EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH OLLE NORDSTROM OF ALLT !!
“Hiroshima And Nagasaki Were The Starting Points For Our Research When Writing This Album. We Can’t Even Begin To Imagine The Horrors The Victims Experienced.”
DISC REVIEW “FROM THE NEW WORLD”
「メタルのコアなジャンルを掘り下げた後、2012年にデビュー・アルバムをリリースした VILDHJARTA を知ったんだ。彼らのサウンドはそれまで聴いたことのないものだった。僕の作曲にも音楽の好みにも大きな影響を与えたよ。彼らはモダン・メタルにおけるランドマーク的なバンドだよ」
2010年代にあれだけ一世を風靡した Djent は死んだのでしょうか?いえ、そんなことはありません。Djent のリフエイジやポリリズミカルなダンス、そして多様性や DIY の哲学はあのころ、Djent を崇め奉っていた若者たちの楽曲に今も息づいています。
2020年にスウェーデンのカールスコガにて結成された ALLT は、音楽で物語を語るストーリーテリングの能力と、機械的でありながら有機的という革新的なアプローチですぐに頭角を現しました。その名の通り “ALLT (All) is Everything” ジャンルを超越したメタルコアの煌めきは、フランス&ノルウェーの連合軍 MIRAR と双璧をなしていますが、驚くべきことに両バンド共にその心臓には VILDHJARTA の奇跡が眠っています。そう、美しいメタルは決して一夜にして築かれることはありません。そこには必ず、過去からの学びやつながりがあるのです。
「広島と長崎は、このアルバムを作る際のリサーチの出発点だった。犠牲者が経験した恐怖は、僕たちには想像することさえできないよ。石に刻まれた “人影の石” のような悲しみを知ることで、とても悲劇的なイメージが鮮明になり、1曲目の “Remnant” の歌詞になったんだ。 “死の人影、悲劇のシルエット” としてね。このようなテーマについて書くことは、僕たちに感情の解放や浄化を与えてくれる。そして、僕らと共にリスナーにもこうしたテーマを探求する機会を与えられたらと願う。僕たちは、犠牲者とその家族に対する深い尊敬の念を持ってこの曲に取り組んだんだ」
まさに “新世界より” 来たる “From The New World” は、荒廃の中に自己を発見する、綿密に作られた音楽の旅。世界の緊張と恐怖にインスパイアされたこの旅路は、核兵器による崩壊と回復、そしてその後に続く感情的で哲学的な風景をテーマにしています。そしてその創作の道のりで、ALLT は日本を物語の源泉に据えたのです。
そのタイトルが表すように、”From the New World” は日本から生み出された小説、アニメ “新世界より” に啓示を受けて生み出されました。そこでは、核兵器並みの暴力サイコキネシスによって滅んだ世界と、そのサイコキネシスを徹底した情報管理とマインドコントロールによって抑えた暴力のない新世界が描かれていました。ALLT はその物語を、核の脅威にさらされた現代と照らし合わせます。
機械的なサウンドと有機的なサウンドは自ずと融合し、荒廃と、その余波の中で生き続ける生命の静かな美しさ両方を呼び起こします。電波の不気味な質感から膨大な計算能力を持つ巨大な機械まで、あらゆるものを模倣した広がりのあるシンセ、ダイナミックなインストゥルメンテーション、パワフルなボーカル、そしてオーガニックな質感がこの音楽にリアリティを根付かせました。そうして彼らがたどり着いたのが、広島と長崎でした。
「僕の経験では、メタルは常に人々が暗闇に立ち向かい、カタルシスを見出すことのできる空間だった。メタルのコミュニティは一貫してファシズム、人種差別、不平等を拒絶してきた。メタルは、人々が最も深い感情を表現し、同じ感情を持つ人々とつながることのできる空間なんだよ。アーティストが真実を語り、境界線を押し広げ続ける限り、ポジティブな変化への希望は常にあると思う」
ALLT は “人影の石” に恐怖し、人の憎悪や暴力性が生み出す悲劇や不条理に向き合いました。それでも彼らは人類を諦めてはいません。なぜなら、ここにはヘヴィ・メタルが存在するから。一貫して人類の暗闇に立ち向かい、魂の浄化を願ってきたヘヴィ・メタルで彼らは寛容さ、優しさ、多様性、平和で世界とつながることを常に願っています。混沌とした世界でも、メタルが真実とポジティブなテーマを語り続ける限り、一筋の巧妙が消えることはないのですから。
今回弊誌ではギタリスト Olle Nordstrom にインタビューを行うことができました。「フロム・ソフトウェアと宮崎英高が創り出す世界には本当にインスパイアされているんだ。彼のゲームやストーリーは、僕が ALLT のリリックでストーリーを創り上げていく方法の大きなインスピレーションになっているんだ。アルバムのタイトルも、僕の大好きなアニメのひとつ “新世界より” から拝借したんだ。”エヴァンゲリオン” からも、そのスケールの大きさと想像力に深くインスパイアされているね。10代の鬱屈した時期に観て以来、あらゆる媒体の中で最も影響を受けた作品のひとつになったよ」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SIDHARTH KADADI OF ZYGNEMA !!
