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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VIOLET ETERNAL : RELOAD THE VIOLET】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JIEN TAKAHASHI OF VIOLET ETERNAL !!

“I Studied From Timo Tolkki About Most Important Things. He Taught Me The We Need The Respect For Cherish Individuality By My Own.”

DISC REVIEW “RELOAD THE VIOLET”

「自分も満足出来て尚且つファンの人が喜んでくれるであろう夢のような音楽を作り続ける為に人脈を広げていく努力は惜しみなくしていますが、なによりも人間関係に恵まれたという部分が大きいと思います」
かつて、日本のメタル・アーティストが、海外のプレイヤーと共闘することはほとんどありませんでした。それは、言葉の壁、文化の壁、そして文字通り “海” という壁が大きく立ちはだかっていたから。もちろん、だからこそ日本のメタルは独特の “味” を持つようになったといわれる一方で、世界で認知されるには少しばかりドメスティックになりすぎたのかもしれませんね。
やはり、歴史を変えるのは若い力です。聳り立つ壁の数々を、ギタリスト Jien Takahashi はいとも簡単に薙ぎ倒していきます。Timo Tolkki に見出され、MAJUSTICE で颯爽とシーンに登場した Jien は、Kaz Nakamura, Kotaro Tanaka, Kelly SIMONZ という日本の百戦錬磨と共に、海外の烈士たち、Iuri Sanson, Ralf Scheepers, Vitalij Kuprij を従えていました。その姿はさながらメタル世界の坂本龍馬。インターネットという新たな海を自在に泳ぎ、Jien は信頼できる仲間を世界中で見つけました。
まさにメタルの生命力、感染力、そして包容力。彼にとって、国籍、人種、文化、性別は一切壁にはなり得ません。重要なのは、自らの才能を具現化できるパーティ。そして、その力を余すことなく使い切って、リスナーに極上の個性的なパワー・メタルを届けること。
「トルキとはかなりコンスタントに連絡を取るようになり、STRATOVARIUS 時代の楽曲をどのように作り上げたかなど色んなことを教えて頂けました。そして彼から独自の作曲方法を伝授されてからは一貫して彼の方法論を踏襲しています。しかし、それはあくまで方法論に過ぎず彼から学んだ最も大切な事は”個性的であれ”という事です。このジャンルに於いて”独創的”でいる事は難儀ですが、個性的であることを大切にしてこれからも精進していきます」
パワー・メタルはたしかにステレオタイプになりがちなジャンルで、飽和と定型化が衰退を招いたこともありました。しかし近年、TWILIGHT FORCE や GLORYHAMMER, FELLOWSHIP, IMMORTAL GUARDIAN といった若い力は、振り切った個性とテクニックで再びこのジャンルに活力を取り戻しています。Jien の新たな冒険となる VIOLET ETERNAL もそうしたバンドのひとつでしょう。
「村下孝蔵さんや弘田三枝子さんのような歌謡界のレジェンドから、私立恵比寿中学やアンジェルムのようなアイドル音楽など幅広く日本のポピュラーミュージックを愛しています。
太鼓の達人でお馴染みのナムコオリジナルやロマンシング・サガシリーズの楽曲を手がける伊藤賢治さんの作る音楽も大好きです。ヨーロッパっぽいメロディも大好きなのですが、ぼくは日本的なメロディで曲を作っていくのが楽しいしその点に生き甲斐を覚えています」
思い返してみれば、かつてパワー・メタルの銀河帝国を築き上げた綺羅星たちには、それぞれのユニーク・スキルが備わっていました。VIOLET ETERNAL のそのスキルはおそらく、欧州と日本の融合。実に耽美的でヨーロピアンでありながら、戦隊もの、アニメの主題歌、J-Rock で慣れ親しんだ日本的なコード進行や勇壮な旋律が五感を刺激するカタルシス。バンドのアンセムである “Under the Violet Sun” は、後半の転調を含めてまさしくその象徴でしょう。平坦になりがちな海外のパワー・メタルに比べて、VIOLET ETERNAL の楽曲はコード進行や転調の魔法が実に鮮やか。
DERDIAN の盟友 Ivan Giannini をはじめとした海外のパワーと、GALNERYUS の YUHKI をはじめとする繊細な日本のメタルが交わる様もまさに Jien が理想とするパワー&メタルの有り様。リスナーはただ、タクトを振るいながら美技を連発する Jien の紫に踊らされればよいのです。
今回弊誌では、Jien Takahashi にインタビューを行うことができました。「BanGDreamに関しては声優の工藤晴香さんのファンクラブにも入ったくらいどハマりしましたね!一時期は髪色まで工藤晴香さんの真似をしていたくらいです(笑)。実際に今でもInstagramでは工藤晴香さんとティモ・トルキの名前を捩った名称をIDにしていますね」
あの RING OF FIRE の “Circle of Time” を彷彿とさせる “The Echoes of Time” からさらに飛翔する “Now And Forever” の流れは絶品。開幕からメロパワ!メロパワ!でねじ伏せるアルバムは、HELLOWEEN の “Master of the Rings” 以来では? どうぞ!!

<収録曲>
01.The Titans
02. The Echoes of Time
03.Now and Forever
04.Ember Flame
05. Under the Violet Sun
06.Land of Golden Sun
07.Never Surrender…In My Dreams
08.Heartless
09. Over the Sorrow
10.Sonata Black
Line-up:
・Ivan Giannini (Vocals)
・Jien Takahashi (Guitarist)
Sound Producer:
・Dennis Ward (Sound Producer)
Additional Musicians:
・Track 02~10. Andrea Cappellari (NEKOMATA, ex-SKELETOON) as Guitarist
・Track 02~10. Ollie Bernstein (ILLUSION FORCE) as Bassist Track 09. Takao (MinstreliX) as Guitarist
・Track 09. Gabriel Guardian (IMMORTAL GUARADIAN) as Guitarist and Keyboardist
・Track 10. YUHKI (GALNERYUS, ULTIMA GRACE) as Keyboardist
・Track 09 10. Ryuya Inoue as Drummer
・Track 10. Timo Tolkki (ex-STRATOVARIUS) as Songwriter

VIOLET ETERNAL “RELOAD THE VIOLET” : 10/10

INTERVIEW WITH JIEN TAKAHASHI

Q1: Unfortunately, Vitalij Kuprij has passed away… He was a hero and a dear partner to you… Can you tell us about your story with Vitalij and your feelings towards him?

【JIEN】: I was devastated by his passed away, still I can’t believe it he left from earth.
Sometime I imagined how I felt if I loss the band mate, but I had never felt so sad about anything in my music career.
About the bond with Vitali and me, sometimes we fought.
But sometimes we talked about bull-shit things for hours.
So we built a wonderful bond that I could never have imagined when I just fan of him.
I was able to co-produce two albums with Vitali and played together in two bands before the he left from earth.
Fortunately, there have a unreleased recording take what he recorded the my song but did not release through the officially.
We are working on this song to release it as VIOLET ETERNAL. So please waiting for upcoming information about this!!

Q1: 残念ながら、Vitalij Kuprij が亡くなってしまいましたね…あなたにとって彼は、ヒーローであり、大切なパートナーだったわけですが、Vitalij とのストーリーや、彼に対する気持ちをお話ししていただけますか?

【JIEN】: “こんなに悲しい出来事が起きるものなのか”…と、彼の死には打ちひしがれました。
音楽活動を続けていればいずれはこういう事もあるかとは思っていましたが、音楽をやってきてここまで残念な気持ちを抱いた事はかつてありませんでした。
ヴィタリとは時には真面目にぶつかり合い、時には何時間もくだらない話をする…いっぱしのリスナーだった頃には想像出来ないほど素敵な絆を築いておりました。
ヴィタリとは生前に2つのバンドで2枚の作品を共同プロデュースして作ることが出来ました。
不幸中の幸いで、彼とレコーディングはしたものの一般的なルートでは発表しなかったレコーディングテイクが残っています。この曲は VIOLET ETERNAL として発表する為に作業を進めておりますので、続報に期待していて下さい!

Q2: To begin with, you and Majustice met with Timo Tolkki, which was a major turning point for you, wasn’t it? Can you talk about your encounter with him and what you learned and inherited from him?

【JIEN】: Sure!! If I never contacted to the Timo Tolkki in this life, my life is a totally different I guess.
Let’s way back to end of 2019, I was in a band called Stormheart and we were creating a EP, and I wanted to get some comments for the EP.
Then I dive to find the e-mail address of Timo Tolkki from internet, and fortunately I’m succeed to found the his address.
After that I send the email to Timo with my songs, then he responed after 15 min!!
And he told me how much he felt happiness to got the email from Japanese fan first after a long time, also he asked to talk with me in phone call.
Then I and him with familiar and he told me the many story, exsample how did he write the songs for STRATOVARIUS era.
After the he taught me to song write process, I’m fully write the songs with same way as Timo.
But is just a way, I studied from him about most important things.
He taught me the we need the respect for cherish individuality by my own.

Q2: そもそも、あなたとMajusticeは、Timo Tolkki との出会いが大きなターニングポイントとなったそうですね?彼との出会い、そして彼から何を学び、受け継いだのかお話ししていただけますか?

【JIEN】: もしもティモ・トルキと接触しなければぼくの人生は大きく違った形になっていたかと思います。
事の始まりは2019年の12月に遡ります。その当時ぼくが活動をしていた STORMHEART というバンドで作品を作っていたのですが、帯タタキにコメントが欲しいなと思いました。
そこで真夜中にインターネット中を駆け巡ってティモ・トルキのメールアドレスを見つけ出して彼にバンドの楽曲を送ったんですね。
そうしたらものの15分程で彼からレスポンスがあって、”日本の人から連絡が来るのは久しぶりだし、ちゃんと話したいから電話番号を教えて欲しい” と伝えられたんです。
それからトルキとはかなりコンスタントに連絡を取るようになり、STRATOVARIUS 時代の楽曲をどのように作り上げたかなど色んなことを教えて頂けました。そして彼から独自の作曲方法を伝授されてからは一貫して彼の方法論を踏襲しています。
しかし、それはあくまで方法論に過ぎず彼から学んだ最も大切な事は”個性的であれ”という事です。このジャンルに於いて”独創的”でいる事は難儀ですが、個性的であることを大切にしてこれからも精進していきます。

Q3: It seems that Jason Becker also approves of your guitar playing, doesn’t he? How did you interact with him?

