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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【W.E.T. : EARTHRAGE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROBERT SÄLL OF W.E.T. !!

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Melodic Hard Super-Stars, W.E.T. Has Just Released Definitely One Of The Best Record In The Genre “Earthrage” !! Are You Ready For “Burn” And “Watch Their Fire” ?

DISC REVIEW “EARTHRAGE”

WORK OF ART, ECLIPSE, TALISMAN。メロディックハードの幾星霜に足跡を刻んだ三雄を頭文字に戴くスーパーグループ W.E.T. が、捲土重来を期すジャンルの王政復古 “Earthrage” をリリースしました!!瑞々しいアリーナロックの雄々しき鼓動は、地平の年輪に印されしかつての栄光を確かに呼び覚まします。
WORK OF ART と ECLIPSE。2000年代以降、メロディックハード希望の星は明らかにこの両雄でした。片や洗練の極みを尽くす AOR、片や情熱と澄明のハードロック。
しかしインタビューで語ったように、スウェーデンの同じ学校から輩出された2つの綺羅星 “W” の象徴 Robert Säll と “E” の象徴 Erik Mårtensson は、至上のメロディーを宿すシンクロニティー、宿命の双子星だったのです。実際、2人の邂逅は、AOR とハードロックの清新なる渾融を導き、ジャンルのレジェンド Jeff Scott Soto の熱情を伴って唯一無二の W.E.T. カラーを抽出することとなりました。
故に Robert の 「最初の2枚では、僕と Erik がかなりコラボレートして楽曲を書いていたんだ。だけど、今回の作品のソングライティングに僕は全く関わらなかったんだよ。」という発言はある意味大きな驚きでした。
それは何より、”Earthrage” が疑いようもなくバンドの最高傑作となり得たのは、前作 “Rise Up” で顕著であった硬質なサウンド、メタルへの接近をリセットし、Robert の得意とする80年代初頭のオーガニックなメロディックロックを指標したからに他ならないと感じていたからです。
つまり、「”Earthrage” を制作する際に Erik と話し合ってあのオーガニックなスタイルを取り戻すべきだと感じた訳さ。」と語るように、もちろん Robert から方向性についてのサジェスチョンはあったにせよ、”Earthrage” における奇跡にも思える有機的な旋律の蒸留、ハーモニーの醸造、ダイナミズムの精錬には改めて責任を一手に負った Erik Mårtensson というコンポーザーの開花と成熟を感じざるを得ませんね。
予兆は充分にありました。ECLIPSE のみならず、NORDIC UNION, AMMUNITION 等、歴戦の猛者達との凌ぎ合いは、明らかに Erik の持つ作曲術の幅を押し広げ、効果的で印象に残るコーラスパートの建築法を実戦の中で磨き上げて行ったのですから。
アルバムオープナー、”Watch The Fire” はまさに Erik とバンドが到達した新たな高みの炎。冒頭に炸裂する生の質感を帯びた強固なリズムと、期待感に満ちたギターリフはまさしく ECLIPSE 人脈から Magnus Henriksson & Robban Bäck 参加の功名。凛として行軍するヴァースでは Jeff と Erik がボーカルを分け合い、さながら DEEP PUPLE の如き伝統のインテンスを見せつけます。
コーラスパートは巨大なフックを宿す獣。トップフォームの Jeff は、久方振りに発揮する本領で徹頭徹尾リスナーのシンガロングを誘うのです。そしてパズルのラストピースは、Desmond Child 譲りのアンセミックなチャントでした。
BOSTON の奥深き音響に Robert のキーボードが映える “Kings on Thunder Road”、MR. BIG の “Nothing But Love” を彷彿とさせるストリングスの魔法 “Elegantly Wasted” を経て辿り着く “Urgent” はアルバムを象徴する楽曲かも知れませんね。
同タイトルのヒットソングを持つ FOREIGNER の哀愁とメジャー感を、コンテンポラリーなサウンドと切れ味で現代へと昇華した楽曲は、あまりに扇情的。
畳み掛けるように SURVIVOR の理想と美学を胸いっぱいに吸い込んだ “Dangerous” で、リスナーの感情は須らく解放され絶対的なカタルシスへと到達するはずです。
そうして一部の隙も無駄もないメロディックハードの殿堂は、”決して終わらない、引き返せない” 夢の続き “The Never-Ending Retraceable Dream” でその幕を閉じました。楽曲のムードが Jeff にとって “引き返せない” 夢である JOURNEY を想起させるのは偶然でしょうか、意図的でしょうか?
今回弊誌では、WORK OF ART でも活躍する稀代のコンポーザー Robert Säll にインタビューを行うことが出来ました。想像以上に明け透けな発言は、しかしだからこそ興味深い取材となっているはずです。「メロディックハードロックがまたチャートの頂点に戻れるとは思えないね。そして僕はそれで構わないと思っているんだよ。」どうぞ!!

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W.E.T. “EARTRAGE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUKES OF THE ORIENT : DUKES OF THE ORIENT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERIK NORLANDER FROM DUKES OF THE ORIENT !!

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John Payne & Erik Norlander, A Journey That Started With The Supergroup Asia Gives You The Next Chapter Of Legacy, With Dukes Of The Orient !!

DISC REVIEW “DUKES OF THE ORIENT”

