THE 100 BEST MODERN METAL ALBUMS OF THE DECADE: 2010 – 2019


THE 100 BEST MODERN METAL ALBUMS OF THE DECADE: 2010 – 2019 

1: GOJIRA “MAGMA” (2016)

音源の試聴はもちろん、音源を流せる動画でのレビューや分析、インタビューがどんどんその勢力を拡大している音楽世界で、活字に残された場所はもはやストーリーや背景を伝えるという使命のみにも思えます。
ストーリーは音楽を聴くだけでは伝わりません。弊誌がモダンメタル=多様性と主張し続けるのも、メタルの今に音楽的な多様性だけではなく人種、性別、地域、宗教を超えたエクレクティックな文化、世界が勃興しつつあるからです。マイノリティーの逆襲と言い換えても良いかもしれませんね。そこに環境問題や政治的な主張を織り込むアーティストも多いでしょう。
故に、メタル先進国とは言えないフランスから現れ、その是非はともあれ環境問題に立ち向かい、プログ、デス、スラッジ、マス、トライバルの稜線を闊歩する GOJIRA は、弊誌がそのストーリーを最も伝えたいアーティストだと言えました。
コンパクトな43分という作品でフォーカスされたのは、エモーションとアトモスフィアを前面に押し出した、キャッチーさとアート性の共存。MASTODON やBARONESS もチャレンジしていますが、芸術性とコマーシャリズムの融合という点でこの作品を超えるモダンメタルのレコードはないと断言出来るように思います。

2: DEAFHEAVEN “SUNBATHER” (2013)

新世界との “クロスオーバー” は、2010年代のメタルバンドにとって重要な成功のための条件でした。 メタルに似つかわしくないピンクのアートワークを纏った “Sunbather” は、完璧なタイミングでブラックメタルとシューゲイズの深き海溝に橋を掛けた “クロスオーバー” の先鋭です。
DEAFHEAVEN の雄弁に交差する激情と音景の二律背反は、ブラックゲイズ、ポストブラックと称されるムーブメントの核心となり、インディーロックのリスナーまでも惹きつけましたが、一方でブラックメタルの信者からはそのルックスも相俟って無慈悲な反発も少なからず招きました。
ただし7年の時を経て顧みれば、そこには拡大する宇宙となったブラックメタルにとって美しきビッグバンにも思える桃色の陽火が崇高に、超然と此方を眺めているだけでしょう。

3: VENOM PRISON “SAMSARA” (2019)

「私は “フィーメールフロンテット” って言葉が好きじゃないの。だってこの言葉はただフロントを務める人物のジェンダーのみによって、サブジャンルのようなものを形成してしまうから。その女性ボーカルを擁するバンドたちが生み出す音楽関係なしにね。」
これまで虐げられてきたシーンに対するリベンジにも思える女性の進出は、2010年代のモダンメタルにとって最大のトピックの一つでしょう。
VENOM PRISON の牙は上顎にデスメタルを、下顎にハードコアの “毒” を宿した音楽の鋭き牙。そうしてセクシズムやミソジニーのみならず、彼らは負の輪廻を構築する現代社会全域に鋭い牙を向けるのです。
“クロスオーバー” の観点から見れば、CODE ORANGE や VEIN がハードコアとメタルの禍々しき婚姻をハードコア側のプロポーズで成立させたのに対し、VENOM PRISON はデスメタルの血統で見事にクロスオーバーの美学を体現してみせました。当然、両者の凶悪なマリアージュ、さらに英国の復権も2010年代を象徴する混沌でした。

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4: GHOST “PREQUELLE” (2018)

近年、MASTODON, VOLBEAT, Steven Wilson, PALLBEARER, Thundercat、さらに2018年は GODSMACK, ALICE IN CHAINS, DISTURBED, SHINEDOWN など様々なジャンルの旗手とも呼べるアーティストが “ポップ” に魅せられ、レガシーの再構築を試みる動きが音楽シーン全体の大きなうねりとして存在するように思えます。当然、邪悪とポップを融合させた稀有なるバンド GHOST もまさしくその潮流の中にいます。
「JUDAS PRIEST はポップミュージックを書いていると思う。彼らはとてもポップな感覚を音楽に与えるのが得意だよね。PINK FLOYD も同様にキャッチー。ちょっと楽曲が長すぎるにしてもね。」
Tobias のポップに対する解釈は非常に寛容かつ挑戦的。さらにモダン=多様性とするならば、70年代と80年代にフォーカスした “Prequelle” において、その創造性は皮肉なことに実にモダンだと言えるのかもしれません。実際、アルバムにはメタル、ポップを軸として、ダンスからプログ、ニューウェーブまでオカルトのフィルターを通し醸造されたエクレクティックな音景が広がっているのですから。

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5: YOB “OUR RAW HEART” (2018)

2010年代の記憶から、ドゥーム/スラッジの “スロウバーン” な台頭を切り離すことは不可能です。オレゴンの悠久からコズミックなヘヴィネスと瞑想を標榜し、ドゥームメタルを革新へと導くイノベーター YOB。
バンドのマスターマインド Mike Scheidt は2017年、自らの終焉 “死” と三度対峙し、克服し、人生観や死生観を根底から覆した勝利の凱歌 “Our Raw Heart” と共に誇り高き帰還を遂げました。
「死に近づいたことで僕の人生はとても深みを帯びたと感じるよ。」と Mike は語ります。実際、”楽しむこと”、創作の喜びを改めて悟り享受する Mike と YOB が遂に辿り着いた真言 “Our Raw Heart” で描写したのは、決して仄暗い苦痛の病床ではなく、生残の希望と喜びを携えた無心の賛歌だったのですから。
ゆえに、蘇った YOB の作品を横断するスロウバーン、全てを薙ぎ倒す重戦車の嗎は決して怒りに根ざしたものではありません。むしろそれぞれの人生や感情を肯定へと導くある種の踏み絵、あるいは病室で眺望と光陽を遮っていたカーテンなのかも知れませんね。結果として YOB はドゥームに再度新風を吹き込むこととなりました。

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6: PERIPHERY “PERIPHERY” (2010)

10年代の前後、Djent はエクストリームミュージックの世界に突如、爆発的に勃興したマスマティカルテクニカルなムーブメントです。MESHUGGAH, SikTh, 新進の “スメリアンコア” などが育んだシンコペーティブで技術的に洗練されたプログレッシブサウンドに、よりアクセシブルにフィルタリングをかける実にエキサイティングな “再発明”。そのリノベーションを担った第1世代こそ CLOUDKICKER, ANIMALS AS LEADERS の Tosin, そして PEPIPHRY の Bulb こと Misha Mansoor でした。
“Nerd” と呼ばれる所謂 “オタク” 文化と密接に繋がりを持ったことも革新的で、レコーディング技術の進歩により自宅でプロフェッショナルな音源を製作する “ベッドルームミュージック” DIY の台頭にも大きな役割を果たしました。
2010年代初頭、シーンを席巻したテクニカルな波。しかし、多くのトレンド、サブジャンルと同様に、Djent はしばらく後、飽和状態を迎え減退期を迎えます。
ただし、歴戦の猛者 Anup Sastry が 「Djent とは、どちらかと言えば、プログメタルというもっと大きな傘の中で探求を続ける、また違った推進力になったと思えるね。」 と語るように、オリジネーター PERIPHERY が “Periphery IV: Hail Stan” で証明したように、Djent はその根を地下へと這わせながら、モダンメタルの核を担っているのです。

7: ZEAL & ARDOR “STRANGER FRUIT” (2018)

過酷な奴隷制、差別の中から産声を上げた嘆きと抵抗、そして救いを包含するゴスペル、ブルース、ソウル。スピリチュアルで魂宿る黒人音楽をエクストリームメタルへと織り込み、刻下の不条理を射影する ZEAL & ARDOR はヘヴィーミュージック未踏の扉を開く真なる救世主なのかもしれません。
「 “ブラック” メタルと “黒人” 音楽をミックスしてみろよ。」その人種差別主義者からの言葉は、アフロ-アメリカンの血を引くアーティスト Manuel を掻き立てるに十分の悪意を纏っていました。
そうして Manuel は、”もし黒人奴隷がイエスではなくサタンを信仰していたら?” をコンセプトにブラックメタルとスピリチュアルを融合し、ZEAL & ARDOR を完成へと導きました。つまり、エクストリームミュージックにとって肝要な未踏の領域への鍵は、皮肉にも人種差別主義者に対する究極の “Fxxk You” だったと言えるのです。そして当然、そのスピリットはマイノリティーの逆襲、モダンメタルのスピリットともシンクロしています。

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8: ROLO TOMASSI “TIME WILL DIE AND LOVE WILL BURY IT” (2018)

「MOL や CONJURER といったバンドはモダンメタルの最前線にいるよ。」エクレクティックを御旗に掲げる Holy Roar Records の躍進は、英国メタルの復権と合わせて2010年代後半のビッグトピックでした。そして、発言の主 James Spence は妹と Eva とレーベルの理念を最も体現する ROLO TOMASSI を牽引しています。
デビュー作 “Hysterics” から10年。バンドは常に再創造、再発明によるコアサウンドの “羽化” を続けながら、気高き深化を遂げて来ました。シンセ-レイドゥンのデジタルなマスコアサウンドから旅立つ分岐点、ターニングポイントは “Grievances”。アグレッションやマスマティカルな理念はそのままに、より有機的でアトモスフェリックな方法論、パッセージを導入したアルバムは、仄暗い暗澹たる深海に息継ぎや空間の美学を投影したユニークかつ思慮深き名品に仕上がったのです。
一方で、”Time Will Die and Love Will Bury It” は闇に際立つ光彩。時に悪魔にも豹変する Eva Spence のスイートサイド、エセリアルに漂う歌声は実際、奔放かつ痛烈なマスコアにシューゲイズやエモ、インディーロックを渾融する彼らの新たなレジスタンスを想像以上に後押ししているのです。

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9: PALLBEARER “FOUNDATIONS OF BURDEN” (2014)

アーカンソーのドゥームカルテット PALLBEARER は、セカンドアルバム “Foundations of Burden” で鬼才 Billy Anderson と出会った瞬間、有望な若手の一団から突如としてフォワードシンキングなシーンのペースセッターへと進化を果たしました。バンドのトラディショナルでカルトなコンポジションはより洗練され、現代的なアトモスフィアをプログレッシブなセンスに添えて具現化する先進的なドゥームバンドへと変化を遂げたのです。
ドゥーム世界の DEAFHEAVEN にも思えるその異形は、後に “Heartless” でキャッチーなメロディーの洪水に重なるプログレッシブドゥームな誘惑を具現化し、MASTODON とも共鳴するメインストリームへの挑戦を企てました。

