個性を際立たせていきます。これぞメタルの没入感。ハイテンションで強烈で時に流麗。自身のペルソナと同化した彼らのデスメタルはもはや単なる音楽ではなく、生き方そのものとなりました。ABORTED, BLOODBATH, CANNIBAL CORPSE, HYPOCRISY, NILE, VADER といったバンドに対する情熱や憧れは、ケープタウンの風景の中に昇華されていきます。
今回弊誌では、ギタリスト Francois van der Merwe にインタビューを行うことができました。「差別はなくなったのか?いや、なくなってはいない。残念ながらこれからも差別が完全になくなることはないだろう。そして、過去の残虐行為のせいで、人々から軽蔑されることも常にある。でもね、幸運なことに、そういう考え方をする人の数は日に日に少なくなっているのもまた事実なんだ」 どうぞ!!

THE FALLEN PROPHETS “PRIMORDIAL INSTINCT” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SEEDS OF MARY : LOVE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JULIEN JOLVET OF SEEDS OF MARY !!

“I Quite Like “Progressive Grunge”! Actually We Are As Much Fond Of Grunge As We Are Of Prog Music.”

DISC REVIEW “LOVE”

「僕たちは GOJIRA をとても尊敬している。彼らは僕らの世代にとって、まさにフレンチ・メタルのパイオニアだ。彼らは僕たちに進むべき道を示し、フランスのオルタナティヴ・カルチャーにスポットライトを当てる手助けをしてくれた。彼らの音楽は妥協がなく、とてもよく練られている。彼らがこのセレモニーに参加するとは予想外だったけど、今や世界中が彼らのことを知っているよね。それは素晴らしいことだよ」
GOJIRA, ALCEST, IGORRR, BETRAYING THE MARTYRS, LANDMVRKS, DEATHSPELL OMEGA, GOROD, THE GREAT OLD ONES, BLUT AUS Nord。挙げればキリがありませんが
これほど多くの才能あふれる革新的メタル・バンドが揃っていながら、フランスにメタル大国というイメージはこれまでありませんでした。それは、日本と同じく “後追い” の国だったからかも知れませんね。しかし、そんなイメージもついに今年、ガラリと変わることになりました。
オリンピック・ゲームの開会式で、地元フランスの GOJIRA が見せたパフォーマンスはまさに圧巻でした。王宮と牢獄。光と影のコンシェルジュリーを光と影のメタルが彩る奇跡の瞬間は、世界中を驚かせ、メタルの力、フランスのメタル・シーンを羽ばたかせることになったのです。
「僕たちはみんなあの時代に育ったから、より共感しやすいんだ。きらびやかな80年代からダークな90年代へのシフトによって、君が言ったような偉大なバンドが出現した。戦争、大量失業、ウイルス性疾患など、残念ながら僕らの生きる今の時代は90年代に通じると思う。だからこそ、そうしたバンドや音楽の美学は今でもかなり重要なんだ」
ではなぜ、モダン・メタルの力が今、世界中で必要とされているのでしょうか?その答えを、フランスの新星 SEEDS OF MARY が代弁してくれました。煌びやかな80年代からダークな90年代へのシフト。それは、まさに理想を追い求め、追い求めすぎたためにやってきたこの “欲望の時代” への揺れ戻しと非常にシンクロしています。だからこそ、多様でダークな90年代のメタルを原点として育った新たなメタルの形、その審美性や哲学、暗がりに臨む微かな光がリスナーの心に寄り添うのでしょう。
「ALICE IN CHAINS からは常に大きな影響を受けてきた。事実、SEEDS OF MARY として初めて演奏した曲は、”Them Bones” のカバーだったんだからね。今日、僕たちはその影響から解放されて、自分たち独自のものを作ろうとしている。でも、声のハーモニーや音楽にあのダークなムードがあると、リスナーがAICを思い浮かべないのは難しいことだと思う」
ゆえに、彼らの音楽は “プログレッシブ・グランジ” と評されることもあります。ALICE IN CHAINS は間違いなく、グランジの渦の中から這い出でましたが、その本性はメタルでした。あの時代の新しい形のメタルでした。そして、その怪しいハーモニーや不確かなコード、リズムの変質に絶望のメロディはあの時代のプログレッシブであり、見事にあの時代を反映した革新でした。
SEEDS OF MARY はそこに、Devin Townsend, Marilyn Manson, SLIPKNOT, SOILWORK, SOTD, NIN といった90年代の代弁者を取り揃えながら、より現代的な手法や趣向に PINK FLOYD のサイケデリアを散りばめることで見事に20年代の暗がりを表明します。
音楽の流行に圧倒されることなく、”種” をまき、収穫する。暴力的で、幽玄で、特定の難しい彼らのサウンドは、内省的な歌詞とありのままの感情の肯定によって、急速に強く成長していきます。
今回弊誌では、Julien Jolivet にインタビューを行うことができました。「僕たちは皆、間接的に日本文化の影響を受けているんだよ。みんなレトロなビデオゲームをプレイしたことがあるし、Jeremy はクラシックな日本映画をよく観ている。アニメやマンガは僕の人生の大部分を占めているよ。アニメの音楽(たとえば “AKIRA”)や菊池俊輔のような作曲家は、間違いなく僕に影響を与えているね」 どうぞ!!

SEEDS OF MARY “LOVE” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIGHTER V : HEART OF THE YOUNG】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FIGHTER V !!

“I Don’t Think Melodic Hard Rock/AOR Is Dead, In Fact I Think There’s An Upward Trend Again. If You Look At TV Shows Like Stranger Things Or Cobra Kai, The 80s Are Coming Back.”

DISC REVIEW “HEART OF THE YOUNG”

「メロディック・ハード・ロック/AORが死んだとは思わないし、むしろ再び上昇傾向にあると思う。”ストレンジャー・シングス” や “コブラ会” のようなテレビ番組を見れば、80年代が戻ってきていることに気づくはずだよ。バイパーサングラス、マレット、ジーンズにレザージャケット……。とはいえ、安っぽいグラムロックで大成功できるとは思わない。オリジナリティを持ち、モダンと80年代のいいとこ取りをすることが重要なんだ。だから、昔の模倣ではなく、リフレッシュしている限り、正しい道を歩んでいることになる!」
メロハーは死んだ。AOR なんてダサい。夢のような80年代を経て、時に煌びやかで、時に美しく、時に悲哀を湛え、そして時に情緒を宿したメロディック・ハードの響きは窓際へのと追いやられてしまいました。しかし、時代は巡るもの。”ストレンジャー・シングス” のような大人気ドラマに80年代のノスタルジアが描かれることで、当時の音楽も息を吹き返しつつあります。
そうしたドラマが視聴者の心を掴むのは、ノスタルジーを誘いながらも同時に新たな視点や思想
、テクノロジーを駆使して決して古臭く終わらせないことが理由でしょう。スイスのバンド、FIGHTER V のセカンド・アルバムのアートワークには、近代的で繁栄した都市の外観で建てられた巨大な心臓が描かれています。そう、彼らの “メロハー” も Netflix と同様に当時の風景に新たな解釈をもたらす革命の鐘。”Heart of the Young”、FIGHTER V が奏でる魅力的なメロディック・ハードは、野心的な若いミュージシャンたちによって作られ、若い心を保つすべてのリスナーに贈られたものなのです。
「”Radio Tokyo” は音楽で成功を収め、頂点を目指している少年の話。”Radio Tokyo” に出演するためにね!僕らの象徴だよ。80年代のビッグバンドはみんな東京、少なくとも日本で演奏していた。それができれば、外国のバンドとして本当に成功したと言えるんだ!」
そんな FIGHTER V が、メロハー復興計画の足がかりに選んだ場所が日本、そして東京でした。なぜなら東京、そして武道館はいつだって世界中のハードロック・キッズ憧れの場所だったから。そして、今や日本は #メロハー が生き残る数少ない国のひとつとなったから。”Radio Tokyo” はまさにメロハーの祝祭。そう、DJ に導かれた圧倒的な高揚感、凄まじい精神的な勃起をうながす楽曲こそメロハーの真髄なのです。
「よくプロデュースされ、ミックスされたコーラスといえば、間違いなく HAREM SCAREM が最高の例になるよね!特に HAREM SCAREM の最初のセルフ・タイトル・アルバムは、伝説的なプロデューサー、Kevin Doyle の傑作だった!もちろん、彼らのソングライティングにおけるトップリーグのセンスも忘れてはならないよ。HAREM SCAREM は間違いなく、メロディック・ロックのダイアモンドなんだ!」
だからこそ、クラシックで若々しいメロハーの新境地を求める FIGHTER V が日本が育てた HAREM SCAREM をお手本に選んだのは自然なことでしょう。彼らは80年代のメロハーに、さらに肉厚でオーロラのようにコーティングされたコーラスの魔法と、プログレッシブに捻くれたフック&テクニックを持ち込んだ革命家でした。タイトルをいただいた(?) WINGER の知性や、”Speed Demon” でみせる MR.BIG への憧れも織り交ぜながら、FIGHTER V もまた、敷き詰められた旋律のカーペットに、現代的なエッセンス、コンポジション、プロダクションを飾り付け、このジャンルを次のステージへと誘います。
やっぱり、コーラスやコール&レスポンスの使い方が素晴らしいですね。FAIR WARNING も、TEN も、TERRA NOVA も個性的で扇情的なコーラスを持っていましたが、メロハーはコーラスが命。何より、彼らのアー写のTシャツは SURVIVOR。大事なことはすべて SURVIVOR から学んだ。いつも心に SURVIVOR を。
今回弊誌では、FIGHTER V にインタビューを行うことができました。「GOTTHARD, KROKUS, SHAKRA のようなバンドは、より多くの観客に知られていたし、そこまでハードな音楽ではないから、より親しみやすかった。だからそうした音楽とより繋がりを深めていったんだ」 FRONTLINE に SHAKRA。滾りますね!どうぞ!!

