タグ別アーカイブ: Tech death

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ABIOTIC : IKIGAI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN MATOS OF ABIOTIC !!

“I Was Doing Some Reading And Fell In Love With The Concept Of Ikigai. In These Challenging Times, I Know a Lot Of Us Are Struggling With Finding Our Reason For Being, And I Wanted To Write an Album About That Struggle, Pain, And Perseverance.”

DISC REVIEW “IKIGAI”

「日本についての本を読んでいたら、”Ikigai” というコンセプトに惚れ込んでしまったんだよ。この厳しい時代に、僕たちの多くは自分の存在理由を見つけ出すのに苦労していると思う。僕はそんな苦労や痛み、忍耐についてのアルバムを作りたいと思ったんだよね」
2010年の結成以来、フロリダで最も急速に成長を遂げたデスコア/テクデスのハリケーン、ABIOTIC。5年間の活動休止で彼らは内面的にも音楽的にも遥かな進化と成熟を遂げ、彼らの存在理由、”生き甲斐” を叩きつけてみせました。
「それぞれの楽曲は、生き甲斐というコンセプトを異なるアプローチで表現している。5年の歳月を経て、宇宙やエイリアンについての作品は今でももちろん好きだけど、生き続ける理由を見つけるのに苦労するような時代に、感じられるもの、親近感を持てるものを書きたいと思ったんだ」
コロナ・ウィルスが日常を、社会を、そして音楽業界全体を破壊し続けていることは言うまでもありません。人の心まで侵される現代の恐怖の中で、ABIOTIC が復活を遂げたのは決して偶然ではないでしょう。デビュー作の “Symbiosis” や、プログレッシブ・スペース・オデッセイ “Casuistry” で宇宙や地球外生命体を探求した彼らは、遂に地上へと降り立ち、人類の現状を憂い、人と繋がりながら悲しみ嘆き、共感し、空想的なものよりも優先すべきテーマを見つけました。
「あれほど才能のあるバンドが多数所属するレーベルの一員になれて嬉しいね。アーティスト自身が運営するこのレーベルは、まるで家族のように感じられるんだ」
Metal Blade から Artisan Era へのレーベルの移動、SCALE THE SUMMIT の Killian Duarteとドラマーでありエンジニアでもある Anthony Simone を含む再編成されたラインナップ、さらに THE BLACK DAHLIA MURDER, ARCHSPIRE, ENTHEOS, FALLUJAH といった錚々たるバンドからの錚々たるゲスト陣を見れば、このバンドがメタル世界における “Symbiosis” “共生” を実現していることに気づくでしょう。そして、一欠片の獰猛も損なうことなく、プログレッシブ・ジャジーな奇譚と和の旋律が “共生” する9通りの “Ikigai” は、これまで以上に共感を誘う傑作に違いありません。
和の心、メロディー、情景、情緒を存分に取り入れた開幕の “Natsukashii”, “Ikigai” は、さながらデス・メタルで綴る日本の歴史絵巻。正確無比なテクデスの猛威に浸透する大和の雅は、リスナーの心身に映像を投影する新生 ABIOTIC の哲学を承知しています。
「不寛容さに直面しているトランスジェンダーとしての人生、依存症患者としての人生、メンタルヘルスと闘っている虐待を受けた子供としての人生、気候変動によって住処が破壊されたフクロウとしての人生など、無限の人生は苦悩しながらも、その苦悩に耐えているんだよね。そして、16世紀の日本の野山で息を引き取る前に、彼はその生のつながりに自分の目的を見出すわけさ」
アートワークの侍は、”Ikigai” で切腹を遂げる今際の際に、21世紀におけるさまざまな人生の苦悩を走馬灯のように目撃し、共感します。
トランスフォビアによる虐待と自死をテーマとしたリード・シングル “Souvenir of Skin” のように、侍が目にする苦痛はすべてが21世紀のもの。切腹の果てに訪れるやるせない未来は、重さを極めながら記憶に残る ABIOTIC の哀しみと濃密な二重奏を描いていきます。さながら、Travis Bartosek の重低咆哮と、TBDM の Trevor の雄叫びがシンクロするように。
FALLUJAH の Scott Carstairs が嗚咽と希望を壮大なスケールのギターソロで表現し、バンドがソングライティングの粋を尽くして GORGUTS の異形やメロディーを重ねる “Horadric Cube” は傑出した瞬間ですし、CYNIC の宇宙と諸行無常が ex-THE CONTORTIONIST の Jonathan Carpenter の美声によって無限に広がる “Grief Eater, Tear Drinker” はアルバムの痛みそのものと言えるでしょう。
重厚なストリングスに導かれる “Gyokusai” で侍は生きる意味を見出します。ただし、すべては遅すぎました。死はもう始まっていました。辿り着いたのは永遠の休息。きっとリスナーには、手遅れになる前に、何かを見つけて欲しいと願いながら。
今回弊誌では、ギタリスト John Matos にインタビューを行うことができました。「アルバムの制作とアートワークは “Ghost of Tsushima” が発売される前に完了していたんだけど、人々が僕たちのアートワークと音楽をあの最高のゲームに関連付けてくれるのは素晴らしいことだよね」 どうぞ!!

ABIOTIC “IKIGAI” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ABIOTIC : IKIGAI】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【Eximperituserqethhzebibšiptugakkathšulweliarzaxułum: Šahrartu】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Eximperituserqethhzebibšiptugakkathšulweliarzaxułum!!

“When You Can Be Sentenced To 15 Years On a Fictitious Case, Without Any Evidence, Just Because You Think Differently Than They Tell You….Damn It, This Is The Plot For Any Historical Film Or Medieval Novel. But Not The Realities Of The 21st Century!”

