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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PUPIL SLICER : MIRRORS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KATIE DAVIES OF PUPIL SLICER !!

“I Don’t Think Anyone Should Be Discriminated Against For How They Were Born, Who They Love And How They Look. Hopefully One Day The World Will Be a Better Place Where Things Aren’t As Bad As They Are Today.”

DISC REVIEW “MIRRORS”

「今は24歳なんだけど、18歳くらいまでヘヴィーな音楽にのめり込んだことはなかったのよ。だけどハマってからはすぐにギターをはじめたわ。まあだから、聴いて育ったのはゲームの音楽とか映画の音楽の枠を出たものじゃなかったわね」
PUPIL SLICER の Katie Davies は、18歳で初めてヘヴィーな音楽を耳にします。決して早くはない邂逅。
しかし、一度エクストリーム・ミュージックの世界に足を踏み入れると、その深化速度は異次元でした。現在24歳のヴォーカル・ギタリスト Katie は、時間軸を狂わせるようなマスメタルとグラインドコア、それに様々なメタルの異分子が融合した楽曲を、むしろコーラスとヴァースで成り立つポップ・ソングやパンク・ロックと同じくらい自然で親しみやすいものだと感じています。
「わたしたちの音楽の核となるのは感情の強さ、インテンシティーで、それは性別によって制限されるものではないと思うわ。あと、わたしたちはメタル・バンドというよりも、パンク・バンドだと思っているのよね」
デビューアルバム “Mirrors” は、不協和な音の超暴力と幻惑への傾倒が、THE DILLINGER ESCAPE PLAN の “Ire Works” や CONVERGE の “Jane Doe” といった名作を想起させます。混乱させ、時間をかき乱し、「何を聴いたんだろう?どうやって作ったんだろう?」と思わせる、人の心や痛みと同様に不可解な音楽です。
「わたしは自分の経験をたくさん書いているけど、より多くの人が音楽に共感できるようストーリー性を持たせるようにしているのよ。わたしが好きなのは、抽象的な歌詞の曲で、その内容についてリスナーそれぞれが自分なりの考えを持つことができ、本当の意味でのつながりを感じることができる曲だと思っているわ」
その名の通り、”Mirrors” は Katie 自身を映し出すレコードで、彼女の核となる考えや痛み、内面的な物語を映し出す鏡であると同時に、不平等や差別が法律や習慣、経済に組み込まれている、システム的にファシストな社会をそのまま映し出す作品でもあります。Katie が経験した個人的、政治的な痛みは、”Mirrors” の暴力によってのみ表現され、追放することが可能なのでしょう。
「わたしは、誰もがその出自、愛する人、外見などで差別されるべきではないと思っているの。いつの日か、今のような悪い状況ではない、より良い世界になることを願っているわ」
イギリス南部の海辺の町ボーンマスで育った Katie は、幼い頃から残酷な目に遭ってきました。4年間過ごした学校では、生徒からも教師からも容赦ないいじめを受け、中退してホームスクールに入学。彼女の耳を満たす音楽は、テレビゲームや映画のサウンドトラック、そして7歳の頃から練習していたバイオリンだけでした。
友人は、地元のユースオーケストラの指揮者を除いて存在せず、最終的に彼女は14歳で第一ヴァイオリンのリーダーとなりますが、3年後、彼女は公立学校に戻ることを余儀なくされました。そこで同級生や教師からさらに冷酷な扱いを受けることになります。
執拗ないじめを受けても、なぜいじめられるのか理解できない。自閉症を患いながら大学を卒業するころには、完全な引きこもり状態となっていました。人は残酷。その思いが世界とのつながりを完全に断たせてしまったのです。
救いの光はロックやメタルでした。ボーンマスからロンドンに移り数学の学位を取得した直後から、Katie は DEAFHEAVEN を聴きながら街を歩くようになります。そこから、RADIOHEAD や GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR を経て、ブラックメタルの世界に足を踏み入れます。ポストロックやシューゲイザーは、彼女の魂の音に最も近い音楽への入り口となりました。
やがて、彼女はギターを手に取り、DEAFHEAVEN の曲をかき鳴らし始めます。
ギターを弾けるようになった後、Katie はミュージシャン向けのオンラインフォーラムに投稿しました。”DEAFHEAVEN のようなブラックメタル・バンドに参加したい」と。投稿後すぐに、地下鉄で数駅のカムデンで練習中のバンドからメッセージが届きます。そこで、ドラマーJosh Andrews と出会ったのです。やがてベースの Luke Fabian が仲間に加わり、TDEP, CODE ORANGE, BOTCH といったバンドを通してマスコアやパワーバイオレンスの傾向を高めていきました。
“Mirrors” の楽曲は、そのどれもが異なるアプローチの産物です。例えば、タイトルトラック “Mirrors” のメインリフでは、彼女はオンラインのジェネレーターにランダムな数字の羅列を入力し、バンドの他のメンバーにソフトウェアの出力に合わせての演奏を依頼します。リズム理論に精通している Katie は、信じがたいことに考えていたメロディーを鼻歌で歌い、目の前のスクリーンに表示されるリズムの波形を把握しながら、頭の中で音を整理していきます。メンバーもリスナーも混乱させた Katie にとって、次の目標は自分自身を混乱させること。
曲作りという最も楽しい時間を終えれば、その後、人に聴かせるという彼女にとって気が遠くなるような現実がやってきます。歌詞を読まれるのが嫌でお蔵入りも考えたという “Mirrors” には、同性愛者やトランスジェンダーに対する米国の法制度を批判する “Panic Defence” のような直接的な曲もある一方で、Katie の内面的な苦しみに焦点を当てた曲には、比喩的なガーゼで保護膜を張っています。例えば “Stabbing Spiders” は、もちろんクモのことを歌っているわけではなく、自傷行為についての楽曲。
「あなたが挙げたバンドは皆、様々なタイプの音楽で非常に広い視野を持っているわよね。わたしたちも同じように、自分たちが好きな音楽すべての部品を組み合わせたいと思ってやっているの」
PUPIL SLICER の目まぐるしい音楽はすでにマスコアを超越しています。 “Mirrors” がこれほど魅力的なのは、バンドがその混沌の中でリスナーに “数学” 以上の多くのなにかを与えているからでしょう。ダイナミクスの恩恵を受けた3人の挑戦者は、研ぎ澄まされたエッジを失うことなく、電子なサウンドスケープの静かな海へと潜り込みアルバムの流れを的確に支配します。
例えば、7分の “Mirrors Are More Fun Than Television” は存分なグルーヴ、存分な混沌、そして DEAFHEAVEN や ALCEST をも連想させる壮大なアトモスフィアのアウトロを備えます。
クローサー “Collective Unconscious” ではさらに顕著。TDEP のような残虐性はポストブラックのブラストとトレモロを誘い、感情を揺さぶるクレッシェンドを導きます。静かの海で Katie は独り絶望を叫びすべてを締めくくるのです。紆余曲折のレコードに咲く深く心に残るフィナーレの華。そうして Katie は痛みを映し、浄化し、超越してみせたのです。
今回弊誌では、Katie Davies にインタビューを行うことができました。「わたしたちのやり方は、自分たちが演奏したい音楽、自分たちが聴きたい音楽を作ることだと思っているの。つまり、自分たちのサウンドに境界線を設けないようにしているのよ」 どうぞ!!

PUPIL SLICER “MIRRORS” : 10/10

INTERVIEW WITH KATIE DAVIES

Q1: This is the first interview with you. So, at first, could you tell us about the band and yourself? What kind of music were you listening to, when you were growing up? Who was your musical hero at that time?

【KATIE】: I’m Katie and I play guitar and sing in a mathcore band, Pupil Slicer! I didn’t actually get into heavier music until I was around 18 (I’m 24 now) and started learning guitar shortly after that soooo I didn’t grow up listening to much stuff outside of music from video games and movies.

Q1: 本誌初登場です!まずはあなたの音楽的な背景からお話ししていただけますか?

【KATIE】: こんにちは!わたしは Katie よ。マスコア・バンド PUPIL SLICER で歌ってギターを弾いているわ。今は24歳なんだけど、18歳くらいまでヘヴィーな音楽にのめり込んだことはなかったのよ。
だけどハマってからはすぐにギターをはじめたわ。まあだから、聴いて育ったのはゲームの音楽とか映画の音楽の枠を出たものじゃなかったわね。

Q2: The name of the band Pupil Slicer is really impressive. What does it mean to you?

【KATIE】: We didn’t have much thought behind the name, me and the original vocalist were just joking around thinking up the most silly metal band names we could and when I thought up that one we said “That’s too good not to use” and wrote the EP sort of on a whim so that we could release something with the name Pupil Slicer.

Q2: PUPIL SLICER (瞳薄切り機) とはなかなか強烈なバンド名ですね?

【KATIE】: 名前についてはあまり深く考えていなかったのよ。わたしとオリジナルのボーカリストは、冗談で最もくだらないメタル・バンドの名前を考えていたんだけど、わたしがこの名前を思いついたとき、「これは使わないともったいない」って盛り上がったの。
それで PUPIL SLICER という名前で何かをリリースするために、気まぐれで EP を書きあげたのよね。

Q3: Nowadays UK young bands like, Loathe, Venom Prison, Svarbard, Frontierer are getting a lot of attention. And it seems Pedram from Frontierer is involved in your record, right? How do you feel about the UK metal scene?

【KATIE】: The UK scene feels really strong right now, we’d love to get to play with some of those bands one day. Yes Pedram from Frontierer/Sectioned mixed and produced our album, he did a great job. I met Pedram at the first London Frontierer show and we became friends then and have chatted since, we also opened for them at their second London show.

Q3: あなたたちはもちろん、LOATHE, VENOM PRISON, SVARBARD, FRONTIERER など、才能ある英国の若手バンドは挙げれば枚挙にいとまがないですね?
FRONTIERER の Pedram はあなたたちの作品にも関わっていますし。

【KATIE】: 今、UKのシーンはとても強力だから、いつかあなたが挙げたようなバンドと一緒に演奏してみたいわね。
FRONTIERER/SECTIONED の Pedram は、わたしたちのアルバムのミキシングとプロデュースを手掛けてくれたの。Pedram とは、FRONTIERER のロンドンでの最初のライブで会って、その時に友達になり、それ以来チャットをしている仲なの。彼らの2回目のロンドンでのライブでは、オープニングを務めたしね 。

Q4: After listening to ‘Mirrors’, I realized once again that metal has nothing to do with gender. You can play and sing very complex music with great intensity. Did you also feel that gender was irrelevant when you were making this record?

【KATIE】: I think the core of our music is emotional intensity and I don’t think that is limited by gender. I would also say that I consider us more of a punk band than a metal one.

Q4: “Mirrors” を聴き終えたあと、わたしはメタルに性別は関係ないと再度確信しましたよ。あなたは、これほど複雑な音楽をインテンス満載で歌いながらギターを弾くんですから。

【KATIE】: わたしたちの音楽の核となるのは感情の強さ、インテンシティーで、それは性別によって制限されるものではないと思うわ。
あと、わたしたちはメタル・バンドというよりも、パンク・バンドだと思っているのよね。

Q5: “Panic Defence” is a song about the abominable panic defence policy that still exists in parts of the USA. It shows your strong desire to change a world where sexual minorities are persecuted, would you agree?

【KATIE】: I don’t think anyone should be discriminated against for how they were born, who they love and how they look. Hopefully one day the world will be a better place where things aren’t as bad as they are today.

Q5: “Panic Defence” は今でもアメリカに残る “パニック・ディフェンス” という愚かしい抗弁 (おもに暴行や殺人を弁護するために行われる法的抗弁の一種。この抗弁をおこなう被告は、問題となる行為がホモセクシャル/トランスセクシャル・パニックと呼ばれる心理状態により一時的な心神喪失にあったときのものだったと主張する) についての楽曲ですね。
マイノリティーの力になりたいという、あなたたちの気持ちが伝わってきます。

【KATIE】: わたしは、誰もがその出自、愛する人、外見などで差別されるべきではないと思っているの。いつの日か、今のような悪い状況ではない、より良い世界になることを願っているわ。

Q6: Is it safe to say that the album title “Mirrors” is a literal reflection of your deeply personal experiences, which have involved a lot of pain?

【KATIE】: Yes the album is very personal, while I write a lot about my experiences I also tried to include a layer of storytelling so that more people could relate to the music. I think my favourite songs are ones with more abstract lyrics where I can form my own idea of what it is about and feel a real connection to it. I hope people can do the same with our music.

Q6: さらに思索を進めれば、”Mirrors” というタイトル自体、あなたの個人的な苦痛や体験を “反映” したものにも思えます。

【KATIE】: そうね。わたしは自分の経験をたくさん書いているけど、より多くの人が音楽に共感できるようストーリー性を持たせるようにしているのよ。
わたしが好きなのは、抽象的な歌詞の曲で、その内容についてリスナーそれぞれが自分なりの考えを持つことができ、本当の意味でのつながりを感じることができる曲だと思っているわ。わたしたちの音楽でも同じように感じてもらえたら嬉しいわね。

Q7: There’s no doubt that the album is influenced by mathcore acts like The Dillinger Escape Plan, Converge and Car Bomb, but there’s more to it than that, right? It’s a great mix of electronica, blackgaze and other elements. You and Rolo Tomassi seem to have a lot in common, would you agree?

【KATIE】: Yes Rolo Tomassi are a big influence on us. I think our main approach is to just create the music we want to play and the music we want to hear. We try not to put any boundaries on our sound, the bands you mentioned all have very broad horizons with many types of music and we want to do the same, combining parts of all the music we like listening to.

Q7: “Mirrors” には明らかに THE DILLINGER ESCAPE PLAN, CONVERGE, CAR BOMB といったマスコアからの影響も存在しますが、エレクトロニカからブラックゲイズまで多様なサウンドも交わり合っていますね?
そういう意味で、同郷の ROLO TOMASSI とは共通点が多そうですが?

【KATIE】: そうね、たしかに ROLO TOMASSI は、わたしたちに大きな影響を与えているわ。わたしたちの主なやり方は、自分たちが演奏したい音楽、自分たちが聴きたい音楽を作ることだと思っているの。つまり、自分たちのサウンドに境界線を設けないようにしているのよ。
あなたが挙げたバンドは皆、様々なタイプの音楽で非常に広い視野を持っているわよね。わたしたちも同じように、自分たちが好きな音楽すべての部品を組み合わせたいと思ってやっているの。

Q8: It’s obvious that the UK has produced more amazing female extreme singers than any other country, not least you, but also Venom Prison, Svalbard and Rolo Tomassi. What do you think is the reason for this?

【KATIE】: I’m not sure if the UK in specific is producing more female singers than other countries, there are fantastic bands in the US now like SeeYouSpaceCowboy, Code Orange and Closet Witch making waves. I think there is starting to be less of a prejudice against women in the scene so hopefully this will lead to more women in music.

Q8: その ROLO TOMASSI, SVARBARD, VENOM PRISON, それにあなたと、英国からは女性の素晴らしいエクストリームなシンガーが多数登場しています。

【KATIE】: UK だけが、エクストリームミュージックにおける素晴らしい女性シンガーを生み出しているってわけじゃないと思うわ。アメリカでは、SeeYouSpaceCowboy、CODE ORANGE CLOSET WITCH といった素晴らしいバンドが活躍しているからね。シーンの中で女性に対する偏見が少なくなってきていると思うから、これをきっかけに音楽界に女性が増えることを期待しているわ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED KATIE’S LIFE

THE DILLINGER ESCAPE PLAN “OPTION PARALYSIS”

CONVERGE “JANE DOE”

DEAFHEAVEN “SUNBATHER”

JUSTICE “CROSS”

DAFT PUNK “ALIVE 2007”

MESSAGE FOR JAPAN

Thank you to everyone in Japan that listens to us! We are very excited to visit one day and see the beautiful country, experience the culture and meet fans at shows!

日本のみんな、わたしたちの音楽を聴いてくれてありがとう!いつか日本という美しい国を訪れ、文化を体験して、ショーでみんなに会いたいわね!

KATIE DAVIES

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PUPIL SLICER Official
PROSTHETIC RECORDS

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NINE TREASURES : AWAKENING FROM DUKKHA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ASKHAN AVAGCHUUD OF NINE TREASURES !!

“I Start Practicing Since 2018, Because I Had Pretty Negative Life Before That. I Wanted To Pool Out Myself From Anxiety And I Found That Buddhism Is Very Suit For Me.”

DISC REVIEW “AWAKENING FROM DUKKHA”

「実際のところ、僕たちの曲のほとんどは、モンゴルの歴史や神話をテーマにしたものではないんだよね。古い神話にインスパイアされた曲もあるんだけど、ほとんどの曲は、僕の考えや頭の中にある何かを表現したいと思って書いたものなんだ」
大草原、砂漠、馬、そして匈奴やモンゴル帝国といった母国の自然と歴史、神話をテーマにメタルを侵略したモンゴルのハン、THE HU, TENGGER CAVALRY。一方で、同じく蒙古の血を引く内モンゴルのフォーク・メタルバンド、NINE TREASURES は伝統を次の時代へ導く九連宝燈です。
「僕は内モンゴルのとても小さな街で生まれたんだ。間違いなく、確実にメタルにとっても “砂漠地帯” のね。まあそれでも、かろうじてメタルの CD はお店で買えたんだよね。信じられないだろうけど。僕は、人間はみんな自分の愛する音楽に出会う運命があると信じているんだ。僕にとってその運命の出会いが HURD をはじめて聴いた時だったんだ」
中国の内モンゴル自治区、小さな草原の街で中学教師の息子として育った Askhan Avagchuud は、METALLICA よりも影響を受けたという HURD の音楽を聴いてメタルに目覚めます。HURD はモンゴルにメタルを伝導した偉大なバンド。そうして彼は首都フフホトの大学に通いながら、北京に移ってからは働きながらメタルの道を追求していきました。
「バンドで生活費を稼げるようになるまで、両方を同時に続けるのはとても大変だったよ。世界の他の地域と同じように、中国でもライブだけで生活できるメタルバンドは少ないし、ここではまだアンダーグラウンドな市場なんだ」
転機が訪れたのは2013年。ドイツの名高いメタル・フェス “Wacken Open Air” のバンドバトルで2位を獲得したのです。モンゴルの代名詞とも呼べるモリンホール、そしてウクライナ発祥ロシアの叙情バラライカ。2つの伝統楽器を優美に奏でながら、朴訥としたエピック・メタルを熱演する NINE TREASURES の情熱は、いつしか南は台湾から北はウランバートルまでツアーを行うほどにその人気を確固たるものにしていきました。自然を呼び覚ますメタルのダンスでありながら、TOOL の知性や IN FLAMES の哀愁、時に琴の音色までを盛り込みながら。
「ほとんどのモンゴルのフォークバンドがホーミーの技術を使っているから、逆に僕は自分の歌い方を守った方がいい。そうすれば、観客に違う選択肢を与えることができるからね」
インタビューから伝わるように、Askhan は他のモンゴル由来のバンドほど母国の文化や伝統を重要視はしていません。それでも、神話や歴史を時に引用する彼の重厚な唸りは、モンゴル語の自然なトリルと有機的に結合し、得も言えぬ中毒性、草原絵巻をリスナーへと届けていきます。
「仏教に改宗するまではかなりネガティブな人生を送っていたんだ。だから2018年から仏門の修行を始めたんだよ。不安から解放されたいと思っていたところで、仏教がとても自分に合っていることに気づいたからね」
“Awakening From Dukkha” “一切皆苦からの目覚め” と題された NINE TREASURES の新たな作品は、ネガティヴに生きてきた Askhan が仏教に改宗し新たな世界観でフィルターをかけた、バンド再生のリレコーディング・アルバムです。古代モンゴルの詩に登場する9つの要素をその名に掲げた歴戦の勇者は、達磨に学ぶことで不安や社会、批判といった苦しみから解放されて、真の自由を感じることができました。
つまり “Awakening from Dukkha” は、彼らがこれまで丹念に作り上げてきたメタルとモンゴル、ロシア、中国のフュージョンを、清らかに血の通った仏の門で蒸留した未来への意思表明なのでしょう。きっと、自ら命を絶った TENGGER CAVALRY, NATURE G. の魂を携えながら。
今回弊誌では、Askhan Avagchuud にインタビューを行うことができました。「最近僕は日本語を学んでいて、来年日本に行く予定なんだ。2年前に日本でマネージャーを見つけたので、うまくいけば彼が日本に連れてきてくれるだろうね。とても興奮しているよ」 どうぞ!!

