EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YUTARO OKUDA OF ARCING WIRES !!
“Definitely Meshuggah Is a Very Important Artist For The Band. I Guess We’re Musicians That Went To ‘Jazz School’ But Still Want To Play Metal As Well So Maybe That Has a Bit To Do With Our Sound.
COVER STORY : BLACK COUNTRY, NEW ROAD “FOR THE FIRST TIME”
“Black Country, New Road Is Like Our Very Own ‘Keep Calm and Carry On’ Or Tea-mug Proclaiming That You Don’t Have To Be Crazy To Work Here But It Helps. It Basically Describes a Good Way Out Of a Bad Place. Excited People Sometimes Claim To Have Lived Near The Road And I Keep Having To Explain To Them That It Doesn’t Exist”
BLACK COUNTRY, NEW ROAD
英国最高のニューバンド、世界最高のニューバンド。デビュー作ですでに最高の評価を得て、将来が約束されたかのように思える BLACK COUNTRY, NEW ROAD。しかしこの独創的な、全員がまだ20代初頭の若者たちは地に足をつけて進んでいきます。
「せいぜい、10点中7点くらいの評価だと思ってたよ。誰もが好きになるわけはないからね。大抵、Twitter で音楽を発表しても、2割が熱狂し、5割が知らん顔、残りの3割が嫌うって感じでしょ?」
サックス奏者の Evans がそう呟けば、ベースHyde も同意します。
「私たちはただの7人のベストメイトで音楽を作っているだけなの。注目されることは名誉なことだけど、私はそれとはあまり関係がないのよ」
このケンブリッジシャー出身の7人組モダン・ロックバンドは、プレスの注目を浴びようとはしていません。彼らは結成してまだ2年半ほどしか経っていませんが、今のところプレス、マスコミの必要性を感じていないのです。なぜなら、ライブが、強烈な口コミの熱量を生み出しているからです。
今、南ロンドンのロック・ミュージック周辺で何かが勃発しています。ポストパンクやポストハードコアの枠組みを使って、アシッドフォークからクラウトロック、クレズマー、ジャズ、ファンク、アートポップ、ノイズ、ノーウェーブまで、様々な影響を受けた多様なバンドが、奇妙な新しい方法でそれらを組み合わせて、奇妙な新しい音楽を生み出しているのです。
こういった素晴らしい手腕を持つ若いバンドは、現役または元音楽学生の場合が多く、結果としてお金をかけずに実験や成長ができる練習場へのアクセスが若い才能にとっていかに重要かを示しています。実際、BC,NR のうち3人はクラッシックの教育を受けています。
BLACK COUNTRY, NEW ROAD に参加しているミュージシャンのほとんどは、何人かがそのまだ学生であった2014年にイースト・カンブリッジシャーで結成された NERVOUS CONDITIONS というバンドに所属していました。そのライブパフォーマンスはエキサイティングという言葉でさえ控えめに思え、ダブルドラマーのラインアップは、1982年の THE FALL や1993年の NoMeansNo のような雰囲気を醸し出して、BEFHEARTIAN の喧騒と BAD SEEDS の勢いまで感じさせていました。さらにグラインドコアの激しさと、憎まれ口や軽蔑の念が、瞬時に静謐な美しさに変わるような、煌びやかな輝きを携えていました。
ただし2018年1月にシンガーの Conner Browne がSNSの投稿を通じて2人の別々の人物から性的暴行を受けたと告発され、数日後にバンドは解散を余儀なくされたのです。声明の中で、Conner は告発をした2人の女性に謝罪しただけでなく、バンド仲間にも謝罪しました。
数ヶ月も経たないうちに、ほとんど何の前触れもなく、同じようなラインナップの新しいグループがロンドンと南東部を中心に激しいギグを行っていました。Conner がいなくなり、元ギタリストの Izaac Wood がフロントマンとなり、ドラマーの一人 Johnny Pyke は去りましたが、Chalie Wayne はまだキットの後ろにいます。ベースの Tyler Hyde, サックスの Lewis Evans, シンセサイザーの May Kershaw, ヴァイオリンの Georgia Ellery とお馴染みの顔が新たなバンドを彩ります。セカンドギタリストには Luke Mark が加わりました。
ただし、ラインナップが似ているとはいえ、バンドとしては(全くではないにしても)かなり違ったサウンドになっていました。BC,NR の方が優れていると、数回のライヴで明らかになります。新たにフロントマンとなった Izaac Wood の超越的で文学的なインスピレーションがバンドをさらに進化させたとも言えるでしょうか。
すでにトレードマークとなったシュプレヒコール・ヴォーカルだけではなく、個人的な経験を歌っているというよりも、歌詞の一部または全部がフィクションになっているような、物語性のある曲作り。Wood は散文、詩、韻を踏んだ連歌などを1曲の中で簡単に切り替えています。彼は、視点の変化を伴う複数の物語や、他の曲へのメタ・テキスト的な参照など、ポストモダン的な手法を用いています。
Speedy Wunderground からリリースされたデビュー・シングル “Athen’s France” のセッションで Wood は、1億再生を記録した Ariana Grade の “Thank U, Next” と、彼自身が同年に THE GUEST としてソロでリリースした “The Theme From Failure Part 1” というあまり知られていないシングルをチェックしたと語っています。これらの曲をはじめ、詩的に音楽的に確かな足取りのを並置することは、BLACK COUNTRY, NEW ROAD がどこから来ているのかにかんして、多くの手がかりを提供してくれるはずです。
では Isaac Wood がソングライターになる前は、日記を書いたり、10代の詩人であったり、熱烈なエッセイスト、PCで戦うキーボードの戦士など、文章に馴染み深い人間だったのでしょうか?
