タグ別アーカイブ: Tech death

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CRYPTOPSY : AN INSATIABLE VIOLENCE】JAPAN TOUR 25′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATT MCGACHY OF CRYPTOPSY !!

“What AI Can’t Replicate Is “Feel”. Flo Has a Groove, a Pulse, a Sense Of Tension And Release That’s Completely Human. He’s Not Just Playing Fast ― He’s “Telling a story” Through His Drumming.”

DISC REVIEW “AN INSATIABLE VIOLENCE”

「AIが再現できないのは、”フィール” だ。Flo にはグルーヴがあり、パルスがあり、緊張感と解放感があり、それは完全に人間的なもの。彼はただ速く演奏しているのではなく、ドラミングを通してストーリーを語っているんだよ。いつプッシュし、いつ抑えるのか、ライブの瞬間にどう乗って観客のエネルギーを高めるのか。 あとは直感だね。それをプログラムすることはできない。魂を偽ることはできないからね。それこそが Flo を伝説的な存在にしている理由であり、どんなアルゴリズムも彼に取って代わることができない理由なんだ」
SNS に支配された世界。AI が生み出すヒット・ソング。ほんの10年前にはSFでしかなかったテクノロジーのシンギュラリティ、アートにおけるディストピアが目前に迫っています。人が作曲し、演奏する。そんな当たり前だった音楽の根源が揺らぎ始めた世界においても、テクニカル・デスメタルの頭領 CRYPTOPSY が揺らぐことはありません。なぜなら、その心臓である Flo Mounier のドラム、その魂とフィール、そして人間としての “ストーリー” は決してプログラムすることは出来ないから。
「AIは敵ではないよ…しかし、注意と責任を持って扱うべき強力なツールには違いないね。確かに、AIは技術的には CRYPTOPSY の音楽のスピードや複雑さを再現することはできる。だけどね…人間の意図、欠点、魂、音楽の背後にある “ストーリー” を再現することは “決して” できないんだよ。メタルが進むべき道はまさにそこなんだよ。つまり、人間の経験なんだ」
CRYPTOPSY が29年前に “None So Vile” で大ブレイクを果たした時、世界は Flo のドラミングを “人智を超えたスピード、テクニック” と大絶賛しました。しかし今や、AI はスピードやテクニックだけなら悠々とその基準を凌駕することができるでしょう。では、人間はAIに敵わないのでしょうか?否。AIが0.01秒で制作した楽曲には “背景” がありません。Flo Mounier という達人が50年の人生で培ってきた “ストーリー”。癖や失敗、進化の過程、そして何より魂と情熱の炎は、AI がいくら進化しても決して再現することはできません。そして、シンギュラリティを目前に控え、ヘヴィ・メタルが目指すべき場所もまた、その何かを伝える、物語る “ストーリー” と情熱の煌めきに違いありません。
「エクストリーム・メタルは “解放” を提供する。こうした音楽は人々に、彼らの痛み、怒り、混乱を洗い流す場所を与え、それを力強いものに変える手助けをする。そしてこうした音楽はコミュニティを生み出す。メタルは、”暗闇の中にいても君は孤独ではない” と言ってくれるんだ。これほどまでに分断された世界で、メタルはあらゆる文化、あらゆる背景を持つ人々をひとつにする。混沌の中にカタルシスがある。残虐さの中に美がある。 だからこそメタルは重要なんだ。だからこそメタルは、時に文字通り、人々が “生き残る” ことを助けるんだよ」
そう、ヘヴィ・メタルはこの激しく分断された世界においても、孤独と痛みを洗い流し、様々な文化、背景を持つ人たちをひとつにつなげる “ストーリー” を語ることができます。CRYPTOPSY の最新作 “An Insatiable Violence” で彼らが扱ったのは SNS の狂気。私たちは、誰かの悪意あるノイズ、嘘、噂話、そしてネガティブなポストをスクロールして悦に浸る奇妙な SNS 中毒に犯されています。しかし、そうした負のドーパミンから活力を得られるはずもなく、結局私たちは大きな時間を割いて、自らを虐げ続けていると今回のインタビューイ Matt McGacy は語ります。
だからこそ、”痛み” や “怒り”、”孤独” を解放するヘヴィ・メタルは、今の世に必要なのです。教養にあふれ、それが悲劇であれ、美談であれ、正直にストーリーを語り、世界をつなぐヘヴィ・メタルが貴重なのです。
「Flo は技術に敬意を払い、真剣に取り組んでいる。 しかしそれ以上に、彼は自分のやっていることが大好きなんだよ。成長したい、学びたい、挑戦したいというハングリー精神があれば、年齢は関係ない。むしろ、年齢は追い風になる。Flo が今も進化し続けているのは、彼が決して満足しなかったからだ。彼は常に向上心を持ち続け、それこそが彼を止められない、アンストッパブルな存在にしているのだ」
その正直さは結局、メタルが好き、楽器が好きという気持ち、情熱から生まれています。エクストリームなメタル・ドラムの教科書を制定した Flo Mounier でさえ、”A Insatiable Violence” においてその技巧と直感に磨きをかけています。もっといえば、CRYPTOPSY というバンド自体が、その伝説を基盤としつつ、”アクセシブル” という新たな領域へと挑んでいます。
悪辣でありながらフィーリングに満ちたフックと即座に耳に残るメロディが、熟練と技術のフィルターを通過して狂気と残忍のデスメタルに染み渡ります。そう、彼らは王座に胡座をかくことなく、遺産を尊重しつつも超越、濃密で毒霧のようななサウンドスケープを解き放って、メタルにおける情熱の物語を見事に語って見せたのです。血に飢えた、慌ただしい作品で容赦なく、不安を煽りながら。
今回弊誌では、フロントマン Matt McGachy にインタビューを行うことができました。「ポストロック・バンドの MONO が大好きなんだよ。彼らの音楽は信じられないほど感動的で、アトモスフィアがあり、感情的だ。歌詞を書いているときや、ショーの後にリラックスしているときに、よく MONO を聴くんだ。美しく、力強い音楽だ」バンドはニ度目の登場。  Flo には VLTIMAS でもインタビューを行っています。どうぞ!!

CRYPTOPSY “AN INSATIABLE VIOLENCE” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CRYPTOPSY : AN INSATIABLE VIOLENCE】JAPAN TOUR 25′

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【QUADVIUM : TETRADOM】 STEVE DI GIORGIO SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEVE DI GIORGIO OF QUADVIUM & TESTAMENT !!

“You Can Make a Fretless Sound Like Fretted If You Want, But You Can Never Make a Fretted Sound Like a Fretless…The Fretless Bass Is Just So Much More Expressive And Has a Greater Distance From The Guitar.”

