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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SEEDS OF MARY : LOVE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JULIEN JOLVET OF SEEDS OF MARY !!

“I Quite Like “Progressive Grunge”! Actually We Are As Much Fond Of Grunge As We Are Of Prog Music.”

DISC REVIEW “LOVE”

「僕たちは GOJIRA をとても尊敬している。彼らは僕らの世代にとって、まさにフレンチ・メタルのパイオニアだ。彼らは僕たちに進むべき道を示し、フランスのオルタナティヴ・カルチャーにスポットライトを当てる手助けをしてくれた。彼らの音楽は妥協がなく、とてもよく練られている。彼らがこのセレモニーに参加するとは予想外だったけど、今や世界中が彼らのことを知っているよね。それは素晴らしいことだよ」
GOJIRA, ALCEST, IGORRR, BETRAYING THE MARTYRS, LANDMVRKS, DEATHSPELL OMEGA, GOROD, THE GREAT OLD ONES, BLUT AUS Nord。挙げればキリがありませんが
これほど多くの才能あふれる革新的メタル・バンドが揃っていながら、フランスにメタル大国というイメージはこれまでありませんでした。それは、日本と同じく “後追い” の国だったからかも知れませんね。しかし、そんなイメージもついに今年、ガラリと変わることになりました。
オリンピック・ゲームの開会式で、地元フランスの GOJIRA が見せたパフォーマンスはまさに圧巻でした。王宮と牢獄。光と影のコンシェルジュリーを光と影のメタルが彩る奇跡の瞬間は、世界中を驚かせ、メタルの力、フランスのメタル・シーンを羽ばたかせることになったのです。
「僕たちはみんなあの時代に育ったから、より共感しやすいんだ。きらびやかな80年代からダークな90年代へのシフトによって、君が言ったような偉大なバンドが出現した。戦争、大量失業、ウイルス性疾患など、残念ながら僕らの生きる今の時代は90年代に通じると思う。だからこそ、そうしたバンドや音楽の美学は今でもかなり重要なんだ」
ではなぜ、モダン・メタルの力が今、世界中で必要とされているのでしょうか?その答えを、フランスの新星 SEEDS OF MARY が代弁してくれました。煌びやかな80年代からダークな90年代へのシフト。それは、まさに理想を追い求め、追い求めすぎたためにやってきたこの “欲望の時代” への揺れ戻しと非常にシンクロしています。だからこそ、多様でダークな90年代のメタルを原点として育った新たなメタルの形、その審美性や哲学、暗がりに臨む微かな光がリスナーの心に寄り添うのでしょう。
「ALICE IN CHAINS からは常に大きな影響を受けてきた。事実、SEEDS OF MARY として初めて演奏した曲は、”Them Bones” のカバーだったんだからね。今日、僕たちはその影響から解放されて、自分たち独自のものを作ろうとしている。でも、声のハーモニーや音楽にあのダークなムードがあると、リスナーがAICを思い浮かべないのは難しいことだと思う」
ゆえに、彼らの音楽は “プログレッシブ・グランジ” と評されることもあります。ALICE IN CHAINS は間違いなく、グランジの渦の中から這い出でましたが、その本性はメタルでした。あの時代の新しい形のメタルでした。そして、その怪しいハーモニーや不確かなコード、リズムの変質に絶望のメロディはあの時代のプログレッシブであり、見事にあの時代を反映した革新でした。
SEEDS OF MARY はそこに、Devin Townsend, Marilyn Manson, SLIPKNOT, SOILWORK, SOTD, NIN といった90年代の代弁者を取り揃えながら、より現代的な手法や趣向に PINK FLOYD のサイケデリアを散りばめることで見事に20年代の暗がりを表明します。
音楽の流行に圧倒されることなく、”種” をまき、収穫する。暴力的で、幽玄で、特定の難しい彼らのサウンドは、内省的な歌詞とありのままの感情の肯定によって、急速に強く成長していきます。
今回弊誌では、Julien Jolivet にインタビューを行うことができました。「僕たちは皆、間接的に日本文化の影響を受けているんだよ。みんなレトロなビデオゲームをプレイしたことがあるし、Jeremy はクラシックな日本映画をよく観ている。アニメやマンガは僕の人生の大部分を占めているよ。アニメの音楽(たとえば “AKIRA”)や菊池俊輔のような作曲家は、間違いなく僕に影響を与えているね」 どうぞ!!

SEEDS OF MARY “LOVE” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【ALCEST : LES CHANTS DE L’AURORE】


COVER STORY : ALCEST “LES CHANTS DE L’AURORE”

“God Is Called Kami In Japanese, And They Basically Have a Kami For Everything. And You Can Clearly See That In Princess Mononoke.”

夜明けの歌

「今、メタルというジャンルはとてもオープンで、いろんなスタイルやアプローチがある」
ブラック・ゲイズ。このサブジャンルは、ブラック・メタルの狂暴で擦過的な暗闇と、シューゲイザーの幽玄でメランコリックな審美を等しく抱きしめた奇跡。メタルとインディー。つまり、このあまりに対照的な2つのジャンルの融合は、フランスの ALCEST が牽引したといっても過言ではないでしょう。
ALCEST にはサウンド面だけでなく、主にフランス語で作曲しながら、世界中に多くのカルト的なファンを獲得してきたという功績もあります。ヨーロッパや非英語圏のメタル・バンドは、より広くアピールするために英語で作曲するのが普通でしたが、ALCEST は音楽に普遍的な魅力があれば言語は関係ないことを証明し続けています。
7枚目のスタジオ・アルバム “Les Chants De L’Aurore” でALCEST は、極限まで輝かしく、メロディアスでみずみずしいアルバムを作るという野心的な探求に乗り出しました。”Spiritual Instinct” や “Kodama” で焦点となっていた “硬さ” や “ヘヴィネス” は減退。一部のファンは不意を突かれたかもしれませんが、”Les Chants De L’Aurore” はこれまで以上に、いやはるかにニュアンスがあり、高揚感があり、複雑なアルバムに仕上がりました。
タイトルの “Les Chants De L’Aurore” は直訳すると “夜明けの歌”。
「新しいアルバムを作るときは、音楽、ビジュアル、歌詞の間にとてもまとまりのあるものを作ろうとするんだ。アルバム・タイトルは、リスナーの心に強いイメージを喚起するものでなければならないと思う。”歌” にかんしては、このアルバムではいつもよりヴォーカルが多くて、合唱団もいるし、僕も歌っているからね。”夜明け” は、ジャケットのアートワークとリンクしていて、とても暖かくて、新しい一日のようでもあり、一日の終わりのようでもあり、その中間のようでもある。だから、このアルバムの持つ温かい雰囲気にぴったりだと思ったんだ」

ALCEST が前作 “Spiritual Instinct” をリリースしたのは5年前のことでした。その頃の世界は自由に動き回れる場所。ところが突然、世界的なパンデミックが起こり、私たちは孤立の繭に包まれました。
このさなぎから抜け出した多くの人たちは、本当に大切なものに対する感謝の気持ちを新たにしたでしょう。それはまるで夢想家に生まれ変わったかのようであり、世界の素晴らしさを再発見した子供たちのようでもありました。
「パンデミックの期間中、何もアイデアが浮かばず、ギターのリフを書こうとしても何も出てこなかった。今までで一番長い期間、何も書けなかった。1年間、リフが1つも出てこなかったと思う。僕はいつも何かを得ようとしていた。もうダメだって感じだった。そしてある日、すべてのブロックが外れた。
インスピレーションがどのように働くのか、本当に知りたい。とても複雑なテーマだ。1年間も何も見つからなかったのに、ある日突然、すべてが解き放たれたなんて。とても奇妙だよね。
10年間ノンストップでツアーを続けてきた僕らにとっては、何か違うことをするいい機会だった。大好きな人たちや、この10年間まともに会っていなかった家族と初めて一緒に過ごすことができた。これまでは年に1、2回地元に帰るだけだった。でもパンデミックのあとは、ほとんど毎日両親に電話するようになり、今では2~3カ月に1回は南仏に会いに行っている。人の温もりやあたたかい気持ちを再発見できた。だから結果的にはよかったんだよ」

つまり、Neige にとって夜明けの歌とは終焉であり、新たな始まりでもあります。
「僕にとってこのアルバムは、ALCEST のオリジナル・サウンドへのカムバックであり、初期のアルバムにあったような、とても異世界的でドリーミーなサウンドへの帰還だ。その後、ほとんどコンセプト・アルバムのようなものに踏み込んでいったから、ちょっとした再生のようなものだった。シューゲイザー・アルバム “Shelter” を作り、映画 “もののけ姫” をテーマにしたコンセプト・アルバム” Kodama” を作り、そして前作 “Spiritual Instinct” はとてもダークなアルバムだった。特に “Kodama” や “Spiritual Instinct” は様々な意味でより硬質だった。
でも、このニュー・アルバムこそが本当の ALCEST であり、僕がこのプロジェクトで表現したいことだと思う。子供の頃にスピリチュアルな体験をして、その体験を音楽で表現できないかと ALCEST を作ったんだからね」
そのスピリチュアルな体験とは何だったのでしょうか?
「子供の頃、何かとつながっているような感覚があった。子供には特別な感覚があると思うんだ。キリスト教的な宗教を連想させるから天国とは呼びたくないけど、人間的な経験をする前のような、僕たちみんなが来た場所、現世と前世、2つの人生の間にあるある種の安らぎの場所のような、魂が休まる場所とのつながりのね。
そのことをあまり話したくないから、代わりに音楽を作ることにしたんだ。だから、ALCEST のアルバムは毎回、物事の違う側面を探求しているというか、僕の日常生活や、いわば地道な生活の中で経験したことにより近いものがあるんだ」

