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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【People In The Box : Kodomo Rengou】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HIROFUMI HATANO OF People In The Box !!

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Tokyo Based Incredible Progressive-Pop Trio, People In The Box Celebrates Their Tenth Anniversary With Definitely Milestone, “Kodomo Rengou”! Innocence And Technique Melt Together Here!

DISC REVIEW “KODOMO RENGOU”

純粋で綿密な音楽への奉仕者、箱の中の三銃士 People In The Box が、自らの10周年に刻む最高到達点 “Kodomo Rengou” をリリースしました!!”計画的” な長期のインターバルを経て、楽曲のデザイン、個性がより際立った作品は、孤高のバンドに相応しき孤高の完成度を誇ります。
「自分の表現したいデザインと、世間が求める快楽というのは、僕の中で決して対立してはいないんです。」 インタビューで波多野氏はそう語ってくれました。あの先鋭的な残響レコードに置いて、日本が誇るポストロック、マスロック、プログレッシブの理想的なブレンドと目された瑞々しい才能は、近年そういった “形式” とは距離を置き “外の影響を取り入れたりすることもなく、メンバー3人の感性の広がりだけで” 文字通り “箱の中” から作品を届けています。
「TM Networkが好きだった “子供時代” と地続きの感性でやっている」 という言葉は “子供連合” を紐解く上で重要なヒントなのかも知れませんね。実際、このアルバムがある種難解で哲学的なバンドのイメージに反して、シンプルなデザインと無垢なる想望から成る天真爛漫な “報いの一日” で幕を開ける事実は象徴的です。
口ずさむキャッチーなハミングも、イノセントで牧歌的なメロディーも、飛び出す絵本のように立体的なギターサウンドも、晴れた冬の日を想わせる優しいシンセサイザーの波動も、全ては楽曲の求めに応じた確かな必然としてそこに存在しています。
そして、楽曲を通してジグソーパズルが組み上がって行くようなこのナチュラルな感覚は、”追求した結果がシンプルで率直な表現に帰結することがあっても自然なこと” と語る波多野氏の言葉をしっかりと裏付けているように思えます。TM Network の名作 “Carol” が緻密で精巧な建造物でありながら、同時に一切無駄の無い完璧にポップなレコードであったことを思い出すリスナーも多いでしょう。
同時に、「リスナーとしては若い頃から、かなり貪欲に聴いていた方だと思います。メタル、プログレッシヴロック、クラシック、エレクトロニックミュージック、ジャズ、民族音楽、ニューウェーブ・・・。」 と語るように、”Kodomo Rengou” は波多野氏とバンドの子供時代から連なる多様な感性を一つ一つ丁寧に育み、惜しげも無く “今” へと昇華したカラフルなポートレートでもあります。
“無限会社” や “泥棒” といった新機軸にも思えるダークでプログレッシブな楽曲から、マスロックのエナジーをポップの領域に組み込んだ “世界陸上”、近年意欲的に取り入れている鍵盤の響きにただ身を委ねるジャズワルツ “あのひとのいうことには”、ミニマリズムの極地 “デヴィルズ&モンキーズ” まで、綿密に練り上げられた多様な楽曲の数々は、すっかりその姿を異にする形式や構成にも関わらず、音に宿った “気概や純度” 、感覚の温度において奇跡の整合性を見せるのです。
勿論、歌詞の面でも波多野氏のクリエイティビティは冴え渡ります。”町A” や “デヴィルズ&モンキーズ” は象徴的ですが、一見無機質に思える単語の羅列やキャッチーな造語の使用が驚くほどの中毒性を創出し、結果として朧気に楽曲のイメージや意味合いをリスナーに印象づけるのですから、「結果的に他人の人生に踏み込んでしまうというくらいの作品を作る気概と覚悟を持ちたいとは思っています。」 という波多野氏の宮大工や鍛治職人の域にも達した拘りと情念の発言にも深く頷けますね。
とは言え勿論、メンバー各自の卓越した技巧そのものにも言及しない訳には行きません。波多野氏が “泥棒” でメセニーよろしくホーンのサウンドをギターで代弁すれば、”町A”で 福井氏はハイフレットや和音を駆使して極上のベースグルーヴを精製します。そして何より、偽装変拍子の海、ポリリズムのトリックの中をかき分け進み、バンドの推進力となる山口氏のドラム捌きは驚異的です。
そうして作品は、”かみさま” に収束して行きます。空間の魔術、静と動のコントラストを完全に支配したバンドは、Spitz をも脅かす甘く切ないメロディーを伴ってリスナーの心をイノセントに溶かすのです。
“これから起こることぜんぶ 息が止まるくらい美しい ひとはそれを 狂気というけど ねぇ、きみはほんとうに知ってた? ねぇ、きみはほんとうに知ってた? この完璧ではない世界で 人生って一度しかないこと”
狂気を狂気とも思わない純粋さでバンドは、ひとが人生で到達すべき本当の場所、見るべき景色を仄めかして見せました。少なくとも “このバンドのいうことには” もしくは奏でる音には信頼が置けると強く感じたインタビュー。ボーカル、ギタリスト、コンポーザー。波多野裕文です。どうぞ!!

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People In The Box “Kodomo Rengou” : 10/10

INTERVIEW WITH HIROFUMI HATANO

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Q1: First of all, could you tell us about your musical background?

【HATANO】: As a listener, I think that I was listening quite widely since I was young. Metal, Progressive Rock, Classical, Electronic Music, Jazz, Ethnic Music, New Wave …. But probably the most noticeable influence as a musician is the alternative rock such as Sonic Youth and the early Smashing Pumpkins. I think that I have not listened to Japanese music very much, but generally I’m lnfluenced by Nanao Tabibito, downy, TM Network. Regarding other members, there is an impression that they are different from each other, but they are listening to music more flexibly than limited to a particular genre.

Q1: まずはインタビューをお受けいただいてありがとうございます!波多野さんが弊誌をチェックしていただいたことがあると伺い、本当に感激致しました。
勿論、People In The Box の音楽を聴けば、バンドが多様な素養を持ち、ここは重要ですが音楽に対して真摯に向き合っていることが伝わります。まずは、波多野さんの音楽遍歴やバックグラウンドについてぜひお聞きしてみたいのですが、そこからお話していただけますか?

【HATANO】: こちらこそありがとうございます。プログレッシヴロック方面の音楽を漁っていると、Marunouchi Muzik Magazine にたどり着くことはしばしばありました(笑)。
リスナーとしては若い頃から、かなり貪欲に聴いていた方だと思います。メタル、プログレッシヴロック、クラシック、エレクトロニックミュージック、ジャズ、民族音楽、ニューウェーブ・・・。ですがおそらく音楽家として一番顕著に影響が現れているのは Sonic Youth や初期 Smashing Pumpkins などのオルタナティヴロックではないかと思います。ひきかえ、邦楽はあまり聴いていないと思いますが、七尾旅人や downy、TM Network には影響を受けているとは思います。
他のメンバーに関していうと、それぞれあり方は違えど、特に何かのジャンルに限定したというよりも、柔軟に音楽を聴いてきている印象があります。

Q2: So, I feel you have a nice balance between Pop and Art. Do you agree that?

