EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Sgah’gahsowah OF BLACKBRAID!!
“Our Ancestors Have Been Painting Their Faces In This Way For Thousands Of Years, Long Before Metal Existed, So We Honor Them By Painting Our Faces In The Same Ways.”
DISC REVIEW “BLACKBRAID I”
「自然に対する尊敬の念は、僕の人生の中で大きな部分を占めている。だからそれは、僕の音楽にも大きく反映されているよ。僕は自然を敬い、神聖な方法で人生を送れるよう最善を尽くしているんだ。 BLACKBRAID は、日常的に自然を体験する機会に恵まれていない人々に、自然からのメッセージや体験を届ける手助けをする方法なんだよね」
近年、ブラックメタルに携わる者は皆、自身の中から湧き出るテーマや意図を持っているように思えます。反差別、反暴力、反ファシズム。
このジャンルを築いたいくつかのバンドが持っていた右翼的で人種差別的なニュアンスを考えれば、それはまさしく革命的な変化であると言えるでしょう。ただし、BLACKBRAID はそういった新しい波とも少し距離を置いているように見えます。首謀者 Sgah’gahsowah はただ、自身のブラックメタルを聴いて、外に出て、自然と対話してほしいと願っているのです。
「そう、僕はネイティブ・アメリカンだよ。人生の大半をニューヨーク州北部に住んで過ごしてきた。若いころは少し引っ越しもしたけど、長い間この地域、アディロンダックに住んでいるんだ」
Sgah’gahsowah のあり方は、今日の世界に蔓延する絶対悪や政治を無視していると主張する人もいるかもしれませんが、地球の状態や気候問題を見れば、もっとシンプルに、自然の中に身を置いてみることの重要性が伝わるはずです。人生の大半を大自然の中で過ごし、日焼けをし、狩り、釣り、剥製など、スピリチュアルで伝統的な生き方を貫く Sgah’gahsowah。
窓の外には3万エーカーの山々が広がり、今は人里離れた場所で24時間365日自然とつながる彼はただ、ハイキングをしたり、山を見たり、小川で泳いだりすることを知らない人々に、音楽を通してそれを伝えたいだけなのです。大都会の高級ブランドならいくつでも名前を挙げられる人が、鳥の名前や魚の名前は一つも挙げることが出来ない。それは果たして “自然” なのか?Sgah’gahsowah はそんな現実を憂い、自分の見ている世界を音楽によって見せたいのです。そこから、何かが変わるかもしれないと仄かな期待を寄せながら。
「僕たちの祖先は、ヘヴィ・メタルが存在する何千年も前からこの方法で顔にペイントしてきたんだよ。だからこそ、僕たちはメタルをやる時に、先祖と同じように顔にペイントを施すことが誇りなんだ。フルートや他の先住民の楽器を使うときも同じで、こうした伝統を自分のブラックメタルに取り入れることができるのは名誉なことなんだ」
もちろん、自然への尊敬と崇拝は、ネイティブ・アメリカンの祖先を敬うことにもつながります。”Sacandaga” や “As the Creek Flows Softly By” を聴けば、彼がネイティブな楽器の音、そして魂をブラックメタルに受け継ぐことを一切恐れないことが伝わります。同時に、始まりの場所、”Barefoot Ghost Dance on Blood Soaked Soil” のような楽曲では、USBM, 特に WOLVES IN THE THRONE ROOM や PANOPTICON といった自然崇拝のカスカディアン・ブラックに対する憧憬をも隠そうとはしません。敬うべきを敬い、敬意に値しない価値観は捨て去る。さらにその場所からも一歩進んで、郷愁を誘うアコースティック・フォーク “As the Creek Flows Softly By”、そしてアコースティックとエレクトリックの二重奏で相互作用を喚起する “Warm Wind Whispering Softly Through Hemlock” と BLACKBRAID は自身に与えられた “ギフト” を存分に見せつけていくのです。
「ブラックメタルが持つ反キリスト教的な思想に共感するのは確かだけど、自然や闇に対する畏敬の念も大きな部分を占めていて、ブラックメタルは僕の音楽にとって完璧なメディアだと思っているんだ」
WAYFARER, UNTAMED LAND, DARK WATCHER のようなアメリカ西部をテーマとするバンドが活躍する中で、USBM には明らかに先住民の声が欠けていました。それはもちろん、ブラックメタルの根元にあったアンチクライストという考え方が、キリスト教に冷酷に弾圧され抑圧された先住民にとって親和性が高いから。しかし、Sgah’gahsowah はそれでも誰かを責めるよりも、闇や自然を敬っていたいのです。政治は彼にとってあまりにも不純な闇だから。争いからは何も生まれないことを知っているから。
今回弊誌では、Sgah’gahsowah にインタビューを行うことができました。どうぞ!!