【JIEN】: I was uploaded the cover video of Jason, I covered the “Altitudes” as you can see in the YouTube.
Then man of the manager for Jason contacted me about my cover video.
He praised for my cover video, especially he loved the I played the “Altitudes” with by my modern and heaviest arrange.
Then he showed my video and songs for Jason Becker himself, and fortunately Jason loved the my musical skills!!
After that sometimes Jason posted recommendation about me in his social medias.
It’s not common things, so still I can’t believe it Jason Becker loved my musical skills especiallyguitar playing.

Q3: あの Jason Becker にもあなたのギター・プレイは認められているようですね?彼とはどういった交流があったのですか?

【JIEN】: ジェイソン・ベッカーに関しては、”Altitudes” という彼の楽曲をカバーしたビデオを YouTube にアップロードしたんです。
そうしたらぼくのカバービデオを見たジェイソンさんのマネージャーから連絡があり、”君はジェイソンの作った楽曲を新たな次元に持っていった!ヘヴィでありながらもジェイソンへのリスペクトを凄く感じる!” と、言って頂けたんですね。
その後にぼくのビデオや楽曲をジェイソンさんのマネージャーが本人に聴かせたらいたく喜んで頂き、おめがねに叶ったという流れでした。それからジェイソンさんは定期的に自分のSNSでぼくのことを投稿して下さるようになったし、それは信じられないほど光栄な事ですよね 。

Q4: Still, Violet Eternal’s “Reload the Violet” is really great album! Can you tell us how you decided to start this band with Ivan Giannini, apart from Majustice?

【JIEN】: I was e-meet to Ivan Giannini at spring season 2023.
So we have fun to talked, especially we had a lot of common friends.
And we discussed about I supporting his upcoming solo activities, but unfortunately I can’t the found the time at that timing.
Few month later, I’ve left from my last activity with suddenly, so I needed to starting the new musical activity.
Then I contacted to Ivan about joining to the my upcoming musical activity, but he difficult to find the time for doing my things at that timing.
But I was not surrendering to got the him, because I have no choice about starting the new musical activity with other than him.
Then he asked me to send the song materials what can use for the album, and I did send the many songs and my artworks what I designed for my hobby.
After listened the whole songs, he send to me single email like a below…
“Sorry Jien, I can’t sing for your song.
Because I’ll sing the whole of your songs after that, so when we’ll be can start the recording!?”.

Q4: それにしても、Violet Eternal の “Reload the Violet” は素晴らしいアルバムですね!今回、Majustice とは別に、Ivan Giannini とこのバンドを立ち上げることになった経緯をお話ししていただけますか?

【JIEN】: イヴァン・ジャンニーニとは2023年の春頃に知り合いました。
イヴァンとは共通の知人もたくさんいたので話が盛り上がったんですね。話の流れでイヴァンのソロアルバムの制作や流通をぼくがサポートするという話が持ち上がったりもしたのですが、そのときはぼくの時間が取れずに没交渉となってしまったのです。
その後、ぼくが参加していた橘アンジュの活動から離脱する事となり新たな活動を模索し始める事となりました。
そして、再びイヴァンにコンタクトを取ってタッグを組めないか打診をしたんですが、今度は彼がめちゃくちゃ忙しく過ごしていてタイミングが合わなそうだったんですね。
しかし、ぼくはイヴァン以外と何かをやるなんて考えられなかったし、”1曲でも良いから!!あ!!ジャケ写のデザインもあるよ!!”とゴリ押しをして彼に確認を促したら、”もっと曲を聴かせてくれ” と連絡が来たんですね。
そして、アルバム相当の曲を送って暫くした頃にイヴァンから連絡があったんです。”ジエンとは1曲だけレコーディングをする事は出来ないよ…何故ならこれからジエンの曲は全て俺が歌うからだ!!さぁいつからレコーディングを始めたらいいんだ??”

Q5: What surprised me was that Dennis Ward, formerly of PINK CREAM 69, was the sound producer! Not only that, but Andrea Capperalli, Ollie Bernstein, Takao, YUHKI, Gabriel Guardian, and Timo Tolkki are also featured on the album! There have been very few Japanese metal artists like that until now, and that’s why you will pave the way and serve as a guideline for other young Japanese to follow! How did you develop this attitude of not putting up barriers, and gathering great musicians from all over the country and abroad?

【JIEN】: Always I’m worked as hard for make the dream power metal for me and every fan, so I’m effort for expanding to my human network for my musical activities.
But I’m lucky guy about human network.
Example let’s talk about how we welcomed the Michael Vescera for MAJUSTICE.
Simply Timo Tolkki was introduced me to Michael with recommended to joining the MAJUSTICE.
As for Dennis Ward who sound produced for “Reload The Violet”.
Iuri Sanson who vocalist of MAJUSTICE introduced me the Juan Corral who working for HIBRIA as manager, and I’m familiar to Juan after that.
It was someday I’ve consult to him about sound produce guy, then Juan was introduced me to Dennis with biggest his kind heart.
About the guest musicians of “Reload The Violet”.
Ollie Bernstein and Andrea Cappellari was good friends with Ivan and me, they gave us a kind answer about participating in the album.
Because that’s participate was feel like home party with friends!!
Sometimes human network made the bad trouble, but I’m so happy to enjoyed my life by the human network of mine.

Q5: おどろいたのは、あの元 PINK CREAM 69 の Dennis Ward がサウンド・プロデューサーをつとめていることですよ!それだけではなく、Andrea Capellari, Ollie Bernstein, Takao, YUHKI, Gabriel Guardian, そして Timo Tolkki といったそうそうたるメンバーがアルバムに参加しています!
今までそういった日本のメタルアーティストはほとんどいませんでしたし、だからこそ、道を切り開き、後続の指針にもなるでしょうね!そうやって、壁を作らず、国内海外問わず素晴らしいミュージシャンをどんどん集めていくあなたの姿勢は、どうやって培われたんですか?

【JIEN】: 自分も満足出来て尚且つファンの人が喜んでくれるであろう夢のような音楽を作り続ける為に人脈を広げていく努力は惜しみなくしていますが、なによりも人間関係に恵まれたという部分が大きいと思います。
例えばMAJUSTICEに参加したマイク・ヴェセーラはティモ・トルキから紹介をされた事がキッカケになりました。
“Reload The Violet” のサウンドプロデュースを手掛けたデニス・ワードは HIBRIA のマネージャーを務めるフアン・コーラルからの推薦で、そのフアンは MAJUSTICE のボーカリストを務めたユーリ・サンソンがぼくに紹介してくれたんです。
今回のアルバムに関してもオリー・バーンスタインとアンドレア・カッペラーリはイヴァンとぼくの2人と仲が良かったから友達グループの内輪ノリ感覚で参加が決まりました。
人間関係が原因でトラブルが起きる事もあるけど、なんだかんだで周りの人達に支えられているからこそぼくはこうして頑張れています。

Q6: Violet Eternal carries on the great power metal aesthetic of Stratovarius, early Symphony X, and Sonata Arctica. But you’re still in your 20s, and you didn’t experience the 90s scene. But I was surprised by your passion and knowledge of metal when we spoke. What made you fall in love with the power metal of that era and decide to carry on the aesthetic yourself?

【JIEN】: Let’s way back to my childhood, I’ve liked Crash 40’s “Live & Learn” and the song called “Can’t Beat Air Man” what famous song in niconico, so originally I’m loved music of what included the power metallic sound since I was a child.
I listened to Yngwie Malmsteen’s album calledTrilogy when I started playing guitar in junior high school, and I thought “this kind music is that I longing to to play it!!”
After that, I saw it the STRATOVARIUS at LOUD PARK 2013, that’s performance was totally changed my life.
And my mind about power metal have never changed until now.
I simply love the sound of power metal, because this type music can convey emotions so directly through melody.

Q6: Violet Eternal は、Stratovarius や初期のSymphony X、それに Sonata Arctica のような素晴らしきパワーメタルの美学を受け継いでいます。ただ、あなたはまだ20代で、90年代のシーンは経験していないはずです。
お話ししていて、あなたのメタルに対する情熱や博識ぶりに驚いたのですが、なぜ、あのころのパワーメタルにのめり込み、自らその美学を受け継ごうと思ったのですか?

【JIEN】: Crash 40 の “Live & Learn” とか、ネット上で大流行をした “エアーマンが倒せない” とか幼少期からメタルっぽい音楽が好きだったのです。
中学生になってギターを始めてすぐにイングヴェイ・マルムスティーンの “Trilogy” というアルバムを聴いて、”ぼくがやりたい音楽はこれっぽい!” と思ったし、そのあとに STRATOVARIUS のステージを LOUD PARK 2013 で観てからは今に至るまでパワーメタルに対する気持ちがブレた事はないです。
単純にパワーメタルのサウンドが好きだし、これほどストレートに感情をメロディに乗せて伝えられるジャンルも他にないと思っています。

Q7: The beauty of Violet Eternal’s power metal music is that it inherits the aesthetics of foreign power metal music, as I mentioned earlier, while at the same time producing melodies that are uniquely Japanese, such as power ranger, anime theme songs, or even J-Rock influences such as B’z! Is such a fusion of foreign and Japanese concepts one of your goals?

【JIEN】: I love a whole of Japanese popular music, example I’m fan of Japanese music legends like Kozo Murashita and Mieko Hirota.
And I loved Japanese idol music groups such as Shiritsu Ebisu Chugaku and Angerme.
I also love Namco Originals such as songs from Taiko no Tatsujin, and I’m huge fan of the Kenji Ito who writes the music for the Romancing SaGa series.
Of course I love European-style melodies, but I enjoy composing power metal songs with Japanese melodies, and that’s what gives me meaning in life.

Q7: Violet Eternal のパワーメタルが素晴らしいのは、先ほど述べたような海外のパワー・メタルの美学を受け継ぎながらも、日本らしいメロディ、例えば戦隊モノやアニメの主題歌、もっといえば B’z のような J-Rock の影響さえ醸し出しているところです!
そうした、海外と日本の融合的なコンセプトは、目標のひとつなんですか?

【JIEN】: 村下孝蔵さんや弘田三枝子さんのような歌謡界のレジェンドから、私立恵比寿中学やアンジェルムのようなアイドル音楽など幅広く日本のポピュラーミュージックを愛しています。
太鼓の達人でお馴染みのナムコオリジナルやロマンシング・サガシリーズの楽曲を手がける伊藤賢治さんの作る音楽も大好きです。
ヨーロッパっぽいメロディも大好きなのですが、ぼくは日本的なメロディで曲を作っていくのが楽しいし、その点に生き甲斐を覚えています。

Q8: “Reload the Violet” is also fascinating because of its beautiful artwork, which I understand you painted yourself? From this art, it seems you have a deep knowledge of manga, anime, and video games. What are some of your favorite works of these art?

