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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PORTICO QUARTET : ART IN THE AGE OF AUTOMATION, UNTITLED (AITAOA #2)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JACK WYLLIE OF PORTICO QUARTET !!

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With The Dreamy, Hypnotic Sound Of The Hang, Portico Quartet Creates Incredible Art In The Age Of UK New Jazz !!

DISC REVIEW “ART IN THE AGE OF AUTOMATION” “UNTITLED (AITAOA #2)”

エレクトロニカとバンドサウンドをシームレスに連結する UK ジャズ新世代 PORTICO QUARTET が、オートメーションの時代に贈る流麗なる記念碑 “Art in the Age of Automation” “Untitled (AITAOA #2)” をリリースしました!!2018年、人と機械の創造性が織り成す距離感は想像以上に接近しています。
エレクトロニカをベースとしつつ、全てにおいて細部までオーガニックであることに拘った GOGO PENGUIN の最新作 “A Humdrum Star” はリスナーの記憶に新しいところでしょう。
”Outer” をデジタルな世界、“Inner” をエモーショナルなヒューマンの領域に位置づけた作品は、例えるならば PC で精密にデザインされた建築物を、匠の手作業で一つ一つ忠実に再現して行くようなプロセスでした。
そして興味深いことに、同じ UK ジャズの新たな潮流から台頭した PORTICO QUARTET の最新作も相似的アイデアを提示して、人と機械が潮解した最先端のサウンドを立証しているのです。
「このアルバムはある種の解決策を提示しているんだよ。オートメーションと人間らしさという2つの異なる物事についてのね。」Jack がインタビューで語った通り、”Art in the Age of Automation” そして “AITAOA #2” がモダンミュージックが宿す苦悩にある種の解決策をもたらすことは明らかです。
“エモーション= 人間” “精密 = デジタル” という刷り込み。言い換えればその苦悩は固定観念という人の持つカルマ。そしてそのカルマに真っ向から挑んだ作品こそ “Art in the Age of Automation” だと言えるでしょう。
Jack は PORTICO QUARTET の音楽性をこう表現しています。「僕たちのサウンドには様々な音楽の側面が落とし込まれているよ。ジャズ、エレクトロニカ、アンビエント。時にはミニマリズムだって垣間見える。」Ninja Tune へ移籍しジャズとの距離を取り PORTICO の名の下でリリースしたポップな異色作 “Living Fields” を経ることで、ある種 “回帰” にも思える “Art in the Age of Automation” はデビュー以来最も深みを増しています。
アルバムオープナー “Endless” はその回帰と深みの象徴かも知れませんね。残響を帯びた電子音、嫋やかなブレイクビート、エセリアルなエレクトロニカの流れは、バンドのトレードマークであるハングドラムの風雅な響きを呼び込みます。”Portico” (前廊)を経由して辿り着くは神聖なるサクスフォンの嘶き。
ヒューマンとデジタルの境目が不可解な、カルマを凌駕した UK らしいダークな情緒はポストロックの雄大さを伴ってリスナーにエンドレスなサウンドスケープを届けるのです。
一方で、タイトルトラック “Art in the Age of Automation” を聴けば、独特の倍音を備えた音階をもつ打楽器ハングドラムが、ジャズとミニマリズムの蜜月を育み幻想的な電子の世界を映し出していることに気づくはずです。20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明、スティールパンのアップデートバージョンは、コンテンポラリーなデジタルの海にも良く映えます。
実際、アルバムを聴き進めるにしたがって、オーガニックな演奏とデジタルなマニュピレーションの境界は、英国の霧で覆われたかのように混迷を深めていきます。”A Luminas Beam” や “KGB” で見せる、生々しい楽器の音色と電子音の融合が育む浮遊感やダイナミズムは、変則拍子を身に纏いジャズとロックの境界さえ霞ませるその深き “霧” のたまものだといえるでしょう。
“Current History” でクラシカルとミニマルテクノの真髄を披露した後、辿り着く “Lines Glow” はまさに音のユーフォリア。神々しきハングの音色はトライバルな感覚をも伴って、カラフルなシンセサイザーの海へと溶け込みます。そうして育まれたサウンドスケープの種は “Undercurrent” で静謐と叙情の波を全身に浴びて終幕に相応しくヒプノティックに開花するのです。
壮麗なストリングスを含むアコースティックな楽器、オーガニックな演奏がモダンなプロダクション、テクニック、テクノロジーと融和した時、そこには鮮やかな PORTICO QUARTET の色彩が生まれます。PORTICO QUARTET の固定観念を解放するチャレンジは、”デジタルなエモーション”、”精密な演奏技術” を幾重にもレイヤーして最新作 “Untitled (AITAOA #2)” へと引き継がれているのです。
今回弊誌では、サクスフォン /キーボードプレイヤーの Jack Wyllie にインタビューを行うことが出来ました。PORTICO QUARTET、GOGO PENGUIN 両者共に、UK ジャズの特異性、革新性についても非常に近い切り口で回答していますね。注目です。どうぞ!!

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PORTICO QUARTET “ART IN THE AGE OF AUTOMATION” “UNTITLED (AITAOA #2) : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ichika : she waits patiently, he never fades】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ichika !!

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Japan’s Up And Coming Guitar Artist ichika Has Been Making Waves With His Trilogy EPs “forn”, “she waits patiently” and “he never fades”. Definitely, We Should Keep An Eye On This Young Virtuoso!!

