EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RAVENNA HUNT-HENDRIX OF LITURGY !!
“Life Has Been Unbelievably Better Since My Transition. Unfortunately The Politics Of Gender Are Becoming Increasingly Scary In the United States, But It’s Still Much Better To Be Living Out In The Open.”
DISC REVIEW “93696”
「男性から女性に移行してからの生活は信じられないほど良くなっているわ。 残念ながら、アメリカではジェンダーに対する政治的な圧力はますます恐ろしいものになってきているけど、それでも、オープンに生きている方が私はずっといいんだよ」
ブラック・メタルを哲学する革新者、LITURGYのハンター・ハント・ヘンドリクスは現在、ラヴェンナ・ハント・ヘンドリクスへとその名を変えています。
「私は女性よ。ずっとそうだった。様々な拒絶を恐れて明かせなかったの。私は女性として音楽家、神学者、詩人で、生まれるものは全て女性の心から。同時に男性として生まれたことを否定したくもないのよね」
長い間、女性の心を持つ男性として生きてきたラヴェンナにとって、トランスジェンダーの告白は非常に勇気のいるものでした。周りの目や差別、弾圧といった現実のプレッシャーをはねのけて、それでも彼女がカミング・アウトした理由は、自分の人生を、そして世界をより良くしたいから。彼女の理想とする天国であり想像の未来都市”Haelegen”実現のため、ラヴェンナの音楽は、魂は、いつしか抑圧を受ける少数派の祈りとなったブラック・メタルと共に、もう立ち止まることも、変化を恐れることもありません。
「ブラック・メタルはロックという枠組みとその楽器を使ってクラシックを作るものだと考えていたんだ。 みんながそう思っているわけではないけど、私にとってはそこが大きな魅力だから」
21世紀に入ってから、ブラック・メタルはメタルの多様性と寛容さを象徴するようなジャンルへと成長を遂げてきました。DEAFHEAVENの光、ALCESTの自然、SVALBARDの闘志、VIOLET COLDの願い、KRALLICEの異形、ZEAL&ARDORのルーツなど、ブラック・メタルが探求する世界は、新世紀の20年で膨大な広がりと深みを備えることになったのです。
そうしたブラック・メタルの領域においてラヴェンナは、作曲、芸術、哲学を共有する組織LITURGYを設立します。”トランセンデンタル・ブラック・メタル”、”超越的ブラック・メタル”と呼ばれるようになったLITURGYのアートはまさに超越的で、バンドに備わる審美と多様性を純粋に統合。神学、宗教、宇宙的な愛、終末論、性について探求しながら、息を呑むような壮大さで恍惚感を表現していきます。
ラヴェンナはこの場所でブラック・メタルの暗黒から歩みを進め、管楽器、アンサンブル、グリッチ、オペラ、時には日本の雅楽まで統合した唯一無二の音楽性を追求し、変化を恐れない彼女のポジティブな哲学を体現しています。その知性の煌めきと実験性は、”ヘヴィネスの再定義”につながっていきました。つまりラヴェンナは、”重さ”を神聖なもの、物語や哲学への触媒として使用することにしたのです。その方法論として彼女は、メタルと前衛的なクラシック音楽の間のスペース、危険な境界線を常に探っています。
「”93696″は”Origin of the Alimonies”のようにオペラやクラシックを想起させる緻密な構成だけど、どちらかというとロックのような安定したグルーヴがある。だから、両方のジャンルが持つすべてを提供できるような作品になればいい」
神の実在について瞑想し、LITURGYのメタル・サイドにフォーカスした”H.A.Q.Q.”と、世界の創造と人類の堕落をクラシック/オペラの音楽言語で表現した”Origin of the Alimonies”。そして、謎の数字を冠した本作”93696″は、その2枚のアルバムのまさにハイブリッドにも思える現行LITURGYの表裏一体。驚くべきことに、ハードコア・パンクの衝動まで帯電した2枚組の巨編は、LITURGYの集大成でありながら、未来をも見つめています。
「バンドの一体感が欲しかったのよ。だから、今回はよりライブに近い音で録りたいと思ったの。もともとこのバンドのバック・グラウンドがパンクだったということもあるんだけど、アルバム自体がこうしたライブ感で作られることが最近非常に少なくなってきているからね」
そうしてラヴェンナによる”ヘヴィネスの再定義”はここに一つの完成を見ます。”93696″には、おそらくこれまでのLITURGYに欠けていた最後のピース、”人間味”、バンドらしさが溢れています。ただ実験を繰り返すだけでは、ただメタルとクラシックをかけあわせるだけではたどり着けない境地がここにはあります。逆に言えば、だからこそラヴェンナは今回、ハードコア・パンクの衝動を必要とし、デジタルからあのスティーヴ・アルビニの手によるアナログの録音に戻したのかもしれません。
例えば、タイトル・トラック”93696″は、LITURGYのトレードマークである複雑かつプログレッシブなリズムとは対極にあって、ダイナミクスの揺らぎや反復の美学で神聖と恍惚を表現。レオ・ディドコフスキーの叩き出す千変万化で獰猛なグルーヴは、ティア・ヴィンセント・クラークの轟音ベースへと感染し、ラヴェンナのメロディズムと雄弁なハーモニーを奏でます。”ポスト・アポカリプス”を紡ぐLITURGYのサウンドは、あるいはもう、ブラック・メタルというよりもISISやCULT OF LUNAの指標する”ポスト・メタル”に近い音像と言えるのかもしれませんね。そしてその一体感は、さながら人の”和”こそが人類の未来であることを示しているようにも思えます。
とはいえ、もちろんこれはLITURGYの作品です。緻密で細部まで作り込まれたニュアンス豊かな楽曲と、想像力豊かなリリックには驚きが満ち溢れています。弦楽器、聖歌隊、フルート、ホルン、ベルを用いて崇高さの高みへと舞い上がる前衛的グリッチ・メタリック・クラシック”Djennaration”を筆頭に、あらゆる楽器、あらゆるジャンルから心に響く美しさを抽出するラヴェンナの才能は健在。そうして彼女は、探求の先にある未知なるものへの寛容さと未来への希望を、自らの作品で祝福してみせたのです。表裏一体から三位一体への大きな進歩。さて、人類はラヴェンナとLITURGYが想望する”天国”へとたどり着くことはできるのでしょうか?
「これは終末的なアルバムよ。そのほとんどは2020年に構築されたものだから、あの年に起こったことすべてがこの作品に影響を与えている。でもね、最終的には希望があるの。最近の世界を見ているとありえないことかもしれないけど…人類の歴史に対するポジティブな未来への憧れがね」
Q1: First, in just the past few years we have seen major world-changing events in the form of pandemics and wars. Of course, this new, epic, huge album may have been influenced by the lockdown, but mentally, did those events affect your work?
【RAVENNA】: Yes, the times feel apocalyptic and it is an apocalyptic album. And most of it was constructed during 2020, so everything going on during that year was influencing the project.
Q2: You mentioned that you were aware that your previous work, “Origin of the Alimonies,” was an opera in your mind and that you were working on a video production of it. Did you switch that production to “93696” during the lockdown?
【RAVENNA】: I created a video for Origin of the Alimonies during 2020, which we use for live performances but haven’t released widely yet.
Q2: 前回のインタビューであなたは、前作 “Origin of the Alimonies” は、自分の中ではオペラだと認識していて、それを映像作品として制作しているとおっしゃっていましたね。パンデミックの最中に、その制作を “93696” へと切り替えたのでしょうか?
【RAVENNA】: 2020年の間に “Origin of the Alimonies” の映像を制作し、ライブでは使っているんだけど、まだ広く公開はしていないんだ。
Q3: 93696 is a number derived from the religions of Christianity and Thelema, right? Since many Japanese are non-religious, can you tell us why this number is so special?
【RAVENNA】: I’m not completely sure what the meaning of the number is. It just came to me. But it has something to do with the union of creative self-realization with universal compassion.
Q4: I understand “Halegen” to be your interpretation of heaven in your ideal future city. Is this “93696” the story of a new world sprouting from the end of the world?
【RAVENNA】: Yes, it’s a yearning for a positive outcome for human history, as unlikely as they may be.
Q5: What is particularly striking about this album is the increased band-like quality. Of course, you composed all the music, but I can feel a live impulse and a sense of unity as a band more than ever before. I hear that the hardcore-punk influence is stronger than ever. Is that the reason?
【RAVENNA】: Yes, I wanted to make a recording that sounded more like our live performances do. In part because the band’s background has always been punk, but also because it’s becoming so much less common for albums to be made in such a live way.
Q6: Black metal continues to expand philosophically, spiritually and musically, and this album seems to embody such a situation, doesn’t it? Did you see this much potential in the black metal you listened to as a child?
【RAVENNA】: Kind of, yes. I’ve always seen black metal as a way to make classical music using rock instrument. Not everyone sees it that way, but that’s a big part of the attraction to me.
Q7: “Origin” approaches Liturgy from the classical side, while “H.A.Q.Q.” approaches it from the metal side. In a way, is “93696” on the border between the two, a dangerous but ideal heavy music for you?
【RAVENNA】: Yes, exactly. 93696 is as meticulous a composition as Origin of the Alimonies but it has more of a steady groove like rock music, so the hope is for it to provide everything both genres have to offer.
【RAVENNA】: うん、まさにその通りね。”93696″は”Origin of the Alimonies”のようにオペラやクラシックを想起させる緻密な構成だけど、どちらかというとロックのような安定したグルーヴがある。だから、両方のジャンルが持つすべてを提供できるような作品になればいいな。
Q8: Finally, have the past two years as Ravenna been more pleasant and happy than ever for you?