DISC REVIEW “Tetradōm”

「異なるサウンドを作るために実験的にエクストリーム・サウンドにフレットレスを持ち込んだんだ。もし望むなら、フレットレスをフレット付きのように鳴らすことはできるけど、フレット付きをフレットレスのように鳴らすことは決してできない……フレットレス・ベースの方が表現力が豊かで、ギターとの距離もとても近いんだ」
メタル世界で “フレットレス”、つまりヴァイオリンのようにフレットのない楽器は今や珍しいものではありません。ベースはもとより、Tom Fountainhead のようにギターにまでその波は広がっています。フレットを取り払った異次元的で滑らかな音色は、どんな楽曲にもえもいわれぬ独特な風味を加え、メタルの幻想と宇宙を深化させてくれるのです。
「DEATH は僕にとってすべてを意味する。Chuckは僕にミュージシャンとして成長するチャンスを与えてくれたし、何より他の人たちが注目できるよう僕をメタルの地図に載せてくれたんだからね。もちろん、”Individuals” の2年前には、僕にとってとても重要なアルバムに参加していたんだけどね… “Human” だよ。CYNIC の才能ある連中と一緒に、あんなに若くしてデスメタルの景色を変えたんだからね。あの作品で新しい方向への扉が開かれ、まったく新しいジャンルが生まれたんだ」
Steve Di Giorgio はそんなフレットレスの魔法をメタルに持ち込んだパイオニアのひとり。今は亡き Chuck Schuldiner が作り上げた DEATH の “Human” は、硬質なメタル世界に “浮遊感” という宇宙を持ち込みました。その新たな景色を描くために Chuck が必要としたのが、ジャズ/フュージョンに精通した CYNIC の面々と Steve のフレットレス・ベースだったのです。
そう、いつだって “壁” を壊すのは “奇抜” にも思える挑戦的なアイデア。以来、エポック・メイキングな “Human” は、テクニカル/プログレッシブ・デスメタルの金字塔となり、フレットレスはメタルの異世界を描く貴重な筆のひとつとなっていったのです。
「僕たちが若く、影響を受けながら成長していた頃、ベースは曲にとって他の何よりも重要だった。だけど、残念ながら90年代にはインスピレーションに溢れたベース演奏が乏しくなり、それは新世紀に入っても続いた。しかし、ここ10~15年の間に、非常に優れた、創造的なスタイルを持つ新しい世代のベーシストが現れ、メタルの中にベースの重要性を取り戻しつつあると思う。ベースが影から出てくると同時に、バンドをサポートし続けることが一般的になってきているんだよ」
始まりの場所 SADUS から、Steve が家と呼ぶ TESTAMENT、ARTENSION や SOEN、果ては MEGADETH まで果てないベースの旅を続ける Steve。そんな彼の挑戦と求道の中でも、QUADVIUM ほど “奇抜な” 試みは初めてでしょう。そう、QUADVIUM にはフレットレス・ベースの達人が Steve 以外にもうひとり、存在するのです。Jeroen Paul Thesseling。OBSCURA や PESTILENCE で名を成したオランダの奇才が加わることで、QUADVIUM はまさに前代未聞の “異質” な物体となりました。
“多弦フレットレス・ベースをさらに進化させたら?” をコンセプトに掲げる QUADVIUM。アルバム “Tetradōm” は、DEATH, CYNIC, ATHEIST, PESTILENCE といった90年代のテクニカル・デスメタルと、現代的なフュージョン・プログ・メタルを基盤とし、楽器の攻撃性と滑らかでジャジーなコード進行、そしてフレットレスの浮遊感、宇宙的景観を巧みに融合させながら、特徴的なダブルベースのサウンドを際立たせていきます。
次から次へとアイデアが飛び交うメタルの迷宮。アストラルな静寂の海、幻想的なハーモニーを切り裂く技巧と激情のインテンション。ふたりのベースの達人は、どちらが主役をはるでもなく、まさに Steve が語る表に出ながらサポートするというこの楽器の理想型を見せつけていきます。
ベースの進化はメタルの進化。「Chuck はよりオープンでメロディアスなギター・リフ・スタイル、”Human” や “Individual” のより創造的なやり方に戻るために僕のベースが必要だと感じていたんだ。でも、僕たちが2作目の CONTROL DENIED の計画を立てている最中に、彼の健康状態が悪化し、完成させることができなくなってしまったんだ。とても、悲しかったよ…それは、その音楽が彼の最も冒険的な楽曲であったからというだけでなく、いや、それ以上に僕たちが出会った1986年、アルバム前のデモの時代からずっと良い友人であったからなんだ。僕はひとりの親友を失い、世界はユニークな先見の明を失った」 TESTAMENT の新作も控えています。Steve Di Giorgio です。どうぞ!!

QUADVIUM “TETRADOM” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【QUADVIUM : TETRADOM】 STEVE DI GIORGIO SPECIAL !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HIDEOUS DIVINITY : UNEXTINCT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ENRICO SCHETTINO OF HIDEOUS DIVINITY !!

“Metal Sex Workers Degrading Metal” Makes No Sense At All, Especially Because The Metal Community Always Claims To Be The Most Open-Minded And Inclusive Of All Music Communities.”

DISC REVIEW “UNEXTINCT”

