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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FRONTIERER : UNLOVED】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PEDRAM VALIANI OF FRONTIERER !!

“I Find Reviewers, Fans And Critics Are Often Guilty Of Wanting To Consume a Record On a Commute. That Attitude Of Convenience Doesn’t Resonate With Me And I Listen To My Records The Way I’d Like To Listen To a Record As a Fan.”

DISC REVIEW “UNLOVED”

2015年、”世界で最も醜悪なマス-プロブレム” の異名と共にデビューフル  “Orange Mathematics” で来臨したスコットランドとセントルイスの混成軍 FRONTIERER は、即座にシーンのセンセーションとなりました。
「愚かなほどにヘヴィーな音楽を創造する。」ただそれだけの目的と欲望のために生を受けた騒音の開拓者が切り開くフロンティアは、まごう事なきネクストレベルの Tech-metal です。
難解な数式を深々と組み込んだ変拍子の渦、ブレイクビーツとジャングルテクノの鋭き破片、ブラッケンドの無慈悲なアグレッション。Pedram 言うところの “コントロールされたランダム”、予測不能の方程式は THE DILLINGER ESCAPE PLAN 亡き後のマスコアワールドを支配する威厳と光輝に満ちています。
SECTIONED のギタリスト Pedram Valiani と A DARK ORBIT のスクリーマー Chad Kapper がサイドプロジェクトとして開始した FRONTIERER は、そうして活性化する活動を背景にフルバンドとなった今、最新作 “Unloved” で不穏で剣呑な進軍を再開するのです。
橙から赤へと危険指数を増したアートワークそのままに、オープナー “Tumoric” からバンドは一気呵成にカオスの洪水を叩きつけます。Chad の切迫したスクリームを狼煙に、狂気を宿したエレクトリックギターのワーミーなサイレンは、不規則な規則性を持つアグレッションの海で一触即発、物騒なダンスを踊ります。
実際、途切れる事なく襲いかかるアルバムの序盤は脅威でしかありません。パンチドランカーの如くその痛みに酔いしれたリスナーは、電子ノイズを塗した”Flourescent Nights”, “Designer Chemtrails” と聴き進めるうちに、Pedram のペダル、EarthQuaker Devices のハーモナイザーこそ怪物で、暴力と知性、エナジーとデジタルの狭間で快楽の拷問を享受しているようにも感じるかも知れませんね。
一方で、Pedram が 「僕は最後にピークを迎えるレコードを書くのではなく、実験の大半が中央に配されたレコードを書きたいと思っているんだ。」と語るように、 “Heartless 101” を分岐とした中盤の鮮烈な実験性は FRONTIERER のパレットに挿された色彩の拡がりを証明します。
実際、ノイズマスター CAR BOMB の Michael Daffener, Greg Kubacki とのコラボレートから誕生した “Heartless 101” はあまりに異彩を放つマスコアの新天地です。近年の CONVERGEをも想起させるメロウで憂鬱、ドゥーミーなムードから一変、Chad の咆哮 “Die Slowly” で世界はノイズの混沌、黙示録へとその色を変えます。
その名状しがたき不確かなデジタルハードコアの萌芽は、”Unloved & Oxidized” で光のアトモスフィアさえ放出しながらグロテスクに前時代の腐敗を促し、”Electric Gag” に投影されたバンド史上最もスロウなグルーヴとグリッチーなエレクトロニカの霞は、遂に使い古されたマスコアのクリシェへ望み通りの緩やかな死を与えるのです。事実、普遍的なブレイクダウンさえ、彼らの手にかかれば瑞々しき未踏のスロウバーンへとその姿を変えています。
マスコア、ノイズ、スラッジにグリッチなエレクトロニカを調合し、飲み干せばスリルが口一杯に広がる予測不能の危険なカクテル。「大きな変化への一歩が作品をほとんど消化不能にすることだと思うんだ。」と語るように、少なくとも “コンビニエンス” に作品を消費するリスナーがこのグラスで酩酊することはないでしょう。
今回弊誌では、ギタリストで首謀者 Pedram Valiani にインタビューを行うことが出来ました。
「僕は、レビュワー、ファン、評論家が時に通勤、通学でレコードを消費する罪を犯していることに気づいたんだ。そういった “コンビニエンス” なアティテュードは少なくとも僕には響かないよ。」どうぞ!!

FRONTIERER “UNLOVED” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SVALBARD : IT’S HARD TO HAVE HOPE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SERENA CHERRY OF SVALBARD !!

Definitely, It’s Hard To Have Hope Now, But Svalbard’s Protest Music Represents a Turning Point In This Dark World !!

DISC REVIEW “IT’S HARD TO HAVE HOPE”

