タグ別アーカイブ: Hardcore

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUMA : DUMA】LIONSBLOOD OF KENYAN METAL


EXCLUSIVE : INTERVIEW WITH MARTIN KHANJA & SAM KARUGA OF DUMA

“It’s About Going Inside And Bringing It Out, putting Our Guts On The Table. There’s No Hiding. That’s The Thing: You Come To Duma You Come To The Fucking Butchery.”

LIONSBLOOD OF KENYAN METAL

一般的な外国人にとって、マサイの言葉で “冷たい水の場所” を意味するケニアのナイロビは、文字通り大都市特有の冷たさを纏っているように感じられるかもしれません。たしかに、街には高層ビルが立ち並び、交通量は多く、首長はヘネシーがコロナを殺すと考えています。それでもニューヨークや東京に比べればまだ温かみが感じられるのではないでしょうか。
しかし、ナイロビで生まれ育ち、この特異なメタルシーンにおいてさらに特異な色彩を放つグラインドデュオ Sam Karugu (ギター/プログラミング) と Martin Khanja (ボーカル) は、その意見に違を唱えます。
「ラジオを聴けばわかるよ。デタラメばかりだ。聴きたくない人がいるから、俺たちは何か違うものを作るんだ。”ワンサイズ・フィッツ・オール” 、一つの価値観がすべてを支配するなんてもう通用しないよ。俺たちは社会に適応出来ない人たちのために音楽を作っているんだ。」
たしかに、DUMA のセルフタイトルのデビュー作は、凡俗を攻撃するインダストリアルノイズが渦巻く反抗のレコードです。
2019年にウガンダのカンパラにある NyegeNyege Studio で録音されたレコード “Duma” は、00年代初頭にハードコアパンクやメタルを聴いて育った2人が送る強烈なステイトメント。ナイロビには80年代から DIY のハードコアシーンが存在しましたし、毎週木曜日の午後10時から12時まではアンダーグラウンドメタルを流す “Metal to Midnight” という番組も存在しました。それに YouTube, インターネット。
「俺の好きな音楽だから、俺が育った場所で周りのみんなに聴かせてやりたいんだよ。」

アフリカ大陸には未だ極小のメタルシーンしか存在しませんが、バンド同士はネットを通して連絡を取り合い、活気に満ちたコミュニティーを形成しています。ケニアのメタルシーンは「楽器を持っていて、心があって、何かをやりたいと思っている人なら、誰でも音楽ができるんだということを教えてくれた。」と Sam は語ります。
「アフリカにも昔からロックはあったよ…アパルトヘイト時代の70年代には、ザンビアやジンバブエのバンドが “Zamrock” を作っていた。ググってみてよ。だけどほとんどのバンドがレコーディングができなかった。だからそのためにケニアに来ていたんだ。”Zamrock” は70年代、80年代、90年代まで続いていたよ。アパルトヘイトが終わるころまでね。
だから、ケニアのシーンはずっと前からあったし、例えば南アフリカにはシーンがあるし、北アフリカにはチュニジアやエジプトにもシーンがある。世界の人々は俺らの存在を忘れてしまっているような気がするよ。でも、ケニアにもロックやメタルがあって、みんな楽しんでいて、バンドが演奏していて、モッシュ・ピットがあって、本当にオープンな人たちばかりなんだ。 人々が本当にオープンなんだよ。」
Martin もシーンの温かさについて同意します。
「ケニアのシーンは家族のような、コミュニティのようなものなんだ。どれだけ稼いでいるか、どんな人種かとか、そんなことは気にしない。ショーに出れば、みんなが愛してくれて、ありのままの自分を受け入れてくれる。
俺は自分のやっていることが人気があるものではなく、とても奇妙なものだと思っていた。だから同じ音楽をやっている人たちに出会って、”兄弟 “という感じになったんだ。俺たちはお互いを理解している。会場に足を踏み入れると、家族のような感覚になるんだ。 子供の頃、高校の頃に会った人たちや、大学生になってから会った人たちが、家族を連れて来てくれるんだ。 それは変わらず、どんどん大きくなっていく。 それがケニアのシーンのとても好きなところだね。みんなが互いに知っていて、みんなのことを愛しているから。」
それでも Sam はメインストリームからは程遠い現状も付け加えます。
「一回のライブで100ユーロが手に入る。それをバンド全員で分けるんだ。メインストリームからは程遠いよ。適切なギア、スタジオなんてないからなかなか新たなチャレンジも出来ないしね。好きだからやっているんだ。やらないと気が狂いそうになるから。」

影響を受けたのはどんな音楽なのでしょう?Martinはこう切り出します。
「TORCH BEARER, PINK FLOYD, Kurt Cobain, XXXTentacion, Travis Scott, SUICIDE SILENCE の Mitch Lucker, Bob Marley, それに DJ Scotch Egg-彼は神だよ。とにかく、彼らは上級地球人さ。エリートなんだよ。」
Sam はどうでしょう?
「ケニアのバンドはみんなそうさ。あとは LAST YEAR’S TRAGEDY, THROBBING GRISTLE。それから、BLACK FLAG, MINOR THREAT, SYSTEM OF A DOWN, それに MELT-BANANA! “Cell-Scape” は最高さ。たくさんいるよ。あとは母さんだね。でも母さんは俺がメタルをやっているなんて知らないよ。ゴスペルかなんかだと思っているんだろう。バレたら面倒くさいからね (笑) 」
Martin にとってメタルは救いであり、自己実現のためのツールでもありました。
「ラジオからメタルが流れてきて、人生が変わった。俺はいつも人生の中で自分の道を見つけようとしていたし、何かを発見しようとしていた。そしてこの音楽が俺に表現力を与えてくれていることに気付いたんだ。
道を歩いていると、頭の中でリズムが聞こえてきたり、詩を書いたりすることはいつも経験してきた。どこでそれを表現できるのか? この作品を通して、それを解放する方法を見つけたんだ。音楽がなければ自分の人生をどうすればいいのかわからない。目的がないんだ。メタルが生きがいを与えてくれた。一日の終わりには自分を表現しなければならない。そうしないと自分を抑え込んでしまう。精神的にも健康的じゃない。俺は苦手なことばかりだけど、少なくともこれは得意なんだ。」

2019年に DUMA が結成されたとはいえ、Sam と Martin は高校時代からお互いを知っていました。そして、Sam は SEEDS OF DATURA の、Martin は LUST OF A DYING BREED というトップナイロビメタルのメンバーでした。当時から、2人は互いの音楽に興味を持っていたのです。ボツワナのウインターメタルフェスで意気投合したデュオのパフォーマンスはすぐに共同作業へと繋がります。バンド名 DUMA とはキクユ語で暗闇を意味します。
「俺らはこの音楽に本当に深く入り込んでしまった。自分たち自身もダークで、音楽もダークで、世界観もダークなこのプロジェクトにね。」
アルバム “Duma” はメタルとして成立しながら、デュオの多様な嗜好を反映したモンスターです。”Omni” でトラップとメタルを融合し、”Lionsblood” ではエレクトロのダンスビートを取り入れます。「ダークでヘヴィーな実験だよ。新しいサウンドを作るためのね。」
“Lionsblood” はまさにアフリカのバンドにしか書けない楽曲でしょう。Martin が説明します。
「これは俺の民族的背景であるマサイ族のルーツからきている。男になるためには、茂みに入ってライオンを殺し、ライオンの血で体を洗わなければならないんだ。それは、つまり自分を見つけたということだ。ライオンの血を飲むんだから、生き残れば自分の中にライオンが残る。この慣わしを使ったのは、俺たちが日常生活の中でどのように存在しているかを表現したかったから。
問題は、人種や文化の違いじゃなく、見解や認識の違いなんだ。その違いは、俺たちが共に分かち合うべき強さなんだよ。 この違いが組み合わさったとき、俺たちはみんな強くなるんだから。人は教会に行ったり、学校に行ったり、何かを発明したり、ビジネスを経営したりすることができる。もし本当に好きなことが得意なら、それをやってみて、好きなことをするように人々を鼓舞して欲しいね。それが人間として、俺たち全員のためになるんだから。」