「僕らのマネージャーはずいぶん前から、日本がいかに重要か、そしてSNSやTwitter/X を正しく使って日本のファンと接触する方法を理解していた。時間と労力がかかることだが、最終的には報われる。ファンと個人的な対話をすることができれば(Tito はその達人だ)、アーティストはファンにとってより大きい存在になるだろう。日本で僕たちにアプローチしてくるファンは、言葉の壁があるにもかかわらず、僕たちを “より身近な存在” だと感じていることに気づいた。とても誇らしく、謙虚な気持ちになったよ」
世界は今や、SNSがすべての中心にあります。それは音楽の世界も同じ。知名度を高め、人気を得るために SNS の効果的な運用は不可欠でしょう。HIDEOUS DIVINITY と彼らが所属するイタリアのレーベル Death To All は、そうした状況を深く理解しています。
彼らは特に、日本のマーケット、その重要性を認識していて、SNS を日本語でも運用。こまめにチェックとエゴサを重ねて、言及のあったアカウントにいいねやリプライを送ることも欠かしません。それはたしかに、時間と労力を消費する裏の仕事ですが、資金をかけることなくマーケティングが可能な金の卵でもあるでしょう。遠く離れたファンとつながれる、幸せな時間でもあるはずです。そうして実際、HIDEOUS DIVINITY 初の日本ツアーは大盛況のうちに幕を閉じたのです。
「正直、あの時は彼女の職業については知らなかったんだ!”メタルのセックス・ワーカーがメタルの品位を落とす” というのは、まったくもって筋が通っていない。特にメタルのコミュニティは、あらゆる音楽コミュニティの中で最もオープン・マインドで包容力があると僕は常に主張しているのだから。一部の例外を除いて、メタル世界に差別的なエピソードは見当たらない。 もちろん、世界は愚か者でいっぱいだ。だからメタルを聴くバカもたまにはいるだろうが、それについて我々ができることはほとんどないんだよな」
一方で、SNS には暗い側面も存在します。誹謗中傷や差別の助長。HIDEOUS DIVINITY の日本公演にゲストとして招待されていたあるセックス・ワーカーのポストについて、”セックス・ワーカーがメタルに言及すると、メタルの品位が落ちる” と発言するアカウントが現れました。
さて、モダン・メタルの “品位” “品格” とは何でしょうか?個人的に、それは Enrico のいうように、包容力、寛容さ、そして教養だと感じています。人種や文化、性別や職業に貴賤がないことは、現代を生きる人々にとってまさに不文律といえます。その不文律こそ、人類が、そしてメタル世界が長い年月をかけて培ってきた知性であり、教養であるはずです。そこに、”区別” と称して差別や抑圧を持ち込むことこそ、前時代的であり、”メタルを聴くバカ” に違いありません。
せっかく、我々はどんなジャンルよりも多様で幅広いテーマを扱う、”教養” を養えるヘヴィ・メタルの世界にいるのです。その “教養” を粗末にするような SNS の使い方は避けるべきでしょう。
「僕たちの音楽が歓迎され、高く評価されたのを見ると、日本のファンを増やすことはできると思う。熱狂的で情熱的なデスメタルのファンに沢山会ったけど、彼らの多くは、UNBIRTH や PUTRIDITY といったイタリアの他のバンドのファンだった。僕たちはただブルータルなデスメタル・バンドではなく、他の方向に向かっていると思うから不思議なんだけど、それでもフィードバックはとても良かったんだ」
実際、多くの日本のファンは寛容だったようです。HIDEOUS DIVINITY の音楽は、決して一筋縄ではいきません。実に哲学的でテクニカルでありながら、暴力的で混沌したノスフェラトゥ。相反する要素を併せ持つ、彼らのテクニカルでプログレッシブなデスメタルを追求するリスナーは決して多くはないでしょう。それでも、日本のリスナーは、決して最推しではなくても、彼らの音楽に耳を傾け、理解しようと努力し、愛情を注ぐようになりました。もちろん、音楽の “品位” が高いことは当然ですが、そうして好奇心と寛容さでメタルの世界が広がることこそ、SNS 時代において最も美しい光景ではないでしょうか?
今回弊誌では、ギター・マイスター Enrico Schettino にインタビューを行うことができました。「日本のSNSにおける、トレンディング・トピックの達成は信じられなかったよ!日本に惹かれる理由はメンバーそれぞれだと思う。Enrico・H はアニメの世界に最も造詣が深いかもしれないし、メンバーみんなが80年代や90年代に人生を変えたビデオゲームを知っている。 個人的に、僕にとっての日本とは、黒澤、北野、葉隠、そして相撲だ。 一般的に、僕はいつも西洋の基準とは全く異なる世界に魅力を感じていたんだよ」 どうぞ!!

HIDEOUS DIVINITY “UNEXTINCT” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HIDEOUS DIVINITY : UNEXTINCT】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHANGELING : CHANGELING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOM “FOUNTAINHEAD” GELDSCHLÄGER OF CHANGELING !!

“Hans Zimmer Famously Said That His Music Is Not Original, But It Is The Sum-total Of All The Music That He’s Consumed In His Life – And That Is Also True For Me.”

DISC REVIEW “CHANGELING”

「Hans Zimmer の有名な言葉に、”自分の音楽はオリジナルなものではなく、人生で消費してきた音楽の総体である” というものがある。そしてその言葉は、僕にとっても真実なんだ。僕は若い頃からオーケストラ音楽に興味があり、10代で初めてレコーディングしたときから、さまざまな種類の楽器を重ねたりオーケストレーションしたりすることで、ロックバンドのサウンドを超えることを試みていた。まだ10代の頃に書いた曲を収録した僕の最初のソロ・アルバムでさえ、オーケストラ・パートや世界中のパーカッション・サウンドがあり、さまざまなジャンルや音楽の伝統から影響を受けている。それが僕の頭の中の音楽の聴こえ方なんだと思う」
“モダン・メタルの歴史上最高傑作のひとつ”。AMOGH SYMPHONY で共闘した Vishal J Singh は、戦友 Tom “Fountainhead” Geldschläger の新たな旅路をこう称賛しました。その言葉は決して大げさなものではありません。長年、艱難辛苦に耐え抜いたフレットレス・モンスターは、これまでの人生と音楽体験をすべて注ぎ込み、モダン=多様を完璧なまでに体現しためくるめくメタル・アートを遂に完成させたのです。
「メディアだけでなくギター業界も、僕のプロとしての全生涯を通じて僕の作品をほとんど無視してきたからね。そしてもちろん、世界各国のアルバム・チャートにランクインした “Akroasis” を通して、ようやく世界中の聴衆に僕の作品を聴いてもらえたというのに、OBSCURA のバンド・リーダーによって、”Tom のパートを再録音した”、”アルバムにはフレットレス・ギターがない”、”Tom はスタジオでギターのチューニングもできない” と嘘の中傷キャンペーンを展開されたときがその最たるものだったね。それだけでなく、僕のビデオはほとんど削除され、僕のソーシャルメディア・ページは何度もハッキングされ、いじめられたり、せっかく僕の活動に興味を持ってくれていたオーディエンスから切り離されたりするケースもたくさんあった。だから、そうした僕の旅路が “Changeling” でやっとメディアの注目を得ただけでね。このアルバムを聴いて、斬新だと思われるのはよくわかるけど、実は僕はもう20年くらいフレットレスでメタルやそれに関連するスタイルを演奏してきたんだ」
Fountainhead が正当な評価を得るのにここまで時間がかかったのは、あまりに遅すぎたとしか言いようがありません。そして皮肉なことに、その評価の妨げとなっていたのは他でもない、彼を世に送り出した OBSCURA の “Akroasis” だったのです。
実際、Fountainhead は OBSCURA の最も野心的な作品となった “Akroasis” の源泉でした。15分の “Weltseele” では東洋の影響と弦楽五重奏を加え、魅惑の実験的スタイルでアルバムを締めくくるなど Fountainhead の貢献、その大きさは誰の目にも明らかであったにもかかわらず、近年よりその人間性が疑問視される OBSCURA の首領 Steffen Kummerer によって彼の存在は抹殺されてしまったのです。しかし豊かな才能は決していつまでも草庵で燻るべきではありません。遂に臥薪嘗胆が報われる日が訪れたのです。まさにメタルの回復力。
「フレットレス・ギターの長所と短所だけど、普通のギターではできないことを実現してくれる。微分音、グリッサンド、ハーモニクスをスライドさせたり、指板を縦よりも横に動けたり…本当にとても楽しいんだ。ただし、コードとなるとできることには限界があって、高音域でのサスティーン、演奏性にも限界がある。また、僕がよく使うメタル・フィンガーボードとブラス・ピックを使っても、ハイエンドを出すには限界があるんだ。だから、”フレットのない普通のギター” ではなく、”ユニークな目的&シチュエーションのためのユニークな楽器” としてアプローチするのが一番効果的なんだよね」
まずこの作品を特別なものにしているのが、Fountainhead のトレードマークであるフレットレス・ギターでしょう。フレットのない耳が頼りの弦楽器は、当然その習熟により大きな労力と鍛錬を必要としますが、あの Bumblefoot に薫陶を受けた Fountainhead にとってこの楽器はむしろ水を得た魚。輝くメタル・フィンガーボードで、この音楽にとって異質な夢幻の世界をフレットレス・ベースと共に紡ぎ上げていきます。
「アルバムのオーケストラ・パートの99%は本物の楽器なんだ。そう、それはとても大変で長いプロセスだった。既存のオーケストラと協力して、大きな部屋ですべてを生録音する手段がなかったからだ。 その代わり、数年かけていろいろな楽器やラインをいろいろな場所で録音した。そのために、さまざまなプレイヤーを起用する必要があったんだ。このアルバムのコンセプトのひとつは、曲ごとにまったく異なる形のオーケストレーションにすることだったから」
とはいえ、フレットレスの異端でさえこの作品にとっては飾りのひとつに過ぎません。ALKALOID, FEAR FACTORY, VIPASSI, DEATH, CYNIC といった強力なメンバーを礎に、混成合唱から、チェロ、フルート、ホーン、ピアノ、チューバ、ヴァイオリン、ヴィオラなど、あらゆる楽器でデザインされたテクニカル・デスメタルの宮殿は、ジャズ・フュージョン、プログレッシブ・ロック、ワールドミュージックを融合してまだ見ぬメタル景色を映し出していきます。アルバムを通して何度も登場し、クライマックスで花開くモチーフの成長も見事。そして、野心という実験音楽における諸刃の剣をしっかりと制御し、地に足のついたメタル・アルバムとして完成させたバランス感覚もまた見事。
今回弊誌では、Tom “Fountainhead” Geldschläger にインタビューを行うことができました。「”Changeling” には日本文化から直接影響を受けた曲が1曲あってね。”Abdication” なんだけどこの曲は、僕が最も影響を受けた音楽家の一人である久石譲の和声言語とオーケストレーション・スタイルを取り入れたものなんだ」これまで何度も弊誌に登場してくれている Morean の声も素晴らしいですね。どうぞ!!

