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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CRISTIANO FILIPPINI’S FLAMES OF HEAVEN : SYMPHONY OF THE UNIVERSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CRISTIANO FILIPPINI OF FLAMES OF HEAVEN !!

“Power Metal and AOR must be about love, positivity, inner strength, battles that take place inside and outside of us, and a sense of justice. So I think Knights of the Zodiac represent not only my favorites, but also perfect examples of how to convey this message.”

DISC REVIEW “SYMPHONY OF THE UNIVERSE”

「パワー・メタルやAORは、愛、ポジティブさ、内なる強さ、自分の内外で起こる戦い、そして正義感について語らなければならないと思う。同時に、”聖闘士星矢”、”北斗の拳”、”ドラゴンボール”、”ベルセルク” といった日本のアニメも、僕のお気に入りであるだけでなく、そうしたメッセージを伝える完璧な作品でもあると思う。だからこそ、このアルバムが日本の漫画やアニメのファンに届くことを心から願っているんだよ」
仲間を信じ合う “友情”、目標達成のため苦難に耐え励む “努力”、そして最後まで諦めず勝利を目指す “勝利”。80年代から90年代にかけて、日本のアニメや漫画はそうしたポジティブでストイックなムードにあふれていました。まだまだ暴力や抑圧、不条理が蔓延していた当時の学校や子供の社会で、私たちはそうした “エンターテイメント” から、前向きな生き方や優しさ、倫理観を学んでいたのかもしれませんね。
それからおよそ30年。当時のアニメや漫画で育った子供たちは成熟し、さまざまな分野でその影響を発揮するようになりました。その波は日本国内に止まりません。イタリアの Cristiano Filippini 率いる FLAMES OF HEAVEN もそうしたアーティストのひとつ。彼らはアートも生き方も複雑を極める現代で、愛や友情、正義といったいつの世も変わらぬ不変の真理にコスモを燃やしています。そのための乗り物として、パワー・メタルや AOR は完璧な “ペガサス”。なぜなら、パワー・メタルのファンタジーはいつの時代もそうしたポジティブな心に寄り添ってきたのですから。
「”聖闘士星矢” にインスパイアされたアルバムの全曲は、最初のシリーズ “サンクチュアリ編” のいくつかのシチュエーションを描写していると言える。曲のタイトルにも登場するフェニックスの一輝やジェミニは間違いなく、漫画の中で最も魅力的で重要で複雑なキャラクターの2人だからね。 しかし、僕のお気に入りのキャラクターは、星矢、紫龍、シャカ、そして童虎だ。 強さ、前向きさ、そして星矢は別としてバランスと知恵の良い例だからね」
“ペガサス幻想 そうさ夢だけは 誰も奪えない心の翼だから”。この数小節、数文字に私たちは何度助けられたことでしょう。イタリアに生まれた Cristiano もこの聖闘士星矢の美しき理想、夢、ストーリーに魅了され、大人になった今、その世界をパワー・メタルで描くことを決意します。
「もちろん “ペガサス幻想” は知っているし、素晴らしい曲で、まさにアンセムだよね。”聖闘士星矢” の公式サウンドトラックには美しい曲がたくさん収録されている。 それに、オーケストラのインストゥルメンタルにも信じられないほどインスパイアされている。傑作だよ」
普段はクラシック・アンサンブルのための作曲に注力している Cristiano。だからこそ、”Symphony of the Universe” は、サンクチュアリのサーガを描くに十分な壮大さと情熱を兼ね備えています。もちろん、イタリアの偉大な先人 RHAPSODY の血をひくクラシカルなパワー・メタルの一撃は強烈ですが、同時にイタリアが誇る Frontiers Music の流れを汲むメロディック・ハードな旋律美も内包し、ワグナーのオペラをメタルに仕立てたような長尺曲も見事。Cristiano はクラシックの作曲プロセスをそのままメタルに持ち込むのではなく、クラシックの世界からメタルを俯瞰し手を加えることで、他のアーティストとは一線を画す存在となり得ています。
同郷 TEMPERANCE の Marco Pastorino が張り上げる歌声はペガサスに乗って駆け上がり、達人 Michele Vioni のギターは廬山昇龍覇の滝の流れの如く流麗。そして Cristiano が指揮を取る鍵盤とオーケストレーションのネビラチェーンはあまりにも純美。ここには、ファンタジックでポジティブなメタルに求められる要素すべてが詰まっているのです。
今回弊誌では、Cristiano Filippini にインタビューを行うことができました。「音楽、特にこのジャンルは、人々の生活を向上させるために大いに役立つと思う。僕の音楽がどれだけ人々が困難な時期を乗り越えるのを助け、今日まったく狂っているように見えるこの世界の灰色を取り除くことができたかについて、多くのメッセージをもらうからね。僕たちは善の戦士なのだから戦わなければならないし、あきらめてはならない。人生は時に厳しいものだけど、戦うための武器はある。そのひとつが、こうしたアートなんだよ」 どうぞ!!

CRISTIANO FILIPPINI’S FLAMES OF HEAVEN “SYMPHONY OF THE UNIVERSE” : 10/10

INTERVIEW WITH CRISTIANO FILIPPINI

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listeningto?

【CRISTIANO】: First of all, I would like to say hello to all our Japanese fans and readers, I am very grateful to your Country. I generally listen to everything good from the late 70s to the 2000s, rock, pop, metal, soundtracks, electronic music. Then I think after that date the quality of the music dropped a lot. Few bands have caught my attention in recent years.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【CRISTIANO】: まずはじめに、日本のファンのみんな、読者の皆みんな、こんにちは! 僕は70年代後半から2000年代まで、ロック、ポップス、メタル、サウンドトラック、エレクトロニック・ミュージックなど、いいものは何でも聴いてきた。その時代に比べて、今は音楽の質がずいぶん落ちたと思う。 近年、僕の関心を引いたバンドはほとんどいないよ。

Q2: I was very impressed when I heard your guitar! The tone is so beautiful and the crystalline shimmer shines through in your fast and unique playing! In fact, what guitarist was your hero?

【CRISTIANO】: I have the opportunity here to clarify something. In Flames Of Heaven I take care of practically everything, I compose all the music, the lyrics, the vocal lines, I take care of the arrangements and orchestrations. I also compose the bass and drum guidelines. As for the guitar, I compose the rhythms and some slower, more melodic solo lines. For everything else, that is, the virtuoso solos and the beauty and perfection of the lead guitar, it is all thanks to Michele Vioni. He’s one of the best guitarists in the world, and he records the guitars for now, while I record the keyboards in the studio. Live instead I will be the rhythm guitar who will also take care of some solo. But the guitar hero is him.

Q2: あなたはギタリストでオーケストレーターだそうですが、この作品はギターのトーンがとても美しく、まるでクリスタルのような煌めきが、ファストでユニークなプレイに輝いています! あなたのヒーローはどんなギタリストだったんですか?

【CRISTIANO】: ここではっきりさせておきたいことがある。FLAMES OF HEAVEN では、実質的に僕がすべてを担当している。すべての楽曲、歌詞、ヴォーカル・ラインを作曲し、アレンジとオーケストレーションを担当しているんだ。 ベースとドラムのガイドラインも僕が作曲しているよ。
ギターに関しては、リズムと、よりスローでメロディアスなソロラインを作曲している。 それ以外のすべて、つまりシュレッド的なソロやリード・ギターの美しさと完璧さは、すべて Michele Vioni のおかげなんだ。彼は世界最高のギタリストの一人で、今のところ彼がギターを録音し、僕はスタジオでキーボードを録音している。 ライブでは僕がリズム・ギターを担当し、ソロも担当する。 でもギター・ヒーローは彼なんだ。

Q3: Still, “Symphony of the Universe” is a masterpiece ofpower metal, combining great melody, technique, andfantasy! Italy has an excellent power metal tradition,including Rhapsody and DGM. Do you have such blood inyour veins?

【CRISTIANO】: As for Rhapsody, in the classic lineup, I think they were unrivaled in their genre. DGM I think they are the best Italian prog band and beyond. By the way, they are my friend Simone Mularoni’s band, who, working with me for six months, mixed and mastered “Symphony Of The Universe.” And they’re also the last band I saw live, they played in my city a month ago. I think these two examples, added to us and 3/4 other bands, represent the best that Italian power and related metal can offer. The first Rhapsody influenced me a little, while I discovered DGM a few years ago and they also make a different genre than ours, progressive metal. They both do a different genre than us anyway.

Q3: それにしても、”Symphony of the Universe” は、素晴らしいメロディ、テクニック、ファンタジーを兼ね備えたパワー・メタルの傑作ですね! イタリアには、RHAPSODY や DGM など優れたパワー・メタルの伝統がありますが、あなたにもそうした血が流れているのでしょうか?

【CRISTIANO】: RHAPSODY に関しては、クラシックのラインナップでは、このジャンルで他の追随を許さなかったと思う。 DGM は最高のイタリアン・プログ・バンドであり、そのジャンル以上の存在だと思う。
ところで、DGM は僕の友人 Simone Mularoni のバンドで、6ヶ月間僕と一緒に働き、”Symphony Of The Universe” のミックスとマスタリングを担当してくれた。 そして、彼らは僕が最近ライブを見たバンドでもある。一月前に僕の街で演奏したからね。
この2つのバンド、それに僕らと他のバンドも加えて、イタリアのパワー・メタルとそれに関連するメタルが提供できる最高のものを表していると思う。RHAPSODY は僕に少し影響を与えたし、DGMは数年前に知ったんだけど、彼らもまた僕らとは違うジャンルのプログレッシヴ・メタルを作っている。 とはいえ、彼らは僕らとは違うジャンルをやっているけどね。

Q4: I am very glad to know that this album is inspired bySaint Seiya! The artwork also features Pegasus andconstellations, what part of that anime inspired you andwhat story did you draw from it?

【CRISTIANO】: I became very fond of “Saint Seiya”, on the cover I wanted to combine some elements, “Saint Seiya”, “Masters Of The Universe” and other religious elements dear to me, such as the cross that is in the Flames Of Heaven logo and the angels from the first album (small on the left). He could ideally represent the first knight of Pegasus, not Seiya but the warrior who first donned the armor and ideally rode the Pegasus. I would say that all the songs on the album that are inspired by this manga describe some situations from the first series “Sanctuary”.

Q4: このアルバムが “聖闘士星矢” にインスパイアされていると知って、とても嬉しく思っています! アートワークにもペガサスや星座が描かれていますが、あのアニメのどの部分からインスピレーションを受けて、どんなストーリーを描きましたか?

【CRISTIANO】: 僕は “聖闘士星矢” がとても好きだから、ジャケットには “聖闘士星矢”、”Masters Of The Universe” 、そして FLAMES OF HEAVEN のロゴにある十字架やファースト・アルバムの天使たち(左の小さい方)など、僕にとって大切な宗教的要素を組み合わせたいと思った。
主人公は理想的にはペガサスの最初の騎士といえる。星矢ではなく、最初に鎧を身にまとい、ペガサスに乗った戦士だ。”聖闘士星矢” にインスパイアされたアルバムの全曲は、最初のシリーズ “サンクチュアリ編” のいくつかのシチュエーションを描写していると言えるだろうね。

Q5: Speaking of Saint Seiya, the theme song Pegasus Fantasy(R.I.P. Nob) is like a chant for those of us who grew up onthat anime. Are you influenced by such anime theme songs and game music?

【CRISTIANO】: Of course I know “Pegasus Fantasy” and it’s a wonderful song, a real anthem. There are many beautiful songs on the official “Saint Seiya” soundtrack. Plus the orchestral instrumentals are incredibly inspired. Masterpieces. Besides that, my favorite song is “Dead Or Dead” from the “Hades” series. Stunning. Changing anime naturally here is very famous and appreciated “Tough Boy” by Tomcat from the second series of “Hokuto No Ken”. On average, Japanese symphonic and video game composers are very good. Of course, I’m also very attached to Konami’s Castlevania series.

Q5: “聖闘士星矢” といえば、主題歌の “ペガサス幻想”(R.I.P. Nob)は、あのアニメで育った私たちにとっては聖歌のようなものです。 そういったアニメの主題歌やゲーム音楽からも影響を受けているんですか?

【CRISTIANO】: もちろん “ペガサス幻想” は知っているし、素晴らしい曲で、まさにアンセムだよね。”聖闘士星矢” の公式サウンドトラックには美しい曲がたくさん収録されている。 それに、オーケストラのインストゥルメンタルにも信じられないほどインスパイアされている。傑作だよ。
それ以外に好きな曲は “黄泉がえり” シリーズの “Dead Or Dead”。素晴らしいよね。アニメなら、やはり “北斗の拳” 第2シリーズから TOM★CAT の “Tough Boy” だね。 日本のシンフォニックやゲームの作曲家はとても優れている。もちろん、コナミの “悪魔城ドラキュラ” シリーズにも愛着があるしね。

Q6: Phoenix and Gemini appear in the titles of yoursongs, but what characters and stories do you like inSaint Seiya?