同郷の GOJIRA とは異なり、ALCEST はほとんどの場合フランス語にこだわっています。そしてこのアンニュイな言語こそが、バンドの幽玄で優しい音楽をさらに引き立てているようにも思えます。
「とても不思議な話なんだけど、アジアや日本には巨大なファン・コミュニティがあるし、アメリカやヨーロッパの他の国にも僕らのファンがたくさんいる。でも、フランスは僕たちの存在に気づくのが本当に遅かった。フランスで本当に人気が出始めたのは “Kodama” からだと思う。なぜ英語に切り替えないかというと、フランス語で歌詞を書くことに安心感があるからなんだ。フランス語は僕の母国語だから、もちろん正確に書くし、母国語で書く方がずっと簡単なんだ。英語で歌おうとして、フランス語のアクセントが聞こえてしまうのが本当に嫌なんだよね。英語で歌うとフランス語のアクセントが確実に聞こえてしまう。
ただ、ボーカルがミックスの中ですごく大きいわけでもないから、フランス語が強すぎることはない。フランス語で歌うフランスのバンドだと思われたくないんだ。できることなら、僕らの音楽は少し普遍的であってほしいからね。あまりはっきり歌わないのはワザとだよ。フランス人だって歌詞を理解できないくらいにね。ボーカルは、メロディーのひとつの要素であってほしいんだ」
ブラックゲイズといった特定のレッテルを貼られることについては、どう感じているのでしょう?
「僕たちは最初の “ブラックゲイザー” バンドとしてクレジットされているし、プレスは ALCEST がブラックゲイズを発明したと言っている。どう考えたらいいんだろう……もちろん、僕らにとってはとても名誉なことだし、意図的にそうしたわけではないんだけど、僕らがジャンルを創り出したバンドだと思われているのならそれは素晴らしいことだと思う。ただ、ブラック・メタルのギターとドラム、ドリーミーなボーカル、そして天使のような、別世界のような、幽玄なタイプのメタルを演奏したかっただけなんだ。
そしたら、レビューの人たちがシューゲイザーという言葉を使い始めて、私は “ああ、シューゲイザーか、音楽スタイルとしてはとても面白い名前だけど、まあいいか” という感じだった。それからシューゲイザー・バンドを聴き始めて、”ああ、そうか、なぜ僕らがシューゲイザー・スタイルを連想されるのか、よくわかったよ” って感じになって、SLOWDIVE とかが大好きになったんだ。とても素敵なのは、ブラックゲイザー・バンドたちがみんな、ALCEST を聴いてバンドを結成したと言ってくれたこと。”あなたの音楽が大好きで、私も同じようなものを作りたかったからバンドを結成した”、これ以上の褒め言葉はないと思う」

SLOWDIVE と Neige には特別なつながりがあります。”Shelter” 収録の “Away” では Neil Halstead と共演も行いました。
「初めて Neil Halstead に会ったとき、僕はまだ20代半ばだった。ファンボーイだったんだ。だから彼に会ったときは怖かったし、ファンであることを隠すのはとても難しかった。だから震えていたし、今思うとちょっと恥ずかしい。でも、彼は本当に親切にしてくれたし、僕が若いミュージシャンで、彼ほど経験を積んでいないことを見抜いていてくれた。
SLOWDIVE を知ったのは、かなり昔のことで、そのころ彼らは音楽の地図から消えていた。誰も彼らのことを知らなかったよ。90年代の幽霊バンドのような存在だった。でも、だんだんもっと語られるようになったような、何か話題になっているような気がしていたんだ。それで彼に言ったんだ。”バンドを再結成したら、みんな熱狂するよ” ってね。そしたら彼は、”いや、どうかな” って。でも面白いもので、彼らが再結成した1年後、僕は彼らを見るためだけにロンドンに行ったんだ。今、彼らは巨大なバンドになっている。Spotify か TikTok か何かで、キッズたちがみんな彼らを発見したんだ。ここ数ヶ月の間に2回彼らを見たけど、観客の中には10代の子もいた。とても奇妙で、とてもクールだよ!
SLOWDIVE で一番好きなのは、”Souvlaki” からのアウトテイクで、”I Saw the Sun” っていう曲。加えて、”Silver Screen”, “Joy”, “Bleeds” といった曲があり、アルバムではリリースされなかった曲だけど YouTube で見ることができるし、おそらくブートレグもリリースされていたと思う。これらはバンドの曲の中で私が一番好きな曲だ。Rachel に再レコーディングや再リリースなどの予定はあるのかと聞いたことがあるんだけど、彼らはこうした曲が好きではないと思う。本当に素晴らしい曲なのに、残念だよね。ぜひ聴いてみてほしい。”Souvlaki: Demos & Outtakes” というタイトルだよ」
THE CURE にもみそめられています。
「Robet Smith は僕たちのアルバム “Kodama” のファンで、アルバムの全曲を演奏してほしいといって彼がキュレーションする Meltdown に招待してくれたんだ。僕は “冗談だろう?” って思ったね。
多くの人がポスト・パンクやニューウェーブに夢中になっているように、THE CURE はとても重要なバンドなんだ。だから、彼のような人がいて、彼が僕らを知っているという単純な事実だけでも、すでにすごいことなんだけど、彼がファンで、彼のフェスティバルで僕らに演奏してほしいと言ってくれたんだ。とても光栄だよ!」
“Les Chants De L’Aurore” は、SLOWDIVE の “Just for a Day” や RIDE の “Nowhere” といったシューゲイザーの名盤と肩を並べるような作品なのかもしれません。
「たぶん RIDE は、”Nowhere” ではドラムがシューゲイザーのレコードにしてはかなりラウドにミックスされていることから来ていると思う。SLOWDIVE や MY BLOODY VALENTINE では、ドラムはそこにあるけれど、もっと背景のような感じ。僕たちの新しいアルバムでは、ドラムが本当に聴こえるよね。ドラムを大音量でミックスしたのは、このアルバムが初めてなんだ。というのも、プロセス・ミュージックはメロディーやムード、雰囲気に重点を置いているからね。でも、ドラムの Winterhalter は、ドラム・パートにとても力を入れているんだ。だから、今回はドラムの音をもう少し大きくしてもいいんじゃないかと思ったんだ」

なぜ、”Spiritual Instinct” のダークでヘヴィな世界から離れたのでしょう?
「そこから離れる必要があったから。いつもツアーをしていると、一人でいることがなくて、いつも人と一緒にいる。だから、自分自身との接点を失うのはとても簡単なことなんだ。最初のインスピレーションは何?この音楽プロジェクトを作ろうと思ったきっかけは?
“Spiritual Instinct” で聴くことができるように、僕は少し混乱していて、フラストレーションを感じていたんだと思う。そして、自分のスピリチュアリティと再びつながることがどうしても必要だった。あのタイトルは、僕が少し混乱していた時期でさえ、たとえ迷いを感じていたとしても、自分の中にある内なる世界やスピリチュアリティを感じることができたという意味なんだ。それは消えることはなかった。パンデミックで僕たちは一区切りをつけ、このバンドに対する主なインスピレーションは何だったのか、このバンドで表現したいことは何だったのか、本当に集中し直した。そして、最初のアルバムにあったコンセプトに戻りたいと気づいたんだ。最初の2枚のアルバムは、この別世界について歌っているからね。光と調和というもうひとつの世界に戻ってきたんだ」
回帰といえば、今回のアートワークはファースト・アルバム “Souvenirs d’un autre monde” を暗示しているように思えます。
「フルートの少女だね。ファースト・アルバムはフランス語で “別世界の思い出” という意味。そのファースト・アルバムの少女が成長し、今、僕がこのプロジェクトで成長したように、彼女も大人になったという意味で、ファースト・アルバムへの言及を入れたかった。ALCEST を始めたのは14歳か15歳のとき。基本的には子供だった。そして、このキャラクターも僕も、この世界、ALCEST の世界の中で成長した。そして、ニューアルバムのジャケットでは、大人になった彼女を再び見ることができるわけだよ」

そして、オープニング・トラックの日本語 “木漏れ日” でこのジャケットを暗示しています。
「恍惚とした曲だよね。幸せな気分になる。光に満ちている。日本語には、英語にもフランス語にも訳せないような言葉がいくつかあるけれど、それがひとつの概念になっているところが好きなんだ。”Komorebi” は、春の木漏れ日を意味する。そしてそれは、まるで宝石のように葉をエメラルド色に変える。とても美しいと思ったよ」
ALCEST のレコードには、宝石の名前を冠した曲が収録されています。
「そう、実は小さな伝統のようなものなんだ。”Komorebi” は、ファーストアルバムの1曲目 “Printemps Emeraude” “エメラルドの春” の現代版のようなもの。”Shelter” には “Opale”、 “Kodama” には “Onyx”、”Spiritual Instinct” には “Sapphire”、そして新作には “Amethyst” が収録されている。だから全部かな!でも、アメジストには特別な意味があるんだ。紫は神秘主義と精神性の色だからね。だから、それを指しているんだ。この石を曲のタイトルに使うのは、僕らのキャリアの中で完璧な瞬間だと思ったんだ。とても強い意味があるんだよ」
ただし、Neige のスピリチュアリティは、神秘主義のような秘教的なものとは異なります。
「確立された考え方に従わないという意味で、秘教的なものはあまり好きではない。というのも、スピリチュアリティについてあまり詳しく読みたくないから。誰もが自分の考えが正しいと思っているけれど、地球上には人の数だけ真実があると思う。そして誰も知らない。誰もすべての意味を知っているふりはできない。神はいるのか、それとも?
でも、自分の感情や直感に耳を傾けるなら、僕はとても直感的な人間だから、スピリチュアルなものやこの種のものと、ただ本で何かを読むよりもずっと深いつながりを持つことができると思う。高次のものとのつながりを感じるために教会に行く必要がある人もいる。でも僕の場合は、自然の中に身を置く必要があるので、故郷に近い南フランスで多くの時間を過ごしている。そこにはとても美しい自然があり、バンド結成当初から私にインスピレーションを与えてくれた。
森の中や海の近くなど、特別な場所にいると、現実ともっと壮大なものとの橋渡しをしてくれるような気がするんだ。この背後に何かがあることを実感できるんだ。少なくとも、僕はそう感じている。すべてに意味がある。そして、僕たちがここにいるのには、それなりの理由がある。それが、このプロジェクトで私が話していることなんだ」