FIGHTER V “HEART OF THE YOUNG” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CARNOSUS : WORMTALES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CARNOSUS !!

“If Putting a Label On Ourselves, We Would Probably Say Progressive Semi-Technical Melodic Thrash-Infused Death Metal? Our Sound Really Is a Mixture Of a Lot Of Influences.”

DISC REVIEW “WORMTALES”

「もし自分たちにラベルを付けるとしたら、”プログレッシブ・セミ・テクニカル・メロディック・スラッシュ・インフューズド・デス・メタル” とでも言うのかな?そんな感じかな。僕らのサウンドは実に多くの影響をミックスしたもので、それがテクニカルに聴こえる要因にもなっているかもしれない。でも、僕らがいつも “典型的なスウェーデン人” に聴こえないのは、おそらくアメリカのバンドからのインスピレーションによるものだろう」
テクデスの巨人 NECROPHAGIST が眠りについておよそ15年。数多のバンドが彼らの足跡を追おうとしましたが、その偉業に近づけた者は決して多くはありません。その理由は、おそらく NECROPHAGIST の “本質” を見誤っていたから。
もちろん、NECROPHAGIST はあの時代にしては異次元の複雑さと速度、そしてテクニックを纏っていましたが、そこにだけ囚われていたわけではありません。むしろ、そうした “オリンピック” 的離れ業の裏側に、恐ろしいほどに練り込まれ、書き込まれたリフやソロの類稀なる名脚本が存在していたのです。テクデスの魔法に必要なのは、BPM だけではありません。逆に言えば、そこを理解し、努力を重ねた ARCHSPIRE や FIRST FRAGMENT は自らの個性も際立たせながらテクデスの階段を登っていくことができたのです。
「その瞬間に正しいと思うことをやるだけで、今回はグルーヴとヘヴィネスにより重点を置いた、よりミドルテンポのアルバムに仕上がった。さっきも言ったように、僕らは自分たちを “テクデス”バンドだとは思っていない。そのレッテルを貼っているのは、僕らのファンやメタル・コミュニティなんだ」
スウェーデンから登場した CARNOSUS も、テクデスのステレオ・タイプやオリンピックに囚われない “多肉質な” バンドの一つ。同時に、スウェーデンというオールドスクールやメロデスのサンクチュアリで機械仕掛けのテクデスを体内に宿すステレオ・タイプの破壊者、デスメタルのサイボーグに違いありません。
“Tech 戦争” に身を投じたように見えた前作 “Visions of Infinihility” から1年。最新作 ”Wormtales” で彼らは、そのサウンドをこれまで以上に多様な方向に押し進め、テクデスに根ざしつつも、メロデスからスラッシュ、プログレッシブからブラックまで、様々なサブジャンルからの影響を取り入れることに決めました。次のスピード・スターを目指す以上に、その先の新たな怪異に進化する道を望んだのです。
実際、その選択は大成功でしょう。もちろん、”Wormtales” の心臓は機械仕掛けのテクデスでできていますが、その体はまさにスウェーデン。メロデスの悲哀、オールドスクールの地獄、デスラッシュの業火を身体に刻んだ CARNOSUS の血を吐き地を這うテクデスは、千変万化の咆哮を伴って “テクニカル” の意味をリスナーに問いかけます。フレットを正確に最速で駆け巡る以上のカタルシスがここにはあります。
今回弊誌では、CARNOSUS にインタビューを行うことができました。「僕たちの作品の歌詞は、ほとんどが架空の世界を舞台にしているけれど、現実との類似点があるのは間違いない。すべてのフィクションは現実の断片を取り込んでいるが、僕たちの歌詞も同じだ。全体主義体制、大量絶滅、抑圧といった要素が、錬金術、精神病、宗教的矛盾といったテーマと混ざり合っているのさ」時代は7弦ベース。どうぞ!!

CARNOSUS “WORMTALES” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【FROST* : LIFE IN THE WIRES】


COVER STORY : FROST* “LIFE IN THE WIRES”

“Every Prog Band Worth Their Salt Really Should Do a Double Album, Shouldn’t They?”

LIFE IN THE WIRES

「価値のあるプログ・バンドは皆、ダブル・アルバムを出すものだし、出すべきだよね」
FROST* とその心臓 Jem Godfrey は、この切り抜きやプレイ・リストのストリーミング全盛のインスタントな時代に、90分2枚組の巨大なエピック “Life in the Wires” を作り上げました。それだけではありません。このアルバムは前作2021年の “Day and Age” のコンセプトとリンクしながら、同時に初期の作品、特に画期的なデビュー・アルバム “Milliontown” のサウンドを見事に取り込んでいるのです。2024年にこれだけ “布石” のあるプログらしいプログを手に入れられるとは思えません。
「新しいアルバムの最初のトラックは、”Day and Age” の最後の曲 “Repeat To Fade” の終わりから始まるんだ。”Day and Age” を作ったときに、未来のためのちょっとした布石としてこの曲を入れたのを覚えているよ。
新しいアルバムの舞台に映画の世界のようなものを作り上げたんだ。 John と私が “Day and Age” を書いていたとき、私は音楽に関してかなり視覚的に考えていたんだ。曲を書いていると、その人たちがいる世界が見えてくる。”Day and Age” の世界観はとても映画的で、さまざまな場所や、メガホンを持った5人の紳士が象徴的なアルバム・ジャケット、そしてその世界観など、私にはとても映画的に感じられた! それで、”Day and Age” の最後、”Repeat to Fade” という曲の最後に、曲がフェードアウトして訪れる静寂の中で、”Can you hear me? “という声を入れた。それが新しいアルバムの始まりなんだ。”ジェームス・ボンドが帰ってくる” みたいな感じかな。 そういうアイデアがとても気に入ったんだ」

その映画のような世界観は、ビデオゲームともリンクしています。
「私の頭の中では、ビデオゲームの “グランド・セフト・オート” のような、ひとつの街でドライブしながら何かをするような世界が舞台になっている。 でも、その気になれば、車に飛び乗り、橋を渡って別の街に行くことができ、そこでは別の世界が繰り広げられているみたいなね。”Day and Age” の世界と “Life in the Wires” の世界は同じ世界の別の場所なんだ。 でも、物事は同時進行している。
“Day and Age” の世界では、”Terrestrial” や “The Boy Who Stood Still” のような登場人物たちがいて、同じように “Life in the Wires” にも登場人物たちがいて、それが同時に起こっている。 すべてが同じ宇宙を舞台にしているというアイデアがとても気に入ったんだ。その結果、ビジュアル面でも音楽面でも、ハウス・スタイルを確立するのはとても簡単だった」
だからこそ、ダブル・アルバムが必要でした。
「”Life in the Wires” のストーリーは、2枚組のアルバムが正義だと思えるほど、十分な物語があったと思う。たしかに怖さはあったよ。長くてつまらない迷走しているプログ・バンドだと評価されるほど最悪なことはないからね。 だから私たちは、以前は60分のCDというフォーマットの枠の中で十分に語ることができると思っていた。
でもこのアルバムでは、4面のレコードを作りたいと強く思ったんだ。 その結果、最適な音質を得るために、ヴァイナルの1ビットが約20分(片面)という制約が生まれた。 不思議なことに、86分と言われるととても長く感じる。 でも、20分のヴァイナル盤を4面分と言われれば、頭の中ではそれほど大変なことだとは感じない。
ダブルアルバムのアイデアはずっとやりたいと思っていた。 2枚組アルバムという素晴らしいプログのクリシェをやるのにちょうどいいタイミングだと思ったんだ!」

