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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SOUP : REMEDIES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERLEND AASTAD VIKEN OF SOUP !!

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Norway Based Tasteful “Musical Soup”, Soup Gives You Nostalgia And Great Soundscape With Their Newest Record “Remedies” !!

DISC REVIEW “REMEDIES”

メランコリックで詩情豊かなミュージックスープ。クロスオーバーの先を見据えるノルウェーのフォーサム SOUP が、ガラス細工のように繊細かつ美麗な壊れもの “Remedies” をリリースしました!ポストロックとプログ、そしてエレクトロニカの華麗なる融合は、斯くも鮮明に北の大地の優美で凛列なる風景を映し出します。
スカンジナビアの西端に息衝く創造性を体現する4人のシェフが2013年にリリースした “The Beauty Of Our Youth” は、ダイナミックかつメランコリックなポストロック、シューゲイズ、オルタナティブロックを起点にクラシカル、シネマティック、そしてエレクトロニカを股に掛けた味わい深いブレンドのスープとして結実し、舌の肥えた音楽ファンの五感を刺激した作品でした。それから4年。バンドは新たな具材と調味料を調達し、決定的な看板メニューを完成させたのです。
レシピの貴重なラストピースは70年代のノスタルジアを運ぶプログロックでした。そして、バンドのキャラクターであるコンテンポラリーなアトモスフィアと、郷愁を誘う有機的なプログロックの邂逅は究極の美へと昇華し、作品のタイトル “Remedies” を具現化する心の治療薬としてリスナーの元へと届けられることとなったのです。
インディーズの生々しいアコースティックサウンドで孤愁と共に幕を開けるオープナー “Going Somewhere” はアルバムへの招待状。ソリッドなドラムスを軸に、シンセサイザー、ストリングス、ギターエフェクトでデザインされた夢幻に揺らめくメロディーの洪水は、ポストロックのクレッシェンド、アトモスフィアと共に新たな “SOUP サウンド” のドアを押し開けて行くのです。
クライマックスは ‘The Boy and The Snow” で訪れます。実際、この11分間のエピックには進化の全てが注がれています。PORCUPINE TREE, KING CRIMSON, SNOW PATROL, MOGWAI。道を交えることのないプログ、インディー、ポストロックレジェンドたちの音像はここに溶け合い新たなケミストリーを創成します。
メロトロンやヴィンテージのギターサウンドは見事にモダンなアンビエンスと融合し、複雑に交差するリズムはポストロックの文脈へと浸透。さらに津波と化したハーモニーはインディーズのエモーションをも飲み込んで奇跡のサウンドスケープを実現し、胸を締め付ける追憶と共に現代へとリスナーの想い出を映し出しているのです。
アルバムのプロダクションを MOGWAI, FRANZ FERDINAND との仕事で知られる Paul Savage が手がけ、さらに Steven Wilson のビジュアルコラボレーター Lasse Hoile が作品のアートを担当したことはある意味象徴的にも思えます。
それにしてもこの楽曲のノスタルジックでドリーミーな世界に潜む、どこかヒリヒリとした緊張感、時に突き刺すような痛みは異常です。そしてその違和感の正体は、コンポーザー Erlend が幼年期に経験した通過儀礼だったのです。
「実は “The Boy and The Snow” は15歳で凍死してしまった子供の頃の友人へ捧げたトリビュートなんだよ。」 Erlend は躊躇いながらもそう語ってくれました。誰もが登る大人への階段には、必ず漆黒の闇や悲しみが宿ります。このエピソードを聞けば、唐突にも思えたチャーチオルガンの独奏、荘厳美の極み “Audion” が鎮魂の調べであることが伝わるでしょう。そして少年の魂が遂に召されたことも。
そうしてアルバムは現代に降臨した JETHRO TULL、”Sleepers” の躍動を経て “Nothing Like Home” で静かにその幕を閉じるのです。
今回弊誌では、ボーカルにしてキーボーディスト、サンプリングも担当する鬼才 Erlend Aastad Viken にインタビューを行うことが出来ました。勿論、メッセージのは彼らが敬愛する QUEEN の “Teo Torriatte” の一節。どうぞ!!

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SOUP “REMEDIES” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MAJOR PARKINSON : BLACKBOX】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JON IVAR KOLLBOTN OF MAJOR PARKINSON !!

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Surreal And Strange, But Also Beautiful and Sensational. Norway Based Theatrical Progressive Septet, Major Parkinson Will Give You Amazing Associative Journey With Their Newest Records “Blackbox” !!

