NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WHITE WALLS : GRANDEUR】RISE OF THE ROMANIAN METAL


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ȘERBAN-LONUT GEORGESCU OF WHITE WALLS !!

“I Think That If Progressive Metal Wants To Keep The Name, It Has To Stay Curious And It Has To Keep Exploring Other Genres. That’s Why I Really Appreciate Bands Like Polyphia – That Kinda Stuff Sounds Very Modern And “State Of The Art”, Precisely Because The Guys Writing It Are Super Open To Genres That You Wouldn’t Expect To Be Associated With More Traditional “Prog”

DISC REVIEW “GRANDEUR”

「ルーマニアのライブツアーに同行していたノルウェーやルクセンブルクの友人たちは、母国の文化省からお金をもらってやっていると言っていたのを覚えているよ。文化を輸出しているのだからね。もしこんな提案をルーマニアの政府にしたら、無視されるか、笑われて銀行に失業手当を取りに行くことになるね (笑)。」
ドラキュラと魔女伝説の神秘を湛える東欧の孤高、ルーマニア。そのメタルじみた伝承にもかかわらず、鋼鉄の炎が決して赤々と燃え上がってはいなかった彼の地において、WHITE WALLS が放つ斬新なプログメタルの魔法はさながらドラキュラのようにリスナーを虜にしていきます。
「WHITE WALLS のメンバー全員がニッチなプログにハマっていったのは、ルーマニアが過去30年間、インターネットアクセスやスピードに関して常に世界のトップ国にランクインしているからなんだろう。若くて、好奇心旺盛で、インターネット接続がスムーズなら、幅広い音楽教育を享受するのはそれほど難しくはないんだよ。」
Șerban-Ionuț Georgescu が語るように、インターネットの普及によって、もはや世界のどこにいてもメタルやプログレッシブの奥深い世界を探求することが可能です。実際、隠れたインターネット大国ルーマニアには、アンダーグラウンドな人気を集める E-AN-NA, BUCOVINA, DIRTY SHIRTS, MAGICA, SCARLET AURA といった優れたバンドが実は乱立しています。それでも WHITE WALLS の最新作 “Grandeur” は、その洗練、完成度、独自性において新たなルーマニアンメタルの道標を刻むようなインパクトを備えているのです。
彼らの洗練を支えた一つの要因が、KARNIVOOL, ANIMALS AS LEADERS, SKYHARBOR を手がけたモダンメタルの仕掛け人、プロデューサー Forrester Savell の起用でしょう。立体感のある音作りを得て、WHITE WALLS の物憂げかつアトモスフェリックな影、攻撃的でダイナミックな光、そして変動を続けるリズミックてグルーヴィーな大地の三原素はより躍動感をもってリスナーの元へと届けられるのです。仄かに感じられるは東欧の風。
「プログレッシブメタルという名前を維持したいのであれば、好奇心を持ち続け、他のジャンルを探求し続けなければならないと思うんだ。それが POLYPHIA のようなバンドを高く評価している理由なんだけどね。とてもモダンでまさに芸術だ。彼らは伝統的な “プログレ” に関連しているとは思えないようなジャンルにも非常にオープンに取り組んでいるからね。」
何より WHITE WALLS が真の “プログレッシブ” を体現しているのは、ノンメタル、ノンプログなテリトリーまで貪欲に咀嚼している点でしょう。ターンテーブルも電子の海も、ミニマリズムの方法論さえ、彼らにとっては捕食の対象でしかありません。RUN THE JEWELS から音節やアクセントの魔法を学んだという Șerban の言葉は、繊細にアーティキュレートされた表情豊かなレコードがしっかりと証明しています。
中でも、日本のアニメーション、Akira や 今敏に影響を受けた MV が秀逸なオープナー “False Beliefs” から “Eye For an I” の流れはモダンプログメタルの到達した一つの金字塔かもしれませんね。LEPROUS や CALIGULA’S HORSE が認める胸を抉るような恍惚のメロディーは、祈りのようなギターの荘厳と交わりながら暗闇と重力へのドアを開けます。Eugen Brudaru の時に縋るような、時に神々しく、時に悪魔にもなる歌声は WHITE WALLS、無垢な白壁を千変万化、カラフルに描き導くのです。
常にシンコペーションとグルーヴの妙を提示しながら、シャープな演奏で裏方に徹するリズム隊の働きも見事。そうしてメロウな高揚感、浮遊するヘヴィネスといった両極が不思議に交わるアルバムは、ブカレストのゲオルゲ・ザンフィルが奏でるパンフルートのように表情豊かなクローザー “The Slaughter (Marche Funèbre)” で絶頂に達するのです。
今回弊誌では、バンドのスポークスマン、ベーシスト Șerban-Ionuț Georgescu にインタビューを行うことが出来ました。「バンド名の由来は、BTBAMのアルバム “Colors” の素晴らしきクローザーから来ているんだ。言葉自体は意味の範囲が広いんだけど、僕らが特に惹かれたのは、生まれた時には世界は白い壁のある部屋のようなもので、人生で残すものがその壁に描かれていくという解釈だったんだ。」 どうぞ!!

WHITE WALLS “GRANDEUR” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GARGOYL : GARGOYL】WHEN GRUNGE AND PROG COLLIDE


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVE DAVIDSON OF GARGOYL !!

‘For Me a Band Like Alice In Chains Does Have Progressive Edge To Them Even Though They’re Considered Grunge. They Definitely Weren’t Just Taking a Radio Rock Approach, They Always Had Something New To Say With Every Album.”

DISC REVIEW “GARGOYL”

「僕はこのプロジェクトを自分の中にある別の影響を吐き出す場所にしたかったんだ。普段、僕がかかわっている音楽から離れてね。そうすることで、アーティストとしての別の一面を表現することができるから。」
前身バンドも含め、ボストンの名状しがたきデスメタル REVOCATION で2000年から活動を続ける Dave Davidson は、究極に複雑なリフ、慄くようなスクリーム、そしてブラストの嵐の中で20年を過ごしてきました。つまり、自らの全てをエクストリームメタルへと捧げることで、シーン随一のギタープレイヤーという威名を得ることとなったのです。DEATH や CYNIC の正当後継者、魂の継承は彼にこそ相応しい。ただし、それは Dave という多面体の音楽家にとってほんの一面にしか過ぎませんでした。
「自分たちが影響を受けたものにオマージュを捧げたいという気持ちはあったと思うけど、それは自分たちのやり方でやる必要があったんだ。 俺たちは過去を振り返るバンドになろうとしているのではなく、影響を受けてそれを発展させることができるバンドになろうとしているからね。」
AYAHUASCA のギター/ボーカル Luke Roberts を巻き込み立ち上げた新たなプロジェクト GARGOYL で、Dave は自らが多感なスポンジだった90年代の音景を、培った20年の発展を注ぎながら再投影してみせました。グランジ、ゴス、オルタナティブ。具体的には、ALICE IN CHAINS や FAITH NO MORE の面影を、Dave らしいプログレッシブやジャズの設計図で匠のリフォームの施したとでも言えるでしょうか。ALICE IN CHAINS + OPETH, もしくは MARTYR という評価は的を得ているように思えますし、プログレッシブ・グランジという Dave が失笑したラベルにしても、少なくとも作成者の苦悩と意図は十分に伝わるはずです。
「間違いなく、僕たちは全員が ALICE IN CHAINS から大きな影響を受けていると言えるね。そうは言っても、Luke は間違いなく非常にユニークなアプローチを行なっているし、彼は本当に個性的になろうと努力しているんだよ。」
Luke を乗船させたのは明らかに大正解でした。ALICE IN CHAINS の神々しき暗闇が、Layne Staley の絶望を認めた絶唱とギタリスト Jerry Cantrell の朴訥な背声が織りなす、音楽理論を超越した不気味で不思議なハーモニーにより完成を見ていたことは間違いありません。そしてアルバム “Gargoyl” が荘厳極まる “Truth of a Tyrant” のアカペラハーモニーで幕を開けるように、Luke の声によって GARGOYL は、ALICE IN CHAINS の実験をさらに色濃く推し進めているのです。
「僕にとってクラシック音楽やジャズは超ヘヴィーなものなんだよ。不安や実存的な恐怖を呼び起こす緊張感、クライマックスでその緊張感を解消した時のカタルシスや爆発的な解放感など、曲の中にテンションを生み出すことで得られる攻撃性やアティテュードがね。」
実際、”Gargoyl” はブラストやグロウルに頼らなくとも重さの壁を超えられることの証明でもあります。不協和なドゥーム、不規則なアシッドトリップに潜みそそり立つ美麗なる聖堂。LEPROUS にも通じるそのコントラストこそ、真なるヘヴィー、真なるプログレッシブを導く鍵であり、メタルがグランジを捕食した気高き勲章なのかも知れませんね。
今回弊誌では、Dave Davidson にインタビューを行うことが出来ました。「僕にとって ALICE IN CHAINS のようなバンドは、グランジと言われていてもプログレッシブなエッジを持っているんだよ。Jerry Cantrell のソロは特に派手ではないし、夥しいわけではないんだけど、僕ははずっと愛してきた。彼はまた、ユニークなリフを生み出す優れた耳を持っていたしね。とにかく、彼らはただラジオ・ロック的なアプローチを取っていたわけでは全くない。どのアルバムでも常に新たな挑戦に挑んでいたんだ。」  二度目の登場。どうぞ!!

