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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OBSIDIOUS : ICONIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LINUS KLAUSENITZER OF OBSIDIOUS !!

“The Wars And Violence In The World Can Only Make You Feel Depressed. I Try To Still Have a Normal Life By Focusing On The Beautiful Things In Life Without Ignoring What Is Happening In The World.”

DISC REVIEW “ICONIC”

「OBSCURA の Steffen と違って、Javi はギターと歌を同時に演奏する必要がない。だから、もう複雑さにも限界はないんだよ。アルバムのプロダクションはとてもモダンで、音楽の中の情報がよりクリアに伝わってくる。それに、僕たちはパワー・メタルの要素を取り入れているのも特徴だ。テクデスとパワー・メタルのミックスはあまり見かけないものだし、プレイしていて楽しかったね」
Linus Klausenitzer, Rafael Trujillo, Sebastian Lanser, Javi Perera。OBSCURA, ALKAROID, ETERNITY’S END, JUGGERNAUT といったプログレッシブ/テック・メタルの綺羅星から集結した4人。これまでも、複雑かつテクニカルなメタルの迷宮で存分に好き者たちを魅了してきた英傑たちは、それでも飽き足らずに複雑の限界を越えようとしています。ただし、黒曜石でできた新たな惑星 OBSIDIOUS はこれまでの星々とは全く別の美しさを誇ります。”Iconic” と名付けられた集合体の象徴は、ウルトラ・テクニカルでありながら敷居の高い堅苦しさとは無縁。このアルバムは、炎のようなインテンスを保ちながら、耳を捉えて離さないメロディーの洪水に満たされています。さながら、溶岩と濁流がクラッシュして黒曜石が生まれる奇跡の瞬間のように、OBSIDIOUS はパワー・メタルとデスメタルをテクニカルな化学反応で一つにしていくのです。
「僕たちはあの頃のバンドの雰囲気に不満で、もう将来の進展、未来の展望が見えなかったんだ。残念ながら、Steffen は僕たちの脱退にとても腹を立てている。もう連絡は取っていないよ。でも、OBSCURA に対して悪い感情は持っていないし、彼らの成功を願っているんだ」
4人中3人がかつてテック・メタルの巨星 OBSCURA の住人で、なおかつ “OBS” で始まるバンドを結成。これで OBSCURA を意識しないリスナーはいないでしょう。しかし、本人たちはどこ吹く風。巨星の絶対的独裁者 Steffen Kummerer から解き放たれ自由を手にした3人は、新たな挑戦にその身を躍らせます。パワー・メタルの咀嚼ももちろん、その一つ。加えて、Rafael Trujillo と Linus のタッグが永続的に復活したことで、多弦ギターとフレットレス・ベースによる異次元のフレットレス・マッドネスが繰り広げられることにも繋がりました。”フレットレス楽器は人間の歌声に近い” と Linus が語る通り、そうして OBSIDIOUS の音楽はより有機的な人間味を帯びることとなったのです。
「結局、世界の戦争や暴力は、自分を憂鬱にさせるだけ。僕は、世界で起こっていることを無視することなく、人生の美しいものに焦点を当てることで、まだ普通の生活を送れるよう努力しているんだよ」
人間味を帯びたのは、何も音楽だけにとどまりません。宇宙をテーマとしていた巨星を脱出した3人とボーカルの Javi Perera は、ロックダウンによるインスピレーションの “無” や、戦争の暴力を目の当たりにして地面に降り立とうと決意します。日常からあまりにもかけ離れた壮大な宇宙の話から、より人間らしいテーマを扱おうと。性的に加虐嗜好が行きすぎた人の話から、認知症とその周りの苦悩まで、誰にでも起こり得るテーマに焦点を当てながら、OBSIDIOUS は人の営みに黒曜石の輝きを探していきます。その探索に、Javi の看護師としての “体験” が生きていることは言うまでもないでしょう。
それにしても、モダンなテクデスからブラッケンドな息吹、スピード違反のアルペジオ、GOJIRA 風のチャグチャグ、ドラマチックなリード・メロディにジェットコースターのソロワークまで、互いの通れない音の隙間をぬいながら、ジャンルの障壁をいとも簡単にぶち破る弦楽隊の多様な才能には恐れ入ります。特に Linus にとって、その音楽的な寛容さは、OBSCURA はもちろん、様々なセッション・ワーク、パワー・メタルの ETERNITY’S END, そしてより伝統的なプログを摂取した ALKAROID で養われたものに違いありません。
そして、見事なオーケストレーションに、硬軟、単複、自由自在なカメレオンのボーカル。知的でエンターテイメント性の高いヘヴィ・メタルと言うことは簡単ですが、その両極端を勇気を持って結びつけるバンドは決して多くはないのですから。例えば、メタル版オペラ座の怪人とか、ブロードウェイのテクニカル・デスメタル。そんな表現を使いたくなるほど、OBSIDIOUS の挑戦は際立っているのです。
今回弊誌では、Linus Klausenitzer にインタビューを行うことができました。「Warrel Dane のファースト・ソロアルバム “Praises to the War Machine” を再び見つけたんだ。このアルバムには素晴らしい曲がたくさんあって、彼のボーカルはとても個性的に聞こえるね」 4度目の登場。どうぞ!!

OBSIDIOUS “ICONIC” : 10/10

INTERVIEW WITH LINUS KLAUSENITZER

Q1: I know this question has been asked tens of thousands of times before, but let me start with this: what happened to OBSCURA?

【LINUS】: Haha, first of all let me thank you for this interview. It’s hard to describe in a few sentences why we left Obscura but I will try. We were unhappy with the atmosphere in the band and didn’t see any progress for the future anymore. It takes a lot of energy and time playing in a band. Even Obsidious is a very new band and it takes time to build up a brand, we feel more fulfilled. We have the same musical language and have a productive way of working together on our goals.

Q1: 何万回も聞かれた質問だとは思いますが、まずはこの話から始めさせてください。OBSCURA に何が起きたのですか?

【LINUS】: ハハ、まずは、またインタビューをありがとう!僕たちが OBSCURA を脱退した理由を数センテンスで説明するのは難しいけど、やってみるね。
僕たちはあの頃のバンドの雰囲気に不満で、もう将来の進展、未来の展望が見えなかったんだ。バンドで演奏するには多くのエネルギーと時間が必要だ。OBSIDIOUS は新しいバンドで、たしかにブランドを確立するには時間がかかる。だけど、僕たちは今がより充実していると感じているんだよ。みんなが同じ音楽言語を持っていて、目標に向かって一緒に働く生産的な仲間だからね。

Q2: You have been with OBSCURA for about 10 years and many felt that you were the backbone of the band, so your departure was very unfortunate. Of course, you are also a colleague of Christian’s at ETERNITY’S END, but how do you feel about OBSCURA and Steffen now?

【LINUS】: It surely wasn’t an easy decision to leave the band. After more than 2 years after the split I feel completely happy about my decision though. It allowed me to develop as a musician and as a composer. In Obsidious I play with some of the best musicians I know, and I deeply believe that we created something unique with our debut album. Also my session jobs are better than before and I play on the biggest stages of my career.
Christian is a good friend of mine and we still make plenty of music together. In the next couple of weeks the new Alkaloid album will be finished, that we have recorded together. Unfortunately Steffen is very resentful about the split. We don’t have any contact anymore. I don’t have bad feelings about Obscura though and wish them all the best.

Q2: あなたは OBSCURA に10年近く在籍し、まさにバンドの屋台骨となっていただけに、今回の脱退を残念に思う人は多いでしょうね。
今も Christian とは ETERNITY’S END で一緒ですが、新しい OBSCURA に対しては、どう思っていますか?

【LINUS】: バンドを脱退するのは確かに簡単な決断ではあなかったよ。だけど、別離から2年以上経った今、自分の決断に完全に満足していると感じているんだ。あのバンドを離れたおかげで、ミュージシャンとして、作曲家として成長することができたからね。
OBSIDIOUS では、僕の知る限り最高のミュージシャンたちと演奏しているし、デビュー・アルバムでユニークなものを作り上げることができたと深く信じている。それに、セッションの仕事も以前よりうまくいっていて、自分のキャリアの中で最も大きなステージで演奏していると感じているよ。
Christian は僕の親友で、今でも一緒にたくさんの音楽を作っているんだ。数週間後には一緒にレコーディングした ALKALOID の新しいアルバムが完成する予定さ。残念ながら、Steffen は僕たちの脱退にとても腹を立てている。もう連絡は取っていないよ。でも、OBSCURA に対して悪い感情は持っていないし、彼らの成功を願っているんだ。

Q3: After you left OBSCURA, you formed OBSIDIOUS with Rafael and Sebastian. I think many people were confused because three of the members are ex-OBSCURA and the band name is similar. Was that intentional?

【LINUS】: Not really. We had a list of over 100 band names and made a vote. The name ‘Obsidious’ won the vote. We were aware that the first 3 characters in the band name are the same, but we didn’t choose it because of that.
We liked the image of the Obsidian in our heads. It’s a vulcanic stone created when lava is hit by water. This extreme reaction refects the intensity of music very well in my opinion.

Q3: 多くのファンは、OBSCURA を脱退した3人が結成した OBSIDIOUS というバンドの名前に混乱したと思います。意図的に似た名前にしたんですか?

【LINUS】: そういうわけでもないよ。100以上のバンド名のリストがあって、全員で投票をしたんだ。で、OBSIDIOUS という名前が票を集めたんだ。だから、バンド名の最初の3文字が同じであることは意識していたけど、それで選んだわけではないんだよ。
僕たちは頭の中にあるオブシディアン (黒曜石) のイメージが好きだったんだ。溶岩に水が当たった時にできる火山石。そのエクストリームな反応は、僕たちの音楽のインテンシティをとてもよく反映していると思うからね 。

Q4: Personally, I feel that compared to OBSCURA, OBSIDIOUS music has more catchy, ear-catching melodies and appeals to a wider audience. Really Great album! What are your thoughts on the differences between OBSCURA and OBSIDIOUS?

【LINUS】: That’s great to hear! Thank you! The biggest difference is the different singing style for sure. We were very lucky to find our singer Javi. He is a master with clean vocals, growls and everything in between. Since he doesn’t need to play guitar and sing at the same time, we didn’t have any limits with complexity anymore as well. The album production is very modern and the information in the music is transported clearer. Also the power metal elements are something we featured. This mix you can’t find often and it was fun to play with.

Q4: 個人的に、OBSCURA と比べて OBSIDIOUS の音楽は、よりキャッチーで、耳を捉えるメロディが多く、幅広い層にアピールしそうだと感じましたよ。素晴らしいアルバムですね!
あなたは、2つのバンドの違いをどう捉えていますか?

【LINUS】: それはうれしいね! ありがとう!一番大きな違いは、確かに歌のスタイルだよね。シンガーの Javi に出会えたことはとても幸運だったよ。彼はクリーン・ボーカル、グロウル、そしてその中間のすべてをこなす達人だからね。
OBSCURA の Steffen と違って、彼はギターと歌を同時に演奏する必要がない。だから、もう複雑さにも限界はないんだよ。アルバムのプロダクションはとてもモダンで、音楽の中の情報がよりクリアに伝わってくる。それに、僕たちはパワー・メタルの要素を取り入れているのも特徴だ。テクデスとパワー・メタルのミックスはあまり見かけないものだし、プレイしていて楽しかったね。

Q5: What do you see as the advantages of fretless instruments in heavy metal?

【LINUS】: A fretless instrument allows to play with more phrasing. It’s a better way to transport emotions because it’s closer to a human’s singing voice.

Q5: 複雑さに限界はないと仰いましたが、多弦の魔術師 Rafael とあなたのフレットレスで、弦楽器の凄まじい饗宴が楽しめるのも OBSIDIOUS の強みですよね?

【LINUS】: フレットレスの楽器は、もっと幅広くて豊かなフレージングを可能にするんだ。人間の歌声に近いから、感情を伝えるのに適しているんだよ。

Q6: Unlike OBSCURA, “Iconic” deals with a lot of very human subjects, from BDSM to dementia, right? Does the fact that Perera is a medical professional help you to delve deeper into the subject matter?

【LINUS】: Wow, it’s great that you recognized this. Javi had a stressful time working as a nurse in the corona unit at his hospital. This happened exactly at the same when he joined the band. I am sure it had an influence on the lyrics that he wrote.

Q6: OBSCURA とは違って、OBSIDIOUS は、BDSM から認知症まで、もっと人間的な題材を扱っていますよね?
Javi が医療関係者であることも、この題材を掘り下げる理由なんでしょうか?

【LINUS】: いやあ、よくぞ気づいてくれたね! Javi は、所属する病院のコロナ病棟で看護師として働きながら、ストレスの多い日々を送っていた。それがちょうどバンドに参加した時期と重なったんだ。きっと、そんな日々が歌詞に影響を与えたんだろうな。

Q7: The world has changed dramatically since our last interview, with pandemics and wars. Many people have gone through dark times, but has your music, themes and life been affected by those changes?

【LINUS】: I can only speak for myself. Without experiences I feel not inspired enough to compose. So I had to force different situations in my life during the lockdowns. Once I changed the decoration of a room and it had an impact already. I wrote almost a complete song the same night.
The wars and violence in the world can only make you feel depressed. I try to still have a normal life by focusing on the beautiful things in life without ignoring what is happening in the world.

Q7: 前回のインタビューから、世界は大きく変わりました。戦争にパンデミック…この暗い時代はあなたの音楽やテーマに影響を与えましたか?

【LINUS】: 僕は自分自身のことを話すことしかできないけど、体験がなければ、作曲するほどのインスピレーションは得られないと思うんだ。だから、体験のないロックダウンの間、僕は生活の中にさまざまな状況を作る必要があったんだよ。一度、部屋の装飾を変えただけで、もうインパクトがあった。その夜、ほぼ1曲書き上げたくらいでね。
結局、世界の戦争や暴力は、自分を憂鬱にさせるだけ。僕は、世界で起こっていることを無視することなく、人生の美しいものに焦点を当てることで、まだ普通の生活を送れるよう努力しているんだよ。

Q8: Well, I understand you are currently working on a solo album as well! Exclusively for our magazine (hehe), could you tell us what you can tell us about the members, themes, and its musicality?

【LINUS】: Haha, I am glad you mention it. I announced that I want to release a solo record 2 years ago already but so far I couldn’t find time to finish it yet. There were a lot of unexpected opportunities for my career and fortunately I didn’t have any time pressure to release the solo record. This’s why it took so long. I worked on the record when I had some time and now it’s the right moment to finalize it. The difference on this record is, that I have an artistic vision that I don’t need to make any compromises for. In the last couple years I released a lot of very complex albums with different bands. This time I wanted to write music that is more straight and easy to listen to. It’s another kind of challenge for me. Right now I am in the studio with Hannes Grossmann who mixes the album. The rest of the musicians I will announce soon. Just follow me on Social Media or Discord and subscribe to my newsletter if you want to be updated.
I have a very special bass that I will be featured on this album for the first time and some very specific guests.

Q8: ところで、あなたはソロ・アルバムの制作も進めているそうですね?弊誌だけに独占で (笑)、その内容を話していただけますか?

【LINUS】: ははは、気にかけてくれてありがとう!2年前にソロ・アルバムをリリースしたいと発表したんだけど、完成させる時間がなかなか取れなくてね。僕のキャリアには予期せぬチャンスがたくさんあって、ありがたい話なんだけど、ソロ・レコードをリリースする時間的なプレッシャーがなかったんだ。だから、これだけ時間がかかったんだよ。時間があるときにレコードに取り組み、今がそれを完成させる正しい瞬間だと思う。
このアルバムが他の作品と違うのは、僕には妥協する必要のない芸術的なビジョンがあるということ。ここ数年、僕は様々なバンドと非常に複雑なアルバムをたくさんリリースしてきたね。だから今回は、もっとストレートで聴きやすい音楽を作りたかったんだ。これは僕にとって、また別の種類の挑戦なんだよ。
今、僕はスタジオで Hannes Grossmann と一緒にアルバムのミキシングをしているところだ。他のミュージシャンについては、近々発表する予定だよ。ソーシャルメディアや Discord で僕をフォローして、ニュースレターを購読してくれたら、最新情報をゲットできるよ。
このアルバムで初めてフィーチャーされる特別なベースと、とても特別なゲストがいるんだ。

LINUS’S RECRNT FIVE FAVORITE ALBUMS

I have just found again the first solo album of Warrel Dane in my playlists: ‘Praises to the War Machine’. There are great songs on this album and his vocals sound very personal. I also enjoy the Smith/Kotzen project a lot. They have just released a live album. I love the music that both musicians made in the past. I couldn’t believe to read that they make albums together now. In my daily playlist you can also find the recent Tribulation record, the new albums of Soilwork and Soreption.

