タグ別アーカイブ: symphonic

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERWOOD : SHADOWS AND FLAMES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MAHMOUD NADER OF RIVERWOOD !!

“Egypt Has a Lot To Offer. Egypt Has More Than Just Pop/Rap/Hiphop And The True Sound Of The Deserts Of Egypt Can’t Be More Clear Than In Metal Music.”

DISC REVIEW “SHADOWS AND FLAMES”

「オリエンタルなメロディーが世界中を魅了する理由。それはやはり、魔法のように西洋のメロディーと異なっているからだと思うよ。オリエンタルなメロディーは常に貴重なもので、西洋人の耳にはとても珍しいものだ。だからこそ、メタルとのミックスは、中近東の文化を紹介するとてもユニークで重要な方法なんだよね」
メタルの生命力、感染力を語るとき、中近東の魔法のようなバンドたちはその完璧なる象徴だと言えるでしょう。モダン・メタルの深遠なる世界がいかに寛容で多様であるかは、イスラエルの ORPHANED LAND とチュニジアの MYRATH、さらに BLAAKYUM, SCARAB のカラフルかつエキゾチックな冒険を見れば自ずと伝わるはずです。そしてもう一つ、エジプトのアレキサンドリアを拠点とする RIVERWOOD の名前を我々はそのリストに加えなければなりません。
「故郷アレクサンドリアと同様に、僕たちの音楽も様々な文化を融合することに力点を置いている。僕たちの音楽には、アラビア文化、西洋の近代文化、スカンジナビア、北欧、そして多くの民族楽器が登場する。これこそが RIVERWOOD のメインテーマでもあるんだよね。ヘッドフォンやスピーカーから遠く離れた場所へ、リスナーの想像力をかきたてるような作品にしたいね」
人口520万人が暮らすエジプト第二の都市アレクサンドリア。地中海の真珠と呼ばれる美しき港湾都市は、ギリシア・ローマ文明、エジプト文明、そしてイスラーム文明が時と共に融合した文化の交差点でもあります。RIVERWOOD の音楽は、そんな彼らの故郷にも似てまさに “世界の結び目” のような色彩豊かな寛容さを誇っているのです。
「基本的に、エジプトには様々な音楽が存在する。ポップ、ラップ、ヒップホップ…だけどエジプトの砂漠、その真のサウンドを伝えるのにメタル以上のものはないんだよ」
砂漠の音を伝えるのにメタル以上のものはない。おそらく、彼らの言葉は真実でしょう。メタルには、砂漠の雄大、過酷、孤独、無情、そして絶景と神秘を伝えるだけの音の葉が備わっています。
RIVERWOOD の場合、彼らが愛する KAMELOT に似てシンフォニックなプログレッシブ・メタルを演じながら、劇中に伝統楽器やフォークミュージック、そして中近東のオリエンタルなメロディーを織り交ぜて砂漠の声を代弁していきます。主役を務める歌い手は素晴らしき Mahmoud Nader その人。彼の熱砂の歌声は、メタルのエクストリーム・サイドからシネマティックな情景描写まで、舞台を多様で情熱的な劇場へと導いていくのです。
「メタル・シーンは長い間、体制に悩まされてきたけど、今は正直言ってそうじゃない。今の唯一の課題は観客の文化で、観客の好みが何十年もかけてロック/メタルからモダン・ポップにシフトしてきたことが、僕にとっては常に奇妙で脅威に思えるんだ。誤解しないでほしいんだけど、例えば Spotify のトレンドを見てほしいんだ…まあでも結局のところ、誰もが自分の好きなものを愛する自由を持っているんだよ」
二枚組のアルバムとも言える75分の壮大な “Shadows and Flames” で語られるのは、新バビロニア興亡の物語。さながら、ネブカドネザル2世のバビロン捕囚のようにメインストリームな音楽世界に淘汰されつつあるハードロック/メタルの民ですが、RIVERWOOD はそんな音楽におけるバビロンの横暴も長くは続かないことを砂漠のメタルで熱く証明してくれます。
最も長い楽曲は12分半の “Blood and Wine” で、リスナーの時間、場所、ムードを刻々と変化させるアラジンの壺。荘厳壮大、絢爛豪華。シンフォニックで、アグレッシブで、エキゾチックで、シアトリカル。”The Shadow” というダークでミステリアスな小曲を挟み、10分超の “Sands of Time” は砂漠の中の異形、ピラミッドへとリスナーを惹き込んでいきます。ハーディー・ガーディーを前面に押し出した7分のロマン “Queen of the Dark” のプログレッシブでフォーキーな面持ちはアルバムの絶妙なアクセント。
“Shadows and Flames” に収録されている楽曲はそれぞれ長さが非常に独特で、1分をやっと超えるような非常に短い作品もあれば10分の作品も存在し、中間がありません。これは非常に挑戦的なやり方で、バンドが作曲能力に大きな自信を持ったエジプトの宝石であることを、ルールのない常識越えのアルバム全体でしっかりと証明していますね。
今回弊誌では、Mahmoud Nader にインタビューを行うことができました。「インスピレーションは中世のビデオゲームから得ている。バンド名の “Riverwood” は、Helgen のドラゴンの攻撃から逃れて、最初に行く村。Skyrim ファンなら共感してくれるはずだよ (笑)」どうぞ!!

RIVERWOOD “SHADOWS AND FLAMES” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERWOOD : SHADOWS AND FLAMES】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LANA LANE : NEPTUNE BLUE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LANA LANE !!

“I Definitely Feel Symphonic Rock Was, And Is, An Important Genre For Women In Music. It Opened Many Doors For Me And Other Female Singers, And I Think It Continues To Do So Today.”

