EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN MATOS OF ABIOTIC !!
“I Was Doing Some Reading And Fell In Love With The Concept Of Ikigai. In These Challenging Times, I Know a Lot Of Us Are Struggling With Finding Our Reason For Being, And I Wanted To Write an Album About That Struggle, Pain, And Perseverance.”
DISC REVIEW “IKIGAI”
「日本についての本を読んでいたら、”Ikigai” というコンセプトに惚れ込んでしまったんだよ。この厳しい時代に、僕たちの多くは自分の存在理由を見つけ出すのに苦労していると思う。僕はそんな苦労や痛み、忍耐についてのアルバムを作りたいと思ったんだよね」
2010年の結成以来、フロリダで最も急速に成長を遂げたデスコア/テクデスのハリケーン、ABIOTIC。5年間の活動休止で彼らは内面的にも音楽的にも遥かな進化と成熟を遂げ、彼らの存在理由、”生き甲斐” を叩きつけてみせました。
「それぞれの楽曲は、生き甲斐というコンセプトを異なるアプローチで表現している。5年の歳月を経て、宇宙やエイリアンについての作品は今でももちろん好きだけど、生き続ける理由を見つけるのに苦労するような時代に、感じられるもの、親近感を持てるものを書きたいと思ったんだ」
コロナ・ウィルスが日常を、社会を、そして音楽業界全体を破壊し続けていることは言うまでもありません。人の心まで侵される現代の恐怖の中で、ABIOTIC が復活を遂げたのは決して偶然ではないでしょう。デビュー作の “Symbiosis” や、プログレッシブ・スペース・オデッセイ “Casuistry” で宇宙や地球外生命体を探求した彼らは、遂に地上へと降り立ち、人類の現状を憂い、人と繋がりながら悲しみ嘆き、共感し、空想的なものよりも優先すべきテーマを見つけました。
「あれほど才能のあるバンドが多数所属するレーベルの一員になれて嬉しいね。アーティスト自身が運営するこのレーベルは、まるで家族のように感じられるんだ」
Metal Blade から Artisan Era へのレーベルの移動、SCALE THE SUMMIT の Killian Duarteとドラマーでありエンジニアでもある Anthony Simone を含む再編成されたラインナップ、さらに THE BLACK DAHLIA MURDER, ARCHSPIRE, ENTHEOS, FALLUJAH といった錚々たるバンドからの錚々たるゲスト陣を見れば、このバンドがメタル世界における “Symbiosis” “共生” を実現していることに気づくでしょう。そして、一欠片の獰猛も損なうことなく、プログレッシブ・ジャジーな奇譚と和の旋律が “共生” する9通りの “Ikigai” は、これまで以上に共感を誘う傑作に違いありません。
和の心、メロディー、情景、情緒を存分に取り入れた開幕の “Natsukashii”, “Ikigai” は、さながらデス・メタルで綴る日本の歴史絵巻。正確無比なテクデスの猛威に浸透する大和の雅は、リスナーの心身に映像を投影する新生 ABIOTIC の哲学を承知しています。
「不寛容さに直面しているトランスジェンダーとしての人生、依存症患者としての人生、メンタルヘルスと闘っている虐待を受けた子供としての人生、気候変動によって住処が破壊されたフクロウとしての人生など、無限の人生は苦悩しながらも、その苦悩に耐えているんだよね。そして、16世紀の日本の野山で息を引き取る前に、彼はその生のつながりに自分の目的を見出すわけさ」
アートワークの侍は、”Ikigai” で切腹を遂げる今際の際に、21世紀におけるさまざまな人生の苦悩を走馬灯のように目撃し、共感します。
トランスフォビアによる虐待と自死をテーマとしたリード・シングル “Souvenir of Skin” のように、侍が目にする苦痛はすべてが21世紀のもの。切腹の果てに訪れるやるせない未来は、重さを極めながら記憶に残る ABIOTIC の哀しみと濃密な二重奏を描いていきます。さながら、Travis Bartosek の重低咆哮と、TBDM の Trevor の雄叫びがシンクロするように。
FALLUJAH の Scott Carstairs が嗚咽と希望を壮大なスケールのギターソロで表現し、バンドがソングライティングの粋を尽くして GORGUTS の異形やメロディーを重ねる “Horadric Cube” は傑出した瞬間ですし、CYNIC の宇宙と諸行無常が ex-THE CONTORTIONIST の Jonathan Carpenter の美声によって無限に広がる “Grief Eater, Tear Drinker” はアルバムの痛みそのものと言えるでしょう。
重厚なストリングスに導かれる “Gyokusai” で侍は生きる意味を見出します。ただし、すべては遅すぎました。死はもう始まっていました。辿り着いたのは永遠の休息。きっとリスナーには、手遅れになる前に、何かを見つけて欲しいと願いながら。
今回弊誌では、ギタリスト John Matos にインタビューを行うことができました。「アルバムの制作とアートワークは “Ghost of Tsushima” が発売される前に完了していたんだけど、人々が僕たちのアートワークと音楽をあの最高のゲームに関連付けてくれるのは素晴らしいことだよね」 どうぞ!!
“Now It’s The Only Way I Play Music. I Feel Naked When I Only Have Just One Of The Guitar Or The Keyboard On Me. It’s How I Think And How I Express Myself The Best Musically.”