誇り高きプログレッシブの遺産と、陰りを帯びた伝統のメロディーを受け継ぐ稀代のミッシングリンク John Payne & Erik Norlander。両雄の鼓動と哲学が交差する DUKES OF THE ORIENT は、凛とした王の血脈を真率に後の世へと伝えます。
巨星 John Wetton の逝去こそが DUKES OF THE ORIENT 生誕のきっかけでした。長らく Wetton の後任として ASIA を牽引し孤軍奮闘を重ねた勇夫 John Payne は、厳しく比較され続けたマエストロの死を機縁に ASIA の金看板を降ろす決断を下します。それは遂に訪れた、彼に巣食う潜在的重圧からの解放だったのかも知れません。
ご存知の通り、ASIA は Payne がフロントを務めた “Paysia” の不遇もあり2006年にオリジナルメンバーでのリユニオンを果たしています。マザーシップから突如として下船を余儀なくされた Payne は、Geoff Downes を除く後期 “Paysia” のメンバー Guthrie Govan, Jay Schellen を伴い、日本が誇る鍵盤の大家、奥本亮氏をリクルートし新たなプロジェクト GPS を立ち上げ唯一のアルバム “Window to the Soul” をリリースしたのです。
“Paysia” の作品となるはずだった “Architect of Time” から楽曲を流用した “Window to the Soul” はメンバーの卓越した技量を反映した充実作でしたが、結局は Payne が ASIA の呪縛から解き放たれることはなく、GPS はオリジナル ASIA の了承を経て ASIA の楽曲をプレイする ASIA Featuring John Payne へと形を変えて存続することになったのです。
ASIA Featuring John Payne で John と運命の邂逅を果たしたのがキーボードウィザード Erik Norlander でした。妻 Lana Lane の作品をはじめ、自身のバンド ROCKET SCIENTISTS, DIO の落胤 LAST IN LINE 等でスマートかつロマンティックな鍵盤捌きを披露するツボを十二分に心得た名コンポーザーとの出会いは、10年という遥かなる時を超え ASIA の名と別れを告げた素晴らしき DUKES OF THE ORIENT の音楽へと繋がることとなりました。(但し、ASIA Featuring John Payne もライブアクトとしては存続するそう。)
異論は多々あるでしょうが、Payne をフロントに据えた ASIA は、少なくとも音楽的には充実したスティントでした。Downes/Payne のコラボレーションは、90年代から00年代初頭というメロディック/プログロック不毛の時代に、確かに命を繫ぐ質実なる実りをもたらしました。ただ、ASIA らしいロマンチシズムから意図的に距離を置き、Payne の野性味溢れる声質をハード&キャッチーに活かす選択は、忠実なファンやレーベルからのサポートをも遠ざける結果になりました。プログレッシブポップが花開く近年を鑑みれば或いは時期尚早だったのかも知れませんね。
ASIA の名を返還した DUKES OF THE ORIENT で John Payne は自由でした。John Wetton との差異を殊更強調する必要もなく、自らの内なる ASIA 全てを表現することが出来たのかも知れませんね。
実際、”血の絆” を響かせるオープナー “Brother In Arms” はオリジナル ASIA と “Paysia” がナチュラルに融合したバンドのマイルストーンだと言えるでしょう。ハードでダイナミックなアレンジや Payne のトレードマークとも言える重厚なコーラスワークは “Aria” の頃の “Paysia” を、溢れ出る哀愁に叙情、ロマンチシズムはオリジナル ASIA をそれぞれ喚起させ双方の美点を5分間のドラマへと昇華します。
同様に “True Colors” の劇的なメロディーを宿す “Strange Days” では、繊細なアレンジメント、アンセミックなキーボード、Guthrie Govan の傑出したギターワークで “Aura” で示した “Paysia” の可能性をも明確に示唆します。
勿論、オリジナル ASIA のコードセクエンスや “ダウンズサウンド” を惜しみなく披露する “Time Waits For No One” “Fourth of July” 等はやり過ぎの感もありますが、同時に荘厳にして華麗、好き者には堪らない胸踊る完成度であることも事実。
加えて、Erik が 「僕は ELP, YES, KING CRIMSON, JETHRO TULL, PROCOL HARUM といった偉大なバンドたち、70年代のブリティッシュプログと共に育ったんだ。それこそが僕の音楽的なルーツだよ。同じようなルーツを ASIA も持っているんだ。」 と語るように、”Fourth of July” のドラマティックな後半部分では、ASIA よりも “プログレッシブ” な先人達の遺産を巧みに消化し、8分間のエピックに相応しき構成と展開を築き上げているのですから感服の一言です。
“A Sorrow’s Crown”, “Give Another Reason” で魅せるチャーチオルガンやスパニッシュギターの躍動感も DUKES OF THE ORIENT の存在感を一際掻き立て、Jay Schellen のコンテンポラリーかつ安定感のあるドラミング、Rodney Matthews の美しきアートワークと共に UK プログレッシブの伝統と血の繋がりを強く主張しています。
少なくとも、90年代からシーンを見守って来たファンであれば、Payne & Norlander 2人の才能や存在自体があまりにも過小評価されていることは憂慮しているはずです。”Dukes of the Orient” にはその評価を覆すだけの稀有なる魔法が存在するのでしょうか?”Only Time Will Tell”。時が来ればその答えは出るはずです。きっと良い方向に。
今回弊誌では、Erik Norlander にインタビューを行うことが出来ました。奥様からもメッセージをいただけましたので、Lana Lane ファンも必読です。どうぞ!!

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DUKES OF THE ORIENT “DUKES OF THE ORIENT : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BELL WITCH : MIRROR REAPER】2017 X’MAS SPECIALL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DYLAN DESMOND OF BELL WITCH !!

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Seattle Based Doom-duo, Bell Witch Takes You Poetic And Philosophical Deathly Journey With Timless Masterpiece “Mirror Reaper” !!

DISC REVIEW “MIRROR REAPER”