NINE TREASURES “AWAKENING FROM DUKKHA” : 9.9/10

INTERVIEW WITH ASKHAN

Q1: First of all, could you tell us how you got into metal in Inner Mongolia, a place maybe where metal is not so popular?

【ASKHAN】: こんにちは. Thank you so much for interviewing me. I was born in very small town in Inner Mongolia, definitely a desert for metal music for sure. But we still can buy metal CDs in music store, can you believe it. I think everybody will have the fate to meet their favorite music, to me when I was first listen to the music of HURD, I just immediately sold out. I don’t even know what was a guitar back then.

Q1: まずは、内モンゴルという、おそらくメタルに馴染みのない場所でメタルにハマった経緯からお話ししていただけますか?

【ASKHAN】: こんにちは。まずはインタビューをありがとう。 僕は内モンゴルのとても小さな街で生まれたんだ。間違いなく、確実にメタルにとっても “砂漠地帯” のね。まあそれでも、かろうじてメタルの CD はお店で買えたんだよね。信じられないだろうけど。
僕は、人間はみんな自分の愛する音楽に出会う運命があると信じているんだ。僕にとってその運命の出会いが HURD をはじめて聴いた時だったんだ。すぐにのめり込んだね。当時僕はギターが何かさえ知らなかったのに。

Q2: The Hu has been a worldwide success, but it can’t be easy to start and run a metal band, can it? How do you feel about the metal scene in China and Inner Mongolia?

【ASKHAN】: They did a really great job, I’m so proud of them. For us it was really difficult, I was a roto artist(part of the film industry) in Beijing back in 2010, I started Nine Treasures while I’m working daily. I was really hard for me to keep them both at the same time until the band start to earn some money for my living. Not much metal bands can live only playing live shows in China just like the rest of the world, it still an underground market here.

Q2: THE HU が世界的な成功を収めたとはいえ、モンゴルや中国でメタルバンドを続けることは簡単ではないでしょうね?

【ASKHAN】: THE HU は本当に素晴らしい仕事をしてくれたよね。とても誇りに思うよ。僕たちにとって活動の継続はとても難しいことだったよ。僕は2010年に北京でロートアーティスト(映画産業の一部)をしていたんだけど、毎日仕事をしながら NINE TREASURES を始めたんだ。
バンドで生活費を稼げるようになるまで、両方を同時に続けるのはとても大変だったよ。世界の他の地域と同じように、中国でもライブだけで生活できるメタルバンドは少ないし、ここではまだアンダーグラウンドな市場なんだ。

Q3: It seems your band name refers to the nine elements extolled in ancient Mongolian poetry, right? What is it all about?

【ASKHAN】: It is about favoring luck and greatness.

Q3: NINE TREASURES とはモンゴルの古い伝承、9つのエレメントに由来するそうですね?

【ASKHAN】: そうだね、幸運と偉大さについての伝承だね。

Q4: Nine Treasures’s signature sound is colored by plucked melodies on the Russian balalaika and bowed accompaniment on the Mongolian morrn khuur, or horse head fiddle. You know, that’s really interesting! Why did you decide to bring both Russian and Mongolian blood into the metal?

【ASKHAN】: The MorinKhuur is kind of a represents of our culture. Everyone knows this one here. The Balalaika is of course a Russian one, the reason we using is because I found it in my aunts house 10 years ago just right before the NT start. And one of our friend is wanted to join in the band, but we already full. But he saw my Balalaika and he said this one is sounding really good you should add it in your band and I can play it for you. Then Nine Treasures pretty much had all the elements at that time.

Q4: 興味深いことに、NINE TREASURES の音楽は、モリンホールのようなモンゴルの伝統楽器を使用したモンゴルのメロディーに加えて、ロシア(ウクライナ発祥)のバラライカにも彩られていますね?

【ASKHAN】: モリンホールは、僕たちの文化の代表のようなものだよ。ここでは誰もが知っているものだからね。バラライカはもちろんロシアのものだ。なぜこれを使っているかというと、10年前、NINE TREASURES が始まる直前に叔母の家で見つけたからなんだ。そんなとき、友人の一人がバンドに参加したいと言っていたんだけど、僕のバンドはすでに満員でね。でも彼は僕のバラライカを見て、これはとてもいい音がするから君のバンドに加えるべきだ、僕が演奏してあげようと言ったんだ。そうして、NINE TREASURES には全ての要素が揃うことになったのさ。

Q5: I was probably the last person to interview Nature.G from Tengger Cavalry and he said “Our music is all about Shaman, nature. horse and warrior spirit.”. How do you feel about his way of thinking and his death?

【ASKHAN】: Until now I still don’t know how to face with his death, it’s so unfortunate. He was a really great guy, a guy that have fully passion for Tengger Cavalry and his music. He could’ve done more great things in his life. But you know, things are not like what we expected at always.

Q5: おそらく、私はTENGGER CAVALRY の Nature G. にインタビューを行った最後の人間です。彼は「僕たちの音楽はシャーマン、自然、馬、そして戦士の魂で構成されている」と語ってくれましたよ。

【ASKHAN】: 今になっても、彼の死をどう受け止めればいいのかわからないんだ。とても残念だよ。彼は本当に素晴らしい人物で、TENGGER CAVALRY と彼自身の音楽に完全な情熱を持っていたんだ。
彼はその人生でもっともっと素晴らしいことができたはずなんだ。だけど、物事は常に僕たちが望むようにはならないからね…

Q6: “Awakening from Dukkha” seems to be a re-recording of a song from before your conversion to Buddhism? Can you tell us why you turned to Buddhism and what has changed since then?

【ASKHAN】: I start practicing since 2018, because I had pretty negative life before that. I wanted to pool out myself from anxiety and I found that Buddhism is very suit for me. My grandma often take me to the lama temple and do prays when I was a child. But I don’t know what was that all about back then. Maybe because of that fate I had the opportunity to practice it. After 3 years of practicing I’m feeling free now, free from anxiety, society, criticism and more. Of curse it means I’m a happier person right now.

Q6: “Awakening From Dukkha” はあなたが仏教に改宗する前の楽曲を、再度レコーディングした作品のようですね?なぜ仏教へと改宗し、その教えがどのようにあなたの人生を変えたのでしょう?

【ASKHAN】: 本当に、仏教に改宗するまではかなりネガティブな人生を送っていたんだ。だから2018年から仏門の修行を始めたんだよ。不安から解放されたいと思っていたところで、仏教がとても自分に合っていることに気づいたからね。
子供の頃、おばあちゃんに連れられてよくラマ寺に行き、お祈りをしていたんだ。だけど、当時の僕にはそれが何なののかわからなかったんだよね。そんな縁もあってか、僕は仏教を実践する機会に恵まれたんだ。3年間の実践を経て、僕は今、不安や社会、批判などから解放され、自由を感じている。もちろんそれは、今の僕がより幸せな人間であることを意味しているんだよ。

Q7: Your lyrics mine Mongolian myth and history with Mongolian language. Are these themes sometimes connected to contemporary social issues of our time?

【ASKHAN】: Actually most of our songs are not about Mongolian history or myth, we have some songs inspired of old myths. But the most of the songs are my thoughts on things and something in my head that I want to express. Like the song called <Don’t Want to Dance>, I just remember when I was in primary school being forced to learn some stupid dance for the anniversary of the school show. I really hated that dance because we need to practice it after class, normally I will spent that time to watch some nice Japanese cartoon on tv. I don’t like to write some serious topics on lyrics, because it’s gonna hurt my brain, and I’m not a historian, haha.

Q7: あなたの歌詞は、モンゴルの神話や歴史をモンゴル語で綴ったものだと聞きましたが、時に現代社会と繋がる部分もあるのでしょうか?

【ASKHAN】: 実際のところ、僕たちの曲のほとんどは、モンゴルの歴史や神話をテーマにしたものではないんだよね。古い神話にインスパイアされた曲もあるんだけど、ほとんどの曲は、僕の考えや頭の中にある何かを表現したいと思って書いたものなんだ。
例えば、”Don’t Want to Dance” という曲は、小学生の頃、学校のショーの記念日のために、くだらないダンスを覚えさせられたことを思い出したとかね。僕はそのダンスが本当に嫌いだったんだ。というのも、授業の後にそのダンスを練習しなければならないのだけど、普段はその時間をテレビで素敵な日本のアニメを見るために使っていたからね。
僕は歌詞に深刻なテーマを書くのは好きではないんだよ。頭が痛くなるし、僕は歴史家ではないからね。

Q8: When I had an interview with The Hu about Throat-singing, they told us “It’s who we are, it’s what we know, it’s where we come from. It comes from an honest human place that we are proud of and comfortable with.” What does throat singing mean to you?

【ASKHAN】: To be honest I can’t do throat singing at all, some of our members does. I tried to learn it, but I’m a really lazy guy that don’t want to practice it every day. Almost every Mongolian folk bands using this technic, so I better keep my own way of singing. Cause it will give the audience some different choice.

Q8: 以前、THE HU にインタビューを行った時、彼らは「ホーミーこそが自分たちの存在証明だ」といった内容を話してくれました。

【ASKHAN】: 正直なところ、僕はホーミーを全く歌うことができないんだよ。メンバーの中にはホーミーを歌う人もいるけどね。僕もホーミーをを学ぼうとしたんだけど、本当に怠け者で、毎日練習したくなかったんだよね。
ほとんどのモンゴルのフォークバンドがこの技術を使っているから、逆に僕は自分の歌い方を守った方がいい。そうすれば、観客に違う選択肢を与えることができるからね。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ASKHAN’S LIFE

HURD “ODOR SHONO”

METALLICA “MASTER OF PUPPETS”

IN FLAMES “CLAYMAN”

KILLSWITCH ENGAGE “AS DAYLIGHT DIES”

ALL TOOL ALBUMS

MESSAGE FOR JAPAN

It’s a really great opportunity to have connection with Japanese metal fans, we have some really good news for you. I’m learning Japanese lately and planing to go to Japan next year. We found a manager in Japan two years ago, he will bring us there if everything works well. I’m so excited for this~

日本のメタルファンとつながりを持てるのは本当に素晴らしいことだね。本当に良いニュースがあって、最近僕は日本語を学んでいて、来年日本に行く予定なんだ。2年前に日本でマネージャーを見つけたので、うまくいけば彼が日本に連れてきてくれるだろうね。とても興奮しているよ。

ASKHAN

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE RUINS OF BEVERAST : THE THULE GRIMOIRES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXANDER VON MEILENWALD FROM THE RUINS OF BEVERAST !!

“We Were Teenagers And Fairly Easily Manipulable, And an Extreme Movement Coming From Obscure Scandinavia, That Was Surrounded By Kind Of an Occult Aesthetic And an Almost Radical Anonymity And Secretiveness, Seemed Overwhelmingly Fascinating To Us.”

DISC REVIEW “THE THULE GRIMOIRES”

「自分がやっていることがブラック・メタルのルールに則っているかどうかは、あまり意識していない。もちろん、NAGELFAR 時代にもそうしていたんだけど、THE RUINS OF BEVERAST は最初から巨大な音の風景を構築することを目的としていたから、限界を感じるものは直感的に無視しようとしていたのだと思うな。そして、何よりもまず制限となるのは、ジャンルのルールだからね」
ジャーマン・ブラック・メタルの伝説。Alexander von Meilenwald の落とし胤 THE RUINS OF BEVERAST は、長い間メタルの海岸線を侵食しながらアンダーグラウンドの美学を追求してきました。ブラック、デス、ドゥームに、サイケデリックな装飾や多彩なサウンドスケープ、サンプルを宿しながら綴る、音のホラー小説。
デビューアルバム “Unlock the Shrine” の広大なアトモスフィアから、15世紀ドイツの異端審問を描いた “Blood Vault – The Blazing Gospel of Heinrich Kramer” のコンセプチュアルな作品まで、Alex の言葉を借りれば、自然や世界を聴覚的に表現する音楽はアルバムごとにそれぞれの独特な感性を備えています。
「俺はいつもゼロからのスタートなんだ。いつも、新しいアルバムのためのビジョンを描き、それが創造的なプロセス全体の地平線として設定される。そして、先ほど言ったように、それは以前の作品とは全く関係がないんだ。」
Alex の6度目の旅路 “The Thule Grimoires” は、これまでのどの行き先よりも楽曲を重視し、アイデアを洗練させ、多様であると同時に即効性のある目的地へと向かいました。スラッジの破壊と暗く壮大な混沌のドゥームを探求した “Exuvia” とは異なり、”The Thule Grimoires” は初期の生々しいスタイルを再度回収しています。では、Alex は過去の寄港地、ブラックメタルのルーツにそのまま戻るのでしょうか?それともトライバルでサイケデリックな領域をさらに旅し続けるのでしょうか?圧倒的で落胆に満ちたドゥーム・アルバム? メタルではなくアンビエントなテクスチャーに根ざした何か?答えはその全てです。
「ブラック・メタルが重要じゃないわけじゃないんだ。”Ropes Into Eden” の冒頭を聴いてみると、かなり古典的なブラックメタルのパートだけど、同時に見慣れない要素によって拡張されている。これはすべてオートマティックに起こることさ」
アグレッシブなテンポ、ブラスト・ビート、そしてトレモロ・リフに大きな重点を置きながら、美しく録音された作品には、フューネラル・ドゥームの深い感情を呼び起こすような、不安になるほど酔いしれた雰囲気が漂っています。ただし、テンポが速くなったことでこれまで以上に素早くシーケンスからシーケンスへと飛び移ることが可能となり、その結果、楽曲は様々な影響が回転ドアのように目まぐるしく散りばめられているのです。
「俺の音楽人生には何度か、必ずポップ、シンセウェーブ、ポスト・パンクの衝撃が戻ってきているんだ。NAGELFAR の “Srontgorrth” アルバムや、初期の THE RUINS OF BEVERAST のリリースでも、少なくともゆるやかには存在していたからね。ただこのアルバムでみんながこれほど “ノン・メタル” な影響を確認する主な理由は、クリーンなボーカルだと思うんだ」
アルバムは陰鬱なスペース・ロック、”Monotheist” 時代の CELTRC FROST、さらには80年代のゴス・ロック、ポスト・パンク、シンセ・ポップからも影響を受けています。しかし、すべてのスタイルを支えているのは、鼓動するブラックメタルの心臓。
例えば “Polar Hiss Hysteria” ではトレモロの嵐とサイケデリックなリードがバランスよく配置されており、膨らんだ緊張感はそのままドゥーム・メタルに身を委ねていきます。クリーン・ボーカルも、アルバム中盤のハイライト “Anchoress in Furs” の見事なコーラスのようにより強調され、不協和音のコーラス讃歌にサイケデリックなギター、Alex の奇妙に高揚したバリトン・ヴォイスが万華鏡のような泥沼を創造します。
「俺はあのバンドを心から尊敬しているし、Peter Steele は “俺たち” の音楽世界でら最も非凡で傑出した人物の一人だと思っているんだよ。彼の黙示録的な皮肉は独特で、彼の声も同様に独特だった。完全に他にはないものだったね。だからこそ、俺は彼の真似をしようとは思わなかったんだ。”Deserts To Bind And Defeat” の冒頭では、俺の声をできるだけ深いトーンで表現することにしたんだよ」 そしてもちろん、TYPE O NEGATIVE。
今回、弊誌では Alexander von Meilenwald にインタビューを行うことができました。「ブラック・メタルのムーブメントが始まったとき、俺たちはノルウェーについてできるだけ多くのことを知りたいと思った。突然、ほとんどすべての人が、スカンジナビアから生まれた創作物を賞賛することに同意したんだからね。俺たちはティーンエイジャーで、簡単に影響をうける年ごろだった。オカルト的な美学と、匿名性と秘密性に包まれた、無名のスカンジナビアから生まれた過激なムーブメントは、俺たちにとって圧倒的に魅力的なものだったんだ」 ブラックメタルが贈る審美の最高峰。どうぞ!!

THE RUINS OF BEVERAST “THE THULE GRIMOIRES” : 10/10

INTERVIEW WITH ALEXANDER VON MEILENWALD

Q1: You are a pioneer and a legend of German Black Metal. When you started Nagelfar, how did you feel about playing Black Metal from Scandinavia in Germany?

【ALEX】: Actually, I never really had any point of contact with Scandinavia before the Black Metal movement was coming up. Norway was surrounded by something mystic, we didn’t really know much of this country, and somehow it was fitting perfectly that an unholy, unfamiliar artistic vision like that of Black Metal was started in this country. And then, when the BM movement started, we were eager to learn as much as possible about Norway. Suddenly, almost everybody concurred in admiring the creations that emerged from Scandinavia. You know, we were teenagers and fairly easily manipulable, and an extreme movement coming from obscure Scandinavia, that was surrounded by kind of an occult aesthetic and an almost radical anonymity and secretiveness, seemedoverwhelmingly fascinating to us. We had a Black Metal scene rather quickly then in Germany, and not all the new German bands were geared to the Scandinavian style. But Nagelfar were. We were deeply into Burzum, Darkthrone, Mayhem, Emperor, Immortal. And a few less knownbands, Manes, Strid, Nästrond. To us it was obvious that those bands would stand as our main inspiration, because we almost started from a scratch. Our guitarist and me had played in a Death Metal band before Nagelfar, but we were eager to get new inspirations. And still, when we had finished the first Nagelfar releases, I think we finally had created something different, despite the huge and obvious influences.

Q1: あなたはジャーマン・ブラック・メタルの先駆者であり、伝説です。NAGELFAR をはじめたとき、北欧発祥のブラック・メタルをドイツでプレイすることについてはどう思っていましたか?

【ALEX】: 実のところ、ブラック・メタルのムーブメントが起こる前は、俺は北欧と全く接点がなかったんだ。でもノルウェーについてはあまり知らなかったけど、あの国は何か神秘的なものに包まれていたから、ブラック・メタルのような穢れた、謎の芸術的なビジョンがこの国で始まったことはなぜかピッタリ符号していたんだよ。
だから、ブラック・メタルのムーブメントが始まったとき、俺たちはノルウェーについてできるだけ多くのことを知りたいと思った。突然、ほとんどすべての人が、スカンジナビアから生まれた創作物を賞賛することに同意したんだからね。俺たちはティーンエイジャーで、簡単に影響をうける年ごろだった。オカルト的な美学と、匿名性と秘密性に包まれた、無名のスカンジナビアから生まれた過激なムーブメントは、俺たちにとって圧倒的に魅力的なものだったんだ。
ドイツではブラック・メタルのシーンがすぐに勃興してきたけど、新しいドイツのバンドがすべてスカンジナビアのスタイルに合わせていたわけではなかったね。だけど、少なくとも NAGELFAR はそうだった。俺たちは BURZUM, DARKTHRONE, MAYHEM, IMMORTAL といったバンドに夢中だったからね。それに、あまり知られていない MANES, STRID, NASTROND みたいなバンドにもね。俺たちにとって、これらのバンドが主なインスピレーションとなったことは明らかだった。なぜなら、俺たはほとんどゼロから始めたからね。
ギタリストと俺は NAGELFAR の前にデスメタル・バンドで演奏していたけど、新しいインスピレーションを得たいと思っていたんだ。そして、NAGELFAR の最初のアルバムを終えたとき、デスメタルから巨大で明確な影響を受けているにもかかわらず、最終的には何か違うものを作りあげだと思うんだ。

Q2: The world of German Black Metal is blossoming at the moment, what makes this scene so special and unique from your point of view?

【ALEX】: I don’t wanna sound negative here, but I don’t think that Germany is really a leading force in Black Metal these days. My favorite Black Metal bands from our country have always been Lunar Aurora and Katharsis, and they’re both disbanded since quite some time. And meanwhile, Germany has been a bit outperformed by other countries, lots of bands are inactive. We have a strong Death Metal movement instead, I mean serious Death Metal, like Nekrovault, Sulphur Aeon, Venenum, Drowned, also Necros Christos, although disbanded as well.