【HATANO】: When I was releasing several pieces of work, I was desperately seeking to establish our style. I wanted to clarify the standing position of the band in the scene as soon as possible, but at some point, I began to doubt the idea of “Establishment” itself. I felt objectivity conscious of such an assumptions and formats in the future became a brake on the sense of speed of creation.
So, in terms of the past few years, we do not incorporate the influence of outside, we make it only with the spread of the sensitivity of the three members, so our listener’s impressions seem to be secondary. There are many parts that we only know in the form of self analysis, haha.
Then, if I answer the question, the design I want to express and the pleasure the world wants are never in conflict in me. That means Art and Pop. The important thing is that I replace the word of “General” with myself. So, even if the pursuit results are simple and frank expression, it’s natural for me. Because I’m doing it like I’m still childhood when I love TM Network.
By the way, I do not understand the tone when the Japanese music scene is told in the form of “Galapagos” in the form of description, but what makes it more interesting to make it a “Galapagos”? I think. It is not an good idea if it means closed, but rather than incorporating new ones superficially, I think that it is more interesting to look at the long-term who self-cultured and born a thick one

Q2: 残響レコード時代からポストロック、マスロック、プログロックの文脈で語られる一方、バンドの持つ極上のフック、ポップセンスはメジャー感とアートの類稀なる融合として音楽シーンで孤高とも言える存在感を放っています。
実際、特に日本では自分の表現したいデザインと、世間が求める快楽の間で葛藤を重ねるアーティストも多いように思うのですが、波多野さんの場合はどちらかと言うと、その二つがナチュラルに溶け合い表出しているように感じます。
つまり、非常に音楽の深い部分を愛しながらも、決してコマーシャリズムを拒んではいないような気がします。逆に言えば、楽曲の求めに応じた複雑さと言うか。その辺りのバランス、そして日本のある意味ガラパゴス的な音楽シーンについてはどのようにお考えですか?

【HATANO】: まだ作品を数枚リリースしたくらいの頃というのは、自分たちのスタイルを確立させようと必死で模索していました。シーンでの音楽的な意味でのバンドの立ち位置というものを早いうちにはっきりさせたいと思っていたのですが、ある時期に「確立」という考え方自体をそもそも疑わしく思うようになりました。そういった将来の想定や形式を意識する客観性が、創作のスピード感にブレーキをかけていると感じたからです。
なので、ここ数年に関していえば、外の影響を取り入れたりすることもなく、メンバー3人の感性の広がりだけで作っているので、自分たちの音楽がどう聴かれるかということは二の次になっているというか、自己分析という形でしかわからない部分が多々あります(笑)。
その上で質問の指摘に答えるとすれば、自分の表現したいデザインと、世間が求める快楽というのは、僕の中で決して対立してはいないんです。重要なのは、世間という言葉を僕は僕自身に置き換えているということです。TM Network が好きだった子供時代と地続きの感性でやっているので、追求した結果がシンプルで率直な表現に帰結することがあっても、それも自然なことなんですよね。
ちなみに、日本の音楽シーンがガラパゴスという形容で語られるときのトーンがいまいち僕は理解できていないのですが、なんならもっとガラパゴス化した方が面白いんじゃないか?と思います。閉鎖的という意味であればまた考えものですが、表面的に新しいものを取り入れていくよりは自己培養して濃いものが生まれた方が、長い目で見て面白いのではないかと思います。

Q3: You are often said to be “Stoic” about your music and record, right?

【HATANO】: We are often said to be the stoic band, but as the principals we do not think so at all, haha.
I think that we do not see the band as far as the meaning of life itself.
However, I never thought that our attitude is always correct, but I think that the emotion for making records is certainly very strong. Not only in music but also in books and movies, I have been changed my life by many great works. So, I’d love to have the same spirit changing someone’s life or eventually stepping into other people’s lives when I make a record.
At the same time, it is important for me not to desuse that I’m only a single living person. Even though I felt there or thought about it unconsciously, I think that it will be transformed into a work.

Q3: People In The Box のレコードを聴くと、バンドが作品をアートとして大切に思う気持ち、情念のようなパトスが音の隙間から流れ来るような感覚に襲われます。漫然と制作された部分など微塵も存在せず、これは僕たちの生きた証で、他の誰にも出来ない事だと訴えかけて来るのです。
あくまで私見ですが、限られた時間に気づかず多くの人間が漫然と生きる中で、その真摯で誠実な姿は”言葉を捨ててしまいたい” ではありませんが、自己実現の意味を言葉で語るよりも遥かに強くリスナーへ届けている気がします。
すなわち、波多野さんにとって People In The Box のアルバムや活動は生きる意味そのもののようにも感じられるのですが、いかがですか?

【HATANO】: 僕らはよくストイックなバンドにみられるのですが、本人たちとしては全然そうは思っていないんです(笑)。
生きる意味そのもの、とまでは背負っていないと思います。
ただ、自分たちの姿勢が必ずしも正解だとは決して思っていませんが、作品作りという行為に対する思い入れというのは、確かにとても強いと思います。音楽に限らず本や映画などもそうですが、僕自身が先達の作る作品に人生を変えられてきた身として、結果的に他人の人生に踏み込んでしまうというくらいの作品を作る気概と覚悟を持ちたいとは思っています。
と同時に、ひとりの生活者であることを蔑ろにしないというのも僕にとっては重要です。そこで感じたことや考えたことが無意識的にであれ、作品へと転化されると思っているからです。

Q4: Let’s talk about your newest release “Kodomo Rengou”. The delivered work was a high level of shocking perfection, reflecting that long interval. At the same time, I feel that it is the most diverse work in the history of the band, right?

【HATANO】: Up until now, I have created records that are not few in a short period of time and fortunately I have been without feeling stalled in particular, but on the contrary, I was thinking that I have not taken the time for my records.
This interval is confidently what we have set up.
Among them, I got a lot of time to arrange the songs, including songwriting, so some things changed considerably depending on things. Although there are before and after, all songs are done at the same time on the final stage of the work, so as you stuff up, the character of each song will naturally emerge. I guess that probably leads to diversity you said.

Q4: では、最新作 “Kodomo Rengou” について話しましょう。フルアルバムとしては3年半ぶりのリリースとなります。勿論、その間にミニアルバム、コンピレーション、映像作品のリリースはありましたが、それにしても邦楽のインターバルとしては非常に長い印象があります。
ただ、届けられた作品はその長いインターバルを反映するように、衝撃的な完成度の高さでした。同時に、バンド史上最も多様性に富んだ作品だとも感じます。その多様性は、波多野さんとバンドのやりたい事を素直に全てやってみた成果のようにも思えるのですがいかがですか?

【HATANO】: これまで作品を短い期間で少なくない数作ってきて、幸運にも特に行き詰まりを感じることもなくやれてこれたのですが、逆に、時間をかけて作るということをやってこなかったことに思い当たりました。
このインターバルは確信的に僕らが設けたものです。
そのなかで、作詞作曲を含む曲のアレンジにかける時間をかなりとったので、物によってはかなり変化していったものもあります。前後はあるものの、作業終盤には全ての曲が同時進行で行われるので、詰めていけば詰めていくほど各曲のキャラクターというのが自ずと浮き上がってきます。そこがおそらく仰る多様性に繋がっているのではないかと。あくまで推測なのですが。

Q5: The title “Kodomo Rengou” means “Children United”. And literary, the album opener “Mukui no Ichinichi” is so simple and takes us our childhood, right?

【HATANO】: Although there is no concrete intention, this song is made at the end of the album production, I feel that it was in mind that becoming the opener somehow. I think that the introduction of the album would have wanted me to be suppressed as flat as it was. It certainly is very simple. We are often complicated, but rust is a common three code, haha. I think that the impression is persistent.

Q5: アルバムは “ソラシドレ レドシラソ” が印象的な “報いの一日” で幕を開けます。”ソラシドレ レドシラソ” は音楽の世界で最もベーシックなフレーズのしかもハミングで、言い換えれば子供らしいイメージを抱かせますよね?
このフレーズをベースにリズムやコードに変化を加え展開して行く楽曲にも驚きですが、このタイトルの作品をこのフレーズで始めたことに特別な意図はあるのでしょうか?

