NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XANTHOCHROID : OF ERTHE AND AXEN ACT I & Ⅱ】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SAM MEADOR OF XANTHOCHROID !!

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More Extreme, Yet More Delicate. More Vast, Yet More Intimate. Xanthochroid’s “Of Erthe and Axen” Attempts To Further Broaden The “Cinematic Black Metal” Horizons !!

DISC REVIEW “OF ERTHE AND AXEN”

プログレッシブエクストリームのイノベーションを志望する、南カリフォルニアの野心的なカルテット XANTHOCHROID が至高なる2枚組の新作 “Of Erthe and Axen” をリリースしました!! “ロードオブザリング” や “ゼルダの伝説 時のオカリナ” にインスピレーションを得たというその壮麗かつ耽美なファンタジックワールドは、”シネマティックブラックメタル” の呼称に相応しいロマンとイマジネーションを運びます。
ブラックメタル、プログメタル、プログロック、シンフォニック、フォーク、クラシカル。XANTHOCHROID のカラフルで奥深いタペストリーは、OPETH, EMPEROR, ENSLAVED, JETHRO TULL, RENAISSANCE の豊潤なるミックスなどとも評されます。ただし、デビュー作から続く壮観なコンセプトストーリーをベースとした、大作映画や RPG のサウンドトラック的なアプローチは確かにバンドの確固たるアイデンティティーとなっているのです。
XANTHOCHROID が紡ぐ “Etymos” の物語は、王の血を引く Thanos と Sindir (後に Ereptor) 兄弟による闘争憚。”Of Erthe and Axen” では、”Incultus”, “Blessed He With Boils” 以前、二人の子供時代の出来事を、愛、嫉妬、魔法、戦争、そして欺瞞のエッセンスを交えつつ克明に描いているのです。
“Etymos” のエピック第一幕は、壮大なオーケストレーションと繊細でフォーキッシュな二つの小曲で幕を開けます。作品の全体像を暗示するような意を異にする二つのイントロダクションは、多彩な楽器の導入と新加入の女性シンガー Ali Meador の美麗なる歌声を披露し、共にバンドの拡がる可能性を伝えていますね。
不穏で不気味なディストーションサウンドが静寂を切り裂く “To Higher Climes Where Few Might Stand” はまさに XANTHOCHROID の真骨頂。EMPEROR や OPETH の面影を、クワイアやシンセサイザーで大仰にドラマティックに味付けしたシアトリカルな8分間は、Sam の邪悪なグロウルと伸びやかなクリーンを羅針盤に、ジギルとハイドの如く静と動を行き来します。6拍子のフォルクローレが、ホーンとストリングスを伴って鮮やかにメタリックな華を満開とする中盤の超展開は筆舌に尽くし難いほど見事です。
“To Souls Distant and Dreaming” で DREAM THEATER の遺伝子を垣間見せた後、Sam のパーカッシブギターは進化の証である “In Deep and Wooded Forests of My Youth” を導きます。マンドリンやアコーディオン、フルートを取り入れた JETHRO TULL をも想起させるフォーキーでロマンチックなデュエットは、朗々とした Ali と Sam の歌声でリスナーを月明かりが差し込む深き森、木々の騒めきへと誘うのです。
「”Act Ⅱ” は “Act I” に比べてメタルの要素が強調され、より長いアルバムになっているね。」 とSam が語るように、アルバムの第二幕はアートワークの変化も伴って、大円団に向けてその硬質と絢爛を増して行きます。
男声と女声のクワイアとピアノの流麗な響をイントロとしたあまりに豪壮でドラマティックな “Through Chains That Drag Us Downward” はその象徴でしょう。Sam の背徳的アジテイトや時折挿入されるブラストビートは、確かにバンドのルーツを示しますが、とは言えあまりに拡大された楽曲全体のデザインを鑑みれば、Sam が 「自分たちをブラックメタルと呼んでいるのはジョークのようなもの」 と語ることにも頷けます。
実際、Sam の歌唱が Hansi Kursch を思わせる “Of Aching Empty Pain” などではシンフォニック/シネマティックメタルのパイオニア BLIND GUARDIAN の領域、絢爛さにまで接近しているようにも思えます。
アルバムは、クラッシックなオペラの如く華麗で重厚な11分の大曲 “Toward Truth and Reconciliation” で濃密でダイナミックな作品をリトレイスするかのように幕を閉じました。
今回弊誌では、ボーカル、ギター、キーボードを担当する Sam Meador にインタビューを行うことが出来ました。今回も Jens Bogren がマスタリングを担当しています。全てを DIY で賄っているため知名度こそ低いものの、そのクオリティーは最上級。どうぞ!!