【RAVENNA】: Yes, life has been unbelievably better since my transition. Unfortunately the politics of gender are becoming increasingly scary in the United States, but it’s still much better to be living out in the open
PERIPHERY は、2010年にデビュー・アルバムをリリースした Sumerian から、Misha によれと “攻撃的な” レコード契約を結んでもらったおかげで、DIY と寝室を離れることになりました。しかし、皮肉なことに、”Djent Is Not a Genre” は依然として、完全無欠に “Djenty” なアルバムです。オープニングの “Wildfire” は、ドラムロールを合図に、ダウンチューンのチャグにハーモニクスの嘶きが不規則に割り込む、決して穏やかではない、Djent な幕開け。”Atropos”, “Dying Star”, “Zagreus”, Everything Is Fine” も同様に、指板の最も窮屈な場所に夢中になっているようにも思えます。
しかし、PERIPHERY が常に目指している、真のプログレッシブ・ミュージックを示すタッチもここには豊富に存在しています。フロントマンの Spencer Sotelo は、咆哮と歌唱の切り替えで対比の美学を生み出し、両手を広げて “ファック・イット!” と宣言して、シンセウェーブと脈打つ EDM ビートを取り入れます。そうして、”Djent Is Not a Genre” の最後を飾る “Dracul Gras” と “Thanks Nobuo” のデュオロジーでは、プログ、Djent、ポップ、ポストロックのカラフルな饗宴が24分にわたって繰り広げられるのです。
同時に PERIPHERY は自らの栄光の軌跡をもここに織り交ぜています。例えば “Wildfire” は、以前 “The Event” で採用されたメロディを再現したもので、2部構成のロック・オペラ、2015年の “Juggernaut” のインストゥルメンタル・セグエの再来です。
「もともと “Periphery V” は “Juggernaut” の後継作品にしたかったんだけど、それはすぐに廃案になったんだ」 と Mark は明かします。「その後、”関連する部分のいくつかを残すか” という話し合いが行われたんだ”。俺が尊敬するバンド、例えば Devin Townsend のようなミュージシャンは、何の根拠もなく突然18年前に発表した曲に関連させたりする。それって結局、彼の膨大なバック・カタログから感じられる自由さだよね。ミュージシャンとしていつかたどり着きたい、実現不可能な場所のように思えたんだ」
なぜ、”Juggernaut Part 2″ のアイデアは破棄されたのでしょう?
「コンセプト・レコードを作るのは難しいから。レコードの中で有機的に流れるように曲を書くだけでなく、それらを物語に適合させなければならないんだよ。歌詞がすべて一致し、ストーリーを語り、その下に音楽が存在し、そこでも同じようなことをしなければならない。それは長く、拷問のようなプロセスだ」
このコンセプトアルバムを巡る混乱は、”Djent Is Not a Genre” のライティング・プロセスにおける、創造的に息苦しい状況を象徴していたようです。バンド自身によれば、それが彼らをほとんど “壊しかけた” とまで言います。パンデミックが起きたとき、メンバーはリモートで作曲をしようとしましたが、その場でのフィードバックがなく、何も進展しませんでした。Misha が説明します。
「多くのアイデアはあったのだけど、Spencer がそれを気に入ったかどうか、実際に曲としてアレンジできるかどうかを確認する必要があったんだ。それ自体には何の意味もない、曲のセクションばかりがたくさんあったんだよ。パンデミックが核心的な問題であったことは間違いないだろうな。で、結局、重要なのは、批評家やファンの承認ではなく、自分たちの気持ちだとわかった。”Hail Stan” はとても簡単にできたし、あのレコードは俺が本当に誇りに思うものだった。だから、ファンや批評家が “彼らはタッチを失った” と言っても、俺は気にしなかった。自分が誇りに思っていれば無敵になれるんだよ。もし君が何かを信じているなら、もし君が自分の生み出したものを信じているなら、それはきっと君を無敵にしてくれる」
Zoom によるコラボレーションもうまくいかず、その結果、PERIPHERY は孤立した状態で、個々に自分のアルバムを作曲するようになりました。Jake は “The Daily Sun” でエレクトロニカに手を出し、Mark はエクストリーム・メタル・バンド HAUNTED SHORES を復活させ、Misha は伝説的なソロ・プロジェクト Bulb を復活させ、Spencer とドラマーの Matt Halpern はエモプログのチームアップ KING MOTHERSHIP を立ち上げました。しかし、こうした動きも彼らにとっては不利に働きました。曲作りのために、2020年10月にバンドが直接再集結するまでに、PERIPHERY はすでに “燃え尽き症候群” に陥っていたのです。その結果、”Djent Is Not a Genre” は制作に3年近くを要することになります。
Mark は “諸刃の剣だった” と当時を振り返ります。
「このアルバムに長い時間をかけていることは分かっていたし、ファンも不安に思っていた。でも、レコードを作り始めた時を考えると、これが唯一の方法だったと思うんだ。もし、何かの期限に間に合わせるために、急いでレコードを出さなければならなかったら、それは不可能だっただろうね」
“I Vividly Remember Kevin Moore Playing Some Of The Songs And Parts That Would End Up On “Images And Words” For Me On The Piano In His Living Room.”
DISC REVIEW “WAVES OF LOSS AND POWER”
「僕たちの音楽が、若い人たちが流行に逆らい、長い曲、挑戦的な歌詞など、こうした体験に没頭するきっかけになればと願っているんだよ。だって、プログレッシブの “巨人” の中には、避けられない時間の経過のために消えてしまった人もいるかもしれないけど、まだ健在なバンドもたくさんあって、プログレッシブ・ミュージックは今こそ、主流で定型的なポップスに代わる選択肢を提供していると思うからね」
インスタントでファストな文化が支配する現代において、プログレッシブ・ミュージックの手間暇や長さ、複雑さは明らかに異端であり逆風です。しかし、だからこそプログレッシブ・ミュージックは今必要なのだと、ロングアイランドのカルト・ヒーローは力説します。Z世代だって全員が全員、時代の潮流やトレンドに馴染めるわけじゃない。僕たちが “選択肢” を提供するのだと。
「DREAM THEATER とは個人的につながりがあってね。Kevin が彼のリビングルームのピアノで、”Images and Words” に入る曲やパートのいくつかを弾いてくれたのを鮮明に覚えているよ。 僕たちを含む多くのプログレッシブ・バンドが “When Dream and Day Unite” に強い影響を受けたことは周知の事実だ。実は、僕はあのアルバムのリリース・パーティに参加したんだけど、PAから聞こえてきた曲を聞いて、文字通りその夜から僕の音楽の趣味や志向が変わったと言えるくらいでね。あれは天啓だったよ」
ICE AGE は1999年に “The Great Divide” で鮮烈なデビューを飾ります。攻撃的なプログ・メタルの複雑性だけでなく、Josh Pincus のゴージャスなボーカルとカラフルな鍵盤による極上のメロディを兼ね備えた彼らは、DREAM THEATER の後継者に最も近い存在だったのかもしれません。
DREAM THEATER については、Kevin Moore 以前と以後がよく語られるトピックですが、ICE AGE は明らかに Kevin Moore 以前の音楽性を受け継いでいました。実際、Kevin と旧知の仲である Josh は、Kevin のようにメロディはもちろん、奇数拍子のダンスに、テクニカルやメカニカルまでもすべて楽曲の “イメージと言葉” へと奉じて、プログレッシブ・メタルの新たな礎を築き上げました。
「僕らはいつも、プログレッシブなフォーマットの中でキャッチーなメロディとパートを持つ曲を書く能力こそが、僕らを差別化するものだと思っていた。 一般的に、このジャンルではボーカルのメロディが迷子になることがよくあるんだ。音楽が先に書かれ、その上にボーカルが “叩きつけられ”、後回しになることがよくあるからね。”Waves of Loss and Power” ではこの罠を避けるように意識したんだ。ボーカル・メロディと歌詞は常に最優先だったよ」
うれしいことに、22年という月日が流れたとは思えないような不変の哲学で彼らは帰ってきました。DREAM THEATER, RUSH, GENESIS, QUEENSRYCHE, KANSAS, STYX といったバンドが煮込まれたプログ・メタルのシチューは、シェフの巧みな味付けによって紛れもなく ICE AGE 以外の何ものでもない美味なる味わいを響かせています。
そして実際、このアルバムにはバンドが残した2枚のアルバム、その続編の意味も込められています。”Perpetual Child”, “To Say Goodbye” はプログ・メタルのファンにとって忘れられないエピックで、その続きを2023年に聴くことができることにまず驚きと感謝を捧げずにはいられません。そしてその “伝承” こそがアルバムのクライマックス。
プログ・メタルの同業者とは異なり、ここに派手さのためのシュレッドはなく、常に楽曲のイメージとアトモスフィアのためにテクニカル・パズルのピースは存在しています。異様なまでに一体化した楽器隊はその証明。彼らは、ムード、テンポ、楽器編成を変化させながら、本物の叙事詩を構築する方法を知っているのです。刻々と変化を続け、好奇心を誘う旋律と戦慄の饗宴は、長尺でありながら一切の切り取りを許さないがゆえに現代への完璧なアンチテーゼであり、もっと言えば、マグナ・カルタに “潰された” SHADOW GALLERY や MAGELLAN, DALI’S DILEMMA の墓標まで背負った魂のルフランなのでしょう。
今回弊誌では、ボーカル/キーボードのJosh、ベースの Doug Odell, ドラムの Hal Aponte にインタビューを行うことができました。「このアルバムは、戦争の非人道性、特に20世紀半ばの中国によるチベットへの侵略と文化破壊について扱っている。これは、領土の征服だけでなく、基本的な人権や良識の抑圧という点でも、心を痛める例なんだよ。 君の言う通り、こうした戦争は各地で現在も続いている。ある派閥が自分たちの世界観や宗教を他の派閥に押し付けようとするのは、常に危険で、しばしば暴力的となる。それは人類が持つ最悪の衝動なのだよ」どうぞ!!