DISC REVIEW “she waits patiently”, “he never fades”

光耀を増した夢幻のクリスタル。琴線の造形師 ichika がギターとベースで奏でるダブルファンタジー “she waits patiently” “he never fades” は、音聖のプロローグを透徹した美意識で彩ります。
マエストロの周辺はデビュー EP “forn” のリリース以降俄に騒がしくなりました。コンテンポラリーでメロディアスなテクニックのイヤーキャンディー AMONG THE SLEEP で gen との麗しき邂逅を果たした後、ichika がスポットライトを浴びたのは東京コレクションのランウェイでした。モデルとしても需要はありそうですがもちろんモデルとしてではなく、スーパーグループ ichikoro のメンバーとしてサプライズで演奏を行ったのです。
Think (川谷絵音), Holy (休日課長), M (ちゃんMari), Vista (奏), Sugar (佐藤栄太郎) から成る異能の音楽集団を率いるリーダーは ichika。そして ichikoro のサウンドはその奔放なラインナップとシンクロするかのように自由を謳歌しています。
「正直音楽の作られていくスピードが異常です。」実際、ゲスの極み乙女や indigo La End の頭領、百戦錬磨の川谷絵音を筆頭とするトリプルギター軍団のクリエイティビティーは斬新かつ鮮烈です。ファンクにポルカ、サンバ、ジャズ、そしてオルタナティブなロックの衝動まで内包する “Wager” はまさにグループの象徴。倍速で演じる紙芝居の如く、コロコロと表情を移す猫の目のイマジネーションはリスナーの大脳皮質を休むことなく刺激し続けます。
課長の派手なスラップを出囃子に、各メンバーの個性も際立つエキサイティングなインストゥルメンタルチューンにおいても、ichika の清澄なるクリーントーンは際立ちます。一聴してそれとわかる眩耀のトーンと水晶のフレットワークは、キラキラと瞬きながら若きヴァーチュオーゾの確かな才気を主張していますね。
無論、ichika のそのトレードマークを最も堪能出来るのがソロ作品であることは言うまでもないでしょう。「”forn” を作るときに話の全体の大きな流れを作り、それを “forn” と “she waits patiently”、”he never fades” の3つに分けました。」と語るように、冒険の序章はトリロジーとして制作されています。”forn” と “she waits patiently” は女性視点で、”he never fades” は男性視点で描かれたストーリー。そして ichika はギターを女声に、ベースを男声に見立てその物語を紡いでいるのです。
「僕は普段曲を作る前にまず物語を作り、それを音楽で書き換えようとしています。聴き手に音楽をストーリーとして追体験させることで、より複雑な感情に誘導することが出来るのではないかなと思っているからです。」という ichika の言葉は彼の作品やセンスを理解する上で重要なヒントとなっています。
彼の楽曲に同じパートが繰り返して現れることはほとんどありません。もちろん、テーマを拡げる手法は時折みられるものの、単純に同じパッセージを再現する場面は皆無です。つまり、映画や小説が基本的には同じ場面を描かず展開を積み重ねてイマジネーションを掻き立てるのと同様に、ichika の楽曲も次々と新たな展開を繰り広げるストーリーテリングの要素を多分に備えているのです。小説のページを捲るのにも似て、リスナーは当然その目眩く世界へと惹き込まれて行くはずです。
加えて、”forn” から ichika がさらに一歩踏み出した場所こそが “感情” であったのは明らかです。「この音を聴けばこういう感情が生まれる」エモーションの引出しを増やすに連れて、彼が直面したのは “ソロギター” という手法そのものだったのかも知れませんね。
ソロギター作品と言えばそのほとんどがアコースティックで奏でられていますが、ichika はエレクトリックギター/ベースを使用しプラグインエフェクトで極限まで拘り抜いた天上のトーンを創出しています。ピアノやアコースティックギターで表現するインストゥルメンタルの楽曲は、確かに美しい反面、平面的な情景描写に終わってしまうことも少なくないでしょう。
しかし、儚さや美しさと同等の激しさや苦しさを宿す “he never fades” や “illusory sense” は明らかにその殻を破った楽曲です。プレイリストを見れば分かるように、そこには、ジャズやアンビエント、ミニマルや電子音楽の領域と並行してデスコアや djent、フュージョンといったロックの衝動を通過した ichika の独創性、強みが存在するのです。
エレクトリックギター/ベースを選択することで、彼は唯一無二の自身のトーンと共に、ハイノートの自由を手に入れています。時に煌き躍動する、アコースティックギターでは再現不可能なハイフレットでのフレキシブルでファストなプレイ、右手を使用したタッピングの絵巻物はモダンなイメージを伴ってロックのエモーションをガラス細工のように繊細な音流へと吹き込みます。
そしてより “ギター” “ベース” という弦楽器の特徴を活かしたスライドやヴィブラート、トレモロ、ガットストローク、さらには休符、弦の擦れる音やミュートノイズまでをも突き詰めて、ichika は感情という総花を物語へと落とし込んでいるのです。揺らぐ感情の波間に注がれる荘厳なる崇高美。
“彼女” は辛抱強く待ちました。”彼” も辛抱強く待ちました。きっと世界には、絶望の後には救いが、別れの後にはユーフォリアが等しく用意されているのです。ichika の素晴らしき序章、未曾有のトリロジーは静かにその幕を閉じました。ISSUES の Tyler Carter と作曲を行っているという情報もあります。次の冒険もきっと目が離せないものになるでしょう。Have a nice dream, ichika です。どうぞ!!

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Artwork by Karamushi

ichika “she waits patiently”, “he never fades” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GLEB KOLYADIN (IAMTHEMORNING) : GLEB KOLYADIN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GLEB KOLYADIN OF IAMTHEMORNING !!

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Not Only A Gifted Pianist And Keyboardist, But A Brilliant Songwriter And Arranger, Iamthemorning’s Keyboard Wizard Gleb Kolyadin Shows His Incredible Talent With His Kaleidoscope-ish Solo Debut “Gleb Kolyadin” !!

