NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALIEN WEAPONRY : Tū】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALIEN WEAPONRY !!

“I Think Our Views On Colonization Are Pretty Clear. For Example, Raupatu Is About Massive Land Confiscations. The Colonial Government In New Zealand (And In Many Other Countries) Did a Lot Of Unjust Things, And The Result Still Affects Our Society Today.”

DISC REVIEW “Tū”

「僕たちは、メタルの聖火を未来に向けてずっと掲げ続けることが出来ればと願っているんだ。そして、その炎はオリジナルのメタルバンドたちと、世界中のファンに向けたリスペクトから生まれているんだよ。」脈々と継承されるメタルのスピリット。ニュージーランドのヤングガンズ ALIEN WEAPONRY は、受け継ぐ燈火を一際高々と世界へ向けて掲げます。
Lewis de Jong (ギター/ボーカル), Henry de Jong (ドラムス) の De Jong 兄弟が8歳と10歳の若さで結成した ALIEN WEAPONRY。Ethan Trembath (ベース) を加えて16歳が2人と18歳の高校世代トリオとなった彼らは、Napalm Records からリリースした超高校級のデビューフル “Tū” で文字通り世界を震撼させました。
実際、古のスラッシュの波動から、Nu-metal のグルーヴ、洗練されたモダンメタルの息吹き、理知的でプログレッシブなデザインにピュアなメタルのメロディーまで、ワイドな視点で綴られたアルバムの中でも、自らの背景であるマオリの文化を投影する試みはあまりにユニークで独創的です。
誇り高きマオリ、Ngati Pikiāo と Ngati Raukawa 族の血を引く De Jong 兄弟は、1864年に1.700人の英国兵に230人で対抗しその命を投げ打った伝説の戦士 Te Ahoaho の子孫にあたります。そしてその勇敢なる遺伝子は克明に若きメタルウォーリアーズの中にも刻まれているのです。
「植民地化についての僕たちの見解は実に明快だよ。ニュージーランドの植民地政府は (他の植民地政府も同様だけど) 多くの不当な行為を行ったね。そしてそのツケは、今の僕たちの社会にまで及んでいるんだ。」と語る De Jong 兄弟。マオリ語で “神々の闘い” をタイトルに冠したアルバムで、彼らは当時の列強諸国が行った不当な搾取を告発し、メタルのジャスティスで断罪していきます。
何より誇りを重んじるマオリの民は、現在でもイギリス、西欧に踏み躙られた一族の尊厳を、”Whakamā” “深い恥” の言葉とともにトラウマとして引きずっています。故に、例えメタルに惹かれたとしても、その気持ちを一族の中で明かすことは今でも簡単ではありません。だからこそ、ALIEN WEAPONRY はマオリとメタルを繋ぐ架け橋を目指しているのです。
事実、マオリの言葉 “Te Reo Māori” をフィーチャーしたトライバルなイントロダクション “Waikōrero”、そしてアイコニックなワーダンス “Haka” を前面に押し出した “Rū Ana Te Whenua” はアルバムのスピリットを決定づけています。
もちろん、ALIEN WEAPONRY の方がより多様でコンテンポラリー、時に LAMB OF GOD, GOJIRA をも想起させるほど理知的ですが、メタルのヘヴィーグルーヴに民族の血やリズムを沈めるという意味では SEPULTURA や SOULFLY との比較が多数を占めるのも頷けますね。
「マオリの言葉はニュージーランドでも日常生活で幅広く使われている訳じゃないからね。だから習得の努力を続けるのは簡単ではないよ。逆に言えば、”Te Reo Maori” で歌うこともあの言葉と繋がる一つの方法なんだ。」世界では今も二週間に一つの言語が “消失” しています。そして、”Te Reo Maori” も実は国連から絶滅が危惧されている言語の一つです。ニュージーランドのヒーローは、”Te Reo Maori” で歌うことで言語の存続にまで大きな力を貸しているのです。
アートワークに描かれたマオリの戦士が全てを象徴するレコード。今回弊誌では、メンバー全員にインタビューを行うことが出来ました。「僕たち兄弟は Kura Kaupapa Maori に通っていたんだ。没入法を取り入れたマオリの学校だよ。毎朝のルーティンとして、学校で歌ってハカを踊っていたね。だからメタルとハカをミックスするのはいたって自然なことだったんだ。」 どうぞ!!