【JIEN】: Absolutely!!
As for games, I’m big fan of Dragon Quest *maybe you know that same game with different name called Dragon warrior, especially I’m loved Dragon Warrior Monsters.
In fact, the band name MAJUSTICE itself is come from a spell in Dragon Warrior lol
For anime, I was crazy fan of Kochikame, Dragon Ball, and Yu-Gi-Oh!
Especially I was checking out almost all anime’swhat broadcasting at night time, I loved works like Isekai Shokudou and Aho Girl.
But I should talk about BanG Dream, because I even joined the fan club of Haruka Kudo who voice actress of this anime!!
At one point, I even imitated Haruka Kudo’s hair color lol
Even now, I use a name that is a play on the names of Haruka Kudo and Timo Tolkki as my Instagram name.

Q8: “Reload the Violet” はその美しいアートワークにも惹かれますが、これはあなたがご自身で描かれたそうですね?
このアートを見るに、あなたはマンガやアニメ、ゲームへの造詣も深そうですね。どういった作品が気に入っていますか?

【JIEN】: ゲームならドラゴンクエスト、それもモンスターズシリーズが大好きです。なんなら MAJUSTICE というバンド名自体がドラクエの呪文から名前を拝借しています (笑)。
アニメではこちら葛飾区亀有公園前派出所やドラゴンボール、そして遊戯王にはめちゃくちゃハマりました。一時期は深夜アニメもほぼ全てチェックしていたくらいで、異世界食堂やアホガールといった作品は思い入れが深いです。
中でも BanGDream に関しては声優の工藤晴香さんのファンクラブにも入ったくらいどハマりしましたね!一時期は髪色まで工藤晴香さんの真似をしていたくらいです (笑)。
実際に今でも Instagram では工藤晴香さんとティモ・トルキの名前を捩った名称をIDにしていますね。

Q9: With Covid, war, and division, the world has been getting darker and darker since the beginning of the 20s. For the marginalized and oppressed people, power metal fantasy seems to be a great escape, and The world needs Power metal now. Would you agree?

【JIEN】: The world has totally changed so much since I was a high school student in 2014.
However, the COVID prevented us from even meeting people close to us.
and I came to the idea such I wrote it below… “I can’t play with band, whether members live in Japan or Portugal!
But wait man… now geography has no effect, so I could form a band with Iuri Sanson living in Portugal!”
So it wasn’t that I hated the pandemic at fully actually.
If you change the way you look at things, a crisis can turn into an great opportunity I guess.
If I hadn’t left activities of before the VIOLET ETERNAL, I wouldn’t have teamed up with Ivan Giannini and released “Reload the Violet”.
And I think that the ability to turn life’s choices into great chance rather than regret is an important ability for surviving in this era.

Q9: パンデミック、戦争、分断と、20年代初頭から世界はどんどん暗くなっているように思えます。
そんな世界で社会から疎外され、抑圧された人々にとって、パワー・メタルのファンタジーはアニメやマンガと同様、現実からの素晴らしい逃避先であり、今、世界から必要とされているように思えますね?

【JIEN】: ぼくが夢見る高校生だった2014年から考えるとあまりにも世界は変わり過ぎてしまったように思います。
しかし、パンデミックによって近くにいる人達とすら会えなくなった事によって、”これじゃあ日本にいようがポルトガルにいようが誰ともバンド出来ないじゃん!…いや、待てよ…今なら地理の影響なんてないに等しいわけだからポルトガルにいるユーリ・サンソンとバンドやってもいいじゃん!” という発想にぼくは行き着いたわけで、まるっきり”パンデミック憎し”というわけではなかったです。
何事も見方を変えるとピンチはチャンスに成り変わると思います。
もしも、ぼくが橘アンジュの活動から離脱していなければイヴァン・ジャンニーニとタッグを組んで “Reload the Violet” という作品を出す事はなかったし、人生の選択を後悔じゃなくて幸福に転じさせる力こそが今の時代を生き抜く上で大切な能力なんだと思います。

SIX ALBUMS THAT CHANGED JIEN’S LIFE!!

Michael Jackson “Invincible”

マイケル・ジャクソンがぼくにとって音楽的な初期衝動を与えてくれた存在です。今でもこの作品はよく聴いていて、聴くたびに新しい発見があります。20年以上前に作られたとは全く思えないし、この作品をもし聴いたことがない方がいれば是非とも聴いて欲しいです。
“最高の楽曲を最高の音質で最高のシンガーが歌う” という方程式の重要性を思い知らされます。

Michael Jackson is the one who gave me my first musical impulses.
I still listen to this album often, and discover something new every time I listen to it this album.
It’s hard to believe that this album was made over 20 years ago!!!
So if you haven’t heard it yet, I highly recommend you do.
It makes you realize the importance of the equation “the best song sung by the best singer with the best sound production.”

Stratovarius “Infinite”

これこそがポピュラリティーを兼ね備えたパワーメタルという音楽の最高傑作だと思います。
バンドの状態も素晴らしいし、なによりもティモ・トルキという人間に於ける “狂気と冷静さ” のバランスが最も絶妙なバランスで体現された楽曲群が揃っているという点がこの作品に於いて最も重要な部分だと思います。
“Mother Gaia” や “Millennium” といった常人には考え難い楽曲がこの世に生み出されて、
黄金期のSTRATOVARIUSというバンドがそれらの楽曲を演奏して録音したという事は奇跡に近い事ですね。 

I think this is the greatest masterpiece of power metal music.
The band was great condition, and I think the most important part of this album is that it is filled with songs that perfectly embody the balance of “madness and calmness” that Timo Tolkki.
This album has a miracle songs like “Mother Gaia” and “Millennium,” which are almost people can’t write.

Kelly SIMONZ’s BLIND FAITH “BLIND FAITH”

この作品が発売された当時高校生だったぼくがリアルタイムでこのアルバムの洗礼を受けた事は後の人生に於ける行末を決定づけるキッカケになったと思います。
“N.W.O” というネオクラシカルメタルの王道を往く楽曲から始まり、キャッチーな “Burning In My Soul” に繋がる流れだけでも感動的ですが、更に “Toki-No-Kakera” という Kelly SIMONZ にしか作れない歌謡ネオクラシカルメタルに繋がるという展開は実に素晴らしく、いつも変わらぬ刺激を頂けるアルバムです。

I’m lucky guy, because this album was released at the time of when I was high school student.
In fact, I think my life is totally different if that’s album released was different timing.
The album starts with the classic neo-classicalmetal song called “N.W.O”,
and I loved the flow that leads into the catchy hard rock”Burning In My Soul”.
But “Toki-No-Kakera” what next song by the track-2, that only Kelly SIMONZ can wrote it!! So this is an album that always inspires me.

Marty Friedman “TOKYO JUKEBOX”

このアルバムこそがマーティ・フリードマンの真骨頂だと思います。
与えられた題材に対して独創性を魅せながら素材の味を活かすという物凄く高度な表現をマーティさんはアルバムを通して披露して下さいました。
痛快過ぎる衝撃をリスナーにお見舞いする “爪爪爪” から始まるアルバムには、”TSUNAMI” や “雪の華” といったマーティさんならではの歌心が込められた楽曲が沢山収録されています。
中でも “駅” に於けるギタープレイはかの名演 “Tornado of Souls” に匹敵する次元にあると断言します!

I believe this album was best work by Marty Friedman.
Throughout the album, Marty performed with his incredibly advanced expression of bringing out the best in the material while displaying his originality in the subject matter he is given.
The album begins with “Tsume Tsume Tsume,” which delivers a brutal punch to the listener.
And contains many songs filled with Marty’s emotional guitar arrangement such as “TSUNAMI” and “Yuki no Hana.”
I declare that his guitar playing in “Station *Eki” in particular is on a level comparable to that of the his masterpiece “Tornado of Souls”!!

Volcano “Violent”

“THE 速弾きバカ”だったぼくにとって屍忌蛇さんのギターを最初に聴いたときの衝撃は凄まじかったです。まるで田舎から出てきた青年が葉巻とスコッチウィスキーの味を通じて都会の渋さを叩き込まれるような感覚ですよね (笑)。
この作品を聴いた後、屍忌蛇さんとは実際に交流を持たせて頂く事となったわけですが、酩酊した屍忌蛇さんから教えられた哲学はティモ・トルキから学んだ事と同じレベルでぼくの音楽脳の礎となっています。
“速く弾いて緊張感をマックスに持ってきてから泣きに落とし込む” という術は “The Echoes of Time” のギターソロに於いてお聴き頂ける事かと思います。

I’m so surprised to listening guitar play of SHE-JA when I was listening at first time.
After listening to this work,
fortunately I had the opportunity to interact with SHE-JA himself.
And the philosophy that SHE-JA taught me is on the same level as what I learned from Timo Tolkki, and it has become the foundation of my musical mind.
I think you can see the I did same way of SHE-JA in the guitar solo of “The Echoes of Time” such as “Shredding for build up tension and then letting it drop into emotional section”

Silex “Arise”

このバンドのギタリストである Masha さんから受けた影響は計り知れないです。
“ヨーロピアンかつ日本的なフィールを持つ楽曲を外国人シンガーを含むハイレベルな面々で表現する” という Silex が実践した方法論は後に MAJUSTICE や VIOLET ETERNAL を始める上で大いなるヒントとなりました。
高校を卒業してから数年間の間は Masha さんの存在がぼくの全てだったし、”どうしたら彼のようになれるのか” と数年間毎日悩み抜いたほど強大な存在でした。
しかしMAJUSTICEを始めるにあたって、”強力な個性” がないとユーリ・サンソンや Kelly SIMONZ といった面々と張り合う事は不可能だと悟り、影響を遠ざけるべく数年間は自ら Masha さんの音楽に触れる事をストップしていました。
自分のスタイルを見出せた今では改めて聴き返す機会も多い大好きな作品です!

Masha who guitarist of this band was gave me inspired as immeasurable.
The methodology that Silex practiced, “The songs with a style of European power metal and combined Japanese feel, and these songs play by musicians what having a most skillful with including non Japanese singer”.
It was a great hint for when I started MAJUSTICE and VIOLET ETERNAL.
For a few years after graduating from high school, Masha was everything to me.
And he was such a powerful presence that I spent several years worrying every day about “how to become like him”.
But when I started MAJUSTICE. I realized that it was impossible to compete musicians the such as Iuri Sanson and Kelly SIMONZ without a “strong personality”.
So I stopped listening to Masha’s music for a few years to distance myself from his influence.
Now that I’ve found my own style fortunately, I often listen to this album again and it’s one of my favorites!