ICE AGE “WAVES OF LOSS AND POWER” : 10/10
INTERVIEW WITH ICE AGE
Q1: Can you start by telling us why you have decided to revive the band now after 22 years?
【HAL】: Thanks! We’re psyched to be back!! The short story is that we had spoken about playing together again for years. We never lost touch as we are brothers, in and out of the band, so there was always some sort of communication or contact between all of us. I had a barbecue at my house a few years back and decided it would be a great idea to have everyone there, maybe even jam a little bit if everyone felt up to it, with no pressure of any kind put on any of us. The jam session went so extremely well that we had no choice but to see this whole opportunity through; we started writing new material that ended up on “Waves of Loss and Power” right on the spot that first time we jammed. After that we did some studio rehearsals and it just escalated from there. Again, it took a few years – it did not come together overnight. We didn’t allow ourselves to put time restraints or pressures of any kind on the process, so it was really done at our own, attainable pace. As far as the right timing goes, it was just a matter of everyone’s schedules being aligned. In 20+ years you would expect everyone’s lives to have changed at least a little bit lol, especially with new challenges and responsibilities, right? From living in different states, marriages, family lives, the pandemic, etc … So it was just a matter of getting the most out of our own individual windows of available time. We did the best that we could while still maintaining our day to day normality. We also capitalized on all of the technological resources that were readily available to us. We learned a lot and definitely grew as a band. We were also able to make the proper adjustments along the way and we got closer as brothers.
【JOSH】: Also, during those many years we weren’t playing together, the urge and need to be creative never went away. Any artist will tell you that no matter how much time you may spend away from you craft, it’s never far from your mind and your heart. I think we all knew in the back of our minds that we’d eventually get back together and write/record. Part of the beauty of being able to do this now is the fact that life experiences have seasoned us all so much, and our individual musical tastes have changed somewhat; that maturation process finds its way into the music and lyrics, and it’s very clear that the finished pieces are products of that time apart, but also of the incredible chemistry we have as musicians and people; in that sense, it’s like we never stopped playing together.
Q1: まず、今、22年ぶりにバンドを復活させようと思ったのはなぜだったんですか?
【HAL】: ありがとう!戻ってこられて感無量だよ! 簡単に説明すると、僕たちはもう何年も前からまた一緒に演奏しようと話していたんだ。僕たちはバンド内外において兄弟のようなものだから、常に何かしらのコミュニケーションやコンタクトがあって、音信不通になることはなかったからね。
数年前に僕の家でバーベキューをしたとき、みんなを集めて、プレッシャーをかけずにその気になれば少しジャムるのもいいんじゃないかと思ったんだ。そのジャムセッションは非常にうまくいったから、この機会を逃すわけにはいかず、最初にジャムったその場で “Waves of Loss and Power” につながる新曲を書き始めたのさ。その後、スタジオでリハーサルを行い、そこからどんどん活動はエスカレートしていった。もちろん、一夜にして完成したわけではなく、数年の歳月を要したけどね。
時間的な制約やプレッシャーは一切かけなかったから、自分たちのペースで進めていくことができたんだ。まあタイミングとしては、全員のスケジュールが一致したことかな。20年以上経てば、皆の生活も多少なりとも変化しているはずでね。特に、新たな挑戦や責任などで。だから、僕たち一人ひとりが使える時間を最大限に活用することが重要だった。僕たちは、日々の生活を正常に保ちながら、このバンドでできる限りのことをしていきたかったんだ。
すぐに利用できる技術的なリソースはすべて活用したよ。僕たちは多くを学び、バンドとして間違いなく成長を遂げた。また、その過程で適切な話し合いを行うことができ、兄弟としてより親密になったんだ。
Q2: I mean, The prog world has changed in your absence. Many of the prog giants are old and have passed away. Meanwhile, the world is dominated by the instant culture of social networking and clippings, and few young people will bother to take the time and trouble to pursue a grand and complex prog. What was it that drove you guys to the prog in such a situation?
【JOSH】: The short answer is that that’s generally the style of music we love. We’re not interested in musical trends or fads; we do this to feed our need to be creative and to offer original, memorable, thoughtful music and lyrics, and the “progressive” genre gives us the best opportunity to express ourselves in that way. We hope that our music will encourage some younger people to buck the trends and immerse themselves in this kind of experience – longer songs, challenging lyrics, etc…While some of the progressive “giants” may have gone away because of the inevitable passage of time, there are still plenty that are alive and well, and progressive music still offers a much-needed alternative to mainstream, formulaic pop.
【DOUG】: From my perspective I think there were two main intentions that were in the ether without us actually thinking or talking about it. First of all there was unfinished business after LIBERATION in that the band had – and still has more to say creatively, in the authentic way that only Ice Age can. The second piece of that is that we enjoy playing together and we started down this path with the sole purpose of making ourselves happy by writing new music together. We didn’t have any business, cultural or technological pressures to contend with because this was a selfish pursuit, coming from the purest artistic place possible. Only as we became serious about this being a new era for the band did we start to reestablish our presence seriously online. Hal (drummer) has been running a Facebook page for years and that’s been one thread of connection that was very important, where fans would share their love of the band and wishes for something new. Now, we are anywhere and everywhere on social media platforms, sharing new content.
【DOUG】: 僕の観点では、実際に考えたり話したりしたわけじゃないけど、そこには2つの主要な意図があったと思うんだ。
まず第一に、 “Liberation” の後にやり残したことがあったから。そこには、ICE AGE だけができる本物の方法で、クリエイティブにもっと言いたいことがあったし、今もある。もうひとつは、僕らが一緒に演奏することを楽しんでいて、一緒に新しい音楽を作ることで自分たちを幸せにすることだけを目的にこの道を歩み始めることができたから。 ビジネスや文化、技術的なプレッシャーは一切なく、純粋に芸術的なものを追求するためにね。
バンドにとって新しい時代であると真剣に考えるようになってから、僕たちはオンラインで真剣に存在感を示し始めたんだ。ドラマーの Hal は何年も前から ICE AGE のフェイスブック・ページを運営していて、ファンがバンドへの愛や新作への願いを共有する、とても重要なつながりの糸となっていたんだよ。 今は、ソーシャルメディアのプラットフォームで、どこでも、新しいコンテンツを共有しているよ。
Q3: On the other hand, the last 20 years have seen the djent movement, originated by Meshuggah, gain momentum. What did you think of that polyrhythmic and bass approach?
【JOSH】: Ahh, yes, “math metal” lol. I think there’s always been an element of that in progressive rock and metal; that’s just the nature of the beast. This kind of music always explores odd time signatures and challenging, technical playing. That’s how a lot of musicians in this genre play, and that’s what turns the audience on. That said, as a singer, I was never drawn to that style of vocals; singing to me is a craft and the vocal chords are an instrument like any other, that require care and practice to excel. We’re all fans of melody, and we’re much more attracted to the musical side of things as opposed to the pounding rhythms and growling vocal genre.
【HAL】: I think Meshuggah are great ! They are absolute masters at what they do and they have truly raised the bar. Musically and stylistically things can become monotonous and boring quite quickly for any artist. For the composer’s as well as the listener’s sake it’s great to be able to think outside of the box. When you are capable of achieving something like this (the djent movement) then you have just uncovered so many new avenues of exploration and sound. As for a polyrhythmic approach I love the idea of maximizing a sections potential rhythmically. Isn’t that where it all stems from – the root of it all? You have your essential pulse that you can branch out from. It pretty much just depends on how many different directions you would like for it to flow in. The sense of freedom is also present and it grants you complete control of an uncharted journey.
Q4: So let’s talk a little about the past. I first discovered you in 1999 with the release of “The Great Divide,” and I have been listening to your music for the past 25 years. It’s a really great album! At the time, you were often described as the successor to Dream Theater. How do you feel about the current DREAM THEATER?
【JOSH】: Thanks for your kind words and your support through the decades – yes, The great Divide album was (and still is) very well regarded. I have a personal connection to Dream Theater because I both took lessons from and taught lessons at the same music store in Long Island as Kevin Moore (original member and keyboardist of Dream Theater); I vividly remember him playing some of the songs and parts that would end up on “Images and Words” for me on the piano in his living room. It’s no secret that many progressive bands, including us, were strongly influenced by “When Dream and Day Unite” – I remember attending the album release party for that album and hearing on the PA – I can literally say my musical tastes and aspirations changed that night. It was a revelation. Partly because of the personal connection and the fact that I’m a huge fan of Kevin’s melodic style and lyrics, I will always be partial to the early DT material; I also loved Derek Sherinian’s contribution. Jordan Rudess is an amazing player technically; no one can match him in that regard; they really are the absolute best from a pure technique standpoint.
【DOUG】: Dream Theater as one of only two progressive metal bands (the other being Porcupine Tree) to reach the level of being on/staying on a major record label (with that level of support and exposure behind them) truly paved the way for many other bands like Ice Age to come after them. It’s very admirable that Dream Theater are still out there, being true to what they do. They have been nominated three times for a Grammy award and actually won in 2022. Speaking very subjectively to answer your question, I personally did not stay on board as a fan after the exits of Kevin Moore (keyboards) and Mike Portnoy (drums) because the material that I connect with the most passionately is on those first three albums.
