NEXT BREAK-THROUGH : CROWN LANDS “THE LEGACY OF RUSH TO BE PASSED ON”
“One Of Our Favorite Bands Is Rush,And They Always Joke About Being The World’s Smallest Symphony. And We Kind Of Wanted To One-up, Or One-down Them, And See How Lush, Orchestral And Symphonic We Could Get With Our Rock Sound.”
WHITE BUFFALO
目を閉じると、誰もがそこに4人のミュージシャンがいると思うに違いない。
CROWN LANDS の音楽は、力強く、幻想的で、広大です。では、この若い二人のロッカーは、どのようにしてステージ上でこうしたワイドなサウンドを実現しているのでしょうか?
ひとつは当然、その音楽的な卓越性です。CROWN LANDS のシンガー兼ドラマー、Cody Bowles は、甲高い歌声と熱いビートを操る。一方、Kevin Comeau はギターの嵐、シルキーなシンセサイザー、輪郭の濃いベースを、しばしば同じ曲の中で同時に繰り出していきます。
「RUSH は僕らの好きなバンドのひとつなんだけど、僕たちは彼らはいつも世界一小さなシンフォニーだって冗談を言っているんだ。そして、彼らを超えるか、あるいは下回るかわからないけど、自分たちのロックサウンドでどれだけ豪華でオーケストラ的でシンフォニックになれるか試してみたかったんだ」そう Comeau は語ります。
RUSH の傑作 “A Farewell to Kings” は今年で45周年です。
「RUSH を知ったのは、僕が10代の頃、実は両親が RUSH を公然と嫌っていたからなんだ。僕は当時パンク・ロックに夢中で、音楽的な才能というよりも、彼らの反骨精神に惹かれていたんだよ。でも、両親が実は THE CLASH が好きで、MISFITS を面白いと思っていることに気づいたとき、パンク熱が冷めたんだよね。それで、”両親は何を嫌っているんだろう?”と思ったんだ。RUSH が嫌い?完璧だってね。それで、”彼らのアルバムを全部ダウンロードしよう” と思ったんだ。それで、叔父さんから彼らのディスコグラフィーを入手して、iPod にダウンロードしたんだよ。
この作品の冒頭の2曲、”A Farewell to Kings” と “Xanadu” は、ロックフィールド・スタジオの中庭でアコースティック・ギターやパーカッションなど、鳥のさえずりが聞こえるような牧歌的なサウンドをたくさん録音していて、僕の心を打ちのめした。そんな雰囲気のレコードは初めてで、想像を掻き立てられたんだ。その頃、僕は14歳でベースを弾いていたので、ベースが目立つ音楽ということもあって、RUSH の世界に入ることができた。GREEN DAY の Mike Dirnt、THE CLASH の Paul Simonon には大きな影響を受けたけど、Geddy Lee のような人はそれまで聴いたことがなかったんだ。THE WHO の John Entwistle くらいかな。
“A Farewell to Kings” は、変拍子やプログレッシブ・ロックの曲構成に対して僕の心を開き、ヴァース・コーラス・ブリッジに縛られなくなったんだ。まるで魔法のようだろ? “Xanadu” の冒頭でタウラスのペダル・パッドを聴いたとき、初めてシンセサイザーが何であるかを認識したんだよ。
人の心に響く音というのはあるものだね。僕の場合、自分たちの音楽の中でムーグの質感や音色に惹かれるのは、”A Farewell to Kings” があったから。Geddy がミニムーグとタウラスペダルを持ち出した最初のレコードだったんだ。そして Peart はドラマーからパーカッショニストになった……。