MESSAGE FOR JAPAN

I really enjoyed answering Natsume’s questions, then this interview had become quite long as you can see lol
Thank you for watching this interview!
I would be very happy if you could find even a little bit of empathy with my thought.
My latest album “Reload The Violet” will be released in other than Japan on May 3rd.
This album has contains melodic metal that embodies the mind I talked in the interview.
I’m pretty sure that anyone who has read this interview will like it! lol
If you like “Reload The Violet”, please post your review on social medias, as it will be a great encouragement.
Please keep the continue to support forVIOLET ETERNAL and Jien Takahashi!!

Sin さんの質問に答えていくのが本当に楽しくて、気がついたら随分と長いインタビューとなってしまいました (笑)。
このインタビューをご覧下さりありがとうございました!もしも、インタビューの中で少しでも共感出来る部分を見出せて頂けたならぼくは凄く嬉しく思います。
そして、4月10日(日)に日本で先行発売された “Reload The Violet” という作品にはぼくがインタビューで述べたマインドが集約されたメロディックメタルが収録されています。このインタビューを読破してくださった方なら必ず気に入って下さる事でしょう!
もし “Reload The Violet” という作品を気に入ってくれたら旧Twitterなどで感想を投稿して頂けると凄く励みになります。今後とも VIOLET ETERNAL と Jien Takahashi への応援のほどをよろしくお願いします!

JIEN TAKAHASHI

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【METAL DE FACTO : LAND OF THE RISING SUN PART.1】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ESA ORJATSALO OF METAL DE FACTO !!

“Power Metal Is The Pinnacle Of Music. It Is Music De Facto, Metal Music De Facto… And From There It Came, Metal De Facto!”

DISC REVIEW “LAND OF THE RISING SUN Pt.1”

「パワー・メタルは音楽の最高峰だということだ。これこそが真の音楽であり、真のメタルだとね…そしてそこから生まれたのが METAL DE FACTO だったんだ!パワー・メタルが再び大衆の意識の中で正当な地位を取り戻すことを願っているんだ!」
魅力的なアートを生み出すために最も必要なのは、好きを突きつめることかもしれません。フィンランドが輩出したパワー・メタルの秘宝 METAL DE FACTO は、その音楽も、そのテーマも自らの好きを貫き通して、情熱の炎で新たな傑作を世に産み落としました。
「たしかにパワー・メタルは、2000年代初頭の全盛期を過ぎると、世間のレーダーから姿を消したように思えたけど、完全に姿を消したわけではなかったと思う。ファンやミュージシャンは、かつてほどの人気がなかったにもかかわらず、パワー・メタルを存続させた」
そう、かつて、パワー・メタルはヘヴィ・メタルが揶揄されるマンネリの象徴でした。”すべてが予定調和で、同じに聴こえる”。そんな逆境中でも、パワー・メタルを愛し、その可能性を信じ続けた STRATOVARIUS, BLIND GUARDIAN, GAMMA RAY, HELLOWEEN といった不屈の魂は、いつしかこのジャンルを豊かで実り多い大地へと変えていきました。METAL DE FACTO は彼らの背中を見て育ち、追い求め、そしてついには同じ舞台、同じ高みへと到達しました。
フィンランド訛りが郷愁を誘う Tony Kakko のような歌声、Steve Harris への憧憬が愛しいベース捌き、疾走するツインリードに Jens Johansson 印の眩いキーボード。”Make Power Metal Great Again” を掲げる彼らの眼差しには、パワー・メタル・マニアックスが求めるものすべてが克明に映し出されているのです。
「大学で民族音楽学を専攻していたとき、ゼミで日本の芸術音楽について研究していたんだけど、日本人がフィンランドのアーティストをどう受け止めているか、フィンランドのメディアがフィンランドのアーティストの日本公演をどう報じているかについても研究したんだ。そう考えると、日本についてのアルバムを作るのはとても自然なことだったと思う」
そうして METAL DE FACTO は、パワー・メタルという暗い現実を薙ぎ払うファンタジーにも好きを貫きます。テーマに選んだ天照大神、赤穂浪士、元寇。それは、Esa Orjatsalo が人生で憧れ続けた日本の歴史や神話そのもの。そうして彼らは “Land of the Rising Sun” “日出る国” と第打ったアルバムで、愛する日本とパワー・メタルの今の姿を重ねます。沈んだ太陽。しかし日はまた必ず昇る。そう、権力や多数派に惑わされず、私たちが好きを貫き続ければ。可能性を信じ続ければ。
今回弊誌では、Esa Orjatsalo にインタビューを行うことができました。「”社畜”。この歌は、権力を得るために会社(または主人)に人生を捧げ、大成功を収めたものの、心の中は空虚で、権力なしで人生がシンプルだった時代を懐かしむ人の物語だからね。また、この曲には、何を望むかには注意しなさい、それは実際に望むものではないかもしれないというより普遍的なテーマもあるんだよ」 どうぞ!!

METAL DE FACTO “LAND OF THE RISING SUN PT.1” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VALENTINO FRANCAVILLA : MIDNIGHT DREAMS】 RIOT 祭り 24!!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VALENTINO FRANCAVILLA!!

“I Learned The Constancy From Riot, Do What You Love With The Heart And If You Persevere With Such Thing Someone Will Be Happy Listening Your Music Or Recognize You As Something Like Fresh Air In His Life Thanks To The Art.”

DISC REVIEW “MIDNIGHT DREAMS”

「RIOT から “不変であること” を学んだんだ。自分の好きなことを心をこめてやれば、誰かが自分の音楽を聴いて幸せな気持ちになったり、自分のアートで人生に新鮮な風が吹いたと認めてくれるだろう。そう、自分の好きなことを変わらずやり続ければね」
かつて、パワー・メタルはヘヴィ・メタルが揶揄されるマンネリの象徴でした。”すべてが予定調和で、同じに聴こえる”。そんな中でも、RIOT は己が愛するパワー・メタルをやり続けました。好きをやり続けることで RIOT のパワー・メタルは豊かに熟成されて、フォーキーだったり、メタリックだったり、エモーショナルだったり、テクニカルだったり、Valentino Francavilla が語るように時季折々の個性を醸し出すようになりました。多くの人の人生に救いや癒しをもたらしました。そして、パワー・メタルの復権と拡散、新たな才能の礎になったのです。
「RIOT は僕のヒーローであり、インスピレーションなんだ!16歳の頃、クラシックなオールドスクール・ヘヴィメタルのコンピレーションを聴いていて、”Thundersteel” が流れてきたんだ。最初のコーラスの後、”これが真のヘヴィ・メタルというものなんだ” と雷に打たれ、この素晴らしいバンドに恋をしたのさ!」
イタリアでメタルに目覚めた Valentino Francavilla は、RIOT の “Thundersteel” を聴いて文字通り雷に打たれたような衝撃を受けました。これこそが個性的で真なるヘヴィ・メタル。いや、真なるヘヴィ・メタルは個性的だと確信した Valentino は、そうしてギター、さらには歌の研鑽に励みました。WHITE SKULL で名を上げ、胸筋と SNS で火がつき、ついにはソロ・デビュー。そして7月にはここ日本で、RIOT V との共演が決定。彼もまた、好きをやり続けた結果、まさに “Midnight Dreams” が実現するのです。
「僕は何か新しいものを発明しているわけじゃない。僕が作曲したものは、人生の季節季節で耳にしたものから影響を受けた音楽だから。でも、僕は人の個性を本当に信じているんだ。人はひとりひとりがそれぞれ個性的だ。だから僕は、良いインスピレーションと影響、愛と独自性を持って、最高の音楽を作ろうとしたんだ!」
Valentino の言葉どおり、彼の音楽は決して真新しい革命的な何かではありません。とはいえ、彼の人生の四季折々を反映した、実に個性的で芳醇なパワー・メタル。たしかに、パワー・メタルには一定のフォーミュラ、型が存在しますが、そこに注がれるのはアーティスト個性であり、”好き” の源。つまり、個性を知り、音楽の色を積み重ねたアーティストにとって、そうしたフォーミュラは創造性の妨げにはならないのです。
「僕がステージで演奏するときに最初に考えるのは、目の前にいる人たちは新鮮な空気を吸って、人生を楽しむためにここにいるんだということ。こんな困難な時代だからこそね。ヘヴィ・メタルや音楽全般は、心理的な問題に対しても、本当に多くの方法で人々を助けることができると思う」
そうして Valentino のパワー・メタルは暗い世界の灯火となります。モダンで高度なテクニックと、クラシックなメタルのメロディ、そして積み重ねてきた音楽の色は雄弁に交合わさり、憂鬱や痛みをかかえる人々にひとときの癒しを提供し、新鮮な一陣の風を心に吹き込むのです。
今回弊誌では、Valentino Francavilla にインタビューを行うことができました。「LOUDNESS や X Japan のような日本のヘヴィ・メタル・バンドも大好きで、彼らからたくさん影響を受けたよ!Xの “Sadistic Desire” や LOUDNESS の “Crazy Doctor”, “Like Hell”, “In The Mirror”, “Heavy Chains” のようなリフが本当に大好きでね。彼らはいつも僕に夢を与えてくれたし、高崎晃の演奏も大好きだよ」 祭りには胸筋。どうぞ!!

VALENTINO FRANCAVILLA “MIDNIGHT DREAMS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【EIGENFLAME : PATHWAY TO A NEW WORLD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FERNANDES BONIFACIO OF EIGENFLAME !!

