NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CANDIRIA : WHILE THEY WERE SLEEPING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN LAMACCHIA OF CANDIRIA !!

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The Pioneer Of Experimental Extreme Music, Candiria Has Just Released Their Ambitious New Album “While They Were Sleeping” For The First Time In 6 Years !!

DISC REVIEW “WHILE THEY WERE SLEEPING”

ブルックリンが生んだ、モダンエクストリームミュージックのパイオニア CANDIRIA が6年の沈黙を経て、新作 While They Were Sleeping” と共にシーンへと帰還を果たしました!!バンドの成熟/進化と原衝動が共存するアルバムで、彼らは自らの価値を再度証明しています。
CANDIRIA の冒険は90年代の中盤から始まりました。メンバー各自が持ち寄った様々な影響、Hardcore は勿論、Death Metal, Hip Hop, Jazz, Fusion, Ambient, Noise といったバラバラな音楽をミックスし、奇跡とも思える革新性と共に圧倒的な存在感を見せつけたのです。現在のエクストリームミュージックシーンは、エクレクティックであることが命題のようにも思えるほど、ジャンルをクロスオーバーした作品が注目を集めていますが、その礎を築いたバンドの1つは間違いなく CANDIRIA ですし、後続に与えた影響は計り知れないと思います。
中でも “The Process of Self-Development”, “300 Percent Density” の2作は白眉。”シームレス”というキーワードの下、切れ目なく、流体のようにしなやかに形を変え続けるエクスペリメンタルな音楽とグルーヴ、そして黒人ボーカリスト Carley Coma のラップからスクリーム、グロウルへと自在に行き来するフレキシブルなボーカルが一体となり押し寄せる波は圧倒的で、今日でも新鮮さを保ちながらシーンのマイルストーンとして輝いていますね。
好調のバンドをアクシデントが襲ったのは2002年のことでした。ツアー中のバンが事故に遭い、メンバーが瀕死の重傷を負ってしまったのです。悲劇がメンバーに落とした影、そしてその影響は明らかでした。2004年に復活したバンドが発表した、強烈なタイトルの作品 “What Doesn’t Kill You…” では実験的、チャレンジングなムードが減退し、メロディーによりフォーカスしたある意味”らしくない”アルバムだったのです。以降、 CANDIRIA のシーンにおける存在感も徐々に減退していきました。
John がインタビューでも語ってくれたように、”While They Were Sleeping” は行き詰まりを感じ、長い休養を経たバンドが再生を果たした、フレッシュで野心的なレコードです。睡眠状態にある社会を “They” と表現し、成功を逃したミュージシャンがその崩壊した社会で王となるコンセプトも、アメリカの現在、そして何より彼ら自身の今を投影しているようで、見事にハマっていますね。
アルバムオープナー、 “While They Were Sleeping” はまさに CANDIRIA の堂々たる帰還、そして現在の立ち位置を告げています。近作のメロディックな歌唱と共に、Carley のラップやグロウルが大々的にフィーチャーされたマスマティカルでアグレッシブな楽曲では、中盤のアンビエントで Jazzy なパートが極上のコントラストを生み CANDIRIA の色を強く主張します。近作での方向性を活かしつつ、バンドが最も生き生きとしていた頃の感覚をしっかりと取り戻したタイトルトラックは純粋に魅力的で、作品を象徴していますね。
実際、アルバムを牽引するのは確実に Carley の千変万化で万華鏡のように多彩なボーカルでしょう。”Mereya” で聴ける Jazzy なスキャットは全くのサプライズですし、 “Forgotten” で堂々とキャッチーなアリーナロックを歌い上げたかと思えば、”The Whole World Will Burn” ではクールなラップでオリジネーターの凄みを見せつけます。まるで彼のボーカルがそれぞれの楽曲の個性を決定しているようにさえ感じますね。
特筆すべきは、”Wandering Light” と “Opaque”。奇しくも VAUREEN の Andrea Horne がフルートとボーカルでゲスト参加をした2曲は、成熟した Carley とバンドの現在を伝えています。
ヘヴィーでカオティックな “Wandering Light” に突如挿入される美しいフルートの響き、そしてオーガニックなボーカルは絶妙のアクセント、フックになっていますし、”Opaque” に至っては、2人のデュエットとギターのメロディーが心を打つ、バンド史上初の感動的なバラードです。
こうした CANDIRIA の新たな魅力、進化が自然に作品の流れに溶け込んでいることからも “While They Were Sleeping” はただアグレッション、ポリリズム、テンションノート、カウンターメロディーという彼らの原点に回帰しただけのレコードではないことが伺えます。6年ぶりの新作は、さらに音楽性、演奏、歌唱の幅を広げ、知性と攻撃性、実験性とキャッチーさを巧みに共存させた CANDIRIA の新たな記念碑であるのです。
唯一彼らと似たような方向性を選択しているのが、実は USオルタナティブの雄 DEFTONES であることを付け加えて置きましょう。
今回弊誌では、バンドのギタリスト John LaMacchia にインタビューを行うことが出来ました。彼は別プロジェクト SPYLACOPA で THE DILLINGER ESCAPE PLAN の Greg ともプレイしているシーンが認める奇才。どうぞ!!

