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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【MOISSON LIVIDE : SENT EMPERI GASCON】


COVER STORY : MOISSON LIVIDE “SENT EMPERI GASCON”

“Je ne pourrais pas m’en passer, l’école power metal a laissé des traces bien trop profondes, merci Tobias Sammet !”

SENT EMPERI GASCON

MOISSON LIVIDE のデビュー・アルバムは、フォーク&パワー・メタルが黒に染まった魔法のような作品です。
ガスコーニュ地方として知られるフランス南西部出身の MOISSON LIVIDE(怒りの収穫)は、主に Baptiste Lavenne の発案によるプロジェクトです。Lavenne は、関連の深いフォーク・メタル・バンド、BOISSON DIVINE(神の酒)の中心人物ですが、MOISSON LIVIDE では、より幅広い楽器と様々な影響を取り入れながら、サウンドの攻撃性と激しさ、そして芳醇なるメロディを研ぎ澄ませました。
“Sent Empèri Gascon” は、初手であらゆる民族楽器(アコーディオン、バグパイプ、ティン・ホイッスル、ホルン、ブズーキなど)が魅了するかもしれませんが、作品が聴き手にしみ込んでいくにつれ、最も印象的なのは、実は基本的で最も重要なこと、つまり歌だとわかります。民俗音楽の系譜に忠実な Lavenne には、新鮮さと古さを同時に感じさせるメロディーを紡ぎ出し、それを中心に壮大でありながら論理的な構成を構築する才能があるのです。そうした点で、このアルバムには初期の MOONSORROW との強いつながりがあるのかもしれませんね。
そして何よりも意外性がここにはあります。フォーク・メタルはソフトだと思うなら、ここにはロケット燃料を使ったブラックメタルの激しさがあります。ブラックメタルは頑固で真面目だと思っているなら、このアルバムは暖かさと胸を高鳴らせる高揚感や笑いに溢れています。メタルは極端さを追求すると道を踏み外すと思っているなら、MOISSON LIVIDE は伝統的なメタルの疾走とツインギターのリードが唸りを上げます。彼らはフォーク・メタルを核に、ブラック・メタル、トラディショナル・メタル、メロデス、ピュア・フォーク、パンク、シネマティックな雰囲気、パワー・メタルなど、曲が必要とするところへ放射状その豊かな味わいを広げていくのです。
そうして、パンチの効いたパワー・メタルとパワフルなブラック・メタルの間で揺れ動くこの新しいバンドは、イノシシのように彼らの生まれた土地を隅々まで掘り下げます。自嘲と皮肉、そして何よりも知性に満ちた LAVENNE は、このプロジェクトの起源を振り返ります。

「BOISSON DIVINE があるからまあ、このプロジェクトが冗談のようなものだと考えるのは完全に間違っているわけではない。もう少し詳しく説明しよう。私がブラックメタルを知ったのは、雑誌のCDサンプラーでメタル全般を知った後、かなり早い時期だった。当時は正直言って、そのスタイルをよく理解していなかった。暴力のレベル、イメージ、ドラミングのスピード、皮を剥ぐようなボーカル……もちろん印象的ではあったけど、私にはすべてがほとんど不条理に思えたんだ。私はすぐにそこから離れ、明るいもの、特にパワー・メタルを愛するようになった。私は DISSECTION に出会い、衝撃を受けたんだ!DISSECTIONは、私がこのスタイルの虜になるために不可欠なバンドだった。アグレッションとメロディーの比率、メタルのちょっとしたアクセント、アコースティックなパッセージ、それは私にとって勝利のコンボだった!それから少しして、VEHEMENCE、AORLHAC、ABDUCTION、PAYDRETZ、HANTERNOZ…といったフランスのメロディック&メディーヴァルなシーンを味わった。だから私は、ゆっくりと、でも自然に、ブラックメタルの影響を自分の作曲に取り入れるようになった。それは BOISSON DIVINE の他のメンバーに定期的に送っていた新曲のデモにも反映されるようになっていったんだ。
それから、ガスコーニュ地方のブラックメタルというアイデアが気に入り、私は曲作りに熱中した(笑)。アイデアがどんどん湧いてきて、あっという間にすべてがうまくいった。BOISSON DIVINE をもじって MOISSON LIVIDE と名付けた。自分たちの足跡を隠すため、人々を笑わせるため、そして不意を突くためにね。こうして “Sent Empèri Gascon”が誕生したんだ」
このアルバムは明らかにガスコーニュ人による、ガスコーニュ地方のための、ガスコーニュのアルバムです。こうしたレコードを作るというアイデア全体、つまりジャンルの制約を気にせず、マーチング・トランペットとブラストビートと80年代のシュレッド・ソロを嬉々としてミックスするスピリットが、とてもフランス的だとも言えるでしょう。”気にしない” という強い姿勢、それはフランスのメタル・シーンに貫かれた哲学なのでしょうか?
「”We don’t care” はアルバムの雰囲気をよく表しているね(笑)。私を突き動かしている哲学であることは間違いない。反商業的な精神が大好きなんだ。自分たちの好きなことをやって、誰がそれを好きなのか見る。既成のジャンルの基準に100%固執して自分たちを芸術的に制限することは考えられないし、それは無意味だからだ。きれいなコーラスを思いつくたびに、私はこの言葉を口にしてきた。誰が気にするんだ?!ってね。ブラック・メタル純血主義者に嫌われる?ああ、でも私は気にしない!」

“聖なるガスコン帝国” というアルバム・タイトル、そして壮大なストーリーにも、フランスイズム、ガスコンイズム、そして中央集権化された首都への苛立ちが宿っています。
「コンセプト・アルバムではないし、テーマは曲によって大きく異なる。地元に古くから伝わる伝説や歴史上の人物、田舎からの脱出や過疎化といったシリアスな話題もあれば、サイクリストに関するユーモラスな話題や、大都会から来た迷惑な観光客をやっつける妄想もある。しかし、タイトルとジャケットは、技術の飛躍的進歩の後に銀河系ガスコン帝国が誕生するという近未来的な架空の物語で “Sent Empèri Gascon”(聖なるガスコン帝国)という曲に基づいている。2084年、パリのジャコバン党が、投票率83%で、”ヨーロッパ連合超民主主義共和国 “として知られる新生国家の選挙に勝利した。その後、中央集権化、自由を奪う、抑圧的な政策が強まった。公共の安全を確保するために高速道路の制限速度が時速50キロに引き下げられ、債務削減のために付加価値税が42%に引き上げられた。エネルギー消費を抑えるため、夜7時からの夜間外出禁止令が導入され、朝7時まで停電となった。反乱は拡大し、地域の独立を望む声はかつてないほど強くなった。
10月2日、鴨の胸肉の脂肪の摂取を禁止する改正案が可決された。さすがに背に腹は代えられなかった。ガスコーニュ地方の2人の農民、ジルとジョン・ドゥディジョスは首都を訪れ、パリの警察署に放火した。彼らの逮捕はメディア、特に24時間放送のオック語ニュースチャンネル “ベルグー・ニュー” で大きく報道された。民衆蜂起の試みを阻止するため、彼らは罰則を受けた。トラクターのボンネットは、自転車のフレームやスクーターのハンドルとして再利用される。彼らはまた、60.8°F以上の暖房をしている市民を通報する無料ホットラインの電話オペレーターとして、2週間の社会奉仕活動を強いられる。国防委員会は、公衆の面前でベレー帽をかぶった場合、頭囲1センチにつき90ユーロの罰金を科すという最後の一撃を加えた。
このような極端な暴力に直面した反体制派は、できる限り目立たないように、新たな集会の方法を探さざるを得なかった。しかし11月17日、すべてを変える出来事が起こった。バスク地方のイルレギー近郊で考古学的発掘が行われ、ガスコン語で刻まれた動物の骨が発見されたのだ。専門家たちの懸命の努力にもかかわらず、フェブシア文字で書かれたメッセージを解読することはできなかった。
そんなことができるのは、この世でただ一人の男だけだ。ピック・デュ・ミディ・ド・ビゴールからほど近い暗い洞窟に住む孤独な男、ガスコン族の最後の一人、ジャン・タイエール。伝説によると、彼は辞書を破って作ったマットレスの上で寝ており、マイクロトポニーミーへの執着が彼を狂わせたという。南風が吹く満月の夜には、アレッテの詩の一節を叫ぶ声が聞こえる。
12月21日、彼のもとに骨が運ばれてきた。彼は一息で、書物を覆っていた埃を払い落とした。Quan dou cèu e séra cadut Lou princi qui estoû proumétut Fénira lou téms de misèri Bastiram lou nouste Empèri」(約束された王子が天から降るとき、不幸の時は終わり、我々は帝国を築く)。
大地震が山を揺らした。何とも言えない音とともに、別世界からの宇宙船のようなものが岩の上に着陸した。長い金髪に熊の絵で飾られたマントを羽織った人型の巨漢が出てきた。彼は完璧なガスコン語で聴衆に語りかけた。彼の名はアラリック4世、Kメラト太陽系のブラアD星から来た。何千年もの間、地球を観察してきた彼の祖先が、ガストン・フェビュスの姿に魅了され、1390年8月2日、彼のバスタブの下にあるマイクロ・ブラックホールを使って、彼を誘拐する計画を立てたという話をした。溺れているように見せかけ攫ったと。
アラリック4世は話を続けた。予言は聖典によって明らかにされた。彼の使命はガスコーニュの人々に星間旅行と反重力の原理を理解する鍵を与え、パリのジャコバン派の凡庸さ、愚かさ、寄生から地球と銀河系を解放することだった。彼は、この技術的飛躍に不可欠な燃料である元素115を安定させる方法を教えた。ニンニク1片、ワイングラス2杯、モスコビウム7kgを量子粒子加速器の中で混ぜなければならなかった。
このようにしてマスターされた115番元素は、核兵器の1万2000倍の破壊力を持つ、想像を絶する恐ろしい戦争兵器の創造も可能にした。核兵器の1万2千倍の破壊力を持つのだ。権力を取り戻し、専制君主を打倒し、フェブスの昔からの夢を実現するときが来たのだ。そして、彼の意志は実現した。
この文章は、ほとんど理解できないような曖昧な文学や社会的引用で、ばかばかしくさえあることは分かっている。しかし、現在の(そして過去200年間の)フランスがどのようなものかを説明するならば、フランスは高度に中央集権化された国で、権力、資金、決定は主にパリに集中している。共和国はその支配力を確立するために文化の標準化を推進し、その結果、パリだけのフランス人を優遇するために、地方の文化や言語は破壊され、少なくとも弱体化した。
このアルバムには、肯定と復讐の思想がある。存在への叫び、私たちが再発見しなければならない生命力。要するに、私たちは自分自身を死なせるのではなく、抵抗しなければならないという考えだ。
疑念を抱くたびに、そのことが頭をよぎった。この精神がフランスのシーン全体に一般化できるかどうかはわからない。いずれにせよ、君がそう感じるのであれば、そこには何らかの真実があるに違いない」

MOISSON LIVIDEの音楽は、ブラックメタルやヘヴィメタル、さらにはパワー・メタルを基調としながら、伝統的な中世の楽器やフォーク的な部分も持ち込んだ実に多様な農夫のメタル。
「まあ、オープンマインドを強調するつもりはないけれど、時間が経てば経つほど、聴くものが多様になり、影響を受けたものが蓄積されていくんだ。私は作曲が大好きで、Cubase の空のセッションを開いて、ここ数ヶ月の間に蓄積されたアイデアの断片に命を吹き込み、それを構造化することをとても楽しんでいる。音楽を分析するのも好きだし、好きなスタイルのコードはすぐに理解できる。でも、あるジャンルを聴くことで、それが頭の片隅に残って、自然と出てくるんだ。結局、作曲のプロセスを説明するのはかなり難しい。脳がさまざまな情報の断片を保存し、その都度ユニークな組み合わせの混合物の形で吐き出すのだと想像している」
Lavenne が恐ろしいのは、農家であることをメタルに活用しているところでしょう。まさに農家とメタルの二刀流。
「私は頭を使ってよく書く。本当にほとんど楽曲は頭で書いている。アイデアは何の前触れもなく浮かんでくるので、ボイスレコーダーアプリを取り出し、赤いボタンを押してラララと歌う。夕方家に帰ると、自分が書いたものを聴いて、アコースティックギターかピアノでコードを練る。ほとんどすべて仕事中に書いている。私はワイン生産者なので、多くの時間をブドウ畑で手作業に費やしている。ブドウの木は1本1本違うが、やるべきことを覚えたら、他のすべてのブドウの木で同じ作業を繰り返す。これを疎外感と捉える人もいるかもしれないが、私は脳の時間を解放する素晴らしい機会だと考えている。
数年のノウハウとブドウ畑の知識があれば、ある種の自動操縦モードに入ることもある。楽器を手にして座り、何か書かなければと自分に言い聞かせることは、本当にめったにない。だから同時に2つのことができる。そのおかげで膨大な時間を節約できる。さまざまな影響について話を戻すと、このようにたくさんの曲をミックスするときに一番難しいのは、”コラージュ” 的な嫌味を出さずに、すべての曲を調和させる一貫性、共通の糸を保つことだ。
だから私は、長尺にもかかわらずかなりシンプルな構成に特に注意を払っている。フック、節、繰り返されるテーマ、コーラス……私はビッグなコーラスが大好きなんだ!パワー・メタル派は、メタルにあまりにも深い足跡を残しすぎた!ありがとう、トビアス・サメット!」
歌詞はガスコーニュ地方の昔話、寓話と現代の出来事に対する批判、さらには未来的な推測の間で揺れ動きます。
「いつもメロディーが先に作られる。それからコード。歌詞はその連鎖の最後のリンクにすぎない。実際、デモを作るときは、曲を完成させるために、何でも歌ったり、思いつきで書いたりすることがよくあるんだ。本当の歌詞は、曲がアルバムの選考段階を通過してから、後で書く。これが一番難しい作業で、なかなか進まないこともある。それでも、美しく、よく書かれた文章を最終的に完成させるのはとても満足感がある……少なくとも形としてはね、内容がくだらないこともあるから(笑)。
ただ、テーマを最初に思いつくということはよくあるんだ。それが曲の内容に大きく影響する。実際、最も非定型的な作曲はそうやって生まれることが多い。主題に変化をつけるのに役立つからだ。また、あらかじめテーマがあると、イメージを思い浮かべることができ、とても刺激になる。最終的には、それをメモに書き写すだけ」