【CRISTIANO】: I wrote those two songs, how much drafts, now over twenty years ago and it wasn’t a rational choice. It was natural to talk about them. They are definitely two of the most fascinating, important and complex characters in the manga. But my favorite characters are Seiya, Shiryu, Shaka and Dohko. Examples of strength, positivity and apart from Seiya aha, also balance and wisdom.

Q6: 曲のタイトルにもフェニックスとジェミニが出てきますが、”聖闘士星矢” ではどんなキャラクターやストーリーがお気に入りですか?

【CRISTIANO】: この2曲を書いたのはもう20年以上も前のことで、どれだけの原案を書いたかわからないけど合理的というよりも、彼らについて話すのはむしろ自然なことだったからね。
彼らは間違いなく、漫画の中で最も魅力的で重要で複雑なキャラクターの2人だからね。 しかし、僕のお気に入りのキャラクターは、星矢、紫龍、釈迦、そして童虎だ。 強さ、前向きさ、そして星矢は別としてバランスと知恵の良い例だからね。

Q7: You have a great love for other Japanese anime andmanga such as Hokuto No Ken, Dragon Ball, and Berserk,and I think the positive power, courage, and fantasy ofthose anime to be very much in line with power metal.How about you?

【CRISTIANO】: Exactly like that. Power Metal and AOR must be about love, positivity, inner strength, battles that take place inside and outside of us, and a sense of justice. So I think the anime you mentioned represent not only my favorites, but also perfect examples of how to convey this message. I really hope this album reaches fans of the manga and anime you mentioned.

Q7: あなたは “北斗の拳” や “ドラゴンボール”、”ベルセルク” といった日本のアニメや漫画が大好きなようですが、そうしたアニメのポジティブなパワーや勇気、ファンタジーはパワー・メタルに通じるものもありますよね?

【CRISTIANO】: まさにそうだね。パワー・メタルやAORは、愛、ポジティブさ、内なる強さ、自分の内外で起こる戦い、そして正義感について語らなければならないと思う。 だから、君が挙げたアニメは、僕のお気に入りであるだけでなく、そうしたメッセージを伝える完璧な作品でもあると思う。このアルバムが、日本の漫画やアニメのファンに届くことを心から願っているんだよ。

Q8: With Covid, war, and division, the world has beengetting darker and darker since the beginning of the 20s. For the marginalized and oppressed people, power metal fantasy seems to be a great escape. Would you agree?

【CRISTIANO】: Absolutely, I think that music, and especially this genre, can help a lot to improve the lives of others. I get numerous messages about how much my music has helped people get through difficult times and take away the grayness of this world, which today seems totally crazy. We must fight because we are the warriors of good and we must not give up. Life is sometimes hard but there are weapons to fight with, and one of them is art.

Q8: パンデミック、戦争、分断と、20年代初頭から世界はどんどん暗い場所となっています。そんな世界で疎外され、抑圧された人々にとって、あなたの生み出すパワー・メタル・ファンタジーは素晴らしい逃避場所のようにも思えます。

【CRISTIANO】: 音楽、特にこのジャンルは、人々の生活を向上させるために大いに役立つと思う。僕の音楽がどれだけ人々が困難な時期を乗り越えるのを助け、今日まったく狂っているように見えるこの世界の灰色を取り除くことができたかについて、多くのメッセージをもらうからね。
僕たちは善の戦士なのだから戦わなければならないし、あきらめてはならない。人生は時に厳しいものだけど、戦うための武器はある。そのひとつが、こうしたアートなんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED CRISTIANO’S LIFE!!

EUROPE “The Final Countdown”

IRON MAIDEN “Somewhere in Time”

SAVATAGE “From The Gutter To The Stage”

HELLOWEEN “Keepers Of The Seven Keys I”

VIRGIN STEELE “Noble Savage”

MESSAGE FOR JAPAN

I would like to thank you first of all Sin, for this opportunity, all the readers and all of Japan for making me the man I am now with stories like the anime that raised me. Give “Symphony Of The Universe” a chance, you won’t regret it!

このような機会を与えてくれた SIN、読者の皆さん、そして僕を育ててくれたアニメの物語…今の僕があるのは日本のおかげだから、日本中の皆さんに、まずお礼を言いたいよ。 “Symphony Of The Universe” をぜひ聴いてみて!後悔はさせないよ!

CRISTIANO FILIPPINI

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AEPHANEMER : UTOPIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARTIN HAMICHE OF AEPHANEMER !!

“I have always admired Joe Hisaishi, who composed the music for many Studio Ghibli films. One of my favorite pieces is Innocent from Castle in the Sky – it is pure, sincere, and beautiful. I truly admire his work.”

DISC REVIEW “UTOPIE”

「僕らにとって、フランス語で歌うことはとても自然な選択なんだ。メタルの世界では母国語で歌うバンドがますます多くなり、一般的に広く受け入れられるようになったと感じているよ。 それは今日、誠実さや信憑性の証とみなされ、高く評価されることさえあるからね」
音楽、特にメタルの優れているのは、たとえ言葉の壁やボーカル・スタイルによって歌詞が不明瞭で理解不能な場合でも、ムード、メロディ、テーマ、バイブスなどその音楽自体に伝える力が込められているところでしょう。裏を返せば、モダン・メタルの寛容さは、あらゆる異端を排除せず、壁を壊して包容し、自らの血肉としていくことができるのです。フランスの AEPHANEMER は、そうして文化の壁も、さらにはメロデスというジャンルの限界まで打ち壊し、突破していきます。
「客観的に見て、僕たちは DARK TRANQUILLITY, AMON AMARTH, ARCH ENEMY のようなサウンドではまったくない。 CHILDREN OF BODOM と比較されることがあるけれど、それでも僕らとはまったく違う雰囲気を持っているよ。 というのも、今の僕は中世、クラシック、民族音楽にインスパイアされることが多いからね。それはもはや前世代のバンドには当てはまらない特徴だよね。結局、単に音楽はそうやって進化していくということだよ」
メタルの進化に終わりはありません。そう、AEPHANEMER はメロデスの遺産をしっかりと抱きしめながら、そのサウンドを別の次元へと高めるために音楽を奏でています。”メディーヴァル・フォーク的シンフォニック・メロデス” という大げさな表現が、もしかしたら今の彼らには最もしっくりくるのかもしれませんね。それだけ、この最先端のメロデスは、映画的で、オーケストラで、壮大な音の祭典です。
2023年にベーシストの Lucie Hune が脱退し3人編成となったにもかかわらず、これだけの緻密な壮観を完成させた AEPHANEMER の才能は比類なきもの。バンド創設者でインタビューイ、 Martin Hamiche が全ての弦楽器とオーケストレーションを担当して、あの鬼才 Dan Swanö 再度の協力により、力強いメロディにフック、心を震わす激情、幻想的なムード、フランスらしい気品と格調の高さ、そして豪華絢爛な “La Rivière Souterraine” が象徴する複雑で多面的な色彩を帯びた、ダーク・フォークとネオクラシカルの煌びやかな祭典 “Utopie” が降臨することとなりました。
「僕たちのアプローチは、あきらめずに日々の小さな行動を通じて現実世界を改善する努力を続ければ、現実世界で何が起こり得るかについて、自分自身、そしておそらく他の人たちを鼓舞するためにアートを創作するというものなんだ。僕たちは、人々が僕たちの音楽からエナジーやインスピレーションを感じ、そのエネルギーを活かして生活や家庭、地域社会に前向きな変化を起こしてくれることをとても嬉しく思っているんだ。僕たちにとって、すべての生きとし生けるもののためにより良い未来を創造することは必要不可欠なこと。だからこそ僕たちの考えるユートピアとは、人類が自然や他の生命体と調和して生きる世界なんだよ」
お馴染みとなった Niklas Sundin (DARK TRANQUILLITY) の手による鮮やかなアートワーク。そこには、彼らにとっての “Utopie” “理想郷”、自然と人間が手を携え、調和して生きていく世界が描かれています。もちろん、前作 “A Dream of Wildness” のイノシシに、私たちは “もののけ姫“ の影をみましたし、久石譲の風も受け取りました。
そう、AEPHANEMER の理想郷にとって、進化し多様に共生するべきは音楽だけにとどまりません。彼らは、人も小さな行動の積み重ねでより良い世界を目指すことができる、異文化と共生し調和することができると信じてアートを生み出していますし、もちろんアシタカとサンのように文明と自然も調和して生きていく未来を見据えているのです。
今回弊誌では、ギタリスト Martin Hamiche にインタビューを行うことができました。「Marion は、僕たちが大好きな宮崎駿監督の “もののけ姫” に登場するイノシシをすぐに思い浮かべたね。 彼女は若い頃からアニメのファンで、アニメは常に彼女に創造的なインスピレーションの源となってきた。 個人的には、多くのスタジオジブリ作品の音楽を作曲した久石譲さんをずっと尊敬してきたんだ。彼の作品で好きな曲のひとつは “天空の城ラピュタ” の “Innocent”。まさに純粋で誠実で美しい音だよね。彼の作品を心から尊敬しているんだ」ギターの煌めきとドラムの技巧、そして声の獰猛は群を抜いていますね。どうぞ!!

AEPHANEMER “UTOPIE” : 10/10

INTERVIEW WITH MARTIN HAMICHE

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【MARTIN】: I discovered metal when I was around 12 or 13, thanks to my older sister, and for a long time, it was the only music I listened to. It started with System of a Down, which I played almost nonstop for a couple of years. Then, a friend gave me a compilation CD that introduced me to a dozen metal bands from different genres. On that CD I found bands that would become favorites for a long time: Amon Amarth, Insomnium, Dimmu Borgir, Therion. Shortly after, I also discovered Windir and Children of Bodom. These bands became the foundation of my metal influences, and I listened to them almost exclusively until I was 20 or 21. I wish I could say that I grew up with classical or folk music, but that was not the case, my family was modest and music culture simply was not present in our home.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【MARTIN】: 姉の影響で12歳か13歳頃にメタルに出会い、それから長い間、メタルだけを聴き続けていた。SYSTEM OF A DOWN から始まり、2、3年間ほとんどノンストップで聴き続けたね。その後、友人からコンピレーションCDをもらったんだ。 そのCDの中で、僕はそれから長い間お気に入りとなるバンドを見つけたんだよ。AMON AMARTH, INSOMNIUM, DIMMU BORGIR, THERION といったバンドだね。その直後、WINDIR と CHILDREN OF BODOM にも出会った。
彼らは、僕が影響を受けたメタルの基礎となり、20歳か21歳になるまで、ほとんど彼らばかり聴いていたね。クラシックや民俗音楽とともに育った、と言いたいところだけど、僕の家族は質素で、音楽文化は我が家には存在しなかったんだ。

Q2: How did Aephanemer begin? What is the meaning behind your band name?

【MARTIN】: Aephanemer started as a one-man band in 2014 when I released “Know Thyself,” an instrumental EP that I created on my own. A few months later, I brought in other musicians and turned it into a full band. The name of the band is inspired by the autumn season, which has always been my favorite, because it is the season in which I feel most at home and at peace. “Aephanemer” is actually a combination of the words “éphémère,” meaning ephemeral, and “fânée,” meaning faded or wilted, like a flower.

Q2: AEPHANEMER はどのように始まったのですか? そのバンド名に込められた意味を教えてください。

【MARTIN】: AEPHANEMER は、2014年に僕がひとりで制作したインストゥルメンタルEP “Know Thyself” をリリースしたときに、ワンマン・バンドとしてスタートしたんだ。 その数ヵ月後に、他のミュージシャンを加えてフルバンドにしたんだよ。
バンド名は、昔から大好きな秋という季節にインスパイアされたもの。僕は秋が最も、自分の家のように穏やかに過ごせるんだ。”Aephanemer” は、儚いという意味の “éphémère” と、花のように色あせた、しおれたという意味の “fânée” を組み合わせたものなんだ。

Q3: Marion’s ghoulish vocals are truly amazing, and she is the face of the band! How do you feel about the gradual increase of female vocalists and players in the metal world, which used to be a boys’ club?

【MARTIN】: Well, I think that is a wonderful development for many reasons. Humanity has probably missed out on many female Mozarts, Beethovens, or Tchaikovskys simply because access to music careers was so limited for women for so long. I am truly happy that Marion, in Aephanemer, contributes to changing that, both as a singer and as a musician.

Q3: Marion の鬼気迫るボーカルは本当に素晴らしく、彼女はバンドの顔となっていますね! ボーイズ・クラブだったメタル界に、女性ヴォーカリストや女性プレイヤーが徐々に増えていることについてはどう思っていますか?

【MARTIN】: そうだね、それは多くの理由から素晴らしい発展だと思う。 これまで人類は、おそらく多くの “女性版” モーツァルト、ベートーヴェン、チャイコフスキーを見逃してきたのだろう。というのも、長い間、女性にとって音楽活動へのアクセスは非常に限られたものだったから。AEPHANEMER で Marion が、歌手として、また音楽家として、それを変えることに貢献していることを心から嬉しく思うよ 。

Q4: When I saw the artwork for your last album, “A Dream of Wilderness,” it reminded me of Hayao Miyazaki’s anime. Have you been influenced by such Japanese culture, anime, music, and video games?