“Angra Was In Fact The Band That Most Influenced Me As a Musician, In Terms Of The Musical Direction I Followed, But On The Other Hand, At No Point Did We Intend To Try To Sound Like Angra”

DISC REVIEW “PATHWAY TO A NEW WORLD”

「ANGRAはミュージシャンとして、僕が辿った音楽の方向性という点で、最も影響を受けたバンドだったから。ただ一方で、ANGRA のようなサウンドを目指したことは一度もないよ。僕らの音楽に対する彼らの影響はとても強いけれど、彼らのやっていたことはユニークだったし、僕らもまた、大多数のパワー・メタル・バンドとは違うサウンドを出そうとしている。簡単なことではないが、努力しているよ」
ちょうど30年前。ANGRA の登場は二重の驚きでした。まずは、クラシックを大々的に取り入れた美しくも壮大でウルトラ・テクニカルなそのパワー・メタルに。そして、ブラジルというメタル第三世界から遣わされた天使である事実に。
時代は流れ、かつて ANGRA が証明したメタルの多様性や感染力は、今や当たり前のものとして受け入れられています。インドやアフリカ、そしてここ日本でも、世界で戦えるバンドが続々と登場しているのですから。そんなメタル世界の総復習、総決算として、再度感染源のブラジルから EIGENFLAME が登場したのはある意味宿命だったのでしょうか。
「ボサノヴァやサンバについては、絶対にないだろうね (笑)。でも、僕らのファースト・アルバムにはブラジル音楽や先住民音楽の要素が控えめに入っているし、バンドが活動し続ける限り、こうした要素はおそらく僕らの曲の一部になるだろうね」
ANGRA が後に再度世界を驚かせたのは、サンバやボサノヴァといったブラジルの代名詞に加えて、ブラジル先住民族の響きをメタルに溶け合わせた点でしょう。”Holy Land” はそこに、”Angels Cry” から引き継いだ流麗壮大なクラシックのシンフォニーまで未だ存分に残していたのですから、まさにメタル多様性の原点の一つであったにちがいありません。そうして、EIGENFLAME もその偉大な足跡を、自らのやり方で推し進めていきます。まさに EIGENFLAME。自分自身の炎。
「一番好きなアルバムは “Rebirth” と “Temple Of Shadows” だろうな。だから Andre が大好きで、”Holy Land” や “Angels Cry” のようなアルバムを愛しているにもかかわらず、バンドの時期を選ぶとしたら、Edu Falaschi がいた時期 になるだろうな」
EIGENFLAME のギタリスト Fernandes Bonifacio が、Andre Matos への敬意を表紙ながらも、Edu Falaschi 時代をフェイバリットに挙げる理由。それは彼らの音を聴けば理解できるでしょう。まさにあの傑作 “Temple of Shadows” を現代にアップデートしたかのような、ウルトラ・テクニカルでウルトラ・プログレッシブなメタル十字軍。
初期の ANGRA にあった、良い意味での “遊び” が排除された宗教画のような荘厳のモザイクは、明らかに EIGENFLAME が受け継いでいます。そうして、一片の曇りもなく天上まで歌い上げる Roberto Indio の迷いなき、揺るぎなき歌声。そこに加わる DRAGONFORCE や KAMELOT のパワー・メタル・カーニバル。ここには、我々が求めるカタルシスがすべて存在します。
「僕たちが経験したあの困難な時期にみんなが望んでいたことを表現するには、とてもいい名前だと思ったんだ。”Pathway To A New World” はコンセプト・アルバムではないけれど、ある意味、曲と曲がつながっている。宇宙、自然、スピリチュアルなエネルギーといったトピックを取り上げているんだよ。”つながる” ことがテーマなんだ。アルバムのアートは “Way Back Home” という曲に基づいている。この曲は、部族を探して放浪していた先住民の戦士が、新しい世界への道を見つける姿を描いているんだ」
ドラマーの Jean は2023年の EDU FALASCHI と NORTHTALE の来日公演にも参加していましたね。新たな未来へ、つながっていきましょう。Fernandes Bonifacio です。どうぞ!!

EIGENFLAME “PATHWAY TO A NEW WORLD” : 10/10

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COVER STORY 【ANGRA : ANGELS CRY】 30TH ANNIVERSARY !! TRIBUTE TO ANDRE MATOS…


COVER STORY : ANGRA “ANGELS CRY” 30TH ANNIVERSARY !!

“We Just Chose The Name Because It Was a Brazilian Name And There’s a Town Here Called Angra, Which Is a Beautiful Town. It Was a Name That We Thought Would Sound Good In Every Language, But, On The Other Hand, Would Also Mean Nothing. We Tried To Run Away From a Meaningful Name. We Discovered The Meaning Of The Word Later On, “Goddes Of Fire”, But I Think It Fits The Band’s Sound Well.”

ANGELS CRY

「ブラジルにアングラという美しい町がある。アングラ。どんな言語でも良い響きを持つ名前だと思ったが、一方で何の意味も持たない名前でもあった。私たちは意味のある名前から逃げようとした。言葉の意味は後でわかったんだ。火の女神。バンドのサウンドにはよく合っていると思う」
ANGRA。それはまさに、ブラジルから現れた情熱の炎のようなメタル・バンドにぴったりな名前でした。
もちろん、情熱的で画期的なヘヴィ・メタルを作る人は今もたくさんいますが、ネットやSNSの普及による情報過多で、特定のイメージを描写することばかりに気を取られているミュージシャンも少なくはありません。もしかしたら、そうした新たな” 文明の利器”は、いつしか大きな失敗や批判を恐れた野心、そして勇気の欠如を育み、純粋で、有機的で、正直で、”突飛” な音楽を生み出す土壌を汚染しているのかもしれませんね。
だからこそ、Andre Matos の逝去は、メタル世界にとって実に大きな喪失でした。偉大なシンガー/ソングライターを失っただけでなく、メタルを本当に愛し、心からのアイデアを具現化し、音楽的に常に挑戦しようとしていた人物を失ったのですから。

Matos は長年にわたり、彼が根っからのミュージシャンであり、イノベーターであることを証明し続けてきました。VIPER, ANGRA, SHAMAN, SYMFONIA, そしてソロ・プロジェクト。何かをするたびに、実験を試みながら、時の試練を乗り越える正直な音を届けてきたのですから。
Matos のキャリアと音楽的ヴィジョンを最もよく表しているアルバムは当然人それぞれでしょうが、今年30周年を迎えた”Angels Cry” は誰もが立ち返るアルバムでしょう。それは、このアルバムが多くの人にとって彼の音楽と ANGRA への入り口であっただけでなく、情熱的で、美しく、しかし突飛で、だからこそ正直だと感じられるからでしょう。
当時 Matos はクラシック音楽の勉強を終え、最初のバンド VIPER で2枚のアルバムを作った後に脱退。1991年に ANGRA を結成しました。彼はそもそもヴォーカリストになるつもりはありませんでしたが、状況が彼をそう導き、より熟達するために歌のレッスンを受け始めていました。
「ドラマーの交代は基本的にプロデューサーの決断だった。プロデューサーが僕らのところに来て、こう言ったんだ。”いいか、このアルバムで僕が望んでいることを、君のドラマーは残念ながら実現できそうにない。電子ドラムを使うか、私の知り合いで1週間でできる人を雇うかだ” とね。ドラマーは私たちの親友で、バンドの共同設立者の一人だったから、この決断はとてもとても難しかった。私たち全員がその場にいて、引き返すことはできなかったから、いずれかの選択肢を選ぶしかなかった」
“Angels Cry” のレコーディングはドイツ、特に Kai Hansen のスタジオで行われました。ボーカルとキーボードが Matos、ギターが Kiko Loureiro と Rafael Bittencourt、ベースが Luís Mariutti 。バンドの共同創設者で当時ドラマーだった Marco Antunes は、プロデューサーの Charlie Bauerfeind がパフォーマンスに満足しなかったため解雇され、後に RHAPSODY での活動で知られる Alex Holzworth がドラムスのレコーディングを行いました。

「このアルバムは簡単には生まれなかった。私たちは経験が浅く、とても若かったから。そして突然、当時パワー・メタルの中心地であり、あらゆることが起こっていたドイツに飛ぶことになった。そこで突然、最高のプロデューサーたちと仕事をすることになった。おかしなことに、私たちは、彼らにもあまり馴染みのない種類の音楽を持ってきた。私たちはヨーロッパのパワー・メタル・バンドではなかったから、クラシックの影響もあった。ブラジルの影響もあったし、カリブのリズムもあった。
“Angels Cry” のレコーディングは、亡命のようなものだとよく言っていたんだ。アルバムが最終的な形になるまで、私たちは何カ月もそこにいた。そして、ちょっと不気味でもあった。私にとっては初めてのドイツだった。その後、何度も何度もドイツに戻り、しばらく住んでいたこともあるし、素晴らしい国、完璧な国だと思うけど。
ハンブルグにある Kai Hansen のスタジオ、ガンマ・レイ・スタジオでこのアルバムをレコーディングしていたんだ。そのスタジオは第二次世界大戦時の地下壕の中にあったんだ。窓もなく、空気もなく、光もなかった。だから、ドイツで作った最初のアルバムは奇妙な雰囲気だった。また、レコーディング中に急遽別のドラマーを立てなければならなくなった。だから、私たちにとってはヘヴィな時期だった。そこから学んだことがあるとすれば、プロフェッショナルであること、忍耐強くあること、そして私たちを試練に陥れたすべてのことに耐えることだった」

実際、ANGRA はこのドイツでの滞在で、かけがえのない人たちと出会いました。
「Sascha Paeth と出会った日のことは、はっきりと覚えている。当時、私たちにはリム・シュノールというドイツ人のマネージャーがいて、彼がレコーディングの予算や全体を取りまとめていた。で、彼のつてでレコーディングのために突然ドイツに移されたけど、あまり快適な生活ではなかったんだ。家具はすべて60年代か70年代のもので、ペンションのオーナーは第二次世界大戦を生き延びた老婦人。彼女の夫も戦争で負傷したためそこに住んでいた。部屋の窓を開けると家の裏庭が見えたんだ。小さな裏庭だったんだけど、いくつか檻があって、鳩を飼っていたんだよ。
Sascha と Charlie Bauerfeind は当時のメインプロデューサーだった。Sascha は Charlie のアシスタントだったけど、彼はいつものようにアルバムの多くを手がけていて忙しくてね。そしてとても不思議なことに、Sascha とはお互いに会ったとき、もうずっと友達のような気がしたんだ。
それから私たちのキャリアと人生はいつもどこか一致していたし、一緒に多くのことをやってきた。”Angels Cry” のレコーディングやその全過程で、彼は私の最大の友人だった。彼は、私が自由な時間を過ごすときによく音楽の話をしていたし、当時からすでに、いつか一緒に何かプロジェクトをやろうというアイデアを持っていた。だから、彼は音楽における大親友の一人だよ」
GAMMA RAY の Kai Hansen と Dirk Schlächter もアルバムに参加しました。
「いつも通りかかって、スタジオで何かしているのをよく見かけたよ。もちろん、彼らは私にとってのアイドルだった。私は恥ずかしがり屋だった。彼らに敬意を表して、”おはよう” とか言う勇気もなかった。でもそのうちに、彼らは本当にコミュニケーション能力の高い、いい人だということが分かってきて、突然アルバムにも参加してくれるようになったんだ」