ALIEN WEAPONRY “Tū” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JOURNAL : CHRYSALIS ORDALIAS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOE VAN HOUTEN OF JOURNAL !!

“I Have Always Been Fascinated By Emotional And Memorable Music That I Would Hear In Certain Video Games – Particularly JRPGs Like Final Fantasy And Chrono Trigger, As Well As High-Fantasy Action Adventure Games Like The Legend of Zelda Series.”

DISC REVIEW “CHRYSALIS ORDALIAS”

サクラメントに居を置く JOURNAL が “Unlorja” で2010年に奏でたテクニックとカオスのエクストリームな二重奏は、ゲーム音楽のエピカルな薫りも纏いながらプログメタル/マスコアの “日誌” に確かな足跡を刻みました。
8年の後、遂に帰還を遂げた JOURNAL が掲げたのは、幼少期から馴れ親しみ愛し続ける “JRPG” 日本のロールプレイングゲームを彷彿とさせる世界観の更なる拡大でした。
「僕のフェイバリットコンポーザーは、ファイナルファンタジーの植松伸夫さんとゼルダの近藤浩治さんなんだ。疑いようもなく、僕が聴いて来たどのメタルバンドよりも強く影響を受けているね。」ゲームの話となると明らかに饒舌さを増すコンポーザー Joe。彼のゲームに対する強い愛情は、そのまま JRPG とそのサウンドトラックのスペクタクル、壮大な世界観、ストーリー展開の妙、そして溢れる感情を最新作 “Chrysalis Ordalias” へと投影することになりました。
もちろん、そこには Joe が養ってきた THE DILLINGER ESCAPE PLAN, TRAINING FOR UTOPIA, CANDIRIA, PROTEST THE HERO, CAR BOMB といったカオティックなメタル/ハードコアの素養が基盤して存在しています。さらに160ページに渡るストーリーを反映する歌詞の深みは COHEED AND CAMBRIA 譲りでしょうか。
そうして、Joe が言うところの 「複雑なタイムシグニチャーと突拍子もないテンポをユニークにブレンドし、同時に様々な感情や景色を運ぶ作曲の妙を得ることが出来たんだ。僕たちの音楽を RPG のボス戦みたいだって言う人もいるくらいでね!」 という独創性極まるユニークブレンドのコンセプトアルバムは完成を見たのです。
JOURNAL の音楽に一際個性を生んでいるのが、ファストで難解なチップチューンサウンドの楽器による完全再現でしょう。確かに8bitサウンドをメタルワールドへと取り込んだバンドは少なからず存在していますが、人の手で半ば強引に勇敢に導入する JOURNAL の姿はまさに開拓者。
実際 Joe も、「8-bit のビデオゲームサウンドを取り入れているバンドも素晴らしいんだけど、僕は人が楽器をプレイしたサウンドの方が好きなんだ。」 と語っていますし、その試みがより生々しいサウンドスケープと、複雑でアグレッシブな迫真のインテンスを共存させているのは明らかです。
事実、”Calamity Smile” はバンドのエクストリームな実験が未曾有のダイナミズムを創造するマイルストーン。FFシリーズのバトルを想起させるスリリングな音符の連鎖、リズムの荒波を、全て演奏で具現化する狂気のハイテクニックは圧倒的な混沌と緊迫感を放ち、一方で中盤のファンキーなパートではチョコボに乗って旅をしているかのような優しい錯覚を抱かせます。
もしかすると、SikTh がゲーム音楽を制作すれば同様の景色に到達するのかもしれませんね。音の先にイメージが宿る無上のサウンドスケープ。
さらに、Joe 自身、ex-CONDUCTING FROM THE GRAVE の Drew Winter 等4人を起用したマルチボーカルシステムも完璧に機能しています。ロールプレイングゲームのキャラクターのように生き生きと適材適所で語りかける彼らの声はグロウル、スクリーム、クリーンに分厚いハーモニーまで自由自在。
特にゼルダのカラフルで牧歌的世界観が表出するタイトルトラック “Chrysalis Ordalias” では、ワイドなボーカルレンジが鮮やかに楽曲の多様性、コントラストを引き立てていますね。
ゲームとエクストリームミュージックの魅力が収束した日誌の1ページ。今回弊誌では、ギタリスト、コンポーザー、そしてボーカルも務める Joe Van Houten にインタビューを行うことが出来ました。
「例えば “FF10” の悲哀極まるシーンで、実に悲しいピアノの調べが流れ出すようにね。そうして僕たちは、ティーダとユウナがいつか結ばれることをただひたすらに願うんだ!大好きなストーリーだよ。」 どうぞ!!

