COVER STORY : DREAMWAKE “THE LOST YEARS”
“Wavecore Is Essentially The Mixture Of Synthwave And Metalcore. We Just Took The Two Coolest Sounding Words From Both Of Those And Put Them Together.”
WAVECORE
2025年のヘヴィ・ミュージック・シーン。多くのモダン・メタル・バンドが創造的なことをしているのを目にします。SLEEP TOKEN はメタルに強烈でポップなオーラをもたらし、ELECTRIC CALLBOY はヘヴィ・ミュージックをパーティーに変えていきます。また、ICE NINE KILLS はメタルのスタイルでホラーに命を吹き込んでいます。
そして4年前、シンセ・ウェーブへの強烈な愛と情熱をメタル・コアのスタイルに融合させたバンドは今、そのアイデアを広げただけでなく、サックスを全面的に取り入れ、彼らのブランド “ウェーブ・コア” のアーバンでセクシーなサウンドを開花させました。
メタル・コアにプログレッシブなアプローチを取り入れ、そこにシンセウェイヴやサックスパートを持ち込む野心。コネチカットの DREAMWAKE は2018年以降、そのサウンドと野心を見事にスケール・アップさせてきました。セカンド・アルバム “The Lost Years” では、まさに独自の進化を遂げたメタルの構築に成功。彼らの “ウェーブ・コア”サウンドは、メタル・コアのヘヴィネスとシンセウェイブの温かくノスタルジックなフィーリングをカップリングしたもので、まさに唯一無二の取り合わせ。まず、ウェーブ・コアとはどういったジャンルなのでしょうか?ギタリストの Dave Pazik が答えます。
「ウェーブ・コアとは、基本的にシンセ・ウェーブとメタル・コアのミックスだ。 シンセ・ウェーブとメタル・コアの中で、最もクールな響きを持つ2つの言葉を一緒にしたんだ。それでウェーブ・コアになった。 少しずつ定着し始めているね。シンセ・コアやレトロ・コアを使う人もいるけど、僕らはウェーブ・コアが気に入っている。それがこのバンドの本質なんだ。 僕らは典型的なメタルコア・バンドよりも少し多くのことをやろうとしている。 メタル・コアは僕らが大好きなものだけど、シンセ・ウェーブの要素を加えて、僕らのアートの原動力にしたいんだ」
フロントマンの Bobby Nabors も付け加えます。
「シンセウェーブは僕らの人生の中でとても大きな部分を占めている。 僕らはみんな、2017年にリリースされた “Nocturnal” で THE MIDNIGHT というバンドを知ったんだ。 僕たち全員が初めてそれを聴いて、音楽的にも人間としても変わったんだ。僕らの人生、キャリア、そして目標において、とても重要なポイントだった。 このアルバムは、僕たちがバンドとしての本当のアイデンティティを見つける手助けをしてくれたんだよ。僕たちはまだまだ拡大し、成長し、実験していくような気がするけど、超自然に真摯に僕たちの心と魂を完全に注ぎ込むことができるものを見つけたんだ。とても情熱を持っているよ。シンセ・ウェーブは DREAMWAKE の大きな部分を占めていて、これからもこの要素を加えたいと思っているんだ」
メタル・コアとして始まり、そこにシンセウェーブを加えたのでしょうか?Bobby が答えます。
「僕ら3人は、このバンドを結成する前にも複数のバンドをやっていたんだ。シンセを取り入れたバンドもあったけど、ほとんどはストレートなメタル・コアだった。それからバンドを始めて、EP “Dark Thoughts in Vibrant Minds” をリリースして、自分たちの本当のサウンドというか、少なくとも方向性を見つけることができた。でも、その中の何曲かはただのストレートなメタル・コアだった。 方向性が定まっていなかったんだ。実際にサックスを使って少し実験してみるまではね。サックス奏者 Jesse Molloy は、僕たちのすべてのレコーディングに参加してくれている。確か “Paradise” という曲で実験的に彼に声をかけたんだ。 この曲は春のビーチのようなフィーリングで、僕たちはサックスで一段上のフィーリングにしたかった。うまくいったし、だから僕たちはそれを取り入れて走り出した。Jesse は、それまでメタルはやったことがなかったので、自分とはまったく違うものだと言っていたけどね。こうして DREAMWAKE のサウンドが誕生したんだ。 サックスはかなり大きな存在だけど、シンセ・ウェーブで自分たちのサウンドを見つけたんだ」