「言葉を書くことに関しては、特に長い歴史はないし、豊かな歴史もない。初期の試みはいくつかあったけど、本気で書くことにコミットした最初の記憶は、2018年の “Theme From Failure Pt.1” だった。」
この曲は、歌詞が陽気でメタモダンなシンセポップな作品でした。
「今まで寝たことのある全ての女の子に自分のパフォーマンスを評価してもらったけど、その結果は恐ろしいものだった。 あの曲は、全く同じことを言う方法が50通りもあることを証明しているんだ。」
歌詞の影響力といえば、Wood はブリクストンのザ・ウィンドミル・パブと Speedy Wunderground のレーベルを中心とした狭いシーンの中で同業者、尊敬する人たちを挙げています。南ロンドンの音楽シーンは控えめに言っても今、沸騰しているのです。彼は特に Jerskin Fendrix を称賛しています。
「自分の音楽をやっている時にはほとんど把握していなかった音楽的なコンセプトが、初めて彼を見た時にはすでに Jerskin のセットの中で完全に形成されていたんだ。彼がやったことは面白くて感動的だったけど、決してくだらないものではなかった。僕たちの関係を最も正確に表現するならば、僕は彼の甥っ子ということになるだろうね。」
それに Kiran Leonard の “Don’t Make Friends With Good People” も。
実際、BLACK MIDI, SQUID と共に、BC, NR は単なるポストパンクの修正主義者と定義することはできないにせよ、純粋に優れたポストパンクの復活を祝っているようにも思えます。もちろん、重要なのは彼らがフリージャズやクラウトロックを漂いながら1970年代後半の最高で最も突出したバンドが持っていた精神、ダイナミズム、実験性を備え、新たに開発されたジャンルまで横断している点ですが。コルトレーンの精神から SWANS の異能、TOOL の哲学まで、受け止め方も千差万別でしょう。
「彼らは僕らをもっと良くしようと背中を押してくれるんだ。彼らより優れているというよりも、より良いミュージシャンになって、より良い曲を書けるようにね。もっと練習しなきゃと思うよ」
文学的な影響については、「もちろん、僕はいくつかの本を読んだことがある。明らかに僕は何冊かの本を読んでいて、それらの本が言葉にも不確かだけど影響を与えているんだ。」 と語っていますが、具体的には 数年前に読んでいた Thomas Pynchon (アメリカの覆面作家。作品は長大で難解とされるものが多く、SFや科学、TVや音楽などポップカルチャーから歴史まで極めて幅広い要素が含まれた総合的ポストモダン文学) と Kurt Vonnegut (人類に対する絶望と皮肉と愛情を、シニカルかつユーモラスな筆致で描き人気を博した。現代アメリカ文学を代表する作家。ヒューマニスト) の名前を挙げます。
「芸術の高低の境界線を尊重していない人がいることは問題だけど、少し成功している作家はその境界線を尊重し、それを理解し、それを覆したり、操作したりしているんだよ。彼らは文化についてのつまらない一般化したポイントを作るためにやっているのではなく、実際に人々が共感できるような、感情的に共鳴する何かを言うためにやっているのだから。僕たちは皆、文化的な価値の高低という点では、高いものも低いものも経験しているけど、それらが交差したとき、あるいは境界線が存在するように感じられないとき、その境界線が取り払われたとき、それはその瞬間の感動や感情的な共鳴の一部となるんだ。それが正確に表現できれば、信じられないほどインパクトのあるものになる。だから僕はヴォネガットのような作家に興味を持っているんだ。物語に興味を持ってもらうための安っぽいトリックかもしれないけどね。でも、リスナーが風景を想像するのに美しい言葉や文学的なセンスを使う必要はないんだよ。コカコーラのように、彼らがすでに知っているものを与えて、あとは好きなものを好きなだけ詰めればいい」
意外かもしれませんが、Wood は Father John Misty の大ファンであることも公言して憚りません。
「正直、彼のことをちょっとセクシーな愚か者だと思っていたんだけど、気がつけば彼の後を追いかけていた。彼は世界最高の作詞家ではないけれど、彼の考えていることは完全に、完全に正直だからね」
Wood 自身の初期の文学的な実験としては、”Kendall Jenner” が挙げられるでしょう。ホテルのスイートルームに宿泊するTVスターを、彼らの意志に反して強引にその場を訪れるリアリティーショーの一場面。もちろんフィクションですが、Kendall (カーダシアン家のお騒がせセレブライフで知られるモデル、タレント) は自殺の前に、(私はNetflixと5HTP の申し子/私の青春時代すべてがテレビで放送されている/何も感じることができない/ジュエリーを脱ぐと私は空気よりも軽いのよ)と嘆きます。
