NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SEVENTH WONDER : TIARA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEFAN NORGREN OF SEVENTH WONDER !!

“We All Supported Tommy Karevik 100%! Off Course, We All Realized That They’d Come First And That This Would Inevitably Set Us Back Time Wise. But There Was No Way Any Of Us Would Get In The Way Of Such a Great Career Move For Him.”

DISC REVIEW “TIARA”

スウェーデンで毎年行われる “一番大切な冬の行事”、聖ルシア祭。貧しい人々に財産全てを提供した純粋の象徴、光の聖人聖ルチアの姿は、そのスウェーデンに居を置くプログメタルの至心 SEVENTH WONDER と不思議に重なるのかも知れません。
“Waiting in the Wings” でその鵬翼を広げたバンドは、“Mercy Falls” で悲劇的なサスペンスを描き切り、“The Great Escape” では30分のエピックと共に喪失、失楽からの大いなる逃避による微かな希望の灯火を見出して来ました。
「難解なセクションも音楽的に実りがなければ僕にとっては的外れなんだ。だからこそ、メロディーとアトモスフィアが必要なんだけどね。」新加入のドラマーにして現在はバンドのスポークスマン的な役割を務める Stefan Norgren の言葉は真実です。
何より、しばしば DREAM THEATER が引き合いに出されるほどのハイテクニックと緻密なデザインの二重奏を奏でながら、SEVENTH WONDER はスカンジナビアの澄み切った眺望を旋律のクリスタルに封じ込めて来たのですから。そうしてそのパノラマは常に映画のように壮大なストーリーを纏ってリスナーの感情を激しく喚起するのです。
8年という長い月日を経てリリースされた最新作 “Tiara” のストーリーは、もしかするとバンド自体の影法師と言えるのかも知れませんね。滅ぶべき運命にある地球が救いを求め “The Everones” に差し出す純粋無垢の象徴、少女 “Tiara”。そのあらすじに、不世出のボーカル Tommy Karevik の KAMELOT 加入を重ねたファンも多いでしょう。
もちろん、Stefan はインタビューで Tommy の “ダブルワーク” がある程度 Win-Win な状況であることを強調しています。ただし、今でも Roy Khan の亡霊を宿し歌唱をシンフォニックに限定される KAMELOT での活動に、彼本来の姿を知るリスナーの多くが歯痒い思いをしていることも事実です。
実際、”Tiara” での Tommy は不要の責任から解放され自由を謳歌しているようにも思えます。自らに宿る全てのレンジでオクターブの山脈を超え、感情のリミットを解放しながら様々なキャラクターを演じ分けるその絶対的なパフォーマンスはまさに水を得た魚。
よりゴージャスでロックオペラの佇まいを擁する “Tiara”。中でも “Tiara” が別れを告げる “Farewell” 三部作はマスタークラスのバンドと Tommy の開眼が最高レベルでシンクロを果たした絶景と言えるでしょう。
シンセの煌めき、理知的な変拍子、メタルらしいエッジとユニゾンの醍醐味、静と動のダイナミズム、躍動するアコースティック楽器にヴァイオリン、暖かいコーラスの絨毯、Tommy と妹 Jenny との甘やかなデュエット、そして何よりエモーション極まる極上のメロディー。少なくとも、ピュアなプログメタルに求めるものは全てがここに存在します。
同時に、”Arrival” でシンフォニックに幕を開けるアルバムは、”The Everones” のスリリングなボコーダー、”Truth” で見せるベースの妙義とフォルクローレの熱情、“By the Light of the Funeral Pyres” はロックマンの8-bitでしょうか、そしてジェットコースターのエピック “Exhale” までバラエティーに富み、新機軸とチャレンジに満ち溢れています。
「さてその結末は?それはアルバムを聴いて、歌詞を読んで自らで決めて欲しいね…。」では、Tommy と SEVENTH WONDER の物語はどのような結末を迎えるのでしょうか。少なくとも、”Tiara” が DREAM THEATER や SYMPHONY X、そして SHADOW GALLERY を愛し続けて来たここ日本で歓迎されるべき作品であることは確かです。
今回弊誌では、Stefan Norgren にインタビューを行うことが出来ました。「テクニック、メロディー、アトモスフィア…それは僕たちのような音楽を生み出す時、心に留めている素晴らしいキーワードなんだよ。」全てのメタルファンに送る素晴らしき SF 叙事詩。どうぞ!!