JOURNAL “CHRYSALIS ORDALIAS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SOILWORK : VERKLIGHETEN】JAPAN TOUR 2019 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BASTIAN THUSGAARD OF SOILWORK !!

“What Can Be Tricky At Soilwork Shows Is That The Majority Of The Songs Are In a Decent Mid-Tempo And Then The Few Fast Songs Are Like Super Fast. It Happens That We Play 5-6 Songs In a Row That Are Very Easy Tempo-wise And Then One Super Fast Song After. It Feels Like Going From 0-100 In a Second And Sometimes That Can Be Tough.”

DISC REVIEW “VERKLIGHETEN”

昨年デビュー20周年を迎えたスウェーデンの巨人 SOILWORK は、絶対の信頼が置けるバンドです。
その真価は、幾度ものメンバーチェンジを乗り越える約20年間で11枚というその旺盛な制作意欲はもちろん、衝動と叙情の “Steelbath Suicide” から、Rob Halford をしてメタルの未来と言わしめた “A Predator’s Portrait”、洗練極まる “Stabbing the Drama”、そして2枚組のエピック “The Living Infinite” まで、エクストリームな精神とメロディーを常に共存させながら、リスナーの好奇心を刺激するフックと新機軸を織り込み続けている点にあります。冒険と安定感の絶妙なバランスとも言えるでしょうか。
3年半振りに届けられた最新作は、スウェーデン語で “現実” を意味する “Verkligheten” をタイトルに冠していました。スウェーデン遠郊のメランコリー、彼の地の悲哀を帯びた旋律は、苦悩に満ちた日常からの逃避を誘います。もしかすると、長年大黒柱として存在した名手 Dirk Verbeuren を MEGADETH に引き抜かれたトラウマも、バンドが現実からの逃避を題材とした理由の一つだったのかも知れませんね。
ただし SOILWORK は新たなドラムマイスター Bastian Thusgaard と共に再び歩み始めます。ダークで思慮深く、リピートを促すレコードにおいて、高揚感を伴う煌めきのメロディーが運ぶ絶佳のコントラストこそ作品の妙。その風情は、ロマンチシズムと言い換えても良いでしょう。さらに Bastian は、そのロマンを現実逃避に対するセラピーとまで表現し、バンドの新たな旅路を飾るポジティブな意思表明へと繋げているのです。
「”The Living Infinite” というダブルアルバムを書くことで、SOILWORK は遂に自分らしい場所を見つけたと思うんだ。」 そう Bastian が語るように、音楽的には確かにあの壮大なエピックこそがバンドにとっての転換点でした。
実際、Bjorn “Speed” Strid も最新のインタビューで、”The Living Infinite” こそが SOILWORK にとって新たな時代の幕開けだったと認めています。同時に、”Verkligheten” ではそのドラマ性に、クラッシックなメタルや80年代の雰囲気をより多分に封入したことも。
インタビューで Bastian も認めているように、Bjorn & David が牽引するノスタルジックな別バンド THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA の活発化が SOILWORK の方向性に影響を与えたことは確かです。
そしてこのノスタルジー溢れるロマンチックなセラピーに最も貢献したのは Bjorn の驚異的にワイドなボーカルレンジでしょう。”Full Moon Shoals” “Witan” で爽快壮美なハーモニーを披露する一方で、”When The Universe Spoke” では研ぎ澄まされたスクリームを投げかけます。過去のどの作品より自然に、シームレスに繋がる適材適所な歌唱の美学は、そうして AMORPHIS の Tomi Joutsen をフィーチャーした “Needles and Kin” のメタル劇場へと完璧に結実していくのです。
もちろん、David Andersson と Sylvain Coudret のギターチームもさらに充実を遂げています。もはや定型化したメロデススタイルを封印し、スウェーデンのメランコリーを封じた創造的なパッセージと、”The Nurturing Glance” が象徴するデュエルのスリルでカタルシスを喚起していきます。
そうして、スーパーファストなブラストビートから、トライバルなリズムまで変幻自在な新加入 Bastian のスティックワークを最後のピースとして、プログレッシブとさえ言える夢幻のメタルワールドは完成を迎えたのです。あの YES を彷彿とさせるアートワークも偶然ではないでしょう。
今回弊誌では、新加入 Bastian Thusgaard に自己紹介も兼ねたインタビューを行うことが出来ました。日本の THOUSAND EYES にも共鳴するような、より広義の血湧き肉躍る浪漫メタルレコード。「いくつかの楽曲はメタルらしい音数の多さから離れて、よりアクセシブルに仕上がったね。僕の考えでは良いことだと思うよ。」どうぞ!!