GARGOYL “GARGOYL” : 10/10

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A LISTENER’S GUIDE TO KRALLICE’S COLIN MARSTON & NYC AVANT-METAL SCENE


A LISTENER’S GUIDE TO KRALLICE’S COLIN MARSTON & NYC AVANT-METAL SCENE

“Undoubtedly NYC Avant-metal Scene Is One Of The Best, But That’s Almost a Technicality Because New York City Is The Densest, Most Diverse Blob Of Humans Probably On The Planet. So Everything That Benefits From a Lot Of People And a Lot Of Variety Is Going To Benefit.”

WARR GUITAR, MENEGROTH, AND NYC

ニューヨークの怪人という呼称は、Colin Marston にこそ相応しいでしょう。14弦まで豊富なバリエーションを持ち、ベースとギターの両義性を有する愛機 “Warr Guitar” は、Colin が語る NYC の個性と多様性を体現した楽器にも思えます。さらに、鍵盤からドラムス、ノーマルなギター、ベースを操るマルチな才能にまで恵まれた Colin の活躍はまさに八面六臂。
「僕が Warr Guitar を手に取ろうと思ったのは、1996年に Trey Gunn と Tony Levin が KING CRIMSON でプレイするのを見たからなんだ。」
前回のインタビュー で Colin はそう語ってくれました。高校のころ、バンドメイトの父親から KING CRIMSON を教わった Colin は、再結成した彼らのライブに赴き衝撃を受けました。当然、Colin は Trey と Tony がチャップマンスティックという10, 12弦の異質をタッチしベースとギターの狭間を演出することは知っていましたが、Trey はすでに Warr Guitar という怪物に乗り換えていたからです。
「この楽器の両義性も重要なポイントだよ。ベースであり、ギターであり、その両方かもしれないんだから。いつだってこのギターのような、しかし幅広いレンジを持つ楽器を楽しんでいるよ。ギターの領域では低音弦だけチューンダウンしているんだ。そしてベースは究極に低音とハイストリングスをプレイしているよ。Warr Guitar の魅力は何と言ってもこのレンジの広さなんだ。同じ音域だけで楽曲やアルバムを構成するのは本当に退屈だからね。」
チャップマンスティックが文字通りスティックであるのに対して、Warr Guitar はギターとベースをその体躯に宿すキメラ。幅広いオクターブレンジでギターとベース、リズムとリードを同時にフォロー可能、特徴的なボイシング。新進気鋭の若き Colin Marston にとって、この楽器は壮大な音楽的空想を実現する鍵でした。
実は、メタル、プログはもちろん、フォーク、スムースジャズ、アヴァンギャルドと Warr Guitar が織りなす世界は驚くほど広く多様です。ただし、完全にカスタマイズ可能な新品は50万円以上、さらに製作者は癌を患い現在新規のオーダーを受け付けていません。門戸は狭いながら、こういった奇妙な楽器によって既存の音楽が再構築されることは必要不可欠な新陳代謝でしょう。
カナダが産んだプログレッシブデスメタルの魔境 GORGUTS に所属しながら、盟友 Mick Barr と立ち上げた超個性的ブラックメタル集団 KRALLICE をはじめ、GORGUTS の Kevin Hufnagel と探索するリフ迷宮 DYSRHYTHMIA、インストカルト BEHOLD…THE ARCTOPUS, 実験的ソロプロジェクト INDRICOTHERE と数多の奇々怪界でニューヨークのアヴァンメタルを牽引する主役の顔もまた一つ。
「NEUROSIS のアルバムを1枚選ぶのはとても難しかったね。所謂プログレバンドではなく、真の意味でのプログレッシブなロックバンドだよ。重要な違いだね。僕の中で、”The Word as Law” は最も成功したハードコアとメタルの融合だと言えるね。ただ何よりも最高にユニークな音楽だよ。ベースはA+の仕事をしているし、シンプルなパンクと複雑でエピカルなメタルがこのレコードで最高の”和解”をしたと言えるかもしれないね。」
特に、前回のインタビューでこう言って崇拝を露わにしていた NEUROSIS の Dave Ed をアルバムに招待し、ブラックメタルだろうがなかろうが全員のクリエイティブな精神を集結しながらメタルを未知の領域へと導く KRALLICE の重要性はこれまで以上に語られるべきでしょう。
一方で、ARTIFICIAL BRAIN, LITRUGY, KAYO DOT, EAST OF THE WALL, WOE, DEFEATIST, CASTEVET, PYRRHON, IMPERIAL TRIUMPHANT といったメタルの先鋭を象徴する NYC の百鬼夜行も、Colin が所有する Menegroth スタジオから彼の手によって発進しているのです。
「疑いようもなく最高のシーンの一つ。それは当然なんだ。なぜならニューヨーク市はおそらく地球上で最も高密度で最も多様な人間の塊だから。だから、誰もが多くの人々と多くの多様性から受けるべくして恩恵を受けていると言えるね。大都市なら同じ状況になるだろうけど、NYC は特別多様で国際的だからね。」
様々な文化や発言に触れることこそ人類の強み。それは世界に蔓延る分断の嵐とはすっかり真逆の考え方で、音楽やストーリーに多様性を認めるモダンメタルのスピリットそのもの。だからこそ、Colin の元には仕事のオファーが舞い込み続けるのでしょう。
このコロナ禍の中でも Colin は粛々とリリース&プロデュースを続けています。その膨大なアーカイブから、近年の重要作10枚について自身の言葉で語ってくれました。
「ワーカホリックという言葉は完全に間違いというわけではないんだけど、僕は作曲やレコーディングを本当に楽しんでいるからね。ワーカホリックってネガティブな響きがあるんだけど、僕は音楽制作に全くそういった感情は抱いていないんだ。
時々はもっと音楽以外にも興味の対象が広がればいいのにとも思うんだけどね…だけど僕にとって音楽は未だに広大で無限の奥行を備えているんだ。だから今でも惹き込まれ続けているのさ。」

COLIN TALKS ABOUT HIS RECENT WORKS

1. KRALLICE “MASS CATHEXIS”

this is the album we worked on mostly between 2018 and spring 2020. it was originally supposed to include 4 other songs, but in the interest of the album not taking forever to finish and then being too long to digest, we cut 2 songs, and then 2 more (although those 4 songs will now just form the core of our next album). i think this album features the most variety of any Krallice release, and although it features only one song “written” by me (the title track), i had more of a hand in the arrangement and drum writing than ever before. McMaster also contributed the most material to this out of any Krallice record. it was awesome to have Dave Ed back (since he wasn’t on GBF or Wolf).

このアルバムは俺たちがほぼ、2018年から2020年の春までに製作した作品だ。もともとは、別の4曲を収録するはずだったんだけど、アルバムの完成に時間がかかりすぎたり、収録時間が長くなりすぎるといった理由で2曲をまずカットし、それからさらに2曲を削ったんだ。だけどその4曲は次のアルバムの核となるものだよ。
俺は “Mass Cathexis” は KRALLICE のアルバムでも最もバラエティーに富んでいると思っている。ただ、俺はこの作品ではタイトルトラック一曲しか書いていないんだけどね。今回はそれよりも、アレンジメントやドラムのパートを書くことに注力したんだよ。Nicholas McMaster がどの作品よりも多くのマテリアルで貢献してくれたね。”Go Be Forgotten”, “Wolf” にはいなかった Dave Edwardson (NEUROSIS) が帰ってきたのも良かったよね。

2. KRALLICE WITH DAVE EDWARDSON “LOUM”

Dave Ed is one of my favorite musicians, both as a bassist, and vocalist. i became obsessed with Neurosis in high school and they informed me as a creative person in so many ways over the years. a truly progressive band that does what they want in the way they want and fuck everyone else. so this record was really a dream come true for me (and mick who also has a long history with Neurosis) to work with Dave and to get him to be the lead singer on a full album! pretty sure it’s the only album where that’s the case in existence–so i also feel like we did the world a public service here, haha!
this is also the Krallice album that i contributed the most writing (20 minutes out of 32 i spearheaded), so it has more of that knotty, dissonant, fractured and uncomfortable feeling than our other work, which i thought would be a perfect bedrock for dave’s vocals.