僕のプレイリストから、Warrel Dane のファースト・ソロアルバム “Praises to the War Machine” を再び見つけたんだ。このアルバムには素晴らしい曲がたくさんあって、彼のボーカルはとても個性的に聞こえるね。Smith/Kotzen のプロジェクトもとても気に入っているよ。彼らはちょうどライブ・アルバムをリリースしたところ。二人のミュージシャンが過去に作った音楽が好きなんだ。今、一緒にアルバムを作っているなんて信じられないよね。あと、僕のデイリープレイリストには、Tribulation の新譜、Soilwork と Soreption の新譜も入っているよ。

MESSAGE FOR JAPAN

My younger brother has started a company to bring tourists to Japan. Finally it is possible to guides Germans through your beautiful country again.
Japan has always been very special to me. I love the kindness of people and the amazing. If I don’t come with a band to Japan soon, I will book a trip through my brother. Thanks for being loyal follower of my and our music! See you all soon hopefully!

実は、僕の弟が日本に観光客を呼ぶための会社を立ち上げたんだよ。ようやく、ドイツ人が君たちの美しい国を再び案内できるようになったんだ。
日本は僕にとって、いつも特別な国。人の優しさ、素晴らしさが大好きなんだ。もし、僕がこのバンドで日本に行けなかったとしても、弟を通して旅行を予約するつもりだよ。僕と僕らの音楽の忠実なフォロワーでいてくれてありがとう! また近いうちに会おうね!

LINUS KLAUZENITZER

OBSIDIOUS Facebook

OBSIDIOUS Official

SEASON OF MIST

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【BLIND GUARDIAN : THE GOD MACHINE】


COVER STORY : BLIND GUARDIAN “THE GOD MACHINE”

“I think What We Did Now Is How Speed Metal Has To Sound Right Now And This Is How It Can Be Interesting For The New Generation Of Metal Fans.”

THE GOD MACHINE

1984年、ギタリストの André Olbrich は、高校の同級生だった Hansi Kürsch をロックバンドのリハーサル室に誘います。そこから、BLIND GUARDIAN の歴史は始まりました。
「Hansi と僕は修学旅行で酒を飲んでいたんだ。すると突然、彼は King Diamond のように高音で歌い始め、完全におかしくなった。でも僕は同時に、”なんて声なんだ! 信じられない!圧倒されるし、こんなに高い音も出せるんだ!”と思ったんだ」
André はすぐに Hansi を自分のバンドで歌わないかと誘いましたが、Hansi は自分はシンガーではなくギタリストであると主張して断りました。 André のバンドにはすでに2人のギタリストがいて、3人目を加える計画はありませんでした。しかし、2人の間ですぐに妥協が成立します。Hansi のベース/ボーカルとしての参加です。さらに André は最終的に希望をかなえ、1997年、Hansi はベースを置いてボーカルだけに専念することになります。ここに、BLIND GUARDIAN の前身である LUCIFER’S HERITAGE が誕生したのです。
「Hansi が参加した瞬間から、ロックっぽいバンドからメタル・バンドになったんだ」
Hansi が付け加えます。
「André と一緒にバンドを組もうと決めたときから、とても真剣に取り組んでいた。僕ら二人は、夢を生きられない人たちにうんざりしていたんだ。誰もが有名になることについて話していたけど、話すことと実行することは別なんだから」
リハーサル室での地味な活動から抜け出し、新たに LUCIFER’S HERITAGE と改名した彼らは、2本のデモテープをリリースし、ドイツの小さなメタルレーベル、No Remorse Records の目にとまることになります。1988年、彼らはレーベルとレコード契約を結び、その記念として新しい名前を手に入れます。BLIND GUARDIAN。まもなくメタル世界で最も神聖なバンドのひとつとなる名前です。こうして彼らのオデッセイは幕を開けました。

BLIND GUARDIAN の名で最初にリリースされたのは1988年の “Battalions of Fear” で、この作品はより壮大なものに目を向けたスピード・メタルだったと言えます。 André, Hansi, ギタリストの Marcus Siepen、ドラマーの Thomen Stauch は、1987年10月にプロデューサー Kalle Trapp とレコーディング・スタジオに入り、世界の頂点に立ったような気分になっていたと André は明かします。
「スタジオに入ったとき、僕たちはとても高揚していたんだ。ヘヴィ・メタルのシーンの一部になって、自分たちのアルバムを持つことになるとね。録音するのは僕らのデモの曲で、僕らが大好きな曲だったから、最高のアルバムになると確信していたんだ」
“Battalions” のセッションは、この若いバンドにとってスタジオ・レコーディングの猛特訓となりました。クレーフェルトのリハーサル・ルームでデモを作っていた彼らのやり方は、あらゆるミスが目につく無菌状態のスタジオでは通用しなかったのです。”Battalions” は初期のバンドの奔放な野心を、特に “指輪物語” のアラルゴンに感化された中心曲の “Majesty” で見せつけますが、彼らにはまだ学ぶべきことがたくさんありました。特に André にとって、”ギターソロを作曲するべき” という気づきは、今後の BLIND GUARDIAN にとって重要な指針となっていきます。
「もっと時間があれば、もっと良くなっていたかもしれない」と André は振り返ります。「例えばソロの場合、あの時は一発勝負で、運が良ければ2発で録れた記憶がある。2回で録音できなかったものは?自分の問題だ。このままではいけないと思った。次のアルバムでは、通常のバンド・リハーサルだけでなく、一人でリハーサルをして、ギターソロを作曲する必要があるとね。スタジオで自分が何を演奏したいのか、どの音が必要なのかを考えるのではなく、その前に準備する必要があるとわかったんだよ」

“Battalions” がスタジオ・レコーディングの厳しさに対してバンドが準備不足だったとすれば、1989年の “Follow the Blind” は全く別の問題があったと André は言います。
「”Battalions of Fear” では、曲作りに時間的なプレッシャーはなかった。曲は全部できていたからね。デモテープにあった曲で、あと1、2曲書いて、アルバムは完成したんだ。そしたら突然、レーベル・マネージャーが “OK、次のアルバムは1年以内に出してくれ” って言ったんだ。それで僕たちは、まったくナイーブに、”ああ、問題ない!” と言ってしまった。だって、1年なんて結構長いと思ったから」
しかし、その1年はあっという間でした。André は公務員になり、Hansi も見習いとして働いていました。バンドはまだ BLIND GUARDIAN をフルタイムの仕事にすると決めていなかったので、曲作りとリハーサルは仕事の後の深夜に詰め込まれることになっていました。
「要求に応じて音楽を作るというのは、そんなに簡単なことではないとを初めて知った。だから多くのことが急いで行われ、リハーサル室で数回だけアイデアをまとめて曲をリハーサルしたんだ」
とはいえ、”エルリック・サーガ” に感化された “Fast To Madness” などファンタジックなメタルはより存在感を増しました。”Follow the Blind” のために彼らが最後に書いた曲は “Valhalla” で、André はこの曲を単なる “繋ぎ” だと考え、トラックリストから危うくカットするところでした。André の予想に反して今日、この曲は BLIND GUARDIAN の曲の中で最も人気のある曲の一つとなり、ライブの定番曲として観客のシンガロング欲を常に刺激しています。
「僕たちは素晴らしい曲を書くことができた。”Valhalla” は、あまり考えすぎない方が良いという素晴らしい例だ。自分の中から出てくるものをすべて、最初に受け止めてしまえばいい。最初のアイデアを採用する。2つ目のアイデアを待つという選択肢はなく、ただそこにあるものをつかむんだ。それがとても純粋で、とても本質的なことだと思うし、それこそが “Valhalla” なんだ。そして、これこそが純粋な BLIND GUARDIAN なんだ」

“Tales from the Twilight World” は、BLIND GUARDIAN がすべてをまとめ始めたレコードです。エピカルでありながら、比較的ストレートなスピード・メタルを2枚お見舞いした後、”Tales” でバンドは曲がりくねった曲の構成と綿密に重ねられたアレンジを導入し、以降それが彼らの特徴になることを宣言したのです。公務員と労働はすでにバックミラーの彼方にありました。バンドは André と Hansi の仕事になっていたのです。
「最初の2枚のアルバムで稼いだお金を全部つぎ込んで、自分たちの小さなスタジオを買ったんだ。スタジオと同じプロセスが必要だった。学ぶべきだとね。曲を事前にプロデュースする必要があったけど、これは小さなスタジオでしかできない。だから、スタジオ機材を購入したんだ。そして、この技術的な機材を手に入れた瞬間から、Hansi と僕はリハーサルルームで生活するようになった。機械を使って、一分一秒でも早く曲に取りかかろうとしたんだ」
Hansi も変革の時であったことを認めます。
「僕たちはいつもいろいろなことを試すのが好きなんだ。実験に対する情熱は、僕たちのソング・ライティングには欠かせないからね。”Follow The Blind” の後、自分たちで初めてスタジオ機材を手にしたとき、僕たちの選択肢は無限に広がり始めた。これがあの頃感じていたことだ」
“Tales” のハイライトである “Traveler in Time”, “Lost in the Twilight Hall”, “The Last Candle” といった楽曲は、複雑で重く、しかしメロディックでキャッチーな要素を一度に味わうことができました。”Lord of The Ring” では素直に自らの素性を告白。振り返ってみると、これはパワー・メタルの発明、そしてその体系化の始まりようにも感じられますが、2人は会話の中で、意図的にこの用語を避けていました。どのように呼ぶにせよ、”Tales” は明らかにバンドが自分たちの “声” を発見した瞬間でした。
「僕たちは、ミュージシャンとしての自分たちについて考えていた」 と André は言います。「どうすれば自分の個性を生かせるか?リード・ギタリストとしての音色はどうすればいいのか?そして、Hansi はもちろん、ボーカリストとしての自分の個性を見つけ、初めて、僕たちが知っている Hansi のような、カリスマ的なサウンドを奏でたと思う。”Follow the Blind” では、彼はもう少しスラッシーなサウンドを出そうとしていて、どこに行けばいいのかよくわからなかったんだと思う。でも、”Tales” ではわかっていた。そして僕らも分かっていた。みんな、自分たちがどこにいて、どんな音を出したいのかわかっていたんだ」
そして、”Tales” でメインストリームでの成功がもたらされたと Hansi は言います。
「もはや、誰もが BLIND GUARDIAN が何であるかを知っていた。最初の2枚のアルバムよりも当然優れていることは別として、違いを生んだのは人々の意識だった。次のアルバムに対する人々の期待を実感したことで、”Somewhere Far Beyond” の制作は最も重要で困難な曲作りの期間となったんだ」
期待はソングライターとしての自分たちに大きなプレッシャーを与えたと André も同意します。
「だって、”なんてこった、こんなに成功したアルバムがあるのに、どうやったらこれを超えることができるんだ?”って思ったんだから」

今年30周年を迎え記念のツアーも行われた “Somewhere Far Beyond” で BLIND GUARDIAN は、”Tales” のメロディックなアイデアを発展させると同時に、より多くのサウンド要素を導入しました。バグパイプを使った “The Piper’s Calling” とタイトル曲、シンセサイザーによる “Theater of Pain”、さらに “ホビットの冒険” を踏まえた “The Bard’s Song(In the Forest)” では悲しげなアコースティック・ギターを、続編 “The Bard’s Song(The Hobbit)” ではそれを発展させた中世的なサウンドを披露して、バンドは “Tales” における自己発見を倍加させながら、さらに外界へと拡大していったのです。ちなみに、”The Quest For Tanelorn” は、ムアコックのエターナル・チャンピオンシリーズが元ネタ。
「”Tales” から “Somewhere” へ進む中で、明らかな進化があった」と André は言います。「だから、ギターの音をもっとリッチにして、”Tales” でやったことにすべて上乗せしようとしたんだ」
“Somewhere Far Beyond” は同時に、BLIND GUARDIAN がリハーサル・ルーム時代にお世話になったプロデューサー、Kalle Trappe との関係を終了させる作品ともなりました。「彼はプロデューサーとして非常に保守的で、僕がサウンドやプロダクションに関して革新的なアイデアを思いついても、いつもブロックされた」と André は嘆きます。だからこそ、1995年の “Imaginations from the Other Side” でバンドは、METALLICA の80年代を支えた伝説のエンジニア、Flemming Rasmussen を起用することにしたのです。

「彼はミュージシャンの尻を叩く方法を知っている。前任者は、パフォーマンスとグルーヴとキャラクターにしか興味がなかったんだ。でも Flemming は、僕たちをミュージシャンとして押し上げることを望んでいた。だから、最初は指から血が出るほど演奏していたよ。”もう100%やってるよ!”って言っても彼は、”そんなのは認めないぞ!もっと頑張れ!” と言うんだよ」
Flemming がミキシング・ボードの後ろにいることで、BLIND GUARDIAN はこれまでで最もタイトで、プログレッシブかつ最もダイヤルの合ったアルバムを完成させます。ファンタジー全般を礼賛するタイトルトラックにアーサー王伝説を引用した “Mordred’s Song” まで、”想像のアザー・サイド” を祝賀する “Imaginations” は大ヒットし、バンドにとって待望の国際的なブレイクを成し遂げました。世界のメタル・シーンは、ドイツと日本のオーディエンスがすでに気づいてたことにやっと気づいたのです。また、このアルバムはメロディック・メタルが低迷していた時期に発表された、豊かなレイヤーを持つバロック的なパワー・メタルでした。95年と言えばグランジがまだ優勢で、Nu-metal が徐々に台頭し、アンダーグラウンドの世界はますます過激になるデス・メタルやブラック・メタルに固執していました。それでも、André は気にしませんでした。ロンドンから来た彼のヒーローが、道を示してくれたから。
「僕たちは QUEEN を尊敬していたんだ。彼らは常に、何があろうと自分たち自身のことをやっていた。彼らは個性的で、シーンから完全に独立していた。僕たちも同じようになりたかった。他のバンドを見すぎて、成功したトレンドに自分を合わせようとすると、常に先を行くバンドより少し遅れてしまうから下降する一方なんだ。僕たちは何かを発明するバンドになりたかったんだ」

現在では誰もが認める名盤となっているため、当時 “Nightfall in Middle Earth” がいかに大きな賭けであったかを想像するのは困難かもしれません。BLIND GUARDIAN は常にオタク的な性癖を持っていて、お気に入りの SF やファンタジーの本を基にした歌詞を書いていました。
「僕はオタク的だと思ったことはないし、自分がオタクだとも思っていなかった」と Hansi は抗議しますが。「オタクだったのは、 André と Marcus だ。彼らはコンピュータのロールプレイングに夢中だったからね。でも僕はクールな男だった。彼らがそうしてる間に本を読んでいたんだよ」
“Nightfall” では、トールキンの “シルマリルの物語” をベースにした22曲入りのメタル・オペラを制作し、これまで以上にファンタジーの道を突き進むことになります。
「このアルバムは、トールキンのファンや、僕たちのようなファンタジーが好きな人にとって素晴らしいものになると思ったんだ」と André は回想します。「だから、自分たちのためでもあった。商業的な考えは排除したんだ。レーベルがこの作品をあまり好まないだろうことは、もうわかっていた。このアルバムには、ヒット曲やラジオのシングル曲、MTVのビデオクリップ的なものは入っていないからね。それは分かっていた。でも、”だからどうした?自分たちがやりたいことなんだから” って思っていたよ」
“Nightfall” の構成は、バンドにとって新たな挑戦となりました。”Imaginations” のように単独で成立する曲を作るのではなく、全体の物語とどのように相互作用するかを考えなければならなかったから。 André が回想します。
「Hansi は “メランコリックなものが必要だ”, “戦いが必要だ”, “あれもこれも必要だ” と言っていたよ。ファンタジー世界に深く入り込んで、トールキン的な感覚に合うようなアイデアを出そうとしたんだ。今までとは違う作業工程だったけど、とても興味深く、違う道を歩んだその時から多くのことを学んだんだろうな」
「この作品は新たな BLIND GUARDIAN のソングライティングの出発点だったのかもしれない」 と Hansi は言います。「当時はそう感じなかったけど、今思えばここがポイントだったのかもしれない。曲作り全体が常に進行しているんだ。だから、”Imaginations” から新しいものに向かって自然で有機的な進化を遂げることになったんだ」

