EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IVAN HANSEN OF FROSTBITT !!
“We Have For As Long As We Have Listened To Metal Been Listening To Japanese Rock Bands Like Dir En Grey, Maximum the Hormone, Moi Dix Mois, Babymetal And a Lot Of Anime Openings!”
DISC REVIEW “MACHINE DESTROY”
「Mana 様の作品はどれも好きだけど、特に Moi Dix Mois で作られた音楽は最高だよね!Dir En Grey は、僕たちの大のお気に入り。”Yokan / 予感” や “Cage” のようなファンキーでアーバンなものから、”Obscure” のような Nu-metal、そして後のデスコアやジャンル・ブレンドのヘヴィなものまで、彼らの全てのスタイルが大好きだよ!特に特定の曲のライブ・バージョンが大好きで、より生々しくエモーショナルに聴こえるんだ。”濤声” のライブ・バージョンのようにね。あれは僕にとって完璧だ!NARUTO は特に130話までが僕にとって特別な場所。Asian Kang-Fu Generation の “カナタハルカ” は、生々しい叫びのようなボーカルで、僕に大きなインスピレーションを与えてくれた!」
日本の音楽は世界では通用しない。そんなしたり顔の文言が通用したのも遥か昔。アニメやゲームのヴァイラル化とともに、日本の音楽は今や海外のナードたちにとって探求すべき黄金の迷宮です。とはいえ、ノルウェーのノイズテロリスト FROSTBITT ほど地下深くまで潜り込み、山ほどの財宝を掘り当てたバンドはいないでしょう。
「特にボーカルとベース・サウンドは、KORN から大きなインスピレーションを受けているよ。”Solbrent” “Frostbitt” では、Johnathan Davis とChino Moreno のヴァイブに深く入り込んでいるんだ。ただ、そのせいで少し非難されたし、一時期ちょっとやりすぎたという事実にも同意しているよ。でも、この新しいレコードでは、彼らのインスピレーションはそのままに、他の多くのものも取り入れて、より味わい深いものになったという気がするね。自分たちを取り戻したような感じさ」
未だ Djent が新しく、勢いのあった10年代初頭に頭角を現した FROSTBITT は、近隣の MESHUGGAH や MNEMIC (素晴らしい!) に薫陶を受け、ローチューンのリズミック・マッドネスに心酔しながらも、同時に Nu-metal, 特に KORN や DEFTONES の陰鬱や酩酊をその身に宿す稀有な存在としてシーンに爪痕を残します。ただし、インタビューに答えてくれた Ivan Hansen の歌唱があまりにも Jonathan Davis に似すぎていたため、あらぬ批判を受けることもあったのです。まさに “Life is Djenty”。
しかし、FROSTBITT の時間旅行は “Machine Destroy” で空も海も飛び越える3Dの冒険へと進化しました。”Machine Destroy” というアルバム・タイトルが示すように、FROSTBITT の目的は常識や次元、時間、既存のメカニズムの破壊。CAR BOMB とのツアーは、FROSTBITT にとってノイズと獰猛さを探求するきっかけとなり、あの英国の破壊王 FRONTIERER をも想起させるアクロバティックなエフェクト・ノイズの数々は、”Frost-Riff” というユニーク・スキルとしてリスナーの脳裏に深く刻まれます。これはもう、ギミックの域を超越したテクニックの領域。
さらに、ここには日本からの影響も伝播しました。”Masked Ghost Host” のシアトリカルで狂気じみた呪文のような言霊の連打からの絶叫は、明らかに Dir en Grey の京をイメージさせますし、作品のテーマは攻殻機動隊。何より、”曲をリフ・サラダではなく、構造や繰り返しのある実際の歌らしい歌にしたい” という彼らの理想は非常に日本的な作曲法ではないでしょうか。タイトル・トラック “Machine Destroy” の致死的な電気の渦の中でも埋もれない、メロディの輝きは日本イズムの何よりの証拠。今作ではさらに、時に RADIOHEAD の知性までも感じさせてくれます。
デスメタルの単調とブラックメタルの飽和が囁かれるこの世界では、新しいアイデアを持ったバンドが必要とされているようです。1996年に片足を突っ込み、もう片足をThallの迷宮に突っ込んで、両腕を遠い東の島国に向けて突き上げる FROSTBITT の3Dな音楽センスは、明らかに前代未聞唯一無二で尊ばれるべき才能でしょう。
今回弊誌では、Ivan Hansen にインタビューを行うことができました。「ノルウェーは、暖かい夏と厳しい寒さの冬と雪の両方がある美しい場所。国土が広く、人々は国土全体に散らばっているから、ノルウェーを旅行するときはかなり遠くまで行くことが多いよね。それに、多くの家庭が森の中に山小屋を持っているから、歩く文化や山越えの文化も盛んなんだ。少なくとも、ブラックメタル・バンドからはそんな雰囲気が伝わってくるし、僕自身も同じようなことを実感しているんだよ」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOMMY NILSEN OF SATIN !!