DISC REVIEW “BLACKBOX”

ノルウェープログレッシブシーンを象徴する比類無き独創性、異形のタイムトラベラー MAJOR PARKINSON がシアトリカルな連想の旅路 “Blackbox” をリリースしました!!幕を開ける奇妙でユニークなミクスチャー劇場のインパクトは絶大です。
ヴァイオリンを含むセプテットが奏でる音楽は、多様で豊潤なノルウェーの土壌に芽吹いた怪異なのかも知れませんね。プログ、ロック、ロカビリー、パンク、ハードコア、オルタナティブ、そして映画のサウンドトラックを等しくその骨格とする中で、Hank Marvin を長とするロック黎明期のインストサウンド “Rautalanka” とコンテンポラリーなエレクトロニカが共鳴し溶け合う様はまさに天衣無縫。20世紀と21世紀の衝突が生み出す時間の融解は、時に不気味に、時に華やかに、そして時にはロマンチックに配役を変えながらリスナーの心まで溶かすのです。
さらに最新作、”Blackbox” では、小さなオーケストラとも言える圧巻の陣容もミクスチャー劇場の完成を後押ししました。クラッシックの “Overture” “序曲” とロックのインテンス、そしてシンセサイザーの魔法を共存させるオープナー “Lover, Lower Me Down” を招待状に、サックス、チューバ、トロンボーン、トランペット、ホルンにチェロ、そして壮大なクワイア。数多のゲストプレイヤーを招いて構築されたミニマルシンフォニーは、Jon Ivar Kollbotn のベテラン俳優のように深みを宿す歌唱を伴って “演劇と音楽の距離” を接近させるのです。
加えて、Lars Christian Bjørknes のキーボードとプログラミング、Sondre Sagstad Veland のドラムスとパーカッションは、共に複雑にして繊細、作品の根幹としてエネルギッシュに躍動し、アルバムのダイナミズムを司り続けます。
シンセウェーブと難解極まるリズムを導入しさらにインテンシティーを増した “Night Hitcher”、THE DOORS の意思を受け継ぐ深遠なる “Before the Helmets” を経て辿り着く “Isabel: A Report to an Academy” は間違いなくアルバムのハイライトでしょう。祈りと闇を等しく抱える10分間のアイデア溢れるエピックは、まさにバンドの真骨頂。
“Mission Impossible” を思わせるセンセーショナルなシンセサイザーとウィスパーボイスに導かれ幕を開けるチェンバーミュージカルは、チェロが定めた印象深い楽曲のテーマにギターとヴァイオリンがリズミカルかつリリカルな奥行を加え、混沌と調和の鬩ぎ合いを提示して行きます。
ゲストボーカル Linn Frøkedal のエセリアルな神々しさは、Jon の深く生々しいフィジカルな表現方法と見事に対比の美学を形成し、「静かで無口な本の中から小さなメロディーの断片が、まるで光が差すように注ぎ出て聴こえるようになった。」 と語るメロディーメイカーの発言を裏付けます。
実際、ヨーロピアンフォークに木琴、タイプライター、ラップまで登場する華やかで騒々しい楽曲のクライマックスは、相反する二人の主演に起因する幅広いエモーションを創出し、リスナーに歓喜と悲愴の両極をもたらしダンスを誘うのです。
「ただ過去に浸って、完全にオールドファッションな存在になりたくはなかったんだ。」 と語る Jon の野心を象徴する、Steve Reich のミニマリズムを全身に浴びたインストゥルメンタル “Scenes from Edison’s Black Maria”、ABBAをも想起させる夢見がちなダンスチューン “Madeleine Crumbles”、「1950年代のベースボールゲームのように曖昧なものからもインスピレーションは生まれるんだ。」 の言葉を体現したもう一つのシンセエピック “Baseball”。バンドの創造性は奔放にして無限です。そして恐らくこの稀有なるアートはレコードにして、映画、演劇、そして小説なのかもしれませんね。
不穏でパワフルなブラスセクションと静謐なるメロディーで時をかける作品のリプライズ、クローサーにしてシネマティックポップなタイトルトラック “Blackbox” はまさに完璧なカーテンコールと言えるでしょう。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド Jon Ivar Kollbotn にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちは日本のバンド PAY MONEY TO MY PAIN とスタジオをシェアしていたんだ。」どうぞ!!

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MAJOR PARKINSON “BLACKBOX” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VON HERTZEN BROTHERS : WAR IS OVER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIKKO OF VON HERTZEN BROTHERS !!

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Finland’s Prog Rocking Brothers, Von Hertzen Brothers Are Firmly Back In Dynamic Prog Territory With Their Masterpiece “War is Over” !!