Q2: ジャーマン・ブラック・メタルの世界は遂に花開きましたね。シーンをユニークで特別なものにしているのは何でしょうか?

【ALEX】: 否定的な言い方をしたくはないんだが、俺の考えではドイツは最近のブラック・メタル界をリードしているとは思えないんだ。ドイツのブラック・メタルバンドで一番好きなのは LUNAR AURORA と KATHARSIS なんだけど、この2つはかなり前に解散しているからね。ドイツは他の国から少し遅れていて、多くのバンドが活動を停止している。
その代わり、強力なデスメタルのムーブメントがあるよ。つまり、NEKROVAULT, SULPHUR AEON, VENENUM, DROWNED, そして NECROS CHRISTOS といった本格的なデスメタルだけど、これも解散しているんだ。

Q3: Nordic folk in the spirit of black metal like Wardruna and Heilung is very popular in Scandinavia now. Their spirituality on ancient myths, philosophies and old instruments seems to resonate with The Ruins of Beverast, would you agree?

【ALEX】: I agree they are related in terms of drama, if I may say so, and also a bit arrangement-wise. In my view, Heilung actually display a stronger Dead Can Dance- or “world music-” influence than a particular “Nordic” vibe in some parts, but I may be mistaken here. I enjoy Wardruna a lot, their vocal arrangements are very powerful and atmospheric, and what I like them both for is, they are able to build musical landscapes that breathe the spirit of the North. I mean with regards to the landscape they are located in. They are able to give nature an audial expression. That is really difficult to accomplish, which I know, because I’m trying to do that myself. And to achieve it, a certain instrumentation, rhythmic and vocal arrangements are needed, and here’s where I certainly agree that you can draw a bow to how The Ruins Of Beverast arrange their songs, indeed.

Q3: ブラック・メタルの精神を宿したノルディック・フォーク、WARDRUNA, HEILUNG といったバンドが今、北欧で大きな人気を博しています。
彼らの神話、哲学、古の楽器といった要素は、THE RUINS OF BEVERAST とも通じているように感じます。

【ALEX】: うん、たしかにこの2つは、ドラマの面でも、アレンジの面でも、関連性があると思うよ。俺の見解では、HEILUNG は北欧の雰囲気というよりも、DEAD CAN DANCE やワールド・ミュージックの影響を強く感じさせる部分があるんだよね。まあ俺の勘違いかもしれないけど。
俺は WARDRUNA をとても気に入っているんだ。彼らのボーカル・アレンジはとてもパワフルで雰囲気がある。俺がこの2つのバンドを好きな理由は、彼らが住む北欧の魂を、そのまま吹き込むような音楽の風景を作ることができるからなんだ。彼らは自然を、聴覚的に表現することができるんだよ。これは本当に難しいことで、俺自身もそうしようとしているからよくわかるんだ。そ
それを達成するためには、ある種の楽器編成、リズム、ボーカルのアレンジが必要になる。だから、君が THE RUINS OF BEVERAST のアレンジ方法に、彼らとの共通点を見出したのもわかるんだよね。

Q4: Looking back, how do you feel about your decision to stop Nagelfar and start The Ruins of Beverast?

【ALEX】: It was the only possible decision. As much as I learnt from Nagelfar, and as many irretrievable memories I have from the times we led that band, as important or even indispensable they were for my creative progress – it was impossible to pursue them. Around the millennium, the communication between our guitarist Zorn and me was severely troubled, it was in fact fairly surprising that we managed to finish “Virus West”. The reason for these difficulties lay in our personalities, we were both very stubborn about music and development of the band, and while in the beginning, we shared a common view upon what we wanted to achieve, things changed throughout the years. Zorn had always been the more down-to-earth musician, he was writing prominent, melodic riffs, while I was voting for a darker and more unmelodic, minatorystyle, based on soundscapes and atmosphere. Both of us had stepped beyond the point where we could have gone back and concede each other, our teamwork was poisoned.When we met years after the split, we had a very good and respectful conversation, but back in the days it was impossible to straighten things, and it was obvious that Nagelfar would be laid to rest. As I wasn’t the common Heavy Metal musician and had very weird and abstract ideas of my future musical ambitions, I concluded rather soon that my only option was working alone. I had been teaching myself all relevant instruments during my time in Nagelfar, so it didn’t really appear as an issue. And I never had any regrets about this.

Q4: 今振り返って、NAGELFAR を終わらせて、THE RUINS OF BEVERAST をはじめる決断を下したことに関してどう感じていますか?

【ALEX】: それが唯一可能な決断だった。NAGELFAR から学んだことや、あのバンドを率いていた頃の思い出は、俺の創作活動を進める上で重要であるいは不可欠なものだったけど、あれ以上追求することは不可能だったからね。
というのも2000年頃、ギタリストの Zorn と俺の間のコミュニケーションに大きな問題が生じ、”Virus West” を完成させたことが不思議なくらいな状況だったから。その衝突は、音楽やバンドの発展に対する2人の非常に頑固な性格が原因だった。当初は実現したいことを共有していたんだけど、年々状況が変化していってね。
Zorn は常に地に足のついた音楽家で、彼は目立つメロディックなリフを書いていたんだけど、俺はサウンドスケープやアトモスフィアをベースにした、よりダークで、メロディックではないミナトリー (威嚇的) なスタイルに心を捧げるようになっていた。解散から数年後に会ったとき、俺たちはとても良い、尊敬に値する会話をしたんだけど、当時は物事を正すことは不可能で、NAGELFAR が眠りにつくべきなのは明らかだったよ。
俺は一般的なメタル・ミュージシャンではなく、将来の音楽的野心について非常に奇妙で抽象的な考えを持っていたから、すぐに唯一の選択肢は単独で活動することだと理解したね。NAGELFAR では独学ですべての楽器を学んでいたから、特に問題にはならなかったね。後悔したことは一度もないよ。

Q5: Every time you work on The Ruins of Beverast it seems like you’ve reached the pinnacle of creativity, but with your next album you’re going to go beyond that place, aren’t you? Is the title and blast beat, tremolo riff of Black Metal still important to you?

【ALEX】: There is one thing important to say: I do _never_ set the previous album as a quality standard for the next album. I’d feel uncomfortably stressed if I had to strive for thegoal of “getting better and better” with each album, that’sno working mode for me. In fact, I always start completely afresh. I always develop a vision for the specific new album, and that is set as the horizon for the whole creative process to follow. And like I said, it is entirely irrespective of the previous output. “Exuvia” had a different songwriting approach than “The Thule Grimoires” and all older albums. I do not really have in mind if anything that I’m doing follows the rules of Black Metal or not. I have been doing that in the Nagelfar days of course, but The Ruins Of Beverast were meant to build huge landscapes of sound from the beginning, and I guess I just intuitively tried to ignore anything that felt as a limitation. And the first and foremost limitations are the rules of a genre. Which, on the other hand, does not mean it’s not important for me. I mean, if you take a listen to the beginning of “Ropes Into Eden”, it is a fairly classic Black Metal part, but again, extended by some unfamiliar elements. This all happens mechanically, I have my musical background which, I guess, is always presentwhen writing songs, but never as the sole landmark.

Q5: THE RUINS OF BEVERAST は、作品をリリースする度にその創造性の最高到達点を更新していきますね。
それでも、ブラック・メタルというタイトルやブラストビート、トレモロリフはあなたにとって今でも重要な要素なんでしょうか?

【ALEX】: 一つだけ重要なことがあってね。俺は、前作を次のアルバムの “品質基準” にすることはないんだよ。アルバムごとに “どんどん良くなっていく” という目標に向かって努力しなければならないとしたら、ストレスが溜まってしまうからね。俺にはそういうモードはないんだよ。
実際、俺はいつもゼロからのスタートなんだ。いつも、新しいアルバムのためのビジョンを描き、それが創造的なプロセス全体の地平線として設定される。そして、先ほど言ったように、それは以前の作品とは全く関係がないんだ。”Exuvia” は、”The Thule Grimoires” やそれ以前のアルバムとは曲作りのアプローチが異なるよ。
自分がやっていることがブラック・メタルのルールに則っているかどうかは、あまり意識していない。もちろん、NAGELFAR 時代にもそうしていたんだけど、THE RUINS OF BEVERAST は最初から巨大な音の風景を構築することを目的としていたから、限界を感じるものは直感的に無視しようとしていたのだと思うな。そして、何よりもまず制限となるのは、ジャンルのルールだからね。
ただし、それが俺にとって重要ではないということじゃないんだ。つまり、”Ropes Into Eden” の冒頭を聴いてみると、かなり古典的なブラックメタルのパートだけど、同時に見慣れない要素によって拡張されている。これはすべてオートマティックに起こることさ。俺には自分の音楽的背景があり、それは曲を作るときに常に存在していると思うんだけど、唯一のトレードマークにはならないのさ。

Q6: This time there was a particularly strong influence from the pop and synth music of your upbringing, Massive Attack, Underworld and post-punk. In a way, are you returning to your own roots?

【ALEX】: Maybe, yes. But still, I always have these impacts returning at some point in my musical life. It was also present on Nagelfar’s “Srontgorrth”-album and on earlier The Ruins Of Beverast releases, at least rudimentary. And on “The Thule Grimoires”, I guess the main reason that brings people to identify a non-metallic influence here are the clean vocals. But they weren’t planned like this beforehand, it just happened in the studio and what mainly the idea of the producer Michael Zech. Some people also seem to think that the intro of the album is a synth, which is untrue, it’s a guitar. As well as most parts in “Mammothpolis”. In fact, we never used fewer synths than on the new album, now that I think about it, haha.But of course you’re right, I would agree that, the older I get, the older are the musical ingredients I seem to resort to, at least when it comes to the elements outside of Metal.

Q6: 特に今回の “The Thule Grimoires” には MASSIVE ATTACK や UNDERWORLD, DEPESCHE MODE, DEAD CAN CANCE といったあなたの青春時代のポップ、シンセウェーブ、ポスト・パンクの要素が強く反映されているように感じます。
ある意味、ルーツに回帰した部分もあるのでしょうか?

【ALEX】: そうかもしれないね。でもやっぱり、俺の音楽人生には何度か、必ずこの衝撃が戻ってきているんだ。NAGELFAR の “Srontgorrth” アルバムや、初期の THE RUINS OF BEVERAST のリリースでも、少なくともゆるやかには存在していたからね。
“The Thule Grimoires” でみんながこれほど “ノン・メタル” な影響を確認する主な理由は、クリーンなボーカルだと思うんだ。ただ、このアルバムのイントロがシンセサイザーだと思っている人がいるようだけど、それは間違いで、ギターなんだ。”Mammothpolis” のほとんどのパートがそうだね。実際、今回のアルバムほどシンセの使用数が少なかったことはないんだよね、考えてみれば (笑)。
でももちろん、君の言う通りだよ。少なくともメタル以外の要素に関しては、年を取れば取るほど自分が頼りにしている音楽的要素は古くなっているように思うね。

Q7: Type O Negative’s albums tend to have green artwork, and “The Thule Grimoires” is therefore reminiscent of their masterpieces. Your singing style and gothic touches also remind me of Peter Steel at times, would you agree?

【ALEX】: The artwork was planned to be greyscale in the beginning, but while working on the demos for the songs, I thought it should get a connection to the harsh face of nature, and I thought of a natural, dirty green. It had nothing to do with Type O Negative. Now don’t get me wrong, I truly respect this band, and I think Pete Steele has been one of the most extraordinary, outstanding people of “our” side of music.His apocalyptic sarcasm was unique, his voice as well. But it was completely inimitable. If you try to imitate a vocal style like this, you _must_ fail. It is so very distinctive and yet extreme at the same time, that every attempt to copy it can just sound like a poor shot. And that’s why I never tried to imitate him. The beginning of “Deserts To Bind And Defeat” was meant to feature my voice in a tone as deep as possible. And that’s what I tried, no more, no less. If anyone thinks it sounds like Steele, that is of course a huge compliment to me, but I don’t think it does …

Q7: TYPE O NEGATIVE はかつて緑がかったアートワークをよく使用していましたね。
“The Thule Grimoires” にはあなたの歌唱やゴシックな要素が時に TYPE O NEGATIVE を想起させますが、緑のアートワークは彼らを意識したものですか?

【ALEX】: アートワークは当初グレースケールを予定していたんだけど、曲のデモを作っているうちに、自然の厳しい一面とのつながりを得るべきだと思い、自然でダーティーな緑色を思いたんだ。だから TYPE O NEGATIVE とは全く関係ないんだよ。
ただ、誤解しないでほしいんだけど、俺はあのバンドを心から尊敬しているし、Peter Steele は “俺たち” の音楽世界でら最も非凡で傑出した人物の一人だと思っているんだよ。彼の黙示録的な皮肉は独特で、彼の声も同様に独特だった。完全に他にはないものだったね。あのようなボーカルスタイルを真似しようとすると、必ず失敗する。非常に個性的であると同時に極端だから、真似をしても下手なコピーにしか聞こえないんだよ。
だからこそ、俺は彼の真似をしようとは思わなかったんだ。”Deserts To Bind And Defeat” の冒頭では、俺の声をできるだけ深いトーンで表現することにしたんだよ。それ以上でも以下でもない。もし誰かがこの曲を Peter に似ていると思ってくれたら、それはもちろん俺にとって大きな褒め言葉なんだけど、まあ俺はそうは思えないよ…。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ALEX’S LIFE

DEPESCHE MODE “VIOLATOR”

My first serious and conscious occupation with the composition, arrangement, and production of music in general

NAPALM DEATH “SCUM”

My very first contact with extreme music

MY DYING BRIDE “AS THE FLOWER WITHERS”

One of the first and most intensive influences of my songwriting. This one brought the feeling of slow-motioned unease into The Ruins Of Beverast, and I still think it to be one of the most saturnine Metal albums ever made.

DARKTHRONE “A BLAZE IN THE NORTHERN SKY”

My very first contact with Black Metal

DEAD CAN DANCE “WITHIN THE REALM OF A DYING SUN”

The blueprint of how to let “mere” music become a whole universe. I never heard music like this before, and afterwards.

MESSAGE FOR JAPAN

Well, in almost 30 years of being an active musician this was my first contact to Japan ever. So, thank you so very much for that, it’s my honor! And in addition, may I say that we are very certainly, not just since yesterday,dreaming of coming to Japan as soon as it can ever be possible. Although we’re certainly aware of the aftermaththat we all may suffer from, when this pandemic horror trip may be finally over. My deepest gratitude to all of you people for the support and sincere interest, fare thee well!

俺は30年近く音楽活動をしているけど、日本からコンタクトがあったのは今回が初めてなんだ。本当にありがとう、光栄だよ!
長い間、俺たちは可能な限り早く日本に行くことを夢見ている。このパンデミックによる恐怖の旅が終わったとき、俺たちは後遺症に悩まされることになるかもしれないけど。応援してくれたみんな、興味を持ってくれたみんな、本当にありがとう!

ALEX VON MEILENWALD

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IN MEMORY OF ALEXI LAIHO: PAINT THE SKY WITH BLOOD


IN MEMORY OF ALEXI LAIHO 

PAINT THE SKY WITH BLOOD

Randy Rhoads, Stevie Ray Vaughan, Dimebag Darrell、Chuck Schuldiner、Eddie Van Halen。世界はこれまで、6弦の英雄たちに何度悲しみの別れを告げたでしょう。その夭折のリストに Alexi Laiho までが加わるとは、神様は非情で不公平です。いや、”死神” に魅入られてしまったと言うべきでしょうか。
何よりもまず、Alexi は現代のギターヒーローとしてメタル界の歴史に名を残すことになるでしょう。2009年には Guitar World 誌の読者投票で Best Metal Guitarist に選ばれました。ただし、彼は単なるシュレッダーではなく、メタルの最も暗く、最も極端な場所に、メロディーと華やかさを浸透させる誘惑の扉を開く先見の明もありました。CHILDREN OF BODOM で彼は、前人未到のジャンルの実験、ブラック・メタル、パワー・メタル、メロデス、クラシカル、スラッシュのフラスコを華麗なリードと “ファックユー” のアティテュードで煮詰め、将来のプレイヤーとなるべき世代にインスピレーションを与え続けたのです。SVALBARD の Serena Cherryの言葉は正鵠を得ています。
「ギタープレイをスポーツのように扱うギタリストがいるけど、Alexi はスピードと正確さを持ち合わせているだけでなく、彼の声が演奏に含まれていたの。 個人的には知らない人でも、ギターの演奏を聴いているうちに、その人のことを知っているように感じることがある。私の場合、Alexi がそうだったわ。ステージ上で弾くすべてのソロから、彼の個性がにじみ出ているのを感じたの」
Nita Starauss も同様に Alexi を崇めていた一人です。
「私は Vai や Satriani のシリアスなギタープレイにもハマっていたけど、ヘヴィーな音楽も好きだったの。だから、CHILDREN OF BODOM は両者の完璧な架け橋だったわ。キーボードとギターのハーモニーは、今でも私のソングライティングに大きな影響を与えているの。何より、ヘヴィーで、ブルータルで、それでも楽しいでしょ?そのやり方を真似しようとしているんだけど、誰も彼より上手くはやれないわね」
TRIVIUM の Matt Heafey にとって Alexi は完璧なギターヒーローでした。
「”Something Wild”, “Hatebreeder”, “Follow the Reaper” がなければ TRIVIUM の音楽性は変わっていただろう。さみしくなるよ、Alexi…」
DRAGONFORCE の Herman Li にとっては、素晴らしいライバルだったようです。
「モンスターのようなギタープレイと素晴らしい才能で、メタル世界に信じられないプレゼントを贈り続けたね。俺の世代では、最高のギタリストだと思い続けてきたよ。アプローチもアティテュードも最高だった」
Gus.G がはじめて雑誌の表紙を飾ったのは、日本の Young Guitar 誌で、Alexi と一緒でした。
「俺の世代最高のギタリストの1人。あの写真はよく覚えている。はじめての雑誌の表紙だったから。お互い ESP のギターを使っていたから、それからもよく交流していた。彼の新しいバンドを楽しみにしていたのに…」
あの Dave Mustaine にまで一目置かれていました。
「何度も一緒にツアーをやったな。素晴らしい才能の持ち主だったよ」

フィンランドのメロディック・デスメタル・バンド、CHILDREN OF BODOM のギタリスト兼ボーカリストだった Alexi は、2020年12月29日にフィンランドのヘルシンキにある自宅で亡くなりました。
41歳になった “ワイルド・チャイルド” は、人生の最後の数年間、長期的な健康問題に悩まされていました。SINERGY のバンドメイトで、死亡時の法的な妻であった Kimberly Gossは、Alexi の死因を “アルコールによる肝臓と膵臓の結合組織の変性” であったと明らかにし、救えた命だったと嘆きました。中毒という悪魔によって、以後彼のような才能を奪われることがないようにと心から願いながら。
「私の真の初恋の人。バンド仲間で親友でもあった。このパンデミックの中での光明は、一緒に過ごす時間の質の高さを得られたこと。私たちのマラソンのような FaceTime での通話、昼夜を問わず延々と続くテキストメッセージや電話は、永遠に私の心に残ることでしょう。
ステージの上でも外でも、一緒に過ごした人生を振り返ることができたこと、そして何年も変わらない友情を大切にすることができたという事実に、私はとても慰められているわ。
アリュー、私の心は満たされていると同時に傷ついているの。これほど長く豊かな歴史を持っている友について、何も語らないままでいられる人はそうそういないでしょう。あなたは私に安らぎを与えてくれたし、あなたの疲れた体がついに限界を迎えるまでの数ヶ月間、数週間の間、私の後悔の念をゼロにしてくれたわ。本当にありがとう。そしてこれからもずっとずっと愛しているわ。
あなたと Tommy (2012年に亡くなった元 SINERGY のドラマー) が天国で再び一緒になって、喜びと笑い声が聞こえてくるのが眼に浮かぶわ。
あなたを知り、愛していた私たちの心の中にあなたはいつまでも残り、あなたの遺産は、世界に祝福を与えた音楽の中で永遠に生き続けるでしょう。
目を閉じて、わたしのダーリン。ようやく安らかな眠りにつけたのよ。愛しているわ」

