EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KATIE DAVIES OF PUPIL SLICER !!
“I Don’t Think Anyone Should Be Discriminated Against For How They Were Born, Who They Love And How They Look. Hopefully One Day The World Will Be a Better Place Where Things Aren’t As Bad As They Are Today.”
ゴーストの物語は、フロリダ州レイクワースから始まりました。パームビーチから南に8マイル、サンシャインステートの郊外に広がる小さな町。ただし、Eric の記憶は父親の影によって暗く沈んでいます。
Eric が生まれる直前、ニューヨークからこの地に転勤した血液技師の父親は、Eric が4歳の時に交通事故で負傷し、それ以来ソファーと杖に拘束されていました。そうしておそらくはその苦境、その結果としてのオピオイド依存症が父親による Eric への支配を引き起こしたのです。Eric はその “暴君のような、ヘリコプターのような親” の複雑な記憶を歌詞の中で 「巨大な手を持った大きな怖い男たちが、僕の胸に指を突っ込み、何をすべきか命令した」と鮮明に振り返ります。
町の下層中流階級で育った Eric の青春は目立たないものでした。アメフトの男らしさも、オシャレへの努力も、行動的になることも、喉の奥で抑圧されていたからです。
「僕はとても内向的だった。友達も全然いなかったしね。学校じゃ、クールなブランドなんて身につけない子供さ。自分以外の何かになりたい、学校以外の何かをやりたい、ここ以外のどこかに行きたい、彼ら以外の誰かといたい、そんな圧倒的な衝動に駆られた10代だったな。いつも本当の自分との折り合いをつけようとしてるんだ。」
17歳の時に父親を亡くしたことが、Eric の感情的地滑りの引き金となりました。「ソーダのボトルを振ってキャップを開けたようなものさ。」
高校卒業後についた営業職で高額な年俸を得ていた Eric ですが、結局、閉所恐怖症のオフィスは彼が夢見ていた人生ではありませんでした。最初の逃避先はハードコアパンクでした。
「NEMESIS でギターを弾き、スラッジメタル SEVEN SERPENT ではドラムを叩いた。それで楽器のマルチな技術と友情が培われたんだ。今でも僕のキャリアには欠かせないものだ。家のようなものだったんだ。」
スピリチュアリティと仏教も Eric の閉ざした心を開かせました。ハーメティシズムと20世紀初頭の書物キバリオンの発見が彼を突き動かしたのです。
「それは宗教だけど、本当に科学に基づいている。僕にとって宇宙物理学は究極のスピリチュアリティなんだ。何より、僕たちが宇宙の中心じゃなく、もっと大きな存在の証を証明してくれるからね。僕にとって、別の領域への逃避でもあったんだよ。間違いなく今、世界は燃えている。ただ、世界には3つのタイプの人がいてね。僕は世界を売った人でも、世界を燃やした人でもない、ただそれを報告するためにここにいるだけなんだ。」
父親からもらった Dr.Dre の傑作 “The Chronic” を除いて、Eric のヒップホップな要素はこの時点まで皆無でした。しかし、NEMESIS のフロントマン Sam のレコードコレクションがその領域への道を開いたのです。DE LA SOUL, OUTKAST, HIEROGLYPHICS のようなアーティストの軽妙な創造性はまず Eric を魅了しました。それからメンフィスの大御所 THREE 6 MAFIA, マイアミの RAIDER KLAN のダークなライムを発見し、遂に Eric はヒップホップと真に心を通わせます。
「夢中になったよ。理解するべきは、僕が感じる闇や重苦しさは必ずしもヘヴィネスやラウドネスと同義ではないってことだった。それはね、ムードなんだよ。」
インダストリアルな暗闇とメタリックなエッジ、それに NINE INCH NAILS の不気味さはもちろん当初から明らかに存在していました。ただし、”Anti-Icon” には新たな地平へ向かいつつ自らの精神を掘り下げる、縦と横同時進行のベクトルにおける深遠な変貌が見て取れます。2年というこれまでにない長い制作期間はその証明でもありました。
「多くのことを経験してきたよ。人生で最も変革的な時期だった。僕は自分の中にあるクソを全部取り出して作品に投影したんだ。みんな僕を羨んでいるけど、正直正気を保って自分が何者か忘れないようにすることに苦労してるから。」
“Anti-Icon” へのヒントは Eric の多種多様なサイドプロジェクトにありました。
“アンチ・ミュージック” と呼ばれるノイズプロジェクト GASM は、拷問のような不安感に苛まれていましたし、SWEARR の叩きつけるようなエレクトロは束縛なき陶酔感の中で脈動していました。BAADER-MEINHOF の生々しいブラックメタルは刃をつきつけ、GHOSTEMANE ブランドでリリースした 2019年ハードコアEP “Fear Network” は闘争、そのダークなアコースティックカウンターパート “Opium” は絶対的な虚無感を捉えており、そのすべては “Anti-Icon” への布石とも取れるのですから。
