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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLACK PEAKS : ALL THAT DIVIDES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH WILL GARDNER OF BLACK PEAKS !!

“We All Started Collectively Listening To Lots Of Mastodon and Tool . Bands Like That . I Think Thats Where The Shift Started To Happen , Into The More Black Peaks Style Heavy Sound.”

DISC REVIEW “ALL THAT DIVIDES”

英国が今、沸騰しています。ARCHITECTS, TesseracT、そして SVALBARD や ROLO TOMASSI といった Holy Roar のロースター。真の意味での “プログレッシブ” を追求するエクレクティックでスリリングな冒険的アーティストが、かつて様々なムーブメントを創造した獅子とユニコーンの紋章の下へと集結しているのです。
ブライトンから顕現した BLACK PEAKS も、その大波を牽引する風雲の一つ。「様々な音楽ジャンルをミックスしているんだけど、主にロック、ハードコア、そしてプログが中心だね。」 と Will が語るように、荘厳と野蛮、洗練と無骨を併せ持つそのコントラストの烈風は、英国ニューウェーブの中でも一際カラフルなインパクトを与えているのです。
注目すべきは BLACK PEAKS が、一歩間違えれば “無節操” とも捉えられかねない “美味しいとこどり” の方法論を、臆せず真摯に追求している点でしょう。SHRINE 時代は自らが認めるように “マーズヴォルティー” すなはち THE MARS VOLTA のポストハードコアを追い求め、さらに改名後は 「僕たちは集まって、MASTODON や TOOL といったバンドを何度も聴いて研究し始めたのさ。そこから音楽性の変化が始まったと思うね。」 と語る通り、モダンプログレッシブの数学的アプローチや重量感を深く “研究” し、理想的な BLACK PEAKS のスタイルへと邁進し構築する。その研究者としての姿勢が、これまでありそうでなかったモダンでコンパクトな凛々しきプログの坩堝を精製することへと繋がりました。
例えばファーストシングル “Can’t Sleep” は、MASTODON のスラッジアタックと SYSTEM OF A DOWN の異国感がシームレスに融合したキメラでしょうし、”Electric Fires” には TOOL のマスマティカルな野心と BIFFY CLYRO のポップな精神が宿っているはずです。加えて湧き出でる OPETH や ELDER のエピカルな世界観。
ただし、その魅力的なフラスコに Will のボーカルが注がれると、BLACK PEAKS は触媒を得て劇的な化学反応を起こします。実際、スクリームからクリーンボイス、囁きからファルセットまで、英国らしい叙情、憂鬱、愁苦、そして悲憤を宿す Will の歌唱とメロディーは、異次元のエモーションを楽曲へと織り込んでいくのです。
フルスロットルの咆哮を縦糸に、ガラスのファルセットを横糸に織り上げたその退廃感は、母国の選択、ブレグジットに起因するものでした。「ここ数年イギリス人としてヨーロッパを旅する事で、実際に興味深い体験をして来たからなんだけどね。つまり、そうやって僕たちに降りかかる出来事に対して情動、怒り、フラストレーションなんかを感じたわけさ。」 そのダイナミズムの源は、例えば SVALBARD にも通じるやはり政治的なものでした。
そうしてアルバムは、THE DILLINGER ESCAPE PLAN のカオスや OCEANSIZE の耽美まで吸収した強欲な運命 “Fate Ⅰ&Ⅱ” でその幕を閉じます。ハードコアのアグレッションとプログレッシブのエレガンスが、自然と同じキャンパスに描かれるダイナミズムの DNA はきっと選ばれたものにしか与えられていないはずです。
今回弊誌では、新たなボーカルスター Will Gardner にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちはアルバムをレコーディングしている最中に ELDER “Reflections of a floating world” を頻繁に聴いていたんだ。」 どうぞ!!

BLACK PEAKS “ALL THAT DIVIDES” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JOURNAL : CHRYSALIS ORDALIAS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOE VAN HOUTEN OF JOURNAL !!

“I Have Always Been Fascinated By Emotional And Memorable Music That I Would Hear In Certain Video Games – Particularly JRPGs Like Final Fantasy And Chrono Trigger, As Well As High-Fantasy Action Adventure Games Like The Legend of Zelda Series.”

DISC REVIEW “CHRYSALIS ORDALIAS”