10: HAKEN “THE MOUNTAIN” (2013)

英国の誇り、プログレッシブ最後の希望 HAKEN がレトロフューチャーな音のタイムマシンを追求し始めたアルバムこそ “The Mountain” でした。
「僕に関して言えば、”YES-90125″、”RUSH-Signals”、”GENESIS-Duke”、”KING CRIMSON-Discipline” といった作品とは多くの共通点があると思うね。」
80年代のポップカルチャーを胸いっぱいに吸い込んだ “Affinity” で Ross Jennings はそう語ってくれましたが、よりエピックを志向したドラマティックな “Mountain” では古のプログレッシブな息吹を一層その身に宿していたのです。
「Djent はメタルシーン、そしてギター界にとっても重要なムーブメントだよね。MESHUGGAH や KILLSWITCH ENGAGE のようなバンドは全てのジャンルにその影響をタペストリーのように織り込んでいるんだよ。その影響は、今日、ミュージシャンとしてやっている僕たちを形成してくれているんだ。」
そこに交差するは近代的なグルーヴと設計図。時代の架け橋となった HAKEN は、特有のメロウな旋律を伴ってプログの遺伝子を受け継いでいくのです。

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11: CHELSEA WOLFE “BIRTH OF VIOLENCE” (2019)

フォーク、ゴス、ポストパンク、インダストリアル、メタル…2010年、デビューアルバム “The Grime and the Glow” を世に放って以来、Chelsea Wolfe はジャンヌダルクの風姿で立ち止まることなく自らの音の葉を拡張し続けてきました。10年続いた旅の後、千里眼を湛えたスピリチュアルな音求者は、本能に従って彼女が “家” と呼ぶアコースティックフォークの領域へと帰り着いたのです。”目覚め始めるレコード” において鍵となるのは女性の力です。
「そろそろ白か黒か以外の考え方を受け入れるべき時よ。”ジェンダー” の概念は流動的なの。そして全ての種類の声を音楽にもたらすことで沢山の美しさが生まれるのよ。今まさにその波が押し寄せているの!素晴らしいわ!」
長い間会員制の “ボーイズクラブ” だったロックの舞台が女性をはじめとした様々な層へと解放され始めている。その事実は、ある種孤高の存在として10年シーンを牽引し続けた女王の魂を喚起しインスピレーションの湖をもたらすこととなったのです。

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12: JINJER “KING OF EVERYTHING” (2016)

「時に穏やかで平穏。だけど時に人々は何かが起こるのをただ待っている。今現在、少なくとも爆撃はされていないわ。それは良い事ね。」
アイコニックな女性をフロントに抱き、多様性を音楽のアイデンティティーとして奉納し、ウクライナという第三世界から登場した JINJER は、実はその存在自体が越境、拡散するモダンメタルの理念を体現しています。テクニカルなグルーヴメタルに Nu-metal と djent の DNA を配合し、R&B からジャズ、レゲエ、ウクライナの伝統音楽まで多様な音の葉を吸収した JINJER のユニークな個性は全てを変えた “King of Everything” から本格化へ転じたと言えるでしょう。
比較するべきはもはやメタル世界最大の恐竜 GOJIRA でしょうか。それとも MESHUGGAH? 音楽、リリックのボーダーはもちろん、メタファーではなく実際に険しい国境を超えた勇者 JINJER の冒険はまだ始まったばかりです。

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13: ANIMALS AS LEADERS “THE JOY OF MOTION” (2014)

Tosin Abasi, Javier Reyes, Matt Garstka のマエストロ3名は、プログレッシブミュージックを新たなチャプターへと導きました。2010年代前半、津波のように押し寄せたテクニカルな波は、絶対的に Tosin Abasi のビジョンや新技術に端を発していました。しかし震源地 ANIMALS AS LEADERS をもはやその Djent という枠のみで括ることは難しいでしょう。
拍子やテンポの変化、複雑でヘヴィーなグルーブは彼らにとってイマジネイティブな楽曲を生み出すツールの一つに過ぎません。作品を彩るユニークで魅力的なテーマ、効果的なエレクトロニカサウンド、アンビエントなパッセージに驚異的なリードプレイ。”The Joy of Motion” はあらゆる面でモダンプログのランドマークとなるレコードです。

14: SVALBARD “IT’S HARD TO HAVE HOPE” (2018)

越流するエモーションをプロテストミュージックへと昇華し、英国ブリストルから咆哮を貫く至宝 SVALBARD。熾烈なメタル/ハードコアにポストロックの叙情と風光、ポストメタルの思索と旅路を織り込みさらなる多様化の波動を導いた新作 “It’s Hard to Have Hope” はシーンの革新であり、同時に閉塞した世界が渇望する変化への希望です。
確かに “It’s Hard to Have Hope” は怒れるアルバムで、中絶、性的暴力、リベンジポルノ、インターンシップの無賃雇用など不条理でダークな社会問題をテーマとして扱っています。女性フロントマンとして Serena が長年メタルシーンで苦しんできたハラスメント行為の数々も、作品の持つ怒りの温度を “フェミニストのメタルアルバム” の名の下に上昇させていることは明らかです。
とはいえ、この類稀なる感情と表情の結晶が、唯一怒りにのみ根ざすわけではないこともまた事実でしょう。実際、Serena はこの作品の目的が “人々にこういった社会的不公平を伝えるだけではなく、なぜそういった問題が起き続けるのか疑問を投げかけることだった” と語っています。「誰が正しいのか互いに主張し合うのを止めてこう尋ねるの。一緒に前進するために何ができるだろう?より良き変化のためお互い助け合えないだろうか?とね。」とも。
そうして世界のターニングポイントとなるべくして示現した “It’s Hard to Have Hope” に、一筋の光明にも思える尊きアトモスフィア、荘厳なる音の風景がより深く織り込まれていることはむしろ当然の進化だと言えるでしょう。

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15: ALCEST “LES VOYAGES DE L’AME” (2012)

「以前とは比較にならないほどコンセプトを推し進めた。だからこの異世界的で、ドリーミーな音楽が生まれたんだ。とても複雑かつプログレッシブなやり方でね。」
ALCEST をブラックメタルと呼ぶ事に長い間葛藤を抱いていた Neige。もちろん、ブラストビートやトレモロアタックは “基盤” ですが、それでも繊細で愛情さえこもったディティールとムードへの拘りは30年前ブラックメタルが生まれた時代には想像も及ばなかった創造的成果であり、ジャンルに対するある種のクーデターでしょう。そもそも Neige はメタルファンがダークなサウンド、イメージに惹かれる理由さえ当初は理解さえしていませんでした。
「全然理解できなかったんだよ。なぜいつもダークである必要があるんだい?だからこそ ALCEST のファーストアルバムが出た際に大きな論争を呼んだんだ。なんでメタルなのにブライトで繊細なんだ?ってね。ただ僕は憎しみに触れたくなかっただけなんだけどね。そこに興味が持てないから。それでも今でもオールドスクールなブラックメタルはよく聴くんだ。ただ最近のブラックメタルバンドはちょっと怠惰だと思うよ。ブラックメタルの慣習に従い、紋切り型の演奏を披露しているだけだからね。残念だよ。」

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16: MESHUGGAH “THE VIOLENT SLEEP OF REASON” (2016)

MESHUGGAH はモダンメタル、エクストリームミュージックの帝王でありパイオニアです。Djent は勿論、Jazz/Fusion を取り入れた Instru-metal, より数学的な要素にフォーカスした Mathcore などそのポリリズミックでローチューンドなヘヴィーサウンドが後続に与えた影響は計り知れません。
“The Violent Sleep of Reason” において、メカニカルで精密に計算されたグルーヴを、率直で生々しいプロダクションで包み込んだ理由。それはアルバムのコンセプトに通じます。”危険な睡眠状態” とは、世界中で起きている無慈悲なテロリズムに対して、何ら行動を起こさない一般の人々を指しています。MESHUGGAH が作品に有機的な感覚、エモーションを強く取り入れたのは、世界の人たちにに手を挙げて欲しい、テロリズムと戦わなければならないというメッセージでもあるのです。
ダイナミックで、インテンスに溢れ、エナジーに満ちたレコードで MESHUGGAH はその価値を再度証明しました。この作品を受け止める私たちには何が出来るでしょうか?

17: BARONESS “PURPLE” (2015)

「全ては色相環、カラーホイールから始まったんだ。」
アートメタルを切り開く BARONESS のフロントマン John Baizley は、色彩をテーマとしたアルバムタイトル、アートワークの起源をそう明かします。赤、青、黄緑、紫と色を紡ぎ続ける音画家は、プログ、スラッジ、サイケデリック、エレクトロニカ、マスロック、インディーロックとサウンドにおいてもカラフルを極めストーナー/スラッジ台頭の旗頭となったのです。
”hipster metal” “通好みのメタル” などと懐柔的にもとられていた BARONESS が、10年間、4枚のアルバムを経てメタルワールドの盟主にまで登り詰めたことには理由がありました。
SLEEP や KYUSS、そしてもちろん BLACK SABBATH の血を引きながら、彼らは決して最高にヘヴィーでも、最高にスロウなバンドでもありません。当然、最高にファストでも、最高にキャッチーでも、もしかしたら最高にクールなバンドでもないのかも知れませんね。
ただし、彼らは時にヘヴィーに、時にスロウに、時にファストに、時にキャッチーに、時にクールに変化する最高にビッグな変幻自在の化け物だったのです。

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18: KARNIVOOL “ASYMMETRY” (2013)

“Sound Awake” で Nu-metal の重厚と TOOL の知的探求を交差させ、一躍メタル世界の中心に躍り出たオーストラリアの寵児は、”Asymmetry” で浮遊するアトモスフィアを体全体で受け止め、さらにその場所から深化を遂げてポストプログレッシブの牽引者となりました。
その音の葉は、TesseracT, RIVERSIDE, PINEAPPLE THIEF とも共鳴しながら、2010年代プログレッシブのイメージとなっていくのです。

19: CONVERGE “THE DUSK IN US” (2017)

ボストンのマスコアレジェンド CONVERGE は、四半世紀に渡って不安と恐怖、そして怒りをその獰猛な音楽に封じ込めその強固な影響力を保ち続けています。そして勿論、そのキャリアの前半では、数学的なブルータリティーを存分に発揮しましたが、しかし近年ではグルーヴやアトモスフィアを発見し、よりインテンスと多様性を備えたようにも思えます。事実 Bannon は、「僕たちはとても人間味のあるバンドで、楽曲はいつだって現実の経験に基づいているんだ。」 とそのハードコア精神を語っています。
“The Dusk In Us” で、バンドはかつてのクラッシックサウンドをキャプチャーしながら、アーティストとして更なる進化を遂げています。彼らの中に映る “Dusk” “夕暮れ” とは、おそらくバンドとしての成熟を示唆しているとも解釈出来ますね。ブルータルでしかし美しきモンスターレコードは、闇と希望、不快感と恍惚、そしてカリスマティックな威厳をリスナーへと運ぶのです。