もちろん、2020年において “Anti-Icon” というタイトルはそのまま、”AI” というワードに直結します。人工知能。近未来のディストピア的イメージは、心を開いた Eric と親の威圧感からくる強迫観念、妄想被害の狭間で揺れ動いているのです。
「オピオイドなんて自分には関係ないと思ってた。中毒者のものだってね。だけど困難な時を経験した人なら誰だってそうなり得るんだ。僕はハイになったとさえ感じなくなった。気分が悪くならないように、ただそのために必要だったんだ。」
偽りの愛を繰り返し嘆く “Fed Up”, 「I DON’T LOVE YOU ANYMORE!」のマントラを打ち鳴らす “Hydrochloride”。疑心暗鬼は怒りに変わり、中毒で盲目となった Eric にとってこれはオピオイドへの別れの手紙でもあるのです。どん底へと落ちた Eric を引き止めたのは、まず父親と同様の行動を取った自身への嫌悪感だったのです。つまり、Eric は大の NIN ファンでありながら、ダウンワードのスパイラルではなく、ダウンワードからの帰還を作品へと刻んだと言えるでしょう。古い自分を終わらせ、新たな自分を生み出す。MVで示した燃える霊柩車は過去の灰。”N/O/I/S/E” からの解放。
「不死鳥は灰の中から蘇るだろ?古い自分を壊し、殺し、そこから新たな人間になるんだよ。」
前作はただ痛みと苦悩を記し続けた作品だったのかも知れません。
「”N/O/I/S/E”をレコーディングした時、僕は自由で真実味のある音楽を作りたかった。言葉は不器用で解釈を誤ることがあって、芸術の無形の資質を損なうものだと思っているからね。僕は自分の脳と骨の中を深く掘り下げて、これまで感じてきたあらゆる苦悩や、自分を含め多くの人に襲いかかるあらゆる惨劇を扱ったアルバムを作ったんだ。”N/O/I/S/E” は独自の言語であり、痛みと哀れみの出血する舌であり、恐怖の遠吠えであり、光や地上の音をすべて見失うほど深いところにある。世界が内側から自分自身を引き裂く音だった。」
EXCLUSIVE : INTERVIEW WITH MARTIN KHANJA & SAM KARUGA OF DUMA
“It’s About Going Inside And Bringing It Out, putting Our Guts On The Table. There’s No Hiding. That’s The Thing: You Come To Duma You Come To The Fucking Butchery.”
一般的な外国人にとって、マサイの言葉で “冷たい水の場所” を意味するケニアのナイロビは、文字通り大都市特有の冷たさを纏っているように感じられるかもしれません。たしかに、街には高層ビルが立ち並び、交通量は多く、首長はヘネシーがコロナを殺すと考えています。それでもニューヨークや東京に比べればまだ温かみが感じられるのではないでしょうか。
しかし、ナイロビで生まれ育ち、この特異なメタルシーンにおいてさらに特異な色彩を放つグラインドデュオ Sam Karugu (ギター/プログラミング) と Martin Khanja (ボーカル) は、その意見に違を唱えます。
「ラジオを聴けばわかるよ。デタラメばかりだ。聴きたくない人がいるから、俺たちは何か違うものを作るんだ。”ワンサイズ・フィッツ・オール” 、一つの価値観がすべてを支配するなんてもう通用しないよ。俺たちは社会に適応出来ない人たちのために音楽を作っているんだ。」
たしかに、DUMA のセルフタイトルのデビュー作は、凡俗を攻撃するインダストリアルノイズが渦巻く反抗のレコードです。
2019年にウガンダのカンパラにある NyegeNyege Studio で録音されたレコード “Duma” は、00年代初頭にハードコアパンクやメタルを聴いて育った2人が送る強烈なステイトメント。ナイロビには80年代から DIY のハードコアシーンが存在しましたし、毎週木曜日の午後10時から12時まではアンダーグラウンドメタルを流す “Metal to Midnight” という番組も存在しました。それに YouTube, インターネット。
「俺の好きな音楽だから、俺が育った場所で周りのみんなに聴かせてやりたいんだよ。」
アフリカ大陸には未だ極小のメタルシーンしか存在しませんが、バンド同士はネットを通して連絡を取り合い、活気に満ちたコミュニティーを形成しています。ケニアのメタルシーンは「楽器を持っていて、心があって、何かをやりたいと思っている人なら、誰でも音楽ができるんだということを教えてくれた。」と Sam は語ります。
「アフリカにも昔からロックはあったよ…アパルトヘイト時代の70年代には、ザンビアやジンバブエのバンドが “Zamrock” を作っていた。ググってみてよ。だけどほとんどのバンドがレコーディングができなかった。だからそのためにケニアに来ていたんだ。”Zamrock” は70年代、80年代、90年代まで続いていたよ。アパルトヘイトが終わるころまでね。
だから、ケニアのシーンはずっと前からあったし、例えば南アフリカにはシーンがあるし、北アフリカにはチュニジアやエジプトにもシーンがある。世界の人々は俺らの存在を忘れてしまっているような気がするよ。でも、ケニアにもロックやメタルがあって、みんな楽しんでいて、バンドが演奏していて、モッシュ・ピットがあって、本当にオープンな人たちばかりなんだ。 人々が本当にオープンなんだよ。」
