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COVER STORY + INTERVIEW 【PRIMAL FEAR : THALIA BELLAZECCA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH THALIA BELLAZECCA OF PRIMAL FEAR !!

“Power Metal Is Like You Go Back To Childhood And Imagine Yourself Riding Eagles And Killing Enemies, Being a Hero Or Becoming The Dark Evil Guy That Wants To Conquer The World.”

PRIMAL FEAR

「PRIMAL FEAR だと、”Rulebreaker” は特に気に入っているアルバムだし、その中の “Bullets & Tears” という曲が特に好きな曲ね。バンドの中で私は本当に若いけれど、子供の頃にメタルが好きになった80年代、90年代のシュレッディなソロをもっと出したい。彼らの全アルバムに収録されているパワフルでヘヴィなパワー・リフはそのままにね」
Kiko Loureiro, Joe Satriani, Steve Vai, Guthrie Govan, Paul Gilbert, Andy Timmons, Marty Friedman, Jason Becker, Yngwie Malmsteen など、数え切れないほどのギター・ヒーローたちから多大な影響を受けた左利きのニュー・ヒロインは、イタリアの FROZEN CROWN で名を上げ、Angus McSix との共闘で刃を研ぎ澄まし、そうして遂に独パワー・メタルのベテラン PRIMAL FEAR へとたどり着きました。
Tom Naumann と Alex Beyrodt。Matt Sinner の心臓 SINNER を原点とするふたりのギタリストは、PRIMAL FEAR でもその実力を余すところなく発揮して、バンドの強靭なリフワークと華々しいシュレッドを鋭利な刃物のように研ぎ澄ませてきました。彼らの脱退は PRIMAL FEAR にとって当然大きな損失でしたが、バンドはロックとサルサで育った異色のメタル・ウーマン Thalìa Bellazecca と、達人として名高い Magnus Karlsson を引き入れることでさらなる高みを目指すことになりました。
「Angus McSix でこの役を “コスプレ” できて、とても嬉しいし光栄よ。リーグ・オブ・レジェンド(大好きで今でもプレイしているゲーム)やアニメのおかげで、いつもコスプレをもっと掘り下げてみたいと思っていたんだけど、残念ながら時間がなかったんだ。コスプレって自分を象徴する分身を持つようなもので、より自分に自信を持ち、自分の行動やあり方に誇りを持つことにも役立っていると思うの」
ファンタジーをテーマとするパワー・メタルの世界において、役を演じる “ロール・プレイ”、そして役になりきる “コスプレ” は、暗く煩わしい日常から離れ異世界へと旅立つためにとても重要な “ツール” なのかもしれませんね。Thalìa はそのコスプレというツールを、パワー・メタルの世界で誰よりも巧みに使いこなします。GLORYHAMMER を追われた Angus McSix との共闘では、カレドニアのレイザー・アマゾンの女王を演じて喝采を浴びました。
しかし、実際のコスプレだけではなく、彼女はさまざまな “ペルソナ” を現実世界でも演じています。自身の人気 YouTube チャンネルを運営し、ヘヴィ・ミュージックとロック全般に対する彼女のスキルと情熱を紹介したと思えば、なんとモデルの領域にも進出。彼女のゴージャスな写真は、ミラノのPERSONAの公式インスタグラムで確認できますが、とにかく自身の “分身”、自身の才能をいくつも揃えることで、彼女は自信を携え、パワー・メタルの栄光に向かって邁進することができるようになったのです。
「パワー・メタルは、誰にでもある現実や嫌なことから逃避するのに役立っているの。それに、パワー・メタルは本当に楽しいジャンルだし、すべてのバンドが何かのキャラクターのコスプレをすることで、さらにエンターテイメント性が増す。まるで子供の頃に戻って、自分がワシに乗って敵を殺したり、ヒーローになったり、世界を征服しようとする暗い悪者になったりするのを再び想像することができるのよ」
大人になって、子供のころのように異世界への想像を膨らませたり、空想のキャラクターになりきることはそうそう許されることではないでしょう。しかし、Thalìa のような自信と才能に満ちたアーティストが先陣を切って、パワー・メタルの楽しさ、エンターテイメント、そして逃避場所としての優秀さを広めてくれたとしたら…私たちはためらいなく、エルフやドワーフ、もしくは侍になりきって、子供のころのように煩わしい日常を忘れられる “エンパワーメント・メタル” に浸ることができるのかもしれませんね。
今回弊誌では、Thalìa Bellazecca にインタビューを行うことができました。「デスノート、エヴァンゲリオン、デス・パレード、デッドマン・ワンダーランド、それにスタジオジブリの全作品が大好きよ。音楽なら、BAND-MAID, ALDIOUS, NEMOPHILA, LOVEBITES, MAXIMUM THE HORMONE, NIGHTMARE, それに TK from 凛として時雨。ゲームなら、ベヨネッタ、どうぶつの森、スーパーマリオ(特にギャラクシー)全部、Bloodborne、Ghost of Tsushima、大神。もともとファンタジーやSFのゲーム、映画が好きだったので、日本に行って、それがストリートでも受け入れられているのを見て、日本がもっと好きになったのよね」 どうぞ!!

INTERVIEW WITH THALIA BELLAZECCA

Q1: First, what kind of music did you grow up listening to?

【THALIA】: I grew up with rock and salsa, plus legends as Michael Jackson and the music of the 80/90s thanks to my parents. I grew the love for metal by myself since I was 12.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【THALIA】: ロックとサルサ、それに両親の影響でマイケル・ジャクソンや80年代、90年代の伝説的な音楽を聴いて育ったわ。感謝よねえ。メタルは12歳から自分で好きになっていったのよ。

Q2: What made you start playing guitar? Who was your guitar hero at the time?

【THALIA】: I started playing guitar thanks to my parents that saw me jumping on the sofa pretending to play the guitar, I think I was listening to Dire Straits or Pink Floyd. My idols at that time were Joe Satriani and Megadeth.

Q2: ギターを始めたきっかけはなんだったんですか?当時のヒーローは誰でしたか?

【THALIA】: 両親のおかげでギターを弾き始めたの。私がエアギターを弾くふりをしてソファに飛び乗るのを見てね。DIRE STRAITS や PINK FLOYD を聴いていたんだと思う。それから私のアイドルは、Joe Satriani と MEGADETH になったのよ。

Q3: You came to Japan in 2019 with Frozen Crown. Can you share your impressions and memories of Japan?

【THALIA】: I had a wonderful impression of Japan and the japanese fans. They were all super kind, helpful and nice. I still have a piece of my heart there cause I really loved everything about Tokyo, from the food to the people. The respect you have there for musicians and how people treat you is not comparable to any other place.

Q3: 2019年には、FROZEN CROWN で来日も果たしましたね。日本の印象や思い出を聞かせてください。

【THALIA】: 日本と日本のファンには素晴らしい印象を受けたのよ。みんなすごく優しくて、親切で、いい人たちだった。東京を思い出すだけで、今でも心が癒されるわ。食べ物から人々まで、東京のすべてが大好きだったから。ミュージシャンに対する尊敬の念や、人々の接し方は、他のどの場所とも比べ物にならないくらい素晴らしいわ。

Q4: In fact, Frozen Crown was a very popular band in Japan, so your departure was unfortunate. Why did you leave the band?

【THALIA】: I left the band cause I wanted to focus on my private life a bit more and do different experiences in other bands and with my own self and career.

Q4: 実際、FROZEN CROWN は日本でとても人気のあるバンドだったので、あなたの脱退は残念でしたよ。

【THALIA】: バンドを脱退した理由は、もう少し私生活に集中したかったのと、他のバンドや自分自身やキャリアについて、いろいろな経験をしたかったからなんだ。

Q5: The world of power metal you live in has fantasy as its power, and in Japan there are many fantasy-themed games, anime, and music. Are you influenced by such Japanese culture?

【THALIA】: I love Japanese culture, especially for all the fantasy-themed games, anime and music. Since I discovered anime I started to dig more in it and see how many different styles you guys have just surprises me and makes me even more curious.
I’m in love with Death Note, Evangelion, Death Parade, Deadman Wonderland plus all the Studio Ghibli films. And Band-Maid, Aldious, Nemophila, Lovebites, Maximum the Hormone, Nightmare and TK from Ling tosite sigure. If it’s video games, Bayonetta, Animal Crossing, all the Super Mario’s, especially the Galaxy ones, Bloodborne, Ghost of Tsushima, Okami.
I was always into fantasy and sci fi games or movies, so going to Japan and seeing how this is embraced also in the streets makes me love the country even more.

Q5: あなたが生きるパワー・メタルの世界にはファンタジーが力となっていますが、日本にもファンタジーをテーマにしたゲームやアニメ、音楽がたくさんあります。そうした日本文化からは影響を受けていますか?

【THALIA】: 日本の文化、特にファンタジーをテーマにしたゲーム、アニメ、音楽は大好きよ。アニメに出会ってから、日本の文化をもっと掘り下げてみるようになったんだけど、そこにあるさまざまなスタイルには驚かされるし、さらに興味が湧いてくるよ。
デスノート、エヴァンゲリオン、デス・パレード、デッドマン・ワンダーランド、それにスタジオジブリの全作品が大好きよ。音楽なら、BAND-MAID, ALDIOUS, NEMOPHILA, LOVEBITES, MAXIMUM THE HORMONE, NIGHTMARE, それに TK from 凛として時雨。ゲームなら、ベヨネッタ、どうぶつの森、スーパーマリオ(特にギャラクシー)全部、Bloodborne、Ghost of Tsushima、大神。もともとファンタジーやSFのゲーム、映画が好きだったので、日本に行って、それがストリートでも受け入れられているのを見て、日本がもっと好きになったのよね。

Q6: After that, you played Queen of the Lazer-Amazons of Caledonia with Angus McSix’s band.
In fact, musicians often play fantasy characters in the world of power metal. How do you feel about “playing a role” or “Cosplay” in a metal band?

【THALIA】: I’m so happy and honored to cosplay this role in Angus McSix. A part of me always wanted to dig more into cosplay, thanks also to League of Legends (a game I love and still play) and anime, but I never had the time unfortunately. It’s like having an alter ego that represents me and helps me as well with having more self confidence and feeling more proud of what I do and how I am.

Q6: その後、Angus McSix のバンドでカレドニアのレイザー・アマゾンの女王を演じましたね。
パワーメタルの世界では、ミュージシャンがファンタジーのキャラクターを演じることがよくあります。メタル・バンドで “役を演じる” こと、あるいは “コスプレする “ことについてどう感じていますか?

【THALIA】: Angus McSix でこの役を “コスプレ” できて、とても嬉しいし光栄よ。リーグ・オブ・レジェンド(大好きで今でもプレイしているゲーム)やアニメのおかげで、いつもコスプレをもっと掘り下げてみたいと思っていたんだけど、残念ながら時間がなかったんだ。コスプレって自分を象徴する分身を持つようなもので、より自分に自信を持ち、自分の行動やあり方に誇りを持つことにも役立っていると思うの。

Q7: I believe that both power metal fantasy and the fantasy of Japanese anime and video games serve as wonderful escapes from the dark realities of oppression, loss. Is it because of these very dark times that power metal is being sought after and is returning to popularity?

【THALIA】: I think this could be one of the reason why power metal is being more and more popular during the last years. It helps a lot to escape the reality and bad moments that everybody has. It’s also a really fun genre and having all these bands cosplaying some characters makes it even more entertaining. It’s like you go back to childhood and imagine yourself riding eagles and killing enemies, being a hero or becoming the dark evil guy that wants to conquer the world.

Q7: パワー・メタルのファンタジーも、日本のアニメやゲームのファンタジーも、抑圧や喪失という暗い現実からの素晴らしい逃避の役割を果たしていると思います。こうした非常に暗い時代だからこそ、パワー・メタルが求められ、人気を取り戻しつつあるのでしょうか?

【THALIA】: ここ数年、パワー・メタルがますます人気を集めている理由のひとつは、まさにそこにあるのではないだろうか。パワー・メタルは、誰にでもある現実や嫌なことから逃避するのに役立っているの。それに、パワー・メタルは本当に楽しいジャンルだし、すべてのバンドが何かのキャラクターのコスプレをすることで、さらにエンターテイメント性が増す。
まるで子供の頃に戻って、自分がワシに乗って敵を殺したり、ヒーローになったり、世界を征服しようとする暗い悪者になったりするのを再び想像することができるのよ。

Q8: You have finally arrived at a big band called Primal Fear! How did you come to join the band?

【THALIA】: I met officially Ralf at a festival here in Italy in July called Luppolo in Rock, we had a nice quick chat about music, bands and so on. Later on he contacted me and asked me to become the new guitarist of the band, they were looking through my profile, saw how I play and thought of me immediately.

Q8: そうして、あなたはついに PRIMAL FEAR というビッグ・バンドにたどり着きました!バンドに加入したきっかけを教えていただけますか?

【THALIA】: 7月にイタリアで開催されたルッポロ・イン・ロックというフェスティバルで、公式に Ralph に会ったんだ。その後、彼から連絡があり、バンドの新しいギタリストにならないかと誘われたのよ。彼らは私のプロフィールを見て、私のプレイを見て、新ギタリストとして私のことをまず考えてくれたのよ。

Q9: Can you tell us about a Primal Fear song or album that you particularly like? What colors do you want to bring out in this band?

【THALIA】: Rulebreaker is one album that I particularly like as the song “Bullets & Tears” in it. Even if I’m really young, I would love to bring out even more the shreddy solos of the 80/90s, something that made me fall in love with metal when I was a kid. As for the powerful heavy and power riffs they have in all their albums.

Q9: PRIMAL FEAR の曲やアルバムで特に気に入っているものを教えていただけますか?このバンドにどんな色を出したいと思っていますか?

【THALIA】: “Rulebreaker” は特に気に入っているアルバムだし、その中の “Bullets & Tears” という曲が特に好きな曲ね。
バンドの中で私は本当に若いけれど、子供の頃にメタルが好きになった80年代、90年代のシュレッディなソロをもっと出したい。彼らの全アルバムに収録されているパワフルでヘヴィなパワー・リフはそのままにね。

Q10: Finally, do you have any advice for the increasing number of female guitarists in recent years, and for women who want to start playing guitar?

【THALIA】: I just want to recommend to all of them, guitarists, singers and so on to be strong, powerful, keep pushing and keep your eyes and ears open because out there it’s as beautiful as hard and difficult. Don’t let anyone keep you down or lower your skills and the person you are, we’re worth of achieving our goals as everybody.

Q10: 最後に、近年増えている女性ギタリストや、これからギターを始めたいと思っている女性にアドバイスをお願いします。

【THALIA】: ギタリスト、シンガー、その他すべての人たちに、強く、力強く、プッシュし続け、目と耳を開いていることを勧めたい。
なぜなら、そこにあるのは困難で難しいのと同じくらい美しい道のりだから。誰にも首をたれず、自分のスキルや人間性を下げるような考え方はしないようにね。私たちは皆、目標を達成する価値があるのだから。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED THALIA’S LIFE!!

Sigur Ros “Agaetis byrjun”

Megadeth “Rust In Peace”

Joe Satriani “The Extremist”

Kiko Loureiro “Sounds of Innocence”

Michael Jackson “Dangerous”

MESSAGE FOR JAPAN

Thank you guys for being such amazing fans and people. I loved your country years ago and I can’t wait to be back again for shows or just holidays. Thank you for being so mice, sweet and respectful, keep these qualities forever. Love you and can’t wait to be in Japan again soon!

