NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IOTUNN : ACCESS ALL WORLDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JESPER GRAS OF IOTUNN !!

“The Immense Exploration That Was So Essential To Rock Music In The 60’s And 70’s Are Now an Essential Part Of Big Parts Of Metal Music, I Think That Makes The Coming Years And Decades Of Metal Music Extremely Exciting.”

DISC REVIEW “ACCESS ALL WORLDS”

「このアルバムは僕にとって創造性にフォーカスした作品だ。真に探求し自由であろうとする創造性は、文明や社会、人間の生活に光を当てるもので、逆に言えばそういった場所からこそ創造性は生まれるんだ。つまり、すべては生命で、共に呼吸しているんだからね」
デンマーク、フェロー諸島の雄大な自然、神秘的な伝承、豊かな感情に囲まれて育った IOTUNN のメンバーにとって、音楽とは変化を続ける人生を表現する手段です。その逆もまた真なり。滴り落ちる音の雫には、表現者の絶え間ない営みが宿っているのです。
「デンマークのメタルシーンは非常に良い状態にあり、常に動き続けているから、そこに参加していて本当に楽しいんだよ。MYRKUR は、僕にとってこの波を象徴するアーティストなんだ。彼女は、音楽をこれまでのデンマークのメタルアーティストが到達したことのないような場所までに持っていこうとしたんだよ。そして、音楽と自然、時間軸を超えた物語、感情を結びつけることの重要性を示したと思うね」
Lars Ulrich のルーツにして KING DIAMOND の母国デンマークは、古くから様々なメタルの交差点でした。PRETTY MAIDS, DIZZY MIZZ LIZZY, ARTILLERY, SATURUNAS, MANTICOLA。彼らが纏った、常に変化を誘う自然と空間、時間、感情の多様な繋がりは、今、VOLBEAT, MYRKUR, VOLA, MOL といったデニッシュ・メタル新たな波へと増幅されながら引き継がれているのです。
「IOTUNN とは、古ノルド語で “巨人” を意味する言葉なんだ。僕にとってこの言葉は、絶え間ない変化と変革を強いる自然と宇宙の力を表していて、それによって人間の謙虚さ、好奇心、そして人生や創造性における開放性をも表そうとしているんだよ」
遅れてきたデンマークの巨人は、デビューフル “Access All Worlds” で文字通り、メタルに根差すすべての世界へとアクセスし、変化を恐れず表音力の限界を突破します。巨人に似つかわしい巨大なサウンド。アグレッションの畏敬からアトモスフェリックな没入感まで、グルーヴとメロディーの多彩な感情に彩られたレコードは、壮大と荘厳を極めながらリスナーを宇宙と自然、そして人生の旅路へと誘います。BARREN EARTH や HAMFERD で世代最高の歌い手と評される Jon Aldara が紡ぐ旋律を、美しき星の導きとしながら。
「60年代、70年代のロックに不可欠だった膨大な探求心は、今ではメタルの大部分にとって不可欠な要素となっているよ。だから、多様性はメタルのこれからの数年、数十年を本当にエキサイティングなものにしていくと思う」
62分のレコードの中で、バンドはプログ・メタルの再構築、再発明に挑みました。CYNIC のスペーシーなプログ・デス、KATATONIA の仄暗きアトモスフィア、ENSLAVED の神話のブラック・メタル、INSOMNIUM の知的なメロディック・デスメタル、MASTODON の野生、それに NE OBLIVISCARIS のモダンで扇情的な響き。
重要なのは、心に響くメロディーであれ、流麗なギターソロであれ、重厚なデスメタルの力であれ、IOTUNN は先人の生きた足跡を噛み締めつつ、フェロー諸島という環境、そして自らの人生で養った表現力を遺憾なく発揮して前人未到のスピリチュアルな境地へとメタルを誘った点でしょう。その彼らの創造性という飽くなき好奇心は、アルバムを締めくくる14分、神話とSFが出会う場所 “Safe Across the Endless Night” に凝縮しています。
今回弊誌では、ギタリスト Jesper Gras にインタビューを行うことができました。「創造的に正しいと思うことは何でも行うという自由。この自由の中で僕たちは、世界で常に提示され、強制されているすべての境界線を破ろうという意思表示なんだ」 どうぞ!!

IOTUNN “ACCESS ALL WORLDS” : 10/10

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【OPETH : BLACKWATER PARK 20TH ANNIVERSARY】PROG MUSIC DISC GUIDE RELEASE SPECIAL !!


OPETH “BLACKWATER PARK” 20TH ANNIVERSARY

WHEN TWO MODERN PROG GIANTS COLLIDE

“Blackwater Park” という言葉は、多様なモダン・プログが話題になる時、さまざまな文脈で必ず出現します。
「 このレコードは、”Blackwater Park” のようにデスメタルとプログを交配しているね?」
「彼らの新作は好きだよ。”Blackwater Park” ではないけど、新しいサウンドで前進している」
Mikael Akerfeldt と Steven Wilson。モダン・プログの二巨星が初めて出会った場所。OPETH にとって5枚目のアルバムが、最も決定的で完璧に構成されたレコードであるという考えに反論するのは困難でしょう。このアルバムが当時のプログレッシブ・メタル界に与えた影響の大きさに反論することも不可能に近いはずです。今日に至るまでこのアルバムは、現代の大半のリリースとの比較対象であり続け、現代のプログレッシブ・ミュージックの重鎮たちが最も高く評価しているレコードでもあるのです。
しかし、21世紀の変わり目にせめぎあったメタルバンドの群れの中で、このアルバムを際立たせたものは何だったのでしょう?なぜこのアルバムはモダン・プログの名盤の一つとして崇められているのでしょう?それを知るためには、千年紀の変わり目、ヨーロッパの重苦しい風景に戻らなければなりません。SNSのナルシスト的な強迫観念や、ブログの前の時代で、新聞が本物のニュースソースであり、CDの売り上げが本物の指標であった時代。

90年代後半、METALLICA がスラッシュのルーツから脱却したことで、メタルの曲作りとイメージ両方に対するアプローチは変化が生じていました。楽曲はより短く、ラジオで流れやすいものに。Nu-metal はMTVを席巻し、ドレッドとトラックパンツがトレンドに。KORN, SLIPKNOT, LIMP BIZKIT, LINKIN PARK といったバンドは、ヒップ・ホップとメタルを融合させたエクストリーム・ミュージックの新たな巨匠となり、テレビやラジオを席巻したのです。
簡単に言えば、プログは完全に過去のものになりました。
1992年に DREAM THEATER が発表した “Images and Words” の成功は、ある種偶然のようなもので、PORCUPINE TREE, SYMPHONY X, MESHUGGAH といったアンダーグラウンド・コミュニティ最高の秘密は、まだ無名のまま。プログは、70年代、80年代の遺産を大事に食い潰しながら生き永らえていたのです。
一方で、厳しい冬のスカンジナビアでは、1990年代半ばに IN FLAMES, AT THE GATES などのメロディックなデスメタルが開花し、80年代半ば、メタルのピーク時から残っていた少数の人々により速く、より重い出口を提供しました。この時期の北欧は、メタルを多様に進化させた鬼才の花園でした。しかし、世紀が変わる頃には、ブラスト・ビート、グロウル、ギター・ソロが時の試練に耐えられず、メロデス自体は世間の目から下降線を辿り始めます。さらに、ダイナミクスの欠如、テーマの同一性、反復性の強調などが相まって、90年代後半にはすでにこのジャンルに対する不満も高まっていたのです。

この逆風ともとれる環境の中で、Mikael Akerfeldt はメロディック・デスメタルとプログレッシブ・ミュージックの実験を始めました。80年代後半から90年代にかけてまずスカンジナビアから勃興した新たなメタルの波。OPETH, MESHUGGAH, AMORPHIS, IN FLAMES, EMPEROR といった傑物を輩出し、WALTARI の Kärtsy Hatakka が “ポストファーストメタルタイム” と呼んだそのムーブメントは、メタルの転換期にして、モダンメタルと現在のメタルシーンにとって架け替えのない重要なピリオドとなりました。
「スカンジナビアのバンドたちは、より幅広いスペクトルの音楽を聴くことで、メタルに “クレイジーさ” を加えていったんだ。」
Kärtsy が語るように、ある者は複雑なリズムアプローチを、ある者はグルーヴを、ある者はプログレッシブロックを、ある者はデスメタルを、ある者はエクストリームな残虐性を、ある者はフォルクローレを “ベーシック” なメタルに加えることで、彼らはモダンメタルの礎となる多様性を築き上げていったのです。そして OPETH は最初から、驚きをリスナーに提供していました。
「僕たちは1990年に、IRON MAIDEN に影響を受けたメロディックなスウェディッシュ・メタルバンドとしてスタートしたんだ。デビューアルバム “Orchid” では、確かにそのようなサウンドだった。だけどその後、僕たちはすべてを投げ出し、音楽的な意味で一からやり直したんだ。2枚目のアルバム “Morningrise” では、そのアプローチの変化をはっきりと感じることができた。その頃には、最近僕たちのトレードマークとなっているプログレッシブやサイケデリックの影響が自分たちのものになり、曲もずっと長くなったね。スウェーデンで同じようなことをやっていたのは、EDGE OF SANITY と KATATONIA だけだったと思うな」
1994年の “Orchid” と1996年の “Morningrise”。最初の2枚のアルバムは、ブラック・メタル、デス・メタルとフォークを融合させた不可思議な作品で、Allmusic は後者を「驚くほどユニーク」と評しています。この2枚のアルバムは、獰猛と知性、そして抽象的音楽を愛する人たちに新しいスターを提供し、次のレコード “My Arms, Your Hearse” は、そのスタイルをさらに消化しやすいフォーマットに凝縮していきました。Thinking Man’s Metal などと称され始めたのも、この頃です。
「”Thinking man’s metal”という言葉は大嫌いだ。まるで僕たちが優越的な感じに聞こえる。他のどのメタルバンドよりも知的だみたいにね。この言葉を思いついた人は良かれと思って使うのかもしれないけど、実際には僕たちに害を与え、人々を遠ざけているかもしれないよ。だから、このことは忘れよう!」

1999年、OPETH は “Still Life” をリリース。このアルバムでは、デス・メタルとアコースティックな要素を融合させ、プログレッシブな精神をより深く浸透させています。しかし OPETH にとって4枚目のアルバムは、優れたコンセプト・アルバムであったにもかかわらず、彼らが費やした努力と希望に報いるまでの注目は集めることができませんでした。それでも、Peaceville Records と契約しツアーの機会が増えたことで、マスターマインド Mikael Åkerfeldt とメンバーは、大きなブレークがすぐそこまで来ているという希望を感じていました。
その予感は期待を超えて的中します。2001年に発表された “Blackwater Park” は、このスウェーデンのグループにとって大きなステップストーンとなっただけでなく、エクストリーム・メタル全体にとっても大きな飛躍となったのですから。
「最終的に、音楽を店頭に並べ、より多くの人々に届けてくれるレーベルと関わることができて、とても嬉しかったな。それまで僕たちの存在を知らなかったメディアからも注目されるようになり、ついにはきちんとしたツアーに出て、あちこちで演奏できるようになったからね。僕たちにとって重要な時期だったよ。だから外側から見れば、”Blackwater Park” が僕たちにとって大きな変化をもたらしたという感覚があるのも理解できるよ」
その理由の一つは、OPETH がステップアップとなった Peaceville を離れてさらにビッグな Music for Nations に移籍することとなり、流通やプロモーションの見通しが広がったことにありました。当初、 Åkerfeldt はこの義務的な移動に不満を抱いてい増したが、すぐにそれが最善であることに気付きました。Music for Nationsには、プロとしての態度、豊富なスタッフ、運営のためのロジスティック能力が備わっていました。この新しいパートナーシップにより、OPETH はÅkerfeldt とギタリストの Peter Lindgren が敬愛する PORCUPINE TREE の Steven Wilson をプロデューサーとして迎えることができたのです。