4面を扱えることで、ストーリーの幅も広がります。
「その通りだよ。前半の第1幕で登場人物を紹介する。そして次の第2幕で旅が始まる。 そして第3幕で寓話が語られ、4幕で教訓が語られる。 音楽的にも、そういった形式に対応できる十分な素材があったんだ。全曲がつながっているんだ。 だから、組曲のようなものなんだ」
かつてプログレッシブ・ロックのレコードにはそうした組曲やつながりのある作品が多く存在しました。
「”The Wall” は連続した作品で、”The Lamb” もその多くがリンクしていた。だからそうするのが自然だと思ったんだ。 もし “CDを作るんだ” と考えていたら、違ったものになっていたと思う。 でも、私の頭の中では、4面のレコード盤ということになっていて、そう思えた……よくわからないけど、今回は完璧に自然に思えたんだ」
“Life in the Wires” のストーリーは、主人公のナイオを中心に展開します。ナイオは、A.I.が運営する世界で、意味のない未来に向かう無目的な子供でした。しかし彼は、かつて母親からもらった古いAMラジオで年老いたDJの声を聞き、信号の発信源をたどって “ライブワイヤー” を見つけ、より良い未来がそこにあるかどうかを確かめようと決心します。しかし、”オール・シーイング・アイ” “全てを見通す瞳” はこの独立した思想に感心せず、攻撃を始めます。
やがてナイオは、ライブワイヤーの故郷を突き止め、自由を得ようとしますが国中を追われることになっていきます。
それでももちろん、多くのコンセプト・アルバムがそうであるように、このアルバムを楽しむために音楽の背景にあるストーリーを完全に受け入れる必要はありません。たとえナイオの旅が頭の上を通り過ぎたとしても、このアルバムは約90分、CD2枚組、またはレコードの伝統的な4面にわたる、多様で革新的、そして非常に楽しい曲のコレクションであることに変わりはないのです。

「ELO の “Out of Blue” は名盤だが、それ以上に “Time” のような作品を作りたかった」
Godfrey の ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA に対する愛情はこの作品にもヒシヒシと感じ取れます。彼はまるで Jeff Lynne のように、メロディックなソングライティング、見事なプロダクション、ポピュラーでありながら知的なアプローチを持つレコードを作りあげました。”Life in the Wires” もまた ELO の作品と同様、プログレッシブでありながら何度も聴かないと理解できないレコードではないのです。
「このアルバムはよりプログレッシブな雰囲気とアレンジになっているから、今回はルールを設けないのが賢明だと思ったんだ。 だから私たちは演奏できるし、ちょっとしたソロもできる。それにさまざまなムードや雰囲気をカバーしている。 ソロを弾いたり、楽器的に自分を表現したりする能力を奪ってしまうと、86分間という時間の中で、自分自身に楽しみがなくなってしまう。このジャンルやミュージシャンの楽しみのひとつは、開放的になれることだと思う。 バンドの中でそれを許容するために、ちょっとした光と影を持つことは公平だと思った。 味わい深いものであることを願うよ!」
Godfrey が12曲を書き、さらにあとの2曲は John Mitchell とのセッションから生まれたもの。”Day and Age” では Mitchell がリード・ボーカルを多く取っていましたが、今回はキーボードの巨匠がリード・ボーカルにしっかりと戻り、シンセもより前面に出ています。
「なぜそうしたかというと、このアルバムの大半を私が書いているから。自分ひとりで書いた曲が多いから、歌うことに意味があったんだ。 私がこれを歌って、John に何か歌ってもらおう” というよりはね。 彼は私よりも音域が広いんだ。 例えば、”Day And Age” では、私が実際に歌っていた曲のうち、John が歌うことになったものが何曲かあった。”Skywards” とかね。
私は “Milliontown” の全曲を歌っていたから、こうしてある種の輪が完成したんだ。 マイクの前に戻って歌を歌うグリーン・パスがもらえたと思ったんだ。 いい機会だと思ったよ」

しかし、FROST* は誰ひとり欠けても FROST* にはならないと Godfrey は主張します。
「John は、彼独特の “Johnular” なアティテュードをもたらしてくれる! 彼はユニークなギター・トーン、ユニークなサウンドを持っている。 人々が音楽を色として見るならば、彼の個性はネオンパープルになるんだ! なぜだろう? エキゾチックというか、ちょっとイタリックというか! とにかく、彼には独特の魅力があって、素敵なんだ。 彼がプレーすると、物事に高価な光沢がもたらされる。それが彼の持ち味なんだ。 それに、彼の声はたしかなものだ。 アルバムの最後、”Starting Fires” で彼が歌っているのがわかるだろう。 彼が、”We’re star…” と歌うだけで、”ああ、John だ!”と思うんだ。
Craig Brundell は、明らかに子犬のような熱意を何にでも持ってくる! 彼はずっと、”ハロー、目が覚めたよ”って感じなんだ。 子犬のように走り回るんだ。 これは何?これは何?ってドラム・グルーヴを歌う。彼はバックビートに素晴らしいエネルギーをもたらしてくれるね。
そして Nathan King は、バンドの父親みたいな存在だ! 彼は信じられないほど冷静で、禅の心を持っている。 彼はバンドの中で最も才能のあるミュージシャンで、鍵盤も弾けるし、歌も歌えるし、ベースもギターも弾ける! そして、彼はいつも音楽を覚えている。 だから私たちはいつも、”Nate、これどうやるの?”って言ってるんだ。 彼は私たちを見渡して、みんなを一直線に導いてくれる。
そういう点で、この関係はとても興味深い。 私は基本的に、みんなに指示を出す一番前のうるさいやつなんだ」

たしかに、このアルバムではバンド全員を再び解き放つことで、抑えきれないほどの喜びが表出しています。
「”Day and Age” では、ソロを省いて巧みなアレンジをするということを明確にしていたね。でも今回は、その立場を少し変化させてもいいんじゃないかと思ったんだ」
その素晴らしい例が “Moral & Consequence” でしょう。まさに “足かせ” が外されたのがわかります。ソロにソロを重ねたこの曲は、様々な意味で前作に対するアンチテーゼとなり、それでもとてもキャッチーです。Godfrey のそのポップ・センスは出自によるところも大きいようです。
「私が音楽に目覚めたのは、7歳くらいのときにテレビでブライアン・イーノを見たのがきっかけだった。彼は1970年代の “ドクター・フー” に出てくるエイリアンの悪役みたいな格好をしていて、EMSのVCS3を弾いていた。私の関心はそれだけだった。
それから14年後、私は結局、金持ちで有名なポップ・スターにはなれないということをようやく受け入れ、ロンドンのヴァージン・ラジオでアシスタント・プロデューサーとして働くことになった。そしてそれから2年後、BBCラジオ1にヘッドハンティングされ、オンエアのイメージング・チームに加わることになったんだ」
そしてポップが花開いた80年代はまさに Godfrey の音を形作りました。
「80年代は私の10年だった。私は 1984 年にティーンエイジャーになったからね。シンセサイザーに夢中になっていた。それはキーボード奏者にとって完璧な嵐だったよ。すべてが可能であり、すべてが現実を超えていた。私たちは70年代の終わりイギリスのとても憂鬱な数年間から抜け出して、率直に言って休憩が必要だった」

ELO はもちろん、ABBA や敬愛する Tony Banks の GENESIS, RADIOHEAD に QOTSA まで様々な影響を織り込んだアルバムにおいて、彼らは重さ軽さではなく、推進力と静寂のペース配分で作品にダイナミズムを生み出しました。当然、あの傑作 “Milliontown” の焼き直しをやるつもりはありません。
「私は純粋に、人々が私たちについて良いとか悪いとか言うのを読まない。もし私がレストランを経営していたら、評判をとても気にするだろうけど、レストランを経営している人とは違って、誰かがクソだと言ったからといって、急いでスタジオに戻ってアルバムを書き直したり、リミックスしたりはしない。誰かが良いと言ってくれたとしても、自分の最新作を聴きながら鏡に映る自分を愛おしそうに見つめ、自分に酒を注ぐようなことはしないんだよ」
そうして Godfrey はこの光のプログレッシブ・ロックで世界を良くしていきたいと願います。
「最近、プログの世界でもメタルギターが多く、叫んでいるように見える。皆、何事にも腹を立てているようだ。カメラに向かってにらみを利かせ、”Lung-Ripper IV- The Death Nexus “という曲を歌う。そんな気分になるのはIKEAにいるときだけだ。プログにはもうユーモアはないようだ。私の時代はもう少し上品だった。今でもFrostのフォーラムを覗いてみると、最近の激論はマーマイト (イギリスのペースト) についてだった。トランプについてはどうすることもできないが、マーマイトについては何人かに落ち着くように言うことができる。このように小さなことからだけど、私たちは世界をより良い場所にしたいんだよ」


参考文献: TPA: Frost* – Life In The Wires

PROGARCHY :Jem Godfrey of Frost*: The Progarchy Interview

THE PROG MIND :TEN QUESTIONS WITH JEM GODFREY

FROST 弊誌インタビュー!

