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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【STRAY GODS : STORM THE WALLS】GREEK POWER METAL SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BOB KATSIONIS OF STRAY GODS !!

“I Think That It Has To Do That I’m a Good RPG Player. I Can Get Easily In The Shoes Of Every Band Like I’m a Full Member Of It. I Can Pretend To Be Adrian Smith, Jim Matheos, And Joey DeMaio All On The Same Day.”

BOB KATSIONIS “KEEPER OF THE GREEK POWER METAL”

1980年代後半、ヨーロッパでパワーメタルが登場したとき、それは要するに、すべての “つまみ” を最大にした伝統的なヘヴィ・メタルだったのかもしれません。HELLOWEEN や GAMMA RAY といったバンドは、JUDAS PRIEST や IRON MAIDEN が築いた核となるサウンドに、よりビッグで晴れやかなメロディー、より大仰なアレンジ、より華やかなボーカルを吹き込み、創造力を過剰なファンタジー世界へと導くことに成功しました。パワーメタルが発展するにつれ、アーティストたちはサウンドの特定の側面に焦点を当て、よりシンフォニック。プログレッシブな分派や、スラッシュ、スピードメタルとの再会を目論む一派も登場。細分化が加速されていきます。しかし、1990年代後半から2000年代初頭にかけてギリシャで生まれたパワーメタルのシーンは当初、初期のパワーメタルの原則にほぼ忠実だったのです。
その後20年間で、ギリシャはおそらく世界で最も強力なパワーメタル・シーンに発展しました。リリースされた作品の数、全体的なクオリティ、あるいは探求されたサウンドの幅など、どれをとっても、地中海沿岸の国は世界中のパワーメタル・ウォーリアーズから大きな尊敬を集めています。
実際、初期からシーンを見守る SACRED OUTCRY のベーシスト George Apalodimas は、「最近、ギリシャからリリースされる作品のクオリティに人々が注目しているのを見て、とても嬉しく思っている。伝統的なヘヴィ/パワーからプログレッシブやシンフォニックなものまで、幅広いスペクトルをカバーする様々なアーティストが揃っているし、僕らが最初に活動していた(90年代)頃と比べて、シーンは大きく進歩したんだ」と語っています。
ギリシャで Bob Katsionis ほどパワー・メタルの強豪国としての評判を高めている人物はいないでしょう。アテネ出身の Bob は、2000年代前半に CASUS BELLI と FIREWIND のキーボード奏者として有名になりました。この2つのバンドは、ギリシャがモダンなシーンを確立する上で非常に重要なバンド。
「たしかに FIREWIND が現れて、いくつかのドアを開けたことも今の状況に関係していると思う。私たちが現れるまで、ギリシャで成功したバンドは ROTTING CHRIST や SEPTIC FLESH のようなブラックメタル・バンドだけだったんだ」
特に、Gus. G 率いる FIREWIND は、その津波のように押し寄せるメロディーと超絶技巧の炎風で日本でも大きな成功を掴み、グリーク・パワーメタルの存在を世界へと知らしめる原動力となったのです。

「ソロ、OUTLOUD, SERIOUS BLACK, VASS/KATSIONIS, WARRIOR PATH, STRAY GODS, イタリアの WONDERS、あと VALIDOR も。ププッ多すぎて挙げられない!(笑) 実はそれは、私が RPG の良いプレイヤーであることと関係があると思うんだ。どのバンドにも、自分がそのバンドの完全なメンバーであるかのように、簡単に入り込むことができるんだ。Adrian Smith, Jim Matheos, Joey DeMaio に同じ日になりきることができるんだ」
FIREWIND を離れた現在、Bob は世界中の様々なバンドで演奏し、レコーディング・エンジニアやミュージック・ビデオのディレクターとして働き、Symmetric Records を運営し、ギリシャから最もエキサイティングなメタルのレコードを様々な形でリリースしているのです。Bob Katsionis は、かつての Shrapnel Records における Mike Varney のごとく、これらのアルバムの多くを自らプロデュースし、演奏も加えています。
「FIREWIND を辞めてからの2年間で、私は新しいスタジオを作り、素晴らしいアルバムをリリースしながら Symmetric Records をアンダーグラウンドで尊敬されるレーベルにし、プロデューサーとしての地位も確立できた。これは、”バンドでキーボードを演奏している人” ではなく、自分自身でいることの利点だったよね」
Bob の最初の本格的なバンド、SKYWARD は、解散する前にフルレングスを録音することができませんでした。ゆえに、ギリシャをパワー・メタルの地図に乗せたのは、1998年にデビューしたアテネの別のバンドでした。INNERWISH の “Waiting for the Dawn” は、HELLOWEEN の “Keeper of the Seven Keys” のメタル・ファンタジーと STRATOVARIUS のパワー・シンセサウンドの中間にあって、ギリシャで今日まで続いているパワーメタルの連鎖の始まりとなりました。
INNERWISH の “Waiting for the Dawn” からのラインナップはアルバム1枚のみとなりましたが、その後バンドはギタリスト Thimios Krikos と Manolis Tsigos の脇を固めるミュージシャンを交代しながら活動を続けてきました。彼らの最新作は2016年のセルフタイトル作品で、EVERGREY や SYMPHONY X を彷彿とさせるプログレッシブな装飾を施した、より洗練されたパワーメタルへと進化を遂げています。かつて弊誌がインタビューを行ったグリーク・パワーの超新星 WARDRUM, SUNBURST にしても、NEVERMORE, KAMELOT という二大プログパワー・バンドを崇拝していましたし、UNTIL RAIN という才能もいます。プログは一つのキーワードなのかもしれませんね。ともあれ、INNERWISH は、同世代の FIREWIND とともに、20年経った今もなおグリーク・パワーメタルを代表する存在といえます。

1998年にピレウスで結成された SACRED OUTCRY ですが、デビュー・アルバム “Damned for All Time” がリリースされたのはなんと2020年のことでした。バンドは初期にカルト的なデモを2つ発表していて、2003年のデモは実質的に “Damned” のラフな原型でしたが、最終バージョンは待つ価値が十分にあったといえます。壮大なメタル、魅惑的なアコースティック・パッセージ、豊かなメロディー、スラッシーなリズム、そして Yannis Papadopoulos のパワフルなボーカルが融合したこの作品は、ギリシャのシーンのみならず、パワーメタル全体のクラシックとなりました。
バンドのベーシストであり、唯一の創設メンバーである George Apalodimas は、「私はパワーメタルをずっと愛してきた。うまくいけば感情を伝えることができるからね。このジャンルの音楽と歌詞は、日常の生活や葛藤から抜け出すための入り口として機能するんだ。そして、それが私たちの音楽で常に目指しているものなんだ」と語ります。
“Damned for All Time” が提供する逃避は、Apalodimas と彼のバンドメンバーが愛するファンタジー小説に根ざしています。アートワークには、マイケル・ムアコックの代表作である『メルニボネの皇子』のエルリックが、頭上をドラゴンが飛び交う厳かな城を見つめる姿が描かれています。このアートはアルバムの雰囲気と完璧にマッチし、特に14分にも及ぶ見事なセンターピース “Damned for All Time” は圧巻のファンタジー。元 LOST HORIZON のシンガー Daniel Heiman をボーカルに迎えた2ndアルバムもすでに “オーブン” の中にあります。このスウェーデン人は、2000年代初期に最も高く評価されたパワーメタルの声であり、ギリシャのシーンの名誉あるメンバーとしての彼の再登場は喜ばしいことといえるでしょう。

