EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHNAR HÅLAND OF IN VAIN !!
Norwegian Progressive Extreme Metal Outfit, In Vain Has Just Released More Polished, More Varied, And More Intelligent Dynamic New Chapter “Currents” !!
DISC REVIEW “CURRENTS”
闇深きノルウェーの森から獰猛なる知性を叫喚する、プログレッシブエクストリームの至宝 IN VAIN がシーンの “潮流” を左右するマイルストーン “Currents” をリリースしました!!神々しきメランコリーと邪悪なブルータリティが融解するその奇跡の眺望は、古の摂理に贖ってリスナーを魂の冒険へと誘います。
IN VAIN にとって、前作 “Ænigma” における Jens Bogren との邂逅は、運命にして僥倖でした。暗騒と調和を司る音響の魔術師との出会いは、バンドに備わる神秘のメロディーや豊潤なコンポジションを一際研ぎ澄まし、多様で濃密なプログレッシブワールドへの扉をしめやかに開いたのです。
鍵盤奏者でクリーンボーカルの Sindre Nedland は “Currents” を “キャッチーでインテンスに満ち、そして普通ではない” レコードだと評しています。実際、バンドは “Ænigma” でついに発見したバンドの個性、対比と実験が生み出す魔法の緊張感を “Currents” で決定的なものへと昇華し、エクストリームメタルの頂きに鋭く光る知性の剣を突き立てたと言えるでしょう。
アルバムオープナー、”Seekers of the Truth” はバンドのルーツであるエクストリームサイドを探求したリフの覇道。ギターチーム Johnar Håland と Kjetil Domaas Petersen の繰り出す魔手は、プログレッシブメタルコアの猟奇性、ブラックメタルの中毒性、メロディックデスメタルの即効性、そして流麗で夢見るようなプログロックのリードプレイを操り、Andreas のスクリームを纏って怪しく疾駆します。
Johnar はアルバムのテーマである “潮流” について 「人々はまさに大陸や国境、さらに世代をも越えて移動しているんだよ。つまり、文化は融合しているんだ。」 と語ってくれました。米国、英国、北欧を股に掛けるワイドな “真実の探求” は、この多様な作品のオープナーに相応しい説得力を誇っていますね。
一方で、”Soul Adventure” はバンドのエセリアルな一面に特化した荘厳の極み。シャープでマスマティカルなリフワークは、ノルウェーに心酔する Matt Heafey のボーカルとも確かにシンクロし、重なり合うコーラスを携えて ENSLAVED にも匹敵する神々しきエピックフィールドを創造しています。
全面参加を果たした LEPROUS のドラマー Baard Kolstad の実力には今さら触れるまでもないでしょうが、それでもコーラスの最中に突如倍テンでブラストをお見舞いする迫真の瞬間には才能の煌めきを感じざるを得ませんね。
極上の対比で幕を開けたアルバムは、”Blood We Shed” では Johanar が近年バンドはブラックからデスメタルへと接近したと語るように OBITUARY の這いずる邪心と賛美歌を悪魔合体へと導き、さらにアルバムの肝であるハモンドが牽引する “En Forgangen Tid (Times of Yore Part II)” では SWALLOW THE SUN の持つドゥームの美意識を70年代のプログ性と溶融しながら対比の頂点 “Origin” まで、劇的なエクストリームミュージックを奏で続けるのです。
アルバムは7分のエピック “Standing on the Ground of Mammoths” でその幕を閉じます。シンセ、ストリングス、ブルーズギター、サックスを組み込み織り成すシネマティックな一大ドラマは、バンドの70年代への憧憬が遂に結実した楽曲なのかも知れません。
溢れ出すノスタルジックなエモーションとシアトリカルなイメージは、時代の “潮流” を飲み込み GENESIS の創造性ともリンクしてバンドを遥かなる高みへと到達させるのです。
今回弊誌では、Johnar Håland にインタビューを行うことが出来ました!初めてリリースされる日本盤には、”And Quiet Flows the Scheldt”, “Ghost Path” 2曲のロングエピックが追加され1時間を超えるランニングタイムでこの傑作をより深く楽しむことが可能です。インタビュー後にも、日本のみんなに僕の日本愛を伝えて欲しいと熱く語ってくれた Johnar の熱意が伝わるようなプレゼントですね。どうぞ!!