DISC REVIEW “GLEB KOLYADIN”

崇高で森厳なる夢幻世界を具現化し、知性とロマンの宝石箱でプログシーンに衝撃をもたらした iamthemorning。幽玄の歌姫 Marjana を存分に駆使するコンダクター、Gleb Kolyadin が自身の “音楽日記” を更新するソロデビュー作 “Gleb Kolyadin” をリリースしました!!
万華鏡の世界観で待望の “キーボードヒーロー” が紡ぐ豊潤で鮮やかなサウンドスケープは、弦数を増やし複雑さと重厚さで近代インストゥルメンタルミュージックの花形となったギターへと突きつけた挑戦状なのかも知れませんね。
「この作品のアイデアは何年も前から積み重ねられて来たものだということなんだ。僕は長年、”Polonuimcubes” という音楽日記のようなものを書き続けているんだよ。」セルフタイトルで自身のポートレートをアートワークに冠した作品は、Gleb の書き連ねた音楽日記と自身のパーソナリティーを投影したまさに自叙伝のようなアルバムです。
“From Stravinsky to Keith Jarrett to ELP”。クラッシック、現代音楽、ジャズ、アンビエント、そしてプログレッシブに敬意を表したマイスターの自叙伝、ワイドで限定されない豊かなイマジネーションは、まさに多様なモダンミュージックの雛形だと言えますね。グランドピアノの凛とした響きは、時に Chick Corea の流麗なエレクトリックキーボードや Brian Eno の空間の美学へと移行し、全てを抱きしめたロシアンマイスターの傑出した才能を伝えています。
つまり、Gavin Harrison, Nick Beggs, Theo Travis といったプログシーンの重鎮がドラムス、ベース、フルート&サックスで牽引し、スーパースター Steve Hogarth, Jordan Rudess がゲスト参加を果たしたこのレコードでは、しかし Gleb こそが凛然と輝く星斗。
アルバムオープナー、”Insight” は Gleb の新たな音旅への “洞察” を高めるリスナーへのインビテーション。Gleb のピアノと Gavin のドラムスは、まさに一枚岩の如く強固に同調しアルバムの骨格を形成し、サックスと弦楽器を巧みに操るシンセサイザーの躍動は印象的なメロディーの潮流と共に作品の自由と鮮度を伝えます。
万華鏡の世界観を象徴する “Kaleidoscope” はモダンとレトロの交差点。プログレッシブの遺産を濃密に宿したピアノが奏でる爽快なテーマは ELP の “Hoedown” にも通じ、Gleb の繊細かつ大胆な鍵盤捌きは言葉を失うほどにスリリングです。
Tatiana Dubovaya のエセリアルなコーラスが切れ込むと雰囲気は一変し、突如として世界は荘厳なる現代的なアトモスフィアに包まれます。そうして楽曲は、フルートの音色を皮切りにエレクトリックカーニバルの大円団へと向かうのです。もちろんここに広がる多彩な”Kscope” はレーベルの美学、ポストプログレッシブの理念とも一致していますね。
そうして “Eidolon”, “Constellation/ The Bell” といった浪漫溢れるピアノの小曲と同様に、ボーカル曲も “Gleb Kolyadin” が誇る “Kscope” の一つとなりました。
“Storyteller” で Jordan Rudess とのヒリヒリするようなインテンスを終えた後辿り着く”The Best of Days” は終幕に相応しき叙情のドラマ。MARILLION の Steve Hogarth と Gleb のコンビネーションは極上のアトモスフィアとセンチメントを創造し、ノスタルジアを深く湛えた楽曲はリスナーの過去へと旅立ち “古き良き日” を克明にイメージさせるのです。
「現在ピアノは、僕にとって自分の思考や感情を表現するためのベストなオプションなんだ。」と語る Gleb。どこまでも謙虚なピアノマンはしかし、間違いなくプログシーンのセンターに立っています。長く待ち望まれた新たな鍵盤の魔術師はロシアからの登場。Gleb Kolyadin です。どうぞ!!

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GLEB KOLYADIN “GLEB KOLYADIN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GOGO PENGUIN : A HUMDRUM STAR】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK BLACKA OF GOGO PENGUIN !!

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PHOTO BY LINDA BUJOLI

Manchester-based Ambitious Jazz Trio, GoGo Penguin Draws Incredible Acoustic-Electronic Visions With Their Eclectic New Record “A Humdrum Star” !!

DISC REVIEW “A HUMDRUM STAR”

