NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUCCUMB : XXI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHERI MUSRASRIK & DEREK WEBSTER OF SUCCUMB !!

“Including a Song About The Boxer Rebellion Was a Personal Choice Though It Does Have a Tie To The Album In Its Being Against Westernization And Christianity In Their Rejection Of Ancestor And Nature Deity Worship.”

DISC REVIEW “XXI”

「私には、リアルな部分でとても男性的な面があって、それが演奏するときに姿を現すことは認めるわ。そうやって生の感情や暴力的な態度を表現する自由があることに感謝しているのよ。ただ、ジェンダーを考慮することで私は男性と女性の興味深いダイナミクスを加えることができるわけだけど、だからといってジェンダーを考慮することが常に必要だとは思っていないわ」
人生の選択、クリエイティブな仕事をする上での選択、音に対する選択にかんして、SUCCUMB のボーカリスト Cheri Musrasrik は女性であることに囚われることはありません。それ以上にもはや、エクストリーム・メタル界の女性をめぐる会話は少し陳腐だと言い切る彼女の喉には、性別を超越した凄みが宿り、”The New Heavy” の旗手としてアートワークの中性神のように自信と威厳に満ち溢れています。
「ベイエリアとカナダのシーンから受けた影響を否定することはできない。この2つのシーンに共通しているのは、彼らは常にそれぞれのアートを新しい領域に押し上げる努力をしているということだよ」
超越といえば、SUCCUMB の放出するエクストリームな音像もすべてを超越しています。ベイエリア、カナダというヘヴィな音楽のエルドラドを出自にもつメンバーが集まることで、SUCCUMB は突然変異ともいえる “The New Heavy” を創造しました。洞窟で唸るブラストビートと野蛮なデスメタルから、ハードコアの衝動と五臓六腑を締め付けるノイズまでスラッシーに駆け抜ける SUCCUMB の “エクストリーム” は、最新作 “XXI” においてより混迷の色合いを増し、くぐもっていた Cheri の声を前面に押し出しました。同時に、BRUTAL TRUTH や NAPALM DEATH のようなグラインドコアから、フューネラル・ドゥームの遅重までエクストリームなサブ・ジャンルを網羅することで、遅と速、長と短、獰猛と憂鬱をまたにかける不穏な混沌を生み出すことに成功したのです。
「様々なジャンルのある種のお決まりをコピーペーストするだけでは、あまりにあからさまだし、必ずしも素晴らしい曲作りになるとは限らない。その代わりに、僕たちはそれらの異質なサウンドの間に存在する音の海溝を掘り下げようとしているんだ」
とはいえ、SUCCUMB の “クロスオーバー” は単なる “いいとこ取り” ではありません。だからこそ彼らの発する “無形の恐怖” はあまりに現代的かつ唯我独尊で、基本的はよりアンビエントで実験的なアーティストを扱うレーベル The Flenser にも認められたのでしょう。そう、このアルバムにはリアルタイムの暴力と恐怖が常に流れているのです。その源流には、環境破壊や極右の台頭、世界の分断といった彼らが今、リアルタイムで感じている怒りがありました。
「義和団の乱を選んだのは個人的な選択だけど、祖先や自然の神への崇拝を否定する西洋化やキリスト教に反対しているという点では、このアルバムの趣旨と関係があるのよね。私は太平洋の小さな島の出身なんだけど、その島は恐ろしい宣教師と彼らの間違った道徳によって、固有の文化や習慣の多くが一掃されてしまったの」
アルバムの中心にあるのは、自然や大地を守っていくことの大切さ。アルバム・タイトル “XXI” は21番目のタロットカード “The World” を指し示していますが、正位置では永遠不滅、逆位置では堕落や調和の崩壊を意味するこのカードはまさに SUCCUMB が表現したかったリアルタイム、2021年の “世界” を象徴しているのです。
特に、義和団の乱を扱った “8 Trigrams” には彼らの想いが凝縮しています。中国の文化や貿易だけでなく、自然崇拝や宗教まで制圧し植民地化した列強と、それに激しく対抗した義和団。中でも、道教の自然や四元素へのつながりと敬愛を基にした八掛結社は、先住民の文化や習慣を抑圧し軍事基地や核実験の場として使用された太平洋の島を出自にもつ Cheri にとっては共感をせずにはいられない歴史の一ページに違いありません。そうして、世界がまた抑圧を強いるならば、私たちが音楽で義和団になろう。そんな決意までも読み取れる壮絶な7分間でアルバムは幕を閉じるのです。
今回弊誌では、太平洋の島からベイエリアに移住した Cheri Musrasrik とカナダ出身 Derek Webster にインタビューを行うことができました。「90年代は音楽業界で “成功する” 可能性についての妄想を捨てるというメタル界の考え方の変化により、多くの実験が行われたんだよ。アーティストが自分たちのサウンドを進歩させるために外部のインスピレーションを求めるようになり、その結果、TYPE O NEGATIVE などのバンドが大成功を収めることになったように思えるね」どうぞ!!