さて、Bob Katsionis 率いる Symmetric Records が真に注目を集め始めたのは、Andreas Sinanoglou が率いるアテネのプロジェクト、WARRIOR PATH と仕事を始めたときでした。ファンタジーをテーマにした勇壮なパワーメタルの2枚のアルバムを通して、Sinanoglou はこのジャンルの最高のソングライターの一人としての地位を確立しました。Bob 自身もその2枚のアルバムで演奏し、プロデュースを手がけていますが、彼は最初から特別なバンドを手に入れたと思っていたそうです。
「当初、Andreas は、自分と友達が楽しめるアルバムを作りたかっただけなんだ。でもね、彼がスタジオで曲を演奏しているのを聞いた瞬間、この素材は世界のパワーメタル・シーンに欠けているものだと気づいたんだ」
Yannis Papadopoulos をセンターに据えたセルフタイトルのデビュー作は素晴らしい出来栄えでしたが、Sinanoglou は想像できる限りのあらゆる点で前作を改善した2作目、”The Mad King” で上がり切ったハードルをさらに超えてきました。楽曲はより野心的で、演奏はよりタイトに、歌詞の物語性はより強く、そして何よりここでも Daniel Heiman が歌っています。WARRIOR PATH はパワーメタルで最も切望されているシンガーを確保し、”The Mad King” に瑞々しき命を吹き込んだのです。
「Daniel Heiman を起用したのはクレイジーなアイデアだったが、そうするのが正しいことだと分かっていたんだ」と Bob Katsionisは振り返り、「非常に大胆な行動が、最終的には実を結んだ。このアルバムには、いまだに信じられないほどの愛と賞賛が寄せられているよ。そんなつもりはなくても、”アンダーグラウンド・クラシック” を作ってしまったと思うし、私たちのアルバムを買ってくれた人たちひとりひとりに感謝しているんだ。我々は感謝しているよ」

Bob Katsionisの最新プロジェクトの一つは、TERRA INCOGNITA のシンガー、Billy Vass とのコラボレーション・アルバムです。そして、Vass/Katsionis とクレジットされたアルバム “Ethical Dilemma” は、WARRIOR PATH の剣を振り回す勇壮なパワーメタルからは遠く離れたもの。その代わりに二人は、DREAM THEATER, QUEENSRYCHE, FATES WARNING の美しくも洗練されたプログ・メタルにインスピレーションを得ることになります。こうしたスタイルの追求は、複雑と甘さのバランスが非常に難しいのですが、”Ethical Dilemma” で彼らは “Images and Words” や “Empire” のような完璧なバランスを見つけ出しました。
「90年代から2000年代にかけてのメランコリックで難解なプログレッシブ・メタルに常に愛着を抱いていた私にとって、これはそれを示すチャンスだったんだ。Billy Vass にソロ・アルバムのプロデュースを頼まれた時、”どんな音にしたい?” と聞いたら、FATES WARNING の “Perfect Symmetry” みたいな音楽を作りたいと言われたんだ。で、それが全てだった。作曲には1ヶ月もかからなかったんだけど、彼がメロディーを考えてくれたときは、とても感激したよ。私が渡した音楽すべてに、完璧なセリフと歌詞を書いてくれたんだ!」

1995年、小さな港町ヴォロスに住んでいた10代の頃、Kiriakos Balanos は友人たちと SILENT WINTER をスタートさせます。そのメンバーで数枚のデモを制作しましたが、仕事や学業で方向性が異なるため、バンドは解散。大人になってヴォロスに戻った Balanos は、SILENT WINTER 名義で新たなラインナップを組み、プロジェクトの復活を決意します。バンド名とはうらはらに激烈な “The Circles of Hell” と “Empire of Sins” は、その決断の正しさを裏付けるもの。Balanos のシュレッド・ギターとフロントマン Mike Livas の高らかなファルセットに導かれた、プログ・パワーのワープスピードは光速を超えます。
「ギリシャがパワー・メタルにおいて非常に強力なシーンを作るれたことは、非常に満足のいくこと。特にこの10年間ギリシャは、他の国から羨まれることが何もなかったからね。とバラノスは言います。「この場所に小さな石を贈ることができてとても幸せだよ」
注目すべきは、SILENT WINTER がグリーク・パワーメタルの非公式な本部であるアテネから遠く離れた場所で活動していることでしょう。バラノスは、アテネに多くのチャンスがあることは認めていますが、強い決意と努力によって地理的なハンディキャップを克服することができたと胸を張ります。
「首都に住まないと、どうしても負担が大きくなってしまう。田舎では知り合いが少ないから、広報の仕事も多くなる。つまり、より多くの努力と作業が必要だという意味だよ」

CRIMSON FIRE 3枚目のLP “Another Dimension” のジャケットには、レーザーの目を持つロボット・ペガサスが宇宙空間を飛行している様子が描かれています。ファンタジーの “おふざけ” を皮肉らずに受け入れることで、パワーメタルを伝統的なヘビーメタルの系譜から少々切り離すことに成功しているのかもしれませんね。”Another Dimension” は、CRIMSON FIRE のクラシックなパワーメタル・サウンドに80年代のAOR的なシンセサイザーとボーカル・ハーモニーを取り入れ、HELLOWEEN と JOURNEY の “別次元” が同時に味わえる作品に仕上がっています。
ギタリストの Stelios Koutelis にとって、ギリシャはメタルを “売る” のに適した場所であり、2004年という結成の時期は完璧だったといいます。
「ギリシャでヘヴィ・メタルが盛んになり始めた時期に、メタルシーンに参入する機会に恵まれたと言うべきだろう。やったりやめたり、時にはやり続けるバンドもいたが、周りにバンドがいない瞬間はなかった。そして、これは現在に至っても同じことだよ」

VALIDOR 唯一の常任メンバーである Odi Thunderer は、自身の音楽を “Blood Metal” と呼んでいます。その理由は簡単。Symmetric Records からリリースされた VALIDOR の最新アルバム “Full Triumphed” からは、マーチング・ドラム、スタッカート・ボーカル、ぎっしり詰まったリフに紛れもない血で血を洗う戦争のにおいがします。Thunderer のパワーメタル解釈は、このジャンルの華やかなヨーロッパスタイルよりも、MANILLA ROAD や CIRITH UNGOL といったエピック・メタルとの共通点が多いといえます。そのため、彼はギリシャでは比較的異質な存在ですが、それでも演奏も受け持った Bob Katsionis をはじめシーンの著名人たちとは深く交流しています。

「私の音楽はすべて、”Seventh Son of a Seventh Son” を中心に発展してきたんだ。音、音符、構造、コンセプト。IRON MAIDEN は皆も知る通り、音楽以外にも多くのことをやっている。アートであり、ロックであり、メタルであり、イメージであり、伝説なんだ。だから偉大なんだよ」
では、Bob Katsionis を中心とした グリーク・パワーメタルの原点はどこにあるのでしょうか。答えはズバリ、IRON MAIDEN です。エディをアイコンとしたメイデンのマーケティング戦略やアート、イメージ作り、伝統的なメタルを突き詰めながら幅をもたせた多様なサウンド、そして練りに練ったストーリーをアルバムに付与するコンセプト。そのすべてが Bob Katsionis の作品群とギリシャのパワーメタルに投影されているのです。
「正直なところ、昔のメイデン・ファンの大半がそうであるように、ここ10~15年の彼らにはかなりついていけてないんだ。しかし、これは彼らではなく、私に問題があるんだよ。私は “Senjutsu” を好きになろうとしたし、最後には好きになった。でもたしかに、曲はとても長くて退屈なんだよね」
STRAY GODS はそんな Bob の “メイデン愛” を形にした新たなプロジェクト。ボーカルも、ギターも、リズム隊も、恐ろしいほどに IRON MAIDEN しています。ただし、重要なのは “Storm the Walls” の楽曲はすべてがオリジナルで、ありそうでなさそうであるかもしれないけどないようなメイデンのリフやサウンドを奏でている点です。さらにいえば、”Somewhere in Time”, “Seventh Son of a Seventh Son” というメイデン史上最もキャッチーで煌びやかだった時代を基盤としているので、現在のメイデンには期待できないカタルシスやシンガロング、スピードアタックが存分に繰り広げられているのです。まさにここは “If” の世界。もしメイデンが、あのころの輝きを取り戻したら…
今回弊誌では、弦と鍵盤の二刀流天才派、Bob Katsionis にインタビューを行うことができました。「例えば、DREAM THEATERのように、曲の長さを正当化することはできない。だから、私は彼らを “プログレッシブ” とは呼ばないんだよ。彼らに今必要なのは、外部のプロデューサーなんだろうな。でも、それをいったい誰が言うんだろうね?我々は最後まで彼らを追いかけ、愛していくつもりだよ」 素晴らしいですね。オリジナルだなんだのいろいろをすっ飛ばして言えるなら、”Senjutsu” の2万倍良い。Bandcamp のメタル部門で発売からずっと一位を守り続けているのも頷けます。オリンパス・メタルの守護者の登場。どうぞ!!

