“You Just Developed Something Unique Because We Lived In an Analog World. So, That’s One Thing I Really Miss About a Lot Of Guitar I Hear, Now. The Voice. The Uniqueness. Now, That’s Not To Say There Aren’t Some Really Amazing And Talented People Out There. There Are!”
“It’s Always Good To Push Your Boundaries. It’s Fun! The Feeling Of Accomplishment Is The Feeling Of Fulfillment.”
INVIOLATE
Steve Vai 最後のスタジオ・アルバムから6年が経ちました。エレクトリック・ギターの巨匠は、確かに他の追随を許さない驚異の作品群を有していますが、意外にもその数は決して多くはありません。彼のファンが望むことはただ一つ。「もっと!」
そして遂にその望みが叶います。”Inviolate” は Steve の最も冒険的で妥協のない演奏に満ちながら、シュレッド以上に彼のトレードマークとなった独特のニュアンスとアヴァンギャルドな個性を前面に押し出しています。
肩の手術のため片手で演奏した “Knappsack” や、ホローボディのジャズギターを使った “Little Pretty”、それに目玉のヒドラギターといった異常事態も謳歌する威風堂々。むしろ挑戦のために自ら異常事態に飛び込むその創造性は驚異的。そうして、万華鏡のようなエキゾチックなヴィジョンで、”Apollo in Color” や “Zeus in Chains” といった楽曲はリスナーの心中に喚起的な絵を描きだしていきます。それにしても、アポロやゼウス、ヒドラとはまるでギリシャ神話の世界です。
「そうなんだ。不思議な感じだよね。それって偶然の産物で、意図的なものではなかったからね。まあその後、意図的になったんだけど。”Zeus in Chains” を作ってレコーディングした後、タイトルが決まっていなかったんだよね。面白いことに、私は聴くだけで、その曲がタイトルを教えてくれることが多いんだ。それで、中間部の巨大で低音のギター・リフがハモりながら、その上に超絶不協和音の音が浮かんだところで、あの曲が “これは Zeus in Chains という曲だ”と言ったんだ(笑)
“Apollo in Color” は、妻の馬の名前なんだ。ただ、その名前を、いつも素晴らしい曲のタイトルになるぞと思っていたんだ。”Apollo in Color” ってタイトルは、基本的に僕があの曲を作るのを助けてくれた。だから、ある時は曲がタイトルを教えてくれるし、またある時はタイトルにその曲がどんな風になるかを左右されるという、逆の状況が起こり得るんだ」
それでも、不可能を可能にするのが Steve Vai という男です。
「10秒くらい強烈な懸念があったんだけど、それから別の声が聞こえてきたんだ。こういうときはたいてい自信に満ちた自分の声が聞こえてくる。そしてその声は、”黙ってやれよ、Vai! お前ならやれる! 時間をかければできるんだ!黙ってやってみろ!” ってね。”黙ってやれ!始めろ!”。そして私は、”わかったよ…” という感じでゆっくりと曲を書き始めたんだ。面白いのは、多くの場合、不可能に思えることでも一度始めてしまえば不可能に思えなくなるということなんだ。ただ、始めるだけでいい。だから、私はそうしたんだよ」
“The Teeth of the Hydra” はまさにヒドラギターのための楽曲です。
「”The Teeth of the Hydra” を聴くと、面白いことにベース、7弦、12弦、ハープ弦のすべてが、あのギターで一度に演奏されているから、非常にリニアなんだよね。イントロができたところでヴァースに入り、エレガントでシームレスなサウンドになるまで作業を続けていった。バラバラな音楽ではダメなんだ。そうではなく、ギターの、そして私自身の可能性に敬意を表したかったんだ。そして、それができたと思っているよ」
“The Teeth of the Hydra” が、ヒドラギターで作られたことは理解していたとしても、同時に通して演奏していると気づいた人は多くはないでしょう。誰もがマルチトラックでのレコーディングだと考えるはずです。
「このギターがあれば、全部できるんだ。録音した後にやったことは、ハープの弦が全てを拾ってしまいノイズが多いので、トラックをもう1つレイヤーしただけだよ」
リニアな演奏といえば、片手だけで弾ききった “Knappsack” は超絶でした。
「私にとって、楽曲の中で最も重要なのはメロディーだ。 “Knappsack” のように、片手で録音するというアイデアは必要に迫られてのことだったんだ。そして、自分にはそれができると思っていた。片手でレガートとハンマリングを駆使したギターを弾くのは、それほど難しくも、不思議なことでもないんだよ。でも、メロディーは Vai ならではのものでなければならないし、私が音楽を作る理由は、メロディーを書くのが好きだからなんだからね。”Knappsack” をレコーディングするときに、メロディとヴァースのコード・チェンジを書き出して、何かわかったような気がしたんだ。このメロディーを作れば、あとは楽勝だと思ったんだ。狂喜乱舞できる! ってね。この曲で実現したかったことのひとつは、容赦のない感じだった。私はそれが好きなんだ。執拗さの中にエネルギーがあり…Zakk Wylde と一緒にステージに立つと、それはもう容赦ないんだよね。彼のパワーは半端じゃないから、ごまかしがきかないんだ!(笑)。でも、作った後にあのビデオを見るのは本当に楽しかったし、それこそが僕の目的であるエンターテイメントなんだ。僕はエンターテイナーなんだよ!」
音楽家が片方の腕を失うというのは、一時的とはいえ大変なことで、自分の力の半分が失われたようなものでしょう。そんな中でも Vai は実にポジティブかつ楽観的です。
「そうだね、とても簡単に受け入れたよ。それは挑戦だけど、何が起きても自分の利益になるようにと考える。結局それは自分のためになっているんだよ。だから、肩が痛くなったとき、まず、現状を受け入れた。なぜなら、現状を受け入れないと深い苦しみが生じるから。戦っても決してうまくいかないけど、受け入れることでうまくいくんだよね。だから、右手が使えないこと、肩がこることを受け入れたら、片手でやるという決断も視野に入ってきたんだよ。そして、私はただ、レモンからレモネードを作ったんだ」
“Avalancha” は Steve が今まで書いた中で最高の曲のひとつではないでしょうか?