“Nightfall” は、 André がクラシック音楽とオーケストラ・アレンジメントに興味を持ち始めたきっかけとしても重要な作品であった。このこだわりは、”Nightfall” の次の作品である2002年の “A Night at the Opera” でさらに実を結ぶことになります。「キーボードでクラシックの楽器を演奏して、それをレコーディングできるなんて、本当に驚いたよ」と André は言います。
「僕たちは、壮大でクラシック志向の曲を作り、実験していたバンドのひとつだったんだ。そして、これらのサウンドの融合は素晴らしいものだと今でも思っている。メタル・ミュージックにとてもよく合うんだ。曲のストーリーやメロディーで作り上げるエモーションは、オーケストラが入ればさらに強くすることができるんだよ」
“A Night at the Opera” で最も大胆な試みは、ホメロスの長編叙事詩 “イーリアス” を14分に渡ってシンフォニック・メタルに翻案した “And Then There Was Silence” でしょう。この曲は、オーケストラの楽器をふんだんに使い、コーラスだけが繰り返されるという、ほとんど圧倒的な音楽的アイデアの洪水を実現しています。”Opera” のレコーディングを開始する頃、2人はクラシック音楽のアルバム “Legacy of the Dark Lands” の制作を始めていました。 André は”Legacy” で採用した作曲スタイルに解放感を覚え、それをメタルの文脈で適用しようとしたのです。
「ルールはない。僕はただ音楽で物語を語りるだけ。もちろん、ドラムとギターを加えなければならなかったけど、とてもうまくいった。ヴァース/コーラス/ヴァース/コーラス/ソロ/コーラス/コーラスみたいな普通の曲の流れから抜け出したかったんだ。それに縛られたくなかったんだ。それに、ヘヴィ・メタルには物語をどこかに導いてくれる自由があると感じている。左の道を通って、またまっすぐな道に戻って、別のところに行くこともできるってね。森の中を歩いていて、木が来たらルートを変えるようなもの。ずっとまっすぐな道である必要はないんだよ」

“Opera” をリリースした後、多くのバンドがレトロなアルバムを制作した時期があったと André は嘆息します。
「彼らは80年代のような音を出そうとしたんだ。僕にとっては、それはひどいことで、そうしたアルバムはすべてひどいと感じた。後ろ向きに歩いているような気がしたんだ。彼らは80年代をもう一度再現したかったんだろうけど、何をバカなことを! 時間は一方向にしか流れていないんだ」
BLIND GUARDIAN のカタログの中で見過ごされてきた逸品、”A Twist in the Myth” がそうしたレトロに回帰するバンドに対する André の答えでした。長年のドラマー Thomas “Thomen” Stauch が脱退し Frederik Ehmke が新たに加入。その厳しい制作スタイル、短くしかし密にミックスされた楽曲、奇妙なシンセ音の多用は、そうしたレトロの風やバンド自身の “A Night at the Opera” からも可能な限り距離を置いていました。 André は、”Twist” について今でも、その最高の曲 -“This Will Never End”, “Otherland”, “Fly” は、トップレベルの BLIND GUARDIAN であると信じています。そして彼は、それらをさらに良くするために手を加え続けたいと思っています。
「今聴くと、もっとこうしたらいいのにと思うことがたくさんある。でも、当時、僕たちはこうした音楽の作り方をこのやり方しか知らなかったし、心の中ではベストだったんだ。でも、いつかこのアルバムの曲のいくつかを作り直したいと思っているんだ。素晴らしいアイデアなんだけど、曲はもっといい方法でアレンジできるし、もっとキャッチーになるはずだからね。このアルバムは、初めて聴く人にとって、とてもとても入り込みにくいものだったということが、今になってよくわかる。情報過多になってしまうし、カッコ悪い。今ならこのアルバムをどうプロデュースするかがわかるんだ」

“Twist” の成果に失望した André は、”And Then There Was Silence” の壮大でシンフォニックな実験に立ち返り、そこから前に進むためのインスピレーションを得ようとしました。そしてその頃、 “Legacy of the Dark Lands” のリリースに向けたセッションに没頭していた André は、本物の人間によるオーケストラを BLIND GUARDIAN のアルバムに使用したくてたまらなくなっていました。
「本物のオーケストラを録音して多くを学んだからこそ、壮大なものを書いてみよう、より良いものを作ろうと言って “And Then There Was Silence” をプログラミングしたからね」
プラハ交響楽団は、”A Night at the Opera” の最大級の衝動をより有機的に感じさせる “At the Edge of Time” で重要な脇役となっています。ゲームの主題歌ともなった “Sacred Worlds” と”時の車輪” がモチーフの  “Wheel of Time” はアルバムの中枢として機能し、”And Then There Was Silence” の圧倒的なスケールをややコンパクトにまとめて提供しています。一方で、”Ride Into Obsession” は André の “作曲された” リードギターがメロディアスなフレーズを奏でなければスラッシュと見紛うばかりのアグレッションを纏います。結局、”At the Edge of Time” は原点回帰という名の一時後退で、 André とバンドの他のメンバーが “Twist” の “失敗” を克服するために必要なリセットであったのです。

2015年の “Beyond the Red Mirror” は、”At the Edge of Time” の自然な伴侶となるべき作品でしょう。この2枚のアルバムはほぼ同じシークエンスとペースで構成されていて、この作品では9分の “The Ninth Wave” と “Grand Parade” を、”Edge” における “Sacred Worlds” と “Wheel of Time” と同じスロットに配置しています。 André は当時、エピックモードで作業し、BLIND GUARDIAN のサウンドを盛り上げるオーケストラの使用に満足していました。
「この2枚のアルバムの間で抜本的な改革はしていないんだ。よし、”Tales” と “Somewhere” の間でやったように、さらに良い音にして、このスタイルをさらに進歩させようという感じだったね。”Beyond the Red Mirror” でピーク・ポイントを設定したかった。ソングライティングはそうできたと思うけど、プロダクションはそうじゃなかったんだ」
確かに、”Mirror” のオーケストラの要素は、”Edge” の力強さに比べて妙に弱々しく感じられ、その結果、アルバムは少しスケールダウンしています。それでも、”Prophecies” のようにいくつかの素晴らしい曲が含まれていますが、 André は “壮大なオーケストラの BLIND GUARDIAN 路線” に行き詰まりを感じていたようにも思えます。
「僕にとっては、その時、この壮大なスタイルを続ける必要はないと思ったんだ。しばらくはこれをやっていたが、今は他のことをやる時だ。もう一度激変が必要なんだとね」

その変化はすぐにやってきますが、その前に André と Hansi は20年以上も温めていた愛の結晶をリリースする必要がありました。BLIND GUARDIAN TWILIGHT ORCHESTRA とクレジットされ、エレクトリック・ギターがゼロである “Legacy of the Dark Land” は、2019年に発売されました。”Legcy” に収録されている最も古い曲は、”Nightfall” 時代までさかのぼります。
「純粋な体験について言えば、常に学び続けるプロセスだった」 と、Hansi は説明します。「音楽家としての能力はもちろん、機能的な曲作りや音楽における物理学について、膨大な知識を得ることができた。それは、実際よりも理論的にね。音楽の魂にとって、その知識は効率的なんだよ」
メタルではないアルバムをリリースし、その理由をファンに理解してもらうことができたのは BLIND GUARDIAN が数十年に渡って築き上げてきた実験の証といえるでしょう。バンドは常にAndré と Hansi の実験室であり、”Legacy” は彼らの最も壮大な実験であったと言えます。だからこそ、二人はこの作品をとても大切にしているのです。
「20年という時間の中で、このような学習プロセスがあったのだから、本当に素晴らしいことだ。こうした時間があったからこそ、このアルバムを作ることができた。何も変えたくないんだ。僕にとってあれは完璧なアルバムで、今までで最高の作品だ」

「長い間、僕らの思考を支配してきたオーケストラ・アルバムの後に、僕らが何か声明を出したかったのは確かだ」と Hansi は言います。「今、僕たちはやりたいことを何でも自由にできるようになったんだ。”The God Machine” は、解き放たれたブラインド・ガーディアンなんだ」
“解き放たれた” という言葉は、”The God Machine” にとって完璧な言葉でしょう。少なくとも “A Twist in the Myth” 以来、あるいはそれ以前から、BLIND GUARDIAN のアルバムの中で最もヘヴィな作品なのですから。このアルバムは、”Deliver Us from Evil”, “Damnation” という2曲の強烈なスピード・メタルで幕を開けます。その後に続く “Secrets of the American Gods” は7分間の音の迷宮で、”The God Machine” の中で最も叙事詩に近いもの。この曲は、Marcus のリズムギターを軸に、アレンジが螺旋状の回廊を下っていくようなうねりを伴っています。Marcus、ドラマーの Frederik Ehmke、ベーシストの Barend Courbois は André や Hansi と同様にアルバムのサウンドにとって重要な存在であることは言うまでもないでしょう。
「久々にバンドとしてリハーサルを再開したんだ。そして、”Legacy of the Dark Lands” に取り組んでいる間、ずっと見逃していたバンドのエネルギーとヘヴィネスを感じたんだ。それは僕らが再び速く、よりハードになった理由のひとつだ」
“The God Machine” はコロナ時代の BLIND GUARDIAN 最初のアルバムですが、彼らの曲は世界的な大災害よりもエルフや魔法使いについての曲の方が未だに多いのはたしかです。ただし、このアルバムは André が今の世界の “世相” と呼ぶものを捉えているようです。
「世界全体が厳しくなったように感じた。人々がお互いにどのように話しているのかがわかった。10代の頃のイライラした気持ちに近いものがあった。そして、それが “The God Machine ” の感覚だった。フラストレーションを全部吐き出して、エネルギーを全部込めたんだ。もっとスピード・メタルなんだ。もっとハードでファストな感じ。僕にとって、それは今の時代を反映しているもので、常に重要なこと。そしておそらく、僕がこの時代に抱いた感情を解消するのに役立つのであれば、それは他の人々にも役立つかもしれない」
今回、BLIND GUARDIAN の挑戦は “スピード・メタル 2022” です。
「もう2017年末のツアーの直後から曲作りを始めていたね。ただアイデアを集めて、すべてをオープンにしておいたんだ、なぜなら、最初のうちは、自分たちを特定の方向に限定したくないから、どんなアイデアがあるか見て、そこから作業するんだ。だから、最初は “American Gods” と “Architects of Doom” に取り組んでいて、その後、”Legacy of the Dark Lands” に集中しなければならない、あるいは集中したいので、曲作りは一旦中断したと思うんだ。それが終わると、オーケストラやアレンジメントと一緒に仕事をするのはとても強烈で、僕にとっては何か別のことをするのが自然だと感じたし、メタル・バンドを再び感じ、残忍さとスピードを感じることができた。だから自然に、最初の1、2曲はスピード感のある曲になった。Wacken Worldwide で演奏して “Violent Shadows” をプレイしたとき、この曲に対して素晴らしいフィードバックを受けた。そして、この直後に、いや、この直後ではなく、すでにこの前に、パンデミックがスタートしたんだ。その瞬間、僕の周りや世界が一変した。よりタフになり、ある種のサバイバルモードに切り替わったような感じ。だから僕もよりタフに、よりハードにならざるを得なかった。すべてが少し混沌としているように見え、その瞬間、よりハードで残忍な音楽を書くことが本物だと感じたんだ。だから、このアルバムは、僕らが今感じている “タイム・スピリット” 世相や瞬間を捉えたものだと思うし、それは僕らの音楽の中に常にあるもので、古いアルバムからずっと、音楽における感覚の大きな部分を占めていたんだ。
このスピード感のあるアルバムは、僕らにとっては自然なことなんだ。レトロなアルバムを作ろうとか、昔を真似しようとは思っていなかった。僕らにとってこの作品は、メタル・バンドとしてスタートしたときの純粋なに、今の知識を加え、バンドとして、作曲家として成長を加えたものなんだ。スピード・メタルを2021年、2022年の時代に移したかった。だから、よりモダンなサウンドにする必要があったし、アレンジに関しても少しトリッキーにする必要があって、それを実行した。振り返ってみて、通用しないような曲は嫌なんだ。そうだね、今回僕らの挑戦は、スピード・メタルが今どう聞こえるべきかということであり、新しい世代のメタル・ファンにとってどう興味深いものになり得るかということだと思う。もし今、16歳や20歳の若者が聴いたら、80年代のオリジナル曲よりもずっと彼らの関心を引くことができると思う」

ある意味、”The God Machine” は BLIND GUARDIAN の新章、その幕開けと言えるのかもしれません。
「どこか別の場所に行きたかった、それは確かだ。いわば、新しい BLIND GUARDIAN のサウンドを定義したかったんだ。”At the Edge of Time” と “Beyond the Red Mirror” はかなり近かったから、あれを1つの章として見ている。そのあと時折、章を閉じ、別の章を開く必要があるんだよ。今がそのタイミングだと思ったんだ。プロデューサーのチャーリーと、どうやったら新しいアルバムをまったく違うサウンドにできるかについて何度も話し合ったんだけど、結論は最初からすべてを変えること。ドラムの録り方も変えたし、ギターの音も完全に変えた。ミキシングも新しい人にやってもらったし、そういうことを全部ひっくるめて、新しい章が始まるんだということがわかるような、今までとは違う作品になったと思う。アートワークについてもね。ファンタジーであることに変わりはないけど、より現代的であることを示すようなアートワークのカットが必要だと」
ただし、BLIND GUARDIAN にとっての “現代化” とは、断捨離で、ミニマライズで、スペースを作ることでした。
「同じダイナミックさ、同じアグレッションを持ちながら、たくさんのスペースが欲しかった…今回の音楽はもっとオープンで、もっとスペースがあるんだ。80の楽器が同時にトリックを繰り広げるような超壮大なものではなく、もっと…僕は70年代のものが好きでね。DEEP PURPLE から LED ZEPPELIN まで、僕の好きなバンドの多くは70年代のロックバンドで、彼らのギターサウンドが本当に大好きなんだ。だから今の僕の基本的なサウンドは70年代のアンプをベースにしていて、それによってよりスペースができて、ある意味ボーカリストがより輝いている。
実際、”The God Machine” はかなり70年代の影響を受けている。今でもライブではこのコンセプトにこだわっていて、うまくいっている。その方がみんなにとってずっといいんだ。僕たちは、基本的なロックっぽいバンドに少し戻っているからね。例えば、ギターから見たアメリカ流のメタル・サウンド、SLIPKNOT, KORN, DISTURBED は、典型的な歪み過ぎ。僕のヒーローは Eddie Van Halen なんだけど、彼のサウンドをいつもチェックしていて、何が好きで何が嫌いなのかっていうのを考えていたんだ。たぶん、それが僕らにとっての進むべき道なんだと思うし、スピード・メタル系の音楽でも、こういうサウンドは気持ちいいと感じるんだ」
“Life Beyond the Spheres” にはたしかに、70年代の音もかなりはっきりと入っています。
「この曲は特殊な奏法で演奏されているんだけど、この奏法を実現するために何度もリハーサルを重ねたんだ。僕は音楽ジャンル全体を何か別のものに前進させる、イノベーションの大ファンなんだ。もしかしたら、今までなかった新しい何かを見つけられるかもしれない。”Life Beyond the Spheres” では、サウンドトラックの方向へ行きたいと思ったんだ。当時は “サイバーパンク 2077″ をやっていたから、ちょっとそこからインスピレーションがあった。サイバーパンクの方向性で、今までよりもスペイシーなメタル・サウンドを持ち込もうとしたんだ。その感覚を Hansi も掴んでくれて、今までやったことのない、このジャンルに近くない曲ができたと思う。いいよね、これはとても革新的な曲で、誇りに思っているよ」
多くのバンドが左に進むと、右に行くのが BLIND GUARDIAN のやり方。
「”Twist in a Myth” のように、遠くへ行ったアルバムもあるし、エレクトロニック・サウンドの実験もたくさんやった。当時はもっとシンセティックなサウンドにしたかったし、シーケンサーで遊んでみたかった。禁止されていることは何もない。自分の頭の中に素晴らしいコンセプトがあれば、何があってもそれを実現させたい。僕らにとってはただ、アルバム全体が調和していることが重要なんだ。曲作りの段階でたくさんの曲を考えたけど、その中には絶対に合わない曲もある。それを入れるのは休憩とか場違いみたいになってしまうから嫌なんだ。だから、曲順を工夫すれば、ストーリーが生まれるような曲ばかりを選んでいった。全く違う方向性の曲もあったよ。ジャズ的な要素も試したし、本当にクールなアイデアもある。ある時点で、リリースする予定だけど、すべては正しく行われなければならない。それでも、オリジナルの BLIND GUARDIAN サウンドにこだわる必要はない。僕の考えでは、BLIND GUARDIAN の本当の最初の定義となったのは “Tales of the Twilight World” だった。だから僕たちはどこへでも行けるんだ」