SEVENTH WONDER “TIARA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOLA : APPLAUSE OF A DISTANT CROWD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM JANZI OF VOLA !!

“I Would Describe The Band As An Adventurous Rockband With Tendencies Towards Metal And Electronica. We’re Very Keen On Experimenting And Not Being Bound To One Label Or Genre.”

DISC REVIEW “APPLAUSE OF A DISTANT CROWD”

モダンプログレッシブのフロントランナー VOLA は、ジャンルのアイデンティティーを保ちながら進化を遂げる荊棘を成し遂げるユトランドの至宝。
Djent 由来の重厚なグルーヴ、シンコペーションの創造性をメロウでヴィンテージなイヤーキャンディーで包み込み、シンセウェーブのフィヨルドへと注ぎ込む彼らのやり方は、まさしくデンマーク発祥のトレンド、”ヒュッゲ” “甘美な時” をリスナーへと運びます。
レトロ&フューチャーが交差する衝撃のデビューフル “Inmazes” から4年。世界一幸福と言われるデンマークに降臨した “時をかけるバンド” が次なるテーマに選んだのは、皮肉にもテクノロジーや SNS が人類にもたらす栄華と暗部、幸せの価値。
「タイトルの “Applause of a Distant Crowd” “遠方の観客から届く拍手喝采” とは、僕たちが SNS を通してコンスタントに賞賛や承認を求めていることを表しているんだよ。だけど、そうやって喝采をくれる人たちは遠く離れていて、そこでの関係性が何か実りをもたらすことなんてないだろうはずなのに。」と新たなドラムマイスター Adam Janzi が語るように、インターネット& SNS の発展は利便性の向上と同時に、承認欲求、嫉妬、欺瞞、憤怒といった人に巣食う闇の部分をこれまで以上に助長させ、世界は生きづらさが増しているようにも思えます。
“We Are Thin Air”、アルバムの幕開けは、そうした息苦しさを “空気が薄い” と表現する究極のメッセージ。THE ALAN PERSONS PROJECT を彷彿とさせる暖和で壮大なメロディーの洪水は、コーラスの魔法と浮遊感を伴って、あたかも水中で暮らしているかのようなイメージを摩訶不思議に演出し描写します。
同時に、80年代の甘くキラキラした、しかしどこか切ないデジタルの波はコンテンポラリーなディストーションサウンドと融け合い、その波動は “Ghost” のエセリアルなセンチメント、感傷の波へと集約していくのです。
レトロとフューチャーを自在に操る時間魔法師の煌きはすなわち “ビタースイート”。そしてよりオーガニックに、オルタナティブの領域へと接近した新たな旅路は、MEW や MUSE のインテリジェントな方法論とも入念にシンクロしていると言えるでしょう。
一方で、「それでも僕たちは、今でもプログやメタルを愛しているよ。それは変わらないね。」と語るように、MESHUGGAH や DECAPITATED の凶暴なポリリズムが一際そのサウンドスケープを拡大させていることは明らかです。
“Smartfriend”, “Alien Shivers” におけるシンコペーションアグレッションはまさしくプログメタルの系譜を引く証ですし、その場所に VOLA 特有のポップセンス、アトモスフィアが流入した響きには、”Post-djent” を導くヒントが隠されているのかも知れませんね。
さらに、”Vertigo”, “Green Screen Mother” で見せるダークでスロウな一面は、バンドと作品の二面性を際立たせ、モダンプログの骨子である多様性とダイナミズムを一際浮かび上がらせることとなりました。そして、当然そこには、Adam が人生を変えたアルバムで挙げている Chelsea Wolfe, Nick Cave からの仄暗く、ノワールな影響が存在するはずです。
今回弊誌では、その Adam Janzi にインタビューを行うことが出来ました。「もしこのバンドを一言で表すなら、アドベンチャーロックバンドかな。メタルとエレクトロニカの要素を持ったね。」 さて、この作品を耳にして Steven Wilson は何をおもうのでしょうか。どうぞ!!

