EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GEOFF THORPE OF VICIOUS RUMORS !!
“Saint Albert Was a One Of a Kind. We Were All Like Brothers…Sharing The Stage And Creating Music With Him Was Something Artist Dream About.”
DISC REVIEW “ATLANTIC YEARS”
「我々はスピードとメロディーをミックスしている。とにかく自分たちに忠実でありたいと思ったんだ!VICIOUS RUMORS はパワー・メタルのパイオニアだと言う人もいるけど、ある意味、我々はヘヴィ・メタルにスラッシュ、ブルース、アトモスフィア、真のメタル的なシンガロング・アンセムをオリジナルな方法でミックスしていたんだよ。我々は決してフェイクな何かになろうとしたわけではない。そこには常にパワーがあったからパワー・メタルなんだ」
サンフランシスコのベイエリアは、1980年代初頭におけるメタルの揺籠でした。この街の雰囲気は実験的な試みを許容し、特にスラッシュ・メタルはこの地の自由な追い風に乗って成功を収めていきました。スラッシュは確かにこの地で飛躍し、世界を征服していったのです。
「スラッシュは常に私たちの周りにあったよ。スラッシュとの相性は今日でも強力だよ。私はそれが大好きだからね…ただ、私たちはより幅広いバリエーションを持っていて、LED ZEPPELIN のようなアプローチを自分たちのヘヴィ・メタルに適用したかったんだ!」
現在のエクストリーム・ミュージックの基準からすると、当時のバンドのほとんどは今よりずっとメロディックに聴こえます。つまり、エクストリームとメタルの基準がまだ曖昧だった逢魔時。そんなベイエリアで産声をあげた VICIOUS RUMORS は完全なスラッシュ集団になるつもりこそありませんでしたが、それでもスラッシュと同等のエッジがあり、同時にメロディがあり、新しい、よりハードな音楽の辛辣さだけでなく伝統的な要素もあり、音楽的な幅の広さでは彼の地でも群を抜いていたのです。
「”Digital Dictator” は、クラシックなラインナップの始まりであり、Carl Albert の最初のアルバムだったから、いつだって特別なアルバムと言えるだろう。あの頃は、とてもエキサイティングな時間だった!アトランティック・ブルー (90年のセルフタイトル “Vicious Rumors”) のアルバムは、ある意味、最初のメジャー・レーベルからのリリースということで特別だね…」
硬軟の傑出したギター・チーム Geoff Thorpe と Mark McGee、ドラマーの Larry Howe、ベースプレイヤーの Dave Starr、ボーカリストの Carl Albert からなる5人組はすぐに有名になり、絶えずツアーを行い、JUDAS PRIEST の “Screaming for Vengence” をスラッシーにドーピングしたような名作 “Digital Dictator” で巨大企業アトランティック・レコードの目に留まることになりました。そうしてバンドは緊密なユニットとなり、精密機械のように動作して、”アトランティック・ブルー” と呼ばれるセルフタイトルを90年にリリースします。
“90年代を定義するメタル・アルバム” と称された “Vicious Rumors” は、タイトなリフとリズムが火山のように噴火し、5オクターブの並外れたボーカルが雷鳴のように轟きます。オープニングの “Don’t Wait For Me” が激烈でスラッシーな一方、”Down To The Temple” では DIO 時代の RAINBOW、”The Thrill Of The Hunt” では IRON MAIDEN を彷彿とさせ、その輝かしい伝統と新風のミックスはメタル・コミュニティ全体に広く、素直にアピールする魅力的なものでした。
「私たちは VICIOUS RUMORS のヘヴィ・メタルでパワフルな日本の夜を過ごし、最初のショーの後、楽屋に向かったんだ。するとプロモーターがやってきて、”もう一度だけアンコールをお願いします” と言うんだ!誰も会場を出ていないからとね!私たちはとても驚いたよ!再び出ていくと客電はついているのに、まだ満員のままだった!!! 私たちは再びライブハウスを揺るがしたよ。この経験は決して忘れることはないだろうね!」
91年の “Welcome to the Ball” も好評のバンドはその勢いを駆って1992年に来日し、ライブ・アルバム “Plug In and Hang On – Live in Tokyo” をリリースします。オーバーダビングのない、生の興奮と情熱を反映した作品は間違いなく VICIOUS RUMORS の絶頂期を捉えたもので、ダイナミックな演奏の中でも特に、生前の Carl Albert の “凄み” を存分に見せつける絶対的な記念碑となったのです。
「聖アルバートは唯一無二の存在だった。彼の半分ほどの才能しか持たないようなボーカリストたちが、巨大なエゴを持ち、小切手を切っているんだ。その才能はお金に値しないのにね。彼は後世の多くの人に影響を与えた。私たちは皆、兄弟のようだったよ…彼とステージを共有し、音楽を創り出すことは、アーティストとして夢のようなことでさえあった」
1994年に5枚目のアルバム “Word Of Mouth” をリリースした翌年、Carl Albert が交通事故で亡くなり、バンドは兄弟を失い、メタル世界はずば抜けたボーカリストを奪われました。それでも VICIOUS RUMORS は絶望の淵で踏みとどまり、インタビューイ Geoff Thorpe を中心に今日までコンスタントに、諦める事なく、”意味のある” メタルを届け続けています。そんな彼らの不屈は “アトランティック・イヤーズ” における再評価の波と共に実を結び、遂に今回、16年ぶりの来日公演が決定したのです!VICIOUS RUMORS is Baaaaack!!