DISC REVIEW “NEPTUNE BLUE”

「90年代、Erik と私は、LANA LANE, ERIK NORLANDER, ROCKET SCIENTISTS で、年に2、3枚、時には4枚ものアルバムを発表していたわ。だけどね、私たちは短期間に多くの作品をリリースすることは、その創造というプロセスから喜びを奪ってしまうと感じていたのよ…」
“LANA LANE はフェイド・アウトした”。そう感じていたファンは実際、多いのではないでしょうか? 威風堂々たる “Love Is An Illusion” で日本を席巻し、”Garden of the Moon” でシンフォニック・ハードの女王、その座を揺るがぬものとして世界へと飛び立ったあの圧倒的な快進撃を目撃していたとすればならなおさらのこと。魔法、輝き、神秘性…言葉ではうまく言い表せない何かが失われてしまった…残念ながらそんな感覚がいつからか、少なくとも私にはありました。大名盤 “Queen of the Ocean” のしばらく後…くらいからでしょうか。
しかし、そう感じていたのは実は張本人である Lana Lane も同じ。原因は多忙と多作。アーティストは決して打ち出の小槌ではありません。強欲に任せて無い袖を振らせるなどはもってのほか。結局、彼女は疲労困憊で10年もの長い間、音楽世界をほぼ離れてしまうことになります。
「私にとって歌うことは、何年経っても本当に自分の一部だから、10年という時間をおいてもっと自分の声や歌に馴染めたのかもしれないわね。私たちは永遠に変化し続ける存在よ。願わくばより良い方向へと向かっていければいいわね」
ただし、その長い休養期間も決して悪いものではなかった。復活作 “Neptune Blue” を聴けば待ちわびた “最初からの” ファンもそう思うのではないでしょうか。
“覚えてる?帰ってきたわ。これが私よ!” と訴えかけるオープナー “Remember Me” はまさに圧巻。みなぎる声の張り、繊細と大胆を自在に使い分ける感情のパラメーター、そして何より初期のフックや勢い、旋律の魔法が時を超えてこの海神の青には再び宿っています。それはきっと、”詠時感 時へのロマン” と言い換えてもいいのかもしれません。
「Erik と私は、このアルバムをオーガニックなものにしたかったの。つまり、それぞれの曲をそれぞれの声で表現したかった。だから、今回はある曲がより “ブルージー” になったとしたら、それを私たちが分類されているような他のジャンルの音楽に無理に合わせようとするのとは対照的に、しっかりとその方向で発展させることができたのよね」
無理にシンフォニックである必要はない。無理にプログレッシブである必要はない。無理にハードである必要はない。10年の休養は、Lana の心から様々な “穢れ” を洗い流しました。原点回帰とは言わないまでも、完全に “無邪気な” 創造性によって育まれた “Love is an Illusion” の “青” がたしかにこのアルバムには流れています。プログはプログに、ハードロックはハードロックに、フォークはフォークに、ブルースはブルースに、そしてシンフォはシンフォに。楽曲の長所を伸ばす有機的な栽培方法は、無農薬の創作物をスクスクと育てるにうってつけのやり方でした。ただし、貫かれた部分も存在します。それは、”ポップ・センス” という ASIA からの贈り物。
長年、ASIA でフロントマンを務めた John Payne のゲスト参加。実はそれがこの素晴らしき復活作の一つの鍵となっています。彼が Erik Norlander と立ち上げた DUKES OF THE ORIENT はまさにトリガーでした。例えば “Remember Me” の勇壮なミドルパートやアコースティックのアウトロ、”Under The Big Sky” の華やいだイントロダクション、”Far From Home” のダウンズ・イズムなど、ASIA 独特のコードと鍵盤の関係性が再現された楽曲は数知れず。そして何より、特に”Secrets of Astrology” 以降平坦にも感じられた旋律の数々が、ASIA イズムの導入によって再びダンスを踊り始め、輝き始めたのです。
かつて “I Belive In You” の楽曲提供を受け、ともにプロジェクトを始動させる可能性もあった John Wetton の5周忌にリリースされた偶然も、この作品の信ぴょう性を高めました。
もちろん、欲を言えばキリがありません。例えば、私たちは Jeff Kollman がこんなものではないことを存分に知っています。楽曲にあわせたといえばそれまでなのでしょうが、荘厳なクローサー “Neptune Blue” に垣間見えるギターの狂気をもっともっと聴きたかった。”EDWIN DEAR の “Can’t Break Me” を思い出して欲しい!” とか、”Don Schiff もっともっとスティック唸らせていいでしょ。LANA LANE といえばベースでしょ。”Symphony of Angels” のイントロのあの “ドゥーン” が人生変えたんだよ!” とか、”ドラムの音!” とか。しかし、そんな話は結局些細なこと。この物語の主人公は、Lana と Erik の二人なのですから。彼女と彼の “ハネムーン” という蜜月はまだまだ続いていきます。
今回弊誌では、Lana Lane にインタビューを行うことができました。「シンフォニックでハードな音楽は、昔も今も、ロックに携わる女性にとって重要なジャンルであることは間違いないと思っているわ。私や他の女性シンガーに多くの扉を開いてくれたし、現在も扉を開き続けているから」 どうぞ!!

LANA LANE “NEPTUNE BLUE” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LANA LANE : NEPTUNE BLUE】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SCARDUST : STRANGERS】SONIC STARDUST FROM ISRAEL


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SCARDUST !!

“The Name Holds Two Opposites. The Scar Dust Is The Trauma, It Is Ugly And It Hurts. But When You Join Both Words Together It Sounds Like Stardust, Which Is Something Ethereal And Beautiful.”

DISC REVIEW “STRANGERS”