SOILWORK “VERKLIGHETEN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HORRENDOUS : IDOL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HORRENDOUS !!

“We Definitely Did Not Have Any Intention Of Sounding Like The Bands Like Cynic, Death, Atheist, And In My Mind Any Similarities Between Us And Them Are Mostly Philosophical. “

DISC REVIEW “IDOL”

2009年に Matt と Jamie の Knox 兄弟、そして Damian Herring によって産声を上げたフィラデルフィアの “ポストデスメタル” アクト HORRENDOUS。デスメタルの過去と未来を繋ぐその進化の徒花は、アルバムを重ねるごとに狂気の色を濃くしています。
USデスメタルとヨーロピアンデスメタル、もしくは古の残虐と技術革新を結ぶ “恐怖の” 架け橋。オールドスクールへの憧憬を垣間見せつつ、CYNIC や DEATH を彷彿とさせる洗練されたコンポジションとテクニックに、EDGE OF SANITY や DARK TRANQUILLITY のロマンチシズムを封入。さらにはマスロックの難解、ポストロックのアトモスフィアさえ加味した前作 “Anareta” は、新旧メタルファンから絶賛を受けたマイルストーンとなりました。
しかし、「冒険的という意味では、どの作品でも僕たちはずっと “プログレッシブ” だったつもりなんだ。ただし、ほとんどのリスナーが最新作を最もプログレッシブなアルバムだと言うのは分かるんだけどね。」 と Jamie が語る通り、進化を止めないバンドの冒険は真の意味での “プログレッシブ” を一層探求した新作 “Idol” へと結実しています。
Jamie の「Alex がライティングプロセスへと加わることでこのアルバムに違いが生まれたのは確かだけどね。というのも、彼はフィラデルフィアのシーンの中でもエクスペリメンタルやフリージャズに精通しているからね。」 との言葉が裏付けるように、長年ベースレスのトリオとして積み重ねて来たバンドの実験的フィロソフィーは、卓越したベースマン Alex Kulick の加入でその深淵を一層増すこととなりました。
CYNIC を想起させるアトモスフェリックなイントロダクション “Prescience” は作品のムードを決定付ける重要なスターター。デスメタルシーンのトレンドがオールドスクールへと傾く中、HORRENDOUS の選択はあくまでも実験性とテクニックの追求でした。もちろん、ベースラインの蠢くようなジャズダンスも Alex の鮮烈な紹介状となっていますね。
邪悪な影が際立つ “Soothsayer” はフォーピースとなったバンドの能力を最大限に見せつけたアドレナリンラッシュ。DEATH よりも複雑に、CYNIC よりも哲学的に、AUTOPSY よりも陰重に。エゴにも似た各自の煌めく技巧は、いつしか一塊りとなりバンドの飽くなき欲望を代弁していきます。
Marty Friedman はもちろん、時に Chris Poland をもイメージさせるインテレクチュアルな Matt と Damian のツインギターアタックは、アルバムを通じて MEGADETH のスリルを再現していますね。
幽玄なアルペジオと Alex のジャズダンスに導かれる “The Idolater” は、バンドの重厚で繊細なレイヤードへの拘りが体現した楽曲。まるでワーグナーに魅入られたかのように威風堂々、高尚かつ壮大なデスメタル楽劇は、リスナーをリピートの無限地獄へと陥れる好奇心の泉なのかもしれません。その中毒性は、いつしか視聴毎に訪れる新たな発見の喜びへと変化していきます。
“Divine Anhedonia” は何よりバンドの実験精神が憑依した楽曲でしょう。メインリフで祝われる Miles Davis の “Bitches Brew” にも通じるロックとジャズの婚姻は、メタルのエナジー、そして千変万化な触手の如きタイムストラクチャーをも纏って “無快楽” を快楽へと転化するのです。確かに “リズムの可能性の探求は “Idol” の大きな部分を占めて” いるようですね。
“Devotion (Blood for Ink)” のクリーンボーカルとグロウルの対比に在りし日の OPETH へと想いを馳せるファンも多いでしょう。それにしても実に多様で創造性に満ちた作品です。「CYNIC, DEATH との相似点はむしろ哲学的なものなんだ。」その言葉こそが “Idol” “偶像” の本質を射抜いているのではないでしょうか。
今回弊誌では、HORRENDOUS のメンバー全員にインタビューを行うことが出来ました。「僕にとっては大前提として、ジャズとはジャンル分けの言葉というよりも政治的な言葉なんだ。」 本誌2度目の登場。どうぞ!!