【MARTIN】: When we thought about putting a boar on the cover of “A Dream of Wilderness,” we looked for references to boars throughout history to give some inspiration to Niklas Sundin, who created the artwork. Marion immediately thought of the boars in Hayao Miyazaki’s Princess Mononoke, a work we both love. She has been a fan of anime since she was younger, and it has always inspired her creatively. Personally, I have always admired Joe Hisaishi, who composed the music for many Studio Ghibli films. One of my favorite pieces is Innocent from Castle in the Sky – it is pure, sincere, and beautiful. I truly admire his work.

Q4 :前作 “Dream of Wildness” のアートワークを見て、宮崎駿監督のアニメを思い出しましたよ。そうした日本文化、アニメ、音楽、ビデオゲームから影響を受けているんですか?

【MARTIN】: “A Dream of Wildness” のアートワークにイノシシを描こうと考えたとき、アートワークを担当した Niklas Sundin (DARK TRANQUILLITY) にインスピレーションを与えるために、さまざまなイノシシを探したんだ。
Marion は、僕たちが大好きな宮崎駿監督の “もののけ姫” に登場するイノシシをすぐに思い浮かべたね。 彼女は若い頃からアニメのファンで、アニメは常に彼女に創造的なインスピレーションの源となってきた。 個人的には、多くのスタジオジブリ作品の音楽を作曲した久石譲さんをずっと尊敬してきたんだ。彼の作品で好きな曲のひとつは “天空の城ラピュタ” の “Innocent”。まさに純粋で誠実で美しい音だよね。彼の作品を心から尊敬しているんだ。

Q5: Dan Swano is involved in “Utopie” as he was in the last album. What do you learn from the originator of Melo-death?

【MARTIN】: Dan Swanö is an incredible sound engineer and has been essential in shaping the current Aephanemer sound, balancing all the classical instruments with the metal ones. His work allows every layer to be heard and feel alive. We are very grateful for his contribution and look forward to collaborating with him even more in the future.

Q5: Dan Swano は前作に引き続き “Utopie” にも関わっていますね。メロデスのオリジネーターのひとりから何を学んでいますか?

【MARTIN】: Dan Swano は素晴らしいサウンド・エンジニアで、現在の AEPHANEMER サウンドの形成に欠かせない存在であり、すべてのクラシック楽器とメタル楽器のバランスをとってくれているんだ。 彼の仕事によって、すべてのレイヤーが聴こえ、生きているように感じられる。 僕たちは Dan の貢献にとても感謝しているし、今後さらに彼とコラボレーションできることを楽しみにしている。

Q6: In fact, “Utopie” is a truly wonderful album!I can’t think of any other work that blends the wailing, fierce of melo-death with cinematic beauty as well as this one! Is one of your goals to portray a cinematic world with melo-death?

【MARTIN】: Thank you very much! When we create our albums, we don’t really set out to make something cinematic. What we do want is to give the feeling that our music opens a window to another universe, and orchestral instruments help us achieve that. They bring colors and textures that allow us to express emotions in ways that metal instruments alone could not. As for the metal side of our sound, we don’t really think in terms of genres. We simply include all the ideas we have and let them shape the music naturally.

Q6: 実際、”Utopie” は本当に素晴らしいアルバムですね!メロデスの慟哭と獰猛さ、そして映画的な美しさがこれほど融合した作品は他にありませんよ!
メロデスで映画のような世界を描くことは、あなたの目標のひとつなんですか?

【MARTIN】: ありがとう! 僕たちがアルバムを作るとき、映画のようなものを作ろうと思っているわけじゃないんだ。僕たちが望んでいるのは、自分たちの音楽が別の宇宙への窓を開けてくれるような感覚を与えることで、オーケストラ楽器はそれを達成する手助けをしてくれるね。オーケストラ楽器は、メタル楽器だけでは表現できないような色彩や質感をもたらしてくれる。
また、僕たちのサウンドのメタル的な側面に関しては、ジャンルで考えることはあまりないよ。 自分たちが持っているアイデアをすべて盛り込み、それが自然に音楽を形作っていくだけなんだ。

Q7: War, pandemics, division, discrimination, oppression… There are many people seeking escape in this dark world, and this work is a veritable “Utopie” for them. If metal has a role to play now, is it to provide a wonderful escape like this record?

【MARTIN】: Yes and no. We are not escapists in the sense of creating art to run away from reality. Our approach is more that we create art to inspire ourselves, and perhaps others, about what could happen in the real world if we don’t give up and continue working to improve it through our small daily actions. We love when people feel energized and inspired by our music, and then take that energy to make positive changes in their lives, in their homes, or in their communities. For us, creating a better future for all living beings is essential, because our vision of Utopia is a world where humanity lives in harmony with nature and other life forms.

Q7: 戦争、パンデミック、分断、差別、抑圧…この暗い世界で逃避を求める多くの人々にとって、この作品はまさに “ユートピア” だと感じています。
今、メタルが果たすべき役割があるとすれば、それはこのレコードのような素晴らしい逃避場所を提供することなのでしょうか?

【MARTIN】: イエスでもありノーでもある。僕たちは、現実から逃げるために芸術を創作するという意味での逃避主義者ではない。僕たちのアプローチは、あきらめずに日々の小さな行動を通じて現実世界を改善する努力を続ければ、現実世界で何が起こり得るかについて、自分自身、そしておそらく他の人たちを鼓舞するためにアートを創作するというものなんだ。
僕たちは、人々が僕たちの音楽からエナジーやインスピレーションを感じ、そのエネルギーを活かして生活や家庭、地域社会に前向きな変化を起こしてくれることをとても嬉しく思っているんだ。僕たちにとって、すべての生きとし生けるもののためにより良い未来を創造することは必要不可欠なこと。だからこそ僕たちの考えるユートピアとは、人類が自然や他の生命体と調和して生きる世界なんだよ。

Q8: From this record, French is the main language. In recent years, more and more metal bands are incorporating the language and culture of their native country instead of English, why did you decide to make French the main language?

【MARTIN】: As you said, we feel that more and more bands singing in their own language is becoming common and widely accepted. It can even be seen as a sign of sincerity and authenticity, which people appreciate today. For us, using French was a very natural choice, especially since our previous album, A Dream of Wilderness, included one French song that was very well received. From our experience on tour, audiences everywhere actually prefer the French lyrics. There is a small exception with part of the US audience, who sometimes see it as a personal insult that we don’t write in English anymore, but that doesn’t matter to us. We make the art that feels true to us, and only to us.

Q8: このアルバムからフランス語がメイン言語となりました。 近年、英語ではなく、母国の言語や文化を取り入れるメタル・バンドが増えていますが、あなたはなぜフランス語をメインにしようと思ったのですか?

【MARTIN】: 君の言う通り、母国語で歌うバンドがますます多くなり、一般的に広く受け入れられるようになったと感じているよ。 それは今日、誠実さや信憑性の証とみなされ、高く評価されることさえあるからね。
僕らにとって、フランス語で歌うことはとても自然な選択なんだ。特に、前作にはフランス語の曲が1曲入っていて、それがとても好評だったから。 ツアーでの経験から言うと、どこの国でもオーディエンスはフランス語の歌詞を好んでいる。 アメリカのオーディエンスの一部には小さな例外があって、彼らは僕たちが英語で書かなくなったことを個人的な侮辱と捉えることもあるようだけど、それは僕たちにとっては問題ではない。僕たちは、僕たち自身にとって、僕たち自身にとってのみ真実であると感じられる芸術を作るだけだよ。

Q9: In this day and age, some people say that melodeath is outdated, rustic, or unpopular. What do you think about those words? Why do you keep playing melodeath?

【MARTIN】: Every music genre can feel outdated until it is reforged, renewed with new elements from other styles, and then finds a new audience. I feel that is exactly what some of us are trying to do. Objectively, we don’t really sound like Dark Tranquillity, Amon Amarth, or Arch Enemy at all. Even Children of Bodom, a band we are sometimes compared to, has a very different vibe than us. This makes sense, because today I am mostly inspired by medieval, classical, and folk music, which isn’t the case for any of those bands. That is simply how music evolves. But when we write, we never think about comparisons or trends: we just create the music we wish existed, the music we would want to listen to ourselves.

Q9: 今の時代、メロデスは時代遅れだとか、いなたいだとか、人気がないなどと言う人がいます。それでも、なぜあなたはメロデスを演奏し続けるのですか?

【MARTIN】: あらゆる音楽ジャンルは、他のスタイルから新しい要素を取り入れて刷新され、新しいリスナーを見つけるまでは、時代遅れだと感じることがある。僕たちがやろうとしていることは、まさにそうした挑戦だと思う。
客観的に見て、僕たちは DARK TRANQUILLITY, AMON AMARTH, ARCH ENEMY のようなサウンドではまったくない。 CHILDREN OF BODOM と比較されることがあるけれど、それでも僕らとはまったく違う雰囲気を持っているよ。 というのも、今の僕は中世、クラシック、民族音楽にインスパイアされることが多いからね。それはもはや前世代のバンドには当てはまらない特徴だよね。
結局、単に音楽はそうやって進化していくということだよ。 でも、僕たちが作曲するときは、比較や流行を考えることはない。僕たちはただ、自分たちが存在してほしいと願う音楽、自分たち自身が聴きたいと思う音楽を作るだけなのだから。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED MARTIN’S LIFE!!

System of a Down “Toxicity”

Because it was the first metal I ever listened to.

Amon Amarth “Fate of Norns”

As it was the first melodic death metal album I discovered.

In Flames “Colony”

Because it made me re-discover melodic death metal when I was 21 and probably inspired me to create Aephanemer

Joe Hisaishi “Howl’s Moving Castle soundtrack”

A major album in my musical journey beyond metal.

Basil Poledouris “Conan the Barbarian”

For a similar reason, and it also became a source of inspiration for Utopie.

MESSAGE FOR JAPAN

Thank you so much to all our listeners in Japan for your support and your amazing culture. We are currently working with a local promoter on a Japan tour, and we really hope to meet you all in 2026. Wishing you a wonderful day!

日本のリスナーのみんな、応援と素晴らしい文化に本当に感謝しているよ。僕たちは現在、日本のプロモーターと日本ツアーに取り組んでいて、2026年に会えることを本当に楽しみにしているんだ。みんなにとって、素晴らしい一日になりますように!

MARTIN HAMICHE

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DRAGONKNIGHT : LEGIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIKAEL SALO OF DRAGONKNIGHT !!

“I Think In Tough Times Power Metal Can Be Something You Hang On To, And When Times Are Good It Is Something To Celebrate Life With! I Think I Might’ve Heard That Quote Actually From André Matos In a Japanese Interview !”

DISC REVIEW “LEGIONS”

「学生時代、ちょっとはみ出し者だった僕にとって、BLIND GUARDIAN の “Nightfall in Middle-Earth” や ANGRA の “Temple of Shadows” のようなアルバムは、人間の領域を超えた壮大な物語を体験させてくれ、心に音楽的な冒険を与えてくれたからね。パワー・メタルは、辛いときには心のよりどころとなり、幸せなときには人生を祝福してくれるものだと思う!この言葉は、日本のインタビューで読んだ Andre Matos の言葉の受け売りなんだけどね!」
早いもので、Andre Matos が亡くなってもう6年の月日が経ちました。メタル・ファンの多くは、未だにこの喪失の大きな穴を完全には埋められていないでしょう。しかし、彼の遺志と音楽は今も生き続けて、リスナーの心に寄り添い、もしくは後続のインスピレーションとして燦然と輝いています。フィニッシュ・パワー・メタルの新鋭 DRAGONKNIGHT も Andre Matos に薫陶を受けたバンドのひとつ。
「このアルバムは重層的な作品と言える。アルバムのいくつかの曲は “時を越えた地” からの短い物語に過ぎないが、アルバムの全てにわたる広いコンセプトもある。ドラゴンロードとして知られる5人の兄弟が、打ちのめされた子供時代を経て、力を取り戻し、子供時代の故郷であるアトランティスを奪還する。アルバムの最後を締めくくるのに、神秘的なアトランティスの再征服以上の勝利があるだろうか?」
日本語を学び、日本の音楽を愛するフィンランドの Ronnie James Dio こと Mikael Salo が語るように、パワー・メタルのファンタジーはこの暗い世界において素晴らしき逃避場所だと言えます。私たちは大人になっても、DRAGONKNIGHT というバンド名に心奪われても、闇の皇帝を頂く仮面で匿名の5人の亡霊を名乗っても、ドラゴンが飛翔する異世界に憧れても良いのです。痛みを忘れて、想像力を羽ばたかせることはいくつになっても素敵なこと。厳しい現実、無慈悲な社会から少々はみだしても大丈夫。きっとヘヴィ・メタルがそんなあなたを丸ごと抱きしめてくれるから。
「特に日本のフォーク・ミュージックに多く見られるペンタトニック・ハーモニーを多用するのが好きなんだ!必要なときに、全体的な音楽体験に神秘的でダークな雰囲気を与えてくれると思う。また、シンガーとしても、Yama-B、坂本英三、森川之雄、小野正利など、日本の巨匠たちの激しさや情感にいつもインスパイアされているよ!」
そうして、Mika の歌うメロディは、ファンタジーのメッカ日本の音楽に触発されています。時代は変わり、今や日本のメタルは世界中から注目を浴びています。不滅のドラゴンロードたちが奏でる壮大なアンセミック・シンフォニー。ドラムの疾走感が、見事なシュレッドと複雑なギター・ワークに向かって、彼らの航海を前進させます。そう、その主役は、日本のメロディで育ったサー・ミカ・サロ卿。
実際このアルバムは、海賊からドラゴンに至るまで、素晴らしいファンタジー、冒険映画のサウンドトラックになり得るでしょう。剣に生き、剣に死ぬ。その彼らの華麗な剣技は、間違いなくいつも人生に寄り添ってくれた BLIND GUARDIAN や ANGRA、彼らから受け継いだパワー・メタルの血、祝福そのものなのです。
今回弊誌では Mikael Salo にインタビューを行うことができました。「メタル以外での僕の “ギルティプレジャー” は、最近80年代の日本の “シティポップ “だ。普段はYouTube Musicで様々なアルバムの曲を個別に聴いているんだ。杏里のこのアルバムはバンガーをたくさん収録しているので、間違いなく最近のお気に入りアルバムのひとつに挙げられる!”I Can’t Stop The Loneliness” と “Windy Summer” は、暗くて寒いフィンランドにいても、沖縄のビーチでくつろいでいるような気分にさせてくれるね(笑)」 二度目の登場!。どうぞ!!