今回弊誌では、Geoff Thorpe にインタビューを行うことができました。「日本のファンのみんなも素晴らしかった。空港や駅で私たちを待ってくれて…彼らがどうやって私たちの居場所を知ったのかわからないよ!」 Geoff が歌っていたアルバムも悪くないし、隠れた異才 Mark McGee をはじめとして、Vinnie Moore, Steve Smyth, Brad Gillis など彼のギター・パートナーとの対比の妙もこのバンドの聴きどころ。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLACKWALD OF TWILIGHT FORCE !!
“The Last Few Years Of Hardships Have Affected Us All One Way Or Another, And If Our Music Was Able To Bring Just a Sliver Of Joy For Someone To Help Them Get Through Those Hard Times, We Have Truly Accomplished Greatness.”
DISC REVIEW “AT THE HEART OF WINTERVALE”
「現代のメタル音楽は、曲作りが合理的になってしまっている。パワー・メタルにおいて、面白い変化や予想外の変化を見出すことは、最近ではほとんどないんだよね。つまり、”最も抵抗の少ない道” を歩むことが、迅速かつ安定したペースで音楽やアルバムを作り上げることにつながってしまっているんだ。実験や創意工夫には時間がかかるからね。でも、そのためにメタルから多様性や実験への意欲が削がれてしまっているのかもしれないね」
10年代、そして20年代のパワー・メタルを牽引する北欧の黄昏は、彼の地の大自然と伝承、そしてファンタジーを刻み込んだ “At The Heart of Wintervale” において、王者の王者たる由縁を見せつけました。バンドの鍵盤奏者で黒魔法の使い手 Blackwald にとって、現代パワー・メタルの大半はステレオタイプで驚きのないもの。手間と時間をかけずに生み出したインスタントな創作物。しかし、魔道士はよく知っています。詠唱は長ければ長いほど、強力な呪文が発動するのです。
「ジョン・ウィリアムズやハワード・ショアといった映画音楽の作曲家に大きな影響を受けたし、彼らこそが僕にとっての “ヒーロー” だと思う。ハンス・ジマーのような人物も、シンセサイザー(ダークナイト)やパイプオルガン(インターステラー)など、非常にミニマルなツールや音で、喚起力と説得力のあるサウンドスケープを作り出し、大きな進歩を遂げている。印象的なモチーフやテーマを創り出す能力とスキルは、僕が賞賛し、憧れるもののひとつなんだ」
Blackwald が語る通り、”At The Heart of Wintervale” はパワー・メタルの定型を超越しています。もちろん、バンドの共同設立者 Lynd のフラッシーでテクニカルなギター・マジックは、アルバムの大きな見せ場であり、華。しかし、楽曲を前に進める原動力、設計図の原盤は、Blackwald が天塩にかけたシンフォニック・アレンジやシンセサイザー、ピアノやチェンバロにヴァイオリンの洪水です。なぜなら、Blackwald はこのトワイライト・キングダムに、壮大な映画音楽のメタルを築こうとしているから。
例えば、ハンス・ジマーが手がけたSF大作や、例えばアラン・メンケンが手がけた夢の国ディズニーのメタル盤があるとすれば、間違いなくそれはこの作品でしょう。それほど、Blackwald が手がけるオーケストレーションは完成度が高く、複雑怪奇でありながら耳にのこる印象力を備えています。数十年前の RHAPSODY の名作群と比べれば、時を超えていかに彼らのシンフォニック・アレンジや構成力、音の色彩が進化したかに気づくでしょう。
「”逃避” という行為は、人類の歴史の中で常に重要だったけど、おそらく今はかつてないほどその必要性が高まっている。常に相互接続され、即座に情報が飛び交い、錯乱するという過酷な現実は、人間の心に負担を与えているよ。僕は、音楽と芸術によるひとときの休息は、精神の幸福のために必ず必要な “安全な避難所” であると信じているんだ。だから、僕たちの音楽とそれに付随する物語を通して、リスナーが現実の束縛から解放されたり、現実の苦悩や苦難から解放された空想の世界に没入できればと願っているんだよ。ほんのひとときだけでもね」
そうして完成した “At The Heart of Wintervale” には、これもジマーやメンケンが手がけた空想の音楽と同様に、人々の “避難所” となるように真摯な祈りが込められています。D&Dのファンタジックなイメージで構成された8章からなるメタル・シネマは、磨きたての鎖帷子や重厚な鎧、黒のマントを身にまとい、ドワーフの鉱山やドラゴンの山、クリスタルの森など未到の地を未曾有の音楽で縦横無尽に駆け巡ります。SNS やインターネットが常に “オンライン” で、心の休まる暇のない現代。押し寄せる情報と暗い出来事をほんのひとときシャットダウンして、”オフライン” になるために、TWILIGHT FORCE の描き出す音景色やストーリーほど適した避難所はないでしょう。
TRICK OR TREAT でも知られるボーカル、Allyon こと Alessandro Conti の高らかなマイケル・キスク的威容に浸るもよし。エクストリーム・メタルの間合に潜むコミカルでプリティなセンスに酔うもよし。ただリスナーは、すべてを忘れてひとときの異世界転生をすればよいのです。アドヴェンチャー・メタルはまだまだ続いていきます。
今回弊誌では、Blackwald にインタビューを行うことができました。「ハイ・ファンタジーのエンターテインメントの多くは、僕たちの音楽や伝承に何らかの影響を及ぼしている。日本の多作なメディアの作品が、長年にわたってその一翼を担ってきたことは間違いないよ。”ベルセルク”, “ワンピース”, “デスノート”, “スタジオ・ジブリ”, “ファイナル・ファンタジー” など、想像力を刺激する日本の創作物の中には、僕たちのインスピレーションを形成してきた素晴らしい作品が数多くあるわけさ」2度目の登場。どうぞ!!
