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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FATES WARNING : THEORIES OF FLIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RAY ALDER OF FATES WARNING !!

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The Pioneer Of Prog-Metal, Fates Warning Returns With Modern & Emotional New Records “Theories Of Flight !!

DISC REVIEW “THEORIES OF FLIGHT”

Prog-Metal のパイオニアとして歴史に名を刻む、US 出身の4人組 FATES WARNING が新たな名作 “Theories of Flight” をリリースしました!!1986年に “Awaken The Guardian” でジャンルを確立して以降、常に進化を続けてきたバンドの凄みがここにはあります。
2004年からしばしの休息の後、前作 “Darkness in a Different Light” で強靭な新ラインナップと共に素晴らしい帰還を遂げた FATES WARNING。”Theories of Flight” でも “Darkness” で提示した、経験とモダンの融合は見事に生きています。インタビューにもあるように、Jens Bogren を起用したことからも、彼らの現役感、モダンなサウンドに対する拘りが伝わりますね。
実際、アルバムは “From The Rooftops” の RIVERSIDE を思わせるエモーショナルなギター、ボーカルと、アトモスフェリックで空間を意識した現代的なサウンドで幕を開けますし、”SOS” で強調されている陰鬱で、ダイナミズムと浮遊感を感じさせるオルタナティブなアプローチはモダンプログの巨匠 Steven Wilson が PORCUPINE TREE で行っていたチャレンジと通じます。
DREAM THEATER や QUEENSRYCHE といった Prog-Metal の先駆者たちが、その最新作でどちらかと言えばコンサバティブで “Back-to-Roots” な音楽を提示している事実を考慮すれば、FATES WARNING が実に挑戦的でタフなバンドであることが伝わりますね。
また、勿論、アルバムは彼らのトレードマークである、テクニカルなパッセージ、タイムチェンジ、スキルフルな演奏でも満たされていますが、それは作品を彩る一要素でしかないような気がします。中心に据えられたのはあくまでも、”Seven Stars” “White Flag” に象徴されるような、メランコリックでメロディアスなボーカルライン、耳を惹くフック、そしてキャッチーなコーラス。そしてその部分こそ、この偉大なバンドが新ラインナップを得て遂に達成した課題なのかも知れませんね。
アルバムのハイライトは、元々は作品のタイトルだったという、”The Ghost of Home” でしょう。Jim Matheos の手による10分間の大曲は、彼の幼少期の体験を元にしています。9年間で8回の転校を経験し、”Home” と呼べる場所の無かった Jim のノスタルジアとリグレットが楽曲に込められているのです。
ラジオのノイズに導かれ、Ray の優しいボーカルと Jim の暖かなアルペジオが過去への扉を緩やかに開くも雰囲気は一転。奇数拍子をタイトにグルーヴィーに刻むベテラン Joey Vera と Bobby Jarzombek の際立った仕事がアグレッシブなヘヴィネスを創出すると、バンドはリスナーたちをもそれぞれの過去へと連れ去り、それぞれの “Ghost” と対峙させるのです。ノスタルジックなタイトルトラックをポストスクリプトとしてアルバムも締めくくる FATES WARNING 史上最も野心的な1曲は、波打つような音楽のバラエティーと豊かなエモーションをリスナーへと届けるでしょう。
今回弊誌では、さらに表現力を増したようにも思えるボーカル Ray Alder にインタビューを行うことが出来ました。バンドは今年、名作 “Awaken The Guardian” リリース時のラインナップでリユニオンショーも行っています。どうぞ!!

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FATES WARNING “THEORIES OF FLIGHT” 9.5/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUBROSA : FOR THIS WE FOUGHT THE BATTLE OF AGES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH REBECCA VERNON OF SUBROSA !!

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Minnesota Based Dramatic-Doom Quartet, SubRosa Has Just Released Beautiful, Magnificent Masterpiece “For This We Fought the Battle of Ages”!!