20: MASTODON “EMPEROR OF SAND” (2017)

00年代、スラッジ/ストーナー革新の首謀者であったアトランタの巨人 MASTODON が “The Hunter”, “Once More Round the Sun” で舵を切ったメインストリームへの接近、ラジオフレンドリーなアプローチは、確かに新たなリスナーを獲得する一方で、それ以上に長年バンドへ忠誠を捧げてきたダイハードなファンを失う結果となりました。
一握りの称賛と山ほどの批判を背に受けてリリースしたコンセプトアルバム “Emperor of Sand” は、結果としてメインストリームとルーツ、ポップとプログレッシブの狭間で揺蕩う完璧なバランスを実現することとなりました。それは多様性の海に溶け込むイヤーキャンディー。
バンドは変化を遂げ成長を続けて行くものです。MASTODON は確かな進化の証を刻みつつ、バンドが失ったかに思われたロマンを取り戻すことに成功しました。それ以上に重要なことがあるでしょうか?ロックの根幹はロマンなのですから。

21: BEHEMOTH “THE SATANIST” (2014)

アートワークをフロントマン Nergal の血で描いた BEHEMOTH の傑作 “The Satanist” を理解するには、誇り高き彼のポーランド政府との、そして白血病との戦いを掘り下げる必要があるでしょう。
ステージでの聖書に対する冒涜で起訴され、ポーランドのポップスターと浮名を流し、癌で死に直面する。そうした全ての出来事は、2011年のポーランドの選挙と相まって、Nergal を母国で最も中傷的で物議を醸す公人へと変えました。
「分断と帝国化。それがポーランド政府の念願だ。彼らは敵を必要とし、スケープゴートを必要としている。俺は彼らのお気に入りのスケープゴートと敵なんだよ。」
“The Satanist” はそうした障害や戦いを乗り越える自己啓発と忍耐の表れでした。
「オリジナリティーなんてものは俺の辞書には存在しない。だけど俺はアートのユニークさを信じているし、唯一無二の個性も信じているんだよ。」

22: LINGUA IGNOTA “CALIGULA” (2019)

「世界に正義を見出すこと、私を傷つけた人間に責任を見出すことにずっと苦労してきたの。だから音楽は奴らに責任を負わせ、正義を見つける私のやり方なの。私なりの復讐なのよ。」
家庭内暴力、虐待の生還者 Kristin Hayter のパワフルな言葉です。そして彼女の受けた恐ろしき痛みと攻撃性は、オペラからノイズ、インダストリアル、フォークに教会音楽、スピリチュアル、そしてメタルまで全てを渾淆した婀娜めきのプロジェクト LINGUA IGNOTA に注がれています。
マイノリティーの逆襲、虐待というタブーに挑む女性アーティストは今後増えて行くはずだと Kristin は語ります。事実、SVALBARD はリベンジポルノを糾弾し、VENOM PRISON は代理出産やレイプについて叫びをあげているのですから。
「どれだけの人が女性を嫌っているか、どれだけ世界が女性を嫌っているか知れば知るほど、”サバイバー” として他の女性への責任を感じるの。これからどこに行くのでしょうね?だけど最も重要なことは、リアルであり続けること。だから音楽を作ったり、暴力について語る必要がなくなればそうするわ。永遠に虐待の被害者になりたくはないからね。」

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23: CODE ORANGE “FOREVER” (2017)

2017年、CONVERGE の名将 Kurt Ballou が手掛けた “ノイズ三部作” とも言える、ENDON, FULL OF HELL, そして CODE ORANGE の作品の中で、最も普遍的な魅力を備えるのが本作なのかも知れませんね。実際、彼らはそれ程大胆なアプローチを志向している訳ではありません。ハードコアとメタルのクロスオーバーらしく、細やかにテンポチェンジ、ストップ&ゴーを繰り返す強烈なリフワーク。シャウト、グロウル、そして女声のトリプルボーカルが生み出すカオスの濁流。不穏や無慈悲なアトモスフィアを演出するエレクトロノイズはあくまで隠し味。
しかし、そういったバンドがデフォルトとするデザインは、非常に豊富なアイデアと深く練られたコンポジションによりフックと中毒性に満ち溢れた音の暴力へと形を変えるのです。彼らの予測不能な危険は、有機体のようなしなやかさとインテリジェンスを備えます。
NINE INCH NAILES や RAMSTEIN の登場に例える識者が多いことにも納得ですね。

24: LEPROUS “MALINA” (2017)

プログメタル、アヴァンギャルド、オルタナティブにポストハードコアと作品ごとにフォーカスするサウンドテーマを変転させつつ、巧みに Djent やポスト系、ブラックメタルの要素も取り入れ多様なモダンプログレッシブの世界観を構築して来たバンドは、しかし同時に Einar の絶対的な歌唱を軸とした仄暗く美麗なムードをトレードマークとして近年掲げています。
2010年代最高のプログメタルオペラとなった “Coal” の後、彼らはより “硬質” でデジタルな作品 “The Congregation” をリリース。そしてメタリックな音像、正確性と複雑性を極めたバンドが次に “Malinar” で見据えた先は、よりオーガニックでナチュラルなサウンドとジャンルの破壊でした。
「僕たちは典型的な所謂 “ビッグメタルサウンド” を求めていなかったんだ。」 様々な要素、テクニックが “オーガニック” というキーワード、そして哀切のストーリーに注がれた純然たる “ロック” の傑作は、同時にキャッチーなメロディーと複雑でスタイリッシュなコンポジションを両立させた時代の象徴でもあります。

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25: POWER TRIP “NIGHTMARE LOGIC” (2017)

2017年、IRON REAGAN と共に大きな話題を攫ったクロスオーバーツインズの片割れ POWER TRIP が “Nightmare Logic” で残した印象は強烈でした。スラッシュメタル、ハードコア、パンクを股に掛け、正々堂々と正面突破を挑むそのアティテュードはあまりにエキサイティング。
麻薬中毒や製薬業界のスキーム、宗教的汚職など様々なトピックに本気で中指を立てながら、歌詞のパワーを楽曲のエネルギー、突進力へと伝導するバンドの気概にはただただ脱帽です。

26: NE OBLIVISCARIS “PORTAL OF I” (2012)

2010年代、オーストラリアは多様なオルタナティブ/プログの新天地として大きな飛躍を遂げましたが、その象徴的存在が NE OBLIVISCARIS でした。メロディックデスメタルのロマン、ブラックメタルのダークな審美、OPETH や CYNIC のプログレッシブな感性、そしてヴァイオリンのクラシカルな調べ。絶対的にミステリアスで知的な “Portal of I” は2010年代前半、メタル世界のムードをある種代弁していたと言えるでしょう。
もちろん、この10年を代表するプロデューサー Jens Bogren のスタイルを表象するレコードであるとも言えますね。

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27: DEFTONES “KOI NO YOKAN” (2012)

DEFTONES の情熱的な “恋の予感” は、”Saturday Night Wrist” のロマンとアトモスフィアを、”Diamond Eyes” で採用し始めたヘヴィーギターのテクスチャーと組み合わせたカップリングの妙。当時 Chino Moreno はポストメタルのスーパーグループ PALMS でも仕事をしており、その青々と響き渡るサウンドスケープは知らず知らずのうちにのうちに “Koi No Yokan” へと投影されたのかも知れませんね
“Leathers” や “Tempest” には、エロティックで重苦しい淫夢のような雰囲気が渦巻いています。 実際、Deftonesほど “セクシー” なメタルを作るバンドはなく、中でも “Koi No Yokan” にはロックに潜む奔放な “性” が溢れているのです。

28: CULT OF LUNA “MARINER” (2016)

ポストメタルのパイオニアとして、存在感を保ち続ける CULT OF LUNA が2016年にリリースしたレコードは NYC の女性ボーカル Julie Christmas とのコラボレート作品でした。
宇宙探査をテーマとしたコンセプト作品 “Mariner” は確かにその静と動の見事なコントラスト、美麗なメロディー、シンセサイザーの効果的な使用などアーティスティックな CULT OF LUNA を体現する要素に満ちています。しかし、同時に Julie の時に激しく、時に陰鬱、時にキュートなボーカルがこれまでにはない感覚を作品に生み出しています。
アルバムの最後を飾る15分の “Cygnus” は彼らのマイルストーンである “Vertikal” を想起させる一大絵巻。”2001年宇宙の旅”にインスピレーションを受けたという CULT OF LUNA らしい映画のサウンドトラックのような一曲は、同時に Julie の平穏から混沌を物語る能力により完成を見たとも言えるでしょう。

29: DEVIN TOWNSEND “EMPATH” (2019)

「現在の Devin Townsend が持つ音楽的な興味全てが、一つの場所へ収まったとしたらどうなるだろうか?」
フォーク、シンフォニック、ポップ、プログ、ファンク、ブラックメタル、ジャズ、ニューウェーブ、アメリカーナ、ワールドミュージック、そして EDM。Devin の中に巣食うマルチディメンショナルな音楽世界を一切の制限なく投影したレコードこそ “Empath” です。そして “エンパス” “感情を読み取る者” のタイトルが意味する通り、Devin がアルバムに封じた万華鏡のエモーションを紐解くべきはリスナーでしょう。
「アルバムは、喜びと人々の助けになりたいという思いに根ざしている。楽曲に多様性を持たせたのは、”Empath” “共感”が弱さと捉えられてきた歴史の中で、人生を様々な観点から見る必要性を表現したかったから。僕にとっても長い間狭い場所に閉じ込められていた創造性を解き放ち、恐怖から脱却するためのやり方だったね。多様性が増す時代において、他人の気持ちになって物事を見ることは他者を理解する上で欠かせないプロセスさ。」

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30: ENDON “THROUGH THE MIRROR” (2017)

エクストリームミュージックの光彩にして特異点。東京から世界を見据えるノイズの狂信者 ENDON がリリースした最新作 “Through the Mirror” は、シーンに “救い” という名の不可逆性をもたらすマスターピース。
「ENDON はメタルという言葉でイメージする音楽の領域を拡大する役目の一端を担っていると思います。言い換えれば私にはメタルの延命措置に関わっているという認識があります。」 と語る彼らの欲望は、残酷なまでに率直です。
ボーカル、ギター、ドラム、そして2名のノイズマニュピレーターを擁する ENDON。ノイズをその多様なソングストラクチャーへ大胆不敵に織り込む彼らの方法論は、エクストリームミュージックの最先端にあると言えます。
ENDON にとってノイズとは “有機性” の象徴なのかも知れません。つまり、音符や調に囚われないノイズは自由な胎動、母性。逆に緻密な楽曲の構築、音楽的な束縛は父性。二性の融合によりフォーカスした『THROUGH THE MIRROR』は、ENDON という稀代のバンドが産み落とした寵児だと言えるのではないでしょうか。