DRAGONKNIGHT “LEGIONS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PIRATE QUEEN : GHOSTS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VICTORIA OF PIRATE QUEEN !!

“As a Woman I Believe We All Have The Same Chances To Reach Our Goals In Music World And It Must Not Be Divided By Gender.”

DISC REVIEW “GHOSTS”

「私たちは実際、あらゆる不正義と戦っていると言えるでしょうね。私たちはメタル・シーンが、そこにいたいと願うすべてのミュージシャン、すべての人にとって安全で親切な場所であってほしいと切に願っているの。音楽の世界でゴール、目標に到達するチャンスは女性も同じだけあると信じているし、それは性別によって分断されてはならないものなの」
かのメタル世界のゴールド・ロジャー、RUNNING WILD がジョリー・ロジャーの旗の下航海に旅立ってからおよそ40年。パイレーツ・メタルという異端の生みの親がフェスのヘッドラインを飾るようになった21世紀。その多様で寛容なメタルのグランドラインに颯爽と登場したのは、5人の女海賊でした。5人にとってのワンピースとは、すなわち海闊天空。悠遠に広がるメタルの海がただ、寛容で、親切で、平等な場所であること。そして、その秘宝は必ずや音の戦、実力で手に入れます。
「故郷のリクシオンは浮島で、いつも簡単に見ることができるわけではないんだ。リクシオンでの生活は自由の香りがいっぱいで、主に女性がリードしているの。もちろん男性もいるけどね。古い航海年代記には、海賊の才能によって結ばれた血縁関係にある5人の少女たちが一堂に会する時が来るという予言が記されているの。そして激動の2023年、私たちは実際にメインランドで再会した。浮島はそんなに大きくないから、とにかくみんな顔見知り。だから、すべては自然に起こったことなの」
ただし、PIRATE QUEEN の5人は RUNNING WILD よりもはるかに年上です。年代期に残る古い記録によると、彼女たちは1523年に海賊を始めています。バミューダ・トライアングルの中にある謎の浮島リクシオンに生を受け、500年もの長い時を刻んできた PIRATE QUEEN の5人は、女王に忠誠を誓いながら世界各地で領海を広げ、名声を上げ、ついに再集結を果たします。すべては、女王の名の下に。音楽の自由、メタルの自由こそ、今の彼女たちが欲する宝。
「私たちは “ファンタジー・メタル” という言葉を使っているのよ。メタル・スタイルとクラシックのミックスだと思っている。パワー・メタルに近いけれど、よりファンタジー的な要素を含んでいると言えるかもしれない。とはいえ私たちが作曲をするときは、ジャンルにとらわれないことを好む。それが海賊の自由の賜物だから。自分たちが作ったものが好きである限り、私たちは海賊船でどこへだって行くことができるのよ」
実際、PIRATE QUEEN の海賊船に踏破できない海はありません。女海賊たちは7つの海へと繰り出し、エピック・メタルの遺産を驚くべき技術とモダンな精神で略奪していきます。クラシックなメタルに壮大なセンスを吹き込み、古の襲撃者たちからインスピレーションを得つつ、未知の海域に踏み込み、見慣れぬジャンルから略奪した宝物でメタルを豊かにしていくのです。
漂流する船の音とセイレーンの歌声。荒波の中で5人はリスナーをフォークとエキゾチックなメロディーの渦に巻き込み、海洋ファンタジーと壮大なメタルの精神を呼び起こします。女王陛下のカリスマ性と海賊たちの無限のエネルギーは、ボーカル・ハーモニー、オーケストレーションを巻き込んで幾重にも重なるメタルの聖地マリージョアをここに完成させたのです。
今回弊誌では、ギタリストにして海賊大将 Victoria Pearl Fata-Morgana にインタビューをおこなうことができました。「リクシオンの海賊の世界も変わってきていて、意見の食い違いがあっても絶対に暴力や戦争が解決策になってはいけないと思っているのよ。我々は海賊で、我々が生き残るために何をしてきたかについて、いろいろと言われることは知っているの。でも、今は戦争は避けなければならないと心から信じている」 “Ghosts” の妖艶な転調がたまりませんね。どうぞ!!

PIRATE QUEEN “GHOST” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INDUCTION : MEDUSA】JAPAN TOUR 24′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TIM HANSEN OF INDUCTION !!

“Power Metal, Or Heavy Metal Just Seems Like The Most Versatile Metal Genre To Me. I Love The Focus On Great Melodies And The Freedom To Go Slow And Heavy, Or Fast And Hard. Power Metal To Me Is a Feeling, Not a Genre. And I Try To Embody That With Induction.”

DISC REVIEW “MEDUSA”

「パワー・メタル、あるいはクラシックなヘヴィ・メタルは、僕にとって最も汎用性の高いメタル・ジャンルに思えるんだ。素晴らしいメロディーを重視し、スローでヘヴィーな曲も、速くてハードな曲も自由自在なところが好きなんだよ。僕にとってのパワー・メタルは、ジャンルではなくフィーリングなんだ。そして、僕は INDUCTION でそれを体現しようとしているんだよ」
かつて、ヘヴィ・メタル、そのステレオタイプの象徴だったパワー・メタルを、”柔軟で汎用性の高い自由なジャンル” と言い切るジェネレーションが遂にあらわれました。それだけでももう隔世の感がありますが、その言葉があのミスター・パワー・メタル Kai Hansen の息子 Tim Hansen から発せられたのですから、時代と価値観の変化はたしかなものに違いありません。
「音楽的には父の世代より間違いなく一歩進んでいるし、いわゆるジャーマン・メタルのバンドたちとはサウンドは違う。でも、もしかしたら僕たちは “ジャーマン・メタルのニューウェーブ” と言えるかもしれないね。僕はそのサウンドが好きだ」
実際、Tim は自身のバンド INDUCTION で “ジャーマン・メタルのニューウェーブ”、そのアンバサダーに就任しました。INDUCTION がその称号に相応しいのには確固たる理由があります。Tim が “ディズニー・メタル” と称賛する TWILIGHT FORCE の完璧にオーケストレートされたシンフォニー、BEAST IN BLACK のダンス・パーティー、POLYPHIA や PERIPHERY まで想起させるモダンなギター・テクニック、硬軟取り揃えた曲調の妙。そんな現代的なアップデートを、80、90年代のクラシックなジャーマン・メタルに落とし込む。
「たしかに父がいなかったら、音楽とギターにのめり込むことはなかったと思う。でも、ギターを手にしたいと思わせる要素はもっとたくさんあったんだ。特定のギター・ヒーローがいたわけではないんだけど、お気に入りのギタリストは、Guthrie Govan, Teemu Mäntysaari, Kasperi Heikkinen。僕は人生の困難な時期に、自分自身に新しい使命が必要だと思った。そして、そのときから僕は完全に音楽にコミットし始め、自分の道を歩むようになった。でも、何かヒントが必要なときに、父のように側に助けてくれる人がいるのはいつもありがたかったよ!」
パワー・メタルを自由の土地とみなし、明日を見据えて狂気と才気を発電する。楽しい音楽を作ること。もちろん、その偉業の達成は Hansen 家の血が後押ししていますが、それだけではないでしょう。そもそも、メタル世界は政治や会社のように世襲制ではありません。継ぐべき地盤も資産もないのですから。それでも、Tim Hansen は父と同じパワー・メタルという夢の国で反乱を起こすと決めたのです。それは、パワー・メタルが好きだから。パワー・メタルへの情熱があふれるから。パワー・メタルが使命だから。ジャーマン・メタル。その過去へのトリビュートと未来への才狂を実現できるのは、Tim Hansen しかいないのですから。
今回弊誌では、Tim Hansen にインタビューを行うことができました。「とにかく楽しい音楽を書きたい。ライヴに来て、日常や普段の生活をすべて忘れて、ただ一晩放心状態になれる。そんな音楽をね。そういう意味で、僕はリスナーに逃避を提供しようとしているんだ。でもそれだけじゃなく、音楽をもっと深く掘り下げると、寓話やファンタジーだけでなく、曲の中にたくさんの実体と意味があることに気づくはずだよ」 親子での来日も決定!あの Ralf Scheepers も GAMMA RAY に帯同します。どうぞ!!

INDUCTION “MEDUSA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VALKEAT : FIREBORN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIIKKA VIRTAPURO OF VALKEAT !!

“For Us As Artists It’s Important To Do Something New And Fresh, And Not Only Redo Stuff That People Have Already Done. We Want To Expand The Map Of Kantele Music And Metal Music.”

DISC REVIEW “FIREBORN”

「僕たちはパイオニアとして、人々がこれまでに聴いたことのないような新しいカンテレ・ミュージックを作りたかったんだ。僕たちアーティストにとって重要なのは、何か新しく新鮮なことをすることであって、すでに人々がやっていることをやり直すことではない。いわば、カンテレ・ミュージックとメタル・ミュージックの地図を広げたいんだよ」
古くはジャン・シベリウスが、メタル世界では AMORPHIS が、フィンランドの民間伝承から生み出された国民的叙事詩カレワラをインスピレーションとして音楽を創造し、彼の地の空気、風景、文化、そして人の有り様を伝えてきました。カレワ族の勇士たちの物語が、フィンランドのロシアからの独立を強く後押ししたことを述べるまでもなく、カレワラはフィンランドの心であり、そこから生まれた伝統楽器カンテレはフィンランドの音であり続けています。
そう、AMORPHIS の楽曲にもあるように、カンテレはフィンランドの音であり、ヘヴィ・メタルも当然、フィンランドを代表する音楽です。ゆえに、VALKEAT はその両者をより太い糸で結び付けようと思い立ちました。そうやって彼らは、カンテレの地図も、メタルの地図も広げながら、フィンランド音楽のアンバサダーとして世界に羽ばたいていくのです。
「カンテレは、フィンランドが誇る国民的楽器だ。日本の琴のようなものといえばいいかな。そして、カンテレは琴と同じように、僕らが創造するどんな音楽にも合うんだ!」
実際、カンテレは想像以上にメタルとの相性が良さそうです。もちろん、その蜜月は VALKEAT の類稀なるコンポジションの妙あってこそ。”Fireborn” は非常に複雑で多層的なアルバムで、リスナーをフィンランドのモダン・フォークとシンフォニック・メタルの新時代へと同時に導く灯台ののような輝きを纏っています。
「サンポのストーリーは、それを持つ者に無限の富を生み出す機械、誰が持とうと永遠の富を生み出すのさ。だから僕たちは、サンポの音楽版のような、それを聴く人に比喩的に “富” を生み出すものを作りたかった。サンポは火で鍛えられたものだから、このアルバムを “Fireborn” “火から生まれしもの” と呼ぶことにしたんだ」
“Fireborn” はカレワラに登場する、所有する者に永遠の富をもたらす機械、サンポにちなんで名付けられました。そうして、壮大なフィンランドとメタルの物語の偉大な伝統を受け継いだアルバムには、崇高な賛美歌、荘厳な歌声、フォーク・メタルの陽気さと原始的なメロディー、異教の精神が詰まっていて、そもそもカンテレがあるべくしてあるよう巧みに設計されています。
非常にダークでアグレッシブな冒頭の “My Crown” で、フィンランド人の深層心理を掘り下げた彼らは、リリックでは精神の最も暗い部分に踏み込み、音楽ではストリングスとブラスのオーケストラを吹き込んでいきました。サーミの人たちの素晴らしい文化に敬意を表した儀式的な “Moraš”、フィンランドのバンドのメランコリックでフォーキーな側面にフォーカスした “Swan Song” でも北欧の色と音を伝えながら、リスナーに無限の富であるカタルシスを与え続けます。
まさにフィンランドへのラブレターとなった涼やかなアルバム。今回弊誌では、ボーカリスト Miikka Virtapuro にインタビューを行うことができました。「僕たちは CHILDREN OF BODOM と同じ地域の出身で、実は Alexi は僕と同じ学校のちょうど10年先輩なんだよ。もちろん、あれほどの才能が若くして亡くなるなんて、とても悲しいニュースだったな…」 どうぞ!!