STRAY GODS “STORM THE WALLS” : 10/10

参考文献; BANDCAMP Olympus Rocks: Where to Start with Greek Power Metal

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FEUERSCHWANZ : MEMENTO MORI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HANS PLATZ OF FEUERSCHWANZ !!

“We Wanted To Expand Medieval Rock Into The World Of Metal, We Wanted To Cross German Lyrics With Heavy Metal Riffs, Folk Violin With Wild Guitar Solos, Bagpipes With Powerful Metal And Put This Into a Massive Fantasy World Full Of Swords, Mead And Dragons.”

DISC REVIEW “MEMENTO MORI”

「確かにフォイアーシュワンツ・ドラゴンは成長しているけど、私たちの核となるメッセージは変わっていないんだ。私たちの目にはまだユーモアが宿っていて、人生のポジティブな面を歌い、楽しんでいるよ。だけどたしかに、よりシリアスな意味合いを持ってきたね」
ドイツのメディーヴァル・メタル、炎龍こと FEUERSCHWANZ が新作 “Memento Mori” を2021年12月31日にリリースするとを決めたのは、ある意味宿命でした。近年の人類史において最も暗い1年を締めくくり、多くの人に必要な笑顔をもたらすに適したバンドがあるとすれば、それは FEUERSCHWANZ をおいて他にはないはずですから。98%のメタル・バンドがダークでシリアスなイメージを追求し孤独と闇を分かち合う中で、彼らは一貫してポジティブかつ陽気。優しく楽しく朗らかにリスナーの心へと寄りそいます。
「私たちは常に人生、人間、友情を祝福しているんだ。このアルバムのテーマ “Memento Mori” は、今日がまるで最後の日であるかのように、精一杯生きるんだ!ってことだから」
アルバムのテーマとなったラテン語の慣用句 “Memento Mori” とは、死はいつもそばにある、だから今を全力で生きようという古からのメッセージ。死が当たり前の出来事だった中世から遠く離れた現代でも、多くの人は喪失や憂鬱をかかえていて毎日を自分らしく前向きに生きられていないようにも思えます。FEUERSCHWANZ は初期のコミカルなイメージを捨て、真剣に人間や人生に向き合うことで、リスナーの悩みや憂鬱を炎で焼きつくす美しきドラゴンの姿へと進化を遂げたのです。
「メディーヴァル・ロックの多くのバンドはドイツの大きなお祭りであるルネッサンス・フェアで演奏し、同時に自分たちのツアーもやっているんだよね。私たちはそこから発展させて、ドイツ語の歌詞とヘヴィ・メタルのリフ、伝統のバイオリンとワイルドなギターソロ、バグパイプとメタルパワーを掛け合わせ、剣や蜂蜜酒やドラゴンに満ちた巨大なファンタジー世界に落とし込みたかったんだ」
インタビューに答えてくれた実は凄腕のシュレッダー Hans Platz のギター・サウンドはこれまでよりも遥かに強烈で、キャプテン・フォイアーシュワンツの歌声は威風堂々。ヴァイオリンやハーディー・ガーディー、フルートの助けを借りながらルネッサンス・フェアに始まった緩やかなメディーヴァル・ロックを激しいメタルの頂へと導いていきます。
タイトル・トラック “Memento Mori” の脈打つようなベースライン、胎動するクランチーなリフワーク、炎焔の音の葉が示すように、明らかに FEUERSCHWANZ はこの作品でキャッチーの中にメタリックな印象を著しく強化して、己の陽の信条を真摯にリスナーへと伝えています。音楽的にも哲学的にも、SABATON や POWERWOLF のパワー・メタルに接近した結果と言えるのかもしれませんね。
Johanna とプリンスこと Ben Metzner による伝統楽器の色合いもアルバムを通して驚異的です。”Untot im Drachenboot” における狂気のバグパイプ、血湧き肉躍る “Rohirrim” の角笛、”Am Galgen” の雄弁なヴァイオリンは、ロード・オブ・ザ・リングのファンタジーはもとより、ゲーム・オブ・スローンズの壮大なる激戦をも現代に蘇らせていきます。時にはローハンの騎士の物語を、時には聖ニコラスの伝説を、時にはカルタゴの将軍の逸話をドラゴンの目を通して伝えながら。
「みんなメタルで使われる英語に慣れきってしまっているから、このままドイツ語で歌い続けていたら逆に何か新しいものが生まれるかもしれないと思っているんだよ。音楽という言語は国際的なものだし、歌詞は分からなくても音楽は理解されると信じている」
すべてがドイツ語であることに何か問題があるでしょうか?むしろ、ドイツ語のメロディックな一面に彼らは気づかせてくれるはずです。重要なのは、瞬時にストーリーを理解することはできないにしても、高揚していつのまにか口ずさむ楽曲のコーラス。世界は中世より多少ましになった程度の暗闇かもしれませんが、結局私たちが墓場に持っていけるのは棺桶くらいのもの。失うものは何もない。死が鋭いそのナイフをつきつけるまでは、今を生きよう!FEUERSCHWANZ の音楽はそう語りかけているのです。
今回弊誌では、Hans Platz にインタビューを行うことができました。「音楽が進化することは重要だと思うし、今現在、伝統楽器を持つバンドはメタルに新しいものをもたらしているんだ」 AMON AMARTH から O-ZONE, THE WEEKEND のカバーまで収録したデラックス・エディションも楽しい試みですね。今だからこそアツいマイアヒ。こういったバンドには珍しくギタリストがヴァーチュオーゾ・タイプなのも良いですし、今回はアレンジもフック満載。GLORYHAMMER から飛び出た Thomas 氏もゲスト参加。どうぞ!!

FEUERSCHWANZ “MEMENTO MORI” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【POWER PALADIN : WITH THE MAGIC OF WINDFYRE STEEL 】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KRILLI & INGI OF POWER PALADIN !!

“Iceland Is Our Home, To Us , Our Landscape Is Mundane. Weirdly, We find Landscapes And Environments That Others Would Consider Mundane – Big Cities, Flat Plains, And So On – Quite Exotic And Inspiring!”

DISC REVIEW “WITH THE MAGIC OF WINDFYRE STEEL”