Dave Ed はベーシストとしてもヴォーカリストとしても、俺の大好きなミュージシャンの一人だ。高校生の時に NEUROSIS に夢中になったんだけど、彼らは何年にもわたってクリエイティブな人間として多くのことを教えてくれたんだ。だから、このアルバムは俺にとって(そしてNeurosisとの長い付き合いがある Mick Barr にとっても)本当に夢のようなことだったんだ!Dave と仕事をして、フルアルバムのリードシンガーになってもらえたんだからね。
これは、アルバム全編で Dave が歌う唯一の作品だと思うんだ。だから俺たちは世界に公共のサービスをもたらしてあげたような気さえするんだ。(笑)
俺が最も多くの曲を書いた KRALLICE のレコードでもあるから(32分のうち20分は俺が率先して作った)、他の作品よりも複雑で、不協和音があって、分断されていて、居心地が悪い感じがして、Dave Edのヴォーカルに対する完璧な基盤になると思ったんだ。

3. BEHOLD…THE ARCTOPUS “HAPELEPTIC OVERTROVE”

so proud of this album! i had been wanting to have a record with a very different approach to the drumming for a long time, and i finally did it! having jason bauers join the band was a perfect fit since he had experience playing 20th century chamber music, and i wanted that to basically be the vibe of the new behold album. also as a recording engineer working on a lot of extreme metal, i was so tired of the “cshhhhhhhhhhhhhhh cshhhhhh shshhshhhhshsh” of washy crashy cymbals smashing around constantly. tech metal benefits from a more articulated sound, so why not built that into the instrumentation itself, rather than writing yourself into a corner with blast beats and double kick that aren;t even audible without triggering or extreme processing in the mix? i also gravitated to a more brutal death metal style of writing for the normal guitar on this album. i like the combination of bdm guitar and 20th century classical percussion! for me it’s a perfect match. for most people, i’m sure it’s going to sound like a big pile of shit! it would be Arctopus without that tension though!

このアルバムをとても誇りに思っているよ!俺は長い間、ドラミングに対して非常に異なるアプローチのレコードを作りたいと思っていたんだけど、ついにそれを実現したんだ!Jason Bauers をバンドに参加させたのは、彼が20世紀のチェンバーミュージックを演奏した経験があったからで、完璧にフィットしていたね。俺は基本的にそれを新しい Behold の作品の雰囲気にしたかったんだ。
また、多くのエクストリームメタルに携わっているレコーディングエンジニアとして、俺はクシャーーーーーンクシャーーーーーンシャシャシャシャシヮみたいな、薄っぺらでガチャガチャしたシンバルがずっと鳴っているサウンドに飽き飽きしていたんだ。Tech-metal は、より明瞭なサウンドから恩恵を受けている。では、トリガーや極端な処理をしないと聴こえないようなブラストビートやダブルキックで自分を追い込むのではなく、インストゥルメント自体に明瞭さを組み込んでみたらどうだろう?このアルバムでは通常のギターにかんして、より残忍なデスメタルのスタイルに惹かれたんだ。 BDM (ブルータルデスメタル) ギターと20世紀のクラシックパーカッションの組み合わせが好きなんだよ!僕にとっては完璧にマッチしている。たしかに多くの人にとってはクソの塊でしかないだろうけど、こんなテンションじゃなきゃ ARCTOPUS はやってられないよ。

4. DYSRHYTHMIA “TERMINAL THRESHOLD”

our “thrash” album! it was really fun to change the dys lineup to 2-guitars and drums for 3 of the songs. having no bass at all on 3 songs, but lots of dual guitar seemed to fit the thrash vibe. i even got to do 2 guitar solos! the one in “Power Symmetry” is a written solo, and the one in “Twin Stalkers” is purely improvised. i’m also very proud of the song “Progressive Entrapment,” which i wrote on bass. i have a feeling that song is not going to resonate with many people, but it’s my favorite for many reasons which i think are impossible to explain. kevin and jeff’s playing and writing on this album are world-class. what a pleasure it is to record those guys!

俺たちの “スラッシュ” アルバムだ!DYSRHYTHMIA のラインナップを3曲でツインギターとツインドラムスに変えるのはとても楽しかったね。その3曲には全くベースが入っていないんだけど、沢山のツインギターがむしろこのスラッシュのヴァイブにフィットしたんだ。俺はギターソロまで弾いたんだよ!一つは構築されたソロの “Power Symmetry” で、もう一つは純粋なインプロヴァイズの “Twin Stalkers” だよ。
それに、”Progressive Entrapment” はとても誇りに思っているんだ。この曲で俺はベースを書いたんだけどね。多くの人にアピールする楽曲じゃないと感じていたんだけど、多くの理由から俺のフェイバリットなんだ。説明するのは難しいんだけど。アルバムにおける Kevin と Jeff の演奏はまさにワールドクラスだ。彼らとレコーディングが出来るのは本当に喜びだね。

5. PHONON “ALLOY”

so excited with how this album came out! it’s just one long improvisation which we cut into chunks and re-ordered. it came out so great! i really like listening to this. i have had other bands with Weasel, but never had improvised with him where i was playing bass. i found it really comfortable and exciting at the same time. i love weasel’s style and i found it easy to work with in this context. elliott and álvaro’s guitar work is the perfect textural companion to the rhythm section weasel and i created. elliott is a total legend and it was an absolute honor to make an album with him. Álvaro and i are newer friends, but just in the last couple years we’ve already collaborated on 5 releases! i like how heavy and metered this album came out even though it’s completely free improv.

このアルバムがこうやってリリースされてとてもエキサイトしているよ!一つの長いインプロビゼーションを、切り貼りして再レコーディングしたものなんだ。素晴らしい結果になったよね!このアルバムを聴くのが本当に好きだよ。Weasel とは他のバンドもやってたんだけど、俺がベースを弾いてインプロヴァイズしたことはなかったからね。非常に快適だけど同時にエキサイトしていることに気づいたよ。Weasel のスタイルが大好きだし、このコンテクストは俺にとってやりやすかったんだ。
Eliott と Alvaro のギターワークも俺と Weasel のリズムセクションとピッタリ符号していたね。Eliott は完全にレジェンドで、彼とアルバムを作れてとても誇らしいよ。Alvaro は比較的新しい友達なんだけど、ここ2年で5枚も一緒にアルバムを出してるんだ!完全にフリーなインプロヴァイズだけど、ヘヴィーでコントロールされたこの作品が気に入っている。

6. INDRICOTHERE “ALTRRN”

i was hired to write all the guitar for an album of Pyramids. i was sent drum machine from Vindsval of Blut Aus Nord, who i’m a massive fan of. i wrote songs to the drum machine on guitar, added a bunch of keyboards, and then sent it to the Pyramids guys to add vocals and additional keys. so this is the version before i sent it to Pyramids, which just Vindsval’s drums and my guitar and keys. i got to really like the instrumental version, and it also included kind of a “lost ambient album” since i extended the end of every song into an ambient exploration. i never planned to release this, but when the pandemic hit, and i lost thousands and thousands of dollars in income from cancelled recording sessions, i released it as a small fundraiser for the studio.
it’s worth noting that i did actually make 2 new proper Indricothere albums during the lockdown: a 3.5-hour ambient record and a crushing sluggish brutal death metal record:
https://indricothere.bandcamp.com/album/xi-5
https://indricothere.bandcamp.com/album/tedium-torpor-stasis

俺は PYRAMIDS のアルバムのためにギターパートすべての作曲を依頼されたんだ。大ファンの BLUT AUS NORD の Vindsval からドラムマシンを送ってもらったんだ。そのドラムマシンに合わせてギターを書いて、たくさんキーボードを加えて彼らに送ったんだ。彼らはそれにボーカルやキーボードをさらに加えたんだよ。
これは PYRAMIDS に送る前のバージョンで、Vindsvalのドラムと僕のギターと鍵盤だけで作ったんだ。このインストバージョンが本当に気に入っていたし、全曲の終わりをアンビエントな探究に拡張した “失われたアンビエントアルバム” のようなものも含まれているんだ。
これをリリースするつもりはなかったんだけど、パンデミックが起きて、レコーディングのキャンセルで何千ドルもの収入を失った時に、スタジオのためささやかな資金集めのためにリリースしたんだ。特筆すべきは、ロックダウンの間に INDRICOTHERE で適切な2枚の新作を作ったことだよ。3.5時間のアンビエント・レコードと、破砕的で緩慢なブルータル・デスメタルのレコードだ。

7. COLIN MARSTON “SUBLIVE”

i was approached by Arun from Subcontinental Records to release a live album of my experimental/classical music.
tracks 1 and 2 are from a show at EMPAC in Troy NY from 2015. the first is in my Indricothere keyboard style. the 2nd is feedback controlled player piano. i later went back to EMPAC and recorded a full-album version of these type of pieces, with Eliane Gazzard collaborating on sustain pedal and piano called, “Parallels of Infinite Perspect” on Álvaro’s Illuso label.
the 3rd track is an improvised duet with Mario Diaz de Leon from Issue Project room in 2019. i hope to do a full album with him soon!

Subcontinental Records の Arun から、俺の実験的/クラシカル音楽のライブアルバムを出さないかってアプローチされてね。1曲目と2曲目は、2015年ニューヨーク EMPAC でのライブなんだ。1曲目はオレが INDRICOTHERE でやってるキーボードのスタイルだ。2曲目はフィードバックをコントロールしたピアノ。後から EMPAC に戻って、Eliane Gazzard とフルアルバムバージョンを録音したんだ。
3曲目は、Issue Project の Mario Diaz de Leon とインプロヴァイズのデュエット。彼とはすぐにフルアルバムを作りたいな!