サウンド・デザインや美しい情景描写と、伝統的なハードロックの音楽性のバランスは、RUSH が “A Farewell to Kings” からずっと大切にしてきたことだね。だから特に今回、僕たちの新譜では、言葉だけでなく音楽で物語を語り、ある時間や場所を捉えようとした。そうやって、その感覚に近づきたかったんだ。”Xanadu” はプログラム・ミュージックの最初の例のひとつで、物語や絵を語るインストゥルメンタル音楽。この曲の最初の3分間は、文字通り、頭の中に信じられないような絵が描かれるんだ。
高校生の時、好きな女の子がいて、彼女のお父さんがこのアルバムをレコードで持っていたのを覚えているよ。そのレコードのアートワークに、RUSH は本当に大きなのお金をかけていた。開けてみると、クレジットや美しい歌詞がきれいなフォントで書かれているんだ」
Bowles の特にお気に入りの RUSH 作品は3枚。
「常にに変化しているけど。”2112″ と “Caress of Steel” が最高を争っていて、”A Farewell to Kings” は3番目に近い位置づけかな。”2112″ を初めて聴いたときは、鳥肌が立ち、涙が出たよ(笑)。とても美しかった。正直なところ、ずっと Geddy の声は女性だと思っていたくらいでね。その後、”こんなふうに歌える人がいるんだ。信じられない。今までで一番素晴らしい歌声だ” と思ったんだ。そして今日まで、僕の人生の中で最高の歌声を聴かせてくれている。
でも正直なところ、別のアルバムが1番という日もあって、不思議な感じ。RUSH の場合、どのアルバムも、ある特定の日にその順位が変動するような気がするんだ。RUSH は物心ついたときからずっと好きなバンドで、家庭の必需品。正直、高校時代まで専ら聴いていた3つのバンドのうちのひとつさ。つい昨日も “2112” を聴いていたんだよ。Comeau が言っていた不思議な感覚は、僕も “Xanadu” を初めて聴いたときに同じ体験をした。実は、父が僕を RUSHに引き込んでくれたんだ。彼はドラマーで、長い間演奏しているんだけど、子供の頃からずっと RUSH に夢中だった。僕がまだ1歳にもなっていない頃、自宅の地下室で彼が “2112” のドラムセクションをすべて完璧に演奏するのを見たからね。彼の演奏には、ただただ畏敬の念を覚えたよ。僕は、リビングルームにあるカセット・プレイヤーでテープを聴き、ラジオに合わせて彼がドラムを演奏することで、その年齢から RUSH にのめり込んでいったんだ。”Xanadu” が流れてくるたびに “魔法の曲” だと思い、音量を上げていたのを思い出すよ。自分のレコードを手に入れるまで、それがどのアルバムのものなのか知らなかったけど。
“A Farewell to Kings” の雰囲気は、本当に大好だ。とても美しく、中世的でね。僕が本当に好きなバンドは皆、この中世的なエッジの効いたアルバムを1枚か2枚出すという奇妙な時期があるんだけど、QUEEN も “Queen II” で同じことをやっているよね。Comeau が言ったように、アコースティック・ギターのトラックで聴ける野鳥の声は、初めて聴いたときには忘れられないもの。そして、Geddy のメロディーの選び方や、音楽との連動性には本当に影響を受けた。それは、長年にわたって聴き続けることで、意識的に、あるいは浸透的に、確実に身についたものだ。”これこそ音楽がなし得るものだ。これが音楽が到達できる高さなんだ” と。僕がずっと憧れていたものだよ。美しくて、決して頭から離れない」
ライブにおいても、RUSH は彼らに大きな影響を与えています。
「RUSH のライブはとてもエキサイティングで、スタジオ録音を一音一音、カットごとに再現するような、当時ではありえないようなライブをやっていたよね。GRATEFUL DEAD のように、毎晩まったく違うライブをするバンドもいるけど、RUSH は “スタジオ録音を3人で完璧に再現する” という、まったく別の道を歩んだわけさ。彼らがテクノロジーを取り入れたこと、つまり正しい極性のフットスイッチを自作しなければならないほど早くからシーケンサーに取り組んでいたことは、当時はライブパフォーマンスの標準ではなかったんだ。彼らはキャリアの最後までクリック・トラックやバッキング・トラックを使用していなかったけど、彼らはテクノロジーを押し進め、その時点で彼らのライブサウンドは他の多くのバンドよりずっと先を行っていた。そのサウンドは、ブートレグの音源で聴くことができるね」
