タグ別アーカイブ: us

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DEAD CROSS : DEAD CROSS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JUSTIN PEARSON OF DEAD CROSS !!

56410

Metal & Hardcore Energetic Supergroup, Dead Cross Brings Life Back Into The Genre With Groundbreaking Debut Record “Dead Cross” !!

DISC REVIEW “DEAD CROSS”

“SLAYER のようにアグレッシブで、FANTOMAS のように奇妙”。Dave Lombardo ( ex-SLAYER, FANTOMAS ), Mike Patton ( FAITH NO MORE, FANTOMAS ), Mike Crain ( RETOX ), Justin Pearson ( THE LOCUST, RETOX ) というエクストリームミュージックの重鎮が集結した新バンド DEAD CROSS が衝撃のデビュー作をリリースしました!!百戦錬磨の古兵たちが放つ一撃はあまりに熾烈かつ迫真です。
SLAYER での鬼神たる Dave Lombardo、FAITH NO MORE での異形たる Mike Patton については今さら多くを語るまでもないでしょう。勿論、その2人がタッグを組んだアヴァンギャルドで “アンチアート” な “Dada-Metal”、FANTOMAS についても。過去に Lombardo は、「もしピカソがミュージシャンだったら FANTOMAS のような音楽を創造しただろう。」 とさえ述べています。
一方で、THE LOCUST はグラインドコア、パワーバイオレンス、ノイズロックをハードコアのフォーマットへと落とし込んだ多様かつ複雑でダイナミックな音楽を信条としており、さらに THE LOCUST の美学こと Justin Pearson が新たに立ち上げた RETOX はハードコアパンクのエキサイティングな新鋭です。
インタビューで Justin は、「ジャンルは実に厄介なもので、自分の目的はリスナーを無関心にしないこと」 だと語ってくれましたが、彼らのキャリアと独自性を見れば、DEAD CROSS という奇跡の化学反応がそのイメージを叶えることは確かなようにも思えます。
実際、”Dead Cross” は期待以上にカオスでエクストリーム、ゲームチェンジングなレコードです。「みんなの音楽に対する感じ方を変えたいし、もっと言えば壊したいと思っているんだよ。」 と語る Justin の野心は、比類なきメンバーと類希なるシンパシーを得て遂に達成されたと言えるのかも知れませんね。
“Dead Cross” が死の直前起こる体温の急降下と脈拍の急上昇、つまり体温曲線と脈拍曲線が交差する現象である “死兆交差” を指すように、アルバムは怒りとフラストレーション、そして究極的にはそこから生じる “死” を様々な観点、手法で表現した作品だと言えるでしょう。
事実、Dave Lombardo は Rolling Stone 誌のインタビューで、このバンドがパリのバタクランで起こったテロに対する大きな憤りから生まれたことを認めています。これが完璧なハードコアアルバムで、自身の最もブルータルで抽象的なレコードであることも。
勿論、Dave 究極の一枚に SLAYER の “Reign in Blood” を挙げるファンも多いでしょう。奇しくもほぼ同じ、30分を切るランニングタイムの2枚のレコードは、そのインパクトにおいても同等の強い光彩を放っているように思えます。
“Reign in Blood” が伝説と化したのは、その際限なきアグレッションと呼応して溢れ出る瑞々しきフックの数々があったからこそ。怒りに満ちた “Dead Cross” にも同様に、リスナーをリピートへと誘う豊潤かつインテリジェンスな仕掛け、キャッチーさが潜んでいるのです。
アルバム前半、ハードコアパンクとスラッシュのエナジーを二乗し突進するアドレナリンラッシュの渦中においても、THE LOCUST を想起させる知的な混沌、ノイズ、変拍子、テンポチェンジは極上のアクセントとして揺るがぬ存在感を放ちます。
さらにBandcamp のインタビューで、「ハードコアのルーツに回帰したんだ。クソと重要さの見分けがつくようになった。」 と語る Dave のドラミングは、その比類なきビートをより感情にまかせ、性急に、複雑に、そしてブルータルに刻みます。80年代のベイエリアパンクから、THE DILLINGER ESCAPE PLAN のようなよりコンテンポラリーなマスコアまで自由自在な Mike Crain のリフワークもスマートで耳を惹きますね。そして何より Mike Patton は Mike Patton です。
「オペラティックなバックヴォーカルとボイスエフェクトをレコード全体にレイヤーすることはどうしても避けられなかったんだ。」 怒れるレコードに似つかわしくない Mike の業、カルマはバンドを驚かせました。しかし、同時に Dave は Mike 由来の異質なるハーモニーやオルタナティブなメロディーラインがアルバムに深みを加えたことも認めています。
CELTIC FROST のアヴァンギャルド、邪念、悪夢を飲み込んだ “Bela Lugosi’s Dead” や “Gag Reflex”、パンクのキャッチーさを奇妙に再構築した “Shillelagh”、よりプリミティブなスクリームが狂気を育む “The Future Has Been Cancelled” といった楽曲群は Mike の貢献なしでは成立しなかったはずです。
鬼才 Ross Robinson を含め5人の才能が火花を散らしたアルバムは、バンドの次なる可能性を諮詢する、ゴシカルでインダストリアルな “Church of the Motherfuckers” でその幕を閉じました。
今回弊誌では Justin Pearson にインタビューを行うことが出来ました。「全てのクリエイティビティーに感謝を」 どうぞ!!

18221626_1834551343533536_3107490956942341155_n

DEAD CROSS “DEAD CROSS” : 10/10

INTERVIEW WITH JUSTIN PEARSON

1471455608174

Q1: As soon as the tour began, the members were arrested and Mike was injured, it looked not good situation. Are you enjoying the tour now?

【JUSTIN】: I think through the eyes of social media everything can easily seem more sensational that it really is when you are actually in the thick of it. Don’t get me wrong, having guns and drugs pulled out of your backpack by a State Trooper, when you have never shot a gun or snorted coke in your life is a bit weird for me. This world is a weird and mean place, but what will happen, will happen. I just roll with things and hope to come out on the other end. If I don’t, well, I suppose it’s over so who gives a shit? As for Patton, he seems resilient, even at his current age. He bounced back and we had a make up show the night following the one we had to cancel. As for enjoyment and tour, sure. However, tour is not what some people think it is. Not that I have any complaints, but it’s a lot of looking out of a van window and hanging out in a venue over and over. Beats a cubicle and a shitty suit though.

Q1: ツアー開始早々に、メンバーが逮捕されたり、Mike が怪我をしたりと大変な状況でしたが、今現在はツアーを楽しめていますか?

【JUSTIN】: ソーシャルメディアの視点を通して見れば、全ては簡単に、よりセンセーショナルに思えるだろうね。実際、当事者としてその中にいるよりも遥かにね。
誤解しないで欲しいんだけど、人生で銃を撃ったこともコカインをやったこともないのに、州警察が君のバックパックから銃やコカインを取り出したら僕には奇妙に思えるだろうね。
この世界は奇妙で卑劣な場所だけど、何でも起こりうるんだよ。僕はそういったことにただ対処して、早く問題から抜け出したいだけなんだ。とにかく、もう終わったことなんだから、誰が気にするって言うんだい?
Mike については、すぐに回復したように思えるよ。彼の年齢にしたらね。彼がすぐに復帰したから、キャンセルした次の日の夜にはライブをセッティングしなければならなかったくらいさ。
ツアーに関しては勿論エンジョイしているよ。ただ、君たちの想像するようなものではないかも知れないけどね。大部分はバンの窓から外を眺めて、開催地で出かけることを繰り返すだけなんだ。

Q2: So, you invited Dead Kennedys’ Jello Biafra Onstage to Perform “Nazi Punks Fuck Off ” as “Nazi Trumps Fuck Off”. Adding that, you even made matching T-shirts, haha. What made you so?

【JUSTIN】: The shirts were a bit too “cute” in my opinion. But Jello insisted, and well, I had to be a good sport. Nonetheless, it was a bit surreal to perform that track with the man. I cut my teeth on Dead Kennedys. And well, unfortunately the subject matter surrounding the song is still fairly relevant.

