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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【IRON MAIDEN : SENJUTSU】


COVER STORY : IRON MAIDEN “SENJUTSU”

Photo copyright by JOHN McMURTRIE

“You Only Have To Look At Those Top Comments To Find Out How Fractured People’s Psychologies Are. This Is Not a Political Issue, I Think It’s a Psychological Issue. There’s a Collective Schizophrenia In The World And The Internet Is Feeding It And Fueling It.”

戦術 -THE ART OF WAR-

Bruce Dickinson は、メタル世界の異端児です。イギリスの巨人、IRON MAIDEN のフロントマンである Bruce は、63歳にもかかわらず今でも旗を振りながら大声で叫び、バンドのマスコットであるエディと剣戟を交わし、若いころといささかも変わらぬ情熱を持ってステージを飛び回っています。背景が変わり、炎が上がると、彼は愛してやまない世界の歴史からインスピレーションを得た古来の衣装を着て、芝居がかった派手な演出で聴衆を釘付けにするのです。
Bruce は、レコーディング・アーティストとして、ライブ・パフォーマーとして、メタル世界最高のボーカリストの一人として当然広く知られています。ただし、同時に彼は、メタル世界においてレジリエンス (心理学における外力による歪み、ストレスを跳ね返す力) の第一人者としても長く記憶されるに違いありません。
2016年、Bruce は舌癌を克服した数ヶ月後に “The Book of Souls World Tour” に参加し、IRON MAIDEN は6大陸で100回以上の公演を行いました。Bruce Dickinson の声は、癌を克服し恐ろしいことにその強靭さを増しています。
「ツアーを3、4ヵ月やってみて…すべてオリジナルのキーで、40年前に使っていたのと同じ音を出している。声のトーンは少し太くなったし…。より頑丈になった。俺は確かにテナーの音域にいるけど、テナーにはさまざまなタイプがある。俺が好きなテナーの一人が、Ronnie James Dio だ。Ronnie は一種のハイブリッドで、年を重ねるごとに彼の声はより頑強になっていったよね。初期の作品、特に RAINBOW 以前の作品に “Butterfly Ball(and the Grasshopper’s Feast)” というアルバムがあってね。彼はゲストとして参加し、DEEP PURPLE の Roger Glober が多くの曲を書き、プロデュースしている。その中に “Love Is All” という曲があるんだけど、彼の声はガラスのようなんだ。とても透明感があって、素晴らしいんだよね。この曲は、アルバムではなくライブでカバーしたいと思っていたんだよ。
11月にハンガリーで Roger と一緒にオーケストラ演奏をすることになっているんだ。去年、ケベック・シティでオーケストラとやったのと同じで、2晩かけて Jon Lord の “Concerto for Group and Orchestra” を演奏して、最後にパープルの曲を5曲演奏したんだ。ハンガリーでも同じことをやるだろうね。
とても楽しいし、オーケストラと一緒に仕事をするチャンスもあるからね。指揮者のポール・マンが他のこともやってみたい?と聞くから、俺は、”メイデンの “Empire of the Clouds” という絶対にやらない曲があるんだけど、これはオーケストラのために作られていて…” と言ってみた。彼はその曲を聴いて、”ああ、これは素晴らしい!” と感動していたよ」

2019年に後に “Senjutsu” となる2枚組の新作アルバムをレコーディングした際には、アキレス腱を痛めながら、手術の翌日にはボーカルを撮り終えました。Bruce はその時のことを、ブーツを履き、松葉杖をついてスタジオに入り、足は “クソ風船” のようになっていたと語っています。そこから彼はツアーに戻り、キャリアを網羅した “Legacy of the Beast World Tour” を継続。毎晩、戦略的にステージを歩き回り、医師がかかとを縫い合わせた直後にもかかわらず懸命に動き回って聴衆を鼓舞しました。
「動き回っていたけど、違う動き方をしていたんだよ。ふくらはぎの筋肉を使わずに動くことを覚えたんだよね。これがなかなか難しくて、従来のやり方ではできないんだ。だから、ジャンプもできないし、走ることもできないし、早く歩くことも問題だった。でも、カニのように歩けば大丈夫だったんだ!」
IRON MAIDEN は、コロナウイルスの流行により、レガシーツアーの残りを2022年に延期することを余儀なくされましたが、さらに Bruce 自身もこの “Senjutsu” リリースの大事なタイミングで軽度のCOVID-19に感染してしまいました。しかし、機長でありレジリエンスの達人はもちろんその心を折られてはいません。
「とても素晴らしいレコードだから、これ以上座って待っているわけにはいかないからね。人々はロックンロールの棚から何かが落ちてくるのを待っていたんだ。だから、このアルバムをリリースするのは、ある意味素晴らしいタイミングだと思うんだ。
体調は全く問題ない。COVIDに感染したから、10日間の自宅隔離を余儀なくされているが。ちょうど1週間前に陽性反応が出たんだ。症状としては、2~3日前から少し気分が悪くなり、少し汗をかき、少し鼻が詰まって、俺の場合は小さな咳が出て、嗅覚も鈍っていたけど、今は少し戻ってきているね。
感染したからといって、ワクチンには全然懐疑的になっていないよ。2回とも接種したし、もし誰かにもう2回接種してほしいと言われたら、真っ先にその列に並ぶだろうな。俺とパートナーは、俺がファイザー、彼女はアストラゼネカのワクチンを接種し、二人とも感染した。でも、彼女はそれを乗り越えたし、基本的に俺も今、かなり克服しているよ。
ワクチンを打っておいたから、症状が軽かったんだろうな。それに、俺の知り合いでワクチンを接種した人は皆、副作用がとても軽いんだよ。ワクチンを接種していない人でコロナになった人を何人か知っているけど、彼らは相当酷い目にあっているよ。たとえ死ななかったとしても、その後かなり長い期間、体調が優れないんだよな。これは50歳以上の人だけではなく、30歳以下の若い人たちにも言えることなんだ」
家に閉じこもるのは退屈で、”Netflixをすべて見てしまった” と告白する Bruce にとって、メイデンの世界に戻ることは、普通の生活に戻ることを意味しています。
「世界が早く常識的なものに戻れば、誰にとっても良いことだよな。俺たちは、その一環として “Maiden is Back” を求めているんだよ」

80分以上という壮大な長さで、最後の2曲だけで30分近くかけてレコードの片面を占める。そんな型破りな音楽とテーマは IRON MAIDEN だけが実現可能な魅力的なメタルドラマでしょう。プログ、フォーク、ブルース、サウンド・トラックなどの影響が随所に現れる、41年の歴史を持つメイデンのタペストリー。”Senjutsu” はそんな匠の伝統に独自の挑戦の形を刻んでいます。
パリのギョーム・テル・スタジオ( “Brave New World” や “The Book Of Souls” を制作したのと同じ場所)で長年のプロデューサーであるケヴィン・シャーリーと再度タッグを組んだ “Senjutsu” の創作過程は、このような全能感に満ちた聴きごたえのある作品にしては、非常にゆるやかなものでした。
「2枚組というのも、自分たちの手の中にあるものに気づくまで、実際には計画されていなかったんだよ。このように濃密で時折挑戦的な作品を作ることが、歴史的なツアーの強壮剤になるという指摘さえも、さりげなく受け流していた。本当に、”アルバム” 以外の計画はなかったんだ。何か決まったアイデアや先入観を持って臨んだわけではないんだよ。
Steve は文字通り2、3日家に閉じこもっていて、その間俺たちはみんなでピンボールをしている。そして彼はこう言うんだ。”おーい!みんなスタジオに来てくれ!” ってね。
Adrian と一緒に作った曲は、もう少しオーソドックスなものだったな。何かができたと思うまで、ギターを弾いたり歌ったりしていたんだ。それからリハーサルをして、そのまま曲にした。言ってみれば、もっとオーガニックなんだよね。逆に Steve は、かなり細かいところまでこだわる傾向がある」
実際、Bruce はこのアルバムで Adrian Smith とのみ楽曲を書いています。
「彼と一緒に書いていると、すぐに物事がうまくいくんだよ。そういう意味では、彼は一緒に作曲するのにとても適した人だよね。彼は、歌いやすいコード構造を考えてくれるし、そこには音楽的な色が含まれているので、俺の頭の中で絵を描き、その上に言葉や曲を書くのも簡単なんだ。
時には、少しずつ入れ替えていくこともある。彼がコーラスだと思っていたものが、途中で何かに変わるかもしれない。コーラスだと思っていたものがギターになるかもしれないけど、それはアイデアを出し合っているうちにわかることさ。Adrian はテニスの名選手なんだけど、彼と一緒に曲を作るのは、ボールを前後にノックするようなものだ。良いラリーになると、”これは良い!” “あれはクリエイティブだ!” となる。実際、エイドリアンとの曲作りはまさにそんな感じなんだよ。
でも、別に Janick と共作しなかったからって意図的なことじゃない。Steve はスポンテニュアスにやるのが好きじゃない。”サプライズだ!俺が全部仕上げた!”というのが彼のやり方なんだ。俺たちは40年以上も一緒に仕事をしているから、お互いの仕事のやり方や長所、短所などを理解しているんだ。
俺と Adrian は、”The Writing on the Wall” 作ったとき、とても驚いたんだよ。彼は、”これは1曲目にするべきだ!” と言った。この曲は俺たちにとっては異色だよ。ある意味では、もう少しメインストリームで、クラシック・ロックのようなものだからな」