「素晴らしいメロディーを持つ、本当にヘビーなものが欲しかったんだ。凶暴で、激しく、熱狂的なサウンドにしたかったんだけど、同時に良いメロディーが欲しかったんだ。ベースは Billy Sheehanなんだけど、”Real Illusion”(2005)時代に録音したもので、”Building the Church” とこの曲で迷った時に前者を選び、 “Avalancha” はしばらく棚にしまっておいたんだ。完成させたいとずっと思っていたから、これはいい機会だったね。基本的にベースとドラムはできていて、あとはメロディーを書いて肉付けしていったよ」
“Greenish Blues” は Peter Green へのオマージュなのでしょうか?
「そうじゃないんだ。Peter のことはもちろん尊敬しているけど、私はそういうブルース・プレイヤーではないからね。グリーニッシュ・ブルースと名付けたのは、コード・チェンジがブルースのコード・チェンジに似ているからで、この曲での私の演奏はブルース的ではあるけれど、従来のブルースというよりは私の奇妙な偏屈さが出ているんだ。グリーンという色は、私のキャリアを通じて、ほとんど最初から使っていた色なんだよね。”Alien Love Secret” のタイトルもあの緑色だよね。だから、この曲を “Greenish Blues” と名付けたのは、”Vai Blues” と言うのと同じことなんだ」
以前、Stevie Ray Vaughan にオマージュを捧げていたことがありますね?
「Stevie へのトリビュート(”The Ultra Zone” 収録の “Jibboom”)は、彼がやりそうなことを私もやっていたからなんだけど、Peter Green の場合は彼のことを考えていたわけじゃないんだ。もしそうなら、彼の演奏を聴いてその感性を自分の演奏に反映させ、偉大なアーティストに敬意を表し自分の声を出すかもしれないけど、そんなことはしなかったからね。もちろん、彼のことは知っているけど、私のお気に入りのギタリストというわけではないんだ。どうせブルースなんて弾けないしね(笑)」
明らかに Steve Vai は今でも “Little Stevie” の冒険心を持っていて、長い間ギターに熟達しているからこそ、新鮮さと興味を高く保つために新しい挑戦を行なっているようにも思えます。
「プレイヤーとしてどんな状態であろうと、実績があろうとなかろうと、自分の限界に挑戦することは常に良いことだ。何より、楽しいよね。達成感があるからこそ、充実感があるんだから。12歳のときに初めてギターを手にしたとき、すぐに病みつきになったんだ。楽譜の読み方はわかるけど、ギターの弾き方はまったくわからないという、何もできない状態だった。LED ZEPPELIN の曲集を買ってきて “Since I’ve Been Loving You” の弾き方を覚えたら最高の気分になった。そして、その感覚はずっと続いている。できないことを想像して、でもそれを実行に移せば手が届くとわかっていて、そしてそれを成し遂げて予想以上にうまくいったときは、まるでパーティーを開いているような気分になるんだ! 爆発しそうなくらいにね。いつもそうなるとは限らないよ。でも、次に進むんだ!(笑)。自分らしい表現ができたときの達成感は、喜びだね。それが病みつきになるんだよ。だって、世の中がどうであろうと関係ない。人がどう思うかなんて関係ない。政府が何をしていようが、宗教が何をしようが、経済がどうであろうが・・・自分自身の小さな秘密が進行中で、そこに集中し、それを尊重するとき、そんな時間は本当に楽しいものだ。それを尊重するべきだよね」
楽器とのコミュニケーション、あるいは楽器との関係は、プロになってから40年あまりで変化を遂げたのだろうか?それとも、20歳の頃と同じなのだろうか?