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XANTHOCHROID “OF ERTHE AND AXEN ACT I & Ⅱ” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GIZMODROME : GIZMODROME】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADRIAN BELEW OF GIZMODROME !!

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The Police, PFM, Level 42, And King Crimson Got Together, Making An Strange But Absolutely Fantastic Record As Gizmodrome !!

DISC REVIEW “GIZMODROME”

ロック四半世紀の時を刻む、四人の傑出したミュージシャンが集結したスーパーグループ GIZMODROME が唯一無二の色彩を放つデビュー作 “Gizmodrome” をリリースしました!!マエストロが紡ぐ多彩かつユニークな “パンクプログ” “プログレッシブポップ” の造形は、ある種定型化したシーンに贖いがたい魅力的な誘惑を放ちます。
THE POLICE の大黒柱 Stewart Copeland を中心として、鍵盤の魔術師 PFM の Vittorio Cosma、LEVEL 42 のスラップキング Mark King、そして KING CRIMSON のギターイノベーター Adrian Belew が参集。GIZMODROME はパンク、ポップ、ニューウェーブが花開いた80年代初頭の風をプログレッシブのテクニックに乗せて運ぶ素晴らしき “Gizmo” “仕掛け” の体現者だと言えるでしょう。
「レコーディングの鍵は素早さだったね。長々と時間をかけることなく、ただ楽しんで行ったんだ。」 と Adrian が語る通り、アルバムは音楽本来のワクワク感、楽しさ、多幸感に満ちています。
アルバムオープナー、”Zombies In The Mall” は GIZMODROME の “生態” を目の当たりに出来る楽曲かも知れませんね。THE POLICE が遺したポップパンクの遺産と、LEVEL 42 のジャズファンクが、プログレッシブなポルカの上でダンスを踊る奇跡。Stewart 自らがプレイしたというトロンボーン、Adrian の巧みなアコースティックギターも重要なアクセントになっていますね。
実際、バンドはポップパンク、ロック、ジャズファンク、プログレッシブという異なるジャンルから一名づつ選抜されたハイブリッドな “多音籍軍”の 顔を持ちます。そしてその4人の選ばれしヴァーチュオーソは究極に楽しみながら、ユーモラスなまでにエクレクティックな音楽のショーケースを披露しているのです。
“イタリア” というロケーションが、この自由で楽観的なムードに更なる追い風となった可能性もありますね。Stewart もレコーディングにおいて、話題の大半が音楽ではなく、パスタやピザについてだったと認めています。
勿論、GIZMODROME のフレキシビリティーが Frank Zappa に通じると感じるリスナーも多いでしょう。事実、レコードの大部分でリードボーカルを務めた Stewart のモノトーンな声質やイントネーションは、Zappa のそれと近いようにも思えます。
インタビューで Adrian が語る通り、Adrian & King のメロディックなコーラスが Stewart のボーカルを際立たせ、VAN HALEN におけるダイヤモンドデイヴの如く極上のストーリーテラーに仕立てあげている部分も、マルチに歌えるバンドならではの実に興味深いチャレンジですね。”Summer is Coming” の BEACH BOYS もしくは TOTO を想起させるコーラスワークは、まさに GIZMODROME の豊潤な可能性の一つだと言えるでしょう。
もしかしたら GIZMODROME は最も成功した音楽の “Back to the Future” なのかも知れません。「僕は二つの要素をミックスするのが好きだね。テクノロジーとオーガニックをね。」 と Adrian が語るように、確かに “Gizmodrome” には古き良き時代の大らかな空気と、現代的なサウンド、コンテンポラリーで多様な創造性のエッセンスが奇想天外に共存しています。
“American People” を文字ったユーモラスな “Amaka Pipa” はまさにその象徴でしょう。Stewart のトライバルなリズムは、Adrian の異質でしかし温もりのある “Foxtone” と溶け合いラップ調のボーカルを誘います。ジャズのビートやブルースの精神まで内包したユニークかつ多彩な一曲は、ルーズで発想豊かなジャムセッションのムードとモダンなデザインを共有するバンドのランドマークなのかも知れませんね。
それにしても Rolling Stone 誌 “100 Greatest Drummers of All Time” で10位にランクした Stewart のドラミングはやはり伊達ではありませんね。左利きにも関わらず右利きのセットでプレイする彼の稀有なスタイルは、スネア、リムショット、ハイハットのダイナミズムに特別な魔法をかけ、THE POLICE 時代から培ったレゲエを初めとする世界中のリズムを見事にロックと融合させています。”Gizmodrome” の楽曲の大半がワールドミュージックを隠し味としているのは、Stewart がメインコンポーザーであることと密接にリンクしているのです。
今回弊誌では Adrian Belew にインタビューを行うことが出来ました。”Stay Ready” は象徴的ですが、彼の風変わりでイタズラ心満載のリックがなければ作品の魅力は半減していたことでしょう。さらには KING CRIMSON, Robert Fripp に対する愛憎入りまじる複雑な感情を、これほど顕にしたインタビューは世界でも初めてかも知れません。来年4月には来日公演も決定しています。どうぞ!!