“Attack On Titan Was That Both Sides In That Story Believe That They’re Doing Good, But They’re Both Committing Evil And Atrocities. Once I Started Wrapping My Head Around The Concept That Was Going On In Attack On Titan, I Was Like, “Oh, Shit, I Can Do That To This Concept That I’m Writing.”
OF KINGDOM AND CROWN
Robb Flynn は、逆境に慣れているわけではありません。若い頃は、オークランドのストリートで暴力に遭遇し、ドラッグに手を染めたこともありますがそれでも。MACHINE “Fuckin'” HEAD は、多くの人がメタルは終わった、死んだと言っていた90年代初頭のシーンで、頭角を現しました。長年にわたり、彼はバンドの約30年の歴史の中で唯一不変の存在であり、ゆえに内部からの問題、そして外部からの問題に直面し続けています。直近では、2019年のアルバム “Catharsis” が多くの批判にさらされ、その直後、バンドの半数が辞めていきました。
しかし、常に襲い来る逆風の中でも Robb Flynn は背筋を伸ばし、自らの意思を貫いてきました。しばしば、突き刺さる批判という槍の鋒も、結局は彼を駆り立てただけでした。MEGADETH の記事でも触れましたが、あの時代のメタル・アーティスト、そのレジリエンス、反発力、回復力は脅威的です。そうして “ØF KINGDØM AND CRØWN” は、賛否両論のあった前作とは異なり、”The Blackening” 以来、誰もが認める MACHINE HEAD 新たな最高傑作であり、一部の評論家はバンドが息切れしたと考えていましたが、再生の一撃ともなりました。
Flynn がクリーンな歌声を披露する場面もあれば、これまでで最もヘヴィなリフを披露する場面もあり、何よりクリエイティブかつ怒りに満ちています。つまり、このアルバムにはハッキリと、”Robb Flynn を見捨てるのは危険だ” と書かれているのです。
「俺はただブルドーザーで突き進むだけだ。他のことをする資格はないんだ。プランBなんて俺の人生にはないんだよ。これが俺の仕事だ。俺は曲を書き、激しく、超強烈なパフォーマンスを行い、観客を熱狂させる。それが俺の仕事だ。だから、もし今バンドにいるミュージシャンたちの活動状況が変わったとしても、俺は自分のやることをやり続けるつもりだ」
“ØF KINGDØM AND CRØWN” が誕生したのは、通常よりも少しリラックスした雰囲気の中でした。パンデミックの最中も、Flynn は音楽を続けていました。金曜日の夜には、バンドのライブストリーム “Acoustic Happy Hour” に出演し、その後、妻と一緒に過ごす。
「妻と一緒にデートをするようになったんだ。スタジオに行って、”Acoustic Happy Hour” をやって、それから家に帰ってきて、一緒に過ごすんだ。そんなことができるようになったのは、13~15年ぶりかな。子供たちはティーンエイジャーで、携帯電話や PC で自分たちのことをしている。だから、久しぶりにガレージで酔っぱらうようなことができるようになった」
そんなとき、Flynn 夫人は MY CHEMICAL ROMANCE の “The Black Parade” を聴きながらある提案をします。コンセプト・アルバムの制作です。
「俺たちのお気に入りのアルバムで、ずっと聴いているんだよ。コンセプト・アルバムは以前、試したことがあったんだけど、その時はボツにしたんだ!だから妻には、”どうだろう…クソみたいなコンセプト・レコードになるかもしれない。それに、クソみたいなコンセプト・レコードを出すような男にはなりたくない” と言ったんだ」
しかし、彼女は粘ります。”The Black Parade” のストーリーを説明し、”超酔っぱらい” の Flynn はようやく理解し始めます。
「彼女は一曲一曲、歌詞ごとに説明してくれたんだ。それで、”ワオ、これはすごい” と思った。やってみて、どうなるか見てみようと思ったんだ」
Flynn はすでに次の音楽制作に取り組んでおり、作品にもとりかかっていましたが、どのような形になるのか、まだきちんと把握はできていませんでした。