André は未だに長年連れ添った Hansi と意見が合わないこともあると認めています。”Blood of the Elves” はまさにそんな2人の違いとケミストリーが生んだ曲。
「キャッチーでフックなメロディーを聴く耳は、僕の方が上だと思う。Hansi はそういう意味では、もっと複雑で、プログレッシブな思考を持ちすぎている人。僕は楽器の演奏ではそうなんだけど、壮大でクラシックな曲になると複雑になりすぎてしまうのは嫌なんだ。僕は心に残るようなサビが好きなんだよ。Hansi はこれを壊したがっていたんだけど、僕は絶対にダメだと言ったんだ。彼にとっては、歌詞のセンスを入れることがとても重要なんだよね…全体がコーラス部分に収まる必要があるんだよ。でも僕はリズムもメロディも完璧なんだから、そのままでいいじゃないかと。だから、たまにはそういうこともあるけど、たいていの場合は同意する。僕たちはそんなに離れているわけでもないし、2つの世界が衝突するようなことはない。
結局、BLIND GUARDIAN の成功は、僕と Hansi のケミストリーのおかげだから。それは、愛憎半ばするケミストリー。僕たちは、本当に何でも話し合えるコミュニケーション方法を持っているから。たとえ意見が合わないときでも、すべてを持ち寄る。でも、最終的には一歩引いて、 “やっぱり、君が正しかった” と言えるんだ。それができるのが大事なんだよ。Hansi が思い通りになることもあれば、僕が思い通りになることもあり、時には妥協点を見出すこともできる。でも、僕は妥協があまり好きじゃなくて、妥協すると何かを失うと思ってしまう。だから、100%彼のやり方で行くか、100%僕のやり方で行くか、その方がいいんだ。何かに合意したら、何かを決めたらそれを100%追求する。それが僕らのいいところで、例えば Hansi が何かに反対していたとして、じゃあ君のやり方でやろうと言った瞬間から、そのアイディアに100%賛成することになるし、その反対もある。それが結果的にいい音楽につながっている」

ただ、歌詞のアイデアは、この曲での “Witcher” のように “オタク” である彼と Marcus が Hansi に押し付けることもあります。ただし、正解を出すのはいつも Hansi です。
「Hansi は歌詞について素晴らしい才能を持っているよ。だから彼に任せるよ。彼はボーカリストだから、正しい言葉に対する正しい感覚を持っているし、サビの部分の言葉ひとつで大きく変わるからね。もし、シンガーが嫌がる言葉を入れたら、曲が台無しになることもある。だから、最終的にボーカリストが気に入ったものを演奏することが本当に大事だと思う。Hansi の歌詞は、行間を読ませるような書き方をしていて、大好きだ。彼はいつも、解釈のためのスペースをたくさん残しているんだ。彼がヒントを与えることで、人々は何が起こっているのか、どういう意味なのかを考え始め、より深く、より深く掘り下げていくことができる。そうすることで、BLIND GUARDIAN の音楽は最終的にもっと強烈なものになるんだ。時には、歌詞がきっかけで本を見つけて、本を読んでくれるなんてこともあるくらいでね。
曲作りの時に彼はダミーの歌詞を使うから、時々議論が起こる。そのダミーの歌詞の中で、彼はとても良さそうな言葉を選んでいて、でも最終的に彼はその素敵な言葉を交換しようとするから、いつもまた喧嘩になる。ただ、Hansi は本当にセンスがよくて、曲のフィーリングや音楽に合うトピックを見抜く力があるんだよね。逆に、僕が音楽を作るとき、例えば “Destiny” は、僕が大のRPG好きで、あれは僕にとって、”World of Warcraft” という氷の世界の何かを題材にしたゲームにインスパイアされたものなんだ。そのことを彼に話し、僕のイメージするリッチキングのことを話した。すると彼は、”僕はそのストーリーに興味がないから、これについては書かないけど、同じ感情をキャッチできるようなものを考えてみるよ” と言ったんだ。彼はそれが本当に上手だから、心配する必要はないし、干渉する必要もないんだよね」
パンデミックで文化としての音楽、文化としてのメタルも危機に瀕しました。
「若い人がいきなり2年間も趣味を追求できなくなる。いきなり家に閉じこもってしまう。もちろん、フラストレーションは溜まる。僕が思うに、一番の捌け口は “音楽” だよ。音楽は良い治療法だ。ハードなバンドをいくつか聴いて、それを捌け口にするんだ。若い世代の人たちは昔よりオープンだからね。そんな若いファンにとって、スピード・メタルに親しむことは間違いなく面白いことだと思うんだ。”The God Machine” はスピード・メタルだけど、ただ、非常にモダンなスピード・メタルだから埃をかぶってはいない。そうやってスピード・メタルのエッセンス、エネルギーを今の時代に伝え、若い世代の足元に投げかけて、”ここにいい音楽があるよ” と言うことが大切だと思うんだ。パンデミックで、音楽シーンは社会の中で何のステータスもなく、真っ先にキャンセルされ、サポートされないことが明らかになった。この生じた穴を再び埋めることができればと願っているよ。多くのオーガナイザーやバンドが潰れてしまわないように。文化は重要だし、音楽は政治家が考えている以上に重要だよ。音楽という文化がこのまま、2023年以降も、僕たちが築き上げることのできる確かなものであってほしいと願っているんだ」

参考文献: TUONELA MAG:Interview with Blind Guardian — “We wanted to define a new Blind Guardian sound.”

BANDCAMP :An Introduction to Blind Guardian’s Mighty Power Metal

HARDFORCE:BLIND GUARDIAN Interview André Olbrich

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【RAMMSTEIN : ZEIT】


COVER STORY : RAMMSTEIN “ZEIT”

I Just Try To Do What I Do Best. Every Musician Craves Freedom. I’m Just Blessed That I’ve Found It.

ZEIT

RAMMSTEIN のフロントマンとして四半世紀を過ごしていながら、Till Lindemann ほど謎めいたミュージシャンはいないでしょう。Lindemann の詩集 “Messer(ナイフ)” には死と腐敗、愛と狂気の黙示録的なイメージに満ちた示唆に富む文章がドイツ語とロシア語で書かれ、気の遠くなるような、荒涼とした美しいイラストが完璧にその謎めいた彼のイメージを補完しています。
しかし、芸術を極限まで追求することを生業とする Lindemann は、ページをめくるうちに、この作品に不完全なものを感じ、鋭いナイフを探し始めます。左腕を1センチほど切開すると、血のついた指紋をつけ、原稿の上に丹念に血を落とします。そうして、ようやくこの詩集を完全なものとしました。
「前はつまらなかった。だから、もっとカラフルにしたんだ」
Till Lindemann にはかつての共産圏と深いつながりがあります。1973年、10歳の時、東ドイツのユース水泳チームのメンバーとして初めてソビエト連邦を訪れました。その5年後、将来のオリンピック選手として期待されていた彼は、1978年にイタリアのフィレンツェで開催された欧州ジュニア水泳選手権大会に東ドイツ代表として選出されます。しかしその週の夜、ポルノ雑誌を売っている風俗店を探すために非常階段を降りているところをコーチに見つかり、代表チームから追放されてしまいます。
この逸話は、Lindemann にとって初めての権威との衝突であっただけでなく、今日まで彼を動かしてきた自由への本能的な憧れ、その初期の兆候だといえます。59歳のカリスマ・シンガーは、RAMMSTEIN のフロントマンとして背中に天使の羽、顔に火炎放射器をつけていないときは、自由詩を書いたり(”詩は魂の飛行だ” とかつて語り、創作過程を “檻” からの脱出に例えた)、釣り、狩り、料理、一人旅に、その自由を見出しています。そして、RAMMSTEIN と並行して行っている音楽プロジェクト LINDEMANN にも、同じような魂の飛行を見いだしているのです。

デスメタルの巨人 HYPOCRISY とワンマン・インダストリアル・クルー PAIN のフロントマンである49歳のスウェーデン人 Peter Tägtgren は、Lindemann との関係を「結婚みたい」と表現しています。Tägtgren の存在感と骨太のユーモアが、Lindemann のやや冷めた態度を和らげているのでしょう。
2015年にリリースされたデュオのデビュー・アルバム “Skills In Pills” の後、Tägtgren と Lindemann は “血の兄弟” となり、昔ながらの友情の儀式で腕を切り、血を混ぜ合わせました。
「2人とも精神的に病んでいるような気がする (笑)。でも、それに対処できるから、僕たちはとてもよく合うんだ。何でも分かち合えるし、分かち合いすぎるくらい。僕らにタブーはないんだよ」そう Tägtgren が朗らかに語れば、Lindemann も同調します。
「完璧なハーモニーを奏でている。RAMMSTEIN での経験から、誰かと一緒に仕事をするとき、友情が損なわれることがあると知っている。でも、私たちは夫婦のようにうまくいっている。残念ながら、性的な関係はないけど……」
レディーボーイやゴールデンシャワー、恋人の肥満を助長することで得られる性的満足感など、嬉々として倒錯した歌がこのプロジェクトの特徴。自発的で自由奔放なプロジェクトの性質は、最新作 “F&M”(ドイツ語で “女と男” を意味する Frau und Mann の略)にも引き継がれています。Lindemann の長女ネレがハンブルクで制作していたグリム童話 “ヘンゼルとグレーテル” の舞台化に際して、3曲の音楽を提供してほしいと依頼したことがこの作品の発端。父とわがままな継母に捨てられた幼い兄妹が、食人鬼の魔女によって森に閉じ込められるという伝説的な物語を、ダークな雰囲気で再構築した舞台に、Lindemann は「良い背景が揃っていた」と語ります。
「ヘンゼルとグレーテルの物語は、病的で残酷だが、とてもロマンチックでもあるからね。親と子の血統という考え方がある。誰が自分の子どもを好き好んで森に送り出すのか?そして、魔女が自分のオーブンに押し込まれる恐怖。グレーテルがラテックスやゴムのフェチだというアイデアを出して、主役にラテックスの衣装を着せたりして。実は、もう一曲お願いできますか?と言われてね。オンデマンドで作曲していたから、楽しくて、新しい仕事のやり方だったな。だから、LINDEMANN のセカンド・アルバムが完成するまで、自分たちがそれを作っていることを知らなかったんだ」

Lindemann が初めて全編英語で歌った前作とは異なり、このアルバムはドイツ語版。つまり、英語を母国語とする人々は、ティルの典型的な破壊的歌詞の意味を自分自身で解き明かして楽しむことを義務付けられています。そして Till Lindemann が関わるすべての作品に共通することですが、この作品には、深く入り込むことで得られる、より重いテーマが存在しています。”F&M” を聴いた人は、この暗いたとえ話、寓話の背後にいる男の真の姿を知ることができるのでしょうか?「”この人は誰だ?”と思うだろうね」
というのも、実のところ、Till Lindemann は、先見性を持つアーティスト、洗練された文人、そして非常に評価の高い企業家として羨望の的となる一方で、25年のキャリアを通じて、”火炎放射器を持ったあのドイツのクソ野郎” というおなじみの二次元的キャラクターを超えた生身の自分を明かすことにはあまりエネルギーを使ってこなかったという事実があります。かつては、インタビューで一言も口を開かないという恐ろしい事態も引き起こしています。
「噂や囁きが Till Lindemann を取り囲んでいる。そのうちのいくつかは真実であり、いくつかはおそらく真実ではない」
2019年、RAMMSTEIN は無題の7枚目のアルバムをリリースし、14カ国以上のアルバムチャートで首位を獲得。フロントマンは世界中のスタジアムで毎晩6万人の観客の注目を集める存在となりましたが、それでも彼はロック界のトップ層の中で最も謎めいた、秘密的なキャラクターの一人であることに変わりはありません。
もちろん、彼のやり方は完全に意図的なもので、RAMMSTEIN の挑発と痛烈な社会批判は、彼らの私生活を隠すために非常に効果的な煙幕ともなっています。同様に、LINDEMANN のレコードに収録されているグロテスクで X-raid なテーマに固執する人々の多くは、それを思いついた作詞家の性格について真に洞察し、見抜くことはできないでしょう。例えば、”Yukon” という曲は、 Lindemann の自然に対する畏敬の念を表していますが、そこにはほとんど注意が払われていません。その結果、Lindemann はどういうわけか25年もの間、もう一人の自分を目立たないように隠して生きていくことができました。「私は2つの人生を持っている」と、彼は英国での最後の主要なインタビューで認めています。

昨年、RAMMSTEIN がロストク (旧東ドイツ最大の港湾都市) の Ostseestadion(3万人収容)凱旋に先立ち、同市の日刊紙 Ostsee-Zeitung は、バンドの地元のヒーローである Lindemann を、彼が人生の形成期を過ごした小さな村で追跡する企画を立ち上げました。彼は今はベルリンに住んでいますが、メクレンブルクには赤レンガのコテージがあり、手入れの行き届いていない庭が魅力的な Lindemann の生家があるのです。しかし、その時、彼は留守。近所の人たちは口を揃えて「彼は一人でいるのが好きなんだ」「放っておいてあげてほしい」地域社会もまた、彼を守っていました。
しかし、Lindemann の母親である Brigit Lindemann(82歳)は、ゲーテやブレヒトなどの文学や絵画、そして自然を愛し、地元で創作活動に励んでいた Lindemann の穏やかな人柄を伝えてくれました。元ラジオ・テレビ局 NDR の文化部長だった彼女は、RAMMSTEIN のライブをオペラにたとえ、ニューヨークの伝説的なマディソン・スクエア・ガーデンで息子のステージを見たことを思い出しながら、誇らしげに語りました。
「何が一番印象に残ったと思う?息子たちの勇気よ!彼らは人がどう思うかなんて気にしない。まったく気にもかけないの!」
Lindemann は当時の東ドイツでの生活を振り返ります。
「私は幸せな子供時代を過ごした。母は共産党員で、父は作家で自由人だった…まあだけど、彼は子供向けの本を書いていたから、当局にとやかく言われることはなかったんだ。実質ロシアに占領されていたから、ロシア料理、ロシア映画、ロシア音楽をたしなみ、学校ではロシア語を読んだり書いたりした。隣人にはロシア兵がいて、子供のころはレモネードや食料を差し入れしたのを覚えている。あのころロシアは私たちの面倒を見てくれる兄のような存在だったんだ」