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31: WILDERUN “VEIL OF IMAGINATION” (2019)

「”エピック” はおそらく最も僕たちの音楽を要約した言葉だけど、ただ僕たちの音楽にあるいくつかのより進歩的で実験的な側面をそれでもまだ除外しているように感じるね。」
虚空に七色の音華を咲かせるフォーク-デス-ブラック-アトモスフェリック-シンフォニック-プログレッシブ-エピックメタル WILDERUN は、ジャンルという色彩のリミットを完全に排除してリスナーに名作映画、もしくは高貴なオペラにも似て胸踊るスペクタクルとドラマティシズムをもたらします。
「OPETH の音楽には特に昔の音源でダークな傾向があるんだけど、WILDERUN には常に見過ごされがちな明るく豊かな側面があったと思うんだ。」
時にアートワークから傑作を確信させるレコードが存在しますが、WILDERUNの最新作 “Veil of Imagination” はまさにその類でしょう。アートワークに咲き誇る百花繚乱はそのまま万華鏡のレコードを象徴し、”陽の”OPETHとも表現されるブライトでシンフォニックに舞い上がる華のモダンメタルは、シーンにおける “壮大” の概念さえ変えてしまうほど鮮烈なオーパスに仕上がりました。

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32: THE DILLINGER ESCAPE PLAN “ONE OF US IS THE KILLER” (2013)

THE DILLINGER ESCAPE PLAN 5枚目のアルバムは、雷鳴鳴り響くマスコアマッドネス、技術的に超越したジャズの要素、そして同時に明らかにラジオフレンドリーなイヤーキャンディーの圧倒的な融合でした。そうして、アドレナリンに満ちた創造性と不思議なポップフィールを交差させたマスコアの創始者は、名前の由来である強盗のようにリスナーの心を奪ってシーンから逃走する完全犯罪を犯したのです。

33: TESSERACT “POLARIS” (2015)

「僕たちは勿論、自らを Djent とかメタルだと思ったことはないよ。ただ、全て正直に言うけど、僕たちは自分たちをプログロックバンド以上の存在だと考えているんだよ。」
界隈でも一二の実力を誇る不世出のボーカリスト Dan Tompkins がバンドに復帰。モダンプログを牽引する Kscope からのリリースと万全の体制で制作された本作はロック史に名を残す傑作に仕上がりましたね。
Djent 黎明期から他とは異なりアトモスフェリックなポスト系の音像を強く意識して来た TesseracT ですが、”Alterd State” での成功を経て彼らがたどり着いた超立方体な境地は、Djent がムーブメントとなって以降数多出現したバンドたちを置き去りにするようなまさに Post-Djent な世界観でした 。
バンドの矜持であるグルーヴィーでポリリズミックなリフはそのままに、Kscope が提示する Post-Prog の領域にもさらに大きく踏み込み、彼らにしか表現し得ない極上の音楽を生み出すことに成功しています。

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34: AMENRA “MASS Ⅳ” (2017)

アントワープに聳える大聖堂の如き凛々たる威厳を放つ、ベルギーのポストメタル-ルミナリエ AMENRA。5年振りとなる最新作 “Mass Ⅵ” は、2017年、DREADNOUGHT や CELESTE が先陣を切った、ポストメタル、ドゥーム、スラッジ、そしてアンビエントなポストハードコアを融合させる “スロウメタル” の快進撃を決定付けました。
AMENRA のレコードは全てが “Mass” の名の下にナンバリングされています。”ミサ” の名を冠したバンドの最も重要な典礼儀式は、”ピュアな感情に掻き立てられ” “バンド全員がパワフルな個人的理由を得るまで” 行われることはありません。故に、ある意味祈りを宿した究極にパーソナルな “自己反映” “自己反省” のプラットフォームこそが “Mass” シリーズの正体だと言えるかも知れませんね。
「両親の死、両親や子供の病気、関係の終焉、愛の喪失と剥奪。全てが存在を空虚にしてしまうような経験だよ。」 実際、バンドのマスターマインド Colin は 、今回の “Mass Ⅵ” を制作するきっかけについてそう語ってくれました。”Mass” シリーズで最もヴィヴィッドかつ群を抜いてダイナミックなレコードは、人間の避けがたき悲痛と喪失を深く探求、そして埋葬する41分間なのかも知れません。「真の感情には国境はないんだよ。」

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35: FALLUJAH “DREAMLESS” (2016)

“Death Metal Revolution” (デスメタル革命) とまで評された出世作 “The Flesh Prevails” から2年。メタル界のメガレーベル、Nuclear Blast に移籍して初の作品は、より美しく、よりキャッチーで、同時にシンセサウンドや女性ボーカルをチャレンジングに取り入れた、多様なモダンメタルを象徴する作品に仕上がりました。
「実は今現在、僕は FALLUJAH を “Tech-Death” だとは全く思っていないんだ。だから、そう呼ばれるのは心外でもあるね。
僕たちは徹頭徹尾メタルバンドなんだけど、アトモスフィアやメロディックな要素によって大きな進化を遂げているんだよ。どの楽曲もエネルギッシュでパワフルでありながら、独自のユニークなエモーションを喚起させるんだからね。」

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36: BRING ME THE HORIZON “AMO” (2019)

ファンとの間の愛憎劇は、創造性を追求するアーティストならば誰もが背負う十字架なのかも知れません。とは言え、BRING ME THE HORIZON ほど荊の枷にもがき苦しみ、愛憎の海に溺れながら解脱を果たすミュージシャンは決して多くはないでしょう。
BRING ME THE HORIZON は新たなる宿業 “Amo” でラディカルな変革を遂げ、リスナーを文字通り地平線の向こうへと誘っています。それはロック、ポップ、エレクトロ、トランスにヒップホップをブレンドした野心極まる甘露。
しかし「15年経った現在でも、ヘヴィーじゃないとかブラストビートがないことが問題になる。そういった障害を壊し続けて来たんだけどね。」とフロントマン Oli Sykes が NME のインタビューで語った通り、確かにデスコア時代からのダイハードなメタルヘッドに “Amo” は堪え難い冒険だったのかも知れませんね。そういった斬新なアイデアを思いつくのは大抵 Oli だと Lee は証言しています。ではなぜ Oli はメタルのルーツから離れて “背水の” 進化を続けるのでしょうか。その理由は音楽と感情の繋がりを保つためでした。
「だからこそラッパーはほとんど新たなロックやパンクなんだよ。ロックはソフトになってしまった。悲惨で退屈なね。もうエキサイト出来る部分がほぼないんだよ。それ故に、僕らがクロスオーバーすることが重要なんだ。そうすることで、僕たちは音楽がどれだけヘヴィーかで評価する場所じゃなく、ただ音楽が好きな人のいる場所へと属することが出来るんだからね。」

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37: RIVERS OF NIHIL “WHERE OWLS KNOW MY NAME” (2018)

テクニカルデスメタルのプログレッシブな胎動も2010年代後半におけるビッグトピックの一つでしょう。
テクニカル、メロディック、デスコア、ブルータル。雨後の筍のごとく現れるデスメタルアクトの大半は、エモーションのスペクトルを怒りに起因する狭い領域へとフォーカスし、ある意味では檻の中で固定観念と共に囚われているようにも思えます。
「この作品では、僕たちが期待されているようなサウンドを放棄した。」と Adam が語るように、RIVERS OF NIHIL が “Where Owls Know My Name” で達成した偉業は、真にユニークな感性で鋼鉄の慣習から羽ばたいたその勇気にあると言えるでしょう。
まさにメタルとプログのタイムラインに交差する異形のランドマーク。モダン=多様性とするならばこの作品ほど “モダン” なスピリットを抱いた奇跡は存在しないのかも知れませんね。多様で創造性に満ち、複雑でしかし凄艶な星の一生を目撃するサイエンスフィクションは、BLOOD INCANTATION ともシンクロして時空を行き来するタイムマシンなのかも知れませんね。

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38: ELDER “REFLECTIONS OF A FLOATING WORLD” (2017)

マサチューセッツからストーナー/ドゥームの翼を広げるアートロックバンド ELDER がリリースした、新作 “Reflections Of A Floating World” はロックアートの革命です。
ファジーでスロウ。シンプルなストーナーアクトとしてスタートした ELDER は、プログ/ヘヴィーサイケの方角へと舵を切り、今や最もクリエイティブでアーティスティックなヘヴィーロックバンドと称されています。リスナーに豊潤なアドベンチャーやストーリーを喚起するあまりにシネマティックな作品と、ジャンルを縦横無尽に横断する精神性はその確かな証拠だと言えますね。
レトロとモダン、ヘヴィネスとアトモスフィア、シンプルとマスマティカルを行き来する楽曲のコントラスト、ダイナミズムはまさに唯一無二。インタビューで語ってくれた通り、「より複雑でプログレッシブ」となったアルバムを象徴する起伏に富んだ楽曲は、「音楽を聴いている時、頭の中にストーリーを描けるようなサウンド」として完成を見たのです。

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39: CATTLE DECAPITATION “MONOLITH OF INHUMANITY” (2012)

ベジタリアンのメタルとして生を受けたサンディエゴのデスグラインドマスター、CATTLE DECAPITATION は、”Monolith of Inhumanity” で、自然愛護の感情を掲げた環境問題のメタルを強固に打ち出しました。
「緑を保とうなんて歌を通して伝えている訳じゃないけど、社会としてどこに向かっているのかは重要だろうな。多くの社会的、政治的バンドが語っているようなことだけど、俺たちはわずかに異なる角度、人道的な角度で物事を見ているんだ。憂鬱で、一方的で、残酷で、不公平な世界をね。そこに答えはないよ。俺たちは問題の提起しか出来ないから。」

40: BELL WITCH “MIRROR REAPER” (2017)