資金に余裕がなかったため、彼らはドイツのスタジオで大半の時間を費やしました。4人のブラジル人が、慣れないとても寒い気候の中、理解できない言語を話す国で。それは彼らの多くにとって初めての海外経験で、そうした逆境に対する反発力、野心、闘争心、そしてエネルギーがすべてアルバムに伝わったようにも思えます。
「SEPULTURA は、国際的にブレイクした最初のブラジルのメタル・バンドだ。ブラジルのバンドに何ができるかを世界に示した。私は彼らをとても尊敬している。彼らがやったことはとても重要だ。時々、ANGRA は SEPULTURA の真似をしたと言われる。だけど、音楽的にもコンセプト的にも、僕たちはほとんど関係ないと思う。同時期にトラディショナルな音楽の流行があり、多くの人が同じことをやっていた。でも、彼らの姿勢や音楽は好きだ。ブラジルから SEPULTURA のようなバンドが出てきたことを誇りに思う」
パワー・メタルは間もなくヨーロッパで大流行することになりますが、1993年のその時点ではまだ爆発的な人気はなく、ANGRAはHELLOWEEN、GAMMA RAY、BLIND GUARDIAN, HAMMERFALL, RHAPSODY らとともに、メタルの停滞を変える代表的なグループのひとつとなるはずでした。同時に、彼らの同胞であるスラッシュ・メタル・バンド、SEPULTURA が世界中で大ブレイクを果たした時期でもありましたが、ANGRA は特定のトレンドに追随することなく、自分たちらしくありたいと決意していたのです。
「アメリカではアルバムをリリースするのも、演奏するのも難しいんだ。ヨーロッパや日本では何の問題もない。彼らにはヘヴィ・メタルの伝統と文化がある。アメリカはとてもトレンドに敏感で、MTVが流しているようなものを好む。そこで活動する機会がないのは残念だ。メタルが好きな人たちが好きなバンドを見る機会がないのは残念だ」

自分らしさを貫くという部分は特に重要で、それがパワー・メタルの中でさえ、ANGRA に非常に際立った個性を与えていました。シューベルトの “未完成” に着想を得たイントロの “Unfinished Allegro” を聴くだけで、Matos がクラシックに深く影響を受けていることが伝わりますし、こうした幕開けはバンドにある種の洗練と風趣を与えています。そうしてこのイントロは、ANGRAの最高傑作であり最も人気のある曲のひとつである “Carry On” ではじけるまで、上昇気流を高めながら、ひたすら期待を煽ります。
そう、”Carry On”。Matos のクリスタルのような歌声と不自然なファルセット。ギターのファストで入り組んだ力強いリフと鳴り響く流麗なるストリングス。巧妙なベースソロと突拍子もない時代錯誤なシンセサイザー。そうした未曾有のコントラストこそが、ANGRAの証。高揚感のある力強いメタルと突拍子もないアイデアを、これほど見事にマリアージュさせた楽曲が他にあるでしょうか。そして訪れるクライマックス、ダイナミックな転調からの Matos の絶唱。
目眩く ANGRA 劇場の後、まるでブラジル人たちは一息ついているかのように、”Time” をゆるやかに始めます。冒頭のアコースティック・ギターのクラシカルでメロディアスなスタイル、Matos の外連見なく純粋な歌声、そして中盤に訪れるアルバム中最もエピカルなリフ・ワーク。彼らは20代にして、全盛期の GENESIS をメタルで再現する術を知っていました。続く “Stand Away” の早すぎたメタル・オペラも絶品。
クラシックからの巧みな引用もまた、”Angels Cry” を独特な作品に昇華していました。パガニーニによるカプリース24番を織り込んだタイトル曲は、絶え間ないリズム・チェンジと、あらゆるひねりに場面と発想の転換が見事に機能しています。一方で、ヴィヴァルディの冬を引用した “Evil Warning” では、よりドラマティックに、ロマンティックにスピードでリスナーの胸をしめつけることに成功しています。

また、”Never Understand” は、ブラジル音楽やカリビアンの影響を受けたアコースティックとベースの見事なコンビネーションから始まり、徐々に激しさを増していきます。この実験的な試みは、バンドが後に続く “Holy Land” で展開し結実することになりますが、圧巻なのはジャーマン・メタルが総力を上げて送るラストのギター・ソロ駅伝。
「”Holy Land” は一種のコンセプト・アルバムだから “Angels Cry” とはまったく違う。”Holy Land” が全体として良いのに対して、”Angels Cry” は個々の曲のレベルで良いんだよな。
もともとのコンセプトは “Holy Land” という曲から生まれたんだ。この曲は私がひとりで書いて、バンドに提示したんだよ。すると、バンド全体が同じような雰囲気になり、ブラジルのことや文化、人種、宗教の混ざり合いなどについて話すようになった。この曲から全体のコンセプトが生まれたんだ。”Holy Land” は、国そのものについてではなく、文化について、文化における人種の混ざり合いについて歌っているんだ」
そして何より、”Wuthering Heights” です。ケイト・ブッシュのカヴァーを男性の、しかもメタル・シンガーが歌うという、どう考えても突拍子もないアイデアをやり抜き名曲に仕立て上げる ANGRA の反骨心は、ここに極まります。ANGRA の楽曲と言われても違和感のないほどに、ここにある創造力は豊かです。
“Angels Cry” は、パワー・メタル、いや、RAGE や BLIND GUARDIAN のようなあの時代に “挑戦” を恐れなかったジャーマン・メタルの傑作として評価されてしかるべき作品で、同時に自分を心から信じ、やり抜くことの重要さを今でも伝えてくれます。
「できる限り成長し、ミュージシャンとしてもっともっと向上し、より高いプロフェッショナルなレベルに到達したい。ブラジルでプロのバンドになるのは難しい。ブラジルという国には、あまり可能性がないんだ。その一方で、私たちは多くの時間を外、特にヨーロッパで過ごした。このような外部市場を持つことはバンドにとって重要だ。さまざまな市場、さまざまな国で活動し、自分たちの好きな音楽をやっていきたい。それが私たちの最大の夢だ。レコード会社の意向を無視して、自分たちのやりたいことだけをやる必要はないよ。でもね、より多くのお金を稼ぐためだけに、反復的で退屈なものになりたくない」


“自分のやり方をつらぬけば 見つけられるだろう
未知なる才能が輝く道を
必要なのは君のプライド、それだけだ”
人生には意味がある…Andre Matos 死すとも、彼の美しき情熱の炎は消えず、こうして受け継がれていくのです。


参考文献: INTERVIEW WITH ANGRE MATOS

METAL MELT DOWN: INTERVIEW WITH ANDRE MATOS

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VICIOUS RUMORS : THE ATLANTIC YEARS】 JAPAN TOUR 23′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GEOFF THORPE OF VICIOUS RUMORS !!

“Saint Albert Was a One Of a Kind. We Were All Like Brothers…Sharing The Stage And Creating Music With Him Was Something Artist Dream About.”

DISC REVIEW “ATLANTIC YEARS”

「我々はスピードとメロディーをミックスしている。とにかく自分たちに忠実でありたいと思ったんだ!VICIOUS RUMORS はパワー・メタルのパイオニアだと言う人もいるけど、ある意味、我々はヘヴィ・メタルにスラッシュ、ブルース、アトモスフィア、真のメタル的なシンガロング・アンセムをオリジナルな方法でミックスしていたんだよ。我々は決してフェイクな何かになろうとしたわけではない。そこには常にパワーがあったからパワー・メタルなんだ」
サンフランシスコのベイエリアは、1980年代初頭におけるメタルの揺籠でした。この街の雰囲気は実験的な試みを許容し、特にスラッシュ・メタルはこの地の自由な追い風に乗って成功を収めていきました。スラッシュは確かにこの地で飛躍し、世界を征服していったのです。
「スラッシュは常に私たちの周りにあったよ。スラッシュとの相性は今日でも強力だよ。私はそれが大好きだからね…ただ、私たちはより幅広いバリエーションを持っていて、LED ZEPPELIN のようなアプローチを自分たちのヘヴィ・メタルに適用したかったんだ!」
現在のエクストリーム・ミュージックの基準からすると、当時のバンドのほとんどは今よりずっとメロディックに聴こえます。つまり、エクストリームとメタルの基準がまだ曖昧だった逢魔時。そんなベイエリアで産声をあげた VICIOUS RUMORS は完全なスラッシュ集団になるつもりこそありませんでしたが、それでもスラッシュと同等のエッジがあり、同時にメロディがあり、新しい、よりハードな音楽の辛辣さだけでなく伝統的な要素もあり、音楽的な幅の広さでは彼の地でも群を抜いていたのです。
「”Digital Dictator” は、クラシックなラインナップの始まりであり、Carl Albert の最初のアルバムだったから、いつだって特別なアルバムと言えるだろう。あの頃は、とてもエキサイティングな時間だった!アトランティック・ブルー (90年のセルフタイトル “Vicious Rumors”) のアルバムは、ある意味、最初のメジャー・レーベルからのリリースということで特別だね…」
硬軟の傑出したギター・チーム Geoff Thorpe と Mark McGee、ドラマーの Larry Howe、ベースプレイヤーの Dave Starr、ボーカリストの Carl Albert からなる5人組はすぐに有名になり、絶えずツアーを行い、JUDAS PRIEST の “Screaming for Vengence” をスラッシーにドーピングしたような名作 “Digital Dictator” で巨大企業アトランティック・レコードの目に留まることになりました。そうしてバンドは緊密なユニットとなり、精密機械のように動作して、”アトランティック・ブルー” と呼ばれるセルフタイトルを90年にリリースします。
“90年代を定義するメタル・アルバム” と称された “Vicious Rumors” は、タイトなリフとリズムが火山のように噴火し、5オクターブの並外れたボーカルが雷鳴のように轟きます。オープニングの “Don’t Wait For Me” が激烈でスラッシーな一方、”Down To The Temple” では DIO 時代の RAINBOW、”The Thrill Of The Hunt” では IRON MAIDEN を彷彿とさせ、その輝かしい伝統と新風のミックスはメタル・コミュニティ全体に広く、素直にアピールする魅力的なものでした。
「私たちは VICIOUS RUMORS のヘヴィ・メタルでパワフルな日本の夜を過ごし、最初のショーの後、楽屋に向かったんだ。するとプロモーターがやってきて、”もう一度だけアンコールをお願いします” と言うんだ!誰も会場を出ていないからとね!私たちはとても驚いたよ!再び出ていくと客電はついているのに、まだ満員のままだった!!! 私たちは再びライブハウスを揺るがしたよ。この経験は決して忘れることはないだろうね!」
91年の “Welcome to the Ball” も好評のバンドはその勢いを駆って1992年に来日し、ライブ・アルバム “Plug In and Hang On – Live in Tokyo” をリリースします。オーバーダビングのない、生の興奮と情熱を反映した作品は間違いなく VICIOUS RUMORS の絶頂期を捉えたもので、ダイナミックな演奏の中でも特に、生前の Carl Albert の “凄み” を存分に見せつける絶対的な記念碑となったのです。
「聖アルバートは唯一無二の存在だった。彼の半分ほどの才能しか持たないようなボーカリストたちが、巨大なエゴを持ち、小切手を切っているんだ。その才能はお金に値しないのにね。彼は後世の多くの人に影響を与えた。私たちは皆、兄弟のようだったよ…彼とステージを共有し、音楽を創り出すことは、アーティストとして夢のようなことでさえあった」
1994年に5枚目のアルバム “Word Of Mouth” をリリースした翌年、Carl Albert が交通事故で亡くなり、バンドは兄弟を失い、メタル世界はずば抜けたボーカリストを奪われました。それでも VICIOUS RUMORS は絶望の淵で踏みとどまり、インタビューイ Geoff Thorpe を中心に今日までコンスタントに、諦める事なく、”意味のある” メタルを届け続けています。そんな彼らの不屈は “アトランティック・イヤーズ” における再評価の波と共に実を結び、遂に今回、16年ぶりの来日公演が決定したのです!VICIOUS RUMORS is Baaaaack!!
今回弊誌では、Geoff Thorpe にインタビューを行うことができました。「日本のファンのみんなも素晴らしかった。空港や駅で私たちを待ってくれて…彼らがどうやって私たちの居場所を知ったのかわからないよ!」 Geoff が歌っていたアルバムも悪くないし、隠れた異才 Mark McGee をはじめとして、Vinnie Moore, Steve Smyth, Brad Gillis など彼のギター・パートナーとの対比の妙もこのバンドの聴きどころ。どうぞ!!