Martin もシーンの温かさについて同意します。
「ケニアのシーンは家族のような、コミュニティのようなものなんだ。どれだけ稼いでいるか、どんな人種かとか、そんなことは気にしない。ショーに出れば、みんなが愛してくれて、ありのままの自分を受け入れてくれる。
俺は自分のやっていることが人気があるものではなく、とても奇妙なものだと思っていた。だから同じ音楽をやっている人たちに出会って、”兄弟 “という感じになったんだ。俺たちはお互いを理解している。会場に足を踏み入れると、家族のような感覚になるんだ。 子供の頃、高校の頃に会った人たちや、大学生になってから会った人たちが、家族を連れて来てくれるんだ。 それは変わらず、どんどん大きくなっていく。 それがケニアのシーンのとても好きなところだね。みんなが互いに知っていて、みんなのことを愛しているから。」
それでも Sam はメインストリームからは程遠い現状も付け加えます。
「一回のライブで100ユーロが手に入る。それをバンド全員で分けるんだ。メインストリームからは程遠いよ。適切なギア、スタジオなんてないからなかなか新たなチャレンジも出来ないしね。好きだからやっているんだ。やらないと気が狂いそうになるから。」
影響を受けたのはどんな音楽なのでしょう?Martinはこう切り出します。
「TORCH BEARER, PINK FLOYD, Kurt Cobain, XXXTentacion, Travis Scott, SUICIDE SILENCE の Mitch Lucker, Bob Marley, それに DJ Scotch Egg-彼は神だよ。とにかく、彼らは上級地球人さ。エリートなんだよ。」
Sam はどうでしょう?
「ケニアのバンドはみんなそうさ。あとは LAST YEAR’S TRAGEDY, THROBBING GRISTLE。それから、BLACK FLAG, MINOR THREAT, SYSTEM OF A DOWN, それに MELT-BANANA! “Cell-Scape” は最高さ。たくさんいるよ。あとは母さんだね。でも母さんは俺がメタルをやっているなんて知らないよ。ゴスペルかなんかだと思っているんだろう。バレたら面倒くさいからね (笑) 」
Martin にとってメタルは救いであり、自己実現のためのツールでもありました。
「ラジオからメタルが流れてきて、人生が変わった。俺はいつも人生の中で自分の道を見つけようとしていたし、何かを発見しようとしていた。そしてこの音楽が俺に表現力を与えてくれていることに気付いたんだ。
道を歩いていると、頭の中でリズムが聞こえてきたり、詩を書いたりすることはいつも経験してきた。どこでそれを表現できるのか? この作品を通して、それを解放する方法を見つけたんだ。音楽がなければ自分の人生をどうすればいいのかわからない。目的がないんだ。メタルが生きがいを与えてくれた。一日の終わりには自分を表現しなければならない。そうしないと自分を抑え込んでしまう。精神的にも健康的じゃない。俺は苦手なことばかりだけど、少なくともこれは得意なんだ。」
2019年に DUMA が結成されたとはいえ、Sam と Martin は高校時代からお互いを知っていました。そして、Sam は SEEDS OF DATURA の、Martin は LUST OF A DYING BREED というトップナイロビメタルのメンバーでした。当時から、2人は互いの音楽に興味を持っていたのです。ボツワナのウインターメタルフェスで意気投合したデュオのパフォーマンスはすぐに共同作業へと繋がります。バンド名 DUMA とはキクユ語で暗闇を意味します。
「俺らはこの音楽に本当に深く入り込んでしまった。自分たち自身もダークで、音楽もダークで、世界観もダークなこのプロジェクトにね。」
アルバム “Duma” はメタルとして成立しながら、デュオの多様な嗜好を反映したモンスターです。”Omni” でトラップとメタルを融合し、”Lionsblood” ではエレクトロのダンスビートを取り入れます。「ダークでヘヴィーな実験だよ。新しいサウンドを作るためのね。」
“Lionsblood” はまさにアフリカのバンドにしか書けない楽曲でしょう。Martin が説明します。
「これは俺の民族的背景であるマサイ族のルーツからきている。男になるためには、茂みに入ってライオンを殺し、ライオンの血で体を洗わなければならないんだ。それは、つまり自分を見つけたということだ。ライオンの血を飲むんだから、生き残れば自分の中にライオンが残る。この慣わしを使ったのは、俺たちが日常生活の中でどのように存在しているかを表現したかったから。
問題は、人種や文化の違いじゃなく、見解や認識の違いなんだ。その違いは、俺たちが共に分かち合うべき強さなんだよ。 この違いが組み合わさったとき、俺たちはみんな強くなるんだから。人は教会に行ったり、学校に行ったり、何かを発明したり、ビジネスを経営したりすることができる。もし本当に好きなことが得意なら、それをやってみて、好きなことをするように人々を鼓舞して欲しいね。それが人間として、俺たち全員のためになるんだから。」
仮に、コロナが世界の終わりをもたらそうとも? Sam は同意します。