JETHRO TULL のような感じもあります。
「JETHRO TULL や DEEP PURPLE みたいな、子供の頃に着ていた “服” を “着せ替え箱” の中から掘り出して、何年も経ってから表に出しているんだよ。俺がバンドに参加していなかった頃の “Prodigal Son” を聴いてみるといいよ。ちょっと待った!と思うだろうね。とても JETHRO TULL 的だから。
俺と Steve は JETHRO TULL の大ファンだけど、好きなアルバムはそれぞれ違うんだよね。俺は初期のフォーク・ロックのファンだけど、彼は “Thick as a Brick” やプログレッシブなものが好きなんだ。あとは “Passion Play” とか。俺はそれほど好きじゃないんだよね。短い曲の方が好きだ。
彼は GENESIS の大ファンなんだけど、Phil Collins の GENESIS ではなく、Peter Gabriel の初期を好んでいる。一方、俺はどちらかというと Peter Gabriel のソロのファンでね。GENESIS を離れてからの彼の作品はよりエッジが効いていると思うからね。”Peter Gabriel III” は、なんて素晴らしいアルバムだろう。”Intruder”, “No Self Control” みたいな不吉さがいい。
あと、俺は VAN DER GRAF GENERATOR というイギリスのプログ・バンドの大ファンでね。彼らは GENESIS と同時代のバンドだったけど、彼らほどビッグではなかったんだ。VDGG はもっとプログレッシブでアート・ロックなタイプなんだけど、俺は彼らと Peter Hammill から歌詞の面で大きなインスピレーションを受けているよ。
まあつまり、俺たち2人の間には、かなりの量の “プログレ” が潜んでいるんだ。ここ数枚のアルバムにはそれが表れているよね」

コロナで始まった2020年代。それだけではなく、IRON MAIDEN に加入したころとはさまざまなことが大きく変化しています。
「今までとはまったく違う方法でプロモーションを行っているよ。リリースの告知には、インターネット上で、イースターエッグ・ハントのようなものを用意したんだ。それに、ミニムービーのようなアニメーション・ビデオもある。
アニメーションは音楽に匹敵するよ。バイクが通ると音がする、人が銃をロックしたりロードしたりすると音がする。男がヤギに変身すると、ベロベロと音がして、バリバリと壁に叩きつけられる。大きなサウンドシステムを使えば、それは素晴らしい音になる。映像に命が吹き込まれたように感じるんだ」
長い間、話題になるようなビデオを作っていないので、人々が想像できないような壮大なものを作りたいと考えていた Bruce を駆り立てたのはドイツのあるバンドでした。
「メイデンのマネージャーであるロッド・スモールウッドに、”RAMMSTEIN の “Deutschland” のビデオを見たことがあるか?”と言ったんだ。あれは、俺にとっては画期的なビデオでね。驚くべきことだよ。俺たちは RAMMSTEIN ではないから、同じことを提案しているわけではなかったんだ。でも、同じくらいのインパクトを与えることができるものが欲しかったんだよ。
画期的なビデオを作りたかった。俺はアニメーターではないからすべてを担当したわけではないけど、ストーリーを書き、元ピクサーのマーク・アンドリュースとアンドリュー・ゴードンが事実上のエグゼクティブ・プロデューサーとして、全体に深く関わっているんだよ」
かつて “トイ・ストーリー” を手がけた人物が、今は IRON MAIDEN のマスコット、エディが政治家の首を切るシーンを書いているのも驚きです。
「俺が脚本を考えたとき、マークはガイドとしてフルカラーの美しい絵コンテを8枚描いてくれた。特に気に入っているのは、最後のシーンでエディがアダムとイブをキャデラックに乗せて、4人のバイカーにエスコートされているところだね。背景にはスタンリー・キューブリックや “ドクター・ストレンジラブ” へのオマージュが描かれていて、まさに俺がこのラストシーンを書いたかのようだった。すぐに、”この仕事をするのにふさわしい人たちだ ” とおもったね。
最初の会議で、マークは “聞いてくれ、僕は勝手にこのオープニングシーンを考えたんだが、バイカーたちはもっと早く登場するべきだと思うんだ。たぶん、ハゲタカのように旋回しているんじゃないかな” と言った。俺は “ロード・オブ・ザ・リングのナズグルだな” と思ったよ。素晴らしいね。
クリエイティブな人たちと一緒に仕事をしていると、すぐに理解しあえるのがとても楽しいんだ。大虐殺で人々を排除する方法を検討していたとき、”実際にどんな銃を持つべきか” というディテールにまでこだわったよ。武器のマイクロデザインをしていたんだよね。
四頭身の死神のようなバイクの男たちが、有害廃棄物の中を走り、逆さまになったアメリカ国旗が、大食いで身なりの悪い政治家を乗せた車に掲げられている…おそらくドナルド・トランプだろうな。まあトランプである必要はないんだけど。これは一般的な比喩だから」

そして、その後ろにはお尻を出したイギリス人の男たちがいます。
「彼らは顔のない公務員で、まだ大英帝国があると思っている愚か者だ。ズボンからお尻を出しているけど、誰も教えてくれないんだよね。
その背後には、明らかに核ミサイルを突き出した中国のドラゴンのようなものがある。多くの人に聞かれるのは、一番上の皇帝が実際に何を持っているのかということなんだ。というのも、(中国の)習近平国家主席が一時的に不人気になったとき、地元の人たちが習近平の外見をくまのプーさんに例えたんだよね。その結果、習近平は “くまのプーさん” を中国で禁止することにしたんだよ。わかるかい?
このビデオには小さなイースター・エッグがたくさん潜んでいるんだ。特定の政治体制を支持するものではないよ。善人はいない、悪人ばかりだ。最初の絵コンテでは、大虐殺が終わり、エディが黙示録のバイカーに護衛されて走り去り、爆弾が爆発するところまでしか描いていなかったんだ。でも、実際には、吸血鬼の王様(試験管の中に入れられた死体の汁で生き返る男)は生き延びて這い回り、闘技場の外ではヤギになっていたんだ。ネブカドネザル2世がしたとされるように、地面に伏せて草を食べている。というのも、彼は気が狂ったようになって錯乱し、自分が獣になったと思い、外に出て、草の中で草を食べていたんだよね。傲慢の罪でね。
そして、彼がロバに目をやると、ロバが “おい、あれは俺の草だぜ “と言ったんだ。王様はロバと同じレベルになってしまった。すべてが滅んだ後、エディがサタンになって、実際彼はサタンではないけど、新しいリンゴを作ってしまうというのはいいアイデアだよね。
ポジティブな結末が必要だったから、最後にアダムとイヴをビデオに挿入したんだよ。スタンリー・キューブリック監督の映画 “Dr.ストレンジラブ” を意識したようなエンディング。エディはただ世界を終わらせるだけで、何もしないの?最後にアダムとイヴが必要で、エディは彼らにリンゴを与えるんだ。
良いことかもしれないし、悪いことかもしれないけど、確実に人間はそれを食べることになる。もしかしたら、また同じことを繰り返してしまうかもしれないけど、どうなるだろうね」
重要なのは、これが “Alexander the Great” のようなメイデンお得意の歴史大作ではなく、現代のアポカリプスな物語だということでしょう。
「これは歴史ではなく、現代の悪夢なんだ。国家が行うゲームの寓意なんだよ」

