NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARCTIC SLEEP : KINDRED SPIRITS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KEITH D OF ARCTIC SLEEP !!

“So Much Metal Out There These Days Just Sounds Like a Bunch Of Random Riffs Pasted Together, With No Concern For Melody Or Song Structure Or Dynamics. It’s Just Not Memorable And So Much Of It Sounds The Same To Me.”

DISC REVIEW “KINDRED SPIRITS”

「僕は自分の音楽を表現する時、”ビタースイート” って言葉をよく使うんだけど、それは僕の音楽が憂鬱や悲しみと、心地よさや慰めのコンビネーションだからだと思う。」
“プログレッシブアトモスフェリックドゥーム”。ARCTIC SLEEP の音楽は、その耳慣れないラベルに反して実に雄弁です。スロウ&ドゥームとプログレッシブ&ビューティフル。相反する真逆の理念を見事に調和させるパラドックスの具現化は、ARCTIC SLEEP が結成当時からビッグテーマとする “生と死” を投影した対比の美学を源流としています。
ミルウォーキーのマルチ奏者 Keith D のソロプロジェクトとして2005年に産声をあげた ARCTIC SLEEP は、バンドとなり様々な紆余曲折、メンバーチェンジを繰り返して今再び Keith の手中へと戻ってきました。
ボーカル、ギター、ベース、チェロ、キーボード、ジャンベ、パーカッションなど多種多様な楽器をほぼ一人でこなす鬼才は、もはや人事やコミュニケーションに割く時間すらも惜しみながら荘厳壮大なエピックの建築を続けています。
「僕と愛猫 Yoda はとても強い絆で結ばれていたんだ。その絆がアルバムに影響を及ぼしているね。ただ、このテーマを世界中で “喪失” に苦しんでいる全ての人に届けたいという思いもあるんだよ。」
そうして完成をみた7枚目のフルアルバム “Kindred Spirits” は、亡き Keith の愛猫 Yoda に捧げられた作品であり、”喪失” に苦しむ全ての人々へ差し伸べられた救いの精神。そして、彼の根幹である “生と死” を再度見つめ直すレコードに添えられたアートワークの崇高美は、そのまま音の景色へと反映されているのです。
「僕はスロウでヘヴィーな音楽を愛している。だけど同時に、メロディックでキャッチーなソングライティングも愛しているんだ。」 暗くドゥーミーに沈み渡るリフの波、雲間をかき分け差し込むメロディーの光明、荘厳なるチェロの響き、そして押し寄せるハーモニーの洪水。バンド史上最も “聴きやすい” と語るアルバムにとって、明確なコントラストとフックを宿すオープナー “Meadows” は完璧な招待状となりました。
ANATHEMA の多幸感と KATATONIA の寂寞を同時に抱きしめるタイトルトラックで独特の牛歩戦術を披露して、OPETH の静謐を深々と “Connemara Moonset” に委ねたバンドは、8分のエピック “Cloud Map” でアートワークの黒烏と美姫の逢引を素晴らしく音で描いてみせました。それは例えば PORCUPINE TREE と ALICE IN CHAINS の理想的な婚姻。幽玄でどこか危うく、美麗でしかし憂鬱な交わりの音の葉は、全てを黒と白に決して割り切ることのできないあやふやで愛すべき世界の理をも投影しながらリスナーの感情を穏やかに喚起するはずです。
今回弊誌では、Keith D にインタビューを行うことができました。「最近は沢山のリフをランダムにコピペしたようなメタルバンドが多いけど、彼らはメロディーや構成、ダイナミズムには無関心だよ。だから記憶に残らないし、僕にとっては全部同じように聴こえるんだ。」 どうぞ!!

ARCTIC SLEEP “KINDRED SPIRITS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JOLLY : FAMILY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOE REILLY OF JOLLY !!

“I Remember When We First Started Making Music And People Comparing Us To Bands Like Porcupine Tree And Riverside. I Had Never Heard Of These Bands Before, So I Was Confused By The Comparison, And Realized There Was a Whole World Of Music To Learn About.”

DISC REVIEW “FAMILY”