シアトルに居を置くベース/ドラムスのドゥームデュオ BELL WITCH が、1曲83分の暗重なる叙事詩 “Mirror Reaper” をリリースしました!!生と死を投影する難解なるあわせ鏡は、昨年逝去した前ドラマー Adrien Guerra へ捧げるトリビュートとしてその崇高なるメランコリー、哀しみの影を増しています。
紫煙のヘヴィートリオ SLEEP が1曲が一時間にも及ぶスロウでアトモスフェリックな反芻の集合体 “Dopesmoker” をリリースして以来、ドゥーム/スラッジ/ドローンのフィールドはメタルの実験性を最も反映する先端世界の一つとして、創造性のリミットを解除し、定石を覆しながらその歩みを続けて来ていました。
勿論、JESU や BORIS のエピカルな長編も、ジャンルの音楽性とは対極に位置する瑞々しくも天真爛漫なムードを追い風に創造された濃厚なサウンドスケープであったに違いありませんね。それでも、BELL WITCH の新たなチャレンジ、1曲83分の野心は想像を遥かに超えるサプライズでした。
“Mirror Reaper” を形作る要素自体は、前作から大きく変化を遂げてはいません。確かにヘヴィーなレコードですが、ランニングタイムの大半はラウドでもブルータルでもなく非常にオープンでスペーシー。ベース、ドラムス、ボーカルにハモンドB3が生み出すその空間に巣食うは巨大な絶望、悲哀と、全てを掻き集めても片手で掬い取れるほど希少なる希望。
しかし Dylan が 「誰にでも簡単に作れるようなレコードにする必要は全くないと決めたんだよ。楽曲を別々に分けてしまうと、説得力が失われる気がしたんだ。」 と語るように、48分の “As Above” と35分の “So Below” が自然と連続して織り成す構成の進化、常識の破壊は、より妥協のない緻密なコンポジション、Adrian の死に手向けるメランコリックな花束と共に、生と死の安直でステレオタイプな二分法へ疑問を投げかけ、”死のメディテーション” を指標しているのです。
アルバムは、アトモスフィアの波に溺れる6弦ベースの幽玄な調べで幕を開けます。実際、「Michael Hedges のギタープレイは実に参考になったね。」 と語るバンドのマスターマインド Dylan Desmond のベース捌きは驚異的で卓越しています。
左手のみならず、右手を強い感情と共にフレットへと叩きつけ、時に滑らし、時に揺らして生み出すトーンは唯一無二。
ギタリストの不在を感じさせない、むしろそれを不必要と思わせる、独特のウォームでメロディックなマルチディメンショナルサウンドは、新たなベースヒーローの誕生を強くアピールし、同時に崇高な意思と純潔なるムードをアルバムにもたらしていますね。
加えて、地を這うグロウルとミスティックな詠唱のコントラスト、SIGUR ROS を想起させるファルセットのハーモニー、ハモンドオルガンのオーガニックなサステイン、Jesse のセットから流れ出すシンバルの漣。アルバムは、瞑想の荒野、空虚な嵐、美麗なる責め苦を経て、いつしか全てが緩やかな生命と音の大河に注がれドゥームの奇跡、反復の魔術を完璧に創出します。そして挿入される亡き Adrian のボーカルは、”生と死の間に存在する共通要素” “ゴースト” を信じるバンド独特の素晴らしきトリビュートなのでしょう。
NEUROSIS, SWANS などと共闘を続ける鬼才 Billy Anderson のインプットにも触れない訳にはいきませんね。Billy ほど暗闇と混沌、そして壮大なサウンドを巧みに精製するプロデューサーは決して多くはないでしょう。そしてこの作品ほど、型破りで威厳を湛えたアンタッチャブルなメタルレコードも実際ほとんど存在しないはずです。
時間、場所、もしかしたら自分自身さえも忘れてただ広大な闇の迷宮で彷徨うだけの地獄、もしくは天国。コマーシャルと最も遠い場所にあるアートのエリジウム。
そして、詩的で哲学的な “死の旅路” は、作品で最も哀しく最も愛すべきポートレート、バンドのコラボレーター Erik Moggridge の消え入るような歌唱で幕を閉じるのです。
今回弊誌では、Dylan Desmond にインタビューを行うことが出来ました。海外メタル誌では軒並みベストの上位に撰されている傑作。そして弊誌にとっては、最もクリスマスらしい作品です。どうぞ!!

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BELL WITCH “MIRROR REAPER” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VEIL OF MAYA : FALSE IDOL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARC OKUBO OF VEIL OF MAYA !!

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Sumerian Giant, Chicago Based Tech-Metal Quartet, Veil Of Maya Opens New Chapter Of Metal With Their Game-Changing New Record “False Idol” !!

DISC REVIEW “FALSE IDOL”

スメリアンの巨人、プログレッシブデスコアの先導者 VEIL OF MAYA が、メタルの領域を拡大しエクレクティックに羽ばたく新作 “False Idol” をリリースしました!!オーガニックかつ複雑な、アートロックやアヴァンギャルドの世界へとより接近した真なるメタルアイドルは、その偉大なる変革を推し進めて行きます。
00年代の中盤から、モダンプログメタル革命の中核に Sumerian Records が存在し続けることは明らかです。BORN OF OSIRIS, ANIMALS AS LEADERS, PERIPHERY, そして VEIL OF MAYA。”スメリアンロースター” は常にシーンの最前線に立ち、多様でコンテンポラリーなメタルの革新を色鮮やかに後押しし続けて来たのです。
中でもこのシカゴのカルテットが2008年に残した “The Common Man’s Collapse” の印象は鮮烈です。重圧のブレイクにビートダウン。デスコアサウンドを要としつつ、変幻自在なテンポと拍子、カオティックなデザインとトリッキーなアイデア全てを共存させて、コンテンポラリーかつ不可思議な独自のプログレッシブワールドでリスナーを魅了したのです。
シュメール帝国の拡大と歩調を合わせるかの如く、アステカの名を冠したバンドはそのサウンドを磨き上げ、ワイドに進化を続けています。グロウルとクリーンを併用する新ボーカル Lukas Magyar が加入し、ポップでキャッチーなイメージを開拓した前作 “Matriarch” は確かに驚きでしたが、決してその大変革は彼らの創造性を損なうものではありませんでした。
Marc が “Survive” と語るように、”Mikasa” という名曲とともに、バンドは自由な翼を手にしたようにも思えます。そしてよりダークでミステリアス、複雑性とダイナミズムを増した “False Idol” はポップとアートの枠を超えダイハードなファンをも唸らせるはずです。
「力に目覚めた男がダークサイドへと落ちていくフィクションなんだ。」 Marc は “False Idol” のテーマについてそう語ります。このアイデアが Lukas のものであることも、バンドの現在の一体感を物語りますが、”False Idol” が大統領ドナルド・トランプを隠喩していることは想像に難くありませんね。そしておそらくは、アルバムを支配する緊張の陰はそこに起因しているのでしょう。
電子の海で揺蕩うコズミックなイントロ “Lull” に導かれ幕を開けるオープナー “Fructure” はバンドのクリエイティブな進化の象徴です。”Unbreakable” を再訪するかのようなクリケットを活かしたマスマティカルでグリッチーなギターリフと、アトモスフェリックなシンセサウンドの奇想天外な融合は、メタルからの Kendrick Lamar や Flying Lotus への回答とも言えるほどに瑞々しく創造的です。
「実際、僕は最近はあまりメタルを聴いていないんだよ。だから君がコンテンポラリーなジャズや、Hip Hop、エレクトロニカなんかの影響を発見して言及してくれたことは嬉しいね。」 Marc はそう語ります。「少なくとも僕は、新たな要素を加えることは、メタルの進化を促す良い方法だと感じているよ。」 とも。
確かにアルバムには、現代的なジャンルのクロスオーバー、音楽のモダニズムを感じる場面が多く存在します。アグレッシブで複雑怪奇な Marc のリフワークと、光のシンセに映えるLukas のソフトでメランコリックなウィスパーは、”Doublespeak”, “Overthrow” と聴き進めるに従って、より絶妙なコントラストとインテンスを描き始めるのです。
そしてアルバムのハイライト、ダイナミズムの洪水は “Whistleblower” で訪れます。近年、Tigran Hamasyan へのリスペクトを公言してはばからない Marc のコンポジションは、遂にデスコアの猛進とジャズの優美な響きを同時に抱き締めました。Lukas の激情とメランコリーを行き来するボーカリゼーションも相俟って、イマジネーションを激しく刺激するアヴァンギャルドな楽曲はメタルの新たな可能性を指し示す期待感に満ち溢れてています。
また、インタビューにもある通り、Marc のゲームミュージックへの傾倒ぶりを見れば、初期の VEIL OF MAYA が究極にメカニカルでチップチューンライクな構成やリフを有していたことにも納得がいきます。つまり “False Idol” はバンドのオーガニックな変化の証。
伸びやかでキャッチーなクリーンボーカルのみで設計したポジティブな “Manichee”、Jacob Collier を思わせるコーラスのタペストリーが印象的な “Citadel”、そしてアルバムを締めくくるアンセミックな “Livestream”。全てはアンビエントなストリングスがバンドのデザイン、エモーションへナチュラルに溶け込んだ新機軸。同時にそれは、すでに “Djentrain” を降りたバンドの新たなる目的地なのかも知れませんね。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド Marc Okubo にインタビューを行うことが出来ました。今年の2月には、Realising Media の劇的な招聘で来日公演を成功させています。「いつか Djent が死ぬその時も、きっと僕たちは VEIL OF MAYA らしいサウンドの音楽を作っているだろうね。」 どうぞ!!