「僕たちが抱えていた問題は、ビジネス上のものだった。最初の10年間で4枚のアルバムをリリースしたけど、ツアーは1回しか行わなかった。10年間でツアーは1回だけ! 僕たちの作品を聴いてくれる人がたくさんいることはわかっていたけど、所属していたレーベルが外に出してくれないことに不満を感じていたんだよ。だけど”Blackwater Park” では、イギリスのMusic For Nationsと契約したことで、その状況が一変したんだ。だけど音楽的には、このアルバムはまったく変化していないと思う。注目されているからそう見えるのかもしれないけど、前のアルバム “Still Life” を聴いても、同じスタイルなんだよ」
Wilson は Åkerfeldt にメールを送り、”Still Life” の巧みなスタイルが彼のメタル愛を再活性化させたと伝えていましたが、それでも Åkerfeldt は当初 Wilson の名声と博識に怖気づいていました。しかし、ロンドンのカムデンにあるタコスバーで出会った二人は意気投合し、Wilson は “Blackwater Park” の制作に参加することになりました。
「僕たちは、”Still Life” “My Arms Your Hearse” の両方で、Fredrik Nordstrom というスウェーデン人エンジニアとコラボレーションしていた。メタルシーンでは有名で、多くのバンドをプロデュースしていて、ヨーテボリに自分のスタジオ(Studio Fredman)を持っていたからね。彼は、僕たちが外部のプロデューサーを起用するならば、自分が第一候補になるだろうと常に考えていたんだろう。しかし、残念ながらそうじゃなかった。
Wilson のことを Nordstrom に伝えたとき、彼は少し傷ついていたね。怒りはしなかったけど、明らかに動揺していた。幸いなことに、彼とスティーブンは一度会うととても仲良くなって、スタジオで問題が起こることはなかったね。お互いに理解し合い、素晴らしいパートナーシップを築くことができた。最終的に、僕たちは Nordstrom にアルバムのミキシングを任せたんだ。みんな彼を信頼していたし、仕事も素晴らしかった」

“Book of Opeth” の中でWilson は「当初は、自分に何ができるかもわからず、メタルのこともよく知らないのに、メタルバンドをプロデュースすることに不安を感じていた」と認めています。
「1995年にリリースされたアルバム “The Sky Moves Sideways” を聴いて以来、Wilson のファンだったんだ。一緒になったのは、ほとんど偶然だったけどね。”Still Life” が発売された頃、僕はようやくインターネットを始めたんだ。驚いたことに、最初に受け取ったメールの1つが Wilson からのもので、僕たちの作品をどれだけ愛しているかを綴っていたんだ。とにかく、彼に会うためにガールフレンドと一緒にイギリスに飛んで行って、食事をして、最後に僕たちをプロデュースしてくれないかと頼んだね。そして彼は、僕と同じように熱心に取り組んでくれたんだ」
OPETHのファンを満足させなければならないというプレッシャーと、バンドが必要とする冒険的スタイルも不安の要因となりました。しかし幸いなことに、Wilson は Åkerfeldt の夢の実現に最適な人物でした。熟練したプロデューサーとしての役割と、真に進化的なパフォーマーとしての役割を併せ持つ Wilson は、 “Blackwater Park” をプログレッシブ・デスメタルの歴史において、驚異的に洗練された、不可欠なパートのみで構成された、時代を超えた作品に仕上げたのです。そしてこの作品においての彼の仕事は、OPETH を後の”Deliverance” や “Damnation”、そして PORCUPINE TREE を2002年の “In Absentia” や2005年の “Deadwing” といった場所へと導くことになりました。
「多くのファンが、僕たちがメタル系のプロデューサーと仕事をしていないことを知って心配したことは知っている。だけど、彼は僕たちのサウンドを変えるのではなく、強化してくれたんだ。メタルの世界で、他の人と同じようなビッグネームを起用しても意味がなかっただろうな。僕たちは、リスクを冒したかったんだ。なぜなら、そうすることで、楽曲から最高のものを引き出すことができるからね」

ドキュメンタリー番組 “Making of Blackwater Park” では、ベーシストのMartin Méndez とドラマー Martin López が、これまで以上に集中してアルバムを作り上げたと語っています。この時点で Åkerfeldt は明らかに OPETH の中心でしたが、それでも López とMéndez と可能な限り共闘しプッシュしました。その結果、リズミカルなデュオは、より”繊細さ” と “自信” を持って演奏することを学びながら、自らの声がいかに重要であるかを感じとっていました。
制作に関して、OPETH はスウェーデンのイエテボリにあるスタジオ・フレッドマン(”Still Life” や “My Arms, Your Hearse” を制作した場所)に戻り、2000年8月から10月にかけてレコーディングを行っています。 Åkerfeldt は、このレコードがそこまで音楽的に劇的な進化を遂げているとは思っていませんでしたが、歌詞の内容は別で、これまでよりかなり自伝的で厭世的な内容になっています。ドキュメンタリー番組の中で彼は「世の中にはおかしな人がたくさんいると思うし、俺だってバカに嫌がらせを受けることもある。そういうことがあって、自分がいかに人を嫌っているかということを歌詞にしたんだ。そして、それをもっと病んだものにするため、さらにスパイスを加えたんだよ!」とコメントしています。
“Blackwater Park” のレコーディングでは、最小限のリハーサルでスタジオに入り、ほとんど歌詞を書いていない状態で制作にとりかかりました。
「”Bleak”, “Blackwater Park”, “Harvest”, “The Leper Affinity” の4曲はほぼ完成していたと思うけど、それらもスタジオで変わっていった。残りの曲は、スタジオで一生懸命、創造的に作業をしながら作ったものさ。ヨーテボリに移動する前に、バンド全体で新曲のリハーサルを3回行ったことを覚えているけどね」

バンドと Wilson はスタジオの狭い部屋に2週間寝泊まりしたあと、DARK TRANQUILLITY の Mikael が所有していたアパートに居を移しました。
「窮屈に見えたかもしれないけど、僕たちの頭の中には音楽のことしかなかったから。気が散るものは何もなく、僕たちは曲で結ばれていたんだよ。それがとても重要だった。家から遠く離れた場所(バンドはストックホルムを拠点としていた)にいると、気が散って仕方がないからね」
アルバムのオープニングを飾る “The Leper Affinity” は、当時 OPETH が得意としていた獰猛で幕を開けますが、楽器の上でボーカルがまさに唸りを上げる姿は、この曲をネクスト・レベルに引き上げています。洗練された激しさの中に、ほろ苦いフォーク・ロックの側面があり、最後には Wilson のアイデアによる哀愁を帯びたピアノのモチーフまで登場。
「Steven Wilson を感動させようとしていたんだ。彼はそれまでメタルバンドをプロデュースしたことがなかった....だから少し緊張していたと思う。俺たちが思いついたアイデアはすべて、彼に使えるかどうか尋ね、修正してもらったね。彼自身も奇妙なアイデアを出してきて、僕たちはそれを気に入り、結局使用することになった」
Akerlfedt は、ウィルソンとの共同作業がバンドのサウンドを「向上」させたと述べ、この決断がもたらしたポジティブな結果についてさらに詳しく説明しています。
「彼は、レコーディングの途中で面白い角度からのアイデアを沢山思いついた。彼のちょっとした仕事が、最も大きな影響を与えたんだ」
そういったアイデアは、Wilson が全曲で演奏したピアノのラインにも見られます。中でも、アルバムの最後に収録されている2分間のアコースティックな小曲 “Patterns In The Ivy” は圧巻です。この曲は、真のデスメタルファンの琴線に触れ、このレコードの奥底に存在する暗く冷たい「ブラック・ウォーター」な感情を象徴しています。

この「暗さ」は OPETH 初期のトレードマークですが、”Blackwater Park” では、リスナーがただ純粋に悲しみを感じられるような形で表現されています。”Benighted” のような温かくも陰鬱なアコースティック・オードが展開される “Harvest”。そのケルト・ダンスは、表面的には陽気に見えますが、痛みと不安が微かに入り混じるノスタルジックな感情へと変わり、物事が単純だった過去の世界を切望する遠い記憶を喚起します。
このレコードのすべての感情と芸術性が生きてくるのは、”The Drapery Falls” でしょう。
最初の2分間で OPETH は、プログレッシブ=変拍子や難解なギターソロという定説を覆します。メロディの力は楽器の技巧をはるかに凌駕し、穏やかなアコースティックの歌声から、心に染み入るようなギターのリード、Akerlfedt のデス・グロウルによるクライマックスまで、この曲は静寂と残忍の見事なバランスを保ち続けます。
実際、静寂と残忍の知的な組み合わせは、OPETH サウンドのバックボーンとなり、”Blackwater Park” の骨子にもなっています。”例えば “The Funeral Portrait” では、滝のように流れるアコースティック・サウンドがいつしか野太いギター・グルーヴへと変化し、葬儀の光景を複雑怪奇に進んでいきます。
Akerlfedt がアルバムで最も気に入っている “Bleak” は、前半のダークな不協和音が、悲痛を極めたアコースティックに変わっていくことで、静寂と残忍の理論が完成されています。中近東の旋律を取り入れながら、悪夢のような怒号とジャズ的な癒しの交錯に魅惑的なリード・メロディーを配し、フィナーレはこのレコードで2回使用したうちの1回、Lopez のダブルキックが炸裂。
OPETH のライブを一度でも経験していれば、タイトル・トラック “Blackwater Park” が解き放たれた刹那、会場内で起こる現象を思い浮かべることができるでしょう。不協和のギターリードから、ヘッドバンギングの波を引き起こす雷鳴のようなマーチへ。曲の中盤には、混沌と残虐を約束する不気味な間奏が訪れ、最後の強烈なダブルキックとデス・グロウルの降臨。レコードで最も速いテンポを刻んでいきます。

OPETH はサウンド・デザインの第一人者です。二人の巨匠がプログ・メタル世界に持ち込んだサウンド・デザインとは、音楽全体をマクロ的に捉え、それぞれの楽器や音が一つのまとまりとなって成立するという概念。”Blackwater Park” や “Damnation” のようなアルバムが、映画のような別世界のようなクオリティを持っているのはそのためでしょう。楽器やサウンドは、細心の注意を払って選択され、ミックスされます。アルバムのクレジットには「苦心して構想した」という一言が添えられていました。
「ちょっとかっこよく見られたかったんだ (笑)。アーティストは、自分の音楽を世に出すのに苦労していると思われたいんだよね。それにもし、このレコードを『簡単に思いついた』と書いていたら、少し傲慢な印象を与えたかもしれないだろ?
まあ実際のところ、どんなレコードも簡単には作れないものさ。常に一定のプレッシャーとストレスがある。とはいえ、2003年に”Damnation” と “Deliverancet’ の2枚のアルバムを同時に制作したときには悪夢のような出来事があったけど、”Blackwater Park” では約6週間でうまく収まったね」
OPETH はこれまでで最大規模のツアーを開始し、NEVERMORE, AMORPHIS, KATATONIA といった時代の戦友とともに、何週間にもわたって世界を廻りました。プレスのレビューは一様に好意的で、The Village Voice、AllMusic、Exclaim! といった非メタル系のメディアでさえ、このアルバムを大きく賞賛していました。”Blackwater Park” は、そのオーガニックで冒険的なプロダクション、展翅とした楽器編成、卓越したソングライティング、そして残忍さと美しさの完璧なハイブリッドによって、特別な作品であり続けています。
以降 OPETHは、このサウンドを3枚のアルバムでさらに追求することになります。破砕機のように重い”Deliverance”、キャッチーで美しい “Ghost Revelries” 、そして暗く実験的な “Watershed”。しかし、”Blackwater Park” で達成した完璧なバランスを超えることは不可能でした。2010年にリリースされた “Heritage” でバンドが突如方向転換したのは、まさにこの感情が一因となっていました。ある意味、この変化はバンドを救ったとも言えます。”Blackwater Park” の完璧な壮大さと美麗は、例えば “Reign In Blood” を発表した SLAYER のように分岐点であり、もうそれ以上探求不可能な領域なのかも知れませんから。

“Blackwater Park” は重さが感激を与えられること、対比の魔法の素晴らしさ、そして混沌の技術嵐に陥ることなく10分の曲を作ることが可能であることをメタル世界に刻みました。”Still Life” でほのめかした理想は、”Blackwater Park” で実現したのです。
純粋なメタルでなければ聴かないというファンはたくさんいるよね。僕はそれって本当に心が狭いと思う。だから、”Blackwater Park” で達成したかったのは、人々の音楽鑑賞の幅を広げること。僕の場合は、Steven Wilson と一緒に仕事をしたことで、作曲やレコーディングの方法に新たなアプローチが生まれ、音楽的な意味で何が可能なのかをより意識することができたんだ。そして、僕たちに刺激を受けて他の音楽をチェックするようになった多くのファンがいると思いたいんだよね。これは僕にとって非常に重要なことだよ。お説教するつもりはないけど、もし君が一つのタイプの音楽に留まっていたら、多くの世界や景色を見逃していると思うんだ。だから、”Blackwater Park” にメッセージがあるとすれば、それなんだよね」
“Blackwater Park” 完全再現のライブ・コンサートを期待するファンも多いでしょう。
「インストゥルメンタルの “Dirge For November” はステージ上でやるにはちょっと奇妙すぎるかもしれないよね。実際にアルバム全体を順番に演奏するのは…とても難しいなあ。ライブでやると、このアルバムを特別なものにしている神秘性が損なわれるかもしれないしね」

さて、その Mikael と Steven が導火線となったモダン・プログを中心に扱った書籍 PROG MUSIC DISC GUIDE が本日発売となりました。Marunouchi Muzik Magazine 編集長 Sin こと私、夏目進平も執筆で参加しております。弊誌読者様にはかならず訴えかける内容だと思います。お手にとっていただければ幸いです。

http://www.ele-king.net/books/008079/

参考文献:Killyourstereo:Remembering The Bleakness & Beauty Of Opeth’s ‘Blackwater Park’

Consequence of Sound: Opeth Blackwater Park Anniversary

LOUDERSOUND: Story Behind Blackwater Park

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARCING WIRES : PRIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YUTARO OKUDA OF ARCING WIRES !!