DISC REVIEW “SAHRARTU”

「政府と違う考えを持っているだけで、何の証拠もなく、架空の事件で15年の刑を宣告される。取るに足らないことで、傭兵に頼って国民を恐怖に陥れ、法外な恐喝を行う…ちくしょう、これは歴史映画や中世の小説の筋書きだよ。21世紀の現実なわけがない!」
欧米とロシアが出会う場所、ベラルーシはまさに今、混沌の最中にあります。ヨーロッパ最後の独裁者”とも呼ばれるソ連の残り香、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領による圧政と不正選挙、そして人権侵害は、多くの国民の怒りを招き大規模な抗議活動へと発展。治安部隊の激しい応戦、弾圧で死傷者が出る事態となりました。そうして、これまで親ロシアの傾向を持っていた国と国民自体、欧州への憧れを隠さない新派が増え、分断を招いているのです。
「今この偉大な分裂の瞬間に、我々の社会は目覚め、根本的な変化の必要性を認識することになった。躍進のためには、深遠な改革、すべての分野の再構築、そして最も重要なことは、考え方の変化が必要だね。松下幸之助のような思考と倫理観を持った明日のリーダーを育成することはまだできていない」
Eximperituserqethhzebibšiptugakkathšulweliarzaxułum (以下 EXIMPERITUS) は明らかにベラルーシの新たな流れを汲んでいます。そして、デスメタルの松下幸之助を標榜するバンドとも言えるのです。
「僕たちは、どんなジャンルの定義にも執着したくないんだよ。実験し、新しい地平を発見し、あらゆる方向に発展し、改善していくことに興味を持っているんだ。」
EXIMPERITUS は、その最先端の技術とワイルドな美学の両面から、デスメタルシーンで確実にその名を知らしめてきました。最新作 “Šahrartu” では、彼らが築き上げてきたアンダーグラウンドの呪術と謎をより大きな世界へ解き放とうとしています。デスメタルの顔を変えるために。
「簡潔に言って、僕たちの個人世界を作っている宇宙の総称なんだ。これは、初期の文明の消滅した言語からいくつか抽出し、構成した造語と言ってもいいだろう。そうやって永遠に過ぎ去った時代とのつながりを感じているんだ。」
EXIMPERITUS は真の意味での密教でした。ゆえにオカルトや古代東洋の神話、そして宗教に対する彼らの魅力を象徴する長い名前を作り上げました。51文字のフルネームは、ラテン語、古代エジプト語、シュメール語、アカカド語をブレンドしたもので、魔法の呪文にも思えます。そうして、歌詞と曲名すべてをベラルーシの古語で綴ったデビュー作 “Prajecyrujučy sinhuliarnaje wypramieńwańnie daktryny absaliutnaha j usiopahłynaĺnaha zła skroź šaścihrannuju pryzmu Sîn-Ahhī-Erība na hipierpawierchniu zadyjakaĺnaha kaŭčęha zasnawaĺnikaŭ kosmatęchničnaha ordęna palieakantakta, najstaražytnyja ipastasi dawosiewych cywilizacyj, prywodziać u ruch ręzanansny transfarmatar časowapadobnaj biaskoncaści budučyni, u ćwiardyniach absierwatoryi Nwn-Hu-Kek-Amon, uwasabliajučy ŭ ęfirnuju matęryju prach Ałulima na zachad ad ękzapłaniety PSRB 1620-26b” はさらに長い文字の羅列も相まって大きな注目を集めたのです。
「英語に訳すと、”センナケリブの六面体プリズムを通した、絶対的で全てを吸収する悪の教義の特異な放出を、宇宙工学的な秩序を持つ古接触の創始者たちの星座弧の超曲面に投影し、前枢軸文明は外惑星PSRB 1620-26bの西側のエーテル物質にアルリムの灰を具現化したヌンフケクアモンの展望台の塔の中で、未来の時間における無限大の共鳴トランスを作動させる” となる。このアルバムは、ピタゴラス、クラウディウス・プトレマイオス、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミコワジ・コペルニク、ジョルダーノ・ブルーノ、フランシス・ベーコン、ガリレオ・ガリレイ、アイザック・ニュートン、そして過去の他の評論家のためのルーツと知識の源に関する論説と言えるだろう。」
重要なのは、これが話題作りの茶番などではなく、すべて魔術、歴史、物理学、神話、哲学といった膨大な知識に裏付けされている点でしょう。同じことは、彼らの音楽にも言えるはずです。巨大な名に恥じない巨大な才能。
EXIMPERITUS のデスメタルは、”テクデス” ラベルの無機質な超技巧バンドというよりは、NILE や ORIGIN, NECROPHAGIST のような怨念と歴史が宿る残忍な英傑との共通点が多いようにも感じられます。リフへの強い拘りがが常にオールドスクールとの繋がりを意識させを感じさせ、東洋的なスケールや中東のイメージでオカルトの神秘や古代のロマンに音及する。予想不可能で広がりのある重音のパルスは、結果として、”テクニカル” でありながら “テクニカル” になりすぎない、舞台劇じみた非常にユニークなデスメタルを創造しています。
そうして2枚目のフルレングス “Šahrartu” で彼らは、残忍さを一切犠牲にすることなく、より多様でメロディックなアプローチへと進化を果たしました。すべては、そのエニグマティックな密教を広く世の中へと解放するため。
リードメロディー、効果的なアコースティックパートで濃密なガテラルとパーカッシヴな重音の魅力を高めた “Utopāda” はその象徴。”Tahâdu” の巨大なグルーヴには不協和とメロディーが同時に散りばめられ、”Anhutu” では伝統からスラムまでデスメタルの壮大を凶暴に抱きしめます。
極めつけは、10分を超える “Inquirad”。ドゥームの遅攻と東洋の神秘を抱きしめながら、アヴァンギャルドなギターの咆哮を交え世界の誕生と死を総括する楽曲は、”Riqûtu” へと続くアンビエントなパッセージで、最早キャッチーともいえる印象的なトランセンドデスメタルの第2章を締めくくるのです。
今回弊誌では EXIMPERITUS にインタビューを行うことができました。「現実としてソ連は崩壊していないし、共産主義者も出て行っていない。だからこそ、この30年の間に、僕たちは以前よりもさらに大きな力で、スターリン主義、全体主義の伝統に立ち返らされてきたんだよ。 」ベラルーシが取り組みはじめた再生とシンクロするかのように、デスメタルを再生するレコード。どうぞ!!

EXIMPERITUS “SAHRARTU” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【Eximperituserqethhzebibšiptugakkathšulweliarzaxułum: Šahrartu】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XOTH : INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH XOTH !!

“We All Were Highly Influenced By Video Game Soundtracks Growing Up. Those Are Some Of The Best Compositions Ever Created In My Opinion.”