VALKEAT “FIREBORN” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TWILIGHT FORCE : AT THE HEART OF WINTERVALE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLACKWALD OF TWILIGHT FORCE !!

“The Last Few Years Of Hardships Have Affected Us All One Way Or Another, And If Our Music Was Able To Bring Just a Sliver Of Joy For Someone To Help Them Get Through Those Hard Times, We Have Truly Accomplished Greatness.”

DISC REVIEW “AT THE HEART OF WINTERVALE”

「現代のメタル音楽は、曲作りが合理的になってしまっている。パワー・メタルにおいて、面白い変化や予想外の変化を見出すことは、最近ではほとんどないんだよね。つまり、”最も抵抗の少ない道” を歩むことが、迅速かつ安定したペースで音楽やアルバムを作り上げることにつながってしまっているんだ。実験や創意工夫には時間がかかるからね。でも、そのためにメタルから多様性や実験への意欲が削がれてしまっているのかもしれないね」
10年代、そして20年代のパワー・メタルを牽引する北欧の黄昏は、彼の地の大自然と伝承、そしてファンタジーを刻み込んだ “At The Heart of Wintervale” において、王者の王者たる由縁を見せつけました。バンドの鍵盤奏者で黒魔法の使い手 Blackwald にとって、現代パワー・メタルの大半はステレオタイプで驚きのないもの。手間と時間をかけずに生み出したインスタントな創作物。しかし、魔道士はよく知っています。詠唱は長ければ長いほど、強力な呪文が発動するのです。
「ジョン・ウィリアムズやハワード・ショアといった映画音楽の作曲家に大きな影響を受けたし、彼らこそが僕にとっての “ヒーロー” だと思う。ハンス・ジマーのような人物も、シンセサイザー(ダークナイト)やパイプオルガン(インターステラー)など、非常にミニマルなツールや音で、喚起力と説得力のあるサウンドスケープを作り出し、大きな進歩を遂げている。印象的なモチーフやテーマを創り出す能力とスキルは、僕が賞賛し、憧れるもののひとつなんだ」
Blackwald が語る通り、”At The Heart of Wintervale” はパワー・メタルの定型を超越しています。もちろん、バンドの共同設立者 Lynd のフラッシーでテクニカルなギター・マジックは、アルバムの大きな見せ場であり、華。しかし、楽曲を前に進める原動力、設計図の原盤は、Blackwald が天塩にかけたシンフォニック・アレンジやシンセサイザー、ピアノやチェンバロにヴァイオリンの洪水です。なぜなら、Blackwald はこのトワイライト・キングダムに、壮大な映画音楽のメタルを築こうとしているから。
例えば、ハンス・ジマーが手がけたSF大作や、例えばアラン・メンケンが手がけた夢の国ディズニーのメタル盤があるとすれば、間違いなくそれはこの作品でしょう。それほど、Blackwald が手がけるオーケストレーションは完成度が高く、複雑怪奇でありながら耳にのこる印象力を備えています。数十年前の RHAPSODY の名作群と比べれば、時を超えていかに彼らのシンフォニック・アレンジや構成力、音の色彩が進化したかに気づくでしょう。
「”逃避” という行為は、人類の歴史の中で常に重要だったけど、おそらく今はかつてないほどその必要性が高まっている。常に相互接続され、即座に情報が飛び交い、錯乱するという過酷な現実は、人間の心に負担を与えているよ。僕は、音楽と芸術によるひとときの休息は、精神の幸福のために必ず必要な “安全な避難所” であると信じているんだ。だから、僕たちの音楽とそれに付随する物語を通して、リスナーが現実の束縛から解放されたり、現実の苦悩や苦難から解放された空想の世界に没入できればと願っているんだよ。ほんのひとときだけでもね」
そうして完成した “At The Heart of Wintervale” には、これもジマーやメンケンが手がけた空想の音楽と同様に、人々の “避難所” となるように真摯な祈りが込められています。D&Dのファンタジックなイメージで構成された8章からなるメタル・シネマは、磨きたての鎖帷子や重厚な鎧、黒のマントを身にまとい、ドワーフの鉱山やドラゴンの山、クリスタルの森など未到の地を未曾有の音楽で縦横無尽に駆け巡ります。SNS やインターネットが常に “オンライン” で、心の休まる暇のない現代。押し寄せる情報と暗い出来事をほんのひとときシャットダウンして、”オフライン” になるために、TWILIGHT FORCE の描き出す音景色やストーリーほど適した避難所はないでしょう。
TRICK OR TREAT でも知られるボーカル、Allyon こと Alessandro Conti の高らかなマイケル・キスク的威容に浸るもよし。エクストリーム・メタルの間合に潜むコミカルでプリティなセンスに酔うもよし。ただリスナーは、すべてを忘れてひとときの異世界転生をすればよいのです。アドヴェンチャー・メタルはまだまだ続いていきます。
今回弊誌では、Blackwald にインタビューを行うことができました。「ハイ・ファンタジーのエンターテインメントの多くは、僕たちの音楽や伝承に何らかの影響を及ぼしている。日本の多作なメディアの作品が、長年にわたってその一翼を担ってきたことは間違いないよ。”ベルセルク”, “ワンピース”, “デスノート”, “スタジオ・ジブリ”, “ファイナル・ファンタジー” など、想像力を刺激する日本の創作物の中には、僕たちのインスピレーションを形成してきた素晴らしい作品が数多くあるわけさ」2度目の登場。どうぞ!!

TWILIGHT FORCE “AT THE HEART OF WINTERVALE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SYMPHONITY : MARCO POLO: THE METAL SOUNDTRACK】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LIBOR KRIVAK OF SYMPHONITY !!

“I Still Had In Mind That Marco Polo Should Be a Strong Power Metal Album At The First Place.”

DISC REVIEW “MALCO POLO: THE METAL SOUNDTRACK”

「GAMMA RAY の “Land of the Free” は、パワー・メタルが沈んでいた時代、トンネルの先に光を与えてくれたんだ」
愛と勇気とファンタジーのパワー・メタルはこれまで、何度か絶滅の危機に瀕してきました。90年代に世界を覆ったダウナーな霧は、チェコの英雄 Libor Křivák が語るようにもちろんこのジャンルを疲弊させました。ただし、後にシンフォニックなオーロラが生き残ったパワー・メタルの勇壮なメロディまでも抱きしめた時、私たちはその美しさの裏で画一化というそこはかとない恐怖もまた、感じていたのです。
「最近、メタル・オペラはたくさんあるけど、本物のパワー・メタルのサウンドトラックは今まで誰も作っていないから、このサウンドトラックのアイデアは気に入っているよ。”Marco Polo” はパワー・メタルとしての力強さを第一に考えていたんだ」
チェコという西洋と東洋の交差点に居を構える SYMPHONITY が、マルコ・ポーロの東方見聞録をアルバムのテーマとして選んだのは、ある意味自然な流れだったのかもしれません。そうして、マルコの足跡を辿ったこのアルバムには、第三世界が勃興した現代のヘヴィ・メタル世界を投影するかのように、様々な国のミュージシャン、伝統音楽、伝統楽器が登場します。当然、バンド名が表す通り、この作品はたしかにオペラのような荘厳な “シンフォニー” を全身に纏っています。
ただし、それでも、このアルバムはワールド・ミュージックにも、シンフォニックなオペラにも、全く飲み込まれてはいません。重要なのは、パワー・メタルとしての雄々しきカタルシス、絶対的な扇情力。かつて、GAMMA RAY が “Land of the Free” で見せつけたパワー・メタルの自由、本物のメタル・オペラを SYMPHONITY はモリコーネに敬意を表しながら受け継いでいきます。Kiske と Kai のダブル・シンガーだったあのアルバムと同様に、2人の歌い手が丁々発止その個性を漲らせながら。
「この物語は、マルコが父や叔父とともに通過した古代の国々。そのエキゾチックな楽器やハーモニー、音階を発見するとてもユニークな機会を与えてくれたんだ。どんな音楽にも、それぞれの魔法があるからね。例えば、中東の音楽にはたくさんの音階がある。他にも様々な音楽が登場する。チベットのホルンは人間の足の骨でできているし、モンゴルの喉歌はとても独創的だよ」
とはいえ、SYMPHONITY が培ったジャーマン・メタルの骨子は、ホーミーや馬頭琴、人骨のチベタン・ホルンにウード、ダルシマーといったシルクロードの民族楽器で巧みに肉付けされ、リスナーを30年の果てしない旅路へと誘います。そうして、シンフォニックであると同時に豊かな質感を備えたこのアルバムは、最終的に重くメタルらしいリフと向き合うことでマルコの苦難を巧みに表現しているのです。
ある意味で、”Malco Polo” はシンフォニックとパワー・メタル真の橋渡しと言えるのかもしれませんね。もちろん、マルコ・ポーロの母国イタリアの至宝 RHAPSODY、そしてエンニオ・モリコーネに対する愛情をも十二分に示しながら。風格と威厳、そして逞しさを備えたメタル・サウンドトラックの堂々たる帰還。
今回弊誌では、ギターマスター Libor Křivák にインタビューを行うことができました。「君が僕たち以外のチェコ共和国のバンドを知らなくても不思議はないんだ。チェコではメタルはとても人気があって、Masters of Rock や Metalfest のような大きなフェスティバルも開催される。だけど、ほとんどすべての国内のバンドの問題は、チェコの歌詞を使っ”ビール・メタル” のような音楽を演奏していて、海外で人気が出るチャンスがないことなんだ」 どうぞ!!

SYMPHONITY “MARCO POLO : THE METAL SOUNDTRACK” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【BLIND GUARDIAN : THE GOD MACHINE】


COVER STORY : BLIND GUARDIAN “THE GOD MACHINE”

“I think What We Did Now Is How Speed Metal Has To Sound Right Now And This Is How It Can Be Interesting For The New Generation Of Metal Fans.”

THE GOD MACHINE

1984年、ギタリストの André Olbrich は、高校の同級生だった Hansi Kürsch をロックバンドのリハーサル室に誘います。そこから、BLIND GUARDIAN の歴史は始まりました。
「Hansi と僕は修学旅行で酒を飲んでいたんだ。すると突然、彼は King Diamond のように高音で歌い始め、完全におかしくなった。でも僕は同時に、”なんて声なんだ! 信じられない!圧倒されるし、こんなに高い音も出せるんだ!”と思ったんだ」
André はすぐに Hansi を自分のバンドで歌わないかと誘いましたが、Hansi は自分はシンガーではなくギタリストであると主張して断りました。 André のバンドにはすでに2人のギタリストがいて、3人目を加える計画はありませんでした。しかし、2人の間ですぐに妥協が成立します。Hansi のベース/ボーカルとしての参加です。さらに André は最終的に希望をかなえ、1997年、Hansi はベースを置いてボーカルだけに専念することになります。ここに、BLIND GUARDIAN の前身である LUCIFER’S HERITAGE が誕生したのです。
「Hansi が参加した瞬間から、ロックっぽいバンドからメタル・バンドになったんだ」
Hansi が付け加えます。
「André と一緒にバンドを組もうと決めたときから、とても真剣に取り組んでいた。僕ら二人は、夢を生きられない人たちにうんざりしていたんだ。誰もが有名になることについて話していたけど、話すことと実行することは別なんだから」
リハーサル室での地味な活動から抜け出し、新たに LUCIFER’S HERITAGE と改名した彼らは、2本のデモテープをリリースし、ドイツの小さなメタルレーベル、No Remorse Records の目にとまることになります。1988年、彼らはレーベルとレコード契約を結び、その記念として新しい名前を手に入れます。BLIND GUARDIAN。まもなくメタル世界で最も神聖なバンドのひとつとなる名前です。こうして彼らのオデッセイは幕を開けました。

BLIND GUARDIAN の名で最初にリリースされたのは1988年の “Battalions of Fear” で、この作品はより壮大なものに目を向けたスピード・メタルだったと言えます。 André, Hansi, ギタリストの Marcus Siepen、ドラマーの Thomen Stauch は、1987年10月にプロデューサー Kalle Trapp とレコーディング・スタジオに入り、世界の頂点に立ったような気分になっていたと André は明かします。
「スタジオに入ったとき、僕たちはとても高揚していたんだ。ヘヴィ・メタルのシーンの一部になって、自分たちのアルバムを持つことになるとね。録音するのは僕らのデモの曲で、僕らが大好きな曲だったから、最高のアルバムになると確信していたんだ」
“Battalions” のセッションは、この若いバンドにとってスタジオ・レコーディングの猛特訓となりました。クレーフェルトのリハーサル・ルームでデモを作っていた彼らのやり方は、あらゆるミスが目につく無菌状態のスタジオでは通用しなかったのです。”Battalions” は初期のバンドの奔放な野心を、特に “指輪物語” のアラルゴンに感化された中心曲の “Majesty” で見せつけますが、彼らにはまだ学ぶべきことがたくさんありました。特に André にとって、”ギターソロを作曲するべき” という気づきは、今後の BLIND GUARDIAN にとって重要な指針となっていきます。
「もっと時間があれば、もっと良くなっていたかもしれない」と André は振り返ります。「例えばソロの場合、あの時は一発勝負で、運が良ければ2発で録れた記憶がある。2回で録音できなかったものは?自分の問題だ。このままではいけないと思った。次のアルバムでは、通常のバンド・リハーサルだけでなく、一人でリハーサルをして、ギターソロを作曲する必要があるとね。スタジオで自分が何を演奏したいのか、どの音が必要なのかを考えるのではなく、その前に準備する必要があるとわかったんだよ」

