EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VIKRAM SHANKAR OF LUX TERMINUS !!
“Trying To Make Heavy Music With No Guitars Is a Creative Challenge That Requires Creative Solutions, Which Is a Lot Of Fun.”
DISC REVIEW “CINDER”
「芸術的に言えば、ギターがないという制約があることはとても充実したことだと思う。実は僕はギターの音が絶対的に好きだし、好きなミュージシャンの多くはギタリストだ。それでも、ギターを排除することで、キーボードが “音の混沌” に埋もれてしまうことがなく、繊細さや美味しさを堪能する余地が生まれる」
LUX TERMINUS とは、ラテン語で “終わりの先の光” を意味します。そう、このバンドは過去のプログのトンネルの先にある光に違いありません。バンドの中心人物は Vikram Shankar。そう、2010年代後半、シーンに彗星のごとく現れた若き鍵盤の魔法使いこそプログ世界の希望。
あの歌聖 Tom Englund との美しすぎるデュオ SILENT SKIES でネットから現実へと飛び出した Vikram は、すぐにその優れたテクニック、音楽教育を存分に受けた知性、研ぎ澄まされたメロディの感覚、音楽を俯瞰して見る眼差しが認められ、REDEMPTION や PAIN OF SALVATION といったこの世界の鬼才にして重鎮にとってなくてはならない存在となりました。
彼がプログ世界の希望である理由。それは彼の音楽に対する優れた才能、真摯な態度だけではなく、鍵盤をその武器に選んでいるから。かつて、プログやメタル世界の華のひとつだったキーボード・ヒーローは今や絶滅寸前。しかし、その繊細さや多彩な色彩は決して滅びてはならない天然記念物。Vikram はこの LUX TERMINUS で、PLINI, INTERVALS, David Maxim Micic といった愛するギターヒーローの哲学をキーボードで再現して独自に進化させ、ギター全盛のシーンに選択肢を増やそうとしているのです。
「ギターがない状態でヘヴィな音楽を作ろうとするのは、創造的な解決策を必要とするクリエイティブな挑戦であり、それはとても楽しいことなんだ。LUX TERMINUS は、おそらく SILENT SKIES と最も共通点があると思う。主に、シネマティックな色合いという意味でね。僕たちは、サウンド・デザインを織り上げていくようなアプローチや、深く思慮深い雰囲気を作り出すための音の実験が大好きだからね」
ギターレスのDjent。LUX TERMINUS の原点はそこにあります。重量感マシマシ、ギターありきのDjentにキーボードで切り込むその心意気こそプログレッシブ。Vikram はアルバム “Cinder” の中で、そのミスマッチに様々な創造的ソリューションで挑んでいきます。
もちろん、ARCH ECHO のようなキラキラの Fu-Djent も一つの解決法でしょう。幾重にも重なった光のキーボードと複雑重厚なリズムが織りなすディズニー・ランドは完璧なエンターテイメントとなり得ます。SLEEP TOKEN のポップな電子メタルも、DIRTY LOOPS のファンキーなリズムも彼らは飲み込み咀嚼します。しかし Vikram の企みはそこだけにとどまりません。
「特に久石譲のジブリ映画の音楽には大きな影響を受けているよ!また、僕は尺八を持っていて、レベルの高い尺八の演奏に心から魅了されているんだ。そうした名人たちには遠く及ばないけど、それでも “Neon Rain” (三味線や箏の演奏もある)のバックで尺八を僕が吹いているんだ。他にも、驚くべきソースがあってね。ポケモン・アルセウスのサウンドトラックに収録されている、特にジュビレシティーのテーマとかね。僕は日本の “音楽言語” がとても好きなんだ!」
Vikram の生み出す音楽はよりコズミックで、映画的で、未来的。Espera という優れたボーカル集団と紡ぐ “Jupitor” 三部作で私たちはインターステラーやスターフィールドといった壮大な映画やゲームの世界へと旅立ち、かの Ross Jennings と Jorgen Munkby を起用した “Catalyst” では CHICAGO や THE POLILE が映画やドラマの主題歌に使われていたあのアーバンでポップな80年代を再訪します。
そして何より Vikram がこのアルバムで大切にしたのが日本とのつながりでした。PAIN OF SALVATION の来日公演で愛する日本を訪れ、様々な都市を訪問した彼はこの国の人や風景の優美に感銘を受けます。尺八や三味線、琴を使用した “Neon Rain” はまさにその感銘が投影された楽曲。そうしてアルバムを締めくくる “Natsukasii” で Vikram はジブリの世界観とメタルを見事に融合させていきます。ノスタルジーと情景、壮観。彼が LUX TERMINUS で目指したものは、素晴らしくここに投影され、確かに鍵盤でなければ実現できない未曾有の景色で、未来へのプログレッシブな窓でした。
今回弊誌では、Vikram Shankar にインタビューを行うことができました。「最近のプログレッシブ・ミュージックには、メタルだけでなくフュージョンやジャズの文脈で活躍する優れたキーボーディストがたくさんいると思うけどね。とはいえ、キーボードの “旗手” のような存在になって、キーボードでどれだけ多彩で奥深い表現が可能かをアピールするできるとしたら、それはとてもやりがいのあることだと思うよ」 どうぞ!!