Bruce の中には難解な歴史の教科書と、スター・ウォーズやロード・オブ・ザ・リングが同時に存在しています。だからこそ、リスナーに届きやすいのかもしれません。
「そうだね。でも、そういった娯楽作品がアイデアをどこから盗んで来たと思うかい?ほとんどはシェイクスピアが作ったもので、その前はギリシャ人が作っていたね。その前には、聖書をそのまま引用したものもたくさんあるし。すべてがリサイクルされて、同じ巨大なメディアの洗濯機に入り、新鮮な状態でマーベル・コミックになって出てくるんだ。
俺は神話が好きだよ。特に、ある程度の寓話性があって、今の時代の良き参考書となるようなものがね。邪悪な帝国が常に勝利するわけではないという希望を人々に与えるようなね。救いを得ることができるのだから」
“Death of the Celts” は、1998年のメイデンの楽曲 “The Clansman” には関連性があるようにも思えますが。アイルランドとスコットランドという違いはあるにせよ。
「スカートをはいた男性のことはよくわからないんだけど、Steve (Harris) にはそういうところがあるんだよね (笑)。 “Death of the Celts” は Steve の曲だけど、彼は部族のアイデンティティを脅かすような人たちの曲を書くのがとても好きなんだよね。彼は以前にもネイティブ・アメリカンや少数民族についての曲を書いている。アイデンティティを脅かされているグループに親近感を持っているんだろうな。そして、自分たちが脅かされているときには、変化するよりも死んだほうがましだと思っている。その考え方は、ある意味ではとてもロマンティックだけど、同時にそれがどれほど歴史的なものなのかはわからないよね。なぜなら、実際に一夜にして死滅する民族はいないから。恐竜もそうだった。何が起こるかというと、人々が吸収されるんだよ。バイキングは絶滅したわけではないけれど、吸収され、同化された。最終的には、イングランド北部に住む、金髪で青い目をした人たちになったんだ」

Adrian Smith と共作した “Darkest Hour ” は、息子を埋葬した男たちの話や、浜辺に流れる血といった暗く陰鬱な楽曲です。
「この曲は、うつ病に苦しんでいたウィンストン・チャーチルの頭の中を少しだけ覗いてみようという試みだった。彼は明らかに天才的な人物だったけど、それだけではなかった。アルコール依存症で、うつ病で、彼が “黒い犬” と呼んでいたものに悩まされていたんだよね。それは彼なりの “うつ病” の表現方法だったんだ。
だけど、彼がいなければ自由世界は基本的に自由ではなかっただろうな。ヨーロッパに関する限り、世界は現在のような形では存在しなかっただろう。もし、彼が頑固な年寄りではなかったら、ヒトラーだけでなく、ヒトラーと和解しようとしていた自分の党の人々にも立ち向かうなんてことはしなかっただろうから。
英国の政治家にしてみれば、面倒なことになるだけだからね。”ヨーロッパのことはナチスに任せておけばいい、我々のことは放っておいてくれれば何をしてもいい” というわけさ。ヒトラーはイギリスの帝国やその他のものに大きな憧れを抱いていたから、その考えに納得していたんだ。
つまり、ヒトラーはイギリスを追い出したいのではなく、実際にはイギリスと同盟を結びたかったんだけど、チャーチルが立ちはだかってこう言ったんだよ。”あなたは野蛮人だ。あなたは文明を破壊し、我々が価値があると考えているすべてのものを破壊するだろう” とね。だから俺たちはチャーチルに大きな感謝の念を抱いている。だけど、その過程で何百万人もの人々が亡くなってしまった…アメリカ人もだけどね。
この曲は浜辺で始まるんだ。冒頭の浜辺は、ダンケルクの浜辺で、基本的には逃げなければならなかった撤退戦の場面なんだ。そして、曲の最後には再び血が赤く染まるんだが、今度はD-Day (ノルマンディー上陸作戦を行った1944年6月6日) のビーチで、俺たちが戻ってきたときのことなんだよ。
その間に語られるのは、基本的には圧倒的に不利と思われる状況下で、ある国が「いや、お前なんかくそくらえ!」と立ち上がった物語なんだよ。第二次世界大戦のバストーニュ(ベルギー)でのアメリカ軍の司令官だったと思うけど、ドイツ軍からの降伏勧告に単純に4文字の言葉で、”Nuts” “おバカさん” と返したんだ。
チャーチルの反応もよく似ていて、”我々は降伏するつもりはない。海岸でも戦う。浜辺でも、丘でも、何を使ってでも戦い抜く” と断言した。これにはナチスも困惑したと思うよ。何を言っているんだ?我々を止めることはできない、我々は圧倒的な力を持っている!のにって感じだっただろうな。しかし、そうはならなかった。これは、一人の人間が作ることのできる違いなんだよ。それが、この曲のテーマなんだ」

今アメリカでは、自分のチームや教団に属すると思われる人たちに対して反対の声を上げることを、人々はとても恐れています。
「世界全体が二極化しているのを見るとがっかりするね……いや、二極化どころではないね。AとB、左と右、北と南…分断されているんだよな。
それが無責任なソーシャルメディアによって増幅されているんだよ。ソーシャルメディアは自分自身を、”そうか、我々は実際にこの怪物を生み出し、事実上制御不能にさせてしまったが、それは我々のせいではない、それがインターネットなのだ、それが進歩なのだ” と考えてしまっている。
だけど、これは制御可能であり、人々は責任を取ることができるんだよ。小さな小さな極端な意見をメガホンで叫んだところで、SNS と同じようには広がっていかないだろうね。だけどメガホンで叫んだほうが、イデオロギー間の対立ではなく、実際の言論を可能にするかもしれないよね。イデオロギーとは、政治的なイデオロギーではなく、事実に基づくイデオロギーのことだよ。
例えばある人は、”チーズはマインドコントロールの方法である” という信念を持っているかもしれない。それをインターネットで公開すれば、バカな男たちがそれを信じるんだよ。なぜなら、それに対抗する反応がないからね。
かつては、新聞社や信頼できる情報源に行って、”チーズについての本当の話は何か?微生物が私たちの脳に侵入するように再プログラムされたのか、それともただのチーズなのか?” といった具合にソースを確認することができた。だけど、それはますます難しくなっている。俺たちのビデオ “The Writing on the Wall” につけられたコメントを見ればわかるよ。興味深いことに、このビデオは左翼から右翼まで、そしてその間のあらゆる意見からさまざまな主張を受けている。
誰かが “これは終わりの時に関するものだ!”といえば、聖書に詳しい人たちは “そうだ、これはイエス・キリストのことで、彼が我々を救うために戻ってくるんだ” と言い、他の人たちは “いや、これは悪の帝国のことだ” “これはトランプのせいだ” “ああ、これはバイデンのせいだ” “ああ、これはワクチンに関わることだ “とさまざまなコメントがあるんだよね。
正直言って、信じられないことだけど、人々は自分なりの解釈で意見を押し付けていくんだ。これらのトップコメントを見れば、人々の心理がいかに分裂しているかがわかるだろう?これは政治的な問題ではなく、心理的な問題だと思うよ。世界には集団的な統合失調症があり、インターネットがそれに拍車をかけているんだよね」
“Hell on Earth” という曲は、まさにそんな地獄のような世界を反映しているようにも思えます。
「どうだろう。それは Steve の歌詞だからね。彼は俺が言うことを気にしていないと思うけど、ちょっとした象徴主義者なんだよね。彼は主流にはならないんだよ。もしかすると、彼は厄介な集団の一員であるかもしれない。彼は俺が信じていないことも信じているけど、人は自分の信じたいことを信じることができ、それが自由な世界と呼ばれるゆえんだからな。だから “Hell on Earth” で彼は明らかに世界を見てこう言っている。”俺が死んでこの世を去ったら、別の世界に戻ってきて、すべてが悪い夢だったと思えるかもしれない。もう一度やり直せるかもしれない。でも、それまでの間、地球上の地獄にいなければならない” とね」

新しいアルバムのタイトルに日本語の “戦術” を選んだ IRON MAIDEN。これは、相手がどこに力を注いでいるかを見極め、それを利用して勝利のための対応策を構築するという考え方です。Bruce が言うように、”サムライ・エディ” と繋がっているのも重要なポイントです。
「Steve が最初の曲を考えて、”Senjutsu” という曲だと言ったんだ。彼は、日本語で “戦争の術 “という意味だと言った。俺は本当かな?と思ってグーグル検索で調べてみたら、いくつかの異なる意味があるみたいだった。俺らはその中から “The Art of War” でいくことにしたんだ。
何の戦争なのかはよくわからない。歌詞を見て、”これは誰かがゲーム・オブ・スローンズを見まくっているみたいだ!” と思ったんだ。草原から北方民族が降りてきて、そこには壁があって、彼らは何としてもその壁を守らなければならない…」
“Senjutsu” のジャケットには、鎧に身を包んだエディが描かれています。つまり、Bruce にはステージ上で鎧を着たり、サムライ・エディと戦ったりする可能性があるということなのでしょうか?
「国際フェンシング連盟は、特にフランスを中心とした西洋のフェンシング連盟で、ライトセーバーの国際的な競技会を公認しているんだ。冗談ではなく、ライトセーバーの大会だよ。彼らのトレーニングを1、2回見たことがあるんだが、実際に競技用のライトセーバーを持っていて、それが最高にかっこいいんだよ。ジュニアフェンシング用のライトセーバーを買ったんだけど、これが地球上で最もクールなものでね。完全な戦闘用ライトセーバーなんだ。徹底的に叩きのめすことができる。壊れることもないしね。
これをホテルのロビーに持ち込んで、ロビーでライトセーバー合戦をしたことがあるんだけど、誰も止めなかったんだよ。だから、ステージ上でサムライ・エディとライトセーバーで決闘するというアイデアは、ぜひ実現したいね!」
IRON MAIDEN が孤高であり続けられる秘訣。Bruce は最後にそのヒントを語ります。
「IRON MAIDEN は、デビューから41年、17枚のアルバムをリリースしてきたけど、いまだに挑戦し続け、人とは違うことをしたいと思っているし、ファンに対して知的に接したいと思っているんだ。それには根性が必要だし、自分の仕事に信念を貫く勇気も必要だ。このアルバムをライブで全曲演奏したいと思っている。それはかなり野心的かもしれないね。しかし、実際のところ、2枚組アルバムをライブで演奏することによる驚きは、それほど大きな提案ではないんだよ。それは、メイデンがメイデンらしく、反抗的に、確実にやっているだけなんだよね。
驚くようなことをするための鍵は、人々を驚かせようとすることではなくてね。むしろ、IRON MAIDEN であろうと意識するときに、危険が生じる。俺たちが情熱を持ってやっていることは、定義上、すべて IRON MAIDEN になる。しかし、それを考えすぎてしまうと、自分自身を窮地に追い込み、自分自身の決まり文句を再利用してしまう危険性があるんだよ。それはカラオケバンドに任せておけばいい」

