COVER STORY + INTERVIEW 【KHALAS : ARABIC ROCK ORCHESTRA】 HARMONY IN THE PALESTINE


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ABED HATHOUT OF KHALAS !!

“Our Music Is About Celebrating Life Despite The Horrors Of Our Region, There Is No Difference Between a Girl That Go To Shout In a Demonstration And a Girl That Choose To Dance And Laugh Despite Of The Occupation, We All Resist In Our Own Way.”

DISC REVIEW “ARABIC ROCK ORHESTRA”

「僕たちがパレスチナですることは、すべて政治的なことになっちゃうけどね。ビールを買うことでさえも政治的になるんだから (笑)。 そう、僕たちの音楽は、この地域の惨状にもかかわらず、人生を謳歌するためのもの。例えば、現状を憂いデモで叫びに行く女の子と、占領されているにもかかわらず踊って笑うことを選ぶ女の子に違いはないと思うからね。だからといって、どちらか一方が他方よりパレスチナを気にかけているということではなく、僕たちは皆、それぞれのやり方で抵抗しているということなんだ」
正邪混沌。私たちは今、正義と邪悪が混沌とした世界を生きています。もちろん、善と悪は、白と黒のようにスッキリとした二元論で割り切れるものではありません。多くの場合、両者の間には曖昧な “グレー・ゾーン” が存在し、その灰色の場所で人類は互いにうまくやる術を学んできました。
とはいえ、私たちは本能的に、もしくはそうして生きる中で、暴力や抑圧の愚かさを知り、ゆるやかに、なんとなくではありながら、寛容の尊さを理解してより良い世界に近づいているはずでした。しかし、気がつくと、世界は正義が邪悪、邪悪が正義の残酷で複雑怪奇な、見通しの悪い場所になっていたのです。パレスチナの砂地にメタルの種を撒いた KHALAS は、そんな歪んだ世界を音楽で変えれられると心から信じています。音楽で人生を謳歌することこそが、世界を黒雲で覆う二極化政治に対する抵抗。
「最近はプロパガンダ・マシンと偽メディアのせいで、ORPHANED LAND ともすべてにおいて意見が一致するわけではないけれど、それでも僕たちは友人で、互いの痛みや苦しみを尊重し、理解しているんだよ」
ロシアとウクライナ。イスラエルとハマス (パレスチナ)。もはやその戦いは、SNS とメディアの戦争です。誰もが正義を叫び、誰もが邪悪を叫び、誰でも自分の “側” に引き入れようと死力を尽くしています。その裏で傷つき、無惨に死んでいく無垢の魂には一瞥もくれずに。さて、私たちは何を信じ、誰の側に立ち、誰を救えばいいのでしょうか?
「僕がパレスチナの皆を代表して発言することはできないけど、民間人に対するテロ行為や大量虐殺は、誰が行おうとも非難されるべきものだ。それが組織的な軍隊であれ、過激派グループであれ、罪のない人々、特に子どもたちが政治的な欲や腐敗の代償を払うことは決してあってはならない」
そもそも私たちは、必ずどちらかの “側” に立たなければならないのでしょうか?いえ、もし誰かの “側” に立つとすれば、それは決して正邪混沌の元凶である権力者やテロリストたちではなく、平和を願う無垢なる人たちの “側” でしょう。あまりにも暴力的で極端な “暴君” たちの裏側には、顔の見えないその何万倍もの共存を望む優しい人たちがいます。イスラエル。パレスチナ。大きな主語で、そのすべてを一括りにすることこそ愚か。そもそもが灰色である正義を、邪悪を声高に叫ぶ人々、その声の大きさに取り込まれてはいけません。
事実、パレスチナが産んだオリエンタル・メタルの雄 KHALAS の音楽は、見事に中東と西欧が融合していますし、彼ら自身、イスラエルの ORPHANED LAND とのツアーを融和と共に完遂した経歴を持ちます。つまり、溜め込んだ憎しみも武器も捨て去り溶け合うことは、決して荒唐無稽で夢見がちなお伽話というわけではないのです。ただ願うのは、共存共栄と普通の人々の平和で普通の日常のみ。
今回弊誌では、KHALAS の Abed Hathout にインタビューを行うことができました。「この状況は今に始まったことではない。過去75年間の占領下で続いてきた、終わりのない血の連鎖の新たな章なんだよ。今起きていることはすべてこの75年の結果なんだけど、政府や選挙で選ばれた人たちは、すべての人に平等な人権を与え、占領を終わらせるための非暴力的な解決、その道を歩むことを拒んでいるんだ」 どうぞ!!

KHALAS “ARABIC ROCK ORCHESTRA” : 10/10

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COVER STORY 【ANGRA : ANGELS CRY】 30TH ANNIVERSARY !! TRIBUTE TO ANDRE MATOS…


COVER STORY : ANGRA “ANGELS CRY” 30TH ANNIVERSARY !!

“We Just Chose The Name Because It Was a Brazilian Name And There’s a Town Here Called Angra, Which Is a Beautiful Town. It Was a Name That We Thought Would Sound Good In Every Language, But, On The Other Hand, Would Also Mean Nothing. We Tried To Run Away From a Meaningful Name. We Discovered The Meaning Of The Word Later On, “Goddes Of Fire”, But I Think It Fits The Band’s Sound Well.”

ANGELS CRY

「ブラジルにアングラという美しい町がある。アングラ。どんな言語でも良い響きを持つ名前だと思ったが、一方で何の意味も持たない名前でもあった。私たちは意味のある名前から逃げようとした。言葉の意味は後でわかったんだ。火の女神。バンドのサウンドにはよく合っていると思う」
ANGRA。それはまさに、ブラジルから現れた情熱の炎のようなメタル・バンドにぴったりな名前でした。
もちろん、情熱的で画期的なヘヴィ・メタルを作る人は今もたくさんいますが、ネットやSNSの普及による情報過多で、特定のイメージを描写することばかりに気を取られているミュージシャンも少なくはありません。もしかしたら、そうした新たな” 文明の利器”は、いつしか大きな失敗や批判を恐れた野心、そして勇気の欠如を育み、純粋で、有機的で、正直で、”突飛” な音楽を生み出す土壌を汚染しているのかもしれませんね。
だからこそ、Andre Matos の逝去は、メタル世界にとって実に大きな喪失でした。偉大なシンガー/ソングライターを失っただけでなく、メタルを本当に愛し、心からのアイデアを具現化し、音楽的に常に挑戦しようとしていた人物を失ったのですから。

