COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【THE ARMED : ULTRAPOP】


COVER STORY: THE ARMED “ULTRAPOP”

“I’d Rather Be The Band That Doesn’t Get All The Way There But Pushes The Next Person To Be Super Great With Something You Were Able To Put Forward. I Think That’s Missing a Lot From Heavy Music In General.”

WE’RE GOING TO SAVE ROCK MUSIC BY KILLING IT!

2015年にアルバム “Untitled” をリリースしたとき、THE ARMED は自らを “デトロイト発のパンクロック・バンド “と謙虚に表現していました。しかし、わずか数年でそんな単純な説明では、この匿名バンドを取り巻くシュールな演出やミスディレクションをとても十分に表現できないことが明らかとなります。
THE ARMED は、ハードコア、マスロック、パンク、さらにはポップの境界を絶妙に溶かし得る “武器” だと言えます。まばゆいばかりのショーマンシップ、興味をそそる不可解の嵐、洗練された作品への称賛を通して、私たちはかならず、”彼らは一体何者なのか?” という、その絶対的な武器の素材に対する疑問を抱くことになるのです。
THE ARMED の真の姿を解明せよ。すぐに、インターネットのコメントスレッドでの議論がはじまり、特捜班が編成されます。
そうして2018年のアルバム “Only Love” のリリースまでには、彼らに関する奇抜な “陰謀論” が出回り始めたのです。プレス写真に写っている人たちは実際にはバンドのメンバーではないとか、CONVERGE のギタリストで、凄腕プロデューサーでもある Kurt Ballou がこのプロジェクトの首謀者であるとか、もっと言えば、すべてが手の込んだデマやパフォーマンスのアート・プロジェクトであるといった考察が飛び交います。
事実、彼らのライナーノーツにはメンバーが記載されていませんでした。アーティスト写真に、メンバーではないかもしれない、楽器を演奏したことがないかもしれない別人が写っているなど前代未聞の由々しき事態です。
当時まだ、インスタグラムのフォロワー数3000足らずのバンドが、The Atlantic、NPRといったメインストリームの雑誌や、Vice の一面を飾ったのも振り返れば不思議な話です。
さらに、ヨーロッパの巨大なフェスティバルで注目を集め、フォードのテレビコマーシャルに本格的に登場し、昨年には、高い評価を得ている “サイバーパンク2077” のサウンドトラックにバンドの曲が収録までされました。

Kurt Ballou が2018年に語った言葉は、それらの謎を紐解く一つの鍵でしょう。
「ソーシャルメディアの時代になって、バンドとそのオーディエンスの間の区分けがどのように変化したかについてよく考えていた。直接アクセスすれば、コミュニティの中で親密な関係を築くことができるけど、一方で不均衡な権利意識を生み出すこともあるだろう。
だから俺は、このプロジェクトを立ち上げることで人々にクリエイターではなくコンテンツだけに注目してもらい、そうした文化を破壊したかったんだ。それによって、製作者よりも作品が重要な、クリエイティブな文化の時代が到来することを願っているんだよ」
実際 Kurt は、THE ARMED アルバムのエンジニアリングを担当し、小規模バンドにとっては夢の高品質なレコーディングと音響のオペレーションを行い、メディアやマスコミにもツテがあります。同時に曲を書く才能があり、パフォーマンスを補う友人のパンクやハードコアミュージシャンの巨大な名簿も所持しているのですから。
噂によると、THE ARMED は CONVERGE の型にはまらない素材のための、奇妙な実験として始まったと言われています。とはいえ、最新のインタビューではその件について全否定しているのですが。
「元の記事を調べてみたんだけど、翻訳ミスだよ。ジャーナリストは常にコンテンツを編集する必要があるからね。 実際に俺が言いたかったのは、THE ARMED を作った時ではなく、プロデュースを始めた時、だったんだからね。とにかく、彼らは素晴らしいと思うよ。一緒に仕事をしていると、困難なこと、混乱すること、そして本当にフラストレーションがたまることもたくさんあるけどね。
まず、彼らは俺が彼らにドラマーを提供しないと予約を取り消すと脅してきた。だから俺のドラマー仲間の多くが彼らのレコードに参加することになったんだよな。最新作では、さらに事態が悪化したよ。 俺がドラムのエンジニアリングをして、彼らがオーバーダブをして、ミックスの時には俺に隠れて God City で働いているエンジニアのザックを雇ったんだ。 彼は、俺が他のレコードの作業を終えた後、夜にスタジオに入り、俺の機材と設定をすべて使ったんだから。 欺瞞と破壊が THE ARMED の活動の核心だから、驚くべきことではないけどね」

事実、初期の EP には元 THE DILLINGER ESCAPE PLAN の Chris Pennie が、”Untitled” には SUMAC などで鳴らす Nick Yacyshyn が、”Only Love” には CONVERGE の Ben Koller がドラマーとしてフィーチャーされています。まさに凄腕が揃うドラム・パラダイスの様相ですが、Ben などは METALLICA の Robert Trujillo がプレイすると騙されて連れてこられた上、楽曲は CONVERGE のデモだと告げられていたのですから、酷い話ではあります。
陰謀論といえば、あのパーティーメタル・ゴッド Andrew WK の関与も長く囁かれています。Adult Swim への参加は無名のハードコア・バンドとしては異例のことのように思えましたが、ASコラボレーションの歴史が長い Andrew WK と結びつくことで、その意味はより明確になります。さらに、THE ARMED が CM に起用される前に Andrew がフォード・フィエスタをレビューしていたことや、フォードの製品発表会で THE ARMED のコントリビューターとして知られる人物と会っていた事実は、この説に一定の重みを与えているのです。

34歳の Cara Drolshagen は THE ARMED のメンバーの中で唯一、何年も前から写真やビデオ、インタビューではっきりと身元が確認されている人物で、彼女の凶暴な叫び声は “ULTRAPOP” の至る所で聞くことができます。彼女は、2012年からバンドに貢献していると言いますが、一方で彼女の個人的な経歴についての発言は、熟練したハードコア・ミュージシャンとしての彼女の地位と矛盾しているようにも思えます。
「不思議なことに、誰がバンドに所属しているかをはっきり言えば言うほど、嘘をついていると思われてしまうのよ。私がこのバンドに参加したとき、みんな冗談だと思って笑っていたのを覚えているけど、私は実際に自分が “主張 “している通りの人間なのよね。私は、自分が音楽シーンにいるとも、ハードコア・ミュージックに夢中になっているとも思っていないわ。写真を撮るのがすきなのよ。無生物の写真を撮って、そこに顔や何かが写っていないか試してみるの。いろんなことに手を出しているよ」
“ULTRAPOP” は、多くのリスナーに驚きと喜び、そして混乱を等しく与えるレコードです。ポップ・ミュージックとエクストリーム・ミュージックの融合により、太陽とノイズの突然変異を生み出すことに成功しました。常識をいくつも破りながら。しかし、それが重要なのです。
「アグレッシブでハードコアでエクストリームな音楽という、破壊的なジャンルであるべきはずのものが、完全に戯画化されてしまっている。私たちはそれに立ち向かいたかったのよ。異なるパターンを探求し、壊したいの。期待されているものを排除しようとしているのよ。アートフォームで考えれば、特に音楽は予測可能性に満ちているわ。従うべき基準にね。私たちは、人々を立ち止まらせ、再考させたいの。パターンに気づけば、それを壊すことができるわ。それが私たちの目標よ」
そのために、本作では著名なプロデューサー Ben Chisholm(Chelsea Wolfe)を起用しました。これまでの作品では、Kurt Ballou がメインプロデューサーを務めていましたが、今回は少し趣向を変えて、Kurt はアルバム制作自体に関わっていると言います。
「Kurt は今でもこのアルバムのエグゼクティブ・プロデューサーよ。その点は変わっていないわ。Ben については、音楽の背後にある数学を理解し、その数字を新しい方法で再構成し、異なる解決策を見出すことができる天才だと言えるわね」
Cara はさまざまな形で新作に貢献しています。実際、ほとんどの曲に彼女の指紋、あるいは声がプリントされていると言ってもいいでしょう。
「すべての曲で歌詞を書き、何らかの形で歌っているわ」
またこのアルバムには、元 SCREAMING TREES の Mark Lanegan, QUEENS OF THE STONE AGE のギタリストでマルチ・インストゥルメンタリスト Troy Van Leeuwen, ROLO TOMASSI の Eva Spence, など、さまざまなゲストが参加しています。しかし、バンドのメンバーは流動的であるため、Cara はそういったプレイヤーを必ずしも “ゲスト” とは見なしていません。今や彼らもこの集団の一員なのです。
「私たちは皆、The Armed ⋈⋈」