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VEIL OF MAYA “FALSE IDOL” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DAVE KERZNER : STATIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVE KERZNER !!

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One Of The Most Creative Artists In The Progressive Rock World Now, Dave Kerzner Becomes A Bridge From Retro to Modern, With His Most Ambitious Work, “Static” !!

DISC REVIEW “STATIC”

レトロとモダン、そして米国と英国の架け橋を演ずる、マイアミのプログレッシブコンダクター Dave Kerzner が濃密なるロックオペラ “Static” をリリースしました!!”アクセシブル” を座右の銘とする天分豊かなコンポーザー/マルチプレイヤーは、現代社会の混沌と真なる幸福の追求をそのキャッチーなサウンドデザインで雄弁に語り尽くします。
近年のプログシーンで、Dave ほど八面六臂な活躍を見せるタレントはいないでしょう。Steven Wilson のマスターピース “Grace For Drowning” にサウンドデザインで貢献し、Steve Hackett の “Genesis Revisited II” にも参加。その GENESIS、Phil Collins の息子 Simon Collins と結成した SOUND OF CONTACT でベストニューカマーを受賞する一方、MOSTLY AUTUMN の才媛 Heather Findlay と結成した MANTRA VEGA でも高い評価を勝ち取ります。
何より、亡き Keith Emerson もゲスト参加した 2014 年のソロデビュー作品 “New World” で提示した壮大なコンセプトと世界観、美麗なメロディーと緻密なデザインは、多くのプログロックファンを魅了したのです。
二年の月日を経て届けられた新作ソロアルバム “Static” も同様に近未来の重厚なコンセプトを内包しています。ただし、”New World” が砂漠化した世界での冒険譚、躍動する物語であったのに対して “Static” はより人間の内面へと深くフォーカスしているのです。
Dave は短絡的かつ享楽的な SNS や TV、ドラッグやアルコールに捌け口を求める現代社会を嘆き、 「最近は誰もが自分が正しいと思う傾向があって、とにかく自分の意見を主張するね。僕たちすべてが偽善者であることも、不快な真実の一つだよ。僕だって時には偽善者だし。それはほとんど不可避なことに思えるよ。」 とその混沌を自らの罪も交えて語ります。しかし同時に、その事実を認識し、日常生活のバランスを考慮することから幸福の価値を変えていこうとも提案しているのです。
妖しくも印象的なプレリュードで幕を開けるアルバムは、”Hypocrites” で人間のエゴイスティックな内面を露わにします。オルタナティブなエッジとダークなムードはまさにアルバムの皮肉なコンセプトを体現し、同時に甘美で気怠いメロディーがリスナーをディストピア “遊園地の街” へと誘います。
Dave Gilmour が憑依したかのような Kerzner のボーカルに、幾重にもコーラスをレイヤーする巧みな手法は Alan Parsons にも似て、まるで砂糖のコーティングの如くスイートでスーパーキャッチーな瞬間をもたらしていますね。
Dave のピアニストとしての実力が遺憾無く発揮された “Static”, “Trust” では、彼のソフィスティケートされた作曲術、スキルが自身の理想と呼応し見事に開花しています。あくまでプログロックの枠組みの中で “アクセシブル” 受け入れ易い音楽性や歌詞に拘るコンポーザー Dave Kerzner は同時に、アルバムを映画に見立てて全体のムードにプライオリティーを置くある意味ディレクター的なポジションをも兼ねています。
「実際、より明るく高揚した楽曲を何曲か、ただフィットしないからという理由で外さなければならなかったくらいさ。」 と語る通り、音楽監督が望んでメランコリックな一面を強調した美麗なる調べのバラードは、アルバムを一つのアートと捉えた GENESIS や PINK FLOYD の創造性と Steven Wilson や ANATHEMA のアトモスフィア、そしてコンテンポラリーなメインストリームの魅力を同時に従えシーンの過去と現在の架け橋となっているのです。勿論、チェロを効果的に使用したドリーミーな “Trust” では特に John Lennon へのリスペクトが深い愛情と共に表層化していることも記しておくべきですね。
同様に、BIG BIG TRAIN の Nick D’Virgilio と GENESIS の Steve Hackett がゲスト参加した “Dirty Soap Box” は顕著ですが、アルバムを通してエレクトロニカサウンドやノイズを縦横無尽に張り巡らせ、効果的にディストピアを演出するそのアイデアからも彼の豊かなイマジネーションを感じ取ることが出来るのです。
75分の壮大なるプログレッシブオペラは、17分に及ぶラストエピック “The Carnival of Modern Life” でその幕を閉じます。よりカオティックに “Hypocrites” のテーマへと回帰する実にプログロックらしいこのクローザーを聴けば、メロディー、ハーモニー、オーケストレーション、ダイナミズム、そしてエモーションをどれ一つ欠くことなく細部にまで情熱と知性を注ぐ Dave の類稀なる才能が伝わるはずです。「僕は現実を砂糖でコーティングするような真似はあまりしたくないんだ。」と語る Dave の音楽はどこまでも真摯で正直にその進化を続けていくのです。
今回弊誌では Dave Kerzner にインタビューを行うことが出来ました。様々な音楽プロジェクトを抱えながら、二つの会社で CEO を務める多能な才気。どうぞ!!

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DAVE KERZNER “STATIC” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XANTHOCHROID : OF ERTHE AND AXEN ACT I & Ⅱ】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SAM MEADOR OF XANTHOCHROID !!

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More Extreme, Yet More Delicate. More Vast, Yet More Intimate. Xanthochroid’s “Of Erthe and Axen” Attempts To Further Broaden The “Cinematic Black Metal” Horizons !!