「何かを創作し続けなきゃ。自分のやりたいことを全力でやらないといけない。世界はコロナで終わりを迎えるかもしれないし、何が起きているのかさえわからないけど、俺は自分のやりたいことをやって、自分らしく表現していくしかないんだよ。今の世の中、SNS によってほとんどの人が自分を表現できるようになっているだろう?今がその時だよ。自分の内臓を全部だすんだよ。」
闇の中でも常に光を見出すアルバムには、世界中に自分たちの音楽を広めたいという野心と共に、純粋な、サブリミナルなメッセージが込められています。Martin は目を輝かせます。
「みんなを鼓舞して、今よりもっと良くなるようにしてあげたいんだ。ビデオにもサブリミナルメッセージを込めている。本当に目を覚まそうとしている人には、それが理解することが出来るのさ。多くの人にインスピレーションを与えたいよ。音楽を聴いてくれた人、インタビューを読んでくれた人、ビデオを見てくれた人の心に何かを残したい。より良く生きれるような何かをね。」
Martin の最も伝えたいメッセージは、オープニングナンバー “Angels and Abysses” に描かれています。
「天使と深淵。心の中の小さな囁きを込めた曲だ。労働の中で、”オマエはもうめちゃくちゃだ。家に帰るんだ” ってね。毎日、自分の別の姿、一面が常に一緒にあることを忘れないでほしいんだ。
俺は心理学の修士号を持っている。そして、自らの認識している意識とは氷山の一角だと気づいたんだ。俺たちの習慣、行動、世界観は別の場所から来ているんだよ。意識的にそれを微調整することができれば、思い描いている最高の人生を体験することができるはずなんだ。その域まで到達しない場合でも、少なくともそれに近づくだろうし、これまでよりは良いものになるはずさ。」
Sam のお気に入りは “Pembe 666″。
「基本的には黙示録5章6節なんだが、スワヒリ語で書かれているんだ。聖書のこの一節では、ヨハネが小羊を見つけたと言っているんだけど、小羊は七つの封印を持っていて世界を解放するためにそれを開けなければならないんだよ。そして彼は子羊が殺されているのを見つけたんだ。 答えを探しているうちに、子羊が殺されていることに気づくというのは、宗教の面白いところだよな。きっと答えはないんだろう。」
最もテクノロジーを受け入れたバンドがケニア出身というのも皮肉なものです。
「俺たちにあるのは、歌とギターとラップトップだけ。面白いことに、メタルではほとんどの人がコンピュータをリスペクトしていない。純粋ではないと思われている。でも、コンピューターがあれば、バンド全体の音楽を作ることができることに気付いたんだ。シンセラインやドラムやギターを思いついて、それを完成させるまで煮詰めていくんだよ。」
DUMA がこれから進む場所はどこにあるのでしょう? Martin が答えます。
「デスメタルはもうやり終えたかも。メタルコア、デスコア、アバンギャルド、シンフォニック、ドゥーム。 これら全ての異なるジャンルからの影響を利用して、ハイブリッドな表現を生み出そうとしている。2040年や2050年に生まれた人たちだって何かを必要としているだろうし、僕らは前に進まなければならない。ヨーロッパやアメリカじゃ、メタルが確立されている。アフリカのメタルを知らしめるために、コンガやブラス、ドラムスといった民族楽器を取り入れるのは良い方法だと思うしね。それが俺たちの目標だ。俺達は新しいジャンルを作るつもりだよ。」
Sam と Martin は、彼らを理解しない人のことまで気にかけてはいません。DUMA の音楽は、マンネリに飽き飽きしたリスナーや、地元の放送局に満足しない人たちのためのもの。DUMA を完全に吸収するには、開かれた心が必要なのです。
「老若男女を問わず、すべての人に関係のあるものを作ろうと思った。たとえ暗くても、そこには光がある。そこにはたくさの知識と知恵が詰まっていて、子供たち、またその子供たちになんらかのインスピレーションを与えるんだ。」
DUMA はある種の伝道師なのでしょうか? Martin は否定します。
「というより、奉仕活動だよ。俺たちのライブに来れば、自分の抱えている問題や障害を克服するより良い方法を見つけることが出来るからね。視点を変えてくれるし、力を与えてくれる。改心させたいわけじゃなく、思い出させたいだけなんだ。」
Sam も同意します。
「伝道ではないね。メタルでは、8万人がメイデンのライブにくるけど、別に崇拝はしてないでしょ?(笑)。ただメイデンを聴くためにライブに行って、家に帰ればクソをする。誰も崇拝はしていない。それがメタルの醍醐味なんだよ。みんな自分の好きなことをしているだけさ。崇拝してるとしたら悲しいことだ。俺たちを崇拝なんてするなよ。やめとけ (笑)。」
“I Think Most Folks Who Identify As “Metalheads” Or Whatever Probably Have a Lot More Nuance Than They Let On. I Just Wish They Would Embrace More Of a Balance Than Clinging To a Very Strict Set Of Rules. I Think That’s Why, As a Forty-Year-Old Man, I Still Identify As a Punk Or a Hardcore Kid.”