「ミュージシャンと楽器の関係はミュージシャンによって異なると思う。とても知的なアプローチをする人もいれば、とても感情的なアプローチをする人もいる。そのどれもが有効であり、そのどれにもリスナーがいるわけだから。ある人は、感情的な部分をうまく表現できず、そのような刺激を好む知的な人たちから支持されるでしょう。ある人はその逆かもしれない。私は、そのすべてが欲しいんだ。中でも私は、素晴らしいメロディーの感覚を味わいたい。それが、自分にとっては一番大事なことなんだ。泣いたり、笑ったり、ズタズタにしたり……”Inviolate” を聴くと、前作ほどシュレッドしているとは思えないだろう? だけど、それはシュレッドから離れたからではなく、単にメロディーを刺激することに興味があるんだと思うんだ。
私の場合、人生の中で演奏について、より知的なことを考えた時期がとても長かったんだ。自分のスキルを磨いたともいえる。でも、それは楽器とのつながりではなく、自分自身とのつながり、そしてそれを弦と指板のでどう表現するかということなんだ。もちろん、楽器に個性を持たせることはあるよ。でも、長年にわたってツアーに出たり、演奏したりしてきた結果、私が身につけたもの、そして今も身につけ続けているものは、楽器の上で、自分の内耳とつながることなんだ。それは、即座に創造的な表現ができるようになることと言い換えてもいいだろうね」
Vai が演奏するときの仕草や表情はとても印象的です。
「何年も前から、自分にはちょっと風変わりな動きやおかしな表情があることに気づいていて、それを叩かれることもあった。なぜ、そんな動きをするんだ?どうしてそんな変な顔をするんだ?(笑)。でも、やめられないんだよ。勝ってにそうなってしまうんだ!だから、数年前にそれに身を任せたんだよ。なぜなら、自分の自然な傾向に身を任せるって、本当に自分自身であることだし、それはとても気持ちのよいものだから。実際のところ、批判する人たちにエサを与えない限り、彼らは君に対して何の力も持たないよ。私は馬鹿にするのが大好きな人たちに、そのエサを与えてしまった。そんなことをしていたら、肝心なことを見逃してしまうよ。だから、もう今の私にとって重要なのは、楽器や観客、自分の身体とのつながりを、自然に感じられるようにすることなんだ。そして、もうそれについて言い訳はしない。それがありのままの姿だから(笑)」
かつて、Steve Vai は12時間ぶっ続けで練習をしている、なんて噂がありました。
「よく自分の練習や規律について質問されることがあるんだけど、正直言って、何もないんだよ(笑)。やりたくないことはできないからね。重要なのは情熱さ。情熱は、規律よりもはるかに優れた創造のエンジンだから。規律というのは、何かをしなければならない、苦労しなければならないということを意味する。”やりたくないことでも、絶対にやるんだ!”、誰が何と言おうと、私はそんなやり方が嫌いだよ。ここに座って2時間音階の練習をする、それが私の鍛錬だとか、私はそんな風に思ったことはないんだ。ただ自分にとって、ギターから離れることが、唯一、規律を必要とする時だったといえるね。ギターの技術やエクササイズを演奏し、30時間のワークアウト、それは喜びでしかなかったよ。好きでなければ、そんなに長い時間座ってギターを弾くことはできないからね。他のことはすべて気晴らしで、ギターが一番。なぜだかわからないけど、そういうものなんだよね。
自分自身のユニークな創造性に、自然で熱狂的だと感じられる時だけ、情熱を味わうことができるんだ。幸せをつかむためには、”偉大でなければならない”、”成功しなければならない” と信じるプレッシャーやストレスから君を解放してくれる、本当に素敵な鍵が必要だ。自分自身の創造的な喜びを表現すること。それが鍵なんだよ。そして、成功はその結果で、オマケでしかない。プリンスやボウイ、あるいはベートーベンといった偉大な芸術家を見ればわかるよね?」
とはいえ、手癖と楽しいだけでは上達しないのも事実でしょう。
「もちろん、自分の情熱のためには、ある種の規律を用いなければならないこともあるよ。ヒドラの後ろに座ったときもそうだった。訓練は必要だったけど、そのビジョンは情熱的で、達成できるとわかっていたんだ。自分の手の届かないところにあるアイデアに触発され、でもがんばればそれを手に入れられるとわかっているとき、君ならどうする?それは、宇宙が君のために特別に作り上げた本物のアイデアなんだよ。幸せになるために到達しなければならないと信じていることを、未来に先送りしてもしかたがない。今が不幸なら、いつになったら幸せになれるというんだい?幸せになれるのは、今だけなんだよ。もし君がギターを弾いていて、自分の音楽が好きならば、名声や成功への希望をすべて捨てて、今まさに演奏している喜びに全神経を注げば、それこそが成功へ邁進する創造のエンジンなんだよ」
それでも、若いギタリストにはある種の “手引き” が必要でしょう。
「”Alien Guitar Secrets” というライブストリームをやっている。そこでは音楽やギターについて、一般のギタリストが興味を持ちそうなことをすべて話しているんだ。もう一つのライブストリーム、”Under it all” では、スケールやその他のものよりも、自分自身について理解することがより重要だといった、心理的なものに焦点を当てているんだ。自分の欲求や能力など、自分自身についてどう感じているかということが、すべてに優先するからね。そして、その感じ方は、音楽家を前進させ、育成し、進化させる上で最も重要なもの。すべては、君が頭の中で自分に言い聞かせる言葉の中にあるんだからね」
“Inviolate” のツアーに私たちは何を期待すればよいのでしょう?
「ライブに来た人たちに体験してほしいのは、ただ楽しい時間を過ごしたい、楽しませたいという人たちと同じ環境に身を置くこと。音楽と完全に一体となったバンドを見ることができ、興味深く、魅力的で、楽しく、美しいメロディーを奏でるパフォーマーを見てほしい。それが、私が望む体験だよ。ショーにかんしては、もし自分が観客としてショーを見ていたらどんな感じだろう、自分が見たいもの、感じたいもの、体験したいことは何だろう、と想像しながら作るのが好きなんだ。音楽に関して言えば、今回のツアーでは、過去のセットリストを洗い直すことができる。”For the Love of God”, “Tender Surrender”, “Bad Horsie” など、みんなが聴きたいと思っている曲をいくつか、それから、カタログの中から演奏したことのない曲を入れたいと思ってるんだ。リストの中の1曲は “Dyin’ Day”(1996年の “Fire Garden” 収録、オジー・オズボーンとの共作)という曲で、一度も演奏したことがなくて、ずっとやりたいと思っていたものさ。ライブではダイナミックな流れを作ろうと思っているから、重いノイズばかりではなく、眠いバラードばかりでもなく、エネルギーを生み出したいね」
“Passion and Warfare”(1990年)は今も名盤として高く評価されている一枚です。
