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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ULCERATE : STARE INTO DEATH AND BE STILL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAMIE SAINT MERAT OF ULCERATE!!

“We Knew Early On That We Needed To Capitalise On a Far Greater Sense Of Melody Than We Ever Had Before, And Really Challenge Our Own Intuitions.”

DISC REVIEW “STARE INTO DEATH AND BE STILL”

「早い段階で、これまでよりもさらに強くメロディのセンスを活用して、自分たちの直感に挑戦する必要があると気付いたんだ」
テクニカルかつアトモスフェリックなデスメタルとして高い評価を得ているUlcerate。その6作目となる『Stare Into Death And Be Still』は、彼らにとっては挑戦的な作品となりました。20年以上のバンド生活で養った本能は、いつしか「混沌」や「醜さ」「汚さ」に偏っていたようです。その偏りを「雪崩のように大量の素材を書いては捨てた」ことで洗い流したあとに芽生えてきた、異質なリフやパターン。そこには「力」や「美しさ」「明瞭さ」がはっきりと宿っていました。
彼らはその異質さをしっかりと捉え、さまざまな角度から強化していきます。もっともわかりやすいのがプロダクションの方向性でしょう。「今回のライティングとプリプロダクションの哲学は、混沌よりも力を優先すること」。そう語るJamieのことば通り、本作の音は明瞭で太く、暖かみさえ感じます。また、彼のドラミングにも変化がありました。メタルからジャズ、ファンクと、さまざまなジャンルのドラマーからそのスタイルを吸収してきたエクストリームメタル界きっての名手の彼ですが、本作では人生の大半をかけて磨いてきたそのテクニックを抑制し、曲そのものを活かすパフォーマンスを志向したのです。
彼らにとっては挑戦的なこうした変化は、リスナーにとってはむしろ“親しみやすい”作風に変化したと感じられるかもしれません。ただし、その親しみやすさは『Stare into Death and Be Still』というタイトルに接続しています。「死への畏敬」。死は常に突然に、暴力的にやってくるものではなく、ときには冷静にはっきりと観察せざるを得ない。そうした「穏やかな恐怖」とでもいうべき感情が、そしてそれに立ち向かうための意志が、「混沌」から「力」へと向かった彼らの作品には宿っています。
「もし『音としてはよいが意味がわからない』歌詞だったり、テキストとしては出来がよくてもフレーズがひどい歌詞だったりしたら、何の役にも立たないからね」。その通り、本作のテキストとそのサウンドは、楽曲と高度に一致しています。
このように、彼らは各要素を綿密に調整して作品を作っています。しかし、その綿密さは、あくまで彼らの精神と肉体から生み出されたものでなければなりません。「自分が演奏しているものが最終的な品物であること意識する」。コンピューターによる演奏の修正や数値管理を否定し、ライン入力ではなく部屋録りを志向する彼らの作品が、整理されたテクニカルさではなく、うねるようなグルーヴと、真に迫るアトモスフィアをまとっているのはうなずけます。
曲、歌詞、演奏、レコーディング、プロダクション……彼らの哲学のもとに、それらすべてが生々しく一体化したデスメタルの名盤がここに誕生しました。今回弊誌では、ドラマーのJamie Saint Meratにインタビューを行うことができました。「完璧は芸術の敵だ」。どうぞ!

WORDS & INTERVIEW BY 江戸大  (DECAYED SUN RECORDS )

ULCERATE “STARE INTO DEATH AND BE STILL” 10/10

INTERVIEW WITH JAMIE SAINT MERAT

Q1: I found this album to be smoother in its flow than before, while still maintaining a meticulous and complex structure. “Shrines of Paralysis” was more straightforwardly melodic than before, but this album is more “melodic” in composition itself… you mentioned in an interview on “Shrines of Paralysis” that this kind of musical development happens “naturally”. Can you tell us some of the events and creations that you and the other members were particularly interested in during the production so that we can capture a bit of that “natural”‘s background? And why have they attracted your attention?

【JAMIE】: We’ve been writing music together for the better part of 20 years now, so when I say ‘natural’ I’m meaning it’s instinctual. But when it came to this sixth album, we actually approached it from a completely different angle. We knew early on that we needed to capitalise on a far greater sense of melody than we ever had before, and really challenge our own intuitions. So for the first 6-8 months of 2018 we went into experimentation mode, to really push ourselves out of our comfort zones. An avalanche of material was written and ultimately thrown out, as we strived to find the right balance of filth and clarity – knowing when to pull back and when to go for the throat. But eventually riffs and patterns started to emerge that felt very unique, and a little alien for us – and it was these first moments of clarity that set the tone and pace for the writing and pre-production throughout 2019.

Q1: 本作は、綿密で複雑な構成を維持しながら、従来よりもその流れがスムーズだと私は感じました。前作『Shrines of Paralysis』は従来よりもストレートにメロディが表現された作品でしたが、本作は構成そのものが「メロディック」とでも言いますか……
あなたは前作のインタビューでこのような音楽的発展が「自然」に起きていると話していました。その「自然」の背景を少しでも私たちが捉えられるように、制作中にあなたや他のメンバーが特に関心をもっていた出来事や創作物をいくつか教えていただけますか?また、それらはなぜあなたがたの関心を惹いたのでしょうか?

【JAMIE】: メンバーとはもう20年以上も一緒に音楽を作っているから、「自然」は「本能的」と言い換えることもできる。ただ、今回の6枚目のアルバムに関しては、実はまったく違う角度からアプローチしている。早い段階で、これまでよりもさらに強くメロディのセンスを活用して、自分たちの直感に挑戦する必要があると気付いたんだ。だから、2018年の最初の6~8ヶ月間は実験モードに入って、自分たちのコンフォートゾーンから自分たちを押し出すことにした。
汚さと明瞭さのちょうどよいところを見つけるため、つまりいつ引いていつ喉元に食らいつくのかを知るために、雪崩のように大量の素材を書いては捨てたよ。最終的に、非常にユニークで、私たちにとっては少し異質な感じのするリフやパターンが現れ始めた。それが、ライティングとプリプロダクションのトーンとペースが決まった、2019年の最初の明快な瞬間だった。

Q2: The mix and production of this album is excellent. It has both the clarity that conveys the detailed expression of the performance and the raw unity that seems to assault the dense space. In my opinion, the sound of the past work has been in a direction where the aggression of each instrument is prominent (for example, the drums are very loud). Can you tell us what your intentions were in regards to the sound of this album?

【JAMIE】: I’d say your characterisation there is actually totally accurate. And as I mentioned earlier – it’s always about constantly finding that fine line between beauty and ugliness. Both ‘Vermis’ and ‘Shrines…’ were intentionally produced and mixed very much so on the uglier side of the spectrum – yet this time around it was a completely different approach. The philosophy with both the writing and pre-production was power over chaos, and I didn’t want any details to be obfuscated as they have been in these prior albums – that kind of an approach wouldn’t benefit this new material at all (all avenues were explored during pre-production to find the best ‘fit’).

Q2: 本作のミックスやプロダクションはすばらしいです。細かい演奏の表情が細かく伝わる明瞭さと、密度のある空間が襲い掛かってくるような生々しい一体感を両立しています。過去の作品のサウンドは、各楽器の攻撃性が際立つような方向性だったように思います(たとえば、ドラムの音量はとても大きいです)。
本作のサウンドについて、あなたがたがどのような意図を持っていたのか教えていただけますでしょうか?

【JAMIE】: 君の言ったサウンドの特徴は完全に正しい。先ほども言ったが、美と醜の間にある微妙なラインをずっと模索していた。『Vermis』や『Shrines of Paralysis』は、意図して大幅に醜さに寄せて編集・ミックスをしたが、今回は全く違うアプローチを取った。
今回のライティングとプリプロダクションの哲学は、混沌よりも力を優先すること。これまでのアルバムのように細部が不明瞭になるのは避けたかったんだ。従来のアプローチは、今回の新しいマテリアルには似つかわしくなかっただろう。最高の「フィット感」を見つけるために、プリプロダクション中あらゆる道筋を模索したよ。

Q3: What is your philosophy as a mixer/arranger/producer? It seems that today’s DAWs are capable of doing roughly everything an artist can think of. In that context, what edits did or did not you make to the album? And what were the thoughts behind that decision?

