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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JYOCHO : 美しい終末サイクル (THE BEAUTIFUL CYCLE OF TERMINAL)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAIJIRO NAKAGAWA OF JYOCHO !!

“We Are Influenced By Cycle Or Rule What We Can Not Perceive In Our Daily Life. Off Course, Individuals, As Well As Society, The Country, And The Earth, The Universe Are Both Influenced By One Law And Cycle.”

DISC REVIEW “美しい終末サイクル”

「サイクルという、法則という、我々では感知できない様なものに普段生きていると左右されています。個人は勿論、社会や国もそうだし、この地球も、この宇宙も、一つの法則やサイクルによって左右されています。この時代になり、それをわたしたちで哲学し検証する必要性が更に増して来たと感じました。 “美しい終末サイクル” は、わたしの哲学となり得るものです。」
生と死、光と陰、始まりと終わり、複雑とポップ、オーガニックとメカニカル。情緒という “いのち” を紡ぎ続けるギタリスト、だいじろーと JYOCHO の導く螺旋のサイクルは、森羅万象の両極を紐解く美しのメッセージです。
“祈りでは届かない距離”、”碧い家で僕ら暮らす”、そして “互いの宇宙”。これまで2枚のミニアルバムと1枚の EP をリリースして来た現代社会の語り部 JYOCHO。
渾淆するプログレッシブ、マスロック、ポストロック、ポップの仮初めの営みを、まるで心理学と幾何学の両極から検証し哲学するような絶佳のサウンドスケープには深い説得力とエモーションの煌めきが備わっています。
そして、様々なコントラストが彩った彼らのファーストサークルは、初のフルアルバム “美しい終末サイクル” で完結と共に新たな螺旋を描き始めるのです。
音楽的にも、確かにこの作品は終着と出発のレコードです。始まりのミニアルバム “祈りでは届かない距離” 収録の “family”, “太陽と暮してきた” を、成熟と団結深めた現行メンバーで試みた再録はその象徴かも知れませんね。
「五人の温度感や揺らぎが確実に音源として落とし込まれた瞬間だと確信しています。」インタビューでだいじろーも語るように、揺らぎ、テンションといった耳よりも心に聴こえる響きとグルーヴは、”バンド” への移行と共に明らかにその鮮やかさを増しています。
もちろん、”安い命”、”碧い家” と密に繋がる “つづくいのち” もこれまでの集大成と言えるのかも知れませんね。降り注ぐ多幸感と幽かな寂寞。フルートやアコースティックギターの膨よかなチェンバーオーケストラは、テクニックもエモーションもすっかり飲み込みロックのグルーヴとダイナミズムを濃密に体現するのです。
一方で、エモと激情がスパークする “Aporia”、自らのギターホライズンを心ゆくまで再び掘り下げる “sugoi kawaii JYOCHO”、内省的でダークな実験部屋 “my room”, “my rule” といったエクレクティックな新機軸、出発の息吹は、さながらリスナーが螺旋階段を下るうち次々遭遇する魅惑の扉。開くたびに知の好奇心と感情をくすぐる未知との遭遇は、どこまでも続くようにも思えます。
しかしこの終末サイクルにも終わりは訪れます。哲学するアルバムを締めくくる、”こわかった” の抱える恐怖は現代社会が抱える闇の部分とも重なります。
張り巡らされたインターネット、SNS の糸は感情までも追体験可能な世界を構築しつつあります。感動、興奮、喜び、悲しみまで、全てのハードルが下がってしまった現代で、JYOCHO が見せる景色、紡ぐ音楽は異質でしかしきっとセラピーのように安らかに世界へと浸透していくはずです。
今回弊誌では、だいじろーさんにインタビューを行うことが出来ました。「是非たくさんの人に、JYOCHOという素晴らしい “いのち” が届き、心に浸透してくれることを祈っております。」12/7には Ichika 率いる Ichikoro とのツーマン、そして来年はワンマンツアーも控えています。3度目の登場。どうぞ!!

JYOCHO “美しい終末サイクル” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SARAH LONGFIELD : DISPARITY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SARAH LONGFIELD !!

“I’m Just So Happy To See It Getting Normalized. I Remember Starting Out There Were No Women On YouTube Or The Guitar Community, Which Was Always Disheartening.”

DISC REVIEW “DISPARITY”

