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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【BIFFY CLYRO : A CELEBRATION OF ENDINGS】


COVER STORY : BIFFY CLYRO “A CELEBRATION OF ENDINGS”

“I Want To Remind People What Rock Music Is All About,I Think This Is a Vibrant Guitar Record And I Don’t Feel That I’ve Heard a Lot Of Them Over The Last Few Years.”

FIND A HOPE IN CHAOS

「ロックミュージックとは何かを思いださせたいんだ。これはギターが躍動するレコードだよ。ここ数年、あまり聴いたことがないようなね。」
BIFFY CLYRO はチャートを席巻する英国で最も人気のあるバンドに成長しています。それも当然でしょう。Simon Neil の言葉は決してただのクリシェやポーズではありません。細部に至るまで、ロックサイエンスの粋を尽くして制作された8枚目のレコード “A Celebration of Endings” は、ロック、ポップ、メタル、オルタナティブ、さらにクラッシック、ヒップホップまでもがシームレスに配合された、ダークな2020年にもたらされる極上の特効薬なのですから。
「このアルバムは喜びの瞬間を共有する作品だよ。人生において喜びを持つことには、罪悪感がつきまとう。それでも俺たちは喜びの時間を過ごさなければならないと思う。それがこの暗闇の中で生存するための、唯一の方法だから。人々は、音楽を生活の中に取り戻そうとしていると思う。」
Ben Johnston は “A Celebration of Endings” が暗闇にさす光、混沌に見いだす希望だと信じています。しかし、リリースまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。

「ロックダウンが始まったとき、俺たちはバンドをやっているように思えなかった。何しろ俺たちはデフォルトが自尊心の欠如で、自信を持つためには何かをしていなければならないから。だから、4ヶ月間何もしなかったことと、アルバムの発売が延期になったことで、本当に不安になったんだ。言葉にするのは難しい。3人で音楽を作っている時の方が安心感があるんだよね。」
“A Celebration of Endings” は叫びの結集です。鬱病とともに生き、自信を取り戻すため戦ってきた Simon Neil は、2016年の自由奔放な “Ellipsis” ではじめて自分自身の外に目をやり外界からインスピレーションを取り入れました。
「若い頃は、政治と個人的な事柄をわけて考えていたけど、今の世界ではそうはいかない。世界は正しい方法で変わる必要がある。」
それまでは、自らの政治思想さえ芸術へこぼれ落ちることはありませんでした。時を同じくして、世界の闇を具現化したようなコロナウィルスによる “混乱と不安” が襲い掛かります。
「現実は当分の間、俺たちの手から引き剥がされているんだ。僕らはいつもこのバンドをスピリチュアルで家族的なものだと考えてきたんだ。だから、それを壊すようなことが起こると、悲嘆にくれる時期がある。それに加えて、Brexit、不安の増大、分裂など、当時の世界で起きていたことが加わって、足元から完全にカーペットか引き剥がされたように感じたんだ。俺の歌詞のほとんどは、かなり暗いところから始まっていると思う。まあ創作をしているときのモチベーションには本当に悲しかったり、怒ったりすることが必要なんだろうな。それは必ずしも健康的なことではないけど….とにかく、俺たちの基盤が変化し、社会がひねくれていると感じたんだ。」

“A Celebration of Endings” は “強制された変化” をさまざまな角度から探るレコードだと言えるのかもしれません。”North Of No South” で世界の指導者たちを “嘘つき、クソ独裁者” と非難し、”Opaque” では Simon の創作意欲を削ぐ音楽のビジネスのフラストレーションを拾い上げました。
「これまでは暗いレコードだよね。俺に光が差し込むのは、たいていしばらくしてからなんだ。このアルバムのポジティブさは、自分の代わりに何かをしてくれる人はいないということに気付いて生まれたんだ。7枚目のアルバム”Ellipsis” は、非常に傷つきやすいアルバムだったと思う。その後誰かが俺らの土地に来て、全部持っていかれた気がしたんだ。壊れたものを拾い上げなければならなかった。自分が本当に大切にしたいものに気づくのはそんな時だ。変化は誰にとっても怖いものだけど、変化は良いことであり、状況を良くするチャンスでもある。俺たちがコントロールできるのは自分自身なんだから。君はどこにいて何をやってる? まずはそこから始めよう。」

“A Celebration Of Endings” は、緊張感と波乱に満ちた作品に仕上がっています。若い頃の混沌としたオルタナティブロックと、この10年で彼らが得意としてきたアリーナを埋め尽くすような爆音が複雑に調和し、さらには彼らの大ヒット曲の基盤となっているポップな感性が活かされているのです。
「波乱に満ちたレコードだよ。それが僕らのバンドの特徴だと気付いたんだ。俺は自分が聴いているバンドが変化を遂げないことに我慢がならないんだ。16歳の時 RAGE AGAINST THE MACHINE の “Evil Empire” を聴いて激怒したのを覚えているよ。彼らのデビューアルバムとリフがそっくりだったから。1997年の WILL HAVEN のアルバム “El Diablo” を聴いたばかりだったんだけど、なぜ RATM がああいう風にならなかったのか理解できなかった。不条理だけどね。(笑) つまり、時々、俺は ROXETTE のような曲を書きたいと思うことがあるんだけど、次の瞬間には、Sunn O))))のような曲を書きたいと思っているんだ。どうやって聴きやすいアルバムを作るかじゃなく、どうやって聴きにくいアルバムにするのか。自分自身を明らかにし始めるレコードにしたかったんだ。」
Simon にとってリスナーが予想可能なものを制作することに意味はありません。
「すべては前作に対するリアクションなんだ。”Ellipsis” では様々なサウンドが常に楽曲を彩っていたけど、今作にはリフだけの瞬間も、ボーカルだけの瞬間も存在する。リスナーの意識を洗い流すよりも、意識の中にスナップさせたかったんだよ。”Worst Kind Of Best Possible” はまさにそんな曲さ。大混乱が続いているんだけど、まだ人がその真ん中にいるんだよね。世界の終わりのように聞こえるけど、その真ん中に人間がいて、何かを得ようとしているんだ。」
もちろん、ロックミュージックは BIFFY CLYRO にとってすべての本質です。
「俺たちの本質は、3人が部屋の中で演奏していることだ。全ての曲はその中で機能する必要があるんだ。リードシングル “Instant History” でさえ、多くの人がEDMスタイルの曲だと奇妙に表現していたけど、俺らのバンドの鼓動とハートビートを持っていることを知っておく必要があるんだ。」