Q2: 先日は、DEAD KENNEDYS の Jello Biafra をステージに招いて彼らの名曲 “Nazi Punks Fuck Off” を “Nazi Trumps Fuck Off” に変えて演奏していましたね?Tシャツまで揃えていたのは最高てしたよ。

【JUSTIN】: 僕の考えでは、あのTシャツはちょっと “キュート” 過ぎたかなって思うんだ。だけど Jello がそうしたいと主張したし、僕は礼儀正しくする必要があったからね。
それにしたって、あの人とあの楽曲をプレイするのは少しシュール、非現実的だったよ。僕は DEAD KENNEDYS でロックの世界に入ったんだからね。それに、残念ながらあの楽曲にまつわる題材もまだかなりの関連性があるよね。

Q3: Definitely, Dead Cross is super band. Sometimes, the band is said as “Dead Cross Is as Aggressive as Slayer and as Weird as Fantômas”. Anyway, what is the purpose of these four people gathered now?

【JUSTIN】: The purpose of the four of us is exactly what it is, a band, exchanging energy and ideas, and putting that out there in the universe!

Q3: DEAD CROSS は “SLAYER のようにアグレッシブで、FANTOMAS のように奇妙” などと例えられるスーパーバンドですが、この4人が今集まった目的は何でしょう?

【JUSTIN】: 僕たち4人の目的は、間違いなくバンドであることだよ。エナジーとアイデアを交換し、世界へと放出するためのね!

Q4: After Gabe Serbian left the band, Mike Patton becomes new singer of Dead Cross. How did you come up with the idea of ​​naming him to successor?

【JUSTIN】: We had a bunch of names of people who we wanted to work with as a vocalist and put them in a hat. It was this weird sort of top hat thing, like that dumb hat that Slash wears. Anyhow, Lombardo reached in and pulled out the one with Patton’s name on it, and that was how it all went down.

Q4: Gabe Serbian がバンドを去った後、DEAD CROSS はカリスマ Mike Patton を後任のシンガーに選びました。この人選は誰が思いついたのですか?

【JUSTIN】: 僕たちは、共にやって行きたいボーカリストを本当に沢山ピックアップして、その名前を帽子の中に入れたんだ。奇妙なトップハット帽で、スラッシュ(GN’R) が身につけているようなバカッぽいやつね。
とにかく、Dave がその帽子に手を突っ込んで引き出したのが Patton の名前だったのさ。後はみんなが知っている通りだよ。

21369120_1903124900009513_5542449050897881577_n

Q5: Your band name “Dead Cross”, it also becomes the title of debut album, What’s the meaning behind the word?

【JUSTIN】: It came to me as I was driving from San Diego to Los Angeles, while listening to NPR. There was this report on an illegal drone strike and a botched attack which killed aid relief.

Q5: アルバムタイトルにもなっているバンド名 DEAD CROSS ですが、この言葉にはどういった意味が込められているのでしょう?

【JUSTIN】: DEAD CROSS (死の直前に体温が急降下して、脈拍が急上昇。体温曲線と脈拍曲線が交差する現象を “死の十字架” “死兆交差” と呼ぶ。)というバンド名は、僕がサンディエゴからロサンゼルスまでドライブしている時に思いついたんだ。NPR (National Public Radio 非営利のラジオネットワークでリベラル寄り) を聴きながらね。
ちょうどニュースでは、違法なドローン攻撃と、攻撃の失敗で国際援助活動の人間を殺害してしまったことについて報じていたんだ。

Q6: Definitely, “Dead Cross” is heavy as hell, It gives me an adrenaline rush, I mean, I feel “Anger” from the record. What did you want to tell the listener on this album?

【JUSTIN】: I rarely put any thought into what a listener might think of the stuff I’m part of. Granted, when people dig stuff that I’m part of, I really appreciate it and think it’s rad. I suppose my goal is to not have people be indifferent… I wanted to change the way people perceive music, or maybe just destroy it in general.

Q6: “Dead Cross” は様々な面で怒りを湛え、アドレナリンラッシュを生むレコードですね?この作品でリスナーに伝えたかったことは何ですか?

【JUSTIN】: 僕は自分が参加した作品に、リスナーがこう考えれば良いのにと言った先回りの思考は込めないようにしているんだよ。勿論、みんなが作品を気に入ってくれれば、本当に感謝するし、最高だと思うけどね。
おそらく、僕のゴールはリスナーを無関心にしないことだと思うよ。みんなの音楽に対する感じ方を変えたいし、もっと言えば壊したいと思っているんだよ。

Q7: Mike and Dave are around 50 years old. Justin and Michael are not such a youth. I feel great that you are playing angry Hardcore/Punk music when you put on years. Could you imagine this situation when you started out?

【JUSTIN】: Did you just call me old? Well, either way, I can’t answer your question. I have been doing what I am currently doing since I was 15.

Q7: Mike と Dave は50歳周辺ですし、あなたにしても決してもう若くはありませんよね?年齢を重ねて、こういった怒れるハードコアを今でもプレイしているのは素晴らしいですね!今の状況を、音楽を始めた頃に想像出来ましたか?

【JUSTIN】: おいおい、老いぼれだって言いたいのかい?どのみちこの質問には答えられないね。僕は今やっている音楽を15の時からやり続けているんだから。

Q8: So, you are one of the originator of Grindcore, Power violence, Noise Rock. What’s your perspective about the extreme music scene these days? For example, do you like Full of Hell, The Body, Code Orange or Boris?

【JUSTIN】: Awe, I think genres are kinda lame to be honest. Even calling certain things music doesn’t seem accurate at times. I suppose noise rock might be a decent term. I just tell people that the genre is “annoying”. As for other bands that I like, I do listen to a lot of talk radio.

Q8: 最後に、あなたはグラインドコア、パワーバイオレンス、ノイズロックの歴史を刻んできた人物の一人です。最近の多様なエクストリームミュージックシーンについてはどう思っていますか?

【JUSTIN】: そうだね、僕は正直に言ってジャンルって厄介なものだと思うよ。疑いようのない呼称だって、時にはその音楽に正確じゃないことがあるんだからね。
ノイズロックというのはマトモな言葉かもしれないね。つまり、その”ノイズロック”という言葉はジャンルが”迷惑な”ものだと伝えているからね。まあバンドを聴くよりも、トークラジオをよく聴いているよ。

18320586_1834459590209378_6447568272748722680_o

FIVE ALBUMS THAT CHANGED JUSTIN’S LIFE

DRIVE LIKE JEHU “DRIVE LIKE JEHU”

16888

THE CRAMPS “BAD MUSIC FOR BAD PEOPLE”

Bad_Music_for_Bad_People

PUBLIC IMAGE LTD. “PUBLIC IMAGE: FIRST ISSUE”

PiLFirstIssue

BORN AGAINST “9 PATRIOTIC HYMNS FOR CHILDREN”

R-379159-1343607022-6728.jpeg

ANTHONY AND THE JOHNSONS “CUT THE WORLD”

antony_and_the_johnsons_cut_the_world_2012-300x300

MESSAGE FOR JAPAN

f16b39930554d52027c24d07efd705b8

I absolutely love it there. Thank you for existing and for all the creativity.

僕はこの作品を本当に気に入っているんだ。存在と全てのクリエイティビティーに感謝を。

JUSTIN PEARSON

DEAD CROSS Facebook Page
IPECAC RECORDINGS Facebook Page
IPECAC RECORDINGS Official Site
日本盤の情報はこちら。

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RINGS OF SATURN : ULTU ULLA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AARON STECHAUNER & MILES BAKER FROM RINGS OF SATURN !!

001-3

MA Based “Alien Core” Act, Rings Of Saturn Shows The Positive Possibility Of DeathCore, With Spacey Melodies And Galactic Chaos Of Their Newest Record “Ultu Ulla” !!

