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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【GHOST : PREQUELLE】


COVER STORY : GHOST BEHIND “PREQUELLE”

Tobias Forge Returns, Not As New Papa, But As Symbol Of Pop & Proggy Evolved-Occult Metal, Cardinal Copia!

Story Behind Ghost : From Tobias Forge To Papa Emeritus & Cardinal Copia

GHOST のボーカリスト、ソングライター Tobias Forge は Papa Emeritus I, II, III としてこれまで3枚のアルバムを製作しメタル闇教皇としての地位を確固たるものとしています。ステージではスカルのメイクアップを施し、ルシファーにゾンビの女王、処女の血を浴びたハンガリーの伯爵夫人まで奇々怪界な登場人物と共に異能のオカルトメタルを提示する怪人は、今眩くも華々しいスポットライトをその身に浴びているのです。
しかしその功績に反して、Tobias の実態は深い霧の中にありました。GHOST の発足以来、Tobias は Papa の匿名性を保つためインタビューを拒否し、スポットライトを避け、典型的なロックスターの姿とは確実に距離を置いて来たからです。
Tobias の匿名性が脅かされたのは、解雇した元バンドメンバー Nameless Ghoul 達の反乱がきっかけでした。金銭面、クレジット関連の闘争で司法の場に引きずり出された Papa の実名 “Tobias Forge” は、白日の下に晒されスポットライトを浴びることを余儀なくされたのです。
「一度スポットライトに晒されると、ライトが自分を追わないことを願うか、何かを語るしかない。」と嘯く Tobias。Nameless Ghoul の讒言によりファンの一部がその作曲能力を疑う中、新たなキャストと共に Cardinal Copia、”Copia 枢機卿” として GHOST を “リモデル” した Tobias は、こともなげに新経典、傑作 “Prequelle” を突きつけます。「変わったのは Papa Emeritus から Cardinal Copia への名前だけさ。」と皮肉を込めながら。

GHOST は後にデビュー作 “Opus Eponymous” に収録される “Stand by Him” で2006年に産声を上げました。友人 Gustaf Lindström とレコーディングを行った楽曲は、すでに MERCYFUL FATE のメタリックなエッジと BLUE OYSTER CULT のノスタルジックなメロディーを包含したオカルトメタルの雛形だったと言えます。
しかし、そのサタニックなテーマとヴィンテージ映画のムードに対して、Tobias の少年のようなルックスはミスマッチでした。一般的なロックバンドとは異なる、匿名のシアターバンド “GHOST” というアイデアはそこが出発点だったのかも知れませんね。
驚くべきことに、Tobias は元々シンガーを志向していたわけではありません。Keith Richards と Slash に憧れていたコンポーザーは当初、クールに煙草を燻らすギタリストの地位に収まることを想定していたのです。しかし、Messiah Marcolin, Mats Levén, JB 等ことごとく理想のシンガーに断られた Tobias は自らシンガーを務めることを余儀なくされました。もちろん、後にその選択こそが大成功を引き寄せる訳で、数奇なる運命を感じざるを得ませんね。

では、双子の父親で一般的な社会生活を営む29歳の青年が BLUE OYSTER CULT, PENTAGRAM, SAINT VITIUS, CANDLEMASS, DEMON, ANGEL WITCH といったサタニックドゥーム、メロディーを散りばめた仄暗いロックの世界に身を投じるきっかけは何だったのでしょう。
Linköping にある16世紀に建てられた教会がサタンに身を委ねる一つの契機であったと Tobias は振り返っています。奇妙なペイントとステンドグラス、魔法のように美しく恐ろしい場所。
同時に厳格で意地の悪い義母や教師も彼を悪魔の世界へと向かわせました。KISS の “Love Gun” や RAINBOW を教えてくれた兄 Sebastian だけが唯一の救いでしたが、彼が家を離れると少年 Tobias は益々ファンタジーの世界へとのめり込んでいきました。
とはいえ、SF小説や映画、ストーンズのアルバム、Nikki Sixx と “Shout at the Devil” など、81年生まれの Tobias を悪魔の世界へ後押ししたピースの数々は、依然として年齢の離れた兄の影響下にあったのです。故に、GHOST のデモをネット上にポストしたその日に Sebastian が亡くなってしまったことは、人生観の決め手となったに違いありません。エネルギーのトレードオフ。悪魔は何かを得るために必ず何かを犠牲にするのです。

MY SPACE からグラミーまで、GHOST は決して順風満帆に辿り着いたわけではありません。特にメディアや評論家による “誇大広告” に晒されたアーティストは予定より長い道のりを歩まされ、時にドロップアウトしてしまうことさえ少なくないのですから。Rise Above Records からリリースしたデビュー作、70年代とサタニックなテーマが牽引するポップメタル “Opus Eponymous” は確かに大きな話題を呼びましたが、北米ツアーは順調とは言い難く、よりアーティスティックなセカンドアルバム “Infestissumam” は商業的に奮いませんでした。
“Opus Eponymous” の独創性を押し広げた “Meliora” は潮目を完全に変えた作品だと言えるでしょう。重厚で斬新な “Circle”、冒涜的なバラード “He Is” はスペシャルで、そこからウルトラキャッチーなシングル、YouTube 総再生回数2400万超えのモンスター “Square Hammer” を得たバンドは加速してチャートの壁を突破していったのです。

参考文献:REVOLVER MAGAZINE (2018) “GHOST: THE TRUE STORY OF DEATH, RELIGION AND ROCK & ROLL BEHIND METAL’S STRANGEST BAND”

ビルボード Top200初登場3位という爆発的な成果と共に、シーンへ大きなうねりをもたらした最新作 “Prequelle”。暴かれた匿名性を逆手にとってスポットライトの中央へ躍り出る決意を果たした Tobias は、明らかに以前よりもしたたかです。
もちろん、彼は自らが敬愛する KISS がメイクと共にその魔法を落としてしまったことを知っています。故に、シーンの潮流を GHOST の個性へと鮮やかに昇華するその手法は言葉を失うほどに見事でした。
キーワードは、多様性とポップ。作品の “匿名性” を紐解いていきましょう。

DISC REVIEW “PREQUELLE”

