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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【DEAFHEAVEN : INFINITE GRANITE】


COVER STORY: DEAFHEAVEN “INFINITE GRANITE”

“If Sunbather Was Summery High Noon, Then Infinite Granite Is The Early Morning.”

ROADS TO INFINITE

2020年の大半を、George Clarke は夜明けの淡い光を見つめながら過ごしました。本来ならばステージや大自然の中で過ごすはずのエネルギーを蓄えていた DEAFHEAVEN のフロントマンは、ロックダウンでロサンゼルスのアパートの壁に囲まれたまま、不眠症になってしまったのです。しかし、ただ静けさの中で煮詰まるのではなく、その厳しい美しさに魅了され、午前3時から6時の間に執筆活動を行い、夜の深い闇が昼の露に溶けていくのを繰り返し眺めていたのです。
DEAFHEAVEN 5枚目のLP “Infinite Granite” は、そうした深夜のセッションの結果として、地平線上の光の反射のように生まれました。2018年の “Ordinary Corrupt Human Love” ではまだ残していたメタリックな重さの多くを捨てて、シューゲイザーとアヴァンギャルドなポストロック・サウンドへと大胆にコミット。繊細なメロディとアトモスフィアの9トラックを収録しています。では、George にとって “Infinite Granite” とはどういった存在なのでしょう?
「”Sunbather” が夏の正午だったとしたら、”Infinite Granite” は早朝だよ」と彼は、DEAFHEAVEN が2013年に発表した衝撃的なホットピンクの作品と比較します。単純化には注意を払うべきでしょうが、やはり表向きは “黒ずくめ” を何度も塗り替えることには、皮肉や目的が存在しています。今回のTOUCHE AMORE, Nick Steinhardt による抽象的なアートワーク(レコードの最初の60秒をハイテクなグラフィックで視覚化したもの)は、クールなブルーの色調でデザインされています。しかし、そのTシャツのような美的感覚よりもはるかに重要なのは、そこに対応する経験、思考プロセス、深い考察です。
「不眠症だったから、私の宿題の多くは、午前2時から6時の間に行われた。つまり、青い時間帯に多くの曲を書いていたと思う。それもアートワークに影響を与えているよ。全体的に、この落ち着かない時期の影響を受けているようだね」

例えば、タイトルにもなっている “Infinite Granite” “無限の堅牢” は、保留中の人生の静けさや停滞によって “化石化” した気分を表すメタファーです。George が当時を思い返します。
「固い空間に閉じ込められているような感覚があったね。繰り返しや日常の重みを感じていたんだ。”Infinite Granite” という曲は、抽象的な過去が現在の自分にどう影響を与えるかについて歌っている。自分が、部分的には家族の歴史の産物であることを知る。家族の問題はしばしば自分の問題でもあるんだよ。家族の苦難は、必然的に自分の人生でナビゲートしなければならないことにもつながる。それは過去を振り返ることであり、その過去が自分にどのような影響を与えるかを見ることなんだ」
印象主義的な歌詞の表面をなぞると、そこには幸運や運命、家族についての力強い問いかけがありました。
「この作品は、過去を振り返り、その過去が自分にどのような影響を与えるかを理解することが大部分だと感じているよ」
昨年12月に発売されたライヴ・アルバム “10 Years Gone” で節目を迎えた DEAFHEAVEN 10年目の旅。そこで彼らは空虚な時間の中、創造力としての彼らの過去、現在、未来を見つめ直し、それが “Infinite Granite” の印象的なスタイルの変化へとつながっていきました。”Daedalus” や “Language Games” のような初期のカットから、”Ordinary Corrupt Human Love” に収録された11分の “Glint” のようなより実験的な最近の曲まで、8つの傑出した曲を収録。ブラックメタルをベースに、シューゲイザーやポストロック、アンビエント・ミュージック、さらにはオルタナティブ・ロックまでをも取り込んで、DEAFHEAVEN が常にサウンドを前進させてきた10年の終わりに、このアルバムは驚くほど自然な響きを誇っていました。いいかえれば、DEAFHEAVENの物語を自らの言語で語った作品であり、それは彼らが時間をかけて洗練させ、故意に変化させたものなのです。George が振り返ります。
「最も注目したのは、10年間で私たちがどのように変化したかだった。より速く、よりアグレッシブに、よりスマートなダイナミクス、よりスマートなトーンになっていたよ。そして、これらの曲をレコーディングした後、すべての曲に歯ごたえと緊迫感が増していることに気がついたんだ。私たちがどのように成長したのかを見るのはとても興味深いことだったな。ある意味では、新しい DEAFHEAVEN が古い DEAFHEAVEN をカバーしていたというか。若い曲に今の自分たちの姿を重ね合わせていたんだ。例えば、 “Glint” のライブ・バージョンはレコードに収録されているものよりもかなり強化されているよね」
DEAFHEAVEN はブラックメタル純粋主義者の間では常に物議を醸していましたが、2013年の画期的な作品 “Sunbather” 以降、彼らはアンチの数を補うだけの賛同者が広い世界にいることを証明してきました。次に彼らが進む道は?

5枚目のアルバム “Infinite Granite” は、その問いかけに力強く答えます。今回の最も大きな変化は、リードシンガー George Clarke の声でしょう。過去のアルバムでリバーブの中に滲み出た扇情的で血も凍るようなエイリアンの叫び声はほとんどなくなり、代わりに TEARS FOR FEARS にも似たクリーンでメランコリックなボーカルが登場します。あるリスナーにはアリーナ・ロックが聞こえ、あるリスナーにはインディー・ロックが、あるリスナーにはアート・ロックが聞こえるでしょう。 しかし、このような急激な変化にもかかわらず、”Infinite Granite” は紛れもなく DEAFHEAVEN のアルバムです。つまり、広がりがあり、妥協がなく、極端。ギタリストの Kerry McCoy は彼らの過去と現在を対比させます。
「2011年のデビュー作 “Rods To Judah” を書いていた時の子供の俺を思い出すよ。Deathwish のようなレーベルと契約し、本物のブッキングエージェントを持ち、ドアが開くのを見たんだ。それは宝くじに当たったようなものだった。俺は文字通り、マイニングで得た金で暮らしていると思っていたし、今でもそう思っているくらいでね。だけど、俺はあの子供にとても共感しているんだ。あの子に、『大丈夫だよ、全部うまくいくよ。自分でコントロールできないことは心配するな』と言ってあげたいね」
Kerry は、”Ordinary Corrupt Human Love” を制作したあのころのバンドにも共感を示しています。たしかに3年前から変化は起きていましたが、薬物やアルコールへの依存を克服したこと、自分たちのバンドを囲い込むことに夢中になっていた同業者や有識者への “恨み” を晴らしたことは、より広い創造的解放への第一歩に過ぎませんでした。
「あのレコードは、禁酒する前に半分書いて、禁酒した後に半分書いたんだ。あの時期は、俺の脳内化学反応、感情、個人的な人間関係が非常に混乱していてね。個人的にも集団的にも、自分たちのことを理解し、成長し、いくつかの悪魔を正していくうちに、クリエイティブな人間につきものの恐怖心がなくなってきたんだよな。これが今の俺たちの状況で、言い訳をしたり、誰かに何かを証明したりする必要はないと思っている」
昔はもっと波乱万丈だったと George は言います。「私たちはエゴやネガティブな気持ち、自分が一番になりたいという気持ちに駆られていたからね。今では、そんな恐れを知らないことが私たちの原動力になっているんだよ」

“Infinite Granite” の作曲とレコーディングに向けて、バンドの5人のメンバーとコラボレーション・チームは、グループ・チャットの名前をそのまま “Infinite Granite” に変更しました。
Kerry が言うように “完全にロックなレコード” になるという明確なコンセンサスはありませんでしたが、状況はそのように傾いているように見えました。最終的にアルバム中盤のハイライトとなった “Lament For Wasps” の波打つシューゲイザーはテンプレートとなっているでしょうか。”Villain” で実験した “空気のようなファルセット” は、さらに彼らの方向性を強調します。
「いろいろな歌手の歌を聴いていた。力強く歌える方法を探していたんだ。シューゲイザーのライブで問題になるのは、轟音のギターに対抗して、ソフトな声を出すこと。私が好きバンドでも多くは、ライブでそのダイナミックさが必ずしもうまく伝わっていない。ミックスでそのバランスを取るのはとても難しいんだよね。
そこで最初に考えたのは、ギターに対抗できるような強い声が必要だということ。そこで、クラシックの名曲に立ち返り、ニーナ・シモンやチェット・ベイカーなど、個性的で力強い声の持ち主の声を聴くことにしたんだ。それに、TEARS FOR FEARS, DEPECHE MODE といったより力強いシンガーも。最終的にライブで演奏することになったとき、大音量のライブ音楽の中で繊細なボーカルに磨きをかけなければならないような、大きなハードルにはしたくないと思っていたからね。それがモチベーションになったんだ。
ある意味では、”Ordinary Corrupt Human Love ” の “Near” や “Night People” のように、自分ですでにやっていたことでもある。それでも、私のアイデンティティではないような、体外離脱の感覚はあるんだよね。全く新しい筋肉を使い、全く違う脳の部分を使っているような感覚だった。
あまりにも新しいことだから、途中で不安になることもあったよ。ボーカルだけでなく音楽的な面でも、作曲の過程で、ダブル・キックなどを簡単に入れることができたはずなのにとかね。それでも、いつも私の意見は、昔の習慣にとらわれず、進むべき道を進むだった。そして、それは何よりも私のためになったんだ。悲鳴を上げないで、自分のやりたいことをやるんだ。そして、やっているからには、続けること。続けること、そしてその正直さを発揮することがとても重要だった」
この楽曲は、George が禁酒について直接言及している唯一の曲でもあります。 “New Bermuda” の重苦しいトーンが、彼らがロサンゼルスに移った後、バンドを取り巻く幻滅とドラッグの雲を象徴していたことは明らかでした。”Infinite Granite” の角質除去されたサウンドには、感情の浄化が暗示されていますが、それは “Villain” で明確になりました。”Inform my mother’s people / 30 months is war / Dealing with the blood of 30 years well wear “とクラークは歌っています。 行間を読むのは簡単です。George は、30歳になって2年半の禁酒期間を経て、この曲を書いたことを認めています。”Infinite Granite” は、あからさまな断酒の記録ではありませんが、人間関係へのアプローチ、野心の概念、30歳を過ぎてからの個人的な進化についてのバンドの大きなテーマ、その中に断酒も確実に含まれていました。
「私の家系では、アルコール依存症と薬物依存症が何世代にもわたって大きな問題となっていた。ここ数年はそのことをよく調べていたんだよね」

事態が進むにつれ、George は自分のヴォーカルを “音楽的な弱点” と称して、より計算されたものにしたい、より行き当たりばったりではないものにしたいという願望を表明しました。
「私はアグレッシブなボーカルが好きだよ。何年もあのやり方を、楽しみながら進化させてきた。だけど、挑戦したいという気持ちが強かったんだ。これまでの DEAFHEAVEN のような伝統的なボーカル・アプローチでは、今回の曲を向上させることはできないだろうと思った。この方向性を考えると、全体を覆うような激しいボーカルでは限界があるのではないかと言ったんだ。より冒険的なボーカルと音楽をマッチさせる方が野心的だと感じたんだよね」
2018年末にプロデューサー Justin Meldal-Johnsenとの “セレンディピティ” な出会いがあったことで、この方向性はさらに加速しました。Kerry は Justin のカリフォルニア州グレンデールのスタジオで、匿名の他のアーティストにギター・パートを提供するように頼まれていました。そして George は、その年の12月にロサンゼルス・パラディアムで行われた NINE INCH NAILS のライブで Justin とばったり出会いました。DEAFHEAVEN はこれまで Jack Shirley(”Infinite Granite” のエンジニア)としか仕事をしたことがありませんでしたが、Justin のバンドに対する新鮮な熱意を受け、彼らの視野を広げる機会を見逃すことはできなかったのです。Kerry が説明します。
「Jackは、非常に自由な人なんだ。俺たちは彼の意見を聞きたければ聞くけど、俺たちの邪魔をするようなことはしない。彼は、その日のそのバンドの、その曲のタイムカプセルを作ることに重きを置いているからね。Justin は、俺をプロデュースすることに専念していたよ。俺はこれまで、そんなにインプットを受けたことがなかったからね。それがとても役に立ったんだ。とてもクールで満足のいく経験だったな」
実際、DEAFHEAVEN の煌びやかでエモーショナルなテイストは、その領域を誰よりも知っている男によって完全に引き出されています。Justin Meldal-Johnsen は、現在 St.Vincent のベーシスト兼音楽監督を務めており、Beck のツアーバンドにも数十年にわたって参加していました。さらに彼は M83の巨大なエレクトロポップ作品 “Hurry Up, We’re Dreaming” のようなサウンドを求める際に雇われる人物で、そのリストにはエモポップの代表格である TEGAN AND SARA, PARAMORE, JIMMY EAT WORLD までもが含まれているのです。
Justin は当初、DEAFHEAVEN が2019年の7分半の激しいシングル “Black Brick” の延長にあると考えていましたが、実際目の当たりにしたより広い方向性に目を見張りました。
「彼は最初、”Black Brick” みたいにやろう!という感じだったけど結局その後、全く別の感じに仕上がってしまったよね (笑) 。だから彼は必ずしもこの方向性に対して準備ができていなかったにもかかわらず、自分ができる最善の方法でこの音楽を促進してくれたんだ。このレコードを聴いた人たちが、新しいプロデューサーとして入ってきた彼を見て、『ああ、彼が DEAFHEAVEN をこの方向に押しやったんだな』と思うのは間違いないけどね。でも、変な言い方をすれば、それはほとんど逆だったんだよ」

実際、Justin の助けは必要でした。COVID がバンドとプロデューサーのカレンダーを空白にし、数ヶ月に及ぶアルバム制作に入ると、”従来型” の曲作りの難しさが痛感されたのです。Kerry が回顧します。
「俺たちは、これまでのキャリアにおいて、動きのある曲を書いてきたんだ。バース、プレコーラス、コーラスを試すというアイデアは、後ろ向きに見えて奇妙にも俺たちにとってはとても進歩的なものだった。また、ダブルキック、ブラストビート、そして大きなクレッシェンドというような手法に戻ることなく、普段やっていることの重厚さと強さを維持しながら、自分たちらしいサウンドにするという課題もあった。これまでのやり方の代わりに、DINOSAUR Jr. や SONIC YOUTH が楽曲にどうアプローチするかを考えてみたんだよね。今は鍛えるべき筋肉が違うんだ。同じトリックに戻ることなく、普段やっていることの強度を維持するという挑戦だよ」
George にもこだわりがありました。
「今回の作品は、以前の作品に比べて、よりディテールにこだわった、よりテクニカルなものになっているんだよ。いろんな意味で非常に赤裸々なんだ。これまでは、より強力な要素が混ざり合って、ある種の洗礼となっていた。だけどここでは、すべてが表現されているんだ。以前のサウンドに頼らずに、曲の流れやダイナミックさ、ドラマチックさを出すために、どれだけ細かく配慮しなければならなかったか。非常に難しかったよ」
リード・シングル “Great Mass Of Colour” は、そういったディテールの追求を象徴していると George は証言します。重なり合うボーカル・パターンと鏡のようなハーモニーはさながら渦を巻く万華鏡。「I feel them all / Great mass of color / Flooding in my bed / Dissolving into red…」高揚感を増した詩が、明快なコーラスへと展開しそして、堤防が決壊。ブラックメタルのまばらな水しぶきがようやくこぼれ落ちていきます。
「ただ単にメロディックなものを作るだけではないんだよ。大事なのは、記憶に残るものを作ることなんだ」
結果として “Infinite Granite” の楽曲コレクションは、ある部分では研磨され、ある部分では高光沢に溢れ、DEAFHEAVEN の新たな歩みへの第一歩となりました。
アルバムのオープニングを飾る “Shellstar” の鳴り響く馴染みのないアンビエンスは、熱気と怒りに飛び込むのではなく、雲の中を滑るように進んでいきます。George が語る「夏の火の中を崇高に彷徨う/炭、灰、咳、轟音…」というストーリーには、奇妙なメランコリーが漂っています。シングル “In Blur” は、RIDE 1990年の名曲 “Vapour Trail” を下敷きとしたもので、古典的なシューゲイザーの夢見がちな幸福感に翻弄され、「この混沌とした寒さの中で、昼の光はどのように見えるのだろうか」と問いかける、力強く痛烈なレイヤーボーカルをフィーチャーしています。
シンセを駆使したインストゥルメンタル “Neptune Raining Diamonds” は、ブレードランナーのスコアからそのまま切り取ったような186秒。アルバムの中で最も短い曲ですが、レトロフューチャーな眩しさがキラキラと渦巻いています。さらに大作 “Mombasa” (Shiv の母国であるケニア最古の都市にちなんで命名)の8分間は、平穏な美しさから猛烈なカタルシスへと宇宙を駆け抜けるような非日常を投影します。一方で、パンデミックという非日常が及ぼした影響も捨てきれません。George が証言します。
「頭の中にある恐怖や起こっている混乱が、曲作りにもよく影響していたよ。いくつかの曲で聞くことができると思う。特に “The Gnashing” には、ちょっとした奇妙な緊張感があるよね。あの曲のを作っているときに、LAで夜間外出禁止令が出たんだ。フリーウェイがすべてストップしていたのを覚えているよ。LAPD が至る所にいた。ヘリコプターのようなものも。そしてもちろん、BLM と、当時州内で起こっていた火事との間で、LAは日々赤茶色に染まっていて、現在進行中の COVID の状況もあった。これらのことがすべて、この曲に反映されているんだ。仮のタイトルは “End of the World” で、本当に終末論的な感じがしたよね。この曲には、終末論を感じさせる大きなエンディングがあり、全体的にダークでドライな雰囲気がある。あの雰囲気の中で作っていなかったら、必ずしも同じようにはならなかったと思うな」