Adam Vallelyの経歴はさらに意味をなしません。このギタリスト兼ボーカリストは、赤いノースリーブのシャツとヘッドバンドを身につけていて、腕の筋肉は猛烈に膨らんでいます。Cara と同時期に THE ARMED に加入したと言ってはいますが、そのような名前の人がバンドに登場した記録はありません。”Adam Vallely” をグーグルで検索すると、最初に出てくるのは小柄なイギリス人男性で、彼のSNSにはULTRAPOP のプロモーションが流れています。
一方で、実際に目撃した人物は、Adam Vallely が現在はエクスペリメンタル・メタルバンド、GENGHIS TRON に参加している Tony Wolski によく似ていると証言しています。
「もちろん、誰が何をしているのか、時には意図的に不明瞭にしている。それは秘密でもなんでもない。皮肉なことに、俺たちが真実を語れば語るほど、人々は俺たちが嘘をついていると思うようになるんだから」
謎に包まれ THE ARMED の中心には常に真の意欲があり、それが “ULTRAPOP” ではかつてないほどよく実現されていると、Adam は情熱的に語ります。このレコードは、ハードコア・ミュージックを、これまでシーンが踏み込めなかった領域に引きずり込もうと、全身全霊で取り組んだ結果だと。全く新しいジャンルとして構想され、実験的なポップやヒップホップの最も大胆で生き生きとした側面を自分たちのサウンドに取り入れることで、全く新しい強度を実現したと。レコードには数十人のメンバーが参加していますが、ライブではその人数が実用性を考慮して8人ほどに絞られています。彼らは、個人のアイデンティティを隠すことで、バンドのより広大な目的についてのメッセージを維持したいと考えているのです。
「次に挑戦する人たちを後押しするバンドでありたいと思っている。一般的なヘヴィー・ミュージックにはそれが欠けていると思うんだ。構造や特定の方法に従わなければならないからね。ニッチなサブジャンルへのこだわりや、プロセスへのフェティシズムは、芸術を完全に停滞させてしまう。だから音楽界の片隅では、誰かが針を動かすことが必要とされているわけさ。だから、俺らは一線を越えようとしている人よりも、そうしようとして失敗したバンドになりたいと思っているんだよ」

実際、エクストリーム・ミュージックは停滞しているのでしょうか?
「そう思う。Soundcloud のラッパー全員が美しいビジョンを持ったアーティストだとは言わないけどね、そこそこ面白くてリスクのあることをやっている人はいるよ。目新しさは、質の高いアートの重要な要素だと思う。何らかの新しい思想を打ち出す必要があり、俺たちはそこに焦点を当てているんだ。ギターを使った音楽は、特にヘヴィーになればなるほど、サブジャンルやサブカルチャーへのフェティシズムを感じさせる。グラインドコアは80年代後半に始まったが、なぜ30年経った今でも50万のバンドが同じことを繰り返しているんだい?」
音と美の概念を覆すことは、結成当初から THE ARMED の計画に組み込まれていました。”ULTRAPOP” は、この反乱的な姿勢をさらに一歩進めました。音楽的に破壊的であろうとするだけでなく、テーマ的にも、現代における破壊の無力さを批判したいと願います。彼らの創造的な世界観においては、純粋な好奇心の欠如こそが、音楽的に破壊的であることを不可能にするのです。
「ハードコア・ショーに行くと、最前列でマイクを握ったり、観客をぶっ殺したり、モッシュをするのは誰でも知っている。俺たちがやろうとしたのは、その儀式を壊すことだよ。なぜなら、誰もが何かの初心者になれば、そこに魔法のような体験が生まれるから。あらゆるものがポップなんだ。Cara が一緒に仕事をしていたクリエイティブ・ディレクターで6桁の給料をもらっている人たちは、首にタトゥーを入れていた。ターゲット社のTシャツにはドクロが描かれている。”ULTRAPOP” のアイデアは、”すべてがすべてである” という意味て、これがアルバムであり、これがジャンルなんだ。俺たちのジャンルは今やウルトラポップなんだよ」
それでもハードコアを捨てないのは、ジャンルへの愛情なのでしょうか?
「首謀者の Dan Greene はみんなと “ロックを殺すことで、ロックを救う” という言葉を共有している。激しさを捨てたいわけではないんだよ。常に存在するものだから。目標は常に、信じられないほど強烈な、最大級の体験を生み出すこと。それが、俺たちがこの世界に入った理由のすべてだから。俺らがやっているのは、ビールを飲みながら革ジャンを着て、TERRORIZER のどのアルバムが一番いいかを語るようなタフガイの集まりじゃないんだ。ウルトラポップという新しいジャンルを作り、最終的にはハードコアよりもハードコアらしいものを作るという、笑えないほど大げさな目標を自分たちに課しているだけさ。カニエ・ウエストレベルの妄想に聞こえるだろうが、壮大なことをやろうとするときに必要な妄想だと思うよ。俺たちは、必ずしもそのようなコミュニティの人々に対して言っているのではなく、これらのジャンルやアートフォームが自分自身の風刺画になってしまうような、停滞した状況に対して言っているんだ」

あなたの筋肉もそうですが、キーボードのメンバーはまるでシュワルツェネッガーです。
「あれは Clark だよ。彼は本物のボディビルダーなんだよ。それってウルトラポップの美学の一部で、ツアーのために全員が信じられないほど良い状態になること。そのために Dan が4ヶ月間ほど栄養士をつけてくれたんだ。今では12ヶ月、16ヶ月の計画になっている。俺たちは、可能な限り超人的な状態でツアーに臨みたいと考えているから、文字通り絶え間なくダイエットとワークアウトを続けているのさ。個人的には、大人になってからずっと大腸炎に悩まされてきたんだが、ボディビルの食事プランのおかげでもうその悩みは消えたんだよ」
“インターネット・バンド” という揶揄にはどう対処しますか?
「”インターネット・バンド” という言葉を軽蔑的な意味で使う人がいるけど、俺たちはその意味を受け入れている。フリークが少ないなら、それを効果的にするために世界中のフリークをキュレーションする必要があるんだ。今の社会では、カルトは必ずしもインチキ薬のセールスマンを中心に形成される必要はなく、Apple や Crossfit のような製品に夢中になっている人たちであってもいいんだからね。俺たちは時に美学と向き合うことで努力してきたし、これからもそうしていきたいと思っている。でも、自分が企画したわけでもないのに、タイムズスクエアのビルボードを誰かが買ってくれたりするのは驚きだよね。嘘ではなく、人々が PayPal でお金を集めてビルボードを買ったんだから」
匿名性にこだわるのはなぜでしょう?
「大げさで妄想的に聞こえるかもしれないが、やはり大きな目標を達成しようとするならば、時にはそのようにならざるを得ないんだ。このバンドが最初から目指していたのは、ある種のムーブメントというか、個々の人間よりも自然の力を感じさせるような強烈なもの。問題は、SLIPKNOT のような “仮面とナンバー” 制度をやりたくないということ。GORILLAZ のように “人間ではない” とか “俺たちはアニメだ ” といった、馬鹿げたものにもしたくなかった。女性ボーカルで、ベースやシンセサイザーも担当している Cara は、写真に登場すると、みんなに冗談だと思われていた。Dan は物語の流れを整えることに長けていすぎて、人々がそのことをもっと気にしていて、ミステリーになっていくんだよ。それはそれでいいんだけど、ムーブメントについての重要性が薄れてしまうのはちょっとね。まあとにかく、何か大きなことをしたいと信じてやっていくよ。お金を稼がなければならないからアルバムを作る、なんてことは誰も望んでいないから。今まで誰も見たことがないような、最高で、強烈で、おそらく文字通り目を見張るようなショーを作るために、一生懸命努力するだけさ」

不可解なマーケティングや、独特のマキシマムパンクサウンドなど、混乱はバンドの美学の主な要素です。”ULTRAPOP” では、ハードコアの激しさと目まぐるしいポップの即興性が同居した、ジェットエンジンで動くニューウェーブのようなサウンドで五感を揺さぶります。核は、ストロボのようなシンセ、歪んだエフェクト、狂気のリズムの上に構築され、同時にヘヴィーミュージックの中でも最も勇敢なフックを備えています。
このタイトルも決して皮肉ではありません。”ULTRAPOP” は、ハードコアの強度とフィジカルを全面的に採用している一方で、最終的にはポップソングのコレクションなのですから。アルバムは、”All Futures” の Yeah, yeah, yeah, yeah!というコーラス、”Masunaga Vapors” の勝利のリフ、”Where Man Knows Want” のインダストリアル・ディスコなど、隅々までドーパミン反応が最大になるように設計されています。これは、期待を裏切り、最終的にはヘヴィー・ミュージックの現状を打破するという、バンドの使命の一部なのでしょう。
謎に包まれた首謀者 Dan Greene が残した最も深いコメントは、”ULTRAPOP” 最後の曲、”THE MUSIC BECOMES A SKULL “についてでした。
グランジ・アイコンである Mark Lanegan が歌っていると言われている重苦しいインダストリアル・トラック。その歌詞には、拍手喝采を浴びてステージを降りた愛すべきパフォーマーが、突然捨てられる様子が描かれています。”What a brilliant show/Now get off/You have been dethroned ” と悲劇的なクライマックスを迎えるのです。それは、ポップがすべてである世界では誰にでもあり得ること。
「この曲がポップスターの死について歌っているとはいわないけど、そうかもしれないね。名声やパフォーマンス、成功のはかなさ、そしてあらゆる可能な結果において避けられない破滅について歌っているんだ。ポジティブさを表現しているアルバムの冒頭部分を反映しているんだ。よりシニカルに見えるかもしれないけど、実際にはそうじゃない。アルバムの最後にある付箋のようなものだと思って欲しいね。まあどうでもいいことにはあまりこだわらないでくれよ」
どうでもいいことにこだわるな。それは、このバンドの正体や Dan Greene の正体を暴こうとした人たちへのメッセージかもしれません。結局、無数のロシア製マトリョーシカをすべて取り外してみても、中身は空っぽなのかもしれないのですから。日本盤は DAYMARE RECORDINGS から発売されています。

参考文献:REVOLVER:SEARCHING FOR THE ARMED: HARDCORE PRANKSTERS FLIPPING HEAVY MUSIC ON ITS HEAD

THE QUIETUS:Maximum Intensity: An Interview With The Armed

NEW NOISE MAG:Interview: The Armed’s Cara Drolshagen Talks New Album ‘ULTRAPOP’

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KIBERSPASSK : SEE BEAR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KIBERSPASSK OF BABA YAGA !!