“Great Music Will Prevail. A Great Example Is That New Tv-series “Peacemaker” That Used a Song By Wig Wam For It’s Opening Credits. That Resulted In Wig Wam Topping The Rock Charts In America, Despite Having “Outdated” Music. That Happened Because People Got a Chance To Hear The Song.”
DISC REVIEW “APPETITION”
「君のように、僕の曲についてオーセンティックとか、”本物” という言葉を使う人がいるけど、本当に光栄に思うよ。おそらくその理由は、SATIN の曲の多くが僕が12歳から15歳の頃に書いたものだからだと思うんだ。1989年から1993年にかけて、メロディック・ロックとヘア・メタルがピークに達し、チャートと電波を席巻していた頃だ」
かつてメディアやシーン、市場を席巻したメロディック・ハード。その復活は近くて遠い。そんな印象を、長くこの音楽と共に生きてきた私は持たざるを得ません。もちろん、一時の無風状態と比べれば、今は天国と地獄。SMASH INTO PIECES, DYNAZTY, PERFECT PLAN, Chez Kane, THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA, GATHERING OF KINGS など百花繚乱の新鋭が躍動し、ベテランもその存在感を増している現在のシーンは非常に健全にも思えます。
ただし一方で、乱発される音源、同じような顔ぶれの同じような音楽には、80年代90年代の初頭に存在した魔法のようなワクワク感、メンバー間の深いケミストリーやストーリーがそれほど感じられないのも事実でしょう。よく出来た “偽物” とでも言うべきでしょうか。
そんなメロディック・ハードの2022年において、SATIN の “Appetition” は明らかに異質です。このアルバムのソングライティングとアレンジ、温もり、自由、そして特に巧妙なハーモニーは、このジャンルが脚光を浴びた栄光の時代からまるで抜け出して来たような “本物感” に満ちています。
それもそのはず、SATIN のマルチ奏者 Tommy Nilsen が完成させた楽曲は、本人があの時代に創造したタイムカプセルなのですから。ただし、あの時代と比べると、プロダクションと全体的なアプローチは非常に新鮮で、Tommy がこの30年で培った経験値と好奇心が本人曰く過去と現在をつなぐ美しき “フランケンシュタイン” の完成に大きく寄与していることは明らかです。
1980年代のメロディック・ハードの名曲が、よりパンチの効いたプロダクションで、時代遅れの楽器やアレンジもなく聴けることを想像してみてください。つまり、私たちリスナーは、”Appetition” というデロリアンに乗って本物の80年代や90年代初頭を体験できるのです。2022年の知識を持ちながら。SATIN は AOR の全盛期から彼が愛したものすべてを、彼自身の手でアレンジし直し、少なくとも片足はクラシックな時代に突っ込んだままで、現在の作品のように聴こえる特殊なタイムカプセルなのかもしれません。
「素晴らしい音楽は必ず勝ち残るよ。今はこのジャンルにも機会があるんだ。だからアーティストが時間をかけてでも素晴らしい曲を共有すれば、ジャンルやタイムスタンプ、歴史に関係なく、注目されるようになるんだ」
固定化されたファン・ベース、そしてその高齢化もメロディック・ハードというジャンルが憂うべき問題の一つです。しかし、Tommy は非常にポジティブです。同世代で同郷の WIG WAM による “Do Ya Really Wanna Taste It” の爆発的なヒットは Tommy だけでなく、このジャンルで懸命にもがく全てのアーティストに大きな力を与えています。人気ドラマ “Peacemaker” で使用され、