CHANGELING “CHANGELING” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHANGELING : CHANGELING】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FROGG : ECLIPSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SKY MOON CLARK OF FROGG !!

“Obviously I LOVE Tech Death, But Yes, One Has To Admit There’s a Formulaic Approach To Both Production And Songwriting In The Genre.”

DISC REVIEW “ECLIPSE”

「特定のサブジャンルにこだわる必要なんてなくて、どんなアイデアも排除したくなかったんだ。 だから “Eclipse II” にはメタル・コア、Djent、フュージョンの要素があり、Will が演奏した何十種類もの楽器を使ったギター・ソロ・セクション、特にファースト・ソロで目立つタブラの妙技、そして黒く染まったシンフォニック・デスメタルのアウトロまでがある。 まさにそれが僕たちが感じていたものだった」
“Frogging the Horses” という SikTh の狂った名曲がありますが、Frogg の二つ名はプログ世界にとってはどうやら僥倖。”どんなアイデアも排除しない” という意味で、明らかにニューヨークのセンセーション FROGG はあの SikTh の魂を受け継いでいます。いや、SikTh だけではありません。00年代、SikTh と “カオス” の覇権を激しく争った PROTEST THE HERO の高鳴るギター・メロディ。ANIMALS AS LEADERS の超重低音とシステマティックな陶酔。BETWEEN THE BURIED AND ME の驚異的で雑多な構成力。NECROPHAGIST の性格無比な超速暴威。そうした21世紀を代表するプログ・メタルを養分として蓄えた巨大なカエルが今、メタルの境界をすべて飲み込みます。
「間違いなく Alexi Laiho だね。 僕がギターを弾き始めたのは高校1年生のときで、かなり後発組だった。 でも、ギター中毒になってしまって、ギターを弾くのを止められなかったよ。僕はPCゲーマーだったから、ネットで独学する方法を知っていたんだ。 Ultimate Metal Forums と sevenstring.org は、当時ギターを学ぶのに人気のサイトだった。まだYoutubeのコンテンツが豊富ではなかったから、フォーラムとギター・タブが主流だったね。僕は地元でフルタイムのインストラクターを雇う余裕がなかったから、Guitar Proが最初の先生だったよ」
そうした21世紀の多様性に FROGG はギター・ヒーローの魂を持ち込んでいます。奔放でカラフル、まるでメインストリームのポップ・ミュージックのように光り輝く “Wake Up” においても、Alexi Laiho から受け継いだ高速の “ピロピロ” がメタルの証を主張します。
実際、”フロッゲンシュタイン” などと例えられるパッチワークな FROGG の音楽において、Sky Moon Clark と Brett Fairchild のシュレッドがすべてを縫い合わせている、そんなイメージさえリスナーは感じることになるでしょう。Alexi Laiho と Guitar Pro の遺産が実りをもたらす時代になりました。”Double Vision Roll” なんて実に COB ですよね。
そうして紡ぎ出されるのは、テクニカル・デスメタルらしからぬスケール感と意外性、そしてお洒落なムード。空想的なメロディ、短いポップなブレイク、奔放な音楽的ショーマンシップに自由を見出した薔薇色のメタル。今の時代、”テック” だけでメタル世界の水面に波紋を広げることはできません。しかし、FROGG の棲む水面にはステレオタイプに飽きたリスナーが渇望する、ぞわぞわとしたカタルシスとカエルが舌を伸ばすようなお茶目な驚きと遊び心が混じった何かが渦を巻いています。まさに新時代のメタル両生類。
今回弊誌では、ボーカルも務める Sky Moon Clark にインタビューを行うことができました。「Will(ドラマー)はこのアルバムのもう一人の主要なソングライターで、BTBAM や SikTH に影響を受けている。 THE FACELESS, COB, SCAR SYMMETRY にはもっと影響を受けたと思う。 FFO (For Fans Of) にBTBAMに入れたのは、彼らが DIABLO SWING ORCHESTRA や UNEXPECT と並んで Will に大きな影響を与えたからなんだ」 UNEXPECT!!ARSIS の名盤を挙げているのも嬉しい。また Emma のショルキーが最高よね。どうぞ!!

FROGG “ECLOPSE” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FROGG : ECLIPSE】

MASTERPIECE REVIEW + INTERVIEW 【ATHEIST : PIECE OF TIME, UNQUESTIONABLE PRESENCE】 JAPAN TOUR 25′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KELLY SHAEFER OF ATHEIST !!

“In My Opinion, Death Has Zero To With The Pioneering Aspect Of Tech-metal, That Title Belongs To Atheist.”