戦争のトランペット、狩の角笛、あるいは反逆のパンクなど、まったく予想外の要素を導入するのも、意外性を生み出すためでしょうか?
「常にそれを意識してやっているわけではないけど、たしかにそんな一面はある。私はアレンジのバラエティーが大好きで、あらゆる方向に飛び出したり、いくつもの音域に触れたり、さまざまなスタイルをミックスしたり、要するにあらゆる棚からつまみ食いするのが好きなんだ(笑)。私はその冒険心をとらえようとしていて、”何でもあり” でいたい。商業的には間違いなく逆効果だけど、仕事ではないので経済的な制約がなく、このようなリスキーな組み合わせができるのは贅沢なことだ。というか、音楽制作のリスクって何?」
残忍さにメロディを加えるという意味で参考にしたのは、あのレジェンドでした。
「 CHILDREN OF BODOM がいい例だよ。私は必ずしもブラックメタルに詳しいわけではないけど、あれほどパワー・エッジの効いた残忍なメタルはまだ聴いたことがない。だから、ブラックメタルの純血主義者のことは気にせず、100%ブラックなアルバムを作る意味はなかった。 ビッグなコーラスがないトラックは作れないし、思いつくことはできても実現できない。私は、ハーディ・ガーディ、ランド地方のバグパイプ、マンドリン、ブズーキ(ちなみにガスコーニュ風ではない)を使い、私が望んでいたハードでキャッチーなコーラスをミックスしている。そしてもちろん、フランスの地方の力強さ、古くからの伝統や価値観に親近感と哀愁をもたらす伝統楽器も」
もちろん、パワー・メタルからの影響も強く残ります。
「IRON MAIDEN, JUDAS PRIEST, ACCEPT, HELLOWEEN, GAMMA RAY…それ以上に AVANTASIA とトビアス・サメットの大ファンでもあるし、伝統的なフォークに軍隊行進曲の側面もある。実際、MOISSON LIVIDE は、私のでたらめな考えをすべて受け入れてくれるような存在だった」
歌詞に使われているガスコン語で自分のルーツに忠実であること、信憑性を保つことは重要なのだろうか?
「簡単に言えば、ガスコン語は私の心の言葉だよ。私の言語だから私の言語で歌う。他の言語で音楽を作ろうとは思わないし、ごく散発的にしかやらないよ。ガスコン語はバスク語をローマ字にしたようなもので、特にRの転がし方にロック的な側面がある。メロディアスなんだ。
私がマスターしている他の言語に関して言えば、フランス語はゲルマン語の影響を受けてメロディーに悪影響を与えるし、メタルでは英語は完全に使いすぎだ。カスティーリャ語に関しては、中学の最後の年以来レベルが急降下しているし、イベリアの友人には失礼だが、ホタの使い方には少し抵抗がある。私たちの歴史はフランス共和国の学校では教えられていない。しかし、私たちのささやかなやり方で、この地域の文化を広める手助けをしている。私たちの歌のおかげでガスコン語を習い始めた人たちや、語学教室に通い始めた人たちからメッセージをもらうと、とてもうれしいね。ガスコン語の使用は70年前から減少しており、復活を望むのはユートピア的だとは思うけどね」
時代に反して、MOISSON LIVIDE の楽曲はかなり長く、変化に富んだパッセージに満ちています。
「レコード盤のフォーマットを埋める必要があったし、Cubase の ctrlC + ctrlV は僕のお気に入りの機能なんだ。”St.Anger” の遺産だね!冗談はさておき、曲のフォーマットは計画的なものではなく、とても本能的なもので、テーマによって本当に様々なんだ。でも、多くの場合、壮大な題材は少なくとも8分以上の時間を必要とする。昔の IRON MAIDEN や HELLOWEEN のアルバムのラスト・トラックに影響を受けているんだ(笑)」

アルバムのジャケットに使われている地図と紋章にも興味をそそられます。
「左の紋章はガスコン地方の紋章で、ルイ14世の紋章官が作った最も広く普及しているシンボルのひとつなんだ。2頭のライオンと麦の穂が描かれたこの紋章は、歴史上ガスコーニュの国旗は存在しないが、これは国旗の役割を果たした。私は赤と青よりも、より正統的な赤と白の方が好きだった。その下の標語は “Sauvatgèr, pataquèra, quantica, renavida” で、意味は “野蛮、乱闘、量子、刷新”。まあ、何の意味もないのだけど、なかなか調子に合っていると思う。ローマ帝国にちなんで乗っかっただけだ。右は銃士の十字架、ガスコン語で “crotz deu larèr”(囲炉裏の十字架)。
その下には “Nunqan Polluta”(決して汚されない)という標語がある。これはバイヨンヌの街の歴史的標語で、何度も包囲されたが一度も奪われなかったから。その版図は日本にまで及んでいるね。地図にはデタラメやダジャレがたくさん書かれているので、全部を解剖するつもりはないけど、パリは帝国の監獄と記されている。この街はこれ以上の価値はない」
MOISSON LIVIDE の精神には、人に内在する嘲笑と楽しみの精神が如実に感じられます。それは人生の明るい面を見る方法であり、蔓延する憂鬱を鼻で笑うこと。
「私の音楽はシリアスで、形式は巧みだけど、歌詞の半分は不条理で、二番煎じで挑発的で、実にくだらないものだ。それは私の性格の一部だからね。単純に人生の反映だと思う。映画の人生のように一面的なものではない。あるときはシリアスで厳粛、またあるときは遊び心にあふれ嘲笑的、速いか遅いか、短いか長いか、まったく異なるムード、サウンド、モード、トーナリティを通過する。深く掘り下げれば、自分の好みに合うものがすぐに見つかるからだ。とはいえ…メタルは真面目すぎるよな(笑)」

原点回帰の田舎暮らしを推奨し、礼賛するメタルだとすればまさに前代未聞でしょう。
「ただ、私たちは必ずしもそのメッセージを伝えようとしているわけではないんだよ。私たちがやっていることは、結局のところ、私たちが情熱を持っていて、他の人に音楽にして聴いてもらいたいと思っているテーマについて話しているだけだからね。特に制約もなく、思いついたものをミックスしているだけなんだ。個人的には、”土地に根を下ろせ”、”田舎に帰れ”, “庭を作れ”, “その土地の言葉を学べ” といった命令や小難しいフレーズを発する気にはならない。おそらく、私は人に指図されるのがあまり好きではないし、その逆もしかりだからだろう。だから自分でビジネスを立ち上げて、働き手を持たないのがいいんだ(笑)。
というのも、無理強いすることなく、ただ敬意を表し、練習し、提案することによって、私たちは人々にガスコン語を習得してもらい、年配の人々には再びガスコン語を始めてもらい、若者たちはランド・バグパイプのような伝統楽器を手にしてもらい、地元のポリフォニック・グループは私たちの歌をレパートリーに取り入れてもらっている。私たちのささやかな貢献によって、さまざまな人々が同じ旗のもとに集い、ガロンヌ地方やピレネー地方を越えて、この地方の知名度を高めることができるのは光栄なことだからね」
最後に、このアルバムにはどんなワインを合わせるべきなのだろうか?
「メルローではなく、100%タナだ!もちろん、MOISSON LIVIDE を存分に味わいたいなら、私のドメーヌ・ド・マティラのタナを飲まなければならない。私の祖父が1960年代に植えた古木のタナ100%の2020年のキュヴェがある。素晴らしいタンニンの強さを持ち、味わいはとてもリッチだが、とてもソフトでクリーミーでもある。家で15年から20年保存できるようなボトルだ。
アルバムを聴きながらタナを飲めば、五感が活性化する。飲むために聴き、その逆もまた然り。高価なVIPチケットよりずっといい、まさに没入型の体験だ。もし私の国を通りかかったら、遠慮なく訪ねてきてほしい。私は夜間、敷地内で人々を歓迎し、試飲やワイナリー周辺のツアーを提供しているからね」

参考文献: HARD FORCE:MOISSON LIVIDE Interview Darkagnan

HEAVY METAL DK:Interview med Baptiste ”Darkagnan” Labenne fra Moisson Livide

METAL OBS:MOISSON LIVIDE : OH, MA DOUCE FRANCE !

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ZYGNEMA : ICONIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SIDHARTH KADADI OF ZYGNEMA !!

“I Was Deeply Connected And Impressed With a Steve Vai Track Titled Blood And Tears Since I Was a Teenager. It Has Carnatic Vocals With Electric Guitar And It Still Gives Me Goosebumps Whenever I Hear It.”

DISC REVIEW “ICONIC”

「地元の音とメタル音楽をブレンドして、この都市と州の人々にとってよりパーソナルなものにするという非常に効果的なアイデアを思いついた。だから、僕らが取り入れようとしている伝統的な音楽のブレンドは、パンジャブ音楽のようにポピュラーなものではない。正直なところ、西と南のミックスなんだ。”Iconic”, “Rise Again”, “To reach the Gods” を聴いてもらえば、その装飾がはっきりわかるはずだ。歌詞はムンバイの鼓動(人々)を語っていて、できるだけ多くの顔を見せることにした。ムンバイは喧騒に満ちているんだ」
想いや思い出、共感、怒りに願い。ヘヴィ・メタルがただの “音楽” ではなく、共に歩むうちいつしか人生になるように、ZYGNEMA の “Grind” も単なる “歌” ではありません。それは、彼らが生まれ育った故郷、ムンバイの精神と人々に捧げられた力強いアンセムです。
「音楽を通して表現することを可能にし、ライブに熱心に通い、メタル音楽に耳を傾ける人々は、その経験をより個人的なものにする。そうやって自分らしくいられること、個人的な感情を自由に表現できることは、誰もが望んでいることなのだろう。そこに、それぞれの文化や意味のある歌詞を融合させることで、より絆が深まるのだと思う」
インドの伝統的なリズムとモダン・メタルのアグレッションの極上のブレンドによって生まれたこの曲は、ムンバイの喧騒、混沌、疲れ知らずのエナジーを的確に捉え鮮やかに讃えるメタル讃歌。第三世界に根を広げるメタルの生命力、包容力、感染力を完膚なきまでに実現した、絆と人生の音楽。ハードなグルーヴと大胆不敵なテーマで知られる ZYGNEMA は、心に宿るローカルな文化とメタルの獰猛さの融合がいかに魅力的であるかを再び証明しました。
「”Grind” のインスピレーションは、ヘヴィなサウンドとリフ、そして PRODIGY の “Smack my bitch up” のようなエレクトロニックでインダストリアルなサウンドをブレンドすることだった。僕が10代の頃親しみ、感銘を受けた Steve Vai の “Blood & Tears” のようにね。エレクトリック・ギターにカルナティックなボーカルが入っていて、今でも聴くたびに鳥肌が立つよ。もうひとつのインスピレーションは、偉大なる Mattias Eklundh なんだ」
ムンバイの落ち着きのない鼓動を完璧に反映した轟音リフと複雑なグルーヴによって、”Grind” は台頭するインド・メタルの、そしてムンバイの新たなアンセムとなりました。コナッコルの複雑怪奇なパーカッションと歌で従来のメタルとは一線を画す印象的なリズムの質感を生み出していますが、そのルーツが欧米でこの奏法に早くから目をつけていた Steve Vai と Mattias Eklundh にあるのも興味深いところ。そうしてこの革新的な組み合わせは、ムンバイの活気に満ちた多様な雰囲気を映し出しながら、西洋と東洋の融合を祝います。
さらに “Grind” のミュージック・ビデオは、この曲のテーマに力強く命を吹き込んでいます。ムンバイの賑やかな通りを背景にしたこのビデオは、露天商、会社員、学生など、実際この地に生きる人々の日常をとらえています。彼らは皆、撮影時に話しかけて出演を快諾してくれたムンバイの人々。だからこそ、ムンバイの鼓動を伝えるこのビデオ、そして音楽には紛れもない信憑性があります。
「ムンバイの人々はたくましく、日々の生活を楽しく切り詰めている。ムンバイで苦難は誰も惜しまない。どんな階層や階級に属していようと、誰も文句を言わない。一日の終わりに、彼らは楽しみ、自分の功績を祝う。それが、僕たちがこのミュージック・ビデオで表現したいこと」
テクノロジーとSNSによって人類は退化しているのではないか。そう訝しむ ZYGNEMA のギタリスト Sidharth Kadadi。懸命に働く人々と、喜びや祝福を分かち合う瞬間がシームレスに織り込まれるこのビデオは、人間の回復力と精神力の証であり、困難にもかかわらず、揺るぎない決意で努力し、乗り越え、繁栄を勝ち取ったムンバイとメタルの記念碑でもあるのです。
今回弊誌では、Sidharth Kadadi にインタビューを行うことができました。「ストリート・ファイターは子供の頃にプレイしたことがあり、リュウの師匠の弟 (豪鬼) が “殺意の波動”という暗黒の修行に没頭してアクマになってしまうというバックストーリーがとても面白かった。剛柔流空手を学ぶことに間違いなく興味があるし、音楽と一緒にもうひとつ芸術を学ぶ時間を作るつもりだよ」どうぞ!!