では、これらの率直に言って、これまでと全く異なるサウンドは、メタルの世界、そしてその場所の牽引者としての立場から身を引く覚悟の意志表示なのでしょうか?George は決して反動ではないと断言しました。
「このアルバムは、非常にドライで、繊細で、エモーショナルな作品で、強さと開放性に焦点を当てている。実にテーマ性の高い作品で、解き明かすべきことがたくさんあるんだよ。私たちのすべてのレコードと同様に、この作品は今の私たちを映し出す鏡であり、人間としての私たちを自然に映し出している。もし何かへの反応だとするならば、それは自分たちの前作への反応だと思うんだ」
たしかに、このアルバムには古の影響が新しいスタイルのフィルターを通して吹き込んでいます。もちろん、ブラックメタルやブラックゲイズの影響はそれほど顕著ではありませんが、ノルウェーの伝説 ULVER の “Kveldssanger” 時代の冷ややかな閃光や、フランスの鬼才 ALCEST が2014年に放った “Shelter” の眩い光も差し込んでいるはずです。それに繊細で豊かなテクスチャーは、MY BLOODY VALENTINE, SWERVEDRIVER, SLOWDIVE といった英国のシューゲイザー・ムーブメントの要素がふんだんに盛り込まれているでしょう。
Kerry は、これらの参照点をさらに拡大して、PINK FLOYD, APHEX TWIN, Brian Eno, THE SMITHS, そして尊敬するスウェーデンのプログレッシブ・バンド、DUNGEN の名を挙げます。一方、 George は RADIOHEAD の重要性を強調し、高い評価を得た2016年のLP “A Moon Shaped Pool” とその3枚目のシングル “Identikit” が特にインスピレーションを与えてくれたと語っています。
実際、DEAFHEAVEN は、”Infinite Granite” を RADIOHEAD が2000年に発表した “Kid A” の自分たちのバージョンだと一貫して発言しています。大胆な音の再出発でありながら、作者のアイデンティティを維持し、拡大しているという共通項をあげながら。George は、「自分たちのやりたいことを堂々と、そして自由にやるという姿勢が大切だ。ヘヴィー・コミュニティでは、BORIS や OPETH のように、自分たちが制限されることはないという理解に基づいて活動しなければならない」と胸を張ります。
では、メタルのエッジを放棄した新たな領域で、DEAFHEAVEN らしさを保つための要素とは何でしょうか?Kerry は熟孝します。
「同じバンドの異なるフレーバーに過ぎないんだ。俺たちの音楽がいつも喚起する核心的な感情のすべてが、新しいフィルターを通して表現されているだけなんだよ。2015年の3枚目のLP “New Bermuda” で、自分たちの音楽にスラッシュやデスメタルの要素を入れることができると気づいたように、今回はこれもできると言っているんだ。それはそれでいいんだよね。これは、俺たちがクリエイティブな筋肉を伸ばせるように壊した、もうひとつの壁なんだよね。人は好きなことを言うものだよ。それは俺たちの仕事ではないんだ。俺たちの仕事は、欲しいものを作ることだけだから…」

George にとって、”Infinite Granite” は、かつてのトレードマークであった爆音のブラックメタルと落ち着いたアンビエンスの摩擦がなくても、気が遠くなるようなエッジを保つことができるという点が重要でした。
「このアルバムは、究極的には私たちを裏返したもの。まだまだ緊張感があるよね。メロディックであっても、かなりの不快感がある。私たちは、その緊張感のある微細な部分に焦点を当てるように努めたんだ。少し地味になったかもしれないけど、面白さが減ったとは思わないよ…」
パンデミックの影響を受けて、George はアメリカを離れ、ニュージーランドで数カ月間の旅行を楽しみました。地球上で最も息を呑むような景色に囲まれ、この島国のCOVID対応のおかげですべてが正常に機能していましたが、それでも彼はツアーに戻ることを夢見ていました。
「Kerry と私は、ライブがなくなったことで、ツアーや世界旅行、人々との出会いなど、このライフスタイルへの愛が深まったと話していたんだ。それは、私たちが失ってしまった、非常にユニークで素晴らしいものなんだ。だから、このアルバムのことを考えるときには、ツアーのことを考えているよ。つまり、可能な限り外に出て演奏し、最も愛している人たちと一緒に、最も愛していることをしながら世界を見て回りたいんだ」
“Infinite Granite” のクリエイティブな “賭け” が功を奏するのか、ファンの中でより凝り固まったメタルヘッズが離れていくならば、DEAFHEAVEN はそれを受け入れることができるでしょうか?George は答えます。
「ファンを失うこと、つまり、得することと失うことの二律背反は、実に面白いものだ。このバンドを愛してやまない私たちのファンが、このアルバムに共感できないのなら、私は理解するよ。彼らに恨みはないし、願わくば我々にも恨みをもたないでもらえれば。私たちには、他にもたくさんの作品がある。ある時期にお互いを見つけることができたのは、幸運で今でも本当に信じられないことなんだよ。そしてすべては進化していく。DEAFHEAVEN では、どの場所からでも乗ったり降りたりすることがでるんだ。この変化は必要だった。もし私たちが、ブラストビート、メジャーキーのコード進行、ディレイのかかったギターでいっぱいのレコードをもう1枚出していたら、人々は私たちに “壊れていないなら、直さないで!”というようなおきまりのレガシーバンドになるよう求めただろうから」
Kerryは誰かのための創作がいかに無意味かを知っています。
「誰かを喜ばせようと考え始めた瞬間に、自分の足を撃つことになる。まあでも、レコードが完成してから6ヶ月間じっくりと考えてみると、どうしてもそういった疑問が出てくるよね。俺たちが出すすべてのレコードは、どこかで怖い思いというかリスクを冒している。だけど、俺たちが音楽制作をしているときは、自分自身にも他の誰にも、「人々がこれをどう思うだろうか」というような疑問を持つことを許さないというルールがあるんだ。”New Bermuda” では、よりヘヴィーな要素を加えていったし、”Ordinary” では、ピアノから始まる曲でアルバムを始めた。毎回、同じルールで制作しているだけなんだ。まあ今回は “掛け金” が多少高かっただけでね。あとはツアーに出て、俺たちを好きな世界中の人たちと話すだけさ。彼らのTシャツを見て、このバンドが好きなキッズたちは、これから飛躍していくだろうと思うんだ」
George はレビューを読むことをやめました。
「”Sunbather” が爆発したとき、あるいはその前に “Roads to Judah” をリリースしたときには、私たちの存在を世界全体が認識していることを初めて垣間見ることができた。それはエキサイティングなことで、特に私たちが22歳、23歳のときには、私たちが作ったものをみんなが気に入ってくれている、クールだな。読んでみようかな?ワオ!ってね。そして、レビュー夢中になったよ。だけど、”Sunbather” が定着した頃には、レビューなんてどちらでも構わないということに気がついたんだよね。というのも、批評家の愛に感謝しているけど、それがずっと続くとは限らないから。あるいは、人間は人間であるとか、彼らは物事に対して様々な意見を持っていて、それが彼らの仕事であるとか、そういったことにね。
特に昔、”‘Sunbather” の時代には、私たちは音楽全体への神からの贈り物だという意見と、何でもありの真新しいものだという意見、その2つの陣営があるように思えた。私たちについて、卑劣で邪悪なことを言っている人もいたよ。私はこの2つの陣営が間違っていることに気づいたんだ。私たちは、音楽界に起こった最悪の出来事ではないけれど、もちろんビートルズでもなんでもない。私たちはただ音楽を作っている人間の集まりで、人々はそれに共感しているんだよね」

岐路において、安全性よりも自己満足を選択することは、いずれにせよ大きな賭けです。DEAFHEAVEN は、黄昏時のシューゲイザーがチャートを独占するはずもないことを十分に理解しており、より激しいメタル・サウンドにしがみついていた方がはるかに安全であることも知っています。ゆえに彼らは、自分たちに忠実でいるために常にリスクを取る価値があると繰り返しています。
いいかえれば彼らは、SLIPKNOT のような “当たり前” の存在となることを危惧していたのです。DEAFHEAVEN 自身は、2019年に BARONESS と共演した際にその危険性を認識していました。サイケ・スラッジの強豪で、確立されたフォーマットに忠実でありながら、常に興味深い方法で進化することに成功している BARONESS。彼らの最新LP “Gold & Grey” は、色分けされたアルバムタイトルを尊重しつつ、新しいギタリストと、TAME IMPALA のミキシングやMGMTのプロデュースを担当した人物を抱え込んでいます。DEAFHEAVEN は、自分たちも同様に長期的に活動する方法を考え始めていたようです。George は、ツアーを通して「やりきった感があった。ツアー中にもう限界だという感覚があったんだ。私は壁にぶつかってしまったようで、この先に私ができることはこのやり方にはもうあまりない」と認めていました。そうして彼らは未開の荒野に再度その身を解き放っていったのです。
「もし俺たちが “エクストリーム・メタル” のバンドであり続けたいと思っていたら、それは難しいことじゃなかった。今後10年間、”Deafheaveny” のレコードを出し続けることで、保証はどんどん増え、フェスのオファーも大きくなっていくだろうから。そうすれば、素敵で小さな “何か” にはなれただろう」
「私たちは、クリエイティブな面に少し興味を持ちすぎているんだ。つまり、他の何よりも自分たちが充実していないと、このプロジェクトは長続きしないんだよね。だから、私たちはまた未開の荒野に身を投じてしまうのさ」
DEAFHEAVEN にはまだまだ可能性が秘められています。
「アルバムには収録されていないけど、ある時期、初期のDJ Shadow や Unkle の最初のレコード、BOARDS OF CANADA のような雰囲気のものを入れようと考えていたことがある。これは、俺がよく聴いていたものでね。バンドの中に PORTISHEAD や MASSIVE ATTACK の影響があるのは確かだと思うけど、俺が興味を持っているもの、Shiv が興味を持っているもの、George が興味を持っているものなど、たくさんあるんだよね。例えば、このアルバムにも初期のWarp レコードや、”OK Computer” の “Airbag”、DJ Shadow のようなものを入れようとしていたんだ。だけど、それは全くフィットしなかったね。結果的にはそれがベストだったと思うけど。とにかく、俺たちにはまだいくつかのレーンが残されていると思うし、そうあってほしいと思う。それこそがクリエイティブな人間の醍醐味だと思うからね」
そう Kerry が目を輝かせれば、George も同意します。
「そうだね、確かにレイドバックしたトリップホップの影響は、私たちもかなり試したけど、今回のアルバムには必ずしも反映されなかった。オーケストラ的な要素を取り入れたり、補助的な楽器を追加したりすることも、まだやったことがないよね。ストリングスにしても、特に理由はないけど入れたことがない。Kerry が言ったように、私たちは常に何かを取り入れたり、試したりすることができる。そして願わくば、私たちが実験を続け、成長し続ければと思うよ」
日本盤は DAYMARE RECORDINGS から発売中!

参考文献: KERRANG!: When The Sun Hits: How Deafheaven stepped out of the shadows to embrace a brave new dawn

THE RINGER:The Sunbathers Turn to the Light: Deafheaven Is Back, and Clearer Than Ever

FADER:Deafheaven on evolution, reinvention, and Infinite Granite

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ZAO : THE CRIMSON CORRIDOR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JEFF GRETZ OF ZAO !!

“It’s About Using This Often Abrasive, Sometimes Pretty Music, To Paint a Picture Of Internal Turmoil And Use The Band As a Healthy Release Of That, And Maybe Help Someone In The Process Who May Be Going Through The Same Things.”

DISC REVIEW “THE CRIMSON CORRIDOR”

「たしかにメタリック・ハードコアのシーンは長い間、画一的で飽和状態に “あった” と思うよ。俺たちもおそらく一度や二度はそのような状況に陥って、罪悪感を抱いたことがあるんだから」
ウェストバージニア州の英雄 ZAO は、今年結成28年目を迎えました。彼らは90年代半ばのメタリック・ハードコアの死や、自らが生み出したテクニカル・メタルコアの盛衰を乗り越え、何度も解散、再結成、メンバーチェンジを繰り返しながら、ホラー映画の悪役のように繰り返し蘇り、今もこの場所にいます。
「多数のメンバーチェンジが行われる前から、クリスチャンだったメンバーたちは信念を変えたか、もしくは変えなかった人たちも “俺たちはクリスチャン・バンドだ” というメッセージを押し通すことは、俺たちが伝えたいことを伝えるのに適していないと判断したんだよね」
ZAO は1993年、キリスト教に焦点を当てたハードコアを作ることを目的に結成されました。ハードコアというジャンルは、テーマに関わらず極論を唱える傾向がありますが、ZAO は彼らの宗教観を前面に押し出していました。祭壇に呼ばれたり、ステージ上で説教が行われたりするのが初期のライブの特徴。
2代目ヴォーカル、Shawn Jonas は、1996年初頭のライブ映像で、「我々はイエス・キリストを崇拝し、彼の前に出るためにここに来た」と熱心に宣言しているほど。そうして若いキッズにとって想像が現実を超越し、神話のような存在となった ZAO は、数多の内部抗争を克服し、リアリティーを伴った “蔵王” の復活を成し遂げたのです。
「ZAO は、自分たちの本能に従って正しいと思うことをするときにこそ、いつも最高の仕事をやってのけるんだ。最近の “メタリック・ハードコア” には、メタルやハードコアとは関係のない外部の要素がたくさん入り込んできているけど、それはとても良いことだよ。俺たちは様々なタイプの音楽が好きだし、ZAO のように聴こえるなら何をやってもいいという自由は、俺たちにとって大きな意味を持っているんだよ」
自らのレーベルを立ち上げ、売り上げや権力を気にかけない自由を得た ZAO は、例えば自らより若い YASHIRA や THOU のような多様性を遺憾なく発揮することになりました。大御所として神話の中の存在でありながら、あくまで自らの本能に従い正直に音楽と対峙し挑戦し続ける ZAO の姿勢こそハードコアであり、CODE ORANGE など現在のシーンを牽引する若手からリスペクトを浴びる理由なのでしょう。
もちろん、”Sprinter Shards” や “Blood and Fire” といった名曲は今でも健在ですが、2016年に発表されたアルバム “The Well-Intentioned Virus” でネクスト・レベルへと到達したコンポジションは、5年の月日を経た “The Crimson Corridor” で一つの究極へと達しました。
「俺たちにとっての ZAO は、攻撃性を解放するためのものだ。バンドとして、俺たちは “重い” 音楽を作りたいと思っている。ヘヴィーといっても、いろいろな意味があるんだ。俺たちにとっては、ハードコア、メタル、デスメタル、さらにはラウドではないけれど “エモーショナル・ヘヴィー” “感情的にヘヴィー” なものまで、すべてが語彙の一部なんだよ」
長い年月で培った豊富な語彙によって、映画のようなメタルコアの世界が現実のものとなりました。一つのリフごとにすべての破壊を目指すのではなく、よりムードを重視したアプローチを交え真綿で首を絞めるように、”感情的にヘヴィー” な情景をそのフィルムへと収めていきます。”Into The Jaws of Dread” のポスト・メタルやサイケデリカな色彩、”Croatoan” の瞑想的で冷ややかな質感、タイトルトラック “The Crimson Corridor” の陰鬱でドゥーミーな音の葉、”R,I.P.W.” のひりつくようなエスニック・プログレッシブ、”Nothing’s Form” の慟哭は、バンドが今でも進化を続けている美しき証明でしょう。しかし同時に、どの楽曲にもメタルコアの矜持を盛り込むことで、対比の美学は凛然とその輝きを増していきます。
「今、音楽に何ができるのかはわからない。世界に会話がないから、もう音楽を通しても会話をすることができないように思えるんだ。自分の言っていることに同意してくれる人たちに向けて歌を歌うか、自分に同意しない人たちを排除するかのどちらかだから」
文字通り、真紅の廻廊のように幻滅からニヒリズムのスパイラルを辿るアルバムは、メロディアスなベースライン、メランコリックなバイオリン、そしてスローモーションのようなドラミングに駆動する圧倒的なリフワークなど、あらゆる要素が盛り込まれた “The Web” でその幕を閉じます。熟成を極めたエレガントなレコードを集約した “The Web” はまるで上質なワインのごとき輝きを秘めています。それでも野蛮で野心的なアルコールの攻撃がリスナーをジワジワと悩殺していくのですが。
今回弊誌では、ドラマー Jeff Gretz にインタビューを行うことができました。「このバンドの全体的なメッセージは、感情的な正直さだよ。それは、この時に耳障りな、時に美しい音楽を使って、内面的な混乱の絵を描き、それを健全に解放するためにバンドで演奏し、その過程で同じようなことを経験しているかもしれない誰かを助けることなんだ」 どうぞ!!