WWEや映画界の大スタージョン・シナとの共闘を経て、今では “スカンジナビアの宝石” とまで称されている WIG WAM はメロディック・ハード全体の希望です。聴いてもらえる “機会” さえあれば、どんなジャンルの誰にでも、音楽さえ “良ければ” 成功するチャンスはある。そして、その “機会” であるストリーミングの普及によって、むしろ Tommy は自身の成功を “It’s About Time” だと確信するに及んだのです。
「僕の音楽や歌詞に力をもらい、中には生きる糧、死なない理由になったというメッセージが世界中から届いているんだ。そのメッセージを読むのは胸が痛いんだけど、君が言うとおり、音楽は必要なものだ」
音楽はただ、”良い” か “悪い” かだけだ。そう語る Tommy の音楽、その評価はリスナーの主観に任せるとして、少なくとも “ポジティブ” が貫かれています。名曲 “Angels Come, Angels Go”。SATIN のトレードマークが詰まった、心の琴線に触れるこの曲で Tommy はこう声を絞り出します。
「天使は来て 天使は去る…人生を通して」
甘くて、ノスタルジックで、少しむず痒くて、それでも愛と勇気と希望を忘れない。これぞメロハーの真骨頂。人生で大切な人を失っても愛をあきらめないで。生きて欲しい。そう歌いかける Tommy の言葉が決して押し付けがましく感じられないのは、彼の元に寄せられた様々なメッセージが痛みと感謝と、ほんの少しの希望に彩られていたからでしょう。
今回弊誌では、Tommy Nilsen にインタビューを行うことができました。「僕にとって、音楽には “良い” と “悪い” の2種類しかなくて、何が良くて何が悪いかは、オペラでもデスメタルでもアイルランドの民族音楽でも、僕自身が決めることなんだ」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TORFINN LYSNE OF YAWN !!
“We Are Also Obviously Very Into Metal, And We Often See a Lot Of «Standardized» Ways Of Producing And Composing This Kind Of Music Today. We Try To Challenge These Ways By Including More Inspiration From Jazz And Contemporary music.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Øyvind Hægeland OF TERRA ODIUM !!
“We Didn’t Want To Sound Like The Newer Progressive Bands, Where The Guitar Is More Percussive, And The Keyboard Is Dominating. Nothing Wrong With That, We Just Wanted To Sound Different Than Those Bands.”
DISC REVIEW “NE PLUS ULTRA”
「SPIRAL ARCHITECT は死んでいないよ。新曲もたくさんあるし、全員が次のアルバムを作りたいと思っているんだ。次のアルバムを作るために必要な時間と作業量は恐ろしいほどに大量だけど、いつか何とかして実現したいと思っているからね。せっかくの音楽的なアイデアが日の目を見ないのはもったいないしね」
螺旋の建築。その名に違わぬ SPIRAL ARCHITECT のメタリックな捻れは、テクニックの狂気とアンバランスな歌唱を伴って、唯一のアルバムが今なお語り継がれる伝説となりました。そんな本来あるべきプログ・メタルの喜悦と陶酔を求めるならば、TERRA ODIUM の血統は完璧です。
「TERRA ODIUM ではメンバー全員がそれぞれの個性を発揮できるようにしたかったから、Steve は完璧にフィットしていたよ。もちろん、私は彼が DEATH でプレイしていた頃からのファンで、DEATH は私たちにとって重要なバンドだからね。昔からフレットレスの音が好きで、彼の音と演奏で TERRA ODIUM を他のバンドともっと差別化できると思ったんだ」