昨年 “最も印象的だったアルバム” の記事にも記しましたが、近年、MASTODON, VOLBEAT, Steven Wilson, PALLBEARER, Thundercat など様々なジャンルの旗手とも呼べるアーティストが “ポップ” に魅せられ、レガシーの再構築を試みる動きが音楽シーン全体の大きなうねりとして存在するように思えます。当然、邪悪とポップを融合させた稀有なるバンド GHOST もまさしくその潮流の中にいます。
「JUDAS PRIEST はポップミュージックを書いていると思う。彼らはとてもポップな感覚を音楽に与えるのが得意だよね。PINK FLOYD も同様にキャッチー。ちょっと楽曲が長すぎるにしてもね。」
と語るように、Tobias のポップに対する解釈は非常に寛容かつ挑戦的。そして実際、アルバムオープナー “Rat” はそのスピリットを存分に反映した極上のポップ/オカルトメタルチューンです。
そのデザインは実にコンパクト。Ozzy Osbourne の隠れた名曲 “Secret Loser” を彷彿とさせる叙情のメロディー、Vivian Campbell と Jake E Lee の落胤にも思えるスタッカートのリフワーク、シンガロングの衝動はとめどなくキャッチーな80年代への招待状。一方で幽玄なヴィンテージのシンセサウンドと聖歌隊の重厚なコーラスは、中世に現代を隠喩したある種ホラーなSFテーマを伴いながら荘厳に楽曲のコアへと付与され、一際洗練されたオカルトメタルの最新形を提示します。
事実、OPETH や ROYAL BLOOD を手がけたプロデューサー Tom Dalgety は時に BOSTON をイメージさせるほどクリアーでキャッチーなコーラスワークを実現し、アルバムを別の次元へと押し進めていますね。
イントロダクション “Ashes” は英国の童謡 “Ring a Ring o’ Roses”。一見牧歌的ですが、日本の “かごめかごめ” “とおりゃんせ” のように、ロンドンの人口1/4を奪った疫病の恐怖を込めた不吉な “怖い童謡” です。もちろん、歌詞の一節 “fun” は “Funeral” に文字られています。
Tobias はしかし 「これはペストをポジティブに捉えた初めてのレコードだろう。」と語っています。徹頭徹尾サバイバルに焦点を当て、逃れられない死の運命に思いを巡らせるチャンスだとも。ペストを拡散した黒死の悪魔 “ラット” は下水道や荷物に紛れあらゆる場所から山のように現れました。SNS で狂気や悪意を拡散する21世紀の “ラット” はさながら私たちなのかもしれません。事実、GHOST が誘う “死” とは肉体的なものとは限りません。現代に蔓延する社会的、精神的な死から逃がれられる場所などもうどこにもないのです。
“Faith” が KING DIAMOND の華麗な鋭利を反映するならば、”Witch Image” は BLUE OYSTER CULT の流脈。「君が浮世のベッドで眠るその時も、誰かの肉体は今夜も腐っていっている」タブーにして真理。死はあらゆる場所、時間に存在します。もちろんダンスの最中にも。
リスナーを不気味なダンスフロアへと誘う “Dance Macabre” はポップメタルの極地、象徴的な楽曲かも知れませんね。KISS の “I Was Made For Loving You” はもちろんロックにディスコを持ち込んだ初めての楽曲でしたが、スポットライトを月明かりに移譲した GHOST の “死の舞踏” はよりロマンティックでシアトリカル。そうして ABBA や ROXETTE のイメージさえキャプチャーした中毒性の極めて高い哀愁のダンスナンバーは、バンドの多様性を証明するマイルストーンともなりました。
モダン=多様性とするならば、70年代と80年代にフォーカスした “Prequelle” において、その創造性は皮肉なことに実にモダンだと言えるのかもしれません。実際、アルバムにはメタル、ポップを軸として、ダンスからプログ、ニューウェーブまでオカルトのフィルターを通し醸造されたエクレクティックな音景が広がっています。
プログレッシブの胎動は “Prequelle” 核心の一部。Tobias はプログロックの大ファンで、作曲のほとんどはプログレッシブのインスピレーションが原型となっていることを認めています。彼が特に愛する URIAH HEEP のスピリットを宿したインストゥルメンタル “Miasma” はその典型かもしれませんね。一方で、そこには Alice Cooper を頂点とする80年代のショックロックや ARTHUR BROWN の遺産も引き継がれており、そのクロスオーバーこそが興味深いのですが。
OPETH の Mikael Åkerfeldt が貢献した “Helvetesfonster” は YES や JETHRO TULL の哲学を色濃く宿すよりトラディショナルなプログレッシブチューン。決してハイパーテクニカルなプレイを要求することはありませんが、とはいえ Rick Wakeman や Keith Emerson の鼓動がここに息衝いていることは明らかでしょう。
ニューウェーブ、DEPEHCHE MODE のイメージを重ねた “See the Light” にも言えますが、シンセサイザー、オルガン、キーボードの響きが GHOST を基点としてシーンに復活しつつあることは喜ばしい兆候だと言えますね。もちろん、サックス、フルート、ハグストロムギターが彩る楽器の多様性も。何より、現在の GHOST には2人の女性キーボード Nameless Ghoul がステージに滞在し、うち1名が時にサックスをプレイしているのですから。SHINING, IHSAHN, RIVERS OF NIHIL などが巧みに取り込んでいるサクスフォンの艶やかな響きはメタルシーンに不可欠なものとなりつつありますね。
コンパクトでしかしあまりに印象深い GHOST 劇場は荘厳なる叙事詩 “Life Eternal” で静かにその幕を閉じます。ウルトラキャッチーでフックに満ち溢れたカラフルなレコードは、数多のリスナーに “メタル” の素晴らしさを伝え、さらなる “信者” を獲得するはずです。
ただし、匿名性を暴かれた Tobias の野望はここが終着地ではありません。多くのゲストスターを揃えたサイドプロジェクトもその一つ。すでに、JUDAS PRIEST の Rob Halford がコラボレートの計画を明かしていますし、これからもスウェーデンの影を宿したメタルイノベーターから目を離すことは出来ませんね。何より、全ては彼の壮大な計画の一部に過ぎないのですから。

GHOST “PREQUELLE” : 10/10

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Universal Music Japan

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUBSIGNAL : LA MUERTA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARKUS STEFFEN OF SUBSIGNAL !!

German Progressive Innovator, Subsignal Walk Toward More Melodic Path And Open To New Influences With Their New Record “La Muerta” !!

DISC REVIEW “LA MUERTA”