ZAO “THE CRIMSON CORRIDOR” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOKONIS : ODYSSEY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SIMON OHLSSON OF VOKONIS !!

“Opeth Is a Great Inspiration To Me, One Of My Favourite Heavy Bands Of All time. It’s Probably The First Time I Got Really Introduced To Prog Rock And Started My Journey There.”

DISC REVIEW “ODYSSEY”

「OPETH と並んで MASTODON も僕が高く評価しているバンドなんだ。THIN LIZZY のようなロック黎明期のバンドを参考にしているところが好きなんだよね。僕は THIN LIZZY の大ファンでもあるから。僕たちが目指していたのは、本当に君の言うようなものだったのかもしれないよね。メタリックな意味でのヘヴィー・ロックの再解釈という場所だよね」
例えば THIN LIZZY、例えば、DEEP PURPLE、例えば URIAH HEEP。先ごろ YOB が DEEP PURPLE のトリビュートへ参加を果たしたように、MASTODON の Troy が THIN LIZZY のライブに参加したように、クラッシック・ロックのメタリックな、もしくはヘヴィーな再解釈はドゥーム/ストーナー界隈にとって重要な通過儀礼の様相を呈しています。そんな割礼の真っ只中で一際存在感を放つヘヴィーアートの創造主こそ VOKONIS です。
「ELDER とは一緒にライブをしたこともあるし、いつも聴いている。ストーナー/ドゥーム・シーンの中で、彼らのような型にはまらないバンドをはじめて目の当たりにして、自分のバンドのクリエイティビティに対する考え方が大きく変わったんだ」
ELDER や KHEMMIS, PALLBEARER といった新世代のドゥーミストがプログレッシブな息遣いで地を這う重音にカラフルな知性を与える中、遅れてきた英雄 VOKONIS はトリオという牙城に RUSH の魂を込めてみせました。ただし、米国の新世代とは決定的に異なる点も存在します。それは、OPETH, SPIRITUAL BEGGARS, GRAND MAGUS といったプログやクラッシック・ロック再解釈の達人が遺した遺産、北欧スウェーデンの血脈です。
「特に長い曲では、彼がアルバムにまとまりをもたらしてくれたと思う。OPETH は僕に大きなインスピレーションを与えてくれるバンドで、今までで最も好きな “ヘヴィーバンド” のひとつだろうな。僕がプログレッシブ・ロックに出会ったのは、おそらく OPETH が最初で、そこから僕の旅が始まったんだよ」
アルバムには、OPETHプログ化の鍵となった鍵盤奏者 Per Wiberg が4曲にゲスト参加しています。同時に SPIRITUAL BEGGARS の顔でもあった渦を巻くハモンドの雄叫びは、長尺化複雑化多様化を志向する拡大する哲学に欠かせない要素となっています。メロトロンとハモンドは作品に荘厳な70年代プログの雰囲気を与え、バンドは瞑想的でゆるやかな時間とリフを中心としたハードなドライビング・パッセージを織り交ぜることが可能となったのですから。
幕切れの “Hollow Waters”と “Through the Depths” では、その効果が顕著に表れています。21分近いヘヴィーなプログ・ドゥームは、それでいて想像以上ににキャッチーかつ耳に残る偉業。古と未来の邂逅は時にメランコリックの極みを醸し出し、アレンジやアイデアの魔法はアートワークの火の鳥のごとく幻想的に楽曲を彩っていきました。ギルモアとジョン・ロードが流動するサイケデリックな探究心こそ至高。
一方で、ベースの Jonte Johansson が使い分けるクリーンとハーシュのボーカルスタイルはその両輪でカリスマ性を放ち、ギタリスト Simon Ohlsson のシャウトを加えたトリプルボーカルの嗎は、タイトルトラック “Odyssey” のキラーなギターリフとえも言われぬ核融合を果たしつつ、古の詩人ホメロスが想像だにしなかったディストピアの放浪記を描いていくのです。
今回弊誌では、Simon Ohlsson にインタビューを行うことができました。「僕は、人間が地球を適切に管理していないために、地球に害を与えていると考えているんだ。だけど、別の意味で、つまり人類が滅亡しても地球はこれからも生き続けると信じているんだよ。人間がいてもいなくてもね」 もしも乾燥した MASTODON の荒野に OPETH が実ったら?どうぞ!!

VOKONIS “ODYSSEY” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW【GOJIRA : FORTITUDE】


COVER STORY : GOJIRA “FORTITUDE”

“The Point Of Fortitude Is To Inspire People To Be The Best Version Of Themselves And To Be Strong No Matter What. It’s Easy To Despair And To Lose Faith. But At Some Point You’ve Got To Figure Out Where You Stand. You’ve Got To Ask What Your Attitude Will Be If This Is The End Of The World As We Know It.”

NATURE IS HURTING

フランスからメタル世界の巨人となった GOJIRA は、そのキャリアにおいて、常に無関心や無知と戦ってきました。そして、待望の7枚目のアルバム “Fortitude” が文字通りゴジラのように地平線の彼方に現れる刻、フロントマンの Joe Duplantier は、人類が自滅へのスパイラルに向かい合う必要性をこれまで以上に強調したのです。
Joe は、子供のころからある記憶が頭から離れません。家族で見ていたテレビ。点滅する画面の前に座ると、静寂の中から理性の声が現れ多くの人が気にも留なかった状況の緊急性を訴えかけていました。フランス系カナダ人の宇宙物理学者であるヒューバート・リーブスは核合成の研究でよく知られていますが、あの運命の夜、彼は人類の自滅は原子の炎の中などではなく、冷たく静かな自己満足の中で起こる可能性が高いと説きました。
GOJIRA のフロントマンは、あのとき驚くほど明快にこう思いました。
「彼はただちにやり方を変える必要があると言っていた。僕たちはゴミやCO2の排出量を減らす必要があるとね。排出量を減らさなければならない、リサイクルをしなければならない。注意を払わないと、50年後には大変なことになってしまう。テレビに出ている人が言っているのだから、状況はすぐに変わるだろうと思ったことを覚えているよ」
しかし残念ながら、30年以上経った今でも状況はほとんど変わっていません。

Joe と弟の Mario は、メタル界で最も率直な暴れん坊の2人にしては意外にも、穏やかで牧歌的な環境で育ちました。スケッチ・アーティストの父とヨガ教師の母の間に生まれた兄弟は、フランスの西海岸にある人里離れたコミューン、オンドルで育ちました。彼らの家はあまりにも田舎だったので、あるジャーナリストが訪れたとき、「庵」と表現したほど。しかし、フォークからマイク・オールドフィールドまで、常に音楽が流れていました。詩人や画家が泊まりに来て、大人たちが国際的な哲学を語り合っているときだけ、音楽は止み子供たちは話に耳を傾けたのです。
兄弟二人はよく浜辺で時間を過ごしました。Joe は木や石を集めていて、家に帰ると手が原油で真っ黒になっていました。一方、Mario はサーフィンをしているときにビニール袋が顔に張り付きました。おとぎ話のような平穏な暮らしにも、現代社会のヒビが入っていたのです。
「自然を傷つけてばかりなんだから、自然に傷つけられるのは当たり前だ」
創造性に囲まれた青春時代を過ごしたにもかかわらず、Joe と Mario はメタル世界の英才教育を受けたわけではありません。彼らの両親がラジオで流さなかったのは、唯一ハードロックだけだったのですから。兄弟のいとこが、当時12歳の Joe に強引に METALLICA を聴かせたことがきっかけで、彼らは METALLICA に夢中になります。
「振動、音色、ドラムの叩き方が神秘的だったんだ。メタルは敏感な人を惹きつけるんだと思うよ。僕は生まれつき敏感で、学校ではいじめられっ子だった。人間が嫌いだったんだ。METALLICA のテーマは非常に感情的で、トラウマになっているような面があり、そこに惹かれたんだよね」
学校での怒りは、2人にヒーローを模倣するエネルギーを与え、Joe はギターを手にしてシンガーになりました。
「僕にとって、音楽は説教やメッセージありきではないんだよね。腹の底から出てきたものを、マイクに向かって叫ぶだけなんだ。叫ぶことで大事な言葉が出てきたんだよ。最後に食べたピザについて叫ぶつもりは毛頭ないけどね」
情熱的で外向的な性格のマリオは、ドラムの虜になりました。
「学校の友達はみんなラグビーをやっていたけど、僕は好きじゃなかった。ドラムが僕のラグビーだったんだ」
兄弟は、そうしてエクストリーム・メタルのカルテット GOJIRA で、その傷を訴えていきました。荒々しく複雑な音楽性だけでなく、環境保護を訴えることも彼らのアイデンティティーとなったのです。

GOJIRA が結成されたのは1996年で、2人が DEATH に影響を受けたミュージシャンを募集する広告を出したのがきっかけでした。そこに2人目のギタリスト、Christian Andreu が加わり、後にベーシストの Jean-Michel Labadie が加わりました。当初、4人は自分たちのことを “GODZILLA” と呼んでいました。火を噴く怪獣ほどメタルなものはないでしょう。
2001年にデビュー作 “Terra Incognita” を自主制作。このタイトルは、兄弟が子供のころに聞いていた会話から生まれたもので、ヒンドゥー教の神話を暗示しています。具体的には、ブラフマーが、その力を乱用した人類から神を隠した未知の場所を意味しているのです。2003年に発表された次作 “The Link” は、同様に形而上学的な内容で、復活、瞑想、苦しみによる悟りについて考察しています。
「最初はもっとスピリチュアルな音楽だった」と Mario は回想します。「2005年に “From Mars to Sirius” をリリースしたときは、詩的な表現を続けていたんだけど、”Global Warming” のような曲は、僕たちの環境に対するメッセージにとって本当に重要なものだったね」
人類が地球を枯渇させ、新たな故郷を探すというSF的なストーリーを持つ “From Mars to Sirius” は、ゴジラにとって初めての気候危機をテーマにした作品で、世界的なブレイクへの第一歩となりました。デスメタルをより大胆に取り入れたこの作品は、ブレイクダウンを多用した “Backbone”(現在でも最もヘヴィーな楽曲のひとつ)のような大作と、穏やかなボーカルで構成されたゆらぎの叙事詩で見事にバランスが取れていました。
「僕たちは世界を征服する準備ができていたんだ!」と、Joe は叫びます。「エネルギーがあり、怖さも疲れも退屈も存在しなかった。10年間の努力と苦労を経て、僕たちは燃えていたし、新しいオーディエンスと出会う期待と飢えがあったんだ」
この野心は、サウンドに磨きをかけた “The Way of All Flesh” と “L’Enfant Sauvage” に反映されていきました。バンドは頻繁にアメリカとヨーロッパをツアーしていましたが、毎晩自分たちのビデオを見返して、細心の注意を払ってライブショーを完成させています。「それってすべてのミュージシャンがやるべきことだろ?」と Mario は嘯きます。

「実は数年前から、人類の未来に悲観的になっていたんだ。真実に目覚めて、多くの人が自分を高めようとしているにもかかわらず、世界は逆行しているような気がするんだよね。テレビで(元)アメリカ大統領が『地球温暖化が本当かどうかわからない』と言っているのを見たり、高校で教えている友人から生徒の中にはヒトラーが映画の中の人物なのか、実在した人物なのかよくわからない子がいるいう話を聞いたりすると、ものすごくがっかりしてしまう。僕は少し疲れてしまったんだ。だからパンデミックが起こったとき、僕は『いいだろう。燃えてしまえばいい。地球に寄生している僕たち人類にとって、これは実際、終わりなのかもしれない』と思っていたんだよね」
自分の無能さを隠そうと必死になっている政治家や権威が、何ヶ月にもわたってくだらない話をしてきた後で、厳しい真実を語る聡明な頭脳に出くわすのは新鮮なことでしょう。
テレビの前で目を輝かせていた少年時代から、Joe は、年間7,500億トンの氷が海に溶け、毎週2,300平方キロメートルの熱帯雨林が伐採され、毎日150種もの生物が絶滅しているという、数字が物語るはず脅威と、その対局にある人々の無知さに慣れていました。だからこそ、コロナで234万人が亡くなり、数え切れないほどの人々が貧困やうつ病に陥っているという現在のデータに贖いトンネルの先には光があると主張する先導者を信じません。COVID-19の危機が1年を超えた今、人類は大きな灰色の未知の世界に直面しているのというのがまがいの無い現実です。
しかしだからこそ、GOJIRA 7枚目のアルバム “Fortitude” が登場するのに、これ以上のタイミングはないでしょう。世界はかつてリーブス博士が呼びかけていたのと同じように、困難に正面から立ち向かう勇気ある心の強さ、”不屈の精神” を求めているのですから。
「不屈の精神こそ、僕たちが示すべきものだ。抱きしめるべきものだよ。近い将来のことでさえもすべてが不確かな世界の中で、僕たちがどうあるべきかということだよね。僕たちはバンド結成当初から、競争と対峙する思いやり、そして憎しみと対峙する愛情をテーマに活動を続けてきた。”Fortitude” のポイントは、最高の自分であること、そして何があっても強くあることを人々に促すことなんだ。朝起きて、また生活に追われるのはつらいことだけど、僕たちの態度や捉え方、自分や人類の未来をどう描くかによって、変化をもたらすことができる瞬間がたしかにあるんだよ。絶望したり、信念を失ったりするのは簡単だ。だけど、ある時点で自分の立ち位置を把握しなければならないんだよ。これが僕たちの知る世界の終わりであるならば、君はどんな行動を起こすんだい?」

私たちはもはやポイント・オブ・ノー・リターン、帰れないところまですでに到達してしまったのでしょうか?もしかしたら私たちは終末に向かって勇敢に行進しなければならないのでしょうか?
「人類がこの地球上に存在する価値があるのかないのか、という具体的な文脈で考えている。僕は友人とよく哲学的な話をするけど、僕は楽観的なんだ。人間だから、もちろん人類の成功を見たいと思っているよ。だけど同時に、僕はたちはこの惑星や他の種族にとって問題であると考えざるを得ないよね。他の種族が、本を書いたり、美術館に行ったり、コーヒーを飲んだりしないからといって、この地球上で生きていく権利がないわけではないんだよ。僕たちが他の動物を扱う方法には、憤慨し、ショックを受けているよ。人間は『動物だから、動物を食べるのは当たり前だ』と言う。でも、他の動物が工場を持っているかい?考えるべきことだと思うよ。僕の友人たちの中には、『私たちはどうせ消えていくものだ。楽しもうよ。すべてを台無しにしてしまおう。どうせ死ぬんだから、そんなの関係ないよ。40億年後には太陽が地球を破壊するんだから』って人もいる。楽観的な人間になるのが正しいのか、それとも悲観的な人間になって皮肉を言うべきなのか。その中間の存在になることはできないね。それは君が眠っているということだ。人間について何か意見や感じたことはあるかい? 僕は楽観的な人間になり、人々を揺さぶり、自分自身を揺さぶって、もっと思いやりを持ち、もっと与え、大統領や政府に頼るのではなく、この地球の問題にもっと問いかけることを選んだ。そして、たとえ僕たちが滅ぶことを運命づけられていたとしても、たとえ僕たちの文明が消滅することになっていたとしても、少なくとも、消滅する前に意識と美の最後の輝きを放ち、魂を高めることができるんだ」
Joe は捕鯨に反対の立場をとっていますが、というよりも動物全体の痛みを当たり前に受け止めているだけでしょう。
「君は諦める?『世の中が汚染されているから、もっと汚染してやる。みんなが盗みをするから、俺はもっと盗むんだ』。僕たち一人一人が世界を作り、僕たちの環境を作っているんだよ。政府や支配者層の話をするときに、『彼ら』と言う人がいる。しかし、『彼ら』は『僕たち』なんだ。あなたも人々の一員なのだから、もう少し努力すれば、変化をもたらすことができるんだ。僕たちは何の制限もなく環境を強姦し、汚染し、破壊する。そのことに腹を立てない人はいなはずさ。なぜ人は、それが簡単に無視できることだと思うんだい?」
昨年8月5日にリリースされたシングル “Another World” は、ファンにとって初めての “Fortitude” の実質的な予告となりました。”もうひとつの世界、もうひとつの場所” を求めるこの曲は、すでにコロナ禍のはじまりから数ヶ月が経過した地球と見事に共鳴。ただし、マキシム・ティベルギアンとシルヴァン・ファーヴルが制作した素晴らしいアニメーション・ビデオに出てくる「The virus is spreading(ウイルスが蔓延している)」というセリフは、実は COVID が制作者の頭の中をよぎるずっと前に完成していたのです。
「コロナのアルバムになるまでは、コロナのアルバムではなかったんだよ。フランスに戻る前には、レコードのミキシングを終えていたから。クレイジーで、まるで世界的な電波に影響されたような感じだよね。”Another World” は僕たちの癇癪が爆発したものだ。別の世界が欲しい、この世界をファックしたい…ああ、でももちろんこれは僕たちの世界だ、これは手にしている唯一のものだ・・・。 これしかないんだ。動物への接し方は何か間違っている。多くの種が絶滅したことは、僕たちの負の遺産の一つになるだろう。これらの種を作るのに何十億年もかかったのに、40年後には何千、何万という種が僕たちのせいで絶滅してしまうんだから」