ZYGNEMA “ICONIC” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LOWEN : DO NOT GO TO WAR WITH THE DEMONS OF MAZANDARAN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NINA SAEIDI OF LOWEN !!

“The Government Of Iran Does Not In Any Way Represent Iranian People And Culture, Their Suppression Of The Arts And Oppression Of Women Goes Against Everything In Iranian culture. Our Culture Has Celebrated Women And The Arts For Millennia Prior To The Dictatorship.”

DISC REVIEW “DO NOT GO TO WAR WITH THE DEMONS OF MAZANDARAN”

「シャーナーメは、多くの寓話や物語を含む魅力的なテキストで、今日の世界で起きていることと非常に関連性があると感じるのよ。世界の舞台であれ、個人的なレベルであれ、このテキストに登場する王や悪党たちの愚行や戯れは、生き生きとした現代的なものに感じられる。この本は、色彩豊かで大げさな方法で人間性を表現した見事な作品であり、私はそれを私たちの音楽で取り入れたいと思ったの」
ペルシャの叙事詩 “シャーナーメ: 王書” は、創造と征服、勝利と恐怖に満ちた、10万行にも及ぶ広大な詩。ロンドンのプログレッシブ・ドゥーム集団 LOWEN の素晴らしき第二幕 “Do Not Go To War With The Demons Of Mazandaran” にインスピレーションを与えているのは、その中に収められている Mazandaran の悪魔の頭領 Div-e Sepid の物語。強大な力と熟練した魔術を持つ巨大な存在で、王の愚かさを懲らしめるため彼の軍隊を破壊し、失明させ、地下牢に幽閉する。
「このアルバムは、それを聴く人々への警告なの。戦争には絶対に勝者などいないし、戦争で利益を得る人間が最大の悪党となる。私はいつも、ウィリアム・ブレイクのような予言的人物に魅了されてきた。彼らは詩や芸術を使って、近未来の可能性について人々に警告を発している。このアルバムが歴史を変えることはないとわかっているけど、私たちの周りで起こっていることの愚かさを鮮やかな色彩で浮き彫りにせざるを得ないと感じている自分がいるのよ」
そう、このアルバムは戦争をけしかける愚かなる王、支配者、権力者たちへの芸術的な反抗であり、英雄に引っ張られる市民たちへの警告でもあります。いつの時代においても、戦争に真の勝者はなく、そこにはただ抑圧や痛みから利益を貪るものが存在するのみ。ただし、LOWEN の歌姫 Nina Saeidi には、そうした考えに至る正当な理由がありました。
「中東の最近の歴史は、100年以上にわたる不安定化と植民地化によって、悲劇的で心が痛むものになってしまった。今のイラン政府はイランの人々や文化を代表するものではなく、芸術の弾圧や女性への抑圧はイラン文化のすべてに反するものだと思っているわ。私たちの文化は、独裁政権以前の何千年もの間、女性と芸術を祝福してきたのだから」
イラン革命の亡命者の娘として産まれた Nina にとって、現在のイランのあり方、独裁と芸術や女性に対する抑圧は、本来イランやペルシャが培ってきた文化とは遠く離れたもの。本来、女性や芸術は祝福されるべき場所。そんな Nina の祖国に対する強い想いは、モダン・メタルの多様性と結びついてこのアルバムを超越的な輝きへと導きました。
何よりその音楽的ルーツは、彼女の祖先の土地に今も深く刻み込まれていて、ゴージャスで飛翔するような魅惑的な歌唱は、パートナーのセム・ルーカスの重戦車なリフの間を飛び回り、大渦の周りに蜃気楼を織り成していきます。”クリーン” な歌声が、これほどまでにヘヴィな音楽と一体化するのは珍しく、また、奈落の底への冒険をエキゾチシズムと知性で表現しているのも実に神秘的で魅力的。多くのメタル・バンドがアラブ世界のメロディを駆使してきましたが、LOWEN のプログレッシブ・ドゥームほど “本物” で、古代と今をまたにかけるバンドは他にいないでしょう。
今回弊誌では、Nina Saeidi にインタビューを行うことができました。「日本から生まれたプログは世界でもトップクラスよね!喜多島修と高中正義は、私の最も好きなミュージシャンの一人なの。もちろん、スタジオジブリの映画のファンでもあるし、『xxxホリック』や『神有月の子ども』など、日本の民話や神話を取り入れたファンタジーやアニメのジャンルも大好きよ。『ヴァンパイア・ハンターD』も、若い頃に好きだったアニメ映画のひとつね。ゴシック映画の傑作。
ビデオゲームでは、私はゼルダの大ファンなの。Wiiのゲームはプレイする機会がなかったけど、N64とSwitchのゲームは今でもプレイする機会があればヘビーローテーションしているの」 どうぞ!!

LOWEN “DO NOT GO TO WAR WITH DEMONS OF MAZANDARAN” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【NILE : THE UNDERWORLD AWAITS US ALL】 JAPAN TOUR 24′


COVER STORY : NILE “THE UNDERWORLD AWAITS US ALL”

“Nile Is Unconcerned With Delusions Of Functioning As an Ethnomusicological Museum Conservatory”

THE UNDERWORLD AWAITS US ALL

その名の通り、NILE はあの悠久の流れのごとく決して静止することはありません。10枚目のアルバム “The Underworld Awaits Us All” は、バンドにとってまた新たな王朝の幕開けとなりました。NILE のディスコグラフィにおけるこれまでの9作と同様、このアルバムもまた兄弟作とは一線を画すユニークな作品となっています。実際、唯一神 Karl Sanders 率いる砂漠の軍団は、アルバムごとに新たな王朝を開いていて、その芸術的刷新の傾向はこのアルバムでも続いています。太陽が昇るように規則正しく、バンドは再び前作から学んだことを取り入れ、その苦労して得た経験を頑丈な土台に注ぎ込み、ピラミッドの改築と再構築に役立てているのです。
「”Amongst the Catacombs of Nephren-Ka” と “Black Seeds of Vengeance” 以来、私たちが作ったアルバムはどれも、”他の NILE のアルバムに似ている “とか、”あのアルバムのようなサウンドにしたかったのか? “とか、好きなレコードのどれかに似ていると言う人がいることに気づいたが、私はシンプルに “メタルを作ることに集中する” ことを好む。人々が愛着を抱くような過去のアルバムを作ったことで、最終的に “やると呪われる、やらないと呪われる” 状況が生まれるのなら、我々は “呪われる” を選ぶんだ」
とはいえ、その新鮮さにもかかわらず “The Underworld Awaits Us All” は紛れもなく NILE のアルバムであり、すぐにそれとわかるバンドの特徴が焼き付けられています。好奇心をそそるエジプト学と古代史、練り込まれたオリエンタルなリフ、燃えるようなテンポと骨の折れるようなスローダウン。これは1994年に NILE がデビュー・デモをリリースして以来、創意工夫を重ねてきたデスメタルの異形であり偉業です。
そして30年後の今、私たちは “Chapter For Not Being Hunged Upside Down On A Stake In The Underworld And Made To Eat Feces By The Four Apes” “冥界の杭の上で逆さまに吊るされ、四匹の猿に糞を食べさせられることのないように” という信じられないようなタイトルの曲を食べさせられることになりました。決してその場しのぎではない、タイトルから曲調に至るまで、デスメタルを愛する人々のためのデスメタル。
新たな血の注入を受けた “Four Apes “は、NILE が今でもレッドラインを越えてなおアクセルを吹かせられることを証明しているのです。ドラマーのファラオ、George Kollias の音の壁を破るようなパフォーマンスだけでも YouTubeは大賑わいでしょう。ある意味、人間離れしたスピードとレーザーガイドのような正確さが組み合わさったこの曲は、過去にバンドが好んだテクニカルなワークアウトを進化させています。NILE のDNAは、そのカタログの総和。
ゆえに、”Four Apes” は2015年の “What Should Not Be Unearthed” のような楽しさがあり、2019年の “Vile Nilotic Rites” のようなダイナミックできらびやかな鋼鉄のサウンドデザインも完備しています。それでも、NILE に刻まれた DNA のもう1つ、改革に執着する部分も存分に発揮されています。

その改革と再生へのこだわりは、”The Underworld Awaits Us All” に深く入り込めば入り込むほど明確になっていきます。”Doctrine Of Last Things” は、NILE の真髄であるスローモーなリフをピラミッドのように積み重ね、盛り上げていきます。テクニカル・ドゥームを愛する多くのリスナーが、なぜこのバンドをマイルストーンとして挙げるのか。Sanders とその仲間たちがもたらす、脂ぎった、悪臭を放つグロテスクな音像はしかし、川の急流のように決して淀まず、静止せず、前へ前へと流れていくのです。
「我々は歴史保存協会ではない。どの曲もアイデアを見つけるのにかなりの時間を費やし、そしてそのアイデアを新しい場所に持っていく。リサーチするだけでは十分ではない。私たちに言いたいことがあることも重要だと思う。これまでのレコードを振り返ってみると、私たちがただ歴史を語っているのではないことがわかる。これは歴史小説だ。歴史小説という媒体を通して、私たち自身の視点や考えを伝えているのだよ」
アメリカを拠点とする NILE は今回も、エジプト学のダークなエッセンスを再びより集めました。エジプト地域の残忍でしかし神秘的な歴史に、これほど適切なサウンドトラックを提供したアーティストはこれまでいないでしょう。しかし Sanders は NILE の音楽が、まず文化の保存ありきではないと主張します。
「NILE は、民族音楽博物館としての機能には無頓着だ。我々は、何よりもまずメタル・バンドである。だから、民族音楽学上の食人族に近いかもしれない。我々のギター・リフの基礎となっている東洋的な様式や調性は、すべてのメタル・リフの遺産とも共通していて、その性質上、多様なアイデアの交配と再利用を推し進めているんだ。それは古代の文化を守ることとは正反対だ。私たちはそうしたアイデアを取り入れて新たなメタルを “作って” いるのだから」
NILE は、ただの文化的なトリビュート・バンドとみなされることへの挑戦を続けると同時に、30年の間に冥界を震撼させるような作品を次々と発表してきたことで、自分たちに課したプレッシャーも克服しているのです。だからこそ、過去のアルバムとは一線を画す部分があります。
「これはストレートな NILE のアルバムだ。東洋の影響を受けたトーンや様式美はまだそこにあるが、このアルバムの直感的な焦点は、メタルの純粋で野蛮な本質にある。私は最近、無意味にオーケストレーションされ、過剰にプロデュースされたレコードの数々を聴いてうんざりしていたので、このアルバムを書いている間、キーボードを下ろしてクローゼットの中にしまい込んだのさ」

Sanders はこの作品でデスメタルの意味を再発見しました。
「デスメタルのレコードは、まず殴打し、次に楽しませるものだと思う。思慮深く、より複雑でスローなものを最初にレコードの前面に出すと、人々は “ああ、これはブルータルじゃない。邪悪さが足りない。あいつらどうしたんだ?” ってなるからね。
それを、”Ithyphallic” で気づいたんだ。”Ithyphallic” の1曲目、”What May Be Safely Written” は、ビッグで長くて壮大な野獣のような曲だけど、必ずしも即効性のある曲ではない。かけてすぐにバーンという感じではない。奇妙で、クトゥルフ的で、クトニックなスタートだった。あの曲に対するリアクションが、このレコードをどうするか、決定づけたんだ。ハードでツボを押さえた曲を前面に出さなかったせいで、迷子になってしまった人もいると思う。教訓を得たよ。まずは頭を殴って、それから別の場所に連れて行こう」
デスメタルに音楽理論は必要なのでしょうか?
「でも、ギターというのは本来、自分が何をやっているのかわからなくてもいいものだと思う。CELTIC FROST のフロントマンである Tom G. Warrior は、ギターで何をやっているのかさっぱりわかっていないが、信じられないような音楽を作っている!
私が知っているデスメタルを演奏している人たちの中には、自分が何を演奏しているのかまったくわからないのに、音楽を作っている人たちがいる。では、理論は必要なのか?いいえ」
しかし、Sanders 自身は音楽をもっと深く掘り下げているように思えます。
「私はいろんなタイプの音楽を聴く。それは NILE の音楽にも表れていると思う。CANNIBAL CORPSE と SUFFOCATION しか聴かない人、とは思えないよね。NILE を聴くと、他のものもたくさん聴こえてくる。でも、それは必ずしもデスメタルにとって必要なものではない。
つまり、デスメタルばかり聴いていれば、デスメタルをうまく演奏できるようになると思うよ。実際、そういう人はたくさんいるけど、私はたまたまいろんなものが好きなだけなんだ。
影響を受けたものが1つだけだと、音楽的には満足できない。世の中には宇宙みたいに広い音楽の海があって、楽しめるものがたくさんある。実際、クソほどたくさんの音楽があり、クソほどたくさんのギターがある。学べば学ぶほど、自分が何も知らないことを知ることになる!」