Q4: では少し昔の話をしましょうか。私が ICE AGE を知ったのは1999年の傑作デビュー “The Great Divide” でした。あれから25年、ずっと聴き続けていますよ。あの頃、あなたたちは DREAM THEATER の後継者などとも言われていましたが…
【JOSH】: そうだね、”The Great Divide” は当時も、そして今もとても高く評価されているよね。僕は Kevin Moore(DREAM THEATER のオリジナル・メンバーでキーボーディスト)と同じロングアイランドの楽器店でレッスンを受け、同時に教えていたから、DREAM THEATER とは個人的につながりがあってね。Kevin が彼のリビングルームのピアノで、”Images and Words” に入る曲やパートのいくつかを弾いてくれたのを鮮明に覚えているよ。
僕たちを含む多くのプログレッシブ・バンドが “When Dream and Day Unite” に強い影響を受けたことは周知の事実だ。実は、僕はあのアルバムのリリース・パーティに参加したんだけど、PAから聞こえてきた曲を聞いて、文字通りその夜から僕の音楽の趣味や志向が変わったと言えるくらいでね。あれは天啓だったよ。
個人的なつながりや、Kevin のメロディックなスタイルと歌詞の大ファンであることもあって、僕はずっと初期の DREAM THEATER の楽曲を好んで聴き続けている。とはいえ、Jordan Rudess は技術的に素晴らしいプレイヤーだ。この点で彼に匹敵する人はいないね。だから純粋なテクニックの観点からみれば、今の彼らは本当に絶対的なベストだよ。
【DOUG】: DREAM THEATER は、メジャー・レコード・レーベルに所属し、そのレーベルに留まるというレベルに達したたった2つのプログレッシブ・メタル・バンド(もう1つは PORCUPINE TREE)の1つとして、そのレベルのサポートと露出を背景に、僕らのような後に来る他の多くのバンドへの道を本当に切り拓いたんだ。
DREAM THEATER がまだここにいて、自分たちのやることに忠実であることは、とても立派なこと。 彼らはグラミー賞に3回ノミネートされ、2022年には実際に受賞しているからね。
ただ、非常に主観的な話をすると、僕自身は Kevin Moore(キーボード)と Mike Portony(ドラムス)の脱退後、ファンとして残ることはなかったんだ。なぜなら、僕が最も情熱的につながっていたマテリアルは、最初の3枚のアルバムにあるからだ。
Q5: Back then, you guys belonged to Magna Carta. There were many great bands on that label, such as Cairo, Megellan, Shadow Gallery, and Dali’s Dilemma, but in the end none of them were commercially successful. What do you think was the reason?
【JOSH】: I agree – there were so many great bands on Magna Carta; I just think it was a function of them not having the budget/desire to really develop them in a proper way. Back in the day, record labels would nurture (and fund) a band creatively; sadly, I think part of the issue there was the fact that they were capitalizing on the popularity of a few flagship prog bands at the time, and were really focused more on total profit than promoting their artists. I think this is the main reason we (and some of the other bands) became disillusioned when we realized our aspirations were not in line with the label’s.
【DOUG】: I know that I reached out to them (the record company) and tried to get some support for us to get on bills for local shows with bands like Fates Warning and Symphony X – and there was absolutely zero assistance from the label.
【JOSH】: Magna Carta には素晴らしいバンドがたくさんいたのに、彼らをきちんと育てる予算や意欲がなかったということだと思う。 昔はレコード会社がバンドをクリエイティブに育てる(資金を提供する)ものだったけど、悲しいことに Magna Carta は、当時の代表的なプログ・バンドの人気に便乗し、アーティストのプロモーションよりも総利益を重視していた。それが問題の一因だったと思っているんだ。そこが、僕たち(と他のバンド)の願望がレーベルの願望と一致していなくて、幻滅した主な理由だと思う。
【DOUG】: 僕はレーベルに連絡を取り、FATES WARNING や SYMPHONY X のようなバンドと一緒に地元のライブに参加できるようなサポートを得ようとしたんだけど、レーベルからの援助はまったくなかったんだ。
Q6: Still, “Waves of Loss and Power” is a great comeback! You seem to be focusing more on melody than before. Would you agree?
【DOUG】: I personally think that melody has always been a big part of the Ice Age sound, especially with a big focus that evolved in that respect with LIBERATION. There are so many musical and vocal hooks at every turn and that’s one of the things that I think sets Ice Age apart from prog bands that cram impressive playing into song structures for the sake of fitting into an expected way of approaching the style of music. This new album is the next logical progression for us, especially when considering the extent of vocal harmonies Josh (singer/keyboards) added, which goes beyond the first two albums from a production standpoint.
【JOSH】: Thanks so much!! We’re very proud of it. I agree with Doug – the melodic core was always there – we always thought what differentiated us was the ability to write songs with catchy melodies and parts within the progressive format. In general, vocal melodies can get lost in the shuffle in this genre; the music often gets written first, and then the vocals are sort of “slapped” on top and become an afterthought; I made a conscious effort on “Waves of Loss and Power” to avoid this trap – vocal melodies and lyrics were always top-of-mind, and that may be part of the reason why you feel it is more melody-focused..
Q6: それにしても、”Waves of Loss and Power” は素晴らしいカムバック・アルバムですね!以前よりもさらに、メロディにフォーカスしているように感じましたよ。
【DOUG】: 個人的には、メロディーは常に ICE AGE のサウンドの大きな部分を占めていると考えているよ。特に “Liberation” では、そこにフォーカスして大きな進化を遂げたんだ。音楽的、ヴォーカル的なフックが随所にあり、それが、音楽スタイルへ合わせるために印象的な演奏を曲構成に詰め込むプログ・バンドとは一線を画す点だと思う。
特に Josh(シンガー/キーボード)が加えたボーカル・ハーモニーを考慮すると、この新しいアルバムは、最初の2枚のアルバムを超えた、僕たちにとって次の論理的進歩だと言えるね。
【JOSH】: 本当にありがとう!!(笑)僕らはそれをとても誇りに思っているよ。Doug の意見に賛成だね。メロディックな核はいつもそこにあった。
僕らはいつも、プログレッシブなフォーマットの中でキャッチーなメロディとパートを持つ曲を書く能力こそが、僕らを差別化するものだと思っていた。 一般的に、このジャンルではボーカルのメロディが迷子になることがよくあるんだ。音楽が先に書かれ、その上にボーカルが “叩きつけられ”、後回しになることがよくあるからね。”Waves of Loss and Power” ではこの罠を避けるように意識したんだ。ボーカル・メロディと歌詞は常に最優先だったよ。それが、よりメロディ重視のアルバムだと感じる理由の一つかもしれないね。
Q7: The band’s second album, “Liberation,” is an album about freedom and liberation, and it is an album that should be listened to in these times of war and fascism/right wings. So, what is the theme of this album?
【JOSH】: Thank you so much for that; yes, part of that album is indeed a statement about the inhumanity of war in general, and more specifically about the invasion and attempted cultural destruction of Tibet by China in the mid 20th Century. That is a heartbreaking example not only of territorial conquest but of the subjugation of basic human rights and decency. You are correct; this struggle is ongoing; it’s just part of being human. It is always dangerous, and often violent, when one faction or another tries to force their worldview or religion on another. It is the worst impulse humanity has to offer. “Waves of Loss and Power” addresses some of these ideas in Perpetual Child Part II; if we can’t find a way to coexist with each other, sadly I believe we will all cease to exist. Generally speaking, the new album is about the great heights of creativity and hopefulness and personal power we all feel at times in life, and the contrast with the sadness and grief of loss we all inevitably have to face in many different ways; personal loss, cultural loss, loss of innocence, etc…there are moments of optimism and moments of cynicism; these coexist within us constantly, and that inner battle expresses itself in the actions we take outwardly every day.
【JOSH】: このアルバムは、戦争の非人道性、特に20世紀半ばの中国によるチベットへの侵略と文化破壊について扱っている。これは、領土の征服だけでなく、基本的な人権や良識の抑圧という点でも、心を痛める例なんだよ。
君の言う通り、こうした戦争は各地で現在も続いている。ある派閥が自分たちの世界観や宗教を他の派閥に押し付けようとするのは、常に危険で、しばしば暴力的となる。それは人類が持つ最悪の衝動なのだよ。
“Waves of Loss and Power” では、特に “Perpetual Child Part II” でこうしたアイデアのいくつかを取り上げている。もし僕たちが互いに共存する方法を見つけることができなければ、悲しいことに、人類は消滅してしまうだろうと思う。
一般的に言えば、この新しいアルバムは、僕たちが人生の中で感じる創造性、希望、個人的な力の高さと、個人的な損失、文化的な損失、無邪気さの損失など、さまざまな形で僕たちが必然的に直面しなければならない損失の悲しみや嘆きとの対比をテーマにしているんだ。楽観主義の瞬間と皮肉主義の瞬間があってね。その両者は常に僕らの中で共存している。その内面の戦いは毎日外に向かって取る行動で表現されているんだ。
Q8: “Perpetual Child” and “To Say Goodbye” are sequels to your earlier albums, why do you choose to create continuity in your Ice Age work?
【JOSH】: Well, that’s a prog tradition, right? Rush had the “Fear” saga, etc…as we were writing for WAVES, I always had in mind the idea of continuing the stories/songs we started on the first two albums. Musically, some of the parts Jimmy came up with for what would become Perpetual Child Part II were reminiscent of the first part, and we kept that in mind as we fleshed out the song. When I started writing on the piano, it became clear my subconscious was steering me back in the direction of “To Say Goodbye,” so I went with it. On the new album, we knew we had a real opportunity to go “big” in continuing some of the musical motifs and lyrical ideas of the first two albums. I wanted to connect with fans of the first two albums, and remind them that we remember what came before, and that we feel like these concepts we touched on back in the day still apply to the continuing experience of music and life. The idea of the Perpetual Child is about reconciling yourself to the experiences and “duties” of adulthood, while being self-aware enough to realize that we never really leave those formative years behind, and that we carry everything with us through our lives, whether we admit it or not. It’s also used as a metaphor for other things in Part II, but I’ll leave that for the listener to figure out! “To Say Goodbye” is really about loss, regret, and grief. We all experience these things in many different ways – Part V is pretty specific regarding the issue it addresses.
Q8: その “Perpetual Child” や “To Say Goodbye” は以前の作品からシリーズ化している楽曲ですよね?