DISC REVIEW “WAR IS OVER”

フィンランドミュージックシーンにおける至高のファミリービジネス、VON HERTZEN BROTHERS。母国、そして UK では押しも押されぬビッグバンドのロックモンスターがリリースした最新作 “War is Over” は、更なる大望を抱き変化を志した新たなチャプターの幕開けです。
Kie, Mikko, Jonne の三兄弟を中心とする VON HERTZEN BROTHERS の音楽は、多様で豊潤なカレイドスコープです。ピュアなクラッシックロックからプログ、ポップ、オルタナティブにワールドミュージックまでナチュラルに横断する神秘のコンポジションは、パワフルかつイマジネーティブなジャンルの交差点として異彩を放っていますね。
特筆すべきは、そのソフィスティケートされた思慮深い作曲術と同次元で繰り出されるワイルドでエネルギッシュなロックマインドでしょう。
柔と剛を自由自在に操舵する血の伝統と絆は、ウルトラキャッチーなメロディーライン、耳を捉えて離さない艶やかなフック、そして洞察力に富んだ深遠なるリリックを纏ってリスナーにモノリシックの意味を伝えるのです。
とは言え、短いリリースインターバルに反して局所的な成功しか収められない焦りで、バンドは疲れ切っていたと Mikko は語ります。もしかすると、ロックサイドに特化した前作 “New Day Rising” でバンドは自由を失い、少し方向性を限定しすぎたのかも知れません。
つまり、KINGSTON WALL のレジェンドで、VHB の2ndアルバムでもプレイしていたドラマー Sami Kuoppamäki が復帰を果たし、HIM の Janne ‘Burton’ Puurtinen をキーボードに起用して制作された ‘War is Over” は、メンバーのみならずレコード会社やマネージメントをも変更し、”燃料切れ” だったバンドが 「前に進み、上昇するため」 の再生の作品なのです。
勿論、バンドが大きな賞賛を捧げる John Lennon へのリスペクトを表明するタイトルトラック “War is Over” は12分のエピックにしてまさにリヴァイブの象徴。アトモスフェリックな電子音に導かれ躍動を始める楽曲は、瑞々しさとダイナミズムに満ちています。
DIZZY MIZZ LIZZY のバランス感覚と KINGSTON WALL のサイケデリカを内包した素晴らしき平和への祈りは、絶え間なく変動するテンポやメロディーで自由の喜びを表現し、コンテンポラリーな音楽が失いつつあるフレキシブルなエナジーを濃密に宿しているのです。
さらに楽曲終盤のファンファーレでは、100本のギターを重ねフィンランドの自由と独立100周年を祝うセレブレーションの意味まで持たせているのですからその豊富なアイデアとロマンチシズムには驚愕の一言ですね。
実際、この壮大なオープナーを皮切りに、アルバムはよりプログレッシブで多様に深化したバンドの “現在” を克明に投影して行きます。
日本やインドのオリエンタルなスケールを導入した BLACK SABBATH と Chick Corea の神々しき融解 “To The End Of The World”、Burton の荘厳なシンセサイザーが映える新天地 “Jerusalem” を経て辿り着く “Frozen Butterflies” はアルバムのハイライトだと言えるでしょう。
根本的にはポップロックの美しきワルツ。しかし幼生が蛹を経て美麗な蝶になるように、プログとポップ、そしてロックの姿を宿命の如く宿した楽曲はまさにバンドの “現在の” クリエイティビティーを象徴しています。
クリーントーンのミニマルな反復リフ、ファストなリズムとシンコペーションはリスナーへ複雑な変拍子を伴うマスロックのような印象すら与え、同時にヘルシンキの大空に羽搏き舞う情熱と冬の凍てつく生命を見事に描写した絶佳のサウンドスケープを保持する楽曲は、バンドのスケールが一次元や二次元の狭い檻では収まらない確固たる証明なのかも知れませんね。
アルバムは作品で最もクラッシックな VHB ソング “Beyond the Storm” でその幕を閉じます。”War is Over” のタイトルが回帰する完璧なまでにスピリチュアルな楽曲は、バンドの祈りと野心をしたためてアルバムのリピートを誘い “円” “サークル” の形態へと導来ました。それは、西洋と東洋の哲学、音楽を等しく学んだ VHB故の絶妙なるエンディングだと言えるでしょう。
恐らくは、彼らの理想とする “エピックロック” に最も接近した傑作。今回弊誌ではボーカルとギターを担当する Mikko von Hertzen にインタビューを行うことが出来ました!本誌二度目の登場。「混乱し、多くの苦難に直面している世界で、平和と思いやりを見ようとすることがどれほど重要かという考えを人々に思い起こさせたいと思ったんだよ。」 どうぞ!!

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VON HERTZEN BROTHERS “WAR IS OVER” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CALIGULA’S HORSE : IN CONTACT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JIM GREY OF CALIGULA’S HORSE !!

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Brisbane’s Progressive Metal Outfit Caligula’s Horse Will Take The listeners Into Unique Sonic Worlds With Ambitious Conceptual Record “In Contact” !!