素晴らしいファンであり、人間でいてくれることに感謝するわ。何年も前に日本が大好きになり、ショーや休暇でまた戻ってくるのが待ちきれないのよ。いつまでも日本の良さを持ち続けてほしいわ。愛を込めて!

THALIA BELLAZECCA

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COVER STORY + INTERVIEW 【ROLAND GRAPOW : HELLOWEEN : MASTER OF THE RINGS】 30TH ANNIVERSARY !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROLAND GRAPOW !!

“At The Beginning I Was a Little Upset, After All, I Was a Big Part Of The Helloween’s History, I Wrote a Lot Of Songs. But I’m a Fatalist, I Believe That Everything That Happens In This World, Everything Happens For The Best.”

DISC REVIEW “MASTER OF THE RINGS”

「”Master of the Rings” は、新しい HELLOWEEN のラインナップによる素晴らしいアルバムだ。バンド・メンバーやレコード会社の不安定な状況が何年も続いた後、僕たちは再び少し自由を見つけ、再び素晴らしいパワー・メタル・アルバムを作ることができた。僕たちもファンも幸せだった。振り返れば、実に素晴らしい時代だったね」
ここ日本で、いや世界中で、90年代のメタル・キッズをメタルへと誘った HELLOWEEN の傑作 “Master of the Rings” から30年。四半世紀以上の時を経ても、このアルバムが色褪せることはなく、素晴らしく時の試練に耐えています。それはきっと、”Master of the Rings” が、メタルの持つ逆境からの “回復力” と共鳴したから。実際、この前年、HELLOWEEN は崩壊の危機に瀕していました。
「僕は Weiki に、日本で “Chameleon” の曲(アコースティックな曲も多かった)を演奏した時、ファンが僕の前で泣いていたと言ったんだ。そして、”Keeper 1+2″ のような昔のスタイルに戻るべきだとも言った。彼は納得していたよ。それから数ヶ月して、Andi がバンドに加わった。彼も僕と同じことを言って、なぜ “Chameleon” のようなアルバムを作ったんだい?と尋ねていたね。とにかく、Uli と Andi がバンドに加わったことで、僕らの進むべき方向はまたひとつになったんだ」
“Master of the Rings” がリリースされる前年、HELLOWEEN が発表した “Chameleon” という文字通りカラフルなアルバムは大きな失敗と受け止められました。典型的なメタル、HELLOWEEN らしいパワー・メタルを捨てて、ポップな実験を試みたこのアルバムは、あまりに早すぎたのかもしれませんね。今聴けば、その多様性や芳醇なメロディが好奇心をそそる好盤にも思えますが、ステレオタイプは当時あまりに大きな壁でした。
「素晴らしい気持ちと同時に悲しい気持ちもあった。Ingo は病気だったし、僕らには本当にそうする以外選択肢がなかったんだ。一方で、Michael はポップ指向に傾倒していて、メタル・ミュージックにはもう興味がなかった。Andi と Uli は、ちょうどいいタイミングで適切なメンバーだったんだ」
さらに、HELLOWEEN の顔ともいえた Michael Kiske と Ingo Schwichtenberg の脱退は、負の連鎖に拍車をかけることとなります。しかし、心の病に侵された Ingo、そしてメタルに興味を失った Kiske がバンドを続けることは不可能でした。そして救世主となったのが、Andi Deris と Uli Kusch だったのです。
“Master of the Rings” は、あまりに印象的なドラム・フィルをイントロとする強烈な2つのスピード・チューンでその幕を開けます。実際、このドラム・フィルに心を奪われてメタルに誘われたファンも少なくないはずです。加えて、ガチガチのツイン・ペダルで暴風のように疾走する開幕の二撃。Uli の個性とインプットは、明らかにこの作品の見せ場となりました。
そして何より、Andi Deris の旋律。哀愁。高揚。激情。楽曲毎にコロコロと、猫の目のようにその色を変える Andi の感情は、ヘヴィ・メタルの強みを完璧なまでに代弁していました。
“Perfect Gentleman” で笑い、”Secret Alibi”で疼き、”In the Middle of Heartbeat” で咽び泣く。”Game is On” で初代ゲームボーイとのシンクロを楽しみ、”Mr.Ego” で素晴らしくも憎らしい Michael Kiske を偲ぶ。Andi の歌う新たな HELLOWEEN のアルバムには、明らかに、人の心に寄り添うヘヴィ・メタルの生命力が見事に吹き込まれていました。そして同時に、この作品には HELLOWEEN 史上最も理知的な整合感を極めたソング・ライティングとリフワークが備わっていたのです。何という復活!私たちはこの作品を聴いて、暗闇にもいつか光が射すことを教わりました。多くの困難は克服できると学びました。
「彼らのことを思えば満足だ。僕は招待されなかったから、再結成には参加していない。そう、最初は少し動揺したんだ。何しろ、僕はバンドの歴史の大きな部分を占めていたし、たくさんの曲を書いたからね。でも僕は運命論者で、この世で起こることはすべて最善のために起こると信じている」
“まだいける。俺たちはまだまだいけるんだ!”。30年前、アルバムに誰よりも力強い “Still We Go” を提供し大復活の立役者となった Roland Grapow はしかし30年後、HELLOWEEN の過去と未来をつなぐ大集結 PUMPKINS UNITED に呼ばれることはありませんでした。あの名曲 “The Chance” や “Someone’s Crying”, “Mankind” を作曲したにもかかわらず。
ある意味、これもまた大きな壁であり痛みなのかもしれません。しかし、”負けヒーロー” となった Roland は腐ることなく現在のメンバーたちにエールを贈ります。これぞまさに、ヘヴィ・メタルの寛容さ、包容力。音楽業界への失望を克服し、前を向いた Roland はこれからもまだまだ “いける” のです。
今回弊誌では、Roland Grapow にインタビューを行うことができました。「Weiki と僕がギターの腕前を競い合ったことは一度もなかった。Weiki はそのことについていつもクールだったからね。僕はただ、ギタリストとしてのスキルを少しでも伸ばしたかったんだ」 30年…Roland のお気に入り、”Dark Ride” の評価が海外で爆上がりしているのも面白いですね。どうぞ!!

HELLOWEEN “MASTER OF THE RINGS” : ∞/10

INTERVIEW WITH ROLAND GRAPOW

Q1: First, Masterplan’s new song “Rise Again” is fantastic! Just like the name of the song, it’s a big comeback, just like a phoenix, and we can take it as Masterplan’s complete resurrection, would you agree?

【ROLAND】: Thank you. I wouldn’t call it a complete resurrection, because in reality, Masteplan never went away. Yes, we haven’t released new music in the last 10 years. But it’s not because we didn’t have ideas, but rather because we were a little disappointed in the modern music industry.

Q1: MASTERPLAN の新曲 “Rise Again” は本当に素晴らしいですね!曲名の通り、不死鳥のような大復活です。MASTERPLAN の完全復活と受け止めていいのでしょうか?

【ROLAND】: ありがとう。完全復活とは言わないよ。なぜなら、現実には、MASTERPLAN は決して消えてはいないのだから。たしかに、この10年間は新曲をリリースしていない。しかし、それは僕たちにアイデアがなかったからではなく、むしろ現代の音楽業界に少し失望していたからなんだよ。

Q2: You yourself have been energetic with guest appearances by Ronnie Romeo and others since the release of “Pumpkings” in 2017, but you never left the piece itself. What has the last seven years been like for you?

【ROLAND】: Oh, I never forget about myself (laughs)
Actually, I have a lot to do. We are currently finishing up the new Masterplan album. But I still have a lot of material, and it is good enough that I do not exclude the appearance of my solo project. But for now these are just plans.

Q2: あなた自身は、2017年に “Pumpkings” をリリースして以来、Ronnie Romeo らにゲスト参加して精力的に活動してきましたが、作品そのものをリリースすることはありませんでした。この7年間はあなたにとってどのようなものでしたか?

【ROLAND】: あ、もちろん自分のことは忘れていないよ(笑)。
実は、やりたいことがたくさんあるんだ。今は MASTERPLAN の新作を仕上げているところ。でも、まだ素材はたくさんあるし、ソロ・プロジェクトの可能性も排除できないくらいさ。今のところは、単なる計画でしかないけどね。

Q3: For the past seven years, Helloween, of which you have long been a part of the body, has been making albums, traveling the world, and gaining popularity with a lineup that connects the band’s past and future as Pumpkins United. However, it is really strange for me, us, that you are not there. What do you think of their current success? Why aren’t you there?

【ROLAND】: Oh, I’m happy for them. At least someone can make money playing music. It’s rare these days, and for young musicians it’s almost an impossible dream. I’m not part of the reunion because I wasn’t invited. And yes, at the beginning I was a little upset, after all, I was a big part of the band’s history, I wrote a lot of songs. But I’m a fatalist, I believe that everything that happens in this world, everything happens for the best. I enjoy the place where I am now. I have a wonderful family, a house, and it would be difficult for me to combine Halloween tours and work with Masterplan, which I would not give up under any circumstances.

Q3: その7年間で、あなたが長い間その体の一部であった HELLOWEEN は、アルバムを作り、世界中を旅し、Pumpkins United としてバンドの過去と未来をつなぐラインナップで人気を博してきました。しかし
あなたがそこにいないことが、私にとって、いや私たちにとって、本当に不思議なのです。現在の彼らの今の成功をどう思いますか?なぜあなたはそこにいないのでしょう?

【ROLAND】: そうだね、僕はそれでよいと思っているよ。彼らのことを思えば満足だ。少なくとも、誰かが音楽でお金を稼ぐことができる。最近では珍しいことだし、若いミュージシャンにとってはほとんど不可能な夢だからね。
僕は招待されなかったから、再結成には参加していない。そう、最初は少し動揺したんだ。何しろ、僕はバンドの歴史の大きな部分を占めていたし、たくさんの曲を書いたからね。でも僕は運命論者で、この世で起こることはすべて最善のために起こると信じている。僕は今いる場所を楽しんでいるよ。素晴らしい家族も家もあるし、どのみち、HELLOWEEN のツアーと MASTERPLAN の仕事を両立させるのは難しかっただろう。MASTERPLAN はどんな状況にあっても諦めたくないからね。

Q4: This year marks the 30th anniversary of the masterpiece, “Master of the Rings.” Actually, this album was my gateway to metal. So you are really one of my heroes! Looking back, what does that album mean to you?

【ROLAND】: It is a great album with a new Helloween line up. After many years of unstable situations of bandmembers and record labels, we found a bit of freedom again, to create a great power metal album again, we were happy and the fans as well. We had a great time back than.

Q4: 今年は傑作 “Master of the Rings” の30周年にあたります。実は、このアルバムが私のメタルへの入り口でした。だからあなたは本当に私のヒーローの一人なんですよ!今振り返ってみて、あのアルバムはあなたにとってどんな存在ですか?

【ROLAND】: 新しい HELLOWEEN のラインナップによる素晴らしいアルバムだ。バンド・メンバーやレコード会社の不安定な状況が何年も続いた後、僕たちは再び少し自由を見つけ、再び素晴らしいパワー・メタル・アルバムを作ることができた。僕たちもファンも幸せだった。振り返れば、実に素晴らしい時代だったね。

Q5: That album marked a time of upheaval for Helloween, as members changed from Michael Kiske to Andi Deris and from Ingo Schwichtenberg to Uli Kusch. How did you feel about this change?

【ROLAND】: Great and bad feelings at the same time, Ingo was sick and we didn’t had a real choice, but Michael was more into pop oriented direction and was not interested into metal music anymore, which was sad, because I love him as a friend and singer. We had Andy and Uli as the right guys in the right moment coming.

Q5: このアルバムは、Michael Kiske から Andi Deris へ、そして Ingo Schwichtenberg から Uli Kusch へとメンバーが変わり、HELLOWEEN にとって激動の時期でもありましたね。

【ROLAND】: 素晴らしい気持ちと同時に悲しい気持ちもあった。
Ingo は病気だったし、僕らには本当にそうする以外選択肢がなかったんだ。一方で、Michael はポップ指向に傾倒していて、メタル・ミュージックにはもう興味がなかった。それは悲しかったよ。だって僕は彼を友人、そしてシンガーとして愛していたから。だからこそ、Andi と Uli は、ちょうどいいタイミングで適切なメンバーだったんだ。

Q6: You yourself joined Helloween in a very pressured position as “Kai Hansen’s successor”, how did you handle that pressure?

【ROLAND】: I was asked to join Helloween, but didn’t know the band at all. I just heard about the name and saw one musik magazine with a front cover of them. None of my friends knew them either.
When Weiki asked me to learn their songs I was not really thinking about Kai, which i have to replace, it was more to make the rest of the band members happy and the fans of course. I came from a different music direction and forthat, it was pretty easy to be honest!.

Q6: あなた自身も、Kai Hansen の後継者という非常にプレッシャーのかかる立場で HELLOWEEN に加入したわけですが、そのプレッシャーにどう対処したんですか?

【ROLAND】: HELLOWEEN に加入しないかと誘われたとき、実は僕はバンドのことはまったく知らなかったんだ。名前を聞いたことがあって、ある音楽雑誌の表紙になっているのを見ただけだった。 友達も誰も知らなかったんだ。
だから Weiki に彼らの曲を覚えろと言われたとき、僕は Kai のことはあまり考えていなかった。考えなければならないのは、他のメンバーやファンを幸せにすることだった。僕は違う音楽の方向から来たから、正直言ってプレッシャーに対処するのは簡単だったよ!

Q7: The last album “Chameleon” was much criticized at the time, but it seems to be a very good album when I listen to it now. Your songs “I Don’t Wanna Cry No More” and “Music” have also stood the test of time. But did you go back to the “Master of the Rings” formula of Helloween because it was still criticized as pop and commercial?

【ROLAND】: Sure, I said to Weiki in Japan the fans were crying in front of me when we played all those Chameleon songs (We did many acoustic songs) I told him we should go back to your old style, like keeper 1+2, he agreed and some month later Andy came to the band and said the same and ask us why did you guys do that Chameleon album? With Uli and Andy in the band we had one direction again to go.

Q7: その前の作品、”Chameleon” は当時は酷評されましたが、今聴くととても良いアルバムだと思います。あなたの作った “I Don’t Wanna Cry No More” や “Music” も時の試練に耐えていますね。それでも、”Master of the Rings” という HELLOWEEN らしさ全開の作品に戻ったのは、やはりコマーシャルでポップという批判があったからですか?

【ROLAND】: その通りだよ。僕は Weiki に、日本で “Chameleon” の曲(アコースティックな曲も多かった)を演奏した時、ファンが僕の前で泣いていたと言ったんだ。そして、”Keeper 1+2″ のような昔のスタイルに戻るべきだとも言った。彼は納得していたよ。それから数ヶ月して、Andi がバンドに加わった。彼も僕と同じことを言って、なぜ “Chameleon” のようなアルバムを作ったんだい?と尋ねていたね。とにかく、Uli と Andi がバンドに加わったことで、僕らの進むべき方向はまたひとつになったんだ。

Q8: I still love the last song “Still We Go” from “Master of the Rings.” For example, it is quite different from your classic “The Chance.” Michael and Andy, did you have different images of the songs you wrote depending on the singer?

【ROLAND】: No, I wrote it a little bit before Andy was coming into the band, but I knew we will have a drastic lineup change and this song is about a new way/future and is full of hope.