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GIZMODROME “GIZMODROME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SONS OF APOLLO : PSYCHOTIC SYMPHONY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DEREK SHERINIAN FROM SONS OF APOLLO !!

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Prog-Metal Super Group, Sons Of Apollo Brings A Lethal Combination Between True Rock N’ Roll Swagger And The Virtuosity With Amazing Debut Record “Psychotic Symphony” !!

DISC REVIEW “PSYCHOTIC SYMPHONY”

古今無双の勇士達が肝胆相照らすメタル/ロックシーンのドリームチーム SONS OF APOLLO が、威風堂々たるデビュー作 “Psychotic Symphony” をリリースしました!!夢劇場のロックサイドを司り、そして幽寂に退場した二人のソウルメイトを軸として紡がれる類まれなるシンフォニーは、芸術の神アポロンの遺伝子を稠密なまでに引き継いでいるのです。
“God of The Drums”, Mike Portnoy がプログメタルの天照帝 DREAM THEATER を半ば追われるような形で後にしたのは2010年のことでした。残念ながら自身の核とする大切な場所を離れざるを得なくなった Mike でしたが、しかし以降も前向きに幅広くその唯一無二なるクリエイティビティを発揮して行きます。
SONS OF APOLLO の種が撒かれたのは2012年。Instru-metal を追求するため結成した Portnoy, Sheehan, MacAlpine, Sherinian (PSMS) で、Mike は98年に同じく DREAM THEATER を離れていた Derek “ディストーション・キーボード” Sherinian と再び相見えることとなったのです。
元々、DREAM THEATER においてロックなアティテュードを最も体現していた “The Del Fuvio Brothers”。再度、意気投合した二人は Billy と Mike の THE WINERY DOGS が休止に向かうと新天地創造へと動き出したのです。
「君たちは今夜、歴史を目撃している。」 Yngwie Malmsteen や TALISMAN の活躍で知られる “Voice of Hard Rock”、Jeff Scott Soto は、バンドのファーストギグとなった David Z のトリビュートライブでまずそう高らかに宣言しました。そして確かに “Psychotic Symphony” は、彼らの “過去”を目撃し愛してきたファンにとって、意義深い新たな歴史の1ページに仕上がりました。
アルバムはオリエンタルなイントロが印象的なオープナー “God of The Sun” で早くも一つのクライマックスを迎えます。Jeff の雄々しき歌唱と Mike のシグニチャーフィルが映える11分のエピックにして三部構成の組曲。まさにファンがバンドに待ち望む全てを叶えた濃密なるプログメタル絵巻は、静と動、美麗と衝動、プログレッシブとメタルをすべからく飲み込み卓越した技術と表現力でリスナーの心を酔わせます。
とは言え、アルバムを聴き進めれば、SONS OF APOLLO の本質がプログメタルよりもルーツであるクラッシックなハードロックやプログロックに一層焦点を当てていることに気づくでしょう。
“Coming Home” は彼らのホームグラウンドへと回帰し、同時にフレッシュな息吹を吹き込んだバンドの象徴的楽曲です。RUSH を想起させるシーケンシャルかつメロディックなテーマと、VAN HALEN のエナジーがナチュラルに同居するコンパクトなアンセムは、”プログレッシブハードロック” とでも呼ぶに相応しい煌めきと胎動を誇示します。
「確かにオリジナルコンセプトはプログメタルだったんだ。だけど作曲を始めると、完全に異なる方向へと進んでいったね。僕たちのクラッシックロックやハードロックからの影響が前面に出て来て、それに従うことにしたんだよ。新たなサウンドを創造したと思う。」
そう Derek が語るように、SONS OF APOLLO は “Psychotic Symphony” でプログメタルを切り札、エッセンスの一つとして、よりマスリスナーへとアピールする普遍的でオーガニックな “ロック” を追い求めたと言えるでしょう。硬質と有機性の共存。それは、DREAM THEATER が “Falling Into Infinity” で一度進みかけた”If”の道だったのかも知れませんね。
ただ、”Signs of The Time” はこの5人でなければ生まれなかった奇跡にも思えます。マエストロ Billy Sheehan の踊るように躍動するベースラインを骨子として幕を開けるエネルギッシュでハードな調べは、しかし中盤でガラリとその表情を変化させるのです。
アトモスフェリックな7拍子へと場面が転換し Ron “Bumblefoot” Thal のリードプレイが切れ込むと、多くのリスナーは UK の “In the Dead of Night” を思い浮かべることでしょう。ここには確かにダイナミックな展開美とジャンルの融合が誘う震駭、そして彼らの理想が深々と織り込まれているのです。
実際、元 GN’R は伊達ではありません。Allan Holdsworth さえ凌ぐのではと思わせる圧倒的な7拍子のシュレッドは彼のベストワークと言えるほどに強烈な存在感と個性を放っています。
加えてBumblefoot の千変万化なギターワークは各楽曲のルーツを指し示す大きなヒントともなっており、例えば “Divine Addiction” で Derek と共にまるで DEEP PURPLE の一員が如く振る舞う瞬間などは、実に興味深くエキサイティングだと言えますね。
勿論、アルバムには Derek と Mike が DREAM THEATER で共に残した “A Change of Seasons”, “Falling Into Infinity” の二作が蘇る瞬間も存在します。”Labyrinth” のヴァースや連続音を執拗に鳴らす Derek のリフワーク、”Opus Maximus” でスケールの上下動をフルピッキングで繰り返す場面などではニヤリとほくそ笑むファンも多いでしょう。
Billy の存在意義を改めて確認出来る11分の “Opus Maximus” で、あたかも自らの理想、新たなチャレンジを再びプログレッシブな啓示で包み込むかの如く幕を閉じる “Psychotic Symphony”。今回弊誌では、Derek Sherinian にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちは、個々にこれまでやって来たバンドやプロジェクトよりビッグになることを目標にしているんだ。」 つわものどもが”夢”の先。どうぞ!!