【JAMIE】: My thinking when it comes to production for this style of music is that you should leverage a DAW as little as possible. If you’re doing electronic music then that’s a completely different ballgame. But any style of music that is predicated on humans playing instruments where you need to capture attitude and spirit shouldn’t be even remotely looking towards these all-too-common techniques. So I stay far away from fixing performances, and any sort of quantisation etc. I’ve always wanted to capture performances as they are, using real drums, real amps. I like to get tones in the room and commit, so I never take DI’s for example. The spontaneity and adrenaline of knowing that what you’re playing is the final product I think greatly aids performances. Perfection is the enemy of art.

Q3: あなたのミキサー/アレンジャー/プロデューサーとしての哲学を教えてください。
現在のDAW(※1)は、アーティストが考えうるおおよそすべてのことが実現できるように思います。その中で、あなたは本作でどのような編集を行った、または行わなかったのでしょうか。そして、その判断の背景にはどのような考えがあったのでしょうか?

【JAMIE】: このスタイルの音楽を作るようになって以来、DAWはできるだけ活用するべきではないと考えている。もちろん、エレクトロニック・ミュージックを作るのであれば、まったく話は変わってくる。しかし、人間が楽器を演奏することを前提とし、哲学や精神をとらえる必要がある音楽スタイルでは、そういったありふれたテクニックに目を向けるべきではない。だから、私は演奏の修正や、あらゆる種類の定量化からは距離を置いている。いつだって、本物のドラムやアンプを使って、ありのままのパフォーマンスを捉えようとしてきた。部屋録りで得た音色を入力するのが好きなんだよ。だから、たとえばDI(※2)は絶対に使わない。自分が演奏しているものが最終的な品物であること意識する。それによって得られる自発性とアドレナリンは、パフォーマンスの大きな助けとなると考えている。完璧は芸術の敵だ。
※1 DAW:音楽制作ソフトの総称。
※2 DI(ダイレクト・ボックス):ギターやベースなどを直接DAWに接続して録音する場合に使う機器 。

Q4: Were there any changes from the last album in terms of the production process, equipment and software?

【JAMIE】: From an audio perspective, not so much. We always like to vary the instrumentation from album to album, be it cymbal choices, amp and cabinet combinations etc. But for the most part mic selections and preamps are almost identical between this album and ‘Shrines’ for example. I know what works well for us, and am more interested in changing tones at the source than trying to shape things with mic selections for example.

Q4: 制作のプロセスや機材、ソフトウェアに関して、前回のアルバムから変わった点はありましたか?

【JAMIE】: オーディオという点では、それほどやり方は変わってはいない。もともと、アルバムごとに機材を変えるのが好きだからね。たとえばシンバルの選択、アンプやキャビネットの組み合わせなどだ。
一方で、マイクやプリアンプは『Shrines of Paralysis』と今回のアルバムではほとんど同じものを使っている。このバンドで何がうまく機能するかは分かっているし、たとえばマイクの選択などでサウンドを形作るよりも、もとの音色を変えるほうに興味があるね。

Q5: Your drumming is one of Ulcerate’s big draws, as it flexes and shrinks while maintaining strength. In addition to that, simple structured beats, tight syncopation, and marching rhythms appear on this album (like “Exhale the Ash” and “There is No Horizon”). You profess to be influenced by various styles of drummers outside of metal, such as jazz and funk. What new drum playing and styles did you explore between “Shrines of Paralysis” and “Stare into Death and Be Still”? And how is that reflected in this album?

【JAMIE】: I can’t really pinpoint anything specifically – I’ve been obsessed with drums most of my life, and my ears are always open. I guess a fairly drastic shift with this album has been a very conscious decision to reign things in a little to serve the riffs in a more direct way. So not being afraid to introduce back beats for example where they’re absolutely required, which I’ve definitely stayed away from in the past. Mostly I’m just becoming more and more interested in how drums serve songs, and trying to draw myself out of a drum-centric approach. There’s a lot of moments on this album where I rearranged parts to be a lot simpler than they first were to heighten the overall impact of the entire orchestration.

Q5: 強度を保ちながら柔軟に伸び縮みするようなあなたのドラミングは、Ulcerateの大きな魅力のひとつです。本作では、従来のうねりながら躍動するプレイに加えて、シンプルな骨格のビートや、タイトなシンコペーションが目立ちます(「Exhale the Ash」や「There is No Horizon」など)。マーチングのようなリズムも登場しますね。
あなたはメタル以外にもジャズやファンクなど、さまざまなスタイルのドラマーからの影響を公言しています。『Shrines of Paralysis』から本作『Stare into Death and Be Still』までの間に、新たにどのようなドラムプレイやスタイルを探求しましたか?そして、それはどのように作品に反映されているのでしょうか?

【JAMIE】: 具体的に何と特定することはできない。人生の大半をドラムに捧げ、さまざまなプレイに耳を傾けてきたからね。
今回のアルバムでは、リフをより直接的な形で表現するために、控えめなプレイをかなり意識した。それが劇的な変化をもたらしたんだろう。たとえば、バックビートは、絶対に必要だという場面でも、以前ならまず使うのを避けていたが、今回は臆せずに使うようにした。
曲のためにどうドラムを役立てるかにますます興味を持つようになったし、ドラム中心のアプローチから抜け出すよう試みている。今回の作品では、全体の演奏のインパクトを高めるために、当初の演奏よりもかなりシンプルにアレンジしたパートがたくさんある。

Q6: If you had to say “that’s my drumming” to other people, especially non-metal lovers, to listen to Ulcerate, which part of the song would you choose and why?

【JAMIE】: The mid-section of ‘Drawn into the Next Void’ and perhaps the intro section of ‘Visceral Ends’ I think showcases some more ‘relatable’ drumming that doesn’t rely on blast beats or other metal-specific techniques, which are often extremely alien and confronting to untrained ears.

Q6: もしあなたが「これが私のドラムプレイです」と他人にUlcerateを聞かせるとしたら、本作のどの曲のどの部分を選びますか?

【JAMIE】: 「Drawn into the Next Void」の中盤や「Visceral Ends」のイントロでは、ブラストビートやメタル特有のテクニックに頼らない、より「親近感の持てる」ドラミングを披露していると思う。メタル特有のテクニックは、訓練されていない耳にとっては本当に異質で、負担になるだろうからね。

Q7: Throughout your explorations as a drummer so far, I think you’ve learned a lot of expressions that wouldn’t have suited Ulcerate. Have you ever thought about starting a project that would adequately represent your non-metal side of things?

【JAMIE】: Yeah for sure – we all have various side-projects outside of Ulcerate where we explore other means of expression.

Q7: これまでのドラマーとしての探求を通して、Ulcerateには似合わないような表現をあなたはたくさん習得したと思います。あなたのメタル以外の側面を十分に表現できるようなプロジェクトを始めようと思ったことはありますか?

【JAMIE】: もちろん、私たちは全員、さまざまな表現を探求するための、Ulcerate以外の多様なサイドプロジェクトを持っている。

Q8: Part of Ulcerate’s appeal is that its musicality and lyrics are highly aligned. How does it come into being? Is it entirely the work of Paul? Or do you ever receive a lyrical theme from Paul while working on a song and come up with new musical ideas?

【JAMIE】: The music is always composed and arranged first, after which Paul will draft up initial lyric ideas and arrangements. We’ll then take these first ideas and start pre-producing them immediately over the pre-recorded track so see how things shape up. It’s here we’ll quickly find out what’s working in terms of how the lyric fits the part, the enunciation, rhythms etc. And we’ll all feed back at this stage, even at the level of how words fit and sound in sentences. It’s of no use to anyone if you have lyrics that ‘sound’ great but make no sense, or lyrics that on paper read well but phrase terribly against the music.

Q8: Ulcerateは音楽性と歌詞が高度に一致していることも魅力のひとつですが、その一致はどのようにして生まれているのでしょうか?完全にPaulの手によるものですか? 制作中にPaulから歌詞のテーマを受け取って、新しい音楽的アイデアが思い浮かぶことはありますか?

【JAMIE】: つねに最初に作曲とアレンジを行い、その後にPaulが歌詞とアレンジを下書きしていく。それからすぐ、そのアイデアをもとに、録音したトラック上でプリプロデュースを始めて様子を見る。
ここで、歌詞とパートのフィット感や、発音、リズムなどで、うまくいっている部分が明らかになる。この段階で、単語が文章にどのようにフィットしているか、どのように聞こえるかというレベルでも、フィードバックをしていく。
もし「音としてはよいが意味がわからない」歌詞だったり、テキストとしては出来がよくてもフレーズがひどい歌詞だったりしたら、何の役にも立たないからね。

Q9: This release is on Debemur Morti Productions, can you tell us why you left Relapse and signed with Debemur Morti Productions out of the many labels out there? Was it simply because they were attractive as business partners? Or was it because their label colors, which featured many of the atmospheric and inventive black metal (or adjacent textures) artists represented by Blut Aus Nord, suited the current Ulcerate?