PRODUCTION WORKS

8. IMPERIAL TRIUMPHANT “ALPHAVILLE”

i love working with Imperial. zach has taken the band on an awesome trajectory over the years and it’s a honor to be along for the ride and to get to collaborate and help him realize his vision. the band is so awesome now with kenny and steve–feels like a real BAND now, with everyone contributing. i love that they leave some looseness in the music and are much more interested in a compelling performance rather than things being 100% accurate. they recognize the value of leaving some dirt and some mystery in a mix too, rather than going for a squeaky clean procut with no rough edges. they are open to lots of experimentation but also value a more jazz-oriented mentality where the instruments sound like people playing together and kicking ass.

IMPERIAL TRIUMPHANT と仕事をするのは大好きだよ。Zack は何年にもわたってバンドを素晴らしい軌道に乗せてきたし、その道を一緒に歩むことができて、コラボレートして彼のビジョンを実現する手助けをすることができて光栄だよ。Kenny と Steve がいる今のバンドはとても素晴らしいよ。全員が貢献して、真の “バンド” になっているね。
彼らは音楽に多少の緩みを残していて、100%正確なものを作ることよりも、説得力のあるパフォーマンスに興味を持っているから好きなんだ。エッジのない、ラフさのないキレイなカットを目指すのではなく、多少の汚れやミステリーをミックスに残すことの価値を認識しているからね。彼らは多くの実験にオープンであると同時に、楽器が一緒に演奏しているように聞こえるようなジャズ指向のメンタリティも大切にしているんだ。

9. AFTERBIRTH “FOUR DIMENSIONAL FLESH”

yes! love this record and this band. i’m so happy they came to me for this recording. an honor. each musician has a totally unique voice on their instrument. i love the prog flair, but the tasteful tempering through quality songcraft. these guys really balance the traditional well with the experimental. it’s very accessible somehow, without being annoying in the way that “accessible” can be, at least for me. it’s also very exciting to me that these guys all value a good-quality more “straightforward” recording/mixing style, rather than wanting that sound-replaced/quantized/amp-simulated vibe that is so omnipresent in modern “professional” recordings.

きたね!このレコードとバンドが大好きなんだよ。彼らがこの作品のために、俺のところに来てくれたことをとても嬉しく思っているよ。 各ミュージシャンはそれぞれの楽器に全くユニークな “声” を持っている。 俺はこのプログな雰囲気が好きなんだけど、質の高い曲作りによる味のあるソフトな性質も気に入っているんだ。
彼らは伝統的なものと実験的なもののバランスをうまくとっている。それはとても親しみやすいもので、”親しみやすい” というのは、少なくとも俺にとってはイライラさせることがないってこと。
また、最近の “プロ” のレコーディングにありがちな、音の置き換え、量子化、アンプシミュレートされたような雰囲気を求めるのではなく、彼ら全員が質の高い、より “素直な” レコーディング/ミキシング・スタイルを大切にしていることも、俺にとってはとても刺激的なことだったな。

10. PYRRHON “ABSCESS TIME”

pyrrhon are the best bros. i love hanging out and joking around with these guys. they are hilarious. also so honored and happy to have gotten to finally record/mix them for this and the previous album. alex cohen is undoubtedly a technical master, but i think the band started to become truly amazing when steve schweggler stepped in behind the drum kit. his style and aggressive playing fit with Dylan, Erik and Doug just perfectly. it’s great how masterful pyrrhons “tech metal” writing is, but even greater how they also have a purely improvised free-form side to their spirit that’s just as effective. these guys are unstoppable musicians and i love that they also have Seputus, which feature all 4 of them AGAIN! as well as many other bands. these guys get it: make a ton of shit and have it all be awesome. haha

PYRRHON は最高のブラザーだよ。彼らとハングアウトしたり、冗談を言ったりするのが大好きなんだ。そして、このアルバムと前作で彼らをレコーディング/ミックスすることができたことをとても光栄に思っているし、幸せに思っているよ。Alex Cohen は間違いなくテクニカルなマスターだけど、Steve Schweggler がドラムキットに座ってから、このバンドは本当に素晴らしいものになっていったと思う。
彼のスタイルとアグレッシブなプレイは、Dylan, Erik, Doug に完璧にフィットしていた。PYRRHON の “テック・メタル” のライティングが群を抜いているのも素晴らしいけど、それ以上に、彼らの精神には純粋に即興的なフリーフォームの側面があり、それが効果的に作用しているんだよね。
彼らはアンストッパブルなミュージシャンだし、彼ら4人全員をフィーチャーした SEPUTUS も大好きだ。大量のゴミを生み出せば、全てが素晴らしい音楽になることを理解しているね。(笑)

ABOUT NYC AVANT-METAL SCENE

undoubtedly one of the best, but that’s almost a technicality because New York city is the densest, most diverse blob of humans probably on the planet. so everything that benefits from a lot of people and a lot of variety is going to benefit. so many big cities can make similar claims, but NYC is exceptionally diverse and international. being shoved together with a ton of other people, some with similar goals, but a range of approaches and influences is only going to create a richer scene with maximum life and vibrance: what a strength there is in being exposed to a wide variety of approaches and statements!
i’m sorry, but people who believe in the value of segregation based on background are the reason humanity will most likely destroy itself. if having a diverse community isn’t totally obvious as a strength, then we have no hope and deserve to die.

疑いようもなく最高のシーンの一つ。それは当然なんだ。なぜならニューヨーク市はおそらく地球上で最も高密度で最も多様な人間の塊だから。だから、誰もが多くの人々と多くの多様性から受けるべくして恩恵を受けていると言えるね。大都市なら同じ状況になるだろうけど、NYC は特別多様で国際的だからね。
多くの人たちと一緒にいれば、中には同じ目的を持った人もいて、様々なアプローチや影響を受けながらも、最大限の生命力とバイブレーションを持ったより豊かなシーンを創り出すことになるはずだから。様々なアプローチや発言に触れることができるのは、なんという強みだろう!
申し訳ないけど、人種や文化といったバックグラウンドに基づく隔離の価値を信じている人たちこそが、人類が自滅してしまう原因なんだよ。仮に多様なコミュニティを持つことが強みにならないならば、人類に希望はなく、滅びるに値するよ。

ABOUT CORONA CRISIS AND MUSIC INDUSTRY NOW

i have been very lucky to still have some remote studio work, but i haven’t had an attended recording session since march! my friends who rely on the live music world for their income are totally fucked. what’s really sad isn’t that Corona happened. that’s actually just normal and natural. what’s so disappointing is how selfishly many are treating an issue (including the American government!!!!) that’s solely and directly about our collective survival as a species. people can’t get it through their heads that all the activities that they want to return to will be MADE POSSIBLE BY quarantine/distancing/masks/closing non-essential things, rather than seeing those things as an impediment to freedom. once again, if you see this as an issue of personal freedom, rather than ENSURING YOUR OWN HEALTH AND FUTURE, then humanity is fucked and we’re all going to die a horrible slow death together as the modern world crumbles. if your goal is to destroy all humans including yourself and your loved ones and me, then you’re doing great! keep going! thanks!

俺は幸いまだリモートでのスタジオの仕事はあるんだけど、レコーディングセッションには3月から参加していないんだよ!ライブハウスに頼って収入を得ている友人たちは完全にダメになってしまった。
本当に悲しいのはコロナが発生した事じゃないんだ。それは普通で当たり前に起こり得ることなんだから。何がとても残念なのかというと、この問題をどれだけ利己的に扱っているかということなんだ。アメリカ政府も含めてね!!!!
これって、種としての我々が生存できるかに直接関係しているよね。コロナ対策を自由への障害として見るべきじゃないよ。かつての生活に戻るには、自己隔離/ソーシャルディスタンス/マスク/が唯一の道なんだから。
もう一度言うけど、もし君が自分の健康と未来を保証することよりも、コロナ対策を個人の自由として捉えているならば、人類は滅び、現代世界が崩壊していく中で、俺たちは皆一緒に恐ろしくゆるやかな死を迎えることになるだろう。もし君の目標が、自身と愛する人と私を含む全ての人間を破壊することならば、そうすればいい! 頑張れよ、ありがとう!

Here’s a list of my other releases since the lockdown started:
https://xazraug.bandcamp.com/album/unsympathetic-empyrean
https://groeth.bandcamp.com/album/unfathomable-existence
https://indricothere.bandcamp.com/album/tedium-torpor-stasis
https://indricothere.bandcamp.com/album/xi-5
https://hathenter.bandcamp.com/album/wr-w-r-wwr0wr-g-0w-er0gw-0wr-w
https://glyptoglossio.bandcamp.com/album/0-1
https://encenathrakh.bandcamp.com/album/live-album
https://encenathrakh.bandcamp.com/album/thraakethraaeate-thraithraake
https://arelseum.bandcamp.com/
https://edenicpast.bandcamp.com/
https://slam420.bandcamp.com/album/bloated-exploded-og-gluttony
https://youtu.be/2C7SrMS1rGI

Other things panned include:
– the debut full length from Edenic Past
– Arelseum II
– a collaborative album with Mike Pride, Jamie Saft, and Mick Barr
– a collobarion with Andrew Hawkins from Bearing Teeth
– a full classical symphony, presented as a solo album
– 2 new krallice albums
and there will be a lot more i’m sure.