TWILIGHT FORCE “AT THE HEART OF WINTERVALE” : 10/10
“I Personally Love The Fact That Power Metal And Folk Metal Are Becoming More And More Popular Within The United States!”
DISC REVIEW “THE MAJESTY OF DECAY”
「個人的には、パワー・メタルとフォーク・メタルが遂に米国内で人気を博しているという事実に興奮しているよ! そして嬉しいことに、僕がこの素晴らしいジャンルのファンになったきっかけは、アメリカのパワーメタル・バンド NOVAREIGN だったことを君に伝えられる」
SAVATAGE, MANOWAR, ARMORED SAINT。パワー・メタルの黎明を彩ったエピックの巨人を擁しながら、90年代以降、北米大陸にパワー・メタルやフォーク・メタルのファンタジーと追憶が本格的に根付くことはありませんでした。それは、伝統の欠如が理由でしょうか? それとも、革新的で現実的で合理的な国民性? もしくは、多民族ゆえの多様性によるもの? しかし、そんな疑念を払拭するかのように、近年の北米はパワー・メタルの一大拠点へと変貌を遂げました。先日、日本ツアーを盛況のうちに終えた LORDS OF THE TRIDENT, カナダの一撃 UNLEASH THE ARCHERS, 激烈な SEVEN KINGDOMS など血湧き肉躍る無敵のメタル・ファンタジーは今、北米にあります。そして、その魔方陣の重要な一角を成すのが JUDICATOR。
「もし僕が彼らの作品から1枚だけ選ぶとしたら、2003年のアルバム “Live” だね。あのアルバムを聴きながら、いつも自分がステージに立つこと、あるいは BLIND GUARDIAN のコンサートに参加することを空想していたからね。ミキシングがとても良く、演奏も素晴らしく、アルバムの曲も多彩なんだよね」
BLIND GUARDIAN のコンサートで運命的に結成された JUDICATOR は、彼らの描く物語や音景への憧れを曝け出しながらも、決してトリビュート・バンドの役割を買って出ることはありません。これは LORDS OF THE TRIDENT にも言えますが、JUDICATOR はアメリカン・サウンドとヨーロッパ・サウンド、そのどちらかに寄ることなく巧みに融合させ、さらにプログレッシブやエクストリームな要素を加えた新たなパワーメタルの挑戦者となってきました。そして今回の “The Majesty Of Decay” で彼らが操るパワー・メタルの純粋な船は、プログレッシブな風を一層その帆に受けながら、未知の世界へ嬉々として疾走していきます。
「”The Majesty of Decay” は、”At the Expense of Humanity” の緩やかな続編のようなもの。僕は死に魅了され、同時に恐れているので、このアルバムは僕の中の死がどのようなものであるかについての思考実験なんだ。このアルバムは、死に対する恐怖を克服するためのエクササイズだと言える」
ナポレオン・ボナパルト、フリードリヒ大王、ユスティニアヌス帝に将軍ベリサリウス。敬愛する BLIND GUARDIAN のファンタジーとは異なり、JUDICATOR は様々な時代、様々な立場の実在した人間を描く歴史の語り部となってきました。ここにはホビットもドワーフもエルフもいませんが、かえってその生身の人間にフォーカスした語り口が彼らのユニーク・スキルとなりました。そうして今回、JUDICATOR は歴史からも距離を置き、人間の命題である死について考えます。そうそれは、兄を癌で失ったボーカリスト John Yelland の物語。
「DREAM THEATER は非常に正確で、GREATFUL DEAD は非常にスポンティニュアスだ。JUDICATOR は、どちらかというと正確なほうに位置すると思うんだけど、僕はスポンティニュアスな感覚を受け入れているバンドをとても尊敬しているんだ」
人生は何事もほどほどが良い。そんな John の言葉通り、死を恐怖、喪失感、後悔、信仰、贖罪、救済といった多角的なレンズで見定めたアルバムは、その音楽も同様に多種多様。
オルガンやブラスを大胆に導入したトム・ジョーンズのメタル “The High Priestess” の異様は際立ちますが、”Ursa Minor” のようなメロディックなブラックメタル・リフ、”From the Belly of the Whale” や “The Black Elk” のプログレッシブでシンフォニックな威厳は、このバンドが1つや2つのタグには容易に収まらないことを証明しています。
一方で、”Daughter of Swords” や “Ursa Major” は、シンプルなパワー・メタルの生地を複雑でなギターワークでコーティングしたファン垂涎のエピックな逸品。まさに革新と伝統の稀有なるアマルガム。そうしてアルバムは、悲劇的な “Judgement” をフォローするコンガとサックスの高揚感 “Metamorphosis” で死の両極を露わにして幕を閉じます。
今回弊誌では、John Yelland と Big Boss にインタビューを行うことができました。「実は、僕は東宝のゴジラ映画が大好きで、あれを見て育ったんだ!ラドン、ギドラ、モスラなど、何十種類ものおもちゃを持っていて、子どものころは何時間も遊んでいたよ..今でも時々遊ぶんだけどね。日本のゲームは僕の人生に大きな影響を与えてくれた。特に、伝説的な小島秀夫氏が作った “メタルギア・ソリッド” ね。このゲームは数え切れないほどプレイしてきたし、20年以上このシリーズに夢中になっているんだ」 どうぞ!!
