COVER STORY : DREAM UNENDING “SONG OF SALVATION”
“There will be bands where you’re like, “I only like the early stuff because the later stuff got different.” That’s fine, but do you really need six records that sound like one specific thing?”
DREAM UNENDING
人生は厳しいもの。人は必ず成長し、生きるために働き、老いて死にます。もし、そんな苦痛のサイクルから解き放たれたとしたら? もし私たちが現代生活の呪縛から解放され、哲学的な反乱を起こし、諦めるのではなく人生を謳歌することができたらどうでしょう。TOMB MOLD の Derrick Vella と INNUMERABLE FORMS, SUMERLANDS の Justin De Tore によるデュオ、DREAM UNENDING は、そうして人生という果てしないファンタジーに慰めを見出しました。
ANATHEMA や Peaceville Three に影響を受けたデスメタル、ドゥーム・メタルを背景に、DREAM UNENDING が描く人生に対する理想を理解することは簡単ではないでしょう。De Tore は、人生の循環的な側面と、逆境に直面した際の魂の回復力をテーマに、音楽とのより深い感情的なつながりを求めているのです。
すべての弦楽器を担当する Vella は、夢のように破砕的な雰囲気を作り出し、バンドが影響を受けてきた素材をさらに高揚させながら、個性と職人的なセンスで巧みにアイデアを育てていきます。デスメタル、ドゥーム・メタル、デス・ドゥームではなく、バンドを “ドリーム・ドゥーム” と呼ぶ Vella のソングライティングは、ヘヴィネスの黒海と天国から射す光のちょうど中間にある絶壁で稀有なるバランスを取っています。
それにしても、デスメタルの救世主として名を売った2人は、なぜゴシックやデス/ドゥームメタルの父である “Peaceville” にオマージュを捧げることになったのでしょう?Derrick Vella が答えます。
「僕が初めて Peaceville に触れたのは PARADISE LOST だった。2000年代に古いゴスのブログを通じて “Shades of God” を聴いたことがあったんだ。正直なところ、あのアルバムは好きではなかったね。そのブログで彼らが “Gothic” というアルバムも出していることを知ったんだけど…なぜあのブログはそっちをアップロードしなかったのか、理解できなかったよ。
“Gothic” は簡単に僕を虜にした。当時聴いていたダーク・ウェイヴ、ポストパンク、エクストリーム・メタルの延長線上にあるような、論理的なものだったからね。まさに世界がぶつかり合う瞬間だった。ちょうどあの頃は、夜、真っ暗なバスで帰宅していたから、このアルバムと THIS MORTAL COIL の “Filigree and Shadow” が混ざっても、それほど飛躍した感じはしなかったね。思い出深いアルバムだよ。
その頃から、友人がドゥーム・メタルにハマり始めたんだけど、彼はカーゴ・パンツのドゥームではなく、もっとベルボトムのようなドゥームが好きでね。だから幸運なことに、THERGOTHON や ESOTERIC みたいなバンドを紹介してもらうことができたんだ。ESOTERIC はこれまで存在した中で最も偉大なメタル・バンドかもしれないね。とても共鳴したよ。UNHOLY のファースト・アルバムもそう。それで結局、Peaceville のものをもっと聴くようになったんだ。
でも、何よりも他のバンドより心に響いたのは、ANATHEMA だった。いつも一番胸が締め付けられる。パワフルで壮大だ。ドゥームというのは面白いジャンルだよね。奇妙にプログレッシブであったり、簡単に雰囲気を作り上げることができたり、空間をシンプルに埋めて濃密なものを作り上げることができたり。デスメタルと同じくらい、いや、それ以上に好きなんだ。
DREAM UNENDING が存在するのは、Justin にバンドを始めようと誘われたからなんだ。それまではドゥーム・メタルを書こうとさえしていなかった。みんなは、僕が高いクオリティでたくさんの曲を書くことができるといつも言ってくれるけど、本当に頼まれたときしかやらないんだ。他人のために書くというプレッシャーの中でこそ、僕は成長できるんだろうな」
ボーカルとドラムを担当する Justin De Tore にとっても、PARADISE LOST と ANATHEMA は重要なバンドでした。