SUCCUMB “XXI” : 10/10

INTERVIEW WITH CHERI & DEREK

Q1: The Bay Area is the most important place for thrash and death metal, and of course Canada has produced many unusual metal bands such as Voivod and Martyr. It seems to me that Succumb was born from a mixture of these two roots. Would you agree?

【DEREK】: You could definitely say that! Even though we don’t put any geographic restrictions on where we draw our inspiration, there is no denying the influence that the Bay Area and Canadian scenes have had on our sound. We draw from the both the more technical bands such as Severed Savior and the bestial bands such as Nuclearhammer and everything in between. Obviously, Voivod has a huge influence on me as a guitarist and songwriter. The common thread here between the two scenes is that they always strive to push their respective art into new territory, which is what we aim to do in Succumb.

Q1: ベイエリアはスラッシュやデスメタルにとって最重要地域で、カナダは VOIVOD や MARTYR といった異端のメタルバンドを多く生み出しています。
SUCCUMB はベイエリアとカナダをルーツに持つメンバーの集まりですが、両者の特徴が素晴らしくミックスされていますね?

【DEREK】: 間違いなくそう言えるね! 僕たちはインスピレーションを得る場所に地理的な制約を設けてはいないけれど、ベイエリアとカナダのシーンが僕たちのサウンドに与えた影響は否定できないよ。
SEVERED SAVIOR のようなテクニカルなバンドから NUCLEARHAMMER のような獣のようなバンドまで、その中間にあるもの全てからインスピレーションを受けているんだ。そして VOIVOD はギタリストとして、またソングライターとして、明らかに僕に大きな影響を与えているね。この2つのシーンに共通しているのは、彼らは常にそれぞれのアートを新しい領域に押し上げる努力をしているということだよ。

Q2: Black metal, thrash, death, hardcore and punk, with various sub-genres further subdivided, Succumb’s music is truly genre-less and fascinating. Where do you find your most important roots? Did you have crossover in mind when you started the band?

【DEREK】: When we started as Cloak, our objective was to start a simple project that worships classic black metal like Blasphemy, Darkthrone and Cultes Des Ghoules. Even then, the end result of that initial demo was something that sounded nothing like either of those bands. As we started to write for our first full length album, I started to inject my influences from brutal death metal and grindcore into our sound, which then became more prominent on XXI. So there is a crossover, however the process in which that crossover materializes isn’t entirely premeditated, instead it flows very naturally. If you just copy paste certain tropes from various genres, it’s very obvious and does not always make for great songwriting. Instead, we try to dig into the sonic trenches that exist between those disparate sounds.

Q2: そのスラッシュ、デスメタルに、ハードコア・パンク、ブラックメタル、そしてありとあらゆるメタルのサブジャンルを飲み込んだ SUCCUMB の音楽は真にジャンルレスで魅了に溢れています。では、SUCCUMB にとって最も重要なルーツはどこにあるのでしょう?

【DEREK】: CLOAK としてこのバンドがスタートした時、僕たちの目的は BLASPHEMY, DARKTHRONE, CULTES DES GHOULES のようなクラシックなブラックメタルを崇拝するシンプルなプロジェクトを始めることだった。それでも、最初のデモの最終結果は、それらのバンドのいずれとも似ていないものだったんだよ。
それから最初のフルアルバムに向けて作曲を始めたんだけど、そこでブルータルなデスメタルやグラインドコアからの影響を自分たちのサウンドに注入し始めた。それが “XXI” でより顕著になったんだ。だから、クロスオーバーではあるんだけど、そのクロスオーバーが実現するプロセスは完全に計画されたものではなく、とても自然に流れていくものなんだ。
様々なジャンルのある種のお決まりをコピーペーストするだけでは、あまりにあからさまだし、必ずしも素晴らしい曲作りになるとは限らない。その代わりに、僕たちはそれらの異質なサウンドの間に存在する音の海溝を掘り下げようとしているんだ。

Q3: Cheri Musrasrik’s vocals are very intense and destructive. Not many people would recognize her as a woman just by listening to her voice. This is proof that there is no gender gap in the world of extreme metal, and that women are becoming more and more commonplace, would you agree?