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SONS OF APOLLO “PSYCHOTIC SYMPHONY” : 9.6/10

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MASTERPIECE REVIEW + INTERVIEW 【BETWEEN THE BURIED AND ME : COLORS】10 YEARS ANNIVERSARY !!


METAL SUCKS PRESENTS: INTERVIEW WITH DAN BRIGGS OF BETWEEN THE BURIED AND ME !!

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Between The Buried And Me Are Currently Out On Tour Celebrating The Tenth Anniversary Of Their Landmark Album “Colors” By Playing It From Start To Finish Every Night. Bassist Dan Briggs Talks About A Retrospective Essay About How The Band Wrote Was Has Come To Be Considered As A Landmark Modern Progressive Metal Record !!

DISC REVIEW “COLORS”

“We are Between The Buried And Me, and this is Colors.”
“Colors Live” のオープナー “Foam Born (A) The Backtrack” が厳かに幕を開け、ピアノのイントロが一旦静まると Tommy Rogers はそう呟きます。
不朽の名作 “Colors” から10年。Tommy, Paul, Dustie, Dan, Blake の5人で紡ぐ BETWEEN THE BURIED AND ME は確かにこの場所から始まり、その豊かな色彩のスペクトルは現在でも決して色褪せることを知りません。
振り返ってみれば、2003年にリリースした “The Silent Circus” における “Mordecai” はバンドのターニングポイントだったのかも知れませんね。トレードマークであった直感的な衝動のカウンターとして崇高なメロディーを発見した彼らは、”Alaska” でエクスペリメンタルなエクストリーム領域の下地を示した後、現在の5人 “ファンタスティック・ファイブ” を揃えて素晴らしき “Colors” へとたどり着くことになります。そして、この64分の万華鏡が放つプリズムは、バンド自身のみならず、現在のモダンメタル/プログレッシブシーンにとってあまりに鮮烈かつ至高のマイルストーンとなりました。
“モダン=多様性” と定義するならば、”Colors” ほど “モダン” なレコードは未だかつて存在しないでしょう。TOOL の “Lateralus”、THE MARS VOLTA の “Frances the Mute”、PROTEST THE HERO の “Kezia”、SikTh の “Death of a Dead Day”、COHEED AND CAMBRIA の “Good Apollo, I’m Burning Star IV, Volume One: From Fear Through the Eyes of Madness”、MESHUGGAH の “Catch Thirtythree”, ISIS の “Panopticon”、THE DILLINGER ESCAPE PLAN の “Miss Machine”、GOJIRA の “From Mars to Sirius”。ミレニアムを迎え、モダンメタル/プログレッシブに多大な影響を与えたエクレクティックな作品が続々と登場する中で、変革の決定打となったアルバムこそ “Colors” だったのかも知れませんね。