DISC REVIEW “ULTU ULLA”

メタルワールドの UMA、人知を超えたテクニカルデスコアアクト RINGS OF SATURN が、バンドの円熟を知らしめる神秘 “Ultu Ulla” をリリースしました!!シュメール語で “記録に残らないほど太古の昔” をアルバムタイトルへと冠した作品は、しかし厳然とアカシックレコードにその造化の妙を刻みつけます。
「もし宇宙に音楽が存在するならば、それは RINGS OF SATURN のようなサウンドだろう。」
予測不能なまでにカオティック、無慈悲なまでにテクニカル。カリフォルニアの超常的カルテットが創造する音宇宙は、 “エイリアンコア” と称されるほどに異次元で別世界。故に、複雑でメカニカルなその “非人間的” サウンドストラクチャーは、常に賛美と批判を等しく内包して来ました。
しかし、テクニカルデスコアシーンの盟主 Unique Leader Records から、メタルシーンの総本山 Nuclear Blast Records へと移籍を果たし、「全てがより意図を持ち、目的にフォーカスして行われている」 状況でリリースされた最新作 “Ultu Ulla” は、バンドに対するインヒューマンでデジタルという難詰を須らく沈黙させるに充分なクオリティーとディレクションを誇ります。
「このレコードで僕たちは、間違いなくより成熟し、構築されたサウンドの方向に進んだね。僕は音楽が究極にスムースに流れることを常に意識しているんだよ。」 と Miles が語るように、”Ultu Ulla” でバンドは自らのストロングポイントを保ちつつ、以前より確実にキャッチーなメロディーやナチュラルなストラクチャーへフォーカスしていると言えますね。つまり、RINGS OF SATURN は “法則” と “混沌” から成り立つ大宇宙のように、その音楽性を拡大させているのです。
アルバムオープナー “Servant of this Sentience” はバンドのイノベーションを象徴する楽曲です。極限にテクニカルなタッピングのイントロダクションは、同時に溢れ出るコズミックな旋律の銀河を創造しアルバムのムードを伝えます。
新加入、Aaron Stechauner の正確で硬質なドラミングは確かにマシナリーですが、切れ込むリフワークはメロディックデスメタルを想起させるほどエナジーに満ちてメズマライズな SF の世界を流麗に構築しているのです。グロウルとスクリームをフレキシブルに行き来する Ian の咆哮を伴って、作品にある種のキャッチーさ、普遍的なダイナミズムが生まれているのは明らかですね。
「デスコアそれ自体の影響より、全く異なるジャンルからの影響の方が僕たちの音楽、アイデアをより興味深く、新鮮にしていると思うんだ。」 Aaron が語るように、多様なインフルエンスもアルバムのテクスチャーを深く、魅力的にしています。
デスコアのチャグ感とシンフォニックなストリングス、さらに NECROPHAGIST のような難解さが渾然一体となる “Parallel Shift”。フォーキーなワルツとブラストビートが煌めきと獰猛を包含する “The Relic。さらに、”Unhallowed” や “The Macrocosm” で見せるアコースティックなアイデア、ジェントルなムードが象徴するように、バンドがデスコアというジャンルのポジティブな可能性へ変貌を遂げたのは確かです。
アルバムは、ピアノとクラッシックギターで古代インカの宇宙への交信を再現する “Inadequate” で幕を閉じました。
今回弊誌では、ドラマー Aaron Stechauner, ギタリスト Miles Baker の2人にインタビューを行うことが出来ました。「僕は”デスコア”のファンだったことは1度もないんだ。」 どうぞ!!

18839198_10155223343308463_594009574045800036_n-2

RINGS OF SATURN “ULTU ULLA” 9.5/10

INTERVIEW WITH AARON & MILES

5931B6FD-rings-of-saturn-to-release-ultu-ulla-album-in-july-inadequate-music-video-streaming-image

Q1: First of all, how is Summer Slaughter 2017? There are legends like Dying Fetus, Origin, and new generation like you, Slaughter to Prevail mixed together, right?

【AARON】: It’s a great tour to be on, especially this year in my opinion. Some legendary things are happening on this tour, like Black Dahlia’s 10 year anniversary of Nocturnal. It’s mind blowing!

【MILES】: It’s great I am having a great time on this tour!

Q1: まずは Summer Slaughter 2017 の感想を聞かせてください。RINGS OF SATURN, SLAUGHTER TO PREVAIL といった新鋭と、ORIGIN, DYING FETUS といったベテランがミックスされたラインナップですね?

【AARON】: 素晴らしいツアーが続いているよ。僕の中で、特に今年はそう感じられるね。
実際、このツアー中には、伝説的な出来事がいくつか起こっているんだよ。例えば THE BLACK DAHLIA MURDER が “Nocturnal” の10周年アニバーサリーを行ったりね。最高だよ!

【MILES】: このツアーでは最高の時間を過ごせているよ!

Q2: You contracted with mega label Nuclear Blast. How is the situation different from Indie or DIY process?

【AARON】: Everything is done with a lot more intention and purpose that has years of experience behind it. We’re allowed to focus on our craft while everyone at Nuclear handles the other side of the spectrum. It’s a nice contrast to how it was in the past, with people scrambling to figure everything out all at once.

【MILES】: Correct. Well it’s a lot different because there are a lot of things that the label handles and has access to that we would otherwise handle and perhaps not have access to.

Q2: 前作からのインターバルで、メガレーベル Nuclear Blast と契約に至りましたね。DIY やインディーの時代と比べてどう変わりましたか?

【AARON】: やはり Nuclear Blast には長年の経験があるからね。全てがより意図を持ち目的にフォーカスして行われているよ。
つまり、Nuclear Blast の人たちがプロモーションなど別の仕事をこなしてくれるから、僕たちは自分たちの音楽に集中出来る訳さ。過去と比べてみればその違いが良く分かるよ。全てを1度にこなさなければならなかったんだからね。

【MILES】: 間違いないね。レーベルには僕たちが扱えなかったり、アクセス出来ないことを実現する力があるんだよ。

Q3: So, let’s talk about your newest record “Ultu Ulla”. It seems “Ultu Ulla” means “Time Immemorial” in Sumerian Cuneiform. You know, how did you find such a strange word? haha.

【AARON】: Yes. But, our singer had the idea for the name “Time Immemorial” first and then found the translation to Sumerian online.

【MILES】: Yeah, this was something our vocalist Ian decided.

Q3: では最新作 “Ultu Ulla” について話しましょう。”Ulta Ulla” とはシュメールの楔形文字で “太古の昔” という意味があるそうですね?

【AARON】: そうだね。ただ、まずシンガーの Ian がまず “Time Immemorial” “太古の昔” というアイデアを出して、それをネットでシュメール語に訳したんだ。

【MILES】: そうだね、Ian が決めたことだよ。

Q4: The theme of album is about aliens transcending space and time. You seems to be heavily influenced by themes of alien life and outer space. Why does the concepts attract you?

【AARON】: It’s always been the theme and novelty of the band. I wasn’t around for the conception, but it’s something that keeps fans interested and entertained. In the end, that’s the whole point of it all anyways!

Q4: アルバムのテーマは時空を超えるエイリアンについてだそうですね? RINGS OF SATURN が、地球外の生命や宇宙にこれほど惹かれるのはなぜでしょう?

【AARON】: それはいつだってバンドのテーマだし、僕たちの象徴でもあるね。
勿論、そのコンセプトを立ち上げた時にはまだ、僕はバンドに加入していなかったんだけど、ファンが興味を持ち、楽しんでくれる一つの要因ではあるよね。まあ、結局そのテーマこそが全てのポイントなんだよ。

59445ABC-rings-of-saturn-discuss-ultu-ulla-artwork-a-big-part-of-the-band-is-the-visual-aspect-video-image

Q5: As your music is called “Aliencore”, your music was so chaotic and even to be said random. It sounded how music from outer space must sound like. And that attracts lot’s of fans. But this new record seems to be slightly different, and you seems to open the new chapter. I mean, it’s about the songs like “The Relic” and “The Macrocosm”. Do you agree that?

【AARON】: We definitely have opened up a new chapter. I would still say that we are the same band, and still embody “aliencore.” We’ve taken our roots and ingredients that make us who we are and simply refined them, and progressed with this record.

【MILES】: Yeah! This record is a definite movement towards a more matured and structured sound. I did a lot of music study in school and privately and I have always been very into things flowing extremely smoothly. That was something that was worked on a lot with this record all while keeping the ole classic RoS vibe in places too.