A面、B面というロスト・テクノロジーもこの作品で再び発掘されました。
「レコードのシーケンスは、デジタルの時代になって失われた芸術だと思う。70年代には、アイズレー・ブラザーズのレコードがあった。A面はパーティーのレコードで、B面までに誰かとイチャイチャしていなければ、大失敗だ。
10代の頃、友達の家に集まってレコードをかけて、ハイになって、しばらくアルバムのジャケットを見つめていたね。A面とB面の曲順は本当に重要だった」
実際、NILE はエジプトの歴史を紐解くだけでなく、ロックやメタルの歴史をも紐解いているのです。
「ブルータルなリズム・パートから別のリズム・パートへと移行し、フィーリングを変化させたり、フックの到来を予感させたりするようなパッセージ。それは、エレクトリック・ギターの先駆者たちにさかのぼる。ブルースやジャズのコード進行、モチーフ、ターンアラウンドからね。それらははすべて、CREAM やEric Clapton, 初期の Jeff Beck といった初期のものを研究した結果なんだ。Jeff Beck! なんてすごいギタリストなんだ!
レノンとマッカートニーの作品を研究するだけでも、学べることはたくさんある!たとえ君がテクデスを演奏していたとしても、何であれ、ソングライティングはクソ重要だ。音楽的な要素をどのように取り入れ、それらを使って音楽的なストーリーを語るかを知ることは、ただ空から降ってくるようなものではない。
そのためには多くの技術が必要で、巨匠たちの作品を研究することが重要だ」
“The Underworld Awaits Us All” におけるバンドのヴィジョンは、そうしたロックの生々しく奔放で野蛮さのある作曲をすることでした。
「過去の NILE のアルバムでは、確かにエキゾチックな楽器をふんだんに取り入れた。バグラマ・サズやグリセンタール、トルコのリュート、古代エジプトのアヌビス・シストラムに銅鑼、様々なパーカッションなど、自分たちの手で演奏するアコースティックな楽器もあれば、キーボード、ギター・シンセ、映画音楽のライブラリもあった。すべてが混ざり合って、静かに脳を爆発させる音楽。
それはそれでとても楽しいよ。弦楽器では、ギターのテクニックをクロスオーバーさせることもある。バグラマやグリセンタを手にしたときでも、私がメタル奏者であることに変わりはない。やっぱり自分なんだ。つまり、魔法のようにマハラジャに変身したりはしない。私はメタル・パーソンだからな。
でもね、今回は曲の進展が進むにつれ、合唱パートをキーボードで考えるのではなく、本物のヴォーカリストにやってもらおうと思ったんだ。高校時代の友人が地元のゴスペル・クワイアで活動していて、4人のゴスペル・シンガーを紹介してくれた。ゴスペル・シンガーたちとのレコーディング・セッションは、とても素晴らしいものだった。彼らは私たちが誰なのかも、デスメタルというものが一体何なのかも知らなかった。しかし、レコーディング・セッションが進むにつれて、彼らはブルータルなグルーヴとの天性の関係をすぐに見出し、あっという間にヘッドバンギングをしていたよ」

Sanders がたどり着いたリフの極地。それは、シンプルであること。
「初期の CELTIC FROST の大ファンなんだ。シンプルな曲で、シンプルなギター・パートなのに、信じられないほどヘヴィなんだ。
リフやアイデアがシンプルであればあるほど、より直接的な結びつきが生まれ、その重みを感じることができる。重さ、破滅、それはとてもとらえどころのないものだ。あまりトリッキーになりすぎると、破滅の感覚をすぐに失ってしまう。それは儚いものだ。鹿のように逃げてしまう!
そう、シンプルなリフが重要なんだ。この NILE の新譜では、すべての新しいクレイジーさに混じって、スローなリフがたくさんある。
それに、シンプルであること自体が美しいこともある。ある曲のヴァージョンがあるんだけど、ちょっと待って、思い出そうとしているんだけど、古いルー・リードの曲で、”Sweet Jane” という曲なんだけど、15年前に誰かがそれを発表したんだ。シンプルなアコースティック・ギターで、アンビエンスがたくさんで、ボーカルが1レイヤー入っていて、他には何もないんだけど、今まで聴いた中で一番美しくて、心を揺さぶられるような曲だった」
アコースティックな楽器の演奏を覚えるのは、メタル・パーソンの嗜みだと Sanders は考えています。
「よく自問自答するんだけど、現代にはエレクトリック・ギターや大きなドラム・キット、エレクトリック・ベースがある。5,000年前の人々は、邪悪でクソみたいなことをやりたいとき、どうしていたのだろう?ってね。エレキギターはなかった。持っているもので何とかするしかなかった。
逆に、もし人類が滅亡してしまったら……黙示録がやってきたら、私はどうやって生きていけばいいんだろう?電気がなくなったら、どうやってエレキギターを弾けばいいんだ?だから、アコースティック・ギターを弾けるようになった方がいい。4,000年前にはアコースティック楽器しかなかったわけだから」

もうひとりのギタリスト、Brian Kingsland とのコンビネーションも熟成されてきました。
「Brian がギタリストとしてやっていることの新鮮さがとても好きだ。彼は、必ずしもメタル的なアイディアではないけれども、それをメタル的な文脈の中で演奏している。例えば、彼はピックと3本の指で複雑なアルペジオ・シークエンスを演奏するんだけど、それは必ずしもメタルの文脈では見られないものなんだ。
例えば、ふたりでマイナーセブンスフラットファイブ(m7b5)のアルペジオを弾いても、彼はピックだけじゃなくて指も使っているから、ヴォイシングが全部変わっていく。
彼が簡単そうに聴かせるから、聴いているとすべてがスムーズで簡単に聴こえるが、実際にやっていることはとても新鮮だ。このアルバムで彼が書いた曲のコード・ヴォイシングのいくつかは、”なんてこった!天才だ!” って感じだ。彼は私とはまったく違うスタイルを持っているのに、NILE のやっていることを正確に理解している。このギター・チームには本当に満足しているよ」
いつかは “Doom” のようなゲームのサウンド・トラックを作りたいという野望もあります。
「僕は “Doom” のファンなんだ。”Doom Eternal” のサウンド・トラックは神がかり的で、そのサントラも持ってるよ。家事をしながら聴いているんだけど、そうすれば、家の中で何かしていても、それがくだらない家事であっても、”Doom” をやっているように感じられるから、苦に感じないんだ(笑)
メタルはこういう壮大なストーリーにとても適している。誰かが NILE の音楽を取り上げて脚本にする必要があるね!」
NILE の作曲法には黄金の方程式があります。
「僕らの曲作りに秘密のハックや近道があるかどうかはわからない。でも通常、その道は歌詞から始まり、曲はそこから発展していくんだ」
実際、NILE のストーリーテリング能力は驚異的です。エジプトの神々が戦争を繰り広げ、人類を混乱に追いやった遠い過去へとリスナーを即座にいざなうことができるのですから。そして驚くべきことに、彼らが語る神話的なエピソードは、しばしば現代の私たちの世界と共鳴していきます。

例えばテム (アトゥム) 神。タイトル・トラック “The Underworld Awaits Us All” の主題である創造神テムは、同じ名前の略奪的なオンラインショッピングサイト Temu の形で復活したのかもしれません。Sanders は、神をデジタルの形で解き放つという役割に喜びを感じています。
「PCのスタートページに Temu が現れ、すでにアマゾンで買ったものを売りつけようとするのを見るたびに、このタイトル曲の歌詞を思い出すよ。”死がなかった時代があった、テム神だけが存在した時代が”。
今考えているのは、このアルバムがリリースされたら、Temu のAIボットが私に直接広告を出して、 “The Underworld Awaits Us All” を Temu で買わせようとするなんて皮肉な未来だ。いずれわかるだろう」
とはいえ、メタルはデジタルの恩恵も強く受けています。Sanders はメタルとギターの進化に目を細めています。
「新しいデスメタルはファンがいろいろ送ってくれるから、どんなことがあっても見つけられる。私の受信箱はバンドからの問い合わせでいっぱいだ。デスメタルからは逃れられないんだ。でも、私たちは今、メタルという芸術の爆発的な進化の中に生きていると思う。
YouTubeの登場は、音楽活動のあり方を大きく変えた。例えば私が演奏を学んでいた頃は、YouTubeはなかった。何かを学ぶことは、必ずしも今ほど簡単ではなかった。でも今は、もし君が若いギタリストなら、スティーブ・ヴァイと入力するだけで、ビデオが150本も出てくる。そしてそれを見ることができる。
誰かが何かをやっているのを見るのは、それをただ聴くのとはまったく違う経験だ。好むと好まざるとにかかわらず、私たちは霊長類なのだ。だから今、私たちは、信じられないほど豊富なギター演奏の知識に瞬時にアクセスできる世代を持つことになった。クリックひとつで、しかも無料で。
それを理解し、ハングリーで、何かを学びたいと思っている人たちにとっては、まさにうってつけだ。ここ10年のギター・プレイのレベルは、こんな感じだ!生きていてよかった。まさにメタル・リスナーのための時間だよ」
同時に、怒りが渦巻く世界で、その対処法も古代エジプトからヒントを得ました。
「”Stelae Of Vultures”(禿鷹の墓)。個人的なアンガーマネジメントみたいなものだね。エンナトゥムがウンミテ人を容赦なく虐殺し、その殺戮を楽しんだときに何が起こったのか?いったいなぜ彼は人々を虐殺し、ハゲタカの餌にするようなことをしたのか?なぜ彼は殺戮と残虐行為に酔いしれたのか?誰も、戦いの初期に彼が矢で目を撃たれたことについては言及しない。矢で目を撃たれるなんて、痛いに決まっている。一日中痛むに違いない。慈悲や人間性という概念が窓から消えてしまうに違いない。
これは人間の状態を表す良いたとえ話だ。目には目をというだけではない。目には目をから始まり、そして飽くなき、しかし破壊的な血の欲望を鎮めるために、さらにもっととエスカレートしていく」

つまり、NILE の曲は過去からのストレートな伝言ではなく、例えばホメロス詩や、ヘロドトスの歴史のように神話や伝説が入りこんでいます。さらに、曲によってはラブクラフト的な超自然的な感覚も存在するでしょう。
「私のプロセスはシンプルだ。曲を書く時間だ。本棚に行く。ランダムに本を選ぶ。これは僕が持っている “死者の書” の一冊だ。目を閉じて開き、 目を開けて、そこに何があるか見る。
たいていの場合、これは曲作りの方法としては愚かなことだ。なぜなら、本を開いて適当なページを開いても、そこにはメタルの曲になるようなものは何もないからだ。でも、何十回かに1回くらいは、本を開いて “これはメタル・ソングになるかもしれない” と思うことがある。
“冥界の杭に逆さまに吊るされず、4匹の猿に糞を食わされないための章” がそうだ。私は “死者の書” を第181章まで開いた。逆さ吊りにされず、糞を食べさせられないための章だった。それを見て、これはメタルの曲になると思ったんだ。そして、本から与えられたものを何でも、時にはとんでもなく薄いものでも、メタルの曲に変えてしまうんだ。そうすると大抵、他の本を手に取らなければならなくなる」
だからこそ、ある意味確立された歴史よりも、未だ未知なる歴史の方が題材にしやすいと Sanders は考えています。
「泥沼に片足を突っ込んでしまえば、その泥沼で水しぶきを上げるのは簡単だ。だから私は古王国時代(王朝時代以前の時代)が好きなんだ。その時代について実際に知られていることは少ない。だから、デスメタルのようなアーティスティックな表現もしやすい。私たちは古代史のバランスの取れた視点を提示しているのではない。デスメタルの曲を書いているんだ。それは2つの異なることなんだ。4,000年前の土器を大切に保存する歴史保存協会とは違うんだ。私たちはデスメタルの曲を書いているんだ。無名で誤解されているものを掘り起こして、より誤解されるようにしているんだ。それがとても好きなんだ」
エンターテインメントが学びの入り口となることはよくあることです。
「だから、このままでいいと思う。今、考古学者や大学教授として活躍している人の何割が、ボリス・カーロフの映画で初めてエジプト学に触れたのだろう?では、それは本当に悪いことなのだろうか?歴史について本当に知りたければ、図書館に行くなり、ヒストリーチャンネルを見るなり、インターネットを見るなりして、自分で実際に少し読めばいい。ハリウッドは、そして我々は人々を楽しませるのが仕事であり、その過程で自由を奪うことはできない。エンターテインメントが教育に優先すると決めたのは社会だからな!」


参考文献: NEW NOISE MAG:INTERVIEW: KARL SANDERS OF NILE TALKS ‘THE UNDERWORLD AWAITS US ALL’

STEREOGUM:Animals Of The Nile: An Interview With Nile’s Karl Sanders

METAL INJECTION:INTERVIEWSKARL SANDERS Talks Creating “Music For Tripping” On Saurian Apocalypse, Three Decades Of NILE & The Evolution Of Metal

GUITAR WORLD : KARL SANDERS

SOUNDWORKS DIRECT JAPAN

日本盤のご購入はこちら。Ward Records

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ESODIC : DE FACTO DE JURE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZED AMARIN OF ESODIC !!

“Even If Acceptance Doesn’t Grow Significantly, I Don’t Foresee Metal Vanishing From the Middle East, As It Conveys Specific Messages And Emotions That Resonate Uniquely With Its Audience.”