DISC REVIEW “PSYCHOSOMATIC”
「ギターとキーボード、どちらか片方だけを持っていると半裸になったような気分になるんだ。それが僕の考え方で、音楽的に最高の自分を表現する方法なんだよね。」
ダブルネックの16弦ギター、モンゴルのホーミーと伝統楽器、アステカの笛に骨のマイク。弊誌ではこれまで、奇想天外なアイデアとメタルの融合をいくつも報じてきました。
どんな突飛な発想とも真摯に向き合うメタルの包容力は、そこから驚くほどドラマティックで獰猛なキメラを多数輩出してきたのです。馬鹿らしさを馬鹿らしさだけで終わらせないメタルの神秘。それでも、ギターとキーボードを同時に演奏という曲芸じみた異能に挑戦する戦士は Gabriel Guardian がはじめてでしょう。
「この2つの楽器を組み合わせることで多くのことが実現できる。音楽的に多くの表現ができるし、そこに無限の可能性を秘めていることも気に入っているよ。」
実際、Gabriel は例えば Alexi Laiho と Janne Wirman の役割を一人で同時にこなすことを究極の目標としている節があります。そのためには、もちろん、基本的にはギターをピッキングなし左手のタップだけでプレイする必要がありますし、鍵盤は右手だけ。ただし、その欠点を補ってあまりある視覚的なインパクト、そしてユニゾンやコード、リズミックなアイデアの広がりがあることは明らかでしょう。他人と意思疎通することなく、自由自在に掛け合いができるのですから。
「僕は昔からメタルにおけるクラシック音楽が好きだったんだ。若い頃はクラシックを聴いていたけど、それからは正直あまり聴いていなかった。だからクラシックの影響というよりも、自分の曲にクラシックの影響を取り入れているメタルバンドから多くの影響を受けたんだ。」
“Read Between The Line” を聴けば、Gabriel の “ギターボード” という発想がメタルとクラッシックのさらなる融合に一役買っていることに気づくはずです。彼はクラシカルなメロディーをその異能で立体的に配置し、構成する技能に優れていますがクラッシックの教育は受けていません。しかしだからこそ、難解複雑な理論よりも、メタル者が欲する “クラシカル” の海へと音楽を没入させることが可能なのでしょう。
「僕たちの曲はパワーメタルで、クラシカルなシュレッドギター/キーを使っているけど、ドラマーとベーシストのリズムセクションはモダンでテクニカルなメタルに傾倒している。この融合が素晴らしくて、このジャンルの名前を思いついた人をまだ見たことがない。」
シンガロングの麻薬 “Phobia” は象徴的ですが、リズムセクションが牽引する djenty なリフワークとパワーメタルの婚姻も想像以上に鮮烈な化学反応をもたらします。フラスコには、メキシコ、ブラジル、カナダ、テキサスの多様な背景、文化がしたたり、メタル革命を指標する “スーパーメタル” が誕生しました。間違いなく、OUTWORLD や HEAVEN’S GUARDIAN で知られる Carlos Zema の強靭な歌声は革命のハイパーウェポンでしょう。
「今回のパンデミックで世界中の人々が受けた心身への影響を目の当たりにして、このアルバムのテーマが思い浮かんだ。その結果、ソリッドでヘヴィで革新的なアルバムになった。今、世界で起きていることと密接に関連している。」
“Psychosomatic”、心身症と名付けられたアルバムは、その名の通りパンデミックが引き起こしたロックダウンや自己隔離といったストレスにより、心や身体に異常をきたす非日常の2020年代をビッグテーマとしています。一時は “Candlelight” 蝋燭の灯で悲しみに沈んだアルバムは、それでも “New Day Rising” の希望に満ちたプログレッシブなパワーメタルで新たな日々の到来を焦がれるのです。
今回弊誌では、Gabriel Guardian, Carlos Zema にインタビューを行うことが出来ました。「欠点は、2つの楽器を常に練習しなければならないこと。2つの楽器を使いこなすために、他のミュージシャンの2倍の練習をしなければならないんだ。2つの楽器をセットアップして、ケアをしなければならないのもめんどうだよね。」 不死の守護者によるメタル革命のはじまり。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JACKIE PEREZ GRATZ OF GRAYCEON !!
“I Made a Pact To Myself That If There Are No Women On The Bill I Won’t Go To The Show, Or If I Am The Only Woman On the Stage, I Won’t Accept The Gig. In Doing This, It Makes The Booking Agents Aware That If They Want Grayceon They Better Get At Least One Other Band That Has a Female In It.”
DISC REVIEW “MOTHERS WEAVERS VULTURES”
「GRAYCEON は決してチェロのことを一番に考えたことがないのよ。チェロという楽器のために特別に何かを書いたり、仕立てたりしているわけではないし、バンドにチェロがいるという事実に基づいて作曲を決定しているわけでもないの。」
卓越したチェロ奏者であること。女性であること。親であること。メタル世界にとってこれまで決して当たり前でなかった物事は、GRAYCEON の中ではすでに当たり前として捉えられています。常識を超えて大きな感情を呼び起こすバンドのアプローチは、そうして本来あるべき姿をシーンへと自然体で伝えていくのです。
「ヘヴィーな音楽を弾きたいと思うようになって、少しの間ベースを弾いてみたんだけど、頭の中で聞こえていたものが弾けなくてイライラするようになったのね。ベースを置いてチェロを手に取ることもよくあったわ。そうしてある時点で、自分の弾き方をよく知っている楽器で、もっと重い音楽を弾くことを阻むものは何もないだろうと思ったわけなの。」
NEUROSIS や TODAY IS THE DAY との共演、AMBER ASYLUM, GIANT SQUID と百戦錬磨、クラッシックの教育を受けた Jackie Perez Gratz にしても、当初常識という固定観念は強固な壁でした。愛器のチェロを一度は捨ててベースへと持ちかえた過去、親となることでツアーを諦めた過去、ボーイズクラブに阻害された過去。GRAYCEON はそんな不自然と不条理を自然へと回帰させるプロジェクトです。
「自然こそが世界の魔法であり、私たちは目に見えない神ではなく、地球を崇拝すべきだということについて書かれているのよ。」
かつて Ronnie James Dio が唱えた魔法の呪文は、半世紀の時を経て “Mothers Weavers Vultures” へと形を変えて受け継がれました。「天国も地獄もない」Jackie は “The Lucky Ones” でそう何度も歌い上げます。すべてはまやかしの人工物。痛みや過ちを消し去る、神も死後の世界も存在しない。存在するのは、ただ地球のみ。自然の中で有限の存在として生きる本質的な真実、摂理の魔法。
“Diablo Wind” でカリフォルニアの山火事を憂い自然破壊に怒るのも、”Rock Steady” でパートナーへの愛情を募らせるのも、すべては有限の尊さを伝えるため。ドゥームの暗闇やスラッジの獰猛はプログフォークの神秘と時に反目し、時に融解していきます。それはさながら正義の怒りと愛の気高さを投影しているようでもあり、誰にでも訪れる確実な死が愛の価値を高めるという本質に言葉という歌詞と、チェロという音波の両面から迫っているようにも思えるのです。
生々しくも有機的な Jack Shirley のプロダクション、Zack の印象的なフィルインも不可欠。そうして、NEUROSIS の実験と MASTODON の野心、SUBROSA の陰鬱に Yo-Yo Ma の旋律を宿したメビウスのコンビネーションはその加速度を増していくのです。
今回弊誌では、Jackie Perez Gratz にインタビューを行うことができました。「私は、もし女性が出演していなければショウには行かないし、もし私がショウの唯一の女性であれば(少なくとも3つのバンドが出演している内の)ギグを受けないと心に誓っているの。そうすることで、ブッキングエージェントにもし GRAYCEON が欲しいなら、少なくとも女性が出演している他のバンドを1組は確保した方がいいと認識させることができるでしょ。それに、彼らが女性が出演していればより多くの女性がライヴに足を運ぶとことを知ることで、他のライヴのことも考えることになる。だから、ボーイズクラブの解体はブッキング、そして会場やエージェントがどのようなアプローチで観客を呼び込むかということから始まると思っているの。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HUNTER HUNT-HENDRIX OF LITURGY !!