しかし、こうした牧歌的な子供時代から思春期になると、両親が離れ離れになり、そこから東ドイツの抑圧的な政治に疑問を抱くようになるのは必然だったのかもしれません。1980年のモスクワオリンピックを目前に控え、競泳のナショナルチームから追放された彼は、一般社会への復帰を目指しながらも、大酒を飲み、ストリートファイトに明け暮れたと回想しています。そんな反抗的な若者が、西洋のロックに夢中になるのはある意味必然でした。
「ラジオをよく聴いていたんだ。RAMMSTEIN のアルバムに収録されている “Radio” という曲は、実はそのことを歌っているんだよ。ラジオはとても大きなことだった。土曜の夜にロック・ショーがあると、みんなで集まって聴いていた。例えば LED ZEPPELIN を聴いて、”すごい!”と思うんだ。もちろん、いつか LED ZEPPELIN のメンバーが RAMMSTEIN のライヴに来ることになんて、あのころは想像もつかなかったよ。まあ、私にとっては今でも正気の沙汰じゃないね。
初めて買ったアルバムは DEEP PURPLE の “Stormbringer” で、他のアルバムと同じように闇市で手に入れた。1ヶ月分の給料で買ったんだ。学業を終えて最初の仕事に就いたときの給料は、月580マルク、今でいう10ユーロくらいだったからね。PINK FLOYD の “The Dark Side Of The Moon” が棚に並んでいたけど、誰も買えなかったのを覚えている。ライブにも行けないし、レコードも買えないし、本当に悲しかったね。だからある意味、自分の音楽を作るのは、クラシックな音楽を聴くより簡単だった」
このような環境を考えると、Lindemann の歌詞には逃避への憧れと、恥や謝罪や後悔から自由に生きるという考えへの過激な信念が、糸のように続いていることは容易に理解できるでしょう。

RAMMSTEIN は1994年、Lindemann が現在住んでいるベルリンのプレンツラウアー・ベルク地区にあるリハーサルスタジオで結成されました。バンド独自のサウンドを作り上げた6人のミュージシャンはそれまで、ハードロック、オペラ、ジャズ、クラウトロック、西ベルリンのアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの異端的、実験的サウンドを学んでいました。彼らはまた、怒りと、型にはまったものに対する憎悪、そしてすべての人々を動揺させ憤慨させるための直感的でしかし完全に意図的な才能を共有していたのです。
「私たちは問題を起こすためにここにいるんだ。私たちを嫌う人がいるという事実が好きなんだよ。私たちはアーティストで、アートはそういう感情を引き起こすべきだ」
あの頃、再統一されたドイツが新たなアイデンティティと折り合いをつける中、イーストサイド出身の6人のミュージシャンもまた自分たちのアイデンティティを発見していました。RAMMSTEIN の鍵盤奏者 Christian “Flake” Lorenz は、ベルリンの壁が崩壊したとき自分がどこにいたかを正確に覚えています。1989年11月9日、彼が所属するパンクバンド、FEELING B は西ベルリンでライヴを行っていました。彼らの出身である東ベルリンは物理的にも政治的にも思想的にも、何十年も西ベルリンから遅れて切り離されていました。
FEELING B は、退廃的で資本主義的な西側に対して、強硬な社会主義の東側が決して “怪物” ではないことを示すため、政府の活動の一環として、街を二分するコンクリートの障壁を通過してギグを行うことを許されていたのです。バンドが演奏していると、Lorenz は観客の中に見慣れた顔があるのに気づきます。
「俺たちは友達が入ってきたのに気づいたんだ。で、俺は言ったんだ、”彼らが西ベルリンにいるなんてあり得るのか?ありえないよ。彼らは壁を飛び越えたのか?” ってね」
その夜、壁が崩壊し、建設から30年近くたったその日壁はデモ隊に粉砕されたことを誰かが知らせました。それは記念すべき出来事でしたが、そのために FEELING B は家に帰ることができなくなりました。
「壁の穴は人で埋め尽くされていた。あまりの混雑に帰ることができなかったんだ。西ベルリンで一晩を過ごさなければならなくなった」


ベルリンの壁崩壊は、世界的に見ても第二次世界大戦後、最も重要な出来事でした。ドイツの再統一、ソビエト連邦の解体、冷戦の終結という連鎖を引き起こしたのですから。しかし、Lorenz と FEELING B にとっては、それ以上にマイナスの影響もありました。
「壁の崩壊は、とても多くのことを変えてしまった。東ドイツでは誰も東ドイツのバンドを聴きたがらなくなったんだ。”本物” が聴けるようになったからね。これまで禁止されていたことが、すべて可能になった。だから、みんな新しいものを作ろうとしたんだ」
Lorenz もその一人となります。わずか数年後、彼は FEELING B のバンド仲間であるギタリストの Paul Landers とドラマーの Christoph Schneider とともに、挑発的なサウンドと無粋な世界観がこの国の分裂した過去と結びつき、同時に明るく統一された未来のシンボルともなる新しいバンドを結成することになったのです。その名は RAMMSTEIN。最も大胆で、最も物議をかもす存在となるバンドの産声があがりました。
もう一人のギタリスト Richard Kruspe は、Lorenz と同じく、東ドイツで育ちました。しかし、Lorenz が社会主義政府の下での生活がわりと好きだったと言うのに対し、Kruspe は母国との関係がより複雑でした。
「生活にはトラブルやプレッシャーがなく、みんな生きていくのに十分なお金を持っていた。つまり、東ドイツについては、12歳まではそこで育つのが最高だったということだよ。10代後半に故郷のシュヴェリンから東ベルリンに移り住んだんだ。そこでは疑問を持たない限り、質問をしない限り機能する、非常に健全な社会という幻想を見せられたのさ」
二人とも、当時の首都東ベルリンには盛んなアンダーグラウンドの音楽シーンがあったということを認めています。権威主義的な東ドイツ政府は、バンドに音楽制作のライセンスを申請させ、そのプロセスで、8人か10人の観客を前にして演奏することを強要しました。ただし、FEELING B のようなアーティスティックで過激なバンドは、歌詞を変えたり、エネルギッシュな曲をトーンダウンさせたりして、オーディションをごまかすことができました。
「たくさんのバンドがいたけれど、みんな友達同士だったんだ。みんなが他の人と一緒に音楽を作っているシーンがここにはあった。僕はその考え方が好きだった。とてもエキサイティングで、たくさんの音楽が繰り広げられていたんだ」 と Kruspe は振り返ります。
壁が崩壊した後、すべてが大きく変わりました。それまでラジオと闇市でのみ聴くことができた西洋音楽が、突然爆発的に普及し、簡単に聴くことができるようになったのです。
「1989年に壁が崩壊したとき、それは僕たち全員にとって新しい時代の始まりだった。しかし、僕たちはすぐに、西側では誰も僕たちを待ってなどいないことに気づいたんだ。東ドイツの音楽産業の構造は完全に崩壊していた。東ドイツのバンドにはほとんど需要がなく、演奏の機会はすべて西側のバンドが独占していた。東ドイツのバンドは、その音楽が体制崩壊のきっかけとなったにもかかわらず、この新しい、徹底的に商業化された音楽ビジネスで足場を築くために、自分たちの位置を変え、再創造することを余儀なくされたんだ」

FEELING B の3人は、他の東ドイツのミュージシャンとジャムセッションを始めていました。Richard Kruspe、ベーシストの Oliver Riedel、そしてドラマーからボーカルに転向した Till Lindemann たちと。そして間もなく、この半ば本気のサイドプロジェクトは、他のすべてを覆い隠してしまうことになります。
Lorenz が Till と初めて会ったのは、東ドイツで行われたギグでした。FEELING Bはよく、観客の誰かに一晩泊めてくれないかと頼むことがあったのです。ある夜、Till も観客の中にいました。5つのベッド、あるいは1つのフロアが必要だという声が上がると、彼は自分の家をそのスペースを提供したのです。
「俺たちはそこに泊まってパーティーをした」と Lorenz は言います。「そして、時々、彼の家に遊びに行って、友達になったんだ」
元天才水泳選手からミュージシャンに転身した Lindemann は、FEELING Bと出会ったときシュヴェリンを拠点とするアートパンク・バンド、FIRST ARSCH で演奏していました。やがて彼は、RAMMSTEIN の種となる課外ジャムセッションに招待されるようになります。
「目的もなく、計画もなく、ただ2時間演奏するために集まったんだ。バンドというより、本業のバンドとは違うことをするためのミーティングだったんだ。セラピー・グループのようなものだった」と Lorenz は振り返ります。
この無名の集団が最初に書いた曲のひとつは、1988年に2機の飛行機が空中で衝突して70人が死亡した航空ショーの惨事、その舞台となったラムシュタインという町の名前にちなんだもの。このサイドプロジェクトについて噂が広まるにつれ、彼らは「ラムシュタインの歌」を持つバンドとして知られるようになったのです。
彼らはすぐにこの名前 Ramstein を採用し、さらに “M” を一つ追加しました。Ramm は英語に訳すと破城槌のような槌、”stein” は “stone” “石” の意。ラム・ストーンは、彼らのサウンドにぴったりな名前だったのです。
大晦日のパーティーのために買っておいた花火を使った火の演出も、初期には試みられていました。Lorenz はこう振り返ります。「あるとき、花火をショーに出したら、”これはすごい!” 思ったんだよね。それで、もう少し増やしてみることにした」

東ドイツの観客は、以前のバンドを知っていて、彼らを愛していました。しかし、西ドイツの観客は彼らが誰なのか知らず、新しくアクセスした西半分での初期のライブの多くは、人はまばらでした。ただし、バンドと母国とのつながりは、観客の数だけでなく、もっと深いところにあったのです。Lindemann は最初から母国語で歌うことにしていました。これは、彼らが学校で英語ではなくロシア語を教えられていたことも一因なのです。
「英語がわからない人たちに向けて下手な英語で歌っている東ドイツのバンドをよく見かけたよ。でも、本当に自分の感情を伝えたいのなら、自分の言葉で話さなければならないんだ。母国語と他の言語で自分の感情を真に伝えるのは不可能なんだから」
最初の曲を完成させるのは、長く、時には険悪なプロセスでした。RAMMSTEIN は民主主義を信条していたからです。食事をする場所から曲のサウンドに至るまで、すべての決定は6人のメンバー全員の同意が必要だったのです。
RAMMSTEIN のデビューアルバムは、1995年9月25日にドイツで発売されました。そのタイトル、”Herzeleid” は英語では “Heartbroken” と訳されますが、これはこのアルバムを書いている間、複数のメンバーが経験していた恋愛問題にちなんでいます。
「ガールフレンドと別れて、とてもつらかった」と Kruspe は振り返ります。「これほど感情的に辛いことはなかった。精神的に追い込まれたよ。同じような経験をした人でなければ、僕が感じたことを理解することはできないだろうね。Till も同じような経験をしていて、仲の良い友人だったから、彼と数カ月間一緒に過ごしたよ。お互いに助け合ったんだろうな。実際、他のメンバーも当時は個人的な問題に悩まされていたんだ。最初のレコードをリリースした後、何も起こらなかった。誰も僕らを知らないから、誰も買おうとはしなかったんだ。俺たちはただ演奏して、演奏して、演奏して、徐々に観客の数が増えていったんだ」
RAMMSTEIN は、あらゆる検閲を排除しようとしていました。他人からも、自分たちからも。当時共演していた CLAWFINGER の Zakk が振り返ります。
「彼らはそれをやりたいと言ったんだ。単純な話だ。最初はとても警戒していたんだ。軍服を着て、ドイツ語で歌い、”r”を連発するバンドだ。ファシストやナチスのバカになるんじゃないかと心配になった。そこで、ドイツ語を話す友人に彼らの歌詞の一部を翻訳してもらい、自分たちが納得できるように理解を深めたのさ」

1996年の中頃には、RAMMSTEIN は自分たちのツアーのヘッドライナーを務めるようになっていました。アンダーグラウンドのバンドがより多くの観客から注目され始めたという実感がありました。バンドの印象的なビジュアル・イメージがステージ上でフォーカスされ始めていたことも手伝って、6人の男が無名の時代は終わりを告げました。また、パイロ(花火)に対するこだわりも、ますます顕著になっていきます。当時、彼らが公式に許可を得ていたかどうかは定かではありません。少しばかり規則を曲げていたのかもしれません。でも、とにかく印象的だったのです。ヨーロッパは、旧東ドイツ出身のこの奇妙なバンドに注目し始めます。その見た目とサウンドは、それまでのバンドにはないもの。6人のメンバーは、RAMMSTEIN が多くの人々にとって理解しがたい存在であったことを最初に認めていました。この謎めいた、そしてしばしば誤解されるバンドにまつわるほとんどのことに狂気が存在するからです。
「RAMMSTEIN があれほどプログレッシブだった理由のひとつは、かつて僕たちが多くの検閲を感じていたからだ。だから RAMMSTEIN では、あらゆる検閲を取り除こうとしていたんだ。他人からも、自分たちからもね。だからみんな、”俺たちは気にしない” となったんだと思う」
その自由に対する一途な思いは、数年後、カルト映画監督のデヴィッド・リンチが1997年に制作した映画 “ロスト・ハイウェイ” のサウンドトラックに彼らを起用したとき実を結びます。突然、このおかしな訛りのある狂気のバンドは、全く新しいオーディエンスに開放されたのです。同年、傑作セカンドアルバム “Sehnsucht” によって、彼らはヨーロッパ全土でスターとなり、その後数年間、ステージ上での逮捕やナチズムに対する見当違いの非難、1999年に起きたコロンバインで起きた虐殺事件をきっかけとした誤った連帯責任など、あらゆる嵐を切り抜け、成功を収めたのです。

2001年初頭、RAMMSTEIN はまだ無名の存在でしたが、彼らの画期的なサード・アルバム “Mutter” は、バンドを、そしてメタルを永遠に変えてしまう金字塔となりました。
レザーと筋肉で身を固めた、世界で最も変態的なバンド。Kruspe と Schneider は、英語での質問を十分理解していたが、意図的に通訳を介して話しました。Lindemann は、まったく口をききませんでした。クラブ・ヒットの “Du Hast” を書き、ドイツ語で歌い、たくさんのパイロを使い、 KORN のUS Family Values Tour で巨大な潮吹きディルドを使ってステージ上でお互いをファックし問題になったバンド。彼らは十分に大きくなりましたが、未だ巨大ではなく、メタルの世界ではまだ外側にいました。Schneider が回顧します。
「他のバンドがやっていることの逆をやったんだ。もしメタル・バンドが長髪だったら、僕らは短髪にする。もし彼らがスポーツウェアを着ていたら、僕らはブーツや他のタイプの服を着るんだ」
“Mutter” は2000年の冬に作曲され、2000年の夏にレコーディングされました。ドイツでの成功はこのアルバムに大きな期待を抱かせ、制作費を増やし、南仏のスタジオ・ミラヴァルで仕事をすることを可能にしました。このスタジオは、PINK FLOYD “The Wall” を、JUDAS PRIEST が “Painkiller” を、AC/DC が “Blow Up Your Video” を制作した場所。
RAMMSTEIN はここで、自分たちのある部分を削ぎ落とし、ある部分を膨らませました。曲の絶対的なエッセンスに集中することで、できる限り雑念を排除し、将来の怠惰なジャーナリストに “ドイツの効率性” を退屈そうに持ち出す機会を与える、そんな芸術的な無駄をできる限り省いたのです。
バックボーンは以前よりもドゥーミーで重厚なリズムで構築され、より壮大な装飾を施すための頑丈な土台となりました。また、以前は機械が多くの力仕事をこなしていたのに対し、より人間的で汗臭いシュトゥルム・ウント・ドラングを輝かせることができるようになったのです。
「テクノやダンス指向のスタイルから離れたいと思ったんだ。もっと自然で、もっとロック・バンドのようなサウンドにしたかったんだ。だから、生ドラムに力を入れ、アコースティックギターで実験し、革新的なギターサウンドを見つけようとしたんだ。そして、初めてオーケストラを使ったね。もう機械の奴隷にはなりたくなかったんだ」