DISC REVIEW “IN CONTACT”

躍動感に満ちたオーストラリアの清新なるオルタナティブ/プログレッシブシーンを象徴する鼓動 CALIGULA’S HORSE が、アートの本質と真髄を提示する新作 “In Contact” をリリースしました!!南半球から流動する多様でモダンなソニックウェーブは、逸群なるミュージシャンシップを伴って世界へと浸透して行きます。
狂気のローマ皇帝カリグラが、自身の愛馬を執政官に任命しようとした愚かな逸話をバンド名に冠するブリズベンの5人組は、しかしその名に相反する稀代の駿馬。”From Tool to Dream Theater” と例えられるように、オルタナティブとプログレッシブの狭間で揺蕩うそのサウンドコンセプトは、同郷 KARNIVOOL の美麗なアトモスフィア、Djent のコンテンポラリーなデザインをも伴って、プログメタルのデフォルトを再定義するような野心と瑞々しさに満ち溢れています。
加えて特筆すべきは、彼らのストーリーテリングの才能です。勿論、ファンタジックなプログレッシブワールドにおいて、コンセプトやテーマを巧みに描く能力は必修技能にも思えます。
しかし、 前作 “Bloom” で日本の木花咲耶姫にインスピレーションを受けて書かれた “Daughter of the Mountain” のポジティブな光彩を挙げるまでもなく、ボーカリスト Jim Grey の詩人としてのタレントを軸としたバンドが、その分野において卓越していることは明らかな事実であり強みだと言えますね。
“In Contact” で彼らが描くファンタジーは、芸術と創造性をテーマとする様々な時空と人物の物語です。古に人類が共有しながら、今ではすっかり忘れてしまった夢の欠片。異なる世界線においてアーティスト達は、記憶の狭間にその感覚を呼び覚まし具現化することで、崇高なるアートを生み出しています。つまり、4人のアーティストを主人公とした4章から成るアルバムは、非常にパーソナルで同時にグローバルなコンセプトイメージを掲げ伝えているのです。
アルバムオープナー、”Dream the Dead” はよりディープでダーク、複雑な世界観を有する最高傑作への招待状です。ギタリスト Sam Vallen のメズマライズで数学的なリフワーク、陰を備えたスペーシーなアルペジオ、そして John Petrucci の壮絶なピッキングを受け継ぐピーキーかつメロディックなリードプレイは、アルバムの冒頭からアグレッションとアトモスフィアを行き来し、目まぐるしくも完璧に作品のディレクションを主張します。続く “Will’s Song” のオーガニックな淫美と複雑難解なリズムデザインに LEPROUS の最新作を想起するファンも多いでしょう。
さらに、スタイリッシュなシンコペーションの合間を縫うように歌い紡ぐ、Jim の浮遊するハーモニー、ファルセットは、神々しさすら纏って芸術家の苦悩、産みの苦しみを劇的に伝えます。
事実、この楽曲を起点とする第一章 “To the Wind” は、インスピレーションや創造性と引換にアーティストが失う健全な人生、ドラッグやアルコール、精神疾患がアートに信頼性や価値をもたらすという不健全な神話について憂慮し警鐘を鳴らしているのです。
実際、Jim の幅広い表現力、そして2010年以降のプログシーンに欠かせない豊潤なポップセンスは、Daniel Tompkins, Einar Solberg, Ross Jennings と並んで新世代の代表格だと言えるはずです。エレクトロビートを巧みにミックスした “Love Conquers All”, よりオーガニックな “Capulet” といった緩やかなバラードで聴ける凛としたボーカルパフォーマンスに加えて、その証明の極めつけは “Inertia and the Weapon of the Wall” でしょう。
第三章、狂気の詩人を主人公とした物語 “Ink” に組み込まれた楽曲は、驚くことに3分間のスポークンワード。詩人の章で語られる長尺のポエトリーリーディングは、大胆なアイデアと豊かな表情を礎とする天賦の才の確かな証です。
アルバムのクライマックスは15分を超える “Graves” で訪れます。作曲に数ヶ月を要したという崇高で完璧なるエピックは、聖歌隊でテクニックを養った Jim の祈るような歌声、さらには耽美なクワイアが実に印象的。Plini を想起させるマスジャズスタイルのギターと共に展開する透明で清廉なサウンドスケープは、しかし徐々に激しさの熱を帯びて行きます。
Jørgen Munkeby のカミソリサックスを合図として Djent のエキサイトメントを加えたバンドは、そうして混沌と興奮の中で突如事切れるように演奏を停止するのです。まるで作品に自身の全てを注いだ芸術家のように。
Forrester Savell, Jens Bogen, そして Sam のサウンドチーム、さらには新メンバーも完璧にハマったバンドの最高到達点。今回弊誌では、Jim Grey にインタビューを行うことが出来ました。2度目の登場です。今回はプログメタルと言わずオルタナティブと呼称している点にも注目です。どうぞ!!

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CALIGULA’S HORSE “IN CONTACT” : 9.7/10

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MASTERPIECE REVIEW + INTERVIEW 【WALTARI : SO FINE!】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KÄRTSY HATAKKA OF WALTARI !!