DISC REVIEW “INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS”

「全ての偉大なメタルのサブジャンルは明らかだけど、それ以外にもプログ、映画やゲームのサウンドトラック、古き良きロックンロールにパンク、ジャズフュージョン、カントリーのチキンピッキングでさえね!ただ愛する、様々な音楽をミックスしているんだよ。」
HORRENDOUS, TOMB MOLD, GATECREEPER を中心とする OSDM、オールドスクールデスメタル復興の波。REVOCATION, RIVERS OF NIHIL, VEKTOR が牽引するモダンな Tech-death の潮流。
デスメタルの世界は現在、2つの新興勢力が切磋琢磨を重ねつつネクストステージへとジャンルを誘っています。彼らに共通する理念は、偉大な過去の遺産へユニークな独自のフレイバーを注ぎ込み、創造性のレコンキスタを果たしている点でしょう。
そういった観点からシアトルの新鋭 XOTH を眺めれば、彼らが両軍の長所を御旗に掲げる勇敢な十字軍にも見えてきます。
「DEATH は間違いなく、僕たちに多大な影響をもたらしているね。彼らは耳と精神を等しく惹きつけるバンドの素晴らしい例だと思うんだ。」
オープナー “Casting the Sigil” が示すように、XOTH の最新作 “Interdimensional Invocations” には、知性とテクニック、そしてイヤーキャンディーに残虐性を併せ持った DEATH のレガシーが確かに眠っています。
ウルトラメロディックで、ジャズの波動を享受するエクストリームメタル。同時に VOIVOD や CYNIC にも滞留する “耳と精神を惹きつける” 飽くなき SF への挑戦、音楽のフラスコにしても間違いなく XOTH の血肉であるはずです。
「僕の意見だけど、ゲーム音楽の中には、これまでの音楽でも最高のコンポジションを誇るものがあるよ。全員気に入っているのは、オールドスクールなゲームのサントラさ。例えば、魂斗羅、悪魔城ドラキュラ、ロックマン、忍者龍剣伝、ソニック、マザー、スーパードンキーコング、ゼルダの伝説なんかだね。」
とは言え、XOTH の中にも他の新興勢力と同様に際立ったユニークスキルが備わっています。ゲーム/映画音楽のサウンドトラックからのインスピレーションはその筆頭格でしょう。
“Mountain Machines” のファストでファンタジックな未来志向のギターハーモニーは、”F-Zero metal” と称される XOTH の真骨頂。”Plague Revival 20XX” のディストピアな世界観ももちろん、忍者龍剣伝や魂斗羅のイメージとも繋がります。
同時に、”シュレッド” をバンドの心臓に据えた理由にも思えるミュージシャンシップの最高峰 “Back to the Jungle”、VOIVOD のカオスとメロデスのパトスを抱きしめる宇宙誘拐譚 “Unsenn Abductor”、THIN LIZZY のデスメタル “Haruspex”、トレモロやブラストを引き連れた “The Ghost Hand of God” のブラッケンドなアグレッション、そして7分のプログエピック “Melted Face of the Soul” まで、メタル/ノンメタル入り乱れた配合の妙に構築されるコズミックかつミステリアス、マルチディメンショナルで時をかける SF ワールドは XOTH をデスメタルのニューフロンティアへ導くに充分のインパクトを備えているのです。
SUFFOCATION, OBITUARY から THE BLACK DAHLIA MURDER まで手がける Joe Cincotta のスタジオも、過去と未来を繋ぐデスメタルのタイムリープに相応しき地の利となりました。
今回弊誌では、XOTH のメンバー全員にインタビューを行うことが出来ました。「特定のスタイルにきちんと収まらないバンドは最初、リスナーを見つけるのが難しいんだ。だけどね、その時期を超えれば、ユニークな方法論を創造し多くのリスナーを獲得するチャンスが巡ってくるんだよ。」 この曲者感。次の MASTODON を狙える逸材に違いありません。どうぞ!!

XOTH “INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XOTH : INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OBSCURA : DILUVIUM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LINUS KLAUSENITZER OF OBSCURA !!

“I Am Missing Innovation a Lot In The Tech Death Scene. When a New Tech Death Album Comes Out, It’s Mostly a Rip Off Of Something That Was There Before. Actually I Prefer The Term Of “Progressive Death Metal” More. “

DISC REVIEW “DILUVIUM”

哲学するプログレッシブデスメタルの巨塔 OBSCURA は、アルバム4枚にも及んだ悠遠かつ考究のコンセプトサイクルを最新作 “Diluvium” で遂に完結へと導きます。Schopenhauer, Goethe, Schelling といった母国ドイツの哲学者にインスピレーションを得た、実存の真理を巡るコスモジャーニーは “Cosmogenesis” のビッグバンから “Diluvium” で迎える終焉まで生命の存在意義を思慮深く追求し描くのです。
或いは、もはや OBSCURA を “Tech-death” という小惑星へと留めることは烏滸の沙汰だと言えるのかも知れませんね。「僕は Tech-death シーンにはイノベーションがとても欠けていると感じていたんだ。実際、僕は Tech-death というタームより “プログレッシブデスメタル” の方を気に入っているからね。」と Linus が語るように、赤と黒が司る終末の物語は皮肉にもバンドに進化を促す未曾有の翼を与えることとなりました。
変化の兆しはオープニングから顕著です。”Clandestine Stars” でバンドは自らのシグニチャーサウンドである複雑にデザインされたポリリズミックなストラクチャー、ハイテクニック、デスメタルのファストなアグレッションと地を這うグルーヴに、エセリアルなメロディーとアトモスフィアを降臨させることに成功しています。
続く “Emergent Evolution” はより顕著にメロディックでキャッチーなバンドの新機軸を投影します。CYNIC のボコーダーをイメージさせる神秘のコーラスワークは、身を捩る狂おしさとひりつく感傷をまとってリスナーの感情へダイレクトに訴えかけるのです。新加入 Rafael Trujillo のロマンティックで時空を架けるリードプレイも作品のテーマやムードと見事にシンクロしていますね。
「今回、僕は本当にバンド全員が同じだけ “Diluvium” の作曲に貢献したと思っているんだよ。だから当然その事実は多様性へと繋がるわけさ。」と Linus が語るように、ある意味バンドのマスターマインド Steffen が一歩引いて民主化を進めることで “Diluvium” の充実度、多様性は飛躍的に上昇したと言えるのかもしれませんね。
Rafael とドラマー Sebastian が共作した “Ethereal Skies” はその確固たる証でしょう。シーケンシャルなクラシカルフレーズが流麗に冒頭を飾る楽曲は、リズムの実験を交えつつテクニカルにエセリアルに深淵から光を放射し、彷徨える空へと救済をもたらすのです。
ブルータルなグロウルと荘厳なるコーラスのコール&レスポンスはすなわち死と生を表現し、Rafael のストリングスアレンジメントはさながら天空へと続く螺旋の階段なのかも知れません。何より OBSCURA のニューフロンティアを切り開くシンフォニックな感覚、鬼才 V.Santura との共同作業は、瑞々しさに満ちています。
さらに終盤、バンドは “The Seventh Aeon” で OPETH の濃密なプログレッシブを、”The Conjuration” でブラックメタルの冷徹なる獰猛を抱きしめ、拡大する可能性をより深く鮮やかに提示して見せました。特に前者で Linus が繰り広げるフレットレスベースの冒険、陰陽の美学は白眉で、アルバムを通してユニークな OBSCURA サウンドを牽引するリードベースマンの存在感を改めて浮き彫りにしていますね。
アルバムは “無限へのエピローグ” でその幕を閉じます。OBSCURA がこの4連作で培った全ての要素はきっとここに集結しているはずです。救済者で破壊者、宇宙の始まりから見守り続けた神と呼ばれた存在は、そうして恒久にも思われた世界が虚無に飲まれるまでを見届けたのでしょうか。一筋の希望、魂の栄光を祈りながら。
今回弊誌では、シーンきってのベースヒーロー Linus Klausenitzer にインタビューを行うことが出来ました!インタビューには弟の話がありますが、実は彼の父は著名なヴァイオリニスト、指揮者の Ulf Klausenitze で今作にもゲスト参加を果たしています。「アドレナリンが身体中を駆け巡り、その感情をオーディエンスとシェアする瞬間は何物にも変えがたいんだよ。」本誌2度目の登場です。どうぞ!!