「ラッキーなことに、俺は自分のスタジオを持っているんだ。ボーカルマイクとギターを持ち、ラップトップをセットアップして、一人で通っていたんだよ。ただアイディアを試すだけで、歌詞のアイディアも何もなかったんだけどね。そのどこかで、オープニング・トラックの “Slaughter The Martyr” のイントロを書いたんだ。これがアルバムの終わりかもしれないし始まりかもしれない…みたいな感じで。どこに向かっているのか全然わからなかったんだ」
アルバムのストーリーやコンセプトを Flynn に与えたのは、家族の別のメンバーでした。そもそも、Flynn が意図していたアルバムのコンセプトは古典的な善と悪の戦いでした。しかし、それがなかなか定着しなかったのです。そして、息子たちと一緒にテレビを見ることになります。
「当初、俺のコンセプトはとてもアメリカ的なストーリー展開だった。善玉と悪玉。いい人が勝つ、というような。でも、結局俺はそれに共感できなかったんだ。まるで、言葉を歌うロボットのような気分だった。で、パンデミックのある時期から、子供たちがアニメをたくさん見るようになった。一日中コンピューターに向かっていて、アニメにどハマりしていった。そういえば、俺も子供のころはアニメオタクだった。最初はスターウォーズ・オタクで、フィギュアやデス・スター、ミレニアム・ファルコンを集めてた。それからアニメオタクになり、”マクロス”, “ロボテック”, “Akira” や “宇宙戦艦ヤマト” に夢中になった。息子たちは知らないが、俺は彼らの年齢のころ、完全にアニメオタクだったんだよ!グッズを買って、フィギュアを集め、コンベンションにも足を運んだ。それから、メタルオタクになり、トレーディング・テープや輸入盤を集めるようになったんだ。 レコードが発売される3ヶ月前に “Reign In Blood” を手に入れた。カセットにはまだハイハットのカウントが入ってるんだ。EXODUS の “Bonded by Blood” は発売の6ヶ月前に持っていた。”Pleasures of the Flesh” や “Brain Dead” のブートレグも持っていたし、親父のガレージでブートレグからジャムって、EXODUS の未発表曲をリハーサルしていたんだよ。そうやって、俺たちはメタルにのめり込んでいったんだ。それで、今度は見たこともないような新しいアニメをまた、子供と一緒に見るようになったんだ。衝撃だったよ!」
そして Flynn の頭に浮かんだのは “進撃の巨人” でした。少なくとも、善と悪が単純に割り切れるような作品ではありません。
「”進撃の巨人” を観たことがない人は、とにかく奇妙でサイケデリックで残忍でクレイジーで、とてもクールなストーリーだから、ぜひ見てほしい。子供の頃に戻って夢中になれるよ。しかもストーリーが長いんだ。シーズン2やシーズン3あたりから、”誰がいい人なんだ?誰が悪者なんだ?” となる。もう何が起こっているのかわからないよ。どっちもめちゃくちゃで、どっちも相手を悪だと思ってるんだ。スゲえな!俺にも、自分の物語でできるかもしれない。善人も悪人もいない。どっちも良いことしてると思ってるけど、どっちも恐ろしくて残虐なことをしてるんだ。そう、このアニメの残虐なところが気に入ってる。どんな映画やドラマにも負けないくらいね」
Flynn の視点が変わったのは、これまでこうした書き方の経験がなかったからに他ならないのです。
「俺はこれまで9枚のアルバムで世界について歌ってきた。俺の目を通して、自分に起こった経験、自分が社会をどう見ているかということを歌ってきた。今、俺は、空がいつも赤く染まっているような近未来で、犯罪が多発する荒野に住む人物を通して作品を書いた。そして、この男の最愛の人を殺した、正反対の人物を通して書くことにもなったんだ。アーティストとして、とても刺激的だった。音楽制作をする上で、いつもとは違う頭の使い方ができたし、本当にクールだったよ」
Flynn の頭の中には、作品の絵コンテまでが存在していました。
「グラフィック・ノベルのようなアルバム、という言い方がぴったりだね。子供がマンガをよく読んでいるから、俺も一緒に読んでいるうちにマンガに目覚めてしまったんだよな。絵コンテのアイデアは、俺の頭の中にあって、文字通り、上から下へ、上へ下へとマンガを描き始めたんだ。ディテールにこだわりたかったんだよ。1人目の主人公アレスは最愛の人、アメジストを失い、彼女を殺した者たちに対して殺人的な暴挙に出る。2番目の登場人物はエロスで、母親を麻薬の過剰摂取で失い、落ちぶれる中で、カリスマ的リーダーによって過激化し、自らも殺人を犯し、アメジストを殺した一人となる。歌詞の中では彼らの人生がどのように絡み合っていくのかが詳細に描かれているよ。オープニングの “Slaughter of the Martyr” は、基本的に登場人物のオリジン・ストーリー。アレスは最愛の人を亡くしたばかり。彼が求めるのは復讐心だけ。それが物語の始まりなのさ」