“I Hope That The Metal Scene Learns To Have Less Of The ‘Boys Club’ Aspect And Hold Space For More Alterity. Personally I See That As The Leading Edge Of Originality For Metal”
DISC REVIEW “ORIGIN OF THE ALIMONIES”
「私は、人類の歴史が展開し始める要因となった神の中にはメタフィジカル (人間の理解や物理を超えた) な不均衡があり、その不均衡を回復するためには、解放的な政治や実験的な芸術が重要な役割を果たすと考えているのよ。」
昨年、”H.A.Q.Q.” でブラックメタルの地図に新大陸を記載した LITURGY。日本の雅楽までを飲み込み、実験と理想を両立させた音楽、芸術、哲学が三位一体のレコードは明らかにメタルの境界線を大きく押し広げました。そうして自らを “解放” しさらなる自由を得た首謀者 Hunter Hunt-Hendrix にとって、次なる超越的ブラックメタルのテーマはクラシックとグリッチを織り交ぜたメタルオペラでした。
「メタルシーンには、”ボーイズクラブ” 的な側面を減らして、もっと変幻自在になってほしいと思っているの。個人的には、それがメタルにとってのオリジナリティの最先端だと思っているから。」
LITURGY は、シンガー、ソングライター、作曲家、哲学者、そして先駆者 Hunter Hunt-Hendrixのプロジェクト。”H.A.Q.Q.” の成功の後、Hunter は様々な葛藤を乗り越え自らがトランスジェンダーであることを公表します。
体は男性、心は女性。彼女の作品の哲学的な性質を考えれば、この勇気ある公表がボーカルとアレンジメントの両方を通して、より深く、より生々しい感情的サウンドを喚起することは明らかでした。
「LITURGY の音楽には、いつもたくさんの愛、寛容さ、誠実さがある。だからといって、それがそのまま “女性的” ってことなのかしら? そう定義するのは、あまりにも堅苦しいような気がするわね。でも、私が個人的にそういった感情にアクセスして表現するときは、それは私にとって女性的なものだと感じているんだけどね。」
性別の移行と同時に、インストゥルメンタルだった万物の起源へと誘うオペラはその神話を語る声を得ました。それはすべて、この物語の主人公が SIHEYMN という女性だったから。言葉だけでも、音楽だけでも伝えられない彼女のメタフィジカルな理想は、そうして女性性を色濃くしながら “Origin of the Alimonies” へと昇華されることとなったのです。描かれるはトラウマティックな愛によって引き裂かれた2つの神の原理 OIOION と SIHEYMN の尊き神話。
「私が Messiaen について愛していることの一つは、彼が前衛的な作曲家であると同時に、私と同じようにキリスト教徒であるということなの。この二つの側面は、私が自分の作品の中で定義し、継続しようとしている “The Ark Work” の繋がりにとって重要なものだから。」
グリッチなシンセで幕を開けた “H.A.Q.Q.” とは対照的に、”Origin of the Alimonies” はフルートの孤高が導きの灯火。フランスの現代音楽作曲家でオルガニスト Olivier Messiaen に薫陶を受けたアルバムは、ヴァイオリン、トランペット、ハープを不穏に誘い、バーストビートのラウドな宇宙と結合することで、2020年代のチェンバーメタルオペラを提示することに成功したのです。
もちろん、”Lonely OIOION” を聴けば、圧倒的なバンドパフォーマンスの不変に今も身を委ねることが可能です。それでも、グリッチやオーケストレーションとのセンセーショナルな婚約に始まり、千変万化なトラップやフリージャズのビート、”The Fall of SIHEYMN” に降臨するマイクロトーナルの絶景、Messiaen 由来の現代音楽のリズムと不協和を設計図とする “Apparition of the Eternal Church” の叙事詩まで、37分すべてが明らかにブラックメタルを超えた芸術作品の域までこのオペラを高めています。
Hunter はかつて、このアルバムで自身のリスナーは大きく減るだろうと予言しました。しかし、作品を締めくくる “The Armistice” の美しき混沌に身を委ねれば、彼女の予言がいかに的外れであったか伝わるはずです。
複雑なリズムのクラスター、ポリフォニー、そして不協和音。常識を覆す斬新なアイデアと、原始的な人間の起源を描いたことによる初演の混乱。そうこれは21世紀のストラヴィンスキー、春の祭典なのかもしれませんね。もちろん、バレーのダンサーは半狂乱でしかし軽やかにモッシュピットで踊ります。ゆえに現在制作中という、アルバムを投影した映像作品も楽しみですね。
今回弊誌では、Hunter Hunt-Hendrix にインタビューを行うことができました。「もちろん、男らしさが悪いわけではないし、私はこれからも男らしさが常にメタルを支配していくと確信しているの。それは私にとって別に構わないのよ。」2度目の登場。どうぞ!!