“Acoustic Electronic” な音景をヴィヴィッドに描くマンチェスターの彗星 GoGo Penguin が、宇宙の真理を奏し最新作 “A Humdrum Star” をリリースしました!!多種多様な次元が交錯し、衝突し、そして融解する偶然絶後のエピックは、膨張する宇宙の営みを彼方から俯瞰する、若しくは人の内なる宇宙を心の目で見つめる音の天体観測なのかも知れません。
「GoGo Penguin はメンバー3人ともジャズをプレイして来た歴史があるけど、同時に他のタイプの音楽も聴いてプレイして来たんだよ。だから、そういった好きな要素をバンドに持ち込むのは当然だよね?」 大胆さと繊細さを兼ね備えた ベーシスト Nick が語るように、GoGo Penguin の音楽は2010年代の拡大拡散するジャズを象徴する多様性に満ちています。
三者が学問として学んだクラッシック、ジャズを基盤として、エレクトロニカ、インディーロック、ポストロックへの愛が溢れるそのエクレクティックで斬新なデザインは、英国の音楽賞マーキュリープライズへのノミネートやニューヨーク・タイムズ紙による ”SXSW 2017”のベスト・アクト12への選出が実証するように高い注目、評価を集め続けているのです。
さらに踏み込んで思考を進めれば 「UK、特にマンチェスターでは、何がジャズで何がジャズじゃないかなんて気にしていないんだよ。」 という一言が目に止まるはずです。
世界を驚かせた拡大するコンテンポラリージャズのプロパガンダ “Jazz The New Chapter” ですが、実際は Nick も語るように、ある種未だ伝統的な中心地アメリカから遠く離れた UK でこそ衝撃的なブレンドのカルチャーが勃興しているのです。先日インタビューを行った MAMMAL HANDS にも言えますが、結合物がブラックミュージックであれ、エレクトロニカであれ、ポストロックであれ、最早彼らの創造する “ジャズ” は “ジャズ” ではない何かへと移行しつつあるようにも感じますね。
“Inner” と “Outer”。二つの思考から制作を始めたという “A Humdrum Star”。インタビューで Nick が語るように “Outer” とは俯瞰した広大な宇宙、”Inner” とは壮大な宇宙にポツリと浮かぶちっぽけな人間やその精神世界を指すはずです。
同時に、シーンでもずば抜けたテクニックを誇るドラマー Rob は、このレコードがエレクトロニカをベースに作られながらも、プロデューサー Brendon が全てにおいて細部までオーガニックであることに拘ったと語っています。例えるなら、PC で精密にデザインされた建築物を、匠の手作業で一つ一つ忠実に再現して行くようなプロセスでしょうか。
すなわち、”Outer” とはデジタルな世界、そして “Inner” とはよりエモーショナルなヒューマンの領域をも示すダブルミーニングなのでしょう。
そして確かにアルバムを通して貫かれる “Acoustic Electronic” なテンション、デジタルとオーガニックが生み出す二面性の世界観はある意味超越的ですらありますね。オープナー “Prayer” で聴くことの出来る Chris の美しきピアノメロディーとジャズの不協和音に巣食うコントラストは手動の電子ノイズを導き、ソウルフルでしかしリスナーをどこか不安にさせる不思議なアトモスフィア、人間らしさを伴いアルバムのイメージを喚起します。
“Raven” で複雑かつメカニカルなデジタルビートとノイズをそのフィジカルで一手に引き受け全てのテクニックを楽曲へと還元する一方で、”Brado” ではハウスミュージックの装いでチルアウトする Rob の存在感は圧倒的。デジタルなビートを細部まで究極に人間が再現したかのような、ある種逆説的な Rob の手法は、シンプルで厳かな耽美のメロディーに電子の残響を宿す Chris のピアノトーン、Nick の多彩で強靭なウッドベースを伴って異様なまでの推進力、奇跡のグルーヴを創出しています。
二面性の収束こそ “Transient State” だと言えます。東京で過ごした日々の中で、代々木八幡の神聖さと周囲の雑多な雰囲気の違いに衝撃を受け神道に興味を抱いたという Chris。自然の中に神を見つけ善も悪も等しく抱きしめる神道の考え方は、ネガティブな出来事もポジティブな出来事も壮大な神秘の一部であるという作品のテーマに繋がることとなりました。
アコースティックとエレクトロニカ、静と動のダイナミズム、広大な宇宙と狭小な人の営み、そしてネガティブとポジティブ。様々な二進法で彩られたレコードは、バンドがインストルメンタルでありながら類希なるストーリーテラーであることを鮮やかに物語っているのです。
今回弊誌では Nick Blacka にインタビューを行うことが出来ました!!2/19からは待望の日本ツアーも始まります。どうぞ!!

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GOGO PENGUIN “A HUMDRUM STAR” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MAMMAL HANDS : SHADOW WORK】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MAMMAL HANDS !!

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New Chapter Of UK Jazz, Mammal Hands Carve Out A Great Footstep With The Expansive, But Monolithic New Record “Shadow Work” !!

DISC REVIEW “SHADOW WORK”