アートワークも一種独特です。Sam が語ります。
「偶然近所の市場で撮ったんだ。女の人が肉を買っているんだけど、彼女の服も肉に見える。肉を食べようとして自分が食べられてしまう。つまり、消費者にみえて実は自らが消費されているんだよ。それにアフリカっぽくて、メタルっぽいアートワークだよね。俺たちが言うところの、机にすべての内臓を出すってやつだよ。肉はすべて切り取られ、演奏するたび俺たちの体内で力になる (笑)」
Martin が付け加えます。
「つまり、このアートワークは自らの内なるものを外界へ解放することを象徴しているんだ。そうやって、自分のすべての内臓を机の上に出すわけだよ。何も隠すことはない。それが DUMA をやっている理由だから。」
アルバムには、ナイロビに対するバンドの不満も反映されています。Sam は、宗教と資本主義がこの大都市における “障壁” となってしまっていると非難します。住人たちは、この “ループの中” で生活することに慣れてしまい、快適な繭の中から出ることはないのです。DUMA は先住民が、自由に生きられるかつてのやり方を思い出すための水先案内人なのでしょう。
「もう機能していないよ。教育、宗教、商業、あらゆるものが俺たちの心を鈍らせている。本当の自分になることを許してくれないんだ。”Comers in Nihil” は箱の中に閉じ込められているという概念を比喩的に探求している。仕事をしてまともにお金を稼ぐというマンネリは安心だし心地よいものだけど、実際には生きているわけじゃなくゆっくりと人生を消耗しているだけなんだ。ただ仕事に行って家に帰ってくるだけなんだから。」
アフリカの現実にも立ち向かわなければなりません。Martin が続けます。
「仕事に行って家に帰ってもやることはたくさんある。家族もいるしね。それでも人は自分をポジティブに表現することでしか生き残れない。すべてを内に秘めていたら発狂してしまうから。自らの内面を世界に共有すれば、存在しなかったはずの人生が創造できる。ひいては、未来のより良い世界を作ることに繋がるんだ。」

仮に、コロナが世界の終わりをもたらそうとも? Sam は同意します。
「何かを創作し続けなきゃ。自分のやりたいことを全力でやらないといけない。世界はコロナで終わりを迎えるかもしれないし、何が起きているのかさえわからないけど、俺は自分のやりたいことをやって、自分らしく表現していくしかないんだよ。今の世の中、SNS によってほとんどの人が自分を表現できるようになっているだろう?今がその時だよ。自分の内臓を全部だすんだよ。」
闇の中でも常に光を見出すアルバムには、世界中に自分たちの音楽を広めたいという野心と共に、純粋な、サブリミナルなメッセージが込められています。Martin は目を輝かせます。
「みんなを鼓舞して、今よりもっと良くなるようにしてあげたいんだ。ビデオにもサブリミナルメッセージを込めている。本当に目を覚まそうとしている人には、それが理解することが出来るのさ。多くの人にインスピレーションを与えたいよ。音楽を聴いてくれた人、インタビューを読んでくれた人、ビデオを見てくれた人の心に何かを残したい。より良く生きれるような何かをね。」
Martin の最も伝えたいメッセージは、オープニングナンバー “Angels and Abysses” に描かれています。
「天使と深淵。心の中の小さな囁きを込めた曲だ。労働の中で、”オマエはもうめちゃくちゃだ。家に帰るんだ” ってね。毎日、自分の別の姿、一面が常に一緒にあることを忘れないでほしいんだ。
俺は心理学の修士号を持っている。そして、自らの認識している意識とは氷山の一角だと気づいたんだ。俺たちの習慣、行動、世界観は別の場所から来ているんだよ。意識的にそれを微調整することができれば、思い描いている最高の人生を体験することができるはずなんだ。その域まで到達しない場合でも、少なくともそれに近づくだろうし、これまでよりは良いものになるはずさ。」
Sam のお気に入りは “Pembe 666″。
「基本的には黙示録5章6節なんだが、スワヒリ語で書かれているんだ。聖書のこの一節では、ヨハネが小羊を見つけたと言っているんだけど、小羊は七つの封印を持っていて世界を解放するためにそれを開けなければならないんだよ。そして彼は子羊が殺されているのを見つけたんだ。 答えを探しているうちに、子羊が殺されていることに気づくというのは、宗教の面白いところだよな。きっと答えはないんだろう。」

最もテクノロジーを受け入れたバンドがケニア出身というのも皮肉なものです。
「俺たちにあるのは、歌とギターとラップトップだけ。面白いことに、メタルではほとんどの人がコンピュータをリスペクトしていない。純粋ではないと思われている。でも、コンピューターがあれば、バンド全体の音楽を作ることができることに気付いたんだ。シンセラインやドラムやギターを思いついて、それを完成させるまで煮詰めていくんだよ。」
DUMA がこれから進む場所はどこにあるのでしょう? Martin が答えます。
「デスメタルはもうやり終えたかも。メタルコア、デスコア、アバンギャルド、シンフォニック、ドゥーム。 これら全ての異なるジャンルからの影響を利用して、ハイブリッドな表現を生み出そうとしている。2040年や2050年に生まれた人たちだって何かを必要としているだろうし、僕らは前に進まなければならない。ヨーロッパやアメリカじゃ、メタルが確立されている。アフリカのメタルを知らしめるために、コンガやブラス、ドラムスといった民族楽器を取り入れるのは良い方法だと思うしね。それが俺たちの目標だ。俺達は新しいジャンルを作るつもりだよ。」
Sam と Martin は、彼らを理解しない人のことまで気にかけてはいません。DUMA の音楽は、マンネリに飽き飽きしたリスナーや、地元の放送局に満足しない人たちのためのもの。DUMA を完全に吸収するには、開かれた心が必要なのです。
「老若男女を問わず、すべての人に関係のあるものを作ろうと思った。たとえ暗くても、そこには光がある。そこにはたくさの知識と知恵が詰まっていて、子供たち、またその子供たちになんらかのインスピレーションを与えるんだ。」
DUMA はある種の伝道師なのでしょうか? Martin は否定します。
「というより、奉仕活動だよ。俺たちのライブに来れば、自分の抱えている問題や障害を克服するより良い方法を見つけることが出来るからね。視点を変えてくれるし、力を与えてくれる。改心させたいわけじゃなく、思い出させたいだけなんだ。」
Sam も同意します。
「伝道ではないね。メタルでは、8万人がメイデンのライブにくるけど、別に崇拝はしてないでしょ?(笑)。ただメイデンを聴くためにライブに行って、家に帰ればクソをする。誰も崇拝はしていない。それがメタルの醍醐味なんだよ。みんな自分の好きなことをしているだけさ。崇拝してるとしたら悲しいことだ。俺たちを崇拝なんてするなよ。やめとけ (笑)。」

参考文献: BANDCAMP:Duma Shines A Light on Underground Kenyan Metal

TONE GLOW

DUMA Facebook
NYEGE NYEGE TAPES Facebook
DUMA Bandcamp

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THOU & EMMA RUTH RUNDLE : MAY OUR CHAMBERS BE FULL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRYAN FUNCK OF THOU !!

“I Think Most Folks Who Identify As “Metalheads” Or Whatever Probably Have a Lot More Nuance Than They Let On. I Just Wish They Would Embrace More Of a Balance Than Clinging To a Very Strict Set Of Rules. I Think That’s Why, As a Forty-Year-Old Man, I Still Identify As a Punk Or a Hardcore Kid.”