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CANDIRIA “WHILE THEY WERE SLEEPING” : 9.6/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WARDRUM : AWAKENING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STERGIOS KOUROU OF WARDRUM !!

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The Full Of Emotion, Melody, And Technique. One Of The Great Modern Power Metal Outfits From Greece, Wardrum Has Just Released Their Masterpiece “Awakening” !!

DISC REVIEW “AWAKENING”

まさに百花繚乱、メタルの一大産地となったギリシャから現れた驚異の新鋭 WARDRUM が、バンドの最高傑作 “Awakening” をリリースしました!!アルバムを通して、心を打つ哀愁のメロディーと目覚ましいテクニックを高い次元で融合させた “Awakening” は間違いなく日本のメタルファンに強くアピールすることでしょう。
WARDRUM は前身の Prog-Metal バンド HORIZON’S END を母体として2010年に結成された5人組。ドラマーの Stergios Kourou が中心となり作詞作曲を手がけるという珍しい体制のバンドです。
FIREWIND, Gus G は勿論、SEPTICFLESH, ROTTING CHRIST, SUICIDAL ANGELS など様々なジャンルで才能豊かなバンドが存在するギリシャのメタルシーン。中でも、華麗でエモーショナルなメロディーと、ソリッドでタイトな現代的テクニックを備えた WARDRUM の Modern Power Metal は、弊誌が今年インタビューを行った SUNBURST と並んでモダンと伝統が織り成すヨーロピアンメタルの新たな潮流を期待させてくれますね。
インタビューでも語ってくれたように、WARDRUM の音楽は強くメロディーにフォーカスしています。現在、ボーカルを務める Yannis Papadopoulos は同郷の知性派 UNITIL RAIN のメンバーとしても知られる実力者なのですが、彼のワイドなレンジを使用し歌い上げる、エモーショナルで哀愁に満ちた調べはアルバムを通して傑出していますね。特に “Right Within Your Heart” は Yannis の熱い歌唱がドラマティックでファストな楽曲と完璧にマッチし、Power Metal 史に残るであろう名曲として燦然と輝いています。
WARDRUM を語る時、同時に忘れてはならないのがプログレッシブというワードです。”Sometimes” の印象的なアルペジオや、”On Skies of Grey” の見事な構成美を聴けば、WARDRUM が幅広い影響を持った多彩なバンドであることが分かるでしょう。
面白いことに、彼らが強く影響を受けたバンドとして挙げているのは、CRIMSON GLORY, SANCTUARY, CONCEPTION といった少しマイナーなバンド群。しかし、勿論 CRIMSON GLORY は QUEENSRYCHE にも通じますし、同様に SANCTUARY は NEVERMORE, CONCEPTION は KAMELOT と考えれば、彼らのアイデンティティーを理解しやすくなるはずです。
そして KAMELOT meets NEVERMORE というフレーズは、実は SUNBURST を表す際にも頻繁に使用されているのですから、このUSを代表する2大 Prog-Power バンドが与えた影響が最も開花している場所が実はギリシャであるという可能性も実に興味深いと感じます。
さらにバンドは Kosta Vreto という Gus G, Gus Drax と同じ土俵に上がる資格を備えたギターヒーローを有しています。ピックを一切使わず爪だけで凄まじいシュレッドから美麗なメロディーライン、そしてヘヴィーなリフまで自由自在にプレイする彼の姿はまさに圧巻の一言。
ただピックを使用しないというだけでなく、時に人差し指の背を使用したダウンストロークを選択したかと思えば、クラッシックギターのように全ての指を駆使してファストなプレイを繰り出す場合もあり、勿論、ピックを持たないためタッピングにも滑らかに移行することが可能。その非常にユーティリティーなプレイスタイルが、独創的で幅広い WARDRUM の音楽性を見事に牽引していると言えるでしょう。
CRYPTOPSY のギタリスト Christian Donaldson のスタジオワークによって “Awakening” の素晴らしくモダンなサウンドが具現化されていることも付け加えて置きましょう。
今回弊誌ではバンドの中心人物、Stergios Kourou にインタビューを行うことが出来ました。彼のシンコペーションを多用した多彩なリズムアプローチが WARDRUM を象徴することは明らかです。どうぞ!!

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WARDRUM “AWAKENING” : 9.5/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FATES WARNING : THEORIES OF FLIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RAY ALDER OF FATES WARNING !!

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The Pioneer Of Prog-Metal, Fates Warning Returns With Modern & Emotional New Records “Theories Of Flight !!