IN VAIN “CURRENTS” : 10/10
INTERVIEW WITH JOHNAR HÅLAND
Q1: Hi, Johnar! This is our first interview with you. So, first of all, could you tell us about yourself? What kind of music were you listening to, when you were growing up? Who was your musical or guitar hero at that time?
【JOHNAR】: Hello and thanks a lot for taking the time to do this interview with us. We are very happy to be able to update our fans in Japan. When growing up I just listened to whatever was on the charts I guess, until I got involved in a band and developed a more independent and critical taste. I started out listening a lot to grunge, for instance Nirvana which I still believe wrote really good songs. Eventually I moved on to more hard music such as metalcore. I continued down that path and developed a taste for really extreme music, and I consider myself kind of cured, meaning that no music is too extreme for me. For most people I guess it is hard to enjoy extreme music at first, because that is not what our ears are accustomed to. It is kind of like coffee, you need to learn how to appreciate it. For years I have listened to all kinds of music, everything from soft music to the most extreme metal. For me there are only two kinds of music; good and bad.
Q1: 本誌初登場です!まずはあなたの音楽的なバックグラウンドについて話していただけますか?
【JOHNAR】: やあ、まずはこのインタビューに時間を割いてくれてありがとう。日本のファンに近況を伝えることが出来て本当に嬉しいよ。
基本的に僕は、ヒットチャートに上がるものなら何でも聴いて育ったと思う。バンドに関わって、よりインディペンデントで決定的なテイストへと進むまではね。
最初に聴き始めたのは NIRVANA のようなグランジだったね。今でも彼らは本当に良い楽曲を作ったと信じているんだけどね。それから徐々に、メタルコアのようなよりハードな音楽へと移って行ったんだ。
僕はその道を進み続けて、本当にエクストリームなテイストまで辿り着いたんだ。そうして、ある意味僕は熟成したと思っているんだ。なぜなら、もはや僕にとってエクストリームすぎる音楽は存在しないからね。
多くの人にとって、エクストリームミュージックは最初から楽しめるものではないと思うんだ。耳が馴染んでいないからね。つまり、コーヒーのようなものだよ。鑑賞のイロハを学んで行く必要かあるんだ。
そして、ここ何年かは全てのジャンルを聴いているんだ。ソフトな音楽から、最もエクストリームなメタルまでね。エクストリームの旅を終えて最終的に辿り着いたのは、音楽には “良い” と “‘悪い” しか存在しないという境地だったんだ。
Q2: So, I think In Vain started as more primitive Black/Death Metal act, but slowly, you’ve headed towards more prog, melodic direction. What made you change your direction?
【JOHNAR】: I actually believe we had progressive and alternative influences already from the start. For instance, look at how we incorporated the saxophone on the track “In Remembrance” from the EP Wounds (2005). In my opinion, In Vain has had a really wide and large musical playground from the beginning. But you are right that we had more Black metal influences in the past and that we have migrated more towards Death. That might change in the future, who knows?
Q2: IN VAIN はよりプリミティブなブラック/デスメタルから、徐々にそのプログレッシブな領域を拡大して来たように思います。その理由をお話いただけますか?
【JOHNAR】: 実のところ、僕はこのバンドがすでに最初からプログレッシブでオルタナティブな影響を保持していたと信じているんだ。
例えば、2005年にリリースした EP “Wounds” の “In Rememberance” ですでに僕たちはサックスを楽曲に取り入れていたよね?だからこれは僕の考えだけど、IN VAIN は当初からワイドで広大な音楽の遊び場を所持していたと思うんだ。
ただ、君は正しいよ。確かに僕たちは過去によりブラックメタルの影響を多く取り入れていたね。それからよりデスメタルの方向にも進んで行ったんだ。それはもしかしたら、未来にはまた変化するかも知れないね。誰にも分からないよ。
Q3: Let’s talk about your newest record “Currents”! I really love your previous record “Aenigma”, but definitely “Currents” is your milestone, and it’s incredibly eclectic. What was your inspirations, when you were writing this masterpiece?
【JOHNAR】: Thanks a lot for your kind words. There were no particular inspirations. As mentioned previously, I have always listened to a lot of different music, and that is still the case. So I cannot really pinpoint anything specific. In addition I get inspiration from life in general, travels, movies, nature, etc. I spent two weeks in Japan in December 2014 and I believe that also inspired me somehow.