アルバムの本格的な制作は、2018年初頭に始まりました。2016年の6枚目のレコード “Magma” は、プログレッシブ・デスメタルの可能性にアクセシブルな高い光沢を飾り付け、GOJIRA の評判を一気に引き上げたレコードでした。これまでの不屈のライフスタイルが、”Magma” を形作ったと言えるのかもしれません。
「ミュージシャンになると、ツアーが人生の90%を占めるんだ 」と Mario は言います。「何週間も、毎晩叫んで、体が元に戻ろうと必死なんだ。世界で最高の仕事であると同時に、最も苦しい仕事でもあるんだよね。それは作曲方法にも大きな影響を与える。狂ったような、暴力的な、やたらと速い演奏は永遠にはできないだろうから」
“Magma” の楽曲は非常にシンプルで、それぞれが1つか2つのリフを中心に構成されていました。Joe の声の繊細な可能性がさらに強調され、より瞑想的なムードが作り出されながら。 制作中には、兄弟の母が亡くなります。
「 “Magma” のすべてが母の死から生まれたわけではないけれど、もちろん深い影響があったよね」と Joe は振り返ります。「僕たちの心の中で、精神的にとても大きな出来事だった。ちょうど曲を書いているときに亡くなったから、影響を投影しないのは不可能だよ。アルバム全体に言えることだけどね。僕たちの母はいつもこう言っていた。死は人生の一部。それを受け入れなければならない』とね。生まれてきて死ぬ、それが人生の輪。だから、誰かが死ぬとみんなが泣いて黒い服を着るのが、子供心にもよくわからなかったんだよね」
その結果、”Magma” は完全な哀歌ではなく、死の先にあるものを同時に探求する作品となりました。冒頭の “The Shooting Star” では、母パトリシアが星座を通して死後の世界への道を示しています。”Between the bear and the scorpion, you’re getting close.”
タイトル曲では、輪廻転生とについて言及し、”Low Lands” は、墓の向こうにあるものについての知識をパトリシアに求めています。
2017年のグラミー賞では、ベスト・ロックアルバムとベスト・メタル・パフォーマンスにノミネートされ、同年末にはメタリカの “WorldWired” ツアーでオープニングを務める栄誉を手にします。自分たちの譲れないものを守りながら、次のステップに進むための基盤が整ったのです。そうして、堅苦しい青写真ではなく、彼らの中のゆるやかな優先順位が形成されていきました。Mario が語ります。
「”Fortitude” の最終的な目標は、自分たちのダークな部分を取り除くことだったと思うけど、それはとても難しいプロセスだった。”Magma” で僕たちは母を亡くして、それがけっこう大きな痛手となっていたんだ。”Fortitude” を書いているときは、星の配置が完璧だった。バンドの成功は最高潮に達していて、ツアーもうまくいっていたから、僕たちはただ曲を書くだけだったんだよ。”Magma” の時のように、感情的に苦しい立場に置かれていたわけではなかったんだ」

Duplantier 兄弟の母、パトリシア・ローザの死を受けて完成した “Magma” は、悲しみと憂いの深い灰色に彩られたレコードで、もちろん悲しみ一辺倒ではないにせよ、ある種居心地の悪さを感じさせた作品でもありました。ゆえに7枚目のアルバムは、より明るく、よりポジティブなものにする必要があったのです。”Magma” が親密で内なるものだったのに対し、”Fortitude” はより外に向かって、パンチの効いた、政治的なアルバムへと意図的に反転させられました。そうして、粗野でブルージーな “Yellow Stone”, 荒涼とした雰囲気の “Liberation” のように、新たな音楽的モチーフを取り入れながらも、彼らの鋭いシグネチャー・サウンドの探求と拡大には、さらに大きな「自由」が必要だったのです。
「ルールはない!」
Joe は、イギリスの過激なオルタナティブ・ロックバンドである PORTISHEAD や RADIOHEAD を引き合いに出し、予想外のサウンドを自由に展開するためのインスピレーションを得たと宣言します。さらに、伝統的なロック、ブルース、アメリカーナの再評価をも提案。これは、MASTODON のギタリスト、Brent Hinds との深い対話によって、子供の頃に受けた影響が再認識されたものでした。
「僕にとっては、いつも不協和で奇妙で攻撃的であることが重要だったんだ。でも、ロック、ブルース、プログレッシブなど、長い間見下していた音楽のエネルギーは、他のメンバーや自分が年を重ねるごとに、その良さがわかってきたんだよね。だからこのアルバムでは、もっと積極的に、もっと派手に、もっと楽しく、何か違うものを表現したいと思うようになった」
“Magma” の “エネルギー” から、バンドのサウンドを前進させたいと語る Joe。アメリカで過ごした10年間で、二重国籍の英雄はその発音も少し変化しました。そして彼の Silver Cord スタジオに流れる作品は、ロングアイランドのマスコア・マニアック CAR BOMB, パリジャン・メタルコアの新星 RISE OF THE NORTH STAR, マサチューセッツのヒップホップ・ロック HIGHLY SUSPECT など、さまざまなバンドへと幅が広がり彩られています。Joe は、2019年にリリースされた HIGHLY SUSPECT のクールなトラック “SOS” にゲスト参加したことが、変化の契機だったと証言しています。
「繊細であったり、”泣き虫 “であったりしてもいいんだということを教えてくれたからね。最初は恥ずかしいと思っていたけど、妻に聴かせたら『あら、セクシーね』と言ってくれたんだよね」

メガ・レーベル Roadrunner Records が、GOJIRA の “独立性と経験” を信頼してくれたことで、Silver Cord は2年間のクリエイティブな「繭」となれました。エンジニアのヨハン・マイヤー(彼らのライブ・サウンドも担当)がすべての段階でバックアップし、同じ空間でデモとレコーディングができるという快適さもあって、これまでにないほど多くのアレンジが試みられ、楽曲が書かれたのです。
「ソロも弾いているんだよ。だけど、アルバムから追い出された2曲にはキラー・ソロが入っていて、”ふざけやがって!”と思ったね」
さらに、SLAYER の “Reign In Blood”, NIRVANA の “Nevermind”, LIMP BIZKIT の “Chocolate Starfish…” などを手がけた伝説のプロデューサー、Andy Wallace がミックスを完成させました。
アルバムの制作は Joe にとって楽しめるものなのでしょうか?
「95%の確率で、惨めな気持ちになる。史上最高の曲を書こうとしているのに、それが実現しない。僕たちは自分の悪魔に直面している。自分のエゴに直面しているんだよ。失望や自己嫌悪にね。人生の中で、アルバムを作ることを選択したその時期には、自分のベストを尽くさなければならないんだ。多くの場合、それは苦痛だけど、正しいリフの組み合わせや良い歌詞を見つけたときには、とても報われることもある」
当初、サプライズ・リリースの時期は、2020年6月とされていました。しかし、ロックダウンが続いたため、9月に延期。ステージへの復帰が差し迫っていないことが明らかになると、さらにそのスケジュールは延期されました。リリースの前提としてツアーを行うという従来の考え方から脱却するには時間がかかりましたが、最終的には、エネルギーと衝動を抑えることができなくなったのです。
「今、僕たちは違った見方ができるようになった。ツアーをしてもしなくても、何があっても作品をリリースするんだ」
“Fortitude” は、まさに自由になることを求めるレコードです。Joe が目標とした解放感が脈々と流れ、完成した作品はポジティブなパワーと肯定的な暖かさに輝いています。GOJIRA のトレードマークであるテクニカルとヘヴィネスの光沢、狂った拍子記号と決定的なシンコペーションはもちろんすべての源流として存在しますが、個々の楽曲はよりオープンに進化を遂げ、時折、推進力のあるエネルギーをポスト・メタルやスタジアム・ロックの領域に向けて走らせることさえあるのですから。
重要なのは、”Flying Whales” の底知れぬグルーヴや、”Born In Winter” の氷のような壮大の中で、”Fortitude” の広範なコンセプトが生と死、自然とスピリチュアリティというテーマに沿って解き明かされ、音楽とテーマとの刺激的な交わりがあるということです。

モダン・メタルの多様性は、何もその音楽のみに範囲を限定するわけではありません。その思索や哲学も実に多様で包容力に満ちています。「消えてしまうことへの原始的な恐怖/虚空で幽霊になること…」実存主義者の亡霊が死の本質を探るオープニング曲 “Born For One Thing” は、完璧な入り口のように感じられます。2008年にリリースされた “The Way Of All Flesh” で徹底的に追求されたテーマは、ブリュッセルにある壮大な中央アフリカ王立博物館で撮影された変幻自在のミュージック・ビデオに匹敵するほどの躍動感をもって進行し、高められていきます。
「僕たちは皆、死ぬんだから、生の手放し方を人生で学ぶ必要がある。死は大きな意味を持ち、誕生と同じように人生の一部だけど、タブーだよね。でも夜が昼になるのと同じように、僕たちは死や衰えの概念とわかり合う必要があるんだよ。自分の体がある日突然機能しなくなるという考えに平安を感じることができれば、より寛大で思いやりのある人間になることができ、”必要のないものを持ち続けない” ことができるだろう。仏教では、7つ以上の物を所有すると苦しみ始めると言われている。これには何か意味があるんだろうな」
印象的なのは、”The Grind” “砕く” というテーマが複数のトラックに浸透していることです。最初の「I’ve been grinding and grinding…」「どんどん砕かれていく」という嘆きは、巨大なクローザーである “Grind” の「surrender to the grind」「俺は砕かれない」という宣言によって反転し、解消されます。この一見逆説的な歌詞の対比は、もちろん冒頭の 「世界にものすごくがっかりしてしまう。僕は少し疲れてしまったんだ」という発言に通じ、物事を先延ばしにしたり、頭を砂の中に埋めたりしないようにとの戒めともなっています。
「人間としての自分に身を任せる必要があるんだ。規律の中にこそ、自由がある。毎晩、寝る前に皿洗いをしておけば、朝になっても汚れた皿は残っていなだろう?人生には終わりがあるという考えに平安を感じることができれば、より幸せに生きることができるだろうね」
死と折り合いをつけることの重要性。それ以外にも、”Fortitude” には世界を旅するような冒険心が存在しています。”Amazonia” は、SEPULTURA の “Roots” のようなトライヴァルな雰囲気を醸し出していますが、これは Joe が2000年代後半にCAVALERA CONSPIRACY のベーシストとして活動していたことにも関係しています。ただし、森林伐採に対する環境保護のメッセージ(「This fire in the sky… The greatest miracle is burnings to the ground」「空を火が覆う。最高の奇跡が焼け落ちてしまう」)は、まさに GOJIRA そのもの。不屈の精神とは、先住民のコミュニティーにたいする敬意の表れでもあるのです。
“Sphinx” は、エジプトの巨像に敬意を表し、切り出された石灰岩のように重く、デスメタルの伝説である NILE も誇りに思うような野蛮さを誇っています。イギリスからの影響も顕著で、”Hold On” では、後期 IRON MAIDEN のような壮大なプログレッシブ絵巻が意図的に展開されています。一方で、”The Trails” は、ピーク時の DEFTONES のように、不気味で囁くような神秘的な雰囲気を醸し出しています。

しかし、音楽的にもコンセプト的にも、明らかに中心となるのは “The Chant” でしょう。インストゥルメンタルのタイトルトラックと並んで、ブルース、ゴスペル、アメリカーナを組み合わせたこの曲は、リスナーに「自分を取り戻し、上に立つ…強くなるんだ!」とリスナーを励ますシンプルな歌詞の組み合わせがこれまでの GOJIRA とは全く異なるものです。Joe が強調するように、この曲は “Fortitude” のコンセプトを究極に凝縮したものであり、ショーが再開されたときに忘れられない夜になることをファンに約束する誓いの手紙でもあるのです。
「通常、僕たちは観客を破壊するために曲を作る (笑) だけどこれは、彼らを一つにするための試みだったんだ」
アルバムのインスピレーションを得るために、Mario は兄にいくつかの絵画や芸術作品を見せました。その中には、オーストリアの画家グスタフ・クリムトが1898年に描いた “パラス・アテナ” も含まれていました。
「美しい絵だよね。彼はさらに戦士や騎士の例をいくつか見せてくれて、最終的には円卓の騎士と先住民族の文化をミックスしたアートワークになったんだ。アルバムの精神を表しているよ。言葉とビジュアルの相性がとても良いんだ」
ある意味で、”Fortitude” は芸術家の息子としての幼少期への頌歌でもあり、気候危機のトラウマだけでなく、それ以上のものを探求しています。”Born for One Thing” は、両親が愛したタイやチベットの哲学を参照しており、”The Trails” は子供のころ流れていたメランコリックとさえ言えるプログポップにも通じ、故郷のラジオから聞こえてきてもおかしくはないでしょう。
「両親が THE BEATLES や PINK FLOYD を聴いていたとき、僕たち兄弟はとても楽しい時間を過ごしていた。だから、その要素を少し加えたいと思ったんだよね」
“Born for One Thing” で提示されている “集団的昏睡” というアイデアは、現代社会の象徴である消費主義というテーマと結びついています。
「消費する方法を変えることは、物事を変える力につながる。例えば、僕は8年ほど前にヴィーガンになったんだけど、その理由は動物を虐待していることに気づいたから。これを人に言うと、「何を言っているんだ?牛乳の箱には “牛は外で育てられている” と書いてあるだろ?工場で飼われている動物じゃないんだから」と言われたりする。でもね、ミルクを作ってくれるおばあちゃんがいて、名前のある牛を飼っていて、その牛を愛情を込めてペットにしているなら、それはそれでいいと思うよ。でも、市販のミルクはそうじゃない。人は事実から逃れるために物語を語り、責任を感じなくて済むようにしたいものだ。僕たちは、自分の手で責任を取る必要があると思うよ。何かを買うときには、少なくとも自分が世界に与える影響を意識したいものだよね。
物事を変えるためには、正しい人に投票すればいいというのは幻想だよ。まずは、自分から始まる集団的な努力が必要なんだ。個人の目覚めこそが、唯一成功する革命なんだよ。このアルバムには市民的不服従の考えが根底にあるけど、行間を読まなければならないよ。市民的不服従とは、ルールに盲目的に従わないこと。クールになるために法律を破る必要はもちろんない。だけど、僕が言いたいのは “自分で考えろ ” ということなんだ。周りを見渡して、自分が世界に与える影響を考える。これこそが僕たちの持つ大きな武器なんだ。ただ、シンプルな選択と日々の習慣が世界を変えていく」

例えば、OPETH の “Heritage” のような大きな変革をもたらした作品と言えるのかもしれません。
「そう思う。アルバムのセッションを始める前に、僕は2ヶ月間、自分たちの曲の書き方やアレンジの仕方を深く分析したんだよね。”Fortitude” 以前の僕たちは、曲作りの公式を考えたことがなかったんだ。つまり、実際には何の構造もなく、ただ何となく組み合わせていただけなんだよね。例えば、良い曲には最低でも3つのコーラスが必要だし、過去の僕たちの音楽の扱い方は非常に実験的なアプローチだった。まあつねに、明白なパターンを避け、ルールの外にある音楽を作り出そうと努力していたからなんだけど。”Toxic Garbage Island” を例にとると、この曲には構造がないんだよね。コーラスもない…何もない! だから、”Fortitude” では、すべてをもう少しバランスよくしたいという気持ちがあって、Joe にこのアルバムでは、コーラスとヴァースを確立したいと言ったんだよね。これが作品全体に大きな力を与えていると僕は考えているよ」
“The Trails” で Joe の歌声は、グロウル、クリーンを経てさらにもう一つの大きなジャンプ、メロディアスへの移行が感じられます。弟はその変化について敏感に感じ取っていました。
「”Magma” の “Shooting Star” や “Lowlands” から始まった試みだと思うけど、この10年間 Joe は自らのボーカルを向上させることに真剣に取り組んできたんだ。僕たちは、さまざまなタイプの音楽を聴いて育ったからね。メタルから THE BEATLES, MASSIVE ATTACK, PORTISHEAD など…真の音楽好きなんだ。ジャムるときは、ファンク・ロックのようなものを演奏してしまうことだっめあるんだよ。 最近の多くのバンドのように、他にサイドプロジェクトを持っているメンバーもいない。つまり僕たち4人にとって、GOJIRA は唯一の音楽活動の場だから、自分たちの個性の すべての側面を表現する必要があるんだよ。僕たちは皆、”メタル・ヘッズ” ではあるんだけど、音楽を愛する者でもあるんだよ。だから、Joe にとっては、自分が自然にやりたいと思ったこと、必要としたことに向かって進化していくしかなかったんだよね。今、彼はシンガーとしてこれまで以上に自信を持っているよ」