Q5: RINGS OF SATURN の音楽は、”Aliencore” と呼ばれるようにランダムと言える程にカオティックでまさに地球外の様相を呈していましたね。実際、それが多くのファンを惹き付けて来た訳です。しかし、新作では新たな章が幕を開けたように感じます。

【AARON】: 間違いなく僕たちは新たなチャプターを開いたね。それでも勿論、僕たちは同じバンドで、今でもエイリアンコアを体現しているんだけど。
ただ、このアルバムでは、僕たちを定義付けるルーツや成分をより抽出し、シンプルに洗練させたんだよ。進化するためにね。

【MILES】: まさに!このレコードで僕たちは、間違いなくより成熟し、構築されたサウンドの方向に進んだね。
僕は学校でも個人的にも音楽を物凄く学んで来たんだ。だから音楽が究極にスムースに流れることを常に意識しているんだよ。それこそが今回のレコードでトライしたことなんだ。勿論、クラッシックな RINGS OF SATURN のヴァイブをしっかりと保ちながらね。

Q6: Regarding the change, some people criticized that your music was too digital, not human-touch, but what do you think about that opinion?

【AARON】: The point of this band was always to sound inhuman and alien, really. With that said, there are ways to make yourself sound foreign and esoteric while still keeping physical human traits, musically speaking. Personally, I think that’s what we’ve achieved with this record. Hopefully other people agree!

【MILES】: Tone and production have a lot to do with that. I think this record is a lot less digital sounding.

Q6: 成熟、変化の話をしましたが、これまで RINGS OF SATURN の音楽は、デジタル過ぎるとか、人間味に欠けるとの批判も浴びてきましたね?

【AARON】: このバンドの重要なポイントは、常に非人間的、エイリアン的な部分なんだよ。それは確かだね。だからその批判に対処するには、深遠かつ宇宙的なサウンドを、フィジカルで人間味のある特徴で描けば良いんだよ。音楽的にはね。
個人的に、僕たちはこのレコードでそれを達成したと思うよ。みんなが同意してくれれば良いんだけどね。

【MILES】: それにはトーンとプロダクションも大いに関係するんだ。このレコードはあまりデジタルではないよ。

Q7: There were lot’s of member change in the band. But since 2014, the lineup is very stable. You know, Alex’s departure from Fallujah was really surprise for me. Similar things do not happen to Rings of Saturn, do you? haha

【AARON】: There have been a lot of changes, yeah. That is a lot of times just the way it goes in bands. A plethora of reasons come to almost every individual in a band that leaves them considering the need to turn the page in their life, in one respect or another. Sometimes those reasons weigh down and weigh down on you until you’re finally ready to say farewell.

【MILES】: Yes, there have been in the past. Yeah, I’d say it’s pretty stable now! I hope not haha!

Q7: 過去にバンドには多くのメンバーチェンジがありましたが、2014年からは安定しているように思えます。

【AARON】: 本当に沢山のメンバーチェンジがあったよね。数え切れない程に。多くの場合、その理由は、脱退したバンドのメンバーが人生の新たなページをめくることについて考えたからなんだろう。
時には、その理由がどんどん重くなっていくよ。別れを告げるまでね。

【MILES】: うん、本当に多くのメンバーチェンジがあったね。今は頗る安定しているよ!もう起きないといいね(笑)。

Q8: I think you are one of a few unique, creative band in a genre, Deathcore. What’s your perspective about the genre? Which band are you emphasize with in the genre?

【AARON】: To be honest I’ve never been a “fan” of deathcore. That isn’t to say I don’t like it; however, it’s never been my peak interest. Over the years of touring with many bands that I’d never really given a listen to in the past, it’s definitely opened my perspective. Still, I think the fact that my influence (as well as Miles’) on our music comes from genres completely different than out own has made for some really interesting and fresh ideas. That’s my opinion, at least. Like Mitch said, “the last thing I want to do is listen to metal and have it inspire what I’m doing in my band. I don’t want to sound like anybody else; I want people to be behind us and sound like us.”

【MILES】: Thank you. I personally listen to different music and not a whole lot of deathcore.

Q8: RINGS OF SATURN はデスコアというジャンルの中で、独自性やユニークさを保つ数少ないバンドだと感じます。このジャンルについてはどういった考えをお持ちですか?

【AARON】: 正直に言って、僕は”デスコア”のファンだったことは1度もないんだ。別に嫌いな訳じゃないよ。ただ、僕の興味のピークに位置したことがないだけであってね。
ここ数年、僕が全然聴いたことのないような多くのバンドとツアーを回ったんだけど、それによって間違いなく新たな価値観が生まれたね。
とは言え、デスコアそれ自体の影響より、マイルスのように全く異なるジャンルからの影響の方が僕たちの音楽、アイデアをより興味深く、新鮮にしていると思うんだ。まあこれは僕の考えだけど。
Mitch (Lucker)が 「僕がやりたくないのは、メタルを聴いてそのインスピレーションをバンドへと落とし込むこと。他の誰かのようなサウンドにはなりたくないんだ。それよりも、誰かに影響を与え、僕たちのようなサウンドにさせたい。」 と語ったようにね。

【MILES】: ありがとう!個人的に、デスコアはあまり聴かないんだ。他のジャンルを良く聴くよ。

TxMp83v

FIVE ALBUMS THAT CHANGED AARON & MILES’S LIFE 

OPETH “GHOST REVERIES”

85177

THE DEAR HUNTER “THE COLOR SPECTRUM”

220px-TheDearHunter-TheColorSpectrumCover

JUSTIN TIMBERLAKE “THE 20/20 EXPERIENCE”

220px-Justin_Timberlake_-_The_2020_Experience

PANIC AT THE DISCO “PRETTY ODD”

220px-PatD_-_Pretty._Odd.

BLINK 182 “ENEMA OF THE STATE”

Blink-182_-_Enema_of_the_State_cover-3

(AARON)

CHILDREN OF BODOM “EVERY ALBUM”

Hate_Crew_Deathroll_(musical_album)

OBSCURA “OMNIVIUM”

OBSCURA-OMNIVIUM

ARSIS “STARVE FOR THE DEVIL”

Arsis_-_Starve_for_the_Devil

WINTERSUN “WINTERSUN”

Wintersun_cover

STEEL PANTHER “FEEL THE STEEL”

Steel_panther_feel_the_steel

(MILES)

MESSAGE FOR JAPAN

ringsofsaturn

I hope to see you all very soon. Cheers!

Hope to see you all soon and thank you for the support!

みんなにすぐ会いたいよ!元気でね!
みんなにすぐ会えたらいいな。いつもサポートをありがとう!

AARON & MILES

RINGS OF SATURN Facebook Page
RINGS OF SATURN Official Site
NUCLEAR BLAST Facebook Page
NUCLEAR BLAST Official Site

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORIGIN : UNPARALLELED UNIVERSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PAUL RYAN OF ORIGIN !!

Origin-Band-Photo-Spring-2017

The Originatior Of Technical Death Metal From Kansas, Origin Introduces Blasting Metallic And Technical Chaos With Their Newest Record “Unparalleled Universe” !!