「PARADISE LOST を初めて聴いたのは、”Draconian Times” が発売されたときだった。ここボストンの大学ラジオでレギュラー・ローテーションとして放送されていたんだよね。ただ、EVOKEN / FUNEBRARUM の Nick Orlando が PARADISE LOST の最初の数枚のレコードをチェックするように薦めてくれるまで、彼らの初期の作品を聴くことはなかったんだ。僕は21歳で “Gothic” を聴いて、とても深い経験をした。基本的に Nick は僕をデス/ドゥームに引き込んだ人物で、だから彼には感謝しているよ。
ただ、”Peaceville Three”も好きなんだけど、一番好きなのは ANATHEMA。Darren White のように痛みや悲しみを表現する人は他にいないよ。とても感動的だ。とにかく、このスタイルで演奏するのはずっと夢だったんだけど、それを実現するための適切な仲間がいなかったんだ。だから、Derrick のように、僕と同じような熱意を持ってくれる人に出会えたことは、自分にとって幸運だったと思っている」
ドゥーム・メタルを作る際のアプローチと、デス・メタルの世界との違いは何なのでしょうか?両者を股にかける作曲家 Derrick が答えます。
「デスメタルに対して、ドゥームではあまり安全策を取らずに書ける気がするんだ。Justin は、自分がどう感じるかを自由に書いて、そこにたくさんのレイヤーを追加してくれる。メロディックになりすぎることを心配することもないし、リフに長くこだわりすぎることもない。もしそうなっても Justin が教えてくれるしね。彼には、”このリフを考え直してみて” と言われることもあるけど、ほとんどいつも彼の言うとおりさ。アルバム “Tide Turns Eternal” を書いたときも、特に対立することはなかったね。”Dream Unending” の長い中間部に差し掛かったとき、僕はこのバンドに何を求めているのかを理解したよ。美しい部分と不穏な部分が同居しているのだけど、それぞれの部分に必ず重みがあるんだよね。
新しいバンドをゼロから始めることの良い点は、何も期待されていないこと。自分たちの好きなように演奏できるし、誰にどう思われようが気にならない。プレッシャーから解放されるんだ。Justin と僕はある程度有名人というか、正直に言うと、彼はスターだけど、二人ともこの音楽をどう思われようと気にしていないよ」
DREAM UNENDING は、自分たちが影響を受けたものをある程度身にまとっているにもかかわらず、伝統的な “デス/ドゥーム・メタル” というタグを敬遠し、自分たち独自のジャンルを確立しています。Derrick はどうやって、”ドリーム・ドゥーム” という言葉が生み出したのでしょうか?
「最初はバンド名や、アルバム名が夢の中で浮かんだということから。COCTEAU TWINS, “Disintegration” 時代の THE CURE, THIS MORTAL COIL といったドリーミーなサウンドのバンドのことを考えながら、曲を肉付けしていった感じかな。曲やアートワークのアイデアのインスピレーションも、映画の夢のシーンから得たものがあるしね。それこそ、黒澤明の “影武者” とかね。ただ、そういうものは “ドリーム・ポップ” というブランドで呼ばれているから、僕たちは “ドリーム・ドゥーム にしたんだよ」
メタル・サウンドと先進的な “ドリーム・ドゥーム” サウンド、それぞれのバランスをどうとっているのでしょうか? Justin が説明します。
「最初から何か違うクリエイティブなことをやりたかったんだ。Derrickも言っていたけど、このプロジェクトに参加するにあたっては、二人ともかなりオープンマインドだった。ドゥームのレコードを作るということでは合意していたと思うんだけど、それ以外のことはほとんど決まっていなかった。かなり慎重にやったよ。僕がやっているバンドのほとんどは、特定のスタイルにしっかりと根ざしていて、それはそれでクールなんだけど、時々輪を乱してしまうようなレコードを作るのはとても楽しいことだよ」
Derrick が補足します。
「結局、Justin と僕はただの音楽オタクなんだ。そして、ヘヴィネスにこだわらず、何かを喚起するような印象的な音楽を作ることに重点を置くようになった。最もヘヴィな部分は、クリーンなパッセージの中にある。そのバランスは、”重さとは?” という問いかけのようなものだと思うんだ。どの曲もすべてのパートに説得力を持たせ、手を抜かないようにするのが僕たちの努め。そして、その説得力をさらに高めるために、必要であれば外部の力を借りることもある。Justin が心を開いて僕を信じてくれることは、本当に助けになるよ。それが自信につながり、自分を追い込み続けることができるんだ」