「イスラエルには小さいながらもとてもパワフルで、最高のメタルバンドが集まっているのよ。ORPHANED LAND, WALKWAYS, SUBTERRANEAN MASQUERADE といった有名なバンドは氷山の一角に過ぎないの。」
米国と欧州、そして中東の交差点イスラエル。時に火薬庫にもなり得る複雑なその地で、音を宗教とするアーティストたちは、現実社会よりも容易に文化間の距離を縮めています。
デビューフル “Sands of Time” があの Prog 誌から “Extraordinary” という絶賛を浴びた SCARDUST も、イスラエルが生んだ極上の架け橋の一つ。世界に散らばるインスピレーションの結晶を集めながら、プログメタル無限の可能性を追求していくのです。
「僕はシンフォニックメタルというのは、プログロックの歴史を紐解けばその延長だと考えることが出来ると思っているんだ。」
バンドの専任コンポーザー、アレンジャー Orr Didi は、クラッシックとロックの甘やかな婚姻から始まったプログロックの起源が、現在のシンフォニックメタルへと続いている、そう主張します。実際、SCARDUST の音楽は荘厳なクワイアやストリングスのクラシカルな響きを抱きしめながら、メタルに宿るアグレッション、複雑な不合理、そしてテクニックの洪水をもしっかりとその身に受け止めているのです。
「優れたテクニックを持つことは、このジャンルには不可欠な要素だと思っているの。」
中でも、驚異的なハイトーンからグロウル、ラップにスキャットまで、ありったけの情趣を注ぎながら自由を謳歌する Noa Gruman の千変万化な詩情はあまりに独特に、楽曲の表情をコントロールしていきます。
実際、Russell Allen と Floor Jansen, そして Whitney Huston がディズニーの魔法で溶け合ったその歌の万華鏡は、JINJER の Tatiana Shmaylyuk に匹敵するほどユニークを極め、”テクニックとは肉体的なプロセスでありながら、心、身体、魂、表現を一つに結びつけ、感情的な側面を最終的な形に持っていくことを目的としているんだ” のギタリスト Yadin の言葉を実践しています。
「イスラエルに最高のオーディエンスがいることは確かなんだけど、その人数は決して多くないから母国よりも遠く遠く離れた世界を対象に音楽を演奏し、作らねばならないと理解しなきゃいけないんだよ。それがある意味もどかしい部分ではあるんだけどね。」
アートとエモーションの粋を極めた絶佳のメタルオペラを創造していながら、母国以外での活動に力を入れなければバンドを維持できないもどかしさ。その中で感じた疎外感や孤独は乗り越える野心を伴って最新作 “Strangers” へと投影されました。
散りばめられた楽曲の断片を組み込みながら驚異のテクニックでレコードへと導く “Overture For The Estranged”。そこから描かれる10曲のプログメタルドラマは、DREAM THEATER や SYMPHONY X の迷宮組曲に EPICA や NIGHTWISH のシンフォニーを集成した新世界。興味深いことに、その10曲はそれぞれが対になるパートナー曲を有して、5つの魅惑のストーリーを裏と表から語り尽くしていくのです。
ORPHANED LAND を手がけた Yonatan Kossov と Jens Bogren のプロダクションチームも、ドイツのハーディーガーディー奏者 Patty Gurdy も、40人の学生コーラス隊も、ダンスを誘う煌びやかなアンサンブルも、すべてはこの耽美でしかしゴージャスなメタル交響曲を嫋やかに彩ります。特に、SYMPHONY X から LANA LANE へとバトンが渡る “Tantibus Ⅱ” の扇情力は筆舌に尽くしがたい秘宝。
今回弊誌では、Noa, Yadin, Orr の3人にインタビューを行うことが出来ました。「SCARDUST には2つの相反するものが込められているの。スカーとダスト (傷の結晶) はトラウマで、醜くて痛いわよね。だけどこの2つの言葉を一緒にすると、スターダストのように聞こえて、それはエセリアルで美しい何かへと変化するのよ。」 どうぞ!!

SCARDUST “STRANGERS” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SCARDUST : STRANGERS】SONIC STARDUST FROM ISRAEL

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WILDERUN : VEIL OF IMAGINATION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAN MULLER OF WILDERUN !!

“Epic Is Probably The Most Encapsulating Word You Could Use But I Feel Like It Still Leaves Out Some Of The More Progressive And Experimental Sides Of Our Music.”

DISC REVIEW “VEIL OF IMAGINATION”

「”エピック” はおそらく最も僕たちの音楽を要約した言葉だけど、ただ僕たちの音楽にあるいくつかのより進歩的で実験的な側面をそれでもまだ除外しているように感じるね。」
虚空に七色の音華を咲かせるフォーク-デス-ブラック-アトモスフェリック-シンフォニック-プログレッシブ-エピックメタル WILDERUN は、ジャンルという色彩のリミットを完全に排除してリスナーに名作映画、もしくは高貴なオペラにも似て胸踊るスペクタクルとドラマティシズムをもたらします。
「OPETH の音楽には特に昔の音源でダークな傾向があるんだけど、WILDERUN には常に見過ごされがちな明るく豊かな側面があったと思うんだ。」
時にアートワークから傑作を確信させるレコードが存在しますが、WILDERUNの最新作 “Veil of Imagination” はまさにその類でしょう。アートワークに咲き誇る百花繚乱はそのまま万華鏡のレコードを象徴し、”陽の”OPETHとも表現されるブライトでシンフォニックに舞い上がる華のモダンメタルは、シーンにおける “壮大” の概念さえ変えてしまうほど鮮烈なオーパスに仕上がりました。
「僕たちが様々な種類の音楽をブレンドする際に使用した最も重要なテクニックとは、単にストレートなフォークセクションをプレイしてから、お決まりのブラックメタルパートを始めるって感じじゃないんだよ。その代わりに、メタルと非常に異なるスタイルの音楽にしか存在しないと思われる特定の作曲テクニックを分析し、それをどうメタルの文脈に適応させるのか探っていったんだ。」
ベーシスト/オーケストレーター Dan Muller が語る通り、WILDERUN の多様性は単純な足し算ではなく複雑な掛け算により無限の可能性を見出しています。様々なジャンルの本質を抜き取り、その膨大なコンポーネントを最適に繋ぎネットワークを構築する彼らのやり方は、さながら人間の神経系統のように神々しくも難解な神秘です。
中でも、シンフォニックなアレンジメントは作品を通じて情炎と感奮、そして陶酔をもたらす WILDERUN のシナプスと言えるのかも知れませんね。メタルをはじめとした豊かな音の細胞は、優美でドラマティックなオーケストレーションにより有機的に結合し、思慮深くシームレスに互いを行き来することが可能となるのです。
オープナー “The Unimaginable Zero Summer” はその進化を裏付ける確固たる道標に違いありませんね。語りに端を発する抽象的かつファンタジックな15分の規格外に、目的のない誘惑など1秒たりとも存在していません。
オーケストラの名の下に、無慈悲なデスメタルからメランコリックアコースティック、浮遊するエレクトロニカ、オリエンタルな重量感、絶佳なワルツの大円団、そしてエセリアルなピアノのコーダまで、秩序と無秩序の間で悠々と整列した音の綺羅星はいつしか夜空にプログレッシブな夏の星座を映し出しているのです。WILDERUN に宿る平穏と焦燥の対比を完膚なきまでに描き象徴する Evanのボーカルレンジも白眉。
クライマックスは中盤に。”Scentless Core (Budding)” に蒔かれたエピックの種は、”Far From Where Dreams Unfurl” の青葉としてエアリーかつメランコリックな大合唱で天高く舞い上がり、”Scentless Core (Fading)” で老獪な叙情の花を咲かせるのです。まるでアルバムのテーマである無邪気から退廃へ、人の歩みを代弁するかのように。
例えばプログレッシブデスメタルなら “Blackwater Park”、シンフォニックエピックメタルなら “Imaginations From The Other Side”、オリエンタルフォークメタルなら “Mabool”。ファンタジックで知的なメタルには各方面に絶対のマイルストーンが存在します。しかし “Veil of Imagination” はOPETH よりも華やかに、BLIND GUARDIAN よりも多様に、ORPHANED LAND よりもシンフォニックに、数ある傑作の交差点として空想力に創造性、好奇心、そして多様性のモダンメタル新時代を切り開くのです。
今回弊誌では Dan Muller にインタビューを行うことが出来ました。「少なくとも僕にとってこのレコードの歌詞のゴールは、世界を実際あるがままに見せることなんだ。みんなの心の目を再度トレーニングしてね。」2度目の登場。どうぞ!!