“I Have Used Raw Meat In a Lot Of Pieces For a Number Of Years. It Seems To Evoke Both a Beautiful Yet Uncomfortable Reaction Which I Am Attracted To. I Think Its a Wonderful Medium To Work With.”
DISC REVIEW “ENJOY YOURSELF”
「俺は何年もの間、多くの作品に生肉を使用してきた。美しいけれど不快な反応も、両方を呼び起こすようだ。だからこそ魅了されているんだが。この作品はその2つが共に喚起される、素晴らしい触媒だと思う」
かつては固体だった肉の塊が、次にドロドロの液体になり、それから再びほとんど固体になったものが合体して、床の上で蠢き、目が皮膚の表面に浮かんで動き回る、そんなジョン・カーペンター 「遊星からの物体X」 のように気が遠くなるようなイメージを喚起させる「溶けた死体」のインパクト。
そのバンド名を体現するように、彼らは自らを「多様なアートを徐々にブレンドしたり、一つの塊にまとめたりすること。」と定義しました。
「David Lynch を挙げてくれて嬉しいね。意図的ではないにせよ、リンチの視覚的なテーマをいくつか活用していると思いたいね。無意識のうちに忍び込んでいるように思えるね。」
ただ、ミュージシャンと記すだけでは、MELTED BODIES のすべてを表すことは不可能です。生肉の造形でアートワークを描きグロテスクの中に美しさを挿入しながら、当たり前のように資本主義の文化に染み付いた大量消費の意味を問い、”Ad People” の MV では、インターネットの力を蒸留し、毎日提供されるSNSの自我と自己嫌悪をスクリーンでリスナーに反射させてみせるのですから。猟奇集団の目的は “魅せること” と “混乱させること”。
「思うに俺たちがいかに一般的で表面的なプラスチックになりつつあるかということだよね。特にソーシャルメディアを介して、同僚や知人、さらには家族に自分自身を提示するときはね。」
あるべき姿を失ったドロドロの死体にとって、世界に根付く陳腐で愚かなな常識を疑うことなど造作もありません。女性が警官たちを次々と家に招き入れ食べてしまう “Eat Cops” で、マイノリティの人々に対する国家による絶え間ない暴力をジョークに隠喩し、”Funny Commercials (And the Five Week Migraine) ではポップなパーティーキャノンで医療保険の欺瞞を叫び、さらに “The Abbot Kinney Pedophiles” では笑い話の中で 「金持ちや甘やかされた奴らの喉を切り裂け!」と目まぐるしい歌唱でアジテート。
すべての営利目的で表面的で偽善的な地獄絵図を、皮肉りながら笑い飛ばすのが彼らのやり方。そうしてキャッチーな罠でリスナーの心に疑念を抱かせるのです。
「1つ言えるのは、消費主義、後期資本主義といった表面的なものをテーマにした作品の多くは、カリフォルニアを中心とした、少なくともアメリカを中心としたものであることは間違いないと思う。」
その噛みつくようなしかし明るさを内包した音楽の塊には、世界で最も多様でエリートとサブカルチャーが蔓延るカリフォルニアという出自が少なからず影響しています。音楽的に、同郷の SYSTEM OF A DOWN や FAITH NO MORE の Mike Patton と比較されることの多い彼らですが、皮肉の中にパーティーを織り込む “Enjoy Yourself” の精神は特別LAの風景を投影しているようにも思えます。
“The Rat” が象徴するように、シンセサイザーのカラフルを武器にカリフォルニアの先達を咀嚼したオルタナティブとノイズの化け物は、そうして偽の幸福や不条理をパーティーで一つ一つ破壊していくのです。時に、シンセウェーブにポストパンク、LAメタルまで想起させるレトロフューチャーな世界観が映像を脳内まで誘う不思議。
結局、”Enjoy Yourself” とは、様々な困難を乗り越えながら、それでも自分自身を楽しむこと。ユニークな個性を曝け出し、本音を臆さず語ること。そうして彼らはその哲学を、視覚的、聴覚的な真の芸術家としてリスナーに訴えかけるのです。その姿はもはやミュージシャンというよりも、メディアでありインフルエンサーなのかもしれませんね。
今回弊誌では、MELTED BODIES にインタビューを行うことができました。「俺たちの曲の中にあるシニカルなテーマを少しでも楽しく感じさせるために、カオスなパーティーのエネルギーを好む傾向があるんだろうな。パーティーも大好きだし、いろんなところから影響を受けているから、楽しい音楽を作ろうとしているんだと思う。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS HATHCOCK OF THE RETICENT !!
“I Wanted To Make An Album That Confronted The Horror Of The Alzheimer Illness But Also The Cruel Way We Often Treat Those That Suffer With It.”