越流するエモーションをプロテストミュージックへと昇華し、英国ブリストルから咆哮を貫く至宝 SVALBARD。熾烈なメタル/ハードコアにポストロックの叙情と風光、ポストメタルの思索と旅路を織り込みさらなる多様化の波動を導いた新作 “It’s Hard to Have Hope” はシーンの革新であり、同時に閉塞した世界が渇望する変化への希望です。
2015年にリリースしたデビューフル “One Day All This Will End” でアグレッション極まるメタル/ハードコアに仄かなアトモスフィアを帯同したバンドは、新作までの道程で困難な時を経験します。Serena がインタビューで語ってくれた通り、メンバー間の恋愛が終焉を迎え、それに伴う心身の病、さらにはベーシストの離脱と、一時は同じ部屋で過ごすことですら苦痛を伴うほどにバンドの状況は崩壊していたのです。
しかし、メンバーのバンドに対する強い愛情は見事に SVALBARD を死の淵から救いました。見方を変えればバンドには、希望を持つことすら困難な世界に対して果たすべき重要な仕事が残っていたとも言えるでしょう。
確かに “It’s Hard to Have Hope” は怒れるアルバムで、中絶、性的暴力、リベンジポルノ、インターンシップの無賃雇用など不条理でダークな社会問題をテーマとして扱っています。
さらには、「このアルバムは、ステージに女の子が立つことにネガティブなコメントを寄せる人たちに対する私からの返答よ。”女性をメタルから追い出せ!” と言うような人たち、コンサートで女性にハラスメント行為を行う人たち。これは彼らに対する私からの恐れなき怒りの返答なの。」と語るように、女性フロントマンとして Serena が長年メタルシーンで苦しんできたハラスメント行為の数々も、作品の持つ怒りの温度を “フェミニストのメタルアルバム” の名の下に上昇させていることは明らかです。
とはいえ、この類稀なる感情と表情の結晶が、唯一怒りにのみ根ざすわけではないこともまた事実でしょう。実際、Serena はこの作品の目的が “人々にこういった社会的不公平を伝えるだけではなく、なぜそういった問題が起き続けるのか疑問を投げかけることだった” と語っています。「誰が正しいのか互いに主張し合うのを止めてこう尋ねるの。一緒に前進するために何ができるだろう?より良き変化のためお互い助け合えないだろうか?とね。」とも。
そうして世界のターニングポイントとなるべくして示現した “It’s Hard to Have Hope” に、一筋の光明にも思える尊きアトモスフィア、荘厳なる音の風景がより深く織り込まれていることはむしろ当然の進化だと言えるでしょう。
勇敢にリベンジポルノの卑劣に怒り、勇敢にハードコア、ブラックメタル、そしてポストロックをブレンドした “Revenge Porn” はまさにその光と陰を見事に体現した楽曲です。バンドが近年注目されるネオクラストの領域を通過していることは明らかです。
静謐なイントロダクションから一転、バンドは正々堂々とハードコアの強さで怒りの鉄槌を下していきます。突如降臨する Serena の慈愛に満ちた歌声はさながら蜘蛛の糸でしょうか。CULT OF LUNA や MY BLOODY VALENTINE のイメージこそ深化の証。そうしてポストブラックの激しさと光明を背負った彼女は悲痛な叫びを投げかけます。「いったい誰が女性を守ってくれるの?」
一方で、もちろんよりストレートな激情も彼らの魅力。何より、無給で酷使されるインターンの憤怒を代弁するオープナー “Unpaid Intern” では、Serena と Liam のボーカルデュエルが牙の鋭さで迫り、沸騰する千変万化なギターリフ、ブラッケンドのリズムセクションを従えてポストハードコアとブラックゲイズの境界を恍惚と共に熔化させていくのですから。
とはいえ、やはりアルバムの肝は Serena が創出する神々しきアトモスフィアと激情の稀有なるコントラストです。アルバムを締めくくるエピック “Try Not To Die Until You’re Dead” でバンドは再びその陰影を鮮明に浮き上がらせた後、美しきインストゥルメンタルのブックエンド “Lorek” で負の感情のみを綺麗に洗い流し、リスナーに思考の為の優しき残余を与えました。
今回弊誌では、ボーカル/ギターのフロントウーマン Serena Cherry にインタビューを行うことが出来ました。メッセージとエモーション、そして音楽がこれほどまでに融解しシンクロする作品はまさしく珠玉。そしてぜひ真摯な彼女の言葉に耳を傾けてください。「感情こそが私たちにとって最も重要なものだから。」リリースは MØL と同じく Holy Roar Records から。どうぞ!!

SVALBARD “IT’S HARD TO HAVE HOPE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE MESSTHETICS : THE MESSTHETICS】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOE LALLY OF THE MESSTHETICS !!

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PHOTO BY ANTONIA TRICARICO

Lally And Canty, Splendid Rhythm Section Of Fugazi Reunite As The Messthetics With New Guitar Virtuoso Anthony Pirog! D.C. Creates New Wave Of Artistic Instrumental Music!

DISC REVIEW “THE MESSTHETICS”

音楽と思想、攻撃性と実験性。FUGAZI は緊張感を原動力に、瞬刻も停滞することなく前進を続けたアンダーグラウンドアイコンでした。
80年代、”ハードコアの首都” でもあったワシントン D.C.で、カリスマ MINOR THREAT 解散の後、暴力や政治に辟易した “レボリューションサマー” を通過し結成された FUGAZI。モッシュやダイブなど危険行為を嫌悪し自由に根差したライブパフォーマンスを敢行、同時に “産業” としての音楽ビジネスから距離を置き DIY に拘るその姿勢は、既成の価値観へと強烈に”F××K”を叩きつける完璧なまでにパンクなアティテュードでした。
もちろん、その音楽もユニークで独創的。かつて 「ハードコアは好きだけど進化したい。」 と Ian MacKaye が語ったように、FUGAZI は典型的なハードコアのモチーフやスピードを避け、よりダイナミックで複雑に探求を重ねたグルーヴィーなアートを創造したのです。レゲエ、ファンク、ジャズ、ダブまで抱きしめたバンドの混沌と多様性は、まさにポストハードコアのパラゴンとして現在まで君臨し、およそ15年間の活動を通してその理想をアップデートし続けました。
もちろん、FUGAZI のスターは Ian MacKaye と Guy Picciotto でしたが、彼らのシグニチャーサウンドとしてまずあの独特のグルーヴを想起するファンは多いでしょう。つまり、Joe と Brendon が創造する豊潤かつ知的なリズムこそがバンドの肝であったことは明らかです。
2002年にバンドが無期限の活動休止を告げた後、今回の主役 Joe Lally は FUGAZI の延長にも思えるインプロヴィゼーションの世界を掘り下げ続けています。ソロワーク、John Frusciante との ATAXIA を通してインディー/オルタナ界隈とも溶け合った Joe が、かつての同僚 Brendon と再度巡り会い辿り着いた場所こそ THE MESSTHETICS だったのです。
新たに結成されたインストゥルメンタルスリーピースは当然 FUGAZI とは異なります。何より、FUGAZI が唯一避けてきたギターシュレッドを前面に押し出している訳ですから。しかし、それ故に愉絶な存在足り得る因果は、2人が船を降りてから独自の歩みを続けた成果にも他なりませんね。
THE MESSTHETICS のスターはギタリスト Anthony Pirog。子供の頃 FUGAZI を聴いていたというワシントンエリアの新鋭は、ジャズ、インディー、アヴァンギャルドまでポケットへと詰め込み D.Cの潮流をさらに先のステージと進めます。
残響やノイズへのアプローチ、マジカルなエフェクトボードにクロスオーバーな世界観は、確かに Bill Frisell の遺伝子を宿しているようにも思えます。Nels Cline に近いのかも知れません。ただ、同時に Eric Johnson や Jeff Beck の煌めくフレーズ、瞬間の美学をも素晴らしく引き継ぐ傑出した才能は、瑞々しい音の絵の具をベテランが築いた味のあるパレットへと注ぎ込んで行くのです。
アルバムオープナー、”Mythomania” はまさしく三傑が魅せる化学反応の証です。オリエンタルな響きやジャズのアウトフレーズをノイズの海へと撒き散らす Anthony の柔軟でエキサイティングなギターワークは、Hendrix の神話を現代へと伝える奇跡。テクニックに特化したジャズスタイルのリズム隊には想像もつかないであろう淡々とした8ビートにより、ミステリアスな楽曲はさらに緊張感を増し、トライバルなギミックと抑揚が徐々に知性の勝利を謳います。
3者のバランスとアンバランスは、アートワークが示すようにヒリヒリとした綱渡りのインテンスで成り立ち、スピードよりもグルーヴに主眼を置いた方法論は確かに FUGAZI の遺伝子を受け継いでいるのです。
もちろん、長年のファンは、”Serpent Tongue” や “Quantum Path” で RUSH やマスロックにも接近した複雑なリズムの波を自在に泳ぎつつ、シンクロし推進力となる Joe と Brendon のアグレッションを懐かしく思うはずです。
一方で、ジャズの幽玄かつ美麗なスピリットもバンドの魅力へと投影されます。ロマンティックな “Inner Ocean” のミニマリズムとアトモスフィア、際立つ強弱のコントラストはポストロックにも通じ、ストリングスにブラシ、ダブルベースで紡がれるクローサー “The Weaver” の荘厳なる美しさは Pat Metheny の理想にも通じます。構成すらもあまりに出来過ぎ、至高の一作。
全てがライブレコーディングで収録された “The Messthetics”。幸運なことに、日本のファンはUS外では世界で初めて彼らのそのライブを目撃するチャンスに恵まれます。「僕たちの仕事は、創造する作品で自分自身に挑戦することなんだよ。」 5月に始まる来日ツアーは、公開された FUGAZI の映画と共に必見です。Joe Lally です。どうぞ!!