Q8: “Master of the Rings” の最後の曲、あなたが作った “Still We Go” は今でも大好きですよ。例えば、あなたの名曲 “The Chance” とは色合いが全く違います。Michael と Andi、シンガーによって書く曲のイメージを変えていたのですか?

【ROLAND】: いや、Andi がバンドに入ってくる少し前にこの曲は書いていたからね。でも、大幅にラインナップが変わることは分かっていたから、この曲は新しい道・未来について歌った、希望に満ちた曲なんだ。僕らはまだまだやれるってね!

Q9: That album included “Grapowski’s Malmsuite1001 (In D Doll)” as a bonus track. Of course, it was a tribute to Yngwie, but did you feel like doing something more technical than Michael Weikath back then?

【ROLAND】: I was a big Yngwie fan and later even we were friends, I had this instrumental written just as a fun song tribute, but Uli, Markus and Andy liked it so much that we used it as a bonus track.
Theer was never a competition between Weikiand me on guitar, I just did what I did and I wanted a bit more develop my skills as a guitarplayer. Weiki was always cool about that.

Q9: このアルバムには、ボーナストラックとして “Grapowski’s Malmsuite1001 (In D Doll)” が収録されていました。もちろん、これは Yngwie へのトリビュートですが、当時は Michael Weikath よりもテクニカルなことをやりたいという気持ちがあったのでしょうか?

【ROLAND】: 僕はイングヴェイの大ファンで、後に友達にもなったんだけど、このインストゥルメンタルは彼への楽しいトリビュートとしてただ作ったんだ。だけど、Uli と Markus, そして Andi がとても気に入ってくれて、アルバムのボーナス・トラックにすることにしたんだ。
Weiki と僕がギターの腕前を競い合ったことは一度もなかった。Weiki はそのことについていつもクールだったからね。僕はただ、ギタリストとしてのスキルを少しでも伸ばしたかったんだ。

ROLAND’S RANKING OF HELLOWEEN ALBUMS !!

1. Dark Ride

2. The Time of the Oath

3. Master of the Rings

4. Better than Raw

5. Chameleon

6. Pink Bubbles Go Ape

As a guitar player I like Chameleon a lot, but for the fans I agree, it is not the best what they wanted!
I like all of them! I am still proud of my years with Helloween!

ギタリストとしては、”Chameleon” はとても好きだけど、ファンにとっては、彼らが望んでいたものとは違うんだよね! 僕はどの曲も好きだ!HELLOWEEN での数年間を今でも誇りに思っているからね!

MESSAGE FOR JAPAN

Japan has always been a special place for me. You have an amazing way of finding a balance between hard work and carefree relaxation, and I would like to learn that too (laughs). I really hope that I will have the opportunity to visit Japan again and maybe even with Masteplan, I also hope that you will like our new album. Thanks for the interview.

日本はいつも僕にとって特別な場所だった。ハードワークと気ままなリラックスのバランスの取り方が素晴らしくて、僕も見習いたいものだよ(笑)。また日本を訪れる機会があればいいなと思うし、MASTERPLAN の新しいアルバムも気に入ってもらえると嬉しいよ。インタビューをありがとう!。

ROLAND GRAPOW

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IN SEARCH OF SUN : LEMON AMIGOS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM LEADER OF IN SEARCH OF SUN !!

“I Think The Whole ‘Angry Looking Metal Band’ Is Getting a Bit Stale In General.”

DISC REVIEW “LEMON AMIGOS”

「”怒っているように見えるメタル・バンド” というのは、一般的に少し古臭くなってきていると思う。”Virgin Funk Mother” は間違いなく、自分たちの個性を探求し、殻を破り始めたアルバムだ。典型的なメタルではないアイデアを持ち込むことを恐れなくなった」
かつて、ヘヴィ・メタルといえば、そのイメージの中心に “怒り” が必ずありました。それは、隣の家のババアが凍るくらい寒いスイスの冬に向けられた怒りかもしれませんし、親のクドクドしたお説教に突きつける “Fuckin’ Hostile” かもしれませんし、ド悪政に対して売りつける喧嘩歌舞伎なのかもしれません。もちろん、そうやって怒りを吐き出すことで、アンガーマネージメントを行い、心の平穏を保つこともできました。つまり、メタルの中にはネガティブな怒りと、ポジティブな怒りが常に同居していたのです。
しかし、多様なモダン・メタルの開花とともに、メタル=怒りという単純な方程式は崩れつつあります。喪失や痛みを陰鬱なメタルで表現するバンドもあれば、希望や回復力を光のメタルで提示するバンドもいます。
そして、BULLET FOR MY VALENTINE, FUNERAL FOR A FRIEND, TWELVE FOOT NINJA といった大御所ともステージを共にしてきたロンドンの新たな才能 IN SEARCH OF SUN は、明らかに “高揚感” をそのメタルの主軸に据えています。典型という概念さえ時代遅れとなりつつある今、人生にもメタルにも、愛、幸福、悲しみ、怒りといったあらゆる感情が内包されてしかるべきなのかもしれませんね。
「本当に単純なことなんだけど、僕らはいろんな音楽が大好きで、みんなグルーヴに夢中なんだ!それがいつも僕らの曲作りに現れていて、それが僕らの音楽にファンキーな雰囲気を加えているんだと思う。グルーヴがなければ、音楽はただのノイズだからね!」
パッション・イエローの背景に、輪切りの悪魔的レモン。そのアートワークを見れば、IN SEARCH OF SUN がメタルの典型を一切気にしていないことが伝わります。もちろん、悪魔こそここにいますが、ではトヨタのロゴマークを悪魔に模した車すべてが真性の悪魔崇拝者なのでしょうか?むしろ、ここには甘酸っぱいエモンの果汁や、ちょっとしたユーモア、そして踊り出したくなるような楽しい高揚感で満たされています。
もしかすると、例えば、最強の魔法ゾルトラークがほんの10年ちょっとで誰にでも使える一般攻撃魔法になってしまったように、メタルの怒りや過激さ、凶悪な音、そんなヘヴィのイタチごっこにも限界があるのかもしれません。だからこそ、グルーヴがなければ音楽なんてただのノイズだと言い切る彼らの、冒険を恐れない多様性、典型を天啓としない奔放さ、そして何より、メインストリームにさえ挑戦可能な豊かで高揚感のあるリズムとメロディの輝きは、メタルの未来を託したくなるほどに雄弁です。
今回弊誌では、Adam Leader にインタビューを行うことができました。「ファースト・アルバムの中に “In Search Of Sun” という曲があるんだけど、この曲は内なる葛藤と、自分が一番愛しているものを掴みに行くための世界との戦いについて歌ったものなんだ。この曲は、決意と自分自身を決してあきらめないことについて歌っている。僕たち全員がそのような姿勢を共有しているから、自分たちを真に定義するような名前に変えるのは正しいことだと思ったんだ」 PANTERA や Djent, BON JOVI とMJと、UKポップス、UKガレージ、ダンス・ミュージックが出会う刻。どうぞ!!

IN SEARCH OF SUN “LEMON AMIGOS” : 9.9/10

INTERVIEW WITH ADAM LEADER

Q1: 1. First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【ADAM】: I grew up listening to all sorts of music. My mum was a huge fan of bands like Queen, Guns n Roses, Aerosmith and Bon Jovi, so I was introduced to the rock n roll side of the spectrum from a very young age. At the same time, I was a 90’s kid from London, so I’d be lying if I said I wasn’t a fan of all the Pop, UK Garage and Dance music that was heavily on rotation all the time. I loved it then, and I still do now.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバック・グラウンドからお話ししていただけますか?’

【ADAM】: いろんな音楽を聴いて育ったよ。僕の母親は QUEEN, GUNS N’ ROSES, AEROSMITH, BON JOVI といったバンドの大ファンだったから、幼い頃からロックン・ロールに親しんできたよ。同時に、僕はロンドン出身の90年代キッズだったので、常にあそこでヘヴィ・ローテーションされていたポップス、UKガレージ、ダンスミュージックなどのファンでなかったと言えば嘘になる。当時も今も大好きな音楽さ。

Q2: What made you start playing an instrument? Who were your heroes at the time?

【ADAM】: I’ve been musical ever since I can remember. My grandparents bought me a little acoustic guitar when I was seven years old – I couldn’t play it, but just holding it made me feel powerful. Whenever any of mum’s favourite bands came on the radio, I’d pretend to be a rock star and play along. There was no greater feeling – It felt like an escape.
But my real introduction was when I was eleven. I discovered the band Pantera; I fell in love immediately; it was from that moment that I wanted to start a band and play music for the rest of my life. Drums were my original instrument, I played drums for almost a decade. It wasn’t until later, I realised I loved the idea of fronting a band. That’s when I started practising how to sing. But yes, Pantera truly started it all for me. They were and still are my heroes to this day.

Q2: 楽器を始めたきっかけは何だったんですか?当時のヒーローは?

【ADAM】: 物心ついたときから音楽はやっていた。7歳のときに祖父母が小さなアコースティック・ギターを買ってくれたんだ。弾くことはできなかったけど、持っているだけでパワーを感じた。母の好きなバンドがラジオから流れてくると、ロックスターになったつもりでエアギターに勤しんだよ。これ以上の感覚はなかった。日常からの逃避だったんだ。
でも、本当の出会いは11歳のときだった。PANTERA というバンドに出会って、すぐに恋に落ちたんだ。その瞬間から、バンドを始めて一生音楽をやりたいと思うようになった。ドラムは僕のオリジナル楽器で、ほぼ10年間ドラムを叩いていた。バンドのフロントを務めるというアイデアが好きだと気づいたのは、後になってからだった。それで歌の練習を始めたんだ。でも、そう、 PANTERA は僕にとって本当にすべての始まりだった。彼らは今でもヒーローだよ。

Q3: How was In Search of Sun formed? What is the origin of the band’s name?

【ADAM】: We actually used to be called ‘Driven’ – but after we’d written our first album ‘The World Is Yours’, we’d realised that we and our music were rapidly maturing.
There’s a song on that first album called ‘In Search Of Sun’ and it’s all about that internal struggle and the fight you have against the world to go and grab the one thing you love the most. It’s about determination and never giving up on yourself – we all share that attitude, so it felt right to change our name to something that truly defines us.

Q3: IN SEARCH OF SUN はどのようにして結成されたのですか?バンド名の由来はなんですか?

【ADAM】: 以前は “Driven” と呼ばれていたんだけど、ファースト・アルバム “The World Is Yours” を作った後、自分たちと自分たちの音楽が急速に成熟していることに気づいたんだ。
そのファースト・アルバムの中に “In Search Of Sun” という曲があるんだけど、この曲は内なる葛藤と、自分が一番愛しているものを掴みに行くための世界との戦いについて歌ったものなんだ。この曲は、決意と自分自身を決してあきらめないことについて歌っている。僕たち全員がそのような姿勢を共有しているから、自分たちを真に定義するような名前に変えるのは正しいことだと思ったんだ。

Q4: “Lemon Amigos” is a great title, and the artwork of the piece is great to start with! Why did you choose the lemon theme?

【ADAM】: When the Covid pandemic came into full force, the whole world stood still and we felt like the band had suddenly come to this premature end, and this left an extremely sour taste in our mouths!
But soon after this, we realised that although we weren’t able to tour, we could definitely write new music; and that’s what we did. Not only did we write a whole bunch of new songs during this period, but the pandemic also taught us to stop giving a shit about what others think and to just be our authentic selves; we feel that this truly shines through in the new ‘Lemon Amigos’ EP. We are very proud of it.

Q4: “Lemon Amigos” は素晴らしいタイトルで、作品のアートワークも傑出していますね!なぜレモンをテーマに選んだのですか?

【ADAM】: パンデミックが本格化したとき、全世界が静止し、僕たちはこのバンドが突然早すぎる終焉を迎えたように感じ、口の中に非常に酸っぱい味が残ったんだよ!
しかしその直後、ツアーはできないが、新しい曲を書くことはできると気づいた。この期間に新曲をたくさん書いただけでなく、パンデミックによって、他人がどう思うかを気にするのをやめ、ありのままの自分でいることを教えられた。だから僕らは、甘酸っぱいタイトルのこのEPをとても誇りに思っているんだ。

Q5: As with your last album, “Virgin Funk Mother,” your concepts and music seem to encompass a sense of humour and tolerance that was previously lacking in metal. The tide is turning, would you agree?

【ADAM】: Absolutely. We’ve never taken ourselves too seriously. I think the whole ‘angry looking metal band’ is getting a bit stale in general. ‘Virgin Funk Mother’ was definetely the album where we started to explore our own personalities and come out of our shells. We were less afraid to bring ideas to the table that weren’t just typical metal. It paved the way for ‘Lemon Amigos’, and ‘Lemon Amigos’ is now paving the way for our third album, which I think will be very defining for us. We’re writing it now – it will come out sometime next year.

Q5: 前作 “Virgin Funk Mother” と同様、あなたのコンセプトと音楽は、以前メタルに欠けていたユーモアと寛容のセンスを包含しているように思えます。流れは変わりつつあるのでしょうか?

【ADAM】: そうだね。僕たちは自分たちのことを深刻に考えすぎたことはない。”怒っているように見えるメタル・バンド” というのは、一般的に少し古臭くなってきていると思う。
“Virgin Funk Mother” は間違いなく、自分たちの個性を探求し、殻を破り始めたアルバムだ。典型的なメタルではないアイデアを持ち込むことを恐れなくなった。そして “Lemon Amigos” は今、サード・アルバムへの道を切り開いている。今次のアルバムを書いているところで、来年には発売される予定だよ。

Q6: What made you decide to add funk to metal?

【ADAM】: It really is as simple as the fact that we love all sorts of music, and we are all obsessed with groove; everybody loves a groove! This always comes out in our writing and I guess it adds a funky vibe to our music. Without a groove, it’s just noise!

Q6: あなたたちのファンカデリックな要素は実に素晴らしいですね!なぜメタルにファンクを持ち込もうと思ったのですか?

【ADAM】: 本当に単純なことなんだけど、僕らはいろんな音楽が大好きで、みんなグルーヴに夢中なんだ!それがいつも僕らの曲作りに現れていて、それが僕らの音楽にファンキーな雰囲気を加えているんだと思う。グルーヴがなければ、音楽はただのノイズだからね!

Q7: More to the point, there is a nostalgia in your music, like Michael Jackson in the 80’s. Did you aim for a “retro-futuristic” worldview by adding such nostalgia to modern prog metal, djent, and metalcore?

【ADAM】: We didn’t aim for it, no. But like I mentioned earlier, the more we experimented and the less we started caring about what others thought, it just started organically coming out in our writing, and that’s because we were no longer afraid to express ourselves fully, regardless of the influence; we are all massive fans of every style of music and thousands of different artists. We hold the utmost respect for each other and every other artist on the face of the planet.

Q7: もっと言うと、あなたの音楽には80年代のマイケル・ジャクソンのようなノスタルジアがあります。現代のプログ・メタル、ジェント、メタルコアにそのようなノスタルジーを加えることで、”レトロ・フューチャー” な世界観を目指したのでしょうか?

【ADAM】: 狙ったわけではないんだよ。でも、さっきも言ったように、実験的なことをすればするほど、そして他人の評価を気にしなくなればなるほど、”ノン・メタル” な要素が有機的にテキストに出てくるようになったんだ。それは、自分自身を完全に表現することを恐れなくなったからだ。
僕たちは皆、あらゆるスタイルの音楽と何千もの異なるアーティストの大ファンなのだから。僕たちはお互いに、そして地球上のすべてのアーティストに最大限の敬意を払っている。

Q8: Speaking of retro-futurism, Japanese anime, games, and music also have great works like Akira’s. Are you influenced by Japanese culture?