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUMA : DUMA】LIONSBLOOD OF KENYAN METAL


EXCLUSIVE : INTERVIEW WITH MARTIN KHANJA & SAM KARUGA OF DUMA

“It’s About Going Inside And Bringing It Out, putting Our Guts On The Table. There’s No Hiding. That’s The Thing: You Come To Duma You Come To The Fucking Butchery.”

LIONSBLOOD OF KENYAN METAL

一般的な外国人にとって、マサイの言葉で “冷たい水の場所” を意味するケニアのナイロビは、文字通り大都市特有の冷たさを纏っているように感じられるかもしれません。たしかに、街には高層ビルが立ち並び、交通量は多く、首長はヘネシーがコロナを殺すと考えています。それでもニューヨークや東京に比べればまだ温かみが感じられるのではないでしょうか。
しかし、ナイロビで生まれ育ち、この特異なメタルシーンにおいてさらに特異な色彩を放つグラインドデュオ Sam Karugu (ギター/プログラミング) と Martin Khanja (ボーカル) は、その意見に違を唱えます。
「ラジオを聴けばわかるよ。デタラメばかりだ。聴きたくない人がいるから、俺たちは何か違うものを作るんだ。”ワンサイズ・フィッツ・オール” 、一つの価値観がすべてを支配するなんてもう通用しないよ。俺たちは社会に適応出来ない人たちのために音楽を作っているんだ。」
たしかに、DUMA のセルフタイトルのデビュー作は、凡俗を攻撃するインダストリアルノイズが渦巻く反抗のレコードです。
2019年にウガンダのカンパラにある NyegeNyege Studio で録音されたレコード “Duma” は、00年代初頭にハードコアパンクやメタルを聴いて育った2人が送る強烈なステイトメント。ナイロビには80年代から DIY のハードコアシーンが存在しましたし、毎週木曜日の午後10時から12時まではアンダーグラウンドメタルを流す “Metal to Midnight” という番組も存在しました。それに YouTube, インターネット。
「俺の好きな音楽だから、俺が育った場所で周りのみんなに聴かせてやりたいんだよ。」

アフリカ大陸には未だ極小のメタルシーンしか存在しませんが、バンド同士はネットを通して連絡を取り合い、活気に満ちたコミュニティーを形成しています。ケニアのメタルシーンは「楽器を持っていて、心があって、何かをやりたいと思っている人なら、誰でも音楽ができるんだということを教えてくれた。」と Sam は語ります。
「アフリカにも昔からロックはあったよ…アパルトヘイト時代の70年代には、ザンビアやジンバブエのバンドが “Zamrock” を作っていた。ググってみてよ。だけどほとんどのバンドがレコーディングができなかった。だからそのためにケニアに来ていたんだ。”Zamrock” は70年代、80年代、90年代まで続いていたよ。アパルトヘイトが終わるころまでね。
だから、ケニアのシーンはずっと前からあったし、例えば南アフリカにはシーンがあるし、北アフリカにはチュニジアやエジプトにもシーンがある。世界の人々は俺らの存在を忘れてしまっているような気がするよ。でも、ケニアにもロックやメタルがあって、みんな楽しんでいて、バンドが演奏していて、モッシュ・ピットがあって、本当にオープンな人たちばかりなんだ。 人々が本当にオープンなんだよ。」
Martin もシーンの温かさについて同意します。
「ケニアのシーンは家族のような、コミュニティのようなものなんだ。どれだけ稼いでいるか、どんな人種かとか、そんなことは気にしない。ショーに出れば、みんなが愛してくれて、ありのままの自分を受け入れてくれる。
俺は自分のやっていることが人気があるものではなく、とても奇妙なものだと思っていた。だから同じ音楽をやっている人たちに出会って、”兄弟 “という感じになったんだ。俺たちはお互いを理解している。会場に足を踏み入れると、家族のような感覚になるんだ。 子供の頃、高校の頃に会った人たちや、大学生になってから会った人たちが、家族を連れて来てくれるんだ。 それは変わらず、どんどん大きくなっていく。 それがケニアのシーンのとても好きなところだね。みんなが互いに知っていて、みんなのことを愛しているから。」
それでも Sam はメインストリームからは程遠い現状も付け加えます。
「一回のライブで100ユーロが手に入る。それをバンド全員で分けるんだ。メインストリームからは程遠いよ。適切なギア、スタジオなんてないからなかなか新たなチャレンジも出来ないしね。好きだからやっているんだ。やらないと気が狂いそうになるから。」

影響を受けたのはどんな音楽なのでしょう?Martinはこう切り出します。
「TORCH BEARER, PINK FLOYD, Kurt Cobain, XXXTentacion, Travis Scott, SUICIDE SILENCE の Mitch Lucker, Bob Marley, それに DJ Scotch Egg-彼は神だよ。とにかく、彼らは上級地球人さ。エリートなんだよ。」
Sam はどうでしょう?
「ケニアのバンドはみんなそうさ。あとは LAST YEAR’S TRAGEDY, THROBBING GRISTLE。それから、BLACK FLAG, MINOR THREAT, SYSTEM OF A DOWN, それに MELT-BANANA! “Cell-Scape” は最高さ。たくさんいるよ。あとは母さんだね。でも母さんは俺がメタルをやっているなんて知らないよ。ゴスペルかなんかだと思っているんだろう。バレたら面倒くさいからね (笑) 」
Martin にとってメタルは救いであり、自己実現のためのツールでもありました。
「ラジオからメタルが流れてきて、人生が変わった。俺はいつも人生の中で自分の道を見つけようとしていたし、何かを発見しようとしていた。そしてこの音楽が俺に表現力を与えてくれていることに気付いたんだ。
道を歩いていると、頭の中でリズムが聞こえてきたり、詩を書いたりすることはいつも経験してきた。どこでそれを表現できるのか? この作品を通して、それを解放する方法を見つけたんだ。音楽がなければ自分の人生をどうすればいいのかわからない。目的がないんだ。メタルが生きがいを与えてくれた。一日の終わりには自分を表現しなければならない。そうしないと自分を抑え込んでしまう。精神的にも健康的じゃない。俺は苦手なことばかりだけど、少なくともこれは得意なんだ。」

2019年に DUMA が結成されたとはいえ、Sam と Martin は高校時代からお互いを知っていました。そして、Sam は SEEDS OF DATURA の、Martin は LUST OF A DYING BREED というトップナイロビメタルのメンバーでした。当時から、2人は互いの音楽に興味を持っていたのです。ボツワナのウインターメタルフェスで意気投合したデュオのパフォーマンスはすぐに共同作業へと繋がります。バンド名 DUMA とはキクユ語で暗闇を意味します。
「俺らはこの音楽に本当に深く入り込んでしまった。自分たち自身もダークで、音楽もダークで、世界観もダークなこのプロジェクトにね。」
アルバム “Duma” はメタルとして成立しながら、デュオの多様な嗜好を反映したモンスターです。”Omni” でトラップとメタルを融合し、”Lionsblood” ではエレクトロのダンスビートを取り入れます。「ダークでヘヴィーな実験だよ。新しいサウンドを作るためのね。」
“Lionsblood” はまさにアフリカのバンドにしか書けない楽曲でしょう。Martin が説明します。
「これは俺の民族的背景であるマサイ族のルーツからきている。男になるためには、茂みに入ってライオンを殺し、ライオンの血で体を洗わなければならないんだ。それは、つまり自分を見つけたということだ。ライオンの血を飲むんだから、生き残れば自分の中にライオンが残る。この慣わしを使ったのは、俺たちが日常生活の中でどのように存在しているかを表現したかったから。
問題は、人種や文化の違いじゃなく、見解や認識の違いなんだ。その違いは、俺たちが共に分かち合うべき強さなんだよ。 この違いが組み合わさったとき、俺たちはみんな強くなるんだから。人は教会に行ったり、学校に行ったり、何かを発明したり、ビジネスを経営したりすることができる。もし本当に好きなことが得意なら、それをやってみて、好きなことをするように人々を鼓舞して欲しいね。それが人間として、俺たち全員のためになるんだから。」

アートワークも一種独特です。Sam が語ります。
「偶然近所の市場で撮ったんだ。女の人が肉を買っているんだけど、彼女の服も肉に見える。肉を食べようとして自分が食べられてしまう。つまり、消費者にみえて実は自らが消費されているんだよ。それにアフリカっぽくて、メタルっぽいアートワークだよね。俺たちが言うところの、机にすべての内臓を出すってやつだよ。肉はすべて切り取られ、演奏するたび俺たちの体内で力になる (笑)」
Martin が付け加えます。
「つまり、このアートワークは自らの内なるものを外界へ解放することを象徴しているんだ。そうやって、自分のすべての内臓を机の上に出すわけだよ。何も隠すことはない。それが DUMA をやっている理由だから。」
アルバムには、ナイロビに対するバンドの不満も反映されています。Sam は、宗教と資本主義がこの大都市における “障壁” となってしまっていると非難します。住人たちは、この “ループの中” で生活することに慣れてしまい、快適な繭の中から出ることはないのです。DUMA は先住民が、自由に生きられるかつてのやり方を思い出すための水先案内人なのでしょう。
「もう機能していないよ。教育、宗教、商業、あらゆるものが俺たちの心を鈍らせている。本当の自分になることを許してくれないんだ。”Comers in Nihil” は箱の中に閉じ込められているという概念を比喩的に探求している。仕事をしてまともにお金を稼ぐというマンネリは安心だし心地よいものだけど、実際には生きているわけじゃなくゆっくりと人生を消耗しているだけなんだ。ただ仕事に行って家に帰ってくるだけなんだから。」
アフリカの現実にも立ち向かわなければなりません。Martin が続けます。
「仕事に行って家に帰ってもやることはたくさんある。家族もいるしね。それでも人は自分をポジティブに表現することでしか生き残れない。すべてを内に秘めていたら発狂してしまうから。自らの内面を世界に共有すれば、存在しなかったはずの人生が創造できる。ひいては、未来のより良い世界を作ることに繋がるんだ。」