【HATANO】: 具体的な意図というのはないのですが、この曲はアルバム制作の終盤に作った曲で、なんとなく一曲目になるというのは念頭にあった気がします。アルバムの導入はなるだけ平熱で抑制されたものであってほしいとも思っていたような気がします。確かにとてもシンプルです。僕らは難解とよく言われますが、サビはありふれたスリーコードですからね(笑)。印象っていうのは根強いんだな、と思います。

Q6: So, what’s “progressive” to you?

【HATANO】: As it is often said, “progressive” in so-called “Progress” is a concept that has become a mere-skeleton. It is a concrete form that it is metaphorically long and epic, odd time structure, or “Crimson like”, “Yes like” etc …. That is why I like it as a hobby with it, haha.
We do not stick to specific genres and keywords as we make it, so we never thought of our music as progressive. In the first place, there are only 4 time or 3 time songs for this record, haha.
However, as a listener, regarding of “Mugen Gaishya” or “Dorobou”, it seems that the state of persistence or madness but insanity, rather than form or mood. For example, it is in communication with the purity of Crimson to do.
In the first place, the favorite part of my favorite progressive rock is not the form but the spirit and purity they had which is appearing in the sound, right? Soft machine or Genesis looks structurally seemingly, but I like them because the fact is only a sense.

Q6: 最も多様性に富んだと言ったのは、”かみさま”という傑出したポップソングがアルバムの軸、中心となって、まるで衛星のようにカラフルで様々な個性を持った楽曲たちが並んでいるイメージを持ったからなんです。
その衛星の中でも、例えば “無限会社” とか “泥棒” の持つクリムゾンとかサバスとか、日本で言えば人間椅子のようなダークで混沌である種プログレ的な感覚って、今までそれほど表出してこなかったような気がします。
それもあって、波多野さんがロックにおける “プログレッシブ” の意味をどのように捉えているか伺ってみたいのですが?

【HATANO】: よく言われるように、いわゆるプログレにおける”プログレッシヴ”というのは形骸化された概念ですよね。変拍子や長尺であるという具体的な形式であったり、”クリムゾンぽい”、”イエスっぽい”などなど・・・。それはそれで趣味としては僕は好きなのですが(笑)。
僕らは作るとなると特定のジャンルやキーワードに固執することはないので、自分たちの音楽をプログレッシブだと思ったことはありません。そもそも、今作は4拍子と3拍子の曲しかありませんしね(笑)。ただ、リスナーとしては質問の”無限会社”や”泥棒”に関していうと、形式やムードというよりも、執拗さや狂気を狂気とも思っていないような状態が、例えばクリムゾンの持つ純粋さとは通じる気はします。
そもそも、僕が好きなプログレッシブロックの好きなところは、形式ではなく彼らが持っていた気概や純度が音に現れているところなんですよね。ソフトマシーンでもジェネシスでもそうですが、一見構築的にみえて、その内実は感覚でしかないというところがとても好きです。

Q7: Could you tell us about your lyrical themes?

【HATANO】: In terms of lyrics, I think it is better to make it rather carefully. The image of words is as sensory as color and light, I want to adjust as a tone color, as a series of meanings, as a character surface, to a place suitable for that music. Sometimes, I also avoid the expressions where music already represents. It is a personal feeling, so hard to explain ….
Regarding listing some words, I do not have any special consciousness, but feel like to make the stage set gorgeous? I don’t want to explain as much as possible in a lyrics, I want to express with words of mass that makes a meaning obscure for the first time in a set of impressions. This is difficult though.

Q7: “町A” が大好きで、ドライブしながら歌ったりしているんですが、一番歌っていて気持ち良い部分の歌詞が “中古車センター” なんですよ(笑)。
“巨大なショッピングモール、レストラン、図書館、うどん屋、書店、パン屋、団地、花屋に、ラーメン屋、神社、寺院、中古車センター、陽の射す部屋”。”デヴィルズ&モンキーズ” でも聴くことの出来るこういった固有名詞の羅列って People In The Box のトレードマークだと思うんです。例えば、”Family Record” とか “Weather Report” の楽曲タイトルにもそういった感覚がありますし。
一見、無作為で機械的にも思えるこういった羅列が高い中毒性を秘め、リピートを誘うことは本当に驚きです。実際、そういった効果はある程度狙って演出しているのでしょうか?

【HATANO】: 歌詞に関していうと、僕はかなり綿密に作るほうだと思います。言葉のイメージというのは、色や光と同じくらい感覚的なもので、音色として、意味の連なりとして、字面として、その音楽にふさわしいところまで調整したいと思っています。音楽がすでに表現しているところは敢えて避けたりもします。個人的な感覚ではあるので、とても説明しにくいのですが・・・。
羅列に関していうと、特別意識はしていないのですが、舞台セットを華やかにしたいという感じでしょうか。できるだけ説明臭くならなず、印象の集合で初めて朧げに意味をなす、それくらいの質量であってほしいんですよね。これが難しいのですが。

Q8: People In The Box have some rules in the freedom, like three-piece, artwork, and title of records and songs, right?

【HATANO】: I think restrictions are convenient and very fond compared with the freedom of stoppage. There is also a design aspect. In musical terms, for example, there is an implicit rule that we do not put guests in the performance so far with only of the three members, but we also devise this in the constraints we have decided It’s a lot of fun to challenge. It is not easy to get to the situation that we did everything, even if we set aside a frame. Rather new ideas are born.
For example, I like to struggle with how to express brass and strings ringing in my head without using them. I like that.

Q8: 無作為と言えば、”Kodomo Rengou” の楽曲タイトルだけを並べれば、小説、例えば星新一さんのショートショートをまとめた単行本のようにも見えて来るんですが(笑)、アートワークの連続性とか、アルバムタイトルは英語で楽曲のタイトルは日本語だったり、勿論スリーピースであることへの拘りも含め、バンドにはいくつか “ルール” が存在しているように思えます。自由の中の規律と言うか。
さて、こういった手法とかルールはどのように生まれて行ったんでしょう?

【HATANO】: 自由のとめのなさを思うと、制約というのは便利でとても好きです。デザインという側面もあります。音楽的なところでいうと、例えば作品においてこれまで演奏でゲストを入れず、メンバー3人の演奏だけでなんとかするという暗黙の決まりがあるのですが、これも決めた制約のなかで工夫してやるということの挑戦がとても楽しいんですよね。
いくら枠を設定したところで、そのなかでやり尽くした、という状況にはなかなかならない。むしろ新しい発想が生まれたりもします。例えば頭の中で鳴っているブラスやストリングスを、それらを使わずにどう表現するか、ということを苦心するのがとても好きなんです。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED HATANO’S LIFE

XTC “APPLE VENUS VOLUME 1”

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SONIC YOUTH “MURRAY STREET”

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JEFF BUCKLEY “LIVE AT SIN-E”

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DEPECHE MODE “SONGS OF FAITH AND DEVOTION”

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JACO PASTORIUS “WORD OF MOUTH”

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MESSAGE FOR READERS

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If I had a strong throat that I physically shout out, I’m pretty serious that I was probably doing metal / hardcore, haha. But, regardless of the genre, if you like music, you surely feel something from our usic. Since I am proud to be making works, so please check it out.
It was a fun interview filled with very interesting points. Thank you very much.