【JAMIE】: Debemur Morti is a perfect artistic and conceptual alignment for us at this stage in our career. Relapse has always treated us exceptionally well – extremely respectful and professional, and the team that we worked with there are great people. But when it came time to start thinking about renewing our contract with them or potentially look elsewhere, it was really a matter of considering what’s best for the art. We have a ‘big’ enough profile within our niche that to me the size of the label doesn’t matter – it’s the level of quality and aesthetic attention to detail. DMP had actually reached out to us around the time of ‘Vermis’ and they’ve always been in my peripheral view. After some great discussions with label owner Phil it became clear that this was a perfect match for us moving forward.

Q9: 本作はDebemur Morti Productions(以下DMP)からの発売となりました。名門Relapseから離れ、数あるレーベルの中でDMPと契約した理由を教えていただけますでしょうか?
単にビジネスパートナーとして魅力的だったからでしょうか? それともBlut Aus Nordを代表とするアトモスフェリックかつ独創的なブラックメタル(あるいはそれに隣接した質感の)アーティストを数多く扱うレーベルカラーが、現在のUlcerateに合っていたからでしょうか?

【JAMIE】: DMPは、私たちの今のキャリアにとって、芸術的にもコンセプト的にも完璧な調整をしてくれた。もちろん、Relapseは常に私たちを良く扱ってくれていた。敬意をもっていて、プロフェッショナルで、一緒に仕事をしたチームは人たちは皆素晴らしかった。ただ、契約更新のタイミングで、私たちの表現にとって何がベストなのかを最重要視して再考した。このニッチな分野では、私たちは十分「ビッグ」な経歴を持っているから、レーベルの規模は問題ではなかった。品質と、細部に至るまでの審美眼が重要だったんだ。
実は、DMPからは『Vermis』の頃に連絡をもらっていたし、彼らはずっと私たちのことを気にかけてくれていた。レーベルのオーナーであるPhilと話し合った結果、DMPが今後の活動に完璧にマッチしていることがはっきりしたんだ。

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DEBEMUR MORTI PRODUCTIONS
DECAYED SUN RECORDS

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE BLACK DAHLIA MURDER : VERMINOUS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TREVOR STRNAD OF THE BLACK DAHLIA MURDER !!

“We Did Come Up During The Age Of Swedish Influenced Metalcore ala As I Lay Dying, Unearth, etc And Did Get Lumped In With That Genre a Lot But I Don’t Personally Believe We’ve Ever Been That. It’s Always been Death Metal To Me. “

DISC REVIEW “VERMINOUS”

「僕たちが登場したのは AS I LAY DYING とか UNEARTH のようなスウェーデンの影響を受けたメタルコアが勃興した時期だったね。そして確かにメタルコアのジャンルによく分類されてきたよ。
だけど、個人的には僕たちがメタルコアだったことはないと信じているんだ。ただずっとデスメタルであり続けただけなんだ。」
THE BLACK DAHLIA MURDER のおよそ20年のキャリアは、誤解を振りほどくための飽くなき闘争だったのかもしれません。無残な猟奇事件の被害者、ブラックダリアの名を冠するデスメタルバンドにとって、登場した時期、場所、人脈すべてが本質とは少しずつかけ離れ理想と乖離しながら得た名声は、70年前の事件と同様ミステリーだったのかも知れませんね。
ただしバンド、いやもやはメタルシーン全体のご意見番として定着した Trevor Strnad がデスメタルのタグに拘るのは、メタルコアのフォーミュレイクな音楽性云々以前に、アンダーグラウンドメタルへの深い愛情が理由であるはずです。
「だって僕たちはアンダーグラウンドミュージックを愛しているからね。僕たちの音楽はアンダーグラウンドミュージックへのトリビュートさ。僕たちが達成した成功は、自分たち自身の条件に妥協することなく基づいているからね。」
BRING ME THE HORIZON が恐れなきその眼差しでジェネリックポップを抱きしめ自らの理想をメタルの新聖歌へ昇華したのとは対照的に、THE BLACK DAHLIA MURDER はエクストリームであり続けアンダーグラウンドを追求することで自らの理想を鋼鉄の大樹へと刻むのです。
「僕たちのメタル文化は社会の大部分から過小評価されているけど、計り知れない強さを持ち、宗教の束縛なしで自由に生きることができるコミュニティーなんだ。」
Trevor にとって、理想的なメタルヘッズとは今でも主流の対岸に位置し、偏見なく音楽ひいては社会の常識や欺瞞を疑う監視者。つまり、権力や主流派にとっては知識という疫病を運ぶ害虫であるべきなのでしょう。ゆえに、当然 “Verminous” “害虫” の名を冠した最新作は新たな反抗の幕開けです。
「僕はこのバンドが何年もかけてより3次元的なサウンドへ、自然に進化を遂げていったと思っているんだ。だから今ではバンドとしてダイナミズムを出すために何をするべきか完全に理解しているんだよ。まさに多様性の力だね。」
あの運指マシーン Ryan Knight を凌ぐほどに燦然と輝く Brandon Ellis の加入と共に前作 “Nightbringers” で芽生えた創造の羽は、”Verminous” において漆黒の大翼として下水道の闇に君臨します。
皮肉にも、”形式的” “一辺倒” を揶揄するために TBDM を含むかつてのメタルコア一派が称された “任天堂サウンド” は、彼らの臓腑の奥底でゲーム音楽が本来有するダイナミズムと万華鏡の音の葉を強調し始めることになったのです。
「確実に僕の書く歌詞はロールプレイングゲームのファンタジーサイドから影響を受けているよね。任天堂のクラッシックなゲーム音楽はメタルと様々な相似点が存在するし、僕たちが書いている音楽もそこから影響を受けているんだよ。」
ドラマティックでシネマティック、より感情的に喚起される作品が書きたかったと語る Trevor。実際、”Verminous” は切り裂きジャックや吸血鬼が主人公ですが、彼が敬愛するドラゴンクエストやファイナルファンタジーに勝るとも劣らないファンタジックな猟奇譚で、好奇のローラーコースターでしょう。
メロディックデスメタルはもちろん、スラッシュ、プログレッシブ、クラシカル、さらにはドゥームの鼓動まで感じさせるレコードのカラフルでムーディー、カリスマティックなイメージは、洗練と地下水脈をまたにかける THE BLACK DAHLIA MURDER にのみ許された秘伝、調合の魔法に違いありません。同時に、体内の害虫は貪欲にに肌を食い破り、変わらぬ凶暴を見せつけるのです。
今回弊誌では、Trevor Strnad にインタビューを行うことができました。「僕は特にレトロゲームを愛しているんだ。フェイバリットは、ドラゴンクエストとファイナルファンタジーシリーズだね。昔の16bit とか 8bit の時代が大好きなのさ。
ゲーム機ならファミコン、スーパーファミコン、メガドライブ (セガ) が絶対的に好みだね。中でもオリジナルのファミコンが最高さ!」 どうぞ!!

THE BLACK DAHLIA MURDER “VERMINOUS” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【MY DYING BRIDE : THE GHOST OF ORION】


COVER STORY : MY DYING BRIDE “THE GHOST OF THE ORION”

“Tired Of Tears Was Exactly How I Felt. They Had Been Flowing Freely From Me For Months And I Was a Shadow Of My Former Self. It Is Sad That This Will Continue For Many Others. Innocent People. So Very Tired Of Tears.”