「とても光栄なことだよ。本当にとてつもなく光栄なことだし、稀有な存在だからこそ、それに対する評価も高いんだ。ある特定のジャンルにぴったり符号するレコードは、たとえそれが古くて名盤であっても、若い人たちでさえ少なくともチェックする必要があると見てくれるんだ。若いギタリストの中には、”Steve Vai はあまり好きじゃないけど、このレコードは名盤と言われ、みんな素晴らしいと言っているし、ウィキペディアを見ても素晴らしいと書いてあるから、とにかくチェックしてみようかな” と思う人もいるかもしれないね。だから、そういう人たちがチェックすることで、必然的にその価値を理解してくれるなら、ネットもいい場所だよね」
そして、”Windows to the Soul”(”The Ultra Zone” 収録)は、今でも Vai にとって特別な一曲です。
「私のカタログの中の多くの楽曲は、他のアーティストの楽曲よりも私の心に触れる。それはたいてい、レコーディングしているときに、自分がつながっていたからなんだ。すべての要素が一緒になっていたからね。サウンド、メロディ、ソロ、フレージング。そのつながりの深さが、効果を持続させるんだ。その曲を聴くと、その曲とのつながりが聴こえるからね。ストーリーがあり、波があり、流れがある。今までやったことのないようなテクニックも入っている。もうひとつ、僕にとって本当に特別な曲、おそらく最も革新的な曲だと思うのは、”Modern Primitive”(2016年)の “And We Are One” だね。あれがソロなんだよ、私にとっては。独特で、全部メロディで、全部フレージングなんだ。あそこでやったことには、聴いたことがない要素がたくさん含まれていた。とても繊細だ。でも、それが好きなんだ。このような小さな変化は、私にとって小さな秘密となり、時には他の人がそれを発見することもあるんだよ」
“For the Love of God” で使用した Ibanez Universe はプリンスに贈られました。
「私はプリンスが大好きで、大ファンだったんだけど、彼が7弦を持つべきだと思ったんだ、彼が7弦を使って何かするのを見たいから。どのギターを何に使うかなんて考えもしなかったよ。何本も持っていたから、言ったんだ。”彼に7弦をあげたいんだ。あれはどうだろう?” ってね。それが “For the Love of God” を弾いたものだとも知らなかったんだ。でもいいんだ、彼はとても親切で、とても感謝してくれて、こう言ったからね。”今度、みんなが送ってくれたギターを置く部屋を作るから、そこに置くんだ”ってね。最高だったよ」
彼は “Tender Surrender” をカバーしたそうですが?
「確かそうだったと思う。それか “Villanova Junction” (Jimi Hendrix) か。あまり自信はないんだけど。CDの箱には ‘Tender Surrender’ by Steve Vai と書いてあって、彼は最初のヴァースを何度も何度も弾いているんだけど、私にはジミのように聞こえるんだ。でも、どうだろうね」
Yngwie Malmsteen、Zakk Wylde、Nuno Bettencourt, Tosin Abasi と行ったGeneration Axe ツアーはどう受け止めているのでしょう?
「私のお気に入りだよ。彼らは兄弟みたいなもので、ツアーでは本当に楽しい時間を過ごしたよ。彼らは完全にプロフェッショナルだ。いい意味で非常識で(笑)、みんな自分の仕事に自信を持っていて、長年にわたって究極の形で結果を出してきた。バンドやソロ・プロジェクト、その他もろもろを離れて、ただ外に出るという素晴らしい機会なんだ。簡単な仕事だよ。あの人たちと一緒にいるだけで、とても楽しいよ。みんな大好きだし」
Frank Zappaと共演した時期は、その後のキャリアにとってどのように役だったのでしょうか?
「Frank と一緒に仕事をしていたとき、私はとても若かったんだ。だから、とても観察力が鋭かった。彼のやることなすことすべてを見ていたから、その後の自分行動の多くは Frank を見ていたことに起因しているんだ。彼の仕事の進め方を見ていたんだ。Frank はいつも公平で、人をだましたり、嘘をついたりすることはなく、正直で、いつもクリエイティブだった。すべてがクリエイティブになるチャンスだった。彼はいつも賢くて機知に富んでいた。フランクの口から何が出てくるかわからないけど、みんながそれを待っていた。彼は、自分の仕事に完全に専念していた。私が Frank から得たものの中で、私のキャリアに深く関わっていると思うのは、彼が自由な思想家であったということ。彼は、他人の信念や恐怖心に縛られることなく、自分の考えで真っ直ぐ進んでいたんだよ。だから、私は思ったんだ。”これこそ、音楽をやる方法、やりたいことをやる方法だ” とね。
また、Frank はビジネス面でも、ミュージシャンとして自分を守る術を心得ていて、私も多くを学んだよ。スタジオについても、編集やレコーディングのやり方など、すべて彼を見て学んでいった。つまり、数値化できないんだ。18歳のときに Frank のテープ起こしを始め、20歳のときにバンドに加わり、3年間一緒にツアーをし、常にレコーディングをしていたからね。その年頃はとても感受性が豊かだから」
Eddie Van Halen も Vai にとって重要な人物です。
「素晴らしい思い出がいくつかある。ある時、ソフトボールをやっていて、その時に初めて彼の兄(Alex)に会ったんだけど、彼はとても印象的な男で、彼の奥さんと私の子供も一緒に遊ぶようになったんだ。Eddie の家に行った時、スタジオを見せてもらったんだけど、彼があるアンプを指差して言ったのを覚えてる。”あのアンプを見ろ、あのヘッドでデビュー・アルバムの全曲を録音したんだ、2曲は除いてな”ってね。それから全然知らない曲のテープにあわせて演奏を始めた。私はこの曲を聴いて、こう言ったんだ。”これはすごいぞ!” ってね。つまり、彼がバンドでやっていたこととは似ても似つかぬものだったんだ。もちろん、彼のタッチは入っているんだけど、いくつか素晴らしい曲を聴いて、私はこう言ったんだ。”ソロのレコードを作ったらどう?” ってね。だけど、それは彼の趣味じゃなかった。彼が好きなのは “VAN HALEN のために作ったギター・パートが自分のソロ・レコードだ” というやり方だったからね。彼はそんな風に思っていた。
もうひとつ、Eddie との素晴らしい思い出がある。私は自分のスタジオで、ギターとペダルとスピーカーとアンプを使ってレコーディングしていたんだけど、Ed が入ってきたんだ。私たちはぶらぶらしていて、ただ話をしていたんだけど、彼が今やっていることについて話してくれて、私のギターを掴んで弾き始めたんだ。それは驚くべきことだった。まさに Ed の音で(笑)、私は思ったんだ。”俺の機材を使って、よくもまあ、完全に VAN HALEN な音を出してくれたな!”ってね。すべては自分の頭の中にあるということを、改めて認識する機会になったよ。結局、大事なのは機材でもなんでもないんだよ。もちろん、一部はそうなんだけど、自分のサウンドの大部分は自分の頭の中にあるんだよ。自分の頭の中で、物事がどのように聞こえているかということなんだ。Ed が私のスタジオで、私の家で、私の機材を使ってギターを弾いたとき、それがはっきりとわかったんだ」
アコースティック・アルバムの制作も行われているようですね?