“Definitely Meshuggah Is a Very Important Artist For The Band. I Guess We’re Musicians That Went To ‘Jazz School’ But Still Want To Play Metal As Well So Maybe That Has a Bit To Do With Our Sound.

DISC REVIEW “PRIME”

「バンドにとって MESHUGGAH は非常に重要なアーティストだよ。僕らは “ジャズスクール” に通っていたミュージシャンだけど、メタルもやりたいと思っているから、それが僕らのサウンドに少し関係しているのかもしれないね」
ジャズとメタルを平等に愛し、その融合に成功するミュージシャンは決して多くはありません。ジャンル自体が希少種と言えるジャズメタルの領域において、ARCING WIRES ほど挑戦的で、楽しく、複雑でありながら消化しやすく、美しさに包まれた音楽に出会えることは奇跡でしょう。
「サウンドの一部として、サックスはもちろん、常に多くのエフェクトやプログラミングを取り入れていて、同様に大きな影響を受けたエレクトリック・ギターやベースのトーンとブレンドすることで、ARCING WIRES サウンドの非常に美しい、不可欠な部分を生み出していると僕は思っているよ」
ギター2本、ドラム、ベースというスタンダードなロックのラインアップにサックスを加えることは、もちろん新機軸ではありません。ドイツの伝説 PANZERBALLETT はすでにそのフォーメーションで繊細なジャズダンスと重厚なメタル戦車の完璧な融合を成し遂げています。
たしかに、”The Lizard”, “Catacaustic”, “Blue Steel” のオープニング3曲を聴けば、その比較はそれほど的外れではないと感じるはずです。しかし、同時に “Catacaustic” から放たれるマスロックの軽快さは眩しいほどにブライトで、さらに “Blue Steel” の終盤では、完全に彼ら自身の「声」を見つけ出すことに成功しています。
「HIATUS KAIYOTE は、僕たちが音楽をどう演奏するかってアイデアを形成する上で、非常に大きな影響を受けているね」
日本人である Yutaro Okuda 氏が語るように、開放的な空と海がジャンルの境界を曖昧にするのでしょうか。オーストラリアは近年、HIATUS KAIYOTE, KING GIZZ のような真のごった煮平等主義者を多数輩出しています。そうして、ジャンルからジャンルへと音の虹をかける ARCING WIRES も当然彼らの血を引いています。Art As Catharsis という彼らのレーベルも、現代におけるロックの多様性を追求する完璧なソウルメイト。
事実、”Prime” はメタルのような怒涛のグルーヴ、非常に流暢で熟練したプログレッシブ・ロック、マスロックのブライトな知性、ポスト・ロックの瞑想、アンビエントの静寂、そしてジャズ/フュージョンの魂とメソッドをシームレスに漂うサーフィンのレコード。
その波乗りを、彼らは実に繊細かつ上品にこなしているため、アルバムの基盤を見極めるのは非常に難しく、音の支配者を探し出すこともほぼ不可能。見事なバランス感覚は真の平等主義者にのみ宿ります。
「学生時代に直接影響を受けたのが Mike Rivett の “Digital Seed” というアルバムだったね。当時の僕にとっては、エレクトリック・サウンドとアコースティック・ジャズの音色の融合を初めて耳にしたアルバムだったんだ。素晴らしいよ」
“Arc9” では、ヘヴィネスとエナジーを抑えて煌めきのグルーヴとメロディに集中し、 “Eniargim” では、オリエンタルな雰囲気が導入し異国の風を運びます。何より、”Serotonin” に込められたエレクトリック・ジャズの鼓動は、UKの新たなジャズの波光とシンクロしながら、音楽に本来あるべきポジティブな新鮮さを感情の高まりに重ねてみせたのです。テレキャスやギブソンで紡がれるギターソロの音色も、画一的な現代のそれではなく、個性的な味わいで素晴らしいですね。明らかにキラキラの Djent とは距離を保ち、伝統と感情を全てに織り込んでいますから。
今回弊誌では、Yutaro Okuda 氏にインタビューを行うことができました。「日本のポップ・パンクのカルテット ELLEGARDEN は大好きだったバンドの一つさ。シドニーに住むアジア人の子供として、ある種のステレオタイプが存在していたから、彼らは僕にとって重要な存在だったな。」ANIMALS AS LEADERS 以来の衝撃。どうぞ!!

ARCING WIRES “PRIME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【EVERGREY : ESCAPE OF THE PHOENIX】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOM S. ENGLUND OF EVERGREY !!

“For Me, Personally I Can Only Base It On The Landscapes I Have Outside My House Which Indeed Is an Scandinavian One So If I Managed To Convey That Through The Music, That’s Great.”

DISC REVIEW “ESCAPE OF THE PHOENIX”

「僕にとってただ一つ重要なのは、僕が何を感じるかではなく、君たちが “何か” を感じてくれることなんだ。僕個人としては、自分の家の外に広がる、まさにスカンジナビアの風景に基づいて歌っているだけなんだよ。音楽を通してそれを伝えることができたなら、それは素晴らしいことだよね」
EVERGREY に宿り続けるメランコリー。宿命にも似たその陰は、いつしか退廃的なプログ・メタルの神話として語り継がれてきました。
世界中で数多くのファンが、EVERGREY の威厳に満ちた甘いメランコリーに心を打たれています。彼らのミソロジーを象徴するのが、Tom S. Englund の魂を込めた歌唱、誠実なリリックにあることは明らかでしょう。
「Vikram が EVERGREY の “Missing You” のカバーを演奏している YouTube のビデオを見て、彼のメロディのセンスと演奏へのアプローチの仕方が好きだと思ったんだ。だから彼にメールで、『バンドを始めようよ!』って言ってみたんだよ」
プログ・メタル世界で最大級の賛辞を送られる歌い手は、実にオープン・マインドです。近年、病と戦いながら音楽を続けるアメリカの戦友、Nick van Dyk の力になるため REDEMPTION にも加入していますし、無名だった若きピアニスト Vikram Shankar の才能に惹かれてすぐさま2人だけのプロジェクト SILENT SKIES を立ち上げています。
「僕は David Gilmour から Bruce Dickinsson まで、その間に存在する全てのシンガーに影響を受けているよ。自分は純粋に影響を受けたというよりも、むしろ “インスパイアされた” と思っているんだけどね」
SILENT SKIES のデビュー作 “Satellites” は、鍵盤とストリングスというシンプルな構造により、ボーカリストとしての Tom S. Englund の凄みが最も際立つ作品と言えるのかも知れませんね。
北欧の雪景色をANATHEMA の繊細、恍惚で表現した深く、悲しく、そして美しい音のミルフィーユ。俄然、すぐ後にリリースが決まっていた EVERGREY の “Escape of the Phoenix” にも期待が高まりました。
「僕とって、このアルバムはとてもハングリーでエネルギッシュな作品で、EVERGREY に新しいリスナーをもたらしてくれることは間違いないと感じているよ。つまり、任務完了だ」
25年以上のキャリアを経ても、EVERGREY の情熱と才能の井戸は枯れることを知りません。研ぎ澄まされたメタルのエッジと、儚くも美しい夢幻世界が絶妙なバランスで共存する芸術作品。暗闇の中にモダンな光を宿した直近の3部作を受け継ぎながら、”The Dark Discovery” の生々しさや “In Search of Truth” の情熱へと回帰した温故知新。この10年で翼を広げたアトモスフィアの奇跡を存分に享受して。
シングル曲の “Forever Outsider” と “Eternal Noctarnal” で最新のメタリックな牙とキャッチーな魅力をアピールする一方で、”In Absence Of Sun” の息を呑む情熱、繊細なピアノのフックは明らかにルーツへの回帰を匂わせています。SILENT SKIES の影響か、初期のごとく再び鍵盤に自由が与えられたことで、Tom Englund の哀愁にも磨きがかかります。
「James Labrie とのデュエットはとても素敵なことだったね。まるで僕たち二人だけの空間のような感覚で、一生大切にしたいと思う瞬間だったんだ」
クライマックスは “The Beholder”。自らがプログメタル世界へ飛び込むきっかけとなった DREAM THEATER の歌声との共演。いつしか、ジャンルで最高の評価を分け合うこととなった2人のデュエットは、2人の出自に相応しい思索に耽るような曲調で見事に溶け合っていくのです。
もちろん、EVERGREY のアルバムにバラードは欠かせません。”Stories” と “You From You” の考え抜かれた壮大には思わず息を呑みます。EVERGREY はテクニックで語らない。ギターソロの扇情力がそう物語り、アルバムに込められた希望と喪失、物憂げな内省の精神はこの2曲がミニチュアのように素晴らしく代弁しています。
“Stories” に示現した希望の光は、”Leaden Saint”、そして “Run” へと受け継がれ日の出のように燦々と降り注ぎます。あまりにドラマティックな物語の終焉には、純粋な至福と充実感、再生の喜びが待っていました。もしかすると、これは人類がパンデミックからの復活を遂げる預言者なのかも知れませんね。そうして不死鳥の脱出は、雲を突き刺すような明るい光でフィナーレを迎えるのです。
今回弊誌では、Tom S. Englund にインタビューを行うことができました。「僕がアルバムを「世界」に提供した時点で、それはもう僕のものではないような感じで、実際には世界が作品をどう評価するか、そしてそのアルバムが世の中でどのような位置を占めるかの方が重要だからね」金言です。どうぞ!!

EVERGREY “ESCAPE OF THE PHOENIX” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TURBULENCE : FRONTAL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALAIN IBRAHIM OF TURBULENCE !!

“I Wouldn’t Say That The Lebanese Background Is Reflected Directly In Our Music. Because You Know, Rock And Metal Is Rebel Music, And Growing Up, Listening To Western Music Was Our Escape.”

DISC REVIEW “FRONTAL”