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DISC REVIEW “FOR THIS WE FOUGHT THE BATTLE OF AGES”

ソルトレイクシティの Dramatic-Doom マスター、SubRosa が自身の最高到達点 “For This We Fought the Battle of Ages” をリリースしました!!一世紀も前に書かれた SF ディストピア小説にインスピレーションを得て制作されたアルバムは、バンドのアイデンティティーである Dramatic-Doom のスケールを一層高めた、様々な音楽ファンに愛されるマイルストーンとなるでしょう。
SubRosa は Doom Metal バンドには珍しく、女性ボーカル Rebecca Vernon のミスティックな歌唱を中心に据えています。加えて、Sarah Pendleton と Kim Pack のダブルヴァイオリンとアディショナルボーカルが唯一無二の美麗な Doom を創出しているのです。
ALCEST や DEAFHEAVEN を見れば分かる通り、近年、メタルに “Beauty”, “Atmosphere” を持ち込む、才気溢れるバンドが注目を集め、シーンの限界を押し広げていますが、SubRosa のユニークなラインナップが生み出す手法、冒険、マジックは中でも際立っていると言えるでしょう。
インタビューにもある通り、”For This We Fought the Battle of Ages” はロシアの反体制活動家 Yevgeny Zamayatin の著書 “We” に触発された作品です。当時のソヴィエト初期社会主義時代の、閉塞された状況を描き揶揄したディストピア小説は、しかし、政府による管理、監視、支配という、実は現代社会が抱える問題に読み解くことも可能です。SubRosa はその命題を、人生、死、自由、愛といったテーマを与えた楽曲を通して、エピカルに、ドラマティックに、そしてドゥーミーに描いているのです。
アルバムオープナー、15分半のエピック、”Despair Is a Siren” は深化したバンドを象徴するような1曲です。Doom という特性上、勿論、長くなりがちな楽曲ですが、しっかりとストーリーやシーンを描写する彼女たちにとって、この長さは意図してデザインされた SubRosa’s Way。
静寂が支配するイントロとラウドで実験的なパートの対比が生むボリューム、テンポのダイナミクス、見事にレイヤーされたトリプルボーカルの魔術、そしてデュエットの如くメロディーとカウンターメロディーを行き来する、複雑で美麗なボーカルとヴァイオリン。バンドのトレードマークとも言える要素が、寄せてはは引く波のように揺らぎつつ、リスナーへと届きます。同時に、六拍子とリズムにフォーカスしたディストーションギターが交わり流れ出すカオスの潮流は、SubRosa が NEUROSIS 以来脈々と繋がる Experimental Metal の落胤であることを主張していますね。
アルバムの中心に据えられた “Black Majesty” も同様に15分を超える大曲。東洋的とも感じられるエスニックでエモーショナルなヴァイオリンが先導する、プログレッシブで極上の展開美を誇るこのエピックにおいて、Rebecca は “Isn’t it beautiful?” とリスナーに問いかけます。その1節、歌声からは “Doom Metal だけど美しいでしょ?” という自負心、アイデンティティーが強烈に伝わりますね。
後半の BLACK SABBATH meets GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR とでも形容したくなるパートでは、リズム隊を中心に、群を抜いたバンドアンサンブルを聴かせることも記して置くべきでしょう。
また、”Il Cappio” では Rebecca の多彩な一面を覗かせます。バンジョーと共に紡がれるリリックは何とイタリア語。囁くようにスイートなトーンで歌う新しいアプローチにより、陰影を帯びた切なくもフォーキッシュな楽曲は、続く “Killing Rapture” の完璧なプレリュードとして機能していると共に、作品の素晴らしいアクセントとして色を添えています。
ドラマティックでプログレッシブ。”美”にとことんまで拘り、”戦い”抜いた野心的な “For This We Fought the Battle of Ages” は、まさにモダンメタル、Experimental Metal, Post-Doom / Sludge の最新型、金字塔として、凛然と輝く名作に仕上がりました。今回弊誌では、バンドの創立メンバーで、ボーカル/ギター、無数の声を使い分ける才女 Rebecca Vernon にインタビューを行うことが出来ました。日本初取材です!どうぞ!!

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SUBROSA “FOR THIS WE FOUGHT THE BATTLE OF AGES” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KANSAS : THE PRELUDE IMPLICIT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PHIL EHART OF KANSAS !!

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Legend Is Back!! The Throne Of US Prog Rock, Kansas Has Just Released Their New Masterpiece “The Prelude Implicit” For The First Time In 16 Years !!

DISC REVIEW “THE PRELUDE IMPLICIT”