「僕は JOLLY が音楽を作り始め、そして人々が僕らを PORCUPINE TREE や RIVERSIDE のようなバンドと比較し出した時のことを覚えているよ。それまで僕はそういったバンドを聞いたことがなかったから、その比較にわりと混乱して、学ぶべき音楽の新たな世界があることに気づいたのさ。」
プログワールドの外界から訪れたポジティブな侵略者 JOLLY は、そのオルタナティブな感性でジャンルの境界を拡大します。
「当初、僕たちにプログのラベルがつけられるのには時間がかかったんだ。それはプログが、ELP みたいにスーパーテクニックとか父の世代のキーボードを使ったバンドであることに関係していたからだと思うんだけど。どちらも JOLLY らしくはないよね。」
JOLLY のカラフルなサウンドスケープと濃密なエモーションを司る、音彩の魔術師 Joe Reilly は、バンドの “プログ” タグがジャンルの象徴だったハイテクニックよりも、現代的な多様性や実験性によるものだと認めています。
実際、Joe は、アトモスフィアの概念に目覚めテクニックの意味を問う “モダンプログ” を定義した PORCUPINE TREE や RIVERSIDE でさえ、認知したのはごく最近のことだったのですから。プログの世界にありながらプログをルーツとしない JOLLY の光芒はジャンルにとってかけがえのない特異点であるはずです。
RADIOHEAD や SMASHING PUMPKINS, そして STONE TEMPLE PILOTS といった90年代の偉大な血脈を出発点としながら、サウンドトラックやシンガーソングライター、R&B、アンビエントにチップチューンまで野心的に咀嚼し、MESHUGGAH 由来の重量感とメインストリームのポップなセンスの両極性を吐き出す JOLLY の多様性、実験精神が、結果として実に “プログレッシブ” なサウンドを紡ぎ出す逆転のパラダイム。その革命的な発想の転換は、バンドのテーマやコンセプトにも如実に現れています。
“The Audio Guide To Happiness”、”幸せになるためのオーディオガイド” から6年のインターバルでリリースされた最新作のタイトルはシンプルに “Family”。ダークでアンハッピーなテーマが踊るロックの世界で彼らのタイトルはポジティブで確かに異端です。
ただし、そこにも JOLLY の持つ二面性、両極性がしっかりと反映されています。「基本的にロックカルチャーのオーラってダークでアンハッピーなものだよね。ただ、そういったダークでアンハッピーなオーラも、君が言及したようなポジティブなムードを存在させるために早くから JOLLY の文化に共存しているんだよ。常に反対側は必要だからね。だから僕たちの歌詞の多くは、美しい瞬間とダークなセンスが共存しているんだよ。」
この6年でバンドはハリケーンに機材を破壊され、愛する友人たちも失いました。同時にメンバーは新たな命も授かっています。JOLLY が提示した “家族” の意味がより深い場所にあることは明らかです。
R&B の息吹を宿す “Lie to Me”、オリエンタル&スペーシーな Devin “Jolly” Townsend “Lazarus (Space Marsala)”, チップチューンと80年代への憧憬を込めた “Ava”、夢幻の天国 “Circuit Heaven”。そうして JOLLY の冒険は、音楽的な “家族” であった RIVERSIDE のギタリスト Pitor に捧げる “Let Go” へと収束します。
ノスタルジックでエモーショナル、COLDPLAY のように繊細かつダイナミックな壊れ物のメロディーを宿す楽曲は、しかし11分の一大プログレッシブ絵巻として傑出した存在感を放っています。その悲壮と叙情、静謐と重厚のハーモニーは必ずや聴くものの心を打つはずです。
「彼との友情は僕たち全員に永久的な影響を与えたんだよ。」プログレッシブとオルタナティブのキメラとして異端の扱いを受けたバンドを “ファミリー” として受け入れてくれた Pitor の優しさは、きっと時を経ても失われることはないでしょう。
今回弊誌では、Joe Reilly にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちの音楽スタイルは非常に複雑というわけじゃないと思うけど、少し多様だから、プログレッシブやオルタナティブのみの説明では不十分だと感じる人がいるだろうから両方を言わなければならないんだ。」どうぞ!!

JOLLY “FAMILY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DIAMOND HEAD : THE COFFIN TRAIN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRIAN TATLER OF DIAMOND HEAD !!

“Once I Had Heard Some Of The Other NWOBHM I Usually Thought We Were Better. We Compared Ourselves To The Biggest Rock Bands In The World Not Just To The Bands In This New Movement. Even Now I Try To Write a ‘Great’ Song.”

DISC REVIEW “THE COFFIN TRAIN”