DISC REVIEW “THE OUBLIETTE”
「アルツハイマーが生み出す地獄。僕は家族と一緒にその光景を目の当たりにしたんだ。アルツハイマーは高齢者が大半を占めているから、病気を主張できないことが多く、社会的には見捨てられ、忘れ去られてしまうことだってよくあるんだ。僕はこの病気の恐ろしさと同時に、この病気で苦しむ人たちへの残酷な接し方にも向き合うアルバムを作りたいと思ったんだよ。」
65歳以上の6%が何らかの影響を受けるアルツハイマー病。ゆっくりと、しかし確実に重症度が増していく慢性的な神経変性疾患です。ゆるやかに自分自身を失っていく恐ろしい病。
プログメタルプロジェクト THE RETICENT の首謀者 Chris Hathcock は実際にその恐怖を目の当たりにし、その視点と経験を音の書へと綴ることを決意したのです。
「絶望と鬱を永続的に克服する道を知っていればいいのにと心から思うよ。僕たちの多くにとって、それはある意味生涯をかけた戦いになるからね。」
THE RETICENT は音楽に仄暗い感情を織り込む天才です。2016年の “On The Eve of a Goodbye” では、幼馴染だったイヴが自ら死を選ぶまでの悲愴を、すべてを曝け出しながら綴りました。徐々に近づいていく決断の刻。湧き出るような感情と共に迎えるクライマックス “Funeral for a Firefly” の圧倒的な光景は、聴くものの心激しくを揺さぶったのです。
「こんな悲しいテーマのアルバムを書いたのは、アルツハイマー病や認知症についての音楽がほとんどないからだよ。一般的に、多くの人は特に後期の段階でアルツハイマー病がいかに衰弱を強いる残酷な病気であるか、完全に認識していないよね。患者は記憶を失うだけでなく、さらに話すことも、移動することも、食べることも、飲み込むことさえ出来なくなるんだよ。」
そして THE RETICENT は再度真っ暗な感情の海へと旅立ちました。”The Oubliette” はアルツハイマーの7つの進行状況を7つの楽曲へと反映したコンセプトアルバムです。オープニングで、病院で自分の病状にさえ気付かず至福の時を過ごす主人公ヘンリーを紹介されたリスナーは、彼の静かな戦い、容赦のない悪夢を追体験していきます。
「僕はいつも、伝えたいことの感情に合ったサウンドを見つけようとしているんだ。それは伝統的なバンド(ギター、ベース、ドラム)のセットアップであることもあれば、ジャズのコンボやダルシマー、あるいはブラックメタルのようなワイルドな異なるジャンルへの挑戦の時もあるね。」
実際、ほぼすべての楽器を1人でこなす Chris のコンポジションとリリックは完璧に噛み合っています。OPETH のアグレッション、PORCUPINE TREE のアトモスフィア、RIVERSIDE のメランコリーに NEUROSIS の哲学と実験を認めた多様な音劇場は、エセリアルなメロディーやオーセンティックなジャズの響きに希望を、激烈なグロウルとメタルの方法論に喪失を見定めて進行していきます。亡き妻の生存を信じながら、時に彼女の死を思い出す動揺は、天秤のようなコントラストの上で悲しくも描かれているのです。挿入されるスポークンワードやトライバルなパーカッションも、ストーリーの追体験に絶妙な効果をもたらしていますね。
クライマックスにしてタイトルトラック、Oubliette とはヨーロッパ中世に聳え立つ城郭の秘密の地下牢。高い天井に一つの窓。ヘンリーはその唯一の出口、すなわち死を絶望的な懇願と共に迎えるのです。ただし今際の際に垣間見るは遂に訪れた平穏。
「それは複雑で “勝ち目のない” 状況と言えるだろうな。だからこそ、このアルバムが病気の現実に対する認識を高め、病気を経験している人やこれから経験するかもしれない人たちに小さな慰めを提供できたらと願っているんだよ。」
THE RETICENT はアルツハイマー病の認知度を高めるために、そして病と戦う患者や家族のために、またしても悲哀を呼び起こす感情的な傑作を創造しました。Chris Hathcock は音楽でただ寄り添い、世界へ訴えかけるのです。
今回弊誌では、その Chris にインタビューを行うことができました。「この病気で苦しんでいる人たちの世話をする人たちは、真のヒーローだよ。実に困難な仕事だからね。時にはほとんど不可能なくらいに。心が痛むし、イライラするし、意気消沈するし、とにかく絶え間ない葛藤が続くんだ。このアルバムで僕は、そんなヒーローたちにそれでも誰かが理解してくれるとメッセージを直接伝えたかったんだ。」 Jamie King のプロデュースはやはりプログメタルに映えますね。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SHANE MCCARTHY OF WAYFARER !!
“Thematically We Wanted To Make Something That Ties Into Where We Are From. We Are From Colorado, Which Was At One Point a Frontier Territory On The Expanding American West. That History, And The Legends That Come With It Are Sort Of Ingrained Here And We Have Grown Up With Them.”