「パワー・メタルはすべてがファンタジーの世界だから、アイスランドの火山や氷がインスピレーションと思われがちだけど、実はそうじゃないんだよね。アイスランドは僕らの故郷で、僕らにとっては平凡な場所なんだよね。だから不思議なことに、他の人が平凡だと思うような風景や環境 – 大都市や平坦な平野など – が、とてもエキゾチックで刺激的だと感じているんだよ」
光と陰の広々としたポストロック、感情的でアトモスフェリックなブラックメタル、伝統にひねりを加えたフォーク・ロックといった音景色はすべて、スカンジナビア最西端に位置する火山と氷の荒涼としたアイスランド、その地形と違和感なくつながります。では、魔法にドラゴン、賢者でありながら剣を振るうパラディンが登場するパワー・メタルはどうでしょう?
極限の自然環境もファンタジーには不可欠、そう思われがちですが、この国で唯一のパワー・メタラー POWER PALADIN はむしろ、自国にはない大都市や平坦な平野からインスピレーションを受けています。彼らにとっては平凡こそが非日常だから。結局、創造の源は人それぞれ。出自はすべてではありません。そうして私たちにとっては当たり前の光景から啓示を受けた新鋭の描き出す音楽は、完膚なきまでに非日常のファンタジーとなりました。
「ライブを始める前にファンタジックな格好をするようなバンドになったらどうかという話もあったんだけど、最終的にそれはやめて、もっとリラックスしたメタルのアプローチでステージ衣装を選ぶことにしたよ。ステージに小道具を持ち込むことはあるけど、おそらく僕たちがあの “ドレスアップ・ゲーム” に参加するようなことはないだろうな」
パラディンとは、勇気と決意を魔法に託し、不屈の魂で業物まで振るう文武両道の勇士。メガギルド Nuclear Blast の OB が立ち上げた新ギルド Atomic Fire の先頭に立ち剣を高々と振り上げたのは、他ならぬレイキャビクの POWER PALADIN でした。弦張斧と鍵盤弓で武装した6人の高貴な戦士たちは、メタル背教者をなぎ倒しつつ、まもなく何十万ものメタル・ソルジャーをその背後に従えていくはずです。なぜなら彼らは見た目や出自よりもっと重要なものを心得ているから。真の文武両道はその精神こそ清らかです。
「僕は MEGADETH や METALLICA みたいなスラッシュ・メタルや PINK FLOYD のようなプログ・ロックで育ったから、今までもこれからも僕の曲作りにはそういった音楽が大きな影響を与えるだろうね。僕と Atli と Bjarni Egill はグラム・ロックのカバー・バンドで一緒に演奏していたから、その時代からの影響もあるだろうね」
メタルのバトル・フィールドはやはり音楽です。当然、POWER PALADIN の根幹をなすのは勇壮無比なパワー・メタル。DRAGONFORCE を想起させるシュレッドの宇宙で絶世のボーカリスト Atli Guðlaugsson が内なる Kiske と交信する “Righteous Fury” や、炎以前の RHAPSODY の如くタンデム・ギターが駆け巡る “Ride The Distant Storm”、ミッドペースの重圧 (ハンマー・フォール) に拳を突き上げざるを得ない “Evermore” など、”With The Magic Of Windfyre Steel” にはパワー・メタルに求められる要素すべてが詰まっています。GAMMA RAY や BLIND GUARDIAN が醸し出した、90年代初頭のエッセンスが各所に散りばめられているのも嬉しい限り。
ただし、POWER PALADIN は、パワー・メタルの先人たちが育んだ優れた音片を無機質なモニュメントへと単純に貼り付けたコピー・キャットではありません。DOKKEN と見紛うばかりの絢爛なコーラスと美麗なメロディーが疾走する “Kraven The Hunte” こそ彼らが特別な勇者である証。”Dark Crystal” のメロパワとは一味違った北欧的クリスタルなセンス、”Into The Forbidden Forest” のプログレッシブな展開、”There Can Be Only One” のオリエンタルなハイトーン・マジック、そのすべてが彼らの強烈な個性として爆発的な扇情力と共にリスナーを多彩な異世界へと連れ去るのです。最後の飾りつけは RPG の音細工。
今回弊誌では、ベーシスト Krilli とギタリスト Ingi にインタビューを行うことができました。「日本のものも含めて RPG にはかなり影響されているね。実際、”Righteous Fury” のソロの直前には “ゼルダの伝説” へのオマージュが込められている」どうぞ!!

POWER PALADIN “WITH THE MAGIC OF WINDFYRE STEEL” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PARADOX : HERESY Ⅱ: END OF A LEGEND】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHARLY STEINHAUER OF PARADOX !!

“Unfortunately, There Is Far Too Much Suffering In Our Beautiful World. Everyone Thinks That Humans Are Intelligent, But With All This Self Destruction Crimes Against Humanity, I Have My Doubts About It.”

DISC REVIEW “HERESY Ⅱ: END OF A LEGEND”

「PARADOX の音楽には数え切れないほど多くのメロディラインが含まれているけど、それは大衆に受けるものでは必ずしもない。だけど、何千回もコピーされて成功したクリシェのようなメロディーを、それがより成功した音楽だからといって俺は奏でたり聞くことはもうできないんだよ。だからこそ、PARADOX で自分のスタイルを発明できたことに満足しているんだ」
時は20世紀後半のドイツ。80年代中盤から後半にかけて、例えば HELLOWEEN、例えば RAGE、例えば BLIND GUARDIAN は、スピード・メタルを独自のファンタジーとシンガロングの旋律美で染め上げ、ジャーマン・メタルの美学を確立していきました。一方で、KREATOR, DESTRUCTION, TANKARD といったよりアンダー・グラウンドなバンドは、米国から流れ着いたスラッシュ・メタルの鼓動をより深く、より速く、より激烈に追求することとなりました。
1981年に OVERKILL の名で結成された PARADOX は、まさにその両者の中間、ベイエリアのスラッシュ・メタルとヨーロッパのパワー・メタルをつなぐ架け橋のような存在だと言えるでしょう。中でも、洗練されたメタリックなリフワークとドラマティックなメロディーの背理な婚姻が TESTAMENT, HEATHEN, METAL CHURCH や TOXIK への欧州からの回答にも思えた90年の “Heresy” は、メタル史に今日にまで語り継がれる傑作の一つ。
「これまで俺は “Heresy” の第二幕を作るつもりはまったくなかったんだ。なぜなら、物語やアルバムの第二部は、第一部より良いものにはならないと信じているからね。これは映画でも同じことが言えるんだけど」
以来、PARADOX とバンドの心臓 Charly Steinhauer には様々な人生の荒波が襲いかかります。
ラインナップの流動化、二度のバンドの活動停止、愛する妻の他界、自身の体調不良。それでも Charly は、”Electrify” で2008年にバンドを再建してからは体の許す限りその才能を唯一無二なるスラッシュ・パワーメタルへと捧げてきたのです。そして “Heresy” から30年。PARADOX は傑作の続編という難題を完璧にこなしながら、自身の存在意義を高らかに宣言します。
「人間は何も学んでいない。それが真実さ。世界のさまざまな場所で、いまだに戦争や抑圧、飢餓が続いている。本当はすべてが平和で美しい地球になるはずなのに、残念ながら戦争や抑圧は常に存在しているんだ。そして何より、信念が違うという理由だけで迫害され、殺された犠牲者は数知れない。誰にでも、自分の人生を最大限に楽しむための力、それをを信じる権利があるというのにだよ」
“異端”、”邪教” という意味を認めた “Heresy” シリーズは、中世ヨーロッパで腐敗した教会、聖職者の堕落、汚職に対して本来の信仰や禁欲を取り戻そうとしたカタリ派という民衆運動と、それを異端とし鎮めるために遣わされたアルビジョア十字軍、そして異端審問のストーリーを描いています。もちろんこれは歴史の話ですが、オリジナルの作詞家 Peter Vogt が持ち寄った新たな異端のストーリーが、現代社会の暗い部分とリンクし、ゆえにこのタイミングで PARADOX が “Heresy” を蘇らせたのは間違いありませんね。
「何年も同じメンバーでバンドをやってみたかったよ。Axel Blaha と俺は1981年にこのバンドを設立した。でも、ラインナップが変わっても、俺がシンガーでありメインソングライターであることは変わらなかったんだ。だからこそ、PARADOX は今日でも PARADOX のサウンドを保っていられるんだ」
Peter はもちろん、オリジナル・メンバーで共に “Heresy” を制作したドラマー Axel Blaha の帰還。さらに Gus Drax に代わり再加入を果たしたギター・マエストロ Christian Muenzner。そして長年の戦友 Olly Keller。Charly のソロ・プロジェクトにも思えたメンバー・チェンジの巣窟 PARADOX ですが、考え得る最高の、そして安心感のある馴染みのメンバーを揃えた今回のアルバムで彼らは真のバンドへと到達したのかもしれませんね。実際、あらゆる場面で熟練し、すべてが自然で有機的なこの作品は、スラッシュ・メタルとパワー・メタル、そしてプログの知性があまりにもシームレスに混じり合っています。
「俺たちは、自分たちのルーツをおろそかにすることなく、あらゆるスタイルを統合し、あらゆるテイストのメタルを提供することに成功したんだ。そうして、俺たちの古い時代のサウンドを完璧に今のサウンドに伝えることができたんだよ」
70分のエピック・スラッシュは、”Escape From The Burning” で幕を開けます。高速でテクニカルなリフ、轟音のドラムとベース、そして壮大でキャッチーな歌声。実際、Charly の歌唱と旋律は BLIND GUARDIAN 初期の Hansi Kürsch を彷彿とさせ、Christian の鮮烈にして美麗を極めたシュレッドの現代建築と絶妙なコントラストを描き出します。言いかえれば、いかに彼らがスラッシュ・スタイルの容赦ない攻撃性と、劇場的なメロディやエピカルな感覚とのバランスを巧みに操作しているかの証明でもあるでしょう。
事実、”Burying A Treasure” のように、燃え盛るリフとマシンガン・ドラミングを全面に押し出してもアンセム的な輝きは増すばかりで、”A Meeting Of Minds” のように、ゆっくりとしたニュアンスのある曲に振り子が変わったとしても、ヘヴィネスの要素はしっかりと維持されているのですから。心に残るメロディーとスラッシュの暴動がせめぎ合うクローザー “The Great Denial” はそんな PARADOX の美しきパラドックスを完璧に投影した楽曲だと言えるでしょう。
つまり、”Heresy Ⅱ: End of a Legend” は、スラッシュ・メタル栄光の時代と、それと並行して進行し、最終的には1990年代に同様の重要なムーブメントに発展することになるヨーロッパのパワー&スピード・メタル・ムーブメントの間のミッシング・リンクのような輝きに違いありません。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの Charly Steinhauer にインタビューを行うことができました。「残念ながら、この美しい世界にはあまりにも多くの苦しみが存在する。誰もが人間は知的だと思っているけど、こういった同じ人類に対する自滅的な犯罪を見ると、俺はそんな考え方に疑問を感じるよ」 どうぞ!!