DISC REVIEW “PIECE OF TIME” “UNQUESTIONABLE PRESENCE”

「もともとプログレッシブ・バンドや複雑な音楽が好きだったし、エクストリーム・メタルも好きだったから、そのふたつを組み合わせるのは自然なことだった。でも、それは決して意図的なものではなく、他の誰かになりたかった訳でもないんだよ。ただ自分たちがそうでありたかっただけで、でもありがたいことに、人々は私たちのユニークなアプローチを徐々に認めてくれるようになった。そして、私たちは自分たちの道を見つけたんだ。人々が最終的にそれを理解するまでには何年もかかったけどね」
デスメタルはその黎明期においてさえ、骨子である過激さに忠実であると同時に、境界を押し広げ、さまざまなサウンドを探求するジャンルとして進化を模索していました。それは、フロリダを一挙にデスメタルのメッカへと押し上げた MORBID ANGEL, OBITUARY, CANNIBAL CORPSE といった黎明期の偉人からの伝統。彼らにしても十二分に異様な音楽を叩きつけていましたが、それでも殻を破るバンドはいつの時代も出てくるものです。
特に90年代初頭には、デスメタルをそのコンフォート・ゾーンから脱却させ、よりプログレッシヴでテクニカルな道へと押し進めようとするバンドの波が押し寄せました。DEATH, CYNIC, PESTILENCE, NOCTURNUS といったバンドが、この奇抜でしかしあまりにも好奇心を誘う音楽の中心にいました。そして、そうしたバンドの “パイオニア” と自負するバンドこそ、ATHEIST です。
「CYNIC は私が契約するのを手伝ったバンドで、私は彼らのデモを Scott Burns と一緒に作った。Paul Masvidal と私は今でも数十年来の素晴らしい友なんだよ。
私の意見では、DEATH はテック・メタルのパイオニアという側面とは全く関係がない。そのタイトルは ATHEIST にこそ相応しい。DEATH は違う種類のメタルのパイオニアであり、プログレッシブになったのは CYNIC の私の子たちが Chuck Schuldiner と一緒になってからだ。それ以前の Chuck はとてもベーシックなプレイヤーだったからね」
もはや伝説となった CYNIC の Paul Masvidal や DEATH の Chuck Schuldiner をこのジャンルにおいては “ひよっこ” 扱いする ATHEIST の心臓 Kelly Shaefer。しかしその言葉に異論を唱える人は誰もいないでしょう。それだけ、ATHEIST と Kelly の功績はずば抜けていました。
「私にとってのお気に入りは、”Unquestionable Presence” だね。このアルバムでプレーしているすべての音を誇りに思う。でも、そうだね、4枚ともまったく違うアルバムだ。 そうなるべきだったんだ。だって、誰も同じアルバムを何度も聴きたくはないだろう。 でも、ATHEIST の雛形は “Unquestionable Presence” だと思うよ」
今年35周年を迎えた ATHEIST のデビュー・アルバム “Piece Of Time” は驚異的なテクニカル・スラッシュとデスメタルの要素をミックスした、オールドスクールでありながら破天荒、非常に狂暴なアルバムで、テクニカルな華やかさとプログレッシブな屈折がふんだんに盛り込まれた名品でした。
それでも ATHEIST の最高傑作に次の “Unquestionable Presence” を推す声が多いのは、おそらくプログレッシブ・デスメタル、テック・メタルというジャンルそのものの雛形を作り上げたから。この作品で彼らはオールドスクールなスラッシュ、デスメタルから離陸し、ジャズ/フュージョンがメタルといかに親密になれるかをその一音一音で証明していきました。
とはいえ、ソリッドなリフと辛辣なヴォーカルは健在。迷宮の中を浮遊して探索するような音楽の中で、リフはより複雑に、ギター・ソロは巧みさを増し、ベースとドラムは以前より遥かに印象的になりました。まだ Kelly はその巧みなギターを弾くことができましたし、ベーシスト Roger Patterson は悲劇的な死を遂げる寸前、このアルバムのためにベース・パートを書きあげていました。そうして、Roger の後任、CYNIC, PESTILENCE, ATHEIST を渡り歩いた稀代のベースマン Tony Choy の独特の音色はこのアルバムを真に特別なものへと昇華したのです。
今回弊誌では、Kelly Shaefer にインタビューを行うことができました。「テック・メタルは私たちから始まったのだけど、多くの人が私たちのアプローチを取り入れ、複雑な新天地へと進んでいったんだ。残念なことに、ジャズ・フュージョンとメタルを最初に激しく融合させたという点で、私たちが評価されることはほとんどないのだけどね」テック・メタルの起源、奇跡の初来日決定。どうぞ!!

ATHEIST “PIECE OF TIME” “UNQUESTIONABLE PRESENCE” : 10/10

ATHEIST ARE: Kelly Shaefer – lead vocals (1987–1994, 2006–present), guitars (1987–1994)
Dylan Marks – drums (2023-present)
Yoav Ruiz Feingold – bass (2019–present)
Jerry Witunsky – guitars (2023–present)
Alex Haddad – guitars (2023–present)

続きを読む MASTERPIECE REVIEW + INTERVIEW 【ATHEIST : PIECE OF TIME, UNQUESTIONABLE PRESENCE】 JAPAN TOUR 25′

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INGURGITATING OBLIVION : ONTOLOGY OF NOUGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FLORIAN ENGELKE & NORBERT MULLER OF INGURGITATING OBLIVION !!

“I Find The Now “Industrially” Standardized Production And Songwriting In Metal Music Boring And Annoying. It’s Become Boring As Hell.”

DISC REVIEW “ONTOLOGY OF NOUGHT”