サクラメントに居を置く JOURNAL が “Unlorja” で2010年に奏でたテクニックとカオスのエクストリームな二重奏は、ゲーム音楽のエピカルな薫りも纏いながらプログメタル/マスコアの “日誌” に確かな足跡を刻みました。
8年の後、遂に帰還を遂げた JOURNAL が掲げたのは、幼少期から馴れ親しみ愛し続ける “JRPG” 日本のロールプレイングゲームを彷彿とさせる世界観の更なる拡大でした。
「僕のフェイバリットコンポーザーは、ファイナルファンタジーの植松伸夫さんとゼルダの近藤浩治さんなんだ。疑いようもなく、僕が聴いて来たどのメタルバンドよりも強く影響を受けているね。」ゲームの話となると明らかに饒舌さを増すコンポーザー Joe。彼のゲームに対する強い愛情は、そのまま JRPG とそのサウンドトラックのスペクタクル、壮大な世界観、ストーリー展開の妙、そして溢れる感情を最新作 “Chrysalis Ordalias” へと投影することになりました。
もちろん、そこには Joe が養ってきた THE DILLINGER ESCAPE PLAN, TRAINING FOR UTOPIA, CANDIRIA, PROTEST THE HERO, CAR BOMB といったカオティックなメタル/ハードコアの素養が基盤して存在しています。さらに160ページに渡るストーリーを反映する歌詞の深みは COHEED AND CAMBRIA 譲りでしょうか。
そうして、Joe が言うところの 「複雑なタイムシグニチャーと突拍子もないテンポをユニークにブレンドし、同時に様々な感情や景色を運ぶ作曲の妙を得ることが出来たんだ。僕たちの音楽を RPG のボス戦みたいだって言う人もいるくらいでね!」 という独創性極まるユニークブレンドのコンセプトアルバムは完成を見たのです。
JOURNAL の音楽に一際個性を生んでいるのが、ファストで難解なチップチューンサウンドの楽器による完全再現でしょう。確かに8bitサウンドをメタルワールドへと取り込んだバンドは少なからず存在していますが、人の手で半ば強引に勇敢に導入する JOURNAL の姿はまさに開拓者。
実際 Joe も、「8-bit のビデオゲームサウンドを取り入れているバンドも素晴らしいんだけど、僕は人が楽器をプレイしたサウンドの方が好きなんだ。」 と語っていますし、その試みがより生々しいサウンドスケープと、複雑でアグレッシブな迫真のインテンスを共存させているのは明らかです。
事実、”Calamity Smile” はバンドのエクストリームな実験が未曾有のダイナミズムを創造するマイルストーン。FFシリーズのバトルを想起させるスリリングな音符の連鎖、リズムの荒波を、全て演奏で具現化する狂気のハイテクニックは圧倒的な混沌と緊迫感を放ち、一方で中盤のファンキーなパートではチョコボに乗って旅をしているかのような優しい錯覚を抱かせます。
もしかすると、SikTh がゲーム音楽を制作すれば同様の景色に到達するのかもしれませんね。音の先にイメージが宿る無上のサウンドスケープ。
さらに、Joe 自身、ex-CONDUCTING FROM THE GRAVE の Drew Winter 等4人を起用したマルチボーカルシステムも完璧に機能しています。ロールプレイングゲームのキャラクターのように生き生きと適材適所で語りかける彼らの声はグロウル、スクリーム、クリーンに分厚いハーモニーまで自由自在。
特にゼルダのカラフルで牧歌的世界観が表出するタイトルトラック “Chrysalis Ordalias” では、ワイドなボーカルレンジが鮮やかに楽曲の多様性、コントラストを引き立てていますね。
ゲームとエクストリームミュージックの魅力が収束した日誌の1ページ。今回弊誌では、ギタリスト、コンポーザー、そしてボーカルも務める Joe Van Houten にインタビューを行うことが出来ました。
「例えば “FF10” の悲哀極まるシーンで、実に悲しいピアノの調べが流れ出すようにね。そうして僕たちは、ティーダとユウナがいつか結ばれることをただひたすらに願うんだ!大好きなストーリーだよ。」 どうぞ!!

JOURNAL “CHRYSALIS ORDALIAS” : 9.9/10

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THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2018 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE


THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2018 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE

1: GHOST “PREQUELLE”

昨年 “最も印象的だったアルバム” の記事にも記しましたが、近年、MASTODON, VOLBEAT, Steven Wilson, PALLBEARER, Thundercat、さらに今年も GODSMACK, ALICE IN CHAINS, DISTURBED, SHINEDOWN など様々なジャンルの旗手とも呼べるアーティストが “ポップ” に魅せられ、レガシーの再構築を試みる動きが音楽シーン全体の大きなうねりとして存在するように思えます。当然、邪悪とポップを融合させた稀有なるバンド GHOST もまさしくその潮流の中にいます。
「JUDAS PRIEST はポップミュージックを書いていると思う。彼らはとてもポップな感覚を音楽に与えるのが得意だよね。PINK FLOYD も同様にキャッチー。ちょっと楽曲が長すぎるにしてもね。」
と語るように、Tobias のポップに対する解釈は非常に寛容かつ挑戦的。さらにモダン=多様性とするならば、70年代と80年代にフォーカスした “Prequelle” において、その創造性は皮肉なことに実にモダンだと言えるのかもしれません。実際、アルバムにはメタル、ポップを軸として、ダンスからプログ、ニューウェーブまでオカルトのフィルターを通し醸造されたエクレクティックな音景が広がっています。
もちろん、シンセサイザー、オルガン、キーボードの響きが GHOST を基点としてシーンに復活しつつあることは喜ばしい兆候だと言えますね。同時に、サックス、フルート、ハグストロムギターまで取り入れたプログレッシブの胎動は “Prequelle” 核心の一部。Tobias はプログロックの大ファンで、作曲のほとんどはプログレッシブのインスピレーションが原型となっていることを認めています。伝統的なプログロック、プログメタルの世界が停滞を余儀なくされている世界で、しかしプログレッシブなマインドは地平の外側で確かに引き継がれているのです。
ウルトラキャッチーでフックに満ち溢れたカラフルなレコードは、数多のリスナーに “メタル” の素晴らしさを伝え、さらなる “信者” を獲得するはずです。
ただし、匿名性を暴かれた Tobias の野望はここが終着地ではありません。多くのゲストスターを揃えたサイドプロジェクトもその一つ。すでに、JUDAS PRIEST の Rob Halford がコラボレートの計画を明かしていますし、これからもスウェーデンの影を宿したメタルイノベーターから目を離すことは出来ませんね。何より、全ては彼の壮大な計画の一部に過ぎないのですから。

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2: YOB “OUR RAW HEART”