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【JERRY CANTRELL : I WANT BLOOD】


COVER STORY : JERRY CANTRELL “I WANT BLOOD”

“I Felt Like I Was Operating At The Top Of My Abilities As a Singer, For Sure. I Think I’m Growing. I’m Trying To Get More Consistent At Everything. That’s The Goal”

I WANT BLOOD

「私はこのレコードのファンだ。もし私が私でなく、ALICE IN CHAINS のメンバーでなかったとしても、ALICE IN CHAINS の作品と私が作ったソロ作品のファンになっていただろう」
ヘヴィ・ミュージックの世界は永遠に流動的で、新しい声は台頭し、常に驚くべき進化を遂げています。
2024年夏季オリンピック・パリ大会では、開会式でフランスのメタルバンド、GOJIRA が大活躍を果たしました。7月、このバンドは、かつてマリー・アントワネットが幽閉され、死刑判決を受けた中世のコンシェルジュリー宮殿で、火柱が立ちのぼり、窓から何人もの首を切られたアントワネットが歌う中、雷鳴のように19世紀のフランス国歌 “Ah!Ça Ira” を轟かせました。
セーヌ川のほとりから世界中に、妥協のないメタルが鳴り響いたことに、Jerry Cantrell は目を細めます。
「クールで意外な選択だと思った。時代が良い方向に変わってきているのかもしれない」
もちろん、変わるものもあれば、変わらぬものも存在します。Cantrell にとって、創造の瞬間はこれまでと同じです。その感覚は、彼が若いギタリストとしてシアトルのガレージやベッドルームで過ごした時間と何ら変わらないのですから。
ALICE IN CHAINS のギタリストは、そうした初期の日々をはっきりと覚えています。
「そこでマリファナを吸ったり、RUSH のレコードを聴いたり、ドラムキットが半分しかなくても仲間と一緒に演奏してみたり。そういうのが好きだったんだ」

シアトルのシーンも懐かしく回想します。
「私たちの前にも、HEART や QUEENSRYCHE がいてずっと活気のあるシーンだった。音楽や芸術が盛んな土地でね。大都市じゃないから、誰からも干渉されずに熟成する時間があった。そして、ここで何かが起こっていると感じ、気がつけば自分もその一部となっていた。19歳や20歳の若者にとっては、それはかなりクールなことだった。
我々はMTVを開拓した最初のバンドともいえた。SOUNDGARDEN もね。シーンにとっては、MOTHER LOVE BONE も本当に重要なバンドだったし、MAD HONEY も、GREEN RIVER もいた。彼らみんなが小さな足がかりとなった。
一緒に仕事をしていなくても、我々はそれぞれが個人として、グループとして、お互いに助け合っていたよ。そしてその成功のひとつひとつが、より大きなものへとつながっていき、臨界点に達して、PEARL JAM や NIRVANA が誕生したんだ」
だからこそ、Cantrell は UK のバンドに大きな影響を受けたといいます。
「私はイギリスのバンドに大きな影響を受けた。JUDAS PRIEST, BLACK SABBATH, LED ZEPPELINなど当時はあの場所に素晴らしい音楽が圧倒的に多かった。量も質もね。これらのバンドはすべて、何らかの形で、互いに影響を与え合ったり、刺激し合ったり、誰かが別の道を進むための分岐点を作ったりしていた。そういう環境は、私たちの小さな町で一握りのバンドで起こったことと似ていて、健全なレベルの尊敬と同時に競争があり、それがすべてのバンドの成長に拍車をかけたんだ。多くのUKバンドも同じだと思う。
だから “British Steel” が好きなんだ。すべてのメタル・ヘッズにとって特別で時代を代表するレコードのひとつだ。Dimebag やVinnie Paul と何度一緒になったかわからないけど、Dime はいつも首にこのカミソリの刃のペンダントをしていたね。
このリフは、私が最初に弾き方を覚えたリフなんだ。K.K. と Glenn Tipton は、メタル界における名デュアル・ギターで、Rob Halford はまさに最高だ。彼のような人はいない」

一方で今、ロサンゼルスやシアトルの自宅のリビングルームで、Cantrell と彼の仲間たちは、アンプとペダル、電子ドラム・キットに接続し、ヘッドホンをつけて演奏します。彼の横に座るのは、ベーシストのDuff McKagan (Guns N’ Roses) と Robert Trujillo (Metallica), ドラマーの Gil Sharone (Marilyn Manson, Dillinger Escape Plan) と Mike Bordin (Faith No More), そしてコンポーザーでギタリストの Tyler Bates。
そうしてある日、”Let It Lie” となる曲が誕生します。完成したその曲は、Cantrell の新たなソロ・アルバム “I Want Blood” に収録されていますが、Cantrell はそれを、”クソみたいにドロドロしている” と表現しています。うなるギター、プログレッシブな中間部、ビッグ・ロック・ソロ、そして Cantrell の歌声からなるドロドロの叙事詩。”誰にでも呪縛がある/原始的な闘争衝動がある/相手の中に自分が見えるか?”
Cantrell にとってこの曲は、初期の SOUNDGARDEN を彷彿とさせる、重厚で荒涼としたロック・チューンで、彼がよく知るグランジの初期を彷彿とさせるもの。リビングルームでたむろしていたロック野郎たちが、偶然インスピレーションを得た瞬間から物語が始まりました。
「フリーフォームのジャムをやっていて、偶然あのリフを見つけたんだ。そうしたら Bates が別の何かで反応した。彼はただ、クールだね、という感じで私を見ていた。ジャムの段階やデモの段階では、少しローファイにしておくのが好きなんだ」

2021年のソロ・アルバム “Brighten” と同様にオールスター・ミュージシャンをフィーチャーした “I Want Blood”。ただ、”Brighten” は Cantrell にとって19年ぶりのソロ・プロジェクトでした。
その19年の間に彼は、2002年の Layne Staley の悲劇的な死によってキャリアを絶たれた ALICE IN CHAINS の復活に集中していました。彼らのカムバックは2009年の “Black Gives Way to Blue”。これはかつての AC/DC のように、ダイナミックなフロントマンの死後、ロックバンドが成功した珍しいケースとなり、アルバムはゴールドを獲得し、ビルボード200で5位を記録しました。その後、シンガーの William DuVall を迎えてさらに2枚のアルバムをリリースした ALICE IN CHAINS は、ツアーとレコーディングを積極的に行うユニットとして完全に再確立され、今年はラスベガスで開催された注目のシック・ニュー・ワールド・フェスティバルで話題をさらいました。
ALICE が確かな地盤を築いたことで、Cantrell はダウンタイムを手にし、1998年の “Boggy Depot”、2002年の “Degradation Trip” に続くソロ・キャリアに戻ることができました。このシンガー兼ギタリストはそうして “Brighten” で、エンニオ・モリコーネのハードロックと傷ついたバラードのコレクションで、新たな伸びを見せたのです。
「あの経験の後、私は燃え上がっていたんだ。もう少し早く仕事に取り掛かりたいと思ったし、時間とチャンスがあるうちにもう1枚やりたいって思ったんだ」
名は体を表す。アルバム・タイトル “I Want Blood” はまさに Cantrell の乾きと情熱を表しています。
「ALICE IN CHAINS の共同マネージャー、スーザン・シルバーとシック・ニュー・ワールド・フェスのためにヴェガスにいたとき、彼女に訊かれたんだ。タイトルは “Fuck You” でしょ?ってね!彼女は正しかった!私のカタログには、”Dirt”, “Facelift”, “Degradation Trip” など、強力なタイトルがいくつかあるからね。運が良ければ、核となる曲のひとつからタイトルをもらえたり、作品を体現するようなものをもらえたりする。”I Want Blood” という曲には、その両方があった。このアルバムはハードな内容なので、この曲のトーンがぴったりだと思ったんだ」