僕が身体的に叫び散らせるような強靭なノドを持っていたら、おそらくメタル/ハードコアをやっていたんじゃないかとよく本気で思うんですが(笑)、ジャンルはともかく、音楽が好きであれば必ず何かしらを感じてもらえるような作品を作っていると自負しているので、ぜひ聴いていただければと思います。
とても興味深い指摘にあふれた楽しいインタビューでした。ありがとうございました。

HIROFUMI HATANO

“Kodomo Rengou” Release Tour

2018年6月8日(金) 横浜 F.A.D YOKOHAMA
開場18:30 / 開演19:00
2018年6月9日(土) 静岡 UMBER
開場18:00 / 開演18:30
2018年6月15日(金) 四日市 CLUB CHAOS
開場18:30 / 開演19:00
2018年6月16日(土) 神戸 VARIT.
開場18:00 / 開演18:30
2018年6月17日(日) 岡山 CRAZYMAMA 2nd Room
開場17:00 / 開演17:30
2018年6月21日(木) 札幌 COLONY
開場18:30 / 開演19:00
2018年6月23日(土) 盛岡 the five morioka
開場18:00 / 開演18:30
2018年6月24日(日) 仙台 MACANA
開場17:00 / 開演17:30
2018年6月29日(金) 広島 CAVE-BE
開場18:30 / 開演19:00
2018年6月30日(土) 福岡 DRUM SON
開場18:00 / 開演18:30
2018年7月1日(日) 熊本 B.9 V2
開場17:00 / 開演17:30
2018年7月6日(金) 高松 TOONICE
開場18:30 / 開演19:00
2018年7月7日(土) 京都 磔磔
開場18:00 / 開演18:30
2018年7月8日(日) 名古屋 CLUB QUATTRO
開場16:45 / 開演17:30
2018年7月11日(水) 渋谷 TSUTAYA O-EAST
開場18:15 / 開演19:00
2018年7月14日(土) 梅田 CLUB QUATTRO
開場17:45 / 開演18:30
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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHON : HOMEY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERICK HANSEL OF CHON !!

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California Based, Incredible Jazz-Math Rock Trio, Chon Advance Into New Realm With The Masterpiece “Homey” !!

DISC REVIEW “HOMEY”

インストゥルメンタルミュージックの未来を切り開く時代の寵児。サンディエゴのジャズ/マスロックトリオ CHON が、シーンの輿望を担う最新作 “Homey” をリリースしました!!バンドの “ホーミー” である南カリフォルニアの太陽、空気、夏の匂いを一身に浴び、望外なまでにチルアウトしたレコードは、ジャンルに海風という新風を吹き込んでいます。
CHON が2015年にリリースしたファーストフルレングス、 “Grow” はバンドのユニークな才能や感受性を見せつける素晴らしきショーケースとなりました。ソフトでカラフルなコードワーク、デリケートでピクチャレスクなリードプレイ、ダイナミックに研ぎ澄まされたバンドサウンド。高度な知性と屈託のない無邪気さが同居する、オーガニックかつテクニカルなその世界観はまさしく唯一無二で、スメリアンの秘蔵っ子から一躍シーンのサウンドアイコンへと飛躍を果たすことになったのです。
バンドのホームタウン、カリフォルニアにインスパイアされ制作された最新作 “Homey” は、”Grow” で見せた圧倒的な光彩はそのままに、その鋭敏な感性が掴まえたエレクトロニカ、アンビエント、ハウスなど所謂チル系のトレンドを大胆に咀嚼し、トロピカルで新鮮なムードとテクニカルなマスロックを共存させることに成功していますね。
アルバムオープナー、”Sleepy Tea” は、インタビューにもあるように、驚異的なまでに進化した CHON のインストゥルメンタルワークを堪能出来る楽曲です。猫の目のように変化する細やかなリズムアプローチは、Mario と Erick のギターチームがダンスを踊る最高の舞台。時に奔放に、時に精巧に、極上のメロディーとエキサイトメントを運ぶニ人の複雑で甘い関係は、奇跡の距離感で音のユーフォリアを紡いで行きます。
CHON の豊潤なる味わい深さの一端は、モダンの中に見せるオールドスクールな部分かも知れません。特に今作では、フュージョンと言うよりもビバップやモダンジャズのスウィング、ツーファイブ、フォービート、フレージング、シンコペーションが丹念に織り込まれており、得も言われぬコントラストを創出しています。例えば、”Checkpoint” などはマスロックの顔をしたジャズスタンダードのナンバーだと言えるかも知れませんね。
当然、手数とグルーヴを両立させた Nathan Camarena のドラム捌きも卓越しており、突っこみ気味でバンドを牽引するそのエナジーは圧倒的。ゲストに迎えた Brian Evans のパーカッション、有機的でムーヴアラウンドな Anthony Crawford のベースラインとも相俟って、型破りでマスロックの可能性を再定義するようなデザインをアルバムを通して描いていますね。
同じくサンディエゴを拠点に活躍する、ビートメーカー/ジャズギタリスト Go Yama をフィーチャーした “Berry Streets” は CHON の新たな冒険を象徴する楽曲です。現在進行形のトレンドであるトロピカルハウスを主軸としたトラックは、あまりにノスタルジックでアンビエント。カリフォルニアのビーチで沈みゆく夕日を惜しみつつ聴くために作られたかのような至高のチルウェイブに仕上がっています。
同時に CHON のジャジーなインストゥルメンタルワークも効果的に挿入されており、Erick がインタビューで語ってくれた通り、結果として二つのジャンル、二つの才能が見事に融合し開花した独創的で至妙な世界観を構築することに成功しているのです。
新進気鋭の シンガー/サックス奏者 Masego を起用した “Nayhoo” もコラボレートの成果が際立って実を結んだ一曲です。ソウル/エレクトロジャズの領域へと踏み込んだ楽曲は、Masego のエモーショナルなボーカルを芯柱とし、匂い立つような色気、スイートな瞬間をアルバムへもたらしていますね。勿論、Thundercat や、FLYING LOTUS がフェイバリットに挙がっている事実を知るまでもなく、ここで彼らが、Jazz の領域を拡大する Robert Glasper と “Jazz The New Chapter” のフロンティア精神を意識したことは明らかです。
「自分たちが気に入るサウンドの楽曲を書き続けて、叶うならファンも僕たちの音楽を好きになり続けてくれることだね。その過程で、さらに新たなファンも開拓出来たら良いな。」
世界最高峰のエレクトロポップを創造するビートメーカー、Giraffage A.K.A. Charlie Yin との共演にも言えますが、既存のファン層からある程度の反発を見越しても、より幅広いマスリスナーへとアピールし、音楽的なチャレンジを続けることこそがバンドのゴールだと Erick は認めています。そして CHON の掲げる、その本来の意味でのロックスピリットは必ず報われるべきだと感じました。
今回弊誌では、ギタリストの一人 Erick Hansel にインタビューを行うことが出来ました。もし、”Homey” のムードやスピリットが気に入ったなら、Jakub Zytecki の最新ソロEP “Feather Bed” や、先日弊誌でも特集を組んだ ichika の新プロジェクト AMONG THE SLEEP へと歩みを進めてみるのも一興です。どうぞ!!

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CHON “HOMEY” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHON : HOMEY】JAPAN TOUR SPECIAL !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【tfvsjs : 在 zoi】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADONIAN CHAN OF tfvsjs !!

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The Innovative Math/Post Rock Act From Hong Kong, tfvsjs Has Released “Math Rock With A Canton Twist” Record “在 zoi” !!