素直に考えれば、”A Celebration of Endings” は驚きと喜びを同時にもたらすエンターテイメントと言えるのかも知れませんね。激しいパワーポップと MUSE のキメラ “North of No South”, 甘やかなディズニーの子守唄 “Space”, メタルとヒップホップ、そしてモーツァルトの壮大な婚姻 “Cop Syrup” までエクレクティックなアトラクションが列をなして待っています。
一方で、自らの内側、社会の闇を吐き出すようなデザートロック “Weird Leisuie” のような楽曲が BIFFY CLYRO の成長と社会的な再評価を浮き彫りにします。
「古くからの友人についての楽曲だ。コカイン中毒で壊れてしまった。彼は間違った道を選び、自分の世界が閉ざされるような厄介な状況に陥ってしまった。助けようとしても振り出しに戻ってしまう。幸い今は良い場所にいて抜け出そうとしているけどね。人は何にでも適応できる。変化を恐れるべきじゃないよ。窓の外をみてみなよ。全てを手にすることができる。人生を手にすることがね。ただ、過ぎ去っていかないようにしないとね。」
ゆえに、タイトルの “A Celebration of Endings” にも深みが増します。
「マヤ文明は2012年に世界が終わると予言していた。俺の理論だと、その通り世界は終わったんだ。予想外の方法でね。人間が意思を放棄して無知になったんだよ。だからこのアルバムは、自らの価値観をリセットするために、自分の最低点を認識することをテーマにしているんだ。そんな中でコロナ危機が起こった。まさに僕が話していることが現実になっているよね。例えばボリス・ジョンソン首相の怠慢だよ。ヤツは凶悪な脂肪の塊さ。NHS (国民健康保険) は今アンタッチャブルな存在であるべきだし、必要なのは食料と健康と家だ。キーワーカーは絶対に低技能労働者じゃないし、彼らが必要だ。政府よりも NHS が必要なんだ。俺が40になったことも関係しているだろうが、自分勝手で自己中心的な人間には我慢ができないよ。」
これはドナルド・トランプの “人間の命よりも経済”、そして売上のため不安を煽るマスメディアへの辛辣な批判です。そしてこの怒りは権力を振りかざす傲慢で無能な一部の特権階級が火種でした。ジェームズ・ボンドを題材とした “The Champ” にもその怒りの炎は注がれています。
「今、社会において自分の立ち位置を知らない人間はおそらくサイコパスだよ。ボンドは世界最高のスパイで、部屋の中にいても気づかれない。つまりこれは、自分の意見を発しなければいけないときに、それを口にしない人たちをスパイに例えているんだ。」

世界的なパンデミック発生から1年。混乱というテーマはさらに顕著になっています。
「今の俺には、曲に込められたメッセージの方が重要だ。足元の砂が変化してしまったんだから。誰にでも起こっていることだよ。大切にしてきたもの、人生で頼りにしてきたものがまったく変わってしまったんだから。そしてみんながすべてに疑問を持ち始めている。だけどその変化をポジティブに捉えるべきさ。価値観をリセットすることができたんだから。変化を起こそうと気づく時なのさ。俺はいつも、曲を作ってレコーディングするだけでいいと思っていた。だけど、このパンデミックを経験してツアーは俺らのアイデンティティーの重要な部分で、DNAの中に存在すると気づいたね。この時期があったからこそ、このバンドを永遠に続けていきたいという気持ちが強くなったんだ。」
“息ができないような場所にいたことがあるか?” COVID や BLM を予見させる “North of No South” のリリック。
「起こったすべてのことで、俺とこのアルバムの関係は変わってしまった。政治とかそういうことじゃなく、正しいか間違っているか。共感するかどうか。コミュニティーについての話さ。」

BIFFYISTORY

90年代半ば、英国に登場したトリオのティーンネイジャー BIFFY CLYRO はポストグランジ・ブリットロックを象徴する衝撃と混乱、そしてインテンスを纏っていました。
マスロックと甘やかなコーラスを同居させ、不器用なフックや不可思議なリリックを意図的に配置する変態の確信犯。
「バンド名に至るまで、何でもかんでも捻くれた捉え方をするのは実に俺たちらしいんだ。だから当時、20年後にまだ音楽をやってるのは俺たちだなんて言ってたら笑われていただろうな。」
1995年、BIFFY CLYRO を結成した3人は、すぐになりたくないものを定義しました。英国がブリットポップに染まっていた中、トリオは否応なしに “Wander Wall” や “Live Forever” の再現を見込まれたのです。
「あり得ないと言ったよ。俺たちは OASIS が嫌いなんだ。だから真逆のことをやりたくなったね。そうやって自分たちのために物事を難しくする、ハードルを上げることは悪くないよ。だって当時はどんなバンドも、半年もすれば OASIS のようなサウンドになっていたからね。それがベストな選択肢だと思っていたんだろう。だけど俺たちは違ったんだ。全く違う言語が存在することを知っていたからね。」
Simon の言う全く違う言語とは PANTERA の “Far Beyond Driven” でした。彼は OASIS とは異なる “俺らは誰よりも強い” マインドのこのアルバムが驚くべきことにアメリカで1位を獲得したことも理解していました。つまり Simon は全く別の方法が存在することを知っていたのです。


Beggars Banquet から3枚のレコードをリリースした後、3人のスコティッシュは当然のようにロンドンへの移住を拒否。観客への挨拶すら拒否していた彼らが初めて挨拶をしたのは、ウェンブリー・スタジアムでの MUSE のサポートライブでした。
「やあ、BIFFY CLYRO だよ!って挨拶するだけで全然違うことに気づいたんだ。それまでは自分たちがまるで観客のお気に入りみたいにして出て行ってた。今考えるととてもナイーブだったよね。まあでもそんな頑固な所は、今も残っているんだけど。」
2007年、彼らが Warner と契約し、アリーナへ向けた音楽 “Puzzle” でメジャーリーグへ飛び込んだ事件は驚きでした。
レコーディングの数ヶ月間に亡くなった Simon の母へ捧げられたアルバムは、以前よりも、アクセシブルでインパクトのある音像を湛えていました。もちろん、プログレッシブな変質者の側面は保っていますが、それでも SUNNY DAY REAL ESTATE の流れを汲んだエモーショナルなオルタナポップロックは聴くものの心まで溶かしたのです。結局、Radio One を席巻し、UKアルバムチャートで2位を記録した “Puzzle” 以降、レディングやリーズでヘッドライナーを務めるなど BIFFY CLYRO は押しも押されぬメインストリームの仲間入りを果たしたのです。
「最近はすぐ曲を書けるようになったけど、そんなことはしたくないんだ。重要なのはレコードを作ることじゃなく、レコードを作る理由を持つことだから。それが俺のモチベーションを維持しているんだよ。」

あまりにも不器用で利益に無頓着だった BIFFY CLYRO。しかし Warner Bros. の Alex Gilbert は彼らのノイズと複雑怪奇なタイムシグネチャーに耳を傾け、ポップセンスの胎動を見抜きました。そうして Storm Thorgerson デザインのアートワークを使用した第二幕の幕開け “Puzzle” は、母親の死に Simon が感じた悲しみを、斜め上の優れた芸術作品へと錬金術で変貌させたのです。
「メジャー足を踏み入れたときでさえ、俺はまだ劣等生だと感じていた。次の大物として書かれているバンドはほんの一握りだったし、俺らは決してそんな風に書かれていなかったから。でも、俺はこのバンドが特別な存在で、他のグループよりも優れているとは言えないまでも、同じくらい優れていると感じていたんだよ。」と Simon は語ります。たしかに、00年代半ば、”英国ギターミュージックの未来” ともてはやされた BLOC PARTY, KAISER CHIEFS, THE HORRORS といったバンドの中で、BIFFY CLYRO と同等の成功、独立心を発揮したのは ARCTIC MONKEYS だけでしたから。
「俺らにはどこにも居心地の良い場所がないんだ。そうやってどこにも馴染まないことに満足している。ポップな人にはちょっとヘヴィーすぎて、メタルな人にはちょっとポップすぎる。だけどそのかわり、どんなフェスでもヘッドライナーを務めることができるんだよ。」