DISC REVIEW “OF ERTHE AND AXEN”

プログレッシブエクストリームのイノベーションを志望する、南カリフォルニアの野心的なカルテット XANTHOCHROID が至高なる2枚組の新作 “Of Erthe and Axen” をリリースしました!! “ロードオブザリング” や “ゼルダの伝説 時のオカリナ” にインスピレーションを得たというその壮麗かつ耽美なファンタジックワールドは、”シネマティックブラックメタル” の呼称に相応しいロマンとイマジネーションを運びます。
ブラックメタル、プログメタル、プログロック、シンフォニック、フォーク、クラシカル。XANTHOCHROID のカラフルで奥深いタペストリーは、OPETH, EMPEROR, ENSLAVED, JETHRO TULL, RENAISSANCE の豊潤なるミックスなどとも評されます。ただし、デビュー作から続く壮観なコンセプトストーリーをベースとした、大作映画や RPG のサウンドトラック的なアプローチは確かにバンドの確固たるアイデンティティーとなっているのです。
XANTHOCHROID が紡ぐ “Etymos” の物語は、王の血を引く Thanos と Sindir (後に Ereptor) 兄弟による闘争憚。”Of Erthe and Axen” では、”Incultus”, “Blessed He With Boils” 以前、二人の子供時代の出来事を、愛、嫉妬、魔法、戦争、そして欺瞞のエッセンスを交えつつ克明に描いているのです。
“Etymos” のエピック第一幕は、壮大なオーケストレーションと繊細でフォーキッシュな二つの小曲で幕を開けます。作品の全体像を暗示するような意を異にする二つのイントロダクションは、多彩な楽器の導入と新加入の女性シンガー Ali Meador の美麗なる歌声を披露し、共にバンドの拡がる可能性を伝えていますね。
不穏で不気味なディストーションサウンドが静寂を切り裂く “To Higher Climes Where Few Might Stand” はまさに XANTHOCHROID の真骨頂。EMPEROR や OPETH の面影を、クワイアやシンセサイザーで大仰にドラマティックに味付けしたシアトリカルな8分間は、Sam の邪悪なグロウルと伸びやかなクリーンを羅針盤に、ジギルとハイドの如く静と動を行き来します。6拍子のフォルクローレが、ホーンとストリングスを伴って鮮やかにメタリックな華を満開とする中盤の超展開は筆舌に尽くし難いほど見事です。
“To Souls Distant and Dreaming” で DREAM THEATER の遺伝子を垣間見せた後、Sam のパーカッシブギターは進化の証である “In Deep and Wooded Forests of My Youth” を導きます。マンドリンやアコーディオン、フルートを取り入れた JETHRO TULL をも想起させるフォーキーでロマンチックなデュエットは、朗々とした Ali と Sam の歌声でリスナーを月明かりが差し込む深き森、木々の騒めきへと誘うのです。
「”Act Ⅱ” は “Act I” に比べてメタルの要素が強調され、より長いアルバムになっているね。」 とSam が語るように、アルバムの第二幕はアートワークの変化も伴って、大円団に向けてその硬質と絢爛を増して行きます。
男声と女声のクワイアとピアノの流麗な響をイントロとしたあまりに豪壮でドラマティックな “Through Chains That Drag Us Downward” はその象徴でしょう。Sam の背徳的アジテイトや時折挿入されるブラストビートは、確かにバンドのルーツを示しますが、とは言えあまりに拡大された楽曲全体のデザインを鑑みれば、Sam が 「自分たちをブラックメタルと呼んでいるのはジョークのようなもの」 と語ることにも頷けます。
実際、Sam の歌唱が Hansi Kursch を思わせる “Of Aching Empty Pain” などではシンフォニック/シネマティックメタルのパイオニア BLIND GUARDIAN の領域、絢爛さにまで接近しているようにも思えます。
アルバムは、クラッシックなオペラの如く華麗で重厚な11分の大曲 “Toward Truth and Reconciliation” で濃密でダイナミックな作品をリトレイスするかのように幕を閉じました。
今回弊誌では、ボーカル、ギター、キーボードを担当する Sam Meador にインタビューを行うことが出来ました。今回も Jens Bogren がマスタリングを担当しています。全てを DIY で賄っているため知名度こそ低いものの、そのクオリティーは最上級。どうぞ!!

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XANTHOCHROID “OF ERTHE AND AXEN ACT I & Ⅱ” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GIZMODROME : GIZMODROME】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADRIAN BELEW OF GIZMODROME !!

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The Police, PFM, Level 42, And King Crimson Got Together, Making An Strange But Absolutely Fantastic Record As Gizmodrome !!

DISC REVIEW “GIZMODROME”