LUX TERMINUS “CINDER” : 10/10
INTERVIEW WITH VIKRAM SHANKAR
Q1: I am a big fan of Silent Skies, the beautiful tapestry you and Tom Englund have woven together, so I was really looking forward to hearing that you were starting a new band! And indeed, “Cinder” is a wonderful record! First of all, can you tell us how Lux Terminus came together?
【VIKRAM】: Thank you so much! Lux Terminus was formed in 2016, with two of my friends from my home town. These two musicians (Brian Craft – bass guitar and Matthew Kerschner – drums), invited me into my first ‘serious’ band when I was in high school, and so I have played with them for about half my life at this point. We released one album in 2018, and then a lot of time passed while I worked on albums by Silent Skies, Redemption, tours with Pain of Salvation, and more. Now, we are officially ready to conquer the world!
Q1: 私は、あなたと Tom Englund が織り成す美しいタペストリー、SILENT SKIES の大ファンなので、あなたが新しいバンドを始めると聞いてとても楽しみにしていました!そして実際、”Cinder” は素晴らしいアルバムです!
まず最初に、LUX TERMINUS がどのようにして結成されたのか教えていただけますか?
【VIKRAM】: ありがとう!LUX TERMINUS は2016年に僕の故郷の友人2人と結成したんだ。この2人のミュージシャン(Brian Craft – ベースギター、Matthew Kerschner- ドラム)は、僕が高校生の時に初めて “本格的な” バンドへと誘ってくれたんだよ。だから、今の時点で人生の半分くらいは彼らと一緒に演奏していることになるね。
2018年にアルバムを1枚リリースし、その後、SILENT SKIES, REDEMPTION, PAIN OF SALVATION とのツアーやアルバム制作に携わりながら、多くの時間が過ぎていった。だけど今、正式に世界を征服する準備が整ったんだ!
Q2: I think it takes a lot of courage to do guitarless prog metal in an era when guitars are at their peak in the metal world. Why did you insist on a guitarless trio?
【VIKRAM】: There are a few reasons for this. Artistically speaking, I find it very fulfilling to have the constraint of no guitar. I absolutely adore the sound of guitar, and many of my favorite musicians are guitarists, but by removing the guitars, the keyboards have room to indulge in subtleties and delicacies that would otherwise be lost in the “sonic chaos.” Trying to make heavy music with no guitars is a creative challenge that requires creative solutions, which is a lot of fun. Additionally, playing in smaller bands and local venues over the years, guitars very often were the “weak point” from a sound mix/live perspective, and so removing guitars allows for a lot of clarity that allows the audience to connect with everything we do without knowing our music beforehand.
Q2: ギターが全盛のメタル世界でギターレスのプログ・メタルをやるのはとても勇気のいることだと思います。なぜギターレスのトリオにこだわったのですか?