“See Bear” Is a Song About My Homeland, My Native Land. A Song About The Pristine Beauty And Greatness Of Siberia. I Am Very Inspired By The Pure Siberian Nature, Endless Expanses And a Huge Blue Sky.”

DISC REVIEW “SEE BEAR”

「”See Bear” (シベリアとかけている) は、私の祖国、生まれ育った土地についての歌よ。シベリアの原始的な美しさと偉大さを歌った曲。私は、純粋なシベリアの自然、果てしなく広がる大地、大きな青い空にとても刺激を受けているの。愛するシベリアをありのまま見せたかったの」
生い茂る針葉樹林、見渡す限りの永久凍土、そして果てのない空。シベリアのタイガに訪れる長い夜を、KIBERSPASSK はハードなダーク・エレクトロで語り、音とし、世界へと発信します。凍てつく寒さと闇の帳には、ひりつくようなインダストリアルとロシアの厳粛なフォークロアを組み合わせたユニークな音化粧がよく似合います。
「私は NYTT LAND という、世界的にもかなり有名なバンドをもう一つやっていて、そこではシャーマニックなダークフォークを作り、古代楽器を演奏し、シベリアのタイガにおけるシャーマンの歌を歌っているのよ。だから、KIBERSPASSK は、私の別人格なの」
冬にはマイナス30℃を超える極寒の地。カザフスタンから100キロ、アルタイ山脈の麓にひろがる西シベリアの草原がバンドの故郷です。そんな場所で Baba Yaga こと Natalya Pahalenko と夫の Anthony はカンテレやタルハルパという古の楽器を操り、北欧神話やシベリア先住民のシャーマンから薫陶を受けた “シャーマニック・ダークフォーク” を奏で世界的な成功を納めます。KIBERSPASSK とはそんな彼らのシベリアという厳しくも美しい環境に特化した別人格。今にも “死にかけた” 村の名前を抱きながら。
「私はずっと自分のやり方でボーカル・テクニックに取り組んできたわ。主な方向性は、伝統的なロシアのフォーク・ボーカル、北欧のヨイク (サーミ人の伝統歌唱) 、トゥバ共和国の喉歌よ」
KIBERSPASSK の特別な音楽の核となるのは、間違いなく Baba Yaga の歌唱です。Baba Yagaはその名の通り異能の力を持つ魔女でシャーマンかもしれません。ヨイクで天使のメロディーに荒々しい異教の呪いの声をかけたり、ホーミーで草原や森林に邪教の声を響き渡らせるのですから。そしてその歌声は、MINISTRY を想起させる攻撃的で無機質なインダストリアルの背景に独特の夜と自然、呪術的アトモスフィアをもたらすのです。
「シベリアの先住民族のフォークロアも同様だけど、ロシアの伝統音楽は私たちの祖先の精神的・文化的遺産のルーツを保存する非常に深い階層なの。本物の感情と個性を持った、とても美しく壮大な音楽よ。とてもインスパイアされるわ。私はもともと歴史家で、自分の土地の歴史や神話を研究し、古代の人物を自分の歌の中で蘇らせることが好きなのだから」
インスピレーションの源は、シベリアの環境や景色はもちろん、スラブ神話の暗黒面にまで及びます。キキーモラ (働き者の願いを叶え怠け者を喰らう幻獣)、ドモヴォーイ (家族を守るため悪い精霊や侵入者の殺害も厭わない家の妖精)、バーバ・ヤーガ (森に住む妖婆。骨と皮だけにまで痩せこけて、脚に至ってはむき出しの骨だけの老婆の姿をしている。人間を襲う魔女のごとき存在)、リホ (小さくて毛深い生き物) など、ロシアの子供たちが生まれたときから知っているキャラクターたち。
古い集落が消えつつあるこの土地では、シベリアの精神と真の神秘性が保たれていて、今でも神話と現実の境が曖昧です。この地で生まれ、生活し、音楽を創造する KIBERSPASSK。だからこそ、その音楽に太古の息吹と孤高、霊妙、荘厳、超自然、そして奇々怪界を持ち込むことが可能だったのでしょう。革新がもはや珍しくなってしまったジャンルに、新鮮で厳しい寒風を吹き込みながら。
今回弊誌では、Baba Yaga にインタビューを行うことができました。MV に登場する印象的なダンサーは Pahalenko 夫妻のの娘さんとの情報も。謎が深まりますね。「Babymetal は実に興味深いバンドよ!彼女たちのショーとエナジーが大好きなの。そういった要素のいくつかは、おそらく KIBERSPASSK に影響を与えているわ」 どうぞ!!

KIBERSPASSK “SEE BEAR” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KIBERSPASSK : SEE BEAR】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WHEEL : RESIDENT HUMAN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SANTEI SAKSALA OF WHEEL !!

“Tool Is One Of The Greatest Bands Of All Times And Being Compared To Them Doesn’t Feel Bad At All. Being Their Successor Or Not, That Is For The People To Decide, We Will Just Keep Making Music!”

DISC REVIEW “RESIDENT HUMAN”

「WHEEL (車輪) という言葉が僕たちのアート制作のイデオロギー全体を表しているように感じたんだよね。それは、継続的でありながら、常に過去だけでなく未来にも目を向けているという意味でね。音楽においても、人生全般においても、新しい領域やアイデアを探求するムーブメントの象徴だからね。頻繁に出発点に戻ってくるけど、それでも僕たちは常に前に進んでいる」
技術の進歩により、音楽はお手軽に作られ、お手軽に聴かれる時代になりました。制作にもリスニングにも異様な労力を消費するプログレッシブ・ミュージックは、いまや風前の灯火です。
かつて世界を作ったプログ・ロックの巨人たちは次々に鬼籍へと入り、労力以上の見返りなど得られるはずもない現状に新規参入者、新たなリリースは目に見えて減っています。そんな中、フィンランドの4人組 WHEEL には、”車輪の再発明” を通してエンジンを生み出すほどに前向きなエナジーと才能が備わっているようです。
「北欧のプログ・メタルと僕たちに共通しているのは、新しい領域を開拓し、自らの道を見つけようとする意欲があるところだと思う。だから当然だけど、WHEEL にとってインスピレーションの源となっているよ。例え、直接的な影響を受けたわけではないとしてもね。OPETH は独自の道を歩み、期待に屈しないことで音楽的な強さを見出した素晴らしいお手本だよ」
メロデスやヴァイキング・メタルが深く根差した北欧にも、OPETH, PAIN OF SALVATION, SOEN といったプログメタルの孤高は存在します。他とは違う道を歩む確固たる意志を胸に秘めつつ、やはりその背後には北欧の暗く美麗な空気を纏いながら。
TOOL の正当後継者と謳われる WHEEL にも、当然その血脈は受け継がれています。そうして彼らは、自らの “カレリアン・シチュー” に KARNIVOOL の知的なアトモスフィア、さらに青年期に影響を受けた SOUNDGARDEN や ALICE IN CHAINS の闇をふりかけ、コトコトと煮込んで熟成させたのです。
「僕たちは、作曲家として、ミュージシャンとして、そしてバンドとして、自分たちを成長させ続けたいと思っていたし、これまでにやったことのないことを今回もやりたかったんだ。”Moving Backwards” には満足しているけど、同じアルバムを繰り返し作ることはしたくなかったんだよ」
ただし、彼らは成功を収めたデビュー作 “Moving Backwards” の場所に留まり続けてはいません。WHEEL 2度目の旅路 “Resident Human” を聴けば、そのオーガニックで生々しいプロダクションに驚くはずです。そしてその変化は、そのまま Aki & Santeri が構築するリズムのパーカッシブな飛躍へと繋がりました。もちろん、その手法を取ることで彼らは、TOOL, RIVERSIDE, KATATONIA, DEAD SOUL TRIBE といった現代プログ変異種の影響を、より存分に咀嚼し、養分とすることが可能だったはずです。
さらに紐解けば、骨太でダイナミズムを重視したその音像は、RUSSIAN CIRCLES のようなポスト・メタルの鼓動ともシンクロし、奇しくも “プログ” “オルタナ” という同じ根を持つ DIZZY MIZZ LIZZY の最新作 “Alter Echo” の目指す先へと歩みを進めていきます。
「基本的には、何も声を上げないないのが最悪だと思っている。1枚のアルバムや1人のアーティストが、今の世界の仕組みを変えることはできないと思うけど、意見を発信するたびに少しは変化が生まれ、物事を良い方向に変えることができるはずだよ」
陰鬱な雰囲気が漂い、パーカッシブなエッジが際立ち、非常にシリアスなアルバムは、過去12カ月間に起こった出来事に大きな影響を受けています。パンデミック、BLM、気候変動。もう私たちは無関心な幸せのままではいられません。
“Resident Human” に収録されている7曲は、現代社会とそこに巣食う闇、分断に纏わる人の感情を的確に表現しています。”Dissipating” の怒りやフラストレーションも、”Hyperion” の親しみやすさも、”Old Earth” のメランコリーと後悔も。
今回弊誌では、ドラマーで中心人物 Santei Saksala にインタビューを行うことができました。「TOOL の後継者であるかどうか、それは人々が決めることで、僕たちはただ音楽を作り続けるだけだよ」 どうぞ!!