“I Want Blood” の曲の中で浮かび上がってくるのは、もっとヘヴィなもの。威嚇的な “Vilified” は、渦巻くギター、轟く Trujillo のベースラインと Sharone のドラムビート、そして Cantrell の特徴的な歌声が何層にも重苦しく重なりアルバムの幕を開けます。”Off the Rails” と “Throw Me a Line” を含め、ここにはたしかに ALICE IN CHAINS の初期から彼が生み出してきた印象的で陰鬱なロックのフックが溢れています。
「作曲だけでなく、ギターの演奏も歌もリスクを犯した。最高の作品というのは、自分が心地よくない場所にいるときに生まれるものなんだ。それをやり遂げられるかどうかわからない。もう少し安全なことをしよう。そんな考えは捨てて、とにかくやってみるんだ。そうすれば、きっと普段はやらないようなことをやったり、自分を追い込んだりして、自分が目指しているよりも高い目標を達成できるはずだ。中心から少しずれた、少し危険な感覚を味わうことができる。そして、偉大な作品になる可能性を秘めたものを作る良いチャンスを手に入れるんだ」
この9曲入りのアルバムは、Cantrell と Joe Barresi のプロデュースにより今年初めにレコーディングされました。セッションは、カリフォルニア州パサディナにあるバレージのJHOCスタジオ(ジョーズ・ハウス・オブ・コンプレッション)で、赤レンガの壁とヴィンテージ機材に囲まれて行われました。Cantrell は、TOOL, SLIPKNOT, QUEENS OF THE STONE AGE など、メジャー・アーティストとの仕事で知られるプロデューサーとのコラボレーションについて説明します。
「彼のスタジオに入ると、まるで10軒のギター・センターがひとつに詰め込まれたようで、過去50年分の機材で埋め尽くされているんだ」

陰鬱な “Echoes of Laughter” は、彼らが集まるたびに Bates が演奏していたリフから始まりました。マリリン・マンソン、HEALTH、Starcrawler のサウンドトラック作曲家、プロデューサーとして高く評価されている彼は、”Brighten” でも Cantrell の主なクリエイティブ・パートナーでした。ツアーにも帯同し、サウンドチェックや楽屋、そして Cantrell のリビングルームのジャムセッションで、このリフは何度も登場します。
「このレコードには、しばらく前から循環しているリフがいくつかある。家を探しているんだ。いいリフなんだけど、どこに置いてくれるんだい?僕の家で、 Bates がちょっといじり始めたんだ。俺は “お前はそれを弾き続けろ。それで何か作ろう”って。
僕はこう言ったんだ。君が思いついたんだってね。あの曲は、ほとんど彼が書いたものなんだ。でも、本当にエモーショナルで、映画のような曲だ。人生の美しさと有限性に触れている。私たちの人生はすべて終わってしまう。でも物語の中には、最初から最後まで美しい瞬間がたくさんある。この曲は、祝福すると同時に手放すというテーマに少し触れているんだ」
Cantrell は喪失感の歌詞で音楽に応えました。”君を横たえて、放して、太陽に咲く花/ざわめき、移動が始まった/もう二度と会わないし、抱きしめることもない”
「それはごく一般的な人間の経験だ。歌詞を書くときは個人的な歴史や他の人が目撃した人間的な瞬間に基づくことが多い、それは決して簡単なことではない。苦悩するよ。歌詞はクソ最悪の部分だ。出来上がったときは最高だけど、すごくイライラするんだ。音楽がまずあって、それから、よし、一体何を言えばいいんだ?この素晴らしい音楽を、バカなことを書いてすぐに台無しにすることもできるんだからね。
でも何かが形になり始めるまで取り組むんだ。多くの場合、出来上がるまで何が何だかわからないんだ。それでも時々、これはどこから来たんだろう?良い歌詞を書くには、第一に、個人的なものでなければならないと思う。自分自身、自分自身の感情、自分自身の感覚、自分自身の観察から始めなければならない」

Layne Staley の悲劇的な死も、Cantrell が対峙した喪失のひとつ。
「我々はそれぞれに個性的な好みがあった。彼が好きなもの、私が好きなものがそれぞれあって、その間にあるものをたくさん共有していたんだ。彼は本当に不思議な能力を持っていてね。誰かの喋りを一度聞いただけで真似できたり、映画のセリフをそのまま繰り返したり、ジョークを言ったりしていした。彼には、そういう模倣力があったんだ。
彼もハーモニーが好きだったし、私もそうだった。一緒に曲作りを始めたときは、自然の成り行きに任せていたね。ただ曲を作って、自分たちのスタイルを見つけようとしていた。他のアーティストの真似を1年ほど続けた後、やっと“これはクールじゃないか? これこそ自分たちの音楽だ”と思えるものに出会ったんだ。
どのバンドにも言えることだけど、本当に自分らしいと思えるアルバムを作るまで、試行錯誤に結構かかったりするよね。でも、私たちはデビュー作の “Facelift” ですでに、90~95%くらいは自分たちの音楽にフォーカスできていたと思う。まだ捨てきれていないものや、古い皮膚のようなものが残っていただけでね。
それは私たちが一緒に作り上げたものだった。だから、今でもそれを演奏し続けることでいい気分になるし、彼のことを思い出すこともできる。もちろん、彼がいなくなってとても寂しいけど、一緒に過ごした時間や一緒に作った音楽には感謝している。私たちが一緒に始めたものを私はこれからも続けていくよ」
だからこそ、”Let It Lie” では Cantrell がギターと同じくらい切れ味鋭い唸るような言霊を披露しています。
「これは個人的な人間関係の歌詞だ。自分の人生において、対立する誰かとどんな関係であっても、それをプラグ&プレイ “すぐに接続” することができる」

Cantrell にとって、インスピレーションは様々なところからもたらされます。彼のギター・ヒーロー、Joe Walsh のインタビューもそのひとつ。そこには、彼が1973年にヒットさせた “Rocky Mountain Way” の歌詞について書かれていました。
「彼は完全にふさぎ込んでいるのに、バンドは “おい、歌詞が必要だ” と言ったんだ。それで、彼はただ意識の流れに身を任せ始めたんだ。彼は立っていて、ロッキー山脈を見ているんだ。そして、”彼はこう言っている、ああ言っている” という歌詞は、彼のマネージャーからの電話だったんだよな」
Cantrell は、Walsh は彼の中に足跡を残したクラシック・ロック時代の多くのプレイヤーの一人だと説明します。
「JAMES GANG、ソロ・キャリア、EAGLES……彼が大好きなんだ。彼は偉大なソングライターであり、偉大なシンガーだ。素晴らしいギタリストだ。トーンも素晴らしい。Joe は僕の個人的なリストの中でも上位に入るね」
まだ多感な子供時代、Walsh の1978年の自伝的シングル “Life’s Been Good” をラジオで聴いたことを彼はしみじみと思い出します。そこには、パーティー、リムジン、マセラティ、ホテルに住み、壁を壊し、会計士に全部払ってもらうといったロックスターの退廃的な話がありました。そのすべてが幼い Cantrell には響いたのです。彼は結局、10年か20年後にヒットメーカーとなったハードロック・バンドのメンバーとして、似たような経験をすることになります。
「私はそうしたロックな物語のいくつかを生きてきた。個人的には経験したことがなくても、経験した人の隣に立っていたことはある。だから、私は犯罪の現場にいたようなものだね」

“I Want Blood” では、”Held Your Tongue” で Cantrell の歌詞の一部が露わに。冒頭のヴァース全体をアカペラで歌っています。初期の ALICE IN CHAINS のレコーディングから、Cantrell はバンドのボーカル・サウンドの重要な要素で、彼のラインは Staley のラインと混ざり合い、強烈に一目で AIC とわかるスタイルを作り出していました。彼のソロ・アルバムでも、そのスタイルは維持されています。しかし、たとえヴァースであっても伴奏なしで歌うことは、Cantrell がボーカリストとしての自信を深めていることを示唆しています。
「確かに、今はシンガーとして自分の能力の頂点で活動しているような気がした。私は成長していると思う。何事にももっと一貫性を持たせたいと思っているんだ。ギターを弾くのも、歌うのも、曲作りをするのも、プロデュースするのも、他の人と一緒に仕事をするのも、うまくプレイするのも。
そうすれば、避けられない浮き沈みが起きても、少なくとも戻るべきベースラインがある。前作では、ステップアップしたように感じた。今回のアルバムでは、特にボーカルにおいて、もう一段階上がったような気がするよ」
例えば、”Off The Rails” や “Afterglow” のような彼独特の、陰鬱でありながらキャッチーなメロディはどこからくるのでしょうか?
「私がミュージシャンになりたいと思ったのは、Elton John のバンドを好きになったことがきっかけだった。”Tumbleweed Connection” が好きでね。アメリカーナのような雰囲気があるんだ。私の印象では、Elton はアメリカを愛していると思うんだ。ポップスやロックンロールだけでなく、カントリー・ミュージックの要素もあるかもしれない。そしてこれには南部の雰囲気があるんだ。”Country Comfort” と “Amoreena” は、このアルバムの中でも特に好きな曲だ。
Elton には何度か会ったことがあったけど、彼はいつもとても物知りで、バンドにとても興味を持ってくれた。彼が僕らの曲 “Black Gives Way To Blue” をレコーディングすることになった頃に、私はそれを知ったんだ。彼は ALICE IN CHAINS の大ファンなんだ。彼自身がファンだから、いろんな音楽について常にアンテナを張っていて、すごく詳しい。自分にとって一番の音楽的インスピレーションの源である人物に、自分の曲で演奏してほしいと頼むなんて…それはとても意味のあることなんだ。まさか彼がイエスと言ってくれるとは思ってもみなかったけどね。私は彼にメールを書き、その曲の意味、特に Layne に敬意を表したいこと、あの曲は和解し、”親友よ、さようなら” と言い、同じ本の新しい章を生きるためにバンドとともに前進するために書いた曲だと説明した。彼はあの曲を聴いて、こう言ったんだ。”この曲の一部になりたい。感情がとても純粋で、この曲でピアノを弾きたい” ってね。私にとってもバンドにとっても、これまでで最もクールな出来事のひとつだ」