WILDERUN “VEIL OF IMAGINATION” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WILDERUN : VEIL OF IMAGINATION】

DISC REVIEW + INTERVIEW 【DERDIAN : DNA】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ENRICO PISTOLESE OF DERDIAN !!

“At The Beginning, Rhapsody Were One Of Our Favorite Band And There Is No Doubt We Have Drawn Inspiration From Them. But We Were Very Young. Now Things Are Very Different. We Feel To Play Completely a Different Music.”

DISC REVIEW “DNA”

風光明媚な地中海を臨むイタリアの “DNA” は、ことロックの世界においてここ日本の情緒と一脈の共感覚を披露し続けています。
古くは NEW TROLLS, P.F.M. といったプログレッシブの芸域から、近年では RHAPSODY, DARK LUNACY, FLESHGOD APOCALYPSE など雄々しきメタルの血脈まで、ファンタジックでロマンと幾ばくかのセンチメントを宿したその感覚世界は殊更に日本のリスナーを魅了して来たのです。
“Derdian” の王 Golstar を巡る英雄譚 “New Era” サーガ、至高のトリロジーでシーンに登壇した DERDIAN もまた、彼らと同様に目眩く幻想と哀愁のユートピアで日本のファンと深くそのイマジネーションを共有しています。
アルバム “Limbo” で日本盤ボーナストラックに、アニメ “聖闘士星矢” のテーマ曲 “Pegasus Fantasy” を華麗にカバーした事実もバンドと日本の密接な脈絡を物語るものでしょう。
「2年以上の月日を経て、DERDIAN と Ivan の間にはケミストリーが存在したことに気がついたんだよ。」マスターマインド Enrico がそう語るように、”Limbo” 以降よりコンテンポラリーなサウンドへとシフトした彼らに不可欠な “声”、Ivan Giannini が復帰を果たし製作された最新作 “DNA” は情緒のシンクロ二ティーはそのままに、集大成にして新たな冒険へと駆り立てるバンド史上最も多様な SF エピックです。
「改竄されていた聖書の内容。現生人類は、来襲したエイリアンが科学で生み出したエイリアンと地球人の子孫であった。」常にストーリー性を前面に押し出す DERDIAN が送る新たなファンタジーは、壮麗なるイントロダクション “Abduction” でシネマティックにその幕を開けます。
アルバムオープナー “DNA” はまさに劇団 “DERDIAN” の面目躍如。高らかに鳴り響くシンフォニー、舞い上がるは雄弁なる大合唱、押し寄せるは津波のようなメタルパワー。
華々しい歌劇の幕開けは ROYAL HUNT にも通ずるメランコリーと構成美、クラシカルの園を見せつけながら、リスナーをカタルシスの渦へと誘います。リレコーディング作品に D.C. Cooper が参加していた事実も偶然ではないはずです。
初期 SYMPHONY X をイメージさせるミステリアス&プログレッシブな “False Flag Operation” を経て遭遇する “Never Born” はアルバムのハイライトでしょう。”DNA” 以上にシンフォニックメタルの理想形を提示した楽曲は、エナジーとフック、キャッチーなスピリットを抱えてダイナミックにその翼を広げます。
大胆なストップモーションに繊細な間奏のオーケストレーションなど、近年のパワーメタルアクトの中でも飛び抜けて “フック” の意味を熟知した作曲術こそが明らかに彼らの強みの1つでしょう。
一方で、強国 “Derdian” は侵攻を続け、その領地を多様に拡大し続けます。耽美なるタンゴの響きを纏ったエスニックな “Red and White”、ジプシージャズのイメージを大胆に投影する “Elohim”、プログメタルの領域へと侵入する複雑怪奇な “Ya Nada Cambiara”。DERDIAN ワールドは無限にカラフルに、そしてエクレクティックにそのパノラマを四望するのです。
そうしてアルバムは日本語で歌われるボーナストラック “Never Born” をアンコールにその幕を閉じます。盛大なカーテンコールを受けながら。
今回弊誌では創立メンバーでギタリスト Enrico Pistolese にインタビューを行うことが出来ました。2年連続となる Evoken Fest への出演も決定しています。「DIYとなった現在は全く異なり、僕たちのことは全て僕たちで決定を下すことが出来る。だいたい、バンド全員が日常の仕事で上司がいるのに、なんでまた厄介な上司を増やす必要があるの?!1人で充分だよ(笑)!!」どうぞ!!

DERDIAN “DNA” : 9.9/10

続きを読む DISC REVIEW + INTERVIEW 【DERDIAN : DNA】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!

SPECIAL INTERVIEW 【RENAISSANCE : A SYMPHONIC JOURNEY】JAPAN TOUR 2018 !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANNIE HASLAM OF RENAISSANCE !!