WHEEL “RESIDENT HUMAN” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WHEEL : RESIDENT HUMAN】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PUPIL SLICER : MIRRORS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KATIE DAVIES OF PUPIL SLICER !!

“I Don’t Think Anyone Should Be Discriminated Against For How They Were Born, Who They Love And How They Look. Hopefully One Day The World Will Be a Better Place Where Things Aren’t As Bad As They Are Today.”

DISC REVIEW “MIRRORS”

「今は24歳なんだけど、18歳くらいまでヘヴィーな音楽にのめり込んだことはなかったのよ。だけどハマってからはすぐにギターをはじめたわ。まあだから、聴いて育ったのはゲームの音楽とか映画の音楽の枠を出たものじゃなかったわね」
PUPIL SLICER の Katie Davies は、18歳で初めてヘヴィーな音楽を耳にします。決して早くはない邂逅。
しかし、一度エクストリーム・ミュージックの世界に足を踏み入れると、その深化速度は異次元でした。現在24歳のヴォーカル・ギタリスト Katie は、時間軸を狂わせるようなマスメタルとグラインドコア、それに様々なメタルの異分子が融合した楽曲を、むしろコーラスとヴァースで成り立つポップ・ソングやパンク・ロックと同じくらい自然で親しみやすいものだと感じています。
「わたしたちの音楽の核となるのは感情の強さ、インテンシティーで、それは性別によって制限されるものではないと思うわ。あと、わたしたちはメタル・バンドというよりも、パンク・バンドだと思っているのよね」
デビューアルバム “Mirrors” は、不協和な音の超暴力と幻惑への傾倒が、THE DILLINGER ESCAPE PLAN の “Ire Works” や CONVERGE の “Jane Doe” といった名作を想起させます。混乱させ、時間をかき乱し、「何を聴いたんだろう?どうやって作ったんだろう?」と思わせる、人の心や痛みと同様に不可解な音楽です。
「わたしは自分の経験をたくさん書いているけど、より多くの人が音楽に共感できるようストーリー性を持たせるようにしているのよ。わたしが好きなのは、抽象的な歌詞の曲で、その内容についてリスナーそれぞれが自分なりの考えを持つことができ、本当の意味でのつながりを感じることができる曲だと思っているわ」
その名の通り、”Mirrors” は Katie 自身を映し出すレコードで、彼女の核となる考えや痛み、内面的な物語を映し出す鏡であると同時に、不平等や差別が法律や習慣、経済に組み込まれている、システム的にファシストな社会をそのまま映し出す作品でもあります。Katie が経験した個人的、政治的な痛みは、”Mirrors” の暴力によってのみ表現され、追放することが可能なのでしょう。
「わたしは、誰もがその出自、愛する人、外見などで差別されるべきではないと思っているの。いつの日か、今のような悪い状況ではない、より良い世界になることを願っているわ」
イギリス南部の海辺の町ボーンマスで育った Katie は、幼い頃から残酷な目に遭ってきました。4年間過ごした学校では、生徒からも教師からも容赦ないいじめを受け、中退してホームスクールに入学。彼女の耳を満たす音楽は、テレビゲームや映画のサウンドトラック、そして7歳の頃から練習していたバイオリンだけでした。
友人は、地元のユースオーケストラの指揮者を除いて存在せず、最終的に彼女は14歳で第一ヴァイオリンのリーダーとなりますが、3年後、彼女は公立学校に戻ることを余儀なくされました。そこで同級生や教師からさらに冷酷な扱いを受けることになります。
執拗ないじめを受けても、なぜいじめられるのか理解できない。自閉症を患いながら大学を卒業するころには、完全な引きこもり状態となっていました。人は残酷。その思いが世界とのつながりを完全に断たせてしまったのです。
救いの光はロックやメタルでした。ボーンマスからロンドンに移り数学の学位を取得した直後から、Katie は DEAFHEAVEN を聴きながら街を歩くようになります。そこから、RADIOHEAD や GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR を経て、ブラックメタルの世界に足を踏み入れます。ポストロックやシューゲイザーは、彼女の魂の音に最も近い音楽への入り口となりました。
やがて、彼女はギターを手に取り、DEAFHEAVEN の曲をかき鳴らし始めます。
ギターを弾けるようになった後、Katie はミュージシャン向けのオンラインフォーラムに投稿しました。”DEAFHEAVEN のようなブラックメタル・バンドに参加したい」と。投稿後すぐに、地下鉄で数駅のカムデンで練習中のバンドからメッセージが届きます。そこで、ドラマーJosh Andrews と出会ったのです。やがてベースの Luke Fabian が仲間に加わり、TDEP, CODE ORANGE, BOTCH といったバンドを通してマスコアやパワーバイオレンスの傾向を高めていきました。
“Mirrors” の楽曲は、そのどれもが異なるアプローチの産物です。例えば、タイトルトラック “Mirrors” のメインリフでは、彼女はオンラインのジェネレーターにランダムな数字の羅列を入力し、バンドの他のメンバーにソフトウェアの出力に合わせての演奏を依頼します。リズム理論に精通している Katie は、信じがたいことに考えていたメロディーを鼻歌で歌い、目の前のスクリーンに表示されるリズムの波形を把握しながら、頭の中で音を整理していきます。メンバーもリスナーも混乱させた Katie にとって、次の目標は自分自身を混乱させること。
曲作りという最も楽しい時間を終えれば、その後、人に聴かせるという彼女にとって気が遠くなるような現実がやってきます。歌詞を読まれるのが嫌でお蔵入りも考えたという “Mirrors” には、同性愛者やトランスジェンダーに対する米国の法制度を批判する “Panic Defence” のような直接的な曲もある一方で、Katie の内面的な苦しみに焦点を当てた曲には、比喩的なガーゼで保護膜を張っています。例えば “Stabbing Spiders” は、もちろんクモのことを歌っているわけではなく、自傷行為についての楽曲。
「あなたが挙げたバンドは皆、様々なタイプの音楽で非常に広い視野を持っているわよね。わたしたちも同じように、自分たちが好きな音楽すべての部品を組み合わせたいと思ってやっているの」
PUPIL SLICER の目まぐるしい音楽はすでにマスコアを超越しています。 “Mirrors” がこれほど魅力的なのは、バンドがその混沌の中でリスナーに “数学” 以上の多くのなにかを与えているからでしょう。ダイナミクスの恩恵を受けた3人の挑戦者は、研ぎ澄まされたエッジを失うことなく、電子なサウンドスケープの静かな海へと潜り込みアルバムの流れを的確に支配します。
例えば、7分の “Mirrors Are More Fun Than Television” は存分なグルーヴ、存分な混沌、そして DEAFHEAVEN や ALCEST をも連想させる壮大なアトモスフィアのアウトロを備えます。
クローサー “Collective Unconscious” ではさらに顕著。TDEP のような残虐性はポストブラックのブラストとトレモロを誘い、感情を揺さぶるクレッシェンドを導きます。静かの海で Katie は独り絶望を叫びすべてを締めくくるのです。紆余曲折のレコードに咲く深く心に残るフィナーレの華。そうして Katie は痛みを映し、浄化し、超越してみせたのです。
今回弊誌では、Katie Davies にインタビューを行うことができました。「わたしたちのやり方は、自分たちが演奏したい音楽、自分たちが聴きたい音楽を作ることだと思っているの。つまり、自分たちのサウンドに境界線を設けないようにしているのよ」 どうぞ!!

PUPIL SLICER “MIRRORS” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PUPIL SLICER : MIRRORS】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NINE TREASURES : AWAKENING FROM DUKKHA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ASKHAN AVAGCHUUD OF NINE TREASURES !!

“I Start Practicing Since 2018, Because I Had Pretty Negative Life Before That. I Wanted To Pool Out Myself From Anxiety And I Found That Buddhism Is Very Suit For Me.”