Terry Brown, Nick Raskulinecz, David Bottrill…RUSH を手がけた3人のプロデューサーと仕事を行う機会にも恵まれました。
「Terry から始まって、最初から “なんてこった、僕たちが?!”って感じだったんだ。その後、ツアーで曲が発展して、Nick にも参加してもらったんだけど、”これは完全にイカれてる” って感じだったよ。この2人のプロデューサーと仕事をしたなんて、信じられなかった。RUSH の最初の10枚を手がけた人と、最後の2枚を手がけた人、この2人と仕事をしたことが、僕らにとっては大きな意味を持つんだ。そして、Dave と一緒にボーカルを担当したことは、ストーンヘンジのような瞬間だった」
CROWN LANDS の今の時点における代表曲 “Context: Fearless Pt. I” は、その “2112″ 風のタイトルからもわかるように、確かに RUSH を彷彿とさせます。2021年のスタジオ・ライブ・アルバム “Odyssey Vol.1″ に収録されたバージョンには、特に素晴らしい演奏が残されています。
代数的な迫力に加えて、RUSH と CROWN LANDS はカナダという同じ故郷でつながっています。後者はオンタリオ州オシャワの出身で、前者は60年代後半のトロントで結成されました。
さらに、”ヒーローに会うべからず” という格言もありますが、CROWN LANDS の二人は、2020年にドラマー兼作詞家の Neal Peart が脳腫瘍で亡くなった後、遺されたメンバー、ベーシスト兼シンガーの Geddy Lee、ギタリストの Alex Lifeson と友人にまでなっているのです。
Bowles は Lifeson と Lee について、「人としてどうあるべきか、人にどう接するべきかは、音楽で何を作るかと同じくらい重要で、彼らはとても謙虚に人生を歩んでいる。40年も一緒に活動してきたのに、いまだに親友なんだ。君たちがツアーで長い時間を過ごしたことがあるかどうかは知らないが、これは驚くべき偉業なんだよ」と尊敬を新たにしています。
CROWN LANDS は、2021年のチャリティ・ギグで Lifeson のバックバンドを務めました。その際、Lifeson は Comeau に彼の象徴的な白いギブソンのダブルネックを貸し出し、持ち帰らせたのです。「あのギターで僕は毎晩、名曲 “Xanadu” を演奏したよ」と Comeau は振り返ります。「彼はとても寛大な人間なんだ」。Lifeson はまた、チャリティ・ショーのステージで、RUSH の名作写真に数多く写っている別のギブソンも Comeau に貸し与えました。
さらに、Comeau は FOO FIGHTERS のドラマー、Taylor Hawkins のオールスター・トリビュート・コンサートに向けて、RUSH のリハーサルに Dave Grohl と一緒に参加しました。彼は、ショーのために Lee のシンセサイザーをプログラムすることまで経験したのです。
ライブ配信も行われた9曲入りのLP “Odyssey Vol.1” は、CROWN LANDS の提示する新しくて懐かしいプログレッシブ・ハードロックへの理想的な入口となる作品でしょう。1971年の “At Fillmore East” がサザン・ロックの巨匠 THE ALLMAN BROTHERS の代表作となったのと同様に、”Odyssey” は CROWN LANDS 最初の3枚のスタジオ・アルバムからの曲をライブ演奏の熱気とともに、鮮明に捉えてより印象を強めています。