“Everything Fast Doesn’t Have To ‘Sound Like Dragonforce!”
DISC REVIEW “UNDER THE VEIL OF MADNESS”
「最近、”パワー・メタル” という言葉が、より幅広いバンドやスタイルに適用されているようだけど、そろそろこのジャンルを細分化するべき時に来ているんじゃないかな? 君が挙げたバンドで言えば、ALESTORM は僕がパワー・メタルと定義するバンドじゃないから、その点では僕たちと比較することはできないと思う。SABATON と DRAGONFORCE のような全く異なるバンドが同じジャンルに含まれている場合、ネーミング・システムをシーンに合わせて進化させなければならないかもしれないよね」
誇りと気高さ。HELLOWEEN や ANGRA, それに日本の GALNERYUS といった巨人が築きあげた正統なるパワー・メタルの血脈を受け継ぐスコットランドの怪物 ASCENSION が、10年という長い月日を経て遂にシーンへと戻ってきました。ASCENSION がパワー・メタルを世界に叩きつける時、そこには必ず確固たる理由があるのです。
「”Far Beyond the Stars” を書いたときは、特に強い理由があった。あれは当時パワー・メタルで起こっていたことに対する個人的な反発だったんだ。当時、僕らのお気に入りのバンドの多くがキーボードやオーケストレーションを好むスタイルに進化してしまい、ギターがサウンド全体の中で後塵を拝するようになっていたんだ。だから、当時はもう一度ギターが主役になるようなアルバムを作りたかったんだよ」
ちょうど彼らが彗星のごとく登場した2010年前後は、Rate Your Music のパワー・メタル年間ベストを見ても “シンフォニック・パワーメタル”、”エピック・プログレッシブ・パワーメタル” と記されたバンドがトップ10を制圧していたことに気づくでしょう。NIGHTWISH, WITHIN TEMPTATION, EPICA といったシンフォニック・メタル成功の波と、RHAPSODY の映画的な方法論、さらに KAMELOT のプログレッシブな情景が渾然一体となって、パワー・メタルの世界観を変えてしまっていたのです。
もちろん、オーケストラやキーボードが舞い踊る、変幻自在で華麗でオペラティックなパワー・メタルは非常に魅力的です。ただし、ギターとハイトーン・ボーカルが主役の時速180キロで疾走するパワー・メタルの伝統が駆逐されてしまう。それは厄災以外の何物でもないでしょう。ASCENSION は “Far Beyond the Stars” で、突き詰めたテクニックとメロディーの魔法、そして高揚感のジェットコースターで見事に厄災を沈めたのです。
「ASCENSION は単独でシーンにユニークなものを提供し、常に境界線を押し広げる存在でありたいと思っているからね。このアルバムでは、今までのパワーメタルにはないものがあると感じている。それこそが、ASCENSION らしいサウンドなんだと思う。速いものがすべて DRAGONFORCE のサウンドでなければならないという訳ではないんだよ」
時は流れ、パワー・メタルの本流は見事に復活を果たしました。ファンタジーを突き詰めた GLORYHAMMER や TWILIGHT FORCE、ダンサブルな BATTLE BEAST や BEAST IN BLACK、北米の雄 LORDS OF THE TRIDENT や UNLEASH THE ARCHERS, そして戦車と共に突き進む SABATON。FELLOWSHIP や POWER PALADIN といった才気溢れる新鋭も続々と登場しています。ASCENSION はそんな百花繚乱なパワー・メタルの現状に再び疑問を呈するため、戻って来たのです。「本当に挑戦を続けているか?」と。
「日本の文化と伝統には、多くの作曲家(僕たちも含めて!)がとても新鮮で面白いと感じるんだ。古典的なヨーロッパのスタイルとは非常に異なるアプローチで音楽を作っているよね。日本人が使う、多くの素敵なジャズのコードやその進行にはとても感化されるよ!それに、日本の作曲家はメロディがとても重要だと感じているはずなんだよ。僕たちと同じようにね!」
GALNERYUS を筆頭に、日本のアーティストが掲げるメロディ至上主義やメタルらしからぬ “ゴージャスな” コード進行に薫陶を受けながら (最近マーティーさんも広瀬香美さんについて同様の話をしていましたね)、日本に対する恩返しとして製作された光速の別れ歌 “Sayonara”。まるであの CACOPHONY を現代に甦らせたかのようなポリフォニックな中間セクションは革命的。そして、パワー・メタルのドラマ性にラグタイムを大胆に導入した “Megalomaniac”。両者ともに、パワー・メタルの常識を覆すに十分の “驚き” を宿しています。ギターの両翼を左右に広げた復活の一撃、”Under the Veil of Madness” はすぐそこです。
今回弊誌では、ASCENSION にインタビューを行うことができました。「日本からは素晴らしいパワー・メタルやメロディック・メタルのバンドやソングライターがたくさん出てきている。実は、僕たちのオールタイム・フェイバリットが GALNERYUS なんだよ!」 “Sayonara” から始めよう。どうぞ!!