DISC REVIEW “UNPARALLELED UNIVERSE”

テクニカルデスメタルの 象徴にして “起源”。貫禄と威信の US フォーピース ORIGIN が、バンドの宇宙を拡充する新作 “Unparalleled Universe” をリリースしました!!コントラストや政治性という新要素にフォーカスした作品は、まさしく “未曾有の” 第二章の幕開けを告げています。
ORIGIN は1997年に結成され、今年20周年を迎えたデスメタルのイノベーター。鬼神のようなハイテクニックと、獰猛なるブルータリティーを共存させた “ニュースクールデスメタル” の筆頭格だと言えるでしょう。「今日のキッズは色々なラベルをデスメタルに加えているね。ただ、僕は ORIGIN こそがデスメタルのサウンドを変えたと強く感じているんだよ。」 と語る孤高のギタープレイヤー Paul Ryan の言葉には、例えば DYING FETUS, NECROPHAGIST, VITAL REMAINS NILE などと共にシーンを牽引してきた当事者だからこその凄みとリアリティーが内包されています。
バンドとして初めて前作と同様のメンバーで制作した “Unparalleled Universe”。しかしフックに欠けるなどとの意見もあった前作 “Omnipresent” とは対照的に、ORIGIN の新たなる “比類なき世界” は魅力的なアイデアとリピートを誘うフックに満ちた実に創造的なレコードとなりました。
異世界のスイーピングで幕を開けるアルバムオープナー、”Infinitesimal to the infinite” は ORIGIN の残虐性が未だに一級品であることを伝えます。圧倒的な音の密度と生まれくるカオスは “無限に” リスナーの聴覚を襲い、参加2作目となるボーカル ex-SKINLESS の Jason Kayser も前作より遥かに堂にいったグロウルを披露しています。
何より、メカニカルかつファストな楽曲を牽引する超人 John Longstreth の、Flo Mounier にも比肩し得るスピードと正確性はバンドのストロングポイントとして強い光彩を放っていますね。
“Cascading Failuers, Diminishing Returns” はバンドが新たな領域へと進出した確かな証です。インタビューで、初期のアルバムをアクション映画に例えたバンドが “Unparalleled Universe” で見せつけたのは、抜群のインテリジェンスと多様な構成力でした。
無慈悲なブラスト一辺倒ではなく、起伏に富んだテンポコントロールで予想もつかない展開を構築するリズムセクション。シュレッドを効果的に盛り込みながら、時に激烈に、時にメロディアスに攻め立てるギターアンサンブル。トラディショナルなテクニカルデスメタルのように、音符を詰め込むだけの方法論では決して辿り着けない境地がここには存在しています。楽曲終盤に見せるアトモスフェリックとさえ表現可能な壮美で幽玄なムードは、まさにそれを象徴していると言えるでしょう。
“Invariance Under Transformation” はバンド史上最もスロウな楽曲かも知れません。グルーヴィーなベースラインと冷酷なまでに難解なパーカッションに刻まれるギターリフは、CANNIBAL CORPSE や SUFFOCATION を想起させるほどにプリミティブでオールドスクール。全てがタイトに一体化したバンドのパフォーマンスは、ブラックホールの質量を纏ってリスナーに激越なグラビティーの洗礼を浴びせます。
“Burden of Prescience” にも言えますが、地獄の罰 “火盆処” の如くジリジリと骨の髄まで焼き尽くすようなローテンポで、しかし重厚な責め苦のサウンドスケープは、バンドのファストな王道と見事にコントラストを描き、ORIGIN の新たなるトレードマークを誕生させているのです。
「現在のアメリカ政治がいかに厄災であるかを顧みれば、政治的な楽曲を収録する正しいタイミングだと感じたんだよ。僕は自分の国を恥ずかしく思っているんだ。」 これまで政治的なオピニオンを決して楽曲には取り入れてこなかったバンドを触発したのがトランプ政権であることは明らかですし、”ろくでなしの政府、全ての革命を目覚めさせる” と歌った BRUJERIA のカバー “Revolución” はまさに ORIGIN の主張を見事に代弁した楽曲だったのでしょう。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド Paul Ryan にインタビューを行うことが出来ました!「最近のキッズは CD に合わせてプレイしているけど、僕たちは全くそんなことはしないよ。」 痺れます。どうぞ!!

18485645_10154764206899037_1562780883955892576_n-2

ORIGIN “UNPARALLELED UNIVERSE” : 9.6/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORIGIN : UNPARALLELED UNIVERSE】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHON : HOMEY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERICK HANSEL OF CHON !!

18341830_1709318155759985_2866650410712777792_n

California Based, Incredible Jazz-Math Rock Trio, Chon Advance Into New Realm With The Masterpiece “Homey” !!

DISC REVIEW “HOMEY”

インストゥルメンタルミュージックの未来を切り開く時代の寵児。サンディエゴのジャズ/マスロックトリオ CHON が、シーンの輿望を担う最新作 “Homey” をリリースしました!!バンドの “ホーミー” である南カリフォルニアの太陽、空気、夏の匂いを一身に浴び、望外なまでにチルアウトしたレコードは、ジャンルに海風という新風を吹き込んでいます。
CHON が2015年にリリースしたファーストフルレングス、 “Grow” はバンドのユニークな才能や感受性を見せつける素晴らしきショーケースとなりました。ソフトでカラフルなコードワーク、デリケートでピクチャレスクなリードプレイ、ダイナミックに研ぎ澄まされたバンドサウンド。高度な知性と屈託のない無邪気さが同居する、オーガニックかつテクニカルなその世界観はまさしく唯一無二で、スメリアンの秘蔵っ子から一躍シーンのサウンドアイコンへと飛躍を果たすことになったのです。
バンドのホームタウン、カリフォルニアにインスパイアされ制作された最新作 “Homey” は、”Grow” で見せた圧倒的な光彩はそのままに、その鋭敏な感性が掴まえたエレクトロニカ、アンビエント、ハウスなど所謂チル系のトレンドを大胆に咀嚼し、トロピカルで新鮮なムードとテクニカルなマスロックを共存させることに成功していますね。
アルバムオープナー、”Sleepy Tea” は、インタビューにもあるように、驚異的なまでに進化した CHON のインストゥルメンタルワークを堪能出来る楽曲です。猫の目のように変化する細やかなリズムアプローチは、Mario と Erick のギターチームがダンスを踊る最高の舞台。時に奔放に、時に精巧に、極上のメロディーとエキサイトメントを運ぶニ人の複雑で甘い関係は、奇跡の距離感で音のユーフォリアを紡いで行きます。
CHON の豊潤なる味わい深さの一端は、モダンの中に見せるオールドスクールな部分かも知れません。特に今作では、フュージョンと言うよりもビバップやモダンジャズのスウィング、ツーファイブ、フォービート、フレージング、シンコペーションが丹念に織り込まれており、得も言われぬコントラストを創出しています。例えば、”Checkpoint” などはマスロックの顔をしたジャズスタンダードのナンバーだと言えるかも知れませんね。
当然、手数とグルーヴを両立させた Nathan Camarena のドラム捌きも卓越しており、突っこみ気味でバンドを牽引するそのエナジーは圧倒的。ゲストに迎えた Brian Evans のパーカッション、有機的でムーヴアラウンドな Anthony Crawford のベースラインとも相俟って、型破りでマスロックの可能性を再定義するようなデザインをアルバムを通して描いていますね。
同じくサンディエゴを拠点に活躍する、ビートメーカー/ジャズギタリスト Go Yama をフィーチャーした “Berry Streets” は CHON の新たな冒険を象徴する楽曲です。現在進行形のトレンドであるトロピカルハウスを主軸としたトラックは、あまりにノスタルジックでアンビエント。カリフォルニアのビーチで沈みゆく夕日を惜しみつつ聴くために作られたかのような至高のチルウェイブに仕上がっています。
同時に CHON のジャジーなインストゥルメンタルワークも効果的に挿入されており、Erick がインタビューで語ってくれた通り、結果として二つのジャンル、二つの才能が見事に融合し開花した独創的で至妙な世界観を構築することに成功しているのです。
新進気鋭の シンガー/サックス奏者 Masego を起用した “Nayhoo” もコラボレートの成果が際立って実を結んだ一曲です。ソウル/エレクトロジャズの領域へと踏み込んだ楽曲は、Masego のエモーショナルなボーカルを芯柱とし、匂い立つような色気、スイートな瞬間をアルバムへもたらしていますね。勿論、Thundercat や、FLYING LOTUS がフェイバリットに挙がっている事実を知るまでもなく、ここで彼らが、Jazz の領域を拡大する Robert Glasper と “Jazz The New Chapter” のフロンティア精神を意識したことは明らかです。
「自分たちが気に入るサウンドの楽曲を書き続けて、叶うならファンも僕たちの音楽を好きになり続けてくれることだね。その過程で、さらに新たなファンも開拓出来たら良いな。」
世界最高峰のエレクトロポップを創造するビートメーカー、Giraffage A.K.A. Charlie Yin との共演にも言えますが、既存のファン層からある程度の反発を見越しても、より幅広いマスリスナーへとアピールし、音楽的なチャレンジを続けることこそがバンドのゴールだと Erick は認めています。そして CHON の掲げる、その本来の意味でのロックスピリットは必ず報われるべきだと感じました。
今回弊誌では、ギタリストの一人 Erick Hansel にインタビューを行うことが出来ました。もし、”Homey” のムードやスピリットが気に入ったなら、Jakub Zytecki の最新ソロEP “Feather Bed” や、先日弊誌でも特集を組んだ ichika の新プロジェクト AMONG THE SLEEP へと歩みを進めてみるのも一興です。どうぞ!!