【JOSH】: まあ、それはプログの伝統だからね。RUSH には “Fear” サーガがあったしね。だから ”WAVES” のために作曲するとき、最初の2枚のアルバムで始めた物語や歌を続けるというアイデアを常に念頭に置いていたよ。
音楽的には、”Perpetual Child Part II” のために Jimmy が思いついたパートのいくつかは、 “Part Ⅰ” を彷彿とさせるもので、それを意識しながら曲を練り上げていった。それに、ピアノで書き始めたら、潜在意識が “To Say Goodbye” の方向へ舵を切っていることがわかったので、それに従った。
新しいアルバムでは、最初の2枚のアルバムの音楽的モチーフや歌詞のアイデアを継承し、より “ビッグ” にできるチャンスがあるとわかっていたんだ。 最初の2枚のアルバムのファンとつながり、僕たちが前の作品を覚えていること、そして当時触れたこうしたコンセプトが、音楽と人生の継続的な体験にまだ適用できると感じていることを思い出してもらいたかった。
永遠の子供というアイデアは、大人になってからの経験や “義務” に自分を納得させつつも、一方で、僕たちは自身の形成期を決して忘れることができず、認めるかどうかにかかわらず、人生を通じてすべてを持ち続けているということを自覚しているという話。 第二部では他のことの比喩としても使われているけど、それはリスナーが考えてくれることだろう。
“To Say Goodbye “は、まさに喪失、後悔、悲しみについて歌っている。 僕たちは皆、さまざまな方法でこれを経験する。パートVは、扱う問題に関してかなり具体的だ。
FIVE ALBUMS THAT CHANGED ICE AGE’S LIFE!!
JOSH: RUSH “Signals”, BLACK SABBATH “Volume 4”, DREAM THEATER “When Dream and Day Unite”, IRON MAIDEN “Powerslave”, SPOCK’S BEARD “The Kindness of Strangers”
HAL: RUSH “Exit Stage Left”, OZZY OSBOURNE “The Ultimate Sin”, BILLY JOEL “The Stranger”, RUSH “Moving Pictures”, METALLICA “Ride The Lightning”
DOUG: LED ZEPPELIN “Led Zeppelin I”, RUSH “Permanent Waves”, KING’S X “Dogman”, BLACK SABBATH “Heaven and Hell”, Chris Cornell “Euphoria Morning”
MESSAGE FOR JAPAN
HAL: As always thank you all so very much for all of your support and encouraging, kind words throughout our time away. We would love to say thank you by performing live for you some time. Maybe that will become a reality in the very near future. Until then … Thank you !!!
JOSH: We know that Japanese music fans in general have a long history and tradition of love for metal and progressive music; we’re so grateful for our audience there, and we hope you enjoy “Waves of Loss and Power!”
DOUG: We are so honored and excited to be connecting with fans of Ice Age from Japan.
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK D’VIRGILIO OF MR. BIG !!
“I Could Never Replace Pat. He Had a Unique Sound And Feel And The Band Really Gelled Together In a Great Way. He Was a Huge Part Of The Mr Big Sound. All I Can Try To Do Is Play To The Best Of My Ability And Pay Tribute To Pat.”
THE BIG FINISH
パット・トーピーが私たちの前からいなくなって、どれくらいの月日が過ぎたでしょう。アイスクリームとハンバーガーを愛し、アメリカの学園モノに出て来そうな爽やかな笑顔でブロンドをなびかせ、年齢をちょっぴり詐称した歌って叩ける MR.BIG のドラマーはあのころ、文字通りみんなのアイドルでした。
ただし、ポール・ギルバート、ビリー・シーンという当代きっての弦楽隊のおかげで霞んでしまってはいましたが、パット・トーピーは顔が良いだけでなく、相当の実力者でバンドの要。”Take Cover” や “Temperamental”, “Undertow” のユニークなリズム・パターンに巧みなゴーストノート、ボンゾを思わせる骨太でタメ気味のドラミングはやっぱりスペシャルで、”Yesterday” を歌いながらソロをとるパットの姿がみんな大好きだったのです。
そして、どこか飄々として浮世離れしたポール、やんちゃなエリック、職人肌で真面目なビリーをつないでいたのもやはりパットだったのでしょう。特に、ビリーとエリックが一時、相当険悪な仲であったことはもう誰もが知る事実ですから。
結局、私たちはパットを失って再度、MR.BIG は “あの4人” でなければならないと痛感させられました。1度目はポールがバンドを去った時。FREE の名曲をその名に冠するバンドです。リッチー・コッツェンでも、むしろポールよりリッチーの方が上手くいってもおかしくはなかったのです。しかし、実際はポールの不思議なメロディ・センスやメカニカルなギターを失ったバンドは一度瓦解しました。
今、THE WINERY DOGS が生き生きとしているのは、THE WHO や FREE の21世紀バージョンを全力で追求しているから。MR.BIG の建前はたしかにほぼ同じでしたが、実のところ彼らはもっと甘いメロディやスター性、派手なテクニックを売りにしていました。その “アンバランス” が実は MR.BIG のキモで魅力だったのです。リッチーと作った ”Get Over It” は玄人好みの素晴らしいアルバムでしたが、MR.BIG はそもそも玄人好みのバンドであるべきではなかったのです。
だってそうでしょう?90年代、私を含めてどれだけ多くのキッズが彼らに憧れて楽器を始めたことでしょう?バンドを始めたことでしょう?アイバニーズのFホールやヤマハのライトグリーンがそこかしこに溢れていたのですから。今、あれだけ長いソロタイムを設けられるバンドがどれだけいるでしょう? “Raw Like Sushi” シリーズのソロタイムをみんなが食い入るように分析していたのですから。MR.BIG はあのころ日本で、楽器をより純粋で真剣な何かへと変えていきました。それは彼らがとことんキャッチーで、ある種のアイドルで、全員がスーパーなテクニカル・スターだったからできたこと。
そんな日本におけるハードロックの父、MR.BIG にも遂に終焉の時が訪れます。エリックは最近、こんな話をしていました。
「BON JOVI がこの年まで続けるとわかってたら “Livin’ On A Prayer” をあんな高くは歌わなかったと言ってた。僕もそう。南米のバンドとやるときに “Lucky This Time” をやりたいと言われたけど無理だった。”Green-Tinted” の高音でさえキツイんだ」
あのベビーフェイスで鳴らしたエリックももう62歳。ポールは56歳。ビリーにいたっては69歳。もちろん情熱は年齢を凌駕しますが、それでも人間に永遠はありません。
それでも、パットが亡くなってから数年後、エリックはこう話していました。
「MR.BIG をまたやりたいよ。あの音楽が大好きだし、バンドを愛してるから。ビリー、ポール、そしてパットの魂とまたステージに上がりたいね」
パットの座右の銘は、”Never Give Up” でした。病に倒れたあとも、パットは常にバンドと帯同し、諦めず、不屈の精神で MR.BIG の音楽と絆を守り続けてきました。だからこそ、やはり幕を下すべき時なのです。お恥ずかしい話ですが、少なくとも私はあのころ、4人の絆と友情を純粋に信じていました。でも、それもあながち間違いではなかったのかもしれませんね。エリック、ポール、ビリー、そしてパットの魂は今回の “The Big Finish” ワールドツアーを最後にやはり、バンドを終わらせるつもりのようです。とても、とても残念で寂しいですが、それはきっと正しい決断なのでしょう。
最後のツアーは、MR.BIG のアンバランスが最高のバランスを発揮した “Lean Into It” が中心となります。マキタのドリルも、”Alive and Kickin” の楽しいハーモニクスも、”Green-Tinted” のメロディックなタッピングも、”Road to Ruin” のビッグ・スイープも、もしかしたらこれが聴き納めとなるかもしれません。しかし何より、多くのファンに別れを告げるため、物語をしっかりと終わらせるため、そしてパットに対する美しきトリビュートとしても、非常に重要なツアーとなるはずです。
ドラム・ストゥールには、ニック・ディヴァージリオが座ります。現在の英国を代表するプログレッシブ・ロック・バンド BIG BIG TRAIN のメンバーで、SPOCK’S BEARD, GENESIS, FROST, FATES WARNING など様々な大御所バンドで腕を振るって来たプログレッシブの巨人。ドラムの腕はもはや疑うまでもありませんが、ニックはとにかく歌が上手い。MR.BIG がボーカル・ハーモニーを何より大事にしてきたこと、ボーカル・ハーモニーで成功を収めたことはご承知のとおり。インタビューにもあるように、実は VAN HALEN や MR.BIG を愛し、その “歌” で選ばれたニックなら、きっと素晴らしい花道を作ってくれるはずです。
「僕は決してパットの代わりにはなれないよ。彼はユニークなサウンドとフィーリングを持っていて、バンドは本当に素晴らしい形で融合していたんだから。彼は MR.BIG サウンドの大きな部分を担っていたんだ。僕ができることは、自分の能力を最大限に発揮して、パットに敬意を表することだ。でも、僕はプロフェッショナルであることを誇りに思っているし、MR.BIG の曲を本物のロック・サウンドにするために必要なことは何でもするつもりだよ」NDV ことニック・ディヴァージリオの弊誌独占インタビュー。どうぞ!!
INTERVIEW WITH NICK D’VIRGILIO
Q1: First of all, how was your participation in Mr. BIG decided? And how do you feel now?
【NICK】: Here in the US I work at Sweetwater. The biggest online music gear retailer in the country. We have very nice recording studios and hold all kinds of workshops and masterclasses, along with normal recording sessions for all kinds of artists. It is a pretty unique place. Paul has been to Sweetwater a number of times and I have played with him in the workshops. Paul also played on my solo record “INVISIBLE” that I released in the summer of 2020. Through all of those things Paul sent me an email on day last year, I think in September – I’ll have to go find the original email, asking if I would be interested in the tour. I of course said yes immediately!