「僕はちょうど面白いと思った物語の装置を試してみたかった。音楽の終わりは前のセクションとはかなり対照的で、物語にはある種のクライマックスが必要だと思ったので、多くのものと同じように、死で終わったんだ。この作品は、彼女の立場や場所について、あるいは彼女のファンや視聴者についてのより広い解説を意図したものではないんだ。別に視聴者の共犯性をあげつらってもいない。いつも彼女や彼女の家族の出来事を楽しんでいたからね。ストレートな物語性のある作品を作るのは初めての試みで、今振り返ってみるとちょっと刺激的すぎたかもしれない。もちろん、女性を差別する意図なんてないよ?そんなことは考えたこともなかった。」
“For The First Time” は昨年3月にイギリスがロックダウンに入る前にレコーディングされた最後のアルバムの一つであり、混乱の中で録音されたアルバムとして完全にふさわしいものだと感じられます。屹立したポストロックの冒険と皮肉なポップカルチャーへの言及に満ちたレコードは、反商業的で、リスナーが純粋なポップミュージックを期待していたのであれば間違った作品を手に取ったと言えるでしょう。
では、この作品で Wood はソングライティングの際に実際の自分に近いペルソナを採用したことはあるのでしょうか?
「最初の曲(”Athen’s France” や “Sunglasses”)では、大きな不安の中で自分を守ろうとしたときに現れる、哀れでシニカルな思考に焦点を当ててきた。だから、そうなんだと思うよ…男の内面をキャラクターで書いてきたからね。それは厄介で、時々うまく翻訳できないこともあると思うんだけど…。例えば、初期の曲では女性の描写がやや一次元的だったと思われていたのは間違いなく後悔しているよ」
カニエ、NutriBullets、デンマークの犯罪ドラマへの言及でポップカルチャーへのアイロニーを匂わせながら、不快なほどに生々しく別れの領域を掘り下げる “Sunglasses”。その機能と意味はまるでボックスを踏み続けるダンスのように、9分という時間の中でずっと続いています。傷ついた自我、嫉妬、不安、その他全てを語るこのトラックの強烈さを考えると、当然のことながら、Wood は具体的な解説を避けようとします。
「多くの人の心の中にある特定の視点から書かれている。それは信じられないほど悲観的で傲慢に感じることがある声なんだ。多くの人が初めて’Sunglasses’を聴いた時に、耳障りで擦り切れたような感じがすると思うんだ。でも実際には、音だけじゃなくかなり苛立たしげな声を出していて、かなり馬鹿げた抑揚をつけていて、それはとても泣き言で、演技的で、かなり大げさなんだよね。聞いているとかなりイライラしてしまう。他の多くの人もそうだろうね」
そもそも、ポストパンクやそれに隣接するシンガーで実際誰もが認める実力者など、Ian McCulloch, David Bowie, Scott Walker くらいではないでしょうか。Mark E Smith, Sioux, Ian Curtis, Iggy Pop への評価が突然負から正へと反転したリスナーは少なくないでしょう。
「願わくば、僕のヴォーカルをたくさん聴いて、声に対する経験がある時点で反転してしまえばいいんだけど。そうすれば、リスナーは僕の歌に夢中になり、それを楽しむようになるからね」
“Sunglasses” の異質なアレンジメントについては「この曲は、物語の中で何が起こるのかという点を、音楽的にかなり露骨に設定していると思う。説明するまでもないだろうけど。何かが起こって、最初の道とは別の道で終わる。音楽はそれを追っているだけなんだ。天才的なポップ・コーラスが書けない時には、この書き方が効果的だと思うよ」
最近まで Wood は10代でした。彼にはまだ時間がたっぷりと残されています。そして刻々と変化を続けるはずです。もちろん、だからこそ現在の曲作りには、若者特有の不安感も。
「不安が意識的に影響しているとは全く考えていないけど、とても重要な時にはよく感じるし、自然とそのことについて書いたり歌ったりするね。そして、なにかを放出する時には、単純に自分自身かなり圧倒されていることに気づくことがあるよ」
BLACK COUNTRY, NEW ROAD という奇妙な名前を Wood はプロパガンダだと説明します。
「僕たちなりの『Keep Calm and Carry On』のようなもので、ここで仕事をするのに必ずしも狂っている必要はないけど、助けになることはあると宣言しているんだ。基本的には、悪い場所から抜け出すための良い方法だと説明しているんだよ。興奮した人たちが時々、この道を知ってるなんて言うんだけど、僕はそれが存在しないことを彼らに説明し続けなければならないんだよ」
このバンドの飄々としたウィットは “For The First Time” 全編に現れていますが、特にオープニングの “Instrumental” でのおかしなキーボードリフはその証拠でしょう。通常、待望のバンドのデビュー・アルバムを紹介するような方法ではありません。Evans が紐解きます。
「奇妙だからといって、それが必ずしも悪いとは限らない。シンセのラインが目立つのはおかしいし、曲の中心になるのもおかしい。だけどそれは素晴らしいことだと思うよ。僕たちは4つのリード楽器を持っている。実際には5つかもしれない。2本のギター、ボーカル、サックス、バイオリン、そして鍵盤を使って、みんなで細部にまで気を配る必要があるんだ。細部にまで気を配っていないと、たぶん聴いていて気持ちの良いものにはならないだろうね。僕たちは我慢しなければならない。だからこそうまくいくんだ」