HORRENDOUS “IDOL” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PINEAPPLE EXPRESS : ANTHEM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PINEAPPLE EXPRESS !!

“Bollywood” Just Translates To “Mainstream” For Me. Prog Is a Genre That Is Overlooked By The Mainstream Audience. But We Are Trying To Make It Accessible And Enjoyable For The Regular Listener. “

DISC REVIEW “ANTHEM”

“バーフバリ” やボリウッドの成功が象徴するように、桃源郷のようなインドのエンターテイメントは世界中を席巻しています。そして、モダンプログ/メタルの世界においても、インドはもはや目が離せないニューフロンティアとなっています。
PERIPHERY のキャッチーと TesseracT のアトモスフィアを抱きしめる SKYHARBOR、インドの伝統音楽を複雑怪奇に探求する AMOGH SYMPHONY, Bruce Soord, Steve Kitch の知を導入した PARADIGM SHIFT, ダークでオルタナティヴなピンクフロイド COMA ROSSI, そしてもはやベースワールドのトッププレイヤーとなった Mohini Dei。すでに、インドの活況はプログレッシブユートピアの相を呈していますね。
中でも、PINEAPPLE EXPRESS はそのインドのカラフルで煌びやかな悦楽の園を、見事にモダンメタル/プログの世界へと投影したエルドラドです。
「僕たちの音楽が持つポテンシャルを最大限発揮するためには、より多くの要素が必要だと悟ったんだよ。」バンドの創設者でキーボードプレイヤー YOGEENDRA が語るように、インド音楽シーンのハブ都市バンガロールに端を発する PINEAPPLE EXPRESS は、その壮大かつ多様な音楽性を具現化するために、8人のメンバーを揃えることとなりました。
フルートにヴァイオリン、そしてダブル、時にトリプルボーカルとなる豊かな旋律のアンサンブルは、最新シングル “Anthem” のまさにアンセムたる由縁です。そして、インドの伝統音楽から DREAM THEATER、SKRILLEX まで、通過した全ての音楽を等しく愛すると語る YOGEENDRA の言葉通り、モダンプログ/メタルはもちろん、Nu-metal, EDM, マスロック、ジャズ、エレクトロニカ、ヒップホップと涌き出でるその多様性の泉は、言語的ビッグバンをも伴って、圧倒的なフックと高揚感を孕みながらリスナーのエナジーへと変換されていくのです。
さらに、PVの熱狂的なオーディエンスが物語るように、その音楽とライブパフォーマンスが放つ圧倒的なスペクタクル性は、PINEAPPLE EXPRESS こそプログワールドにおける次世代の旗手である証なのかもしれません。
「僕にとって “ボリウッド” という言葉は “メインストリーム” と同義なんだ。そしてプログというジャンルはメインストリームのリスナーから見落とされていると思うんだ。だからこそ、僕たちはプログをよりアクセシブルに、一般的なリスナーが楽しめるように味付けしようとしているんだよ。」彼らはボリウッド成功の秘訣を理解しています。そしてあのゴージャスな浮世絵巻きを愛するプログの世界へと持ち込み、停滞するシーンに活路を見出そうとしているのかも知れませんね。
ただし、EP “Uplift” の複雑極まるオープナー “Cloud 8.9” を聴けば伝わるように、バンドの創造性、ハイテクニック、コンポジションはすでに名だたるプログロースターにも一切引けを取りません。むしろ従来のプログメソッドでも十分勝負可能なアビリティーを備えながら、メインストリーム、一般リスナーを意識した彼らの舵取りは、それこそが真の意味での “プログレッシブ” を体現しているのかもしれませんね。
今回弊誌では、4人のメンバーにインタビューを行うことが出来ました。公開数日での15万再生突破は伊達ではありません。さらに、旬のサウンドマン ARCH ECHO の Adam Bentley がミキシングを手がけたアンセムをぜひ。どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THRAILKILL : EVERYTHING THAT IS YOU】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH WES THRAILKILL FROM THRAILKILL !!