From there Paul sent me some demo tracks to play along to. With the aim of see how my voice would fit. I think we both knew that we made a nice connection as far as the drumming was concerned but Pat Torpey was such a great singer as well and Mr Big’s vocals in their live shows are a big deal. Paul and the boys needed to know that I could sing those parts. So I set out and recorded myself on the songs that Paul sent. They were a few tunes from the “Lean Into It” record. In the end, they liked what I did and I got the gig! I am so very happy!!!
Q2: Considering your “Progressive” background, it doesn’t seem like your connection with Mr. Big is very deep. Did you actually listen to Mr. Big’s music before you decided to join?
【NICK】: Sure! I listened to Mr Big when their records were brand new. I was a fan of the band, Pat’s drumming, and got to meet him once back in the 1990’s. I think it was at a clinic or the NAMM show. I forget exactly but I definitely learned as much as I could from his playing. I’ve had a long career in progressive music but I am a rocker at heart. It all goes together in my opinion.
Q3: Of course, Mr. Big had Pat Torpey sitting on the drum set all the time, and the members and fans really loved him. How do you feel about taking Pat’s place musically and as a human being?
【NICK】: I could never replace Pat. He had a unique sound and feel and the band really gelled together in a great way. He was a huge part of the Mr Big sound. All I can try to do is play to the best of my ability and pay tribute to Pat. I pride myself on being a pro and will do what I have to make the songs sound authentic and rock! I want the fans to have a great time at the shows.
Q4: Many fans thought that Mike Portnoy would be chosen because of his relationship with Billy and Paul. I have a feeling you were chosen not only because of your drumming technique, but also because of your singing ability, as we listen to Spock’s Beard and it’s immediately obvious that you are a great vocalist! How about that?
【NICK】: I love to sing as much as I love to drum. Having the ability to do both has proven a good thing for my music career. It has helped me get many gigs including this one.
Q5: You have played with many different virtuosos and you yourself play many different instruments. How do you feel about Paul and Billy’s technique?
【NICK】: Oh my gosh, Paul and Billy are two of the best ever and I a honored that I will share the stage with them. I will be honest that it makes me feel good inside knowing that I have what it takes to play with them. I’ve worked hard to be the best musician I can possibly be.
Q5: BIG BIG TRAIN をはじめ、様々なヴァーチュオーゾと共演し、ご自身もマルチプレイヤーであるあなたの目から見て、ポールとビリーのテクニックはどういったものですか?
Q6: Mr. Big has a huge discography, but what albums do you particularly like and what songs would you like to play live?
【NICK】: All of the record have great songs and It will be cool to the play the songs from “Lean Into It”. That is what I know so far about what we will be playing. What I’ve done while I am waiting to hear what the rest of the set will consist of is to go back and listen to their live records and watch a bunch of YouTube videos. Songs like “Colorado Bulldog”, “Addicted To That Rush”, “Wild World”, “Take Cover”, and others seem to be very popular with the fans and songs the boys have played a lot over the years so I have been learning those as well just in case. “Colorado Bulldog’ is a beast of a song! Even if we don’t play all of those songs it is still good for me to immerse myself into their music.
【NICK】: どのレコードも素晴らしい曲ばかりだけど、”Lean Into It” の曲を演奏するのはクールだろうね。これが、今のところ分かっている演奏予定でもある。残りのセット内容を聞いている間に、彼らのライブ盤を聴き直したり、YouTube のビデオをたくさん見たりしているところさ。
“Colorado Bulldog”, “Addicted To That Rush”, “Wild World”, “Take Cover” といった曲はファンにとても人気があるようだし、彼らが長年にわたってたくさん演奏してきた曲なので、いつでもできるようにそれらも覚えているんだ。”Colorado Bulldog” は野獣のような曲だよね!これらの曲は実際にすべてを演奏しないかもしれないけど、彼らの音楽に浸ることができるのはライブに向けていいことだと思うんだ。
Q7: To a prog-maniac like me, you are literally GOD, but there are still some Japanese hard rock fans who don’t know you. To introduce yourself to these people, please tell us some of your works that you would like them to hear.
【NICK】: Ha! Well…thank you! I have been blessed to do many things over my career. I would point people who have never heard of me to my current band BIG BIG TRAIN. I have proudly been in BBT since 2007 and we’ve made a lot of records in that time. What is crazy for me this year is that I will go from the last show for Mr Big in Indonesia directly to the UK for a 3 week tour of Europe with Big Big Train. Our biggest tour of Europe to date. I am very proud of my band and I hope some Mr Big fans will check out BBT. It is a prog rock band in the style of Genesis, Yes, and others. Incredible musicians in my band as well. www.bigbigtrain.com
I would also like folks to check out my solo record “INVISIBLE”. Paul played on the song “Overcome”. I also had many other great guest artists play on the record. I am proud of that record. It was one I wanted to make for a long time and finally got the chance. www.nickdvirgilio.com
【NICK】: ハッ! そうか…まあ、ありがとう(笑)。僕は自分のキャリアが、いろいろなことに恵まれてきたと思っていてね。僕のことを知らない人には、現在のバンド BIG BIG TRAIN をまず紹介したいね。
僕は2007年から BBT に所属していて、その間にたくさんのレコードを作ってきたことを誇りに思っているからね。今年、僕にとってクレイジーなのは、インドネシアでの MR.BIG の最後のショーから直接イギリスに行き、BIG BIG TRAIN と一緒に3週間のヨーロッパ・ツアーを行うこと(笑)。これまでで最大のヨーロッパ・ツアーなんだ。僕は自分のバンドをとても誇りに思っているし、MR. BIG のファンの人にも BBT をチェックしてもらえたらうれしいね。GENESIS や YES スタイルのプログ・バンドだ。 僕のバンドにも信じられないようなミュージシャンがいるんだよ。http://www.bigbigtrain.com
あとは、僕のソロ・アルバム “INVISIBLE” もぜひチェックしてほしい。ポールは “Overcome” という曲で演奏しているよ。他にも多くの素晴らしいゲスト・アーティストに参加してもらったんだ。僕はこのレコードを誇りに思っているよ。長い間作りたかったもので、ようやくそのチャンスが巡ってきたからね。http://www.nickdvirgilio.com
Q8: Finally, Japan has a special connection with Mr. Big. They’ve been ridiculed abroad for things like Big in Japan, but we really love them! Do you think this is really Mr. Big’s “Finish”?
【NICK】: All I know is where I am going at the moment. Not the best answer I know,haha.
Just about anything from Motown. I love Funk, Soul, and old school R&B music. It’s made a huge difference in the way I play drums. Especially when I rock.
MESSAGE FOR JAPAN
I cannot wait to get back to Japan! I’ve only has the pleasure of going one time with a power pop group called “The Rubinoos”. We played 4 shows in September of 2002. 21 years ago! It was such an incredible experience. Such amazing history and culture. It will be awesome to experience it again!
日本に戻るのが待ち遠しいよ!僕は THE RUBINOOS というパワー・ポップ・グループと一緒に一度だけ日本に行ったことがあるんだ。2002年の9月に4回公演したよ。21年前だって?!信じられないような経験だった。素晴らしい歴史と文化。それをまた体験できるなんて、最高でしょう!
そうした “良い” ゲームから学んだこともあります。
「可能な限り包括的で寛容で多様でありたいと思っている。僕は FLUMMOX というバンドの大ファンなんだ。そのバンドの僕らの親友 Max Moberry は、OTHERS BY NO ONE という別のバンドにも参加しているんだけど、彼らは…間違ったラベルを付けたくはないんだけど、そのコミュニティの一員なんだ。そして Max は僕らのアルバムにもフィーチャーされているんだ。”Moonlighter” の一番最後にね。
だから、僕たちはどんな生き方も歓迎するし、誰も排除したくはないんだ。むしろ、少数派の人たちにスポットライトを当てたい。OTHERS BY NO ONE は昨年 “Book II: Where Stories Come From” という素晴らしいアルバムを出していて、FLUMMOX は最近たくさんのライブをやっているよ。この2つのバンドとは Max のおかげでつながることができた」
トレカの収集にも余念がありません。
「”ハースストーン” は大学までずっとプレイしていたよ。物を集めるのは好きなんだけど、実際に物を買って集めるお金がなかったから、無料でゲームができるのは痒いところに手が届くというかそんな感じでね。2021年にBlizzard(Entertainment)が何かと物議を醸し、今のままでは応援できないと思い、その年の夏からプレイをやめたんだ。ちょうどその頃、同僚の多くが仕事帰りや昼休みに定期的に “マジック:ザ・ギャザリング” をプレイしていることを知り、僕も飛びついたんだ。
トレカにハマったのは、同年代のみんなと同じで、ポケモンカードが最初だよ。幼少期は絶対的なアイテムだったな。買いものに行くたびに親にカードをせがんだよ。これもみんなと同じように、実際のゲームの遊び方を知らなかったから、友達に見せびらかしたり、弟に自慢したりするためだけに、カードのお金をせびっていたんだ。それがきっかけで収集癖がついたというかね。その後、”遊戯王”、”マジック・ザ・ギャザリング” へと進んだんだ」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SARAH PENDLETON OF THE OTOLITH !!