つまり、DREAMWAKE にとってはメタル・コアと同じくらい、シンセ・ウェーブとの出会いが衝撃的だったのです。Dave が回想します。
「僕らが初めてシンセ・ウェーブに出会ったときのことを覚えている。とてもクールな瞬間だった。友人の車で音楽を聴いていたとき、彼が初めて THE MIDNIGHT を聴かせてくれたんだ。それまであまり聴いたことのない、本当にクールなスタイルの音楽だった。だから僕たちは、自分たちがすでに知っていて大好きなものを使って、シンセ・ウェーブを自分たちのものにする方法を見つけたかった」
Bobby がシンセ・ウェーブに見つけたのは、エモーションとノスタルジアでした。
「感情に訴える音楽に関しては、僕らはみんな本当に情熱的だと思う。僕たちは皆、音楽に何かを求めている。 何かを感じさせてくれるような… シンセ・ウェーブや THE MIDNIGHT、そういったバンドに出会って、一気に世界が広がった。シンセ・ウェーブの音楽の多くには、僕たちが書く傾向にあるものと似たテーマがある。人生、内なる葛藤、物事のダークでヘヴィな側面、でも同時にポジティブであること。ほろ苦さという奇妙なエネルギーがある。ノスタルジックで温かみがあると同時に、ちょっと冷たい感じもする。この作品は感情に左右される音楽で、サックスはその素晴らしい一部だと感じている。感情を引き出してくれる。 それこそが、僕らの音楽の正義なんだ。
サックスが入ると、ひとつのレベルからまったく違う領域になるんだ。鳥肌が立つような感じだ。バンドをやりながら自分たちを表現できることが本当に嬉しいね」
とはいえ、今をときめくあのバンドにも影響を受けています。
「SPIRITBOX, PERIPHERY, ERRA, NOVELISTS といったバンドやアーティストからインスピレーションを受けている。加えて、The Midnight, FM-84, Timecop 1983 といったシンセウェーブ・アーティストからも多くのインスピレーションを受け、プログレッシブ・メタルコアとシンセウェーブ・ミュージックの両方から影響を得ることで、現在のサウンドを作り上げることができたんだ」
モダン・メタルの世界では、多くのバンドが同じように外部から様々な影響を取り入れようとしていますが、不誠実で歪なやり方も少なくありません。しかし、DREAMWAKE は実に自然です。Bobby はこの実験をとても気に入っています。
「ありがとう。 サックスを使った実験は、最初は1回限りのものだったんだけど、曲の感情をうまく引き立てているのを聴いて、僕らのサウンドの永久的な一部にする必要があると感じたんだ。 僕らの曲はサックスがとてもよく合っている。
以前は曲を書いてから、入れる場所をサックス奏者に選んでもらっていた。サックスを入れる場所を決めてもらっていたんだ。でも今回のアルバムでは、彼に楽しんでもらうことにしたんだ。 やりすぎたり、無理強いしたりすることなく、サックスの出番を増やすようにした。以前のレコードよりもサックスを散りばめて、そのメッセージを訴えかけるようにしているんだ」
“The Lost Years” は、前作 “Virtual Reality” よりも様々な点で進化を遂げていると Dave は語ります。
「幅を広げたという感じかな。 サックスやシンセ・ウェーブ、軽めのパートもたくさん書いたけど、ヘヴィなパートも間違いなく増えた。 そういう意味でも幅が広がったと思う。今回は DREAMWAKE のダイナミックさがより広がったと思う。まず、僕らは “Virtual Reality” で自分たちのサウンドを見つけたんだ。今回のアルバムでは、自分たちがやっていることを両極端により強烈な形で届けるにはどうしたらいいか、より意図的で計算されたものにしたのさ」
“The Lost Years” から何を感じ取ってほしいのでしょう?Bobby が答えます。