PARADOX “HERESY Ⅱ: END OF A LEGEND” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RAGE : RESURRECTION DAY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PEAVY WAGNER OF RAGE !!

“I Was Very Productive With Rage Over The Last Nearly 40 Years. Its 28 Albums Incl Refuge & LMO. Why? Because I Can!”

DISC REVIEW “RESURRECTION DAY”

「そう、俺はこのほぼ40年の間、RAGE で非常に生産的だった。REFUGE と LMO を含めれば、残したアルバムは28枚。なぜそんなに作れるのかって?それはな、俺様ならやれるからだよ!はっはっはっ!(笑) 」
Peavy Wagner は “骨のある” 男です。ジャーマン・メタルの世界では、1980年代の全盛期から多くの才能が生まれては消えていきましたが、RAGE は独特のイヤー・キャンディーと捻くれたセンスの二律背反を共存させながら、粉骨砕身ただ実直にメタルを紡ぎつづけてきた気骨者に違いありません。
刻々と変化を遂げるトレンドの急流、ミュージック・インダストリーの大波にも屈しないストイックなメタルの骨巨人。Peavy が語るように、”Trapped”, “Missing Link”, “Black in Mind”, そして “XIII” と、1990年代メタルの荒野においてさえ彼らの作品はむしろその輝きを増し、さながら骨上げの喉仏のように貴重な存在となったのです。
「いやいや、ありえねーよ!Manni は忙しくて時間もねーし、プロフェッショナルなバンドでやる気ももうないだろうしな。Victor はいろいろあって俺が6年前にクビにしたんだぜ?ありえねーよ!」
Peavy は RAGE は決してメンバー・チェンジの多いバンドではないと強調しますが、それが決して少ないわけでもありません。ほぼ40年に渡る長い歴史の中には、何度もドラスティックな変化の刻が訪れました。そうやって、新陳代謝を繰り返しながら、RAGE は生き続ける意味を見出してきたと言えるのかもしれません。
逆にいえば、あくまで Peavy という屋台骨の支えられる範囲でですが、RAGE は加わるメンバーによってその音楽性をさながら脱皮のように変遷させていったのかもしれませんね。そして、ギター・プレイヤーはその脱皮を終えた肉体の色を司る、重要なファクターとなったのです。
Manni Schmidt は今でも “Ragers” に最も人気の高いギタリストかもしれませんね。フレーズやリフの源流が推測できないような突拍子もないギターの百鬼夜行、奇妙なグルーヴのうねりは、”Missing Link” の異常な耳障りの良さと結合し、ある意味初期 RAGE の終着駅となりました。
一方で、Victor Smolski の超絶技巧も近年の RAGE にとって絶対的な看板でした。特に凄腕 Mike Terrana を伴って完成を遂げた “Soundchaser” のプログレッシブで、クラシカルで、シンフォニックで、キャッチーで、途方もないスケール感を創出したテクニカルなメタルの叙事詩は、ラヴクラフトに負けず劣らずの濃密な奇々怪界をその身に宿していたのです。
では、それ以外の時期は RAGE にとって “狭間” の報われない時だったのでしょうか?ずっと RAGE を追い続けたファンならその問いに突きつけるのは間違いなく否。何より RAGE の歴史に燦然と輝く “Black in Mind” にその両者は絡んでいないのですから。
「実を言うと俺たちは、数年前から RAGE の歴史の中でこの4ピースの段階を目指していたんだよな。だから、ツインギターというソリューションに戻るのは自然なことだったんだよ」
人生を変えたアルバムに POLICE や RUSH を挙げていることからも、Peavy がスリー・ピースにこだわりを持ち、この形態でしか生み出せない何かを常に念頭に置いていたのはたしかでしょう。ただし、一つの場所にとどまらないのもまた RAGE のサウンド・チェイス。
現代的で多様な世界観を切り開くため、メタルをアップデートし選択肢を広げるためにツインギターを導入した 大作 “Black in Mind”。(ちなみにその次の “End of All Days” は逆に肩の力を抜いて聴けるこちらも名作) AXXIS から Stefan Weber を、ANGELINC から Jean Bormann を、”家が近い” という理由でリクルートした “Resurrection Day” には、たしかにあの傑作と同じ血、同じ哲学が流れています。
明らかに Peavy は Smolski を解雇して “The Devil Strikes Again” に取り組んで以来、ある意味定型的なネオクラシカル・ギター、シアトリカル過ぎる表現、そして10年以上使ってきたアトモスフェリックでオーケストレーションなタッチそのすべてを剥ぎ取り、より “簡潔” で “あるべき姿” の RAGE を取り戻そうとしているようにも思えます。さて、その試みは吉と出たのでしょうか?それとも…
「新石器時代になると、人間は自然と共に生きる遊牧民から、定住して農業を営み、自然に干渉して自然を操作するようになった。このことが、気候変動、戦争、人口過剰など、世界が抱える大きな問題につながっているんだよ。俺たちは今、この危機を良い形で乗り越えるか、悪い形で乗り越えるかを決めなければならない時期に来ているんだ。つまり瀬戸際なんだよ。そしてその決断の日こそ、俺たちの “復活の日” なんだ…」
常に人類の歴史、古の秘法、異世界などをテーマとしてその場所から現代に鋭くメスを入れてきた Peavy。人と自然の付き合い方、そして脱皮を続けるバンドの哲学、その両者をリザレクトさせるダブル・ミーニングのタイトルはまさに彼の真骨頂。実際、”Resurrection Day” で RAGE は “Black in Mind” と同様に、彼らのメタルをアップデートしここに来てさらなる新境地を開いています。
その象徴こそ、”Traveling Through Time” でしょう。近年の IRON MAIDEN に通じるようなメタルの時間旅行には、ツインギターでしかなし得ない古のハーモニーが響き渡ります。その趣向を凝らした勇壮は GRAVE DIGGER にも似て、しかしオーケストラの荘厳や Peavy のダミ・キャッチーな歌声で完全に RAGE の独壇場としてリスナーに歓喜を届けるのです。
一方で、Peavy がグロウルをお見舞いする “Arrogance and Ignorance” を筆頭に、メロディック・デスメタル的な作曲術も今作では際立ちます。さながら ARCH ENEMY のように疾走し蹂躙し慟哭を誘う劇的なリフワークとハーモニーの数々は、これもまたツインギターでしかなし得ないバンドの新境地に違いありません。
もちろん、かつてのスピード・スラッシャーを彷彿とさせる “Extinction Overkill”、アコースティックを巧みに施した “Man In Chains”、80年代を現代風に塗り替えた “Mind Control” などこれまでのファンを満足させる要素も満載されていて、何より “Resurrection Day” の旋律はそのすべてが RAGE でありながら一段魅力的な珠玉となっているのです。その証明こそ、タイトル・トラックから、”Virginity”, “A New Land” と畳み掛ける、血湧き肉躍るフック満載のメタル・ドラマの三連撃。よりキャッチーに、よりドラマティックに、よりエピカルに。RAGE が遂げた完全復活。
今回弊誌では、Peavy Wagner にインタビューを行うことができました。「骨のコレクションは膨大な量になっているぜ。今では本物の骨の博物館を所有しているくらいでね!」 どうぞ!!