“Battalions” がスタジオ・レコーディングの厳しさに対してバンドが準備不足だったとすれば、1989年の “Follow the Blind” は全く別の問題があったと André は言います。
「”Battalions of Fear” では、曲作りに時間的なプレッシャーはなかった。曲は全部できていたからね。デモテープにあった曲で、あと1、2曲書いて、アルバムは完成したんだ。そしたら突然、レーベル・マネージャーが “OK、次のアルバムは1年以内に出してくれ” って言ったんだ。それで僕たちは、まったくナイーブに、”ああ、問題ない!” と言ってしまった。だって、1年なんて結構長いと思ったから」
しかし、その1年はあっという間でした。André は公務員になり、Hansi も見習いとして働いていました。バンドはまだ BLIND GUARDIAN をフルタイムの仕事にすると決めていなかったので、曲作りとリハーサルは仕事の後の深夜に詰め込まれることになっていました。
「要求に応じて音楽を作るというのは、そんなに簡単なことではないとを初めて知った。だから多くのことが急いで行われ、リハーサル室で数回だけアイデアをまとめて曲をリハーサルしたんだ」
とはいえ、”エルリック・サーガ” に感化された “Fast To Madness” などファンタジックなメタルはより存在感を増しました。”Follow the Blind” のために彼らが最後に書いた曲は “Valhalla” で、André はこの曲を単なる “繋ぎ” だと考え、トラックリストから危うくカットするところでした。André の予想に反して今日、この曲は BLIND GUARDIAN の曲の中で最も人気のある曲の一つとなり、ライブの定番曲として観客のシンガロング欲を常に刺激しています。
「僕たちは素晴らしい曲を書くことができた。”Valhalla” は、あまり考えすぎない方が良いという素晴らしい例だ。自分の中から出てくるものをすべて、最初に受け止めてしまえばいい。最初のアイデアを採用する。2つ目のアイデアを待つという選択肢はなく、ただそこにあるものをつかむんだ。それがとても純粋で、とても本質的なことだと思うし、それこそが “Valhalla” なんだ。そして、これこそが純粋な BLIND GUARDIAN なんだ」

“Tales from the Twilight World” は、BLIND GUARDIAN がすべてをまとめ始めたレコードです。エピカルでありながら、比較的ストレートなスピード・メタルを2枚お見舞いした後、”Tales” でバンドは曲がりくねった曲の構成と綿密に重ねられたアレンジを導入し、以降それが彼らの特徴になることを宣言したのです。公務員と労働はすでにバックミラーの彼方にありました。バンドは André と Hansi の仕事になっていたのです。
「最初の2枚のアルバムで稼いだお金を全部つぎ込んで、自分たちの小さなスタジオを買ったんだ。スタジオと同じプロセスが必要だった。学ぶべきだとね。曲を事前にプロデュースする必要があったけど、これは小さなスタジオでしかできない。だから、スタジオ機材を購入したんだ。そして、この技術的な機材を手に入れた瞬間から、Hansi と僕はリハーサルルームで生活するようになった。機械を使って、一分一秒でも早く曲に取りかかろうとしたんだ」
Hansi も変革の時であったことを認めます。
「僕たちはいつもいろいろなことを試すのが好きなんだ。実験に対する情熱は、僕たちのソング・ライティングには欠かせないからね。”Follow The Blind” の後、自分たちで初めてスタジオ機材を手にしたとき、僕たちの選択肢は無限に広がり始めた。これがあの頃感じていたことだ」
“Tales” のハイライトである “Traveler in Time”, “Lost in the Twilight Hall”, “The Last Candle” といった楽曲は、複雑で重く、しかしメロディックでキャッチーな要素を一度に味わうことができました。”Lord of The Ring” では素直に自らの素性を告白。振り返ってみると、これはパワー・メタルの発明、そしてその体系化の始まりようにも感じられますが、2人は会話の中で、意図的にこの用語を避けていました。どのように呼ぶにせよ、”Tales” は明らかにバンドが自分たちの “声” を発見した瞬間でした。
「僕たちは、ミュージシャンとしての自分たちについて考えていた」 と André は言います。「どうすれば自分の個性を生かせるか?リード・ギタリストとしての音色はどうすればいいのか?そして、Hansi はもちろん、ボーカリストとしての自分の個性を見つけ、初めて、僕たちが知っている Hansi のような、カリスマ的なサウンドを奏でたと思う。”Follow the Blind” では、彼はもう少しスラッシーなサウンドを出そうとしていて、どこに行けばいいのかよくわからなかったんだと思う。でも、”Tales” ではわかっていた。そして僕らも分かっていた。みんな、自分たちがどこにいて、どんな音を出したいのかわかっていたんだ」
そして、”Tales” でメインストリームでの成功がもたらされたと Hansi は言います。
「もはや、誰もが BLIND GUARDIAN が何であるかを知っていた。最初の2枚のアルバムよりも当然優れていることは別として、違いを生んだのは人々の意識だった。次のアルバムに対する人々の期待を実感したことで、”Somewhere Far Beyond” の制作は最も重要で困難な曲作りの期間となったんだ」
期待はソングライターとしての自分たちに大きなプレッシャーを与えたと André も同意します。
「だって、”なんてこった、こんなに成功したアルバムがあるのに、どうやったらこれを超えることができるんだ?”って思ったんだから」

今年30周年を迎え記念のツアーも行われた “Somewhere Far Beyond” で BLIND GUARDIAN は、”Tales” のメロディックなアイデアを発展させると同時に、より多くのサウンド要素を導入しました。バグパイプを使った “The Piper’s Calling” とタイトル曲、シンセサイザーによる “Theater of Pain”、さらに “ホビットの冒険” を踏まえた “The Bard’s Song(In the Forest)” では悲しげなアコースティック・ギターを、続編 “The Bard’s Song(The Hobbit)” ではそれを発展させた中世的なサウンドを披露して、バンドは “Tales” における自己発見を倍加させながら、さらに外界へと拡大していったのです。ちなみに、”The Quest For Tanelorn” は、ムアコックのエターナル・チャンピオンシリーズが元ネタ。
「”Tales” から “Somewhere” へ進む中で、明らかな進化があった」と André は言います。「だから、ギターの音をもっとリッチにして、”Tales” でやったことにすべて上乗せしようとしたんだ」
“Somewhere Far Beyond” は同時に、BLIND GUARDIAN がリハーサル・ルーム時代にお世話になったプロデューサー、Kalle Trappe との関係を終了させる作品ともなりました。「彼はプロデューサーとして非常に保守的で、僕がサウンドやプロダクションに関して革新的なアイデアを思いついても、いつもブロックされた」と André は嘆きます。だからこそ、1995年の “Imaginations from the Other Side” でバンドは、METALLICA の80年代を支えた伝説のエンジニア、Flemming Rasmussen を起用することにしたのです。

「彼はミュージシャンの尻を叩く方法を知っている。前任者は、パフォーマンスとグルーヴとキャラクターにしか興味がなかったんだ。でも Flemming は、僕たちをミュージシャンとして押し上げることを望んでいた。だから、最初は指から血が出るほど演奏していたよ。”もう100%やってるよ!”って言っても彼は、”そんなのは認めないぞ!もっと頑張れ!” と言うんだよ」
Flemming がミキシング・ボードの後ろにいることで、BLIND GUARDIAN はこれまでで最もタイトで、プログレッシブかつ最もダイヤルの合ったアルバムを完成させます。ファンタジー全般を礼賛するタイトルトラックにアーサー王伝説を引用した “Mordred’s Song” まで、”想像のアザー・サイド” を祝賀する “Imaginations” は大ヒットし、バンドにとって待望の国際的なブレイクを成し遂げました。世界のメタル・シーンは、ドイツと日本のオーディエンスがすでに気づいてたことにやっと気づいたのです。また、このアルバムはメロディック・メタルが低迷していた時期に発表された、豊かなレイヤーを持つバロック的なパワー・メタルでした。95年と言えばグランジがまだ優勢で、Nu-metal が徐々に台頭し、アンダーグラウンドの世界はますます過激になるデス・メタルやブラック・メタルに固執していました。それでも、André は気にしませんでした。ロンドンから来た彼のヒーローが、道を示してくれたから。
「僕たちは QUEEN を尊敬していたんだ。彼らは常に、何があろうと自分たち自身のことをやっていた。彼らは個性的で、シーンから完全に独立していた。僕たちも同じようになりたかった。他のバンドを見すぎて、成功したトレンドに自分を合わせようとすると、常に先を行くバンドより少し遅れてしまうから下降する一方なんだ。僕たちは何かを発明するバンドになりたかったんだ」

現在では誰もが認める名盤となっているため、当時 “Nightfall in Middle Earth” がいかに大きな賭けであったかを想像するのは困難かもしれません。BLIND GUARDIAN は常にオタク的な性癖を持っていて、お気に入りの SF やファンタジーの本を基にした歌詞を書いていました。
「僕はオタク的だと思ったことはないし、自分がオタクだとも思っていなかった」と Hansi は抗議しますが。「オタクだったのは、 André と Marcus だ。彼らはコンピュータのロールプレイングに夢中だったからね。でも僕はクールな男だった。彼らがそうしてる間に本を読んでいたんだよ」
“Nightfall” では、トールキンの “シルマリルの物語” をベースにした22曲入りのメタル・オペラを制作し、これまで以上にファンタジーの道を突き進むことになります。
「このアルバムは、トールキンのファンや、僕たちのようなファンタジーが好きな人にとって素晴らしいものになると思ったんだ」と André は回想します。「だから、自分たちのためでもあった。商業的な考えは排除したんだ。レーベルがこの作品をあまり好まないだろうことは、もうわかっていた。このアルバムには、ヒット曲やラジオのシングル曲、MTVのビデオクリップ的なものは入っていないからね。それは分かっていた。でも、”だからどうした?自分たちがやりたいことなんだから” って思っていたよ」
“Nightfall” の構成は、バンドにとって新たな挑戦となりました。”Imaginations” のように単独で成立する曲を作るのではなく、全体の物語とどのように相互作用するかを考えなければならなかったから。 André が回想します。
「Hansi は “メランコリックなものが必要だ”, “戦いが必要だ”, “あれもこれも必要だ” と言っていたよ。ファンタジー世界に深く入り込んで、トールキン的な感覚に合うようなアイデアを出そうとしたんだ。今までとは違う作業工程だったけど、とても興味深く、違う道を歩んだその時から多くのことを学んだんだろうな」
「この作品は新たな BLIND GUARDIAN のソングライティングの出発点だったのかもしれない」 と Hansi は言います。「当時はそう感じなかったけど、今思えばここがポイントだったのかもしれない。曲作り全体が常に進行しているんだ。だから、”Imaginations” から新しいものに向かって自然で有機的な進化を遂げることになったんだ」

“Nightfall” は、 André がクラシック音楽とオーケストラ・アレンジメントに興味を持ち始めたきっかけとしても重要な作品であった。このこだわりは、”Nightfall” の次の作品である2002年の “A Night at the Opera” でさらに実を結ぶことになります。「キーボードでクラシックの楽器を演奏して、それをレコーディングできるなんて、本当に驚いたよ」と André は言います。
「僕たちは、壮大でクラシック志向の曲を作り、実験していたバンドのひとつだったんだ。そして、これらのサウンドの融合は素晴らしいものだと今でも思っている。メタル・ミュージックにとてもよく合うんだ。曲のストーリーやメロディーで作り上げるエモーションは、オーケストラが入ればさらに強くすることができるんだよ」
“A Night at the Opera” で最も大胆な試みは、ホメロスの長編叙事詩 “イーリアス” を14分に渡ってシンフォニック・メタルに翻案した “And Then There Was Silence” でしょう。この曲は、オーケストラの楽器をふんだんに使い、コーラスだけが繰り返されるという、ほとんど圧倒的な音楽的アイデアの洪水を実現しています。”Opera” のレコーディングを開始する頃、2人はクラシック音楽のアルバム “Legacy of the Dark Lands” の制作を始めていました。 André は”Legacy” で採用した作曲スタイルに解放感を覚え、それをメタルの文脈で適用しようとしたのです。
「ルールはない。僕はただ音楽で物語を語りるだけ。もちろん、ドラムとギターを加えなければならなかったけど、とてもうまくいった。ヴァース/コーラス/ヴァース/コーラス/ソロ/コーラス/コーラスみたいな普通の曲の流れから抜け出したかったんだ。それに縛られたくなかったんだ。それに、ヘヴィ・メタルには物語をどこかに導いてくれる自由があると感じている。左の道を通って、またまっすぐな道に戻って、別のところに行くこともできるってね。森の中を歩いていて、木が来たらルートを変えるようなもの。ずっとまっすぐな道である必要はないんだよ」