DISC REVIEW “THEORIES OF FLIGHT”

Prog-Metal のパイオニアとして歴史に名を刻む、US 出身の4人組 FATES WARNING が新たな名作 “Theories of Flight” をリリースしました!!1986年に “Awaken The Guardian” でジャンルを確立して以降、常に進化を続けてきたバンドの凄みがここにはあります。
2004年からしばしの休息の後、前作 “Darkness in a Different Light” で強靭な新ラインナップと共に素晴らしい帰還を遂げた FATES WARNING。”Theories of Flight” でも “Darkness” で提示した、経験とモダンの融合は見事に生きています。インタビューにもあるように、Jens Bogren を起用したことからも、彼らの現役感、モダンなサウンドに対する拘りが伝わりますね。
実際、アルバムは “From The Rooftops” の RIVERSIDE を思わせるエモーショナルなギター、ボーカルと、アトモスフェリックで空間を意識した現代的なサウンドで幕を開けますし、”SOS” で強調されている陰鬱で、ダイナミズムと浮遊感を感じさせるオルタナティブなアプローチはモダンプログの巨匠 Steven Wilson が PORCUPINE TREE で行っていたチャレンジと通じます。
DREAM THEATER や QUEENSRYCHE といった Prog-Metal の先駆者たちが、その最新作でどちらかと言えばコンサバティブで “Back-to-Roots” な音楽を提示している事実を考慮すれば、FATES WARNING が実に挑戦的でタフなバンドであることが伝わりますね。
また、勿論、アルバムは彼らのトレードマークである、テクニカルなパッセージ、タイムチェンジ、スキルフルな演奏でも満たされていますが、それは作品を彩る一要素でしかないような気がします。中心に据えられたのはあくまでも、”Seven Stars” “White Flag” に象徴されるような、メランコリックでメロディアスなボーカルライン、耳を惹くフック、そしてキャッチーなコーラス。そしてその部分こそ、この偉大なバンドが新ラインナップを得て遂に達成した課題なのかも知れませんね。
アルバムのハイライトは、元々は作品のタイトルだったという、”The Ghost of Home” でしょう。Jim Matheos の手による10分間の大曲は、彼の幼少期の体験を元にしています。9年間で8回の転校を経験し、”Home” と呼べる場所の無かった Jim のノスタルジアとリグレットが楽曲に込められているのです。
ラジオのノイズに導かれ、Ray の優しいボーカルと Jim の暖かなアルペジオが過去への扉を緩やかに開くも雰囲気は一転。奇数拍子をタイトにグルーヴィーに刻むベテラン Joey Vera と Bobby Jarzombek の際立った仕事がアグレッシブなヘヴィネスを創出すると、バンドはリスナーたちをもそれぞれの過去へと連れ去り、それぞれの “Ghost” と対峙させるのです。ノスタルジックなタイトルトラックをポストスクリプトとしてアルバムも締めくくる FATES WARNING 史上最も野心的な1曲は、波打つような音楽のバラエティーと豊かなエモーションをリスナーへと届けるでしょう。
今回弊誌では、さらに表現力を増したようにも思えるボーカル Ray Alder にインタビューを行うことが出来ました。バンドは今年、名作 “Awaken The Guardian” リリース時のラインナップでリユニオンショーも行っています。どうぞ!!

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FATES WARNING “THEORIES OF FLIGHT” 9.5/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENSLAVED : IN TIMES】LOUD PARK 2016 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Ivar Bjørnson OF ENSLAVED !!

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Finally, Enslaved Are Going To Play For Japan For The First Time! Don’t Miss Their Amazing Performance At Loud Park 16 !!

DISC REVIEW “IN TIMES”