ジャーマンプログメタルの唱道者、SIEGES EVEN の血を受け継ぐ嫋やかなる残映。SUBSIGNAL がリリースした最新作 “La Muerta” は、サンタ・ムエルテの名の下にプログシーンの信仰を集め新たな拠り所、守護者となるはずです。
「当時起こったことはとても単純で、個人的な相違だったんだ。最終的にバンドは、Arno と僕、Oliver と Alex の二つに割れてしまったんだよ。」と Markus がインタビューで語った通り、80年代から活動を続ける巨星 SIEGES EVEN が長年の内なる闘争の末2008年に解散の道を選んだニュースは、プログメタルシーンに衝撃をもたらしました。
名手 Wolfgang Zenk がフュージョンに特化した支流 7for4 へと移行し、オリジナルメンバーの Markus が復帰。Andre Matos や Jens Johansson との実験場 Looking-Glass-Self の果てに邂逅したバンド史上最高のボーカリスト Arno Menses を得た 00年代のSIEGES EVEN。
そうして2005年にリリースした8つの楽章から成る “The Art of Navigating by the Stars” が、SIEGES EVEN 独特の世界観に研ぎ澄まされたメロディーが初めて重なり、FATES WARNING の “A Pleasant Shade of Gray” にも比肩し得る壮大なマイルストーンとなった事を鑑みれば、尚更バンドの消滅がシーンにとってどれ程の損失であったか推し量れるはずです。
しかし、Arno と Markus のメロディーとプログレッシブが奏でるケミストリーの二重奏はしっかりと SUBSIGNAL の音に刻まれています。
アルバムが相応に異なる風合いを醸し出していたように、SIEGES EVEN のスピリットはまさに実験と挑戦の中にありました。故に、二人が描く新たな冒険 SUBSIGNAL のサウンドが、プログレッシブワールドのトラディショナルな壁を突き破ることは自明の理だったのかも知れませんね。
キーワードはアクセシブルとエクレクティックでしょう。実際、「Arno と僕は他の異なるジャンルにも興味を持っていてね。」「僕にとって最も重要なのはメロディーなんだ。」と Markus が語るように、遂に本格化した SUBSIGNAL の最新作 “La Muerta” には近年のモダンプログレッシブが放つ波動とシンクロする瑞々しき血潮が注ぎ込まれているのです。
バンドのデビュー作 “Beautiful & Monstrous” 収録の “The Sea” が指針となったように、SUBSIGNAL は知性の額縁とプログレッシブなキャンパスはそのままに、よりソフィスティケートされた筆を携えドラマとエモーション、時にメランコリーをカラフルな多様性と共に一つの絵画、アートとして纏め上げて来ました。
ダンサブルなイントロダクション “271 Days” に導かれ示現するアルバムオープナー “La Muerta” は、バンドのトレードマークを保ちつつ、よりアクセシブルなメインストリームの領域へと舵を切る野心のステートメントです。
Steven Wilson の “To The Bone” を核として、HAKEN, FROST*, TesseracT, iamthemorning といったコンテンポラリーなプログレッシブロースターは恐れる事なくポップを知性や複雑性、多様性と結びつけモダンプログレッシブの潮流を決定的なものとしています。タイトルトラック “La Muerta” で示されたビジョンはまさにそのうねりの中にありますね。
Markus のシグニチャーサウンドであるコード感を伴うシーケンスフレーズは RUSH や THE POLICE のレガシー。現代的な電子音とマスマティカルなリフワークの中で舞い踊る Arno のメロディーは、眠れる John Wetton の魂を呼び覚ましたかのようにポップで優美。コーラスに華開く幾重にも重なるメランコリーは、暗闇から聖人へと向けられた全ての切実な祈り、請われた赦しなのかも知れませんね。
トライバルでシンフォニックな “Every Able Hand”、Markus の主専攻クラッシックギターから広がる雄大な音景 “The Approaches”、一転ブルースやカントリーの郷愁を帯びた “When All The Trains Are Sleeping” など Markus が語る通り実にエクレクティックなレコードで、全ては “Even Though the Stars Don’t Shine” へと収束していきます。
奇しくも Wilson の最新作とリンクするニューウェーブ、シンセポップの胎動、TEARS FOR FEARS や DEPECHE MODE の息吹を胸いっぱいに吸い込んだ楽曲は、同時にリズムのトリックやシーケンシャルなフレーズが際立つプログポップの極み。アルバムに貫かれるは旋律の躍動。
そうして “La Muerta” は iamthemorning の Marjana を起用し、荘厳なる Arno とのデュエット “Some Kind of Drowning” で平等に赦しを与えその幕を閉じました。
一片の無駄もなく、ただ日によってお気に入りの楽曲が変化する、そんな作品だと思います。ピアノからシンセ、エレクトロニカまで自由自在な Markus Maichel の鍵盤捌き、Dirk Brand の繊細極まるドラムワーク、そして RPWL の手によるクリアーなサウウンドプロダクションが作品をさらに一段上のステージへと引き上げていることも記しておきましょう。
今回弊誌では、ジャーマンプログメタルの開祖 Markus Steffen にインタビューを行うことが出来ました。「80年代に SIEGES EVEN を立ち上げたんだ。おそらくドイツではじめてのプログメタルアクトだったと思うよ。」どうぞ!!

SUBSIGNAL “LA MUERTA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALKALOID : LIQUID ANATOMY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALKALOID !!

German Extreme Metal Super Group Alkaloid Shows Amazing Musicianship And Creativity With Their Newest Record “Liquid Anatomy” !! Can You Imagine Yes & Rush Mixed With Modern Metal Aggression?

DISC REVIEW “LIQUID ANATOMY”

テクニカルデスメタルの牙城、ドイツに惹起する維新の兆し。千軍万馬の猛者が締盟したプログレッシブの絆 ALKALOID は、最新作 “Liquid Anatomy” で天壌の宇宙から中毒性のマイクロウエーブを発します。
ALKALOID ほどスーパーバンドの表現が相応しい音楽集団はそう多くはないでしょう。これまでメンバー5人がかかわってきたバンドは、DARK FORTRESS, NONEUCLID, SPAWN OF POSSESSION, OBSCURA, NECROPHAGIST, ABORTED, GOD DETHRONED, BLOTTED SCIENCE と文武両道の精鋭ばかり。
中でも、「僕たちが NECROPHAGIST と OBSCURA で始めたことを今では無数のバンドがやっているんだ。」と語る通り、局所性ジストニアによる中指の不遇をも覆す不屈のギターマエストロ Christian Muenzner、新たに HATE ETERNAL にも加入したギターとピアノを操るドラムユーティリティ Hannes Grossmann のかつての音楽的なアイデアが、現在の包括的な Tech-metal への崇高なるインスピレーションとなっていることは明らかですね。
とはいえ、「僕たちは新たなバンド、プロジェクト、アルバムの度に自分たちを”再発明”するようにしているんだよ。特定のスタイルに執着してしまわないようにね。」と Christian が語るように、 ALKALOID は定型化したテクデスの様式、さらには傑出したデビュー作さえ過去の時空へと置き去りにしながら、RIVERS OF NIHIL, IHSAHN, HAKEN, GHOST ともシンクロするクラッシックなプログのスピリットを昇華した新たなメタルの潮流に身を委ねているのです。
アルバムオープナー “Kernel Panic” こそ進化の象徴。ヴィンテージのシンセサウンドに導かれ、滔々と湧出するシーケンシャルなギターフレーズはまさに YES や RUSH の遺伝子を色濃く宿す鮮やかな落胤。DARK FORTRESS 等で残虐な威厳を浴びせる Morean は、驚くことにその歌唱を Jon Anderson のチャンネルへと接続し、神秘的でキャッチーなロックの崇高美を具現化していくのです。
イーヴィルなディストーションサウンドは変調の証。ナチュラルに獰猛なモダンメタルの領域へとシフトする、一体化したバンドの猛攻は衝撃的ですらありますね。一転、再びプログの多幸感が再臨し、時に相反する二つの次元が融解。TOOL と CYNIC、一方で YES と VAN HALEN が楽曲の中で流動し躍動する “In Turmoil’s Swirling Reaches” にも言えますが、ALKALOID の振るう奇想天外なタクト、コントラストの魔法は実際群を抜いています。
そして先述したバンドと同様に、クラッシックとコンテンポラリー、荘厳と嗜虐、ポップと知性の狭間を自由自在に行き来するこのシームレスなアイデアは、確かに多様なモダンプログレッシブの根幹を成しているはずです。ただし、ALKALOID のプログレッシブには特に “90125” や “Signals” など80年代の風を受けた独特の色香も存在しますが。
MORBID ANGEL と MESHUGGAH が同乗する重戦車 “As Decreed by Laws Unwritten”、トライバルで複雑なリズムに呪術と叙情のボーカルが映え GOJIRA の理念ともシンクロする “Azagthoth” でブラックホールの物理現象を追求した後、バンドはタイトルトラック “Liquid Anatomy” でさらに新たな表情を披露します。
実際、これほど感動的で心を揺さぶるバラードと、エクストリームメタルのレコードで出会えるとは僥倖以外何者でもないでしょう。GENESIS や PORCUPINE TREE の叙情、クラッシックや教会音楽のスピリットをダークに消化した荘厳の極みは、感情の波間を悲哀で染め抜きます。
アルバムを通して言えますが、特にこの楽曲で聴くことの出来る Christian のエモーションとテクニック全てを楽曲のためだけに捧げた神々しきソロワークは、最後の “ギターヒーロー” を誇示して余りある激情とスリルに満ちていますね。
アルバムを締めくくるは20分のラブクラフトモンスター、6つの楽章から成るエピック “Rise of the Cephalopods” は ALKALOID 版 “2112” もしくは “Cygnus X-1 Book II: Hemispheres” なのかも知れませんね。プログロックの構成美、モダンメタルの複雑なグルーヴ、モダンプログの多様性にアトモスフィア。全てがここには存在します。現存の南極大陸を葬り、頭足類が進化を遂げる “If” の SF ストーリーは、実はシーンと自らの立ち位置を密かに反映しているのかも知れませんね。
今回弊誌では、Morean, Hannes, Christian の3名にインタビューを行うことが出来ました。 NECROPHAGIST や OBSCURA についても重要な証言が飛び出したと思います。「Hannes がアルバムのいくつかの瞬間で “90125” の時代を超越したサウンドに近づいたという事実は、彼がそれを意図しているのかいないのかに関わらず、エンジニア、プロデューサーとしてのスキルに対する大きな賛辞だよ。 1983年に彼らが成し遂げたサウンドを超えるものは、今日でもほとんどないからね。」どうぞ!!