「特に “Metropolis Pt.2” が、バンドメンバー全員に与えた影響は否定できないね。このアルバムを聴いた時はまだティーンエイジャーだったんだけど、それがただプログへの愛を増幅させたんだ。あの名作を初めて聴いた時に感じた気持ちを誰かに感じてもらえれば、それはとても嬉しいことだと思うよ。」
DREAM THEATER の後継者と呼ばれるバンドは十指で足らぬほどに登場し、おそらく大半はその大役を果たせずにいます。とはいえ、プログメタルの感染力が増幅し、世界中で逞しく花開いた21世紀の状況に悲観することはないでしょう。これまでプログやメタルの第三世界と思われていた場所にも、魅惑の新緑が咲き乱れているのですから。現在プログメタルが燃え盛る灼熱の中東、レバノンから現れた TURBULENCE は、ジャンルの地図にどんな足跡を記すのでしょうか?
「レバノン人としてのバックグラウンドが直接、僕らの音楽に反映されているとは言わないけどね。みんなも知っているように、ロックやメタルは反抗的な音楽で、洋楽を聴いて育ってきた僕たちにとって、メタルはある意味そうした母国の文化からの逃げ場になっていたんだからね。」
中東や北アフリカといえば、ORPHANED LAND や MYRATH のオリエンタルでエキゾチックなプログメタルを想像するリスナーも多いでしょう。しかし、TURBULENCE の本質はそこにはありません。例えば、日本でも邦楽と距離を置き洋楽にアイデンティティーを求める音楽ファンが少なからず存在するように、TURBULENCE にとって母国の文化に反抗し自らの個性を確立する手段が西欧のメタルだったのでしょう。
「特に西洋の人たちにとっては中東の音楽はエキゾチックで魅力的なんだよね。純粋に商業的な観点から考えれば、僕たちも間違いなくそちらに惹かれると思うんだよ。でも、今は自分たちの音楽のコンセプトやストーリーを第一に考えて、それを提供したいんだ。」
そうして、DREAM THEATER のカバーバンドからはじまった TURBULENCE は、ただ真っ直ぐに己が信じる純粋無垢なプログメタル道を突き進むことになりました。TURBULANCE とはきっと “Six Degrees of Inner Turbulence” から受け継いだ勲章。2作目となった “Frontal” には、DREAM THEATER をはじめとするプログメタルの偉人にだけ許された “コンセプトアルバム” の誇りと血潮、そしてスケール感が宿っています。
「”Frontal” “前頭葉” は、建設作業員のフィニアス・ゲイジの実話に基づいているんだ。彼は、鉄の棒が頭を完全に貫通し、左 “前頭葉” の大部分が破壊され、永遠に肉体的にも精神的にも変化を残した事故を生き延びた。僕たちは、日常の生活が不測の事態に対していかに脆いのか、そこに焦点を当てたんだ。」
QUEENSRYCHE がいかにも気に入りそうな、人間の強さと弱さを同時に描いたアルバムにはプログメタルの現在、過去、未来すべてが収められています。ほとんどの曲が7分から10分程度、時間をかけたイントロダクション、意味深な歌詞、奇妙なリズムやアイデア、競い合う楽器のダンスにテクニカルな大円団。たしかに、TURBULENCE はプログメタルの家系図にしっくりとハマるパズルのピースです。
「僕たちのサウンドをユニークにしているのは、伝統的なストーリーテリングと現代的なモダンプログのリズムやサウンドを融合させて、限界を押し広げようとしている部分だと思うんだ。」
ただし、その場所にとどまらない第三世界の生命力と包容力は実に偉大で、時折見せるテクノ・ビートやテクニカルなチャグ、djentyなリフリズム、そしてクライマックスで漂う異国の風、オリエンタルメロディーは明らかにジャンルの未来を見据えています。
「それでも、僕らの音楽には、東洋的でオリエンタルな背景から生まれたいくつかの特徴が確実に反映されていると思うな。」
現代的なアトモスフィアを蓄えながら内省と高揚を行き来し、音数で楽曲を破壊する暴挙を許さぬ感情の深み。Ray Alder や Einar Solberg を想起させる Omar El Hajj のソウルフルな歌唱も独自性の構築に一役買っていますし、何よりあの Kevin Moore に薫陶を受けた Mood Yassin の温もりに満ちた鍵盤が絶妙。”Crowbar Case” や “A Place I Go To Hide” の表現力、ダイナミズムはまさに現代の “Awake” でしょう。
そして今回弊誌では、中東の Petrucci こと Alain Ibrahim にインタビューを行うことができました。実に流暢で、ジャジーなフレーズが巧みなギターヒーロー。
「”In The Name of God” はとてもパワフルで時代を超越した楽曲で、個人的には DREAM THEATER 屈指の名曲だと思っているんだ。」P-Vineから3/12にリリースされる日本盤には、DREAM THEATER の大曲カバーがボーナストラックとして収録。どうぞ!!

TURBULENCE “FRONTAL” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IER : 妖怪】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IER !!

“Dir en grey Is One Of My Main Influences, And Also One Of My Favourite Bands Ever. They Are Really Original And Creative, But Sadly That Kind Of Japanese Bands Don’t Get Much Attention In The West.”

DISC REVIEW “妖怪”

「アルゼンチンでは、僕の世代の多くの子供たちが日本文化に触れて育っているんだ。90年代はアルゼンチンにグローバリゼーションと新自由主義をもたらした。ケーブルテレビではたくさんのアニメが放送され、いくつかの出版社が多くの漫画の権利を取得し国内で商業化を始めたんだ。90年代後半には、スペイン語でアニメを紹介する雑誌まで出版され、アニメやコスプレの大会も開催されるようになってね。」
まさに地球の裏側、アルゼンチンでこれほどまでに日本文化が花開いているなどと誰が想像したでしょうか。IER の首謀者 Ignacio Elías Rosner は、音楽で日本の怪談を紡ぎその流れを牽引する越境の使者に違いありません。
「怪談に関しては、表現しているテーマの多さに魅了されているんだ。日本人は超自然や死後の世界に対する理解が非常に異なっている。西洋の信仰とのコントラストはとても強く、僕たちを魅了し、同時に怖がらせてくれるんだ。個人的には、それらの民話や伝説、伝統が、僕が好きだったアニメや映画の至る所にあったからこそ、自分の子供時代の一部を代表していると言えるんだ。」
ケーブルテレビで目にしたドラゴンボールや聖闘士星矢、エヴァンゲリヲン。プレイステーションでリリースされるサイレント・ヒルやファイナル・ファンタジーの魅力的ソフトの数々。Ignacio はアルゼンチンに放たれたジャパニーズ・サブカルチャーの虜となり、その場所から日本の音楽や伝統文化、哲学へと歩みを進めていきました。
「怪談の復讐、抑圧、永遠の不幸、孤独、憂鬱、怒り、喪失感、失恋などのテーマは、僕が IER で取り組みたいと思っていたものと同じだった。日本文化に立ち返って、同時に比喩で表現する方法を与えてくれたんだよね。登場人物、状況、行為を通して、僕は多くの感情を外に出すことができ、同時に奇妙で不穏な雰囲気を作り出すことに成功したのさ。」
すべてを Ignacio 一人で収録する IER の J-Horror 四部作は完結へと向かっています。”怪談”、”うずまき”、そして95分の狂気 “妖怪” は壮大なコンセプトの第三幕。アルバムや楽曲タイトルを、漢字を含む日本語で表記する時点で Ignacio の本気と知性が伝わりますが、それ以上に伊藤潤二や日本のホラー映画、怪談を読み込み、分析して音に再現するその異能はある意味常軌を逸しています。
「Dir en grey は大きな影響を受けたバンドの一つで、これまでで一番好きなバンドの一つでもある。彼らは本当に独創的で創造的なんだけど、悲しいかな、この手の日本のバンドは欧米ではあまり注目されていないんだよね。例えば、アルゼンチンではほとんどの人が Dir en grey のことを「アニメ音楽」だと言うだろうから。」
西洋で生まれた恐怖と憂鬱の最高峰、ブラックメタルをプログレッシブに奏でながら、日本の音の葉を織り込む手法こそ Ignacio の語り口。原点である凶暴なカオスは、V系の美学、Dir en grey や Sukekiyo の複雑怪奇、邦画やゲームのサンプリング、伝統芸能のしきたりをカウンターとして絶妙なコントラスト、恐怖のジェットコースターを描き出します。
その情緒に、アルゼンチン由来のラテンやアコースティック、フォーク、スペイン語を重ねた唯一無二は、間違いなく西欧の例えば CANNIBAL CORPSE 的ショックホラーや猟奇よりも、不穏で不気味で奇怪に感じられるはずです。中でも、日本語で皿の数を怒号する “皿屋敷” の恐ろしさは白眉。
今回弊誌では、アルゼンチンのメタル法師 Ignacio にインタビューを行うことができました。「”うずまき” の映画化の監督であるヒグチンスキーは、僕が映画からのサンプルを含む “うずまき” アルバムをリリースした後に連絡してきてね。最初は彼が怒るのかと思ったけど…。それどころか、全然違うんだよ。彼は感激してくれて、法的な問題を避けるために、映画の権利を持っていた映画会社に連絡するのを手伝ってくれたんだ。ありがたいことに、僕は著作権侵害をしていなかったし、ヒグチンスキーは自分のSNSでアルバムをシェアしてくれたんだよ!」 どうぞ!!

IER “妖怪” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IMMORTAL GUARDIAN : PSYCHOSOMATIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IMMORTAL GUARDIAN !!

“Now It’s The Only Way I Play Music. I Feel Naked When I Only Have Just One Of The Guitar Or The Keyboard On Me. It’s How I Think And How I Express Myself The Best Musically.”

DISC REVIEW “PSYCHOSOMATIC”

「ギターとキーボード、どちらか片方だけを持っていると半裸になったような気分になるんだ。それが僕の考え方で、音楽的に最高の自分を表現する方法なんだよね。」
ダブルネックの16弦ギター、モンゴルのホーミーと伝統楽器、アステカの笛に骨のマイク。弊誌ではこれまで、奇想天外なアイデアとメタルの融合をいくつも報じてきました。
どんな突飛な発想とも真摯に向き合うメタルの包容力は、そこから驚くほどドラマティックで獰猛なキメラを多数輩出してきたのです。馬鹿らしさを馬鹿らしさだけで終わらせないメタルの神秘。それでも、ギターとキーボードを同時に演奏という曲芸じみた異能に挑戦する戦士は Gabriel Guardian がはじめてでしょう。
「この2つの楽器を組み合わせることで多くのことが実現できる。音楽的に多くの表現ができるし、そこに無限の可能性を秘めていることも気に入っているよ。」
実際、Gabriel は例えば Alexi Laiho と Janne Wirman の役割を一人で同時にこなすことを究極の目標としている節があります。そのためには、もちろん、基本的にはギターをピッキングなし左手のタップだけでプレイする必要がありますし、鍵盤は右手だけ。ただし、その欠点を補ってあまりある視覚的なインパクト、そしてユニゾンやコード、リズミックなアイデアの広がりがあることは明らかでしょう。他人と意思疎通することなく、自由自在に掛け合いができるのですから。
「僕は昔からメタルにおけるクラシック音楽が好きだったんだ。若い頃はクラシックを聴いていたけど、それからは正直あまり聴いていなかった。だからクラシックの影響というよりも、自分の曲にクラシックの影響を取り入れているメタルバンドから多くの影響を受けたんだ。」
“Read Between The Line” を聴けば、Gabriel の “ギターボード” という発想がメタルとクラッシックのさらなる融合に一役買っていることに気づくはずです。彼はクラシカルなメロディーをその異能で立体的に配置し、構成する技能に優れていますがクラッシックの教育は受けていません。しかしだからこそ、難解複雑な理論よりも、メタル者が欲する “クラシカル” の海へと音楽を没入させることが可能なのでしょう。
「僕たちの曲はパワーメタルで、クラシカルなシュレッドギター/キーを使っているけど、ドラマーとベーシストのリズムセクションはモダンでテクニカルなメタルに傾倒している。この融合が素晴らしくて、このジャンルの名前を思いついた人をまだ見たことがない。」
シンガロングの麻薬 “Phobia” は象徴的ですが、リズムセクションが牽引する djenty なリフワークとパワーメタルの婚姻も想像以上に鮮烈な化学反応をもたらします。フラスコには、メキシコ、ブラジル、カナダ、テキサスの多様な背景、文化がしたたり、メタル革命を指標する “スーパーメタル” が誕生しました。間違いなく、OUTWORLD や HEAVEN’S GUARDIAN で知られる Carlos Zema の強靭な歌声は革命のハイパーウェポンでしょう。
「今回のパンデミックで世界中の人々が受けた心身への影響を目の当たりにして、このアルバムのテーマが思い浮かんだ。その結果、ソリッドでヘヴィで革新的なアルバムになった。今、世界で起きていることと密接に関連している。」
“Psychosomatic”、心身症と名付けられたアルバムは、その名の通りパンデミックが引き起こしたロックダウンや自己隔離といったストレスにより、心や身体に異常をきたす非日常の2020年代をビッグテーマとしています。一時は “Candlelight” 蝋燭の灯で悲しみに沈んだアルバムは、それでも “New Day Rising” の希望に満ちたプログレッシブなパワーメタルで新たな日々の到来を焦がれるのです。
今回弊誌では、Gabriel Guardian, Carlos Zema にインタビューを行うことが出来ました。「欠点は、2つの楽器を常に練習しなければならないこと。2つの楽器を使いこなすために、他のミュージシャンの2倍の練習をしなければならないんだ。2つの楽器をセットアップして、ケアをしなければならないのもめんどうだよね。」 不死の守護者によるメタル革命のはじまり。どうぞ!!

IMMORTAL GUARDIAN “PSYCHOSOMATIC” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【WARDRUNA : KVITRAVN】


COVER STORY : WARDRUNA “KVITRAVN”

“Wardruna’s Music Is a Way Of Connecting To Those Energies In The Absence Of Nature. It Becomes a Bridge. It Becomes a Way Of Getting In Touch With These Things I Think a Lot Of People In Modern Society Are Feeling a Loss Of, Or a Longing For. Some Form Of Connection To Our Surroundings.”