DISC REVIEW “A ROMANCE WITH VIOLENCE”
「自分たちがどこから来たのかということを意識したものを作りたかったんだ。俺たちはコロラド出身で、ここはアメリカ西部の開拓地だった。その歴史と、それに伴う伝説がこの地に根付いていて、俺たちはそれを背負って育ってきたんだから。」
アメリカ西部の土には血が染み込んでいます。何世代にも渡り、赤土や山や平原の埃にも。植民地支配者の手によって原住民から流れ落ちた血潮は、そのままアメリカ西部を赤く染め上げたのです。それは発展でも運命でもなく、古代の文化や土地を冷酷に搾取した虐殺でした。
「西部のイメージに浸透している貪欲さや暴力の誘惑を描くことが目的だったと思う。それはすべてが魅力的に見えて、ある種の優雅さを持っているんだけど、俺たちはこのアルバムでその絵を描きつつ、それを取り巻く闇を掘り下げたいと思ったわけさ。」
アメリカ創世の神話には二つの大きな傷があります。奴隷制とそして西部開拓の名の下にネイティブアメリカンの土地と生命を奪ったこと。残念ながら、アメリカの西部進出から1世紀半が経過しその比較的短い時間の中で、闇を闇へと隠蔽する機運はますます強まっています。
コロラド州デンバーの WAYFARER にとって、アメリカーナとウェスタンフォークを散りばめた彼らのエクストリームメタルは、自らの場所に宿る歴史の捻じ曲げ、溶解に抵抗する手段とも言えるのです。
「俺は北欧の音楽や文化を楽しんでいるけど、アメリカ人としては北欧神話をテーマにしたアルバムを書いたり、それを自分たちのイメージとして取り入れたりすることはできないような気がするんだ。だから、彼らとアプローチは似ているんだけど、俺らの祖国の歴史や伝説、そしてこの場所の代名詞とも言える音楽からメタルを創造しているんだ。」
“フォークメタル” という言葉は、例えば、アンティークの木製楽器をメタルに持ち込み、ヴァイキングの夜会を再現する音景をイメージさせます。ただしこのジャンルの起源と本質は、その国の民族史をメタルサウンドで探求することにあるはずです。アメリカにも、血と煙と混乱に満ちた豊かなフォークの歴史があり、そして2020年にそれを最も深く探求しているバンドは間違いなく WAYFARER でしょう。
「映画のようなクオリティーを目指していた。バンドが様々な要素を混ぜ合わせて、キッチュなギミックのようなものを生み出すのは簡単なことだからね。もっと純粋な方法でアプローチすることが重要だったんだ。」
実際、彼らの最新作 “A Romance With Violence” は、アメリカ西部の血なまぐさい歴史を映画のように描き出し、勧善懲悪の善と悪を入れ替えながら、その真実を葬り去ろうとする企みに贖い痛烈に暴露しています。
カウボーイのラグタイムで幕を開ける “The Curtain Pulls Back” でサルーンの情景を映し出した彼らは見事にレコードの映画的なトーンを設定します。
“The Crimson Rider”、”The Iron Horse” で、ガンマンや無法者、大陸横断鉄道の出現について真実を伝え、10分間のフィナーレ “Vaudeville”では、暴力と偽りの希望を煽った貪欲と野心、つまりマニフェストデスティニー時代の現実を鮮明に映し出すのです。DREADNOUGHT の Kelly Schilling、KRALLICE の Colin Marston のゲスト参加もアルバムのストーリーを完璧に補完していますね。
「この時代は君を引き込む世界だけど、同じように簡単に君を堕落させ、内面まで曝け出させる。」
世界中に知られるアメリカの象徴となったカウボーイの原型が、この巨大な国の過去の非常に辛辣で、悲惨で、恐ろしい出来事とどのように関連しているのか。WAYFARER はさながらエンニオ・モリコーネとメタルのいいとこ取り、文字通り暴力とロマンスの対比によって、その難題を如実に描き切ってみせました。
西部開拓はもちろん、ヴァイキングや世界大戦の血生臭い暴力をロマンに変えた、人工の汚れたカーテンを一枚一枚剥ぎ取っていくように。美しい歴史の絵画には必ず血の匂いが添えられているのですから。
今回弊誌では、ギター/ボーカル Shane McCarthy にインタビューを行うことが出来ました。「Red Dead Redemption との比較は公平に思えるね。西部劇のサブジャンルに取り組んだ、近年ではよりメジャーなメディアリリースの一つだからね。」 どうぞ!!
ゴーストの物語は、フロリダ州レイクワースから始まりました。パームビーチから南に8マイル、サンシャインステートの郊外に広がる小さな町。ただし、Eric の記憶は父親の影によって暗く沈んでいます。
Eric が生まれる直前、ニューヨークからこの地に転勤した血液技師の父親は、Eric が4歳の時に交通事故で負傷し、それ以来ソファーと杖に拘束されていました。そうしておそらくはその苦境、その結果としてのオピオイド依存症が父親による Eric への支配を引き起こしたのです。Eric はその “暴君のような、ヘリコプターのような親” の複雑な記憶を歌詞の中で 「巨大な手を持った大きな怖い男たちが、僕の胸に指を突っ込み、何をすべきか命令した」と鮮明に振り返ります。
町の下層中流階級で育った Eric の青春は目立たないものでした。アメフトの男らしさも、オシャレへの努力も、行動的になることも、喉の奥で抑圧されていたからです。
「僕はとても内向的だった。友達も全然いなかったしね。学校じゃ、クールなブランドなんて身につけない子供さ。自分以外の何かになりたい、学校以外の何かをやりたい、ここ以外のどこかに行きたい、彼ら以外の誰かといたい、そんな圧倒的な衝動に駆られた10代だったな。いつも本当の自分との折り合いをつけようとしてるんだ。」
17歳の時に父親を亡くしたことが、Eric の感情的地滑りの引き金となりました。「ソーダのボトルを振ってキャップを開けたようなものさ。」
高校卒業後についた営業職で高額な年俸を得ていた Eric ですが、結局、閉所恐怖症のオフィスは彼が夢見ていた人生ではありませんでした。最初の逃避先はハードコアパンクでした。
「NEMESIS でギターを弾き、スラッジメタル SEVEN SERPENT ではドラムを叩いた。それで楽器のマルチな技術と友情が培われたんだ。今でも僕のキャリアには欠かせないものだ。家のようなものだったんだ。」
スピリチュアリティと仏教も Eric の閉ざした心を開かせました。ハーメティシズムと20世紀初頭の書物キバリオンの発見が彼を突き動かしたのです。
「それは宗教だけど、本当に科学に基づいている。僕にとって宇宙物理学は究極のスピリチュアリティなんだ。何より、僕たちが宇宙の中心じゃなく、もっと大きな存在の証を証明してくれるからね。僕にとって、別の領域への逃避でもあったんだよ。間違いなく今、世界は燃えている。ただ、世界には3つのタイプの人がいてね。僕は世界を売った人でも、世界を燃やした人でもない、ただそれを報告するためにここにいるだけなんだ。」
父親からもらった Dr.Dre の傑作 “The Chronic” を除いて、Eric のヒップホップな要素はこの時点まで皆無でした。しかし、NEMESIS のフロントマン Sam のレコードコレクションがその領域への道を開いたのです。DE LA SOUL, OUTKAST, HIEROGLYPHICS のようなアーティストの軽妙な創造性はまず Eric を魅了しました。それからメンフィスの大御所 THREE 6 MAFIA, マイアミの RAIDER KLAN のダークなライムを発見し、遂に Eric はヒップホップと真に心を通わせます。