「まだ完成には遠いんだけど。パンデミックの時に始めたんだ。15曲あって、そのうち13曲はシンプルなアコースティックギターで録音したんだ。それからボーカルを始めたんだけど、途中から肩の手術を受けなければならなくなったんだ。手術が終わってから、演奏ができるようになるまでしばらくかかった。その頃には、ツアーに出て、ロック・インストゥルメンタルのアルバムをサポートしたいと思うようになっていた。だけど、アコースティックと歌のツアーをいつかやるかもしれない。絶対にないとは言えないよ。Jeff Beck は80年代にフィンガーピッキングを始めた。彼は40歳の時に、これだけの名盤を残していながら完全に奏法を変えたんだ。人生はこれからだよ」
Steve Vai の創造性は尽きることがありません。
「あからさまにクリエイティブというわけではないよ。でも、自分の心に響く創造的なアイデアは必ず実現できる、それを邪魔するものは何もないという確信があるんだよね。多くのクリエイティブな人たちは、自分の熱意を信じていないんだよ」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS LETCHFORD OF SCALE THE SUMMIT !!
“You Have To Diversify Your Income. The Days Of Musicians Making a Living Off Of Just Their One Band Is Long Over, It Was Over Even When We Started Our Band In 2005.”
DISC REVIEW “SUBJECTS”
「6枚のアルバムをリリースし、世界中でツアーを行ってきた。たけど楽器の演奏や作曲に少し飽きていたこと、バンドの規模が大きくなってきたこともあり、お気に入りのシンガーに声をかけてみようと考えるようになったんだ」
かつて、インストでなければ SCALE THE SUMMIT ではないとまで言い切った、ギター世界のミッシングリンク Chris Letchford は実際、彼の言葉通り LIQUID TENSION EXPERIMENT と ANIMALS AS LEADERS をつなぐインストゥルメンタルの覇道を突き進む数少ない才能の一人と目されていました。
シュレッドよりも楽曲にフォーカスし、プログ・メタルの標準的なクリシェを排除。ワイルドで目的のないシュレッドの代わりに、まるで弦が声であるかのように、冒険的でメロディックなリードを自らのジャガーノートとして積み上げてきたのです。一方で、Chris の中で、インストの商業的限界、壁を打ち破れない苛立ちとマンネリの幻影が日に日に膨らんでいたのも事実でしょう。
「8人の異なるシンガーを起用したことで、シンガーと本格的に活動していくことが自分のやりたいことだと気づくことができたんだ。音楽を作ることへの情熱が再び蘇ったんだよ」
前作 “In A World of Fear” で各楽曲にソリストを招聘し、新たな “色” を加える試みが一つの導火線となったのでしょうか。SCALE THE SUMMIT は遂にインストゥルメンタルの旗手という地位を捨て去り、新たな航海に出ることを決意します。船に乗り込むのは8人の多種多様なボーカリストたち。
アルバムは Mike Semeski(ex-INTERVALS)をフィーチャーした “Form and Finite” で幕を開けます。猛烈な勢いのギター・ストリームはそれだけで十分にプログで刺激的ですが、ボーカルが加わることでさらなる波が加えられ、最後に鬼才 Andy James がゲストとして花火のごとき流麗なリードを披露し、新生 SCALE THE SUMMIT号は完璧な条件での船出を迎えます。
Chris Letchford は、数年前にソロプロジェクト ISLANDS で、ボーカルとの婚姻を予見していました。アルバム “History of Robots” にはボーカル曲が2曲収録されていたのですが、そこで歌っていた REIGN OF KINDO の Joey Secchiaroli は “Subjects” でも崇高な “Jackhammer Ballet” に登場しています。煩雑なギターワークとジャジーなボーカルの蜜月。”Subjects” にはインストゥルメンタル・バージョンも存在しますが、STS の新章は、独創的なギターと各ボーカリストの優れたパフォーマンスの組み合わせで、ネクスト・レベルへと進化を遂げたのです。
HAKEN の Ross Jennings をフィーチャーした “Daggers and Cloak” で既存のファンの溜飲を下げる一方で、バンドは新たな海域にも進出していきます。今最も注目されているバンドの一つ、SPIRITBOX から Courtney LaPlante を呼び寄せた “The Land of Nod” は STS のヘヴィーとメロディック双方の最高到達点を更新したような珠玉。
「彼の死は本当に衝撃的だった。アルバムの完成後、Garrett とは誰もあまり話をしていなかったんだ。だからアルバムの発表日に SNS にみんながタグ付けして、その時にはじめて彼が亡くなったことを知ったんだよね。辛かったね…」
アルバムのハイライトは、Garrett Garfield をフィーチャーした “Don’t Mind Me” でしょう。Chris のトレードマークであるクリーントーンのタッピングが、Garrett のソウルフルな歌声とデュエットを繰り広げるような夢見心地。 残念ながら、Garrett は昨年11月に鬱に飲み込まれてこの世を去ってしまいました。Garrett の心の痛みや喪失感を反映した感情の灯火は、インストゥルメンタルでは到達できなかった境地なのかもしれませんね。「うつ病や不安、ストレスに悩んでいる人には食事と運動の改善をお勧めするよ。自分で調べてみるのが大事だよ!」
今回弊誌では、Chris Letchford にインタビューを行うことができました。「ミュージシャンを目指すなら、収入を多様化しなければならないよ。ミュージシャンが一つのバンドだけで生計を立てていた時代はとっくに終わったんだ。2005年に僕らがバンドをはじめた時には、すでに終わっていたんだから」二度目の登場。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROHAN “RO HAN” STEVENSON OF I BUILT THE SKY !!