つまり、TOMB MOLD との違いは実はそれほどないのかも知れません。
「TOMB MOLD の曲は僕が作るかもしれないけど、それをバンドに持ち込むと、みんなが自分の DNA を入れてくれる。今年3曲入りのテープを出したんだけど、エンディングの “Prestige of Rebirth” にクリーンセクションが入っていて、それを聴いて DREAM UNENDING みたいだと言う人が多かったんだ。まあ、あの部分の土台は僕が書いているし、そうなるのは当然なんだけど、あのテープでは TOMB MOLD がもっとメロディックな面を開拓しているから面白いんだよね。
メロデス的なものではなくて、CYNIC の “Focus” や “Traced in Air” を彷彿とさせるような感じで、もしくは特に FATES WARNING ようなバンドの延長線上にあるような感じなんだ。みんなプログレッシブ・メタルが好きで、プログレッシブ・デス・メタルも好きで、そこに浮気しがちでね。DREAM UNENDING はほとんどそれをスローダウンさせただけのようなものだと思うんだ。とにかく、デスメタルはとても想像力豊かなジャンルだから、ドゥームがより想像力豊かなジャンルだとは言いたくない。たぶん、どちらのジャンルにもルールはないんだ」
ANATHEMA の中でも、”Pentecost III” と “Serenades” は特別な作品だと Derrick は言います。
「この2枚のレコードで聴けるような、ゆっくりとした陰鬱なパッセージがとても好きなんだ。伝統的でないパワー・コードをうまく使っている。それと、”We, the Gods” のような曲もね。この曲は基本的にタイトル曲の “Tide Turns Eternal “の青写真なんだ。でも、ペースをきっちりコントロールすることで、自分たちのものにした。ANATHEMA の特徴を壊したり、攻撃的で耳障りなものにしたくはなかったんだ。アルバムのテンションが上がっても、ペースを乱すことはない……といえば、わかりやすいだろうか?
ただ、彼らは常に進化しているんだ。それがバンドの素晴らしいところであり、音楽のカッコいいところでもある。若い頃、あるいは今でも、”後期は全然違うから初期のものしか好きじゃない” という人がいるでしょ。それはそれでいいんだけど、1つのサウンドを持つレコードが6枚も必要なんだろうか?リスナーとしては、好きなバンドにはもっと多くのものを求めるものだと思うし、彼らがどこまで到達できるかを常に見たい。ANATHEMA は30年前の ANATHEMA のようには聴こえない。2枚目、3枚目のアルバムでやめてしまう人もいるだろう。だけど、僕は最初の8枚くらいは全部好きなんだ」
もちろん自分たちはコピーバンドではないがと前置きして Justin が続けます。
「僕たちは特定のバンドをコピーしようとは思っていないよ。ボーカルに関しては、Darren White のような激しさを出したいとは思っているけど、それは無理な話。僕たちは異なる人間であり、最終的に僕は僕でなければならないからね。全体として、このアルバムでは歌詞もサウンドも自分自身に忠実であったと思うよ」
ゴシック・ドゥームというジャンルは一般的にヨーロッパのもので、2人でアメリカからその世界に参入するという感覚はあるのでしょうか?
「全然違うよ。僕らには EVOKEN がいるから。いい仲間なんだ」
この “陰鬱” なスタイルは、なぜアメリカよりもヨーロッパのシーンに多く浸透しているのでしょう? 2人にもその理由はわからないようです。
「僕はいつもこのジャンルに惹かれているのだけど、アメリカでは同じ興味を持つ友人が数人しかいない。おそらくこれはアメリカ的なものではないんだ。あと、美学は人々にとってとても重要でイメージが全ての場合もある。スタイリッシュでないサブジャンルは、スタイリッシュなものほど受け入れられてはいない」
「なぜもっと多くの人がこのジャンルを愛さないのか、なぜ皆 AHAB の最初の2枚を崇拝しないのか、わからないんだ。美意識の問題なのだろうか?でも、革ジャンを着た人たちには、海やクジラは十分にカルトではないんだろうな。レーベルの問題かもしれないけどね。ドゥームにはある種の忍耐力が必要だ。ドローンやベルボトム・ドゥームは、僕の知っている北米の人たちにはもっとインパクトがあったように感るな。多分、多くの人はメタルを聴いている時にまで、鬱な気分になりたくないだけなんだろうけど」
バンド名の由来となった “果てしない夢” とは何を意味するのでしょうか?Derrick の言葉です。