「メタル・ミュージックは、今や “工業的に” 標準化されたプロダクションとソングライティングが退屈で腹立たしいものになった。地獄のようにつまらなくなった。こういう図式化された大量生産物の一部にはなりたくない。プログ・メタルの50%でさえ、画一化されている。もちろん挑戦すれば、ボツになったり、プロダクションを台無しにするリスクは常にあるけど、それを跳ね返していきたいんだ」
その並外れた生命力と感染力で世界中に種を蒔き、芽吹かせてきたヘヴィ・メタル。しかし、これほど裾野が広がった世界においても、真に挑戦的な音楽を志すアーティストは決して多くはありません。それはある意味当たり前のことでしょう。アーティストも我々と同じ人間です。普通に生活して人気を得、承認欲求を満たすためにはある程度 “アート” を犠牲にしてでも認知され売れることが必要だから。しかし、INGURGITATING OBLIVION にそんな “打算的” 考えは毛頭ありません。
「僕が常に心がけているのは、何よりもまず自分が好きで、個人的に満足できる音楽を作ることだ。それはアーティストの特権だ。僕たちは、ただ共有するのではなく、音楽を録音し、ある時点で発表/共有することを選んだ。これはもちろん、批判や嘲笑を浴びるリスクを伴う。信じてほしいのだけど、僕はメタル・シーンやそれ以外の世界で、僕たちのバンドをうっとうしい、気取っている、つまらない、長い、はっきりしない……何でもありだと心から思う何百人もの人々に会ってきた。幸いなことに、それでも僕はあまり気にしていない。僕たちの蛇行した複雑な音楽表現を楽しんでくれている素敵な人たちの輪があるから」
書籍を出版するほどの本物の哲学者 Florian Engelke 率いる INGURGITATING OBLIVION は、ただ自分たちが満足できる音楽と哲学のみを “Ontology of Nought” に記録しました。だからこそ、パターンも、手がかりも、建築的根拠も、どこにも見つからない。まったく脈絡がないままに、しかし壮大な迷宮が完成していく。デスメタルを名乗るものにこれほど迷わされ、興味をそそられたことは未だかつてありません。
不協和音、途切れ途切れのリズム、漆黒のインテンシティ、テクニカルなアルペジオ、フレットレスの夢幻、スポークンワード、呪術的なアトモスフィア、凶悪なノイズが結びついたアヴァンギャルドな地下大迷宮は1時間15分近くに及ぶ5曲からなり、さまざまな楽章に分かれています。忍耐強く、有機的に、しかし盲人が盲人を導くような意図と方向性をもって彼らの “バベルの図書館” は刻々と変化していきます。
「僕に言わせれば、人は形成期というものを経験する。僕の場合、それは MORBID ANGEL, OBITUARY, DISINCARNATE, MY DYING BRIDE といったバンドだった。彼らの印象は今でも僕の中に残っている。でもDjent全体は、ほんの短い間だけ楽しめたものだった。それがすべて過ぎ去り、印象が残って、次に進んだのかもしれないけどね」
彼らの生み出す音の迷宮は、Djent のように機械仕掛けで精密なものではありません。むしろ、デスメタルがその凶暴を発揮し始めた90年代初頭の、おどろおどろしい混沌を百鬼夜行の壮大さで実現した狂気。そこにバルトークやライヒのような現代音楽の実験や、フランク・ザッパとマイルス・デイヴィスの挑戦を込めた奇々怪界は真に唯一無二。だからこそ、有機的で、実存的で、革命的な音楽が生まれるのです。
今回弊誌では、INGURGITATING OBLIVION にインタビューを行うことができました。「僕らのバンド名が哲学的に聞こえる主な理由のひとつは、僕がある時期哲学を勉強していた(その後、言語学に科目を変更した)という事実そのものにあると思う。だから、自然と哲学的なことや根源的なことに関心を持つようになったんだ。いくつかの古典(孫子、老子、ソクラテス、プラトン、デリダ、ニーチェ、そして宗教的/精神的な経典の数々)を読み、政治的/哲学的な言説に親しみを持っているからね。2024年初頭、僕はRoutledgeから “The Ethical Bottomline(倫理的ボトムライン)” というタイトルの最初の本を出版したんだ」 Tom Fountainhead がフレットレス・ギターを奏でるツールはEBOW ( 弦に近づけるだけでサスティンをコントロールできるアタッチメント。バッテリー駆動でバイオリン、ホーンや木管楽器のようなハーモニーを奏でることができる)。どうぞ!!

INGURGITATING OBLIVION “ONTOLOGY OF NOUGHT” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INGURGITATING OBLIVION : ONTOLOGY OF NOUGHT】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CARNOSUS : WORMTALES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CARNOSUS !!

“If Putting a Label On Ourselves, We Would Probably Say Progressive Semi-Technical Melodic Thrash-Infused Death Metal? Our Sound Really Is a Mixture Of a Lot Of Influences.”

DISC REVIEW “WORMTALES”

「もし自分たちにラベルを付けるとしたら、”プログレッシブ・セミ・テクニカル・メロディック・スラッシュ・インフューズド・デス・メタル” とでも言うのかな?そんな感じかな。僕らのサウンドは実に多くの影響をミックスしたもので、それがテクニカルに聴こえる要因にもなっているかもしれない。でも、僕らがいつも “典型的なスウェーデン人” に聴こえないのは、おそらくアメリカのバンドからのインスピレーションによるものだろう」
テクデスの巨人 NECROPHAGIST が眠りについておよそ15年。数多のバンドが彼らの足跡を追おうとしましたが、その偉業に近づけた者は決して多くはありません。その理由は、おそらく NECROPHAGIST の “本質” を見誤っていたから。
もちろん、NECROPHAGIST はあの時代にしては異次元の複雑さと速度、そしてテクニックを纏っていましたが、そこにだけ囚われていたわけではありません。むしろ、そうした “オリンピック” 的離れ業の裏側に、恐ろしいほどに練り込まれ、書き込まれたリフやソロの類稀なる名脚本が存在していたのです。テクデスの魔法に必要なのは、BPM だけではありません。逆に言えば、そこを理解し、努力を重ねた ARCHSPIRE や FIRST FRAGMENT は自らの個性も際立たせながらテクデスの階段を登っていくことができたのです。
「その瞬間に正しいと思うことをやるだけで、今回はグルーヴとヘヴィネスにより重点を置いた、よりミドルテンポのアルバムに仕上がった。さっきも言ったように、僕らは自分たちを “テクデス”バンドだとは思っていない。そのレッテルを貼っているのは、僕らのファンやメタル・コミュニティなんだ」
スウェーデンから登場した CARNOSUS も、テクデスのステレオ・タイプやオリンピックに囚われない “多肉質な” バンドの一つ。同時に、スウェーデンというオールドスクールやメロデスのサンクチュアリで機械仕掛けのテクデスを体内に宿すステレオ・タイプの破壊者、デスメタルのサイボーグに違いありません。
“Tech 戦争” に身を投じたように見えた前作 “Visions of Infinihility” から1年。最新作 ”Wormtales” で彼らは、そのサウンドをこれまで以上に多様な方向に押し進め、テクデスに根ざしつつも、メロデスからスラッシュ、プログレッシブからブラックまで、様々なサブジャンルからの影響を取り入れることに決めました。次のスピード・スターを目指す以上に、その先の新たな怪異に進化する道を望んだのです。
実際、その選択は大成功でしょう。もちろん、”Wormtales” の心臓は機械仕掛けのテクデスでできていますが、その体はまさにスウェーデン。メロデスの悲哀、オールドスクールの地獄、デスラッシュの業火を身体に刻んだ CARNOSUS の血を吐き地を這うテクデスは、千変万化の咆哮を伴って “テクニカル” の意味をリスナーに問いかけます。フレットを正確に最速で駆け巡る以上のカタルシスがここにはあります。
今回弊誌では、CARNOSUS にインタビューを行うことができました。「僕たちの作品の歌詞は、ほとんどが架空の世界を舞台にしているけれど、現実との類似点があるのは間違いない。すべてのフィクションは現実の断片を取り込んでいるが、僕たちの歌詞も同じだ。全体主義体制、大量絶滅、抑圧といった要素が、錬金術、精神病、宗教的矛盾といったテーマと混ざり合っているのさ」時代は7弦ベース。どうぞ!!

CARNOSUS “WORMTALES” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CARNOSUS : WORMTALES】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【EXIST : HIJACKING THE ZEITGEIST】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MAX PHELPS OF EXIST !!

“I’d Say I Acquired Language From Listening To Cynic And Death Which Seeped Its Way Into Many Of My Musical Tendencies, I Listened To That Stuff a Ton Because It Spoke To Me On a Deep Level.”