アーティストとしての Alexi の歴史は、幼馴染みである Jaska Raatikainen と INEARTHED というグループを結成した90年代中盤まで遡ります。INEARTHED は、CHILDREN OF BODOM に改名し、Spinefarm Records と契約するまでに3本のデモテープを録音していました。
当時の彼らを表現する一文に「時速100万マイルのパワーコードと、スウィープ・アルペジオ、ヴァイにインスパイアされたテクニック、そして感染力のあるリードを組み合わせた、ブルータルでありながら、メロディックで複雑なサウンド」とありますが、実に的を得た一文だと言えるでしょう。誰もが、疑いもなく、次世代のギターヒーローが登場したと確信したはずです。
「10歳のときにMTVを見ていたら、Steve Vai の “For the Love of God” のビデオが流れてきた。その時、俺は絶対にギターを始めなきゃならないと思ったんだ」
Alexi Laiho は、1979年4月8日、フィンランドのエスポーで Markku Uula Aleksi Laiho として生まれました。彼は幼い頃から天才の兆しを見せていて、4歳で父の聴く DIRE STRAITS で天職を悟りながら、5歳でバイオリンを習いはじめ、少年時代は主にクラシック音楽を聴いて過ごしました。そんな少年に神 Steve Vai は舞い降り、メタルという宗教に目覚め改宗するきっかけを与えたのです。
Alexi が11歳のとき、初めて父親がギターを買ってくれました。それは Tokai (トーカイ) の白いストラトタイプでした。ヘア・メタルの妙技に夢中になった彼は、Randy Rhoads, Jake E. Lee, Zakk Wylde といった達人の真似事をはじめました。
「いいギターだった。毎日、学校から走って帰ってきては、親に殴られそうになりながら、寝るまで弾いていたんだから」
高校時代、ギターへの執着をさらに強めた Alexi は、最終的には授業を休んで家で薪割りをしつつ、メタルやシュレッドのテクニックを教則ビデオから独学で学んでいったのです。
「何かを犠牲にしなければならなかった。俺にとってそれは学校だったんだ。母は僕が高校を卒業できないことを知っていたよ。でも、夢中になっていることで成功するように手助けしてくれたんだ」

Alexi は友人でドラムの Jaska と2人でジャムをしながら、後に INEARTHED、そして CHILDREN OF BODOM となる異形の基礎を作っていきました。ベルギーのレーベルと契約しましたが、よりビッグな Spinefarm Records が INEARTHED に興味を持ち、望ましい契約を申し出ました。ベルギーのレーベルとの契約から逃れるために、彼らは INEARTHED が解散してアルバムを出せなくなったとレーベルに伝えたのです。
そうしてフリーエージェントとなった彼らは、CHILDREN OF BODOM という新しい名前で “再結成” し、Spinefarm と契約を結びます。その契約は、Alexi とCOB のメンバーにすぐさま大きな変化をもたらしました。
バンドは1997年11月にデビューアルバム “Something Wild”を発表。アルバムを引っさげてツアーを行い、地元以外でも人気を高めることに成功します。熱狂的なソロ、壮大なシンフォニー、騒々しいコーラスがアドレナリンを爆発させる音楽。当時のトレンドとは真逆の、楽しく、必死で、まだ無名だったギタリストのやりたいことがすべて詰まったサウンド。トレンドやファッションに中指を立て、シーンの限界を拒んだのです。
「俺たちは本当に小さなアンダーグラウンド・メタルの世界にいたけど、そこで俺は間違いなく最高のギタリストだった。誰のケツでも蹴ることができたし、それが評価されたんだ」
一方で、ベーシスト Henkka Seppälä は COB の未来を信じられずにいました。
「自分たちのやっていることは本当に好きだったけど、同時に 、自分たちは何者なんだろう?この音楽は何なんだ?と思っていたんだ。大げさではなく、これは誰の趣味にも合わないものだと確信していたんだよね。でも Alexi は “Something Wild” のレコーディングが終わったとき、マスターCDをプリントしてそこにこう書いたんだ。”未来のゴールドセラー・アルバム”とね (笑)。もちろん、彼は冗談を言っていたんだけど。運が良ければ数百枚は売れるだろうと思っていたけど、10年後には実際にゴールドを獲得したんだ」
Alexi 自身はこの作品をこう評します。
「”Deadnight Warrior” と “Lake Bodom” …これらは実際に良い曲だったけど、それ以外は素晴らしいリフ上で俺が卑猥な言葉を叫んでいるだけだった。何も計画していなかったからね」


HYPOCPISY と COVENANT とのツアーでは、Alexi が少年時代にMTVで見たような、野性的なロックンロールのライフスタイルを実践していきました。
「タダでお酒が飲めるところなんてはじめてだった。あれは最高だったな。他のバンドと一緒に大きなバスに乗って、とても楽しい時間を過ごしたよ。彼らは、俺たちが演奏やパーティーのやり方を知っていることを確認すると、すぐに受け入れてくれたね」
1997年の10月、CHILDREN OF BODOM は DIMMU BORGIR ヘルシンキ公演で前座を務めました。DIMMU BORGIR は3枚目のアルバム “Ensrone Darkness Triumphant” をリリースしたばかりの大物で、会場となる “Lepakko” はロック界では伝説的な存在。Silenoz は当時のことを鮮明におぼえています。
「楽屋からオープニングバンドの演奏が聞こえてきた。Yngwie Malmsteen のような光速のサウンドだったよ。俺たちは外に飛び出し、その光景を見て、口を開いたまま立ち尽くしてしまった…」
1997年に Alexi と SINERGY を結成し、2002年に結婚することとなる Kimberly Goss はそのとき、DIMMU BORGIR のキーボード奏者でした。当時を振り返ります。
「私たちには秘密の言語があったのよ。1998年、一緒にエストニアに行ったとき、私たちは効果音、セリフも含めて “バック・トゥ・ザ・フューチャー” 一作目の言葉ですべて話していたの」

“Something Wild” をリリースした後、CHILDREN OF BODOM はさらに人気を高め、アンダーグラウンドにおけるメロディック・デスメタルの代表的な存在となりました。Alexi が鋭利な ESP ギターで刻んだ、高速難解なリフワークと目にも止まらぬトリッキーかつクラシカルなリードはバンドの代名詞として定着。
フィンランドのメタルは、90年代後半ルネッサンスの真っ只中にあり、HIM, SONATA ARCTICA, APOCALYPTICA, NIGHTWISH といったバンドが脚光を浴びはじめます。一方の COB は、ブレイクするまでに数年を要します。セカンド・アルバム “Hatebreeder”、日本でおそらく一番人気の “Follow The Reaper” は、”Something Wild” に盛り込まれたアイデアを基により洗練された楽曲を提示しましたが、フィンランドで1位を獲得しメタル界全体が注目するきっかけとなったのは、2003年の “Hate Crew Deathroll” でした。その年、彼ら”Finnish Metal Music Awards” で “Metal Band Of The Year” に選ばれ、ヨーロッパや日本でもヘッドライナーとして活躍することになります。最も重要なことは、NEVERMERE, HYPOCRISY, DIMMU BORGIR と共に、ついに初の米国ツアーへ名乗りを上げたことでしょう。

「このアルバムは、俺たちがようやく自分たちの道とスタイルを見つけた作品さ。それまでの俺たちは、ちょっとあちこちに行くような感じだったからね。自分たちが何をしたいのか探しているようなものだった。そして、”Hate Crew” でようやくそれを掴むことができたんだ。CHILDREN OF BODOM にとって最も重要なアルバムであるだけでなく、間違いなく最高のアルバムの一つだね。多くの人にとって、COBの最も好きなアルバムであり、それを責めるつもりはまったくないよ。自分で言うのもなんだけど、すごくいいアルバムだから。振り返って聴いてみると、ヤバいな、俺たち。こんな凄いアルバムを作ったんだ!ってなるからね」
アルバムのタイトルは Alexi お得意の邪悪なジョークの一つ。
「”Hate Crew “は、”CHILDREN OF BODOM “の別の言い方だ。COB のヘイトクルーは、常にギャングの側面を持っているからな。”Deathroll” は好きなように解釈してくれよ。戦争になると、必ず “死亡者リスト” が出てくる。また、これから殺したい人や、すでに殺した人のリストということもできる。みんなが自分で考えてそれを作ればいいんだよ」

2005年にリリースされた “Are You Dead Yet?” は、彼らをさらにレベルアップさせました。そして、遂に地球上で最もビッグなメタルバンドの1つ SLAYER が声をかけてきたのです。2006年の “The Unholy Alliance Tour” に招待されたのです。Kerry King は当時を懐かしみます。
「”Are You Dead Yet? “は、彼らのアルバムの中でも最も好きなアルバムだった。当時から、ヤツは未来だ、次のギターヒーローだと思っていたよ。見ていて『クソッ!』と思うような、努力を惜しまない人間なんだ。俺が一日中練習しているのに、まったく敵わねえと思ってしまうようなね」
LAMB OF GOD や MASTODON と並ぶ強力なラインナップに加わった CHILDREN OF BODOM は、ライブという戦場で果敢に SLAYER に挑みました。Kingも認めています。
「彼らは成功していたよ。俺は、惨敗したヤツらを見てきたからな。
彼らのセットリストはヘヴィーなもので、それは俺たちのオープニングとしては賢明なことだった。見ていて楽しいし、Alexi はギターの神様だったよ」
ツアーを振り返って、Henkka は Alexi を「パーティーを始めた人」「友達を作るのが上手い人」と表現します。それまで自分がアイドルだと思っていたバンドと一緒に行動することにも臆することはありませんでした。
「多くの人は、Kerry と一緒にイェーガーを飲み始めるというトリックに陥る。Kerry は大きな耐性を持っているのにね (笑) Alexi が Kerry の部屋から運び出された夜もたくさんあったよ。”ヘイトクルー” のメンバーになりたい人は、ツアーバスのバックラウンジに来て、裸になって逆立ちをしなければならないという儀式があった。そして口にウイスキーを注ぐんだけど、必ず鼻に入ってしまうんだよ(笑) 少なくとも Randy Brythe はその後、タトゥーを入れたから、儀式をやって公式にヘイトクルーになったはずだよ(笑)」

MASTODON のドラマー/シンガー Brann Dailor はこのツアーが基本的にサマーキャンプだったと言います。
「COB のメンバーはウォッカを何ケースかもらうはずだったんだけど失敗してラム酒をもらってきた。彼らは、「もういいや、ミキサーを買おう」と言っていたね。全員が休暇中のような帽子をかぶり、バスの中でラム酒のブレンドドリンクを作ったんだ。バスの中は、まるでステロイドを使った MOTLEY CRUE 82年版のようでね。彼らが聴いていたのは80年代のヘア・メタルばかり。SKID ROW や WINGER だよ。俺は、「もうこのバスから降りなければ!なあ、BON JOVI はもう聴きたくないよ、みんな!」って感じさ」
時おり見せる邪悪なユーモアも、やはり Alexi の魅力でした。
「ブリットポップのクソ、OASIS…あんなものは大嫌いだ。PEARL JAM のように、音楽が泣き言や不平不満に聞こえるようなバンドもね。あのボーカルの声には、かなりイライラさせられるね」また、Britney Spears の “Oops!… I Did It Again” や Bananarama 1984年のヒット曲 “Cruel Summer” をカバーすることで、メタル純粋主義者を愚弄することに喜びを感じているようでもありました。
“Hate Crew Deathroll”(2003), “Are You Dead Yet?” (2005), の成功により、CHILDREN OF BODOM はエクストリーム・メタル界にその名を轟かせ、Alexi は念願の国際的な評価を得ることになりました。
Alexi を知る人たちは、彼のことを物腰の柔らかい穏やかな心と、無謀で自発的な一面を併せ持つ、周囲の誰よりもパーティーを盛り上げる “ワイルド・チャイルド”と表現しています。
「彼の芸術は残忍で攻撃的だったけど、それは猛烈で大きな心を持った優しい男の一面に過ぎなかった。俺にはいない、兄のような存在だっよ」と語るのは、RECKLESS LOVE のフロントマンで、グラムロックのトリビュートアクト THE LOCAL BAND で Alexi と共にプレイした Olli Herman。

しかし、バンドが世界的な成功を収めたことで、皮肉にも Alexi はその成功を保つためのプレッシャーから自己破壊的な行動へ走るようになり、才能多き若きエースは多大なダメージを肉体や精神に蓄積していくこととなります。
“Are You Dead Yet?” は、COB にとってメインストリームへの最も大胆な挑戦であり、バンドの知名度を高めたにもかかわらず、ファンからは様々な反応がありました。2008年には “Blooddrunk” を発表。このレコードは COB の成長が停滞しているという印象を払拭するためには不十分な作品でした。さらに、Alexiの健康状態が懸念され、出演をキャンセルするケースが相次ぎます。
Alexi のキャリアは約25年に及びますが、その間、孤独なギターヒーローはドラッグやアルコール、うつ病と常に戦っていました。それらの悪魔が原因で、北欧のネオクラシストはあまりにも多くの恐怖を経験し、骨を折り、病院へ担ぎ込まれています。1998年末、19歳の Alexi は、30種類の精神安定剤と数杯のウイスキーを摂取してゆるやかな自殺を図っています。
「子供時代は大丈夫だったけど、17歳くらいになると頭がかなりおかしくなっていった。友人が床に倒れている俺を見つけ、病院に連れて行ってくれたんだ。俺は決して良い状態ではなかった」と2005年に語ったように。強まる自殺願望。その一件は単なる始まりに過ぎませんでした。
「どんどん気分が悪くなっていった。薬を飲んでから数年後、精神的に完全に参ってしまい、1週間ほど入院したことがある。それが3度目の入院だった。人生で最悪の気分だったよ」
危険な状況はエスカレートしていきました。2006年、”ワイルドチャイルド” は、酒に酔って車の上から転落し、手首を骨折。修理が必要なのは彼の腕でした。
「友達がボーリングをしていて、ホワイトロシアを飲んでいたんだ。ストライクが出て、俺はちょっとしたダンスか何かをやったんだけど、酔っ払っていたから滑ってしまった。何かの拍子に逆さまになって、左肩に着地したんだ。最初はみんな笑っていたし、俺も笑っていた。すると突然、肩が大きく腫れ上がり、腕を骨折したことを知ったんだ」

骨折の回復は決して早いものではありませんでした。骨が正常に治癒していないため、6週間にわたって左腕はスリングで固定され、その後は演奏できるようになるまで数ヶ月間、厳しい理学療法を受ける必要がありました。ギタリストにとっては気が重くなるような出来事でした。さらに運が悪いことに、崇拝していたギタリストZakk Wylde, Steve Vai と一緒に Guitar World 誌の表紙を飾る予定がありました。
「正気の沙汰じゃなかった。断ることができなかったから、腕にギブスをして、目の周りをきれいにしてもらったんだ。もうあんな経験はこりごりだよ。まあ、ボウリングや酒はやめていないけどね。でも、もう十分に自分の体を壊したよ。骨折もしたしね」
Zakk Wylde は、その思い出に苦笑します。
「彼がギブスをしていたのを覚えているよ。まるで結婚式の準備をしている女の子のようで、人生最大の日なのに、結婚式の写真を撮る時に腕が折れて目が黒くなっているようだった。面白かったよ。最高だった」
不幸なことに、ボーリング以外にも体への負担は続きます。2年後、COB のツアーバスで運転手が急カーブを切ったとき、寝台から投げ出されて肩を骨折したのです。この事故は飲酒が原因ではありませんでしたが、年齢のわりに Alexi の体がますます脆くなっていたことを示唆しています。
Alexi は、これらの出来事によって、自分の体がダメージを受けていることを十分に認識していましたが、おそらく最も大きな衝撃は、2011年カリフォルニア州アナハイムで開催されたNAMMコンベンションでの体調悪化です。二日酔いのせいだと思って様子を見ていましたが、出血と嘔吐は9時間も続きました。病院では医師から驚くべき診断を受けました。
「潰瘍ができていて、かなりひどかった。内臓を吐いていて、それが止まらなかったんだよ。吐き続けて、まったく我慢できなかった。4日ほど入院しなければならなかったね。水分補給のために大量の点滴を受けたよ。史上最悪の事態だった。本当だよ」

幸運にもこの時は生き延びることができましたが、Alexi はハードなパーティーと中毒という悪魔にツケを払う必要を実感していました。
「胃に永久的なダメージはないと言われたけど、解毒して過度な飲酒の習慣から抜け出さなければならなかった。毎日ウイスキーを5杯も飲む必要はないと思ったね」
入院したからといって、Alexi が自分のやり方を完全に変えることはありませんでした。
「入院したのはいいことだったよ。退院してからはあまり飲んでいない。ビールを数本飲む程度だ。あちこちでビールを飲むくらいで、ハードな酒は完全にやめた。ショットを飲むなんて考えたくもないね。永遠にやめるというわけではないよ。ただ、今は考えていないだけだ。俺はいつも、困難な方法で物事を学ばなければならない運命なんだ。ただ、このままではいけない、もっと自分を大切にしなければならないと気づかされたね」
ANNIHILATOR の Jeff Waters は悔やみきれない様子です。
「Alexiとは最初から意気投合した。互いの演奏を愛してたから。最初はどうやって酒をやめたの?と助けを求めたけど、結局他の中毒者と同様酷い状態に戻り、俺に話しかけなくなった…でも心底ヤツは酒や薬と手を切ることを望んでたんだ。寂しいね…助けを求めるのは恥じゃないよ」
何年にもわたって、Alexi は自らのうつ病や音楽の背後にある精神的な混乱について、いつも率直に語ってきましたが、彼はしばしば、最も暗い瞬間を乗り越えさせてくれたのはバンドだと主張しましていました。
「何かを失うことを恐れるとしたら、ギターを弾くことが真っ先に思い浮かぶんだ」
2011年の “Relentless Reckless Forever”のインタビューでは、Alexi の精神状態が話題になりました。ただ、このアルバムは、2003年の “Hate Crew Deathroll” のように、鋭く、技術的に優れた作品になったと評価されただけでなく、フロントマンの状態もずっと良くなっていました。
「いつもと同じライフスタイルを続けることはできない 。朝、起きてからウイスキーを1本飲むこともできない。大げさだけど、いつの間にかかなりハードになっていて、それに気づかなかったんだ。人としてもミュージシャンとしても機能していたし、ショーを台無しにしたこともなかったけど、落ち着いて、自分を大切にしなければならないと気付いたんだ」

時に、Alexi はグループ内の不和をほのめかすこともあり、ギタリストの Roope Latvala には必要な「労働倫理」が欠けていると主張したこともありました。結局 Roope は2015年に COB を脱退し、バンド最後の作品 “Hexed” で後任 Daniel Freyberg の登場を予告したとき、Alexi はこう説明しています。
「俺たちの残りのメンバーは…子供の頃からお互いを知っている…20年間一緒にツアーを続けてみてみなよ。そうすれば、時には結婚生活のように、くだらないことで口論になってしまうこともあるということがわかるだろうね」
“Hexed” では “Follow The Reaper” で完成させたようなネオクラシカルな要素を再び取り入れましたが、より筋肉質になり、パンチの効いたクランチーなリフ、メロディックなバック・アレンジがよりシームレスに融合していました。批評家たちはこのアルバムを「ルーツへの回帰」と評しましたが、Alexi はその事実をいつものように軽妙に認めました。
「俺たちは何度もそこに戻っているように見えるけどね」
そうして CHILDREN OF BODOM は、Alexi がアナハイムの病院に入院した後もレコーディングやツアーを続け、後期の作品では若返りも感じられたもののバンドは2019年に解散を発表します。彼らの最後のライブは、12月15日のヘルシンキ・アイスホールでした。Henkka は昨日のことのように回想します。
「いつも通りのことをやった。ショーの前にはフィストバンプをして、ショーの後にはハグをして、また会おうと言ったよ。みんな喜んでいたし、気分も良かった。もちろん、もう二度と一緒に演奏することはないとわかっていたから、悲しい気持ちもあったけどやり遂げたんだ」

著作権の問題でCOBの名前を使い続けることができなかった Alexi は、新バンド BODOM AFTER MIDNIGHT を結成し、自身のキャリアの新たな章を始める準備を行います。2020年10月には、フィンランドで3回の小さなライブを行いました。COB時代からの盟友 Daniel は悲しげに語ります。
「Alexi はとてもオールドスクールな人物で、リフとメロディーだけもってスタジオにあらわれ、それをメンバーに見せて膨らませていくんだよ。そうやって、レコードを書き始めて、今年レコーディングして、2022年にリリースする予定だったんだけど、そうはならなかったんだ…彼はとても興奮していたよ。新たな意欲とモチベーションを持っていて、自分がまだ頑張れることを示したかったんだ」
「彼は小さなクラブでのライブをとても喜んでいたわ」と Kimberly も同意します。「彼は、派手さなんていらないと思っていたのよ。演奏はシャープで、歌も素晴らしく、新しいラインアップはキラー。彼は、あのライブがこの世に存在する最後の3つのライブになったことをとても誇りに思っているでしょうね。自分のルーツである小さなクラブ、素晴らしいエネルギー、新しいパワーに戻ったのだから。アルコール依存症や薬物乱用の問題で苦しんでいる人は助けを求めて。彼と同じ運命をたどる必要はないわ。誰かが手を差し伸べるのは愛情から。依存を助長するような人たちに囲まれないようにしてね。彼の死を無駄にしたくないの。だからAlexiを教訓に一人でも多くの命が救われればと願っているのよ」
BODOM AFTER MIDNIGHT に残した僅かなレコーディングの一つ、”Paint The Sky With Blood” は空を真っ赤に染める Alexi の新たな野望を象徴した楽曲でした。生き様でした。まさに遺音。メンバーは誇りを持って、再度獣を檻から放ちました。
「俺たちと同じように、Alexi もバンドの曲に熱中していたし、この曲を発表することを待ち望んでいた。だから、彼の願いを叶えることができて嬉しいね。言うまでもなく、俺たちは彼の最後の創造物の一部となれることを光栄に思い、誇りに思っている。Alexi の音楽、遺産、そして彼自身を称えるために、もう一度、獣を檻から解き放つ時が来たんだよ」
Alexi が無人島に持っていくレコードを聞かれたとき、「無人島でパーティーがあったときのために」と、Andrew WKの “I Get Wet” を選んだのは楽しい逸話でした。彼が今、どこにいようと、あのアルバムを大音量で聴いていることは間違いないでしょう。
最後に Alexi の言葉を置いておきましょう。
「賞や賛辞のためにこの仕事をしているわけではないんだよ。音楽のため、そして演奏することを愛するためにやっているんだ。それだけだ」

参考文献:GUITAR WORLD: THE LIFE AND TIMES OF ALEXI LAIHO

LOUDER SOUND:Alexi Laiho: the blazing life and wild times of a modern metal hero

NME:RIP, Children of Bodom’s Alexi Laiho: Finnish metalhead with a wicked sense of humour

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AD NAUSEAM : IMPERATIVE IMPERCEPTIBLE IMPULSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AD NAUSEAM !!