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Legendary Avant-garde Metal Act From Finland, Waltari Will Come To Japan For The First Time Ever! Don’t Miss The Amazing Performance Of Pioneer!

DISC REVIEW “SO FINE!”

アヴァンギャルドメタルの創始者にして、北欧の伝説。フィンランドが生んだカメレオン、千変万化なミクスチャーゴッド WALTARI がその30年のキャリアで初の来日を果たします!!
80年代後半から90年代にかけてスカンジナビアから勃興した新たなメタルの波。MESHUGGAH, AMORPHIS, OPETH, IN FLAMES, EMPEROR といった傑物を輩出し、インタビューで Kärtsy Hatakka が “ポストファーストメタルタイム” と呼んだそのムーブメントは、メタルの転換期にして、モダンメタルと現在のメタルシーンにとって架け替えのない重要なピリオドとなりました。
「スカンジナビアのバンドたちは、より幅広いスペクトルの音楽を聴くことで、メタルに “クレイジーさ” を加えていったんだ。」
Kärtsy が語るように、ある者は複雑なリズムアプローチを、ある者はプログレッシブロックを、ある者はデスメタルを、ある者はエクストリームな残虐性を、ある者はフォルクローレを “ベーシック” なメタルに加えることで、彼らはモダンメタルの礎となる多様性を築き上げていったのです。
“ポストファーストメタルタイム” を語る上でWALTARI は決して外せないバンドです。メタル、デスメタル、スラッシュ、オルタナティブ、プログ、ヒップホップ、ファンク、ジャズ、ブルース、フォーク、インダストリアル、テクノ、パンク、シンフォニック、ポップなど全てを飲み込む音楽性は、まさにそのモダンメタルに宿る多様性の申し子と言えるでしょう。
バンドが 1994年にリリースした “So Fine!” はまさにゲームチェンジングなレコードでした。獰猛なデスメタルのイントロから一転、オルタナティブな浮遊感とパンキッシュなエナジーで突き進む “The Beginning Song” で幕を開けるアルバムは、同じ感覚を持った楽曲が2曲と存在しない奇跡の多様性を誇ります。
確かにスラッシュとデスメタルがアルバムを通して軸とはなっているのですが、あまりに広大なその数多のインフルエンスは、 “ロックが本来持つオープンマインドなアティテュードを守る” “ロックを革命的なその本来の意味に戻したかった” という Kärtsy の言葉を裏付けるように、唯一無二でオリジナリティーに満ちていますね。
中でも、タイトルトラック “So Fine!” の創造性、完成度は驚異的です。EDM、当時のユーロビートを大胆に導入した楽曲は、同郷のヨーデルフォークグループ ANGELIT とコラボレートすることにより、トライバルなビートとフォーキーなヨーデル、そしてロックのグルーヴがせめぎ合う一大エピックとして語り継がれることとなりました。時に Ozzy Osbourne を想起させる Kärtsy のサイケデリックでポップな歌唱も実に魅力的ですね。
ポップと言えば、”To Give” にはバンドのそのセンスが集約しています。WALTARI 印のダンサブルかつファンキーなアレンジメントは確かに Michael Jackson のイメージを宿し、”Beat it, Leave it” と嘯く女性ボーカルとのデュエットは究極なまでにキャッチーでシンガロングを誘います。
インタビューにもあるように、真に根っこの部分はパンクである WALTARI。”Piggy in the Middle” や “Autumn” を聴けば、当時、大半のハードコアアクトがより直線的にパンクのルーツに向かっていったのとは対照的に、WALTARI がメタル、スラッシュとのクロスオーバーに強くフォーカスしていたことも伝わるはずです。何より、ジャンルとジャンルを軽快に股に掛ける “So Fine!” の精神性が後続に与えた影響は計り知れません。
同じアルバムは2枚作らないと語るように、以降 WALTARI はレコードを通じて様々な冒険を行っていきます。”Yeah! Yeah! Die! Die” ではオーケストラとデス/スラッシュメタルの完璧なる邂逅を持たらし、”Space Avenue” ではエレクトロインダストリアルに振り切ったサウンドで周囲を圧倒しました。
素晴らしき “Blood Sample”, “Release Date” といった近年の比較的、普遍なモダンメタルへと接近した作風の中にさえ、煌めくような驚きの瞬間は星の数ほど散りばめられているのですから。
ただ、そういった振れ幅の中でも WALTARI, Kärtsy が紡ぐメロディーは常に途方もなくキャッチーかつ魅力的。不安や孤独、現代社会に対する嘆きを独自のアイロニーを交えつつ珠玉の旋律へと変換し楽曲へと反映する彼のやり方が、バンドのアイデンティティーとして頗る機能していたことは記して置かなければなりません。
遂にレジェンド初の来日です!今回弊誌では、Kärtsy Hatakka にインタビューを行うことが出来ました。ベースとキーボードもこなし、あの X Japan の hide も影響を受けたと言われる不世出のシンガー。さらには KREATOR の Sami Yli-Sirniö が在籍し、過去には ex-CHILDREN OF BODOM の Roope Latvala も所属していたというシュレッダー好きにも堪らないバンドです。どうぞ!!