DISC REVIEW “HIJACKING THE ZEITGEIST”

「Paul Masvidal はまさに師匠のような存在で、僕が初めて行ったツアーは CYNIC と一緒だったし、彼や Sean Reinert と関わるようになって、僕の世界は大きく広がった。そして僕は CYNIC と DEATH を聴くことで、今自分の音楽的傾向の多くに染み込んでいる “言語” を身につけたと言える。本当に何度も何度も聴いたからね。それは、深いレベルで彼らの音楽が僕に語りかけてきたからなんだ」
Max Phelps は今や、プログレッシブ・デスメタルの宇宙にとってなくてはならぬ存在です。それはもちろん、DEATH TO ALL の声として亡き Chuck Schuldiner の影を追い、CYNIC では Paul Masvidal をメンターとしてその師事を受けているからだけではありません。Max はその二大巨頭から受け継いだ哲学やスピリットを、自らのやり方で羽ばたかせようとしています。
「ヘヴィーとキャッチー、テクニカルとシンプル。本当にそれ自体が目的だったのかどうかはわからない。なぜなら、それが僕たちの書き方にとってごく自然なことだと思うからね。でも、そういった要素を、より伝統的な曲構成で、よりタイトで短いアレンジに落とし込むというのは、ひとつの目標だったと言えるかもしれないね」
Max はカルト・ヒーローたちの遺伝子を色濃くその身に宿しながらも、より幅広い層にアピールしたいと願っています。そしてその願いは、EXIST の最新作 “Hijacking the Zeitgeist” で成就するはずです。濃縮還元されよりコンパクトとなった曲構成、耳を惹くメロディとフックの応酬、それでいてジャンルの門番をも唸らせるテクニックと複雑性を兼ね備えたアルバムはまさに、プログレッシブ・デスメタルの前代未聞。
実は、その EXIST の新たな冒険は Max もうひとつのヒーロー RUSH の影響で幕を開けました。プログ・デスと同じくらいに RUSH を愛し、RUSH オタクと公言する Max は、このアルバムは彼らにとっての “Permanent Waves” であり、”Moving Pictures”、さらにいえば “Power Windows” であると明言しています。それらは、RUSH にとっての “プログレッシブ” が変化した瞬間。そして、RUSH により幅広いリスナーへの “窓” が開いた瞬間。
「メリーランド州出身ということで、PERIPHERY や ANIMALS AS LEADERS がスタートするのを見ることができたし(昔、地元で一緒にライヴをやったこともある)、それは本当にクールで刺激的だった。Djent という言葉は、コピー商品ばかりで過飽和になり、軽蔑的な言葉になってしまったと思う。でも、そのムーブメントを牽引していたバンドは本当に素晴らしくて、みんな自分の声を持っていた。好むと好まざるとにかかわらず、現代のギター・プレイにも非常に大きな影響を与えたと思う」
アルバムに収録された “Window to the All” が仄めかす通り、この作品はすべての人への窓となりえます。それは、プログ・デスはもちろん、RUSH のようなキャッチーなプログ・ロック、PINK FLOYD や TOOL のような浮遊するサイケデリア、そして THE CONTORTIONIST や PERIPHERY のようなポリリズミックで現代的な Djent の流れまで組み込んだ膨大なる窓。
そこで歌われるのは、人類の新たな “窓” となったインターネット、SNS への執着とそこにある欺瞞。
「多くの人が、SNS で自分と関係のない物事の状況について非常に落ち込んだり、怒ったりしているのは、それが常に自分の目の前にあるからだと思う。自分の身の回りのことや、自分が実際にコントロールできることにもっと集中した方がいいこともあるし、少なくともそこでバランスを取る方がいいのかもしれないよね」
我々はあまりにも、無関係なものごとに左右されすぎるようになりました。それはきっと、ネットという窓が常に覗きすぎているからでしょう。ヘヴィ・メタルという窓は常に開いていますが、覗こうが覗くまいがそれはリスナーの自由。楽器だって、真摯に深く取り組もうが、ネットに動画をアップするだけだろうがそれはプレイヤーの自由。そんな今の寛容なメタルのあり方を Max Phelps はきっと、世界の理想としているのです。
今回弊誌では、Max Phelps にインタビューを行うことができました。「昨年末、CYNIC で来日したとき、僕は初めて日本に行ったんだ。妻も一緒に来てくれて、東京と京都で過ごしたんだけど、本当に楽しかった。正直、今までで一番好きな旅行体験のひとつで、今はいつも日本に引っ越したいと冗談を言っているくらいだよ。日本文化が本当に好きで、僕たちが慣れ親しんでいるカオスと比べて、みんなが親切で礼儀正しく、すべてがスムーズに進んでいることが信じられなかった。また何度も訪れたいよ!」OBSCURA, EQUIPOISE, そしてエンジニアに Anup Sastry という最強の布陣。どうぞ!!

EXIST “HIJACKING THE ZEITGEIST” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【EXIST : HIJACKING THE ZEITGEIST】

COVER STORY 【NECROPHAGIST : ONSET OF PUTREFACTION / EPITAPH 25TH, 20TH ANNIVERSARY】


COVER STORY : “ONSET OF PUTREFACTION” / “EPITAPH” 25TH, 20TH ANNIVERSARY

“I Don’t Think Every Death Metal Maniac Should Buy My Album, But Anyone Who Is Tired Of All These Average Shit, Where One Band Sounds Like The Other.”

NECROPHAGIST

「”ネクロ “を名前に持つバンドは多すぎる。でも、1988年当時、”ネクロ” を含む名前を選んだバンドはほとんどなかった。今となっては、そんなことをするバンドはクソつまらないし、バカげてる。
僕らの名前が “Necrophagist” だからといって、世間からつまらないと思われるのは良くない。”Necropha-gist” は、音楽にのみ優先順位を設定し、それを改善し、独自の新しいスタイルのデスメタルを開発するためのバンド。だから僕のせいにしないで、ネクロを使っているデスメタル・バンドの “新時代” のせいにしたいね。君たち、想像力は一体どこにあるんだ?」
今からちょうど四半世紀前。Muhammed Suiçmez は、ギターとマイクとコンピューターを持ってスタジオに閉じこもり、史上最もユニークで影響力のあるメタル作品のひとつを録音しました。今にして思えば、 “Onset of Putrefaction” が1999年という前世紀に発表されたことが信じられません。音楽的なスタイルもプロダクションも、明らかに未来。案の定、この作品は、来るべき現代のテクデス・ワールドほとんどすべての規範となったのです。