もう隣に Phil Demmel はいませんが、代わりに DECAPITATED の Vogg がいます。MACHINE HEAD にスーパースターが揃った印象もあります。
「Vogg は全く別の次元にいるんだ。彼は正気じゃない。そして、彼らと一緒にツアーをすることができた。パンデミックの前に行った “Burn My Eyes” の完全再現ツアーでは、バンドと一緒に毎晩プレイすることができたんだ。これだけの数のツアーをこなすと、お互いの心を読むことができるようになる。それが大事なことだと思う。パンデミックに見舞われたとき、俺たちはとても頑張っていたから、残念だったね。
ロックダウン中でもビルのオーナーは、俺のスタジオだからということで入れてくれた。だから、しばらくはリフを書いたり、デモを作ったりして、それを彼らに送っていたんだ。メールで送っていたよ。若いデスメタル・バンドを何組か知っているけど、彼らはそうやってレコードを全部作っているんだ。リフをメールして、ドラムのビートをメールして、それからギタリストにメールして、シンガーにメールするんだ。俺は、”よし、これなら俺にもできる” と思ったんだ。それで、”このリフを完成させてくれ” みたいな感じでやり始めたんだ」
MACHINE HEAD 最初のライブから30年が経ちました。
「当時はベイエリアにとってワイルドな時代だった。スラッシュ・シーンの多くが死に絶えていった。ゆっくりと恐ろしい死を迎えていたんだ。METALLICA の “Black Album” やチリペッパーズ、FAITH NO MORE のファンクを真似るバンドばかりだった。それで、スラッシュ・ファンクというのが出てきたんだけど、これはひどいもんだったね。俺たちはただヘヴィに演奏したかったんだ。当時はまだそんなにメタルは聴いていなかった。パンクやハードコアやインダストリアルばかり聴いていたよ」
MACHINE HEAD は再び上昇気流に乗ったように見えます。Flynn をさながらオジーのように、これほどまで頑なに前へと推し進めるもなは何なのでしょうか?
「何年も前に、バスケットボールのマイケル・ジョーダンの言葉を読んだことがあるんだ。”NBAを愛する必要はない。バスケットボールの試合だけを愛せばいい” ってね。音楽ビジネスやそれに付随するクソみたいなこと、政治やクソみたいなことに巻き込まれるのはとても簡単だけど、必要ないことでもある。俺は16歳の時にスラッシュ・メタルを始めたんだ。ベイエリアの悪名高いスラッシュ・クラブ、”ルーシー・イン” でプレイしていた。バックヤードパーティ。友達の親が旅行に行って、友達がパーティーを開くんだ。”リビングルームで演奏するんだ!” みたいな。あとは、教会のコミュニティ・センターで演奏していたんだ。スラッシュが好きで、音楽を演奏するのが好きで、その興奮が好きで、この世界に入ったんだよ。つまり、”メタルをやって超有名になるんだ!”なんて思ったことは一度もない。すごくアンダーグラウンドだった。”Burn My Eyes” をやったときも、”MTVで流されることはないだろう。ラジオで流れることもないだろう。ファンベースを獲得するのは大変なことだけど、一人一人、一生懸命に働いてやっていこう” と思っていた。俺にとっては、それは何も変わっていないんだ」
冒頭で述べたように、Robb Flynn は逆境に慣れているわけではありません。しかし、メタルのエネルギー、経験、そして音楽以外の何ものにも代えがたい感覚が、彼をスウィングさせ続けるのです。そこには、挑戦、あるいは克服を楽しみに変える何かがあるのでしょう。
「俺にとって、音楽はつながりなんだ。俺が育った、人々が楽しんでいるときに作り出す、あの狂ったような、目に見えないエネルギーのね。それこそが俺の生きる糧なんだ。ライブ配信からも、同じエネルギーを得ることもできる。それもまた本物だ。そこにあるんだから。全然違うものだけど。でも、そこにある。それこそが、俺にとっての醍醐味なんだよ。うん、それが俺の生きる道だ」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALASDAIR DUNN OF ASHENSPIRE !!
“What We Wanted To Do Though Was Expand That Observation On Western Class Dynamics, Look Underneath It, And Then Show How Those Underlying Motives And Mechanisms Of Late-stage Neoliberal Capitalism Saturate Every Level Of Society.”