US Progressive Hard の始祖にして、アメリカにプログロックを根付かせた英傑 KANSAS が何と2000年以来16年振りの新作 “The Prelude Implicit” をリリースしました!!
オリジナルメンバー、シンガー、メインソングライター、つまりはバンドの顔であった Steve Walsh の脱退と、3人の新メンバー加入を経てリリースされた作品は、新たな生命を得たかのような瑞々しさと自信に満ちています。
新しいフロントマン/キーボーディスト、Ronnie Platt の歌唱は、間違いなく作品に強い生命力を与えています。映画 “Rock Star” のように、全く無名だった Lombard のカバーバンドのシンガーは、突如、自身も敬愛するプログレジェンド KANSAS のフロントマンに抜擢されました。そして、JOURNY の Arnel Pineda のように、そのチャンスを見事ものにしたのです。
「僕のゴールは Steve の代わりになることじゃないよ。それは誰にも不可能だからね。だけど、KANSAS の品位を保っていく責任はあるんだよ。」と語る彼のパフォーマンスは、Steve へのリスペクトを提示しながらも、若さと推進力を伴い実に魅力的。
特に、”The Unsung Heroes” での歌唱は傑出しています。インタビューでも語ってくれたように、国のために死んで行った戦士たちへの鎮魂歌は、普遍的なアメリカンシャッフルを、中間部のギター/ヴァイオリンのアンサンブルが素晴らしいとは言え、ほぼ歌唱のみで名曲の域まで高めているという点において、JOURNY の “Lovin’, Touchin’, Squeezin'” と通じるものを感じます。発する極上のエモーションと、凄まじいレンジのハイノートは Walsh の代役以上の個性を間違いなく発揮していますね。
新ギタリスト Zak Rizvi の貢献にも触れておくべきでしょう。共同プロデューサー、共同ライターとしてもクレジットされた彼の才能は、今回インタビューを受けていただいた Phil と2人きりとなったオリジナルメンバーで、長年バンドを支えてきた隻眼のギタリスト Rich Williams をも充分に刺激したようで、”The Prelude Implicit” では、”Masque”, “Leftoverture” 期のようなスリリングなリフを存分に味わうことが出来ますね。
“Visibility Zero” にはまさにその成果が結実しており、こちらも新メンバー、David Manion がもたらすプロギーなハモンドサウンドとギター、そして勿論 KANSAS を象徴する楽器、ヴァイオリンのトリプルデュエルが無上のスリルを生み、70年代中期の KANSAS をイメージさせつつ、よりヘヴィーな現在のサウンドを提示しています。
さらに、プログレッシブという観点から見れば、8分の大曲 “The Voyage of Eight Eighteen” は KANSAS のプログサイドを象徴する楽曲です。多数のマルチプレイヤーが存在することで可能になる濃厚かつ重厚なサウンド、プログロックらしい変拍子やキメの美学、そしてかつてのユーロプログに対するUSからの憧れが、ヴァイオリンを使用したフォーキッシュなメロディーとして表層化した結果、あの “The Pinnacle” を超えるような新たな名曲として仕上がりました。現役プログロックバンドとしての矜持を見事に示したと言えますね。
勿論、KANSAS と言えば、”Carry On Wayward Son” や “Dust In the Wind” のような POP センスも重要な1面ですが、今作はボーカルメロディーがアルバムを通してカラフルかつ非常に充実しており、コンパクトな “Summer” はキャッチー極まりないメロディックハードソングですし、”Crowded Isolation” の哀愁も深く胸に染みます。
傑作 “Leftoverture” 40周年に、堂々たる王者の帰還です。Anderson / Stolt の “Invention of Knowledge” と双璧を成す、今年の Masterpiece of Prog Rock だと信じます。今回弊誌では、ダイナミックなドラミングで作品のエンジンとなった、オリジナルメンバー Phil Ehart にインタビューを行うことが出来ました。どうぞ!!

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KANSAS “THE PRELUDE IMPLICIT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KAYO DOT : PLASTIC HOUSE ON BASE OF SKY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOBY DRIVER OF KAYO DOT !!

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US Avant-Garde / Experimental Icon, KAYO DOT Has Just Released Neo-Futuristic landscape Record “Plastic House On Base Of Sky” !!

DISC REVIEW “PLASTIC HOUSE ON BASE OF SKY”