“It Is Worrisome And Frightening How Easily We Seem To Slip Back Into The Grave Mistakes Of The Past And Allow Ugliness And Hatred And Aggression To Poison Us. Vigilance And Memory Are Vital. Love Is Vital”
DISC REVIEW “FOLIUM LIMINA”
「”Bone Dust” はウクライナ侵攻の前に書かれたものだけど、自分の家を守るための歌。私たちは簡単に過去の重大な過ちに戻り、醜さと憎しみと侵略に毒されることを許してしまうようね。心配だし恐ろしいわ。警戒心と記憶力は不可欠だと思う。何よりも、愛は不可欠よ」
世界は多くの場所、様々な理由で燃えているように思えます。だからこそ、”過去” という灰の中から生まれた THE OTOLITH の “Bone Dust” は2022年に必要なアンセムにも感じられるのです。見事にサンプリングされた “独裁者” におけるチャップリンの演説と同様に、この楽曲は徐々に強度と熱を増し、燃え盛る世界の醜さ、憎しみ、不条理に対して教訓という愛を注いでいきます。
THE OTOLITH 63分のデビュー作 “Folium Limina” は、”Sing no Coda “に聞こえる遠い教会の鐘から、TOOL のような陶酔感の “Andromeda’s Wing”, ISIS を思わせるドラマティックなクローザー “Dispirit” の最後の音までリスナーは絶句し、静寂と轟音、美麗と醜悪の狭間で人間の業を知り、それでも希望という名の光を胸に秘めて生を見つめます。
「SUBROSA の終焉は、私たちにとって胸が張り裂けるような出来事だったわ。予期せぬ出来事で、私たちは何ヶ月も悲しみと混乱と嘆きに包まれていたの。でもね、グループのメンバーの一人がその一員であることを望まなくなったとき、最終的にはそれを受け入れて前に進まなければならないの」
THE OTOLITH は、ソルトレイク・シティで愛された SUBROSA の灰の中から生まれたバンド。元 SUBROSA のメンバー Sarah Pendleton、Kim Cordray、Andy Patterson、Levi Hanna と、VISIGOTH のベーシスト Matt Brotherton で新たな生を受けました。THE OTOLITH は不死鳥のように蘇るのか。それとも、イカロスのように燃え尽きるのか。求めよ、さらば与えられん。5人のデビュー作 “Folium Limina” は明らかに SUBROSA の遺品をさえ凌ぐフェニックスに違いありません。
「”Otolith” とは、ギリシャ語で “耳の石” を意味する言葉。内耳にある小さな水晶の構造物なのよ。バランス、動きの検出、音の検出を助けるの。アルバム・タイトルのフォリアとは、脳の中にある葉っぱのような構造物で、電気や電磁波のエネルギーを伝導させる働きをする。木の枝のように見えるわ。そして、リミナという言葉は、覚醒と夢想の間、シラフと陶酔の間、生と死の間などの心の辺境状態に由来している」
耳の石の名を冠した THE OTOLITH は、SUBROSA の残したものをある程度は受け継いでいると言って良いでしょう。巨大でアヴァンギャルドなドゥームを得意とし、情景を映し出すモノリシックなメランコリーが彼らの命題。氷河のようなリフがドゥーミーな海に突き刺さり、幽霊のようなヴァイオリンがその表面を悲しみの色に染め上げます。
美と破滅の間に境界線を引かず、幽玄なストリングスとダイナミックなベース、ギター、パーカッションを織り込んだ闇のタペストリー。現実と夢想、生と死の狭間で輝くのは Sarah と仲間の千変万化な歌唱。深く掠れた咆哮、礼拝的な詠唱、合唱のような澄んだ歌声は、SUBROSA の影をなぎ払い、キャッチーで、ダイレクトで、ドラマティックな THE OTOLITH の現在地を内耳の水晶へと刻みます。
「誠実さ、純粋な感情こそが、音楽を作る上で最も重要なピースだと信じているわ。だから、私たちにとって、それは今も変わっていない。その感情がネガティブなものであろうとポジティブなものであろうと、誠実である限り、すべての楽曲に含まれるべき唯一の要素なのよ」
誠実、純粋、愛。THE OTOLITH のスロウ・バーンはそうした感情の大切さと共に、過去の過ちから学ぶべき知恵の輝きを再確認させてくれます。残虐で冷酷な悲壮から切ない美しさまで、音のスペクトラムを横断する6曲は、近年稀に見る “アルバム” 志向の作品。つまり、これはタペストリーであり、美しく説得力のあるしかし欠点に満ちた人生の教科書なのでしょう。メタルを通して生命を吹き込まれた人間の経験は、暗く、美しく、思慮深く、超越的なものとなるはずですから。
今回弊誌では、Sarah Pendleton にインタビューを行うことができました。「ヘヴィ・メタルはバラエティに富んだ多元的な世界なの。木星サイズの抽象画のように、より多様になり、渦を巻き続けているのよ。私たちは、どんなサブジャンルに分類されようが、そこからこぼれ落ちようが、その世界の一部であることに恍惚としているの」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN COBBETT FROM HAMMERS OF MISFORTUNE !!
“Let’s Boil It Down To “Illusions” By Sadus And “Nursery Cryme” By Genesis; This Pair Of Albums Are Kind Of i Ideal In Thrash On One Hand, And Prog On The Other, To Me Anyway.”
“I Do Love Dark Music, But To Me My Music Just Sounds Like Rainbows. Jagged Piercing Ones At Times, But Still Rainbows.”
DISC REVIEW “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY”
「私は自分の音楽を、天使と悪魔の融合とは思っていない。私にとってはすべて天使的なものなんだ。悪魔的なものは、私自身の悪魔について論じるときに題材として登場するだけでね。意図的にダークな音楽を作ろうとはしていないんだ。ダークな音楽は好きだけど、私にとって自分の音楽は虹のように聞こえるだけ。時にはギザギザに突き刺さるような虹もあるんだけど、それでも虹なんだよ」
ご存知の通り、ヘヴィ・ミュージックが無味乾燥で一義的な場所であるというのは、完全なる誤解です。とはいえ、殺風景で無彩色なスタイルの持ち主がたしかに多いのも事実。しかし、そういったアーティストと同じくらい、ヘヴィ・ミュージックを色鮮やかなアートの爆発として扱う人たちも同様に多いのです。シカゴの Fire-Toolz は、ヘヴィネスに宿る無限の色彩を提案するインターネットの虹。Fire-Toolz A.KA. Angel Marcloid は、プログレッシブ、ブラックメタル、ジャズ・フュージョン、インダストリアル、AOR, グラインドコア、さらには日本のシティー・ポップの要素までスリリングなプロキシを通して屈折させ、スタイルの境界を創造のピクセルで消してしまうのです。
「どんなジャンルの音楽にも、男っぽいとか、女っぽいとか、固有のジェンダー・アイデンティティや表現があるとは思えないよ。ここアメリカの私たちにしても、他の文化にしても、そうした関連付けや決めつけをしてしまうのは残念なことだよ。ただ、私はそうしたレッテル貼りが一般的であることも理解しているんだ。私がそんな風に物事を見たことがないたけでね。境界が曖昧になることは、ほとんどの場合、良いことだと思うんだ。制限を取り払い、規範を解体し、自由を活用することは、とても重要なことだから」
ここ数十年にわたるポスト・モダニズム思想の定着は、ステレオタイプを曖昧で不安定なものとし、ジャンルや形式といった制約を過去の遺物と見なす新しい文化を精製しました。Fire-Toolz の最新作、”I will not use the body’s eyes today” は、この新世界の芸術的アプローチをある意味で体現しているのです。その主眼は、音楽の “脱構築” にあります。
「他の人が私のカオスをどう捉えているかは、よくわかるんだよ。私にとってこの混沌は、とてもコントロールされ、組織化されているように感じられるんだけど、外から見ると、混乱しているように見えるかもしれないね」
私たちが毎秒何千ものピクセルを自然とスクロールするように、この7曲はリスナーを容赦なく説得し、時に幻惑します。一つのテクスチャーやモチーフに落ち着くことはほとんどなく、さながらグリッチを含んだデジタル・コラージュのように機能していきます。最もオーソドックスな “Soda Lake With Game Genie” にしても、6分半という長尺の中にサックスやブラスト・ビート、80年代のポップなど、予期せぬ展開が濁流のように押し寄せる非常に流動的な仕上がり。
“A Moon In The Morning” では、Angel Marcloid のパレットは全体を覆い尽くす焼けるようなディストーションへと変化し、悪魔の遠吠えとオーケストラのMIDIストリングスの厳しいせめぎ合いが対消滅の危機感を抱かせます。イタロ・ディスコ、テクノ、EBM のテイストを取り入れたビートも、アコースティック・ギターのサスティーンを強調したブレイクダウンも、この構築を逃れたしかし意図的なカオスの中にあります。
重要なのは “仕切り” がないこと。ここはブラックメタル、ここは AOR、ここはプログレッシブなどという構築された混沌は、結局のところステレオタイプで、興ざめです。
こうして、従来の構成や動きといった概念を完全に捨て去ろうとする姿勢が “I will not use the body’s eyes today” をユニークで挑戦的作品にしているのです。それはまさに、体の目を使わず、心の目で作品を作ること。心を開き、未来を見据えることのできるリスナーにとって、この計算された混沌はすべての芸術と文化が境界線を失ってもまだ機能する世界の予兆とまで言えるでしょう。そう、私たちは Fire-Toolz によってまんまとハッキングされているのです。
「”I will not use the body’s eyes today” というフレーズは、多かれ少なかれ、私がエゴ (肉体的な目) からではなく、高次の自己の目 (心の目) から見ることを肯定しているんだよね。つまりこれは、超越のための嘆願なんだよ」
ヴェーダ哲学、キリスト教神秘主義、見捨てられることへの恐れ、感情の断絶、愛着の不安、自己破壊、意識の霊的傾向、トラウマの治癒、恥。Angel は永遠に拡張される音のツールボックスと同様に、世界とその神秘に対する多様な哲学と神学のインデックスをもその作品に注ぎ込んでいます。そうして、Fire-Toolz というプログラムは自己実現によって既存の器がさらに拡大可能であることを証明しているのです。
今回弊誌では、Angel Marcloid にインタビューを行うことができました。「カシオペア、角松敏生、木村恵子、杏里、Hiroshima、堀井勝美、鈴木良雄、菊池桃子を生んでくれてありがとう!」 どうぞ!!