Matos は長年にわたり、彼が根っからのミュージシャンであり、イノベーターであることを証明し続けてきました。VIPER, ANGRA, SHAMAN, SYMFONIA, そしてソロ・プロジェクト。何かをするたびに、実験を試みながら、時の試練を乗り越える正直な音を届けてきたのですから。
Matos のキャリアと音楽的ヴィジョンを最もよく表しているアルバムは当然人それぞれでしょうが、今年30周年を迎えた”Angels Cry” は誰もが立ち返るアルバムでしょう。それは、このアルバムが多くの人にとって彼の音楽と ANGRA への入り口であっただけでなく、情熱的で、美しく、しかし突飛で、だからこそ正直だと感じられるからでしょう。
当時 Matos はクラシック音楽の勉強を終え、最初のバンド VIPER で2枚のアルバムを作った後に脱退。1991年に ANGRA を結成しました。彼はそもそもヴォーカリストになるつもりはありませんでしたが、状況が彼をそう導き、より熟達するために歌のレッスンを受け始めていました。
「ドラマーの交代は基本的にプロデューサーの決断だった。プロデューサーが僕らのところに来て、こう言ったんだ。”いいか、このアルバムで僕が望んでいることを、君のドラマーは残念ながら実現できそうにない。電子ドラムを使うか、私の知り合いで1週間でできる人を雇うかだ” とね。ドラマーは私たちの親友で、バンドの共同設立者の一人だったから、この決断はとてもとても難しかった。私たち全員がその場にいて、引き返すことはできなかったから、いずれかの選択肢を選ぶしかなかった」
“Angels Cry” のレコーディングはドイツ、特に Kai Hansen のスタジオで行われました。ボーカルとキーボードが Matos、ギターが Kiko Loureiro と Rafael Bittencourt、ベースが Luís Mariutti 。バンドの共同創設者で当時ドラマーだった Marco Antunes は、プロデューサーの Charlie Bauerfeind がパフォーマンスに満足しなかったため解雇され、後に RHAPSODY での活動で知られる Alex Holzworth がドラムスのレコーディングを行いました。

「このアルバムは簡単には生まれなかった。私たちは経験が浅く、とても若かったから。そして突然、当時パワー・メタルの中心地であり、あらゆることが起こっていたドイツに飛ぶことになった。そこで突然、最高のプロデューサーたちと仕事をすることになった。おかしなことに、私たちは、彼らにもあまり馴染みのない種類の音楽を持ってきた。私たちはヨーロッパのパワー・メタル・バンドではなかったから、クラシックの影響もあった。ブラジルの影響もあったし、カリブのリズムもあった。
“Angels Cry” のレコーディングは、亡命のようなものだとよく言っていたんだ。アルバムが最終的な形になるまで、私たちは何カ月もそこにいた。そして、ちょっと不気味でもあった。私にとっては初めてのドイツだった。その後、何度も何度もドイツに戻り、しばらく住んでいたこともあるし、素晴らしい国、完璧な国だと思うけど。
ハンブルグにある Kai Hansen のスタジオ、ガンマ・レイ・スタジオでこのアルバムをレコーディングしていたんだ。そのスタジオは第二次世界大戦時の地下壕の中にあったんだ。窓もなく、空気もなく、光もなかった。だから、ドイツで作った最初のアルバムは奇妙な雰囲気だった。また、レコーディング中に急遽別のドラマーを立てなければならなくなった。だから、私たちにとってはヘヴィな時期だった。そこから学んだことがあるとすれば、プロフェッショナルであること、忍耐強くあること、そして私たちを試練に陥れたすべてのことに耐えることだった」

実際、ANGRA はこのドイツでの滞在で、かけがえのない人たちと出会いました。
「Sascha Paeth と出会った日のことは、はっきりと覚えている。当時、私たちにはリム・シュノールというドイツ人のマネージャーがいて、彼がレコーディングの予算や全体を取りまとめていた。で、彼のつてでレコーディングのために突然ドイツに移されたけど、あまり快適な生活ではなかったんだ。家具はすべて60年代か70年代のもので、ペンションのオーナーは第二次世界大戦を生き延びた老婦人。彼女の夫も戦争で負傷したためそこに住んでいた。部屋の窓を開けると家の裏庭が見えたんだ。小さな裏庭だったんだけど、いくつか檻があって、鳩を飼っていたんだよ。
Sascha と Charlie Bauerfeind は当時のメインプロデューサーだった。Sascha は Charlie のアシスタントだったけど、彼はいつものようにアルバムの多くを手がけていて忙しくてね。そしてとても不思議なことに、Sascha とはお互いに会ったとき、もうずっと友達のような気がしたんだ。
それから私たちのキャリアと人生はいつもどこか一致していたし、一緒に多くのことをやってきた。”Angels Cry” のレコーディングやその全過程で、彼は私の最大の友人だった。彼は、私が自由な時間を過ごすときによく音楽の話をしていたし、当時からすでに、いつか一緒に何かプロジェクトをやろうというアイデアを持っていた。だから、彼は音楽における大親友の一人だよ」
GAMMA RAY の Kai Hansen と Dirk Schlächter もアルバムに参加しました。
「いつも通りかかって、スタジオで何かしているのをよく見かけたよ。もちろん、彼らは私にとってのアイドルだった。私は恥ずかしがり屋だった。彼らに敬意を表して、”おはよう” とか言う勇気もなかった。でもそのうちに、彼らは本当にコミュニケーション能力の高い、いい人だということが分かってきて、突然アルバムにも参加してくれるようになったんだ」

資金に余裕がなかったため、彼らはドイツのスタジオで大半の時間を費やしました。4人のブラジル人が、慣れないとても寒い気候の中、理解できない言語を話す国で。それは彼らの多くにとって初めての海外経験で、そうした逆境に対する反発力、野心、闘争心、そしてエネルギーがすべてアルバムに伝わったようにも思えます。
「SEPULTURA は、国際的にブレイクした最初のブラジルのメタル・バンドだ。ブラジルのバンドに何ができるかを世界に示した。私は彼らをとても尊敬している。彼らがやったことはとても重要だ。時々、ANGRA は SEPULTURA の真似をしたと言われる。だけど、音楽的にもコンセプト的にも、僕たちはほとんど関係ないと思う。同時期にトラディショナルな音楽の流行があり、多くの人が同じことをやっていた。でも、彼らの姿勢や音楽は好きだ。ブラジルから SEPULTURA のようなバンドが出てきたことを誇りに思う」
パワー・メタルは間もなくヨーロッパで大流行することになりますが、1993年のその時点ではまだ爆発的な人気はなく、ANGRAはHELLOWEEN、GAMMA RAY、BLIND GUARDIAN, HAMMERFALL, RHAPSODY らとともに、メタルの停滞を変える代表的なグループのひとつとなるはずでした。同時に、彼らの同胞であるスラッシュ・メタル・バンド、SEPULTURA が世界中で大ブレイクを果たした時期でもありましたが、ANGRA は特定のトレンドに追随することなく、自分たちらしくありたいと決意していたのです。
「アメリカではアルバムをリリースするのも、演奏するのも難しいんだ。ヨーロッパや日本では何の問題もない。彼らにはヘヴィ・メタルの伝統と文化がある。アメリカはとてもトレンドに敏感で、MTVが流しているようなものを好む。そこで活動する機会がないのは残念だ。メタルが好きな人たちが好きなバンドを見る機会がないのは残念だ」