ノルウェーの SPIRAL ARCHITECT の元メンバー、ボーカル/ギターの Øyvind Hægeland とドラマーの Asgeir Mickelson。2人が率いるこの新組織は、名前こそ違えど、彼らがかつて創造した幾何学建築の精神を素晴らしく受け継いでいます。MANITOU の達人、ギタリストの Bollie Fredriksen、AMORPHIS のような英雄にオーケストレーションを施してきた Jens Bogren の申し子 Jon Phipps、そして DEATH や TESTAMENT で知られるメタル・アイコン、フレットレス・モンスター Steve Di Giorgio によって完成された TERRA ODIUM は、プログ・メタル愛好家にとって、音を聞く前から食欲をそそられような逸材に違いありません。
「私たちは、新しいプログレッシブ・バンドのように、ギターがよりパーカッシブで、キーボードが支配的なサウンドにはしたくはなかったんだよ。もちろんそれは悪いことではないんだけど、私たちはそういったバンドとは違ったサウンドにしたかったんだ」
エレクトロニカやシンセサウンドの大胆な導入、0000の麻薬はアトモスフェリックで中毒性の高いモダンなプログ・メタル建築を乱立させました。その方法論はシーンに活況をもたらすとともに、定型化や飽和を要因とする終わりの未来も同時に映し出したのです。ただし、プログメタル世界は、車輪の再発明から動き出す鼓動に再び熱を帯びつつあります。
「私たちが曲を作るときは、いつもギターのリフから始まるんだ」
TERRA ODIUM は、永遠に続く誇示よりもドラマ性を優先し、偏執的にディテールにこだわりながらも簡潔で記憶に残る無数のメロディーに彩られた、うっとりするようなギター・サーガを展開していきます。”これ以上はない” 究極のプログ・メタル “Ne Plus Ultra” は、DEATH, CYNIC, VOIVOD, WATCHTOWER, PSYCHOTIC WALTZ といった天才のエキセントリックで探求心を胸に、さらに数トンの音の筋肉、真実のオーケストレーション、壮大なドゥームの威厳をドーピングした異端のタワーマンションとしてその全貌をあらわしたのです。
7分間のヒプノティックな時間の中で、膨大なリフを惜しげもなくドゥームとスラッシュに捧げる “Crawling”、死を招くグルーヴとオーケストラの装飾がうねりの波にそびえ立つ “The Road Not Taken”。氷のように妖しく黒い “Winter” では、目まぐるしいプログレッシブでテックな迷宮でフレットレスの狂気を見せつけます。
中でも、CANDLEMASS や KING DIAMOND の不気味なシアトリカルに浸りながらも、プログレッシブの名手としてその矜持を見せつける “The Thron” は、驚異的なメタルの嗚咽であると同時に、非常に巧妙で変態的な12分の不均衡として TERRA ODIUM の本懐を遂げた楽曲にも思えます。これ以上のものがあるでしょうか?
今回弊誌では、Øyvind Hægeland にインタビューを行うことができました。「音楽業界には、ビッグなライブや当時のバンドが持っていたクールなイメージ、そしてもちろん女の子やお金など、私を惹きつけるものがたくさんあったからね。プログレッシブ/テクニカル・メタルはほとんど、あるいはまったくお金にならないし、ほとんどの女の子はこういった音楽が好きではないという真理に気づくには遅すぎたね!(笑)」 どうぞ!!
“Wardruna’s Music Is a Way Of Connecting To Those Energies In The Absence Of Nature. It Becomes a Bridge. It Becomes a Way Of Getting In Touch With These Things I Think a Lot Of People In Modern Society Are Feeling a Loss Of, Or a Longing For. Some Form Of Connection To Our Surroundings.”