実験的レーベル Ninja Tuneと契約したのは、収穫でした。コンタクトはラブレターという21世紀において脇に追いやられ、枯れ果てたスタイル。型にはまらない契約だったからこそ、完璧にフィットしていたのでしょう。未知の世界への感覚も魅力の一つだったと Hyde は説明します。
「彼らが私たちメンバーの中の誰かを知っているとは思えなかった。とてもエモーショナルになったわ。私たちに契約を申し入れていた他の誰も、このような方法で感情を表現していなかったからね。彼らはわざわざそんなことをする必要はなかったけど、そうしてくれたの」
このグループがすでに若いファンの想像力を掻き立てていることに注目すべきでしょう。”Opus” を制作した最初のセッションでは、新グループと旧グループとの差別化を図るための議論があったのではないでしょうか?
「具体的にいつ、どのようにしてそうなったのかは覚えていないけど、BC,NRで何をしたいのかという理解はあったのだと思う。NERVOUS CONDITIONSを2~3年やっていたんだけど、その間に開発したものをいくつか取り入れたいと思っていたのは確かだよ。でももちろん、それまでとは違う種類の音楽を作りたいという願望もあるし、現在の作品は、僕ら全員にとってよりくつろげるものになっていると思う」
Hyde も同意します。
「感情的にも音楽的にもつながっているんだから、私たちは何かを作り続けるしかなかったの。感情的には脆くなって、もがいていたけどね」
最新シングルとなった “Science Fair” は、前衛的なギターとブラスのモンスター。Evans のお気に入りです。
「この曲はかなりストレートなものだよ。キューバ風のビート・フリップなんだ。科学的に完璧なドラム・ビートだよ」
一方、Georgia は、起源が東欧とドイツ、伝統的なユダヤ人の民族音楽クレズマーがバンドにもたらした影響を説明します。ヴァイオリンとサックスは伝統的なロックの楽器ではありませんが、クレズマーのバックグラウンドは新たな扉を開きました。
「祝賀会の音楽みたいなものよ。パーティーミュージックなの。ユダヤ文化の中で人々が集まる時に演奏されるのよ。悲しい音楽でも、かなりハッピーな音楽。でも、マイナーキーだから悲しそうに聞こえるのよね」
アルバムのタイトルでさえも、奇妙な場所から抜かれています。それは Isaac が偶然見つけた “We’re All Together Again for the First Time” と題されたデイヴ・ブルーベックのジャズ・アルバムからの抜粋でした。
曲作りのプロセスは決まっているのでしょうか?
「具体的なプロセスはないんだけど、最初のアイデアはたいてい Lewis と僕がスケッチをして、それからハーモニーを奏でることのできるメンバーがトップラインなどでそのスケッチを補強していくんだ。その後、グループ全体で肉付けをして分解し、全員が満足できるものに仕上げていくんだよ。その時にテーマを考えて、歌のための言葉をまとめるんだ。曲作りの過程で言い争うことはほとんどないね」
それはバンドのサウンドの断片の組み合わせ方にもはっきりと表れています。”For The First Time” は例えば「エキゾチックな」着色剤を使っただけのロックではありません。クレズマーとポスト・ハードコアという、表向きは全く異なる要素が反復合成されていることを考えると、このバンドにはいくつかの「異なる陣営」が存在しているのではないかと疑いたくもなります。
「確かに相対的な専門知識のポケットはいくつかある。Georgiaと Lewis はクレズマー音楽の経験が豊富で、Georgia は現在 Happy Bagel Klezmer Orkester と共演しているし、Lewis は若い頃に経験豊富なクレズマー音楽家と共演して彼らから即興演奏の仕方を教わり、それが彼の作曲に大きな影響を与えているんだよ。May はクラシックの分野に最も多くの時間を割いているし、僕はARCADE FIRE のアルバムを最も多く所有している。でも、これらの影響を受けたもの同士がお互いに争っているわけではないんだ」
Evans も同意します。
「僕たちはとても仲が良いから、誰かにアイデアがクソだと言われても気が引けることはないよ。ソングライターの中には、音楽は自分の赤ちゃんのようなものだと言う人もいるけど、それは僕たちのエートスではないんだよ。僕らは常に曲を変えているし、7人組のバンドでは手放す能力が本当に重要なんだ。独裁者にはなりたくないんだよね。他にも6人の素晴らしい才能を持った人がいるんだから、彼らを無視して何の意味があるんだろう?それは音楽を悪くするだけだ。もしそれが1人の手によるものなら、僕らの音楽はクソになっていただろうね」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LARS HORNTVETH OF JAGA JAZZIST !!