シアトルに居を置くベース/ドラムスのドゥームデュオ BELL WITCH がリリースした、1曲83分の暗重なる叙事詩 “Mirror Reaper” は生と死を投影する難解なるあわせ鏡。
Dylan が 「誰にでも簡単に作れるようなレコードにする必要は全くないと決めたんだよ。楽曲を別々に分けてしまうと、説得力が失われる気がしたんだ。」 と語るように、48分の “As Above” と35分の “So Below” が自然と連続して織り成す構成の進化、常識の破壊は、より妥協のない緻密なコンポジション、Adrian の死に手向けるメランコリックな花束と共に、生と死の安直でステレオタイプな二分法へ疑問を投げかけ、”死のメディテーション” を指標しているのです。
紫煙のヘヴィートリオ SLEEP が1曲が一時間にも及ぶスロウでアトモスフェリックな反芻の集合体 “Dopesmoker” をリリースして以来、ドゥーム/スラッジ/ドローンのフィールドはメタルの実験性を最も反映する先端世界の一つとして、創造性のリミットを解除し、定石を覆しながらその歩みを続けて来ていました。それでも、巨大な絶望、悲哀と、全てを掻き集めても片手で掬い取れるほど希少なる希望を宿す、1曲83分の野心は想像を遥かに超えるサプライズでした。

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41: TRIBUATION “DOWN BELOW” (2018)

“Down Below” の出現で、TRIBULATION を単なるメタルバンドと呼ぶことはこれまで以上に困難となりました。スウェーデンの “ヴァンピリック” カルテットは、今でも誇らしげにコープスペイントで身を包み、ボーカリスト/ベーシストの Johannes Andersson は、地球の深部から悪魔を召喚するほどに邪悪な声で叫んでいます。
しかし、ブラッケンドなデビュー作のリリースから9年間で、TRIBULATION はより繊細で大胆となり、サイケデリック、シューゲイズ、ポストロックの多様でシネマティックな世界へと手を伸ばしました。それでも実にアクセシブルなその音の葉はさながら “トワイライト” でしょうか?TRIBULATION がヴァンパイアを再びクールな存在へ復権させる鍵であることは確かです。

42: KHEMMIS “HUNTED” (2017)

KHEMMIS のデビュー作 “Absolution” は MASTODON と PALLBEARER のちょうど中間に位置するようなモダンなドゥーム/スラッジ作品で、近年活気を得て来たスロウバーンな世界にまた新たな才能が舞い降りたことを知らしめました。
しかし博士号を持つメンバー2人が牽引する、この知的でメタルに忠誠を誓ったバンドが同じ場所へと留まることはありませんでした。デビューフルから僅か15ヵ月で届けられた KHEMMIS の次章 “Hunted” はよりクラッシックロック、トラディショナルメタルの領域へと接近したレコードとなりました。全5曲、44分の作品は全てがロックの美学に捧げられています。
確かにレトロリバイバルの波はメタルシーンにも押し寄せています。ただ焼き直すだけではなくモダンなレンズを通して音楽を見ていることが重要で、興味深いレトロフューチャーなサウンドはこれからさらに拡がりを見せていくことでしょう。

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43: BLOOD INCANTATION “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE” (2019)

「僕たちの音楽、アートワーク、歌詞の主な目標は、人々に先入観を疑わせることなんだ。音楽的にだけじゃなく、概念的にも限界を押し広げることが重要なんだよ。そのため、エイリアンや次元を股にかける存在だけじゃなく、何かにインスパイアされて自分自身の内なる世界を拡大することもまた重要なテーマなんだ。」
宇宙、異次元、エイリアンをビッグテーマに “アストラルデスメタル” の称号を得る BLOOD INCANTATION は、しかし自らの存在や哲学を “サイエンスフィクション” の世界に留め置くことはありません。SF を隠喩や象徴として扱う “デス・スター” 真の目的は、現実世界のリスナーに森羅万象あらゆる “常識” に対して疑問を抱かせることでした。
もちろん、その非日常、非現実は音の葉にも反映されています。HORRENDOUS, TOMB MOLD, GATECREEPER を従え津波となった OSDM リバイバルの中でも、BLOOD INCANTATION の映し出す混沌と荘厳のコントラスト、プログの知性やドゥームの神秘まで内包する多様性はまさに異能のエイリアンだと言えるでしょう。

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44: THE OCEAN “PELAGIAL” (2013)

「MASTODON が “白鯨” の作者 Melville についての文学の教室なら THE OCEAN は地球科学の教室だろう。」”地球の地質に対するドイツからの賛歌” と讃えられるポストメタルの研究者 THE OCEAN は、全てのアートの母である自然とその摂理を音のビジュアルプレゼンテーションとして誰よりも濃密に響かせます。
「僕は音楽が直接、環境問題に対するポリシーに影響を与えるなんて妄想は持っていないんだ。だけどね、僕たちの音楽を聴く人の関心を高めることは出来ると思っているよ。」
アルバムや楽曲タイトル、リリックにサウンドスケープ。時にマジカル、時に険しい自然のイメージを知性的なメタルのフレームへと織り込み、エモーショナルで革新的なポストメタルの森羅万象を司るドイツの賢人は、そのディスコグラフィーさえも変化を繰り返す地球環境のクロニクルとしてメタルの図書館へと寄贈するのです。

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45: BETWEEN THE BURIED AND ME “THE PARALLAX Ⅱ: FUTURE SEQUENCE” (2012)

2002年に BETWEEN THE BURIED AND ME がデビュー作を放って以来、リスナーは彼らのウルトラテクニカルな側面を一際待ち望んで来ました。
“Goodbye to Everything”。宇宙で全てに別れを告げる、バンド史上最も結束のとれたエピックで、バンドはファンの期待や重圧にも別れを告げたのかも知れませんね。この場所で培われたオーガニックでエモーショナルなプログ絵巻は、後に Tommy が 「新しいサウンドだなんて言いたくはないんだけど、新作はあまりヘヴィーじゃないし時に奇妙な感じだ。成長したというのかな。ALASKA から COLORS の時くらい大きくスタイリスティックな変化だよ。」と語る “Coma Ecliptic” へと引き継がれていくのです。

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46: GORGUTS “COLORED SANDS” (2013)

ドラマーの自殺を受け、2005年 GORGUTS が一時的に解散した後、バンドのリーダーである Luc Lemay は森での生活へとライフスタイルそのものを変化させました。後に Luc は短期間ギタリストとして短期間 NEGATIVA へと加わり、最終的には Steeve Hurdle の提案に基づいて GORGUTS を再編へと導きました。
Century Mediaとの長年の契約論争の後、2013年にバンドはあまりに完璧な “Colored Sands” でカムバックを果たします。それは彼らの輝かしいキャリアの中で、最もおどろおどろしくしかし精巧極まるテクニカルデスメタルの完成でした。 その後の7年で “Colored Sands” の精密な狂気をトレースしたバンドは決して少なくありません。
MORBID ANGEL に触発されたバンド形成期のゴアなメタルよりもはるかに成熟していて、”An Ocean of Wisdom” といった知の扉を開くタイトルで奇想天外を尽くすトラックは、新たなラインナップ Lemay、ベーシスト Colin Marston、リードギタリスト Kevin Hufnagel、 ドラマーの John Longstreth という異能の百鬼夜行が奇跡的に噛み合った結果とも言えるのです。

47: IGORRR “SAVAGE SINUSOID” (2017)

Igorrr とは誇り高きフランスのコンポーザー/マルチプレイヤー Gautier Serre のソロプロジェクト。ブレイクコア、グリッチホップ、トリップホップ、バロック、クラシカル、ワールドミュージック、サイバーグラインド、デスメタル、ブラックメタルなど百花斉放、極彩色のインスピレーションを濃縮し、時代もジャンルも超越したそのサウンドスケープは即ち規格外のモンスターだと言えるかもしれませんね。
そして Gautier は、その至高の怪物を各ジャンルのスペシャリストを招集することで制御し、自らの意のままに操っているのです。”Savage Sinusoid” のアートワークに描かれた結合のスフィアは、まさにそのシンボルだった訳ですね。
ムーブメントとしての djent が終焉を迎えシーンに定着した中で、Igorrr の”Savage” と “Sinusoid” を融合させる時代も空間も超越したユーフォリアは EDM や hip-hop が席巻する現在の音楽シーンだからこそ、新たなトレンドとしてモダンメタルをさらに前進させる可能性を多分に孕んでいます。少なくともこのジャンルは未だに進化を続けているのですから。

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48: RUSSIAN CIRCLES “GUIDANCE” (2016)

シカゴの Instru-Metal トリオ、RUSSIAN CIRCLES がリリースしたオーガニックでエモーショナルな新作 “Guidance” は傑出していました。Post-Rock の持つダイナミズムを最も体現しているとも言われる3人は、この新しい作品において、静と動、陰と陽、単純化と複雑化を見事に使い分け、シーンにインストゥルメンタルミュージックの更なる可能性を提唱しています。
2014年の初来日公演、”Leave Them All Behind” がすでに伝説となっているように、ライブに定評のある彼ら。インタビューで Brian が語ってくれた通り、そのライブのエクスペリエンスを詰め込んだというレコードは、非常に生々しいサウンド、感情に満ちています。Chelsea Wolfe のボーカルさえフィーチャーして、整合性の高いコンセプチュアルなサウンドを提示していた前作 “Memorial” から、再度ボーカルを排除し、原点回帰とも言える進化を見せていますね。

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49: VEKTOR “TERMINAL REDUX” (2016)

スラッシュリバイバルのムーブメントで頭角を現し、SF的な世界観と Proggy なインテリジェンスで黄金世代にも匹敵する個性を作り上げた US の4人組 VEKTOR。
73分にも及ぶ大作SF映画のような “Terminal Redux” は、アグレッションとアトモスフィア、直情性と実験性の対比が見事で、リスナーにランニングタイムの長さを感じさせないフックに満ちた傑作に仕上がりました。
VOIVOD meets WATCHTOWER とでも例えたくなる “Charging The Void” はまさに VEKTOR を象徴するような楽曲です。キャッチーかつアグレッシブなリフワーク、ブラックメタルにも通じるようなトレモロとブラストビート、効果的に挿入されるテンポチェンジ。彼らが指標する “Sci-fi Prog-Thrash” のレシピを惜しげも無く披露していますね。近未来感を演出するドラマティックなコーラスも実に効果的です。
エピカル&ドラマティック。”Terminal Redux” は間違いなく以前の作品よりも大幅にドラマ性が増しています。

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50: THE HU “THE GEREG” (2019)