Fender が行った調査によると、近年新たにギターを始める人の半数が女性であるそうです。その傾向を裏付けるように、Yvette Young, Nita Strauss, Orianthi Panagaris などテクニカルなロックやメタルの世界においてもギターヒロインの存在感、輝きは増す一方だと言えるでしょう。
Sarah Longfield。仄暗く凍える湖と森を抱くアメリカ中西部の最北、ウィスコンシンから登場した25歳の美姫は、さながらギターシーンのジャンヌダルクなのかも知れませんね。
2016年、Guitar World 誌による “世界最高の7弦、8弦ギタープレイヤー15人” の中に選された革新のハイテクニックビューティーは、驚くべきことにチャンネル登録者数20万を超える人気 YouTuber でもあるのです。(Rob Scallon とのコラボレートの数々は秀逸)
「マルチなプラットフォームを築き、ミュージックコミュニティーの様々な側面で名前が売れることは、素晴らしいプロモーションにもなって来たのよ。」と Sarah が語るように、ソロ活動、バンド THE FINE CONSTANT、そして YouTube と新世代らしく現代的なプラットフォームを意欲的に活用することで、彼女は Season of Mist との契約を手にすることになりました。
インタビューで、「私はまずピアノを8歳の時に始めて、それからヴァイオリンを10歳の時に始めたの。遂にギターを手にしたのは12歳の時だったわね。」と語るようにその音楽的素養は実に深くそして多様。弊誌に何度か登場している Yvette Young が似たようなバックグラウンドを持つことも興味深いシンクロニシティーではないでしょうか。
魔女か英雄か。さらにはチェロ、パーカッションまで嗜む才女のエクレクティックな素養とオープンマインドは、メタルの様式、伝統、アグレッションを地図にない未踏の領域へと導くのです。
「最新作は実際、前作とは全く異なるアルバムになったわね。焦点がよりオーガニックなマテリアルにシフトされ、私の持つ様々な影響を探求することが出来るようになったのよ。」 と語る Sarah。つまり、不均衡や差異を意味するタイトルを冠した最新作 “Disparity” は、遂に彼女本来の魅力を余す事なく伝えるマイルストーンに仕上がったと言えるはずです。
人生で初めて手にしたピアノの響きをイントロダクションに、幽玄荘厳、夢見がちでアトモスフェリックな独特の世界はその幕を開けます。”Embracing Solace”。慰めを抱擁する。プログレッシブなデザインからエレクトロニカの実験にジャズの恍惚まで、全てをシームレスに、壮麗優美に、そして時に幽冥に奏でるサウンドスケープは実にユニークかつ濃密。
Kate Bush を想起させる嫋やかな Sarah 自身のボーカルとエモーションを増したギター捌きの相性も極上。自らの音楽旅行を通して経験した光と影はこうして楽曲、作品へと見事に投影されて行きます。
ANIMALS AS LEADERS のショウを見た翌日に書かれたという、ヘヴィーでマスマティカルなデジタルのルーツを探求する “Cataclysm” が Tech-metal、ギターナードの心を激しく打つ一方で、”Departure” のオリエンタルな情緒や “Citrine” のオーガニックなポストロックの音景、”Miro” のアヴァンギャルドなジャズ精神は、二胡やハープ、サクスフォンの導入も相俟って、リスナーをカラフルで刺激的な非日常の絶景へと誘うのです。
今回弊誌では、Sarah Longfield にインタビューを行うことが出来ました。「私は女の子がギターをプレイすることがいたって普通な世の中になってただ本当に嬉しいのよ。」ウィスコンシンの乙女は果たして高潔か異端か。それは歴史が語るでしょう。どうぞ!!

SARAH LONGFIELD “DISPARITY” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TTNG : ANIMALS ACOUSTIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TIM COLLIS OF TTNG !!

“The Animals Themselves Are Really Totally Abstract And Don’t Have Any Immediate Connection The Song’s Lyrics Or Sentiments. At The Time They Were Simply Place-holders.”

DISC REVIEW “ANIMALS ACOUSTIC”

オックスフォードに端を発するマスとエモの交差点は、英国と米国のサウンドスケープを統べる大動脈へと連なります。
TTNG。かつて THIS TOWN NEEDS GUNS を号していたヤングガンズの名を一躍知らしめたのは、多種多様な動物の姿をタイトルとアートワークに投影したデビューフル “Animals” でした。
確かにインタビューでバンドのマスターマインド Tim Collis は 「アルバムに登場する動物それ自体は、本当に、完全に抽象的な存在で、実は楽曲の歌詞や感情と直結するものではなかったんだよ。」と明かしてくれました。つまり、楽曲に授けられた動物の名前は、製作時に必要だった仮タイトル以上の存在でも以下の存在でもなかった訳です。
しかしながら、クロコダイルやシマウマ、パンダにマントヒヒが跋扈し、あの色彩豊かで五感を呼び覚ますアートワークの美福は、 TTNG のエクレクティックな音楽世界を図らずも象徴していたのかも知れませんね。
同郷同世代の FOALS は常に比較対象の的でしたが、BATTLES や日本の toe にも比肩される精密華麗な演奏技術は明らかに TTNG を際立った存在へと昇華していました。ただし、手数の多いハイテクニック、変幻自在のタイム感といったマスロックを源流とする鮮やかな音景は TTNG という大自然の一部分に過ぎません。
オックスフォードの偉大な先人 RADIOHEAD、さらには THE SMITH といった誇り高き霧雨の情緒は英国の血統を。一方で、Stu Smith の儚くも感傷的な歌声に溶け合う開拓者の実験性とアンビエンスは、OWLS, AMERICAN FOOTBALL, さらには MINUS THE BEAR といった Kinsella 兄弟に端を発する USエモ/インディーの景観をもリスナーへと届けるのですから。
以降、Stu の脱退、ベース/ボーカルの Henry Tremain を加えたトリオでのリスタート、THIS TOWN NEEDS GUNS から TTNG への改名、香港 Hidden Agenda での災難など激動のディケイドをくぐり抜けた彼らは、そうしてまるでバンドの第一章を総括するかのごとく “Animals” の記念すべき10周年を特別な形で祝うことに決めたのです。
トピックは3つ。まずは全編にアコースティックアレンジを施し再録することで、例えば叙情極まる “Lemur”, “Badger”, “Dog” のように躍動感に霞んでいた楽曲の本質が生々しく浮き上がり、ギタリスト Tim の円熟をも鮮明に伝えています。そしてよりソフトに、より理知的に再構築された音楽のジャングルは、”Elk” で顕著なように、ストリングスやトランペット、ハープにダブルベース、シロフォンにハンドドラムまで色とりどりのアコースティックな響きを誘うオーケストラへと進化を遂げたのです。
Stu Smith の帰還も特別な出来事でしょう。「明らかに Stu は “Animals” において大きな部分を担っていたね。だから僕たちはこの作品の楽曲で彼をフィーチャーしたかったんだ。」の言葉は真実です。より艶を増したように感じられるセンターラインの復帰は、期間限定とはいえバンドのエナジーにハイオクのインパクトをもたらしました。
そして、自由を与えられた AMERICAN FOOTBALL などで活躍する Nate Kinsella, COVET のクイーン Yvette Young, KRAKEN QUARTET のゲスト陣はノスタルジアに彩られた楽曲群に新たな生命を宿します。Tim はインタビューで何度も “リスナーが楽しめる” スペシャルワンを提供したかったと語っています。そしてその優しさは間違いなくサウンドスケープとなってレコードを循環しているのです。
「バンド名は元々、ジョークみたいなものだったんだよ。UKにはほとんど銃が存在しないんだ。警察官さえ所持していないほどでね。だから銃が必要だという笑いにしてみたんだけど、決してネガティヴな意味を込めた訳ではないんだよ。けれども、ほとんどの人間は勿論、銃とそれがもたらす暴力の可能性に反対だし、バンド名がそういった不名誉なスティグマを背負うことは避けたかったのさ。当然、明らかにジョークだし、シリアスに取られるべきことではないけどね。」と改名の理由を語ってくれた前回のインタビューもぜひ。Tim Collis です。どうぞ!!