“We Would Like To Contribute Bringing Metal Music Sound Approach To a Different Level In The Future. There Are Many Listeners That, Like Us, Are Deeply Tired By The Fake Plastic Sounding Records That Are Trending Since The Last 20 Years.”

DISC REVIEW “IMPERATIVE IMPERCEPTIBLE IMPULSE”

「将来的には、メタルのサウンド・アプローチを別のレベルに引き上げることに貢献したいと考えているよ。僕たちと同じように、過去20年間のトレンドである偽のプラスチック・サウンドのレコードに深く疲れている多くのリスナーがいるからね」
機械化されたダンス・ミュージックも、そのバカげた単調さも、そんな音楽を使うクラブも、すべてが100% 大嫌いなんだ。アナログの録音を極めたエンジニア、かの Steve Albini はかつてそう言い放ちました。デジタルに支配された我々は、たしかに繊細で温もりのある生のレコード、その音響を忘れつつあるのかもしれません。それは、耳に鮮やかな添加物にまみれた、メタル世界も同様でしょう。
「ここ数年、メタルの中で音質の平均値が大きく下がっているから、僕たちのようなアルバムは目立ちやすいんだろうな。例えば、ダイナミクスを重要視している作品はほとんどないよね」
近年、その実験精神とこだわり抜いたコンセプトで注目を集めるイタリアのメタルシーン。中でも、”吐き気がするまで追求する” をバンド名に掲げる AD NAUSEAM の献身はもはや狂気の域でしょう。現状に不満があるなら、自ら創造する。ここには、大げさで滑稽な偽物のプロダクションは存在しません。アーティスト本人がエンジニアリングを学び、専用のスタジオ・マシン、キャビネット、アンプ、ドラムキット、さらにはマイクの設計にまで趣向を凝らしたスタジオを建設。すべてはただ、自らが心地良いと感じるサウンドを構築するためだけに、AD NAUSEAM は途方もない労力を注ぎ込んだのです。チューニングも既存のものとはかけ離れています。
「いくつかのオーケストラ・パート( “Sub Specie Aeternitatis” の最後と “Inexorably Ousted Sente” の最初)は、60以上のヴァイオリンを重ねて、彼自身が1つずつ録音したものなんだよ」
6年の歳月をかけて制作された最新作 “Imperative Imperceptible Impulse”。Bandcamp で販売されている “フル・ダイナミック・レンジ” のアルバムを聴けば、この作品が現代のメタル・サウンドとは全く趣を異にする音の葉を響かせることに気づくはずです。
全体の音量は隅々まで見渡せるようにコントロールされ、さながら精巧なタペストリーのごとくすべての楽器が入念に折り重ねられています。ドラムの幽霊音、ギターの息遣い、そしてベースの呪詛まで、生々しく肉感的な三次元の重苦しいオーケストラは、そうしてリスナーの部屋までライブの興奮を運んで来るのです。実際、その録音手法はクラッシックの原理。
「メタルに様々なジャンルのダークな不純物を加えて溶かしたいという本質的な衝動は、最初は不十分な試みだったけど、たしかにそこにあったんだ。新しいものを作るには、自分の限界から一歩踏み出さなければならないことを理解するべきさ」
アルバムは、例えば LITURGY, 例えば KRALLICE, 例えば IMPERIAL TRUMPHANT といった今メタルシーンを牽引する複雑怪奇な NYC の魑魅魍魎とシンクロし、奇しくも同じ方向を向いています。デスメタルやブラックメタルと、ジャズや現代音楽の不協和な錬金術。ただし、NYC の新鋭たちが意図的にラフでアンダーグラウンドなイメージをそのサウンドに残しているのに対し、AD NAUSEAM の合成法は実に緻密で繊細。
テクニックの粋を尽くしながらギターソロさえ存在しないダークな音の不純物は、奇抜に躍動しながらもすべてが正確無比な譜面の中へパズルのように収まります。それは、NEUROSIS とGORGUTS の踊る地獄のの祭典でしょうか。ストラヴィンスキーはひとつのキーワードでしょう。マスコアやテクデスの洗礼も浴びながら、ヌルヌルと蠢く百鬼夜行が奏でる呪詛は、そうしてリスナーを吐き気がするまで何度もリピートへと誘うのです。
彼らにいわせれば、単なるリフの連続ではなく、音が過去を参照したり、未来を予測したりする秩序。不調和によって和声が得られ、不協和音によって旋律が得られるような音楽。真のアヴァンギャルド。
今回弊誌では、AD NAUSEAM にインタビューを行うことができました。「このアルバムは、18年間の研究と実験の結果なんだ。Steve Albini のサウンド哲学は、僕たちの哲学ととても近いものがある。自分よりも優れた人から学ぼうとするのは自然なことだよ。そして、彼はおそらくこの業界で最高の人だ」 どうぞ!!

AD NAUSEAM “IMPERATIVE IMPERCEPTIBLE IMPULSE” : 10/10

INTERVIEW WITH AD NAUSEAM

Q1: This is the first interview with you. So, at first, could you tell us about yourself and the band? What kind of music were you listening to, when you were growing up?

【AD NAUSEAM】: We started playing together in January 2003, after very few musical experiences in other bands. All the band members were interested in the most aggressive and violent side of metal music. We changed name from Kaos to Death Heaven and recorded a demo in 2005 and an album in 2007, called “Viral Apocalypse”.
The most remarkable events of those years are a live show opening for Cynic and the first gig abroad, in Austria.

Q1: 弊誌初登場です!まずはあなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【AD NAUSEAM】: 僕たちは2003年1月に一緒に演奏を始めたんだ。それまで、他のバンドでの音楽経験はほとんどなかったんだけどね。その頃はバンドメンバー全員が、メタルの最も攻撃的で暴力的な側面に興味を持っていたね。それからバンド名を KAOS から DEATH HEAVEN に変更し、2005年にデモを、2007年に “Viral Apocalypse” というアルバムをレコーディングしたんだよね。
この数年間で最も注目すべき出来事は、CYNIC のオープニングを務めたライブと、オーストリアでの初の海外ツアーかな。

Q2: The band has been around since the early 2000s and has recently changed its name to Ad Nauseam? Why did you change your name to this?

【AD NAUSEAM】: Sometime you have to let go something to be able to grow, to evolve, to change. That was the case with Death Heaven, a name that we chosen when we were very young (Andrea P. and Matteo G. were 15!).
When our musical taste and our music developed and our sound became more unhortodox, we decided to change name in Ad Nauseam. It was around December 2011.
Ad Nauseam (until the nausea) is a name that massively represent our approach to everything that concern our work. Music composition, sound research, artwork and graphics, lyrics, live concerts are all the result of a refining process that we iterate “until the nausea”, until the result looks to be (nearly) perfect.

Q2: AD NAUSEAM というバンド名に改名したのはなぜだったんですか?

【AD NAUSEAM】: 成長し、進化し、変化するためには、何かを手放さなければならない時がある。それは DEATH HEAVEN の場合も同じで、何しろ僕たちがまだ若かった頃(Andrea P .と Matteo G. は15歳だよ!)に決めた名前だったからね。だから、僕たちの音楽の好みや音楽が発展し、サウンドがより非凡なものになったとき、僕たちは AD NAUSEAM に名前を変えることにしたんだ。2011年12月頃のことだね。
AD NAUSEAM(吐き気がするまで)という名前は、僕たちの仕事に関わるすべてのことに対するアプローチを表しているよ。作曲、サウンドリサーチ、アートワークやグラフィック、歌詞、ライブコンサートなど、すべてが「吐き気を催すまで」繰り返し行われる洗練されたプロセスの結果であり、その結果が(ほぼ)完璧に見えるまで繰り返されるからね。

Q3: You guys, of course, recently there have been a lot of high-profile Italian metal bands like Nero Di Marte and Dark Quarterer. How has the scene changed?

【AD NAUSEAM】: To be precise, Italy has always had a characteristic scene and delivered many unique bands over the last 40 years. Death SS with Paul Chain moved their first steps in the seventies. Bulldozer and Necrodeath were ahead for their time in mid eighties. Other bands that populated the underground were equally talented, but they had no luck to get what they deserved. A lot of interesting bands arose between ’80s and ’90s: Maleficarum, Excidium, Schizo, Sadist, Doomsayer, Flash Terrorist, Enslaved… Unfortunately they grown in a country that wasn’t ready to support such extreme acts. It was a mixture of cultural aspects and lack of structures that made their life very hard, so that most of those bands desappeared.
In the following years some bands got more recognition outside the Italian boundaries, like Aborym, Hour Of Penance…
In the last decade or so, Italian extreme metal scene grew so much that can be now considered one of the strongest in the world. The quality level recently reached by many Italian bands is mindfucking. Gorrch, Hateful, Nero Di Marte, Fuoco Fatuo, Bedsore, Noise Trail Immersion, Continuum of Xul, Progenie Terrestre Pura, Totalitarian, Putridity and Cosmic Putrefaction are just few examples.

Q3: あなたたちはもちろん、NERO DI MARTE, DARK QUARTERER など最近はイタリアのメタルシーンが注目を集めていますね?

【AD NAUSEAM】: 正確には、イタリアには常に特徴的なシーンがあって、過去40年間に多くのユニークなバンドを送り出してきているんだよ。Paul Chain を擁する DEATH SSは70年代にその第一歩を踏み出した。80年代半ばには BULLDOZER と NECRODEATH が時代の先端を行っていた。アンダーグラウンドで活躍していた他のバンドも同様に才能があったけど、彼らには相応しいものを得る運がなかったんだ。
80年代から90年代にかけて、多くの興味深いバンドが誕生したよ。MALEFICARUM, EXCIDIUM, SCIIZO, SADIST, DOOMSAYER, FLASH TERRORIST, ENSLAVED…。残念ながら、彼らはそういったエクストリームな音楽の活動をサポートする準備ができていなかった国で成長したんだ。文化的な側面と構造の欠如が混在していたため、彼らの生活は非常に厳しく、ほとんどのバンドが姿を消してしまったんだよ。それから、ABORYM や HOUR OF PENANCE のように、イタリアの枠を超えて認知されるようになったバンドも出てきたのは出てきたんだけど…。
ここ10年ほどで、イタリアのエクストリーム・メタルシーンは非常に成長し、今では世界で最も強力なシーンのひとつと考えられるようになったね。最近、多くのイタリアのバンドが到達したレベルには驚かされるよ。GORRCH, HATEFUL, NERO DI MARTE, FUOCO FATUO, BEDSORE, NOISE TRAIL IMMERSION, CONTINUUM OF XUL, PROGENIE TERRESTRE PURE, TOTALITARIAN, PUTRIDITY, COSMIC PUTREFACTION などはその一例だよ 。

Q4: Italy was one of the earliest countries in the world to be affected by the Corona and suffered enormously. Has this new work been affected by the pandemic?

【AD NAUSEAM】: This album is the result of 6 years of work. This means that only the very last part of it has been affected by the pandemic. When Italy went in total shutdown lin March 2020, we were reamping the stringed instruments, so we had to pause everything and wait to be able to go out of our homes again. During these two months Andrea P. had plenty of time to compose and record all the orchestral parts. It has been a really long job as some of the orchestral parts (on the end of Sub Specie Aeternitatis and the beginning of Inexorably Ousted Sente) are made by 60+ layers of violins takes he personally recorded one by one, which required many days of full-time work (as he done in our previous record, by the way). Moreover, during that period he had the time to work on the previously recorded drums tracks.

Q4: イタリアはコロナ・ウィルスの被害を最も早く、甚大に受けた国の一つです。今回のアルバムは、そのパンデミックに影響を受けていますか?

【AD NAUSEAM】: このアルバムは6年の歳月をかけて作られたんだ。つまり、パンデミックの影響を受けたのは一番最後の期間だけなんだよ。2020年3月にイタリアが全面的に閉鎖されたとき、僕たちは弦楽器のリレコーディングを行っていたので、すべてを一時停止して、再び家の外に出られるようになるのを待たなければならなかった。
この2カ月間で、Andrea・P はすべてのオーケストラ・パートの作曲と録音に十分な時間を割いたんだ。いくつかのオーケストラ・パート( “Sub Specie Aeternitatis” の最後と “Inexorably Ousted Sente” の最初)は、60以上のヴァイオリンを重ねて、彼自身が1つずつ録音したものなんだよ。何日もフルタイムで作業しなければならなかったので、本当に長くかかったね。ちなみに、前作でもそうだったんだけど。さらに、その間に以前録音したドラムのトラックにも時間を割くことができた。

Q5: Why did you choose the album title “Imperative Imperceptible Impulse”? What is the concept behind your work?

【AD NAUSEAM】: The meaning of the title track is very personal. Andrea P. was facing a difficult time in his private life and that what he wrote is so deeply rooted in his unconscious that he is still discovering new meanings that are important to him. Basically, we can say that our lyrics come from places we don’t fully understand, places that are inside all of us, places that are not meant to be understood. As the music, the sound, and the artwork of I.I.I., even the lyrics should just be experienced freeing the mind of any concept, any label, and just letting it resonate with the deepest unconscious layers. Probably people from Japan have a cultural background that allow this to happen easily.

Q5: “Imperative Imperceptible Impulse” という作品のタイトル、コンセプトについてお話ししていただけますか?

【AD NAUSEAM】: タイトル曲の意味はとても個人的なものでね。Andrea P. は当時、私生活で困難な時期に直面していたんだ。だから、今回彼が書いたものはそんな無意識に深く根ざしていて、今でも彼にとって重要な意味を新たに発見していっているんだよ。
基本的に僕たちの歌詞は、完全には理解できない場所、僕たち全員の内側にある場所、理解されることを意図していない場所、から来ていると言えるだろうな。”Imperative Imperceptible Impulse” の音楽、サウンド、アートワークがそうであるように、歌詞も、あらゆる概念やラベルから心を解放して、無意識の深い層と共鳴させながら、ただ経験すればいいんだよ。
おそらく日本の人々は、それが容易にできる文化的背景を持っているのではないかな?

Q6: Recently, bands from the New York metal scene such as Imperial Triumphant, Liturgy and Krallice have been making headlines for creating death/black metal with influences from jazz and contemporary music. It seems like you guys are heading in the same direction, would you agree?

【AD NAUSEAM】: We were heading toward this direction since 2005, when we started composing Viral Apocalypse, under the name of Death Heaven. That intrinsic urge to melt metal with other dark impurities coming from different genres was definitely a first inadequate attempt, but it was there. It is definitely not something new to us.
We are happy that other bands are joining us on this direction. Of course, we are not the first to do that. Just think what several bands of the second wave of black metal did in the late nineties. Understanding that to create something new you have to step out of your boundaries, taking inspiration from the great masters that expanded our conception of music is just a normal step an artist needs to do to find himself.

Q6: 最近は、IMPERIAL TRUMPHANT, LITURGY, KRALLICE といった、ジャズや現代音楽の影響を受けたNYCのデス/ブラックメタルがシーンを牽引していますね。AD NAUSEAM にも同様の素養が感じられますが?

【AD NAUSEAM】: 2005年に DEATH HEAVEN 名義で “Viral Apocalypse” の作曲を始めたときから、すでに僕たちはこの方向に向かっていたんだ。メタルに様々なジャンルのダークな不純物を加えて溶かしたいという本質的な衝動は、最初は不十分な試みだったけど、たしかにそこにあったんだ。だから僕たちにとって決して新しい試みではないんだよね。
他のバンドがこの方向性に参加してくれるのは嬉しいことだよ。もちろん、僕たちが初めてのバンドではないけどね。90年代後半に、ブラックメタルの第二波に属するいくつかのバンドがやったことを考えてみて欲しい。新しいものを作るには、自分の限界から一歩踏み出さなければならないことを理解するべきさ。
そのために、僕たちの音楽の概念を広げてくれる偉大な巨匠たちからインスピレーションを得ることは、アーティストが自分自身を見つけるために必要な、ごく普通のステップなんだよ。

Q7: Lately, when we interview complex extreme metal bands, many of them say that they were influenced by Voivod, Gorguts, Neurosis, Cynic and Death. How about you?

【AD NAUSEAM】: We all started to listen metal when we were 12-13 years old, when we first started to play together in 2003 we already was already into metal up to the neck. The list of bands we have been influenced from is so long that an entire page would not be enough to name just the more important of them. The bands you mentioned played a great role in the development of metal music and at certain level influenced us a lot, but a really big number of other bands you may not expect had an impact in our sound as well.

Q7: 先駆者と言えば、最近、実験的なエクストリーム・メタルバンドにインタビューすると、VOIVOD, GORGUTS, NEUROSIS それから CYNIC と DEATH の名前は本当に良く登場しますよ。

【AD NAUSEAM】: 2003年に初めて一緒に演奏したとき、すでに僕たちは首までメタルに浸かっていた。影響を受けたバンドのリストは非常に長く、重要なものだけでも挙げるとページ全体が足りなくなってしまうよね。
君が挙げたバンドはメタルの発展に大きな役割を果たし、あるレベルでは私たちに大きな影響を与えているけど、君が予想しないような他のバンドも非常に多く、僕たちのサウンドに影響を与えているんだ。

Q8: I read an interview in which you spoke of your admiration for Steve Albini. Sound-wise, this album seems to take metal to the next level, doesn’t it?