I STILL IDENTIFY AS A PUNK, OR HARDCORE KID

「”メタルヘッズ” と名乗る人たちの多くは、公平にみてもおそらく自分たちが言うよりもずっと多くの音楽的なニュアンスを持っていると思うよ。だから厳格なルールにしがみつくのではなく、バランスを取ってほしいと願うばかりだね。俺はしっかりバランスを取っているからこそ、40歳になった今でも、パンクやハードコアキッドなんだと思う。頭の中では、そういった概念がより曖昧で広がりを持っているように思えるからね。」
スラッジ、ドゥーム、メタル、ハードコア、グランジ。ルイジアナの激音集団 THOU はそんな音楽のカプセル化に真っ向から贖う DIY の神話です。
「ここ数年で培った退屈なオーディエンスではなく、もっと反応の良い(しかし少なくとも多少は敬意を払ってくれる)オーディエンスを獲得したいからなんだ。 堅苦しいメタル野郎どもを捨てて、THE PUNKS に戻る必要があるんじゃないかな!」
15年で5枚のフルアルバム、11枚の EP、19枚のスプリット/コラボレーション/カバー集。THOU の美学は、モノクロームの中世を纏った膨大なカタログに象徴されています。THE BODY を筆頭とする様々なアーティストとの共闘、一つのレーベルに拘らないフレキシブルなリリース形態、そしてジャンルを股にかける豊かなレコードの色彩。そのすべては、ボーカリスト Bryan Funck の言葉を借りれば “金儲けではなく、アートを自由に行う” ためでした。
2018年、THOU は自らのアートな精神を爆発させました。3枚の EP とフルアルバム、計4枚の4ヶ月連続リリース。ドイツのサイレント映画 “カリガリ博士” に端を発するノイズ/ドローンの実験 “The House Primodial”、Emily McWilliams を中心に女性ボーカルを前面に据えた濃密なダークフォーク “Inconsolable”、ギタープレイヤー Matthew Thudium が作曲を司りグランジの遺産にフォーカスした “Rhea Sylvia”、そしてスラッジ/ドゥームの文脈で EP のカオスを具現化した “Magus”。一般的なバンドが4,5年かけて放出する3時間を僅か4ヶ月で世界に叩きつけた常識外れの THOU が願うのは、そのまま頑ななステレオタイプやルールの破壊でした。
実際、Raw Sugar, Community Records, Deathwish, Sacred Bones とすべての作品を異なるレーベルからリリースしたのも、境界線を破壊し多様なリスナーへとリーチする自由な地平線を手に入れるため。自らが獲得したファンを “退屈” と切り捨てるのも、主戦場としてしまったメタル世界の狭い視野、創造性の制限、クロスオーバーに対する嫌悪感に愛想が尽きた部分はきっとあるのでしょう。
「このバンドはグランジの源流であるパンクのエートス、プログレッシブな政治的内容、メランコリックなサウンドから絶対的な深みへと浸っている。 間違いなく、10代の頃に NIRVANA, SOUNDGARDEN, PEARL JAM, ALICE IN CHAINS を聴いていたことが、音楽制作へのアプローチや、ロックスターのエゴイズムを避けることに大きな影響を与えている。」
“The Changeling Prince” の MV でヴァンパイアのゴシックロッカーを気取ってみせたように、THOU にとってはロックスターのムーブやマネーゲームよりも、音楽世界の常識を覆すこと、リスナーに驚きをもたらすことこそが活動の原動力に違いありません。そのスピリットは、パンク、そしてグランジに根ざす抑圧されたマイノリティーの咆哮が源流だったのです。全曲 NIRVANA のカバーで構成された “Blessings of the Highest Order” はまさにその証明。
「メンタルの病の個人的な影響を探求することがかなりの部分染み込んでいて、それは無慈悲なアメリカ資本主義の闇とは切っても切り離せないものだと思うんだ。」
THOU が次にもたらす驚きとは、10/30にリリースされる、ポストロック/ダークフォークの歌姫 Emma Ruth Rundle とのコラボレーション作品です。90年代のシアトル、オルタナティブの音景色を胸一杯に吸い込んだ偉大な反抗者たちの共闘は、壊れやすくしかしパワフルで、悲しくしかし怖れのない孤立からの脱出。精神の疾患や中毒、ストレスが容赦なく人間を押しつぶす現代で、灰色の世界で屍に続くか、希望の代わりに怒りを燃やし反抗を続けるのか。選択はリスナーの手に委ねられているのかも知れませんね。
今回弊誌では、Bryan Funck にインタビューを行うことができました。「大きな影響力とリソースを持っているレーベルの多くが、自分たちがリリースする音楽やリリースの方法に関して、リスクを負うことを最も嫌がっているように見えるのは本当に悲しいことだよ。彼らの成功により、クリエイティブな決定を下す自由がより広く与えられるはずだと思うんだけど、それは逆のようだね。」2度目の登場。どうぞ!!

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THOU & EMMA RUTH RUNDLE : MAY OUR CHAMBERS BE FULL】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CONFESS : EAT WHAT YOU KILL】BLOOD & PRIDE OF IRANIAN METAL


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NIKAN KHOSRAVI OF CONFESS !!

ALL PICS BY Camilla Therese

“Of Course Harsh Sentences Weren’t Convenient But I Took Pride For That! Cause It Meant That My Music And My Lyrics Are So Strong And Truthful That They Could Scare a Whole Regime. But At The Same Time It Was Stepping To The World Of Unknowns.”

GIVE BLOOD FOR THE MUSIC

「ポジティブな話をしようじゃないか。もちろん、過去も重要だけど新たなアルバム、新たなツアー、未来について話したいんだ。」
イランで不敬罪に問われノルウェーへと亡命したメタルソルジャー。CONFESS の魂 Nikan Khosravi とのコンタクトはそうして始まりました。Nikan と同様の状況に立たされた時、それでもあなたは過去よりも未来を見つめ、希望を捨てずにいられるでしょうか?
「被告を懲役12年、鞭打ち74回の刑に処す。」2017年、テヘランの裁判官は、冒涜的な音楽を作ったとして政権に起訴されたイランの有名メタルデュオ、CONFESS 2人のメンバーに判決を言い渡しました。特にシンガーでリードギタリスト Nikan “Siyanor” Khosravi(27歳)は、”最高指導者と大統領を侮辱した”、”反体制的な歌詞と侮辱的な内容を含む音楽を制作し世論を混乱させた”、”野党メディアのインタビューに参加した” として非常に重い量刑を受けることとなったのです。
“告白” と題されたデュオの “違法” なレパートリーは、イラン政府の反体制派に対する極端な不寛容さを狙撃する “Encase Your Gun “や、”ファック” をリベラルに使用した “Painter of Pain”、刑務所での地獄を綴る “Evin”など。
2014年、”In Pursuit of Dreams” をリリースした彼らはアルバムが出た数日後、イスラム革命防衛隊(IRGC)のエージェントに逮捕されました。罪状は? “冒涜、悪魔崇拝的なメタルやロックを扱う違法なアンダーグラウンドレーベルの結成と運営、反宗教的、無神論的、政治的、無政府主義的な歌詞を書いたこと”。
2人はイラン最凶の刑務所エヴィンに送還され、10日間独房で過ごした後、一般棟に移されました。解放されたのはそれから数ヶ月後、Nikan の両親が2人の保釈金として自宅を担保に差し出したのです。そして数年後、彼らは裁判にかけられ冒頭の判決が読み上げられました。
「実は最初は強制的に出国させられたんだ!そしてもう一つの理由は、目を覚まさせる率直な暴言というか意見を吐いたアーティストという理由だけで、10年以上も刑務所にいるのはフェアではないと感じたからだよ。どんなやり方でも、僕は刑務所の外にいた方が多くの人の役に立つことができると感じていたしね。」
しかし、センセーショナルな判決を受けたメタル世界の心配はある意味杞憂に終わりました。イランの政権も世界が監視する中で、この言論信教の自由に対する侵害をこれ以上大ごとにする気はなく、政権に牙を剥く狼への抑止力として象徴的な量刑を得られればそれでよかったのかもしれません。
そもそも、Nikan も語っているように、イランではたしかにヘヴィーメタルは禁止された違法な音楽ですが、それでもライブの許可が降りるバンドは存在しているのです。つまり、背教的で違法なメタル代表として迫害を受けたように思われた CONFESS ですが、その実は判決の通り政権への反抗と批判こそが真の迫害理由だったのでしょう。政権に擦り寄るか否かで決定される天国と地獄は、たしかに神の所業ではありません。
ただ、どちらにしても、イランが国民の表現の自由を厳しく制限していることは明らかです。ジャーナリストは今でも逮捕され続けていますし、公共の場で踊ったり顔を隠さなかっただけの女性も酷い罰を受けているのですから。つまり、抑圧的なイランの現政権にとって、芸術を通して自己や思想を表現する CONFESS のようなアーティストは格好の標的だったのです。
「僕は逮捕されたことを誇りに思っていたんだよ! なぜならそれは、僕の音楽と歌詞が非常に強力で真実味があることを意味していたからね。政権全体を脅かすことができたんだから。でも同時に、それは未知の世界に足を踏み入れることでもあったんだ。 」
そんなある種のスケープゴートとされた Nikan ですが、自らのアートが真実で政権に脅威を与えたことをむしろ誇りに思っていました。人生は常にポジティブであれ。そんな Nikan の哲学は、偶然にも彼を迫害されるアーティストの移住を支援する ICORN によってメタルの聖地ノルウェーへと導くことになったのです。
「僕らは今までスラッシュ、グルーヴ、デス、メタルコア、ニューメタル、ハードコアなどと呼ばれてきたけど、すべてを書いている僕自身でも自分たちが何者なのかよくわからないし、正直なところ何のレッテルを貼るべきなのかもわかっていないんだ。今でも新たな場所に行くための新たな要素を探しているからね!どんな楽曲でも、自分をより良く表現するための新しい “追加の” サウンドを今も探しているんだよ。」
ノルウェーで新たなメンバーを加えた Nikan は各メタル誌にて絶賛を受けた新曲 “Eat What You Kill” をリリース。激動のストーリーだけでなく、楽曲にもこれほど説得力を持たせられるのが CONFESS の凄みでしょう。SLIPKNOT も HATEBREED も PANTERA もすべてぶちこんだこの激音の黒溜まりはあまりに強烈。常に前を向き、新たな光を追い求める無神論者。血と誇り、そして文字通り人生すべてをかけたニューアルバム “Revenge At All Costs” の登場は目前です。すべてを賭けた復讐は、きっと過去を完全に断ち切る決意の叫び。
「僕が人間として2015年から今日まで経験してきた全てのことを書いていると言えるね。その期間に起こった全てのこと、会った全ての人について語っているんだ。このアルバムは間違いなく物語を語るアルバムであり、もちろん政治的なアルバムでもあるよ。」独占インタビュー。どうぞ!!