VOLA “APPLAUSE OF A DISTANT CROWD” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NOSOUND : ALLOW YOURSELF】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GIANCARLO ERRA OF NOSOUND !!

“I’ve Never Been a Fan Of Being Very Good Or Even Virtuoso Or Any Instrument, I Hate Any Virtuoso Or Technical Playing, I Like Instead Emotions, That Are Always Simple And Direct.”

DISC REVIEW “ALLOW YOURSELF”

「シンプルとは究極の洗練である。」 イタリアから真なるプログレッシブを追求する現代のダヴィンチ Giancarlo Erra は、万能の天才に相応しき多様な才能を NOSOUND へと捧げます。
70年代のサイケデリカとプログの香りをコンテンポラリーなオルタナティブ、アンビエント、エレクトロニカ、ポストロックの小瓶へと封じる NOSOUND の芳醇でエクレクティックな音楽性は、ヨーロッパにおいて今最も刺激的なアートロックフォームの一つとして遂にその認知を頗る高めています。
21世紀初頭に帆を上げた NOSOUND の航海にとって、ポストプログレッシブの本営 Kscope との契約、そしてポストロックのサウンドスケープへと接近した “A Sense of Loss” のリリースは最初の転機となりました。
「僕が Kscope を気に入っているのは、プログの世界と定義を見直そうと決め、僕の新作を歓迎してくれるのはもちろん、プログ世界の外側のアーティストとも多く契約をしている点なんだ。」と Giancarlo は語ります。
事実、ANATHEMA はもとより、THE PINEAPPLE THIEF, NO-MAN といった NOSOUND と深くシンクロする Kscope ロースターは音色、響きの焦点を全て感情表現という一点へ集中させています。詩歌、奏楽、ノイズ、オーケストレーション、リズムは、音楽というレンズを通して最もエモーションを際立たせる場所へと配置されるコンポーネントの一つ。
つまり、「僕はどの楽器においても、卓越したミュージシャンやヴァーチュオーゾの大ファンだったことはないんだよ。むしろ、ヴァーチュオーゾやテクニカルなプレイを嫌っているとさえ言えるね。それよりもエモーションを愛しているんだ。」との言葉通り、NOSOUND の志向する “プログレッシブ” は、卓越した技巧を感情追求の一端とする典型的なプログレッシブロックとは全く異なる領域にあると言えるのです。
賞賛されるべきは変化を恐れない勇気だと Giancarlo は語ってくれました。そして彼らの最新作 “Allow Yourself” は自らのコンフォートゾーンからさらに針路を進め、最も創造性煌めく海原へと到達する “許し” が付与された第二の転機です。
事実、かつての音楽性は “Nosound” となったと嘯く通りその変化はドラスティック。典型的なロックの構造から離れて “ミニマル” なデザインを追求し、エレクトロニカとアコースティックの完璧なバランスを見出したアートは、カテゴライズやアナライズさえ愚かな行為に思えるほど浮世離れの絵巻物。
ただし、このエレガントでドリーミー、メランコリックで静謐で、しかし時に深々と積もる怒りの灯火やパワフルなエナジー、情熱や情念を噴出させるモナリザの万華鏡には、これまで以上に様々な感情が、より鮮やかに交錯し織り込まれていることは確かです。
もしかしたら、世界には “許し” が足りないのかもしれません。自らを愛すること、心を開くこと、変化を遂げること、理解を深めあうこと。全てに勇気を持って “許し” を与え、新たな扉を開くためのサウンドトラックとして、この作品はあまりに完璧です。
今回弊誌では、Giancarlo Erra にインタビューを行うことが出来ました。「プログというジャンルは、そもそもジャンル分けをものともしない音楽のために生まれたはずなのに、70年代を過ぎると最も閉鎖的な分野の音楽になってしまったね…”進化” するべきはずのものから、形骸化された “プログレッシブ” の形式で作られた音楽だけを受け入れるものになってしまったのさ。」ぜひドアを開けてください。どうぞ!!

NOSOUND “ALLOW YOURSELF” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【REVOCATION : THE OUTER ONES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVID DAVIDSON OF REVOCATION !!