「夢中になったよ。理解するべきは、僕が感じる闇や重苦しさは必ずしもヘヴィネスやラウドネスと同義ではないってことだった。それはね、ムードなんだよ。」
インダストリアルな暗闇とメタリックなエッジ、それに NINE INCH NAILS の不気味さはもちろん当初から明らかに存在していました。ただし、”Anti-Icon” には新たな地平へ向かいつつ自らの精神を掘り下げる、縦と横同時進行のベクトルにおける深遠な変貌が見て取れます。2年というこれまでにない長い制作期間はその証明でもありました。
「多くのことを経験してきたよ。人生で最も変革的な時期だった。僕は自分の中にあるクソを全部取り出して作品に投影したんだ。みんな僕を羨んでいるけど、正直正気を保って自分が何者か忘れないようにすることに苦労してるから。」
“Anti-Icon” へのヒントは Eric の多種多様なサイドプロジェクトにありました。
“アンチ・ミュージック” と呼ばれるノイズプロジェクト GASM は、拷問のような不安感に苛まれていましたし、SWEARR の叩きつけるようなエレクトロは束縛なき陶酔感の中で脈動していました。BAADER-MEINHOF の生々しいブラックメタルは刃をつきつけ、GHOSTEMANE ブランドでリリースした 2019年ハードコアEP “Fear Network” は闘争、そのダークなアコースティックカウンターパート “Opium” は絶対的な虚無感を捉えており、そのすべては “Anti-Icon” への布石とも取れるのですから。
もちろん、2020年において “Anti-Icon” というタイトルはそのまま、”AI” というワードに直結します。人工知能。近未来のディストピア的イメージは、心を開いた Eric と親の威圧感からくる強迫観念、妄想被害の狭間で揺れ動いているのです。
「オピオイドなんて自分には関係ないと思ってた。中毒者のものだってね。だけど困難な時を経験した人なら誰だってそうなり得るんだ。僕はハイになったとさえ感じなくなった。気分が悪くならないように、ただそのために必要だったんだ。」
偽りの愛を繰り返し嘆く “Fed Up”, 「I DON’T LOVE YOU ANYMORE!」のマントラを打ち鳴らす “Hydrochloride”。疑心暗鬼は怒りに変わり、中毒で盲目となった Eric にとってこれはオピオイドへの別れの手紙でもあるのです。どん底へと落ちた Eric を引き止めたのは、まず父親と同様の行動を取った自身への嫌悪感だったのです。つまり、Eric は大の NIN ファンでありながら、ダウンワードのスパイラルではなく、ダウンワードからの帰還を作品へと刻んだと言えるでしょう。古い自分を終わらせ、新たな自分を生み出す。MVで示した燃える霊柩車は過去の灰。”N/O/I/S/E” からの解放。
「不死鳥は灰の中から蘇るだろ?古い自分を壊し、殺し、そこから新たな人間になるんだよ。」
前作はただ痛みと苦悩を記し続けた作品だったのかも知れません。
「”N/O/I/S/E”をレコーディングした時、僕は自由で真実味のある音楽を作りたかった。言葉は不器用で解釈を誤ることがあって、芸術の無形の資質を損なうものだと思っているからね。僕は自分の脳と骨の中を深く掘り下げて、これまで感じてきたあらゆる苦悩や、自分を含め多くの人に襲いかかるあらゆる惨劇を扱ったアルバムを作ったんだ。”N/O/I/S/E” は独自の言語であり、痛みと哀れみの出血する舌であり、恐怖の遠吠えであり、光や地上の音をすべて見失うほど深いところにある。世界が内側から自分自身を引き裂く音だった。」
“We All Grew Up Loving BTBAM And While We Never Sit Down And Attempt To Write Anything That Sounds Like Them, Their Philosophy Of Letting a Song Take Any Twist Or Turn That It Wants Is Certainly Present In Our Music. If Anything, Our Bands Are Most Similar In Our Liberated Attitude Toward Writing Music.”
DISC REVIEW “THE ANGEL OF HISTORY”
「ポストメタルは間違いなく僕たちのサウンドの大きな部分を占めているね。たしかに完全にポストメタルとは呼べないかもしれないけど、でも同時に、完全にプログレッシブメタルとも呼べないかもしれないよね。」
音の革新は、概しておぼろげであやふやな秘境に端を発します。プログレッシブメタルコアをアステカの魔法とカオスで異次元へと導いたトリックスター、VEIL OF MAYA に見出された NYC の海獣 CRYPTODIRA は、その名の通り深海で数万年もの異種族交配を繰り返したモダンメタルモンスターです。
「僕らはみんな BETWEEN THE BURIED AND ME を愛して育ったからね。楽曲を自由自在に捻くれさせる彼らの哲学は、僕らの音楽にも確かに存在しているんだ。どちらかと言えば、僕たちのバンドは彼らと、音楽を書くことに対する自由な姿勢が最も似ているんじゃないかな。」
BTBAM の名作群を手がけた Jamie King をプロデューサーとして迎えたように、たしかに CRYPTODIRA は難解と容易、混沌と明快、暴虐と安寧、激音と静謐の狭間に巣喰いながらメタルの荒唐無稽を自由自在に謳歌しています。
「彼はとてもオープンマインドなプロデューサーで、僕たちのアイデアをより商業的にに手なずけようとするのではなく、可能な限りクレイジーなことをしてサウンドに自分たちの息を吹き込ませるよう促してくれたんだからね。」
実際、マルクス主義、精神分析、フェミニストやポストコロニアル理論など人類史におけるテーマを哲学的な視点から俯瞰し、理想と現実の狭間を示唆する “The Angel of History” は、常軌を逸したメタルの歴史書だと言えます。プログ、ポストメタル、ハードコア、デスメタル、スラッジ、マスコア、ジャズの豊潤なるアマルガムは、深海で熟成されためくるめくテクニックや多彩な歌唱スタイルで人と音の歴史を投影するのです。それは万年海獣のみに許された秘法。
もちろん、”Dante’s Inspiration” を聴けば、瞬きと同時にテンポや拍子が移り行く THE DILLINGER ESCAPE PLAN の数学が、千変万化な歴史の授業に欠かせない教科書の一つであることは揺るぎません。ただしその一方で、ポストメタルの申し子は嫋やかで美麗な対比の魔法を忘れることはないのです。それは歴史に宿る儚さでしょうか。
“Self-(Affect/Efface)” で “Alaska” のような精神病的グロウルが高らかなクリーンボイスに磨き上げられる瞬間、”The Blame For Being Alive” で Pat Metheny がオルタナティブやデスメタルに蹂躙される瞬間、天使とのデュエット、”The White Mask Speaks” に宿る荘厳なポストメタルのシネマトグラフィー。あまりにドラマティックな場面転換はさながら猫の目のごとく。リスナーは予想不可能なメタルと人類の未来に幾度も思いを馳せるはずです。
今回弊誌では、CRYPTODIRA にインタビューを行うことが出来ました。「日本のアーティストは、様々なジャンルを日々聴いているよ。ちょっと頭に浮かんだだけで、toe, Tricot, Mouse on the Keys, Passepied, ゲスの極み乙女, Indigo la End, 水曜日のカンパネラ, Snail’s House なんかをよく聴くよ。」 どうぞ!!