Homey-2

CHON “HOMEY” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHON : HOMEY】JAPAN TOUR SPECIAL !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SHADOW OF INTENT : RECLAIMER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS WISEMAN & BEN DUERR FROM SHADOW OF INTENT !!

18157459_652408941624917_1015245742480791902_n

The Halo-Themed Stunning Symphonic Deathcore Act From US, Shadow Of Intent Has Just Released One Of The Most Dramatic Record Of The Year, “Reclaimer” !!

DISC REVIEW “RECLAIMER”

遥かなる星河に美麗なるデスコアのシンフォニーを注ぐ、コネチカットのスペースシップ SHADOW OF INTENT がハイスペックな新章 “Reclaimer” をリリースしました!!人類とコヴナントの争いを描く壮大なる宇宙譚 HALO シリーズをテーマに抱いたバンドは、文字通りシーンの “再生” を担っていくはずです。
ギタリスト Chris Wiseman とボーカル Ben Duerr のプロジェクトとして始まった SHADOW OF INTENT。遂に5人のメンバーを揃え、真のバンドとしてリリースした初の作品 “Reclaimer” は実際全ての面で前作 “Primordial” を凌駕しています。
アルバムオープナー、”We Descend…” の神秘的なアトモスフィア、壮麗なるオーケストレーション、透徹したプロダクションはまさに進化の証。インタビューにもあるように、ABIGAIL WILLIAMS のキーボーディスト Kelsie Hargita の力を借りて構築するシンフォニーは、幾重にも重なりたなびく天の川銀河のごとく華麗に花開きます。
“The Return” で見せるコントラストはアルバムの素晴らしきインビテーション。Ben の地を這うガテラルと Chris の天翔るシュレッドは互いのインテンス、エレガンスを損なうことなく、むしろ崇高さと風格を相互作用で創造しながら激しく加速していきます。
インタビューで語ってくれた通り Jason Richardson をリスペクトする Chris のクラシカルでファストなリードプレイは、スリルと審美の無重力空間でダンスを披露し、Ben のガテラルはブラックホールの質量で全てを飲み込みます。さらに Matt のテクニカルかつクリエイティブなドラミングはカイパーベルトのごとくバンドを密に集約ししリスナーへと迫り来るのです。
彼らを凡百のデスコアバンドから際立たせているのは、確かに卓越したシンフォニックなアレンジメントとオーケストレーション、凛としたピアノの響き、そして鮮麗で純美なメロディーでしょう。しかし、同時により幅広く多彩な音楽的素養も注目されるべきだと感じます。
INFANT ANNIHILATOR の Dickie Allen, INGESTED の Jason Evans, そして Ben のトリプルボーカルで臨んだ “The Catacombs” ではフロリダデスメタルに接近し、チャグと対比させたよりプリミティブでオーガニックなブルータリティーを見せつけ、一方で “The Mad Tyrant’s Betrayal” では高音トレモロリフやクリーンギターを大胆に導入しブラッケンドでアトモスフェリックなドラマを提示します。
何より、Chris のデスコア、テクデス、ブルータルデスメタル、ブラックメタル、ブラックゲイズ、クラシカルなどを巧みに配置した千変万化なリフワーク、そして Ben とゲストボーカルが構築するガテラル、グロウル、スクリーム、クリーンをピースとした難解なジグソーパズルの融合には驚嘆するしかありません。
勿論、VILDHJARTA / HUMANITY’S LAST BREATH のメンバーにして BORN OF OSIRIS の最新作でミキシングも手がけたシーンのレジェンド Buster Odeholm が手がけたアルバムでは、「高校時代には、”The New Reign” EP を本当によく聴いたものさ。」 と Chris が語る通り “The Gathering of All”, “The Heretic Prevails” のようなBoO 直系のアトモスフェリックでコズミックなデスコアサウンドも見事に炸裂していますね。
そして遂にパワーメタルの領域にまで足を踏み入れたドラマチックな “The Prophet’s Beckoning”。クリーンボイスで勇壮に歌い上げる奇跡の刹那には、壮絶に畳み掛けたアルバム中盤の全てが最良の形で結実したかのような爽快感までをも感じることが出来ました。
ちょうど一時間、ドラマティックなスペースオペラは、作品で最もプログレッシブな長尺曲 “The Tarutarus Impalament” で深遠なスポークン・ワードと共に幕を閉じました。
今回弊誌では Ben と Chris にインタビューを行うことが出来ました。デスコアはもとより、シンフォニック、ブラッケンド、プログレッシブ、メロディックなど様々なメタルファンにぜひ聴いていただきたい作品です。どうぞ!!

17498782_636487953217016_2576682200764432207_n-2

SHADOW OF INTENT “RECLAIMER” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SHADOW OF INTENT : RECLAIMER】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【YVETTE YOUNG : ACOUSTICS EP 2】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YVETTE YOUNG !!

Yvette-Young-interview-Acoustics-EP-II-Covet-guitar-1

Having Played Piano Since The Age Of Four And Violin Since Age Seven. Math Rock Queen, Yvette Young Shows Her Classical Influences With Her Beautiful New Record “Acoustics EP 2” !!

DISC REVIEW “ACOUSTICS EP 2”

端麗なる才媛、麗しきマスロッククイーン Yvette Young が、情趣溢れる別世界 “Acoustics EP 2″をリリースしました!!インタビューにもあるように、愛するポストロックの領域へと接近した絶佳なる名編には、多様でフレキシブルな彼女の色彩が存分に織り込まれています。
プログレッシブとマスロックの狭間で存在感を放ち、シーンの揺らぎとなっている COVET をホームグラウンドとするように、Yvette はモダンギタリストの文脈で語られるテクニカルなプレイヤーです。しかし、4歳からピアノを始め、7歳でヴァイオリンを学んだという彼女の深遠なる七色のギフトは、決してただ一所に留まってはいないのです。
実際、”Acoustics EP 2” は実に画期的な作品です。ギターで作曲を開始して6年。波のように揺蕩う異なる拍子の海、アコースティックギターで表現されるモダンで高度なテクニック、そして自らがプレイするヴァイオリン、ピアノ、ハープ、バンジョーなど多種多様な楽器の使用による豊かな表情、アトモスフィア。全てが前作 “Acoustics EP” から格段にスケールアップを遂げ、Yvette は遂に独自の世界観を確立したように思えます。
ボサノバの空気を深く吸い込み、自身のポップサイドを前面に押し出した “Holiday” で幕を開けるアルバムで、しかし特に着目すべきは、彼女の独創的な奏法が可能にするオーケストラのようなサウンドでしょう。勿論ピアノやストリングスを重ねているとはいえ、骨格がギター1本の演奏でこれほどまで音楽に立体感を生み出す作品は実に得がたいと感じます。実はそこには Yvette のクラッシックの素養、ピアノの技術が大きく作用しているのです。
インタビューで語ってくれた通り、Yvette には “ギターのレイアウト、フレットや弦をピアノの鍵盤に見立てて” プレイする場面が存在します。つまり左手で抑え右手で音を出す通常のプレイに加えて、両手ともに指板をタップし直接音を生み出すことで、右手の分、旋律をより重ねることが可能になっているのですね。ギターを横にしてそのままピアノのように “弾く” イメージでしょうか。
当然、高度なテクニックで音量やノイズの調整は簡単ではありません。しかし彼女はメトロノームの如く正確にリズムを保ちながら、優美なサウンドで鮮やかに清音を奏でます。
作品で最もポストロックに接近した “Adventure Spirit” の、文字通り冒険心を胸に抱いたカラフルなメロディーのポリフォニーは、まさにその Yvette オーケストラの象徴です。チェロ、ヴァイオリン、ボーカル、ギター。テーマを奏でる主役の楽器が次々に入れ替わるアンビエントな楽曲で、Yvette の知性的なギターアルペジオ、コードプログレッションはコンダクターのように様々な楽器を操り指揮していきます。
勿論、ギターが旋律を奏でる場面では、鮮やかに両手タップを使用し、躍動するメロディーと共に指揮者不在の状況を回避。エアリーなボーカル、エセリアルなストリングスの響きは、オーガニックな彼女のオーケストラに HAMMOCK や CASPIAN を想起させる美麗なるダイナミズムを創造していますね。
一方で、フォーキーな “Blossom” の数学的で流麗なフレージングはマスロックの女王を強くイメージさせてくれます。師匠 INVALIDS 譲りのサウンドスケープ、風景の中に点在する無上のエキサイトメントはすでに彼女のトレードマークとなった感がありますね。
アルバムは、現在の Yvette Young を全て詰め込んだ悲しみと希望の組曲、”A Map, A String, A Light Pt 2″ で詩情豊かにその幕を閉じました。
今回弊誌では Yvette Young にインタビューを行うことが出来ました!もはや弊誌のかわいい担当準レギュラーだと言えますね!どうぞ!!