実際、メタル、ハードコア、メタルコアをルーツとしながらも、”Colors” には数え切れないほど豊かな色彩が織り込まれています。ジャズ、クラッシック、プログレッシブ、ワールドミュージック、ブルース、ポルカ、ブルーグラス、デスメタル、ブラックメタル…精密かつ大胆に配置されたインフルエンスの数々は、彼らのルーツとナチュラルに混ざり合い、時にエクストリームに、時にテクニカルに、時にアトモスフェリックに、時にメロディックにリスナーの元へとこの偉大なるエピックを届けるのです。
この作品が後続にとってインフルエンタルであることは、何よりあの DREAM THEATER のマスターマインド John Petrucci でさえ、彼らのセルフタイトルのアルバムが PERIPHERY, ANIMALS AS LEADERS と並んで BTBAM から「影響を受け、インスピレーションとアルバムを形作る助けになった。」 と語っていることからも明らかです。
ギタリスト Paul Waggoner は、「重要なのは、”Colors” の究極なまでにエクレクティックな音楽の数々は、誰か1人のメンバーが思いついた訳ではなく、全員が貢献して達成された点だよ。」 と語っています。確かに Dan もインタビューで、「僕は彼らに OINGO BOINGO とか GENTLE GIANT のようなバンドを紹介したし、彼らは EMPEROR や ULVER を教えてくれたんだ。」 と語ってくれました。ファンタスティック・ファイブがジグソーパズルのピースのごとく完璧に、奇跡的にフィットし補完し合い起こった化学反応。それが “Colors” の本質だと言えるのかも知れませんね。
よりミクロな観点で見れば、ギターリフのフレキシビリティを飛躍的に高めたこともこのレコードの功績だと言えるでしょう。メタルコアの興隆により、リードプレイのようにテクニカルなリフワークは徐々に浸透して行きましたが、それでもやはり “リフ” と “リード” の境界線は確実に存在したはずです。
あくまでも “リフ” はボーカルの伴奏として繰り返されるもの。”リード” は自由な自己表現の舞台。そんなトラディショナルな考え方を根底から覆したのが “Colors” であり、PROTEST THE HERO の “Kezia” であり、SikTh の “Death of a Dead Day” だったのではないでしょうか?
“Colors” のリフワークを聴けば、低音弦ではパターンやリズムを細かく変えながら、高音弦では自由自在にフレットを駆け巡る、フレキシブルかつ創造性豊かな “バッキング” が伴奏として見事に成立していることが分かります。そして、AAL 革命、Djent 前夜に繰り広げられたあまりに重要なこのコペルニクス的転回は、言うまでもなく様々なメタルジャンルにおいて今では定石として根付いているのです。
Dan は “Colors” を収録曲 “White Walls” になぞらえ “空間や考え方に限定されず、僕らの周りにある壁を全て壊してしまうように色彩たちがが鮮やかさを増していく” アルバムだと語ります。バンドは当時プログやメタルの既成概念を破壊した後、夜空に美しき虹をかけました。そして10年を経た今、”Colors” 10周年を祝う完全再現ツアーを終えた後、バンドは再び “未来” へと向かい新たな色彩のマジックを掲げてくれるでしょう。
今回弊誌では、US Metal Sucks, Gear Gods 誌と連携してベーシスト Dan Briggs の “Colors” 製作秘話を完全掲載することが出来ました。NOVA COLLECTIVE に続き今年2度目の登場です。「僕たちはいかにして “Colors” を制作したのか」どうぞ!!