「”The Lost Years” は人生の “ページめくり” のような気がするね。青春時代から、大人としての自分を発見し、人生の目的を見つける。人生の次のステップを踏み出し、自分が進むべき道を進む。制作中の何年かの間に、僕らはちょっとしたアイデンティティの危機に陥っている。
“The Lost Years” の多くは、痛みや感情、人生の良い年や悪い年について書かれている。しかし、トンネルの中には光もある。怖いけれど、楽観的になること。 地平線の先には、必ず良いことが待っている。人生は前進する。もしこのアルバムを聴いてくれる人がいたら、大丈夫だと感じてほしいし、人生がどんなに苦しくても、怖くても、前に進み続ける理由があることを知ってほしいんだ」
Dave が付け加えます。
「さらにいえば、陳腐に聞こえるかもしれないが、”君はひとりじゃない” というメッセージを発信したかった。年齢を重ね、問題や葛藤を抱えていると、かなり孤立してしまうような気がするんだよ。周りのみんなもそうした苦労をしている。時には結局自分しかいないことに気づくこともある。それは良いことでもあるけれど、誰にでもサポートシステムが必要だし、自分が経験している苦難は一時的なもので、解決できるものだと気づかせてくれる人が必要なんだ。僕らの音楽がそのための逃げ道になったり、苦境に立たされているのは自分だけではないということを誰かにわかってもらうためのプラットフォームになったりするのなら、それは素敵なことだ。それが大きな目標であり、僕たちの活動から受け取ってほしいメッセージなんだよ」
DREAMWAKE にとって、歌詞やメッセージはとても大切なものだと、フロントマンは語ります。
「僕は歌詞を書くとき、それが良いものであれ悪いものであれ、特定の感情を感じない限り何も書けないんだ。無理やり書くことを自分に許さない。書けるのは、音楽を通して納得して、解決するに値する何かを感じているときだけだ。だから歌詞を書くときは、誰がどう解釈してもいいように曖昧に書く。 でも、僕は自分自身の個人的な葛藤や自分の人生で経験していることから歌詞を書いているんだよ。
歌詞はある意味セラピーのようなもの。 自分の考えや感情を処理するためのね。誰だってそれを吐き出す方法が必要だ。僕の方法は幸運にも音楽だ。 歌詞には誇りを持っているし、時間をかけている。僕にとってとても大切なものであり、このアルバム全体がとても重要なものなんだ」
シンセ、サックス、そしてプログレッシブなメロディー。 曲を作るプロセスを Dave が説明します。
「どの曲もスタートが違う気がする。 最近はシンセのメロディから始まる曲が多い。というより、リフから書くことだけは避けるようにしている。むしろ、すでにそこにあるメロディにリフをつけるほうがいい。僕たちはいつも演奏を先に仕上げる。Bobby と僕は10代の頃からずっとそうだった。スタジオに行って、歌詞のない曲を書いて、曲を完成させる。 そうすれば、自分たちのサウンドスケープを作ることができる。 ギター・パートやシンセの多くが、まるでボーカルのメロディーのように歌えることに気づくだろう。 ボーカルを入れる前に、そういうものをたくさん入れるようにしているんだ。なぜなら、初めて聴いたときには気づかないような、サブリミナル的なメロディーが背後にあるからだ」
ボーカリストも、バックの演奏には絶大な自信を持っています。
「インストゥルメンタルの面では、ボーカルがいなくても、僕らの曲は大きな声で語りかけてくるような気がする。何が起こっているのか聴き取れる。僕らの音楽と作曲プロセスには、たくさんのレイヤーがある。 集中しないと聞こえないこともある。そのプロセスには、とても多くの思いが込められているんだ。もちろん、ボーカルがあるときは、とてもいいし、音楽に素晴らしい要素を加えているのだけど、インストゥルメンタルだけを聴いていないと聴こえないようなものがたくさん隠されてしまうんだ。だからファンにはインストゥルメンタルも集中して聴いてほしいと思っているんだ。ある意味、曲を別の視点から聴いているようなものだからね。
どのレイヤーも無駄にはなっていない。僕らの音楽には、ひとつひとつに明確な目的がある。 フィラーもナンセンスもない。それぞれのピースがそこになければならないと感じているんだ。 インストゥルメンタルにはプライドがあるんだ。僕らはバンドで全領域をカバーしようとしているんだ。 トラック内のあらゆるものが常にシュレッドしているようにしたいんだ(笑)。 もしそうでないなら、僕たちはそれをさらに加速させる必要がある。 すべての小品が印象的であってほしい。 どの曲にも驚きを与えたいんだ」