THE RISE OF NORDIC FOLK
古き良き道を守り続けてきたノルウェーの WARDRUNA は、遠い過去や文化の大仰で滑稽な遺物だと思われるかもしれません。しかし、彼らの音楽が、実際は今日の自分たちを理解する鍵となるのかもしれません。実際、スカンジナビアに行けば、北欧のフォークミュージックが鉄器時代のヨーロッパの公海にバイキングが最後に乗り込んで以来、最大のブームを記録しているのですから。
WARDRUNA は明らかにそのムーブメントの先頭に立っています。彼らのリリシズムの根底には神話や伝説があり、その壮大で瞑想的なサウンドは “Game of Thrones” の中でも特に暴風のエピソードにおいて違和感を感じることはないはずです。彼らのニッチな部分は、毛むくじゃらなジェイソン・モモアと、あごを掻きむしるメタルヘッドの間へ進入しているのです。
WARDRUNA という名前は「ルーンの守護者」と訳され、ニッケルハルパ、ヤギの角、骨笛、西暦500年のドイツ製竪琴のレプリカを使って音楽を奏でます。フロントマンの Einar Selvik は、長い格子状の顎ひげを生やし、ヴァイキング時代のシャープな髪型を整え、凍てつくようなフィヨルドの風景の中で、裸足で自然への頌歌を厳粛に歌い上げるのです。驚くべきことに、”Lyfjaberg (Healing-mountain)” のビデオは1000万回の再生回数を突破しています。
Einar は自らの音楽について「シリアスである必要はないし、深遠である必要もない」と語ります。明るい目をしていて、カリスマ性があり、誠実な人物。シニカルな時代においても、彼の魔法に影響される余地は十分にあるでしょう。彼は、時代や世界を超えて語りかけるような音色、モード、ドラムパターンを採用しています。
「ある意味では、原始の音は俺たちのDNAの中にあると思うし、世界的なものだ。だからどこの国の人であっても、つながることができると思う」
セカンドアルバム “Yggdrasil” がリリースされたあと、WARDRUNA の音楽はヒストリーチャンネルのテレビ番組 “Vikings” で大きく取り上げられ話題となりました。この番組のプロデューサーは最終的に Einar に直接連絡を取り、”Vikings” の シーズン2のサウンドトラックで作曲家の Trevor Morris (The Borgias) とのコラボレーションを依頼したのです。
「音楽業界で成功するには、まず良い音楽を作ること、そして次に聞かれることが重要なんだ。」
少なくとも、WARDRUNA はプログレッシブな音楽を作っています。過去を描き、現在を表現し、未来の予想図を提示する。博物館のケースから古い楽器を取り出しながら。実際、太古の楽器が奏でる刺激的な音に耳を傾けると、多くの海を越える大航海のイメージが浮かんできます。”Assassin’s Creed” のメーカーも確かにそう考えたようで、人気ビデオゲームの最新作 “Valhalla” の音楽に Einar を抜擢しています。新進気鋭の AURORA との共演も実現。
明らかにステレオタイプなポップスターというよりも、頑固な学者タイプである Einar は、北欧の民俗学を掘り下げ、雄鹿、烏、狼への頌歌や、癒しの “薬の歌” と呼んでいる音楽を披露します。新しい歌を研究する際には考古学者、歴史家、言語学者に依頼し、オックスフォードからデンバーまで大学で自らの仕事について講義まで行ってきました。
「自然との関係、お互いとの関係、そして自分自身よりも大きな何かとの関係において、古い文化を利用すること。それが昔話や昔の音を掘り起こす理由だよ。俺は、過去から学ぶ価値があると感じるものに声を与えているだけだからな」
ではなぜ、Einar は古代北欧の神話に惹かれたのでしょうか?
「子供の頃に古代北欧の物語や歴史に心を奪われたんだ。白と黒、善と悪といった一神教的な世界観とはとても違っていたから。それははるかに複雑なものだったよ。10代の頃には、古い伝統の秘教的でスピリチュアルな側面への興味がさらに深まりまったね。でも、それらを音楽的に解釈してくれる人はいなかった。だから俺はそれを試してみたいと思ったんだ。個人的にもっと意味のあることをしたいと思っていたんだよ。古い詩をただ暗唱するだけではなく、その知識を統合することが重要なんだ。」
Einar にとってルーンはどういう意味を持つのでしょうか?