“もののけ姫” にインスパイアされたように、Neige は日本の神道、自然界に存在するものすべてに魂が宿るという側面に惹かれています。
「神道では、すべてのものに魂が宿ると信じられている。例えば、村の小さな川にも魂が宿っている。だから彼らは自然をとても大切にするんだろうね。山には山の魂があり、空には空の魂がある。ちょっと比喩的な表現になるけれど。日本人は、すべてのものに魂が宿っていると本気で言っているわけではないと思うけど、それがすべてのものを尊重することにつながっている。自分たちの周りにあるすべてのものに敬意を払う。それは、僕が日本文化でとても好きなところだよ。日本語では “God” のことを神と呼ぶけど、彼らは基本的にすべてのものに神を持っている。”もののけ姫” を見れば、それがよくわかるよね。彼らは森の精霊、巨大な樫のような生き物を描いている。本当に美しい」
アルバムは、前半は陽気で多幸感にあふれ、それから後半は悲しい中にも喜びがあるような流れです。
「そう、アルバムは最後の曲で少し暗くなる。最後の曲は、ギョーム・アポリネールというフランスの作家の詩で、”L’adieu”。これは英語で “farewell” と訳される。僕が取った詩のタイトルなんだ。とても悲しい歌だよ。
僕がアルバムでやりたいのは、最後にもう少し深みを持たせることなんだ。そうすると、ある種のミステリアスなゾーンに行き着くんだ。自分の感情をどうしたらいいのかわからなくなる。そして、本当に少し緊張してくる。それに、僕は100%ハッピーエンドが好きではないのかもしれない。たぶん、最後のほうで物事を少し複雑にするのが好きなんだと思う」
ピアノ曲の “Reminiscence” は今までの ALCEST の曲とは一風異なります。
「アルバムで本物のピアノを使い、完全なアコースティックの曲を作ったのは初めてだからね。チェロのように聞こえる楽器があるけど、これはチェロではなくヴィオラ・ダ・ガンバという楽器。とても古い楽器なんだ。すべてアコースティック。とてもシンプルな曲だ。間奏曲のようなものだけど、僕にとってはとても深い意味がある。なぜなら、この曲は僕が生まれて初めて触った楽器、祖母のピアノで録音されたから。祖母はピアノの先生で、家族みんなに音楽の手ほどきをした。レコードで聴けるのは、僕の家族全員が使っているこの楽器の音なんだ。そして僕たちは皆、この楽器から音楽の弾き方を学んだ。だから、祖母がもたらしてくれたものへの素敵なオマージュなんだ。祖母がいなかったら、もしかしたら僕はこの音楽を作っていなかったかもしれないからね」
そうして、ALCEST は暗い時代に光を投じる灯台のようなアルバムを完成させました。
「今僕らが生きている時代の暗さにインスパイアされたアルバムを2枚作った後、特にこの暗い時代に、調和と美しさとポジティブさをたくさん持ったアルバムを作れば、本当に際立つことができると思った。このアルバムは、まるで癒しのような感じがするから、みんなに楽しんでもらえると思ったんだ」


参考文献: FORBES:Alcest Flourish In The Unbridled Warmth Of Their Latest LP, ‘Les Chants De L’Aurore’

POST-PUNK .COM: BANDS FEATURED ARTICLES INTERVIEWS Emerald Leaves Shimmering in the Light of Dawn — An Interview with Alcest

KERRANG!:Alcest: “In dark times, to make an album of beauty and positivity could really stick out”

MARUNOUCHI MUZIK MAG ALCEST INTERVIEW

日本盤のご購入はこちら。Ward Records

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WOMBAT SUPERNOVA : APEWOMAN VS TURBO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH WOMBAT SUPERNOVA!!

“Math Rock And Prog Metal. These Genres Can Go In Similar Directions But As They Come From Really Different Worlds, They’re Not Really Meeting Each Other That Often.”

DISC REVIEW “APEWOMAN VS TURBO”

「マス・ロックとプログ・メタル。そのふたつのジャンルは似たような方向に進むことができるけど、本当に違う世界から来たものだから、実際はお互いに出会うことはあまりないんだよね。僕らのプロジェクトは、DREAM THEATER や HAKEN ようなプログ・メタルの大ファンで、でもマス・ロックを作りたかったから、その両方を組み合わせることにしたんだよ」
マス・ロックとプログ・メタル。両者共に、複雑怪奇な奇数拍子と難解なテクニックを心臓としながらも、決して交わることのなかったジャンルたち。それはきっと、エモ/スクリーモとメタルという大きく離れた場所から進化をとげてきたせいでしょう。しかし、フランスのウォンバットとエイプウーマンは、ユーモアでその壁をとりはらいます。
「僕はいつも不思議だったんだ。マス・ロックは当然、プログレッシブで面白いことを期待していた(そしてそれを望んでいた)のだけど、実際にはシリアスでエモい側面が、僕が思っていたよりもずっとシーンで優勢であることを知って驚いたね」
おそらく、マス・ロックとプログ・メタル最大のちがいは、音楽的な “深刻さ” である。そう信じていたウォンバットこと Lulu は、実際のマス・ロックシーンのシリアスさに驚き、違和感を感じます。同じくらいシリアスなら、大好きなマス・ロックとプログ・メタルが出会わない手はない。しかも、そこにユーモアやハッピーな感情を織り込んだらどうなるんだろう?そこから、WOMBAT SUPERNOVA の冒険がはじまりました。
「僕はいつも任天堂の大ファンボーイで、僕らの音楽はマリオカートのサウンドトラックにすごく影響を受けていると思う。全体的にはちょっと微妙なんだけど、”Bertrand” のコーラスのようにはっきりわかることもある。僕ら2人とも、大乱闘スマッシュブラザーズ・アルティメットとそのOSTの大ファンでもあるんだ」
“Bertrand” は、まさにそんな “最高にキュートで、最高にハッピーで、最高におマヌケなマス・ロック” を標榜する彼らを象徴するような楽曲。ハイパーなイントロのタッピング・リフに、MESHUGGAH も顔負けのブレイクダウン。そのふたつをつなぐのが、感染力増し増しのアニメチックで爽快なメロディなのですから、前代未聞のマスプログハッピーミュージックはとどまるところをしりません。
「どうやら僕らの音楽のおかげで、暗いことがあっても楽しくハッピーな気分で生活できるようになったみたいなんだ。このプロジェクトは、以前は僕らが楽しむために作ったものだったけど、もしこのプロジェクトがみんなに良いバイブスを与えることができたなら、僕たちは本当に嬉しいよ」
音楽は、それがネガティブな感情であれ、ポジティブな感情であれ、リスナーの心に寄り添うもの。そうして、リスナーの心の壁を溶かしたウォンバットは、カントリーからジャズ、そして場違いなブラストビートの連打までカオティックに音楽で未曾有のサーカスを演じ続け、ジャンルの壁をも溶かしていくのです。
今回弊誌では、WOMBAT SUPERNOVA にインタビューを行うことができました。”バンドのアイデンティティにウォンバットを選んだのは、かわいい動物だし、小さなキャラクターだし、その中の一匹が “ベルトラン” (明るくてかわいくて賢い) だったから” どうぞ!!

WOMBAT SUPERNOVA “APEWOMAN VS TURBO” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENTERRE VIVANT : 四元素】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ENTERRE VIVANT !!