HOW GOTHIC DOOM LEGEND TURNS DARKNESS INTO LIGHT

PARADISE LOST の “Gothic” こそがゴシックメタルの幕開けを告げたレコードであることに異論の余地はないでしょう。
以来、ミルトンの失楽園に啓示を受けた荘厳耽美の象徴は、”Icon”, “Draconian Times” とメランコリーの金字塔を重ねることとなりました。そうして、90年代というメタルの実験室は多種多様なゴシックの重音楽を創造することになるのです。
ゴシックメタルの総本山 Peaceville Records は、その PARADISE LOST, ANATHEMA, そして MY DYING BRIDE の通称 “Peaceville Three” を世紀末の世界へと送り出しました。さらにデスメタルから分岐した SENTENCED や TIAMAT、しめやかな女声をメインに据えた THEATER OF TRAGEDY, THE GATHERING と漆黒に広がる色彩の中でも、ヴァイオリンとクラシカルに沈む暗海 MY DYING BRIDE のゴシックメタルは飛び抜けてドゥーミーな陰鬱だったと言えるでしょう。

30年のキャリアで12枚の仄暗くしかし豊潤な旅路を歩んできた死にゆく花嫁が、自らの音の葉を超える悲劇に見舞われたのは、”Feel the Misery” リリース後2017年のことでした。中心人物 Aaron Stainthorpe の5歳の娘が癌と診断されたのです。Aaron は愛娘を襲った病を 「神の最も残酷な、愛のない創造物の1つ」 と断じ嘆きました。
「2017年9月、5歳になった美しい娘が癌と診断された。心配と混乱のブラックホールが目の前に広がったよ。この恐ろしい病気を取り巻く恐怖は、現実的で残忍で容赦ないものだった。化学療法と二度の手術をくぐり抜け、幸運にも娘は癌を克服した。それでも彼女は、残りの人生を再発と潜在的合併症の恐怖と戦いながら過ごさなければならない。だから私はただ自分が墓に向かう時、彼女が強く率直な女性として生きていて欲しいとそればかり願っているよ。」
娘の罹患は Aaron の人生観、そして未来を大きく変えました。
「彼女が病気になる前は単純で愚かなことにイライラしていたけど、本当に深刻な何かに対処しているとそれが非常に取るに足らないものに思える。例えば昔ならプリンターが上手く働かなければばらばらに叩き壊しただろう。だけど今の私はただ、新しいのを買おうと言うだけさ。私を苦しめ、ストレスを与えるだろう愚かな些細なことは、もはや存在しない。人生に変化があったんだよ。私は変わった。もっとリラックスして落ち着いた人になったのさ。」

創立メンバーで出戻りの Calvin Robertshaw とドラマー Shaun Taylor-Steels がレコーディングの直前にバンドを離れました。
「もっと重要なこと、娘の治療に気を取られていたから、メンバーの離脱を気にかけている暇はなかったね。だから Andrew が Calvin がまた辞めたと言ってきても正直どうでも良かったんだ。幸運にも早めに出て行ってくれたから “The Ghost of Orion” のための彼の素材はそんなに残っていなかったんだけど、後からお金を請求されても嫌だから Andrew が全て書き直したよ。ギタリストなら自分のリフが全て採用されるほうが幸せってもんだ。前のアルバム “Feel the Misery” も Hamish Glencross がレコーディング前に辞めたから同じ状況だった。あのアルバムのレビューはこれまでよりポジティブだったから、Andrew が素晴らしいソングライターであることはすでに証明されているからね。
Shawn の場合、エンジニアの Mark が ex-PARADISE LOST の Jeff Singer を知っていて、僅か2週間で全てを覚えて素晴らしいドラミングを披露してくれたんだ。
もちろん、過去にメンバーが去った時は少しイラついたかもしれない。だけど今回私は別の次元にいたからね。ある意味 MY DYING BRIDE との繋がり自体、少し希少になっていたから Andrew はストレスが溜まっただろうな。メンバーが去ったと慌てても、私は肩をすくめて知らないよと言うだけだったから。」

レコードで最も荘厳にエモーショナルに織り上げられた “Tired Of Tears” は文字通り娘の罹患に枯れ果てた涙の結晶。
「この楽曲は僕の人生で、最も恐ろしくストレスが溜まった時期を扱っている。唯一の子供が死に近づいたんだから。これまでも落ち込んだことはあったけど、これほどではなかったよ。真の暗闇でどう対処して良いのか全くわからなかった。それでも全力を尽くして戦おうと決めたんだ。涙が枯れ果てたとはまさに私が感じていた気持ちだ。何ヶ月も涙が自然と溢れ続けたんだ。」
結局、MY DYING BRIDE のあまりに長く、思索を誘う悲嘆のセレナーデは現実という葬儀の行進を彩る葬送曲です。Andrew によると、「悲惨な楽曲は現実の生活に対処するための準備でありカモフラージュ」なのですから。
MY DYING BRIDE は Peaceville Records と最も長く契約したバンドでしたが、”The Ghost of Orion” で袂を分かち Nuclear Blast と新たに絆を結びました。
「Peaceville を離れたのは時間が理由だったと思う。彼らは私たちのために出来得る限り全てをしてくれたし、完全なる芸術的自由を与えてくれたね。だけど私たちはもっと多くのものを提供したかったし、コミュニティーにおける存在感もさらに高められると感じていたんだ。Peaceville はその渇望を満たすことが出来なかった。Nuclear Blast ほどの巨大なレーベルなら実現が可能だからね。
新たなレーベルと契約し、新たなメンバーを加えて、私は MY DYING BRIDE が蘇ったように感じているんだ。新鮮な空気を吸い込みセカンドチャンスが与えられたようにね。”The Ghost of Orion” は最高傑作に仕上がったと思うし、再びエネルギーを充填して、より大きく、より素晴らしい音楽を生み出すバンドを目指していくんだよ。」

“The Ghost of Orion” は MY DYING BRIDE 史上最もキャッチーでアクセシブルだとメンバー、リスナー、評論家全てが評しています。その変化は存在感を高めるため?それともレーベルの影響?もしくは娘の回復が理由でしょうか?
「全ては意図的に行われた変化だよ。Peaceville 時代の後期からすでによりレイドバックした “イージーリスニング” なアプローチは検討されていたんだ。過去の私たちがそうであったように、若いころは強い印象を与えようとするからね。私たちも4回リフを繰り返して自然に他のパートへ移行する代わりに、ただ驚かせるためだけに同じリフを7回半ひたすらプレイしたりしていた。技術的に優れていることも証明したかったんだと思う。だけど、それはもう過去にやったことだ。今は何も証明する必要もない。
だからこのアルバムにはギターとボーカルのハーモニーがたっぷり含まれているんだ。ダブル、トリプル、時には4重にも重ねてね。さらにコーラスも存分に取り入れて聖歌隊の雰囲気を与えたよ。
ただ、あくまで MY DYING BRIDE 流のコマーシャルさ。だってシングル曲 “The Old Earth” にしたって10分あるんだからね。一般的なコマーシャルとはかけ離れている。それでも、耳に優しいのは確かなようだ。メタルに詳しくない友人が “Your Broken Shore” を褒めてくれたのは嬉しかったよ。つまり新たなファンを獲得しているってことさ。
もちろん、リッチなコーラスに不満を言うファンはいるだろう。でも私たちは新たなチャレンジを楽しみ、前へと進んでいるんだからね。」

新たな挑戦と言えば、チェロ奏者 Jo Quail と WARDRUNA の女性ボーカル Lindy-Fay Hella がゲスト参加しています。チェロはバンド史上初、女声も “34.788%…Complete” 以来初の試みです。
「アルバムを制作していくうち、特別な作品へ発展していることに気づいたんだ。それで私たちだけで仕上げるよりも、他の質の高いミュージシャンを加えて最高のアルバムに仕上げるべきだと思ったのさ。真に際立った2人の女性が、その才能で素晴らしいパートを加えてくれたんだよ。」
今や様々な分野のアーティストに影響を与える立場となった MY DYING BRIDE。では Aaron Stainthorpe その人はどういった芸術家からインスピレーションを受けているのでしょうか? CANDLEMASS と CELTIC FROST は彼にとっての二大メタルバンドです。
「”Nightfall” の暗闇は私の中で生き続けるだろうね!実に巧みに設計されていて、最初から最後まで過失のないレコードだよ。特にボーカルがね。CELTIC FROST なら “Into The Pandemonium” だよ。このバンドが支配するアンビエンスと真の狂気は私にとって純粋に詩的なんだよ。アートワークも素晴らしいよね。」
同時に DEPECHE MODE と DEAD CAN DANCE も当然彼の一部です。
「DEPECHE MODE を愛するメタルヘッドは決して少なくないよ。だって終わりのない落胆と陰鬱が存在するからね。私はアルバムだけじゃなく、12インチ7インチを出来る限り購入していたね。ファンクラブのメンバーにも入っていたくらいだから。
DEAD CAN DANCE で私が最初に聴いた CD は “The Serpents Egg” で、これは長年にわたって個人的なお気に入りなんだ。新しい歌詞や詩を書きたい時に聴きたくなるね。 モダンで厳格な心持ちから、望んでいる温かく創造的な雰囲気に変化させてくれる。このLPは、そうして “言葉の食欲” が落ち着くまで繰り返されるわけさ。」
さらには SWANS まで。「Michael Gira の心は複雑で、その創造的な成果は特に SWANSに現れている。Michael の提供する複雑なリリックと楽曲は、時に不快だけど喜びで価値があるものだ。何が起こっているのかわからないけど、魅力的で戸惑うほど美しい。」