PHOTO BY BRIAN TIRPAK

“I Have Been Blessed That My Voice Has Stayed Strong… I Really Love To Sing The Songs Of Renaissance.”

A SYMPHONIC JOURNEY

60年代後半、ブリティッシュロック第2の波はメインストリームに清新な音風を吹き込みました。質量を纏ったロックンロールは、ジャズ、フォーク、クラシカル、そしてポップミュージックと融合し華麗なオーケストラを奏で始めたのです。そして、至高のコンダクターが集うそのムーブメントは、”プログレッシブロック” “進化するロック” と称されるようになりました。
残念なことに、ムーブメントの中で RENAISSANCE は、YES, KING CRIMSON, そして GENESIS ほどの盛名を馳せた訳ではありません。”Northern Lights” のヒットが生まれた70年代後半まで、バンドがチャートを賑わせたりスタジアムをフルハウスにすることはありませんでしたし、何より彼らは前述のコンダクターたちほどテクニカルでも、フラッシーでも、実験的でもなかったからです。
しかし、RENAISSANCE にはクラシック音楽、フォーク音楽をオーケストラルに、シンフォニックにロックへと昇華する唯一無二の独自性が確かに存在していました。
「私たちの音楽は魂の深い部分に触れるものなの。」 Annie Haslam のオペラティックに舞い上がる5オクターブの声翼、Jon Camp のメロディックに推進力を秘めたベースライン、そして Michael Dunford のデリケートで味わい深いギターアレンジメント。彼らのプログルネサンスはただ一貫して魂に触れる音楽の追求だったのです。
世界初のシンフォニックロック女性シンガー Annie が RENAISSANCE に加入したのは “移行” の時期でした。YARDBIRDS のレジェンド Keith Relf が着手した「ロックにクラシックやフォークをブレンドして進化を遂げる」構想はそのままに、メンバー全てが交代しリリースした”Prologue” からバンドは躍動を開始します。Annie のそびえ立つ美声、John Tout のジャジーでラテンな鍵盤捌き、Jon Camp の華麗なベースライン。エレガントなタイトルトラックはまさしくルネサンスイズムの芽生えでした。
バンドのクリエイティブフォースである Michael Dunford が正式に復帰し、オーケストラを導入した “Ashes Are Burning” は ELP や YES のファンの目を惹くに充分なクオリティーを誇るブレイクスルーアルバムとなりました。Dunford の緻密で淡く、マジェスティックなアレンジメント、アコースティックの響きは完璧なまでにバンドにフィットし、オープナー “Can You Understand?” で魅せるロックとクラシカル、そしてフォークの目眩くコントラスト、ダイナミズムは作品をプログレッシブの名作として長らく語り継がれるマイルストーンへと押し上げたのです。
作品を重ねるごとに RENAISSANCE はそのプログレッシブのイヤーキャンディー、シンフォニックでエセリアルな天にも昇る聴き心地を高めていきました。中でも、75年にリリースした “Scheherazade and Other Stories” は最もシネマティックで、深層までレイヤーされた極上のデザインを誇るマスターピースです。
25分のエピック “Song of Scheherazade” はライブアルバム “Live at Carnegie Hall” でさらにそのスリル、ダイナミズムを増して、圧倒的なまでにリスナーを恍惚へと誘います。一方で、後に BLACKMORE’S NIGHT もカバーした “Ocean Gypsy”、前作の “I Think of You” で提示した幽玄に煌めく叙情のスロウダンスも実に白眉なのですが。
しかし、米国で成功のピークに達したバンドは “Northern Lights” のヒットを境にダークピリオドへと陥ってしまいます。「正直に言って大きな過ちだったと思うわ。当時私たちは自らの大事な大事な財産を置き忘れてしまったのね…」インタビューで Annie も認めているように、ヒットを求めるプレッシャー、ニューウェーブやディスコミュージックの台頭により、80年代に入りバンドはその魂を置き忘れ迷走し、遂には分裂に至ってしましました。
ソロ活動を経て Annie, Michael の両者が合流。2000年に “Tuscany”をリリースし、バンドの40周年を契機にリユニオンが本格化するとシーンはレジェンドの復帰を諸手を挙げて歓迎しました。しかし、新作 “Grandine il Vento” が予定され RENAISSANCE にとって何者にも代えがたい1年となるはずだった2013年を前に、Michael Dunford が逝去してしまったのです。
“Grandine il Vento”, 後にリイシューを経て “Symphony of Light” と銘打たれた作品は、Annie が “導きの光” と慕っていた Michael への素晴らしいトリビュート、墓碑となりました。
今では5人のアメリカ人と、米国在住の英国人というラインナップになった RENAISSANCE ですが、Annie の情熱、そして天賦の歌声は衰えることを知りません。そうして、オーケストラとの共演を封じたライブDVD “A SYMPHONIC JOURNEY” は新たな旅立ちの象徴としてリリースされます。8年ぶりに決定した来日公演はまさにその伝説と飛翔を目にするこの上ないチャンスとなるはずです。
今回弊誌では、歴史の証人 Annie にインタビューを行うことが出来ました。「そして何より、私は心から RENAISSANCE の楽曲を歌うことを愛しているの。」アートワークに使用するほど絵画や写真にも秀でた芸術の人。どうぞ!!

続きを読む SPECIAL INTERVIEW 【RENAISSANCE : A SYMPHONIC JOURNEY】JAPAN TOUR 2018 !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XANTHOCHROID : OF ERTHE AND AXEN ACT I & Ⅱ】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SAM MEADOR OF XANTHOCHROID !!

18518132_1712836618734250_485832773851021512_o

More Extreme, Yet More Delicate. More Vast, Yet More Intimate. Xanthochroid’s “Of Erthe and Axen” Attempts To Further Broaden The “Cinematic Black Metal” Horizons !!