CONFESS “EAT WHAT YOU KILL” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CONFESS : EAT WHAT YOU KILL】BLOOD & PRIDE OF IRANIAN METAL

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CODE ORANGE : UNDERNEATH】


COVER STORY: CODE ORANGE “UNDERNEATH”

THERE’S NOBODY LIKE US…CODE ORANGE ARE READY TO BE NEW ICON OF EXTREME MUSIC

BORN FROM “UNDERNEATH” OF THE SCENE

キャリア10周年を迎え、CODE ORANGE は間違いなくハードコア最大のバンドへ進化を遂げようとしています。
2008年に、ハードコア色の強いクロスオーバーの一味として結成された CODE ORANGE。当時、メンバーは平均すると約14歳で、2012年までは文字通り CODE ORANGE KIDS と呼ばれていました。
「俺らは文字通り世界中で誰にも演奏しないツアーを無数に行ってきた。自慢でも何でもなく、それが現実だ。ハードコアバンドはその現実を知っている。それでもすべて自分でやること、DIY を教えてくれるのがハードコアだ。その音楽を愛しているからな。」
メジャーメタルレーベルとの契約、SLIPKNOT, GOJIRA とのツアー、グラミーへのノミネート、コーチェラからのラブコール
。冒険の始まりから遥かな高みへと到達したバンドの思想は、しかし今でも実にリアルなハードコアです。
「”Underneath” がヘヴィーミュージックの方向を変えることを望んでいるか? いや、俺は何も望んでいない。メタルやハードコアのミュージシャンを鼓舞するバンドになりたいか? 俺らは何かになりたいとは思わない。それなら俺らは彼らの一人になるだろう。」

Jami は Nu-metal を “Underneath” への意識的な影響元としては言及していませんが、ボストンの VEIN など他の新たなハードコアイノベーターと同様に、CODE ORANGE のサンプリングとパーカッションに対する最大級のアプローチを見れば、90年代後半との比較を避けることはできないでしょう。実際彼らは、SLIPKNOT の Corey Taylor を、”The Hunt” のゲストボーカルとして迎え入れ、夏にはKnotfest Roadshow のオープナーを務めます。
「Coley は好きじゃない人たちと時間を無駄にすることはない。俺らも同じことをするつもりさ。」
傍観者は、本質的に商業主義とは相反するハードコアから生まれた CODE ORANGE のよりビッグで、より精巧で、ある意味でよりメロディックなサウンドについてセルアウトの烙印を押すかもしれません。しかし、本物のアートには程遠い、経済的に満たされすぎているという示唆は、相当な名声を獲得した今でも明らかに偽りです。
「音楽をやめて、ウェンディーズで働き始めたほうが稼げるはずさ。」
ドラマー/ボーカリスト Jami Morganはそう嘯きます。しかしそのジョークが真実に思えるほど、彼らは全ての労力を “Underneath” へと注いだのです。


デモとレコーディングを一つのプロセスと捉えた彼らは、そのミッションに丸一年を費やしました。相当に密度の高いデモを完成させた後、バンドはナッシュビルへ降り立ち、1日12時間週7日のハードワークを2ヶ月間続けました。
「おかげでヒップホップのレコードみたいになった。デモと言うよりも、誰かとレコーディングをやるために聴かせる、俺らがミックスした何百ものトラックの集積だったから。
プロデューサーの Nick はさすがに週末は仕事を離れたけど、俺らはアシスタントエンジニアと作業を続けたよ。なぜなら、このレコードのリードの多く、Reba の奇妙なデジタルサウンドはデモの過程で開発されたものだったから、ミックスでダイレクトに録音したからね。ヘヴィーな音楽がより芸術的になろうとすると、多くの場合、その即時性が失われてしまう。全てが連携する必要があるんだ。上手く1つの大きなオーケストラに組み込むことができたね。」
さらに長年の協力者 Will Yip とフィラデルフィアで追加の作業を行い、2人のプロデューサーとの仕事を終えた後もハードディスクをピッツバーグまで持ち帰り何ヶ月も調整を続けたのです。

キーボードを担当する Eric “Shade” Balderose のアルゴリズムはその印象度を飛躍的に高めました。2017年の “Forever” においてもインダストリアル、エレクトロサウンドは確かに鳴り響きましたが、あくまで不気味な装飾の一つとして脇役の領域を超えることはありませんでした。
しかし “Underneath” において彼の創造するプログラミングドラムトラック、ホラーサウンドトラック、アトモスフェリックなシンセサウンドはボーカルや他の楽器と同等の不可欠な存在であり、主役でしょう。Eric はエレクトロニカのプロダクションを自身で学ぶと同時に、NINE INCH NAILS, MARILYN MANSON のコントリビューター Chris Vrenna をプログラミングアシスタントに起用しクオリティーを著しく高めました。
Jami は当時の Eric について、「彼は文字通り心を失いそうなほど消耗していた。誰かと共に働く必要があったんだ。」と語っています。
エレクトロの波に加えて、Jami と Rega が散りばめた様々なボーカルスタイルは、時に重なりながら目覚ましきコントラストを生み出しました。故にレコードには、滑らかに風変わりなハーモニー、スリリングなブレイクダウン、果てはシュレッドギターまで多様な世界が広がることとなりました。
そのパズルのコピー&ペーストは瞬く間に行われるため、音楽的要素や演奏者の解読さえ時に難解です。しかし音楽の方向感覚を失わせる CODE ORANGE の挑戦状は完全に意図的であり、細心の注意を払って構築したレコードの二分概念をまざまざと象徴しています。
「俺は全ての楽曲に二重の意味を持たせたかったんだ。歌詞の一行一行からアルバムのストーリー、さらに他の3枚のレコードとの繋がりまでね。」


CODE ORANGE のリリックは複雑です。ただし可能な限り分解を容易ににするため、”Underneath” のリリックには基本的に二つのビッグテーマが用意されています。一つはテクノロジーの観点から見た現代社会。もう一つは、自身が所属する音楽産業、ヘヴィーミュージックシーンに対する思索です。
例えば、”Who I Am” ではソーシャルメディアで同時に経験する接続と断絶に言及し、”A Sliver” は SNS のプラットフォームを重要だと感じる誤った感性を断罪します。
「誰もが大きな大きな声を持っているように感じている。だけど結局、俺たちの声はすべて、SNS というボックスに入れられているから、そこでいくら大きな声を出したって本当に重要な意味は持たないんだよ。」
一方で、”Cold Metal Place” は極寒の地下メタル世界。プレッシャーに苛まれる他のバンドを尻目に、CODE ORANGE は競争の激しい音楽業界を生き抜きます。「全世界が笑っているが、オマエはその事実さえ知らない」の一節は音楽世界の過酷なプレッシャーをリアルに描写しています。
「それが批判であれ、ジャッジであれ、常にノイズが存在するように感じるね。自分が誰かの冗談になる可能性をいつも孕んでいる。すべてがミーム、すべてがジョーク、すべてが判決可能、すべてが破壊可能な世界だから。」