DISC REVIEW “DE FACTO DE JURE”

「ロサンゼルスに移住してバンドを復活させようと決めたのは、ヨルダンですべてのチャンスを使い果たしたから。どんなに最善を尽くしても、ヨルダンで自分のバンドや他のバンドとドラムを演奏して持続可能なキャリアを築くことはできなかった。自分の情熱を追求し、好きなことで生計を立てられる場所に移住する必要があることがはっきりしたんだ」
スラッシュ・トリオ、ESODIC の歴史は深く長く、1995年にヨルダンのアンマンで結成され、当初は PURGATORY として知られていました。彼らは過去30年間にデモ、スプリット、そして2枚のEPをリリースしていますが、ヨルダンでのメタル活動には限界がありました。
「スラッシュ・メタルに惹かれた理由。スラッシュには、現実の問題や社会的不正義を訴えてきた長い歴史があり、それが僕たちの心に深く響いた。SEPULTURA, KREATOR, EXODUS のようなバンドは、政治的なテーマや抑圧への反抗を声高に主張してきた。このサブジャンルは、強烈でパワフルな音楽を通して、僕たちのフラストレーションをぶつけ、現実の複雑さに取り組むための完璧なはけ口を提供してくれる」
SLAYER, TESTAMENT, KREATOR, SEPULTURA, EXODUS といった巨人たちにインスパイアされた ESODIC の音楽と哲学は、抑圧や差別と戦い続けてきた偉人たちの薫陶を受け、常に中東の激動する社会政治情勢を反映したものでした。だからこそ、中東、ヨルダンという不安定な場所においては、バンドとしての存在そのものが嫌がらせや逮捕の危険にさらされていたのです。
「メタル関連の品物をすべて没収されたり、投獄されたり、殴られたり、精神的にも肉体的にも拷問に耐えた者もいた。僕たちの元メンバーは皆、何年にもわたる拘留と激しい嫌がらせに苦しんできた。ムスリム同胞団が大きな影響力を持つ中、ヨルダン政府は僕たちのイベントでの過激な暴力の可能性を防ぐために、メタルヘッズを標的にしていたんだ。それは例えば、10年ほど前、怒った首長の一団がハロウィーン・パーティーで100人以上の人々を石で攻撃したことがあるから。悪魔崇拝者だと決めつけたからだ」
悪魔崇拝。かのパリ・オリンピックでも GOJIRA が揶揄されたように、21世紀の今となってもメタルに貼り付けられたレッテルはそうやすやすと剥がれ落ちてはくれません。伝統や宗教色が濃い国ならなおさらでしょう。しかし、ESODIC やメタルが目指す抑圧への怒り、自由への回復力、寛容な世界への祈りはそれでも決して根を上げることはありません。
“De Facto De Jure” で彼らはウダイ・フセインをテーマにスラッシュ・アタックをキメています。あのサダム・フセインの息子にして、”中東で最も忌み嫌われた男”。女性やスポーツ選手の命をあまりに無慈悲に、ぞんざいに扱った男の愚行は、何年経っても忘れ去るわけにはいかないのです。
「中東ではイスラム教の存在とその禁止事項が強いにもかかわらず、メタル音楽が完全に消滅することはないだろうね。多くのアラブ諸国は、以前よりも徐々にメタルを受け入れつつある。たとえ受容が大きく進まないとしても、メタルがこの地域から消えることはないだろう。なぜなら、メタルは聴衆の心に響く特別なメッセージや感情を伝えているからだよ」
ESODIC は、あらゆる困難をものともしない強さを、回復力を音楽的な寛容さへと還元し、多様で豊かな中東と世界の融解を導き出しました。ここでは、神秘的でエキゾチックなアラビアン・ナイトと、デスラッシュの狂気がひとつの均質な塊として信じられないほどうまく機能しています。ヘヴィなギターとブルータルなボーカルが、トライバルなリズムと繊細な民族音学、民族楽器に命を吹き込む冒険のシンドバッド。ほのかに漂うメランコリーは、ヨルダンを出国せざるを得なかった Zed の望郷の念でしょうか。
今回弊誌では、Zed Amarin にインタビューを行うことができました。「音楽には癒しと団結の力があるように、理解と思いやりを育む役割を果たすことができると信じているからね。ボブ・マーリーがかつて言ったように、”音楽のいいところは、当たっても痛みを感じないところだ”。音楽は架け橋となり、僕たちに共通の人間性を思い出させ、明るい未来をもたらす手助けをすることができるよ」 どうぞ!!

ESODIC “DE FACTO DE JURE” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【ARKA’N ASRAFOKOR : DZIKKUH】


COVER STORY : ARKA’N ASRAFOKOR “DZIKKUH”

“Metal Comes From Rock. Rock Comes From Blues. Blues Comes From The Blacks Deported To America. The Very Basis Of Metal Comes From Home. Metal Is African!”

DZIKKUH

トーゴ出身のメタル・バンドが、世界に羽ばたこうとしています。Arka’n Asrafokor は、メタルの激情とトーゴの音楽遺産を見事に融合させています。同時に、彼らはモダン・メタルの多様性を理解して、ファンク、ラップ、サイケデリックなタッチを混淆し、地球という唯一無二の美しき星へ音楽を捧げているのです。
3月末。Metal Hammer が週間ベスト10曲を発表しました。このおすすめリストは、通常、北米とヨーロッパのアーティストが独占しています。しかしその週は、メタル界のレジェンドたち、Ozzy Osbourne や Serj Tankian に混じって、トーゴのバンド Arka’n Asrafokor がシングル “Angry God of Earth” でランクインし、ガラスの天井を打ち破ったのです。この曲は、竜巻のようなスラッシュで始まり、儀式的な香りを匂わせる催眠術のようなテクスチャーを召喚。生のメタルと西アフリカの祖先の響き、母なる大地への祈りを巧みに融合させています。
「我々が選ばれたと聞いたとき、まず頭に浮かんだのは、どうして我々があんなところにいるんだろうということだった。きっとハードワークのご褒美なんだ。ロックは逆境に立ち向かうための、信念の行動だったから」
Kodzo Rock Ahavi は作曲を手がけ、ほとんどすべての歌詞を書いているバンドの顔。彼にとっても、Metal Hammer のようなビッグ・マガジンにチョイスされることは晴天の霹靂でした。

Ahavi は2010年、トーゴの首都ロメに数年前にオープンしたスタジオでデモのレコーディングを開始し、音楽プロジェクトをスタートさせました。そこで行う他のアーティストのプロデュースは、現在も彼の主な収入源となっています。
「トーゴのような国でメタル・プレイヤーとして生計を立てるのは難しい。芸術を愛するがゆえに、無償で演奏することを厭わない人でなければ、とてもじゃないけど続けられないよ!
トーゴにはメタル・シーンがひとつもなかったから、本当に大変だった。ステージもなかった。それに、みんなこの音楽が何なのか知らない。でも、トーゴのあちこちで戦略的に演奏してみたんだ。目的に応じて場所を選んだ。少しずつ、メタルが何なのかを知ってもらえるようになった。そして特に、私たちのスタイルが何なのかをね。そして驚いたことに、彼らはそれを気に入ってくれた。メタルを聴いたことがない人もいたけれどね。彼らは音楽の伝統的な側面が好きなんだ。彼らはそれを理解することができた。音楽は自分たちのルーツを映し出す鏡だった。
ここの人たちはロックを知っている。いいロックバンドがいる。でも、今のところトーゴで唯一のメタル・バンドは私たちだ。だから、音楽的な仲間がいたとは言えないと思う」

少しずつ、Ahavi はミュージシャンの友人を集め、自作曲と AC/DC や SCORPIONS のカバーを交互に演奏するライブを行うようになりました。そして口コミで、ほんの数週間のうちに、ロックとエクストリーム・メタルのファンで構成される、小さいながらも忠実な地元のファン・ベースが作られるようになったのです。
「反響はすごかった。カヴァーのリクエストはどんどん減り、オリジナル曲がどんどん増えていったんだ」
もちろん、困難もたくさんありました。
「私たちは悪魔崇拝者と呼ばれていた。少なくとも最初はそう呼ばれていた。西洋的なメタルのイメージ。黒い服を着て、ステージのあちこちで飛び跳ねたり、うなり声をあげたり…。でも、ファン層が広がり、クレイジーな連中がステージで何をしているのか、何を歌っているのかを彼らが理解したいと思うようになると、あっという間に状況は変わっていった。
自分たちのルーツから生まれた音楽だから、検閲もないしね。リスナーは自分が何を聴いているのかわかっている。トーゴの外に住んでいる人たちでさえね。例えばガーナのように、同じリズムと文化を共有している人はたくさんいる。私たちのメッセージは現実的で、人生や社会についてのもの。エキセントリックでも非倫理的でもない。だいじなのは自分の未来と自由のため、愛する人のために立ち上がり戦うこと、先人たちの残した足跡をたどること」

Arka’n Asrafokor はそうして2015年に誕生し、現在まで安定したラインナップを保っています。2019年、彼らはファースト・アルバム “Za Keli” をリリースし世界を驚かせました。トライバル、スラッシュ、グルーヴ、デス……といったメタルのサブカテゴリーを幅広く取り揃え、Ahavi が常に引き出してきた影響のるつぼを凝縮した作品。
「私たちのエウェ語で、Zã Keli とは闇と光、夜と昼という意味。この世界を支えている二面性、そして私たちはそれを受け入れ、調和し、自分の役割を果たさなければならないという事実を常に忘れないために、このアルバムタイトルを選んだんだ。Zã Keli の二面性は、アルバムのほとんどすべての歌詞で感じることができる。明るい花の咲く丘や暗い地獄のような谷、笑いや涙、学び、成長、しかし魂の内なる核は安全で、手つかずで、明るく、人間的であり続ける。私たちの曲を聴けば、希望に満ちた美しい平和的な言葉が、他の曲では憎悪と貪欲から私たちの母なる地球に死を撒き散らす者たち、罪のない生命を破壊する者たちへの無慈悲な戦いを呼びかける戦士の叫びが聞こえてくる」

リズムは、轟音のシーケンス、ファンク・エレガンス、アフリカの打楽器が組み合わさり、ラップ、レゲエ、サイケデリックなギターソロも取り揃えています。Ahavi は KORN と Jimi Hendrix、PANTERA と Eddie Van Halen を同じくらい愛しているのです。そして彼は、自分の創作過程をアーティストと作品との一対一の対話だと考えています。
「作曲をするときは、曲の流れに身を任せ、曲が私に何を求めているのかに耳を傾ける」
“Zã Keli” はオープナー “Warrior Song” から最後まで、メタル・アルバムでは出会ったことのないような楽器やサウンドの数々で楽しませてくれる作品でもあります。ガンコグイ(地元のカウベル)、アクサツェ(パーカッシブなシェイカー)、エブー・ドラム、ジャンベ、そして西アフリカのトーキング・ドラムなど、彼らがヘヴィ・メタルを解釈するための道具はまさに無限大。
6/8拍子で演奏されるほとんどの楽曲。これもまた彼らの民族音楽を強く反映しています。伝統に沿ったメタルの演奏にこだわるのは、自分たちのルーツを誇り、自分たちが何者であるかを世界に示すため。
特に近年の多様なモダン・メタル、その折衷的なカクテルの中では、ルーツが特別な意味を持ちます。
「私のベースのインスピレーションは、やはりトーゴの伝統文化。その雰囲気、その知恵だ。スピリチュアルなものは目に見えないことが多い。しかし、アルカーンやアフリカ全般にとって、物理的な力とスピリチュアルなものは2つの異なるものではない。それどころか、一方は他方の延長であり、その連続なんだ。身体、石、木には魂がある。私たちはスピリチュアルなものを音楽から切り離すことはしない。アルカーン という言葉は、まさにその宇宙の隠された側面を指している」

そして Arka’n Asrafokor の創始者は、自分がアフリカ大陸で異質なメタルを作っているとは思ってもいません。
「メタルはもともとアフリカのものだ。だからこそインスピレーションをブレンドしやすい。アフリカのメタルは、長い海を越えて帰ってきた放蕩息子を迎えるようなものなんだ」
彼の主張を理解するには、祖先が遠く離れた土地に無理やり連れ去られたという歴史を思い返す必要があります。
「西アフリカ人が奴隷として米国に連れて行かれ、その子孫がブルースを発明し、それがロックに進化し、さらにそれがメタルに進化した。そう考えれば、たしかにメタルはそもそもアフリカのものだろ?」
その誇りは音楽にもあらわれています。
「私たちの音楽は、アフリカで接ぎ木したヨーロッパのメタルではない。私たちは地元の言葉であるエウェ語を話すので、人々は私たちが歌うことの精神的な意味を理解できるからね。私たちが演奏するリズムも純粋なヨーロッパ的なものではなく、アフリカの人々はそれに共感する。ときどき村の人に我々の音楽を聴かせると、故郷のいい音楽だと言ってくれる。私たちのやっていることは、ある種ユニークで、ポップな傾向に縛られていないから、聴衆は年齢層で分けられることもない。誰でも聴くことができる」

素晴らしき “Za Keli” のあと、彼らは国際的に知られるようになり、他のアフリカ諸国でも公演を行うようになりました。海外で自分たちをアピールする機会がさらに増え、2019年末にガーナの首都アクラで行われたコンサートは、訪れた数人のヨーロッパのプロモーターまでも魅了し、フランス、ドイツ、スイスでの演奏に招待されたのです。それ以来、彼らは世界中でメタル・フェスティバルの常連となりました。
さらに、サハラ砂漠以南のメタルのアイデンティティを描いた著書 “Scream for me, Africa” で、アメリカ人作家のエドワード・バンチスが彼らを主役に抜擢します。ハック誌のインタビューで、アフリカの荒々しいサウンドを聴き始めるのに理想的なバンドについて尋ねられたとき、バンチスは躊躇しませんでした。
「Arka’n Asrafokor の音楽はクレイジーだ。聴く者を別世界に誘う。今まで誰も聴いたことのないものを聴くには、気合いが必要なんだ」
ボツワナの SKINFLINT のような他のアフリカン・メタル・バンドも、アフリカ大陸の音の遺産に敬意を表しているのはたしかです。
「アフリカのメタルは今やそれほど珍しいものではなくなった。ケニア、ガーナ、ナイジェリア、南アフリカ、ボツワナ、ウガンダ、アンゴラ……から推薦できるバンドはたくさんある。アフリカのデスメタルシーンの守護者であるボツワナの OVERTHUST と WRUST, OverthrustとWrust、ボツワナのヘヴィ・メタル SKINFLINT。ケニアの SEEDS OF DATURA や LAST YEAR TRAGEDY, 素晴らしき DIVIDING THE ELEMENTS, そしてもちろんチュニジアの MYRATH は最も世界的に知られたアフリカン・メタル・バンドのひとつだね。我々は皆、”訛りのあるメタル” をやっているし、そうあるべきなんだ」