【CHERI】: When I first started doing vocals it was for a noise punk band called PIG DNA and my main inspirations were people like Chitose of The Comes / The Wretched or Sakevi. I will admit that I have a very real male side to me that reveals itself when I perform. I am grateful to have the freedom to display raw emotion and violent attitudes. To consider gender can add some interesting dynamics, but I do not feel it is always necessary to address.

Q3: Cheri のボーカルは破壊衝動とインテンスに満ちていて、声を聴くだけで女性とわかる人は多くはないでしょう。それこそが、エクストリーム・ミュージックの世界で女性が当たり前の存在となった証明にも思えますね。

【CHERI】: ボーカルを始めたのは PIG DNA というノイズパンクバンドで、THE COMES/THE WRECHED の Chitose や Sakevi などに影響を受けているの。
私には、リアルな部分でとても男性的な面があって、それが演奏するときに姿を現すことは認めるわ。そうやって生の感情や暴力的な態度を表現する自由があることに感謝しているのよ。ただ、ジェンダーを考慮することで私は男性と女性の興味深いダイナミクスを加えることができるわけだけど、だからといってジェンダーを考慮することが常に必要だとは思っていないわ。

Q4: 21 is the card number for “The World” in the Tarot, right? Is this album about a divided world that was radically changed by the pandemic and climate change?

【CHERI】: While writing lyrics the state of planet Earth was what concerned me most. The themes of the album are related to the four elements: air, water, fire, earth. The importance of respecting and caring for our land and nature was a recurring thought that I had. The World card defines these ideas well.

Q4: アルバム・タイトルの “XXI”、21とはタロットカードの21番目、”The World” を指していますよね?つまり、パンデミックや気候変動で急速に分断を深めるこの “世界” を表しているのでしょうか?

【CHERI】: 歌詞を書きながら、一番気になったのはこの地球の状態だったわ。アルバムのテーマは、空気、水、火、土の4つのエレメントに関連しているの。大地や自然を敬い、守っていくことの大切さを繰り返し考えていたわ。”ワールド・カード” は、その考え方をよく表しているのよ。

Q5: The title of the song is in English, but it uses mysterious words about primordial gods, mythological spirits, and cosmological symbolism, right? How did you decide on this?

【CHERI】: I was attracted to ancient texts, knowledge, mythologies, and cosmogony for their feeling of greater potency. When speaking about the origin of our world and the worship of elements it made sense to look at these early conceptions of things.

Q5: 楽曲のタイトルは英語表記ですが、根源的な神々や神霊、宇宙的なシンボリズムについての神秘的な言葉を使用していますね?

【CHERI】: 古文書、古の知識、神話に惹かれるのよね。そして、より大きな力を感じることができる宇宙論にもより大きな力を感じるものに惹かれたのよね。
私たちの世界の起源や四元素への崇拝について語るとき、こういった初期の概念に注目することは理にかなっていると思うの。

Q6: The last song has the theme of the boxer Rebellion, right? At that time, Japan was one of the countries that participated in the colonization of China. Currently, the world is witnessing the rise of fascists and right-wingers again, is it meant to rebel against such a situation?

【CHERI】: Including a song about the Boxer Rebellion was a personal choice though it does have a tie to the album in its being against westernization and Christianity in their rejection of ancestor and nature deity worship. I come from a small Pacific island that has had much of its native culture and customs wiped out by hideous missionaries and their false morality. There are times when I consider an alternate reality where the missionaries that landed there were killed.

Q6: 最後の楽曲では、義和団の乱について歌っていますよね?当時は日本も中国の植民地分割に参加した国の一つでした。
近年、再びファシズムや極右勢力の台頭が目立ちますが、そういった情勢に贖う意味があるのでしょうか?