I STILL IDENTIFY AS A PUNK, OR HARDCORE KID
「”メタルヘッズ” と名乗る人たちの多くは、公平にみてもおそらく自分たちが言うよりもずっと多くの音楽的なニュアンスを持っていると思うよ。だから厳格なルールにしがみつくのではなく、バランスを取ってほしいと願うばかりだね。俺はしっかりバランスを取っているからこそ、40歳になった今でも、パンクやハードコアキッドなんだと思う。頭の中では、そういった概念がより曖昧で広がりを持っているように思えるからね。」
スラッジ、ドゥーム、メタル、ハードコア、グランジ。ルイジアナの激音集団 THOU はそんな音楽のカプセル化に真っ向から贖う DIY の神話です。
「ここ数年で培った退屈なオーディエンスではなく、もっと反応の良い(しかし少なくとも多少は敬意を払ってくれる)オーディエンスを獲得したいからなんだ。 堅苦しいメタル野郎どもを捨てて、THE PUNKS に戻る必要があるんじゃないかな!」
15年で5枚のフルアルバム、11枚の EP、19枚のスプリット/コラボレーション/カバー集。THOU の美学は、モノクロームの中世を纏った膨大なカタログに象徴されています。THE BODY を筆頭とする様々なアーティストとの共闘、一つのレーベルに拘らないフレキシブルなリリース形態、そしてジャンルを股にかける豊かなレコードの色彩。そのすべては、ボーカリスト Bryan Funck の言葉を借りれば “金儲けではなく、アートを自由に行う” ためでした。
2018年、THOU は自らのアートな精神を爆発させました。3枚の EP とフルアルバム、計4枚の4ヶ月連続リリース。ドイツのサイレント映画 “カリガリ博士” に端を発するノイズ/ドローンの実験 “The House Primodial”、Emily McWilliams を中心に女性ボーカルを前面に据えた濃密なダークフォーク “Inconsolable”、ギタープレイヤー Matthew Thudium が作曲を司りグランジの遺産にフォーカスした “Rhea Sylvia”、そしてスラッジ/ドゥームの文脈で EP のカオスを具現化した “Magus”。一般的なバンドが4,5年かけて放出する3時間を僅か4ヶ月で世界に叩きつけた常識外れの THOU が願うのは、そのまま頑ななステレオタイプやルールの破壊でした。
実際、Raw Sugar, Community Records, Deathwish, Sacred Bones とすべての作品を異なるレーベルからリリースしたのも、境界線を破壊し多様なリスナーへとリーチする自由な地平線を手に入れるため。自らが獲得したファンを “退屈” と切り捨てるのも、主戦場としてしまったメタル世界の狭い視野、創造性の制限、クロスオーバーに対する嫌悪感に愛想が尽きた部分はきっとあるのでしょう。
「このバンドはグランジの源流であるパンクのエートス、プログレッシブな政治的内容、メランコリックなサウンドから絶対的な深みへと浸っている。 間違いなく、10代の頃に NIRVANA, SOUNDGARDEN, PEARL JAM, ALICE IN CHAINS を聴いていたことが、音楽制作へのアプローチや、ロックスターのエゴイズムを避けることに大きな影響を与えている。」
“The Changeling Prince” の MV でヴァンパイアのゴシックロッカーを気取ってみせたように、THOU にとってはロックスターのムーブやマネーゲームよりも、音楽世界の常識を覆すこと、リスナーに驚きをもたらすことこそが活動の原動力に違いありません。そのスピリットは、パンク、そしてグランジに根ざす抑圧されたマイノリティーの咆哮が源流だったのです。全曲 NIRVANA のカバーで構成された “Blessings of the Highest Order” はまさにその証明。
「メンタルの病の個人的な影響を探求することがかなりの部分染み込んでいて、それは無慈悲なアメリカ資本主義の闇とは切っても切り離せないものだと思うんだ。」
THOU が次にもたらす驚きとは、10/30にリリースされる、ポストロック/ダークフォークの歌姫 Emma Ruth Rundle とのコラボレーション作品です。90年代のシアトル、オルタナティブの音景色を胸一杯に吸い込んだ偉大な反抗者たちの共闘は、壊れやすくしかしパワフルで、悲しくしかし怖れのない孤立からの脱出。精神の疾患や中毒、ストレスが容赦なく人間を押しつぶす現代で、灰色の世界で屍に続くか、希望の代わりに怒りを燃やし反抗を続けるのか。選択はリスナーの手に委ねられているのかも知れませんね。
今回弊誌では、Bryan Funck にインタビューを行うことができました。「大きな影響力とリソースを持っているレーベルの多くが、自分たちがリリースする音楽やリリースの方法に関して、リスクを負うことを最も嫌がっているように見えるのは本当に悲しいことだよ。彼らの成功により、クリエイティブな決定を下す自由がより広く与えられるはずだと思うんだけど、それは逆のようだね。」2度目の登場。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NIKAN KHOSRAVI OF CONFESS !!