GOJIRA の未来に目を向けるためには、過去の栄光を振り返るべきでしょう。2018年、Bloodstock Open Air のヘッドライン・ショーは、雨に打たれた2万人の観客がダービーシャーの泥の中に叩き込まれただけでなく、2006年の英国でのデビューからフェスティバルでの初のヘッドラインに至るまで長い道のりを歩んできたバンドにとっても画期的な出来事でした。
自分が聴いて育ったバンド CANNIBAL CORPSE がオープニングを務めるというスリル、経験は、これから起こるであろうもっと素晴らしい夜に向けての “食欲” を存分にそそるものでした。
“Fortitude” の完成から、その欲求は高まる一方です。しかし、今後の展望について、Joe は希望に満ちている一方で、大げさな表現には躊躇しています。
「ミュージシャンの人生は必ずしも楽ではない。僕たちは今、副業をしなくてもやっていける状況にある。これは素晴らしいことだけど、それでも金持ちには程遠い。大きな家や莫大な銀行口座を持つロックスターではないんだよ。今は家さえ持っていない」
大きな舞台や多額のギャラへの憧れが、芸術的な目的に影響を与えることはあるのでしょうか?
「答えは、イエスでもありノーでもある。人生では、自分がなぜそうするのか、100%はわからないものだよ。頭の中や心の中で起こっていることを、僕がとやかく言うことはできないんだ。曲を作るとき、もちろん売れることを願っているよ。だけど、それだけじゃなく、僕たちはアーティストであり、人間であり、哲学者であり、多くのことを考えている。僕は、自分が書いた言葉1つでも妥協する必要はないと思いたいし、すべての音楽的なアイデアは心の中からまっすぐに出てくるものだと信じている。それが僕たちのコンパスなんだ。音楽には生きている実感が必要だ。共鳴する必要があるんだよ。たとえ誰かが100万枚売れると言ったとしても、僕たちにとって魅力的な要素がなければ、それはゴミ同然のものなんだ」

サイクルとレガシーというテーマを掘り下げてみましょう。GOJIRA は24年後、そしてブレイクした3rdアルバム “From Mars To Sirius” から約16年後に、より広いメタル・ファミリーの一部として自分たちをどのように見ているのだろうか。新世代のバンドが彼らのアイデアを拾い上げて使用しています。
「人生は短いし、あっという間に過ぎてしまうから、今あるものに集中したほうがいい。僕は、自分たちより速いバンドやクールなバンドのことはあまり気にしない。流行に敏感でありたいと思っているけど、自分たちの芸術的センスは非の打ち所がないと自信を持っているからね。音楽的にもビジュアル的にも、僕たちは自分たちの世界を持っているんだ。長い間、この領域、つまり自分たちが開発しているこの芸術と実体の完全性に取り組んできたんだ。この作品には価値があると確信しているよ。まるで鉱山を見つけて、それをまだ掘り続けているようなものさ。あと数枚のレコードを作るための燃料は確実に残っている。僕たちのビジョンはまだ完全には達成されてはいないからね」
つまり今のところ、 Joe は未来に向かって努力することと、1つ1つの勝利を大切にすることだけを考えています。これまではバンドのために犠牲になっていた家族との “素晴らしい瞬間” を大切にしながら。このアルバムを、長い間待っていてくれた多くのファンに届けることは、重要なこと。そして、GOJIRA が再び脚光を浴びることで、Joe の中にある正義の焔が再び燃え始めるのは必然に違いありません。
「僕は自分を活動家だと思っている。文章やアイデアで誰かを感動させるたびに、誰かが同意するたびに、価値のあるプロジェクトが日の目を見るたびに、僕は活性化されるんだ。僕の中には、決してあきらめない、屈しない、絶望しないというセーフティネットがある。それは、音楽や思考、一体感やコミュニティを通して、人間性の美しさを感じているから。僕たちの中には、とてつもなく大きな力があるよ。僕はそれを信じているし、そのために戦うことを決してやめないんだ。歌を通して、会話を通して、インタビューを通して、芸術を通して」
GOJIRA は最後まで信じられるバンドです。興奮と皮肉を込めて自分たちの未来を見つめています。
「長く愛されるバンドでありたいと思っているけど、同時にそうは思っていない。人類は大きな問題を抱えている。解決しなければならない問題をね」

参考文献: KERRANG!: Inside Gojira’s new metal masterpiece… and their fight for our future 

THE GUARDIAN:‘Nature is hurting’: Gojira, the metal band confronting the climate crisis

SPIN:Gojira on New LP Fortitude, Escaping Our ‘Collective Coma’

OVERDRIVE:FEATURE INTERVIEW – GOJIRA “THE ULTIMATE GOAL WAS TO GET RID OF OUR DARKER SIDE!” MARIO DUPLANTIER

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PUPIL SLICER : MIRRORS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KATIE DAVIES OF PUPIL SLICER !!

“I Don’t Think Anyone Should Be Discriminated Against For How They Were Born, Who They Love And How They Look. Hopefully One Day The World Will Be a Better Place Where Things Aren’t As Bad As They Are Today.”

DISC REVIEW “MIRRORS”

「今は24歳なんだけど、18歳くらいまでヘヴィーな音楽にのめり込んだことはなかったのよ。だけどハマってからはすぐにギターをはじめたわ。まあだから、聴いて育ったのはゲームの音楽とか映画の音楽の枠を出たものじゃなかったわね」
PUPIL SLICER の Katie Davies は、18歳で初めてヘヴィーな音楽を耳にします。決して早くはない邂逅。
しかし、一度エクストリーム・ミュージックの世界に足を踏み入れると、その深化速度は異次元でした。現在24歳のヴォーカル・ギタリスト Katie は、時間軸を狂わせるようなマスメタルとグラインドコア、それに様々なメタルの異分子が融合した楽曲を、むしろコーラスとヴァースで成り立つポップ・ソングやパンク・ロックと同じくらい自然で親しみやすいものだと感じています。
「わたしたちの音楽の核となるのは感情の強さ、インテンシティーで、それは性別によって制限されるものではないと思うわ。あと、わたしたちはメタル・バンドというよりも、パンク・バンドだと思っているのよね」
デビューアルバム “Mirrors” は、不協和な音の超暴力と幻惑への傾倒が、THE DILLINGER ESCAPE PLAN の “Ire Works” や CONVERGE の “Jane Doe” といった名作を想起させます。混乱させ、時間をかき乱し、「何を聴いたんだろう?どうやって作ったんだろう?」と思わせる、人の心や痛みと同様に不可解な音楽です。
「わたしは自分の経験をたくさん書いているけど、より多くの人が音楽に共感できるようストーリー性を持たせるようにしているのよ。わたしが好きなのは、抽象的な歌詞の曲で、その内容についてリスナーそれぞれが自分なりの考えを持つことができ、本当の意味でのつながりを感じることができる曲だと思っているわ」
その名の通り、”Mirrors” は Katie 自身を映し出すレコードで、彼女の核となる考えや痛み、内面的な物語を映し出す鏡であると同時に、不平等や差別が法律や習慣、経済に組み込まれている、システム的にファシストな社会をそのまま映し出す作品でもあります。Katie が経験した個人的、政治的な痛みは、”Mirrors” の暴力によってのみ表現され、追放することが可能なのでしょう。
「わたしは、誰もがその出自、愛する人、外見などで差別されるべきではないと思っているの。いつの日か、今のような悪い状況ではない、より良い世界になることを願っているわ」
イギリス南部の海辺の町ボーンマスで育った Katie は、幼い頃から残酷な目に遭ってきました。4年間過ごした学校では、生徒からも教師からも容赦ないいじめを受け、中退してホームスクールに入学。彼女の耳を満たす音楽は、テレビゲームや映画のサウンドトラック、そして7歳の頃から練習していたバイオリンだけでした。
友人は、地元のユースオーケストラの指揮者を除いて存在せず、最終的に彼女は14歳で第一ヴァイオリンのリーダーとなりますが、3年後、彼女は公立学校に戻ることを余儀なくされました。そこで同級生や教師からさらに冷酷な扱いを受けることになります。
執拗ないじめを受けても、なぜいじめられるのか理解できない。自閉症を患いながら大学を卒業するころには、完全な引きこもり状態となっていました。人は残酷。その思いが世界とのつながりを完全に断たせてしまったのです。
救いの光はロックやメタルでした。ボーンマスからロンドンに移り数学の学位を取得した直後から、Katie は DEAFHEAVEN を聴きながら街を歩くようになります。そこから、RADIOHEAD や GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR を経て、ブラックメタルの世界に足を踏み入れます。ポストロックやシューゲイザーは、彼女の魂の音に最も近い音楽への入り口となりました。
やがて、彼女はギターを手に取り、DEAFHEAVEN の曲をかき鳴らし始めます。
ギターを弾けるようになった後、Katie はミュージシャン向けのオンラインフォーラムに投稿しました。”DEAFHEAVEN のようなブラックメタル・バンドに参加したい」と。投稿後すぐに、地下鉄で数駅のカムデンで練習中のバンドからメッセージが届きます。そこで、ドラマーJosh Andrews と出会ったのです。やがてベースの Luke Fabian が仲間に加わり、TDEP, CODE ORANGE, BOTCH といったバンドを通してマスコアやパワーバイオレンスの傾向を高めていきました。
“Mirrors” の楽曲は、そのどれもが異なるアプローチの産物です。例えば、タイトルトラック “Mirrors” のメインリフでは、彼女はオンラインのジェネレーターにランダムな数字の羅列を入力し、バンドの他のメンバーにソフトウェアの出力に合わせての演奏を依頼します。リズム理論に精通している Katie は、信じがたいことに考えていたメロディーを鼻歌で歌い、目の前のスクリーンに表示されるリズムの波形を把握しながら、頭の中で音を整理していきます。メンバーもリスナーも混乱させた Katie にとって、次の目標は自分自身を混乱させること。
曲作りという最も楽しい時間を終えれば、その後、人に聴かせるという彼女にとって気が遠くなるような現実がやってきます。歌詞を読まれるのが嫌でお蔵入りも考えたという “Mirrors” には、同性愛者やトランスジェンダーに対する米国の法制度を批判する “Panic Defence” のような直接的な曲もある一方で、Katie の内面的な苦しみに焦点を当てた曲には、比喩的なガーゼで保護膜を張っています。例えば “Stabbing Spiders” は、もちろんクモのことを歌っているわけではなく、自傷行為についての楽曲。
「あなたが挙げたバンドは皆、様々なタイプの音楽で非常に広い視野を持っているわよね。わたしたちも同じように、自分たちが好きな音楽すべての部品を組み合わせたいと思ってやっているの」
PUPIL SLICER の目まぐるしい音楽はすでにマスコアを超越しています。 “Mirrors” がこれほど魅力的なのは、バンドがその混沌の中でリスナーに “数学” 以上の多くのなにかを与えているからでしょう。ダイナミクスの恩恵を受けた3人の挑戦者は、研ぎ澄まされたエッジを失うことなく、電子なサウンドスケープの静かな海へと潜り込みアルバムの流れを的確に支配します。
例えば、7分の “Mirrors Are More Fun Than Television” は存分なグルーヴ、存分な混沌、そして DEAFHEAVEN や ALCEST をも連想させる壮大なアトモスフィアのアウトロを備えます。
クローサー “Collective Unconscious” ではさらに顕著。TDEP のような残虐性はポストブラックのブラストとトレモロを誘い、感情を揺さぶるクレッシェンドを導きます。静かの海で Katie は独り絶望を叫びすべてを締めくくるのです。紆余曲折のレコードに咲く深く心に残るフィナーレの華。そうして Katie は痛みを映し、浄化し、超越してみせたのです。
今回弊誌では、Katie Davies にインタビューを行うことができました。「わたしたちのやり方は、自分たちが演奏したい音楽、自分たちが聴きたい音楽を作ることだと思っているの。つまり、自分たちのサウンドに境界線を設けないようにしているのよ」 どうぞ!!

PUPIL SLICER “MIRRORS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AD NAUSEAM : IMPERATIVE IMPERCEPTIBLE IMPULSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AD NAUSEAM !!

“We Would Like To Contribute Bringing Metal Music Sound Approach To a Different Level In The Future. There Are Many Listeners That, Like Us, Are Deeply Tired By The Fake Plastic Sounding Records That Are Trending Since The Last 20 Years.”

DISC REVIEW “IMPERATIVE IMPERCEPTIBLE IMPULSE”

「将来的には、メタルのサウンド・アプローチを別のレベルに引き上げることに貢献したいと考えているよ。僕たちと同じように、過去20年間のトレンドである偽のプラスチック・サウンドのレコードに深く疲れている多くのリスナーがいるからね」
機械化されたダンス・ミュージックも、そのバカげた単調さも、そんな音楽を使うクラブも、すべてが100% 大嫌いなんだ。アナログの録音を極めたエンジニア、かの Steve Albini はかつてそう言い放ちました。デジタルに支配された我々は、たしかに繊細で温もりのある生のレコード、その音響を忘れつつあるのかもしれません。それは、耳に鮮やかな添加物にまみれた、メタル世界も同様でしょう。
「ここ数年、メタルの中で音質の平均値が大きく下がっているから、僕たちのようなアルバムは目立ちやすいんだろうな。例えば、ダイナミクスを重要視している作品はほとんどないよね」
近年、その実験精神とこだわり抜いたコンセプトで注目を集めるイタリアのメタルシーン。中でも、”吐き気がするまで追求する” をバンド名に掲げる AD NAUSEAM の献身はもはや狂気の域でしょう。現状に不満があるなら、自ら創造する。ここには、大げさで滑稽な偽物のプロダクションは存在しません。アーティスト本人がエンジニアリングを学び、専用のスタジオ・マシン、キャビネット、アンプ、ドラムキット、さらにはマイクの設計にまで趣向を凝らしたスタジオを建設。すべてはただ、自らが心地良いと感じるサウンドを構築するためだけに、AD NAUSEAM は途方もない労力を注ぎ込んだのです。チューニングも既存のものとはかけ離れています。
「いくつかのオーケストラ・パート( “Sub Specie Aeternitatis” の最後と “Inexorably Ousted Sente” の最初)は、60以上のヴァイオリンを重ねて、彼自身が1つずつ録音したものなんだよ」
6年の歳月をかけて制作された最新作 “Imperative Imperceptible Impulse”。Bandcamp で販売されている “フル・ダイナミック・レンジ” のアルバムを聴けば、この作品が現代のメタル・サウンドとは全く趣を異にする音の葉を響かせることに気づくはずです。
全体の音量は隅々まで見渡せるようにコントロールされ、さながら精巧なタペストリーのごとくすべての楽器が入念に折り重ねられています。ドラムの幽霊音、ギターの息遣い、そしてベースの呪詛まで、生々しく肉感的な三次元の重苦しいオーケストラは、そうしてリスナーの部屋までライブの興奮を運んで来るのです。実際、その録音手法はクラッシックの原理。
「メタルに様々なジャンルのダークな不純物を加えて溶かしたいという本質的な衝動は、最初は不十分な試みだったけど、たしかにそこにあったんだ。新しいものを作るには、自分の限界から一歩踏み出さなければならないことを理解するべきさ」
アルバムは、例えば LITURGY, 例えば KRALLICE, 例えば IMPERIAL TRUMPHANT といった今メタルシーンを牽引する複雑怪奇な NYC の魑魅魍魎とシンクロし、奇しくも同じ方向を向いています。デスメタルやブラックメタルと、ジャズや現代音楽の不協和な錬金術。ただし、NYC の新鋭たちが意図的にラフでアンダーグラウンドなイメージをそのサウンドに残しているのに対し、AD NAUSEAM の合成法は実に緻密で繊細。
テクニックの粋を尽くしながらギターソロさえ存在しないダークな音の不純物は、奇抜に躍動しながらもすべてが正確無比な譜面の中へパズルのように収まります。それは、NEUROSIS とGORGUTS の踊る地獄のの祭典でしょうか。ストラヴィンスキーはひとつのキーワードでしょう。マスコアやテクデスの洗礼も浴びながら、ヌルヌルと蠢く百鬼夜行が奏でる呪詛は、そうしてリスナーを吐き気がするまで何度もリピートへと誘うのです。
彼らにいわせれば、単なるリフの連続ではなく、音が過去を参照したり、未来を予測したりする秩序。不調和によって和声が得られ、不協和音によって旋律が得られるような音楽。真のアヴァンギャルド。
今回弊誌では、AD NAUSEAM にインタビューを行うことができました。「このアルバムは、18年間の研究と実験の結果なんだ。Steve Albini のサウンド哲学は、僕たちの哲学ととても近いものがある。自分よりも優れた人から学ぼうとするのは自然なことだよ。そして、彼はおそらくこの業界で最高の人だ」 どうぞ!!

AD NAUSEAM “IMPERATIVE IMPERCEPTIBLE IMPULSE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HEDVIG MOLLESTAD : EKHIDNA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HEDVIG MOLLESTAD !!

ALL PICS BY Julia Marie Naglestad & Thor EgilLeirtrø

“If My Work Can Be Considered a Bridge In Music, Nothing Is Better! I’d Love To Be a Bridge Between The Good Qualities In Jazz And The Good Qualities Of Metal. Complexity, Simplicity, Embodied. Like Most Humans.”