RAGE “RESURRECTION DAY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUNRISE : EQUILIBRIA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KONSTANTIN LAARS NAUMENKO OF SUNRISE !!

“We Remember Life In The Soviet Union Very Well And We Are Happy That Our Country Broke The Chains Of This Prison And Moves In The European Direction. Freedom Is In The Blood Of Our Nation And Our Way Is To Build a Highly Developed European Country.”

DISC REVIEW “EQUILIBRIA”

「ウクライナのメタルシーンは非常に多様で、ほとんどすべてのサブジャンルが存在しているよ。すでに有名なバンドもあれば、世界のメタルシーンでビッグネームになる可能性を秘めたこれからのバンドもあるんだよ」
JINJER, NOKTURNAL MORTUM, DRUDKH。Konstantin Naumenko の言葉を借りればソヴィエトという “牢獄” の鎖を断ち切ってからのウクライナは、ブラック・メタルからプログレッシブ・グルーヴまで個性極まる多様なバンドをゆっくりとしかし確実に輩出し始めました。それでもウクライナ、もしくは東欧から SUNRISE のようなクオリティーとテクニックを兼ね備えたパワー・メタルの申し子が登場したのは初めてでしょう。
「僕たちがインスパイアされたのは、バンドを始めた頃にとても人気があって、今ではレジェンドとなったパワー・メタルのバンドたちなんだ。STRATOVARIUS, SONATA ARCTICA, HAMMERFALL, HELLOWEEN みたいなバンドだよ」
2003年に活動を開始し、オンラインとアンダーグラウンドの世界で徐々に脚光を浴びはじめた SUNRISE は4枚目のフルアルバム “Equilibria” で、東欧メタル世界の常識を覆す大きな一撃を放ちました。
SONATA ARCTICA, そして STRATOVARIUS。北欧パワーメタルの象徴的なバンドを基にしてヘヴィネスとサウンドスケープを増幅した60分強の作品は、20年前のユーロ・パワー成功の要因を探りながら次の世代へとつなぐミッシング・リンクなのかもしれませんね。
フロントマン Konstantin “Laars” Naumenko は、”Ecliptica” や “Silence” の頃の Tony Kakkoが果たした冷静と情熱の間でドラマティックなメタルを語る吟遊詩人の役割を継ぎ、ボーカル/キーボード奏者で妻の Daria “Lady Dea” Naumenko は Jens Johansson を彷彿とさせる見事な鍵盤捌きとともに天使のような囀りで夫の世界観を肉付けしていきます。そうして、リズム・セクションと最近加入したギタリスト Maksym Vityuk まで一丸となり、雷鳴のようなスピードメタル・アタックを繰り広げていくのです。
「僕たちの “We are the Fire” が SONATA ARCTICA にインスパイアされていることには同意するけど、類似性はこの曲で終わっていると思うよ。他の曲では、異なるサウンドと異なるアイデアを披露している。NIGHTWISH や初期の WITHIN TEMPTATION のようなシンフォニックな曲もあれば、 STRATOVARIUS や AVANTASIA に近いサウンドの曲もあるからね。さらに、プログレッシブ・メタル・スタイルで書かれた3曲は、DREAM THEATER の作品を思い出させるかもしれないね」
“Equilibra” が “Reckoning Night” 以降の SONATA ARCTICA、もしくは “Eternal” 以降の STRATOVARIUS の長き沈黙に焦りを感じている層に対する福音であることは言うまでもありませんが、より広義のパワー・メタルやシンフォニック、プログ世界もこの作品を享受するべきでしょう。
“We Are The Fire”や “Life Is A Journey” のような高空飛行のジェットストリームは、”Father Time” や “Fullmoon” の疾走と高揚感を運びますが、心に響く混声のヴォーカル・デュエット “The Only Reason” や、ピアノを中心としたミドルペースの “The Bell” では存分にシンフォニック・プログレッシブの余韻に浸ることが可能。さらに、”Equilibrium” や “Unbroken Dreams” では重厚なリフワークとキーボードの相乗効果で、感染力の高いヘヴィーメタルの根源を探求していくのです。Eではじまり、Aで終わるパワーメタルの金字塔は、四半世紀の時を超えてより壮大により荘厳に進化を果たしました。
今回弊誌では、Konstantin “Laars” Naumenko にインタビューを行うことができました。「僕たちは、ソビエト連邦での生活をよく覚えているよ。そして、僕たちの国があの牢獄の鎖を断ち切り、ヨーロッパの方向に向かって進んでいることを嬉しく思っているんだ。自由は僕たちの国の血の中にあり、これからの道のりは高度に発展したヨーロッパ的国家を築くことなんだ」 どうぞ!!

SUNRISE “EQUILIBRIA” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WIZARDTHRONE : HYPERCUBE NECRODIMENSIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIKE BARBER OF WIZARDTHRONE !!

“Children Of Bodom Played At Tuska Festival And Alexi Dedicated “Bodom Beach Terror” To Me And My Friends, And I Went Home To The UK Feeling More Motivated Than I Ever Had To Follow this path”

DISC REVIEW “HYPERCUBE NECRODIMENSIONS”