【AD NAUSEAM】: We assume it’s a bit exaggerated. In the past years the average of the sound quality decreased a lot among metal music so an album like ours easily stands out. Very few ones give importance to the dynamics, for instance. We have always worked very hard to create our own “next level”. We developed our own approach to the sound during years and years of testings, listenings, experiments. Our research spans form listening to a lot of music to the design of our own personal studio machines, cabinets, amplifiers, drumkit pieces, even microphones! Since 2003 Andrea P. become a skilled sound technician growing technically and philosophically in unison with our tastes and believes on what our band should sound (and what it shouldn’t). I.I.I. is the result of 18 years of research and experiments. Steve Albini has a sound phylosophy that is very near to ours. It is natural to try to learn from people that are better than us. And he is probably the best.
Of course this is still the beginning, it will always be. Andrea is happy but he is never completely satisfied with the results he gets. There will be always improving margins.

Q8: あなたが Steve Albini を崇拝していて、サウンド面でもメタルをネクスト・レベルへ誘いたいと語っていたインタビューを読みましたよ。

【AD NAUSEAM】: まあ、それは少し大げさだけどね。ここ数年、メタルの中で音質の平均値が大きく下がっているから、僕たちのようなアルバムは目立ちやすいんだろうな。例えば、ダイナミクスを重要視している作品はほとんどないよね。
僕たちは、常に自分たちの「ネクスト・レベル」を作るために懸命に努力してきたんだ。何年も何年もテスト、リスニング、実験を繰り返して、サウンドに対する独自のアプローチを開発したんだよ。
僕たちの研究は、多くの音楽を聴くことから、自分たち専用のスタジオ・マシン、キャビネット、アンプ、ドラムキット、さらにはマイクの設計にまで及ぶ。2003年以降、Andrea P .は熟練したサウンドテクニシャンとなり、技術的にも哲学的にも、僕たちのバンドがどのようなサウンドであるべきか(そしてどのようなサウンドであるべきでないか)という好みや信念と一体となって成長してきたわけさ。
だから、”Imperative Imperceptible Impulse” は、18年間の研究と実験の結果なんだ。Steve Albini のサウンド哲学は、僕たちの哲学ととても近いものがある。自分よりも優れた人から学ぼうとするのは自然なことだよ。そして、彼はおそらくこの業界で最高の人だ。
もちろん、まだ始まったばかりで、これからもずっとそうだろう。Andrea も、得られた結果に完全に満足しているわけではないからね。常にマージンの改善が必要なんだ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED AD NAUSEAM’S LIFE

Andrea P.
Scott Walker: Bish Bosh, Nevermore: Dreaming Neon Black, Cryptopsy: And Then You’ll Beg, Mayhem: Ordo Ad Chao, Shostakovich: String Quartets 3, 7 & ,8 (Borodin String Quartet)

Matteo G.
Morbid Angel: Covenant, Neurosis: Through silver in blood, Swans: The great annihilator, King Crimson: The power to believe, Voivod: Phobos

Matteo B.
Megadeth:  Rust In Peace, Mysticum: In The Streams Of Inferno, Thorns: Thorns, Mayhem: De Mysteriis Dom. Sathanas, Acid Bath:  When The Kite String Pops.7

Andrea S.
Ulver: Perdition City, Carpatian Forest: Bloodlust and Perversion, Marduk: Nightwing, Ulver: Shadows of The Sun, Death: Live in L.A.

MESSAGE FOR JAPAN

We would like to contribute bringing metal music sound approach to a different level in the future. There are many listeners that, like us, are deeply tired by the fake plastic sounding records that are trending since the last 20 years.
Our studio is opening to every band that shares our sound philosophy. Let’s create a new trend in opposition whit the modern standards:
https://www.mstrsoundstudio.org/

僕たちは、将来的には、メタルのサウンド・アプローチを別のレベルに引き上げることに貢献したいと考えているよ。僕たちと同じように、過去20年間のトレンドである偽のプラスチック・サウンドのレコードに深く疲れている多くのリスナーがいるからね。
僕たちのスタジオは、サウンド哲学を共有するすべてのバンドに開かれているよ。現代のスタンダードに対抗して、新しいトレンドを作っていこう!

AD NAUSEAM

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GENGHIS TRON : DREAM WEAPON】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HAMILTON JORDAN OF GENGHIS TRON !!

“I Think We Have Known For a Long Time That We Wanted Our Third Album To Have More Sonic Space, And More Atmosphere, And To Create a World That Is More Warm And Hypnotic, Instead Of Being Claustrophobic And Abrasive.”

DISC REVIEW “DREAM WEAPON

「僕は今でも “ブルータル” な音楽が大好きだけど、今の僕たちの生活の中では、そういった音楽は正直な気持ちで書けるものではないし、自分たちの音楽として聞きたいと思っていたものでもないんだよね。だから少なくとも、このアルバムにお決まりのブルータルは存在しないのさ」
“Board Up the House” から13年の時を経て届けられた “Dream Weapon”。パンデミックの喧騒に、人類と地球の “重さ” を天秤にかけるレコードで彼らが戻って来たのは、きっとある種の運命でしょう。
さながら列車の分岐器のように、時おり流れを変えるレコードがレールの上へと現れますが、まさに “Board Up the House” はそういった類の作品でした。エクストリーム・メタルとエレクトロニカ究極のアマルガム。グラインドコアに絡みつくコンピューターの鼓動。反復を重ねるドゥームとシリアスなメロディーまで血肉としたこのアルバムが、以降の重音と電子音という両極端の甘やかな婚姻に果たした役割は決して少なくありませんでした。
「”Dream Weapon” のヘヴィネスは、ダークなメロディー、ヒプノティックなリズム、歌詞の内容といったソングライティングそのものから来るもので、プロダクション・スタイルから来るものではないんだよね」
13年という時間はバンドの多様性を洗練へと導き、サウンドの大きな変化をもたらしました。ただし、GENGHIS TRON がソフトになったという評価はおそらく間違いでしょう。彼らはただ、ヘヴィーの真理を追求しながら、没入感のある音楽世界という当初からの目標へとまた一歩近づいたに過ぎないのですから。実際、”重さ” とはこの夢見がちな武器のキーワードです。そして Hamilton Jordan は美しいメロディーが時にブラスト・ビートやシュレッド・ギターより遥かに重く腹に突き刺さることを認めています。
「10年前に好きだったバンドやアルバムは今でもすべて好きだけど、好みが広がって他の影響を受けているってことかな。新しい音楽にも素晴らしいものはたくさんあるけど、僕が最近聴いているのは、Peter Gabriel, TEARS FOR FEARS, KING CRIMSON, YES, CHAMELEONS。THE BEATLES でさえ聞いているよ」
メタルとエレクトロニカという一義的なジャンルの交配から距離を置くことも重要でした。10年で養った、クラッシック・ロックの素養は優しく、オーガニックに、二面性だけで語られがちなバンドの音像を嫋やかに立体へと変えていったのです。
ロックダウンの影響により別々の場所で録音されながら、Kurt Ballou は今回もそのアイコニックな手腕でバンドの進化を支えました。むしろリモートワークは作品にとってプラスにさえ働いたのかも知れませんね。おかげでミキシングとプロダクションに時間をかけることができ、「ヘヴィーのためのヘヴィー」ではなく、楽曲そのものから生じる重さ、忍び寄るようなクリーンで繊細なアプローチを Kurt に依頼することが可能となったのですから。
「初めて Nick のパフォーマンスを見たとき、僕は圧倒されたね。2017年にカリフォルニア州バークレーで行われた SUMAC のライヴだったんだけど、彼の演奏は実にパワフルでありながらニュアンスがあって、ダイナミック。本当に面白いドラムパターンを演奏していたんだ。 その頃から、もしドラマーと一緒に演奏するなら、Nick がいいなと思うようになってね。」
もちろん、 BAPTISTS や SUMAC で鳴らした Nick Yacyshyn という界隈きってのドラマーがもたらす “重さ” もGENGHIS TRON の進化にとって重要なファクターです。これまで打ち込みのドラムスで表現されていた絵画のパレットは、Yacyshyn のダイナミックなビートで有機的な三次元の広がりを見せました。
ファースト・シングルに選ばれたタイトル・トラック “Dream Weapon” はまさに彼らの現在を具現化した夢の武器でしょう。
サイケデリックでリフ主導のエクスペリメンタル・メタルは、ノイジーでフィードバックを多用したミニマルな珠玉。意図的に繰り返しを行うことで緊張感を生み出し、思うがままにダイナミズムの罠を張り巡らせます。Sochynsky のプログラミングとシンセ全ては Jordan のカラフルで質感を纏うリフへと溶け込み、機械に挑戦を挑む Yacyshyn の強烈なグルーヴは、変拍子も、もう一人の新メンバー Tony Wolski の甘くメロディックなヴォーカルラインもすべてを受け止め鼓動を刻みます。
機械が天使を遣わしたかのようなインダストリアル・ポップロック “Pyrocene”、80年代のSci-fiイメージを優しく封じたレトロ・フューチャー “Alone In The Heart Of The Light”、MESHUGGAH の哲学を電子の世界に込めた”Single Black Point”。アルバムは現代社会の苦悩、人間の醜悪と、その業が取り除かれる遥か先の夢見がちな地球両者を、時に対比させ、時に融解させながらリスナーの本能へと投影していきます。決して悪夢や暴動がひたすら押し寄せるようなレコードではありません。それでも胸に鋭く突き刺さる、機械獣の重い牙。
聴くたびに新たな発見のある作品を創生したい。”ヘヴィー” の意味を問う作品を創生したい。RUSSIAN CIRCLES や Chelsea Wolfe の生々しくも新鮮なスピリットと共鳴しながら2つの世界を描ききる “Ritual Circle” は、そうして人類と音楽に残されたわずかな希望の灯火となるはずです。人類の終わりは地球の終わりではなく、私たちの地球は再生して、前進するだろう。だから、未来を恐れるのではなく、愛をもって受け入れるべきなんだと。
「人類の終焉と世界の終焉を同一視する人がいるようだけど、それは全くの別物だ。 気候変動であれ、パンデミックであれ、小惑星や核戦争であれ、人類が終わりを迎えれば、地球は次の段階に進むんだよ。それはたしかに悲しいことなんだけど、同時に僕たちはその事実に安心感を覚えるんだよね」
日本盤はボーナストラック追加で Daymare Recordings から4/14リリース。ライナーノーツは私。どうぞ!!

GENGHIS TRON “DREAM WEAPON” : 10/10

INTERVIEW WITH HAMILTON JORDAN

Q1: Genghis Tron didn’t break up, it went on hiatus. But why did you decide to come back together after 13 years?

【HAMILTON】: During those 13 years, we always wanted to make new music again. It just took a lot longer than we had expected! For several years, Michael and I were each focusing on other things (work, family, and so on), and life just got in the way. We had to wait until the right time, when the planets aligned and we each had the space in our lives―and the inspiration―to work on a new album. But now that we are making music together again, we have no plans for another hiatus any time soon!

Q1: GENGHIS TRON は解散していたわけではありませんでしたが、それでもなぜ13年ぶりの今、休止からの復活を決めたのですか?

【HAMILTON】: この13年間、僕たちは常に新しい音楽を作りたいと思っていたんだ。 ただ、そのために予想以上の時間がかかったね。 この数年間、Michael と僕はそれぞれ別のこと(仕事や家庭など)に集中していて、まあ言ってみれば人生が壁になっていたのさ。
新しいアルバムを制作するためには、互いの人生に余裕ができ、インスピレーションが湧いてくるようなタイミングを待つしかなかったんだよね。でも、今は再び一緒に音楽を作っている。すぐにまた活動を休止する予定はないよ!

Q2: You’ve added Tony Wolski and Nick Yacyshyn to your band. Nick in particular is one of the leading drummers in experimental extreme music. Why did you choose them?

【HAMILTON】: I was blown away the first time I saw Nick perform. It was a show with Sumac in Berkeley, California in 2017. His playing at that show was so powerful, but nuanced and dynamic, and he played really interesting drum patterns. So around that time, I started thinking that if we ever played with a drummer, I wanted it to be Nick. Sometime later, I learned from an interview that Nick listens to a lot of synth music, which made me feel more optimistic that he would be a great fit. He was the first and only person we asked to play drums, and we were really happy when he said yes!
Tony is a friend of mine who I met a few years ago when I moved from California to Detroit. He is a very talented musician and songwriter. When our previous vocalist Mookie left the band, Tony seemed like a good person to ask. We started by sending him a few demos, and we were relay amazed by his vocal ideas. Tony wrote melodies that felt like a perfect fit in our songs, and yet they were something new that Michael or I never would have thought to write.
We are really stoked that Tony and Nick joined this project for Dream Weapon, because they really helped push these songs to another level.

Q2: Tony Wolski と Nick Yacyshyn が新たにバンドへと加わりましたね?

【HAMILTON】: 初めて Nick のパフォーマンスを見たとき、僕は圧倒されたね。2017年にカリフォルニア州バークレーで行われた SUMAC のライヴだったんだけど、彼の演奏は実にパワフルでありながらニュアンスがあって、ダイナミック。本当に面白いドラムパターンを演奏していたんだ。 その頃から、もしドラマーと一緒に演奏するなら、Nick がいいなと思うようになってね。
それからしばらくして、あるインタビューで Nick がシンセ・ミュージックをたくさん聴いていると知り、彼との相性がいいのではないかと楽観的になったね。 ドラムを頼んだのは彼だけだったから、OKしてくれたときは本当に嬉しかったね。
Tony は、僕が数年前にカリフォルニアからデトロイトに引っ越してきたときに出会った友人だ。 とても才能のあるミュージシャンで、ソングライターでもあるね。前任のボーカリスト Mookie がバンドを脱退したとき、トニーにお願いするのが良いと思ったよ。
まずは、いくつかデモを送ってみたんだけど、彼のボーカルのアイデアには本当に驚かされたよ。Tony は僕たちの曲にぴったりのメロディーを書いてくれたね。僕や Michael が思いつかないような新しいメロディーをね。
だから、Tony と Nick が “Dream Weapon” のプロジェクトに参加してくれたことで、曲をさらにレベルアップさせることができたんだよね。

Q3: In recent interviews, I’ve noticed that many artists have been influenced by this pandemic in various ways. I feel “Dream Weapon” seems to be one of them, would you agree?

【HAMILTON】: Most the of the album was written before the pandemic began, so I would not say that it had a big impact on the main songwriting process. But it definitely impacted the final months of finishing the songs, as well as the recording process itself (which happened in August 2020). Because of the pandemic, Nick had to record his drums in Canada, and we had to finalize all of the final arrangements (including drums) by trading demos over the internet, instead of working on songs in person. This was challenging, but it also may have benefitted the album too, because it forced us to be very thoughtful and deliberate about how every second of every song was going to come together.

Q3: ここ最近、インタビューを行う中で、いかに多くのアーティストがこのパンデミックに様々に影響を受けているのか気づきましたよ。”Dream Weapon” もそういった作品の一つに思えますが?

【HAMILTON】: アルバムのほとんどはパンデミックが始まる前に書かれていたから、曲作りのプロセスに大きな影響を与えたとは言えないかもしれない。だけど、曲を仕上げるための最後の数ヶ月と、レコーディング(2020年8月に実施)には、間違いなく影響を及ぼしたよ。
パンデミックのおかげで、Nick はカナダでドラムを録音しなければならず、僕たちは直接会って曲作りをするのではなく、インターネット上でデモを交換しながら最終的なアレンジ(ドラムを含む)をすべて完成させなければならなかった。
これはチャレンジングなことだったけど、アルバムにとってはプラスになったかもしれないよね。というのも、すべての曲の1秒1秒がどのように組み合わされるのか、深く慎重に考える必要があったから。

Q4: I interviewed a band called Neptunian Maximalism, who said about the concept of their work “It turns out that we are mistaken to think of the human being so unique in his process of evolution. “Dream Weapon” also seems to present a sad but beautiful idea that we are not special and that the earth will continue after our extinction. How about that?

【HAMILTON】: We totally agree! Some people seem to equate the end of humanity with the end of the world. But those are two very different things. When humanity meets its end―whether through climate change, or another deadly pandemic, or an asteroid, or nuclear war―the planet will move on. We do find some comfort in this, even though there is sadness as well.

Q4: 最近、NEPTUNIAN MAXIMALISM というベルギーのバンドにインタビューを行ったのですが、彼らは「人間だけが進化の過程においてユニークな存在だと、我々は勘違いをしている」と語っていました。
“Dream Weapon” にも、人類が滅びても地球は続いていくという、悲しくも美しいアイデアが封入されていますよね?

【HAMILTON】: うん、全く同感だね!人類の終焉と世界の終焉を同一視する人がいるようだけど、それは全くの別物だ。 気候変動であれ、パンデミックであれ、小惑星や核戦争であれ、人類が終わりを迎えれば、地球は次の段階に進むんだよ。
それはたしかに悲しいことなんだけど、同時に僕たちはその事実に安心感を覚えるんだよね。

Q5: Many fans will feel that your music has become softer after listening to “Dream Weapon”. However, the album still has a very dark and heavy atmosphere. You’ve broken away from the formulaic heaviness of blast beats, rhythmic changes and riffs, and you’ve explored a new freedom of heaviness, haven’t you?

【HAMILTON】: You expressed it very well. We wanted the heaviness of Dream Weapon to come from the songwriting itself―the dark melodies, the hypnotic rhythms, the lyrical content―and less from the production style. I still really love (and listen to) list of “brutal” music, but at this point in our lives, that is not the sort of stuff that feels honest for us to write, and it’s not the sort of material we wanted to hear in our music. At least not for this album.

Q5: “Dream Weapon” を聴いて GENGHIS TRON はソフトになったと感じるファンもいるでしょう。
しかし、実際はこの作品には実にダークでヘヴィーなアトモスフィアが存在します。バンドがただ、お決まりのブラストビートや重量感のあるリフといった場所から離れ、自由なヘヴィネスを探求した結果にも思えます。

【HAMILTON】: うん、それはとても良い表現だね。”Dream Weapon” のヘヴィネスは、ダークなメロディー、ヒプノティックなリズム、歌詞の内容といったソングライティングそのものから来るもので、プロダクション・スタイルから来るものではないんだよね。
僕は今でも “ブルータル” な音楽が大好きだけど、今の僕たちの生活の中では、そういった音楽は正直な気持ちで書けるものではないし、自分たちの音楽として聞きたいと思っていたものでもないんだよね。だから少なくとも、このアルバムにお決まりのブルータルは存在しないのさ。

Q6: What’s interesting is that your music projects an 80s vibe, like Tears For Fears or Peter Gabriel, for example. Has your taste in music changed in the last 10 years?

【HAMILTON】: That’s a compliment to be compared to Tears for Fears and Pater Gabriel―thanks! To continue with a theme from the previous question, these are artists who create music that is emotionally heavy, yet textured and warm and inviting. (Also, both have killer, pounding drums with lots of big toms―definitely something we tried to achieve on Dream Weapon!) Michael and I have both been listening to more music like this for the past 10 or 15 years, and I think we have known for a long time that we wanted our third album to have more sonic space, and more atmosphere, and to create a world that is more warm and hypnotic, instead of being claustrophobic and abrasive.
I still love all the same bands and albums I loved ten years ago, but my tastes have expanded to bring in other influences. There is a lot of great new music out today, obviously, but most of my recent listening has been focused on rediscovering things from the past that I didn’t previously know much about―including Peter Gabriel, Tears for Fears, King Crimson, Yes, Chameleons, even the Beatles.

Q6: 興味深いことに、”Dream Weapon” には、TEARS FOR FEARS, Peter Gabriel といった80年代のムードが潜んでいますよね。この10年で、あなたの音楽的嗜好も変化したのでしょうか?