悪戯、ハートブレイク、カオスの混合物は BIFFY CLYRO にしか作れないと Simon は主張しますが、バンドから離れてもグリッチ/ドローン、グラインドコア、ファンタジーノイズファンクなど様々なプロジェクトで刺激的な音楽を創造し続けています。
「俺はいつだって “商業的なアーティスト” になりたいとは思っていないんだ。俺たちはポップスの中でもメジャーレーベルに所属しているけど、それでも変な音楽を作っている。60歳になっても、感嘆符と疑問符の両方を持っていたいんだよ。もし俺たちがあまりにもストレートになりすぎた時は、引退の時だろう。」
つまり、BIFFY CLYRO は成長しても成熟することはないのでしょう。
「洗練されたロックなんて雰囲気に落ち着きたくないんだ。俺にはカオス、アナーキー、それに “ファックユー “が必要なんだよ。ヒップホップにはそのアティテュードがある。だからロックがそれを失うわけにはいかないじゃないか。成熟なんて俺たちじゃない。優雅に年を取りたくないんだ。黒のトレーナーとシェードを着て、クールなクソポーズを取りたくないんだ。そんや服どこで買うんだ?いいかい、人生では常に高いところを目指すんだ。失敗したって構わない。何もしないよりましさ。」


Simon は7歳の時、近くのキルマーノックで Johnston の双子の兄弟に出会いました。トリオは最近、それぞれ40歳の誕生日を迎えましたが、その間、彼らは切っても切れない関係を築いてきたのです。いつもお互いのジョークに、常に心を込めて笑っているのですから。2013年のダブルアルバム “Opposites” 制作時の Ben のアルコールとの戦い、あるいは “A Celebration Of Endings” をめぐる試練の時期を考慮しても、ここ数年で絆はさらに強まっています。
「バンドとしての俺たちの原則、やり方は変わっていない 。中心となるのは3人で、肩にはちょっとしたDIYのチップを乗せている。人として、そして集団として経験してきた変化は、すべて自然に起こったことだ。だからバンドから学んだことを自分たちの人生に、そして人生から学んだことをバンドに取り入れることができたんだ。」

参考文献:Telegraph:Biffy Clyro interview: ‘We wanted to be the opposite of Oasis’

KERRANG!:THE MORE THINGS CHANGE: HOW BIFFY CLYRO FOUND HOPE IN CHAOS

NME:Biffy Clyro: “Life can be yours – just don’t let it pass you by

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BIFFY CLYRO Official

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JAGA JAZZIST : PYRAMID】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LARS HORNTVETH OF JAGA JAZZIST !!

“I’ve Listened To Tomita’s Albums For Years And It Felt Really Natural To Combine This Inspirations Of Warm Synth Sounds With The Analogue And Organic Sounds Of The Drums, Guitars, Horns And Vibraphone. We Spent a Lot Of Time Making The Synth Melodies Sound As Personal And Organic As Possible, Like a Horn Player Or a Singer. Tomita Was The Biggest Reference To Do That.”

DISC REVIEW “PYRAMID”

「アルバムの音楽を表現するために、何か象徴的なものが欲しかったんだ。今回の音楽はかなり壮大で、ピラミッドの四方や外壁、そしてその中にある神秘的な部屋を音楽で表現することができたと感じたわけさ。」
人類史において最もミステリアスな古代の巨石建造物ピラミッドは、興味深いことに過去と未来を紡ぐノルウェーのフューチャージャズ集団 JAGA JAZZIST 5年ぶりの帰還に最も相応しいアイコンとなりました。
「Ninja Tune とはスケジュールの問題があったんだ。彼らは今年、非常に多くのリリースを抱えていたから。Brainfeeder への移籍は今のところいい感じだよ。僕たちが大好きなアーティストと同僚になれて誇らしいね。」
ジャズを王の眠る部屋だとするならば、そこから無数に伸びる通路が繋ぐ音の部屋こそ JAGA JAZZIST の真骨頂。エレクトロニカ、ミニマル、クラシカル、ポストロック、プログロックと接続するエクレクティックな内部構造、360度見渡せる “神秘の部屋” の有りようは、奇しくも FLYING LOTUS が主催し Kamasi Washington, Thundercat といったジャズの新たなファラオが鎮座する Brainfeeder の理念や野心と完膚なきまでに符合しました。
「たしかにシンセとそのシンセサイザーでの音の出し方に関して、冨田勲に大きなインスピレーションを受けたね。この “Tomita” という曲だけじゃなく、アルバム全体にも影響を与えているんだよ。」
前作 “Starfire” と比較してまず驚くのが “エッジ” の減退と “オーガニック” の伸長でしょう。”Starfire” に見られたアグレッシブなダブやエレクトロニカのサウンドは影を潜め、一方で70年代のプログやフュージョンに通じる神秘的な暖かさが作品全編を覆っています。ある意味、Miles Davis があの時代に描いたスケッチを、現代の技巧、タッチで復元するような冒険とも言えるでしょうか。
特筆すべきその変化は、JAGA JAZZIST の主催 Lars Horntveth が9回も訪れているという、日本が輩出した偉大な作曲家、シンセサイザーアーティスト冨田勲の影響によって引き起こされました。
「彼の温かみのあるシンセサイザーの音に受けたインスピレーションと、ドラム、ギター、ホーン、ビブラフォンのアナログで有機的なサウンドを組み合わせるのはとても自然なことだと感じたわけさ。シンセのメロディーを、ホーン奏者やシンガーのようにできるだけパーソナルでオーガニックなサウンドにするため多くの時間を費やしたんだよ。その手法において、最も参考になったのが富田だったんだ。」
暖かく有機的なアコースティックな楽器の音色を、シンセサイザーという機械で再現することに人生をかけた冨田勲。ゆえに、彼がアナログシンセで奏でるメロディーの夢幻は唯一無二でした。その理想をユニゾンの魔術師 JAGA JAZZIST が8人がかりで現代に蘇らせるのですから面白くないはずがありませんね。
アンビエントからラテン、さらに Chris Squire を想起させるベースフレーズでプログの世界まで到達する “Tomita”。ボレロとファンク、それに夢見がちなサウンドトラックが合わさり最古のミニマルミュージックをアップデートした “Spiral Era”。Fela Kuti の魂、Miles Davis の遺志と共鳴しながらユニゾンと対位法、ポリリズムのカオスで圧倒する “The Shrine”。ネオンを散りばめたジャズ/フュージョンのダンスフロア “Apex”。そのすべては、壮大で美しく、奇妙で夢のようなピラミッドを形成するレトロな未来なのでしょう。
ロックの視点で見れば、”Kid A” 以降の RADIOHEAD や TAME IMPALA まで因数分解してヒエログリフに刻むその慧眼をただ崇拝するのみ。
今回弊誌では、Lars Horntveth にインタビューを行うことができました。「この楽曲は彼の音楽へのオマージュであるのみならず、偉大な政治家としての Fela Kuti に捧げた音楽なんだ。この曲がタイトルに沿った “聖堂” であることを願っているよ。彼の人生と魂に語りかける楽曲になっているとしたら、それは僕たちにとってボーナスのようなものさ。」どうぞ!!