“Labeling Can Only Get Us In Trouble. Every Band Or Album We Come In Contact With Should Be Viewed As It’s Own Entity, To Be Digested As Art.”

DISC REVIEW “EVERYTHING THAT IS YOU”

ハリウッドに居を構える楽器演奏者の登竜門 Music Institute。その過酷な虎の穴とも言える通称 MI で結成され、Instru-metal 道を追求していた MAMMOTH が THRAILKILL と名を改めリリースした “Everything That Is You” は、バンドの過去と現在、そして未来全ての作品を繋ぎ、与えられたギフトへと感謝を捧げる人間讃歌です。
自らが考案した “Cream Theater” の異名を追い求めた黎明期から、ストイックなトリオは音楽の旅を続けています。実際、MAMMOTH として最後にリリースした “Deviations” は、ANIMALS AS LEADERS を思わせるコンテンポラリーなヴァイブと、LIQUID TENSION EXPERIMENT にも通じる Tech-metal の王道、そして THE ARISTOCRATS のジャズ精神を巧みにミックスし、プログメタルシーンのリスナーを思考させ唸らせた快作でした。
ただ、HAKEN との有意義なツアーの後、同名バンドの乱立により改名を余儀なくされた彼らは、ギタリストで中心人物 Wes Thrailkill のラストネーム THRAILKILL を看板として掲げることに決めたのです。
「同じようなアルバムは2枚と作りたくない」と語る Wes の言葉を裏付けるかのように、”Everything That Is You” は MAMMOTH からのさらなる深化を封じる作品です。
「最新作はよりプログメタルにフォーカスした作品だよ。過去には各ソロイストを強調したジャズ/フュージョン寄りのアルバムも作ってきたけどね。」 と Wes は語りますが、彼の言うジャズ/フュージョンとはより個としてのソロイストを強調した作風、そしてプログメタルとはより全体のビジョンを統一した絵画のような作風と理解するべきでしょう。
そのコンセプトを考慮に入れて作品と向き合えば、THRAILKILL の目指す場所がより鮮やかに伝わって来るはずです。
Djent の季節を過ぎ、近年インストゥルメタル界隈では、ロックとジャズを融合させた難解とも言えるフュージョンというジャンルをより多様に、ポップに、現代的なサウンドでハイクオリティーにディフォルメする動きが高まりを見せています。
出自は Djent である INTERVALS や PLINI, さらに OWANE や ARCH ECHO といった超新星までそのカラフルなサウンドに込められた共通項は、知的でありながらキャッチーの粋を集めたその煌びやかなデザインでしょう。
実際、彼らは全て超一流のソロイストを揃えていますが、決して複雑怪奇なリードプレイ、それに “0000” を延々と奏でることはありません。ミニマルとさえ言える印象的なメロディーやリフを膨らませながら、R&B、ポストロックやエレクトロニカ、時にヒップホップまで飲み込んでリスナーにフックの洪水を投げかけるのです。
彼らと比較すれば存分にメタリックですが、THRAILKILL も確かにその大渦の中にいます。実際、”Consciously” でゲストプレイヤー Ryan Cho が奏でるヴィオラの響きがシネマティックなアルバムの幕開けを告げると、そこには Instru-metal のディズニーランドが広がって行くのです。
Final Fantasy のスリルをイメージさせる “Aware”、ポストロックの多幸感がヘヴィーフュージョンと溶け合った “Before”、デジタルの響きがエモーションを加速させる “Everything’s”、TRIBAL TECH のファンクを受け継ぐ “Gone”、そしてマスロックの洗礼を大いに浴びたタイトルトラックまで、躍動感を持った楽曲群はシームレスに繋がりそのエンターテインメント性を解き放っていきます。
一方で、もはや “Dream Rush” のニックネームこそ適切に思える奇想天外なオッドタイムの荒波で、しっかりと舵を取るリズム隊の貢献に触れない訳にはいかないでしょう。特に日本人である Yas Nomura の溢れるフレーズアイデアと巧妙な指捌き、ジャズの鼓動は、和製 Jaco Pastorius の形容もきっと過称ではないはずです。(余談ですが彼はギタリストとしても素晴らしい腕前で、Allan Holdsworth を彷彿させるプレイを聴かせます)
もちろん、ARCH ECHO の Adam Bentley がミキシングを手がけたことも偶然ではないでしょう。今回弊誌では Wes Thrailkill にインタビューを行うことが出来ました。「Yas は日本から来たんだよ。最初僕たちが会った時、彼が話すことの出来た英語は “Dream Theater….” だけだったくらいさ。」 どうぞ!!