Comeau はバンドのバイブルとして、2021年のEP “White Buffalo” に収録され、”Odyssey” のフィナーレを飾る大作 “The Oracle” を挙げています。CROWN LANDS にとって、この曲はステージで演奏するのが最も難しい曲の一つ。
「大音量のヘヴィーな曲をライブで演奏するのは本当に簡単なんだ。スライドを駆使した “Mountain” のような初期の楽曲みたいにね。だけど、ダイナミクスを追求すると、バンドの人数が少なければ少ないほど、各メンバーの音量が大きくなる。だから、5人組や6人組のバンドは、それほどプレッシャーがかからないんだよね。”The Oracle” はダイナミックに動く音楽で、15分間に渡って拍子記号やとんでもないキーチェンジが繰り返されるから、常に気を抜けないんだよ」
“White Buffalo” のタイトル曲は、BLACK KEYS や WHITE STRIPES といった有名なインディー・ロック・デュオのファンにもアピールしそうな簡潔なロック・ナンバーです。しかし、ギターを弾くフロントマンがいる前述の2つのバンドとは異なり、Bowles は歌うドラマーで、それが CROWN LANDS に異なるグルーヴを与えています。
Bowles は、「歌いながらドラムを叩くことで、すべてのリズム、アクセント、ヒットを熟知することになる。だから、無意識にそのビートに合わせてボーカルのリフやフックを作り始めて、それがメロディの作り方に影響しているような気がするんだ」と語っています。Bowles は、”White Buffalo” のプロデューサーである David Bottrill が、以前 TOOL や Peter Gabriel と仕事をしていたことで、彼のボーカルのフレージングを広げる手助けとなった、そう信じています。
“White Buffalo” のブギーの中には、CROWN LANDS の心に寄り添う歌詞のメッセージが込められています。「多くの先住民の文化では、白い水牛は強さと繁栄を象徴している」と、ノバスコシア州の先住民族ミクマクのハーフである Bowles は説明します。
「この曲には、本当に素晴らしいドライブ・ビートがあった。止められない鼓動のような感じがしたんだよね。バンドにとって、このビートは野生の動物を連想させるものだった。そのことを考えると、先住民の先祖を持つ僕は、先住民のために望むべき新しい時代の到来について話したいと思ったんだ。それは、団結して、過去数百年間に僕たちの皿に押し付けられてきたすべての抑圧を克服するということだ」
音楽や生き様にもミクマクの遺産は息づいています。
「ミクマクは、僕の音楽の追求と芸術的表現に宿っている。僕はミクマクのハーフであることを誇りに思って育ち、学校でみんなに話すのを楽しみにしていたんだけど、それはすぐにからかいやいじめ、アメリカの過去に僕の民族に起こったことについての人種的な “ガスライティング” “心理的虐待” に変わったんだ。僕は子供の頃、長い髪をポニーテールや三つ編みにしていたから、よくからかわれたものだよ。残念ながら、これは日常茶飯事で、何年もネガティブな影響を受けてきた。先生にさえからかわれたから、家にいてドラムを叩くのが好きになったんだ。
週末になると、アルダービル先住民族の近くにあるコテージに行くんだよ。そこで子どもの頃、多くの時間を過ごした。僕たちは、その保護区の家族や長老と友達だからね。彼らから、先住民であることの意味について、かけがえのない教えを受けたんだ。
そして僕は、自分が女性的な側面と男性的な側面を併せ持つ “2つのスピリット” であることを深く理解することができたんだよね。西洋的な性別違和の二項対立に自分が当てはまるとは思えなくて、最近まで自分のその部分を探求することが難しかったんだけど、先住民の教えは深い解放と美しい啓示であり、今でも毎日多くのことを発見しているよ。
僕は自分の文化的ルーツに誇りを持ち、それを心の中に大切にしまっている。生い立ち、アイデンティティ、文化のこうした側面は、バンドの創作と並行して生きているんだよ」
Bowles は男性的な面と女性的な面のバランスはどう取っているのでしょうか?