しかし、彼と彼のバンド仲間たちはこのルーツとメタルのミックスを明らかに “別のレベル” まで高めているのです。それは、言語(彼らは英語、フランス語、トーゴ語のエウェ語で歌う)、メロディー、そして外見さえも超えた “完全な融合”。ビデオやコンサートでは、Arka’n Asrafokor のメンバーは、往年のトーゴ人兵士へのオマージュとして、黒とアフリカの衣装をミックスしたり、顔に白いペンキを塗ったりしています。エウェ語でアスラフォは戦士を意味し、アスラフォコアまたはアスラフォコールはアハヴィの造語ですが、戦士たちの音楽を意味し、ザ・ケリは戦士の歌という独自の賛美歌。
「アルカンとはスピリチュアル。アスラフォは母国語で戦士を意味する。そしてアスラフォコールは戦士の音楽を意味する。戦士は私たちの文化の象徴だった。彼らは常にコミュニティのために戦い、死ぬ準備ができていた。名誉、正義、真実、平和、愛のために死ぬ準備ができている。そして、この心と魂の状態は、常に私たち一人ひとりの心の奥深くに生き続け、保ち続けなければならないものだ。それがアルカンの精神だ。私たちはそういう人間だ。それこそが、祖先の歩みを受け継ぐ戦士の掟なんだ」
そうして昨年、彼らはドイツのビッグ・レーベル、アトミック・ファイア・レコードと契約を結びましたが、Ahavi は依然としてDIY的アプローチを貫いています。
「レコーディング、ミックス、ミュージックビデオの撮影、編集…私たちは特定のマーケットに合わせたり、流行のトレンドに引っ張られたりすることなく、完全に自由を謳歌している」
“Got to break it” や “Walk with us” のような曲のビデオでは、ミニマルな風景と手作りのエフェクトが個性を生み出し、YouTube ユーザーのコメント欄には、”過小評価” という形容が繰り返されています。

そうして Arka’n Asrafokor たちの音楽を用いた闘いは、崇高な目標を追求していきます。「正義、平和、愛…すべての生き物の起源である母なる地球への敬意」
Ahavi はそうバンドの理念を声高に宣言します。彼にとって、環境保護が人間の外部にあるもののように語られることは驚きでしかありません。
「私たちは自然の一部なのに。人間は明日、呼吸画できるかどうか決めることはできないんだ」
セカンド・アルバム “Dzikkuh” の象徴となる “Angry God of Earth” は、盲目で貪欲な人間の行き過ぎた行為と、それに怒る神について語っています。この曲は、神の懲罰としての気候的黙示録を描いているのです。
「死だけが残る。人間が蒔いた種を刈り取る時が来た。私たちの文化では、地球は女性的であったり男性的であったりする。彼女の怒りをこれ以上刺激しないようにしよう」

参考文献: EL PAIS:Un grupo de metal de Togo se abre hueco en el panorama del rock duro internacional

ECHOES AND DUST :(((O))) INTERVIEW: ARKA’N ASRAFOKOR: TOGO HEAVY METAL WARRIORS

PAN AFRICAN MUSIC :Arka’n : “Metal is African”

ATOMIC FIRE RECORDS

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PIRATE QUEEN : GHOSTS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VICTORIA OF PIRATE QUEEN !!

“As a Woman I Believe We All Have The Same Chances To Reach Our Goals In Music World And It Must Not Be Divided By Gender.”

DISC REVIEW “GHOSTS”

「私たちは実際、あらゆる不正義と戦っていると言えるでしょうね。私たちはメタル・シーンが、そこにいたいと願うすべてのミュージシャン、すべての人にとって安全で親切な場所であってほしいと切に願っているの。音楽の世界でゴール、目標に到達するチャンスは女性も同じだけあると信じているし、それは性別によって分断されてはならないものなの」
かのメタル世界のゴールド・ロジャー、RUNNING WILD がジョリー・ロジャーの旗の下航海に旅立ってからおよそ40年。パイレーツ・メタルという異端の生みの親がフェスのヘッドラインを飾るようになった21世紀。その多様で寛容なメタルのグランドラインに颯爽と登場したのは、5人の女海賊でした。5人にとってのワンピースとは、すなわち海闊天空。悠遠に広がるメタルの海がただ、寛容で、親切で、平等な場所であること。そして、その秘宝は必ずや音の戦、実力で手に入れます。
「故郷のリクシオンは浮島で、いつも簡単に見ることができるわけではないんだ。リクシオンでの生活は自由の香りがいっぱいで、主に女性がリードしているの。もちろん男性もいるけどね。古い航海年代記には、海賊の才能によって結ばれた血縁関係にある5人の少女たちが一堂に会する時が来るという予言が記されているの。そして激動の2023年、私たちは実際にメインランドで再会した。浮島はそんなに大きくないから、とにかくみんな顔見知り。だから、すべては自然に起こったことなの」
ただし、PIRATE QUEEN の5人は RUNNING WILD よりもはるかに年上です。年代期に残る古い記録によると、彼女たちは1523年に海賊を始めています。バミューダ・トライアングルの中にある謎の浮島リクシオンに生を受け、500年もの長い時を刻んできた PIRATE QUEEN の5人は、女王に忠誠を誓いながら世界各地で領海を広げ、名声を上げ、ついに再集結を果たします。すべては、女王の名の下に。音楽の自由、メタルの自由こそ、今の彼女たちが欲する宝。
「私たちは “ファンタジー・メタル” という言葉を使っているのよ。メタル・スタイルとクラシックのミックスだと思っている。パワー・メタルに近いけれど、よりファンタジー的な要素を含んでいると言えるかもしれない。とはいえ私たちが作曲をするときは、ジャンルにとらわれないことを好む。それが海賊の自由の賜物だから。自分たちが作ったものが好きである限り、私たちは海賊船でどこへだって行くことができるのよ」
実際、PIRATE QUEEN の海賊船に踏破できない海はありません。女海賊たちは7つの海へと繰り出し、エピック・メタルの遺産を驚くべき技術とモダンな精神で略奪していきます。クラシックなメタルに壮大なセンスを吹き込み、古の襲撃者たちからインスピレーションを得つつ、未知の海域に踏み込み、見慣れぬジャンルから略奪した宝物でメタルを豊かにしていくのです。
漂流する船の音とセイレーンの歌声。荒波の中で5人はリスナーをフォークとエキゾチックなメロディーの渦に巻き込み、海洋ファンタジーと壮大なメタルの精神を呼び起こします。女王陛下のカリスマ性と海賊たちの無限のエネルギーは、ボーカル・ハーモニー、オーケストレーションを巻き込んで幾重にも重なるメタルの聖地マリージョアをここに完成させたのです。
今回弊誌では、ギタリストにして海賊大将 Victoria Pearl Fata-Morgana にインタビューをおこなうことができました。「リクシオンの海賊の世界も変わってきていて、意見の食い違いがあっても絶対に暴力や戦争が解決策になってはいけないと思っているのよ。我々は海賊で、我々が生き残るために何をしてきたかについて、いろいろと言われることは知っているの。でも、今は戦争は避けなければならないと心から信じている」 “Ghosts” の妖艶な転調がたまりませんね。どうぞ!!

PIRATE QUEEN “GHOST” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OU : Ⅱ: FRAILTY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANTHONY VANACORE OF OU !!

“Yoko Kanno Is a Prolific Composer In That Area And She Is One Of My Favorite Composers, And Definitely Has an Influence In The Music Of OU.”

DISC REVIEW “Ⅱ: FRAILTY”

「最終曲の “Recall” でジェゴグを使うアイディアがあった。だからそのパートのレコーディングを手伝ってもらえないかと芸能山城組に連絡を取ったんだよ。彼らはとても親切に対応してくれたけど、残念ながら実現はしなかったね。そこで、僕の恩師のひとりであるマイケル・リプシーに連絡を取ったところ、彼がジェゴグの故郷であるインドネシア・バリ島の知り合いに連絡を取ってくれて、そこの偉大なミュージシャン、 Ida Bagus Made Widnyana がそのパートを録音してくれることになったんだ」
デビュー作で世界を驚かせた中国のプログ・メタル・アクト OU から連絡があったのは、彼らがセカンド・アルバムを制作している最中のことでした。あの芸能山城組とコンタクトを取りたい。デビュー作でインタビューを行ってくれた君に何かツテはないだろうか?と。
AKIRA のサウンド・トラックを手がけたビッグネームにツテなどあるはずがありません。しかし、なんとか彼らの期待に応えようと、コンタクト・フォームや電話などでアプローチを試みました。ありがたいことに、芸能山城組からはとても丁寧で親切な返信 (リモートではなく実際に同じ場所で演奏をしたいという哲学) をいただき、残念ながら今回のコラボレートは実現しないことになりました。
「日本のアニメの音楽には以前から興味があったよ。AKIRA の音楽は、これまでに作られたサウンドトラックの中で最も興味深いもののひとつだと思う!菅野よう子はこの分野で多作な作曲家であり、僕の好きな作曲家の一人で、間違いなく OU の音楽に影響を与えているよ」
実現こそしませんでしたがそれでも、私は OU の情熱と包容力と見識の高さに一層魅了されてしまいました。まず、AKIRA や菅野よう子、芸能山城組という日本が誇る革新的な文化に大きく影響を受けている見識の高さ。そして、中国という伝統文化の結晶から、さらにインドネシアのジェゴグ、日本文化にアプローチを試みるその情熱と包容力。まさに、多様性と寛容さが花開く現代のメタル世界、その象徴的存在でしょう。
「音楽全体のテーマとして共通しているのは、”Fragility” 脆さ。そして人間の状態というものが本当にどれほどか弱いものなのか、どれほど簡単に流されてしまうものなのかということを扱っているんだ」
実際、彼らが扱うテーマやその音楽自体も現代のメタルを体現し、今の世界を反映したもの。この暗い世界で私たちは、人間があまりに脆く弱い存在であることを再確認しています。より良き場所へ向かうはずだった世界は、人間の脆さにより挫折し、弱い人間を抑圧し排除するかつての短絡的で “簡単な” 生きづらいレールへと舞い戻ってしまいました。OU は、中国という奇妙にバランスとのれたしかし危うい国から、人間の弱さを見つめ直しています。そして同時に彼らは、かつて強さや勝利に重きを置いていたヘヴィ・メタルの世界線に、弱さや儚さの音の葉を注ぎ込んでメタルの現在地をも更新して見せました。
「STRAPPING YOUNG LAD 時代からずっと、彼の作品はほとんど全部好きだよ。特に彼のアルバムで好きなのは、”Ghost”, “Deconstruction”, Empath”, “Lightwork”, あとはすべてのライブ・アルバムだね。特に “Order of Magnitude” は素晴らしいよ」
そんな儚くも美しい “II:Frailty” において、最後のピースは Devin Townsend のプロデュースとゲスト参加に違いありません。まさにその身を挺してメタルの多様性を切り開いてきた偉人。プログ、パンク、アンビエント、ジャズ、オーケストラにアコースティックとさまざまな切り口でメタルの進化を促した Devin は、”Frailty” にミニマルで繊細な音の織物をマキシムにレイヤーしていきました。ミニマリズムとマキシマイズこそ Devin の真骨頂。爆発的なバンドの力と幽玄絶後なボーカル、そして煌びやかなシンセの海は、まさに狂おしく、夢のように波打ちます。
今回弊誌では、Anthony Vanacore にインタビューを行うことができました。21世紀の “Mandalyon” of THE GATHERING。 二度目の登場。どうぞ!!

OU “Ⅱ: FRAILTY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALBION : LAKESONGS OF ELBID】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOE PARRISH OF ALBION !!

“I Prefer To Go Back To The Source Itself, As In The Original Folk Songs And Melodies Themselves, Rather Than The Versions Of That Sound Found In Rock Or Metal Music.”