DISC REVIEW “EKHIDNA”

「私の作品が音楽の架け橋になるとしたら、それに勝るものはないと思うわ!ジャズの良さとメタルの良さの架け橋になりたいわね。複雑さ、シンプルさ、それが具現化されたもの。ほとんどの人間のようにね。」
上半身はジャズ。下半身はメタル。翼を纏うギリシャ神話の怪物エキドナは、現代の音楽世界に Hedvig Mollestad の姿を借りて降臨しました。そうして彼女の10年にも及ぶアヴァンジャズとヘヴィーロック壮大な実験の軌跡は、サイケデリックなグルーヴを伴いながらプログレッシブの頂点を極めます。
「私はメタルとジャズの真のハイブリッド。ただ TOOL や MASTODON、MEGADETH でさえその音楽の生々しさと強烈な表現は、多くのジャズ歌手の帽子と蝶ネクタイよりもずっと親近感があるからね。」
もちろん、ジャズとロックの融合は何も今に始まったことではありません。例えば源流がジャズならば WEATHER REPORT, RETURN TO FOREVER。ロックならば STEELY DAN でしょうか。ただし、Hedvig の起こす化学反応はよりダイナミックで肉感的。BLACK SABBATH の黒を起源とし脈々と連なるメタルの伝統を受け継いだリフの猛攻、獰猛、邪悪を繊細よりも頭脳的に血肉としているのです。
「私は、自由と同時に、いかに演奏されるべきか “正確に” 知っているものを演奏することの組み合わせが大好きなの。このリフはこの場所でこう変拍子になって、こんなダイナミズムをつけるって正確にね。分かっていればすべてのエナジーを注ぎ込めるでしょ?」
ロックやメタルの愛すべき予定調和と、ジャズの持つ自由奔放。この二つが等しく交わる時、そこにはきっとスピリチュアルな何がが生まれます。Miles Davis の “Bitches Brew” 然り、MAHAVISHNU ORCHESTRA の “Birds of Fire” 然り。超越し、ジャズでもロックでもなくなった名状しがたきスピリットが “Ekhidna” にもたしかに存在するのです。
同時に、温故知新の精神も Hedvig の音の葉をより超越的に彩ります。Miles の時代には存在しなかった MARS VOLTA の宇宙、TOOL の数学、MASTODON の浪漫、SLEEP の重厚を内包したモダンな建築手法は、以前のフュージョンとは一線を画する唯一無二。
実際、6曲で構成されるレコードで、幕開けから17分の空を切り裂く雷撃 (変幻自在なモダンメタルの躍動とサンタナの寛容がテレキネスで惹かれあう “Antilone” は珠玉) のあと訪れる3分の平穏、”Slightly Lighter”。興味深いことに、このオスロの丘の穏やかな呼吸は、70年代のプログやフュージョンに宿った伝説とも、スカンジナヴィアが産み落とす広大なフォークジャズとも、OPETH が引き寄せた音響空間の再現ともとれるのですから。
その多様な思慮深さは幕引きの “One Leaf Left” へと引き継がれます。METALLICA の “One” のようにスロウバーンで映画のようなサウンドスケープは、徐々に歪んだギターでサイケデリックな爆発を誘って行くのです。
スカンジナヴィアは2000年代から続くジャズロック黄金時代の真っ只中にあります。ELEPHANT 9や 絶対神 MOTORPSYCHO を生んだのもこのシーン。完璧な世界ならば、 “Ekhidna” はHedvig Mollestad を彼らのすぐ隣に押し上げ、それ以上にシーンの女王へと祀り上げてしかるべきでしょう。それだけのクオリティー、それだけの驚き、それだけの躍動感がこのレコードには宿っているのですから。
今回弊誌では、ノルウェーの至宝 Hedvig Mollestad にインタビューを行うことができました。「音楽は絶えず動いている。それが音楽の本質よ。探求し、進化し、挑戦し続けている。今後数十年の間に、ライターは音楽のジャンルを正しく記述するための新たな方法を見つけなければならないと思うわ。潜在的に、まだ非常に多くの創造的で正確な、未使用の言葉があると思うから!」 トランペットまで含むシクステッドでの新たな冒険。現代のマクラフリン、それともジェフ・ベックか。どうぞ!!

HEDVIG MOLLESTAD “EKHIDNA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COUNTLESS SKIES : GLOW】2020’s OPETH FROM UK


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAMES PRATT OF COUNTLESS SKIES !!

“Maybe, Some Of The People Who Miss The Death Metal Elements Will Enjoy Glow. I Think If Nothing Else, It Has The Diversity That Was Found In Early Opeth.”

DISC REVIEW “GLOW”

「”Glow” では、プログの要素をより多く取り入れて、他の音楽からの影響も取り入れた。僕は今も自分たちのサウンドを保ちたいと願っているんだ。ただし、新たなダイナミックな方法でね。今は自分たちのサウンドを見つけ始めていると思う。」
メロディックデスメタルは多くのファンに愛されるジャンルですが、あまりにそのサウンドが明確なため、90年代初頭の予定調和が繰り返されるだけという側面も否めません。実際、21世紀以降、この場所に新鮮な空気を持ち込んだ異能は数少なく、DARK TRANQUILLITY, INSOMNIUM, OMNIUM GATHERUM といった創始者に近い英傑たちに進化を委ねるしかありませんでした。
「僕たちは BE’LAKOR の大ファンなんだ。彼らは、自分たちの良さの基本を守りながら、常に変化し、新しいサウンドを探求しているバンドだからね。彼らの最新アルバム “Vessels” は、音楽的にも非常に異なるものになっている。」
僅かな例外の一つが BE’LAKOR で、彼らのプログレッシブな旅路が多くの後続を勇気づけたことは間違いありません。北欧のメランコリーからかけ離れた高級住宅街、イングランドのハートフォードシャーに現れた COUNTLESS SKIES もそんなバンド一つです。BE’LAKOR の名作 “Stone’s Reach” のファイナルトラックをバンド名に戴き、彼らの最新作 “Vessels” と自らのデビューフル “New Dawn” のリリースデートを合わせこむ COUNTLESS SKIES の BE’LAKOR 愛は本物。ただし、受け継いだのは音楽性そのものではなく、挑戦者の哲学とスピリットでした。
「有能なバンドを際立たせているのは、メタルをはるかに超えたところから影響を受け取り入れる能力だと思うからね。プログメタルは、他のジャンルのように特定のサウンドに限定されていないから好きなんだ。僕たちはメロディックデスメタルの観点からプログレッシブメタルに取り組んでいるんだ。」
BE’LAKOR や INSOMNIUM に薫陶を受けたデビュー作はあくまでプロローグに過ぎませんでした。オペラティックな歌声、プログレッシブな楽曲構成、メタリックな感性を刺激するテクニカルな嘶き、そしてストリングスやクワイア、メロトロンの優雅で重厚なノンメタルな響き。その全てがタペストリーの如く、メロディックデスメタルの下地へと幾重にも重ねられていきます。
「今回はオーケストラの要素がとても楽しかったね。使用した楽器は、それぞれの曲のアイデンティティーの大きな部分を占めていると思う。」
英語には Glow と Grow Up を掛け合わせて「大きく変貌を遂げる」という意のスラング Glow Up が存在しますが、COUNTLESS SKIES の最新作 “Glow” はまさに Glow Up な傑作です。
ブラストビートに重なる ANATHEMA、メロデスの DEAFHEAVEN とでも形容したくなる鮮烈なオープナー “Tempest” は、”We’re Here Because We’re Here” と同種の希望やエナジーをもたらすオレンジの嵐。BLIND GUARDIAN のゴージャスさえ纏った “Summit” の一方で、INSOMNIUM 直系の獰猛とメランコリーを伝える “Moon” はエセリアルなピアノの響きと共にバンドの出自を示し、夕映えに佇む月の哀愁を物語るのです。
「デスメタルの要素を恋しく思っている人たちの中には、”Glow” が楽しめる人もいるかもしれないね。何より、初期の OPETH に存在した多様性を持っていると思うから。」
極め付けは、3楽章20分から成るタイトルトラックでしょう。メロトロンにストリングス、フォーキーなダンスに現代的アトモスフィア、エアリーなハーモニー、そのすべてを抱きしめ OPETH の哲学で裁縫した空の織物は間違いなく20年代を代表するプログエピックでしょう。プログメタルとメロデスが鬩ぎ合いながら幕を引くエンディングは鳥肌もの。もちろん現存するバンドですが、それでも2020年の OPETH と信じたいほどに遺産を気高くアップデートしているのです。
今回弊誌では、リードギタリストにしてコンポーザー James Pratt にインタビューを行うことができました。「BLMを公に支持している人々に対する反発が大きかったことを覚えているよ。ああいった混乱の時には、人々と関わることが大切だと思うね。偏屈な人は常に存在するけれど、中には誤った情報を持っている人もいて、なぜそれが重要なことなのか、きちんとした説明を必要としている人もいるんだから。」FORWARD. THINKING. METAL.は空に映える。どうぞ!!

COUNTLESS SKIES “GLOW” : 10/10

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A LISTENER’S GUIDE TO KRALLICE’S COLIN MARSTON & NYC AVANT-METAL SCENE


A LISTENER’S GUIDE TO KRALLICE’S COLIN MARSTON & NYC AVANT-METAL SCENE

“Undoubtedly NYC Avant-metal Scene Is One Of The Best, But That’s Almost a Technicality Because New York City Is The Densest, Most Diverse Blob Of Humans Probably On The Planet. So Everything That Benefits From a Lot Of People And a Lot Of Variety Is Going To Benefit.”

WARR GUITAR, MENEGROTH, AND NYC

ニューヨークの怪人という呼称は、Colin Marston にこそ相応しいでしょう。14弦まで豊富なバリエーションを持ち、ベースとギターの両義性を有する愛機 “Warr Guitar” は、Colin が語る NYC の個性と多様性を体現した楽器にも思えます。さらに、鍵盤からドラムス、ノーマルなギター、ベースを操るマルチな才能にまで恵まれた Colin の活躍はまさに八面六臂。
「僕が Warr Guitar を手に取ろうと思ったのは、1996年に Trey Gunn と Tony Levin が KING CRIMSON でプレイするのを見たからなんだ。」
前回のインタビュー で Colin はそう語ってくれました。高校のころ、バンドメイトの父親から KING CRIMSON を教わった Colin は、再結成した彼らのライブに赴き衝撃を受けました。当然、Colin は Trey と Tony がチャップマンスティックという10, 12弦の異質をタッチしベースとギターの狭間を演出することは知っていましたが、Trey はすでに Warr Guitar という怪物に乗り換えていたからです。
「この楽器の両義性も重要なポイントだよ。ベースであり、ギターであり、その両方かもしれないんだから。いつだってこのギターのような、しかし幅広いレンジを持つ楽器を楽しんでいるよ。ギターの領域では低音弦だけチューンダウンしているんだ。そしてベースは究極に低音とハイストリングスをプレイしているよ。Warr Guitar の魅力は何と言ってもこのレンジの広さなんだ。同じ音域だけで楽曲やアルバムを構成するのは本当に退屈だからね。」
チャップマンスティックが文字通りスティックであるのに対して、Warr Guitar はギターとベースをその体躯に宿すキメラ。幅広いオクターブレンジでギターとベース、リズムとリードを同時にフォロー可能、特徴的なボイシング。新進気鋭の若き Colin Marston にとって、この楽器は壮大な音楽的空想を実現する鍵でした。
実は、メタル、プログはもちろん、フォーク、スムースジャズ、アヴァンギャルドと Warr Guitar が織りなす世界は驚くほど広く多様です。ただし、完全にカスタマイズ可能な新品は50万円以上、さらに製作者は癌を患い現在新規のオーダーを受け付けていません。門戸は狭いながら、こういった奇妙な楽器によって既存の音楽が再構築されることは必要不可欠な新陳代謝でしょう。
カナダが産んだプログレッシブデスメタルの魔境 GORGUTS に所属しながら、盟友 Mick Barr と立ち上げた超個性的ブラックメタル集団 KRALLICE をはじめ、GORGUTS の Kevin Hufnagel と探索するリフ迷宮 DYSRHYTHMIA、インストカルト BEHOLD…THE ARCTOPUS, 実験的ソロプロジェクト INDRICOTHERE と数多の奇々怪界でニューヨークのアヴァンメタルを牽引する主役の顔もまた一つ。
「NEUROSIS のアルバムを1枚選ぶのはとても難しかったね。所謂プログレバンドではなく、真の意味でのプログレッシブなロックバンドだよ。重要な違いだね。僕の中で、”The Word as Law” は最も成功したハードコアとメタルの融合だと言えるね。ただ何よりも最高にユニークな音楽だよ。ベースはA+の仕事をしているし、シンプルなパンクと複雑でエピカルなメタルがこのレコードで最高の”和解”をしたと言えるかもしれないね。」
特に、前回のインタビューでこう言って崇拝を露わにしていた NEUROSIS の Dave Ed をアルバムに招待し、ブラックメタルだろうがなかろうが全員のクリエイティブな精神を集結しながらメタルを未知の領域へと導く KRALLICE の重要性はこれまで以上に語られるべきでしょう。
一方で、ARTIFICIAL BRAIN, LITRUGY, KAYO DOT, EAST OF THE WALL, WOE, DEFEATIST, CASTEVET, PYRRHON, IMPERIAL TRIUMPHANT といったメタルの先鋭を象徴する NYC の百鬼夜行も、Colin が所有する Menegroth スタジオから彼の手によって発進しているのです。
「疑いようもなく最高のシーンの一つ。それは当然なんだ。なぜならニューヨーク市はおそらく地球上で最も高密度で最も多様な人間の塊だから。だから、誰もが多くの人々と多くの多様性から受けるべくして恩恵を受けていると言えるね。大都市なら同じ状況になるだろうけど、NYC は特別多様で国際的だからね。」
様々な文化や発言に触れることこそ人類の強み。それは世界に蔓延る分断の嵐とはすっかり真逆の考え方で、音楽やストーリーに多様性を認めるモダンメタルのスピリットそのもの。だからこそ、Colin の元には仕事のオファーが舞い込み続けるのでしょう。
このコロナ禍の中でも Colin は粛々とリリース&プロデュースを続けています。その膨大なアーカイブから、近年の重要作10枚について自身の言葉で語ってくれました。
「ワーカホリックという言葉は完全に間違いというわけではないんだけど、僕は作曲やレコーディングを本当に楽しんでいるからね。ワーカホリックってネガティブな響きがあるんだけど、僕は音楽制作に全くそういった感情は抱いていないんだ。
時々はもっと音楽以外にも興味の対象が広がればいいのにとも思うんだけどね…だけど僕にとって音楽は未だに広大で無限の奥行を備えているんだ。だから今でも惹き込まれ続けているのさ。」

COLIN TALKS ABOUT HIS RECENT WORKS

1. KRALLICE “MASS CATHEXIS”

this is the album we worked on mostly between 2018 and spring 2020. it was originally supposed to include 4 other songs, but in the interest of the album not taking forever to finish and then being too long to digest, we cut 2 songs, and then 2 more (although those 4 songs will now just form the core of our next album). i think this album features the most variety of any Krallice release, and although it features only one song “written” by me (the title track), i had more of a hand in the arrangement and drum writing than ever before. McMaster also contributed the most material to this out of any Krallice record. it was awesome to have Dave Ed back (since he wasn’t on GBF or Wolf).

このアルバムは俺たちがほぼ、2018年から2020年の春までに製作した作品だ。もともとは、別の4曲を収録するはずだったんだけど、アルバムの完成に時間がかかりすぎたり、収録時間が長くなりすぎるといった理由で2曲をまずカットし、それからさらに2曲を削ったんだ。だけどその4曲は次のアルバムの核となるものだよ。
俺は “Mass Cathexis” は KRALLICE のアルバムでも最もバラエティーに富んでいると思っている。ただ、俺はこの作品ではタイトルトラック一曲しか書いていないんだけどね。今回はそれよりも、アレンジメントやドラムのパートを書くことに注力したんだよ。Nicholas McMaster がどの作品よりも多くのマテリアルで貢献してくれたね。”Go Be Forgotten”, “Wolf” にはいなかった Dave Edwardson (NEUROSIS) が帰ってきたのも良かったよね。

2. KRALLICE WITH DAVE EDWARDSON “LOUM”

Dave Ed is one of my favorite musicians, both as a bassist, and vocalist. i became obsessed with Neurosis in high school and they informed me as a creative person in so many ways over the years. a truly progressive band that does what they want in the way they want and fuck everyone else. so this record was really a dream come true for me (and mick who also has a long history with Neurosis) to work with Dave and to get him to be the lead singer on a full album! pretty sure it’s the only album where that’s the case in existence–so i also feel like we did the world a public service here, haha!
this is also the Krallice album that i contributed the most writing (20 minutes out of 32 i spearheaded), so it has more of that knotty, dissonant, fractured and uncomfortable feeling than our other work, which i thought would be a perfect bedrock for dave’s vocals.