スラッジ、ドゥーム、ストーナーのプログレッシブで多様な進化はもはや無視できないほどにメタルの世界を侵食しています。中でも、オレゴンの悠久からコズミックなヘヴィネスと瞑想を標榜し、ドゥームメタルを革新へと導くイノベーターこそ YOB。バンドのマスターマインド Mike Scheidt は2017年、自らの終焉 “死” と三度対峙し、克服し、人生観や死生観を根底から覆した勝利の凱歌 “Our Raw Heart” と共に誇り高き帰還を遂げました。
「死に近づいたことで僕の人生はとても深みを帯びたと感じるよ。」と Mike は語ります。実際、”楽しむこと”、創作の喜びを改めて悟り享受する Mike と YOB が遂に辿り着いた真言 “Our Raw Heart” で描写したのは、決して仄暗い苦痛の病床ではなく、生残の希望と喜びを携えた無心の賛歌だったのですから。
事実、ミニマルで獰猛な2014年の前作 “Clearing the Path to Ascend” を鑑みれば、全7曲73分の巡礼 “Our Raw Heart” のクリエイティビティー、アトモスフィアに生々流転のメタモルフォーゼが訪れたことは明らかでしょう。
作品のセンターに位置する16分の過重と慈愛の融合 “Beauty in Falling Leaves” はまさに YOB が曝け出す “Raw Heart” の象徴でした。甘くメランコリックなイントロダクションは、仏教のミステリアスな響きを伴って Mike の迫真に満ちた歌声を導きます。それは嵐の前の静けさ。ディストーションの解放はすなわち感情の解放。ベースとドラムスの躍動が重なると、バンドの心臓ギターリフはオーバートーンのワルツを踊り、濃密なビートは重く揺らぐリバーブの海で脈動していくのです。バンド史上最もエモーショナルでドラマティックなエピックは、死生の悲哀と感傷から不変の光明を見出し、蘇った YOB の作品を横断するスロウバーン、全てを薙ぎ倒す重戦車の嗎は決して怒りに根ざしたものではありませんでした。
結果として YOB は THOU や KHEMMIS と共にドゥームに再度新風を吹き込むこととなりました。例えば CATHEDRAL の闇深き森をイメージさせるオープナー “Ablaze” ではジャンルのトレードマークにアップリフティングでドリーミーなテクスチャーを注入しドゥームの持つ感情の幅を拡大しています。
そうしてアルバムは僅かな寂寞とそして希望に満ちた光のドゥーム “Our Raw Heart” でその幕を閉じます。人生と新たな始まりに当てた14分のラブレターは、バンドに降臨した奇跡のマントラにしてサイケデリックジャーニー。開かれたカーテンから差し込むピュアな太陽。ポストメタルの領域にも接近したシネマティックでトランセンドな燦然のドゥームチューンは、彼らとそしてジャンルの息災、進化を祝う饗宴なのかも知れませんね。

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3: SVALBARD “IT’S HARD TO HAVE HOPE”

女性の躍動と、多様性、両極性を旨とする HOLY ROAR RECORDS の台頭は2018年のトピックでした。越流するエモーションをプロテストミュージックへと昇華し、英国ブリストルから咆哮を貫く至宝 SVALBARD はまさにその両者を象徴する存在です。熾烈なメタル/ハードコアにポストロックの叙情と風光、ポストメタルの思索と旅路を織り込みさらなる多様化の波動を導いた新作 “It’s Hard to Have Hope” はシーンの革新であり、同時に閉塞した世界が渇望する変化への希望となりました。
確かに “It’s Hard to Have Hope” は怒れるアルバムで、中絶、性的暴力、リベンジポルノ、インターンシップの無賃雇用など不条理でダークな社会問題をテーマとして扱っています。
さらには、「このアルバムは、ステージに女の子が立つことにネガティブなコメントを寄せる人たちに対する私からの返答よ。”女性をメタルから追い出せ!” と言うような人たち、コンサートで女性にハラスメント行為を行う人たち。これは彼らに対する私からの恐れなき怒りの返答なの。」と語るように、女性フロントマンとして Serena が長年メタルシーンで苦しんできたハラスメント行為の数々も、作品の持つ怒りの温度を “フェミニストのメタルアルバム” の名の下に上昇させていることは明らかです。
とはいえ、この類稀なる感情と表情の結晶が、唯一怒りにのみ根ざすわけではないこともまた事実でしょう。実際、Serena はこの作品の目的が “人々にこういった社会的不公平を伝えるだけではなく、なぜそういった問題が起き続けるのか疑問を投げかけることだった” と語っています。「誰が正しいのか互いに主張し合うのを止めてこう尋ねるの。一緒に前進するために何ができるだろう?より良き変化のためお互い助け合えないだろうか?とね。」とも。
そうして世界のターニングポイントとなるべくして示現した “It’s Hard to Have Hope” に、一筋の光明にも思える尊きアトモスフィア、荘厳なる音の風景がより深く織り込まれていることはむしろ当然の進化だと言えるでしょう。
CULT OF LUNA や MY BLOODY VALENTINE のイメージこそ深化の証。そうしてポストブラックの激しさと光明を背負った彼女は悲痛な叫びを投げかけます。「いったい誰が女性を守ってくれるの?」

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AZUSA : HEAVY YOKE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRISTER ESPEVOLL & DAVID HUSVIK OF AZUSA !!

“I Think The Whole Metal Genre Needs An Alteration, And The Domination Of Male Energies Comes With Certain Limitations And Lacks Dynamics. In General, We Need More Females Involved.”

DISC REVIEW “HEAVY YOKE”