TTNG “ANIMALS ACOUSTIC” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ROLO TOMASSI : TIME WILL DIE AND LOVE WILL BURY IT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAMES SPENCE OF ROLO TOMASSI !!

“There Has Always Been a Fit Balance The Dark And The Light In Both Our Music And Lyrical Themes. I Still Think There Is Darkness Within “Time Will Die and Love Will Bury It” But The Light Is Definitely Winning.”

DISC REVIEW “TIME WILL DIE AND LOVE WILL BURY IT”

シェフィールドのジキルとハイド。光彩と陰影を司る、世界で最も拡張的で多様なエクストリームイノベーター ROLO TOMASSI が遂に到達するダイナミズムの極地。
最新作 “Time Will Die and Love Will Bury It” はさながらピンボールのように、崇高と混沌の狭間を行き来しながらプログレッシブマスコアのフロントローを奪取します。
デビュー作 “Hysterics” から10年。バンドは常に再創造、再発明によるコアサウンドの “羽化” を続けながら、気高き深化を遂げて来ました。シンセ-レイドゥンのデジタルなマスコアサウンドから旅立つ分岐点、ターニングポイントとなったのは前作 “Grievances” だったのかもしれませんね。
アグレッションやマスマティカルな理念はそのままに、より有機的でアトモスフェリックな方法論、パッセージを導入したアルバムは、仄暗い暗澹たる深海に息継ぎや空間の美学を投影したユニークかつ思慮深き名品に仕上がったのです。
事実、バンドのトレードマークであったビビッドに拡がるシンセの響きでさえ、大部分が物憂げなピアノとストリングスの音景へそのポジションを譲渡していたのですから、実にドラスティックな革新だったと言えるでしょう。
“Time Will Die and Love Will Bury It” はその新風を追い風に、常にバンドに息衝く変化への渇望をより鮮明に表層化した作品です。
そして同時に、「確かに “Grievances” は罪と後悔にフォーカスしたとてもダークでモノクロームなレコードだったよね。そして僕はあのレコードで書いた全てのものを克服したかったんだよ。」と James が語る通り、不満と後悔に決別を告げるリスタートの表明でもあるのです。
“Grievances” の宵闇を洗い流す、セレスティアルでアンビエントなイントロダクション “Towards Dawn” でレコードの風向きを仄めかした後、バンドは “Aftermath” で耀きポストロックのドリームスケープを暁に捧げて作品の針路を決定づけます。
時に悪魔にも豹変する Eva Spence のスイートサイド、エセリアルに漂う歌声は実際、奔放かつ痛烈なマスコアにシューゲイズやエモ、インディーロックを渾融する彼らの新たなレジスタンスを想像以上に後押ししていますね。神々しきシンセサウンドが重厚に押し寄せる光のイルミネーション “A Flood of Light” はポストブラックとバンドの実験性が波打つ新機軸のシンボルと言えるかも知れませんね。
一方で、光は闇により際立ちます。ブラッケンドなビートにハードコアの激情、さらにドゥーミーな不穏を宿す “Ritual”、エレガントな幻想と無慈悲な悪夢が抱擁する “The Hollow Hour” などエクストリームミュージックの暗い場所から抽出したテクスチャーはより鮮明に、ダイナミックにレコードの光輝を映し出すこととなったのです。
アルバム各所に散りばめられたメランコリックなピアノとコーラスも、コントラストの魔法を際立たせ、ダイナミズムの終着点 “Balancing the Dark” では複雑な時間操作とジャズの魅力で、文字通り危うく絶妙なバランスポイントを提示するのです。
アルバムは “Risen” で Eva の嫋やかな歌声により、優しき静謐を抱きしめながら緩やかに埋葬されます。エンジェリックなソプラノボイスは “時のレクイエム” の中で、再度 UK で最もエクレクティックなバンドの遥かなる円熟を見せつけながら虚空へと消え去って行きました。
今回弊誌では、コンポーザーでキーボードプレイヤー、時に妹 Eva とパワフルなデュエットを聴かせる James Spence にインタビューを行うことが出来ました。「MOL や CONJURER といったバンドはモダンメタルの最前線にいるよ。」確かに今年はエクレクティックを掲げる Holy Roar Records の年と言えるかも知れませんね。二度目の登場です。とうぞ!!