Dave Ed はベーシストとしてもヴォーカリストとしても、俺の大好きなミュージシャンの一人だ。高校生の時に NEUROSIS に夢中になったんだけど、彼らは何年にもわたってクリエイティブな人間として多くのことを教えてくれたんだ。だから、このアルバムは俺にとって(そしてNeurosisとの長い付き合いがある Mick Barr にとっても)本当に夢のようなことだったんだ!Dave と仕事をして、フルアルバムのリードシンガーになってもらえたんだからね。
これは、アルバム全編で Dave が歌う唯一の作品だと思うんだ。だから俺たちは世界に公共のサービスをもたらしてあげたような気さえするんだ。(笑)
俺が最も多くの曲を書いた KRALLICE のレコードでもあるから(32分のうち20分は俺が率先して作った)、他の作品よりも複雑で、不協和音があって、分断されていて、居心地が悪い感じがして、Dave Edのヴォーカルに対する完璧な基盤になると思ったんだ。

3. BEHOLD…THE ARCTOPUS “HAPELEPTIC OVERTROVE”

so proud of this album! i had been wanting to have a record with a very different approach to the drumming for a long time, and i finally did it! having jason bauers join the band was a perfect fit since he had experience playing 20th century chamber music, and i wanted that to basically be the vibe of the new behold album. also as a recording engineer working on a lot of extreme metal, i was so tired of the “cshhhhhhhhhhhhhhh cshhhhhh shshhshhhhshsh” of washy crashy cymbals smashing around constantly. tech metal benefits from a more articulated sound, so why not built that into the instrumentation itself, rather than writing yourself into a corner with blast beats and double kick that aren;t even audible without triggering or extreme processing in the mix? i also gravitated to a more brutal death metal style of writing for the normal guitar on this album. i like the combination of bdm guitar and 20th century classical percussion! for me it’s a perfect match. for most people, i’m sure it’s going to sound like a big pile of shit! it would be Arctopus without that tension though!

このアルバムをとても誇りに思っているよ!俺は長い間、ドラミングに対して非常に異なるアプローチのレコードを作りたいと思っていたんだけど、ついにそれを実現したんだ!Jason Bauers をバンドに参加させたのは、彼が20世紀のチェンバーミュージックを演奏した経験があったからで、完璧にフィットしていたね。俺は基本的にそれを新しい Behold の作品の雰囲気にしたかったんだ。
また、多くのエクストリームメタルに携わっているレコーディングエンジニアとして、俺はクシャーーーーーンクシャーーーーーンシャシャシャシャシヮみたいな、薄っぺらでガチャガチャしたシンバルがずっと鳴っているサウンドに飽き飽きしていたんだ。Tech-metal は、より明瞭なサウンドから恩恵を受けている。では、トリガーや極端な処理をしないと聴こえないようなブラストビートやダブルキックで自分を追い込むのではなく、インストゥルメント自体に明瞭さを組み込んでみたらどうだろう?このアルバムでは通常のギターにかんして、より残忍なデスメタルのスタイルに惹かれたんだ。 BDM (ブルータルデスメタル) ギターと20世紀のクラシックパーカッションの組み合わせが好きなんだよ!僕にとっては完璧にマッチしている。たしかに多くの人にとってはクソの塊でしかないだろうけど、こんなテンションじゃなきゃ ARCTOPUS はやってられないよ。

4. DYSRHYTHMIA “TERMINAL THRESHOLD”

our “thrash” album! it was really fun to change the dys lineup to 2-guitars and drums for 3 of the songs. having no bass at all on 3 songs, but lots of dual guitar seemed to fit the thrash vibe. i even got to do 2 guitar solos! the one in “Power Symmetry” is a written solo, and the one in “Twin Stalkers” is purely improvised. i’m also very proud of the song “Progressive Entrapment,” which i wrote on bass. i have a feeling that song is not going to resonate with many people, but it’s my favorite for many reasons which i think are impossible to explain. kevin and jeff’s playing and writing on this album are world-class. what a pleasure it is to record those guys!

俺たちの “スラッシュ” アルバムだ!DYSRHYTHMIA のラインナップを3曲でツインギターとツインドラムスに変えるのはとても楽しかったね。その3曲には全くベースが入っていないんだけど、沢山のツインギターがむしろこのスラッシュのヴァイブにフィットしたんだ。俺はギターソロまで弾いたんだよ!一つは構築されたソロの “Power Symmetry” で、もう一つは純粋なインプロヴァイズの “Twin Stalkers” だよ。
それに、”Progressive Entrapment” はとても誇りに思っているんだ。この曲で俺はベースを書いたんだけどね。多くの人にアピールする楽曲じゃないと感じていたんだけど、多くの理由から俺のフェイバリットなんだ。説明するのは難しいんだけど。アルバムにおける Kevin と Jeff の演奏はまさにワールドクラスだ。彼らとレコーディングが出来るのは本当に喜びだね。

5. PHONON “ALLOY”

so excited with how this album came out! it’s just one long improvisation which we cut into chunks and re-ordered. it came out so great! i really like listening to this. i have had other bands with Weasel, but never had improvised with him where i was playing bass. i found it really comfortable and exciting at the same time. i love weasel’s style and i found it easy to work with in this context. elliott and álvaro’s guitar work is the perfect textural companion to the rhythm section weasel and i created. elliott is a total legend and it was an absolute honor to make an album with him. Álvaro and i are newer friends, but just in the last couple years we’ve already collaborated on 5 releases! i like how heavy and metered this album came out even though it’s completely free improv.

このアルバムがこうやってリリースされてとてもエキサイトしているよ!一つの長いインプロビゼーションを、切り貼りして再レコーディングしたものなんだ。素晴らしい結果になったよね!このアルバムを聴くのが本当に好きだよ。Weasel とは他のバンドもやってたんだけど、俺がベースを弾いてインプロヴァイズしたことはなかったからね。非常に快適だけど同時にエキサイトしていることに気づいたよ。Weasel のスタイルが大好きだし、このコンテクストは俺にとってやりやすかったんだ。
Eliott と Alvaro のギターワークも俺と Weasel のリズムセクションとピッタリ符号していたね。Eliott は完全にレジェンドで、彼とアルバムを作れてとても誇らしいよ。Alvaro は比較的新しい友達なんだけど、ここ2年で5枚も一緒にアルバムを出してるんだ!完全にフリーなインプロヴァイズだけど、ヘヴィーでコントロールされたこの作品が気に入っている。

6. INDRICOTHERE “ALTRRN”

i was hired to write all the guitar for an album of Pyramids. i was sent drum machine from Vindsval of Blut Aus Nord, who i’m a massive fan of. i wrote songs to the drum machine on guitar, added a bunch of keyboards, and then sent it to the Pyramids guys to add vocals and additional keys. so this is the version before i sent it to Pyramids, which just Vindsval’s drums and my guitar and keys. i got to really like the instrumental version, and it also included kind of a “lost ambient album” since i extended the end of every song into an ambient exploration. i never planned to release this, but when the pandemic hit, and i lost thousands and thousands of dollars in income from cancelled recording sessions, i released it as a small fundraiser for the studio.
it’s worth noting that i did actually make 2 new proper Indricothere albums during the lockdown: a 3.5-hour ambient record and a crushing sluggish brutal death metal record:
https://indricothere.bandcamp.com/album/xi-5
https://indricothere.bandcamp.com/album/tedium-torpor-stasis

俺は PYRAMIDS のアルバムのためにギターパートすべての作曲を依頼されたんだ。大ファンの BLUT AUS NORD の Vindsval からドラムマシンを送ってもらったんだ。そのドラムマシンに合わせてギターを書いて、たくさんキーボードを加えて彼らに送ったんだ。彼らはそれにボーカルやキーボードをさらに加えたんだよ。
これは PYRAMIDS に送る前のバージョンで、Vindsvalのドラムと僕のギターと鍵盤だけで作ったんだ。このインストバージョンが本当に気に入っていたし、全曲の終わりをアンビエントな探究に拡張した “失われたアンビエントアルバム” のようなものも含まれているんだ。
これをリリースするつもりはなかったんだけど、パンデミックが起きて、レコーディングのキャンセルで何千ドルもの収入を失った時に、スタジオのためささやかな資金集めのためにリリースしたんだ。特筆すべきは、ロックダウンの間に INDRICOTHERE で適切な2枚の新作を作ったことだよ。3.5時間のアンビエント・レコードと、破砕的で緩慢なブルータル・デスメタルのレコードだ。

7. COLIN MARSTON “SUBLIVE”

i was approached by Arun from Subcontinental Records to release a live album of my experimental/classical music.
tracks 1 and 2 are from a show at EMPAC in Troy NY from 2015. the first is in my Indricothere keyboard style. the 2nd is feedback controlled player piano. i later went back to EMPAC and recorded a full-album version of these type of pieces, with Eliane Gazzard collaborating on sustain pedal and piano called, “Parallels of Infinite Perspect” on Álvaro’s Illuso label.
the 3rd track is an improvised duet with Mario Diaz de Leon from Issue Project room in 2019. i hope to do a full album with him soon!

Subcontinental Records の Arun から、俺の実験的/クラシカル音楽のライブアルバムを出さないかってアプローチされてね。1曲目と2曲目は、2015年ニューヨーク EMPAC でのライブなんだ。1曲目はオレが INDRICOTHERE でやってるキーボードのスタイルだ。2曲目はフィードバックをコントロールしたピアノ。後から EMPAC に戻って、Eliane Gazzard とフルアルバムバージョンを録音したんだ。
3曲目は、Issue Project の Mario Diaz de Leon とインプロヴァイズのデュエット。彼とはすぐにフルアルバムを作りたいな!

PRODUCTION WORKS

8. IMPERIAL TRIUMPHANT “ALPHAVILLE”

i love working with Imperial. zach has taken the band on an awesome trajectory over the years and it’s a honor to be along for the ride and to get to collaborate and help him realize his vision. the band is so awesome now with kenny and steve–feels like a real BAND now, with everyone contributing. i love that they leave some looseness in the music and are much more interested in a compelling performance rather than things being 100% accurate. they recognize the value of leaving some dirt and some mystery in a mix too, rather than going for a squeaky clean procut with no rough edges. they are open to lots of experimentation but also value a more jazz-oriented mentality where the instruments sound like people playing together and kicking ass.

IMPERIAL TRIUMPHANT と仕事をするのは大好きだよ。Zack は何年にもわたってバンドを素晴らしい軌道に乗せてきたし、その道を一緒に歩むことができて、コラボレートして彼のビジョンを実現する手助けをすることができて光栄だよ。Kenny と Steve がいる今のバンドはとても素晴らしいよ。全員が貢献して、真の “バンド” になっているね。
彼らは音楽に多少の緩みを残していて、100%正確なものを作ることよりも、説得力のあるパフォーマンスに興味を持っているから好きなんだ。エッジのない、ラフさのないキレイなカットを目指すのではなく、多少の汚れやミステリーをミックスに残すことの価値を認識しているからね。彼らは多くの実験にオープンであると同時に、楽器が一緒に演奏しているように聞こえるようなジャズ指向のメンタリティも大切にしているんだ。

9. AFTERBIRTH “FOUR DIMENSIONAL FLESH”

yes! love this record and this band. i’m so happy they came to me for this recording. an honor. each musician has a totally unique voice on their instrument. i love the prog flair, but the tasteful tempering through quality songcraft. these guys really balance the traditional well with the experimental. it’s very accessible somehow, without being annoying in the way that “accessible” can be, at least for me. it’s also very exciting to me that these guys all value a good-quality more “straightforward” recording/mixing style, rather than wanting that sound-replaced/quantized/amp-simulated vibe that is so omnipresent in modern “professional” recordings.

きたね!このレコードとバンドが大好きなんだよ。彼らがこの作品のために、俺のところに来てくれたことをとても嬉しく思っているよ。 各ミュージシャンはそれぞれの楽器に全くユニークな “声” を持っている。 俺はこのプログな雰囲気が好きなんだけど、質の高い曲作りによる味のあるソフトな性質も気に入っているんだ。
彼らは伝統的なものと実験的なもののバランスをうまくとっている。それはとても親しみやすいもので、”親しみやすい” というのは、少なくとも俺にとってはイライラさせることがないってこと。
また、最近の “プロ” のレコーディングにありがちな、音の置き換え、量子化、アンプシミュレートされたような雰囲気を求めるのではなく、彼ら全員が質の高い、より “素直な” レコーディング/ミキシング・スタイルを大切にしていることも、俺にとってはとても刺激的なことだったな。

10. PYRRHON “ABSCESS TIME”

pyrrhon are the best bros. i love hanging out and joking around with these guys. they are hilarious. also so honored and happy to have gotten to finally record/mix them for this and the previous album. alex cohen is undoubtedly a technical master, but i think the band started to become truly amazing when steve schweggler stepped in behind the drum kit. his style and aggressive playing fit with Dylan, Erik and Doug just perfectly. it’s great how masterful pyrrhons “tech metal” writing is, but even greater how they also have a purely improvised free-form side to their spirit that’s just as effective. these guys are unstoppable musicians and i love that they also have Seputus, which feature all 4 of them AGAIN! as well as many other bands. these guys get it: make a ton of shit and have it all be awesome. haha

PYRRHON は最高のブラザーだよ。彼らとハングアウトしたり、冗談を言ったりするのが大好きなんだ。そして、このアルバムと前作で彼らをレコーディング/ミックスすることができたことをとても光栄に思っているし、幸せに思っているよ。Alex Cohen は間違いなくテクニカルなマスターだけど、Steve Schweggler がドラムキットに座ってから、このバンドは本当に素晴らしいものになっていったと思う。
彼のスタイルとアグレッシブなプレイは、Dylan, Erik, Doug に完璧にフィットしていた。PYRRHON の “テック・メタル” のライティングが群を抜いているのも素晴らしいけど、それ以上に、彼らの精神には純粋に即興的なフリーフォームの側面があり、それが効果的に作用しているんだよね。
彼らはアンストッパブルなミュージシャンだし、彼ら4人全員をフィーチャーした SEPUTUS も大好きだ。大量のゴミを生み出せば、全てが素晴らしい音楽になることを理解しているね。(笑)

ABOUT NYC AVANT-METAL SCENE

undoubtedly one of the best, but that’s almost a technicality because New York city is the densest, most diverse blob of humans probably on the planet. so everything that benefits from a lot of people and a lot of variety is going to benefit. so many big cities can make similar claims, but NYC is exceptionally diverse and international. being shoved together with a ton of other people, some with similar goals, but a range of approaches and influences is only going to create a richer scene with maximum life and vibrance: what a strength there is in being exposed to a wide variety of approaches and statements!
i’m sorry, but people who believe in the value of segregation based on background are the reason humanity will most likely destroy itself. if having a diverse community isn’t totally obvious as a strength, then we have no hope and deserve to die.

疑いようもなく最高のシーンの一つ。それは当然なんだ。なぜならニューヨーク市はおそらく地球上で最も高密度で最も多様な人間の塊だから。だから、誰もが多くの人々と多くの多様性から受けるべくして恩恵を受けていると言えるね。大都市なら同じ状況になるだろうけど、NYC は特別多様で国際的だからね。
多くの人たちと一緒にいれば、中には同じ目的を持った人もいて、様々なアプローチや影響を受けながらも、最大限の生命力とバイブレーションを持ったより豊かなシーンを創り出すことになるはずだから。様々なアプローチや発言に触れることができるのは、なんという強みだろう!
申し訳ないけど、人種や文化といったバックグラウンドに基づく隔離の価値を信じている人たちこそが、人類が自滅してしまう原因なんだよ。仮に多様なコミュニティを持つことが強みにならないならば、人類に希望はなく、滅びるに値するよ。

ABOUT CORONA CRISIS AND MUSIC INDUSTRY NOW

i have been very lucky to still have some remote studio work, but i haven’t had an attended recording session since march! my friends who rely on the live music world for their income are totally fucked. what’s really sad isn’t that Corona happened. that’s actually just normal and natural. what’s so disappointing is how selfishly many are treating an issue (including the American government!!!!) that’s solely and directly about our collective survival as a species. people can’t get it through their heads that all the activities that they want to return to will be MADE POSSIBLE BY quarantine/distancing/masks/closing non-essential things, rather than seeing those things as an impediment to freedom. once again, if you see this as an issue of personal freedom, rather than ENSURING YOUR OWN HEALTH AND FUTURE, then humanity is fucked and we’re all going to die a horrible slow death together as the modern world crumbles. if your goal is to destroy all humans including yourself and your loved ones and me, then you’re doing great! keep going! thanks!

俺は幸いまだリモートでのスタジオの仕事はあるんだけど、レコーディングセッションには3月から参加していないんだよ!ライブハウスに頼って収入を得ている友人たちは完全にダメになってしまった。
本当に悲しいのはコロナが発生した事じゃないんだ。それは普通で当たり前に起こり得ることなんだから。何がとても残念なのかというと、この問題をどれだけ利己的に扱っているかということなんだ。アメリカ政府も含めてね!!!!
これって、種としての我々が生存できるかに直接関係しているよね。コロナ対策を自由への障害として見るべきじゃないよ。かつての生活に戻るには、自己隔離/ソーシャルディスタンス/マスク/が唯一の道なんだから。
もう一度言うけど、もし君が自分の健康と未来を保証することよりも、コロナ対策を個人の自由として捉えているならば、人類は滅び、現代世界が崩壊していく中で、俺たちは皆一緒に恐ろしくゆるやかな死を迎えることになるだろう。もし君の目標が、自身と愛する人と私を含む全ての人間を破壊することならば、そうすればいい! 頑張れよ、ありがとう!