【HAMILTON】: TEARS FOR FEARS や Peter Gabriel と比較されるなんて、光栄だね。ありがとう!それってさっきの質問の続きにもなるんだけど、彼らは、感情的にヘヴィーでありながら、テクスチャーがあり、温かく魅力的な音楽を作るアーティストだよね。それに、どちらもビッグ・タムを多用したキラーで迫力のドラム・サウンドを持つ。
Michael と僕は、この10年か15年の間に、こういった音楽をより多く聴くようになったんだ。そして、この3枚目のアルバムには、もっと音の空間や雰囲気を持たせたい、閉所恐怖症的で擦れた感じではなく、もっと暖かくヒプノティックな世界を作りたいと、以前から考えていたわけさ。
10年前に好きだったバンドやアルバムは今でもすべて好きだけど、好みが広がって他の影響を受けているってことかな。新しい音楽にも素晴らしいものはたくさんあるけど、僕が最近聴いているのは、Peter Gabriel, TEARS FOR FEARS, KING CRIMSON, YES, CHAMELEONS。THE BEATLES でさえ聞いているよ。そうやって、これまであまり知らなかった過去の音楽を再発見することにハマっているんだ。

Q7: So far you’ve been described as a kind of dichotomy between extreme music and electronica, but “Dream Weapon” is much more diverse and profound. So, It seems to me that this album is a defiance of that duality, would you agree?

【HAMILTON】: Yes, I definitely agree. When we started this band in 2004, the most exciting idea at the time was for us to write songs that very literally crammed lots of our genre influences into one song―as in “let’s have a crazy grindcore part, and a Warp Record IDM section, and a big Neurosis riff, and a Load Records noisy part.” That was fun and exciting when we were 20 years old, but we pretty quickly got tired of that approach. As we grew as people and songwriters, we realized that the bigger and more exciting challenge would be to weave our ideas together in a more cohesive way, such that our influences would blend and forge something new, instead of something that was a more literal combination of different elements. I understand why some people still think of our music as a combination of “metal and electronic music,” but to me, I just think of it as Genghis Tron.

Q7: これまで、GENGHIS TRON はエクストリーム・ミュージックとエレクトロニカの二分法で語られることが多かったと思いますが、今回はさらに多様で深いですよね?
その二分法から脱却するという思いはありましたか?

【HAMILTON】: そうだね、確かにそう思うよ。 2004年にこのバンドを始めたとき、当時最も刺激的だったアイデアは、文字通り自分たちが影響を受けたジャンルを一つの曲に詰め込んだ曲を作ることだったんだ。
例えば、「クレイジーなグラインドコアのパート、Warp Record の IDM のパート、NEUROSIS の巨大なリフ、Load Records のノイジーなパートを全部入れよう」とか。20歳の頃はそれが楽しくて刺激的だったんだけど、すぐにそのやり方に飽きてしまったんだよね。
人として、またソングライターとして成長するにつれ、より大きく、よりエキサイティングな挑戦は、文字通り異なる要素の組み合わせではなく、それぞれが影響を受けたものが混ざり合い自然と新しいものを生み出すような、よりまとまりのある方法で自分たちのアイデアを織り交ぜることだと気づいたんだよ。
僕たちの音楽を “メタルとエレクトロニック・ミュージック” の組み合わせだと考える人がいるのは理解できるけど、僕にとってはただ、”GENGHIS TRON のような音楽” なのさ。

Q8: Japanese game music has received a great deal of international recognition in recent years. Is there any influence from Japanese game music and 8bit culture?

【HAMILTON】: If Japanese game music has had any influence on our music, honestly it would be subconscious. I played video games a lot when I was younger, but I mostly stopped when I started playing guitar seriously around age 14. Michael is not a gamer either. That being said, I still have some very fond musical memories of certain NES games from when I was a kid, and I have no doubt that some of those melodies and tones shaped my tastes in some respect.

Q8: 日本のゲーム音楽は、近年世界的評価を受けています。あなたたちはかつて “Nintendo-core” などとも称されましたが、そういった音楽から影響は受けていましたか?

【HAMILTON】: 日本のゲーム音楽が僕たちの音楽に影響を与えているとしたら、正直なところ、それは潜在的なものだろうな。若い頃はよくゲームをしていまたけど、14歳頃にギターを本格的に弾き始めてからはほとんどしなくなったからね。Michael もゲーマーではないしね。
とはいえ、子供の頃に遊んだファミコンのゲームにはとても楽しい音楽の思い出があって、そのメロディーや音色が僕の好みを形成したことは間違いないだろうね。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED HAMILTON’S LIFE

NINE INCH NAILS “THE DOWNWARD SPIRAL”

TOOL “AENIMA”

CONVERGE “JANE DOE”

PHILIP GLASS “SOLO PIANO”

PORTISHEAD “THIRD”

MESSAGE FOR JAPAN

First, we want to give a big thanks to Tadashi and Daymare Recordings for bringing Dream Weapon to Japan. We hope people enjoy the album! Also, I really hope that we can visit to play shows some day. We currently don’t have any touring plans, but it has been a dream of mine for a long time to tour in Japan, and I hope that some day we can make that dream a reality!

まず、”Dream Weapon” を日本に届けてくれた Tadashi と Daymare Recordings に感謝するよ。皆がこのアルバムを楽しんでくれることを願っているよ。いつの日かライヴをするために日本を訪れることができたらいいなと思っているんだ。
現在、ツアーの予定はないけど、日本でツアーをすることは僕の長い間の夢だったから、いつの日かその夢を実現させたいと思うよ。

HAMILTON JORDAN

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IOTUNN : ACCESS ALL WORLDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JESPER GRAS OF IOTUNN !!

“The Immense Exploration That Was So Essential To Rock Music In The 60’s And 70’s Are Now an Essential Part Of Big Parts Of Metal Music, I Think That Makes The Coming Years And Decades Of Metal Music Extremely Exciting.”

DISC REVIEW “ACCESS ALL WORLDS”

「このアルバムは僕にとって創造性にフォーカスした作品だ。真に探求し自由であろうとする創造性は、文明や社会、人間の生活に光を当てるもので、逆に言えばそういった場所からこそ創造性は生まれるんだ。つまり、すべては生命で、共に呼吸しているんだからね」
デンマーク、フェロー諸島の雄大な自然、神秘的な伝承、豊かな感情に囲まれて育った IOTUNN のメンバーにとって、音楽とは変化を続ける人生を表現する手段です。その逆もまた真なり。滴り落ちる音の雫には、表現者の絶え間ない営みが宿っているのです。
「デンマークのメタルシーンは非常に良い状態にあり、常に動き続けているから、そこに参加していて本当に楽しいんだよ。MYRKUR は、僕にとってこの波を象徴するアーティストなんだ。彼女は、音楽をこれまでのデンマークのメタルアーティストが到達したことのないような場所までに持っていこうとしたんだよ。そして、音楽と自然、時間軸を超えた物語、感情を結びつけることの重要性を示したと思うね」
Lars Ulrich のルーツにして KING DIAMOND の母国デンマークは、古くから様々なメタルの交差点でした。PRETTY MAIDS, DIZZY MIZZ LIZZY, ARTILLERY, SATURUNAS, MANTICOLA。彼らが纏った、常に変化を誘う自然と空間、時間、感情の多様な繋がりは、今、VOLBEAT, MYRKUR, VOLA, MOL といったデニッシュ・メタル新たな波へと増幅されながら引き継がれているのです。
「IOTUNN とは、古ノルド語で “巨人” を意味する言葉なんだ。僕にとってこの言葉は、絶え間ない変化と変革を強いる自然と宇宙の力を表していて、それによって人間の謙虚さ、好奇心、そして人生や創造性における開放性をも表そうとしているんだよ」
遅れてきたデンマークの巨人は、デビューフル “Access All Worlds” で文字通り、メタルに根差すすべての世界へとアクセスし、変化を恐れず表音力の限界を突破します。巨人に似つかわしい巨大なサウンド。アグレッションの畏敬からアトモスフェリックな没入感まで、グルーヴとメロディーの多彩な感情に彩られたレコードは、壮大と荘厳を極めながらリスナーを宇宙と自然、そして人生の旅路へと誘います。BARREN EARTH や HAMFERD で世代最高の歌い手と評される Jon Aldara が紡ぐ旋律を、美しき星の導きとしながら。
「60年代、70年代のロックに不可欠だった膨大な探求心は、今ではメタルの大部分にとって不可欠な要素となっているよ。だから、多様性はメタルのこれからの数年、数十年を本当にエキサイティングなものにしていくと思う」
62分のレコードの中で、バンドはプログ・メタルの再構築、再発明に挑みました。CYNIC のスペーシーなプログ・デス、KATATONIA の仄暗きアトモスフィア、ENSLAVED の神話のブラック・メタル、INSOMNIUM の知的なメロディック・デスメタル、MASTODON の野生、それに NE OBLIVISCARIS のモダンで扇情的な響き。
重要なのは、心に響くメロディーであれ、流麗なギターソロであれ、重厚なデスメタルの力であれ、IOTUNN は先人の生きた足跡を噛み締めつつ、フェロー諸島という環境、そして自らの人生で養った表現力を遺憾なく発揮して前人未到のスピリチュアルな境地へとメタルを誘った点でしょう。その彼らの創造性という飽くなき好奇心は、アルバムを締めくくる14分、神話とSFが出会う場所 “Safe Across the Endless Night” に凝縮しています。
今回弊誌では、ギタリスト Jesper Gras にインタビューを行うことができました。「創造的に正しいと思うことは何でも行うという自由。この自由の中で僕たちは、世界で常に提示され、強制されているすべての境界線を破ろうという意思表示なんだ」 どうぞ!!

IOTUNN “ACCESS ALL WORLDS” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IOTUNN : ACCESS ALL WORLDS】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ABIOTIC : IKIGAI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN MATOS OF ABIOTIC !!

“I Was Doing Some Reading And Fell In Love With The Concept Of Ikigai. In These Challenging Times, I Know a Lot Of Us Are Struggling With Finding Our Reason For Being, And I Wanted To Write an Album About That Struggle, Pain, And Perseverance.”

DISC REVIEW “IKIGAI”

「日本についての本を読んでいたら、”Ikigai” というコンセプトに惚れ込んでしまったんだよ。この厳しい時代に、僕たちの多くは自分の存在理由を見つけ出すのに苦労していると思う。僕はそんな苦労や痛み、忍耐についてのアルバムを作りたいと思ったんだよね」
2010年の結成以来、フロリダで最も急速に成長を遂げたデスコア/テクデスのハリケーン、ABIOTIC。5年間の活動休止で彼らは内面的にも音楽的にも遥かな進化と成熟を遂げ、彼らの存在理由、”生き甲斐” を叩きつけてみせました。
「それぞれの楽曲は、生き甲斐というコンセプトを異なるアプローチで表現している。5年の歳月を経て、宇宙やエイリアンについての作品は今でももちろん好きだけど、生き続ける理由を見つけるのに苦労するような時代に、感じられるもの、親近感を持てるものを書きたいと思ったんだ」
コロナ・ウィルスが日常を、社会を、そして音楽業界全体を破壊し続けていることは言うまでもありません。人の心まで侵される現代の恐怖の中で、ABIOTIC が復活を遂げたのは決して偶然ではないでしょう。デビュー作の “Symbiosis” や、プログレッシブ・スペース・オデッセイ “Casuistry” で宇宙や地球外生命体を探求した彼らは、遂に地上へと降り立ち、人類の現状を憂い、人と繋がりながら悲しみ嘆き、共感し、空想的なものよりも優先すべきテーマを見つけました。
「あれほど才能のあるバンドが多数所属するレーベルの一員になれて嬉しいね。アーティスト自身が運営するこのレーベルは、まるで家族のように感じられるんだ」
Metal Blade から Artisan Era へのレーベルの移動、SCALE THE SUMMIT の Killian Duarteとドラマーでありエンジニアでもある Anthony Simone を含む再編成されたラインナップ、さらに THE BLACK DAHLIA MURDER, ARCHSPIRE, ENTHEOS, FALLUJAH といった錚々たるバンドからの錚々たるゲスト陣を見れば、このバンドがメタル世界における “Symbiosis” “共生” を実現していることに気づくでしょう。そして、一欠片の獰猛も損なうことなく、プログレッシブ・ジャジーな奇譚と和の旋律が “共生” する9通りの “Ikigai” は、これまで以上に共感を誘う傑作に違いありません。
和の心、メロディー、情景、情緒を存分に取り入れた開幕の “Natsukashii”, “Ikigai” は、さながらデス・メタルで綴る日本の歴史絵巻。正確無比なテクデスの猛威に浸透する大和の雅は、リスナーの心身に映像を投影する新生 ABIOTIC の哲学を承知しています。
「不寛容さに直面しているトランスジェンダーとしての人生、依存症患者としての人生、メンタルヘルスと闘っている虐待を受けた子供としての人生、気候変動によって住処が破壊されたフクロウとしての人生など、無限の人生は苦悩しながらも、その苦悩に耐えているんだよね。そして、16世紀の日本の野山で息を引き取る前に、彼はその生のつながりに自分の目的を見出すわけさ」
アートワークの侍は、”Ikigai” で切腹を遂げる今際の際に、21世紀におけるさまざまな人生の苦悩を走馬灯のように目撃し、共感します。
トランスフォビアによる虐待と自死をテーマとしたリード・シングル “Souvenir of Skin” のように、侍が目にする苦痛はすべてが21世紀のもの。切腹の果てに訪れるやるせない未来は、重さを極めながら記憶に残る ABIOTIC の哀しみと濃密な二重奏を描いていきます。さながら、Travis Bartosek の重低咆哮と、TBDM の Trevor の雄叫びがシンクロするように。
FALLUJAH の Scott Carstairs が嗚咽と希望を壮大なスケールのギターソロで表現し、バンドがソングライティングの粋を尽くして GORGUTS の異形やメロディーを重ねる “Horadric Cube” は傑出した瞬間ですし、CYNIC の宇宙と諸行無常が ex-THE CONTORTIONIST の Jonathan Carpenter の美声によって無限に広がる “Grief Eater, Tear Drinker” はアルバムの痛みそのものと言えるでしょう。
重厚なストリングスに導かれる “Gyokusai” で侍は生きる意味を見出します。ただし、すべては遅すぎました。死はもう始まっていました。辿り着いたのは永遠の休息。きっとリスナーには、手遅れになる前に、何かを見つけて欲しいと願いながら。
今回弊誌では、ギタリスト John Matos にインタビューを行うことができました。「アルバムの制作とアートワークは “Ghost of Tsushima” が発売される前に完了していたんだけど、人々が僕たちのアートワークと音楽をあの最高のゲームに関連付けてくれるのは素晴らしいことだよね」 どうぞ!!

ABIOTIC “IKIGAI” : 10/10

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【OPETH : BLACKWATER PARK 20TH ANNIVERSARY】PROG MUSIC DISC GUIDE RELEASE SPECIAL !!


OPETH “BLACKWATER PARK” 20TH ANNIVERSARY

WHEN TWO MODERN PROG GIANTS COLLIDE

“Blackwater Park” という言葉は、多様なモダン・プログが話題になる時、さまざまな文脈で必ず出現します。
「 このレコードは、”Blackwater Park” のようにデスメタルとプログを交配しているね?」
「彼らの新作は好きだよ。”Blackwater Park” ではないけど、新しいサウンドで前進している」
Mikael Akerfeldt と Steven Wilson。モダン・プログの二巨星が初めて出会った場所。OPETH にとって5枚目のアルバムが、最も決定的で完璧に構成されたレコードであるという考えに反論するのは困難でしょう。このアルバムが当時のプログレッシブ・メタル界に与えた影響の大きさに反論することも不可能に近いはずです。今日に至るまでこのアルバムは、現代の大半のリリースとの比較対象であり続け、現代のプログレッシブ・ミュージックの重鎮たちが最も高く評価しているレコードでもあるのです。
しかし、21世紀の変わり目にせめぎあったメタルバンドの群れの中で、このアルバムを際立たせたものは何だったのでしょう?なぜこのアルバムはモダン・プログの名盤の一つとして崇められているのでしょう?それを知るためには、千年紀の変わり目、ヨーロッパの重苦しい風景に戻らなければなりません。SNSのナルシスト的な強迫観念や、ブログの前の時代で、新聞が本物のニュースソースであり、CDの売り上げが本物の指標であった時代。

90年代後半、METALLICA がスラッシュのルーツから脱却したことで、メタルの曲作りとイメージ両方に対するアプローチは変化が生じていました。楽曲はより短く、ラジオで流れやすいものに。Nu-metal はMTVを席巻し、ドレッドとトラックパンツがトレンドに。KORN, SLIPKNOT, LIMP BIZKIT, LINKIN PARK といったバンドは、ヒップ・ホップとメタルを融合させたエクストリーム・ミュージックの新たな巨匠となり、テレビやラジオを席巻したのです。
簡単に言えば、プログは完全に過去のものになりました。
1992年に DREAM THEATER が発表した “Images and Words” の成功は、ある種偶然のようなもので、PORCUPINE TREE, SYMPHONY X, MESHUGGAH といったアンダーグラウンド・コミュニティ最高の秘密は、まだ無名のまま。プログは、70年代、80年代の遺産を大事に食い潰しながら生き永らえていたのです。
一方で、厳しい冬のスカンジナビアでは、1990年代半ばに IN FLAMES, AT THE GATES などのメロディックなデスメタルが開花し、80年代半ば、メタルのピーク時から残っていた少数の人々により速く、より重い出口を提供しました。この時期の北欧は、メタルを多様に進化させた鬼才の花園でした。しかし、世紀が変わる頃には、ブラスト・ビート、グロウル、ギター・ソロが時の試練に耐えられず、メロデス自体は世間の目から下降線を辿り始めます。さらに、ダイナミクスの欠如、テーマの同一性、反復性の強調などが相まって、90年代後半にはすでにこのジャンルに対する不満も高まっていたのです。

この逆風ともとれる環境の中で、Mikael Akerfeldt はメロディック・デスメタルとプログレッシブ・ミュージックの実験を始めました。80年代後半から90年代にかけてまずスカンジナビアから勃興した新たなメタルの波。OPETH, MESHUGGAH, AMORPHIS, IN FLAMES, EMPEROR といった傑物を輩出し、WALTARI の Kärtsy Hatakka が “ポストファーストメタルタイム” と呼んだそのムーブメントは、メタルの転換期にして、モダンメタルと現在のメタルシーンにとって架け替えのない重要なピリオドとなりました。
「スカンジナビアのバンドたちは、より幅広いスペクトルの音楽を聴くことで、メタルに “クレイジーさ” を加えていったんだ。」
Kärtsy が語るように、ある者は複雑なリズムアプローチを、ある者はグルーヴを、ある者はプログレッシブロックを、ある者はデスメタルを、ある者はエクストリームな残虐性を、ある者はフォルクローレを “ベーシック” なメタルに加えることで、彼らはモダンメタルの礎となる多様性を築き上げていったのです。そして OPETH は最初から、驚きをリスナーに提供していました。
「僕たちは1990年に、IRON MAIDEN に影響を受けたメロディックなスウェディッシュ・メタルバンドとしてスタートしたんだ。デビューアルバム “Orchid” では、確かにそのようなサウンドだった。だけどその後、僕たちはすべてを投げ出し、音楽的な意味で一からやり直したんだ。2枚目のアルバム “Morningrise” では、そのアプローチの変化をはっきりと感じることができた。その頃には、最近僕たちのトレードマークとなっているプログレッシブやサイケデリックの影響が自分たちのものになり、曲もずっと長くなったね。スウェーデンで同じようなことをやっていたのは、EDGE OF SANITY と KATATONIA だけだったと思うな」
1994年の “Orchid” と1996年の “Morningrise”。最初の2枚のアルバムは、ブラック・メタル、デス・メタルとフォークを融合させた不可思議な作品で、Allmusic は後者を「驚くほどユニーク」と評しています。この2枚のアルバムは、獰猛と知性、そして抽象的音楽を愛する人たちに新しいスターを提供し、次のレコード “My Arms, Your Hearse” は、そのスタイルをさらに消化しやすいフォーマットに凝縮していきました。Thinking Man’s Metal などと称され始めたのも、この頃です。
「”Thinking man’s metal”という言葉は大嫌いだ。まるで僕たちが優越的な感じに聞こえる。他のどのメタルバンドよりも知的だみたいにね。この言葉を思いついた人は良かれと思って使うのかもしれないけど、実際には僕たちに害を与え、人々を遠ざけているかもしれないよ。だから、このことは忘れよう!」