“We Agree That There Are Not Many Women Seen In This Particular Genre Of Music, But There Is, Without a Doubt, a Vastly Overlooked List Of Women Pioneering The Genre With Amazing Talent, And Doing a Lot For Metal And Rock Music As a Whole.”
DISC REVIEW “LIMBO”
「このメタルという特定の音楽ジャンルに女性があまりいないことには同意するけど、このジャンルを開拓し、素晴らしい才能を持ち、メタルやロック音楽全体のために多くのことを成してきた女性は、間違いなく大きく見落とされているわね。Hayley Williams (PARAMORE) みたいなボーカリストや、素晴らしい友人 Adrienne Cowan (SEVEN SPIRES) , Elizabeth Hull がいなければ、今のような自信を得ることはできなかったと思う。そしてもちろん、母である Sandy Casey の指導と助言がなければ、私はどこにも居場所がなかったでしょうね。彼女は私の人生に影響を与えてくれた、最も刺激的なシンガーよ。」
ロックやメタルの世界における女性の躍動は、間違いなく21世紀におけるメジャーなトピックの一つです。ただし、その開拓には古くはジャニスにスージー・クワトロ、アニー・ハズラムから、アンネケ、ターヤ、エイミー・リーまで、ゼロから土壌を培った幾人もの献身が捧げられています。Casey Lee Williams の母 Sandy Casey もその一人。そうして今、引き継がれた遺産はプログメタルの世界を変革へと導きます。
実は、Casey はすでに有名人です。あの全世界で1億再生以上を記録し第8シーズンまで継続されているモンスターコンテンツ、大ヒット3DCGアニメ “RWBY” のサウンドトラックでメインシンガーを務めているのですから。それだけではありません。彼女の父は Jeff Williams。”RWBY” シリーズのコンポーザーで音楽監督。母との共演もそのサウンドトラックで実現。サラブレッドの血と才能は、そうしてさらなるアーティスティックな飛躍を求めました。
「最初のリハーサルの時から、彼女はこのプロジェクトに参加したいと思っていたし、非常に複雑だけど美しい音楽の上に歌を乗せるという挑戦を受け入れたいと思っていたんだ。」
バークリーの知的な複雑怪奇と、アニメの甘やかな表現力。昼と夜、二つの異世界が出会う逢魔時にはきっとこの魔法の言葉が似合います。OK, GOODNIGHT。
「アルバムのコンセプトは、奇妙な扉が開かれ、地球を荒廃させ、誰でも何でも破壊する異世界の巨人がやってきたような巨大な黙示録の中で生き残ろうとしている若い女の子を中心に展開しているよ。」
デビューフル “Limbo” でバンドが語るのは異世界からもたらされた辺獄のストーリー。幼い頃から日本の文化やアートを愛しアニメを見続けた異能のギタリスト Martin と、映画のサウンドトラックを養分とする鍵盤奏者 De Lima、そして “RWBY” で近未来の理不尽な御伽草子を紡ぐ Casey が交わるにはあまりに完璧な舞台です。
「アトモスフェリックなサウンドとピアノを、大きな作品の一部として使用することで、リスナーの心を掴み、より集中して聴くことができるようになると思う。ヘヴィーなギターリフと優雅なテクスチャーの並置は、このバンドのサウンドの大きな部分を占めているよ。」
ストーリーへの没入感を加速する対比のダイナミズムと、メタルとサントラのマリアージュが投影を加速する音映像。もちろん、その難題はバークリーのカラフルなテクニックと、Casey の伸びやかでムード満載な歌声によって実現されていくのです。
クラッシックやジャズ、ポストロックのキメラさえ基本。ここには PROTEST THE HERO も、DREAM THEATER も、PLINI も、RADIOHEAD も、ほんの少しの Djent も、CASIOPEA のようなジャパニーズフュージョンだって、それにアニメのイントロやアウトロのドラマティシズムまでもが繊細に大胆に織り込まれているのですから。最新 EP “Under the Veil” の幕引きに流れる Casey の気高きソプラノは、20年代プログメタルの辿る道をほんのりと照らしているのかも知れませんね。
今回弊誌では、OK GOODNIGHT にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちは皆、好きな音楽や音楽を演奏するようになった経緯が全く違っていて、それがアーティスティックな選択にも表れていると思うよ。それに、長所と短所もそれぞれ違っているよね。」どうぞ!!