Fire-Toolz “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY” : 10/10
COVER STORY : POLYPHIA “REMEMBER THAT YOU WILL DIE
“I’m Gonna Grow Up And Be a Rock Star, And Just Truly Believing That.”
REMEMBER THAT YOU WILL DIE
「中学2年生の時にマリファナを吸い始めた。それが僕の人生の中で大きな意味を持つようになったんだ。テキサスに住んでいたから麻薬所持で逮捕されたけど、それが僕のキャリアに火をつけたようなもの。僕は保護観察中で、1年間、学校に行って、家に帰るだけだったんだ。人を呼ぶことも、友達の家に行くことも許されなかった。それで、ギターを本当に、本当に、本当に上手になろうと思ったんだ」
16歳になった POLYPHIA の Tim Henson は薬物所持で2度、法に触れてしまいました。テキサス州のように薬物犯罪が特に重く処罰される州では、尚更居場所を失います。今、28歳の Tim は、「毎日マリファナを吸える仕事に就いたんだ」と皮肉を込めて話します。「でも、”言霊” ってあるんだよね。小学校6年生のとき、”僕は Tim Hendrix。大きくなってロックスターになるんだ” って、みんなに宣言して、本当にそう思っていたんだ。だからね、意識の顕在化、決意表明。その力が本当に重要だと思うんだよ」
麻薬所持の罪で、Tim は保護観察や外出禁止処分となり、一人でいることが多くなりました。しかし、その時間をすべて使ってギターの練習を続け、貪欲に最高のミュージシャンを目指したのです。中国からの移民である母親は、息子がアメリカで得られるチャンスを最大限に生かすことを決意します。3歳のときから Tim はヴァイオリンのレッスンを受け始め、幼少期に長時間の練習に対する耐性を養いました。間違うと先生に弓で手を叩かれることもあり、決して楽しいものではありませんでしたが、彼はこの経験に感謝しています。
「多くの移民が、アメリカはチャンスの国だと考えている。だから、若いうちから何かを始めさせる親が多いんだ。乱暴な先生で、当時はかなり嫌だったけど、今思えばおかげで規律を学べたし、集中し、鍛錬し、練習することで、何事も上手になることを理解できたんだ」
10歳のある日、Tim は父親がギターを取り出すのを見ます。それまで父親がギターを弾くということを全く知らなかった彼は、その楽曲に興味をそそられました。「父親の BLACK SABBATH のコレクションから曲を選んで、耳コピを始めたんだよね。サバスは耳コピが簡単なんだ。全部Eマイナーのペンタトニックだから。そして、15歳になるころには、ヴァイオリンの気晴らしでギターを始めたのに、完全にヴァイオリンを捨てていたよ」
Tim が中学生の頃は、CHIODOS, TAKING BACK SUNDAY, FROM FIRST TO LASTなどが流行っていて、長い前髪に血行が悪くなるほどきついジーンズをはいた仲間に囲まれていました。
「年上の子たちが夢中になっていたクールなバンドだった。メロディーのいくつかは信じられないし、楽器編成も本当にユニークだと思ったんだ。ビートルズ、ジミヘン、サバスなど、古いロックしか知らなかった僕は、現代のバンドがやっていることを聴いて、特にロック的なソロとより現代的でテクニカルなリフを融合させることに、革命的な感覚を覚えたんだよね」
高校に入ると、ほとんどの同級生がシーンを卒業し、より “普通” の趣味を追求していました。しかし、Tim はまだ WHITECHAPEL を聴くことで満足していました。それでも彼は、”メインストリーム” の音楽と、それがなぜそんなに人気があるのかについて、好奇心を抑えることができなくなったのです。
「僕はメインストリームの曲を聴きに行き、なぜ多くの人々が好きなのかを理解しようとしたんだ。メタルは非常にニッチだから、僕はより多くの人に届く音楽を評価するようになっていった。何が親しみやすいのか、なぜ多くの人が共感するのか、音楽にあまり興味のない人たちでさえも。以来、その理由を分析するようになったんだ。僕自身はメインストリームの音楽に個人的に共感していたわけではなく、ただ馴染もうとしていただけなんだけどね。だけど、好きなもののために仲間はずれにされるのは、いい気分ではないからね。とはいえ、メインストリームの音楽の多くに純粋に感謝するようになったんだ」
こうした影響はやがて、Tim が2010年から活動しているバンド、POLYPHIA で作る音楽にも滲み出るようになりました。新譜 “Remember That You Will Die” は、ポップ、ファンク、EDM、Djent といった多様な絵の具をキャンバスに投影した、カルテットにとって最もカラフルでエクレクティックな作品と言えるでしょう。”オマエはいつか死ぬ。忘れるな” というタイトルは、ラテン語の格言 “Memento Mori” をロックンロールの流儀で翻訳した、羊のメタル皮を着た狼の残虐。
「人間は死が避けられないことを自認しているから、生の限られた時間を使って、永遠に存在し続けることができるものを発明しようとする。芸術家は想像力を駆使して、歴史に残るようなものを創り出すんだ。人工知能が発明され、それがアートやテクノロジーに応用されるようになると、人間の思考とコンピューターの思考のギャップを埋める方法が見つかる。 この2つをつなぐことは、最終的に人間の経験の永続性につながり、それは人間が不老不死になることに最も近いと言えるんだ。アルバムのタイトルは、このアートと結びついているんだ」
つまり、POLYPHIA の発明とはジャンルのステレオタイプを気にかけないこと。それが彼らの成功の礎です。彼らは MySpace でデスコアをイメージさせる10代の若者としてテキサスから現れたましたが、彼らをスターにしたのはそのブレイクダウンではなく、21世紀で最もジャンルを打ち破るリックをいくつも生み出したから。ファンク、マスロック、ヒップホップをミックスしたインストゥルメンタル・ジャムは、YouTube で何百万もの再生と Instagram のフォロワーを獲得しました。
「僕たちは何からでもインスピレーションを受ける。過去数枚のアルバムからギターを取り除き、ドラムとベースだけを聴くとしたら、トラップ・ビートやフューチャー・ベース・ビートが残る。もしギターを外して、演奏しているものにボーカルを加えても、やっぱりそう聴こえるだろう。つまり POLYPHIA でギターっぽいのはギターだけで、あとは人間がプログラムされたパートを演奏しているだけなんだ」
POLYPHIA は、半分プログレッシブ・インストゥルメンタル・バンドで、半分オンライン・インフルエンサーだと言えるのかも知れませんね。バンドが2016年に “Euphoria” のビデオを公開した際、半裸のスーパー・モデルをサムネイル画像として起用したところ、400万人を数える人々にクリックバウトされました。YouTube のトップコメントにはこう書かれています。”彼らはとても賢い。美しい女性の画像を使って、騙して素晴らしいギター・バンドを発見させるなんて。ありがとう”
「POLYPHIA は意識的に2つの非常に異なるオーディエンスを一緒にしようとしたんだ。一つはギター・マニアとオタク。もうひとつは、ジャスティン・ビーバーや ONE DIRECTION のキッズだった僕らと同世代の女の子たちだ。それが目標だったんだけど、何年もかけて、自分たちではない何かになろうとすることを減らして、自分たちでいるようになったんだ。今でも男性中心だけど、ライブでは女の子がたくさんいるんだよ」
Ichika Nito、Mateus Asato、Yvette Youngといった才能あるアーティストを起用した 2018年の3rdアルバム “New Levels New Devils”。彼らのプロモ写真には、メルセデスに腰掛け、まるでクールなキッズのような格好をした4人組の姿が写っていました。テック・メタルを愛する若者たちにとって、それはある意味冒涜的な行動でしたが、Tim は当時、重要なことはクールであることと女の子にモテることだったと胸を張ります。
「2004年の “St Anger” で、METALLICA のプロモを見たんだ。彼らは全員メルセデスでリハーサルスペースに乗り付けたんだ。すげーカッコいいと思ったんだ。その時、自分たちを世界最大かつ最高のメタル・バンドと呼ぶというミームを思いついたんだよ。それに、僕らがもっとビッグになりたいと思っていた頃、ONE DIRECTION はまだ存在感を示していた。僕たちは、”よし、彼らがやっていることをやろう。明らかに女の子が好きなことだ” と思ったんだよな」
“The Most Hated” という明らかにノンギターな EP は、ファンたちの頭を悩ませ、中には逃げ出してしまった人もいました。
「あのリリースで、”俺たちが先にいたから POLYPHIA は俺たちのものだ” みたいな気取った老害的ファンを排除したんだ。彼らは僕たちの以前の作品を気に入っているから、それはそれでよかったんだ。結果として、新しいファンを獲得することができたからね。アマチュアから現在のようなバンドへと成長できたのさ。このアルバムも、半分は既存のファンのため、残りの半分は新しいファンのために作ったよ」
ボーカリストがいないことで、当初は多くのリスナーにとって眉唾ものでしたが、Tim はむしろインストであることがバンドに大きな創造性と可能性をもたらしたと考えています。
「より多才になれるし、より多くのコラボレーションが可能になるんだ。僕が本当に理想としているビジネスモデルは、EDMがすごく流行っていた2015年から16年ごろ、Zedd と Alessia Cara みたいな DJ とポップスターとのコラボも盛んで、同じ DJ があらゆるポップスターとコラボしてスターのキャリアを飛躍させるようなシステム。POLYPHIA のアイデアは DJ なんだよね。どんなシンガー、ラッパー、メタル・ボーカリスト、楽器奏者、DJ、プロデューサーともコラボできるんだ」
Chino Moreno や Steve Vai、ラッパーの Killstation や $not、ポップスターの Sophia Black など、”Remember That You Will Die” の豪華なゲスト陣を見れば、POLYPHIA の生み出したモデル・ケース、その影響力が浮き彫りとなります。