「今でも俺は “偉大な” 楽曲を書こうとしている。過去の焼き直しを行わず、ダイナミズムをアレンジに持ち込もうとしているんだ。」
来年、自主制作のデビューアルバム “Lightning to the Nations” リリース40周年を迎える NWOBHM レジェンド DIAMOND HEAD は、ほぼ半世紀の活動を経てもその創造性、野心、チャレンジングスピリットに陰りを見せず進化を続ける稀有なるバンドです。
70年代後半、世界を支配していたパンク/ニューウェーブへのカウンターとして勃興した NWOBHM。しかし、”オールドウェーブ” として追いやられていたハードロック/メタルの圧倒的な逆襲には、振り返ると “典型的” なメタルサウンドを掲げるバンドは少なく、重金属のユニークなおもちゃ箱の様相を呈していたようにも思えます。
IRON MAIDEN のプログレッシブな感性、DEF LEPPARD のメジャーなセンス、ANGEL WITCH, WITCHFINDER GENERAL のドゥームな息吹、そしてエクストリームミュージックの雛形となった偉大なる VENOM。ムーブメントに兆したメルティングポットの理念は、今日のモダンメタルの地平まで受け継がれています。
あの Steve Harris をして “Next Zeppelin” と言わしめた DIAMOND HEAD の才能は、新たな波においても抜群の光芒と独自性を放っていました。Lars Ulrich も認める “スラッシュのオリジネーター” Brian Tatler が生み出すヘヴィーなリフの数々は 「俺自身はプログバンドの大ファンだった」 と語る通り BUDGIE のごとく見事に屈折し、Sean Harris のオジーが ZEP をソウルフルに歌ったような不思議な歌唱と不思議にマッチすることで、メタル本来のミステリアスでダークなカタルシスを創生していたのです。
ブームの終焉と共に消えてしまったバンドは、METALLICA によるクールなカバーと Dave Mustaine の助力により復活を遂げます。オリジナルメンバーは Brian のみとなってしまいましたが、ポジティブに新たな血を取り入れ最高傑作とも言える “The Coffin Train” を2019年に完成へと導きました。
バンドのトレードマークであるエキサイティングな暴走特急 “Belly of the Beast” で発車する “柩列車” はしかしタイトルトラック “The Coffin Train” でその色を変えます。
「Ras のおかげで DIAMOND HEAD は新たな地平を拡大して、よりモダンなサウンドを得ることができたんだ。この作品は、言ってみれば21世紀のための DIAMOND HEAD さ。」
そう、Brian が語るようにこれは21世紀の NWOBHM そのものです。デンマークに生まれロンドンを拠点とする加入2作目のシンガー Rasmus Bom Andersen の類稀なる才能と Brian のプログレッシブな理想はここで奇想天外に噛み合いました。
ダークでムーディー、そして重くプログレッシブな曲調は、Ras の Chris Cornell を想起させる卓越した歌唱を導き絶大なるエモーションを創出します。実際、Ras が披露するレンジの広さと豊かな声量、込められた感情の素晴らしさ、さらにコンポーザー&プロデューサーとしての高い技量は Chris の正当後継者として完璧な資質を備えていますね。
「俺はこういった、70年代のクラッシックロックにインスピレーションを得たエピックを愛しているし、DIAMOND HEAD がデビュー以来やり続けてきたことでもあるね。俺は “Kashmir”, “Child in Time”, “Victim of Changes”, “Xanadu”, “Watcher of the Skies” といったエピックを聴いて育ったんだから。」
事実、”The Coffin Train” はエピックの宝庫です。オーケストレーションを施した “The Sleeper”、”Until We Burn” のフックに満ちた英国のドラマ性、叙情性は筆舌に尽し難く、その陰影のダンスは Brian が楽曲に最も求めるダイナミズムを濃密に映し出しているのです。
さらに、オリエンタルな “Shade of Black”, グランジーな “Serrated Love” では、オルタナティブやインディーまで新鋭のサウンドもしっかり受け止める Brian の包容力と、瑞々しい感性で SOUNDGARDEN, Chris を愛する Ras のモダンな感覚が完璧に融合し、NWOBHM のユニークな精神を現代へと昇華することに成功しています。
偉大なバンドの偉大なレコード。今回弊誌では、伝説 Brian Tatler にインタビューを行うことが出来ました。「NWOBHM は DIAMOND HEAD にとって便利なムーブメントだった。当時他の NWOBHM バンドを聴くと、俺は大抵俺らの方が良いなと思っていた。と言うよりも、あの新たなムーブメントの中にいるバンドより、世界でもビッグなバンドと比肩していると考えていたんだよな。」 どうぞ!!

DIAMOND HEAD “THE COFFIN TRAIN” : 10/10

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COVER STORY + FUJI ROCK FESTIVAL 19′ 【KING GIZZARD & THE LIZARD WIZARD】


COVER STORY : KING GIZZARD & THE LIZARD WIZARD

“What Is Psych? Is It Psyche? Is It Psychedelic? If It’s An Exploratory Approach To Music Then Perhaps We Are. If It’s About Creating Huge Walls Of Glistening, Phased-Out Guitars Then We Are Not. I’ve Always Felt More Like a Garage Band Than Anything. We Don’t Write Songs About Space, Either.”

WHAT IS PSYCH? WHAT IS KING GIZZ?

「ロックは死んだ。」もう何十年も議論され続けるクリシェです。インターネットやストリーミングサービスの普及によって、今日ではより容易く多様なジャンルへとアクセス可能で、例えば iTunes を開けばロック/メタルのみならず、クラッシック、ジャズ、ポップ、ワールドミュージック、エレクトロニカ、オルタナティブ、R&B、ヒップホップなど様々な世界への入り口が並んでいます。
もちろん、そのストリーミングサービスにおいてエレクトロニカやヒップホップがロック/メタルを大きく凌駕している事実も今や常識と言えるでしょう。
とはいえ、70年代、80年代には及ばないものの、ロック/メタルはライブの分野では善戦していますし “死んだ” と判断するには早計にも思えます。ただ、ジャンルを定義した巨人たちに代わる新たなビッグアクトが望まれているのもまた事実でしょう。
しかし、新世代にとってロック/メタルという形式を取りながら、新たな領域を開拓し世界に衝撃を与える仕事は決して簡単ではありません。なぜならこのフィールドでは、何十年もかけて数えきれないほど多くのバンドが様々な実験を試みてきたからです。さらにネットの登場で過飽和となったシーンには両方の意味で、新星に残されたスペースはほぼないも同然だと言えるでしょう。
ただし、それでもその難題を解決する救世主、キング、もしくはウィザードがオーストラリアに君臨しています。KING GIZZARD & THE LIZARD WIZARD です。

あの TAME IMPALA との繋がりも深く、風変わりな名 (多大な影響を受けた Jim Morrison の呼称 “The Lizard King” が関係している) を持つメルボルンのバンドは真なるジャムセッションへの愛から誕生しました。ほぼ10年のキャリアですでに14枚のフルアルバムと2枚の EP を制作。ギター、キーボード、サックス、フルート、クラリネット、シタールなどその他様々な楽器を操るフロントマン Stu Mackenzie を中心に、ギター、キーボード、ハーモニカ、ボーカル担当の Ambrose Kenny-Smith、さらにCook Craig & Joey Walker 2人のギタリストを加え、ベーシスト Lucas Skinner、そして Michael Cavanagh と Eric Moore のダブルドラマーという異様な編成も、ジャムセッションへの執心、ライブバンドとしての矜持を考慮すれば実に自然な流れだと言えます。
バンドの音楽性を定義するなら、サイケデリックロック、プログレッシブロックが最も近いラベルなのかも知れません。ただし、むしろそれは建前とでも言うべきで、実際はカラフルな虹色の多様性をキャンパスに描くエクレクティックな音画家です。そしてそのアティテュードは、モダン=多様性の進化した音楽シーンに完璧にフィットしそこからさながら流動体のごとくさらに限界を超えていきます。実際、Stu Mackenzie は根本的な疑問を口にします。「ところで、サイケって何なんだい?もしそれが音楽への探索的なアプローチを意味するならば確かに俺たちはサイケだよ。だけど、歪んだギターの壁を作ったり、宇宙についての歌詞を意味するなら俺たちはサイケとは言えないね。」
事実、サイケ-ソウル-サーフ-ファズ-ガレージ-ジャズ-スペースロックなどと称される彼らの音とスタイルは年月とアルバムによって変化を続けています。2011年にリリースした4曲入りの EP “Anglesea” はかつてのニューウェーブ/ポストパンクのようにも聴こえましたし、典型的なリバイバルのようにも思えましたが、振り返ってみればそれは始まりに過ぎませんでした。

劇的な化学反応は2015年の “Quarters!” で発生しました。タイトル通りアートワークも4区分、楽曲も10分10秒ピッタリの4つで40分40秒のランニングタイムとクオーターに拘った作品はジャズロックの実験室を解放した初のアルバムでした。
Stu は当時、”Quarters!” について、「俺らは叫んじゃいけないレコードを作りたかった。長くてミニマル、反復を多用した構造の中でね。だから普段のようなブルータルなギターペダルも封印したんた。」と語り PINK FLOYD への敬意も覗かせています。
進化は止まりません。”Paper Mâché Dream Balloon” でフォークロックへ接近した後、アルバム最後の音と最初の音が見事に繋がりエンドレスにループする2016年の “Nonagon Infinity” から基盤となるサイケデリックロックに様々な刺激を注入し “King Gizz のサイケ” を創造し始めます。マイクロトーナル (微分音) もその刺激の一つ。


2017年にはそうしてアルバム全編をマイクロトーナルで統一した “Flying Microtonal Banana” を製作します。アルバムタイトルは Stu ご自慢のマイクロトーナルギターの名前。作品に収録された “Sleep Drifter” は今でも最大の人気曲の一つとなっています。
2017年は KING GIZZ にとって実に重要な一年でした。リリックに環境問題を取り上げ始めたのもこの年から。さらに、2月から12月にかけてバンドは5枚のフルアルバムをリリースします。ほぼ2ヶ月に1枚のデスマーチによって、しかし彼らは多くのファンを獲得し自らの価値を証明しました。

前述の異端 “Flying Microtonal Banana”、ナレーションを配した本格コンセプト作 “Murder of the Universe”, 奇妙でしかしキャッチーな “Skunsches of Brunswick East”、サイケデリックでポリリズミック TOOL の遺伝子を配合する “Polygondwanaland”、そして環境問題とプログロックのシリアスな融合 “Gumboot Soup”。
特に “Polygondwanaland” は KING GIZZ の最重要作と言えるのかもしれませんね。オープナー “Crumbling Castle” はまさしくバンド進化の歴史を11分に詰め込んだ濃密な楽曲ですし、何より彼らは作品を自らのウェブサイトで無料公開し、驚くべきことにその著作権さえ主張しなかったのですから。
バンドのメッセージは明瞭でした。「レコードレーベルを始めたいと思ったことはあるかい?さあやってみよう!友人を雇ってフィジカルを制作して出荷するんだ。僕たちはこのレコードの権利を主張しない。楽しんでシェアしてくれよ!」
そうして KING GIZZ は、ファンやインディーレーベルにオーディオファイルやアートワークもフリーで公開してそれぞれにフィジカルのディストリビュートを促したのです。それは衰退したレコード、CD文化を保護し復権を願うバンドが取った驚天動地の奇策でした。彼らほどのビッグネームの、しかも最高傑作のフィジカルをマージンなしで配給出来るチャンスなどなかなか飛び込んでくるはずもありません。作品は世界中88のレーベル、188のフォーマットで販売されることとなりました。

そういった大胆な行動は、彼らが全ての作品を自身のインディペンデントレーベルからリリースしていることにより可能となっています。レーベルはドラマー Eric Moore によってスタートし、彼が全てのマネージメントスタッフを仕切っているのです。もはやレーベルとのビッグディールを目指す時代は終焉を迎えました。若く意欲的なバンドにとって KING GIZZ のやり方は理想的なモデルケースでしょう。なぜなら、彼らはクリエイテビィティー、レコードの権利、リリースの計画、バンドの未来まで全てを完全に掌握しているのですから。

さすがに1年に5枚リリースの反動が訪れたのか、新作 “Fishing for Fishies” のリリースには2019年まで時間がかかりました。アルバムについて Stu は、「俺たちはブルースのレコードを作りたかったんだ。ブルースやブギー、シャッフルとかそんな感じのね。だけど楽曲はそのテーマと戦って、自らのパーソナリティーを獲得している。」と語っています。
実際、荒々しきブルーグラスのタイトルトラックを筆頭に、類稀なるグルーヴと RUSH の影響を宿す “The Cruel Millennial”、さらにエレクトロニカに満たされながらミツバチの重要性を語り継ぐ”Acarine” などアルバムは千変万化で充実を極めています。

驚くべきことに、そうして KING GIZZ は8月にリリースされる新作 “Infest the Rat’s Nest” で次の標的をメタルへと定めました。
公開された “Planet B” は誰も想像だにしなかったスラッシュメタルチューン。さらに “Self-Immolate” は初期の METALLICA, SLAYER と MUSE や ROYAL BLOOD を変拍子の海でミックスした奇々怪界。彼らが新たな領域で披露するエクレクティックな獰猛性が待ちきれませんね。

KING GIZZ の持つ多様性、プログ/メタルの新聖地オーストラリアというグローバルな出自はモダンなロック世界の原則を見事に内包しています。Stu はそのバンドの多様性について、「音楽は探検なんだ。僕がまだ探索していない音楽の作り方、レコードの作り方が何百万も残っている。言うまでもなく、学んでいない楽器、聴いていない音楽、探求していない文化もね。」と語っていますが、それでも父に Neil Young を歌い聞かされ、60年代のガレージコンピレーションから、敬愛する FLOWER TRAVELLIN’ BAND 含む70年代に勃興した東洋のサイケロックまで、Stu の知識と好奇心に際限はありません。驚くべきことに、彼は毎年一つ新たな楽器の習得を自らに課しています。

もちろん、彼らの特異なサウンドや”健全な” 4/4の錯覚を誘うポリリズムの魔法、そしてカメレオンの美学は、古くからのリスナーが慣れ親しんだプログロックやメタルの法則には乗っ取っていないかもしれません。一方で、故に革新的で創造性溢れ、前時代へのカウンターとして新たなビッグアクトの資格を得ているとも言えるはずです。バンドは自由自在に自己表現を繰り出すアートの極意を恐れてはいませんし、それでもなお、ロック/プログ/メタルの領域を住処としているのですから。遂に FUJI ROCK FESTIVAL 19′ で初来日を飾る KING GIZZ のモットーは、”No Slowing Down”。サイケ、プログ、ジャズ、エレクトロ、フォークにスラッシュとその境界を破壊し自由に泳ぐ魔法の王様は、きっとこれから何十年もロックミュージックの進化を担っていくはずです。

参考文献: The Guardian:King Gizzard & The Lizard Wizard: can the psych band release five albums in one year?
The Quietus:No Slowing Down: King Gizzard & The Lizard Wizard Interviewed
Ultimate Guitar :Why King Gizzard & the Lizard Wizard Are the Future of Rock Music We’ve Been Waiting for

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FUJI ROCK FESTIVAL 19′

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【EMPLOYED TO SERVE : ETERNAL FORWARD MOTION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JUSTINE JONES OF EMPLOYED TO SERVE !!

“We’re Humanitarians Who Write About Things We’ve Experienced And What a Lot Of Other People We Love Experience, Whether That Be Mental Illness All The Way To The Misuse Of Social Media.”

DISC REVIEW “ETERNAL FORWARD MOTION”

「どちらかと言えば、私たちは自分たちの経験や、他人の愛すべき経験を楽曲にする人道主義者なのかもしれないわね。それこそメンタルの問題から SNS の誤用まで扱うようなね。」
沸騰する英国のライジングスター EMPLOYED TO SERVE。フロントウーマン Justine Jones は、獰猛なメタリックハードコアの刃に希望の “ヒューマニティー” を抱懐し、現代社会の歪みと真摯に対峙しています。
「”Suspended in Emptiness” は SNS を額面通りに受け取るなって曲なの。休日の楽しそうな出来事をポストしているけど、その裏側ではみんな苦しんでいるのよ。SNS だけを見て、他人が自分より優れているとか、幸せだとか考えるのはバカげているわ。」
ポケットの中のほんの小さな長方形の物体は、いつしか大きく社会を支配し “ドーパミン中毒者” の文明へと世界を塗り替えてしまった。Justine は、数分おきにその物体を見つめ、ハートのタップを確認する “承認の渇望” 状態が永続的かつ健全だとは考えていません。
むしろ、そうして発生する怒りや憂鬱、混乱の悪循環が、メンタルイルネス、自己陶酔、セクシズムといった負の連鎖を生んでいると彼女は主張し、ハードコアのカオスと Nu-metal のブルータリティー、そしてオルタナティブなスピリットで代弁者として悲壮な咆哮を放つのです。
彼らが雇われ、使役するのは歪な社会の犠牲者のみ。そしてその強固な決意は “Eternal Forward Motion” “永遠に前へと進む” 最新作へグルーヴと共に深々と刻まれています。
「人生と同じように、音楽も結局は元の場所へと戻るの。そうして私たちは偶然その巡り合わせでムーブメントの一部となったのよ。」
Justin と彼女のフィアンセでギタリスト Sammy Urwin の小さなアパートメントで産声をあげた EMPLOYED TO SERVE は、今やメタリックハードコアの新たな大渦を巻き起こす原動力の一つです。
CHARIOT や NORMA JEAN, CONVERGE, THE DILLINGER ESCAPE PLAN といったカオテイックなハードコアと、SLIPKNOT, KORN, DEFTONES の Nu-metal 遺伝子を配合し猛襲するバンドの牙は、同世代の CODE ORANGE, VEIN といったエクストリームな野心家の理念や創造性と激しくシンクロしていたのです。
数学的な混沌と、マスリスナーへ訴求するキャッチーなグルーヴのキメラこそが世界を席巻するバンドのブースター。TDEP の複雑怪奇と SLIPKNOT のホラー映画をミックスした “Dull Ache Behind My Eyes”、 KORN の憂鬱とヘヴィネスに Justin のハードコアな咆哮が響く “Harsh Truth”。獰猛な狂気を纏いながらしかしフックに満ちた楽曲は、リアルなリリックを携えて数知れない “奪われた” 若者たちの声なき声を代弁して世界へと突きつけるのです。
そうしてアルバムは、10曲のブルータルでダークな告発の後、”Bare Bones Of A Blue Sky” で一筋の光明を見出します。DEFTONES とシューゲイザーの穏やかで美しき邂逅は、Justin が繰り返す “Open Your Eyes” のスクリームと共にリスナーへ明日への希望を届けるのです。
今回弊誌では、Justine Jones にインタビューを行うことができました。「結局のところ、生きていく中で何を学ぶかが重要で、自分を堕落させようとする人間に同調しないことが大事だと思うわ。人はその生い立ちで判断されたり虐待を受けるべきではないのよ。私はそういった悲しい出来事が徐々に減ってきていると感じているの。だからうまくいけば、時間の経過とともにいつか消えればいいのだけど。」
UKに巻き起こっているエクストリームな新風を牽引するレーベル Holy Roar のレーベルマネージャーも務める才女。どうぞ!!

EMPLOYED TO SERVE “ETERNAL FORWARD MOTION” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE ARISTOCRATS : YOU KNOW WHAT…?】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARCO MINNEMANN OF THE ARISTOCRATS !!

“All I Can Say In Retrospect Is That We Had a Great Chemistry And I Guess It Shows And After All I’m Still In Touch With DT And Collaborate With Jordan On Many Projects And Also Was Planning To Do Something With John Petrucci For a While. I Was Just Personally The Right Fit. I Listened To Completely Different Kind Of Music And Never Heard DT Songs Or Owned Their Albums. That Was The Biggest Deal For Them.”

DISC REVIEW “YOU KNOW WHAT…?”

「”You Know What…?” で僕らはソングライター、ミュージシャンとして互いにインスパイアし、バンドとして未踏の領域を目指したよ。バンドはその親密さを増し、互いを深く知ることが作品の限界を広げる結果に繋がったね。それでもこれは完全に THE ARISTOCRATS のアルバムだよ。だからこそ、これまでの作品で最高にクールなんだ。」
プレスリリースにも示された通り、”You Know What…?” は THE ARISTOCRATS が追求する “ミュージシャンシップの民主主義” が結実したインストライアングルの金字塔です。
Guthrie Govan, Bryan Beller, Marco Minnemann。ギター、ベース、ドラムスの “特権階級” “最高級品” が集結した THE ARISTOCRATS は、その圧倒的な三頭ヒドラの無軌道な外観に反してデモクラシーをバンドの旨としています。実際、これまでのレコードでも彼らは、それぞれが各自の特色を内包した3曲づつを持ち寄り、全9曲の和平的 “カルチャークラッシュ” を巻き起こしてきたのですから。
「僕たちは全員が異なるスタイルを持っているね。だけどその互いの相性が THE ARISTOCRATS を形成しているんだ。」Marco の言葉はその事実を裏付けますが、ただし “You Know What…?” を聴けば、バンドのコンビネーションやシンクロニシティー、共有するビジョンが互いの個性を損なうことなく未知なる宇宙へ到達していることに気づくはずです。
オープナー “D-Grade F**k Movie Jam” は彼らが基盤とするジャズロック/フュージョンの本質であるスポンティニュアスな奇跡、瞬間の創造性を体現した THE ARISTOCRATS ワールドへの招待状。
眼前に広がるは真のジャムセッション。徐々に熱量を増していく新鮮な Guthrie のワウアタック、極上のグルーヴとメロディーを融合させる Bryan のフレットレスベース、そしてソリッドかつアグレッシブな手数の王 Marco。時に絡み合い、時に距離を置き、ブレイクで自在に沸騰する三者の温度は Beck, Bogert & Appice をも想起させ、ただゲームのように正確に譜面をなぞる昨今のミュージシャンシップに疑問を呈します。
トリッキーな6/8の魔法と両手タッピングからマカロニウエスタンの世界へと進出する “Spanish Eddie”、サーフロックとホーダウンをキャッチー&テクニカルにミックスした “When We All Come Together” はまさに THE ARISTOCRATS の真骨頂。ただし、70年代のヴァイブに根ざした刹那のイマジネーション、インプロの美学は以前よりも明らかに楽曲の表層へと浮き出てきているのです。
KING CRIMSON のモンスターを宿す “Terrible Lizard”、オリエンタルな風景を描写する “Spiritus Cactus” と機知とバラエティーに富んだアルバムはそうして美しの “Last Orders” でその幕を閉じます。Steve Vai の “Tender Surrender” はギミックに頼らず、トーンの陰影、楽曲全体のアトモスフィアでインストの世界に新たな風を吹き込んだマイルストーンでしたが、”Last Orders” で彼らが成し得たのは同様の革命でした。
それはインタープレイとサウンドスケープ、そしてエモーションのトライアングル、未知なる邂逅。さて、音楽というアートはそれでも正しいポジション、正しいリズムを追求するゲームの延長線上にあるのでしょうか?
今回弊誌では、Marco Minnemann にインタビューを行うことが出来ました。DREAM THEATER のドラムオーディションには惜しくも落選したものの、マルチプレイヤーとしてソロ作品もコンスタントにリリースし、近年では Jordan Rudess, Steven Wilson, RUSH の Alex Lifeson とのコラボレートも注目されています。
「個人的には完璧に DREAM THEATER にフィットしていたと思うよ。ただ僕は彼らとは完全に違う感じの音楽を好んでいるし、DREAM THEATER の楽曲を聴いたこともなければアルバムも持っていなかったからね。それがオーディションの中で彼らにとって大きな意味を持ったんじゃないかな。」日本のサブカルチャーを反映したTシャツコレクションも必見。二度目の登場です。どうぞ!!

THE ARISTOCRATS “YOU KNOW WHAT…?” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ANUP SASTRY : ILLUMINATE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANUP SASTRY !!

“I Don’t Really Think “Djent” Movement Has Gone Away Or Anything. The Entire “Djent” Idea Really Just Falls Under The Larger Category Of Progressive Metal, In My Opinion. Bands Have Been Incorporating Small Pieces Of That “Djent” Style For Years.”

DISC REVIEW “ILLUMINATE”

「両親共にインド出身なんだ。ただ、僕はワシントンDCで生まれ、そのエリアの郊外で育ったんだよ。」
ハイテクニカルドラマー、コンポーザー、レコーディングエンジニア、プロデューサーとしてキャリアを重ねる Anup Sastry は、ワシントンエリアのプログメタルを牽引する雄心であり、世界と興起するインドメタルの地平を繋ぐ架け橋です。
プログのネットワークが彼の存在に気づいたのは2011年のことでした。Anup が YouTube にアップした PERIPHERY のカバー “New Groove” は圧倒的な異彩を放っていたからです。流麗かつ繊細なコンビネーション、革新的なタム&シンバルサウンド、体格を活かしたハードヒット、そして決定的なグルーヴ。独特のテクニックで PERIPHERY を料理したコックの手腕には理由がありました。
古くからの友人で、THE FACELESS, GOOD TIGER など数多の “Tech-metal” アクトで辣腕を振るう Alex Rudinger との切磋琢磨、さらに他ならぬ PERIPHERY の Matt Halpern, Travis Orbin への師事。置かれた環境と抜きん出た才能は、そうして Anup を “Djent” ムーブメントの最前線へと誘うことになりました。
「僕たちは “Djent” をプレイすることにはあまり焦点を当てていなくて、ただ創造的でヘヴィーな音楽を書こうとしていたんだよ。」
インドのライジングスター SKYHARBOR のポリリズミックグルーヴに寄与し、トロントのインストゥルメタルマスター INTERVALS のカラフルな創造性を後押しした Anup のドラミングは、”Djenty” と呼ばれるモダンなリズムアプローチの象徴にもなりました。
ただし、ムーブメントの震源地で迸るマグマとなっていたマイスター本人は、 “Djent” にフォーカスしているつもりはなかったようですね。実際、Anup はこの時期、よりメインストリームのギターヒーロー Marty Friedman や Jeff Loomis にも認められレコードやツアーに起用されています。
とはいえ、一方で Anup は “Djent” が残した功績、レガシーを高く評価もしています。「”Djent” というジャンルについてだけど、僕は本当にムーブメントが過ぎ去ってしまったようには思えないんだ。”Djent” の包括的アイデアは、より大きいプログメタルというカテゴリーにしっかりと根付いている。僕の考えではね。つまり、ここ何年か多くのバンドは “Djent” のスタイルのピースを取り入れている訳さ。」
過ぎ去った言われるムーブメントとしての “Djent”。しかし Anup はプログメタルという “大きな傘” の中でその理念やグルーヴが息づき進化を続けていると主張しているのです。
実際、彼がリリースした最新作 “Illuminate” は、”Djent” のレガシーとモダンメタルの多様性が溶け合った挑戦的かつプログレッシブなルミナリエ。そして、これまでインストゥルメタル道を突き進んでいた Anup が、欠けていた最後のピースとして3人のボーカルを全編に起用したマスリスナーへの招待状です。
“The World” で “Djent” の遺伝子に咆哮を響かせる Chaney Crabb、KORN をイメージさせるタイトルトラック “Illuminate” では Mike Semesky が一際陰鬱な表情を加え 、デスコアの猟奇 “Beneath the Mask” と PERIPHERY のダイナミズム “Story of Usで歌唱をスイッチする Andy Cizek の汎用性も見事。ただし最も見事なのは、ワイドで魅力的な楽曲群を書き上げ、ほぼ全ての楽器を自らでレコーディングした Anup Sastry その人でしょう。
「僕はそのやり方を “プログラミングギター” と呼んでいたんだ。とはいえ、サウンドは本物のギターなんだよ。基本的に僕はリフを一音づつ、もしくはすごく小さいパートをプレイしレコーディングするんだ。つまり、結局編集に大きく頼って細切れを繋げているんだよ。」
チートにも思える彼のレコーディング方法は、しかし弦楽器の達人ではないミュージシャンにとって1つの可能性なのかもしれませんね。
今回弊誌では、怪人 Anup Sastry にインタビューを行うことが出来ました。実は今年、古巣 SKYHARBOR にヘルプで参加しライブを行っています。「プログメタルは、メタルの中でも常に新たなクリエイティブなサウンドを求める性質を持っているジャンルだ。だから僕にとって “Djent” とは、どちらかと言えば、プログメタルというもっと大きな傘の中で探求を続ける、また違った推進力になったと思えるね。」  先日インタビューをアップした ARCH ECHO の Adam Bentley もゲスト参加。どうぞ!!

ANUP SASTRY “ILLUMINATE” : 9.9/10

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