ROLO TOMASSI “TIME WILL DIE AND LOVE WILL BURY IT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JYOCHO : 互いの宇宙 (A PARALLEL UNIVERSE)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAIJIRO OF JYOCHO !!

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Japanese Math/Post-Rock Icon, Daijiro Of Jyocho Has Just Released The Most Imaginative, Delicate, and Emotional Record To Date “A Parallel Universe” !!

DISC REVIEW “互いの宇宙”

「JYOCHO は自由な存在です。聞きたい時、あなたが必要な時に聞いてください。」 もはや宇宙コンビニの看板は不要でしょう。日本随一のギターシェフ、だいじろー氏が京都から世界へ和の “情緒” を伝える集合体 JYOCHO。アニメ “伊藤潤二『コレクション』” のエンディングテーマを含む “互いの宇宙 e.p” には、”鮮度” を何よりも愛おしむ料音人の拘りと力量が思うままに詰め込まれています。
デビュー作 “祈りでは届かない距離” から程なくして届けられた前作 “碧い家で僕ら暮らす” には、確かな変化と進化の証が封じ込められていました。童話やお伽噺、夢のある空想の物語から、よりリアルで自然体な世界観へとシフトした作品は、”碧い家” すなわち地球に暮らす私たちの刹那性とそれでも守るべきものについて、住人たちへナチュラルに寄り添い対話をはかります。
rionos から猫田ねたこに引き継がれたボーカルは変化の象徴かも知れませんね。「少年ぽい質感の声が好み」 とだいじろー氏が語るように2人の声質は共に中性的なイメージを特徴とします。ただし、rionos のドリーミーで凛とした歌唱に対して、猫田ねたこの紡ぐ歌は時に繊細で危うい印象を与えます。”悪いベクトルで良すぎない” 彼女の持つ不安定な人間らしさは JYOCHO の定めた新たな方向性とリンクしながら心地よい感情の揺らぎをリスナーへと届けるのです。
現実の大地へと降り立った JYOCHO にはその楽曲にも変化が訪れました。”情緒”、日本的な侘び寂びと歌心により焦点を定めたのは、大海へと漕ぎ出す彼らにとっては必然だったのでしょう。もちろん、トレードマークの数学的なリズムやテクニカルなフレーズは変わらず存在していますが、より自然でオーガニックに楽曲の一部として溶け込んだ目眩くプログレッシブな要素は、バンドの一体感と共に楽曲第一主義の立場を鮮明に知らしめているのです。
“互いの宇宙 e.p.” にはさらに鮮度を増した JYOCHO の今が込められています。
だいじろー氏と伊藤潤二氏、2人の宇宙を昇華する試みは、謀らずしも “互い” の意味を深く掘り下げることへと繋がりました。全てが “互い” で成り立つ宇宙。マクロの視点で世界を俯瞰した結果、だいじろー氏が感じたものはミクロの自分自身と孤独、寂寞でした。
その感情が見事に反映されたタイトルトラック “互いの宇宙”。繊細なドラムワークと美麗なアトモスフィアは斯くも見事に複雑なリズムを隠し通し、ピアノのアンビエンスとだいじろー氏の豊かなオブリガートは、桜の花びらの如く徐々に楽曲を淡く色付け、咲き誇り、そして儚く散るのです。猫田ねたこが強弱やシンコペーションで生み出すメロディーのバリエーションも全てはキャッチーなサウンドスケープのために広がる宇宙の一部分。
特にだいじろー氏の有機的なギターは狭義のマスロックから飛び出して、お気に入りにも挙げている Vahagni のフラメンコやジャズ、現代音楽まで包括したさらなる高みへと達しているように感じます。
もしかしたら、ここに収録された4つの楽曲はそのまま春夏秋冬を、”情緒” を表現しているのかもしれませんね。受け取り方は自由です。確かに言えるのは、”互いの宇宙 e.p.” は円環であるという事実でしょう。「一つのテーマから派生させて、また一つに帰還させるという方法をとりました。」 とだいじろー氏が語るように、作品には共通して流れる歌詞やメロディーが存在します。
寂寞と微かな希望を内包した “互いの宇宙” を起点に、フルートの躍動感を陽の光に重ねた壮大な JYOCHO 流ポストロック “pure circle”, 郷愁のマスエモ絵巻 “ユークリッド”、そしてアコースティックの響きが胸に迫る “互いの定義” まで、印象的な一つのテーマが千々に形を変え純粋な円環を流動する様はまさしく圧巻です。見方を変えれば、この EP 自体が18分の巨大なエピックと言えるのかも知れませんね。
相変わらずだいじろー氏は感覚でした。ただし、その瞬間の積み重ねは、悠久にも思える音楽との対話、思考の末に生まれた唯一無二の感覚なのです。彼がこの作品に落とし込んだ孤独や寂寞は、もしかしたら “互い” を感じる対象が究極的には音楽だけだからなのかも知れません。
今回弊誌では、だいじろー氏にインタビューを行うことが出来ました。「JYOCHOは、触れた人によって形を変える仕組みを持たせています。」 SNSにアップされる演奏動画も、楽曲へ繋がることがあり見逃せませんね。どうぞ!!