そうした Aaron の才能はいつか小説や映画を生み出すのかもしれません。
「いつか映画を撮るかもしれないね。大きな映画館じゃ上映されないような作品さ。2020年のベストフィルムは “The Lighthouse” だよ。4K やフルカラーで撮影されなければ映画じゃないように思われているかもしれないけど、実際はそうじゃない。」
今年はバンドにとって3枚目のアルバム、マイルストーン “The Angel and The Dark River” の25周年です。興味深いことに、名曲 “The Cry of Mankind” は僅か2時間半で全てが完成した楽曲です。
「Calvin が適当にギターを触っていて、残りのメンバーは無駄話をしていた。でも彼のフレーズの何かが私たちの耳を捉えたんだ。そこから全員で一気呵成に仕上げていったね。こうやって自然と出てくる曲はそれほど多くはないよ。通常は誰かが「私に3つのリフがある。さあここから他の楽器で装飾し楽曲を作ろう」って感じだから、何もないところから作られて絶対的なリスナーのお気に入りになったのは最高だよ。ファンがその曲を愛しているんだから、すべてのギグで演奏しなければならないと思う。」
Aaron と Andrew は唯一のオリジナルメンバーで、その付き合いは30年を超えています。
「私たちは老夫婦のようなものさ。 両方とも同じものを望んでいる。それに私だけがオリジナルメンバーではないのが嬉しいんだよ。親愛なる人生のために、他の誰かがまだそこに留まっているのは素晴らしいことだからね。 もし Andrew が辞めたら、私もタオルを投げるだろうな。彼も同様のことを言っているがね。なぜなら私たちは自分からは辞めると言いたくないんだよ。だから長く続くかもしれないね!私はまだもう10年は続けられると思う。」

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GATECREEPER : DESERTED】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHASE MASON OF GATECREEPER !!

PHOTO BY PABLO VIGUERAS

“Gatecreeper Started When I Met Our Drummer, Matt, And Discussed Our Shared Love For Old School Death Metal. We Both Talked About Dismember And Decided To Start a Band. Our Formula Has Always Been The Same Since The Beginning.”

DISC REVIEW “DESERTED”

「GATECREEPER は僕がドラマーの Matt と出会って始まったんだ。僕たちのオールドスクールデスメタルに対する愛をシェアしようぜってね。あの時僕たちは DISMEMBER について熱く語って、それでバンドを始めようって決めたんだよ。」
アリゾナに生を受けたメタリックハードコアの牽引者 GATECREEPER は、その溢れるデスメタル愛でエクストリームミュージックを遂に巨大なスタジアムへと導きます。
「僕たちは “スタジアムデスメタル” という言葉を世界へもたらし、それが取り上げられるようになった。要は、しっかりとエクストリームでありながらキャッチーなデスメタルを作ることが出来るということなんだ。狂気のサウンドでありながら、記憶に残るデスメタルは存在し得るんだ。DEICIDE の “Once Upon A Cross” のようにね。」
今回インタビューに答えてくれた ボーカリスト Chase Mason は Revolver のインタビューでそう怪気炎を上げ、スタジアムでプレイする自らの姿を夢想します。
実際、Chase の前人未到なその野心は決して夢物語ではないのかも知れませんね。
「フロリダデスメタルとスウェディッシュデスメタル。間違いなくその2つは僕たちのサウンドにおいて欠かせない重要な要素だよね。ただ、僕たちはそういったバンドたちの大好きな要素を抽出して、ユニークな僕等のサウンドとなるよう形成していくだけなんだ。」
HORRENDOUS, TOMB MOLD, BLOOD INCANTATION 等と共に OSDM 復興の波を牽引する GATECREEPER。中でも彼らは米国の凶凶と欧州の叙情を繋ぐ大胆な架け橋となり、初期の DEATH や OBITUARY と ENTOMBED, DISMEMBER が完璧なバランスで交わる “スイートスポット” の発見を誰よりも得意としています。
もちろんそこには、BOLT THROWER を頂点とする UK デスメタルの鼓動、さらには Kurt Ballou のサウンドメイクが象徴するように VEIN や CODE ORANGE のメタリックなハードコアとも共鳴する先鋭性も存分に垣間見ることが出来るでしょう。
ただし、”ポストヒューマン” な人類滅亡の世界を描いたアリゾナの “Deserted” で最も目を惹くエイリアンは、ポップである種単純化とまで言えそうなストラクチャーに宿された究極のキャッチーさでしょう。サバスの時代に巻き戻ったかのような凶悪でしかしシンプルなリフワークは、複雑化を極めた現代メタルに対するアンチテーゼの如く鮮烈に脳裏へと刻まれます。
その真の意味での “オールドスクール” の利点は、GATECREEPER ではベースを担当する Nate Garrett がマイクに持ち替え、Chase がベースをプレイ、さらに Eric Wagner もギターを兼任する SPIRIT ADRIFT にもシェアされています。GATECREEPER と SPIRIT ADRIFT、メンバー3名が重複し古を敬う2つのバンドの作品が、海外主要紙2019年のベストに多く選されている事実は複雑化の終焉と単純化への兆しを意味しているのかも知れませんね。
ただし、残念ながら GATECREEPER & SPIRIT ADRIFT の古式ゆかしくしかし斬新な共闘は終わりを迎えるようです。
「僕はもう SPIRIT ADRIFT ではプレイしないし、Nate も GATECREEPER でプレイすることはもうないよ。そうすることで、(同じマネージメントの) 2つのバンドが円滑に、互いに争わずやっていくことができるんだよ。」
Post Malone がアリゾナのショウで GATECREEPER のTシャツを着用したシーンは、今のところ彼らが最もメインストリームへと接近した瞬間だったのかも知れません。ただし、あのメタルを愛するポップアイコンに見初められた音の葉は、いつかスタジアムへと到達するに違いありません。
今回弊誌では、Chase Mason にインタビューを行うことが出来ました。「僕は COFFINS が大好きだし、他にも FRAMTID, DISCLOSE, GAUZE, BASTARD といった日本のハードコアやパンクバンドも気に入っているんだ。」日本盤は DAYMARE RECORDINGS から。どうぞ!!

GATECREEPER “DESERTED” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLOOD INCANTATION : HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ISAAC FAULK OF BLOOD INCANTATION !!

“I Believe That Questioning Mainstream Archaeology, Even If The End Goal Isn’t Proving The Existence Of Aliens, Is a Great First Step To Questioning Everything We Have Been Taught About Our Own Society.”

DISC REVIEW “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE”