ノルウェーを代表する Viking / Progressive Black Metal バンド, ENSLAVED が Loud Park 16 で遂に日本初上陸を果たします!!ライブバンドとしても名高い彼らのパフォーマンスは、日本のメタルファンを確実にノックアウトすることでしょう。
初期にはプリミティブな Black Metal 色の濃い Extreme Metal を追求していたENSLAVED ですが、近年はプログレッシブな要素を多分に取り入れた、荘厳で唯一無二の Progressive-Black サウンドを指標しています。
最も頻繁に比較されるのは OPETH でしょうが、PINK FLOYD を思わせるサイケデリックな瞬間も存在し、Herbrand Larsen の美麗なクリーンボイスは KATATONIA をも想起させる、実にフレキシブルで才能豊かななバンドです。同時に Herbrand のオルガンからメロトロン、シンセサイザーまで自在に操るエピカルなキーボードサウンドが、他の Extreme Metal との大きな差異を生んでいるとも言えますね。
特に、”Axioma Ethica Odini” でシーンの売れっ子プロデューサー Jens Bogren を起用してからは神がかっており、前作 “Riitiir” ではもはや Extreme Metal の枠にさえ収まり切らない、完璧な構成美を誇る神々しいまでに進化したエピックサウンドを完成させていました。
昨年リリースした “In Times” は、”Riitiir” という一つの完成形を経て、現在の成熟したバンドが新たに勇壮でプリミティブな原点に立ち返ったレコードと言えるでしょう。
アルバムオープナー、”Thurisaz Dreaming” はバンドの過去と現在が溶け合った “In Times” を象徴するような楽曲です。ノルウェーが誇る強烈なブラストビートを元にした、怒りに満ちた Blackend のブリザードで幕を開ける巨人の夢は、確かに初期の ENSLAVED を彷彿とさせます。Grutle Kjellson の邪悪で無慈悲な叫びは、彼らが今でも”古い価値観”を守り続けていることの証です。しかし、楽曲はスムーズに、違和感もなく、バンドのメロディック、プログサイドへと移行し、彼らの武器であるクリーンボーカルを伴った優雅でアンビエントなサウンドを響かせるのです。
ブリットロック的な感覚さえ存在する、キャッチーで美しく、オーガニックな “Building With Fire” にしても、残虐なオーラを纏ったスクリームと共に、ダークなパッセージが用意されていますし、”One Thousand Years of Rain” ではメロディックに疾走するエクストリームパートに呼応する、彼ら独特の浮遊感溢れるコーラスが白眉です。この振れ幅の大きさを自然に感じさせる、見事なバランス感覚こそが、アルバムの肝だと言えるのではないでしょうか。
同時に、前作に比べて、良い意味でラフで空間が目立つ “In Times” は、ドラマー Cato Bekkevold の強靭なタイム感、バラエティー豊かで個性的なフィルインの数々がリスナーを惹き付ける重要なランドマークとなっていることは記して置くべきでしょう。
特筆すべきは、タイトルトラック “In Times”。ENSLAVED の先進的で型にはまらないドラマ性を集約したかのような楽曲は、虚無なる宇宙を漂うかのようなサイケデリックなイントロから、バンドの光と影を反映するかのように、幻想的な神秘性と無慈悲な残忍さが交差します。ブラック、サイケ、プログ、アグレッション、アトモスフィア、ハーモニー、そして至高の構成美。ENSLAVED を形作る全ての要素が内包されたかのような10分間の大曲は、間違いなく彼らの新たなシンボルとなるはずです。
今回弊誌では、バンドの創立メンバーでギタリスト、Ivar Bjørnson にインタビューを行うことが出来ました。90年代からシーンを牽引し続けてきた人間の言葉はやはり重いです。どうぞ!!

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ENSLAVED “IN TIMES” : 9.5/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MARILLION : F.E.A.R.】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PETE TREWAVAS OF MARILLION!!

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One Of The Greatest Prog Legend From England, Marillion Has Just Released Their Best Album In Two Decades, “F.E.A.R.” !!

DISC REVIEW “F.E.A.R.”