OBSCURA “DILUVIUM” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OBSCURA : DILUVIUM】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALKALOID : LIQUID ANATOMY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALKALOID !!

German Extreme Metal Super Group Alkaloid Shows Amazing Musicianship And Creativity With Their Newest Record “Liquid Anatomy” !! Can You Imagine Yes & Rush Mixed With Modern Metal Aggression?

DISC REVIEW “LIQUID ANATOMY”

テクニカルデスメタルの牙城、ドイツに惹起する維新の兆し。千軍万馬の猛者が締盟したプログレッシブの絆 ALKALOID は、最新作 “Liquid Anatomy” で天壌の宇宙から中毒性のマイクロウエーブを発します。
ALKALOID ほどスーパーバンドの表現が相応しい音楽集団はそう多くはないでしょう。これまでメンバー5人がかかわってきたバンドは、DARK FORTRESS, NONEUCLID, SPAWN OF POSSESSION, OBSCURA, NECROPHAGIST, ABORTED, GOD DETHRONED, BLOTTED SCIENCE と文武両道の精鋭ばかり。
中でも、「僕たちが NECROPHAGIST と OBSCURA で始めたことを今では無数のバンドがやっているんだ。」と語る通り、局所性ジストニアによる中指の不遇をも覆す不屈のギターマエストロ Christian Muenzner、新たに HATE ETERNAL にも加入したギターとピアノを操るドラムユーティリティ Hannes Grossmann のかつての音楽的なアイデアが、現在の包括的な Tech-metal への崇高なるインスピレーションとなっていることは明らかですね。
とはいえ、「僕たちは新たなバンド、プロジェクト、アルバムの度に自分たちを”再発明”するようにしているんだよ。特定のスタイルに執着してしまわないようにね。」と Christian が語るように、 ALKALOID は定型化したテクデスの様式、さらには傑出したデビュー作さえ過去の時空へと置き去りにしながら、RIVERS OF NIHIL, IHSAHN, HAKEN, GHOST ともシンクロするクラッシックなプログのスピリットを昇華した新たなメタルの潮流に身を委ねているのです。
アルバムオープナー “Kernel Panic” こそ進化の象徴。ヴィンテージのシンセサウンドに導かれ、滔々と湧出するシーケンシャルなギターフレーズはまさに YES や RUSH の遺伝子を色濃く宿す鮮やかな落胤。DARK FORTRESS 等で残虐な威厳を浴びせる Morean は、驚くことにその歌唱を Jon Anderson のチャンネルへと接続し、神秘的でキャッチーなロックの崇高美を具現化していくのです。
イーヴィルなディストーションサウンドは変調の証。ナチュラルに獰猛なモダンメタルの領域へとシフトする、一体化したバンドの猛攻は衝撃的ですらありますね。一転、再びプログの多幸感が再臨し、時に相反する二つの次元が融解。TOOL と CYNIC、一方で YES と VAN HALEN が楽曲の中で流動し躍動する “In Turmoil’s Swirling Reaches” にも言えますが、ALKALOID の振るう奇想天外なタクト、コントラストの魔法は実際群を抜いています。
そして先述したバンドと同様に、クラッシックとコンテンポラリー、荘厳と嗜虐、ポップと知性の狭間を自由自在に行き来するこのシームレスなアイデアは、確かに多様なモダンプログレッシブの根幹を成しているはずです。ただし、ALKALOID のプログレッシブには特に “90125” や “Signals” など80年代の風を受けた独特の色香も存在しますが。
MORBID ANGEL と MESHUGGAH が同乗する重戦車 “As Decreed by Laws Unwritten”、トライバルで複雑なリズムに呪術と叙情のボーカルが映え GOJIRA の理念ともシンクロする “Azagthoth” でブラックホールの物理現象を追求した後、バンドはタイトルトラック “Liquid Anatomy” でさらに新たな表情を披露します。
実際、これほど感動的で心を揺さぶるバラードと、エクストリームメタルのレコードで出会えるとは僥倖以外何者でもないでしょう。GENESIS や PORCUPINE TREE の叙情、クラッシックや教会音楽のスピリットをダークに消化した荘厳の極みは、感情の波間を悲哀で染め抜きます。
アルバムを通して言えますが、特にこの楽曲で聴くことの出来る Christian のエモーションとテクニック全てを楽曲のためだけに捧げた神々しきソロワークは、最後の “ギターヒーロー” を誇示して余りある激情とスリルに満ちていますね。
アルバムを締めくくるは20分のラブクラフトモンスター、6つの楽章から成るエピック “Rise of the Cephalopods” は ALKALOID 版 “2112” もしくは “Cygnus X-1 Book II: Hemispheres” なのかも知れませんね。プログロックの構成美、モダンメタルの複雑なグルーヴ、モダンプログの多様性にアトモスフィア。全てがここには存在します。現存の南極大陸を葬り、頭足類が進化を遂げる “If” の SF ストーリーは、実はシーンと自らの立ち位置を密かに反映しているのかも知れませんね。
今回弊誌では、Morean, Hannes, Christian の3名にインタビューを行うことが出来ました。 NECROPHAGIST や OBSCURA についても重要な証言が飛び出したと思います。「Hannes がアルバムのいくつかの瞬間で “90125” の時代を超越したサウンドに近づいたという事実は、彼がそれを意図しているのかいないのかに関わらず、エンジニア、プロデューサーとしてのスキルに対する大きな賛辞だよ。 1983年に彼らが成し遂げたサウンドを超えるものは、今日でもほとんどないからね。」どうぞ!!