そんなメタナラティブなポスト音楽産業でも、Jami にとってはバンドが全てです。故に彼らの物語をレコードに記し続けることは当然でしょう。そうして闘うバンド CODE ORANGE 最大の願いは、そのキャリアを重ねていくことなのです。
「音楽で食っていきたいと思っている。だけど今や誰にとってもそうすることはとても難しい。座っていても金が入ってきた15年前とは違うんだ。」
2017年、GOJIRA とのツアーは彼らのバンドに対する取り組みを根底から変化させました。フランスのモダンメタルバンドは今やメタル世界の中心にいます。GOJIRA が毎晩セットを録画し、パフォーマンスの微調整を行うことはかなりの驚きでした。
「彼らはメタルを作るのが、工夫してより良いものを作るのがいかに難しいかを知る新世代なんだ。そうまでしても、俺らは生き抜かなきゃならない。」
従うべき青写真を持たない CODE ORANGE にとって課題は二つ存在します。まず、ハードコアとインダストリアル、オルタナティブを彼らのようにミックスするバンドは前代未聞なので、独力でチェックポイントを設定しながら進まねばならないこと。さらに、そこに確立されたマーケットが存在しないことでしょう。
「メタルなのか、ハードコアなのか、それともただのクソなのか。とにかく、あのアーティストのファンなら俺らの音楽も気にいるって勧め方は出来ないからな。少しづつファンを獲得していくしかないね。それが唯一のチャンスだ。」
グラミーへのノミネートは “ネクストバンド” としての孵化を促しました。
「グラミーは、多くのバンドとは異なるプラットフォームを手に入れるチャンスだった。もし勝ち取れれば、もっと俺たちの意図を実現していただろうな。 ノミネートされるだけで幸せだと言うつもりはないね。目標は、物事を変えることだから。そのための唯一の方法は、プラットフォームを拡張し続けることだろう。」

Jami はグラミーにノミネートされたことで多少なり “ドア” が開いたことを実感しています。ただし、個人的な成功のみならず、エクストリームミュージック全体の地位向上を狙う彼らのハードルは、遥かに高い位置へと設定されています。そのための取り組みの一つが、ライブの超進化です。事実、コロナウイルスでさえ、彼らの勢いを止めることは出来ませんでした。Jami がドラムライザーから解放されたはじめてのアルバムリリースショーは、無観客ながら絶賛を集めました。
「動画を視聴しているファンもライブに参加しているような気持ちにさせたいんだ。基本的にメタルのライブプロダクションはシンプルで退屈でからな。Windows のスクリーンセイバーみたいにね。だからもっと複雑に、多次元にしたいわけさ。」
バンドはすでに JPEGMAFIA や Injury Reserve などラッパーとのコラボレーションを行っていますが、他のメタルミュージシャンとは異なる方法で、ヒップホップやエレクトロアーティストとの相互受粉を続けたいと考えています。なぜなら Jami はポップやヒップホップの世界で、メタリックなイメージと美学が今どれほど人気があるかに気付いているからです。つまり彼はヘヴィーな音楽がただ享受するだけでなく、影響をもたらす存在であることを示したいのです。
「それを真実にするためには、エクストリームミュージックがエキサイティングである必要がある。そして相互通行の中から新たなものを生み出していきたいんだ。もちろん、俺らはラップメタルを目指しているわけじゃない。もっとプロダクションサイドでヒップホップのやり方を取り入れていきたいのさ。」

Jami は20年代という新たな10年でヘヴィーミュージックを前進させる必要性を切迫して感じています。それは多くのメタルフェスやロックフェスでプレイするうち、彼の年齢で主役を演じるミュージシャンがどれほど珍しいかに気づいたから。同時に、Reba のような女性プレイヤーはメタルユニバース全体では決して珍しくはありませんが、よりメジャーなメタル世界では過小評価されがちです。
「ヘヴィーミュージックには、新たなアイコン、子供たちが見たがって真似したりするバンドが必要だよ。メインストリームには3、4年前に出てきて、すでにアイコンの風格を備えたアーティストが存在する。メタルでそんな存在がいるかな?」
バンドのアクロバティックな攻撃性、隆起した上半身の筋肉はWWEへ自然に適合しました。相乗効果は確かにファン層の拡大に役立ちましたが、メタルの固定観念を増長させる危険も孕みます。
「俺らはロックを長い間支配してきたものから抜け出したいんだよ。」
ティーンネイジャーでライブを始めて以来、ストレスや精神的苦痛は多少なり改善されたと彼らは語ります。しかし、バンで寝泊まりし激しいライブパフォーマンスに起因する肉体的消耗や、アンダーグラウンドシーンの財政的精神的圧迫はそれでも厳しいものでしょう。
「俺らはユニットだから。批判や苦難を乗り越えるには、お互いを気にかけることが重要だ。CODE ORANGE は全員がこのバンドを特別だと信じている。それが特別なことなんだ。地球上のどんなバンドとも異なるし、俺らみたいなバンドは一つとしていない。だから良いってわけじゃないけど俺らは…まあ半分はジョークさ (笑)」

続きを読む COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CODE ORANGE : UNDERNEATH】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HELMS ALEE : NOCTILUCA】JAPAN TOUR 2020 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HOZOJI MATHESON-MARGULLIS OF HELMS ALEE !!

“And These Days, Pretty Much Every Single One Of My Best Female Friends Is An Extremely Talented And Active Musician. Many Of Them Play In Heavy Rock Bands. So The Feeling Of Imbalance Is Shifting To An Equilibrium In My World. I Can Say With Confidence That I Feel Accepted And Valued By The Male Musicians In My Community.”

DISC REVIEW “NOCTILUCA”

「”Noctiluca” とは特定の生物発光藻類のラテン語訳で、一般的に “海の輝き” として知られているの。」
海の輝きが “Noctiluca” ならば、HELMS ALEE はさしずめ重の輝きでしょう。彼らがシアトル特有の、深憂なレンズを通して支配する時間と空間。それはまるで深海のごとく暗闇に囲まれながら、差し込む光線に反射する艶やかな色彩、そして栄養価の高い深層音を備えているのですから。
比較の対象はもっぱら MELVINS, KYLESA, BIG BUSINESS でしょうか。もちろん、スラッジーなリフの猛攻とノイジーな実験のラボラトリーは HELMS ALEE のトレードマークですが、同時にリズムのトリックに重きを置いたセクシーなアプローチを考慮すれば、一方でこの海洋トライアングルこそコンテンポラリーな RUSH と言えるのかも知れませんね。
「このアルバムのために私たちは、これまで以上にボーカルのコラボレートを進めたわ。それに今回のプロデューサー/エンジニア (R.E.M. を手がけた Sam Bell) はとてもボーカルに心血を注ぐ人物だったの。」
3つの異なる声を持つ HELMS ALEE。ベースの Dana James, ドラムスの Hozoji Matheson-Margullis, そして青一点ギターの Ben Verellen が織りなすボーカルの輪舞は、さながらウミウシのごとく柔軟性と色彩を纏った “Noctiluca” において完全に花開き、重の輝きを一際煌びやかに染めました。
「私は海とそこに住んでいる微生物こそが、私たち人間の日常に見られるよりも生命があることを思い出させてくれると思うのよ。人間の行動や日々の政治を観察すると悲しくなりがちだから。」
Hozoji にとって生物発光藻のビーカーこそがランプであり、灯台の光です。マジカルで神秘的で、仄暗い現代社会に光をもたらす微かな希望。そしてそのイメージは確かに “Noctiluca” の音の葉へと反映されているのです。
“Interachnid” のオープニングはさながら海底火山の目覚めでしょうか。ダイナミック極まるマグマのリズムは、RUSSIAN CIRCLES の最新作にも似て圧倒的な命の躍動を伝えます。フレキシブルに、フリーダムに、イカの虹色のごとく刻々とその表情を変える Hozoji と Dana のシンクロニシティーは、まさしく HELMS ALEE の心臓。一方、続く “Beat Up” でわずか半音の違いを駆使してメジャーとマイナーを不思議に行き来する Ben のギターワークは頭脳なのかも知れませんね。
メタルからハードコア、スラッジ、グランジ、プログレッシブの狭間を漂う海月たちは、そうしてバリトンからソプラノまで時に独唱し、時に合唱し、感情の揺らぎを響かせます。”Spider Jar” で聴かせる荘厳のタペストリーは、その輝きに歌心を加えた HELMS ALEE の現在を如実に伝えています。
「私たちの音楽はライブセッティングでこそ最高の印象を与えるようなものなのよ。なぜなら、ライブパフォーマンスにおける多くの感情の力によって、私たちの歌が意図した通りになっていくと信じているからなの。」
4月に始まる日本ツアーの招聘元、Daymare Recordings 濱田氏が放った 「ライヴを観る前と観た後で決定的に印象が変わるバンド」 の言葉を受けて、Hozoji はライブハウスでバンド、そしてオーディエンスから生じ対流する感情の力をキーワードにあげました。そしてその幾層にも重なるエモーションの潮目は、Endon, alley, BB を巻き込んで一つの大きなうねりを創造するはずです。
今回弊誌では、Hozoji Matheson-Margullis にインタビューを行うことができました。「最近では、ほとんどの女性の親友一人一人が非常に才能があり活動的なミュージシャンなの。彼女たちの多くはヘヴィーロックバンドで演奏しているわ。だから、不均衡の感覚は少なくとも私の世界においては均衡へと移行しているの。私は自分のコミュニティの男性ミュージシャンに受け入れられ、評価されていると自信を持って言うことができるから。」
これまでの女性アーティストはまた一味違った視点、経験を持つミュージシャンでしょう。どうぞ!!