参考文献: FORBES:Iron Maiden Singer Bruce Dickinson Chats New Album ‘Senjutsu’ And Society’s Great Psychological Divide

LOUDWIRE:INTERVIEW – IRON MAIDEN’S BRUCE DICKINSON DIVES INTO ‘SENJUTSU,’ TIME TRAVEL DESTINATIONS + MORE

KERRANG!:The Way Of The Samurai: Uncover the secrets of Iron Maiden’s new album, Senjutsu

日本盤のご購入はこちら、WARNER MUSIC JAPAN

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLAZE BAYLEY : WAR WITHIN ME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLAZE BAYLEY !!

“If You Are Weak You Can Grow Strong. If You Are Broken You Can Mend. If You Are Different You Are Not Alone.”

DISC REVIEW “WAR WITHIN ME”

「良い時も困難な時も、俺のファンは俺と一緒にいてくれたからね。俺が自分自身を信じられなくなったときだって、彼らは俺のことを信じてくれたんだから。絶望的な気持ちになったときには励ましてくれた。だから、ファンが俺に作曲やレコーディング、演奏を求めてくれる限り、俺はやり続けるだろうな」
Blaze Bayley は、世界最大のメタルバンド IRON MAIDEN で5年という決して短くない時間を過ごしました。ミッドランドの小規模バンド WOLFSBANE からまさかの加入。誰もが羨むシンデレラ・ストーリー。しかし、そんな栄光の裏側で Blaze は一人、もがき苦しんでいました。偉大なる万能のシンガー、前任者 Bruce Dickinson の後任という重圧。がむしゃらが力となった WOLFSBANE よりも、丁寧に音程を追わねばという不自由な足枷。鳴り止まぬファンからのバッシング。
「当時、メイデンのファンの多くは俺を嫌っていたし、25年経った今でも嫌っている人は多いと思う。でも、この2枚のアルバムでは素晴らしい曲が書けたと思うし、この2枚はメイデンを語る上で重要な意味を持っているんだ」
25年の月日を経た現在でも、Blaze の中に巣食う仄暗い感情は拭い去れてはいないようです。それでも、Blaze があのバンドにいた意味はきっとありました。たしかに、”X-Factor” はアルバムの暗い荘厳と Blaze の不安定な音程がミスマッチの感はありましたが、”Virtual Ⅺ” のよりキャッチーでカラフルな音使いは彼のガッツやエナジーと調和を見せ始めていましたし、Steve Harris の奮戦も相俟って現在の大作化した “エピック・メイデン” への礎を築いたようにも思えます。実際、今 “Virtual Ⅺ” を聴けばメイデンのプログサイドとキャッチーサイドが完璧に交わった快作以外の感想が出てきませんし、仮に Bruce が歌っていたとしたら壮大になりすぎて別物の作品となっていたはずです。
「俺のファンが落ち込んでいるとしたら、このアルバムは彼らに力を与えるものでなければならない。俺がメタルを続けるため自分自身に言い聞かせていることの一部をファンに伝えたかった。もし君が弱っていても、強くなって戻ってこられる。もし君が壊れてしまっても、治すことはできる。もし君が他の人と違っていても、決して一人ではないんだよ」
あれから四半世紀。Blaze Bayley はただひたすらその人生を、ピュア・メタルとファンのために捧げ続けてきました。そんな英国のメタル侍の姿はある意味、Blaze にとっての恩返しでもあります。批判を浴びても決して自分を無下に扱わなかった IRON MAIDEN への恩返し。苦しい時も自分を信じてサポートを続けてくれたファンへの恩返し。そうして Blaze は、このコロナ禍で苦悶の時を過ごすファンのために最大の恩返しとなる “War Within Me” を贈りました。
「”War Within Me” の制作を始めたとき、俺たちは興奮と自由を感じたんだ。10曲ができあがった。10曲が互いに関連している必要はなかったけれど、残忍で力強く、真実を示していて、俺たちが作れる最高の曲でなければならなかった。そして楽曲のアレンジは、それぞれのストーリーに忠実なものでなければならなかった。妥協なく、勇気と誠実さを示さなければならなかった」
Blaze Bayley が IRON MAIDEN から巣立って25年。その歩みの結晶こそ “War Within Me”。内なる葛藤を乗り越えた侍の逆襲には、メタルのすべてが詰まっています。Blaze にとって作曲のパートナーであり卓越したギタリストでもある Chris Appleton との出会いは、さながらそのエンジンにハイオクとナイトロを搭載したようなものでした。ACCEPT のように勇壮で、IRON MAIDEN のように知的で、MEGADETH のようにテクニカルで、MOTORHEAD のように粗暴。これほどメタルらしいメタルをしたためるアーティストが今日どれほど存在するでしょうか。それにしても素晴らしいギタープレイヤーですね。
インタビュー中では Tim “Ripper” Owens に向けたシンパシーについて言及していますが、もしかすると、Blaze Bayley にとって目指すべきは Udo Dirkschneider なのかもしれませんね。特異すぎるその声、勇壮を体現したかのような容姿、そして時に本家を凌ぐような凄まじい楽曲とパフォーマンス。さらに、ウィリアム・ブラックのSFトリロジーにしても、チューリング、テスラ、ホーキンスの科学者をテーマとした組曲にしても、さながら “Aces High” のような303部隊の攻防にしても、Blaze Bayley は何よりメタルのロマンを誰よりも深く理解しています。インタビューでは Blaze の、意外なほどの知への探究心を感じられるでしょう。
18歳のころ、清掃の夜勤をこなしながらホテルで “The Number of the Beast” を聴いていた少年は夢を叶え、今度は叶えさせてくれたファンのためにメタル道を突き進んでいきます。今回、弊誌では Blaze Bayley にインタビューを行うことができました。「実は、彼らが俺を選んだことにとても驚いたんだ。彼らが電話をかけてきて、俺が選ばれたと言ったんだけど、あの時俺はショックを受けたんだ。嬉しいけど、ショックだった」 どうぞ!!

BLAZE BAYLEY “WAR WITHIN ME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JAZZ SABBATH : JAZZ SABBATH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MILTON KEANES (ADAM WAKEMAN) OF JAZZ SABBATH !!

“They Basically Made It Simpler, So Anyone With a Guitar And Half a Brain Could Play It. Yes It Appealed To The Masses, But Generally I Like To Think My Original Version Was More Intellectual.”