DISC REVIEW “在 zoi”

頽廃と精神、暗澹と光明のコントラストを司る、香港のマスロック/ポストロックイノベーター tfvsjs が豊かな可能性に満ちた新作 “在 zoi” をリリースしました!!圧倒的なダイナミズムと多様性を備えたアルバムは、White Noise Records というキーワードともリンクしてアジア圏インストゥルメンタルの目を見張る進歩を証明する1枚となるでしょう。
複雑で予想不可能、しかし美しく感情豊かなピースを創造する tfvsjs が素晴らしきデビュー作 “equal unequals to equal” の後提示したのは、よりダークでヘヴィーな世界観でした。Adonian はその理由について 「僕たちがここ何年か香港で経験したことをどうしても反映しているからだと思うんだよ。政治は毎日僕たちの心を混乱させ、日常生活にも強く影響するんだ。そんな重荷を抱えた状況で作られた訳だから、音楽が僕たちの捌け口となった面は否めないと思うんだ。」 と語ります。
TTNG, Mylets のメンバーが香港のライブハウス Hidden Agenda で、不法就労の疑いにより警察に身柄を拘束された5月の事件をご記憶の方も多いでしょう。一見、ビザの申請を行う行わないという単純な話にも見えますが、実はこの事件こそ香港の闇を反映し象徴しているのです。
香港では、音楽の興行は商業地帯でしか認められていません。しかし商業地帯の非常に高価な賃料のせいで、ライブハウスを経営することは現実的ではないのです。Hidden Agenda はしかしながら、インディペンデントなアーティストを応援したいという情熱によって、賃料の安い “グレーゾーン” 工業地帯で幾度も場所や手法を変えながら何とか営業を続けて来たライブハウスでした。グレーなやり方のために当局からは目をつけられ、ビザの申請も難しいという背景が存在したようですね。
勿論、国によって文化や法律は異なるため、正義を単純に定義することは出来ません。ただ、才能溢れるインディペンデントなアーティストが演奏する場所を奪われていることは確かで、日本にとっても単なる対岸の火事とは思えません。何より、「自由と多様性の国際都市である香港は、クリエイティブなパフォーマンスと作品がもっと繁栄していく機会を創るべきだね。」 という TTNG, Mylets のコメントが全てを語っている気がします。
tfvsjs の言う “ここ何年か香港で経験したこと” は実は Hidden Agenda のケースとシンクロしています。彼らもまた工業地帯で、音楽活動を続けるために機材を持ち込んだスタジオ型のレストラン tfvsjs.syut をオープンさせていました。非常に人気のあったその場所は、しかし当局の立ち退き命令により昨年閉店を迎えてしまいます。
確かに違法性を宿すグレーゾーンでの出来事。ただ、アイコニックな表現者を的とした一連の強硬な流れには、一国二制度の下で保たれている香港の政治的、文化的な自治性の揺らぎを感じざるを得ません。「政治的にも文化的にも中国というより香港のバンド」 と語る彼らのアイデンティティーが保たれることを望むばかりです。
そういった経緯を念頭に置けば、tfvsjs の新たなレコードが、ダークでインテンス、そしてノイジーでドゥーミーなムードを加えたことにも納得が行くはずです。無音とノイズのコンビネーションで幕を開けるアルバムオープナー “Burn all flags,” は実際、頽廃と精神性を隠喩しているようにも思えます。
勿論、もとより一つのジャンルに収まるバンドではありません。2005年に結成された tfvsjs は、以前ボーカルやトランペッターまでをも擁していました。インタビューで hip hop をよく聴いていると語ってくれた通り、メンバー各自の多様な音楽的素養は、窮屈な政治の下でも型にハマらない自由な創作活動を可能としているのです。
何よりトレードマークとも言えるツインドラムスが生み出すダイナミズムは圧巻の一言。ツインギターとツインドラムスによるコール&レスポンスは、複雑な展開でも、シンプルなビートにおいてもまるで二つのバンドが共演しているかのようなエキサイトメントをリスナーへと届けます。爽涼なマスロックと轟音のドゥームゲイズを同時に梱包したかのような “and paint our pupils with ashes” はまさにその象徴だと言えますね。
7th や9th のテンションノートをメカニカルな五線譜へ巧みに配置した “Shrine of our despair”、YES の “燃える朝焼け” をイメージさせるスリリングでプログレッシブな “Battle From The Bottom”、ポストロックとアジアの悠久が見事に調和する “無以名状” を経てたどり着く “滅曲” は間違いなくアルバムのハイライト。
フラストレーションの捌け口となった楽曲で、ブラックゲイズのトレモロは慟哭を、マスロックの暖かなメロディーは光明を代弁し、極上のコントラストはまるで闇夜に浮かび上がる月華の如くリスナーの心を動かします。
日本のマスロックレジェンド toe の美濃氏がミキシングとマスタリングを手がけたことで、サウンドも丹念に磨きあげられ間違いなく作品の充実へと繋がっていますね。
今回弊誌では、ギタリストでコンポーザー Adonian Chan にインタビューを行うことが出来ました。昨年は Summer Sonic にも出演を果たした香港の英雄です。どうぞ!!

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tfvsjs “在 zoi” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【YVETTE YOUNG : ACOUSTICS EP 2】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YVETTE YOUNG !!

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Having Played Piano Since The Age Of Four And Violin Since Age Seven. Math Rock Queen, Yvette Young Shows Her Classical Influences With Her Beautiful New Record “Acoustics EP 2” !!

DISC REVIEW “ACOUSTICS EP 2”

端麗なる才媛、麗しきマスロッククイーン Yvette Young が、情趣溢れる別世界 “Acoustics EP 2″をリリースしました!!インタビューにもあるように、愛するポストロックの領域へと接近した絶佳なる名編には、多様でフレキシブルな彼女の色彩が存分に織り込まれています。
プログレッシブとマスロックの狭間で存在感を放ち、シーンの揺らぎとなっている COVET をホームグラウンドとするように、Yvette はモダンギタリストの文脈で語られるテクニカルなプレイヤーです。しかし、4歳からピアノを始め、7歳でヴァイオリンを学んだという彼女の深遠なる七色のギフトは、決してただ一所に留まってはいないのです。
実際、”Acoustics EP 2” は実に画期的な作品です。ギターで作曲を開始して6年。波のように揺蕩う異なる拍子の海、アコースティックギターで表現されるモダンで高度なテクニック、そして自らがプレイするヴァイオリン、ピアノ、ハープ、バンジョーなど多種多様な楽器の使用による豊かな表情、アトモスフィア。全てが前作 “Acoustics EP” から格段にスケールアップを遂げ、Yvette は遂に独自の世界観を確立したように思えます。
ボサノバの空気を深く吸い込み、自身のポップサイドを前面に押し出した “Holiday” で幕を開けるアルバムで、しかし特に着目すべきは、彼女の独創的な奏法が可能にするオーケストラのようなサウンドでしょう。勿論ピアノやストリングスを重ねているとはいえ、骨格がギター1本の演奏でこれほどまで音楽に立体感を生み出す作品は実に得がたいと感じます。実はそこには Yvette のクラッシックの素養、ピアノの技術が大きく作用しているのです。
インタビューで語ってくれた通り、Yvette には “ギターのレイアウト、フレットや弦をピアノの鍵盤に見立てて” プレイする場面が存在します。つまり左手で抑え右手で音を出す通常のプレイに加えて、両手ともに指板をタップし直接音を生み出すことで、右手の分、旋律をより重ねることが可能になっているのですね。ギターを横にしてそのままピアノのように “弾く” イメージでしょうか。
当然、高度なテクニックで音量やノイズの調整は簡単ではありません。しかし彼女はメトロノームの如く正確にリズムを保ちながら、優美なサウンドで鮮やかに清音を奏でます。
作品で最もポストロックに接近した “Adventure Spirit” の、文字通り冒険心を胸に抱いたカラフルなメロディーのポリフォニーは、まさにその Yvette オーケストラの象徴です。チェロ、ヴァイオリン、ボーカル、ギター。テーマを奏でる主役の楽器が次々に入れ替わるアンビエントな楽曲で、Yvette の知性的なギターアルペジオ、コードプログレッションはコンダクターのように様々な楽器を操り指揮していきます。
勿論、ギターが旋律を奏でる場面では、鮮やかに両手タップを使用し、躍動するメロディーと共に指揮者不在の状況を回避。エアリーなボーカル、エセリアルなストリングスの響きは、オーガニックな彼女のオーケストラに HAMMOCK や CASPIAN を想起させる美麗なるダイナミズムを創造していますね。
一方で、フォーキーな “Blossom” の数学的で流麗なフレージングはマスロックの女王を強くイメージさせてくれます。師匠 INVALIDS 譲りのサウンドスケープ、風景の中に点在する無上のエキサイトメントはすでに彼女のトレードマークとなった感がありますね。
アルバムは、現在の Yvette Young を全て詰め込んだ悲しみと希望の組曲、”A Map, A String, A Light Pt 2″ で詩情豊かにその幕を閉じました。
今回弊誌では Yvette Young にインタビューを行うことが出来ました!もはや弊誌のかわいい担当準レギュラーだと言えますね!どうぞ!!