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JYOCHO “互いの宇宙” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【People In The Box : Kodomo Rengou】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HIROFUMI HATANO OF People In The Box !!

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Tokyo Based Incredible Progressive-Pop Trio, People In The Box Celebrates Their Tenth Anniversary With Definitely Milestone, “Kodomo Rengou”! Innocence And Technique Melt Together Here!

DISC REVIEW “KODOMO RENGOU”

純粋で綿密な音楽への奉仕者、箱の中の三銃士 People In The Box が、自らの10周年に刻む最高到達点 “Kodomo Rengou” をリリースしました!!”計画的” な長期のインターバルを経て、楽曲のデザイン、個性がより際立った作品は、孤高のバンドに相応しき孤高の完成度を誇ります。
「自分の表現したいデザインと、世間が求める快楽というのは、僕の中で決して対立してはいないんです。」 インタビューで波多野氏はそう語ってくれました。あの先鋭的な残響レコードに置いて、日本が誇るポストロック、マスロック、プログレッシブの理想的なブレンドと目された瑞々しい才能は、近年そういった “形式” とは距離を置き “外の影響を取り入れたりすることもなく、メンバー3人の感性の広がりだけで” 文字通り “箱の中” から作品を届けています。
「TM Networkが好きだった “子供時代” と地続きの感性でやっている」 という言葉は “子供連合” を紐解く上で重要なヒントなのかも知れませんね。実際、このアルバムがある種難解で哲学的なバンドのイメージに反して、シンプルなデザインと無垢なる想望から成る天真爛漫な “報いの一日” で幕を開ける事実は象徴的です。
口ずさむキャッチーなハミングも、イノセントで牧歌的なメロディーも、飛び出す絵本のように立体的なギターサウンドも、晴れた冬の日を想わせる優しいシンセサイザーの波動も、全ては楽曲の求めに応じた確かな必然としてそこに存在しています。
そして、楽曲を通してジグソーパズルが組み上がって行くようなこのナチュラルな感覚は、”追求した結果がシンプルで率直な表現に帰結することがあっても自然なこと” と語る波多野氏の言葉をしっかりと裏付けているように思えます。TM Network の名作 “Carol” が緻密で精巧な建造物でありながら、同時に一切無駄の無い完璧にポップなレコードであったことを思い出すリスナーも多いでしょう。
同時に、「リスナーとしては若い頃から、かなり貪欲に聴いていた方だと思います。メタル、プログレッシヴロック、クラシック、エレクトロニックミュージック、ジャズ、民族音楽、ニューウェーブ・・・。」 と語るように、”Kodomo Rengou” は波多野氏とバンドの子供時代から連なる多様な感性を一つ一つ丁寧に育み、惜しげも無く “今” へと昇華したカラフルなポートレートでもあります。
“無限会社” や “泥棒” といった新機軸にも思えるダークでプログレッシブな楽曲から、マスロックのエナジーをポップの領域に組み込んだ “世界陸上”、近年意欲的に取り入れている鍵盤の響きにただ身を委ねるジャズワルツ “あのひとのいうことには”、ミニマリズムの極地 “デヴィルズ&モンキーズ” まで、綿密に練り上げられた多様な楽曲の数々は、すっかりその姿を異にする形式や構成にも関わらず、音に宿った “気概や純度” 、感覚の温度において奇跡の整合性を見せるのです。
勿論、歌詞の面でも波多野氏のクリエイティビティは冴え渡ります。”町A” や “デヴィルズ&モンキーズ” は象徴的ですが、一見無機質に思える単語の羅列やキャッチーな造語の使用が驚くほどの中毒性を創出し、結果として朧気に楽曲のイメージや意味合いをリスナーに印象づけるのですから、「結果的に他人の人生に踏み込んでしまうというくらいの作品を作る気概と覚悟を持ちたいとは思っています。」 という波多野氏の宮大工や鍛治職人の域にも達した拘りと情念の発言にも深く頷けますね。
とは言え勿論、メンバー各自の卓越した技巧そのものにも言及しない訳には行きません。波多野氏が “泥棒” でメセニーよろしくホーンのサウンドをギターで代弁すれば、”町A”で 福井氏はハイフレットや和音を駆使して極上のベースグルーヴを精製します。そして何より、偽装変拍子の海、ポリリズムのトリックの中をかき分け進み、バンドの推進力となる山口氏のドラム捌きは驚異的です。
そうして作品は、”かみさま” に収束して行きます。空間の魔術、静と動のコントラストを完全に支配したバンドは、Spitz をも脅かす甘く切ないメロディーを伴ってリスナーの心をイノセントに溶かすのです。
“これから起こることぜんぶ 息が止まるくらい美しい ひとはそれを 狂気というけど ねぇ、きみはほんとうに知ってた? ねぇ、きみはほんとうに知ってた? この完璧ではない世界で 人生って一度しかないこと”
狂気を狂気とも思わない純粋さでバンドは、ひとが人生で到達すべき本当の場所、見るべき景色を仄めかして見せました。少なくとも “このバンドのいうことには” もしくは奏でる音には信頼が置けると強く感じたインタビュー。ボーカル、ギタリスト、コンポーザー。波多野裕文です。どうぞ!!