“Our Music Has Dark Parts And Light Parts. “Two Become One” Is The Concept Of The Band. Music Made Together By One Person Living In France And One Person Living In Japan. A World That Mixes European And Japanese Culture. An Atmosphere That Mixes The Past And The Present…”

DISC REVIEW “四元素”

「今までうまくブラックメタルと日本をミックスしたバンドは少ない。少なすぎる。その中でも自分にとってレジェンドである 凶音 (MAGANE) のファースト・アルバムは最高です。復活してほしいな~。だから Enterre Vivant はずっと聴きたい音楽を作っていることになります。自分の毎日を見せている音楽。日本とブラックメタルです」
25年前、日本にやってきたフランスの若者は、日本を愛し、日本で暮らし、日本を見つめ、”本当の自分” を日本とブラックメタルの婚姻により描き出すことを決めました。それは Sakrifiss にとって、日常であり、自然に自らの内面から湧き出すもの。人生を着飾る必要はない。優れた人になる必要はないけれど、”本当の自分” でいて欲しい。Sakrifiss の人生という泉、もしくは黄泉メタルが生み出した願いは、結果として日本とブラックメタルを誰よりも自然に融合することとなりました。
「四元素。しかしこの作品は、風、火、水、土の話しだけではありません。人間、人生についてでもあります。たとえば、”水” という曲は過去と未来の話も含まれている。人間にも上流と下流があります。泉から生まれてそして水のように人生が流れていく。人生は滝のように、川のように、激しくなったり、弱くなったりします。でも最後は河口で旅が終わります。泉へ戻りたくても無理だ。流れていくしかない。あきらめた方がいいという意味じゃない。人間は自分は何ができる、何ができないかを知って生きるべきだという意味でしょう」
風、火、水、土。この世の全ては、 その4つ (ないしは5つ) の元素から成り立っているという考え方は、ヨーロッパにもアジアにも古くからありました。そして元素同士を結びつけるのが愛で、引き離すのが憎しみという考え方もそこには付随しています。フランスに住むフランス人と日本に住むフランス人が結びついた Enterré Vivant のアルバム “Shigenso” は、共通する自然哲学を媒介とした愛によって、欧州と日本を優しく結びつけました。
そうして、彼らのブラックメタルで歌われる4つの元素は、人生の様々な場面を構成していきます。流れに逆らわず、風の導きのまま、炎を宿して、土のように満ち足りた、弱さを認めた本来の自分であればきっとより良い明日になる。ケ・セラ・セラというフランス語、もしくは人間万事塞翁が馬というアジアの古事…そんな未来へ向けたポジティブで率直なメッセージがアルバムには込められています。
「”Enterré” は “うめる”、”Vivant” は “生きたまま”。つまり反対のイメージを持っている二つの単語です。”暗い” 言葉と “明るい” 言葉のミックスにしたかったからです。Enterré Vivant の世界にぴったりのチョイスだと思いました。私たちの音楽には暗いパーツがあって明るいパーツもあります。”二つが一つになる” がバンドのコンセプトなのです。フランスに住んでいる一人と日本に住んでいる一人が一緒に作った音楽。ヨーロッパと日本の文化をミックスした世界。昔と今を混ぜた雰囲気」
フランス語のモノローグと日本語のナレーション。日本の伝統楽器と西欧の現代楽器。日本古来のメロディと西欧のモダン・メタル。そして、日本の生き方と西欧の生き方。精神も、場所も、時間も超越して一つになった音世界がここにはあります。
反対のイメージを持ったものでさえ、固定観念にとらわれなければ、正直であればきっと一つになれる。鳴り響く美しきトレモロのメロディ、ブラックメタル特有の灼熱の叫び、プログレッシブな建築術、そして和の色彩を宿したあまりにも感動的なアトモスフェリック・ブラックメタルは、音の四元素の輪を輪廻のように展開しながら、メタルの寛容さを具現化していくのです。
今回弊誌では、Enterre Vivant にインタビューを行うことができました。Sakrifiss さんの回答はほぼ原文ママの日本語です。「18歳になって私は日本語と日本の文化の勉強を始めた。大学で日本の歴史のことももっと知るようになりました。凄く魅力的だったのは土偶、源氏物語、浄瑠璃、世阿弥、松尾芭蕉・・・昔の日本もとても面白いですが、もうちょっと最近なら1950年代と1960年代の映画も大好きです。三船敏郎様出演の映画も素晴らしいですが、一番好きなムービーは “ビルマの竪琴”。昔の日本が大好きだが、もっと最近ならやっぱり1990年代からのジャパニーズブラックメタルのファンでもあります」 どうぞ!!

ENTERRE VIVANT “四元素” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PENSEES NOCTURNES : DOUCE FANGE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LEON HARCORE A.K.A. VAEROHN OF PENSEES NOCTURNES !!

“Pensees Nocturnes Is Drinking a Glass Of Champagne On The Edge Of The Abyss, Where Everything Is Falling.”

DISC REVIEW “DOUCE FANGE”

「僕は音楽を優先し、バンドをケースバイケースで判断し、なるべくカタログ化しないようにしているからね。インターネットの発達により、国籍という概念は音楽においてもはや意味を持たなくなったと思う。だから、たとえフランスに強力なブラックメタル・シーンがあるように見えても、フランス人であることに特に誇りを持つことはないんだ」
メタルヘッズがブラックメタルを想像するとき、ノルウェーのフィヨルドや教会を思い浮かべるのか一般的でしょう。しかし、”実験好き” な人たちはその限りではありません。PLEBEIAN GRANDSTAND, DEATHSPELL OMEGA, BLUT AUS NORD, CREATURE, そして IGORRR。バゲットとエスカルゴとエッフェル塔の国は、確実に今、そのトリコロールに血と知の漆黒を加えつつあります。
それでも、PENSEES NOCTURNES の首謀者 Leon Harcore A.K.A Vaerohn は、音楽に国籍はないと嘯きます。レッテルを剥がす、固定観念を疑う、欺瞞の美を笑う。それこそが彼らの目的なのですから。ある意味、そのニヒリズムとシニシズムこそ、フランスらしいと言えなくもないでしょうが。とにかく、この夜想と不安の申し子は、圧倒的なブラックメタルの核を、オーケストレーション、ジャズ、フォーク、エキセントリックな装飾、そして皮肉にもセーヌの滸やルネサンス、それにアール・ヌーヴォーでコーティングした裏切りの饗宴を催しています。
「なぜ好きな楽器を使えるのに、3つや4つに楽器を限定してしまうんだい?PENSEES NOCTURNES はライブと違ってスタジオでは常にワンマンバンドとして活動しているから、好きなものを何でも試すことができるのさ」
常識を疑い、当たり前をせせら笑う PENSEES NOCTURNES にとって、”ノン・メタル” な楽器の使用はある意味至極当然。ヴァイオリン、フルート、クラリネット、アコーディオン、トランペット、トロンボーン、サックス、ディジュリドゥ、ティンパニー、コントラバス、ハーモニカなど雑多なオーケストラと通常のメタル・サウンドが混在するインストゥルメントの狂気は、あのシルク・ド・ソレイユさえも凌駕します。ただし、Leon のサーカスは安全と死の狭間を良く知っていて、様々な要素をバランスよく取り入れながら、地獄の綱渡りを渡り切って見せるのです。
「PENSEES NOCTURNES は明らかに唯物論的な音楽であり、今ここで聴くべき音楽だ。憂鬱でもなく、無邪気な喜びでもなく、美しくもなく、酷くもなく、現実的で悲劇的な人生のビジョンだから。むしろ、僕たちの存在に対するニヒリズムと笑いのシニシズム (慣習の否定。冷笑主義)なんだよ」
フランスを笑う狂気のブラックメタル・サーカス “Douce Fange” は人間大砲の音で開演し、”Veins Tâter d’mon Carrousel” ですぐさま狂騒曲の舞台を設定します。芝居がかった叫び声は同じフランスの IGORRR を想起させ、刻々と変化する音の曲芸は無限にアクロバティック。ブラスセクションで始まる “Quel Sale Bourreau” は、DIABLO SWING ORCHESTRA にも似て、曲芸師のように様々な演目を披露。IMPERIAL TRIUMPHANT 的なブラックメタルのカオスとオペラが戦う様は、まさにニューヨークとフランスの決闘。そうして次々に、無慈悲なピエロたちはジャンルの境界線を歪めながらメタル化したワルツを踊り、笑い笑われながら即物的な享楽を与え、漆黒のアトラクションを血と知に染めあげていきます。
「キリスト教が現世の死である以上、ブラックメタルは生でなければならない。つまり、ブラックメタルは物質主義的な快楽であるべきで、それ以上の何かを望むことなく、今あるわずかな人生を楽しむことだ。 神秘的、超越的な側面も、サタンも、神も、どんな信念もない。 ただ、現実が、可能性と限界を伴ってあるがままにある。 その観点からすると、PENSEES NOCTURNES は他のどのバンドよりもブラックメタルなんだ」
Leon にとって、ブラックメタルの反語はキリスト教。天国に行くという目的のために、現世における享楽を放棄して、真面目に粛々と生を全うするその教義は彼にとって全くのナンセンス。美しいとされる “人生を楽しまない” 生き方に Leon は疑いの目を向け、快楽と狂気と反骨の三色に染まったトリコロールの旗を振ります。ブラックメタルこそが生。重要なのは、一見、ふしだらで退廃的で危険で強欲にも思えるこのサーカスには、実のところ何の強制力もありません。
今回弊誌では、Leon Harcore A.K.A. Vaerohn にインタビューを行うことができました。「PENSEES NOCTURNES は、すべてが落ちていく深淵の縁でシャンパンを飲んでいる」名言ですね!タイトルはもちろん、シャルル・トレネの “優しいフランス” のオマージュで  “汚れたフランス”。どうぞ!!

PENSEES NOCTURNES “DOUCE FANGE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CARPENTER BRUT : LEATHER TERROR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FRANCK HUESO OF CARPENTER BRUT !!

“Metal Music Was Boring Me, I Thought The Genre Was Going In Circles. Then One Day I Watched a Justice Live Show And It Was The Trigger. Why Not Push Electro To The Point That It Sounds As Powerful As Metal Music? So Carpenter Brut Was Born.”