仮に、コロナが世界の終わりをもたらそうとも? Sam は同意します。
「何かを創作し続けなきゃ。自分のやりたいことを全力でやらないといけない。世界はコロナで終わりを迎えるかもしれないし、何が起きているのかさえわからないけど、俺は自分のやりたいことをやって、自分らしく表現していくしかないんだよ。今の世の中、SNS によってほとんどの人が自分を表現できるようになっているだろう?今がその時だよ。自分の内臓を全部だすんだよ。」
闇の中でも常に光を見出すアルバムには、世界中に自分たちの音楽を広めたいという野心と共に、純粋な、サブリミナルなメッセージが込められています。Martin は目を輝かせます。
「みんなを鼓舞して、今よりもっと良くなるようにしてあげたいんだ。ビデオにもサブリミナルメッセージを込めている。本当に目を覚まそうとしている人には、それが理解することが出来るのさ。多くの人にインスピレーションを与えたいよ。音楽を聴いてくれた人、インタビューを読んでくれた人、ビデオを見てくれた人の心に何かを残したい。より良く生きれるような何かをね。」
Martin の最も伝えたいメッセージは、オープニングナンバー “Angels and Abysses” に描かれています。
「天使と深淵。心の中の小さな囁きを込めた曲だ。労働の中で、”オマエはもうめちゃくちゃだ。家に帰るんだ” ってね。毎日、自分の別の姿、一面が常に一緒にあることを忘れないでほしいんだ。
俺は心理学の修士号を持っている。そして、自らの認識している意識とは氷山の一角だと気づいたんだ。俺たちの習慣、行動、世界観は別の場所から来ているんだよ。意識的にそれを微調整することができれば、思い描いている最高の人生を体験することができるはずなんだ。その域まで到達しない場合でも、少なくともそれに近づくだろうし、これまでよりは良いものになるはずさ。」
Sam のお気に入りは “Pembe 666″。
「基本的には黙示録5章6節なんだが、スワヒリ語で書かれているんだ。聖書のこの一節では、ヨハネが小羊を見つけたと言っているんだけど、小羊は七つの封印を持っていて世界を解放するためにそれを開けなければならないんだよ。そして彼は子羊が殺されているのを見つけたんだ。 答えを探しているうちに、子羊が殺されていることに気づくというのは、宗教の面白いところだよな。きっと答えはないんだろう。」

最もテクノロジーを受け入れたバンドがケニア出身というのも皮肉なものです。
「俺たちにあるのは、歌とギターとラップトップだけ。面白いことに、メタルではほとんどの人がコンピュータをリスペクトしていない。純粋ではないと思われている。でも、コンピューターがあれば、バンド全体の音楽を作ることができることに気付いたんだ。シンセラインやドラムやギターを思いついて、それを完成させるまで煮詰めていくんだよ。」
DUMA がこれから進む場所はどこにあるのでしょう? Martin が答えます。
「デスメタルはもうやり終えたかも。メタルコア、デスコア、アバンギャルド、シンフォニック、ドゥーム。 これら全ての異なるジャンルからの影響を利用して、ハイブリッドな表現を生み出そうとしている。2040年や2050年に生まれた人たちだって何かを必要としているだろうし、僕らは前に進まなければならない。ヨーロッパやアメリカじゃ、メタルが確立されている。アフリカのメタルを知らしめるために、コンガやブラス、ドラムスといった民族楽器を取り入れるのは良い方法だと思うしね。それが俺たちの目標だ。俺達は新しいジャンルを作るつもりだよ。」
Sam と Martin は、彼らを理解しない人のことまで気にかけてはいません。DUMA の音楽は、マンネリに飽き飽きしたリスナーや、地元の放送局に満足しない人たちのためのもの。DUMA を完全に吸収するには、開かれた心が必要なのです。
「老若男女を問わず、すべての人に関係のあるものを作ろうと思った。たとえ暗くても、そこには光がある。そこにはたくさの知識と知恵が詰まっていて、子供たち、またその子供たちになんらかのインスピレーションを与えるんだ。」
DUMA はある種の伝道師なのでしょうか? Martin は否定します。
「というより、奉仕活動だよ。俺たちのライブに来れば、自分の抱えている問題や障害を克服するより良い方法を見つけることが出来るからね。視点を変えてくれるし、力を与えてくれる。改心させたいわけじゃなく、思い出させたいだけなんだ。」
Sam も同意します。
「伝道ではないね。メタルでは、8万人がメイデンのライブにくるけど、別に崇拝はしてないでしょ?(笑)。ただメイデンを聴くためにライブに行って、家に帰ればクソをする。誰も崇拝はしていない。それがメタルの醍醐味なんだよ。みんな自分の好きなことをしているだけさ。崇拝してるとしたら悲しいことだ。俺たちを崇拝なんてするなよ。やめとけ (笑)。」

参考文献: BANDCAMP:Duma Shines A Light on Underground Kenyan Metal

TONE GLOW

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PANZERBALLETT : PLANET Z】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAN ZEHRFELD OF PANZERBALLETT !!

“Planet X Were The First Band I’ve Heard With This Special Blend Of Low-Tuned Heavy Guitar Riffs, Dark Atmospheres, Jazz Harmony, Precision And Virtuosity. “Planet Z” Could Be Understood As My Vision Of a Sequel To That.”

DISC REVIEW “PLANET Z”

「私の愛する2つの異なった音楽世界を融合させるつもりだった。このバンド名を見つけることが出来てラッキーだったよ。とても良くコンセプトを表現しているからね。ヘヴィーな鋼鉄とソフトなダンス。両方とも深く気を配る必要があるというのが共通点だね。戦車は精密なエンジニアリングを要求されるし、バレーは舞踏術をマスターした独創性に基づくからね。」
ドイツが誇る PANZERBALLETT は、ヘヴィーとソフト、精密と独創、複雑と明快を股にかけ、重音舞踏会を華麗に駆け抜ける高性能ジャズ式重戦車。その異様と壮観には5つの掟が定められています。
「音楽とテクニックでリスナーに感動を与える」「多面性を持って音楽的にフレッシュでいる」「音楽の予測性と非予測性をバランス良くミックス」「高い知的レベルを保ちながらアグレッションを持つ」「リスナーの期待に沿わないで挑発する」
実際、PANZERBALLETT はこれまで、新鮮なアイデアと予想外の行動でリスナーに驚きを与え続けてきました。
Frank Zappa, WEATHER REPORT, ABBA といった多様な泉から涌き出でるカバーの数々、”Take Five” や “ピンクパンサーのテーマ” を自らのセットリストに組み込むその貪欲、そしてサックスはもちろん、インドの伝統楽器にタイプライター、果ては Mattius Eklundh まで “使用” する大胆奇抜まで、常軌を逸した PANZERBALLETT の辞書に不可能の文字は存在しないのです。
「PLANET X は低音のヘヴィーなギターリフ、ダークな雰囲気、ジャズのハーモニー、正確さ、そして名人芸の特別なブレンドを持っていたね。こんなバンドは聴いたことがなかったよ。だから、”Planet Z”は、”Planet X” の続編のような作品を作ってみたいという願望のあらわれなんだ。」
テクニシャン・オブ・テクニシャンを結集した PANZERBALLETT ですが、それでも Jan Zehrfeld という大佐の乗り物であることは疑いの余地もありません。そして、最新作 “Planet Z” は、Zehrfeld の頭文字を頂くように以前よりさらにソロアルバムの性質が高まった作品と言えるのです。
The Brecker Brothers, TRIBAL TECH, MESHUGGAH といった異能に影響を受けてきた Jan ですが、そのヘヴィーメタルビバップな魂を最も喚起したのが PLANET X でした。
キーボードの VAN HALEN こと Derek Sherinian が名手 Virgil Donati と立ち上げたインストフュージョンプロジェクト。Tony MacAlpine, T.J. Helmerich, Brett Garsed, Alan Holdsworth, Billy Sheehan, Dave LaRue などなど奇跡的なメンバーを集めて、メタルとジャズの交差点を探った早すぎたバンドです。
異端は異端を知る。そんな宇宙人の魂を継ぐように、アルバムは Virgil Donati のドラムスをフィーチャーした格好のジャズメタル “Prime Time” でその幕を開けます。
「彼らは皆私に影響を与えていて、特に Virgil からは大きな影響を受けている。だからまず、彼に声をかけたんだ。でも素晴らしい出発点になったよ。なぜなら、彼が参加していることで他の一流のドラマーたちにも参加を了承してもらうことができたからね。」
今回のゲストを大勢招くそのやり方も、PLANET X を見習ったものかも知れませんね。Virgil, Marco Minnemann, Morgan Agren, Gergo Borlai, Hannes Grossmann, Andy Lind。OBSCURA で多忙な Sebastian Lanser の休養と共に自らが愛するドラマー6名を招くことで、アルバムはさらにソロ作品の色を濃くしていきます。
「クラッシック作曲家の中でワーグナーは、おそらく最も “メタル” な音楽性を持った一人だから。」
その言葉通り、鬼才ワグナーのワルキューレはメタルの五重奏へと堂々進化し、ウニとタコの壮絶な戦いを複雑怪奇な音楽で表現し、遂には SOS のモールス信号をそのまま楽曲へと組み込んでしまう。Jan の爆発する芸術は “Planet Z” という遠く離れた宇宙の星で目一杯花開いたのです。
今回弊誌では、Jan Zehrfeld にインタビューを行うことが出来ました。「この15年の間に、PANZERBALLETT は独自の音楽領域を作り上げてきたね。音楽を作る時は、その領域に飛び込んでいるんだけど、それって自分の “惑星” に引きこもっていると言えるかもしれないよね。」 前回のインタビューと合わせてどうぞ!!