DISC REVIEW “OF ERTHE AND AXEN”

プログレッシブエクストリームのイノベーションを志望する、南カリフォルニアの野心的なカルテット XANTHOCHROID が至高なる2枚組の新作 “Of Erthe and Axen” をリリースしました!! “ロードオブザリング” や “ゼルダの伝説 時のオカリナ” にインスピレーションを得たというその壮麗かつ耽美なファンタジックワールドは、”シネマティックブラックメタル” の呼称に相応しいロマンとイマジネーションを運びます。
ブラックメタル、プログメタル、プログロック、シンフォニック、フォーク、クラシカル。XANTHOCHROID のカラフルで奥深いタペストリーは、OPETH, EMPEROR, ENSLAVED, JETHRO TULL, RENAISSANCE の豊潤なるミックスなどとも評されます。ただし、デビュー作から続く壮観なコンセプトストーリーをベースとした、大作映画や RPG のサウンドトラック的なアプローチは確かにバンドの確固たるアイデンティティーとなっているのです。
XANTHOCHROID が紡ぐ “Etymos” の物語は、王の血を引く Thanos と Sindir (後に Ereptor) 兄弟による闘争憚。”Of Erthe and Axen” では、”Incultus”, “Blessed He With Boils” 以前、二人の子供時代の出来事を、愛、嫉妬、魔法、戦争、そして欺瞞のエッセンスを交えつつ克明に描いているのです。
“Etymos” のエピック第一幕は、壮大なオーケストレーションと繊細でフォーキッシュな二つの小曲で幕を開けます。作品の全体像を暗示するような意を異にする二つのイントロダクションは、多彩な楽器の導入と新加入の女性シンガー Ali Meador の美麗なる歌声を披露し、共にバンドの拡がる可能性を伝えていますね。
不穏で不気味なディストーションサウンドが静寂を切り裂く “To Higher Climes Where Few Might Stand” はまさに XANTHOCHROID の真骨頂。EMPEROR や OPETH の面影を、クワイアやシンセサイザーで大仰にドラマティックに味付けしたシアトリカルな8分間は、Sam の邪悪なグロウルと伸びやかなクリーンを羅針盤に、ジギルとハイドの如く静と動を行き来します。6拍子のフォルクローレが、ホーンとストリングスを伴って鮮やかにメタリックな華を満開とする中盤の超展開は筆舌に尽くし難いほど見事です。
“To Souls Distant and Dreaming” で DREAM THEATER の遺伝子を垣間見せた後、Sam のパーカッシブギターは進化の証である “In Deep and Wooded Forests of My Youth” を導きます。マンドリンやアコーディオン、フルートを取り入れた JETHRO TULL をも想起させるフォーキーでロマンチックなデュエットは、朗々とした Ali と Sam の歌声でリスナーを月明かりが差し込む深き森、木々の騒めきへと誘うのです。
「”Act Ⅱ” は “Act I” に比べてメタルの要素が強調され、より長いアルバムになっているね。」 とSam が語るように、アルバムの第二幕はアートワークの変化も伴って、大円団に向けてその硬質と絢爛を増して行きます。
男声と女声のクワイアとピアノの流麗な響をイントロとしたあまりに豪壮でドラマティックな “Through Chains That Drag Us Downward” はその象徴でしょう。Sam の背徳的アジテイトや時折挿入されるブラストビートは、確かにバンドのルーツを示しますが、とは言えあまりに拡大された楽曲全体のデザインを鑑みれば、Sam が 「自分たちをブラックメタルと呼んでいるのはジョークのようなもの」 と語ることにも頷けます。
実際、Sam の歌唱が Hansi Kursch を思わせる “Of Aching Empty Pain” などではシンフォニック/シネマティックメタルのパイオニア BLIND GUARDIAN の領域、絢爛さにまで接近しているようにも思えます。
アルバムは、クラッシックなオペラの如く華麗で重厚な11分の大曲 “Toward Truth and Reconciliation” で濃密でダイナミックな作品をリトレイスするかのように幕を閉じました。
今回弊誌では、ボーカル、ギター、キーボードを担当する Sam Meador にインタビューを行うことが出来ました。今回も Jens Bogren がマスタリングを担当しています。全てを DIY で賄っているため知名度こそ低いものの、そのクオリティーは最上級。どうぞ!!

19959358_1787200591297852_1024487884777074018_n

XANTHOCHROID “OF ERTHE AND AXEN ACT I & Ⅱ” : 9.8/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XANTHOCHROID : OF ERTHE AND AXEN ACT I & Ⅱ】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SHADOW OF INTENT : RECLAIMER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS WISEMAN & BEN DUERR FROM SHADOW OF INTENT !!

18157459_652408941624917_1015245742480791902_n

The Halo-Themed Stunning Symphonic Deathcore Act From US, Shadow Of Intent Has Just Released One Of The Most Dramatic Record Of The Year, “Reclaimer” !!

DISC REVIEW “RECLAIMER”