DISC REVIEW “LEATHER TERROR”

「Bret Halford は、POISON の Bret Michaels と JUDAS PRIEST の Rob Halford を混ぜた名前で、主人公が好きなグラム・ロックとヘヴィ・メタルという二つの音楽ジャンルにオマージュを捧げる私なりのやり方だった」
“若き科学者 Bret Halford は、恋愛が苦手な男。学校のチアリーダーである運命の女性は、すでにいじめっ子のひとりと付き合っている。ロックスターに扮した Bret は、Leather Teeth と名乗り彼女を口説こうとするが、大事故に巻き込まれ大やけどを負ってしまう。同じ頃、ミッドウィッチでは謎の殺人鬼 “ブギーマン” が街をうろついていた。この街では殺人、カニバリズム、暴力が進行中だ”
これは2018年の “Leather Teeth” で、フランスが誇るシンセウェーヴの天才 CARPENTER BRUT が書き起こした、ヘヴィ・メタルとホラーのレトロフューチャーな怪綺譚、3部作のサウンドトラック、その第1幕。CARPENTER BRUT の頭脳である Franck Hueso は、ギターをほとんど持たず、ボーカル曲も数曲のみであるにもかかわらず、”ターミネーター”、”エルム街の悪夢”、”バトルランナー” の完璧にデザインされた電子音楽を、華やかなヘアメタル、ディスコ風味、鋲付き革ジャンの光沢で鮮やかに彩ってみせました。Carpenter の名は伊達ではありません。
「僕はミュージシャンではないから、楽器を演奏するのは難しかった。でも一方で、僕は機械やプラグなどを扱う方法を知っていて、それを扱うのが好きなんだよね。自分が何をしているのか、どんな結果が得られるのか、よくわからないまま何時間もシンセサイザーをいじっていると本当に面白いし、”ハッピー・アクシデント” が発生して、思いがけない結果が得られることもあるんだよ」
第二幕 “Leather Terror” は、Bret が第一幕で受けた屈辱を晴らすため、復讐の鬼となるストーリー。興味深いことに、”Leather Teeth” の4年後にリリースされた “Leather Terror” は、その舞台設定も1987年から1991年、つまり4年後へと移行しています。”Serpence Albus” から “Black Album” へ。奇しくもそのストーリー・ラインと呼応するかのように、CARPENTER BRUT の音楽もまた、ナイフと血とレザーが織りなすダークでアグレッシブな領域へとより深く歩みを進めています。Franck のノスタルジアとは冷たく、硬く、しかしどこか居心地のよい恐怖。
「僕はポップスのフォーマットで、シンプルでキャッチーな曲も好きだし、A点からZ点まで、いろいろなムードを持った伸びていくような楽曲も両方好きなんだ。だから、ロックやポップスの音楽的な構成でありながら、すべてシンセサイザーで行う。人々が慣れ親しんでいる構造を保ちつつ、あまり馴染みのない音を使うという二律背反を多用しているのさ。そうやって様々な音楽をミックスしているよ」
シンセウェーヴ、インダストリアル、ダークウェーヴ、EDM、そしてメタルの境界線を曖昧にした “Leather Terror” は、80年代のホラー映画のような構成の魔法で、過去と現在、そして未来までも曖昧にします。不気味で威嚇的なリズム、反復の美学、重厚なサウンドスケープとアンセミックなメロディー、静謐で暗がりのムードにいたるまで、Franck はその武器化された電子機器でメタルとシンセウェーヴの華麗な “戦争” を “麻薬的” に描いているのです。
「メタルは退屈で、このジャンル自体が堂々巡りだと思っていたんだよ。そんなある日、JUSTICE のライブを観た。あれが引き金となったね。エレクトロもメタルと同じくらいまでパワフルなサウンドにできないか?…エレクトロを最もダンス的な方法で押し出し、メタルのパワーとクロスオーバーさせたいという欲求が生まれたんだ。それで CARPENTER BRUT が誕生したんだよね」
ギターを1本もフィーチャーしていないのに、私たちの望む荒々しいリフやメタリックな音像が生み出される奇跡。実はその根底には、メタルとディスコに共通する “パワー” や “エナジー” の底流がありました。陰と陽の音楽的な掛け算は殺人鬼のダンスホールを産み落とし、クリエイティブな自由を与えられた “ゲスト・ダンサー” ならぬゲスト・シンガーたちは、その場所で思いのままにトラックをハックし、恐怖に独自の色を加えていきます。
GUNSHIP の Alex Westaway、THE DILLINGER ESCAPE PLAN の Greg Puciato、CONVERGE の Ben Koller、TRIBULATION の Johannes Andersson、SYLVAINE の Kathrine Shepard、ULVER など、多数のゲストが踊る死の舞台は、あの時代の空気感を呼び覚ますだけでなく、多様なボーカル体験をも再現しています。つまり CARPENTER BRUT はメタルではない “電子音楽” であるけれど、メタルと同じくらい暗く、豊かで、感情的で、エクレクティックな音楽。ミュージシャンじゃなくてもミュージシャンにはなれる。CARPENTER BRUT のすべては楽しい二律背反が原動力なのです。
今回弊誌では、Franck Hueso にインタビューを行うことができました。「”北斗の拳” や “マッド・マックス” などのように、僕が特に大好きなポスト・アポカリプス的な精神に基づく “AKIRA” の世界観は、もちろん大好きさ。”ポスト・アポカリプティック” (終末論的) は、次のアルバムのテーマにもなっているからね」 GHOST の Tobias によると、Franck はあの DEATHSPELL OMEGA にも関わりがあるとかないとか…それにしても、PERTURBATOR といい、DAN TERMINUS といいフランスのダークウェーヴ恐るべし。どうぞ!!

CARPENTER BRUT “LEATHER TERROR” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MOONSHINE OVERSIGHT : THE FRAME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MOONSHINE OVERSIGHT !!

“Drummers Are The New “Guitar Heroes”! The World Deserves More Bands Like Mastodon. With Strong Drums, The Songs Lead To a More Groovy Sound.”

DISC REVIEW “THE FRAME”

「たしかに80年代や90年代、フランスのバンドの扱いは良いものじゃなかった。John Lennon がこんな皮肉を言ってたのを思い出すよ。”フランスのロックはイギリスのワインみたいなもの” ってね。だけど、それから時間が経って、新たなフランス音楽革命が勃発している。世界からもリスペクトされながらね。おそらく、イギリスのワインもちょっとはマシになったんだろう (笑)」
背に音雷を纏ったメタルの怪獣 GOJIRA が強烈な導火線だったのでしょう。フランスのメタル世界に今、プログレッシブ革命が勃発しています。IGORRR, 6:33, ALTESIA, HACRIDE, HYPNO5E, SYMBIOSIS…エレクトロニカからdjentまで華麗に乱れ咲いた複雑怪奇の自由意志は、英米主導のロック封建制を破壊して音に国境がなくなったことを晴れやかに訴えているのです。重要なのは、彼らの一つとして典型的なプログ・メタルの方法論を踏襲していないこと。DREAM THEATER を祖父とすれば、HAKEN や LEPROUS といったその息子の世代から影響を受けた “DREAM THEATER の孫” が鮮烈な才能を現し初めているのです。
「僕たちの目指すところは、ハード・ロックやメタルのエナジーをプログの多様性や自由さに混ぜ合わせることだから」
LEPROUS, HAKEN, CALIGULA’S HORSE, TesseracT といった “息子” の世代に共通するのが、胸の奥を素手で直接握られるような、感情の堰が決壊するような、研ぎ澄まされた叙情の旋律。そして彼らの発する魅惑のメロディーには、”ポスト”・ロックや OPETH, POPCUPINE TREE に端を発する空間的なアトモスフィアが付随していました。逆に言えば、”メカニカル” や “テクニカル” から距離を置きながら、いかにプログレッシブを表現するのか。そんな命題が “息子” の世代には課せられていたのかもしれませんね。先日インタビューを行った “孫” 世代、ALTESIA がそんな新叙情世界を無数の “ジャンルの劇中劇” でさらに深化させていたのは記憶に新しいはず。では、今回の主役、同じく “孫” 世代の MOONSHINE OVERSIGHT はいかにしてプログレッシブを推し進めているのでしょうか。キーワードは有機的で衝動的なロックのエナジー。
「ドラムの領域は、新たな “ギター・ヒーロー” の分野だよ!世界は MASTODON のようなバンドをもっと必要としている。強力なドラムで、楽曲をグルーヴィーに引っ張るようなバンドがね」
例えば、MASTODON をプログレッシブ・メタルと称する人は多くはないでしょう。TOOL にしても、プログレというよりはオルタナと呼ばれる方が確実に多いはず。とはいえ、彼らの千変万化や複雑怪奇を初めて耳にした際、私たちは心のどこかで “プログレッシブ” という言葉を思い浮かべているはずなのです。ただ、クラシックな “プログレ” と距離が離れすぎているためプログレッシブも呼べないだけで。つまり、真のプログレッシブがプログレではないという本末転倒がずっと幅を利かせてきた不思議な現象。狂気の監視者たる MOONSHINE OVERSIGHT はまさにそこに目をつけました。
オープナー “Eyes of Sorrow” を聴けば、MOONSHINE OVERSIGHT の叙情が “息子” 世代のそれと比べても何ら引けを取らない感情の大渦であることが伝わるはずです。ただし、彼らはその場所に手数とオカズを存分にしたためたドラムの激動、有機的な数学教室を封じることを決意します。まさに嵐のようなダイナミズム。つまり彼らは、プログの伝統を受け継ぐ LEPROUS や HAKEN のアトモスフィアと、プログの異端者である MASTODON や TOOL, そして同郷の偉大な先達 GOJIRA の荒れ狂う数の暴力を、大胆に引き合わせることに成功したのです。つまり、ロックのエナジー、メタルのアグレッション、さらにはフォークの繊細さまでを咀嚼して、パワフルで内省的という二律背反のプログレッシブ・ワールドを実現したと言えば伝わりやすいでしょうか。OPETH と ALICE IN CHAINS が奇跡の共演を果たしたような “Remembrance” は、陰陽道を駆け抜ける彼らの “陰” を突き詰めた絶佳の名演ではないでしょうか。もちろん、”Ghosts” のギターソロを聴けばロックらしいギターヒーロの遺伝子も存分に感じるはず。
今回弊誌では、MOONSHINE OVERSIGHT にインタビューを行うことができました。「僕はドラゴンボールで育ったし、今は進撃の巨人にハマっている。ゲームだと、Final Fantasy シリーズが大好きで、特にⅦ が好きだったな。つまり僕は少年ジャンプの、正義、友情、勝利を信じているんだよ」 どうぞ!!