Realising Media による招聘で、先日初の日本ツアーを行った、US Avant-Garde / Experimental の旗手 KAYO DOT が新たな傑作 “Plastic House on Base of Sky” をリリースしました!!
バンドの頭脳、Toby Driver の溢れる才能故に、2度と同じ方向性のアルバムを作らないなどと称される KAYO DOT。 “Plastic House on Base of Sky” はしかしながら、前作 “Coffins on Io” の New Wave / Art Pop サウンドをある程度引き継ぎながら、様々な点でより深化を遂げた高いレベルの作品に仕上がりました。
アルバムオープナー、”Amalia’s Theme” は作品を象徴するような楽曲です。冒頭のレトロウェーヴなシンセサイザーサウンドは確かに80年代の New Wave を想起させます。David Bowie の世界観を感じる場面もあるでしょう。とは言え、複雑なリズムを伴って未来を奏でるそのコンポジションは、例えば DEPECHE MODE などと比較するよりも、現代のより先進的な ULVER のようなアーティストと比べる方がしっくり来るように思えます。
インタビューで Toby は、アルバムが日本が誇るテクノポップの巨匠、平沢進さんの強い影響下にあることを公言していますが、同様に日本出身のアーティスト 上田風子さんが手掛けた独創的なアートワークとも相俟って、ネオフューチャーなサイバーパンクワールドを確立しています。
ビートさえ消滅するような実験的混沌 “All The Pain In All The Wide World” を経てアルバムのクライマックスは “Magnetism” で訪れます。型破りで JAZZ の如くスウィングする変拍子の上を、キーボードサウンドとシンセパターンが幾重にもレイヤーされ近未来感を演出します。憂いを帯びた Toby のメロディーライン、歌唱は実に見事で、これはアルバムを通して言えますが、彼の少しひねくれたポップセンスが炸裂しているようにも思えますね。
ドリーミーでシルクのようにレイヤードされたキーボードサウンドは、勿論、アルバムの根幹を成していますが、それはアルバムに Toby 以外にも2人のキーボードプレイヤーが参加していることを考慮しても、現在彼の興味の中心であることは明らかでしょう。Toby はキーボード、ギター以外にもクラリネット、チェロ、ダブルベース など様々な楽器をこなします。そこに、Daniel Means, ギターもプレイする Ron Varod, という2人のキーボードプレイヤー と異次元のドラマー Keith Abrams が加わることで、KAYO DOT は少人数でシンフォニーを奏でる類稀な集団へと変貌しているのです。
勿論、”Hubardo” で見せたような傑出した Doom / Metal 要素と、彼のオリジナリティーの融合を懐かしむファンも多いでしょう。しかし、インタビューで “僕は本当に、メタルシーンだけに限定されたくないんだよ” と断言したように、彼の才能は1つのジャンルに留まることを許しません。そして今回の冒険も、行先は違えど素晴らしい旅となっているように感じましたよ。
今回弊誌では Toby にインタビューを行うことが出来ました。有難いことにこれで3度目の登場です。どうぞ!!

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KAYO DOT “PLASTIC HOUSE ON BASE OF SKY” : 9.5/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ASTRONOID : AIR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRETT BOLAND OF ASTRONOID !!

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Five Piece From Massachusetts, ASTRONOID Has Just Released Their Phenomenal Debut Full-Length “Air” !! “Dream Thrash” Reaches New Realm Of Metal Music !!

DISC REVIEW “AIR”

ミュージックシーンには、時にリスナーの想像を遥かに超えて、ジャンルの壁を平然と、無慈悲なまでに叩き壊すような存在が現れます。マサチューセッツを拠点とし、”Dream Thrash” を指標する5人組 ASTRONOID はまさにそういったバンドでしょう。彼らが Blood Music からリリースしたデビューフルレングス “Air” は、メタルシーンのトレンドを左右しかねないほどの傑作にして重要作となりました。
Black Metal に新たな要素を加えた Post-Black と呼ばれるジャンルが注目を集める、昨今のメタルシーン。多幸感を伴うアトモスフィア、Shoegaze 要素を融合させた ALCEST, DEAFHEAVEN、WOLVES IN THE THRONE ROOM, 実験的な Math / Prog 要素を果敢に取り入れた KRALLICE, LITRUGY は間違いなく Post-Black シーンのフラッグシップだと言えますね。
ASTRONOID はその両輪、 Shoegaze, Math / Prog 要素のみならず、Thrash Metal, Prog, Post-Rock, Power Metal, Dream Pop など実に多様なジャンルをミックスし、”Black Metal の最終形態” とでも表現したくなるような新しい音楽を生み出したのです。
“Up and Atom” は彼らの革新性を象徴するような1曲です。基本的には ALCEST のような Post-Black のフォーマットに適応した楽曲は、しかし冒頭から独自の顔を見せてくれます。キーワードはボーカルハーモニー。幾重にもレイヤーされた天上の歌声、ファルセットが紡ぐ極上のメロディーはリスナーをユートピアへと誘います。MEW の緻密に構築された幻想世界を思い出すファンも多いでしょう。時にブラストビートをも織り交ぜた、アグレッシブでテクニカルなバックの演奏との対比、マッチングの妙はアルバムを通して存在し、 ASTRONOID を”ネクストレベル”のバンドへ引き上げています。
さらに、中盤に用意された、あの HELLOWEEN を想起させるような、Power Metal 的展開はショッキングとさえ言えますね。なぜなら、モダンメタルバンドがこういった明白なメタルらしさをアピールする機会はほとんど無いからです。ツインギターハーモニーやアルペジオを多様したこのパートは、違和感なく楽曲に溶け込み、トレモロリフへと繋がりながら見事なドラマティシズムを演出していますね。
続く “Resin” も傑出した楽曲で、ボーカルの”壁”とでも形容したくなるような荘厳なるハーモニーは Devin Townsend の遺伝子を引き継いでいるようにも感じます。音の”壁”はボーカルだけではありません。シンガーでマルチプレイヤーの Brett を加えたトリプルギターとベース、4本の弦楽器が創出する、美しくも圧倒的なサウンドウォールは壮観で、心から生で体感してみたいと思えますね。
一方、タイトルトラック “Air” は比較的ストレートな “Up and Atom” と比べて実験的な一面を覗かせます。思わずカウントしたくなるマスマティカルな構成はブルックリンのシーンを意識しているようにも感じました。
さらに、プログレッシブという見地からみれば、”Obsolate” は明らかに CYNIC のリフワーク、浮遊感を独自の方法で体現しており、後半のボコーダーから難解なギターソロへと続くパートは彼らのチャレンジが身を結んだ瞬間だと言えるでしょう。
51分間のシネマティックなドリームスケープは、多幸感と希望に満ち、ポップさの限界までプッシュしながら、アグレッションと実験性をも多分に盛り込んだ、Black Metal のマイルストーン的な作品となりました。個人的には今年のベストアルバムであると確信しています。
今回弊誌では、バンドの中心人物、ボーカル/ギター担当の Brett Boland に話を聞くことが出来ました。間違いなく近い将来、大ブレイクするバンドです。日本から火が着けば嬉しいですね。尚、作品は下記の Blood Music Bandcamp から Name Your Price でダウンロード可能です。どうぞ!!