INTERVIEW WITH ASCENSION
Q1: First of all, what kind of music were you listening to, when you were growing up?
【ASCENSION】: We definitely have a big mixed bag of music that we love in the band but of course many classic power metal bands appear in there! This ranges from things like Helloween, Yngwie Malmsteen, Stratovarius, Gamma Ray, Blind Guardian, X-Japan, Sonata Arctica and many others! Outside of power metal we have a wider variety from Blink-182, The Offspring, David Bowie, Cyndi Lauper, System of a Down, Rage Against the Machine, Cradle of Filth, 2Pac, NWA, Eminem, Dire Straits, Elton John, Fleetwood Mac and of course classics such as Metallica, Iron Maiden and Pantera! We also have always listened to a lot of Classical music and Musical theatre too! I could write a list as long as this page if I continued!
Q1: 本誌初登場です!まずは、バンドの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?
【ASCENSION】: 好きな音楽がバンド内で混在しているのは確かだけど、もちろんそこにはクラシックなパワーメタル・バンドがたくさん登場するよ!HELLOWEEN, Yngwie Malmsteen, STRATOVARIUS, GAMMA RAY. BLIND GUARDIAN, X-JAPAN, SONATA ARCTICA などなどたくさんね.。
パワー・メタル以外では、BLINK-182, THE OFFSPRING, David Bowie, Cyndi Lauper, SYSTEM OF A DOWN, RAGE AGAINST THE MACHINE, CRADLE OF THE FILTH, 2Pac, NWA, Eminem, Dire Straits, Elton John, FLEETWOOD MAC。それにもちろん、METALLICA, IRON MAIDEN, PANTERA といったクラシックまで幅広いジャンルを聴いてきたよ!クラシックやミュージカルもよく聴いていたね。そうやっていくらでも、長いリストを書くことができるよ。
Q2: Speaking of Scottish power metal, Gloryhammer now dominates the scene, but when you guys started out it was barren, wasn’t it? When you started Ascension, why did you choose power metal? Do you think Gloryhammer and Alestosm are competitors for you?
【ASCENSION】: Back when we started Ascension there wasn’t a single other power metal band from Scotland – and only just a few that were from the UK as a whole. By the time we started the band we loved the whole musical combination that power metal offers – melody, speed, technicality and soaring, uplifting vocals. It’s a whole package – and on top of that is so energetic and a lot of fun to play. It’s a genre where you can constantly challenge yourself with what you write as well as technically pushing limits with what you play. To us, that is what power metal is all about.
It seems recently that that blanket term ‘Power Metal’ gets applied to a wider range of bands and styles – to the point where it might be worth subdividing the genre. Alestorm, from your example, is not what I would define as power metal and so they are not comparable to us in that way. I think when you have a term where hugely different bands like Sabaton and Dragonforce get lumped into the same genre then the naming system might have to evolve to match the scene!
Q3: “Far Beyond the Stars” was a great album with a very strong impact, but it took you 10 long years to release new music from it. Why such a long period of silence?
【ASCENSION】: When we wrote ‘Far Beyond the Stars’ it was for a particularly strong reason – it was a personal reaction to what was happening in power metal at the time. We wanted to make an old-school style power metal album where guitar riffs and solos were back in a big way – it seemed at the time that a lot of our favourite bands had evolved their style to favour keyboards, orchestrations and the guitar started to take a back-seat to the whole sound. So, really it was just that at that time we wanted to make an album where guitars were once again the star.
Now, as you mentioned the first album was greatly received – something we are still very grateful to the fans for! Our problem after that was that we didn’t want to just make a second album in the same style – again we wanted to push boundaries and come up with something new and fresh. We’ve been song writing ideas for a long time for the new album but other projects took our interest in the meantime and we never felt like we found a new sound and new idea that would be interesting as a second album. What we have now with the new album ‘Under the Veil of Madness’ we feel is something that could offer something new and exciting to the power metal genre – some flair and unexpected twists and turns!