PANZERBALLETT “PLANET Z” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + COVER STOEY 【DEFTONES : OHMS】


COVER STORY : DEFTONES “OHMS”

“I Set Up a Record Player In The Media Room, Which Has Forced Me And My Family To Listen To Records And Start Them From The Beginning And Listen To The Whole Thing, Through The Experience. I’m Trying To Get My Daughter, Who’s 15, Into That Mindset Of Listening To Records. Everybody Right Now Is Spoon-fed Singles, But Listening To Records Is an Experience.”

VOLT = 1 AMPERE × 1 OHM

「MESHUGGAH のように聴こえるかって?いやそこまでヘヴィーじゃないよ。ツーバス祭りかって?そんなの俺たちがやったことあるかい? 怒ってるかって?ああ、怒っている部分もあるよ。だけど、俺たちが全編怒っているだけのレコードを出したことがあったかい?」
ヘヴィーな音楽に繊細で色とりどりのテクスチャーを織り込むのが DEFTONES 不変のやり方です。
「俺は大のヘヴィーメタルファンとは言えない。良い音楽が好きなんだ。どんな音楽でも好きだよ。良い曲があればジャンルは問わないね。俺たちはオープンマインドなんだ。何か一つのジャンルに収まる必要はない。むしろそうであるべきではないと思う。人それぞれでいいんじゃないかな。CANNIVAL CORPSE を聴きたければ聴けばいい。でも俺たちは皆色々な音楽を聴いているから、ある日突然ニッチなものに当てはまらなければならないと決めてしまうと、自分自身を壁に閉じ込めることになってしまうと思うんだ。」
実際、Twitch の DJ 配信で Chino は、N.W.A, Toro y Moi, Brian Eno, BLUT AUS NORD など自らのエクレクティックな趣向を明かしています。
「電子音楽、実験的なもが好きで、何年もヴァイナルを集めているんだ。新しい家でメディアルームにレコードプレーヤーを設置したんだけど、そのおかげで俺も家族もレコードを最初から聴き始めて、通して全部聴くことを余儀なくされているんだ。15歳になる娘に、レコードを聴くというマインドセットを身につけさせようとしているんだよ。今の人はみんなシングルばかり聴いているけど、レコードを聴くのは経験なんだよね。
年寄りの説教みたいに聞こえるかもしれないけど、俺にとってはとても意味のあることなんだ。娘を部屋に呼び、”何のレコードかわからなくてもいいから、一枚選んでみてよ” ってね。この間彼女は TORTOISE というバンドを選んだ。ドラマー2人の6人組で、全てインストゥルメンタルだった。”なぜそれを選んだの?”と聞いたら 彼女は “カバーが気に入ったから” と答えたね。それからそのアルバムを聴いたんだ。
昔はそういう風に音楽を選んでいたんだよ。レコード屋に行って、レコードを見て、かっこよさそうなものがあれば手に入れていた。そして、自分で稼いだお金を使って、レコードを好きになっていったんだ。その精神を自分の中に持ち続けて、若い人たちに伝えようとしているのさ。」

時にヘヴィーで、時に怒り、時にファストで、時にカモメが鳴くレコード。
「カモメの鳴き声を入れたいと思ってたんだ。Don Henley の “Boys of Summer” にはカモメの鳴き声が聴こえるセクションがあって、不気味な気持ちになったものさ。」
カモメの鳴き声を入れようと決めた時、すでに “Pompeji” は完成した後でした。しかし、ビーチの捕食者から12分の音声を入手した彼らは、波の音と鳴き声のサウンドスケープを忍ばせることにまんまと成功したのです。
「こうすれば楽曲の設定が変えられるし、どこかへ連れて行ってくれるよね。俺らのレコードにはいつだって小さな動物や昆虫が隠れているから (笑)」
DEFTONES 9枚目のアルバム “Ohms” に戻ってきたのは、動物の鳴き声だけではありません。”Adrenaline”, “Around The Fur”, “White Pony”, “Deftones” のプロデューサーである Terry Date も久々の帰還を果たしました。
「彼はとても忍耐強い人だけど、挑戦するスペースを与えてくれるんだ。たぶん、一緒に仕事をしていて心地よく感じない人とやっていると、スタジオに入って何かをしなければならないって感じになってしまうんだろうね。Terry と一緒なら何かをやり遂げることができる。うまくいかないかもしれないことをやってみても、俺が立ち止まって「よし、今度は別の視点から見てみよう」と言うまでは、その道を歩ませてくれるんだ。 」
Terry と製作したうちの1枚、”White Pony” は今年20周年を迎えました。昨今、2000年にリリースされたレコードを当時見下していたメディアやライターが Nu-metal について再評価の言葉を投げかけています。
「彼らは常に見下していたと思う。聴くことに罪悪感すら感じていたよね。僕らのことではないと思うけど、間違いなく LIMP BIZKIT とかはそうだよね。当時のリスナーはそれが馬鹿げていることを知っていた。振り返ってみると “あんな音楽を聞いていたなんて信じられない” とかじゃなくて “あの頃はバカだと分かっていても好きだった”ってことさ。それでいいんだよ。ダサいと思って恥ずかしがっちゃだめだよ。好きなものを好きになればいい。誰が気にするんだ?偉そうにするなよ。何の問題もないよ。」

Google によると、”Ohms” とは “導体の2点間の電気抵抗” と定義されています。Chino にとってこの言葉はどのような意味を持つのでしょう?
「ものごとのバランスと極性のことだよ。俺はいつも DEFTONES を陰と陽のバンドだと表現してきた。俺らが作る音楽、歌詞にはいつもそれが並列されていて、そこから美しさが生まれるんだよ。」
美しさといえば、ドラマーの Abe Cunningham は以前、アルバム “White Pony” を自由に走る美しい馬のイメージだと語っていました。”Ohms” のイメージは何なんでしょう?
「サマースカッシュかレモンキューカンバーだな。まあ動物で言えば仔馬だな。新しい野生の仔馬さ。」
タイトルソング “Ohms” を語る時、Chino は興奮を隠せません。
「最初に書かれたものの一つさ。Stephen が3年前にデモを送ってくれてね。彼のメールを開くのが大好きなんだよ。いつも興奮させられるからね。他のメンバーは、この曲の陽気な響きに少し困惑していたけれど。」
そうしてリスナーは、ノイズの嵐から Chino Moreno の言葉を受け取ります。”俺たちは過去というデブリに囲まれて生きている”。それはフロントマンがレコードにおいて、そしてレコード以外でも最近よく口にする言葉です。
とは言え、エクストリームシーンで最もリスペクトを受ける言葉の達人は、しかし歌詞を書くことにそれほど拘りがありません。
「まあ歌詞は、日記のかわりに、より詩的な方法で考えを書き留めているって感じかな。恥ずかしいとまでは言わないけど、簡単じゃないよ。一番好きじゃないことかな。(笑) 言いたいことがどれだけあるのかわからず、止めることもよくあるね。あとはより匿名性の高いものに置き換えてプレッシャーを和らげたりとか。」
Chino にとって、曖昧であることはソングライティングにおいて重要な要素です。常に見えていながら、手の届かない場所にいる、自分自身をカモフラージュする能力。それこそが長年に渡り、Chino にミステリアスな雰囲気を付与してきました。メンバーの Abe にしても自分の人生をかけて演奏してきた楽曲が何についてなのか、分かっていないこともあります。
「歌詞の意味を時々彼に尋ねるんだ。彼はうーん、どうだろう。わからないけどそうなのかな?ってはぐらかすんだ。まあでも、長い間一緒にいるからね。Chino はいつも人生に起こったことを共有したいと思っているんだよ。歌詞は自分から出てきたものだ。内省的というか。だから、最悪な出来事でも、毎晩それを歌えるのはとても幸せなことなんだよ。そうやって悪魔を追い払うことができるんだから。」