ALKALOID “LIQUID ANATOMY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERS OF NIHIL : WHERE OWLS KNOW MY NAME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM BIGGS FROM RIVERS OF NIHIL !!

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Pennsylvania Based Progressive Death Metal Quinted, Rivers Of Nihil Contribute To Re-branding Death Metal Into A Eclectic, Expressive Art-form With Incredible New Record “Where Owls Know My Name” !!

DISC REVIEW “WHERE OWLS KNOW MY NAME”

遂に食物連鎖の頂点へと躍り出たペンシルベニアの梟神 RIVERS OF NIHIL が、深遠かつエクレクティックなプログレッシブデスメタルへとドラスティックな変貌を果たす傑作 “Where Owls Know My Name” をリリースしました!!生と死、そして知性を司る伝承の神明は、猛禽の鋭さと神々しきアトモスフィアでシーンの潮流を支配します。
テクニカル、メロディック、デスコア、ブルータル。雨後の筍のごとく現れるデスメタルアクトの大半は、エモーションのスペクトルを怒りに起因する狭い領域へとフォーカスし、ある意味では檻の中で固定観念と共に囚われているようにも思えます。
「この作品では、僕たちが期待されているようなサウンドを放棄した。」と Adam が語るように、RIVERS OF NIHIL が “Where Owls Know My Name” で達成した偉業は、真にユニークな感性で鋼鉄の慣習から羽ばたいたその勇気にあると言えるでしょう。
多様で創造性に満ち、複雑でしかし凄艶な星の一生を目撃するサイエンスフィクションは、数年前に FALLUJAH がアトモスフィアと共に導入したジャンルのパラダイムシフトをも超越し、さらに時空を行き来するタイムマシンなのかも知れませんね。
アルバムオープナー “Cancer / Moonspeak” は来たるべき運命、旅路のムードを決定づけます。まるで CYNIC のような浮遊するアンビエントは、アコースティックの響き、レトロなシンセ、ムードに満ちたクリーンボイスを伴ってリスナーを深遠なるストーリーへと誘います。
刹那、雷鳴のように鋭利なギターリフが轟くと雰囲気は一変。革命的な “The Silent Life” がスタートします。揺るぎのない無慈悲なアグレッションとインテンスは、徐々に理知的なギターと官能のサクスフォンが支配するスロウなジャズブレイクへと転換していきます。その変化は驚くほどにナチュラルでオーガニック。そうして静と動、混沌と平穏のコントラストは終盤に向けて奇跡の融解を遂げるのです。まるで人生本来の姿を描くかのように。
CANNIBAL CORPSE と KING CRIMSON が果たした未知との遭遇。例えることは容易いですが、実際、獰猛な猟奇性と神々しき英知を寸分も失うことなく一つのサウンドクラフトに収めることがどれほど困難かは想像に難くありません。何より彼らのデザインはあまりに自然で、神々の創造物のように生き生きとした姿を晒しているのですから。
厳かなクリーンボーカルを導入し、モダンなメロディックデスメタルにサイケデリックな夢幻のアトモスフィアを付与した “A Home”、激烈なアサルトに一片の叙情を込めて老衰の無常を伝える “Old Nothing” を経て辿り着く “Subtle Change (Including the Forest of Transition and Dissatisfaction Dance)” はアルバムのハイライトだと言えるでしょう。
“Epitaph” を思わせる悲壮なアコースティックをイントロダクションに据えた8分30秒のエピックは 「KING CRIMSON は僕のオールタイムフェイバリットバンドなんだよ。」と Adam が語る通りクラッシックなプログロックの息吹を全身に宿した濃密な叙情のスロウダンス。ソフトでエレガントな繊麗と、野蛮で蒼然としたアグレッションは、ギターやサクスフォン、オルガンのトラディショナルで大胆ななソロワーク、プログロックのダイナミックな変拍子やシーケンスを抱きしめながら、詩情と偉観そして奇妙なカタルシスを伴って文明の移り変わりを描く壮大なマグナムオパスを形成するのです。
一方でこの大曲には、djenty なリフワークやシンフォブラックの狂騒などコンテンポラリーな一面も散りばめられており、幽玄なクリーンボイスが創出する崇高美とも相俟って、もしかすると NE OBLIVISCARIS が纏う神秘ともシンクロしているのかも知れませんね。
続くインストゥルメンタル “Terrestria III: Wither” では、情景を切り取るポストロックのデザインを導入し、コンテンポラリーなエレクトロニカやアンビエント、インダストリアルノイズのキャンパスに冷徹かつ耽美な絵巻物を描いてみせるのですから、バンドのエクレクティックな感性、タイムラインの混沌には驚かされるばかりです。
アルバムは、バンドの審美を全て詰め込んだタイトルトラックで再度サクスフォン、ヴィンテージシンセ、クリーンボイスの温もりを呼び起こし作品のコアを認識させた後、ダークなギターがメロトロンの海を切り裂く “Capricorn / Agoratopia” で荘厳にリリカルに、一握りの寂寞を胸に秘め星の死を見届けながらその幕を閉じました。
今回弊誌では、ベース/クリーンボーカルを担当する Adam Biggs にインタビューを行うことが出来ました。まさにメタルとプログのタイムラインに交差する異形のランドマーク。モダン=多様性とするならばこの作品ほど “モダン” なスピリットを抱いた奇跡は存在しないでしょう。ex-THE FACELESS の Justin McKinney、BLACK CROWN INITIATE の Andy Thomas もゲストとして素晴らしい仕事を果たしています。どうぞ!!

