NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OBSCURA : DILUVIUM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LINUS KLAUSENITZER OF OBSCURA !!

“I Am Missing Innovation a Lot In The Tech Death Scene. When a New Tech Death Album Comes Out, It’s Mostly a Rip Off Of Something That Was There Before. Actually I Prefer The Term Of “Progressive Death Metal” More. “

DISC REVIEW “DILUVIUM”

哲学するプログレッシブデスメタルの巨塔 OBSCURA は、アルバム4枚にも及んだ悠遠かつ考究のコンセプトサイクルを最新作 “Diluvium” で遂に完結へと導きます。Schopenhauer, Goethe, Schelling といった母国ドイツの哲学者にインスピレーションを得た、実存の真理を巡るコスモジャーニーは “Cosmogenesis” のビッグバンから “Diluvium” で迎える終焉まで生命の存在意義を思慮深く追求し描くのです。
或いは、もはや OBSCURA を “Tech-death” という小惑星へと留めることは烏滸の沙汰だと言えるのかも知れませんね。「僕は Tech-death シーンにはイノベーションがとても欠けていると感じていたんだ。実際、僕は Tech-death というタームより “プログレッシブデスメタル” の方を気に入っているからね。」と Linus が語るように、赤と黒が司る終末の物語は皮肉にもバンドに進化を促す未曾有の翼を与えることとなりました。
変化の兆しはオープニングから顕著です。”Clandestine Stars” でバンドは自らのシグニチャーサウンドである複雑にデザインされたポリリズミックなストラクチャー、ハイテクニック、デスメタルのファストなアグレッションと地を這うグルーヴに、エセリアルなメロディーとアトモスフィアを降臨させることに成功しています。
続く “Emergent Evolution” はより顕著にメロディックでキャッチーなバンドの新機軸を投影します。CYNIC のボコーダーをイメージさせる神秘のコーラスワークは、身を捩る狂おしさとひりつく感傷をまとってリスナーの感情へダイレクトに訴えかけるのです。新加入 Rafael Trujillo のロマンティックで時空を架けるリードプレイも作品のテーマやムードと見事にシンクロしていますね。
「今回、僕は本当にバンド全員が同じだけ “Diluvium” の作曲に貢献したと思っているんだよ。だから当然その事実は多様性へと繋がるわけさ。」と Linus が語るように、ある意味バンドのマスターマインド Steffen が一歩引いて民主化を進めることで “Diluvium” の充実度、多様性は飛躍的に上昇したと言えるのかもしれませんね。
Rafael とドラマー Sebastian が共作した “Ethereal Skies” はその確固たる証でしょう。シーケンシャルなクラシカルフレーズが流麗に冒頭を飾る楽曲は、リズムの実験を交えつつテクニカルにエセリアルに深淵から光を放射し、彷徨える空へと救済をもたらすのです。
ブルータルなグロウルと荘厳なるコーラスのコール&レスポンスはすなわち死と生を表現し、Rafael のストリングスアレンジメントはさながら天空へと続く螺旋の階段なのかも知れません。何より OBSCURA のニューフロンティアを切り開くシンフォニックな感覚、鬼才 V.Santura との共同作業は、瑞々しさに満ちています。
さらに終盤、バンドは “The Seventh Aeon” で OPETH の濃密なプログレッシブを、”The Conjuration” でブラックメタルの冷徹なる獰猛を抱きしめ、拡大する可能性をより深く鮮やかに提示して見せました。特に前者で Linus が繰り広げるフレットレスベースの冒険、陰陽の美学は白眉で、アルバムを通してユニークな OBSCURA サウンドを牽引するリードベースマンの存在感を改めて浮き彫りにしていますね。
アルバムは “無限へのエピローグ” でその幕を閉じます。OBSCURA がこの4連作で培った全ての要素はきっとここに集結しているはずです。救済者で破壊者、宇宙の始まりから見守り続けた神と呼ばれた存在は、そうして恒久にも思われた世界が虚無に飲まれるまでを見届けたのでしょうか。一筋の希望、魂の栄光を祈りながら。
今回弊誌では、シーンきってのベースヒーロー Linus Klausenitzer にインタビューを行うことが出来ました!インタビューには弟の話がありますが、実は彼の父は著名なヴァイオリニスト、指揮者の Ulf Klausenitze で今作にもゲスト参加を果たしています。「アドレナリンが身体中を駆け巡り、その感情をオーディエンスとシェアする瞬間は何物にも変えがたいんだよ。」本誌2度目の登場です。どうぞ!!

OBSCURA “DILUVIUM” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SVALBARD : IT’S HARD TO HAVE HOPE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SERENA CHERRY OF SVALBARD !!

Definitely, It’s Hard To Have Hope Now, But Svalbard’s Protest Music Represents a Turning Point In This Dark World !!