“Opera” をリリースした後、多くのバンドがレトロなアルバムを制作した時期があったと André は嘆息します。
「彼らは80年代のような音を出そうとしたんだ。僕にとっては、それはひどいことで、そうしたアルバムはすべてひどいと感じた。後ろ向きに歩いているような気がしたんだ。彼らは80年代をもう一度再現したかったんだろうけど、何をバカなことを! 時間は一方向にしか流れていないんだ」
BLIND GUARDIAN のカタログの中で見過ごされてきた逸品、”A Twist in the Myth” がそうしたレトロに回帰するバンドに対する André の答えでした。長年のドラマー Thomas “Thomen” Stauch が脱退し Frederik Ehmke が新たに加入。その厳しい制作スタイル、短くしかし密にミックスされた楽曲、奇妙なシンセ音の多用は、そうしたレトロの風やバンド自身の “A Night at the Opera” からも可能な限り距離を置いていました。 André は、”Twist” について今でも、その最高の曲 -“This Will Never End”, “Otherland”, “Fly” は、トップレベルの BLIND GUARDIAN であると信じています。そして彼は、それらをさらに良くするために手を加え続けたいと思っています。
「今聴くと、もっとこうしたらいいのにと思うことがたくさんある。でも、当時、僕たちはこうした音楽の作り方をこのやり方しか知らなかったし、心の中ではベストだったんだ。でも、いつかこのアルバムの曲のいくつかを作り直したいと思っているんだ。素晴らしいアイデアなんだけど、曲はもっといい方法でアレンジできるし、もっとキャッチーになるはずだからね。このアルバムは、初めて聴く人にとって、とてもとても入り込みにくいものだったということが、今になってよくわかる。情報過多になってしまうし、カッコ悪い。今ならこのアルバムをどうプロデュースするかがわかるんだ」

“Twist” の成果に失望した André は、”And Then There Was Silence” の壮大でシンフォニックな実験に立ち返り、そこから前に進むためのインスピレーションを得ようとしました。そしてその頃、 “Legacy of the Dark Lands” のリリースに向けたセッションに没頭していた André は、本物の人間によるオーケストラを BLIND GUARDIAN のアルバムに使用したくてたまらなくなっていました。
「本物のオーケストラを録音して多くを学んだからこそ、壮大なものを書いてみよう、より良いものを作ろうと言って “And Then There Was Silence” をプログラミングしたからね」
プラハ交響楽団は、”A Night at the Opera” の最大級の衝動をより有機的に感じさせる “At the Edge of Time” で重要な脇役となっています。ゲームの主題歌ともなった “Sacred Worlds” と”時の車輪” がモチーフの  “Wheel of Time” はアルバムの中枢として機能し、”And Then There Was Silence” の圧倒的なスケールをややコンパクトにまとめて提供しています。一方で、”Ride Into Obsession” は André の “作曲された” リードギターがメロディアスなフレーズを奏でなければスラッシュと見紛うばかりのアグレッションを纏います。結局、”At the Edge of Time” は原点回帰という名の一時後退で、 André とバンドの他のメンバーが “Twist” の “失敗” を克服するために必要なリセットであったのです。

2015年の “Beyond the Red Mirror” は、”At the Edge of Time” の自然な伴侶となるべき作品でしょう。この2枚のアルバムはほぼ同じシークエンスとペースで構成されていて、この作品では9分の “The Ninth Wave” と “Grand Parade” を、”Edge” における “Sacred Worlds” と “Wheel of Time” と同じスロットに配置しています。 André は当時、エピックモードで作業し、BLIND GUARDIAN のサウンドを盛り上げるオーケストラの使用に満足していました。
「この2枚のアルバムの間で抜本的な改革はしていないんだ。よし、”Tales” と “Somewhere” の間でやったように、さらに良い音にして、このスタイルをさらに進歩させようという感じだったね。”Beyond the Red Mirror” でピーク・ポイントを設定したかった。ソングライティングはそうできたと思うけど、プロダクションはそうじゃなかったんだ」
確かに、”Mirror” のオーケストラの要素は、”Edge” の力強さに比べて妙に弱々しく感じられ、その結果、アルバムは少しスケールダウンしています。それでも、”Prophecies” のようにいくつかの素晴らしい曲が含まれていますが、 André は “壮大なオーケストラの BLIND GUARDIAN 路線” に行き詰まりを感じていたようにも思えます。
「僕にとっては、その時、この壮大なスタイルを続ける必要はないと思ったんだ。しばらくはこれをやっていたが、今は他のことをやる時だ。もう一度激変が必要なんだとね」

その変化はすぐにやってきますが、その前に André と Hansi は20年以上も温めていた愛の結晶をリリースする必要がありました。BLIND GUARDIAN TWILIGHT ORCHESTRA とクレジットされ、エレクトリック・ギターがゼロである “Legacy of the Dark Land” は、2019年に発売されました。”Legcy” に収録されている最も古い曲は、”Nightfall” 時代までさかのぼります。
「純粋な体験について言えば、常に学び続けるプロセスだった」 と、Hansi は説明します。「音楽家としての能力はもちろん、機能的な曲作りや音楽における物理学について、膨大な知識を得ることができた。それは、実際よりも理論的にね。音楽の魂にとって、その知識は効率的なんだよ」
メタルではないアルバムをリリースし、その理由をファンに理解してもらうことができたのは BLIND GUARDIAN が数十年に渡って築き上げてきた実験の証といえるでしょう。バンドは常にAndré と Hansi の実験室であり、”Legacy” は彼らの最も壮大な実験であったと言えます。だからこそ、二人はこの作品をとても大切にしているのです。
「20年という時間の中で、このような学習プロセスがあったのだから、本当に素晴らしいことだ。こうした時間があったからこそ、このアルバムを作ることができた。何も変えたくないんだ。僕にとってあれは完璧なアルバムで、今までで最高の作品だ」

「長い間、僕らの思考を支配してきたオーケストラ・アルバムの後に、僕らが何か声明を出したかったのは確かだ」と Hansi は言います。「今、僕たちはやりたいことを何でも自由にできるようになったんだ。”The God Machine” は、解き放たれたブラインド・ガーディアンなんだ」
“解き放たれた” という言葉は、”The God Machine” にとって完璧な言葉でしょう。少なくとも “A Twist in the Myth” 以来、あるいはそれ以前から、BLIND GUARDIAN のアルバムの中で最もヘヴィな作品なのですから。このアルバムは、”Deliver Us from Evil”, “Damnation” という2曲の強烈なスピード・メタルで幕を開けます。その後に続く “Secrets of the American Gods” は7分間の音の迷宮で、”The God Machine” の中で最も叙事詩に近いもの。この曲は、Marcus のリズムギターを軸に、アレンジが螺旋状の回廊を下っていくようなうねりを伴っています。Marcus、ドラマーの Frederik Ehmke、ベーシストの Barend Courbois は André や Hansi と同様にアルバムのサウンドにとって重要な存在であることは言うまでもないでしょう。
「久々にバンドとしてリハーサルを再開したんだ。そして、”Legacy of the Dark Lands” に取り組んでいる間、ずっと見逃していたバンドのエネルギーとヘヴィネスを感じたんだ。それは僕らが再び速く、よりハードになった理由のひとつだ」
“The God Machine” はコロナ時代の BLIND GUARDIAN 最初のアルバムですが、彼らの曲は世界的な大災害よりもエルフや魔法使いについての曲の方が未だに多いのはたしかです。ただし、このアルバムは André が今の世界の “世相” と呼ぶものを捉えているようです。
「世界全体が厳しくなったように感じた。人々がお互いにどのように話しているのかがわかった。10代の頃のイライラした気持ちに近いものがあった。そして、それが “The God Machine ” の感覚だった。フラストレーションを全部吐き出して、エネルギーを全部込めたんだ。もっとスピード・メタルなんだ。もっとハードでファストな感じ。僕にとって、それは今の時代を反映しているもので、常に重要なこと。そしておそらく、僕がこの時代に抱いた感情を解消するのに役立つのであれば、それは他の人々にも役立つかもしれない」
今回、BLIND GUARDIAN の挑戦は “スピード・メタル 2022” です。
「もう2017年末のツアーの直後から曲作りを始めていたね。ただアイデアを集めて、すべてをオープンにしておいたんだ、なぜなら、最初のうちは、自分たちを特定の方向に限定したくないから、どんなアイデアがあるか見て、そこから作業するんだ。だから、最初は “American Gods” と “Architects of Doom” に取り組んでいて、その後、”Legacy of the Dark Lands” に集中しなければならない、あるいは集中したいので、曲作りは一旦中断したと思うんだ。それが終わると、オーケストラやアレンジメントと一緒に仕事をするのはとても強烈で、僕にとっては何か別のことをするのが自然だと感じたし、メタル・バンドを再び感じ、残忍さとスピードを感じることができた。だから自然に、最初の1、2曲はスピード感のある曲になった。Wacken Worldwide で演奏して “Violent Shadows” をプレイしたとき、この曲に対して素晴らしいフィードバックを受けた。そして、この直後に、いや、この直後ではなく、すでにこの前に、パンデミックがスタートしたんだ。その瞬間、僕の周りや世界が一変した。よりタフになり、ある種のサバイバルモードに切り替わったような感じ。だから僕もよりタフに、よりハードにならざるを得なかった。すべてが少し混沌としているように見え、その瞬間、よりハードで残忍な音楽を書くことが本物だと感じたんだ。だから、このアルバムは、僕らが今感じている “タイム・スピリット” 世相や瞬間を捉えたものだと思うし、それは僕らの音楽の中に常にあるもので、古いアルバムからずっと、音楽における感覚の大きな部分を占めていたんだ。
このスピード感のあるアルバムは、僕らにとっては自然なことなんだ。レトロなアルバムを作ろうとか、昔を真似しようとは思っていなかった。僕らにとってこの作品は、メタル・バンドとしてスタートしたときの純粋なに、今の知識を加え、バンドとして、作曲家として成長を加えたものなんだ。スピード・メタルを2021年、2022年の時代に移したかった。だから、よりモダンなサウンドにする必要があったし、アレンジに関しても少しトリッキーにする必要があって、それを実行した。振り返ってみて、通用しないような曲は嫌なんだ。そうだね、今回僕らの挑戦は、スピード・メタルが今どう聞こえるべきかということであり、新しい世代のメタル・ファンにとってどう興味深いものになり得るかということだと思う。もし今、16歳や20歳の若者が聴いたら、80年代のオリジナル曲よりもずっと彼らの関心を引くことができると思う」