「私たちは基本的に過去15年間の音楽を無視していたんだよね。エクストリーム・ウィザード・メタルはうまく機能していると思うよ。レビュアーがこのバンドをパワー・メタル、メロディック・デス、テクニカル・デス、シンフォニック・ブラックと表現しているのをよく目にするけど、結局私たちの音楽はそれらのどれにも当てはまらず、すべての要素を少しずつ取り入れているんだよね」
WIZARDTHRONE は、宇宙から来たテクニカル・パワー・デス・シンフォニック・ブラック・メタルの名状し難き混合物で、いくつもの多元宇宙を越えた魔法使いの王。
カラフルで印象的な音楽性と純粋な不条理の間を行き来する複合魔法の創造性は、ALESTROM, GLORYHAMMER, AETHER REALM, NEKROGOBLIKON, FORLORN CITADEL といったメタル世界のファンタジーを司る英傑を依り代として生まれています。そうして、何百万光年も離れた銀河から地球に到達した彼らのデビュー・アルバム “Hypercube Necrodimensions” には、激しさと情熱、そして知性とファンタジーが溢れているのです。
「歌詞を見てすぐにはわからないかもしれないけど、このアルバムは、現代の政治的な音楽と同じように、同じくらい、強い声明を出していると思うんだよ。これは世界が悲しみと怒りに満ちている時代に作られた情熱と生命の祭典であり、作りながら僕たちにも未来への希望を与えてくれたんだ」
暗く歪んだ2020年を経て、メタル世界でも政治的な発言やリリックは正義の刃を構えながら確実に増殖しつつあります。メタルにおけるファンタジーやSFの役割は終わったのか?そんな命題に、GLORYHAMMER でも “ハンマー・オブ・グローリー” を手に暗黒魔術師ザーゴスラックスと戦う Mike Barber は堂々たる否をつきつけました。
「2007年にフィンランドを旅行した際、共通の友人から Alexi と Janne を紹介されたんだけど、彼らは親切で純粋で、何時間も私たちと一緒にいて、質問に答えたり、ビールを一緒に飲んだり、ミュージシャンになるためのアドバイスをしてくれたんだよね。翌日、CoB はTuskaフェスティバルで演奏し、彼はなんと “Bodom Beach Terror” を私と私の友人に捧げてくれたんだ。私は、この道を進むことにかつてないほどのモチベーションを感じながら英国に帰ったんだよ」
COB + EMPEROR などと陳腐な足し算ですべてを語る気はありません。ただし、未曾有のメタル・メルティングポットでありながら、ここ15年間の方程式をあえて捨て置いた WIZARDTHRONE の魔法には、たしかに亡き Alexi Laiho と CHILDREN OF BODOM の遺産が根づいています。
Mike と Matthew Bell (FORLORN CITADEL)。そのギターのデュエルは “Frozen Winds of Thyraxia” の凍てつくような風速を越えて、まばゆいばかりの爆発的なエネルギーをもたらします。さながら Alexi と Rope のコンビにも似た魅惑のダンス。タイトル・トラック “Hypercube Necrodimensions” では、その場所に ALESTORM や GLORYHAMMER の怪人 Christopher Bowes の高速鍵盤乱れ打ち、フォルクローレの瞬きが加味されて、”Wildchild” の面影がノスタルジアの星砂へと込められます。それは、テクデスのテクニカルな威圧をのみもってしても、パワー・メタルの勇壮をのみをもってしてもなし得ない、奇跡の瞬間でしょう。
一方で、”The Coalescence of Nine Stars in the System Once Known as Markarian-231″ の冷徹で黒々としたシンフォニックな響き、ナレーションを加えた “Black Hole Quantum Thermodynamics” のドラマティックなメタル劇場、”Forbidden Equations Deep Within the Epimethean Wasteland” の複雑を超越した音世界といった、様々なサブジャンルを予測不可能にシームレスに横断するハイパーキューブな黄泉の多次元体は、宇宙の真実を物語る現実を超えた壮大なサウンドに到達しているのです。もちろんそれは、メンバー各自が自身のバンドから持ち寄った “種” を育てた結果でもあり、スーパーバンドとしての理想形をも提示しているのではないでしょうか。
今回弊誌では、Mike Barber にインタビューを行うことができました。「サウンドよりも、彼らのアティテュードがこのアルバムの制作に影響を与えたと思う。ただし、タイトル曲には、CoB の解散に敬意を表して、明らかな影響をいくつか入れているよ。Alexi が亡くなってから、彼らは私にとってまた新たな意味を持つようになったんだ」 どうぞ!!

WIZARDTHRONE “HYPERCUBE NECRODIMENSIONS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IMMORTAL GUARDIAN : PSYCHOSOMATIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IMMORTAL GUARDIAN !!

“Now It’s The Only Way I Play Music. I Feel Naked When I Only Have Just One Of The Guitar Or The Keyboard On Me. It’s How I Think And How I Express Myself The Best Musically.”

DISC REVIEW “PSYCHOSOMATIC”

「ギターとキーボード、どちらか片方だけを持っていると半裸になったような気分になるんだ。それが僕の考え方で、音楽的に最高の自分を表現する方法なんだよね。」
ダブルネックの16弦ギター、モンゴルのホーミーと伝統楽器、アステカの笛に骨のマイク。弊誌ではこれまで、奇想天外なアイデアとメタルの融合をいくつも報じてきました。
どんな突飛な発想とも真摯に向き合うメタルの包容力は、そこから驚くほどドラマティックで獰猛なキメラを多数輩出してきたのです。馬鹿らしさを馬鹿らしさだけで終わらせないメタルの神秘。それでも、ギターとキーボードを同時に演奏という曲芸じみた異能に挑戦する戦士は Gabriel Guardian がはじめてでしょう。
「この2つの楽器を組み合わせることで多くのことが実現できる。音楽的に多くの表現ができるし、そこに無限の可能性を秘めていることも気に入っているよ。」
実際、Gabriel は例えば Alexi Laiho と Janne Wirman の役割を一人で同時にこなすことを究極の目標としている節があります。そのためには、もちろん、基本的にはギターをピッキングなし左手のタップだけでプレイする必要がありますし、鍵盤は右手だけ。ただし、その欠点を補ってあまりある視覚的なインパクト、そしてユニゾンやコード、リズミックなアイデアの広がりがあることは明らかでしょう。他人と意思疎通することなく、自由自在に掛け合いができるのですから。
「僕は昔からメタルにおけるクラシック音楽が好きだったんだ。若い頃はクラシックを聴いていたけど、それからは正直あまり聴いていなかった。だからクラシックの影響というよりも、自分の曲にクラシックの影響を取り入れているメタルバンドから多くの影響を受けたんだ。」
“Read Between The Line” を聴けば、Gabriel の “ギターボード” という発想がメタルとクラッシックのさらなる融合に一役買っていることに気づくはずです。彼はクラシカルなメロディーをその異能で立体的に配置し、構成する技能に優れていますがクラッシックの教育は受けていません。しかしだからこそ、難解複雑な理論よりも、メタル者が欲する “クラシカル” の海へと音楽を没入させることが可能なのでしょう。
「僕たちの曲はパワーメタルで、クラシカルなシュレッドギター/キーを使っているけど、ドラマーとベーシストのリズムセクションはモダンでテクニカルなメタルに傾倒している。この融合が素晴らしくて、このジャンルの名前を思いついた人をまだ見たことがない。」
シンガロングの麻薬 “Phobia” は象徴的ですが、リズムセクションが牽引する djenty なリフワークとパワーメタルの婚姻も想像以上に鮮烈な化学反応をもたらします。フラスコには、メキシコ、ブラジル、カナダ、テキサスの多様な背景、文化がしたたり、メタル革命を指標する “スーパーメタル” が誕生しました。間違いなく、OUTWORLD や HEAVEN’S GUARDIAN で知られる Carlos Zema の強靭な歌声は革命のハイパーウェポンでしょう。
「今回のパンデミックで世界中の人々が受けた心身への影響を目の当たりにして、このアルバムのテーマが思い浮かんだ。その結果、ソリッドでヘヴィで革新的なアルバムになった。今、世界で起きていることと密接に関連している。」
“Psychosomatic”、心身症と名付けられたアルバムは、その名の通りパンデミックが引き起こしたロックダウンや自己隔離といったストレスにより、心や身体に異常をきたす非日常の2020年代をビッグテーマとしています。一時は “Candlelight” 蝋燭の灯で悲しみに沈んだアルバムは、それでも “New Day Rising” の希望に満ちたプログレッシブなパワーメタルで新たな日々の到来を焦がれるのです。
今回弊誌では、Gabriel Guardian, Carlos Zema にインタビューを行うことが出来ました。「欠点は、2つの楽器を常に練習しなければならないこと。2つの楽器を使いこなすために、他のミュージシャンの2倍の練習をしなければならないんだ。2つの楽器をセットアップして、ケアをしなければならないのもめんどうだよね。」 不死の守護者によるメタル革命のはじまり。どうぞ!!

IMMORTAL GUARDIAN “PSYCHOSOMATIC” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FREEDOM CALL : M.E.T.A.L.】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS BAY OF FREEDOM CALL !!

“We Just Used The Word “Metal“ For This Common Threat. In This Moment We Got This Vision. If All People Around The World Would Be Metal Fans…We Would Have Peace On Earth!”

DISC REVIEW “M.E.T.A.L.”