【ADAM】: We love Japanese culture! I’ve always wanted to visit Japan, but sadly I haven’t gotten around to it yet. It is one of my biggest wishes to visit. The people, the culture, the food – everything is just incredible!

Q8: レトロ・フューチャーといえば、日本のアニメ、ゲーム、音楽にも “Akira” のような素晴らしい作品があります。日本の文化に影響を受けていますか?

【ADAM】: 日本の文化は大好きだよ!ずっと日本に行きたいと思っていたのだけど、残念ながらまだ行けていないんだ。訪れてみたい国のひとつだよ。人々、文化、食べ物……すべてが本当に素晴らしいんだ!

SIX ALBUMS THAT CHANGED ADAM’S LIFE!!

PANTERA “Vulgar Display Of Power”

Michael Jackson “Thriller”

LED ZEPPELIN “BBC Sessions”

THE OFFSPRING “Americana”

SLIPKNOT “Slipknot”

LED ZEPPELIN “Led Zeppelin II”

MESSAGE FOR JAPAN

Hello Japan! We love and appreciate you and we cannot wait to eventually come over and play some shows in your beautiful country. Watch this space!

こんにちは、日本!僕たちは日本のことを愛しているし、感謝しているんだ。いずれ日本に行って、君たちの美しい国でライブをするのが待ちきれないよ。期待していてね!

ADAM LEADER

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KINGCROW : HOPIUM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DIEGO CAFOLLA OF KINGCROW !!

“I Think Kintsugi Is Really a Great Metaphor About Dealing With Traumas And Overcoming Them And Even Celebrate Them Since They Are Part Of Our Growth Process.”

DISC REVIEW “HOPIUM”

「金継ぎは素晴らしいアイデアだと思ったんだ。自身のトラウマ、傷と向き合い、それを克服し、さらには成長過程の一部でもあるその傷を祝福できるようになる。金継ぎは、その歌詞の実に素晴らしい比喩だと思ったね。また、金継ぎのコンセプトはアートワークにも使用し、アルバムのビジュアル表現にも全面的に取り入れているよ。なぜなら、その魅力的な哲学をおいても、素晴らしく美しい芸術形態だから」
欠けたり割れたりした器を、漆を使って修復する日本の伝統的な技法、金継ぎ。もう二度と戻らない致命的な “傷” を優しくつなぎ合わせ、美しい金でコーティングすることでその傷を唯一無二の前向きな個性とする金継ぎはもはや、修理を超えてアートの域に達しています。
イタリアの伊達プログ KINGCROW は、その技法と哲学、アイデアに魅せられ、”Kintsugi” を自らの血肉へと昇華させました。ネットの普及により致命的な心の “傷”を負いやすい時代に、彼らは金継ぎを人間そのものに例えます。 つなげない傷なんてない。トラウマを克服し、いつかはその傷を個性とし、その傷ごと優しく抱きしめられる日がやってくる。彼らの “Kintsugi” はそんな美しい希望の歌になったのです。
「答えを提示するのではなく、自分の考えや視点を説くのでもなく、さまざまなトピックについてリスナーに考えさせ、自分なりの答えを見つけさせようとしている。だから、君が指摘したように、”Hopium” のアイデアのひとつも、盲目的に従うのではなく、疑問を持つことなんだ。そう、フェイクニュースや誤った情報が氾濫する時代には、物事に対して疑問を持つことがこれまで以上に重要なんだよ」
“Kintsugi” を収録した KINGCROW の最新作、そのタイトルは “Hopium”。”Hope” “希望” と “Opium” “麻薬” を掛け合わせたアメリカの新たなスラングには、幻想的な甘い希望の意味が込められています。ネットのエコーチェンバー、バブルの中に閉ざされて自身を絶対的な正義だと思い込み、異なる意見、異なる存在を悪と断じる狂気の世界で、彼らはただ、”疑問” を持って欲しいと願います。差別や分断を煽るフェイクニュースやプロパガンダをまずは、少しでも疑うこと。KINGCROW は、そう投げかけることで、一度傷つき “割れて” しまった人類の絆を取り戻し、より美しく、再びつなぎあわせたいのです。
「PAIN OF SALVATION の “マジック” の中核には、とても感情的な創造性があると思うし、それは僕たちも同じだと思いたい。クールなものを作るために、曲のエモーショナルなメッセージを犠牲にすることは絶対にないからね。僕たちはただ、感情を揺さぶる音楽を、興味深い美学とさまざまなレイヤーで表現しようとするだけだ」
KINGCROW がつなぎ合わせるのは、人だけではありません。プログ以外にも、メタル、オルタナティヴ、エレクトロニカといった珠玉のジャンルを黄金の光沢でつなぎあわせ、唯一無二の美しき個性とする彼らの音楽こそ、まさに金継ぎ。感情を決して置き忘れず、極限まで洗練された楽曲には必ず、ハッと息を呑むような、魂を揺さぶられる瞬間が用意されていて、リスナーは大鴉のマジックにただ酔しれます。アルバムには、奇しくも現在 PAIN OF SALVATION で鍵盤をつとめる Vikram Shankar がゲスト参加していますが、もしかすると彼らこそが “魂の救済” を謳った最も “エモーショナル” なプログ・メタルバンドの後継者なのかもしれませんね。
今回弊誌ではギタリスト、キーボーディストでメイン・コンポーザーの Diego Cafolla にインタビューを行うことができました。「バンド名を探していたとき、実はちょうどエドガー・アラン・ポーの詩集を読んでいて、”大鴉” にはいつも心を奪われるものがあったんだ。会話のすべてが主人公の心の中で起こっているという事実は、本当に魅力的なアイデアだ。
僕にとっては、外界といかにかかわるかで、自分の現実だけがそこにあると思い込んでしまうことを象徴していた。だから結局、KINGCROW という名前になったんだ」 もはや、LEPROUS, HAKEN, CALIGULA’S HORSE と並んでモダン・プログ・メタル四天王の風格。どうぞ!!

KINGCROW “HOPIUM” : 10/10

INTERVIEW WITH DIEGO CAFOLLA

Q1: Italy is a country that has produced great progressive bands such as PFM, Banco, New Trolls, and Arti. Did you grow up listening to those bands?

【DIEGO】: Some of them. My father has some Italian progressive rock in his vinyl collection so it was natural for me to absorb records like “Storia di un minuto” by PFM or “Concerto Grosso” by New Trolls. Anyway I always listened to a lot of different kinds of music not just progressive rock so it definitely was part of my musical growth but with a lot of other stuff. There was always a lot of different music in the air in our house.

Q1: イタリアは PFM, BANCO, NEW TROLLS, ARTI といった偉大なプログ・バンドを輩出した国です。そうしたバンドを聴いて育ったのでしょうか?

【DIEGO】: 何人かはね。父がイタリアン・プログレッシブ・ロックのレコード・コレクションをいくつか持っていたので、PFMの “Storia di un minuto” や NEW TROLLS の “Concerto Grosso” といったレコードを自然と吸収していったんだ。とにかく、プログレッシブ・ロックだけでなく、いろいろな種類の音楽をいつも聴いていたから、音楽的な成長の一部であったことは間違いない。我が家にはいつも様々な音楽が流れていたからね。

Q2: Nevertheless, I see various elements of metal, alternative, electronica, etc. among you. What kind of music influenced you growing up?

【DIEGO】: I’ve listened basically to every kinds of music, from progressive rock, to heavy metal, to electronic music and much more. I too curious to just confine my listenings to one specific kind of music. So I loved to listen to Pink Floyd, The Beatles and Beach Boys, King Crimson, Rush, Slayer, Nine Inch Nails, Iron Maiden, Sigur Ros, Massive Attack, Radiohead, Tori Amos, The Police…I mean I can go on with hundreds of different bands and artists , all very different. I think I’ve learned something from everyone of them. For me it was always about if I liked it or not , without thinking too much about the style they played.

Q2: ただ、KINGCROW の音楽からは、プログ以外にも、メタル、オルタナティヴ、エレクトロニカなど、様々な要素を感じますね?

【DIEGO】: プログレッシブ・ロックからヘヴィ・メタル、エレクトロニック・ミュージックなど、基本的にあらゆる音楽を聴いてきた。好奇心が強すぎて、特定の音楽だけに絞って聴くことができなかったんだ。
だから、PINK FLOYD, BEATLES, BEACH BOYS, KING CRIMSON, RUSH, SLAYER, NINE INCH NAILS, IRON MAIDEN, SIGUR ROS, MASSIVE ATTACK, RADIOHEAD, THE POLICE, Tori Amos……。彼ら全員から何かを学んだと思う。僕にとっては、彼らのジャンルや演奏スタイルについて深く考えることなく、好きかどうかが常に重要だったんだ。

Q3: The name Kingcrow was inspired by Edgar Allan Poe’s masterpiece “The Raven”. What drew you to that story?

【DIEGO】: When I was searching for a name for the band I was actually reading a book of E.A. Poe poems and I found The Raven always captivating. The fact that the whole conversation actually happens in the mind of the main character is really a fascinating idea. To me it represented how the way we interact with the external world can lead us to believe that our reality is the only one out there. So it ended up inspiring the name Kingcrow.

Q3: KINGCROW というバンド名は、エドガー・アラン・ポーの名作 “The Raven (大鴉)” にインスパイアされているそうですね?

【DIEGO】: バンド名を探していたとき、実はちょうどエドガー・アラン・ポーの詩集を読んでいて、”大鴉” にはいつも心を奪われるものがあったんだ。会話のすべてが主人公の心の中で起こっているという事実は、本当に魅力的なアイデアだ。
僕にとっては、外界といかにかかわるかで、自分の現実だけがそこにあると思い込んでしまうことを象徴していた。だから結局、KINGCROW という名前になったんだ。

Q4: There is one band that I think is very similar to Kingcrow, Pain of Salvation. I don’t think the music is very similar, but more like their spirituality and philosophy. Would you agree?

【DIEGO】: Well I think that nowdays the music of the two bands is pretty different but I agree that we both probably have the same approach when it comes to the main concept behind the band. I think that at the core of Pain Of Salvation “magic” there is this very emotionally charged creativity and I like to think that it’s the same for us. For sure I know that we would not sacrifice the emotional message of a song just to make something cool. We just try to make emotionally charged music, presented with an interesting aesthetic, with different layers. If we consider this aspect I think Pain of Salvation have a pretty similar approach. Then both bands tend to have thoughtful lyrics so I can see also that connection.

Q4: KINGCROW にとても似ていると思うバンドがひとつだけあります。PAIN OF SALVATION です。音楽が似ているというより、精神性や哲学が似ているように感じますよ。

【DIEGO】: 今となっては、この2つのバンドの音楽はかなり異なっていると思うけど、バンドの背後にある主要なコンセプトに関しては、おそらくふたつとも同じアプローチを持っている。
PAIN OF SALVATION の “マジック” の中核には、とても感情的な創造性があると思うし、それは僕たちも同じだと思いたい。クールなものを作るために、曲のエモーショナルなメッセージを犠牲にすることは絶対にないからね。僕たちはただ、感情を揺さぶる音楽を、興味深い美学とさまざまなレイヤーで表現しようとするだけだ。
この点を考慮すると、PAIN OF SALVATION と僕らはかなり似たアプローチをしていると思う。それから、どちらのバンドも思慮深い歌詞を書く傾向があるので、そういうつながりもあると思うね。

Q5: Hopium is American new slang for “sweet hope based on illusion,” isn’t it? For example, the fantasy that “Donald Trump will be president and the great America will return”. A compound of “hope” and “opium,” a narcotic opiate.
In the age of social networking, we have become blinded by the echo chambers and bubbles of the internet, unable to honestly accept different opinions and different people. Blindly believing in our own righteousness and putting others down is truly a drug. Is this the purpose of the album “Hopium” to reconnect people from such a “divided” world?

【DIEGO】: Well even if basically all lyrics are by Diego Marchesi I think I can say that he tries to offer his emotional reaction to the world that surrounds us and he tends to write lyrics that makes you questioning about things. He doesn’t offer you an answer, he’s not preaching his ideas or his point of view, but makes you reflect aboutdifferent topics and then you have to find your own answers. So, as you pointed out, one of the ideas behind “Hopium” is also that, questioning and not blindly following. And I think in an era of fake news and misinformation, questioning about things is more important than ever.

Q5: アルバム・タイトルの “Hopium” とは、”Hope” “希望” と “Opium” “麻薬” があわさったアメリカの新しいスラングで “幻想に基づく甘い希望” という意味ですよね。
SNS の時代、私たちはインターネットのエコーチェンバーやバブルに目がくらみ、異なる意見や異なる人々を素直に受け入れることができなくなっています。盲目的に自分の正義を信じ、他人を貶めることは、まさに麻薬。このような “分断” された世界の人々を再び結びつけることが、アルバム “Hopium” の目的なのでしょうか?

【DIEGO】: 基本的にすべての歌詞が Diego Marchesi によるものであるが、彼は僕たちを取り巻く世界に対して感情的な反応を示そうとしているし、物事に対して疑問を抱かせるような歌詞を書く傾向があると言える。
彼は答えを提示するのではなく、自分の考えや視点を説くのでもなく、さまざまなトピックについてリスナーに考えさせ、自分なりの答えを見つけさせようとしている。だから、君が指摘したように、”Hopium” のアイデアのひとつも、盲目的に従うのではなく、疑問を持つことなんだ。そう、フェイクニュースや誤った情報が氾濫する時代には、物事に対して疑問を持つことがこれまで以上に重要なんだよ。

Q6: I say “connect” because the album begins with “Kintsugi,” a traditional Japanese technique of reconnecting broken, precious objects with urushi gold. It is a really great piece of music. How did you come to know about Kintsugi and decide to make it into a piece of music?

【DIEGO】: When I wrote the music for the song, Diego Marchesi (lead singer) presented me the lyrics for Kintsugi and I thought that it was a fantastic idea. I think it’s really a great metaphor about dealing with traumas and overcoming them and even celebrate them since they are part of our growth process. We also used the kintsugi concept in our artwork and extended it to the full visual representation of the album because, beside it’s fascinating philosophy it’s also an amazing and beautiful art form.

Q6: 私が “つなぐ” と言ったのは、このアルバムが “金継ぎ” で始まるからですよ。壊れたものをつなぎ合わせる日本の伝統技法。本当に素晴らしい楽曲です。
どのようにして金継ぎを知り、それを音楽にしようと思ったのですか?

【DIEGO】: この曲を書いたとき、Diego が “Kintsugi” の歌詞を提示してくれて、素晴らしいアイデアだと思ったんだ。自身のトラウマ、傷と向き合い、それを克服し、さらには成長過程の一部でもあるその傷を祝福できるようになる。金継ぎは、その歌詞の実に素晴らしい比喩だと思ったね。
また、金継ぎのコンセプトはアートワークにも使用し、アルバムのビジュアル表現にも全面的に取り入れているよ。なぜなら、その魅力的な哲学をおいても、素晴らしく美しい芸術形態だからね。

Q7: Besides Kintsugi, are there any other aspects of traditional Japanese culture, anime, games, or music that interest you?

【DIEGO】: Well, growing up we are all exposed to some of Japanese culture. To make you an example I think most of the cartoons we grew up with as children are Japanese export.
Anyway I think that there’s a great fascination for Japan culture since it’s really different from European culture. There was a period of my life that I was really into Japanese horror movies and you can tell that there’s a complete different vibe going on that makes them really fascinating.