Here’s a list of my other releases since the lockdown started:
https://xazraug.bandcamp.com/album/unsympathetic-empyrean
https://groeth.bandcamp.com/album/unfathomable-existence
https://indricothere.bandcamp.com/album/tedium-torpor-stasis
https://indricothere.bandcamp.com/album/xi-5
https://hathenter.bandcamp.com/album/wr-w-r-wwr0wr-g-0w-er0gw-0wr-w
https://glyptoglossio.bandcamp.com/album/0-1
https://encenathrakh.bandcamp.com/album/live-album
https://encenathrakh.bandcamp.com/album/thraakethraaeate-thraithraake
https://arelseum.bandcamp.com/
https://edenicpast.bandcamp.com/
https://slam420.bandcamp.com/album/bloated-exploded-og-gluttony
https://youtu.be/2C7SrMS1rGI

Other things panned include:
– the debut full length from Edenic Past
– Arelseum II
– a collaborative album with Mike Pride, Jamie Saft, and Mick Barr
– a collobarion with Andrew Hawkins from Bearing Teeth
– a full classical symphony, presented as a solo album
– 2 new krallice albums
and there will be a lot more i’m sure.

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NEW DISC REVIEW + COVER STOEY 【DEFTONES : OHMS】


COVER STORY : DEFTONES “OHMS”

“I Set Up a Record Player In The Media Room, Which Has Forced Me And My Family To Listen To Records And Start Them From The Beginning And Listen To The Whole Thing, Through The Experience. I’m Trying To Get My Daughter, Who’s 15, Into That Mindset Of Listening To Records. Everybody Right Now Is Spoon-fed Singles, But Listening To Records Is an Experience.”

VOLT = 1 AMPERE × 1 OHM

「MESHUGGAH のように聴こえるかって?いやそこまでヘヴィーじゃないよ。ツーバス祭りかって?そんなの俺たちがやったことあるかい? 怒ってるかって?ああ、怒っている部分もあるよ。だけど、俺たちが全編怒っているだけのレコードを出したことがあったかい?」
ヘヴィーな音楽に繊細で色とりどりのテクスチャーを織り込むのが DEFTONES 不変のやり方です。
「俺は大のヘヴィーメタルファンとは言えない。良い音楽が好きなんだ。どんな音楽でも好きだよ。良い曲があればジャンルは問わないね。俺たちはオープンマインドなんだ。何か一つのジャンルに収まる必要はない。むしろそうであるべきではないと思う。人それぞれでいいんじゃないかな。CANNIVAL CORPSE を聴きたければ聴けばいい。でも俺たちは皆色々な音楽を聴いているから、ある日突然ニッチなものに当てはまらなければならないと決めてしまうと、自分自身を壁に閉じ込めることになってしまうと思うんだ。」
実際、Twitch の DJ 配信で Chino は、N.W.A, Toro y Moi, Brian Eno, BLUT AUS NORD など自らのエクレクティックな趣向を明かしています。
「電子音楽、実験的なもが好きで、何年もヴァイナルを集めているんだ。新しい家でメディアルームにレコードプレーヤーを設置したんだけど、そのおかげで俺も家族もレコードを最初から聴き始めて、通して全部聴くことを余儀なくされているんだ。15歳になる娘に、レコードを聴くというマインドセットを身につけさせようとしているんだよ。今の人はみんなシングルばかり聴いているけど、レコードを聴くのは経験なんだよね。
年寄りの説教みたいに聞こえるかもしれないけど、俺にとってはとても意味のあることなんだ。娘を部屋に呼び、”何のレコードかわからなくてもいいから、一枚選んでみてよ” ってね。この間彼女は TORTOISE というバンドを選んだ。ドラマー2人の6人組で、全てインストゥルメンタルだった。”なぜそれを選んだの?”と聞いたら 彼女は “カバーが気に入ったから” と答えたね。それからそのアルバムを聴いたんだ。
昔はそういう風に音楽を選んでいたんだよ。レコード屋に行って、レコードを見て、かっこよさそうなものがあれば手に入れていた。そして、自分で稼いだお金を使って、レコードを好きになっていったんだ。その精神を自分の中に持ち続けて、若い人たちに伝えようとしているのさ。」

時にヘヴィーで、時に怒り、時にファストで、時にカモメが鳴くレコード。
「カモメの鳴き声を入れたいと思ってたんだ。Don Henley の “Boys of Summer” にはカモメの鳴き声が聴こえるセクションがあって、不気味な気持ちになったものさ。」
カモメの鳴き声を入れようと決めた時、すでに “Pompeji” は完成した後でした。しかし、ビーチの捕食者から12分の音声を入手した彼らは、波の音と鳴き声のサウンドスケープを忍ばせることにまんまと成功したのです。
「こうすれば楽曲の設定が変えられるし、どこかへ連れて行ってくれるよね。俺らのレコードにはいつだって小さな動物や昆虫が隠れているから (笑)」
DEFTONES 9枚目のアルバム “Ohms” に戻ってきたのは、動物の鳴き声だけではありません。”Adrenaline”, “Around The Fur”, “White Pony”, “Deftones” のプロデューサーである Terry Date も久々の帰還を果たしました。
「彼はとても忍耐強い人だけど、挑戦するスペースを与えてくれるんだ。たぶん、一緒に仕事をしていて心地よく感じない人とやっていると、スタジオに入って何かをしなければならないって感じになってしまうんだろうね。Terry と一緒なら何かをやり遂げることができる。うまくいかないかもしれないことをやってみても、俺が立ち止まって「よし、今度は別の視点から見てみよう」と言うまでは、その道を歩ませてくれるんだ。 」
Terry と製作したうちの1枚、”White Pony” は今年20周年を迎えました。昨今、2000年にリリースされたレコードを当時見下していたメディアやライターが Nu-metal について再評価の言葉を投げかけています。
「彼らは常に見下していたと思う。聴くことに罪悪感すら感じていたよね。僕らのことではないと思うけど、間違いなく LIMP BIZKIT とかはそうだよね。当時のリスナーはそれが馬鹿げていることを知っていた。振り返ってみると “あんな音楽を聞いていたなんて信じられない” とかじゃなくて “あの頃はバカだと分かっていても好きだった”ってことさ。それでいいんだよ。ダサいと思って恥ずかしがっちゃだめだよ。好きなものを好きになればいい。誰が気にするんだ?偉そうにするなよ。何の問題もないよ。」

Google によると、”Ohms” とは “導体の2点間の電気抵抗” と定義されています。Chino にとってこの言葉はどのような意味を持つのでしょう?
「ものごとのバランスと極性のことだよ。俺はいつも DEFTONES を陰と陽のバンドだと表現してきた。俺らが作る音楽、歌詞にはいつもそれが並列されていて、そこから美しさが生まれるんだよ。」
美しさといえば、ドラマーの Abe Cunningham は以前、アルバム “White Pony” を自由に走る美しい馬のイメージだと語っていました。”Ohms” のイメージは何なんでしょう?
「サマースカッシュかレモンキューカンバーだな。まあ動物で言えば仔馬だな。新しい野生の仔馬さ。」
タイトルソング “Ohms” を語る時、Chino は興奮を隠せません。
「最初に書かれたものの一つさ。Stephen が3年前にデモを送ってくれてね。彼のメールを開くのが大好きなんだよ。いつも興奮させられるからね。他のメンバーは、この曲の陽気な響きに少し困惑していたけれど。」
そうしてリスナーは、ノイズの嵐から Chino Moreno の言葉を受け取ります。”俺たちは過去というデブリに囲まれて生きている”。それはフロントマンがレコードにおいて、そしてレコード以外でも最近よく口にする言葉です。
とは言え、エクストリームシーンで最もリスペクトを受ける言葉の達人は、しかし歌詞を書くことにそれほど拘りがありません。
「まあ歌詞は、日記のかわりに、より詩的な方法で考えを書き留めているって感じかな。恥ずかしいとまでは言わないけど、簡単じゃないよ。一番好きじゃないことかな。(笑) 言いたいことがどれだけあるのかわからず、止めることもよくあるね。あとはより匿名性の高いものに置き換えてプレッシャーを和らげたりとか。」
Chino にとって、曖昧であることはソングライティングにおいて重要な要素です。常に見えていながら、手の届かない場所にいる、自分自身をカモフラージュする能力。それこそが長年に渡り、Chino にミステリアスな雰囲気を付与してきました。メンバーの Abe にしても自分の人生をかけて演奏してきた楽曲が何についてなのか、分かっていないこともあります。
「歌詞の意味を時々彼に尋ねるんだ。彼はうーん、どうだろう。わからないけどそうなのかな?ってはぐらかすんだ。まあでも、長い間一緒にいるからね。Chino はいつも人生に起こったことを共有したいと思っているんだよ。歌詞は自分から出てきたものだ。内省的というか。だから、最悪な出来事でも、毎晩それを歌えるのはとても幸せなことなんだよ。そうやって悪魔を追い払うことができるんだから。」

たしかに、Abe の内省的という指摘は今回のレコードに強く当てはまるのかもしれませんね。”Koi No Yokan” のコズミックなイメージは近かったにしても、DEFTONES はコンセプトアルバムを作りません。それでも、”Ohms” の楽曲を分解すれば、特定の言葉たちが何度か登場することに気づくはずです。
「自分自身と向き合いながら多くの経験をした。これまで生きたいように生きてきたから、内省的なことをする必要があったんだ。セラピーを受けたんだ。俺はいつも、自分の個人的な感情を他人に話す必要があるのかと感じていた。でも、自分やバンドのことを知らない人と話すのは全く異なる経験になったね。子供の頃からの自分をさらけ出して、なぜ、どうやって今の自分になったのか理解することが出来たからね。」
Chino は毎日朝になるとセラピーに向かい、何週間もかけて自分の人生の物語を辿って行きました。時折疲労も感じましたが、価値のある疲れだったようです。
「良い結果でも悪い結果でも、なぜ自分が人生でその決断を下してきたのか気がついたんだ。解明するのはクールなことだったよ。怖いことでもあるけど、間違いなく健全なことさ。だからこのアルバムのテーマのうちいくつかは、人生で行った選択を認識して、満足いかない状況をどうやって変えていくのか考えられるようになることなんだ。」
恵まれた人生に思えますが、Chino の不満とは何だったのでしょう?
「まあ多くの人が対処していることだと思うけど、ある時に不幸になったり、悲しかったり、寂しかったり、怒ったりすると、どこかしら頭が変になることがあってね。これまでに書いてきた曲を見てもらえればわかると思うけど、僕の感情はいつもどこにだってありえるんだ(笑)。冷静さを保てないことが多くて、親しい友人や家族には嫌な顔をすることもある。だけどそれは彼らに怒っているのではなく、もっとうまくやれるとわかっている自分に怒っているのかもしれないよね。あまり具体的には言いたくないけど、決断を下しても気分が良くならないとしたら、それをどうやって変えるの? 自分に責任を持って、自分を見つめ直すんだよ。多くの人がそうする必要があるけれど、簡単なことじゃないよね。だけどそうやって少しずつ学んでいくんだ。そうすれば少しずつ調整ができるようになる。次の日には少し幸せな気分で 目が覚めるかもしれないよ。」

オープニング曲 “Genesis” で Chino は、”I finally achieve balance” “ついに心のバランスを保つことに成功した” と言っています。もちろん、Chino の歌詞は必ずしも文字通りの意味ではないですし、解釈の余地はありますが。
「あの歌詞はかなり文字通りの表現だった。正直に言うと、完全なバランスが取れたわけではないんだ。だけどバランスを感じる瞬間があるんだよ。それに近い日もあれば、そうでない日もある。 ある日はそれから何マイルも離れていたりしてね。でも、それは時代に不満を感じているということでもあるんだ。すべてが二極化しすぎているよね。誰もが意見を持っていて、フェンス越しに互いに吠え合っていている。頭がおかしくなるよ。どちらか一方を選びたくない、バランスを取りたい。何が言いたいかわかる? この曲もそれを表していると思う。」
“Ohms” とは Chino Moreno の再生なのでしょうか?
「文字通りそうだとは言わないよ。今の自分を以前とは全くの別人だなんて思っていないからね。未だにかなり以前の Chino Moreno を感じているよ。だけど同時に、ある種の変容も感じるんだ。」
たしかに、2020年の DEFTONES のレコードには、変わったものもあれば変わらないものもあります。PANTER や SLAYER を手がけた Terry Date もかつて若き DEFTONES にはすっかり手を焼いていました。有名なスタジオでの映像には、もしゃもしゃナッツを食べてニヤニヤする Chino Moreno, ドミノで遊びながらニヤニヤする Stephen Carpenter, 雑誌を読みながらニヤニヤする Frank Delgado を前に、憔悴しきって言葉を発する Terry の姿が残っています。
「オマエら、あと2,3テイクやれたら、ナッツを食べてドミノをやって雑誌を読んだらいいさ。だけど俺たちはいくつか問題を解決しなきゃならないよ…」
彼らの “遅れることに長けている” 能力は現在も変わっていません。Abe は今回も Terry を悩ませたことを認めます。
「毎回 Terry を辞めさせるんだ。それが俺たちのやり方なんだ。(笑) 以前の3枚でも辞めているし、今回も辞めそうになった。怒らせたくはないんだけどね。唇を噛んで、眼鏡が曇り出すからわかるんだよ (笑)。いつも目標はTDを辞めさせよう!さ。」

そんなジョークとは裏腹に、DEFTONES は “Ohms” に並々ならぬ情熱を注いでいます。LA の Henson と Trainwreck Studios でレコーディングされた作品には “コーヒー、ジュース、ビール、テキーラ、小便、笑い” を少なめに12曲を制作して10曲が収録されたのです。Abe は嘯きます。
「よく、このアルバムのために6000曲書いたなんて言うバンドがいるけど、ウソばっかりだ (笑)。12曲で充分だよ。」
“Gore” リリース時に、Stephen が「このアルバムで誇れるのは、ただギターを弾いていることだけだ。」と語り論争を引き起こしたことは記憶に新しいはずです。そこから DEFTONES は文字通り学んでいます。Chino が説明します。
「過去に誰かが楽しめなかったレコードが存在するのは確かさ。でも同じメンバーで何枚もアルバムを作るなら全員が参加するべきだよ。俺たちは厳しい過去の経験から学んだんだ。”Gore” で Stephen はあまりレコードにかかわっていないと認めていた。だけどそれは俺たちが彼を必要としていなかったからではない。俺の好きな DEFTONES の楽曲のアイデアは彼が率先して作ったものだしね。誤解のないように言うけど、Stephen は “Gore” にかかわっていたよ。”Phantom Bride” は歌詞とドラム以外すべて彼が書いている。ただ、アルバムに完全に関与していなかっただけで、俺らの曲の方がいいとか思ったわけじゃないんだよ。そうじゃなくて、彼はあの頃何かを乗り越えようとしていたんだ。レコードが完成したあと、少しだけそのことについて話してくれたんだけどね。お前は俺の兄弟だ。全部分かってるからと伝えたけどね。とにかく、重要なのは全員がかかわって、全員がエキサイトすることなんだ。」
“Ohms” は全員がかかわって、全員がエキサイトするレコードなのでしょうか?
「まちがいなくね。Stephen が送ってきた最初のタイトルソングのデモなんて12分もあったんだから(笑)。」
一方で、Abe はすでに次のレコードについて考えるほどこのバンドに夢中です。
「俺はまだ小さな子供なんだよ。また次のレコードを作れることに興奮してるんだから。」
次のレコードを作れること。Abe が常に胸に秘める感謝の理由は想像に難くありません。”Ohms” は正式には DEFTONES 9枚目のアルバムですが、実際は10枚目の作品とも言えます。2013年、ベーシストの Chi Cheng が交通事故で昏睡状態に陥り、命を落とすという悲劇に見舞われたため、製作を断念した歴史があるからです。DEFTONES は再び Terry Date の部屋へと帰ってきました。Chi を除いて…
「彼はいつも俺らと共にある。毎日考えているよ。インスピレーションの源だ。彼はいつもそばにいる。」

メタル、ハードコア、ヒップホップ。ターンテーブルやプログラミングを得意とする Frank Delgado, パンクバンドでプレイしていた Sergio Vega とメンバーの得意分野が分かれることも DEFTONES の強みでしょう。
「レコードを作ろうと思うのは、一人一人が個別に、そして全体的にインスピレーションを受けられるかどうかなんだ。何年もかけてわかったことだけど、それが本当に大切な瞬間なんだよね。 みんなで集まって、誰かが何か音を出し、他のメンバーがそれに反応してさらに何か音を出し、1分後にはその音が1時間前には存在していなかった曲に変わっていくんだよ。そうやって有機的に起こるのが一番いいんだけどね。いつもそうなるとは限らないけどね。 たまに集まって何時間も話し合っても何も出てこないこともあるし、出てきても何も浮かばないこともある。レコードを作るために集まって、30曲書いて10曲に絞るなんてことはしない。文字通り10曲書くんだ。アイデアを出して、途中でスチームが切れたら、”よし、やり直そう “ということになる。それが僕らのやり方なんだよ。」
DEFTONES にとって唯一音楽よりも大事なものは、それを作っているメンバーたちの絆です。
「バカバカしくて子供じみているかもしれないけど、俺たちにとってはハングアップすることがすべてなんだ。一日中くだらない話ばかりしているよ。レコードを作るためだけにレコードを作ることはないね。好きだから作っているんだ。遊びたいし、騒ぐのが好きだ。そのノイズの中から楽曲が生まれるんだよ。」
以前からそうだったように、これからもきっとそうでしょう。

参考文献: KERRANG!THE SECRETS BEHIND DEFTONES’ NEW ALBUM, OHMS: INSIDE THE STUDIO FOR THE FIRST TIME

VULTURE : Deftones Have (Almost) Found Balance

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