MOONSHINE OVERSIGHT “THE FRAME” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【6:33 : FEARY TALES FOR STRANGE LULLABIES – DOME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FLORENT CHARLET OF 6:33 !!

“We Were Stunned (As We Tried To Pay Tribute On The Album’s Artwork) By “Cyberpunk” Animes Such as Akira, Ghost in the shell ou Gunnm, And Some Of Their OST. Nicko Is a Huge Fan of Yoko Kanno.”

DISC REVIEW “FEARY TALES FOR STRANGE LULLABIES”

「バンドが誕生したのが長いクレイジーな夜のパーティーの後、午前6時33分だったから 6:33 なんだ。バンドの名前を決めるのは往々にしてとても複雑で、何か意味があるのか、何かを参照しているのかといろいろ探したり、メンバー全員が別々の自分の考えを持っていたりする……だから僕たちは、単純に、効率的に、深い意味はなく、ただ楽しい名前を選んだんだ」
6:33 を “楽しいプログ・バンド” と位置づけている。そんな Florent の言葉通り、フランスのイカれた変態集団 6:33 は、複雑難解で何事にも意味や哲学を求める傾向のプログ世界を “楽しい” に変える破天荒の確信犯。
「音楽スタイルの多様性についてだけど、僕は、うまくいって、楽しくなるならば何でもすぐにそれを実行するんだよ。僕たちのこういった音楽スタイルの変化は、ユーモアのようなもので、悲しみから喜びへと瞬く間にジャンプするんだよね」
ファンク、スウィング・ジャズ、ヒップホップ、R&B、ポップス、サウンドトラック、ワルツ、サーカス、スカ、ゴスペル、チャーチオルガン、チューブラー・ベル、80年代のシンセ・ウェイブ、ブラス・バンド、オーケストラ….世界で最も多様なメタル・バンドとしてあの DIABLO SWING ORCHESTRA と双璧をなす 6:33 のパレットには、ありとあらゆる音の色彩が用意されています。
例えば、やたらとメニューの多い中華屋に入って肝心の味に閉口する。6:33 の料理にそんな杞憂は必要ありません。まさになんでもあって心から楽しめる一流の料理店。これをプログと呼んでいいのでしょうか?それともプログメタル・アルバム?いえ、”Feary Tales For Strange Lullabies – The Dome” はそのすべてであり、それ以上のものなのかもしれません。
「僕たちは、若いアーティストがスターになるために巨大な都市(ドーム)に引っ越してくるという、ある種のオルタナティブ・ワールドを作りあげたんだ。そこで彼は色とりどりの人々と出会い、自分の中の声(頭の中の奇妙な虫のようなものの声)に心を動かされるんだ。そして、彼は自分の目標に突き進んでいく」
“Feary Tales For Strange Lullabies – The Dome” は、全11曲、53分10秒の “オペラ・コミック”。日本の “サイバーパンク・アニメ” に影響を受けた近未来のダークな物語を、アートの粋を集めながら、直接的に楽しく語ります。率直で境界線のない変態集団は、ウルトラ・キャッチーなメロディー、それにエネルギーに満ちたシンガロングを作り出すコツを心得ていて、最高にプログレッシブでありながら、ヘッドバンキングしたり、足を踏みならしたり、指でどこかを叩いたりすることが宿命づけられた “踊れるプログミュージック” を完成へと導いたのです。
オープナー “Wacky Worms” は、アルバムの縮図となるような一曲。あえて言えばこのアルバムの中で最も “メタル” な楽曲ですが、6:33 らしくあらゆるものが含まれていながら、それぞれが自然にシームレスに接続されているため、一層豊かな音楽の乗り心地に身を委ねることができるのです。それはまさに彼らが6年をかけて目指したもの。さらに 男女ツインボーカル、ダブル・キーボードという新たな編成を得てはじめて、音楽に真の鼓動が脈打ち始めました。プログラミングされたドラムスも、ついに新メンバーが加わり、以後ライブでは ”生” で再現されていきます。
1枚のアルバムの中で、これほどまでに多様なスタイルが次から次へと飛び交い、しかもそれが自然な流れの中で巧みに織り込まれている作品がどれだけあるでしょう?QUEEN, THE BEATLES, GENESIS, FAITH NO MORE, ブロードウェイ、シンセウェイブ、ディスコ、トランス、そしてもちろんメタル、まさに Devin Townsend の音の壁がグランドピアノの音に宿り壮大に幕を閉じる “Prime Focus”。これでほんの一曲。常軌を逸しています。
“Party Inc.” では、子供たちの合唱団まで登場します。これ以上ないほどシアトリカルですが、同時に遊び心があり、生き生きとしていて、都会の地下に巣食う粗野で殺伐とした未来のリアルにリスナーは贖うことができません。そうして到達する “Hangover”。Flow が師匠と呼ぶ Mike Patton が乗り移ったかのような千変万化なパフォーマンスに我々は声を失います。降り注ぐ拍手とスタンディング・オベーション。しかしきっとこれで終わりではありません。名演にはアンコールがつきものです。
今回弊誌では、ボーカリスト Florent Charlet にインタビューを行うことができました。「思春期の僕たちは、Akira、攻殻機動隊、銃夢といった “サイバーパンク” アニメや、それらのOST(バンドのギタリスト兼コンポーザーである Nicko は、菅野よう子の大ファン)に衝撃を受けたんだよね。アルバムのアートワークも日本のサイバーパンクに敬意を表しているんだよ」どうぞ!!

6:33 “FEARY TALES FOR STRANGE LULLABIES” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALTESIA : EMBRYO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALTESIA !!

“Dream Theater Is Not Really an Influence For Me When I Compose, And Indeed, I Feel Closer To Bands Like Haken, Between The Buried And Me, Wilderun, Opeth, Caligula’s Horse.”

DISC REVIEW “EMBRYO”

「実際のところ、DREAM THEATER は僕が作曲するときに影響を受けているバンドではないね。HAKEN, BETWEEN THE BURIED AND ME, WILDERUN, OPETH, CALIGULA’S HORSE みたいなバンドに近いと思っているよ」
2019年、”Paragon Circus” でプログ・メタルの世界に登場した ALTESIA は、HAKEN の壮大、LEPROUS の荘厳、OPETH の邪悪を DREAM THEATER の技巧でつなぐ奇跡のニュー・カマーとして驚きと賞賛を集め、フランス・メタル・アワードで五位という衝撃のデビューを果たしました。重要なのは、彼らが DREAM THEATER の “息子” ではなく “孫” だという点でしょう。
「僕たちは、長いシュレッドのソロや、テクニックのためのテクニックなど、プログ・メタルの “決まり文句” を避けようとしているんだ」
予測不可能でジャンルを超えた音建築、印象的なインタルードの数々、テクニカルでエキサイティングな楽器の魔法、20分を超える巨大なプログの要塞、荘厳なコーラスを伴うメロディックな歌声、魅惑の変拍子。おそらく、プログ・メタルのリスナーが求めるものをほぼすべて備えながら、ALTESIA の音楽からこのジャンルの巨星 DREAM THEATER が創造した “クリシェ” を感じることはそう多くはありません。それよりも、DREAM THEATER を聴いて育った “息子” 世代のモダン建築を手本として、さらなるプログの更新を目指しているのです。
マイナー・キーの楽曲を基盤としながら、よりアップビートで煌びやか、明快な荘厳は LEPROUS や HAKEN, CALIGULA’S HORSE が開拓した新たなプログの道筋。シンセサイザーは夜空に瞬く星座のように降り注ぎ、バックのシンフォニーは天の川のようにシルキーで滑らか。Clément のヴォーカル・メロディーは、さながらクワイアのようなコーラスの濁流に身を委ねながら、リスナーの琴線に触れ激しく胸を締め付けます。
「このアルバムは、57分間に様々な感情が渦巻く、とても繊細な作品だと思っているよ。でも、それは僕たちが目指していることでもあるんだよね。観客を驚かせるために、そして自分自身に挑戦するために、非常に多様でダイナミックなレコードをリリースすることでね」
彼らの実験が興味深いのは、大きな楽曲の枠組みの中に小さな楽曲を複数用意しているところかもしれませんね。言ってみれば、劇中劇のようにビッグテーマの内側で、Djenty なブレイクダウン、ブラストビート、ヴァイオリンやアコーディオン、サックスのダンス、古典的なファンクやジャズ、欧州のフォーク・ミュージック、さらに1800年代のパーラー・ミュージックのような世界観までカラフルな小曲が時代を超えて渦巻きます。このアルバムにおける千変万化なダイナミクスはプログ世界においても前人未到の領域かもしれませんね。
「このアルバムは、基本的に僕たちがより良い人間になるにはどうしたらよいかをテーマにしているんだ。もし僕たちが正しい質問を自分自身に投げかけ、集団的な方法で良心を高めようとするならば、世界は大きく変わるだろうと僕は思っていてね。許すこと、直観に従うこと、自分に忠実であること、自分のための人生を生きることなどテーマは様々さ」
政治的腐敗、富の不平等、地球汚染などサーカスのような運命を背負ってしまった人類破滅の物語 “Paragon Circus” の重苦しさから一転、”Embryo” はその暗い宿命をいかにして変えていくか、そんな命題を宿しています。だからこそ、その音楽もよりブライトで希望を湛えた濃密へと移り変わっていきました。
バンド名 ALTESIA は架空の木の名前。雄大な大木も一粒の種から始まっています。社会のあり方を変えようとするならば、まずは一人一人が内省し、自分を見つめなおし、愛を抱き、ALTESIA の音楽のように心を澄ませること。それこそが世界を変える第一歩なのかもしれませんね。
それにしても終幕の叙事詩、21分の祝祭 “Exit Initia” は言葉に表せないほどの絶景です。プログ世界の大曲には、しばしば退屈だったり、ただ何かを詰め込んだだけだったり、不器用に混線していたりする悪手が見られますが、”Exit Initia” には21分という長尺の意味がしっかり存在しています。そして、楽曲全体で大きな感情を創出する手法は、実は彼らの “祖父” DREAM THEATER が “Octavarium” で見せつけたプライドとよく似ていました。やはり、血は争えませんね。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの Clement Darrieu とキーボードの Henri Bordillonにインタビューを行うことができました。「ビデオ・ゲームの音楽は、80年代のジャパニーズ・フュージョンに大きく影響を受けていて、その中には僕が大好きな Casiopea のようなバンドがいたんだよね。あとこれは秘密の話なんだけど、”Exit Initia” の一部はアレンジの段階で “Attack on titans” “進撃の巨人” のオープニングに似すぎているという理由で変更しているんだよね」 どうぞ!!