「僕たちの音楽、アートワーク、歌詞の主な目標は、人々に先入観を疑わせることなんだ。音楽的にだけじゃなく、概念的にも限界を押し広げることが重要なんだよ。そのため、エイリアンや次元を股にかける存在だけじゃなく、何かにインスパイアされて自分自身の内なる世界を拡大することもまた重要なテーマなんだ。」
宇宙、異次元、エイリアンをビッグテーマに “アストラルデスメタル” の称号を得る BLOOD INCANTATION は、しかし自らの存在や哲学を “サイエンスフィクション” の世界に留め置くことはありません。SF を隠喩や象徴として扱う “デス・スター” 真の目的は、現実世界のリスナーに森羅万象あらゆる “常識” に対して疑問を抱かせることでした。
「主流の考古学に疑問を呈することは、例え最終的にエイリアンの存在を証明出来なかったとしても、僕たち自身の社会について教えられてきた全てに疑問を投げかける素晴らしい第一歩だと思うんだよ。」
BLOOD INCANTATION の叡智を司るドラマー Isaac にとって、ギョペグリ・テペやギザのピラミッド、ナスカの地上絵が宇宙人の創造物であろうがなかろうが、究極的にはどちらでも構わないのかも知れませんね。なぜなら、彼の最終目標は宇宙よりも未知である人の心、暗く危険な内部空間の探索にあるからです。
Isaac は現在の人間社会、政治システムを完全なる実験の失敗だと捉えています。故に、この文明社会こそ人類の最高到達点で良好な進歩を遂げているという固有概念に疑問符をもたらすため、寓話的に SF を使用しているにすぎないのです。
「僕たちの新しいレコードは、人類という種が記憶を失っていて、その過去はまだ明らかにされていないという概念に焦点を当てているんだ。」
“Hidden History of the Human Race” で描くのは忘却の彼方に追いやられた人類の隠された歴史。大胆不敵な宇宙旅行者が作成する、失われた古代の歩みを取り戻すアストラルレコードの使命は、そうしてデスメタルとプログレッシブのロマンを取り戻す旅ともリンクしていきます。
「僕はね、”プログレッシブデスメタル” ってタグはあまり気に入っていないんだよ。だってそこに分類されるバンドの大半が、僕がプログレッシブロックがもともと志していたと考える音楽をプレイしていないんだからね。」
プログレッシブの名を冠しながら、モダンなテクニックの博覧会を志向する昨今のバンドとは一線を画す BLOOD INCANTATION のロマンチシズム。それは YES, PINK FLOYD, RUSH, KING CRIMSON といった神代の巨人への憧憬を根源としています。
“Echoes”, “Close to the Edge”, “The Gates of Delirium” といったプログエピックを指標した18分の異次元探索 “Awakening from the Dream of Existence to the Multidimensional Nature of our Reality (Mirror of the Soul)” を聴けば、そこに古の技術やイデアを元にした音のペイガニズムが存在することに気がつくはずです。
同時に、テクニカルデスメタル、ブルータルデスメタル、デスコア等の台頭により次元の狭間に埋もれた “OSDM” オールドスクールデスメタルの “レコンキスタ” を司る十字軍の役割も忘れるわけにはいきません。
HORRENDOUS, TOMB MOLD, GATECREEPER を従え津波となった OSDM リバイバルの中でも、BLOOD INCANTATION の映し出す混沌と荘厳のコントラスト、プログの知性やドゥームの神秘まで内包する多様性は傑出しています。その理由は、GORGUTS を筆頭に、DEATH, CYNIC, DEMILICH といったデスメタルに異世界を持ち込んだ異形の “血の呪文” を受け継いでいるからに相違ありません。
逆説的に言えば、ブラックメタルやドゥームメタルほど神秘や謎、アトモスフィアを宿していないデスメタルの領域でその世界の “DEAFHEAVEN” を演じる事は簡単ではないはずです。しかし、”Inner Paths (to Outer Space)” に内包された爆発的なエネルギー、リフノイズの海に鳴り響く美麗邪悪なアコースティックギター、複雑怪奇なフレットレスベースの胎動、アナログアンビエントな音の葉を浴びれば、彼らの野心が文字通りコズミックに拡大を続ける宇宙であることに気づくでしょう。
今回弊誌では、Isaac Faulk にインタビューを行うことが出来ました。「プログレッシブロックとは、様々なジャンルを過去のスタイルから生まれ出るテクニックと融合させ、異なる方向へと導くような音楽だよ。」 音楽にしても、時に “メインストリーム” に疑念を抱くことはきっと必要でしょう。どうぞ!!

BLOOD INCANTATION “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XOTH : INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH XOTH !!

“We All Were Highly Influenced By Video Game Soundtracks Growing Up. Those Are Some Of The Best Compositions Ever Created In My Opinion.”

DISC REVIEW “INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS”

「全ての偉大なメタルのサブジャンルは明らかだけど、それ以外にもプログ、映画やゲームのサウンドトラック、古き良きロックンロールにパンク、ジャズフュージョン、カントリーのチキンピッキングでさえね!ただ愛する、様々な音楽をミックスしているんだよ。」
HORRENDOUS, TOMB MOLD, GATECREEPER を中心とする OSDM、オールドスクールデスメタル復興の波。REVOCATION, RIVERS OF NIHIL, VEKTOR が牽引するモダンな Tech-death の潮流。
デスメタルの世界は現在、2つの新興勢力が切磋琢磨を重ねつつネクストステージへとジャンルを誘っています。彼らに共通する理念は、偉大な過去の遺産へユニークな独自のフレイバーを注ぎ込み、創造性のレコンキスタを果たしている点でしょう。
そういった観点からシアトルの新鋭 XOTH を眺めれば、彼らが両軍の長所を御旗に掲げる勇敢な十字軍にも見えてきます。
「DEATH は間違いなく、僕たちに多大な影響をもたらしているね。彼らは耳と精神を等しく惹きつけるバンドの素晴らしい例だと思うんだ。」
オープナー “Casting the Sigil” が示すように、XOTH の最新作 “Interdimensional Invocations” には、知性とテクニック、そしてイヤーキャンディーに残虐性を併せ持った DEATH のレガシーが確かに眠っています。
ウルトラメロディックで、ジャズの波動を享受するエクストリームメタル。同時に VOIVOD や CYNIC にも滞留する “耳と精神を惹きつける” 飽くなき SF への挑戦、音楽のフラスコにしても間違いなく XOTH の血肉であるはずです。
「僕の意見だけど、ゲーム音楽の中には、これまでの音楽でも最高のコンポジションを誇るものがあるよ。全員気に入っているのは、オールドスクールなゲームのサントラさ。例えば、魂斗羅、悪魔城ドラキュラ、ロックマン、忍者龍剣伝、ソニック、マザー、スーパードンキーコング、ゼルダの伝説なんかだね。」
とは言え、XOTH の中にも他の新興勢力と同様に際立ったユニークスキルが備わっています。ゲーム/映画音楽のサウンドトラックからのインスピレーションはその筆頭格でしょう。
“Mountain Machines” のファストでファンタジックな未来志向のギターハーモニーは、”F-Zero metal” と称される XOTH の真骨頂。”Plague Revival 20XX” のディストピアな世界観ももちろん、忍者龍剣伝や魂斗羅のイメージとも繋がります。
同時に、”シュレッド” をバンドの心臓に据えた理由にも思えるミュージシャンシップの最高峰 “Back to the Jungle”、VOIVOD のカオスとメロデスのパトスを抱きしめる宇宙誘拐譚 “Unsenn Abductor”、THIN LIZZY のデスメタル “Haruspex”、トレモロやブラストを引き連れた “The Ghost Hand of God” のブラッケンドなアグレッション、そして7分のプログエピック “Melted Face of the Soul” まで、メタル/ノンメタル入り乱れた配合の妙に構築されるコズミックかつミステリアス、マルチディメンショナルで時をかける SF ワールドは XOTH をデスメタルのニューフロンティアへ導くに充分のインパクトを備えているのです。
SUFFOCATION, OBITUARY から THE BLACK DAHLIA MURDER まで手がける Joe Cincotta のスタジオも、過去と未来を繋ぐデスメタルのタイムリープに相応しき地の利となりました。
今回弊誌では、XOTH のメンバー全員にインタビューを行うことが出来ました。「特定のスタイルにきちんと収まらないバンドは最初、リスナーを見つけるのが難しいんだ。だけどね、その時期を超えれば、ユニークな方法論を創造し多くのリスナーを獲得するチャンスが巡ってくるんだよ。」 この曲者感。次の MASTODON を狙える逸材に違いありません。どうぞ!!

XOTH “INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WILDERUN : VEIL OF IMAGINATION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAN MULLER OF WILDERUN !!

“Epic Is Probably The Most Encapsulating Word You Could Use But I Feel Like It Still Leaves Out Some Of The More Progressive And Experimental Sides Of Our Music.”