Kate Bush がフロントウーマンの SLAYER。Chelsea Wolfe 擁する THE DILLINGER ESCAPE PLAN。もしくは Joni Mitchell と CYNIC の邂逅。
ネイティブアメリカンの透明な少女、ヒーラーの名を冠する AZUSA は、様々な “If” を浄化と知恵、調和と変化のダイナミズムで実現しながら、飛躍するフィーメールフロンテッドの潮流を一層確かなものとします。
多国籍のスーパーバンド AZUSA の始まりは、THE DILLINGER ESCAPE PLAN の Liam Wilson が EXTOL に送った一通のメールでした。昨年終焉を迎えたカオティックハードコアの首謀者を牽引したベースマンは、明らかにノルウェープログメタルの至宝に激しく惹かれていました。
一方はヴィーガンでヨガを嗜む探求者。一方はキリスト教の中でも特に精霊の加護を掲げる一派で育った、クリスチャンメタルの求道者。もしかすると、両者の間には “スピリチュアル” という共通項が存在したのかも知れませんね。
そして David が「男性のエナジーがシーンを支配することで、リミットやダイナミクスの欠如が生まれていると思う。だから一般的に、僕たちはもっと女性を取り込んで行く必要があるんだよ。」と語る通り、AZUSA の更なる独自性は女性ボーカル Eleni Zafiriadou の加入で決定的なものとなりました。
ハードコアを経由し、現在はインディーポップデュオ SEA + AIR で魅惑の歌声を響かせる Eleni の、ブルータルからドリーミー、そしてポップを行き来する万華鏡のアプローチは、それでも未だ男性が大半を占めるエクストリームの声に鮮やかな新風を吹き込んでいます。
もう一つの重要なトピックは、EXTOL から袂を別ったギタリスト Christer Espevoll がドラマー David Husvik と再度邂逅を果たしたことでしょう。
CYNIC や DEATH の知性と神秘のアグレッションを、北欧からキリスト世界のイメージと共に発信していた EXTOL の異能。ボーカル Peter の兄弟で、そのデザインを支えていた Christer が従兄弟である一族の David と再び創作を始めたことは、バンドやシーンにとって実に歓迎すべき出来事であるはずです。
実際、アルバムオープナー “Interstellar Islands” で2人のケミストリーは、瞬く間にかつての輝きを取り戻します。メロディックにリズミカルに、思慮深く構築される Christer の幾何学的ギターワークは、15年の時を超え David の放つ正確無比なグルーヴと見事に交差し調和していきます。もちろん、複雑に連なるオッドタイムの基幹となるは Liam のベースノート。
「特に Liam と Eleni が AZUSA に加わってから僕たちは全く異なる場所にいると言えるだろうね。実際、”Heavy Yoke” の作曲とレコーディングのプロセスは、思いもしなかった場所に僕たちを誘ったんだ。僕たち2人が始めた時は想像もつかなかったような場所にね。」 と Christer が語る言葉は真実です。
スラッシュの凶暴からサイケデリックワルツ、そして甘やかなポップをシームレスに接続し、刻々とタイムワープを繰り返すスリリングな楽曲で、Eleni の魔法は冴え渡ります。
そうしてそのエクレクティックな才能は、入り組んだ迷宮のような “Heavy Yoke”、一方でよりストレートなハードコア賛歌 “Heart of Stone”、そして初期 CYNIC のアトモスフィアを纏った “Spellbinder” までリアルタイムで適応し、バンドの目的地である美しき不協和、メタルホライゾンの向こう側を煌々と照らすのです。
相互に織り成す人間関係のより暗い側面、現実に蔓延る感情的な重さへと焦点を当てたアルバムで、Eleni は 「私の夢を一瞬で踏みにじる準備は出来た?」 と唄います。シーンは彼女の叫びにどう反応するのでしょうか?
今回弊誌では、元 EXTOL の Christer と現 EXTOL の David にインタビューを行うことが出来ました。「僕たち2人がハードロックやメタルを聴き始めたのは12, 13歳のころだったね。僕等の両親はその行為にとても懐柔的だったんだけど、ただしクリスチャンロック、クリスチャンメタルのバンドはキリスト教の教えを歌詞に盛り込んでいるから許されていたんだよ。」 どうぞ!!

AZUSA “HEAVY YOKE” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CULT LEADER : A PATIENT MAN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANTHONY LUCERO OF CULT LEADER !!

“I Do Feel The Weeping Skull Represnts The Concept Of The Album. Musically And Lyrically We Want The Band To Be An Expression Of The Negativity In Our Lives.”

DISC REVIEW “A PATIENT MAN”

ソルトレイクに兆すエクストリームミュージックの胡乱なニューリーダー。異端の唱道者 CULT LEADER が掲げる教義は、陶酔を誘う魔性のカオスとノワールです。
グラインドコアとスラッジの蜜月を象徴したバンド GAZA の解散は、アンダーグラウンドの世界にとって二重の意味でショッキングな出来事でした。鋭利で野放図なその独創性が途切れることはもちろん、当時のボーカリストが起こしたスキャンダルもまた、リスナーの大きな落胆を誘ったことは確かでしょう。
しかし障害の根源を断ち切り、ベーシスト Anthony をボーカルに据えて再始動を果たした CULT LEADER のある種麻薬的で、妖気振りまく夜叉の佇まいは、GAZA の悲劇を振り払って余る程に鮮烈かつ混沌です。
もちろん、2014年のデビュー EP “Nothing for Us Here” 以来、CULT LEADER はメタリックでブルータルなハードコアの鼓動に、プログレッシブやドゥーム/スラッジの息吹と悲哀の情操を投影し、カオティックで多様な宇宙を創造して来ました。
実際、インタビューで Anthony も 「もし僕たちがある特定のジャンルに限定されてしまったら、もはやバンドとして機能しないとさえ思うんだ。それほど僕たちの音楽性は多岐に富んでいるんだよ。」 と語っています。
ただし、それでも黒の指導者が提示する新たなバイブル “A Patient Man” は、敬虔な信者にこれまで以上の圧倒的驚愕とカタルシスをもたらす大いなる預言書、もしくは洗礼だと言えるでしょう。
CONVERGE と Chelsea Wolfe,  Nick Cave の薄幸なる婚姻。涙するスカルをアートワークにあしらったこの作品を、端的に表せばこういった表現になるでしょうか。
言い換えれば、ランニングタイムのおよそ半分はグラインドとハードコアのカオス。一方で残りの半分はバリトンボイスで紡がれるデリケートなノワールへと捧げられているのです。
ブラストビートに導かれ、ポリリズミックなメロディーと無節操なブレイクダウンが花開くオープナー “I Am Healed” や、不協和のシャワーとスラッジのスロウバーンがしのぎを削る “Isolation in the Land of Milk and Honey” が慣れ親しんだ CULT LEADER の経典だとすれば、連続する “To: Achlys”, “World of Joy” の2曲はさながら新経典でしょうか。
Nick Cave, Chelsea Wolfe, DEAD CAN DANCE のプリミティブでノワールな世界観。NEUROSIS の放射線状にも位置する13分間の穏やかなフューネラルは、哀しみと闇、美しき孤独と終焉を反映しながら、ダークアメリカーナにフォークやゴスまで内包し作品に傑出したデュエル、コントラストをもたらしました。
「音楽的にも詩的にも、僕たちはこのバンドを人生におけるネガティブな部分の代弁者としたいんだよ。」と Anthony が語るように、黒雲の途切れないアルバムにおいて、ただ “テンション” という素材を主軸としてこれほどの落差、ダイナミズムを創出するレコードは極めて稀だと言えるでしょう。
「頼むから俺を癒してくれ。」Anthony の咆哮、絶唱はリアルな苦痛、苦悶を掻き立てるマスターの所業。一方で、「愛に満ちた光が世界中の人間に注いでも、俺の下には来ないだろう。」と孤独を綴るその声は、全てを受け入れ語りかけるような慰めと寂寞のトーンでした。
孤高の唱道者は墓標の上で踊る。もしかすると、彼らの新たな教義は、THOU や CONVERGE の最新作とも根底ではシンクロしているのかも知れません。Kurt Ballou のプロダクション、リリースは Deathwish Inc. から。
今回弊誌では、Anthony Lucero にインタビューを行うことが出来ました。「自分たちのコンフォートゾーンの外へと冒険することを、僕たちはいつも心掛けているんだよ。」どうぞ!!