“Sometimes I’ll Discover Some Cool Voicings While Working On a Jazz Tune And I’ll Try To Manipulate Them In a Certain Way So That It Fits Into The Metal Framework Better.”

DISC REVIEW “THE OUTER ONES”

エクストリームメタルシーンの “名状しがたきもの”。刻々とその姿を変える轟音の支配者 REVOCATION は、神秘探求者たるリスナーの脳を時に捕捉し、時に喰らうのです。
「彼らは時代によって音楽性を少しづつ変化させていたでしょ?」David は信奉する DEATH の魅力についてそう語りましたが、自らのバンド REVOCATION にも同様の試みを投影しています。
ハイテクニカルなデスメタルの知性とスラッシュメタルの衝動の中に、オーセンティックなメタルの様式美を組み込んだ初期の煌きは眩しく、一方で鬼才 ARTIFICIAL BRAIN にも所属する Dan Gargiulo 加入以降の、前衛的で中毒性を宿した VOIVOD にも通じる不協和のカオスもまた魅力の一つだったと言えるでしょう。
そうして最新作 “The Outer Ones” でバンドが辿り着いた魔境こそ、トレードマークである演奏能力とアグレッションを拠り所とする”完璧なデスメタル”、すなわち “The Inner Ones” に、荘厳でリリカルなメロディーのイヤーキャンディーやジャズの複雑怪奇、すなわち “The Outer Ones” を織り込んだコズミックな宇宙でした。
饗宴の始まりはダークでソリッドな “Of Unworldly Origin” から。TRIVIUM の爽快さまでイメージさせる耳障りの良いファストチューンは、しかし同時にブルーノートを起点としたジャジーなコードボイシングで自らの異形をアピールします。
分解してスウィングさせればツーファイブにもフィットするウネウネとしたリードプレイから、冷徹でしかしファンタジックな DEATH の遺産、ツインリードへと雪崩れ込むギターの魔法は2人のマエストロを備える REVOCATION ならではの至宝でしょう。
実際、唯一のオリジナルメンバーとなった David Davidson のジャズに対する愛情は、先日あの TESTAMENT のジャズスラッシャー Alex Skolnick との対談でお互いが認め合ったように、本物です。ギター教師の一面も持つインテリジェントな David は、メタルにとって規格外のコード進行、ボイシング、そしてスケールを操りながらアルバムを未知の領域へと誘います。
ロマンチックとさえ表現可能な “Blood Atonement” はまさに David の異能が濃縮した楽曲でしょう。ブラッケンドな激情を叩きつける漆黒のワルツは幽かな叙情を宿し、一転して静寂の中紡がれるクリーントーンの蜜月は Joe Pass の匠を再現します。まさに David 語るところの “コントラスト” が具現化した “血の償い” は、CYNIC のアトモスフィアさえ纏って怪しくも神々しく輝くのです。
“Fathomless Catacombs” で再び DEATH への深い愛情を示した後、バンドは “The Outer Ones” で BETWEEN THE BURIED AND ME の重低音のみ抜き出したかのような不規則な蠢きでラブクラフトのホラーを体現し、さらに不気味なコードワークが映える “Vanitas” では VOIVOD はもとより ATHEIST, PESTILENCE のカオスをも須らく吸収してみせました。
アルバムを締めくくる大曲 “A Starless Darkness” はまさに名状しがたき暗闇。ドゥームの仄暗い穴蔵から這い出でし闇の化身は、勇壮なエピック、スラッシュの突心力、デスメタルの沈痛、シュレッドのカタルシスと多様にその姿を変えながら、OBSCURA と並びプログレッシブデスメタルの森を統べる者としての威厳を示すのです。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド David Davidson にインタビューを行うことが出来ました。「ジャズの楽曲に取り組んでいる時、しばしば僕はクールなボイシングをいくつか発見するんだけど、それがメタルのフレームワークへとうまく収まるように手を加えてみるんだ。」フックと展開の目眩くクトゥルフ。今、最もハイテクニカルなギターチームが揃ったバンドの一つでしょう。どうぞ!!

REVOCATION “THE OUTER ONES” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FREAK KITCHEN : CONFUSION TO THE ENEMY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATTIAS “IA” EKLUNDH OF FREAK KITCHEN !!