a4027265917_10-2

YVETTE YOUNG “ACOUSTICS EP 2” : 9.7/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【YVETTE YOUNG : ACOUSTICS EP 2】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARCADEA : ARCADEA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CORE ATOMS OF ARCADEA !!

18121397_1488188897908002_3297078369382183841_o

Mastodon, Withered, Zruda, Get Together As Synth-laden Progressive, Heavy Psych Band Arcadea !! This Should Be Interesting For Sure !

DISC REVIEW “ARCADEA”

MASTODON, WITHERED, ZRUDA のメンバーが集結した新たなるコスモフロンティア ARCADEA が、遥かなる未来を映し出すデビューフル “Arcadea” をリリースしました!!50億年先の宇宙をテーマとした壮大なるスペースオデッセイは、ロックという銀河の膨張を促すビッグバンとなるはずです。
MASTODON のドラマー/ボーカル Brann Dailor が、WITHERED のギタリスト Raheem Amlani, ZRUDA のギタリスト/キーボーディスト Core Atoms とチームアップしたスーパープロジェクト ARCADEA。
ホームバンドでは基本的にギタリストの Raheem, Core 2人をシンセプレイヤーへとコンバートし、プログレッシブかつサイケなエレクトロニカサウンドのみを Brann のダイナミックで手数に富んだドラムス、キャッチーなボーカルと融合させた ARCADEA の音楽はユニークで先見性に溢れています。何よりロック/メタルの必需品とも思えるギターサウンドがどの楽曲からも聴こえて来ないのですから驚きですね。
Brann のホームバンド、偉大なる MASTODON は “Crack the Skye” で Brann のリードボーカルを初めてレコードに取り入れて以来、彼のメロディックな歌唱と呼応するようによりキャッチーでストレートなコンポジションへと移行して行きました。その変化により Brann はさらにバンドにとって不可欠な存在となりましたが、皮肉なことにその方向転換は彼のトレードマークであるハイパーアクティブでフィルオリエンテッドなドラミングが減退する結果にも繋がっていったのです。
“Arcadea” は Brann Dailor の魅力全てが詰まった作品だと言えるのかも知れませんね。アルバム全体を覆うのは、間違いなくあの “Leviathan”, “Blood Mountain” で聴くことの出来た、リード楽器を主張するエキサイティングで高密度な阿修羅のドラミング。同時に彼のスペーシーでポップな浮遊感溢れる歌心は、確実に作品のコアとして土星の輪のようにレコードを包み込んでいるのです。”Arcadea” には2人の Brann Dailor が互いを損なうことなく生き生きと存在しています。
勿論それは、アルバムオープナー、電子音楽の軍歌 “Army of Electrons” が証明するように、Raheem, Core 2人の綿密かつ繊細なコンポジション、変拍子を活用したプログレッシブなイメージ、ベースからリードまで幾重にもテクスチャーされた魅惑のシンセサウンドが、影となり日向となり素晴らしき脇役として煌めくことで初めて成立する才能のシンフォニーだと言えるでしょう。
一方で、”Gas Giant” はバンドの出自を明確にする楽曲です。インタビューにもあるように、アーケードゲームの “アーケード” をバンド名としたように、ゲームミュージックの影響は彼らが共闘する大きな理由の1つ。
“ロックマン” を想起させる勇壮で8bitライクなイントロダクションは、ビデオゲーム時代の幕開けに育ち、”アーケードゲームはマジカルな場所だった” と語るバンドのロマンが楽曲に溶け合った夢のような瞬間だったのかも知れませんね。
さらに、エアリーな女性ボーカルとボコーダーを起用したスロウでムーディーな “Neptune Moon” では John Carpenter をイメージさせるロマンチックなエレクトロホラーサウンドを再現。
Core が “70年代、シンセサイザーは未来の楽器だった” と語るように、ビデオゲーム、映画音楽といった70’s~80’s の典型的な電子サウンドを Brann のコンテンポラリーでアグレッシブなドラムスと融合させることで、レトロフューチャーな顔貌を形成しているようにも感じました。
エレクトロニカでありながら加工された EDM とは全く異質、ヘヴィーでありながら重厚なメタルとも異なる唯一無二のデザインが冴え渡る革新作。今回弊誌では、Core Atoms にインタビューを行うことが出来ました。MASTODON の近作に何かシックリこないダイハードなファンにもぜひオススメしたい作品です。どうぞ!!

17022272_1488085951251630_4128789015247277774_n-2

ARCADEA “ARCADEA” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARCADEA : ARCADEA】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MUTOID MAN : WAR MOANS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN BRODSKY OF MUTOID MAN !!

14463027_1282693865083769_1205438428190919894_n

Converge / Cave In Super Group, Mind-Blowing Behemoth, Mutoid Man Literary Melt Your Mind With Their Newest Record “War Moans” !!

DISC REVIEW “WAR MOANS”