「僕にとっては、人生という誰もが共有する旅のこと。ひとりひとりの中にある魂は、僕たちよりも長生きし、もしかしたら永遠に続くかもしれない。それは、自分自身と世界における自分の位置を再調整する方法なんだ。僕は誰の上にも立っていない。みんながそうだよ。僕たちは皆同じ生身の人間で、自分たちが理解するよりも大きなものを運ぶ器なのさ。僕は君が生きているのと同じ夢を生きているんだよ。重要なのは希望を失わないこと、自分は一人ではないこと、忍耐すること、人生は生きる価値があること、人生は動き続けるものだからそれに合わせて動くこと、過去にこだわらないこと、神に不可能でも愛があれば救われること。
“Dream Unending” という曲のクリーンなブレイクは、緩やかで脆いものとの相性が抜群だと思うんだ。このアルバムは確かにダークに聞こえる時もあるし、美しくメランコリックで、ダグラス・サークの映画みたいに葛藤もある。でも、クリーン・ブレイクはとてもきれいだし、ネガティブではなく人生を肯定するような内容で、その後の歌詞の内容もより希望に満ちた方向にシフトしているよ。Justin の歌詞は崇高なもの。とにかくめちゃくちゃいい。リスナーに読んでほしいね。
自分たちだけでなく、心を開いてくれた人たちにもある種のメッセージを届けたかった。だから、意識的にきれいな話し言葉とクリーンなパートを使ったんだと思うんだ。そのパートは僕が書いたんだけど、Justin が僕に貢献させてくれてよかったよ。僕らふたりは、毎日が自分自身を向上させ、前進し続けるためのチャンスだと考えているんだ。”魂は波であり、潮の流れは永遠である” とね。くよくよせず、癒すことを選んでいきたい。少なくとも努力はするよ」
Justin がホラーやカオスなど、ネガティブなテーマを扱った長い時間を経て、人生を肯定するようなポジティブなものにシフトしたのは、なぜだったのでしょうか?
「解放されたんだよ。ニヒルな歌詞を書いたことはないんだけど、今の時点ではネガティブなことに疲れてしまったんだ。それを楽しむのは卑怯だと思うんだ。希望に満ちたものを書くことは、精神的に良いことだと思う。楽観的なものを作るために、怒りや激しさを妥協したわけでもない。ただ、この歌詞は、これまで書いてきたものと同じくらいリアルなんだ」
Derrick もこれまで、容赦のないデスメタルを奏で続けてきました。
「これは、TOMB MOLD が前作を出したあたりから、ずっとやりたかったことなんだ。ただ、それを表現するための適切なプラットフォームがなかったんだよね。Justin のことを知れば知るほど、僕らの波長が似ていることに気づいて、それが理にかなったことだったんだ。他のバンドがやっていることに反発するわけじゃないけど、不気味な陰鬱なデスとか、神の怒りとか、そういう悲観的なことは絶対にやらないようにしていた。これは僕らにとってより良い道であり、僕らにとってより真実だったんだ。一般的なメタル・ファンにはあまり好まれない道かもしれないけど、そんなことはどうでもいいんだ (笑)」
短いインターバルでリリースされた最新作 “Song of Salvation” はよりプログレッシブになったと Derrick は語ります。
「12弦ギターを手に入れて、曲作りのアプローチも少し変わったと思う。曲の真ん中が先にできているようなことが多くなったね。”これからどうするか” という感じでね。曲の最初から最後まで書くのとは違って、いろいろなものを組み合わせていくことができたんだよ。ホワイトボードを買って、長い曲のいろいろな部分をビジュアルマップにしたんだ。新譜の曲のいくつかは、14分から16分で、繰り返しがあまりない。だから、ほとんどプログレッシブなクオリティになっているよ。幸運なことに、このアルバムを完成させるのに十分な時間があったんだ」
“プログレッシブ” には意図的に舵を切ったのでしょうか?ギタリストが答えます。
「20分の曲を書こうと思っても、時間を伸ばすために必死になっているような感じがあるよね。今回の曲は、時間のことはあまり考えず、自然に終わると思うまで書いたんだ。長い曲は山あり谷ありで、それがプログレッシブ・ロックの良さでもあるから。クレイジーな部分やエネルギッシュな部分があって、一旦下がって、緊張が高まって解放されるような感じ。
このアルバムでは、より自信を持ってソロを書けるようになった。”Tides” でも満足していたんだけど、ギターを弾く時間が増えたことと、またギターのレッスンを受け始めたことが大きかったと思う。これが大きな鍵になった。レッスンを受け始めた頃には、アルバムの大部分はできていたんだけど、ソロのいくつかはまだ完成していなかった。レッスンを受けて、いろいろなアイデアを投げかけてもらって、アプローチして、また演奏や何かに取り組むという日常に戻って、それが練習でも課題でも、音楽的に自分を高めるための大きなステップになったんだ。