THE RISE OF NORDIC FOLK

古き良き道を守り続けてきたノルウェーの WARDRUNA は、遠い過去や文化の大仰で滑稽な遺物だと思われるかもしれません。しかし、彼らの音楽が、実際は今日の自分たちを理解する鍵となるのかもしれません。実際、スカンジナビアに行けば、北欧のフォークミュージックが鉄器時代のヨーロッパの公海にバイキングが最後に乗り込んで以来、最大のブームを記録しているのですから。
WARDRUNA は明らかにそのムーブメントの先頭に立っています。彼らのリリシズムの根底には神話や伝説があり、その壮大で瞑想的なサウンドは “Game of Thrones” の中でも特に暴風のエピソードにおいて違和感を感じることはないはずです。彼らのニッチな部分は、毛むくじゃらなジェイソン・モモアと、あごを掻きむしるメタルヘッドの間へ進入しているのです。
WARDRUNA という名前は「ルーンの守護者」と訳され、ニッケルハルパ、ヤギの角、骨笛、西暦500年のドイツ製竪琴のレプリカを使って音楽を奏でます。フロントマンの Einar Selvik は、長い格子状の顎ひげを生やし、ヴァイキング時代のシャープな髪型を整え、凍てつくようなフィヨルドの風景の中で、裸足で自然への頌歌を厳粛に歌い上げるのです。驚くべきことに、”Lyfjaberg (Healing-mountain)” のビデオは1000万回の再生回数を突破しています。
Einar は自らの音楽について「シリアスである必要はないし、深遠である必要もない」と語ります。明るい目をしていて、カリスマ性があり、誠実な人物。シニカルな時代においても、彼の魔法に影響される余地は十分にあるでしょう。彼は、時代や世界を超えて語りかけるような音色、モード、ドラムパターンを採用しています。
「ある意味では、原始の音は俺たちのDNAの中にあると思うし、世界的なものだ。だからどこの国の人であっても、つながることができると思う」

セカンドアルバム “Yggdrasil” がリリースされたあと、WARDRUNA の音楽はヒストリーチャンネルのテレビ番組 “Vikings” で大きく取り上げられ話題となりました。この番組のプロデューサーは最終的に Einar に直接連絡を取り、”Vikings” の シーズン2のサウンドトラックで作曲家の Trevor Morris (The Borgias) とのコラボレーションを依頼したのです。
「音楽業界で成功するには、まず良い音楽を作ること、そして次に聞かれることが重要なんだ。」
少なくとも、WARDRUNA はプログレッシブな音楽を作っています。過去を描き、現在を表現し、未来の予想図を提示する。博物館のケースから古い楽器を取り出しながら。実際、太古の楽器が奏でる刺激的な音に耳を傾けると、多くの海を越える大航海のイメージが浮かんできます。”Assassin’s Creed” のメーカーも確かにそう考えたようで、人気ビデオゲームの最新作 “Valhalla” の音楽に Einar を抜擢しています。新進気鋭の AURORA との共演も実現。
明らかにステレオタイプなポップスターというよりも、頑固な学者タイプである Einar は、北欧の民俗学を掘り下げ、雄鹿、烏、狼への頌歌や、癒しの “薬の歌” と呼んでいる音楽を披露します。新しい歌を研究する際には考古学者、歴史家、言語学者に依頼し、オックスフォードからデンバーまで大学で自らの仕事について講義まで行ってきました。
「自然との関係、お互いとの関係、そして自分自身よりも大きな何かとの関係において、古い文化を利用すること。それが昔話や昔の音を掘り起こす理由だよ。俺は、過去から学ぶ価値があると感じるものに声を与えているだけだからな」
ではなぜ、Einar は古代北欧の神話に惹かれたのでしょうか?
「子供の頃に古代北欧の物語や歴史に心を奪われたんだ。白と黒、善と悪といった一神教的な世界観とはとても違っていたから。それははるかに複雑なものだったよ。10代の頃には、古い伝統の秘教的でスピリチュアルな側面への興味がさらに深まりまったね。でも、それらを音楽的に解釈してくれる人はいなかった。だから俺はそれを試してみたいと思ったんだ。個人的にもっと意味のあることをしたいと思っていたんだよ。古い詩をただ暗唱するだけではなく、その知識を統合することが重要なんだ。」


Einar にとってルーンはどういう意味を持つのでしょうか?
「”ルーン “という言葉には様々な意味がある。書かれた文字の表音系だけじゃなく、秘密、知識、技術、秘教的な知恵、魔法の歌を意味することもある。フィンランドの民間療法の伝統では、魔法の歌は常にルーンと呼ばれているんだ。ルーンの秘密を知ることは、人が持つことのできる最高の知識と考えられていた。だからこそ、俺はとても尊敬の念を持ってアプローチしているんだよ。
ノルウェー語、アイスランド語、アングロサクソン語の3つの異なるルーンの詩がある。それらはことわざやなぞなぞのようなもので、教育するために作られているんだ。その詩を音楽的に表現するにあたって、俺の創造的なコンセプトは、独自の前提で解釈することだったんだ。
つまり、白樺の木を象徴するBのルーンであれば、森に出て白樺の木で遊ぶ。水をテーマにしているのであれば、川の真ん中に立ってボーカルを全部やりながら、水の音を使う。そういった場所を捉えて、それを音楽に反映させていくことだね。」
Einar は自らを「マルチ・ディシプリナリアン」と表現しています。ワークショップで教えたり、レクチャーを行ったり。そして、歴史的に言えば、「確固たる地に立つ」ように努力しています。創造する際、彼は根のない木に登ることに抵抗があるのです。
同時に彼は、教養と素朴さのバランスを求めています。ただ古代の管楽器の起源を理解するだけで、子供のように初めて演奏することの驚きと喜び(そして失敗)を失って何の意味があるのでしょうか?
もちろん、WARDRUNA の音楽は北欧が誇るブラックメタルにも影響を受けています。あの GORGOROTH の元ドラマーという経歴は伊達ではありません。
「スカンジナビアの音楽は、この場所の環境に非常に影響を受けている。非常に重苦しく、メランコリックでダークだけど、俺たちはそこに美しさを見出しているんだ。だから伝統音楽とブラックメタルにも当然通じる所はある。初期のブラックメタルは伝統的な調性に非常に影響を受けているし、もちろんそのテーマは神話やフォークロアなんだからな」

とはいえ、Einar にとってメタルバンドは “仕事” でしかなかったようですが。
「俺はメタルのバックグラウンドを持っているけど、GORGOROTH のようなバンドはただの仕事だったんだ。それが非常にパワフルな芸術表現であることを除けば、自分の創造的な声を込めるようなものではなかったからな。GORGOROTH で Kristian と知り合った時、二人とも異教徒で、自分たちのルーツや歴史に非常に興味を持っているという共通点を見つけたんだ。だから WARDRUNA を始めたとき、彼を入れるのは自然なことだったよ。最初の頃から、彼は俺のアイデアを跳ね返してくれた男だった。一緒にコンセプトを作っていったんだ。メタルの世界でこれほど多くの人が WARDRUNA に興味を持っているのを見て、ちょっと驚いたよ。反響は圧倒的だった。」
ただし、このネオフォークの信者たちはロックダウンの間、教会を燃やすかわりに、森の中で小さなミードを作ったり、歴史を研究していたのですが。ブラックメタルの現在地については、どう思っているのでしょうか?
「俺は個人的な思いからこのプロジェクトをやっている。それ以外はすべてオマケさ。食品にしても音楽にしても、何かが工業化された途端に栄養がなくなってしまう。音楽に栄養を求める人が増えていると思う。以前のブラックメタルは音楽の背後にある意図を重視していて、テクニックや音質は二の次だった。でも、今ではテクニックが重視されていて、どれだけ良い音を出せるかが重要になってきているよね。だけどね、音楽には、意味を運ぶ全くユニークな能力がある。音の力、言葉の力、そして自分の意志と声の力は、北方の秘教的な伝統の中で重要な要素なんだよ。」
ENSLAVED の Ivar Bjørnson とのコラボレーションはまさにメタルとノルディックフォークの融合でした。
「最初のコラボレーション SKUGGSJA の依頼を受けた時、その前提は『Enslaved meets Wardruna』ということになっていたんだ。もちろん、それは非常に魅力的でクールなものだった。それから数年後に別の作品 (Hugsja) を一緒に書く機会があったんだ。 もっとアコースティックなギターとドラムを使って、より自然な風景に持っていきたいと思ったんだ。今までとは違うセットアップでね。完全な WARDRUNA や ENSLAVED ではなく、その中間のようなものさ。でも WARDRUNA よりギターが主体だ。」

WARDRUNA のニューアルバム “Kvitravn” とは、「白いカラス」を意味し、世界と世界の架け橋の象徴としてそのカラスを使用しています。アルビノの精霊動物は、多くの文化圏の神話に登場します。北欧の伝統では、カラスのフーギンとムニンはオーディンに属し、思考と記憶を象徴しています。
アルバムのストリーミングイベントでは、Einar がスカルド詩に基づいた新曲 “Munin” のソロ・ストリップバック・バージョンを披露しました。
「誰の顔も見えないがパフォーマンスをする。スカルドは北欧の吟遊詩人。彼らは大きな力を持っていた。彼らは物事に名前を付けることができ、そうすることで物事をコントロールすることができたんだ。スカルドは人々の生きた記憶を持っていた。彼らは過去と現在の間の 媒介者としての役割を果たした。オーディンは詩の神だよ」
Einar “Kvitravn” Selvik。自らの呼称の一部を冠した作品は、これまでよりもパーソナルなものにも思えます。
「必ずしも個人的なものだとは言わないよ。アルバムには自分のアーティスト名のバリエーションが入っているけど、自分の名前を冠したアルバムではないからね。というよりも、最初にその名前を名乗ろうと思ったきっかけと同じものに飛び込んでいると言ってもいいだろうな。
ある種のことをより深く掘り下げているとは思うよ。それはおそらく、様々な伝統や自然との関係、そして自分自身をどのように定義しているのかといった人間の領域に焦点を当てているのだろう。
多くの曲は俺の視点から見た曲なんだ。そういう意味では、もちろん少し親近感がある。だからこそ、より個人的なアルバムとして受け止められるのかもしれないけどね。」

動物は Einar にとっていつもインスピレーションをもたらしてくれる源泉です。
「もちろん動物は、トナカイであれ熊であれヘラジカであれオオカミであれ、カラスやヘビであれ、インスピレーションを与えてくれる。このアルバムにはオオカミも登場しているしね。
その曲は、動物と人間の関係をロマンチックにしようとしているわけではないんだけど、俺らが輪になっていた頃に戻ろうとしているんだ。ここノルウェーでは基本的にすべてのオオカミを殺してしまった。多くの人が彼らを殺したいと思っていたからね。
俺ははこの問題を理解している。争いの全体像も理解している。双方の立場を理解しているんだ。自然界で起きている全ての問題は、生態系の一部を取り除けばオオカミだけではなく、自然全体に影響を与えることになる。全体のサイクルが不均衡になるんだよ。俺たちは自然の保護者であり、管理者でなければならないからね。
オオカミを殺すことは有効な解決策ではない。クマやオオカミ、そしてこれらの肉食動物と一緒に暮らすことには、犠牲が伴うことを理解しなければならないんだ。犠牲があるとすれば、それには価値がある。真の価値がね。」
“Kvitravn” で Einar は、記憶の声のように、また21世紀の私たちの良心のように、音の葉に舞い降ります。重要なのは、これが単に歴史の再演ではない点でしょう。彼にとっては、「自分のルーツを知ることで方向性が見えてくる」のです。
「自然が語りかけてきても、俺たちはその声に耳を傾けなくなった。このアルバムは、自然と再接続するための心の叫びなんだよね。それはロマンチックな考えではないよ。古代では、人類は自然と戦い、自然をコントロールしようとしていたんだから。今では、自然からほとんど完全に離れてしまった。2020年の春、一般の人たちが緘黙していたことに改めて気づかされたね」

WARDRUNA の音楽は、”ペイガニズム” が何を意味するのか、それが過去の意味とどのように異なるのか、という私たちのロマンチックな概念と、自然の不在に対する私たちの “憂鬱” との間の “摩擦”(Einar が繰り返し使う言葉)を探求しているのです。
Einar は野外で歌を「狩り」に出かけます。彼は音楽的に “文盲” であると自称し、直感的に曲を作ります。そしてその直感をドラマチックな自然の空間で演奏するのです。Einar は WARDRUNA の音楽を「自然の不在の中で、自然のエネルギーに接続する方法」だと考えています。
「架け橋になるよ。現代社会では多くの人が自然を失い、憧れを感じていると思う。環境とのつながりのようなものをね」
実際、WARDRUNA の最新作には、ノルウェーの森の香りが漂っています。このアイデアはバンドのヴォーカリストでアレンジャー Lindy-Fay Hella が考え出したもの。彼らはスカンジナビア北部の古代サーミの文化に触発された深い政治的な源を持っていて、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドが彼らの土地の所有権を主張したことにより歴史的に嫌われてきた先住民族です。彼女自身、サーミの血統とリンクしています。
「サーミの人々が不当に扱われてきたことは、アメリカ先住民の歴史と似ているのよ。私の曾祖母がどこから来たのか、自分が誰であるのかを隠さなければならなかったという事実に、私は怒っているの。だから、私の歌い方に彼女の一部が含まれているのは正しい感じがするわ。」
都市景観の中で聴く WARDRUNA も不思議な感覚をもたらしますが、やはり自然の中ではより一層引き立ちます。時代を超越した音楽かもしれませんが、自然環境に根ざしていることが相乗効果を生み出すのでしょう。潜在的に Einar 頭の中では “2+2が5になる” のかも知れませんね。