JAGA JAZZIST “PYRAMID” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COVET (YVETTE YOUNG) : TECHNICOLOR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YVETTE YOUNG OF COVET !!

“I Personally Do Feel Like There’s a Lot Of Stereotypes And Preconceptions Floating Around, And I Look Forward To Continuing To Work Hard So I Can Be a Better Example Of What Is Possible To Younger Girls.”

DISC REVIEW “TECHNICOLOR”

「”Technicolor” とは、かつて古いフィルムを着色するために使用された懐かしい方法だから、適切な名前だと思ったの。アルバムの音楽の多くは、私の中に少しノスタルジアを呼び起こしていると思うのよ。トーンや高揚感のおかげでね。」
褪せたフィルムに色を差せば、浮かび上がるは感情。決して万人には訴求しない難解多動なマスロック/プログレッシブの領域に、COVET と Yvette Young は夢見がちに懐かしき音の虹をかけて色彩豊かな華の架け橋となりました。
「あれは私が今まで経験した中で最悪の出来事の一つだったわ。音楽業界(そしてそのシーン全般)には依然として女性に大きな偏見があって、混乱の多い場所であることを学んだと思うわ。それにね、何か悪いことが起こっているときは決して静観しないことが常に最善であることも学んだわ。だって、黙っていれば、誰かがバンドの力と権力を乱用し続けることを許してしまうから。」
順風満帆に思えたマスロックイーンのキャリアは今年初頭、強大な嵐にさらされました。PERIPHERY のギタリスト Mark Holcomb との不倫騒動が巻き起こったのです。Mark 本人からの冷たい言葉に加えて、彼のファンベースからも心ない差別、中傷を受けた Yvette は傷つき、悩み、そして遂に毅然と声をあげました。
憶測が飛び交っているから自分の言葉で真実を伝えたい。Yvette は Mark が妻とは別居し離婚したと嘘をついて妻と彼女2人との二重生活を続けたこと、都合が悪くなると彼女をブロックし脅迫まで行ったこと、心労でセラピーに通わざるを得なくなったことを正直に透明に明かしたのです。
「私は成すことすべてにおいて、自分自身に問いかけているの。どんなシーンに存在していたい? ミュージシャンが性別や肌の色を問わず本当に活躍できるシーンとは?その場所へどうやって貢献できる?仕事やパフォーマンスをしているときは、いつもそれを心に留めておくのよ。シーンの将来に希望を抱いているわ。」
固定観念や先入観が禍々しく漂う分断された世の中で、Yvette の勇気が切り開く色彩は後続のマイノリティーが差別や不利益を受けることのない未来。女性であること、アジア系の出自を誇れる未来。”Technicolor” はそんな Yvette の決意と優しさが込められた新たな旅路となったのです。
「音楽がメロディックでもエモーショナルでもないテクニカルな演奏技巧には興味がないことに気づいたのよ。だから将来的には、もっとドリーミーでエモーショナルでメロディックな世界を探求したいわ。」
目まぐるしいテレキャスターのブライトなサウンドと、フレットボードを駆け巡るポリリズミックなタップダンスに端を発する COVET の音世界は、よりオーガニックに、よりアトモスフェリックに、よりエモーショナルにリスナーの心を溶かします。
「”Parachute” と “Farewell” を書いたとき、私はすぐにギターに重なるボーカルラインが浮かび歌い出し、歌詞はあとから浮かんできたの。歌が加えられてやっと楽曲が完成したと感じたわ!そうそう、私のフェイバリットシンガーは宇多田ヒカルなのよ。彼女を聴いて育ったから。」
中でも自身のボーカルを加えたエセリアルな “Parachute” とジャジーな “Farewell” は、新生 COVET の象徴でしょう。前作の “Falkor” と対をなすネバーエンディングストーリー組曲 “Atreyu” のイノセントな響きも極上ですし、彼女のヒーロー CASPIAN の Philip Jamieson がトレモロの嘆きを付与する “Predawn” の叙情も筆舌に尽くしがたい音恵でしょう。
今回弊誌では、Yvette Young にインタビューを行うことができました。「音楽シーンにおけるセクシズムと正面から闘うことが重要だと思う。このトピックにアプローチする方法はたくさんあるわね。だけど最近、性差別について話しすぎると報復を多く受けてしまうように感じるわ。それが実際に人々をこの話題から遠ざけている可能性もね!」 POLYPHIA, Ichika とのシンクロニシティーも必見。どうぞ!!

COVET “TECHNICOLOR” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORANSSI PAZUZU : MESTARIN KYNSI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ONTTO & EVILL OF ORANSSI PAZUZU !!

“When I Say Progressive, I Mean That In The Literal Sense, Thinking About Music That Has The Idea Of Exploration At Heart. We Are Not Doing a Prog Tribute. Not Following Anyone Else’s Path, But Making Your Own Path.”

DISC REVIEW “MESTARIN KYNSI”