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WALTARI “SO FINE!” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ART OF ANARCHY : THE MADNESS】BUMBLEFOOT SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RON “BUMBLEFOOT” THAL !!

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Mega-Super Group, Art Of Anarchy Seek To Reinvent Themselves From 90’s Glory, With New Masterpiece “The Madness” !!

DISC REVIEW “THE MADNESS”

90’s~00’s にかけて人気を博した “オルタナティブメタル” の空気をリフレッシュし、見事現代へと再誕させる US スーパーグループ ART OF ANARCHY が、傑出した2ndアルバム “The Madness” をリリースしました!!極上のコンポジションに5人の個性が溶け合った揺るぎなきロックのメタモルフォーゼは、極限まで多様化したシーンに王道の何たるかを見せつけています。
ART OF ANARCHY は、ギターとドラムスをプレイする双子の Votta 兄弟と、GUNS N’ ROSES で気を吐いていたマエストロ Ron “Bumblefoot” Thal が意気投合し始まったバンドです。そこに、STONE TEMPLE PILOTS や VELVET REVOLVER で活躍した天賦のシンガー Scott Weiland, DISTURBED の切れ味鋭いベースマン John Moyer が加わることで、大きな注目と期待を集めるメガアクトが誕生したのです。バンド全員のレコードセールス(当時)は1億5000万枚と言うのですから、数字の面からも彼らの凄みは伝わるでしょう。
セルフタイトルのデビュー作をリリース後、Weiland はバンドを脱退。アルバムをプロモートするツアーを拒否した彼は結局、人生を通じて苦しんできた薬物との戦いに敗北し、命を落としてしまいました。
バンドは Weiland の後任に CREED の Scott Stapp を指名します。実は2014年には Stapp も薬物問題、さらには路上生活にまで転落するなど負の話題で世間を騒がせましたが、彼は挑戦し困難に打ち勝ちました。そして Weiland と同様、まさに時代の寵児として活躍した Stapp の加入は再度バンドのエンジンに屈強なエナジーを注ぐ結果となったのです。
“The Madness” には、ただスーパーグループという事実以上のケミストリー、そしてメッセージ性が間違いなく存在します。Ron がインタビューで語ってくれた通り、Votta 兄弟のアリーナロック、DISTURBED の鋭利でマスマティカルなリフワーク、CREED の瑞々しく雄大なメロディー、そして Bumblefoot、もしくは “Chinese Democracy” の型破りで独創的なアイデア全ては淀みなく渾融し、濃密なマグマとなって作品を流動します。
オルタナティブが王道へと以降した21世紀初頭のソリッドな空気を DNA に深く刻んだ5人の古兵たちは、しかし同時に時代の推移により”オルタナティブであること” から遂に解放され、その雄弁なコンポジション、華麗なテクニック、そして唯一無二のタレント性を制限なくここに開花させているのです。
また、アルバムタイトル “The Madness” が表象するように、作品にはまさに Stapp が苦しんできた”狂気”がそのまま描かれています。新たなアンセム “1,000 Dgrees” では「僕自身が最悪の敵だ。僕は呪われている。」と当時の地獄を独白し、至上のバラード “Changed Man” では「もう一度チャンスをくれないか?僕は変わったんだ。家に帰る時が来たんだよ。」と最愛の妻に過去の自分との決別を告げます。果たして妻は “With Arms Wide Open” で待っていてくれたのでしょうか?
とにかく、”僕たちはこのアルバムを Scott、そして同じチャレンジに直面する人たちの成功に捧げることとしたんだ” と Ron が語るように、作品はアメリカが抱える大きく暗い闇に対する贖いとして生を受けました。自身の魂を声と詩に宿した Stapp の歌唱には深みとリアルが込められ、その美しく、切なく、雄々しく、そして芳醇なメロディーは懺悔であり赦しであり、希望の灯火でもあるように聞こえます。
アルバムの主役は間違いなく Stapp ですが、Ron のトリッキーでカラフルなギターワークが作品にクリエイティブで類まれなる神通力のようなフックをもたらし続けていることは記して置かなければなりませんね。
指ぬき、フレットレス、ロングスケールなど様々な武器を持つ “Bumblefoot” ですが、インタビューでも語ってくれたように彼は決して楽曲の破壊者ではありません。ソロプロジェクト、ガンズ時代を通して歌ものに強い拘りを持ち、エモーショナルで耳に残りリピートを誘うギターフレーズを追い求めてきた彼の真価は “Somber” のアメジストのように燐光を発するソロパートに集約されているのかもしれませんね。
王道とは何か。彼らの”王道”の先には必ず唯一、アリーナでシンガロングし、拳を振り上げるファンの姿が透けて見えます。彼らにはもはやトレンドを意識する必要などありません。ただ、キャッチーでフックと起伏に満ちたアルバムは、エゴを廃し全てが楽曲とストーリーに捧げられ、世代を超えて愛される魔法を備えた新たな栄光への幕開けであると信じます。
今回弊誌では、Ron “Bumblefoot” Thal にインタビューを行うことが出来ました。余談ですが、再発が決定した彼の2ndアルバム “Hermit” もぜひ併せて聴いていただきたいと思います。変態としてのみ語られがちな彼ですが、FAITH NO MORE や RAGE AGAINST THE MACHINE のインテンスと独特のポップセンス、そしてユニークなギターファンタジーをミックスした極上のコンポジションが炸裂した名作。どうぞ!!