【CHERI】: 義和団の乱を選んだのは個人的な選択だけど、祖先や自然の神への崇拝を否定する西洋化やキリスト教に反対しているという点では、このアルバムの趣旨と関係があるのよね。
私は太平洋の小さな島の出身なんだけど、その島は恐ろしい宣教師と彼らの間違った道徳によって、固有の文化や習慣の多くが一掃されてしまったの。一方で、そこに上陸した宣教師たちが殺されたという別の現実を考えることもあるんだけどね。

Q7: This album has a more effective contrast between long and short songs compared to your previous albums.I also felt a strong influence from Grindcore. Would you agree?

【DEREK】: Absolutely! On this album, I wanted to put a darker shade on some of the grind bands that have influenced me such as The Kill, Parlamentarisk Sodomi, Brutal Truth, Mortalized, Flesh Parade and old Gridlink. I feel like we have only begun to explore that side of our sound.

Q7: それにしてもこの作品は、長い曲と短い曲のバランス、コントラストが絶妙ですね?グラインドコアからの強い影響を感じましたよ。

【DEREK】: もちろんだよ!このアルバムでは、THE KILL, PARLAMENTARISK SODOMI, BRUTAL TRUTH, MORTALIZED, FLESH PARDAE、それに昔の GRIDLINK など、僕が影響を受けたグラインドバンドにさらに暗い色合いをつけたいと思ったんだよね。ただ、自分たちのサウンドのそういう面をまだ探求し始めたばかりだと感じているよ。

Q8: Your music reminds me of the adventurous and ambitious works of the 90s, like “Bloody Kisses” by Type O Negative, “34.788%… Complete” by My Dying Bride, “City” by Strapping Young Lad… Is The 90’s a special time and spirit for you?

【DEREK】: The 90s was undoubtedly a special time in metal. If the 80s were a time of rapid evolution, with all of its various sub genres emerging in a relatively short span of time, then the 90s were a time where those genres defined who they were and were truly able to stretch their legs. This led to a great deal of experimentation due to a changing mindset in the metal community, which cast aside any delusions of the possibilities of “making it” in the music industry. Ironically, it seems like this commitment to the underground also led to artists seeking outside inspiration to progress their sound in a way that was not often seen in the 80s outside of bands like Voivod and Celtic Frost, which in turn led to bands like Type O Negative hitting the big time. History lessons aside, metal in the 90s, in all its various forms have left an impression on us as musicians.

Q8: SUCCUMB の音楽を聴いていると、野心的で冒険的だった90年代の作品を思い出しますよ。
TYPE O NEGATIVE の “Bloody Kisses” や MY DYING BRIDE の “34.788%… Complete”、それに STRAPPING YOUNG LAD の “City” とか…あの時代の空気はあなたにとってやはり特別ですか?

【DEREK】: 90年代は、間違いなくメタル世界にとって特別な時代だった。80年代が比較的短期間に様々なサブジャンルが出現し、急速な進化を遂げた時代だとすれば、90年代はそれらのジャンルが自分たちのあり方を定義し、真に伸び伸びと活動できた時代であったと言えるだろうな。
言ってみれば、90年代は音楽業界で “成功する” 可能性についての妄想を捨てるというメタル界の考え方の変化により、多くの実験が行われたんだよ。皮肉なことに、このアンダーグラウンドへの傾倒は、80年代には VOIVOD や CELTIC FROST のようなバンド以外にはあまり見られなかった方法だったんだ。アーティストが自分たちのサウンドを進歩させるために外部のインスピレーションを求めるようになり、その結果、TYPE O NEGATIVE などのバンドが大成功を収めることになったように思えるね。
歴史の教訓はさておき、90年代のメタルは、その様々な形態で、ミュージシャンとして僕たちに印象を残しているよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED DEREK’S LIFE

MORBID ANGEL “COVENANT”

PORTAL “OUTRE”

DEFEATED SANITY “PSALMS OF THE MORIBUND”

METALLICA “RIDE THE LIGHTNING”

RIPPING CORPSE “DREAMING WITH THE DEAD”

MESSAGE FOR JAPAN

We would love to tour Japan if ever it were possible. Thank you for your support and we hope to play in Japan soon!

可能ならば、ぜひ日本をツアーしてみたいね。サポートをありがとう。日本ですぐ会おう!

CHERI & DEREK

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