ALKALOID “LIQUID ANATOMY” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALKALOID : LIQUID ANATOMY】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERS OF NIHIL : WHERE OWLS KNOW MY NAME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM BIGGS FROM RIVERS OF NIHIL !!

27629412_10155570961834317_1067238401963773275_o

Pennsylvania Based Progressive Death Metal Quinted, Rivers Of Nihil Contribute To Re-branding Death Metal Into A Eclectic, Expressive Art-form With Incredible New Record “Where Owls Know My Name” !!

DISC REVIEW “WHERE OWLS KNOW MY NAME”

遂に食物連鎖の頂点へと躍り出たペンシルベニアの梟神 RIVERS OF NIHIL が、深遠かつエクレクティックなプログレッシブデスメタルへとドラスティックな変貌を果たす傑作 “Where Owls Know My Name” をリリースしました!!生と死、そして知性を司る伝承の神明は、猛禽の鋭さと神々しきアトモスフィアでシーンの潮流を支配します。
テクニカル、メロディック、デスコア、ブルータル。雨後の筍のごとく現れるデスメタルアクトの大半は、エモーションのスペクトルを怒りに起因する狭い領域へとフォーカスし、ある意味では檻の中で固定観念と共に囚われているようにも思えます。
「この作品では、僕たちが期待されているようなサウンドを放棄した。」と Adam が語るように、RIVERS OF NIHIL が “Where Owls Know My Name” で達成した偉業は、真にユニークな感性で鋼鉄の慣習から羽ばたいたその勇気にあると言えるでしょう。
多様で創造性に満ち、複雑でしかし凄艶な星の一生を目撃するサイエンスフィクションは、数年前に FALLUJAH がアトモスフィアと共に導入したジャンルのパラダイムシフトをも超越し、さらに時空を行き来するタイムマシンなのかも知れませんね。
アルバムオープナー “Cancer / Moonspeak” は来たるべき運命、旅路のムードを決定づけます。まるで CYNIC のような浮遊するアンビエントは、アコースティックの響き、レトロなシンセ、ムードに満ちたクリーンボイスを伴ってリスナーを深遠なるストーリーへと誘います。
刹那、雷鳴のように鋭利なギターリフが轟くと雰囲気は一変。革命的な “The Silent Life” がスタートします。揺るぎのない無慈悲なアグレッションとインテンスは、徐々に理知的なギターと官能のサクスフォンが支配するスロウなジャズブレイクへと転換していきます。その変化は驚くほどにナチュラルでオーガニック。そうして静と動、混沌と平穏のコントラストは終盤に向けて奇跡の融解を遂げるのです。まるで人生本来の姿を描くかのように。
CANNIBAL CORPSE と KING CRIMSON が果たした未知との遭遇。例えることは容易いですが、実際、獰猛な猟奇性と神々しき英知を寸分も失うことなく一つのサウンドクラフトに収めることがどれほど困難かは想像に難くありません。何より彼らのデザインはあまりに自然で、神々の創造物のように生き生きとした姿を晒しているのですから。
厳かなクリーンボーカルを導入し、モダンなメロディックデスメタルにサイケデリックな夢幻のアトモスフィアを付与した “A Home”、激烈なアサルトに一片の叙情を込めて老衰の無常を伝える “Old Nothing” を経て辿り着く “Subtle Change (Including the Forest of Transition and Dissatisfaction Dance)” はアルバムのハイライトだと言えるでしょう。
“Epitaph” を思わせる悲壮なアコースティックをイントロダクションに据えた8分30秒のエピックは 「KING CRIMSON は僕のオールタイムフェイバリットバンドなんだよ。」と Adam が語る通りクラッシックなプログロックの息吹を全身に宿した濃密な叙情のスロウダンス。ソフトでエレガントな繊麗と、野蛮で蒼然としたアグレッションは、ギターやサクスフォン、オルガンのトラディショナルで大胆ななソロワーク、プログロックのダイナミックな変拍子やシーケンスを抱きしめながら、詩情と偉観そして奇妙なカタルシスを伴って文明の移り変わりを描く壮大なマグナムオパスを形成するのです。
一方でこの大曲には、djenty なリフワークやシンフォブラックの狂騒などコンテンポラリーな一面も散りばめられており、幽玄なクリーンボイスが創出する崇高美とも相俟って、もしかすると NE OBLIVISCARIS が纏う神秘ともシンクロしているのかも知れませんね。
続くインストゥルメンタル “Terrestria III: Wither” では、情景を切り取るポストロックのデザインを導入し、コンテンポラリーなエレクトロニカやアンビエント、インダストリアルノイズのキャンパスに冷徹かつ耽美な絵巻物を描いてみせるのですから、バンドのエクレクティックな感性、タイムラインの混沌には驚かされるばかりです。
アルバムは、バンドの審美を全て詰め込んだタイトルトラックで再度サクスフォン、ヴィンテージシンセ、クリーンボイスの温もりを呼び起こし作品のコアを認識させた後、ダークなギターがメロトロンの海を切り裂く “Capricorn / Agoratopia” で荘厳にリリカルに、一握りの寂寞を胸に秘め星の死を見届けながらその幕を閉じました。
今回弊誌では、ベース/クリーンボーカルを担当する Adam Biggs にインタビューを行うことが出来ました。まさにメタルとプログのタイムラインに交差する異形のランドマーク。モダン=多様性とするならばこの作品ほど “モダン” なスピリットを抱いた奇跡は存在しないでしょう。ex-THE FACELESS の Justin McKinney、BLACK CROWN INITIATE の Andy Thomas もゲストとして素晴らしい仕事を果たしています。どうぞ!!

29512579_10155704433204317_8025556343368814659_n-2

RIVERS OF NIHIL “WHERE OWLS KNOW MY NAME” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERS OF NIHIL : WHERE OWLS KNOW MY NAME】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AUGURY : ILLUSIVE GOLDEN AGE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATHIEU MARCOTTE OF AUGURY !!