DISC REVIEW “LAKESONGS OF ELBID”

「僕が ALBION のために書こうとしている音楽は、基本的には精巧でありながら、できれば本物のフォーク・ミュージックをモダンな楽器で演奏し、アレンジにクラシックのアプローチを取り入れたものにしたい。最近のロックやメタルによくあるバージョンではなく、オリジナルの民謡やメロディーのように、起源そのものに立ち返ることを好んでいるんだ」
ある時点で、メタルのトレンドに躍り出た欧州のフォーク・メタルが、徐々にその輝きを失っていったのは、明らかに飽和と画一化が理由でした。それもそのはず。先達のフォーク・メタルから拝借したようなフレーズを満載したフォーク・メタルは、すでに伝統音楽の色香さえ失っていたのですから。その間に、インドや中東、アフリカ、アジア、南米、南太平洋の各地で、メタルの感染力は猛威をふるい、その生命力と包容力で世界中の日常を捉えた “フォーク・ミュージック” と融合を果たしていきました。
では、欧州のフォーク・メタルは消えゆく運命にあるのでしょうか?否。あの JETHRO TULL で薫陶を受け、完全復活の立役者となったギタリスト Joe Parrish 率いる ALBION がその流れを変えつつあります。彼らの音楽は、まがいものではなく、真のフォーク・ミュージックと当時の風景、日常、神話、そしてリュートやフルートのような楽器に根ざしているのですから。
「60年代や70年代のロック・ミュージシャンの多くは、細部まで考えすぎるのではなく、直感的な情熱のようなもので、短期間に多くのこと(ライヴ、アルバム、曲)をやり遂げ、アイデアにコミットする…そんな自信のようなものを持っていたと思う。Ian と一緒に仕事をし、彼とレコーディングをしたことで、僕はただアイデアにコミットし、物事を本当にやり遂げることができるようになったんだ。準備しすぎたり、細かなことで自分を苦しめて最終的な完成を遅らせるのではなく、もう少し自分の直感を信じることができるようになった。芸術の世界では、クリエイティブで多くのアイデアを持っている人の割合が高いが、そのアイデアにコミットし、実現までやり遂げる人の割合はかなり少ないからね」
さらに、ALBION にはかつての偉大なミュージシャンに備わっていた直感力を兼ね備えています。Joe が JETHRO TULL を離れたのも、まさにそれが理由。狂気のフラミンゴこと Ian Anderson と仕事をする中で学んだ、直感のアイデアを具現化する力。そうして彼はビッグ・バンドを離脱して、アーサー王伝説とその時代をプログ・メタル、フォーク・メタルに投影するアイデアを、完成させる道を選んだのです。
「逃避という側面は極めて重要なものだ。すべての素晴らしい芸術は、何らかの形で “トランスポート” する能力を持っている。よく、つらい時や状況を乗り切るために、特定の曲や音楽のことを口にする人がいるけど、それはよくわかるよね。ある曲や作品に惚れ込んだとき、その曲や作品によって日々の感情や経験が大きく変わることがある。それがアートや音楽の “変容力” なんだ!」
そうして完成を見た “Lakesongs of Elbid” には、アートに込められた “変容力” が備わっています。JETHRO TULL に傾倒した OPETH のような、現代的なリフワークに目覚めた BLIND GUARDIAN のような、その新鮮なフォーク・メタルの息吹は、リスナーの憂鬱や喪失を抱きしめながら、その感情をポジティブに変容させ、そして歴史上のめぐるめくファンタジーへと誘います。ALBION にとっての “聖杯” とは、リスナーの心を変容させる音の葉のこと。そうして彼らは、プログレッシブでフォーキーなメタルの王位継承を目指し、邁進していくのです。
今回弊誌では、Joe Parrish にインタビューを行うことができました。「自分たちが聴きたくなるような音楽を作っているだけさ。それがアーティストとしての誠実さを保つ唯一の方法なんだ。他人をなだめたり、アピールしたり、迎合したりするようなことを始めた時点で、アーティストではない。いやまあ、アーティストなんだろうけど、不誠実極まりない人間になる。それは、作品にあらわれるよね」 どうぞ!!

ALBION “LAKESONGS OF ELBID” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HEMLYN : WARS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AL JAZIRI OF HEMLYN !!

“Ultimately, The Future Of Metal In Africa Depends On Nurturing Local Talent, Improving Infrastructure, And Fostering a Supportive Environment For Metal Enthusiasts, And Fusing The Genres.”

DISC REVIEW “WARS”

「アフリカにおけるメタルの未来は、地元の才能を育て、インフラを改善し、メタル愛好家を支援する環境を育み、ジャンルを融合させることにかかっている。僕は、メタルは現地の音楽のルーツを借りてこそ受け入れられるものだと心から信じている…つまり、フュージョンが鍵なんだ。そして決意と投資をしさえすれば、アフリカは多様性を謳歌し、このジャンルの世界的景観に貢献する活気あるメタル・コミュニティを育成する可能性を秘めているんだ」
メタルの生命力、感染力、包容力は、文化や人種、国、大陸、宗教、性別の壁をのりこえて、今や世界各地で芽吹いています。それでも、アフリカへ到達し、その場所で花開くためにはおそらく、世界のどの場所よりも時間が必要でした。それはまず、貧困や治安の悪化からくるインフラの不足、機材の不足。そして何より、現地のルーツとかけ離れた音楽性もその理由でしょう。
「HEMLYN の創作過程では、地元のパーカッションと僕たちの青春時代のギター・ヒーロー、両方の世界の要素を融合させている。僕たちの音楽はロックとスフィの要素を融合させたもので、だからこそチュニジアの文化遺産と音楽の旅を反映したユニークなサウンドを作り出せたんだ」
チュニジアの神秘的な音楽集団 HEMLYN のリーダー Al Jaziri は、アフリカにおけるメタルの未来を見据えて、自身のルーツである SYSTEM OF A DOWN のようなグルーヴ・ギターと、自らの血である北アフリカのパーカッションや旋律を見事に融合させました。あまりにユニークでエキゾチック、アフリカとメタルがシームレスにつながったその音楽は、砂漠に浮かぶ蜃気楼、シティ・ブ・サイドのように驚きと感嘆、現実からの逃避場所をリスナーに届けるのです。
「僕にとって、日本のアニメやビデオゲーム、そしてヘヴィ・メタルは、とどまるところを知らない想像力と、日常生活の制限を超越することができる幻想的な世界を提供してくれる。スーパーマンや悟空のように空を飛んだり、宇宙を股にかけた壮大な冒険に乗り出したり、不正義に立ち向かったりすることを夢見たり。こうした芸術形態は、現実の苦難に必要な休息を与えてくれる」
HEMLYN の音楽が、現実からの逃避場所となり得たのは、Ali がメタルと同じくらい、日本の文化を愛していたからでした。地中海に面した美しい国チュニジアにしても、やはり貧困や病気、抑圧に暴力といったアフリカの苦難は存在します。新曲 “Mafia 52” も、革命後の政府の抑圧、自由の搾取に対するプロテスト・ソング。そんな日常で Al の心が休まる時間が、メタルと日本のゲームやアニメだったのです。
「マンガもメタルも、従来の常識に挑戦し、より明るく希望に満ちた未来を垣間見せてくれるオルタナティブな視点を表現しているんだ。そうした文化は、人間の精神の回復力と、現実の枠を超越する創造性の力を体現し、疎外され、抑圧されていると感じている人々に慰めとインスピレーションを与えてくれるのさ」
HEMLYN の音楽は情景音写と感情豊かなリリックで、リスナーを音の旅へと誘います。パワフルなギター・リフ、プリミティブなリズム、魂を揺さぶるヴォーカルで、リスナーの心を非日常へと連れ出すのです。そう、アニメもマンガもゲームもメタルも、現実のくだらない常識や慣習を打ち破り、抑圧から解放された未来をもたらす希望のアート。そして、HEMLYN ほどそのアートを世界にもたらすに適したバンドは他にいないはずです。
今回弊誌では、Al Jaziri にインタビューを行うことができました。「アニメ、ゲーム、音楽を含む日本文化は、常に僕を魅了してきた。思いやり、寛大さ、友情、忍耐力、ユーモアなど、人生の貴重な教訓を教えてくれたんだ。ゼルダやソニック、マリオやストリートファイターなどの日本のビデオゲームのサウンドトラックは、僕の作曲へのアプローチに影響を与え、永続的な影響を残した…菊池俊輔の作曲は、何十年もの間、僕の中で共鳴し続けた。いつもメタルを聴きながらマンガを読んでいたのを覚えているよ。だからこそ今、僕の中でノリタカのようなマンガは、STRATOVARIUS のようなバンドと永遠に結びついているんだ」 どうぞ!!

HEMLYN “WARS” : 10/10

INTERVIEW WITH AL JAZIRI

Q1: When I think of metal and rock in Tunisia, I first think of MYRATH. Is metal/rock music actually popular in Tunisia? Are you influenced by them?

【AL】: MYRATH is indeed one of the most respected metal bands that originated from Tunisia. Even though metal music faced challenges after the revolution of 2011, it was quite popular, loved by many Tunisians. Metal concerts, including bands like Dark Tranquility, were well-received. After a decade of absence, metal is making a comeback in Tunisia, and I personally aim to promote this genre further. While MYRATH are friends of HEMLYN, our styles differ significantly, and we don’t consider ourselves directly influenced by them. However, we may share common influences in rock music. Personally, my music is influenced by Soufi music, Californian metal, and English rock music. Since I was five years old, I was roaming in my father’s soufi and pop mega shows (Hadhra – Nouba, etc.

Q1: チュニジアのメタルやロックといえば、まず MYRATH を思い浮かべる人が多いかもしれませんね。チュニジアではメタルやロックはポピュラーなのでしょうか?MYRATH からは影響を受けていますか?

【AL】: MYRATH は、チュニジアから生まれた最も尊敬されるメタル・バンドのひとつだよ。2011年の革命後、メタル・ミュージックは困難に直面したんだけど、それでもメタルは多くのチュニジア人に愛され、かなり人気があった。DARK TRANQUILLITY のようなバンドを含むメタルのコンサートは好評だったしね。
10年の後、チュニジアではメタルがカムバックしつつあり、僕は個人的にこのジャンルをさらに促進することを目指しているんだ。MYRATH は HEMLYN の友人だけど、僕たちのスタイルは大きく異なり、彼らから直接影響を受けたとは考えていないよ。ただ、ロック・ミュージックにおいては共通の影響を受けているかもしれない。個人的には、僕の音楽はスフィー・ミュージック、カリフォルニアのメタル、イギリスのロックに影響を受けている。5歳の頃から、父のスフィやポップ・メガ・ショー(Hadhra – Noubaなど)の中を聴き歩いていたからね。

Q2: I think you differ from MYRATH and ORPHANED LAND in that you are more primitive and based on traditional North African music, whereas they are more oriental in melody. These differences give you a great personality, would you agree?

【AL】: The traditional North African, specifically Tunisian, popular music is in my blood, having been born into it. I grew up on stage, and learned the job alongside great artists. Hemlyn’s creation process blends elements from both worlds, to local percussion and the guitar heroes of my/ our youth. Our music is a fusion of rock and Soufi elements, creating a unique sound that reflects our cultural heritage and musical journey. After two years of Covid, we composed a total of 21 tracks divided into two parts. “Mafia 52” being the second song released from Part 1 of the “WARS” album.

Q2: MYRATH や ORPHANED LAND とあなたたちの違いは、彼らがよりオリエンタルなメロディーを主軸としているのに対して、あなたたちはよりプリミティブで伝統的な北アフリカの音楽をベースにしている点だと思います。この違いが HEMLYN に素晴らしい個性を与えていますね?

【AL】: 北アフリカ、特にチュニジアの伝統的なポピュラー音楽は、生まれながらにして僕の血の中に流れている。僕はステージで育ち、偉大なアーティストたちとともに仕事を学んだ。
HEMLYN の創作過程では、地元のパーカッションと僕たちの青春時代のギター・ヒーロー、両方の世界の要素を融合させている。僕たちの音楽はロックとスフィの要素を融合させたもので、だからこそチュニジアの文化遺産と音楽の旅を反映したユニークなサウンドを作り出せたんだ。
パンデミックの2年間を経て、僕たちは2つのパートに分かれた全21曲を作曲した。”Mafia 52 ” は、アルバム “WARS” のパート1からリリースされた2曲目にあたる。

Q3: How did Hemlyn start and where did the name Hemlyn come from?

【AL】: In 2013, when I came back from from Los Angeles where I studied music, I realized that I needed to form a band that had a very distinct signature. We know already that the world is full of awesome musicians, so instead of imitating existing styles, I wanted to create something authentic and unique through the fusion process, very much like fusing ingredients into a new recipe to create a new dish. After recruiting talented musicians in my city and brainstorming band names, I came up with the name, and HEMLYN was born. The name reflects our journey as music wanderers, seeking our own path beyond conventional norms, HEMLYN could be translated to RONIN in Japanese.

Q3: HEMLYN はどのように始まり、その名前はどこから来たのでしょう?

【AL】: 2013年、音楽の勉強をしていたロサンゼルスから戻ってきたとき、とても特徴的なバンドを結成する必要があると気づいたんだ。世界中に素晴らしいミュージシャンがたくさんいることはもう知っているから、既存のスタイルを真似するのではなく、フュージョンのプロセスを通して、何か本物のユニークなものを作りたかった。
そうして僕の住む街で才能あるミュージシャンを募り、バンド名をブレインストーミングした結果、HEMLYN が誕生した。この名前は、音楽の放浪者としての僕たちの旅を反映している。だから、HEMLYN は日本語に訳すと “浪人” なんだよ。

Q4: Seplutura’s “Roots” was a record that changed the world of metal, bringing third world traditions, vitality and diversity to a predominantly western metal scene. Were you influenced by them and the Nu-metal movement?

【AL】: While many people make comparisons to Sepultura, personally, I wasn’t influenced by them. My primary fusion inspiration comes from System Of A Down. Their socially and politically engaged music resonated with me deeply. Combining Armenian melodies and rhythms with powerful riffs, and Serj Tankian’s powerful vocals left a lasting impression on me as a singer and songwriter. System Of A Down’s music remains relevant even today, almost two decades later….

Q4: SEPLUTURA の “Roots” はメタル世界を変えたレコードで、西洋のメタル・シーンに第三世界の伝統、活力、多様性をもたらしました。彼らの哲学や Nu-metal のムーブメントに影響を受けましたか?

【AL】: 多くの人が僕らと SEPLUTURA を比較しているけど、個人的には彼らから影響を受けたわけではないんだよ。僕のフュージョンのインスピレーションの源は、SYSTEM OF A DOWN だ。彼らの社会的、政治的に関与した音楽は、僕の心に深く響いた。アルメニア語のメロディーとリズムにパワフルなリフを組み合わせ、Serji Tankian のパワフルなボーカルは、シンガー・ソングライターとしての僕に強烈な印象を残したね。SOAD の音楽は、20年近く経った今日でも僕らと大きな関連性があるんだ…。

Q5: In recent years, metal bands that incorporate traditional music, such as Bloodywood, have given the impression that they are rebelling against the power and government of their country with their music.” The title “Mafia 52” is a strong title, what is the theme or meaning behind it?