DISC REVIEW “VEIL OF IMAGINATION”

「”エピック” はおそらく最も僕たちの音楽を要約した言葉だけど、ただ僕たちの音楽にあるいくつかのより進歩的で実験的な側面をそれでもまだ除外しているように感じるね。」
虚空に七色の音華を咲かせるフォーク-デス-ブラック-アトモスフェリック-シンフォニック-プログレッシブ-エピックメタル WILDERUN は、ジャンルという色彩のリミットを完全に排除してリスナーに名作映画、もしくは高貴なオペラにも似て胸踊るスペクタクルとドラマティシズムをもたらします。
「OPETH の音楽には特に昔の音源でダークな傾向があるんだけど、WILDERUN には常に見過ごされがちな明るく豊かな側面があったと思うんだ。」
時にアートワークから傑作を確信させるレコードが存在しますが、WILDERUNの最新作 “Veil of Imagination” はまさにその類でしょう。アートワークに咲き誇る百花繚乱はそのまま万華鏡のレコードを象徴し、”陽の”OPETHとも表現されるブライトでシンフォニックに舞い上がる華のモダンメタルは、シーンにおける “壮大” の概念さえ変えてしまうほど鮮烈なオーパスに仕上がりました。
「僕たちが様々な種類の音楽をブレンドする際に使用した最も重要なテクニックとは、単にストレートなフォークセクションをプレイしてから、お決まりのブラックメタルパートを始めるって感じじゃないんだよ。その代わりに、メタルと非常に異なるスタイルの音楽にしか存在しないと思われる特定の作曲テクニックを分析し、それをどうメタルの文脈に適応させるのか探っていったんだ。」
ベーシスト/オーケストレーター Dan Muller が語る通り、WILDERUN の多様性は単純な足し算ではなく複雑な掛け算により無限の可能性を見出しています。様々なジャンルの本質を抜き取り、その膨大なコンポーネントを最適に繋ぎネットワークを構築する彼らのやり方は、さながら人間の神経系統のように神々しくも難解な神秘です。
中でも、シンフォニックなアレンジメントは作品を通じて情炎と感奮、そして陶酔をもたらす WILDERUN のシナプスと言えるのかも知れませんね。メタルをはじめとした豊かな音の細胞は、優美でドラマティックなオーケストレーションにより有機的に結合し、思慮深くシームレスに互いを行き来することが可能となるのです。
オープナー “The Unimaginable Zero Summer” はその進化を裏付ける確固たる道標に違いありませんね。語りに端を発する抽象的かつファンタジックな15分の規格外に、目的のない誘惑など1秒たりとも存在していません。
オーケストラの名の下に、無慈悲なデスメタルからメランコリックアコースティック、浮遊するエレクトロニカ、オリエンタルな重量感、絶佳なワルツの大円団、そしてエセリアルなピアノのコーダまで、秩序と無秩序の間で悠々と整列した音の綺羅星はいつしか夜空にプログレッシブな夏の星座を映し出しているのです。WILDERUN に宿る平穏と焦燥の対比を完膚なきまでに描き象徴する Evanのボーカルレンジも白眉。
クライマックスは中盤に。”Scentless Core (Budding)” に蒔かれたエピックの種は、”Far From Where Dreams Unfurl” の青葉としてエアリーかつメランコリックな大合唱で天高く舞い上がり、”Scentless Core (Fading)” で老獪な叙情の花を咲かせるのです。まるでアルバムのテーマである無邪気から退廃へ、人の歩みを代弁するかのように。
例えばプログレッシブデスメタルなら “Blackwater Park”、シンフォニックエピックメタルなら “Imaginations From The Other Side”、オリエンタルフォークメタルなら “Mabool”。ファンタジックで知的なメタルには各方面に絶対のマイルストーンが存在します。しかし “Veil of Imagination” はOPETH よりも華やかに、BLIND GUARDIAN よりも多様に、ORPHANED LAND よりもシンフォニックに、数ある傑作の交差点として空想力に創造性、好奇心、そして多様性のモダンメタル新時代を切り開くのです。
今回弊誌では Dan Muller にインタビューを行うことが出来ました。「少なくとも僕にとってこのレコードの歌詞のゴールは、世界を実際あるがままに見せることなんだ。みんなの心の目を再度トレーニングしてね。」2度目の登場。どうぞ!!

WILDERUN “VEIL OF IMAGINATION” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HUMANITY’S LAST BREATH : ABYSSAL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BUSTER ODEHOLM OF HUMANITY’S LAST BREATH !!

“Djent Was a Continuation Of What Meshuggah Started. Everyone Added Their Own Flavour To The Sound For Better Or For Worse. Thall Is Just a Word That Sounds Funny In Swedish.”

DISC REVIEW “ABYSSAL”

「MESHUGGAH はあの本当にユニークなサウンドの先駆者なんだ。演奏の面でも、作曲の面でもね。僕たちも含めて多くのバンドが彼らの直接的な子孫だと言えるだろうな。」
そのジャンル名は “EVIL”。MESHUGGAH の血を引くスウェーデンの猛威 HUMANITY’S LAST BREATH は、シーンに内在する愚かな “ヘヴィネス” の競争を横目に、純粋で無慈悲なまでに冷徹な恐怖と狂気を世界へと叩きつけます。
Calle Thomer と Buster Odeholm。”Thall” 生みの親にして Djent の神、VILDHJARTA のメンバー2人を擁する HUMANITY’S LAST BREATH に大きな注目が集まるのはある意味必然だったと言えるでしょう。何より、VILDHJARTA 本体は長らく隠遁状態にあったのですから。
ただし、HLB は決して VILDHJARTA のインスタントな代役というわけではありません。「Djent のムーブメントは MESHUGGAH が始めたことの継続だったんだ。良しにつけ悪しきにつけ、みんながその下地に独自のフレイバーを加えていったよね。」Buster の言葉が裏付けるように、HLB が追求し個性としたのは Djent を通過した “重” と “激” の究極形でした。
2012年のデビューフル “Humanity’s Last Breath” から7年。実際、唯一のオリジナルメンバー Buster がバンドを一度解体し、再構築して作り上げた最新作 “Abyssal” は彼の愛する MORBID ANGEL のように重量以上の畏怖や威厳を伝える音の “深淵” だと言えるでしょう。
「ヘヴィーな音楽において、コントラストは非常に軽視されていると思うんだ。だけど僕はソングライティングのアプローチにおいて、最も重要な要素の1つだと考えているよ。」モダンメタルコアの新星 POLARIS はヘヴィネスの定義についてそう語ってくれましたが、HLB の威容にも奇しくも同様の哲学を垣間見ることが可能です。
オープナー “Bursting Bowel Of Tellus” は HLB が描く “激重” の理想なのかも知れませんね。威風堂々、デスメタルの重戦車で幕を開け、ピッチシフターの雄叫びと高速シンコペーションで djenty なカオスを創出。ブラストの悪魔を召喚しつつ呪術的なクリーンボイスでさらなる中毒性を醸し出すバンドの方程式は、まさしくヘヴィネスの坩堝と対比の美学に彩られています。
事実、新ボーカル Filip Danielsson の豊かな表現力は HLB にとって進化のトリガーだったのかも知れません。獰猛な咆哮はもちろん、時にエセリアルに、時に邪悪に、時に囁き、時に静寂まで呼び寄せる Filip のワイドな魔声により、仄かな北欧の風を伴ってバンドは多様に真の “激重” の探求へとその身を委ねることになりました。
さらに “Born Dust”, “Fradga”, “Abyssal Mouth” と聴き進めるうち、そこには STRAPPING YOUNG LAD, FEAR FACTORY と交差する、近未来感を軸としたシンクロニシティーがまざまざと浮かんで来るはずです。それはブラッケンドで djenty な最高級のテクニックを、惜しげも無く純粋にヘヴィネスへと注ぎ込み昇華した桃源郷のディストピア。
もちろん、アルバムの第二幕、全楽曲のインストバージョンは建築士としての自信と DIY の矜持であることを付け加えておきましょう。彼らのデスコアマッドネスに知性は不可欠です。
今回弊誌では、ドラムスとギターを自在に操る鬼才 Buster Odeholm にインタビューを行うことが出来ました。「”Thall” とはスウェーデン語で面白く聴こえるようなただの言葉なんだ。」今、世界で最も重力を集めるブラックホール。どうぞ!!

HUMANITY’S LAST BREATH “ABYSSAL” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【POSSESSED : REVELATIONS OF OBLIVION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH EMILIO MARQUEZ OF POSSESSED !!

“Seven Churches” Was The Creation Of Death Metal In My Opinion. There Was Never a Band Who Used The Words “DEATH METAL” In Any Song Title Or Claiming That Category When “Seven Churches” Was Released. “Seven Churches” Was Very Raw And Wierd In Structure And Lyrics. Just So Dark For Its Time. Very Unique!”