ALTESIA “EMBRYO” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【ESOCTRILIHUM :DY’TH REQUIEM FOR THE SERPENT TELEPATH】


COVER STORY : ESOCTRILIHUM “DY’TH REQUIEM FOR THE SERPENT TELEPATH”

“It’s a Kantele, a Finnish Instrument. This Stringed Instrument Is Really Incredible, Because There Is Clearly a Mystical Character In The Frequencies Emitted By This Instrument! Actually, I Discovered The Kantele In a Very Surprising Way.”

DEMONS, DESPAIR, AND MADNESS

ESOCTRILIHUM は、今日活動しているブラックメタル・プロジェクトの中でも最も特異で、クリエイティブで、多作なプロジェクトのひとつへと急速に成長を遂げました。6枚のフルアルバムと1枚のEP を4年の間にリリースし、このフランスのワンマン・ユニットは、冷酷でありながらエモーショナルで奇々怪界なメタルの百鬼夜行を続けています。
ESOCTRILIHUM は、Asthâghul の不気味で無限とも思える野心と創造性でメタル・アンダーグラウンド内部で一手に賞賛を集めています。例えば、DIMMU BORGIR や BAL-SAGOTH のような90年代のシンフォニック・ブラックメタルの華やかなゴージャスを、生々しいローファイの攻撃で表現するような、例えば、OPETH に端を発するプログレッシブな知性を多種多様なジャンルとアーティストで細切れにして煮込んだような。そんな唯一無二の音の審美は、奇妙に魅力的なアートワークたちに吸い込まれ、リスナーの後退を許さなくします。
根底にキャッチーさとフックを常に配する Asthâghul の魅力的なリフ・スタイルは、1970年代と1980年代のクラシック・メタルから明らかにヒントを得ています。そんな謎めいたイヤーキャンディーに恐ろしく巨大なドラムとベースのインタープレイが加わり、彼のプロジェクトは堂々たるオーラと強烈な印象を纏うのです。そんな混沌とダイナミズム、 サウンドテクスチャーの申し子 Asthâghul が、はじめて買ったレコードは奇しくも OPETH の “Blackwater Park” でした。
「とても特別なアルバムで、忘れられない思い出があるよ。ある種の苦悩があり、明らかに本物の何かを反映している。子供の頃に最もよく聞いたアルバムは他には、PARADISE LOST の “One Second”, Björkの “Debut”, CATAMENIA の “Halls Of Frozen North” だろうな。この3枚は最高の思い出だよ」
一人ですべてを手がける Asthâghul。音楽制作(ミキシング、プロダクション、パフォーマンス)について最も勉強になったアルバムは何だったのでしょう?
「長年の間に直観的に学んだ技術もある。例えば、私は常に自分の無意識から何かを回収することで、自分自身の宇宙を作り出そうとしてきたからね。ただ、もし、2枚のアルバムを選ぶとしたら、GOJIRA の “The Link” と、SHAPE OF DESPAIR の”Illusion’s Play” だろうな。この2枚のアルバムは、私にとって特別なものだよ。”Illusion’s Play” にはたくさんのメランコリーと悲しみが詰まっている。このアルバムをどれだけ愛しているかを語る言葉はないけれど、全体のアトモスフィアが多くの感情を呼び起こし、その感情は永遠に私の中に刻まれることだろうね。私たちを心の奥底に連れて行き、失われた感情を呼び覚ましてくれる音楽だ。”The Link” については、この明らかに非典型的な側面が私は好きなんだ。GOJIRA は、壮大なアバンギャルド・メタル作品の中に、多くの影響をミックスしている。 非常に実験的であり、テクニカルでもあるよね。メロディーは、時に拷問のようで、時に非常に柔軟だ。 彼らは常に、パワーを失わないギターテクニックを重要視しているからね」
最近最も衝撃を受けたのは T.O.M.B. の “Fury Nocturnus” です。
「非常にパワフルな暗黒の流れを生み出しているアルバムだね。音楽を聴くという単純な事実が、非常に暗い存在を引き寄せ、呼び起こすと言ってもいい。すべての曲は、非常に謎めいていて、しかし非常に明白な何かへの頌歌となっている。私はこういった二面性がとても好きなんだ。こういった音楽が私たちの精神に与える影響を過小評価してはいけないよ。この作品はダーク・ミュージックの傑作だね。この種の傑作は、別の次元への扉を開く。マスターの波動は、複雑でユニークな魔法の音システムを作ることができる」
レビューを気にすることはあるのでしょうか?
「好きなアーティストのレビューを気にしたことはない。アルバムをとても気に入ったときは、インターネット上のネガティブなレビューを気にすることはないし、他人が私の意見を壊すこともない。LEVIATHAN の “Massive Conspiracy Against All Life” のようなアルバムだよ。私にとって、このアルバムは真の宝石で、贈り物。とにかく素晴らしいねこれほどまでに聴き込んだアルバムは他にないよ。プロダクションはこのプロジェクトのメンタリティを反映していて、すべてが本物。憎しみ、痛み、絶望があり、それらがとてもうまく混ざり合っている。このアルバムは過小評価されているね。ある曲が文脈から外れていると言う人もいるけど、私にとっては全くの誤りだね。全ての曲がまとまっていて、非常に特殊な世界に対応しているよ」

メタルを奏でる必然性についてはどう考えているのでしょうか?
「ブラックメタルとの相性については、説明するのが少し難しいんだけど、私が悪魔や密教に惹かれていたことがすべての始まりだったね。私は常に邪悪なものを好んでいたから、ブラックメタルとの出会いで、私の音楽的指向が明らかになったんだ。だけど、今日の私には異なるビジョンがあって、私の人生もこのプロジェクトを始めた頃とは異なっている。ただし、私の嗜好は常に不明瞭なものに向けられているがね。私がこの種の音楽に惹かれたのは、ごく自然なことだよ。というのも、暗闇というのは常に私が経験したい側面だったから。実際、ESOCTRILIHUM の前には、バンドで演奏したことはなかったんだけど、ファーストアルバム “Mystic Echo From A Funeral Dimension”を発表する前には、すでに多くの音楽を作っていたんだ」
様々な楽器をこなす才能は、今や現代的で DIY なブラックメタル・プロジェクトには欠かせない要素にも思えます。それでも、Asthâghul が織り込むする楽器の量は異常です。
「ESOCTRILIHUM のすべての楽器は私が担当している。最初に手にした楽器はギターだったよ。最初はギターで練習していたんだが、すぐにこの楽器との相性の良さに気づいたよ。最初の頃は、自分のアイデアすべてをタブ譜に書き込んでいたんだ。それは、いつか他の楽器をマスターして、組み合わせることができると確信していたからなんだけどね。私はいつも一人で学んでいる。誰も隣にいない方が効率的だからね。
実際、ギターを習ってすぐに、個人の音楽室でドラムを演奏する機会があり、何時間もかけてこの楽器をマスターするためのトレーニングをしたんだ。一つ一つのテクニックを学ぶことは快感で、まだ私には動揺の魔物は現れていなかったからね。ただ、当時の私は録音ソフトを持っていなかった。でも、私は心の底から “いつかプロジェクトを作る” と思っていたんだ。ヴァイオリンとカンテレに興味を持ったのは、数年後のことだよ。この2つの楽器は、音楽の別の次元を探求するために非常に特殊な周波数を探求することができる素晴らしい楽器だ。ギターを弾けるようになると、バイオリンも簡単に弾けるようになるよ。ピアノ、トランペット、オーボエ、オーケストレーションなどの残りの楽器は、MIDIキーボードで作業している。いずれにしても、それぞれの楽器の演奏方法を習得するには時間がかかったけど、新しいサウンドを追加することができて良かったよ」
世界には膨大な数のバンドが存在しています。ストリーミングの普及により山ほどの作品を聴いていると自負していても、それでも世の中にあるメタルの10%さえ私たちは耳にしていません。つまり、アーティストは熾烈な競争を勝ち抜かなければまず一聴を促すことさえままならないのです。その中で、傑出した自分のスタイルを確立することが聴いてもらうことへの近道かもしれません。今では、リスナーが夢中になり、次のリリースにも足を運んでくれる作品を提示するためには、巨大な存在感とユニークな音は必須。