自分らしさを貫くという部分は特に重要で、それがパワー・メタルの中でさえ、ANGRA に非常に際立った個性を与えていました。シューベルトの “未完成” に着想を得たイントロの “Unfinished Allegro” を聴くだけで、Matos がクラシックに深く影響を受けていることが伝わりますし、こうした幕開けはバンドにある種の洗練と風趣を与えています。そうしてこのイントロは、ANGRAの最高傑作であり最も人気のある曲のひとつである “Carry On” ではじけるまで、上昇気流を高めながら、ひたすら期待を煽ります。
そう、”Carry On”。Matos のクリスタルのような歌声と不自然なファルセット。ギターのファストで入り組んだ力強いリフと鳴り響く流麗なるストリングス。巧妙なベースソロと突拍子もない時代錯誤なシンセサイザー。そうした未曾有のコントラストこそが、ANGRAの証。高揚感のある力強いメタルと突拍子もないアイデアを、これほど見事にマリアージュさせた楽曲が他にあるでしょうか。そして訪れるクライマックス、ダイナミックな転調からの Matos の絶唱。
目眩く ANGRA 劇場の後、まるでブラジル人たちは一息ついているかのように、”Time” をゆるやかに始めます。冒頭のアコースティック・ギターのクラシカルでメロディアスなスタイル、Matos の外連見なく純粋な歌声、そして中盤に訪れるアルバム中最もエピカルなリフ・ワーク。彼らは20代にして、全盛期の GENESIS をメタルで再現する術を知っていました。続く “Stand Away” の早すぎたメタル・オペラも絶品。
クラシックからの巧みな引用もまた、”Angels Cry” を独特な作品に昇華していました。パガニーニによるカプリース24番を織り込んだタイトル曲は、絶え間ないリズム・チェンジと、あらゆるひねりに場面と発想の転換が見事に機能しています。一方で、ヴィヴァルディの冬を引用した “Evil Warning” では、よりドラマティックに、ロマンティックにスピードでリスナーの胸をしめつけることに成功しています。

また、”Never Understand” は、ブラジル音楽やカリビアンの影響を受けたアコースティックとベースの見事なコンビネーションから始まり、徐々に激しさを増していきます。この実験的な試みは、バンドが後に続く “Holy Land” で展開し結実することになりますが、圧巻なのはジャーマン・メタルが総力を上げて送るラストのギター・ソロ駅伝。
「”Holy Land” は一種のコンセプト・アルバムだから “Angels Cry” とはまったく違う。”Holy Land” が全体として良いのに対して、”Angels Cry” は個々の曲のレベルで良いんだよな。
もともとのコンセプトは “Holy Land” という曲から生まれたんだ。この曲は私がひとりで書いて、バンドに提示したんだよ。すると、バンド全体が同じような雰囲気になり、ブラジルのことや文化、人種、宗教の混ざり合いなどについて話すようになった。この曲から全体のコンセプトが生まれたんだ。”Holy Land” は、国そのものについてではなく、文化について、文化における人種の混ざり合いについて歌っているんだ」
そして何より、”Wuthering Heights” です。ケイト・ブッシュのカヴァーを男性の、しかもメタル・シンガーが歌うという、どう考えても突拍子もないアイデアをやり抜き名曲に仕立て上げる ANGRA の反骨心は、ここに極まります。ANGRA の楽曲と言われても違和感のないほどに、ここにある創造力は豊かです。
“Angels Cry” は、パワー・メタル、いや、RAGE や BLIND GUARDIAN のようなあの時代に “挑戦” を恐れなかったジャーマン・メタルの傑作として評価されてしかるべき作品で、同時に自分を心から信じ、やり抜くことの重要さを今でも伝えてくれます。
「できる限り成長し、ミュージシャンとしてもっともっと向上し、より高いプロフェッショナルなレベルに到達したい。ブラジルでプロのバンドになるのは難しい。ブラジルという国には、あまり可能性がないんだ。その一方で、私たちは多くの時間を外、特にヨーロッパで過ごした。このような外部市場を持つことはバンドにとって重要だ。さまざまな市場、さまざまな国で活動し、自分たちの好きな音楽をやっていきたい。それが私たちの最大の夢だ。レコード会社の意向を無視して、自分たちのやりたいことだけをやる必要はないよ。でもね、より多くのお金を稼ぐためだけに、反復的で退屈なものになりたくない」


“自分のやり方をつらぬけば 見つけられるだろう
未知なる才能が輝く道を
必要なのは君のプライド、それだけだ”
人生には意味がある…Andre Matos 死すとも、彼の美しき情熱の炎は消えず、こうして受け継がれていくのです。


参考文献: INTERVIEW WITH ANGRE MATOS

METAL MELT DOWN: INTERVIEW WITH ANDRE MATOS

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KATATONIA : SKY VOID OF STARS】 JAPAN TOUR 24′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JONAS RENKSE OF KATATONIA !!

“I Don’t Really Mind The Different Tags People Put On Our Music. We Can Only Do The Music That Keeps Us Inspired And It Doesn’t Matter What Genre It’s Supposed To Be.”

DISC REVIEW “SKY VOID OF STARS”

「すべてのアルバムは新しい章であり、作曲やレコーディングをしている間は、そのアルバムが将来的にどんな意味を持つかなんて考えていない。僕らははただ “今” にいて、自分自身を凌駕しようとしている。作ったアルバムがディスコグラフィーの名作になるかどうかは、歴史が示してくれるだろうね」
KATATONIA、そして Jonas Renkse は、”時代” という言説をあまり信用していません。正直なところ、多くのバンドはそうではありません。そして、KATATONIA というアーティストは、自身をリスナーとは全く違った “今” というレンズで作品を見ています。
「僕らの音楽に付けられる様々なタグはあまり気にしていないんだ。僕らが生み出せるのはインスピレーションを維持できる音楽だけで、それがどんなジャンルであろうと関係ないんだからね」
ゴシック・ドゥームやデスメタルに生を受け、アトモスフェリックなダーク・メタル、ポスト系の音作り、アンビエント、フォーク、プログレッシブと、時に鋭く、時に溶け合いながら、万華鏡のごとくそのサウンドを変化させてきた KATATONIA。リスナーからすれば、アルバム間の区別、つまり “Brave Murder Day” と “Discouraged Ones”、”Last Fair Deal Gone Down” と “Viva Emptiness” 、”The Great Cold Distance” と “Night Is the New Day” 、さらにそこから “Dead End Kings” とのリリースを隔てる、ほとんど断崖絶壁のような決定的 “違い” は、何らかの意識的な決断が働いていると思わざるを得ません。しかし、Jonas はインタビューの中で、そうではなく、KATATONIA の各アルバムは明らかに、一つの芯となる同じ DNA を共有していることを明かしています。それは、彼らの象徴である鴉に宿る暗がりで、メランコリーで、憂鬱。ただし、そんな KATATONIA にも、皮肉なことに “時代” の風を受けた変化の兆しが現れています。
「音楽は常に苦しい現実からの慰めと逃避を提供してきた。そして今もそうだ。音楽という、苦難から乖離した聖域を作り出すことのできる力。その一部になれたことを、僕はうれしく思うよ」
パンデミックや大きな戦争、分断という未曾有の苦難は、KATATONIA の活動、そして Jonas の心にこれまで以上の暗い影を落としました。自分にできることは何なのか。Jonas がたどり着いた結論は、音楽で逃避場所という “サンクチュアリ” を作ること。
“Sky Void of Stars” で私たちは、間違いなくそれを聴くことができます。分厚いベース、轟くメランコリー、そして寂しげなギターはたしかに、今でも彼らのサウンドの大部分を占めています。しかし、”Opaline” が示唆するノスタルジックで、きらびやかで、重厚なシンセの虹空は、エモーショナルなコーラスと相まって、明らかに、苦境に立つリスナーへと寄り添う KATATONIA の新たなサンクチュアリでしょう。
もちろん、プログレッシブな “Austerity”、アンセミックな “Birds”、アトモスフェリックな “Sclera” は過去の残響。しかし、その残響にはすべて、”優しさ” という新たな魅力が加味されています。星のない空などを望む人はいないでしょう。エネルギッシュでありながら瞑想的な優しき名作。そう、KATATONIA は常に挑戦し、今を生きるメタル世界では稀有なるバンドなのです。また、アルバムを締めくくる、6/8の変幻自在なバラードが素晴らしい…
「Mikael Akerfeldt との “聴き合い” の儀式は今でもやっているよ。楽しい儀式だし、最近は集まってつるむための理由という意味の方が大きいかもしれないね。OPETH と KATATONIA は今でも多くの影響を共有しているけれど、ささやかで恵まれない始まりから間違いなく違う道を歩んできているよ」
そんな KATATONIA の初来日が遂に決定しました。”Better Late Than Never”。ボーカリスト Jonas Renkse の、OPETH の Mikael Akerfeldt との親交の深さ (“Brave Murder Day” のボーカルはほとんどが Mikael のもの) 、音楽性の近しさは有名な話ですが、それ以外にも、AYREON や Bruce Soord との WISDOM OF CROWD への参加など、彼の歌声に対するミュージシャンからの信頼は絶大なものがあります。Mr. エモーショナル。Jonas Renkse です。どうぞ!!