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THE MESSTHETICS “THE MESSTHETICS ” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SWARRRM : こわれはじめる – Beginning to break】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TSUKSA & KAPO FROM SWARRRM !!

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After More Than 20 years Activity, Japanese Grindcore Titan Swarrrm Breaks The Genres And Hardcore Rules With Their Newest Record “Beginning to break” !!

DISC REVIEW “こわれはじめる – Beginning to break”

“Chaos & Grind” を御旗に掲げる気概と熱情のグラインドコア烈士 SWARRRM が、激しさに豊かな感情を宿す愛と破壊の狼煙 “こわれはじめる” をリリースします!!スタンダードなハードコア的ルールに別れを告げ、アレンジや表現の幅を止めどなく拡大した作品は、ジャンルの垣根を意に介さない強靭で普遍的な魅力に満ちています。
「ハードコアルール的なものにはもうあまり興味ありません。それよりも刺激を欲しています。」 とインタビューで KAPO 氏が語るように、”こわれはじめる” は怒りや絶望、憤りといったオールドスクールなハードコアに根差すネガティブなアティテュードや類型的なスタイルが文字通り壊れ始めるレコードだと言えるのかも知れません。
刺激という意味では、例えば CONVERGE が新作でその多様なサウンドデザインによって語らずしてハードコア本来の刺激を更新したように、混沌の先を見据え変化を渇望する SWARRRM が保守的な地下室から這い出し少なからず陽の光を欲することは必然にも思えます。
アルバムオープナー “ここは悩む場所じゃない” は変化の象徴。「前作 ”FLOWER” 収録の ”幸あれ” ”あがれ” といった曲に可能性を感じていたのは間違いない」 「より普遍的なロックテイストに辿り着くべくして辿り着いた」と KAPO 氏が語る通り、この楽曲が指し示すレコードのイメージはキャッチーで歌心を携えた前代未聞の歌謡グラインド。伝説 HELLCHILD 時代から、原川 司氏がこれほど “歌った” ことは勿論ないでしょう。
司氏が発する歌心、エモーションが、J-Pop ではなく70年代の歌謡曲を想起させる事実は重要です。ここに存在するのはロマンではなく浪漫、ラブではなく愛、儚さと寂寞そして感謝。
大人になれば世界のほとんどが綺麗事や純愛ではなく、どこか歪な愛や歪んだ感情で成り立っていることに気づきます。それでも今がある奇跡。モダンなポップスが纏う煌びやかな飾りを寄せ付けない、司氏の貫く “歌” は日本的な侘び寂びを孕んでどこまでも正直です。
そうした司氏の新境地とバンドのルーツが見事に融解した楽曲こそ “愛のうた” であり、”絆” であると感じます。「あなたの思うグラインドコアと、私たちのグラインドコアは違うという事でしょうか。」 と KAPO 氏が語るように、ブラストのアレンジメントにこそグラインドの美学を貫く SWARRRM。
美しさと儚さはメロディーに、混沌と破綻はブラストへと帰依し、そこから生まれるボーカルと演奏の鬩ぎ合い、美醜のコントラストは唯一無二の尊き激音を創出するのです。楽曲の前半と後半でガラリと情景が変化し衝撃をもたらす詩の魔法も見事。
そうして辿り着く “血が叫ぶ” は、実際ブラストが装飾程度にしか使用されない異端の極地。ファンキーなカッティングが映えるポップとも形容可能な楽曲にはノイズが大胆に散りばめられています。
インタビューにもあるように、勿論偶然で意図も離れていますが、とは言えエクストリーム最前線の ENDON, FULL OF HELL, THE BODY との偶発的シンクロニシティーはシーンの向かう先を朧気に映し出しているようにも思えますね。
そうしてアルバムは、幕開けと同様にアコースティックの静謐な音色でその幕を閉じるのです。
今回弊誌では、司氏と KAPO 氏にインタビューを行う事が出来ました。「激しい音楽に長く触れてこられた方にこそ聞いていただきたいです。何か感じていただけるのではと思います。」 変わらないことへの恐怖と、変わることへの恐怖。SWARRRM です。どうぞ!!