26756898_10156548686826030_1455210049241378694_o

Augury Give Proof Why Montreal, Quebec Is The Prog/Tech Capital Of The Western Scene With Long-awaited New Record “Illusive Golden Age” !!

DISC REVIEW “ILLUSIVE GOLDEN AGE”

CYNIC の後には、そして BEYOND CREATION の前には彼らが居た。OBSCURA と共にテクニカルデスメタルのプログレッシブサイドを探求し先導し続けるカナダの SF メタル集団 AUGURY が実に9年振りとなる新作”Illusive Golden Age” をリリースしました!!
“黄金時代” が “幻” ではないことを確かに証明する一枚は、テクデスの燎火を明々と灯す躍動感に満ちています。
カナダが誇るモントリオールとケベックの二大都市は、テクニカルデスメタルのメッカだと言えます。GORGUTS, CRYPTOPSY に端を発するその潮流は、MARTYR, BEYOND CREATION などに引き継がれ、近年の “Stay-Tech” メタルマシーン ARCHSPIRE まで脈々と連なります。
中でも、AUGURY の宿すエモーションと有機的なサウンド、クリエイティビティーはジャンルの無慈悲でメカニカルな特性を超越し、明らかに異彩を放っているのです。
9年の沈黙を破るアルバムオープナー “Illusive Golden Age” は風雲児たるバンドの型破りな一面が存分に示された戦慄。このジャンルの定番であるシンフォニックなイントロダクションや、ファストな音の洪水には脇目も振らず、独特のエスニックなスケールとクリーンギターのアクセント、そしてフレットレスベースの浮遊感が奏でるユニークな三重奏こそ彼らの狼煙。
神秘と孤高のメロディーセンス、空間を残したミッドテンポのリフワークは襲い来るヒステリックで噛みつく牙のボーカルとブラストの狂気を際立たせ、ダーティーに歌うSFの奇妙なワルツへと収束して行きます。失われた文明と知識を探るリスナーの旅は、得体の知れない未知なるエキサイトメントでその幕を開けるのです。
ステレオタイプのテクニカルデスメタルからさらに距離を置いた “Carrion Tide” はバンドの緻密なタクティクスを象徴する楽曲かも知れませんね。メタルリスナーにまるで施しを与えるかの如く付与されたブラッケンドのアグレッションは、AUGURY の持つ個の力によって様々なエモーションへとその形を変えて行きます。
ディープなガテラルからヒステリックなスクリーム、ミドルレンジの雄々しきクリーンまでメタルボーカルのショウケースにも思える Patrick Loisel のワイドな才能は移り行く喜怒哀楽を完璧なまでに表現し、起伏に富んだ楽曲のメインパーソナリティーとして君臨します。
ギタリスト Mathieu Marcotte の DEATH や CYNIC に VOIVOD、さらには OPETH や EMPEROR の遺伝子を受け継ぐ複雑でスリリングなリフの猛攻は、カタストロフィーが眼前に迫るかのような錯覚を引き起こし、ex- BEYOND CREATION の怪物 Dominic “Forest” Lapointe はフレットレスベースの酩酊でサイケデリックな静謐の焼け野原を描くのです。
MESHUGGAH と CYNIC が凌ぎを削る “Mater Dolorosa”、ゲーム音楽の影響を感じさせるサイバーなインストゥルメンタル “Message Sonore” を経て辿り着く、最長8分の “Anchorite” でアルバムはその幕を閉じます。
“Anchorite” とは、抗し難い理由で社会や故郷を離れ一人で暮らす宿命の意。もしかするとそれは、大災害で滅びし失われた文明最後の生き残りだったのかも知れません。焦燥と惜別、そして寂寥感を込めた過去からのメッセージは、メランコリーとアンビエンス、そしてアグレッションが渾然一体となったオデッセイ。
最高のミュージシャンシップで「異なる感覚を持って独自のサウンドを築き上げた」AUGURY の神話は、そうしてさざめく波の音と共に自然の元へと帰って行きました。
今回弊誌ではバンドの中心人物 Mathieu Marcotte にインタビューを行うことが出来ました。「個人的には確かにテクデスを聴いてはいるんだけど、そのスタイルからそんなに多くの影響を受けている訳ではないからね。逆に言えば、そうでなければ同じ様なサウンドになってしまうからね。 」リリースは DARK MATTER SECRET, EQUIPOISE, INFERI 等を抱える超注目株 The Artisan Era から。どうぞ!!

29594613_10156794749481030_8281508778133795329_n-2

AUGURY “ILLUSIVE GOLDEN AGE” 9.8/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AUGURY : ILLUSIVE GOLDEN AGE】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SLUGDGE : ESOTERIC MALACOLOGY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATT MOSS OF SLUGDGE !!

14691247_923037787829249_3806283631659252224_o

Mollusk-themed Tech Death King, Slugdge Has Just Released Their Most Adventurous, Complex And Progressive Album Yet, “Esoteric Malacology”!!

DISC REVIEW “ESOTERIC MALACOLOGY”