Q7: 金継ぎ以外に、日本の伝統文化、アニメ、ゲーム、音楽などで興味を持ったものはありますか?

【DIEGO】: 僕たちは日本の文化に触れて育ってきたんだよ。例を挙げると、僕たちが子供の頃に見て育ったアニメのほとんどは、日本からの輸出品だったと思うからね。
とにかく、日本の文化はヨーロッパの文化とは本当に違っていて、とても魅力的だと思う。日本のホラー映画にはまっていた時期があるんだけど、全く違う恐ろしい雰囲気があって、とても魅力的だったね。

Q8: Since ancient times, metal and progressive music have delivered fantasies to listeners, and listeners have been able to escape from dark realities with music, and be empowered by music. In this day and age of propaganda and the “drug” of discrimination, can metal and prog fantasy change anything?

【DIEGO】: Well, I think that our music more than offering an escape from reality gives you a moment to reflect on it. I don’t know if music can change anything but I like to think that people who listen to our music and pay attention also to the lyrics have one more chance to think about some topics with maybe a fresh point of view. So since I believe that everything influences everything yeah, in a very romantic way music can make people questioning, and questioning is always good if you ask me.

Q8:古来より、メタルやプログレッシブ・ミュージックはリスナーにファンタジーを届け、リスナーは音楽によって暗い現実から逃避し、音楽によって力を得てきました。プロパガンダや差別という “麻薬” が蔓延する現代において、メタルやプログのファンタジーは何かを変えることができるのでしょうか?

【DIEGO】: まあ、僕たちの音楽は、現実逃避を提供する以上に、現実について考える時間を与えるものだと思う。音楽が何かを変えられるかどうかはわからないけど、僕らの音楽を聴いて歌詞にも注目してくれる人たちが、もしかしたら新鮮な視点を持って、あるトピックについて考える機会がまたひとつ増えるかもしれない、そう思いたいんだ。
だから、すべてのものがすべてのものに影響を与えると信じている。とてもロマンチックな方法で、音楽は人々に疑問を抱かせることができるんだ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED DIEGO’S LIFE!!

Pink Floyd “Dark Side Of The Moon”

Rush “Moving Pictures”

Radiohead “Ok Computer”

Massive Attack “Mezzanine”

Nine Inch Nails “The Fragile”

MESSAGE FOR JAPAN

Well thanks for the opportunity. We hope to play in Japan in the next future…it’s for sure on our bucket list!

この機会を与えてくれてありがとう。近い将来、日本で演奏できることを願っているよ!

DIEGO CAFOLLA

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KINGCROW SEASON OF MIST

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HOUKAGO GRIND TIME : KONCERTOS OF KAWAIINESS: STEALING JOHN CHANG’S IDEAS, A BOOK BY ANDREW LEE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREW LEE OF HOUKAGO GRIND TIME !!

“I Think That Would Be My Ultimate Goal: To Write a Series That Could Be Adapted By KyoAni, And Then Compose Music For It.”

DISC REVIEW “Koncertos Of Kawaiiness: Stealing Jon Chang’s Ideas, A Book By Andrew Lee”

「萌えアニメを伝道するのに最適な方法かどうかはわからないけど、これが僕が知っている唯一の方法だから。自分には同人誌を描く能力がない。だから、音楽やグッズで愛を表現するしかないんだよ。京アニでアニメ化されるようなシリーズを書いて、そのために作曲をする…というのが僕の最終目標かな」
オッサンがオッサンというだけで抑圧される時代。それでもオッサンは、艱難辛苦に耐え忍び生きて行かなければなりません。オッサンがそうした辛い現実や抑圧から逃避する場所。その代表こそ、萌えアニメであり、ヘヴィ・メタルなのです。
Kawaii に癒され、メタルで首を振る。間違っても、オッサンが Kawaii で腰を振ることは許されません。とにかく、オッサンにだって、心のオアシスは必要です。HOUKAGO GRIND TIME の Andrew Lee は、DISCORDANCE AXIS や GRIDLINK で有名な “先輩” に敬意を表しつつ、そんなオアシスとオアシスの悪魔合体に挑み、そして成功を収めました。
「やっと日本でライブができて本当に感謝しているよ!アメリカ国内でライブをする場合、観客の年齢層は少し高めで、アニメ文化に馴染みがないことがほとんどだ。”遊戯王” や “ぼくのぴこ” のもっと有名なミームならわかる人も何人かいるかもしれないけど、ほとんどの人にとってアニメのサンプルはただの面白い音でしかないんだ。日本でショーに来てくれた人たちはみんな真のオタクで、イントロやサンプルをしっかり理解してくれていた。それは本当にうれしいことだったんだ」
Andrew の悪魔合体。しかしそれは、母国アメリカでは少し孤独な戦いでもありました。グラインド・コアと萌えアニメの両方を等しく愛する彼にとって、強烈なグラインド・コアだけを求めるアメリカのファンには、少し違和感を感じていたのかもしれませんね。そんな中で、大成功を収めた日本ツアーは、Andrew にとって自らのアートが完璧に認められた瞬間で、孤独から解放された瞬間で、生きがいを得た瞬間でもありました。わかりあえる、認め合えるというだけで、孤独なオッサンやオタクにとっては奇跡のような “めたる・タイム・きらら” が生まれることもあるのです。
「いろいろなアニメのサウンドトラックを楽しんでいるけど、特に菅野よう子さんの “天空のエスカフローネ” のOSTが大好きでね。もちろん、”Just Communication”、”Irony”、”sister’s noise”、”only my railgun”、”Don’t Say Lazy” など、OPやEDの名曲もたくさんあるよね。ただ、あのスタイルで書くのは自分には難しいので、基本的にはギターソロくらいで、僕の曲に影響を与えていることはないかな。また、”響け!ユーフォニアム” や “ぼざろ” には、ひどい演奏がいくつか入っているのもいい!コンサート・バンドの最初の演奏は学生が録音したのに、最後の演奏はプロが作ったとか、ぼっちちゃんのの最初のバンド・シーンで聴ける意図的なミスや突っ込みとかね」
“Koncertos Of Kawaiiness: Stealing Jon Chang’s Ideas, A Book By Andrew Lee” は、まさにわかりあえるオタク、認め合えるオッサンだけに贈られた Kawaii のメタル・コンチェルト。萌えメタてぇてぇ。Moe to the Gore。腸が煮えくり返るようなボーカルとハイパー・ブラストなゴミ箱スネアの旋風に刻み込まれた萌えアニメの尊いわかりみ、そしてウルトラ・テクニカルなギター・ソロ。そのアンバランスはしかし、まるでこの分断された世界で Kawaii とメタルだけが世界をつないでくれるような不思議な期待感を持たせてくれます。
そう、世界がこれほどまでに分断され、激動している今、唯一の処方箋はわかりみと Kawaii の二重奏に違いありません。オッサンだって自己実現してもいい。オッサンだって美少女になりたい。Kawai くないようじゃ、無理か。オッサンもね、Kawai くしておかないと。オッサンがすべからく HENTAI だと思うなよ!盲点。むしろ久しい。
今回弊誌では、Andrew Lee にインタビューを行うことができました。「僕の人生のすべてが “ハルヒ” と “らき☆すた” に捧げられている。これらの作品を見て、僕は自分をただ “アニメを見ている” 人間だと思わなくなり、真の “オタク “になれたのだから」 わかります。二度目の登場。 彼の本職 (?), RIPPED TO SHREDS も最高です。どうぞ!!

HOUKAGO GRIND TIME “KONCERTOS OF KAWAIINESS” : 10/10

INTERVIEW WITH ANDREW LEE

Q1: First of all, could you talk about your impressions of last year’s Japan tour?

【ANDREW】: I am so grateful to finally perform in Japan! When I perform domestically, the audience is usually a bit older and unfamiliar with anime culture. A few people may understand some of the more famous memes from YuGiOh or Boku no Pico, but to most the anime samples are just some funny sounds. Everyone who came to the shows in Japan were true otaku and understood the intros and samples, which made me very happy.

Q1: まず、昨年の日本ツアーの感想から聞かせていただけますか?

【ANDREW】: やっと日本でライブができて本当に感謝しているよ!アメリカ国内でライブをする場合、観客の年齢層は少し高めで、アニメ文化に馴染みがないことがほとんどだ。”遊戯王” や “ぼくのぴこ” のもっと有名なミームならわかる人も何人かいるかもしれないけど、ほとんどの人にとってアニメのサンプルはただの面白い音でしかないんだ。
日本でショーに来てくれた人たちはみんな真のオタクで、イントロやサンプルをしっかり理解してくれていた。それは本当にうれしいことだったんだ。

Q2: You also played with Japanese bands. How did you feel about the Japanese scene?

【ANDREW】: Japan has some of the strongest and best grindcore bands in the world! Unholy Grave, Brob, Butcher ABC, Bolt Stein, 324… I think Japanese grindcore has a unique sound. I was very grateful that I could perform on the same stage as bands like Go-zen, Needle Contaminated Pork, and Maggut.

Q2: 日本のバンドとも共演されていますね。日本のシーンについてどう感じましたか?

【ANDREW】: 日本には、世界で最も強力で最高のグラインドコア・バンドがいる!Unholy Grave、Brob、Butcher ABC、Bolt Stein、324…日本のグラインドコアはユニークなサウンドを持っていると思うね。Go-zen、Needle Contaminated Pork、Maggut のようなバンドと同じステージで演奏できたことにとても感謝しているよ。

Q3: Did you make it to Akihabara, perhaps your “sacred place”? Did you buy anything you wanted?

【ANDREW】: Unfortunately my schedule was very tight on this tour and I didn’t have a chance to go to Akihabara. However, I have been there on previous trips to Japan! I don’t collect many goods, whether it’s anime or music, but I visited some maid cafes and enjoyed browsing the shops. Actually, an editor from Wanimagazine came to the Asakusa show and gave me a gift in a black bag. When I opened it later, it was the newest edition of Comic Kairakuten, which I found very funny.

Q3: あなたの “聖地” であろう秋葉原には行きましたか?欲しいものは買えましたか?

【ANDREW】: 今回のツアーはスケジュールがタイトで、残念ながら秋葉原には行けなかったんだ。でも、以前の日本旅行では行ったことがあってね!アニメでも音楽でも、あまりグッズは集めない方だけど、メイド喫茶に行ったり、お店を見て回ったりしてとても楽しめたよ。
実は、ワニマガジンの編集者が浅草のライブに来ていて、黒い袋に入ったプレゼントをくれた。後で開けてみたら、コミック快楽天の最新刊で、とても面白かったよ。

Q4: “Koncertos Of Kawaiiness: Stealing Jon Chang’s Ideas, A Book By Andrew Lee” will show you how much of a “Kawaii” devotee you are. Why do you think grindcore is the best way to evangelize “Kawaii”?

【ANDREW】: I don’t know if it’s the best way to evangelize moe anime, but it’s the only way I know how. I don’t have the ability to draw my own doujinshi, so I can only express my love through music and goods. However, I believe Jon Chang is starting production of an anime adaptation of his comic book, which he writes but doesn’t draw. I think that would be my ultimate goal: to write a series that could be adapted by KyoAni, and then compose music for it. But I’m not sure how to start wwwwww;;.

Q4: “Koncertos Of Kawaiiness: Stealing Jon Chang’s Ideas, A Book By Andrew Lee” を聴けば、あなたがどれだけ “Kawaii “信者であるかがわかるでしょう。
なぜ、グラインド・コアが “Kawaii” を伝道する最適な方法だと考えたのですか?

【ANDREW】: 萌えアニメを伝道するのに最適な方法かどうかはわからないけど、これが僕が知っている唯一の方法だから。自分には同人誌を描く能力がない。だから、音楽やグッズで愛を表現するしかないんだよ。でも、確か Jon Chang が、自分の原作はあるけど絵は描かない漫画のアニメ化の制作を始めているはず。
京アニでアニメ化されるようなシリーズを書いて、そのために作曲をする…というのが僕の最終目標かな。でも、どうやって始めたらいいのかわからないけどねwwwwwwww

Q5: Speaking of “Kawaii” and music, HGT’s roots in “K-on”, “BanG Dream”, and more recently “Bocci the Rock” and “Girls Band Cry” have become very popular. Many of these moe band anime use very high caliber musicians and performances. Are you influenced by the theme song, the ending theme, or the music in the anime?

【ANDREW】: I enjoy lots of various anime soundtracks, especially Kanno Yoko’s OST for Escaflowne. And of course there are many classic OP and ED songs, like Just Communication, Irony, sister’s noise, only my railgun, Don’t Say Lazy etc. However it’s difficult for me to write in that style, so in general the music doesn’t influence my own, only the guitar solos. Also, I like how Hibike Euphonium and BoZaRo had some crappy performances in them! Like the first performance of the concert band was recorded by students, but the final performance was made by professionals, or the intentional mistakes and rushing you can hear in the first band scene of Bocchi.

Q5: “Kawaii” と音楽といえば、HGT のルーツである “けいおん!” や “BanG Dream” 、最近では “ぼっち・ざ・ろっく!” や “ガールズバンドクライ” といったバンドのアニメが人気を博しています。
こうした萌え系のバンド・アニメは、非常にレベルの高いミュージシャンや演奏を起用しているものが多いですね。あなたはアニメの主題歌やエンディングテーマ、音楽から影響を受けることはありますか?

【ANDREW】: いろいろなアニメのサウンドトラックを楽しんでいるけど、特に菅野よう子さんの “天空のエスカフローネ” のOSTが大好きでね。もちろん、”Just Communication”、”Irony”、”sister’s noise”、”only my railgun”、”Don’t Say Lazy” など、OPやEDの名曲もたくさんあるよね。ただ、あのスタイルで書くのは自分には難しいので、基本的にはギターソロくらいで、僕の曲に影響を与えていることはないかな。
また、”響け!ユーフォニアム” や “ぼざろ” には、ひどい演奏がいくつか入っているのもいい!コンサート・バンドの最初の演奏は学生が録音したのに、最後の演奏はプロが作ったとか、ぼっちちゃんのの最初のバンド・シーンで聴ける意図的なミスや突っ込みとかね。

Q6: Many of the viewers of moe anime are probably, like myself, unfulfilled males (Ossan) who feel some kind of loneliness in society, and it is wonderful that such males can smile a little, be happy, and feel at peace. Your music has the same effect as that of Moe anime, would you agree?

【ANDREW】: I think grindcore fans used to be made of ossans all over the world, but actually in California mincecore/goregrind/punk music is increasingly made and consumed by children! I’m not totally sure if my music is healing, but I am grateful if it has that effect.

Q6: 萌えアニメの視聴者の多くは、おそらく私と同じように、社会の中で何らかの孤独を感じている満たされないオッサンであり、そんなオッサンが少しでも笑顔になり、幸せになり、安らぎを感じられるのは素晴らしいことだと思います。あなたの音楽には、萌えアニメと同じような効果が感じられますよ。

【ANDREW】: かつてグラインドコアのファンは世界中でオッサンばかりだったと思うけど、実はカリフォルニアではミンスコア/ゴアグラインド/パンクの音楽はキッズが作って消費することが多くなっているんだ!僕の音楽が癒しになっているかどうかは分からないけど、そういう効果があるのならありがたいことだね!