【VIKRAM】: 理由はいくつかある。芸術的に言えば、ギターがないという制約があることはとても充実したことだと思う。実は僕はギターの音が絶対的に好きだし、好きなミュージシャンの多くはギタリストだ。それでも、ギターを排除することで、キーボードが “音の混沌” に埋もれてしまうことがなく、繊細さや美味しさを堪能する余地が生まれる。
つまり、ギターがない状態でヘヴィな音楽を作ろうとするのは、創造的な解決策を必要とするクリエイティブな挑戦であり、それはとても楽しいことなんだよ。さらに、長年にわたって小規模なバンドや地元の会場で演奏していると、サウンド・ミックスやライブの観点からギターが “弱点” になることが非常に多かった。だから、ギターを取り除くことで、観客が事前に僕たちの音楽を知らなくても、僕たちのやること全てとつながることができるような明瞭さが得られると思うんだ。
Q3: There used to be many keyboard heroes like Keith Emerson and Jon Lord in the metal and prog world, but now they are few and far between. That’s why your presence is so valuable. Why don’t keyboard heroes grow up now a days?
【VIKRAM】: I think that there are many outstanding keyboardists working in progressive music these days, in metal but also in a more fusion/jazz context, but certainly it is very rewarding to be a sort of “standard bearer” for keyboards, and showcase how much versatility and depth of expression is possible with the keyboard.
Q3: かつては Keith Emerson や Jon Lord のようなキーボード・ヒーローがメタルやプログの世界には多く存在しましたが、今ではほとんどいなくなってしまいました。だからこそ、あなたの存在はとても貴重ですよ!なぜ今は、ほとんどキーボード・ヒーローが育たないのだと思いますか?
【VIKRAM】: 最近のプログレッシブ・ミュージックには、メタルだけでなくフュージョンやジャズの文脈で活躍する優れたキーボーディストがたくさんいると思うけどね。とはいえ、キーボードの “旗手” のような存在になって、キーボードでどれだけ多彩で奥深い表現が可能かをアピールするできるとしたら、それはとてもやりがいのあることだと思うよ 。
Q4: The album also features great vocalists such as Ross Jennings and Espera. But you didn’t ask Tom Englund, who has worked with you on Silent Skies and Redemption, to participate?
【VIKRAM】: Tom is one of my closest friends, and also a truly world-class vocalist whose singing has profoundly shaped my life over the years. So I would love to work with him on Lux Terminus music! Perhaps on a future album!
Q4: このアルバムには、Ross Jennings や Espera といった素晴らしいヴォーカリストたちも参加しています。しかし、SILENT SKIES や REDEMPTION で共演する Tom Englund には参加を依頼しなかったのですか?
【VIKRAM】: Tom は僕の最も親しい友人の一人であり、また彼の歌唱は長年にわたって僕の人生を深く形作ってきた、まさに世界的なヴォーカリストでもある。だからもちろん、LUX TERMINUS の音楽で彼と一緒に仕事がしたいよ!おそらく将来のアルバムでね!
Q5: On the album, we can hear an unprecedented amount of atmospheric, cosmic, almost gem-like metal! How do you think Lux Terminus differs from bands like Redemption, Silent Skies and Pain of Salvation that you are involved with?
【VIKRAM】: Lux Terminus perhaps has the most in common with Silent Skies, of those artists mentioned, chiefly because of our emphasis on cinematic colors. We love textural approaches to sound design, and experimenting with sounds to create deep and thoughtful atmospheres. Of course Lux Terminus is a good deal heavier and more technical, and we also tend to celebrate joy and positive emotions in music more than any of those artists mentioned. For me emotion is vital and the defining characteristic of my music. Lux Terminus allows me to express positivity and light and excitement in progressive music, and this is very important for me because I believe in striving to be happy, even when I may not feel it due to my own internal struggles with mental health and depression!
Q5: このアルバムでは、かつてないほどのアトモスフェリックでコズミックな、まるで宝石のようなメタルを聴くことができます!LUX TERMINUS は、あなたが関わっている REDEMPTION, SILENT SKIES, PAIN OF SALVATION といったバンドとはどう異なりますか?
【VIKRAM】: LUX TERMINUS は、おそらく SILENT SKIES と最も共通点があると思う。主に、シネマティックな色合いという意味でね。僕たちは、サウンド・デザインを織り上げていくようなアプローチや、深く思慮深い雰囲気を作り出すための音の実験が大好きだからね。
もちろん、LUX TERMINUS はもっとヘヴィでテクニカルだし、僕が関わっている他のバンド以上に、音楽における喜びやポジティブな感情を讃える傾向がある。僕にとって、感情は不可欠であり、それが僕の音楽の特徴でもある。このバンドでは、プログレッシブ・ミュージックでポジティブさ、明るさ、興奮を表現することができる。これは僕にとってとても重要なことなんだ。たとえメンタルヘルスや鬱との内的な闘いのためにそれを感じることができなくても、僕は幸せになろうと努力することを信じているからね!