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SWARRRM “こわれはじめる – Beginning to break” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DEAD CROSS : DEAD CROSS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JUSTIN PEARSON OF DEAD CROSS !!

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Metal & Hardcore Energetic Supergroup, Dead Cross Brings Life Back Into The Genre With Groundbreaking Debut Record “Dead Cross” !!

DISC REVIEW “DEAD CROSS”

“SLAYER のようにアグレッシブで、FANTOMAS のように奇妙”。Dave Lombardo ( ex-SLAYER, FANTOMAS ), Mike Patton ( FAITH NO MORE, FANTOMAS ), Mike Crain ( RETOX ), Justin Pearson ( THE LOCUST, RETOX ) というエクストリームミュージックの重鎮が集結した新バンド DEAD CROSS が衝撃のデビュー作をリリースしました!!百戦錬磨の古兵たちが放つ一撃はあまりに熾烈かつ迫真です。
SLAYER での鬼神たる Dave Lombardo、FAITH NO MORE での異形たる Mike Patton については今さら多くを語るまでもないでしょう。勿論、その2人がタッグを組んだアヴァンギャルドで “アンチアート” な “Dada-Metal”、FANTOMAS についても。過去に Lombardo は、「もしピカソがミュージシャンだったら FANTOMAS のような音楽を創造しただろう。」 とさえ述べています。
一方で、THE LOCUST はグラインドコア、パワーバイオレンス、ノイズロックをハードコアのフォーマットへと落とし込んだ多様かつ複雑でダイナミックな音楽を信条としており、さらに THE LOCUST の美学こと Justin Pearson が新たに立ち上げた RETOX はハードコアパンクのエキサイティングな新鋭です。
インタビューで Justin は、「ジャンルは実に厄介なもので、自分の目的はリスナーを無関心にしないこと」 だと語ってくれましたが、彼らのキャリアと独自性を見れば、DEAD CROSS という奇跡の化学反応がそのイメージを叶えることは確かなようにも思えます。
実際、”Dead Cross” は期待以上にカオスでエクストリーム、ゲームチェンジングなレコードです。「みんなの音楽に対する感じ方を変えたいし、もっと言えば壊したいと思っているんだよ。」 と語る Justin の野心は、比類なきメンバーと類希なるシンパシーを得て遂に達成されたと言えるのかも知れませんね。
“Dead Cross” が死の直前起こる体温の急降下と脈拍の急上昇、つまり体温曲線と脈拍曲線が交差する現象である “死兆交差” を指すように、アルバムは怒りとフラストレーション、そして究極的にはそこから生じる “死” を様々な観点、手法で表現した作品だと言えるでしょう。
事実、Dave Lombardo は Rolling Stone 誌のインタビューで、このバンドがパリのバタクランで起こったテロに対する大きな憤りから生まれたことを認めています。これが完璧なハードコアアルバムで、自身の最もブルータルで抽象的なレコードであることも。
勿論、Dave 究極の一枚に SLAYER の “Reign in Blood” を挙げるファンも多いでしょう。奇しくもほぼ同じ、30分を切るランニングタイムの2枚のレコードは、そのインパクトにおいても同等の強い光彩を放っているように思えます。
“Reign in Blood” が伝説と化したのは、その際限なきアグレッションと呼応して溢れ出る瑞々しきフックの数々があったからこそ。怒りに満ちた “Dead Cross” にも同様に、リスナーをリピートへと誘う豊潤かつインテリジェンスな仕掛け、キャッチーさが潜んでいるのです。
アルバム前半、ハードコアパンクとスラッシュのエナジーを二乗し突進するアドレナリンラッシュの渦中においても、THE LOCUST を想起させる知的な混沌、ノイズ、変拍子、テンポチェンジは極上のアクセントとして揺るがぬ存在感を放ちます。
さらにBandcamp のインタビューで、「ハードコアのルーツに回帰したんだ。クソと重要さの見分けがつくようになった。」 と語る Dave のドラミングは、その比類なきビートをより感情にまかせ、性急に、複雑に、そしてブルータルに刻みます。80年代のベイエリアパンクから、THE DILLINGER ESCAPE PLAN のようなよりコンテンポラリーなマスコアまで自由自在な Mike Crain のリフワークもスマートで耳を惹きますね。そして何より Mike Patton は Mike Patton です。
「オペラティックなバックヴォーカルとボイスエフェクトをレコード全体にレイヤーすることはどうしても避けられなかったんだ。」 怒れるレコードに似つかわしくない Mike の業、カルマはバンドを驚かせました。しかし、同時に Dave は Mike 由来の異質なるハーモニーやオルタナティブなメロディーラインがアルバムに深みを加えたことも認めています。
CELTIC FROST のアヴァンギャルド、邪念、悪夢を飲み込んだ “Bela Lugosi’s Dead” や “Gag Reflex”、パンクのキャッチーさを奇妙に再構築した “Shillelagh”、よりプリミティブなスクリームが狂気を育む “The Future Has Been Cancelled” といった楽曲群は Mike の貢献なしでは成立しなかったはずです。
鬼才 Ross Robinson を含め5人の才能が火花を散らしたアルバムは、バンドの次なる可能性を諮詢する、ゴシカルでインダストリアルな “Church of the Motherfuckers” でその幕を閉じました。
今回弊誌では Justin Pearson にインタビューを行うことが出来ました。「全てのクリエイティビティーに感謝を」 どうぞ!!

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DEAD CROSS “DEAD CROSS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENDON : THROUGH THE MIRROR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAICHI NAGURA OF ENDON !!

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“Catastrophic Noise-metal” Outfit ENDON Has Largely Eluded The Attention Of The Broader Western Underground Music Scene With New Extreme Masterpiece “Through The Mirror” !!