HELMS ALEE “NOCTILUCA” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HELMS ALEE : NOCTILUCA】JAPAN TOUR 2020 SPECIAL !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GATECREEPER : DESERTED】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHASE MASON OF GATECREEPER !!

PHOTO BY PABLO VIGUERAS

“Gatecreeper Started When I Met Our Drummer, Matt, And Discussed Our Shared Love For Old School Death Metal. We Both Talked About Dismember And Decided To Start a Band. Our Formula Has Always Been The Same Since The Beginning.”

DISC REVIEW “DESERTED”

「GATECREEPER は僕がドラマーの Matt と出会って始まったんだ。僕たちのオールドスクールデスメタルに対する愛をシェアしようぜってね。あの時僕たちは DISMEMBER について熱く語って、それでバンドを始めようって決めたんだよ。」
アリゾナに生を受けたメタリックハードコアの牽引者 GATECREEPER は、その溢れるデスメタル愛でエクストリームミュージックを遂に巨大なスタジアムへと導きます。
「僕たちは “スタジアムデスメタル” という言葉を世界へもたらし、それが取り上げられるようになった。要は、しっかりとエクストリームでありながらキャッチーなデスメタルを作ることが出来るということなんだ。狂気のサウンドでありながら、記憶に残るデスメタルは存在し得るんだ。DEICIDE の “Once Upon A Cross” のようにね。」
今回インタビューに答えてくれた ボーカリスト Chase Mason は Revolver のインタビューでそう怪気炎を上げ、スタジアムでプレイする自らの姿を夢想します。
実際、Chase の前人未到なその野心は決して夢物語ではないのかも知れませんね。
「フロリダデスメタルとスウェディッシュデスメタル。間違いなくその2つは僕たちのサウンドにおいて欠かせない重要な要素だよね。ただ、僕たちはそういったバンドたちの大好きな要素を抽出して、ユニークな僕等のサウンドとなるよう形成していくだけなんだ。」
HORRENDOUS, TOMB MOLD, BLOOD INCANTATION 等と共に OSDM 復興の波を牽引する GATECREEPER。中でも彼らは米国の凶凶と欧州の叙情を繋ぐ大胆な架け橋となり、初期の DEATH や OBITUARY と ENTOMBED, DISMEMBER が完璧なバランスで交わる “スイートスポット” の発見を誰よりも得意としています。
もちろんそこには、BOLT THROWER を頂点とする UK デスメタルの鼓動、さらには Kurt Ballou のサウンドメイクが象徴するように VEIN や CODE ORANGE のメタリックなハードコアとも共鳴する先鋭性も存分に垣間見ることが出来るでしょう。
ただし、”ポストヒューマン” な人類滅亡の世界を描いたアリゾナの “Deserted” で最も目を惹くエイリアンは、ポップである種単純化とまで言えそうなストラクチャーに宿された究極のキャッチーさでしょう。サバスの時代に巻き戻ったかのような凶悪でしかしシンプルなリフワークは、複雑化を極めた現代メタルに対するアンチテーゼの如く鮮烈に脳裏へと刻まれます。
その真の意味での “オールドスクール” の利点は、GATECREEPER ではベースを担当する Nate Garrett がマイクに持ち替え、Chase がベースをプレイ、さらに Eric Wagner もギターを兼任する SPIRIT ADRIFT にもシェアされています。GATECREEPER と SPIRIT ADRIFT、メンバー3名が重複し古を敬う2つのバンドの作品が、海外主要紙2019年のベストに多く選されている事実は複雑化の終焉と単純化への兆しを意味しているのかも知れませんね。
ただし、残念ながら GATECREEPER & SPIRIT ADRIFT の古式ゆかしくしかし斬新な共闘は終わりを迎えるようです。
「僕はもう SPIRIT ADRIFT ではプレイしないし、Nate も GATECREEPER でプレイすることはもうないよ。そうすることで、(同じマネージメントの) 2つのバンドが円滑に、互いに争わずやっていくことができるんだよ。」
Post Malone がアリゾナのショウで GATECREEPER のTシャツを着用したシーンは、今のところ彼らが最もメインストリームへと接近した瞬間だったのかも知れません。ただし、あのメタルを愛するポップアイコンに見初められた音の葉は、いつかスタジアムへと到達するに違いありません。
今回弊誌では、Chase Mason にインタビューを行うことが出来ました。「僕は COFFINS が大好きだし、他にも FRAMTID, DISCLOSE, GAUZE, BASTARD といった日本のハードコアやパンクバンドも気に入っているんだ。」日本盤は DAYMARE RECORDINGS から。どうぞ!!

GATECREEPER “DESERTED” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GATECREEPER : DESERTED】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU : WILD GODS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXIS PAREJA OF THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU !!

“Our Music Similarly Doesn’t Follow The Traditional Form Or Structure Of Most Music Out There. Overall It’s Fairly Volatile And Can Take Off In Any Direction At Any Given Time. We Have Always Enjoyed Exploring The Vast Possibilities Of Music And Prefer Not Be Cornered Into One Genre.”

DISC REVIEW “WILD GODS”