THRAILKILL “EVERYTHING THAT IS YOU” : 10/10

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THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2018 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE


THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2018 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE

1: GHOST “PREQUELLE”

昨年 “最も印象的だったアルバム” の記事にも記しましたが、近年、MASTODON, VOLBEAT, Steven Wilson, PALLBEARER, Thundercat、さらに今年も GODSMACK, ALICE IN CHAINS, DISTURBED, SHINEDOWN など様々なジャンルの旗手とも呼べるアーティストが “ポップ” に魅せられ、レガシーの再構築を試みる動きが音楽シーン全体の大きなうねりとして存在するように思えます。当然、邪悪とポップを融合させた稀有なるバンド GHOST もまさしくその潮流の中にいます。
「JUDAS PRIEST はポップミュージックを書いていると思う。彼らはとてもポップな感覚を音楽に与えるのが得意だよね。PINK FLOYD も同様にキャッチー。ちょっと楽曲が長すぎるにしてもね。」
と語るように、Tobias のポップに対する解釈は非常に寛容かつ挑戦的。さらにモダン=多様性とするならば、70年代と80年代にフォーカスした “Prequelle” において、その創造性は皮肉なことに実にモダンだと言えるのかもしれません。実際、アルバムにはメタル、ポップを軸として、ダンスからプログ、ニューウェーブまでオカルトのフィルターを通し醸造されたエクレクティックな音景が広がっています。
もちろん、シンセサイザー、オルガン、キーボードの響きが GHOST を基点としてシーンに復活しつつあることは喜ばしい兆候だと言えますね。同時に、サックス、フルート、ハグストロムギターまで取り入れたプログレッシブの胎動は “Prequelle” 核心の一部。Tobias はプログロックの大ファンで、作曲のほとんどはプログレッシブのインスピレーションが原型となっていることを認めています。伝統的なプログロック、プログメタルの世界が停滞を余儀なくされている世界で、しかしプログレッシブなマインドは地平の外側で確かに引き継がれているのです。
ウルトラキャッチーでフックに満ち溢れたカラフルなレコードは、数多のリスナーに “メタル” の素晴らしさを伝え、さらなる “信者” を獲得するはずです。
ただし、匿名性を暴かれた Tobias の野望はここが終着地ではありません。多くのゲストスターを揃えたサイドプロジェクトもその一つ。すでに、JUDAS PRIEST の Rob Halford がコラボレートの計画を明かしていますし、これからもスウェーデンの影を宿したメタルイノベーターから目を離すことは出来ませんね。何より、全ては彼の壮大な計画の一部に過ぎないのですから。

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2: YOB “OUR RAW HEART”