ロック四半世紀の時を刻む、四人の傑出したミュージシャンが集結したスーパーグループ GIZMODROME が唯一無二の色彩を放つデビュー作 “Gizmodrome” をリリースしました!!マエストロが紡ぐ多彩かつユニークな “パンクプログ” “プログレッシブポップ” の造形は、ある種定型化したシーンに贖いがたい魅力的な誘惑を放ちます。
THE POLICE の大黒柱 Stewart Copeland を中心として、鍵盤の魔術師 PFM の Vittorio Cosma、LEVEL 42 のスラップキング Mark King、そして KING CRIMSON のギターイノベーター Adrian Belew が参集。GIZMODROME はパンク、ポップ、ニューウェーブが花開いた80年代初頭の風をプログレッシブのテクニックに乗せて運ぶ素晴らしき “Gizmo” “仕掛け” の体現者だと言えるでしょう。
「レコーディングの鍵は素早さだったね。長々と時間をかけることなく、ただ楽しんで行ったんだ。」 と Adrian が語る通り、アルバムは音楽本来のワクワク感、楽しさ、多幸感に満ちています。
アルバムオープナー、”Zombies In The Mall” は GIZMODROME の “生態” を目の当たりに出来る楽曲かも知れませんね。THE POLICE が遺したポップパンクの遺産と、LEVEL 42 のジャズファンクが、プログレッシブなポルカの上でダンスを踊る奇跡。Stewart 自らがプレイしたというトロンボーン、Adrian の巧みなアコースティックギターも重要なアクセントになっていますね。
実際、バンドはポップパンク、ロック、ジャズファンク、プログレッシブという異なるジャンルから一名づつ選抜されたハイブリッドな “多音籍軍”の 顔を持ちます。そしてその4人の選ばれしヴァーチュオーソは究極に楽しみながら、ユーモラスなまでにエクレクティックな音楽のショーケースを披露しているのです。
“イタリア” というロケーションが、この自由で楽観的なムードに更なる追い風となった可能性もありますね。Stewart もレコーディングにおいて、話題の大半が音楽ではなく、パスタやピザについてだったと認めています。
勿論、GIZMODROME のフレキシビリティーが Frank Zappa に通じると感じるリスナーも多いでしょう。事実、レコードの大部分でリードボーカルを務めた Stewart のモノトーンな声質やイントネーションは、Zappa のそれと近いようにも思えます。
インタビューで Adrian が語る通り、Adrian & King のメロディックなコーラスが Stewart のボーカルを際立たせ、VAN HALEN におけるダイヤモンドデイヴの如く極上のストーリーテラーに仕立てあげている部分も、マルチに歌えるバンドならではの実に興味深いチャレンジですね。”Summer is Coming” の BEACH BOYS もしくは TOTO を想起させるコーラスワークは、まさに GIZMODROME の豊潤な可能性の一つだと言えるでしょう。
もしかしたら GIZMODROME は最も成功した音楽の “Back to the Future” なのかも知れません。「僕は二つの要素をミックスするのが好きだね。テクノロジーとオーガニックをね。」 と Adrian が語るように、確かに “Gizmodrome” には古き良き時代の大らかな空気と、現代的なサウンド、コンテンポラリーで多様な創造性のエッセンスが奇想天外に共存しています。
“American People” を文字ったユーモラスな “Amaka Pipa” はまさにその象徴でしょう。Stewart のトライバルなリズムは、Adrian の異質でしかし温もりのある “Foxtone” と溶け合いラップ調のボーカルを誘います。ジャズのビートやブルースの精神まで内包したユニークかつ多彩な一曲は、ルーズで発想豊かなジャムセッションのムードとモダンなデザインを共有するバンドのランドマークなのかも知れませんね。
それにしても Rolling Stone 誌 “100 Greatest Drummers of All Time” で10位にランクした Stewart のドラミングはやはり伊達ではありませんね。左利きにも関わらず右利きのセットでプレイする彼の稀有なスタイルは、スネア、リムショット、ハイハットのダイナミズムに特別な魔法をかけ、THE POLICE 時代から培ったレゲエを初めとする世界中のリズムを見事にロックと融合させています。”Gizmodrome” の楽曲の大半がワールドミュージックを隠し味としているのは、Stewart がメインコンポーザーであることと密接にリンクしているのです。
今回弊誌では Adrian Belew にインタビューを行うことが出来ました。”Stay Ready” は象徴的ですが、彼の風変わりでイタズラ心満載のリックがなければ作品の魅力は半減していたことでしょう。さらには KING CRIMSON, Robert Fripp に対する愛憎入りまじる複雑な感情を、これほど顕にしたインタビューは世界でも初めてかも知れません。来年4月には来日公演も決定しています。どうぞ!!

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GIZMODROME “GIZMODROME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SONS OF APOLLO : PSYCHOTIC SYMPHONY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DEREK SHERINIAN FROM SONS OF APOLLO !!

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Prog-Metal Super Group, Sons Of Apollo Brings A Lethal Combination Between True Rock N’ Roll Swagger And The Virtuosity With Amazing Debut Record “Psychotic Symphony” !!

DISC REVIEW “PSYCHOTIC SYMPHONY”

古今無双の勇士達が肝胆相照らすメタル/ロックシーンのドリームチーム SONS OF APOLLO が、威風堂々たるデビュー作 “Psychotic Symphony” をリリースしました!!夢劇場のロックサイドを司り、そして幽寂に退場した二人のソウルメイトを軸として紡がれる類まれなるシンフォニーは、芸術の神アポロンの遺伝子を稠密なまでに引き継いでいるのです。
“God of The Drums”, Mike Portnoy がプログメタルの天照帝 DREAM THEATER を半ば追われるような形で後にしたのは2010年のことでした。残念ながら自身の核とする大切な場所を離れざるを得なくなった Mike でしたが、しかし以降も前向きに幅広くその唯一無二なるクリエイティビティを発揮して行きます。
SONS OF APOLLO の種が撒かれたのは2012年。Instru-metal を追求するため結成した Portnoy, Sheehan, MacAlpine, Sherinian (PSMS) で、Mike は98年に同じく DREAM THEATER を離れていた Derek “ディストーション・キーボード” Sherinian と再び相見えることとなったのです。
元々、DREAM THEATER においてロックなアティテュードを最も体現していた “The Del Fuvio Brothers”。再度、意気投合した二人は Billy と Mike の THE WINERY DOGS が休止に向かうと新天地創造へと動き出したのです。
「君たちは今夜、歴史を目撃している。」 Yngwie Malmsteen や TALISMAN の活躍で知られる “Voice of Hard Rock”、Jeff Scott Soto は、バンドのファーストギグとなった David Z のトリビュートライブでまずそう高らかに宣言しました。そして確かに “Psychotic Symphony” は、彼らの “過去”を目撃し愛してきたファンにとって、意義深い新たな歴史の1ページに仕上がりました。
アルバムはオリエンタルなイントロが印象的なオープナー “God of The Sun” で早くも一つのクライマックスを迎えます。Jeff の雄々しき歌唱と Mike のシグニチャーフィルが映える11分のエピックにして三部構成の組曲。まさにファンがバンドに待ち望む全てを叶えた濃密なるプログメタル絵巻は、静と動、美麗と衝動、プログレッシブとメタルをすべからく飲み込み卓越した技術と表現力でリスナーの心を酔わせます。
とは言え、アルバムを聴き進めれば、SONS OF APOLLO の本質がプログメタルよりもルーツであるクラッシックなハードロックやプログロックに一層焦点を当てていることに気づくでしょう。
“Coming Home” は彼らのホームグラウンドへと回帰し、同時にフレッシュな息吹を吹き込んだバンドの象徴的楽曲です。RUSH を想起させるシーケンシャルかつメロディックなテーマと、VAN HALEN のエナジーがナチュラルに同居するコンパクトなアンセムは、”プログレッシブハードロック” とでも呼ぶに相応しい煌めきと胎動を誇示します。
「確かにオリジナルコンセプトはプログメタルだったんだ。だけど作曲を始めると、完全に異なる方向へと進んでいったね。僕たちのクラッシックロックやハードロックからの影響が前面に出て来て、それに従うことにしたんだよ。新たなサウンドを創造したと思う。」
そう Derek が語るように、SONS OF APOLLO は “Psychotic Symphony” でプログメタルを切り札、エッセンスの一つとして、よりマスリスナーへとアピールする普遍的でオーガニックな “ロック” を追い求めたと言えるでしょう。硬質と有機性の共存。それは、DREAM THEATER が “Falling Into Infinity” で一度進みかけた”If”の道だったのかも知れませんね。
ただ、”Signs of The Time” はこの5人でなければ生まれなかった奇跡にも思えます。マエストロ Billy Sheehan の踊るように躍動するベースラインを骨子として幕を開けるエネルギッシュでハードな調べは、しかし中盤でガラリとその表情を変化させるのです。
アトモスフェリックな7拍子へと場面が転換し Ron “Bumblefoot” Thal のリードプレイが切れ込むと、多くのリスナーは UK の “In the Dead of Night” を思い浮かべることでしょう。ここには確かにダイナミックな展開美とジャンルの融合が誘う震駭、そして彼らの理想が深々と織り込まれているのです。
実際、元 GN’R は伊達ではありません。Allan Holdsworth さえ凌ぐのではと思わせる圧倒的な7拍子のシュレッドは彼のベストワークと言えるほどに強烈な存在感と個性を放っています。
加えてBumblefoot の千変万化なギターワークは各楽曲のルーツを指し示す大きなヒントともなっており、例えば “Divine Addiction” で Derek と共にまるで DEEP PURPLE の一員が如く振る舞う瞬間などは、実に興味深くエキサイティングだと言えますね。
勿論、アルバムには Derek と Mike が DREAM THEATER で共に残した “A Change of Seasons”, “Falling Into Infinity” の二作が蘇る瞬間も存在します。”Labyrinth” のヴァースや連続音を執拗に鳴らす Derek のリフワーク、”Opus Maximus” でスケールの上下動をフルピッキングで繰り返す場面などではニヤリとほくそ笑むファンも多いでしょう。
Billy の存在意義を改めて確認出来る11分の “Opus Maximus” で、あたかも自らの理想、新たなチャレンジを再びプログレッシブな啓示で包み込むかの如く幕を閉じる “Psychotic Symphony”。今回弊誌では、Derek Sherinian にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちは、個々にこれまでやって来たバンドやプロジェクトよりビッグになることを目標にしているんだ。」 つわものどもが”夢”の先。どうぞ!!