DISC REVIEW “AWAKENING FROM DUKKHA”

「実際のところ、僕たちの曲のほとんどは、モンゴルの歴史や神話をテーマにしたものではないんだよね。古い神話にインスパイアされた曲もあるんだけど、ほとんどの曲は、僕の考えや頭の中にある何かを表現したいと思って書いたものなんだ」
大草原、砂漠、馬、そして匈奴やモンゴル帝国といった母国の自然と歴史、神話をテーマにメタルを侵略したモンゴルのハン、THE HU, TENGGER CAVALRY。一方で、同じく蒙古の血を引く内モンゴルのフォーク・メタルバンド、NINE TREASURES は伝統を次の時代へ導く九連宝燈です。
「僕は内モンゴルのとても小さな街で生まれたんだ。間違いなく、確実にメタルにとっても “砂漠地帯” のね。まあそれでも、かろうじてメタルの CD はお店で買えたんだよね。信じられないだろうけど。僕は、人間はみんな自分の愛する音楽に出会う運命があると信じているんだ。僕にとってその運命の出会いが HURD をはじめて聴いた時だったんだ」
中国の内モンゴル自治区、小さな草原の街で中学教師の息子として育った Askhan Avagchuud は、METALLICA よりも影響を受けたという HURD の音楽を聴いてメタルに目覚めます。HURD はモンゴルにメタルを伝導した偉大なバンド。そうして彼は首都フフホトの大学に通いながら、北京に移ってからは働きながらメタルの道を追求していきました。
「バンドで生活費を稼げるようになるまで、両方を同時に続けるのはとても大変だったよ。世界の他の地域と同じように、中国でもライブだけで生活できるメタルバンドは少ないし、ここではまだアンダーグラウンドな市場なんだ」
転機が訪れたのは2013年。ドイツの名高いメタル・フェス “Wacken Open Air” のバンドバトルで2位を獲得したのです。モンゴルの代名詞とも呼べるモリンホール、そしてウクライナ発祥ロシアの叙情バラライカ。2つの伝統楽器を優美に奏でながら、朴訥としたエピック・メタルを熱演する NINE TREASURES の情熱は、いつしか南は台湾から北はウランバートルまでツアーを行うほどにその人気を確固たるものにしていきました。自然を呼び覚ますメタルのダンスでありながら、TOOL の知性や IN FLAMES の哀愁、時に琴の音色までを盛り込みながら。
「ほとんどのモンゴルのフォークバンドがホーミーの技術を使っているから、逆に僕は自分の歌い方を守った方がいい。そうすれば、観客に違う選択肢を与えることができるからね」
インタビューから伝わるように、Askhan は他のモンゴル由来のバンドほど母国の文化や伝統を重要視はしていません。それでも、神話や歴史を時に引用する彼の重厚な唸りは、モンゴル語の自然なトリルと有機的に結合し、得も言えぬ中毒性、草原絵巻をリスナーへと届けていきます。
「仏教に改宗するまではかなりネガティブな人生を送っていたんだ。だから2018年から仏門の修行を始めたんだよ。不安から解放されたいと思っていたところで、仏教がとても自分に合っていることに気づいたからね」
“Awakening From Dukkha” “一切皆苦からの目覚め” と題された NINE TREASURES の新たな作品は、ネガティヴに生きてきた Askhan が仏教に改宗し新たな世界観でフィルターをかけた、バンド再生のリレコーディング・アルバムです。古代モンゴルの詩に登場する9つの要素をその名に掲げた歴戦の勇者は、達磨に学ぶことで不安や社会、批判といった苦しみから解放されて、真の自由を感じることができました。
つまり “Awakening from Dukkha” は、彼らがこれまで丹念に作り上げてきたメタルとモンゴル、ロシア、中国のフュージョンを、清らかに血の通った仏の門で蒸留した未来への意思表明なのでしょう。きっと、自ら命を絶った TENGGER CAVALRY, NATURE G. の魂を携えながら。
今回弊誌では、Askhan Avagchuud にインタビューを行うことができました。「最近僕は日本語を学んでいて、来年日本に行く予定なんだ。2年前に日本でマネージャーを見つけたので、うまくいけば彼が日本に連れてきてくれるだろうね。とても興奮しているよ」 どうぞ!!

NINE TREASURES “AWAKENING FROM DUKKHA” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NINE TREASURES : AWAKENING FROM DUKKHA】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE RUINS OF BEVERAST : THE THULE GRIMOIRES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXANDER VON MEILENWALD FROM THE RUINS OF BEVERAST !!

“We Were Teenagers And Fairly Easily Manipulable, And an Extreme Movement Coming From Obscure Scandinavia, That Was Surrounded By Kind Of an Occult Aesthetic And an Almost Radical Anonymity And Secretiveness, Seemed Overwhelmingly Fascinating To Us.”

DISC REVIEW “THE THULE GRIMOIRES”

「自分がやっていることがブラック・メタルのルールに則っているかどうかは、あまり意識していない。もちろん、NAGELFAR 時代にもそうしていたんだけど、THE RUINS OF BEVERAST は最初から巨大な音の風景を構築することを目的としていたから、限界を感じるものは直感的に無視しようとしていたのだと思うな。そして、何よりもまず制限となるのは、ジャンルのルールだからね」
ジャーマン・ブラック・メタルの伝説。Alexander von Meilenwald の落とし胤 THE RUINS OF BEVERAST は、長い間メタルの海岸線を侵食しながらアンダーグラウンドの美学を追求してきました。ブラック、デス、ドゥームに、サイケデリックな装飾や多彩なサウンドスケープ、サンプルを宿しながら綴る、音のホラー小説。
デビューアルバム “Unlock the Shrine” の広大なアトモスフィアから、15世紀ドイツの異端審問を描いた “Blood Vault – The Blazing Gospel of Heinrich Kramer” のコンセプチュアルな作品まで、Alex の言葉を借りれば、自然や世界を聴覚的に表現する音楽はアルバムごとにそれぞれの独特な感性を備えています。
「俺はいつもゼロからのスタートなんだ。いつも、新しいアルバムのためのビジョンを描き、それが創造的なプロセス全体の地平線として設定される。そして、先ほど言ったように、それは以前の作品とは全く関係がないんだ。」
Alex の6度目の旅路 “The Thule Grimoires” は、これまでのどの行き先よりも楽曲を重視し、アイデアを洗練させ、多様であると同時に即効性のある目的地へと向かいました。スラッジの破壊と暗く壮大な混沌のドゥームを探求した “Exuvia” とは異なり、”The Thule Grimoires” は初期の生々しいスタイルを再度回収しています。では、Alex は過去の寄港地、ブラックメタルのルーツにそのまま戻るのでしょうか?それともトライバルでサイケデリックな領域をさらに旅し続けるのでしょうか?圧倒的で落胆に満ちたドゥーム・アルバム? メタルではなくアンビエントなテクスチャーに根ざした何か?答えはその全てです。
「ブラック・メタルが重要じゃないわけじゃないんだ。”Ropes Into Eden” の冒頭を聴いてみると、かなり古典的なブラックメタルのパートだけど、同時に見慣れない要素によって拡張されている。これはすべてオートマティックに起こることさ」
アグレッシブなテンポ、ブラスト・ビート、そしてトレモロ・リフに大きな重点を置きながら、美しく録音された作品には、フューネラル・ドゥームの深い感情を呼び起こすような、不安になるほど酔いしれた雰囲気が漂っています。ただし、テンポが速くなったことでこれまで以上に素早くシーケンスからシーケンスへと飛び移ることが可能となり、その結果、楽曲は様々な影響が回転ドアのように目まぐるしく散りばめられているのです。
「俺の音楽人生には何度か、必ずポップ、シンセウェーブ、ポスト・パンクの衝撃が戻ってきているんだ。NAGELFAR の “Srontgorrth” アルバムや、初期の THE RUINS OF BEVERAST のリリースでも、少なくともゆるやかには存在していたからね。ただこのアルバムでみんながこれほど “ノン・メタル” な影響を確認する主な理由は、クリーンなボーカルだと思うんだ」
アルバムは陰鬱なスペース・ロック、”Monotheist” 時代の CELTRC FROST、さらには80年代のゴス・ロック、ポスト・パンク、シンセ・ポップからも影響を受けています。しかし、すべてのスタイルを支えているのは、鼓動するブラックメタルの心臓。
例えば “Polar Hiss Hysteria” ではトレモロの嵐とサイケデリックなリードがバランスよく配置されており、膨らんだ緊張感はそのままドゥーム・メタルに身を委ねていきます。クリーン・ボーカルも、アルバム中盤のハイライト “Anchoress in Furs” の見事なコーラスのようにより強調され、不協和音のコーラス讃歌にサイケデリックなギター、Alex の奇妙に高揚したバリトン・ヴォイスが万華鏡のような泥沼を創造します。
「俺はあのバンドを心から尊敬しているし、Peter Steele は “俺たち” の音楽世界でら最も非凡で傑出した人物の一人だと思っているんだよ。彼の黙示録的な皮肉は独特で、彼の声も同様に独特だった。完全に他にはないものだったね。だからこそ、俺は彼の真似をしようとは思わなかったんだ。”Deserts To Bind And Defeat” の冒頭では、俺の声をできるだけ深いトーンで表現することにしたんだよ」 そしてもちろん、TYPE O NEGATIVE。
今回、弊誌では Alexander von Meilenwald にインタビューを行うことができました。「ブラック・メタルのムーブメントが始まったとき、俺たちはノルウェーについてできるだけ多くのことを知りたいと思った。突然、ほとんどすべての人が、スカンジナビアから生まれた創作物を賞賛することに同意したんだからね。俺たちはティーンエイジャーで、簡単に影響をうける年ごろだった。オカルト的な美学と、匿名性と秘密性に包まれた、無名のスカンジナビアから生まれた過激なムーブメントは、俺たちにとって圧倒的に魅力的なものだったんだ」 ブラックメタルが贈る審美の最高峰。どうぞ!!