DISC REVIEW “JAZZ SABBATH”

1968年、バーミンガムの4人の青年、Tony Iommi, Bill Ward, Geezer Butler, Ozzy Osbourne が結成した BLACK SABBATH はヘヴィーメタル始まりの地として絶対的な信頼を得てきました。ただし、世界はその認識を覆すべきなのかも知れません。なぜなら、彼らの楽曲は完全なる “盗品” だったのですから。
60年代から70年代初頭にかけて、英国ジャズの新たな波を牽引していた JAZZ SABBATH。リーダーの凄腕ピアニスト Milton Keanes は将来を嘱望されていましたが、心臓の病で倒れ入院を余儀なくされてしまいます。
おかげで1970年にリリースを予定していたデビュー作の発売は延期となり、退院した Milton はまさかの事態に愕然とします。なんと BLACK SABBATH という見ず知らずのバンドが、彼の楽曲をヘヴィーメタルの雛形にアレンジして世に出してしまっていたのです。
「ちょうど入院していて、退院したら何が起こったのか全てを理解したよ。もちろん激怒したね。だけど真実を語る僕の言葉には誰も耳を傾けなかったし、信じてもくれなかった。」
Milton の怒りはもっともでしょう。その事件によって彼は以後50年間も辛酸を舐め続けることとなったのですから。
ただし、遂に真実を伝えるチャンスが巡ってきました。紛失していた JAZZ SABBATH のマスターテープが現在になって奇跡的に発見されたのです!!
「信頼できるアーティストたちを集め、このバンドを再開し、真実を伝えるのにこれほど長くかかってしまった。」
それでも魅力的な JAZZ SABBATH の音楽が、時の狭間へと埋もれずに済んだ事実は僥倖でした。世界中で何百万もの人々が崇拝しているヘヴィーメタルの教祖が、実際には音楽的なシャルラタンにすぎず、入院した寝たきりの天才から音楽を盗んだことの確かな証としても。
「彼らは基本的に僕の楽曲をよりシンプルにしていたね。だからギタープレイヤーなら誰でも、脳みその半分でプレイすることができたね。まあ、だからこそ大衆にアピールしたんだろうな。だけど、僕は自分のオリジナルバージョンの方がより知的だったと考えているよ。」
実際、JAZZ SABBATH のイービルなジャズは決して脳みそ半分で演奏可能なほどシンプルではありません。ウォーキングベースにピアノのインプロヴァイズ、4ビートのドラム。60年代のビバップスタイルが JAZZ SABBATH の基本です。
“Children of the Grave”, “Evil Woman” のようにドゥーミーな原曲に近いものもあれば、もとい BLACK SABBATH がわりと忠実にコピーを果たしたような楽曲もあれば、”Iron Man” のように突拍子も無いエアリーなアレンジで後のメタルへの移行が信じがたいような楽曲も存在します。
何より、名曲 “Changes” の神々しきピアノの調べ、コードの魔法は、いつ何時誰が演奏をしたとしても圧倒的な陶酔感と得も言われぬノスタルジアを運んでくれるのです。
今回弊誌では、このクソ下らない架空の物語を生み出した Milton Keanes こと Adam Wakeman にインタビューを行うことができました。
「僕が幼い時…いやゴメン、Adam が幼い時…というかきっと彼は父の影を少なからず追っていたと思うんだよね。だけど自分の足で立ち、自らの道を歩み出すときっと父に対して誇りと賞賛の気持ちしかなくなるはずなんだ。」BLACK SABBATH, Ozzy Osbourne との共演、さらに父はあの YES の心臓 Rick Wakeman です。どうぞ!!

JAZZ SABBATH “JAZZ SABBATH” : 66,6/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DIAMOND HEAD : THE COFFIN TRAIN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRIAN TATLER OF DIAMOND HEAD !!

“Once I Had Heard Some Of The Other NWOBHM I Usually Thought We Were Better. We Compared Ourselves To The Biggest Rock Bands In The World Not Just To The Bands In This New Movement. Even Now I Try To Write a ‘Great’ Song.”

DISC REVIEW “THE COFFIN TRAIN”

「今でも俺は “偉大な” 楽曲を書こうとしている。過去の焼き直しを行わず、ダイナミズムをアレンジに持ち込もうとしているんだ。」
来年、自主制作のデビューアルバム “Lightning to the Nations” リリース40周年を迎える NWOBHM レジェンド DIAMOND HEAD は、ほぼ半世紀の活動を経てもその創造性、野心、チャレンジングスピリットに陰りを見せず進化を続ける稀有なるバンドです。
70年代後半、世界を支配していたパンク/ニューウェーブへのカウンターとして勃興した NWOBHM。しかし、”オールドウェーブ” として追いやられていたハードロック/メタルの圧倒的な逆襲には、振り返ると “典型的” なメタルサウンドを掲げるバンドは少なく、重金属のユニークなおもちゃ箱の様相を呈していたようにも思えます。
IRON MAIDEN のプログレッシブな感性、DEF LEPPARD のメジャーなセンス、ANGEL WITCH, WITCHFINDER GENERAL のドゥームな息吹、そしてエクストリームミュージックの雛形となった偉大なる VENOM。ムーブメントに兆したメルティングポットの理念は、今日のモダンメタルの地平まで受け継がれています。
あの Steve Harris をして “Next Zeppelin” と言わしめた DIAMOND HEAD の才能は、新たな波においても抜群の光芒と独自性を放っていました。Lars Ulrich も認める “スラッシュのオリジネーター” Brian Tatler が生み出すヘヴィーなリフの数々は 「俺自身はプログバンドの大ファンだった」 と語る通り BUDGIE のごとく見事に屈折し、Sean Harris のオジーが ZEP をソウルフルに歌ったような不思議な歌唱と不思議にマッチすることで、メタル本来のミステリアスでダークなカタルシスを創生していたのです。
ブームの終焉と共に消えてしまったバンドは、METALLICA によるクールなカバーと Dave Mustaine の助力により復活を遂げます。オリジナルメンバーは Brian のみとなってしまいましたが、ポジティブに新たな血を取り入れ最高傑作とも言える “The Coffin Train” を2019年に完成へと導きました。
バンドのトレードマークであるエキサイティングな暴走特急 “Belly of the Beast” で発車する “柩列車” はしかしタイトルトラック “The Coffin Train” でその色を変えます。
「Ras のおかげで DIAMOND HEAD は新たな地平を拡大して、よりモダンなサウンドを得ることができたんだ。この作品は、言ってみれば21世紀のための DIAMOND HEAD さ。」
そう、Brian が語るようにこれは21世紀の NWOBHM そのものです。デンマークに生まれロンドンを拠点とする加入2作目のシンガー Rasmus Bom Andersen の類稀なる才能と Brian のプログレッシブな理想はここで奇想天外に噛み合いました。
ダークでムーディー、そして重くプログレッシブな曲調は、Ras の Chris Cornell を想起させる卓越した歌唱を導き絶大なるエモーションを創出します。実際、Ras が披露するレンジの広さと豊かな声量、込められた感情の素晴らしさ、さらにコンポーザー&プロデューサーとしての高い技量は Chris の正当後継者として完璧な資質を備えていますね。
「俺はこういった、70年代のクラッシックロックにインスピレーションを得たエピックを愛しているし、DIAMOND HEAD がデビュー以来やり続けてきたことでもあるね。俺は “Kashmir”, “Child in Time”, “Victim of Changes”, “Xanadu”, “Watcher of the Skies” といったエピックを聴いて育ったんだから。」
事実、”The Coffin Train” はエピックの宝庫です。オーケストレーションを施した “The Sleeper”、”Until We Burn” のフックに満ちた英国のドラマ性、叙情性は筆舌に尽し難く、その陰影のダンスは Brian が楽曲に最も求めるダイナミズムを濃密に映し出しているのです。
さらに、オリエンタルな “Shade of Black”, グランジーな “Serrated Love” では、オルタナティブやインディーまで新鋭のサウンドもしっかり受け止める Brian の包容力と、瑞々しい感性で SOUNDGARDEN, Chris を愛する Ras のモダンな感覚が完璧に融合し、NWOBHM のユニークな精神を現代へと昇華することに成功しています。
偉大なバンドの偉大なレコード。今回弊誌では、伝説 Brian Tatler にインタビューを行うことが出来ました。「NWOBHM は DIAMOND HEAD にとって便利なムーブメントだった。当時他の NWOBHM バンドを聴くと、俺は大抵俺らの方が良いなと思っていた。と言うよりも、あの新たなムーブメントの中にいるバンドより、世界でもビッグなバンドと比肩していると考えていたんだよな。」 どうぞ!!

DIAMOND HEAD “THE COFFIN TRAIN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SPIRIT ADRIFT : DIVIDED BY DARKNESS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NATE GARRETT OF SPIRIT ADRIFT !!

“There Is Nothing New Under The Sun. Pretty Much Everything In Rock Music Has Already Been Done. BUT I’m Providing My Own Interpretation Of The Things That I Love, So In That Way It Is New!”