WARDRUNA はドローン、重なり合う周波数、捻くれたビートなど、何世紀にも、何千年にもわたって儀式に使われてきた音楽のテクニックを使っています。それこそ、石器時代のシャーマンから中世の教会音楽まで。しかし、その目的は何でしょうか? Einar は自らをを説教者とは見なしたくないが、核心的な信念があると語ります。
「俺は、自然をもっとアニミズム的に捉えれば、全員のためになると強く信じている。俺たちは自然の神聖さを取り除いたとたんに、種としての道を踏み外してしまったと思うよ。それは必ずしもスピリチュアルなことではないんだ。というよりもアティテュードだよ。霊的な人であろうと宗教的な人であろうと、そうでない人であろうと、当てはまるからね。俺たちが支配者ではなく、自然を神聖なもの、重要なもの、俺たちの一部であると考える姿勢が大事だよね」
基本的に、アニミズムとは、私たちを取り巻く自然環境の生命力と固有の原動力を探求すること。では彼の宗教観はどのようなものなのでしょうか?
「まあ、どんな自然をベースにした宗教にも、もちろんその土地に応じた多様性はあるだろうけど、俺たちの伝統はこの土地で作られ、形作られている。俺たちの川、俺たちの自然、俺たちの森によってね。君たちの伝統もそうだろう。だから、結局概念は全く同じなんだ。俺たちは間違いなく、様々な意味で同じ伝統を受け継いでいると思っている。ラッピング、飾り付けが少し異なるだけでね」
古代の楽器を蘇らせること。それもアニミズムの一環です。
「自然楽器は、これまで扱ってきた他の種類の楽器とは違うんだ。ある意味では生きていて、自分の意志を持っている。昔の方法でフレームドラムを作っていた時は、動物の皮を剥いで、なめして、皮を削っていたんだからね。
それはとても単調で時間のかかる作業だけど、ゆっくりと新しい形で動物を生き返らせていくのはとても美しいことだよ。このプロセスを経て、自分の楽器をより個人的でアニミズム的に見ることができるようになったんだ。」

例えば地理的にも、歴史的にもヴァイキング文化の中心の一つスコットランドで撮影された映画 “ヴァルハラ ライジング”。この映画の視覚的な一面だけを捉えて、大衆向けのハリウッド作品と論じることは簡単です。一方で、原始的な力がより “先進的” なものに立ち向かう時の寓話、文化的帝国主義に対するアンチテーゼとして受け止めることも可能でしょう。
同様の視点で、メタルのリスナーは WARDRUNA を受け止めているはずです。そこに大仰な滑稽さと、深遠な知性が感じられるから。そして、国境のないメタルが原始の力や太古の歴史に惹かれる理由もそこにあるのかもしれませんね。
「俺は東洋や他の多くの場所に行って、俺たち自身の伝統音楽に非常によく似ているものを見つけることができた。それこそが、本当に古くて原始的な音楽表現がより深いレベルで俺たちに語りかけてくる理由の一つだと思うんだ。言語の壁や文化の壁を超えているように見えるし、リスナーが非常に多様であるという事実。それに、年齢や、リスナーが聴く他の種類の音楽の観点からも。国境を越えているんだよ」
Einar は、WARDRUNAの音楽はヴァイキング時代(西暦780年から1070年まで)と結びついているだけでなく、さらに遡って1万年前まで体験できると強調しています。当時、イギリス諸島はドガーランドと呼ばれる大陸によってヨーロッパ本土とつながっており、初期の中石器時代の狩猟採集民は、この場所を北上して移動してきたこともその理由の一つでしょう。
約8,200年前に津波がドガーランドを一掃したと長い間考えられていました。これは、ノルウェーの海岸沖で起きた「ストレッガ」と呼ばれる海底地滑りによって引き起こされました。最近の研究では、このラグナロクのような出来事は、土地全体とその人々を一掃するものではなかったかもしれないことが示唆されています。それどころか、その後何千年にもわたって気候変動と海面上昇がゆっくりと進行し、残りの群島を水没させてしまったのです。


つまり、Einar が自然に耳を傾けるとき、彼は自然がどのように変化しているかを追跡します。現在の気候変動の緊急事態は、”Kvitravn” のメッセージから切り離すことができません。アルバムのクライマックス ”Andvarljod’(’Song Of The Spirit-Weavers’) ” は、北欧神話に登場する北欧人が運命を司ります。WARDRUNA はこの曲の短縮されたスカルディックなパフォーマンスを冬至の日にリリースしました。占星術的に大きな変化をもたらす日に。Einar が「夏が生まれる」と表現したように、その最も暗い日に、この曲は潮の流れが変わる可能性を予告しています。
アルバムに収録されている10分間のバージョンでは、Einar が女性の声のコーラスをバックに、新たな高みに向かって歌い上げます。彼は、「自分の中にも共鳴するような音が出てくる。そうすれば、何かを成し遂げようとしていることがわかるんだ」
HEILUNG, MYRKUR, SKALD, Danheim。かつて古代文明が自然界に対して感じていたつながりが、ネオフォーク、ノルディックフォーク、ダークフォークと呼び方は様々ですが、新鋭を結びつける骨なのかもしれませんね。
「初めて WARDRUNA と仕事を始めた時から、自然との親近感を感じていたの。」と Lindy-Fay Hella は説明します。
「自然の中には、良いものだけでなく、醜さや畏怖といったコントラストも受け入れる余地があるわ。今のところ、私たちの荒々しいサウンドは、スカンジナビアの荒野に根ざしているのよ。そろそろヒゲを生やし始める時期かもしれないわね。」

WARDRUNA のコンサートで Einar が観客とコミュニケーションをとることはほとんどありません。
「WARDRUNA では、曲と曲の間にコミュニケーションをとることは、重要ではないんだ。最後の最後にやるだけさ。それが唯一のコミュニケーションの場なんだ。俺にとってコンサートは儀式だから。1時間から2時間の間に、神聖な空間を作るということだよ。
そこでは人々は音楽とつながり、儀式のように音楽に没頭することができる。教会やモスクなどに行かない人たちは、神聖で厳粛な空間やミーティングを得ることができないと思うからね。
宗教的なものやスピリチュアルなものである必要はないんだよ。俺たちの目標は、ある意味で自分よりも大きな何かと繋がることができるような空間を作ることだから。
それが音楽であれ、周りの人たちであれ何でもいいし、自然そのものでもいい。俺たちの音楽は、北欧の神話や遺跡などを映し出しているけど、本質を突き詰めていくと、核となるのはいつも自然なんだよね。自然とつながるための入り口として捉えている人が多いと思うんだよ。」
そうして、WARDRUNA のコンサートには様々な民族、様々な趣向、様々な年齢のファンが集まります。
「クラシック音楽が好きな人たちが、メタルファンと同じショーに来ているのを見るのはとても魅力的だよ。美しい光景だね。俺たちの音楽が、言語やジャンルを超えて国境を越えていく能力を持っていることは本当に素晴らしいことだと思うよ。ある意味、どの音楽ジャンルにも当てはまらない音楽なんだ。いろんな人に訴えかけることができるからね。」

参考文献: THE QUIETUS:A Kind Of Magic: Wardruna Teach Us To Laugh At Ourselves Again

GREEN GLOBAL TRAVEL:INTERVIEW: WARDRUNA REVIVES ANCIENT NORDIC FOLK TRADITION

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AMNPLIFY: INTERVIEW WITH EINAR SELVIK FROM WARDRUNA

SMASH:有料配信ライブ”Wardruna’s virtual release show

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【BLACK COUNTRY, NEW ROAD : FOR THE FIRST TIME】


COVER STORY : BLACK COUNTRY, NEW ROAD “FOR THE FIRST TIME”

“Black Country, New Road Is Like Our Very Own ‘Keep Calm and Carry On’ Or Tea-mug Proclaiming That You Don’t Have To Be Crazy To Work Here But It Helps. It Basically Describes a Good Way Out Of a Bad Place. Excited People Sometimes Claim To Have Lived Near The Road And I Keep Having To Explain To Them That It Doesn’t Exist”

BLACK COUNTRY, NEW ROAD

英国最高のニューバンド、世界最高のニューバンド。デビュー作ですでに最高の評価を得て、将来が約束されたかのように思える BLACK COUNTRY, NEW ROAD。しかしこの独創的な、全員がまだ20代初頭の若者たちは地に足をつけて進んでいきます。
「せいぜい、10点中7点くらいの評価だと思ってたよ。誰もが好きになるわけはないからね。大抵、Twitter で音楽を発表しても、2割が熱狂し、5割が知らん顔、残りの3割が嫌うって感じでしょ?」
サックス奏者の Evans がそう呟けば、ベースHyde も同意します。
「私たちはただの7人のベストメイトで音楽を作っているだけなの。注目されることは名誉なことだけど、私はそれとはあまり関係がないのよ」
このケンブリッジシャー出身の7人組モダン・ロックバンドは、プレスの注目を浴びようとはしていません。彼らは結成してまだ2年半ほどしか経っていませんが、今のところプレス、マスコミの必要性を感じていないのです。なぜなら、ライブが、強烈な口コミの熱量を生み出しているからです。
今、南ロンドンのロック・ミュージック周辺で何かが勃発しています。ポストパンクやポストハードコアの枠組みを使って、アシッドフォークからクラウトロック、クレズマー、ジャズ、ファンク、アートポップ、ノイズ、ノーウェーブまで、様々な影響を受けた多様なバンドが、奇妙な新しい方法でそれらを組み合わせて、奇妙な新しい音楽を生み出しているのです。
こういった素晴らしい手腕を持つ若いバンドは、現役または元音楽学生の場合が多く、結果としてお金をかけずに実験や成長ができる練習場へのアクセスが若い才能にとっていかに重要かを示しています。実際、BC,NR のうち3人はクラッシックの教育を受けています。

BLACK COUNTRY, NEW ROAD に参加しているミュージシャンのほとんどは、何人かがそのまだ学生であった2014年にイースト・カンブリッジシャーで結成された NERVOUS CONDITIONS というバンドに所属していました。そのライブパフォーマンスはエキサイティングという言葉でさえ控えめに思え、ダブルドラマーのラインアップは、1982年の THE FALL や1993年の NoMeansNo のような雰囲気を醸し出して、BEFHEARTIAN の喧騒と BAD SEEDS の勢いまで感じさせていました。さらにグラインドコアの激しさと、憎まれ口や軽蔑の念が、瞬時に静謐な美しさに変わるような、煌びやかな輝きを携えていました。
ただし2018年1月にシンガーの Conner Browne がSNSの投稿を通じて2人の別々の人物から性的暴行を受けたと告発され、数日後にバンドは解散を余儀なくされたのです。声明の中で、Conner は告発をした2人の女性に謝罪しただけでなく、バンド仲間にも謝罪しました。
数ヶ月も経たないうちに、ほとんど何の前触れもなく、同じようなラインナップの新しいグループがロンドンと南東部を中心に激しいギグを行っていました。Conner がいなくなり、元ギタリストの Izaac Wood がフロントマンとなり、ドラマーの一人 Johnny Pyke は去りましたが、Chalie Wayne はまだキットの後ろにいます。ベースの Tyler Hyde, サックスの Lewis Evans, シンセサイザーの May Kershaw, ヴァイオリンの Georgia Ellery とお馴染みの顔が新たなバンドを彩ります。セカンドギタリストには Luke Mark が加わりました。

ただし、ラインナップが似ているとはいえ、バンドとしては(全くではないにしても)かなり違ったサウンドになっていました。BC,NR の方が優れていると、数回のライヴで明らかになります。新たにフロントマンとなった Izaac Wood の超越的で文学的なインスピレーションがバンドをさらに進化させたとも言えるでしょうか。
すでにトレードマークとなったシュプレヒコール・ヴォーカルだけではなく、個人的な経験を歌っているというよりも、歌詞の一部または全部がフィクションになっているような、物語性のある曲作り。Wood は散文、詩、韻を踏んだ連歌などを1曲の中で簡単に切り替えています。彼は、視点の変化を伴う複数の物語や、他の曲へのメタ・テキスト的な参照など、ポストモダン的な手法を用いています。
Speedy Wunderground からリリースされたデビュー・シングル “Athen’s France” のセッションで Wood は、1億再生を記録した Ariana Grade の “Thank U, Next” と、彼自身が同年に THE GUEST としてソロでリリースした “The Theme From Failure Part 1” というあまり知られていないシングルをチェックしたと語っています。これらの曲をはじめ、詩的に音楽的に確かな足取りのを並置することは、BLACK COUNTRY, NEW ROAD がどこから来ているのかにかんして、多くの手がかりを提供してくれるはずです。
では Isaac Wood がソングライターになる前は、日記を書いたり、10代の詩人であったり、熱烈なエッセイスト、PCで戦うキーボードの戦士など、文章に馴染み深い人間だったのでしょうか?
「言葉を書くことに関しては、特に長い歴史はないし、豊かな歴史もない。初期の試みはいくつかあったけど、本気で書くことにコミットした最初の記憶は、2018年の “Theme From Failure Pt.1” だった。」
この曲は、歌詞が陽気でメタモダンなシンセポップな作品でした。
「今まで寝たことのある全ての女の子に自分のパフォーマンスを評価してもらったけど、その結果は恐ろしいものだった。 あの曲は、全く同じことを言う方法が50通りもあることを証明しているんだ。」