“Links 2 3 4″ のために、バンドが炭鉱で巨大な白雪姫のために働いている映像が作られました。
「グリム兄弟のおとぎ話は、時に残酷で暴力的な面もあるんだ。私たちはいわばドワーフで、この女性を慕う一方で、同時に憎んでいる。なぜなら、小人たちは彼女のために働き、薬を手に入れなければならないからだ。そしてその見返りとして、我々は彼女を見て、彼女の美しさを楽しむことができる」
より直接的となった音楽の性質とともに、”Mutter” の世界や暗さはより翻訳されやすいものとなりました。生き埋めにされた少年を歌った “Spielhur” という曲について珍しく語った Lindemann は、「生き埋めにされるというのは、人が持つ基本的な恐怖なんだ」
作品に曖昧さがなかったのは、バンドに向けられたナチスへのシンパシーへの非難に対処するためでした。
「ナチスと呼ばれることは、ドイツはまだ信用できないという “お父さん” 的な考え方の後遺症であるとも言える」
DEPESCH MODE の “Stripped” をカバーしたビデオで、バンドは帝国時代のドイツ人映画監督レニ・リーフェンタールの作品から、1936年のベルリン・オリンピックの映像を使うことにしていました。リーフェンタールは、1934年のニュルンベルク集会を悪名高いナチスのプロパガンダ映画 “Triumph Of The Will” のために撮影した後、ヒトラーの特別なお気に入りになっていたのです。これは完全に、芸術的な挑発を意図したものでした。しかし、誰もがそう思っていたわけではありません。
「あの状況に関して、僕たちは若くて素朴だったと言えると思う…マスコミに攻撃されて、とても無力だと感じた。でも、僕の目から見れば、僕たちは正しいことをしたんだ。僕たちは常に極端なことをやってきた。極端な文章、極端なショー、極端なやり方で行動し、常に挑発的であろうとしてきたんだ。僕たちの歌詞はさまざまな解釈が可能だけど、決して右傾化することはないんだよ。でも、もし様々に解釈できる歌詞を提示すれば、人々がそれを様々に解釈することを期待するしかない。僕らは意図的に挑発的なバンドなんだ。そして、我々の挑発の頂点は、もちろん、あのレニ・リーフェンシュタールのビデオだった。僕らが右派だと思っている人たちにショックを与えたかったから、あのようなことをしたんだよ。でも、今の時代から見ると、もう二度とやらないかもしれないね」
この曲では、Lindemann がマーチの武骨なビートにのせて、いかに RAMMSTEIN が誤解した左翼と対峙し、彼らの芸術を読み違えた人々によって中傷されてきたかを歌っています
「彼らは私の心を正しい場所に置きたいと思っている/しかし私が下を見ると/それは私の左胸で鳴っていた/彼らの嫉妬は間違っていた」

「最初の頃は、英語で歌おうとしたんだ」と Schneider は当時を振り返ります。「でも Till の歌詞はとても力強いけど、英語にうまく翻訳されないことに気づいたんだ。だから、ドイツ語で歌い続けることにしたんだ。すると、よく人が寄ってきて、”なんて素晴らしいバンドなんだ、ドイツ語で歌っているのが残念だ” と言われたものだよ。ドイツ以外の国では未来がないと言われたんだ。他の国で成功するチャンスはないってね」
20年経った今、RAMMSTEIN ほどこの件について大笑いしている人はいないでしょう。壁の向こう側からやってきたこの6人の不良たちは、想像できる限りのあらゆるトレンドに逆らいながら、25年間を過ごしてきたのです。
「俺たちは西側のバンドにはなれなかった」と Lorenz は言います。「俺たちは若い頃に、協力することが大切で、一人はそれほど重要ではないと学んだからだ。だから今でも一緒にいるんだ」
RAMMSTEIN のアートが彼らの生い立ちに対する反応であったとすれば、Lindemann の個人的な倫理観もまた然り。バンドの初期には、バンドへのコミットメントと、1985年に生まれた幼い娘ネレを育てる片親としての仕事とをしっかり両立させていました。自称カルマの信者である彼は、実の父親が子育てに無頓着で、時には無関心であったことを忘れてはいませんでした。
「父はぜんぜん家にいなかった。彼は朗読会のツアーに出かけていたんだ。でも、ネレとマリーには、芸術的な生活の中で時々起こる混乱にもかかわらず、”普通の” 教育を施そうと懸命に努力した。私は間違いなくいい父親だよ。
まあ、子供が小さかった頃は、RAMMSTEIN に今ほど大きな時間的プレッシャーがかかっていなかったんだ。子供たちはいい子で、自分たちのことは自分たちでやる」

2019年の無題の作品、RAMMSTEIN の真骨頂に続く “Zeit”。大胆にもドイツ語で “時間” を意味するラベルが貼られたアルバムには、様々な時の流れが集約されています。”Liebe ist für alle da” からの10年のブランクを考慮すれば、ましてや Covid の状況を加味すれば、RAMMSTEIN のレコードがこれほどすぐに届くと予想した人はほとんどいなかったはずです。これもまた、時の魔法。前作のリリースから2年あまりの間、ツアーは大幅に制限され、一時は Till Lindemann が(COVIDではない状態で)集中治療室に収容されたこともあり、”Zeit” は時代の移り変わりや空になった砂時計、生命のはかなさをたしかに連想させます。しかしそれよりも興味深いのは、この大物たちでさえ、彼らの独特の方式でさえ、停滞を避けるために時の流れに従って進化を必要とする、その事実を暗黙のうちに認めていることでしょう。
アルバムのオープニングには落ち着いた世界の倦怠感があります。かすかに響くピアノラインと複雑で熟考されたリリック。「私たちは終わりに向かって漂い 急がず ただ前進する 海岸で無限が手招きしている」
“Giftig” は、彼らがパーティーのやり方を忘れていないことを明確に証明しています。”Du Hast” の流れを汲む、6弦とレイヴなシンセサイザーを組み合わせた短編。”Zick Zack” は、重量感溢れるリフに混じってディスコビートを使い、整形手術や永遠の若さに対するセレブの執着を皮肉たっぷりに批評。”腹の脂肪はゴミ箱へ/ペニスは再び太陽を拝む”。”Zeit” の全体的なテーマである “時を超えて繰り返し聴ける” こと。”Zick Zack” はその象徴的な楽曲でしょう。
“OK” は、”Links 2 3 4″ のキャッチーさに加え、より難解な歌詞、よりグルーヴィーなギター、そしてかの GHOST が誇るであろう大規模なクワイアのアウトロを誇る、まさに燃え盛る炎と呼ぶにふさわしい名曲。”Zeit” は単なる大ヒットのリサイクル、ノスタルジックな時の旅ではありません。
シンプルに “Sex” と題されたトラックをフィーチャーした前作と比較して、”Zeit” は彼らがいかに自己反省的で内省的かを改めて発見できる作品なのでしょう。”Angst” のような曲では、おなじみの胸を張った表現でファンが望むものを提供しつつ、同時に彼らの最も暗い恐怖をむき出しにする意志も見え隠れ。”Meine Tränen” (My Tears)と “Lügen” (Lie) では、正直な感情がより率直にむき出しにサウンドに反映されていて、前者のオペラティックなメロドラマは、後者のアンビエンス、ボコーダー、ブラックゲイズと対を成しています。そうしてパーカッシブな “Dicke Titten”(大きなおっぱい)は、ファンが期待するポルノ的な挑発ではなく、本当に膨らんだ胸への暖かい抱擁に意味を見出しているようです。
LED ZEPPELIN や Alice Cooper の雑音混じりの音楽を聞くためトランジスタ・ラジオに耳を傾けた10代の子供が、今や世界的な大スター。その未来は、若き日の Till Lindemann が思い描いた通りのものだったのでしょうか?Till Lindemann は若き日の Till Lindemann に暖かい抱擁をあたえるのでしょうか?
「そんなことは考えずに、ただ自分のベストを尽くすだけさ。音楽家は誰でも自由を渇望している。私は、それを見つけることができただけで幸せだよ」

参考文献: KERRANG!: The Real Till Lindemann: Meet The Man Behind The Flamethrower

LOUDER:Rammstein: The birth of a legend

KERRANG!: Rammstein: How Mutter took the world’s most perverse band to the extreme

REVOLVER:REVIEW: RAMMSTEIN’S SMART, LEWD ‘ZEIT’ HAS BIG BOOBS, COCK ROCK AND MORE

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FEUERSCHWANZ : MEMENTO MORI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HANS PLATZ OF FEUERSCHWANZ !!

“We Wanted To Expand Medieval Rock Into The World Of Metal, We Wanted To Cross German Lyrics With Heavy Metal Riffs, Folk Violin With Wild Guitar Solos, Bagpipes With Powerful Metal And Put This Into a Massive Fantasy World Full Of Swords, Mead And Dragons.”

DISC REVIEW “MEMENTO MORI”

「確かにフォイアーシュワンツ・ドラゴンは成長しているけど、私たちの核となるメッセージは変わっていないんだ。私たちの目にはまだユーモアが宿っていて、人生のポジティブな面を歌い、楽しんでいるよ。だけどたしかに、よりシリアスな意味合いを持ってきたね」
ドイツのメディーヴァル・メタル、炎龍こと FEUERSCHWANZ が新作 “Memento Mori” を2021年12月31日にリリースするとを決めたのは、ある意味宿命でした。近年の人類史において最も暗い1年を締めくくり、多くの人に必要な笑顔をもたらすに適したバンドがあるとすれば、それは FEUERSCHWANZ をおいて他にはないはずですから。98%のメタル・バンドがダークでシリアスなイメージを追求し孤独と闇を分かち合う中で、彼らは一貫してポジティブかつ陽気。優しく楽しく朗らかにリスナーの心へと寄りそいます。
「私たちは常に人生、人間、友情を祝福しているんだ。このアルバムのテーマ “Memento Mori” は、今日がまるで最後の日であるかのように、精一杯生きるんだ!ってことだから」
アルバムのテーマとなったラテン語の慣用句 “Memento Mori” とは、死はいつもそばにある、だから今を全力で生きようという古からのメッセージ。死が当たり前の出来事だった中世から遠く離れた現代でも、多くの人は喪失や憂鬱をかかえていて毎日を自分らしく前向きに生きられていないようにも思えます。FEUERSCHWANZ は初期のコミカルなイメージを捨て、真剣に人間や人生に向き合うことで、リスナーの悩みや憂鬱を炎で焼きつくす美しきドラゴンの姿へと進化を遂げたのです。
「メディーヴァル・ロックの多くのバンドはドイツの大きなお祭りであるルネッサンス・フェアで演奏し、同時に自分たちのツアーもやっているんだよね。私たちはそこから発展させて、ドイツ語の歌詞とヘヴィ・メタルのリフ、伝統のバイオリンとワイルドなギターソロ、バグパイプとメタルパワーを掛け合わせ、剣や蜂蜜酒やドラゴンに満ちた巨大なファンタジー世界に落とし込みたかったんだ」
インタビューに答えてくれた実は凄腕のシュレッダー Hans Platz のギター・サウンドはこれまでよりも遥かに強烈で、キャプテン・フォイアーシュワンツの歌声は威風堂々。ヴァイオリンやハーディー・ガーディー、フルートの助けを借りながらルネッサンス・フェアに始まった緩やかなメディーヴァル・ロックを激しいメタルの頂へと導いていきます。
タイトル・トラック “Memento Mori” の脈打つようなベースライン、胎動するクランチーなリフワーク、炎焔の音の葉が示すように、明らかに FEUERSCHWANZ はこの作品でキャッチーの中にメタリックな印象を著しく強化して、己の陽の信条を真摯にリスナーへと伝えています。音楽的にも哲学的にも、SABATON や POWERWOLF のパワー・メタルに接近した結果と言えるのかもしれませんね。
Johanna とプリンスこと Ben Metzner による伝統楽器の色合いもアルバムを通して驚異的です。”Untot im Drachenboot” における狂気のバグパイプ、血湧き肉躍る “Rohirrim” の角笛、”Am Galgen” の雄弁なヴァイオリンは、ロード・オブ・ザ・リングのファンタジーはもとより、ゲーム・オブ・スローンズの壮大なる激戦をも現代に蘇らせていきます。時にはローハンの騎士の物語を、時には聖ニコラスの伝説を、時にはカルタゴの将軍の逸話をドラゴンの目を通して伝えながら。
「みんなメタルで使われる英語に慣れきってしまっているから、このままドイツ語で歌い続けていたら逆に何か新しいものが生まれるかもしれないと思っているんだよ。音楽という言語は国際的なものだし、歌詞は分からなくても音楽は理解されると信じている」
すべてがドイツ語であることに何か問題があるでしょうか?むしろ、ドイツ語のメロディックな一面に彼らは気づかせてくれるはずです。重要なのは、瞬時にストーリーを理解することはできないにしても、高揚していつのまにか口ずさむ楽曲のコーラス。世界は中世より多少ましになった程度の暗闇かもしれませんが、結局私たちが墓場に持っていけるのは棺桶くらいのもの。失うものは何もない。死が鋭いそのナイフをつきつけるまでは、今を生きよう!FEUERSCHWANZ の音楽はそう語りかけているのです。
今回弊誌では、Hans Platz にインタビューを行うことができました。「音楽が進化することは重要だと思うし、今現在、伝統楽器を持つバンドはメタルに新しいものをもたらしているんだ」 AMON AMARTH から O-ZONE, THE WEEKEND のカバーまで収録したデラックス・エディションも楽しい試みですね。今だからこそアツいマイアヒ。こういったバンドには珍しくギタリストがヴァーチュオーゾ・タイプなのも良いですし、今回はアレンジもフック満載。GLORYHAMMER から飛び出た Thomas 氏もゲスト参加。どうぞ!!

FEUERSCHWANZ “MEMENTO MORI” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DER WEG EINER FREIHEIT : NOKTVRN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NIKITA KAMPRAD OF DER WEG EINER FREIHEIT !!

“I Somehow Always Wanted To Create an Album About The Night, About Dreams And The World Between Being Awake And Asleep.”