「僕たちにとって、プログレッシブとは1つのジャンルに誠実でいることではなく、ジャンルを旅して新たな音の次元へと進んでいくことなんだ。そして僕はプログの巨人たちが、当時同じようなアイデアを持っていたと確信しているんだよ。」
古の巨人とその探究心を共有するフィンランドの哲音家、サイケデリックブラックマスター ORANSSI PAZUZU。ジャンルを巡るバンドの旅路は最新作 “Mestarin Kynsi” (マスターの爪) において一際ブラックメタルの暗黒宇宙を飛び出し、プログレッシブ、クラウトロック、アシッドハウス、ジャズ、アヴァンギャルド、ミニマル、ノイズの星々を探訪する壮大なる狂気の音楽譚へと進化を遂げています。
「ORANSSI PAZUZU という名前は、僕たちの音楽に存在する二元的な性質を表すため選んだんだ。サイケデリックなサウンドと70年代スタイルのジャムベースなクラウトロックの探検を、ブラックメタルに取り入れたかったからね。」
艶やかなオレンジと魔神パズズ。二極化されたバンド名が象徴するように、ORANSSI PAZUZU は時にメタルという重力からも解放されて、不可思議なリズム感とポップな感性を備えつつ、神秘と悲惨の破片に溶け出す独特の審美世界を呼び起こします。
「ゲームのサウンドトラックからは間違いなく影響を受けているね。その風景やイベントを視覚化し参照することについては、バンド内で多くのコミュニケーションをとっているんだ。時には、特定のゲームのシーンについても言及しながらね。」
ファイナルファンタジーシリーズを手掛けた植松伸夫氏に多大な影響を受けたと語る Evill。実際、イタリアのホラーフィルムや UNIVERS ZERO の暗黒舞踏を想起させるオープナー “Ilmestys” (天啓) を聴けば、アルバムがシンセサイザーの深霧や電子の海へと乗り出したサウンドトラックの一面を湛えることに気づくはずです。当然、時にホーミーを思わせる Jun-His の表魔力と不協和のギターも音の映画化に一役買っていますが。
「確かにこのアルバムではたくさん異なることが起こっているよね。 ただ、できるだけ数多くの影響を詰め込むことが目標ではなかったんだ。」
SWANS の方法論でエクストリームメタルにアヴァンギャルド革命をもたらした2016年の “Värähtelijä” から、ORANSSI PAZUZU は「演奏する音楽という “結果” が “リーダー” で周りに存在するミュージシャンは、その “リーダー” という中心に仕える方法を考える」自らの流儀をさらに研ぎ澄まして完成された黒のシネマ、ラブクラフトのコズミックホラーを届けてくれました。
もちろん、”Tyhjyyden Sakramentti” に潜む CAN, DARKTHRONE, TANGERINE DREAM の複雑怪奇な共存、”Kuulen ääniä maan altar” に忍ばせた PERTURBATOR とのシンクロニシティー、さらにはサイケブラックに20世紀最高のミニマリスト Steve Reich, Philip Glass の創造性を混入させた奇跡 “Uusi teknokratia” など、ロックとメタルの歴史を網羅した歴史家、研究家の一面は健在です。
ただし Ontto の、「まずはアトモスフィアが湧いてきて、僕たちの目的はそれに従うことなんだ。組み込まれる様々なジャンルは、たいていの場合、音楽を望ましい方向に操作するための適切な道具だと考えているよ」 の言葉通り、最終的に ORANSSI PAZUZU の探究心、好奇心はジャンルという絵の具を一枚の絵画を想像を超える創造として仕上げるための道具として使用しているに過ぎません。
それはトワイライトゾーンとツインピークスの不気味を抽出してブレンドした、異次元のブラックホールと言えるのかもしれませんね。メタル世界、いや音楽世界自体が経験したことのない、魑魅魍魎、異形のサウンドスケープがここには存在するのです。
今回弊誌では、ベーシスト Ontto とキーボーディスト Evill にインタビューを行うことができました。「個人的に最初のビッグアイドルの1人は、ファイナルファンタジーサーガの音楽を創生した植松伸夫氏だったんだ。今でも彼のハーモニーやエモーションの素晴らしきアプローチに影響を受けていることに気づかされるね。”FF VII” は僕のエピカルで壮大な感覚が生まれた場所なんだ。」
ANEKDOTEN 以降の北欧プログとの共通項を見出すのも一興。MAGMA や MAYHEM の波動を抱く DARK BUDDAH RISING とのコラボレーション、WASTE OF SPACE ORCHESTRA もぜひ。どうぞ!!

ORANSSI PAZUZU “MESTARIN KYNSI” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ELDER : OMENS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK DISALVO OF ELDER !!

“I’d Like To Think That We’re Channeling The Adventurous And Explorative Spirit Of The Prog Scene In The 70’s, But Not Directly The Sound. We Want To Be Our Own Band, But Also Push The Boundaries Of Our Own Creativity.”

DISC REVIEW “OMENS”

「僕は日本の浮世絵を購入したばかりでね。それをきっかけに、日本の文化について読んでいて”浮世”の意味を発見したんだ。読み進めるにつれて、僕がアルバムのために書いている歌詞と本当にシンクロしていて興味をそそられたよ。
住んだことのない場所についてはあまり多くは語れないけど、少なくとも僕の住む西洋世界では、人生に意味をもたらさない過剰な消費に執着し過ぎているように感じるね。必要のないものを買うために働いているように思えるよ。大きな家やファンシーな車を買い、意味のない人生を送り、ゴミ以外何も残さず死んでいく。
このアルバムの楽曲は、僕たちの多くが精神的奴隷として生きていることを悟り、人生を充足させるため自分自身の道を見つけることについて書かれているんだよ。」
前作 “Reflections Of A Floating World” リリース時のインタビューで、Nick DiSalvo はそう語ってくれました。古の日本に学び、物質世界よりも精神世界に重きを置く彼の哲学は、おそらく ALCEST の Neige とも通じています。
そして奇しくも、シンプルなストーナーアクトとしてスタートし、プログ/ヘヴィーサイケの方角へと舵を切った ELDER の音楽性は、ストーリーを喚起するシネマティックな創造と、ジャンルを縦横無尽に横断する精神性という意味でいつしか ALCEST と神話を共有できる数少ない語り部に成長を遂げていたのです。
「今日僕たちは、サウンドとアトモスフィアのスペクトルを広げて探求を続けている。だけど、君が “Omens” について “ブライト” で “アップリフティング” と評したのはとても興味深いね。だってこのアルバムのテーマはさっきも語った通り実にダークなんだから!まあ僕はいつも悲哀と喜びの2つの対照的な感情を描こうとしているんだ。そして両者のムードを全ての楽曲に落とし込もうとしているんだよ。」
前作で “浮世” の浄土を描いた ELDER は、”Omens” で対照的に欲望渦巻く物質世界の限界を鋭く描写することとなりました。さながら対となるレコードにも思える2枚のアルバム。その陰の “裏面” はしかし、映し出した深刻なテーマと反するように陽のイメージを以前とは比較にならないほどブライトに宿しています。
新たな輝きは明らかに、ANATHEMA, ALCEST, CYNIC といったモダンメタル/プログの革命家とも通じるように思えます。前作の時点でクラッシックプログ、クラウトロック、インディーからの影響がシームレスに芽生えるカラフルで多彩な浮世草子を創世していた ELDER ですが、その物語にシューゲイズやポストロックの息吹をふんだんに加えたことは確かでしょう。ただし Nick はその場所よりも、さらに純粋に澄み切ったプログジャイアントへの憧憬を隠そうとはしませんでした。
「彼らに比べて音楽的な才能が欠けているから、僕たちが直接的に YES の系譜に位置するかはわからないけど、彼らが僕たちの大きなインスピレーションと探求の源であることは間違いないね!どちらかと言えば、僕たちは70年代のプログシーンの冒険心と探究心を伝え、チャネリングしていると思う。サウンドを直接伝えているのではなくてね。」
ストーナーへの愛情を湛え、後ろ髪を引かれながらもその音心は確実にかつての恋人から遠ざかっています。実際、”Ember” は現代に突如として現れた “オルタナティブな YES” と表現したいほどに、70年代の宇宙的で英知的な “残り火” を灯しているのですから。
もちろん、”Omens”, “Halcyon” に漂うサイケデリックな営みは PINK FLOYD の遺産でしょう。ただし、”In Procession”, “One Light Retreating” に Nick が施した Steve Howe と Jon Anderson の彫刻、GENTLE GIANT の細工は、他の現代を生きるバンドには決して真似できない匠の孤高。
「“Elder” “長老” は僕にとって古の感覚、篝火に佇む古の賢人を想起させる言葉で、僕たちの歌うテーマにフィットすると思ったんだよ。今でも、この言葉は確かな美しさを持っていると感じるね。」
フェンダーローズ、メロトロン、ムーグ、さらに瑞々しきギターの百花繚乱を携えた長老の紡ぐ古の音楽は、”Omens” の物語と同様に、プログレッシブの新緑が世界中の廃墟から成長し、次世代のサイクルを始める美しき象徴に違いありません。
今回弊誌では、Nick DiSalvo に2度目のインタビューを行うことができました。「僕はこの時間を出来るだけ新たな音楽の作曲に当てて、生産的でいようと心がけているんだ。特にこの春はコンサートをキャンセルせざるを得ないからね。だから僕たちにできる最良のことは、出来るだけ賢くこの時間を使うことなんだよ。」
前回のインタビューでは ANEKDOTEN を挙げて驚かせてくれた Nick ですが、今回はノルウェー気鋭のジャズロック NEEDLEPOINT を2作も挙げている点にも注目です。どうぞ!!