DISC REVIEW “REVELATIONS OF OBLIVION”

先日、かの Rick Rubin が SLAYER をしてブラックメタルの創案者と呼んだように、ジャンルの朝未きはいつも朧げで、故にそのミステリアスなアルカイックパズルの最適解は常に議論の的となってきました。
1983年に降誕した POSSESSED は “ゴッドファーザー・オブ・デスメタル” の称号を贈られる邪悪の根源。85年にリリースしたデビュー作 “Seven Churches” が、DEATH の “Scream Bloody Gore” をはじめ CANNIBAL CORPSE, DEICIDE, OBITUARY, MORBID ANGEL といったフロリダの魑魅魍魎に少なからず影響を与えたことは想像に難くありません。
実際、今は亡き Chuck Schuldiner は、DEATH の前身バンド MANTAS が当初 VENOM/MOTORHEAD 的な方向性を志向していながら、POSSESSED の登場で全てが変わったことを認めています。
「POSSESSED は当時登場したどんなバンドとも異なっていた。その音楽は純粋なノイズではなく、様々な要素、アイデアを作曲に取り入れていたんだ。彼らの進化は、他のバンドの挑戦や拡大の下敷きとなったんだよ。」
しかし、例え楽曲やデモのタイトルに “デスメタル” の文言を掲げようとも、”Seven Churches” の音楽性は決してデスメタルの完璧な “模範解答” であった訳ではありません。むしろ、スラッシュメタルとデスメタルのダークな架け橋との評価が一般的だと言えるかも知れませんね。ただし、POSSESSED の理念は完璧なまでにデスメタルでした。
「スラッシュはクリーンボーカルで歌われる生々しくファストな音楽だ。決して難しいソングライティングのスタイルではないよ。ブラックメタルも好きだけど、限られた少しのバンドだけだ。なぜならブラックメタルバンドの大半は、サタニックでさえなく、トレンドに追従しているだけだからね。デスメタルはもっともっとチャレンジングな音楽だよ。そしてコンセプチュアルでもある。バラエティー豊かだしね。」
新生 POSSESSED の栄誉あるドラマー職に任命された Emilio Marquez は、ジャンルの交差点に対して鋭い観察眼を発揮します。
確かに、クロスオーバーの禁忌を発動せずとも、デスメタルはスラッシュやブラックメタルと比較してより猟奇でカオスで挑戦的なジャンルであるように思えます。そして、その美学を主導したバンドこそ POSSESSED だったのです。
新生。そう、POSSESSED は不死鳥の如く蘇ったバンドです。後に BLIND ILLUSION, そして PRIMUS を結成する Joe Satriani が一番弟子 Larry LaLonde の絶妙に捻くれ絶妙に知的なギターワークを軸に据え、今では心理学の学位を取得しカウンセラーとなった Mike Sus の奔放で奇々怪界なドラムダンス、Jeff Becerra の狂猛なる咆哮を三位一体の阿鼻叫喚とした10代の POSSESSED は、さながら奇想画のごとくジャンルの脱俗と自我意識を備えた異端でした。
2枚のアルバムと1枚のEPを遺して解散したバンドの復活は2007年。トリビュートアルバムから実現した再起のオリジナルメンバーは Jeff Becerra のみでしたが、それでも車椅子の Jeff が牽引するパフォーマンスはファンの熱狂を呼びました。
そして、それから12年の後に届けられた最新作 “Revelations of Oblivion” には、Emilio の言葉を借りれば “POSSESSED のレガシーをしっかりと受け継いだ” ネクストレベルの無慈悲な倒錯が封じられていたのです。
“Seven Churches” と同様に荘厳な SE で幕を開ける伏魔殿には、確かにあの POSSESSED の背徳が投影されています。GRUESOME や ex-DRAGONLORD でならすシュレッダーをリクルートした効果は絶大で、当時のリフの迷宮はドラマ性とエキサイトメントを充填し迫ります。
もちろんチープだったプロダクションも大きく改善され、Emilio の正確無比なドラムアタックは Sus の異様を懐かしむ暇さえ与えませんし、何より Jeff の鬼気はその迫真を増しています。
特に、スラッシュの疾風とデスメタルの迅雷を共存させた “Demon” の刻々と移りゆくペースチェンジの妙、”Abandoned” や “Shadowcult” の絶妙に捻くれながらもギターハーモニーまで披露するリフドラマは、アップデートされた POSSESSED 2.0 の脅威を見せつけるに充分の攻撃でしょう。
今回弊誌では、Emilio Marquez にインタビューを行うことが出来ました。「僕の考えでは、”Seven Churches” こそがデスメタルを創造したと思うね。実に生々しく、構成や歌詞も風変わりだったよね。あの時代にしてはただ本当にダークだった。とてもユニークだよ!」 偶然にも、近年の KREATOR と非常に近い場所へと着地した可能性もありますね。どうぞ!!

POSSESSED “REVELATIONS OF OBLIVION” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VLTIMAS : SOMETHING WICKED MARCHES IN】CRYPTOPSY JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FLO MOUNIER OF VLTIMAS / CRYPTOPSY !!

2018 © Tina Korhonen/ www.tina-k.com

“Things Are a Bit Different Then When I Began. But It All Comes Down To The Same Thing, How To Go Fast And Make It As Easy And Natural As Possible.”

DISC REVIEW “SOMETHING WICKED MARCHES IN”

VLTIMAS の履歴書は、雄弁に “究極” をバンド名に冠したメタルコレクティブの偉大さを物語ります。
15年にも渡り、MAYHEM のポスト “De Mysteriis Dom Sathanas” 時代に使役し、AURA NOIR でもその名を轟かす Rune “Blasphemer” Eriksen。デスメタルのゴッドファーザー MORBID ANGEL のまさに顔で、現在は I AM MORBID を束ねる David Vincent。そして革命的なテクデスレジェンド CRYPTOPSY 唯一のオリジナルメンバー、ドラムマスター Flo Mounier。
そうして個性極まる三邪神の悪魔合体が実現したデビューフル “Something Wicked Marches In” は、エクストリームミュージックのさらなる可能性を提示する未知なる魔道書となりました。
大西洋を挟むノルウェーとアメリカ大陸の地理的困難は、むしろバンドの魅力を際立たせるアクセントです。オープナー “Something Wicked Marches In” に訪れる厄災、威風堂々のデスメタルは混沌と共に教会を包む紅蓮のリフワークへ変容し、瞬時にリスナーをスカンジナビアの凍てつく不吉へと誘います。
燃え盛る業火には、Flo の無慈悲なドラムアタック、David の “病的な” 咆哮が焚べられ、いつしか名状しがたき魑魅魍魎を生み出してしまうのです。
「俺の考えでは、VLTIMAS はよりロックに根差していると思うんだ。グルーヴィーでもっとフィーリングを重視したアイデアでね。」
特筆すべきは、VLTIMAS の設計図にロックの躍動感、グルーヴ、空間の魔法が織り込まれている点です。時にその鎌首をもたげる PANTERA を思わせるデスロールは、カオスと冷徹の荒野に絶妙のオアシスを配置します。そして刹那の静謐、アトモスフィアの蜃気楼は David の禍々しき囁き。
「Rune のヴァイブには慣れ親しんでいるんだ。だから彼の望むものは分かっているんだよ。つまり、とてもキャッチーで、いくらかはテクニカルなプレイだよ。David は楽曲により構成を求めるんだ。」
残忍でしかしキャッチー、起伏とダイナミズム溢れる “Blackend” のデスメタルは、三神の個性を攪拌しながら “Praevalidus”, “Total Destroy!” とその独自の牙を研ぎ澄ましていきます。
そうして辿り着く “Monolilith” の “究極” に禍々しく、”究極” に艶美なブルータルドラマは確かにアルバムのハイライトです。”彼女は唯一の、私が使える唯一無二の、悪魔の女王” と David が宗教的に歌い紡ぐ儀式のクリーンボーカルは、”病的な天使” の “Covenant/Domination” 時代をも想起させ、凛然荘厳の楽曲において “究極” の野心と対比の美学でリスナーを魅了するのです。
BPM の限界に挑む “Diabolus Est Sanguis” にも言えますが、不思議と耳を惹く呪術のメロディー、アトモスフィア、テンポチェンジやリズムの実験など、レコードに織り込まれた意外性とフックの数々こそが、古強者が古強者である確かな証ではないでしょうか。
自身のバンド CRYPTOPSY で来日が決定し、絶佳の EP “The Book of Suffering: TomeⅡ” をリリース。さらにもう一つのスーパーグループ TRIBE OF PAZUZU にも参加。今こそキャリアのピークを迎えるドラムマスター Flo Mounier に弊誌は二度目のインタビューを行うことが出来ました。
「まずはグルーヴとフィーリングさ!! それから、自分を変えるような練習をするんだ。つまり、自分にとって快適でないような課題だよ (笑) そういった苦手な分野にも慣れて、快適になるようにね。」 どうぞ!!

VLTIMAS “SOMETHING WICKED MARCHES IN” : 10/10

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