たしかに、Abe の内省的という指摘は今回のレコードに強く当てはまるのかもしれませんね。”Koi No Yokan” のコズミックなイメージは近かったにしても、DEFTONES はコンセプトアルバムを作りません。それでも、”Ohms” の楽曲を分解すれば、特定の言葉たちが何度か登場することに気づくはずです。
「自分自身と向き合いながら多くの経験をした。これまで生きたいように生きてきたから、内省的なことをする必要があったんだ。セラピーを受けたんだ。俺はいつも、自分の個人的な感情を他人に話す必要があるのかと感じていた。でも、自分やバンドのことを知らない人と話すのは全く異なる経験になったね。子供の頃からの自分をさらけ出して、なぜ、どうやって今の自分になったのか理解することが出来たからね。」
Chino は毎日朝になるとセラピーに向かい、何週間もかけて自分の人生の物語を辿って行きました。時折疲労も感じましたが、価値のある疲れだったようです。
「良い結果でも悪い結果でも、なぜ自分が人生でその決断を下してきたのか気がついたんだ。解明するのはクールなことだったよ。怖いことでもあるけど、間違いなく健全なことさ。だからこのアルバムのテーマのうちいくつかは、人生で行った選択を認識して、満足いかない状況をどうやって変えていくのか考えられるようになることなんだ。」
恵まれた人生に思えますが、Chino の不満とは何だったのでしょう?
「まあ多くの人が対処していることだと思うけど、ある時に不幸になったり、悲しかったり、寂しかったり、怒ったりすると、どこかしら頭が変になることがあってね。これまでに書いてきた曲を見てもらえればわかると思うけど、僕の感情はいつもどこにだってありえるんだ(笑)。冷静さを保てないことが多くて、親しい友人や家族には嫌な顔をすることもある。だけどそれは彼らに怒っているのではなく、もっとうまくやれるとわかっている自分に怒っているのかもしれないよね。あまり具体的には言いたくないけど、決断を下しても気分が良くならないとしたら、それをどうやって変えるの? 自分に責任を持って、自分を見つめ直すんだよ。多くの人がそうする必要があるけれど、簡単なことじゃないよね。だけどそうやって少しずつ学んでいくんだ。そうすれば少しずつ調整ができるようになる。次の日には少し幸せな気分で 目が覚めるかもしれないよ。」

オープニング曲 “Genesis” で Chino は、”I finally achieve balance” “ついに心のバランスを保つことに成功した” と言っています。もちろん、Chino の歌詞は必ずしも文字通りの意味ではないですし、解釈の余地はありますが。
「あの歌詞はかなり文字通りの表現だった。正直に言うと、完全なバランスが取れたわけではないんだ。だけどバランスを感じる瞬間があるんだよ。それに近い日もあれば、そうでない日もある。 ある日はそれから何マイルも離れていたりしてね。でも、それは時代に不満を感じているということでもあるんだ。すべてが二極化しすぎているよね。誰もが意見を持っていて、フェンス越しに互いに吠え合っていている。頭がおかしくなるよ。どちらか一方を選びたくない、バランスを取りたい。何が言いたいかわかる? この曲もそれを表していると思う。」
“Ohms” とは Chino Moreno の再生なのでしょうか?
「文字通りそうだとは言わないよ。今の自分を以前とは全くの別人だなんて思っていないからね。未だにかなり以前の Chino Moreno を感じているよ。だけど同時に、ある種の変容も感じるんだ。」
たしかに、2020年の DEFTONES のレコードには、変わったものもあれば変わらないものもあります。PANTER や SLAYER を手がけた Terry Date もかつて若き DEFTONES にはすっかり手を焼いていました。有名なスタジオでの映像には、もしゃもしゃナッツを食べてニヤニヤする Chino Moreno, ドミノで遊びながらニヤニヤする Stephen Carpenter, 雑誌を読みながらニヤニヤする Frank Delgado を前に、憔悴しきって言葉を発する Terry の姿が残っています。
「オマエら、あと2,3テイクやれたら、ナッツを食べてドミノをやって雑誌を読んだらいいさ。だけど俺たちはいくつか問題を解決しなきゃならないよ…」
彼らの “遅れることに長けている” 能力は現在も変わっていません。Abe は今回も Terry を悩ませたことを認めます。
「毎回 Terry を辞めさせるんだ。それが俺たちのやり方なんだ。(笑) 以前の3枚でも辞めているし、今回も辞めそうになった。怒らせたくはないんだけどね。唇を噛んで、眼鏡が曇り出すからわかるんだよ (笑)。いつも目標はTDを辞めさせよう!さ。」

そんなジョークとは裏腹に、DEFTONES は “Ohms” に並々ならぬ情熱を注いでいます。LA の Henson と Trainwreck Studios でレコーディングされた作品には “コーヒー、ジュース、ビール、テキーラ、小便、笑い” を少なめに12曲を制作して10曲が収録されたのです。Abe は嘯きます。
「よく、このアルバムのために6000曲書いたなんて言うバンドがいるけど、ウソばっかりだ (笑)。12曲で充分だよ。」
“Gore” リリース時に、Stephen が「このアルバムで誇れるのは、ただギターを弾いていることだけだ。」と語り論争を引き起こしたことは記憶に新しいはずです。そこから DEFTONES は文字通り学んでいます。Chino が説明します。
「過去に誰かが楽しめなかったレコードが存在するのは確かさ。でも同じメンバーで何枚もアルバムを作るなら全員が参加するべきだよ。俺たちは厳しい過去の経験から学んだんだ。”Gore” で Stephen はあまりレコードにかかわっていないと認めていた。だけどそれは俺たちが彼を必要としていなかったからではない。俺の好きな DEFTONES の楽曲のアイデアは彼が率先して作ったものだしね。誤解のないように言うけど、Stephen は “Gore” にかかわっていたよ。”Phantom Bride” は歌詞とドラム以外すべて彼が書いている。ただ、アルバムに完全に関与していなかっただけで、俺らの曲の方がいいとか思ったわけじゃないんだよ。そうじゃなくて、彼はあの頃何かを乗り越えようとしていたんだ。レコードが完成したあと、少しだけそのことについて話してくれたんだけどね。お前は俺の兄弟だ。全部分かってるからと伝えたけどね。とにかく、重要なのは全員がかかわって、全員がエキサイトすることなんだ。」
“Ohms” は全員がかかわって、全員がエキサイトするレコードなのでしょうか?
「まちがいなくね。Stephen が送ってきた最初のタイトルソングのデモなんて12分もあったんだから(笑)。」
一方で、Abe はすでに次のレコードについて考えるほどこのバンドに夢中です。
「俺はまだ小さな子供なんだよ。また次のレコードを作れることに興奮してるんだから。」
次のレコードを作れること。Abe が常に胸に秘める感謝の理由は想像に難くありません。”Ohms” は正式には DEFTONES 9枚目のアルバムですが、実際は10枚目の作品とも言えます。2013年、ベーシストの Chi Cheng が交通事故で昏睡状態に陥り、命を落とすという悲劇に見舞われたため、製作を断念した歴史があるからです。DEFTONES は再び Terry Date の部屋へと帰ってきました。Chi を除いて…
「彼はいつも俺らと共にある。毎日考えているよ。インスピレーションの源だ。彼はいつもそばにいる。」

メタル、ハードコア、ヒップホップ。ターンテーブルやプログラミングを得意とする Frank Delgado, パンクバンドでプレイしていた Sergio Vega とメンバーの得意分野が分かれることも DEFTONES の強みでしょう。
「レコードを作ろうと思うのは、一人一人が個別に、そして全体的にインスピレーションを受けられるかどうかなんだ。何年もかけてわかったことだけど、それが本当に大切な瞬間なんだよね。 みんなで集まって、誰かが何か音を出し、他のメンバーがそれに反応してさらに何か音を出し、1分後にはその音が1時間前には存在していなかった曲に変わっていくんだよ。そうやって有機的に起こるのが一番いいんだけどね。いつもそうなるとは限らないけどね。 たまに集まって何時間も話し合っても何も出てこないこともあるし、出てきても何も浮かばないこともある。レコードを作るために集まって、30曲書いて10曲に絞るなんてことはしない。文字通り10曲書くんだ。アイデアを出して、途中でスチームが切れたら、”よし、やり直そう “ということになる。それが僕らのやり方なんだよ。」
DEFTONES にとって唯一音楽よりも大事なものは、それを作っているメンバーたちの絆です。
「バカバカしくて子供じみているかもしれないけど、俺たちにとってはハングアップすることがすべてなんだ。一日中くだらない話ばかりしているよ。レコードを作るためだけにレコードを作ることはないね。好きだから作っているんだ。遊びたいし、騒ぐのが好きだ。そのノイズの中から楽曲が生まれるんだよ。」
以前からそうだったように、これからもきっとそうでしょう。

参考文献: KERRANG!THE SECRETS BEHIND DEFTONES’ NEW ALBUM, OHMS: INSIDE THE STUDIO FOR THE FIRST TIME

VULTURE : Deftones Have (Almost) Found Balance

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