Q7: As you know, this year marks the 20th anniversary of Haruhi and Rakisuta, two major turning points in moe anime, and in a way this album is probably dedicated to those two works, right?

【ANDREW】: My entire life is dedicated to Haruhi and Lucky Star, because through watching those works I stopped thinking of myself as someone who “watched cartoons” and became an “otaku.” I think the treatment of Hirano Aya in the Japanese media was extremely unfair, and in general there are many problems with expectations placed upon entertainers and idols. I was a little disappointed by the last book Tanigawa wrote and there doesn’t seem to be any conclusion for the series in sight, but I hope he will be inspired again. I never had an expectation of more seasons of Lucky Star, so I’m merely satisfied by the continuation of the 4koma.

Q7: ご存知の通り、今年は “ハルヒ” と “らき☆すた” の20周年です。ある意味、このアルバムはその2作品に捧げられたものなのかもしれませんね?

【ANDREW】: 僕の人生のすべてが “ハルヒ” と “らき☆すた” に捧げられている。これらの作品を見て、僕は自分をただ “アニメを見ている” 人間だと思わなくなり、真の “オタク “になれたのだから。
日本のメディアにおける平野綾さんの扱いは非常に不公平だったと思うし、一般的に芸能人やアイドルに期待されることには多くの問題がある。谷川氏が書いた最近の作品には少しがっかりしたし、シリーズの完結も見えないようだが、また奮起してほしいね。”らき☆すた” にかんしては、続編を期待していなかったので、4コマが続いただけでとても満足しているんだ。

Q8: The ultra-technical guitars that are occasionally interspersed in your songs have the
feel of those moments when the moe pieces that appear in the manga Time Kirara
sometimes come back to reality, don’t they?

【ANDREW】: Hmm… for me, playing guitar solos is as vital as breathing. I think your interpretation is correct for you, and that everyone should interpret the music the way they like. Playing guitar solos in goregrind feels more natural than “normal” grindcore, maybe because there is precedent with bands like Carcass or Extremely Brutal. But I don’t think too hard about it, I just like to play solos.

Q8: 時折挿入される超絶テクニカルなギター・ソロは、”まんがタイムきらら” の作品に登場する萌えマンガが、時折現実に戻ってくる瞬間のようなシュールな感覚がありますね。

【ANDREW】: うーん…僕にとってギターソロを弾くことは、呼吸をすることと同じくらい重要なことなんだ。君の解釈は君にとって正しいし、誰もが好きなように音楽を解釈すべきだと思う。
ゴア・グラインドでギターソロを弾くのは、CARCASS や EXTREMELY BRUTAL のようなバンドの前例があるせいか、”普通の” グラインドコアよりも自然に感じるんだ。でも、あまり難しく考えず、ただソロを弾くのが好きなだけなんだよね。

FIVE “MOE ANIMES” THAT ANDREW RECOMMENDS NOW!!

Machikado Mazoku

My favorite series of the last 10 years, though I am also including the 4koma in my assessment, not just the anime. I love how it flawlessly combines its serious and funny moments, and there are so many cute/moe moments and great sound FX. Wishing good health to Itou-sensei!!

まちカドまぞく

ここ10年で一番好きなシリーズ。アニメだけでなく、4コマも含めて評価している。シリアスな場面と笑える場面が完璧に組み合わさっていて、かわいい場面や萌える場面、素晴らしいサウンドFXがたくさんあって大好きだ。伊藤先生のご健康をお祈りします!

Sora yori mo Tōi Basho

Actually I think this one was a bit of a bait and switch, but it did it multiple times. At first I thought it was a fluffy moe series, then I thought it would be serious drama, but then it turned right back into fluffy slice of life.

宇宙よりも遠い場所

実はこの作品、コロコロと変わるよね。最初はフワフワした萌え系かと思いきや、シリアスなドラマかと思いきや、またフワフワした日常系に戻るんだから。

Hibike Euphonium

This is the epitome of music anime so far. Although there are lots of moe moments and fanservice between Reina and Kumiko, I really enjoyed the relatable depiction of their musicianship and their journey through adolescence.

響け!ユーフォニアム 

これまでの音楽アニメの規範。玲奈と久美子の間には萌えシーンやファンサービスがたくさんあるけど、音楽性や青春の旅路も親近感を持って描かれていてとても楽しめたよ。

Yuru Camp

I almost lost my mind and tried going camping after being inspired by this series. However I quickly realized that I have absolutely no affinity for the outdoors or insects.

ゆるキャン△

このシリーズに触発されて、正気を失いかけてキャンプに行こうとしたんだ。しかし、アウトドアや昆虫にまったく縁がないことにすぐに気づいたよ。

Bamboo Blade

Sadly I have never experienced kendo. However, in middle through high school I competed in fencing (my weapon was epee). I was not good enough to be a national level fencer, but the sport aspects of this series were similar to my own experiences.

バンブーブレイド

残念ながら僕は剣道を経験したことがない。しかし、中学から高校にかけてフェンシング(エペ)をやっていた。全国レベルのフェンシング選手になるほどの実力はなかったけど、このシリーズのスポーツ的な側面は自分の経験と似ていたんだ。

MESSAGE FOR JAPAN

I will be back next year! Watch out for my chainsaw deathgrind tour. I am eagerly waiting to see and perform for everyone again.

来年また日本にいくよ!僕のチェーンソー・デス・グラインド・ツアーに注目してほしい。またみんなに会って、パフォーマンスできることを心待ちにしているんだ。

ANDREW LEE

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【NILE : THE UNDERWORLD AWAITS US ALL】 JAPAN TOUR 24′


COVER STORY : NILE “THE UNDERWORLD AWAITS US ALL”

“Nile Is Unconcerned With Delusions Of Functioning As an Ethnomusicological Museum Conservatory”

THE UNDERWORLD AWAITS US ALL

その名の通り、NILE はあの悠久の流れのごとく決して静止することはありません。10枚目のアルバム “The Underworld Awaits Us All” は、バンドにとってまた新たな王朝の幕開けとなりました。NILE のディスコグラフィにおけるこれまでの9作と同様、このアルバムもまた兄弟作とは一線を画すユニークな作品となっています。実際、唯一神 Karl Sanders 率いる砂漠の軍団は、アルバムごとに新たな王朝を開いていて、その芸術的刷新の傾向はこのアルバムでも続いています。太陽が昇るように規則正しく、バンドは再び前作から学んだことを取り入れ、その苦労して得た経験を頑丈な土台に注ぎ込み、ピラミッドの改築と再構築に役立てているのです。
「”Amongst the Catacombs of Nephren-Ka” と “Black Seeds of Vengeance” 以来、私たちが作ったアルバムはどれも、”他の NILE のアルバムに似ている “とか、”あのアルバムのようなサウンドにしたかったのか? “とか、好きなレコードのどれかに似ていると言う人がいることに気づいたが、私はシンプルに “メタルを作ることに集中する” ことを好む。人々が愛着を抱くような過去のアルバムを作ったことで、最終的に “やると呪われる、やらないと呪われる” 状況が生まれるのなら、我々は “呪われる” を選ぶんだ」
とはいえ、その新鮮さにもかかわらず “The Underworld Awaits Us All” は紛れもなく NILE のアルバムであり、すぐにそれとわかるバンドの特徴が焼き付けられています。好奇心をそそるエジプト学と古代史、練り込まれたオリエンタルなリフ、燃えるようなテンポと骨の折れるようなスローダウン。これは1994年に NILE がデビュー・デモをリリースして以来、創意工夫を重ねてきたデスメタルの異形であり偉業です。
そして30年後の今、私たちは “Chapter For Not Being Hunged Upside Down On A Stake In The Underworld And Made To Eat Feces By The Four Apes” “冥界の杭の上で逆さまに吊るされ、四匹の猿に糞を食べさせられることのないように” という信じられないようなタイトルの曲を食べさせられることになりました。決してその場しのぎではない、タイトルから曲調に至るまで、デスメタルを愛する人々のためのデスメタル。
新たな血の注入を受けた “Four Apes “は、NILE が今でもレッドラインを越えてなおアクセルを吹かせられることを証明しているのです。ドラマーのファラオ、George Kollias の音の壁を破るようなパフォーマンスだけでも YouTubeは大賑わいでしょう。ある意味、人間離れしたスピードとレーザーガイドのような正確さが組み合わさったこの曲は、過去にバンドが好んだテクニカルなワークアウトを進化させています。NILE のDNAは、そのカタログの総和。
ゆえに、”Four Apes” は2015年の “What Should Not Be Unearthed” のような楽しさがあり、2019年の “Vile Nilotic Rites” のようなダイナミックできらびやかな鋼鉄のサウンドデザインも完備しています。それでも、NILE に刻まれた DNA のもう1つ、改革に執着する部分も存分に発揮されています。

その改革と再生へのこだわりは、”The Underworld Awaits Us All” に深く入り込めば入り込むほど明確になっていきます。”Doctrine Of Last Things” は、NILE の真髄であるスローモーなリフをピラミッドのように積み重ね、盛り上げていきます。テクニカル・ドゥームを愛する多くのリスナーが、なぜこのバンドをマイルストーンとして挙げるのか。Sanders とその仲間たちがもたらす、脂ぎった、悪臭を放つグロテスクな音像はしかし、川の急流のように決して淀まず、静止せず、前へ前へと流れていくのです。
「我々は歴史保存協会ではない。どの曲もアイデアを見つけるのにかなりの時間を費やし、そしてそのアイデアを新しい場所に持っていく。リサーチするだけでは十分ではない。私たちに言いたいことがあることも重要だと思う。これまでのレコードを振り返ってみると、私たちがただ歴史を語っているのではないことがわかる。これは歴史小説だ。歴史小説という媒体を通して、私たち自身の視点や考えを伝えているのだよ」
アメリカを拠点とする NILE は今回も、エジプト学のダークなエッセンスを再びより集めました。エジプト地域の残忍でしかし神秘的な歴史に、これほど適切なサウンドトラックを提供したアーティストはこれまでいないでしょう。しかし Sanders は NILE の音楽が、まず文化の保存ありきではないと主張します。
「NILE は、民族音楽博物館としての機能には無頓着だ。我々は、何よりもまずメタル・バンドである。だから、民族音楽学上の食人族に近いかもしれない。我々のギター・リフの基礎となっている東洋的な様式や調性は、すべてのメタル・リフの遺産とも共通していて、その性質上、多様なアイデアの交配と再利用を推し進めているんだ。それは古代の文化を守ることとは正反対だ。私たちはそうしたアイデアを取り入れて新たなメタルを “作って” いるのだから」
NILE は、ただの文化的なトリビュート・バンドとみなされることへの挑戦を続けると同時に、30年の間に冥界を震撼させるような作品を次々と発表してきたことで、自分たちに課したプレッシャーも克服しているのです。だからこそ、過去のアルバムとは一線を画す部分があります。
「これはストレートな NILE のアルバムだ。東洋の影響を受けたトーンや様式美はまだそこにあるが、このアルバムの直感的な焦点は、メタルの純粋で野蛮な本質にある。私は最近、無意味にオーケストレーションされ、過剰にプロデュースされたレコードの数々を聴いてうんざりしていたので、このアルバムを書いている間、キーボードを下ろしてクローゼットの中にしまい込んだのさ」

Sanders はこの作品でデスメタルの意味を再発見しました。
「デスメタルのレコードは、まず殴打し、次に楽しませるものだと思う。思慮深く、より複雑でスローなものを最初にレコードの前面に出すと、人々は “ああ、これはブルータルじゃない。邪悪さが足りない。あいつらどうしたんだ?” ってなるからね。
それを、”Ithyphallic” で気づいたんだ。”Ithyphallic” の1曲目、”What May Be Safely Written” は、ビッグで長くて壮大な野獣のような曲だけど、必ずしも即効性のある曲ではない。かけてすぐにバーンという感じではない。奇妙で、クトゥルフ的で、クトニックなスタートだった。あの曲に対するリアクションが、このレコードをどうするか、決定づけたんだ。ハードでツボを押さえた曲を前面に出さなかったせいで、迷子になってしまった人もいると思う。教訓を得たよ。まずは頭を殴って、それから別の場所に連れて行こう」
デスメタルに音楽理論は必要なのでしょうか?
「でも、ギターというのは本来、自分が何をやっているのかわからなくてもいいものだと思う。CELTIC FROST のフロントマンである Tom G. Warrior は、ギターで何をやっているのかさっぱりわかっていないが、信じられないような音楽を作っている!
私が知っているデスメタルを演奏している人たちの中には、自分が何を演奏しているのかまったくわからないのに、音楽を作っている人たちがいる。では、理論は必要なのか?いいえ」
しかし、Sanders 自身は音楽をもっと深く掘り下げているように思えます。
「私はいろんなタイプの音楽を聴く。それは NILE の音楽にも表れていると思う。CANNIBAL CORPSE と SUFFOCATION しか聴かない人、とは思えないよね。NILE を聴くと、他のものもたくさん聴こえてくる。でも、それは必ずしもデスメタルにとって必要なものではない。
つまり、デスメタルばかり聴いていれば、デスメタルをうまく演奏できるようになると思うよ。実際、そういう人はたくさんいるけど、私はたまたまいろんなものが好きなだけなんだ。
影響を受けたものが1つだけだと、音楽的には満足できない。世の中には宇宙みたいに広い音楽の海があって、楽しめるものがたくさんある。実際、クソほどたくさんの音楽があり、クソほどたくさんのギターがある。学べば学ぶほど、自分が何も知らないことを知ることになる!」

A面、B面というロスト・テクノロジーもこの作品で再び発掘されました。
「レコードのシーケンスは、デジタルの時代になって失われた芸術だと思う。70年代には、アイズレー・ブラザーズのレコードがあった。A面はパーティーのレコードで、B面までに誰かとイチャイチャしていなければ、大失敗だ。
10代の頃、友達の家に集まってレコードをかけて、ハイになって、しばらくアルバムのジャケットを見つめていたね。A面とB面の曲順は本当に重要だった」
実際、NILE はエジプトの歴史を紐解くだけでなく、ロックやメタルの歴史をも紐解いているのです。
「ブルータルなリズム・パートから別のリズム・パートへと移行し、フィーリングを変化させたり、フックの到来を予感させたりするようなパッセージ。それは、エレクトリック・ギターの先駆者たちにさかのぼる。ブルースやジャズのコード進行、モチーフ、ターンアラウンドからね。それらははすべて、CREAM やEric Clapton, 初期の Jeff Beck といった初期のものを研究した結果なんだ。Jeff Beck! なんてすごいギタリストなんだ!
レノンとマッカートニーの作品を研究するだけでも、学べることはたくさんある!たとえ君がテクデスを演奏していたとしても、何であれ、ソングライティングはクソ重要だ。音楽的な要素をどのように取り入れ、それらを使って音楽的なストーリーを語るかを知ることは、ただ空から降ってくるようなものではない。
そのためには多くの技術が必要で、巨匠たちの作品を研究することが重要だ」
“The Underworld Awaits Us All” におけるバンドのヴィジョンは、そうしたロックの生々しく奔放で野蛮さのある作曲をすることでした。
「過去の NILE のアルバムでは、確かにエキゾチックな楽器をふんだんに取り入れた。バグラマ・サズやグリセンタール、トルコのリュート、古代エジプトのアヌビス・シストラムに銅鑼、様々なパーカッションなど、自分たちの手で演奏するアコースティックな楽器もあれば、キーボード、ギター・シンセ、映画音楽のライブラリもあった。すべてが混ざり合って、静かに脳を爆発させる音楽。
それはそれでとても楽しいよ。弦楽器では、ギターのテクニックをクロスオーバーさせることもある。バグラマやグリセンタを手にしたときでも、私がメタル奏者であることに変わりはない。やっぱり自分なんだ。つまり、魔法のようにマハラジャに変身したりはしない。私はメタル・パーソンだからな。
でもね、今回は曲の進展が進むにつれ、合唱パートをキーボードで考えるのではなく、本物のヴォーカリストにやってもらおうと思ったんだ。高校時代の友人が地元のゴスペル・クワイアで活動していて、4人のゴスペル・シンガーを紹介してくれた。ゴスペル・シンガーたちとのレコーディング・セッションは、とても素晴らしいものだった。彼らは私たちが誰なのかも、デスメタルというものが一体何なのかも知らなかった。しかし、レコーディング・セッションが進むにつれて、彼らはブルータルなグルーヴとの天性の関係をすぐに見出し、あっという間にヘッドバンギングをしていたよ」