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YVETTE YOUNG “ACOUSTICS EP 2” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【tricot : 3】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH tricot !!

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The Best Girls Trio On Earth, tricot Makes Math-Rock Great Again With Their New Milestone “3” !!

DISC REVIEW “3”

日本のマスロック/ポストロックのランドマークとなった歴史文化都市、京都から世界へと進出し快進撃を続けるガールズトリオ tricot が時代を切り拓く一撃 “3” をリリースしました!!ポップ、パンク、そしてプログまで取り込んだ前人未到の方程式は世界を驚かせるに充分なインパクトを纏っています。
日英米同時リリースとなった最新作 “3” は、インタビューにもあるようにバンドが最も自由を謳歌した「何でもアリ」な作品に仕上がりました。ドラムス komaki♂ 脱退後リリースされた “A N D”, “KABUKU EP” は共に数名のサポートドラマーたちと共に制作されましたが、今作ではライブのサポートも務める吉田雄介氏がほぼ全ての楽曲でプレイ。フレキシブルにトリオの意思に反響するセンシブルなドラムスを得て、バンドはその野性味と知性を最高の形で開花させたと言えるかも知れませんね。
勿論、変幻自在なリズム、マスマティカル(数学的)な変拍子の洪水がシンボルとなり、特に海外では “マスロック” “Math-rock” と称される tricot の音楽ですが、多彩を極めるのはリズムだけではありません。”3″ で確かに実現したカラフルで鮮やかな楽曲群、世界観はしなやかにバンドの成熟、進化を伝えています。
また、tricot のその自由な実験精神は CD のパッケージングにも表層化しています。ブックレットもアートワークもなく、透明のケースにただ “3” と書かれただけのミニマルパッケージ盤(1500円)と同時に、クリエイター・チョーヒカルとのコラボレーションによるアートボックス、999枚限定デラックス盤(4500円)を用意。「今通常盤として世に出されている形が果たして今もみんなにとって通常であるのか」。拡散するリスナーの要望と改革の進まぬ音楽産業の落差に疑念を抱き、一石を投じるバンドのチャレンジは実に潔く、大いに賞賛されるべきでしょう。
アルバムオープナー、園子温監督のオリジナルドラマに使用された “TOKYO VAMPIRE HOTEL” を聴けば、tricot がロックの持つ原衝動とインテリジェンス、そしてポピュラリティーをナチュラルに凝縮させていることに気づくはずです。楽曲の持つインテンシティー、パンキッシュな衝動、コンテンポラリーな展開は AT THE DRIVE-IN をも想起させ、その凄みはポストハードコアの領域へと達していますね。
進化の証である、ファストでアグレッシブな2分30秒が過ぎ去ると、バンドは別の顔を見せ始めます。メロディックでキュートな “WABI-SABI” はバンドの真骨頂であり、”TOKYO VAMPIRE HOTEL” の素晴らしきカウンターとして存在しています。tricot らしいポップなヴァースに色を添える楽器隊のコーラス、ハーモニーは楽曲に極上のアトモスフィアをもたらし、同時に生々しいサウンドプロダクションとリズムアプローチの妙は “マスポップ” のパイオニアであることを高らかに宣言しているのです。
実際、椎名林檎のリリカルなムードを内包する “節約家” にも言えますが、2人のギタープレイヤーが創造するインテンスは峻烈で、その意外性に満ちた休符の配置、スタッカートの切れ味、テンションノートの煌めきは作品のコアとして揺るがぬ存在感を放っています。
ダンサブルな “よそいき”、ジャズの息吹を吸い込んだ “DeDeDe”、ボーカルエフェクトや中国語まで活用した “ポークジンジャー” と実にバラエティーに富み色とりどりの作品において、トリッキーなバンドの魅力は “18, 19″ で最高潮に達します。
インタビューで語ってくれた通り、「やりたいこと詰め込んで全部やってやろう」という意気込みで制作されたチャレンジングな楽曲は、実に複雑怪奇。異なるイントロとコーラスのリズムに加え、突然のストップ&ゴーが多発する変則リズムの氾濫は、tricot のクリエイティビティとテクニックを完膚無きまでに見せつけています。特にアクティブでダイナミックなベースラインは群を抜いていますね。
さらにイントロのリズムを注意深く数えれば、”9・9・10・9″ と進行していることに気づくはずです。つまり、”18, 19” とは楽曲の拍子を表しており、タイトルや歌詞、そしてその淡いメロディーから不安定な青春時代の恋愛を想像するリスナーを見事煙にまいているのです。平然と宿された衝撃の”ダブルミーニング”。tricot の虜となる音楽ファンが後を絶たないのも納得ですね。
アルバムは、シンプルにスタートし徐々にコーラスやセブンスコードが重ねられて行く不思議で魅力的なポップチューン “メロンソーダ” でその幕を閉じます。人生を変えたアルバムを見れば分かる通り、貫かれるポップセンスは3人にとって不可欠で、そしてあまりに当然のものとして常に存在しているのでしょう。
今回弊誌では tricot の3人にインタビューを行うことが出来ました。4月には日本が誇るポストロック/ハードコアの祝祭 “After Hours” でプレイし、さらに8月には UK ポストロック/ハードコアの祭典 ArcTanGent への出演も決定しています。
余談ですが、「世に出回ってる tricot の楽譜はだいたい間違っている」そうなので、こちらも画期的な試み “目コピ動画” を公式ショップから購入してみるのも一興です。どうぞ!!

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tricot “3” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ETERNITY FOREVER : FANTASY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BEN ROSETT OF ETERNITY FOREVER !!

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Dance Gavin Dance, Chon And Strawberry Girls Get Together !! The Super Group, Eternity Forever Mixed Prog Rock And R&B With Their Amazing Debut EP “Fantasy” !!