DISC REVIEW “DIVIDED BY DARKNESS”

「SPIRIT ADRIFT は僕が音楽を書いている。GATECREEPER の音楽を書いているのは Chase と Eric だよ。つまり、僕が SPIRIT ADRIFT を運営し、Chase が GATECREEPER を運営しているんだ。」
2015年から、Nate Garrett は GATECREEPER と SPIRIT ADRIFT、二隻の船に乗船しています。そして、GATECREEPER がデスメタルの新たな地平を目的地とするのに対して、SPIRIT ADRIFT は Nate のカタルシス、すなわち、培った音楽的背景、溢れる感情、現代社会への想い、自らの成長、全てに舵を切っているのです。
「政府やメディアは僕ら全員にくだらないことで互いに争わせようとしているんだ。真の問題や崩壊したシステムから目を逸らさせるためにね。だから僕たちはヘイトや恐れ、分断を与えられている訳さ。”Divided By Darkness” はそういった策謀を、愛、知識、結愛、しかし必要ならば暴力的な革命で克服するストーリーなのさ。」
闇に分断される世界の分水嶺 “Divided By Darkness” に光明というコントラストを与えたのは、Nate 自らの内なる進化でした。現代社会の悪習、悪癖から距離を置き達成された4年間のソブライエティー、しらふ状態は Nate の自信と創造力を活性化し、皮肉にも近年世界を覆う不信感がテーマのレコードに光を注ぐ結果となったのです。
「ドゥームはいつも僕の血管に存在するよ。」総帥 BLACK SABBATH を筆頭に、SAINT VITUS, TROUBLE, PENTAGRAM, そして同郷ニューオリンズの誇り CROWBER まで、禍々しくも鈍重なドゥームの遺伝子は SPIRIT ADRIFT の根幹にして “Divided By Darkness” の文字通りダークサイドを司ります。
一方で、アリーナメタルの高揚感、メロディックメタルの旋律美、そしてプログロックの知性はアルバムの “愛、知識、結愛” を象徴しているのです。
「もはや新たに白日の下に晒されることはないよ。ロック音楽の本当に大部分はもう成されてしまっているからね。だけど僕は、自身の解釈を愛する音楽に加えているからね。だからある意味では新しいと言えるんだ!」
そう、Nate が SPIRIT ADRIFT において追求し、そのミステリアスな音の葉を斬新たらしめるものはクロスオーバーの個性と美学です。沈鬱で陰気な “Abyss” “深淵” に端を発し、Ozzy Osbourn のアリーナメタルや Tony Martin 時代の様式美サバスをイメージさせる “Angel” を呼び込む “Angel & Abyss” のコントラストには、Nate が解釈するロックの光と影が如実に投影されています。
それはロックやメタルに残された仄かな可能性なのかもしれません。賛美歌にも似た “Living Light” の荘厳は人生を照らす煌めき。さらにアルバムを締めくくるエピック “The Way of Return” では、BLACK SABBATH と PINK FLOYD, CROWBER と TANGERINE DREAM, そして MEGADETH と Roky Erickson といった、禁断でしかし魅惑の異種族間の交配が Nate の “パーソナリティーやスタイル” を基盤として行われ、”死んだ” と謳われるロックの先行きを灯台のような暖かい光で照らしているようにも思えるのです。
今回弊誌では、Nate Garrett にインタビューを行うことが出来ました。「僕は、過去に利用されてきた音楽の要素を取り入れ、それらを今までにない個性的な方法で組み合わせることによって、ユニークな何かが出来上がると感じているんだ。」その航路はきっと HAUNT や KHEMMIS とも交わるはずです。どうぞ!!

SPIRIT ADRIFT “DIVIDED BY DARKNESS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BAND-MAID : WORLD DOMINATION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KANAMI OF BAND-MAID !!

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Welcome Home, Master & Princess. Band-Maid Are Back With Their Second Full Length Record “World Domination”. Literally, They Are Ready For World Domination!

DISC REVIEW “WORLD DOMINATION”

「お帰りなさいませ、ご主人様お嬢さま!」国内、海外で数多の “お給仕” を行い格段の進化を遂げた日本が誇る戦うメイド集団 BAND-MAID が、世界征服を目論む挑戦状 “WORLD DOMINATION” をリリースしました!!ヴァレンタインに届いた57分の峻烈なる宣告は、ワールドクラスの自信と決意に満ちています。
まさに有言実行。前回のインタビューで 「次の作品も、その次の作品も自分たちの作詞作曲を増やしていきたいと思っています!」 と語ったように、最新作 “WORLD DOMINATION” は3つの共作曲を含め全てがオリジナルの楽曲で占められています。そしてその事実はまさしく本物の証。5人を包むメイド服は貫禄さえ纏い、徹頭徹尾 BAND-MAID 色に染め上げられた純粋なハードロックチューンの数々は、瑞々しさと共に偉大な先人たちのスピリットや美学を濃密に継承しているのです。
アルバムオープナー “I can’t live without you.” の圧倒的な躍動感はもはや事件です。KANAMI の創造する不穏で重厚なリフワークはまさに世界征服の狼煙。斬れ味鋭いリズム隊が牽引するファスト&ソリッドな楽曲は、扇情力を増しながら SAIKI の激情を込めたコーラスで制御不能のカタルシスを浴びせます。
「終わらぬ夢を見たいんだ 終わらぬ夢を見たいんだ 音もなく 堕ちていく それでも まだ… I can’t live without you. 」 同時に MIKU の投げかける熱情の詩は、男女間の恋愛以上にバンドとファンの間に存在する熱い想いを代弁し、渦巻くロックのロマンの中で互いに不可欠な関係であることを宣言しているのでしょう。これ以上ないほどに素晴らしき闘いの幕開けです。
“DOMINATION” や “CLANG” を聴けば、バンドの一体感やテクニックの飛躍的な向上が伝わるはずです。楽曲の複雑なデザインを掻い潜り、小節ごとにパターンを変えながら豊かなバリエーションを生み出す AKANE と MISA のアレンジメントは卓越していて、勿論、ファストなフレーズからアウトラインのスケールまで自由自在の KANAMI を加えバンドの創造性はかつて無いほどに沸騰しています。
“One and only” や “Carry on living” は象徴的ですが、散りばめられたブレイクダウン、四つ打ち、エレクトロニカといった現代的なフックの数々もバンドの広がる可能性を示唆していますね。
何より、根幹にブルーズが存在する BAND-MAID のハードロック道は、WHITESNAKE や MR. BIG の持っていたマジックを濃厚に共有しています。同時に、和の精神、J-POP の豊かなメロディーをも引き継いだ5人の戦士は、先述のコンテンポラリーなメタルやラウドの方法論まで総括しながら唯一無二の “メイド・イン・ジャパン” を築き上げているのです。
アルバム後半、連続して収録されたバラードタイプの心揺さぶる2曲、”Daydreaming”, “anemone” はその証明なのではないでしょうか。相川七瀬、B’z、JUDY AND MARY から延々と連なるジャパニーズロックの血脈はフックに満ちたバラードなしでは語れません。モダンなアレンジとセンス、過去と未来のバランス感覚、そして空間の魔法を駆使した多幸感まで誘って聴かせる “BAND-MAID のハードロック” はここに極まっているのかも知れませんね。
今回弊誌では、KANAMI さんにインタビューを行うことが出来ました。”BAND-MAID が世界征服に向け、先に進む1枚”、ハードロックの Up to Date。どうぞ!!

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BAND-MAID “WORLD DOMINATION” : 9.8/10

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INTERVIEW WITH VILLE LAIHIALA 【S-TOOL, SENTENCED, POISONBLACK】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VILLE LAIHIALA OF S-TOOL !!

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S-TOOL
Photography: Loma Graphics/ Jani Mahkonem
Retouch: Loma Graphics/ Jani Mahkonen

One Of The Best Singer In Finland, Ville Laihiala Talks About His New Band S-Tool, Upcoming Japan Tour, And Legendary Sentenced & Poisonblack !!