OMENS TRACK BY TRACK BY ELDER

Omens

タイトルトラック “Omens” はレコードの舞台設定だね。その本質は、文明の衰退についてのコンセプトアルバム。悪い兆候のもとにある社会の有り様を描いているんだ。壮大な文明の城は高く聳えるけど、迫り来る変化の暗い雲に覆われているよ。
僕たちのレコードでは大抵、楽曲は書かれた順序で収録されている。実際にこのタイトルトラックはアルバムで最も古い曲なんだ。そのため、おそらく以前のレコードと最もイメージが似ていて、最もリフの多い楽曲になったね。だけど最後の部分は、ほぼシューゲイズとポストロックの領域に浸っているかな。
オープニングのピアノのリードは、もともとは曲のモチーフにしようと考えていたんだけど、レコーディング中はどういうわけか合わなかったんだ。そんな中で、Fabio がムーグでジャミングを開始し、オープニングリフに新たなモチーフを重ねてくれたんだ。こんな風に、スタジオでは瞬く間にひらめきで変更が加えられることがあるね。

In Procession

もともとはアルバムの最初の曲であり、シングルにしようと思っていたんだけど、おそらくこれほど多くの変更が加えられた楽曲はないね。2つの部分に分かれていて、最初の部分はクラッシックな ELDER のリフとサイケデリックなヴァースの間を行ったり来たりして、後半部分はジャムセッションが進展しながら構築され、グルーヴィーでポリリズミカルな終幕へとに至るんだ。
作曲の観点から見ると、”In Procession” は ELDER の基準としては非常にシンプルで、全体的な特徴も、”The Gold & Sliver Sessions” のジャムを基盤とした性質に近いよね。
非常にブライトかつ刺激的な楽曲で、常に前進している世界を説明するエネルギーに満ちた歌詞を伴うよ。これは、この架空の文明が創設された時から常に成長、消費、発展する必要を伝えているんだ。ただし、”In Procession” の “行進” は同時に、軍事的または葬式的なものとしても解釈できるよね。つまり崩壊につながることを示唆してもいるんだ。

Halcyon

このように長い曲だと、ボーカルは比較的少ないんだけど、音楽が代わりに語ってくれる。”Halcyon” はまさに今この時についての楽曲。崩壊の直前、この世界の美しさを理解する最後のチャンス。死を避けられないものとして受け入れてきた文明において、自由の中で生きる一種の陶酔の瞬間。
“Omens” は他のレコードよりも時間をかけ、それほど根を詰めず製作して、有機的に “部品” を開発していったんだ。オープニングの4分間はスタジオで行ったいくつかのライブジャムの1つで、このやり方をよく表しているね。もともとこのジャムは10分を超えてたんだけど。ファンの忍耐力もテストしているわけさ。ライブで何が起こるだろうね!
僕の考えでは Halcyonは、”Lore” に最も近いかもしれないね。レコードの中で最も長くて最も壮大なトラックとして、センターピースの機能を果たしているからね。何度も聴けばギターとキーボードの多重なるレイヤーを紐解き、時には複数のドラムまで明らかにしするよ。最後のリフは、ジョン・カーペンターと GOATSNAKE が出会ったような感じだね。まさにアルバムを代表するリフだよ。

Embers

比較的明るいトーンにもかかわらず、”残り火” というタイトルが示すように、燃え尽きて消えていく世界のシーンを描いた楽曲だよ。おそらく僕たちが今まで書いた中で最もオルタナティブな楽曲で、ストーナーやドゥームよりもオルタナティブロックとの共通点が多く存在するね。つまり、良くも悪くもジャンルにあまり注意を払わないとこうなるという一例なのかもしれないね。前代未聞だよ。
僕たちは未知の海で泳いでいるから、ELDER らしく聴こえるかどうかにはあまり関心がないんだ。だから “Embers” はすぐに完成したよ。最後のリフは “パールジャムリフ” と呼ばれているくらいさ。

One Light Retreating

オープナーとは逆に、”One Light Retreating”は、最後に作業を終えた曲だった。レコードの浮き沈みが激しいから、このようなヘヴィーかつモメンタムなリフで終了するべきだと感じだね。つまり前作から “Omens” へのジャンプを完全に要約する、ひねりを加えたクラシックな ELDER ソングだよ。アルバムのクリーンなプロダクションが、スペーシーなエンディングで輝いているよね。
物語が幕を閉じると、世界の光が1つずつ消え、夜の暗闇に消えていくんだ。だけど僕たちのアルバムすべてと同様に、強い希望も存在する。新しい緑の生命が世界中の廃墟から成長し、また新たなサイクルが始まるんだ。

ELDER “OMENS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PURE REASON REVOLUTION : EUPNEA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JON COURTNEY OF PURE REASON REVOLUTION !!

“First Time Labelled “Prog Rock” I Think We Were a Little Surprised. For Us It Was Mix Of Grunge, Fleetwood Mac Vox, Floyd, Massive Attack & DJ Shadow. So To Get Labelled With What Was Just a Small Section Of The Influences Felt a Little Odd. Now We’re Proud To Be Progressive.”

DISC REVIEW “EUPNEA”