「ツー・スピリットであることは、両方を持っているようなもの。ただ、僕がツー・スピリットであることを人に話し始めたとき、皆が “もう知っているよ。君にはそのエネルギーがある” と言ってくれる。その圧倒的な受容は嬉しいよね。でも、あまり意識はしていないんだ。ある時は男性的で、ある時は女性的。まるで自分が美しい星で、その周りには美しい惑星がたくさんあって、ある星の方に引っ張られたり、別の星に好かれたり、でも決して一つの場所にいるわけではない…そんな感じかな。フレディ・マーキュリーは、僕にとってファッションの象徴。昔は、古着屋で何日もかけて自分に合うもの、合わないものを見つけるのが好きだったね。レディースのコーナーには、いい服がたくさんあるから、もっぱらそこで買い物をしているよ。特に何が欲しいというのはないんだ。ただ、気に入ったものを見つけて、それを着るだけだけど。外に出るとみんなに変な目で見られるけど、僕はそれが好きだ。自分を表現するのは素晴らしいことだからね」
皮肉なことに、多くのバンドがブレイクした曲を恨むようになると言われています。しかし、CROWN LANDS と “White Buffalo” の関係はそうならないと Comeau は考えています。
「この曲はラジオやストリーミングで最も人気のある曲のようだけど、この意味は僕たちにとってとても身近で大切なもの。とても幸運なことだと考えているんだ。この曲を本当に誇りに思っているんだよ」
先住民の苦境は、CROWN LANDS で繰り返し扱われるテーマです。2020年にリリースされたセルフ・タイトルのデビューLPでは、行方不明になり殺害された先住民の女性に捧げた “End of the Road” というトラックがクライマックスとなりました。さらに CROWN LANDS というバンド名自体、カナダで先住民が奪われた王家の土地を指すものでした。バンド名には、彼らの音楽的野心も込められています。”クラウンランド” とは君主の領土のことで、Bowles はこう言っています。「クラウンランドは盗まれた土地で、僕らはそれを取り戻している」
悲劇が起こったカナダ先住民のレジデンシャル・スクールについて、バンドは次のような声明を発表しました。
「僕たちはこの場を借りて、カナダのすべての居住区学校が徹底的に調査されるべきだということ言いたい。亡くなった人たちの家族は皆、悲しみに暮れている。この国では、人々は忌まわしい状況の中で生きている。僕たちは、こうした話を始めるために戦い続け、真の変化を起こせることを願っている」
CROWN LANDS は、卓越した演奏技術に加え、Comeau が言うように “たくさんのおもちゃ” を使って、桁外れの音楽を作り上げています。Bowles はコンサート・タム、ウィンド・チャイム、テンプル・ブロック、チューブラー・ベルなど数多のギミックを装備した巨大なドラムキットという要塞の中にいます。Comeau はギターと同時にベースラインを演奏する ムーグ・タウラスペダルなど、多数のシンセサイザーを足で操作しています。ただし、ライブでバッキング・トラックを使用することはありません。Bowles は「僕たちは見たままの姿を音にしたいんだ。それが僕たちのモットーなんだよ。個人的には、トラックを使用するバンドはそれでいいと思う。でも、僕らの場合は、ライブでトラックを使うことは絶対にないと言い続けてきた。僕らには向かないんだよ」
CROWN LANDS の二人は、ロサンゼルスでの活動を終えてヒッチハイクでカナダに戻ったばかりの Comeau が、Bowles がドラムを担当していたバンドのオーディションを受けたときに初めて出会いました。当時、Comeau はベーシストとして活躍していましたが、Bowles のバンドの新しいギタリストとしてオーディションを受けたのです。結果は不合格でした。
しかし、Bowles は彼のギター・プレイを気に入り、連絡を取り続けるようになります。二人は友人となり、やがて納屋で一緒にジャムるようになりました。この納屋でのジャムがきっかけで、Bowles は本格的に歌い始めたのです。「一緒に音楽をつくろうということになったんだ。CROWN LANDS はそうやって、なんとなく始まったんだよ」
彼らが一緒に書いた最初の曲は、”One Good Reason” でした。彼らは最初のEP、2016年の “Mantra” を、わずか2日でレコーディングし終えたのです。