DREAMWAKE は音楽と歌詞だけでなく、MVやマーチャンダイズにもノスタルジックでレトロ・フューチャーな雰囲気が醸し出されています。逆にいえば、メタル・バンドが定期的に使うような色彩はあまり見かけません。Bobby が説明します。
「そうすることで、自分たちを最大限に表現することができる。このバンドのピースは、イメージ、マーチャンダイズ、すべてを含めて、僕たちの心の一部みたいなものなんだ。それはまた、僕たちがバンドと迷い、そして今ここにいること、人生の様々な時期に似ているのかもしれない。シンセ・ウェーブ/ヴェイパーウェイブの美学は、僕たち自身を本当によく捉えている。ノスタルジックな子供時代のような、温かくてファジーな感覚を持ちながら、同時に切なくてエモーショナルでもある。
ピンクとブルーを見ると、誰もが自動的に DREAMWAKE 思い浮かべるよね(笑)。それが僕らのカラーなんだ!」
ブルーとピンク。Bobby はそのツートンカラーの色合いを、完璧主義者とそこからの解放のふたつで実践しています。
「少なくとも僕は、ミュージシャンとして毎公演完璧でありたいと思っている。でも毎晩必ず何かがあるわけだから、自分の頭で考えて、ショーの後に自分を責めないことが大切なんだ。多くのミュージシャンは、少なくとも僕が会った人たちはそうだった。完璧でありたい、もっとうまくなりたいと思うのはみんな同じだけど、常に自分が一番の批判者なんだ。以前はステージから降りると、その晩はずっと怒っていて、ツアーや旅を台無しにしていた。今は、ステージに立つこと、そしてそのステージをやり遂げることに喜びを感じられるようになった。何が起ころうとも、起こったことは起こったことだし、自分が一生懸命やった限り、それがすべてなんだ。この前のツアーでは、それを本当に実践したし、精神状態も以前よりずっと良くなった。 ミュージシャンとして、少なくとも僕にとっては、毎晩110%完璧でなくても大丈夫だということが、大きなことだと感じている。 人間である以上、何かは起こるものだから、そこに行って人々のためにやった自分を褒めてあげて、多幸感を感じて次のステージに行くんだ」
DREAMWAKE というバンド名も、そもそも “多幸感” を意識してつけられました。
「DREAMWAKE という名前の由来は、音楽を演奏することで自分たちの感覚を体現できるような名前を見つけようとしたことからきているんだ。僕たちはそれを、夢やフロー状態、ネガティブな考えやアイディアから解放された状態だと考えたい。 音を通して、現実から一時的に逃避し、多幸感に浸るようなね」
シンセ・ウェーブは、ここ10年ほどの間に、音楽だけでなく様々な側面に浸透してきました。バンド全員がその事実に興奮を覚えています。
「本当にクールだと思うよ。 僕らのビデオにも、そういった側面をいくつか使っている。”Night Rider” のビデオでは、ランボルギーニが登場し、背景にはサイバー・パンクのような街並みが映っていた。
シンセ・ウェーブの要はフィーリングに浸れることだ。 だから、純粋でオーセンティックなシンセウェーブを取り入れたものには、何らかの愛着が湧くんだ。 胸に響く感覚を与えてくれる。僕らにとってはとてもありがたいことなんだ。
今、シンセウェーブが注目されているのはとても嬉しいことだよ。みんなが大好きなものだから、あちこちのメディアで目にすることができる。ある意味、僕らのために作られたトレンドのようなものだ。僕らにとっては、子供時代に似ているんだ。90年代に育ったから、80年代後半から90年代がスイートスポットだと感じている。まさにノスタルジーだね。僕たちがこの音楽をやっているのと同じ頃に流行っているというのは神だ。もちろん、情熱的なプロジェクトだから、流行に乗るつもりはないけれど、社会がシンセウェーブで病みつきになっているのは事実だ。僕たちはその利点を享受することができるんだ」
参考文献: DEAD RHETRIC : Dreamwake – Championing Wavecore










