「”ルーン “という言葉には様々な意味がある。書かれた文字の表音系だけじゃなく、秘密、知識、技術、秘教的な知恵、魔法の歌を意味することもある。フィンランドの民間療法の伝統では、魔法の歌は常にルーンと呼ばれているんだ。ルーンの秘密を知ることは、人が持つことのできる最高の知識と考えられていた。だからこそ、俺はとても尊敬の念を持ってアプローチしているんだよ。
ノルウェー語、アイスランド語、アングロサクソン語の3つの異なるルーンの詩がある。それらはことわざやなぞなぞのようなもので、教育するために作られているんだ。その詩を音楽的に表現するにあたって、俺の創造的なコンセプトは、独自の前提で解釈することだったんだ。
つまり、白樺の木を象徴するBのルーンであれば、森に出て白樺の木で遊ぶ。水をテーマにしているのであれば、川の真ん中に立ってボーカルを全部やりながら、水の音を使う。そういった場所を捉えて、それを音楽に反映させていくことだね。」
Einar は自らを「マルチ・ディシプリナリアン」と表現しています。ワークショップで教えたり、レクチャーを行ったり。そして、歴史的に言えば、「確固たる地に立つ」ように努力しています。創造する際、彼は根のない木に登ることに抵抗があるのです。
同時に彼は、教養と素朴さのバランスを求めています。ただ古代の管楽器の起源を理解するだけで、子供のように初めて演奏することの驚きと喜び(そして失敗)を失って何の意味があるのでしょうか?
もちろん、WARDRUNA の音楽は北欧が誇るブラックメタルにも影響を受けています。あの GORGOROTH の元ドラマーという経歴は伊達ではありません。
「スカンジナビアの音楽は、この場所の環境に非常に影響を受けている。非常に重苦しく、メランコリックでダークだけど、俺たちはそこに美しさを見出しているんだ。だから伝統音楽とブラックメタルにも当然通じる所はある。初期のブラックメタルは伝統的な調性に非常に影響を受けているし、もちろんそのテーマは神話やフォークロアなんだからな」
ALL PICS BY Julia Marie Naglestad & Thor EgilLeirtrø
“If My Work Can Be Considered a Bridge In Music, Nothing Is Better! I’d Love To Be a Bridge Between The Good Qualities In Jazz And The Good Qualities Of Metal. Complexity, Simplicity, Embodied. Like Most Humans.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NIKAN KHOSRAVI OF CONFESS !!
ALL PICS BY Camilla Therese
“Of Course Harsh Sentences Weren’t Convenient But I Took Pride For That! Cause It Meant That My Music And My Lyrics Are So Strong And Truthful That They Could Scare a Whole Regime. But At The Same Time It Was Stepping To The World Of Unknowns.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LARS HORNTVETH OF JAGA JAZZIST !!
“I’ve Listened To Tomita’s Albums For Years And It Felt Really Natural To Combine This Inspirations Of Warm Synth Sounds With The Analogue And Organic Sounds Of The Drums, Guitars, Horns And Vibraphone. We Spent a Lot Of Time Making The Synth Melodies Sound As Personal And Organic As Possible, Like a Horn Player Or a Singer. Tomita Was The Biggest Reference To Do That.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KJETIL NORDHUS OF GREEN CARNATION !!
“In Some Ways We Are a “Child” Of that Norwegian Black Metal Era. Through The Years, Many Of Those Early Black Metal Bands Have Changed Quite a Lot, Developing Their Music And Bringing In Other Influences.”