RUSH の話題は、彼らの友情の中でも最も早い時期から浮上し、二人はそれぞれ相手がスーパーファンであることを知り、興奮を覚えたといいます。Comeau は RUSH の “スターマン” ロゴのタトゥーを腹部に彫っていることを明かし、これで二人の契約は成立したのです。
CROWN LANDS の他の重要な音楽的インスピレーションは、THE ALLMAN BROTHERS(Comeau は Duane Allman のスライドギターを崇拝)、Jeff Buckley(Bowles の伸縮性と感情的な歌声)、STARCASTLE(イリノイ州の70年代のプログ・バンド)など。
Bowles と Comeau は、最終的に CROWN LANDS のメンバーを増やすかどうかに関して、葛藤があるようです。Bowles は物事をシンプルにすることに傾いています。しかし、Comeau は、もしミュージシャンが増えたら、ステージ上で一つの楽器に集中できるようになるし、Bowles がドラムキットの後ろから、GENESIS で Phil Collins がやったように、前面に出て歌うようにもなると喜んでいます。
「Bowles は Neal Peart のようなことを歌いながらやろうとしているし、僕はキーボードとベースを担当し、ギターも弾く。RUSH の3人を2人に凝縮しようとしているんだ。彼らは “世界最小の交響楽団になりたい” と言ったことで有名だけど、僕らは、たった2人で同じようなことを成し遂げようとしている。生意気な冗談だったけど、多くのインスピレーションを受けているよ」
ただし明らかに、Bowles と Comeau は2人だけでも、まるで超能力を操るように音楽を奏でられます。宇宙的ヒッピーの衣装を身にまとった長髪の CROWN LANDSは、クラシック・ロックの魔法そのものです。最近大きな影響を受けたのは “Moving Pictures”。
「”Moving Pictures” で Alex がスタジオで使っていたのとほぼ同じ組み合わせのアンプを使ったんだ。だから特に “White Buffalo” のオープナーは、”Moving Pictures” のギターにかなり近づけたと思うけど。エンジニアリングの観点からは、”Moving Pictures” は今でも史上最高のサウンドを持つアルバムのひとつだと思う。今聴いても、とても新鮮だよね。このアルバムに収録されている楽器の忠実さはいつも目を引くけど、この新譜でもそれに近いものができたと思っているよ」
音的にも視覚的にも、CROWN LANDS は巨大な足跡を残しているあるバンドを彷彿とさせます。ミシガン州のロックバンド、GRETA VAN FLEETです。神々しくも ZEP の鉄槌を振りかざす若き異端児。
類似性は、音楽や見た目だけにとどまりません。GRETA VAN FLEET がグラミー賞を受賞したように、CROWN LANDS はカナダのグラミー、Juno賞を受賞していて、両バンド共に、ローリング・ストーン誌の最高の音楽ジャーナリスト、ブライアン・ハイアットによって記事にもされているのです。
現在、CROWN LANDS は、GRETA の2021年のトップ10アルバム “The Battle at Garden’s Gate” をサポートする米国アリーナ・ツアーのオープニング・アクトとしてツアーに出ています。
CROWN LANDS のミュージシャンたちは、自分たちのバンドに何が起きているのかを理解しています。「本当に感謝している」と Bowles は言います。「GRETA が好きな人はたいてい、僕らも好きだからね。アメリカで大勢の人の前で大きなステージで演奏できるのは大きいよ」
カナダでは、CROWN LANDS はバンドとしてシアター・レベルのステータスに近づいています。しかし、あまりツアーを行っていないアメリカでは、彼らはまだこれからのバンドなのです。
参考文献: AL.Com:America’s next must-see rock band is from Canada
EXCLAIM!:’A Farewell to Kings’ at 45: Crown Lands Talk the Influence of Rush’s Sonic Scale-Up
FUGUES:Marching to their own beat: Crown Lands drummer Cody Bowles