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ASTRONOID “AIR” : 10/10

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WORLD PREMIERE : “PART 16: MOUNTAIN OF FLAMES (TEST MIX)” 【ANOVA : DIYU】


WORLD PREMIERE: NEW SONG!! “PART 16: MOUNTAIN OF FLAMES (TEST MIX) OF ANOVA !!

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PROG / MATH METAL MEETS ELECTRONICA !! AnovA ARE NOW WORKING ON A NEW RECORD “DIYU”!!

日本人ギタリスト Yoshiaki Nishite さん率いる インターナショナルプロジェクト AnovA。彼らの Prog / Math Metal に Electronica, Classical, World Music を融合させた独自の音楽性はモダンプログシーンにおいて一際異彩を放っていますね。バンドは現在 3rd Album “Diyu” のリリースに向けて鋭意制作中。今回弊誌ではアルバムからオリエンタルな佳曲 “Part 16: Mountain Of Flames” のテストミックスを公開です!
MESHUGGAH 由来のヘヴィーグルーヴ、幾重にもレイヤードされたシンセサウンド、ピアノの美しい音色が東アジアの仏教的な思想と調和した見事な楽曲だと感じました。Yoshi さんからのメッセージも届いていますよ。

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【MESSAGE FROM YOSHI】

この楽曲が収録されるであろう”Diyu”というアルバムのコンセプトは、Luke(Ba)が3年前にDavid(Vo)と始めたプロジェクトから始まっています。
近いうちにリリースを予定している3rdアルバム”Diyu”には、完全にイチから作った楽曲が大半ではありますが、この楽曲「Part16: Mountain of Flames」は実は3年前からあった曲なのです。(←最近知りました。。)
その曲を、より自由に、より自分たちらしく、アイデアをみんなで入れてアレンジしていった結果、原型を留めないくらい曲が変貌してしまいました。。
とはいえ、今のAnovAらしさを表す象徴的な曲になったので、「アルバムリリースまで放置しておくのはもったいない!」ということで、Test Mixではありますが、先行配信しちゃおうということになりました。
AnovAは「まだライブすらしたことが無い変なバンドだ」と思われるかもしれませんが、時にはゲームにはまりこんだり、時には音楽について熱く語り合ったりしながら、実験的で新しいもの、どんどん進化する音楽を目指しつつ、仕事の合間を縫いつつ、趣味として気ままに頑張っている音楽プロジェクトです。
今月、AnovAは3周年を迎えるのですが、色々と今後の展開を見据えて、さらに新しいことや実験的なことに取り組んで行く予定です。ひとまず、「変なバンドだなー」くらいに覚えていただければ幸いです!

YOSHI

AnovA Bandcamp Page

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