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RIVERS OF NIHIL “WHERE OWLS KNOW MY NAME” : 10/10

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EXCLUSIVE INTERVIEW 【CONCEPTION : ROY KHAN】2018 REUNION SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROY KHAN OF CONCEPTION !!

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The Voice Of Prog-metal, Former Kamelot Singer Roy Khan Is Back With Reunited Norwegian Legend Conception !!

CONCEPTION IS BACK !!

時代に咲いた鮮やかな徒花、ノルウェーが産んだプログメタルレジェンド CONCEPTION が遂に帰ってきます!!長すぎた沈黙を破る伝説の帰還は、不世出のシンガー Roy Khan の復活を伴いシーンに歓喜の渦を巻き起こしています。
KAMELOT の金看板として、その艶やかで煽情的な歌唱を披露していたスーパースター Roy Khan がバンドからの脱退を表明したのは 2011年春の事でした。音楽大学でオペラと声楽を学んだ Roy の歌唱技術、歌に込めるエモーション、ファルセットの魔法は別格。「もし僕があの時 KAMELOT を辞めていなかったとしたら、今日僕はここにいないだろう。」とインタビューで語った通り、不可避な “燃え尽き症候群” の治療が要因とはいえ、作曲にも大いに貢献を果たしていたマエストロ突然の離脱はあまりにショッキングな出来事でした。
「僕は本当に音楽に関係する全ての人に対して、全てのコミュニケーションをシャットダウンしたんだからね。」音楽から離れていた7年間、Roy は教会の職員や教師として働いていたようです。その生活も悪くはなかったと話すシンガーは、しかし遂に自身の才能を再び世界に解放する準備が整ったと溢れる自信を漲らせます。
「実際に僕たちが解散したことはないんだよ。何と言うか、棚上げしていたって感じだったね。」 という言葉が裏付けるように、友人として連絡を取り続けていた CONCEPTION が Roy 復帰の舞台となったのは自然で最良の選択に思えます。実際に、バンドは2005年にライブ限定で一時的なリユニオンを果たしていますし、”ここ何年かは何度も、いつかある時点で何かやりたいねと話して” いた訳ですから。
神秘的で崇高、ある種哲学的とも言える CONCEPTION の “プログレッシブ” は、登壇が少し早すぎたのかもしれませんね。スパニッシュギターが夕日に映えるデビュー作 “The Last Sunset”、キャッチーでドラマティック、稀代のバラード “Silent Crying” を擁する “Parallel Minds”、複雑かつ荘厳な楽器の宗儀 “In Your Multitude”、そして冷徹でダークな歌の涅槃 “Flow”。
「僕たちはいつも、自分たちをリニューアルしようと心掛けて来たんだよ。それまでに作った楽曲のようなサウンドを持つ新曲を作らないというのが、バンドのポリシーだったんだ。」と語る通り、これまで CONCEPTION が残した4枚の作品は確かに全て合わせた焦点が異なります。
しかしそれでもその勇敢なる多様性、DREAM THEATER の “Awake” を推し進めたかのような独特の内省的なアトモスフィア、近年の FATES WARNING にも通じるインテリジェンスの糸を巡らすダークなインテンシティー、そして SEVENTH WONDER にも受け継がれた洗練のデザインは全ての作品に浸透しており、まだまだ与し易いスピード&パワーが全盛だった当時よりも、エクレクティックなモダンメタルのスピリットが透徹した現在こそ正当な評価が得られるはずです。
すでに先を見据えるバンドの復活EPは秋にリリースが予定されています。「僕たちの全ての歴史、要素がミックスされるわけさ。」と語る Roy ですが、その歴史にはもちろん自身が経験した KAMELOT での荘厳な旅路や、フラメンコの情熱をその身に宿すギターマイスター Tore Østby が ARK で育んだプログレッシブな冒険も含まれているはずです。期待に背くことはないでしょう。そして願わくば、失った20年を取り戻すコンスタントな活動を望みたいところですね。
今回弊誌では、ボイス・オブ・プログメタル Roy Khan にインタビューを行うことが出来ました!Welcome Back Roy, and CONCEPTION! Here We Go!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AUGURY : ILLUSIVE GOLDEN AGE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATHIEU MARCOTTE OF AUGURY !!

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Augury Give Proof Why Montreal, Quebec Is The Prog/Tech Capital Of The Western Scene With Long-awaited New Record “Illusive Golden Age” !!

DISC REVIEW “ILLUSIVE GOLDEN AGE”

CYNIC の後には、そして BEYOND CREATION の前には彼らが居た。OBSCURA と共にテクニカルデスメタルのプログレッシブサイドを探求し先導し続けるカナダの SF メタル集団 AUGURY が実に9年振りとなる新作”Illusive Golden Age” をリリースしました!!
“黄金時代” が “幻” ではないことを確かに証明する一枚は、テクデスの燎火を明々と灯す躍動感に満ちています。
カナダが誇るモントリオールとケベックの二大都市は、テクニカルデスメタルのメッカだと言えます。GORGUTS, CRYPTOPSY に端を発するその潮流は、MARTYR, BEYOND CREATION などに引き継がれ、近年の “Stay-Tech” メタルマシーン ARCHSPIRE まで脈々と連なります。
中でも、AUGURY の宿すエモーションと有機的なサウンド、クリエイティビティーはジャンルの無慈悲でメカニカルな特性を超越し、明らかに異彩を放っているのです。
9年の沈黙を破るアルバムオープナー “Illusive Golden Age” は風雲児たるバンドの型破りな一面が存分に示された戦慄。このジャンルの定番であるシンフォニックなイントロダクションや、ファストな音の洪水には脇目も振らず、独特のエスニックなスケールとクリーンギターのアクセント、そしてフレットレスベースの浮遊感が奏でるユニークな三重奏こそ彼らの狼煙。
神秘と孤高のメロディーセンス、空間を残したミッドテンポのリフワークは襲い来るヒステリックで噛みつく牙のボーカルとブラストの狂気を際立たせ、ダーティーに歌うSFの奇妙なワルツへと収束して行きます。失われた文明と知識を探るリスナーの旅は、得体の知れない未知なるエキサイトメントでその幕を開けるのです。
ステレオタイプのテクニカルデスメタルからさらに距離を置いた “Carrion Tide” はバンドの緻密なタクティクスを象徴する楽曲かも知れませんね。メタルリスナーにまるで施しを与えるかの如く付与されたブラッケンドのアグレッションは、AUGURY の持つ個の力によって様々なエモーションへとその形を変えて行きます。
ディープなガテラルからヒステリックなスクリーム、ミドルレンジの雄々しきクリーンまでメタルボーカルのショウケースにも思える Patrick Loisel のワイドな才能は移り行く喜怒哀楽を完璧なまでに表現し、起伏に富んだ楽曲のメインパーソナリティーとして君臨します。
ギタリスト Mathieu Marcotte の DEATH や CYNIC に VOIVOD、さらには OPETH や EMPEROR の遺伝子を受け継ぐ複雑でスリリングなリフの猛攻は、カタストロフィーが眼前に迫るかのような錯覚を引き起こし、ex- BEYOND CREATION の怪物 Dominic “Forest” Lapointe はフレットレスベースの酩酊でサイケデリックな静謐の焼け野原を描くのです。
MESHUGGAH と CYNIC が凌ぎを削る “Mater Dolorosa”、ゲーム音楽の影響を感じさせるサイバーなインストゥルメンタル “Message Sonore” を経て辿り着く、最長8分の “Anchorite” でアルバムはその幕を閉じます。
“Anchorite” とは、抗し難い理由で社会や故郷を離れ一人で暮らす宿命の意。もしかするとそれは、大災害で滅びし失われた文明最後の生き残りだったのかも知れません。焦燥と惜別、そして寂寥感を込めた過去からのメッセージは、メランコリーとアンビエンス、そしてアグレッションが渾然一体となったオデッセイ。
最高のミュージシャンシップで「異なる感覚を持って独自のサウンドを築き上げた」AUGURY の神話は、そうしてさざめく波の音と共に自然の元へと帰って行きました。
今回弊誌ではバンドの中心人物 Mathieu Marcotte にインタビューを行うことが出来ました。「個人的には確かにテクデスを聴いてはいるんだけど、そのスタイルからそんなに多くの影響を受けている訳ではないからね。逆に言えば、そうでなければ同じ様なサウンドになってしまうからね。 」リリースは DARK MATTER SECRET, EQUIPOISE, INFERI 等を抱える超注目株 The Artisan Era から。どうぞ!!