「リハーサル・ルームで録音したんだけど、プロフェッショナルなサウンドに仕上がったよ。レコーディングに使った機材もプロ仕様。ミックスも最終的に、その道のプロと一緒にやったんだ。だから、リハーサル室で作ったとは思えない仕上がりになっている。そう、とても大変だったんだ。時間も神経も使ったけど、それだけの価値はあったよ」
2000年代に入る前、SUFFOCATION のようなデスメタル・バンドは、ハイゲインの氾濫とカオティックなエネルギー、そしてブルータルな重量が本質的ににじみ出る音楽を生み出していました。ただし、彼らのデスメタルはテクニカルな複雑さとは裏腹に、オーガニックな人間味が多く残されていたのです。NECROPHAGIST は、テクデスを次のステップに進め、より臨床的で冷たく、マシナリーで極めて正確なスタイルを打ち立てました。
「多くの人はデスメタルにおけるドラム・マシーンを好まないが、ドラム・ラインをプログラムするのに3週間、毎日12時間かかった。その結果、このCDはほとんど自然なサウンドになったんだよ」

それまでもテクデスは、もちろんある種の几帳面さを好む傾向がありましたが、”Onset of Putrefaction” は、強迫的な細菌恐怖症と例えられるほどに、無菌状態の完璧主義が貫かれています。プログラムされたドラムは、ロボットのような正確さと非人間的な冷たさを加え、偽物のように聞こえる以上にデスメタルのエッジとAIの無慈悲を獲得するのに役立っています。一方で、テクデスの命ともいえるリフは、当時の常識以上に可動性が高く、慌ただしく、細部まで作り込まれていました。さらにそれらはすべて、ディミニッシュ・アルペジオ、ホールトーン・スケール、クロマティック・ムードといった異端を最大限に活用して、流動的かつリズミカルな魅惑的な”音楽” に加工する魔法に覆われています。
そんな高度に機械化された無菌室は、デスメタル本来の穢れを祓い、過度に衛生化されるという懸念を、次から次へと収録される楽曲の超越したクオリティで薙ぎ払っていきます。一方で、ステレオタイプな低いうなり声のボーカルは、単に楽曲の意味を伝えるものとなり、リズム楽器の一つとして有効に機能しています。
「歌詞のほとんどは昔の CARCASS のようにゴアなテーマを扱っているけど、もっとセンスのあるものもある。これらはより新しいものだ。新しい歌詞はもっと哲学的なものになると思う」

NECROPHAGIST(ギリシャ語で「死者を喰らう者」の意)は、トルコ系ドイツ人のギタリスト/ボーカリスト Muhammed Suiçmez が結成し、フロントを務め、彼がすべてを決定するワンマン・バンドでした。
彼らのデビュー・アルバム “Onset of Putrefaction” は、Hannes Grossmann が制作したドラム・サンプルを使った新版が作られています。
「僕はドイツで生まれたので、1975年からここに住んでいる。ドイツの社会は奇妙で退屈だ。大学を卒業したら、この国を離れると思う。母国にはあまり行ったことがないし、トルコとの関係が希薄なんだ。
偏見を感じることはある。人々は異なる文化を恐れ、偏見を持ち、奇妙な振る舞いをする。とはいえ、僕はここで何人かのドイツ人と友好関係を築いた。彼らとの間には常に距離があるけれどね。私の親友は非ドイツ人であることを明言しなければならないよ。ドイツ人は、僕を自分自身や友人とは異なるものとして理解しているのだ」

そうしたある種の “孤高” と “孤独” の中でも、Muhammed は2010年の解散までに Christian Münzner, Hannes Grossmann, Marco Minnemann, Sami Raatikainen といったドイツの才能を次々と発掘し、彼らが OBSCURA のような次世代の旗手となっていったのはご承知の通り。そうした人を活かすアルバムとして発表された2004年の “Epitaph” は、その完璧な仕上がりとは裏腹に、文字通りバンドの墓標となってしまっています。アルバムでは、Muhammed自身も、7弦と27フレットを備えた新しいカスタムショップのIbanez Xiphosギターで攻めていました。唯一無二であることにこだわるが故の、消滅。
「昔から他のバンドをコピーするバンドはいたし、オリジナルなバンドもいた。その点では何も変わっていないが、レーベルが生き残るために利益を上げる必要がある限り、彼らは手に入るものは何でもリリースするだろう。少なくとも一部のレーベルはそうだ。特にアンダーグラウンドの小さなレーベルは、今でも利益を最も必要としている。それがビジネスであり、ある程度は理解できるが、これでは音楽の発展はない。
NECROPHAGIST は主に自分自身のためにやっているが、もちろん、人々が我々の音楽に影響を受けていると聞くのは光栄なことだ。
音楽的には、確かに僕らのルーツはデスメタルの最初の時代にある。それを除けば、僕たちはどんな音楽にもオープンだし、みんなかなり多様な音楽を聴いている。自分のことしか言えないけど、マルムスティーンのソロ・スタイルはかなり影響を受けていると思う。あとは、パワーメタルは影響を受けているが、それはある程度までだ。SONATA ARCTICA 以外によく聴くパワー・メタル・バンドは思いつかない。とにかくさまざまな角度から影響を受けてもいるよ。重要なのは、自分たちの音楽がどう聞こえるかだ」

“Onset of Putrefaction” から25年。”Epitaph” から20年。年月を経た2枚のアルバムは、今やテクデスの聖典として、様々な後続に崇め奉られています。
「まあ、すべてのデスメタル・マニアが僕のアルバムを買うべきだとは思わないけど、他のバンドと同じように聴こえるような、平均的なクソにうんざりしている人なら誰でも買うべきだよ。申し訳ないけど、バンドはギターやドラムスティックを持てるようになったら、すぐにCDをレコーディングするべきではないと思うんだ。だから、NECROPHAGIST が10年前から存在し、音楽が年々向上していることを知っておいてほしい。新しい、あるいは違ったスタイルの音楽を聴いてもらいたいんだ。”Onset” が他のバンドに似ていると言っている人は、みんなよく聴いていない。だから、この音楽は間違いなくデスメタル・マニアのために作られたものだけど、ブラストビートやダウンチューニングのギターだけがここにあるわけじゃないんだ」

デスメタル・アルバムにおいて、ラジオ・ソングのように、すべての曲が他の曲とまったく違うと自信を持って断言できることがどれほどあるでしょう?NECROPHAGIST は魔法の公式を見つけたと思い込んで、それを繰り返し、同じようなサウンドの濫用になるようなバンドではありませんでした。すべての異なるトラックを全く異なる雰囲気で収録し、そのどれもが地獄のようにキャッチーであるという最も野心的な目標を達成してきました。つまり、彼らが残した2枚の聖典はジャンルを超越し、デスメタルの専門家でない人にとっても潜在的な興味対象であるという特殊性を持つ、史上数少ない真に偉大なアルバムとなったのです。
「ハードドライブのどこかに新しいアルバムは録音してある。でも今はもうバンドをやる気はないんだよな」
これが2019年、Muhammedからの最後の便り。今はエンジニアの資格をとって BMW でエンジニアとして働いているとも噂されていますが、このアニバーサリーの年に何か動きはあるでしょうか…


参考文献: MASTERFUL MAGAZINE : NECROPHAGIST

NIHILISTIC HOLOCAUST: NECROPHAGIST

ZWAREMETALEN Interview