ABOUT VILLE LAIHIALA

SENTENCED で慟哭のノーザンメランコリックメタルを創成し、POISONBLACK でもより幅広い枠組みの中でその叙情を追求し続けて来た不世出のシンガー Ville Laihiala が、新たな旅路 S-TOOL で遂に日本へと帰還を果たします!POISONBLACK 以来8年振りとなるレジェンドの降臨は、かつてより硬質なエキサイトメントを誘うはずです。
変革は突然でした。1995年、IN FLAMES の “The Jester Race”、DARK TRANQUILLITY の “The Gallery”、AT THE GATES の “Slaughter of the Soul” と時を同じくして名盤 “Amok” を世に送り出し、メロディックデスメタルの骨格を形成した SENTENCED。しかし彼らがその領域へと留まったのはほんの僅かな期間のみでした。
EP “Love & Death” で変化の予兆を示したバンドは、デスボイスを廃し、新たに独特のダーティーボイスで悲壮を歌い紡ぐ Ville Laihiala を迎え入れる決断を下します。
振り返ってみれば、メインコンポーザー Miika Tenkula の音楽的ビジョンは “Amok” の時点から他のメロデスレジェンドに比べて一際洗練され拡散していたようにも思えます。そしてその天賦の才は Ville という漆黒の翼を得て、フィンランドの凍てつく空寂を縦横無尽に飛び翔ることとなりました。
1998年にリリースされた “Frozen” はバンドの全てが噛み合い理想が形象化したはじめての作品と言えるのかも知れませんね。
“The Suicider” が象徴するように、時にニヒルに、時にストレートに死や自殺をテーマとして扱う SENTENCED。シンプルでしかし印象深いギターメロディーに融和する悲嘆と失意の絶唱は、あまりに直情的に極寒の空気を切り裂きます。
ゴシックなイメージでアグレッシブに突き進む彼らの手法は恐らく HIM や NEGATIVE といった後続にも大きなインスピレーションを与えています。つまり SENTENCED はメロデスと並び二つのジャンルで先駆者の地位にある稀有な存在だと言えるでしょう。
同時に、勿論これはメタルですが Miika のメタルらしいリフワークから距離を置いたそのギターフィロソフィーには、確かにパンクやグランジの奔放なアティテュードも滲んでいますね。
赤盤 “Crimson” の “Killing Me Killing You” で図らずも耽美と絶望があまりに紙一重であることを証明して見せた後、SENTENCED は完璧なる傑作、メランコリーの洪水青盤 “The Cold White Light” を完成させます。やはりこのバンドが生み出すメロディーは衝撃的なまでに胸を抉ります。まさに絶頂期。しかしバンドの終焉も突然でした。
“暗闇で手を差し出すけど誰もいないんだ。なぜただ人生を生きるだけでこんなにも辛いんだろう。僕は絶望に駆られてそれでも必死で手を差し出すんだ。” (No One There)
永眠した SENTENCED についてはあまり触れたがらなかった Ville ですが、「僕はいつだって自分自身を表現したいと思っているし、その必要も感じているよ。自らの “ノイズ” と言葉でね。だから確かに時にはモチベーションを保つのに苦労することはあったんだよ。」 と語ってくれました。
解散後に立ち上げた POISONBLACK では、ギタリスト、コンポーザーとしてもその魅力を存分に発揮した Ville。恐らくは、クリエイティビティーを制限される SENTENCED での活動に限界を感じたのかも知れませんね。
とは言えバンドの墓標、自らを葬る “The Funeral Album” で回帰したラフ&メタリックな音像は “May Today Become The Day” や “Vengence Is Mine” が証明するように、充分に魅力的なものでした。そしてその悲哀を帯びた硬性は、近年の METALLICA や DISTURBED ともシンクロしながら確かに S-TOOL のデビュー作 “Tolerance 0″ にも引き継がれているのです。
今回弊誌では、Ville Laihiala にインタビューを行うことが出来ました。”No Reunion!!” 悲しいことに我々は病で Miika を失いました。当然です。どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MUTOID MAN : WAR MOANS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN BRODSKY OF MUTOID MAN !!

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Converge / Cave In Super Group, Mind-Blowing Behemoth, Mutoid Man Literary Melt Your Mind With Their Newest Record “War Moans” !!

DISC REVIEW “WAR MOANS”

CONVERGE, CAVE IN, ALL PIGS MUST DIE のメンバーが集結した突然変異のスーパーグループ MUTOID MAN が奔放かつ不遜、バッダースな新作 “War Moans” をリリースしました!!キャッチーなロックン・ロールのイメージを獰猛なメタルのアグレッションに投影した、チャーミングかつタイトなレコードはシーンの大いなる期待に応えて余りある一撃となりました。
シリアスで暗色調なアティテュードが枢軸となるコンテンポラリーなメタルシーン。狂気やユーモア、風刺を宿す MUTOID MAN のシアトリカルで本来のメタルらしいコンセプトは、実際異端で新鮮なカウンターとして際立っています。
インタビューにもあるように、”War Moans” は “セクシャリティ”、性行為や性的欲求にフォーカスした作品です。アートワークやタイトルが示すように、性的指向、欲求が日増しに暴走する現代社会を、戦争という極限状態へと投影しある意味戯画化することで、現代の異様さ “倒錯性” “変態性” を浮き彫りにしているのかも知れませんね。実際、バンドは “War Moans” を “Perverted” 変態的なレコードだと断言しています。そしてその柔軟なユーモアはポップセンスに、辛辣な毒気はアグレッションに姿を変えて作品の音楽性に反映されているのです。
文字通りリスナーの心を溶かすアルバムオープナー、”Melt Your Mind” はそういった彼らの意図を十二分に汲み取った楽曲です。キャッチーでスピーディー、ハイパーアクティブなバンドの新たなアンセムは、Brodsky のフックに満ちたギタープレイ、ファジーでラウドな Nick のベース捌き、そして Ben Koller の数学的かつダイナミックなドラミングに牽引されて、空襲にも似た爆発的なエナジーを発します。
加えて、あの VAN HALEN をも想起させるボーカルハーモニー “hoo-ooo” の火力も絶大で、物憂げなメロディーとの相乗効果は無上の中毒性をリスナーへと植え付けて行くのです。
続く”Bone Chain” ではさらにアンニュイなメロディーが中毒性を増し、MOTORHEAD meets QUEENS OF THE STONE AGE とでも形容可能、ドラッグのように危険でオルタナティブなキャッチーネスを創造していますね。
インタビューにもあるように、パンクやハードコアは勿論ですが、特に初期のメタルスピリット、80年代という時代を意識しリスペクトして制作されたアルバムで “Irons in the Fire” からタイトルトラック “War Moans” への流れはまさに作品を象徴しています。
MEGADETH の “Countdown to Extinction” をイメージさせる大仰なイントロ、スラッシュの衝動、テクニカルなシュレッド、インテレクチュアルなリズムワーク、シンガロングを誘うキャッチーなコーラス。”Irons in the Fire” は、かつてメタルが備えていた祝祭的な高揚感を胸いっぱいに浴びつつ、マスマティカルでスペーシーに味付けしたモダンな感覚と共に現代へと叩きつけているのです。
さらに SLAYER の “War Ensemble” に対する極上のオマージュにも思える “War Moans” では、あの時代を象徴するシュレッダー Marty Friedman が、トレードマークのコード感抜群で変拍子を切り裂くリードプレイでバンドの主張を代弁しています。
こういった凶悪な楽曲においても、Brodsky はスクリームや吐き捨てを駆使してあくまでメロディーを追い、勿論あの素晴らしき CAVE IN で確立したスタイルから遠く遊離する訳もありませんが、グロウルは使用していませんね。彼のそのトレードマーク自体も、グロウルが飽和気味な界隈に対する強いアンチテーゼ、風刺となっているように感じました。
とは言え、アルバムは決してオプティミスティックな押しの一辺倒ではありません。ブルージーでスロウ、スラッジーにバンドのシリアスな一面を見せつける “Kiss of Death” はアルバムの裏ハイライトとして作品に妙なる濃淡をもたらし、何よりこのマスターピースを締めくくる衝撃のパワーバラード、ダークな歌姫 Chelsea Wolfe を起用した “Bandages” では、慈愛と憂鬱の相反するエモーションを深々とサウンドに込め、バンドのジャンルスパニングでフレキシブルな才能を絶佳なるコントラストとして見事レコードに落とし込んでいるのです。
作品のプロデューサーでもある CONVERGE の Kurt Ballou が、カオティックに暴走する “Micro Aggression” ではなく、意外にもこの2曲にゲスト参加を果たしていることを付け加えておきましょう。
今回弊誌では、ex-CONVERGE で CAVE IN のマスターマインド Stephen Brodsky にインタビューを行うことが出来ました。マーティーさんによれば、「新しいアルバムはエグい! クッソかっこいい! メタルかロックかパンクか分からないけど、とにかく生々しいヘヴィ・ミュージック! コイツらはホンモノだ、保証付き!!」 だそうですよ。どうぞ!!

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MUTOID MAN “WAR MOANS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ART OF ANARCHY : THE MADNESS】BUMBLEFOOT SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RON “BUMBLEFOOT” THAL !!

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Mega-Super Group, Art Of Anarchy Seek To Reinvent Themselves From 90’s Glory, With New Masterpiece “The Madness” !!

DISC REVIEW “THE MADNESS”

