EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRODY UTTLEY OF RIVERS OF NIHIL !!
“It Is Absolutely Possible To Have The Singular Focus Of Your Idealized Art, You Just Have To Be Willing To Put Off All Of The Things That We’ve Been Raised To Believe Are Necessary Components Of What Makes a Life Fulfilling And Meaningful.”
DISC REVIEW “THE WORK”
「ロックダウンは、閉じこもって腰を据え、これまで以上にクリエイティブな作業に没頭する絶好の機会となったんだ。当時、世界で起こっていたすべてのことを考えると、もう二度とバンドとして一緒に音楽を演奏することはないだろうと思えてね。だから、ある意味では最後のアルバムになると思って書いていたのかもしれないよね」
ペンシルバニア RIVERS OF NIHIL は、本質的な意味でのプログレッシブな要素と、付け焼き刃とは正反対のクリーンな歌唱を着実に取り入れ、シーンの中で傑出した存在となったエクストリーム・メタル・アンサンブル。2018年の “Where Owls Know My Name” でプログレッシブ・デスメタルの最先端を書き換えた彼らは、最期を意識し不退転の決意で臨んだ “The Work” においてまさに堅忍不抜、パンデミックという冬の情景を誰よりも克明に、さながら名作映画ように深々と映し出してみせました。
「”The Work” は間違いなく四部作の終わりを告げる作品なんだ。僕たちのこれまでの4枚のレコードは、それぞれ季節を表していてね。”The Conscious Seed of Light” は春、 “Monarchy” は夏、”Owls” は秋、そして “The Work” は冬なんだよ。冬というのは心の状態も表している。長い間、落ち込んだり、絶望したり、不安になったりする心の状態は、アメリカの北東部で経験する冬とよく似ているんだ」
最も困難で予測不能な季節。冬に託されたそんなイメージは、そのまま “The Work” の音楽にも当てはまります。冷たく機械的な極端さと、有機的な暖かさや適切に配置されたメロディが絶妙に混交した “Owls” がある意味万人受けする秋だとすれば、野心的で、瞑想的で、変化に富んだ超越的な “The Work” はすべてを受け入れるために時間を要する冬の難解そのものなのかも知れません。厳しくて冷たい不可解な世界。しかし最後に到達するのは肉体的、精神的、感情的な満足感です。
「自分の理想とする芸術に集中することは絶対に可能だよ。ただ、自分の完璧な芸術的ビジョンにすべてを捧げたいのであれば、人生を充実させ、意味のあるものにするために必要であると信じられてきたすべてのものを喜んで捨てなければならないんだ」
アルバムに込められたメッセージは、リスナーに内省を促し、人生をより本質的な価値のある、意味のあるものにしていくこと。”The Work” “仕事” とはいったいなんのための仕事なのか。自分の人生を生きるという、簡単なようで実に難しい不可能にも思える命題こそ彼らの魂。それがパンデミックであれ、大統領選であれ、アートワークの分断された世界においても、黙々と光の中で音楽を作り続けたのがインタビューの回答者である Brody Uttley であり、RIVERS OF NIHIL でした。つまり、パンデミック、冬という厳しい季節においても、不撓不屈の精神さえあれば心の充足、魂の浄化は必ず得られるのです。
「多くのバンドが、よりプログレッシブなサウンドに向かうにつれて、ヘヴィーな瞬間、その激しさを失っていく傾向があると思うんだ。でもその要素を完全に捨ててしまうのは愚かなことだよ。というのも、僕たちはヘヴィーな要素を “絵画” の “色” として使うことに長けているからね。僕たちは “プログレッシブ” というものを自分たちのやり方で表現したかったんだ」
冒頭の “The Tower (Theme from The Work)” は、そのテーマと音楽の両方で、アルバムの本質を伝えます。荘厳で幽玄なピアノに始まり、悲しくも不吉な歌詞が寒々としたジャズ・メタルの世界を彩ります。アレンジにも工夫が施され、サックスやパーカッションといった “アウトサイド・メタル” な音色が心に残る響きを加えていきます。ボーカリスト Jake Dieffenbach が、最終的にトレードマークであるグロウルへ到達するまでの RIVERSIDE にも似た穏やかな不安感が、何よりもこの冬のアルバムを完璧に表現しているでしょうか。
実際、このアルバムには穏やかに、緩やかに、内省的で多面的なダイナミズムの断片が散りばめられています。ほとんどラジオ・フレンドリーと言えるほどポップで、ストレートなリズムにクラシック・ロックのギターソロまで認めた “Wait”、AYREON や PINK FLOYD のサイケデリックな宇宙に “Tower 2″ のアコースティックな響き。一方で、”Dreaming Black Clockwork” や “Focus” には NINE INCH NAILS を想起させるインダストリアルで凶暴な冷酷と混沌が封じられています。
クライマックスはアルバムの最後を飾るトリロジー。繊細で、ミニマルで、アンビエントで、爆発すれば荘厳壮大、咽び泣く音の壁、ディストピア的邪悪なノイズの連射。Brody が最近の愛聴盤に MOGWAI や DEAFHEAVEN, RADIOHEAD を挙げているのは、アルバムを紐解くためのちょっとしたヒントなのかもしれません。ポスト・ロックやポスト・メタルをデスメタルの側から解釈したようなダイナミズムと激情の26分は、このバンドがどれほどすべてを投げ打ってアートに捧げているのか、変化を恐れない人間たちなのか、それを証明するに十分な音のメッセージだと言えるでしょう。
今回弊誌では、リード・ギタリストでキーボードもこなす Brody Uttley にインタビューを行うことができました。「典型的な人生の青写真に従わない人は真のヒーローで、僕にとって常に刺激的な存在なんだ」 二度目の登場。どうぞ!!
RIVERS OF NIHIL “THE WORK” : 10/10
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