イングランドとスコットランドの稜線より這い出し軟体動物王 SLUGDGE が、カウンターカルチャーとしてのメタルを存分に追求した “深遠なる軟体動物学” “Esoteric Malacology” をリリースしました!!
メタルの狂騒と尊厳を等しく抱きしめ、ドラマ性と知性を高次元で融合させた独創的なレコードは “メタルの進化” を雄弁に物語ります。
「ヘヴィーメタルはアウトサイダーのための音楽さ。君たちが愛していようが嫌悪していようが、カウンターカルチャーとして永遠に存在し続けるんだ。」と Matt が語るように、SLUGDGE のはヘヴィーメタルのジョークにも思える過度なファンタジーや想像力を敢えて前面に押し出しながら、シリアスかつハイクオリティーなサウンドをデザインすることでアウトサイダーとしての矜持を保つ以上の存在感を発揮していると言えるでしょう。
“Esoteric Malacology” も、当然その彼らの流儀に乗っ取って制作されたレコードです。楽曲はバンドのビッグテーマである “カタツムリ” “ナメクジ” その他軟体動物に捧げられ、歌唱やリフの持つ莫大なエネルギーで軟体動物の神々を祝福しています。
そして、ギミックにも思えるその大袈裟で奇想天外な劇画的手法は、例えば CANNIBAL CORPSE がそうであるように、キラーでシリアスな楽曲を伴うことで異端の享楽を宿す巨大なカタルシスを誘うこととなるのです。
GOJIRA の楽曲 “Esoteric Surgery” へのオマージュにも思えるアルバムタイトルは、確かにフランスが生んだ不世出のプログレッシブメタラーへの接近を示唆しています。そして、”The Spectral Burrows” が “The Way Of All Flesh” の息吹を胸いっぱいに吸い込んだ傑出したプログメタルチューンであることは明らかでしょう。
EDGE OF SANITY の “The Spectral Sorrows” を文字ったに違いないドラマティックなエピックは、複雑かつ重厚なテクスチャーがテクニックの荒波に跋扈する濃密な5分50秒。荘厳でしかし闇深きそのアトモスフィアは、聴く者の脳波を直接揺さぶり音の酩酊へと誘います。
比率の増した神秘のクリーンボーカルは絶妙のアクセント。ENSLAVED に備わった全てを洗い流すかのような神々しさとは異なり、混沌も崇高も全てを包括したダークロード “Mollusa” への捧物、破滅的にキャッチーなその調べは、異世界への扉を厳かに開く確かな “鍵” として機能しているようにも思えます。
軟体動物の柔軟性を活かした “Putrid Fairlytale” は SLUGDGE を象徴するプログレッシブデスメタル。NAPALM DEATH の “Lucid Fairytale” をオマージュしたタイトルからは想像もつかない劇的なドラマが繰り広げられています。
ここまで記して来た通り、”Esoteric Malacology” の楽曲タイトルは偉大な先人たちの足跡に対するオマージュとなっています。 “War Squids” は BLACK SABBATH の “War Pigs”、”Slave Goo World” は SEPULTURA の “Slave New World”、”Transilvanian Fungus” は DARKTHRONE の “Transylvanian Hunger” 等。そして “Putrid Fairlytale” にはそういった彼らが愛する様々なジャンルのメタルが触手で繋がり凝縮されているのです。
プログの色合いを帯びた鋭利なリフワークと相対するブラストビート。一方で、粘度の高いミッドテンポのグルーヴと荘厳なるボーカルメロディー。繊細かつ印象的な電光石火のギターシュレッドを極上の味付けに展開する魅惑のテクデスオデッセイは、Matt が語る “ヘヴィネスの秘密” を見事に体現しながらまさにバンドが理想とするメタルを描き出していますね。
スロウでドゥーミー、ロマンチックとさえ言える “Salt Thrower” で塩に溶けゆくナメクジの悲哀を全身で表現した後、アルバムは “Limo Vincit Omnia” でその幕を閉じます。ラテン語で “スライムは全てを征服する” の意を持つエネルギッシュなナンバーは、「メタルが進化し続けるためには影響の外側から新たなアイデアを取得する必要があるように感じるね。」と語る通りエレクトリックなサウンドまで包括し、意義深き実験と学問の成果を誇らしく報告しています。
今回弊誌では、バンドのギター/ボーカル Matt Moss にインタビューを行うことが出来ました。ギタリスト Kev Pearson とのデュオでしたが、インタビュー後に THE BLACK DAHLIA MURDER のドラマー Alan Cassidy と NOVENA の ベースマン Moat Lowe が加わり完璧すぎるラインナップを完成させています。どうぞ!!

a1718888280_10-2

SLUGDGE “ESOTERIC MALACOLOGY” : 9.8/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SLUGDGE : ESOTERIC MALACOLOGY】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORIGIN : UNPARALLELED UNIVERSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PAUL RYAN OF ORIGIN !!

Origin-Band-Photo-Spring-2017

The Originatior Of Technical Death Metal From Kansas, Origin Introduces Blasting Metallic And Technical Chaos With Their Newest Record “Unparalleled Universe” !!

DISC REVIEW “UNPARALLELED UNIVERSE”

テクニカルデスメタルの 象徴にして “起源”。貫禄と威信の US フォーピース ORIGIN が、バンドの宇宙を拡充する新作 “Unparalleled Universe” をリリースしました!!コントラストや政治性という新要素にフォーカスした作品は、まさしく “未曾有の” 第二章の幕開けを告げています。
ORIGIN は1997年に結成され、今年20周年を迎えたデスメタルのイノベーター。鬼神のようなハイテクニックと、獰猛なるブルータリティーを共存させた “ニュースクールデスメタル” の筆頭格だと言えるでしょう。「今日のキッズは色々なラベルをデスメタルに加えているね。ただ、僕は ORIGIN こそがデスメタルのサウンドを変えたと強く感じているんだよ。」 と語る孤高のギタープレイヤー Paul Ryan の言葉には、例えば DYING FETUS, NECROPHAGIST, VITAL REMAINS NILE などと共にシーンを牽引してきた当事者だからこその凄みとリアリティーが内包されています。
バンドとして初めて前作と同様のメンバーで制作した “Unparalleled Universe”。しかしフックに欠けるなどとの意見もあった前作 “Omnipresent” とは対照的に、ORIGIN の新たなる “比類なき世界” は魅力的なアイデアとリピートを誘うフックに満ちた実に創造的なレコードとなりました。
異世界のスイーピングで幕を開けるアルバムオープナー、”Infinitesimal to the infinite” は ORIGIN の残虐性が未だに一級品であることを伝えます。圧倒的な音の密度と生まれくるカオスは “無限に” リスナーの聴覚を襲い、参加2作目となるボーカル ex-SKINLESS の Jason Kayser も前作より遥かに堂にいったグロウルを披露しています。
何より、メカニカルかつファストな楽曲を牽引する超人 John Longstreth の、Flo Mounier にも比肩し得るスピードと正確性はバンドのストロングポイントとして強い光彩を放っていますね。
“Cascading Failuers, Diminishing Returns” はバンドが新たな領域へと進出した確かな証です。インタビューで、初期のアルバムをアクション映画に例えたバンドが “Unparalleled Universe” で見せつけたのは、抜群のインテリジェンスと多様な構成力でした。
無慈悲なブラスト一辺倒ではなく、起伏に富んだテンポコントロールで予想もつかない展開を構築するリズムセクション。シュレッドを効果的に盛り込みながら、時に激烈に、時にメロディアスに攻め立てるギターアンサンブル。トラディショナルなテクニカルデスメタルのように、音符を詰め込むだけの方法論では決して辿り着けない境地がここには存在しています。楽曲終盤に見せるアトモスフェリックとさえ表現可能な壮美で幽玄なムードは、まさにそれを象徴していると言えるでしょう。
“Invariance Under Transformation” はバンド史上最もスロウな楽曲かも知れません。グルーヴィーなベースラインと冷酷なまでに難解なパーカッションに刻まれるギターリフは、CANNIBAL CORPSE や SUFFOCATION を想起させるほどにプリミティブでオールドスクール。全てがタイトに一体化したバンドのパフォーマンスは、ブラックホールの質量を纏ってリスナーに激越なグラビティーの洗礼を浴びせます。
“Burden of Prescience” にも言えますが、地獄の罰 “火盆処” の如くジリジリと骨の髄まで焼き尽くすようなローテンポで、しかし重厚な責め苦のサウンドスケープは、バンドのファストな王道と見事にコントラストを描き、ORIGIN の新たなるトレードマークを誕生させているのです。
「現在のアメリカ政治がいかに厄災であるかを顧みれば、政治的な楽曲を収録する正しいタイミングだと感じたんだよ。僕は自分の国を恥ずかしく思っているんだ。」 これまで政治的なオピニオンを決して楽曲には取り入れてこなかったバンドを触発したのがトランプ政権であることは明らかですし、”ろくでなしの政府、全ての革命を目覚めさせる” と歌った BRUJERIA のカバー “Revolución” はまさに ORIGIN の主張を見事に代弁した楽曲だったのでしょう。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド Paul Ryan にインタビューを行うことが出来ました!「最近のキッズは CD に合わせてプレイしているけど、僕たちは全くそんなことはしないよ。」 痺れます。どうぞ!!