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AUGURY “ILLUSIVE GOLDEN AGE” 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SLUGDGE : ESOTERIC MALACOLOGY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATT MOSS OF SLUGDGE !!

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Mollusk-themed Tech Death King, Slugdge Has Just Released Their Most Adventurous, Complex And Progressive Album Yet, “Esoteric Malacology”!!

DISC REVIEW “ESOTERIC MALACOLOGY”

イングランドとスコットランドの稜線より這い出し軟体動物王 SLUGDGE が、カウンターカルチャーとしてのメタルを存分に追求した “深遠なる軟体動物学” “Esoteric Malacology” をリリースしました!!
メタルの狂騒と尊厳を等しく抱きしめ、ドラマ性と知性を高次元で融合させた独創的なレコードは “メタルの進化” を雄弁に物語ります。
「ヘヴィーメタルはアウトサイダーのための音楽さ。君たちが愛していようが嫌悪していようが、カウンターカルチャーとして永遠に存在し続けるんだ。」と Matt が語るように、SLUGDGE のはヘヴィーメタルのジョークにも思える過度なファンタジーや想像力を敢えて前面に押し出しながら、シリアスかつハイクオリティーなサウンドをデザインすることでアウトサイダーとしての矜持を保つ以上の存在感を発揮していると言えるでしょう。
“Esoteric Malacology” も、当然その彼らの流儀に乗っ取って制作されたレコードです。楽曲はバンドのビッグテーマである “カタツムリ” “ナメクジ” その他軟体動物に捧げられ、歌唱やリフの持つ莫大なエネルギーで軟体動物の神々を祝福しています。
そして、ギミックにも思えるその大袈裟で奇想天外な劇画的手法は、例えば CANNIBAL CORPSE がそうであるように、キラーでシリアスな楽曲を伴うことで異端の享楽を宿す巨大なカタルシスを誘うこととなるのです。
GOJIRA の楽曲 “Esoteric Surgery” へのオマージュにも思えるアルバムタイトルは、確かにフランスが生んだ不世出のプログレッシブメタラーへの接近を示唆しています。そして、”The Spectral Burrows” が “The Way Of All Flesh” の息吹を胸いっぱいに吸い込んだ傑出したプログメタルチューンであることは明らかでしょう。
EDGE OF SANITY の “The Spectral Sorrows” を文字ったに違いないドラマティックなエピックは、複雑かつ重厚なテクスチャーがテクニックの荒波に跋扈する濃密な5分50秒。荘厳でしかし闇深きそのアトモスフィアは、聴く者の脳波を直接揺さぶり音の酩酊へと誘います。
比率の増した神秘のクリーンボーカルは絶妙のアクセント。ENSLAVED に備わった全てを洗い流すかのような神々しさとは異なり、混沌も崇高も全てを包括したダークロード “Mollusa” への捧物、破滅的にキャッチーなその調べは、異世界への扉を厳かに開く確かな “鍵” として機能しているようにも思えます。
軟体動物の柔軟性を活かした “Putrid Fairlytale” は SLUGDGE を象徴するプログレッシブデスメタル。NAPALM DEATH の “Lucid Fairytale” をオマージュしたタイトルからは想像もつかない劇的なドラマが繰り広げられています。
ここまで記して来た通り、”Esoteric Malacology” の楽曲タイトルは偉大な先人たちの足跡に対するオマージュとなっています。 “War Squids” は BLACK SABBATH の “War Pigs”、”Slave Goo World” は SEPULTURA の “Slave New World”、”Transilvanian Fungus” は DARKTHRONE の “Transylvanian Hunger” 等。そして “Putrid Fairlytale” にはそういった彼らが愛する様々なジャンルのメタルが触手で繋がり凝縮されているのです。
プログの色合いを帯びた鋭利なリフワークと相対するブラストビート。一方で、粘度の高いミッドテンポのグルーヴと荘厳なるボーカルメロディー。繊細かつ印象的な電光石火のギターシュレッドを極上の味付けに展開する魅惑のテクデスオデッセイは、Matt が語る “ヘヴィネスの秘密” を見事に体現しながらまさにバンドが理想とするメタルを描き出していますね。
スロウでドゥーミー、ロマンチックとさえ言える “Salt Thrower” で塩に溶けゆくナメクジの悲哀を全身で表現した後、アルバムは “Limo Vincit Omnia” でその幕を閉じます。ラテン語で “スライムは全てを征服する” の意を持つエネルギッシュなナンバーは、「メタルが進化し続けるためには影響の外側から新たなアイデアを取得する必要があるように感じるね。」と語る通りエレクトリックなサウンドまで包括し、意義深き実験と学問の成果を誇らしく報告しています。
今回弊誌では、バンドのギター/ボーカル Matt Moss にインタビューを行うことが出来ました。ギタリスト Kev Pearson とのデュオでしたが、インタビュー後に THE BLACK DAHLIA MURDER のドラマー Alan Cassidy と NOVENA の ベースマン Moat Lowe が加わり完璧すぎるラインナップを完成させています。どうぞ!!

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SLUGDGE “ESOTERIC MALACOLOGY” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INTO THE GREAT DIVIDE : INTO THE GREAT DIVIDE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZACK ZALON OF INTO THE GREAT DIVIDE !!

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Incredible Multi-instrumental Player, Zack Zalon Creates Pure Prog-metal Epic “Into The Great Divide” With Dream Theater’s Maestro Mike Mangini !!