THE RUINS OF BEVERAST “THE THULE GRIMOIRES” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE RUINS OF BEVERAST : THE THULE GRIMOIRES】

IN MEMORY OF ALEXI LAIHO: PAINT THE SKY WITH BLOOD


IN MEMORY OF ALEXI LAIHO 

PAINT THE SKY WITH BLOOD

Randy Rhoads, Stevie Ray Vaughan, Dimebag Darrell、Chuck Schuldiner、Eddie Van Halen。世界はこれまで、6弦の英雄たちに何度悲しみの別れを告げたでしょう。その夭折のリストに Alexi Laiho までが加わるとは、神様は非情で不公平です。いや、”死神” に魅入られてしまったと言うべきでしょうか。
何よりもまず、Alexi は現代のギターヒーローとしてメタル界の歴史に名を残すことになるでしょう。2009年には Guitar World 誌の読者投票で Best Metal Guitarist に選ばれました。ただし、彼は単なるシュレッダーではなく、メタルの最も暗く、最も極端な場所に、メロディーと華やかさを浸透させる誘惑の扉を開く先見の明もありました。CHILDREN OF BODOM で彼は、前人未到のジャンルの実験、ブラック・メタル、パワー・メタル、メロデス、クラシカル、スラッシュのフラスコを華麗なリードと “ファックユー” のアティテュードで煮詰め、将来のプレイヤーとなるべき世代にインスピレーションを与え続けたのです。SVALBARD の Serena Cherryの言葉は正鵠を得ています。
「ギタープレイをスポーツのように扱うギタリストがいるけど、Alexi はスピードと正確さを持ち合わせているだけでなく、彼の声が演奏に含まれていたの。 個人的には知らない人でも、ギターの演奏を聴いているうちに、その人のことを知っているように感じることがある。私の場合、Alexi がそうだったわ。ステージ上で弾くすべてのソロから、彼の個性がにじみ出ているのを感じたの」
Nita Starauss も同様に Alexi を崇めていた一人です。
「私は Vai や Satriani のシリアスなギタープレイにもハマっていたけど、ヘヴィーな音楽も好きだったの。だから、CHILDREN OF BODOM は両者の完璧な架け橋だったわ。キーボードとギターのハーモニーは、今でも私のソングライティングに大きな影響を与えているの。何より、ヘヴィーで、ブルータルで、それでも楽しいでしょ?そのやり方を真似しようとしているんだけど、誰も彼より上手くはやれないわね」
TRIVIUM の Matt Heafey にとって Alexi は完璧なギターヒーローでした。
「”Something Wild”, “Hatebreeder”, “Follow the Reaper” がなければ TRIVIUM の音楽性は変わっていただろう。さみしくなるよ、Alexi…」
DRAGONFORCE の Herman Li にとっては、素晴らしいライバルだったようです。
「モンスターのようなギタープレイと素晴らしい才能で、メタル世界に信じられないプレゼントを贈り続けたね。俺の世代では、最高のギタリストだと思い続けてきたよ。アプローチもアティテュードも最高だった」
Gus.G がはじめて雑誌の表紙を飾ったのは、日本の Young Guitar 誌で、Alexi と一緒でした。
「俺の世代最高のギタリストの1人。あの写真はよく覚えている。はじめての雑誌の表紙だったから。お互い ESP のギターを使っていたから、それからもよく交流していた。彼の新しいバンドを楽しみにしていたのに…」
あの Dave Mustaine にまで一目置かれていました。
「何度も一緒にツアーをやったな。素晴らしい才能の持ち主だったよ」

フィンランドのメロディック・デスメタル・バンド、CHILDREN OF BODOM のギタリスト兼ボーカリストだった Alexi は、2020年12月29日にフィンランドのヘルシンキにある自宅で亡くなりました。
41歳になった “ワイルド・チャイルド” は、人生の最後の数年間、長期的な健康問題に悩まされていました。SINERGY のバンドメイトで、死亡時の法的な妻であった Kimberly Gossは、Alexi の死因を “アルコールによる肝臓と膵臓の結合組織の変性” であったと明らかにし、救えた命だったと嘆きました。中毒という悪魔によって、以後彼のような才能を奪われることがないようにと心から願いながら。
「私の真の初恋の人。バンド仲間で親友でもあった。このパンデミックの中での光明は、一緒に過ごす時間の質の高さを得られたこと。私たちのマラソンのような FaceTime での通話、昼夜を問わず延々と続くテキストメッセージや電話は、永遠に私の心に残ることでしょう。
ステージの上でも外でも、一緒に過ごした人生を振り返ることができたこと、そして何年も変わらない友情を大切にすることができたという事実に、私はとても慰められているわ。
アリュー、私の心は満たされていると同時に傷ついているの。これほど長く豊かな歴史を持っている友について、何も語らないままでいられる人はそうそういないでしょう。あなたは私に安らぎを与えてくれたし、あなたの疲れた体がついに限界を迎えるまでの数ヶ月間、数週間の間、私の後悔の念をゼロにしてくれたわ。本当にありがとう。そしてこれからもずっとずっと愛しているわ。
あなたと Tommy (2012年に亡くなった元 SINERGY のドラマー) が天国で再び一緒になって、喜びと笑い声が聞こえてくるのが眼に浮かぶわ。
あなたを知り、愛していた私たちの心の中にあなたはいつまでも残り、あなたの遺産は、世界に祝福を与えた音楽の中で永遠に生き続けるでしょう。
目を閉じて、わたしのダーリン。ようやく安らかな眠りにつけたのよ。愛しているわ」

アーティストとしての Alexi の歴史は、幼馴染みである Jaska Raatikainen と INEARTHED というグループを結成した90年代中盤まで遡ります。INEARTHED は、CHILDREN OF BODOM に改名し、Spinefarm Records と契約するまでに3本のデモテープを録音していました。
当時の彼らを表現する一文に「時速100万マイルのパワーコードと、スウィープ・アルペジオ、ヴァイにインスパイアされたテクニック、そして感染力のあるリードを組み合わせた、ブルータルでありながら、メロディックで複雑なサウンド」とありますが、実に的を得た一文だと言えるでしょう。誰もが、疑いもなく、次世代のギターヒーローが登場したと確信したはずです。
「10歳のときにMTVを見ていたら、Steve Vai の “For the Love of God” のビデオが流れてきた。その時、俺は絶対にギターを始めなきゃならないと思ったんだ」
Alexi Laiho は、1979年4月8日、フィンランドのエスポーで Markku Uula Aleksi Laiho として生まれました。彼は幼い頃から天才の兆しを見せていて、4歳で父の聴く DIRE STRAITS で天職を悟りながら、5歳でバイオリンを習いはじめ、少年時代は主にクラシック音楽を聴いて過ごしました。そんな少年に神 Steve Vai は舞い降り、メタルという宗教に目覚め改宗するきっかけを与えたのです。
Alexi が11歳のとき、初めて父親がギターを買ってくれました。それは Tokai (トーカイ) の白いストラトタイプでした。ヘア・メタルの妙技に夢中になった彼は、Randy Rhoads, Jake E. Lee, Zakk Wylde といった達人の真似事をはじめました。
「いいギターだった。毎日、学校から走って帰ってきては、親に殴られそうになりながら、寝るまで弾いていたんだから」
高校時代、ギターへの執着をさらに強めた Alexi は、最終的には授業を休んで家で薪割りをしつつ、メタルやシュレッドのテクニックを教則ビデオから独学で学んでいったのです。
「何かを犠牲にしなければならなかった。俺にとってそれは学校だったんだ。母は僕が高校を卒業できないことを知っていたよ。でも、夢中になっていることで成功するように手助けしてくれたんだ」

Alexi は友人でドラムの Jaska と2人でジャムをしながら、後に INEARTHED、そして CHILDREN OF BODOM となる異形の基礎を作っていきました。ベルギーのレーベルと契約しましたが、よりビッグな Spinefarm Records が INEARTHED に興味を持ち、望ましい契約を申し出ました。ベルギーのレーベルとの契約から逃れるために、彼らは INEARTHED が解散してアルバムを出せなくなったとレーベルに伝えたのです。
そうしてフリーエージェントとなった彼らは、CHILDREN OF BODOM という新しい名前で “再結成” し、Spinefarm と契約を結びます。その契約は、Alexi とCOB のメンバーにすぐさま大きな変化をもたらしました。
バンドは1997年11月にデビューアルバム “Something Wild”を発表。アルバムを引っさげてツアーを行い、地元以外でも人気を高めることに成功します。熱狂的なソロ、壮大なシンフォニー、騒々しいコーラスがアドレナリンを爆発させる音楽。当時のトレンドとは真逆の、楽しく、必死で、まだ無名だったギタリストのやりたいことがすべて詰まったサウンド。トレンドやファッションに中指を立て、シーンの限界を拒んだのです。
「俺たちは本当に小さなアンダーグラウンド・メタルの世界にいたけど、そこで俺は間違いなく最高のギタリストだった。誰のケツでも蹴ることができたし、それが評価されたんだ」
一方で、ベーシスト Henkka Seppälä は COB の未来を信じられずにいました。
「自分たちのやっていることは本当に好きだったけど、同時に 、自分たちは何者なんだろう?この音楽は何なんだ?と思っていたんだ。大げさではなく、これは誰の趣味にも合わないものだと確信していたんだよね。でも Alexi は “Something Wild” のレコーディングが終わったとき、マスターCDをプリントしてそこにこう書いたんだ。”未来のゴールドセラー・アルバム”とね (笑)。もちろん、彼は冗談を言っていたんだけど。運が良ければ数百枚は売れるだろうと思っていたけど、10年後には実際にゴールドを獲得したんだ」
Alexi 自身はこの作品をこう評します。
「”Deadnight Warrior” と “Lake Bodom” …これらは実際に良い曲だったけど、それ以外は素晴らしいリフ上で俺が卑猥な言葉を叫んでいるだけだった。何も計画していなかったからね」