KATATONIA “SKY VOID OF STARS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLIND EQUATION : DEATH AWAITS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLIND EQUATION OF JAMES MCHENRY !!

“The Largest Influence On Our Music However Is The Touhou Soundtrack By ZUN. Especially Touhou 8 – Imperishable Night. Yume Nikki And It’s Fangames Have Also Been Largely Influential To Me For The Last Two Albums.”

DISC REVIEW “DEATH AWAITS”

「メタルのルールや境界線を破るためだけに音楽を書いているとは言わないけど、その境界線が自分の制作や作曲のプロセスに影響を与えることはないね。破壊が理にかなっていて、人々の期待を打ち砕くようなものであれば、僕はそれをとても楽しいことだと思うからね」
イリノイの BLIND EQUATION が牽引する “サイバー・グラインド” が一体何なのかよく分からなくても、”Death Awaits” を聴けばその狂気に衝撃を受けることは間違いありません。8bitのチップチューン、ユーロ・トランス、ブラックメタル、そしてグラインドが融合したこの混沌は純粋に、これまで世の中に存在しなかったもの。その音楽はまるでアートワークの彼岸花のように、甘く、切なく、美しく、そして危険です。
「僕らの音楽に最も大きな影響を与えているのは、ZUN による東方サウンド・トラックなんだ。特に東方8、”東方永夜抄 ~ Imperishable Night” だね。夢日記とそのファンゲームも、過去2枚のアルバムに大きな影響を与えているんだよ。ライティング・プロセスでよくプレイしていたからね」
8bit・エレクトロニクスとブラスト・ビートが時にアンセミックに、時にカタストロフィックに共鳴し爆発する彼らの音楽は当然、日本のゲーム・ミュージックに感化されています。ただしそれは、悪魔城ドラキュラや F-Zero、そしてファイナル・ファンタジーといった、海外のアーティストにとってある意味 “おなじみ” となったメジャー作品ではなく、よりアンダーグラウンドな、ZUN 氏が主催する同人サークル “上海アリス幻樂団” による東方Project でした。
「僕たちはみんな一緒に闘っているのだから、お互いに支え合うことが大切なんだよ。音楽や芸術は、ネガティブな感情から逃避するための素晴らしい方法だよね。それはたしかだよ。でも、それ以上に、そうした感情に対処し、癒すためにも使うことができる。音楽コミュニティで素晴らしい人々に出会えたことは、僕を人間として向上させ、単なる逃避以上のものになっているんだから!」
前作 “Life is Pain” “人生とは苦痛” と違って、”Death Awaits” は、現実世界の不安やネガティブな人生経験、対人関係の痛み、失われた信頼について吐き出しながらも、そこに一筋の希望を込めています。
サイバー・グラインドも東方Project も、言ってみれば日陰の中の日陰。メタルやゲームといった現実世界からの逃避場所の中でも、非常に深くて遠い逃避場所でしょう。しかし、だからこそ、BLIND EQUATION の首領 James McHenry は、その深く暗い場所へと逃げるだけではなく、負の感情に対処し、癒やされ、深淵から這い出ることも必要だと語ります。
“孤独なのは君だけじゃない”。そう、あのぼやけた彼岸花のごとく、”Death Awaits” に流れる黒とピンクの曖昧なコントラスト。それは、痛みと希望であり、破壊と協調であり、重さと美しさであり、危険と優しさの象徴です。
アップリフティングとダウナーで極端に二極化されたように思える BLIND EQUATION の音楽でさえ、その”叙事詩” はメタルのルールを破りながら一つとなり、無限の可能性を示してみせました。だからこそ、彼らのこの混沌とした音楽はこの混沌の時代に、孤独なリスナーの心に寄り添い、そっと手を差し伸べる権利があるのでしょう。
今回弊誌では、James McHenry にインタビューを行うことができました。「特に Camellia & Nanahira のアルバム “GO-IN!” は、クリエイティヴな面で僕に大きな影響を与え、BLIND EQUATION の曲作りにおけるジャンルの切り替えやより混沌とした部分の多くにインスピレーションを与えてくれたんだ」 ドラム、ボーカル、ショルキーのトリオ編成も最高!どうぞ!!

BLIND EQUATION “DEATH AWAITS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MATTEO MANCUSO : THE JOURNEY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATTEO MANCUSO !!

“A Good Advice Would Be To Shut Down The Phone, Laptop And Everything Around You, And Just Explore The Guitar.”

DISC REVIEW “THE JOURNEY”

「僕は指弾きを選んだというわけじゃなくてね。というのも、エレキギターを始めたばかりの頃は、ピックを使うということを知らなかったんだ!その後、ピックを “発見” したんだけど、フィンガー奏法に慣れすぎていたし、僕は(今もそうだけど)信じられないほど怠け者だったから、ピックの使い方を学ばなかったんだ。メリットとデメリットはあると思うけど、どちらが良いということはないとも思う。何をプレイしたいかによるんじゃないかな」
John Petrucci, Joe Satriani, Steve Vai, Tom Morello, Frank Gambale など、ギター・シュレッドの世界は実は、イタリア系のプレイヤーを中心に回ってきました。そしてここにまた、イタリアの赤、光速の、フェラーリ・レッドの血を引くシュレッダーが登場しました。驚くべきことに、Steve Vai, Al Di Meora, Tosin Abasi といったモンスター級のギタリストがこぞって “ギターの未来” と称するこの26歳のシチリア人 Matteo Mancuso は、かの Allan Holdsworth にも例えられる難解かつ超常的フレーズの数々を、指弾きでこなしています。
「僕は自分のことをジャズやロック、どちらかのプレイヤーだとは思っていないんだ。僕はただ、ギターを自分を表現する道具として使っているミュージシャンなんだ!だから、聴いたものすべてをミックスするのが好きなんだよ。その方が自然でのびのびと感じられるからね」
もちろん、Matteo のテクニックは誰もが驚くような、スペクタクルと知性、そして野生が溶け合うギターのイノベーションです。しかし、彼の本当の真価は “良い曲が書ける” ところにあります。ジャズ、フュージョン、ロックにメタルを咀嚼した Matteo の音世界を巡る旅路 “The Journey” は、ウェス・モンゴメリーから WEATHER REPORT、ジミヘン、さらに TOOL や Plini に至るまで、実に色彩豊かで奔放な、万華鏡の景色を届けてくれます。そこに Matteo のマジック・タッチがあれば、誰が言葉を必要とするでしょうか?
実際 Matteo は、インストは歌物よりも絶対的に数が少ないからこそ、ジャンルを超えて音源を探索し、そして様々な素養を身につけることができたと胸を張ります。そうしていつかは、Eric Johnson の “Cliffs of Dover” や Santana の “Europa” と肩を並べるほどに、雄弁なインスト音楽を創造したいと願うのです。
「パシフィカは、気軽に買えるストラトタイプの中でおそらく最高の入門機なんだ。それに、僕は良いギター・トラックをレコーディングするのにハイエンド・ギターは必要ないと思う!最も重要なことは、良いサウンドを求めるときの演奏の出来栄えだからね!」
加えて、うれしいことにこの新進気鋭のイタリア人は、YAMAHAのパシフィカを愛機として使用しています。もちろん、パシフィカはプロ御用達の “ハイエンド・ギター” ではありません。しかし、だからこそ Matteo はパシフィカを使用しているふしがあります。誰にでも手にすることのできるストラトタイプの王様であるパシフィカで魔法を生み出すことによって、Matteo はギターの敷居を下げ、裾野を広げていきます。
今回弊誌では、Matteo Mancuso にインタビューを行うことができました。「Allan Holdsworth はギターの数少ないイノベーターの一人で、僕はいつも彼をヘンドリックスやヴァン・ヘイレンと同列に並べていたんだ。彼は、ギターが多くの素晴らしい方法で演奏できることを教えてくれたし、彼のハーモニーのアプローチとボキャブラリーは、まさにこの世のものとは思えないものだったよ」 YouTubeで158kのフォロワーを獲得し、ギター・モンスターたちから称賛されたデビュー・アルバム “The Journey”。まさに新しい世界秩序の幕開けでしょう。どうぞ!!