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SONS OF APOLLO “PSYCHOTIC SYMPHONY” : 9.6/10

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MASTERPIECE REVIEW + INTERVIEW 【BETWEEN THE BURIED AND ME : COLORS】10 YEARS ANNIVERSARY !!


METAL SUCKS PRESENTS: INTERVIEW WITH DAN BRIGGS OF BETWEEN THE BURIED AND ME !!

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Between The Buried And Me Are Currently Out On Tour Celebrating The Tenth Anniversary Of Their Landmark Album “Colors” By Playing It From Start To Finish Every Night. Bassist Dan Briggs Talks About A Retrospective Essay About How The Band Wrote Was Has Come To Be Considered As A Landmark Modern Progressive Metal Record !!

DISC REVIEW “COLORS”

“We are Between The Buried And Me, and this is Colors.”
“Colors Live” のオープナー “Foam Born (A) The Backtrack” が厳かに幕を開け、ピアノのイントロが一旦静まると Tommy Rogers はそう呟きます。
不朽の名作 “Colors” から10年。Tommy, Paul, Dustie, Dan, Blake の5人で紡ぐ BETWEEN THE BURIED AND ME は確かにこの場所から始まり、その豊かな色彩のスペクトルは現在でも決して色褪せることを知りません。
振り返ってみれば、2003年にリリースした “The Silent Circus” における “Mordecai” はバンドのターニングポイントだったのかも知れませんね。トレードマークであった直感的な衝動のカウンターとして崇高なメロディーを発見した彼らは、”Alaska” でエクスペリメンタルなエクストリーム領域の下地を示した後、現在の5人 “ファンタスティック・ファイブ” を揃えて素晴らしき “Colors” へとたどり着くことになります。そして、この64分の万華鏡が放つプリズムは、バンド自身のみならず、現在のモダンメタル/プログレッシブシーンにとってあまりに鮮烈かつ至高のマイルストーンとなりました。
“モダン=多様性” と定義するならば、”Colors” ほど “モダン” なレコードは未だかつて存在しないでしょう。TOOL の “Lateralus”、THE MARS VOLTA の “Frances the Mute”、PROTEST THE HERO の “Kezia”、SikTh の “Death of a Dead Day”、COHEED AND CAMBRIA の “Good Apollo, I’m Burning Star IV, Volume One: From Fear Through the Eyes of Madness”、MESHUGGAH の “Catch Thirtythree”, ISIS の “Panopticon”、THE DILLINGER ESCAPE PLAN の “Miss Machine”、GOJIRA の “From Mars to Sirius”。ミレニアムを迎え、モダンメタル/プログレッシブに多大な影響を与えたエクレクティックな作品が続々と登場する中で、変革の決定打となったアルバムこそ “Colors” だったのかも知れませんね。
実際、メタル、ハードコア、メタルコアをルーツとしながらも、”Colors” には数え切れないほど豊かな色彩が織り込まれています。ジャズ、クラッシック、プログレッシブ、ワールドミュージック、ブルース、ポルカ、ブルーグラス、デスメタル、ブラックメタル…精密かつ大胆に配置されたインフルエンスの数々は、彼らのルーツとナチュラルに混ざり合い、時にエクストリームに、時にテクニカルに、時にアトモスフェリックに、時にメロディックにリスナーの元へとこの偉大なるエピックを届けるのです。
この作品が後続にとってインフルエンタルであることは、何よりあの DREAM THEATER のマスターマインド John Petrucci でさえ、彼らのセルフタイトルのアルバムが PERIPHERY, ANIMALS AS LEADERS と並んで BTBAM から「影響を受け、インスピレーションとアルバムを形作る助けになった。」 と語っていることからも明らかです。
ギタリスト Paul Waggoner は、「重要なのは、”Colors” の究極なまでにエクレクティックな音楽の数々は、誰か1人のメンバーが思いついた訳ではなく、全員が貢献して達成された点だよ。」 と語っています。確かに Dan もインタビューで、「僕は彼らに OINGO BOINGO とか GENTLE GIANT のようなバンドを紹介したし、彼らは EMPEROR や ULVER を教えてくれたんだ。」 と語ってくれました。ファンタスティック・ファイブがジグソーパズルのピースのごとく完璧に、奇跡的にフィットし補完し合い起こった化学反応。それが “Colors” の本質だと言えるのかも知れませんね。
よりミクロな観点で見れば、ギターリフのフレキシビリティを飛躍的に高めたこともこのレコードの功績だと言えるでしょう。メタルコアの興隆により、リードプレイのようにテクニカルなリフワークは徐々に浸透して行きましたが、それでもやはり “リフ” と “リード” の境界線は確実に存在したはずです。
あくまでも “リフ” はボーカルの伴奏として繰り返されるもの。”リード” は自由な自己表現の舞台。そんなトラディショナルな考え方を根底から覆したのが “Colors” であり、PROTEST THE HERO の “Kezia” であり、SikTh の “Death of a Dead Day” だったのではないでしょうか?
“Colors” のリフワークを聴けば、低音弦ではパターンやリズムを細かく変えながら、高音弦では自由自在にフレットを駆け巡る、フレキシブルかつ創造性豊かな “バッキング” が伴奏として見事に成立していることが分かります。そして、AAL 革命、Djent 前夜に繰り広げられたあまりに重要なこのコペルニクス的転回は、言うまでもなく様々なメタルジャンルにおいて今では定石として根付いているのです。
Dan は “Colors” を収録曲 “White Walls” になぞらえ “空間や考え方に限定されず、僕らの周りにある壁を全て壊してしまうように色彩たちがが鮮やかさを増していく” アルバムだと語ります。バンドは当時プログやメタルの既成概念を破壊した後、夜空に美しき虹をかけました。そして10年を経た今、”Colors” 10周年を祝う完全再現ツアーを終えた後、バンドは再び “未来” へと向かい新たな色彩のマジックを掲げてくれるでしょう。
今回弊誌では、US Metal Sucks, Gear Gods 誌と連携してベーシスト Dan Briggs の “Colors” 製作秘話を完全掲載することが出来ました。NOVA COLLECTIVE に続き今年2度目の登場です。「僕たちはいかにして “Colors” を制作したのか」どうぞ!!