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People In The Box “Kodomo Rengou” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHON : HOMEY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERICK HANSEL OF CHON !!

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California Based, Incredible Jazz-Math Rock Trio, Chon Advance Into New Realm With The Masterpiece “Homey” !!

DISC REVIEW “HOMEY”

インストゥルメンタルミュージックの未来を切り開く時代の寵児。サンディエゴのジャズ/マスロックトリオ CHON が、シーンの輿望を担う最新作 “Homey” をリリースしました!!バンドの “ホーミー” である南カリフォルニアの太陽、空気、夏の匂いを一身に浴び、望外なまでにチルアウトしたレコードは、ジャンルに海風という新風を吹き込んでいます。
CHON が2015年にリリースしたファーストフルレングス、 “Grow” はバンドのユニークな才能や感受性を見せつける素晴らしきショーケースとなりました。ソフトでカラフルなコードワーク、デリケートでピクチャレスクなリードプレイ、ダイナミックに研ぎ澄まされたバンドサウンド。高度な知性と屈託のない無邪気さが同居する、オーガニックかつテクニカルなその世界観はまさしく唯一無二で、スメリアンの秘蔵っ子から一躍シーンのサウンドアイコンへと飛躍を果たすことになったのです。
バンドのホームタウン、カリフォルニアにインスパイアされ制作された最新作 “Homey” は、”Grow” で見せた圧倒的な光彩はそのままに、その鋭敏な感性が掴まえたエレクトロニカ、アンビエント、ハウスなど所謂チル系のトレンドを大胆に咀嚼し、トロピカルで新鮮なムードとテクニカルなマスロックを共存させることに成功していますね。
アルバムオープナー、”Sleepy Tea” は、インタビューにもあるように、驚異的なまでに進化した CHON のインストゥルメンタルワークを堪能出来る楽曲です。猫の目のように変化する細やかなリズムアプローチは、Mario と Erick のギターチームがダンスを踊る最高の舞台。時に奔放に、時に精巧に、極上のメロディーとエキサイトメントを運ぶニ人の複雑で甘い関係は、奇跡の距離感で音のユーフォリアを紡いで行きます。
CHON の豊潤なる味わい深さの一端は、モダンの中に見せるオールドスクールな部分かも知れません。特に今作では、フュージョンと言うよりもビバップやモダンジャズのスウィング、ツーファイブ、フォービート、フレージング、シンコペーションが丹念に織り込まれており、得も言われぬコントラストを創出しています。例えば、”Checkpoint” などはマスロックの顔をしたジャズスタンダードのナンバーだと言えるかも知れませんね。
当然、手数とグルーヴを両立させた Nathan Camarena のドラム捌きも卓越しており、突っこみ気味でバンドを牽引するそのエナジーは圧倒的。ゲストに迎えた Brian Evans のパーカッション、有機的でムーヴアラウンドな Anthony Crawford のベースラインとも相俟って、型破りでマスロックの可能性を再定義するようなデザインをアルバムを通して描いていますね。
同じくサンディエゴを拠点に活躍する、ビートメーカー/ジャズギタリスト Go Yama をフィーチャーした “Berry Streets” は CHON の新たな冒険を象徴する楽曲です。現在進行形のトレンドであるトロピカルハウスを主軸としたトラックは、あまりにノスタルジックでアンビエント。カリフォルニアのビーチで沈みゆく夕日を惜しみつつ聴くために作られたかのような至高のチルウェイブに仕上がっています。
同時に CHON のジャジーなインストゥルメンタルワークも効果的に挿入されており、Erick がインタビューで語ってくれた通り、結果として二つのジャンル、二つの才能が見事に融合し開花した独創的で至妙な世界観を構築することに成功しているのです。
新進気鋭の シンガー/サックス奏者 Masego を起用した “Nayhoo” もコラボレートの成果が際立って実を結んだ一曲です。ソウル/エレクトロジャズの領域へと踏み込んだ楽曲は、Masego のエモーショナルなボーカルを芯柱とし、匂い立つような色気、スイートな瞬間をアルバムへもたらしていますね。勿論、Thundercat や、FLYING LOTUS がフェイバリットに挙がっている事実を知るまでもなく、ここで彼らが、Jazz の領域を拡大する Robert Glasper と “Jazz The New Chapter” のフロンティア精神を意識したことは明らかです。
「自分たちが気に入るサウンドの楽曲を書き続けて、叶うならファンも僕たちの音楽を好きになり続けてくれることだね。その過程で、さらに新たなファンも開拓出来たら良いな。」
世界最高峰のエレクトロポップを創造するビートメーカー、Giraffage A.K.A. Charlie Yin との共演にも言えますが、既存のファン層からある程度の反発を見越しても、より幅広いマスリスナーへとアピールし、音楽的なチャレンジを続けることこそがバンドのゴールだと Erick は認めています。そして CHON の掲げる、その本来の意味でのロックスピリットは必ず報われるべきだと感じました。
今回弊誌では、ギタリストの一人 Erick Hansel にインタビューを行うことが出来ました。もし、”Homey” のムードやスピリットが気に入ったなら、Jakub Zytecki の最新ソロEP “Feather Bed” や、先日弊誌でも特集を組んだ ichika の新プロジェクト AMONG THE SLEEP へと歩みを進めてみるのも一興です。どうぞ!!