遥かなる星河に美麗なるデスコアのシンフォニーを注ぐ、コネチカットのスペースシップ SHADOW OF INTENT がハイスペックな新章 “Reclaimer” をリリースしました!!人類とコヴナントの争いを描く壮大なる宇宙譚 HALO シリーズをテーマに抱いたバンドは、文字通りシーンの “再生” を担っていくはずです。
ギタリスト Chris Wiseman とボーカル Ben Duerr のプロジェクトとして始まった SHADOW OF INTENT。遂に5人のメンバーを揃え、真のバンドとしてリリースした初の作品 “Reclaimer” は実際全ての面で前作 “Primordial” を凌駕しています。
アルバムオープナー、”We Descend…” の神秘的なアトモスフィア、壮麗なるオーケストレーション、透徹したプロダクションはまさに進化の証。インタビューにもあるように、ABIGAIL WILLIAMS のキーボーディスト Kelsie Hargita の力を借りて構築するシンフォニーは、幾重にも重なりたなびく天の川銀河のごとく華麗に花開きます。
“The Return” で見せるコントラストはアルバムの素晴らしきインビテーション。Ben の地を這うガテラルと Chris の天翔るシュレッドは互いのインテンス、エレガンスを損なうことなく、むしろ崇高さと風格を相互作用で創造しながら激しく加速していきます。
インタビューで語ってくれた通り Jason Richardson をリスペクトする Chris のクラシカルでファストなリードプレイは、スリルと審美の無重力空間でダンスを披露し、Ben のガテラルはブラックホールの質量で全てを飲み込みます。さらに Matt のテクニカルかつクリエイティブなドラミングはカイパーベルトのごとくバンドを密に集約ししリスナーへと迫り来るのです。
彼らを凡百のデスコアバンドから際立たせているのは、確かに卓越したシンフォニックなアレンジメントとオーケストレーション、凛としたピアノの響き、そして鮮麗で純美なメロディーでしょう。しかし、同時により幅広く多彩な音楽的素養も注目されるべきだと感じます。
INFANT ANNIHILATOR の Dickie Allen, INGESTED の Jason Evans, そして Ben のトリプルボーカルで臨んだ “The Catacombs” ではフロリダデスメタルに接近し、チャグと対比させたよりプリミティブでオーガニックなブルータリティーを見せつけ、一方で “The Mad Tyrant’s Betrayal” では高音トレモロリフやクリーンギターを大胆に導入しブラッケンドでアトモスフェリックなドラマを提示します。
何より、Chris のデスコア、テクデス、ブルータルデスメタル、ブラックメタル、ブラックゲイズ、クラシカルなどを巧みに配置した千変万化なリフワーク、そして Ben とゲストボーカルが構築するガテラル、グロウル、スクリーム、クリーンをピースとした難解なジグソーパズルの融合には驚嘆するしかありません。
勿論、VILDHJARTA / HUMANITY’S LAST BREATH のメンバーにして BORN OF OSIRIS の最新作でミキシングも手がけたシーンのレジェンド Buster Odeholm が手がけたアルバムでは、「高校時代には、”The New Reign” EP を本当によく聴いたものさ。」 と Chris が語る通り “The Gathering of All”, “The Heretic Prevails” のようなBoO 直系のアトモスフェリックでコズミックなデスコアサウンドも見事に炸裂していますね。
そして遂にパワーメタルの領域にまで足を踏み入れたドラマチックな “The Prophet’s Beckoning”。クリーンボイスで勇壮に歌い上げる奇跡の刹那には、壮絶に畳み掛けたアルバム中盤の全てが最良の形で結実したかのような爽快感までをも感じることが出来ました。
ちょうど一時間、ドラマティックなスペースオペラは、作品で最もプログレッシブな長尺曲 “The Tarutarus Impalament” で深遠なスポークン・ワードと共に幕を閉じました。
今回弊誌では Ben と Chris にインタビューを行うことが出来ました。デスコアはもとより、シンフォニック、ブラッケンド、プログレッシブ、メロディックなど様々なメタルファンにぜひ聴いていただきたい作品です。どうぞ!!

17498782_636487953217016_2576682200764432207_n-2

SHADOW OF INTENT “RECLAIMER” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SHADOW OF INTENT : RECLAIMER】

RHAPSODY REUNION JAPAN TOUR SPECIAL !! INTERVIEW WITH ALEX HOLZWARTH !


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEX HOLZWARTH OF RHAPSODY REUNION !!

ANN3644-Final-1

Italian Symphonic Power Metal Legend, Rhapsody Reunite To Celebrate Their 20th Anniversary And Coming To Japan For Farewell !

“EMERALD SWORD SAGA”

シンフォニックパワーメタルの先駆者にして、イタリアが生んだ伝説の戦士 RHAPSODY が、初期のメンバーでリユニオンを果たし、ここ遥かなる地日本でも翠玉の太刀を携えフェアウェルツアーを行います!!名作 “Symphony of Enchanted Lands” の完全再現を伴う結成20周年のアニバーサリーライブは、偉大な勇者たちのレガシーに幕を下ろす別れの儀式ともなるはずです。
RHAPSODY が1997年にリリースした “Legendary Tales” はまさにゲームチェンジングなレコードでした。勿論、それ以前にもクラッシック音楽とメタルを融合させたバンドは多数存在しましたが、”フィルム・スコア・メタル” と称される彼らの音楽は、文字通り雄大なファンタジームービー、もしくは勇壮なロールプレイングゲームを強くイメージさせる一大エピックだったのです。
鳴り響くクワイア、壮麗かつシンフォニックなオーケストレーション、大仰なコンポジション、そしてヨーロッパの空気を存分に伝えるクラシカルでフォルクローレなメロディー。何よりバンドには、そのイロモノ感を説得力へと導く英傑が存在しました。
カンツォーネの歌唱をメタルに取り込むがごとく熱く太いハイノートを操る Fabio Lione, ファストで素晴らしくデザインされたリードプレイを披露する Luca Turilli, バロックから後期ロマン派まで幅広い知識でアグレッシブなオーケストラを創造する Alex Staropoli 。Sascha Paeth という黒子の存在もあって、三俊の奏でるシンフォニーはメロディックメタル史に語り継がれるマスターピースを産み落としたのでした。 当時、BLIND GUARDIAN と ANGRA の理想的な婚姻といったイメージを抱いたファンも多かったのではないでしょうか。
さらに RHAPSODY がエポックメイキングだったのは、アルバム5枚で完結する長編ファンタジー、エメラルドソードサーガをコンセプトの中央に据えた点でしょう。2、3作の連続コンセプトアルバムならばしばしば存在するかもしれませんが、RHAPSODY は5作品に渡る長く壮大過ぎるストーリー。しかもエメラルドソードサーガが終結した後、ダークシークレットサーガというこちらもアルバム5枚に渡る長編に乗り出したのですから、あまりに型破りだと言わざるを得ないでしょう。
Luca Turilli のイマジネーションが生んだ世界はこうです。
「ストーリーの主人公はユニコーンに運命を告げられた “氷の戦士”。彼は魔法の国アルガロードに忍び寄る暗黒王アクロンの軍団を打ち倒すため、エメラルドソードを求め地獄に聳える暗黒の塔に向かいます。塔を守護する象牙の門を開くため三つの鍵を探し出し、遂に伝説の剣を手に入れた氷の戦士。アンセロット王国の救出に向かった彼は戦友アルワルドと共に要塞を解放します。しかし暗黒王アクロンの奸計により2人は捕えられ、アルワルドの恋人アイリンは目の前で犯され殺されてしまうのです。アルワルドの命を賭した機転により何とか逃げ出すことに成功した氷の戦士。しかしエメラルドソードを手にした暗黒王は、暗黒の女王を蘇らせ魔法の国々を滅ぼしていきます。氷の戦士は暗黒王の魔の手から”エンチャンテッドランド”を守れるのでしょうか?」
さて、今回完全再現を行う第2幕 “Symphony of Enchanted Lands” はサーガで最も大仰でプログレッシブな作品。そして今回インタビューを行った Alex Holzwarth が加入した第3幕 “Dawn of Victory” は逆にコンパクトでパワーメタル然とした作品。何より、サーガの幕を閉じる第5幕 “Power of the Dragonflame” はサーガ全ての長所を盛り込んだまさに集大成とも言える完成度、劇的なクライマックスを宿した新たな傑作だと言えますね。
エメラルドソードサーガの後、バンドは RHAPSODY OF FIRE への改名、契約を巡るトラブル、Luca の脱退からバンドの分裂、Alex Holdsworth & Fabio Lione の脱退と決して順風満帆で来た訳ではありません。実際、ただ1人 RHAPSODY OF FIRE に残る形となったキーボーディスト Alex Staropoli は残念ながら今回のリユニオンには参加していません。
しかし、インタビューにもあるように、彼以外の参加メンバーはとにかく楽しんで今回のツアーを行っている様子。最後に、散り散りとなってしまった全盛期のメンバーが揃う RHAPSODY を見るチャンスが訪れたことは日本のファンにとって素晴らしいプレゼントでしょう。
今回弊誌では、ドラマー Alex Holzwarth にインタビューを行うことが出来ました!16年在籍したバンドのダイナモが気さくに現状を語ってくれました。行間を読めば見えてくることもあるでしょう。どうぞ!!