18485645_10154764206899037_1562780883955892576_n-2

ORIGIN “UNPARALLELED UNIVERSE” : 9.6/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORIGIN : UNPARALLELED UNIVERSE】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OBSCURA : AKROASIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEFFEN KUMMERER & LINUS KLAUSENITZER OF OBSCURA !!

1415312_10153821309783545_2095330542179876058_o

German Tech-Death master OBSCURA is back with new members and new sounds ! Incredible new record “Akroasis” gives you thought-provoking lyrics and maelstrom of technicality!!

DISC REVIEW “AKROASIS”

ドイツのテクデスマスター OBSCURA がメンバーチェンジを経て傑作 “Akroasis” と共にシーンに帰還を果たしました!!
テクデスシーンの中でも屈指のロースターを揃えた OBSCURA は、そのコスミックな世界観、メロディックでありながら複雑なリフワーク、そして CYNIC や DEATH からの遺産を感じさせる音楽性でデビューから常に注目の存在でした。しかし、前作リリース後、Christian Muenzner, Hannes Grossmann という作曲にも大いに貢献していたテクニシャンたちが脱退。バンドはしばらくの沈黙を余儀なくされていたのです。
2014年、待望の復活がアナウンスされた OBSCURA は当初、新メンバーとして、PANZERBALLETT などで知られる Sebastian Lanser と、フレットレスギターを操るFountainhead こと Tom Geldschläger がクレジットされていました。しかし、Tom は、”Akroasis” ではプレイしているものの、短期間で脱退してしまい、現在は Rafael Trujillo が加わっています。また、Linus もバンドに加入したのが2011年9月ですからフルアルバムに参加するのは初となりますね。
2ndアルバム “Cosmogenesis” と、前作 “Omnivium” は疑うまでもなく、テクデスシーンに名を残す名盤でした。ジャズからの影響も感じさせる、フレットレスベースを使用したメロディックで浮遊感溢れるその音楽性は、モダンなテクデスバンドたちのカウンターパートとして、モダンメタルシーンで純然たる存在感を発揮していましたね。ただ同時に、強烈なアグレッションの裏返しとしてバラエティーに欠けていたのも事実。
Linus がインタビューで言及している通り、”Akroasis” は静と動、メロディーとアグレッションという対比が生み出す、ダイナミズムに溢れた作品に仕上がりました。以前よりも瞑想的でさらに思慮深い、クリーンギターさえ多用したプログレッシブなサウンドが印象的で、テクデスシーンのトレンドセッターとなる可能性を孕んでいます。
アルバムオープナー “Sermon of the Seventh Suns” はクラシカルな OBSCURA サウンドに新要素を少し加えた、ファンへの招待状のような楽曲。Fountainhead のメロディアスでありながら奇抜な、フレットレス特有の浮遊感を含んだソロワークが非常に耳を惹きます。”Ten Sepiroth”, “Perpetual Infinity” といった楽曲でも強烈なリードを聴かせる彼のプレイは作品の顔の1つとなっており、脱退は残念に思えます。インタビューからも分かりますが、やはり音楽性の違いと言うよりも人間関係が原因だったのではないでしょうか。
“Ode to the Sun” を聴けば、彼らの進化やアルバムのテーマが伝わるでしょう。”Akroasis” を象徴するような1曲は、新ドラマー Sebastian Lanser の見事なオーケストラパーカッションの上に成り立っています。CYNIC を想起させる、ヴォコーダーを使用したメロディアスな歌唱が、マンモスのようにヘヴィーなギターリフ、グロウルのカウンターとなり実に際立っています。パーカッションとクワイアが導くクライマックスの扇情力は圧倒的ですね。
同様に、15分の壮大なエピック、”The Weltseele” も実にプログレッシブ。冒頭で美しいアルペジオに絡みつく Linus のフレットレスベースは暖かく印象的で、アルバムを通して言えるのですが、前作までとは比較にならない程効果的です。インタビューで今回のテーマの1つがポリリズムだと語ってくれましたが、この楽曲では特に、Sebastian のエスニックなグルーヴを基にしたポリリズミックなアプローチが素晴らしく、MESHUGGAH / Djent の方法論とはまた別の彼ららしいやり方を見せつけていますね。静と動の対比もまたアルバムのテーマですが、異国感漂うオーケストラサウンドを大胆に導入した “The Weltseele” にはストリングスのみの美麗なパートまで存在し、新しい OBSCURA をアピールしています。
また、既に CYNIC の名を挙げましたが、タイトルトラックや “Fractal Dimension” のように DEATH を想起させる場面も多く、凄みを増した Steffen のダークでディープな歌唱はあの Chuck Schuldiner をさえ彷彿とさせますね。Steffenが完璧に近いと語る、V. Santura のプロダクションも作品をさらに1段上に引き上げていることを重ねて記しておきましょう。
今回弊誌ではバンドの要である Steffen Kummerer, Linus Klusenitzer 2名にインタビューを行うことが出来ました。重要な作品、重要なインタビューだと考えています。どうぞ!!

11222800_10153724746168545_4250028125484227405_n

OBSCURA “AKROASIS” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OBSCURA : AKROASIS】