拡大する UK ジャズの象徴にしてニュージャズの新たな潮目、MAMMAL HANDS。昨年、初来日公演も成功させた異端のベースレストリオがリリースした最新作 “Shadow Work” は、多彩多様なジャンルを繋ぐ架け橋としてタイトルとは裏腹の凛とした光彩を放っています。
Robert Glasper に端を発する、拡散する新たなジャズの潮流はまさにモダンな音楽世界の縮図と言えます。ヒップホップ、ソウル、ファンク、エレクトロニカ、フォーク、クラシカル。様々なジャンルを縦横無尽に横断し、”Jazz The New Chapter” とも形容されるニュージャズの瑞々しいアプローチは、そして今、世界各地で同時多発的に勃興しているのです。
とりわけ UK は北欧、南米と並んで、その万華鏡のサウンドスケープで注視される新聖域の核心だと言えるでしょう。
「沢山の新たな UK のジャズアクトがその音楽にエレクトロニカを取り入れる傾向は驚きではないんだよ。というのも、UK では多くの偉大なエレクトロニカミュージックが制作されているからね。」 インタビューで Nick が語ったように、そうして UK ジャズ新世代が一際フォーカスしブレンドした個性こそ、彼の地が誇るエレクトロニカの胎動でした。
Matthew Halsall 率いる Gondwana Records のロースターはその滾りし地熱の趨勢を握ります。ハングの叙情を取り入れた PORTICO QUARTET, ビッグレーベル BlueNote への移籍を果たした GOGO PENGUIN, そして中でも今回取り上げる MAMMAL HANDS は最もエクレクティックで普遍的な魅力を備えたトリオだと言えるのかも知れませんね。
何より記して置くべきは、バンドの持つ Steve Reich 由来のミニマリズムと幻想的なそのサウンドデザインが、馴染み深きポストロックやポストプログレッシブの領域と非常に接近している点ではないでしょうか。
「実の所、僕たちは自分たちをジャズグループだと考えたことは一度もないんだよ。」 と JESSE が語れば、Nick は 「僕が聴いて育ったのは、MOGWAI, GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR, KING CRIMSON といったバンドなんだ。」 と証言します。
レコード最長のエピック “Transfixed” はその象徴かも知れません。シングルノートの反復から生まれるグルーヴは、いつしか複雑で多面的なリズムとメロディーを重ねて行きます。
ライヒとチャネリングを果たしたかのようなミニマリスティックなデザインは、Jesse のタブラを使用したパーカッシブなアプローチ、Nick のアコースティックとエレクトリックを行き来するヒプノティックな鍵盤の妙、Jordan のコルトレーンを想起させる冷ややかなテナーの情熱、そしてさりげのない電子の海を全て携えて、60, 70年代の “スピリチュアルジャズ” をロックとコンテンポラリーのイメージを伴い21世紀へと蘇らせるのです。
実際、「新しいアプローチとトラディショナルなアプローチをブレンドして音楽を創造することは、 僕たちにとって本当に興味深い手段なんだよ。それに、僕は新たなバンドがコンテンポラリーなサウンドを追い求めることは重要だと思っているからね。」 と Nick が語るように、彼らの戦略は実に巧妙です。
近年、よりエレクトロニカへとコミットする PORTICO QUARTET とは対象的に、MAMMAL HANDS はジャズのトラディショナルな偶然性からコンテンポラリーな必然性、そしてロックやプログ、エレクトロニカのリスナーにもアピールするキャッチーなフックとチャレンジングな革新性を兼ね備えているのですから。
ストリングスを文脈に配置したミニマルジャズの体現 “Black Sails”、フルートで作曲されたアイリッシュフォークとジャズの美麗なる落とし子 “A Solitary Bee”、クラシカルの息吹が宿る “Boreal Forest”、そしてグループのアイデンティティであるワールドミュージックに特化したタブラの魔術 “Three Good Things”。
つまり全ては、アドベンチャーを志向するジャズ、ロック、フォーク、アンビエント、ダンスリスナーにとって、格好の架け橋として設計されているのです。そして絶景なるその無垢なる橋からの眺望は、逆説的に言えばカテゴライズを超越したただ “音楽” と描写されるべき風景なのかも知れませんね。
今回弊誌では、メンバー全員にインタビューを行うことが出来ました。アクセシブルでありながら非常に繊細かつ多様な彼らの音楽は弊誌の理想ともシンクロします。「多くの人が、僕たちの音楽が他のジャンルを聴くきっかけになったと言ってくれるのは嬉しいよ。」 どうぞ!!

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MAMMAL HANDS “SHADOW WORK” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DIABLO SWING ORCHESTRA : PACIFISTICUFFS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANIEL HÅKANSSON OF DIABLO SWING ORCHESTRA !!

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Hybrid Of Old–style Swing jazz, Classial, and metal. Sweden Based Incredible Octet Diablo Swing Orchestra Has Released More Unique, Unexpected But Ultra-catchy Masterpiece “Pacifisticuffs” !!

DISC REVIEW “PACIFISTICUFFS”

メタルワールドのアウトオブボックス。世界で最もカラフルかつユニークな悪魔の楽団 DIABLO SWING ORCHESTRA が、遂にシーンへとより深く浸透すべき新作 “Pacifisticuffs” をリリースしました!!複雑怪奇とポップを過去最高の滑らかさで融解させた作品には、タイトルに冠した “平和主義” と “殴り合い” の二律背反が見事にフィットしています。
“ポストファーストメタルタイム”。WALTARI の Kärtsy Hatakka が弊誌のインタビューで証言したクラッシックメタルとモダンメタルの偉大なる架け橋に、スウェーデンが果たした役割はあまりにも絶大でした。
MESHUGGAH, OPETH の両巨頭を挙げるまでもなく、90年代初頭から此の地の先鋭は、ベーシックなメタルのデフォルトにプログレッシブの波動、エクストリームな残虐性、フォルクローレの優美、そして複雑なリズムアプローチ等を付加してモダンメタルの礎となる百花繚乱の多様性を創世し続けているのです。
中でも、チェロやホーンセクションを備えた8人組 DIABLO SWING ORCHESTRA のエクレクティックな存在感は飛び抜けて異端だったと言えます。その名が物語る通り、メタル、ジャズ、クラッシックを等しくベースとする狂気を孕んだクロスオーバーの濁流は、アヴァンギャルド、エクスペリメンタルの狭い定義に堰き止められ限定的ながら、間違いなく強烈な印象と影響を残して来たのです。
そして、前作 “Pandora’s Piñata” から5年という長いインターバルを経てリリースしたバンドの最新作 “Pacifisticuffs” は、囚われていたその狭い檻までをも突き破り、より幅広く認知と賞賛を受けるべき作品に仕上がったと言えるでしょう。
オペラティックな歌唱でバンドの顔とも言えた Annlouice Lögdlund が脱退し、新たに Kristin Evegård を迎えたことは、結果として変化の象徴となりました。より普遍的で、しかしアンニュイかつジャジーな魅力と個性を備えた Kristin の伸びやかな歌唱は、バンドのカルトなイメージを一新させるフレッシュな起爆剤だと言えますね。
爽快でキャッチー、そしてあまりに多様なオープナー “Knucklehugs (Arm Yourself with Love)” は楽団の新たなイメージへと誘う招待状。Daniel が 「僕たちはまず、強力なメロディーやリズミックなフックといった楽曲の強固な基盤にフォーカスする傾向があるんだよ。」と語る通り、ポップパンクのコマーシャルな突進力さえ喚起する Kristin と Daniel のデュエットは、メタリックなギターリフ、スウィングするホーンセクション、そしてバンジョーとストリングスを携えたエルヴィスの祝福を一身に受けて、至上なる創造性とフックを提示します。
陽気なブルーグラスから一転、オーケストレーションとホーンをさらに前面に配した感傷的なメタルポルカ “The Age of Vulture Culture” で Kristin の完璧なる融合を証明した後、バンドは “Superhero Jagganath” でトロピカルなレゲエにハワイアン、”Lady Clandestine Chainbreaker” ではフラメンコの邪悪な誘惑にフォーカスし、”Pacifisticuffs” の音楽が世界を巡る旅であると高らかに宣言するのです。
そうして辿り着く “Jigsaw Hastle” は、故郷スウェーデンへの凱旋と言えるのかも知れません。Kristin の透明な哀愁を生かしたウルトラキャッチーなダンスチューンは、同郷の ABBA を彷彿とさせる北欧の煌びやかな風。アートワークのトライアングルから注入された電気の魔法は、きっとこの楽曲のエレクトロニカな要素へと還元されたに違いありません。
Daniel が提唱する “異なるサウンドを独自のものへと昇華する偉大なる自由” は、究極のポップと巡るエクレクティックな世界旅行の果てに遂に完成を見たのかも知れませんね。
今回弊誌では、シンガーでギタリスト、バンドの中心人物 Daniel Håkansson にインタビューを行うことが出来ました。どうやら Daniel のボーカルパートが減った理由も、Kristin の加入による理想のオクテットの完成にある様ですね。「今まで成されてきたことの “外側” について考えなくてはいけないと思うんだ。」どうぞ!!