PHOTO BY Huang Jiale
“To Me It Expresses The Nature Of The Project, Being Free To Create Your Reality I Built The Sky = I Create My World/My Art.”
DISC REVIEW “THE ZENITH RISE”
「僕にとってこの名前は、プロジェクトの本質を表現しているんだ。現実から自由になって、”空を構築する”。つまり、それって自分の世界/芸術を創造するって意味なんだ。
このプロジェクトは、以前僕の考え方だった “努力して作る” よりも、純粋に創造するため始めたものなんだけど、皮肉なことに、今ではフルタイムで取り組んでいるよ。」
“空には限界がないでしょ?” 南半球オーストラリアの天つ空は Rohan “Ro Han” Stevenson の牙城です。そうして大気圏から成層圏、東西南北を所狭しと吹き抜けるギターの風は、流動の旋律を後方へと置き去りにしていきます。
「僕は、空がどれだけ芸術的であるかにもとても惹かれているんだ。様々な色合い、要素、バリエーションがあって、全く同じような空模様になることは2度とない。だからこそ、その一期一会な偶発性を心から楽しんでいるのさ。」
Tosin Abasi, Plini, David Maxim Micic, Misha Mansoor。ある者は衝撃のテクニックを、ある者はリズムの迷宮を、ある者は斬新なトーンを携えて登場したモダンギターの精鋭たちは、弦の誉を別次元へと誘っています。
そんなニッチなインストゥルメンタルワールドにおいて、Ro Han は空という蒼のキャンバスにカラフルな虹音を誰よりも美しく描いていきます。テクニックや複雑性よりもリスナーを惹きつける魔法とは、きっとストーリーを語り景色を投影する能力。彼にはそんな音の詩才や画力が備わっているのです。
「僕は Tosin や Misha と対照的に多くの部分でロックやパンクのヴァイブを保っていると思うんだ。間違いなく、彼らほどギターは上手くないんだけど、それはきっとユニークなセールスポイントだろう。」
BLINK 182, GREENDAY といったポップパンクの遺伝子を色濃く宿したハイテクニックの申し子。”Journey to Aurora” は象徴的ですが、確かに Ro Han の空にはいつだって明快なメロディーが映し出されています。そして、djent のリズミックアクセントを、さながら流れる雲のごとく疾走感へ巧みに結びつけていくのです。
100万回の視聴を記録した “Up Into The Ether” は Ro Han の決意をアップリフティングな旋律に込めた希望の轍。2019年の夏に仕事を辞して I BUILT THE SKY で生きていくと誓った Ro Han。成功しようと失敗しようと後悔を残して生きるよりはましだと訴えます。
一方で、KARNIVOOL, DEAD LETTER CIRCUS を手がけた名プロデューサー、Forrester Savell との共闘、オーストラリアンセンセーションはアルバムによりアトモスフェリックで感傷的な空模様ももたらしました。
ダークで激しい雷鳴のようなタイトルトラック “The Zenith Rise” が晴れ渡ると、レコードはクリーンギターとアコースティックのデリケートでメロウ、時に優しくチャーミングな鮮やかな3つの音風景を残してその幕を閉じます。実際、この偶発性、予想不可能性から生まれるダイナミズムこそ Ro Han の音楽がクラウドコア、天気予報のインストミュージックと例えられる由縁なのでしょう。
今回弊誌では、Rohan “Ro Han” Stevenson にインタビューを行うことができました。「僕は自分でやらなきゃ気が済まないタイプで(コントロールフリークと言う人もいるかもしれないけど)、これが他の人との共同作業から遠ざかっていた原因の一部なんだ。
それはたぶん、僕が強い芸術的なビジョンを持っているからだと思う。自分が何を達成したいのか分かっているような気がするし、外から他の要素を加えても結局最終的な目標から遠ざかるだけだろうから、主に一人で音楽を作っているんだ。」8/5には P-Vine から日本盤もリリース決定!どうぞ!
“There Are So Many More Professional Women Guitarists Kicking Ass Out There. I’d Rather Think Of It As “Everyone’s Era”, Where Gender, Race, Ethnicity (Or Genre!) Doesn’t Matter…I Hope The Era I Live In Is The One Where The Music Is What Matters.”
“Maybe I Am a Working Guitar Man, So I Always Get To Play Different Kinds Of Music, That Really Influences Me So Much, So That’s Why My Music Is More Diverse.”