DISC REVIEW “HOSTILE ARCHITECTURE”
「僕たちがやりたかったのは、西洋の階級力学に関する観察を拡大し、その背後を注意深く探り、後期新自由主義資本主義の根本的な動機とメカニズムが、社会のあらゆるレベルに飽和してしまっていることを示すことだった。結果として、労働者階級の劣悪な居住環境は、より広い問題の徴候に過ぎず、僕たちはそのことに注意を促したかったんだ」
大都市に住んでいれば、ホームレスや劣悪な居住環境で暮らす労働者の存在を切り離すことはできません。公園のベンチの真ん中に作られた鉄のレール、日よけの下にあるスパイク、絶え間なく点滅するライトなど、持たざる者に対する “敵対的な建築” は現代の都市デザインの主流となっていて、公共の建築物は一時的なシェルターとなるどころか、多くの人を抑圧しています。
スコットランドの建築メタル ASHENSPIRE は、そうしたモダンで冷徹な建築物を現代社会を観察するレンズとして、富の不平等、階級闘争を取り巻く様々な問題を映し出していきます。2017年の “Speak Not of the Laudanum Quandary” で、これまであまり議論されてこなかった歴史の残虐行為に焦点を当てた ASHENSPIRE。しかし、私たちはそれでもまだ学べず、また同じ過ちを犯しているのでしょうか?敵対的な建築物は、今、この瞬間も、リアルタイムで抑圧の甍を叫んでいます。
「資本主義リアリズムとは、労働者階級や疎外されたコミュニティといった社会から恩恵を受けるべき人々の想像力を制限することで、そうやってアメリカはこの不平等な秩序を維持している。
そうやって労働階級や抑圧された者たちが皆、この世界(後期新自由主義資本主義世界)が可能な限り最高の世界だと信じさせられているから、それを変えるために戦うのではなく、単に抑圧に耐えようとし、それを “世の中の流れ” あるいは “あるべき物事のあり方” として受け流し、最終的に彼らを搾取する側に利益をもたらす態度をとってしまうんだ。このような状況から抜け出すのは大変なことだと思う」
ドラマーで、歌い手でもある Alasdair Dunn の言葉には、無慈悲に断罪された者たちの悲愴や無念が漂っています。”Hostile Architecture” の中心には、抉り取られた魂がボロボロに蠢いていて、それぞれが幻滅のマントラを唱えているような感覚に陥ります。”3ヶ月で貧民街に逆戻り”、”偉大なヤツなどいない。多くのモブが偉大なのだ”、”俺たちは仕事のカルト、カルト労働者だ”…ASHENSPIRE はそうした言葉をハンマーのように扱って、アヴァンギャルドなメタルと共にそのメッセージをリスナーの耳へと叩き込みます。
血のコーラスに研ぎ澄まされた詩を織り交ぜ、感情のクレッシェンドを司り、多種多様な楽器の怒りでフラストレーションを切り裂いていきます。つまり、A FOREST OF STARS との比較はある程度的を得ていて、独自のスパイラル、苛烈でありながら振動するアイデンティティを計算された自信で表現しているのです。
「機能的な建築物であると同時に前衛的な表現であるという点で、僕たちの音を象徴するような物質的な建物はそうそうないと思うけど、ニコライ・ラドフスキー(合理主義運動の魅力的な前衛建築家)が1921年に “コレクティブハウス” “集合住宅” のスケッチを描いているんだ。もし僕たちの音楽が建物になるとしたら、あのような感じになるだろうな」
解散した ALTAR OF PLAGUES のスワンソングと同様に、ASHENSPIRE はポスト・メタルを思わせる設計図でカオスの層を積み重ね、催眠術のような効果をもたらします。ただし、ASHENSPIRE の集合住宅では、無骨で冷淡な”工業的な” 雰囲気よりも、ハンマー・ダルシマーやヴァイオリンの有機的振動で反抗世界が彩られ、最も暗い瞬間を美しくも儚く鳴らしています。つまり、”Hostile Architecture” は、後期新自由主義資本主義下において、都市の文脈で制約された様々な構造の階層と抑圧が再び動き出す方法を探る音響作品なのでしょう。
つまり、この作品は、ブルータリズム、ポストモダン、実用主義的な建築構造からインスピレーションを得ていて、産業革命後の都市の至る所で見受けられる本質的に呪術的で、手頃な価格のコスト削減住宅や、ホームレス対策用の手すりやスパイクを通して、コンクリートで固められた矛盾の不協和音に本来の住むとは、生きるとはの問いを投げかけているのです。
今回弊誌では、ASHENSPIRE の首謀者 Alasdair Dunnにインタビューを行うことができました。「僕が書いていた音楽は、他の多くのバンドが喚起するロマンチックなスコットランド観に反するものだとわかっていたからこそ、まず、スコットランドとの関連を明示したかったんだよ。過ぎ去った時代にグラスゴーのスカイラインを支配した煤と煙を吐き出す煙突、次に、それらの煙突の多くを映し出す、またはそこから発展したように見える高層アパート群を参考にしてね」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOSH CHRISTIAN OF TOXIK !!
“I Think When You Realize You’ve Got a Knack For Something It’s Seductive You Want To Keep Pushing It To See Where Your Boundaries Are. The Expression Is What Carries Us As Artists.”
COVER STORY : MEGADETH “THE SICK, THE DYING…AND THE DEAD!”
“For The First Time In a Long Time, Everything That We Needed On This Record Is Right In Its Place”
THE SICK, THE DYING…AND THE DEAD!”