DISC REVIEW “IT’S HARD TO HAVE HOPE”

越流するエモーションをプロテストミュージックへと昇華し、英国ブリストルから咆哮を貫く至宝 SVALBARD。熾烈なメタル/ハードコアにポストロックの叙情と風光、ポストメタルの思索と旅路を織り込みさらなる多様化の波動を導いた新作 “It’s Hard to Have Hope” はシーンの革新であり、同時に閉塞した世界が渇望する変化への希望です。
2015年にリリースしたデビューフル “One Day All This Will End” でアグレッション極まるメタル/ハードコアに仄かなアトモスフィアを帯同したバンドは、新作までの道程で困難な時を経験します。Serena がインタビューで語ってくれた通り、メンバー間の恋愛が終焉を迎え、それに伴う心身の病、さらにはベーシストの離脱と、一時は同じ部屋で過ごすことですら苦痛を伴うほどにバンドの状況は崩壊していたのです。
しかし、メンバーのバンドに対する強い愛情は見事に SVALBARD を死の淵から救いました。見方を変えればバンドには、希望を持つことすら困難な世界に対して果たすべき重要な仕事が残っていたとも言えるでしょう。
確かに “It’s Hard to Have Hope” は怒れるアルバムで、中絶、性的暴力、リベンジポルノ、インターンシップの無賃雇用など不条理でダークな社会問題をテーマとして扱っています。
さらには、「このアルバムは、ステージに女の子が立つことにネガティブなコメントを寄せる人たちに対する私からの返答よ。”女性をメタルから追い出せ!” と言うような人たち、コンサートで女性にハラスメント行為を行う人たち。これは彼らに対する私からの恐れなき怒りの返答なの。」と語るように、女性フロントマンとして Serena が長年メタルシーンで苦しんできたハラスメント行為の数々も、作品の持つ怒りの温度を “フェミニストのメタルアルバム” の名の下に上昇させていることは明らかです。
とはいえ、この類稀なる感情と表情の結晶が、唯一怒りにのみ根ざすわけではないこともまた事実でしょう。実際、Serena はこの作品の目的が “人々にこういった社会的不公平を伝えるだけではなく、なぜそういった問題が起き続けるのか疑問を投げかけることだった” と語っています。「誰が正しいのか互いに主張し合うのを止めてこう尋ねるの。一緒に前進するために何ができるだろう?より良き変化のためお互い助け合えないだろうか?とね。」とも。
そうして世界のターニングポイントとなるべくして示現した “It’s Hard to Have Hope” に、一筋の光明にも思える尊きアトモスフィア、荘厳なる音の風景がより深く織り込まれていることはむしろ当然の進化だと言えるでしょう。
勇敢にリベンジポルノの卑劣に怒り、勇敢にハードコア、ブラックメタル、そしてポストロックをブレンドした “Revenge Porn” はまさにその光と陰を見事に体現した楽曲です。バンドが近年注目されるネオクラストの領域を通過していることは明らかです。
静謐なイントロダクションから一転、バンドは正々堂々とハードコアの強さで怒りの鉄槌を下していきます。突如降臨する Serena の慈愛に満ちた歌声はさながら蜘蛛の糸でしょうか。CULT OF LUNA や MY BLOODY VALENTINE のイメージこそ深化の証。そうしてポストブラックの激しさと光明を背負った彼女は悲痛な叫びを投げかけます。「いったい誰が女性を守ってくれるの?」
一方で、もちろんよりストレートな激情も彼らの魅力。何より、無給で酷使されるインターンの憤怒を代弁するオープナー “Unpaid Intern” では、Serena と Liam のボーカルデュエルが牙の鋭さで迫り、沸騰する千変万化なギターリフ、ブラッケンドのリズムセクションを従えてポストハードコアとブラックゲイズの境界を恍惚と共に熔化させていくのですから。
とはいえ、やはりアルバムの肝は Serena が創出する神々しきアトモスフィアと激情の稀有なるコントラストです。アルバムを締めくくるエピック “Try Not To Die Until You’re Dead” でバンドは再びその陰影を鮮明に浮き上がらせた後、美しきインストゥルメンタルのブックエンド “Lorek” で負の感情のみを綺麗に洗い流し、リスナーに思考の為の優しき残余を与えました。
今回弊誌では、ボーカル/ギターのフロントウーマン Serena Cherry にインタビューを行うことが出来ました。メッセージとエモーション、そして音楽がこれほどまでに融解しシンクロする作品はまさしく珠玉。そしてぜひ真摯な彼女の言葉に耳を傾けてください。「感情こそが私たちにとって最も重要なものだから。」リリースは MØL と同じく Holy Roar Records から。どうぞ!!