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BETWEEN THE BURIED AND ME “COLORS” : ∞/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHELSEA WOLFE : HISS SPUN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHELSEA WOLFE !!

Chelsea Wolfe by Bill Crisafi

PHOTO BY BILL CRISAFI

Certainly, Folk/Rock/Experimental Artist Chelsea Wolfe Took A Step Toward More Dark Side, Heavy Realm, Sludge World With Her Outstanding New Record “Hiss Spun” !!

DISC REVIEW “HISS SPUN”

ダークでスピリチュアルな崇高美を追求する、ノースカリフォルニアの堕天使 Chelsea Wolfe が、そのゴシカルなイメージをスラッジメタルの世界へと解き放つ最新作 “Hiss Spun” をリリースしました!!審美のダークサイドを司るエクストリームアートの女王は、至上の環境、チームを得てより鮮明にその印象を増しています。
近年、Chelsea と彼女の右腕 Ben Chisholm の冒険は、出自であるゴシックフォークの枠を容易く超越し、ドゥームの翳りを宿すインダストリアル、エレクトロニカ、ノイズ、ドローンにまでアプローチの幅を拡げて来ました。陰鬱にして甘美、アーティスティックで創造性豊かなそのジャンルの邂逅は、Chelsea の幽美なビジュアルやスピリチュアルな一面とも共鳴しながら、この混沌とした世界に安寧を喚起するメディテーションの役割を果たして来たのかも知れませんね。
“Spun” の凄艶なディストーションサウンドでスラッジーに幕を開ける “Hiss Spun” は、リスナーの思念、瞑想にある種の直感性を差し伸べる、よりヘヴィーで正直なアルバムです。
「これは、ヘヴィーなレコードでロックソングを求めていたの。」 実際、Chelsea はそう語っています。故にRED HOST 時代のバンドメイト、ドラマー Jess Gowrie とのリユニオンは必然だったとも。
確かにこのレコードの陣容は彼女の言葉を裏付けます。リードギタリストに QUEENS OF THE STONE AGE の Troy Van Leeuwen を起用し、ex-ISIS の Aaron Turner をゲストボーカルとして招聘。さらに CONVERGE の Kurt Ballou をプロデューサーに指名した采配の妙は間違いなくこのレコードの方向性を諮詢していますね。
セカンドトラック “16 Phyche” はアルバムを象徴する楽曲かも知れません。蝶の羽を得て人間から変異を遂げた美しき魂の女神、そして火星と木星の間を公転する小惑星の名を共有するこのコズミックで漆黒のヘヴィーバラードは、自由を奪われ制限される人生をテーマとしています。
「8年間、故郷ノースカリフォルニアを離れてロサンゼルスにいたんだけど、LAは私と共鳴することは一度もなかったの。私の心はいつもノースカリフォルニアにあったのよ。大きな木々、山や川の側にね。」 Chelsea はそう語ります。
遂に家族と自然、スピリチュアルなムードに溢れた故郷へと帰還し、心の平穏と安寧を取り戻した彼女は、閉塞的で捌け口のない当時の自分を反映させた魂の情歌へと辿り着いたのでしょう。
実際、”Twin Fawn” にも言えますが、彼女も認める通りこの楽曲における Chelsea の歌唱はよりパーソナルで内面全てを曝け出すような壮絶さを宿します。フィードバックと不穏なムードが支配する重密なサウンドとも絶妙にシンクロし、彼女のエモーションは現代社会の閉所恐怖症とも形容可能なイメージをも楽曲に映し出しているのです。
“Hiss” とはホワイトノイズ、つまり雨音や川のせせらぎ、鳥の囀りといった自然と人間を繋ぐ雑音を意味する言葉だと Chelsea は教えてくれました。トレモロリフとポストメタルの重厚で奏でられる “Vex” で Aaron Turner の剛胆な咆哮は大地の感覚、アーシーなホワイトノイズだとも。
Aaron の声が大地の咆哮なら、浮遊感を伴う Chelsea の声はさながら虚空のスキャットでしょうか。楽曲の最後に挿入された森のざわめきに耳を澄ませば、彼女のメッセージが伝わるはずです。ヘヴィーとエセリアルのコントラストで表現される自然に対する強い畏怖は、現代社会が忘れつつある、しかし忘れてはならない貴き精神なのかも知れませんね。
確かにヘヴィーでスラッジーなアルバムですが、同時に “Twin Fawn”, “Two Spirit” のような自身のアイデンティティー、ゴシック/フォークにフォーカスした楽曲や、近年養って来たインダストリアル/ノイズ要素を分断に盛り込むことで、作品は Chelsea の多面的な才能を映す鏡、ある意味集大成的な意味合いも保持しています。そして勿論、女性としての一面も。
アルバムは、魔女の如き甲高い歌声が印象的な “Scrape” で幕を閉じます。様々な怒りやヘヴィーな祈りが込められたアルバムには、当然 Chelsea の一人の女性としての怒りも封じられています。あの禍々しき魔女裁判が行われたセイラムでレコーディングが行われたことも、偶然ではないのかも知れませんね。
今回弊誌では、Chelsea Wolfe にインタビューを行うことが出来ました。彼女がゲスト参加を果たしている MYRKUR の最新作も同様に素晴らしい内容。併せてチェックしてみてくださいね。どうぞ!!

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CHELSEA WOLFE “HISS SPUN” : 9.8/10

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