Q3: デビュー作 “Far Beyond The Stars” は素晴らしいアルバムでシーンに大きなインパクトを残しましたが、あなたたちはその後、10年という長い沈黙の期間に入りました。
【ASCENSION】: “Far Beyond the Stars” を書いたときは、特に強い理由があった。あれは当時パワー・メタルで起こっていたことに対する個人的な反発だったんだ。当時、僕らのお気に入りのバンドの多くがキーボードやオーケストレーションを好むスタイルに進化してしまい、ギターがサウンド全体の中で後塵を拝するようになっていたんだ。だから、当時はもう一度ギターが主役になるようなアルバムを作りたかったんだよ。
君が言うようにに1stアルバムはとても好評で、今でもファンに感謝しているよ。その後、僕たちが直面した壁は、だからこそ同じようなスタイルのセカンド・アルバムを作るだけではいけないということだったんだ。新しいアルバムのために長い間曲作りのアイデアを練っていたんだけど、その間は他のプロジェクトに興味が行ってしまい、ASCENSION の次の一歩として面白いような新しいサウンドや新しいアイデアを見つけたとは思えなかったんだ。
だからこそ、ニューアルバム “Under the Veil of Madness” は、パワー・メタルというジャンルに何か新しい刺激的なものを提供できるものだと感じているんだよ。
Q4: By the way, the new song “Sayonara” is fantastic! It has more tension than when Dragonforce was at its most intense, and the melody is outstanding! Did you have Dragonforce in mind when you were writing the song?
【ASCENSION】: We honestly never have Dragonforce in mind when song writing – in fact we never have any other band in mind other than what we want Ascension to sound like. We want Ascension to stand alone offering something unique to the scene and constantly pushing boundaries. With this album we feel there are things that have not been done in power metal before and so it’s a sound that we think of as uniquely Ascension – everything fast doesn’t have to ‘Sound Like Dragonforce.
Q5: “Sayonara” means goodbye in Japanese. Why did you choose this Japanese word for the title and theme?
【ASCENSION】: We had such a great experience with our Japanese label (Spiritual Beast) from the first album – and A LOT of great feedback and love from fans in Japan that we knew we wanted to show our appreciation by giving a little recognition to fans of fast and melodic metal in Japan! The theme of the song is about saying one final goodbye – so it felt perfect to use ‘Sayonara’ for this song!
Q6: When I interview power metal bands, many of them tell me that they were influenced by Japanese anime and video games, probably because of the strong fantasy elements, but what about you guys?
【ASCENSION】: Japan has a great history of producing some absolutely fantastic composers – and a unique style and approach to music that many find very appealing. There are a lot of great power and melodic metal bands and song writers in coming out of Japan – one of our all-time favourites being Galneryus! I think Japanese culture and traditions lend to a very different take on writing music, different from classic European styles which a lot of composers (us included!) find very fresh and interesting – lots of very nice jazzy chords and progressions to get inspired from! I also think Japanese composers feel that melody is very important – just like we do!.
Q7: Also, I love your another new song “Megalomaniac”. You know, A very current title, isn’t it? With Covid, war, and division, the world has been getting darker and darker since the beginning of the 20s. For the marginalized and oppressed people, power metal seems to be a great escape. Especially since your metal is very pure and elation metal. Would you agree?
【ASCENSION】: This song for us is definitely about just having fun and bringing loads of energy – we wrote something to show that we don’t take ourselves too seriously and aren’t afraid to try crazy new ideas. Having a full-on Ragtime section in the middle of a power metal song I think is not too common to hear I think.
Q8: For example, the old power metal bands such as Helloween and Gamma Ray did not have a very “technical” image, but recent bands such as Twilight Force, Glory Hammer, and you guys are revolutionizing power metal with your quite technical performances, I feel. How about that?
【ASCENSION】: For us there is technicality in playing but also technicality in composition too and we like to push the boundaries in both. I think on our new album every musician is pushing higher onto new levels of personal achievement and our aim is to keep that going for every album we make. I don’t listen to Gloryhammer and TwilightForce so can’t really speak to their playing or composing.
【ASCENSION】: もちろん、僕らの演奏にはテクニカルな部分があるけど、実は作曲にもテクニカルな部分っていうのが存在して、その両方で境界線を押し広げることが好きなんだよね。新しいアルバムでは、すべてのミュージシャンが個人的な目標達成のために新しいレベルに挑戦していると思うし、僕らの目標はアルバムを作るたびに挑戦を維持し続けることだ。
僕は GLORYHAMMER や TWILIGHT FORCE を聴かないから、彼らの演奏や作曲について話すことはできないな。
FIVE ALBUMS THAT CHANGED ASCENSION’S LIFE!!
Galneryus “Resurrection” (Ricki)
Yngwie Malmsteen “Odyssey” (Fraser)
Angra “Temple of Shadows” (Dick)
Helloween “Keeper of the Seventh Keys Pt I” (Nick)
Kauan “Sorni Nai” (Doc)
MESSAGE FOR JAPAN
From all of us at Ascension, thank you so much for your continued support all these years – we hope the new album with be worth the very long wait and we will love to one day come and play the songs for you all!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARK BOALS FROM RING OF FIRE !!
“I Look To Singers Such As Pavarotti Who Never Lost Their Level Of Excellence And Singing Up Until The Day They Left This Earth. I Hope And Pray To Be Able To Do The Same!”