DISC REVIEW “LEAVES OF YESTERYEAR”
「”Light of Day, Day of Darkness” は多くの点で “すべてを備えて” いるよね。まさに過剰な創造性だったよ。そして幸運にも僕たちはすべてをまとめて、音楽の長いリストとしてだけじゃなく1つの曲として見られるように仕上げることができたんだ。」
ノルウェーの闇皇帝 EMPEROR にも血を分けた Tchort 率いる翠色のカーネーションは、00年代に咲いたプログメタルの徒花にも思えました。しかし、音花のラボラトリーで生育された越境の種子は後続の遺伝子へと刻まれ、14年の時を経て遂に GREEN CARNATION 本体の再生をも誘ったのです。
インタビューに答えてくれた GREEN CARNATION の声、Kjetil が初めてバンドに加わった “Light of Day, Day of Darkness” は当時の常識をすべて覆すような異端の書でした。娘の逝去と息子の誕生を同時に体験した Tchort の感情もとにした闇と光の生命譚は、60分で一曲を成す異形の姿を誇っていました。
「最も重要なのはムードとアトモスフィアだからね。実際、”Light of Day, Day of Darkness” の大半かプログレッシブに属するなんて誰もが言えないだろう。僕たちの音楽には酩酊するような要素、ヘヴィーな要素、ドゥーミーな要素など、他にもたくさん存在するからね。」
サックスやシタール、クワイア、それに600を超えるサンプルまで使用して、ブラック、デス、プログはもちろんフォークからゴス、ドゥームまで縦横無尽に敷き詰めた音の絨毯は、ある意味ステレオタイプが定着してきた当時のプログメタル世界を震撼させたのです。
「このアルバムで僕たちにとって最も重要なことの1つは、GREEN CARNATION 最高の面をすべて1つのアルバムに取り込むことだったね。解散以前は5枚のアルバムで何度も実験を繰り返したんだけど、すべてのアルバムに “典型的なグリーンカーネーションの瞬間” があったわけさ。」
目眩く音旅を経て、経済的な不遇とモチベーションの喪失により2007年に活動を休止した GREEN CARNATION。しかし、マイルストーン “Light of Day, Day of Darkness” のワンオフショウを契機として再び翡翠の撫子に血が通い始めます。
5曲45分。最新作 “Leaves of Yesteryear” に純粋な新曲は3曲しか収録されていません。残りの2曲は “My Dark Reflections of Life and Death” の再録と BLACK SABBATH “Solitude” のカバー。しかし、過去曲の再訪を含め、この内容に不満を感じるファンはいないでしょう。
プログメタルでストーリーテリングを行う翡翠の煌めきは、14年の時を超えて成熟を導き一際その輝きを増していました。エピックという過去の忘れ物を取り戻すタイトルトラック、”Leaves of Yesteryear” には、たしかに ULVER, ENSLAVED, ANATHEMA, CANDLEMASS, KATATONIA といった異端メタルの巨人に宿る耽美や重厚、荘厳を想起させながら、より純粋化したプログメタルを紡ぐバンドの知性と哲学が込められています。
クラッシックロックへの憧憬を湛えた “Sentinels” のアラベスクな旋律、記憶に残るリフワーク、70年代に根ざす鍵盤の香りはまさにロックの黄金律。そうして輪廻の導きのもと、作品はよりドラマティックによりプログレッシブに生まれ変わった16分のセンターピース “My Dark Reflections of Life and Death” で “GREEN CARNATION 2020” の壮大を存分に見せつけるのです。
今回弊誌では、不世出のシンガー Kjetil Nordhus にインタビューを行うことができました。「ある意味僕たちはあのノルウェーブラックメタルシーンの “子供” なんだよ。あれから何年にもわたり、初期のブラックメタルバンドの多くは大きな変化を遂げ、音楽を発展させ、他からの影響をもたらしたね。
たとえば、最近 ULVER のファンになった人は、最初のアルバムを聴くとかなりショックを受けるはずだよ。もちろん、僕たちだってジャンルや影響に関して実験的なバンドだしね。 」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SONDRE SKOLLEVOLL OF MORON POLICE !!
“A Lot Of The Music From The Super Famicom Was Also Very Proggy! The Soundtrack Of Secret of Mana (Seiken Densetsu 2) Was Mindblowing When I First Heard It! Beautiful Melodies Mixed With Interesting Technical Parts, Weird Time-Signatures And Atmospheric Landscapes.”