DISC REVIEW “NAKA”
「このタイトルは日本語の “中” から取ったんだ。中とは中間とか間っていう意味だよね。それって僕のライフスタイルなんだ。僕は最近の生活の中で、全てにおいて良いバランスを探し求めているんだ。
例えば、人生と仕事、ソロ活動とお金のための音楽、テクニックとメロディーといった二律背反の中でね。全ては正しいバランスが必要に思えるね。」
tfvsjs が統べるマスロックキングダム、香港でメタリックなシュレッドを響かせる Jason Kui の魅力は日本語の “中” に集約されています。
“仕事” であるセッションミュージシャンの経験で得た卓越した技巧と音楽眼を、”人生” であるソロ作品に落とし込む。偏りすぎた天秤は、いつしか障壁を生み出すのかも知れません。つまり技巧と旋律、ロックとアウトサイドロックの絶妙なバランスは、Jason のしなやかなライフスタイルに端を発しているのです。
言い換えれば、”Naka” とはギターアルバムに付き物のエゴを一切排除した水平な天秤。Jason のニュートラルな好奇心は、楽曲全てが別の顔を持つ虹のようなレコードを完成へと導いたのです。
「僕は80年代後半に生まれたから、オリジナルのゲームボーイで育った。だから8bitは僕にとって大きな意味があるんだよ。 そして、賑やかな渋谷のホテルで書いたリフと、8bitのレトロな雰囲気を一緒にするのはクールなアイデアだと思ったんだ。」
レトロなゲームボーイとモダンなプログレッシブサウンドがクラシカルに溶け合う “Pixel Invasion” は Jason Kui に透徹する多様性の象徴でしょう。アートワークに描かれた砂漠と海、天と地、光と影のコントラストは、そのまま作品に浸透する過去と未来、技巧と旋律、優美と重厚の音狭間を反映しているはずです。
“Splash!” で ARCH ECHO や INTERVALS の血を引く近代的でポップな “Fu-djent” を披露しながら、より硬質で伝統的なフュージョン “Mean Bird” を織り込むタイムマシーンの装い。DREAM THEATER にポルカやマカロニウエスタンを移植する “Dance of Awakening The Spirit Part II, The Ballad of The Headless Horseman” の大胆不敵。さらにダンサブルなソウル/ファンク “Games Brown (Hey!)” から、フォーキーでノスタルジックな “Then and Now” へ移行する感情の津波。これほど色彩豊かなインストゥルメンタルレコードが存在するでしょうか?
フレーズの宝石箱 Andy Timmons, シュレッドの百面相 Andy James, 複雑怪奇なフュージョンキング Tom Quayle, プログメタルライジングスター Poh Hock と、モダンギターの綺羅星を適材適所に配する隠し味も見事。料理の仕上げは当然、パン屋でありプログシェフ Anup Sastry。
今回弊誌では、Jason Kui にインタビューを行うことができました。「僕が農家だとしたら、Anup は料理人さ。僕が彼にマテリアルを渡し、彼が組み立てていくんだよ。」 “Guitar Idol” や “I Am a Singer” を追っていたファンなら記憶に残っているはず。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARCO MINNEMANN OF THE ARISTOCRATS !!
“All I Can Say In Retrospect Is That We Had a Great Chemistry And I Guess It Shows And After All I’m Still In Touch With DT And Collaborate With Jordan On Many Projects And Also Was Planning To Do Something With John Petrucci For a While. I Was Just Personally The Right Fit. I Listened To Completely Different Kind Of Music And Never Heard DT Songs Or Owned Their Albums. That Was The Biggest Deal For Them.”
DISC REVIEW “YOU KNOW WHAT…?”
「”You Know What…?” で僕らはソングライター、ミュージシャンとして互いにインスパイアし、バンドとして未踏の領域を目指したよ。バンドはその親密さを増し、互いを深く知ることが作品の限界を広げる結果に繋がったね。それでもこれは完全に THE ARISTOCRATS のアルバムだよ。だからこそ、これまでの作品で最高にクールなんだ。」
プレスリリースにも示された通り、”You Know What…?” は THE ARISTOCRATS が追求する “ミュージシャンシップの民主主義” が結実したインストライアングルの金字塔です。
Guthrie Govan, Bryan Beller, Marco Minnemann。ギター、ベース、ドラムスの “特権階級” “最高級品” が集結した THE ARISTOCRATS は、その圧倒的な三頭ヒドラの無軌道な外観に反してデモクラシーをバンドの旨としています。実際、これまでのレコードでも彼らは、それぞれが各自の特色を内包した3曲づつを持ち寄り、全9曲の和平的 “カルチャークラッシュ” を巻き起こしてきたのですから。
「僕たちは全員が異なるスタイルを持っているね。だけどその互いの相性が THE ARISTOCRATS を形成しているんだ。」Marco の言葉はその事実を裏付けますが、ただし “You Know What…?” を聴けば、バンドのコンビネーションやシンクロニシティー、共有するビジョンが互いの個性を損なうことなく未知なる宇宙へ到達していることに気づくはずです。
オープナー “D-Grade F**k Movie Jam” は彼らが基盤とするジャズロック/フュージョンの本質であるスポンティニュアスな奇跡、瞬間の創造性を体現した THE ARISTOCRATS ワールドへの招待状。
眼前に広がるは真のジャムセッション。徐々に熱量を増していく新鮮な Guthrie のワウアタック、極上のグルーヴとメロディーを融合させる Bryan のフレットレスベース、そしてソリッドかつアグレッシブな手数の王 Marco。時に絡み合い、時に距離を置き、ブレイクで自在に沸騰する三者の温度は Beck, Bogert & Appice をも想起させ、ただゲームのように正確に譜面をなぞる昨今のミュージシャンシップに疑問を呈します。
トリッキーな6/8の魔法と両手タッピングからマカロニウエスタンの世界へと進出する “Spanish Eddie”、サーフロックとホーダウンをキャッチー&テクニカルにミックスした “When We All Come Together” はまさに THE ARISTOCRATS の真骨頂。ただし、70年代のヴァイブに根ざした刹那のイマジネーション、インプロの美学は以前よりも明らかに楽曲の表層へと浮き出てきているのです。
KING CRIMSON のモンスターを宿す “Terrible Lizard”、オリエンタルな風景を描写する “Spiritus Cactus” と機知とバラエティーに富んだアルバムはそうして美しの “Last Orders” でその幕を閉じます。Steve Vai の “Tender Surrender” はギミックに頼らず、トーンの陰影、楽曲全体のアトモスフィアでインストの世界に新たな風を吹き込んだマイルストーンでしたが、”Last Orders” で彼らが成し得たのは同様の革命でした。
それはインタープレイとサウンドスケープ、そしてエモーションのトライアングル、未知なる邂逅。さて、音楽というアートはそれでも正しいポジション、正しいリズムを追求するゲームの延長線上にあるのでしょうか?