Sanders がたどり着いたリフの極地。それは、シンプルであること。
「初期の CELTIC FROST の大ファンなんだ。シンプルな曲で、シンプルなギター・パートなのに、信じられないほどヘヴィなんだ。
リフやアイデアがシンプルであればあるほど、より直接的な結びつきが生まれ、その重みを感じることができる。重さ、破滅、それはとてもとらえどころのないものだ。あまりトリッキーになりすぎると、破滅の感覚をすぐに失ってしまう。それは儚いものだ。鹿のように逃げてしまう!
そう、シンプルなリフが重要なんだ。この NILE の新譜では、すべての新しいクレイジーさに混じって、スローなリフがたくさんある。
それに、シンプルであること自体が美しいこともある。ある曲のヴァージョンがあるんだけど、ちょっと待って、思い出そうとしているんだけど、古いルー・リードの曲で、”Sweet Jane” という曲なんだけど、15年前に誰かがそれを発表したんだ。シンプルなアコースティック・ギターで、アンビエンスがたくさんで、ボーカルが1レイヤー入っていて、他には何もないんだけど、今まで聴いた中で一番美しくて、心を揺さぶられるような曲だった」
アコースティックな楽器の演奏を覚えるのは、メタル・パーソンの嗜みだと Sanders は考えています。
「よく自問自答するんだけど、現代にはエレクトリック・ギターや大きなドラム・キット、エレクトリック・ベースがある。5,000年前の人々は、邪悪でクソみたいなことをやりたいとき、どうしていたのだろう?ってね。エレキギターはなかった。持っているもので何とかするしかなかった。
逆に、もし人類が滅亡してしまったら……黙示録がやってきたら、私はどうやって生きていけばいいんだろう?電気がなくなったら、どうやってエレキギターを弾けばいいんだ?だから、アコースティック・ギターを弾けるようになった方がいい。4,000年前にはアコースティック楽器しかなかったわけだから」

もうひとりのギタリスト、Brian Kingsland とのコンビネーションも熟成されてきました。
「Brian がギタリストとしてやっていることの新鮮さがとても好きだ。彼は、必ずしもメタル的なアイディアではないけれども、それをメタル的な文脈の中で演奏している。例えば、彼はピックと3本の指で複雑なアルペジオ・シークエンスを演奏するんだけど、それは必ずしもメタルの文脈では見られないものなんだ。
例えば、ふたりでマイナーセブンスフラットファイブ(m7b5)のアルペジオを弾いても、彼はピックだけじゃなくて指も使っているから、ヴォイシングが全部変わっていく。
彼が簡単そうに聴かせるから、聴いているとすべてがスムーズで簡単に聴こえるが、実際にやっていることはとても新鮮だ。このアルバムで彼が書いた曲のコード・ヴォイシングのいくつかは、”なんてこった!天才だ!” って感じだ。彼は私とはまったく違うスタイルを持っているのに、NILE のやっていることを正確に理解している。このギター・チームには本当に満足しているよ」
いつかは “Doom” のようなゲームのサウンド・トラックを作りたいという野望もあります。
「僕は “Doom” のファンなんだ。”Doom Eternal” のサウンド・トラックは神がかり的で、そのサントラも持ってるよ。家事をしながら聴いているんだけど、そうすれば、家の中で何かしていても、それがくだらない家事であっても、”Doom” をやっているように感じられるから、苦に感じないんだ(笑)
メタルはこういう壮大なストーリーにとても適している。誰かが NILE の音楽を取り上げて脚本にする必要があるね!」
NILE の作曲法には黄金の方程式があります。
「僕らの曲作りに秘密のハックや近道があるかどうかはわからない。でも通常、その道は歌詞から始まり、曲はそこから発展していくんだ」
実際、NILE のストーリーテリング能力は驚異的です。エジプトの神々が戦争を繰り広げ、人類を混乱に追いやった遠い過去へとリスナーを即座にいざなうことができるのですから。そして驚くべきことに、彼らが語る神話的なエピソードは、しばしば現代の私たちの世界と共鳴していきます。

例えばテム (アトゥム) 神。タイトル・トラック “The Underworld Awaits Us All” の主題である創造神テムは、同じ名前の略奪的なオンラインショッピングサイト Temu の形で復活したのかもしれません。Sanders は、神をデジタルの形で解き放つという役割に喜びを感じています。
「PCのスタートページに Temu が現れ、すでにアマゾンで買ったものを売りつけようとするのを見るたびに、このタイトル曲の歌詞を思い出すよ。”死がなかった時代があった、テム神だけが存在した時代が”。
今考えているのは、このアルバムがリリースされたら、Temu のAIボットが私に直接広告を出して、 “The Underworld Awaits Us All” を Temu で買わせようとするなんて皮肉な未来だ。いずれわかるだろう」
とはいえ、メタルはデジタルの恩恵も強く受けています。Sanders はメタルとギターの進化に目を細めています。
「新しいデスメタルはファンがいろいろ送ってくれるから、どんなことがあっても見つけられる。私の受信箱はバンドからの問い合わせでいっぱいだ。デスメタルからは逃れられないんだ。でも、私たちは今、メタルという芸術の爆発的な進化の中に生きていると思う。
YouTubeの登場は、音楽活動のあり方を大きく変えた。例えば私が演奏を学んでいた頃は、YouTubeはなかった。何かを学ぶことは、必ずしも今ほど簡単ではなかった。でも今は、もし君が若いギタリストなら、スティーブ・ヴァイと入力するだけで、ビデオが150本も出てくる。そしてそれを見ることができる。
誰かが何かをやっているのを見るのは、それをただ聴くのとはまったく違う経験だ。好むと好まざるとにかかわらず、私たちは霊長類なのだ。だから今、私たちは、信じられないほど豊富なギター演奏の知識に瞬時にアクセスできる世代を持つことになった。クリックひとつで、しかも無料で。
それを理解し、ハングリーで、何かを学びたいと思っている人たちにとっては、まさにうってつけだ。ここ10年のギター・プレイのレベルは、こんな感じだ!生きていてよかった。まさにメタル・リスナーのための時間だよ」
同時に、怒りが渦巻く世界で、その対処法も古代エジプトからヒントを得ました。
「”Stelae Of Vultures”(禿鷹の墓)。個人的なアンガーマネジメントみたいなものだね。エンナトゥムがウンミテ人を容赦なく虐殺し、その殺戮を楽しんだときに何が起こったのか?いったいなぜ彼は人々を虐殺し、ハゲタカの餌にするようなことをしたのか?なぜ彼は殺戮と残虐行為に酔いしれたのか?誰も、戦いの初期に彼が矢で目を撃たれたことについては言及しない。矢で目を撃たれるなんて、痛いに決まっている。一日中痛むに違いない。慈悲や人間性という概念が窓から消えてしまうに違いない。
これは人間の状態を表す良いたとえ話だ。目には目をというだけではない。目には目をから始まり、そして飽くなき、しかし破壊的な血の欲望を鎮めるために、さらにもっととエスカレートしていく」

つまり、NILE の曲は過去からのストレートな伝言ではなく、例えばホメロス詩や、ヘロドトスの歴史のように神話や伝説が入りこんでいます。さらに、曲によってはラブクラフト的な超自然的な感覚も存在するでしょう。
「私のプロセスはシンプルだ。曲を書く時間だ。本棚に行く。ランダムに本を選ぶ。これは僕が持っている “死者の書” の一冊だ。目を閉じて開き、 目を開けて、そこに何があるか見る。
たいていの場合、これは曲作りの方法としては愚かなことだ。なぜなら、本を開いて適当なページを開いても、そこにはメタルの曲になるようなものは何もないからだ。でも、何十回かに1回くらいは、本を開いて “これはメタル・ソングになるかもしれない” と思うことがある。
“冥界の杭に逆さまに吊るされず、4匹の猿に糞を食わされないための章” がそうだ。私は “死者の書” を第181章まで開いた。逆さ吊りにされず、糞を食べさせられないための章だった。それを見て、これはメタルの曲になると思ったんだ。そして、本から与えられたものを何でも、時にはとんでもなく薄いものでも、メタルの曲に変えてしまうんだ。そうすると大抵、他の本を手に取らなければならなくなる」
だからこそ、ある意味確立された歴史よりも、未だ未知なる歴史の方が題材にしやすいと Sanders は考えています。
「泥沼に片足を突っ込んでしまえば、その泥沼で水しぶきを上げるのは簡単だ。だから私は古王国時代(王朝時代以前の時代)が好きなんだ。その時代について実際に知られていることは少ない。だから、デスメタルのようなアーティスティックな表現もしやすい。私たちは古代史のバランスの取れた視点を提示しているのではない。デスメタルの曲を書いているんだ。それは2つの異なることなんだ。4,000年前の土器を大切に保存する歴史保存協会とは違うんだ。私たちはデスメタルの曲を書いているんだ。無名で誤解されているものを掘り起こして、より誤解されるようにしているんだ。それがとても好きなんだ」
エンターテインメントが学びの入り口となることはよくあることです。
「だから、このままでいいと思う。今、考古学者や大学教授として活躍している人の何割が、ボリス・カーロフの映画で初めてエジプト学に触れたのだろう?では、それは本当に悪いことなのだろうか?歴史について本当に知りたければ、図書館に行くなり、ヒストリーチャンネルを見るなり、インターネットを見るなりして、自分で実際に少し読めばいい。ハリウッドは、そして我々は人々を楽しませるのが仕事であり、その過程で自由を奪うことはできない。エンターテインメントが教育に優先すると決めたのは社会だからな!」


参考文献: NEW NOISE MAG:INTERVIEW: KARL SANDERS OF NILE TALKS ‘THE UNDERWORLD AWAITS US ALL’

STEREOGUM:Animals Of The Nile: An Interview With Nile’s Karl Sanders

METAL INJECTION:INTERVIEWSKARL SANDERS Talks Creating “Music For Tripping” On Saurian Apocalypse, Three Decades Of NILE & The Evolution Of Metal

GUITAR WORLD : KARL SANDERS

SOUNDWORKS DIRECT JAPAN

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GLYPH : HONOR. POWER. GLORY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JEFF BLACK OF GLYPH !!

“Honor. Power. Glory.” Sums Up All The Fun, Silly And Awesome Things About Power Metal That We Love. Something That’s Really Important To Us Is To Do Things That Are a Little Crazy And Over The Top, Like In Pro Wrestling!”

DISC REVIEW “HONOR. POWER. GLORY.”

「”Honor. Power. Glory.” というタイトルは、僕たちが愛してやまないパワー・メタルの、楽しくて、バカバカしくて、だからこそ最高なものすべてを要約してくれている。僕らにとって本当に大切なことは、プロレスのようにちょっとクレイジーで大げさなことをすることなんだ!多くのバンドは、自分たちの音楽スタイルにある馬鹿げたことを受け入れるにはクールすぎる感じに振る舞っているけど、僕らはその真逆をやりたいんだ」
“GLYPH。彼らは単なるヘヴィ・メタル・バンドではなく、宇宙船VSSドラゴンロードで滅びゆく惑星を脱出する銀河系傭兵のクルー。明らかに、彼らはただ曲を作っているのではなく、新たに世界を構築している”。
そんな謳い文句がしっくりくるほど、GLYPH の音楽やルックはあまりにも大仰でシアトリカルです。それは、彼らがメタルを WWE のようなあからさまで、しかしリスナーに勇気を与える素晴らしきエンターテイメントだと信じているから。エンタメではとにかく突き抜けた者が勝者。そんな彼らのメンタリティは、確実に現代のシリアスなメタル世界に一石を投じます。そう、メタルは現実を見つめても、現実から逃避しても、勇気を出して現実と対峙してもかまわない。そんな寛容な音楽なのです。
「もし人々が GLYPH から強さ、希望、勇気を見出してくれるなら、僕たちは自分たちの仕事を正しくやっているという証拠だよね。パワー・メタルは今、特に北米とヨーロッパで盛り上がっているよ。SABATON, POWERWOLF, WIND ROSE のようなバンドがこのジャンルに新しい息吹をもたらし、人々はその息吹に大きく反応している。ファンタジーやSFを題材にした音楽とつながる “オタク” と呼ばれる人々の文化全体が、かつてないほど大きくなっているんだよ」
栄誉。力。栄光。まるで、努力、友情、正義を掲げた少年ジャンプのようなアルバム・タイトルも彼らの “やりすぎ” なパワー・メタルにはよく似合います。そして彼らはこの場所から、リスナーに強さや希望、勇気といったポジティブなエナジーを見出して欲しいと願います。パワー・メタルというジャンル自体も、この暗い世界でかつてないほどに輝きを放ち始めました。それはある意味、抑圧され、逃げることを余儀なくされたアニメや映画、ゲームといったファンタジーの信奉者、”ナード” “オタク” と呼ばれしものたちのレコンキスタなのかもしれませんね。
「現代のパワー・メタル・バンドをいくつか聴いて、複雑な気持ちになったんだ。曲作りがタイトで即効性があり、コーラスやフックの力強さが好きだったんだけど、ただそこにはメタル要素(リフやソロ)がかなり不足しているように聴こえたんだ。だから、90年代や2000年代のパワー・メタルのクールな要素を取り入れて、タイトでメロディ主導のソングライティング・スタイルに持っていったら面白いと思ったんだ」
そして何より、GLYPH のパワー・メタルには華があります。現代のパワー・メタル、その華のなさ、足りないクレイジーに不満を持って始めた新世代のバンドだけに、DRAGONFORCE や SABATON の剛と勇、そこに90年代が輩出した STRATOVARIUS や BLIND GUARDIAN のシュレッドやエピックが存分に埋め込まれたメタルの園はもはや楽園。もはやその実力はデビュー作にして TWILIGHT FORCE や GLORYHAMMER にも匹敵しています。残念ながら、優れたフロントマンの R.A. は脱退してしまいましたが、もちろんメタルの回復力でより強くなって戻ってきてくれることでしょう。
今回弊誌では、Jeff Black にインタビューを行うことができました。「17歳のときに2ヶ月間日本を訪れたこともあるんだ。 学生時代は漫画やアニメに夢中で、今でも時々見ているよ。好きだったシリーズは、”るろうに剣心”、”カウボーイビバップ”、”新世紀エヴァンゲリオン”、”エルフェン・リート”。ファンタジーやSFに対する日本のアプローチにはいつも感心しているんだ。とても独特で無節操なんだ。スピリチュアルやファンタジーの要素がたくさんあって、でもロマンスなど他のジャンルにも入り込んでいるからね」 新たなキーボード・ヒーローの誕生。どうぞ!!