イングランドを代表する Prog アクト、MARILLION が、ここ20年における彼らの最高傑作とも評される新作 “F.E.A.R.” をリリースしました!!
コンセプト、リリック、ミュージック、全てが異次元のクオリティーで深く冷厳に溶け合ったアルバムは、キャリア38年にしてバンドの新たなマイルストーンとなるでしょう。
Prog Rock がコマーシャリズム、POP の波に飲まれた80年代に、GENESIS 譲りのドラマ性とシンフォニーを携えて颯爽とシーンに登場した MARILLION は、ボーカル Fish のカリスマ性、シアトリカルなパフォーマンスとも相俟って Neo-Prog と呼ばれる新たなムーブメントの主役となって行きます。とは言え、彼らの音楽は決して70年代の回顧のみに収まるものではありませんでした。
New Wave, Heavy Metal の風を受けて、巧みにトレンドを反映し、実験性を孕んだそのサウンドは、今となってはやはり Pomp Rock と呼ぶ方が相応しいようにも思えます。初期の作品群からは、U2 や POLICE といった正統派ブリットロックから、IRON MAIDEN のハードなエッジまでを血肉として、Prog Rock を一つ先のステージに進めようと試みていたことが伝わりますね。
ボーカルが Fish から Steve Hogarth にチェンジし、1994年に制作したコンセプトアルバム “Brave” は Pomp Rock バンドとしての MARILLION が結実した瞬間でした。
インタビューにもある通り、Prog Rock 特有のファンタジー性と距離を置き、ダークかつリアリズムに拘ったテーマで勝負した作品は、ダイナミックで強く空間を意識し、アンビエントさえ取り入れながら、際立った音楽的表現力、センスと共に、音楽史に新たな章を書き加えたのです。
そしてその試みは勿論、現在 Modern Prog, Post-Prog シーンの Guru として尊敬を集める Steven Wilson と、彼が率いて来た PORCUPINE TREE とも強く共鳴していたことは明らかでしょう。
それから22年の月日を経て、リスナーの元に届けられた彼らの新しいマスターピースは、”F.E.A.R.” と名付けられました。”F*** Everyone And Run” を略して “F.E.A.R”。この実にセンセーショナルなタイトルは、やはり現実的で、社会問題に目を向けた、現在の MARILLION らしい極めてリアルなコンセプトを表現しているのです。具体的には銀行や政治の汚職、Brexit、欧州議会の腐敗、世界的資本主義の崩壊など、まさに英国が抱える現代社会のダークサイドを投影した濃密な68分に仕上がっています。
アルバムオープナー、”El Dorado” は悲観的な未来を予測した楽曲。PINK FLOYD の “The Division Bell” を想起させる大曲は、インタビューで Pete が “ヨーロッパ周辺には、大きな変化が起こりつつあり、それを通して誰かが僕たちをコントロールする計画を立てているような予感、予兆が存在するんだよ” と語った通り、MARILLION が抱く未来に対する “Fear” の前兆を表現しているようにも感じます。前作のオープナーで、奇しくも同じ17分の大曲 “Gaza” と対となる存在と言えるかも知れませんね。
同時に “El Dorado” は Mike Kelly のエレクトリックピアノからオルガンまで自在に操る見事なキーボードサウンドと、まさにトップフォームな Steve Rothery の物語を紡ぐギターソロがアルバムを通して重要な鍵となることも伝えています。
そしてやはり、特筆すべきは H こと Steve Hogarth のキャラクターになりきった壮絶な歌唱でしょう。作品を象徴するテーマである、持つ者と持たざる者、世界的資本主義の拡大による”エリート”の出現と彼らの保身についての組曲 “The New Kings” において、H は全身の感情を振り絞り、アルバムタイトルともなった “F*** Everyone And Run” と歌い紡ぎます。その瞬間、センセーショナルでともすればチープにさえ思えたその一節は、悲しみの感情を掻き立て、世界の状況を真摯に考えるきっかけを与える魔法の言葉へと変化するのです。RADIOHEAD を想起させるコンテンポラリーなセンチメンタリズムを見事にコンセプトと融合させ、MARILLION が現代にプロテストソングを蘇らせたと捉えることも可能でしょう。
THE BEATLES から脈々と繋がる UK の血を受け継ぎながら、
真の意味での Progressive を体現したアルバム “F.E.A.R.” 。今回弊誌では、1982年からバンドを支え続ける、フレキシブルなベーシスト Pete Trewavas にインタビューを行うことが出来ました。ヨーロッパで絶大な支持を得ている MARILLION ですが、メッセージにもある通り、今度こそは日本のファンにもアピールすると信じます。どうぞ!!

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MARILLION “F.E.A.R.” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUBROSA : FOR THIS WE FOUGHT THE BATTLE OF AGES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH REBECCA VERNON OF SUBROSA !!

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Minnesota Based Dramatic-Doom Quartet, SubRosa Has Just Released Beautiful, Magnificent Masterpiece “For This We Fought the Battle of Ages”!!

DISC REVIEW “FOR THIS WE FOUGHT THE BATTLE OF AGES”