DISC REVIEW “GRAVITY”
「長い休みを取ったんだ。前作はコンセプトアルバムだったんだけど、ロシアを題材にしたこともあってあまり評判が良くなかったんだよね。ちょうどその頃、ロシアという国やその指導者に対して皆が怒っていた。だから、とても良いアルバムだったのだけど、チャンスをもらえなかった気がするね。その結果、僕たちは RING OF FIRE のバンドの活動から非常に長い間離れることになったんだ」
20世紀の最終盤に、特にここ日本で猛威を振るったネオクラシカルなシュレッドと、プログレッシブなヘヴィ・メタル。その複雑でしかし神秘的な二つの審美を炎と冷静でつなぎあわせた RING OF FIRE の存在は、ARTENSION と共に、かつて私たちを不可能を可能にした不可視領域へと誘ってくれました。
時は2022年。ネオクラシカルとプログを、素直に、ウルトラ・テクニックで結びつけるバンドはほとんど絶滅してしまいました。マグナ・カルタやシュラプネルはほとんど息をしていませんし、SHADOW GALLERY はメンバーの死により沈黙。SYMPHONY X はネオクラシカルを脱出し、ROYAL HUNT がその灯火を必死で繋いでいるといった状況なのかもしれません。
Vitalij Kuplij と Tony MacAlpine。もしくは George Bellas。さらに、彼のソロアルバムにおける Greg Howe との共演に、さながらパブロフの犬がごとく心が踊った私たちの偏った性癖は、もはや相当時代遅れなのかもしれませんね。実際、ヘヴィ・メタルは今でも多くのリスナーを惹きつけ、拠り所となっていますが、もっと多様で広義の “プログレッシブ”、そうでなければよりヒロイックで視覚にも訴えかける大仰なファンタジーを人々は求めているようです。
では、RING OF FIRE に、もう付け入る隙はないのでしょうか? 否。9年ぶりに帰ってきた彼らのサウンドは、自らのアイデンティティを保ちながらも、しっかりと “今”のヘヴィ・メタルの風を受けています。ウクライナ人である Vitalij にとってはもちろん侵略に、そして稀代のシンガー Mark Boals にとっては加齢という “重力” に、引っ張られるわけにはいかなかったのでしょう。RING OF FIRE 5枚目のアルバム “Gravity” は、その “反発力” で過去の遺産を見事に “エピック” なキャンパスへと描き切りました。
「Vitalij Kuprij はウクライナ出身だから、どのアルバムもヨーロッパ的な雰囲気はあると思う。もちろん、Cole や Aldo も曲を書いて独自のヴァイブを加えているし、僕以外のバンドはみんなヨーロッパにルーツがあるから欧州の音になるのも当然だよね」
血の入れ替えは完璧に成功しました。名の売れた古株を選ぶよりも、Mark と Vitalij はイタリアの新鋭3人に賭け、そしてギャンブルに勝利しました。特に、SECRET SPHERE のギタリスト Aldo Lonobile は掘り出し物としか言いようがありません。これまでの RING OF FIRE にもしかしたら欠けていた、ヨーロッパのエピックやスケール感、それにストーリー・テリングのスキルが Aldo によってもたらされました。それはまさに、今のメタルに求められるもの。
このアルバムのマグナム・オーパスである “The Beginning” と “Storm Of The Pawns” は、複雑な感情、洗練の感覚、鍛錬を重ねたクラシックの技術が、エピック・メタルのイメージで再構築されています。重要なのは、そこにプログレッシブ・メタル特有の驚きが組み込まれているところ。Vitalij が紡ぐ突然のピアノの旋律は、至る所でリスナーにサプライズを提供していきます。もちろん、”Melanchonia” のような内省的なリリックとメランコリーが、メタライズされた感情を爆発させる RING OF FIRE 式対比の美学も健在。”King Of Fool’s” や “21 Century Fate Unknown” のように、時には予想外の不協和音を音楽に取り入れて、心理的変化を伝える “物語” の能力も見事。
タイトル曲の “Gravity” はそんな新たな RING OF FIRE に生まれたマイルストーンなのかもしれません。メンタル、スピリチュアル、フィジカル。歌の三要素を整えた Mark Boals の歌唱は絶対領域へと到達。ドラマチック・シネマティックなシンセサイザーが響く中、ダニー・エルフマンがメタル映画のスコアを作ったような感染力が楽曲のフックを最高潮まで高めます。心強いことに、RING OF FIRE は今でも挑戦を重ね、最後の1音までそのクオリティを保っています。ネオクラシカル/プログレッシブ最後の桃源郷がここにはあるのです。
今回弊誌では、メタルの歌聖 Mark Boals にインタビューを行うことができました。「僕はまだまだ歌い方を勉強している感じなんだよ。パバロッティのように、この世を去るまでその卓越した歌唱力を失うことがなかった人たちは、特に尊敬しているよ。僕もそうでありたいと願っているから」BILLIONAIRES BOYS CLUB、いいですよね。どうぞ!!
“Just Like My Short Time With My Host Family In Japan, It Doesn’t Take Much To Change Someone’s Life For The Better. Just a Little Bit Of Kindness Can Completely Change The World!”