スラッジ、ドゥーム、ストーナーのプログレッシブで多様な進化はもはや無視できないほどにメタルの世界を侵食しています。中でも、オレゴンの悠久からコズミックなヘヴィネスと瞑想を標榜し、ドゥームメタルを革新へと導くイノベーターこそ YOB。バンドのマスターマインド Mike Scheidt は2017年、自らの終焉 “死” と三度対峙し、克服し、人生観や死生観を根底から覆した勝利の凱歌 “Our Raw Heart” と共に誇り高き帰還を遂げました。
「死に近づいたことで僕の人生はとても深みを帯びたと感じるよ。」と Mike は語ります。実際、”楽しむこと”、創作の喜びを改めて悟り享受する Mike と YOB が遂に辿り着いた真言 “Our Raw Heart” で描写したのは、決して仄暗い苦痛の病床ではなく、生残の希望と喜びを携えた無心の賛歌だったのですから。
事実、ミニマルで獰猛な2014年の前作 “Clearing the Path to Ascend” を鑑みれば、全7曲73分の巡礼 “Our Raw Heart” のクリエイティビティー、アトモスフィアに生々流転のメタモルフォーゼが訪れたことは明らかでしょう。
作品のセンターに位置する16分の過重と慈愛の融合 “Beauty in Falling Leaves” はまさに YOB が曝け出す “Raw Heart” の象徴でした。甘くメランコリックなイントロダクションは、仏教のミステリアスな響きを伴って Mike の迫真に満ちた歌声を導きます。それは嵐の前の静けさ。ディストーションの解放はすなわち感情の解放。ベースとドラムスの躍動が重なると、バンドの心臓ギターリフはオーバートーンのワルツを踊り、濃密なビートは重く揺らぐリバーブの海で脈動していくのです。バンド史上最もエモーショナルでドラマティックなエピックは、死生の悲哀と感傷から不変の光明を見出し、蘇った YOB の作品を横断するスロウバーン、全てを薙ぎ倒す重戦車の嗎は決して怒りに根ざしたものではありませんでした。
結果として YOB は THOU や KHEMMIS と共にドゥームに再度新風を吹き込むこととなりました。例えば CATHEDRAL の闇深き森をイメージさせるオープナー “Ablaze” ではジャンルのトレードマークにアップリフティングでドリーミーなテクスチャーを注入しドゥームの持つ感情の幅を拡大しています。
そうしてアルバムは僅かな寂寞とそして希望に満ちた光のドゥーム “Our Raw Heart” でその幕を閉じます。人生と新たな始まりに当てた14分のラブレターは、バンドに降臨した奇跡のマントラにしてサイケデリックジャーニー。開かれたカーテンから差し込むピュアな太陽。ポストメタルの領域にも接近したシネマティックでトランセンドな燦然のドゥームチューンは、彼らとそしてジャンルの息災、進化を祝う饗宴なのかも知れませんね。

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3: SVALBARD “IT’S HARD TO HAVE HOPE”

女性の躍動と、多様性、両極性を旨とする HOLY ROAR RECORDS の台頭は2018年のトピックでした。越流するエモーションをプロテストミュージックへと昇華し、英国ブリストルから咆哮を貫く至宝 SVALBARD はまさにその両者を象徴する存在です。熾烈なメタル/ハードコアにポストロックの叙情と風光、ポストメタルの思索と旅路を織り込みさらなる多様化の波動を導いた新作 “It’s Hard to Have Hope” はシーンの革新であり、同時に閉塞した世界が渇望する変化への希望となりました。
確かに “It’s Hard to Have Hope” は怒れるアルバムで、中絶、性的暴力、リベンジポルノ、インターンシップの無賃雇用など不条理でダークな社会問題をテーマとして扱っています。
さらには、「このアルバムは、ステージに女の子が立つことにネガティブなコメントを寄せる人たちに対する私からの返答よ。”女性をメタルから追い出せ!” と言うような人たち、コンサートで女性にハラスメント行為を行う人たち。これは彼らに対する私からの恐れなき怒りの返答なの。」と語るように、女性フロントマンとして Serena が長年メタルシーンで苦しんできたハラスメント行為の数々も、作品の持つ怒りの温度を “フェミニストのメタルアルバム” の名の下に上昇させていることは明らかです。
とはいえ、この類稀なる感情と表情の結晶が、唯一怒りにのみ根ざすわけではないこともまた事実でしょう。実際、Serena はこの作品の目的が “人々にこういった社会的不公平を伝えるだけではなく、なぜそういった問題が起き続けるのか疑問を投げかけることだった” と語っています。「誰が正しいのか互いに主張し合うのを止めてこう尋ねるの。一緒に前進するために何ができるだろう?より良き変化のためお互い助け合えないだろうか?とね。」とも。
そうして世界のターニングポイントとなるべくして示現した “It’s Hard to Have Hope” に、一筋の光明にも思える尊きアトモスフィア、荘厳なる音の風景がより深く織り込まれていることはむしろ当然の進化だと言えるでしょう。
CULT OF LUNA や MY BLOODY VALENTINE のイメージこそ深化の証。そうしてポストブラックの激しさと光明を背負った彼女は悲痛な叫びを投げかけます。「いったい誰が女性を守ってくれるの?」

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