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DIABLO SWING ORCHESTRA “PACIFISTICUFFS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHON : HOMEY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERICK HANSEL OF CHON !!

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California Based, Incredible Jazz-Math Rock Trio, Chon Advance Into New Realm With The Masterpiece “Homey” !!

DISC REVIEW “HOMEY”

インストゥルメンタルミュージックの未来を切り開く時代の寵児。サンディエゴのジャズ/マスロックトリオ CHON が、シーンの輿望を担う最新作 “Homey” をリリースしました!!バンドの “ホーミー” である南カリフォルニアの太陽、空気、夏の匂いを一身に浴び、望外なまでにチルアウトしたレコードは、ジャンルに海風という新風を吹き込んでいます。
CHON が2015年にリリースしたファーストフルレングス、 “Grow” はバンドのユニークな才能や感受性を見せつける素晴らしきショーケースとなりました。ソフトでカラフルなコードワーク、デリケートでピクチャレスクなリードプレイ、ダイナミックに研ぎ澄まされたバンドサウンド。高度な知性と屈託のない無邪気さが同居する、オーガニックかつテクニカルなその世界観はまさしく唯一無二で、スメリアンの秘蔵っ子から一躍シーンのサウンドアイコンへと飛躍を果たすことになったのです。
バンドのホームタウン、カリフォルニアにインスパイアされ制作された最新作 “Homey” は、”Grow” で見せた圧倒的な光彩はそのままに、その鋭敏な感性が掴まえたエレクトロニカ、アンビエント、ハウスなど所謂チル系のトレンドを大胆に咀嚼し、トロピカルで新鮮なムードとテクニカルなマスロックを共存させることに成功していますね。
アルバムオープナー、”Sleepy Tea” は、インタビューにもあるように、驚異的なまでに進化した CHON のインストゥルメンタルワークを堪能出来る楽曲です。猫の目のように変化する細やかなリズムアプローチは、Mario と Erick のギターチームがダンスを踊る最高の舞台。時に奔放に、時に精巧に、極上のメロディーとエキサイトメントを運ぶニ人の複雑で甘い関係は、奇跡の距離感で音のユーフォリアを紡いで行きます。
CHON の豊潤なる味わい深さの一端は、モダンの中に見せるオールドスクールな部分かも知れません。特に今作では、フュージョンと言うよりもビバップやモダンジャズのスウィング、ツーファイブ、フォービート、フレージング、シンコペーションが丹念に織り込まれており、得も言われぬコントラストを創出しています。例えば、”Checkpoint” などはマスロックの顔をしたジャズスタンダードのナンバーだと言えるかも知れませんね。
当然、手数とグルーヴを両立させた Nathan Camarena のドラム捌きも卓越しており、突っこみ気味でバンドを牽引するそのエナジーは圧倒的。ゲストに迎えた Brian Evans のパーカッション、有機的でムーヴアラウンドな Anthony Crawford のベースラインとも相俟って、型破りでマスロックの可能性を再定義するようなデザインをアルバムを通して描いていますね。
同じくサンディエゴを拠点に活躍する、ビートメーカー/ジャズギタリスト Go Yama をフィーチャーした “Berry Streets” は CHON の新たな冒険を象徴する楽曲です。現在進行形のトレンドであるトロピカルハウスを主軸としたトラックは、あまりにノスタルジックでアンビエント。カリフォルニアのビーチで沈みゆく夕日を惜しみつつ聴くために作られたかのような至高のチルウェイブに仕上がっています。
同時に CHON のジャジーなインストゥルメンタルワークも効果的に挿入されており、Erick がインタビューで語ってくれた通り、結果として二つのジャンル、二つの才能が見事に融合し開花した独創的で至妙な世界観を構築することに成功しているのです。
新進気鋭の シンガー/サックス奏者 Masego を起用した “Nayhoo” もコラボレートの成果が際立って実を結んだ一曲です。ソウル/エレクトロジャズの領域へと踏み込んだ楽曲は、Masego のエモーショナルなボーカルを芯柱とし、匂い立つような色気、スイートな瞬間をアルバムへもたらしていますね。勿論、Thundercat や、FLYING LOTUS がフェイバリットに挙がっている事実を知るまでもなく、ここで彼らが、Jazz の領域を拡大する Robert Glasper と “Jazz The New Chapter” のフロンティア精神を意識したことは明らかです。
「自分たちが気に入るサウンドの楽曲を書き続けて、叶うならファンも僕たちの音楽を好きになり続けてくれることだね。その過程で、さらに新たなファンも開拓出来たら良いな。」
世界最高峰のエレクトロポップを創造するビートメーカー、Giraffage A.K.A. Charlie Yin との共演にも言えますが、既存のファン層からある程度の反発を見越しても、より幅広いマスリスナーへとアピールし、音楽的なチャレンジを続けることこそがバンドのゴールだと Erick は認めています。そして CHON の掲げる、その本来の意味でのロックスピリットは必ず報われるべきだと感じました。
今回弊誌では、ギタリストの一人 Erick Hansel にインタビューを行うことが出来ました。もし、”Homey” のムードやスピリットが気に入ったなら、Jakub Zytecki の最新ソロEP “Feather Bed” や、先日弊誌でも特集を組んだ ichika の新プロジェクト AMONG THE SLEEP へと歩みを進めてみるのも一興です。どうぞ!!