「間違いなく、男女混成ボーカルは僕たちにとって鍵となる要素だし、このハーモニーが他のバンドと僕たちを区別化しているとさえ思うよ。おそらく、このスタイルを取るバンドは増えていくと思うよ。」
純粋な理性を革命に導くプログレッシブな哲音家 PURE REASON REVOLUTION は、めくるめく陰極陽極のハーモニーで沈んだ世界を緩やかに溶かします。
「最初にプログロックのラベルを貼られた時、僕たちは少し驚いたんだ。僕たちにとって当時の自らの音楽は、グランジ、FLEETWOOD MAC のボーカル、PINK FLOYD, MASSIVE ATTACK, DJ SHADOW をミックスしたものだったから。だからそんな影響の中からとても小さな部分だけを切り取って、プログロックとレッテルを貼られることは少し奇妙な感じがしたんだよ。まあ、今はプログレッシブのラベルを誇りに思っているけどね。」
PORCUPINE TREE や COHEED AND CAMBRIA を導火線にプログレッシブの新たなビッグバンが勃発した00年代。PURE REASON REVOLUTION が放ったデビュー作 “The Dark Third” の鮮烈さは明らかに群を抜いていました。
グランジオルタナティブの遺伝子を纏いながら、電子のレンズを通して映すPINK FLOYD のサイケデリック。さらにそこには、極上のフックとハーモニーが添えられていたのです。仮にモダンプログレッシブが、勃興したモダンなジャンルの音の葉を取り込む多様性の万華鏡だとしたら、まさに PURE REASON REVOLUTION こそがアプレゲールの象徴だと言えました。
「間違いなくデビュー作 “The Dark Third” と近い場所にあるけれど、同時に他の2作からも切り取ったような部分があるよね。だから、願わくば “Eupnea” が僕たちのデビュー作を少し思い返させながら、進化したようにも思えるサウンドであれば良いね。」
2010年の “Hammer and Anvil” 以来実に10年ぶりの復活作となった “Eupnea” はバンドの集大成にして出発点なのかもしれませんね。アルバムは “New Obsession” の緩やかな電子パルスでその幕を開けます。徐々に顕となる音建築、バンドの過去と未来を繋ぐ架け橋。
スペーシーでダークなエレクトロの波動を発端に、流動するギターのクランチサウンドとポップなハーモニー。そうして PRR は全ての出発点へと回帰しながら、シネマティックな “Hammer and Anvil”、ダークなシンセウェーブ “Amor Vincit Omnia” の情景を重ね、さらにサウンドの幅を広げていくのです。
ポストロックにも通じるアトモスフィアを主戦場としていた PRR ですが、プログのラベルに誇りを感じているの言葉通り、”Ghosts & Typhoons” では難解でアグレッシブなギタードライブ、BRING ME THE HORIZON のスピリットまで披露。一方で、SMASHING PUMPKINS の哲学を宿す “Maelstorm” や 7/4の魔法 “Beyond Our Bodies” ではさらにメロディーの流麗に磨きをかけてレコードの対比を鮮明にしていきます。
そうしてアルバムは、真の感情的ジェットコースター、13分のタイトルトラック “Eupnea” で PORCUPINE TREE や ANATHEMA に寄り添いながら、時代の激動と愛娘の吐息を遠近法で描写して幕を閉じるのです。
今回弊誌では、ボーカル/マルチ奏者 Jon Courtney にインタビューを行うことができました。「男女混成のハーモニーは、FLEETWOOD MAC, CSNY, THE BEACH BOYS からの影響だね。僕たちのメロディーは常に THE BEACH BOYS から本当に強力な影響を受け続けている。Brian Wilson こそがメロディーの王様さ。」どうぞ!!

PURE REASON REVOLUTION “EUPNEA” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SPELL : OPULENT DECAY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CAM MESMER OF SPELL !!

“We Think Our Music Is a Lot More Diverse Than That. We Never Try To Write ‘Heavy Metal Songs’ – We Just Try To Write The Best Songs We Can! Sometimes It Might Sound Like Pop, or Prog, or Gospel, or Disco, or Goth”

DISC REVIEW “OPULENT DECAY”

「カナダには偉大なバンドがたくさんいるけど、RUSH はアンタッチャブルな存在さ。19枚ものアルバムを全くの駄作なしで製作できるバンドが他にいるかい?彼らはキャリアを通じて何度も進化を遂げているし、常に適切で興味深い存在であり続けた。」
RUSH, TRIUMPH とカナダが生んだトリオは須らく、その音楽に絶佳の魔法を宿してきました。そしてその魔法は文字通り “呪文” の名を冠する若き三銃士 SPELL へと受け継がれていきます。
「”NWOBHM” や “NWOTHM” のラベルが貼られることが多いようには思えるね。おそらく CAULDRON, SKULL FIST, ENFORCER といった “ニューウェイブオブトラディショナルヘビーメタル” のムーブメントが勃興した時にバンドを始めたからだろうな。」
たしかに、SPELL はそのキャリアを通じてトラディショナルなメタルを磨き上げ、鮮やかな光沢を付与することに多大な貢献を果たしています。ただし、その狭い世界のみにとどまるには、SPELL の魔法はあまりに虹色です。
「僕たちの音楽は彼らよりもはるかに多様だよ。なぜなら僕たちは “ヘヴィーメタルソング” を書こうとはしていないから。ただ、できる限り最高の曲を書こうとしているんだ。だから時にはポップ、プログレッシブ、ゴスペル、ディスコ、ゴスのように聞こえるかもしれないね。良い音楽ならジャンルなんて気にしないのさ。」
“Opulent Decay” のサイケデリックな波光を受けて、SPELL の術式は神秘的なオーラとアクティブな胎動の共存を可能にします。エアリーなギタリズム、幾重にも重なるエセリアルなシンセ、叙情と憂いのハーモニー。時に Steve Harris を想起させる縦横無尽のベースラインはバンドの強力な碇です。
ポップ、プログレッシブ、ゴスペル、ディスコ、ゴスを巧みに操るメタルの新司教と言えば GHOST でしょう。ただし、バンドの首脳 Cam は GHOST や OPETH を目指しているわけではないと断言します。
「僕たちが自らを “Hypnotizing Heavy Metal” と称するのは、他のラベルが当てはまらないからなんだ。僕たちは音楽が魔法だと信じている。人々の現実を変える力を持った魔法だよ。”催眠術” をかけるようにね。それこそが僕たちの目標なんだ。」
ヒプノティックヘヴィーメタル。夢見心地の催眠術を施すヘヴィーメタルは、よりニッチでアンダーグラウンドな場所から現実を変える波動です。
BLUE ÖYSTER CULT の神曲 “(Don’t Fear) The Reaper” のヴァイブを纏う死神の哲学 “Psychic Death”、地下スタジアムの匂いを響かせるタイトルトラックに、よりリズミカルプログレッシブな “The Iron Wind”。何より、GHOST 成功の要因を抽出し黒魔術のポットで煮詰めたような “Deceiver” のロマンティシズム、訴求力にはただならぬものが感じられますね。
今回弊誌では、ベース/ボーカル Cam Mesmer にインタビューを行うことができました。「日本のバンドは大好きだよ!聖飢魔II、CROWLEY, LOUDNESS, GISM, THE EXECUTE, TOKYO YANKEES, THE COMES, G-SCHMITT, GHOUL なんかだね。日本には最高に強力でユニークなヘヴィーメタルとパンクの文化が根付いていて、僕はそこから最も影響されているんだよ。」どうぞ!!

SPELL “OPULENT DECAY” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JAZZ SABBATH : JAZZ SABBATH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MILTON KEANES (ADAM WAKEMAN) OF JAZZ SABBATH !!

“They Basically Made It Simpler, So Anyone With a Guitar And Half a Brain Could Play It. Yes It Appealed To The Masses, But Generally I Like To Think My Original Version Was More Intellectual.”