今回弊誌では、Marco Minnemann にインタビューを行うことが出来ました。DREAM THEATER のドラムオーディションには惜しくも落選したものの、マルチプレイヤーとしてソロ作品もコンスタントにリリースし、近年では Jordan Rudess, Steven Wilson, RUSH の Alex Lifeson とのコラボレートも注目されています。
「個人的には完璧に DREAM THEATER にフィットしていたと思うよ。ただ僕は彼らとは完全に違う感じの音楽を好んでいるし、DREAM THEATER の楽曲を聴いたこともなければアルバムも持っていなかったからね。それがオーディションの中で彼らにとって大きな意味を持ったんじゃないかな。」日本のサブカルチャーを反映したTシャツコレクションも必見。二度目の登場です。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM BENTLEY OF ARCH ECHO !!
“We Felt It Would Be Fun To Go Against The Typical Trends And Have Something More Comical. We Have Fun And Don’t Take Things Too Seriously, And The Artwork Reflects That.”
DISC REVIEW “YOU WON’T BELIEVE WHAT HAPPENS NEXT!”
“I’ve Always Been Very Business Wise In My Approach, Coming From a Background Of Working As An Accountant, And For Me It’s All About Being As Diverse As Possible. If You Want To Be Able To Survive You Have To Be Smart.”
DISC REVIEW “MASTER OF THE UNIVERSE”
PERIPHERYの Misha Mansoor は 「メタルバンドはお金を産まなくなってしまった。これから重要なのは収入の多様化だ。」 と語り、アーティストにとって過酷な時代の生存術を提示しました。
ある時はエクストリームなシュレッダー、ある時は YouTube のエンターテイナー、そしてまたある時はギターブランドのイノベーター。Ola Englund の音楽ビジネスに対するアプローチはまさに Misha の提唱するサバイバル術を実践しています。
「生き残りたいならスマートになるべきさ。ただし、成功に簡単な方法があると考えるのは間違いだよ。そんなものはないね。全てはハードワークと献身の結果なんだ。」
Ola のアプローチは確かに合理的で現代的ですが、決してハードワークを怠っているわけではありません。そして、世界がスウェーデンの埋もれた才能を発掘したのは、まさに尽瘁と先鋭的なビジョンが詰まった Ola の YouTube チャンネルだったのです。
ウィットとユーモアに富み、絶佳の技術と無尽蔵の知識でギター関連の機材をレビューしデモ演奏を披露する Ola のチャンネルは、自身のエクストリームメタルバンド FEARED と共にその名声を高めていきました。
そして登録者数32万を超えるコンテンツは、重要な収入源であると同時に規格外の広告塔としての役割も果たし、遂には SIX FEET UNDER、そして現所属 THE HAUNTED といったビッグバンドへの加入へと繋がったのです。ギターブランド Solar Guitar の立ち上げも、YouTube で養った経験と英知が寄与しているのは明らかですね。
多忙な生活の中でも Ola は音楽を製作し続けます。「ほとんどの人はメタルリフとデスメタルの演奏でいつもの僕を知っている訳だよ。だからこの作品をリリース出来たのは素晴らしいよ。世界中に僕にはエモーションがあって、様々なスタイルの音楽を好んでいると知らしめることが出来るからね。」
初のソロアルバムとなった “Master of the Universe” は自らの感情と音楽的な多様性を余すことなく注入した “猫の目の” 宇宙です。
コミカルなタイトルに反して “Pizza Hawaii” のデザインは実にシリアスです。RUSH を想わせる知性のアルペジオを序奏として、トレンドの TOSKA 的プログレッシブグルーヴと OPETH のミステリアスなリフエイジを投影したシュレッドロマンは素晴らしくエピカルです。
コンテンポラリーで理知的ななヘヴィーグルーヴと、荘厳なシンセを纏った静謐が異次元のダイナミズムをもたらす “Cerberus”、シアトリカルなピアノの響きが Devin Townsend にもシンクロする “Slutet på Skivan”。中でも Ola にとって特別な言葉 “Solar” を冠した太陽組曲はプログレッシブリスナーに絶景をもたらす銀光のルミナリエ。
ピアノ、アコースティックギター、サクスフォンまで駆使してメタリックに、プログレッシブに、ジャジーに、アンビエントに、そしてクラシカルに踏破する24分の感情山脈は、映画のサウンドトラックにも似て究極の音景をリスナーに届けるのです。
今回弊誌では、Ola Englund にインタビューを行うことが出来ました。「僕はいつも自分のアプローチにとてもビジネス的なビジョンを取り入れてきたね。それは会計士として働いていたバックグラウンドから来ているんだけれど。そして全てを出来るだけ多様化するように心掛けているんだ。」 どうぞ!!