“I’ve Listened To Tomita’s Albums For Years And It Felt Really Natural To Combine This Inspirations Of Warm Synth Sounds With The Analogue And Organic Sounds Of The Drums, Guitars, Horns And Vibraphone. We Spent a Lot Of Time Making The Synth Melodies Sound As Personal And Organic As Possible, Like a Horn Player Or a Singer. Tomita Was The Biggest Reference To Do That.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YVETTE YOUNG OF COVET !!
“I Personally Do Feel Like There’s a Lot Of Stereotypes And Preconceptions Floating Around, And I Look Forward To Continuing To Work Hard So I Can Be a Better Example Of What Is Possible To Younger Girls.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TIM CHRISTENSEN OF DIZZY MIZZ LIZZY !!
PHOTO BY JANNICK BOERLUM
“Pelican Is a Big One For Me. As Is Russian Circles. MONO From Japan Is Also a Favourite. And There Are So Many More. Elder, Uncle Acid, YOB, Kerretta, Earth, Electric Wizard, Katatonia, Lowrider, Gojira, And I Could Go On.”
“I Believe That Language Choice Of Words And Phrasing, Has a Lot To Do With The Collective Mindset Of The People. Being Singled Out Because Of My Gender Automatically Negates My Worth And Work As a Musician.”
DISC REVIEW “A GAZE AMONG THEM”
「私は時々、BIG|BRAVE はどんなシーンとも全く繋がっていないんじゃないかと思う時があるの。それは、最初から特定のジャンルの音楽を作ろうと望んだことがないからだと思うの。私たちは自らの理論を概念化し、そこから前進していったから。」
ビジュアルアーツの背景から音楽世界に転進した異能の勇士は、定型化されたヘヴィーの概念へと挑戦します。
「私は、Mathieu と真剣に音楽を始めるほんの一年前にギターを手にしたの。公の場所で歌ったこともなかったのよ。実際、このバンドが誕生するまで、私は自分の声をどれだけ “使用” できるのか分からなかったくらいなの。」
バンドの顔である麗しの Robin Wattie は、自らの音楽経験が相当に不足していたことを素直に認めました。故に、BIG|BRAVE の旗揚げには文字通り “大きな勇気” が必要だったとも。
ただしその無垢なる履歴書は、紡がれた歴史の中で同質化が進んだ “ヘヴィネス” が元来有した “様々な姿形” を暴き出すにはむしろ好都合だったとも言えます。既存のあらゆるジャンルへと、従属を拒む選択もまた勇気。
ドゥーム、ドローン、ポストメタル、ポストロック、シューゲイズ。BIG|BRAVE を形容する看板は数あれど、確かにそのどれもがモントリオールの怪物を適正に言い表しているようには思えません。例えば、SUMAC の如くその全てを混交したハイブリッドのキメラならば少しは近づくでしょうが。
「単一のコードパターンを使用する場合、コード進行を考えたり聴いたりする必要はないよ。存在しないんだからね!故にその基盤に重ねる歌のフィーリングと音の階層にフォーカスすることが可能なんだ。そうすることで、リスナーをより容易く恍惚状態へと導ける。実にリズミカルなドローンさ。」
Mathieu は、”ワンコードでどれだけ興味深い音楽が作れるか” をバンドの命題に掲げています。その矛盾したテーマ、制限的なやり方はしかし一方で HEILUNG も言及していた “安定したビートを長時間浴びる時に起こる魔法、トランス状態で我を忘れる経験” をもたらすことが可能でしょう。
ただし、エレガントに難題をクリアする “A Gaze Among Them” を聴けば伝わるように BIG|BRAVE に流れるのは、Tony Conrad や Steve Reich といったミニマリストの柔軟な血脈です。
オープナー “Muted Shifting of Space” はある種象徴的でしょう。動的な和声の流れを拒絶して、様々な色調、音色、サウンドエフェクトがその代役を務めます。躍動するメロディーラインとリズミカルなタッチは、コードの動きを極力封じることで即興の自由、スポンティニュアスなイメージを得られたからこそ生まれました。
SUNN O))) のドローンとは明らかに異なるスロウバーン。野生で呪術的、しかしアクセシブルで感情に訴えかける音の葉の力強さは、Robin の本能、ジャズの背景に依るところが大きいのかも知れませんね。
「その質問をしてくれてありがとう。」セクシズムやミソジニーについて Robin はどうしても自らの言の葉を記しておきたかったようです。
「私は言葉や言い回しの選択って、人々の集団心理に大きく関係していると思うのよ。ただ私の性別だけで選ばれるとしたら、ミュージシャンとしての私の価値と仕事は自動的に無意味なものとなってしまうのよ。」
ダークディーバ、メタルプリンセス。Robin はそういった音楽と無関係な部分を売り物にする気はありません。きっと2020年代は、フィーメールフロンテットとわざわざ記すことを取り払うべき時代でしょう。性別は決して “ジャンル” ではないのですから。
“A Gaze Among Them” はつまり音響的な瞑想により自らをその肉体と切り離し、世界と共感、もしくは阻害を感じる作品かも知れませんね。”Them” 大衆の視線と自らの視線が交わる時、”既存のジャンルや価値観に当てはまる必要” はそれでもきっとないはずです。
今回弊誌では、Robin & Mathieu にインタビューを行うことが出来ました。「言語の選択に気をつけなければ、色とりどりの女性が一生懸命行ったことを評価する以前に、女性に制約を追加してしまうわ。それはほとんどの女性が知らずに持ち歩く内面化されたミソジニーを補強してしまうことにも繋がるの。」
GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR の Thierry Amar, LINGUA IGNOTA や THE BODY を手がける Seth Manchester のクレジットも納得。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARK OWEN OF WE LOST THE SEA !!