Q3: では最新作 “Currents” について話しましょう。前作 “Ænigma” も素晴らしいレコードでしたが、今作は完璧なるマイルストーンで驚異的にエクレクティックです。まずは作品のライティングプロセスで受けたインスピレーションについて話していただけますか?
【JOHNAR】: どうもありがとう!。特定のインスピレーションが存在した訳ではないんだ。というのも、先に述べたように僕は本当に沢山の異なる音楽をいつも聴いているからね。今回もそうだったんだ。だから特定の何かをピンポイントで指すことは出来ないんだよ。
加えて、僕は人生そのもの、旅行、映画、自然からもインスピレーションを得ているんだ。実は2014年の12月に僕は、日本で二週間過ごしたんだけど、いくらかはその経験もインスピレーションとなったのは確かだね。
Q4: Is there any concept or lyrical themes in this album? What’s the meaning behind the title, and artwork of “Currents”?
【JOHNAR】: Currents is not a concept album in the traditional sense, however there is a topic and a red line in the music, lyrics and artwork. Currents, reflects on the colossal shifts and changes of our time. The present world is characterized by continental flows of people, traditions and cultures. Migration of people across continents and borders. Cultures merging. Dramatic shifts in lifestyle from one generation to the next. These are all currents – movements that distort old patterns, create tensions as well as new opportunities. This topic exists in both the lyrics and the music. However, we touch upon it in an abstract way with a top-down view. It is important for me to clarify that we do not have any direct political views on this matter reflected in our lyrics.
Our music has always been diverse, and this time around more than ever the music felt like a strong current that took the songs in various directions. The lyrics formed its own creative current addressing movements and shifts of our time. It was more the case of the concept finding the album, rather than us looking for a concept for the record really.
Q4: アルバムのコンセプトや歌詞のテーマについて話していただけますか?
【JOHNAR】: “Currents” はトラディショナルな意味でのコンセプトアルバムではないんだ。ただ、音楽、アートワーク、歌詞に共通するトピックは存在するよ。タイトルの “潮流” “現在” とは僕たちの時間の巨大な変化とシフトを反映しているんだ。
現代の世界では人々、伝統、文化が大陸を越えて流れていることが特徴だろうね。人々はまさに大陸や国境を越えて移動しているんだよ。つまり、文化は融合しているんだ。さらに、ライフスタイルは1世代で劇的に変化を遂げる。そういった全てが “Currents” なんだよ。つまり、古いパターンを変化させて新たな機会と共にテンションを作るムーブメントだね。
このトピックは、歌詞と音楽両方に息づいているよ。ただ、俯瞰的に見て抽象的に扱ってはいるけどね。僕にとっては、この話題を歌詞に反映させる上で、直接的な政治観を持たないことを明確にすることは重要だったんだ。
僕たちの音楽は常に多様化していて、今回はこれまで以上に多くの音楽がさまざまな方向で曲を奏でるような強い “流れ” を感じていたんだよ。歌詞は、そのトピックに関連しながら独自のクリエイティブな潮流を形作り、僕たちの時代へとシフトして行ったね。実際、僕たちがアルバムのコンセプトを探したと言うよりも、コンセプトがこの作品を見つけたと言う方がしっくりくるね。
Q5: I feel “Origin” symbolize this record. The comparison between brutal and ethereal, Black/Death metal and atmospheric sound is really amazing! Maybe, “Seekers of the Truth” and “Soul Adventure” also good example of these two aspects. How do you think about the balance between the two?
【JOHNAR】: I agree with you that Origin is a good representation of the album as a whole, as it has a bit of everything and is full of contrasts. Seekers of the Truth and Soul Adventurer are both a bit different, at least the latter being the first song we have ever released with almost no screaming vocals. Hence I do not believe it symbolizes the record as a whole in the same way as Origin.
Q5: “Origin” が持つブルータリティーとエセリアルの対比は作品を象徴しているように思えます。”Seekers of the Truth” と “Soul Adventurer” も楽曲として対となりその二つをより鮮明に比較させますね?