DISC REVIEW “FANTASY”

ex-DANCE GAVIN DANCE, A LOT LIKE BIRDS の Kurt Travis、ex-CHON の Brandon Ewing、そして STRAWBERRY GIRLS で活躍する Ben Rosett という類い稀なる駿才が集結した新たなファンタジー、ETERNITY FOREVER が鮮烈なデビューEP “Fantasy” をリリースしました!!メンバーが誇る芳醇なキャリアを引き継ぎながらも、新たな冒険へと誘う作品は、近年稀に見る衝撃を伴って永遠に愛される不朽のエバーグリーンとなるはずです。
インタビューにもあるように、ETERNITY FOREVER の物語は昨年行われた CHON と STRAWBERRY GIRLS、そして POLYPHIA が一堂に会した “Super Chon Bros” ツアーから始まりました。
全世界で30万枚のセールスを上げる US インディーの雄 LOCAL NATIVES のベースプレイヤー Nick Ewing を兄に持つ Brandon は当時、CHON の一員としてツアーに帯同していました。Sumerian と契約し今や飛ぶ鳥を落とす勢いで邁進する、カリフォルニアの日差しを全身に浴びたマスマティカルでポジティブなプログレッシブ集団は、Camarena 3兄弟の次男が脱退したためベーシストを必要としていたのです。
一方、Ben Rosett が所属する STRAWBERRY GIRLS は、日本ではまだあまり馴染みのないバンドかも知れませんね。彼らもインストゥルメンタルを主戦場とする実験的なトリオ。ex-DANCE GAVIN DANCE のギタリスト Zachary Garren 率いる異能の集団は、可能性を発掘することにかけては定評のある Tragic Hero Records からダーク&セクシーな名作群をリリースしています。
ポストハードコア、マスロック、プログレッシブが魅力的に交差したツアーで Brandon と Ben は意気投合。Blue Swan, Equal Vision をセンターとしたシーンの中でもずば抜けた歌唱力を有する Kurt Travis との邂逅により、バンドはまさにスーパータレントブラザーズとしての生を受けたのです。
デビューEP “Fantasy” は4曲という僅かなボリュームにもかかわらず、圧倒的な躍動感と無限の可能性を感じさせる作品に仕上がりました。
アルバムオープナーでタイトルトラック、”Fantasy” の幕が上がるとリスナーは、Brandon が奏でる透明で繊細なギターの音色に酔いしれるでしょう。
ビビッドでリリシズムを湛えたその思索的な響きは、アイデアの潮流に乗り、宵闇の風に帆をはらませ無上のサウンドスケープを運びます。確かにここには CHON や DANCE GAVIN DANCE が持つ複雑にして軽快、難解にして耳馴染みの良い、モダンでイマジネーティブなセンスが開花しています。Brandon がベースのみならず、ギターのマイスターでもあることがここに証明されたと言えますね。
Kurt Travis の鮮烈で “黒い” ファルセットが切り込むと、楽曲は新たな顔を啓示しバンドの個性を主張し始めます。Prince を想わせるシルクのように滑らかで心地よいそのファルセットは、彼らの “Fantasy” に濃厚なブラックミュージックの風を誘います。Kurt が過去にどのバンドでも見せることのなかったその切り札は、プログレッシブでマスマティカルなロックとエモーショナルでトライバルな R&B やソウルが遂に溶け合うための重要な魔法の触媒となっているのです。
“Movies” の郷愁と慕情が入り混じった美しきポストロックのキャンパスが、Kurt のソウルフルな黒い歌唱で染めあげられ、未だ見ぬ奇跡の景色を宿す様はまさに ETERNITY FOREVER の真骨頂だと言えるでしょう。
4曲15分のEPを通して流れるのは、作品のプロデュース、ミキシング、マスタリング全てを手がけた Ben Rosett のイデオロギーかも知れませんね。STRAWBERRY GIRLS ではあの Kendrick Lamar のカバーも披露しているように、オープンで瑞々しい感性を持つ彼のアンテナは “Jazz The New Chapter” のマインドと通じます。
Hip Hop やネオソウルに接近し、ジャズの領域をブラックミュージックへと浸透、拡大。インプロビゼーションよりも、明確でソフィスティケートされたプロデュースを主張する Robert Glasper や HIATUS KAIYOTE の方法論を、Ben はプログレッシブロックの分野でチャレンジしたように感じられます。そして彼らの “New Chaper”は、コンパクトでキャッチー、エキサイティングで新鮮な、プログレッシブワールドの稀有なる地殻変動として”永遠永久に”歴史に刻まれることでしょう。
今回弊誌では Ben Rosett にインタビューを行うことが出来ました。今年一番のサプライズ。どうぞ!!

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ETERNITY FOREVER “FANTASY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JYOCHO: 祈りでは届かない距離 (A PRAYER IN VAIN)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAIJIRO OF JYOCHO !!

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One Of The Most Talented Guitar Player From Japan, Daijiro Nakagawa With JYOCHO Has Just Released Very Impressing Math-Rock Meets J-Pop Record “A Prayer In Vain” !!

DISC REVIEW “祈りでは届かない距離”

Math-Rock という東洋が主たる発信地の魅力的で、しかし曖昧なジャンルにおいて、宇宙コンビニが果たした役割は非常に大きなものでした。短いキャリアで閃光のように強い輝きを放ったバンドは、時に幾何学的、時に有機的な美しきサウンドスケープに、日本らしいポピュラーミュージックの色合いを添え、ジャンルの曖昧さを逆手に取って Math-Rock の可能性を証明し、世界中から大きな賞賛を浴びたのです。
バンドの解散から一年半。リーダーでギタリストのだいじろー氏が JYOCHO というプロジェクト名でリリースしたデビュー作 “祈りでは届かない距離” は、さらに研ぎ澄まされたそのポップセンス、多様でカラフルな音楽性、高いミュージシャンシップを滑らかに溶け合わせ、今度は自身の可能性を証明したレコードとなりました。
JYOCHO とはすなはち”情緒”。インタビューにもあるように、日本らしい四季のような感情の変化を世界に伝えたいという想いで名付けられた JYOCHO はまさにこのカラフルなレコードを体現しています。
アルバムオープナー、”family” は宇宙コンビニと JYOCHO を繋ぐミッシングリンクのような存在です。クリーンでピュア、しかしテクニカル。宇宙コンビニ時代からだいじろー氏のトレードマークとも言えるマスマティカルなギターフレーズに導かれたリスナーは、流れ来るフルートの美しく雅な響きに驚きを覚えるでしょう。アルバムを通してこのフルートの音色は、JYOCHO の唯一無二の世界観”情緒”を醸し出すことに大いに貢献していますね。
確かにジャジーなリズムパターン、複雑なコンポジション、繊細なギターフレーズは Math-Rock のアイデンティティーを主張しますが、楽曲へと自然に溶け込み寄り添い、ただ深化を促すジグソーパズルのピースとして存在しているようにも思えます。
実際、ポップスの領域へと繋がるような、rionos の中性的でイノセントな歌声、メロディーが JYOCHO, そして “祈りでは届かない距離” を特別な存在にしていることは明らかです。
だいじろー氏が原点だと語る出身地、京都を想いながら作られたであろう “故郷” は、その Post-Rock 的なサウンドスケープを背景に歌い紡がれる rionos の優しく、懐かしく、実にエモーショナルなボーカルが、リスナーの心へフワリフワリと侵入し様々な感情を喚起します。勿論、そこに情緒を感じるファンも多いでしょう。
とは言え、アルバムにはロック的なスリルも当然存在します。”太陽と暮らしてきた” の変拍子、ギターとフルートのユニゾン、そして対位法的インプロヴァイズは実にエキサイティングで JYOCHO という集団のミュージシャンシップの高さを見せつけています。だいじろー氏のギターにより深く耳を傾ければ、タッピング以外にも、ベンドやアルペジオ、ハーモニクスの使用法が卓越していることにも気づくはずです。人生を変えたアルバムを見れば分かる通り、驚異的なアコースティックギタリストから影響を受け、右手の五本指をも自在に操る彼の奏法はロックのフィールドにおいては実に異端で革新です。
こうした JYOCHO の楽器とボーカルの素晴らしいバランス、見事な調和は、rionos の歌声にも相まって、偶然にも、”祈り”を捧げるアーティスト Cocco の名作群 “クムイウタ” や “ラプンツェル” を想起させる瞬間が存在します。確かに世界は “祈りでは届かない距離” で隔てられていますが、それでも私たちは”気づく”必要がありますし、”調和”へと向かうべきでしょう。
今回弊誌では、だいじろー氏にインタビューを行うことが出来ました。読者のみなさまにも”気づいて”いただければ幸いです。どうぞ!!