MATTEO MANCUSO “THE JOURNEY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SOLEO : SOLEO】


COVER STORY : SOLEO “SOLEO”

“Music, Just Like Any Artform, Can Inspire a Person To Act, But It’s Still Up To The Person To Put One Foot In Front Of The Other.”

SOLEO

SOLEO は、ボーカルとギターのアミール・ゴリザデ、ドラムのニック・ゴリアス、ベースのタイナン・エヴァンスによって結成されたモダン・プログ・バンドです。クリーブランドを拠点とするこのトリオは、ゴリザデの両親が1979年のイラン革命時に祖国を逃れ、アクロンに避難した経験にインスパイアされ、セルフタイトルのデビューアルバムを今夏リリースしました。
「アルバムに収録されている “Uncle” という曲は、母の叔父のことを歌っているんだ。彼らは母の兄を捕らえ、母の父を捕らえ、彼らも処刑するつもりだった。二人はなんとか逃れたけどね…

ゴリザデの両親はアクロン大学で出会いました。ゴリザデはそうした自分のルーツを知り、音楽を通して家族の物語を伝えたいと思うようになっていきました。
「年をとるにつれて、イランの文化をより深く理解するようになった。このアルバムに取り組んでいる時、イランの歴史について両親ともっと話すようになったんだ。そして自分でも、もっと調べたんだよ」
ゴリザデは若い頃から音楽に造詣が深く、高校時代には AMBERSEIN というバンドを結成していました。

“I grew up listening to a mix of American and Persian music, and I think that’s where my sound comes from. As I got older, I started exploring music more and now I listen to pretty much everything from all over the world. Actually, one of my friends just got me into Japanese prog music from the 1960s. It’s good! I still don’t know much about it, but it’s something I’m learning more about these days.
It would take me way too long to name all the artists that have inspired me, but I wouldn’t say they influenced my writing because I try not to emulate other artists. I want to create original sounding music with my own style. I think copying another artists is a waste of time. That’s just doing a worse version of something that already exists. I don’t want to do that. I want to enjoy their music, and then create my own. I probably do subconsciously draw from artists I listen to, but I try not to.”


「僕はアメリカ音楽とペルシャ音楽をミックスして聴いて育った。大人になるにつれて、もっと音楽を探求するようになり、今では世界中のあらゆる音楽を聴くようになったよ。実は、友人の一人が1960年代の日本のプログレを聴かせてくれたんだ。いいよね!まだあまり詳しくはないけど、最近もっと勉強しているところなんだ。
僕にインスピレーションを与えてくれたアーティストの名前を全部挙げると長くなりすぎるけど、僕は他のアーティストのマネはしないようにしているから、彼らが僕の作曲に影響を与えたとは言えない。僕は自分のスタイルでオリジナルな音楽を作りたいんだ。他のアーティストのコピーは時間の無駄だと思う。それは、すでに存在するものの悪いバージョンをやっているだけだ。そんなことはしたくない。彼らの音楽を楽しんで、それから自分の音楽を作りたい。無意識のうちに、自分が聴いているアーティストの曲を参考にしているのかもしれないけど、そうしないようにしているんだ」

そうして彼は、中東の伝統的な音に大きくインスパイアされた独特のギター・チューニング・スタイルを確立し、曲作りを始めたのです。
「大学時代に父がイランに行ったことがあるんだ。父が帰ってきて、シタールをプレゼントしてくれたんだ。エレキギターをこんな風にチューニングしたら、どんな音がするんだろうってね。すべては、僕が思いついたギターのチューニングから始まったんだ。僕が弾いたチューニングは中東の響きに聞こえた。自然と、それに惹かれたんだ」
大学院に通うためにカリフォルニアに引っ越した後、ゴリザデはより真剣に音楽を追求するためにオハイオ州北東部に帰りたいという気持ちになりました。そして、AMBERSEIN の元バンド仲間であるタイナン・エヴァンスに、新しいプロジェクトを始めることを相談したのです。
ゴリザデは、ベースのエヴァンスに取り組んでいた中東風の曲を紹介し、2人は後にドラムのニック・ゴリアスを加えて SOLEO を結成しました。
SOLEO のサウンドは、西洋のプログレッシブ・ロックとストーナー・メタルに古典的なペルシャ音楽を融合させたシネマティックなもの。このブレンドが、より大らかで壮大なサウンドを生み出しているのです。アルバムは全体として、PINK FLOYD の “The Wall” や THE WHO の “Tommy” のような古典的な作品を思わせる映画的な感覚を持っていますが、同時に現代的なチャレンジも組み込まれています。
ゴリザデのシタール風ギターのサイケデリアと、メタル的なドラミング、ドロドロしたベースラインが、SOLEO に典型的なプログレッシブ・ロックとは一線を画す渾然一体型サウンドを与えています。
バンドは約8年前から共同で曲を作っていて、デビュー・アルバムはその間に作られたもの。驚くことに、2022年にポスト・ハードコアやメタルコア・バンドの多いレーベル、Tragic Hero Records と契約を果たしました。
「”Manifesto” は、おそらく僕が書いた最初の曲で、”これが何になるか分かっている。これがアルバムのオープニングになるんだ” と思っていたね」
オープニング曲のアイデアは、イラン革命の精神的指導者であったルーホッラー・ホメイニー師が、嘘に基づいた楽観的な未来について国民に向けて演説をするというものでした。
アルバムはそこから、ゴリザデの母親がイランから逃れてきて、アクロンで生活と家庭を築くまでを3つの章で語っています。つまり、84分にも及ぶ “Soleo” は、中東とアメリカの両方を横断する物語をリスナーに届けるというコンセプトに沿っているのです。