DISC REVIEW “INTO THE GREAT DIVIDE”

マルチインストゥルメンタリスト、伏竜 Zack Zalon が提唱し、Mike Mangini, Richard Chycki の DREAM THEATER 人脈が入眼へと導いた “ロックノベル” プロジェクト INTO THE GREAT DIVIDE が渾身のデビュー作をリリースしました!!プログメタルのレガシーを存分に咀嚼し忠実に新構築する彼らの純粋なる流儀は、細分化極まるモダンメタルの風土へ却って新鮮な風を運びます。
プログロックの中でも特に RUSH や YES の持つエピカルなメロディー、繊細なテクニック、数学的な変拍子、壮大なオーケストレーションをメタルと融合させたプログメタル。DREAM THEATER, FATES WARNING の二大巨頭を始祖とするジャンルは黎明期から様々にユニークなバンドを多く輩出しています。
SHADOW GALLERY, LIQUID TENSION EXPERIMENT, MAGELLAN, ICE AGE, DALI’S DILEMMA。プログメタル、シュレッドに特化した偉大な Magna Carta, Shrapnel 両レーベルが残した遺産は決して安易に風化させてしまうべきではないはずです。(余談ながら ICE AGE デビュー作のタイトルは奇しくも “The Great Divide”。)
「これは疑いようもなくプログミュージックだよ。自分自身で聴きたいような作品を作ることに決めたんだ。だから、ある意味この作品は僕が聴いて育ったバンドたちへのオマージュの意味も持つわけさ。」 Zack が語るように、INTO THE GREAT DIVIDE は確かにプログメタルの原点とも言えるトラディショナルなポリリズム、クラッシックロックのメロディー、フラッシーなギターとエピックなキーボードに彩られ、無類の遺産を相続するに相応しきヴィジョンを提示しています。
同時により洗練されたデリケートなアレンジメント、ピアノやストリングが生み出す静と動のダイナミックなコントラスト、幻想的でシネマティックなオーケストレーションは 「それでいてフレッシュで異なるものに仕上がっていればと思う。」 というマスターの言葉を裏付けますね。
オープナー、”The Crossing” や冒険へ誘う “A Call to Adventure” はまさにレガシーとコンテンポラリーが交差するグランドライン。Zack がドラムス以外全ての楽器を手がけることで、楽曲のデザインはより密にその完成度を高めます。
冒頭にピアノやギターで示される魅力的な楽曲のテーマが、リズムや音階を少しづつ変えながら優美に展開していく様は実に音楽的で圧巻。鬼才 Brendon Cassidy のオーケストラアレンジメントも呼応し溶け合い、プロジェクトが提唱する小説や映画のようなプログメタルは見事にリスナーの想像力を喚起するのです。
フレッシュと言えば、インストゥルメンタルでありながらアルバムに濃密なストーリーを抱かせる “ロックノベル” のアイデアに触れない訳にはいきませんね。楽曲毎に用意されたイントロダクション、ディープボイスのナレーションは雄弁にして簡潔に逆境に打ち勝つ勝利の道筋を語ります。確かに全曲に解説が付与されたインストルメンタルアルバムは前代未聞で、特に英語をネイティブとするリスナーにとっては画期的なコンセプトでしょう。
Zack の全く弾き控えしないシュレッドも本作の重要なセールスポイントです。Lukather や Huff にリスペクトを捧げる Zack。経過音を豊富に組み込んだリズミックでジャジーなマエストロの滑らかなギター捌きは真に卓越しています。
加えて、折に触れて出現する様々な Shrapnel ロースターをイメージさせる場面、パッセージも好き者には溜まりませんね。Petrucci は元より、Steve Morse や MacAlpine, ロマンチックなフレーズは Neil Zaza、さらには Michael Lee Firkins のカントリーテイストまで垣間見ることが出来るのですからあの時代を愛するリスナーにとっては堪えられない贈り物となるはずです。
“Challenge Accepted” で披露するトライバル&マシナリー、刻刻と移行する拍子の魔法を完全掌握した性格無比なプレイが代弁するように、クリエイティブかつ的確に楽曲を支える手数王の素晴らしさは最早語るまでもないでしょう。
今回弊誌では、Zack Zalon にインタビューを行うことが出来ました。「Mikeはプロジェクトの熱心な支持者として参加し、彼の並外れたスタイルと能力をアルバムにもたらしてくれたんだ。」 どうぞ!!

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INTO THE GREAT DIVIDE “INTO THE GREAT DIVIDE” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GOOD TIGER : WE WILL ALL BE GONE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DERYA NAGLE OF GOOD TIGER !!

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“Some Kind Of Rock” Super Group, Good Tiger Shows their High-level Talent And Splendid Chemistry With Newest Record, Statement of Evolution “We Will All Be Gone” !!

DISC REVIEW “WE WILL ALL BE GONE”

TesseracT, THE FACELESS, THE SAFETY FIRE。コンテンポラリーなプログレッシブワールドを象徴する三傑から雄飛せし5人の寵児が集結したスーパーバンド GOOD TIGER が、確かな飛躍の証 “We Will All Be Gone” をリリースしました!!ウルトラキャッチーでエモーショナル、ハイパーテクニカルで、しかし素晴らしくコンパクトに設計されたレコードは、精強なる “雄々しき猛虎” の降臨を世界へと知らしめるでしょう。
2015年に “A Head Full Of Moonlight” で月光の下華麗に登壇した GOOD TIGER は、”Some Kind of Rock” “何かしらのロック” を指標し、その出自であるプログレッシブな感覚と共にポストハードコアのエモーションを枢軸としたモダンな多様性を披露し注目を集めて来ました。
PERIPHERY, VEIL OF MAYA, AUGUST BURNS RED, BETWEEN THE BURIED AND ME, DANCE GAVIN DANCE といったシーンを牽引するビッグアクトとのツアー、さらには古豪 Metal Blade Record との契約はその事実を端的に物語っているはずです。
追い風を受けリリースされた3年振りの新作 “We Will All Be Gone” は、そしてその大きな期待に真っ向から応え全ての面でスケールアップを果たした快作に仕上がりました。眩いメロディーは Elliot の透き通る詩情と共に磨き上げられ総天然色の輝きを放ち、侘び寂びを湛えた美しき至高のコードヴォイシング、思考の粋を尽くしたインストルメンタルパッセージを携えてリスナーに37分の “瞬間的な” カタルシスを届けるのです。
同時に、デビュー作に存在した Djent の潮流、プログレッシブの波動はよりナチュラルにまるで “痕跡” のように楽曲へと吸収され、成熟を果たした猛虎の今を伝えます。
あまりにソリッドでフックに満ちたアルバムオープナー “The Devil Thinks I’m Sinking” は進化の象徴です。CHON を想起させる甘やかなコードの響きに、エンジェリックな Elliot のファルセットが溶け合い昇華するアトモスフィアの洪水は、実にモダンなワイドスクリーン。一方、Alex Rüdinger はその広大かつ傑出したアビリティーで、ロックのグルーヴと的確なアクセント、そしてプロギーで複雑なタイム感とフィルインを司り楽曲を見事にドライブへと誘います。
実際、このプリティーで現代的なコードプログレス、クリーンで繊細なプロダクション、幾重にもレイヤーされた有機的なコーラスとギターの饗宴をプログメタルと称することは、時にその “痕跡”が素晴らしき隠し味、グルーヴのストライドとして見え隠れするにしても、些か的外れにも思えます。
むしろ、インタビューで Derya も認めているように、HAIL THE SUN, STOLAS, SIANVAR, そして何より Blue Swan ロースターの首領でもある DANCE GAVIN DANCE といったポストハードコアの文脈で語られるほうが、今作の感情とテクニックの爆発的なモメンタムを示すにはよりシックリとくるのではないでしょうか。
とは言え、バンドが一般的な “ポストハードコア” の狭い枠へと収まらないことも確かです。”Blueshift” や “Cherry Lemon” で提示したエレクトロニカの儚い響きとデジタルビートをフィジカルで再現する試みは楽曲のメランコリーや郷愁を想像以上に際立たせていますし、時には PINEGROVE をさえ思わせるチル感までをも創出し、さらにアルバムを締めくくる “I’ll Finish This Book Later” では Prince を愛する Derya の魂が R&B の風となり Robert Glasper とも共鳴しながら嫋やかに吹き抜けて行くのですから。
「GOOD TIGER は様々な形で理解され楽しんでもらうことが出来るバンドだと確信しているよ。そしておそらく、僕たちは自らをそれ故に “Some Kind Of Rock” “何かしらのロック” と呼んでいるんだと思うな。」 この刹那を喚起する瞬間の美学は、ジャンルもスタイルも飛び越えて”Some Kind of Important” 重要な何かをシーンに突きつけているのかも知れませんね。
Forrester Savell (KARNIVOOL, DEAD LETTER CIRCUS), Adam “Nolly” Getgood (PERIPHERY, AAL) が残した驚異的にクリアーなサウンドプロダクションの妙も付け加えておきましょう。
今回弊誌では、Derya Nagle にインタビューを行うことが出来ました!2度目の登場となります。「ありがたいことに、僕たちはある特定のジャンルに従う必要もないから、とにかく好きなことをやりたいようにやっているだけさ!」 どうぞ!!