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JYOCHO “祈りでは届かない距離” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITE : CUBIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NOBUYUKI TAKEDA OF LITE !!

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Japanese Math / Post Rock Hero Returns! Lite Goes Back To Their Roots And Opens Up A New Chapter With Accessible And Emotive Record “Cubic” !!

DISC REVIEW “CUBIC”

日本が生んだ Math-Rock / Post-Rock ヒーロー LITE が待望の新作 “Cubic” をリリースしました!!バンドの原点である、タイトで躍動感溢れる生の音像へと回帰した作品は、国内外でインストゥルメンタルミュージックを志すアーティストへの新たな道標となるでしょう。
LITE の近作はその理知的な一面が作風を支配していました。ジグソーパズルのピースを一つ一つ組み合わせるように綿密に、デリケートに構成された彼らのストラテジーは “For All the Innocence” で一つの完成形を提示したと言えます。シンセサイザーを多用し、ギターを何本も重ね、精巧でカラフルな絵画のようにレイヤーされた音世界は、極限までこだわり抜いた足し算の美学であったとも言えるでしょう。
“For All the Innocence” の流れを汲みつつ、やや人間味も戻ってきた前作 “Installation” リリース後、LITE は国内、海外でツアーを重ねます。インタビューにもあるように、そこで彼らはオーディエンスとの温度差に直面したのです。もっとダイレクトに伝わる方法を模索し、たどり着いた一つの結論が “原点回帰” でした。
3年半のインターバルを経て、リスナーの元へと届けられた最新作 “Cubic” にはそうした葛藤を乗り越え、さらにステージアップを果たした魅力的な LITE の現在が詰まっています。
アルバムオープナー “Else” を聴けばバンドの進化が伝わるでしょう。アグレッションと躍動感を前面に押し出し、生々しくフィジカルな感覚を宿す楽曲は、ストレートにロックの真価を表現し、引き算の美学を提示しています。有機物のように形を変えていくトラックには、ワウを使用したヘンドリックスを想起させる激しい熱量のギターソロすらハマっていますね。
勿論、リズムやリフにはマスマティカルなイデオロギーが貫かれていますが、オーガニックで力強いギターサウンドと、抜けの良いダイナミックなドラムスによって、リスナーはまるで4人のメンバーのみが目前に現れ生のライブを見ているかのような錯覚に陥ることでしょう。
アーテュキレーション、ゴーストノート、そしてギターのピッキング音までクリアに感じられる立体感。あの BATTLES を手がける Keith Souza をマスタリングで、THE MARS VOLTA との仕事で知られる Heba Kadry をミキシングで起用したことも、新たなサウンドに寄与していることは明らかですね。
ジャケットのルービックキューブとリンクするように、カラフルでチャレンジングな点も “Cubic” の特徴です。SOIL&”PIMP”SESSIONS のタブゾンビがトランペットで参加した “D” はアルバムを象徴する楽曲かも知れません。自由な雰囲気でジャムセッションからそのまま進化した楽曲は、良い意味でのルーズさ、即興の魅力、ロックの原衝動を合わせ持ち、クリエイティブなエナジーが溢れて出ています。後半の転調を繰り返すアイデアも実にスリリングですね。
以前にも挑戦したとは言え、インストゥルメンタルバンドとして知られる LITE が2曲にボーカルを導入したこともサプライズだと言えますね。アヴァンギャルドなアルバムクローサー “Zero” での根本潤氏の歌唱はエキセントリックで実に効果的ですし、何よりギタリスト武田氏自らが日本語で歌う “Warp” からは、海外で認められる LITE がクールな日本語の美しさ、リズムを伝えるという意味からも重要な1曲だと感じます。
実際、フロム JAPAN のアイデンティティーは、LITE を海外のバンドから際立たせている隠し味では無いでしょうか?”Square” が象徴するような、エモとはまた違った日本的な侘び寂び、哀愁はレコードの要所で現れ作品をさらに魅力的に彩っていますね。
今回弊誌では、バンドのギタリストでコンポーザー、武田信幸さんにインタビューを行うことが出来ました。海外では、toe や ENEMIES も所属する要注目の Topshelf Records からのリリース。どうぞ!!


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LITE “CUBIC” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NAPOLEON : NEWBORN MIND】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SAM OSBORN OF NAPOLEON !!

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UK Based Melodic Hardcore Four Piece, NAPOLEON Has Just Released The Genre-Breaking Debut Full-length, “Newborn Mind” !! “Melodiposipassiongroove” Is Here !!

DISC REVIEW “NEWBORN MIND”

ユーロモダンメタルコアシーンの皇帝 NAPOLEON が満を持して待望のデビューフルレングス “Newborn Mind” をリリースしました!!ハイセンスなシングルや EP で注目を集め、将来を期待されながらデビューフルレングスまで長い時間をかけたのは、NOVELISTS と同様の手法。そして36分のレコードは、長く待ち続けた Melodilc Hardcore ファンの期待に十分に応える内容となっています。
Tech-Metal シーンにおいて有数の実力を持つギタリスト、 Sam Osborn 擁する NAPOLEON は自らのサウンドを”melodiposipassiongroove” と称しています。実際、INTERVALS meets KILLSWITCH ENGAGE, POLYPHIA meets ARCHITECTS などと例えられる彼らの音楽性は見事にメロディー、ポジティブ、パッション、グルーヴを共存させていますね。
他の Tech-Metal バンドと比較して、NAPOLEON のサウンドを強く特徴付ているのはその大胆なクリーンギターの使用法でしょう。”Stargazer”,”Utopia” のイントロが効果的なのは勿論、”Maps” を聴けば、彼らがまさに “Newborn” な音楽を創造していることが分かります。メジャーキーで、クリーンギター&クリーンボーカルにより紡がれる2分間の小曲は、Math-Rock, Instru-Metal の影響下にありながら、同時にしっかりと Metalcore の土台も感じさせるのです。非常にカラフル、エモーショナルでフレッシュな “Maps” は NAPOLEON のバンドとしての可能性、多様性を証明していますね。
さらに、”Of Jams, Smokes & Promises” のイントロなどは、And So I Watch You From Afar を彷彿とさせるアイリッシュなメロディーが白眉。ユニークなタイムストラクチャーと相俟って Math-Rock からの影響を強く誇示しています。人生を変えたアルバムに、TTNG の作品をチョイスしているように、ここまで Math-Rock とメタル要素の融合を推し進めたアーティストは前代未聞なのではないでしょうか?
新ボーカル、ex-CLIMATES 、Wes Thompson の荒々しいスクリームからエモーショナルなクリーンまで見事にこなす幅広いレンジも実に魅力的です。時に流暢に、時にカオティックに駆け巡る Sam の多彩なフレットワークとの相性も抜群。タイトルトラック “Newborn Mind” では、スーパータイトなリズム隊、特に James Mendoza のスピーディーでメカニカルなドラミングはアルバムを通して素晴らしいですが、の協力もあり、メロディックでありながらテクニカルでヘヴィーという命題をいとも簡単に達成していますね。
“Dystopia” で歌われる “get awake and defeat this” というフレーズは “Utopia” でも再度現れます。「目を覚ませ、挫けるな」、NAPOLEON の音楽は、インタビューでも語ってくれた通り、リスナーに常にポジティブなグルーヴを届けてくれるのです。
今回弊誌では、Sam Osborn にインタビューを行うことが出来ました。日本ツアーも視野に入っていそうですね、どうぞ!!

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NAPOLEON “NEWBORN MIND” : 9.2/10

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