“I Was Deeply Connected And Impressed With a Steve Vai Track Titled Blood And Tears Since I Was a Teenager. It Has Carnatic Vocals With Electric Guitar And It Still Gives Me Goosebumps Whenever I Hear It.”
“Balenciaga Or Moschino Are Great Examples In Fashion For Being Incredibly Technical Clothing That Doesn’t Take Itself Too Seriously. That’s Really What We Want The Most In Music, To Connect With People.”
“When We Came Up With The Band Name, We Did Have a Video Game Main Menu Screen Running In The Background. So Yeah, The Name Really Came From That Whole Idea Of Pressing a Button To Enter a Virtual World.
DISC REVIEW “FROM MIRROR TO ROAD”
「実はバンド名を考えていたとき、後ろでビデオゲームのメインメニュー画面が開いていたんだ。だから、ボタンを押せば、ワクワクするようなバーチャルな世界に入れるという発想がバンド名の由来になった。僕らの場合、その世界は音楽のサウンドスケープなんだけどね」
ビデオ・ゲームで育った世代なら、”Press Enter” の文字を見るだけで血湧き肉躍るに違いありません。カートリッジを装着して、未知なる冒険へと繰り出すその入り口こそ、”Press Enter” なのですから。ゲームの中で私たちは、いつも無敵で全能でした。
同様に、未知なるバンドの始まりのリフやメロディが天高く、もしくは地響きのようにアルバムの幕開けを告げる瞬間はいつもワクワクするものです。どんな音がするのだろう?想像を絶するスリルやサスペンス、もしくは狂気はあるのだろうか?歌われるのは希望?それとも絶望?内なる五感を熱くさせるのだろうか?…おもちゃ箱をひっくり返したようなデンマークのプログレッシブ・トリオ PRESS TO ENTER は、そのワクワク感、ロックやメタルの全能感を何よりも大事にしています。
「HAKEN の “1985” という曲と、彼らが現代のプログレッシブ・ミュージックに80年代のサウンドを使っていることにすごくインスパイアされたんだ。それに、Dua Lipa はそういったオールドスクールなサウンドをとてもうまく料理して、新しい新鮮な方法で使っている。面白いことに、僕たちは80年代に直接インスパイアされるというよりも、80年代にインスパイアされたサウンドを使う現代のアーティストに影響を受けているんだと思う」
PRESS TO ENTER の音楽には、ゴージャスで全能感が宿っていた80年代の世界から飛び出してきたような高揚感と華やかなポップネスが蔓延しています。ただし、彼らのアルバム “From Mirror to Road” はただ過去の焼き直しではなく、モダンな Djent のセオリーや洗練されたプロダクション、ネオ・ファンクやネオ・フュージョンのグルーヴ、それに21世紀の多様性を胸いっぱいに吸い込んだごった煮の調理法で、独自の個性と哲学をデビュー作から披露していきます。あの ARCH ECHO 肝入りの才能に納得。
「私は不安症と身体的苦痛障害と呼ばれるものを抱えていて、4年前に顎の手術を受けることになったの。その後、長い間落ち込んでいて、しばらく歌うこともやめていたの。Lucas と Simon が “Evolvage” のボーカルに誘ってくれたとき、私は新たな希望を得たわ。あの曲をレコーディングしたとき、私は本当に音楽とつながることができた。自分にとって自然な感じだったし、新しい方法で自分を表現する機会を与えてくれたのよ。私のボーカルは、このバンドの音楽に新しい色を加え、特別な味わいを与えていると思う」