ある意味、”The God Machine” は BLIND GUARDIAN の新章、その幕開けと言えるのかもしれません。
「どこか別の場所に行きたかった、それは確かだ。いわば、新しい BLIND GUARDIAN のサウンドを定義したかったんだ。”At the Edge of Time” と “Beyond the Red Mirror” はかなり近かったから、あれを1つの章として見ている。そのあと時折、章を閉じ、別の章を開く必要があるんだよ。今がそのタイミングだと思ったんだ。プロデューサーのチャーリーと、どうやったら新しいアルバムをまったく違うサウンドにできるかについて何度も話し合ったんだけど、結論は最初からすべてを変えること。ドラムの録り方も変えたし、ギターの音も完全に変えた。ミキシングも新しい人にやってもらったし、そういうことを全部ひっくるめて、新しい章が始まるんだということがわかるような、今までとは違う作品になったと思う。アートワークについてもね。ファンタジーであることに変わりはないけど、より現代的であることを示すようなアートワークのカットが必要だと」
ただし、BLIND GUARDIAN にとっての “現代化” とは、断捨離で、ミニマライズで、スペースを作ることでした。
「同じダイナミックさ、同じアグレッションを持ちながら、たくさんのスペースが欲しかった…今回の音楽はもっとオープンで、もっとスペースがあるんだ。80の楽器が同時にトリックを繰り広げるような超壮大なものではなく、もっと…僕は70年代のものが好きでね。DEEP PURPLE から LED ZEPPELIN まで、僕の好きなバンドの多くは70年代のロックバンドで、彼らのギターサウンドが本当に大好きなんだ。だから今の僕の基本的なサウンドは70年代のアンプをベースにしていて、それによってよりスペースができて、ある意味ボーカリストがより輝いている。
実際、”The God Machine” はかなり70年代の影響を受けている。今でもライブではこのコンセプトにこだわっていて、うまくいっている。その方がみんなにとってずっといいんだ。僕たちは、基本的なロックっぽいバンドに少し戻っているからね。例えば、ギターから見たアメリカ流のメタル・サウンド、SLIPKNOT, KORN, DISTURBED は、典型的な歪み過ぎ。僕のヒーローは Eddie Van Halen なんだけど、彼のサウンドをいつもチェックしていて、何が好きで何が嫌いなのかっていうのを考えていたんだ。たぶん、それが僕らにとっての進むべき道なんだと思うし、スピード・メタル系の音楽でも、こういうサウンドは気持ちいいと感じるんだ」
“Life Beyond the Spheres” にはたしかに、70年代の音もかなりはっきりと入っています。
「この曲は特殊な奏法で演奏されているんだけど、この奏法を実現するために何度もリハーサルを重ねたんだ。僕は音楽ジャンル全体を何か別のものに前進させる、イノベーションの大ファンなんだ。もしかしたら、今までなかった新しい何かを見つけられるかもしれない。”Life Beyond the Spheres” では、サウンドトラックの方向へ行きたいと思ったんだ。当時は “サイバーパンク 2077″ をやっていたから、ちょっとそこからインスピレーションがあった。サイバーパンクの方向性で、今までよりもスペイシーなメタル・サウンドを持ち込もうとしたんだ。その感覚を Hansi も掴んでくれて、今までやったことのない、このジャンルに近くない曲ができたと思う。いいよね、これはとても革新的な曲で、誇りに思っているよ」
多くのバンドが左に進むと、右に行くのが BLIND GUARDIAN のやり方。
「”Twist in a Myth” のように、遠くへ行ったアルバムもあるし、エレクトロニック・サウンドの実験もたくさんやった。当時はもっとシンセティックなサウンドにしたかったし、シーケンサーで遊んでみたかった。禁止されていることは何もない。自分の頭の中に素晴らしいコンセプトがあれば、何があってもそれを実現させたい。僕らにとってはただ、アルバム全体が調和していることが重要なんだ。曲作りの段階でたくさんの曲を考えたけど、その中には絶対に合わない曲もある。それを入れるのは休憩とか場違いみたいになってしまうから嫌なんだ。だから、曲順を工夫すれば、ストーリーが生まれるような曲ばかりを選んでいった。全く違う方向性の曲もあったよ。ジャズ的な要素も試したし、本当にクールなアイデアもある。ある時点で、リリースする予定だけど、すべては正しく行われなければならない。それでも、オリジナルの BLIND GUARDIAN サウンドにこだわる必要はない。僕の考えでは、BLIND GUARDIAN の本当の最初の定義となったのは “Tales of the Twilight World” だった。だから僕たちはどこへでも行けるんだ」

André は未だに長年連れ添った Hansi と意見が合わないこともあると認めています。”Blood of the Elves” はまさにそんな2人の違いとケミストリーが生んだ曲。
「キャッチーでフックなメロディーを聴く耳は、僕の方が上だと思う。Hansi はそういう意味では、もっと複雑で、プログレッシブな思考を持ちすぎている人。僕は楽器の演奏ではそうなんだけど、壮大でクラシックな曲になると複雑になりすぎてしまうのは嫌なんだ。僕は心に残るようなサビが好きなんだよ。Hansi はこれを壊したがっていたんだけど、僕は絶対にダメだと言ったんだ。彼にとっては、歌詞のセンスを入れることがとても重要なんだよね…全体がコーラス部分に収まる必要があるんだよ。でも僕はリズムもメロディも完璧なんだから、そのままでいいじゃないかと。だから、たまにはそういうこともあるけど、たいていの場合は同意する。僕たちはそんなに離れているわけでもないし、2つの世界が衝突するようなことはない。
結局、BLIND GUARDIAN の成功は、僕と Hansi のケミストリーのおかげだから。それは、愛憎半ばするケミストリー。僕たちは、本当に何でも話し合えるコミュニケーション方法を持っているから。たとえ意見が合わないときでも、すべてを持ち寄る。でも、最終的には一歩引いて、 “やっぱり、君が正しかった” と言えるんだ。それができるのが大事なんだよ。Hansi が思い通りになることもあれば、僕が思い通りになることもあり、時には妥協点を見出すこともできる。でも、僕は妥協があまり好きじゃなくて、妥協すると何かを失うと思ってしまう。だから、100%彼のやり方で行くか、100%僕のやり方で行くか、その方がいいんだ。何かに合意したら、何かを決めたらそれを100%追求する。それが僕らのいいところで、例えば Hansi が何かに反対していたとして、じゃあ君のやり方でやろうと言った瞬間から、そのアイディアに100%賛成することになるし、その反対もある。それが結果的にいい音楽につながっている」

ただ、歌詞のアイデアは、この曲での “Witcher” のように “オタク” である彼と Marcus が Hansi に押し付けることもあります。ただし、正解を出すのはいつも Hansi です。
「Hansi は歌詞について素晴らしい才能を持っているよ。だから彼に任せるよ。彼はボーカリストだから、正しい言葉に対する正しい感覚を持っているし、サビの部分の言葉ひとつで大きく変わるからね。もし、シンガーが嫌がる言葉を入れたら、曲が台無しになることもある。だから、最終的にボーカリストが気に入ったものを演奏することが本当に大事だと思う。Hansi の歌詞は、行間を読ませるような書き方をしていて、大好きだ。彼はいつも、解釈のためのスペースをたくさん残しているんだ。彼がヒントを与えることで、人々は何が起こっているのか、どういう意味なのかを考え始め、より深く、より深く掘り下げていくことができる。そうすることで、BLIND GUARDIAN の音楽は最終的にもっと強烈なものになるんだ。時には、歌詞がきっかけで本を見つけて、本を読んでくれるなんてこともあるくらいでね。
曲作りの時に彼はダミーの歌詞を使うから、時々議論が起こる。そのダミーの歌詞の中で、彼はとても良さそうな言葉を選んでいて、でも最終的に彼はその素敵な言葉を交換しようとするから、いつもまた喧嘩になる。ただ、Hansi は本当にセンスがよくて、曲のフィーリングや音楽に合うトピックを見抜く力があるんだよね。逆に、僕が音楽を作るとき、例えば “Destiny” は、僕が大のRPG好きで、あれは僕にとって、”World of Warcraft” という氷の世界の何かを題材にしたゲームにインスパイアされたものなんだ。そのことを彼に話し、僕のイメージするリッチキングのことを話した。すると彼は、”僕はそのストーリーに興味がないから、これについては書かないけど、同じ感情をキャッチできるようなものを考えてみるよ” と言ったんだ。彼はそれが本当に上手だから、心配する必要はないし、干渉する必要もないんだよね」
パンデミックで文化としての音楽、文化としてのメタルも危機に瀕しました。
「若い人がいきなり2年間も趣味を追求できなくなる。いきなり家に閉じこもってしまう。もちろん、フラストレーションは溜まる。僕が思うに、一番の捌け口は “音楽” だよ。音楽は良い治療法だ。ハードなバンドをいくつか聴いて、それを捌け口にするんだ。若い世代の人たちは昔よりオープンだからね。そんな若いファンにとって、スピード・メタルに親しむことは間違いなく面白いことだと思うんだ。”The God Machine” はスピード・メタルだけど、ただ、非常にモダンなスピード・メタルだから埃をかぶってはいない。そうやってスピード・メタルのエッセンス、エネルギーを今の時代に伝え、若い世代の足元に投げかけて、”ここにいい音楽があるよ” と言うことが大切だと思うんだ。パンデミックで、音楽シーンは社会の中で何のステータスもなく、真っ先にキャンセルされ、サポートされないことが明らかになった。この生じた穴を再び埋めることができればと願っているよ。多くのオーガナイザーやバンドが潰れてしまわないように。文化は重要だし、音楽は政治家が考えている以上に重要だよ。音楽という文化がこのまま、2023年以降も、僕たちが築き上げることのできる確かなものであってほしいと願っているんだ」

参考文献: TUONELA MAG:Interview with Blind Guardian — “We wanted to define a new Blind Guardian sound.”

BANDCAMP :An Introduction to Blind Guardian’s Mighty Power Metal

HARDFORCE:BLIND GUARDIAN Interview André Olbrich

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERWOOD : SHADOWS AND FLAMES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MAHMOUD NADER OF RIVERWOOD !!

“Egypt Has a Lot To Offer. Egypt Has More Than Just Pop/Rap/Hiphop And The True Sound Of The Deserts Of Egypt Can’t Be More Clear Than In Metal Music.”

DISC REVIEW “SHADOWS AND FLAMES”

「オリエンタルなメロディーが世界中を魅了する理由。それはやはり、魔法のように西洋のメロディーと異なっているからだと思うよ。オリエンタルなメロディーは常に貴重なもので、西洋人の耳にはとても珍しいものだ。だからこそ、メタルとのミックスは、中近東の文化を紹介するとてもユニークで重要な方法なんだよね」
メタルの生命力、感染力を語るとき、中近東の魔法のようなバンドたちはその完璧なる象徴だと言えるでしょう。モダン・メタルの深遠なる世界がいかに寛容で多様であるかは、イスラエルの ORPHANED LAND とチュニジアの MYRATH、さらに BLAAKYUM, SCARAB のカラフルかつエキゾチックな冒険を見れば自ずと伝わるはずです。そしてもう一つ、エジプトのアレキサンドリアを拠点とする RIVERWOOD の名前を我々はそのリストに加えなければなりません。
「故郷アレクサンドリアと同様に、僕たちの音楽も様々な文化を融合することに力点を置いている。僕たちの音楽には、アラビア文化、西洋の近代文化、スカンジナビア、北欧、そして多くの民族楽器が登場する。これこそが RIVERWOOD のメインテーマでもあるんだよね。ヘッドフォンやスピーカーから遠く離れた場所へ、リスナーの想像力をかきたてるような作品にしたいね」
人口520万人が暮らすエジプト第二の都市アレクサンドリア。地中海の真珠と呼ばれる美しき港湾都市は、ギリシア・ローマ文明、エジプト文明、そしてイスラーム文明が時と共に融合した文化の交差点でもあります。RIVERWOOD の音楽は、そんな彼らの故郷にも似てまさに “世界の結び目” のような色彩豊かな寛容さを誇っているのです。
「基本的に、エジプトには様々な音楽が存在する。ポップ、ラップ、ヒップホップ…だけどエジプトの砂漠、その真のサウンドを伝えるのにメタル以上のものはないんだよ」
砂漠の音を伝えるのにメタル以上のものはない。おそらく、彼らの言葉は真実でしょう。メタルには、砂漠の雄大、過酷、孤独、無情、そして絶景と神秘を伝えるだけの音の葉が備わっています。
RIVERWOOD の場合、彼らが愛する KAMELOT に似てシンフォニックなプログレッシブ・メタルを演じながら、劇中に伝統楽器やフォークミュージック、そして中近東のオリエンタルなメロディーを織り交ぜて砂漠の声を代弁していきます。主役を務める歌い手は素晴らしき Mahmoud Nader その人。彼の熱砂の歌声は、メタルのエクストリーム・サイドからシネマティックな情景描写まで、舞台を多様で情熱的な劇場へと導いていくのです。
「メタル・シーンは長い間、体制に悩まされてきたけど、今は正直言ってそうじゃない。今の唯一の課題は観客の文化で、観客の好みが何十年もかけてロック/メタルからモダン・ポップにシフトしてきたことが、僕にとっては常に奇妙で脅威に思えるんだ。誤解しないでほしいんだけど、例えば Spotify のトレンドを見てほしいんだ…まあでも結局のところ、誰もが自分の好きなものを愛する自由を持っているんだよ」
二枚組のアルバムとも言える75分の壮大な “Shadows and Flames” で語られるのは、新バビロニア興亡の物語。さながら、ネブカドネザル2世のバビロン捕囚のようにメインストリームな音楽世界に淘汰されつつあるハードロック/メタルの民ですが、RIVERWOOD はそんな音楽におけるバビロンの横暴も長くは続かないことを砂漠のメタルで熱く証明してくれます。
最も長い楽曲は12分半の “Blood and Wine” で、リスナーの時間、場所、ムードを刻々と変化させるアラジンの壺。荘厳壮大、絢爛豪華。シンフォニックで、アグレッシブで、エキゾチックで、シアトリカル。”The Shadow” というダークでミステリアスな小曲を挟み、10分超の “Sands of Time” は砂漠の中の異形、ピラミッドへとリスナーを惹き込んでいきます。ハーディー・ガーディーを前面に押し出した7分のロマン “Queen of the Dark” のプログレッシブでフォーキーな面持ちはアルバムの絶妙なアクセント。
“Shadows and Flames” に収録されている楽曲はそれぞれ長さが非常に独特で、1分をやっと超えるような非常に短い作品もあれば10分の作品も存在し、中間がありません。これは非常に挑戦的なやり方で、バンドが作曲能力に大きな自信を持ったエジプトの宝石であることを、ルールのない常識越えのアルバム全体でしっかりと証明していますね。
今回弊誌では、Mahmoud Nader にインタビューを行うことができました。「インスピレーションは中世のビデオゲームから得ている。バンド名の “Riverwood” は、Helgen のドラゴンの攻撃から逃れて、最初に行く村。Skyrim ファンなら共感してくれるはずだよ (笑)」どうぞ!!

RIVERWOOD “SHADOWS AND FLAMES” : 9.9/10

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