VICIOUS RUMORS “THE ATLANTIC YEARS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DRAGONCORPSE : THE DRAKKETH SAGA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARDY LEITH OF DRAGONCORPSE !!

“We Expressed That Clean Vocals Being Underutilised And Even Ridiculed In Heavier Music In General Was Missing Out On a Whole World Of Possibilities.”

DISC REVIEW “THE DRAKKETH SAGA”

「僕たちは、自分たちが影響を受けたものをしっかりとその名に刻んでいるんだよ。DRAGONFORCE をはじめとしたパワーメタルからの多大な影響。そして WHITECHAPEL や CANNIBAL CORPSE をはじめとするデスメタルやデスコアからの影響。だから、両方の名前を統合するべきだと思ったんだ」
DRAGONFORCE の名を挙げるまでもなく、天翔るドラゴンはファンタジックなパワー・メタルの代名詞であり象徴です。一方で、”Corpse” “死体” は、CANNIBAL CORPSE を引き合いに出すまでもなく、デスメタルの根幹であり原点。その2つの単語を安直なまでに大胆に繋ぎ合わせたオーストラリアの新鋭 DRAGONCORPSE の登場は、A7X が語るようにヘヴィ・メタルが “大胆な” 進化を厭わなくなる予兆なのかもしれません。
「パワー・メタルとデスコア。この一見相容れない2つのジャンルを融合させたきっかけは、僕と BEYOND DEVIATION の Kris Chayer との単純なやり取りから生まれたんだ。そこで僕らは、ヘヴィな音楽全般においてクリーン・ボーカルが十分に活用されていない、そして馬鹿にされていることは、あらゆる可能性を失っていることになると話したんだよ」
そもそも、ヘヴィ・メタルの世界はクリーン・ボーカルが花形で主流でした。しかし、スラッシュ、デスメタル、メタルコアと時を重ねるうちに、重さこそ正義、グロウルやスクリームであらずんばメタルにあらずといった空気が醸し出されてきたような気もします。そんな中で、DRAGONCORPSE はメタルにおけるクリーン・ボーカルの重要性に再度焦点を当て、デスコアの現代的な重力の中にパワー・メタルのファンタジーを組み込む事でメタルの新たな可能性を見出して見せました。
「どのようなスタイルの音楽にも、おそらく永遠に “純粋な人” たち、ピュアリストはいるものだろう。僕たちが取り込みたいのは、ヘヴィな音楽もファンタジックな音楽も両方楽しめる、オープンマインドな人たちだよ。僕たちのようなバンドが現れて、実際に活動するのを長い間待っていたと言ってくれる人がたくさんいることは、正しい道を歩んでいることを意味しているんだ」
と言うよりも、そもそもパワー・メタルとデスコアは、それほど遠い場所にいたのでしょうか? 例えば、BLIND GUARDIAN の “I’m Alive” や “Mirror Mirror”、もしくは HELLOWEEN の ”Escaltion 666″ や ”Push” を聴けば、その実、パワー・メタルにも重さを許容する素養が十分にあったことに気づくはずです。DRAGONCORPSE はただし、その陳腐になりがちなジャンルの手術を、スタイルの良いところを合成し、それぞれの脂肪をカットすることで、両者の総和を超越するカタルシスを作り出すことに成功したのです。
そして、彼らのサウンドの中心、パワーとデスコアが重なる部分は、SOILWORK や SCAR SYMMETRY を想起させるスウェーデンの基盤が実は支えています。このコアから音楽の要求に応じて、壮大なパワーメタルのコーラスや、デスコアのブレイクダウンへと、より柔軟に、大胆に、シームレスに楽曲はその枝葉を巡らせていきます。
もちろん、デスコアとパワー・メタルという、おそらくサウンド的にも審美的にも最も異なると思われてきた2つのサブジャンルを組み合わせることで、DRAGONCORPSE はデスコアのファンがパワー・メタルの世界を探求するための、パワー・メタルのファンがデスコアの世界を探求するための橋渡しを行い、この壮大な “The Drakketh Saga” の最大の功績としたことは記しておくべきでしょう。
今回弊誌では、多才なボーカリスト Mardy Leith にインタビューを行うことができました。「J-ロックやJ-メタルにとても影響を受けているし、日本の影響も浸透している。X-Japan, D’espairsRay, The GazettE, Maximum the Hormone のようなバンドからの影響だね。高校時代は D’espairsRay の大ファンだったよ!僕の記憶が正しければ、彼らは実際に Soundwave フェスティバルの1つでオーストラリアに来たことがあるんだ!それからもちろん、DEVILOOF のようなヘヴィなものも大好きさ!」オーストラリア、アメリカ、カナダの混成バンド。どうぞ!!

DRAGONCORPSE “THE DRAKKETH SAGA” : 10/10

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COVER STORY 【RETURN OF SAVATAGE】 INTERVIEW WITH ZAK STEVENS


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZAK STEVENS OF ARCHON ANGEL & SAVATAGE !!

“Criss Treated Everyone With Total Love And Respect. He Had a Really Angelic Spirit.”

復活のSAVATAGE

「タイトルは”カーテン・コール”になるだろう。来年の4月、Criss の誕生日にリリースしたい。そうしてツアーでファンに愛と感謝とさよならを伝えるんだ。これまでのメンバー全員に関わってもらい、10点満点の最高傑作で幕を閉じる」
US プログ・パワーの伝説、SAVATAGE の首領 Jon Oliva の言葉です。復活の SAVATAGE。アメリカにプログ・メタルとパワー・メタルの種をまいたドラマティックな反乱軍が、ついにメタル世界へと帰還します。
「僕が92年に初めて SAVATAGE に参加したとき、Criss が “今まで一緒にいられなかった時間を取り戻し、一緒に遊んで、もっとお互いを知る必要がある。だから一緒に暮らそう” と言ってくれたんだ。それが彼のやり方なんだよ。彼は誰に対しても完全な愛と敬意を持って接していた。本当に天使のような精神を持っていたんだ。僕たちは一緒に音楽を作り、失われた時間を取り戻していった。だからこそ、数年というより、10年以上一緒に仕事をしていたような気がしているんだ」
SAVATAGE を語るとき、避けては通れない2つの魂こそ、Criss Oliva と Paul O’Neill。両者とも、この世を去って何年も経ちますが、未だに彼らに対するスタンディング・オベーションと “カーテン・コール” は鳴り止みません。
Jon Oliva の弟、Criss Oliva は天賦の才に恵まれたギタリストでした。Eddie Van Halen の技量を宿しながら、エモーションとカタルシスに全振りした Criss の流麗なソロイズムはまさに天国への階段で、バンドのドラマ性を飛躍的に向上させていました。Zak Stevens が証言するように、誰が評しても “天使” となるその本質は、むしろ Randy Rhoads に近かったのかもしれません。とにかく、Criss のギターと Jon のピアノ、そして後に Zak が受け継ぐ旋律の魔法を軸とし、Paul O’Neill の荘厳華麗なシンフォニーと変幻自在なリズム、そこに考え抜かれたコンセプトが加わって、SAVATAGE の唯一無二は実現していました。
ただし、Criss と Paul が召されてもなお、SAVATAGE-Ismは脈々と受け継がれ、途絶えることはありません。Chris Caffery, Alex Skolnick, Al Pitrelli といった超一流がギターの芸術を繋ぎ、Paul O’Neill のシンフォニーは TRANS-SIBERIAN ORCHERSTRA として多くの SAVATAGE メンバーと共に夢のような成果を残しました。後続への影響も並々ならぬものがあったはずです。そして、Jon Oliva が SAVATAGE の声であるのと同様に、Zak が歌った4枚の名作、その驚異的な完成度を鑑みれば彼もまた、SAVATAGE の声に違いありません。
「僕はいつも QUEENSRYCHE と FATES WARNING の大ファンだったんだ。ARCHON ANGEL とその2つのバンドを比較することは、間違いなく正しいよ。Aldo も QUEENSRYCHE の大ファンであることは知っているので、その比較は完全に理にかなっているね」
Jon Oliva とボーカルを分け合う Zak Stevens による新たなバンド ARCHON ANGEL も、そうした SAVATAGE-Ism の継承者であり、同時に SAVATAGE の復活を祝う天使の啓示でもあるでしょう。これほどドラマティックかつ知的なプログ・パワーは近年稀に見ると言わざるをえません。素晴らしいのは、SAVATAGE のシンフォニーやドラマを基軸としながらも、QUEENSRYCHE が見せたコンパクト&キャッチーなプログ劇場、FATES WARNING の濃密なプログ・エキスをしっかりと抽出して、アーコン・エンジェルの物語へと落とし込んでいるところでしょう。アーコンとは、神々の宣託を地上に伝える選ばれた天使のこと。その天使がもし、Criss Oliva だったとしたら、我々は USプログ・メタルの始祖が三位一体となった ARCHON ANGEL の作品で、SAVATAGE の雄々しき復活を今まさに天から告げられているのでしょう。
今回弊誌では、Zak Stevens にインタビューを行うことができました。「特に2020年以降、世界で起きているネガティブな出来事については、とても残念に思っている。 復活した SAVATAGE は、今まで通り、人々の人生のタイムラインになるような曲、人生の辛い時期を乗り越えるような曲、そして感動を与えるような曲を届けることができると思っているよ。 それは、ファンのみんなからいつも聞いている話で、僕たちの音楽を通じて、そうした素晴らしい出来事が継続することを期待しているんだ」 どうぞ!!