「僕たちの音楽は全体的にかなり不安定で、いつでもどの方向にでも進路を取れる。常に音楽の広大な可能性を探求して楽しみ、一つのジャンルに追い詰められることを望まないんだから。」
トワイライトゾーンのディストピアな未来において、画一化された “No.12” の外観を頑なに拒む伝統の破壊者 THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU。デスメタル、ハードコア、スクリーモ、プログレッシブ、ワールドミュージック、ミニマル、ジャズといった幾千もの奇妙な混合物に数学的溶媒を注いだマスコアのパイオニアは、類稀なるライブのカタルシスを伴って00年代に君臨した怪物でした。そう2010年に人知れずその姿を消してしまうまでは。
ボーカリスト Jesse の言葉を借りれば失われた10年は “成長のための必要悪”。そして、インタビューに答えてくれたギタリスト Alexis に言わせれば “成長を実証” するためシーンへと帰還したモンスターは復活作 “Wild Gods” で拡散と成熟を同時に見せつけています。
「僕たちの音楽は常に変化を遂げている。僕の目標はつまり自分たちの過去を繰り返さないことなんだ。アルバムをいくつかリリースして、休息し、今はチャレンジ出来る。リスナーがオープンマインドで、ジャンルなど気にせずただ音楽に身を任せてくれたら嬉しいね。」
THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU は確かに変化と共に進んできました。妥協を許さないアグレッシブなメタルコアとグラインドの紅い薔薇 “Put On Your Rosy Red Glasses” を出発点に、ポストハードコアを可能な限り最も苛性で迷路のような反復へ誘う “Grind. Sad. Nuclear”。 さらに “メランコリー” にヘヴィーとキャッチーを両輪に据えた出世作 “Mongrel” に、”ノン・メタル” な冒険を推し進めた “Worse The Alone” まで、ポリリズムと数学者の威厳を宿した “Polymath” の称号を手にしつつも、彼らは画一的な場所からは程遠い多種族のキメラとして常に保守、伝統へと挑んできたのです。
「確かにアルバムにはコンセプトがあるね。僕たち自身、そして自然界に纏わる現在の問題を反映しているんだよ。」
隠遁した10年の間に顕となった世界を覆う黒い雲。歌詞を書き上げた Jesse はこのアルバムがフィクションのように非常識極まる地球を宇宙人へと紹介する広告で、子供を虐待する司祭、司祭を守る教会、女性より優れていると信じる男性、動物を虐殺する人類といった “Wild Gods” をどうぞ見に来て下さいと嘯きます。そうしてバンドはその闇に、鋭き牙はそのままに咲き誇る多様性の嵐で贖うのです。
狂気とスリルに満ちた世の夜会を彩るサルサのダンス “Gallery of Thrills” はエクレクティック極まるアルバムの華麗なる招待状。エレクトロシンセとストリングスのサウンドスケープが過去と未来を行き来する “Ruin the Smile”、ラウンジジャズのアトモスフィアとメタルコアの残虐、プログレッシブの複雑がいとも容易く噛み合った “Raised and Erased”、サンバやボッサのメタリックな嘶き “Tombo’s Wound”。そうした多種多様な景観の中でも、テンポやムードは全て計算の下で刻々と移り変わり、さらに音の表情を増していくのですから驚きです。
“Ease My Siamese” が象徴するように、Jesse の囁き、荘厳に歌い紡ぎ、泣き叫ぶボーカルレンジがもたらすエモーションの振れ幅も絶妙に豊かで、フラメンコを基にした “Of Fear” では妻の Eva Spence (ROLO TOMASSI) と極上のデュエットまで披露しています。そうしてアルバムは、”Interspecies” のシロフォンとストリングスで異種間交流のロマンを運んだ後、ラテンのリズムと言語で究極の破滅をもたらす “Rise Up Mountain” で幕を閉じるのです。
2016 年に THE DILLINGER ESCAPE PLAN が活動を終えてから3年。CAR BOMB の新作と共鳴しながら “Wild Gods” は再びマスコアの時計を動かし始めます。今回弊誌では、Alexis Pareja にインタビューを行うことが出来ました。「MONO, envy, Melt-Banana みたいな日本のバンドはライブや音源を楽しんでいるよ。それにジャズの世界でも、上原ひろみ、福居良みたいな驚異的ミュージシャンがいてインスパイアされるね。」 昨年、来日も果たしています。どうぞ!!

THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU “WILD GODS” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOU : WILD GODS】

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【LINGUA IGNOTA : CALIGULA】


COVER STORY: LINGUA IGNOTA “CALIGULA”

I’ve had a difficult time finding justice in the world, finding accountability for the people who have done harm to me… The music is my way of holding people accountable and finding justice. My way of finding revenge.

MY SWEET REVENGE…THE STORY BEHIND “CALIGULA”

「世界に正義を見出すこと、私を傷つけた人間に責任を見出すことにずっと苦労してきたの。だから音楽は奴らに責任を負わせ、正義を見つける私のやり方なの。私なりの復讐なのよ。」
家庭内暴力、虐待の生還者 Kristin Hayter のパワフルな言葉です。そして彼女の受けた恐ろしき痛みと攻撃性は、オペラからノイズ、インダストリアル、フォークに教会音楽、スピリチュアル、そしてメタルまで全てを渾淆した婀娜めきのプロジェクト LINGUA IGNOTA に注がれています。
「何か違うことがやりたかったの。新鮮で私のビジョンのみを投影したようなね。どんなジャンルやカテゴリーにも繋がりたくはなかったのよ。ルールや限界を設けることになるから。真正で正直な音楽を作りたかったのよ。」

LINGUA IGNOTA の新作 “Caligula” は確かに正直であり、そして同時に残酷なアルバムです。8分を超える楽曲3曲を含む11曲の連なりがリスナーに与えるのは罰にも思える疲労困憊の聴体験。
「もともとアルバムは、90分を超えていたの。さすがに音楽を詰め込みすぎだと思ってそれを75分にしたのよ。さらにそこから66,6分まで短縮したの (笑)。そんなちょっとしたジョークに溢れたアルバムでもあるのよ。リスナーをアルバムの “サイクル” へ誘うことで私は罰を受けなければならないの。だって彼らに示すのは家庭内暴力のサイクルなんだから。」
2017年の LP “All Bitches Die” に比べれば幾分かはアクセシブルかも知れません。ただし、それでも”アウトサイダーのオペラ” として生を受けた “Caligula” を咀嚼するには何度も何度もアルバムを噛みしめる必要がありそうです。
「言いようのないものに声を出したいし、本質的に表現が難しいものを人々に理解してもらいたいの。」と Kristin は説明します。 「それに、みんなが私についてあれこれ言うことを自虐ネタにもしているのよ。炎上商法とか、悪いフェミニストだとか。その反応を音楽にも取り入れているの。」

ただし、LINGUA IGNOTA は音楽プロジェクトとして始まった訳ではありませんでした。クラッシックのピアノと声楽を学び、シカゴでインターディシプリナリー (複数の学問の) クリエイティブアートを研究した後、実は Kristin の Brown 大学卒業論文こそが LINGUA IGNOTA の子宮でした。10,000ページに及ぶ論文のタイトルは “全てを燃やせ、誰も信じるな、自殺しろ”。THE MEAT SHITS のようなポルノグラインドバンドの性暴力的な歌詞を調べ、彼女自身の経験に照らして文脈化を果たします。
やがて彼女は自身の作品をロードアイランド州プロビデンスのDIYノイズ/メタルシーンへと持ち込み、自らと対立的な側面を実験し始め、2枚のレコードをリリースし、THE BODY とツアーを始めたのです。
「THE BODY にシーンを紹介してもらえたのがとてもラッキーだったわね。だって彼らは基本的に良い人間だけを周りに置いていて、奴らとは関わらない方がいい、クソだからってアドバイスをくれたから。」


そうして生まれた LINGUA IGNOTA に対する明確なビジョン、溢れる自信にもかかわらず、Kristin は彼女のアートをどこか客観的で距離を置いて見ている節があります。
「全ては私の中から生まれたものよ。だけどこの名前でパフォーマンスを行うことに何かしら距離を置いている部分もあるのよ。」
ライブにおいても、群衆の中に立ちライトで焦点をぼかし影に隠れて歌い紡ぐ Kristin。何より “未知の言語” を意味するラテン語の LINGUA IGNOTA という名前自体、中世ドイツのベネディクト会系女子修道院長であり神秘家、作曲家ヒルデガルト・フォン・ビンゲンが占いや神秘主義を目的に開発した言語 “リングア・イグノタ” を基にしているのですから。
そうした “ペンネーム” や “影のパフォーマンス” のみならず、歌詞の面でも Kristin は時に自身とアートの距離を考慮します。
「もちろん、個人的に経験したことをベースにしているけど、権力や暴力を乱用する男の言葉を引用することもあるわ。私に起こったことじゃなくても、(家庭内暴力の経験がある私なら)、その言葉に “重み” をもたらすことができるんだから。」