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ART OF ANARCHY “THE MADNESS” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KXM : SCATTERBRAIN】GEORGE LYNCH SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GEORGE LYNCH OF KXM !!

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On “Scatterbrain”, Tight And Energetic Performance Of KXM’s Three Giants Will Tell You What The Musicianship, Creativity Is !!

DISC REVIEW “SCATTERBRAIN”

Ray Luzier (KORN)、 dUg Pinnick (KING’S X)、そして George Lynch (LYNCH MOB) というシーンの英傑3名が集結したスーパーバンド KXM が新作 “Scatterbrain” をリリースしました!!三雄の魂が通い合い、個性が溶け合った秀絶な作品は、ロックの持つオーガニックな衝動と、知性を擽るエキサイトメントを織り込みリスナーの直感へと波動するはずです。
“Scatterbrain” は僅か12日間という短い期間で制作されたレコードです。インタビューで George は「もしもさらに時間をかけていたら、いったいどんなものが完成していたのかと考えると、恐ろしいくらいだよ!」 と語ってくれましたが、同時に70年代を思わせる短期集中形のクリエイティブ環境が作品にマジックを産んだとも言えるような気がしますね。
スライドバーを使用したブルースの響きから一転、アルバムはインテンスとカオスが支配するタイトルトラック “Scatterbrain” でその幕を開けます。Ray Luzier の操る不敵な変拍子は George Lynch のシャープで粋なリフワークと共鳴し、その潮流はプログレッシブとさえ言えるムードを創造していますね。ペースダウンし、凪の静穏を献ずる中間部では、Mr. Scary がブルースの熱情を宿した魂魄のシュレッドで楽曲に生命を吹き込み、バンドの破天荒な技巧を伝えています。
“Breakout” や “Big Sky Country” を聴けば、dUg Pinnick の一筋縄ではいかないソウルフルでポップな独特の流儀、歌唱が驚くほど作品にフィットしていることが分かるでしょう。ダークに鬱屈したメロディーが得意のハーモニーを重ねてポップに花開く瞬間。直感的に楽曲を解釈し、ボーカルラインを自然とインプロヴァイズに導く瞬間。そして激情に任せ、咆哮に情念を乗せる瞬間。dUg の持つ類稀なセンスはスポンテニアスにトリオの鼓動と呼応し、無上のカタルシスをリスナーの元へともたらすのです。
同時に、”Breakout” で Ray が魅せる、パーカッションを使用したエスニックなサウンドはデビュー作から進化した KXM の潤色です。ロック、メタル、プログ、ファンク、ブルース、オルタナティブが淀みなく循環する多様な “Scatterbrain” の中で、ワールドミュージックからの影響は確実にアルバムを更に一段上のレベルへと押し上げています。
情熱と哀愁を湛えた dUg の歌唱が光る “Calypso”、カリブの風、グルーヴに乗る George のシュレッドが新鮮な “Not A Single Word” は殊更に、バンドがラテンやレゲエのリズム、モチーフを探求し血肉としていることの証明だと言えますね。
KING’S X でもエクレクテイックなサウンドをトレードマークとする dUg。David Lee Roth, STEEL PANTHER, STONE TEMPLE PILOTS で華々しく経歴を重ね、MI で教鞭もとっていた知性派 Ray。そしてインタビューでも語ってくれた通り、新たな領域へと自己を導き続ける George。ダイナミックなハードロックのルーツの上で、エキゾチックなダンスを華麗に披露する KXM 固有のサウンドは、3人の個性と手練、そしてフロンティアスピリットが結実しシンクロした成果だと言えるでしょう。
エキサイティングでエネルギーに満ちたアルバムは意外にも、ヘンドリックスの遺伝子を受け継いだブルージーなララバイ “Angel” で静かに幕を閉じます。無類で奇抜なタイム感、鋭くアウトやインを繰り返す異端のスリル、瞬間の奇跡。”Scatterbrain” における George のギターワークは近年でも群を抜いていますが、Jeff Healey をも想起させるエモーションを纏った “Angel” のリードは彼が未だに第一人者であることを、改めてシーンに宣言しています。
今回弊誌では George Lynch にインタビューを行うことが出来ました。DOKKEN のリユニオンについても重大な内容を語ってくれています。どうぞ!!