MEGADETH は復讐と共にある。苦難の度に強くなる。長年 MEGADETH と Dave Mustaine を追い続けたリスナーなら、そうした迷信があながち世迷いごとではないことを肌で感じているはずです。METALLICA からの非情なる追放、薬物やアルコール中毒、Marty Friedman の脱退、バンドの解散、Drover 兄弟を迎えた新体制での不振…実際、厄災が降りかかるたびに、MEGADETH と Dave Mustaine は研ぎ澄ました反骨の牙で苦難の数々をはね退け、倍返しの衝撃をメタル世界にもたらし続けています。
逆に言えば、MEGADETH という船が順風満帆であることは稀なのですが、2016年の “Dystopia” 以降の期間は、彼らの波乱万丈の基準からしても、非常に荒れた展開であったと言えるでしょう。まず、”Dystopia” でドラムを担当し、当初はアルバムをサポートするためにバンドとツアーを行っていた Chris Adler が、2016年半ばに当時は本職であった LAMB OF GOD とのスケジュールの兼ね合いで脱退せざるを得なくなります。後任には元 SOILWORK の Dirk Verbeuren がヘッドハントされました。
そうして2019年、次のアルバムの制作が始まった矢先、Dave Mustaine は咽頭癌と診断され、50回以上の放射線治療と化学療法を余儀なくされます。
「今は100パーセント大丈夫だと思う。2020年の10月に医者からOKが出たからね。3年目の節目を迎えるはずさ。それはかなりクールなこと。治療、栄養、そして病院の外で行わなければならない個人的なことまで、すべて一生懸命取り組んだからな。医師たちは、癌を治療するために俺にとって本当に残酷なプログラムを組んでくれたよ。手術をせずにがんを退治しようというのだから仕方がないけど。
俺は医師たちに、Eddie Van Halen が舌の一部を切り取ったのが少し気になると言ったからね。歌えなくなっちゃ困ると。IRON MAIDEN の Bruce Dickinson や Michael Douglas も罹患していて、俺もその一員になったってことさ。素晴らしいプログラムが用意されて、担当医は本当に素晴らしい人たちだった。医者に診てもらって、健康に異常がないと言われれば、普通は本当にありがたく思うもの。もう、俺の癌には何の力もない。ファンが落胆しないようにしたいからな。医師は俺が歌い続けることがいかに重要かを知っていたよ」
無事、寛解にはいたったものの、その後 Covid-19 の大流行が起こり、アルバムの進行はさらに遅れます。決定打は2021年春。長年のベーシストで Mustaine の右腕であった David “Junior” Ellefson が、”性的不祥事” を起こしてしまうのです。バンドで最も品行方正、神父にして良い父親と思われていた Ellefson の性的なスキャンダル。その影響は大きく、バンドはすぐに解雇という判断を下します。そうして、TESTAMENT などで活躍を続けるフレットレス・モンスター Steve Di Giorgio が彼のパートの再レコーディングを行うこととなりました。
「俺は Ellefson を1000回でも許す。だけどもう共に演奏することはない。もう彼のことは本当に話さないよ。面白い話をするのは好きだけど、そういう話をするのは本当に嫌なんだ。
Steve への交代は、多くの理由からそうする必要があったから。外から見ているだけで、俺が間違ったことをしたと言っている人がいたけど、なあ、あの事件が例え真実でなかったとしても、俺の人生にあんなクソ騒動はいらないと思ってたんだ。重要なのはバンドで、バンドには4人のメンバーがいる。クルーがいる。ビジネスの関係もある。そしてその全員の家族たちも。リーダーが間違った決断はできないよ。
Steve は素晴らしい新鮮な空気を吹き込んでくれたよ。最近インタビューを受けたんだけど、女の子が “どうして Dave Ellefson のパートを変えたんですか” って言うんだ。それで俺は思ったんだ。”オマエはバカなのか?あんな事があったんだ、パートを変えなきゃいけないだろ?”ってね。彼女には言わなかったけど、そう思っていたんだ。
Steve Gi Giorgio も (後任の) James Lomenzo も2人とも、一緒にいて本当に楽しい人たちだよ。Steve のことは知らなかったけれど、James と同じくらい一緒にいて楽しいヤツだと思った。みんなが経験したあの時期は、少し気難しいものだったよな。でも、俺たちは正しいことをしたかったんだ。誰もすべての事実を知らないけど、それで誰かを引き抜きたいとは思っていなかったから。TESTAMENT は俺の友人だから。
Steve は偉大なベーシストだけど、俺ら(METALLICA)が TRAUMA から Cliff Burton を引き抜いたときのことを覚えてるよ。TRAUMA はそれほど良いバンドではなかったけど、それでもバンドにはメンバーがいて、彼らの人生はその時に変わってしまったんだ。もし誰かを雇うなら、誰かから盗んでいないことを確かめたかったんだ」