「僕たちの音楽を通して送る世界へのメッセージ。それは両親への感謝、生まれ育った地を愛する心、自然の保護、女性への愛と敬意、母国の歴史や祖先への愛などの重要性を思い起こさせることなんだよ。そうして最終的には、リスナーそれぞれの内なる力を目覚めさせ、未来を信じられるようにしたいんだ。」
モンゴルの大草原に示現したロックの蒼き狼は、遊牧民のプライドと自然に根差す深い愛情、そして西洋文明に挑む冒険心全てを併合する誇り高き現代のハーンです。
THE HU が提示する “Hunnu Rock” “匈奴ロック” の中で主役にも思えるホーミーは、もしかすると西洋文明に潜む欺瞞や差別を暴く “正直な” メッセージなのかも知れませんね。なぜなら彼らは、”誰も除くことなく世界中全ての人間に” 自らの音楽、モンゴルの魂を届けたいのですから。
デビューアルバムのタイトル “The Gereg” とは、モンゴル帝国のパスポートを意味しています。多くのモンゴル人にとって、ロマンチックに美化された騎馬の遊牧民や自由を謳歌するモンゴル帝国のヒーローは西洋のストーリーテラーによって描かれた征服者のフィクションなのかも知れません。
しかし、ステレオタイプなメタルファンを惹きつけるそのイメージを入り口に、THE HU は “The Gereg” をパスポートとして、モンゴル本来のスピリチュアルで愛と敬意に満ちた美しき文化、景色、音の葉を少しづつでも伝えていきたいと願っているのです。

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51: PERTURBATOR “NEW MODEL” (2017)

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52: NEUROSIS “HONOR FOUND IN DECAY” (2012)

53: SUNN O))) “LIFE METAL” (2019)

54: SHINING “BLACK JAZZ” (2010)

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55: ANATHEMA “WEATHER SYSTEMS” (2012)

56: THE CONTORTIONIST “LANGUAGE” (2014)

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57: OBSCURA “DILUVIUM” (2018)

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58: ULVER “THE ASSASSINATION OF JULIUS CAESAR” (2017)

59: FROST* “FALLING SATELLITES” (2016)

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60: LITURGY “H.A.Q.Q.” (2019)

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61: ARCHITECTS “LOST FOREVER // LOST TOGETHER” (2014)

62: THE FACELESS “AUTOTHEISM” (2012)

63: SOEN “LOTUS” (2019)

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64: VEIL OF MAYA “ID” (2010)

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65: THANK YOU SCIENTIST “TERRAFORMER” (2019)

66: ALIEN WEAPONLY “TU” (2018)

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67: DAUGHTERS “YOU WON’T GET WHAT YOU WANT” (2018)

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68: VEIN “ERRORZONE” (2018)

69: KATATONIA “DEAD END KINGS” (2012)

70: PROTEST THE HERO “VOLITION” (2013)

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71: SWALLOW THE SUN “WHEN A SHADOW IS FORCED INTO THE LIGHT” (2019)

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72: BORN OF OSIRIS “THE DISCOVERY” (2011)

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73: WOLVES IN THE THRONE ROOM “CELESTIAL LINEAGE” (2011)

74: INTER ARMA “PARADISE GALLOWS” (2016)

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75: KVELERTAK “MEIR” (2013)

76: HORRENDOUS “IDOL” (2018)

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77: INTERVALS “A VOICE WITHIN” (2014)

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78: SUMAC “WHAT ONE BECOMES” (2016)

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79: ASTRONOID “AIR” (2016)

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80: MUTOID MAN “WAR MOANS” (2017)

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81: OATHBREAKER “RHEIA” (2016)

82: INTRONAUT “THE DIRECTION OF LAST THING” (2015)

83: CLOUDKICKER “BEACONS” (2010)

84: ORPHANED LAND “ALL IS ONE” (2013)

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85: RIVERSIDE “SHRINE OF NEW GENERATION SLAVES” (2013)

86: MOL “JORD” (2018)

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87: POLYPHIA “MUSE” (2014)

88: CAR BOMB “w^w^^w^w” (2012)

89: SKYHARBOR “BLINDING WHITE NOISE: ILLUSION & CHAOS” (2011)

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90: MYRKUR “M” (2015)

91: DESTINY POTATO “LUN” (2014)

92: BOTANIST “Ⅳ: FLORA” (2014)

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93: MYRATH “LEGACY” (2016)

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94: HEILUNG “LIFA” (2018)

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95: FULL OF HELL “TRUMPETING ECSTACY” (2017)

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96: DISPERSE “LIVING MIRRORS” (2013)

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97: UNEVEN STRUCTURE “FEBRUUS” (2011)

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98: KING GIZZARD & THE LIZARD WIZARD “POLYGONDWANALAND” (2017)

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99: EMPLOYED TO SERVE “ETERNAL FORWARD MOTION” (2019)

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100: TOOL “FEAR INOCULUM” (2019)

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MORON POLICE : A BOAT ON THE SEA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SONDRE SKOLLEVOLL OF MORON POLICE !!

“A Lot Of The Music From The Super Famicom Was Also Very Proggy! The Soundtrack Of Secret of Mana (Seiken Densetsu 2) Was Mindblowing When I First Heard It! Beautiful Melodies Mixed With Interesting Technical Parts, Weird Time-Signatures And Atmospheric Landscapes.”

DISC REVIEW “A BOAT ON THE SEA”

「ノルウェーにおけるプログの “魔法” って何なんだろうね。60年代後半からプログバンドはずっとここにあって、長い間人気を博して来たから、若い世代に刷り込まれているんじゃないかな。だから僕たちがここにいるんだよ!」
“プログレッシブ” の遺産と血脈を受け継ぐ綺羅星の中でも、2019年特に印象的なレコードを残した寵児がノルウェーを拠点とすることは偶然ではないのかも知れませんね。
電子の海で主流とプログを交差させた LEPROUS、エピックの中で多様とハーモニーを追求する MAGIC PIE、そしてプログレッシブポップの革命を牽引する MORON POLICE。共通するのは、プログレッシブ世界の外へと目を向ける野心でしょう。
「様々なジャンルを股にかけることも大好きだね。メタルの要素が減退したから、これまでより多様になれた部分はあるだろうね。ポップミュージックは完膚なきまで崇高になり得るし、ポップミュージックがテクニックと重ね合った時、僕にとって最高に魅力的なものとなるんだ!」
ノルウェーの異形 MAJOR PARKINSON にも籍を置くユーティリティープレイヤー Sondre Skollevoll は、これまで充分に探索が行われて来なかったポップと崇高、ポップとテクニックの融合領域へと MORON POLICE で海図なき船出を果たしました。ノアの箱船で GENESIS の息吹、プログレッシブの遺伝子を守りながら。
「アートワークは、僕たちは “この地球の一員” ってメンタリティーと、音楽のメランコリックな側面を反映しているんだ。」
メタリックな一面を切り離すことで音楽的自由を謳歌する “A Boat on the Sea” で、Sondre は以前に増して表現の自由をも享受し世界を覆う暗雲を薙ぎ払っていきます。
米国の小説家 Kurt Vonnegut がポストベトナム世界を風刺した、”Hocus Pocus” からタイトルを頂くメランコリックなピアノ語りを序曲とするアルバムは、”The Phantom Below” で無機質なデジタルワールドへの皮肉と憧憬を同時に織り込みます。
「大半のスーパーファミコンの音楽はとてもプログレッシブだよね!”聖剣伝説2 Secret of Mana” のサウンドトラックを初めて聴いた時はぶっ飛んだよ!美しいメロディーが、興味深いテクニカルなパート、奇妙な変拍子、アトモスフェリックなサウンドスケープとミックスされていたんだからね。」
最終的にSondre の目指す場所とは、幼き日に熱中したスーパーファミコンの、アナログとデジタルが交差する、目眩く色彩豊かな音楽世界なのかもしれませんね。
ノルウェーという小さな国のプログシーンが注目を集めるきっかけとなったストリーミングサービスの恩恵を認識しながらも、8bit のオールドスクールな情味と温もり、知性の頂きはバンドの原点であり精髄でしょう。狂気のスキルとイヤーキャンディー、それに北欧のメランコリーをミニマルなゲームサウンドと同期させる “Isn’t It Easy” はその象徴に違いありません。
“Beaware the Blue Skies” のレゲエサウンドで、平和大使の仮面の裏で米国の戦術ドローンを大量生産する母国ノルウェーの偽善を暴き、”The Dog Song” のカリビアンや “Captain Awkward” の奇妙なスキャットで自らの多様性を証明する MORON POLICE。それでも、一貫して燃え盛る灯台の炎となったのは煌びやかで心揺さぶるメロディーの光波でした。
「僕はね、強力なメロディーは、きっといつだって純粋なポップ世界の外側に居場所を得ると思っているんだ。そしてそんな音楽がより注目を集めつつあることが実に嬉しいんだよ。」
THE DEAR HUNTER を手がける Mike Watts の航海術も旅の助けになりました。そうして MORON POLICE はプログ世界の外洋へと船を漕ぎだします。
今回弊誌では、Sondre Skollevoll にインタビューを行うことが出来ました。「僕はゲーム音楽の大ファンなんだよ。特に任天堂のね。近藤浩治、植松伸夫、菊田裕樹、David Wise のような音楽家を聴いて育ったんだよ。僕はそういったゲーム音楽にとても影響を受けていると思うし、そのやり方を音楽に取り込んでいるんだ。」MARQUEE/AVALON から日本盤の発売も決定。どうぞ!!

MORON POLICE “A BOAT ON THE SEA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLOOD INCANTATION : HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ISAAC FAULK OF BLOOD INCANTATION !!

“I Believe That Questioning Mainstream Archaeology, Even If The End Goal Isn’t Proving The Existence Of Aliens, Is a Great First Step To Questioning Everything We Have Been Taught About Our Own Society.”