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CHON “HOMEY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【川口千里 / SENRI KAWAGUCHI : CIDER ~Hard & Sweet~】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SENRI KAWAGUCHI !!

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20 Years Old Drum Maestro, Sernri Kawaguchi From Japan Has Just Released Hard & Sweet Fusion Record, “Cider” !!

DISC REVIEW “CIDER ~Hard & Sweet~”

“手数姫” こと女子大生スーパードラマー、川口千里が遂にメジャーデビュー作 “CIDER ~Hard & Sweet~” をリリースしました!!二十歳の節目にメンバーを固定して望んだ成長著しい快作は、まさに茫々と広がる世界への確かな切符となるでしょう。
インタビューにもあるように、5歳でドラムと運命的な出会いを果たし、8歳であの “手数王” 菅沼孝三氏に師事を始めたという彼女の物語は、さながら現代のお伽噺のごとく素敵な奇跡と共に幕を開けました。12歳で挑んだプレイスルー動画の総再生回数は4000万回に迫り、世界的なドラム関連サイト “ドラマーワールド” では世界のトップドラマー500に撰されるなど、もはやその存在はワールドワイドに熱い視線を浴びていると言えますね。
すでにインディーズで2枚のソロ作品をリリースしている川口千里。しかしその活躍は自身のリーダー作のみに留まりません。E-girls, Guthrie Govan のライブをサポートし、Lee Ritenour とも共演。さらには 映画 “さらばあぶない刑事” のサウンドトラック、ももいろクローバーZのアルバム “AMARANTHU” にも参加するなどその素晴らしくジャンルを股に掛けた活躍により、彼女はしっかりと自身の軌跡を刻んで行っているのです。
「20歳を記念するアルバムなので、大人をイメージしつつ爽やかな若さもあるタイトル」「私のドラミングの “Hard” な部分も “Sweet” な部分も両方感じてほしい」 という理由から名付けられた3作目のリーダー作 “CIDER ~Hard & Sweet~”。アニバーサリーの冒険で彼女がキーパーソンに指名し絶大な信頼を置いたのが、Philippe Saisse でした。THE ROLLING STONES, David Bowie から David Sanborn, Al Di Meora まで数多の巨人と共演しそのアレンジを手がけて来た、フランスの偉大なキーボーディストにしてコンポーザー、プロデューサーは自身のグループ PSP の “S” を Simon Phillips から Senri Kawaguchi に翻しその力を貸すことにも吝かではありませんでした。
アルバムオープナー “FLUX CAPACITOR” は “バックトゥザフューチャー”、時代を行き来する作品の予告編でしょうか?フュージョンがスムーズジャズと呼ばれる以前のクロスオーバーなエキサイトメントとフリーダムを掲げつつ、同時に Philippe のポップなセンスを活かすクリアーなプロダクションとモダンなテクニックを内包する楽曲は瑞々しさに満ちています。ゴーストノートやハイハットの細かな刻みまで隈なく見渡せるサウンドの透明度は本当に群を抜いていますね。
Philippe のビンテージな機材から繰り出されるキャッチーなテーマは、川口千里の刻々と拍子を移すダイナミックなリズムワークに牽引され、万華鏡のように鮮やかな広がりを見せて行きます。Pino Palladino の代役として参加したカメルーン生まれのテクニシャン Armand Sabal-Lecco は、低音域から高音域までフレキシブルなベース捌きを披露し、Philippe の Jan Hammer を想起させるスリリングなソロワークと相まってギターの不在を感じさせませんね。トリオのタイトなグルーヴがダブルタイムへ移行すると、そのカタルシスはさらに加速しロックの衝動をさえ孕みながら音のユーフォリアを創造していくのです。
マリンバを使用し野性的な雰囲気を演出する “Wupatki”、彼女自身が作曲を行ったロマンチックなバラード “Longing Skyline” を挟んで訪れる “Do Do Ré Mi” はアルバムのハイライトと言えるかもしれませんね。ジャズスタンダードの古典ようにスタイリッシュに幕を開ける楽曲は、突如その舞台を現代的なフュージョンへと移します。アルバムに収録するのが初めてとは思えないほど堂にいった4ビートから6/8拍子へと切り替わるその魔法の瞬間はリスナーに音楽の “楽しさ” を運ぶはずです。”間”を大切にしたという彼女の言葉通り、スティック一閃、バンドがピタリと完全に音を止める瞬間はあまりにクールで川口千里というコンダクターの実力を存分に見せつけています。
さらに 「現場での化学反応が想像以上に凄かった」 と語るように、楽曲終盤のサンバをベースとした、ドラムスがリード楽器に思えるほど壮絶なインタープレイは、”Ginza Blues~intro~” や “Senri and Armand Groove” と並んで “手数姫” の面目躍如であり、同時にメンバーの個性、そしてトリオのケミストリーが結実した得難き刹那だと感じました。
インタビューでフュージョンを音楽の “交差点” と位置づけた千里さんの想いを乗せたアルバムは、奇しくも個性的な三者の道が交差した証である “In Three Ways” でカラフルに幕を閉じました。「単なるスムーズジャズじゃない」という言葉に込められたプライドをしっかりと実現した充実の51分。
今回弊誌では、川口千里さんにインタビューを行うことが出来ました!世界を見据えつつ、同時に現役女子大生らしいかわいらしい部分も垣間見えると思いますよ。どうぞ!!