DISC REVIEW “THROUGH THE MIRROR”

エクストリームミュージックの光彩にして特異点。東京から世界を見据えるノイズの狂信者 ENDON が、シーンに “救い” という名の不可逆性をもたらすマスターピース 『THROUGH THE MIRROR』をリリースしました!!
「ENDON はメタルという言葉でイメージする音楽の領域を拡大する役目の一端を担っていると思います。言い換えれば私にはメタルの延命措置に関わっているという認識があります。」 と語る彼らの欲望は、残酷なまでに率直です。
ボーカル、ギター、ドラム、そして2名のノイズマニュピレーターを擁する ENDON。ノイズをその多様なソングストラクチャーへ大胆不敵に織り込む彼らの方法論は、エクストリームミュージックの最先端にあると言えます。
罪深きノイズの濁流 CODE ORANGE, ハードコア/グラインドのハイブリッドエクストリーム FULL OF HELL、そして ENDON。奇しくも等しくその最新作を CONVERGE の巨匠 Kurt Ballou に委ね、ノイズというキーワードで繋がる三傑は、創造性という核心において他の追従を許してはいませんね。
中でも ENDON が特異点であるべきは、インタビューにもあるように、彼らがノイズを “主人公” として扱っている部分だと言えるでしょう。勿論、エクスペリメンタルな極北たるデビューフル 、ノイズを中心に据えた “母盤”『MAMA』はその具象にして直接的な証です。しかし、ノイズを楽器の一つとして扱い楽曲を “構築” することで、よりロック/メタルのフォーマットへと接近した “父盤” 『THROUGH THE MIRROR』においてもその信念は揺らぐことすらありませんでした。
ENDON にとってノイズとは “有機性” の象徴なのかも知れません。つまり、音符や調に囚われないノイズは自由な胎動、母性。逆に緻密な楽曲の構築、音楽的な束縛は父性。二性の融合によりフォーカスした『THROUGH THE MIRROR』は、ENDON という稀代のバンドが産み落とした寵児だと言えるのではないでしょうか。
こうした変化、父性の強調をセルアウトと断じることは無意味です。那倉氏が 「私は「悟り」という言葉もあまり好きではありません。私は「悟り」を「去勢」と言い換えます。」 と語ったように、バンドは “去勢” とは対極に位置するマスアピールを欲しているのですから。
アルバムオープナー、6分間のノイズの弾幕、ブラストの洪水、地獄の責め苦 “Nerve Rain” をある種の踏み絵としたレコードは、実際アグレッションとカオス、エモーションとキャッチーさが奇跡のバランスで均衡を保つインテンスの塊です。
“Your Ghost is Dead” “Born in Limbo” を聴けば今回、特に彼らの獰猛さの一端をブラックメタルやハードコアのテクスチャーが支えていることに気づくはずです。歌詞を持たないボーカリスト、那倉太一の阿鼻叫喚は言語をも凌駕し、ギターやリズムと対等にレイヤーされたノイズのグラデーションは有機的にその残虐性を高めていますね。
殊更、 起伏が増し、繊細なる “オアシス” が存在感を放つ終盤の24分間は圧巻です。”Perversion ‘Till Death” における全てを破壊するかの如き非業の質量、修羅なる重量感は、狂気の狭間に挿入される仄暗くも耽美なるクリーンギターを伴って、スラッジーというワードのみで形容するにはあまりに背徳的で異端な世界観を作り上げています。
プリミティブなパンクのエナジーで疾駆するタイトルトラック “Through the Mirror” がメジャーキーで解決した刹那、世界はその色を変えます。”Torch Your House” で開花するエセリアルなムード、ノイズの宇宙、多幸感とさえ表現可能なサウンドスケープは、ポストロックやポストパンクの美麗なるイメージ、アンビエンス、崇高さを伴って作品に稀有なるコントラストをもたらし物語を締め括るのです。
アルバムを通してギタープレイヤー、宮部氏のルーズでクールなブルーステイストが、作品に更なる彩り、魅力を加えていることも付け加えておきましょう。
今回弊誌では、那倉太一氏にインタビューを行うことが出来ました。8/23からは FULL OF HELL, THE BODY, FRIENDSHIP の日本ツアーが始まりますが、ENDON も8/27に出演が決定しています。インタビューで、「小説が歌詞を補完しているという関係ではありません。」 と明言していますが、太一氏の弟、悦生氏が全ての楽曲タイトルに対応する小説を著しています。実に興味深い内容なので併せてぜひ。どうぞ!!

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ENDON “THROUGH THE MIRROR” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MUTOID MAN : WAR MOANS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN BRODSKY OF MUTOID MAN !!

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Converge / Cave In Super Group, Mind-Blowing Behemoth, Mutoid Man Literary Melt Your Mind With Their Newest Record “War Moans” !!

DISC REVIEW “WAR MOANS”