歌詞の影響力といえば、Wood はブリクストンのザ・ウィンドミル・パブと Speedy Wunderground のレーベルを中心とした狭いシーンの中で同業者、尊敬する人たちを挙げています。南ロンドンの音楽シーンは控えめに言っても今、沸騰しているのです。彼は特に Jerskin Fendrix を称賛しています。
「自分の音楽をやっている時にはほとんど把握していなかった音楽的なコンセプトが、初めて彼を見た時にはすでに Jerskin のセットの中で完全に形成されていたんだ。彼がやったことは面白くて感動的だったけど、決してくだらないものではなかった。僕たちの関係を最も正確に表現するならば、僕は彼の甥っ子ということになるだろうね。」
それに Kiran Leonard の “Don’t Make Friends With Good People” も。
実際、BLACK MIDI, SQUID と共に、BC, NR は単なるポストパンクの修正主義者と定義することはできないにせよ、純粋に優れたポストパンクの復活を祝っているようにも思えます。もちろん、重要なのは彼らがフリージャズやクラウトロックを漂いながら1970年代後半の最高で最も突出したバンドが持っていた精神、ダイナミズム、実験性を備え、新たに開発されたジャンルまで横断している点ですが。コルトレーンの精神から SWANS の異能、TOOL の哲学まで、受け止め方も千差万別でしょう。
「彼らは僕らをもっと良くしようと背中を押してくれるんだ。彼らより優れているというよりも、より良いミュージシャンになって、より良い曲を書けるようにね。もっと練習しなきゃと思うよ」

文学的な影響については、「もちろん、僕はいくつかの本を読んだことがある。明らかに僕は何冊かの本を読んでいて、それらの本が言葉にも不確かだけど影響を与えているんだ。」 と語っていますが、具体的には 数年前に読んでいた Thomas Pynchon (アメリカの覆面作家。作品は長大で難解とされるものが多く、SFや科学、TVや音楽などポップカルチャーから歴史まで極めて幅広い要素が含まれた総合的ポストモダン文学) と Kurt Vonnegut (人類に対する絶望と皮肉と愛情を、シニカルかつユーモラスな筆致で描き人気を博した。現代アメリカ文学を代表する作家。ヒューマニスト) の名前を挙げます。
「芸術の高低の境界線を尊重していない人がいることは問題だけど、少し成功している作家はその境界線を尊重し、それを理解し、それを覆したり、操作したりしているんだよ。彼らは文化についてのつまらない一般化したポイントを作るためにやっているのではなく、実際に人々が共感できるような、感情的に共鳴する何かを言うためにやっているのだから。僕たちは皆、文化的な価値の高低という点では、高いものも低いものも経験しているけど、それらが交差したとき、あるいは境界線が存在するように感じられないとき、その境界線が取り払われたとき、それはその瞬間の感動や感情的な共鳴の一部となるんだ。それが正確に表現できれば、信じられないほどインパクトのあるものになる。だから僕はヴォネガットのような作家に興味を持っているんだ。物語に興味を持ってもらうための安っぽいトリックかもしれないけどね。でも、リスナーが風景を想像するのに美しい言葉や文学的なセンスを使う必要はないんだよ。コカコーラのように、彼らがすでに知っているものを与えて、あとは好きなものを好きなだけ詰めればいい」
意外かもしれませんが、Wood は Father John Misty の大ファンであることも公言して憚りません。
「正直、彼のことをちょっとセクシーな愚か者だと思っていたんだけど、気がつけば彼の後を追いかけていた。彼は世界最高の作詞家ではないけれど、彼の考えていることは完全に、完全に正直だからね」

Wood 自身の初期の文学的な実験としては、”Kendall Jenner” が挙げられるでしょう。ホテルのスイートルームに宿泊するTVスターを、彼らの意志に反して強引にその場を訪れるリアリティーショーの一場面。もちろんフィクションですが、Kendall (カーダシアン家のお騒がせセレブライフで知られるモデル、タレント) は自殺の前に、(私はNetflixと5HTP の申し子/私の青春時代すべてがテレビで放送されている/何も感じることができない/ジュエリーを脱ぐと私は空気よりも軽いのよ)と嘆きます。
「僕はちょうど面白いと思った物語の装置を試してみたかった。音楽の終わりは前のセクションとはかなり対照的で、物語にはある種のクライマックスが必要だと思ったので、多くのものと同じように、死で終わったんだ。この作品は、彼女の立場や場所について、あるいは彼女のファンや視聴者についてのより広い解説を意図したものではないんだ。別に視聴者の共犯性をあげつらってもいない。いつも彼女や彼女の家族の出来事を楽しんでいたからね。ストレートな物語性のある作品を作るのは初めての試みで、今振り返ってみるとちょっと刺激的すぎたかもしれない。もちろん、女性を差別する意図なんてないよ?そんなことは考えたこともなかった。」
“For The First Time” は昨年3月にイギリスがロックダウンに入る前にレコーディングされた最後のアルバムの一つであり、混乱の中で録音されたアルバムとして完全にふさわしいものだと感じられます。屹立したポストロックの冒険と皮肉なポップカルチャーへの言及に満ちたレコードは、反商業的で、リスナーが純粋なポップミュージックを期待していたのであれば間違った作品を手に取ったと言えるでしょう。
では、この作品で Wood はソングライティングの際に実際の自分に近いペルソナを採用したことはあるのでしょうか?
「最初の曲(”Athen’s France” や “Sunglasses”)では、大きな不安の中で自分を守ろうとしたときに現れる、哀れでシニカルな思考に焦点を当ててきた。だから、そうなんだと思うよ…男の内面をキャラクターで書いてきたからね。それは厄介で、時々うまく翻訳できないこともあると思うんだけど…。例えば、初期の曲では女性の描写がやや一次元的だったと思われていたのは間違いなく後悔しているよ」

カニエ、NutriBullets、デンマークの犯罪ドラマへの言及でポップカルチャーへのアイロニーを匂わせながら、不快なほどに生々しく別れの領域を掘り下げる “Sunglasses”。その機能と意味はまるでボックスを踏み続けるダンスのように、9分という時間の中でずっと続いています。傷ついた自我、嫉妬、不安、その他全てを語るこのトラックの強烈さを考えると、当然のことながら、Wood は具体的な解説を避けようとします。
「多くの人の心の中にある特定の視点から書かれている。それは信じられないほど悲観的で傲慢に感じることがある声なんだ。多くの人が初めて’Sunglasses’を聴いた時に、耳障りで擦り切れたような感じがすると思うんだ。でも実際には、音だけじゃなくかなり苛立たしげな声を出していて、かなり馬鹿げた抑揚をつけていて、それはとても泣き言で、演技的で、かなり大げさなんだよね。聞いているとかなりイライラしてしまう。他の多くの人もそうだろうね」
そもそも、ポストパンクやそれに隣接するシンガーで実際誰もが認める実力者など、Ian McCulloch, David Bowie, Scott Walker くらいではないでしょうか。Mark E Smith, Sioux, Ian Curtis, Iggy Pop への評価が突然負から正へと反転したリスナーは少なくないでしょう。
「願わくば、僕のヴォーカルをたくさん聴いて、声に対する経験がある時点で反転してしまえばいいんだけど。そうすれば、リスナーは僕の歌に夢中になり、それを楽しむようになるからね」
“Sunglasses” の異質なアレンジメントについては「この曲は、物語の中で何が起こるのかという点を、音楽的にかなり露骨に設定していると思う。説明するまでもないだろうけど。何かが起こって、最初の道とは別の道で終わる。音楽はそれを追っているだけなんだ。天才的なポップ・コーラスが書けない時には、この書き方が効果的だと思うよ」
最近まで Wood は10代でした。彼にはまだ時間がたっぷりと残されています。そして刻々と変化を続けるはずです。もちろん、だからこそ現在の曲作りには、若者特有の不安感も。
「不安が意識的に影響しているとは全く考えていないけど、とても重要な時にはよく感じるし、自然とそのことについて書いたり歌ったりするね。そして、なにかを放出する時には、単純に自分自身かなり圧倒されていることに気づくことがあるよ」

BLACK COUNTRY, NEW ROAD という奇妙な名前を Wood はプロパガンダだと説明します。
「僕たちなりの『Keep Calm and Carry On』のようなもので、ここで仕事をするのに必ずしも狂っている必要はないけど、助けになることはあると宣言しているんだ。基本的には、悪い場所から抜け出すための良い方法だと説明しているんだよ。興奮した人たちが時々、この道を知ってるなんて言うんだけど、僕はそれが存在しないことを彼らに説明し続けなければならないんだよ」
このバンドの飄々としたウィットは “For The First Time” 全編に現れていますが、特にオープニングの “Instrumental” でのおかしなキーボードリフはその証拠でしょう。通常、待望のバンドのデビュー・アルバムを紹介するような方法ではありません。Evans が紐解きます。
「奇妙だからといって、それが必ずしも悪いとは限らない。シンセのラインが目立つのはおかしいし、曲の中心になるのもおかしい。だけどそれは素晴らしいことだと思うよ。僕たちは4つのリード楽器を持っている。実際には5つかもしれない。2本のギター、ボーカル、サックス、バイオリン、そして鍵盤を使って、みんなで細部にまで気を配る必要があるんだ。細部にまで気を配っていないと、たぶん聴いていて気持ちの良いものにはならないだろうね。僕たちは我慢しなければならない。だからこそうまくいくんだ」
実験的レーベル Ninja Tuneと契約したのは、収穫でした。コンタクトはラブレターという21世紀において脇に追いやられ、枯れ果てたスタイル。型にはまらない契約だったからこそ、完璧にフィットしていたのでしょう。未知の世界への感覚も魅力の一つだったと Hyde は説明します。
「彼らが私たちメンバーの中の誰かを知っているとは思えなかった。とてもエモーショナルになったわ。私たちに契約を申し入れていた他の誰も、このような方法で感情を表現していなかったからね。彼らはわざわざそんなことをする必要はなかったけど、そうしてくれたの」
このグループがすでに若いファンの想像力を掻き立てていることに注目すべきでしょう。”Opus” を制作した最初のセッションでは、新グループと旧グループとの差別化を図るための議論があったのではないでしょうか?
「具体的にいつ、どのようにしてそうなったのかは覚えていないけど、BC,NRで何をしたいのかという理解はあったのだと思う。NERVOUS CONDITIONSを2~3年やっていたんだけど、その間に開発したものをいくつか取り入れたいと思っていたのは確かだよ。でももちろん、それまでとは違う種類の音楽を作りたいという願望もあるし、現在の作品は、僕ら全員にとってよりくつろげるものになっていると思う」
Hyde も同意します。
「感情的にも音楽的にもつながっているんだから、私たちは何かを作り続けるしかなかったの。感情的には脆くなって、もがいていたけどね」