CULT LEADER “A PATIENT MAN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FRONTIERER : UNLOVED】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PEDRAM VALIANI OF FRONTIERER !!

“I Find Reviewers, Fans And Critics Are Often Guilty Of Wanting To Consume a Record On a Commute. That Attitude Of Convenience Doesn’t Resonate With Me And I Listen To My Records The Way I’d Like To Listen To a Record As a Fan.”

DISC REVIEW “UNLOVED”

2015年、”世界で最も醜悪なマス-プロブレム” の異名と共にデビューフル  “Orange Mathematics” で来臨したスコットランドとセントルイスの混成軍 FRONTIERER は、即座にシーンのセンセーションとなりました。
「愚かなほどにヘヴィーな音楽を創造する。」ただそれだけの目的と欲望のために生を受けた騒音の開拓者が切り開くフロンティアは、まごう事なきネクストレベルの Tech-metal です。
難解な数式を深々と組み込んだ変拍子の渦、ブレイクビーツとジャングルテクノの鋭き破片、ブラッケンドの無慈悲なアグレッション。Pedram 言うところの “コントロールされたランダム”、予測不能の方程式は THE DILLINGER ESCAPE PLAN 亡き後のマスコアワールドを支配する威厳と光輝に満ちています。
SECTIONED のギタリスト Pedram Valiani と A DARK ORBIT のスクリーマー Chad Kapper がサイドプロジェクトとして開始した FRONTIERER は、そうして活性化する活動を背景にフルバンドとなった今、最新作 “Unloved” で不穏で剣呑な進軍を再開するのです。
橙から赤へと危険指数を増したアートワークそのままに、オープナー “Tumoric” からバンドは一気呵成にカオスの洪水を叩きつけます。Chad の切迫したスクリームを狼煙に、狂気を宿したエレクトリックギターのワーミーなサイレンは、不規則な規則性を持つアグレッションの海で一触即発、物騒なダンスを踊ります。
実際、途切れる事なく襲いかかるアルバムの序盤は脅威でしかありません。パンチドランカーの如くその痛みに酔いしれたリスナーは、電子ノイズを塗した”Flourescent Nights”, “Designer Chemtrails” と聴き進めるうちに、Pedram のペダル、EarthQuaker Devices のハーモナイザーこそ怪物で、暴力と知性、エナジーとデジタルの狭間で快楽の拷問を享受しているようにも感じるかも知れませんね。
一方で、Pedram が 「僕は最後にピークを迎えるレコードを書くのではなく、実験の大半が中央に配されたレコードを書きたいと思っているんだ。」と語るように、 “Heartless 101” を分岐とした中盤の鮮烈な実験性は FRONTIERER のパレットに挿された色彩の拡がりを証明します。
実際、ノイズマスター CAR BOMB の Michael Daffener, Greg Kubacki とのコラボレートから誕生した “Heartless 101” はあまりに異彩を放つマスコアの新天地です。近年の CONVERGEをも想起させるメロウで憂鬱、ドゥーミーなムードから一変、Chad の咆哮 “Die Slowly” で世界はノイズの混沌、黙示録へとその色を変えます。
その名状しがたき不確かなデジタルハードコアの萌芽は、”Unloved & Oxidized” で光のアトモスフィアさえ放出しながらグロテスクに前時代の腐敗を促し、”Electric Gag” に投影されたバンド史上最もスロウなグルーヴとグリッチーなエレクトロニカの霞は、遂に使い古されたマスコアのクリシェへ望み通りの緩やかな死を与えるのです。事実、普遍的なブレイクダウンさえ、彼らの手にかかれば瑞々しき未踏のスロウバーンへとその姿を変えています。
マスコア、ノイズ、スラッジにグリッチなエレクトロニカを調合し、飲み干せばスリルが口一杯に広がる予測不能の危険なカクテル。「大きな変化への一歩が作品をほとんど消化不能にすることだと思うんだ。」と語るように、少なくとも “コンビニエンス” に作品を消費するリスナーがこのグラスで酩酊することはないでしょう。
今回弊誌では、ギタリストで首謀者 Pedram Valiani にインタビューを行うことが出来ました。
「僕は、レビュワー、ファン、評論家が時に通勤、通学でレコードを消費する罪を犯していることに気づいたんだ。そういった “コンビニエンス” なアティテュードは少なくとも僕には響かないよ。」どうぞ!!

FRONTIERER “UNLOVED” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SVALBARD : IT’S HARD TO HAVE HOPE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SERENA CHERRY OF SVALBARD !!

Definitely, It’s Hard To Have Hope Now, But Svalbard’s Protest Music Represents a Turning Point In This Dark World !!

DISC REVIEW “IT’S HARD TO HAVE HOPE”