“People In Music And In All Walks Of Life Have Always Faced Depression And Anxiety And Maybe We Are Just Better At Recognising It Out Now.”
DISC REVIEW “TRIUMPH & DISASTER”
「僕は、ミュージシャンだから苦痛に苛まれているとか、芸術には苦痛が必要だといった決まり文句のようなものでこの問題を茶化したり、単純化しすぎたりするのは嫌いなんだ。音楽に関わる人だけじゃなく、あらゆる分野の人々は常に鬱や不安に直面していると考えているから。」
シドニーが誇るポストロック/メタルの俊英 WE LOST THE SEA は、最新作 “Triumph & Disaster” で気候変動と天然資源の枯渇により崩壊の刹那でゆらめくディストピアな世界を描いています。
バンドにとって、荒廃したこの惑星の未来を語ることは定められた運命だったのかも知れませんね。なぜなら彼ら自身も破滅の瀬戸際にその身を置いていたのですから。
ジャムロックの海風を浴びながらその音景の壮観を存分に拡大していたバンドは2013年、ボーカリスト Chris Torpy を自死により失います。心揺さぶるリリック、熱気に満ちたパフォーマンス、何より長年の友人だった核を失い、残されたメンバーは無限海溝の淵へと沈んでいきました。
CULT OF LUNA スタイルのポストメタルを追及した “Crimea”, “The Quietest Place ‘n Earth” において、Chris の正直で生々しいスクリームは不可欠な要素でした。バンドの肝であるダイナミクスから Chris の声、性格、文章がそっくりそのまま欠落してしまう。未来は不安に、過去は苦痛へと変わり、虚無からの再出発に彼らは2つの約束を定めます。
「彼はバンドにとって不可欠なメンバーだった。音楽的にも、人間的にもね。だから誰も彼の穴を埋めることは出来ないんだよ。 」
Chris のためにもバンドを続けること。Chris の後任を求めないこと。ギタリスト Mark は当時、深い闇の奥にありながら “音楽が負のエネルギーを集中するための素晴らしい方法” だと認識していました。
WE LOST THE SEA を蘇らせたのは、皮肉にも離陸後73秒で爆発し7人の乗組員が亡くなったスペースシャトル”チャレンジャー”の事故でした。宇宙探査をまた一歩前に進めた死に至る勇敢な航海。彼らは乗組員たちと Chris の姿を重ね “Departure Songs” を完成へと導きます。
チェルノブイリの災害やロバート・スコットの南極遠征さえインスピレーションの一翼を担ったアルバムは、完全にインストゥルメンタルで、Chris の居場所はトレモロのメロディーや荘厳なコードワークへと静かに移行していたのです。
音の風景を楽器のみでよりアトモスフェリックに、よりディプレッシブに投影する術を学んだ WE LOST THE SEA。皮肉なことに、”Departure Songs” の美しい嘆きの音の葉は、世界を共鳴させバンド史上最大の成功をもたらすことになりました。
ライブ会場は、鬱や不安に苛まれる人々のセラピーの場所となり、バンドの音楽は困難に立ち向かう彼らを抱擁し大きな助けとなったのです。実際、メンバーが “美しき鬱” と定める Chris の遺志は、こうしてチャレンジャー号と同様残された者の推進力となりました。
「意図的に荒涼としたレコードを書き始めたんだ。実際、アルバムに希望を持たせるべきかどうかを議論したんだよ。そして最終的に、希望なしで何かを示すことは出来ないだろうという結論に達したね。」
“Triumph & Disaster” は “Departure Songs” のナチュラルなフォローアップ。同様に絶望や鬱、不安をその音に宿していますが、治療やセラピーという内なる場所から誰もが憂慮する環境問題へ目を向けた成熟のアート作品だと言えるでしょう。そして、崩れゆく世界にも存在する親子の愛はアルバムにおける一握りの希望となりました。WE LOST THE SEA に再び歌声をもたらした母の賛美歌 “Mother’s Hymn” はまさにその象徴でしょう。
「もし正直で心を動かすパワフルな音楽を書くとしたら、心の底から本心であたらなければならないよ。 」
亡き Chris、そして自らの音楽を語るとき、バンドは “Honest” “Real” の言葉を必ず使用しています。全てにおいて正直である。それはきっと “喪失” の長いトンネルに苦しみ抜いた彼らにとって1つの光明であり、出口だったのかも知れませんね。
今回弊誌では Mark Owen にインタビューを行うことが出来ました。「僕はね、早い段階でほとんどの人が音楽に宿る “でたらめ” をすぐに見破ることができると学んだんだ。もっともらしく正直である風を装っても、すぐそれを見破ってしまう。歌詞がなく、それでも感動的なアイデアを書こうとしている “ポスト” の世界の人々はこの本質を理解していて、その使い方を知っているんだと思うな。」 どうぞ!!