DISC REVIEW “NOKTVRN”

「私はずっとクラシック音楽が好きで、フレデリック・ショパンは私に多くのインスピレーションを与えてくれた作曲家の一人なんだ。特に彼のピアノのためのいわゆる “夜の小品” であるノクターンがお気に入りなんだよね」
ヘヴィ・メタルは昼の音楽でしょうか、それとも夜の音楽でしょうか? もちろん、カリフォルニアの真夏の太陽の下、ビーチで美女と組んず解れつ大音量で聴くべきメタルも存在しますが、根本的には暗く、重く、憂鬱な夜行性の音楽であることは誰もが認めるところでしょう。夜行性とはすなわち夜と一体になることです。
夜想曲、ノクターンを書くためには、夜からインスピレーションを受けなければなりません。ポーランドのピアニストで作曲家、フレデリック・ショパンは夜を愛し、1827年から1846年の間に21曲の夜想曲を書き連ね、遂にはその超絶技巧の中で人間の心の複雑さにまで到達して表現しました。つまり、彼の “夜の小品” は、ロマン派の理想を華麗に実現し、技巧的研究の中に類稀なる夜のハーモニーとメロディーの融合を提示していたのです。
「レコードを作る場合重要なのは、バンドの文脈における楽器と音の組み合わせだということなんだ。例えば、シンフォニック・オーケストラでヴァイオリンだけを聴くのと同じように、メタルでギターだけを聴いても、全体は理解できない。”Noktvrn” では、ショパンのノクターンなどクラシックな曲との直接的なつながりはないにしても、こうしたクラシック流のアプローチが最近の私の曲作りに大きな影響を与えているんだよ」
5枚目のアルバムとなる “Noktvrn” で、DER WEG EINER FREIHEIT は独自の革命的な道を歩み始めました。ボーカル/ギターの Nikita Kamprad は、クラシックの整合性やシンフォニーが描き出す全体像の美学に影響を受けながら、さらに敬愛するショパンがのめり込んだ “夜” に心酔し、メタル・ノクターンの具現化に向けて全精力を傾けました。
「私はなんとなく、夜について、夢について、起きているときと眠っているときの間の世界についてのアルバムを作りたいとずっと思っていたんだよ」
きっかけは、深夜から早朝に白昼夢として降りてきた “Immortal” という楽曲でした。もし夢の中で作曲ができたとしたら、もし半分眠っている状態で創造的になれたとしたら。朝日がほんの少しだけ顔を出した紫色の部屋の中で Nikita はそんな夢物語を偶然にも実現し、さらに夜のリズムに惹かれていきました。作曲を夜間に限定して行うようになったのも、飽くなき夜音探求のため。そうして、プログレッシブ・ブラックメタルを指標するドイツの賢者は、そのバンド名と同様に自由を渇望し、実験と挑戦のノクターンを完成させました。
「つい数日前、ある人が DEAFHEAVEN も新しいアルバムで私たちの “Noktvrn” と似たようなテーマを扱っていると言ってきたんだ。例えば、早朝に感じる気持ちや、半分眠っているような気分といったものをね」
偶然とは重なるもので、DER WEG EINER FREIHEIT と同様にブラックメタルの世界を押し拡げる DEAFHEAVEN も奇跡的に”青の時間” をテーマとした作品を昨年リリースしています。ただし、音楽的には双方リスクを犯しながらも DER WEG の “夜” の方がより多彩で実験的なのかもしれませんね。
オープニングを飾る “Finisterre II” のアトモスフェリックな音響はアルバムを侵食し、”Monument” のオーケストラアレンジとホーンセクションが妖しくも美しい夜の音を召喚。別世界を醸し出す “Immortal” のフォーク、”Haven” の夢のようなシューゲイズ、”Gegen Das Lichtの徹頭徹尾アバンギャルドなアートロックと、彼らの夜会は迷宮のように深く入り組みながら、混迷の中に人の複雑を描き出します。
「私たちの社会では、メンタルヘルスや心の病気はいまだに過小評価され、話したくないタブーのような問題とされているように感じているんだ。だから私たちがそれについて話さなければ、精神的な病に苦しむ人々の助けにはならないだろうと思ってね」
“Noktvrn” は一般的なブラックメタルとは異なり、人間の心のあり方を投影した作品です。睡眠時や夢を見ている時の脳の働き、パニック障害、幽体離脱体験にフォーカスしたリリックはショパンのように夜で心を哲学して、パズルのピースのようにアルバムの音楽へと寄り添いました。
暗く、孤独で、憂鬱な夜は、だからこそ時には優しい時間にも変化します。遂にマイルドな英語を解禁すると共にクリーンな歌声を解き放ち、実験的なブラックメタルを多層的なハーモニーの輝きで装飾した彼らの新たな挑戦は、まさに弱さや儚さをも抱きしめる夜の包容力をも認めた結果ではないでしょうか。
今回弊誌では、Nikita Kamprad にインタビューを行うことができました。「音楽を書いたり、ライブで演奏したりすると、ほんの一瞬だけど、自由な気持ちになる。言論、プライバシー、宗教などの自由が制限され、しばしば紛争、腐敗、戦争を引き起こしているのを見ると、今の世界にはあまり自由を感じないからね。だから、音楽とこのバンドは、私にとっての “自由への道” であり、好きなことができる安全な空間に逃避する方法なんだよ」 どうぞ!!

DER WEG EINER FREIHEIT “NOKTVRN” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PARADOX : HERESY Ⅱ: END OF A LEGEND】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHARLY STEINHAUER OF PARADOX !!

“Unfortunately, There Is Far Too Much Suffering In Our Beautiful World. Everyone Thinks That Humans Are Intelligent, But With All This Self Destruction Crimes Against Humanity, I Have My Doubts About It.”

DISC REVIEW “HERESY Ⅱ: END OF A LEGEND”

「PARADOX の音楽には数え切れないほど多くのメロディラインが含まれているけど、それは大衆に受けるものでは必ずしもない。だけど、何千回もコピーされて成功したクリシェのようなメロディーを、それがより成功した音楽だからといって俺は奏でたり聞くことはもうできないんだよ。だからこそ、PARADOX で自分のスタイルを発明できたことに満足しているんだ」
時は20世紀後半のドイツ。80年代中盤から後半にかけて、例えば HELLOWEEN、例えば RAGE、例えば BLIND GUARDIAN は、スピード・メタルを独自のファンタジーとシンガロングの旋律美で染め上げ、ジャーマン・メタルの美学を確立していきました。一方で、KREATOR, DESTRUCTION, TANKARD といったよりアンダー・グラウンドなバンドは、米国から流れ着いたスラッシュ・メタルの鼓動をより深く、より速く、より激烈に追求することとなりました。
1981年に OVERKILL の名で結成された PARADOX は、まさにその両者の中間、ベイエリアのスラッシュ・メタルとヨーロッパのパワー・メタルをつなぐ架け橋のような存在だと言えるでしょう。中でも、洗練されたメタリックなリフワークとドラマティックなメロディーの背理な婚姻が TESTAMENT, HEATHEN, METAL CHURCH や TOXIK への欧州からの回答にも思えた90年の “Heresy” は、メタル史に今日にまで語り継がれる傑作の一つ。
「これまで俺は “Heresy” の第二幕を作るつもりはまったくなかったんだ。なぜなら、物語やアルバムの第二部は、第一部より良いものにはならないと信じているからね。これは映画でも同じことが言えるんだけど」
以来、PARADOX とバンドの心臓 Charly Steinhauer には様々な人生の荒波が襲いかかります。
ラインナップの流動化、二度のバンドの活動停止、愛する妻の他界、自身の体調不良。それでも Charly は、”Electrify” で2008年にバンドを再建してからは体の許す限りその才能を唯一無二なるスラッシュ・パワーメタルへと捧げてきたのです。そして “Heresy” から30年。PARADOX は傑作の続編という難題を完璧にこなしながら、自身の存在意義を高らかに宣言します。
「人間は何も学んでいない。それが真実さ。世界のさまざまな場所で、いまだに戦争や抑圧、飢餓が続いている。本当はすべてが平和で美しい地球になるはずなのに、残念ながら戦争や抑圧は常に存在しているんだ。そして何より、信念が違うという理由だけで迫害され、殺された犠牲者は数知れない。誰にでも、自分の人生を最大限に楽しむための力、それをを信じる権利があるというのにだよ」
“異端”、”邪教” という意味を認めた “Heresy” シリーズは、中世ヨーロッパで腐敗した教会、聖職者の堕落、汚職に対して本来の信仰や禁欲を取り戻そうとしたカタリ派という民衆運動と、それを異端とし鎮めるために遣わされたアルビジョア十字軍、そして異端審問のストーリーを描いています。もちろんこれは歴史の話ですが、オリジナルの作詞家 Peter Vogt が持ち寄った新たな異端のストーリーが、現代社会の暗い部分とリンクし、ゆえにこのタイミングで PARADOX が “Heresy” を蘇らせたのは間違いありませんね。
「何年も同じメンバーでバンドをやってみたかったよ。Axel Blaha と俺は1981年にこのバンドを設立した。でも、ラインナップが変わっても、俺がシンガーでありメインソングライターであることは変わらなかったんだ。だからこそ、PARADOX は今日でも PARADOX のサウンドを保っていられるんだ」
Peter はもちろん、オリジナル・メンバーで共に “Heresy” を制作したドラマー Axel Blaha の帰還。さらに Gus Drax に代わり再加入を果たしたギター・マエストロ Christian Muenzner。そして長年の戦友 Olly Keller。Charly のソロ・プロジェクトにも思えたメンバー・チェンジの巣窟 PARADOX ですが、考え得る最高の、そして安心感のある馴染みのメンバーを揃えた今回のアルバムで彼らは真のバンドへと到達したのかもしれませんね。実際、あらゆる場面で熟練し、すべてが自然で有機的なこの作品は、スラッシュ・メタルとパワー・メタル、そしてプログの知性があまりにもシームレスに混じり合っています。
「俺たちは、自分たちのルーツをおろそかにすることなく、あらゆるスタイルを統合し、あらゆるテイストのメタルを提供することに成功したんだ。そうして、俺たちの古い時代のサウンドを完璧に今のサウンドに伝えることができたんだよ」
70分のエピック・スラッシュは、”Escape From The Burning” で幕を開けます。高速でテクニカルなリフ、轟音のドラムとベース、そして壮大でキャッチーな歌声。実際、Charly の歌唱と旋律は BLIND GUARDIAN 初期の Hansi Kürsch を彷彿とさせ、Christian の鮮烈にして美麗を極めたシュレッドの現代建築と絶妙なコントラストを描き出します。言いかえれば、いかに彼らがスラッシュ・スタイルの容赦ない攻撃性と、劇場的なメロディやエピカルな感覚とのバランスを巧みに操作しているかの証明でもあるでしょう。
事実、”Burying A Treasure” のように、燃え盛るリフとマシンガン・ドラミングを全面に押し出してもアンセム的な輝きは増すばかりで、”A Meeting Of Minds” のように、ゆっくりとしたニュアンスのある曲に振り子が変わったとしても、ヘヴィネスの要素はしっかりと維持されているのですから。心に残るメロディーとスラッシュの暴動がせめぎ合うクローザー “The Great Denial” はそんな PARADOX の美しきパラドックスを完璧に投影した楽曲だと言えるでしょう。
つまり、”Heresy Ⅱ: End of a Legend” は、スラッシュ・メタル栄光の時代と、それと並行して進行し、最終的には1990年代に同様の重要なムーブメントに発展することになるヨーロッパのパワー&スピード・メタル・ムーブメントの間のミッシング・リンクのような輝きに違いありません。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの Charly Steinhauer にインタビューを行うことができました。「残念ながら、この美しい世界にはあまりにも多くの苦しみが存在する。誰もが人間は知的だと思っているけど、こういった同じ人類に対する自滅的な犯罪を見ると、俺はそんな考え方に疑問を感じるよ」 どうぞ!!

PARADOX “HERESY Ⅱ: END OF A LEGEND” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RAGE : RESURRECTION DAY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PEAVY WAGNER OF RAGE !!

“I Was Very Productive With Rage Over The Last Nearly 40 Years. Its 28 Albums Incl Refuge & LMO. Why? Because I Can!”

DISC REVIEW “RESURRECTION DAY”

「そう、俺はこのほぼ40年の間、RAGE で非常に生産的だった。REFUGE と LMO を含めれば、残したアルバムは28枚。なぜそんなに作れるのかって?それはな、俺様ならやれるからだよ!はっはっはっ!(笑) 」
Peavy Wagner は “骨のある” 男です。ジャーマン・メタルの世界では、1980年代の全盛期から多くの才能が生まれては消えていきましたが、RAGE は独特のイヤー・キャンディーと捻くれたセンスの二律背反を共存させながら、粉骨砕身ただ実直にメタルを紡ぎつづけてきた気骨者に違いありません。
刻々と変化を遂げるトレンドの急流、ミュージック・インダストリーの大波にも屈しないストイックなメタルの骨巨人。Peavy が語るように、”Trapped”, “Missing Link”, “Black in Mind”, そして “XIII” と、1990年代メタルの荒野においてさえ彼らの作品はむしろその輝きを増し、さながら骨上げの喉仏のように貴重な存在となったのです。
「いやいや、ありえねーよ!Manni は忙しくて時間もねーし、プロフェッショナルなバンドでやる気ももうないだろうしな。Victor はいろいろあって俺が6年前にクビにしたんだぜ?ありえねーよ!」
Peavy は RAGE は決してメンバー・チェンジの多いバンドではないと強調しますが、それが決して少ないわけでもありません。ほぼ40年に渡る長い歴史の中には、何度もドラスティックな変化の刻が訪れました。そうやって、新陳代謝を繰り返しながら、RAGE は生き続ける意味を見出してきたと言えるのかもしれません。
逆にいえば、あくまで Peavy という屋台骨の支えられる範囲でですが、RAGE は加わるメンバーによってその音楽性をさながら脱皮のように変遷させていったのかもしれませんね。そして、ギター・プレイヤーはその脱皮を終えた肉体の色を司る、重要なファクターとなったのです。
Manni Schmidt は今でも “Ragers” に最も人気の高いギタリストかもしれませんね。フレーズやリフの源流が推測できないような突拍子もないギターの百鬼夜行、奇妙なグルーヴのうねりは、”Missing Link” の異常な耳障りの良さと結合し、ある意味初期 RAGE の終着駅となりました。
一方で、Victor Smolski の超絶技巧も近年の RAGE にとって絶対的な看板でした。特に凄腕 Mike Terrana を伴って完成を遂げた “Soundchaser” のプログレッシブで、クラシカルで、シンフォニックで、キャッチーで、途方もないスケール感を創出したテクニカルなメタルの叙事詩は、ラヴクラフトに負けず劣らずの濃密な奇々怪界をその身に宿していたのです。
では、それ以外の時期は RAGE にとって “狭間” の報われない時だったのでしょうか?ずっと RAGE を追い続けたファンならその問いに突きつけるのは間違いなく否。何より RAGE の歴史に燦然と輝く “Black in Mind” にその両者は絡んでいないのですから。
「実を言うと俺たちは、数年前から RAGE の歴史の中でこの4ピースの段階を目指していたんだよな。だから、ツインギターというソリューションに戻るのは自然なことだったんだよ」
人生を変えたアルバムに POLICE や RUSH を挙げていることからも、Peavy がスリー・ピースにこだわりを持ち、この形態でしか生み出せない何かを常に念頭に置いていたのはたしかでしょう。ただし、一つの場所にとどまらないのもまた RAGE のサウンド・チェイス。
現代的で多様な世界観を切り開くため、メタルをアップデートし選択肢を広げるためにツインギターを導入した 大作 “Black in Mind”。(ちなみにその次の “End of All Days” は逆に肩の力を抜いて聴けるこちらも名作) AXXIS から Stefan Weber を、ANGELINC から Jean Bormann を、”家が近い” という理由でリクルートした “Resurrection Day” には、たしかにあの傑作と同じ血、同じ哲学が流れています。
明らかに Peavy は Smolski を解雇して “The Devil Strikes Again” に取り組んで以来、ある意味定型的なネオクラシカル・ギター、シアトリカル過ぎる表現、そして10年以上使ってきたアトモスフェリックでオーケストレーションなタッチそのすべてを剥ぎ取り、より “簡潔” で “あるべき姿” の RAGE を取り戻そうとしているようにも思えます。さて、その試みは吉と出たのでしょうか?それとも…
「新石器時代になると、人間は自然と共に生きる遊牧民から、定住して農業を営み、自然に干渉して自然を操作するようになった。このことが、気候変動、戦争、人口過剰など、世界が抱える大きな問題につながっているんだよ。俺たちは今、この危機を良い形で乗り越えるか、悪い形で乗り越えるかを決めなければならない時期に来ているんだ。つまり瀬戸際なんだよ。そしてその決断の日こそ、俺たちの “復活の日” なんだ…」
常に人類の歴史、古の秘法、異世界などをテーマとしてその場所から現代に鋭くメスを入れてきた Peavy。人と自然の付き合い方、そして脱皮を続けるバンドの哲学、その両者をリザレクトさせるダブル・ミーニングのタイトルはまさに彼の真骨頂。実際、”Resurrection Day” で RAGE は “Black in Mind” と同様に、彼らのメタルをアップデートしここに来てさらなる新境地を開いています。
その象徴こそ、”Traveling Through Time” でしょう。近年の IRON MAIDEN に通じるようなメタルの時間旅行には、ツインギターでしかなし得ない古のハーモニーが響き渡ります。その趣向を凝らした勇壮は GRAVE DIGGER にも似て、しかしオーケストラの荘厳や Peavy のダミ・キャッチーな歌声で完全に RAGE の独壇場としてリスナーに歓喜を届けるのです。
一方で、Peavy がグロウルをお見舞いする “Arrogance and Ignorance” を筆頭に、メロディック・デスメタル的な作曲術も今作では際立ちます。さながら ARCH ENEMY のように疾走し蹂躙し慟哭を誘う劇的なリフワークとハーモニーの数々は、これもまたツインギターでしかなし得ないバンドの新境地に違いありません。
もちろん、かつてのスピード・スラッシャーを彷彿とさせる “Extinction Overkill”、アコースティックを巧みに施した “Man In Chains”、80年代を現代風に塗り替えた “Mind Control” などこれまでのファンを満足させる要素も満載されていて、何より “Resurrection Day” の旋律はそのすべてが RAGE でありながら一段魅力的な珠玉となっているのです。その証明こそ、タイトル・トラックから、”Virginity”, “A New Land” と畳み掛ける、血湧き肉躍るフック満載のメタル・ドラマの三連撃。よりキャッチーに、よりドラマティックに、よりエピカルに。RAGE が遂げた完全復活。
今回弊誌では、Peavy Wagner にインタビューを行うことができました。「骨のコレクションは膨大な量になっているぜ。今では本物の骨の博物館を所有しているくらいでね!」 どうぞ!!