GLYPH “HONOR. POWER. GLORY.” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OCTOPLOID : BEYOND THE AEONS】”TALES FROM THE THOUSAND LAKES” 30TH ANNIVERSARY!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH OLI-PEKKA LAINE OF OCTOPLOID & AMORPHIS !!

“Probably The Most Important Band For Amorphis Were Piirpauke, Wigwam and Kingston Wall. Especially, Since It Was Possible To Witness Kingston Wall Live, It Made a Huge Impact On Us.”

DISC REVIEW “BEYOND THE AEONS”

「AMORPHIS も BARREN EARTH も素晴らしい人たちから成る素晴らしいバンドだと思うけど、僕は自分のキャリアの中で初めて、音楽的に100%自分の言葉で何かをする必要があったんだ。そうした “マザーバンド” とそれほど違いはないけれど、OCTOPLOID の作曲やプロダクションには、他のバンドでは不可能なニュアンスがあるんだ」
“Beyond the Aeons” “永劫の彼方に” と名付けられた OCTOPLOID という不思議な名前のバンドによるアルバムは、まさにフィンランド・メタル永劫の歴史を眺め続けてきた Olli-Pekka Laine の結晶だといえます。彼は1990年に北欧の伝説 AMORPHIS を結成したメンバーのひとりであり、2000年代にバンドを脱退した後、今度はプログ・メタルの英雄 BARREN EARTH に参加。そして2017年、AMORPHIS に復帰しました。加えて、MANNHAI, CHAOSBREED, といったバンドでもプレイしてきた Oli にとって、”Beyond the Aeons” は自身が歩んだ道のり、まさにフィンランド・メタルの集大成なのかもしれません。
「当時も今と同じように自分たちの仕事をしていただけだから、少し奇妙に感じるよ。ただ、当時としては他とはかなり違うアルバムだったから、 AMORPHIS のフォロワーにとってなぜ “Tales” が重要なのかは、なんとなくわかるよ。デスメタルに民族音楽とプログを組み合わせ、神秘的な歌詞と素晴らしいプロダクション。要は、そのパッケージがあの時代にドンピシャだったんだ。それまで誰もやったことのないコンビネーションだったから、上手くいったのさ」
Oli が歩んだ道のりを包括した作品ならば、当然そのパズルのピースの筆頭に AMORPHIS が位置することは自然な成り行きでしょう。特に Oli にとって思い入れの深い、今年30周年を迎える “Tales From The Thousand Lakes”。そのデスメタルとフォーク、プログを北欧神話でつないだ奇跡の悪魔合体は、この作品でもギラリとその牙を剥いています。しかし、AMORPHIS が AMORPHIS たる由縁は、決してそれだけではありませんでした。
「おそらく僕ら AMORPHIS にとって最も重要なバンドは、PIIRPAUKE, WIGWAM, KINGSTON WALL だったと思う。特に KINGSTON WALL のライブを見ることができたことは大きくて、本当に大きな衝撃を受けたんだ。だから、OCTOPLOID のサウンドにサイケデリアを加えるのは自然なことだった」
Oli が牽引した90年代の “ヴィンテージ” AMORPHIS にとって、フィンランドの先人 KINGSTON WALL のサイケデリックなサウンド、イマジネーションあふれるアイデアは、彼らの奇抜なデスメタルにとって導きの光でした。そしてその光は、”Elegy”, “Tuonela” と歩みを進めるにつれてより輝きを増していったのです。Oli はあまり気に入っていなかったようですが、”Tuonela” で到達した多様性、拡散性は、モダン・メタルの雛形としてあまりにも完璧でしたし、その音楽的包容力は多彩な歌い手たちを伴い、明らかに OCTOPLOID にも受け継がれています。
AMORPHIS の遺産 “Coast Of The Drowned Sailors”、KINGSTON WALL の遺産 “Shattered Wings”。両者ともにそのメロディは珠玉。しかしそれ以上に、ヴァイキングの冒険心、素晴らしいリードとソロ、70年代の思慮深きプログ、80年代のシンセワーク、サイケデリアが恐ろしき悪魔合体を果たした “Human Amoral ” を聴けば、Oli がフィンランドから世界へ発信し続けてきた、アナログの温もり、ヘヴィ・メタルの可能性が明確に伝わるはずです。聴き慣れているけど未知の何か。彼の印象的なベース・ラインは、これからもメタルの未来を刻み続けていくのです。
今回弊誌では、Olli-Pekka Laine にインタビューを行うことができました。「Tomi Joutsen と一緒に大阪と東京の街をよく見て回ったし、この前は西心斎橋通りで素晴らしいフレットレスの日本製フェンダーベースを買ったよ。いいエリアだったよ!日本の人たちも素晴らしいよ。日本の自然公園もぜひ見てみたい。定年退職したら、日本に長期旅行すると誓うよ!」 どうぞ!!

OCTOPLOID “BEYOND THE AEONS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DAATH : THE DECEIVERS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH EYAL LEVI OF DAATH !!

“I Think That This Is The Best Time In History To Be a Musician. Because, Just The Only Time In History Where You Have Been Able To Reach The Masses And Reach Niche Audiences Are On Your Own Without Having a Huge Labour.”

DISC REVIEW “THE DECEIVERS”

「今はミュージシャンとして史上最高の時期だと思う。というのも、大衆にリーチし、ニッチな聴衆にリーチすることができる。巨大な労働力を使わずに自力でね。今はそんな歴史上唯一の時代だからね」
2000年代初頭。New Wave of American Heavy Metal 通称 NWOAHM の波が盛り上がりを見せ始めました。”ヨーロピアン・スタイルのリフワークに乾いた歌声を乗せて、メタルをメジャーに回帰させる” というムーブメントはたしかに一定の成果を上げ、いくつかのメタル・バンドはメジャー・レーベルと契約していきました。特に熱心だったレーベルがロードランナー・レコードで、当時新進気鋭のバンドをまるで豊穣な木に実ったおいしい果実のように青田買いを続けたのです。
DAATH もロードランナーに見出されたバンドのひとつ。他の NWOAHM とは明らかに一線を画していましたが、さながら十把一絡げのようにレーベルは彼らと契約。2007年の “The Hinderers” で大成功を収め、その年の Ozzfest にも出演しました。彼らのデスメタルには、バークリー仕込みのウルトラ・テクニック、高度な建築理論、さらにオーケストレーションとエレクトロ的なセンスがあり、まさに彼らの名曲 “Dead On The Dance Floor” “ダンス・フロアの死体” を地でいっていたのです。旧約聖書の生命の樹、その隠されたセフィアの名を冠したバンドの才能は、”どこにもフィットせず”、しかし明らかに際立っていました。
しかし、御多分に洩れずロードランナーのサポートは停滞。その後、DAATH は何度もメンバー・チェンジを繰り返し、レコード会社を変えながら数年活動を続けましたが、2010年のセルフタイトルの後、実質的に活動を休止したのです。世界は14年も DAATH を失いました。しかし、SNS や YouTube といったプラットフォームが完備された今、彼らはついに戻ってきました。もはや巨大な資本や労働力よりも、少しのアイデアや好奇心がバズを生む現代。”どこにもフィットしない” ニッチな場所から多くのリスナーへ音楽を届けるのに、今以上に恵まれた時代はないと DAATH の首謀者 Eyal Levi は腹を括ったのです。
「シュレッドは戻ってきたと思うし、シュレッディングはしばらくここにある。それがバンドを復活させるのにいい時期だと思った理由のひとつでもあるんだ。リスナーは今、シュレッドやテクニックを高く評価して、ヴァーチュオーゾの帰還を喜んでいるように思えたんだ。全体として、今の観客はもっとオープンになっているように感じる。今はヘヴィ・ミュージックをやるには歴史上最高の時代だと思うし、それが観客が楽器の可能性の限界に挑戦するバンドやアーティストに飢えている理由のひとつなんだ」
Eyal はもうこれ以上待てないと、ほとんどのメンバーを刷新してこの再結成に望みました。そして今回、彼が DAATH のメンバーの基準としたのは、ヴァーチュオーゾであること。そして、異能のリード・パートが書けること。
そもそも、Eyal からして父はイングヴェイとも共演した有名クラシック指揮者で、音楽の高等教育を受けし者。そこに今回は、あの OBSCURA でフレットレス・ギターを鳴らした Rafael Trujillo、DECAPITATED や SEPTICFLESH の異端児ドラマー Krimh、さらにあの Riot Games でコンポーザーを務める作曲の鬼 Jesse Zuretti をシンセサイザーに迎えてこの “シュレッド大海賊時代” に備えました。念には念を入れて、Jeff Loomis, Dean Lamb, Per Nillson, Mark Holcomb といった現代最高のゲスト・シュレッダーまで配置する周到ぶり。
「自然を見ると、例えば火山のように、美しいけれど自然がなしうる最も破壊的なこと。海や竜巻など、自然には素晴らしい美しさがある一方で、破壊的で残酷な面もある。だから、美しさと残忍さ、あるいは重苦しさの中の美しさは、必ずしも相反するものだとは思わない。だから、僕のなかでヘヴィで破壊的で残酷な音楽と、美しいメロディやオーケストレーションはとてもよくマッチするんだ。というか、真逆という感覚がないね。メロディーやオーケストレーションは、ヘヴィネスの延長線上にあるもので、音楽をより強烈なものにしてくれる」
そう、そしてこの “The Deceivers” にはまさに旧約聖書のセフィア DAATH が目指した美しき自然の獰猛が再現されています。”妨害者”、”隠蔽者”、そして “詐欺師” を謳った DAATH の人の欺瞞三部作は、人類がいかに自然の理から遠い場所にいるのかを白日の下に晒します。欺瞞なき大自然で、美と残忍、誕生と破壊はひとつながりだと DAATH の音楽は語ります。愚かなプロパガンダ、偽情報に踊り踊らされる時代に必要なのは、自然のように飾らない正直で純粋な魂。
Riot Games の Jesse が手がけた荘厳なオーケストレーションを加えて、”The Deceivers” の音楽は、さながら RPGゲームのボス戦が立て続けに発生するようなアドレナリンの沸騰をリスナーにもたらします。いや、むしろこれはメタルのオーケストラ。そしてこのボス戦のデスメタルが戦うのは、きっと騙し騙され嘘を生業とした不純な現代の飾りすぎた魂なのかもしれませんね。
今回弊誌では、Eyal Levi にインタビューを行うことができました。「インストゥルメンタル・プログレッシヴの POLYPHIA や INTERVALS, PLINI, SHADOW OF INTENT がそうだよね。とてもとてもうまくやっている。芸術的な妥協はゼロでね。僕らの時代にこのようなタイプの技術があれば、よかったと思うよ」 どうぞ!!

DAATH “THE DECEIVERS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ESODIC : DE FACTO DE JURE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZED AMARIN OF ESODIC !!

“Even If Acceptance Doesn’t Grow Significantly, I Don’t Foresee Metal Vanishing From the Middle East, As It Conveys Specific Messages And Emotions That Resonate Uniquely With Its Audience.”

DISC REVIEW “DE FACTO DE JURE”

「ロサンゼルスに移住してバンドを復活させようと決めたのは、ヨルダンですべてのチャンスを使い果たしたから。どんなに最善を尽くしても、ヨルダンで自分のバンドや他のバンドとドラムを演奏して持続可能なキャリアを築くことはできなかった。自分の情熱を追求し、好きなことで生計を立てられる場所に移住する必要があることがはっきりしたんだ」
スラッシュ・トリオ、ESODIC の歴史は深く長く、1995年にヨルダンのアンマンで結成され、当初は PURGATORY として知られていました。彼らは過去30年間にデモ、スプリット、そして2枚のEPをリリースしていますが、ヨルダンでのメタル活動には限界がありました。
「スラッシュ・メタルに惹かれた理由。スラッシュには、現実の問題や社会的不正義を訴えてきた長い歴史があり、それが僕たちの心に深く響いた。SEPULTURA, KREATOR, EXODUS のようなバンドは、政治的なテーマや抑圧への反抗を声高に主張してきた。このサブジャンルは、強烈でパワフルな音楽を通して、僕たちのフラストレーションをぶつけ、現実の複雑さに取り組むための完璧なはけ口を提供してくれる」
SLAYER, TESTAMENT, KREATOR, SEPULTURA, EXODUS といった巨人たちにインスパイアされた ESODIC の音楽と哲学は、抑圧や差別と戦い続けてきた偉人たちの薫陶を受け、常に中東の激動する社会政治情勢を反映したものでした。だからこそ、中東、ヨルダンという不安定な場所においては、バンドとしての存在そのものが嫌がらせや逮捕の危険にさらされていたのです。
「メタル関連の品物をすべて没収されたり、投獄されたり、殴られたり、精神的にも肉体的にも拷問に耐えた者もいた。僕たちの元メンバーは皆、何年にもわたる拘留と激しい嫌がらせに苦しんできた。ムスリム同胞団が大きな影響力を持つ中、ヨルダン政府は僕たちのイベントでの過激な暴力の可能性を防ぐために、メタルヘッズを標的にしていたんだ。それは例えば、10年ほど前、怒った首長の一団がハロウィーン・パーティーで100人以上の人々を石で攻撃したことがあるから。悪魔崇拝者だと決めつけたからだ」
悪魔崇拝。かのパリ・オリンピックでも GOJIRA が揶揄されたように、21世紀の今となってもメタルに貼り付けられたレッテルはそうやすやすと剥がれ落ちてはくれません。伝統や宗教色が濃い国ならなおさらでしょう。しかし、ESODIC やメタルが目指す抑圧への怒り、自由への回復力、寛容な世界への祈りはそれでも決して根を上げることはありません。
“De Facto De Jure” で彼らはウダイ・フセインをテーマにスラッシュ・アタックをキメています。あのサダム・フセインの息子にして、”中東で最も忌み嫌われた男”。女性やスポーツ選手の命をあまりに無慈悲に、ぞんざいに扱った男の愚行は、何年経っても忘れ去るわけにはいかないのです。
「中東ではイスラム教の存在とその禁止事項が強いにもかかわらず、メタル音楽が完全に消滅することはないだろうね。多くのアラブ諸国は、以前よりも徐々にメタルを受け入れつつある。たとえ受容が大きく進まないとしても、メタルがこの地域から消えることはないだろう。なぜなら、メタルは聴衆の心に響く特別なメッセージや感情を伝えているからだよ」
ESODIC は、あらゆる困難をものともしない強さを、回復力を音楽的な寛容さへと還元し、多様で豊かな中東と世界の融解を導き出しました。ここでは、神秘的でエキゾチックなアラビアン・ナイトと、デスラッシュの狂気がひとつの均質な塊として信じられないほどうまく機能しています。ヘヴィなギターとブルータルなボーカルが、トライバルなリズムと繊細な民族音学、民族楽器に命を吹き込む冒険のシンドバッド。ほのかに漂うメランコリーは、ヨルダンを出国せざるを得なかった Zed の望郷の念でしょうか。
今回弊誌では、Zed Amarin にインタビューを行うことができました。「音楽には癒しと団結の力があるように、理解と思いやりを育む役割を果たすことができると信じているからね。ボブ・マーリーがかつて言ったように、”音楽のいいところは、当たっても痛みを感じないところだ”。音楽は架け橋となり、僕たちに共通の人間性を思い出させ、明るい未来をもたらす手助けをすることができるよ」 どうぞ!!

ESODIC “DE FACTO DE JURE” : 10/10

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