“‘Post-rock’ Used To Be a Useful Catch All Term That Included All Of The Things You Just Listed To Describe Our Sound, Particularly For Bands Like Tortoise, Stereolab, Slint, But Now Seems It’s Gotten Very Specialised To a Certain Type Of Slow-burning Reverby Sound.”
DISC REVIEW “SEQUESTERER”
「アイルランドは小さな国だけど、沢山の有名なインストゥルメンタルバンドを輩出しているよね。その大きな理由は、おそらく00年代初期に THE REDNECK MANIFESTO がこの国でとても人気があったからだと思うんだ。」
THE REDNECK MANIFESTO, GOD IS ASTRONAUTS, ADEBISI SHANK, AND SO I WATHCH YOU FROM AFAR, ENEMIES。00年代初期に勃興したアイルランドのインストゥルメンタル革命は、ポストロックの情景とマスロックの知性を巧みに組み込みながらそのユニークな音脈を紡ぎ続けています。
「”ポストロック”は、僕たちのサウンドを説明するための便利なフレーズだったね。ただ、今となってはリバーブをかけた緩やかに燃えるような特定のサウンドを指すようになっていると思う。」
穏やかに多幸感を運ぶアトモスフェリックなサウンドスケープのみを追求せず、実験性、多様性、複雑性を同時にその理念へと宿す ALARMIST はまさにアイルランドに兆した特異性の申し子だと言えるでしょう。
“ポストマスロック”。モダンなインスト音楽の領域にとって不可欠なポストロック、マスロックのみならず、エレクトロニカ、ジャズ、チェンバー、サウンドトラックにゲーム音楽まで貪欲に飲み込む騒々しき野心家 ALARMIST に付属したタグは、そうして自らが呼称する “インスト過激主義者” のイメージと共に新時代の到来を激しく予感させています。
「僕たちはパートをスワップするのが好きなんだ。パートごとよりもアンサンブル全体を考えて作曲しているからね。」
ALARMIST が過激派たる由縁は、担当楽器のユーティリティー性にもあると言えます。カルテットからトリオへと移行する中でツインドラムの奇抜は失われましたが、それでもメンバー3人は全員が鍵盤を扱えますし、ギタリストとキーボーディストの境界さえ曖昧。さらに管楽器やアナログシンセ、トイピアノにダルシマーまで駆使してその音のキャンパスを豊かに彩っているのです。
「僕たちは1つのジャンルのラベルで完全に満足することは決してないだろうね。だけど “エクスペリメンタルロック” は曖昧だけど使える言葉だと思う。」
実際、バンドのセカンドアルバム “Sequesterer” に封じられた楽曲は、かつてポストロックに備わっていた実験性、真の意味での “ポスト” ロックを体現する魔法です。
例えば Tigran Hamasyan がジャズからの MESHUGGAH への返答だとすれば、オープナー “District of Baddies” はポストロックからの MESHUGGAH への返答なのかも知れません。ANIMALS AS LEADERS を想起させるシーケンシャルなメロディーとポリリズミックなリズムアプローチの現代建築は、アナログシンセサイザーの揺蕩う揺らぎや多様な楽器の音色との交わりで緩やかに溶け出し、風光明媚な情景の中へと見事に同化を果たします。それはメタルの方法論とはまた異なるスリル。時間もジャンルも楽器の垣根までも飛び越えまたにかける音旅行。
同様に、”Boyfriend in the Sky” はトロピカルトライバルに対する、”Lactic Tang” は FLYING LOTUS に対する、そして “Expert Hygience” はゲーム音楽に対するポストロックからの強力な返答だと言えるのかも知れませんね。ポストロックの一語である程度音像が理解できてしまう現在のシーンにおいて、TORTOISE, STEREOLAB, SLINT といったバンドはもっと多様で、挑戦的で、アヴァンギャルドな理想を追っていたよね?という ALARMIST の救いにも似たメッセージは、”ポスト” の停滞と飽和から脱却する万華鏡の音魂として世界を席巻するはずです。
今回弊誌では ALARMIST のメンバーにインタビューを行うことが出来ました。「日本にはクールな音楽が沢山あるよね。Mouse on the Keys, Cornelius, Perfume みたいな J-Pop に武満徹のような現代音楽まで。それに、任天堂、セガ、コナミみたいなゲーム音楽からも大きな影響を受けているんだよ。」リリースはジャンル最重要レーベルの一つ Small Pond から。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRIAN COOK OF RUSSIAN CIRCLES !!