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BETWEEN THE BURIED AND ME “COLORS” : ∞/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GENTLE GIANT : THREE PIECE SUITE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DEREK SHULMAN OF GENTLE GIANT !!

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With A Little Help Of Steven Wilson, Sleeping Prog Giant From UK, Gentle Giant Show Their Brilliance And Originality With Newly Remixed Album “Three Piece Suite” !!

DISC REVIEW “THREE PIECE SUITE”

英国にて睡臥する穏やかなる巨人、プログレッシブレジェンド GENTLE GIANT が久々の音信となる作品 “Three Piece Suite” をリリースしました!!バンドの初期三作から楽曲を集積し、名匠 Steven Wilson がリミックスを施したアルバムは、70年代の稀世なる栄光を鮮明に現代へと蘇らせています。
GENTLE GIANT は1970年に Shulman 三兄弟が中心となり結成したプログレッシブクインテット。技巧と叙情、エクレクティックとポップを巧緻に集約し、81年に解散するまで独自の価値観でプログロックの可能性を顕示し続けた偉大なバンドです。
彼らの音楽を語る時、適切な言葉を探すのは容易ではありません。どこか飄々としていて掴み所がなく、時にニヒルに、時にユーモラスに、時にアヴァンギャルドに刻々と表情を移すその音流は、莫大な情報量と独特のタイム感も相俟って、霧闇を掻き分けるが如き浮遊感と心細さをリスナーに与えて来たのです。
勿論、アーカイブには YES や KING CRIMSON 等と共に必ず明記されるバンドですが、彼らほどの人気、知名度を得ていない理由は多分にその五里霧中、即効性の欠如が理由だと言えるでしょう。
しかし、逆に言えば GENTLE GIANT の魅力はその遅効性、抽象性にあるのかも知れませんね。アルバムを聴く度に必ず新たな発見、感動を得ることが出来るアーティストはロックの歴史を眺めても決して多くはないでしょう。R&B をベースにポップス、ジャズ、クラッシック、サウンドトラック、そして現代音楽まで咀嚼しロックのフィールドへと昇華した多彩な楽曲の数々は、あまりに大胆かつ緻密です。
さらに、「間違いなく僕たちは、ムーブメントや思想を追ったり、スターダムを意識したりはしていなかったね。」 と語る通り、バンドの唯我独尊で超俗としたムードも彼らのクリエイティビティーを後押ししました。そして事実、そのとめどない知識の井戸、アイデアの泉から無限に湧き出るユニークなアプローチの数々は、時を経た現代でも様々な後継に影響を与え続けているのです。
「いつも GENTLE GIANT のサウンドとオリジナルのフィーリングを保ちながら、サウンドをより “良く” させてくれないかと頼んで来たんだ。」 と Derek が語るように、稀代のプログレマニア Steven Wilson もその一人。そして Steven はその野望を見事にやり遂げました。
“Three Piece Suite” はバンドの記念すべきデビューアルバム “Gentle Giant” からの3曲で幕を開けます。ジャズのビートやフュージョン的テーマなど様々な仕掛けを配しつつ、R&B をベースとしたドライブする “Giant” は、バンドの楽曲で最も典型的な “プログ” らしい楽曲かもしれませんね。サイケデリックなエナジーと中盤で見せつける叙情性のコントラストは、確かにここが出発点であることを主張します。