HYPOCPISY と COVENANT とのツアーでは、Alexi が少年時代にMTVで見たような、野性的なロックンロールのライフスタイルを実践していきました。
「タダでお酒が飲めるところなんてはじめてだった。あれは最高だったな。他のバンドと一緒に大きなバスに乗って、とても楽しい時間を過ごしたよ。彼らは、俺たちが演奏やパーティーのやり方を知っていることを確認すると、すぐに受け入れてくれたね」
1997年の10月、CHILDREN OF BODOM は DIMMU BORGIR ヘルシンキ公演で前座を務めました。DIMMU BORGIR は3枚目のアルバム “Ensrone Darkness Triumphant” をリリースしたばかりの大物で、会場となる “Lepakko” はロック界では伝説的な存在。Silenoz は当時のことを鮮明におぼえています。
「楽屋からオープニングバンドの演奏が聞こえてきた。Yngwie Malmsteen のような光速のサウンドだったよ。俺たちは外に飛び出し、その光景を見て、口を開いたまま立ち尽くしてしまった…」
1997年に Alexi と SINERGY を結成し、2002年に結婚することとなる Kimberly Goss はそのとき、DIMMU BORGIR のキーボード奏者でした。当時を振り返ります。
「私たちには秘密の言語があったのよ。1998年、一緒にエストニアに行ったとき、私たちは効果音、セリフも含めて “バック・トゥ・ザ・フューチャー” 一作目の言葉ですべて話していたの」

“Something Wild” をリリースした後、CHILDREN OF BODOM はさらに人気を高め、アンダーグラウンドにおけるメロディック・デスメタルの代表的な存在となりました。Alexi が鋭利な ESP ギターで刻んだ、高速難解なリフワークと目にも止まらぬトリッキーかつクラシカルなリードはバンドの代名詞として定着。
フィンランドのメタルは、90年代後半ルネッサンスの真っ只中にあり、HIM, SONATA ARCTICA, APOCALYPTICA, NIGHTWISH といったバンドが脚光を浴びはじめます。一方の COB は、ブレイクするまでに数年を要します。セカンド・アルバム “Hatebreeder”、日本でおそらく一番人気の “Follow The Reaper” は、”Something Wild” に盛り込まれたアイデアを基により洗練された楽曲を提示しましたが、フィンランドで1位を獲得しメタル界全体が注目するきっかけとなったのは、2003年の “Hate Crew Deathroll” でした。その年、彼ら”Finnish Metal Music Awards” で “Metal Band Of The Year” に選ばれ、ヨーロッパや日本でもヘッドライナーとして活躍することになります。最も重要なことは、NEVERMERE, HYPOCRISY, DIMMU BORGIR と共に、ついに初の米国ツアーへ名乗りを上げたことでしょう。

「このアルバムは、俺たちがようやく自分たちの道とスタイルを見つけた作品さ。それまでの俺たちは、ちょっとあちこちに行くような感じだったからね。自分たちが何をしたいのか探しているようなものだった。そして、”Hate Crew” でようやくそれを掴むことができたんだ。CHILDREN OF BODOM にとって最も重要なアルバムであるだけでなく、間違いなく最高のアルバムの一つだね。多くの人にとって、COBの最も好きなアルバムであり、それを責めるつもりはまったくないよ。自分で言うのもなんだけど、すごくいいアルバムだから。振り返って聴いてみると、ヤバいな、俺たち。こんな凄いアルバムを作ったんだ!ってなるからね」
アルバムのタイトルは Alexi お得意の邪悪なジョークの一つ。
「”Hate Crew “は、”CHILDREN OF BODOM “の別の言い方だ。COB のヘイトクルーは、常にギャングの側面を持っているからな。”Deathroll” は好きなように解釈してくれよ。戦争になると、必ず “死亡者リスト” が出てくる。また、これから殺したい人や、すでに殺した人のリストということもできる。みんなが自分で考えてそれを作ればいいんだよ」

2005年にリリースされた “Are You Dead Yet?” は、彼らをさらにレベルアップさせました。そして、遂に地球上で最もビッグなメタルバンドの1つ SLAYER が声をかけてきたのです。2006年の “The Unholy Alliance Tour” に招待されたのです。Kerry King は当時を懐かしみます。
「”Are You Dead Yet? “は、彼らのアルバムの中でも最も好きなアルバムだった。当時から、ヤツは未来だ、次のギターヒーローだと思っていたよ。見ていて『クソッ!』と思うような、努力を惜しまない人間なんだ。俺が一日中練習しているのに、まったく敵わねえと思ってしまうようなね」
LAMB OF GOD や MASTODON と並ぶ強力なラインナップに加わった CHILDREN OF BODOM は、ライブという戦場で果敢に SLAYER に挑みました。Kingも認めています。
「彼らは成功していたよ。俺は、惨敗したヤツらを見てきたからな。
彼らのセットリストはヘヴィーなもので、それは俺たちのオープニングとしては賢明なことだった。見ていて楽しいし、Alexi はギターの神様だったよ」
ツアーを振り返って、Henkka は Alexi を「パーティーを始めた人」「友達を作るのが上手い人」と表現します。それまで自分がアイドルだと思っていたバンドと一緒に行動することにも臆することはありませんでした。
「多くの人は、Kerry と一緒にイェーガーを飲み始めるというトリックに陥る。Kerry は大きな耐性を持っているのにね (笑) Alexi が Kerry の部屋から運び出された夜もたくさんあったよ。”ヘイトクルー” のメンバーになりたい人は、ツアーバスのバックラウンジに来て、裸になって逆立ちをしなければならないという儀式があった。そして口にウイスキーを注ぐんだけど、必ず鼻に入ってしまうんだよ(笑) 少なくとも Randy Brythe はその後、タトゥーを入れたから、儀式をやって公式にヘイトクルーになったはずだよ(笑)」

MASTODON のドラマー/シンガー Brann Dailor はこのツアーが基本的にサマーキャンプだったと言います。
「COB のメンバーはウォッカを何ケースかもらうはずだったんだけど失敗してラム酒をもらってきた。彼らは、「もういいや、ミキサーを買おう」と言っていたね。全員が休暇中のような帽子をかぶり、バスの中でラム酒のブレンドドリンクを作ったんだ。バスの中は、まるでステロイドを使った MOTLEY CRUE 82年版のようでね。彼らが聴いていたのは80年代のヘア・メタルばかり。SKID ROW や WINGER だよ。俺は、「もうこのバスから降りなければ!なあ、BON JOVI はもう聴きたくないよ、みんな!」って感じさ」
時おり見せる邪悪なユーモアも、やはり Alexi の魅力でした。
「ブリットポップのクソ、OASIS…あんなものは大嫌いだ。PEARL JAM のように、音楽が泣き言や不平不満に聞こえるようなバンドもね。あのボーカルの声には、かなりイライラさせられるね」また、Britney Spears の “Oops!… I Did It Again” や Bananarama 1984年のヒット曲 “Cruel Summer” をカバーすることで、メタル純粋主義者を愚弄することに喜びを感じているようでもありました。
“Hate Crew Deathroll”(2003), “Are You Dead Yet?” (2005), の成功により、CHILDREN OF BODOM はエクストリーム・メタル界にその名を轟かせ、Alexi は念願の国際的な評価を得ることになりました。
Alexi を知る人たちは、彼のことを物腰の柔らかい穏やかな心と、無謀で自発的な一面を併せ持つ、周囲の誰よりもパーティーを盛り上げる “ワイルド・チャイルド”と表現しています。
「彼の芸術は残忍で攻撃的だったけど、それは猛烈で大きな心を持った優しい男の一面に過ぎなかった。俺にはいない、兄のような存在だっよ」と語るのは、RECKLESS LOVE のフロントマンで、グラムロックのトリビュートアクト THE LOCAL BAND で Alexi と共にプレイした Olli Herman。

しかし、バンドが世界的な成功を収めたことで、皮肉にも Alexi はその成功を保つためのプレッシャーから自己破壊的な行動へ走るようになり、才能多き若きエースは多大なダメージを肉体や精神に蓄積していくこととなります。
“Are You Dead Yet?” は、COB にとってメインストリームへの最も大胆な挑戦であり、バンドの知名度を高めたにもかかわらず、ファンからは様々な反応がありました。2008年には “Blooddrunk” を発表。このレコードは COB の成長が停滞しているという印象を払拭するためには不十分な作品でした。さらに、Alexiの健康状態が懸念され、出演をキャンセルするケースが相次ぎます。
Alexi のキャリアは約25年に及びますが、その間、孤独なギターヒーローはドラッグやアルコール、うつ病と常に戦っていました。それらの悪魔が原因で、北欧のネオクラシストはあまりにも多くの恐怖を経験し、骨を折り、病院へ担ぎ込まれています。1998年末、19歳の Alexi は、30種類の精神安定剤と数杯のウイスキーを摂取してゆるやかな自殺を図っています。
「子供時代は大丈夫だったけど、17歳くらいになると頭がかなりおかしくなっていった。友人が床に倒れている俺を見つけ、病院に連れて行ってくれたんだ。俺は決して良い状態ではなかった」と2005年に語ったように。強まる自殺願望。その一件は単なる始まりに過ぎませんでした。
「どんどん気分が悪くなっていった。薬を飲んでから数年後、精神的に完全に参ってしまい、1週間ほど入院したことがある。それが3度目の入院だった。人生で最悪の気分だったよ」
危険な状況はエスカレートしていきました。2006年、”ワイルドチャイルド” は、酒に酔って車の上から転落し、手首を骨折。修理が必要なのは彼の腕でした。
「友達がボーリングをしていて、ホワイトロシアを飲んでいたんだ。ストライクが出て、俺はちょっとしたダンスか何かをやったんだけど、酔っ払っていたから滑ってしまった。何かの拍子に逆さまになって、左肩に着地したんだ。最初はみんな笑っていたし、俺も笑っていた。すると突然、肩が大きく腫れ上がり、腕を骨折したことを知ったんだ」