PRESS TO ENTER がこの暗澹たる2020年代にロックの全能感と期待、そして希望を蘇らせたのは、自らも一度は傷つき不安と共にあったから。他人と自分を比べることで鬱状態に陥り、極度の不安を抱えていたボーカルの Julie は、自らの歌声がこの奇抜で好奇心に溢れたプログレッシブ・メタルに命を吹き込むことを知り、前へと進み始めました。実際、マドンナから始まり、アギレラ、ペリー、レディ・ガガの系譜につながる彼女のポップで力強い歌声は、プログの世界にはないもので、だからこそ輝きを放ちました。
「僕らの曲 “Cry Trigger” のアンビエント・セクションは、”バイオハザード・ゼロ” のテーマ ”Save Room” に非常にインスパイアされているんだ。それに僕は、日本のアニメの大ファンでもある。”ワンパンマン” や “進撃の巨人” は大好きな作品だよ。僕らの曲 “Frozen Red Light” の一部は、間違いなくアニメ音楽の影響を受けている。あと日本の音楽では、CASIOPEA と彼らの昔のベーシスト、櫻井哲夫が大好きなんだ。彼は僕のベースプレイに大きなインスピレーションを与えてくれた。それに、RADWIMPS も大好きだよ」
最後のピースとして、PRESS TO ENTER は日本の文化を隠し味に加えました。それは、日本のアニメやゲーム、音楽の中に、失われつつあるワクワク感が存分に残っているから。そうして PRESS TO ENTER の軽快で複雑でポップな世界は、視覚的にも広がりを得て3次元の立体感を得たのです。もちろんそれは、彼らが敬愛する地元の英雄 DIZZY MIZZ LIZZY と同じトリオだからこそ、得られた自由。
今回弊誌では、PRESS TO ENTER にインタビューを行うことができました。「DIZZY MIZZ LIZZY の Tim Christensen、Tosin Abasi, Plini が僕のスーパー・ヒーローだね。彼らをたくさん聴いたことで、自分のサウンドや音楽におけるクリエイティブな考え方が形成された気がする」 Tosin というより、かの Manuel Gardner Fernandes 直伝のスラッピング、それに曲中の魔法のようなテンポ変化が実にカッコいいですね。どうぞ!!
現代のインストゥルメンタル・ギター界は想像力と独創性に溢れています。Tim Henson, Tosin Abasi, Ichika, Manuel Gardner Fernandes, Jakub Zytecki, David Maxim Micic, Aaron Marshall, Yvette Young のようなミュージシャンは、アクロバティックな演奏だけではなく、技術性と音楽性が共存できることを証明しています。Plini がその一員であることを誇りに思うシーン。
「多くの進化と才能に囲まれているのは素晴らしいことだ。ANIMALS AS LEADERS にしても、UNPROCESSED の曲にしても、テクニカルでありながら、シンプルなメロディのようにエモーショナルでキャッチーなんだ」
このシーンは、DIYが主流であり、ビジネスやレーベルを重視していないことも Plini は気に入っています。
「ビジネスにかんして、僕はできるだけ人を避けるようにしているんだ。僕にはレコード会社もマネージャーもいない。そうすることで、僕と同じ目標を持っていないような人たちと話す時間を無駄にしなくてすむからね。ツアーに出るときも、一緒にいるのはみんな友達だから、何か問題があってもすぐに話せる。一緒に仕事をする人たちはみんな、自分の仕事を愛し、本当にいい仕事をしたいという同じ姿勢を持っている。
僕は幸運なことに、典型的な音楽業界のしきたりやならわしの多くを避けてきた。でも、特にこのシーンやジャンルでは、観客がそれでもアーティストのハードワークを評価してくれるから良いよね。生半可なプログ・バンドが有名になっても、ギター・オタクの人たちはみんなわかっていて、”そんなに良くないよ。聴く気にならない” ってなるからね。だから、このシーンで活動するのはとても正直なことなんだ」