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CHON “HOMEY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【tfvsjs : 在 zoi】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADONIAN CHAN OF tfvsjs !!

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The Innovative Math/Post Rock Act From Hong Kong, tfvsjs Has Released “Math Rock With A Canton Twist” Record “在 zoi” !!

DISC REVIEW “在 zoi”

頽廃と精神、暗澹と光明のコントラストを司る、香港のマスロック/ポストロックイノベーター tfvsjs が豊かな可能性に満ちた新作 “在 zoi” をリリースしました!!圧倒的なダイナミズムと多様性を備えたアルバムは、White Noise Records というキーワードともリンクしてアジア圏インストゥルメンタルの目を見張る進歩を証明する1枚となるでしょう。
複雑で予想不可能、しかし美しく感情豊かなピースを創造する tfvsjs が素晴らしきデビュー作 “equal unequals to equal” の後提示したのは、よりダークでヘヴィーな世界観でした。Adonian はその理由について 「僕たちがここ何年か香港で経験したことをどうしても反映しているからだと思うんだよ。政治は毎日僕たちの心を混乱させ、日常生活にも強く影響するんだ。そんな重荷を抱えた状況で作られた訳だから、音楽が僕たちの捌け口となった面は否めないと思うんだ。」 と語ります。
TTNG, Mylets のメンバーが香港のライブハウス Hidden Agenda で、不法就労の疑いにより警察に身柄を拘束された5月の事件をご記憶の方も多いでしょう。一見、ビザの申請を行う行わないという単純な話にも見えますが、実はこの事件こそ香港の闇を反映し象徴しているのです。
香港では、音楽の興行は商業地帯でしか認められていません。しかし商業地帯の非常に高価な賃料のせいで、ライブハウスを経営することは現実的ではないのです。Hidden Agenda はしかしながら、インディペンデントなアーティストを応援したいという情熱によって、賃料の安い “グレーゾーン” 工業地帯で幾度も場所や手法を変えながら何とか営業を続けて来たライブハウスでした。グレーなやり方のために当局からは目をつけられ、ビザの申請も難しいという背景が存在したようですね。
勿論、国によって文化や法律は異なるため、正義を単純に定義することは出来ません。ただ、才能溢れるインディペンデントなアーティストが演奏する場所を奪われていることは確かで、日本にとっても単なる対岸の火事とは思えません。何より、「自由と多様性の国際都市である香港は、クリエイティブなパフォーマンスと作品がもっと繁栄していく機会を創るべきだね。」 という TTNG, Mylets のコメントが全てを語っている気がします。
tfvsjs の言う “ここ何年か香港で経験したこと” は実は Hidden Agenda のケースとシンクロしています。彼らもまた工業地帯で、音楽活動を続けるために機材を持ち込んだスタジオ型のレストラン tfvsjs.syut をオープンさせていました。非常に人気のあったその場所は、しかし当局の立ち退き命令により昨年閉店を迎えてしまいます。
確かに違法性を宿すグレーゾーンでの出来事。ただ、アイコニックな表現者を的とした一連の強硬な流れには、一国二制度の下で保たれている香港の政治的、文化的な自治性の揺らぎを感じざるを得ません。「政治的にも文化的にも中国というより香港のバンド」 と語る彼らのアイデンティティーが保たれることを望むばかりです。
そういった経緯を念頭に置けば、tfvsjs の新たなレコードが、ダークでインテンス、そしてノイジーでドゥーミーなムードを加えたことにも納得が行くはずです。無音とノイズのコンビネーションで幕を開けるアルバムオープナー “Burn all flags,” は実際、頽廃と精神性を隠喩しているようにも思えます。
勿論、もとより一つのジャンルに収まるバンドではありません。2005年に結成された tfvsjs は、以前ボーカルやトランペッターまでをも擁していました。インタビューで hip hop をよく聴いていると語ってくれた通り、メンバー各自の多様な音楽的素養は、窮屈な政治の下でも型にハマらない自由な創作活動を可能としているのです。
何よりトレードマークとも言えるツインドラムスが生み出すダイナミズムは圧巻の一言。ツインギターとツインドラムスによるコール&レスポンスは、複雑な展開でも、シンプルなビートにおいてもまるで二つのバンドが共演しているかのようなエキサイトメントをリスナーへと届けます。爽涼なマスロックと轟音のドゥームゲイズを同時に梱包したかのような “and paint our pupils with ashes” はまさにその象徴だと言えますね。
7th や9th のテンションノートをメカニカルな五線譜へ巧みに配置した “Shrine of our despair”、YES の “燃える朝焼け” をイメージさせるスリリングでプログレッシブな “Battle From The Bottom”、ポストロックとアジアの悠久が見事に調和する “無以名状” を経てたどり着く “滅曲” は間違いなくアルバムのハイライト。
フラストレーションの捌け口となった楽曲で、ブラックゲイズのトレモロは慟哭を、マスロックの暖かなメロディーは光明を代弁し、極上のコントラストはまるで闇夜に浮かび上がる月華の如くリスナーの心を動かします。
日本のマスロックレジェンド toe の美濃氏がミキシングとマスタリングを手がけたことで、サウンドも丹念に磨きあげられ間違いなく作品の充実へと繋がっていますね。
今回弊誌では、ギタリストでコンポーザー Adonian Chan にインタビューを行うことが出来ました。昨年は Summer Sonic にも出演を果たした香港の英雄です。どうぞ!!