【AL】: “Mafia 52” is a commentary on Law 52 in Tunisia, which imposes severe restrictions on personal freedoms, particularly regarding drug offenses. The song critiques the abuse of power enabled by such laws, symbolized by the title “Mafia 52.” It reflects a rebellion against oppressive legal frameworks and the authorities enforcing them. Themes of resistance, defiance, and the pursuit of freedom resonate strongly with the context of Law 52 in Tunisia, highlighting broader societal issues through the lens of metal music. The upcoming album “WARS” is in fact a collection of critiques about everything that is wrong with society, and each song is a battle against any form of injustice or struggle.

Q5: 近年、BLOODYWOOD のような伝統音楽を取り入れたメタル・バンドは、その音楽で自国の権力や政府に反抗することが多いように思えます。”Mafia 52″ という強烈なタイトルには、どんな意味が込められていますか?

【AL】: “Mafia 52″ はチュニジアの法律52号に対するコメントで、個人の自由、特に麻薬犯罪に関して厳しい制限を課している。この曲は、”マフィア52” というタイトルに象徴されるように、このような法律が可能にする権力の乱用を批判している。抑圧的な法的枠組みとそれを執行する当局への反抗を反映しているんだよ。
抵抗、反抗、自由の追求というテーマは、チュニジアの法律52号の背景と強く共鳴し、メタル音楽のレンズを通してより広い社会問題を浮き彫りにしている。今度のアルバム “WARS” は、実際、社会のあらゆる問題についての批評集であり、それぞれの曲は、あらゆる形の不正や闘争に対する “戦い” なんだ。

Q6: I was surprised to know that you love Japanese culture, anime, games and music, including Akira Toriyama. What works of art do you particularly enjoy? Do you draw inspiration from them?

【AL】: Ah now we are talking!
I am a fan of the 80’s / 90’s manga era. From Gunnm to GTO, Noritaka to Ruroni Kenshin, ARMS, Yuyu Hakusho & Hunter X Hunter , Bleach, Ranma 1/2, Death Note and of course Dragon ball Z.. Japanese culture, including anime, games, and music, has always fascinated me. It taught me valuable life lessons about compassion, generosity, friendship, perseverance, and humor. Japanese video game soundtracks, such as those from Zelda and Sonic, Mario and Street fighter have left a lasting impact on me, influencing my approach to music composition… the compositions of Shunsuke Kikuchi resonated in me for decades. And I remember always having metal music in my ears when I was reading mangas, and now mangas such as Noritaka are bound forever with bands like like Stratovarius.

Q6: あなたが鳥山明をはじめ、日本の文化、アニメ、ゲーム、音楽が好きだと知って驚きました。特に好きな作品は何ですか?また、日本の文化からインスピレーションを受けることはありますか?

【AL】: 話が盛り上がってきたね!僕は80年代、90年代の漫画のファンなんだ!ガンダムからGTO、破壊王ノリタカ!、るろうに剣心、ARMS、幽遊白書、ハンターXハンター、BLEACH、らんま1/2、デスノート、そしてもちろんドラゴンボールZまでね。
アニメ、ゲーム、音楽を含む日本文化は、常に僕を魅了してきた。思いやり、寛大さ、友情、忍耐力、ユーモアなど、人生の貴重な教訓を教えてくれたんだ。ゼルダやソニック、マリオやストリートファイターなどの日本のビデオゲームのサウンドトラックは、僕の作曲へのアプローチに影響を与え、永続的な影響を残した…菊池俊輔の作曲は、何十年もの間、僕の中で共鳴し続けた。いつもメタルを聴きながらマンガを読んでいたのを覚えているよ。だからこそ今、僕の中でノリタカのようなマンガは、STRATOVARIUS のようなバンドと永遠に結びついているんだ。

Q7: The world has changed dramatically in 2020’s with pandemics, divisions, and wars. The world is full of lonely or oppressed people, Both of the fantasy of Japanese anime and video games and heavy metal are perfect escapes and recoveries from such dark realities. Is that part of what made you fall in love with both?

【AL】: The world is indeed in a state of constant flux, marked by pandemics, divisions, and conflicts that leave many people feeling lonely or oppressed. Throughout history, this struggle between the powerful and the marginalized has persisted, and art has always played a cathartic role and offering emotional comfort in the face of adversity.
For me, Japanese anime and video games, as well as heavy metal, offer fantastical realms where imagination knows no bounds and where one can transcend the limitations of everyday life. Whether it’s dreaming of flying like Superman or Goku, embarking on epic adventures across the universe, or standing up against injustice, these art forms provide a much-needed respite from the struggles of reality.
In my journey, Michael Jackson’s visit to Tunisia in ’98 left a profound impact on me. Sharing the stage with him ignited a passion within me to pursue music as a career. His music, along with the world of mangas, shaped my worldview as a ’90s kid. Additionally, bands like Metallica, Marilyn Manson, Korn, Muse, and System of a Down became pillars of inspiration for me. Their music served as a beacon of hope, reminding me that I am not alone in navigating the challenges of this oppressive world.
In essence, both mangas and metal represent alternative perspectives that challenge conventional norms and offer glimpses of a brighter, more hopeful future. They embody the resilience of the human spirit and the power of creativity to transcend the confines of reality, providing comfort and inspiration to those who feel marginalized or oppressed.

Q7: パンデミック、分断、戦争など、2020年代の世界は劇的に変化しました。世界は孤独や抑圧された人々で溢れ、日本のアニメやビデオゲーム、そしてヘヴィ・メタルのファンタジーは、そうした暗い現実からの逃避や回復に最適だと感じます。あなたがその両方を好きになったのは、そうした理由もあるのでしょうか?

【AL】: パンデミックや分断、紛争によって、多くの人々が孤独や抑圧を感じている。歴史を通じて、権力者と疎外された人々との間のこの闘争は続いてきた。そして芸術は常に、逆境に直面したときに感情的な安らぎを与え、カタルシスをもたらす役割を果たしてきたんだ。
僕にとって、日本のアニメやビデオゲーム、そしてヘヴィ・メタルは、とどまるところを知らない想像力と、日常生活の制限を超越することができる幻想的な世界を提供してくれる。スーパーマンや悟空のように空を飛んだり、宇宙を股にかけた壮大な冒険に乗り出したり、不正義に立ち向かったりすることを夢見たり。こうした芸術形態は、現実の苦難に必要な休息を与えてくれる。
僕の旅では、98年のマイケル・ジャクソンのチュニジア訪問が大きな衝撃を残したんだ。彼とステージを共にしたことで、音楽を職業にしたいという情熱に火がついた。彼の音楽は、マンガの世界とともに、90年代の子供だった僕の世界観を形作った。さらに、METALLICA, Marilyn Manson, KORN, MUSE, SYSTEM OF A DOWN といったバンドは、僕にとってインスピレーションの柱となった。彼らの音楽は希望の光となり、この抑圧的な世界の困難を乗り越えようとしているのは自分ひとりではないことを思い出させてくれた。
要するに、マンガもメタルも、従来の常識に挑戦し、より明るく希望に満ちた未来を垣間見せてくれるオルタナティブな視点を表現しているんだ。そうした文化は、人間の精神の回復力と、現実の枠を超越する創造性の力を体現し、疎外され、抑圧されていると感じている人々に慰めとインスピレーションを与えてくれるのさ。

Q8: I believe that metal has the power to transcend religious, racial, gender, and cultural barriers. Still, it took a long time for metal to flourish in Africa. Do you think metal will gain more vitality in Africa in the future?

【AL】: Honestly, it’s going to depend on people. The flourishing of metal in Africa hinges largely on the support and promotion of local emerging bands. Historically, metal has been predominantly associated with Western civilizations, with notable contributions from England and the United States.
In contrast, Africa has faced challenges in establishing a thriving metal scene, largely due to infrastructural limitations and a lack of support for local artists. Unlike genres like blues and rap, which have deep roots in African culture, metal has taken longer to gain traction. Nevertheless, there is potential for growth and vitality in the African metal scene with concerted efforts to support emerging talent and improve infrastructure. However, I truly believe that Metal music can only be accepted if it borrows the roots of the local music… Fusion is the key.
Japan serves as a prime example of how dedication to promoting metal bands can lead to international success. With a robust metal scene and effective promotion strategies, Japanese bands have gained recognition on the global stage. However, in the third world, where production quality may be limited and infrastructure lacking, the path to prosperity is more challenging.
Ultimately, the future of metal in Africa depends on nurturing local talent, improving infrastructure, and fostering a supportive environment for metal enthusiasts, and fusing the genres. With determination and investment, Africa has the potential to cultivate a vibrant metal community that celebrates diversity and contributes to the genre’s global landscape.

Q8: メタルには宗教、人種、性別、文化の壁を超える力があると信じています。それでも、アフリカでメタルが花開くには長い時間がかかりました。今後、アフリカでメタルはもっと活性化すると思いますか?

【AL】: 正直なところ、それは人によるだろう。アフリカにおけるメタルの繁栄は、地元の新興バンドのサポートとプロモーションに大きく依存している。歴史的に、メタルは主に西洋文明と結びついていて、イギリスやアメリカの貢献が顕著だ。これとは対照的に、アフリカではメタル・シーンの繁栄が困難で、その主な原因はインフラ面での制約と地元アーティストへの支援不足だ。アフリカ文化に深く根付いているブルースやラップのようなジャンルとは異なり、メタルは人気を得るまでに時間がかかった。とはいえ、新たな才能を支援し、インフラを改善するための協調的な努力によって、アフリカのメタル・シーンには成長と活力の可能性を得た。僕は、メタルは現地の音楽のルーツを借りてこそ受け入れられるものだと心から信じている……つまり、フュージョンが鍵なんだ。
日本は、メタル・バンドのプロモーションへの献身が国際的な成功につながるという典型的な例だよね。強固なメタル・シーンと効果的なプロモーション戦略によって、日本のバンドは世界の舞台で認知されるようになった。しかし、生産の質が限られ、インフラが不足している可能性のある第三世界では、繁栄への道はより困難となる。
結局のところ、アフリカにおけるメタルの未来は、地元の才能を育て、インフラを改善し、メタル愛好家を支援する環境を育み、ジャンルを融合させることにかかっている。決意と投資をしさえすれば、アフリカは多様性を謳歌し、このジャンルの世界的景観に貢献する活気あるメタル・コミュニティを育成する可能性を秘めている。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED AL’S LIFE!!

METALLICA “Black Album”

Turning point in my life, a Hit packed album, that turned me into a metal believer.

SILVERCHAIR “Neon Ballroom”

The orchestral composition of Emotion Sickness and the vocal performance changed my perception of what is possible to do with rock, and broke boundaries.

MUSE “Origin of Symmetry”

The specific rock and classical piano approach along with Mathew Bellamy’s vocal performance comforted my taste of fusing genres. Being a piano player that used to love Chopin, a found this album refreshing. So much that I called Chris Rock , the engineer who mixed and mastered this album to work one my first album.

SYSTEM OF A DOWN “Toxicity”

A true slap in the face, powerful, inspired, angry, engaged, fused with unconventional instruments and melodies. My true inspiration as a fusion artist, leading me to create a Tunisian Tribal Metal genre.

METALLICA “Reload”

Metallica again, because their evolution, and the emotion around their art. Metallica is not a music genre, it’s a world. Besides, Hetfield was my greatest vocal teacher with Tankian.

MESSAGE FOR JAPAN

First of all, one of my goals in life is to travel to Japan! Try delicious meals, from sushi platters to yakisobas and ramens, Yattaa!! !!
And I AM going to attend to the 2025 universal expo in OSAKA, and I WILL one day perform in Japan in front of Metal fans! To Japanese people I say this: Your sensitivity, friendship, hard work and creativity force respect!
Keep being amazing at what you do JAPAN, you are a very special country.
Thank you Sin for your interest in Hemlyn. Be Safe and Keep Head Banging!
PS: I am enthusiastic about an opportunity to meet you in Japan and discuss our shared passion for music and culture, should you be available. Additionally, I am proud of the project at Le Centre Des Arts Jerba (https://centre-arts-jerba.com/fr/), founded by my father, Fadhel Jaziri. The center aims to promote artistic and cultural exchange, offering a platform for diverse performances and exhibitions. I believe it contributes to the enrichment and promotion of the region’s cultural heritage and is deeply intertwined with my day-to-day involvement with music and arts. Looking forward to chatting more!

まず、僕の人生の目標のひとつは、日本を旅行することだ!寿司の盛り合わせから焼きそば、ラーメンまで、美味しいものを食べて、ヤッタァ!!
そして、2025年に大阪で開催される万国博覧会に参加し、いつか日本のメタル・ファンの前でライブをするつもりだよ!日本の皆さんに言いたい。君たちの感性、友情、努力、創造性は尊敬に値する!日本は特別な国だよ。HEMLYN に興味を持ってくれてありがとう。安全第一で、ヘッドバンギングを続けてほしい!
PS:僕の父、ファデル・ジャジリが設立したLe Centre Des Arts Jerba (https://centre-arts-jerba.com/fr/)のプロジェクトを誇りに思っているんだ。このセンターは、芸術的・文化的交流を促進することを目的としており、多様なパフォーマンスや展示のためのプラットフォームを提供している。僕は、このセンターがこの地域の文化遺産の充実と振興に貢献し、私の日々の音楽や芸術との関わりと深く結びついていると信じているんだ。また話せるのを楽しみにしているよ!

AL JAZIRI

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