CONVERGE, CAVE IN, ALL PIGS MUST DIE のメンバーが集結した突然変異のスーパーグループ MUTOID MAN が奔放かつ不遜、バッダースな新作 “War Moans” をリリースしました!!キャッチーなロックン・ロールのイメージを獰猛なメタルのアグレッションに投影した、チャーミングかつタイトなレコードはシーンの大いなる期待に応えて余りある一撃となりました。
シリアスで暗色調なアティテュードが枢軸となるコンテンポラリーなメタルシーン。狂気やユーモア、風刺を宿す MUTOID MAN のシアトリカルで本来のメタルらしいコンセプトは、実際異端で新鮮なカウンターとして際立っています。
インタビューにもあるように、”War Moans” は “セクシャリティ”、性行為や性的欲求にフォーカスした作品です。アートワークやタイトルが示すように、性的指向、欲求が日増しに暴走する現代社会を、戦争という極限状態へと投影しある意味戯画化することで、現代の異様さ “倒錯性” “変態性” を浮き彫りにしているのかも知れませんね。実際、バンドは “War Moans” を “Perverted” 変態的なレコードだと断言しています。そしてその柔軟なユーモアはポップセンスに、辛辣な毒気はアグレッションに姿を変えて作品の音楽性に反映されているのです。
文字通りリスナーの心を溶かすアルバムオープナー、”Melt Your Mind” はそういった彼らの意図を十二分に汲み取った楽曲です。キャッチーでスピーディー、ハイパーアクティブなバンドの新たなアンセムは、Brodsky のフックに満ちたギタープレイ、ファジーでラウドな Nick のベース捌き、そして Ben Koller の数学的かつダイナミックなドラミングに牽引されて、空襲にも似た爆発的なエナジーを発します。
加えて、あの VAN HALEN をも想起させるボーカルハーモニー “hoo-ooo” の火力も絶大で、物憂げなメロディーとの相乗効果は無上の中毒性をリスナーへと植え付けて行くのです。
続く”Bone Chain” ではさらにアンニュイなメロディーが中毒性を増し、MOTORHEAD meets QUEENS OF THE STONE AGE とでも形容可能、ドラッグのように危険でオルタナティブなキャッチーネスを創造していますね。
インタビューにもあるように、パンクやハードコアは勿論ですが、特に初期のメタルスピリット、80年代という時代を意識しリスペクトして制作されたアルバムで “Irons in the Fire” からタイトルトラック “War Moans” への流れはまさに作品を象徴しています。
MEGADETH の “Countdown to Extinction” をイメージさせる大仰なイントロ、スラッシュの衝動、テクニカルなシュレッド、インテレクチュアルなリズムワーク、シンガロングを誘うキャッチーなコーラス。”Irons in the Fire” は、かつてメタルが備えていた祝祭的な高揚感を胸いっぱいに浴びつつ、マスマティカルでスペーシーに味付けしたモダンな感覚と共に現代へと叩きつけているのです。
さらに SLAYER の “War Ensemble” に対する極上のオマージュにも思える “War Moans” では、あの時代を象徴するシュレッダー Marty Friedman が、トレードマークのコード感抜群で変拍子を切り裂くリードプレイでバンドの主張を代弁しています。
こういった凶悪な楽曲においても、Brodsky はスクリームや吐き捨てを駆使してあくまでメロディーを追い、勿論あの素晴らしき CAVE IN で確立したスタイルから遠く遊離する訳もありませんが、グロウルは使用していませんね。彼のそのトレードマーク自体も、グロウルが飽和気味な界隈に対する強いアンチテーゼ、風刺となっているように感じました。
とは言え、アルバムは決してオプティミスティックな押しの一辺倒ではありません。ブルージーでスロウ、スラッジーにバンドのシリアスな一面を見せつける “Kiss of Death” はアルバムの裏ハイライトとして作品に妙なる濃淡をもたらし、何よりこのマスターピースを締めくくる衝撃のパワーバラード、ダークな歌姫 Chelsea Wolfe を起用した “Bandages” では、慈愛と憂鬱の相反するエモーションを深々とサウンドに込め、バンドのジャンルスパニングでフレキシブルな才能を絶佳なるコントラストとして見事レコードに落とし込んでいるのです。
作品のプロデューサーでもある CONVERGE の Kurt Ballou が、カオティックに暴走する “Micro Aggression” ではなく、意外にもこの2曲にゲスト参加を果たしていることを付け加えておきましょう。
今回弊誌では、ex-CONVERGE で CAVE IN のマスターマインド Stephen Brodsky にインタビューを行うことが出来ました。マーティーさんによれば、「新しいアルバムはエグい! クッソかっこいい! メタルかロックかパンクか分からないけど、とにかく生々しいヘヴィ・ミュージック! コイツらはホンモノだ、保証付き!!」 だそうですよ。どうぞ!!

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MUTOID MAN “WAR MOANS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FULL OF HELL : TRUMPETING ECSTASY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SPENCER & DYLAN OF FULL OF HELL !!

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Maryland / Pennsylvania Quartet, Full OF Hell Has Just Released The Newest Album “Trumpeting Ecstasy”!! Diverse, But More Into Extreme Metal Realms!

DISC REVIEW “TRUMPETING ECSTASY”

メリーランド、ペンシルベニアのカルテット、破壊者 FULL OF HELL がフルアルバムとしては2013年の “Rudiments of Mutilation” 以来となる新作 “Trumpeting Ecstasy” をリリースしました!!日本が誇るノイズゴッド MERZBOW, アヴァンギャルドノイズデュオ THE BODY とのコラボレート、さらには NAILS, PSYWARFARE とのスプリットを血肉としてリリースした作品は、要となる自身のルーツを軸としつつ、同時にエクストリームミュージックの領域を一際押し広げる重要なレコードとなりました。
CODE ORANGE, 日本の ENDON と並んで FULL OF HELL はハードコアとノイズ要素を融合させるアプローチの先端に立つアーティスト。もはやハードコアの大家となった感のある CONVERGE の Kurt Ballou が斬新なその三者全ての新作を手がけることとなったのも偶然ではないでしょう。
実験的な作風にシフトするかとも思われた “Trumpeting Ecstasy” は、意外にもストレートな楽曲が軸となり押し寄せる暗く激しい11曲23分となりました。インタビューにもあるように、サウンド、リフワークなど、確かにバンドはよりメタルの領域に接近したようにも思えますし、楽曲が”密着”していると語るのも頷けます。
しかし、勿論彼らの野心が一所に留まるはずもなく、レコードは同時にパワーバイオレンス、ノイズ、スラッジ、インダストリアルといった多様なアイデアを見事に昇華しコンテンポラリーなブルータリティーを散りばめたハイブリッドなエクストリームミュージックとして仕上がったのです。
“木々も鳥たちも悲しみに満ちている。彼らは歌っているんじゃない。ただ悲鳴をあげているんだ。” ニュージャーマンシネマの巨匠 Werner Herzog の言葉で幕を開けるアルバムオープナー “Deluminate” は文字通り世界の悲惨さ、絶望感の象徴です。不協和音をスクラッチする悪夢のデスメタルライクなリフワークと、疾走する巧みで手数の多い狂気のドラミングは無慈悲にもリスナーに地獄絵図を投下して行きます。”人間は地球の顔に出来た膿だ” と喉が張り裂けるほどシャウトする Dylan の苦痛を伴う憤怒は即ちハードコアのリアルで、聴く者に畏敬の念さえ感じさせますね。
禍々しい何かを引き摺るようにスローダウンする、スラッジーな “Gnawed Flesh” はまさに FULL OF HELL の真骨頂。脱退したベーシスト Brandon Brown のデモニックなガテラルは、Dylan の鋭いスクリームと凶悪なインタープレイを繰り広げバンドの顔となっていましたが、新たに加わった Sam DiGristine もしっかりとその伝統を引き継ぎ、自身のハラワタに宿した魑魅魍魎を地の底でスラッジパートに全てぶつけています。
さらに “Crawling Back to God” には ex-ISIS の Aaron Turner が、”At the Cauldron’s Bottom” には CONVERGE の Nate Newton がそれぞれボーカルでゲスト参加し、様々な声を得た作品は実に多様な色を加えているのです。
GRIMES のレーベルに所属するカナダのアーティスト Nicole Dollanganger の声を得たタイトルトラック “Trumpeting Ecstasy” はバンドが経てきたコラボレートの旅が結実した成果だと言えるでしょう。THE BODY の Lee Buford が生み出すビートと Nicole の天上の歌声は、不穏なノイズを宿した惨忍なバンドの暴虐と溶け合うこともなく、奇妙な二分法のまま冷やかなまでに無機質に進行して行きます。
インタビューで Dylan は、”Trumpeting Ecstacy” というタイトルが「他人の不幸は蜜の味」といった意味を持つと語ってくれましたが、この純美と非業、”喜び”と”悲しみ”の奇妙な共存はそのまま彼の語る人間の心の最も醜く陰湿な場所を映し出しているように感じました。
今回弊誌では、フロントマン Dylan とギタリスト Spencer にインタビューを行うことが出来ました!8月には THE BODY, FRIENDSHIP と回る日本ツアーも決定しています。どうぞ!!