ALL PICS BY Camilla Therese
“Of Course Harsh Sentences Weren’t Convenient But I Took Pride For That! Cause It Meant That My Music And My Lyrics Are So Strong And Truthful That They Could Scare a Whole Regime. But At The Same Time It Was Stepping To The World Of Unknowns.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FEISAL EL-KHAZRAGI OF LOATHE !!
“Musical Diversity Is Just Another Term For Musical Freedom I Think. So Long As There Is True Emotion In The Music, It’s ‘Valid’ Regardless Of What Style It Is And What Band Or Artist It’s Written Or Performed By.”
DISC REVIEW “I LET IT IN AND IT TOOK EVERYTHING”
「このアルバムにはサウンドトラックに対する僕たちの愛情が反映されている訳だよ。オープニングの “Theme” はまさにこのレコード全体のフィーリングを象徴しているのさ。美しいけれど、どこか破滅的でハードブレーキングな雰囲気だよね。」
音楽を触媒とした野心はアーティストそれぞれ。有名になりたい者、レコードを数多く売りたい者、自らの限界に挑みたい者。リバプールの銀幕王 LOATHE は、刻々と移り変わる景色や瞬間、そして感情を切り取りレコードへと投影する、サウンドトラックの美学を自らの雄図に抱きます。
「日本のゲームからの影響は明らかに僕たちの音楽へ強く現れているよ。”The Cold Sun” は特に象徴的だけど。僕たちはそういったサウンドトラックが、しばしば LOATHE の音楽に通じるようなヘヴィーな感情を伝えているように感じるんだ。だからこそ、究極にエモーショナルな人間として惹きつけられるわけだよ。」
2017年にバンドがデビューフル “The Cold Sun” を放った時、多くのリスナーはその冷厳な陽光の影に日本のアニメーション “Akira” の存在を感じたはずです。アートワークはもちろん、Tech-metal とエレクトロの雄弁なアマルガムを裏路地へと引き摺り出すハードコアのリアルは、さながら遠近法の撮影トリックのように鮮やかにバンドの個性を投映したのです。共鳴するはレトロフューチャーな世界観。ただし、それはあくまでも “LOATHE RPG” の序章に過ぎませんでした。
「僕は、音楽的な多様性とはただ音楽的な自由を言い換えた言葉だと思うんだ。つまり、それがどのようなスタイルであれ、どんなバンドやアーティストかに関係なく、真の感情が宿る音楽である限りそれは価値ある “多様” と表現できるわけさ。」
最新作 “I Let It In And It Took Everything” は間違いなく、モダン=多様性のモダンメタルフィールドにおけるラストダンジョンの一つでしょう。ただし、メタリックハードコアからブラックメタル、ポストメタル、プログ、シューゲイズ、オルタナティブ、エモ、Nu-metal とカラフルに張り巡らされた罠の数々はあくまで単なる仕掛けに過ぎず、多様性のラスボスとは “真の感情” だと Feisal El-Khazragi は語ってくれました。
実際、これほど感情に溢れたエクストリームミュージックの “アンソロジー” は非常に稀有な存在です。”Theme” の退廃的な電子のアンビエンスで、ハードコア “ニューロマンティック” の芽生えに立ち会ったリスナーは、不協和の凶暴とポストロックの壮大が交差する “Aggressive Evolution” を全身に浴びて言葉を失うはずです。
「音楽作品の “体内” でそういった二極の “並置” を使用すれば、触れて感じる音全てがさらなるインテンスを纏うんだ。」 の言葉通り、ダイナミズムの洪水は急速に変化を遂げた時代の濁流のごとく、もしくは SNS のタイムラインのように、目にも留まらぬ速さと勢いを持って感情を押し流していくのです。
CODE ORANGE にも通じる凶悪電子のハードコア “Broken Vision Rhythm”, DEFTONES の夢見心地を運ぶ “Two-way Mirror”, シューゲイズとメタルのジェットコースター “New Faces In The Dark”, RADIOHEAD から連なる英国の叙情 “Is It Really You?” と、シームレスに色彩と物語を繋ぐレコードは実際、「一度ハマると全てを奪っていく」ほどの中毒性を誇ります。
途中で席の立てない映画、セーブの出来ないゲーム、プラウザの閉じられない SNS。何であれ、感情の灯火に魂を掴まれれば最後、耳を離すことは不可能です。
今回弊誌では、ベース/ガテラルの Feisal El-Khazragi にインタビューを行うことができました。「実際、日本という国は息をのむほどだった。人々の感性は美しくて、共演した日本のバンドはその情熱を持って自らの作品にアプローチしているようだったね。」 どうぞ!!