同時に、難解とポップを融合させた伏魔殿 “Giant” を聴けば、Derek の人生を変えたアルバムを見るまでもなく、初期の彼らが Frank Zappa から強い影響を受けていたことが伝わりますね。一方で Zappa 自身も GENTLE GIANT を非常に高く評価しており、共鳴し合う素晴らしき孤高の脈流が確かに存在したことを伝えています。
続く “Nothing At All” はバンドの素性をより鮮明にする9分のエピック。LED ZEPPELIN の名曲 “Stairway To Heaven” に影響を与えたと確信させるほどに美しい、(余談ながら Derek が影響を受けたアーティストに挙げてる SPIRIT は “天国への階段” の元ネタと噂される “Taurus” の作者なのですから興味深い)フォーキーでアコースティックな調べはニヒルでサバシーなギターリフを導き、自然にしかし唐突に3分半のアヴァンギャルドなドラムソロへと展開して行くのです。ここにはすでに様式美は存在せず、この頃からバンドはポップとロックのみならず、前衛的で現代音楽的な感覚を等しく身に纏っていたことが分かりますね。
71年にリリースされた “Acquiring The Taste” からは2曲が収録されています。”Pantagruel’s Nativity” はバンドの拡大する野心を反映した、アルバムの実験的作風を象徴する楽曲かもしれませんね。ムーグシンセやメロトロンのレトロな味わい、映画のようなオーケストレーション、トランペットを組み込んだバッキングの妙。楽器の増加により全てが新鮮に噛み合った楽曲は、日本の童謡 “通りゃんせ” を思わせる懐かしき旋律とハーモニーを携えてリスナーに濃厚なるサウンドスケープを届けます。
さらに “The House, The Street, The Room” では、ヴィブラフォンやチェロまでこなすマルチ奏者 Kerry Minnear を中心に32もの楽器を使用しメズマライズな狂気を演出しているのですから恐れ入ります。
72年の “Three Friends” からは4曲。ドラマーを Malcolm Mortimore にスイッチし、T. REX 等の仕事で知られる Tony Visconti のプロダクションからバンドのプロデュースに移行した作品です。
“Schooldays” のセピア色なノスタルジアが証明するように、よりセンチメンタルでストーリーテリングにフォーカスした作品は、三人の同級生を軸として物語を紡ぐ初のコンセプトアルバム。濃密にレイヤーされたオーケストレーションと感傷的なコーラスワークが実に印象的で、P.F.M を頂点とするイタリアのシンフォニックな後続たちに多大な影響を与えた事実も頷けますね。
幻想と技巧、静寂と騒然、耽美と悪夢を等しくコントラストさせた “Peel the Paint” のイデアルは、サックスの魔術と相俟って、KING CRIMSON の理想ともシンクロしながら穏やかな人間の狂気を体現し、名作と名高い “Octopus” へと繋がって行くのです。
Steven Wilson の手によりさらに輝きを増した珠玉の名曲たち。”Peel The Paint” を聴けば、フロントに Kerry のヘヴィーハモンド、リアに Gary の突き刺すようなブルースリックが配されて、5.1chサラウンド特有の分離と広がりが実に効果的に活用されていることが伝わります。それにしても今回初披露となった “Gentle Giant” のアウトテイク “Freedom’s Child” の美しさには言葉を失いますね。
今回弊誌では、リードボーカルにして Kerry と同様マルチ奏者 Derek Shulman にインタビューを行うことが出来ました!実はバンド解散後には A&R としてポリグラムで BON JOVI や CINDERELLA を発掘。さらに Atco, Roadrunner では社長として PANTERA や DREAM THEATER と契約し、2PLUS Music & Entertainment では我らが LOUDNESS とも手を組んだ重要すぎる人物です。とは言え、正統な評価が遅れリユニオンが強く望まれるバンドでもあります。「僕たちは今でも音楽を作っているよ。たとえそれが僕たちの耳にしか届かないとしてもね。」 どうぞ!!