アルバムは、2009年の大統領選挙後にイランで起こった政治運動グリーン・ムーブメントについても歌っています。
「現職のマフムード・アフマディネジャドは非常に不人気だったため、(アフマディネジャドを支持する)イランの最高指導者が彼の圧勝で再選されたと主張したとき、ほとんどの人々は選挙結果の妥当性を疑った。
“緑” という色は当初、勝利が有力視されていた対立候補、ミール・ホセイン・ムサビの選挙運動で使われ、それに関連していた。選挙後、緑色は革命を推進する人々の団結の象徴となった。圧政を排除し、市民の繁栄を支援するために献身的なより良いリーダーシップをもたらすもののね。緑色は自然を連想させ、生命と成長を象徴しているからだ。 この曲は特にグリーン・ムーヴメントについて歌っているけど、このムーヴメントが歴史上の他の瞬間と類似していることを認識し、強調したかったんだ」
アルバムの終盤は現実から理想というフィクションへと変化し始め、”Soleo” という曲では、ゴリザデと彼の兄弟がイランに戻り、人々を解放するというファンタジーが描かれています。
「第3幕は、イラン革命が僕の母にどのような影響を与えたか、僕にどのような影響を与えたか、そしてイラン人一般にどのような影響を与えたかについて。明らかに、そんなことは起こらない。それでも、革命が起こり、成功すれば、僕たちの多くは、少なくともイランを訪れるために戻ることができる」
ゴリザデはこれまでに2度イランを訪れたことがあります。赤ん坊のときと、大学時代に父親と訪れたとき。しかし母親は一度も戻っていません。
「母の歴史について話すのは、最初はためらった。というのも、クレイジーに聞こえるだろうけど、向こうの政府には人々を監視する人間がいるんだ。彼女は、僕が作品を公開したことに少し神経質になっているけど、彼女の同意なしに公開したわけじゃない。最終的に彼女は問題ないと言ってくれたよ」
ゴリザデは、自分の家族の歴史について音楽を書くことは、解放的で自由であると同時に、最も困難なことであるといいます。
「多くの人が、移民という同じような経験をしているのに、それを表現する方法がないのだと思う。これが僕の家族だけの物語だというのは短絡的だ。多くの人が故郷を離れ、別の場所で新しい生活を始める。だから、ストーリーはユニークだけど、コンセプトは普遍的なんだ。僕の家族のように物理的に居場所がなかったり、学校で仲間はずれにされたり、自分の居場所がどこにもないと感じたり。それがいくつかの曲の大きなテーマなんだ」

イランでは、ヘヴィ・メタルは禁止された音楽です。

“I don’t know if they consider it “devil’s music” but they do say it’s “against Islam” and therefore it is banned. I disagree with this idea, and I would say most Iranian people do as well. Their current government is anti-western culture, so they ban anything that is western influenced, like rock and metal music. But suppressing music just makes people want to engage with it more, so it’s a silly idea to me. I’ll leave it at that.”


「彼らがそれを “悪魔の音楽” と考えているかどうかは知らないが、”イスラム教に反する” と言っているのはたしかだ。僕はこの考えに同意しないし、ほとんどのイラン人もそうだと思う。イランの現政権は反西洋文化主義なので、ロックやメタルのような西洋の影響を受けた音楽を禁止している。しかし、音楽を抑圧することは、人々がもっと音楽に関わりたいと思うようになるだけで、僕にとっては愚かな考えだよ。それは置いておこう」

近年、移民問題は、ここ日本でも多くの注目を集めるようになりました。

“I’d like to know more about what is happening in Japan to spark these kinds of discussions. I think the best way to get along with a group of people you’re not familiar with is to get to know them. Once you scratch the surface, you will find more similarities between people than differences. We all want the same things, and we all have the same kinds of struggles, desires, etc. They just have different flavors to them. But to aliens, we all look the same, like big talking monkeys.
Unfortunately, you can’t force people to be tolerant of one another. I don’t know how to get those kinds of people to accept immigrants. But if someone wants to immigrate to your country, they probably have a love or admiration for it, so take it as a compliment. They’re not here to ruin your country. Immigrants just want to live their lives in peace, just like everyone else. It’s oftentimes scarier for them to move to a new country than it is for the natives to welcome them in. So be kind to them and they will probably be kind to you too.”


「議論を巻き起こすために、日本で何が起きているのかもっと知りたい。馴染みのない人たちと仲良くなる一番の方法は、その人たちを知ることだと思う。ひとたび表面を剥がせば、人々の間には違いよりも共通点の方が多く見つかるはずだ。みんな同じものを求めているし、同じような葛藤や欲望などを持っている。ただ味付けが違うだけだ。しかし、エイリアンから見れば、僕たちは皆同じで、大きな口をきくサルのように見える。
でもね、残念ながら、人々が互いに寛容であることを強制することはできないんだ。そういう人たちに移民を受け入れてもらうにはどうしたらいいかわからない。でも、もし誰かがあなたの国に移民を希望しているのなら、彼らはおそらくその国に愛着や憧れを持っているはずだから、それを褒め言葉として受け取ってほしい。彼らはあなたの国を破滅させるために来ているわけではないんだよ。移民は他の人たちと同じように、平和に暮らしたいだけなんだ。彼らにとっては、新しい国に移住することは、原住民が彼らを迎え入れることよりもきっと怖いことなんだから。だから彼らに親切にすれば、きっと彼らもあなたに親切にしてくれるだろう」

ゴリザデの親友の一人は、日本人です。

“Absolutely! One of my best friends is Japanese. After high school he moved back to Tokyo. I visited him while I was in college. We explored Tokyo and Kyoto together. It was one of the most important experiences in my life. I love Japanese culture. The food is amazing, the people are kind, and the history is rich. Most of my musical instruments were made in Japan too. My guitar is a Caparison, hand-made in Japan. I also have a Korg synthesizer, and a few Yamaha instruments. I love all of them.
And yes, I do like video games and anime, most of my friends do. I’m a master at the original Super Smash Brothers for Nintendo 64, and I will never back down from a challenge. I do enjoy anime as well. I think it’s very imaginative and often quite thought-provoking. The enthusiasm of Japanese voice acting is fun to listen to. Hayao Miyazaki films are my favorite anime, but I’ve enjoyed plenty of others as well. Howl’s Moving Castle is probably my favorite Miyazaki film.
To our Japanese fans I would say, thank you so much for listening to our music. It’s really amazing to learn it has made its way to Japan. I appreciate every single one of you and I hope we can meet soon. I’ve been wanting to come back to Japan for a while now, and playing music for our fans there would be a great reason to do so. Please feel free to reach out! Arigatou gozaimasu!”