DISC REVIEW “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE”

「僕たちの音楽、アートワーク、歌詞の主な目標は、人々に先入観を疑わせることなんだ。音楽的にだけじゃなく、概念的にも限界を押し広げることが重要なんだよ。そのため、エイリアンや次元を股にかける存在だけじゃなく、何かにインスパイアされて自分自身の内なる世界を拡大することもまた重要なテーマなんだ。」
宇宙、異次元、エイリアンをビッグテーマに “アストラルデスメタル” の称号を得る BLOOD INCANTATION は、しかし自らの存在や哲学を “サイエンスフィクション” の世界に留め置くことはありません。SF を隠喩や象徴として扱う “デス・スター” 真の目的は、現実世界のリスナーに森羅万象あらゆる “常識” に対して疑問を抱かせることでした。
「主流の考古学に疑問を呈することは、例え最終的にエイリアンの存在を証明出来なかったとしても、僕たち自身の社会について教えられてきた全てに疑問を投げかける素晴らしい第一歩だと思うんだよ。」
BLOOD INCANTATION の叡智を司るドラマー Isaac にとって、ギョペグリ・テペやギザのピラミッド、ナスカの地上絵が宇宙人の創造物であろうがなかろうが、究極的にはどちらでも構わないのかも知れませんね。なぜなら、彼の最終目標は宇宙よりも未知である人の心、暗く危険な内部空間の探索にあるからです。
Isaac は現在の人間社会、政治システムを完全なる実験の失敗だと捉えています。故に、この文明社会こそ人類の最高到達点で良好な進歩を遂げているという固有概念に疑問符をもたらすため、寓話的に SF を使用しているにすぎないのです。
「僕たちの新しいレコードは、人類という種が記憶を失っていて、その過去はまだ明らかにされていないという概念に焦点を当てているんだ。」
“Hidden History of the Human Race” で描くのは忘却の彼方に追いやられた人類の隠された歴史。大胆不敵な宇宙旅行者が作成する、失われた古代の歩みを取り戻すアストラルレコードの使命は、そうしてデスメタルとプログレッシブのロマンを取り戻す旅ともリンクしていきます。
「僕はね、”プログレッシブデスメタル” ってタグはあまり気に入っていないんだよ。だってそこに分類されるバンドの大半が、僕がプログレッシブロックがもともと志していたと考える音楽をプレイしていないんだからね。」
プログレッシブの名を冠しながら、モダンなテクニックの博覧会を志向する昨今のバンドとは一線を画す BLOOD INCANTATION のロマンチシズム。それは YES, PINK FLOYD, RUSH, KING CRIMSON といった神代の巨人への憧憬を根源としています。
“Echoes”, “Close to the Edge”, “The Gates of Delirium” といったプログエピックを指標した18分の異次元探索 “Awakening from the Dream of Existence to the Multidimensional Nature of our Reality (Mirror of the Soul)” を聴けば、そこに古の技術やイデアを元にした音のペイガニズムが存在することに気がつくはずです。
同時に、テクニカルデスメタル、ブルータルデスメタル、デスコア等の台頭により次元の狭間に埋もれた “OSDM” オールドスクールデスメタルの “レコンキスタ” を司る十字軍の役割も忘れるわけにはいきません。
HORRENDOUS, TOMB MOLD, GATECREEPER を従え津波となった OSDM リバイバルの中でも、BLOOD INCANTATION の映し出す混沌と荘厳のコントラスト、プログの知性やドゥームの神秘まで内包する多様性は傑出しています。その理由は、GORGUTS を筆頭に、DEATH, CYNIC, DEMILICH といったデスメタルに異世界を持ち込んだ異形の “血の呪文” を受け継いでいるからに相違ありません。
逆説的に言えば、ブラックメタルやドゥームメタルほど神秘や謎、アトモスフィアを宿していないデスメタルの領域でその世界の “DEAFHEAVEN” を演じる事は簡単ではないはずです。しかし、”Inner Paths (to Outer Space)” に内包された爆発的なエネルギー、リフノイズの海に鳴り響く美麗邪悪なアコースティックギター、複雑怪奇なフレットレスベースの胎動、アナログアンビエントな音の葉を浴びれば、彼らの野心が文字通りコズミックに拡大を続ける宇宙であることに気づくでしょう。
今回弊誌では、Isaac Faulk にインタビューを行うことが出来ました。「プログレッシブロックとは、様々なジャンルを過去のスタイルから生まれ出るテクニックと融合させ、異なる方向へと導くような音楽だよ。」 音楽にしても、時に “メインストリーム” に疑念を抱くことはきっと必要でしょう。どうぞ!!

BLOOD INCANTATION “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【HEILUNG : FUTHA】


COVER STORY : HEILUNG “FUTHA”

“We’re Trying To Place Ourselves In The Minds Of People From 2,000 Years Ago, 3,000 Years Ago, 4,000 Years Ago. What Are The Sounds The People Heard? Of Course, It’s The Nature Sounds. There’s An Ever-changing Use Of Instruments And Sounds That We Collect In Nature.”

HOW HEILUNG DESCRIBES “THE DOWNFALL OF THE KNOWN WORLD” AND SURVIVAL WITH PAGANISM

「過去と繋がるためには、現在と断絶する必要がある。」とChristopher Juul は語ります。この言葉は発言主であるデンマークのプロデューサーがドイツの Kai Uwe Faust、ノルウェーの Maria Franz、2人の歌い手を誘うヒプノティックなプロジェクト HEILUNG のマニフェストとなっています。
アンプから歴史を紡ぐ HEILUNG。青銅器の芽生えからヴァイキングの荒波まで、北欧の野生と原始を呼び起こすグループの使命は、鹿と水牛の角、動物の皮、人骨、剣、世界最古の片面太鼓フレームドラム等の古代遺物とルーンストーンやアミュレットから再文脈化された陰鬱なリリックを融合させることとなりました。
Christopher が充すパーカッシブな海洋の中で、チベットの聲明を醸し出す Faust とノルウェーの伝統を紡ぐ Maria はせめぎ合い、闇と生命の複雑なバランスを構築します。

「みんなの感情にほんの少し火花を散らしたいんだ。自然に囲まれ、自身の牛を屠殺し、ドラムを作り、つまり地球からの恵みで生きるためにね。」 Faust にとって悲しみを生むだけの “現代文明” と積極的に繋がることは決して重要ではないのです。つまり、ドイツ語で “癒し” を意味する HEILUNG とは、そのドローンと詠唱を背景とした祭祀的なコンサートはもちろんですが、何よりも階級、宗教、政治など現代生活の障壁から距離を置き解き放たれること、トライバルな精神への接近をこそ象徴しているのです。

「幼い頃、私は自分が世界で一番醜いと信じていたの。」その考えが長い間自身を訶み、破壊していたと Maria は打ち明けます。
「周りの人たちと繋がることが出来るなんて思いもしなかったわ。だけど11歳の時、全てが変わったの。故郷でヴァイキングの再現に目覚めたのよ。ドラムを演奏し、弓矢を放ち、当時の服装を再現し着用してコミュニティーとスピリチュアリズムの深い意味に気づく。友人を作り、10歳も歳上の人たちと焚き火を囲んで人生を語らう。10代の若者から、物語や知恵を共有できる祖父母までね。美しい場所で成長し、私はそこに救われたの。だから、私たちが HEILUNG を結成した時は、パズル全てのピースが集まったようだったの。」
かつてヴァイキング、ユングリング家が拠点としたノルウェー海沿いの街ボッレで育ったことも彼女の感性を羽ばたかせました。
「私と妹は、幼い頃から国立公園を遊び場として使っていたの。王と女王が埋葬されている墓の塚を滑り降りていたわ。歴史の風があの公園を吹き抜けているから、そこを歩いて前時代の何かを感じないなんて不可能なのよ。」
HEILUNG 究極の目的は、人々の心の状態を変えることだと Maria は語ります。
「年をとると、ありがとうの言葉の必要性を感じ始めたわ。私は自分の小さな儀式を作っているの。それは宗教や社会を知る遥か以前から知っていたものよ。」

Faust の人生はヴァイキング文化によってより劇的に救われました。厳格なキリスト教徒の両親は彼にテレビを禁止し、文学の探求を推奨していました。そして古代の謎や墓などが記された “The Last Secrets of Our Planet”、祖父が所持していたギリシャ神話は確かに幼い彼を魅了していたのです。ただし、10代に差し掛かると組織化された宗教に反発し問題を起こします。
「両親との支配的な生活の中で、キリスト教に嫌気が差したんだ。学校でも暴力やトラブルが付き物だったね。物を壊したり、人を殴ったりしていたんだ。それで知能テストを受けさせられたんだけど、僕は非常に賢いが学校には馴染めない子供だと判明したんだよ。それでサタニズムに傾倒したんだ。ちょっと早熟だったかもね。14歳で逆さ十字のタトゥーを刻んでいたんだから。」
Faust に再び光が射したのは、シャーマニズムとヴァイキング文化に出会った17の時でした。酷い皮膚病にも悩まされていた彼は “シャーマニックワーカー” に招かれて癒しとトランスの旅を経験し、眼前に黄金の門が開くのを感じます。
「21日間毎朝、朝露を患部に塗りなさいって。当時僕は全身黒ずくめのサタニストだよ。全然信じてなかったけどとりあえず16日か18日かだけやってみたんだ。そうしたらすっかり治ってしまったんだ。10年間悩まされ続けた痒みや痛みが全てなくなったんだ。キリストを信じようが悪魔を信じようが、目の前で “癒し” を目撃したんだから。以来、信仰に悩まされることはなくなったね。おかげで両親に謝罪して和解したんだ。それ以来創造性は爆発を続けているよ。」

ただし Faust の反抗はまだ終わりではありませんでした。次なる闘争はキャリアや家族といった従来の社会システムへと向けられたのです。キャンプファイヤー、ヒーリングワークショップ、数々の旅を経てシャーマンへと近づいた彼は “愚か” だと自嘲する行動を起こしました。
「失業率の高い中、コンクリート工場の仕事を辞めたんだ。ちょうど工場長へと昇進した時、僕はここを去らなければならないと言ったんだ。何百万のドイツ人が夢見る暮らしを捨てたんだよ。誰も僕の決断を理解出来なかったね。人生を台無しにしてるって。」
仕事を辞しアートや歴史を学ぶことを意識していた Faust ですが、奇しくも黄金の門はタトゥーの世界へと開かれました。”見て盗め” タイプの女師匠と出会った彼は子供の頃からの夢であった創作の世界に没頭し、数年後、デンマークに移住した Faust はヴァイキングのスタイルに敬意を表しながら北欧のタトゥーシーンに定着し、2013年には “ノルディックタトゥー” をテーマとした書籍を出版するまでに至ったのです。

チベットの聲明を身につけたことも人生を大きく変えました。
「SLAYER や SEPULTURA も聴いていたけど、あれはメタルよりダークだよ。チベットの歌い手たちは、どんなメタルシンガーよりも深い。まさに探し求めていたサウンドだった。」
タトゥーへの情熱は遂に音楽への目覚めと交差します。戦士、古代のシンボル、鹿をフィーチャーした華やかなネオノルディックの印。Faust のアートは Christopher の目に留まり、2人はスタジオで一気に HEILUNG の原型を創造しました。ただし、あまりに狂気じみていたため、よりメロディックでエセリアルなイメージを求めて Christopher のガールフレンド、元バンドメイト Maria を呼び寄せることになったのです。そうして3人のミュージシャンは、奇しくもヴァイキングの文化によって集うこととなりました。