90’s~00’s にかけて人気を博した “オルタナティブメタル” の空気をリフレッシュし、見事現代へと再誕させる US スーパーグループ ART OF ANARCHY が、傑出した2ndアルバム “The Madness” をリリースしました!!極上のコンポジションに5人の個性が溶け合った揺るぎなきロックのメタモルフォーゼは、極限まで多様化したシーンに王道の何たるかを見せつけています。
ART OF ANARCHY は、ギターとドラムスをプレイする双子の Votta 兄弟と、GUNS N’ ROSES で気を吐いていたマエストロ Ron “Bumblefoot” Thal が意気投合し始まったバンドです。そこに、STONE TEMPLE PILOTS や VELVET REVOLVER で活躍した天賦のシンガー Scott Weiland, DISTURBED の切れ味鋭いベースマン John Moyer が加わることで、大きな注目と期待を集めるメガアクトが誕生したのです。バンド全員のレコードセールス(当時)は1億5000万枚と言うのですから、数字の面からも彼らの凄みは伝わるでしょう。
セルフタイトルのデビュー作をリリース後、Weiland はバンドを脱退。アルバムをプロモートするツアーを拒否した彼は結局、人生を通じて苦しんできた薬物との戦いに敗北し、命を落としてしまいました。
バンドは Weiland の後任に CREED の Scott Stapp を指名します。実は2014年には Stapp も薬物問題、さらには路上生活にまで転落するなど負の話題で世間を騒がせましたが、彼は挑戦し困難に打ち勝ちました。そして Weiland と同様、まさに時代の寵児として活躍した Stapp の加入は再度バンドのエンジンに屈強なエナジーを注ぐ結果となったのです。
“The Madness” には、ただスーパーグループという事実以上のケミストリー、そしてメッセージ性が間違いなく存在します。Ron がインタビューで語ってくれた通り、Votta 兄弟のアリーナロック、DISTURBED の鋭利でマスマティカルなリフワーク、CREED の瑞々しく雄大なメロディー、そして Bumblefoot、もしくは “Chinese Democracy” の型破りで独創的なアイデア全ては淀みなく渾融し、濃密なマグマとなって作品を流動します。
オルタナティブが王道へと以降した21世紀初頭のソリッドな空気を DNA に深く刻んだ5人の古兵たちは、しかし同時に時代の推移により”オルタナティブであること” から遂に解放され、その雄弁なコンポジション、華麗なテクニック、そして唯一無二のタレント性を制限なくここに開花させているのです。
また、アルバムタイトル “The Madness” が表象するように、作品にはまさに Stapp が苦しんできた”狂気”がそのまま描かれています。新たなアンセム “1,000 Dgrees” では「僕自身が最悪の敵だ。僕は呪われている。」と当時の地獄を独白し、至上のバラード “Changed Man” では「もう一度チャンスをくれないか?僕は変わったんだ。家に帰る時が来たんだよ。」と最愛の妻に過去の自分との決別を告げます。果たして妻は “With Arms Wide Open” で待っていてくれたのでしょうか?
とにかく、”僕たちはこのアルバムを Scott、そして同じチャレンジに直面する人たちの成功に捧げることとしたんだ” と Ron が語るように、作品はアメリカが抱える大きく暗い闇に対する贖いとして生を受けました。自身の魂を声と詩に宿した Stapp の歌唱には深みとリアルが込められ、その美しく、切なく、雄々しく、そして芳醇なメロディーは懺悔であり赦しであり、希望の灯火でもあるように聞こえます。
アルバムの主役は間違いなく Stapp ですが、Ron のトリッキーでカラフルなギターワークが作品にクリエイティブで類まれなる神通力のようなフックをもたらし続けていることは記して置かなければなりませんね。
指ぬき、フレットレス、ロングスケールなど様々な武器を持つ “Bumblefoot” ですが、インタビューでも語ってくれたように彼は決して楽曲の破壊者ではありません。ソロプロジェクト、ガンズ時代を通して歌ものに強い拘りを持ち、エモーショナルで耳に残りリピートを誘うギターフレーズを追い求めてきた彼の真価は “Somber” のアメジストのように燐光を発するソロパートに集約されているのかもしれませんね。
王道とは何か。彼らの”王道”の先には必ず唯一、アリーナでシンガロングし、拳を振り上げるファンの姿が透けて見えます。彼らにはもはやトレンドを意識する必要などありません。ただ、キャッチーでフックと起伏に満ちたアルバムは、エゴを廃し全てが楽曲とストーリーに捧げられ、世代を超えて愛される魔法を備えた新たな栄光への幕開けであると信じます。
今回弊誌では、Ron “Bumblefoot” Thal にインタビューを行うことが出来ました。余談ですが、再発が決定した彼の2ndアルバム “Hermit” もぜひ併せて聴いていただきたいと思います。変態としてのみ語られがちな彼ですが、FAITH NO MORE や RAGE AGAINST THE MACHINE のインテンスと独特のポップセンス、そしてユニークなギターファンタジーをミックスした極上のコンポジションが炸裂した名作。どうぞ!!

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ART OF ANARCHY “THE MADNESS” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BAND-MAID : JUST BRING IT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KANAMI OF BAND-MAID !!

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Welcome Home, Master & Princess. Are You Ready For The Next Babymetal ?! OK, Just Bring It! Japanese Hard-Rock Maid Girls BAND-MAID Has Just Released Really Cool Debut Full-Length “Just Bring It” !!

DISC REVIEW “JUST BRING IT”

ロマン溢れるメイド服に身を包み、タイトな正統派ハードロックサウンドを継承する BAND-MAID が遂に待望のメジャーデビューフルレングス “Just Bring It” をリリースしました!!楽曲の幅を広げ、著しい成長を遂げたメンバーの全てが注ぎこまれた作品は、世界を制圧するに充分なクオリティーを備えています。
Babymetal が日本が生んだ最高の女性メタルアーティストであることは、METALLICA, GUNS’N ROSES との共演、世界の熱狂ぶりをみれば明らかでしょう。しかし同時に彼女たちを認めない、アンチの存在も少なからず目に付く事も確かです。
先日、海外大手”トゥルーメタル”系レーベルのパブリッシャーと話す機会があったのですが、彼は Babymetal について「アイコンとして華があり、バンドも素晴らしいね。だけど彼女たちは自ら楽曲を作らないし、演奏もしない。さらにどれだけメタルを愛しているのかについても疑問だね。」 と語っていました。おそらくこれが Babymetal アンチの総意だと思います。
弊誌は別段”トゥルーメタルマガジン”と言う訳でもありませんので、その高い楽曲のクオリティー、kawaii×metal の新たなアプローチ、モダンな視点、ハイレベルなパフォーマンス、そして何より世界が認めてしまっているという事実から、結果が全てを語るというスタンスです。しかし、確かに演奏も作曲も出来る新たなロックンロールヒロインが日本から生まれたとしたら、この日出づる国の音楽ファンはさらに誇れるものが増えるはずですね。
BAND-MAID はまさにその Next-Babymetal の可能性を大いに秘めたアーティストだと思います。実際、彼女たちがまずブレイクを果たしたのは海外のラジオ局からでした。Facebook で150万ものフォロワーを持つ巨大ラジオ局 “Jrock Radio” が “Thrill” の PV を紹介するやいなや、BAND-MAID の名は一気に海外へ広まることとなりました。”Thrill” の Youtube 再生回数は 400万に迫る勢い。さらに昨年は国内と併せて本格的なワールドツアーも成功させており、”結果”をみれば間違いなくワールドクラスのアーティストへと成長しつつあると言えるでしょう。
では、BAND-MAID はそのインパクトだけで注目を浴びたのでしょうか?答えは否です。確かにライブを「お給仕」と言い、ファンを「ご主人様」「お嬢様」と呼ぶ5人の可愛らしいメイドには仄かな出オチ感がフンワリと漂っているかも知れません。しかし、ギャップ萌え極まる硬派な “Just Bring It” を聴けばその実力が本物であることが伝わるでしょう。
Just Bring It…「かかってこいや!」と名付けられた自信に満ちた作品は、13曲中9曲がメンバーの手によるもので、その事実は”バンド” BAND-MAID としての強みを存分にアピールしています。
アルバムを通して、とにかくギターリフがクール。トラディショナルとモダンを行き来するツインギターはその確かなテクニックと共にフックとメロディー、アグレッションを提供し続けます。そこに緩急織り交ぜたカラフルなツインボーカル、骨太で強烈なスラップまでお見舞いするベースにダイナミックなドラムスが加われば、彼女たちの可能性が無限に広がっていることを感じるはずです。
“CROSS” は BAND-MAID の今を象徴するような楽曲です。彼女たちがすんなりと海外で受け入れられた理由の一つはそのブルーステイストかもしれません。アルバムを通して活躍するブルーノートの響きは特にUSのリスナーにとっては非常に馴染み深いもの。しかし BAND-MAID はしっかりと J-Rock 由来のキャッチーさやギミックを同時に織り込んでオリジナリティーを創出しています。見事なフックを生む転調とシンコペーション、ブルージーなギターリフ、耳馴染みのよいメロディー、シンガロングパート。”CROSS” は端的に BAND-MAID の長所を物語っていますね。
加えて、マスロックテイストさえ感じさせるプログレッシブな “Awkward” は “CROSS” と対極に存在し新鮮な驚きをリスナーに与えます。ストリングを効果的に使用したこの感動的なピースは BAND-MAID の未来をチャレンジングスピリットと共に明るく照らしているように思えますね。
おそらく日本のロックファンが思うよりも、海外の音楽シーンは現在 EDM, hiphop に席巻されています。ピュアなハードロック、メタルを渇望する”トゥルーファッキンメタラー”の逆襲が BAND-MAID に託されていることは間違いないでしょう。
今回弊誌では、ギタリストでメインコンポーザー KANAMI さんにインタビューを行うことが出来ました。Mr. Big を想起させるスリリングな “モラトリアム” や “YOLO” の流暢なリードプレイを聴けば彼女の驚異的な才能が分かるはずです。Welcome Home, Master & Princess! どうぞ!!

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BAND-MAID “JUST BRING IT” : 9.6/10

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