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KXM “SCATTERBRAIN” 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CLOUD NOTHINGS : LIFE WITHOUT SOUND】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DYLAN BALDI OF CLOUD NOTHINGS !!

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New Age Cleveland Indie Rockers, Cloud Nothings Expand And Explore The New Realm With 4th Record “Life Without Sound”! Don’t Miss Their Upcoming Japan Tour In April !!

DISC REVIEW “LIFE WITHOUT SOUND”

オルタナティブ、エモ、インディーズを咀嚼し、リアルな現在進行形の音楽を創造するクリーブランドの4人組 CLOUD NOTHINGS がバンドの成熟を伝える最新作 “Life Without Sound” をリリースしました!!そのディスコグラフィーの中で、最も静観的かつ沈思を誘うアルバムは、彼らの新たな魅力が素晴らしく開花した1枚に仕上がりました。
NIRVANA を初めとして、80年代後期からオルタナティブ / アンダーグラウンドシーンの名作群を手がけ続けてきた Steve Alvini を擁しリリースした2ndアルバム “Attack on Memory”。そのシャープに研ぎ澄まされたアグレッシブなサウンドは、瑞々しいロックアンセムの数々を伴ってシーンに新たな風を吹き込みました。インタビューで Dylan は言葉で音楽を定義することに明らかな嫌悪感を表していますが、それでも90年代の装飾を廃したオルタナティブやエモを想起させるその音楽性は、オルタナリバイバル、エモリバイバルという潮流の中でも一際輝きを放つマイルストーンとなりました。
“毎作違う作品を目指している”と語る Dylan。確かに、”Life Without Sound” は “Attack on Memory” や、スリーピースとなりパンク/ハードコアのエナジーすら内包した前作 “Here and Nowhere Else” とは異色の深化した引力を有していると言えます。
新たにギタリストで鍵盤もこなす Chris Brown が加入し再び4人編成へと回帰した作品は、4つに増えた楽器をさながら美麗なタペストリーを織り上げるかの如く繊細に配置し、細部まで丹念にフックを散りばめた CLOUD NOTHINGS の進化を告げる新たなステートメントです。
アルバムオープナー、”Up to the Surface” は奥行きを広げ、深みを増す彼らの可能性を証明する楽曲です。孤独感を煽るピアノのイントロに導かれ、紡がれる切なく感傷的なメロディーは、まさに Dylan がライティングプロセスで感じていた憂苦を代弁し、巧妙なギターの重畳と、パーカッシブなリズムが生み出す味わい深いフックはリスナーをリピートの輪廻へと誘います。
さらに “Internal World” はバンドのコンポジションが最高到達点へと達した瞬間かも知れませんね。豊富なリズムパターン、クレッシェンドデクレッシェンド、そして何よりポップを極めたキャッチーでメランコリックなボーカルライン。あの WEEZER を想起させる切なさとフックを纏った楽曲には確かに完璧まで試行錯誤を重ねた成果が刻まれていますね。
今回、DEATH CUB FOR CUTIE, HANSON などの仕事で知られる新たなプロデューサー John Goodmanson が作品の最後のピースとして選択し、フォーカスしたのは Dylan のボーカルでした。おそらく彼はこれまで歌詞にはあまり拘ってこなかったという Dylan のフロントマンとしての脆さを見抜いたのでしょう。

“I want a life, that’s all I need lately I am alive but all alone”
「生きている実感が欲しいんだ。近頃はそれだけが欲しいんだよ。生きてはいるけど孤独なんだ。」

新たなアンセムとなった “Modern Act” で進化を遂げ自信に満ちたフロントマンは、自身に巣食っていた孤独を堂々と歌い上げます。
“Up to the Surface” や “Modern Act” で描かれる、孤独が生んだアイデンティティクライシスは、”音を失った”自身の経験を投影したリアルな脆さです。しかしインタビューで語ってくれた通り、そこから辿り着いたアルバムのテーマ”自己理解” “自己実現” は強くポジティブなメッセージでした。プロデューサーが導いたのは、脆さと自信のコントラストが生み出す極上のエモーションだったのかも知れませんね。
「結局自分の運命なんてわからないものなんだけどね。」
アルバムクローサー、”Realize My Fate” で Dylan はそう嘯きながら作品の幕を閉じました。
今回弊誌では、Dylan Baldi にインタビューを行うことが出来ました。4月には3年ぶりの来日公演も決定しています!どうぞ!!

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CLOUD NOTHINGS “LIFE WITHOUT SOUND” : 9.5/10

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