“I Think The Change Of Music Industry Is a Brave New World With Tons Of Opportunities. You Can’t Sit Home And Complain It Was Better Before. Adjust Or Die.”

DISC REVIEW “CONFUSION TO THE ENEMY”

急速に拡大を続ける “ギターナード” の世界。真のギターフリークの間で、最もイノベーティブかつ画期的なプレイヤーとして崇拝を浴び続ける “Freak of the Freak” Mattias IA Eklundh。
水道のホースクリップ、テレビのリモコン、櫛、大人のディルドーにラジカセアンプ。目につくもの全てを “ギミック” としてギタープレイに活用し、レフトハンドのハーモニクスから両手タッピング、ミステリアスなスケールにポリリズムの迷宮まで自在に操るマエストロのアイデアは決して尽きることがありません。
同時に、弦は錆び付いても切れるまで交換せず、スウェーデンの自然とジャーマンシェパードを溺愛し、音楽産業の利益追求主義を嫌悪する独特の思想と哲学は Mattias の孤高を一層後押ししているのです。
「FREAK KITCHEN を立ち上げたのは少しだけコマーシャルな音楽を志したから。だけど適度にひねくれていて、様々な要素をミックスしながらね。」 とはいえ Mattias が情熱を注ぐスリーピースの調理場は、ただ難解で複雑な訳ではなく、むしろキャッチーでフックに満ち溢れた色とりどりのスペシャリテを提供して来ました。”Pop From Hell” とも評された、甘やかでインテリジェント、Mattias の “歌心” を最大限に引き出した “Freak Kitchen” はまさにバンドのマイルストーンだったと言えますね。
ジャズからボサノバ、アバンギャルド、ブログにインド音楽と手を替え品を替えエクレクティックに食材を捌き続けるバンドは、そうして最新作 “Confusion to the Enemy” でさらなる未踏の領域へと到達したように思えます。
「AC/DC は僕がいつも帰り着く場所なんだよ。Angus にただ夢中だし、Phil Rudd の熱狂的なファンでもあるんだ。」 近年、AC/DC のやり方に再びインスパイアされたことを明かす Mattias。その言葉を裏付けるかのように、作品には以前よりシンプルでスペースを活用した、ヴィンテージロックやブルースのエネルギッシュな息吹が渦巻いているのです。
例えば “Good Morning Little Schoolgirl” をイメージさせるブルースパワーにアンビエントな風を吹き込んだ “The Era of Anxiety”、スウェーデン語で歌われる “Så kan det gå när inte haspen är på” のシンプルな突進力とスライドギターのスキャット、さらにトラディショナルなブルースのクリシェをベースとしながら、愛車のボルボをパーカッションに EXTREME の “Cupid’s Dead” の要領で問答無用にリフアタックを繰り広げる “Auto” の音景は明らかに魅力的な新機軸でしょう。
もちろん、KINGS X を思わせるダークなオープナー “Morons” から胸を締め付ける雄大なバラード “By The Weeping Willow” まで、クラッシックでヴィンテージなサウンドを背景に Mattias らしいルナティックなギタープレイと甘く切ないメロディーのデコレーションを疎かにすることはありません。
圧巻はタイトルトラック “Confusion to the Enemy” でしょう。バンド史上トップ5に入ると語る楽曲は、アルバムに存在する光と闇を体現した究極なまでにダイナミックなプログレッシブ絵巻。MESHUGGAH を想起させる獰猛なポリリズムと空間を揺蕩うアンビエンス、さらにFKらしいイヤーキャンディーが交互に顔を覗かせる未曾有のサウンドスケープは、バンドが辿り着いた進化の証。
時という “敵” であり唯一の資産を失う前に成し遂げた記念碑的な快作は、そうして “We Will Not Stand Down” で緩やかにエモーショナルにその幕を閉じるのです。
今回弊誌では Mattias IA Eklundh に2度目のインタビューを行なうことが出来ました。「ゼロから何かを生み出す作業は、未だに究極の興奮を運んでくれるんだ。ただのルーティンの練習はそうではないよね。」 どうぞ!!

FREAK KITCHEN “CONFUSION TO THE ENEMY” : 10/10

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