ソルトレイクシティの Dramatic-Doom マスター、SubRosa が自身の最高到達点 “For This We Fought the Battle of Ages” をリリースしました!!一世紀も前に書かれた SF ディストピア小説にインスピレーションを得て制作されたアルバムは、バンドのアイデンティティーである Dramatic-Doom のスケールを一層高めた、様々な音楽ファンに愛されるマイルストーンとなるでしょう。
SubRosa は Doom Metal バンドには珍しく、女性ボーカル Rebecca Vernon のミスティックな歌唱を中心に据えています。加えて、Sarah Pendleton と Kim Pack のダブルヴァイオリンとアディショナルボーカルが唯一無二の美麗な Doom を創出しているのです。
ALCEST や DEAFHEAVEN を見れば分かる通り、近年、メタルに “Beauty”, “Atmosphere” を持ち込む、才気溢れるバンドが注目を集め、シーンの限界を押し広げていますが、SubRosa のユニークなラインナップが生み出す手法、冒険、マジックは中でも際立っていると言えるでしょう。
インタビューにもある通り、”For This We Fought the Battle of Ages” はロシアの反体制活動家 Yevgeny Zamayatin の著書 “We” に触発された作品です。当時のソヴィエト初期社会主義時代の、閉塞された状況を描き揶揄したディストピア小説は、しかし、政府による管理、監視、支配という、実は現代社会が抱える問題に読み解くことも可能です。SubRosa はその命題を、人生、死、自由、愛といったテーマを与えた楽曲を通して、エピカルに、ドラマティックに、そしてドゥーミーに描いているのです。
アルバムオープナー、15分半のエピック、”Despair Is a Siren” は深化したバンドを象徴するような1曲です。Doom という特性上、勿論、長くなりがちな楽曲ですが、しっかりとストーリーやシーンを描写する彼女たちにとって、この長さは意図してデザインされた SubRosa’s Way。
静寂が支配するイントロとラウドで実験的なパートの対比が生むボリューム、テンポのダイナミクス、見事にレイヤーされたトリプルボーカルの魔術、そしてデュエットの如くメロディーとカウンターメロディーを行き来する、複雑で美麗なボーカルとヴァイオリン。バンドのトレードマークとも言える要素が、寄せてはは引く波のように揺らぎつつ、リスナーへと届きます。同時に、六拍子とリズムにフォーカスしたディストーションギターが交わり流れ出すカオスの潮流は、SubRosa が NEUROSIS 以来脈々と繋がる Experimental Metal の落胤であることを主張していますね。
アルバムの中心に据えられた “Black Majesty” も同様に15分を超える大曲。東洋的とも感じられるエスニックでエモーショナルなヴァイオリンが先導する、プログレッシブで極上の展開美を誇るこのエピックにおいて、Rebecca は “Isn’t it beautiful?” とリスナーに問いかけます。その1節、歌声からは “Doom Metal だけど美しいでしょ?” という自負心、アイデンティティーが強烈に伝わりますね。
後半の BLACK SABBATH meets GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR とでも形容したくなるパートでは、リズム隊を中心に、群を抜いたバンドアンサンブルを聴かせることも記して置くべきでしょう。
また、”Il Cappio” では Rebecca の多彩な一面を覗かせます。バンジョーと共に紡がれるリリックは何とイタリア語。囁くようにスイートなトーンで歌う新しいアプローチにより、陰影を帯びた切なくもフォーキッシュな楽曲は、続く “Killing Rapture” の完璧なプレリュードとして機能していると共に、作品の素晴らしいアクセントとして色を添えています。
ドラマティックでプログレッシブ。”美”にとことんまで拘り、”戦い”抜いた野心的な “For This We Fought the Battle of Ages” は、まさにモダンメタル、Experimental Metal, Post-Doom / Sludge の最新型、金字塔として、凛然と輝く名作に仕上がりました。今回弊誌では、バンドの創立メンバーで、ボーカル/ギター、無数の声を使い分ける才女 Rebecca Vernon にインタビューを行うことが出来ました。日本初取材です!どうぞ!!

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SUBROSA “FOR THIS WE FOUGHT THE BATTLE OF AGES” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【downy : 第六作品集『無題』】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROBIN AOKI OF downy!!

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One Of The Greatest Post-Rock, Dark Electronic Outfit From Japan, downy Has Just Released Deep And Cold New Masterpiece “Mudai Ⅵ” !!

DISC REVIEW “第六作品集『無題』”

日本の至宝、5人組ロックバンド downy が新作 “第六作品集『無題』” をリリースしました !!
日本における Post-Rock の先駆けとも評される downy は、映像担当のメンバーが存在する特異な形態のバンドです。当初から、映像と音楽の融合を掲げて来たバンドは、同時に現在フェスやクラブシーンに根付きつつある VJ の先駆者とも言えるでしょう。また、音楽担当以外のメンバーを擁するという点では、勿論初期の KING CRIMSON と通じるフレキシブルな集団でもあるのです。
Post-Rock と一言で語られることも多い downy の音楽ですが、一つのジャンルで括ってしまうには、彼らの才能は多彩で、先鋭的で、オリジナル過ぎると感じます。
静と動を巧みに行き来する独特のダイナミズム、ナチュラルな変拍子の使用が創出する緊張感、儚くも美しいメランコリー、文学的なリリックにレイヤーされた豊かなエモーションが、Hardcore, Post-Hardcore, Psychedelic Rock, Prog Rock, Metal, Jazz, Hip Hop, Electronica, Trip Hop など多様なフィルターを通して downy の世界観、芸術として昇華し、リスナーの元に届けられるのです。
9年の活動休止の後、リリースされた前作 “第五作品集『無題』” は、休止以前と同様、チャレンジングでストイックな作品でしたが、同時に以前、アルバムを覆っていたどこか無機質なムードに仄かな光が射し込んだような、暖かな変化も感じられましたね。
それから3年の間に、downy は休止以前よりも、シーンの軸としてある種の責任感を背負いながら動いてきたようにも思われます。
2014年のフジロック初出演、クラムボントリビュートアルバムへの参加、THE NOVEMBERS への楽曲提供、そして、何と言っても同世代で日本が誇るオルタナティブの雄、envy, Mono と共に Synchronicity” とのコラボレーションから “After Hours” というフェスを立ち上げるなど、実に積極的に活動を続けて来ています。
そういった成果が結実したのが新作 “第六作品集『無題』” であると言えるかも知れませんね。演奏にはさらに人間味を加え、青木ロビン氏のボーカルにはエモーション以上のスピリチュアルな何かが宿っているようにも感じます。
アルバムオープナー、”凍る花” はこの新たな傑作を象徴するような楽曲です。レコードの幕開けを告げるシンセサウンドが鳴り響くと、リスナーは驚きと共に急速に downy ワールドへと誘われます。前作で仄かに射し込んだ暖かな光は、実はこのアルバムでは感じられません。7拍子が導くヒリヒリとした緊張感、さらに説得力を増したメランコリックな歌唱が伝える冷たく蒼い世界観は、まさしく downy 唯一無二のもの。初期の感覚、原点を、現在の成熟した downy が奏でるといったイメージも少なからず存在するようにも思います。
続く”檸檬” はウッドベースとツッコミ気味のハイハットがジリジリとした焦燥感を生み出す壮絶な5拍子。”海の静寂” は R&B 的な黒い歌唱と、静寂を切り裂くギターのうねりが印象的。プレイ自体は人間らしい感情の熱を帯びているにもかかわらず、殺伐とした冷ややかな雰囲気を保ち続けるアルバムは、やはり異形なまでに特殊です。
同時に、”色彩は夜に降る”, “親切な球体” にも言えますが、リズム隊の究極に研ぎ澄まされた、ミニマルかつインプレッシブなリフアプローチが冴え渡った作品とも言えますね。
今回弊誌では、青木ロビン氏にインタビューを行うことが出来ました。内容にもある通り、メタル、プログロックのファンにも強く聴いていただきたいバンドです。どうぞ!!