アルバムは、ドリーミーなギター・パターンとエレガントなギター・ソロ、伸びやかな単音で終わる壮大な “It Comes” でその幕を閉じます。Cantrell にとってこの曲は、PINK FLOYD とその象徴的なギタリストである David Gilmour への感謝の念と呼応しています。
レコーディング・セッション中、Cantrell は突然ひらめき、ギターのシングル・ピックアップに顔を近づけ、”Another Brick in the Wall, Part 2″ の不朽の名セリフを叫びました。
「”肉を食わなきゃ、プリンも食えないだろ?”よく聴いてみると、この曲の最後の瞬間にそのようなボーカルがあったことがわかる。その場の雰囲気に流されて、ただ面白いと思ってギターに向かって叫んだんだ」
PINK FLOYD への愛情は深く、Gilmourが彼の本質的なギター・ヒーローだといえますが、実際に会う機会はないといいます。
「いつかあの人と2、3時間一緒に過ごしたいよ。少なくとも、2、3時間ね。私は Gilmour が大好きだ。PINK FLOYD も大好きだ。彼らは私にとってビッグ・バンドなんだ。あのテイストを出すつもりで書いたわけじゃないんだけど、自然とそうなったんだ。この曲には、私のフロイドに対する感謝の気持ちと、ちょっとした煌めきの要素が含まれていると思う。あの人たちに触れることはできない。アンタッチャブルだよ。私にとって PINK FLOYD は、常にとても視覚的なバンドだった。音楽を聴いていると、いろんな場所に連れて行ってくれるし、風景や人物を見ることができる。私はいつも彼らのそういうところが好きだった。曲作り、パフォーマンス、プロダクション・レベル、特に当時としては、とても重層的で、とても豊かで深みがあった。私は Gilmour を尊敬するギタリストのトップ5に入れているんだ」
当然、シアトルの血脈として BLACK SABBATH も Cantrell の血肉となっています。
「私が最初に聴いたサバスのアルバムは、実は “Vol. 4” で、でもそれでいいんだ。あとは “Paranoid” も完璧に近いと思う。サバスにはヘヴィネスとダークネスがあり、それは私たちのサウンドに直接影響を与えたとしてよく引き合いに出される。たしかにその血統をたどることができるし、それはシアトルの多くのバンドに言えることだと思う。
サバスはフロイドと似てとても視覚的なバンドでもあるけれど、ただもっと直感的なんだ。オジーがホラー映画のサウンドトラックを作ろうとしていたというインタビューを読んだことがある。テーマは常にかなり暗く、殺伐としていて、テーマ的にも歌詞的にもパンチが効いていたからね。Tony Iommi も私のお気に入りのギタリストの一人で、とても影響を受けたよ」

Cantrell は自身のギターリフの特徴をどう捉えているのでしょうか?
「グランジはチューニングが少しずれていて、フルベンドとは言えないリフが多い。僕の曲には、大きくベンドするリフが多いんだ。これは僕の特徴のひとつなんだ。サバスの Tony Iommi や Ace Frehley を聴いていて、そう思うようになったんだ。Frehley は大のベンダーで、僕も子供の頃は彼の大ファンだった」
デュアル・ギターのバンドが Cantrell の好みです。
「私は長年 AC/DC のファンだった。”Highway To Hell” も “Back in Black” も完璧だと思う。とても巨大で、とても衝撃的で、私にとっても、何百万人もの人々にとっても、人生のしおりのようなものだった。
奇妙なことに、ALICE IN CHAINS は彼らが経験したことをいくつか経験した。私たちはメンバーの死を経験し、続けていく決心をし、それを成功させた。私たちのバンドは、ある意味パラレルなんだ。
バンドを始めたころは、私はどんなバンドでもリズム・プレイヤーだったから、Malcom にとても共感していたし、いつか Angus のようにリードを弾きたいと思っていた。彼は驚異的なリード・プレイヤーだけど、バンドのバックボーンはリズム・ギターだといつも思っている。私が好きなバンドの多くは、デュアル・ギターのバンドだと思う。IRON MAIDEN も SCORPIONS もね。ALICE IN CHAINS を始めた当初は、本当はもう1人ギタリストが欲しかったんだけど、他のメンバーがギタリストを欲しがらなかったから、もう少し弾けるようになる必要があったんだ(笑)」
ギタリストとして、同じシアトルのあの偉人も Cantrell に大きな影響を与えました。
「Jimi Hendrix はシアトルのローカルヒーローの一人で、私たちは同じ道を歩いた。彼と同じ町の出身であることを誇りに思っていた。このバンドのごく初期の頃、私たちは墓地まで車で行き、彼の墓に行ってビールを数本くすねたりしたのを覚えている。多くの人がそうしていることも知っていた。だから、もしマリファナが少なかったとしても、墓に行けば必ずマリファナが1、2本はあったよ……私たちも何度かやったけどね!(笑)みんな、ギターのピックや時にはマリファナ全部を置いていくんだ。そして私たちはジミと一緒にいて、人々が彼の墓に置いていったマリファナを吸った。
彼は驚異的なギタリストだった。彼のバンド、あのレコードのトリオは伝説的だ。”Are You Experienced?” は、私が最初に出会った彼のアルバムだ。そして今でもベストだと思っている。彼は革新者であり、極めてユニークだった。彼は時の試練を乗り越える独自性を持っていた。同レベルのギタリストは、Eddie Van Halen しかいない」

その Van Halen は彼の恩人です。
「彼は私の友人でそう呼べたことを誇りに思っている。1990年頃、半年ほど彼らのツアーに同行したとき、彼らは私たちに最初のブレイクのきっかけを与えてくれた。
最初にファースト・アルバムを聴いたんだ。そして最初の一音から……それがどんなにマジカルだったかを覚えている。ジミヘンと同じだよ。だからふたりを引き合いに出すんだけど、彼らは時代の違う兄弟のようなものだと思うんだ。完全に唯一無二なんだ。Eddie の前には Eddie のようなサウンドを出す人はいなかった。でも、その後に彼のようなサウンドを出したり、彼の真似をしようとしたりした人は山ほどいた。
タッピング奏法をやってみたけど、全然ダメだった。あのレコードは、ギタリストになりたいと思っていた子供にとって、まるで達成不可能な目標みたいなものだった。
数年後、私たちは本当にいい友達になった。彼は新しいギターとアンプを持っていた。それを買っていいかどうか、少し安くしてもらえないかとか、そんなことを尋ねたのを覚えている。彼はこう言ったんだ “そんなのクソくらえだ、お前にやるよ!”」
Cantrell が夏のツアーで全米を回る中、”I Want Blood” で作った曲のほとんどは、”Vilified” を除いて秘匿されることになりました。90年代、ALICE IN CHAINS は次のアルバムに収録される予定の新曲をロードテストすることが度々ありましたが、それはスマートフォンが普及する前の時代だから。ファンが前夜のライヴの全編をハイビジョン映像でYouTubeにアップする時代ではありませんでした。
彼らが “Would?” や “Rooster” のような曲をテストしていた当時は、時折海賊がテープレコーダーをショーに忍び込ませ、サウンドボードに接続する以外は問題ではなかったのです。そのような傷だらけの録音を聴くのは、いずれにせよ選ばれた一部の人たちだったから。
「一般的に、私は最初にその曲のベスト・ヴァージョンを聴いてもらいたいんだ。それから、ビデオとかが氾濫するのはいいんだ。やり方が変わってきたし、おそらく多くの他のアーティストもそうだろう」