そして今、”Dystopia” から6年半以上、MEGADETH 40年の歴史の中で最も長いインターバルを経て、”The Sick, the Dying… And the Dead!” がついに解き放たれました。このアルバムの制作にまつわるトラブルや苦悩の山を考えれば、MEGADETH のリベンジが倍返し以上のものであることは、ファンにとって容易に想像できるでしょう。そうして実際、Dave Mustaine は逆境をものともせず、12曲のスリリングで知的で瑞々しい破壊と衝動の傑作を携え戻ってきました。MEGADETH のリーダーのレジリエンス、驚異的な回復力、反発力を再度証明しながら。
「この曲は何人もの人から “パンデミックの話だろ?” と言われたことがあるけど、そうではないんだよ。黒死病についてなんだ。歌詞はとても分かりやすいものさ。かなり明確にストーリーを語っているからね。映画を観たことがあるよ。メアリー・シェリーの “フランケンシュタイン” で、ロバート・デ・ニーロとケネス・ブラナーが出演していた。映画の中でペストについて話している部分があったんだけど、その部分がとても不気味だったのをはっきりと覚えている。童謡の “Ring Around the Rosie” が出てくるんだよ。”Ring-a-ring-a-roses, A pocket full of posies, Atishoo, atishoo, We all fall down.” という歌。”Go to Hell” みたいに童謡を加えたかった。これは黒死病の時代の子供向けの童謡で、死体が悪臭を放つため、悪臭を隠すためにポージー (薬草、花束) を大量に用意しなければならなかったことから、ポージーをポケットに入れることを題材にしたもの。黒死病にかかった人々は、病気を取り除くために死体を火葬しなければならなかったんだ」
例えば、”Life in Hell” の「2、3杯飲めば大丈夫/2、3錠飲めば世界が消える/どうせ死ぬんだから」という歌詞を、悪意に満ちたフランク・シナトラのように唸る彼の顔には、無粋な笑みが浮かんでいるにちがいないのです。そうして迎える6分半の軍事大作 “Night Stalkers” には、偉大なる Ice-Tの激しいラップが装備されています。BPM190で、米軍第160特殊作戦航空連隊という高度に専門化した部隊の英雄的行為にリリックと威厳で取り組みました。
「初めて会ったとき、Ice-T はちょうどキャリアをスタートさせたところだった。彼はかなり物議をかもしていた。当時、ラップ・アーティストにはある種のメンタリティがあり、特に Ice-T が1992年に “Cop Killer” みたいな曲を出したときはそうだった。彼は大衆を偏向させていたんだよな。俺は、彼は才能があり、彼が歌っているのは芸術だと信じていた。彼の曲の一つ、”Shut Up, Be Happy” を何年もイントロ・テープとして使っていたくらいでね。”Night Stalkers” での彼のパートはクールだ。俺は、個性的でわかりやすい声と言い回し、それにストリートのメンタリティと言葉を持っている人が欲しかったんだ。彼なら、ヘリに乗り込んで準備をするのに最適な人物だと思った。
それに、メタルとヒップホップ、2つのアートを融合させれば若い奴らにも響くだろ?子供たちがヒップホップに夢中なのは、友達が夢中になっているからだ。音楽を聴くことにかんして、個性的でない子供たちがたくさんいるんだ。友達が聴いていないものは聴きたくない、仲間はずれにされたくないという人がたくさんいる。俺が10代の頃、IRON MAIDEN や AC/DC を聴いていた時はとてもハードでヘヴィだったから、友達はどう考えているかなんて気にしなかったがね」
Sammy Hager もボーナス・トラックで、自身の楽曲のカバーでゲスト参加しています。
「Sammy の曲のカバーソングをやったんだ。多くの人は、VAN HALEN で活動する前の Sammy を知らないんだ。でも俺は、彼が MONTROSE でプレイしていた頃から知っているし、その後、ソロ・キャリアも知っている。正直、VAN HALEN のあの頃の曲にはあまり納得がいかなかったんだけど、MONTROSE で Sammy の歌を聴いて以来、あの人は歌えるなぁと思っていたからね。彼は俺の大好きなシンガーの一人だったんだ、ずっとね」
“The Sick, the Dying… And the Dead!” には、暗闇と暴力、そして痛烈な社会批判が溢れています。原子力発電所の事故によって引き起こされた壊滅的な影響の中で、安全性を必死で手繰り寄せる “Dogs of Cernobyl”。”唾液が噴き出し、嘔吐し、ボウルを溢れさせる/悔い改め、神に問う、あなたはまだ私の魂を欲しているのか?”