ARCHON ANGEL “Ⅱ” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【ELEGY : REUNION 2023】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IAN PARRY OF ELEGY !!

“Henk Was Ahead Of His Time With His Unique Song Writing Style And Phenomenal Technique On Guitar.”

ELEGY REUNION 2023

「やはり Henk の功績は大きいよ。彼は、DREAM THEATER などの偉大なバンドが存在するプログ・シーンよりも何年も前に、ELEGY の曲を書いていたんだからね。だから、Henk はそのユニークな曲作りのスタイルとギターの驚異的なテクニックで、時代の先端を走っていたと言える」
日本ほど ELEGY を愛し、ELEGY に愛された国は他にありません。おそらく、この国のリスナーは世界のどの国よりもメタルに知を求め、美を求めていました。だからこそ、早すぎたオランダの至宝に恋焦がれ、挽歌が眠りについた際にはいつまでも、いつまでもその目覚めを待ち続けていたのです。今でこそ、当たり前になったファンタジーとテクニカルの饗宴、”プログ・パワー” ですが、明らかに ELEGY はその源流です。そうして、DREAM THEATER よりもファンタジックで、HELLOWEEN よりもテクニカルかつ知的な失われし夢の迷宮がついに長き眠りから覚める時が訪れました。
「あの頃、Henk の母親が悲しいことに他界してしまい、想像できるように、それは彼にとって本当にものすごい打撃となってしまったんだ。彼は2人の子供を育てていたから、家族のために音楽から手を引くことにしたんだよ。でも ELEGY は、Henk と常に連絡を取り合っていたんだ」
ELEGY と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?明らかに、前ボーカリスト Eduard Hovinga の月まで突き抜けるような甲高いハイトーンとドラマティックなメロディは、初期 ELEGY の象徴でした。そしてもちろん、Henk van der Laars と Arno van Brussel / Gilbert Pot が織りなすあまりに劇的なギター・ハーモニーの疾駆は、ELEGY の代名詞と言えるでしょう。
その美しき両翼が完全に噛み合った “Lost” において、私たちはメタル・カタルシスの最高到達点を経験しました。逆に言えば、”Spanish Inquisition” の身を捩るような音スタシーを知ってしまった我々は、生半可なプログ・パワーでは満足しない体に調教されてしまったのです。いやー、”Supremacy” も良いんですよね…”Lust For Life” みたいな壮大荘厳なバラードを書けるバンドが他にどれほどいることか。
そうした絶頂期に、なぜかギター・スイープのテクニックまでずば抜けていた Eduard がバンドを去り、VENGENCE, Misha Calvin, そして TAMAS などで活躍した “Zero” の申し子ともいえる Ian Parry が ELEGY に加入します。Ian は Eduard のような天空のシンガーではありませんが、例えば Ronni James Dio のような力強く、エモーショナルな歌唱を得意としていました。だからこそ、少しスピードを抑えて、内省的で狂おしいほどにエモーショナルな “State of Mind” には適任でした。
嘘のような話ですが、当時の中高生は皆、カラオケで名曲 “Shadow Dancer” を歌いながら踊り狂ったものでした。それほど、あの頃の ELEGY は人気があったのです。本当です。Ian Parry はあの年、BURRN! 誌のベスト・シンガーに選ばれたんじゃなかったかな…とにかく、だからこそ、突然の Henk の脱退は青天の霹靂、あまりにも衝撃的で絶望的なニュースだったのです。
「ELEGY は2000年から、Jean Michel Jarre/Consortium Project の Patrik Rondat と2枚のアルバム “Forbidden Fruit”, “Principle of Pain” をレコーディングしていた。しかし、ファンが Henk を欲していることは明らかで、Patrik がやめると決めた時、Martin と私はバンドを繭の中に入れて、いつか Henk が戻ってくることを願うことにしたんだよ。その日がついに訪れたんだ!」
バンドは名手 Patrik Rondat を勧誘し活動を続けますが、非常にユニークなソングライターと、本当にユニークなサウンドを持つギタリストという二足の草鞋を履いていた天才の抜けた穴を埋めることは難しく、ELEGY は長い眠りにつくことになりました。たしかに Patrik はクラシック・ギターも縦横無尽に使いこなすフランスでも屈指のプレイヤーでしたが、ヴァイオリンから始まっている Henk が司るキーボードまで含めたゴージャス&カルフルなオーケストレーションの色彩こそ、ELEGY の真骨頂だったのかもしれませんね。
結局、ファンだけでなく、Ian も Martin も Dirk も Henk van dar Laars という偉人の帰りを待っていたのです。”Lost” のアートワークに描かれた月のように、時は満ちました。全作の再発、日本も含む?!リユニオン・ツアー、そしてその道の先には、私たちが焦がれ続けた新作が待っているようです。
今回弊誌では、Ian Parry にインタビューを行うことができました。「素晴らしい未来への希望を歌うことだよ。メディアでよく見聞きするような怖い話ではなく、もっとおとぎ話を書きたいんだ。魔法にかかったようなファンタジーの世界をね。そうだね、それで、1997年の “State of Mind” の時のように、ファンの皆に再び幸せな気持ちになってもらえたらうれしいね」 弊誌独占世界初インタビュー。どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TWILIGHT FORCE : AT THE HEART OF WINTERVALE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLACKWALD OF TWILIGHT FORCE !!

“The Last Few Years Of Hardships Have Affected Us All One Way Or Another, And If Our Music Was Able To Bring Just a Sliver Of Joy For Someone To Help Them Get Through Those Hard Times, We Have Truly Accomplished Greatness.”

DISC REVIEW “AT THE HEART OF WINTERVALE”

「現代のメタル音楽は、曲作りが合理的になってしまっている。パワー・メタルにおいて、面白い変化や予想外の変化を見出すことは、最近ではほとんどないんだよね。つまり、”最も抵抗の少ない道” を歩むことが、迅速かつ安定したペースで音楽やアルバムを作り上げることにつながってしまっているんだ。実験や創意工夫には時間がかかるからね。でも、そのためにメタルから多様性や実験への意欲が削がれてしまっているのかもしれないね」
10年代、そして20年代のパワー・メタルを牽引する北欧の黄昏は、彼の地の大自然と伝承、そしてファンタジーを刻み込んだ “At The Heart of Wintervale” において、王者の王者たる由縁を見せつけました。バンドの鍵盤奏者で黒魔法の使い手 Blackwald にとって、現代パワー・メタルの大半はステレオタイプで驚きのないもの。手間と時間をかけずに生み出したインスタントな創作物。しかし、魔道士はよく知っています。詠唱は長ければ長いほど、強力な呪文が発動するのです。
「ジョン・ウィリアムズやハワード・ショアといった映画音楽の作曲家に大きな影響を受けたし、彼らこそが僕にとっての “ヒーロー” だと思う。ハンス・ジマーのような人物も、シンセサイザー(ダークナイト)やパイプオルガン(インターステラー)など、非常にミニマルなツールや音で、喚起力と説得力のあるサウンドスケープを作り出し、大きな進歩を遂げている。印象的なモチーフやテーマを創り出す能力とスキルは、僕が賞賛し、憧れるもののひとつなんだ」
Blackwald が語る通り、”At The Heart of Wintervale” はパワー・メタルの定型を超越しています。もちろん、バンドの共同設立者 Lynd のフラッシーでテクニカルなギター・マジックは、アルバムの大きな見せ場であり、華。しかし、楽曲を前に進める原動力、設計図の原盤は、Blackwald が天塩にかけたシンフォニック・アレンジやシンセサイザー、ピアノやチェンバロにヴァイオリンの洪水です。なぜなら、Blackwald はこのトワイライト・キングダムに、壮大な映画音楽のメタルを築こうとしているから。
例えば、ハンス・ジマーが手がけたSF大作や、例えばアラン・メンケンが手がけた夢の国ディズニーのメタル盤があるとすれば、間違いなくそれはこの作品でしょう。それほど、Blackwald が手がけるオーケストレーションは完成度が高く、複雑怪奇でありながら耳にのこる印象力を備えています。数十年前の RHAPSODY の名作群と比べれば、時を超えていかに彼らのシンフォニック・アレンジや構成力、音の色彩が進化したかに気づくでしょう。
「”逃避” という行為は、人類の歴史の中で常に重要だったけど、おそらく今はかつてないほどその必要性が高まっている。常に相互接続され、即座に情報が飛び交い、錯乱するという過酷な現実は、人間の心に負担を与えているよ。僕は、音楽と芸術によるひとときの休息は、精神の幸福のために必ず必要な “安全な避難所” であると信じているんだ。だから、僕たちの音楽とそれに付随する物語を通して、リスナーが現実の束縛から解放されたり、現実の苦悩や苦難から解放された空想の世界に没入できればと願っているんだよ。ほんのひとときだけでもね」
そうして完成した “At The Heart of Wintervale” には、これもジマーやメンケンが手がけた空想の音楽と同様に、人々の “避難所” となるように真摯な祈りが込められています。D&Dのファンタジックなイメージで構成された8章からなるメタル・シネマは、磨きたての鎖帷子や重厚な鎧、黒のマントを身にまとい、ドワーフの鉱山やドラゴンの山、クリスタルの森など未到の地を未曾有の音楽で縦横無尽に駆け巡ります。SNS やインターネットが常に “オンライン” で、心の休まる暇のない現代。押し寄せる情報と暗い出来事をほんのひとときシャットダウンして、”オフライン” になるために、TWILIGHT FORCE の描き出す音景色やストーリーほど適した避難所はないでしょう。
TRICK OR TREAT でも知られるボーカル、Allyon こと Alessandro Conti の高らかなマイケル・キスク的威容に浸るもよし。エクストリーム・メタルの間合に潜むコミカルでプリティなセンスに酔うもよし。ただリスナーは、すべてを忘れてひとときの異世界転生をすればよいのです。アドヴェンチャー・メタルはまだまだ続いていきます。
今回弊誌では、Blackwald にインタビューを行うことができました。「ハイ・ファンタジーのエンターテインメントの多くは、僕たちの音楽や伝承に何らかの影響を及ぼしている。日本の多作なメディアの作品が、長年にわたってその一翼を担ってきたことは間違いないよ。”ベルセルク”, “ワンピース”, “デスノート”, “スタジオ・ジブリ”, “ファイナル・ファンタジー” など、想像力を刺激する日本の創作物の中には、僕たちのインスピレーションを形成してきた素晴らしい作品が数多くあるわけさ」2度目の登場。どうぞ!!

TWILIGHT FORCE “AT THE HEART OF WINTERVALE” : 10/10

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