では “トランセンデンタル” とも形容され Chelsea Wolfe にも通づる音闇の聖堂の鍵はどこにあるのでしょう?
「リバーブね!ボーカルやピアノにリバーブをかけまくってウエットなサウンドにしているのよ。そうしてダークでありながら鮮明なサウンドスケープを創造しているの。」
カトリックと密接に思える LINGUA IGNOTA のアートですが、実は Kristin 自身は現在無神論者。
「教会で育ったけど、13で無神論者になったの。それ以来信じたり信じなかったりを続けているわ。今は…おそらく信じていない。だけどカトリックのイメージとか聖書の言語とは密接な繋がりを持っているの。カトリックに限らず、崇拝行為として構築された音楽やアートは実に美しく純粋な意図があるの。一方で、教会自体の不純な意図、腐敗に抑圧、虐待も存在するけどね。」
最近は DAUGHTERS の “You Won’t Get What You Want” がお気に入りです。
「他にもコーラルミュージックやドローンを良く聴くわ。サルディーニャやジョージアのポリフォニーも大好きよ。そういった音楽と Tim Hecker, Meredith Monk, それにハードコアやパンクをミックスしているのよ。」

血の滲むようなリリックとジャンルの枠を超えた音のマニフェスト “Caligula” のタイトルは、世の中全てを憎み全員を殺害しようとしたローマ皇帝のに因んで名付けられました。
「虐待の力、狂気、堕落、ナルシシズム…政治的なコミュニティーの世界で私は全てを見てきたわ…そしてそのトラウマの結果として自分自身にも狂気を宿すこととなったの。だからこそ、”Caligula” というタイトルが崩壊しかけて崖の淵にある現在の社会を例証していると感じたのよ。」
しかし、LINGUA IGNOTA の音楽は、差し迫った社会の衰退、崩壊と戦うための神器となるのでしょうか?
「時々、私の音楽が何かを助けているのか、それともノイズを追加しているだけなのかって自問自答するわ。私がを起こそうとしている変化をみんなが聞いてくれたらと望むわ。そして、私の音楽が弱く不可視とされている人々が虐待と戦うための力となることもね。」
権力を利用して他人を虐待する愚かな行為は政治の世界のみならず、ロックミュージックのコミュニティーを含む社会のあらゆる側面に存在します。ただ近年では、以前より多くの被害者が前に出て公の場で声を上げられるように改善が進んでいるようにも思えます。当然、やるべきことはまだまだありますが。
「エクストリームミュージックのコミュニティーは大部分がまだまだとても酷い状況よ。愚かな考えをもとにした醜い振る舞いや、ミソジニーが横行しているわ。実際、私を虐待した男の1人は有名なノイズミュージシャンだった。それに以前より保守的で右よりの政治性を欲しているようにも思えるわね。
ただ、だからと言ってコミュニティーやシーンを “取り締まって” 正すことが答えだとは思わないの。誰かを排除するコールアウトカルチャーは結局有毒でコミュニティーの助けにはならないわ。教育こそが正しい道だと思うの。複雑だけど、誰かを追放し排除するより考え方を変えたいのよ。」


Kristin は彼女の “音楽教育” がどの様な影響を与えたのか、虐待の被害者のみならず、加害者からも話を聞き前へと進む手助けになっていることを知り多少なりとも心の平安を得ます。
虐待というタブーに挑むのは、LINGUA IGNOTA だけではありません。SVALBARD はリベンジポルノを糾弾し、VENOM PRISON は代理出産やレイプについて叫びます。さらにそういった “正義の” バンドは増えるのでしょうか?
「家庭内暴力や性的暴力の経験はありふれたものよ。だからそういったテーマのプロジェクトは今後増えていくと思うの。ありふれていてリアルだからこそ、自らの経験やトラウマを扱うのは当たり前になっていくはずよ。」
そう、”リアル” こそが LINGUA IGNOTA を魅力的な妖魔としているのです。 ドラマのために作られたフィクションではなく、究極に恐ろしくしかし正直な場所に端を発するノンフィクションは、故に近寄りがたい音の葉を纏っていますが、奈落の底でヘヴィーなリスナーと深く深く繋がっています。
「どれだけの人が女性を嫌っているか、どれだけ世界が女性を嫌っているか知れば知るほど、”サバイバー” として他の女性への責任を感じるの。これからどこに行くのでしょうね?だけど最も重要なことは、リアルであり続けること。だから音楽を作ったり、暴力について語る必要がなくなればそうするわ。永遠に虐待の被害者になりたくはないからね。」

続きを読む COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【LINGUA IGNOTA : CALIGULA】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENDON / SWARRRM : 歪神論 -EVIL LITTLE THINGS-】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAICHI NAGURA OF ENDON & KAPO OF SWARRRM !!

“To Me, Extreme Music In Japan Seems To Have a Spirit Kind Of “Fuck While Being Fucked” And Yeah…I Can Hear It. The Situation Is Often Forgotton Unconsciously.” By Taichi Nagura

“I’m Not Sure What The Punk / Hardcore Spirit Specifically Refers To. The Spirit Should Be Different For Each Individual.” By Kapo

DISC REVIEW “歪神論 – EVIL LITTLE THINGS –

「日本でバンドをやるということが常に既に”Made in Occupied Japan” であるという事実をわざとらしくモチーフとしました。反体制とかアナーキズムについては特には意識していませんね。”Made in Occupied Japan”が表すのはアメリカにファックされているという事実です。」
日本のエクストリームミュージックは “やりながらやられている”。ENDON の那倉太一氏が語るのは、白人が生み出したロック、もしかすると文明そのものへと過度に依存する日本の歪。大多数の日本人が “アメリカにファックされている” 事実を黙過する中、ENDON と SWARRRM、国産グラインドの二巨星は全てを直視し、共鳴し、未だ “更新の余地” があるべきロックの地平を開拓し続けます。
少なくともロックの教科書には、グラインドコアの源流とされるパンクロックについて、反体制的でアナーキーなアティテュードだと記されています。では、彼らの放ったスプリット “歪神論 -Evil Little Things-” とは、未だ白人に対するコンプレックスを抱き続ける日本の愚かしき権力に贖う音楽の形をした何かなのでしょうか?
那倉氏は「だいたい現政権や差別主義者を否定するのにわざわざ他人のスピリットなんて必要でしょうか。」と応じます。
さらに SWARRRM Kapo氏の言葉は象徴的です。「パンク/ハードコアのスピリットが具体的に何を指すのか不明ですが。大体、個でスピリットは違うはず。パンク/ハードコアのスピリット=左寄りと限定することがパンク全体主義であると考えます。一人一人が違う意見であるという事を当然のように理解される環境こそが必要なのでは。」
天上天下 唯我独尊 三界皆苦 吾当安此。”全宇宙のなかで、私たちは皆がたった一つの尊い存在。苦しみに溢れる世界で、私はその苦しみを気にかけるために生まれてきたのだ”。ENDON と SWARRRM、両者に流れる血潮にはきっとこの釈迦の言葉が刻まれています。それは啓蒙や扇動からは程遠いしかし世界にとって枢要な境地。
さらに Kapo 氏は “唯我独尊” のイデアこそが互いを惹きつけると語ります。「いつの時期にもそれぞれの時期のイケてると言われる価値観を共有する集団はいます。シーンというのかもしれません。そういう価値観に影響される事を拒否できるバンドの一つではないかと判断して仲良くさせてもらってます。SWARRRMはご存知かもしれませんが、良くも悪くもそういう事とは常に無縁の活動を長年続けてます。」
なるほど、歪神論で提示された両者の音の葉はそうして確かにシンクロしています。
「グラインドのシンボルであるブラストビートが炸裂する瞬間は、機関銃による戦闘の開始場面のようであり、多分に射精的な快楽を表象しています。」
インテンスの極みであるブラストとDビートは、ロックらしいギターのコードやリフワークと相対し確かに融解します。その位置から、カヴァー曲も含めてノイズの地獄や歌謡の宴といったそれぞれの蟻地獄へと引き摺り込む唯我の方法論も見事。
加速する混沌に逆行するロックのギタリズム。その二律背反にも思えるエナジーはしかし確かに白人のロックに魅せられ奪われた後、踏み倒し、疾風迅雷のうねりをあげる極東のモンスターに違いありません。ハードコアの脱領土化はここにその一歩を踏み出しました。
今回弊誌では、那倉、Kapo 両氏にインタビューを行うことが出来ました。「私自身ロックと政治の関係性に特別な物を求めていません。主張や左右の風向きは時代時代で変化あってしかるべきと考えます。過去の主張や精神が現代に有効とは考えませんし、過去の物事を全く美化して捉えてないし、美化されたロマンチックなロックの教科書も信じません。」どうぞ!!

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENDON / SWARRRM : 歪神論 -EVIL LITTLE THINGS-】