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GENTLE GIANT “THREE PIECE SUITE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHELSEA WOLFE : HISS SPUN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHELSEA WOLFE !!

Chelsea Wolfe by Bill Crisafi

PHOTO BY BILL CRISAFI

Certainly, Folk/Rock/Experimental Artist Chelsea Wolfe Took A Step Toward More Dark Side, Heavy Realm, Sludge World With Her Outstanding New Record “Hiss Spun” !!

DISC REVIEW “HISS SPUN”

ダークでスピリチュアルな崇高美を追求する、ノースカリフォルニアの堕天使 Chelsea Wolfe が、そのゴシカルなイメージをスラッジメタルの世界へと解き放つ最新作 “Hiss Spun” をリリースしました!!審美のダークサイドを司るエクストリームアートの女王は、至上の環境、チームを得てより鮮明にその印象を増しています。
近年、Chelsea と彼女の右腕 Ben Chisholm の冒険は、出自であるゴシックフォークの枠を容易く超越し、ドゥームの翳りを宿すインダストリアル、エレクトロニカ、ノイズ、ドローンにまでアプローチの幅を拡げて来ました。陰鬱にして甘美、アーティスティックで創造性豊かなそのジャンルの邂逅は、Chelsea の幽美なビジュアルやスピリチュアルな一面とも共鳴しながら、この混沌とした世界に安寧を喚起するメディテーションの役割を果たして来たのかも知れませんね。
“Spun” の凄艶なディストーションサウンドでスラッジーに幕を開ける “Hiss Spun” は、リスナーの思念、瞑想にある種の直感性を差し伸べる、よりヘヴィーで正直なアルバムです。
「これは、ヘヴィーなレコードでロックソングを求めていたの。」 実際、Chelsea はそう語っています。故にRED HOST 時代のバンドメイト、ドラマー Jess Gowrie とのリユニオンは必然だったとも。
確かにこのレコードの陣容は彼女の言葉を裏付けます。リードギタリストに QUEENS OF THE STONE AGE の Troy Van Leeuwen を起用し、ex-ISIS の Aaron Turner をゲストボーカルとして招聘。さらに CONVERGE の Kurt Ballou をプロデューサーに指名した采配の妙は間違いなくこのレコードの方向性を諮詢していますね。
セカンドトラック “16 Phyche” はアルバムを象徴する楽曲かも知れません。蝶の羽を得て人間から変異を遂げた美しき魂の女神、そして火星と木星の間を公転する小惑星の名を共有するこのコズミックで漆黒のヘヴィーバラードは、自由を奪われ制限される人生をテーマとしています。
「8年間、故郷ノースカリフォルニアを離れてロサンゼルスにいたんだけど、LAは私と共鳴することは一度もなかったの。私の心はいつもノースカリフォルニアにあったのよ。大きな木々、山や川の側にね。」 Chelsea はそう語ります。
遂に家族と自然、スピリチュアルなムードに溢れた故郷へと帰還し、心の平穏と安寧を取り戻した彼女は、閉塞的で捌け口のない当時の自分を反映させた魂の情歌へと辿り着いたのでしょう。
実際、”Twin Fawn” にも言えますが、彼女も認める通りこの楽曲における Chelsea の歌唱はよりパーソナルで内面全てを曝け出すような壮絶さを宿します。フィードバックと不穏なムードが支配する重密なサウンドとも絶妙にシンクロし、彼女のエモーションは現代社会の閉所恐怖症とも形容可能なイメージをも楽曲に映し出しているのです。
“Hiss” とはホワイトノイズ、つまり雨音や川のせせらぎ、鳥の囀りといった自然と人間を繋ぐ雑音を意味する言葉だと Chelsea は教えてくれました。トレモロリフとポストメタルの重厚で奏でられる “Vex” で Aaron Turner の剛胆な咆哮は大地の感覚、アーシーなホワイトノイズだとも。
Aaron の声が大地の咆哮なら、浮遊感を伴う Chelsea の声はさながら虚空のスキャットでしょうか。楽曲の最後に挿入された森のざわめきに耳を澄ませば、彼女のメッセージが伝わるはずです。ヘヴィーとエセリアルのコントラストで表現される自然に対する強い畏怖は、現代社会が忘れつつある、しかし忘れてはならない貴き精神なのかも知れませんね。
確かにヘヴィーでスラッジーなアルバムですが、同時に “Twin Fawn”, “Two Spirit” のような自身のアイデンティティー、ゴシック/フォークにフォーカスした楽曲や、近年養って来たインダストリアル/ノイズ要素を分断に盛り込むことで、作品は Chelsea の多面的な才能を映す鏡、ある意味集大成的な意味合いも保持しています。そして勿論、女性としての一面も。
アルバムは、魔女の如き甲高い歌声が印象的な “Scrape” で幕を閉じます。様々な怒りやヘヴィーな祈りが込められたアルバムには、当然 Chelsea の一人の女性としての怒りも封じられています。あの禍々しき魔女裁判が行われたセイラムでレコーディングが行われたことも、偶然ではないのかも知れませんね。
今回弊誌では、Chelsea Wolfe にインタビューを行うことが出来ました。彼女がゲスト参加を果たしている MYRKUR の最新作も同様に素晴らしい内容。併せてチェックしてみてくださいね。どうぞ!!

4PAN1T

CHELSEA WOLFE “HISS SPUN” : 9.8/10

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