「僕の親友の一人は日本人だ。高校卒業後、彼は東京に戻ったから、大学在学中に彼を訪ねたんだ。東京と京都を一緒に探検した。それは僕の人生で最も重要な経験の一つとなった。僕は日本の文化が大好きだよ。食べ物は素晴らしく、人々は親切で、歴史は豊かだ。僕の楽器もほとんどが日本製なんだ。僕のギターはキャパリソンで、日本で手作りされたもの。コルグのシンセサイザーも持っているし、ヤマハの楽器もいくつか持っている。どれも大好きだよ。
ゲームやアニメも好きでね。NINTENDO64の初代 “大乱闘スマッシュブラザーズ” の達人なんだ。アニメも好きだよ。とても想像力豊かで、考えさせられることも多い。日本の声優の熱意は聞いていて楽しい。宮崎駿監督の作品が一番好きだけど、他の作品もたくさん楽しんでいるんだ。”ハウルの動く城” は宮崎作品で一番好きかもしれない。
日本のファンには、僕らの音楽を聴いてくれて本当にありがとうと言いたいね。日本まで届いたと知って、本当に驚いているんだ。一人一人に感謝しているし、すぐに会えることを願っている。また日本に行きたいとずっと思っていて、日本のファンのために音楽を演奏することは、そのための素晴らしい理由になるだろう。気軽に声をかけてほしい!ありがとうございます!」

イランの最後の国王が支配権を失い、イスラム共和国が国を掌握したイラン革命が、このアルバムの中心的なコンセプト。1年にわたる一連の抗議行動、ストライキ、武力闘争の中で、何千人もの人々が殺されたり、避難を余儀なくされました。
ゴリザデは、アルバムのテーマ、特に革命時に殺された母親の叔父を歌った “Uncle” について、両親には話していないといいます。
「彼はイスラム教に背き、新体制に服従しなかった。だから、ホメイニにひざまずいて、”あなたが私の指導者です” と言えば、殺さないと言われたんだ。だけど、その男の顔に唾を吐きかけ、『王万歳』と言ったところ、撃たれたという話だ。かなり衝撃的だった」
ゴリザデは、ヒジャブの着用をめぐりイランで殺害されたマフサ・アミニさんの事件にも大きな衝撃を受けました。
「地球の裏側で、女性を殴り殺すのがなぜ悪いかについて考えながら、ただポツンと座っているだけで、僕はなんだか役立たずな気がするよ。でも今は、他に何をしたらいいのかわからない。僕が今思いつくのは、この言葉を広め、意識を高める手助けをすることで、変化を起こすために十分な数の人々が結集できるようにすることだ。
22歳のイラン人女性、マフサ・アミニが首都を訪れていたとき、自称 “道徳警察” がヒジャブの下の髪の露出が多すぎるという理由で彼女を逮捕した。これはイランの女性にはよくあることだが、最近政府はこの馬鹿げた法律をより厳しく “取り締まる” ようになった。彼女が拘束されている間に何が起こったのかはまったくわからないが、状況証拠によれば、彼女は頭を殴られたようだ。警察に拘束されている間、彼女が気を失って昏睡状態に陥っている映像がある。ねえ、着ている服のことで女性を殺すことに “道徳的” なことだと言えるのだろうか?
イランは美しい国だ。人々は素晴らしく、温かく、思いやりがある。僕は自分の出自に強い誇りと愛着を持っている。しかし、1979年の政権交代以来、政府はここまで堕落してしまった。これが僕の家族、そして他の多くの人々がイランから去った理由だ。もっと “世俗的” な政府が必要だ。そうでなければ、権力者は “神の名の下に” 女性を殴り殺したり、その他の凶悪な残虐行為を行うことができる。だけどそれは神などではない。悪だ。女性の権利に関心があるなら、これは重要なことだ。黒人の命に関心があるなら、これは重要なことだ。そして、もしあなたが “すべての命が大切だ” と唱えているのなら、これはあなたにとって大切なことだ。これは人権問題であり、誰も自国の政府に殴り殺されるべきではない。何か変化を起こさなければならない」
イスラエルとパレスチナの新たな火種にも言及します。


“I see it all as a tragedy. I don’t know enough about world politics or the history between Israel and Hamas to really give an informed opinion on this particular issue. All I know is that it’s sad to see. I don’t know anything about Iran’s involvement in it either, or if they’re backing Hamas, but it wouldn’t surprise me. America is backing Israel in this fight, so I’m sure Hamas is getting support from other countries as well.”

「すべてが悲劇だと思う。僕は世界政治やイスラエルとハマスの歴史について十分な知識を持っているわけではないから、この特別な問題について本当に詳しい意見を述べることはできない。僕が言えるのは、ただ見ていて悲しいということだけだ。イランの関与についても、彼らがハマスの後ろ盾になっているのかどうかも知らない。アメリカはこの戦いでイスラエルを支援しているのだから、ハマスも他の国から支援を受けているはずだよね」

ゴリザデは、このアルバムはコンセプチュアルなもので、彼の家族の音声記録やイラン革命の映像まで含まれていますが、彼は歌の中の移民の経験が一般の聴衆に語りかけることを望んでいます。
「僕らを応援してくれている人たちには本当に感謝している。僕らの演奏を見るためにお金を払ってくれたり、シャツやCDを買ってくれたりするのは、本当にクールなことだと思う。気に入ってくれることを願っている。できるだけ多くの人に、中東で起こったことや、移民の現状を見せたいんだ」
音楽は、人と人との調和のために、何ができるのでしょうか?

“People enjoy and connect with music, which can enrich a person’s life. And that certainly is important. However, I don’t think music itself necessarily does anything to create change for a peaceful or better world; it’s people who do that. Music, just like any artform, can inspire a person to act, but it’s still up to the person to put one foot in front of the other.
A great example of this is the song “Baraye”, written by Iranian artist, Shervin Hajipour. It is a song inspired by the death of Mahsa Amini, who was killed by the Iranian government last year. Her death sparked a protest in Iran, and that song was so moving that it became the anthem of the protest. I think it inspired people to get engaged with the movement, and it also helped spread awareness of what was happening. In those regards, music can help create a better world, but it’s still up to people to take action.”


「人は音楽を楽しみ、つながり、それによって人生を豊かにすることができる。それは確かに重要なことだ。しかし、音楽そのものが必ずしも平和な世界やより良い世界への変化をもたらすとは思わない。音楽は、他の芸術と同じように、人に行動を促すことはできるが、それでも片足を前に出すのはその人次第だからね。
その好例が、イランのアーティスト、シェルヴィン・ハジプールが書いた “バラエ” という曲だ。この曲は、昨年イラン政府によって殺害されたマフサ・アミニの死にインスパイアされたものだ。彼女の死はイランでの抗議を呼び起こし、この曲はとても感動的で、抗議の賛歌となった。この曲は、人々が運動に参加するきっかけとなり、また、何が起きているのかという認識を広めるのに役立ったと思う。そういった点で、音楽はより良い世界を作る手助けになる」

参考文献: Prog-rock band Soleo tells a family’s story of fleeing Iran in the 1970s

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WORMHOLE : ALMOST HUMAN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH WORMHOLE !!

“SF, Video Games, And Heavy Metal…These Are All Things Nerds Like. We Are All Some Kind Of Nerd.”

DISC REVIEW “ALMOST HUMAN”