maxresdefault-15

続きを読む RHAPSODY REUNION JAPAN TOUR SPECIAL !! INTERVIEW WITH ALEX HOLZWARTH !

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BETRAYING THE MARTYRS : THE RESILIENT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AARON MATTS OF BETRAYING THE MARTYRS !!

BETRAYING-THE-MARTYRS-thumb-1200xauto-39682

Paris Heavyweights, Betraying The Martyrs Has Just Released Catchy-Orchestrated New Album “The Resilient” !!

DISC REVIEW “THE RESILIENT”

フランスが生んだモダンメタルの殉教者 BETRAYING THE MARTYRS がバンドのポテンシャル全てを注ぎ込んだ新作 “The Resilient” をリリースしました!!Metalcore, Deathcore, Hardcore をベースにシンフォニックでエレクトロニカな味付けを施したユニークかつ際立った作品は、フレンチメタルレボリューションの中核に位置する重要なレコードとなりました。
“The Resilient” は前作 “Phantom” で提示した、獰猛なヘヴィネスとメロディックなモーメントの華麗な融合をさらに1歩進め、キャッチーとさえ言えるフックをふんだんに使用したチャレンジングなアルバムです。WHITECHAPEL, SUICIDE SILENCE といったデスコアオリジネーターが挙ってオリジナルのジャンルから離れ独自の進化を辿る中で、BETRAYING THE MARTYRS も遂に自らのアイデンティティーを築き上げたと言えるのかも知れませんね。
アルバムオープナー、”Lost for Words” はそのキャッチーな一面を突き詰めたバンドの新たなアンセムであり、アルバムタイトルが示す通り BETRAYING THE MARTYRS がさらなる強さを得て戻って来たことを証明する一曲でもあります。
デスコア由来の激しくクランチするリフワークはバンドの帰還を高らかに告げますが、シンフォニックでキャッチーなコーラスが訪れるとリスナーは、彼らの進化、モダンに拡大する視野を実感することになるでしょう。勿論、シンフォニックな要素は BETRAYING THE MARTYRS に欠かせないものとして存在してきた訳ですが、今作では完全に別次元の劇的な魅力を提示しているのです。
その新たな地平をを象徴するのが “Won’t Back Down” でしょう。ヘヴィーでアンダーグラウンドなルーツを枢要としながらも、美麗で大仰ななオーケストレーションを前面に押し出した楽曲は、バラードとは呼べないまでも明らかにスロウでプログレッシブ。傑出した耽美なドラマ性を誇ります。2015年にフランスで起きたテロに衝撃を受けて書かれたというエモーショナルな一曲は、アルバムに類稀なチェンジオブペースをもたらすと共に、バンドの確かな成長を伝えていますね。
インタビューでも触れているように、この美しくシアトリカルな世界観と獰猛なデスコアサウンドの見事な融合は、クリーンボーカル/キーボード Victor Guillet の果たす役割が飛躍的に増し、その才能が素晴らしく開花したことに由来しています。
オーケストレーション、エレクトロニカだけでなく、シンプルなピアノの響きも効果的に使用する彼の鍵盤捌きは特異かつ至妙。”Take Me Back” を聴けば、ピアノが導く甘美なボーカルメロディーが CREED や LINKIN PARK が持つロマンチシズムと通じることに気づくはずです。
飽和気味で数多のステレオタイプなデスコアアクトと彼らを分かつ無上の武器 Victor の開眼は、同時にアメリカナイズとも呼べるメジャーなポップネスを纏い、アンダーグラウンドなジャンルに革新をもたらす一際印象的なメジャー感を織り込むことに成功していますね。
結果として、BETRAYING THE MARTYRS は共にツアーを行った ASKING ALEXANDRIA の大きな成功をしっかりと目に焼き付け、自らの血肉としながらも、デスコア、Djent という重厚でテクニカルなルーツを忘れることはありませんでした。それは正式メンバーとして加入した CHIMP SPANNER のドラマー Boris Le Gal が繰り出す凄まじきスティック捌き、”Dying to Live” の煽情的なリードプレイ、綿密に構成されタイトに進化したギターリフ、そして猛悪なグロウルとエピカルなクリーンのコントラストが見事に代弁していると言えるでしょう。
今回弊誌ではバンドのフロントマン Aaron Matts にインタビューを行うことが出来ました。アナ雪の “Let It Go” をヘヴィーにカバーしたことでも話題になりましたね。どうぞ!!

Betraying-the-Martyrs-The-Resilient-Album-Art-2017

BETRAYING THE MARTYRS “THE RESILIENT” : 9.3/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BETRAYING THE MARTYRS : THE RESILIENT】