LOATHE “I LET IT IN AND IT TOOK EVERYTHING” : 10/10
Jami は Nu-metal を “Underneath” への意識的な影響元としては言及していませんが、ボストンの VEIN など他の新たなハードコアイノベーターと同様に、CODE ORANGE のサンプリングとパーカッションに対する最大級のアプローチを見れば、90年代後半との比較を避けることはできないでしょう。実際彼らは、SLIPKNOT の Corey Taylor を、”The Hunt” のゲストボーカルとして迎え入れ、夏にはKnotfest Roadshow のオープナーを務めます。
「Coley は好きじゃない人たちと時間を無駄にすることはない。俺らも同じことをするつもりさ。」
傍観者は、本質的に商業主義とは相反するハードコアから生まれた CODE ORANGE のよりビッグで、より精巧で、ある意味でよりメロディックなサウンドについてセルアウトの烙印を押すかもしれません。しかし、本物のアートには程遠い、経済的に満たされすぎているという示唆は、相当な名声を獲得した今でも明らかに偽りです。
「音楽をやめて、ウェンディーズで働き始めたほうが稼げるはずさ。」
ドラマー/ボーカリスト Jami Morganはそう嘯きます。しかしそのジョークが真実に思えるほど、彼らは全ての労力を “Underneath” へと注いだのです。
デモとレコーディングを一つのプロセスと捉えた彼らは、そのミッションに丸一年を費やしました。相当に密度の高いデモを完成させた後、バンドはナッシュビルへ降り立ち、1日12時間週7日のハードワークを2ヶ月間続けました。
「おかげでヒップホップのレコードみたいになった。デモと言うよりも、誰かとレコーディングをやるために聴かせる、俺らがミックスした何百ものトラックの集積だったから。
プロデューサーの Nick はさすがに週末は仕事を離れたけど、俺らはアシスタントエンジニアと作業を続けたよ。なぜなら、このレコードのリードの多く、Reba の奇妙なデジタルサウンドはデモの過程で開発されたものだったから、ミックスでダイレクトに録音したからね。ヘヴィーな音楽がより芸術的になろうとすると、多くの場合、その即時性が失われてしまう。全てが連携する必要があるんだ。上手く1つの大きなオーケストラに組み込むことができたね。」
さらに長年の協力者 Will Yip とフィラデルフィアで追加の作業を行い、2人のプロデューサーとの仕事を終えた後もハードディスクをピッツバーグまで持ち帰り何ヶ月も調整を続けたのです。
キーボードを担当する Eric “Shade” Balderose のアルゴリズムはその印象度を飛躍的に高めました。2017年の “Forever” においてもインダストリアル、エレクトロサウンドは確かに鳴り響きましたが、あくまで不気味な装飾の一つとして脇役の領域を超えることはありませんでした。
しかし “Underneath” において彼の創造するプログラミングドラムトラック、ホラーサウンドトラック、アトモスフェリックなシンセサウンドはボーカルや他の楽器と同等の不可欠な存在であり、主役でしょう。Eric はエレクトロニカのプロダクションを自身で学ぶと同時に、NINE INCH NAILS, MARILYN MANSON のコントリビューター Chris Vrenna をプログラミングアシスタントに起用しクオリティーを著しく高めました。
Jami は当時の Eric について、「彼は文字通り心を失いそうなほど消耗していた。誰かと共に働く必要があったんだ。」と語っています。
エレクトロの波に加えて、Jami と Rega が散りばめた様々なボーカルスタイルは、時に重なりながら目覚ましきコントラストを生み出しました。故にレコードには、滑らかに風変わりなハーモニー、スリリングなブレイクダウン、果てはシュレッドギターまで多様な世界が広がることとなりました。
そのパズルのコピー&ペーストは瞬く間に行われるため、音楽的要素や演奏者の解読さえ時に難解です。しかし音楽の方向感覚を失わせる CODE ORANGE の挑戦状は完全に意図的であり、細心の注意を払って構築したレコードの二分概念をまざまざと象徴しています。
「俺は全ての楽曲に二重の意味を持たせたかったんだ。歌詞の一行一行からアルバムのストーリー、さらに他の3枚のレコードとの繋がりまでね。」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HOZOJI MATHESON-MARGULLIS OF HELMS ALEE !!
“And These Days, Pretty Much Every Single One Of My Best Female Friends Is An Extremely Talented And Active Musician. Many Of Them Play In Heavy Rock Bands. So The Feeling Of Imbalance Is Shifting To An Equilibrium In My World. I Can Say With Confidence That I Feel Accepted And Valued By The Male Musicians In My Community.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHASE MASON OF GATECREEPER !!
PHOTO BY PABLO VIGUERAS
“Gatecreeper Started When I Met Our Drummer, Matt, And Discussed Our Shared Love For Old School Death Metal. We Both Talked About Dismember And Decided To Start a Band. Our Formula Has Always Been The Same Since The Beginning.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXIS PAREJA OF THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU !!