「SF、アニメ、ゲーム、そしてヘヴィ・メタルはすべて、オタクが好きなものなんだよ。僕らはみんなある種のオタクなんだ」
VOIVOD や PERIPHERY の例を挙げるまでもなく、ヘヴィ・メタルは古来より、SFやアニメ、ビデオゲームと非常に親和性の高い音楽ジャンルとして名を馳せてきました。そこに共通するのは、何かに夢中になり熱狂する力、”オタク力” だとバルティモアの WORMHOLE は胸を張ります。ストイックなまでに己の好奇心を追求するそのパワーこそが、創作の原動力であり、インスピレーションの源となる。そうして様々なジャンルの “オタク力” を集結したメタルのワームホールは、遂に独自のメトロイド・メタル、そして “Tech-Slam” を発明するに至りました。
「”メトロイド・プライム” に惹かれたんだ。8歳と9歳の僕らにとって、一番あのゲームが “ホラー” だったんだよね。それに、かなり暴力的だから、8歳なら当然クールだと思うだろう。それから、雰囲気、キャラクター・デザイン、メトロイド・ヴァニア・タイプ (メトロイドとキャッスル・ヴァニアをあわせた造語。横スクロール・アクションの総称) のゲームデザイン、そしてサムスに惚れ込んだんだ」
では、”テック・スラム” とは一体何なのでしょうか? それは彼らがメトロイドやドゥームといったSFビデオ・ゲームを何千時間もプレイする中で発見し、完成させたエトスです。WORMHOLE の変幻自在で不定形なスタイルは、そうしたビデオゲームの名作と同じく、オールマイティの狂気と挑戦を孕んでいます。テック、メロディ、ブレイクダウン、アトモスフェリック、不協和音…つまり彼らの “Almost Human” な “テック・スラム” は、暴力、ホラー、おどろおどろしいメタルのファンが求めるどんな空白も埋めることができるのです。
「”ルイージ・マンション” は、”Data Fortress Orbital Stationary” の曲の一部にインスピレーションを与えてくれたね。例えば、ルイージが吹く調子ハズレの笛とかね。遊戯王や、屍鬼のようなホラー・ミステリー系のアニメも大好きなんだよね。屍鬼は最高だ!」
そうして彼らのワームホールはメトロイドのみならず、アニメやカード・ゲームなど日本が生んだサブカルチャーをことごとく飲み込みながら、その不協和を巧みに調和させていきます。メトロイドのサウンド・トラックや世界観には、暗くて陰鬱な雰囲気の一方で、美しく幻想的なイメージも多く存在します。そして怪談から続く日本のサブカルチャーには、そうした恐怖と審美の二律背反が巧みに共存を続けてきました。そうした日本の審美眼に薫陶を受けた彼らは、アグレッシブで露骨なアプローチの曲の中で、その美しくも技巧的で、ある種突拍子もないサウンドを取り入れる方法を見つけたのです。
だからこそ、彼らの “テック・スラム” には、あまたのテクデスやスラムにはほんの少しだけ欠けている、成熟度、ニュアンス、オリジナリティが完璧に備わっています。ARTIFICIAL BRAIN や DYSRHYTHMIA の不協和なデスメタルに、NECROPHAGIST の卓越した技巧、そしてSFホラーのサウンド・トラックが三位一体となり共栄するメトロイドのメタルは、まさにメタルのバウンティ・ハンターとして恐怖の探索を担っていきます。
今回弊誌では、WORMHOLE の Kumar 兄弟にインタビューを行うことができました。「僕たちの福音だと言えるかもしれないよね。僕たちはテックが好きだし、スラムも好きだ。僕たちが本当に求めている、そうしたフレーバーの組み合わせを聴いたことがなかったから、それを作ろうとしたんだよ」 どうぞ!!

WORMHOLE “ALMOST HUMAN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENTERRE VIVANT : 四元素】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ENTERRE VIVANT !!

“Our Music Has Dark Parts And Light Parts. “Two Become One” Is The Concept Of The Band. Music Made Together By One Person Living In France And One Person Living In Japan. A World That Mixes European And Japanese Culture. An Atmosphere That Mixes The Past And The Present…”

DISC REVIEW “四元素”

「今までうまくブラックメタルと日本をミックスしたバンドは少ない。少なすぎる。その中でも自分にとってレジェンドである 凶音 (MAGANE) のファースト・アルバムは最高です。復活してほしいな~。だから Enterre Vivant はずっと聴きたい音楽を作っていることになります。自分の毎日を見せている音楽。日本とブラックメタルです」
25年前、日本にやってきたフランスの若者は、日本を愛し、日本で暮らし、日本を見つめ、”本当の自分” を日本とブラックメタルの婚姻により描き出すことを決めました。それは Sakrifiss にとって、日常であり、自然に自らの内面から湧き出すもの。人生を着飾る必要はない。優れた人になる必要はないけれど、”本当の自分” でいて欲しい。Sakrifiss の人生という泉、もしくは黄泉メタルが生み出した願いは、結果として日本とブラックメタルを誰よりも自然に融合することとなりました。
「四元素。しかしこの作品は、風、火、水、土の話しだけではありません。人間、人生についてでもあります。たとえば、”水” という曲は過去と未来の話も含まれている。人間にも上流と下流があります。泉から生まれてそして水のように人生が流れていく。人生は滝のように、川のように、激しくなったり、弱くなったりします。でも最後は河口で旅が終わります。泉へ戻りたくても無理だ。流れていくしかない。あきらめた方がいいという意味じゃない。人間は自分は何ができる、何ができないかを知って生きるべきだという意味でしょう」
風、火、水、土。この世の全ては、 その4つ (ないしは5つ) の元素から成り立っているという考え方は、ヨーロッパにもアジアにも古くからありました。そして元素同士を結びつけるのが愛で、引き離すのが憎しみという考え方もそこには付随しています。フランスに住むフランス人と日本に住むフランス人が結びついた Enterré Vivant のアルバム “Shigenso” は、共通する自然哲学を媒介とした愛によって、欧州と日本を優しく結びつけました。
そうして、彼らのブラックメタルで歌われる4つの元素は、人生の様々な場面を構成していきます。流れに逆らわず、風の導きのまま、炎を宿して、土のように満ち足りた、弱さを認めた本来の自分であればきっとより良い明日になる。ケ・セラ・セラというフランス語、もしくは人間万事塞翁が馬というアジアの古事…そんな未来へ向けたポジティブで率直なメッセージがアルバムには込められています。
「”Enterré” は “うめる”、”Vivant” は “生きたまま”。つまり反対のイメージを持っている二つの単語です。”暗い” 言葉と “明るい” 言葉のミックスにしたかったからです。Enterré Vivant の世界にぴったりのチョイスだと思いました。私たちの音楽には暗いパーツがあって明るいパーツもあります。”二つが一つになる” がバンドのコンセプトなのです。フランスに住んでいる一人と日本に住んでいる一人が一緒に作った音楽。ヨーロッパと日本の文化をミックスした世界。昔と今を混ぜた雰囲気」
フランス語のモノローグと日本語のナレーション。日本の伝統楽器と西欧の現代楽器。日本古来のメロディと西欧のモダン・メタル。そして、日本の生き方と西欧の生き方。精神も、場所も、時間も超越して一つになった音世界がここにはあります。
反対のイメージを持ったものでさえ、固定観念にとらわれなければ、正直であればきっと一つになれる。鳴り響く美しきトレモロのメロディ、ブラックメタル特有の灼熱の叫び、プログレッシブな建築術、そして和の色彩を宿したあまりにも感動的なアトモスフェリック・ブラックメタルは、音の四元素の輪を輪廻のように展開しながら、メタルの寛容さを具現化していくのです。
今回弊誌では、Enterre Vivant にインタビューを行うことができました。Sakrifiss さんの回答はほぼ原文ママの日本語です。「18歳になって私は日本語と日本の文化の勉強を始めた。大学で日本の歴史のことももっと知るようになりました。凄く魅力的だったのは土偶、源氏物語、浄瑠璃、世阿弥、松尾芭蕉・・・昔の日本もとても面白いですが、もうちょっと最近なら1950年代と1960年代の映画も大好きです。三船敏郎様出演の映画も素晴らしいですが、一番好きなムービーは “ビルマの竪琴”。昔の日本が大好きだが、もっと最近ならやっぱり1990年代からのジャパニーズブラックメタルのファンでもあります」 どうぞ!!

ENTERRE VIVANT “四元素” : 10/10

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