【JOHNAR】: 同意するよ。”Origin” はアルバム全体を表現すれ良い例だと思う。というのも、この楽曲は全ての要素を少しづつ内包し、完璧なるコントラストを描き出しているからね。
“Seekers of the Truth” と “Soul Adventurer” は異なる雰囲気を持った楽曲だよね。特に “Soul Adventure” は僕たちが初めてリリースしたほとんどスクリームを持たない楽曲だからね。だから一曲で “Origin” のようにアルバム全体を象徴しているとは言えないんだけどね。
Q6: In “Aenigma”, there was lot’s of guest players like from Solefald, Borknagar. In “Currents”, clean voice, growl, big chorus, sax also made the record diverse world. Also, “Standing on the Ground of Mammoths” is typically, I feel you sometimes make a moody, good 70’s feelings with hammond, pedal steel, and sax. Could you please tell us about guest line-up and additional instruments this time?
【JOHNAR】: The saxophone is not new to us, as we have used it since 2005. It is also present on Currents as you mention. In addition, we have guests playing Hammond organ, violin, cello, horns, etc and some guest vocalists such as Matt Heafy (Trivium), Simen H. Pedersen and our old bass player Kristian Wikstøl doing hardcore vocals.
Q6: “Standing on the Ground of Mammoths” のサックスは典型的ですが、バンドはゲストや様々な楽器を駆使して時に70年代のムーディーな感覚を楽曲に持ち込むこともありますね?
【JOHNAR】: サックスは僕たちにとって新しい要素ではないよね。2005年から使用しているからね。そして君が指摘するように、勿論 “Currents” でも使用しているよ。
さらには、ハモンド、ヴァイオリン、チェロ、ホーンセクションで多数のゲストを起用しているんだ。それにボーカルでも、TRIVIUM の Matt Heafy, Simen H Pedersen, 後は以前のベースプレイヤー Kristian Wikstøl のハードコアボイスを起用しているんだよ。
Q7: Awesome Jens Bogren produced “Currents” this time again. What do you like him? And does it mean “Currents” is kind of a continuation of phenomenal predecessor “Aenigma”?
【JOHNAR】: Jens Bogrens is a very skilled and popular engineer. I guess his calender is fully booked the whole year these days. He did a great job on our previous record Ænigma, hence we decided to work with him this time around as well. The production is much more organic this time around.
Q7: バンドは今回も Jens Bogren をプロデューサーに起用しています。彼のどういった点が気に入っていますか?
【JOHNAR】: Jens Bogren は非常にスキルが高く、人気のあるプロデューサーだね。おそらく、最近は一年中彼のカレンダーは埋まっていると思うよ。
単純に、前作 “Ænigma” で彼は偉大な仕事を果たしたから、今回も彼を起用することに決めたんだ。今回のプロダクションはよりオーガニックに仕上がっているよ。
Q8: I had an interview with Baard last year. So, I’m really happy to hear Baard played this record, haha. Anyway, your associate acts like Solefald, Borknagar, Leprous, Ihsahn, ICS Vortex are typically, Norway seems to have it’s own metal meets prog sound. What’s your perspective about Norwegian scene, sound, and bands?
【JOHNAR】: Baard has been a guest drummer for us the last year and he plays session drums on the album. He did an amazing job. When it comes to the Norwegian scene I do not believe it is such a big scene for alternative/progressive extreme metal bands. There are some really good ones, but my impression is that most of the scene is still way more weighted in traditional genres like Black, Death and Heavy metal.
Q8: LEPROUS の Baard Kolstad がアルバムではドラムスをプレイしています。その LEPROUS, そして勿論 IN VAIN をはじめとして、SOLEFALD, BORKNAGAR, IHSAHN, ICS VORTEX など IN VAIN と繋がりの深いノルウェーのバンドたちは独自の視点でメタルとプログレッシブを融合させているように見えます。
【JOHNAR】: Baard は昨年から僕たちのゲストドラマーを務めていて、アルバムではセッションドラマーという扱いなんだ。素晴らしい仕事をしてくれたよ。
ノルウェーのシーンについてだけど、僕はここにそこまで大きなオルタナティブ/プログレッシブのエクストリームメタルシーンが存在するとは思わないんだ。勿論、本当に良いバンドもいくつかはいるけれど、僕の印象では、シーンの大半は未だトラディショナルなジャンルに重きを置いているね。ブラックメタル、デスメタル、そしてヘヴィーメタルのようなね。