Q6: You also do music for video games, and there are elements of video game music on this album as well, aren’t there? In fact, do Japanese cultures, like video games, anime, and music, for example, influence you?
【VIKRAM】: Certainly, in particular Joe Hisaishi’s scores for the Ghibli films has been a significant influence on me! Also I own a shakuhachi, and am extremely captivated by high-level shakuhachi playing. I cannot play the instrument anywhere near the great masters, but I do play some shakuhachi in the background of a part of the song “Neon Rain” (which also includes shamisen and koto instrumentation). There is also some influence from some surprising sources – for instance the “Jubilife” theme from Pokemon, especially as it appears on the Arceus soundtrack. I love the “musical language” of Japan very much!
Q6: あなたはビデオゲームの音楽も手がけていますが、このアルバムにもビデオゲーム音楽の要素がありますよね?実際、例えばそうしたビデオゲームやアニメ、音楽といった日本の文化は、あなたに影響を与えていますか?
【VIKRAM】: 確かにね!特に久石譲のジブリ映画の音楽には大きな影響を受けているよ!また、僕は尺八を持っていて、レベルの高い尺八の演奏に心から魅了されているんだ。そうした名人たちには遠く及ばないけど、それでも “Neon Rain” (三味線や箏の演奏もある)のバックで尺八を僕が吹いているんだ。
他にも、驚くべきソースがあってね。ポケモン・アルセウスのサウンドトラックに収録されている、特にジュビレシティーのテーマとかね。僕は日本の “音楽言語” がとても好きなんだ!
Q7: At the same time, there is a sense of Djent, Jazz/Fusion, and Fu-djent-like quality to this album. What’s interesting is that the keyboards take over the guitar-driven Djent music and create a truly unique sound, would you agree?
【VIKRAM】: I think that is a big part of what makes Lux Terminus special. It’s also something that I find extremely fun to do compositionally. Achieving a djent-like quality without a guitar, the instrument that usually defines djent, is a unique challenge!
Q7: 同時に、このアルバムには Djent、Jazz/Fusion、Fu-djent のような感覚もあります。興味深いのは、キーボードがギター主体のDjent音楽を引き継ぎ、実にユニークなサウンドを作り出していることですよ。
【VIKRAM】: それが LUX TERMINUS を特別なものにしている大きな部分だと思う。また、そうやって作曲をするのはとても楽しいことだと思う。通常、Djentを定義する楽器であるギターを使わずに、Djentのようなクオリティを実現するのは、ユニークな挑戦だからね!
Q8: You end the album with a song titled “Natsukashii” in Japanese. Why did you choose this Japanese word, which means nostalgic?
【VIKRAM】: I was reading about some concepts of words from other languages that express ideas that are not as easy to express in English, and “Natsukashii” captivated me immediately. I love the idea of not simply feeling a longing for the past, but rather gratitude for having experienced it – that is a beautiful way to approach the idea of nostalgia. I think it goes along very well with the way that we like to incorporate what might be “nostalgic” musical elements, in particular 80s pop and synth pop sounds.
Q8: アルバムは日本語のタイトルがつけられた “Natsukashii” という曲で幕を閉じます。
【VIKRAM】: 英語で表現するのが簡単ではないアイデアは他の言語にたくさんあって、その話を読んでいて日本語の “なつかしい” という言葉にすぐに心を奪われたんだよね。単純に過去を懐かしむのではなく、それを経験できたことに感謝するという考え方がとても好きでね。僕たちが “ノスタルジック” な音楽要素、特に80年代のポップスやシンセポップのサウンドを取り入れるのが好きなこととも、とても相性がいいと思ったんだ。
FIVE ALBUMS THAT CHANGED VIKRAM’S LIFE!!
What a question! There are so many! Here are five that I know have had a profound impact on my trajectory as a musician from childhood through the present day, roughly in the order that they entered my life: