“We Sadly Still Have a Very Divided Country, And a Lot Of Problems That We Live With, But We Have Just Proven During The Rugby World Cup How The Whole Country Can Pull Together In Unity. Music Can Have The Same Effect.”
DISC REVIEW “SIDEREAL LIGHT VOL.2”
「悲しいことに、僕たちの国はいまだに非常に分断されていて、多くの問題を抱えながら生きているんだ。だけどね、ラグビーのワールドカップで、僕らは国全体が団結して力を合わせることができることを証明したばかり。音楽も同じような効果をもたらすことができるよ。南アフリカではスポーツのような規模にはまだなっていないかもしれないけど、いつかそうなることを願っているよ」
南アフリカの立法府がおかれるケープタウン。テーブル・マウンテンや希望峰、テーブル湾が望める風光明媚なこの街にも、やはりアパルトヘイトの暗い影は残っています。白人が多く住む高級住宅街シーポイントの一方で、誇りと砂のケープ・フラッツには低所得者層が溢れています。そこは、かつてアパルトヘイトで強制移住させられたカラード (有色人種) たちの居住区。南アフリカで白人の入植が始まった “マザー・シティ” は、すべての人種にとって母なる街ではありません。暴動、窃盗、レイプ…それでもこの街とアフリカの壮大を愛するブラックメタル・バンド CROW BLACK SKY は音楽で憎しみや差別の壁を壊したいと焦がれます。
「僕たちは将来、間違いなくまた “黒い” ブラックメタルを作るだろう。でも今はもっと明るく、宇宙の威厳をたたえたサウンドを作りたかったんだ」
ゆえに CROW BLACK SKY は、絶望と狂気のブラックメタルにおける希望峰になりたいと望みます。テーブル・マウンテンから臨める漆黒の夜と降り注ぐ星々。それは、彼らに混沌とした宇宙の起源、星々のサガ、そして文明の不吉な未来を感じさせるに十分な壮観でした。歪んだ憎しみと差別がたどり着く世界は破滅。だからこそ、彼らはかつてアパルトヘイトを終わらせた音楽プロジェクト “サンシティ” のように、音楽で世界を変えたいのです。
「僕が聴く日本の音楽では、SIGH が最高の前衛ブラックメタルのアルバムをいくつか作っているし、素晴らしい日本のメタルバンドはたくさんある。去年の、IMPERIAL CIRCUS DEAD DECADENCE はぶっ飛んでいたよね!メタル以外では、MONO、特に “Hymn to the Immortal Wind” は僕にとって特別な存在だ」
そうして、CROW BLACK SKY が到達した場所こそ、コズミック・ブラックメタルでした。あまりに荘厳でメロディック。”Sidereal Light Vol.2″ はブラックメタルのルーツと豊かなアンビエンスが超次元で共存し、多層的な楽器編成、オーケストレーション、そしてプログレッシブなアイデアが両者の婚姻を祝福しています。伝統と革新、ルーツと先鋭、轟音と繊細、黒と白、絶望と希望。彼らの音楽は、そんな二律背反と混沌の中からワームホールを示現させ、光を見出します。MONO へのリスペクトも納得。
また、すべてが長尺の全4曲は非常に複雑でプログレッシブ。ブラックメタルでこれほど卓越したリード・ギターを聴くことはあまりありません。技術的にも可動域が広がった彼らの音楽は、そうしてスペイシーなシンフォニーから、超越的なトランスまで、文字通りブラックメタルの宇宙を拡大していくのです。
今回弊誌では、CROW BLACK SKY のコアメンバー2人、ギターの Gideon Lamprecht とボーカルの Ryan Higgo にインタビューを行うことができました。「BURZUM の “Filosofem” と DARKTHRONE の “A Blaze in the Northern Sky” を初めて聴いたときの感動は、今でも忘れられないよ。この感覚は僕の中にずっと残っていて、今でもいつも追いかけているものなんだ」 Devin Townsend のファンにもアピールしそうですね。どうぞ!!
“Our Music Has Dark Parts And Light Parts. “Two Become One” Is The Concept Of The Band. Music Made Together By One Person Living In France And One Person Living In Japan. A World That Mixes European And Japanese Culture. An Atmosphere That Mixes The Past And The Present…”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DRYAD OF 虚极 (BLISS-ILLUSION) !!
“I Personally Believe That Black Metal Is a Very Special Form Of Music, With Themes Given To It By People. I Don’t Care About These Things, I Love Black Metal Very Much, But I Won’t Be Limited To My Love For It.”
“Retelling Our Root Story Is a Very Important Thing As a Taiwanese Musician. We Have So Many Interesting And Beautiful Stories In This Small island, I Don’t Want These To Be Forgotten.”
“I Was Struck With Incredibly Profound Emotion. It Was Probably Then That I Was Fully Set On Dedicating This Album To The Three Kingdoms Period, And More Specifically, To The Brothers Of Liu Bei, Guan Yu, and Zhang Fei.”
COVER STORY : DEMONSTEALER “THE PROPAGANDA MACHINE”
“Make The Minority The Big Villain That The Majority Should Fear In Any Country, And You’ve Suddenly Got Control. It’s All The Same Tactics; It’s Just That The Country Changes.”
THE PROPAGANDA MACHINE
“The Propaganda Machine” は、エクストリーム・メタルの言葉で叫ばれる戦いの鬨。Sahil Makhija 4枚目のソロ・アルバム “Demonstealer” は、母国インドをはじめ世界中の大衆を操り搾取する右翼政治家、人種差別主義者、偽情報の拡散者、宗教過激派を狙い撃ちしています。Sahil が言葉を濁すことなく、このアルバムに収録されている歌詞はすべて、抑圧に対する抗議の看板となり得るもの。ただし Sahil は、20年前、彼の先駆的バンド DEMONIC RESURRECTION でインドにデスメタルを紹介していた頃には、まだ “The Propaganda Machine” を作ることはできなかったと認めています。
「俺はボンベイ・シティに住む、かなり恵まれた子供だった。そして、ほとんどの子供がそうであるように、俺は政治に興味がなかったんだ」と Sahil は自身の音楽活動の初期を振り返って言います。SEPULTURA の “Refuse/Resist” のような政治的なメタルを聴いていたにもかかわらず、政治を意識することはなかったのです。
Sahil の覚醒は緩やかでした。彼は2015年のシングル “Genocidal Leaders” で遂に DEMONSTEALER に社会的な歌詞を取り入れ始め、前2作 “This Burden Is Mine” と “The Last Reptilian Warrior” では現実世界の問題がより浸透するようになりました。しかし、”The Propaganda Machine” は、彼がこれまで制作した中で、圧倒的に政治色が強いレコードだと言えます。その理由は、周囲を見渡せばわかるでしょう。トランプ、Brexit、目に余る警察の残虐行為、復活したネオナチズム、世界的なパンデミック、ロシアのウクライナ侵攻など、その暗闇のリストは身近で気が滅入るものばかり。
「このアルバムは、プロパガンダ・マシーンというタイトル通り、ここ数年の世界のあり方に完全にインスパイアされているんだ。特に、ヒンドゥー教の右翼過激派政権が誕生してからのインドでの出来事に触発されているよ。”The Fear Campaign” では、多数派が少数派を恐れるように仕向けることで、政府が大衆をコントロールすることについて。”Monolith of Hate” は、憎しみの政治と、恐怖のキャンペーンを通じて多数派が少数派を憎むように仕向ける方法について歌っているよ。正直なところ、世界中でこうしたことが起こっているよな。インドではヒンドゥー教徒が大多数で、ヒンドゥーの政府はイスラム教徒に関する悪いプロパガンダを流し続け、ヒンドゥー教徒がイスラム教徒に恐怖を抱くようにしようとしている。イギリスやアメリカ、ヨーロッパでも同じように、移民を恐れさせるキャンペーンが行われているし、アメリカでは、人種や宗教などでも同じことが行われている。世界的な “戦術” なんだよな。”恐怖を与え続け、従順にさせる” という歌詞は、まさにすべてを要約しているよ。
“The Art of Disinformation” は、テクノロジーがいかに武器になるかについて。インドでは、WhatsApp の偽ビデオが、この憎しみを広めるために使われ、最終的には少数民族への暴力や殺害さえも扇動しているんだ。”Screams Of Those Dying” は、ここ数年、リンチや暴動、警察の横暴、殺人、基本的人権のために戦う人々の暗殺によって失われた実際の命について歌った。”The Great Dictator” は、自分たちの利益のために憎悪と暴力を推進・宣伝する右派の指導者について。”‘The Anti-National” “反国家” は、インドや自国の政府に疑問を持つ人々が、いかに “反国家” と呼ばれているかについて。そして最後に “Crushing the Iron Fist” は、俺たちが力を合わせれば、私腹を肥やし、宗教、カースト、人種によって人々を分断するのではなく、生活の質を向上させるために働く、より良い政府を見つけることができるかもしれないという希望をアルバムに残している。国民のために働くという、本来あるべき姿の政府をね」
DEMONSTEALER は厳密には Sahil のソロプロジェクトですが、NILE の George Kollias が “This Burden Is Mine” でドラムを叩いて以来、ゲスト・ミュージシャンはそのサウンドに欠かせない要素となっています。DEMONSTEALER のサポート・キャストは着実に増えており、”The Propaganda Machine” は総勢12人のプレイヤーによって命を吹き込まれているのです。クレジットには、鍵盤の Iratni、Hannes Grossmann を含む4人のドラマー、さらに4人のベーシスト、3人のリード・ギタリストの名前があります。James Payne (Kataklysm, Hiss From The Moat), Ken Bedene (Aborted), Sebastian Lanser (Obsidious/Panzerballett), Dominic ‘Forest’ Lapointe (First Fragment, Augury, BARF), Stian Gundersen (Blood Red Throne, You Suffer, Son of a Shotgun), Martino Garattoni (Ne Obliviscaris, Ancient Bards), Kilian Duarte (Abiotic, Scale The Summit), Alex Baillie (Cognizance), Dean Paul Arnold (Primalfrost), Sanjay Kumar (Equipoise, Wormhole, Greylotus)。Sahil は、彼らの役割について厳格に規定することはありません。ここでは、それぞれのミュージシャンが、それぞれの長所を発揮しているのです。
「各ミュージシャンは、それぞれの個性を生かす。これほど多才なミュージシャンと仕事をするのであれば、俺がプログラミングをしたり、これとこれを演奏しろなんて厳しく指示する意味はない。もちろん、ドラムのパートをすべてサンプルで置き換えるのはとても簡単だが、すべて全く同じ音になってしまう。それに何の意味があるのだろう?だから、ドラムの音はアルバムの曲によって変化するし、ベースのダイナミズムも当然変わってくるさ」
このアルバムは、Sahil の独特なソングライティングだけでなく、彼の思想によっても一貫性を保ちます。右翼のポピュリストが支配する不安定な国で活動することは簡単ではありません。最近、ニューデリーとムンバイにあるBBCのオフィスが、インド特集を放送した後に家宅捜索を受けました。”モディ・クエスチョン”(2023年)は、2002年にグジャラート州で起きた一連の暴動で首相が果たした役割を探るドキュメンタリー。ボリウッドの作品は、過激派の脅迫によって定期的に中断、破壊、閉鎖され、Sahil 自身も、風刺ロックバンド WORKSHOP で政治家と悪徳警官を罵倒した際、検閲に直面しました。Sahil が “偉大なる独裁者” や “鉄拳を砕く” のような曲を書くことの結果を恐れているとしても、彼はそれを表に出すことはありません。恐れよりも、彼は何度も自分の特権と、それを使って抑圧と闘う責任について言及します。
「俺のような人間は、アパートでくつろぎながら、こう言うこともできる。これは俺の戦いではないんだ。普通の平穏な暮らしを送ればいいってね。俺は何気ない生活を送れるのだから。だけど、踏みつけにされそうになっている人たちが大勢いる。いずれは反撃に出るべき人たちが。抗議の力、情報の力によって、俺たちは実際に変化を起こすことができるはずだ。どんな形であれ、善戦する人たちはたくさんいる。そして、願わくば、より多くの人々が目を開き、自分たちが持っている特権や、声を上げる必要があるという事実に気づくことを期待しているんだ。そして、この先、より良い日々が待っていることもね。俺たちは、自分たちが見つけた世界よりも良い世界を残すことができる、すべての人々にとってより公正で平等な世界に住むことができると信じたい。他人を親切に扱い、専制や抑圧に負けることはないとね。しかし、実際には、これは長い戦いで、変化は一夜にして起こるものではない。だからこそ俺は、より良い世界を作るために、時間、エネルギー、努力、時には命さえも犠牲にしてきたすべての人々に敬意を表したいんだ」