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downy “第六作品集『無題』” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KANSAS : THE PRELUDE IMPLICIT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PHIL EHART OF KANSAS !!

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Legend Is Back!! The Throne Of US Prog Rock, Kansas Has Just Released Their New Masterpiece “The Prelude Implicit” For The First Time In 16 Years !!

DISC REVIEW “THE PRELUDE IMPLICIT”

US Progressive Hard の始祖にして、アメリカにプログロックを根付かせた英傑 KANSAS が何と2000年以来16年振りの新作 “The Prelude Implicit” をリリースしました!!
オリジナルメンバー、シンガー、メインソングライター、つまりはバンドの顔であった Steve Walsh の脱退と、3人の新メンバー加入を経てリリースされた作品は、新たな生命を得たかのような瑞々しさと自信に満ちています。
新しいフロントマン/キーボーディスト、Ronnie Platt の歌唱は、間違いなく作品に強い生命力を与えています。映画 “Rock Star” のように、全く無名だった Lombard のカバーバンドのシンガーは、突如、自身も敬愛するプログレジェンド KANSAS のフロントマンに抜擢されました。そして、JOURNY の Arnel Pineda のように、そのチャンスを見事ものにしたのです。
「僕のゴールは Steve の代わりになることじゃないよ。それは誰にも不可能だからね。だけど、KANSAS の品位を保っていく責任はあるんだよ。」と語る彼のパフォーマンスは、Steve へのリスペクトを提示しながらも、若さと推進力を伴い実に魅力的。
特に、”The Unsung Heroes” での歌唱は傑出しています。インタビューでも語ってくれたように、国のために死んで行った戦士たちへの鎮魂歌は、普遍的なアメリカンシャッフルを、中間部のギター/ヴァイオリンのアンサンブルが素晴らしいとは言え、ほぼ歌唱のみで名曲の域まで高めているという点において、JOURNY の “Lovin’, Touchin’, Squeezin'” と通じるものを感じます。発する極上のエモーションと、凄まじいレンジのハイノートは Walsh の代役以上の個性を間違いなく発揮していますね。
新ギタリスト Zak Rizvi の貢献にも触れておくべきでしょう。共同プロデューサー、共同ライターとしてもクレジットされた彼の才能は、今回インタビューを受けていただいた Phil と2人きりとなったオリジナルメンバーで、長年バンドを支えてきた隻眼のギタリスト Rich Williams をも充分に刺激したようで、”The Prelude Implicit” では、”Masque”, “Leftoverture” 期のようなスリリングなリフを存分に味わうことが出来ますね。
“Visibility Zero” にはまさにその成果が結実しており、こちらも新メンバー、David Manion がもたらすプロギーなハモンドサウンドとギター、そして勿論 KANSAS を象徴する楽器、ヴァイオリンのトリプルデュエルが無上のスリルを生み、70年代中期の KANSAS をイメージさせつつ、よりヘヴィーな現在のサウンドを提示しています。
さらに、プログレッシブという観点から見れば、8分の大曲 “The Voyage of Eight Eighteen” は KANSAS のプログサイドを象徴する楽曲です。多数のマルチプレイヤーが存在することで可能になる濃厚かつ重厚なサウンド、プログロックらしい変拍子やキメの美学、そしてかつてのユーロプログに対するUSからの憧れが、ヴァイオリンを使用したフォーキッシュなメロディーとして表層化した結果、あの “The Pinnacle” を超えるような新たな名曲として仕上がりました。現役プログロックバンドとしての矜持を見事に示したと言えますね。
勿論、KANSAS と言えば、”Carry On Wayward Son” や “Dust In the Wind” のような POP センスも重要な1面ですが、今作はボーカルメロディーがアルバムを通してカラフルかつ非常に充実しており、コンパクトな “Summer” はキャッチー極まりないメロディックハードソングですし、”Crowded Isolation” の哀愁も深く胸に染みます。
傑作 “Leftoverture” 40周年に、堂々たる王者の帰還です。Anderson / Stolt の “Invention of Knowledge” と双璧を成す、今年の Masterpiece of Prog Rock だと信じます。今回弊誌では、ダイナミックなドラミングで作品のエンジンとなった、オリジナルメンバー Phil Ehart にインタビューを行うことが出来ました。どうぞ!!