骨折の回復は決して早いものではありませんでした。骨が正常に治癒していないため、6週間にわたって左腕はスリングで固定され、その後は演奏できるようになるまで数ヶ月間、厳しい理学療法を受ける必要がありました。ギタリストにとっては気が重くなるような出来事でした。さらに運が悪いことに、崇拝していたギタリストZakk Wylde, Steve Vai と一緒に Guitar World 誌の表紙を飾る予定がありました。
「正気の沙汰じゃなかった。断ることができなかったから、腕にギブスをして、目の周りをきれいにしてもらったんだ。もうあんな経験はこりごりだよ。まあ、ボウリングや酒はやめていないけどね。でも、もう十分に自分の体を壊したよ。骨折もしたしね」
Zakk Wylde は、その思い出に苦笑します。
「彼がギブスをしていたのを覚えているよ。まるで結婚式の準備をしている女の子のようで、人生最大の日なのに、結婚式の写真を撮る時に腕が折れて目が黒くなっているようだった。面白かったよ。最高だった」
不幸なことに、ボーリング以外にも体への負担は続きます。2年後、COB のツアーバスで運転手が急カーブを切ったとき、寝台から投げ出されて肩を骨折したのです。この事故は飲酒が原因ではありませんでしたが、年齢のわりに Alexi の体がますます脆くなっていたことを示唆しています。
Alexi は、これらの出来事によって、自分の体がダメージを受けていることを十分に認識していましたが、おそらく最も大きな衝撃は、2011年カリフォルニア州アナハイムで開催されたNAMMコンベンションでの体調悪化です。二日酔いのせいだと思って様子を見ていましたが、出血と嘔吐は9時間も続きました。病院では医師から驚くべき診断を受けました。
「潰瘍ができていて、かなりひどかった。内臓を吐いていて、それが止まらなかったんだよ。吐き続けて、まったく我慢できなかった。4日ほど入院しなければならなかったね。水分補給のために大量の点滴を受けたよ。史上最悪の事態だった。本当だよ」

幸運にもこの時は生き延びることができましたが、Alexi はハードなパーティーと中毒という悪魔にツケを払う必要を実感していました。
「胃に永久的なダメージはないと言われたけど、解毒して過度な飲酒の習慣から抜け出さなければならなかった。毎日ウイスキーを5杯も飲む必要はないと思ったね」
入院したからといって、Alexi が自分のやり方を完全に変えることはありませんでした。
「入院したのはいいことだったよ。退院してからはあまり飲んでいない。ビールを数本飲む程度だ。あちこちでビールを飲むくらいで、ハードな酒は完全にやめた。ショットを飲むなんて考えたくもないね。永遠にやめるというわけではないよ。ただ、今は考えていないだけだ。俺はいつも、困難な方法で物事を学ばなければならない運命なんだ。ただ、このままではいけない、もっと自分を大切にしなければならないと気づかされたね」
ANNIHILATOR の Jeff Waters は悔やみきれない様子です。
「Alexiとは最初から意気投合した。互いの演奏を愛してたから。最初はどうやって酒をやめたの?と助けを求めたけど、結局他の中毒者と同様酷い状態に戻り、俺に話しかけなくなった…でも心底ヤツは酒や薬と手を切ることを望んでたんだ。寂しいね…助けを求めるのは恥じゃないよ」
何年にもわたって、Alexi は自らのうつ病や音楽の背後にある精神的な混乱について、いつも率直に語ってきましたが、彼はしばしば、最も暗い瞬間を乗り越えさせてくれたのはバンドだと主張しましていました。
「何かを失うことを恐れるとしたら、ギターを弾くことが真っ先に思い浮かぶんだ」
2011年の “Relentless Reckless Forever”のインタビューでは、Alexi の精神状態が話題になりました。ただ、このアルバムは、2003年の “Hate Crew Deathroll” のように、鋭く、技術的に優れた作品になったと評価されただけでなく、フロントマンの状態もずっと良くなっていました。
「いつもと同じライフスタイルを続けることはできない 。朝、起きてからウイスキーを1本飲むこともできない。大げさだけど、いつの間にかかなりハードになっていて、それに気づかなかったんだ。人としてもミュージシャンとしても機能していたし、ショーを台無しにしたこともなかったけど、落ち着いて、自分を大切にしなければならないと気付いたんだ」

時に、Alexi はグループ内の不和をほのめかすこともあり、ギタリストの Roope Latvala には必要な「労働倫理」が欠けていると主張したこともありました。結局 Roope は2015年に COB を脱退し、バンド最後の作品 “Hexed” で後任 Daniel Freyberg の登場を予告したとき、Alexi はこう説明しています。
「俺たちの残りのメンバーは…子供の頃からお互いを知っている…20年間一緒にツアーを続けてみてみなよ。そうすれば、時には結婚生活のように、くだらないことで口論になってしまうこともあるということがわかるだろうね」
“Hexed” では “Follow The Reaper” で完成させたようなネオクラシカルな要素を再び取り入れましたが、より筋肉質になり、パンチの効いたクランチーなリフ、メロディックなバック・アレンジがよりシームレスに融合していました。批評家たちはこのアルバムを「ルーツへの回帰」と評しましたが、Alexi はその事実をいつものように軽妙に認めました。
「俺たちは何度もそこに戻っているように見えるけどね」
そうして CHILDREN OF BODOM は、Alexi がアナハイムの病院に入院した後もレコーディングやツアーを続け、後期の作品では若返りも感じられたもののバンドは2019年に解散を発表します。彼らの最後のライブは、12月15日のヘルシンキ・アイスホールでした。Henkka は昨日のことのように回想します。
「いつも通りのことをやった。ショーの前にはフィストバンプをして、ショーの後にはハグをして、また会おうと言ったよ。みんな喜んでいたし、気分も良かった。もちろん、もう二度と一緒に演奏することはないとわかっていたから、悲しい気持ちもあったけどやり遂げたんだ」

著作権の問題でCOBの名前を使い続けることができなかった Alexi は、新バンド BODOM AFTER MIDNIGHT を結成し、自身のキャリアの新たな章を始める準備を行います。2020年10月には、フィンランドで3回の小さなライブを行いました。COB時代からの盟友 Daniel は悲しげに語ります。
「Alexi はとてもオールドスクールな人物で、リフとメロディーだけもってスタジオにあらわれ、それをメンバーに見せて膨らませていくんだよ。そうやって、レコードを書き始めて、今年レコーディングして、2022年にリリースする予定だったんだけど、そうはならなかったんだ…彼はとても興奮していたよ。新たな意欲とモチベーションを持っていて、自分がまだ頑張れることを示したかったんだ」
「彼は小さなクラブでのライブをとても喜んでいたわ」と Kimberly も同意します。「彼は、派手さなんていらないと思っていたのよ。演奏はシャープで、歌も素晴らしく、新しいラインアップはキラー。彼は、あのライブがこの世に存在する最後の3つのライブになったことをとても誇りに思っているでしょうね。自分のルーツである小さなクラブ、素晴らしいエネルギー、新しいパワーに戻ったのだから。アルコール依存症や薬物乱用の問題で苦しんでいる人は助けを求めて。彼と同じ運命をたどる必要はないわ。誰かが手を差し伸べるのは愛情から。依存を助長するような人たちに囲まれないようにしてね。彼の死を無駄にしたくないの。だからAlexiを教訓に一人でも多くの命が救われればと願っているのよ」
BODOM AFTER MIDNIGHT に残した僅かなレコーディングの一つ、”Paint The Sky With Blood” は空を真っ赤に染める Alexi の新たな野望を象徴した楽曲でした。生き様でした。まさに遺音。メンバーは誇りを持って、再度獣を檻から放ちました。
「俺たちと同じように、Alexi もバンドの曲に熱中していたし、この曲を発表することを待ち望んでいた。だから、彼の願いを叶えることができて嬉しいね。言うまでもなく、俺たちは彼の最後の創造物の一部となれることを光栄に思い、誇りに思っている。Alexi の音楽、遺産、そして彼自身を称えるために、もう一度、獣を檻から解き放つ時が来たんだよ」
Alexi が無人島に持っていくレコードを聞かれたとき、「無人島でパーティーがあったときのために」と、Andrew WKの “I Get Wet” を選んだのは楽しい逸話でした。彼が今、どこにいようと、あのアルバムを大音量で聴いていることは間違いないでしょう。
最後に Alexi の言葉を置いておきましょう。
「賞や賛辞のためにこの仕事をしているわけではないんだよ。音楽のため、そして演奏することを愛するためにやっているんだ。それだけだ」

参考文献:GUITAR WORLD: THE LIFE AND TIMES OF ALEXI LAIHO

LOUDER SOUND:Alexi Laiho: the blazing life and wild times of a modern metal hero

NME:RIP, Children of Bodom’s Alexi Laiho: Finnish metalhead with a wicked sense of humour