僕のの先生は Kevin Hufnagelで、彼は GORGUTS で演奏している。毎週レッスンが楽しみだよ。GORGUTS のレコード、DYSRYTHMIA、彼の昔のバンド SABBATH ASSEMBLY など、彼はクオリティの高い人で、音楽は様々。いろいろなことを教えてくれるし、僕が何を見せても、彼はいつもとても楽しそうに聞いてくれる。お互いが充実している、そんな師弟関係だと思うんだ。
でも、めちゃくちゃ長い曲を書くのは、ちょっとリスクがあるよね。ドゥーム・ミュージックはとにかく長いんだけど、”アルバムの半分が15分の曲” っていうのは、多くのリスナーを遠ざけることになる。そんな長い曲を聴いてる暇はないという人もいる。4分の曲でもスキップする人がいるんだから恐ろしいよね。まあ、それはアンダーグラウンドというよりメインストリームの問題だけど。まあ、全部聴いてくれる人、実際に13分間に渡って曲を聴いてくれる人にだけ聴いてほしいというような感じかな」
ゲスト・ボーカリストや多種多様な楽器もアルバムを彩りました。
「”Secret Grief” では、友人のレイラがトランペットを吹いてくれた。元々、この曲のデモを作ったとき、このメロディーの部分はエレキギターで、ほとんどシンプルなソロでやっていたんだ。でも、スコットランドのバンド BLUE NILE が大好きで、彼らの2枚目のアルバムには、とてもブルーで夢のようなクオリティーがあってね。その中に “Let’s Go Out Tonight” という曲があるんだけど、”このエッセンスを瓶詰めにして、なんとか僕らのレコードに入れたい” と思っていたんだ。確か Justin に、トランペット奏者と共演しているデヴィッド・トーンのアルバムかライブ映像を見せたら、それがすごくドリーミーで、この曲に使えるんじゃないかと思ったんだよな。レイラは何でもできるプロだから、それを見事に達成してくれた。アルバムに新しいテイストを加えてくれたよね。
アルバムに収録されているピアノやオルガンは、すべて僕の父の手によるもの。父がアルバムに参加することは、とてもクールなことなんだ。彼がピアノを弾いているのを見て、僕は音楽に目覚めたんだからね。僕がギターを弾きたいと思ったときも、彼は “お前ならできる、レッスンを受けろ” と言ってくれた。両親ともすごく励ましてくれる人なんだよ」
彼らは音そのものではなく、音の生み出す雰囲気を捉えることに長けているようです。
「Justin と僕は音楽全般についてよく話すし、自分たちが好きなものについても話す。LIVE というバンドを覚えているかな?Justin も僕もあのバンドと “Throwing Copper” というレコードが大好きでね。LIVE みたいな曲を作りたいとは思わないけど、”Lightning Crashes’ を聞いたときに感じるような感情を作りたいんだ。それが僕のキーポイントになっているような気がするね。サウンドをそのままコピーするわけではないんだけど、フィーリングやエモーションを掴むというか。
このレコードを制作していたとき、ターンテーブルから外さなかったレコードは、TOTO の “Hydra” だったと思う。TOTO のようなリフを書こうとは思わないけど、スティーブ・ルカサーのギターを聴いて、彼のソロのアプローチについて考えたり、感じたりすることはできるんだ。
JOURNEY の “Who’s Crying Now” いう曲もそう。あの曲のソロは決してトリッキーなものではないけど、そこから引き出される感情が見事なんだ。だから、僕はいつもそういうものを “鍵” にしている。今回のアルバムでは12弦で弾いているせいか、MAHAVISHNU OSCHESTRA のジョン・マクラフリンが弾いていたようなクリーンな瞬間がいくつかある。彼は僕よりずっとギターが上手いから、もっとシンプルだけどね。
僕たちはドゥームのもっとゴシックな側面、例えば THE GATHERING のようなバンドがとても好きなんだ。彼らも ANATHEMA のようにサウンドを進化させ続け、プログや PINK FLOYD のような領域に踏み込んでいったバンドなんだ。だから、このアルバムではクリーン・シンガーが何人か加わって、そういう部分を強調することができた。僕は成長を見るのが好きなんだ。フランク・ザッパが好きなら、その人はいろいろなテイストの音楽をたくさん聴くことができる。でも、フランク・ザッパが半分しか作品を出さなかったら?僕はアーティストの旅路を見るのが好きなんだよ。