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FULL OF HELL “TRUMPETING ECSTASY” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PROTEST THE HERO : PACIFIC MYTH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TIM MACMILLAR OF PROTEST THE HERO !!

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Legendary Canadian Prog-Core Outfit, Protest The Hero Has Just Released Innovative New EP “Pacific Myth” !!

DISC REVIEW “PACIFIC MYTH”

高いテクニックと、モダン=多様性に富んだその音楽性で、Modern Metal を象徴する存在となっているカナディアンレジェンド PROTEST THE HERO が新たなメンバー、販売戦略を携え挑んだ新作 “Pacific Myth” をリリースしました!!革新的な音楽性で驚きをもたらしたヒーローは、マーケティングにおいてもシーンをリードしようとしています。
今日のメタルシーンでは当たり前のように行われているクラウドファンディングキャンペーン。有名、無名に関わらず現在多くのバンドを支える、このレーベルを介さずファンと直接繋がる販売戦略は、PROTEST THE HERO が前作 “Volition” で勇気を持って踏み出した一歩が発端だったと言えるでしょう。バンドはクリエイティブな可能性とモチベーションを手に入れ、ファンは音源以外にも特別なアイテムやマーチを手に入れられる、全てが Win-Win な “Volition” での試みは確かな成功を収めました。しかし、彼らはその場所にも満足せず、さらに合理的な一手を打って来たのです。
“Pacific Myth” で彼らが打ち出した新たな戦略は、サブスクリプションプラットフォームという手法でした。定額を支払ってくれたファンのみに、毎月フレッシュな新曲を配布するという野心的なその試みは、再び成功を収めたと言えます。7500人以上のファンが “Pacific Myth” のキャンペーンに参加し、バンドのエクスクルーシブなコンテンツに12$、25$の私財を投入したのですから。6ヵ月に渡る長いキャンペーンが終了した後、バンドは “Pacific Myth” にリマスター、リミックスを施し EP として新たにリリースすることを決断します。
オリジナルラインナップが崩壊し、ベーシスト Cam McLellan、ドラマー Mike Ieradi を新たに迎えて制作されたこの EP は、”Fortress” 以前、”Fortress” 以降と時にそのキャリアを分けて語られるバンドの命題に抗うかのような強い意志を発する作品です。
確かに “Fortress” は完璧で、同時にモダンの意味を定義するようなマイルストーンでもあります。さらに昨年行われた、オリジナルラインナップでのデビューフル “Kezia” 10周年記念ツアーの盛況を見れば、この作品の若々しいエナジーも同様に愛されていることが分かりますね。
故に、BETWEEN THE BURIED AND ME にとっての “Colors” と同様に、”Fortress” 以降の作品は、ハードコア色が薄れ、よりトラディショナルでメロディー重視の方向に舵を切った “Sucrrilous”, さらにはピンチヒッターで LAMB OF GOD の剛腕 Chris Adler の推進力を生かした強力な “Volition” を持ってしてもその高き頂きを超えるまでには至らないという評価に落ち着いてしまっているように思えます。
実際、PROTEST THE HERO の現状を憂うファンの多くは、おそらく若さが原動力の一つとなった “Kezia” “Fortress” の瑞々しく、型破りで、予測不能な一面を愛しているのでしょう。しかしバンドは必ず成熟して行きます。Rody はダーティーに奔放に歌うよりもしっかりと丁寧にキャッチーなメロディーを追う場面がほとんどですし、楽曲も様々な要素をエクレクティックに吸収しつつも 、予測不能なカオスよりも、インテリジェンスを感じる構成美で驚きを演出する方向へとシフトしています。
インタビューで Tim が”2つを融合させる方法を見つけた”と語るように、”Pacific Myth” では10年という月日が生んだジレンマを、バンドの過去と未来を自然に繋ぐことで跳ね除けるチャレンジが行われているのです。
“Harbinger” のエピカルなピアノイントロを聴けば、誰もが “Kezia” のマジックを想起するはずです。そしてこの楽曲に存在する、クラシカルでテクニカルでカオティックなサウンドは、まさに2006年の衝撃をリスナーに蘇らせる役割を果たします。
穿った見方をすればファンへ擦り寄ったとも思える原点回帰ですが、元来 PROTEST THE HERO が売りにしていたこの種のキャッチーさ、テクニカルなフックを敢えて再提示したのは、自らの遺産すら武器へと変換する余裕の表れと見るべきではないでしょうか。実際、アグレッシブな曲風に刹那挿入されるピアノとボーカルだけの美しき共演は、現在の彼らだからこそ生み出せる極上の瞬間です。
同様に、”Cold Water” で聴けるサルサのようなリズミックなアプローチ、”Cataract” のスピードとエナジーの中でみせる黒くソウルフルなアイデアもバンドの新たな領域を開拓していますね。
作品で最も意義深いトラックはアルバムクローサー “Caravan” だと言えるでしょう。構成美に拘るが故長尺化している昨今の楽曲においても、バンド史上最長の8分39秒は新鮮な驚きだと言えます。”安全な場所”から離れ、未来へ向けて船出を果たしたキャラバンは、トレードマークとも言える複雑なアルペジオや狂気のシュレッドに頼らずグルーヴ重視でフックを生み出すと共に、意外性に満ちた後半では、キーボード、クリーンギターを巧みに使用し見事なアトモスフィアさえ具現化。彼らの成熟を伝えていますね。
メロディーの美しさも白眉で、DREAM THEATER さえ想起させる壮大なフィナーレには圧巻の一言。実際、”Caravan” での Rody は、近年あまり感じられなかった生き生きとした表情豊かな歌唱を披露し、バンド全体が成熟と共に自然と自信を取り戻したようにも思えますね。
全てを総括し、未来へと舵を切った伝説。今回弊誌では、ギタリストでコンポーザー Tim MacMillar にインタビューを行うことが出来ました。昨年、Realising Media の招聘により行われた、8年振りの素晴らしい来日公演は記憶に新しいところですね。どうぞ!!