越流するエモーションをプロテストミュージックへと昇華し、英国ブリストルから咆哮を貫く至宝 SVALBARD。熾烈なメタル/ハードコアにポストロックの叙情と風光、ポストメタルの思索と旅路を織り込みさらなる多様化の波動を導いた新作 “It’s Hard to Have Hope” はシーンの革新であり、同時に閉塞した世界が渇望する変化への希望です。
2015年にリリースしたデビューフル “One Day All This Will End” でアグレッション極まるメタル/ハードコアに仄かなアトモスフィアを帯同したバンドは、新作までの道程で困難な時を経験します。Serena がインタビューで語ってくれた通り、メンバー間の恋愛が終焉を迎え、それに伴う心身の病、さらにはベーシストの離脱と、一時は同じ部屋で過ごすことですら苦痛を伴うほどにバンドの状況は崩壊していたのです。
しかし、メンバーのバンドに対する強い愛情は見事に SVALBARD を死の淵から救いました。見方を変えればバンドには、希望を持つことすら困難な世界に対して果たすべき重要な仕事が残っていたとも言えるでしょう。
確かに “It’s Hard to Have Hope” は怒れるアルバムで、中絶、性的暴力、リベンジポルノ、インターンシップの無賃雇用など不条理でダークな社会問題をテーマとして扱っています。
さらには、「このアルバムは、ステージに女の子が立つことにネガティブなコメントを寄せる人たちに対する私からの返答よ。”女性をメタルから追い出せ!” と言うような人たち、コンサートで女性にハラスメント行為を行う人たち。これは彼らに対する私からの恐れなき怒りの返答なの。」と語るように、女性フロントマンとして Serena が長年メタルシーンで苦しんできたハラスメント行為の数々も、作品の持つ怒りの温度を “フェミニストのメタルアルバム” の名の下に上昇させていることは明らかです。
とはいえ、この類稀なる感情と表情の結晶が、唯一怒りにのみ根ざすわけではないこともまた事実でしょう。実際、Serena はこの作品の目的が “人々にこういった社会的不公平を伝えるだけではなく、なぜそういった問題が起き続けるのか疑問を投げかけることだった” と語っています。「誰が正しいのか互いに主張し合うのを止めてこう尋ねるの。一緒に前進するために何ができるだろう?より良き変化のためお互い助け合えないだろうか?とね。」とも。
そうして世界のターニングポイントとなるべくして示現した “It’s Hard to Have Hope” に、一筋の光明にも思える尊きアトモスフィア、荘厳なる音の風景がより深く織り込まれていることはむしろ当然の進化だと言えるでしょう。
勇敢にリベンジポルノの卑劣に怒り、勇敢にハードコア、ブラックメタル、そしてポストロックをブレンドした “Revenge Porn” はまさにその光と陰を見事に体現した楽曲です。バンドが近年注目されるネオクラストの領域を通過していることは明らかです。
静謐なイントロダクションから一転、バンドは正々堂々とハードコアの強さで怒りの鉄槌を下していきます。突如降臨する Serena の慈愛に満ちた歌声はさながら蜘蛛の糸でしょうか。CULT OF LUNA や MY BLOODY VALENTINE のイメージこそ深化の証。そうしてポストブラックの激しさと光明を背負った彼女は悲痛な叫びを投げかけます。「いったい誰が女性を守ってくれるの?」
一方で、もちろんよりストレートな激情も彼らの魅力。何より、無給で酷使されるインターンの憤怒を代弁するオープナー “Unpaid Intern” では、Serena と Liam のボーカルデュエルが牙の鋭さで迫り、沸騰する千変万化なギターリフ、ブラッケンドのリズムセクションを従えてポストハードコアとブラックゲイズの境界を恍惚と共に熔化させていくのですから。
とはいえ、やはりアルバムの肝は Serena が創出する神々しきアトモスフィアと激情の稀有なるコントラストです。アルバムを締めくくるエピック “Try Not To Die Until You’re Dead” でバンドは再びその陰影を鮮明に浮き上がらせた後、美しきインストゥルメンタルのブックエンド “Lorek” で負の感情のみを綺麗に洗い流し、リスナーに思考の為の優しき残余を与えました。
今回弊誌では、ボーカル/ギターのフロントウーマン Serena Cherry にインタビューを行うことが出来ました。メッセージとエモーション、そして音楽がこれほどまでに融解しシンクロする作品はまさしく珠玉。そしてぜひ真摯な彼女の言葉に耳を傾けてください。「感情こそが私たちにとって最も重要なものだから。」リリースは MØL と同じく Holy Roar Records から。どうぞ!!

SVALBARD “IT’S HARD TO HAVE HOPE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE MESSTHETICS : THE MESSTHETICS】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOE LALLY OF THE MESSTHETICS !!

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PHOTO BY ANTONIA TRICARICO

Lally And Canty, Splendid Rhythm Section Of Fugazi Reunite As The Messthetics With New Guitar Virtuoso Anthony Pirog! D.C. Creates New Wave Of Artistic Instrumental Music!

DISC REVIEW “THE MESSTHETICS”