1999年、OPETH は “Still Life” をリリース。このアルバムでは、デス・メタルとアコースティックな要素を融合させ、プログレッシブな精神をより深く浸透させています。しかし OPETH にとって4枚目のアルバムは、優れたコンセプト・アルバムであったにもかかわらず、彼らが費やした努力と希望に報いるまでの注目は集めることができませんでした。それでも、Peaceville Records と契約しツアーの機会が増えたことで、マスターマインド Mikael Åkerfeldt とメンバーは、大きなブレークがすぐそこまで来ているという希望を感じていました。
その予感は期待を超えて的中します。2001年に発表された “Blackwater Park” は、このスウェーデンのグループにとって大きなステップストーンとなっただけでなく、エクストリーム・メタル全体にとっても大きな飛躍となったのですから。
「最終的に、音楽を店頭に並べ、より多くの人々に届けてくれるレーベルと関わることができて、とても嬉しかったな。それまで僕たちの存在を知らなかったメディアからも注目されるようになり、ついにはきちんとしたツアーに出て、あちこちで演奏できるようになったからね。僕たちにとって重要な時期だったよ。だから外側から見れば、”Blackwater Park” が僕たちにとって大きな変化をもたらしたという感覚があるのも理解できるよ」
その理由の一つは、OPETH がステップアップとなった Peaceville を離れてさらにビッグな Music for Nations に移籍することとなり、流通やプロモーションの見通しが広がったことにありました。当初、 Åkerfeldt はこの義務的な移動に不満を抱いてい増したが、すぐにそれが最善であることに気付きました。Music for Nationsには、プロとしての態度、豊富なスタッフ、運営のためのロジスティック能力が備わっていました。この新しいパートナーシップにより、OPETH はÅkerfeldt とギタリストの Peter Lindgren が敬愛する PORCUPINE TREE の Steven Wilson をプロデューサーとして迎えることができたのです。

「僕たちが抱えていた問題は、ビジネス上のものだった。最初の10年間で4枚のアルバムをリリースしたけど、ツアーは1回しか行わなかった。10年間でツアーは1回だけ! 僕たちの作品を聴いてくれる人がたくさんいることはわかっていたけど、所属していたレーベルが外に出してくれないことに不満を感じていたんだよ。だけど”Blackwater Park” では、イギリスのMusic For Nationsと契約したことで、その状況が一変したんだ。だけど音楽的には、このアルバムはまったく変化していないと思う。注目されているからそう見えるのかもしれないけど、前のアルバム “Still Life” を聴いても、同じスタイルなんだよ」
Wilson は Åkerfeldt にメールを送り、”Still Life” の巧みなスタイルが彼のメタル愛を再活性化させたと伝えていましたが、それでも Åkerfeldt は当初 Wilson の名声と博識に怖気づいていました。しかし、ロンドンのカムデンにあるタコスバーで出会った二人は意気投合し、Wilson は “Blackwater Park” の制作に参加することになりました。
「僕たちは、”Still Life” “My Arms Your Hearse” の両方で、Fredrik Nordstrom というスウェーデン人エンジニアとコラボレーションしていた。メタルシーンでは有名で、多くのバンドをプロデュースしていて、ヨーテボリに自分のスタジオ(Studio Fredman)を持っていたからね。彼は、僕たちが外部のプロデューサーを起用するならば、自分が第一候補になるだろうと常に考えていたんだろう。しかし、残念ながらそうじゃなかった。
Wilson のことを Nordstrom に伝えたとき、彼は少し傷ついていたね。怒りはしなかったけど、明らかに動揺していた。幸いなことに、彼とスティーブンは一度会うととても仲良くなって、スタジオで問題が起こることはなかったね。お互いに理解し合い、素晴らしいパートナーシップを築くことができた。最終的に、僕たちは Nordstrom にアルバムのミキシングを任せたんだ。みんな彼を信頼していたし、仕事も素晴らしかった」

“Book of Opeth” の中でWilson は「当初は、自分に何ができるかもわからず、メタルのこともよく知らないのに、メタルバンドをプロデュースすることに不安を感じていた」と認めています。
「1995年にリリースされたアルバム “The Sky Moves Sideways” を聴いて以来、Wilson のファンだったんだ。一緒になったのは、ほとんど偶然だったけどね。”Still Life” が発売された頃、僕はようやくインターネットを始めたんだ。驚いたことに、最初に受け取ったメールの1つが Wilson からのもので、僕たちの作品をどれだけ愛しているかを綴っていたんだ。とにかく、彼に会うためにガールフレンドと一緒にイギリスに飛んで行って、食事をして、最後に僕たちをプロデュースしてくれないかと頼んだね。そして彼は、僕と同じように熱心に取り組んでくれたんだ」
OPETHのファンを満足させなければならないというプレッシャーと、バンドが必要とする冒険的スタイルも不安の要因となりました。しかし幸いなことに、Wilson は Åkerfeldt の夢の実現に最適な人物でした。熟練したプロデューサーとしての役割と、真に進化的なパフォーマーとしての役割を併せ持つ Wilson は、 “Blackwater Park” をプログレッシブ・デスメタルの歴史において、驚異的に洗練された、不可欠なパートのみで構成された、時代を超えた作品に仕上げたのです。そしてこの作品においての彼の仕事は、OPETH を後の”Deliverance” や “Damnation”、そして PORCUPINE TREE を2002年の “In Absentia” や2005年の “Deadwing” といった場所へと導くことになりました。
「多くのファンが、僕たちがメタル系のプロデューサーと仕事をしていないことを知って心配したことは知っている。だけど、彼は僕たちのサウンドを変えるのではなく、強化してくれたんだ。メタルの世界で、他の人と同じようなビッグネームを起用しても意味がなかっただろうな。僕たちは、リスクを冒したかったんだ。なぜなら、そうすることで、楽曲から最高のものを引き出すことができるからね」

ドキュメンタリー番組 “Making of Blackwater Park” では、ベーシストのMartin Méndez とドラマー Martin López が、これまで以上に集中してアルバムを作り上げたと語っています。この時点で Åkerfeldt は明らかに OPETH の中心でしたが、それでも López とMéndez と可能な限り共闘しプッシュしました。その結果、リズミカルなデュオは、より”繊細さ” と “自信” を持って演奏することを学びながら、自らの声がいかに重要であるかを感じとっていました。
制作に関して、OPETH はスウェーデンのイエテボリにあるスタジオ・フレッドマン(”Still Life” や “My Arms, Your Hearse” を制作した場所)に戻り、2000年8月から10月にかけてレコーディングを行っています。 Åkerfeldt は、このレコードがそこまで音楽的に劇的な進化を遂げているとは思っていませんでしたが、歌詞の内容は別で、これまでよりかなり自伝的で厭世的な内容になっています。ドキュメンタリー番組の中で彼は「世の中にはおかしな人がたくさんいると思うし、俺だってバカに嫌がらせを受けることもある。そういうことがあって、自分がいかに人を嫌っているかということを歌詞にしたんだ。そして、それをもっと病んだものにするため、さらにスパイスを加えたんだよ!」とコメントしています。
“Blackwater Park” のレコーディングでは、最小限のリハーサルでスタジオに入り、ほとんど歌詞を書いていない状態で制作にとりかかりました。
「”Bleak”, “Blackwater Park”, “Harvest”, “The Leper Affinity” の4曲はほぼ完成していたと思うけど、それらもスタジオで変わっていった。残りの曲は、スタジオで一生懸命、創造的に作業をしながら作ったものさ。ヨーテボリに移動する前に、バンド全体で新曲のリハーサルを3回行ったことを覚えているけどね」

バンドと Wilson はスタジオの狭い部屋に2週間寝泊まりしたあと、DARK TRANQUILLITY の Mikael が所有していたアパートに居を移しました。
「窮屈に見えたかもしれないけど、僕たちの頭の中には音楽のことしかなかったから。気が散るものは何もなく、僕たちは曲で結ばれていたんだよ。それがとても重要だった。家から遠く離れた場所(バンドはストックホルムを拠点としていた)にいると、気が散って仕方がないからね」
アルバムのオープニングを飾る “The Leper Affinity” は、当時 OPETH が得意としていた獰猛で幕を開けますが、楽器の上でボーカルがまさに唸りを上げる姿は、この曲をネクスト・レベルに引き上げています。洗練された激しさの中に、ほろ苦いフォーク・ロックの側面があり、最後には Wilson のアイデアによる哀愁を帯びたピアノのモチーフまで登場。
「Steven Wilson を感動させようとしていたんだ。彼はそれまでメタルバンドをプロデュースしたことがなかった....だから少し緊張していたと思う。俺たちが思いついたアイデアはすべて、彼に使えるかどうか尋ね、修正してもらったね。彼自身も奇妙なアイデアを出してきて、僕たちはそれを気に入り、結局使用することになった」
Akerlfedt は、ウィルソンとの共同作業がバンドのサウンドを「向上」させたと述べ、この決断がもたらしたポジティブな結果についてさらに詳しく説明しています。
「彼は、レコーディングの途中で面白い角度からのアイデアを沢山思いついた。彼のちょっとした仕事が、最も大きな影響を与えたんだ」
そういったアイデアは、Wilson が全曲で演奏したピアノのラインにも見られます。中でも、アルバムの最後に収録されている2分間のアコースティックな小曲 “Patterns In The Ivy” は圧巻です。この曲は、真のデスメタルファンの琴線に触れ、このレコードの奥底に存在する暗く冷たい「ブラック・ウォーター」な感情を象徴しています。

この「暗さ」は OPETH 初期のトレードマークですが、”Blackwater Park” では、リスナーがただ純粋に悲しみを感じられるような形で表現されています。”Benighted” のような温かくも陰鬱なアコースティック・オードが展開される “Harvest”。そのケルト・ダンスは、表面的には陽気に見えますが、痛みと不安が微かに入り混じるノスタルジックな感情へと変わり、物事が単純だった過去の世界を切望する遠い記憶を喚起します。
このレコードのすべての感情と芸術性が生きてくるのは、”The Drapery Falls” でしょう。
最初の2分間で OPETH は、プログレッシブ=変拍子や難解なギターソロという定説を覆します。メロディの力は楽器の技巧をはるかに凌駕し、穏やかなアコースティックの歌声から、心に染み入るようなギターのリード、Akerlfedt のデス・グロウルによるクライマックスまで、この曲は静寂と残忍の見事なバランスを保ち続けます。
実際、静寂と残忍の知的な組み合わせは、OPETH サウンドのバックボーンとなり、”Blackwater Park” の骨子にもなっています。”例えば “The Funeral Portrait” では、滝のように流れるアコースティック・サウンドがいつしか野太いギター・グルーヴへと変化し、葬儀の光景を複雑怪奇に進んでいきます。
Akerlfedt がアルバムで最も気に入っている “Bleak” は、前半のダークな不協和音が、悲痛を極めたアコースティックに変わっていくことで、静寂と残忍の理論が完成されています。中近東の旋律を取り入れながら、悪夢のような怒号とジャズ的な癒しの交錯に魅惑的なリード・メロディーを配し、フィナーレはこのレコードで2回使用したうちの1回、Lopez のダブルキックが炸裂。
OPETH のライブを一度でも経験していれば、タイトル・トラック “Blackwater Park” が解き放たれた刹那、会場内で起こる現象を思い浮かべることができるでしょう。不協和のギターリードから、ヘッドバンギングの波を引き起こす雷鳴のようなマーチへ。曲の中盤には、混沌と残虐を約束する不気味な間奏が訪れ、最後の強烈なダブルキックとデス・グロウルの降臨。レコードで最も速いテンポを刻んでいきます。

OPETH はサウンド・デザインの第一人者です。二人の巨匠がプログ・メタル世界に持ち込んだサウンド・デザインとは、音楽全体をマクロ的に捉え、それぞれの楽器や音が一つのまとまりとなって成立するという概念。”Blackwater Park” や “Damnation” のようなアルバムが、映画のような別世界のようなクオリティを持っているのはそのためでしょう。楽器やサウンドは、細心の注意を払って選択され、ミックスされます。アルバムのクレジットには「苦心して構想した」という一言が添えられていました。
「ちょっとかっこよく見られたかったんだ (笑)。アーティストは、自分の音楽を世に出すのに苦労していると思われたいんだよね。それにもし、このレコードを『簡単に思いついた』と書いていたら、少し傲慢な印象を与えたかもしれないだろ?
まあ実際のところ、どんなレコードも簡単には作れないものさ。常に一定のプレッシャーとストレスがある。とはいえ、2003年に”Damnation” と “Deliverancet’ の2枚のアルバムを同時に制作したときには悪夢のような出来事があったけど、”Blackwater Park” では約6週間でうまく収まったね」
OPETH はこれまでで最大規模のツアーを開始し、NEVERMORE, AMORPHIS, KATATONIA といった時代の戦友とともに、何週間にもわたって世界を廻りました。プレスのレビューは一様に好意的で、The Village Voice、AllMusic、Exclaim! といった非メタル系のメディアでさえ、このアルバムを大きく賞賛していました。”Blackwater Park” は、そのオーガニックで冒険的なプロダクション、展翅とした楽器編成、卓越したソングライティング、そして残忍さと美しさの完璧なハイブリッドによって、特別な作品であり続けています。
以降 OPETHは、このサウンドを3枚のアルバムでさらに追求することになります。破砕機のように重い”Deliverance”、キャッチーで美しい “Ghost Revelries” 、そして暗く実験的な “Watershed”。しかし、”Blackwater Park” で達成した完璧なバランスを超えることは不可能でした。2010年にリリースされた “Heritage” でバンドが突如方向転換したのは、まさにこの感情が一因となっていました。ある意味、この変化はバンドを救ったとも言えます。”Blackwater Park” の完璧な壮大さと美麗は、例えば “Reign In Blood” を発表した SLAYER のように分岐点であり、もうそれ以上探求不可能な領域なのかも知れませんから。

“Blackwater Park” は重さが感激を与えられること、対比の魔法の素晴らしさ、そして混沌の技術嵐に陥ることなく10分の曲を作ることが可能であることをメタル世界に刻みました。”Still Life” でほのめかした理想は、”Blackwater Park” で実現したのです。
純粋なメタルでなければ聴かないというファンはたくさんいるよね。僕はそれって本当に心が狭いと思う。だから、”Blackwater Park” で達成したかったのは、人々の音楽鑑賞の幅を広げること。僕の場合は、Steven Wilson と一緒に仕事をしたことで、作曲やレコーディングの方法に新たなアプローチが生まれ、音楽的な意味で何が可能なのかをより意識することができたんだ。そして、僕たちに刺激を受けて他の音楽をチェックするようになった多くのファンがいると思いたいんだよね。これは僕にとって非常に重要なことだよ。お説教するつもりはないけど、もし君が一つのタイプの音楽に留まっていたら、多くの世界や景色を見逃していると思うんだ。だから、”Blackwater Park” にメッセージがあるとすれば、それなんだよね」
“Blackwater Park” 完全再現のライブ・コンサートを期待するファンも多いでしょう。
「インストゥルメンタルの “Dirge For November” はステージ上でやるにはちょっと奇妙すぎるかもしれないよね。実際にアルバム全体を順番に演奏するのは…とても難しいなあ。ライブでやると、このアルバムを特別なものにしている神秘性が損なわれるかもしれないしね」

さて、その Mikael と Steven が導火線となったモダン・プログを中心に扱った書籍 PROG MUSIC DISC GUIDE が本日発売となりました。Marunouchi Muzik Magazine 編集長 Sin こと私、夏目進平も執筆で参加しております。弊誌読者様にはかならず訴えかける内容だと思います。お手にとっていただければ幸いです。

http://www.ele-king.net/books/008079/

参考文献:Killyourstereo:Remembering The Bleakness & Beauty Of Opeth’s ‘Blackwater Park’

Consequence of Sound: Opeth Blackwater Park Anniversary

LOUDERSOUND: Story Behind Blackwater Park

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARCING WIRES : PRIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YUTARO OKUDA OF ARCING WIRES !!

“Definitely Meshuggah Is a Very Important Artist For The Band. I Guess We’re Musicians That Went To ‘Jazz School’ But Still Want To Play Metal As Well So Maybe That Has a Bit To Do With Our Sound.

DISC REVIEW “PRIME”

「バンドにとって MESHUGGAH は非常に重要なアーティストだよ。僕らは “ジャズスクール” に通っていたミュージシャンだけど、メタルもやりたいと思っているから、それが僕らのサウンドに少し関係しているのかもしれないね」
ジャズとメタルを平等に愛し、その融合に成功するミュージシャンは決して多くはありません。ジャンル自体が希少種と言えるジャズメタルの領域において、ARCING WIRES ほど挑戦的で、楽しく、複雑でありながら消化しやすく、美しさに包まれた音楽に出会えることは奇跡でしょう。
「サウンドの一部として、サックスはもちろん、常に多くのエフェクトやプログラミングを取り入れていて、同様に大きな影響を受けたエレクトリック・ギターやベースのトーンとブレンドすることで、ARCING WIRES サウンドの非常に美しい、不可欠な部分を生み出していると僕は思っているよ」
ギター2本、ドラム、ベースというスタンダードなロックのラインアップにサックスを加えることは、もちろん新機軸ではありません。ドイツの伝説 PANZERBALLETT はすでにそのフォーメーションで繊細なジャズダンスと重厚なメタル戦車の完璧な融合を成し遂げています。
たしかに、”The Lizard”, “Catacaustic”, “Blue Steel” のオープニング3曲を聴けば、その比較はそれほど的外れではないと感じるはずです。しかし、同時に “Catacaustic” から放たれるマスロックの軽快さは眩しいほどにブライトで、さらに “Blue Steel” の終盤では、完全に彼ら自身の「声」を見つけ出すことに成功しています。
「HIATUS KAIYOTE は、僕たちが音楽をどう演奏するかってアイデアを形成する上で、非常に大きな影響を受けているね」
日本人である Yutaro Okuda 氏が語るように、開放的な空と海がジャンルの境界を曖昧にするのでしょうか。オーストラリアは近年、HIATUS KAIYOTE, KING GIZZ のような真のごった煮平等主義者を多数輩出しています。そうして、ジャンルからジャンルへと音の虹をかける ARCING WIRES も当然彼らの血を引いています。Art As Catharsis という彼らのレーベルも、現代におけるロックの多様性を追求する完璧なソウルメイト。
事実、”Prime” はメタルのような怒涛のグルーヴ、非常に流暢で熟練したプログレッシブ・ロック、マスロックのブライトな知性、ポスト・ロックの瞑想、アンビエントの静寂、そしてジャズ/フュージョンの魂とメソッドをシームレスに漂うサーフィンのレコード。
その波乗りを、彼らは実に繊細かつ上品にこなしているため、アルバムの基盤を見極めるのは非常に難しく、音の支配者を探し出すこともほぼ不可能。見事なバランス感覚は真の平等主義者にのみ宿ります。
「学生時代に直接影響を受けたのが Mike Rivett の “Digital Seed” というアルバムだったね。当時の僕にとっては、エレクトリック・サウンドとアコースティック・ジャズの音色の融合を初めて耳にしたアルバムだったんだ。素晴らしいよ」
“Arc9” では、ヘヴィネスとエナジーを抑えて煌めきのグルーヴとメロディに集中し、 “Eniargim” では、オリエンタルな雰囲気が導入し異国の風を運びます。何より、”Serotonin” に込められたエレクトリック・ジャズの鼓動は、UKの新たなジャズの波光とシンクロしながら、音楽に本来あるべきポジティブな新鮮さを感情の高まりに重ねてみせたのです。テレキャスやギブソンで紡がれるギターソロの音色も、画一的な現代のそれではなく、個性的な味わいで素晴らしいですね。明らかにキラキラの Djent とは距離を保ち、伝統と感情を全てに織り込んでいますから。
今回弊誌では、Yutaro Okuda 氏にインタビューを行うことができました。「日本のポップ・パンクのカルテット ELLEGARDEN は大好きだったバンドの一つさ。シドニーに住むアジア人の子供として、ある種のステレオタイプが存在していたから、彼らは僕にとって重要な存在だったな。」ANIMALS AS LEADERS 以来の衝撃。どうぞ!!

ARCING WIRES “PRIME” : 10/10

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