「癒しとは、人々に内なる自己と再接続するための枠組みや空間を与えること。言い換えれば、私たちは安定したビートを長時間浴びる時に起こる魔法、トランス状態で我を忘れる経験を提供したいのよ。」
HEILUNG のマニフェストである “増幅される歴史” とは、考古学用語 “Living History” 生きた歴史の体感と繋がっています。Maria の言葉通りライブという儀式の共同体験と、アルバムのよりプライベートなリスニング体験の両方を掛け合わすことでその癒し効果は深遠さを増します。
「自然から得たサウンドや楽器はいつも変わり続けるんだよ。」骨や剣といった古代の遺物や自然を音楽に取り込む型破りな HEILUNG のやり方も偶然という魔法をその音の葉に宿す、モダンミュージック革命だと言えるのかもしれませんね。
「森を走り回って滝の音、悠久の年月が築き上げた岩清水、それに降雪の音までレコーディングしたんだ。これは本当に難しいかったね。」
HEILUNG において自分は生産者はでシェフは Christopher だと Faust は続けます。
「僕はあるがままのサウンドを収集する、言ってみれば音の農家なんだよ。自然のサウンドという新鮮な果物や野菜を Christopher に提供して、彼がコンピューターやソフトウェアで料理の腕を振るう。するとまるで古いノルウェーの教会で演奏しているようなサウンドが広がるんだ。彼には教会や洞穴の引き出しが沢山あってね。どうやっているのかは分からないんだけど。」

自然の息吹はすなわち太古のサウンドで、彼らの使命はそれを現代に蘇らせること。”Othan” こそ古代のトランス。
「2000年、3000年、4000年前の人の心の中に自分を住まわそうとしているんだ。当時彼らが聞いていたのはどんな音だろう?もちろん、風や滝といった自然の音だよね。それにお酒を飲んでリズムに合わせて歌って踊っていたんだろうね。だから僕たちは、そのリズムを当時のまま骨や頭蓋骨、武器なんかで刻むんだ。スタジオの前に巣を作っているカモメの鳴き声までね。Christopher はそれをクレージーなまでに歪めてサイケデリックに仕上げるんだよ。」
信仰や社会のシステムから解き放たれた Faust にとって、当然音楽はいかなる制約も受けるものではありません。
「僕たちはサッカーを “プレイ” するように音楽を “プレイ” はしない。むしろ遊ぶという “プレイ” に近いだろうな。全く新しい要素を繋ぎ、全く新しい方法で進み、不可能なことを実現する。完全なる自由なんだよ。」
骨をマイクや打楽器にするのも Faust 流 “遊び” の一環です。
「骨や頭蓋骨のコレクターなんだよ。大学が研究のために所持していたものを買い受けたりしてね。”Krigsgaldr” はまさにそんな骨を使用したんだ。」

男性と女性が存在する自由も HEILUNG の強みでしょう。さらに、”Ofnir” が男性的に振れたアルバムだとすれば、振り子の針は”Futha” で女性側へと振れました。事実 ‘Svanrand”, “Norupo” といった不気味な聖歌、神々のため息において女声の存在感は確実に増していますし、歌詞にしても 1000年前の女性が暗唱したアイスランドのマジカルな呪文がもとになっているのですから。
「自然な流れだと思う。自然界ではバランスが重要なんだ。プラスとマイナス、昼と夜、黒と白。全ては両極の間を浮遊しているのだから。」
オープナー、”Galgaldr” はアルバムのテーマである “既知の世界の崩壊” とそこから生まれる “避け難き再生” を象徴する楽曲です。同時にそのテーマは、”Futha” のレコーディング中 Christopher と Maria が区画整理によって愛する家を手放さざるを得なくなった事象とリンクしています。
「Maria は庭で過ごし草花を育てることを愛していた。重機や業者は彼女の目の前でその庭を引き裂いたんだ。彼女は涙を流していたよ。だから彼女に大丈夫、今は恐ろしいけど全てを見ておくんだ。いつか全てが解決する日が来ると伝えたんだ。」
実は異教の司祭の息子で、幼い頃から儀式を幾度も取り扱ってきた Christopher が語るストーリーはおとぎ話ではなく現実ですが、それでも彼らはいつかより素敵な家を見つけ新たな幸せを噛みしめるはずです。それこそが再生の精神だと彼らは感じています。暗闇から現れる黄金の門。慣れ親しんだ価値観の破壊から生まれ来る真なる癒しと自由。人生という3人の旅路は、まさにアルバムの意思と見事にシンクロしているのです。

2020年代を前にして、メタル世界は自然崇拝や地霊信仰といったペイガニズムの波を全身に浴びています。Anna Von Hausswolff, Myrkur, Chelsea Wolfe など女性がムーブメントを後押ししているのは確かでしょう。そして HEILUNG はその最前線に位置しています。
「人間は自然と繋がることで、肉体的、精神的オーガニズムを感じるんだ。生命は全てが一つ。人間だけじゃなく、植物や海だって養ったり捕食したりしながら僕たちと関係しているんだから。」
しかしなぜ、エクストリームミュージックの住人は特段異教の世界に惹かれるのでしょうか? Christopher はその理由を理解しています。
「ルーン文字やペンタグラム、オカルトのシンボルは若者が大半を占めるエクストリームメタルの文化において重要な背徳感を備えているからね。」

ただし、もちろんそれだけではありません。過去にロマンチシズムを求めるメタル世界の住人だからこそ、古の息吹ペイガニズムの再発見へと繋がったのではないでしょうか。
「祖先になじみ深い知識や力への道は、現代世界の多くの人々にとって隠されているようなものだ。支配的な一神教信仰によって抑制されたか、産業革命以来単に忘れられたか、農村から都市環境への移動が原因かは分からないけどね。オカルトのシンボルはこの古代の力を指し示し、繋がるためのヒントなんだよ。だから、それが音楽によって生み出される感情的に満たされた空間内に反映されると、実に刺激的なんだ。」
今では “Game of Thrones” や “Vikings” のサウンドトラックにまで使用され、メタル世界最大の現象となった HEILUNG。「 僕たちの大きな夢は、オペラハウスや古代の円形劇場、自然環境で演奏すること。ゆっくりと実現に近づいているよ。もちろん、様々なリスナーが混在するフェスも楽しいよ。だけど、古代の音楽だから自然環境やオペラハウスこそが相応しいんだ。」

参考文献: HOW DENMARK’S HEILUNG ARE CREATING “AMPLIFIED HISTORY” WITH HUMAN BONES, THROAT SINGING: REVOLVER MAG

Heilung: The force of nature that’s leaving metalheads spellbound: METAL HAMMER

Folk-Metal Group Heilung Talks Second Album ‘Futha,’ Soundtracking Primetime TV and Finding a New Female Energy: Billboard

HOW PAGANISM IS INFLUENCING A NEW BREED OF HEAVY ARTIST: Kerrang!

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HEALING SEASON OF MIST

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VINNIE MOORE : SOUL SHIFTER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VINNIE MOORE !!

“It Has Been a Great Time Since I Joined UFO In 2003. We Still Have Shows Coming Up In 2020. It Is Always Sad When Something Comes To An End, But Nothing Lasts Forever.”

DISC REVIEW “SOUL SHIFTER”

「SANTANA や THE ALLMAN BROTHERS BAND に関する君の指摘は全くもって正鵠を得ているね。なぜなら、僕がとても若い頃非常に入れ込んでいたのがその2つのバンドだったからなんだ。」
Tony MacAlpine, Jason Becker 等と共に、ネオクラシカルの申し子として虎の穴シュラプネルから登場した Vinnie Moore は、しかし大半のギターヒーローたちと同様に格調高きあの始まりの場所から大きく羽ばたいています。
1985年、”Mind’s Eye” で披露した正確無比なピッキング、知性と工夫を施したスケールの階段、そして身を焦がすクラシカルロマンティックなメロディーラインは、Vinnie を一躍ポストイングヴェイの筆頭へと押し上げました。インタビューで語ってくれたように、Al DiMeola, Paco Delucia のイマジナリーなスパニッシュギター、そしてクラッシック音楽そのものは確かに彼の断片として存在します。
ただし、Vinnie の名声を確立した “ネオクラシカル” は彼の音楽を形成するパズルのピースでしかありませんでした。実際、あのジャズマスター Pat Martino の弟子に師事し、ブルースロックやフュージョンを原点とする Vinnie のカラフルな音の葉は、”Out of Nowhere” で一つの完成形を高次元で提示したにも関わらず、むしろネオクラシカルの足枷が評価の焦点を曇らせているようにさえ感じます。
「このレコードには僕の初期の影響が色濃く反映されているんだ。LYNYRD SKYNYRD なんかも同様にね。」
実は “Meltdown” 以降、全てをリセットし自らの望む音旅を追求して来た Vinnie。UFO での古式ゆかしいロックドライブは旅の追い風となり、最新作 “Soul Shifter” は遂にその “移行” が身を結んだ魂の地平へと達しました。
初期の SANTANA や THE ALLMAN BROTHERS BAND のフィルモアを想起させるスリリングなリアルジャム “Funk Bone Jam” の迫力は圧倒的。Tommy Bolin をフィーチャーした Billy Cobham の “Spectrum” を思い浮かべるオールドファンも多いでしょう。
以前のように音数のギネス記録へ挑む訳ではありませんが、百戦錬磨の Rudy Sarzo を従え緩急自在、千変万化にグルーヴし、スタッカートとレガートの追憶をエモーションに見染める Vinnie の英姿は、まさに自らの過去と未来が交差したギタリズム。匂い立つトーンの官能美も群を抜いています。
クラッシックロックへの郷愁は追悼、称賛の名の下にさらなる深みを増していきます。Larry Carlton にも肉薄するセンチメンタルなスロウブルース”Mystified” で Chris Cornell への溢れる感情を認めた後、”Brother Carlos'” で SANTANA の偉業を称え、遂には LYNYRD SKYNYRD の Steve Gaines を追悼する “Gainesville Station” では Jordan Rudess の魔法を借りてサザンロックのライブ会場を音に宿してみせました。
もちろん、”Soul Rider” はかの Gregg Allman に捧げられた楽曲ですし、さらに言えば、”Heard You Were Gone” は自身の愛機 Dean Guitar の CEO Elliott Rubinson の逝去を聞いてしたためられたスピリチュアルピースでした。
そうして訪れる時をかけるギターの祝祭 “Across The Age”。ピッキングのニュアンス、ハーモニクスダイナミクス、ビブラートの魔法に煌めくトーンコントロール。永遠にも思えるソロワークは、しかし刹那に Steve Lukather の銀河を超え Hendrix のビッグバンまで到達するのです。
「僕は Phil の決断を完全に理解しているよ。彼は何年も何年もツアーを続け、歳を重ねていったんだ。何かが終わる時はいつも悲しいものさ。だけど何事も永遠に続けることは出来ないよ。」
もしかすると、我々が愛する古き良きロックの鼓動もいつかは終焉を迎えてしまうのかもしれません。とは言え、今この時、少なくとも幾ばくかのセンチメントと共にその醍醐味を伝えてくれる英雄はまだここにいます。引き継がれる魂と遺産。”Soul Shifter”。そう、数多のソウルを受け継ぎし者、Vinnie Moore です。どうぞ!!

VINNIE MOORE “SOUL SHIFTER” : 10/10

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