DISC REVIEW “A BOAT ON THE SEA”
「ノルウェーにおけるプログの “魔法” って何なんだろうね。60年代後半からプログバンドはずっとここにあって、長い間人気を博して来たから、若い世代に刷り込まれているんじゃないかな。だから僕たちがここにいるんだよ!」
“プログレッシブ” の遺産と血脈を受け継ぐ綺羅星の中でも、2019年特に印象的なレコードを残した寵児がノルウェーを拠点とすることは偶然ではないのかも知れませんね。
電子の海で主流とプログを交差させた LEPROUS、エピックの中で多様とハーモニーを追求する MAGIC PIE、そしてプログレッシブポップの革命を牽引する MORON POLICE。共通するのは、プログレッシブ世界の外へと目を向ける野心でしょう。
「様々なジャンルを股にかけることも大好きだね。メタルの要素が減退したから、これまでより多様になれた部分はあるだろうね。ポップミュージックは完膚なきまで崇高になり得るし、ポップミュージックがテクニックと重ね合った時、僕にとって最高に魅力的なものとなるんだ!」
ノルウェーの異形 MAJOR PARKINSON にも籍を置くユーティリティープレイヤー Sondre Skollevoll は、これまで充分に探索が行われて来なかったポップと崇高、ポップとテクニックの融合領域へと MORON POLICE で海図なき船出を果たしました。ノアの箱船で GENESIS の息吹、プログレッシブの遺伝子を守りながら。
「アートワークは、僕たちは “この地球の一員” ってメンタリティーと、音楽のメランコリックな側面を反映しているんだ。」
メタリックな一面を切り離すことで音楽的自由を謳歌する “A Boat on the Sea” で、Sondre は以前に増して表現の自由をも享受し世界を覆う暗雲を薙ぎ払っていきます。
米国の小説家 Kurt Vonnegut がポストベトナム世界を風刺した、”Hocus Pocus” からタイトルを頂くメランコリックなピアノ語りを序曲とするアルバムは、”The Phantom Below” で無機質なデジタルワールドへの皮肉と憧憬を同時に織り込みます。
「大半のスーパーファミコンの音楽はとてもプログレッシブだよね!”聖剣伝説2 Secret of Mana” のサウンドトラックを初めて聴いた時はぶっ飛んだよ!美しいメロディーが、興味深いテクニカルなパート、奇妙な変拍子、アトモスフェリックなサウンドスケープとミックスされていたんだからね。」
最終的にSondre の目指す場所とは、幼き日に熱中したスーパーファミコンの、アナログとデジタルが交差する、目眩く色彩豊かな音楽世界なのかもしれませんね。
ノルウェーという小さな国のプログシーンが注目を集めるきっかけとなったストリーミングサービスの恩恵を認識しながらも、8bit のオールドスクールな情味と温もり、知性の頂きはバンドの原点であり精髄でしょう。狂気のスキルとイヤーキャンディー、それに北欧のメランコリーをミニマルなゲームサウンドと同期させる “Isn’t It Easy” はその象徴に違いありません。
“Beaware the Blue Skies” のレゲエサウンドで、平和大使の仮面の裏で米国の戦術ドローンを大量生産する母国ノルウェーの偽善を暴き、”The Dog Song” のカリビアンや “Captain Awkward” の奇妙なスキャットで自らの多様性を証明する MORON POLICE。それでも、一貫して燃え盛る灯台の炎となったのは煌びやかで心揺さぶるメロディーの光波でした。
「僕はね、強力なメロディーは、きっといつだって純粋なポップ世界の外側に居場所を得ると思っているんだ。そしてそんな音楽がより注目を集めつつあることが実に嬉しいんだよ。」
THE DEAR HUNTER を手がける Mike Watts の航海術も旅の助けになりました。そうして MORON POLICE はプログ世界の外洋へと船を漕ぎだします。
今回弊誌では、Sondre Skollevoll にインタビューを行うことが出来ました。「僕はゲーム音楽の大ファンなんだよ。特に任天堂のね。近藤浩治、植松伸夫、菊田裕樹、David Wise のような音楽家を聴いて育ったんだよ。僕はそういったゲーム音楽にとても影響を受けていると思うし、そのやり方を音楽に取り込んでいるんだ。」MARQUEE/AVALON から日本盤の発売も決定。どうぞ!!