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GOOD TIGER “WE WILL ALL BE GONE” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORPHANED LAND : UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHEN BALBUS OF ORPHANED LAND !!

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Israel Based Middle-East’s Oriental Metal King, Orphaned Land Shows Their Protest & Anger To “Big Machine” With Their Newest Record “Unsung Prophets & Dead Messiahs” !!

DISC REVIEW “UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS”

オリエンタルメタルの創始者にして、愛と平和の伝道師。イスラエルの至宝 ORPHANED LAND が偏見の鎖を断ち切る最新作 “Unsung Prophets & Dead Messiahs” をリリースしました!!複雑で荘厳、そして何より怒れる正義のアルバムは、世界を支配する全ての権力、不条理に対する強烈なプロテストとなるはずです。
90年代初頭からまさに “孤立した地” イスラエルで生を受けた ORPHANED LAND は、自らの地理的、文化的出自と真っ直ぐに向き合いながら不屈の精神でその活動を続けて来ました。
あのドキュメンタリー映画 “グローバルメタル” で驚愕と共に世界が発見した、西洋を起源とするメタルのフレームに中東のオリエンタルなフレーバーや民族楽器を持ち込む独特の手法は勿論正直で真摯なバンドの象徴だと言えますね。しかし、それ以上にアラビアを起源とするユダヤ、イスラム、キリスト三つの大宗教の融和を願い貫かれるバンドの高潔なるスピリットこそが多くのファンを魅了する理由なのかも知れません。
バンドが掲げるその崇高な理念が結実した傑作 “All is One” から5年のインターバルを経てリリースされた “Unsung Prophets & Dead Messiahs” は、祈りと願いで満たされた前作とは異なりより具体的に人の革新を促すアルバムだと言えるでしょう。
バンドはこれだけ政治、戦争、経済が危機に面する世界で沈黙を貫く世論に疑問を投げかけます。この状況はプラトンの “洞窟の比喩” ではないかと。残念ながら民衆は抜け出す努力を嫌い、暗い日常でも耐え時にはそれにしがみつきます。事実、キリストからガンジー、キング牧師、ケネディ大統領まで世界を救う “預言者”、もしくは “メシア” といった存在の多くは変革を起こす前に暗殺されて “歌い続ける” ことも叶わなかったのですから。
沈黙、停滞への義憤を宿すアルバムは、ギターと民族楽器を操る Yossi Sassi 脱退後初のアルバムともなりました。とは言え、当然 ORPHANED LAND に停滞などは似合いません。
「バンドにメインコンポーザーは存在しないよ。誰もが作曲していて、僕たちは各自のリフを巧妙にマッシュアップしているんだ。さながら大きなジグソーパズルのようにね。」 と Chen が語るように、より奔放で展開の妙を増したエピカルな楽曲群に大黒柱不在の影は感じられませんね。
さらに思索を進めれば、「”All is One” では確かに僕たちは意図的にグロウルを避けていたね。だけど、”Unsung Prophets & Dead Messiahs” では、全ての側面でただ音楽にメッセージを語らせることにしたんだ。」 という言葉に目が止まるはずです。
怒りや嘆きがプログレッシブなデスメタルのムードへと幾分か変換された作風は確かに過去の “Mabool” や “The Never Ending Way of ORwarriOR” を想起させますが、同時にここには未だ前作で開花した祈りのオーケストレーションやシンフォニックなコーラスも華麗に息づいており、結果としてそのキャリアを集約したかのような進化を遂げたと言えるのかも知れませんね。
女性ボーカルと壮麗なストリングスが誘うオープナー “The Cave” はその進化の象徴。極上のエモーションを湛える当代きっての歌い手 Kobi Farhi が時に壮大なクワイアと、時に自らの凶暴なグロウルと繰り広げるコール & レスポンスは、コントラストの魔法、異国のメロディーとシンセサイザーの響きに抱かれオリエンタルメタルを一際尊きメタルオペラの高みへと導きます。
8分間の観劇の一方で、RAMMSTEIN を思わせるダンサブル & キャッチーな “We Do Not Resist” は、エレクトロニカとオーケストレーションの海原を中東の民族楽器がまるでモーゼのように闊歩する異端でしかし印象的な楽曲。コンパクトで強靭なデザインは確かに新機軸。ダイナミックで一切予定調和のない冒頭の2曲でリスナーは自らの “洞窟” から抜け出るはずです。
さらに PORCUPINE TREE や GENESIS, PINK FLOYD の面影を宿すプログレッシブメランコリックな “Chains Fall to Gravity” では Kobi の名唱とレジェンド Steve Hackett の名演を同時に堪能出来る佳曲。まるで演歌のような一期一会の熱唱が生み出す情念は、いつしか Steve の左手へと乗り移りブルースの優しさでリスナーを繋ぐ頑なな鎖を断ち切って行くのです。Jens Bogren のしなやかなサウンドデザインも相変わらずお見事。
BLIND GUARDIAN の Hansi Kursch がトレードマークのメロディーで色香を漂わせるトラディショナルなメタルアンセム “Like Orpheus”、AT THE GATES の Tomas Lindberg が唸りを上げるコンテンポラリーな “Only the Dead Have Seen the End of War” まで ORPHANED LAND はそうやって思想や人種、宗教のみならず音楽の世代やジャンルも繋いでいるのかも知れませんね。
今回弊誌ではギターと木琴、さらにブズーキ、サズ等の民族楽器を扱う Chen Balbus にインタビューを行うことが出来ました! 「影響力は僕たちが望むほど大きくはないんだよ。だけどね、一つくらいは希望が必要でしょ?」 4月の来日も決定しています。どうぞ!!

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ORPHANED LAND “UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS” : 9.8/10

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