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SENRI KAWAGUCHI “CIDER ~Hard & Sweet~” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FELIX MARTIN : MECHANICAL NATIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FELIX MARTIN!!

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Felix Martin’s Twin-Neck 14&16 Strings Guitar And Two Hand Tapping Technique Opens The New Realm Of Instru-metal Music With Incredible New Record “Mechanical Nations” !!

DISC REVIEW “MECHANICAL NATIONS”

南米ベネズエラが生んだギターウィザード Felix Martin が、ラテンの風とモダンな色彩を投影した最高傑作 “Mechanical Nations” をリリースしました!!14&16弦のダブルネックが紡ぐ鮮烈で独創的なその調べは、鸞翔鳳集な昨今の Instru-metal シーンにおいても一際光彩を放っています。
Felix の楽器は独特です。Warr Guitar や Chapman Stick など確かに10弦を超える多弦楽器は存在します。ただ、それらはベースの色合いが濃く、ベースにメロディー用の弦、レンジが付属しているといった考え方を基調としています。
対して、Felix のダブルネックギターは、インタビューにもあるように、同じレンジのギターを2つ合わせただけのある意味シンプルな構造。しかし同じレンジの7、8弦ギターを2本使用するため、既存の多弦楽器 (スケールが長い物もあるので一概には言えませんが) に比較して、よりギターの領域にフォーカスした立体的な演奏を味わうことが出来るのです。
勿論、ギターやベースに比べれば、双方のギターをタッピングで奏でるため両手の自由度は高く、遥かに多くの音を同時にプレイすることが可能。パーカッシブなピアノとも称される彼のテクニック、アプローチは、まさしくモダンギターイノベーションのフロントランナーだと言えますね。
その先鋭的なスタイルに反し、クラシカルなトリオという編成で制作された “Mechanical Nations” は、母親が手がけ、自らのギターをあしらったその芸術的で大胆なアートワークが示すように、南米大陸への深い愛情を包み込んだ芳醇な作品に仕上がりました。南米をツアーし、大陸の多種多様な都市の空気、エネルギー、文化、景観に触れた Felix は、街ごとに受けたインスピレーションを楽曲へと反映して行ったのです。
“Barquisimetal” は彼のホームタウン Barquisimeto を、そして “Canaima” はベネズエラが誇る世界最後の秘境カナイマ国立公園を心象として生まれた楽曲です。そしてアルバムでも最もメタリックかつメカニカルな、タンゴのリズムを纏った前者と、最も穏やかでノスタルジックな、フォークミュージックのイメージを具備した後者のコントラストは、そのままベネズエラの豊かな音楽文化の写し鏡となっているのです。
カリビアン、ネイティブ、 アフリカ系、ヨーロッパ系。 まさに人種のるつぼと言える社会主義国家はレゲトン、サルサ、ホローポ、ガイタ、カラカスのメレンゲなど、ロマンティックから複雑な拍子を持つ音楽までラテンミュージックを象徴する雑多なバックグラウンドを宿しています。そしてそのラテンのルーツは Felix の内面世界にも強く共鳴し、唯一無二の Instru-metal、グローバルフュージョンへと昇華しているのです。
メタル、ジャズ、プログ、ファンク、そしてラテンの雄弁なカクテルと言える “Mechanical Nations”。インタビューで語ってくれた通り、”Santos” にゲスト参加した Angel Vivaldi のリードを除いて作品にはソロパートが存在しません。それでも作品が至上のスリルを常に纏っているのは、バークリーで学んだトリオの傑出した技術と、緩急を巧みに配置したコンポジションの賜物だと言えますね。
つまり、”Eight Moon Headdress” が象徴するように、クリーントーンの詩情豊かなサウンドスケープと、エキサイティングで攻撃的なパーカッシブテクニックが目まぐるしく交互する魅力的な楽曲群は、手数の多いエキゾチックなドラミングとスラップを交えたダイナミックなベースプレイが牽引し、タイトなバンドの推進力となっているのです。
ANIMALS AS LEADERS, KING CRIMSON, PRIMUS, 或いは Stanley Jordan。Felix のマジックタッチと彼のバンドが生み出すドラマティックな芸術は、偉大な先人にも比肩し得るクオリティーと独創性を秘めています。今回弊誌では、Felix Martin にインタビューを行うことが出来ました。日本でライブを行うのか昔からの夢だそう。どうぞ!!

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FELIX MARTIN “MECHANICAL NATIONS” : 9.5/10

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