CONVERGE, CAVE IN, ALL PIGS MUST DIE のメンバーが集結した突然変異のスーパーグループ MUTOID MAN が奔放かつ不遜、バッダースな新作 “War Moans” をリリースしました!!キャッチーなロックン・ロールのイメージを獰猛なメタルのアグレッションに投影した、チャーミングかつタイトなレコードはシーンの大いなる期待に応えて余りある一撃となりました。
シリアスで暗色調なアティテュードが枢軸となるコンテンポラリーなメタルシーン。狂気やユーモア、風刺を宿す MUTOID MAN のシアトリカルで本来のメタルらしいコンセプトは、実際異端で新鮮なカウンターとして際立っています。
インタビューにもあるように、”War Moans” は “セクシャリティ”、性行為や性的欲求にフォーカスした作品です。アートワークやタイトルが示すように、性的指向、欲求が日増しに暴走する現代社会を、戦争という極限状態へと投影しある意味戯画化することで、現代の異様さ “倒錯性” “変態性” を浮き彫りにしているのかも知れませんね。実際、バンドは “War Moans” を “Perverted” 変態的なレコードだと断言しています。そしてその柔軟なユーモアはポップセンスに、辛辣な毒気はアグレッションに姿を変えて作品の音楽性に反映されているのです。
文字通りリスナーの心を溶かすアルバムオープナー、”Melt Your Mind” はそういった彼らの意図を十二分に汲み取った楽曲です。キャッチーでスピーディー、ハイパーアクティブなバンドの新たなアンセムは、Brodsky のフックに満ちたギタープレイ、ファジーでラウドな Nick のベース捌き、そして Ben Koller の数学的かつダイナミックなドラミングに牽引されて、空襲にも似た爆発的なエナジーを発します。
加えて、あの VAN HALEN をも想起させるボーカルハーモニー “hoo-ooo” の火力も絶大で、物憂げなメロディーとの相乗効果は無上の中毒性をリスナーへと植え付けて行くのです。
続く”Bone Chain” ではさらにアンニュイなメロディーが中毒性を増し、MOTORHEAD meets QUEENS OF THE STONE AGE とでも形容可能、ドラッグのように危険でオルタナティブなキャッチーネスを創造していますね。
インタビューにもあるように、パンクやハードコアは勿論ですが、特に初期のメタルスピリット、80年代という時代を意識しリスペクトして制作されたアルバムで “Irons in the Fire” からタイトルトラック “War Moans” への流れはまさに作品を象徴しています。
MEGADETH の “Countdown to Extinction” をイメージさせる大仰なイントロ、スラッシュの衝動、テクニカルなシュレッド、インテレクチュアルなリズムワーク、シンガロングを誘うキャッチーなコーラス。”Irons in the Fire” は、かつてメタルが備えていた祝祭的な高揚感を胸いっぱいに浴びつつ、マスマティカルでスペーシーに味付けしたモダンな感覚と共に現代へと叩きつけているのです。
さらに SLAYER の “War Ensemble” に対する極上のオマージュにも思える “War Moans” では、あの時代を象徴するシュレッダー Marty Friedman が、トレードマークのコード感抜群で変拍子を切り裂くリードプレイでバンドの主張を代弁しています。
こういった凶悪な楽曲においても、Brodsky はスクリームや吐き捨てを駆使してあくまでメロディーを追い、勿論あの素晴らしき CAVE IN で確立したスタイルから遠く遊離する訳もありませんが、グロウルは使用していませんね。彼のそのトレードマーク自体も、グロウルが飽和気味な界隈に対する強いアンチテーゼ、風刺となっているように感じました。
とは言え、アルバムは決してオプティミスティックな押しの一辺倒ではありません。ブルージーでスロウ、スラッジーにバンドのシリアスな一面を見せつける “Kiss of Death” はアルバムの裏ハイライトとして作品に妙なる濃淡をもたらし、何よりこのマスターピースを締めくくる衝撃のパワーバラード、ダークな歌姫 Chelsea Wolfe を起用した “Bandages” では、慈愛と憂鬱の相反するエモーションを深々とサウンドに込め、バンドのジャンルスパニングでフレキシブルな才能を絶佳なるコントラストとして見事レコードに落とし込んでいるのです。
作品のプロデューサーでもある CONVERGE の Kurt Ballou が、カオティックに暴走する “Micro Aggression” ではなく、意外にもこの2曲にゲスト参加を果たしていることを付け加えておきましょう。
今回弊誌では、ex-CONVERGE で CAVE IN のマスターマインド Stephen Brodsky にインタビューを行うことが出来ました。マーティーさんによれば、「新しいアルバムはエグい! クッソかっこいい! メタルかロックかパンクか分からないけど、とにかく生々しいヘヴィ・ミュージック! コイツらはホンモノだ、保証付き!!」 だそうですよ。どうぞ!!

17796327_1473596632660157_8806910300092491507_n-2

MUTOID MAN “WAR MOANS” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MUTOID MAN : WAR MOANS】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ELDER : REFLECTIONS OF A FLOATING WORLD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK DISALVO OF ELDER !!

18076853_1493027850739101_2137956393990418469_o

Massachusetts Based Artistic Heavy Rock Act, Elder Take You An Adventure That Won’t Be Soon Forgotten With Their Progressive & Eclectic New Record “Reflections Of A Floating World” !!

17626428_1467810789927474_8938480281207226626_n-2

DISC REVIEW “REFLECTIONS OF A FLOATING WORLD”

マサチューセッツからストーナー/ドゥームの翼を広げるアートロックバンド ELDER が、革命的な新作 “Reflections Of A Floating World” をリリースしました!! 音のキャンバスに描かれる芸術的で想像性豊かな色彩は、リスナーを遥かなるサウンドスケープの旅路へと誘うことでしょう。
ファジーでスロウ。シンプルなストーナーアクトとしてスタートした ELDER は、プログ/ヘヴィーサイケの方角へと舵を切り、今や最もクリエイティブでアーティスティックなヘヴィーロックバンドと称されています。リスナーに豊潤なアドベンチャーやストーリーを喚起するあまりにシネマティックな作品と、ジャンルを縦横無尽に横断する精神性はその確かな証拠となっていますね。
中でも前作 “Lore” は、リフ、メロディー、コンポジションに最上級のデザインと創造性が施され、プログレッシブドゥームの傑作として各所で高い評価を得た作品でした。しかし、バンドは “Reflections Of A Floating World” で自身の最高到達点を易々と更新して見せたのです。
アルバムオープナー、”Sanctuary” の威風堂堂としたリフクラフトはまさに ELDER の真骨頂。揺るぎなきそのファジーな響きはバンドのルーツを主張し、リスナーを “浮世” という聖域へ導く道標と化していますね。
楽曲の中間部では、バンドのフロントマン、ボーカル/ギター Nick DiSalvo が演奏家としての実力を存分に見せつけます。エモーションとテクニック、そしてエピカルな旋律を意のままに操り融和させたロングリードは、仙境なるアルペジオや起伏の激しい山々の如きリズムアプローチをアクセントとして極上のアドベンチャーを紡いで行きます。
実際、これほどまでギターサウンドが的確に、存分に、華麗に設計、レイヤーされたレコードは簡単には見当たりません。それはすなわち、4人目のメンバーとなったセカンドギタリスト Michael Risberg、ペダルスティールのスペシャリスト Michael Samos を不可欠な存在としてアルバムに招聘する理由となったのです。
“The Falling Veil” では、”Lore” から一層上のステージへと移行した Nick のボーカリストとしての魅力も開花します。表現力とレンジが広がり、自信に満ちた彼のサイケデリックな歌唱は Ozzy Osbourne のような中毒性をも携え、決してメジャーとは言えないジャンルのバンドがリーチを拡大するための大きな武器となっていますね。
さらに、”The Falling Veil” はバンドの新たな地平も提示します。PINK FLOYD のムードを存分に浴びてスタートする楽曲は、クラッシックプログ、クラウトロック、インディーなどの影響がシームレスに芽生える、カラフルで多彩な浮世草子と言えるかも知れません。レトロとモダン、ヘヴィネスとアトモスフィア、シンプルとマスマティカルを行き来する楽曲のコントラスト、ダイナミズムはまさに唯一無二。インタビューで語ってくれた通り、「より複雑でプログレッシブ」となったアルバムを象徴する起伏に富んだ楽曲は、「音楽を聴いている時、頭の中にストーリーを描けるようなサウンド」として完成を見たのです。
バンドが誇るコンテンポラリーな多様性はジャンルのみに留まらず、百花斉放なその使用楽器にも及びます。人生を変えたアルバムのトップに ANEKTODEN をリストしていることからも、バンドのプログレッシブロックに対する造詣の深さが伝わりますが、”The Falling Veil” を引き合いに出すまでもなく、メロトロンを彼らほど巧みにヘヴィーロック/メタルへと取り入れた集団は OPETH を除いては存在しないでしょう。
アルバムを聴き進めれば、フェンダーローズが素晴らしき色を添える “Staving Off Truth”、ペダルスティールが主役を務め Miles Daves の遺伝子を宿した “Sonntag”、メロトロンとピアノがヘヴィーなリフストラクチャーと見事な対比を生み出す “Blind” など、Nick が語ってくれたように 「ヘヴィーロックではあまり聴くことの出来ない楽器」でヘヴィーロックを新たな領域に導いていることに気づくはずです。
ジャンルのマスターマインドである MASTODON がキャッチーであることにフォーカスした今、ELDER の切り開く新たなフロンティアはシーンにとって掛け替えのない財産となっているのかも知れませんね。
今回弊誌では Nick DiSalvo にインタビューを行うことが出来ました。日本の “浮世” ともリンクし、マテリアルワールドとスピリチュアルワールドを往来する64分の壮大な叙事詩。6曲全てが10分前後ながら、リッチで瑞々しく、全く冗長さを感じさせない圧倒的な構成力にぜひ酔いしれてみてくださいね。どうぞ!!

ELDER “REFLECTIONS OF A FLOATING WORLD”: 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ELDER : REFLECTIONS OF A FLOATING WORLD】