メッセージやフィーリングを伝えるには、クリーン・ボーカルの方がずっと簡単なんだよ。スポークンワードのパートを使うのも同じで、より感情的なトーンを設定することができる。その点では、僕たちはより良い作品を作ることができたと思うな。”Tides” の出来が悪かったというわけではなくて、もっとコントロールできた気がしたんだ。
もうひとつ、僕らがよく話すバンドで、DREAM UNENDING の精神的なコンパスが KINGS Xなんだ。僕たちは彼らのようにクリスチャンではないけれど、彼らが話していることの多くは、”ある曲を聴くとその曲を聴く前よりも100倍も気分が良くなる” というもの。音楽にそんな力があるなんて驚きだよね。僕は音楽が高揚感をもたらすという考え方が好きで、それが DREAM UNENDING の方向性を決めるのに役立っていると思うんだ。ドゥームというジャンルは、特に最近は気分を悪くさせるように作られているから不思議なんだけど、僕たちは “それもいいけど、ちょっと違う方向にも行ってみようかな” と思っているんだ。
だからこのアルバムを作っている間は、あまりドゥーム・メタルを聴いていなかったと思う。ドゥーム・メタルの中で唯一聴いたのは ANATHEMA の “Silent Enigma” だと思うけど、それよりも “Alternative 4” と “Judgement” を聴いていたね。ESOTERIC よりも Bruce Hornsby を聴いていたかもしれない」
DREAM UNENDING の “高揚感” はより深く、よりスピリチュアルな側面を見出していきます。
「自分を大いなる力に委ねる必要はなく、もっと自分の中にあるもの、自己発見、自己改善という考え方に基づいたスピリチュアルな側面がこのバンドにはあると思う。人によっては、より良い人間になるための道として、宗教的な経験や啓示を得ることがあるかもしれないし、僕はそういったものをとても興味深く感じている。僕の周りには信仰を持つ人がいて、人生全般について話をするのが好きだし、彼らの視点が好きなんだ。
アルバム “Song of Salvation” は、自分自身を見つめて、”何かを変えなければならないのなら、変えるのは自分でなければならない” “何かを追い求めて自分を向上させなければならないことを受け入れる” 、そんな作品だと思う。それはとても重要なことで、僕たちはなかなか口にできないけど、大切なことなんだ。
だって、惨めな思いはしたくないでしょう?誰がみじめになりたいの?幸せを見つけることだって、一種の精神的な目覚めであり、自分自身と平和になることであり、周囲と平和になることでもある。それが何であれ、僕はそこに本当の力があると思うし、身体にも、精神衛生にも、魂にも良いことだと思うよ。どんなものであれ、そこに何かを見出すことができればね。
だから、”Song of Salvation” は、何よりも自己受容を扱っていると思う。ただ、それと同時に、忘れるために生きている人もいる。僕たちは後悔しながら物事を振り返り、人生において良くも悪くも物事を行い、それが自分自身を形成していく。それを受け入れて、自分の中に居場所を見つけて、ずっと一緒に暮らす必要はないけれど、否定する必要もないんだということを理解したほうがいいと思うんだ。自分自身から逃げているだけでは、ほとんど嘘をついて生きているようなものだから」
もちろん、リスナーは “救済” の先を期待してしまいます。
「そうだね、これまで取り組んできたものに関しては、まだ先があるんだ。曲作りは、”今、何を聴いていて、何が好きか?” ということを考えながら進めていくから楽しいんだよ。OPETH に似ていると言われたこともある。彼らほどヘヴィではない部分もあるけれども、いい意味で彼らも長尺なアプローチをするバンドだね。”Damnation” は、すべてクリーンで歌われたアルバムで、このアルバムを作っているときは、それをとにかく聴き込んだんだ。
どうすれば可能性を押し広げ続けることができる?例えば、中間部全体を使ったソロを書きたいとか、クリーンなソロを書きたいとか、ちょっと変わったソロを書きたいとか、みんなが期待しているような曲とは違う曲を書きたいとか。曲の長さや曲の性質上、DREAM UNENDING ではいろいろなことを試すスペースがあると思うんだ。そのことをずっと考えていて、曲を書き続けているんだ」
参考文献: NEW NOISE:INTERVIEW: DREAM UNENDING ON WEAVING A MUSICAL TAPESTRY
INVISIBLE ORANGE:he Soul is a Wave: A Conversation with Dream Unending (Interview)