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PROTEST THE HERO “PACIFIC MYTH” : 9.4/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CANDIRIA : WHILE THEY WERE SLEEPING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN LAMACCHIA OF CANDIRIA !!

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The Pioneer Of Experimental Extreme Music, Candiria Has Just Released Their Ambitious New Album “While They Were Sleeping” For The First Time In 6 Years !!

DISC REVIEW “WHILE THEY WERE SLEEPING”

ブルックリンが生んだ、モダンエクストリームミュージックのパイオニア CANDIRIA が6年の沈黙を経て、新作 While They Were Sleeping” と共にシーンへと帰還を果たしました!!バンドの成熟/進化と原衝動が共存するアルバムで、彼らは自らの価値を再度証明しています。
CANDIRIA の冒険は90年代の中盤から始まりました。メンバー各自が持ち寄った様々な影響、Hardcore は勿論、Death Metal, Hip Hop, Jazz, Fusion, Ambient, Noise といったバラバラな音楽をミックスし、奇跡とも思える革新性と共に圧倒的な存在感を見せつけたのです。現在のエクストリームミュージックシーンは、エクレクティックであることが命題のようにも思えるほど、ジャンルをクロスオーバーした作品が注目を集めていますが、その礎を築いたバンドの1つは間違いなく CANDIRIA ですし、後続に与えた影響は計り知れないと思います。
中でも “The Process of Self-Development”, “300 Percent Density” の2作は白眉。”シームレス”というキーワードの下、切れ目なく、流体のようにしなやかに形を変え続けるエクスペリメンタルな音楽とグルーヴ、そして黒人ボーカリスト Carley Coma のラップからスクリーム、グロウルへと自在に行き来するフレキシブルなボーカルが一体となり押し寄せる波は圧倒的で、今日でも新鮮さを保ちながらシーンのマイルストーンとして輝いていますね。
好調のバンドをアクシデントが襲ったのは2002年のことでした。ツアー中のバンが事故に遭い、メンバーが瀕死の重傷を負ってしまったのです。悲劇がメンバーに落とした影、そしてその影響は明らかでした。2004年に復活したバンドが発表した、強烈なタイトルの作品 “What Doesn’t Kill You…” では実験的、チャレンジングなムードが減退し、メロディーによりフォーカスしたある意味”らしくない”アルバムだったのです。以降、 CANDIRIA のシーンにおける存在感も徐々に減退していきました。
John がインタビューでも語ってくれたように、”While They Were Sleeping” は行き詰まりを感じ、長い休養を経たバンドが再生を果たした、フレッシュで野心的なレコードです。睡眠状態にある社会を “They” と表現し、成功を逃したミュージシャンがその崩壊した社会で王となるコンセプトも、アメリカの現在、そして何より彼ら自身の今を投影しているようで、見事にハマっていますね。
アルバムオープナー、 “While They Were Sleeping” はまさに CANDIRIA の堂々たる帰還、そして現在の立ち位置を告げています。近作のメロディックな歌唱と共に、Carley のラップやグロウルが大々的にフィーチャーされたマスマティカルでアグレッシブな楽曲では、中盤のアンビエントで Jazzy なパートが極上のコントラストを生み CANDIRIA の色を強く主張します。近作での方向性を活かしつつ、バンドが最も生き生きとしていた頃の感覚をしっかりと取り戻したタイトルトラックは純粋に魅力的で、作品を象徴していますね。
実際、アルバムを牽引するのは確実に Carley の千変万化で万華鏡のように多彩なボーカルでしょう。”Mereya” で聴ける Jazzy なスキャットは全くのサプライズですし、 “Forgotten” で堂々とキャッチーなアリーナロックを歌い上げたかと思えば、”The Whole World Will Burn” ではクールなラップでオリジネーターの凄みを見せつけます。まるで彼のボーカルがそれぞれの楽曲の個性を決定しているようにさえ感じますね。
特筆すべきは、”Wandering Light” と “Opaque”。奇しくも VAUREEN の Andrea Horne がフルートとボーカルでゲスト参加をした2曲は、成熟した Carley とバンドの現在を伝えています。
ヘヴィーでカオティックな “Wandering Light” に突如挿入される美しいフルートの響き、そしてオーガニックなボーカルは絶妙のアクセント、フックになっていますし、”Opaque” に至っては、2人のデュエットとギターのメロディーが心を打つ、バンド史上初の感動的なバラードです。
こうした CANDIRIA の新たな魅力、進化が自然に作品の流れに溶け込んでいることからも “While They Were Sleeping” はただアグレッション、ポリリズム、テンションノート、カウンターメロディーという彼らの原点に回帰しただけのレコードではないことが伺えます。6年ぶりの新作は、さらに音楽性、演奏、歌唱の幅を広げ、知性と攻撃性、実験性とキャッチーさを巧みに共存させた CANDIRIA の新たな記念碑であるのです。
唯一彼らと似たような方向性を選択しているのが、実は USオルタナティブの雄 DEFTONES であることを付け加えて置きましょう。
今回弊誌では、バンドのギタリスト John LaMacchia にインタビューを行うことが出来ました。彼は別プロジェクト SPYLACOPA で THE DILLINGER ESCAPE PLAN の Greg ともプレイしているシーンが認める奇才。どうぞ!!

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CANDIRIA “WHILE THEY WERE SLEEPING” : 9.6/10

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