SVALBARD “IT’S HARD TO HAVE HOPE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MAGNUM : LOST ON THE ROAD TO ETERNITY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BOB CATLEY OF MAGNUM !!

With “Lost On The Road To Eternity”, Magnum Have Reached The Landmark Of 20 Albums And 40 Years Career, But They Are Still Just Moving On !!

DISC REVIEW “LOST ON THE ROAD TO ETERNITY”

40年のキャリアが純化した彫琢。英国の伝統と幽玄を織り込んだ匠のシグニチャーサウンドは、記念すべき20枚目のアルバム “Lost on the Road to Eternity” でさらなる高みからリスナーの迷霧を晴らす尊き光明となるはずです。
よりワイドな音色を有する鍵盤の名手 Mark Stanway が加入し、初めて Rodney Matthews がアートワークを手がけた叙事詩 “Chase the Dragon” こそが全ての源流でした。生まれながらに感傷と情緒をその喉へと宿す唯一無二の歌聖 Bob Catley。そして Bob の歌唱を完璧なまでに駆使するギタリスト/コンポーザー Tony Clarkin。翼を得た MAGNUM のコア2人は、80年代を自在に羽ばたきました。
プログの知性とハードロックの鼓動を見事に融合し、フォークとファンタジーのエッセンスを織り込んだ浪漫の頂 “On A Storytellers Night”。Polydor へと移籍を果たしメインストリーム AOR への洗練された扉を開いた “Wings of Heaven”。「新しくエキサイティングな音楽を見つけていくことが、僕たちの存在を異なるものにしていたんだろうな。」と Bob が語る通り、難局の90年代に投下したブルージーな実験 “Rock Art” まで、バンドのクリエイティブな冒険は旋律の魔法を誘いながら濃密な景色を残していったのです。
Bob が「当時はメンバーの何人かが難しい時間を過ごしていたんだ。だから正しいムードを得るために常に戦っていなければならなかったんだよ。」と回顧するように、バンドは時代の潮流にも翻弄されながら95年に解散し、Bob, Tony, Al の HARD RAIN、さらに TEN のメンバーを起用した荘厳なる Bob のソロプロジェクトで雌伏の時を過ごします。
そうして2001年に Tony が THUNDER の Harry James をリクルートし MAGNUM をリフォームすると、彼らはその音の歴史を誇り高く掲げながらも、よりセールスやプレッシャーから開放されて、ただ偉大な作品を製作することのみへと没頭することになるのです。
バンド史上最長、62分のランニングタイムを誇る最新作 “Lost On The Road To Eternity” は各時代のアイコニックなマグナムサウンドを巧みに分配しながら、枯れない泉のごときメロディーの清流を至高のデザインへと注入し何度目かの最高到達点へと導かれています。
アルバムオープナー “Peaches and Cream” は、初期のオーガニックなクラッシックロックをハイクオリティーなプロダクションとアップリフティングなコーラスワークで現代に蘇らせたベテランシェフのスペシャリテ。ヒロイックな8分のエピック “Welcome To Cosmic Cabaret” にも言えますが、さらに深みを増したボーカルの陰影とトーンコントロールの妙は彼らが残り少ない名匠の一群であることを確かに証明していますね。
AVANTASIA で Bob と共演している Tobias Sammet がゲスト参加を果たしたタイトルトラック “Lost On The Road To Eternity” は、オーケストレーションやストリングスを大胆に使用して “On A Storytellers Night” からのロドニーマシューズサーガの続編を生き生きと描きます。
一方で、ファンタジーの世界から一転するポップな “Without Love” ももちろん彼らの得がたき魅力の一つでしょう。今年、JUDAS PRIEST が “Firepower” で、SAXON が “Thunderbolt” で初期のハードロックテイストをキャッチーにリヴァイブさせ英国の矜持を雄々しく取り戻していますが、”Without Love” を聴けば彼らもまたロックにフックを回帰させるガーディアンであることが伝わるはずです。続く “Tell Me What You’ve Got To Say” にも言えますが、バンドがかつて天空へと広げた翼はよりしなやかに、よりポップにリスナーの心を包みこむのです。
アルバムは “Chase the Dragon” のプログレッシブな世界観と知性を反映した “King of the World” でその幕を閉じました。Mark, Harry を失おうとも、依然として MAGNUM のロマンティックなファンタジーが悠久であることを示唆するエナジーに満ち溢れながら。
今回、弊誌では巨匠 Bob Catley にインタビューを行うことが出来ました。「バンドがリスナーの興味を惹く楽曲を作り続けられる限り、リスナーが聴きたいと想い続けてくれる限り僕たちは続けて行くんだよ。」どうぞ!!

MAGNUM “LOST ON THE ROAD TO ETERNITY” : 9.8/10

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