ALL PHOTOS BY TEDDIE TAYLOR
“I Would Much Rather Listen To a Darkthrone Album That Sounds Like It Was Recorded On a Boombox Than Hear Some Over-produced, Over-polished, Over-wrought Album.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM SYMONDS OF LATITUDES !!
“Post Metal Was Never An Intention But Perhaps An Inescapable Tag For Forward Thinking, Heavy, Emotional And Atmospheric Music. I Would Like To Think The More We Progress The Further Removed We Are From This. “
DISC REVIEW “PART ISLAND”
「僕は ISIS の大ファンだったし、初期の CULT OF LUNA の作品は楽しんでいたんだ。だけど結局今となっては、焼き直しに頼るジャンルになってしまっているね。」
その地理学的バンド名が指し示すように、LATITUDES は停滞するポストメタルの大陸を地平の彼方へと移動させる魅惑のプレートです。
「LATITUDES はヘヴィーなバンドなんだけど、シューゲイザーやフォークの要素、クリーンボーカルや圧倒的なメロディーと融合させているんだ。」
英国から登場した “Post-Whatever” なファイブピースは、エクストリームな音壁に知性と情景を塗り込みながらアートの真髄を追求しその造形を続けています。NEUROSIS の暗黒と ALCEST のメランコリーを合わせ鏡に映しながら、プログレッシブ、ハードコア、スラッジ、ドゥーム、チルウェーブまで多様な音の葉を万華鏡の理論で織り込む LATITUDES の光彩は、そうしていつしかジャンルの境界を緩やかに溶かしていたのです。
「僕たちは、慎重に選択してこのアルバム全体でボーカルをハイライトとしたんだ。完成した曲にボーカルを追加するのではなく、ボーカルを中心として楽曲を作曲していったんだよ。」
時に、アンビエントメタルとも評される美麗な野心家は、自らのコンフォートゾーンに止まることはありません。インストゥルメンタルの鼓動を源泉としていたバンドは、これまで数曲でアンサンブルの一部として使用していた嫋やかな声帯の振動を音楽建築の中心へと据える決断を下します。
そうして今回インタビューに答えてくれた Adam Symonds をフルタイムのメンバーに起用し、トリプルギター&ボーカルの新編成で “Part Island” を完成へと導いたのです。
湖面と逆転した稜線が写るモノクロームのアートワークは、分断された世界の象徴。絶望、喪失、空虚。母国の政治的混乱と社会的分断は悲しいまでにアルバムのイメージへと反映されています。ただし、梯子で繋がる上下の世界が仄めかすように、レコードには一縷の希望も残されているのです。
苦痛と期待を等しく帯びたアコースティックのセレナーデ、”Underlie” の色彩は、”Part Island” のキャンバス全体を鮮明に浮かび上がらせます。シンプルでしかしエレガントに描かれた物語の第一幕は灰色の悲哀を帯び、神聖なメロディーには仄暗き絶望が霧のように舞い落ちるのです。
「結果として、ダイナミクスに満ちたレコードとなったんだよ。素晴らしいハーモニーが常に生まれていると思うんだけどな。」
ポストロックの荘厳とブラッケンドの狂気、トレモロと不協和音のカコフォニーをリズムの魔法で抱きしめた “Moorland Is The Sea” のパノラマは実にプログレッシブ。さらにノイズの海とアトモスフィアの波で英国の鬱屈した気候を視覚化する “Dovestone” のサウンドスケープは実にシネマティック。
そうしてアルバムのダイナミズムは作品を締めくくるタイトルトラックで最高潮へと達します。アコースティックの浮遊感、リフのカタストロフィー、ピアノのドラマチシズム、そして溢れる激情のエモーション。バンドの全てを注いで具現化した対比の美学とカタルシスは、想像を絶する音の震源地としてリスナーをトランス状態へと誘うのです。
今回弊誌では、Adam Symonds にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちにポストメタルをやっているという意識はないんだ。まあだけど、先鋭的で、ヘヴィーで、エモーショナルでアトモスフェリックな音楽だからそのタグからは逃れようがないよね。だから僕らはもっと進化してこのタグから先に進みたいね。」リリースは注目の Debemur Morti Productions から。どうぞ!!