音楽と思想、攻撃性と実験性。FUGAZI は緊張感を原動力に、瞬刻も停滞することなく前進を続けたアンダーグラウンドアイコンでした。
80年代、”ハードコアの首都” でもあったワシントン D.C.で、カリスマ MINOR THREAT 解散の後、暴力や政治に辟易した “レボリューションサマー” を通過し結成された FUGAZI。モッシュやダイブなど危険行為を嫌悪し自由に根差したライブパフォーマンスを敢行、同時に “産業” としての音楽ビジネスから距離を置き DIY に拘るその姿勢は、既成の価値観へと強烈に”F××K”を叩きつける完璧なまでにパンクなアティテュードでした。
もちろん、その音楽もユニークで独創的。かつて 「ハードコアは好きだけど進化したい。」 と Ian MacKaye が語ったように、FUGAZI は典型的なハードコアのモチーフやスピードを避け、よりダイナミックで複雑に探求を重ねたグルーヴィーなアートを創造したのです。レゲエ、ファンク、ジャズ、ダブまで抱きしめたバンドの混沌と多様性は、まさにポストハードコアのパラゴンとして現在まで君臨し、およそ15年間の活動を通してその理想をアップデートし続けました。
もちろん、FUGAZI のスターは Ian MacKaye と Guy Picciotto でしたが、彼らのシグニチャーサウンドとしてまずあの独特のグルーヴを想起するファンは多いでしょう。つまり、Joe と Brendon が創造する豊潤かつ知的なリズムこそがバンドの肝であったことは明らかです。
2002年にバンドが無期限の活動休止を告げた後、今回の主役 Joe Lally は FUGAZI の延長にも思えるインプロヴィゼーションの世界を掘り下げ続けています。ソロワーク、John Frusciante との ATAXIA を通してインディー/オルタナ界隈とも溶け合った Joe が、かつての同僚 Brendon と再度巡り会い辿り着いた場所こそ THE MESSTHETICS だったのです。
新たに結成されたインストゥルメンタルスリーピースは当然 FUGAZI とは異なります。何より、FUGAZI が唯一避けてきたギターシュレッドを前面に押し出している訳ですから。しかし、それ故に愉絶な存在足り得る因果は、2人が船を降りてから独自の歩みを続けた成果にも他なりませんね。
THE MESSTHETICS のスターはギタリスト Anthony Pirog。子供の頃 FUGAZI を聴いていたというワシントンエリアの新鋭は、ジャズ、インディー、アヴァンギャルドまでポケットへと詰め込み D.Cの潮流をさらに先のステージと進めます。
残響やノイズへのアプローチ、マジカルなエフェクトボードにクロスオーバーな世界観は、確かに Bill Frisell の遺伝子を宿しているようにも思えます。Nels Cline に近いのかも知れません。ただ、同時に Eric Johnson や Jeff Beck の煌めくフレーズ、瞬間の美学をも素晴らしく引き継ぐ傑出した才能は、瑞々しい音の絵の具をベテランが築いた味のあるパレットへと注ぎ込んで行くのです。
アルバムオープナー、”Mythomania” はまさしく三傑が魅せる化学反応の証です。オリエンタルな響きやジャズのアウトフレーズをノイズの海へと撒き散らす Anthony の柔軟でエキサイティングなギターワークは、Hendrix の神話を現代へと伝える奇跡。テクニックに特化したジャズスタイルのリズム隊には想像もつかないであろう淡々とした8ビートにより、ミステリアスな楽曲はさらに緊張感を増し、トライバルなギミックと抑揚が徐々に知性の勝利を謳います。
3者のバランスとアンバランスは、アートワークが示すようにヒリヒリとした綱渡りのインテンスで成り立ち、スピードよりもグルーヴに主眼を置いた方法論は確かに FUGAZI の遺伝子を受け継いでいるのです。
もちろん、長年のファンは、”Serpent Tongue” や “Quantum Path” で RUSH やマスロックにも接近した複雑なリズムの波を自在に泳ぎつつ、シンクロし推進力となる Joe と Brendon のアグレッションを懐かしく思うはずです。
一方で、ジャズの幽玄かつ美麗なスピリットもバンドの魅力へと投影されます。ロマンティックな “Inner Ocean” のミニマリズムとアトモスフィア、際立つ強弱のコントラストはポストロックにも通じ、ストリングスにブラシ、ダブルベースで紡がれるクローサー “The Weaver” の荘厳なる美しさは Pat Metheny の理想にも通じます。構成すらもあまりに出来過ぎ、至高の一作。
全てがライブレコーディングで収録された “The Messthetics”。幸運なことに、日本のファンはUS外では世界で初めて彼らのそのライブを目撃するチャンスに恵まれます。「僕たちの仕事は、創造する作品で自分自身に挑戦することなんだよ。」 5月に始まる来日ツアーは、公開された FUGAZI の映画と共に必見です。Joe Lally です。どうぞ!!

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THE MESSTHETICS “THE MESSTHETICS ” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SWARRRM : こわれはじめる – Beginning to break】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TSUKSA & KAPO FROM SWARRRM !!

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After More Than 20 years Activity, Japanese Grindcore Titan Swarrrm Breaks The Genres And Hardcore Rules With Their Newest Record “Beginning to break” !!

DISC REVIEW “こわれはじめる – Beginning to break”

“Chaos & Grind” を御旗に掲げる気概と熱情のグラインドコア烈士 SWARRRM が、激しさに豊かな感情を宿す愛と破壊の狼煙 “こわれはじめる” をリリースします!!スタンダードなハードコア的ルールに別れを告げ、アレンジや表現の幅を止めどなく拡大した作品は、ジャンルの垣根を意に介さない強靭で普遍的な魅力に満ちています。
「ハードコアルール的なものにはもうあまり興味ありません。それよりも刺激を欲しています。」 とインタビューで KAPO 氏が語るように、”こわれはじめる” は怒りや絶望、憤りといったオールドスクールなハードコアに根差すネガティブなアティテュードや類型的なスタイルが文字通り壊れ始めるレコードだと言えるのかも知れません。
刺激という意味では、例えば CONVERGE が新作でその多様なサウンドデザインによって語らずしてハードコア本来の刺激を更新したように、混沌の先を見据え変化を渇望する SWARRRM が保守的な地下室から這い出し少なからず陽の光を欲することは必然にも思えます。
アルバムオープナー “ここは悩む場所じゃない” は変化の象徴。「前作 ”FLOWER” 収録の ”幸あれ” ”あがれ” といった曲に可能性を感じていたのは間違いない」 「より普遍的なロックテイストに辿り着くべくして辿り着いた」と KAPO 氏が語る通り、この楽曲が指し示すレコードのイメージはキャッチーで歌心を携えた前代未聞の歌謡グラインド。伝説 HELLCHILD 時代から、原川 司氏がこれほど “歌った” ことは勿論ないでしょう。
司氏が発する歌心、エモーションが、J-Pop ではなく70年代の歌謡曲を想起させる事実は重要です。ここに存在するのはロマンではなく浪漫、ラブではなく愛、儚さと寂寞そして感謝。
大人になれば世界のほとんどが綺麗事や純愛ではなく、どこか歪な愛や歪んだ感情で成り立っていることに気づきます。それでも今がある奇跡。モダンなポップスが纏う煌びやかな飾りを寄せ付けない、司氏の貫く “歌” は日本的な侘び寂びを孕んでどこまでも正直です。
そうした司氏の新境地とバンドのルーツが見事に融解した楽曲こそ “愛のうた” であり、”絆” であると感じます。「あなたの思うグラインドコアと、私たちのグラインドコアは違うという事でしょうか。」 と KAPO 氏が語るように、ブラストのアレンジメントにこそグラインドの美学を貫く SWARRRM。
美しさと儚さはメロディーに、混沌と破綻はブラストへと帰依し、そこから生まれるボーカルと演奏の鬩ぎ合い、美醜のコントラストは唯一無二の尊き激音を創出するのです。楽曲の前半と後半でガラリと情景が変化し衝撃をもたらす詩の魔法も見事。
そうして辿り着く “血が叫ぶ” は、実際ブラストが装飾程度にしか使用されない異端の極地。ファンキーなカッティングが映えるポップとも形容可能な楽曲にはノイズが大胆に散りばめられています。
インタビューにもあるように、勿論偶然で意図も離れていますが、とは言えエクストリーム最前線の ENDON, FULL OF HELL, THE BODY との偶発的シンクロニシティーはシーンの向かう先を朧気に映し出しているようにも思えますね。
そうしてアルバムは、幕開けと同様にアコースティックの静謐な音色でその幕を閉じるのです。
今回弊誌では、司氏と KAPO 氏にインタビューを行う事が出来ました。「激しい音楽に長く触れてこられた方にこそ聞いていただきたいです。何か感じていただけるのではと思います。」 変わらないことへの恐怖と、変わることへの恐怖。SWARRRM です。どうぞ!!