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KANSAS “THE PRELUDE IMPLICIT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NICK JOHNSTON : REMARKABLY HUMAN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK JOHNSTON !!

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Canadian Guitar Hero, Nick Johnston Has Just Released Minimal, Mystic, And Emotional Masterpiece “Remarkably Human” !!

DISC REVIEW “REMARKABLY HUMAN”

カナダを代表するインストゥルメンタルギタリスト、Nick Johnston が”傑出した”新作 “Remarkably Human” をリリースしました!!ギターを見事に歌わせたメロディーとエモーション、そして高度なインテリジェンスを兼ね備えたこの作品は、彼のマイルストーンとして更なる飛躍のきっかけとなることでしょう。
Paul Gilbert, Plini, Tosin Abasi, PERIPHERY, THE ARISTOCRATS, POLYPHIA, など新旧問わず才能豊かなアーティストとコラボレートしてきたことからも、この Schecter のストラトシェイプを獲物とした29歳のアックスマンが、”傑出している”ことは明らかでしょう。
そして、彼がこれほどまでにミュージシャンから注目を集めているのは、その”マイナスの美学”によるところが大きいのではないでしょうか。
モダンギターシーンは足し算の世界です。音を足し、ギターの弦を足し、リズムを複雑化し、フラッシーなプレイを追求するプレイヤーが多いと感じます。勿論、それらは非常に魅力的で、重要な冒険ですが、同時に Nick を際立たせることにも繋がりました。
“Remarkably Human” は、THE ARISTOCRATS の Bryan Beller, KING CRIMSON の Gavin Harrison, Plini の Luke Martin を起用して制作されました。前作、”Atomic Mind” ではドラマーも THE ARISTOCRATS の手数王 Marco Minnemann が参加していましたが、PORCUPINE TREE でも活躍してきた Gavin を選んだことからも Nick の向かう先が伝わるように思います。
“Ignore Alien Orders” はインストゥルメンタルギタリストのアルバムオープナーとは思えないような楽曲です。作品で最初に飛び込んでくる音もギターではなくピアノなのですから。しかし、Luke のダークでダイナミックなピアノが Nick の繊細なトーンを導くと、Gavin の巧みなシンバルワーク、Bryan のフレキシブルなベースラインが見事に調和し、”Remarkably Human” で目指すところが顕になります。極限まで楽曲にフォーカスした4人のオーケストラ。フラッシーでもプログレッシブでもありませんが、ここには極上の音楽が存在します。
コンポーザーとして、非常にミニマルな境地へとたどり着いた Nick ですが、インタビューで語ってくれた通り、ほとんどがピアノで作られたという楽曲群は、Plini でもお馴染み Luke Martin の神秘的なサウンドスケープが一つの鍵となっています。”Weakend by Winter” はまさに2人の才能が完璧に噛み合った作品のハイライトですし、昨今のインストゥルメンタル音楽で最も美しい瞬間かも知れません。
コンポーザーとしての Nick にばかり注目して来ましたが、勿論プレイヤーとしても驚異的で、テーマ部分で、Larry Carlton を思わせる巧みな音の選択と、David Gilmour のような強烈なエモーションを提示すると、Guthrie Govan や Steve Lukather を想起させるスリリングでクロマティックなリックの数々により、楽曲は無限に拡がりを見せていきます。ストラトの長所である、オーガニックなアーティキュレーションの使用が白眉で、フレーズの一つ一つが感情を持っているかのようにすら感じますね。
今回弊誌では、マイナスの美学により見事な作品を作り上げた Nick Johnston にインタビューを行うことが出来ました。YOUNG GUITAR 誌でもコラムを持っていた彼は非常に強く来日を望んでいます。2度目の登場となりますね。どうぞ!!

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NICK JOHNSTON “REMARKABLY HUMAN” : 10/10

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