“Our Music Similarly Doesn’t Follow The Traditional Form Or Structure Of Most Music Out There. Overall It’s Fairly Volatile And Can Take Off In Any Direction At Any Given Time. We Have Always Enjoyed Exploring The Vast Possibilities Of Music And Prefer Not Be Cornered Into One Genre.”
DISC REVIEW “WILD GODS”
「僕たちの音楽は全体的にかなり不安定で、いつでもどの方向にでも進路を取れる。常に音楽の広大な可能性を探求して楽しみ、一つのジャンルに追い詰められることを望まないんだから。」
トワイライトゾーンのディストピアな未来において、画一化された “No.12” の外観を頑なに拒む伝統の破壊者 THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU。デスメタル、ハードコア、スクリーモ、プログレッシブ、ワールドミュージック、ミニマル、ジャズといった幾千もの奇妙な混合物に数学的溶媒を注いだマスコアのパイオニアは、類稀なるライブのカタルシスを伴って00年代に君臨した怪物でした。そう2010年に人知れずその姿を消してしまうまでは。
ボーカリスト Jesse の言葉を借りれば失われた10年は “成長のための必要悪”。そして、インタビューに答えてくれたギタリスト Alexis に言わせれば “成長を実証” するためシーンへと帰還したモンスターは復活作 “Wild Gods” で拡散と成熟を同時に見せつけています。
「僕たちの音楽は常に変化を遂げている。僕の目標はつまり自分たちの過去を繰り返さないことなんだ。アルバムをいくつかリリースして、休息し、今はチャレンジ出来る。リスナーがオープンマインドで、ジャンルなど気にせずただ音楽に身を任せてくれたら嬉しいね。」
THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU は確かに変化と共に進んできました。妥協を許さないアグレッシブなメタルコアとグラインドの紅い薔薇 “Put On Your Rosy Red Glasses” を出発点に、ポストハードコアを可能な限り最も苛性で迷路のような反復へ誘う “Grind. Sad. Nuclear”。 さらに “メランコリー” にヘヴィーとキャッチーを両輪に据えた出世作 “Mongrel” に、”ノン・メタル” な冒険を推し進めた “Worse The Alone” まで、ポリリズムと数学者の威厳を宿した “Polymath” の称号を手にしつつも、彼らは画一的な場所からは程遠い多種族のキメラとして常に保守、伝統へと挑んできたのです。
「確かにアルバムにはコンセプトがあるね。僕たち自身、そして自然界に纏わる現在の問題を反映しているんだよ。」
隠遁した10年の間に顕となった世界を覆う黒い雲。歌詞を書き上げた Jesse はこのアルバムがフィクションのように非常識極まる地球を宇宙人へと紹介する広告で、子供を虐待する司祭、司祭を守る教会、女性より優れていると信じる男性、動物を虐殺する人類といった “Wild Gods” をどうぞ見に来て下さいと嘯きます。そうしてバンドはその闇に、鋭き牙はそのままに咲き誇る多様性の嵐で贖うのです。
狂気とスリルに満ちた世の夜会を彩るサルサのダンス “Gallery of Thrills” はエクレクティック極まるアルバムの華麗なる招待状。エレクトロシンセとストリングスのサウンドスケープが過去と未来を行き来する “Ruin the Smile”、ラウンジジャズのアトモスフィアとメタルコアの残虐、プログレッシブの複雑がいとも容易く噛み合った “Raised and Erased”、サンバやボッサのメタリックな嘶き “Tombo’s Wound”。そうした多種多様な景観の中でも、テンポやムードは全て計算の下で刻々と移り変わり、さらに音の表情を増していくのですから驚きです。
“Ease My Siamese” が象徴するように、Jesse の囁き、荘厳に歌い紡ぎ、泣き叫ぶボーカルレンジがもたらすエモーションの振れ幅も絶妙に豊かで、フラメンコを基にした “Of Fear” では妻の Eva Spence (ROLO TOMASSI) と極上のデュエットまで披露しています。そうしてアルバムは、”Interspecies” のシロフォンとストリングスで異種間交流のロマンを運んだ後、ラテンのリズムと言語で究極の破滅をもたらす “Rise Up Mountain” で幕を閉じるのです。
2016 年に THE DILLINGER ESCAPE PLAN が活動を終えてから3年。CAR BOMB の新作と共鳴しながら “Wild Gods” は再びマスコアの時計を動かし始めます。今回弊誌では、Alexis Pareja にインタビューを行うことが出来ました。「MONO, envy, Melt-Banana みたいな日本のバンドはライブや音源を楽しんでいるよ。それにジャズの世界でも、上原ひろみ、福居良みたいな驚異的ミュージシャンがいてインスパイアされるね。」 昨年、来日も果たしています。どうぞ!!
THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU “WILD GODS” : 9.9/10