DISC REVIEW “JAZZ SABBATH”

1968年、バーミンガムの4人の青年、Tony Iommi, Bill Ward, Geezer Butler, Ozzy Osbourne が結成した BLACK SABBATH はヘヴィーメタル始まりの地として絶対的な信頼を得てきました。ただし、世界はその認識を覆すべきなのかも知れません。なぜなら、彼らの楽曲は完全なる “盗品” だったのですから。
60年代から70年代初頭にかけて、英国ジャズの新たな波を牽引していた JAZZ SABBATH。リーダーの凄腕ピアニスト Milton Keanes は将来を嘱望されていましたが、心臓の病で倒れ入院を余儀なくされてしまいます。
おかげで1970年にリリースを予定していたデビュー作の発売は延期となり、退院した Milton はまさかの事態に愕然とします。なんと BLACK SABBATH という見ず知らずのバンドが、彼の楽曲をヘヴィーメタルの雛形にアレンジして世に出してしまっていたのです。
「ちょうど入院していて、退院したら何が起こったのか全てを理解したよ。もちろん激怒したね。だけど真実を語る僕の言葉には誰も耳を傾けなかったし、信じてもくれなかった。」
Milton の怒りはもっともでしょう。その事件によって彼は以後50年間も辛酸を舐め続けることとなったのですから。
ただし、遂に真実を伝えるチャンスが巡ってきました。紛失していた JAZZ SABBATH のマスターテープが現在になって奇跡的に発見されたのです!!
「信頼できるアーティストたちを集め、このバンドを再開し、真実を伝えるのにこれほど長くかかってしまった。」
それでも魅力的な JAZZ SABBATH の音楽が、時の狭間へと埋もれずに済んだ事実は僥倖でした。世界中で何百万もの人々が崇拝しているヘヴィーメタルの教祖が、実際には音楽的なシャルラタンにすぎず、入院した寝たきりの天才から音楽を盗んだことの確かな証としても。
「彼らは基本的に僕の楽曲をよりシンプルにしていたね。だからギタープレイヤーなら誰でも、脳みその半分でプレイすることができたね。まあ、だからこそ大衆にアピールしたんだろうな。だけど、僕は自分のオリジナルバージョンの方がより知的だったと考えているよ。」
実際、JAZZ SABBATH のイービルなジャズは決して脳みそ半分で演奏可能なほどシンプルではありません。ウォーキングベースにピアノのインプロヴァイズ、4ビートのドラム。60年代のビバップスタイルが JAZZ SABBATH の基本です。
“Children of the Grave”, “Evil Woman” のようにドゥーミーな原曲に近いものもあれば、もとい BLACK SABBATH がわりと忠実にコピーを果たしたような楽曲もあれば、”Iron Man” のように突拍子も無いエアリーなアレンジで後のメタルへの移行が信じがたいような楽曲も存在します。
何より、名曲 “Changes” の神々しきピアノの調べ、コードの魔法は、いつ何時誰が演奏をしたとしても圧倒的な陶酔感と得も言われぬノスタルジアを運んでくれるのです。
今回弊誌では、このクソ下らない架空の物語を生み出した Milton Keanes こと Adam Wakeman にインタビューを行うことができました。
「僕が幼い時…いやゴメン、Adam が幼い時…というかきっと彼は父の影を少なからず追っていたと思うんだよね。だけど自分の足で立ち、自らの道を歩み出すときっと父に対して誇りと賞賛の気持ちしかなくなるはずなんだ。」BLACK SABBATH, Ozzy Osbourne との共演、さらに父はあの YES の心臓 Rick Wakeman です。どうぞ!!

JAZZ SABBATH “JAZZ SABBATH” : 66,6/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW【ESOTERIC : A PYRRHIC EXISTENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GREG CHANDLER OF ESOTERIC !!

“We Always Knew That Our Music Would Not Be Too Popular, Because It Is Extreme And Requires Attention To Process All Of The Details In The Sound And Repeated Listens To Become Familiar With It.”

DISC REVIEW “A PYRRHIC EXISTENCE”

「”Esoteric” の英語で最も一般的な定義は、”少数の人に向けた、もしくは理解している人だけに向けた” という意味なんだ。僕たちの音楽がとても人気があるわけじゃないことは理解しているからね。それは、この種の音楽が極端で、サウンドに乗せられたすべての詳細を処理し、それに慣れるため繰り返し聞く必要があるからだと思う。」
オカルトやサタニズムの秘伝を弔いの鎮魂歌へと封じる、英国の沈鬱 ESOTERIC。フューネラルドゥームの開祖は、超重超遅の二重奏に飽き足らず、デス、サイケデリック、インダストリアル、プログレッシブ、さらには寂寥のアトモスフィアからノイズの酸性雨までジャンルの可能性を拡大する特異点として偉大な足跡を残し続けています。
「フューネラルドゥームというジャンルが、ESOTERIC に完璧にフィットすると思ったことはないんだ。なぜなら、僕たちの音楽はそれよりも少し実験的な性格を帯びているからね。」
1993年、悪夢のような質感と哀しみに満ちたルグーブレで “フューネラルドゥーム” のフレームワークを築いた “Esoteric Emotions” でも、結局彼らはより遅くより深く苦痛の万華鏡を投影したかっただけでしょう。
ESOTERIC にとって重要なのは、深悼痛惜なドゥームの中に独自のスタイルを構築することでした。そうしてその軌跡と哲学は、BELL WITCH をはじめ KHEMMIS, PALLBEARER, ELDER, INTER ARMA といった現代ドゥーム革命の潤色な担い手たちへ脈々と受け継がれているのです。
「ライティングプロセスにおいて楽曲の長さは考慮していないんだけど、だから短ければ3分で、長くなれば26分にもなるんだろう。だけど基本的には、7分から16分の間で収まっているよ。」
BELL WITCH 83分の厖大なエピック “Mirror Reaper” に呼応するように、8年ぶりの蘇生 “A Pyrrhic Existence” は27分の緩やかな落魄 “Descent” でその幕を開けます。
高所からの自死を試みる時、人はこういった光景を目の当たりにするのでしょうか。永遠にも思えるスロウモーションのモノクロ映画は、アンビエントな静寂とプログレッシブなドラマ性、そして厳粛な轟音の狭間で、陰鬱、恐怖、絶望の影を反映していきます。
きっと、この瞬間にして久遠の葬送曲は、アルバムタイトルでもある世界の不条理や自己犠牲に端を発しているのでしょう。勝利からは程遠い勝利。見方を変えれば、Greg Chandler 語るところの 「よりアグレッシブで圧倒的にダークなアトモスフィアを加えた」 PINK FLOYD の宇宙。
“Descent” に端を発する、精神の荒野を漂う仄暗き死の旅路は、トレードマークであるトリプルギターと流麗なリードで今際の際のドラマ性を神聖なまでに高めた “Rotting in Dereliction”、最後の旅を意味するアンビエントなシンセの不吉 “Antim Yatra” とその魂の窓を少しづつ解放していきます。”Culmination” で見せる巧みな場面展開も秀逸。そうして98分2枚組の壮大極まる悲壮劇は、”Sick and Tired” でメランコリーと不協和、そしてノイズの波音を掻き集め闇の帳へ奉納しながらその幕を閉じるのです。
今回弊誌では、創立メンバーでギター/ボーカル Greg Chandler にインタビューを行うことができました。「音楽のジャンルが広がりすぎる時、影響の似たバンドが増えすぎるのは僕には唯一の欠点に思えるね。独自のサウンドやスタイルを創造するバンドじゃなく、他のバンドのようなサウンドを作りたいバンドが人気を博してしまう傾向があるようにね。」どうぞ!!

ESOTERIC “A PYRRHIC EXISTENCE” : 10/10

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