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SWARRRM “こわれはじめる – Beginning to break” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DEAD CROSS : DEAD CROSS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JUSTIN PEARSON OF DEAD CROSS !!

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Metal & Hardcore Energetic Supergroup, Dead Cross Brings Life Back Into The Genre With Groundbreaking Debut Record “Dead Cross” !!

DISC REVIEW “DEAD CROSS”

“SLAYER のようにアグレッシブで、FANTOMAS のように奇妙”。Dave Lombardo ( ex-SLAYER, FANTOMAS ), Mike Patton ( FAITH NO MORE, FANTOMAS ), Mike Crain ( RETOX ), Justin Pearson ( THE LOCUST, RETOX ) というエクストリームミュージックの重鎮が集結した新バンド DEAD CROSS が衝撃のデビュー作をリリースしました!!百戦錬磨の古兵たちが放つ一撃はあまりに熾烈かつ迫真です。
SLAYER での鬼神たる Dave Lombardo、FAITH NO MORE での異形たる Mike Patton については今さら多くを語るまでもないでしょう。勿論、その2人がタッグを組んだアヴァンギャルドで “アンチアート” な “Dada-Metal”、FANTOMAS についても。過去に Lombardo は、「もしピカソがミュージシャンだったら FANTOMAS のような音楽を創造しただろう。」 とさえ述べています。
一方で、THE LOCUST はグラインドコア、パワーバイオレンス、ノイズロックをハードコアのフォーマットへと落とし込んだ多様かつ複雑でダイナミックな音楽を信条としており、さらに THE LOCUST の美学こと Justin Pearson が新たに立ち上げた RETOX はハードコアパンクのエキサイティングな新鋭です。
インタビューで Justin は、「ジャンルは実に厄介なもので、自分の目的はリスナーを無関心にしないこと」 だと語ってくれましたが、彼らのキャリアと独自性を見れば、DEAD CROSS という奇跡の化学反応がそのイメージを叶えることは確かなようにも思えます。
実際、”Dead Cross” は期待以上にカオスでエクストリーム、ゲームチェンジングなレコードです。「みんなの音楽に対する感じ方を変えたいし、もっと言えば壊したいと思っているんだよ。」 と語る Justin の野心は、比類なきメンバーと類希なるシンパシーを得て遂に達成されたと言えるのかも知れませんね。
“Dead Cross” が死の直前起こる体温の急降下と脈拍の急上昇、つまり体温曲線と脈拍曲線が交差する現象である “死兆交差” を指すように、アルバムは怒りとフラストレーション、そして究極的にはそこから生じる “死” を様々な観点、手法で表現した作品だと言えるでしょう。
事実、Dave Lombardo は Rolling Stone 誌のインタビューで、このバンドがパリのバタクランで起こったテロに対する大きな憤りから生まれたことを認めています。これが完璧なハードコアアルバムで、自身の最もブルータルで抽象的なレコードであることも。
勿論、Dave 究極の一枚に SLAYER の “Reign in Blood” を挙げるファンも多いでしょう。奇しくもほぼ同じ、30分を切るランニングタイムの2枚のレコードは、そのインパクトにおいても同等の強い光彩を放っているように思えます。
“Reign in Blood” が伝説と化したのは、その際限なきアグレッションと呼応して溢れ出る瑞々しきフックの数々があったからこそ。怒りに満ちた “Dead Cross” にも同様に、リスナーをリピートへと誘う豊潤かつインテリジェンスな仕掛け、キャッチーさが潜んでいるのです。
アルバム前半、ハードコアパンクとスラッシュのエナジーを二乗し突進するアドレナリンラッシュの渦中においても、THE LOCUST を想起させる知的な混沌、ノイズ、変拍子、テンポチェンジは極上のアクセントとして揺るがぬ存在感を放ちます。
さらにBandcamp のインタビューで、「ハードコアのルーツに回帰したんだ。クソと重要さの見分けがつくようになった。」 と語る Dave のドラミングは、その比類なきビートをより感情にまかせ、性急に、複雑に、そしてブルータルに刻みます。80年代のベイエリアパンクから、THE DILLINGER ESCAPE PLAN のようなよりコンテンポラリーなマスコアまで自由自在な Mike Crain のリフワークもスマートで耳を惹きますね。そして何より Mike Patton は Mike Patton です。
「オペラティックなバックヴォーカルとボイスエフェクトをレコード全体にレイヤーすることはどうしても避けられなかったんだ。」 怒れるレコードに似つかわしくない Mike の業、カルマはバンドを驚かせました。しかし、同時に Dave は Mike 由来の異質なるハーモニーやオルタナティブなメロディーラインがアルバムに深みを加えたことも認めています。
CELTIC FROST のアヴァンギャルド、邪念、悪夢を飲み込んだ “Bela Lugosi’s Dead” や “Gag Reflex”、パンクのキャッチーさを奇妙に再構築した “Shillelagh”、よりプリミティブなスクリームが狂気を育む “The Future Has Been Cancelled” といった楽曲群は Mike の貢献なしでは成立しなかったはずです。
鬼才 Ross Robinson を含め5人の才能が火花を散らしたアルバムは、バンドの次なる可能性を諮詢する、ゴシカルでインダストリアルな “Church of the Motherfuckers” でその幕を閉じました。
今回弊誌では Justin Pearson にインタビューを行うことが出来ました。「全てのクリエイティビティーに感謝を」 どうぞ!!

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DEAD CROSS “DEAD CROSS” : 10/10

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