Cantrell は後ろを振り返ることにあまり時間を費やさないといいますがしかし、このギタリストは自分自身を音楽、ロックの連続体の一部だと考えています。
「私はバトンを手渡されたコミュニティの一員なんだ。そして、そのバトンを他の人々、次の世代のミュージシャンに渡すことができ、彼らがそのバトンを受け取り、自分のレースを走るのを見ることができた。とてもクールなことだよ。崇高な努力だよ」
昨年4月のシック・ニュー・ワールドのギグの後、具体的な計画がないとしても、ALICE IN CHAINS が彼の次なる舞台なのは確かでしょう。
「いつかはまたロックに戻るつもりだよ。それがいつになるのか正確にはわからないけど、適切な機会が訪れたり、”そうだ、やろう” と決めたら、やるつもりだよ。両方できるのはいいことだ。私の経歴を見れば、私のハートがどこにあるかわかるよ。私はアリスに生き、アリスを食べ、アリスを愛している。バンドにいることが大好きなんだ。でも、たまには船から出てひとりで泳ぐのもいい。それは健康的なことだ。ボートはいつでもすぐそこにあるし、泳いで戻ることもできる。それは私たち全員にとって変わらないことだ」
ソロ・キャリアを模索することは、ここ数年、アリスが現在進行形で取り組んでいるように、刺激的な場所であったと彼は言います。
「自分の直感に従うこと、自分らしくあること。この2つを実行すれば、勝っても負けてもうまくいく。それが私たちのモットー。何をするにしても、この2つから始めるようにしている。自分の直感を信じ、自分に賭けるんだ」


参考文献: REVOLVER :JERRY CANTRELL: “YOU CAN LOOK AT MY HISTORY AND YOU KNOW WHERE MY F**KIN’ HEART LIES”

KERRANG!:“It’s some of the best work I’ve done”: Jerry Cantrell takes us inside his new solo album I Want Blood

Trace The Bloodline: Jerry Cantrell Of Alice In Chains’ Favourite Albums

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DIAMOND CONSTRUCT : ANGEL KILLER ZERO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KYNAN GROUNDWATER OF DIAMOND CONSTRUCT !!

“Bands Like Korn And Linkin Park Blend New Things Together So Well. We’ve Always Looked Up To The Nu-metal Genre For Being Something Truly Unique. That’s What We Want To Do In a Modern Way.”

DISC REVIEW “ANGEL KILLER ZERO”

「KORN や LINKIN PARK のようなバンドは、当時の新しいものをうまく融合させていた。だからこそ、僕たちは Nu-metal というジャンルが本当にユニークなものであることを常に尊敬してきたんだ。僕たちは、ああいうことを今の現代的なやり方でやりたいんだ。誰かが僕らの音楽を聴いたときに、”あれは DIAMOND CONSTRUCT だ!”と言ってもらえるような、新しくてすぐ認識できるものを作りたいんだよ」
CODE ORANGE, VEIN, SPIRITBOX, LOATHE, VENDED, TETRARCH といった新鋭の登場、 MADVAYNE や SATAIC-X の復活、そして SLIPKNOT や KORN, DEFTONES の奮闘によって Nu-metal は再びメタルのトレンドへと返り咲いてきました。興味深いのは、あの奇妙で雑多な電子的重量感が、近年メタルの原動力となった “ノイズ” と絶妙な核融合を起こしていることでしょう。オーストラリアの DIAMOND CONSTRUCT は、そのノイズと Nu-metal の核融合を使って、メタルコアの原石をダイヤモンドの輝きへと磨き上げました。
「メタルコアというジャンルが非常に規則的で、特定のサウンドやリフの書き方があるせいで門戸が閉ざされているようだということには、僕たちもまったく同意見だよ。だからこそ、僕たちは常にオリジナリティを大切にしてきた。DIAMOND CONSTRUCT を他の誰かのように聴かせたくない。だから、他のバンドが残してくれたサウンドから影響を受けつつも、自らのサウンドを拡大させようとベストを尽くしているんだ」
実際、DIAMOND CONSTRUCT は、ヘヴィ・ミュージックの暗闇に多様でエレクトロニックな光の華を咲かせることに成功しています。それは、メタルコアという箱の鍵を解き放ち、”ニュー・メタルコア” の潮流を押し進めることにもつながりました。だからこそ彼らは、SPIRITBOX, THOUSAND BELOW, そして HARPER といった印象的なバンドを擁するあの Pale Chord における最初のオーストラリア人ロースターとなることに成功したのです。
そして、EMMURE, ALPHA WOLF, DEALER を源流とし、DIAMOND CONSTRUCT や DARKO US を巻きこんで大きな津波へと成長したその波は、日本にまで到達して PALEDUSK, PROMPTS のようなバンドが海を渡る力にもなったのです。
「Braden はとてもユニークな人だ。時代の流れに逆らうのが好きで、期待されることをするのが嫌いなんだ。Wes Borland, Josh Travis, Jason Richardson のようなギタリストへの愛が、彼をペダル・ダンスというニッチなテクニックを見つけるまでに成長させたんだ。彼は、自分が最もシュレッディでテクニカルなギタリストではないかもしれないことを知っているからこそ、他の多くの人ができないことをやっているんだ。僕たちは、全員がギターという楽器の限界を押し広げるのが好きなんだ」
そんなトレンドを “開拓” した彼らが世界から注目を集めた一因が、ギタリスト Braden Groundwater の “ペダル・ダンス” でした。シュレッドとテクニックが溢れるインターネットの世界で、DIAMOND CONSTRUCT は楽器の扱いにおいても常識にとらわれず、ノイズと色彩の新たな潮流を生み出していきます。Braden は驚異的スピードや奇抜なテクニック以外にも、ギターには様々な可能性があることをペダルのタップダンスで巧みに証明していきました。白には200色ありますが、Braden のサウンドはきっとそれ以上に万華鏡の可能性を秘めています。
「アニメやゲームが持つオーラといかにマッチしているかということに、多くの共通点やつながりがあることに気づいたんだ。個人的な成長や失恋、恋愛、グループとの境界を乗り越える物語。それがこのアルバムのテーマだ。ファイナル・ファンタジーのようなゲームがもたらすストーリーに似ているよね。だからそれと連動させるために、ゲームから抜粋した声でインタールードを書いたんだ。僕たちが作った音楽とテーマにマッチしたビジュアルを表現することは、すべて理にかなっていたんだ」
そうして生み出されたダイヤのサウンドは、”Angel Killer Zero” で日本の文化と見事に融合を果たします。日本のアニメやゲームは、孤独感、失恋、幼少期のトラウマ、そして目を見張るような成長という、人生をナビゲートするようなストーリーで世界を魅了してきました。誰もが経験するような物語だからこそ、彼らはそのテーマに感化され、メタルと共に開拓することを心に誓いました。そうした普遍的で、しかし特別な勇気をもらえるようなテーマは、SNS も駆使して世界中多くの人に自身の音楽を届けたいと願う今の彼らにピッタリだったのです。
今回弊誌では、ボーカリスト Kynan Groundwater にインタビューを行うことができました。「最近、僕たちは、本当に注目されたり、注目を浴びるためには、現代のソーシャル・メディアを把握しなければならないことに気づいたんだ。それは、音楽と同じくらい重要なことなんだってね。だから僕たちは、その世界を学び、それに取り組み、より上手になり、より一貫したものにすることを自分たちに課したんだよ」 Wes Borland に影響を受けたギターっていいね。どうぞ!!

DIAMOND CONSTRUCT “ANGEL KILLER ZERO” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KANONENFIEBER : DIE URKATASTROPHE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NOISE OF KANONENFIEBER !!

“The Topic Of War In The Metal Genre Is Often Handled In a Provocative And Glorifying Way. We Wanted To Create a Contrast To That And Develop a Project That Depicts War In Its Worst Aspects, Serving As a Warning.”