「今日の世界において全ての元凶の一つは、全員が共通の価値観やバランスの上で生きていないことなんだ。異なる興味、宗教間の行き違い、そして政治家は金の亡者さ。だから僕たちは “メタル” という言葉を共通点に提案したんだ。もし世界中全ての人たちがメタルファンだったら…きっと世界に平和をもたらすことができるはずさ。」
白砂糖に蜜を敷きつめたウルトラブライトなメロディー、劇画的王道ファンタジーな世界観、そしてディフォルメを加えたユーモアの精神。FREEDOM CALL は自らが掲げる “ハッピーメタル” のクルセイダーとして20年ものキャリアを積み上げてきました。
十字軍の魔法は、マスターマインド Chris Bay の演奏者、メロディーメイカー、そしてプロデューサーとしての卓越した能力を三叉撃として発動しています。
例えば SAXON 中期の快作 “Metalhead” のキーボードを聴けば Chris のマルチな才能と音算能力が伝わるはずです。さらに、根からはオールドスクールを、葉脈からはコンテンポラリーを吸収したポップの大樹 “Chasing the Sun” で花開いた光の音の葉は、メロディーの騎士に相応しい壮麗と華美を誇っていたのですから。
「”車輪の再発明” を行うつもりはないんだよ。音楽において最も重要な部分は、リスナーを心地よくすることなんだから。例え1人でも FREEDOM CALL の楽曲を聴いて幸せになってくれる人がいるなら、僕は完全に満足なんだ。」
ポジティブに振り切れたハッピーメタルの真髄は全てがこの言葉に集約しています。メタルをただキャッチーの極みへと誘う Chris の大願は、そうして10枚目の記念碑 “M.E.T.A.L.” で完璧に実現へ至ることとなりました。
メタルの数字である “666” を敢えて避け、エンジェルナンバー “111” をタイトルへと掲げたメタルとゴスペルの白き調和 “111 – The Number of the Angels” で FREEDOM CALL はリスナーを “ハッピーメタル” の領域へと巧みに誘い込みます。
記念碑としてリアルなメタルアルバムを目指した作品において、タイトルトラック “M.E.T.A.L.” はまさにメタルの予想可能性、完成された様式を現代的に具現化した楽曲でしょう。Brian May の遺伝子を引き継いだギターの魔法はクラッシックな隠し味。実際、「新曲を全部シンガロングするのが聴きたいね。」 という Chris の言葉は伊達ではありません。一聴しただけで全て口ずさみたくなるほど、”M.E.T.A.L.” の “11” 曲は突き抜けてキャッチー&ハッピーです。
ただし、人生を変えたアルバムに ELP, SUPERTRAMP が含まれていることからも、楽曲の豊富なバラエティーやフックが他の平面的なメタルレコードとは異なることが伝わるはずです。「ただメタルを書いて生み出し続ける “メタルマシーン” みたいにはなりたくないからね。」 “Sail Away” を筆頭に、キーボードやシンセサイザーのエフェクトが醸し出す音の風景も時に神々しい奇跡、無類のドラマを演出します。
そして何より、ソロアルバムの影響は絶大でした。”The Ace of the Unicorn” などは特に顕著ですが、「おそらく、両方の感覚があるんだろうな。僕は間違いなくオールドスクールなソングライターなんだけど、同時にモダンな音楽にも合わせていこうとしているからね。」 の言葉が示す通り、メンバーの変遷と共に再生を果たした FREEDOM CALL のポップセンスはモダンにアップデートされていて、典型的なロック/メタルのイヤーキャンディーにメインストリームの計算された洗練を巧みに練り込んでいるのです。
もちろん、FREEDOM CALL に宿る “光” の正体とは、”Keeper” を継ぐ者の使命であるメジャーキー、メジャーコードの完璧なる支配でしょう。陽光と哀愁のコントラストこそドイツの誇り。ダーク&シンフォニックに統一された前作 “Master of Light” はむしろ異端でした。しかしそれ以上にコンテンポラリーな音の葉までも抱きしめるポジティブなスピリットこそが核心なのかもしれませんね。
それにしても、FREEDOM CALL 然り、MAJESTICA 然り、FROZEN CROWN 然り、GLORYHAMMER 然り、TWILIGHT FORCE 然り、今年は推進力と旋律の二重奏が革命的なメロディックパワーメタルの快作が多数降臨していますね。
今回弊誌では、Chris Bay にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちは “ハッピーメタル” の十字軍で、自らが光の…マスターなんだから。」どうぞ!!

FREEDOM CALL “M.E.T.A.L.” : 9.9/10

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DISC REVIEW + INTERVIEW 【DERDIAN : DNA】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ENRICO PISTOLESE OF DERDIAN !!

“At The Beginning, Rhapsody Were One Of Our Favorite Band And There Is No Doubt We Have Drawn Inspiration From Them. But We Were Very Young. Now Things Are Very Different. We Feel To Play Completely a Different Music.”

DISC REVIEW “DNA”

風光明媚な地中海を臨むイタリアの “DNA” は、ことロックの世界においてここ日本の情緒と一脈の共感覚を披露し続けています。
古くは NEW TROLLS, P.F.M. といったプログレッシブの芸域から、近年では RHAPSODY, DARK LUNACY, FLESHGOD APOCALYPSE など雄々しきメタルの血脈まで、ファンタジックでロマンと幾ばくかのセンチメントを宿したその感覚世界は殊更に日本のリスナーを魅了して来たのです。
“Derdian” の王 Golstar を巡る英雄譚 “New Era” サーガ、至高のトリロジーでシーンに登壇した DERDIAN もまた、彼らと同様に目眩く幻想と哀愁のユートピアで日本のファンと深くそのイマジネーションを共有しています。
アルバム “Limbo” で日本盤ボーナストラックに、アニメ “聖闘士星矢” のテーマ曲 “Pegasus Fantasy” を華麗にカバーした事実もバンドと日本の密接な脈絡を物語るものでしょう。
「2年以上の月日を経て、DERDIAN と Ivan の間にはケミストリーが存在したことに気がついたんだよ。」マスターマインド Enrico がそう語るように、”Limbo” 以降よりコンテンポラリーなサウンドへとシフトした彼らに不可欠な “声”、Ivan Giannini が復帰を果たし製作された最新作 “DNA” は情緒のシンクロ二ティーはそのままに、集大成にして新たな冒険へと駆り立てるバンド史上最も多様な SF エピックです。
「改竄されていた聖書の内容。現生人類は、来襲したエイリアンが科学で生み出したエイリアンと地球人の子孫であった。」常にストーリー性を前面に押し出す DERDIAN が送る新たなファンタジーは、壮麗なるイントロダクション “Abduction” でシネマティックにその幕を開けます。
アルバムオープナー “DNA” はまさに劇団 “DERDIAN” の面目躍如。高らかに鳴り響くシンフォニー、舞い上がるは雄弁なる大合唱、押し寄せるは津波のようなメタルパワー。
華々しい歌劇の幕開けは ROYAL HUNT にも通ずるメランコリーと構成美、クラシカルの園を見せつけながら、リスナーをカタルシスの渦へと誘います。リレコーディング作品に D.C. Cooper が参加していた事実も偶然ではないはずです。
初期 SYMPHONY X をイメージさせるミステリアス&プログレッシブな “False Flag Operation” を経て遭遇する “Never Born” はアルバムのハイライトでしょう。”DNA” 以上にシンフォニックメタルの理想形を提示した楽曲は、エナジーとフック、キャッチーなスピリットを抱えてダイナミックにその翼を広げます。
大胆なストップモーションに繊細な間奏のオーケストレーションなど、近年のパワーメタルアクトの中でも飛び抜けて “フック” の意味を熟知した作曲術こそが明らかに彼らの強みの1つでしょう。
一方で、強国 “Derdian” は侵攻を続け、その領地を多様に拡大し続けます。耽美なるタンゴの響きを纏ったエスニックな “Red and White”、ジプシージャズのイメージを大胆に投影する “Elohim”、プログメタルの領域へと侵入する複雑怪奇な “Ya Nada Cambiara”。DERDIAN ワールドは無限にカラフルに、そしてエクレクティックにそのパノラマを四望するのです。
そうしてアルバムは日本語で歌われるボーナストラック “Never Born” をアンコールにその幕を閉じます。盛大なカーテンコールを受けながら。
今回弊誌では創立メンバーでギタリスト Enrico Pistolese にインタビューを行うことが出来ました。2年連続となる Evoken Fest への出演も決定しています。「DIYとなった現在は全く異なり、僕たちのことは全て僕たちで決定を下すことが出来る。だいたい、バンド全員が日常の仕事で上司がいるのに、なんでまた厄介な上司を増やす必要があるの?!1人で充分だよ(笑)!!」どうぞ!!

DERDIAN “DNA” : 9.9/10

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