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tfvsjs “在 zoi” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【YVETTE YOUNG : ACOUSTICS EP 2】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YVETTE YOUNG !!

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Having Played Piano Since The Age Of Four And Violin Since Age Seven. Math Rock Queen, Yvette Young Shows Her Classical Influences With Her Beautiful New Record “Acoustics EP 2” !!

DISC REVIEW “ACOUSTICS EP 2”

端麗なる才媛、麗しきマスロッククイーン Yvette Young が、情趣溢れる別世界 “Acoustics EP 2″をリリースしました!!インタビューにもあるように、愛するポストロックの領域へと接近した絶佳なる名編には、多様でフレキシブルな彼女の色彩が存分に織り込まれています。
プログレッシブとマスロックの狭間で存在感を放ち、シーンの揺らぎとなっている COVET をホームグラウンドとするように、Yvette はモダンギタリストの文脈で語られるテクニカルなプレイヤーです。しかし、4歳からピアノを始め、7歳でヴァイオリンを学んだという彼女の深遠なる七色のギフトは、決してただ一所に留まってはいないのです。
実際、”Acoustics EP 2” は実に画期的な作品です。ギターで作曲を開始して6年。波のように揺蕩う異なる拍子の海、アコースティックギターで表現されるモダンで高度なテクニック、そして自らがプレイするヴァイオリン、ピアノ、ハープ、バンジョーなど多種多様な楽器の使用による豊かな表情、アトモスフィア。全てが前作 “Acoustics EP” から格段にスケールアップを遂げ、Yvette は遂に独自の世界観を確立したように思えます。
ボサノバの空気を深く吸い込み、自身のポップサイドを前面に押し出した “Holiday” で幕を開けるアルバムで、しかし特に着目すべきは、彼女の独創的な奏法が可能にするオーケストラのようなサウンドでしょう。勿論ピアノやストリングスを重ねているとはいえ、骨格がギター1本の演奏でこれほどまで音楽に立体感を生み出す作品は実に得がたいと感じます。実はそこには Yvette のクラッシックの素養、ピアノの技術が大きく作用しているのです。
インタビューで語ってくれた通り、Yvette には “ギターのレイアウト、フレットや弦をピアノの鍵盤に見立てて” プレイする場面が存在します。つまり左手で抑え右手で音を出す通常のプレイに加えて、両手ともに指板をタップし直接音を生み出すことで、右手の分、旋律をより重ねることが可能になっているのですね。ギターを横にしてそのままピアノのように “弾く” イメージでしょうか。
当然、高度なテクニックで音量やノイズの調整は簡単ではありません。しかし彼女はメトロノームの如く正確にリズムを保ちながら、優美なサウンドで鮮やかに清音を奏でます。
作品で最もポストロックに接近した “Adventure Spirit” の、文字通り冒険心を胸に抱いたカラフルなメロディーのポリフォニーは、まさにその Yvette オーケストラの象徴です。チェロ、ヴァイオリン、ボーカル、ギター。テーマを奏でる主役の楽器が次々に入れ替わるアンビエントな楽曲で、Yvette の知性的なギターアルペジオ、コードプログレッションはコンダクターのように様々な楽器を操り指揮していきます。
勿論、ギターが旋律を奏でる場面では、鮮やかに両手タップを使用し、躍動するメロディーと共に指揮者不在の状況を回避。エアリーなボーカル、エセリアルなストリングスの響きは、オーガニックな彼女のオーケストラに HAMMOCK や CASPIAN を想起させる美麗なるダイナミズムを創造していますね。
一方で、フォーキーな “Blossom” の数学的で流麗なフレージングはマスロックの女王を強くイメージさせてくれます。師匠 INVALIDS 譲りのサウンドスケープ、風景の中に点在する無上のエキサイトメントはすでに彼女のトレードマークとなった感がありますね。
アルバムは、現在の Yvette Young を全て詰め込んだ悲しみと希望の組曲、”A Map, A String, A Light Pt 2″ で詩情豊かにその幕を閉じました。
今回弊誌では Yvette Young にインタビューを行うことが出来ました!もはや弊誌のかわいい担当準レギュラーだと言えますね!どうぞ!!

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YVETTE YOUNG “ACOUSTICS EP 2” : 9.7/10

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