DISC REVIEW “DIE URKATASTROPHE”

「メタル・ジャンルにおける戦争の話題は、しばしば挑発的で美化された方法で扱われているという点で意見が一致した。私たちはそれとは対照的に、戦争を最悪の側面から描き、警告の役割を果たすようなプロジェクトを展開したかった。戦争における苦しみと死は時を経ても変わらないものだから、今日の世界の緊張に照らしても特に適切なテーマだと思ったんだ」
例えば、SABATON や ACCEPT のように戦争の英雄譚を語るメタル・バンドは大勢います。それはきっと、メタルならではの高揚感や攻撃性が、勇壮な勝利の物語と素晴らしくシンクロするからでしょう。
しかし、彼らの描く戦争はあくまでファンタジー。ファンタジーだからこそ、酔いしれることができます。実際の戦争にあるのは、栄光ではなく悲惨、殺人、残酷、無慈悲、抑圧に理性の喪失だけ。誰もが命を失い、魂を失い、人間性を失う。だからこそ、戦争の狂気を知るものが少なくなった時代に、KANONENFIEBER はその狂気を思い出させようとしているのです。
「KANONENFIEBER の真正性は、大衆に理解されやすいことよりも私にとって重要なことだから。私の英語力では、兵士たちのスラングを正確に伝えることはできないんだ。そして、もうひとつの重要な要素は、私が扱う手紙や文書がドイツ語で書かれていることだ。私はそうした兵士の手紙や文書をもとに歌詞を書いているし、多くの文章を直接歌詞に取り入れているからね。だから、KANONENFIEBER にドイツ語を使うのは論理的な選択だった」
KANONENFIEBER がその “教育” や “警鐘” の舞台に第一次世界大戦を選んだのは、そこが産業化された大量殺戮の出発点だったから。そして、”名もなき” 市井の人や一兵卒があまりにも多く、その命や魂を削り取られる地獄のはじまりだったから。
だからこそ、彼らは戦争の英雄、戦争を美化するような将校やスナイパーではなく、数字や統計で抽象的に描かれてきた名もなき弱者を主人公に選びました。顔のない被害者たちに顔を与える音楽。そのために KANONENFIEBER の心臓 Noise は、当時の残された手紙や文献、兵士の報告書をひとつひとつ紐解き、心を通わせ、バンドの歌詞へと取り込んでいきました。
そうして、”Die Urkatastrophe” “原初の災難” と名付けられたアルバムには、採掘チームが戦線の地下にトンネルを掘り進めた苦難や(”Der Maulwurf”)や、オーストリア=ハンガリーがロシア軍からリヴィウ/レンベルクを奪還した地獄の戦い(”Lviv zu Lemberg”)といった真実の戦争が描かれることとなりました。
「デスメタルとブラックメタルは、私たちが選んだ戦争を最悪の側面から描くというテーマにとって最高の音楽的出口だ。これほど危険で抑圧的なサウンドでありながら、同時に雰囲気があってメランコリックなジャンルは他にないと思う。それに、私はこうしたジャンルにいると単純に落ち着くというのもあるね」
そしてそのストーリーは、凶悪さと物悲しさを併せ持つ、ほとんど狂おしいほどのエネルギー、メタルというエネルギーによって紡がれていきます。Noise のカミソリのような叫びや地を這う咆哮は兵士や市民の恐怖を代弁し、パンツァーファウストのように地鳴りをあげるトレモロに夕闇の荘厳とメランコリーが注がれていきます。そうして流血、死、絶望にまつわる物語の糸は戦場エフェクトや話し言葉の断片によって結ばれ、アルバム全体を有機的にあの暗黒の1910年代へと誘っていきます。
我々はこの狂気の嵐の中から、当時の戦災者の言葉から、戦争の非道、虚しさ、地獄を読み取らなければなりません。安全な場所から大きな声で勇ましい言葉を吐く英雄まがいほどすぐ逃げる。彼らは決して自分の体は張りません。だからこそ、KANONENFIEBER は匿名性を貫き、顔の見えない負けヒーローを演じ続けるのです。
今回弊誌では、Noise にインタビューを行うことができました。「私の家から車で10時間もかからないところで、戦争が起こっている。過去の領土主張をめぐって、人々が残忍にも他人を殺しているんだ。私には理解できない。私は政治的な教養があるわけではないし、政治的な対立について議論しようとは思わない。しかし、何事も暴力が解決策であってはならないと信じている。すべては言葉を交わすことと、譲り合いによって解決できるはずなんだ」ANGRY METAL GUY で滅多に出ない満点を獲得。どうぞ!!

KANONENFIEBER “DIE URKATASTROPHE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ZEMETH : MIREN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JUNYA OF ZEMETH !!

“When I Realized That What I Was Intoxicated With Was Probably Not Metal, But Melody Itself, There Was Almost No Music That I Didn’t Like.”

DISC REVIEW “MIREN”

「こんな闇鍋みたいなアルバムがあってもいいんじゃないかという気持ちで “Miren” を仕上げまして、本当にメタルを自称していいのか…?と疑問に思うような曲もありつつ、これも新時代のメタルとして世間に受け入れて頂きたい気持ちもあります。個人的に何を持って”メタル”とするのかはジャンルよりもマインドの方が大切だと思っております。演歌をメタルという人も居るわけですし、メタルとは非常に深い概念だと思いますね」
何をもって “メタル” とするか。それはもしかしたら、フェルマーの定理を解き明かすよりも難解な問いかもしれません。しかし少なくとも、メタルに対する愛情、情熱、そして知識を持つものならば、誰でもその定理へとたどり着くための挑戦権を得られるはずです。北海道を拠点とする JUNYA は、まるでピタゴラスのようにその3平方を自在に操り、メタルの定理を新時代へと誘います。
「閉鎖的なコミュニティで”わかってる”音楽を披露するのも楽しいかもしれませんが、とにかく誰でもいいから僕の音楽が届いて欲しいという思いが一番強いです。ライブの感動や音楽を通した人の温かみを知らずに北海道の辺境で生きてきた自分が初めて音楽に目覚めてイヤホンやスピーカーを通して感じた感動を誰かにもZemethで味わってほしいと思っています。メロディが持つ力というものは自分の中で何事にも代え難いものなので、それを皆様にも体感して頂く為にもこれからもメタルというマインドを携え色々な挑戦をしていきたいと思っております」
JUNYA がメタルの定理を新たな領域へと誘うのは、ひとりでも多くのリスナーに自分の魂ともいえる音楽を届けたいから。何もない僻地で暮らしてきた彼にとって、音楽の神秘と驚異はイヤホンとスピーカーからのみもたらされたもの。しかし、だからこそ、JUNYA はその冷たい機械を介して音楽がどれほどの感動や温もりを届けられるのか、孤独の隙間を埋められるのかを骨身に沁みて知っています。
もはや、ZEMETH の音楽を聴くために “メタル” の門を開ける必要はありません。メロディに酔いしれていたら、それがメタルだった。そんな感覚で世界は ZEMETH の虜になっていくでしょう。
「メタルが無いっていうのはメタラーとしてどうなんだとは思いますが、Falcom、村下孝蔵、ZABADAKが僕の中の3大人生を変えたアーティストなんです。やっぱり世の中のアーティストはもっと音楽の話をするべきだと思いました。ルーツや影響を提示してこそ、その人の音楽の真意が見えるのだと思います。だって自撮りとか音楽関係無い自分語りばっか上げて音楽の話をしないアーティストって中身が見えなくて何考えてるかまるでわからない!僕は自分が生んだ楽曲が生まれた過程は大公開したいですし、僕自身の人となりよりも音楽的な部分を楽しんでほしいです」
アルバムには、イースを中心としたファルコム・ミュージック、スパニッシュ・メタル、ジャニーズ、つんく、ボカロ、アニソン、インフルエンサーに歌謡曲と実にさまざまな要素が飛び交いますが、それでも貫かれるのはメロデスの心臓ともいえる慟哭の旋律。JUNYA はその精製に誰よりも自信があるからこそ、何の “Miren” もなくジャンルの壁を壊していきます。
“音楽の話をしよう”。JUNYA のその言葉は明らかに、音楽を伝えるために音楽以上に重要となってしまった SNS や “バズ” に対する強烈なアンチテーゼでしょう。そして、彼には中身を明け透けにしてもなお、誰にも真似できない旋律の魔術師たる誇りと信念、そして揺るがぬ覚悟が備わっています。
“あくまでコンポーザー”。ボーカルが入っていても、インストのような感覚が強い ZEMETH の音楽。それはきっと、すべてのパート、すべてのトーン、すべてのリズム、すべての音欠片がただメロディのために、楽曲のために働いているからでしょう。
“音楽をファッション感覚で聴く人って音楽にリスペクトが無い気がしてそれこそシャバいとは思うのですが、本当~~に正直に言うと僕はチャラい音楽を聴いてるような女性が好きです!!” それはそう。それはそうなんですが、孤独や僻地の閉塞感を埋めるのは決してチャラい音楽を聴いているような女性だけではないことを、実は JUNYA 自らが証明し、誰かの希望となり続けているのです。
今回弊誌では、JUNYA にインタビューを行うことができました。「僕が心酔しているのは恐らくメタルではなくメロディそのものなんだと気づいた頃から、苦手な音楽はあれど嫌いな音楽というものはほとんどなくなりました」 “PURE IGNORANCE” で一瞬静寂が訪れ、チャイムが鳴り響き、そして爆発する瞬間ね。これが才能よ。どうぞ!!

ZEMETH “MIREN” : 10/10

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