RAGE “RESURRECTION DAY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE RUINS OF BEVERAST : THE THULE GRIMOIRES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXANDER VON MEILENWALD FROM THE RUINS OF BEVERAST !!

“We Were Teenagers And Fairly Easily Manipulable, And an Extreme Movement Coming From Obscure Scandinavia, That Was Surrounded By Kind Of an Occult Aesthetic And an Almost Radical Anonymity And Secretiveness, Seemed Overwhelmingly Fascinating To Us.”

DISC REVIEW “THE THULE GRIMOIRES”

「自分がやっていることがブラック・メタルのルールに則っているかどうかは、あまり意識していない。もちろん、NAGELFAR 時代にもそうしていたんだけど、THE RUINS OF BEVERAST は最初から巨大な音の風景を構築することを目的としていたから、限界を感じるものは直感的に無視しようとしていたのだと思うな。そして、何よりもまず制限となるのは、ジャンルのルールだからね」
ジャーマン・ブラック・メタルの伝説。Alexander von Meilenwald の落とし胤 THE RUINS OF BEVERAST は、長い間メタルの海岸線を侵食しながらアンダーグラウンドの美学を追求してきました。ブラック、デス、ドゥームに、サイケデリックな装飾や多彩なサウンドスケープ、サンプルを宿しながら綴る、音のホラー小説。
デビューアルバム “Unlock the Shrine” の広大なアトモスフィアから、15世紀ドイツの異端審問を描いた “Blood Vault – The Blazing Gospel of Heinrich Kramer” のコンセプチュアルな作品まで、Alex の言葉を借りれば、自然や世界を聴覚的に表現する音楽はアルバムごとにそれぞれの独特な感性を備えています。
「俺はいつもゼロからのスタートなんだ。いつも、新しいアルバムのためのビジョンを描き、それが創造的なプロセス全体の地平線として設定される。そして、先ほど言ったように、それは以前の作品とは全く関係がないんだ。」
Alex の6度目の旅路 “The Thule Grimoires” は、これまでのどの行き先よりも楽曲を重視し、アイデアを洗練させ、多様であると同時に即効性のある目的地へと向かいました。スラッジの破壊と暗く壮大な混沌のドゥームを探求した “Exuvia” とは異なり、”The Thule Grimoires” は初期の生々しいスタイルを再度回収しています。では、Alex は過去の寄港地、ブラックメタルのルーツにそのまま戻るのでしょうか?それともトライバルでサイケデリックな領域をさらに旅し続けるのでしょうか?圧倒的で落胆に満ちたドゥーム・アルバム? メタルではなくアンビエントなテクスチャーに根ざした何か?答えはその全てです。
「ブラック・メタルが重要じゃないわけじゃないんだ。”Ropes Into Eden” の冒頭を聴いてみると、かなり古典的なブラックメタルのパートだけど、同時に見慣れない要素によって拡張されている。これはすべてオートマティックに起こることさ」
アグレッシブなテンポ、ブラスト・ビート、そしてトレモロ・リフに大きな重点を置きながら、美しく録音された作品には、フューネラル・ドゥームの深い感情を呼び起こすような、不安になるほど酔いしれた雰囲気が漂っています。ただし、テンポが速くなったことでこれまで以上に素早くシーケンスからシーケンスへと飛び移ることが可能となり、その結果、楽曲は様々な影響が回転ドアのように目まぐるしく散りばめられているのです。
「俺の音楽人生には何度か、必ずポップ、シンセウェーブ、ポスト・パンクの衝撃が戻ってきているんだ。NAGELFAR の “Srontgorrth” アルバムや、初期の THE RUINS OF BEVERAST のリリースでも、少なくともゆるやかには存在していたからね。ただこのアルバムでみんながこれほど “ノン・メタル” な影響を確認する主な理由は、クリーンなボーカルだと思うんだ」
アルバムは陰鬱なスペース・ロック、”Monotheist” 時代の CELTRC FROST、さらには80年代のゴス・ロック、ポスト・パンク、シンセ・ポップからも影響を受けています。しかし、すべてのスタイルを支えているのは、鼓動するブラックメタルの心臓。
例えば “Polar Hiss Hysteria” ではトレモロの嵐とサイケデリックなリードがバランスよく配置されており、膨らんだ緊張感はそのままドゥーム・メタルに身を委ねていきます。クリーン・ボーカルも、アルバム中盤のハイライト “Anchoress in Furs” の見事なコーラスのようにより強調され、不協和音のコーラス讃歌にサイケデリックなギター、Alex の奇妙に高揚したバリトン・ヴォイスが万華鏡のような泥沼を創造します。
「俺はあのバンドを心から尊敬しているし、Peter Steele は “俺たち” の音楽世界でら最も非凡で傑出した人物の一人だと思っているんだよ。彼の黙示録的な皮肉は独特で、彼の声も同様に独特だった。完全に他にはないものだったね。だからこそ、俺は彼の真似をしようとは思わなかったんだ。”Deserts To Bind And Defeat” の冒頭では、俺の声をできるだけ深いトーンで表現することにしたんだよ」 そしてもちろん、TYPE O NEGATIVE。
今回、弊誌では Alexander von Meilenwald にインタビューを行うことができました。「ブラック・メタルのムーブメントが始まったとき、俺たちはノルウェーについてできるだけ多くのことを知りたいと思った。突然、ほとんどすべての人が、スカンジナビアから生まれた創作物を賞賛することに同意したんだからね。俺たちはティーンエイジャーで、簡単に影響をうける年ごろだった。オカルト的な美学と、匿名性と秘密性に包まれた、無名のスカンジナビアから生まれた過激なムーブメントは、俺たちにとって圧倒的に魅力的なものだったんだ」 ブラックメタルが贈る審美の最高峰。どうぞ!!

THE RUINS OF BEVERAST “THE THULE GRIMOIRES” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PANZERBALLETT : PLANET Z】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAN ZEHRFELD OF PANZERBALLETT !!

“Planet X Were The First Band I’ve Heard With This Special Blend Of Low-Tuned Heavy Guitar Riffs, Dark Atmospheres, Jazz Harmony, Precision And Virtuosity. “Planet Z” Could Be Understood As My Vision Of a Sequel To That.”

DISC REVIEW “PLANET Z”

「私の愛する2つの異なった音楽世界を融合させるつもりだった。このバンド名を見つけることが出来てラッキーだったよ。とても良くコンセプトを表現しているからね。ヘヴィーな鋼鉄とソフトなダンス。両方とも深く気を配る必要があるというのが共通点だね。戦車は精密なエンジニアリングを要求されるし、バレーは舞踏術をマスターした独創性に基づくからね。」
ドイツが誇る PANZERBALLETT は、ヘヴィーとソフト、精密と独創、複雑と明快を股にかけ、重音舞踏会を華麗に駆け抜ける高性能ジャズ式重戦車。その異様と壮観には5つの掟が定められています。
「音楽とテクニックでリスナーに感動を与える」「多面性を持って音楽的にフレッシュでいる」「音楽の予測性と非予測性をバランス良くミックス」「高い知的レベルを保ちながらアグレッションを持つ」「リスナーの期待に沿わないで挑発する」
実際、PANZERBALLETT はこれまで、新鮮なアイデアと予想外の行動でリスナーに驚きを与え続けてきました。
Frank Zappa, WEATHER REPORT, ABBA といった多様な泉から涌き出でるカバーの数々、”Take Five” や “ピンクパンサーのテーマ” を自らのセットリストに組み込むその貪欲、そしてサックスはもちろん、インドの伝統楽器にタイプライター、果ては Mattius Eklundh まで “使用” する大胆奇抜まで、常軌を逸した PANZERBALLETT の辞書に不可能の文字は存在しないのです。
「PLANET X は低音のヘヴィーなギターリフ、ダークな雰囲気、ジャズのハーモニー、正確さ、そして名人芸の特別なブレンドを持っていたね。こんなバンドは聴いたことがなかったよ。だから、”Planet Z”は、”Planet X” の続編のような作品を作ってみたいという願望のあらわれなんだ。」
テクニシャン・オブ・テクニシャンを結集した PANZERBALLETT ですが、それでも Jan Zehrfeld という大佐の乗り物であることは疑いの余地もありません。そして、最新作 “Planet Z” は、Zehrfeld の頭文字を頂くように以前よりさらにソロアルバムの性質が高まった作品と言えるのです。
The Brecker Brothers, TRIBAL TECH, MESHUGGAH といった異能に影響を受けてきた Jan ですが、そのヘヴィーメタルビバップな魂を最も喚起したのが PLANET X でした。
キーボードの VAN HALEN こと Derek Sherinian が名手 Virgil Donati と立ち上げたインストフュージョンプロジェクト。Tony MacAlpine, T.J. Helmerich, Brett Garsed, Alan Holdsworth, Billy Sheehan, Dave LaRue などなど奇跡的なメンバーを集めて、メタルとジャズの交差点を探った早すぎたバンドです。
異端は異端を知る。そんな宇宙人の魂を継ぐように、アルバムは Virgil Donati のドラムスをフィーチャーした格好のジャズメタル “Prime Time” でその幕を開けます。
「彼らは皆私に影響を与えていて、特に Virgil からは大きな影響を受けている。だからまず、彼に声をかけたんだ。でも素晴らしい出発点になったよ。なぜなら、彼が参加していることで他の一流のドラマーたちにも参加を了承してもらうことができたからね。」
今回のゲストを大勢招くそのやり方も、PLANET X を見習ったものかも知れませんね。Virgil, Marco Minnemann, Morgan Agren, Gergo Borlai, Hannes Grossmann, Andy Lind。OBSCURA で多忙な Sebastian Lanser の休養と共に自らが愛するドラマー6名を招くことで、アルバムはさらにソロ作品の色を濃くしていきます。
「クラッシック作曲家の中でワーグナーは、おそらく最も “メタル” な音楽性を持った一人だから。」
その言葉通り、鬼才ワグナーのワルキューレはメタルの五重奏へと堂々進化し、ウニとタコの壮絶な戦いを複雑怪奇な音楽で表現し、遂には SOS のモールス信号をそのまま楽曲へと組み込んでしまう。Jan の爆発する芸術は “Planet Z” という遠く離れた宇宙の星で目一杯花開いたのです。
今回弊誌では、Jan Zehrfeld にインタビューを行うことが出来ました。「この15年の間に、PANZERBALLETT は独自の音楽領域を作り上げてきたね。音楽を作る時は、その領域に飛び込んでいるんだけど、それって自分の “惑星” に引きこもっていると言えるかもしれないよね。」 前回のインタビューと合わせてどうぞ!!

PANZERBALLETT “PLANET Z” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE HIRSCH EFFEKT : KOLLAPS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ILJA JOHN LAPPIN OF THE HIRSCH EFFEKT !!

“Plain, Aggressive Music With Odd Time Signatures Would Probably Be Boring For Us In The End, If We’d Only Stick To That Kind Of Music. Allowing Different Moods And Genres To Come In Has Kept Such Music Interesting And Exciting”

DISC REVIEW “KOLLAPS”

「結局、奇妙な拍子記号があるだけのプレーンでアグレッシブな音楽は、そこに固執するのであればおそらく僕たちにとって退屈だろうな。異なるアトモスフィアやジャンルを取り入れることは、そんなテクニカルな音楽を面白く刺激的なものにしてくれたんだ。」
自らを “Indielectropostpunkmetalmathcore” と称するハノーファーの異分子トリオ THE HIRSCH EFFEKT は、目眩くジャンルの島々を巡りメタルの多音美を実現する挑戦的な吟遊詩人です。
「このレコードの大半は、フライデーフォーフューチャーと世界の気候変動問題について扱っているんだ。よりドキュメンタリータッチで、客観的にね。グレタ・トゥーンベリに触発され、彼女のスピーチからいくらか派生した楽曲もあり、引用として使用している部分もあるよ。だからスウェーデン語のタイトルなんだ。」
THE DILLINGER ESCAPE PLAN から LEPROUS, 果てはストラヴィンスキーまで、無限にも思える音のパレットを備えた THE HIRSCH EFFEKT にとって、その言語的な多様性も彼らの絵音を彩る重要な筆に違いありません。
自らのバンド名が象徴するように、母国語であるドイツ語の響きでユニークな異国情緒を奏でながら、最新作 “Kollaps” において、楽曲にスウェーデン語のタイトルを冠することで若き環境活動家の蒼を観察者としての視点から紡いで見せるのですから。
「典型的な3ピースとしての、ベース、ギター、ドラムのバンドサウンドの退屈さを感じた時、僕たちはひらめいたんだ。バンドのサウンドから遠ざかり、ストリングスセクション、合唱、ホーンなどのクラシック音楽の要素を組み込んだり、モチーフやバリエーションのメソッドを拝借したら、もっとエキサイティングな楽曲になるんじゃないか?ってね。」
興味深いことに、メンバー3人のうちギター/ボーカルの Nils とインタビューに答えてくれたベーシスト Ilja は、ドイツの音楽大学で幅広い教育を受けています。ゆえに、典型的なロックサウンドに飽き足らず、クラッシックやエレクトロニカ、ノイズにジャズと、その好奇と冒険の翼を果敢に難解に広げることはある意味必然でした。
ゆえに、THE DILLINGER ESCAPE PLAN や BETWEEN THE BURIED AND ME との比較は避けがたい運命とも言えるでしょう。実際、”Noja” を聴けば彼らのアグレッシブでカオティックな奇数拍子の猛攻が、OPETH の知性とブラックメタルの咆哮を介しながらも、TDEP のスタイルをある程度基盤としていることに気がつくはずです。そこに絡み合う異質なアルペジオと英語のスポークンワードが重なることで、世界は不可思議な胎動を始めるのです。
ただし、THE HIRSCH EFFEKT はただリズミックにのみ実った果実ではなく、ハーモニックにも芳醇な甘い実をつけました。MESHUGGAH と SikTh の重音異端が流麗に花開く “Declaration”、LEPROUS の狂気を煮詰めた “Domstol”、NINE INCH NAILS の内省的シネマを投影した “Bilen”。さらにアルバムを締めくくる “Agera” には、Steven Wilson にも通じるメロディーの哲学と感情の絵画が広がります。
これほどの多様性、色彩を備えながら一つのアートとして完成したアルバムは、まさに Ilja が語る通り、”美術館のアートギャラリーを歩くような” 芸術的広がりを有しているのです。
今回弊誌では、Ilja John Lappin にインタビューを行うことができました。「”The Fragile” は実は僕のフェイバリットレコードの1つで、作詞作曲のみならず、プロダクション、サウンド、ジャンルの多様性に関するオルタナティブロックやメタルの重要かつ広く認識されたランドマークだよね。 」どうぞ!!

THE HIRSCH EFFEKT “KOLLAPS” : 10/10

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