DISC REVIEW “THE OFFERING”
「パワー・メタルのジャンルやコミュニティーをバンドや人々にとってポジティブな場所にすることができれば、人と人とのつながりが生まれ、友情が生まれ、最近の暗い時代と戦うことができるのではないかと思うからね。僕が日本でホストファミリーと過ごした短い時間のように、誰かの人生を良い方向に変えるのに、それほど多くの時間は必要ないんだよ。ほんの少しの優しさが、完全に世界を変えるんだ!」
茨城県阿見町。霞ヶ浦を抱く人口4万5000の小さな町の優しさが、遂には北米のパワー・メタル世界を大きな愛で一つにしようとしています。
「実は高校生のとき、茨城県阿見町の家庭でホームステイをしたことがあるんだ。日本に渡り、素晴らしい人たちと一緒に過ごしたことが僕の人生を変えたんだ。彼らはあまり英語を話せないから、日本語でお礼と日本での体験がいかに重要だったかを伝えたいと思った。それで、大学に進学して、3つの専攻のうちの1つを日本語にしたんだ。
日本語の授業でアキ(日本人のハーフだけどアメリカで育ったから言葉は通じない)と出会い、一緒にバンドを結成したよ。また、妻ともその日本語の授業で出会ったんだ。ホストファミリーと過ごした短い時間、そしてホストファミリーのアメリカ人の高校生に対する優しさが、僕の人生を完全に変えてくれたんだ。彼らのおかげで、僕は今ここにいるんだよ」
米国ウィスコンシン州のスーペリア市と姉妹都市である阿見町。その縁もあって、高校生の Fang VonWrathenstein A.K.A. Ty Chritsian はホームステイで阿見町にやってきました。日本の田舎町で受けた歓待、そしてどこの馬の骨かもわからぬ自分に向けられた家族のような温かい優しさは、Ty の人生を完全に変えました。RIP SLYME や GLAY を発見し、日本語を学び、日本語の授業で妻やバンドの盟友 Aki Shimada と出会い、日本のゲームやアニメ、コスプレと共鳴するメタル・バンド LORDS OF THE TRIDENT を結成。日本の優しさから生まれた日本への愛情は、そうしていつしか北米のパワー・メタル世界を優しさで一つにしていきます。
「パワーメタルのバンドや自分たちが作る音楽は、地域のコミュニティーをひとつにまとめ、世界にポジティブな変化をもたらす非常に強い力になるとも思っているんだ。僕たちは、北米のパワー・メタル・バンド、そのコミュニティーを友好的に結びつけることに取り組んでいる」
アメリカのメタルは “怒り” と “恐れ” の音楽。ゆえに、前向きで優しく、ファンタジーと伝統に彩られたパワー・メタルは未だにヨーロッパのもの。ただし、そんな状況を変えるために、LORDS OF THE TRIDENT は北米のパワー・メタル・コミュニティーを一つにしようと決意します。UNREASH THE ARCHERS, SEVEN KINDGOMS, AETHER REALM といったバンドの中心に LORDS OF THE TRIDENT は存在し、Kickstarters、Patreonキャンペーン、ゲームやプロレスのYoutube シリーズ、Twitch など様々なエンターテイメントに共同して取り組み、北米の熱烈なパワー・メタル・ファンや改心者の忠実なコミュニティを徐々に育んできたのです。
ここ数年のよう、現実の生活が悲惨で暗く憂鬱なときは、勝利を収めるヒーローの救済、そんな物語を欲するもの。現実の世界ではヒーローと悪役を見分けることさえも簡単ではありません。勇ましい主人公が究極の悪に立ち向かい暗闇を払う物語は、暗い現実を忘れ前向きに生きるための特効薬なのかもしれません。そんなアメリカの苦悩や絶望を、LORDS OF THE TRIDENT はパワー・メタルのファンタジックな絆で優しさに変えていこうとしているのです。
「僕らは伝統的なパワー・メタルとオールド・スクールなヘヴィ・メタルの間のどこかに存在しようとしてるんだ。ヨーロッパの多くのパワー・メタルとは違って、僕らの音楽には余計なオーケストレーションがないんだ。キャッチーな曲とコーラスを書くことにいつも重点を置いていて、それが僕らの音楽を広めるのに役立っていると思う」
アメリカにパワー・メタルを根付かせるための試みは、DIY のエンタメ活動だけにとどまりません。欧州のプログレッシブでエピックなパワー・メタルと、米国のフラッシーでキャッチーな80’s メタルを巧みに融合することで、彼らはアメリカのオーディエンスに訴えかけました。同時に、コミコンやゲーム・コンベンションのライブで培った、コスプレや小道具、演出で派手好きな米国人を虜にしていきます。そうして、遂には “地球で最もメタルなバンド” の称号を (勝手に) 得ることになりました。
そんな LORDS OF THE TRIDENT が日本に恩返しにやってきます。日本の小さな優しさが生んだ大きなパワー・メタルの物語は、きっとこのツアー、そして夢の土浦公演でひとつのフィナーレを迎えるのでしょう。そして、霞ヶ浦に降り立ったポセイドンは、次の物語にむけて新たな章を開くのです。
今回弊誌では、Ty Chritsian にインタビューを行うことができました。「”ファイナル・ファンタジー6″ が一番好きなゲームで、その音楽とも深いつながりがあるんたよね。実際、Baron の奥さんは結婚式で、”ファイナル・ファンタジー6″ の曲に合わせてヴァージン・ロードを歩いたからね」 どうぞ!!