最新シングルとなった “Science Fair” は、前衛的なギターとブラスのモンスター。Evans のお気に入りです。
「この曲はかなりストレートなものだよ。キューバ風のビート・フリップなんだ。科学的に完璧なドラム・ビートだよ」
一方、Georgia は、起源が東欧とドイツ、伝統的なユダヤ人の民族音楽クレズマーがバンドにもたらした影響を説明します。ヴァイオリンとサックスは伝統的なロックの楽器ではありませんが、クレズマーのバックグラウンドは新たな扉を開きました。
「祝賀会の音楽みたいなものよ。パーティーミュージックなの。ユダヤ文化の中で人々が集まる時に演奏されるのよ。悲しい音楽でも、かなりハッピーな音楽。でも、マイナーキーだから悲しそうに聞こえるのよね」
アルバムのタイトルでさえも、奇妙な場所から抜かれています。それは Isaac が偶然見つけた “We’re All Together Again for the First Time” と題されたデイヴ・ブルーベックのジャズ・アルバムからの抜粋でした。
曲作りのプロセスは決まっているのでしょうか?
「具体的なプロセスはないんだけど、最初のアイデアはたいてい Lewis と僕がスケッチをして、それからハーモニーを奏でることのできるメンバーがトップラインなどでそのスケッチを補強していくんだ。その後、グループ全体で肉付けをして分解し、全員が満足できるものに仕上げていくんだよ。その時にテーマを考えて、歌のための言葉をまとめるんだ。曲作りの過程で言い争うことはほとんどないね」
それはバンドのサウンドの断片の組み合わせ方にもはっきりと表れています。”For The First Time” は例えば「エキゾチックな」着色剤を使っただけのロックではありません。クレズマーとポスト・ハードコアという、表向きは全く異なる要素が反復合成されていることを考えると、このバンドにはいくつかの「異なる陣営」が存在しているのではないかと疑いたくもなります。
「確かに相対的な専門知識のポケットはいくつかある。Georgiaと Lewis はクレズマー音楽の経験が豊富で、Georgia は現在 Happy Bagel Klezmer Orkester と共演しているし、Lewis は若い頃に経験豊富なクレズマー音楽家と共演して彼らから即興演奏の仕方を教わり、それが彼の作曲に大きな影響を与えているんだよ。May はクラシックの分野に最も多くの時間を割いているし、僕はARCADE FIRE のアルバムを最も多く所有している。でも、これらの影響を受けたもの同士がお互いに争っているわけではないんだ」
Evans も同意します。
「僕たちはとても仲が良いから、誰かにアイデアがクソだと言われても気が引けることはないよ。ソングライターの中には、音楽は自分の赤ちゃんのようなものだと言う人もいるけど、それは僕たちのエートスではないんだよ。僕らは常に曲を変えているし、7人組のバンドでは手放す能力が本当に重要なんだ。独裁者にはなりたくないんだよね。他にも6人の素晴らしい才能を持った人がいるんだから、彼らを無視して何の意味があるんだろう?それは音楽を悪くするだけだ。もしそれが1人の手によるものなら、僕らの音楽はクソになっていただろうね」


そもそも、千年紀の変わり目に生まれた多くのミュージシャンのように彼らはバンドの音楽をそのような臨床的カテゴリーに当てはめることには全く興味がないようです。Hyde が続けます。
「ロックの方が簡単だと思うこともあるけど、ポップの方が簡単だと思うこともあるわ。一つのものに留まる時間はほとんどないから、それを何か呼ぶのは無意味だと思うのよ」
しかし、それでもこれは Isaac Wood のバンドなのでしょうか?不可解な答えが返ってきます。
「BLACK COUNTRY, NEW ROAD が “僕のバンド” というのは、クラッシュした車に乗っていたオーストラリア人の男が “仲間を待っていた” のと同じ意味だ。少なくとも、私はアル・ゴア副大統領のように広く尊敬されている」
ダイナミクスとは何か、インパクトとは何かを再評価することもバンドにとって重要な課題でした。Hyde が説明します。
「当たり前のことのように思えたけど、非常に静かなパートと非常にラウドなパートを使い分けるというシンプルなテクニックは、曲の中で進行や物語のような構造を作り出すのに役立ったわね。それに静かに演奏することで、楽器を切り取ることができるということも学んだわ。ヴァイオリンとサックスは、しばしば音を非常に拡張的にしているわね。それが、よりオーケストラ的で映画的なアプローチにもつながっている。曲の中には、引き込まれるような音楽の波があるの」
たしかに、BLACK COUNTRY, NEW ROAD の音楽は少なくとも、絶対的な新しさの前衛ではないかもしれません。ただ他の誰とも似ていないというだけで、たとえ構成要素のほとんどを挙げることができたとしても、それは明らかに十分すぎるほどの眩しさでしょう。
「SLINT を崇拝してるからね。信じられないくらい良いバンドだ。だから比較されても気にならないよ」
とはいえ、SLINT, SONIC YOUTH, OXBOW, COWS, TORTOISE, BATTLES, TALK TALK TALK。誰かが彼らが他のバンドと「全く同じ」ように聞こえると主張するたび、その誤りを正すのは簡単です。もちろん、ポップカルチャーは今、より粒体化されているような気がしますし、至る所でつながりがあり、すべてが奇妙かつ予測不可能な形で機能しています。
例えば、もし誰かが BC,NR を SHELLAC の模造品だと非難したいのであれば、まず最初に考慮しなければならないのは、サックス、ストリングス、シンセを使ったクレズマーと自由な即興演奏、次に、彼らのグローバルなポップカルチャーへの没頭でしょう。さて、では彼らの新たな道のりは次にどこへ向かうのでしょうか?

「最初は ARCADE FIRE みたいになるって冗談を言ってたんだ。当時はそれが面白かったんだけど、僕らは結果的にそういう感じのアルバムを書いたんだ。今はカンタベリー・シーンのことを冗談にしているんだ。だから、もしかしたら3作目にはリュートが出るかもしれない。少なくとも20%の人が聴いてくれることを願っているよ」
“Track X” は次の作品にとっての “X ファクター” となるかもしれません。
「Track X ” は、新しい作品がどんなものになるのか、ちょっとしたアイデアを与えてくれる区切りのようなものだ。でも、これまでとは違うものになるだろうね。奇妙な音や無調なもので表現するのではなく、曲作りの中に奇妙さを埋め込んでいくんだよ。複雑な不規則性でね」
その名前が示すように、「Black Country, New Road」にはまだ目的地はなく、ただただ速度と逃避感、そして懸命に稼いだ自由があります。絶対的な可能性を秘めているのはたしかです。日本でそのライブパフォーマンスが目撃できるのはいつになるでしょうか?

参考文献: The Quietus:Making Good Their Escape: Black Country New Road Interviewed

The Quietus:Frenz Experiments – Black Country, New Road Interviewed

DIY Mag:CLASS OF 2021: BLACK COUNTRY, NEW ROAD

The Guardian: Interview ‘30% hate us, 50% don’t care’: Black Country, New Road, Britain’s most divisive new band

ファラ:Black Country, New Road “For the First Time”

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【Eximperituserqethhzebibšiptugakkathšulweliarzaxułum: Šahrartu】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Eximperituserqethhzebibšiptugakkathšulweliarzaxułum!!

“When You Can Be Sentenced To 15 Years On a Fictitious Case, Without Any Evidence, Just Because You Think Differently Than They Tell You….Damn It, This Is The Plot For Any Historical Film Or Medieval Novel. But Not The Realities Of The 21st Century!”

DISC REVIEW “SAHRARTU”

「政府と違う考えを持っているだけで、何の証拠もなく、架空の事件で15年の刑を宣告される。取るに足らないことで、傭兵に頼って国民を恐怖に陥れ、法外な恐喝を行う…ちくしょう、これは歴史映画や中世の小説の筋書きだよ。21世紀の現実なわけがない!」
欧米とロシアが出会う場所、ベラルーシはまさに今、混沌の最中にあります。ヨーロッパ最後の独裁者”とも呼ばれるソ連の残り香、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領による圧政と不正選挙、そして人権侵害は、多くの国民の怒りを招き大規模な抗議活動へと発展。治安部隊の激しい応戦、弾圧で死傷者が出る事態となりました。そうして、これまで親ロシアの傾向を持っていた国と国民自体、欧州への憧れを隠さない新派が増え、分断を招いているのです。
「今この偉大な分裂の瞬間に、我々の社会は目覚め、根本的な変化の必要性を認識することになった。躍進のためには、深遠な改革、すべての分野の再構築、そして最も重要なことは、考え方の変化が必要だね。松下幸之助のような思考と倫理観を持った明日のリーダーを育成することはまだできていない」
Eximperituserqethhzebibšiptugakkathšulweliarzaxułum (以下 EXIMPERITUS) は明らかにベラルーシの新たな流れを汲んでいます。そして、デスメタルの松下幸之助を標榜するバンドとも言えるのです。
「僕たちは、どんなジャンルの定義にも執着したくないんだよ。実験し、新しい地平を発見し、あらゆる方向に発展し、改善していくことに興味を持っているんだ。」
EXIMPERITUS は、その最先端の技術とワイルドな美学の両面から、デスメタルシーンで確実にその名を知らしめてきました。最新作 “Šahrartu” では、彼らが築き上げてきたアンダーグラウンドの呪術と謎をより大きな世界へ解き放とうとしています。デスメタルの顔を変えるために。
「簡潔に言って、僕たちの個人世界を作っている宇宙の総称なんだ。これは、初期の文明の消滅した言語からいくつか抽出し、構成した造語と言ってもいいだろう。そうやって永遠に過ぎ去った時代とのつながりを感じているんだ。」
EXIMPERITUS は真の意味での密教でした。ゆえにオカルトや古代東洋の神話、そして宗教に対する彼らの魅力を象徴する長い名前を作り上げました。51文字のフルネームは、ラテン語、古代エジプト語、シュメール語、アカカド語をブレンドしたもので、魔法の呪文にも思えます。そうして、歌詞と曲名すべてをベラルーシの古語で綴ったデビュー作 “Prajecyrujučy sinhuliarnaje wypramieńwańnie daktryny absaliutnaha j usiopahłynaĺnaha zła skroź šaścihrannuju pryzmu Sîn-Ahhī-Erība na hipierpawierchniu zadyjakaĺnaha kaŭčęha zasnawaĺnikaŭ kosmatęchničnaha ordęna palieakantakta, najstaražytnyja ipastasi dawosiewych cywilizacyj, prywodziać u ruch ręzanansny transfarmatar časowapadobnaj biaskoncaści budučyni, u ćwiardyniach absierwatoryi Nwn-Hu-Kek-Amon, uwasabliajučy ŭ ęfirnuju matęryju prach Ałulima na zachad ad ękzapłaniety PSRB 1620-26b” はさらに長い文字の羅列も相まって大きな注目を集めたのです。
「英語に訳すと、”センナケリブの六面体プリズムを通した、絶対的で全てを吸収する悪の教義の特異な放出を、宇宙工学的な秩序を持つ古接触の創始者たちの星座弧の超曲面に投影し、前枢軸文明は外惑星PSRB 1620-26bの西側のエーテル物質にアルリムの灰を具現化したヌンフケクアモンの展望台の塔の中で、未来の時間における無限大の共鳴トランスを作動させる” となる。このアルバムは、ピタゴラス、クラウディウス・プトレマイオス、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミコワジ・コペルニク、ジョルダーノ・ブルーノ、フランシス・ベーコン、ガリレオ・ガリレイ、アイザック・ニュートン、そして過去の他の評論家のためのルーツと知識の源に関する論説と言えるだろう。」
重要なのは、これが話題作りの茶番などではなく、すべて魔術、歴史、物理学、神話、哲学といった膨大な知識に裏付けされている点でしょう。同じことは、彼らの音楽にも言えるはずです。巨大な名に恥じない巨大な才能。
EXIMPERITUS のデスメタルは、”テクデス” ラベルの無機質な超技巧バンドというよりは、NILE や ORIGIN, NECROPHAGIST のような怨念と歴史が宿る残忍な英傑との共通点が多いようにも感じられます。リフへの強い拘りがが常にオールドスクールとの繋がりを意識させを感じさせ、東洋的なスケールや中東のイメージでオカルトの神秘や古代のロマンに音及する。予想不可能で広がりのある重音のパルスは、結果として、”テクニカル” でありながら “テクニカル” になりすぎない、舞台劇じみた非常にユニークなデスメタルを創造しています。
そうして2枚目のフルレングス “Šahrartu” で彼らは、残忍さを一切犠牲にすることなく、より多様でメロディックなアプローチへと進化を果たしました。すべては、そのエニグマティックな密教を広く世の中へと解放するため。
リードメロディー、効果的なアコースティックパートで濃密なガテラルとパーカッシヴな重音の魅力を高めた “Utopāda” はその象徴。”Tahâdu” の巨大なグルーヴには不協和とメロディーが同時に散りばめられ、”Anhutu” では伝統からスラムまでデスメタルの壮大を凶暴に抱きしめます。
極めつけは、10分を超える “Inquirad”。ドゥームの遅攻と東洋の神秘を抱きしめながら、アヴァンギャルドなギターの咆哮を交え世界の誕生と死を総括する楽曲は、”Riqûtu” へと続くアンビエントなパッセージで、最早キャッチーともいえる印象的なトランセンドデスメタルの第2章を締めくくるのです。
今回弊誌では EXIMPERITUS にインタビューを行うことができました。「現実としてソ連は崩壊していないし、共産主義者も出て行っていない。だからこそ、この30年の間に、僕たちは以前よりもさらに大きな力で、スターリン主義、全体主義の伝統に立ち返らされてきたんだよ。 」ベラルーシが取り組みはじめた再生とシンクロするかのように、デスメタルを再生するレコード。どうぞ!!

EXIMPERITUS “SAHRARTU” : 10/10

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