さらに、”Junkie”, “Celebutante” といった激しいトラックでは、NWOBHM やクラシックなメタルのスタイルが MEGADETH にどれだけ影響を与えたか、それを隠そうともせず彼らの悪態を正当な形で体現しています。
「オランダで女の子が MEGADETH のロゴの入った服を着てたから、俺のバンドだと言ったんだ。そしたら、近寄るな、変態!みたいな顔してシッシッと光の速さで手を振る。違う、違う、俺のバンドだからと写真を頼んだが、知らない!嫌だとさ」
特に、”Celebutante” は富と名声のためなら何でもするセレブリティの愚かさを皮肉った楽曲。質実剛健な MEGADETH とは正反対の場所にいます。まさに Mustaine の “反発力” が炸裂した最高のストーリー。
「MEGADETH のギタリストに必要なのは Attitude (態度), Ability (能力), Appearance (見た目)だ。まずは態度が大事だ。MEGADETH は音楽が何より優先だから、バンドに始まりバンドに終わる生活が必要。無論、能力がなければ無理だがね。友人同士の馴れ合いでは成功しないから」
もちろん、ムステインが船を操縦している間、目的地に向かうためには良い乗組員が必要です。そして、Verbeuren とリードギタリスト Kiko Loureiro は明らかに、巧みに創造し、大胆に冒険する完璧な船員となりました。重要なのは、Loureiro が12曲中8曲でコ・ライターとしてクレジットされていること。彼のクラシックギター演奏は、広大な “Dogs of Chernobyl” に東欧のテイストを付与し、難解なリフとジャズ・テイストのソロワークは、”We’ll Be Back” と “Night Stalkers “のまさに推進力。また、ミッドテンポのタイトル曲では、Mustaine の唸るようなヴォーカルに呼応したコール&レスポンスを聴かせるなど、彼の存在感は大いに増しています。
「MEGADETH との2枚目のアルバムだけど、Dave とは2015年から7年間一緒にプレイしている。だから、様々な国、様々な年齢のファンに会うことができる。古い曲も新しい曲も演奏するし、業界の人たちにも会うし、もちろん Dave の家族、バンド・メンバー、マネージメント、レーベルの人たちにも会うんだ。だから、もう内輪の付き合いみたいなもんだよ。
でもね、ギター・ソロは、この7年間ほとんど変化していないんだ。ギターソロは、自分自身の表現のようなものだ。ただ自分の楽器を演奏すればいいだけだから。ただし、MEGADETH の遺産にふさわしい曲や、Daveを喜ばせ、ファンを喜ばせるような曲を作ることは、ある意味、このアルバムでもっと簡単にできたんだ。バンドをより理解することができたし、それが大きな違いだったね。VAN HALEN のリフを持ち込んだりはしないよ (笑)」
Loureiro の野生に知性を組み込んだメロディックなスタイルは Mustaine のマニアックなクランチと見事にマッチし、Verbeuren のリズミック・アプローチは、彼が共作した “Junkie” や、トライバル・パムリングを中心とした短い間奏曲 “Psychopathy” などで顕著に効果を発揮。Di Giorgio の妙技を堪能できる場面も多々あり、さらに “Dystopia” の共同プロデューサーである Chris Rakestraw は、”The Sick, the Dying… And the Dead!をでも同じ役割を担いながら、Mustaine とクルーの活力と凶暴性を最高の状態で捉えていきました。
「人生は厳しい。勝ち組になるか、そうでないか。人は敗者と呼ばれるべきではないと思う。でもな、2位になろうとすることは、敗者ではないんだよ。常に自分を高めようと努力する限り、完走した者は勝者なんだ。それはとても簡単なこと。人生を1%改善するだけで、3ヶ月ちょっとの短い努力で、仕事ぶりでも、大切な人に対してでも、子供に対してでも、まったく違う人間になることができる。俺はレコードや出版契約をすべて全うしたよ。俺らのステージや地位にいるバンドで、そんなことをするバンドがどれだけいるだろうか?そんなことはしない。普通は延長するか、そもそも膨大な契約とたくさんのオプションがあって、自由になることはないだろう。だが、俺は本当に抜け目のないビジネスパーソンで、できるだけ早く自分たちの未来を確認することができるのさ」
MEGADETH のように長い歴史を持つバンドの場合、批評家の間では常に最新アルバムをバンドの最も象徴的な作品と比較したり、後期の高水準作品として認められるものは何でも “…以来最高の作品” と呼ぶ傾向があります。しかし、”The Sick, the Dying… And the Dead!” が MEGADETH の膨大なディスコグラフィーの中でどのような位置づけにあるかを正確に知るのは時期尚早であり、現時点で本当に知るべきことは、この新作が素晴らしいかどうかだけ。安心して欲しい。このアルバムはただ、ただ、本当に素晴らしい!
「本当に久しぶりに、このアルバムには必要なものが、正しい場所に、すべて揃っている」