ESOCTRILIHUM にとつて、”Inhüma” から “Eternity of Shaog” への道のりはまさにその巨大な存在感を身につける糸口になったはずです。よりメロディックで、ムーディーで、アトモスフェリックで、エモーショナル。”Eternity of Shaog” には嫌になるほど長いタイトルに加えて、ラヴクラフト的な宇宙、さらにメロディやリフの構造の多くに東洋的、あるいはメソポタミア的な色合いが見られます。 LEVIATHAN メンバーの手によるジンのような怪物がそびえ立つアートワークが示すように。
「古代文明では、例えばファラオの墓のように、世界に偶然開かれた扉を媒介にして、目に見えないものとコンタクトをとっていたという話をよく読むよね。クラーク・アシュトン・スミスも参考にしているんだ。彼はラヴクラフトと同様に、ある種族の秘密を知っていて、その知識を伝えるためにさまざまな形や名前を取ることにした作家さ。あとは、H.P.ブラヴァツキーの著作も参考にしているね。彼女が下層と上層の地球を理解していることは驚くべきことだよ。
意図的に東洋的なものを作ろうと思ったわけではないんだよ。”Telluric Ashes” のように、ベースにカンテレを入れたかっただけなんだけど、よくよく考えてみると、確かに東洋的な方向性を感じさせる音になっているよね。望んでいたものではないんだけど。
テーマとしては、悪魔、絶望、地球の理論、狂気、地獄の盟約など、秘密にしておくべきものから影響を受けている。これは私の考えを反映したものさ」
“Eternity of Shaog” の構成は以前と比べ、もう少し鮮明ですっきりしていて、全体的に明るく広々としているようにも見えます。冒頭の “Exh-Enî Söph” ですぐに確立されたこの雰囲気は、アルバム全体で維持され、壮大を増していきます。研磨された硬質なサウンド、以前のクランチーな雰囲気から一歩引いて、歪みのないメロディーを自由に飛び回らせて、音楽にダイナミズムとインパクトを与えているのです。
“Eternity of Shaog” にはシンフォニックな傾向が顕著に現れていて、シンフォニック・ブラックメタルというレッテルを貼るのもあながち間違いではなさそうにも思えます。 しかし、大げさでドラマチックな、ややサーカスに近いタイプではなく、むしろ1990年代後半のシンフォニック・ブラックメタルに親和性を感じます。 暖かみがあり、広がりがあり、曲の構成にはオーケストラのような雰囲気が存在。
「メロディックな部分は、私のオーケストレーションへの情熱と、ファンタジー文学作品の中のパラレルワールドへの情熱から生まれたものなんだ。昔はシンフォニックなサウンドを作ることができるいくつかのソフトウェアを使って遊んでいたんだけど、プロジェクトが進むにつれて、こういったシンフォニックな要素を自分の音楽に取り入れるようになった。謎めいているように見えるかもしれないけど、カンテレの練習はシンフォニックなサウンドを生み出すためのアプローチにおいて、私を後押ししてくれたんだ。そして、いくつかの楽器やメロディーの層を同時に組み合わせることが、シンフォニックな側面を作り出すことになった。ESOCTRILIHUME は、最初はシンフォニックなものを目指していなかったけど、時間の経過とともに状況が変わっていったんだよね」
実際、カンテレは “Eternity of Shaog” にとって不可欠な楽器となっています。
「カンテレはフィンランドの楽器なんだ。この弦楽器は本当にすごいよ。この楽器が発する周波数は、明らかに神秘的だ。実は、私がカンテレに出会ったのは、とても意外な場所だった。だからある存在に導かれて、必要に迫られて手に入れたのだと思う。ある意味、自分の考えと現実をつなぐ架け橋のようなもの。新しい楽器を手に入れなければならないことはわかっていたんだけど、どれが最初に心に届くのかはまだわかっていなかったからね。今では頻繁に使っているよ。すべての場面で使えるわけではないけど、なるべく直感的に使えるようにしているのさ」

そうしてたどり着いた約80分に及ぶ “Dy’th Requiem for the Serpent Telepath”。ESOCTRILIHUM は長いアルバムを出すことで知られていますが、最新作はこれまでの最長のレコードです。”Xuiotg” のように凶暴なブラックメタルで猛威を振るう瞬間もあれば、”Craanag” のようなアンビエントな曲も存在します。深みを増したシンセの魔法とアヴァンギャルドな哲学に窺えるのは、相互作用と実験への意欲。
“Dy’th Requiem for the Serpent Telepath” は、3曲ずつの4つのセクションで構成され、Serpent Telepath の死、変容、再生という壮大なストーリーを描いています。Serpent Telepath とは ESOCTRILIHUM が描いた恐ろしい世界に生息する強力な存在の1つ。物語は、拷問のようなイメージと精神的な闘争の間で引き裂かれる叙事詩のように展開します。幽体離脱と精神的な不安というテーマは深淵で、レコードに込められた邪悪な呪文にさらなる次元を加えています。エクストリーム・メタルと言うよりも、より正確にはエクストリーム・ミュージックでしょう。ブラック・メタルやデス・メタルのレコードであると同時に、Asthâghul は自信を持ってノイズ、アンビエント、プログレッシブ、ポスト・パンク、ゴシック・ロック、クラシカルの領域へと大胆に踏み込んでおり、曲の中で彼が選択したどの道においても、その道のプロにも匹敵する卓越した能力を発揮しているのです。この美しき混沌は一人のクリエイターが閉所で孤独に作ったものですが、その地平線は遥か彼方まで広がっています。
Asthâghul がその音の葉以上に公表していることはあまりなく、彼の音楽は彼の喚起的で異世界的なサウンド同様謎に包まれています。ブラックメタルの歴史の中には、BLUT AUS NORD のように顔を出さずに挑戦的な作品を作る特異なアーティストは少なくありません。しかし、ESOCTRILIHUM は何か異質で、まるで人間の目には見えない冥界からの超自然的な周波を発しているようにも感じられることがあるのです。そんな密教的創造に反して作品もプロジェクトもその規模を拡大していく中、ESOCTRILIHUM が他の音楽家を加えることはあるのでしょうか?
「私は最後まで一人でいるつもりだよ。正直なところ、誰も私と一緒に演奏することはできないんだ。というのも、私と他の人との間の伝達の流れを何かがブロックしていて、コラボレーションとなると全く上手くいかないんだ。私は一人でいる方が好きだよ。自分の作品をよりコントロールできるからね。それに、人脈を作ることも私にはできないんだ」

ブラックメタルは一人ですべてをこなすアーティストが多い印象です。
「ブラックメタルは、孤独や孤立と完全に調和しているスタイルだからね。なぜなら、孤立しているからこそ、自分の精神状態を完璧に反映したものを作ることができるから。それに孤立することは、目に見えないものと触れ合うための最良の方法でもある。一人で作業をしていると、アイデアが早く浮かび、必要に応じて無意識の力を借りることができるんだ。誰かのために何かをすることを強制されないという事実は、仕事をより興味深いものにしてくれるよ」
フランスは古くから、非常に革新的で先鋭的なブラックメタルを生むことで知られています。
「確かにフランスには様々なグループがあって、オカルト的なテーマを有しているよね。でも ESOCTRILIHUM は誰とも関係していまないんだ。なぜなら、私はコラボレーションを完全に拒否してこのプロジェクトを作ったから。この音楽を作るには一人でなければならないし、正直なところ一緒に音楽を作れる人を知らないんだ。つまり、すべては私の “創造したい” という一心から始まったと考えていいだろうね」
それにしても短期間であまりに膨大なリリースです。創造性は尽きないのでしょうか?
「自分の音楽的な衝動を信じ、その衝動が現れたときに仕事をしているだけなんだ。すべてを同時にリリースすることだって可能だけど、それは賢明ではないよね。私の中にはまだ充分情熱があるので、活動的であり続けていられる。精神が求めるときに、すぐに選ばれた楽器を演奏して自分自身の内面を映し出さなければならない。音楽的な衝動が頻繁に現れることもあれば、何も起こらずに長く待たされることもある。これは非常に暗いテーマだよ。なぜなら、私は物事の進展を説明できないことがあるから。ESOCTRILIHUM を管理することは苦しみであり、苦悩でもあるから、いつかは終止符を打たなければならないと思っている。私はすでにすべてをプログラムしているんだよ」

参考文献: METAL STORM: ESOCTRILIHUM INTERVIEW

THE WAR INSIDE MY HEAD: INTERVIEW ESOCTRILIHUM

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